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2010年9月13日 第6回新たな地域精神保健医療体制の構築に向けた検討チーム議事録

社会・援護局障害保健福祉部精神・障害保健課

○日時

平成22年9月13日(月) 18:00~20:00


○場所

厚生労働省 共用第7会議室(5階)


○出席者

朝田構成員、阿式構成員、岡崎構成員、河岸構成員、河崎構成員、栗林構成員、柴田構成員、
長野構成員、西田構成員、野澤構成員、野村構成員、広田構成員、松浦構成員、松本構成員、
三上構成員、三根構成員

○議事

○福田精神・障害保健課長 それでは、定刻となりましたので、ただいまより「第6回新たな地域精神保健医療体制の構築に向けた検討チーム」を開催いたしたいと思います。
 本日も、構成員の皆様方におかれましては、大変御多忙中のところ御参集いただきまして誠にありがとうございます。進行役を務めさせていただきます精神・障害保健課長の福田でございます。よろしくお願いいたします。
 念のために申し上げますけれども、本検討チームは公開であります。検討チームでの審議内容は厚生労働省のホームページに議事録として掲載される予定でございますので、あらかじめ御了解くださいますようお願いを申し上げます。
 また、本日は東構成員、渕野構成員から御欠席との御連絡をいただいておいります。
 それでは、早速議事の方に入らせていただきたいと思います。
 まず、議題の(1)でございます。本日から構成員からのヒアリングを開始させていただきたいということでございます。前回、事務局より御案内いたしました河崎構成員、三根構成員、長野構成員からヒアリングを実施いたしたいと思っております。
 なお、まず3名の方に続けて御発表いただいて、その後で質疑等の時間を設けたいと思います。そのような形で進めさせていただければと思っておりますので、御協力をお願いいたします。
 では、早速でございますけれども、まず河崎構成員の方からお願いいたします。時間の方は、概ね15分ぐらいで御発表いただければと思いますので、よろしくお願いいたします。

○河崎構成員 日精協の河崎でございます。今日は一応構成員からのヒアリングということで、私の方は日精協の立場で精神科医療を提供する立場の者としての少し総論的なところをお話させていただければと思っております。
 特に、今回のこの検討チームの中でももちろん出ておりますけれども、入院医療をどういうふうに考えるのか、あるいはどういう場合に精神科医療、特に入院医療が必要になるのか。その辺りをざっと、非常に表面的ではございますが、総論的なところとしてお話をさせていただければと思っております。
 まず、右下にそれぞれ1、2、3、4というふうに番号を打たせていただいておりますので、その番号でお話をさせていただきます。
 まず、2ページ目に「認知症とは」と書かせていただいております。もちろん、これは今日ここに参加なされている皆様方は十分におわかりのところでございます。
 ただ、私としましては自分の知識を整理するため、あるいは認知症というのはどういうふうな病気なのかと言われたときに、私自身はここの5つの点について一般的に説明をさせていただいております。
 もちろん「記憶と判断力の障害を基本とする症候群である」ということに関しましては、これはそれぞれ皆様方合意をしていただけるのだろうと思っておりますし、こういう判断力の障害としての失語であるとか失行、失認、あるいは行為の遂行障害というようなことが現れてくる。
 その後に、「現実に即した適切な行動ができなくなる」と書いておりますが、この辺りが患者さん御本人、あるいはその周囲の方たちから見ても、いろいろな面でこの疾患そのものに対応させてもらうときの問題として現れることが多いのだろうと思っております。
 病理学的な話、あるいは認知症のいろいろなタイプに関しましては、もうここで特にお話をさせていただくことはないのだろうと思っております。
 次の3ページ目を見ていただけたら思います。一応、私なりに認知症の方に対する精神科医療の役割、特に精神科病院として認知症の方に対する役割はどういうものがあるのかをまとめてみました。
1点目は「早期診断と鑑別診断」であろうと思っております。これに直接関係してくるのが、やはり認知症疾患医療センターだろうと思っておりまして、このことは後で少し触れさせていただきます。
 2点目が「BPSDに対する対応」、これが精神科医療として非常に重要な関わりをすること、問題点だと思っておりますし、特に入院医療ということが必要になる際には、このBPSDの対応ということが大きな役割として入院医療が担うんだと思います。
 3点目が、「身体合併症への対応」ということでございます。これは前回の第5回のところにも出てきていたかと思いますけれども、やはり身体合併症を認知症の方が持った際に、どこでどういう医療を提供していくのか。これを、今回のこの検討チームの中でもある程度の方向性を示していっていただければありがたいと思っております。もちろん、この身体合併症への対応というのが精神科病院として十分な責任を負わなければいけないところであることも間違いないと思っております。
 もう一点は4番目に書かせていただいておりますけれども、精神科病院が特に入院という形で認知症の方に関与する際は、「精神保健福祉法に則った医療の提供」ということが非常に大きな特徴というんでしょうか、このことが精神科医療の一番バックボーンになっているところでございますけれども、この法律に沿った医療を提供しなければいけないということでございます。
 この4つの点が精神科医療、特に精神科病院が認知症に対する役割として重要なものであろうと考えております。
 「認知症疾患医療センター」のことを4ページ目に書いております。若干これまでの経緯を書かせていただいておりますけれども、当初は平成元年に老人性痴呆疾患センターという形で創設をされました。平成17年ごろまでに全国約150か所整備されましたが、当時この疾患センターのいろいろな機能が各センターにより非常にばらつきがあるというような問題点もあったと聞いておりますけれども、一たん中止になっております。平成20年の4月から新しく、現状の「認知症疾患医療センター」事業がスタートしたということでございます。前回の厚労省の資料にもこの辺りは出ております。認知症疾患医療センターの三大機能、これも我々、日精協側として考えているところでございますけれども、もちろん先ほどの「早期診断と鑑別診断機能」が1点目でございます。
 2点目が「救急医療体制と身体合併症への対応機能」、これも非常に重要な認知症疾患医療センターとしての機能であるというふうに考えております。
 それから、専門医療相談あるいは地域の方たち、地域のかかりつけ医の先生方との間の専門医療に関する研修機能というようなものも、このセンターの重要な機能であろうという認識でございます。ちなみに、前回の厚労省の資料を見させていただきますと、今年の8月の26日現在で82病院が全国で指定を受けているようでございますが、そのうち51病院が日精協の会員病院でございます。
 なお、この82病院について事務局の方に確認したいのですが、国の補助を受けている疾患センターが82病院ということじゃないかと思っておりまして、日精協には51病院以外にもう10病院、現在疾患センターとしての機能を果たしております。それは、前回の資料の中には入っていなかったというふうに思っております。いずれにしましても、民間の精神科病院がこの認知症疾患医療センターの多くを担わせていただいているというところでございます。
 その次に、BPSDの問題を挙げさせていただきました。これは朝田先生もいらっしゃる中で全くお恥ずかしい話ですが、認知症の中核症状である記憶障害、あるいは見当識障害、判断力の障害以外の副次的に出現する周辺症状という位置づけになっております。
 精神症状と行動異常、一応大きく分類されておりまして、それぞれの症状としてそこに書いているようなものがございます。
 そして、このBPSDが非常に治療あるいは介護の際に大きな問題となるということは、実際に介護施設等で関わりの皆さん方も実感としておありだろうと思います。
 これに対する対応でございますけれども、もちろん環境改善等の非薬物療法も非常に重要でございます。しかし、向精神薬等の適正な使用による薬物療法、これももちろん重要でございまして、薬物療法だけではなくて環境改善等の非薬物療法と合わせてBPSDに対する対応が必要になるということでございます。
 身体合併症のことを次に書かせていただきました。上のポツは、前回の厚労省の資料の精神病床の調査の中にこれが出ておりました。「入院治療が必要となる特別な管理を要する身体合併症を持つ精神病床での認知症入院患者は24.9%を占める」。それプラス日常的な管理を要する人が40.9%あるということでございますので、合わせますと65%の方が何らかの身体合併症を持っていて、それに対する管理を要するということでございます。
 それから、次のポツとその次のポツに書いているのは、日精協の方が平成20年度に調査をしたものでございます。認知症の治療病棟を有する精神科病院、そこでは74%の病院が内科医等の他科の先生方の常勤医を必要としております。必要としているというのか、それだけの他科の常勤医の先生を配置しております。ですから、認知症治療病棟を持っている精神科病院では、やはり精神科医だけでは対応し切れないような身体合併症に対応させていただいている。
 そして、どういうような手技が可能であるかということを見てみますと、経管栄養が86%の病院で対応可能。挿管が51%、IVH、気管切開、腎透析というようなところの対応可能な病院がそれぐらいあるということでございます。
 ちなみに、これは日精協の認知症の治療病棟を持つ299病院からの回答のデータでございます。
 8ページ目でございます。これも「身体合併症への対応」のことで、先ほどの調査からのものなのですが、こういう身体合併症を多くの方が持っておられる。そうしますと、我々認知症治療病棟を持っている精神科病院では、それに対してできるだけ自分の病院で対応できる方には対応させていただいているんですが、どうしても対応し切れないケースというのはもちろん多々出てまいります。そのときにスムーズに転院ができるのかということが、 やはり我々精神科病院にとっても大きな問題でございます。
 1つは、骨折等の整形外科領域は割と転院をさせていただきやすいということがございます。私の病院の経験から言いましても、大腿骨頸部骨折等が起こった患者さん、認知症の方に対して、近くの民間の整形外科を要する一般科の病院さんが手術を受けていただけるということはございます。
 しかし、それ以外の転院というのは極めて困難であるということも実態でございます。先ほどの299の病院にお聞きしたところでは、身体合併症のための転院がスムーズに行われている病院というのは20%程度にしかすぎません。残りの認知症の治療病棟を持った精神科病院は、非常に合併症が起こった際の転院先を確保するのに難儀をしているということでございます。
 その際、どうして転院がうまくいかないのかということの理由も聞いておりますけれども、7割以上の病院では、一般科、身体科の先生方や看護師の皆さん方、いわゆるスタッフが精神症状のある患者を敬遠なされるというのが一番多かったわけでございます。
 それと同時に、同じぐらいの割合で、精神科の病棟がないので精神症状の対応ができないということで合併症の受入れを断られるというようなところでございます。
 そうしますと、これは今後我々日精協として考えていかなければいけないところなのですが、もちろん自分の個々の病院で身体合併症に対応できる体制をつくっていくのは必要であろうかとは思いますけれども、やはり認知症を中心にした精神障害者の方たちの身体合併症に対しては、まず総合病院精神科の対応が今後ますます重要となるであろうということが1つございます。
 そして、それと同時に重度の認知症の身体合併症に対する精神病床、あるいは精神病棟が必要になってくるのではないかというようなことを日精協として考えております。
 もちろん重度の認知症、身体合併症病棟ということになりますと、それにふさわしい人員配置等が必要になってまいりますけれども、やはり総合病院の精神科だけではなくて、民間の精神科病院が認知症を中心とした精神障害者の方の身体合併症に対応できるような病棟、病床を準備すべきではないかというのも、ひとつ今後の課題としてあろうかと思っております。
 次の9ページ目でございます。「認知症治療病棟」の簡単な説明を書かせていただきました。昭和63年に老人性痴呆疾患病棟として新設をされた病棟でございまして、現在は認知症治療病棟として運営されています。前回の厚労省の資料から見させていただきますと、認知症治療病棟入院料は全国で450医療機関、3万1,290床で算定されておりますが、そのうち日精協の会員病院は394病院、2万6,403床を占めております。大体8割程度が、日精協の会員病院が認知症治療病棟入院料を算定しているというところでございます。
 そして、この認知症治療病棟は、先ほどのBPSDが特に著しい重度の患者さんを対象として、急性期に重点を置いた集中的な入院医療を行うという位置づけではございますが、最後のポツのところに書いておりますように、認知症治療病棟への新規入院患者の残存曲線を見てみますと6か月で約半分、1年で36%程度の患者さんが残っておられます。つまり、長期在院の傾向が非常に顕著である。これは、他の精神疾患と比べましても明らかに認知症の方の残存曲線というのは長期化する傾向がある。この問題をどうするのかということも、この検討チームの中でいろいろと論議していただければと思っております。
 最後でございます。精神保健福祉法に則った医療を精神科病院では提供するんだということでございます。
 まず1点目は、この精神保健福祉法に則った医療ということでございますので、入院医療においては入院形態、あるいは行動制限に関して十分に人権に配慮した対応が精神保健福祉法では求められております。言い換えますと、精神科病院での入院医療の中では、認知症の方に対してこのようなことに十分に配慮した対応をした上での治療が行われているということになります。
 それともう一点、認知症の方は特に入院に関して十分な認識ができない場合がございます。あるいは、そういう場合には精神保健指定医が関与をして、医療保護入院等の御本人の意思に基づかない入院が必要になるということでございます。
 同じことは、行動制限の場合にも精神保健指定医によるきっちりとした対応、判断があった上で行われるというのが精神科医療の一つの大きな役割であろうと思っております。
 一番下に、「認知症入院患者の約半数は医療保護入院」というふうに書かせていただいております。括弧をして、医療保護入院が「(全入院患者では40%以下)」である。これは、少し全体的なデータを書かせていただきましたが、最近日精協が行っている調査から見てみますと、認知症の治療病棟に入院中の患者さんの約70%は医療保護入院というようなデータが出ております。ですので、もちろん全入院患者では、約40%よりも少し低いのが医療保護入院のパーセントだったと思っておりますが、認知症治療病棟ではやはり重度な認知症の方をたくさん対応させていただいているということでございます。
 一応、全体的なお話という意味合いで説明させていただきました。以上でございます。

