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2010年12月6日 第41回労災保険部会議事録
労働基準局労災補償部労災管理課
○日時
平成22年12月6日(月)18:00~
○場所
厚生労働省中央合同庁舎第5号館専用第19・20会議室(17階)
(東京都千代田区霞が関1-2-2)
○出席者
委員
岩村 正彦 (東京大学大学院法学政治学研究科 教授) |
野寺 康幸 (社団法人全国中小企業勤労者福祉サービスセンター 会長) |
稲葉 康生 (元毎日新聞社東京本社論説室局 次長委員) |
小畑 史子 (京都大学大学院地球環境学堂 准教授) |
黒田 正和 (日本化学エネルギー産業労働組合連合会 事務局長) |
小島 弘幸 (日本基幹産業労働組合連合会 中央副執行委員長) |
齊藤 惠子 (UIゼンセン同盟政策局 部長) |
田中 伸一 (全日本海員組合 副組合長) |
新谷 信幸 (日本労働組合総連合会 総合労働局長) |
林 裕司 (全国建設労働組合総連合 書記次長) |
伊丹 一成 (新日本製鐵株式会社人事・労政部 部長) |
桐明 公男 (社団法人日本造船工業会 常務理事) |
輪島 忍 (社団法人日本経済団体連合会 労働法制本部主幹) |
事務局
尾澤 英夫 (労災補償部長) |
木暮 康二 (労災管理課長) |
瀧原 章夫 (調査官) |
野地 祐二 (労災保険財政数理室長) |
須永 敏良 (主任中央労災補償監察官) |
河合 智則 (補償課長) |
渡辺 輝生 (職業病認定対策室長) |
若生 正之 (労災保険審理室長) |
植松 弘 (労災保険業務課長) |
美濃 芳郎 (労働保険徴収課長) |
○議題
(1) 労働基準法施行規則及び労働者災害補償保険法施行規則の一部を改正する省令案要綱について(諮問)
(2) 社会復帰促進等事業に係る平成21年度成果目標の実績評価及び平成22年度成果目標について
(3) 平成23年度労働保険特別会計労災勘定概算要求について(報告)
(4) その他(報告)
○議事
○岩村部会長 それでは、皆様お揃いのようですので、ただいまから第41回労災保険部会を開催いたします。
本日は中窪委員、那須委員、佐々木委員、萩尾委員、田中恭代委員が欠席です。また前回の部会以降、委員の交替がありましたので、ご紹介させていただきます。労働者側委員として、藤田正隆委員に代わりまして、日本化学エネルギー産業労働組合連合会事務局長でいらっしゃる黒田正和委員が就任されています。一言お願いします。
○黒田委員 よろしくお願いいたします。
○岩村部会長 また、議事に入る前に、事務局のほうに人事異動や組織改編があったということで、自己紹介をお願いします。
○労災管理課長 8月5日付で労災補償部組織再編がありまして、5日付で労災管理課長になりました木暮です。よろしくお願いします。
○労働保険徴収課長 同じく8月5日付で労働保険徴収課長を拝命いたしました美濃です。よろしくお願いします。
○補償課長 同じく8月5日付で補償課長となりました河合です。よろしくお願いします。
○労災保険審理室長 同じく8月5日付で労災保険審理室長若生です。よろしくお願いします。
○労災保険業務課長 7月30日付で労災保険業務室長、それから8月5日に組織改編の関係で労災保険業務課長を拝命しました植松です。よろしくお願いします。
○岩村部会長 どうぞよろしくお願いします。それでは、本日の議事に入ります。お手元にあります議事次第に沿って進めさせていただきます。第1の議題ですが、「労働基準法施行規則及び労働者災害補償保険法施行規則の一部を改正する省令案要綱」についてです。本件は厚生労働大臣から労働政策審議会会長宛の諮問案件です。そこで、まず事務局のほうから説明をいただきます。まず、省令案要綱を読み上げていただき、その上で内容の説明をお願いします。
○労災管理課長補佐 それでは資料1をご覧ください。厚生労働省発基労1206第1号 労働政策審議会会長諏訪康雄殿。別紙「労働基準法施行規則及び労働者災害補償保険法施行規則の一部を改正する省令案要綱」について、貴会の意見を求める。平成22年12月6日 厚生労働大臣細川律夫。次のページです。労働基準法施行規則及び労働者災害補償保険法施行規則の一部を改正する省令案要綱。第一 障害補償並びに障害補償給付及び障害給付に係る身体障害の障害等級の見直し、労働基準法(昭和22年法律第49号)に基づく障害補償並びに労働者災害補償保険法(昭和22年法律第50号)に基づく障害補償給付及び障害給付を行うべき外貌障害に係る等級について、男女差の解消及び等級の新設を行うものとすること。第二 施行期日等。一 この省令は、平成23年2月1日から施行するものとすること。二 この省令の施行に関し、必要な経過措置を定めるものとすること。以上でございます。
○労災管理課長 内容について私から説明します。参考資料が資料1の後に付いていますけれども、1-1はその概要と1-2が参照条文です。私からは参考1-3に沿って説明をします。参考1-3外ぼう障害に係る障害等級の見直しに関する専門検討会報告書(概要)についてというものがあります。本年の6月に外ぼうの著しい醜状に関する男女の障害等級に5等級の差を設けているということについて、憲法第14条第1項に違反するという地裁段階での判決が確定したということです。具体的には5月27日に京都地裁であった判決ですが、厚生労働省として、それを受け止めて控訴しないという判断をしました。したがって6月10日付で判決の確定がなされたということです。
この判決については、私ども受け入れたわけですけれども、判決文そのものにおいては男女の等級に5等級の差を設けていることについては憲法違反ということでしたけれども、そもそも異なった等級にする差が設けられていること自体は、直ちに違憲であるとも言えないというような表現もありまして、改めて行政としてどのような等級づけをするのかということが求められたという状況でした。したがって、判決の趣旨などを踏まえて、専門検討会を設置し、8月5日から3回にわたって検討を重ねてきたところです。その検討会を受けて、今般、省令案要綱を取りまとめてお諮りしているというものです。まず、専門検討会については、法律的な観点だけではなくて、医学的観点からの検討も行ったところです。検討内容については、判決の趣旨、男女差を残すべきやむを得ない事情の存否、男女差を解消する方向での障害等級設定の在り方ということで、この中で法律的な面、医学的な面、双方からの検討が行われたということです。右側の検討会報告書のポイントとして、男女別となっている外ぼう障害に係る障害等級の規定を改め、性別に関わりない規定とするということです。男女に差を設けないということです。そして、2番目の○で、現行の女性の等級を基本として改正することということです。下の障害等級表(抄)をご覧ください。右の現行の障害等級については、女性の外貌に著しい醜状を残すというものが第7級ということで、これは年金の給付があるという手厚い給付の段階が第7級です。これに対して、男性の外貌に著しい醜状を残すものは第12級という形になっており、女性の外貌に醜状を残すものも同じく第12級、男性の外貌に醜状を残すものが第14級という扱いになっていました。改正後については、この男性の女性のという表現を改め、著しい醜状を残すものについては、第7級というものに統一すると、外貌に醜状を残すものについては第12級に統一するということで、女性の等級を基本として男女差を解消するということです。その次に第9級に外貌に相当な醜状を残すものというものを新設しましたが、これについては医療技術の進展を踏まえて、醜状の程度を相当程度軽減できるとされた障害に限り、新たに設定する障害等級により評価するという扱いを考えているということです。その詳しい内容は、参考1-4の報告書に書いてありますが、参考1-5で若干補足的に説明を申し上げます。
