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2010年12月13日 第2回今後の高年齢者雇用に関する研究会

職業安定局高齢・障害者雇用対策部高齢者雇用対策課

○日時

平成22年12月13日(月)13:00~15:00


○場所

財務省共用第108会議室(合同庁舎4号館1階)


○出席者

岩村教授、小畑准教授、権丈准教授、駒村教授、佐藤教授、清家塾長、藤村教授


中沖高齢・障害者雇用対策部長、土田高齢者雇用対策課長


上田高齢者雇用事業室長、望月高齢者雇用対策課長補佐


長山高齢者雇用事業室長補佐


○議題

(1)高年齢者雇用対策について
(2)その他


○議事

○清家座長 それでは、時間になりましたので、「第2回今後の高年齢者雇用に関する研究会」を開催いたします。
 本日は、御多忙のところお集まりいただき、誠にありがとうございました。
 それでは、早速議事に入りたいと思います。本日は、高年齢者雇用対策についてを主な議題としたいと考えております。
 まず、事務局より資料の御説明をお願いいたします。
○望月高齢者雇用対策課長補佐 では、事務局より資料の説明をいたします。
 本日は、まず資料1「関係資料」をご覧いただきたいと思います。関係資料の中で、本日は11のテーマに基づきまして、前回御意見いただいた点も踏まえまして資料を提出しております。
 それでは、おめくりいただきまして1ページ目をご覧いただければと思います。
 まず、高年齢者雇用と若年者雇用の関係でございます。
 図表1をご覧いただければと思います。高齢者層及び若年者層の人口の推移につきましてグラフを載せております。
 2009年と2030年をご覧いただければと思います。若年者と高年齢者につきまして、それぞれ推移を載せておりますけれども、高年齢者が2009年で941万人、人口がございますけれども、2030年には818万人になり、123万人減少すると推計されております。これに対しまして、若年層の方でございますけれども、2009年が2,050万人ですけれども、2030年には1,533万人、517万人減少すると予想されております。
 これを見ますと、若年者、高年齢者、ともに減少するということが予想されておりますけれども、若年者の方が減少の幅が大きいということになります。
 続きまして、図表2をご覧いただければと思います。こちらは、先般も載っておりました、労働力市場への参加が進まないケースと参加が進むケースの場合に分けました、労働力人口の推移の見込みでございます。
 これを見ますと、15~29歳、30~59歳、60~64歳、65歳以上と分けてみますと、すべて減少していくのですけれども、どの年齢層におきましても労働力市場への参加を進ませるような積極的な労働政策が用いられることによりまして、その減少の幅がある程度食いとめられるということが見てとれます。
 続きまして、3ページ目をご覧いただければと思います。
 図表3でございますけれども、こちらでは年齢別に2004年と2009年の人口、労働力人口、雇用者数を比較しております。
 まず、便宜的に性別計でご覧いただければと思います。人口は、15~29歳で2004年から2009年に11.8%減少しております。それに対しまして、労働力人口の方はマイナス12.2%、雇用者数は11.4%減少となっておりますので、ちょっと幅はございますけれども、大体人口とか労働力人口の減少程度に15~29歳の雇用者が減少しているということが見てとれると思います。
 また、雇用者を男女別に見てまいりますと、男性で55~59歳の雇用者がマイナス1.7%、2004年から2009年にかけて減少しておりますけれども、それに対しまして女性では9.6%増加しております。また、60~64歳では、男性では26.0%増加しているのに対し、女性では39.3%増加しておりまして、女性の雇用者数が高年齢層で増えているということが見てとれると思います。
 続きまして、図表5、6をご覧いただければと思います。こちらは、若年層につきまして、どのようなミスマッチがあるかを示したグラフでございます。
 まず、図表5をご覧いただければと思います。23年3月卒の大卒求人倍率について見ますと、1,000人以上の求人倍率が0.57倍に対しまして、1,000人未満では2.16倍となっておりまして、企業規模による求人倍率の差がかなり大きくなっております。
 また、高卒で、99人以下、100~499人、500~999人、1,000人以上と規模別に見てまいりますと、規模が大きいところほど充足率が高くなっておりまして、中小企業ではまだ求人に対しまして充足している分が少ないということが見てとれます。
 以上によりまして、市場規模によりまして、かなり若年の就職にミスマッチが生じているということが見てとれると思います。
 続きまして、5ページをご覧いただければと思います。
 図表7、図表8は、若年層の雇用調整につきまして見ております。
 まず、図表7をご覧いただければと思います。雇用調整を行う場合、高年齢者、若年者、非正規労働者のどちらの雇用維持を優先するかを聞いたものでございますけれども、どちらともいえないが68.1%となっております。2番目に、若年者の雇用維持を優先すると答えたところが29.0%となっております。それに対しまして、高齢者の方は2.9%となっておりまして、若年の方は長期的な視野に立って企業が採用などをしていると考えられますので、雇用調整の対象に、高年齢者よりはなりにくいということが見てとれます。
 また、図表8をご覧いただきますと、こちらは労働経済動向調査で、近年の雇用調整のやり方について見ております。ここで特に2008年から2009年にかけて、かなり跳ね上がっておりますけれども、新規学卒の抑制ということが、これまでもかなり高い水準で下がってきたのですけれども、2008年から2009年にかけまして上がっておりまして、7%となっております。
 これに対しまして、雇用延長で雇用面での対応をしたというところは、これまでも低い水準であったのですけれども、2008年から2009年にかけては、やや右肩上がりに急上昇しております。
 以上が若年と高年齢者の関係の資料でございました。
 続きまして、6ページ以降は、各国の高年齢者雇用対策について資料を用意しております。
 7ページをまずご覧いただければと思います。
 高齢化率につきまして、国別にグラフを載せております。1950年代を見ますと、特に日本は5%程度の高齢化率だったのですけれども、2050年には39.6%と、4割近くの高齢化率になることが予想されております。また、注目されますのが韓国で、1950年ではかなり低い水準だったのですけれども、日本と同じように急激に上昇していきまして、2050年には34.2%になると予想されております。
 それに対しまして、欧米諸国では、高齢化率は同様に上がっているのですけれども、日本や韓国に比べて、その上がり方は低くなっております。特に最近では、上昇傾向にやや頭打ちの感じが見られているところが多くなっております。
 続きまして、図表10をご覧いただければと思います。これは、就業率と実引退年齢を国別に比較したものでございますけれども、就業率の方をご覧いただければと思います。
 便宜的に男女計で見てまいりますと、日本では55~59歳で74.5%となっております。この水準は、他の欧米諸国に比べまして比較的高い水準なのですけれども、スウェーデンでは80.7%となっております。
 これが性別でどのように違っているかを見てまいりますと、55~59歳の日本の男性の就業率は89.2%であるのに対し、女性では60.0%になっております。それに対しまして、スウェーデンでは、55~59歳の男性の就業率が83.4%となっていますけれども、女性の方が日本よりかなり高くなっておりまして、77.9%となっております。特に、女性が比較的就業率が高いことによりまして、全体の就業率を引き上げているという構図が見てとれます。
 続きまして、8ページの図表12をご覧いただければと思います。こちらは、諸外国の高年齢者雇用対策等の概況ということで、年金制度と高年齢者雇用対策の制度がどのようになっているかということを簡単にまとめたものでございます。
 日本につきましては、既に御承知のとおりでございますけれども、年金のところを見てまいりますと、アメリカ、イギリス、ドイツ、フランスと、ここに掲げている国では、将来的に67歳あるいは68歳に年金の受給開始年齢を引き上げることが既に決定されております。特にフランスでは、11月に施行されました法律によりまして、2023年までに段階的に67歳に引き上げることが決まっております。
 また、高年齢者雇用対策につきましては、アメリカでは雇用における年齢差別禁止法が施行されておりまして、採用、解雇、賃金など、あらゆる面において年齢による差別が禁止されております。
 これに対しましてEU諸国では、EU指令に基づきまして国内法が整備されておりまして、それで年齢に限らず、人種などの差別が禁止されていることになっております。特にドイツやフランスなどでは、従来、柔軟な引退制度でありますとか早期退職促進給付などの政策がとられておりましたけれども、現在は年金を引き上げて高齢者も働いてもらうという政策に転換しております。
