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2011年2月24日 薬事・食品衛生審議会食品衛生分科会乳肉水産食品部会議事録

○日時

平成23年2月24日(木)10:00~12:13


○場所

厚生労働省共用第8会議室


○出席者

委員

山本委員(部会長)、阿南委員、石田委員、甲斐委員、木村委員、小西委員、鈴木委員、中村委員、野田委員、林谷委員、堀江委員、松田委員、山下委員

参考人

五十君参考人、豊福参考人

事務局

梅田食品安全部長、木村大臣官房参事官、森口基準審査課長、横田課長補佐、浦上専門官

○議事

○事務局 それでは、定刻となりましたので、ただいまから「薬事・食品衛生審議会食品分科会乳肉水産食品部会」を開催させていただきます。
本日は、お忙しい中お集まりいただき、ありがとうございます。どうぞよろしくお願いいたします。
本年1月に委員の改選があり、新体制となり、初の部会の開催に当たりまして、まず、梅田食品安全部長より、御挨拶申し上げます。
○食品安全部長 おはようございます。食品安全部長の梅田でございます。昨年7月に食品安全部長に就任いたしました。よろしくお願いいたします。
本日は、大変お忙しい中、乳肉水産食品部会にお集まりいただきまして、ありがとうございます。また、委員の先生方におかれましては、日ごろより食品衛生行政の推進に当たり格別の御理解と御協力を賜り、重ねて御礼申し上げます。
さて、初めに御報告でございますが、本年1月24日に開催されました薬事・食品衛生審議会の食品衛生分科会におきまして委員の改選がございました。当部会に関しましては、後ほど事務局からも御紹介申し上げますが、今回の改選によりまして、本部会の委員として、新たに4名の先生方に就任していただくことになりました。また、委員の互選によりまして、引き続き山本委員に部会長をお願いすることになった次第でございます。
山本部会長を初め委員の先生方におかれましては、今後とも当部会の運営に当たりまして御協力くださいますようよろしくお願い申し上げます。
当部会におきましては、動物性食品の規格基準の設定等について御審議いただいております。昨年は、妊婦に対する魚介類の摂食と水銀に関する注意事項の見直しや、乳中のアフラトキシンM1について御議論いただいたところでございます。本日は、食品中のリステリア・モノサイトゲネスの取り扱い等について御議論いただく予定にしております。委員の皆様方におかれましては、それぞれ専門家の御見地から忌憚のない御意見を賜りたいと存じます。
以上、簡単ではございますが、開会に当たりまして御挨拶させていただきます。どうぞよろしくお願いいたします。
○事務局 ありがとうございました。
なお、本日、梅田部長は、所用のため、ここで中座させていただきます。
(食品安全部長退席)
○事務局 本日は、寺嶋委員、西渕委員より御欠席の御連絡をいただいておりますが、乳肉水産食品部会の委員15名中13名の御出席をいただいており、部会委員総数の過半数に達しておりますので、本日の部会が成立しておりますことを御報告いたします。
 なお、先ほど梅田部長からの挨拶にもございましたが、委員の互選により、本部会においては、引き続き山本委員に部会長をお願いすることとなりました。
また、今回の改選により4名の委員が新たに就任されましたので、部会の開催に当たりまして、まず御紹介させていただきます。委員名簿につきましては、資料の2枚目にございますので、併せてごらんいただければと思います。
東京海洋大学食品生産科学科教授の木村委員でございます。
 国立医薬品食品衛生研究所衛生微生物部長の小西委員でございます。
 国立医薬品食品衛生研究所食品衛生管理部第四室長の野田委員でございます。
 名古屋大学大学院生命農学研究科教授の松田委員でございます。
 なお、今回の改選とは別に、昨年の5月28日付で本部会の委員に御就任いただいております、国立感染症研究所細菌第一部第一室長の寺嶋委員につきましては、先ほど申し上げましたように、本日御欠席との御連絡をいただいております。
 次に、本日の議題に関連しまして、お二人の専門家に参考人として御出席いただいておりますので、御紹介いたします。
 国立医薬品食品衛生研究所の五十君室長でございます。本日は、リステリア・モノサイトゲネスに関して実施していただいた汚染実態調査等の概要について御説明をお願いしております。
 続きまして、国立保健医療科学院の豊福室長でございます。本日は、微生物基準設定の国際的動向について、コーデックスにおけるリステリア基準設定も含め御説明をお願いしております。
 続きまして、前回の当部会開催以降の事務局側の人事異動がございましたので、この場をお借りしまして紹介させていただきます。
大臣官房参事官の木村でございます。
 基準審査課長の森口でございます。
 私、基準審査課課長補佐をしております横田でございます。どうぞよろしくお願いいたします。
 それでは、山本部会長に議事の進行をお願いしたいと思います。よろしくお願いいたします。
○山本部会長 皆様、おはようございます。引き続き、部会長をさせていただくことになりました国立医薬品食品衛生研究所の山本です。どうぞよろしくお願いいたします。
 それでは、議事に入らせていただきたいと思います。初めに、事務局から配付資料の確認をお願いいたします。
○事務局 資料の確認をさせていただきます。議事次第の裏に配付資料の一覧がございます。
それに沿いまして、まず資料1、「常温保存可能品に係る乳等省令の改正について」。
 資料2-1、「食品中のリステリア・モノサイトゲネスの取扱いについて」。
 資料2-2、スライドの「微生物学的リスクマネジメントとCodex等におけるListeriaリスクマネジメント」。
 資料2-3、「リステリア症の発生状況と国内の食品における汚染状況」。
 資料2-4-1、資料2-4-2は、食品安全委員会において作成されているリステリアに関するリスクプロファイルでございまして、それぞれ平成18年に作成されたものと現在検討中の改定案になっております。これらの資料につきましては、必要に応じて御参照いただければと考えております。
 それから、委員の先生方のみの配付資料といたしまして、参考資料1-1から参考資料8といたしまして一つのファイルに閉じてございますものと、右肩に「報告資料」と記載がございます一枚紙がございます。
配付資料の不足等ありましたら、事務局までお願いいたします。
○山本部会長 それでは、議事に入りたいと思います。皆様方、資料の不足はございませんか。
本日は、2つの議題について御議論いただく予定としておりますが、まず、議題の(1)としまして、審議事項であります「常温保存可能品に係る乳等省令の改正について」、事務局から御説明をお願いいたします。
○事務局 それでは、常温保存可能品、ロングライフミルクとかLL製品と呼ばれることが多いかと存じますけれども、こちらに係る乳等省令の改正につきまして御説明いたします。資料1をごらんいただければと思います。
本件につきましては、これから御説明をさせていただきますけれども、事務的な基準改正とも言えるような内容になってございます。ただ、食品衛生法第11条の規定に基づく規格基準改正に当たりますので、昨日付で、厚生労働大臣から薬事・食品衛生審議会長あてに諮問させていただいたところでございまして、本部会での御審議をお願いさせていただくものでございます。
それでは、1.「経緯」から御説明させていただきます。牛乳、成分調整牛乳、低脂肪牛乳、無脂肪牛乳、加工乳、それから乳飲料につきましては、摂氏10度以下で保存されなければならないとされてきたところでございますけれども、平成60年7月に、乳及び乳製品の成分規格等に関する省令、略して乳等省令と申し上げますけれども、こちらの改正におきまして、一定の衛生要件を満たした牛乳等は、厚生労働大臣の認定によりまして、常温保存可能品の表示が可能となり、常温で保存できる牛乳等が流通することになってございます。
常温保存可能品につきましては、資料の中ほどの※1の部分に乳等省令7条の定義の記載がございますけれども、「連続流動式の加熱殺菌機で殺菌した後、あらかじめ殺菌した容器包装に無菌的に充填したものであって、食品衛生上、摂氏10度以下で保存することを要しないと厚生労働大臣が認めたものをいう」と定められてございまして、賞味期限表示の例外規定として定められているものでございます。
本文に戻りまして、この規定につきましては、「その後」のところからになりますけれども、平成21年9月に消費者庁設置がございまして、食品衛生法改正がそれに先立ちあったわけですけれども、法第19条に基づく表示の基準につきましては消費者庁が所管することとなったところでございまして、以後、常温保存可能品の認定につきましては内閣総理大臣が担当しているということでございます。
今般、消費者庁におきまして新たに法に基づく表示基準に関する内閣府令を制定するということで、当省においても必要な改正を行うということで本日御議論いただくものでございます。
常温保存可能品につきましてもう少し御説明させていただきたいと思いますが、ファイルの方の参考資料1-2を御参照いただければと思います。常温保存可能品ということで、日本乳業協会のホームページにまとまった資料がございますので引用させていただいておりますけれども、こちらに常温保存可能品と表示される牛乳と要冷蔵の牛乳との違いにつきまして説明されてございます。
ここに記載のように、加熱殺菌とか充填の工程に違いがあるということで、まず殺菌温度が高いということで、LL牛乳は130~150℃で1~3秒間滅菌されるということ。それから図がございますけれども、容器が異なるということで、光と空気を遮断できるような構造になっているということでございます。それから無菌的に充填することとございますけれども、先ほどの定義にあるように、殺菌したものを無菌的に充填するということでございます。
また、製品中の細菌数につきましても、冷蔵品より厳しい規定が設定されてございます。それ以外にも生乳の細菌数等々の規定がございまして、常温で保存できるようにされているということでございます。これらも含めまして、製造所ごとに殺菌機とか充填機の構造、機能とか、製造の管理体制も含めて審査をして、大臣認定をしているところでございます。
資料が前後して申し訳ありませんけれども、資料1にお戻りいただきまして、中ほどより下の「消費者庁の改正内容」でございます。先ほど申し上げましたけれども、乳等省令の表示の規定を内閣府令に移行するということでございまして、乳等省令7条の規定はおおむね移行いたしますけれども、内閣総理大臣による常温保存可能品の認定規定については削除する方針であることが示されたところでございます。
こちらを受けまして、3の「当省の改正(案)」のところでございますけれども、大臣認定が削除されることによりまして、常温保存可能品の安全性が確保できないおそれがあるということで、衛生の水準を今と同じに確保するという方法につきましていろいろと事務局で検討してまいりました。この制度が消費者庁に移管された後も、衛生面につきましては、当省と協議をしながら運用してきたという経緯もございますので、これまでの制度を維持する、すなわち、厚生労働大臣が認定する旨の改正を行うこととしたものでございます。
改正の内容につきましては、この資料の裏のページをごらんいただければと思いますけれども、省令の改正の新旧対照表がございます。右側は現行、左側は改正案になってございます。右側の現行第7条の規定でございますけれども、こちらに常温保存可能品の定義がございます。灰色の部分、こちらに、今までは表示の例外規定のところに規定されていた常温保存可能品の定義を、今度は別表の、次のページになりますけれども、牛乳の保存の方法の基準、こちらの例外規定のところに移すこととさせていただきたいということでございます。
説明は以上でございます。
○山本部会長 ありがとうございました。
