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2010年10月28日 第6回終末期医療のあり方に関する懇談会議事録

○日時

平成22年10月28日(木)14:00~16:00


○場所

中央合同庁舎5号館 厚生労働省省議室(9階)


○議題

(1)終末期医療のあり方に関する懇談会報告書(案)について
(2)その他

○議事

○秋月課長補佐 これより、第6回「終末期医療のあり方に関する懇談会」を開催いたします。委員の皆様方におかれましては、大変ご多忙のところ、当懇談会にご出席いただき、誠にありがとうございます。議事に入る前に、私から新しい委員のご紹介をいたします。まず、社団法人日本医師会副会長の羽生田俊委員です。そして本日はご欠席のご連絡をいただいておりますが、社団法人日本看護協会常任理事の福井トシ子委員です。お二人が新たに委員にご就任されました。続いて、本懇談会の委員及び参考人の欠席と代理のご報告をいたします。財団法人がんの子供を守る会理事の近藤博子委員の代理として、財団法人がんの子供を守る会の武山ゆかり様にご出席いただいております。あけぼの会会長のワット隆子委員の代理として、あけぼの会の西貝圭子様にご出席いただいております。また、国立病院機構南九州病院院長の福永秀敏参考人より、ご欠席のご連絡をいただいております。
 事務局も人事異動がありましたので、改めてご紹介いたします。医政局長の大谷です。医政担当審議官の麦谷です。医政局政策医療課長の池永です。医政局政策医療推進官の山本です。最後に、私は医政局政策医療課課長補佐の秋月と申します。よろしくお願いいたします。懇談会にご参加いただく方々は以上です。
 それでは懇談会を進めていくに当たり、まずは大谷医政局長より挨拶をお願いいたします。

○大谷医政局長 政務三役は用務により出席できませんでしたので、私からご挨拶申し上げたいと思います。委員の皆様方、また参考人の皆様におかれましては、大変お忙しい中、終末期医療のあり方に関する懇談会にご出席いただきまして、誠にありがとうございます。
 終末期医療につきましては国民の関心も高く、個人の価値観が多様化している中、終末期医療のあり方も人それぞれ異なり、どのように本人の意思を尊重した終末期医療を実現していくか、厚生労働省としても重要な問題と考えております。今回の懇談会におきましても、医療現場で終末期医療を支えていらっしゃる医師・歯科医師の方、地域に根ざしたホスピス、緩和ケアを支えていらっしゃるNPOの方、尊厳死やリビング・ウィルといった問題を法律の観点から分析していただいている方、そして実際に病気を抱えていらっしゃる方など、それぞれの立場からご発表いただき、活発にご議論をいただいてまいりました。容易に結論づけることのできない問題も多くあるわけですけれども、厚生労働省としましては、終末期のあり方について国民の意識調査を続けた上で、検討を重ねていくことが必要と考えております。
 本日は報告書の取りまとめに向けたご議論をお願いする予定となっております。まずはこれまで懇談会にご尽力いただいたことに対する御礼、そして本日お越しいただきましたことに感謝し、開会のご挨拶とさせていただきます。どうぞよろしくお願いいたします。

○秋月課長補佐 それでは資料の確認をいたします。議事次第、座席表、委員及び参考人名簿に続き、資料1として「終末期医療のあり方に関する懇談会報告書(案)」について、資料1の別添として、「終末期医療のあり方に関する懇談会「終末期医療に関する調査」結果について(案)」を配布いたしました。また、本日は池上委員よりご提供いただいた「延命医療に関する一般市民の意識と遺族の評価」と題したスライドと、中川委員よりご提供いただいた「終末期医療2010」の冊子を配布しております。それでは以降の議事運営は座長にお願いいたします。

○町野座長 はじめに、この懇談会においては、委員欠席の際に、代わりに出席される方に関して、事前に事務局を通じて座長の了解を得ること、及び当日の懇談会において承認を得ることとなっております。代理として参加し、発言をしていただくことについて、これをお願いしている次第です。本日の懇談会については、近藤博子委員の代理として財団法人がんの子供を守る会ソーシャルワーカーの武山ゆかり代理人、ワット隆子委員の代理として、あけぼの会広報担当の西貝圭子代理人のご出席をお認めいただきたいと思います。よろしいでしょうか。
                  (承認)

○町野座長 また、本日も前回に引き続き、参考人の皆様にもご出席いただいております。それでは議題に入ります。本日の議題は、「終末期医療のあり方に関する懇談会報告書(案)について」となっており、報告書(案)についてご議論いただきたいと思います。
 また、今回この報告書を取りまとめた後も、終末期医療の議論は続けられるべきだと思いますので、今後、どのような調査を行うべきか、どのような議論が必要かということについて、最後の30分程度、できればもっと取って活発なご議論をいただきたいと思っております。それでは事務局より、報告書(案)及び(別添)の説明をお願いいたします。

○秋月課長補佐 はじめに、資料1の報告書(案)について説明いたします。1頁に「はじめに」があります。2頁が「これまでの経緯」です。終末期医療については昭和62年より検討を開始し、平成5年からはおおむね5年おきに、調査検討を実施しております。3頁から5頁までが「終末期医療に関する調査の概要」となっており、調査目的、調査対象、調査の時期、調査項目、調査方法、集計結果などを記載しております。6頁からは「終末期医療に関する調査結果」をまとめたものです。1)の調査結果の概要に引き続いて、8頁からはそれぞれの問いに対する結果を記載しております。各問いのコメントの最後に記載されている頁は、資料1(別添)として配布した「終末期医療のあり方に関する懇談会」、「終末期医療に関する調査」結果について(案)」の頁に該当いたします。(別添)ではグラフと数値を示しておりますので、適宜ご参照ください。
 報告書(案)に戻ります。22頁からが「終末期医療のあり方に関する懇談会の主な意見のまとめ」です。懇談会を通じてさまざまなご議論をいただいたものを、この報告書では「終末期医療に関する情報格差」「緩和ケアについて」「リビング・ウィルと終末期のあり方を決定する際のプロセスの充実について」「家族ケア・グリーフケア」「その他の意見」「次回の調査・議論への提言」にまとめております。最後の25頁に、懇談会の審議経過をまとめております。

○町野座長 これからの議論の進め方ですけれども、報告書(案)を2つに分けて進めていきたいと思いますが、よろしいでしょうか。

                 (異議なし)

○町野座長 ここからの議論は報告書(案)を固めると言いますか、それをブラッシュアップする作業ですので、報告書の内容について、このように修正してもらいたいというご議論と、それと関連するようなご発言やお考えがおありでしたらということで、区別すると言いますか、事務局で後で取りまとめるときに考えなければいけませんので、そこらをきちんと明示されてご発言いただけたら、非常にありがたく思います。まずは報告書(案)1頁の「はじめに」と、2頁の「これまでの経緯」、3頁から5頁の「終末期医療に関する調査結果の概要」、6頁から22頁の「終末期医療に関する調査結果」、併せて(別添)の「終末期医療のあり方に関する懇談会「終末期医療に関する調査」結果について(案)の概要」について、ご意見、ご質問がありましたら、どこからでも結構ですのでよろしくお願いいたします。
 何もないということはないと思うのですけれども、事務局から前回の調査結果とちょっと変わっていると見られる所がある、あるいは、この場ではまだご意見が出てないでしょうけれども、もし皆様方の感想などで、いくつかご指摘があったらご紹介いただけたら議論がしやすくなるかと思います。

