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2011年1月19日 社会保障審議会児童部会児童虐待防止のための親権の在り方に関する専門委員会第8回議事録

雇用均等・児童家庭局

○日時

平成23年1月19日(水) 10:00~12:00


○場所

厚生労働省 専用第21会議室


○出席者

委員

才村委員長 大村委員 佐藤委員 松風委員 豊岡委員
松原委員 吉田委員
(欠席:磯谷委員 長委員 庄司委員 中島委員 水野委員)

参考人

山田参考人(磯谷委員の代理出席)

オブザーバー

古谷参事官 (最高裁判所) 進藤局付 (最高裁判所)
飛澤参事官 (法務省) 羽柴局付 (法務省)

厚生労働省

高井雇用均等・児童家庭局長 石井大臣官房審議官 田河総務課長
高橋家庭福祉課長 杉上虐待防止対策室長 千正室長補佐

○議題

(1) 報告書案について
(2) その他

○配布資料

資料1児童虐待防止のための親権の在り方に関する専門委員会報告書案
資料2児童虐待防止のための親権に係る制度の見直しに関する要綱案(法制審議会児童虐待防止関連親権制度部会決定)

○議事

○才村委員長
 定刻となりましたので、ただ今から「第8回児童虐待防止のための親権の在り方に関する専門委員会」を始めさせていただきます。委員の皆さま方には、御多用のところをお集まりいただきまして、誠にありがとうございます。本日は磯谷委員、長委員、中島委員、水野委員の4名が御欠席と伺っております。佐藤委員と松風委員は少し遅れるとのことです。
 また、庄司委員におかれましては、一昨日、17日の正午に御逝去されました。この委員会におきましても本当に貴重な御意見を頂戴しました。誠に痛恨の極みでございます。心から哀悼の意を表したいと思います。
 それでは議事に入ります前に、本日御欠席の磯谷委員の代理といたしまして、第一東京弁護士会所属の山田攝子弁護士に参考人としておいでいただいております。御参加いただくかどうかについて委員の皆さま方にお諮りしたいと思います。異議はございませんでしょうか。

(「異議なし」の声あり)

○才村委員長
 それでは山田参考人、よろしくお願いします。

○山田参考人
 よろしくお願いいたします。

○才村委員長
 それでは、事務局から資料の確認をお願いしたいと思います。

○千正室長補佐
 資料の確認をさせていただきます。最初に議事次第、座席表がございます。それから、資料1として「児童虐待防止のための親権の在り方に関する専門委員会報告書案」、資料2として法制審議会児童虐待防止関連親権制度部会で取りまとめられた「児童虐待防止のための親権に係る制度の見直しに関する要綱案」でございます。資料は以上でございます。

○才村委員長
 それでは、本日の議事に入らせていただきたいと思います。前回の12月7日の委員会におきまして、報告書の骨子案につきまして御議論をいただいたところでございます。本日は、前回の議論等を踏まえまして最終的な報告書の案という形で事務局で整理していただいております。これにつきまして、事務局から説明いただいた上で、報告書の取りまとめに向けて具体的な記載の仕方について、御議論を頂戴したいと思います。できれば、本日を最後の委員会としたいと考えておりますので、御協力をお願いしたいと思います。
 報告書の議論に先立ちまして、法制審議会児童虐待防止関連親権制度部会におきまして昨年12月15日に要綱案が取りまとめられたところでございます。まず法務省から、要綱案について御説明いただきたいと思います。

○飛澤参事官(法務省)
 ただ今、委員長から御紹介がありましたとおり、昨年12月15日に開かれました法制審議会児童虐待防止関連親権制度部会の第10回会議におきまして、「児童虐待防止のための親権に係る制度の見直しに関する要綱案」が取りまとめられましたので、その主な内容について御説明いたします。
 お手元に配布されております資料2を御覧ください。要綱案の「第1 親権の効力」の1ですが、子の利益の観点の明確化として民法の身上監護の規定に「子の利益のために」という文言を加えることとしております。
 次に、要綱案第1の「2 懲戒」ですが、現行の民法第822条は親権を行う者は必要な範囲内でその子を懲戒することができるものとされており、文言上「必要な範囲内」というところに何ら限定が設けられていないところ、本来は懲戒として許されない児童虐待について懲戒権を口実とする者がいることに鑑み、子の利益のために必要な範囲内であることを示すことにより、懲戒の範囲について文言上、明確に限定することにしております。また、民法第822条のうち「懲戒場」に関する部分については、現在このような施設が存在しないこともあり、削除することとしております。この民法第822条の規定につきましては、全部を削除するべきであるという意見も強く主張されていたところであり、法制審議会の部会におきましても懲戒権を児童虐待の口実とさせないために民法第822条を全部削除するという方法を選択肢としてあり得ないものとして排斥するような意見はございませんでした。ただ他方で、懲戒権の規定の取扱いは将来、親権制度全般を見直す際にきちんと整理して検討する方が望ましいことや、民法第822条を全部削除することによって、本来できるしつけができなくなるという誤った受け止め方がされないかなどといった現在の規定を削除することによる社会的影響についての懸念もあり得ること、それから、懲戒についてはさまざまな考え方があり得ることなどに鑑みると、現段階では先ほど申し上げたような懲戒の範囲について文言上の限定を付すという案も一定の前進が見られ、かつ、現実的ではないかということで前述のような取りまとめとなったところでございます。
 次に、要綱案「第2 親権の喪失等」の説明に移ります。ここでは親権喪失制度の見直しについてまとめられております。ポイントをかいつまんで御説明いたしますと、第1に現在の親権喪失制度に加えて、予め2年以内の一定の期間に限って親権を行使できないこととする親権停止制度を新設することとしております。これが要綱案第2の2に記載されていることです。それから第2に親権喪失の要件が見直されております。現在、親権が喪失されるのは父または母が親権を濫用したとき、または著しく不行跡であるといったように、親の態様に着目した要件となっておりますが、要綱案では「親権の行使が著しく困難又は不適当であることにより子の利益を著しく害するとき」といったように、子の利益に着目した要件に変更することとしております。これが要綱案第2の1です。なお、要綱案第2の2の1と要綱案第3を御覧いただければわかるとおり、親権停止・管理権喪失についても子の利益に着目した要件とすることとしております。
 それから、要綱案第2の1から3を通じての話となりますけれども、従前は子の親族および検察官のみであった親権喪失および管理権喪失の請求権者に今般、子どもと未成年後見人および未成年後見監督人を追加することとし、今回新たに設けられる親権停止の請求権者もこれらと同じ並びとすることとしております。
 なお、先日、千正室長補佐から御紹介があったように、現在は児童福祉法により児童相談所長に親権喪失の請求権が与えられておりますが、今回の民法改正に併せて児童福祉法を改正し、児童相談所長に親権停止および管理権喪失の請求権が付与されることが想定されております。また、今回子どもを請求権者に加えたものの、これは子どもに積極的に申立てをさせるといった趣旨ではなく、他の請求権者が申立てできないような事情があった場合に、速やかに子どもの利益を確保することができるようにするためのものですので、このような改正がなされた後も、できるだけ他の請求権者において申立てするようにして子どもに負担感を与えないよう運用上の配慮が必要であるとの意見も出されたところでございます。
 要綱案「第3 未成年後見」の説明に移ります。現在、未成年後見人は自然人のみしかなれず、しかも1人しかなれないとされております。しかし、適切な未成年後見人を見つけにくいという指摘を受けて、そのような状態を少しでも緩和するために複数の未成年後見人の選任を認めるとともに、法人の未成年後見人を選任できることとしております。第3の1は、未成年後見人は1人であるという民法第842条を削除するというものです。そして、第3の2の1で未成年後見人を追加的に選任できることとしております。さらに、未成年後見人が複数いる場合の権限行使の在り方については第3の3に記載したように整理しております。すなわち未成年後見人が複数人いる場合は、原則として共同してその権限を行使することとしております。それから、未成年後見人が数人いる場合に、家庭裁判所がその一部の者について財産に関する権限のみを行使すべきことを定めることができることとしております。さらに、財産に関する権限については、家庭裁判所が権限の単独行使、あるいは分掌を認めることができることとしております。要綱案第3の2の2では家庭裁判所が未成年後見人を選任する場合の考慮要素が書かれていますが、そこの括弧書きの中で法人を未成年後見人として選任する場合の考慮要素が書かれております。
 要綱案第4の1は、今回の見直しに伴う派生論点を取り扱ったものです。また、第4の2では「関連する規定について、所要の整備を行う」とありますが、今回の改正に伴い家事審判や戸籍法等の改正も必要となるため、そのことを念頭に置いております。
 要綱案の概要は以上でございます。今後は、この要綱案を2月の法制審議会総会に諮り、そこで了解を得られた場合には法制審議会から法務大臣に要綱が答申されることになります。そして答申されました場合には、法務省においてそれを踏まえ次期通常国会に所要の法案を提出することを予定しております。説明は以上でございます。

