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2011年1月17日 第42回労災保険部会議事録
労働基準局労災補償部労災管理課
○日時
平成23年1月17日(月)16:00~
○場所
厚生労働省中央合同庁舎第5号館専用第18・19会議室(17階)
(東京都千代田区霞が関1-2-2)
○出席者
委員
岩村 正彦 (東京大学大学院法学政治学研究科 教授) |
野寺 康幸 (社団法人全国中小企業勤労者福祉サービスセンター 会長) |
稲葉 康生 (元毎日新聞社東京本社論説室局 次長委員) |
小畑 史子 (京都大学大学院地球環境学堂 准教授) |
中窪 裕也 (一橋大学大学院 国際企業戦略研究科 教授) |
黒田 正和 (日本化学エネルギー産業労働組合連合会 事務局長) |
齊藤 惠子 (UIゼンセン同盟政策局) |
小島 弘幸 (日本基幹産業労働組合連合会 中央副執行委員長) |
新谷 信幸 (日本労働組合総連合会 総合労働局長) |
立川 博行 (全日本海員組合 中央執行委員国際・国内政策局長) |
林 裕司 (全国建設労働組合総連合 書記次長) |
伊丹 一成 (新日本製鐵株式会社人事・労政部 部長) |
桐明 公男 (社団法人日本造船工業会 常務理事) |
田中 恭代 (旭化成株式会社 人財・労務部EO推進室部長) |
輪島 忍 (社団法人日本経済団体連合会 労働法制本部主幹) |
事務局
尾澤 英夫 (労災補償部長) |
木暮 康二 (労災管理課長) |
瀧原 章夫 (調査官) |
野地 祐二 (労災保険財政数理室長) |
須永 敏良 (主任中央労災補償監察官) |
河合 智則 (補償課長) |
渡辺 輝生 (職業病認定対策室長) |
若生 正之 (労災保険審理室長) |
植松 弘 (労災保険業務課長) |
美濃 芳郎 (労働保険徴収課長) |
宮下 雅之 (労災管理課長補佐) |
本多 則惠 (賃金時間室参事官) |
高崎 真一 (計画課長) |
吉本 明子 (雇用均等政策課長) |
○議題
1. 労働基準法施行規則及び労働者災害補償保険法施行規則の一部を改正する省令案要綱について
2.平成23年度労働保険特別会計労災勘定予算案概要について
3.社会復帰促進等事業に係るPDCAサイクルの見直しについて
○議事
○岩村部会長 ただいまから、第42回労災保険部会を開催いたします。本日は、那須委員、佐々木委員、萩尾委員がご欠席でございます。
また、前回の部会以降、委員の交替がございましたので、ご紹介させていただきます。労働者側委員としまして、田中伸一委員に代わり、全日本海員組合中央執行委員国際・国内政策局長の立川博行委員が就任されました。
○立川委員 立川と申します。よろしくお願いいたします。
○岩村部会長 どうぞよろしくお願いいたします。それでは、今日の議事に入らせていただきます。お手元の議事次第に沿って進めてまいりたいと思います。
まず、第1の議題は、「労働基準法施行規則及び労働者災害補償保険法施行規則の一部を改正する省令案要綱について」です。本件は厚生労働大臣から労働政策審議会会長あての諮問案件です。前回のこの部会におきまして、事務方から説明をいただいた件であります。それでは、事務局のほうからご説明をお願いします。
○労災管理課長 前回に引き続きまして、省令案要綱について、ご審議をお願いします。資料1-1と1-2の法律案要綱については前回読み上げましたので省略させていただきまして、去年12月22日に行いました公聴会について説明いたします。
公聴会の公述意見については、資料1-2に添付しています。資料1-2の内容は、公益側・労働者側・使用者側、それぞれ公述をいただきました。公述内容として、概ね妥当との意見をいただいたものと考えていますが、その中でそれぞれ様々貴重な意見をいただきました。改正内容に関する意見を集約すれば、改正内容や改正省令の適用時期について周知徹底することや、適切に制度を運用するということを要望するもの。また、障害等級については、社会情勢の変化に対応した見直しを適宜に行うことを要望するものということになろうかと思います。我々としては意見を踏まえまして今後も改正内容をきちんと周知徹底するとともに、適切な制度運営を図ってまいりたいと考えているところです。