 続きまして、9ページで、今、御紹介いたしましたアメリカの雇用における年齢差別禁止法につきまして御紹介したいと思います。
 アメリカの雇用における年齢差別禁止法(ADEA)は、1967年に制定されました法律でございますけれども、これは40歳以上の個人に対する、年齢を理由とする雇用に関する差別を禁止するものでございまして、40歳以上の中高年齢者を保護するような法律となっております。
 禁止される差別待遇でございますけれども、20人以上の従業員を抱える使用者あるいは職業紹介所、労働組合につきまして差別を禁止するものとなっております。
 それで、除外される行為につきまして法律の中で規定されておりまして、幾つか御紹介させていただきたいと思います。
 まず、安全性を非常に重視するような公共交通機関の業務などでございまして、これは年齢が真正な職業資格になるということで要件が定まっております。
 ここでどのようなことかを御紹介いたしますと、差別されている年齢グループの中に安全かつ効率的な職務遂行を不可能にする性質を持つ者がおり、その性質は応募者がその集団に属するという知識以外の方法では確認できないこと。つまり、その年齢グループに関する身体的条件に基づいて安全に対する真の危険があり、かつそのことにつき年長の被用者を個人単位で取り扱うことが不可能かつ極めて非現実的であることを証明するとされております。
 この基準のもとで、例えばパイロットなどは年齢が真正な職業資格になると判断されておりますけれども、商業的航空機の整備士などにつきましては、60歳という年齢は真正な商業資格でないと判断されております。
 それで、10ページをごらんいただければと思います。
 このADEAの法律に基づきます救済機関でございますけれども、訴訟を起こす前に雇用機会均等委員会に年齢差別の行政救済申し立てをしなければならないとされております。ここに年間2万件ぐらいの申し立てが行われていると、資料にはございました。
 続きまして、11ページで、今度はEUの方をご覧いただければと思います。
 EUは、指令に基づきまして国内法が整備されるという体系となっております。まず、この指令につきまして御紹介したいと思います。
 2000年11月に採択された雇用及び職業における均等待遇の一般的枠組を設定するEU指令に基づきまして、EU諸国では、2003年12月までに、年齢だけでなく、宗教または信条、障害、年齢、性的嗜好に関わりなく、均等な取り扱いを保障するように国内法の整備を行うこととされております。ただし、年齢及び障害差別につきましては、6年間の経過措置が可能とされております。
 この指令でございますけれども、定年年齢を定める各国の国内法の規定には影響しないと書かれております。
 禁止される差別待遇でございますけれども、直接的な差別だけでなく、外見上は中立であるものの不利益をもたらすような間接差別も禁止される差別待遇となっております。
 ここでアメリカと異なりますのは、職業的必要条件、例えば宗教、信条、障害、年齢、性的嗜好が職業的必要条件となるような場合は、その取り扱いの相違は差別とならない、 あるいは、年齢を理由とした合法的な雇用政策でありますとか、労働市場及び職業訓練目的を含む合法的な目的によって、客観的かつ合理的に正当化されるような場合は、差別にはならないとされております。例として、若年者、高年齢者等を雇用促進・保護する場合が規定されております。
 最近出ました判決を御紹介させていただきたいと思います。10月に出ました欧州司法裁判所の判決でございますけれども、これは労働契約により定年の定めをする、すなわち定年到達により労働契約を自動終了させることを許容する国内法の規定は、EU指令に反しないとされております。
 これは、ドイツの社会法典第6編第41条で、老齢年金の受給年齢に達した日に労働契約が終了する旨の労使の合意があることを、労働契約が終了する要件として掲げています。その法律の正当性が判断されたわけでございますけれども、EU指令には、正当な目的によって、客観的かつ合理的に正当化され、かつ、達成手段が必要かつ適当な措置については許容されるという規定がございまして、この社会法典の規定はEU指令には反しないと判断されたものでございます。
 続きまして、13ページをご覧いただければと思います。3番目のテーマでございますけれども、再就職援助措置につきまして、近年の実績などをまとめたものでございます。これは、前回も御質問いただいた点も含めまして、資料で載せております。
 幾つか御紹介させていただきますと、求職活動支援書の中で、例えば高齢者ジョブカード取得者数というものを年度別に掲げております。この高齢者ジョブカードの制度自体は、平成20年2月に開始されたものでございます。それで、平成20年の実績はゼロ件となっておりますけれども、平成21年度には1,242件の実績となっております。
 続きまして、下の14表で、中高年齢者試行雇用奨励金の実績でございます。これは、平成21年で試行雇用を開始した方が6,217人で、常用雇用移行率が77.3%となっております。これは、試行雇用される事業主につきまして、労働者1人当たり月額4万円を最大3か月半支給するものでございます。それで常用雇用に移していくものでございます。
 下の方をご覧いただければと思います。ハローワークにおけるマッチングの中で就職率の低下を掲げております。ここは、50~59歳、60~64歳、65歳以上ということで年齢別に掲げておりますけれども、年齢が高くなるにつきまして就職率の方は下がっていくということが見てとれます。50~59歳では23.2、60~64歳では19.0、65歳以上では11.0%の就職率となっております。
 続きまして、15ページは教育訓練給付の状況、実績の数字を掲げております。
 教育訓練給付は、個々人の主体的な能力開発を支援するものでございまして、個々人の主体的能力開発を支援することにより、失業のリスクを低くするということが政策目的となっております。この給付には年齢要件はございませんけれども、過去の受講開始日以降の支給要件期間が3年以上、前、教育訓練給付を受けたときから3年の間を置かなければいけないことになっております。
 年齢要件はございませんけれども、25~29歳、30~34歳という比較的若い年齢層で受講者の割合が高くなっておりまして、それに対しまして50~54歳、55~59歳、60~64歳は、それぞれ3.7%、1.4%、0.1%となっておりますので、若年層にかなり活用されていることが見てとれると思います。
 続きまして、16ページ以降では、これまでの高齢者雇用に係る研究会等における議論をまとめたものを掲げております。
 17ページをご覧いただければと思います。このような研究会が幾つかございますけれども、ここで3つ資料を掲載しております。
 まず、内閣府で平成12年に開催されました、雇用における年齢差別禁止に関する研究会でございますけれども、ここで指摘されたものとしましては、年齢差別の禁止についての前提条件やマイナス面の緩和方法など、以下の点について更に検討を深めていく必要があるということで、項目としましては、例えば成果主義の浸透と評価の明確化、解雇に関する規制のあり方等が掲げられております。
 次に、年齢にかかわりなく働ける社会に関する有識者会議及び研究会というものが厚生労働省で平成13年から15年に行われました。ここでは、雇用システムの改革のための条件整備としては、とりわけ厳しい中高年齢者の雇用機会の確保を進めていくためにも、募集・採用における年齢制限の是正が不可欠であるという指摘をいただいております。
 更に、中高年齢者の年齢差別の是正をやっていくために、能力を評価軸とする労働市場の枠組み作りのため、職務の明確化と包括的な能力評価システムの整備に向けた事業をスタートすべきという御指摘をいただいております。
 そして、今後10年間は、少なくとも65歳までの安定的な雇用を確かなものにすることを最優先とすべき期間である、年齢に関わりなく働ける社会の実現を将来的に目指していく必要があるという御指摘をいただいております。
 続きまして、平成16年の法改正の前に、今後の高齢者雇用対策に関する研究会と、審議会の雇用対策基本問題部会で更に御検討いただいて御指摘をいただいております。
 ここでは、年金支給開始年齢までの雇用の確保策としまして、基本としては定額部分の年金支給開始年齢の引き上げに合わせて、段階的に定年を引き上げるべきでありますけれども、それが困難な場合には、希望者全員を対象とする継続雇用制度の導入によって、年金支給開始年齢までの雇用を確保すべきという御指摘をいただいております。
 その際に、労使間で労働条件等について十分な協議を行って、必要な見直しをしていくことが不可欠であるという御指摘をいただいております。
 更に、中高年齢者の再就職の促進策でありますとか、シルバー人材センターも含めました高齢者の多様な働き方に応じた就業機会の確保につきましても、必要であるという御指摘をいただいております。
 以上がこれまでの研究会における成果などでございました。