参考1-5に、著しいという要件にあたるものの右側に認定基準の概要が書いてあります。大きく2つに分かれている訳ですが、真中の段の判断基準の?Aのところをご覧ください。顔面部にあっては、鶏卵大面以上の瘢痕、長さ5センチメートル以上の線状痕又は10円銅貨大以上の組織陥没については、現在著しいという扱いをしています。これらのうち、いわゆる面的な広がりのあるものについては、引き続き著しい醜状ということで取扱うことを考えていますけれども、長さ5センチメートル以上の線状痕というようなものについては、現在医療技術が進展しているということで、かなりの程度外見からは判別がつきにくいところまでの手術対応ができるというようなこともありますので、線状痕を取り出して相当の醜状という位置付けにするということを考えているということです。以上の施行規則改正については、今後パブリックコメント、公聴会という手続きを経て、規則の制定の手続を進めていきたいと考えているところです。以上です。
○岩村部会長 ありがとうございました。ただいま説明があったところですけれども、ご意見ご質問などがありましたらお願いします。
○黒田委員 今回の京都地裁の趣旨を踏まえた外ぼう障害に係る障害等級の見直しには、賛同したいと思います。その中で今回新設される第9級に外貌に相当な醜状を残すものについては、長さ5センチメートル以上の線状痕ということで、いま説明がありましたが、イラスト等にも示されておりますけれども、是非、顔面部の長さの5センチメートル以上の線状痕ということについては、今後適正な運用をお願いしたいと考えています。以上です。
○岩村部会長 ありがとうございます
○齋藤委員 外ぼうによる労災の発生件数がどのぐらいあるのか、事務局のほうで把握していたら教えてほしいんですけども。
○岩村部会長 事務局いかがでしょうか。
○補償課長 平成21年度については415件になります。いわゆる現在第7級に該当するものは13件、第12級の場合、女性については39件、男性は51件で、第14級は一応60件ということになっていますけれども、実はこれ以外にも、顔面だけではなくて、神経症状等の障害を残したりするものですから、単純に数としては言えないんですけれども、全体の件数としては415件で、そのほかに差については、神経症状等の障害を残したものが244件あるということになります。
○岩村部会長 齋藤委員よろしいですか。
○齋藤委員 はい。
○岩村部会長 そのほか、いかがでしょうか。
○輪島委員 いまの説明でということであれば適切な対応なのではないかと思っています。いくつか確認をという意味合いで質問させていただきたいと思います。これまで女性の長い線状痕について、第7級に位置付けられているわけですけれども、新たに第9級というものが新設をされるわけですが、不利益な変更になるのではないかという点がないのかどうかということと、それから諮問文のところは第二の二のところに必要な経過措置というような文言がありますが、その中身がどういうものになるのかということをご説明いただきたいと思います。以上です。
○岩村部会長 では事務局のほうからお願いします。
○補償課長 まず医学的な側面から申しますと、既に線状痕というものは、いま資料等によりご説明しましたように、こういう形で顔に残るということは基本的にないとされています。では、具体的にはどうなっているかというと、昔はここを切りますと表面を表皮の部分から縫ったと、それによって皮ふが盛り上がる形で顔面に残ったんだけれども、いまは表皮の下に真皮という部分がありまして、そこを縫って表面については接着剤等で閉じるんだそうです。そうすれば、こういう形で残ることはほとんど、もういまの段階ではない。そういう意味ではしわのような形で残る場合は当然あり、横に切れば縦に切るよりは少し残るということはありますが、それにしても過去のようなこういう形で傷が残るということはないので、そういう意味では、現在の医療技術を踏まえた形で今回報告書が取りまとめられたということです。
○労災管理課長 それから経過措置の関係ですけれども、本施行規則については、手続が予定どおりということでしたら、2月1日付の施行を予定していますけれども、判決確定日の6月10日に遡った経過措置を設けたいと考えています。
○岩村部会長 よろしいですか。
○輪島委員 はい。
○岩村部会長 そのほか、いかがでしょうか。
○新谷委員 遡っての経過措置を設けていただくということですが、施行日の2月1日もそうですが、この日付は、労働災害が発生した日なのか、申請があった日なのか、あるいはその症状が確定して第12級なり第7級になった日なのか、この辺の取扱い、実務的な扱いを教えていただけませんか。
○補償課長 当然これは、治癒した日ということになります。災害発生日ということではなくて、治癒日にどうかということになります。
○岩村部会長 よろしいでしょうか。
○新谷委員 はい、わかりました。
○岩村部会長 ほかに、いかがでしょうか。よろしいでしょうか。それでは、本件については先ほど事務局のほうからも説明がありましたが、このあと公聴会やパブリックコメントということが手続として予定されています。これらの公聴会などの状況も踏まえて、次回の部会で議論をいただきたいと考えています。それでよろしいでしょうか。
(了承)
○岩村部会長 はい、ありがとうございます。それでは、2番目の議題に移りたいと思います。2番目は、議事次第にあります第2の議題と第3の議題を続けて議論したいと思います。第2の議題のほうは、「社会復帰促進等事業に係る平成21年度成果目標の実績評価及び平成22年度の成果目標について」ということであり、第3の議題は「平成23年度労働保険特別会計労災勘定概算要求について」ということです。では、この2つをまとめて事務局のほうから、まず説明をいただきます。よろしくお願いします。
○労災管理課長補佐 それでは議題2から説明させていただきます。まず資料2に基づきましてご説明する前に、参考2-1、参考2-2をご覧ください。ご承知のとおり、社会復帰促進等事業につきましては、平成17年度からより一層の効率的・効果的な事業の運営を図るため、各事業の性格に応じ成果目標を設定するとともに、平成20年7月に定めました基本方針に基づきまして、PDCAサイクルによる目標管理を行っているところでございます。
この基本方針では、当該年度の評価を翌々年度の概算要求に反映することが示されていますが、これまでの評価は、アウトカム指標やアウトプット指標の達成状況と全体の評価の関係がやや曖昧で、定性的にすぎる嫌いもありました。このため、今回の評価に当たりましては、より客観性や体系性を高める工夫をしています。