○才村委員長
 どうもありがとうございました。ただ今の説明に対しまして、御質問がありましたら伺いたいと思います。いかがでしょうか。
 ないようですので事務局から、この専門委員会の報告書案につきまして、前回の報告書骨子案から変更になった箇所を中心に説明をいただきたいと思います。よろしくお願いします。

○杉上虐待防止対策室長
 それでは私から、この専門委員会で報告書としてまとめていただくものについて事務局の案をまとめましたので、御説明いたします。まず、全体的な話ですけれども、委員長が言われました前回と異なるところとしては「はじめに」と「おわりに」を追加させていただいております。内容については、後ほど説明させていただきます。また、事務局で字句の修正、例えば「親」「親権者」の使い方がまちまちである部分がございましたので、字句の使い方なども整理しております。それから前回、12月7日の委員会で各委員から活発な御意見をいただきましたので、その御意見の反映もさせていただいております。
 まず、資料1の1ページ「はじめに」の部分でございます。児童虐待防止対策の経緯について、1段落目で記載させていただいています。2段落目は、今回の改正を検討するに当たっての経緯ということで、前回の児童虐待防止法の附則に基づいて検討がなされたということでございます。さらに3段落目では、この委員会での議論のもとになりました「児童虐待防止のための親権制度研究会」の報告書、あるいは法制審議会での動き等について書かせていただいているところでございます。最後の段落は当委員会での議論の経緯という形で、これも前回御説明申し上げましたが、それぞれの論点について五つの柱で報告書をまとめております。問題の所在等、検討すべき論点、専門委員会における議論、検討の方向性、それから当面考えられる対応策という形で整理させていただいたということを「はじめに」で書かせていただいております。
 具体的な論点の1番は「施設入所等の措置がとられている場合の施設長等の権限と親権の関係について」でございます。ここで少し御説明申し上げなければいけない部分がございます。これまでは保護者に対する手続保障を仕組みの中に取り入れた上で施設長等の権限が保護者の親権に優先するといった方向で御議論いただいてきたところでございます。先ほど法務省の方から報告がございましたが、我々も児童福祉法の改正を検討しております。今月に招集される通常国会において、議論中ではございますけれども、この審議会での途中の方向性を基に、並行して政府内において法案策定に向けた検討を進めてきたところでございます。この検討の過程において、児童の監護・教育および懲戒に関する施設長等の権限は、既に現行法で規定されており、施設長等にはその措置をとる権限がある。親権者の意に反して可能とも考えられるわけですけれども、それはさまざまな事情の中で個別に判断されるべき事項であって、法律の規定として一律に優先的にというような措置というのは、規定するのは難しいのではないかという結論に至ったところでございます。このため、事務局から御提案申し上げますのは、施設入所等の児童の監護を適切に行うことができるよう、法制的に現時点で可能な範囲で施設長等の権限と親権の関係を整理できるように考えた上で今回、報告書のつくりについて修正させていただいているところでございます。
 具体的に申し上げますと、5ページの(4)「検討の方向性」でございますが、施設入所等の措置がとられている児童の福祉の観点から、親権者が不当な主張をする場合に、施設長等が適切に措置をとることができることを明確にする枠組みが望ましいということをまず記載しております。施設長等が、児童の監護、教育及び懲戒に関し必要な措置をとるに際して、親権者の関与を完全に排除する枠組みを創設するということで、ここの部分はこれまで御議論いただいたところであると考えております。このような考え方がある一方で、この委員会でも親権者の意向についての配慮ということが幾度も御意見として出てきているわけですが、そういった配慮が求められることから、親権者の意向にかかわらず、一律に施設長等が児童の個々の処遇について措置をとることができることとすることについては、慎重な検討を要すると考えられると書かせていただいております。その上で、現行においてできる整理ということで、施設長等が児童の監護、教育及び懲戒に関して必要な措置をとることについて親権者が不当な主張をすることが許されないことを明確化してはどうかということ。また、生命や身体の安全を確保するために、緊急を要する場合については、親権者の意向にかかわらず、施設長等が確実に必要な措置をとるべきことを明確化することが必要ではないかと書かせていただいております。また、施設長等と親権者との対立を調整する場や、施設長等の判断の適正性を確保することが必要であると書かせていただいております。また、先ほど法務省から親権喪失の「子の利益に着目した見直し」や一時的な制限という御報告をいただきました。親権者の親権の行使が困難又は不適当であるときに、児童の福祉が害されるような場合には、民法上の親権制限の審判を適切に活用すべきという形にさせていただいております。
 続きまして、(5)の「考えられる対応策」は、今申し上げました(4)の「検討の方向性」に即した文章にさせていただいているというのが5ページの下の二つの段落でございます。
 それから6ページでございますが、先ほど法務省から児童相談所長の権限として親権喪失の申立てについて児童福祉法上で権限行使ができることになっているわけでございますが、これに加えて今般、子の利益の観点からの見直しがなされ、さらに親権停止の審判もできるようになるわけでございますので、こういったことについても法律上対応すべきと考えているわけでございまして、ここについてあらためて記載させていただいているところでございます。また、この委員会あるいは法務省の法制審議会におきましても、子どもの福祉のために最後の砦である児童相談所長が積極的にこのような制度を活用することについて御意見をいただいているところですので、併せてそれも書かせていただいているところです。
 「なお書き」以下につきまして、上三つの丸につきましては前回に出た意見により字句の修正をした上で残しております。下の三つの丸につきましては、前回の御議論を踏まえて、このように書かせていただいております。
 上から四つ目の丸でございますけれども、施設長等と親権者が対立する場合には児童相談所がその調整に当たる必要があるということ。あるいは児童相談所長が判断できない場合には、児童福祉審議会の意見を聴くなどして調整を図る必要があるとしております。
 その下の丸でございますけれども、児童相談所やその委託を受けた民間団体等による親への積極的な指導・支援が必要ではないかという御意見をいただいていますので、そのような方向で書かせていただいております。
 最後の丸でございますけれども、今説明申し上げた一つ上の丸につきましては親権者の意向に配慮した措置で、最後の丸につきましては児童の意向に即した対応も必要ではないかということで、児童の意向に合わなかった場合について児童が相談できるような体制整備ということも御意見として出ておりますので、そういった取組も進めていくと書かせていただいているところです。以上が第1の論点でございます。
 関連します9ページ以降の第2の論点でございますけれども、「一時保護中の児童相談所長の権限と親権の関係について」は、基本的には第1の論点と同じと考えております。10ページの「考えられる対応策」として、一時保護の場合についても同様の権限を明確にすることが必要であるということ、また、この場合の児童相談所長というのは、一時保護を行った児童相談所長とするということ。それから、一時保護中については一時的なことということで児童の個々の処遇について重大な問題が生ずる機会はそれほど多くないと考えられますが、第1の論点と同様に、親権者の不当な主張等を防止する必要があることから、1の(5)と同様の措置を講ずるという結論でまとめさせていただいております。第1、第2の論点につきましては以上でございます。

○才村委員長
 ありがとうございました。今、事務局から特に親権者に配慮するという枠組みではなくて、やはり親権者の意向に配慮して一律に施設長等が児童の個々の処遇について措置をとることには慎重な検討が必要だろうということで、具体的には児童の福祉のための措置をとる場合に親権者は不当な主張をしてはならないという旨の規定、特に身体・生命にかかわる問題について緊急を要する場合については親権者の意向にかかわらず施設長等が確実に必要な措置をとるべきことを明確化すべきではないかという旨の規定を今回新たに盛り込んでいただいたわけですが、この点も含めて、こういった書き方でよいのかどうか。ぜひ、御意見を頂戴したいと思います。
 