それでは、これに関しまして御質問等ございましたら、よろしくお願いいたします。
○阿南委員 消費者庁が検討するのは表示だけですので、大臣認定が外されることによって、この安全性が確保できないおそれがあるというところなのですけれども、実際に厚生労働省はどのように安全性のチェックなどを行っているのか、確かにここの部分が誰も責任を持つところがなくなるとちょっと心配だとは思いますので、ちょっと具体的に説明していただけますでしょうか。
○事務局 承認に当たりましては、事前に必要な資料を添えて厚生労働省の方に提出をいただきまして、その事項につきまして審査することとさせていただきます。内容といたしましては、原料乳の規定として、例えば搾乳してから授乳までの時間が48時間以内にできるようにとか、細菌数が、通常の牛乳、冷蔵用の牛乳に比べて低く抑えられているかとか、それから、先ほども少し御説明させていただきましたけれども、殺菌機や充填機、充填室の洗浄とか殺菌、それから製品の無菌状態を保持できるのに十分な構造とか機能を有しているかとか、殺菌機等の取り扱いに関する管理マニュアルを作成してあるかどうかとか、そういったものに関する資料をすべて御提出いただきまして、こちらの方で審査をして、それが審査で問題なければ承認して製造ができるということとさせていただいてございます。
○阿南委員 それは具体的にOKを出す審議会とかそういうところはどこなのですか。
○事務局 基本的には事務局の審査でございます。
○阿南委員 わかりました。
○山本部会長 ほかにございませんでしょうか。
 そうしましたら、この件の取り扱いということになるわけですけれども、当部会で御了承いただくということにして、その後どのようにこれが扱われていくかということをちょっと御説明いただけますか。
○事務局 御了承いただいた後でございますけれども、本来のスキームでございますれば、部会で御審議をいただいた後、その上部の組織でございます食品衛生分科会において御審議をいただくこととなりますけれども、こちらの「報告資料」と右肩にございます「食品衛生分科会における確認事項」という一枚紙をごらんいただければと思います。
こちらに食品衛生分科会規定の第8条はつけてございませんので申し訳ございませんけれども、8条に、分科会における決定事項のうち、比較的軽易なものとして、分科会があらかじめ定める事項に該当するものについては、分科会長の同意を得て、当該部会の議決をもって分科会の議決とする。ただし、当該部会において特に慎重な審議を必要とする事項であるとの決定がなされた場合にはこの限りではない、との規定がございます。この規定につきまして、検討事項ごとの取り扱いにつきまして整理をさせていただいておりますのが裏のページでございます。
 本日御審議いただいた事項につきましては、保存の基準の一部改正ということに当たりますので、3番か4番に該当するかと思います。3、4のいずれにつきましても、分科会の欄をごらんいただければ、△、▲ということで、△は分科会での報告、▲は分科会への文書配付ということでの報告ということになりますので、いずれも、この部会での議決とするということになろうかと思います。
 先ほども御説明差し上げましたように、ただし書きがついてございまして、内容等から見て慎重に審議する必要があるとの当部会の意見がございましたら、分科会での審議となるということでございますけれども、こちらで考えておりますのは、そのただし書きには該当しないのではないかと考えております。御確認いただければと思います。よろしくお願いいたします。
○山本部会長 ありがとうございました。この3つ目の諮問の有無というのはどういう意味になりますか。
○事務局 これは薬事・食品衛生審議会への諮問が必要かどうかということで、本件につきましては諮問させていただいているということでございます。
○山本部会長 いずれにせよ、ここで決めたことで、もう上のほうに報告だけですということですね。食品安全委員会の方に一応投げかけて、返ってくれば、そのまま改正が認められるかどうかということですが、いかがですか。
 内容から見ますと、どうも定義をこちらの別表の方に新たに書き加えたという改正のように見えますけれども、よろしいですか。
(「はい」と声あり)
○山本部会長 ありがとうございました。では、これで、当部会からの決定事項ということで、分科会の方に御報告することにしたいと思います。
 あと事務局から、これに関しまして御説明をお願いいたします。
○事務局 今後の手続でございますけれども、先ほども少し触れましたが、食品安全委員会の確認等をする予定としてございますけれども、本日御了承いただきました内容に変更を生じるものでなければ、本部会で改めて御審議をいただくことなく、今後のパブリックコメント等の手続を進めさせていただければと考えております。
○山本部会長 ありがとうございます。それでは、内容に変更等が生じた場合の対応につきましては、私と事務局とで相談させていただくということでよろしいでしょうか。
(「はい」と声あり)
○山本部会長 ありがとうございます。では、そのように手続を進めさせていただきます。
 続きまして、議題(2)として、「食品中のリステリア・モノサイトゲネスの取扱いについて」、まず、事務局から説明をお願いいたします。
○事務局 食品中のリステリア・モノサイトゲネスの取り扱いにつきまして、御説明させていただきます。資料2-1をごらんいただければと思います。
本件につきましては、我が国のリステリアに係る規定の見直しの必要性の検討に当たりまして、今後、食品安全委員会のリスク評価の依頼など、その方向について御議論をお願いしたいというものでございます。
 1.「経緯」でございますけれども、リステリア・モノサイトゲネス、以下、リステリアと略して説明させていただきますけれども、こちらは環境中に広く分布するようなものでございます。特徴としましては、4℃以下で増殖可能ということがございまして、乳製品とか食肉加工品などの調理済みで低温で長期保存するような食品が食中毒の原因になることが多いということでございます。
 リステリアの特性、詳細につきましては、後ほど五十君先生より御説明いただけるかと思います。今回の検討の背景でございますけれども、平成21年7月にコーデックスにおいて微生物規格、国際基準が採択されたということを受けたものでございます。
また、この動きを受けまして、平成20年度から日EUの規制改革対話、経済協議の場でございますけれども、こちらにおいてEUよりコーデックス基準を導入するように要望されているということもございまして、検討の開始が求められているところでございます。
 2番、リステリアに係る我が国の現在の規制の状況について御説明いたします。非加熱の食肉製品、生ハムとかサラミソーセージの一部などが該当するかと思いますけれども、こちらとソフトタイプ及びセミソフトタイプのナチュラルチーズからリステリアが検出された場合には、食品衛生法の第6条第3号に基づきまして、輸入、販売等が禁止されているという状況でございます。
 また、EU加盟国からの一部の非加熱食肉製品、それからナチュラルチーズ、こちらもソフトタイプ及びセミソフトタイプでございますけれども、こちらにつきましては、食品衛生法第26条第3項に基づく輸入時の検査命令の対象とされてございまして、輸入ごとの検査が義務づけられているという状況でございます。
 その他の食品につきましても、第6条第3号の規定の対象とはなってございますけれども、食品の特性とか食品中の菌数を踏まえて判断してきているところでございます。
それから、規制ではございませんけれども、リステリアは胎児に大きな影響を及ぼすということがございますので、過去にリステリア食中毒の原因となった食品は食べないよう、妊婦さんに対して注意喚起をしているということもございます。
 3から6の事項につきましては、これから豊福先生、五十君先生に御紹介していただくこととしてございます。ここまでの説明は以上でございます。
○山本部会長 どうもありがとうございました。
続きまして、豊福先生から「微生物学的リスクマネジメントとCodex等におけるListeriaリスクマネジメント」について、御説明をお願いいたします。
○豊福参考人 非常に僣越ですけれども、ただいまから、「微生物学的リスクマネジメントとCodex等におけるListeriaリスクマネジメント」というお話をさせていただきます。
 私は厚労省からWHOのフード・セーフティ・デパートメントに5年間出向しておりまして、その当時、この微生物リスクマネジメントのフレームワークをつくったときの担当者であり、FAOとWHOの合同食品微生物リスクアセスメント委員会の事務局をやっておりまして、当時、リステリアのリスク評価の事務局をやっておりました。
それから、コーデックスの食品衛生部会は、日本代表、それからWHO代表として続けて13年間連続出席しておりますので、リステリアに関しましては、19年間議論しましたけれども、その中の13年間は一応議論に参加していたということで、非常に僣越ですけれども、御説明させていただきたいと思います。
(PP)
 これからお話しさせていただくのは、微生物学的ハザードに対するリスク分析の枠組みとリスク管理の役割に関する話、2番目に、微生物規格基準設定の国際動向ということで、現在、我々は世界貿易機関(WTO)、特にSPS協定の中で生きているものですから、それは無視できないということ、3番目にコーデックスの微生物リスクマネジメントの中で、新しい数的指標という概念が出てきまして、より微生物リスク評価の結果を踏まえてリスクマネジメント、特に微生物規格の設定というような話ができるようになってきましたので、その話をさせていただきます。
 JEMRAというのはJoint Expert Meetings on Microbiological Risk Assessmentということで、FAO、WHOの合同の微生物リスク評価をする委員会のことです。汚染物質ですとJECFAというのがありますけれども、その微生物版だと思っていただければ結構です。
 それから最後に、コーデックス等におけるListeria monocytogenesに関するリスクマネジメントということで、コーデックスのほか幾つかの国の微生物規格について御紹介したいと思います。
(PP)
 最初に言葉の整理です。ここら辺はもう教科書的な話ですけれども、ハザードというのは、食品中の生物学的、化学的または物理学的な原因物質、または食品の状態ということで、今、議論する場合は、ハザードはListeria monocytogenesです。それに対してリスクというのは、食品中にハザードが存在する結果として、それに人が暴露されたことにより健康への悪影響が起きる確率とその程度ということになります。
(PP)
 これはWHOがつくったtraining materialから持ってきたものですが、道路を人が渡ろうとしたときに、道路を走っているトレーラーとか自転車はハザード。それに対してリスクというのは、こういうハザードにより、この人が道路を渡ったときにどれぐらいの確率で事故に遭うか。それからそのときにどれくらいseriousなのか。車椅子が必要になるまでなのか、あるいはかすり傷で済むのか、あるいは不幸にして命を落としてしまうのか、どれくらいそのeffectがseriousなのか。この2つを考えるのがリスクでありまして、通常は、How likely? の部分を考える方が多くなっています。
(PP)
 リスクアナリシスというのは、これも教科書にいろいろと載っていますけれども、3つのコンポーネントでできていまして、リスク評価が科学的な根拠の提供です。それをベースにして、行政施策を選択・実行して、更に当初ねらった効果が得られているかどうかをモニタリングしてそれをレビューすることがリスク管理です。この間に機能的な分離、ファンクショナル・セパレーションということが謳われていますが、同時に、この間のインタラクション(相互作用)というのも重要だということになっています。