具体的には参考の2-1ですが、アウトカム指標を用いた「政策効果」とアウトプット指標を用いた「事業執行率」によりまして、「A」~「C」の3類型に分けて評価を試みています。Aは政策効果も高く、事業執行率も高いもので、評価は「施策継続」としています。Bは政策効果は高いのですが、事業執行率が低いものであり、評価は「施策継続」ですが、「予算額(又は手法等)を見直し」としています。Cにつきましては、政策効果が低いものであり、「アウトカム指標の未達成要因を分析の上、事業の見直し又は廃止が必要」という評価をしています。Cには理論上、上段、下段があるわけですが、どちらがベターなのかというのはいろいろ考え方ができるところでございまして、少なくともアウトカム指標が満たされていないという意味で、同じCという分類にしています。
実績評価結果の概要です。参考の2-2をご覧ください。評価対象事業は53事業ありました。そのうち何らかの見直しが必要であるなどとして、B、Cとした事業は18事業(34%)です。資料2には57事業を記載していますが、うち3事業が平成22年度からの新規事業、1事業については、複数年度管理事業でございまして、評価対象とはしておりません。
評価累計の内訳ですが、Aとした事業は35事業で66%、Bとした事業が3事業で5.7%、Cとした事業が15事業で28.3%となっています。
それでは、資料2に基づきご説明したいと思います。いちばん上の黒の網掛けの部分に記載例がありますように、平成21年度の成果目標につきましては、上段にアウトカム指標、中段にアウトプット指標、下段にそれらを踏まえました評価を記載しております。なお、その下に予算執行率も併せて記載してありまして、Aと評価された事業であっても、予算執行率が80%以下である事業については、予算額は「適正な水準に見直し」とのコメントを付けています。
主に評価対象事業のうち、Cと評価された事業を中心にご説明したいと思います。1頁の事業番号3ですが、平成21年度アウトカム指標のうち?@の「メンタルヘルス支援事業を利用した事業場において、当該支援を踏まえ、新たなメンタルヘルス対策に取り組む割合を90%以上とする」目標に対して、「86.3%」だったため、未達成となりCとしております。要因につきましては、経済の低迷から新たな対策への取組に躊躇する事業場があったためと分析しておりまして、平成22年度においては、ニーズの高い事業場に絞って集中的に支援を行うという観点から、メンタルヘルス支援事業を廃止し、事業場のニーズを把握している「メンタルヘルス対策支援センター」の充実を図ることとしています。また、22年度のアウトカム指標も「メンタルヘルス対策支援センターに相談した結果、有効、有用であった旨の回答割合を90%以上にする」などの見直しを行っています。なお、本事業につきましては、本事業のうち労働者の健康づくり対策支援業務については、「中央労働災害防止協会」に関する省内事業仕分け結果を踏まえ、廃止することとしております。
次に事業番号4です。21年度のアウトカム指標のうち、?@の「化学物質のリスクアセスメント及びMSDSに係る研修参加事業場において、化学物質のリスクアセスメント等研修内容に基づき、取り組む割合を90%以上とする」に対しまして「73.8%」であったため未達成、Cとしております。要因は、3の事業と同様、経済の低迷から新たな対策への取組に躊躇する事業場があったためと分析しています。22年度は研修事業を行わないため、アウトカム指標も「モデルMSDSのホームページアクセス数を前年度(654万件)以上にする」などに変更しております。
事業番号5ですが、アウトカム指標のうち?@の「快適職場推進計画の認定件数を年間3,210件以上とする」に対し、「3,081」件であったため、未達成、Cとしております。こちらも要因は、景気後退の影響があったためと分析しています。認定件数を過去最高件数であった平成17年度の3,210件とすることなどを22年度のアウトカム指標としています。なお、本事業は22年度限りの事業です。
4頁、事業番号8です。21年度のアウトカム指標のうち、?Aの「セミナーに参加したバス事業者の80%以上から『運行計画作成支援システム(仮称)』を活用をしたい、また活用を検討したいとの回答を得る」が「76%」であったこと、また、アウトプット指標のうち、?@の「計1,400のトラック事業者」に対して「693」、「計700のバス事業者等」に対して「696」であったため未達成であり、Cとしています。こちらも要因は、セミナーの開催時期が第4四半期となり、他の団体が行う労務管理セミナーと日程が重なり参加できなかったため、また予定参加者数を収容できる会場の確保ができなかったためと分析しています。22年度については、トラック事業者とバス事業者の他に、荷主や旅行業者もセミナーへの参加対象者とすることとし、「80%以上から、セミナーが有益であった旨の回答を得る」ということを追加しています。
事業番号11です。アウトプット指標、「助成金支給件数503件」に対し「407件」であったため、Bとしています。要因は予算の範囲内で効果的な助成を図るために、平成21年4月から支給要件を健康診断を受診したパートタイム労働者数が「1人以上」から「延べ4人以上」に見直したためと分析しています。22年度のアウトプット指標は、この支給要件で支給することが可能な最大限である「450件」としています。
7頁の事業番号22です。21年度のアウトカム指標のうち?@の「事業対象事業場のうち、改善措置を講じた事業場の割合が84.6%以上」に対しては「75.5%」、また、?Dの「手すり先行工法を採用するとの回答割合を80%以上」に対しては「70.6%」。さらにアウトプット指標のうち、?Bの「256事業場に対し、199事業場」であったため、未達成としています。要因は、こちらも経済情勢の悪化を受け、措置等の実施に慎重な姿勢をとる事業場が見られたためと分析しています。
続いて事業番号24、じん肺等対策事業ですが、21年度のアウトプット指標のうち、「石綿健康管理手帳の新規交付数を5,231件以上」に対しては「3,880件」であったため、Bとしています。当該手帳については、必要とされる方々からの申請に基づき交付していますが、引続き制度の周知に努め、要件を満たす方々への交付を徹底することとし、22年度は21年度実績である3,880件以上としています。
続いて事業番号25です。21年度アウトカム指標のうち、?@のiiの「7割以上」に対しては「69.2%」、?@のiiiの「4%の増加」に対し「1.1%の増加」、?Aのiiの「80%以上」に対し「76.1%」であったため、Cとしています。要因は、受診勧奨や説明会の内容が直接的・具体的でなかったためと分析しています。
事業番号27です。こちらは21年度のアウトカム指標のうち、?Aの「視聴覚媒体の利用者数、1万3,055人」に対し、「7,500人」、アウトプット指標のうち「新規化学物質を1,200件追加掲載」に対し、「1,064」件であったことから未達成としています。要因は、施設の一部を閉鎖したことで、1施設分の利用者が減ったこと、新規化学物質の届出件数が少なかったためと分析しています。このため、22年度は「視聴覚媒体の利用者数は7,500人の前年度以上」、「届出された物質の全件追加掲載」とそれぞれ変更しています。
事業番号29です。21年度アウトカム指標のうち?@の「1,300回以上」に対し「499件」、アウトプット指標のうち、「522事業場」に対し「178事業場」であったためCとしています。要因は、産業保険活動には一定の理解を示すのですが、実施する余地がないとする事業場が多かったためと分析しています。このため、22年度はそれぞれの件数を低く設定しています。