○山田参考人
 磯谷委員の代理で日本弁護士連合会の意見を発言させていただきたいと思いますので、よろしくお願いいたします。5ページの(5)「考えられる対応策」について御説明いただきましたことを前提に1点、意見を述べさせていただきたいと思います。従前から日本弁護士連合会は意見書で日常生活に関する事柄については施設入所等の措置がとられた以上は親権が事の性質上、優先しているのではないかということで、できればそれを法律に明記したいという意見を述べてまいりましたけれども、その切り分けが困難であるという中で、少なくともガイドライン等によりまして現場の助けになるような基準を設けるべきではないかということを述べさせていただきたいと思います。入所等の措置がとられている場合、例えば集団的な処遇であるとか、そういうことに基づく一定のルールというものが考えられるのではないか。具体的には、衛生上の問題や施設管理上の問題、それから集団生活を送っている中での他の児童への配慮等は当然求められるところでありまして、現場で使い勝手のよい基準のようなものをガイドライン等で示していただくことで対応していただきたいということで、その辺りをこの「考えられる対応策」の中に書き込んでいただけないかというのが日本弁護士連合会としての意見でございます。

○才村委員長
 今、参考人におっしゃっていただいたのは、いわゆる立法マターというよりも、制度改正がなされた後の運用の課題としてということでよろしいですか。

○山田参考人
 スタートのところは法律で明記したいという立場でございましたので、それが困難であるとしてもということで申し上げたいと思います。

○才村委員長
 運用するに当たって、具体的なガイドラインが必要であるということですね。今の山田参考人の御意見も含めまして、御意見を頂戴したいと思いますが、いかがでしょうか。
 大村委員、お願いします。

○大村委員
 今の山田参考人の御意見の基本的な考え方はよくわかります。明確な基準があることが必要ではないかという御趣旨かと思います。ただ、その前提として、先ほどの事務局の御説明について若干確認させていただきたいのですけれども、この会議ではずっと施設長等と親権者等との間で、子どもの処遇について意見が対立する場合については、施設長等の権限を優先させるという方向で考えるということで議論をしてきたのだろうと思います。そして、この方向性は今日まで変わっていないということではないかと了解しています。その上で、才村委員長からも御説明がありましたけれども、画一的に規律する、すなわち、一切を考慮せずにすべての場合に施設長等の方が優先し親権者等は何も言えないという制度をつくるということには、問題があるのかもしれないのではないかという疑念にどう対処するかが問題になっている。そこでどうするかというと、親権者等の正当な主張は可能である。施設長等が措置を行うことに対して、親権者の側から正当な主張をするということまでも排除するものではない。正当な主張であればそれを考慮に入れて、施設としては措置をとる。そういうことだろうと思います。そのことを引っくり返して言いますと、多分条文にはそう書かれるのだと思いますが、親権者等の不当な主張は許されないということになる。この点は動いていないわけです。不当な主張をなされた場合には、親権者の主張があったとしても、施設長等は措置をとれるのだということなのだろうと思います。このことをしっかりと確認した上で、では正当な主張にあたると考えられるのは、どのような場合なのかということを例示する。このような場合は正当かもしれない。しかし、それ以外は不当な主張であるということを明確にする。つまり、ポイントは二つあると思います。一つは、親権者は何も言えないわけではない。このようにすることが子どもにとって望ましいということを言うことはできる。そのことまでを妨げるわけではないということ。もう一つは、しかし、最終的にはそうした主張を勘案した上で必要な措置をとることはできる。必要な処置がとれないということはないということ。この2点をはっきりさせることではないかと思います。

○才村委員長
 どうもありがとうございました。事務局から、今の御発言に関連して何かありますか。

○杉上虐待防止対策室長
 これまでも施設長の権限として監護・教育・懲戒の中で子どもの福祉のために必要な措置がなされています。これらについて、今回の措置に伴って不適当な措置になるとは考えていません。結局、施設長がその権限の範囲であるか、あるいは子どもの福祉のための必要な措置が適切になされたか、そういった適切な行為について正当性を排除するものではないと考えています。ただこれらについて、先ほど御説明申し上げたとおり、どのような範囲でどのように行えば、子どもの福祉のため必要かつ適切かどうか、一律に規定するのは法的に少し難しいのではないかと考えたわけです。
 これに対して、山田参考人あるいは大村委員から今、御説明があった点については、どの程度ガイドライン的なものになるのかはわかりませんけれども書き込めるのか、書き込めないのか、明確化できるのかということは、事務局で受け止めて、今後検討していきたいと考えています。

○才村委員長
 今の御議論に関連すると思いますが、6ページの下から三つ目の段落で、これは法律の中でこのような文言をうたうということではなくて、別途このような仕組みについて提示していくという意味ですね。ですから、多分ガイドラインの中でもこのような内容が盛り込まれるのではないかと思います。

○杉上虐待防止対策室長
 そのとおりで構わないと思います。どのような点について児童福祉審議会に意見を聴くか、あるいはどのような対応をするか、そのようなものの参考になるものが何かつくれればよいと現時点では思っています。

○才村委員長
 ありがとうございます。他にいかがですか。松原委員、お願いします。

○松原委員
 今の点に関して1点です。私も大村委員の考え方に賛成です。その上で、才村委員長がおっしゃった下から3番目の丸については、どういうルートでこのような手続きがとられるかというのが、特に親権者の方に明示されていないと、「このような場合に合わないので、調整してほしい」などということが明確に出てこないことが想定されますので、これも運用ないしガイドラインのところで書き、施設長等あるいは児童相談所にもそのことが周知されるようなものをつくっていただきたいということが1点です。
 それから、通常の生活の中では施設長がかなりの実際の権限と責任を持ちますので、これは前からの私の主張ですが、上から三つ目の段落のところで、「制度の理解を進めるための研修の実施」これは、四つ目のルートなども入るだろうと思いますけれども、このように書いていただきましたが、基本的に私はここで、これほど大きな責任と権限を持つ施設長にも資格制度を導入していただきたいと発言しました。ただ、これは虐待だけに及ばなくなりますので、すべての児童福祉施設となるので、今回は無理ではないかと思っています。その上で、「研修の実施」というと少し弱い感じがしますので、できれば「受講の義務化」、それができなければ「受講の促進を図る」というようなことで、これは後で14ページにも同じ文言が出てきます。そこのところで、きちんとこのような親権に係る現実的な運用課題を理解した施設長の下で子どものケアがなされるような体制をつくっていただきたいと思います。

○才村委員長
 ありがとうございます。豊岡委員、お願いします。

○豊岡委員
 児童相談所を含めて現場の混乱がないように、ぜひ今出ましたガイドラインやマニュアルのようなものをつくっていただきたいというお願いをしておきたいと思います。

○才村委員長
 今、豊岡委員から御発言いただきましたけれども、このガイドラインというのは、少し具体的な話になりますけれども、例えば施行規則や施行令などという中で、このような仕組みについて盛り込むということも考えられるのでしょうか。というのは、児童相談所が措置するに当たって、保護者もしくはその児童の意向と児童相談所の援助方針が異なる場合は児童福祉審議会の意見を聴かなければならないというのは、確か児童福祉法の施行令の中で書かれていたのではないかと思いますが、そのようなイメージでよろしいのでしょうか。

○杉上虐待防止対策室長
 にわかにお答えはできないのですけれども、全体にこの報告書で取りまとめていただいたものについては真摯に受け止めて、法律で規定すべき事項については法律、あるいは政令・省令レベルのものはそういう形で、あるいは通知・ガイドライン等のもの、場合によっては予算措置という形で、それは事務局で整理した上で、全般のお話になるわけですが、必要な対応をするということになるかと思っています。