細かい内容はここでは話ませんが、いくつか更に追加して申し上げたいと思います。具体的な施行にあたりましては、施行通達を発出するわけですが、今般の改正の趣旨については改正の趣旨を全国の労働基準監督署に周知して被災者の方にとって納得感のある運営に努めたいと考えているところです。特に今回遡及適応の対象となる方々がおられます。経過措置を設けましたので、遡及適応の対象となる方々がおられますので、この方については待ちの姿勢ではなくて、労働基準監督署において調査を行って、職権で等級の変更を行って、その旨を通知するという形を取りたいと考えています。この形によりまして変更漏れのないように適切な事務処理を行ってまいりたいと考えていますので、よろしくお願いいたします。以上です。
○岩村部会長 ありがとうございました。ただいまの公聴会に関する説明も踏まえまして本件に関してご意見、ご質問などがあればお願いします。
○黒田委員 労働委員の黒田です。2つお願いがあります。公聴会のほうに出ていた意見で、1つは、外ぼう障害については、74年もの間、男女間の格差が解消されることはなかったということで、それ自体は当時の時代背景ですとか、社会の価値観に合致したものとは思いますが、74年に渡って見直しの機会がなかったこと自体がいかがなものかと思います。12月22日の公聴会の中でも新谷公述人が申し上げているところでありますが、他の労働法制・政策について、男女の格差がいま存在するものがないかどうか、現在の実態に合っていないものがないかという観点から、厚生労働省としても省庁全体でいま一度点検を行うべきであるとお願いしたいと思います。
もう1点は、これも公聴会の中で出ていたのですが、医療技術の実情や諸外国の取扱いなど、社会情勢の変化に対応した見直しのタイミングを適宜設けていただくということも併せて、繰り返しになりますがお願いしたいと思います。以上です。
○岩村部会長 ありがとうございました。ほかにいかがですか、よろしいですか。ご意見もないようですので、諮問のあった本件について、この部会としては「妥当と認める」旨労働条件分科会に対して報告したいと考えますがいかがでしょうか。
(了承)
○岩村部会長 はい、ありがとうございました。それでは、そのようにさせていただきます。報告文については、私にご一任していただくということでよろしいですか。
(了承)
○岩村部会長 ありがとうございました。次に議題(2)では、「平成23年度労働保険特別会計労災勘定予算案概要について」です。事務局のほうから説明をお願いします。
○労災管理課長 資料2に基づきまして説明申し上げます。資料2の1頁に歳入予算と歳出予算の総括が書いてます。去年の12月24日に閣議された労災勘定の予算案の概要です。歳入予算については、対前年度比98.5%、歳出予算額99.2%ということで、減少しているところです。その減少の状況について、次の頁で説明申し上げたいと思います。
まず、歳入については、ほとんどが保険料収入です。他勘定より受入が保険料収入ということですが、労災保険料の収入見込額が対前年度比で98.1%です。雇用者所得の伸びといいますかマイナスということが予想されているために、保険料の収入の減を予測しているというところで、歳入についてはほとんどこの要因が大部分を占めます。
次に、歳出については、次の頁で給付費の保険給付費をご覧ください。短期給付、長期給付の年金、アスベストの関係の特別遺族給付金、いずれもマイナスです。これは長期的な労働災害の減少ということを反映しまして、減少を見込んでいるということです。2番目の社会復帰促進等事業費については、事業仕分け等も受けまして、53億円以上の減少をたてています。これについての詳細については、議題3のところで説明申し上げたいと思います。
業務取扱費これが実は増加してますが、これも仕分けの関係で、特に法人関係の仕分けにおきまして指摘を受けたもので、国が直接実施するというものがいくつかございます。いちばん大きなところでは、労災情報センターにやっていただきました労災診療費の事前点検の業務がいちばん大きいわけです。そういうものを国で直接実施するということで形の上では業務取扱費のところが伸びて社会復帰促進等事業費のところで削れていると。そういう形の部分があるということです。予算については以上です。
○岩村部会長 ありがとうございました。それではただいまの説明についてご意見、ご質問がありましたらお願いします。齋藤委員どうぞ。