事業番号30です。21年度アウトカム指標のうち、?Aの「86.5%以上」に対し「74.6%」であったため、Cとしています。要因は、セミナー等への参加者はメンタルヘルス不調者の職場復帰に関する具体的な事例を知りたいとの要望が寄せられているなど、セミナーの内容が受講者のニーズに必ずしも合致していなかったためと分析しています。22年度はセミナーの内容を見直した上で、記載のとおり設定しています。
事業番号33です。21年度アウトカム指標のうち?@の「1,900回以上」に対し「1,878回」。?Aの「20年と比較し、4%以上減少」に対し、林業はプラスマイナス「0%」、工業はプラス「12.5%」、アウトプット指標の「参加者数3万6,800人以上」に対し、「3万3,106人」であったためCとしています。要因は、アウトカム指標に関しましては災害防止団体の人員不足、アウトプット指標に関しては景気の悪化に伴いアスベストやメンタル対策向けの教育研修を優先するなど、参加する講習を企業が絞っているためと分析しております。
事業番号35番です。21年度アウトプット指標のうち、「相談件数5万5,650件以上」に対し、「5万1,471」件であったためBとしています。要因は、本事業を実施するため全国33カ所に設置した「労働時間等相談センター」の周知広報が不十分であったためと分析しています。このため、22年度は当センターの更なる周知を行うこととし、22年度の目標は21年度と同様としております。
事業番号37です。アウトプット指標の「90%以上」に対し、「82%」であったため、Cとしています。要因は、景気悪化の影響等もあり、事業から脱退した事業主が相当数あったためと分析しています。このため、22年度は本事業に対する事業場の意欲等を確認した上で、対象集団を選定するよう努めることとし、22年度の目標は21年度と同様としています。
事業番号39です。アウトカム指標の「労災事故発生率を0.3%以下」に対しまして「0.37%」であったためCとしています。要因は、労災事故の発生率が高い「溶接」の職種における技能実習生の数が増加しているためと分析しています。このため、評価欄にも記載がありますが、「溶接」に関する受入団体、企業に対する指導・啓発を重点的に行う等の工夫を検討するとともに、22年度のアウトカム指標についても記載のとおり見直しをしております。
12頁、13頁の事業番号46です。独立行政法人労働者健康福祉機構が実施する事業ですが、アウトカム指標のうち?@の「有用であった旨の評価を80%以上得る」に対し「77.9%」であったためCとしています。満足度・調査において、診断結果等の報告書の内容のわかりやすさに対する満足度が伸び悩んだことなどが原因であると分析しています。平成22年度については満足度が伸び悩んだ診断結果報告書の項目について、わかりやすく記載するなど、改善策を講じ、利用者のニーズに的確に答えられるよう、更なる努力を行っているところであり、引続き80%以上を目標としています。
16頁の事業番号56です。障害者職業能力開発校の施設・機器の整備を行うための経費であり、アウトカム指標の「就職率60%以上」に対しまして、「55.0%」であったためCとしています。要因は、依然として厳しい雇用失業情勢にあると分析しており、22年度においては、障害者職業能力開発校とハローワークなど、関係機関と連携をより深め、就職支援に一層配慮することなどを通じ、就職率の向上を目指し、引続き60%以上の就職率を目標としています。
なお、個々の事業につきましては以上でございますが、今年度においても費用負担者であります、事業主団体の参画による検討会を、7月7日と11月30日にそれぞれ開催してご審議いただいているところです。その場では、独立行政法人が実施している事業に関して、アウトプット指標やアウトカム指標だけではなく、入札段階において競争原理が導入されているのかという意見や、例えば産業保健施策といった大きな政策について、それがどのような方向に向いているのかについても説明すべきではないかという意見もございました。このようなご意見については、今後検討させていただきたいと考えています。
次に参考の2-3です。社会復帰促進等事業費の推移をお示ししているものです。ご承知のとおり、「平成21年度予算までに平成17年度予算の4分の1を削減する」という目標に基づきまして、計画的削減を図ってまいりました。平成21年度当初予算額で、目標を15億円上回る902億円となり、目標を達成したところです。しかしながら、緊急雇用対策の一環とする未払賃金立替払の請求増加への対応としまして、平成21年度対事業補正予算に、その関係経費74億円が計上されたため、976億円となったところです。平成22年度の予算についても、PDCAサイクルによる不断のチェックに加え、事業仕分け、事務事業の横断的見直し等も行われた結果、対前年度補正後予算比で16.2%、158億円のマイナスとなっております。平成17年度予算の約3分の1を削減した額となっております。また、平成23年度の概算要求においても、引続き徹底した精査を行い、平成22年度予算比で3.2%、26億円の削減を行い、792億円の要求を行っているところです。これは、平成17年度予算の約3分の1である430億円を削減した額となっているところです。
また、参考2-4につきましては、社会復帰促進等事業の根拠となる労災保険法第29条の各号ごとの事業の予算額の推移を整理した資料です。以上、議題2についての説明は以上でございます。
○労災管理課長 引き続きまして、資料3に基づきまして、予算のご説明を申し上げます。資料3は、平成23年度の労災勘定の要求概要です。平成22年度と比較いたしまして、歳入につきましては、138億円減で要求をしています。その主な要因は雇用者所得がマイナスになっているということなどから、保険料の歳入が減になるという見込みで減をしているということです。具体的には他勘定より受入れというところでございまして、ここの減がほとんどということです。歳出につきましては、引き続き労働災害の減少が見込まれますので、保険給付費の減などを中心といたしまして、歳出につきましては41億円の減ということにしております。その中では社会復帰促進等事業費についての減も26億円行っているということです。
続きまして、参考3-1の労災保険経済概況ということで、ストックも含めまして、状況をご説明申し上げます。平成18年度から22年度予算まで書いてありますが、収入については、平成20年度と比べて平成21年度は減少していることは、お気づきだと思います。平成21年度につきましては、料率改定がありまして、保険料率が引き下げられた関係で、収入が減となっているところです。支出につきましては、対象が保険給付費等ですので、それよりなだらかな減少になっています。平成21年度段階から、決算上の収支がマイナスとなっておりまして、積立金の取崩し段階に入っているということです。労災保険の積立金は、年金給付に充てるというものですが、年金の受給者数が減少しはじめたことに伴いまして、労働災害の長期的な減少の中で、これから積立金の取崩し段階に入っているということで、22年度予算におきましても取崩しを予定しています。
積立金の累計額につきましては、平成21年度については増えていますが、これは( )書きにありますように、船員保険の統合に伴う船員保険積立金の船員保険特別会計から移し変えたという額が983億円ありますので、それを除くと取り崩しているということです。