 続きまして、18ページをご覧いただければと思います。シルバー人材センターについて、前回も説明させていただきましたけれども、更に補足して資料を掲げております。
 19ページをご覧いただければと思います。
 図表16で、シルバー人材センターの年齢階層別の会員数を掲げております。ここで、特に割合が多くなっておりますのが65~69歳が35.8%、70~74歳が30.4%となっておりまして、この65歳以上の層が主力を占める年齢構成となっております。
 続きまして、20ページで、シルバー人材センターで働く理由あるいは配分金の使途につきまして、これは会員の方々に対して行いましたアンケートでございます。その中で、現在の暮らしの状況が大変苦しいとかやや苦しいと答えた方に対しまして、それぞれの項目について聞いたものでございます。
 大変苦しいと答えた方が9.6%、やや苦しいと答えた方が26.1%となっておりますけれども、大変苦しいと答えた方で、生活費を稼ぐためにシルバー人材センターで働くという方が70.0%となっております。また、やや苦しいと答えた中では、生活費も多いですけれども、健康によいと答えた方が57.2%となっております。
 配分金の使途でございますけれども、大変苦しいと答えられた方では、86.8%が家計の財源にする。やや苦しいと答えられた方では、その割合が80.0%となっております。配分金は、こういう生活状況が厳しい方では家計の財源として使われているということが見てとれます。
 続きまして、21ページ以降では、高年齢雇用継続給付につきまして資料を用意しております。
 高年齢雇用継続給付でございますけれども、60~65歳の方に支給されるものでございます。これは60歳になって定年を迎えたことなどによりまして、賃金が著しく低下するような場合に、働く方の意欲が減退しまして結果的に失業に結び付きかねないということがございますので、そのリスクを回避するために支給するものでございます。
 支給対象でございますけれども、60歳時点に比べまして賃金が25%を超えて低下した状態で雇用継続される高齢者となっています。すなわち、賃金が75%未満に低下した場合でございます。
 給付額は、ここに掲げてあるグラフのようになっております。最大で75%の給付が行われるということになっております。
 支給状況でございますけれども、平成21年度をご覧いただければと思います。初回の受給者数は22万2,292人、支給金額は1,424億円となっております。
 続きまして、23ページで、雇用保険部会で高年齢雇用継続給付あるいは雇用保険制度の高齢者のところにつきまして、どのような議論がされていたかということを御紹介させていただいております。
 まず、高年齢雇用継続給付につきましては、平成16年の法律改正で、平成18年以降、高年齢者雇用確保措置が努力義務から義務化されましたので、基本的にはこの年齢層の失業のリスクはかなり回避されることになりましたけれども、これで高年齢雇用継続給付をどのように考えていくかということが議論されたものでございます。
 雇用保険部会での結論でございますけれども、高年齢雇用継続給付につきましては、改正高年齢者雇用安定法等を踏まえ、原則として平成24年度までの措置とし、激変を避ける観点から、その後段階的に廃止すべきであるということが指摘されております。
 更に、平成21年1月7日の雇用保険部会では、65歳以降の雇用保険につきまして、今後の雇用失業情勢や雇用保険の財源状況を見きわめつつ、引き続き検討すべきであるという指摘をいただいております。
 更に、平成21年12月末の雇用保険部会では、雇用継続給付などにつきまして、60歳代前半層の雇用の状況を踏まえ、平成25年度以降のあり方を改めて検討すべきという御指摘をいただいております。
 続きまして、24ページ以降、雇用保険法の適用除外について資料を用意させていただいております。
 雇用保険では、雇用保険法第6条に基づきまして、65歳に達した日以後に雇用される方につきましては、短期雇用特例被保険者、または日雇い労働被保険者を除く場合は、雇用保険の適用除外とされております。それで、実際、65歳以上の雇用の状況がどのようなことになっているかを見たものでございます。
 図表19では、65歳以上の新規求職者数が2009年、これは年の累計でございますけれども、32万人となっております。
 更に、図表20では、正規雇用者のうち、年齢階級別に月末1週間の就業時間別従業者数がどのようになっているかを見たものでございますけれども、65歳以上で35時間以上働くという方が49万人となっております。ただ、これはそれぞれの方に何時間働いたかを聞いたものでございますので、複数就業した場合はここに入ってくると考えられます。そのようなことによりまして、労働時間が長くなっている方もいると考えられます。
 続きまして、26ページ以降で公的給付の受給状況を、アンケートなどに基づいて資料を用意させていただきました。
 27ページ、図表21をごらんいただければと思います。ここでは、JILPTで行われましたアンケートに基づきまして、企業に在職老齢年金受給者あるいは高年齢雇用継続給付の受給者がどれぐらいいるかを聞いたものでございますけれども、老齢年金では48.3%、雇用継続給付が50.6%となっております。
 それで、28ページ、図表23でございますけれども、ここでは公的給付の支給額が変更された場合に、賃金は変更されますかということを聞いたものでございます。賃金は変更しないと答えられた方が、老齢年金、雇用継続給付、ともに半数以上となっておりまして、そのほか、わからないと答えられた方が3割程度になっております。
 続きまして、29ページからは、雇用対策法による募集・採用に係る年齢制限禁止の義務化につきまして資料を用意しております。
 2007年10月に施行されました雇用対策法の改正によりまして、募集・採用に係る年齢制限の禁止が義務化されております。ただ、雇用対策法施行規則に基づきまして、年齢制限を設けていい場合が列挙されておりまして、それが図表24で、どのような理由で年齢制限を設けたかというものでございます。
 ここで、?@定年年齢を上限としているということが12.88%となっております。
 また、?B長期勤続によるキャリア形成のため若年者等を対象としたという答えが11.88%となっております。
 続きまして、有期契約労働者につきまして、アンケートなどを掲げておりますので、こちらをごらんいただければと思います。31ページ以降でございますけれども、これは厚生労働省が2005年に行った調査でございます。
 有期契約労働者はいろいろな類型がございますけれども、総数で60~64歳では、男女計で11.6%となっておりますけれども、特に多いのは嘱託社員でございまして、58.6%で、平均年齢も60.0%となっております。この調査で嘱託社員がそもそも定年退職者等を一定期間、再雇用する目的で契約し、雇用する方とされておりますので、ここでかなり高齢者が入ってきている調査結果となっております。
 それで、図表26、就業形態、有期契約労働者の契約を更新することがある場合における契約更新の判断基準を聞いたものでございますけれども、ここで右から3番目で、上限年齢を設定しており、これに達したかどうかによると答えられたところが、全体で16.2%となっております。特に、高齢者が多い嘱託社員では26.9%となっております。
 次は、図表27で、それでは上限年齢がどれぐらいかということを聞いたものでございます。そもそも上限年齢を設定しているのが、契約社員で10.6%、嘱託社員でしたら26.9%などとなっておりますけれども、嘱託社員で見てまいりますと、60歳未満が7.8%、60歳~65歳までが64.0%、65歳以上が28.1%となっております。
 続きまして、短時間労働者につきまして、法律と統計の資料を用意させていただきました。
 35ページをご覧いただければと思います。
 こちらは短時間労働者雇用の改善等に関する法律で、平成20年4月に施行されたものでございますけれども、均衡のとれた待遇の確保の促進が改正の大きな目玉となっております。ここでは、賃金等の待遇に関しまして、すべてのパートタイム労働者について、多様な就業形態に応じて正社員と均衡のとれた待遇の確保に努めることを事業主に義務付けておりまして、特に、正社員と同視すべきパートタイム労働者については、差別的取り扱いを禁止しております。
 ここで、パートタイム労働者あるいは短時間労働者というのは、1週間の所定労働時間が通常の労働者に比べまして短いものとされておりますので、当然、高齢者なども入ってくるわけでございます。ここで8条、9条、10条、11条ということで、均衡対偶や処遇につきまして規定されておりますけれども、それをまとめたものが36ページの下の表です。
 ここでは、短時間労働者を通常の労働者と比較して、職務、人材活用の仕組みや運用など、あるいは契約期間に基づきまして、同視すべき、職務と人材活用の仕組みが同じ、職務が同じ、職務も異なるという4つの類型で、それぞれどのような待遇を図っていくかということが、法律でどのように規定されているかを掲げております。通常の労働者と全く同視すべき方につきましては、第8条に基づきまして、短時間労働者であることによる差別的取り扱いの禁止を規定されておりますので、同じ取り扱いにしなければいけないということになっております。