○才村委員長
 吉田委員、お願いします。

○吉田委員
 今のお話と、これまでの委員の皆さまの分と関連して、運用のことですけれども、一つは親権者が不当な主張をすることを封ずるという点で、その趣旨はよくわかりますし、また民法上の親権制限の制度を活用するということもよろしいかと思います。ただ、現実には現場で不当かどうかの判断が大変難しいだろうということが一つです。とすれば、その中での親権制限制度の利用ということが出てくれば、その辺の切り分けです。どのような場合にこれを活用すべきなのか。さらにいうと、親権者の意向との調整というところで、児童相談所が児童福祉審議会の意見を聴くということもありますけれども、これも制度として重なる部分がありますので、利用する側としては、どのような使い方が最も効果的なのか。特に、単に権利制限の問題という面だけではなくて、その親に対する支援であったり、ソーシャルワークということを視野に入れていきますと、あまり親権者の主張を一方的に封ずるような現場の運用というのは、いかがかと思います。そのような意味での、それぞれの制度の利用の守備範囲を明確にしておく必要があるだろうというのが1点です。
 2点目は、一番下に児童の意向ということで、「電話相談」というのが出ていますけれども、前にこの場でお話ししましたけれども、親が申立てをするというような、といいますのは親権者の不当な主張に対して施設長がどうしようかと。そして、児童相談所が調整に当たるということで、施設長が児童相談所に話を持ちかけるということはあるかと思いますけれども、親が自分の主張の正当性を評価してほしいとか、これを調整してほしいという親からのルートというのは保障しておかなくてよいのか。今回の修正の意図は、親の意向を配慮する、尊重するということでありますと、そのような親の意向を取り上げる、受け止めるという手立てを用意しておいた方がよいのではないかというのが2点目です。
 3点目は、下から2番目に「親権者に対して民間団体が積極的に指導・支援する」とありますけれども、民間団体も全国で30~40箇所ありますけれども、その力量については差があるということで、実際にここまでできる民間団体は限られるだろうと思います。そうした意味で、そもそもここで言う民間団体というのが何を指しているのかということが一つと、それから通常虐待防止の民間団体であれば、こうした指導・支援が行えるように、今行われている民間団体支援の施策がありますけれども、それをさらに充実するということでなければ、この担い手にはなり得ないだろうと思いますので、その意味でも運用に当たってそうした施策の整備が必要かと思います。以上です。

○才村委員長
 どうもありがとうございます。今、三つの具体的な御提言をいただいたのですが、これについて事務局で何かありますか。

○杉上虐待防止対策室長
 まず、1点目のさまざまな制度の活用も含めたガイドラインという御意見をいただきました。そのとおりだと思っていますので、十分吉田委員の御発言を踏まえて検討していきたいと考えています。
 それから、2点目の親の意向の相談ということで、気持ちとしては下から二つ目の丸の中に書かせていただいているつもりではありますけれども、もう少し明記すべきということであれば、それはそれで修正といいますか、報告書の中に書き込むということかと思っています。
 それから、おっしゃるとおり民間団体は千差万別だと理解しています。数的には増えてきていますが、その中において力のある団体、力のない団体は正直言ってあると思います。それらについても十分留意していきたいと考えています。

○才村委員長
 ありがとうございます。山田参考人、お願いします。

○山田参考人
 6ページの上から4番目の丸の部分について、多くの委員から御発言があり、重なる部分はあるかと思いますが、従前、一律に施設長等の親権が優先するという枠組みの中で、強化されることに伴って児童福祉審議会への意見照会等の必要が議論されてきたと受け止めています。今回、その枠組みが変わったという中で、その必要性等についてあらためて検討する必要があるのではないかと日本弁護士連合会では考えていますが、先ほどからの御指摘の中にありました点を踏まえて、書きぶりも含めて検討いただけたらと思います。この4行目に「意見を聴くなどして、調整を図る」とありますが、この「意見を聴く」ことと「調整を図る」こととの関係がわかりにくいという印象を受けていまして、御検討いただければと思います。

○才村委員長
 今の山田参考人の御指摘は、「意見を聴く」ということと「施設長等と親権者との調整」とがうまくつながらないのではないかというお話だったと思いますけれども、これはどうですか。確かに、具体的な調整の仕方としては少し曖昧ですね。専門的な意見を踏まえた上で調整に当たるということでしょうか。事務局、お願いします。

○千正室長補佐
 書きぶりが、その意味ではあまり明確ではなかったかもしれませんが、調整に当たるのは、児童相談所のケースワークの中で当たることになると思いますので、例えば「児童福祉審議会の意見を聴くなどもした上で」というようにすれば流れが明確になるかと思いますが、そのような御趣旨でよろしいですか。

○山田参考人
 「調整」のために「意見を聴く」と先ほどこの案文の御説明のときには、その流れでおっしゃったように伺ったのですが、文章としてつながりが明確でない点は、今の御説明であれば、若干修文いただくなりして、もう少しわかりやすく。その前提として、先ほど申し上げましたように、若干枠組みが変わったことによって、4番目の必要性について議論が必要ではないかということが日本弁護士連合会の検討の中で出てきましたので、従前どおりとは少し前提が違うのではないか。その点は必要に応じてその必要性を検討しつつ、具体的に詰めていかれるという理解でよろしいですか。

○千正室長補佐
 児童相談所が調整に当たるに際して、非常に軽易なことであれば、第三者の専門家の方々の意見を聞かなくてよいという場合もありますし、非常に判断に悩む、専門的な知見が必要だという場合には、意見を聞いた方がより適切な判断が可能だという場合もあるかと思います。その辺は必ずということではないと考えています。

○山田参考人
 必要に応じて、ということですね。

○才村委員長
 よろしいでしょうか。

○山田参考人
 ありがとうございました。

○才村委員長
 大村委員、お願いします。

○大村委員
 今のやりとりは言葉の上ではそのとおりで結構だと思います。ただ、山田参考人が再三、「枠組みが変わった」とおっしゃっていますが、私は基本的な考え方は変わっていないという認識を確認する必要があるのではないかと思います。根幹の部分について必要なことであれば、施設は単独でできると考えるべきではないかと思います。ただ、施設に対して何かを言っていくことがいけないということではない。言っていくことは可能であって、それについて、山田参考人が御指摘の4番目の手続きに乗るということもあるべしということではないかと理解しています。
 念のために申し上げますが、資料の8ページに出ています児童福祉法第47条の第2項は、現在の規定でも「監護、教育及び懲戒に関し、その児童の福祉のために必要な措置をとることができる」としていますので、何でもできるわけではなくて、福祉のために必要な措置ができるということだと思います。原則として、児童の福祉のために必要な措置はとれる。それを妨げるようなことはしてはいけない。そのことを今回確認する。ただ、必要な措置かどうかは、問題によっては必ずしも明瞭ではありませんので、施設の側で必要な措置だと言っていたら、直ちに何も言えなくなるというわけではないということだろうと思います。ですから、ガイドライン等を設けるということだとすると、必要な措置というのはどのようなことなのか、わかりにくいものについては、具体例を挙げて説明するということも考えられるかもしれません。

○才村委員長
 枠組みに対する基本的な認識ですが、山田参考人はいかがでしょうか。

○山田参考人
 大村委員の今の御指摘が前提であって、法律に明確に書き込めないということのみであるという理解を前提にするということは、共通の理解ということでよろしいわけですね。

○大村委員
 法律に書き込めないというのは、何を書き込めないということですか。

○山田参考人
 一律に施設長等の権限が親の親権に優先するということについて、法制上の困難を御説明いただいて、報告書の書きぶりが前回の骨子案からだいぶ変わったという前提であっても、これまで検討してきた社会的養護の基になる子どもの施設長の親権代行と親の親権との関係は、従前の議論のとおりであるということが前提であるという理解でよろしいですか。それの足を引っ張るような発言を何箇所かさせていただきまして、その点は申し訳ないと思います。

○才村委員長
 いいえ。いろいろな御意見を頂戴しまして、どうもありがとうございます。それでは、事務局からお願いします。

○千正室長補佐
 これまでの御議論も、施設の現場等で親権者が不当な主張をする場合で施設長が子どものために必要な措置をとろうとするときに対応に苦慮するというのが、議論の出発点だったかと思います。ですから、この審議会のこれまでの議論でも、不当でない親権者の意向といいますか、そちらへの配慮も必要だということは、一方でいろいろな先生方が言われてきたところで、正当な主張をする親権者の意向まで無視して、何か措置をとるようにすべきだという方向ではなかったと理解しています。大村委員はそのような趣旨を先ほどおっしゃって、そのことは現時点においても変わっていないと理解しています。それを書いているものが、不当な主張を許さないということです。
 一方で、山田参考人が言われたのは、恐らく法的に貫けるというとき、前回までの議論ですと、それを前提としてそのための手続きとして児童福祉審議会の意見を聴くということですので、それは必要的な手続きだったということで、その意味においては、児童福祉審議会の意見を聴くという行為の位置付けが変わるということになるので、全部のケースについて聴くかどうかは、ケース・バイ・ケースで、適切に必要があれば聴けばよいのではないかという趣旨の御発言と受け止めました。