続きまして参考3-2、参考3-3で「事業仕分け」の状況をご説明申し上げます。参考3-2は、去る10月27日に行われた特別会計に関する事業仕分けです。次の頁に、10月27日の評価結果が一覧になっていますが、労働保険特別会計につきましては、雇用保険二事業関係の10個の事業が個別事業として取り上げられて、当日、事業仕分けを受け、一番最後に労働保険特別会計全体の制度のあり方という形での仕分けを受けたということです。労災保険につきましては、「制度のあり方」というところで、雇用保険と一括してご議論がなされました。そこにおきまして、枠組みのあり方ですが、労災保険の社会復帰促進等事業については原則廃止という評価を受けました。積立金の取扱いについては、現状維持すること、剰余金の取扱いについては、事業の見直しにより、剰余が生じた場合には、必要な積立金の水準を維持しつつ、受益者負担の引き下げを図るべきという指摘を受けました。
次の頁から評価者のコメントがあります。基本的には雇用勘定関係の指摘が多いということですが、この2頁の例えば、労災・雇用勘定にある普通財産を一般会計に無償で移管すべき。3勘定で計上されている事務取扱費の効率化の必要。雇用保険二事業と未払賃金立替払制度はPDCAサイクルの評価・労使の意見を踏まえた上で一部廃止というような指摘を受けました。あるいは2頁のいちばん下ですが、社会復帰促進等事業は特別会計としては廃止。3頁目です。例えば社会復帰促進事業は受益と負担の関係が崩れていて必要ない。労災保険は認定を除いて自賠責のように民営化・業務委託を検討すべきというような指摘などがあります。細かなことは省略しますが、以上のような特別会計仕分けの評価を受けたということです。
参考の3-3につきましては、特別会計仕分けは制度全体でしたが、行政刷新会議・省内の事業仕分けにおきまして、様々な観点から社会復帰促進等事業についてご指摘をいただいているものを取りまとめたもので、これとPDCAサイクルのABC評価などを含め総括した表です。一つひとつご説明するのは煩瑣ですので、かいつまんで申し上げますと、例えば労働者の健康保持増進対策事業は、先ほどPDCAサイクルで申し上げましたように、C評価ということです。これは例えば、行政刷新会議の中央労働災害防止協会の仕分けという、法人仕分けにおいては事業の廃止という指摘を受けました。このようなPDCAサイクルや刷新会議の結果も踏まえまして、中央労働災害防止協会委託分につきましては、22年度限りで「廃止」というような措置をしているのが表の見方です。基本的に私どもはPDCAサイクルに基づいて「廃止」その他を判断していますが、一方で事業仕分けの結果も受けまして、事業の見直しもしていくということです。
未払賃金の立替払事業につきましては、PDCAサイクルにおきましてはA評価ということです。また、倒産件数の減少に伴って、請求件数減に伴う予算減は行っておりますが、基本的に来年度の要求はしているということです。
2頁の19をご覧ください。19は労災診療費審査体制等充実強化対策費です。これは(財)労災保険情報センターという法人の事業仕分けを行政刷新会議で受けたということです。事業仕分けの結果は、実施機関を競争的に決定ということですが、私どもで検討した結果、事業仕分けの結果を踏まえて、委託事業そのものを廃止いたしまして、事業規模縮減の上、国による直接実施に切り賛えるというものです。したがいまして、この事業を含めたいくつかの事業につきましては、法人を使う事業としては廃止しておりますが、国で直接実施するという事業が何事業かあります。それはそれぞれ記載してありますので後ほどご覧ください。
42番、女性と仕事総合支援事業の関係です。これにつきましては、行政刷新会議第2弾の事業仕分けを受けまして、事業そのものは平成22年度限りで廃止し、事業目的・手法につきましては、女性と仕事の未来館の活用についてゼロベースで見直して、平成23年度は男女ワークライフ支援事業として予算要求を行ったということです。しかしながら、平成23年度に要求した事業につきましても、去る11月17日の刷新会議の再仕分けを受け、男女共同参画と男女ワークライフバランスの重要性についてはご評価をいただいたわけですが、「事業廃止」、「女性と仕事の未来館」の「閉鎖」という指摘を受けたということです。今後、今回の「評価結果」に加えまして、女性関連施設や利用者の声などを踏まえまして、女性の就業支援という観点から必要な事業の内容や、施設の取扱い等について、予算編成まで時間はありませんが、鋭意検討を行っています。
その他いろいろありますが、一つひとつのご説明は申し上げません。いちばん最後の頁の55独立行政法人のJILPTの関係につきましては、これも事業仕分けを受けまして、労働大学校については研修の維持向上を図りつつ、規模縮減の上国が実施するという形で、これについても基本的に国に研修部分を移管するなどの見直しを図ることにしております。以上、資料3についてご説明を申し上げました。
○岩村部会長 ありがとうございました。ただいま議題2、議題3につきまして併せて事務局からご説明いただいたところでございます。これについて、ご意見、ご質問などがありましたらお願いします。
○齋藤委員 社会復帰促進事業の評価の考え方と方向なのですが、評価軸として、アウトプット指標とアウトカム指標の2種類で評価されている。客観的にわかりやすいということで評価されているのですが、出てきた評価数値が80%を超えないと駄目とか、全部いっていないと駄目とか、数字を以って廃止や継続というのを決めておりまして、そういったものが果たしていいのかどうか。ある程度効率性や合理性という観点が必要だと思うのですが、これに重点を当てるのではなくて、社会的必要性、その事業がどうしてできたのか、様々な観点から検討して、加えて専門部会である当部会で公労使の議論を得て、継続や廃止を決定するべきではないかと思っているのですが、どのようにお考えになっているのでしょうか。
○岩村部会長 事務局のほうで。
○労災管理課長 この社会復帰促進等事業の評価につきましては、正直なところいろいろ試行錯誤をして、毎年少しずつ変更しながらやってきているという実態があります。私どもとしましては、できるだけ定量的な評価をということでやりながらも、総合的な評価を加えたいという気持ちは持っております。
例えば、ある種特定の事業について、目標が5つも6つもあるようなものがありまして、そのうちの1つ、ほんの僅かの数%を満たさないというものも、現状ではC評価というような括りにしています。これは自己に対して厳しくというつもりもあるわけですが、そのようなものにつきましては、当然ながら、現在の評価の方法ですとCということでありましても、ほとんどの項目については満たしているとか、あるいは社会的な意義などを踏まえた上で、見直しをするという対応を図っております。ただ、ABCという評価はかなりクリアなカットでやっているものですから、そこら辺で多少ご指摘のようなことがあれば、もう少し来年度に向けて、どのような表示の仕方があるのかを含めた見直しについては検討してまいりたいと考えています。
○齋藤委員 特に中小企業の労災関係なのですが、大企業はほとんど自分の会社で労災についてはきちんとやられていると思うのですが、中小においては、そういう体制ができていないのがたくさんあり、そういったところの評価があまりよくないから削られるというのは、非常に懸念をしておりますので、そういうところについてもきちんと検討していただければと思います。