○福田精神・障害保健課長 どうもありがとうございました。
 続きまして、三根構成員の方からお願いいたします。

○三根構成員 それでは、本日は認知症の精神科医療に関しまして、もちろん在宅が対応可能ならばそれがいいわけですし、認知症を見ていく上で、介護上の工夫やら、理論的なケアやら、またはリハビリやら、いろいろなことを行うわけですけれども、その中でどうしてもやむを得ず精神科の病床、認知症治療病棟に入院せざるを得ない方々がいるんだという現状、現実、それからその場合にどうしても適正な薬物療法が必要であるというところを御理解いただきたいと思って少しまとめてみました。
 また、日精協が過去数年行っております研究事業を見直しまして、認知症治療病棟を取り巻く状況、環境といいますか、一般病棟と治療病棟、あるいは治療病棟と介護保険施設、特に老健とのやり取りの中でどういう課題があるかというようなことを問題提起できればと思っております。
 まず1ページ目ですけれども、2つ、脳血管性認知症とアルツハイマー型のシェイマーを出しております。1970年の長谷川先生の有名なスタディに、認知症と診断されれば5年後に生きている方は2割ぐらいしかいないんだということがありますが、横軸にそういう意味で身体症状と時間経過を取りまして、縦軸にBPSDを取りました。恐らく1ページ目の脳血管性認知症ですと、BPSDは恐らくもっと先鋭的にとがったような波で出たり引っ込んだりするんでしょうけれども、横軸との身体症状との絡みでこういうような経過で進むのかなと思います。
 次の2ページ目のアルツハイマーの場合には、よく言われるように徐々に確実に進行すると言われます。私が見ている中では種々のパターンがあるようには思いますけれども、例えば70ぐらいで発症して、急激に悪くなって101歳まで生きられて、最後の1年ぐらいは寝込まれた方とか、逆に本当に緩やかに進んで最後に急激に進んですぐ寝込まれる方等々がおられると思いますけれども、最初の辺りは在宅でも可能でしょうし、介護保険のいろいろな在宅サービスやら、入所サービスやらを利用しながら、あるいは精神症状、BPSDが出れば一時期精神科での対応を必要とするかもしれませんし、そういったふうに死に至る病ですからいろいろな身体合併症も出てくることと思いますので、一般内科での対応も必要になってくるかと思います。
 また、もっと言えば、最後は必ずターミナルを迎えられますから、どこでみるかというとケースバイケースで、精神科でみたり、あるいは一般科でお世話になったり、その辺のところが問題となってきていると思います。
 その下の図ですけれども、「認知症の医療と介護」ですが、黄色が介護保険領域で、ブルーが医療保健です。
 すみません、白黒でした。現在、一番下の認知症情報提供加算、これは認知症の確定診断をつけるために介護保険施設から認知症疾患医療センター等となっていまして、これは精神科の病院も介護保険では請求できるようになっておりますが、こういった確定診断、または認知症医療センターに紹介した場合は認知症診断管理料となりますし、かかりつけ医から診断ができる施設に行った場合が認知症疾患地域連携加算ということになりますが、そのように認知症の診断をつけるための手当がついてきております。
 そういったことで、その報酬上も確定診断ということは非常にしやすくなりつつあるかなという気がいたしますけれども、認知症診断管理料というのは医療センターだけですから、80か所ぐらいのところしか全国でかかることができないということになるわけです。
 3ページです。これは、「認知症治療病棟への入院理由」を多い順に並べ替えてみたわけで、言葉で書けば徘徊とか妄想なわけですけれども、この徘徊一つを取っても通常の徘徊ではなくて真夏と真冬が多いんです。熱中症で死ぬ可能性、凍死する可能性を御家族の方が心配されて入院相談に来られたり、頻繁に迷子になって何度も何度も捜索されて、いよいよやはりもう無理だということで認知症治療病棟に来られる。
 妄想と書けば妄想ですけれども、通常のよく見られる物取られ妄想に何らかの暴力的な行為が結び付くとか、嫁が取ったと言って嫁に暴力を振るうとか、泥棒がいるというようなことで毎日のように警察を呼んで非常に地域を巻き込むとか、あるいは私が見ている中では家の棟上式が終わって使用する角材を家の中庭の置いておいたところ、火をつけて全焼してしまうというような例もありました。
 とにかく激しい興奮で、この間入院した人はやっと歩ける状態で、家で御家族はこんな激しい興奮があるとおっしゃるけれども、まあこの状態でそうはないんじゃないかと思って見ていたら、火事場の何とか力と言いますか、よちよち歩きなんですけれども、ベッドを持ち上げて窓をたたき割ったり、とにかく何が言いたいかというと、性的逸脱行為でも本当に悲惨な状況が実はあるんです。お嫁さんが本当に悲惨な状態になったり、訪問のヘルパーさんが襲われたり、本当に悲惨な状態がありまして、そういう状況の方が入院してこられるという現状を理解していただきたいと思います。
 それから、その下は入院経路です。今お話したような経緯ですと自宅からが多いのは当然ですが、意外と多い医療機関からの入院というものに着目して次に話を進めさせていただきたいと思います。
 4ページです。医療機関からの入院が多いわけですから、一般病院から認知症を合併した患者さんを精神科病院へ転院させる状況というのを見てみました。幻覚妄想やせん妄状態、あるいは患者さんや職員への暴力とかが多くなっております。もちろん、どの病院も認知症の患者さんだけではなくて他の患者さんもお預かりしているわけですし、そういった患者間の暴力というものがあったらやはり困るというのは当然のことだろうと思います。
 私は7月に実はヘルニアで入院していて、術後にICUのようなところに2日いましたけれども、隣の人がものすごいせん妄で、2日間絶食で眠れなかったので、私は主治医に頼んで注射で2日間寝させてもらいましたが、一般病棟に帰ってからも病棟中に響くような声で毎晩、毎晩、叫び声が続いていまして、しまいにはそこの外科医がどんなメディケーションをしたらいいかと、私のところに相談をしにきたわけです。私はもうちょっと対応できるだろうと思っていたんですが、やはり1人でもそういう方がおられると他の入院患者さんに迷惑になるなということは、つくづく身をもって感じた次第でございます。
 そのせん妄が前の精神科病棟への入院理由より多いものですから、一般病院で転院させたいという理由で、やはりそういった状況が病棟の中で繰り返されていたら、当然せん妄状態の方を精神科でみてもらえないかと思うのは、ごく当然のことではないだろうかと思います。
 性的逸脱等行為というようなことを書いていますけれども、うちの認知症病棟の看護婦はおしりを触られたり胸を触られたりするのは、まあしようがないかなというぐらいの肝っ玉母さん的な感じで対応しているのが現状でして、亢進傾向と言って、口の中に入るものを全部かんだり、オーラルムーブメントがずっと続いていて自制できない人もいるわけです。
 何らかの処置で、私も今も傷がありますけれども、窒息しそうになったので口の中の残留物を取るときに無理やりかまれたこともあります。その方は、自分の指をかみちぎりそうになったというようなことでして、ではそういう方にミトン型の手袋をしてはいけないと言われたらどうしようかなということにもなるわけです。そういうような状況の方が一般病院で転院を希望されるのは、なるほどなと。
 その下の図ですけれども、このアンケートの中で2番目の「単科精神科病院では基礎疾患の治療が充分に出来ない」、その下の下の「精神科病院から合併症患者の受け入れを拒否される」というのは、これはやはり似たような理由だと思います。そうしますと、一般病院から精神科に転院させられない一番大きな理由は、やはり合併症であろう。河崎構成員がおっしゃいましたけれども、やはり合併症が一番なのではないかという気がいたします。
 一番上に「本人や家族が拒否する」ということがありますが、これはやはり精神科へのいろいろな思いもあるでしょうし、また、そもそも合併症で一般病院に入院したわけですから、それを診る専門医がいるわけです。では、先生、診てくださいよというのは家族の気持ちからすると理解できないこともないと私は思いますし、逆に精神科の認知症病棟があって認知症の専門医がいるところから介護保険施設にそろそろといった場合に、先生は認知症の専門医でしょう。先生に診てもらうのが一番安心できるんですよと家族が言われることも、なるほど、理解できるような気がいたします。
 次の5ページですけれども、「認知症治療病棟での治療期間」が長くなっております。そもそも下の図で「3ヶ月以上の長期在院の原因」と書いてありますけれども、3か月で入院料が下がるわけですが、そもそも3か月で下がる理由というのは私にはわかりません。医療上の理由より、財政上の問題かなと個人的には思っております。要は、BPSDがあって長期在院になっているというのは、当然のごとくの結論であろうかと思うわけでございます。
 次の、6ページでございます。「退院後の行き先について」でございますが、一般病院は何らかの合併症が出て、急性の変化があっていくということだろうと思います。それ以外ですと、在宅、亡くなることも当然あるわけでして、介護保険施設が多うございます。
 その中で、認知症グループホームでの入院継続が困難な理由というのを書いておりますが、ここにあるような今まで話してきたようなBPSD、いろいろな行動がやはり困難な理由となるのであろうと思います。
 その次の7ページですけれども、BPSDが改善している場合に有効であったケア、当然薬物療法が有効なわけでして、できることならば入院して24時間みながら薬物療法をしたいなというのが我々の本当の気持ちでありますし、もちろん生活訓練、作業療法が必要です。それから、いろいろな個別リハも絶対私は必要になってくると思います。
 そんなことで、介護保険施設としては当然のごとく、BPSDがあればなかなか対応できないということでありますが、7ページの下に「身体拘束禁止の対象となる具体的な行為(介護保険指定基準)」というのがあります。このように、介護保険では制度上、身体拘束は原則しない。そればかりか、割と厳格にそれを行っておりまして、例えば車いすからずり落ちないようなY字体も禁止されております。福岡県が身体拘束ゼロ発症の地ということであって、特にチェックが厳しいのかもしれませんけれども、ベッド柵なども2つ以上は付けられないとか、そういうことがあればその原因をやはりきちんと検討して御家族と協議して記録しているわけですが、私は、毎週その対策をどうしたか、結果としてどうなったか報告しろということで保健所に報告しているところであります。
 その次が8ページでございます「認知症専門病棟に当初から入院する場合、不都合なこと」です。これは、ここだけ抜き取ったものですから何だろうと思われるかもしれませんが、病院によってはすごく激しい興奮がある場合に、精神科一般病床でみる場合があります。それで、ちょっと落ち着いたところで認知症治療病棟でみるときもあります。当初から認知症治療病棟でみる場合に不都合なことというふうに御理解していただければよろしいかと思います。
 初期診断がしにくい。合併症の診断がしにくい。これは、医療の包括というものがあるからだろうと思います。BPSDが激しい場合には困ることがある。それからその下ですが、看護介護の対応が大変である。対応するのが当たり前だろうと思いますが、敢えてこのスライドを使わせていただきました。先ほど入院理由のところで申し上げたような、慣れた看護師、慣れた介護職でも対応できないほどの激しい興奮等がありますと、認知症治療病棟と言えども最初からそこでみるのは非常に難しい例があるということを御理解いただきたいと思います。
 その下の図は、認知症治療病棟での合併症ですけれども、一番下の12.3%、一番少ないわけです。少ないわけですけれども、私はこれが問題だろうと思います。単独でも入院治療が必要と思われる合併症があった。この辺は恐らく、入院後にこういう合併症が徐々に悪くなったりとか、あるいはその病院の外来で診ていて徐々に合併症が出てきて、ずっと見ておられますのでやむなくそこの精神科の病院に入院した方というようなことだろうと思います。当初からこういう精神科受診歴がなくて、単独でも入院しなければいけないような合併症があれば、恐らく内科に行かれるだろうと思いますけれども、要はどの程度の合併症であればどう診るかというのはその病院の機能にもよりますので、その辺りをどう構築していくかということが重要なことになってこようかと思います。
 9ページでございます。時間的な都合で省略させていただきます。認知症病棟において必要と考えられる医療行為、その下の対応可能な手技は河崎構成員が先ほどお話されました。
 10ページでございます。これはいつからか忘れましたけれども、「新設された精神科身体合併症管理加算」というものが新設されました。これは7日間限定ということで、制限されたあまり疾患が多くない状態になれば7日間のみ算定できますというものです。それに対しては、7日間ではなかなか対応できないという回答が一番多うございます。
 ちなみに、診療報酬の世界では何かが1つ認められると何かが1つ削られるという背景がありまして、この年もこれが認められた代わりに何かが1つ減って、非常にじくじたる思いをしたわけでございます。
 その下で今まで話したことを少しまとめてみますと、一般病院から精神科病床に行く場合、合併症をある程度治療して認知症があった場合に、やはり一般病棟から精神科という流れがあるんでしょうけれども、非常にその合併症の治療が大変である。というよりも、認知症と身体合併症を治療するシステムがないと言ってもいいのではないかと思います。また、先ほどから精神科の認知症治療病棟でできることとできないことと、できる医療行為の差がありますね。何もできない病院というのもありましたけれども、その中で差ができてきている。何とか自分のところで対応しようとしている病院もあれば、早く転院させたい。専門科に転院して専門科で診ていただきたいと思われるところもある。そこら辺は、どのレベルでどこが診るかというのが一番の問題かと思います。
 逆に合併症で言えば非常に重篤な合併症、意識がないとか動けなくなっている状態、これは非常に今の地域の拠点病院さんでみていただいていて助かっております。骨折もそうですし、先ほど河崎先生もおっしゃいましたけれども、骨折も動けないですね。その間は、非常にみていただけます。ただ、動けるようになるとすぐ帰ってくる。先生、もうですか、とよく言います。
 その精神科から介護保険病床の方に行くのに、一番の問題がBPSDだろうと思います。それは介護保険制度上の問題があると、先ほどお話しました。BPSDは絶えず出たり引っ込んだり、出たり引っ込んだりしますから、ここはもう治療して出ていない。だからずっと出ないというものじゃないわけですから、非常に老健側からすればそこはやはり心配なんだろうと思います。
 しかし、このBPSDはさっき重度の合併症は割と一般病院でみていただけると言いましたが、BPSDが逆に介護保険側で出た場合、精神科病床、認知症治療病棟が空いていれば我々はいつもみるわけです。みる上での問題はないわけで、左側の上向きの矢印は割とできるけれども、右側の下向きの矢印はなかなかできにくい状況にあるというところでございます。
 11ページです。少し飛ばしますけれども、一番下に認知症の進行予防への通所・入所リハビリテーション・重度認知症デイケアの評価とか、精神科的医療や身体的合併症の治療の評価とか、「質の高い医療・介護」、特にリハビリが必要と思います。認知症短期集中リハというのが介護の世界であります。個別リハです。初めての認知症の個別リハだろうと思いますが、こっちが医療じゃなくて介護側から出たというのは、精神保健課がもう少し何かそういったところに手当をしてほしいと私は思うわけです。
うちの老健は認知症治療病棟があるお陰で非常に認知症が重度化していまして、うちのOTを呼んで、認知症短期集中リハがせっかく付いたのにあまりできないのはなぜかと聞いたら、先生、見に来てくださいよと言われた。それで見に行ったら、いろいろな計算問題とか、いろいろな絵を書いて、漫画を見て、それがどうなったかというようなことをしていたんですけれども、目の前に出すと破いて食べました。とてもじゃないけれども、そういう何とかリハというのができるような状況じゃない。
 ただ、個別リハは必要だと思います。エモーショナルな面で、スタッフが個別に認知症の患者さんと接触している部分というのは非常に重要だろうと思いますし、下に認知症治療病棟の基準を書いていますけれども、右上です。生活機能回復のための訓練、いわゆる日常生活機能訓練と言いますが、20年も前に日常生活機能訓練という単語を認知症病棟で使ったという感性は、私はすばらしいと思います。重度の認知症ですから日常生活、いかに生活の中でのリハをやるというのはすばらしい感性だったろうと思います。
 しかし、非常にリハの人材が不足しているというようなことも言えると思いますし、今の50対1のリハ、それからPSW1ではとてもじゃないけれどもやれないと思いますし、下の認知症疾患入院精神療法、これは入院精神療法と書いていますが、多分精神科の中の点数ということで付いたんでしょう。これは回想法等を用いたいわゆる個別リハですが、これは18年になくなっちゃったんです。是非こういうものをなくすということはしないでもっと発展していただかないと、とてもじゃないですが、重度の認知症はみられないと感じます。
 12ページです。いろいろまとめますと、身体合併症に対しては、長期的課題としてはこういった重度の認知症と合併症がある方をみるところが必要ではないか。短期的には身体合併症管理加算の充実が必要じゃないか。
 それから、「認知症の治療病棟の課題2」で、BPSDが改善した場合の受け皿と連携としましては、介護保険指定上の制約がある。それでも、BPSDが持続するケースがあるんだ。その場合はどうするか。精神科、精神病棟でみるしかないのか。それから、「認知症治療病棟の課題3」といたしましては、医療費の包括の問題で包括導入後20年経ちます。この包括というのは、恐らく医療のその時代のスタンダードがその包括になっていると思います。20年経ってスタンダードは変わらないのか。抗アルツハイマー薬が今後出てくるときに、20年前の包括医療のスタンダードではどうなんだ。
 それから、日常生活機能訓練(リハビリ)の課題は50人に1人のOT、PSWでいいのか。老健のスタッフは25人に1人のOTをそろえてくれと私に要望を出しています。もっとリハの手当てをしていただきたい。
 認知症課題の4といたしましては医療センター、これは省かせていただきます。
 14ページです。よく見る普通の円グラフですが、実はこのダブった部分というのは今、話してきましたように非常に奥深いんだ。そして、そこがダブればダブルほど、重複した部分を治療するということが非常に難しい問題になってきている。
 最後に15ページですけれども、費用について話させていただきます。左側が要介護5・医療区分2、これは食費はありません。右側が要介護2・医療区分1、左側が割と寝たきりの認知症の方、右側が割と動ける認知症というふうに仮定しました。入院料がここに書いてあります。医療は、左側は包括、右側は外来受診でプラスアルファというふうにしました。
 何が言いたいかと言いますと、介護支給額を全部使った場合にどちらとも在宅の方が費用、コストがかかる。在宅ケアは費用がかかる。財源はどうするかという話を前回しましたけれども、国民の同意は得られているのか。それが一番、気になるところです。
 それから、最後に「1ヶ月本人負担分の比較」と書いてあります。真ん中辺の課税世帯が上です。子どもさんが一般的なサラリーマンで同居してやる方で、22とか21と書いていますが、これはうちの50ぐらいの病棟で一番多いのがこういう世帯で、下が非課税世帯、17、24と書いてありますけれども、これは高齢者世帯のみで基礎年金ぐらいもらっている方です。
 合計しますと、これは本当に払う純粋な部分ですけれども、いずれも認知症病棟から老健に移そうとしましても老健の方が自己負担分が高い。これで、御家族は行くわけがない。例えば、一般病床で肺炎を起こして入院します。100万も百何十万もかかります。1割ですと十何万かかります。それプラス食費もあるでしょう。そんな問題で、では、そこから例えば認知症治療病棟に経済的に行くかというと、その流れはあるでしょうけれども、この逆の流れはないんじゃなかろうか。これもまた、無理からぬことかなと思います。以上でございます。