 リスクコミュニケーションというのは、リスクアナリシス、つまり、評価、管理、すべての段階において関連するすべての人々の間で、リスクに関する意見の2方向性の交換、すなわち一方向性でなくて、情報と意見を2方向性で交換するのがリスクコミュニケーションということになります。
(PP)
 我が国では、リスク管理機関は厚生労働省と農林水産省など。ほかにもあるかもしれません。それからリスク評価をするのは内閣府の食品安全委員会、新たな施策をする場合には食品安全委員会からリスク評価の意見をいただくということになっています。
(PP)
 リスク管理というのは何かというのを、FAO、WHOが97年に示した専門家会合の報告書に書いていますけれども、リスク評価とは違い、リスク管理は、リスク評価の結果及び消費者の健康保護と公正な貿易を進める上で適切なその他の要因も考慮して、幾つかある政策の中から、どれが最も人の健康の保護ができ、かつ実行可能か等いろんなファクターを考えて、政策を比較検討した上で選択し、更にそれを実施することがリスク管理と定義されています。
(PP)
 これは、2000年と2002年にFAO、WHOが行った専門家会合で示されたリスクマネジメントの4つのフレームワークということで、その後、コーデックスがつくりました微生物リスク管理のガイドラインでも、この同じフレームワークが使われていますし、我が国の厚労省と農水省がつくりましたリスク管理の標準作業手順書でも全く同じこの4つの枠組みを使っています。新たな問題が発生しますと、通常、公衆衛生上の問題ですけれども、基準の標準化といったことも新たな問題として考えていいと思います。
 そのときに、最初にPreliminary Risk Management Activities(初期のリスク管理活動)から始まるわけですが、今、まさしくこの委員会はここをやろうとしているのだと思いますが、ここで例えば問題がありますと、リスクプロファイルを書きまして、リスク評価が必要だということになれば、リスク評価を諮問することになります。日本の場合ですと食品安全委員会です。
 リスク評価の結果が出てきますと、次にOption Assesmentということで、リスク管理措置の案を評価し、そのときには、費用対効果ですとか、実行可能性ですとか、そのほかのファクターを考慮した上で対策を決めまして、次に実行します。その後に、その施策の効果をモニタリングし、当初ねらったとおりにリスクが管理されているかどうか評価するということになります。
(PP)
 続いて、今の4つを順番に見ていきますけれども、マネジメントの初期活動としましては、まず問題の特定です。今回ですと、RTE食品中のListeria monocytogenesというのが問題になっています。コーデックスでは、次にはリスクプロファイルを準備するということになります。更に、ハザードの優先順位を分類した上で、リスク評価を進める上で、リスク評価方針を検討・作成する。更にリスク評価、日本では食品健康影響評価と言われていますけれども、これを依頼しまして、その結果が出てきましたら、その結果を考察する。これがPreliminary Risk Management Activitiesという初期活動になります。
(PP)
ですから、今はまさしくこの辺、?B、?C、?D辺りをこれから行おうとしていると私は見ておりますが、そのときに、最初に問題が特定しますと、次はリスクプロファイルというのを作成します。その時点で把握されている情報、基礎データを整理したものをリスクプロファイルと呼んでおります。
 食品安全上の問題、例えば、今回ですと、病原菌はListeria monocytogenesで、問題となるのはそのまま食べられるような調理済み食品、RTE食品、それに関する公衆衛生上の問題、例えばどういう人がハイリスクなのかとか、あるいはどのようなところで病原菌はフードチェーンの中で入り込むのかというようなことを整理します。
 リスクプロファイルは、リスク管理者として何をすべきかということの判断の基礎になります、その中にはリスク評価をするかしないかということも含まれます。それからリスク管理者によります対策案ですとか、リスク評価ができるかとか、あるいは必要か、あるいはリスク評価者に対してどのようなことを質問するか検討するための基礎資料にもなりますし、情報源の特定ですとか、予想されるデータ不足を指摘することもあります。
(PP)
 初期活動では、食品衛生上の問題を探知しまして、リスクプロファイルを作成した段階で、管理上の判断ということで、例えば既存の規則で対応可能という選択肢もあるでしょうし、何もしなくても大丈夫だろうということもあれば、緊急的に暫定的な対応をとらなければいけないということもありますし、行政的な判断にはもっと情報が必要だということで、リスク評価を行うこともあります。ですから、リスクプロファイルに基づいて、リスク管理者はここで判断するということになります。
(PP)
 これは日本というよりもコーデックスの方で言われている一般的な話ですけれども、ではどういうときに微生物リスク評価(MRA)が必要かというと、例えば現在のリスクを推定したいとか、あるいはフードチェーンの中でどこで対策をとれば最も有効になるかということで、いろんな対策を仮に実施したときにどれぐらいリスクが相対的に変化するか比較するとか、あるいは新たに微生物規格を設定したい場合とか、あるいは海外の基準と同等性の評価が必要な場合とか、また、実際結果としてはわかることですが、データ不足している分野を明らかにし、今後の研究の方向性を検討したいというときにも行うことができます。
(PP)
 このように、リスク評価の必要性を検討しまして、目的・範囲、どういう目的で、どういうリスク評価をするか、そのリスク評価自体が適切かどうか、それから可能かということを判断しまして、もしYesということであれば、リスク評価ポリシーというものを決めます。
(PP)
リスク評価ポリシーというのは、これもリスク管理者が決めるものですけれども、例えばデータの採用のときに、ヒトのデータと動物のデータがあれば、ヒトのデータを採用するとか、あるいは、科学雑誌に出版されているようなデータがなければ、どこまでの範囲のデータ(例えばピアレビューされた科学雑誌以外の科学雑誌のデータも使っていいとか、あるいは非公開のデータまでも使っていいとか)、を採択するかの判断基準等をあらかじめ評価をやるときに方針として決めておくことによって、公正で透明性の保たれたリスク評価が行われるということになります。それからまた、データの選択などでバイアスが生じないことも確保できるということで、リスク管理者が責任を持って作成しますが、当然、リスク管理者とリスク評価者の間で意見の交換が必要になります。
(PP)
 次に、リスク評価を実施すると決めれば、これはコーデックスの例ですけれども、評価チームを招集しますけれども、我が国の場合は食品安全委員会に諮問することになります。その次に、チームに対してどのような質問に答えてほしいか、明確な質問を提示することが必要になってきます。例えば比較してほしい対策案(例えば基準値の例、HACCPを義務づける、製造基準の設定、検査を義務づける、生産段階でワクチンの接種等、)いろいろなオプションがありますが、どのオプションを比較してほしいかということは明確にしなければいけません。それから必要に応じてデータを集めます。あるいは追加データを提出します。それから、やっている最中には、リスク評価とリスク管理は機能的な分離が求められますけれども、リスク評価の進捗状況を把握して、特に全く当初想定された結果と違うようなことが出そうであるとか、あるいは非常に大きなデータギャップがあって不確実性が大きくなりそうだということがわかってくれば、そのときそのときに中間的にある程度リスク管理者とリスク評価者の間で議論をすべきだということになっています。
 また、リスク評価の結果をどうやって示すか、どの段階まで結果が明らかになった時点でリスク評価を終わったことにするかということをあらかじめ決めておかないとなかなかリスク評価は終わりません。
(PP)
リスク評価結果が出てきますと、今度はリスク管理の措置を決めることになります。これはリスク管理者の仕事になります。そのときには、リスク評価から得られた情報が非常に役立ちます。後からお話ししますが、ALOPという公衆衛生上の目標を満たすために、どういう対策をフードチェーンの中どのポイントでとったらいいかということを考えながら決めていきます。しかしながら、リスク管理というのは、科学的な部分だけでなくて、技術面、あるいは財政的な面からの実行可能性ですとか、リスクとベネフィットの比較であるとか、あるリスクを下げることによって他のリスクが顕在化してくるという可能性も否定できませんので、そういったことも検討しながらリスク管理のオプションを評価して決めていくということになります。
(PP)
 ここでリスク管理の2番目まで来まして、3番目がリスク管理措置の実施となります。これは例えば法的な措置、政省令、あるいは規格基準とか、あるいはガイドラインをつくるとか、そういう検討をする、また、新たな対策をする場合には予算措置が必要になる可能性もある、あるいは、他のリスク管理機関との連携の可能性があるかもしれません。
 続いてリスク管理措置を実施します。実施した後で、第4のステップとしてMonitoring & Reviewですけれども、これはモニタリングをして、実施効果を検証しまして、有効性を検討します。結果をまとめて公表し、新しい情報ですとか、あるいは新たに可能になった技術、例えば何らかのハザード(つまりリステリア)を効果的に死滅させることができる新たな技術ができたという場合にはリスク管理の見直しを行うことになります。
以上がリスク管理の部分でございます。
(PP)
 それに対してリスク評価というのは、問題を整理しまして、健康被害の状況を推定し、リスク管理を科学的に支援するということが重要な部分になってきまして、こちらの方は4つのコンポーネントに分かれています。健康被害に焦点を当てた確率的な推定をする。ただし、常に確率論的なアプローチをとるという意味ではありません。微生物の場合には特に、こういうリスクマネジメントオプションをとったときに、あるいはとらなかった場合に、将来、リスクがどの程度増減するか。あるいは、オプションA、B、Cとあったときに、それぞれの相対リスク、Aをベースにしたら、Bのときには100分の1、CのときはBより100分の1下がるというように、相対的なリスクを評価することが微生物リスク評価の場合には多うございます。
(PP)
 化学物質のリスク評価と微生物リスク評価の一番大きな違いは、発がん性物質を除きまして、化学物質の場合には閾値がありますけれども、微生物の場合は閾値がないということで、閾値に基づいて健康被害が起こらない許容濃度を求めるということが化学物質の場合はありますけれども、微生物の場合は、今申し上げましたように、対策案の効果を予測して比較しまして、どのマネジメントのオプションが最も効果的かというような質問に答えるために微生物リスク評価は用いられています。
 基本的に病原体には閾値がない、つまり、一つの病原体であっても、確率は非常に低いですけれども、病気を起こすことはできると考えられています。
(PP)
 これがリスク管理機関である厚労省と食安委の関係を簡単に書いたものですが、今ここで問題を認知した後にリスク評価の案件を決定しまして、食安委の方にリスク評価を諮問するという流れになろうかと思います。
(PP)
 以上が1番の部分の説明、簡単にしましたけれども、続きまして、微生物規格基準設定の国際的な動向ということで簡単に御説明したいと思います。現在、日本はWTOの加盟国ですから、このSPS協定に基づきまして、リスク評価に基づきリスク管理をしなければいけないことになります。では、リスク評価はどのように実施したらいいかというと、これも国際機関が決めた手順、原則に従うということになっておりまして、食品安全につきましては、国際機関というのがコーデックス委員会と規定されております。