○輪島委員 いま齋藤委員がおっしゃった点は、非常に重要だと思います。ただ、私どもの理解では、いまのところまだ発展途上というように思っていて、特に参考の2-3の説明にあるように、平成17年から平成21年度までの目標として、4分の1をカットするということで、平成17年、18年、19年、20年、21年ということで、PDCAサイクルをようやくゴロッと一回転させて、ここまできているので、手法については、課題はたくさんあると思うのです。確かに80%という目標で77%でCというところも、本当にそれが適切な目標なのかどうかということの手法も含めて、まだ開発段階と思っておりますので、もう少し適切な手法が今後開発されるのではないかと。それから、ある意味で平成17年度から事業仕分け的なことをずっとやってきたということも事実なので、そのことも評価をしつつ、今後に期待をするというところでご理解をいただければなと思います。○新谷委員 この仕分けの内容なのですが、特に社会復帰促進等事業については、いまいただいている資料でいくと、57事業、これだけ対象となったすべてなのですか。最初に確認をさせてほしいのですが。
○労災管理課長 社会復帰促進等事業について、ここで掲げておりますのは、あくまでPDCA評価という形で評価をしているものです。当然のことながら、社会復帰促進等事業の中には、例えば車椅子、義手の関係ですとか、ほとんど保険給付に類するものもありますので、そういうものについては、一般の事業と同じという評価はできないということで、いままでPDCAサイクルの表の中には入れてこなかったという経緯がありますので、これについてはいわゆる事業的なものについて、ピックアップをしている表です。
○新谷委員 その上でここに出ていないそういった付加的な給付も含めて、事業仕分けでは原則廃止という判定が下ったわけです。確かに仕分け人の方から指摘を受ける部分も確かにあったのかもしれません。独法を経由していろいろな事業をやられているのはあったかもしれません。それにしても、いま、ご説明にあったように、被災労働者の付加的給付、特に車椅子や義手、義足のような、これから社会復帰をしようというときに、非常に重要な施策であるとか、遺児の奨学金であるとか、もちろん企業倒産における未払賃金の立替払制度の部分も含めて、原則廃止の対象として上げられたわけでありますから、非常にこの点については乱暴な仕分けがされたと思っています。この点については、先日開催されました、労働政策審議会の本審でも触れさせていただきましたが、これは明らかに労働者の命と健康を守る事業に対する逆行、後退につながるということで、非常に危惧をしています。
また、原則廃止ということで、先ほどの仕分け人の意見の中にも、一般会計でこれをやってはどうかという意見があったようですが、これは全額を使用者、事業主負担でやっていただいている事業ですので、それは違うのではないかと非常に感じております。企業の営利活動の中で発生した事故に対する補償であり、それに関連する事業ですので、これは事業主の負担で全額やっていただくべきものだというように感じています。
いずれにしましても、こういった重要な決定、判定が労働政策審議会を経ずに、一方的に看板がかけられまして、それに基づいて、今後政府として推し進めていくということについて、非常に危惧をしておりまして、公労使三者の労働政策審議会の中で、是非十分な審議をするべきだということを、改めて申し上げておきたいと思います。
○岩村部会長 承っておきたいと思います。そのほか、いかがでしょうか。
○齋藤委員 平成23年度の労働保険特別会計の要求の部分なのですが、歳出のほうで給付費が減額になっています。先ほどの説明では、労災の発生件数が少なくなっているということを言われているのですが、精神障害とか最近多くなっていますので、そういうものを考えて、少なくていいのかどうかという部分と、社会復帰促進事業費も、23年の要求額が減っておりますが、こちらの減額している理由を、先ほどご説明があったのであれば、もう一度教えていただきたいのですが。
○労災管理課長 給付費につきましては、確かに減ってはいますが、対前年度比99.4%ということで、これは実際に労働災害の減少の要因が、例えばそれは景気が低滞していてかもしれませんが、そういうことも含めて実態として統計的に減っている部分を私どもで計算して、これで十分予算は確保できるだろうと、もちろん精神障害などの新たな課題というものも生じてはいますが、マクロの給付費としてはこれで確保できると考えているということです。
それから、社会復帰促進等事業の関係については、一部未払賃金立替払事業のところで申し上げましたように、景気の動向から申し上げて、平成23年度については若干平成22年度よりは立替払の金額が少なくなるであろうというような見込みですとか、あるいは、特にこの間行われてきた省内の事業仕分けにおきましては、特に法人にいく間接経費の削減というものを中心にやってきたという経緯がありますので、そういう、まさに無駄な部分の排除などを積み上げて、この額を減額しているということでございます。
先ほどの資料2-3をご覧いただけばわかりますように、平成21年度から22年度についてはかなり大幅な削減を行ったわけですが、平成22年度から23年度につきましては、いま申し上げたような範囲内での削減ということでして、労働者のセーフティネットとしての必要な事業については確保しているつもりでございます。
○岩村部会長 よろしいでしょうか。
○野寺委員 そもそも論で大変恐縮なのですが、刷新会議の社会復帰促進等事業廃止ということが政府の方針であるとすると、来年度要求で社会復帰事業を791億円要求するということは、政府としてどうお考えになっているということなのですか。刷新会議の結論を無視して要求したということになるのでしょうか。それとも、刷新会議の結論の解釈というのは個々の事業で検討する中で勝負して構わないということなのですか。
○労災管理課長 行政刷新会議の特別会計ワーキンググループの評価ということでございます。このワーキンググループにおきます取りまとめ、コメントにおきまして、原則廃止という評価がなされたわけですが、政府としては、これを受けて内閣全体としてどう考えるかということでございます。私どもとしましては、この刷新会議のご指摘につきましては、無駄の排除の徹底の趣旨であろうと受け止めております。社会復帰促進等事業については、引き続き必要な事業であると思っていますが、いずれにしても、無駄の排除の徹底の点検というものをきちんとやっていって、その上で政府部内の調整をして、セーフティネットが後退しないように適切に対応してまいるよう、今後調整を図っていきたいと考えているところでございます。
○田中委員 社会復帰促進等事業に関する考え方について、労災管理課長からいまお話がありました。まさしく、そのとおりだと思います。
事業の仕分けだという話で、原則廃止などという大変乱暴な議論がなされたようですが、この社会復帰促進等事業の中には、ここに評価された部分だけ出しても、これだけたくさんのもの、さまざまな事業があるわけです。その中にも、一例を挙げて言えば、アスベスト、石綿の問題とか、現実にそういう具体的な社会問題、大変大きな問題を議論してきて、また、そういうことに現在進行形で対応しているような問題、それから、メンタルヘルスにかかわるような、健康に直接影響するような問題が多数含まれています。そういう中で、短時間で「はい、この事業は廃止です」と一括りで議論するのは大変遺憾だと。そういった議論のないように。それから、厚生労働省としての、この事業は必要だ、ただ無駄の排除は必要だというようなお考えについては、これはごもっともだと思いますので、一つひとつの事業の内容と、その社会的な影響とか、実際にその事業の持つ内容をよく洗い出しをして、必要なものは当然必要な措置として、やっていっていただきたいと思います。