○齋藤委員 先ほども話がありましたように、昨年の事業仕分け第3弾での労災保険の社会復帰促進等事業については、原則廃止との仕分け結果に対して、労働側として、社会復帰促進事業等の中には労災の際の義肢や車椅子の支援、あるいは社会問題である石綿、また、企業倒産時の未払賃金の一部を政府が立替え払いする未払賃金立替払事業等が含まれ、廃止は労働者の安全を守る事業の後退、逆行であるとの意見を申し上げ、この労政審等労災部会として事業仕分けの際には、労使代表、学識経験者の意見を尊重すべきとの見解を出しました。今回示された予算案について、事業の効率化、合理化に加え、先般の部会でも申し上げましたように、事業の社会的必要性、存在意義など総合的な見直しを行った上で継続と判断され、予算の確保となった点について評価をしたいと考えます。
○岩村部会長 ありがとうございました。その他にいかがですか、小島委員。
○小島委員 労災保険財政についてですが、参考2-1を見ますと、積立金の累計が先ほども説明がありましたように、給付が減る、あるいは社会復帰促進事業等見直すとのことで、削減したとしても、収入が減るとのことで、積立金の累計が約8兆円から7兆8,500万円と減じるようになったとのことで、先日の部会の中で外部の有識者による労災保険財政の検討会を開催するという話もありますが、是非、この当部会との連携を図っていただきたいということ。今どうするということはもちろんですが、将来に渡ってもどうするかについても論じられると思いますので、その件についても可能の限りこの部会と連携して情報の共有を図っていただきたい。そういう配慮をお願いしたいとのことで、意見を述べさせていただきました。
○岩村部会長 ありがとうございました。ただいまの点に対して、一言ありましたら事務局からどうぞ。
○労災管理課長 前回の部会でもご説明申し上げましたように、現在、労災保険の財政検討会の開催をしているところですが、それはそれと致しまして、積立金そのものの額は、年金受給者の人数、その他の事情によって、客観的に決まってくる面があります。ここの金額が減っているから直ちに財政的に厳しい状況かというと必ずしもそうではなく、それらのことも含みまして、労災保険財政検討会では、より国民にわかりやすく、積立金の意義、積立金の算定方法や、ディスクロージャーについても検討しています。その成果については、当然この部会と連携を図りながら皆様方にもご報告しながら進めていきたいと思っていますので、よろしくお願いいたします。
○岩村部会長 ありがとうございました。輪島委員。
○輪島委員 質問ですが、参考2-1の注)の1ですが、労災保険の積立金という表現と、いちばん最後に原資(責任準備金)という表現があります。積立金という表現と、責任準備金という表現はこれは何かの用語ですか。上の表の区分のいちばん下にある積立金累計額という表現がありますが、責任準備金の累計額でもいいわけですか。積立金だと埋蔵金みたいな、今日そういう取られ方があるので、責任準備金というのは非常に適切な表現なような気がしますけれど、それはどういう関係になっているのか教えてください。
○岩村部会長 ではお願いします。
○労災管理課長 これはまあ様々な予算なり特別会計のいろいろな制度上は、いまのところ積立金という名称になっていますので、積立金という整理にしていますが、ただその内容的には責任準備金であるということを明らかにするためにこの「注」をつけています。もちろん最初から責任準備金と書けばわかりやすいというのは、まさに指摘のとおりですが、少なくともこのような「注」を付けることで内容をより明確にして皆様にお伝えしたいと考えています。
○輪島委員 労災保険の積立金はまさにそういう趣旨で積み上がっているものなので、その点についても広く理解いただけるよう、今後とも継続して周知説明の機会をたくさん作っていただきたいと思います。要望です。
○岩村部会長 ありがとうございました。他にいかがですか、新谷委員。
○新谷委員 先ほど事務局に説明いただいた内容で1点質問させていだきます。資料2の2枚目のところで、先ほど歳入のところで保険料収入について98.1%に収入見込みが下がるという説明で、それの説明として、雇用者所得の収入減という話を伺いました。これが2ポイント近く下がるという見込みが出ていますが、保険料の収入はメリット制による労災保険、労災事故が少なくなれば保険料収入が下がるという、ビルトインされているシステムがありますので、2ポイント近く下がるうちの、減る要因を分解したときに雇用者所得収入が減るのがどのくらいあり、メリット制による減額分はどのくらいあって正確にちょっと教えていただかないと、すべてが何か厚労省の労働行政の基本となるところが、雇用者所得が減るという前提ですと、これから我々分配の交渉もするものですから、労働行政がこういう見込みで、やっておられるとなると、他に影響もしかねないと思いまして、その辺についてご説明の補足がありましたらお教えいただきたいと思います。