○福田精神・障害保健課長 どうもありがとうございました。
 では、続きまして長野構成員、よろしくお願いいたします。

○長野構成員 よろしくお願いいたします。資料があります。「愛南町における認知症地域ケアの中での「精神科医療」の実践」ということで、現場の中から生の声ということでお聞きいただいたらと思っています。
 愛南町ですけれども、どこにでもある小さな田舎町、人口2万6,000人で高齢化率が今32%程度というところであります。唯一特徴があるとしたら一地域に一精神科病院ということで、エリアのことは責任を持って最終的にメンタルヘルスのことをコンビニ的にやろうと思っているところが特徴的かなと思います。
 更に「「精神科医療」の役割」ということですが、これはできていることが6割方かなとは思っているんですけれども、どう考えて支援体制をつくっているかというところです。この初めの資料は、地域で啓発活動を集会所単位でずっと10年以上継続してやっておりまして、その中で地域の方々に私たち精神科医療はこういうお手伝いをできると思いますというか、したいと思っているので一緒によろしくというか、そういうことで使っているスライドであります。
 一つひとついきますと、まず本人に対する支援はなかなかできない。力がないんですけれども、やはり認知症にどう対応するかという周りの都合ばかりに常にいってしまって、診察にいらっしゃったときに御家族であったり周囲の方がいろいろと、こう大変だ、ああ大変だと言われるところで本人さんがとても嫌な顔をしていたりとか、つらそうな顔をしていたりとか、何か言いたそうなお顔をされていたりとか、そういうものをくみ取りながら、また初期の段階では、わしは全部わからんようになるんだろうかという不安を持たれたりとか、そこにアプローチをすることがやはり一番の精神科医としての基本でありたい。忘れずにやっていきたいというふうに考えていて、自戒の念も込めてこの1番のところを常に入れております。
 2番のところです。まず一番大事なのはここで、生活の場はやはり地域にあって、その中で私たちが住民として、医師として、医療として、どう地域づくりに参画をするかということで、ネットワークであったり、啓発活動もずっと継続をしていますが、公民館単位ではとても大き過ぎるので集会所単位で現在120か所を超え、年に5回から10回、ずっと継続をしていまして、とても自分たちにとっても勉強になる場所になっています。
 更にネットワークで、やはり町そのものが私たちの町では生きられなくなっていますので、その町づくりにどう参画をするかというところを大事にしていっています。
 次はちょっと医療らしいところになっていきますが、やはり「早期診断」はどうしても不可欠なもので、認知症の啓発活動を始めたときに恥ずかしいんですけれども、精神科には最後の最後にどうしようもなくなったときに入院に来てくださいねと、講演の中でとても恥ずかしいことを言ったことを今でも覚えています。早く見つけても手立てがありませんから、みたいなことを言った覚えがあるんですけれども、もちろん全くそうではなくて、早くきちんと見つけて環境調整して支援をきちんと入れていくことで穏やかに暮らしていく。これが目標なんだということで、早期診断です。また、専門医ではありませんので大学との連携で鑑別診断等も行っております。
 「介入」も、何でも介入すればいいということは全くないんですけれども、慎重に、慎重に公的機関と大きな問題を、御本人がつらい思いをしない、家族がつらい思いをしないように早くから介入をしたいと思っています。
 「家族調整の支援」です。家族が認知症という病気のことでいざこざして、経済問題などで本当に決裂するのは見ていられないというようなところで、何か役に立てないかと思っています。
 更に4番、精神科医療が一番活躍できるところはここだろうと思っているのですが、「認知症ケアに対するサポート」、もちろん鑑別診断、やはり治療できるものの除外ですね。BPSDと鑑別診断ということをよく言われるんですけれども、ずっと地域の中でやっていて思うのは、その都度、その都度の状態像の判断、これは身体疾患からきているんだろうか、せん妄専門なんだろうか、反応なんだろうか、難易性の幻覚妄想なんだろうか、うつなんだろうかという状態像、身体疾患も総合的に含めた判断が、やはり医療がずっと継続して関わる一番大切なところじゃないかと思っています。
 その中で精神障害の問題とも一環していますけれども、できるだけ生活の場から離したくない。離れないままに何とかならないかということをメインとしながら、先ほど先生のお話にもありましたけれども、本当にどうしようもないケースもいらっしゃるので、そういう方は最終のとりでとして入院加療をしたい。絶対的必要性というのは私自身はあまりないと思っていて、ある場合もあるんですけれども、相対的必要性による入院加療が多いかと思います。
 あとは、医療もトップダウンのヒエラルキーの頂点にいるのではなくて一員だということも常に意識をしています。合併症の問題は本当に深刻で、できるだけ初期から「“からだ”のかかりつけ医」、血圧の薬ひとつだけでもできるだけ内科の先生に出していただきながら連携を取っていく。初期からやっていくと、大分重症になっても思い入れであったり、その方の人となりとか、いろいろなことを御存じでいてくれるので、結構最後まできちんと一緒にやってくださることもあって、「“からだ”のかかりつけ医」と「“こころ”のかかりつけ医」という体制をできるだけたくさんのケースで組みたいと思っています。ですから、地域の中の老人施設には全て両方の嘱託医が配置していただいています。
そういうことをしていくために、だんだん体制を変えてきました。その次の「体制」のところですけれども、町全体の体制を見ながら、精神科医療じゃないとやれないことはやれないこととして、していくということで、平成8年と22年の町全体の大体の状況、あまり精査をしていないので細かなところは申し訳ないんですけれども、町全体でこんなふうに、これも変えていきました。今の法制度でやれること、更に新たな地域福祉の仕組み、ソーシャルビジネスの仕組みということを一緒につくり上げてきています。
 その中で、精神科医療がどう構造改革をしたかというのが次のページです。地域で支えながら、ダウンサイジングをする。更に認知症の方も後でお話ししますが、病棟で処遇させていただいたり、いろいろな方がいらっしゃるんですけれども、どうやったらできるだけ生活の場から離れなくていいんだろうかということで、まず認知症対応型通所介護を4年前、5年前に出して、町中に点々と小規模多機能まで出して実践をしてきています。
 その次に、医療がどう地域の中で私たちの力を活かし、使っていただくかということでの現在の体制を書いてみました。無数に線を引いているのは連携のことなんですけれども、つながっているところを引いているともう見えなくなっちゃうので途中でやめてしまいましたが、ありとあらゆるところ、近所の人たちも含めて私たち精神科医療がきちんと見えるところにいる。もちろんドクターだけではどうしようもなくて、多職種、ナース、保健師、OT、PSWが縦横無尽に地域を駆け回りながら何とか連携を保っている。地域の中のグループホームで特養、老健、養護、それぞれの制度の問題があるので、嘱託医だったりとか、老健というのはやはり丸めで問題もあるんですけれども、医師会員として支援という形でしていたり、総合病院のリエゾンであったり、地域のリソースを精一杯使いながら何とかやれないかと思っています。
 特徴的なのは、やはり行政等の連携をかなり密にやっていることで、包括支援センターには月2回、半日ずっと包括支援センターの社会福祉士であったり、保健師たちと一緒に訪問であったり、相談に乗ったりとか、様々な研修講師、介護認定士とかはもちろんですけれども、こういう動きをしていっています。あとは、自前のところで認知症、デイサービス、やはり小規模で、ここには精神科のナースとPSWを配置して、地域のどこでもなかなか難しかった認知症の方、最近はどこも結構いろいろやれるようになってきたので精神科が言う必要はなくなってきたんですけれども、そういうような配置をする。
 更に、24時間365日やるのと年に数回でも休みがあるのは意味が違って、やはりきちんと365日支えられるということで、障害の方も同じですので共生型にして小規模多機能居宅介護をやっています。これの特徴は、病棟でずっと認知症ケアをやってきたベテランナースが責任者になって、肝っ玉母ちゃんですね。結構なことに、動じずにしっかり腰を据えてうちでみるというふうに頑張っていくという、そんな小規模多機能を何とかしています。病棟ももちろん大事な一つの資源ではありますが、やはり最終選択肢という位置づけをしています。
 次に、データ的な整理はとてもとても追いつかなかったので、少し典型的な関わりのケースをざっとまとめてみました。今日の朝7時にようやくできたので、見ていると「てにをは」がめちゃめちゃなので差し引いて見ていただけるとありがたいと思います。
 これを機会にちょっと見てみると、私自身が関わったケースというか、カルテのあるケースが535ありました。更に、老人施設であったり、診察まで届いていないケースもいらっしゃるので、恐らくここ十数年で関わらせていただいた方が700、800という中でやらせてもらっているものだろうと思います。入院を必要としたもの、やはり入院がどうあるべきかということはとても大事なところなので、それを2枚出させていただきました。比率としてはかなり低いんですけれども、それでもやはり必要だというところで出させてもらっています。
 一番初めが、やはりこれは典型的ですけれども、いろいろな病院からいっぱいお薬が出てせん妄を起こして入院をされて、お薬を全部抜いたらすっきりよくなった。けれども、やはり記憶障害、中核症状は残っていた。ただ、10日ほどですっきりしているんですけれども、これは平成10年ぐらいのケースを敢えて出したんですが、当時、介護保険もまだあれでしたし、当時の支援ではなかなか在宅まで持っていけませんでしたが、10か月もかかってしまいました。今であればもう10日ほど、もしくはもう入院は要らないんだろうなというようなケースです。
 その次の方は家族がいらっしゃったんですけれども、先ほどの単純な反応ではなくて本当に不穏、興奮、暴力というか、とんでもないところまで発展する方でありましたが、なかなか老人施設、在宅ではどうにもならずに一度入って、うちでも薬物療法とかいろいろなことを試しましたが、なかなかうまくいかずに入院がしばらくかかったと思います。それから、退院をされて特養に行かれたんですけれども、特養でもすぐそういうふうな状況になって入院希望がありましたが、これは特養でしっかりみていただこうということも含めて、アウトリーチでカンファレンスに参加をして、何とか特養の方に頑張っていただいて今も生活をされているという方です。
 その次の方は認知症ではないんですけれども、地域で認知症ということで内科から強制退院を受けて、かかりつけ医の先生も認知症で御飯を食べない、もう無理かなという状況だったんですが、いらっしゃってみると妄想性障害であって、向精神薬の点滴等で元気になって1か月ほどで帰られた。こういう精神科医療が認知症だろうとあきらめている中にも、やはり難易性の精神疾患も混じっていて、こういう方がきちんと診断されるのはとても大切かなと思っています。