○秋月課長補佐 それでは、6頁の「終末期医療に関する調査結果の概要」について説明いたします。
 1つ目ですが、終末期医療に対する関心というのは80~96%です。80~96%というように少し幅があるのは、一般国民、医師、看護職員、介護施設職員それぞれの方にお尋ねしておりますので、こうした幅があります。関心は高いのですけれども、延命医療について家族で話し合ったことがある者は半数程度であり、十分に話し合ったことのある者は少ないということです。延命治療について家族で話し合ったことがあるかどうかという問いについては、今回から新たに追加した項目です。
 2つ目です。延命医療について家族と話し合いをしている者のほうが、延命医療に対して消極的な傾向が見られました。
 3つ目です。病態ごとに異なるものの、治る見込みがないと診断された場合は、延命医療に対して消極的である。一方、自分自身の延命医療に対して、自分の家族には延命医療を望む傾向が見られます。
 4つ目です。死期が迫っている場合、延命医療を中止して自然に死期を迎えさせるような医療やケアを望む者が前回よりは増加しておりますが、苦痛を和らげることに重点を置く医療・ケアを望む者が半数以上を占めております。
 リビング・ウィルの考え方に賛成する者の割合は、前回よりも増加しております。また、延命医療について家族と話し合いをしている者のほうが、リビング・ウィルに賛成する割合も多い。
 リビング・ウィルの法制化については、一般国民は法制化に否定的な意見が6割を超える一方、医師と看護職員の間では意見が二分しております。
 延命医療に関して、51~67%の方が医師と患者の間で十分な話し合いが行われていないと考えております。
 終末期医療に対して、悩みや疑問を感じたことがある医療福祉従事者は、80%を超えます。
 また、医療福祉従事者の間では終末期状態の定義や延命医療の不開始、中止等に関する一律の判断基準について、「詳細な基準を作るべき」という意見と、「一律な基準ではなく医療・ケアチームが十分に検討して方針を決定すればよい」という意見で二分しております。
 右の頁にまいります。死期が迫っているときの療養場所として、63%の一般国民は自宅で療養することを望んでいますが、66%の方は自宅で最期まで療養することは困難であると感じています。その理由は、「家族への負担」「急変したときの対応の不安」を挙げる方が多いです。
 死期が迫っているときの療養場所として、自宅で最後まで療養することが実現可能と回答した方は、一般国民の6.2%よりも医療福祉従事者の方が多くなっております。(医26%、看37%、介19%)
 「WHO方式癌疼痛治療法」について、よく知っている医療福祉従事者は少なく、前回調査に比べてやや減少しています。
 最後に、終末期医療の普及のために充実していくべき点としては、「在宅終末期医療が行える体制作り」「患者(入所者)、家族への相談体制の充実」を挙げる者が多いということです。

○町野座長 いまのが概要ですが、これに続いて次の頁からはその結果について、より詳しいものがあります。いまの点について何かありますか。

○池上委員 私から提示した資料がありますので、それについて2、3分説明させていただければと思います。というのは、これはこの調査の中で対象となっていない、実際に亡くなられて病院を退院した方のご遺族に対する調査だからです。この結果は明日、東京で行われる公衆衛生学会で発表する予定です。最後の頁をご覧いただきますと、この結果はすでに英文で報告しておりますので、今日はその概要を報告いたします。5頁の上のほうですが、「一般」というのは、東京から100?qぐらい離れたある地方都市における、一般の国の調査と同じ方法を用いた一般住民に対する調査です。「遺族」というのは、亡くなられて退院された患者のご遺族に対する調査です。これまでの調査では、ご遺族の意向を直接伺っていないので、補完する意見としてご報告いたします。
 まず延命医療について、患者・家族との話し合いが「十分行われた」というのは、やはり遺族においても2割程度でした。「なし」あるいは「無回答」というのが、同じく6割ぐらいなされていないことが分かりました。「家族への延命医療を望まない」というのが、一般では6割前後を占めていますが、ご遺族になるとその割合はそれぞれ半分になっており、がんのほうがその割合は低くなっています。延命医療における医師と家族の話し合いについては、一般の方は「ほとんどなされていない」、あるいは「わからない」と回答されていますが、ご遺族に伺うと「十分に話し合われた」というのが6割を超しております。そういうものをまとめますと、やはりご遺族についても、今後は調査をしていく必要があるというのが結論です。詳細は後ほどご覧いただければと存じます。
 それに関連して、もう1点あります。国の調査と同じ方式を用いて、一般住民についてある地区で行ったわけですが、やはり比較をする上では、それを用いざるを得なかったのです。報告書は資料1の24頁をご覧ください。6)の「次回調査・議論への提言」の上から5行目、「この際、過去の調査との連続性も考慮しつつ、調査方法、調査項目について検討すべきである。具体的には、調査に先立ち検討期間を設け、例えば、調査対象者の範囲、回収率を向上させるための方策、終末期医療に関する用語の適切な使用、終末期医療の新しいニーズに適応した調査項目等を検討すべきである」ということに、私は非常に賛成しております。と申しますのは、この骨格は昭和62年にできて、基本的にそのときの社会状況及び用語をそのまま踏襲した形で調査が行われているからです。また、内容的にも調査指標についても、連続性に配慮しながら見直す必要があると思いました。これについてはじっくりと調査研究をしながら行うべきだと考えております。

○町野座長 いまのお話とご意見というのは、22頁に入って、その後半のご意見に関係いたします。今後の調査のあり方とその内容については、非常に示唆に富むご意見だろうと思います。そこで事務局のほうにもお尋ねしたい。先ほど池上委員がおっしゃった6頁の下から3つ目の○の延命医療に関して云々の医師と患者の間で十分な話し合いという所です。このときの患者というのは、患者本人と限定されているのでしょうか。返事をされる方というのは、おそらく患者さんとその家族も入った感じで返答している。質問を受けられたほうは、そういう具合に受け取って何かやっていらっしゃるということではないかというのが、私がわからないところなのです。これは質問ですと、問いのいくつぐらいに当たるわけですか。

○秋月課長補佐 確認いたします。

○町野座長 ほかにありますか。

○池上委員 いまの話に関連して。私の調査では、もちろんご遺族ですから、家族という立場でしか答えられないわけです。患者さんのほうにも独立して設問を設けたのですけれども、違ったこと、例えば延命医療について別の意向があることを明確に言うことは、こうしたアンケート調査上はなかなかできないわけです。やはり家族とご遺族と亡くなられた本人とのギャップについて、振り返って伺うことは難しいのではないかと思います。

○秋月課長補佐 先ほどの医師と患者の間の話し合いということですが、もともと一般国民に配布した質問そのものは、「延命医療を続けるべきか中止するべきかという問題について、医師と患者の間で十分な話し合いが行われていますか」とお尋ねしております。(別添)では119頁にそちらの回答をお示ししています。