○岩村部会長 事務局のほうでお願いします。
○労災管理課長 直ちにこの場では細かな数字は出ませんが、また後ほど報告申し上げたいと思っています。単純に確かにおっしゃられるとおり、雇用者所得の減だけではなく、いままでの趨勢とか、細かな複数の要素を確かに入れ込んでいることは確かです。メリット制による収入の減少も含めて、保険料収入の実績を真っ直ぐに伸ばすことにより出している面もありますので、正確に要因分析をするにはちょっとお時間をいただく必要があろうかと思っています。
○新谷委員 それが含まれているということは、まず確認させていただきたかった。先ほどは説明がなかったものですから。すべてが雇用者所得の収入減と聞こえたもので、そこを確認させていただきたかったのが1つです。
その見込みの、特に雇用者所得の収入減も当然あると思いますが、それは省の中の取扱いですと、労災保険の収支の計算にのみ使うものなのか、他の局の安定局とか共通でそういう見込みを省全体として使っているのか、それの扱いもあれば教えてください。
○岩村部会長 事務局、いかがでしょうか。
○労災管理課長 これはかなり労災の実績を基にしていますので、先ほど申し上げましたように雇用者所得の減というのはマクロな話でして、例えば事業所数、事業所が倒産したりつぶれたりしますと、当然のことながら労働保険の収入は減ってくる。そういうものも含めまして、実績としての減少したのを真っ直ぐ推計として延ばしていく要素もありますので、あくまでもこれは労働保険の数字と考えていただければいいと思います。
○岩村部会長 よろしいですか、その他はいかがですか、よろしいですか。本件については以上にさせていただきます。
次の議題に移りたいと思います。議題(3)は、「社会復帰促進等事業に係るPDCAサイクルの見直しについて」です。事務局から説明をお願いします。
○労災管理課長 資料3でございます。冒頭に書いてありますように、社会復帰促進等事業については、行政刷新会議事業仕分け等において、「原則廃止」という指摘を受けるなど、無駄の排除の観点から、ガバナンスの抜本的な強化が求められている状況です。このため、平成23年度概算要求については見直しを行いまして、対前年度で、事業数を29事業、予算額を約54億円削減としたのですが、これは単年度限りということではなく、「社会復帰促進等事業に係る目標管理に係る基本方針」についても見直しをして、無駄をなくす仕組みを構築する中で、より重点的に監視する体制を作りたいということです。新基本方針については、平成23年度から適用したいと考えていますが、まずPDCAサイクルの見直しの説明をする前に、いま申し上げた、29事業、54億円削減について説明を申し上げたいと思います。
参考3-1をご覧ください。これは平成23年度の足下の所ですが、いちばん下の所に「雇用戦略・基本方針2011」と「雇用戦略対話」の合意で、12月15日のものがあります。この「雇用戦略対話」の政労使合意におきまして、社会復帰促進等事業については必要な見直しを行った上、今後とも実施するとし、セーフティーネット対策としての重要な役割などについても政労使の合意がなされました。これを受けまして、私どもで予算の見直しを行って、真ん中の所に記載しているように、執行実績が相対的に低い事業、社会復帰促進等事業として実施する必要性が相対的に低い事業、所期の目的を達成した事業、類似事業の存する事業等について、廃止・統合などを行って、事業数及び予算額を削減しました。
事業数としては、平成22年度は106事業でした。このうち34事業を廃止・統合しまして、新規事業を5事業立ち上げて、見直し後は77事業という形に整理しました。予算額につきましては、廃止・縮減等によって対前年度比の減を大幅に立てています。その具体的な事業リストですが、参考3-2「社会復帰促進等事業一覧」をお配りしています。ただ、この一覧につきましては、見直し前の、廃止する事業も含めてリスト化していますので、番号としては97番まで振ってある事業になっています。この97事業のうち、平成22年度限りの事業17事業、平成23年度限りの事業とか経過措置事業を除くと、いま説明した77事業になるわけです。これが社会復帰促進等事業の全体像です。