○山田参考人
 言葉足らずで申し訳ありません。

○才村委員長
 よろしいですか。大村委員、お願いします。

○大村委員
 山田参考人の御危惧はよくわかるのです。今回、この書きぶりが変わったことによって、従前ここまで議論してきたことが、崩れ去るのではないかという御懸念だろうと思います。今回の修正によって変わったのは、親権者の意思にかかわらず、どのような場合であっても施設の方が優先するというわけではない。画一的に優先するのであり、親権者の関与を全く許さないということではない。正当な主張はあり得るだろうということですので、具体的な条文の作成にあたっては、根幹のところは変わっていないという認識に立って、作業をしていただきたいと思います。

○才村委員長
 ありがとうございます。他にはよろしいですか。この第1、2のテーマは、よろしいですか。それでは、今日はいろいろと貴重な御意見を頂戴いたしました。これらを踏まえまして、さらに事務局の方で書き方の工夫をしていただければと思います。まとめの方をよろしくお願いしたいと思います。
 それでは、第3の論点に移らせていただきたいと思います。事務局から説明をお願いします。

○杉上虐待防止対策室長
 11ページ以降です。第3の論点「里親等委託中及び一時保護中の親権者等がいない児童等の取扱いについて」です。あまり変えているところはありません。13ページの4「その他」で、里親委託中であっても児童相談所長が親権代行という形で整理されているわけですけれども、児童相談所長の監護の方針と児童本人の意向という場合について、しっかりと児童の意向を受け止めるべきだという意見があったことを加えております。
 それから、(4)「検討の方向性」の最後で、上記の枠組みとともに、未成年後見人についてしっかり確保していこうという御意見があります。そのような御意見を踏まえて、「未成年後見人を確保するための方策も併せて推進する必要がある」と書かせていただいています。
 それから14ページですが、この部分の新たに書き加えたところですけれども、下の二つの丸です。「また書き」以降で、民法において、複数の未成年後見人の選任が許容される場合には、未成年後見人の追加選任についても児童相談所長が請求できるようにしてはどうかということ、「未成年後見人の引受手を確保する観点から」そのサポート体制についてもしっかりと進めることと書かせていただいています。それから最後の点ですが、先ほどの児童の意向との関係ですけれども、第1の論点にも書かせていただいたように、児童が電話相談などにより意見を述べやすくするという取組が必要ではないかと書かせていただいています。以上です。

○才村委員長
 どうもありがとうございました。今の説明に御意見を頂戴したいと思います。

○松原委員
 この未成年後見人の確保については、このように書いていただいて、我々の意向を反映していただいたと思って、積極的に評価したいと思います。その上で、13ページの「その他」は、14ページの一番下の丸に対応するということでよろしいのですよね。児童の意向を聴くことも必要という意見は、要するに児童相談所あるいは第三者が聴くのだという理解でよろしいのかという確認だけさせていただきたいと思います。13ページの「その他」には誰が聴くと書いていないのですけれども、14ページを見ると児童相談所長と第三者と読めますので、それでよいのかという確認だけさせていただきたいです。

○杉上虐待防止対策室長
 事務局の考え方は、それでよいと思っています。それぞれの地域の資源もありますので、一つは児童相談所がしっかりと受け止める。また、第三者が良い場合も当然ありますので、その仕組みも検討していこうという思いで書かせていただいています。

○松原委員
 ありがとうございます。

○才村委員長
 よろしいですか。他にいかがですか。山田参考人、お願いします。

○山田参考人
 ただ今、松原委員から未成年後見人の件について、評価される御発言がありました。私どもも担う可能性のある立場で、未成年後見制度をこの機会にいろいろと学び、受け皿としていろいろなパターンで必要な方策を検討していきたいと思っているところです。
 つきましては、未成年後見人に関して、この箇所ではなくて独立して、第8項を設けていただき、そちらに書いていただくことはできないかと、そのように発言させていただくように磯谷委員から宿題をいただいてまいりました。特に具体的に、費用を含む報酬の問題それから責任に関連しての保険制度の創設等、具体的に検討すべき事柄等を書き込んでいただきたいと希望します。
 それからもう1点、3項に関してですが、前回もしくは前々回に磯谷委員から戸籍上親権者がいるのに行方がわからない場合などについて、第三者から見て、児童相談所長の親権代行権限がわかるような手立て、証明書のようなものが必要ではないか。その辺りにつきまして、厚生労働省として何か考えていらっしゃるか。あるいは現にこのような方策を採っているということがありましたら、教えていただきたいと思います。

○才村委員長
 事務局、いかがでしょうか。

○千正室長補佐
 未成年後見人のサポートの個所でございますけれども、この未成年後見人のサポートが制度を運用するに当たって必要と考えられる論点は幾つかあるわけでございます。前回磯谷委員から、ある論点について書いているけれども、他の必要な論点であると考えられるところには書いていないので、別立てで書いてはどうかという話もあったところでございます。報告書の書き方、構成の話ですけれども、そういった御意見を踏まえまして関係する論点のところにはすべて「未成年後見人のサポート」という記載を加える方向で今回お出ししております。そこの書き方が各論点ごとに書いてあるのが良いのか、別立てで書く方が良いのかにつきましては、例えば審議会の運用のモデルを明示するとか、他にも横串の論点がございますので、未成年後見人のサポートだけを別立てにするのが良いのかどうかというのは、少し相談させていただければと思います。
 それから、書き方をどれぐらい具体的にできるかというところについても、思いは私たちも磯谷委員、山田参考人も変わらないと思っているのですが、どこまで報告書の中で書けるかを御相談させていただければと思います。それから親権代行する場合に、その人がその子どもの親権を代行をしているということの証明、わかるようにということで、その必要性は第三者との関係で特にあろうかと思います。そこを具体的にどのような証明方法が可能なのかは先ほどから話が出ていますけれども、ガイドライン等を定めるという実際の運用をどうするかというところで今後検討しなければいけない論点だと思います。現場の方とも相談しながら、どのようなやり方ができるのかを検討していきたいと思います。

○才村委員長
 どうもありがとうございます。サポートについてはさらりと書かれていますけれども、どのようなシステムで、どういった方法でサポートするのか。これはかなり大きいテーマだと思いますが、ガイドラインの話がありましたが、具体的なサポートの在り方について何らかの形で可能な範囲で示していく必要があると思いますし、また事務局の方でこの報告書に反映していただけたらと思います。
 他に、御意見はいかがでしょうか。よろしいでしょうか。それでは今の議論を踏まえて、また修文していただきたいと思います。
 次に、4番の論点です。「一時保護の見直しについて」、事務局から説明をお願いします。

○杉上虐待防止対策室長
 第4の論点「一時保護の見直しについて」、資料としては16ページ以降でございます。基本的には事務局で字句等の修正をさせていただいた部分と、17ページでございますけれども「考えられる対応策」については基本的な1段落目2段落目は変えておりません。最後の「なお書き」でございますが、児童福祉審議会について既存のものがあるわけですが、千差万別という形で運用方法のモデル等、これもガイドラインになるのかもしれませんが、そういったものを示す必要があるという御意見を踏まえて、この部分にそういったことを書かせていただいております。以上でございます。

○才村委員長
 どうもありがとうございました。御意見を頂戴したいと思います。山田参考人、お願いします。

○山田参考人
 17ページの(4)「検討の方向性」のところでございますが、「一時保護について司法関与を強化することは、相当でないと考えられる」という個所について違和感がございます。と申しますのは、理念的には司法審査に反対する意見は見られなかったのではないか。比較法的にも2か月という長期にわたり子どもの身柄を確保する際に裁判所が一切かかわらないという制度は先進国では私どもの認識の範囲ではないのではないか。なぜ今回ここの「強化することは相当でない」については現場の体制等の問題が大きかったと理解しております。そのことを入れていただきたいという趣旨で、一時保護について司法関与を強化することは「現状においては」相当でないと考えられるが、将来的には検討課題ということで、報告書の書きぶりを加えていただけないかと考えております。

○才村委員長
 16ページの下から三つ目の段落のところに、この理由が書かれているわけです。確かに17ページ「検討の方向性」のところで「司法関与を強化することは相当でない」がいきなり出てくると立法論としても司法関与は考えられないという意味合いになってしまいます。ところが、実態を踏まえると「現状では」ということですよね。その辺りは、事務局はいかがでしょうか。