○町野座長 これからのいろいろな議論になるところです。かつてもちょっと出たことがあります。6頁の上から4つ目の○ですが、質問やまとめ方が、緩和ケアというものが行われると、もう延命が放棄されているような、つまり延命か緩和医療・ケアかというとエントベーダーオーダーと言いますか、あれかこれかのような聞き方と受け取られる可能性があるので、これは少し誤解を招くのではないかというご議論があったように思います。あとは情報格差の問題、さらには質問の仕方等について、これから考えていかなければいけないところですけれども、確かに言われてみますと4つ目の○の所が、そういう感じを与えるなという感じがいたします。

○林委員 その点について少し申し上げます。この結果をまとめる中で、学会で発表された結果として1つの新しい事実がありますので、それについて補足説明させていただきます。実は、今年の6月にアメリカのがん学会で発表された結果です。肺がんの方々を対象にした調査結果です。早期から緩和ケアを提供した方々と、本当に終末期と言いますか、痛みが出てからであったり、必要が出てから緩和ケアを受診した方々とで、命の長さを比較した研究が発表されました。その中で、早くから緩和ケアにかかった人たちのほうが、命の長さが約2.7カ月長かったという結果が出たのです。前回私がした報告では、後ろ向きの研究と言いますか、後から振り返っての研究で長い傾向が見られたという結果だったのですが、今回は前向きの研究の中でそのような差が見られたという報告がありました。
 それを振り返ってみますと、決して緩和医療が命を縮めることはなく、むしろ命を延ばすという結果がその中に示されたわけです。それを考えたときに実はこの文章全体、報告書全体にわたって言えることですが、延命医療と緩和医療は異なるもの、実際に内容は異なるのですけれども、緩和医療も延命につながるという意味合いを考えると、今後は「延命医療」という言葉遣いと「緩和医療」という言葉遣いを、また言葉の混乱を招くと思われるかもしれませんけれども、少し考える必要があるのではないかと感じた次第です。

○町野座長 ほかにありますか。なければ次の22頁からの部分について、ご議論をいただきたいと思います。「終末期医療のあり方に関する懇談会の主な意見のまとめ」です。これについても一応報告書の内容として、このような議論がされたということが挙げられますので、これについても何かご意見あるいは感想等がありましたらお願いしたいと思います。先ほどの池上委員のご発言というのは、おそらくこちらのほうで活きてくるお話だろうと思います。最後の6)の次回調査・議論への提言ですが、池上委員からしますと、一応この内容で結構ということでしょうか。

○池上委員 具体的にはいまお話のあった、緩和ケアと延命医療というものが対比的に用いられている表現等を含めてです。これには過去との比較を重視するあまり、現状を正しく反映していないような表現方法があります。これは時間をかけて、諸外国における動向も踏まえて、また日本の有識者あるいは広く国民の意見も聞いて、より適切な表現に直していく必要があるということを改めて申し上げます。

○町野座長 24頁の6)の部分を、今のようなことで修正する必要はありますか。そこまでではないでしょうか。

○池上委員 この報告書はこの設問に従ってまとめた以上、これを無理に改めると、報告書の内容を反映しなくなると思います。その議論はこの調査をする前に行うべきだったのですが、反省として調査に先立つ議論がなされる時間がほとんどなかったということを、思い出していただければと存じます。

○町野座長 2つ目の●の次回議論に関して云々という所で、これをする時にこういうことも調査しろということになっていますけれども、その前にこの趣旨に沿ってと言いますか、以上のことに沿って事前に十分にもう1回、どのような調査をするかについて検討することが望まれる、というような文章を加えるということになりますか。それとも、そんな必要はないでしょうか。

○池上委員 私は、この表現の中でそれが包含されていると解釈したのですけれども、座長がより明確にする必要があるとおっしゃるのであれば、むしろそれに越したことはないと存じます。

○町野座長 わかりました。ほかにありますか。

○川島委員 22~24頁と項目が括弧付けしてあって、1)~6)とありますけれども、私からの訂正希望の箇所は3)の内容です。3)を初めから読んでいきますと、リビング・ウィルの法制化については、「法制化するべきである」という意見がある一方の括弧付けされている所から、いま読んだ所までです。これについては、むしろ一般国民がどういうように考えているかということが、1)の情報格差の所でも出てきておりますので、「一般国民の6割は否定的である」という文言にする。つまり国民がどう考えているかということが反映されたほうがよろしいのではないかと思っております。ですから「リビング・ウィルの法制化については、一般国民の6割は否定的である」という文言に変更していただけるとありがたいと思います。
 もう1カ所、4行目の「一方で」からずっと行って、「リビング・ウィルが患者の意思を尊重した終末期を実現する1つの方法として、リビング・ウィルそのものに対する考え方を支持する者が増えている」というのは、調査結果の内容を反映しておりますのでそれでいいのですけれども、その次の「リビング・ウィルを適切に活用するためにも、リビング・ウィルの正しい知識を普及し」については、別の文言に差し替えていただきたいと思います。この会でもしょっちゅう話になりましたが、リビング・ウィル、つまり意思決定をさせることが大事なのではなくて、意思決定ができるための十分な情報提供をしているということがなされていないという現実がある。それはどこに反映されているかというと、6頁目の先ほどの終末期医療に関する調査結果の概要の例えば「延命医療に関して、51~67%の者が医師と患者の間で十分な話し合いが行われていない」ということからも推測されます。これは出来上がったリビング・ウィルをどう活用するかではなくて、リビング・ウィルを、つまり意思決定ができる前段階のちゃんとした説明責任がされていないところに、むしろ着目していただきたいわけです。
 もう一度申し上げます。「リビング・ウィルを適切に活用するためにも、リビング・ウィルの正しい知識」という所を別の文言で、例えば「意思決定が行われるための十分な情報提供を普及し」とする。つまり、リビング・ウィルが作成できるための十分な情報提供のほうが先だという序列を、はっきりさせていただきたいのです。情報提供を十分にすることによって、結果としてリビング・ウィルが生まれるのであって、リビング・ウィルが最初にあるのではない。ここの序列をはっきりさせていただきたいと思います。なぜなら、「終末期医療の決定プロセスに関するガイドライン」にも記載がありますように、決定プロセスが大事であって、結果は付いてくるものです。しかし、リビング・ウィルという結果を初めに設定しておいて、それをどうするかという話では、主客転倒になってしまいますので、ここは好ましくない。
 もう一度申し上げます。「リビング・ウィルを適切に活用するためにも、リビング・ウィルの正しい知識」という所までを割愛して、代わりに「意思決定が行われるための十分な情報提供を普及し」というようにしていただいたほうが、よろしいのではないかと思っております。

○町野座長 いま2点にわたって出ましたけれども、確認いたします。1つは3)の最初の●で、法制化に国民の6割が反対しているということを明示すべきだということでしょうか。

○川島委員 はい。

○町野座長 それが1点ですね。では、まずその点からご議論いただけないでしょうか。

○中川委員 もちろん、それでもよろしいのですけれども、すでに15頁のリビング・ウィルについて「賛成する」と回答した者を対象という所に、パーセントが記載されているのです。リビング・ウィルについてどのように扱われるのが適切かという問いに対して、一般国民と介護職員とでは云々と回答した者の割合が最も多かったということで、パーセントも記載されています。いま先生が指摘されたのは、「終末期医療のあり方に関する懇談会の主な意見のまとめ」ですから、ここにあえてパーセントが出なくても、今のこの文章でそれほど違わないのではないかと思うのですが、いかがでしょうか。