 そのほか、類型に基づきまして、実施義務・配慮義務、あるいは努力義務など、それぞれ規定をされております。
 続きまして、37ページをご覧いただければと思います。
 こちらは、平成18年に行われましたパートタイム労働者の総合実態調査の報告でございますけれども、特に年齢の高いところで見ていきたいと思います。
 まず、賃金等処遇に関しまして、正社員と同等もしくはそれ以上の評価をされていると思うと答えられた方が、65歳以上では18.5%となっておりますので、年齢計よりかなり高くなっております。正社員よりも賃金が低いと思うが、納得できるという方が46.0%で、これも年齢計よりも高くなっております。
 更に、図表30をごらんいただければと思います。こちらは、今後の就業に対する希望でございますけれども、正社員になりたいと答えられた方は55~59歳、60~64歳、65歳以上という年齢層では、それぞれ8.1%、3.4%、2.3%となっておりますので、年齢が高いところでは正社員になりたいという希望は低くなっております。
 また、下で賃金について掲げておりますけれども、時間給は、年齢計では平均の金額が880円なのですけれども、60~64歳、65歳以上では、それぞれ948.1円、948.4円となっておりまして、年齢計よりも高い水準となっております。
 以上が資料1の説明でございましたけれども、続きまして、資料2で裁判例につきまして幾つか御紹介させていただきたいと思います。
 まず、1番、2番はNTT関係の裁判例でございますけれども、1番のNTT東日本事件、平成21年11月に東京地裁で判決が出たものでございます。こちらでは、定年前にグループ会社に転籍して、そこで定年まで、給与が下がるものの雇用されて、それから継続雇用に移るような場合でございます。
 このような場合、グループ会社の給与水準は、同一地域における同業種の賃金水準等を参考としつつ、大幅な減額にならないよう一定の配慮をした上で設定されており、勤務地も限定的なものとするなど、当該地域で生活する労働者の事情に配慮したものとなっているから、総所得が低下する場合であっても、継続雇用制度に該当しないとは言えないと判断されております。
 続きまして、NTT西日本事件、平成22年3月の高松高裁の判決でございますけれども、この場合は地域会社という関連会社のようなところに定年前に移って、そこで継続雇用される場合についてのものでございます。地域会社との間におきましては、資本的にも、その業務の内容としても密接な関係を有する中で、NTT西日本グループと一体として、本件制度による継続雇用制度を採用したものであるから、高年法第9条の趣旨に反するとは言えないと判断されました。
 続きまして、NTT西日本事件、平成21年11月の大阪高裁の方でございますけれども、ここでは高年法第9条で直截的に私法的効力を認めた規定と解することはできないと判断されております。判決の内容でございますけれども、高年法第9条は、労働者に事業主に対する継続雇用制度の導入請求権、ないし継続雇用請求権を付与した規定、すなわち直截的に私法的効力を認めた規定とまでは解することができないと判断されております。
 続きまして、3番で京浜交通事件、平成22年の横浜地裁川崎支部の判決でございますけれども、これは就業規則の中で継続雇用の基準があったような場合で、継続雇用の基準の定め方について争われたものでございますけれども、ここでは会社側がすべての労働者の過半数を代表する者を選出することができない状況にあったものと認めるに足りる証拠はないと判断されまして、会社が過半数の労働者と労使協定をするために努力したとは言えないと判断されております。
 したがいまして、会社は高年法第9条第2項に規定する協定をするため努力したにもかかわらず、協議が整わなかったとして、就業規則29条が高年法附則第5条第1項の要件を具備していないと言うべきであると判断されております。就業規則は、手続要件を欠き、無効であると判断されました。
 続きまして、4番目でございますけれども、これは東京大学出版会事件、平成22年の東京地裁の判決で、労働者が定年を迎えた方が、協調性とか規律性を欠くということで再雇用を拒否されたような場合でございますけれども、この協調性とか規律性ということは、再雇用者として通常勤務できる意欲と能力があるという基準に該当しないことにはならず、何らの客観的・合理的理由もなく再雇用拒否が行われたものであって、解雇権濫用法理の趣旨に照らして無効であると判断されました。
 最後に、資料3で「議論のためのメモ」を、前回の御議論を踏まえまして用意させていただきました。
 まず1番で、大きな項目としまして、希望者全員の65歳までの雇用確保措置のあり方でございます。希望者全員が65歳まで働くことができるよう、2013年度に向けて、実現可能な措置を講ずる必要があるのではないかという点が課題としてあります。
 具体的な検討する制度としましては、定年制、定年年齢の引き上げでありますとか、継続雇用制度の対象となる高年齢者に係る基準制度について、ポイントになってくるかと思います。
 2番目でございますけれども、年齢に関わりなく働ける環境の整備で、まず雇用における年齢差別の禁止につきましては、アメリカのように中高年齢者に係る年齢差別を全面的に禁止するようなやり方、あるいはEU型の年齢差別禁止について、生活上の目的などに応じて、ある程度許容するやり方がございます。このような年齢差別禁止について、どのように考えるかということ。
 あるいは、高年齢者の雇用促進、再就職の促進について、どのように図っていくか。特に高年齢者の能力開発をどのように進めていくかということでございます。
 3番目が多様な就業機会の確保で、今、シルバー人材センターが多様な就業機会を提供するものとしてございますけれども、そのあり方についてどのように考えていくか。
 あるいは、最終的には年齢に関わりなくということでございますけれども、現在、70歳まで雇用確保を進めていくということをやっておりますので、それを今後どのように環境整備を図っていくかということでございます。
 3番目の課題でございますけれども、高年齢者雇用と若年者雇用との関係につきまして、人口が減少していく中でどちらも減っていくわけですけれども、代替的なものなのか、あるいは質的に全く異なるものとして考えるべきかということが、議論のポイントとしてあるかと思います。
 そのほか資料4では、前回の11月5日の研究会の議論をまとめたものを用意させていただいております。
 事務局の説明は、以上でございます。
○清家座長 ありがとうございました。
 それでは、今、事務局から資料について御説明いただきました。今日は、主に資料3の「議論のためのメモ」に基づいて意見交換を行うわけですが、その前に、まず今の事務局からの御説明について、御質問がもしもございましたらお願いいたします。どうぞ。
○佐藤教授 資料1「関係資料」の7ページの日本とスウェーデンの比較で、スウェーデンは女性の高齢者の就業率が高いということですけれども、実引退年齢を見ると、日本よりスウェーデンの方が早い。変だなという感じがするので、どこか間違っているのではないか。それが1つ、統計的におかしい。
 もう一つは、30ページの下の図表24の「不問」というのをちょっと御説明いただければ。不問というのは、年齢を問いませんというのだけではなくて、?@と?Aが入っているということなのか。この2点です。
○清家座長 では、お願いします。
○望月高齢者雇用対策課長補佐 図表10は、OECDの統計を引っ張ってきたものでございます。もう一回精査させていただきたいと思います。
 図表24の不問の割合がかなり高くなっておりますけれども、これは定年年齢を上限とするもの、及び?Aの労働基準法等による年齢制限を含むものと、含まないものが混じっているようなものということだと思います。
○佐藤教授 ?@と?Aを足すと14%ぐらいですね。70何%の人は何なんだろう。年齢制限していない。
○望月高齢者雇用対策課長補佐 年齢制限をしていないものと、それから年齢制限を含むもの、両方含んでおりますので、これはそれぞれ両方に該当するものがあるというか。
○佐藤教授 そうすると、年齢は問わないというのがすごく多いということ。何歳でもいいですということ。それが7割ぐらいあるということ。それはそれでいいのだけれども、すごく多いなという感じがする。
○土田高齢者雇用対策課長 法律上、禁止されていますので、少なくともハローワークに出てくる求人はそういうものが多いということです。
○佐藤教授 定年を導入しているのはすごく多いですよね。だけれども、定年までとも書いていないところが多いということですね。わかりました。
○清家座長 定年までは合法なわけでしょう。定年の年齢を上限とする。わかりました。
 では、ほかにいかがでしょうか。内容的な質問もよろしいですか。
(「はい」と声あり)
○清家座長 そうしましたら、少しサブスタンスといいますか、内容に関する議論に移りたいと思います。