 それから、だんだんリスク管理、リスク評価が進歩しまして、微生物規格と公衆衛生上の指標を結びつけるような数的指標、我々はメトリックスと呼んでおりますけれども、その数的指標というのが示されてきました。
(PP)
 コーデックス規格自体はリスク評価に基づいて設定されておりますので、コーデックスの規格をそのまま適用する場合には、このSPS協定に示されたリスクベースであるとみなされるようになっています。
(PP)
今言いましたように、新たな規格基準や衛生管理措置を設定する場合には、関係国際機関により開発された手法に基づいてリスク評価を行うこと、また新しい措置はSPS委員会での質疑対象になりますので、WTO通報が必要になってまいります。
(PP)
先ほど言いましたように、国際機関によって開発された手法というのは、食品安全の場合はコーデックスということです。家畜衛生ですとOIEがガイドラインをつくっているということになります。
(PP)
ここから新しい、最近考えられてきたメトリックスというものについて、まず言葉の御説明をさせていただきます。最初に出てくるのがALOP(Appropriate Level of Protection)ということで、その国が適正と認める健康ですとか家畜衛生のレベルということで、通常、単位人口例えば10万人当たり年間発症率、患者10万人当たり0.3人というような単位であらわされます。
(PP)
ところが、リスク管理の目標を10万人当たり患者0.3人にしようと言っても、それを食品中の規制値、あるいは事業者がどのレベルまで微生物制御をしたらいいかというのが結びつかないですし、例えばHACCPで微生物を制御したいといったときにも、10万人当たり0.3人に抑えるためには、どの程度厳しく実施したら良いのかよくわからないということで、その公衆衛生上の目標と食品中の微生物汚染頻度または濃度との橋渡しをするために考えられたのがFood Safety Objectiveという概念でありまして、公衆衛生上の概念を微生物学的に測定、あるいは制御できるような単位に変換するために考えられました。
患者というのは、食べたときに暴露されて発症しますから、橋渡しをするために、FSOは喫食時、すなわり食べたときの菌数、あるいは汚染率を考慮したものでございます。
(PP)
 これがICMSFといいまして、国際食品微生物規格諮問委員会、コーデックスにも登録されておりますNGOのサイトに公表されている日本人の源さんという方が書かれました新しい数的指標を示したイラストでございます。今言った橋渡しというのは、下の方がPer million people per yearということで、年間100万人当たり、食品由来疾患(foodborne illnesses)にかかる人の割合、これがALOPですと。それに対して、これでは工場がどの程度まで管理したらいいかわからないので、工場での微生物制御のターゲットという意味で橋渡しをつくったのだということです。
(PP)
 最初にALOPがあり、更にFSOですが、FSOは先ほど申し上げましたように、喫食時のターゲットということで、それよりも川上の、例えば工場、生産者、あるいは輸送中等でのターゲットはどうしたらいいかといいますと、Performance objective、POと呼びます。工場での出荷時のPO、あるいは一次生産者の段階でのPOと、FSOを満たすために生産段階のいろんな段階でPOを設定することになっています。
これを、例えばこの患者レベルを維持するためにはFSOをこれぐらいにしなければいけないだろうというリスク評価から計算することが出てきまして、更に予測微生物学などを使うことによって、FSOを維持するためには各段階のPOはどうしなければいけないか推定することができるようになってきています。
(PP)
もう既にFSOの話をしましたが、これは摂食時点での食品中の危害汚染物質の汚染頻度と濃度であって、ALOPを満たす最大値と定義されておりまして、例えばRTE食品中のListeria monocytogenesがグラム当たり100を超えないこと、というようなことがFSOとなっています。
(PP)
それに対しFSOというのは、何度も言いますように、これは摂食時ですので、なかなか管理が難しいということで、このFSO及びALOPを満たすように、フードチェーンのそれぞれの段階で許容される最大の汚染値また濃度というのをPOと規定しております。
(PP)
これは一つのイメージとしてごらんいただきたいのですけれども、例えば低温薫製したコールドスモークしたサーモン、PO-1が原料段階、工場でスモークサーモンをつくったときの最終包装後の製品がPO-2、小売店での販売がPO-3、喫食時のFSO。そのときのLevel of Protectionということで、1回喫食時のリステリア発症の確率を考えてみたときに、例えば原料がLogで-0.21、それから製造段階で若干汚染があって菌数が増え、更に流通の間で、販売するまでの間で若干増殖し、更に家庭の冷蔵庫で増殖して、喫食時にLogで3ですから、およそグラム当たり1,000個ぐらいということになるとします。その場合のリスクというのは恐らく、1回摂食当たり、およそ1,000万回に1回ぐらいの発症確率だろうと推定されます。例えばもうちょっと最初の菌数が低くなれば、当然FSOが100個ぐらいになりまして、そうすると、1回当たりの発症確率は1億回に1回ぐらいと推定されます。
この中でリスク管理者はどのレベルをALOPすなわち、appropriateか判断して、例えば喫食1回あたりの発症確率として10-8くらいが妥当だろうということになりますと、このラインで設定しなければいけない、そうすると、販売時はこのレベルをPOにしなければいけないだろうというように考えて、このPOを維持できるように微生物規格を設定していこうということをやっていくことになります。
(PP)
 微生物規格というのは、これは今、コーデックスの定義そのままですけれども、現在見直しをしておりまして、我が国もフィンランドとともに共同議長国です。将来的に変わる可能性はありますけれども、今の微生物規格の定義というのは、一定量の食品中の微生物の検出または検出数、あるいは毒素または代謝産物の検出量をもとに、食品あるいはあるロットの合否ですね、ここに書いておりますように、acceptableかどうか判断するために使うのが微生物規格基準ということになっています。
(PP)
これを決めるときには、必ず対象とする微生物は何かということ、それからサンプリングプラン、例えば何検体とって、1検体当たり何グラムなのか、それから試験法は何なのか、それから実際どこでこの微生物規格を使うのかといったことも決めていきます。
(PP)
MC、Microbiological Criterionというのは、そのロットがPOを満たしているかどうかを判断するための規格と言いかえられますが、通常、MCに示される基準というのはPOと同じではなくて、POよりもMCの方が厳しくなることになります。
(PP)
以上が微生物規格基準の設定の国際的な動向でございまして、次にFAO、WHOのリスク評価の結果です。JEMRAのListeria monocytogenes リスク評価MRAのKey Findings、すなわち非常に重要な知見ということを示しています。まず1つは、ほとんどすべてのリステリア症のケースは微生物基準、例えばゼロトレランスだろうが100cfu/gであろうが、それよりもはるかに高いレベルのListeria monocytogenesの摂食によって起きているということです。従って、高いレベルの汚染を防止するリスク管理がリステリア症のリスクを下げる上で最も効果的な手段であるということになります。
次に、実はListeria monocytogenesは食品中で増殖できる食品とできない食品に分けられますが、増殖が起きない食品では、製造または市販時の汚染を減らせばリスクは当然下がってきます。それから、増殖が起き得る食品においては、温度管理、それから保管期間を限定するといった管理措置ができればListeria monocytogenesが食品中で増加して、起きるリステリア症の発生を下げることができますから、温度管理と保存期間の限定、これがリスク管理のオプションとしては効果的であろうということがわかってきました。
(PP)
さらに、コーデックスの食品衛生部会からJEMRAに対して質問が挙げられまして、そのうちの一つが、食品中のL.monocytogenesの菌数が、例えば25グラム中に不検出というレベルから、1グラム、あるいは1ミリリットル当たり1,000 colony forming units、のレベル、あるいは更にもっと高いようなレベルまで含めて設定したときにリスクはどのように変わりますかということでございました。
(PP)
そのときの答えがこの表です。これはどう見るかといいますと、これはアメリカのpopulationを対象にしていますが、例えば基準値をグラム当たり100cfuにしたときに、すべてのRTE食品がこの規格を満たしていると仮定した場合に推定される患者数は年間5.7人、それに対して、25グラム中で不検出という基準の場合ですと年間推定患者は0.5人となります。つまり、この段階でListeria monocytogenes のレベルは1,000倍違うのですが、患者数は10倍ぐらいしか変わらないということが1つと、もう一つわかってきたことは、当時、アメリカはゼロトレランス、つまり、グラム当たり0.04というのが規格ですが、それでも患者は2,500人ぐらいおりました。
(PP)
ということは何かというと、もしみんなが規格を守っていれば患者は0.5人になりますが、実際には2,500人いるということは、守ってない製造者、あるいは製品の割合が0.018%ある。つまり、これは規格を0.04/g、つまり、25グラム中不検出にしようが、100/gにしようが、それよりも一番大事なことは、規格を守らせること、すべての製造者に対し適切に遵守させること方が重要であって、微生物規格が25グラム中不検出だろうが100cfu/gだろうがあまり差は認められないということがわかってきました。
(PP)
実際、コーデックスはこの微生物リスク評価を受けてどういう微生物規格をつくったかというと、まず1つ、微生物規格が必要ない食品というのを決めました。これは製造工程、加工工程で、Listeria monocytogenesを確実に死滅させ、かつ再汚染が起こり得ないようなRTE、例えば包装した後に加熱したような食肉製品の場合は再汚染ありませんし、そこでしっかり加熱していれば、しかもGood Hygienic Practice、日本で言いますと都道府県知事が定めます管理運営基準ですか、そういったものをしっかり実施しているような場合には微生物規格は必要ないだろうとコーデックスは規定しております。
続きまして、規格が必要な適切な食品ということで、食品中でListeria monocytogenesが増殖しないRTE(RTEはListeria monocytogenesの殺菌処理を行うことなくそのまま食べられるような食品とコーデックスでは定義しており、生食の食品も含まれます)というのは、例えばpHが4.4未満、あるいは水分活性が0.92未満の食品であり、この場合はサンプル数5で、許容できる基準値は、これを超えてはいけないというのは0ですけれども、つまり、基準は100cfu/gですから、5検体とって100cfu/gを超えるのは1個もあってはいけないけれども、100cfu/gまでは存在しても良いということになっています。検査法はISOの11290-2という方法で実施します。