○町野座長 ご意見はありますか。最初の●の文章というのは、言われてみると確かにわかりにくいところがあります。要するに、法制化すべきであるという意見があると。他方では法制化の必要がないという意見もかなりあると。しかし医師が家族と相談の上、その希望を尊重しながらということについては、両方が一致している。そういう順番でしょうね。

○中川委員 その順番を変えてもう一度書かれるのはいいと思いますが、パーセントは前にすでに出ていますから、「終末期医療のあり方に関する懇談会の主な意見のまとめ」の中で、あえてまた出てくることもないのではないかと思います。そうすると、みんなパーセントを出したほうがいいということになりますので。いかがでしょうか。

○町野座長 パーセントを出せということではなくて、おそらく国民の中では消極的な意見のほうが強い、ということを明示してもらったほうがいいのではないかということです。

○中川委員 それは書き方を少し変えればよろしいのではないでしょうか。

○町野座長 いまのような順番に変更して、もう1回修文するということでよろしいでしょうか。
                 (異議なし)

○町野座長 それでは2つ目の●の問題です。ご意見によりますと、この文章だと意思決定をすれば、リビング・ウィルを書くか書かないかの問題のように見えると。むしろ先ほどの●の議論の続きで、本人の意思を尊重しながら終末期医療をやっていくというのが、リビング・ウィルの基本的な考え方なので、これを法制化するかどうかは別として、このためにもリビング・ウィルというやり方がありますよという知識の普及と啓発、そのことに力点を置いた序列にしたほうがいいのではないか、というご意見と承ってよろしいでしょうか。

○川島委員 リビング・ウィルがなされた後にそれをどう使うかではなくて、リビング・ウィル、つまり意思決定が行われるためには、その前に十分な情報提供がないといけないということが大事です。普及させるべきはリビング・ウィルを普及させるのではなくて、リビング・ウィル、つまり意思決定がされるための十分な情報提供を、医療従事者等がきちんと説明できるような環境づくりをする。それが決定プロセスだというのが、もともとの決定プロセスのあり方です。その後に「終末期医療の決定プロセスに関するガイドライン」が記載されております。すでに意思決定されたものをどう使うかではなくて、どのようにちゃんとプロセスを踏んでいくかということについては、十分な情報提供をするということを強調していただいたほうがよろしいのではないかと思います。

○町野座長 ご意見はいかがでしょうか。

○木村委員 その意見には大賛成だと思います。リビング・ウィルというものを重要視することになると、あまり情報も提供しないで、さあ、リビング・ウィルを書け書けとか、リビング・ウィルを決めろということになりかねないのです。やはり川島先生がおっしゃるように、情報提供がないと十分なリビング・ウィルも得られないし、折角もらったリビング・ウィルがコロコロ変わるということになってしまったりしますので、その意見には賛成です。

○井形参考人 私は尊厳死協会ですが、尊厳死協会のリビング・ウィルというのは、本人の意思を尊重しましょうという人権運動の1つだと考えております。本人の意思は正しい情報でないと駄目だというのだったら、選挙などはまさに全員が同じ情報を共有して行っているわけではないが、それでも社会は動いていくのですから、本人の意思があるときに、それを関係者が寄ってたかってそんなことはないというような言い方はしないほうがいいと思うのです。あくまでも本人の意思を尊重しておく。現にエホバの証人の輸血なども、私たちは輸血すべきだと思いますけれども、現在の法律では患者の権利のほうが優先するということになっていることを申し上げたいと思います。

○橋本参考人 橋本の意見です。この文章だと、リビング・ウィルを望む人のほうが多いように読み取れると申しています。それからALSの場合、十分な情報提供がされないと意思が決められませんので、やはり情報がいちばん大事であると思っています。

○町野座長 ここの部分の文章も、もしかしたら整理の必要があるかもしれません。要するにウィルというのは遺言ですから、リビング・ウィルの制度というのは、書面に書かれた意思決定を重視するというのがリビング・ウィルの基本的な考え方ですが、そのものを普及させることではないというのは、おそらく皆さんもあるだろうと思います。この文章の最初にあるのは、リビング・ウィルの制度というのは本人の意思を尊重しながら、終末期医療が行われるべきだという基本的な考え方に立っているので、その考え方の普及が行われるべきだというのが1つあります。
 したがってどこで意思決定をさせる、あるいは書面に書かせるという問題ではなくて、本人の意思を活かしながら終末期医療を行う方法がありますよと。そのためにはお医者さんと患者さん側と家族の間で、いろいろな話し合いをしながら続けていかなければいけないことだろうと思うのです。そういう内容であるならば、おそらく皆さん方の一致が得られるだろうと思うのです。
 ただ、リビング・ウィルというのは随分最初のときから調査検討会の中で、言葉として使われていて、ずっとそのまま残っているのです。これはもう最初の段階とは違って、皆さんの考え方というのは、かなり形式的なものではなく、本人の意思の尊重だということになっているわけです。そのようなことをはっきりさせながら、いまの川島委員のご意見を活かし、いまの先生のご意見も活かしながら修文していくということでいかがでしょうか。何かご意見はありますか。

○川島委員 文書化したものが金科玉条のように、あたかもその人間の意思決定であるように思い違いをする人が出る危険性を伴うと思うのです。10分前のリビング・ウィルはもう化石ですので、10分後の変わった理性的な意思決定こそ、つまり直近の意思決定が最も大事なので、文書化することが大事ではないわけです。3)の表題でそういう話をすると、リビング・ウィルという言葉自体が不適切で、意思決定とか、別の言葉にしたほうがいいという話になってしまうつもりはないのです。なぜなら、もともと調査がそういう名前でこの文言を使っていますので、調査はそれでいいのです。
 ですから先ほども言いましたように、3)の2番目の●の「一方でリビング・ウィルが」から「も増えている」という所は調査結果なので、そのまま尊重していい。しかし、その後の「リビング・ウィルを適切に活用するためにも」から、「正しい知識を普及し」という所は行きすぎではないかと思っています。そのような意思決定が行われるためにはその前段階の序列として、やはり1番に十分な情報提供が普及されなければいけないので、そのことはガイドライン上も明記していただきたいと思います。

○町野座長 わかりました。3)ではとにかくリビング・ウィルについての調査ということがありますので、これはそのまま「リビング・ウィルと終末期のあり方を決定する際のプロセスの充実について」として、1つ目の●は先ほどのように順番を変えた上で修文をすると。2番目の●は書き方を少し考える。文章はいまパッと思い浮かびませんけれども、これはリビング・ウィルが患者の意思を尊重した終末期を実現する1つの方法となっていますから、そのことに力点を置きながら、たった1つの方法を実現するだけではなくて、基本的にはこれも含めた上で終末期の意思の形成、意思を活かされることについての知識・啓発ということで修文するということでいかがでしょうか。