 まず、「議論のためのメモ」を資料3で用意していただいているところでございますが、1、2、3と分かれておりますので、この順番で、まず、希望者全員の65歳までの雇用確保措置のあり方について御議論いただきたいと思います。御承知のとおり、年金の報酬比例部分の支給開始年齢の引き上げに伴いまして、雇用継続を希望するものの結果として、雇用継続されないことにより無収入となる者が生じないようにする必要があるということについては、基本的な認識の一致があると思いますが、当面は希望者全員の65歳までの雇用確保措置が緊急の課題となっております。
 そこで、まず定年制及び継続雇用制度のあり方について、御意見をいただきたいと思います。特に、2013年度からは、今、申しましたように報酬比例部分も引き上げが開始されますので、その辺も踏まえて少し御議論いただければと思います。では、よろしくお願いします。どうぞ御自由に。あるいは、もう少し事務局の方から趣旨等について御説明していただきますか。余り付け加えることはない。
○岩村教授 ちょっとだけ発言したいと思います。所用のため途中で退出しなければいけないので。
○清家座長 では、先生、2、3も含めて。
○岩村教授 定年制に関してお聞きしたいのは、60歳定年制を義務化しましたね。私もよく覚えていないのですが、あのとき、当初55歳であったのを60歳に引き上げて、最終的には義務化するということをやったわけです。60歳定年制を義務化したときは、多分社会的実態として、大体皆、定年は60歳になっているねみたいな感覚があったような気がするのです。今日、データを私も見ていないのでよくわからないのですが、そのときと比べて、65歳に仮に定年年齢を上げることを考えたときに、その裏付けとなるような社会的な実態がどのぐらいあるのかというのが、もしわかれば教えていただきたい。
 ここから先は政策判断になるのですが、ある程度社会的実態があるから65歳にしましょうというスタンスと、いや、社会的実態とは関わらず、これは年金の支給開始年齢が上がるので、もうえいやでやってしまうものだと考えるのかという問題でもあると思うのです。もしベースになるようなデータがわかるようであれば、今日難しければ、次回にでもお願いできればと思います。
○清家座長 わかりました。この辺、事務局の方からいかがでしょうか。
○土田高齢者雇用対策課長 先般の雇用状況報告で、定年引き上げによって現在65歳をやっているところは、全企業で14%弱でございますので、そういう意味では65歳まで今の段階で多くの企業が定年年齢の引き上げをやっているかというと、そういうことではないですし、あるいは定年の定めを廃止しているところも含めても、大体16~17%です。そういってみれば、20年以上前、最初は努力義務だったと思いますけれども、まだそういう状況ではないかなと。
○清家座長 佐藤委員、どうぞ。
○佐藤教授 ちょっと2にも係るのですけれども、この前も少しお話ししたのですけれども、65歳まで定年制ということを考えると、企業の寿命ということを考えると、多分、企業も存続を続けるためには事業分野も変えていかなければいけないでしょうし、技術構造も変わってくるでしょうし。そういう意味では、企業が存続する努力をして、その結果、企業の中で生まれる仕事はどんどん変わっていくと思います。
 それは、今まで以上に大卒、22歳で採って43年間というスパンを考えると、企業のあり方というのは相当変わっていく。当然、それぞれの企業が事業を展開する上で必要な業務、その業務に必要とされる職業能力も変わっていくというのを前提にする必要があるだろう。
 そうすると、企業が65歳定年といったときに、例えば大卒を雇うときに65歳まで雇用を保障しますという前提とすると、今まで以上に43年間、事業分野が変わり、業務が変わることについていける人材を採ることを考えざるを得ないわけですね。ついていけるということは、仕事が変わっても、新しい仕事の能力開発に取り組んでくれるとか。つまり、高い学習能力ということを求めることにならざるを得ないだろう。
 そういう意味で、後ろの能力開発のあり方というのは、企業内でそれをやろうとすれば、企業もそうだし、本人も新しい仕事にちゃんと能力を発揮でき、企業に貢献できるような能力を変えていくことが、多分すごく必要になってくると思うのです。ですから、企業にやれということはやるにしても、もしかするとある面では、いわゆる正社員で65歳まで雇用する人についての期待というのは、学習能力の高い人を採ろうということが強まる可能性が今よりもあるかな。
 もう一つは、働いている人についても、その企業で65歳までというと、職業能力の転換が相当迫られる。確かに雇用は続く。それが本人にとっても望ましいことか。たとえ給与が下がっても転職して、今の仕事が続く方がいいということもあるのかな。企業に努力するなという意味ではないです。ですから、同時に企業内で変化する仕事についていく能力開発というのも、企業もやるし、社会的にも提供する。
 もう一つは、途中で労働市場の転換を整備して。勿論、企業が外へ出すことを優先しろという意味ではないのですけれども、本人もその中で新しい仕事についていく努力をするのと、移って、別の会社で変わらなくて、今の能力を使う方が、もしかすると本人にとってもいい。ですから、能力開発とか今、やっている転職の機会整備とセットでやらないと、なかなかうまく回っていかないかな。本人にとっても幸せなのかということもあるし、企業ももしかすると入り口で、今まで以上に将来の転換能力みたいなものを見て絞り込むことが起きないとも限らないかなと、この前と同じなのですけれども。
○清家座長 わかりました。
 ほかに。どうぞ、駒村委員。
○駒村教授 2つほどあります。
 1つは、岩村先生がおっしゃったことに少し重なるのですけれども、年金支給開始年齢の引き上げと実行ベースの引退の状況について。55歳から60歳に引き上げるのを決めたのは、たしか1954年。実際に年金支給開始年齢が60歳になったのは74年ぐらいですか。数字を確認させください。20年ぐらいかかって上がってきたわけです。その間、実行ベースの引退というのはどうなっていたのかというのが1つ教えていただきたい。
 次に、これは今の話とも関わってくるのですけれども、94年に60歳から65歳の支給切り上げを決めて、実際目的にたどり着くのが2025年ということで、30年かかってくるわけです。このペースというのは、ほかの国と比べてどんなものだろうか、ほかの国に比べて早いのか遅いのか、それは調べていただければなと思います。それが1つ。
 もう一つは、今、佐藤先生がおっしゃったことに関わるかもしれませんけれども、資料1の17ページに気になる記述があります。これは、上段の丸の4つ目です。能力を評価軸とする労働市場の枠組みづくりのために、職務の明確化と包括的な能力評価システムの整備に向けた事業をスタートすべきと。これは、ある種、外部労働市場も含めて整備するという話なのかなと思うのですけれども、この提言のこの部分というのは、何か政策的に反映されたのかどうか、この2つ、お願いいたします。
○清家座長 事務局からお答えできる範囲で。残りの部分は宿題と。
○土田高齢者雇用対策課長 諸外国のペースとか過去の経緯は、また後日。
 職務の明確化と包括的な能力評価システムの整備については、キャリアコンサルタントとかジョブカードの方で政策的に実現されてきているのではないかと思っております。
○清家座長 では、藤村委員。
○藤村教授 定年制というのが企業からどのように受けとめられるか、それから従業員が定年が引き上げられたことに対して、どう反応するかという2つを考える必要があると思います。企業側は、定年年齢まではある種の雇用保障があって、そこまではいろいろなことがあるけれども、雇い続けなければいけないだろうと思って、これまで55歳がそうですし、60歳まで上がったときに、それは仕方ないよねとなっていましたよね。これが65になったときに、えっ、まだ5年も上がるのという、実態はそんなに変わらないかもしれませんが、心理的な負担感がとても大きいだろうと思います。だから、現実65歳定年に引き上げる企業が余り出てきていないのは、その辺の雇用保障との絡みがあると思います。
 今度、従業員側からすると、60歳ぐらいまではいろいろな意味で生活費のこともあり、一定の収入が必要だけれども、特に地方へ行きますと、60歳以上は先祖伝来の田畑を耕す生活をしたいのだ。しかし、企業が65歳定年にするとやめづらい。だから、65歳定年というのは勘弁してほしいという意見の人もいますね。これは、まさに農業と関わっているような部分ですから、大企業の工場などに勤めている人はそうなります。
 逆に、地方でも中核都市に住んでいるような人たちは、むしろそういう先祖伝来の田畑などありませんから、60歳過ぎても働き続けたい。しかし、それが定年制が65になるということとの関わりで言うと、そこまでは求めていないのが現状ですね。ただし、年金の支給開始年齢が65になっていくときに、本当に今のような働くことに対する考え方が継続するかどうかというのは、よくわからない。ですから、定年制というものの持つ重みが、まだ今のところ、企業側、従業員側、相当重いので、65歳に引き上げることについては相当な抵抗がありそうだなという気がします。
○清家座長 では、小畑委員、どうぞ。