 その次の経過です。ここからの2例が今、病棟に残られているというか、現在入院をされているお2人全員です。上の方はアルコール依存症から認知症に経過して、皮肉なことなんですけれども、アルコール依存症は介入ができなくて、つかんではいたんですが、認知症が始まってやっとちょっとずつ入れるようになった。それから、本当に行方不明になって捜索したり、皆、事故も覚悟しながら何とかいろいろなことをしながら在宅でやってきたんですけれども、心筋梗塞で倒れて入院をして、もうこれ以上は無理だなということで精神科に入院されました。中でも不眠から暴力、いろいろなことがあって、ようやく落ち着いてはきているんですけれども、まだやはり暴力が最近あったのは1週間前とかのレベルだったので、老健はなかなかちょっと難しくて、これからしばらくノウハウを蓄積して老人施設にと考えている方がいらっしゃいます。
 更に、次の方は恐らく2年前ぐらいに地域に行けた方なんですけれども、本当にのっぴきならない事情であったのでこちらも納得していますが、御家族の事情で長期入院になっている方もやはりいらっしゃいます。この方は近々、老人施設ということを考えています。
 その次の方は、やはりさっきの小規模多機能が効果的だったんですけれども、脳血管性認知症の方で薬物療法も何も利かずに常に興奮、暴力がどんなに介護を工夫しても私たちの力ではどうにもならなくて当時の精神科医療の体制にならなかった方なんですけれども、小規模多機能の責任者が、あの方を小規模多機能に連れて行きたいということから病棟内で認知症ケアユニットをつくって、その中で本当にマンツーマンに近い形でケアをして、小規模多機能が開設2年前ですけれども、そちらの方で処遇をしながら、今は何とか自宅で外泊までできる。本当によくこの方をみているなと私は思うし、いつでももういいよとは思うんですけれども、家族のマインドであったり、介護者のマインドというのは、ここまでやれるんだなということに感服しているケースであります。
 その次です。鑑別診断はやはりとても大事で、コメントが早口で申し訳ないんですけれども、上の方はレビー小体型認知症、まだ地域にこの病名が全く流れていないころで、もう気味が悪い、とりつかれているんじゃないか、おはらいしなきゃみたいなことで、本当にリアルに御飯をつくるときには奥さんの分まで全部つくられますし、常に子どもを抱っこして、ほら、かわいいやろと見せにいらっしゃるような方で、皆これはもう精神病だから入院させなきゃみたいな雰囲気があったんですけれども、レビー小体型認知症ということで、病気のことをきちんと周りで理解しながら在宅で何とか5年間、中核症状がそれから随分進んできて、どうしても独居は厳しくなって今グループホームで暮らされていますが、幻覚、妄想はまだ残っていますけれども、いい形で処遇されている形で入院は回避をしています。
 その次の方はFTDの方で、FTDの前頭側頭葉型認知症で記憶障害がほとんど目立たないままに反社会的行動を随分される方はやはりいらっしゃって、とても生真面目な方が万引き、ゴミあさりを頻回にどんどんやり出して警察に何度も保護されて、もう次にやったら拘留だというところで初めて医療につながって、大学病院と連携しながらFTDの診断を確定して、それから見守りに入り、最近亡くなられたんですけれども、家族もやはりあのとき診断がついていなかったら犯罪者の家族ということでめちゃめちゃになっていたんだということで、何とか一生を終えるのを見届けられた方がいらっしゃいます。
 その次も、在宅です。これは典型的な初期からの方で、何と長谷川式が全てではもちろんないのですが、初期で30点満点のアルツハイマー病はこの方だけでした。もともととてもレベルの高い方で30点、どう考えても何か違うということでいろいろ検査をしていくと、やはりこれだろうということで8年間、今はもう完全に寝たきりで意思疎通はとれませんけれども、進行に合わせて一つひとつ支援体制を組みながら、何とか在宅でずっとやれているケースの方がいらっしゃいます。
 更に危機介入です。危機介入は無数にあるんですけれども、ひとつやってよかったなという方です。もともと地域で孤立していた方で、なかなか周りとのつき合いがなくて、更にやせてきて尿便まみれで異臭みたいなところから行政に苦情の電話があって、町の嘱託医という立場で何度も訪問して、ようやく家の中に入れていただいたのですが、本当に尿と便の中に御飯があるような状況で全く話もできずに、これは死んでしまうなということで遠い親戚の方の協力をいろいろお願いして受診をしていただいた。
その当時は診断もわからなかったんですけれども、入って環境を整えて栄養状態をよくすると、身体症状の改善に従って認知機能もどんどん改善してきて、もともと認知症だったんだろうかと思うぐらいよくなってきてしまって、ケアハウスに入られて元気にされているという方もいらっしゃいます。
 あとは、困難事例です。こんなにうまくいくというか、ストーリーが整っているケースばかりではもちろんないんです。困難事例などと書きましたが、先ほどからありますけれども、私たちの病院は全く身体合併症対応能力がありませんのでリエゾンでやるしかないんですけれども、地域医療そのものが、やはり地域医療総合病院が比較的安定しているときは駆けずり回りながら何とかこれでいけるかなと思っていたんですけれども、総合病院の医師が約半数まで減ってきて、11人の常勤医で年間のキュウキ6,400件というのをこなしているような病院になってくると余裕を持ってやれなくて、なかなかリエゾンがうまくいかなくなったり、身体合併症のケースは早期の胃がんの手術をあきらめたり、本当にいろいろあります。
 更にちょっと下に書きましたが、御家族に問題があって支援ができないケースとか、経済的に本当に困窮しているので御本人の年金、認知症の方の年金で家族、皆が生活しているケースなどは多々あって、食事さえもカップラーメン一日一個などという方がいらっしゃったりします。
 アルコール問題に関しては、なかなか介護保険の中できちんとスキームがありませんので苦労されていて、一つひとつ対応するしかない状況だったりとか、あるいはやはり独居の方、愛南町は2万6,000のうち高齢者世帯が4,500人いらっしゃいます。どこもやってもやっても本当に御支援できない方がいらっしゃるんですけれども、支援拒否や、お2人とも認知症のケースはいっぱいあります。虐待ケースも本当にたくさんありますし、御本人からも、更にいくと家族が全生活を介護に費やしていて自分の生活は何もない。更にお一人が何人もの介護をして、やっと2人片付いた、あと2人とおっしゃっておられたり、本当に歯がゆいなと思います。
 更に、ケアマネージャーさんたちの中で24時間体制でずっとやっている方であったり、認知症のグループホームの責任者で半年徘徊につき合ってやっと落ち着いたとか、本当ににこにこされながらやられていますけれども、1年ぶりにこの前やっと3連休が取れて認知症ケア専門士の試験を受けてきたという責任者の方がいらっしゃったり、御本人たちは本当にやる気でやられていますけれども、まだまだ大変だなと思っています。医療として地域の一員として関わりたいと思うし、決してさぼっているつもりはないんですけれども、無力とまでは言いませんが、本当に微力で解決に至らないケースが無数に存在しているのは事実であります。
 その次に、これまで現在のところで感じてきたことは、全般として田舎に認知症疾患医療センターはなかなか整備できないんですけれども、専門医であったり、または神経内科医の不在が深刻です。マンパワーは当然全く足りません。いつでもどこでもと言いたいところですけれども、到底その体制にはほど遠い。
 入院ですけれども、大事な資源だというふうに考えています。更に、もともと一般病棟で処遇をしてくると精神症状で治療のために保護室を使うならばわかるのですが、ただ、御本人は悪気なく他の部屋に入ってぽこんとたたかれてけがをするみたいなところがいっぱいあって、本人の保護のために保護室をやむを得ず使うなどということで頻回で、本末転倒だと思いますけれども、やむを得ない現状があって、このままではだめだなと感じていました。
 それで、平成18年に高齢者の世界のユニットケアをヒントに、病棟の一角に空間的にも人員配置も独立させ、更に看護補助加算で見守り体制を強化して小さな認知症ケアユニットをつくってみました。ここで本当に保護室のケースとか、寝たきりになりかけたケースが歩けるようになったり、よくなる方が続出して、それでケアがちゃんといけると老人施設の入所もできるようになりました。これは、やはりこれから地域にとても必要な資源だろうと当時は考えていました。
 ただ、今はやはり生活、地域で暮らすということを考えていくと、今の地域のデイサービスなどもそうなんですけれども、介護の世界も皆さん必死に認知症の勉強をされて、対応力もどんどん強く高くなって、ケアマネさんたちもどんどん力をつけていらっしゃっていて、精神科病院じゃなきゃいけないケースが以前に比べると随分減ってきたと思っています。
 更に、自前で自分たちの精神科の経験とか特性が活かせる介護保険の事業所を立ち上げることで、できるだけ回避する方向がやはり健全なのかなと思って取り組みを進めていますが、まだまだ道半ばであります。
 私どもの法人の中に認知症疾患を入れてしまいましたけれども、治療ベッドを持っておりますが、さっきの20年前のスタンダードが今では通用しないと、施設基準、人員配置、全てあのままではどうにもならないというふうに課題を感じています。やはりアウトリーチ、往診、生活の場に行くということはとても有効で、また機会があれば話をしたいと思っています。
 それから、やはり合併症ですね。先ほどちょっと申し上げましたけれども、地域の身体医療そのものが崩壊をしてくるとこれほど大変なんだなと、リエゾンで何とか工夫して先生の理解を得てと思っていたんですけれども、1年ごとに先生が変わられて、会う間もなく変わられる先生も随分いらっしゃいます。それでも来ていただかないと地域医療が回らない状況の中で、なかなか努力、連携だけでは限界だなというふうにちょっと弱音をはいています。
 更に、これからさあどうしようかというところですが、地域全体で10年後を考えても、もう高齢者の人口は変わらないのでハードはもう要らないかなと思っています。
 ただ、若年層、介護層が減少して、高齢化はもちろん上がります。様々なものの量が、まず足りません。住居、サービス、在宅サービス、施設サービス、医療、リハビリ、家族の支援、多機関の連携、経済、交通、さっきの年金の話もそうですけれども、生活そのものの見通しが立っていません。やはり地域に住んでいる人がどう自分たちの町で生きるかという地域力が本当に問われるということで、私たちも地域住民として本気でやはり行動したいと思うし、ぼつぼつ始めてはいるんですけれども、なかなか答えが出ない状況であります。
 入院に関しては、やはり最小限の利用でいきたい。強く思っているのは、一生を終える場所は精神科一般の病棟ではないと思っています。本当に寂しいんですけれども、家族がどこで亡くなったのかと聞かれたときに、堂々と精神科病院、私たちの病院は平山と言いますが、平山で亡くなったと言える方がまだまだ少ないことも気づいていて、世間一般で言う普通の場所、精神科病院も普通の場所だと思うし、そうなりたいんですけれども、そういうところで終えていただきたくないと思っています。どうしても必要な場合は短期間限定であって、更に今の50とか60とかという一看護単位では認知症のケアはなかなかできなくて、看護だけでもできないので、この人員配置に関しては大幅に見直しが必要かと思っております。
 アウトリーチ、とりあえず生活の場に出向くということはまずとても大切で、当面の最重要課題として取り組みを続けています。
 身体合併症、何度も言いますが、地域医療体制が本当に大変なので、私たちとして何ができるのかという模索中です。急務だというのはよくわかっているんですけれども、今すぐ妙案が浮かばないというのが現実であります。
 ちょっと長くなりましてすみません、以上です。