それからListeria monocytogenesが増殖する食品というのは、賞味期限内に0.5log/gの増殖が起きる食品と定義しておりますが、これは検査法のばらつきを考えて、これ以上増えた場合には増殖するとみなすということですが、この場合にはn(検体数)が5で、cが0、基準は0.04cfu/g、つまり、25グラム中に不検出ということになっています。
実はこの議論の最後の最後に第3のアプローチというのが提案されて、妥協ということになっていったのですが、リステリアをコントロールするための適正な衛生規範を実施して、かつ限定されたレベルの増殖しか起きないようなRTE食品の場合であって、かつ、規制当局が、上記の1)、2)と同等のレベルの消費者保護を提供できると考える妥当性が確認された規格を、1)と2)にかかわらず、1)と2)の同じ程度の消費者保護を提供できるということがvalidatedされた規格であれば設定してもいいですよということを規定しています。
これが2007年に規定されましたコーデックスの「食品中のListeria monocytogenesの管理における食品衛生の一般原則の適用に関するガイドライン」というドキュメントの中のAnnex ?Uに規定されている微生物規格でございます。
(PP)
ほかの国をちょっと見ておきますと、基本的にECにおきましてはすべての食品事業者がHACCPによる衛生管理を義務づけられておりまして、まず、乳幼児及び特殊医療目的のRTE食品につきましては、nが10で、25グラム中不検出ということになっています。
それから増殖が起きる食品につきましては、まず、最初につくった製造者が直接の管理を離れるときにはn=5で、c=0で、25グラム中不検出。しかしながら、増殖が起きるRTE食品であっても、保存可能期間内に100cfuを超えないことを事業者が示すことができれば、販売期間の中でも100cfuまでは認めるとなっております。
それから増殖が起きない食品については、販売期間中、n=5で、c=0で100 cfu/gということになっています。
(PP)
アメリカでは、FDAが所管するRTE食品については、25グラム中陰性で、検出された場合には法違反ということになっております。ただ、アメリカは2008年に増殖可能な食品はゼロトレランスと、それから増殖が起きないRTE食品では100cfu/gと別の規格を適用するということをPolicy Guede案の中では発表していますが、少なくとも現時点ではこれがアクセプトされて動いているという情報は持っておりませんので、今でもゼロトレランスを維持していると考えられます。アメリカの場合は食肉製品等は農務省がリスク管理者ですけれども、こちらの方では87年からRTE食品はゼロトレランス政策を維持しております。
(PP)
続いて、オーストラリアの規格もありまして、これもほとんど、現状、ゼロトレランスに近い形でやっていますが、まるごとレトルトされた魚を除く、即席用に加工された魚については100まで認めるという形になっております。
以上が、私が最初に御説明すると言いましたリスクマネジメントとリスクアセスメントの関係、それから現在のMCを設定するための科学的な進展に関するお話、それからコーデックスのリスク評価の一部分と現在のコーデックス、あるいはその他の国の微生物規格ということでございました。
どうもありがとうございました。
○山本部会長 豊福先生、どうもありがとうございました。
今日初めて、FSOとかALOPの概念をお聞きになった方にとってはちょっと複雑で、これを全部考えながら審議していくのかということになりますとなかなか適用しにくいところもあるかと思いますけれども、今の御説明に関しまして、御質問、特にございましたらお願いいたします。
○木村委員 今、御説明いただいたところで、テーブル6ですかね、「予想されるリステリア症患者」のテーブルがあったと思いますけれども、豊福先生の御説明で、確かにアメリカはゼロトレランスをとっていて、ヨーロッパなどは100cfuの基準をとっているけれども、実際に100万人当たりにアメリカの方が例えば多いという現状があって、その御説明として、それはそういった基準の問題ではなくて、その基準そのものを守っているかどうかというところがわかってきたというお話があったと思うのですが、一方で、このテーブル6を見てみますと、実際にゼロトレランス、cfuで0.4のところから100まで上げていくと、この推測値として0.5から5.7まで上がってくると。わずか10倍にしか上がらないという御表現でしたけれども、10倍というのは非常に大きな値だと思いますので、ここら辺りの説明をもう少しいただければと思います。
○豊福参考人 これが、今、御質問いただきましたリステリア症の患者ですけれども、今、木村先生がお話しされたとおり、これが0.04cfu/gというのは、実際、25グラム中不検出ということで、このときに、アメリカのpopulationで、1回の喫食が大体31.6グラムと仮定したときに、推定される患者は年間0.5人、それに対しまして、例えば100cfu/gという規格を決め、更に、すべての食品がこれを超えないと仮定したときに発生すると考えられる年間患者は5.7人です。
 私が10倍と言ったのは、微生物規格の間の差が2500倍に対し、患者数の場合は10倍です、つまり、基準値を2500倍変えたけれども、患者数は10倍だったという趣旨で10倍と申し上げたわけで、リスク評価としては、各レベルを設定したときに、どのように患者の発生のリスクが変わりますかという質問ですから、これが答えになってくるわけです。ではどのレベルがAppropriate Level of Protectionになるかというのは、これは今お話ししましたように、リスク管理の判断になってきます。例えば、やはりこのレベルが必要だということになるか、あるいはここまで許容できるかという判断はリスクマネジメント上の判断になってくる。
それで、もう一つのスライドでございますが、実際、アメリカで当時、年間2,500人ぐらい患者が発生しております。その一番近いのは2,133というこの数字ですけれども、これから割り出しまして、実際に規格に合わないようなディフェクティブ・サービング、すなわち一回提供する食品の中に規格に合わないようなものは0.018%くらいあるのだろうということを推測したわけです。
つまり、実際にゼロトレランスなのだけれども、年間2,500人患者がいる原因というのは、それを守っていない食品がこれぐらいの割合で存在しているだろうということをベースに判断しております。それで、コーデックスのリスクアセスメントとしては、どちらの規格、0.04/gすなわち25グラム中不検出にしようが、100cfu/gにしようが、それよりも一番大きく患者発生数に効いてくるファクターとしては、この規格を守らない食品が存在することのほうが大きな要因ではないかということをリスク評価の中では指摘しているということですが、これでお答えになっているでしょうか。
○木村委員 大体内容は理解しましたけれども、100cfuとゼロトレランスでいった場合に、すべての、今のリスクの問題が、その基準を守る守らないだけで説明がつかないということにはなりますね。
○豊福参考人 確かにおっしゃるとおりで、これがではすべてかというと、それは確証ないと思いますが、一つの考え方として、2,500人出るのはなぜかというときに、もしすべてがディフェクティブ・サービングが原因だとすればこれぐらいの比率で出てくるだろうという説明になると思います。
○木村委員 ありがとうございました。
○山本部会長 ほかにございますか。
○小西委員 非常にわかりやすい御説明、どうもありがとうございました。1つ教えていただきたいのですが、ALOPを決めるときに、先ほどの「予想されるリステリア症患者」の表のところで、最後のEstimated number of listeriosis cases per yearというのがALOPに当たるわけでございますね。その決め方ですけれども、リステリアの症状というのは、普通の食中毒とは違って、消化器系の症状ではなくて、風邪様、または妊婦の場合には流産というような症状ですが、その症状別、または年齢別でのALOPの決め方というのは、こういう微生物の場合にはしないのでしょうか。
○豊福参考人 まず、現在、ALOPの決め方ということ、ガイダンスドキュメントは、コーデックスも含めて世界中には存在しません。それがまず1点です。
 それからリステリアの場合のリスク評価のときには、リステリア症というのは、いわゆる侵襲性の例えば髄膜炎ですとか敗血症ですとか、かなり劇的な症状を示すようなリステリア症をターゲットにしています。というのは、リステリア症にはいわゆる胃腸炎タイプもあるのですけれども、それはあまりにも実態がわからな過ぎるということで、主に報告されているのは重篤な侵襲性という、つまり、腸管の膜を通り抜けて敗血症になるような、一般的に無菌と考えられているような深部臓器まで菌が入ってくるような、それで重篤な症状を示すようなリステリア症をターゲットにリスク評価をしています。
 それからもう一つの御質問で、ALOPをいわゆる健常者集団と、それから感受性集団に分けることがあるかといいますと、技術的には可能だと思いますけれども、見たことはないです。現在、ALOPに近いものを示しているのは、例えばアメリカの場合ですと、FDAが「ヘルシー・ピープル2010」というのを示して、その中で、例えばリステリアの患者は何人にしようとか、までに抑えようとかとなっていますけれども、その中で、例えば健常者何人、あるいは高齢者何人、あるいは臓器移植者何人という、感受性集団を分けてALOPを決めるようなことはしておりません。
○山本部会長 ほかにありますか。
○野田委員 RTE食品についてお聞きしたいのですけれども、その定義については資料の22ページの下のスライドに書いてあるとおりだと思いますけれども、非常に範囲が広いのではないかと思われるのですね。それをRTE食品という形で一くくりしたときに、どこまでそれが適用範囲に具体的になるのかというところに関して、特に議論、問題になったこととか、実際それがどういう食品、どれくらいの品目が対象になるのかというところをお聞きしたいのですが。
○豊福参考人 全部のレポートを見直したわけではないですが、私が記憶している限りでは、RTEの幅について余り議論した記憶がございません。実際に例えばこのRTEに対してリステリアの微生物モニタリングをしているECなんかのデータを見ますと、基本的には食肉加工品、それからスモーク魚などの魚介類加工品、それから野菜及びその加工品、それから乳・乳製品が主でございまして、そのほかに、サンドイッチもRTEですよね。サンドイッチですとか、あるいはケーキですね。例えばチーズを使ったようなケーキ類だとか、そういったものを対象にしてモニタリングしているデータは認められます。
ですから、これですと、日本の場合、今、申し上げた食品以外のものまでRTEの概念には入ってくると思いますが、ただ、明らかに、例えばpHが4.4未満ですとか、水分活性が0.92よりも低いような食品については、ほとんど微生物モニタリングをしているデータは見たことがございません。ですから、今までアウトブレークが起きている食品ですとか、過去にリステリア菌が高頻度に分離されているような食品をターゲットに各国は検査していると考えております。
○野田委員 本来的には食品ごとにその規格基準を設定するのが本論であって、RTEということで一くくりにして同じ規格を設定すること自体、若干、普通のほかの場合と比較すると無理というか、違いがあると思われるのですけれども、そこに関してはどのような議論があったでしょうか。
○豊福参考人 初期のころには確かに、先ほど申し上げました肉とか乳ですとか野菜とか、そういうカテゴリー別な話を15年ぐらい前にはしたような記憶はありますが、実際、リスク評価が出てきて、微生物規格を最終的につくり上げようといったのは本当に最後の3年ぐらいですけれども、その間では食品のカテゴリー、原材料のカテゴリー別に分けようという議論はまずなく、増殖するかしないか、RTEの中でリステリアが増殖できるかどうか、これは微生物の性状にかかわってきますけれども、こちらの部分の議論しかしたような記憶はないです。