○小畑准教授 皆様の御意見と重なってしまうのですけれども、今、高年法8条におきましては、定年60歳を下回ることはできないと決めてあるわけでございますけれども、この60歳となった経緯というのは、皆様御指摘のとおり、さまざまな要因が絡まって60歳という結論になっているところを、それらを60歳から65歳へと押し上げるような変化が本当に生じているかどうかの確認が多分必要だろうということを重ねて、私からも、もしできましたらいろいろとお調べいただけるものでしたらお願いしたいということです。
 そういたしますと、例えば65歳まで定年を引き上げる社会的な理由とか企業の事情、従業員の事情というものが追い付いていない場合には、年金支給開始年齢が引き上がるから、ブランクを開けないためにだけ上げるということだと、支給開始年齢が68歳になって、70歳になってということのたびに、そういう議論がまた続いていくというのは、年齢を考えていくとちょっと疑問を感じるというのが、皆様共通かと思いますので、そこをどういう根拠付けでどの辺りまで考えられて、そこから先はもっと現実的な問題として考えているのかといった微妙なラインのようなものが、もしおわかりになるのでしたら資料をいただけたらと思います。
 以上でございます。
○清家座長 権丈委員、何かありますか。
○権丈准教授 いえ。
○清家座長 いいですか。わかりました。
 どうぞ、岩村委員。
○岩村教授 継続雇用制度の方ですが、基準の仕組みについては、今日事務局の方でも御紹介してくれたように、幾つか裁判例が出ています。
 一番典型的な紛争は、NTTのものがそうですが、これは背景としては、多数組合と少数組合という企業内での状況がある中で出てきたものですけれども、いずれにしろ紛争の根幹にあるのは、結局継続雇用制度を導入するかわりに、何らかの形で処遇が大きく変わることです。NTTの場合は、今日、御紹介もありましたけれども、転籍になり賃金体系が変わる。少なくとも継続雇用までを考慮したときの生涯総賃金が余り変わらないような形で賃金制度を変えてしまうということがセットになっているということです。
 1つは、こういう継続雇用制度を考えたときには、結局のところ、いまの点がポイントになることです。NTTの紛争の起き方から見ても、そうだということを理解しておく必要がある気がします。勿論、定年年齢の引き上げの場合も同じような話になるわけで、実際に訴訟も起きています。
 もう1つは、現行法は、特に基準そのものについては、余り中身は言っていない。ただ、前回の資料では、アンケート調査で働く意欲があるとか、健康上支障がない、あと会社が提示する職務内容の合意とか、幾つかのパターンはあります。ありうる1つ論点は、基準のあり方について法律は何も触れていないのだけれども、今までの経験なり紛争例を勘案して、基準の中身に対して、もう少し法なりが介入するのかどうかの適否は考える必要があるのかもしれないと思います。
 3番目は、改正法が施行されたときに講演会で受けた質問ではっきりわかったのですが、企業は継続雇用するときに選別したいということです。延ばす人と延ばさない人の選別をしたいというときに、時々ありがちなのは、紛争を抱えている企業などの場合だと、ある特定の人たちを排除したいということで基準が設定されているかもしれない。裁判例上、それが立証されている事例があるわけではないのですが、端から見ているとそういう気もしなくもないということがあるので、そういったところをどうするのかという論点があります。
 4番目としては、多数組合があるところは余り問題ないのですが、組合がないときの従業員代表は、過半数の従業員を代表する者となるという点があります。この従業員代表には、別に継続雇用の基準の場合に限りませんが、結構問題があることがあり、その辺も見直すとか見直さないというところも、実は論点としてはあるかなと思います。
 最後に、法律問題としては、今日は深入りしませんが、基準が法律の定める要件を満たさないというときにどうなるかということがあります。事例としては、今日御紹介いただいている京浜交通事件がそうです。そもそも基準ができていないよとなったときに、その事後処理をどうするのかという法律上の論点があって、それについては法律がはっきりした規定になっていないので、そこはどうするのかという議論は解釈論の問題としてはあります。この点も基準制度を考えたときには論点にはなるでしょうということかと思います。
○清家座長 わかりました。
 どうぞ、佐藤委員。
○佐藤教授 藤村さんが言われたことに関係する。60歳から65歳にすると、企業に非常に負担感があるのではないか。多分負担感があるというのは、今の岩村さんの、継続雇用であればセレクションしたい。選びたいのはなぜかというと、これまで正社員の企業の人材活用なり雇用主責任のところだと思います。つまり、業務なり勤務地に限定せず、企業としては強い人事権を持っている。他方、ちゃんと雇用保障しなさい。ですから、仕事がなくなっても、能力が落ちても教育訓練しなさい。それを60歳までだったのが、65歳まで更にやるのか。
 現状を前提にすると、今60歳でどうにか仕事を変えて、給与を下げればいいけれども、60歳までと同じものを65歳までやれというのが非常に負担感があると思います。ですから、従来型の正社員の雇用の仕方が変わるということが起きれば、業務限定の無期契約みたいな形にして、その業務についての能力が低下したかどうかがわかるということになって、給与は上がらない。本人が選択できるとか、仕事がなくなったら契約解除できるという仕組みになれば、65歳までできる。
 現状のいわゆる正社員の雇用を前提にすると、企業からすれば、確かに60歳まではどうにかできるかわからないけれども、更に、特に変化の激しい時代に、企業の責任で職業能力転換の教育もあり、できるだけ仕事もそうして、65歳までと言われてしまうと。企業はそれまで人事権を持っていたのですけれども、もう少しそこを変えていかないとなかなか難しいのかなという気はします。
○清家座長 わかりました。
 どうぞ、権丈委員。
○権丈准教授 実は先程から確認させていただければと考えていた事があります。定年年齢を65歳までに今すぐ引き上げるのは難しいというご意見については、確かに、この2,3年では各企業による処遇の大幅変更が難しいことを考えますと、まさにその通りだろうと思います。ところで、この研究会の議論の範囲としましては、定年年齢の引き上げ、特に65歳までについて2013年までに実施するかどうかを検討するのか、それとも将来を見据えた、もう少し長いタイムスパンで考えてもよいのかということをお伺いしたいと思います。短期的に実施が難しいことも、中長期的に考えるのならば、段階的に条件を整えていくことで可能になってくるかと思います。そうであれば、どういう社会を描くのかという議論になるのかと思います。
○清家座長 では、事務局から。
○土田高齢者雇用対策課長 2013年の目の前に迫っている問題意識といたしましては、報酬比例部分の支給開始年齢が61歳になりますので、そこで60歳定年と61歳では少なくとも1年間のギャップができてしまう。最低限、そこを見据えてどうするかということでございます。
 ただ、現状で高年法9条の雇用確保措置自体は、もう65歳ということで先に進んでいますけれども、大もとになります定年年齢は60歳が義務化ということで、それをどうしていくかということでございます。それは定年年齢ではなくて、継続雇用制度をどうするかというやり方もいろいろありますので、それを含めて全体を御議論いただければなと思っております。
○清家座長 ですから、2013年以降のところも勿論視野に入れて議論していくということでございます。
 この点について、皆さんからいろいろ御要望がございましたので、まず定年制については、できる範囲の中で、要するに最終的には平成6年に法定化されたと思いますけれども、60歳定年制に至るプロセスがどのようなものだったかということについて、少し事務局の方で整理していただきたいと思います。これは、ほかのものもそうですけれども、私の記憶ですと、まず60歳までの定年の延長を企業に努力してくださいという施策を進めながら、最終的にかなり長い猶予期間を経て、平成6年に法定化したかと思います。
 ただ、その際に、これはもう一つの点とも関連しますけれども、恐らく60歳定年制のときには、60歳までの雇用確保措置というものではなくて、いきなり60歳定年と持っていったわけです。それから、これは統計などを見てもあれですけれども、55歳から段階的に57歳とか引き上げていった企業もありますが、多くのケースは55歳からいきなり60歳に持っていった形になっていますので、その辺もどのような形で持っていったのかということは興味があると思いますので、ちょっと調べていただきたいと思います。
 もう一点は、これは今、権丈委員が言われたこととも関連するのですけれども、定年の延長が可能かどうかは別として、定年の延長の話をするときに、今、申しましたように、一気に65歳に持っていくのか、それとも2013年度以降に発生する報酬比例部分の支給開始年齢の引き上げのスケジュールに合わせて、61歳、62歳という刻みで持っていくのか。そういうやり方は、今までの60歳定年制のときにはしていないわけでございますが、そういうことも含めて、少し検討することにしてはどうかなと思っております。