○福田精神・障害保健課長 どうもありがとうございました。
 それでは、これまでのヒアリングの内容につきまして、特に精神科病院の役割という観点から御意見、御質問をお願いしたいと思います。
 前回の検討チームの際、終わりの方で足立政務官の方から、いわゆる冒頭説明しておりますけれども、論点ですね。この検討チームで最終的に議論をまとめていかなくてはいけない。特に、認知症患者さんに対する精神科の入院医療の役割の明確化というような点について、まずはあるべき姿というものをこのチームの中で十分に議論をしてほしいというお話があったかと思いますので、そういった点も念頭に置きながら、大変に広くて深い問題ではありますけれども、3人の構成員の方々から御発表いただきましたので、御意見、御質問をそれぞれいただければありがたいと思います。発表された先生方同士でも、他の構成員の方にもちろん御質問、御意見を言っていただいて結構でございますし、そういったことでこれから御議論を進めていただければと思いますので、よろしくお願いします。御意見、御質問のある方は、お願いします。
 では、野村構成員お願いします。

○野村構成員 いつも最初に手を挙げてすみません。
 病院の中で薬を使うことは当然あると思います。それから、鍵をかけてどこにも出かけられないようにすることもやむを得ないし、あることだと思いますが、もちろんスタッフが少な過ぎることも大問題で、これがきっとネックになって何もできないんだと思いますけれども、精神科の治療の中で私が特に足りないと思っているのは、本人の話をじっくり聞いてあげるということと、それから話を聞きながら心理的な治療を加えていくということが大変不足しているのではないかということを、認知症の分野でも改めて私は強く感じております。
 精神疾患統合失調症の治療についても前からそれは強く感じておりましたけれども、これから精神科の医療の中で心の面でどうやってその方を支援し、回復させていくかということはとても大事な視点であろうと思いますので、その辺にどうやってこれから予算を付け、スタッフを養成し、当然医療スタッフも増やさなければ、つまりその人が社会で暮らしていけない。危険だから閉じ込めて、最小限のニーズでその人たちを監視しようというふうに今の医療体制を私は感じるんです。それでは、やはり御本人が悲惨な結末になっていくしか私の目には見えなくて、とても気の毒である。最初の入院している患者さんの様子を聞きまして、一たん認知症になったらおしまいだねという感じをすごく受けてしまいました。
 そうではなくて、本当に治すところである。治療病棟なんだから、認知症を治すところであるというふうに考えて、スタッフを充実させて心理療法も充実させなければいかぬということを強く感じました。以上です。