○山本部会長 よろしいですか。
 RTEの定義となるとなかなか、ここに書いてある以外に難しいなという気はしますけれども。
 まだ質問があるかと思いますけれども、時間の関係もありますので、豊福先生、どうもありがとうございました。
 引き続き御説明を五十君先生の方からいただきたいと思います。「リステリア症の発生状況と国内の食品における汚染状況」についてということで、この内容を見ていただきながら、RTEのことも少し考えることができるのかなと思っております。
○五十君参考人 準備をしている間に、今、野田委員の方から御質問のありました件について、少し説明させていただきます。
リステリアの場合、環境中に非常に広く分布しておりまして、そういったところが非常に重要でありまして、食品の原材料から入ってきて、それが食品内で増殖することによって感染を起こすという従来の一般的な食中毒の事例に対しまして、リステリアの場合は広く分布して、環境中に多くいるということから、製造工程でクロスコンタミネーション等を起こすことが多いと考えられています。原材料から持ちこした菌が増えまして感染を起こすという考え方よりも、環境中ないしは流通、あるいは製造工程のクロスコンタミネーションによって菌が入ってきてリステリア症を起こしてしまう可能性があるということで、食べる時点で再加熱して菌を殺さない食品については、ほぼリステリアに感染してしまう可能性があるという考え方です。コーデックスではRTEという、すべてに網をかけることでコントロールしようということになっていると思います。
(PP)
 それでは、私に与えられましたテーマは、「リステリア症の発生状況と国内の食品における汚染状況」ということで、最初に簡単にリステリアの性質につきまして説明しまして、実際にはリステリア症がどういったものであるかということ、そして国内の食品の汚染実態につきまして説明させていただきたいと思います。
(PP)
 リステリア・モノサイトゲネスは、分類学的に言いますと、リステリア属菌で、本属は6菌種に今なっております。途中で分類の再編成等々ありまして複雑にはなっておりますが、現在、リステリア属は6菌種ということで、赤でお示ししましたリステリア・モノサイトゲネス、これが主な病原菌という扱いになります。
 実際には、そのほかの菌種でも動物、あるいはヒトへの感染があるというレポートはございますが稀であり、リステリア・モノサイトゲネスがヒトの食品を介したリステリア症の原因となると考えております。したがいまして、コーデックスの規格で出てまいりますのはリステリア・モノサイトゲネスという菌種が該当します。一般的にリステリアと言うとこの菌を指すことになります。
 本菌はグラム陽性の小さな桿菌でございまして、運動性を持ちます。芽胞は形成いたしませんので、通常の加熱条件で十分に死滅することができます。本菌は非常に広く自然界に分布しておりまして、どこが中心的な汚染源になっているという考察がなかなか難しいということが特徴であります。
 それから、食品衛生上の最も特徴的な性質と思われますが、低温の増殖性があるということでございます。したがいまして、例えば4℃という低温条件でも、日数が長くなりますと菌が増殖してくるという性質がございます。それから高い食塩濃度でも死滅することなく生存します。ある程度のところまで発育できますし、高い塩濃度でも菌は生存して残るということになります。
(PP)
 本菌を原因とするリステリア症、あるいはリステリア感染症、いろんな言葉で言われていますが、どんな病気かということを説明いたします。例えば集団事例のように食品を介して大量に菌が入りますと、初期症状と呼ばれております、38~39℃程度の発熱、頭痛といったインフルエンザ様症状と呼ばれるような非特異的な症状をあらわすことがあります。これは高い菌数で入った場合、感染後24時間から48時間ぐらいに出てくると言われているものでございます。いわゆる急性の胃腸炎症状というのはむしろほとんどまれにしか起こらないということになっております。
 実際に国内でリステリア症と呼ばれている場合は後者でございまして、本菌が体内に感染を起こして入ってしまって、重症化、全身性、あるいは神経系まで感染した場合、これがリステリア症と一般的に言われているものでございます。初期症状のみを示しましたものについてはなかなかリステリア症であるという特定はできないというのが実情でございます。
 重症化した場合、リステリア症では髄膜炎、敗血症といった症状を示しまして、重篤化した場合は致死率が約20%程度であると言われております。
 それから妊婦の感染というのは少し他と違っておりまして、妊婦自体は比較的軽いインフルエンザ症状等を示す程度でおさまるのですが、胎児は非常に強く影響を受けまして、早産や死産の原因となると考えられております。実際には、新生児の髄膜炎、敗血症といった形であらわれてくるかと思います。
 ポイントといたしましては、腹痛、下痢などの急性の胃腸炎症状は通常ほとんど確認できないということが特徴です。
(PP)
 国内では集団事例というのは、後で説明いたします1例を除きましては確認できておりませんが、海外では、いろいろな食品を原因といたしまして集団事例が報告されております。製品ごとに事例の多いもの、特に患者数が10名を超える文献的に確認できるものを一覧にしたものがこちらになります。
 まず、乳及び乳製品による集団事例でございます。東ドイツの事例は、戦後間もなく闇市で販売されていた未殺菌乳によるものということで、実際の患者数等は確定した値ではございませんが、こういったものがあるということで、殺菌されてない牛乳にはリステリアがいるということがポイントになるかと思います。それ以降につきましては、主に乳製品ではこのような集団事例が報告されております。
(PP)
 発酵乳製品というカテゴリーでは、ナチュラルチーズになるかと思います。ナチュラルチーズにつきましては、低温で長期熟成等々がございますので、リステリアはこの中でどうしても爆発的に増えてしまう可能性があるということで、これまでに多数、集団事例が報告されております。
 見ていただければわかるように、患者数が多い場合、リステリアの血清型の4bというもので集団事例が起こりますと、大体その患者の2割程度の方は亡くなられることになります。あるいは、ここにお示しした、これは日本の例ですが、ほかの血清型では実際には死者がいないということも確認できると思います。
(PP)
 次いで集団事例の多いものは、食肉加工品による集団事例でございます。こちらもやはりある程度、4bという血清型の事例が多いということになりまして、発症した場合は同様な割合で死者が観察されています。
 食肉加工品につきましては、生肉は非常に高い率でリステリア汚染しておりますので、加熱不十分等々で菌が残ってしまって、低温管理の間に菌が増えてしまうといったことで、その生肉からくるリステリアと、それから製造工程の加工の段階からのバイオフィルムによります再汚染という2つの点が指摘されておりまして、こういった形で、直接、あるいは間接のリステリア汚染を受けることによって食肉加工品による集団事例が起こると考えられております。
(PP)
 次は野菜類による集団事例ですが、サラダ等々の集団事例も報告されております。野菜というのは農場から供給される食品になるわけでございまして、例えば1981年のカナダで報告されたキャベツサラダ、実際はコールスローサラダが原因のものですが、この場合はキャベツを生産しておりました農場で、実はリステリア症でヒツジが死亡していたことがわかっております。そのふん便を肥料といたしましてキャベツを育てていて、コールスローキャベツの場合は製造工程上に低温で熟成させる期間がありますので、その間に恐らく菌が増えたと考えられております。
 リステリアは、農場を中心に広く分布しておりますので、野菜を介した感染があることも認識しておかなくてはいけないということになるかと思います。
(PP)
その他の食品につきましては、こういった魚介類、それからアメリカでは生卵が原因というのもございます。それからエビが原因というものが報告されております。
(PP)
一方、国内でリステリア症がどのぐらい起こっているか。リステリアというのは全症例報告の感染症ではございませんので、なかなか統計が表に出てこないという実情があります。いろいろ調査しましたが、実数がつかまってこないということで、我々は平成13年から15年にかけまして、アクティブサーベイランスという手法でリステリア症の国内の発生状況を推定しました。
やり方といたしましては、病院にアンケート調査を行いまして、過去にリステリア症の経験があるか、あるいはリステリアの菌を分離したことがあるかという形で、検査をする担当の部局と、それから診断を行う側の部局両方に質問を出しました。いずれかから、リステリアの菌を分離した、あるいはリステリア症を実際に経験したといった情報を収集いたしまして、経験のあるところには再度アンケートを行いまして実態を掌握していったということになります。
 対象となる病院数は2,258であります。ベッド数が100以上の中から大規模病院が対象ということになります。調査時点での全国のベッド数はここにお示ししております。またアンケート調査対象になった病院の割合は大体41.6%を網羅したということになるかと思います。
 回答を得たのが773病院からでございまして、アンケートの回収率は34%で、このうちリステリアを検出、分離、あるいは診断経験があるという病院の数は194でございまして、そのデータを詳細に検討しまして、実際の国内の発生状況を推定したわけでございます。
(PP)
 1996年から2003年3月までの確認できました患者は95、そして年間平均に直しますと毎年13ということになります。この値から、対象となったベッド数から逆算いたしまして、国内全体の年間の患者数を83としております。この値は、人口100万人当たりの患者数といたしましては0.65という値になります。
年度が違いますと比較できませんので、大体同じ年度のときのデータをそこにお示ししてありますけれども、アメリカFoodNetのデータでは100万人当たり5、フランスが1997年のデータですが、4.1、イギリスが1.6~2.5、オランダが0.7という報告がございます。
 最近の新しいデータ、今、資料から更新してございまして、EU27か国の発生頻度は97年から2008年のトータルで1~3という値が報告されております。したがいまして、我々の推定いたしました日本の0.65という値は、ヨーロッパの平均的な国のやや低い辺りの発症率であるということになるかと思います。
(PP)
 実際のデータがありますので、分析した結果でございます。リステリア症患者の年齢別の分布ということになります。1歳未満が多くて、60歳以上の高齢者に多い。そして、働き盛りの年齢では少ないということでございます。国内で確認されました症例につきましての死亡者はすべて60歳以上の高齢者でございまして、計算上の致死率は21%。これも海外で報告されている値とほぼ同じ状況でございます。
(PP)
 国内の集団事例に関するまとめを御報告させていただきます。2001年に我が国で唯一と思われる、ナチュラルチーズを原因としましたリステリアの集団事例というのが北海道で確認されております。これにつきまして説明させていただきたいと思います。どのような形でこの集団事例が認知されたかということからまずお話しいたします。
ご存じのように、リステリアはなかなかリステリア症であるということが特定できないわけでございます。この事例では、たまたま北海道庁が行っておりました定期検査、北海道の場合はナチュラルチーズをおみやげとして振興しておりました関係で、ナチュラルチーズはリステリア症が海外で多いということでモニターをしておりましたところ、123検体を調べたうちの1検体から本菌を検出しました。すぐに対応して、その生産者に、どういったルートで販売されたかという、食品の方から調査に入っていったわけでございます。