 定年制の引き上げというのは、現状を前提とすると、労働者の方にもそれほど切迫感はないかもしれませんが、報酬比例部分まで引き上げられたときにどうなるかというのは、また別の話ですので、勿論、今の実態を踏まえつつ、しかし長期的に実際、支給開始年齢が引き上げられて無年金者が多く発生するような場合に、どのようなものが望ましいかというところから逆算して考えるような考え方も必要かと思いますので、その辺もあわせて資料を少し整理していただければと思います。
 では、引き続きまして、また1のところに当然戻ることもございますが、論点の2、年齢に関わりなく働ける環境の整備ということについて少し御議論をいただきたいと思います。
 どうぞ。
○駒村教授 清家先生の今のお話にあわせて、ちょっと資料をお願いしたいのは、13年以降は上の部分も遅れていくという部分もありますけれども、特別支給の老齢厚生年金自体の繰り上げ受給が認められていると思うので、複雑な仕組みなので仕組みを確認させていただきたいのと、もし実態みたいなものがあれば、その辺も教えていただいて、場合によっては、上の部分が上がっていけば、繰り上げ受給しながらの働き方というのも選択肢としてあると思いますので、その辺は次回また教えていただきたい。よろしくお願いします。
○佐藤教授 教えていただいてもいいですか。
○清家座長 どうぞ。
○佐藤教授 高齢期の能力開発で、資料15ページを見ると、教育訓練給付がだんだん年齢とともに受ける人が減ってくる。分母からすると上も多いから、年齢構成ごとの受給率はもっと落ちてしまうかもわからないけれども、本来、もっとリカレントが必要な時期に受けなくなってしまう。ですから、外部労働市場の教育訓練の受講が年齢別にわかるようなものがあるか、あと企業内の教育訓練投資も、年齢階層ごとにどんなふうになっているのか。高齢者への教育訓練投資が企業内でどうなっているか。このぐらいしかないのかわからないですけれども、本人たちが余り受けるつもりがないのか、あるいはそういう機会がないのか、もしかすると両方の要素かもわかりません。
 その辺、本来は延びてくると教育訓練は大事になってくると思うのですけれども、できれば本人の能力開発意欲と、実際受けている人たちの年齢別の分布とか、そういうものがもう少し教育訓練であるといいなと思いました。
○清家座長 2のところは、事務局の方で4つぐらいポイントを整理していただいておりますけれども、勿論これに含まれない部分も御指摘いただいて構いませんけれども、年齢差別禁止の話、あるいは雇用促進策の話、あるいはシルバー人材センターも含めて、多様な雇用機会の確保の話。それから、65歳を超えて70歳までの雇用ということを、今、政府の方でも言い始めているわけですが、その辺りのポイントが挙げられておりますが、いかがでしょう。
 権丈委員、どうぞ。
○権丈准教授 多様な就業機会の確保に関連したことです。前回も少しお話しさせていただいたのですが、実際に多様な働き方を提供するには様々な方法があるかと思います。シルバー人材センターがまず取り上げられており、その通りかと思います。また今回は、パート労働についての資料をご用意いただきました。加えて、企業で実施している多様な働き方の選択肢もあると思います。短時間正社員制度等の労働時間に柔軟性を持たせる働き方など、そちらの方の資料もありましたら、ご提示いただければと思います。
○清家座長 どうぞ、駒村委員。
○駒村教授 年齢差別禁止について、アメリカとEUの制度上の比較。これは、佐藤先生と別のところでお話しした話ですけれども、雇用システムがかなり違う中で、その辺は少し頭に入れて議論しなければいけないかなと思っております。企業の中で抱き抱えているところと、外部のマーケットで評価する仕組みがある程度ある国では違うと思います。そこは少し考えなければいけないと思います。
 もう一つは、これもいろいろなデータがあることはあると思いますけれども、イメージとして、あるいはどういう研究が進んでいるか、お示しいただきたいのですけれども、健康状態が60~65歳になってくるとかなりばらついてくる一方で、能力によっては、別に高齢者になったから、認知能力とか記憶力とか説明力とかは下がらないというスコアも発表されているかと思います。そういうものもあわせて資料として、どこまでこういう老年学というのでしょうか、生理学的な部分かもしれませんけれども、研究があるか。
 昔は55歳で引退だったわけですけれども、それと今の55歳は全然違うと思いますし、健康寿命がどんどん延びているわけですし、生命的な寿命も延びていきますから、ばらつきは上がっていくとは思うものの、思ったより労働者としての可能性が残っている可能性もあるわけですので、その辺はいいデータがありましたら集めていただきたいと思います。
○清家座長 ほかにいかがでございましょうか。
 小畑委員、どうぞ。
○小畑准教授 この前発言させていただいたことと重なってしまうのですが、今日、EU指令とそれに対する各国の状況の資料を拝見しまして、大変ありがたかったのですけれども。
 先ほど藤村先生の御発言もありましたし、いろいろ先生方、御発言なのですが、希望する人が年齢に関わりなく働けるということでもすばらしいことだと思いますけれども、それがもし求められなければ、年齢に関わりなく職を失う。定年制との関わりの問題で、そういうことも含めて、希望する者が年齢に関わりなく働ける社会と呼ぶような純粋な、アメリカ的な考え方をするということですと、やはり前回も申し上げたのですけれども、日本で大体55~60歳ぐらいまでは、お給料がどうなるにせよ職はあるという家庭がたくさんあるような社会のあり方。これを根本的にがらがらと変えていくことになると、大変な影響が考えられます。
 今、ここでおっしゃる、希望する人が年齢に関わりなく働ける社会というのは何なのかというのを、少し種類別にというか、幾つかに分けて考えていく必要があるのではないかということを付け足させていただきます。
 以上でございます。
○清家座長 ほかにいかがでございましょうか。
 藤村委員、よろしいですか。
○藤村教授 今、企業の実態を見ていますと、60歳定年で、その後継続雇用制度が65歳までのところもあれば、継続雇用になったら、もう上はないよ。何歳まででも、本人が希望して体力とか能力とかあれば。現実に70歳を超えて働いている方もいらっしゃる。そうすると、60歳定年も全部取っ払って、年齢に関わりなくやったときに出てくる問題と、それから一応、定年年齢をどこかで設定して、再雇用に入ったら、そこから上は余り関係ないですよとするのかで、大分実態として受け取られ方が違うだろうなと思います。
 ですから、年齢に関わりなくという話をすると、必ず企業の担当者は、では一定基準で解雇できるようになるのですね。それがないと受け入れられませんよというのが出てきますね。だから、そういうものを入れることによって、今まで日本社会が持ってきた、ある種の何とか雇用は守っていこうよというのが、ひょっとしたら相当大きな変化になってくるのかなという。時代が変わっていくのだから、ある種のショックが必要で、それを越えたところに、今よりもっといい社会があるのだというのを信念として持って法律をつくる側が説明していけば、それはそれで一つのやり方とは思いますけれども、どうかなというところですね。
○清家座長 ほかにいかがでございましょう。よろしゅうございますか。
 この1と2ですね。つまり、1の基本的なコンセプト、希望者全員の65歳までの雇用確保措置というのは、今までの日本の雇用の美風というか、一定の年齢までは、労働条件はいろいろ変わるにしても、雇用はきちっと守りましょうというコンセプトが、かなりここのところには貫かれていて、2に発展させると、そこがちょっと変わってくるということだと思います。
 ですから、これは1のところを、例えば定年の延長も含めてしっかりとやるということがあって、多分2に進めるかどうかという話になってくるのかなと思いますので、70歳まで働ける企業社会というスローガンというか、発想自体はとてもいいと思うのですけれども、70歳まで働けるというのは、65歳までの雇用を確保するというものの単なる延長線上にあるのではなくて、ちょっとそこは違うのかなという感じは私もいたします。
 基本的には、皆さん方の御意見は、年金の支給開始年齢まではしっかりと雇用を確保するということだと思いますが、それ以降のところは、勿論働く意思と仕事能力がある人が能力を発揮できるような社会になる方がいいのだけれども、それをもっと若いところまで含めて考えて、更に日本の雇用のあり方自体を全面的に変えましょうというところまではいかないのかなと。岩村先生、いらっしゃらないのだけれども。佐藤先生、逆にもうちょっと変えた方がいいのではないかという御意見の方かもしれない。
 佐藤先生、最後に。