そもそも労災というのは、職場が安全でない、職場でいろいろな災害が起きるということから始まっているわけですから、その職場の安全をどう担保するのか、確保するのかというところの議論なくしてこの議論というのは成り立たないわけですから、労使でしっかりとその辺を議論して、この社会復帰促進等事業の評価とか予算運用については、部会の中でしっかりと議論を詳細にしていくべきだと考えています。この点についても、厚生労働省のお考えもはっきりとこの場でお聞きしたいと思います。
○岩村部会長 ご意見ということで承っておきたいと思います。
○野寺委員 事業評価の方法ですが、先ほどの資料2のいろいろな事業のご説明の中に、景気が悪いから取組みがうまくいかなかった、というものがいくつかあったと思います。メンタルヘルスもその1つだと思うのですが、かつて自殺が増えてメンタルヘルスの要請が社会的に叫ばれた時期があった。それでできたのだろうと思うのです。景気が悪いから取組みが遅れているというのは、難しいから遅れているということでもあるし、事業主としての最優先は企業が生き残ることでしょうから、そういう意味で遅れているのかもしれません。単にそこのところをあまり強調する評価は、ちょっと本質を見失うのではないかと思うので、お考えいただきたいと思います。
○岩村部会長 ありがとうございます。ほかにいかがですか。よろしいですか。いま話題になった事業仕分けですが、先ほど新谷委員のご発言にもありましたように、12月1日の労働政策審議会の本審で「労働政策審議会会長見解」というものを出しています。その中で、「雇用保険二事業や労災保険の社会復帰促進等事業は、労働者保護や雇用のセーフティネットとして重要な役割を果たしており、労使の議論を積み重ねて作り上げられたものである。今後、政府において事業仕分けへの対応を行う際には、これらの事業の果たしている役割や経緯を踏まえ、雇用労働の当事者でもある労使及び雇用労働政策に幅広い知見を有する学識経験者の意見を尊重していただきたい」という見解が出されたところです。
この見解を踏まえますと、労災保険の社会復帰促進等事業については、事業仕分けで確かに厳しい評価がなされているところではありますが、いま議論の中にもありましたように、これらの事業というのは労使の議論を積み重ねてきたものでして、労働者の安全衛生や保護のための重要なセーフティネットとして大きな役割を果たしているものと認識をしております。
今後、政府において対応を行うに当たりましては、労働の事情に精通し、当事者でもある労使代表と、労働政策に幅広い知見を有する学識経験者の意見を尊重すべきであると考えますので、労働政策審議会労働条件分科会労災保険部会長といたしまして、政府に対し適切な対応を求めたいと思います。
それでは、この議題についてはこのぐらいにしまして、次の議題へ移りたいと思います。第4の議題で「その他」ということです。これにつきましては、事務局のほうから、今年6月の「労災保険業務」の厚生労働省省内事業仕分けを踏まえた対応について3点、「労働保険適用事業場の情報の公表について」が1点、合計4点の報告があるということです。それでは、まず最初に、事務局からこの4点まとめて説明をいただきたいと思います。よろしくお願いします。
○労災保険財政数理室長 まず1点目の報告事項ですが、資料4-1に沿ってご説明します。本年6月の省内事業仕分けにおきまして、長期給付の原資として保有している積立金について、積立金の額が適切なのか国民にわかりやすく説明すべきであるとの指摘がなされました。そこで、社会保障の専門家、あるいは保険数理等の専門家にお願いして、労災保険財政検討会を開催し、指摘された事項をはじめとして、労災保険財政に係る課題について、専門家の方々にご検討いただくこととしました。
この検討会においては、労災の年金受給者数の将来推計方法、労災保険財政の開示のあり方、メリット制の財政への影響などについて検討する予定でございます。第1回は10月12日に開催しまして、明日、第2回を開催する予定でございます。来年夏を目途に最終報告をとりまとめる予定でございます。なお、検討結果については、この部会にご報告させていただく予定です。
○補償課長 続きまして、私のほうから、同じく省内事業仕分けにおいて事務事業の改革として提示した2点、1点目は労災保険の窓口業務の改善、2点目は精神障害等の増加に対応した労災補償の見直し、この2点についてご説明します。
まず第1点目の労災保険の窓口業務等の改善については、資料4-2です。この取組については3つあります。1つは監督署に来庁された相談者や申請者への対応、2つ目は労災申請の後決定がなされるまでの間の申請者への対応、3つ目は不支給決定となった場合の申請者への対応という、入口、途中、出口の各局面における窓口業務の改善を進めるというものです。具体的に申し上げますと、入口段階では、請求することができる保険給付の内容や社会復帰促進等事業について漏れのない説明を行うということ。2つ目の途中段階では、申請後3カ月を経過した事案については、請求人に対して、調査の進行状況や決定時期の見通し等を連絡するということ。3つ目の出口の段階では、不支給決定となった場合に不支給決定となったポイントをわかりやすく説明すること等の取組を進めている状況でございます。また、この取組みの効果を測定するために、平成21年度には相談者や申請者に対するアンケート調査を実施していまして、入口段階では満足度97.8%、途中段階では満足度81.4%という結果になっています。なお、3点目の出口の段階での説明は、今年度からの指示となっています。このアンケート調査につきましては本年度も実施していまして、その集計結果ができ次第、業務改善に反映させるほか、パンフレットやホームページの内容を「わかりやすい」ものに改善するなど、今後とも国民の皆様の声を踏まえた取組を進めてまいりたいと考えています。
2点目は、資料4-3、精神障害等の増加に対応した労災補償の見直しについてです。精神障害等に関する労災請求については、平成11年9月に策定した判断指針に基づいて現場では労災認定を行っているわけですが、指針の策定当時、平成10年には42件であった労災請求件数が、平成21年度には1,136件と、30倍近くに急増していまして、本年度もその増加傾向は続いています。また、一方で、1件辺りの平均処理日数は8.7カ月と、他の傷病等と比較すると相当の長期間を要している状況にあります。そのため、精神障害等労災請求事案の処理について、精神医学的側面、法律的側面から問題点は一体何なのか、また、労災認定の迅速化と効率化を行うためにはいかなる方策が可能なのか等について検討していただくことを目的として、去る10月15日から、医学専門家5名、法律専門家4名からなる検討会を開催し、現在ご議論いただいているところです。なお、この検討会は、来年夏ごろまでに結論を取りまとめていただく予定にしておりまして、その後、現行の判断指針に反映させたいと考えております。