○福田精神・障害保健課長 御意見ということで、ありがとうございます。その他、御意見、御質問はございますか。
 広田構成員、どうぞ。

○広田構成員 他にないので、皆さんが考えている間にお話させていただきます。
 前回も多分、最後のところで足立政務官が、私の発言があまりこの場にふさわしくないという言い方をされていました。今日もふさわしくないかもしれませんけれど、さっき長野先生が啓発の話をされていたんですね。
 私は2日前に地元の警察に立ち寄りましたら、まさに認知症の高齢者が来ていて、私が座ってお話し相手になったんですけれど、要するにこんな警察にはいたくない。確かにいたくないわけです。では、あなたはどこの誰なのと言ったら全くわからない。誰かわからない。警察が困っていましたが、私は寝る時間になったから帰ってきたんですけれど、どの辺のところがいわゆる啓発をして医療機関にかかるのが認知症なのであって、啓発、早期発見、早期治療といったときに何度も言いますけれども、インフルエンザじゃないけれども、うつだろうと何だろうとやはり予防というのが大事だと思うんです。
 そうすると、その辺の予防と、早期発見、早期治療のどの辺のところがいわゆる治療の線だということをやっておかないと、本当にこれから愛南町と違って横浜市のような都市部は一人暮らしの高齢者、特に私が暮らしているところは高齢者ナンバーワンなんです。それで、低所得なんです。そうすると、お話ししなくても生活が成り立つスーパーがあったりしますから、本当に誰もが認知症になって、今や警察の現場は事件の解決の警察官ではなくて認知症の家を探す警察官みたいになっちゃう漫画ティックな話が今後起こりますよというふうな予測を私はしているんですけれど、その辺をよろしくお願いします。

○福田精神・障害保健課長 長野構成員、どうぞ。

○長野構成員 全く同感で、先日キャラバンメイトの養成研修の講師で行っていたんですけれども、認知症の対策を何とか地域でしなければと始めた方々がキャラバンメイトの方々に、認知症の方がいたらどんどん連絡してくださいというふうに行政の職員が言っていたんです。
 例えば、その地域でいろいろ配達されている方とか、宅急便の業者とかに協力を仰ごうかと思っていて、その方はとても熱心に考えていると思うんですけれども、そういうことであれば私は協力できないということを申し上げたんです。どんどんほじくり出すと言ったら言葉が悪いですけれども、見つけて、あの人は認知症だよというのは全くナンセンスなことですし、認知症が始まりながらも世間でひっそり暮らす選択肢もあるわけなので、私たちが今その予防のことも含めて地域でお話ししているのは、やはり必要なときにはアプローチしてくださいねと、先ほど勧誘のところで非常にソフトにという言葉を使ったんですけれども、必要なときにアプローチできるよということを常に伝えていくことと、やんわりつながっている。何かどこかとはつながっている体制をつくりたいということで啓発活動を続けています。
 ただ、では何点になったらどうかというのは、全くこれもナンセンスな話で、地域づくりそのものをやはりいろいろな小さな単位で始めていかないことにはいけないし、都会でどうすればというのは本当に私も想像がつかないところがもちろんありますけれども、気をつけなければいけない。精神障害の件も、もちろん同じだろうと思っています。以上です。

○福田精神・障害保健課長 ありがとうございました。
 では、岡崎構成員お願いいたします。

○岡崎構成員 長野先生のお話を聞いて本当にほとんど尽くされているなと思いました。やはり認知症の問題というのは地域で、できるだけ御自分が住んでおられたところで生活を継続していくのに、必要な支援をしっかりしていく中で、その一部として一時的に入院医療も必要になる場合があるということで、この入院医療がどれぐらい必要かという調査も、地域により、施設により、すごく違うだろうと思うんです。
 ですから、それが本当に意味がある調査になるには、やはりそこでどういう治療をしているか、あるいはケアをしているかということがそろっていないと、多分データはそろわないだろうと思うんです。ですから、そこのところはしっかりデータを見るときに注意をする必要があるかと思います。
 私自身も個人的な経験ですけれども、長崎におりましたが、長崎市は中核市で保健所の機能がしっかりして、地区担当の保健師さんと、精神保健福祉相談で地域を回っていたんですが、うちの主人が最近物忘れがつよいとか、何かよくわからないけれども前と違うんだよねといった相談の相手としてベテランの保健師さんがいるわけです。
 そういうことから始まって、ひょっとしたら認知症じゃないかということで、介護者の会をちょうど始めていましたので、介護者の会に参加してもらって相談してもらうわけです。既に看取った経験者もいますし、いろいろな段階での認知症の状態の経験を語れる人がいて、ピアカウンセリングもできる人たちがいる。
 そういう人たちのアドバイスを受けながらやっていきますと、介護のパワーは非常に大きくなるんです。それからその中で看取りを終えた人などが、長野先生が紹介された、多分小規模多機能居宅支援というものに発展したんじゃないかと思いますが、当時は宅老所と言っておりまして、宅老所に寄り合って、互いに介護を支援する形になるんですが、時には泊まっていくということもあった。そういう機能ができますと、本当に入院しないんですね。幻覚も少々あろうが、外来通院で結構やれるものだなという体験をしました。
 そういったものがきちんとベースにあること、それに、もちろん身体合併症で具合が悪いときに対応できるところは必要だなというふうには思います。
 ただ、合併症の治療は、さっき三根先生がお話されましたが、個々の病院が内科医等を雇ってやるような合併症医療では、合併症全体に対してとても対応し切れないと思います。高齢の方でいろいろな複雑な病態も絡んでいることが多いし、外科的な処置も必要ですので、やはり一定の圏域にセンター的な役割をする病院をしっかりつくって、合併症医療をやるべきだと思います。
 東京都の場合は私の病院がやっているんですけれども、これは非常に困難です。内科や外科の医師の確保が難しく、精神病棟ですと医療費は安く、経営的にはほとんど成り立ちませんので、しっかり行政的にもサポートされた認知症の患者さんを含む精神科の患者さんの合併症治療のセンターをつくらないといけないと思います。そういったことができないと、地域全体の合併症医療には十分に対応できないかなと思います。中途半端に合併症医療をやりますと、長期在院の原因にもなってしまいますので、そこのところすごく大事かと思います。以上の点を述べさせていただきました。

○福田精神・障害保健課長 ありがとうございます。その他、御意見、御質問ございますでしょうか。
 では、河崎構成員お願いします。

○河崎構成員 今の岡崎先生の御発言で少しお聞きしたいんですが、確かに認知症の方の合併症のセンター的な機能はもちろん非常に大事だろうと思いますし、そういうものがまずその地域の中に確保できるということが、身体合併症に対して高度な身体的な治療を行う場合には必要になってくると思うのですが、全国的に見ますと現状は今、全くそういう状況ではない。
 その中で、それぞれの精神科の病院が、できるだけ身体的な合併症に対して関わりが持てるというような形の、それなりの一般医療に対する質の向上のようなものを一方では担保をしていくような方向性が必要ではないかと思うんです。
 確かに先生がおっしゃられたように、中途半端な形であれば、それがまた長期になったり云々というお話はございましたけれども、でも、実際に十分な身体的な医療が民間の精神科病院でもできるというようなことをやはり一方では目指すべきではないかというところは是非御理解していただけたらと思います。

○福田精神・障害保健課長 岡崎構成員、お願いします。

○岡崎構成員 そのことはもちろんネガティブに考えているわけではございませんで、特に私どもの経験からしても、内科医とか整形外科の先生を雇っていらっしゃるところもあると思いますが、お1人あるいは2人ぐらいいらっしゃって、それで内科的な側面で急を要しない状態の治療をするとか、あるいは他の専門病院と連携をしてやるとか、そういった意味でやはり内科の先生等がおられる方が、よりいいだろうとは思っています。

○福田精神・障害保健課長 ありがとうございます。その他、御意見、御質問ございますでしょうか。
 では、柴田構成員どうぞ。

○柴田構成員 3人の方々の発表の中から、身体合併症の課題が大きいということは在宅支援をしている者としてよくわかりました。
 ただ、一方で、どうしても精神科に入院をするということが大前提になっているようなイメージが私の中では取れまして、長野構成員がお話をされましたように医療がアウトリーチ、とにかく外に出て行くことがいかに大事なのかということを在宅支援する中から常に感じていて共感を覚えました。
 しかも、そこに必要なときにアプローチをして、強制的ではなくて必要なときにアプローチをしてやんわりとつながっていくという言葉が、実は家族もすごく安心をするし、本人がもつ安心感は非常に大事だと思うのです。
 精神病院に入院する必要性のある方は確実にいるし、暫定的に入院し、在宅に戻るという過程は大切だと思います。しかし、入院することを大前提とするよりは、まず在宅でどれだけ支え切れるかということを考えていくことがまずはこれから目指すことだと、3人の構成員のお話を伺いながら思いました。意見です。

○福田精神・障害保健課長 ありがとうございます。
 西田構成員、お願いします。

○西田構成員 今のお話と共通するところが多いんですけれども、これからの認知症の入院医療ということの役割を考えていくときには、今の地域の精神科医療体制を前提でその役割を考えるということではだめで、やはり将来の入院医療の役割というものを考えていく上では今、出てきているように、地域でどうやって支えていくかという地域で支える認知症の精神医療の在り方というものを充実させていかないといけないのではないかと思います。
 先ほど三根構成員の方からも、BPSDというのは地域に戻ったときにまた出てきてしまうこともある。それでまた入退院という形をしていても、それでいいのかということもありました。本当は、不安定であればこそ地域で駆けつけて、そこで迅速に対応することで入院も防げるし、その地域での生活を維持できるということがあると思うんです。そういった意味で、今の入院医療というものの在り方は、どうしても地域でしっかり支える認知症の精神医療体制が脆弱なゆえに担っている役割というのは非常に大きいと思います。
 この検討チームにおいては将来のビジョンも含めて考えるということだったと思いますから、やはり地域の在宅ないし外来の認知症の医療というものがどうあるべきかということと併せて、それと並行して入院医療がどういう役割を担うかということが検討される必要があると思います。
 長野先生のお話に非常に感銘を受けまして、やはり認知症においても在宅でしっかりとアウトリーチを含めて治療を提供していく体制を構築することが大事だと考えました。どうもありがとうございます。

○福田精神・障害保健課長 ありがとうございます。
 長野構成員、どうぞ。

○長野構成員 おっしゃるとおりなんですけれども、さっきの将来に向けてというところが実はちょっと引っかかっていまして、精神疾患の社会的入院の方ももちろん待ったなしなのですが、認知症の方のことはもっと待ったなしで、将来と悠長に言っていられないと思うんです。
 都会の方も結局、昔、高度経済成長のときに出てきた方々の高齢化率が集落によっては40%、50%となっていて、田舎の方もとても目の前に日々で、先ほど三根先生がおっしゃったように、必ず8年、10年で亡くなられていくんですね。
 皆さんの人生の閉じ方をどうお支えするかということで本当に待ったなしで、将来などと言っている状況が実は認知症に関して、より切迫していないということはもう少し考えないと、合併症もいつかできたらとか、そういう問題ではもちろんないし、認知症疾患医療センターももちろん大事な制度なんですけれども、即効性のあるものがやはりどんどん打たれていかないと、今度の認知症デイサービスの泊まりのお話も出ていますが、賛否両論で私も問題もあるなという気はしますけれども、即効性のあるものがどんどん地域の中にいって、試行錯誤しながら在宅、地域で支えられるものは支えるということにすぐ取り掛からなければいけなくて、精神科医療はその一員でいるということで本当に切迫しているという、そこのテンポ感みたいなことは今回も切迫感を持って結論を出して、結論は出ないにしても出せていけたらと感じています。以上です。