○佐藤教授 藤村さんの前の方なのですけれども、今、定年が60歳で、多くはそこで切りかえて1年ごと、仕事に応じて給与を決める、毎年見直すという形で65歳まで延ばすと、今のやり方を延ばした中で企業がやれるかどうかだと思います。今と同じようなやり方を。多分それはやりにくいと思っているわけ。そこだと思うのです。今やっていることを定年に変えられるかどうかだと思います。それが多分相当難しいと判断する。それがやれればやれます。ただ、それをやると、ずっと前まで変わってくる可能性もあるわけです。そこをどう考えるかだと思うのです。藤村先生も、そこは同じだと。
○藤村教授 もうちょっと言うと、最近、労働組合の役員と議論するときに、組合員、正社員中心で組織していますから、正社員の雇用保障のあり方、このままでいいのですかという議論を吹っ掛けるのです。つまり、2003年から2008年9月までというのは、景気の状況が非常によくて雇用は延びたのだけれども、正社員の雇用は余り延びなかった。なぜかというと、正社員として雇うとやめさせにくいから、増えていったのは有期雇用の部分。結局、自分たちの雇用を守るために、それ以外の雇用形態の人たちを増やしてきた。それがリーマン・ショックでがんと切られて。これをまた繰り返すのですかという議論をするのですね。
 彼らは、勿論非常に嫌な顔をしていますけれども、正社員に対する雇用の保障というのが、今のままの状態で65歳までの定年というのは、多分非常に受け入れにくいだろう。もう少し緩めて、何かあったらすぐに切れるというのはまずいと思いますが、ある一定ルールの下で、正社員といえども削減の対象にはなりますよと、ちょっとそこを緩めてあげれば、もっとこの議論も進むのかな。だから、実は高齢者の話だけではなくて、日本全体の雇用のあり方、雇用保障のこれからのあり方というものに関わる議論になっていくのだろうなと思います。
○清家座長 わかりました。ほかによろしゅうございますか。
(「はい」と声あり)
○清家座長 そうしましたら、少しまたここのところでも議論を整理すると同時に、幾つか御要望がありました検討項目、調査項目を調べていただくことにしたいと思います。
 また1、2に戻ることも当然あるということを前提に、次に3つ目の高齢者雇用対策と若年雇用の関係というところについて御議論いただきたいと思います。
 では、どうぞ。
○佐藤教授 これは、経済学の方では、55~60歳とか60~65歳にしたときに、正社員雇用を増やして、若年雇用との関係について分析したものはあるのですか。
○藤村教授 幾つかありますよ。
○佐藤教授 多分効果は同じですね。
○藤村教授 半々。
○佐藤教授 やはり若年雇用にマイナス。
○藤村教授 マイナスというのもあるし、関係ないというのもあるし。では、ちょっと。
 働き方を少し考えれば、大きく2種類あると思っています。例えば中小企業を中心として、頭数で要員を管理しているところ。比較的技能が低い場合には、高齢者がいれば勿論若年層は入ってこられない。そうではなくて、古い技術と新しい技術への対応という話になってくると、これは競合しないことになりますね。
 お客様の中には、古い技術を使った機械を使っている方がいらっしゃって、そのメンテナンスをしなければいけない。そういう技術をわざわざ若手に教えるかというと、それはしない。では、60歳過ぎて継続雇用で元気な人にそういったお世話をしてもらう。逆に若手を採用して、それは新しい技術に対応した機械・設備に行ってもらう。そうすると、ここは完全に別の世界になりますね。
 ですから、中小企業の人たちと議論していると、頭数だから、結局は若年層が入りにくくなるよという話が出てきます。逆に、大企業の人事の人と話をすると、いや、そこは競合しません。だから、日本全体でどっちの効果がどれくらい強いかというのは、幾つか計測結果がありますね。
○清家座長 今、藤村さんの話に付け加えると、中小企業でも受注生産みたいな製造業は代替しないですね。組立型というか、大量生産型みたいな。受注生産型は、むしろベテランの議論が有効に効いてくるから、むしろ代替しないというか、補完的なところが多いかもしれない。
 もう1つは、今、思い出したのは、太田聡一さんなどがやった研究というのは、頭数の代替というよりは、年功賃金の問題。つまり、中高年を多く雇うと、年功賃金のもとでは、人件費のコストがそこのところで食われてしまうので、若年の雇用に向きにくい。ですから、中高年の数というよりは、中高年の賃金の高さが問題になる。
○佐藤教授 なるほど、総人件費。
○清家座長 それから、この中でも少し引用されていたかもしれませんけれども、一番有名なのはOECDのエンプロイメントアウトルックみたいな、まさに日本とヨーロッパではなかなか比較できないけれども、ヨーロッパの場合には、70年代後半から80年代にかけて、年金の支給開始年齢の引き下げとか、生涯年金などを非常に弾力的に給付することによって、高齢者の引退を早めて若年の雇用機会を増やそうとしたのだけれども、それは結果的には非常に壮大な失敗に終わって、若年の雇用機会が増えない一方で、高齢者の引退だけ促進されてしまったという分析はあります。
 ほかにいかがでしょうか。
○佐藤教授 以前と違って、若年の供給は減っていくわけですね。そこは、かつての高齢者の雇用延長に比べれば、今の方がもっと供給が減っていくので、そういう意味では影響は少ないかもわからない。どういう時期で高齢者の雇用を延長していくかという時期の関係は見ていく必要がある。図表1ですね。
○清家座長 この辺はどうでしょうか。権丈委員、多様な働き方、若者の中で増えたりして。特によろしいですか。
○権丈准教授 はい。
○清家座長 小畑委員、どうぞ。
○小畑准教授 若年者雇用のみの話ではないのですが、パートタイム労働法の資料も御用意いただいて、こちらにお示しくださっているのですが、これから非正規雇用が、この法整備の過程の中でどのように変わっていくのかということを視野に入れてお話をする必要が勿論あると思います。
 例えば、就職ができなかった層が非正規雇用に行った場合に、若年者雇用で非正規雇用という人がますます増えた場合に、非正規雇用の法規制のあり方というもの。同視すべきものであれば、みんな二重丸といった状況が法整備の中で行われていて、それから努力義務の部分、均衡の部分があるわけですが、それの効果というものがどういうふうに出てくるのかもにらみながら。それが例えば正規雇用を増やす方向にいくのかどうかも考えながら、組み込んでいくことが非常に重要だなと思いました。
 以上です。
○清家座長 ほかによろしゅうございますか。
(「はい」と声あり)
○清家座長 それでは、今日はこの議論のためのメモということで、論点1、2、3について皆様からさまざまな御意見をいただきました。今日は必ずしも一つの方向に考え方が集約しというよりは、まだこれからいろいろな検討課題があるということを御提起いただいたわけでございます。基本的には、まずすべての労働者について65歳までの雇用を確保するために、仮に継続雇用制度でいくとしても、現在、継続雇用制度の対象となる高齢者に関わる基準を設けて、一定のものを排除できるようになっている部分をもっと見直していかなければいけないのではないか。
 つまり、定年の延長にしろ、継続雇用制度にいくにしろ、最終的に年金の支給開始年齢が65歳になるときに、そこまでの間、一定の基準で排除されるものがシグニフィカントに出てしまうというのは、ちょっと問題なのではないかということについては、比較的異論はないのではないかと思います。具体的にそれをどうするかということについては、また先ほど来あったような過去の経緯等ももう一度精査しながら、更に議論を進めていきたいと思っております。
 それから、勿論非常に超長期には、労使双方が納得できる形で、年齢に関わりなく働くことができる働き方の仕組みをつくり上げることに取組む必要があるかと思いますが、その前に65歳までの雇用をしっかり確保するということと、それから70歳までの雇用も含めて、その先の話をちょっと分けて考えた方がよろしいのではないかということも、皆さん方の御意見から今日はかなり言えたのではないかと思います。
 特に、次回以降は少し具体的に、この2013年問題も含めて、制度にどのように落とし込んでいくのか。雇用の新しいルールのあり方、定年制、継続雇用制度を含めて、少し詰めて議論していく必要があると思いますので、本日いただきましたいろいろな御意見を更に踏まえて、議論の集約に努めてまいりたいと思います。
 次回は、前にもお約束いたしましたとおり、企業のヒアリング等について主に議論させていただきたいと思っております。日程については、事務局より御説明がございますので、お願いいたします。
○望月高齢者雇用対策課長補佐 次回は企業ヒアリング等を予定しておりますが、現在、事務局においてヒアリングの準備とともに、当日御参加いただく方々との日程調整を進めているところです。委員の皆様からは次回以降の日程について御連絡をいただいておりますが、それらも踏まえまして、確定次第、改めて御連絡を差し上げたいと考えておりますので、よろしくお願い申し上げます。
○清家座長 年明けということに当然なるでしょうね。わかりました。では、年明けに企業のヒアリングを設定していただいて、できるだけ皆さんが出席できる日程で行いたいと思います。
 では、本日はお忙しい中、どうもありがとうございました。


(了)
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