○労働保険徴収課長 それでは、続きまして4点目です。労働保険の適用事業場検索の関係です。資料4-4は、勤務先や就職先の事業主が労働保険に加入しているかどうかということをどなたでも簡単に確認できるよう、厚生労働省のホームページに「労働保険の適用事業場検索」のページを開設することとしたものです。労働者を1人でも雇った場合に、事業主は労働保険に加入するよう法律で義務付けられているわけですが、加入手続を取らない事業所も一定数存在するということがあり、そのような企業で働く方については、労災事故に遭った場合、あるいは失業した時などに、速やかに保険給付を受けられない恐れがあります。そうした中で、労働保険の加入状況を誰でも簡単にチェックできるようにすることで、労働保険未加入の事業者に対して、加入手続を促すことにつながると期待している次第です。
○岩村部会長 ありがとうございました。ただいまご説明いただきました4点について、ご意見、ご質問がありましたら、お願いします。
○林委員 4番目の、労働保険の加入状況をインターネットで確認できるようにするということなのですが、先月の24日、私どもの者が基準局に要請に来たとき、個人事業所のレベルでいうと、そういう情報が別な件で利用される恐れがあるということで、対策をお願いしたわけですが、そのときに、コピーガードというのですか、コピー防止機能を考えているというお答えをいただいているのですが、この関係についてはもう実施されているのでしょうか。
○労働保険徴収課長 はい、実施しています。
○岩村部会長 ほかに、いかがですか。
○小島委員 精神障害の労災認定の件で、お願いしておきたいと思います。この迅速化そのものについては、精神疾患の申請の性格から、申請そのものが本人の症状が緩和したあとに行われることが多くて、時期的にもかなり経ってからの申請ということになりますので、迅速化についてはしっかり議論していただきたいと思います。その上に立って、その中でも2つ問題点を提起して、それも議論していただきたいと思います。
1点目は、精神疾患というのは通常の労災認定とは別の基準があってもいいのではないかと考えています。我々が問題として認識しているのは、労災認定の基準として発症主義というものがありますが、これがゆえに、精神疾患の場合、「発症前の6カ月の間に客観的に精神障害を発症させる恐れのある業務による強度の心理的負荷が認められること」とあります。労災認定全般としては発症主義は理解できますが、精神疾患の場合は、事故に遭遇するというような突発的なものというより、徐々に悪化するというものが大半です。また、発症後も増悪するケースも多い。しかし、現在の基準では、発症日の6カ月前のみを見て、具体的には強度?Vと判定されなければなりませんし、なおかつ他の要素も加わった、相当程度過重というものが求められます。
これに対して、発症時には強度?Tあるいは?Uであっても、その後の業務起因による負荷があって、重篤化して、明らかに業務上の出来事が連続して負荷を与えていたとしても、判断期間外の出来事として加味されず、労災認定されないという実態にあります。発症以降の出来事であっても、業務起因であれば判断基準に含めることができないか是非検討願いたい、というのが1点です。
併せまして、他の労災では、怪我の症状の重い軽いということは認定とは関係ありませんが、精神疾患のみが、疾患を発症しても強度?Vで、かつ相当程度過重でなければ認定されないという非常に高いハードルを課していることについても、検討課題としていただきたいと思います。
2点目は、労災保険の請求立証責任が会社ではなくて被災労働者本人、もしくはその遺族となっている点です。これは心疾患のケースも同様ですが、会社から業務起因ではないとして証明拒否される場合があります。そのときに被災者側が時間外勤務や勤務の実態を調べ、業務上であるとする証明をしなければいけないということになりますが、会社側の協力を得るのは非常に難しいというのが実態です。被災者が亡くなって遺族が申請するときは、さらに難しくなります。労災申請後に監督署による調査が行われますが、会社側証言との食違いによりその後の調査が長期化することもあり、そのことが審査の迅速化の妨げともなっていると考えています。
労災請求主体は被災労働者であっても、労働者弱者の観点から、立証責任を会社側に転換して、安全配慮義務の履行を証明できなければ労災認定するぐらいの、ドラスティックな仕組みを検討したらいいのではないかと考えています。以上2点、検討課題に加えられないかどうか、是非お願いしたいと思います。
○補償課長 まず最初のお話です。ストレス強度?Vでなければ厳しいという話ですが、これは、ストレス強度?Tという、我々が日常生活の中で経験するようなストレス強度のものについては、確かにそのまま労災認定ということではありませんが、いまおっしゃった?Uもしくは?Vの場合は、そのライフイベントが起こったあとの状況、我々は「出来事後の状況」と言っていますが、そこをきちんと調べた上で業務上外を判断していますので、その点については大丈夫かと思います。仮に?Tであったとしても、その?Tの中身を単純に適用するのではなくて、現実問題として、その?Tが?Uという形で評価できないかどうか、その中身自体も踏まえて判断していますので、ご懸念の点は相当数、現場では解消されているのではないかと思います。発症後の問題については、現在開催されている検討会において今後検討されるものと考えています。
2点目の問題は、いま実務的にはどうなっているかというと、請求人の方が、遺族でも結構ですが、請求書を持ってこられる、相談に来られると、その相談に基づいて、当然、現場の職員は可能な限り調査をしていますし、仮にいろいろな形で事業主の方が少し協力されがたいというか、少し躊躇されている場合も、極力説得して、精神障害を発症するような事実があるのかどうか、過労死なら過労死の長時間労働があったのかどうかを含めて調査していると、少なくとも我々は考えています。
○新谷委員 同じく、精神障害の労災認定の基準に関する専門検討会についてです。精神障害の労災認定件数が非常に増えているということで、非常に時宜を得た専門家会議かと考えています。実は、現在、ご承知のとおり、安全衛生分科会の中で、職場のメンタルヘルス対策についての論議が始まっています。これは、6年ぶりの安全衛生法の改正に向けての対策ということで検討がされているわけです。この労災の認定については、その後発生するかもしれない紛争との関係も連動しますので、安全衛生分科会の中での安全衛生対策としての予防という意味での職場のメンタルヘルス対策とも非常に関連が深い部分だと思いますので、是非、連動をきちんと密にやっていただいて、検討を進めていただきたいと思っています。要望として1点申し上げます。
○岩村部会長 そういうご要望があったということでございます。
○輪島委員 1点確認です。資料4-3の判断指針の変更について、手続的にはどのようになるのですか。
○補償課長 先ほど申し上げましたが、報告書をいただいて、判断指針に何らかの形で反映するという形をとっています。そういう意味では、これは局長通達ですので、改正して、同時に審議会にご報告するという形になろうかと思います。
○岩村部会長 よろしいでしょうか。そのほか、いかがですか。よろしいでしょうか。
(了承)
○岩村部会長 ほかにご意見がないようでしたら、これをもちまして本日の部会は終了させていただきたいと思います。本日の議事録の署名委員ですが、労働者代表の田中伸一委員、使用者代表の伊丹一成委員にそれぞれお願いします。皆様、今日は夜遅く、お忙しいところを、ありがとうございました。以上で終了いたします。
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