○福田精神・障害保健課長 ありがとうございます。その他、御意見ございますか。
 阿式構成員、どうぞ。

○阿式構成員 私も長いこと精神科の看護師をして、その中でも認知症の治療病棟の師長をずっとしてきました。平成2年からですので、入院される患者さんは随分変わってきた。最近は本当に身体合併症の方が多くなって看護も大変になってきているんですけれども、やはりある程度の期間、いつも3か月を退院の目安にしていたんですが、そういう中で帰れない人というのはどうしても残ってくる。だけど、その中で、病棟の中で生活の場ではないなということをいつも私なりに感じていました。
 それで、平成16年にユニットをつくって、そこである程度生活をしてもらおうと思ったんです。やはり長野先生が言われるように地域で生活するということが基本になるとは思うのですが、どうしても自宅に帰るというのではなくて、私は自分の家であるような、ほっとできるような場所ならば、それも地域の一つと考えてもいいのかなと思うんです。
 その中で、やはり退院が難しいというのは、家族の方がうちは1人で誰も看る者がいないからと言われると病院側が、私たちが本当に積極的に退院を促進していなかったのではないかなと、今ちょっと疑問も持っているんです。一般の病院では、どうしても退院してもらう場合には必ず家に帰っていただくし、帰れない場合はよその施設に行っていただくとか、そういうこともものすごくしっかりとされるんですけれども、精神科の中にあってはやはりその部分で家族の大変さがわかりますので、帰ったら誰も看る者がいないからとか、そういうことでやはり地域へ向けての努力というか、退院促進が少し少なかったように思います。入院が長くなれば長くなるほどかえって生活ができなくなって、だんだんと帰れなくなってくる人が多いなと思っています。
 それで、病院としても地域の中で何とかつながりを持ってということで、平成16年ぐらいから市元気塾ということで、地域の住民の人を集めて認知症の勉強会をしたり、グループワークをしたり、映画を観ていただいたりしています。地域には一人暮らしの人が多いんですけれども、自分がどうなったら診察に行ったらいいのかということがすごく不安になると、この前もそういうふうな話があって、本当にどこに行けばいいとか、地域の人はまだまだ疾患センターがどこにあるとか、そういうことではなくて、実際に自分がこういうふうになったら認知症かなと思ったときに病院に行けばいいとか、どこに行けばいいとか、そういうことがわからなくて困っておられるんですけれども、そういう会をする中で少しは地域の中で一人暮らしの人でも、皆が食事をするときに行って、そこに来なければ連絡をしてくださったり、みてくださる人も随分増えてはきています。そういうことで、今すぐに効果はなかなか出ないんですが、これを続けていくしかないかなというふうには思って、何かそういうふうな地域につなげるようなものができればと思っています。
 入院して何年もいる必要ないような方がいることも確かにありますけれども、地域の介護のシステムのサービスがまだまだ足りないような気はしています。

○福田精神・障害保健課長 ありがとうございます。
 野澤構成員、お願いします。

○野澤構成員 先ほど来いろいろな方からお話が出ていますけれども、本当に今、起きている高齢化というのは都市部なんですね。ものすごい勢いとものすごいボリュームで高齢化が起きているのは都市部であって、もう一つ同時に起きているのが生産年齢人口の減少です。つまり、現役世代の人口というのはどんどん減っていて、一番その減り方が激しいのは突出して東京で、数年先に一体どうなっちゃうんだろうと本当に恐ろしく思っています。
 それで、今日、長野先生のいろいろなケースを先ほど来から聞いていて非常に私は感動しまして、何かすごいドキュメンタリーを見せられているような気分になってきて、こういうものを多くの人に知ってほしいと思います。こういうものを聞くと、何とかなるんじゃないかという気がしてくるんですね。
 やはり疾病ではなくて人間として見ると、こういうことになってくるんだなと思うわけです。もちろん、疾病は疾病として治療しなければいけない場面はあるんでしょうけれども、いつまでもその治療の対象としている限りは、なかなかこういう人間としての像は結んでこない。やはり最後の最後には人間としてもう一度、地域の中でみていくという、それを目指さなければ一体何を目指すんだろうというぐらいの気になってくるんですね。
 それは、どうして人間として見られるのかと言うと地域に戻すからで、地域にいるからこそ人間として見られるわけで、やはり私は目指すべき方向というのははっきり出ているんじゃないかという気がしているんです。本当にそれぞれの先生方のお話を聞くと皆さん一生懸命やられていて、どれもこれも真実に思えるし、どれもこれも正義に思えるんですけれども、やはりどこかで決断して方向性をきちんと示さなければ、それだけの余裕なんてとてもじゃないけれども、我々の前にはないような気がしております。以上です。

○福田精神・障害保健課長 ありがとうございます。その他、御意見ございますでしょうか。
 三上構成員、お願いします。

○三上構成員 今日のお話を聞いていて、長野先生のお話は特にそうですが、コミュニティの力が認知症における問題を解決するのには一番大きいのではないかと思いました。
 しかしながら、野澤構成員がおっしゃったように、一方では都会でこういったものを望めるのかという不安もあります。私は大阪で開業しておりますが、長野構成員のおっしゃったような取り組みが身の周りにあまり見えないというのが現状です。やはり身体合併症による入院が避けられないという部分は当然あると思います。三根構成員の御説明にありましたように、現在の診療報酬では、精神科身体合併症管理加算が設けられておりまして、治療開始早期の7日間について評価されるわけですが、これは急性期の身体合併症を想定したものであります。手術であるとか、骨折、肺炎など、そういった急性期の疾患で7日間ということであり、実際に医療が必要な認知症の方は、慢性的にその医療が必要である場合が多く、まだまだ認知症における身体合併症への評価は十分ではないと考えられます。このような状況において、認知症と身体合併症を持つ方を受け入れることのできる施設は少ないのではないかと考えます。
 私のところは総合病院で、173床の精神科病床があり、そこに30人程度の認知症の透析患者をお預かりしておりますが、こういった方は水分管理の問題でありますとか、御家族の環境等もありますけれども、なかなか御自宅に帰すことができません。認知症のみ、あるいは腎不全のみということであれば、通院等でコントロールができるのですが、両方あるということになりますと、なかなか御自宅での自己管理ができないということもございます。このような実情につきましても勘案したうえで、今後の認知症における身体合併症への対応としてご一考いただきたいと思っております。

○福田精神・障害保健課長 ありがとうございました。
 もう一件、今日は議題がありまして、前回大まかな枠組みをお諮りした追加調査がありますので、それに対する一定の時間も取らなくてはならないのですけれども、それが後ろにあるということも含めた上で更に御発言がある方はどうぞ。
 では、長野構成員お願いします。

○長野構成員 すみません。お断りなんですけれども、もうおわかりだと思うんですが、今日お示しさせていただいたものは地域の中のごく一角の話で、介護認定審査会も実は委員でしているところに、実は自分が主治医の意見書を書いていない認知症の方は全部自分のところに近く回ってくるんですけれども、まだまだつながっていない方がいっぱいいらっしゃって、恐らく町民全部にアンケートを取ると、こういうことをやっていると知っている方は多分1割にも満たないというのが田舎でも現実だろうと思っています。
 本当にやっても、やってもですが、結果は必ず出るという実感もあるので、早くやり始めてやるということの中で、ごく一角の話だということだけは置いておいていただけるとありがたいと思います。以上です。

○福田精神・障害保健課長 ありがとうございます。
 では、広田構成員お願いします。

○広田構成員 私は、厚生労働省の社会保障審議会障害者部会臨時委員を担うときに、介護保険の統合はこちらに置いておいて、やはり国民のトータル福祉ということを考えて入らせていただいたんですけれど、ようやく今年の4月から高齢者福祉のボランティアを週に一度させていただいているんです。とても私自身は楽しい。
 だけど、市内のあるところに行っていると、お昼のお食事が終わるとお薬が出てきて、精神医療の被害者としてそれが気になるけれど、私は精神障害者の世界ではうるさい広田さんで通っているんですが、そこでは一般の御婦人で通っているわけです。ですから、一切口を出さない。
 そうしますと、今日お3方が発言されたんですけれど、いわゆる薬物療法が主流を占めているようなお話をされているんですが、精神疾患本体の方の治療の方で、やはり多量多剤というのは今、問題になってきて、少なくしようというふうな施策を打ってきているんですけれど、本当に認知症のお薬というのは適正なのか。日本の精神科医療というのは安いから、ある意味では薬でもうけなければいけないというふうに考えているよという医者もいます。
 それから、きちんとした公的な会議でも、やはり医者が日本の精神科医は製薬会社まみれだ。だから早期発見、早期治療ですよ、広田さんと言っている場合もあります。そういうことを含めて、将来また本体の精神疾患と同じように多量多剤というか、いろいろな形で適正さを欠いて増えているということがないように、どこかが見張っている体制はきちんと現在あるのでしょうかということを精神医療の被害者としてお聞きしたいと思います。
 ちなみに、私の母も最期のところは認知症ぎみというか、妄想ぎみでしたけれど、私が精神病院の被害を受けているから、私は絶対に精神病院に連れて行かないでということで、救急車で一般の内科に搬送していただきました。

○福田精神・障害保健課長 朝田構成員、お願いします。

○朝田構成員 ごく簡単に申し上げます。
 今日は3名の先生方、それぞれのお立場から大変いいお話をしていただきまして、よく整理されました。特に長野先生はたくさんのことをおっしゃったわけですけれども、一生を終える場所ではないというところが非常に印象深く、また今、阿式構成員もおっしゃったように、人間としての生活の場ではないという、ここのところは詰めるならばこの話になると思うんです。要するに、精神科の病院以外で今、収容というか、入院加療ができるところがあるのかと言ったら、恐らく私は日本の国の今のベッドの状況を考えると多分ないと思うんです。
 その中で今、愛南町の5ページで、先生のところが平成8年から22年の14年間にどう組成が変わっていったかというところを拝見しますと、精神科病棟は149から65になっていて、その反面で平山寮とか、小規模多機能とか、こうしたところで生活の場として転換というか、されているわけですね。恐らく、この辺が実はなかなか意義深くて、相当スキルがあると思うんですけれども、ある意味でこういうものが非常にいいヒントになるんじゃないかという印象を持ちました。以上です。

○福田精神・障害保健課長 ありがとうございます。その他、御意見ございますでしょうか。
 それでは、時間の関係がありますので、この件についての意見交換はここまでといたしまして、次の議題に入らせていただきたいと思います。
 議題の(2)ですけれども、前回大きな項目については御説明をさせていただきましたが、「精神病床における認知症入院患者に対する追加調査について」ということで、各構成員の方にも事前にやり取りをさせていただいておりますけれども、具体的な項目の最終的な案という形で準備をさせていただきましたので説明をさせていただきます。よろしくお願いします。