参考3-2の冒頭からご覧いただくとおわかりのように、事業番号の横に「PDCA評価番号」という欄があります。ここのバーが書いてある所が、いままでPDCAサイクルで評価をしていないものです。例えば3番の、義肢等補装具支給経費とか、その次の、アフターケアの経費など、労災保険給付の付加給付のような事業とか、その他、一定程度の分量の事業は、いままでPDCAサイクルで評価してこなかったわけです。
それから、参考3-3ですが、その中からさらに、廃止した事業と、予算額が対前年度比でプラスマイナス20%以上になった事業だけ抜き出したものです。これに基づきまして、どのような事業に変動があったのかを若干かいつまんで説明します。まず社会復帰促進事業の中での、独立行政法人労働者健康福祉機構に対する施設整備費につきましては、九州の福岡県にある総合せき損センターが建築後相当年数が経っていて、その建替え経費が平成23年度で措置しましたので、一時的にこの経費が延びたわけです。
それから、被災労働者等援護事業です。いちばん冒頭のものにつきましては、平成22年度限りの事業だったために廃止しましたが、その次の、救急薬品の関係の事業については、今回の行政刷新会議の事業仕分け結果を踏まえまして、必要性の点検を行った結果、この事業が作られた時期と比べて、災害発生時に私ども監督署が救急薬品を持って飛んで行く必要性が低下した、と判断して廃止したわけです。今回の見直しはこのような観点で、一つ一つ見直しをして廃止しているということです。それから、新規労災年金受給の支援経費につきましても、これについては省内事業仕分けの結果を踏まえて、国による直接実施に振り替えるとのことです。その次の休業補償特別援護経費については、むしろ支給実績が伸びていますので、大幅な増加をしているとのこと。20番の、援護事業の業務委託費については、粉じん作業労働者に対して、粉じん作業以外の職種への転換に必要な技能講習のための教育訓練の援護というものでしたが、これについても、何年も実績がないということもありまして、あるいは、必要性を総合的に勘案して廃止したのです。
一つ一つ、全部を説明していくと大変時間を食うわけですが、いま申し上げたように、伸ばす事業については伸ばし、廃止するものについては廃止するという中で、50数億円の削減を行っています。
以上を踏まえまして、PDCAサイクルの見直しについてご説明を申し上げたいと思います。資料3の裏側、「新基本方針(案)」という所をご覧ください。いまご説明申し上げた社会復帰促進等事業、これからは77事業ということですが、すべての事業を目標管理の対象とするという考え方で評価をやっていきたいわけです。目標については、アウトカム指標とアウトプット指標を用いて設定することを原則としまして、質と量の両面を評価する観点から、可能な限り複数の目標を設定していきたいと思います。この点については既に実施していますが、基本方針上明らかでなかった所なので、基本方針の改正を行いたいとのことです。
それから、3番目の○ですが、すべての事業を目標管理の対象とすることからすると、アウトカム指標で測定することがなかなかできない事業もあります。それらについては別の評価基準を設定することにしたいと思います。また、執行実績が相対的に低い事業、社復事業として、実施する必要性が相対的に低い事業などについては、検討会において点検しているわけですが、その結果については労災保険部会でも議論をして、PDCAサイクルの一環として位置づけたいわけです。また、検討会そのものについても公開性を高めていきたいと考えています。
それから、具体的なPDCAの所です。まず、計画の所ですが、2番目のポツにあるように、いま現在、複数年度目標管理事業が若干ありますので、複数年度にまたがるものについては当該年度の目標も設定したいというところが変更点です。また、事業の実施にあたっては、いままでにせっかくPDCAサイクルで実施してはいますが、特に法人などに委託するような事業につきましては、具体的な目標について、きちんと実施主体に明示していたかどうかという問題もありますので、評価の際の様々な指摘、要因分析など、それから、目標についても、きちんと配慮するようにと明示した上で事業を実施する仕組みにしたいと考えています。また、実行にあたっては、すべての事業というわけにはいきませんが、1年が終わって閉めてから数字をとるだけではなくて、事業の途中においてもモニタリングを行いたいと考えています。
それから、評価については、先ほど説明しましたが、アウトカム指標とアウトプット指標によって、検討会・部会における議論を踏まえまして、評価を実施したいと考えています。