○井形参考人 私たちには毎年、2,000名近くの死亡会員が出ますが、その遺族にリビング・ウィルを主治医に見せたときに協力してくれましたかというアンケートでは96%までの人が協力してくれましたと回答しています。協力してくれましたということは、あなたの意思はわかりました、それを尊重して診療しましょうということでした。先生の言われたように、医療は患者さんとの共同作業ですから、患者さんの意思は尊重しましょうという態度を貫いていますし、そうあって欲しいと思っています。

○町野座長 わかりました。ここはちょっと複雑な文章になるかもしれませんけれども、後で取りまとめることにいたします。この部分はこれでよろしいでしょうか。

○藤田参考人 今回、がんの緩和ケアの専門の方が何人もご参加いただいておりますので、少しお伺いしたいのです。「終末期医療に関する情報格差」のほうか、「緩和ケアについて」のほうに入るのかがわからないのですが、がん対策基本法で「WHO方式癌疼痛治療法を100%のがん診療に携わる医師の方々に研修していただく」、という文言をしっかり入れたにもかかわらず、6頁で「説明できない」とか、「よくわかっていない」という方が増加しているとありました。私たちがん対策を進める者としては、とても杞憂しております。是非「終末期医療に関する情報格差」に、そのことをしっかりと入れていただきたいと思います。
 特に114頁の「モルヒネの使用に当たって、有効性と副作用について患者にわかりやすく、具体的に説明することができるか」という、薬に対しての有効性と副作用について説明できるかというとても根本的なところが、説明できないと回答した者の割合が増加する傾向があったというのは、終末期にこれからどうやって生きていくのかという生き方を支える問題の前の段階で、痛みに苦しんでいく患者が増えていくということですから、是非適切な情報の項目の中に、そういった文言をしっかりと入れていただきたいと思っております。
 もう1つは、「緩和ケアについて」の23頁です。治療と緩和ケアを同時に並行して行っていく「パラレルケア」を浸透させることが必要である、という文言があります。私ども一般市民としては、「ターミナルケア」「ホスピスケア」「緩和ケア」というように、いくつか終末期に関する言葉があり、どういった意味があるのか、どういった差があるのかも何もわかっていない一般市民が多いのです。その中にまた「パラレルケア」という1つのケアのあり方みたいな形で出ていくと、かえって混乱してしまいますので、「同時に並行して行っていくことを浸透させていく」という文言だけでいいのではないかと思いますが、いかがでしょうか。

○町野座長 2点ありましたが、相互に関連すると思います。1つは、緩和ケアの医療現場における知識がまだ十分に普及していないので、それを1)の終末期医療に関する情報格差の中に入れたら、おそらく適切ではないかというご意見です。この点についてはいかがでしょうか。

○木村委員 この客体と言いますか、医療従事者の中でどういう割合になっているのか。このアンケートの対象になっている病院が、一般病院とか緩和ケア病棟とかいろいろ書いてありますけれども、その中でどういう割合にいるのかで違ってくるのではないかと思うのです。実際に診療所でも川島先生のようにやっていらっしゃる方と、あまりそういうことをしていない、ほとんど一般の高血圧とか慢性期だけを診ている人は、ここのことをあまりよく知らないし、病院でもあまりこういうことを扱っていない病院だとよくわからない方もいらっしゃるのです。もちろん緩和ケア病棟の方はよくご存じだと思います。一般病院でもかなりがんの末期の方を診ているとか、手術の患者さんをやっているとか、どういう患者さんを診ているかによって随分違ってくるのではないかと思うのですけれども、それが書いていないのでよくわからないのです。
 ですから、パーセンテージが低くなったということで悲観していらっしゃいますけれども、実際にどういう相手に対してアンケートを取ったかによっても違ってくるのではないかと思うのです。わかればその辺のところも調査すれば、また違ってくるのかなと思います。もちろん疼痛緩和についてはあるのですけれども、普段やっていない先生方やほかの職員の方には、なかなかよく分かっていただけないということはあると思います。

○池上委員 これは調査内容だけではなく、調査方法についても再考する必要があるということの一環として申し上げれば、病院の中に括られている医師・看護職員について、具体的に個人として誰が回答するかについては、特に規定はないわけです。ですから、そのときにこの調査票に回答した医師の属性というのは不明です。それも含めて調査方法を再検討しないと。いま言ったように、実際に逆行するかのように減っているというのは、たまたま回答した医師が、その年による構成比のぶれなのかどうかも、いまは把握できていませんし、全体の回収率としても、必ずしも高くないわけです。本報告書の資料1の(別添)の2頁をご覧いただくと、そこに回収状況が記されています。これで見ますと、医師については緩和ケア病棟の回答率は6割いっていますが、診療所や病院に至っては3分の1の回答にとどまっています。こうした現状からしても、調査方法について再考する必要があるかと存じます。

○土屋参考人 いまの件については、私がヒアリングのときに申し上げたように、最近、薬剤にはさまざまな剤型や種類がどんどん出てきていることから、今回の調査ではそれを医師・看護職員・介護施設職員が説明できるかと聞かれると、現実として複雑化しているものの使い分けなどについては、なかなか難しいだろうというのは想像に難くないことです。
 6頁の調査結果そのものについては、これはこれで全然問題はありませんが、上の四角の○の3つ目に、「本報告書における医療福祉従事者とはこれを指す」とあります。そうだとすると、十分な情報提供をするためにはここで言うところの、医療福祉従事者及びその他の専門職の人の十分な情報提供が、必要ではないかということを言わないと。むしろ、ここではそういう職は入らないことになっていますので、やはりそういう現実に、先ほどの意思決定をきちんとするためにも、十分な情報を提供するためには、その専門職の人の情報提供が必要だと言えるのではないかという気がいたします。

○林委員 まず先に、モルヒネの使用に当たっては、具体的に説明できる者の割合が減少していることについてです。この調査が行われたのが、平成20年の3月です。実は、国のがん対策基本法に基づいてがん対策推進基本計画ができ、それに基づいて現在、がん診療に携わる医師に対する緩和ケアの基本的な研修が、全国的になされています。それが始まったのがほぼ同時期です。現在はここに示されているよりも多くの方が知識も持っていらっしゃるでしょうし、おそらくいま調査を行うと、もっといい結果が出るだろうと思っています。ですから今、いたずらにここの部分を強調するというのは。この調査のときはそうだったかもしれないのですが、実際に1万人以上の医師がその研修会を受講しているという状況ですので、若干改善しているであろう状況を踏まえると、そこまで強調しなくてもいいのではないかと、私個人としては思います。
 もう1つ、先ほどパラレルケアの文言についてのご意見をいただきました。その点で、実際に緩和ケアがパラレルに並行して行われるべきであるという点が、いちばん重要なメッセージになりますので、ご指摘のポイントはおっしゃるとおりだと思います。ただ、私自身としては一方で何かの物事を象徴するための言葉というのも、必要なものとして捉えております。並行して行われるべきで、なおかつ緩和ケアのことを「パラレルケア」と言っているのではなく、治療と同時に行われている状況を指し示す言葉として「パラレルケア」という言葉を示すのであれば、重複するのではなく、同じものを表現しているのでもなく、状況を示すものとして1つの概念を表す言葉として用いられるという点で、私はやはり「パラレルケア」という言葉を載せていただくことを提唱したいと思っています。