○杉上虐待防止対策室長
 おっしゃっている意味はもちろんわかりますし、この委員会においても司法関与を全面的に否定しているわけではないというのはそのとおりですので、(4)の「検討の方向性」のところに「一時保護について」の前くらいに委員長が言われたような趣旨が入るような形で整理したいと考えております。

○山田参考人
 よろしくお願いします。

○才村委員長
 どうもありがとうございます。他に、御意見はいかがでしょうか。よろしいでしょうか。
 それでは、次の5の論点に移らせていただきたいと思います。事務局の方で説明をお願いします。

○杉上虐待防止対策室長
 19ページ以降でございます。第5の論点は「保護者指導に対する家庭裁判所の関与の在り方について」ということでございます。これにつきましては字句の修正をさせていただいている以外、変更点はなかったかと思っております。家庭裁判所の関与については運用でやっていく等の対応を図るという形で整理しているところであります。

○才村委員長
 ありがとうございます。この点につきまして、何か御意見はございませんでしょうか。よろしいでしょうか。これは随分議論してきたところで、簡潔にまとめていただいたのではないかと思います。よろしいでしょうか。
 それでは、次の第6の論点に移らせていただきます。説明をお願いします。

○杉上虐待防止対策室長
 第6の論点「施設入所等の措置及び一時保護が行われていない親権者等がいない児童等の取扱いについて」でございます。ここにつきましては、24ページの「考えられる対応策」になお書きとしまして未成年後見人のことを書かせていただいております。それ以外は基本的には変わっておりません。

○才村委員長
 ありがとうございます。御意見を頂戴したいと思います。よろしいでしょうか。
 ないようですので、次が最後でしたか。第7の論点に移らせていただきたいと思います。事務局から、説明をお願いします。

○杉上虐待防止対策室長
 第7の論点「接近禁止命令の在り方について」でございます。26ページ以降でございますが、加えた部分は、当委員会における議論(3)の部分の28ページ以降でございますが、前回、人格権に基づく差止請求について法務省からも御説明いただきまして、その際に各委員から意見があったわけでございます。そういったものについて、28ページの1段落目に人格権の差止請求について書かせていただいたということ。それに対しまして、これらを接近禁止命令で刑罰で担保しようとすると、結局のところ要件は厳格にならざるを得ないという一方の意見があった。「さらに」の段落ですが、人格権に基づく差止請求の方が要件が軽いと考えられるが、そういったものが現実に実績が少ないのであれば、より厳格な接近禁止命令の仕組みを設けても、結局活用されないのではないかといったような御意見、そういったものについて書き加えさせていただいております。また、この第7の論点につきましては前回、御議論いただきまして、「こととしてはどうか」という書きぶりにしていたものを「考えられる」であるとか「図るべきである」という形で(4)の「検討の方向性」、(5)の「考えられる対応策」について、文言の修正をして結論的な形で書かせていただいており、内容的には変更していないところであります。以上です。

○才村委員長
 どうもありがとうございます。これは現行の制度の枠の中で運用面で工夫してはどうかという内容であったと思います。御意見はいかがでしょうか。山田参考人、お願いします。

○山田参考人
 まず1点、報告書案28ページの1行目で人格権に基づく差止請求の問題点を挙げておられますが、それに加えて2点指摘させていただきたいということでございます。一つは自立していたとしても未成年者自身が直接申立てることは難しいと思われる点。もう1点は担保の要否。これは可能性に過ぎませんが、担保の問題も指摘すべきではないかという2点を発言させていただくよう預かってまいりました。報告書案の27ページの(3)の第1パラグラフと28ページ(4)の第1パラグラフで金銭の無心等の事例が記載されていますが、こちらの委員会でも性的虐待が疑われる事例について問題提起されたと記録等で、また磯谷委員から伺っております。今申し上げた個所に、かつて性的虐待を受けた子どもが退所した後に虐待した親が接近する場合を事例として書き加えていただきたいと思いますが、御検討いただけますでしょうか。

○才村委員長
 ちょっとお伺いしたいのですが、子どもの人格権に基づく差止請求に関して子どもの申立てが困難ということと、担保の問題とおっしゃったのですが、もう少し具体的に。私は法律のことはあまりわからないので申し訳ないのですが、具体的に何か案というか提言がございましたら、それも含めてお伺いしたいと思います。

○山田参考人
 利点が挙げられているという中に、難しい部分も書き加えていただきたいということで、具体的に聞いてきたわけではなく、メモでもらっているところでございますが。

○才村委員長
 担保の問題とおっしゃったのは、子ども自身が申立てするというのは非常に困難な状況の中で、それを担保するような何か方策を盛り込むべきではないかという意味ですか。

○山田参考人
 これは保証としての担保を立てさせられる可能性が事案によっては無担保で出るケースももちろんあると思いますが、可能性としてはあるわけで、その点を指摘すべきではないかという意見でございます。事案として経験がないものですから。

○才村委員長
 法務省の飛澤参事官、お願いします。

○飛澤参事官(法務省)
 今、山田参考人がおっしゃったことは、民事法で人格権に基づく差止請求は先般も御説明したとおり主に仮処分で利用される場合が多いだろうと。仮処分というのは民事保全の一種ですが、まさに仮の処分ですので、そういった処分を出すに当たって、もし仮の処分が後で取り消された場合で、相手に損害があったときにそこから払うという意味で担保を積ませるということになっています。ただ、法律上は担保は必ず積ませるのではなくて、一応裁判所の裁量になっているところですので、まさに山田参考人が御指摘のとおり、運用上は事案によっては担保を積ませなくてよいという判断が出る場合もあるし、逆に、疎明の程度などを見て心配だから少し積ませることもあると思いますが、その辺はまさに裁判所が事案を見ての判断で、少なくとも個別の裁判所の判断ですので断言はできないのですが、事案が事案であれば、仮に担保を積ませるとしても、およそ積めないような担保を要求することはないのではないかと考えているところでございます。

○才村委員長
 ですから、無条件にできるというようなことではなくて、いろいろな方策が考えられる一つの例としてここで書いているということだと思いますが、山田参考人、どうでしょうか。

○山田参考人
 手続面での問題点については個別の事案によってそれが大きな問題になるかどうかは、飛澤参事官から御説明いただいたとおりでございますが、可能性として懸念される問題ということで指摘いただければという意見でございます。

○佐藤委員
 とてもシンプルなことですが、誰に聞けばよいのか。先ほどの山田参考人のお話だと未成年の場合には申立てができないというお話でしたけれども、ここで想定しているのは例えば自立している年長の一人暮らしの未成年者がアルバイトで稼いだ収入うんぬんとか民間シェルターで生活している未成年者うんぬんということで、それ以下の年齢を含めてですが、そういう状態にある子どもたちの場合は施設で保護することが可能で、むしろ未成年者自身が自分の生活を侵害されないために接近禁止命令を申請することができるということはないのでしょうか。
○才村委員長
 差止ではなくて接近禁止の方ですね。

○佐藤委員
 いや、接近禁止という方法があるよというガイドを受けて、その方法を未成年者自身がそういうことを手続きとして、つまり親権をかさに親から不当なことをされることを子どもの側から排除する手段として、子どもがこの親に対して接近禁止命令を都道府県知事に出してもらうように申請するということは想定できないのでしょうか、できるのでしょうかという質問です。

○才村委員長
 事務局、何かありますか。

○千正室長補佐
 恐らく、磯谷委員というか先ほど山田参考人が言われたことはこういうことではないかと思います。現行の民事上の人格権に基づく差止請求を活用していこうというのが、今、お示ししている方向性ですが、この仕組みによっても制度としては未成年者自身が申立てることは可能でありまして、また仮に議論してきた接近禁止命令という罰則付きの命令を例えば裁判所が出すという制度を仮に創設するとしても、それは制度の設計次第ですけれども、その場合も基本的には未成年者自身の申立ても可能とすることも十分あり得ると思います。制度としては未成年者自身が申立てることは可能だけれども、恐らくここからが問題提起されたところだと思いますが、可能とはいえ未成年者自身が申立てるというのは、現実的にはいろいろなサポートがないと難しいのではないかということを先ほどの御発言は言われているのではないかと思います。