 当該施設の追跡調査で喫食者86人を特定いたしまして聞き取りを行いましたところ、44%の38名の方が症状を示していたということです。食品並びに患者さんのふん便から、リステリアの検出を行いまして、疫学マーカーや分離株の病原性評価等の確認により、本事例が本食品を介したリステリアの集団事例であるということが学問的に確認されたわけでございます。
(PP)
 実際の当該施設に保存してありましたチーズの汚染状況をお示ししますと、血清型1/2bというリステリアが、ここでお示ししますように、グラム当たり107という非常に高い菌数で検出されております。それから、Washedタイプというチーズはかなり高い菌数でございまして、白かびタイプ、カマンベールにつきましても、75%の製品から104程度の菌が分離されております。それからSemi-hardタイプのチーズからも、2検体ではございますが、そこにお示しいたしましたように、1,000を超える菌数のリステリアが分離されたという状況でございます。
(PP)
 実際の症状でございます。こちらで便宜的に振り分けさせていただきまして、上部が急性の胃腸炎症状と思われる患者さんの訴え、そして下は風邪様症状、インフルエンザ様症状と言ったらいいような症状を示したわけでございます。両症状を併発していた患者さんは約53%、風邪様症状のみという方が約半数の47%ということで、実際には急性胃腸炎症状のみを訴えた方はいらっしゃらなかったということになります。
 この事例の場合は、WHOの分類で言いますと、non-invasiveタイプのリステリア症ということになると思います。幸い、この事例では重篤化する患者さんは見られなかったということになります。
(PP)
「本集団事例のまとめ」です。国内初の食品を介したリステリア集団感染事例であると思われます。血清型は1/2bのリステリアの濃厚汚染を受けましたナチュラルチーズの摂取による非侵襲型(non-invasive type)のリステリア症を発症した。リステリア症といいますか、リステリア感染症を発症したということになるかと思います。チーズ製造環境を広く汚染していた菌の混入による。実際、製造業者の周辺を調べますと、農場を抱えている製造業者でございましたが、至るところからこの血清型のリステリアが分離されてきておりました。
参考でございますが、リステリアの海外の集団事例をすべてチェックしましたところ、血清型1/2bによる主な集団事例は4例記録がございまして、いずれも、そこでお示しするように、死亡者が出ない、比較的軽度なリステリア感染症を発症するような事例であるということが確認されたわけでございます。
(PP)
 こちらから後のスライドにつきましては、国内のリステリアの市販食品の汚染実態の結果をお示しいたします。幾つかのスライドは平成13年から15年度の厚生労働科学研究のデータでありますので、今から約7年前のデータということになるかと思いますが、文献値等々を集積して、まとめた形でお示ししてございます。
 ナチュラルチーズにつきましては、国産、輸入で調べておりまして、国産では一つも検出されておりません。輸入につきましては、2.4%の検体からリステリアが検出されました。それからready-to-eatのカテゴリーと思われるものについて幾つかの分類分けをして、お示ししてあります。生鮮魚介類といたしましては、平均汚染率は1.5%、加工した魚介類では4%、総菜で1%、肉の加工品で4.8%、野菜で0.3%、そしてスモークサーモン、当時いろいろ汚染が問題になっておりましたので単独でやっております。5.4%程度が汚染されているということになります。
 したがいまして、全体的に低いパーセンテージではありますが、ほぼどのRTEにも汚染が認められるということになるかと思います。
(PP)
 こちらは規格基準とは直接はかかわらないのですが、生の食肉に関しての汚染実態ですが、非常に報告が多かったものですから、集計した結果になります。牛肉、豚肉、鶏肉、特に動物種によってというわけではございませんで、枝肉から加工が進むに従って陽性率がいずれの肉でも上がっていくということになっております。よく言われておりますように、加工工程のラインに形成されておりますバイオフィルム、ここにリステリアがよく巣くっておりまして、そこからのコンタミネーションによる汚染があらわれていると思います。
(PP)
 先ほどの調査は大分古くなっておりますので、2009年度に現状の国内の食品の汚染実態調査、RTEと思われるもの1,500検体につきまして改めて調査をした結果をお示しいたします。分類的には、まず野菜類としましては、日本の特徴的な食品と言えると思いますぬか漬け、一夜漬け、キムチ等々について調べた結果で、一夜漬けから3.3%、1検体検出ということになります。
 チーズは、新しいデータといたしまして、国内のチーズはほとんど最終段階で加熱が入っていることが多いものですから、主に輸入品を中心に調査しております。白かび、これはソフトタイプになりますが、105検体中1検体検出されました。それからハード、セミハードタイプ、こちらにつきましては検出されておりません。ですから、輸入品についても、以前よりは状況はよくなっていることになると思います。
食肉製品でございますが、ここにお示しいたしますように、ローストビーフで3.3%、生ハム、国産のスライス品で調べましたが、2.2%ということになります。
(PP)
続きまして魚介類ですが、スモークサーモンで約2%程度、それからシャケ、生食用の製品ですが、マグロ赤身で3.3。これは1検体出ますと、このぐらいのパーセンテージになってしまうということになります。
それから、少し汚染率の高いものといたしまして、ネギトロ、マグロのすきみ、これが6.7%、いくらにつきましては10%、それから辛子明太子が6.7%、以下はほとんど検出されていないという状況です。
それから豆類では納豆の検査をしております。牛乳につきましては、海外で低温殺菌乳で事例が1つありましたものですから、低温殺菌乳をチェックしましたが、いずれも検出されておりません。
トータルのRTE全体のパーセンテージは、平均しますと大体1.4%の汚染率ということになります。
(PP)
定量的に検討した結果でございまして、見ていただくとわかりますが、実際には、一番向こうのレーンを見ていただくと、今、コーデックスの規格基準の評価に使う方法がcfu、直接塗抹法ということになります。こちらで調べますと、チーズの1検体だけ、実際には陽性ということになりますが、4.9×102という値で、これは現在のコーデックスで言っておりますグラム100個をちょっと超える程度の汚染でして、それ以外は増菌によらないと検出できない非常に低いレベルの汚染であるということになります。
(PP)
お手元の資料にはないのですが、海外の汚染、菌数を出したデータというのは非常に少ないものですから、東京都健康安全研究センターの仲真先生にお願いいたしましてスライドを借りてきたものでございます。調査国、アメリカが多くて、あとデンマークが1例ありますが、見ていただくとわかるように、RTE、日本のデータがこの辺り、これは東京都の調査のデータになりますが、国内は非常に低いオーダーで、たまにこのような値が出てきているということでございます。アメリカのデータでは、かなり高い菌数の食品が見られているようでございます。デンマークのスモークサーモンに関しましても、日本よりもやや高いレベルの汚染が観察される状況ということがわかります。
(PP)
それからリステリアの特色といたしまして、低温増殖性がございます。これは培地に入れて温度管理を、4℃、10℃、20℃で行った場合の増殖曲線になります。ちょっと高い菌数の103から始めて定量的にカウントいたしております。
一番左側が20℃ですが、これは大体1日程度で1log以上を突破して増えてまいります。次のグラフは10℃で管理した場合です。10℃で管理した場合、この株では大体数日で1log上がるということになります。4℃で管理した場合は、1週間程度で10倍ぐらい菌数が上がってくるという状況でございます。
(PP)
それぞれの食品にスパイクして菌の挙動を見た結果で、基本的には培地でのデータとそれほど大きく変わりません。ただ、食品種によっては、例えばいくら醤油漬けですと、この10℃の状態がかなりこちら側にシフトしてきて、4℃ですとそれほど増えないというような結果が出ております。
浅漬けの方は、むしろ菌が減っていくという結果が出ておりまして、これはほかの菌、フローラとの関係でリステリアが抑え込まれていっているという結果が出ております。
(PP)
以上、私のまとめました「リステリア制御の難しさ」です。非常に食品を広く汚染しておりますので、我々は常にある程度、リステリアという菌、生きた菌に暴露されているという状況にあると思います。
このうち重症化する事例は、我々の調査で言いますと大体100万人に1人いるかいないかというような状況でございまして、広く食品を汚染しているわりには極端に低く発症しているということは言えるのではないかと思います。
ヒトにおける発症につきましては宿主側の要因にかなり左右されておりますようでして、例えば1歳未満の赤ちゃんと60歳以上の高齢者、こちらで感染が多くなっているという状況でございます。
集団事例につきましては、高い菌数摂取によってリステリア症が起こるわけですが、この場合は、急性症状としてnon-invasiveなインフルエンザ様症状を示す。このときには、必ずしも急性の胃腸炎を示すとは限らないという状況かと思います。
よくわかっていないのは、重症化したリステリア症はどういった場合に移行するか。潜伏期間は非常に長いと言われておりまして、一番長いのは3か月後に発症するということが言われております。したがいまして、現在、リステリア症がどういった原因で菌の混入を受けたかというのはなかなか特定できない状況であります。一般的には、ほとんどのリステリア症は食品を介してヒトに感染しているだろうと考えられているわけですが、この辺がよくわからないと思います。
それから免疫弱者、高齢者、それから、例えばガン患者等々の免疫的に弱い方というのはやはり低い菌数でも感染すると言われております。それから、実際にはマウス等の動物モデルでやりますと、あらかじめ低い菌数のリステリアにさらされておりますと、ほとんど発症しなくなります。したがって、生菌による免疫効果というのも実際には働いている可能性があるとも考えられております。
それから低温増殖性でありますことから、消費者に渡った後に、冷蔵庫の中に長期間食品が置かれているというときに、やはりリステリアの混入を受けますと、増殖してリステリア症に結びついていく可能性があることも考えられると思います。
最後になりましたけれども、病原性や疫学に関する基礎研究の絶対的な不足がございます。実際には、臨床的に得られますリステリアの血清型4bというのが日本の場合は6割程度でございますが、実際の食品の汚染実態を見ますと、4bによる汚染というのはそれほど高くない状況であります。恐らくある程度病原性の強いグループがあるということもあると思いますが、なかなかその特定に至っていないので、現在はリステリアという菌はすべて感染性のあるものと漠然ととらえられているような現状でございます。
以上、リステリア症につきましてと、それから国内の市販食品の汚染実態及び本菌の概略につきまして述べさせていただきました。
○山本部会長 どうもありがとうございました。
それでは、今の御説明に関しまして御質問等ございましたらお願いいたします。
○阿南委員 このリステリア症というものについて、消費者も余り関心も高くないし自覚もなくて、政府の対応ですとか注意喚起もまだ十分でないという状況の中で、たとえ自分が実際にはこのリステリア症にかかっていたとしても、大したことないとか、原因がわからないまま表に出てこないという可能性は十分考えられますね。