それから、新規で行う社会復帰促進事業について、いままでは部会において特段確認をいただいてはいませんでしたが、今後は部会においても必要性の確認を行っていただいてはどうかと思います。
それから、改善です。目標達成、事業実績等につきましては、翌年度に評価した結果についてはその次の概算要求にきちんと反映していきたいのですが、その状況については部会においても確認を行います。これは、実際には既にご報告を申し上げていますが、そういうことで実施したいと考えています。新規事業については担当からご説明を申し上げます。
○労災管理課長補佐(企画) 参考3-4をご覧ください。新規事業を5つほど記載しています。順次、簡単にご報告させていただきたいと思います。
まず1番目、事業シートの1番です。「(メンタルヘルス対策に対応可能な)外部専門機関の整備・育成等事業」です。こちらにつきましては、メンタルヘルス不調者が大変増加する中で、一定規模以上の病院や医師会など、事業場の外部組織として、メンタルヘルス不調者に対する産業保健活動への参加が想定される機関に対し、開設に向けての意向や課題等についての調査、それから、外部専門機関の整備が課題となっている地域では、開設に向けた研修などの支援を行う事業です。精神障害等事案につきましては、平成21年度の労災保険請求が1,136件となっていて、支給決定件数も234件に上っています。本事業によりまして、専門スタッフがいないことなどによる、労働者のメンタルヘルス対策を十分に行うことができない事業者に対し、支援を行うことが可能となり、精神障害等事案の発生を防止し、精神障害等事案に対する労災保険給付の抑制に資すると考えることから、本事業を社会復帰促進等事業で行うこととしています。
続きまして、2番目の事業です。「職場における受動喫煙防止対策事業」についてです。飲食店や宿泊施設などで喫煙室を設置する事業場に対し、その設置に要する費用の4分の1の助成などを行う事業です。本事業によりまして、職場における受動喫煙を受ける機会が減少することにより、労働者の健康障害を防止することができると考えているため、社会復帰促進等事業で行うこととしています。
3番目の事業です。「働きやすい職場環境形成事業」です。職場におけるいじめ・嫌がらせに対する労使を含めた国民的な問題意識を共有するための気運の醸成を図る事業です。平成21年度の労災保険からの支給決定を行った精神障害等事案は234件ありますが、そのうち嫌がらせ・いじめ・上司とのトラブルなど、対人関係のトラブルによるものは29件と、全体の約12%を占めています。本事業によりまして、これらの事案の発生を防止し、精神障害等事案に対する労災保険給付の抑制に資するため、社会復帰促進等事業で行うこととします。
続きまして、4番目ですが、「墜落・転落災害等防止対策推進事業」です。足場からの墜落防止措置に関する「より安全な措置」について、専門家による診断の実施、診断結果に基づく改善計画の作成等の現場に対する指導・支援などを行う事業です。平成21年度における墜落・転落による死亡者数は289人と、全死亡災害の4分の1を占めている状況です。本事業によりまして、墜落・転落による死亡災害を防止し、労災保険給付の抑制に資するため、社会復帰促進等事業で行うこととしています。
最後に、「女性就業支援全国展開事業」です。全国の女性関連施設等に対する相談対応や講師派遣などを雇用勘定と折半で行う事業です。女性労働者の約6割が、職場の人間関係、仕事の質・量について、強い不安、悩み、ストレスを有している実態があります。一方で、平成21年度に支給決定を行った精神障害等事案、234件のうち、女性労働者が当事者となるものは69件と、全体の約30%、また、過労死事案、293件のうち22件と、全体の約8%を占めている状況です。本事業によりまして、全国の女性関連施設等で行っている、女性就業支援施策が効果的、効率的に実施できるようになり、国全体として、女性の健康の保持・増進が図られること、また、精神障害等事案や過労死事案等の発生を防止し、これらの事案に対する労災保険給付の抑制に資するため、社会復帰促進等事業で行うこととしています。以上でございます。
○岩村部会長 ありがとうございました。それでは、ただいまご説明いただいた、一連の資料3関係につきまして、ご意見あるいはご質問があればお願いしたいと思います。