○中谷課長補佐 では、事務局から説明させていただきます。
 冒頭、河崎先生が先ほど認知症疾患医療センター82というのは必ずしも全てに補助金が出ているわけではなく、都道府県や指定都市が指定をしている疾患センターも含まれています。
 ただ、国に報告が上がってくるまでに少しタイムラグがあるために数が合わないこともあると思いますので、よろしくお願いします。
 では、資料4を説明させていただきます。構成員の皆様にはあらかじめ原案を送っておりますので、その変更点を中心に説明させていただきます。
 まず、1ページ目は基本的な患者様一人ひとりに聞く質問票で、基本情報になっています。
 2ページ目をご覧ください。こちらは、少し精神症状や認知症の異常行動について、既存の調査よりは詳しく聞いております。精神症状についても、幻覚、物盗られ妄想、被害妄想といったかなり細かい項目を立てさせていただいております。
 3ページ目は、ADLとIADLの状況ということになっております。これも、事前にお送りしたものと同じ内容になっています。
 それから4ページ目、問11です。これも今、御議論がありました認知症以外の合併症がありますかということになります。特別な管理、日常的な管理というのは、既存の調査と同じ聞き方になっております。内訳についても、疾患を並べさせていただいております。少し詳しく聞かせていただいております。
 問12のところも、医療行為としてはかなり細かく聞かせていただいております。この調査では、調査日における身体管理ということにさせていただいています。
 それから、5ページ目です。こちらは少し事前にお送りしたものと変更がありまして、問13では過去1か月間の他科受診の有無を尋ねていますが、13‐1でその診療科目及び1か月間の受診頻度も追加をさせていただいております。
 それから、問14は対象者の薬物療法・精神科専門療法の程度、事前の票では精神科リハビリテーションとなっていたのですが、精神科専門療法ということで少し詳しく療法を分けています。
 質問の14‐1では「薬物療法についてお答えください」の質問文章に、「過去1週間に使用した薬物療法」ということで期間を限定させていただいています。
 それから、14‐2では「過去1か月間に行った精神科専門療法」ということで、対象がわかりやすいように限定をさせていただいています。精神科専門療法の内容については、以前は精神療法というふうに大くくりだったのですが、「精神科作業療法」、「入院生活技能訓練療法」、「入院集団精神療法」、「入院精神療法」、5番で「音楽療法、回想療法、その他の精神科リハビリテーション」、「その他」、「行っていない」という形で項目を変更させていただいています。
 それから6ページ目で問15、診療費の支払い方法については事前にお送りしたものと差し替えさせていただいていまして、厚労省でやっています患者調査と同じ項目にそろえさせていただいております。
 次に、7ページをご覧ください。問18で、入院前の介護サービス、医療はどのような利用状況かという質問ですが、こちらの質問の文章が「対象者の入院直前の介護サービス」ということで、「前」と言うと漠然としていますので「入院直前」という質問文に変えさせていただいています。
 それから問19、「対象者の入院の理由についてお答えください」ということですが、こちらの回答項目の6番、7番のところで、「精神症状は安定しており、在宅療養でも対応できるが、必要な在宅医療・介護」と、医療と介護をまとめて書いていたのを、御意見ありましたので、これは医療と介護を別々の項目に立てさせていただきました。
 続きまして、8ページ目になります。こちらは、対象者の自宅での介護者についての質問です。21番の2番目の「介護者の健康状態についてお答えください」というものの回答項目が普通に生活といったような文言だったんですが、健康状態に問題があるかどうかということがわかりやすいように、項目の1は「健康状態に問題なし」、項目の2番は「持病・障害等有り健康状態に不安がある」といった形でまとめさせていただきました。3番目に「不明」ということも追加をしております。
 続きまして、問24以降は居住先・支援が整った場合の退院可能性を聞いておりますが、9ページ目、問25以降で少し変更があります。
 まず問25番は、適切と考えられる「生活・療養の場」ということですが、回答項目の7番目に「障害者自立支援法に基づく施設等の利用(ケアホーム・グループホームなど)」ということで、精神科病院に聞きますので、精神科領域のグループホームと認知症のグループホームと混同されないように別項目として立てさせていただいております。
 それから、問26番です。これは、退院後に必要な支援ということになります。まず、回答項目4番目の「小規模多機能型居宅介護」というのはよく内容を理解していない方もいるのではないかといった御意見があったので、下に※印で説明文を入れさせていただいております。
 それから回答項目の6、7、8番目ですが、こちらは事前にお送りしたものは訪問診療がありませんでしたので、8番に「訪問診療」と追加をさせていただきまして、その上の6番、7番はそれぞれ通院という聞き方に分けて、6、7、8が分かれるように表現を変えております。
 続きまして、10ページ目は「家族や友人から得られる支援の程度」、「退院可能性がない理由」ということで、こちらについては事前にお送りさせていただいたものと同じ内容になっております。変更はございません。
 11ページ目ですが、問29番で「対象者は現在、転院・入所の順番待ちをしているか」というところについては選択肢の29‐1、5番目に先ほどと同じように「自立支援法に基づく施設等利用」という項目を同じように追加をしております。
それから29‐4番目、最後の「順番待ちをしていない理由について」というところは、主な理由を1つ回答していただくように質問文に追加をさせていただいております。
最後の1枚は事前にお送りしていないのですが、そもそもの調査対象となる病棟の基本情報に関する1枚紙でありまして、問1が対象となる病棟の届出基準の種類、問2が対象となる病棟の職員数、病院の職員と病棟担当の職員数を職種別に聞いています。問3は、その対象となる病棟についての主傷病別の患者数を記入していただくということで、基本情報として考えております。
調査票の説明は、以上です。

○福田精神・障害保健課長 どうもありがとうございました。ただいまの事務局からの説明につきまして、御質問などのある構成員の方はよろしくお願いしたいと思います。
 各構成員の方々から事前にいただいた意見は今、説明したとおりなるべく反映をさせているという状況でございます。
 長野構成員、お願いします。

○長野構成員 実は、認定審査をしながらとても気になっているんですけれども、日常生活自立度のチェックの仕方がこの一覧表だけで、いわゆる介護保険の認定調査と照らし合わせられるようなデータになるかというところがあって、現場でこのことを本当に細かく知っている者があまりいないものですから、調査員さんのマニュアルをここに関しては一緒に付けておくことで比較ができるのかなと。4とMの違いとか、ローカルルールもかなりありますので、精神科医は皆Mだと思って付けていても、実はその調査員さんのところではMじゃないというものもたくさんあって、この文面だけで付けちゃうのはちょっとリスキーかなと。せっかくデータが出るので、比較できるといいかなと思ったりします。以上です。

○福田精神・障害保健課長 ありがとうございます。その他、御意見ございますでしょうか。
 朝田構成員、お願いします。

○朝田構成員 もう一度改めてお聞きしたいんですが、私はこの調査票は転院・退院においてADLのお世話というか、ケアの問題が重要なので、そこのところにフォーカスを当てて実態を調べるための調査というふうに理解していたのですが、これだともうフルボディというか、全てを含むような非常に精緻なアンケートになっていますね。目的は、どういうことでしょうか。

○中谷課長補佐 ADL、IADLではなくて、むしろその精神症状や、医療の内容が既存の調査ではよくわかっていないので、そこにむしろフォーカスを当てて少し掘り下げた調査をしたいということと、プラス退院できない理由というところも以前の調査ではセルフケア能力というところがあって、その中身が医療の話なのか、介護の話なのかが少し不明瞭なので、その部分をもう少し掘り下げたいという、その2点が大きな理由です。

○朝田構成員 ちょっと申し上げますと、医療の部分と介護の部分と2つあるとして、医療はさて置いておいて介護に関して言いますと、3ページの問9の下半分ですね。
 まず、ここではベッド上の可動性というか、それから移乗があって、食事があって、トイレがございますけれども、普通だとこれに入浴、着脱が付いていると思います。というのは、例えば介護の中で一番手間がかかるのが食事です。ほぼ、タイムスタディをやると半分が食事に費やされます。しかし、本当に認知症特有に大変なのは殴ったり蹴ったりされて入浴の手伝いができない。あるいは、おむつの人であればなかなかやらせてくれない。着脱、ここでも蹴られたりするというところで、ある意味で非常に冷や冷やしながらやるのはそういうところだ。
 それから、何よりも認知症のADLをみるに当たっての特徴は、脳卒中のADLとは全然質が違うんです。つまり、要するに脳卒中の人は片方が麻痺していて手が使えないから服が着られない。そう言うんだけれども、認知症の人は別に手足なんか皆、蹴りが入るぐらいだから幾らでも動きます。
 ただ、例えばズボンを頭からかぶっちゃうとか、セーターの表裏がわからないとか、それを手を貸してあげようとすると、何をするんだと言ってパンチが入るから、そこがある意味で非常につらいわけですね。
 そういう難しいことを言ってもわかりにくいと思うので、たくさん現場の人がいらっしゃる前で私がこんなことを言ってはいけないんですけれども、昔から我々が言ってきたのは、現実にやっているADLとできるはずのADLと言ったら多分わかると思うんです。要するに、麻痺がないんだから服を着ることはできるはずだ。しかし、前後がわからない。ズボンをどう履いていいのかわからない。だから、しようがなくてやってあげなくちゃいけないというふうなところがアルツハイマー等の認知症の最大のADL障害の特徴だから、これだとこう言っては何ですが、脳卒中のADLになってしまっている。
 だから、このままでいいとは思うんですけれども、それについて現実にこの方がやっていらっしゃるADLと、その能力からいってできるはずのADLと両方を答えてもらって、かつ、それに対して抵抗があるか、ないかという質問をもう一つ付けておくと、その大変度は、ぱっと見ただけで、できるはずとやっているADLの乖離が大きいほど大変なわけです。
 それで、更に抵抗があったらもう手に負えないというところは割とすっきりいくと思いますので、よろしくお願いします。

○福田精神・障害保健課長 ありがとうございます。非常に認知症の方の特色ということをうまく教えていただけたかと思います。その他、御意見ございますでしょうか。
 柴田構成員、お願いします。

○柴田構成員 今の御意見はそのとおりだと思いまして、私自身は介護の場で支援をしております。どうしても薬物を多く服用をしている状況から生活者という捉え方をするのと、そうではなくて薬をできるだけ少なくして生活のケアの場面で関わる状態像はかなり違うような気がするんです。そういう意味から今、委員がおっしゃったようなところの内容を少し含んでいただけると、調査をする意味というのは大きいかと思います。
 それともう一つですが、問19です。6、7のところが分かれたことは非常によかったと思っています。同時に、9番の「上記以外で、本人、家族等が強く希望するため」というところでは、現実にこれは全く別のものだと思っています。本人が強く希望する例は非常に少なくて、家族が強く希望する例が恐らく九十何%だろうと思いますので、ここはもし可能であれば分けていただけると私はいいなと思っております。以上です。

○福田精神・障害保健課長 ありがとうございます。その他、御意見ございますでしょうか。
 それでは、予定された時間もきました。今、大変重要な御指摘、特に認知症の方のいわゆるケアをする上での重要な視点について御意見をいただいたと思いますので、いただいた御意見を反映できる点につきましてはなるべく反映するということで対応させていただきたいと思います。細かいところは事務局の方にお任せいただければと思いますけれども、今の内容につきましてはもう一度先生方に送らせていただきますので、そのときにどうしてもという部分がございましたら御意見をいただくということでもう一回やり取りをするという形で、ただ、基本的には次に出すものは原則そういうつもりでご覧いただいてということでお願いできればと思っておりますので、よろしくお願いします。調査の時間の関係もありますので、比較的早目にこちらからもう一回メールを差し上げたいと思いますので、御確認をいただければと思っております。
 それでは、最後になりますけれども、事務局の方から次回の検討チームのテーマ及び次回以降の予定、日程等につきまして説明をお願いします。

○本後課長補佐 日程につきましては、今週の木曜日になります16日の18時から、場所は厚生労働省の9階、公園側の省議室になります。
 次回も今回と同様、構成員の方々からのヒアリングを行った後、意見交換を行う予定でございます。次回ですけれども、三上構成員、栗林構成員、阿式構成員、松浦構成員、柴田構成員、東構成員にお願いしたいと思っております。これは後ほど御連絡させていただきますが、準備の関係もありますので資料がございましたら大変短くて恐縮ですが、前日の15日の水曜日までに事務局の方へ送っていただければと思います。よろしくお願いいたします。

○福田精神・障害保健課長 ありがとうございます。
 本日も大変お忙しい中、長時間にわたりまして御意見いただきましてありがとうございました。
 それでは、これをもちまして第6回の検討チームを閉会いたしたいと思います。どうもありがとうございました。


(了)
<照会先>

社会・援護局障害保健福祉部
精神・障害保健課企画法令係

電話: 03-5253-1111(3055)

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