○町野座長 形式的に2つの論点があります。前のほうの議論ですけれども、これはあえて入れる必要があるかないかという話ですよね。これはいかがですか。私の感想ですが、1)では情報格差と言っているけれども、何と何の格差かというと、医療を受ける側と医療間の格差の問題を言っています。そして最後の●ではこれを解消する方法として、医療の側ももうちょっといろいろな情報や知識を持って、患者に選択肢を提供できるような体制をつくっておかなければいけないと。前のほうではいくつか例が挙がっていて、かなり説得力があるのですが、最後の所でこれは何を念頭に置いているのか、今ひとつわからないのです。
 その中の1つとして緩和医療のことに触れるというのはいいのではないかと思っています。ただ、なかなか普及していないで、むしろどんどんなくなっているかどうかについてはまだ議論があるところで、ただしわからないかもしれないけれども、現在が普及していると考える人はまずいないわけです。まだ、これから努力が必要であるということですので、これを例として入れた上で、例えば「なお一層緩和ケアのあり方について、これから普及啓発を図ることも必要であろう」ということを入れるというのでいかがでしょうか。よろしいでしょうか。若干強引すぎたかなと。
 もう1つの論点である23頁の「パラレルケア」の文言についてです。いまの林委員のご説明は私も納得ができたわけですが、この点はいかがでしょうか。維持ということでよろしいですか。

○藤田参考人 先ほど申し上げましたように、私は緩和ケアのことをよく存じていますので、すべての言葉の意味を言えます。一般の国民にこれから緩和ケアが普及していきますが、「ターミナルケア」「ホスピスケア」「緩和ケア」の言葉の意味や違いもよくわかっていないような状態ですので、もし入れるようでしたらその文言のどこからか引用して、説明をしっかりと入れていくことも1つなのかなと思いますが、いかがですか。

○町野座長 この書き方をもう少しわかりやすくということは、そういう話ですね。先ほどの林先生のお話を活かせるような状態で、もう少しわかりやすく書く。これだと、まるで緩和ケアがパラレルケアそのものであるかのように受け取られる可能性があるというので、林先生、もし変えるとしたら何かありますか。

○林委員 いますぐは。

○町野座長 わかりました。この点は、いまのようなことをより明確にするという格好で、打合せで修文にさせていただく方向でよろしいですか。

                 (異議なし)

○町野座長 どうもありがとうございます。論点等について、ほかに何かありますか。

○中山委員 22頁の1)「終末期医療に関する情報格差」のいちばん最後の●で、「なお、医療福祉従事者に対する終末期医療に関する教育及び話し合う機会を確保することが、情報格差を解消するために重要である」はよいのですが、「その前提として、終末期医療体制を整備し」という終末期医療体制の整備は、具体的にはどんな整備をイメージして書いたかと、いま改めて疑問に思いました。
 たしか、何回目かの討議のときに、医療において終末期の定義は難しく、病名によって経過が違いますし、たとえば、救急車で搬送された高齢者の場合、救命できる病名であっても高齢で救命ができないという現実もあって、そこで行われる医療というのはとても複雑で、終末期といっても一言では括れないという議論があったように記憶しています。
 その中で、ここで改めて、終末期医療体制の整備という言葉の中に含まれる意味を明確にしないと、誤解される一文にならないかと危惧しましたので、ご検討いただきたいと思います。

○町野座長 事務局では、ここは何をイメージされているか。

○秋月課長補佐 こちらは、1)「終末期医療に関する情報格差」の中で出しているものですが、具体的には患者や家族、医療従事者が話し合えるような機会をきちんと整備すること。あるいは、医療福祉従事者の多職種連携というか、関係する方々が話し合うということで、終末期医療体制の整備といいますと非常に広い範囲を含みますが、ここでは情報格差という流れを汲んで話し合う機会とか、そういったものをイメージしています。

○町野座長 要するに、これは体制を整備するわけですから、より在宅の医療が活発に使えるようにとか、そういう話なのでしょうか。

○秋月課長補佐 こちらは調査結果のほうでも、報告書(案)の20頁の?Jの1つ目、医療福祉従事者のうち、終末期医療の普及に関し、終末期医療の普及のために充実していくべき点は何かという問に対して、「在宅の終末期医療が行える体制づくり」「患者・入所者、家族への相談体制の充実」とあります。こうしたものを医療福祉従事者が求めていらっしゃることもありますので、こういった文言を具体的に入れるのが一案かと思います。

○町野座長 そうしますと、より具体化すると思います。先ほどの緩和ケアの話もその1つの表れだったのですが、例えばそこでこれを少し入れて、選択肢を終末期医療のところでも必要であると言い切るということでよろしいですね。いまのような具体的なことで。

○田村委員 わかりやすくするようにということの関連かもしれませんが、1)のタイトルが情報格差ということで、結局これは医療の受け手と担い手の間にある情報格差ということです。先ほどのリビング・ウィルのところも情報提供というところが、とても大きなプロセスのカギであるというところがあるので、医療の受け手と担い手にある情報格差とか、そこのところに何か明記したほうがいいのかなと。タイトルだけを読む方ももちろんおられるので、いかがでしょうか。

○町野座長 いまの点は、確かにこれを情報格差と言われるとわかりづらいところがあって、どういう話の順序にこれがなっているのかなということですが、基本は第一次から始まった基本というのは患者の意思を尊重しながら、最終的にいい終末期医療を行うことで、しかしそれがインフォームドコンセントになったりするわけですが、それができるためには医療がなければいけないわけです。そして、その中にそれが選択できる余地がないと、不毛の選択では駄目だということがあるわけで、最初から本人の意思を活かすためには、どういう方策があるかということがそのトップにある。そういう考え方からすると、情報格差といっても、患者の側が何を選択できるか知らないという情報についての偏在が1つある。
 他方では、医療側もこのことを十分に伝えられていない。例えば、いろいろ知らなかったりして、そのことも解消しなければいけない。諸々のことがここに入っています。それを情報格差ということで表現しているので、イメージとしてはわかりづらいのですが、もし何か適切な言葉を思い付いたら、言っていただけるとありがたいです。何かありますか。

○田村委員 その2つの意味を全部まとめるのは難しいなと思って聞いていたのですが、ここにあるのは、例えば先ほどから言っている医療を担う側と受ける側に情報の格差がある。それは、きちんと情報提供のプロセスを踏んでいないことが多いからということがいままでの議論の中ではずっとあったので、そこの部分も1つかなと思います。

○町野座長 急にいい知恵は、ここで出てこないところがありますが。

○山本委員 全体を通じたほうがいいのかもしれませんが、片括弧になり、その次には○、●になっているのだろうと思います。このやり方は、一般的には流れや優先順位や重みづけ、あるいは時系列的にと何かがあってやりますが、これにはそれが何もないのです。そこがないから、具体的には22頁の最後に終末期医療体制の問題が出ていますが、これはその前の?Jの終末期医療体制の充実と同じようなことが出ているわけです。この辺の何が何だかわかりづらくなってしまっているのをもう少し整理したほうがいいのではないかなと思いますが、いかがでしょうか。