○新谷委員 資料3の裏に書いてある、PDCAサイクルの回し方についてご説明いただきましたし、また、資料3-1から資料3-3まで、新規事業も含めて詳細な資料を付けていただいていまして、社会復帰促進等事業について、労災保険部会での情報開示といいますか、審議が充実されることについて、まずは評価をしておきたいと思います。その上で、資料3の裏にPDCAサイクルの説明があって、「基本的な考え方」の中に、上の四角の最後の○に「検討会において点検し」と書かれています。今日の資料は、その後にホームページ等で公開されることになると思いますが、最後の3-6に、この検討会の構成委員の名簿もついていまして、すべて使用者側委員で構成されている検討会となっています。この社会復帰促進等事業については、先ほども増減をした事業の報告もいただきましたが、被災労働者の援護事業だとか、安全性に資する事業について、いずれも労働者側にとっても非常に影響の大きい事業内容となっているわけです。PDCAサイクルの中でもこの検討会が組み込まれていますが、今後、これが使用者側だけの構成でされることになるのかならないのかを含めて、非常に気になります。
お聞きしたい点があります。使用者側だけの委員で構成された検討会が設置されていて、それが公の資料の中に出てくる経緯が何故なのかがわかれば、過去の経緯を含めてお聞きしたいと思います。
○岩村部会長 では、事務局のほうからお願いします。
○労災管理課長 特別会計についてはかねてから無駄遣いが議論になってきていましたが、特に雇用保険の2事業も含めて、様々な箱物、その他について、厳しいご指摘がありました。私どもの社会復帰促進等事業についても、かつては労働福祉事業という形で実施してきましたが、労働福祉事業についても、特に箱物建設をはじめとして様々な問題があったということで、見直しを行いまして、労働条件確保事業の廃止なども含めて、法律改正までやって、労働福祉事業を社会復帰促進等事業に転換してきたという、歴史的な経緯があります。その中で、点検していく仕組みとして、当時、保険料を負担していた使用者の方々にご覧いただいて、無駄を排除していく枠組みを作ったことがあります。これは直接に費用を負担している立場から、当然、費用負担の痛みを受けていることで、厳しいご指摘がいただけるという考え方もあって、このようなことになっているわけです。一方、労働側も含めた方々にはどうしてきたかといいますと、既に本部会でも毎年、この社会復帰促進等事業については、事実上様々なご報告は申し上げていましたが、検討会そのものについては、5年10年という大きな歴史的な流れの中で、特別会計の見直しをしていた中で、むしろ現場の知恵も含めて、無駄を点検する仕組みとして運営してきたわけです。
○岩村部会長 ありがとうございました。
○新谷委員 いまのご説明でわかったのは、保険料を負担しているのが使用者なので、使用者を中心とした、無駄の削減についての検討会を設けたというご説明ではなかったかと思います。ただ、この労災保険は、労働災害という事故に対して、使用者みんなで保険料を出して掛け合う保険制度です。元々、労働者が保険料を掛ける制度ではないわけで、当然ですが、使用者が全部払っていただき、その責任でやっていただく保険制度ですから、そこはやはり、2事業とは持っている性格がまた違うのではないかと思います。しかし、やっている事業については、被災労働者の援護を中心として、労働者にとっても非常に関係の深い分野ですし、これが従来からの、そういうご説明で、金を払っている人たちが使用者なのだから、使用者だけで検討会をやっていくことについては、ILOの三者構成主義からいって、今日的に見たらいかがなのかという疑問があるわけです。今回の仕分けにおいても、非常に関心の高まった社会復帰促進等事業ですから、すぐにとは言いませんが、私も、労働側としても、この検討会と同様の情報をいただける場を検討していただく。それは合同でやるのか、別にやるのかという問題があろうかと思いますが、情報が一方的に使用者だけに行っていることについては、三者構成主義からいくと、やはりバランスを欠くのではないかと思いますので、是非検討をお願いします。以上です。
○岩村部会長 ありがとうございました。他にいかがですか。
○輪島委員 いまの意見に対してではないのですが、使用者側にとっては従来から、どういうふうに使われているのかという件については関心があるわけです。特に社会復帰促進等事業については、平成17年から3年間で、実際に25%の削減をするということで、要は無駄の排除という観点から、この事業はどうあるべきかという点について検討してきた経緯なので、その点についてはご理解をいただければ有難いと思います。