○佐藤委員
 そういうことです。

○才村委員長
 よろしいでしょうか。制度的には可能だけれども、現実としてはまだまだ未成年であるので難しさが伴うのではないかということですよね。

○佐藤委員
 刑罰を伴うものにするかどうかということは、また別の議論をしなくてはいけないかもしれませんけれども、現実に、かつていろいろな意味での虐待を受けて、そこから少し抜け出して状況を変えようとしている子どもに対して、依然として被害が及ぶかもしれない。このDVの件ではその生命又は身体に重大な危害を受けるうんぬん。これはそれと同程度の要件が課せられることとなるとなっていますが、例えば子どもが自立して働いて、かつての状況からようやく抜け出そうとしているときに、引き続きいろいろな意味の虐待を受けるようになるということは、これと同じような恐れと理解すれば、未成年者がこういう命令を出してほしいと選択肢でそういうことがあるならば検討してもよいということを、むしろ支援するという流れを生んだ方が良いのではないか。実際に接近禁止命令が法の上では定められながら、ほとんど運用されないでいる状況というのは、この仕組みを有効に活用できるものだという仕掛けがないからではないかと思いますが、いかがでしょうか。

○千正室長補佐
 佐藤委員が言われたように、そういった現実の自立しようとしている未成年者がいたときに、依然として何か親が危害を加えようとするケースがある。何かそこに手立てが必要であるというニーズがあるというのは、この委員会でも共通の認識になったのではないかと思っております。そのときに、そうしたニーズに対応するためにどのような制度を活用するのか。あるいは新たに設けるのかというところについて、まず現状の人格権に基づく差止請求をしっかりと活用していくような土壌をつくっていこうというのが一つの議論の方向性であったかと思います。そのために、厚生労働省としてもそういったことを周知していかなければいけないと思っております。それが一つでございます。
 それから、現行の接近禁止命令が使えないかというのは、今議論している施設退所後の自立しようとしているケースとは少し違うのではないかと思っています。今の接近禁止命令は児童福祉法第28条の強制入所措置がとられている場合が対象で、そのときに知事が命令するということですので、子が申立てなくても行政機関が必要だと思えば出すという仕組みになっています。

○才村委員長
 佐藤委員、よろしいでしょうか。いずれにしても今回の書き方としても、とりあえず現行の運用で状況を見て、将来的な検討課題という形で位置付けていますので、この書きぶりでよろしいのではないかと思いますが、どうでしょうか。そのような問題意識を持ちながらです。

○吉田委員
 ごく単純なことですけれども、先ほどの山田参考人のお話からすれば、そうした人格権に基づく差止請求をするのは大変困難が伴うということですね。そうすれば、単にここは周知徹底にとどめず、そうした申立てが可能になるようなサポートをするということでなければ、実質的に子どもたちがそうした親からの不当な要求に対して対抗し得ないわけですから、もう一歩踏み込んだ書きぶりまでいってよろしいのではないかと思います。

○才村委員長
 これはこの問題に限らず、いろいろなところでガイドラインのようなものが要るということで、多分今、吉田委員がおっしゃった内容についても、サポートの在り方ですよね。何らかのガイドラインのようなものの中で明示していくのではないかと思います。どうでしょうか。こういう制度があって手続きはこうだとか、こういう場合にはこういう制度の活用が考えられるとか、そういうことをガイドラインの中で具体的に説明していくということではないのでしょうか。これは制度的な方向性ですから、それの運用の在り方については当然もう少し詳しい説明が要るのではないかと思いますが、吉田委員よろしいでしょうか。
 他に御意見は、いかがでしょうか。よろしいでしょうか。豊岡委員、お願いします。

○豊岡委員
 今、山田参考人が言われた性的虐待のケースを書き込むかどうかという考え方については回答がなかったようですが。

○才村委員長
 失礼しました。

○千正室長補佐
 そのような事案もあろうかと思いますので、少し書き方を工夫した上で、また御相談したいと思います。

○才村委員長
 お願いします。よろしいでしょうか。書きぶりを工夫していただくということで、以上が論点すべてになります。
 最後に「おわりに」です。これも新たに書いていただいていますので、これについて説明をお願いします。

○杉上虐待防止対策室長
 最後に「おわりに」の部分、33ページでございます。五つの段落で書いています。本委員会の議論を基に現時点でということにならざるを得ない部分が幾つかありました。現に、今日の御意見でも出た、一時保護の司法審査の問題等、幾つかあるわけでございまして、現時点で実現可能と考えられる対応策をまとめたということを書かせていただいています。それから、繰り返しになりますが「はじめに」で述べたとおり、虐待の深刻な状況については今回の親権にかかわる児童福祉法等の改正の検討以外にも当然やっていただくものがあるということを書かせていただいています。
 さらに、親権者の児童の監護等に関する問題であって、児童福祉法の範疇外の問題というものが正直言ってありまして、それらについて児童福祉の現場からも指摘されております。例えば施設入所等の措置がとられている場合において進学の問題、予防接種の問題、精神科病棟の問題等があるわけでございます。これらについては、個別法の問題や運用上の問題、あるいは現実に動いている問題等があるわけでございまして、これらについて民法上の親権制限の請求を適切に行うだけではなくて運用面において工夫の検討が求められていると思っております。我々もいろいろな所でこういったものを何かできないかということは引き続きやっていきたいと思っております。
 それから、厚生労働省においては先ほど御質問があったわけですけれども、法の改正をはじめ、運用面での改正や改善など必要な対応を行っていただくことを望むという形で委員会としての意見を入れさせていただいたことと、「最後に」のところですけれども、言うまでもなく虐待の問題は社会全体で取り組むべき課題ですので、この報告書は関係者だけでなく、一般の方にも目を通していただきたい。虐待の問題が共有化されるように、そのきっかけになってほしいという気持ちを書かせていただきました。以上です。

○才村委員長
 どうもありがとうございました。御意見を頂戴したいと思いますが、まず松風委員はこの件ですか。

○松風委員
 すみません。先ほど発言しようと思って時期を逃してしまいました。よろしいでしょうか。

○才村委員長
 接近禁止のところですか。

○松風委員
 いえ、そうではなくて、一時保護の見直しで、2か月以上の一時保護をする場合の第三者機関である児童福祉審議会の意見を聴くことにするというところです。この点は、先ほどの施設長の監護と保護者の意見が対立する場合に、児童相談所長が調整を図る上で専門家の意見を聴くという機能と、行政行為をチェックする機能というのは、やはり意味合いが違うのではないかと思いまして、児童福祉審議会のそれぞれの役割についてどの程度の内容を期待するのかということをもう少し明確にした方がよいのではないかと思いました。特に、措置審査部会、里親審査部会、被措置児等のいわゆる施設内虐待に関する権利擁護の部会、それから重大事件の検証委員会等さまざまな役割が児童福祉審議会に課せられております。それぞれ期待される内容範囲が非常に異なるわけで、委員は非常にそれぞれの立場で混乱する場合も起こってくるかと思います。審議会の役割として、もう少し全体として整理する必要があるのではないかと思います。
 それから、先ほど才村委員長がおっしゃった児童福祉審議会の意見を聴くというのは、どのようなレベルで明記されるのか。このチェックの場合は、多分規則か法令等になるのではないかと思います。要するに専門家の意見を聴くという内容と、法令等に記載する内容との区別をどうするのかといったようなことについての整理ももう少し必要ではないかと思いまして、後からですみませんが発言させていただきました。

○才村委員長
 ありがとうございます。今、この児童福祉審議会の役割というか性格については、ここではチェック機能を求めていて、他は専門的にバックアップしていく機能があり、そこがごちゃごちゃになっていてよいのか、そこを整理する必要があるのではないかという御意見であったと思います。制度的位置付けについては、後ほど事務局から少し御説明いただくとして、まず、児童福祉審議会の性格をどのようにとらえるのかについて、他の委員の皆さま方から、ぜひ御意見を頂戴したいと思いますが、いかがでしょうか。専門的にサポートしていく機能と矛盾してきますか。豊岡委員、お願いいたします。

○豊岡委員
 これは個人的な感覚といいましょうか、携わった中での感じですけれども。行政のチェック機能も当然あると思いますし、専門的な立場からの行政に対する助言というのでしょうか意見という部分もあるので、どのように整理して、どのようにうまく切り分けていくか、そこのやり方をガイドラインなり、このようにしたらうまくいくというようなものを示していただくと都道府県なりが動きやすいという印象で松風委員の意見は聞きました。

○才村委員長
 そのような行政の行為をチェックし、その上に立って専門的にサポートしていくということで、それほど矛盾しないのではないかという御意見と受け止めたのですが、そのようなことでしょうか。松風委員はどうでしょうか。松原委員、お願いいたします。