○五十君参考人 恐らく、先ほどの集団事例で観察されました様に、かなり高い菌数をとってしまって、重篤なところまでいかない間のnon-invasiveタイプと分類しているようなタイプはほとんど、リステリアに感染したからという認識はないと思います。ところが、重篤化しましたリステリア症につきましては、髄膜炎、あるいは敗血症という非常に重篤な感染症になりますので、恐らく入院が必要となってくると思います。この時点で、大型の病院ですと検査室の方で菌が確認されればいいのですけれども、全症例報告ではないということから、必ずしも菌の特定はされないで、抗生物質治療が入ってしまいますと、菌の分離は困難で、なかなかリステリアであるという認知がないと思います。
 それで、我々、研究班のときに、病院側から問い合わせがまいりました。入院した時点で抗生物質治療が入っておりまして、菌がなかなか分離されないという状況で、それがリステリア症かどうか、恐らく髄膜炎等の症状からリステリアの感染であろうというような症例を幾つか調査したことがございます。遺伝子レベルで見たり、抗原のチェック等々をしますと、恐らくリステリアの感染ではないかという症例も幾つか観察されているというのが現状でございます。
○阿南委員 そうしますと、こういう食中毒があるという自覚がないと、例えば家庭用の冷蔵庫は10℃ですが、この菌は4℃でも増えていくわけですね。そうしますと、ふだん、家庭で例えば生野菜をサラダで食べることは多いですが、増えている可能性があるのですね。これはやはり何らかの形で注意喚起する必要があると思うのですが、そうすると、冷蔵庫の中で4℃以下で管理してくださいと警告を出さなければいけないということでしょうか。
○五十君参考人 それにつきましては、先ほどお示ししましたように、リステリアの場合は妊婦さんの感染というのが非常に起こりやすいので、今、厚生労働省からは、ホームページ、あるいは母子手帳を通じましてリステリアの注意喚起というのを行っておりまして、特に妊娠期間中は、リステリアというのはこういった注意が必要ですよということの注意喚起を現在やっている状況でございます。それ以外の、家庭の冷蔵庫内の管理というのはなかなか注意喚起までは至ってないというのが現状かと思います。
○山本部会長 どうもありがとうございました。ほかにございますか。
特にないようでしたら、それでは、事務局から本件の対応方針について説明をお願いいたします。
○事務局 そうしましたら、資料2-1に戻っていただきまして、3ページ目の7番、「対応方針(案)」でございます。今、御意見等をいただいていますように、これから規制、リスクコミュニケーション等の対応が必要になるかと思いますけれども、現行の規制の見直しの検討に当たりましては、まず、ここに記載の2つの点につきましての整理が必要と考えているところでございます。
(1)対象食品でございますけれども、コーデックスにつきましては、御紹介のありましたように、RTE食品を微生物規格の対象としているということでございますけれども、我が国におけるリステリア症の発生の推定とか、国内に流通する食品の汚染状況等は高くはないという現状、それから現時点において食品衛生法の第6条第3号を適用している非加熱食肉製品、そういう汚染実態等を踏まえて、現時点で規制対象となっている非加熱食肉製品とナチュラルチーズについて、食品衛生法第11条第1項に基づく規格基準として成分規格を設定するということがまず考えられるのではないかと考えております。
 それから2つ目でございますけれども、規格基準の設定の内容でございます。EUからのコーデックス基準の整合という要望がございますけれども、先ほども御説明ありましたが、我が国がWTOの加盟国として、原則としてFSP協定に基づいて、コーデックス基準の採用が求められているということを踏まえまして、コーデックスにおけるリステリアに係る微生物規格の代替措置、第三のアプローチと御紹介がありましたけれども、こちらの適用について成分規格として設定することを検討してはどうかということでございます。
 この点につきましては、2ページ目のコーデックス等の基準の表を御確認いただければと思います。増殖が起きる食品、起きない食品の基準に加えまして、代替措置、第三のアプローチというのがコーデックスにおきまして認められております。それから増殖が起きない食品については100cfu/gまでの菌数が許容されていること。それからEUの方でございますけれども、EUの表の※6のところに書いていますが、こちらがコーデックスの代替措置を適用しているとご理解いただければと思います。
増殖が起きる食品であっても、100cfu/gを超えないことを事業者が示すことができれば、こちらの基準を適用できるということ。それから増殖が起きる食品、増殖が起きない食品というのを、コーデックス、EUも書いていますけれども、増殖が起きる起きないというのをすぐに判断するのは難しいということで、このまま規制を導入した場合、監視に当たって混乱があることも想定されていることを考慮する必要があると考えているところでございます。
 それからまた3ページ目に戻っていただきまして、「また」以降でございますけれども、コーデックスの衛生規範に保存基準として6℃以下で保存することが規定されてございます。できれば2~4℃ということでございますけれども、現在の規制におきましては、非加熱食肉製品については保存基準10℃、ナチュラルチーズについては設定されてございませんので、コーデックスに合わせまして6℃以下で保存する旨を規定するということについても検討してはどうかと考えております。
 これらを踏まえまして、リステリア規制の見直しの検討に当たりましては、食品健康影響評価を食品安全委員会に依頼するということ、それで、評価結果を受けた後に具体的な管理措置について薬事・食品衛生審議会の本部会におきまして検討を行うこととすることにしてはどうかと考えているところでございます。
 4ページ目にまいりまして、なお書きのところでございますけれども、食品安全委員会のリスク評価に当たりましてのオプションといたしましては、先ほどの2つの点を踏まえますと、まず、1つ目といたしまして、現行の規制対象である非加熱食肉製品とナチュラルチーズにつきまして、ソフト及びセミソフトタイプでございますけれども、こちらにコーデックス基準の代替措置に基づいて、食品に100cfu/g以下とするリステリアの成分規格、それから6℃以下とする保存基準を設定する場合、それから2つ目といたしまして、RTE食品全体につきまして、コーデックス基準、成分規格と保存基準を導入する場合、これらについてのリスクの相違を含めた評価を依頼することとしてはどうかと思います。
 なお、RTE食品につきましては、先ほどお話もございましたけれども、コーデックスで定義されておりますように、食品の範囲が広いということもございますので、先ほど御報告いただいた汚染実態等も踏まえて、対象食品を例示して評価していただくことになるのかなと考えているところでございます。
 説明は以上でございます。
○山本部会長 ありがとうございました。
それでは、ただいまの御説明に対しまして、御質問、御意見ございますでしょうか。
○木村委員 今、御説明あった対象食品ですが、これは現行でゼロトレランスの対象としている日本では非加熱食肉製品とナチュラルチーズに、これから内閣府の方で検討いただくということですが、基本的には厚生労働省としては絞っていく方向でという御説明があったわけですが、コーデックス自体は、先ほど来質疑があったように、RTE食品全般をくくっているわけです。
一方で、国内で、このゼロトレランスの規制がかかったときから、先ほど五十君先生から説明があったように、たくさんのRTE食品の汚染実態がわかってきておりまして、特に魚介加工品、そういったものは、先ほどのデータを見ても、汚染率が高いと。こういった状況で、新しい仕組みのところで、この2つの食品について絞っていくという説明をもう少し補足していただくとよろしいかなと思いますが、いかがでしょうか。
○事務局 こちらにつきましては、ここで2つの食品に絞るという方向でという意味ではございませんで、2つの現行の措置に国際的な整合性の要素を加えると、まず1つ目のオプションがあるのではないかと。それと、比較の対象としてRTE食品の全体についてコーデックス基準の考え方を導入して、RTE食品に基準を導入するという場合、2つ目のオプションを含めて評価していただいて、その評価結果を踏まえて、この部会でその規制対象食品についても改めて御議論いただくということでございます。
○木村委員 ありがとうございました。
○山本部会長 よろしいですか。
○阿南委員 つまり、2つには絞らないということですね。
○山本部会長 食品安全委員会の聞き方の問題になるかと思いますが、その辺がちょっと、このままだとあいまいなのかなと。リスクの評価を含めた、リスクの相違を含めた評価、何との相違というのがちょっと抜けているような感じですけれども、その辺についてはどうですか。
○事務局 この2つの食品で規制した場合に発症率がどの程度あるか、それから全体の食品に対象を広げた場合にどの程度の発症率になるかということを評価していただくということになろうかと思います。
○山本部会長 規制のかけ方、対象食品によって違いが出てくる可能性があるということを考えておられるということですね。現行、五十君先生が調べられた中では、100万人当たり0.65、これがあるわけなので、現状はそこベース。それから、そういう発症、絞ってやったときの数をそのような形で追求していただくということになるのでしょうか。本当にそこの数がデータとして出てくるかというのがちょっと難しいかもしれませんが、そうなると、絞った場合とそうでない場合の相対比較みたいなことをやっていただく可能性が出てくるので、それで我々が、返ってきたときにどう判断するかということになると思います。
 ほかにございませんか。
 今後これを諮問して、どれぐらいの期間で返ってくるかという問題もあるかと思いますけれども、返ってきた結果によって、病原体の数を規定して保存基準をつくるという初めての規格になるのではないかと思うのです。病原体ではないけれども、病原菌を含む菌として腸炎ビブリオという規制をかけてあるのですけれども、あれは病原性があるかないか関係なくやっていますので、そうなると、ある種の指標菌的な扱いをしていますけれども、今回の場合も本当は、でも、病原性がある菌がどの程度含まれているかはわからないので、それと似た形にはなるとは思います。ただ、菌を指定してつくるということになればかなり、第2番目か、ということにもなるかなあということなので、きちっとした議論をしていかなければいけないかと考えております。
 ほかにございませんか。
特に御質問ないようでしたら、本件については、先ほど申し上げたように、健康影響評価を依頼すると。その結果を踏まえて更にリスク管理の内容について今後御審議いただくということになりますけれども、それでよろしいでしょうか。
(「はい」と声あり)
○山本部会長 どうもありがとうございました。
それでは、議題の3の「その他」ということですけれども、ほかに事務局から何かございますか。
○事務局 それでは、次回の本部会の開催日程につきましてでございますが、4月25日、月曜日午後を予定しております。後日、詳細につきまして御連絡を差し上げることとしたいと思います。また、その際、委員の日程につきまして確認させていただきたいと思います。よろしくお願いいたします。
○山本部会長 どうもありがとうございました。少し時間が過ぎてしまいましたけれども、本日の部会はこれで終了したいと思います。


(了)
<照会先>

医薬食品局食品安全部基準審査課乳肉水産基準係
(03-5253-1111 内線2489)

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