それから、ILOの三者構成主義というお話がありましたが、いまこの審議会の場面で、資料も出て議論をしているわけですから、そういう意味では、三者構成主義に劣るのかどうかは、少しどうかなという気がしないわけではないです。いずれにしましても、こういう場も含めて、議論の機会はあるのではないかと思います。
○岩村部会長 ありがとうございました。その他、いかがでしょうか。
○新谷委員 いまの輪島委員のご発言の中で、私が気にしているのは、厚生労働省の部会の正式な会議資料の中にPDCAサイクルが書き込まれていて、しかも、その検討会には名簿もついていて、それが使用者側だけの名簿構成の委員会である、ということが公式の資料として出てくるわけです。この検討会で検討された内容は、もちろん三者構成主義の部会の中で審議する材料となるわけですが、その前段の段階で、先ほどおっしゃっていただいたような、25%削減することが、多分この検討会の中で検討されて、その素案が出てくることになろうかと思います。やはり使用者側の負担で全額やっていただいている保険制度ですが、そこは労働側も情報レベルを同様に合わせていただくほうが望ましいので、要望を申し上げたいと思います。以上です。
○岩村部会長 ありがとうございました。他にいかがですか。
○中窪委員 参考資料3-4の「新規事業」ですが、その中の?Aです。「職場における受動喫煙防止対策事業」について、労働者の健康障害を防ぐという趣旨にはまったく賛成で、大変結構なことだと思います。それとの関係で思い出すのが、前々回でしたか、昨年の春、業務上疾病の施行規則の別表を変えるときに、私のほうから、受動喫煙で労災の対象になった方はどのくらいいるのかと質問したのに対し、そういう実績はないと答えていただいたと思います。その後、昨年9月29日の新聞各紙に、少なくとも国内で年間約6,800人の方が受動喫煙で亡くなっており、そのうち3,600人は職場の受動喫煙が原因と推計されると、厚生労働省の研究班が発表したとの報道がありました。ですから、労災の認定においても、こういう最新の研究の成果も踏まえながら的確に判断していただきたいと、改めてお願いしたいと思います。今回のこれとは関係ありませんが、思い出したので申し上げました。
○岩村部会長 ありがとうございました。
○輪島委員 資料3の所で、少しご質問します。2つ目の○の所で、「平成23年度の概算要求を見直し」と書いてあって、前年度に比べると52億円削減ということは、平成22年度からいまの平成23年度の要求の所で52億円削減だと思います。わかればですが、夏の時点の概算要求からはどれぐらい変わったのかはわかるのかどうかです。
2つ目は、意見です。資料3の裏に、「すべての事業を目標管理の対象とする」と。これは行政刷新会議での指摘も含めると、適切な対応だとは思います。アウトカム指標もアウトプット指標もなじまない事業は確かに従来からある気がしますが、その点で、2つ目の○や3つ目の○でも工夫の余地は確かにあるかと思います。検討会を踏まえると、なかなか難しいというのがこれまでの率直な印象で、適切な目標を作っていただくことは重要だと思いますが、事業ごとに一つひとつ見ると、難しい課題が結構あると思います。
3つ目です。資料3の裏の「基本的な考え方」のいちばん最後、4つ目の○の最後の行の「また」という所で、議事録等の公表、それから、検討会自体の公開ということが書いてあります。これも先ほど申し上げた趣旨で、適切な対応だと思いますが、そのやり方というかあり方も、上手なやり方が必要だと思うので、ご検討ください。以上です。
○岩村部会長 それでは、質問いただいた所についてお願いします。
○労災管理課長 概算要求段階からということで申し上げると、27億円の削減をしているわけです。
○岩村部会長 他にいかがでしょうか。特段ございませんか。よろしいですか。
それでは、社会復帰促進等事業にかかる、目標管理に関する新基本方針案につきましては、今日、労使それぞれから出た意見を踏まえて、事務局において整理をしていただきたいので、よろしくお願いします。
本日用意している議題は以上です。他に意見等がないようでしたら、これをもって本日の部会を終了したいと思いますが、よろしいですか。
本日の議事録の署名委員ですが、労働者代表については小島委員に、使用者代表については輪島委員にお願いします。
それでは、今日はお忙しい中、ありがとうございました。これで終了といたします。
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