○松原委員
 松風委員が出された例示で言うと、里親のところはチェックしていると思います。行政が認定したりとチェックしていて、児童福祉法第28条等に係るような権利擁護の部分のところは先だって私の意見をお出ししている。現行でも二様の性格を審議会全体として持っているのではないかと思っていて、幾つか機能が増えるとすれば、どの部会でやるのかというモデルは示す必要があると思いますが、審議会の体制をがらりと変えなければいけないなど、別の一つの組織体をつくり出さなければ行けないというほどのことではないと、今、松風委員の発言をお聞きして思ったのです。

○松風委員
 私も決して矛盾しているとは思わないのですけれども、どこまで束縛するかを明確にするということだと思っております。

○才村委員長
 枠組みでしょうか。

○松風委員
 そうですかね。

○才村委員長
 束縛というと。

○松風委員
 行政をチェックするということ。それから聴聞をどうするかということも悩ましいことです。単なる専門的な意見なのか、聴聞した上で、ある判断を行うことにするのかどうかということも今後は検討する必要があると思いますので、その辺りのガイドラインになるのかもしれませんけれども、十分な御検討をいただきたいということです。

○才村委員長
 ガイドラインになるのかどうか。具体的な解説というか説明が要ると思いますが、その中で今、松風委員がおっしゃった、ややもすると現場が混乱してしまうという事実があるので、そこを少し意識しながら今後策定する上で書き方を工夫していただけたらどうかと思いますが、松風委員はそれでよろしいでしょうか。

○松風委員
 はい、結構です。

○才村委員長
 それから、もう一つは児童福祉審議会のこういった仕組みを法律の中でうたい込んでいくのか、それ以外なのかということですよね。これについては、今の議論を踏まえると、多分ガイドラインの中でということになると思いますが、事務局はいかがでしょうか。

○千正室長補佐
 手続として審議会の意見を聴くということを明確にする。言ってみれば義務付けるということについては法律の規定が必要かと思っております。あと、先ほどおっしゃったどの程度審議会が行政を拘束するのかという意見については、今は審議会の意見を聴くという規定が、例えば措置部会などにもありますけれども、そこについての規定は特段ありませんが、このようなことになっています。法的に束縛されるものではないけれども尊重すべきものであるという考え方で運用されていると思います。同じようなことになるかと思いますので、その辺もガイドラインで考え方を示していければと思っております。

○才村委員長
 よろしいでしょうか。松風委員から非常に大事な視点と問題提起をしていただいたと思います。松風委員は、よろしいでしょうか。

○松風委員
 結構です。当然のことながら、ここに記載していただく児童福祉審議会の役割についてはその辺りを明確にして報告書に記載していただければありがたい。要するに、一時保護の場合は手続を軽易するということになるのでしょうか。最初の処遇のところでの対立の役割と、2か月を超える一時保護の場合の審議会の役割とは、ここの記載としては差を付ける内容になるのかならないかというところは、どうでしょうか。

○千正室長補佐
 先ほど豊岡委員や松原委員も御発言されたかと思いますが、濃淡はあろうかと思いますけれども、どちらもあくまで権力の行使であったり、行政処分に対してチェックするという側面と、さまざまな専門家の方の意見をお聞きしてそれを生かしていくという両方の側面があると思います。確かに現行の措置を審査する部会や里親の部会、権利擁護の部会など、どこに当てはまるべきなのかということは何も示さないと確かに都道府県の方で運用に困るだろうと思いますので、そこをガイドラインの中でモデルを示していくように検討していきたいと思っております。

○才村委員長
 よろしいでしょうか。ありがとうございます。
 「おわりに」の書き方や内容ですけれども、松原委員、お願いいたします。

○松原委員
 この文章の中で児童相談所の体制整備が書いてあって、確かに必要だと思います。この中に当然今まで議論してきました一時保護所の整備も入っているという理解をしてよろしいですかという確認が1点です。
 それから、せっかく児童相談所の体制整備を書いていただきましたので、新聞報道では最低基準の見直し等は若干報道されてはいますが、それも報道上だけの問題ですので、ぜひ児童養護施設を中心とした社会的養護を担う施設の体制整備もぜひ、ここの中で書いていただきたい。これだけの責任を負っていただくので、これも施設長だけでなく、それを遂行できるような施設職員全体の質・量の向上がやはり必要だと思いますので、ぜひそれを書いていただきたいと思います。
 それから7のところでシェルターの話が出てきています。これは必ずしも児童福祉法上には規定されていない施設ですので、ぜひ社会的養護を担う施設の一つの種別として子どものためのシェルターも明示していただければありがたいと思います。以上です。

○才村委員長
 ありがとうございます。山田参考人、お願いいたします。

○山田参考人
 「おわりに」の中に、関係諸機関との調整について一言触れていただけないかと考えております。具体的な場所としては3段落目の「必要な場合には民法上の親権制限の請求を適切に行うとともに」の後に入れていただくか、あるいは4段落目に入れていただく。厚生労働省が主体的に必要な関係諸機関と前向きに調整を図っていただきまして、その上での運用面での改善や工夫につなげていただきたいと考えております。

○才村委員長
 ありがとうございます。今、松原委員、また山田参考人から具体的な御提言をいただきました。具体的な書きぶりについてはまた事務局で工夫をしていただけたらと思います。他に、御意見はいかがでしょうか。よろしいでしょうか。
 ないようですので、以上で終わらせていただきたいと思います。活発な御議論を本当にありがとうございました。本日はいろいろと具体的な御意見を頂戴しました。恐れ入りますが、具体的な書きぶりにつきましては委員長に一任していただければと思いますが、いかがでしょうか。

(「異議なし」の声あり)

○才村委員長
 ありがとうございます。それでは、そのようにさせていただきたいと思います。
 今後の予定について、事務局から何かありますか。

○杉上虐待防止対策室長
 御議論をありがとうございました。報告書の修正につきましては委員長と相談しながら事務局で作業させていただきます。必要に応じて各委員の皆さまにも御相談させていただくことがあると思いますので、御協力のほど、引き続きよろしくお願い申し上げます。また、調整が整って、できれば今月中、遅くとも来月始めには報告書という形で取りまとめたいと考えております。その際には、事前に発表日等についてはお知らせしたいと思っております。また、報告書につきましては2月を目途に本専門委員会の設置を決定した社会保障審議会児童部会にも報告する予定です。以上です。

○才村委員長
 それでは、専門委員会の終了に際しまして高井雇用均等・児童家庭局長から御挨拶いただければと思います。

○高井雇用均等・児童家庭局長
 委員の皆様方には、8回にわたり熱心に御議論いただきまして、ありがとうございました。本日は報告書の方向性をおまとめいただきまして、今の委員長のお話のように、できるだけ早く調整させていただきたいと思っております。それを受けて、2月の児童部会への報告もありますけれども、法務省が予定している民法改正と、我が方の児童福祉法の改正を併せまして国会に提出していきたいと思っております。
 昨年も、児童相談所の体制強化や後方支援の強化など、いろいろと取り組んできているところですが、今回の法改正によりまして一歩進めると考えているところですし、さらに、予算面、制度面、運用面を深く考えていかなければならないと、我々も思っております。今回の報告書によりまして、この委員会はこれで終わりということになります。委員の皆様方には日ごろからお世話になっておりますが、今後も引き続き御指導いただきますようによろしくお願いいたしまして、御礼の言葉とさせていただきます。ありがとうございました。

○才村委員長
 それでは、最後になりましたけれども、私からも一言御挨拶申し上げたいと思います。この専門委員会は昨年3月31日に第1回が開催されたところですので、ちょうど1年近くにわたって合計8回の会議を開催いたしまして、本当に毎回活発な、また貴重な御意見を頂戴しました。本当に皆さま方の御協力に感謝を申し上げたいと思います。また、本専門委員会につきましては報告書の取りまとめをもちまして役割が終了いたします。それで解散することになるわけですけれども、各委員を代表して報告書の内容が政策に最大限反映されるように、また、これは先ほども御意見を頂戴したところですが、今回我々が扱ったテーマである親権にかかわる問題以外の課題も含めて児童虐待防止対策が推進できるように努めていただければと思います。
 以上をもちまして、児童虐待防止のための親権の在り方に関する専門委員会を終了させていただきたいと思います。皆さま、本当にどうもありがとうございました。


(了)

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