○町野座長 ご意見はよくわかりますが、これは全部組み直しですね。

○山本委員 全部組み直すのは大変ですから、どうしたらいいのか、少し知恵を出したほうがいいと思います。

○町野座長 先生のほうのご意見は。人の知恵を借りるようで。

○山本委員 少し私も協力するのは、やぶさかではありません。

○町野座長 いまの点は留保させていただきまして、私もいま考えながらですが、ほかにご意見はありますか。

○大熊委員 別の点もよろしいですか。設問の中には終末期における療養の場所というのが入っていますが、意見にはそういう問題が出ていないと思いまして、せめてその他の意見のあたりで結構ですから入れてください。私は再々、認知症の人が精神病院に2割も入れられて、あんな所で認知症がさらに悪くなって死ぬのはいけないとか、施設の雑居部屋で亡くなっていくのは人生の最後にふさわしくないと言ってきました。
ただ、「こういうふうにしたい」という意見書だから、「これでは駄目」という意見はうまく入らないかなと思って、意見を差し控えていたのです。
 例えば「その他」で人生を閉じるに当たって、家庭と同様の本人にふさわしい環境というものが整備されるべきであるというようなことを入れていただけたらいいなと。医療についてもケアについても、どんな場で行われるかというので全く効果が違ってまいります。
 たまたま私の母親が、この7月に悪性リンパ腫?W期、末期と言われたのですが、病院から覚悟して家に連れ戻してきましたらば、めきめき良くなって、今朝も私にお茶を入れてくれるというようなことになりました。もちろん抗がん剤は使っていますが、場の力というのが非常に大きいのです。誰でも自宅で亡くなるというふうにいかないとすれば、特養ホームなり療養型なり精神病院が、自宅とあまりにかけ離れた日本の現状をなんとかしたいと思っていて、その方向づけを「その他」のあたりに入れていただければと思っています。

○町野座長 ありがとうございます。いまの内容を5)「その他」に入れることについてはいかがでしょうか。といいますのは、先ほど全部組み直したほうがいいという山本先生のご意見もありましたが、これをどこに入れるかというのはもう1つ考慮、その他に入れておくのはまた惜しいという考えもあり得ますから、どこかでそれを活かす方向でこれから考えるということでよろしいでしょうか。

○池上委員 いまのことは、報告書の内容をある程度反映させたほうがよろしいかと思います。(別添)の資料1の「終末期における療養の場所」というのは89頁にあります。その中で、いろいろな事情があるかと存じますが、必ずしも自宅を望んでいるということではないわけで、あるべきケアのあり方と、これはあくまでも調査結果を踏まえて言うのであれば、89頁以下を何らかの形でまとめたほうがよろしいと思います。考え方としては賛成ですが、この報告書の趣旨としては結果を踏まえたことで言及していただいたほうがよろしいかと存じます。

○町野座長 おっしゃられるとおりだろうと思います。在宅医療というか、それがそちらの方向に向かわなければいけないことはありますが、それぞれがどのような状況でそうなのかについては、一律にこれを書くことは、意識調査の結果から踏まえてもそれほど一遍に書くわけにはいかないだろうと思いますが、いまのようなことを踏まえた上で、本人にとっていちばん望ましい医療というのは何か。在宅医療も含めた上でということで書かせていただくということでよろしいですか。

○大熊委員 踏まえてもいいのですが、この範囲内に小さくまとめないで、これは「意見」なのですから、少し踏み出したような方向づけをした文章にしていただければと思います。

○川島委員 いろいろな項目がごちゃごちゃしていて整理がつきにくいということだと思いますが、もう一度見てみますと、6頁が終末期医療に関する調査結果として、初めに概要が出ているわけです。論文的には初めにバーンと結果を出すのがいいと思いますので、概要が出ていて、8頁以降が各項目についてのデータが21頁まで続いている。その次に、主な意見のまとめになっているので、この順序がいびつなのかもしれません。つまり、結果のそれぞれの項目の8~21頁を最初に持っていって、その結果として6、7頁の概要が後ろに来て、それに対して懇談会の主な意見をまとめてというふうに、位置をずらせばいいのではないかと思います。初めと真ん中の順序を逆にすると、少しわかりやすいのかなと思います。

○山本委員 もう1つは、22頁までのデータも漫然と出さないで、例えば整理しながら重みづけをして、いちばん大事なものは何なのかから入っていったほうがいいのではないかと思って見ていましたので、あとからお話をさせていただきます。

○中川委員 関連したことですが、最初の21頁までは?Jのあとに○が付いていますが、22頁からは1)のあと本当は?@になるものに●が付いています。この辺がどういうふうに。これを一貫させると、○と●が混在することはなくなるのかなと思います。22頁からは1)のあとで、本当はマルの数字が来るはずが黒くなり出しています。これは、何か特別な意味はあるのでしょうか。

○町野座長 意味は特別ないとは思います。非常にいろいろなご議論をいただきまして、最初は何も意見がないので、これはどうなるかと思いましたが、最後はこれではまとまらないようなことになってまいりました。どうしますか。全体の組み直しの前に、川島先生からでしたか、概要とか、それを入れ換えるかどうかという話ですよね。どちらがわかりやすいか。これは、いままでのやり方を踏襲したと考えてよろしいですか。それを換えることについては、それほど大変な手間ではないし、できる話だと思いますが、換えてみてやはり前のほうがよかったということにならないかというのが少しあります。

○中川委員 読んでいて、このままのほうがよろしいと思います。これは最後にまとめが出てこないと、そこまで読むかどうかという問題がまた出てきますので。

○町野座長 確かに。それではこの点は維持して、いちばん肝心なのは22頁からの終末期のあり方の中の主な意見のまとめ方で、非常に順番がわかりづらいし、どうつながっているかが見えないというご批判がある。今回に限ったことではなくて、これは4回目ですが、これまでの3回についても常に同じような感想を持たれた方が多いと思います。これをここでどうするかという話ですが、すべて事務局で整理というわけにはいきませんので、非常にまた断定的なまとめ方をして恐縮ですが、一本の筋道としては、本人の意思と本人のことを考慮して、終末期医療を行わなければいけない。そのためには、そのプロセスを十分に考えていかなければいけないというのが最初のスタートだろうと思います。これは皆さん方が完全に一致しているところです。
 しかし、いまのようなプロセスの充実のためには、それに伴う体制の確立というのができていなければいけない。何もないところで意思決定できるといっても、ほとんど意味がないので、そのためには終末期医療の現状や何ができるかについて、知識の普及がなければいけない。同時に、だからといって、知識があるだけではなくて、何もありませんという知識は具合が悪いので、結局何か体制が確立していなければいけない。
 例えばこういう医療がありますとか、緩和医療ケアというものを含めた上で全部なければいけない。それが体制の確立の問題の中に、情報格差が入っているというので少しわかりにくくなっているので、それを2番目に大きく広げて持ってきて、その中に先ほどの大熊委員の言われた問題を体制の確立の中に組み込むということでやり、各論的なところで緩和ケアを別項で起こして置いておくことにする。
 今日はグリーフケアについてはあまり議論が出ませんでしたが、この次に4)のグリーフケアも特記すべき事項として付け加えるという順番にして、その他の意見の中で先ほど大熊先生が付け加えてくれと言われました在宅等の医療の問題、24頁のいちばん上の●の代弁者の制度については、意思決定の中にこれを組み込む格好にする。2番目には、これから議論しておくことが重大であるということもその意思決定のプロセスの中に組み込むということが考えられますが、何かご意見はありますか。それは、かえってわかりにくいとか違うぞというご意見があったら。

○池主委員 全体の流れとして、一般の方が見られるときに、これは昭和62年から歴史があって、5年間の空白があって今回の一連の検討が始まったわけですよね。そのときに前段の昭和62年から検討してきたことが、医療現場や何かでは1つ参考例として、それなりの効果なり、ためになってきた部分があったと思いますが、それをなぜ今回変えたのか。前の検討から今回は何が基本的に変わったのかという部分を、もう少し簡略な部分で何項目か出していただければ、一般の方もわかるのではないかと思いますが、それは無理でしょうか。

○町野座長 絶対に不可能ということはおそらくないだろうと思いますが、かなりいろいろな受取り方があるだろうと思います。私個人は、今回の調査検討会というのはプロセスガイドラインが一応できて動き出したところで、このような方向でいいのかということが1つあると思います。
 その前の検討会であったのは、射水の病院の事件や生臭い事件は頻々として起こっていましたから、それに対してどう対応したらいいかということは、おそらく多くの人の頭の中にあってということだろうと思います。それは私の見方ですが、別の見方の人もいるだろうと思います。それを1つにまとめてしまって、今回の報告書というのはこういうことをスターティングポイントとしているのだということをやるのは、かなり難しいと思います。

○山本委員 いまの座長のプロセスというか流れの中での話というのは賛成しますので、座長と事務局でもう少し詰めていただくのがいちばんいいのではないかと思います。
 それから●と○の流れというのは全くないわけではなく、片括弧の具体的なところにいくのを●にして、22頁等は片括弧の下にいるわけで、白括弧というのは○の中の1つずつになっています。けれども、その先がわからないのです。もし可能ならば、●の中でも大事なところは、例えば「パラレルケア」をもう少し大きな字とか太い字とか、何かでアクセントをつけるというのもあってもいいのではないかという気はします。以上です。

○町野座長 ありがとうございました。そうすると、かなり大幅な修正がありますが、大体考え方として概ね合意が得られたという方向で、これから単純な修文で済まないところがいくつかあるわけですが、もう1回書き直して、もう1回やりますか。それとも、もういいということで皆様方にこの内容をメールか何かでお示しして、ご意見を伺う。それでも、もう1回やったほうがいいというご意見があれば、そこでやるかどうかを考えるということで、事務局のご意見としてはいかがでしょうか。

○池永政策医療課長 事務局としては、座長のいまのような形でと思いますが、皆さん方のご意見をお聞きいただいた上でも結構だと思います。

○町野座長 それでは、今日修正すべき大きなところは、22頁以下にほぼ集中していると考えてよろしいわけですね。22頁のところをわかりやすくするために、例えば先ほどのようにプロセスの充実から始まって、いくつかの流れで書く。そして、ご意見がありましたような●とか○にしても、項目がぶっ切れているという発想なのです。双方の関連がわからないので、○を使うのが別に悪いわけではなくて、わかりやすいようにもう少し双方が関連するように全面的に大きく手を加えて、それぞれのところでいくつか修文をしたほうがいいところはその中に当然組み入れながら、いまのような作業を行う。
 特に先ほどの22頁の1)は体制の確立ということになって、情報格差の問題はその中に組み込む格好になりますから、かなり大きなあれだろうと思いますが、今日いただいたいろいろな修正点も踏まえて、そこらを落とさないようにして、事務局としては大体把握していると思いますので、それを全部取り入れるような方向でもう1回作って、皆様方にメールに添付ファイルか何かでお送りしてご意見をいただいてということにしますか。あるいは、そこの必要はない。そちらでまとめてくれとおっしゃる人がもしおいでなら、それはやらないほうがいいでしょうね。よろしいでしょうか。

○秋月課長補佐 いまいただいたご意見を基に、もう一度修正案を考えまして、これまでもメール等で配付して意見を頂戴していますが、同じようなやり方でもしよければ、またメールか何か、もしくは郵送でも結構ですが、配付してご意見を頂戴する形で進めたいと思います。

○樋口委員 修文のやり方というのはご存じのように、これだけの人数がいてという話ですから、はっきり言うとまとまるわけがないわけですよね。「てにをは」から始まって議論百出でしょう。そのほかに言いたいことがあるので、ここではまず簡単に申し上げますが、この会の進め方としては意見を言うチャンスは我々にはあるということですが、それを全部入れたらおかしな文章にしかならないわけですから、最終的には町野座長に一任する。しかし、それまでにはできるだけこちらの意見も申し上げる、一応変更したものをいただいて意見を言う機会をいただいた上で、最終的に一任としたらよろしいのではないかなと思います。

○町野座長 ありがたいお言葉ではありますが、おそらく皆さん方に意見をお配りした上で、これで納得できないという人が出てきたときは、もう1回議論せざるを得ないと思います。今日の皆様方のご意見を伺っていると、それほどのことにはならないのではないかと思いますが、出てきたものを見たら、これはとんでもないという人が出るかもしれないです。

○樋口委員 それは座長と事務局でご判断されて。

○町野座長 そのときはもう1回会議を開くかは、そこで検討させていただくということでよろしいですか。今日で完全におしまいということではないということで、事務局はそれでよろしいですか。

○池永政策医療課長 基本的に座長と相談してまとめた上で、各委員の先生方にお送りして、その上でご納得いただければそれで結構です。もし、どうしても意見がまとまらなくて、座長の一任を越えるような大きな問題があるとすればもう一度開くということで、そこも含めて座長とご相談するということで、事務局としては結構です。

○樋口委員 少し時間をいただこうと思います。私自身は山本先生には申し訳ないのですがこの素案はよくできていると思います。山本先生のおっしゃることもよくわかりますが、結局この懇談会あるいはその前の検討会の位置づけの問題です。5年ごとに国民の意識調査をやって、その動向で意識調査がどの程度正確に国民の意識を反映するかということ自体に限界はあるけれども、5年ずつやっていくと少しずつ違いも出てくるということで、それを把握した上で、関連して終末期医療等に現に関わっている専門家や、あるいは患者団体として関与する人にさらにご意見をということなので、最後の部分もさまざまに意見が出てきたのを、こういうようにその主要なところを、私としては別に事務局をひいきするわけではないですが、うまくまとめていると思うのです。急にいま、ここであらためてそれらについて議論しようという話はないので、そういう話かなと思っているわけです。
 しかし、この修文のことでこれだけ熱心にご意見が出るのは、いままでの記録の反映だけではなくて、これからの政策形成に、こういう言い方をしておいたほうが、このような文言で記録を残しておいた方が、何らかの形で将来につながるのではないかと皆さん信じておられるわけですよね。しかし、それに関連して、この検討会あるいは懇談会は、そういう役割のものとしてはいままで設置されてこなかったわけです。だから、この報告書が無意味かというと、そんなことはないと思っていますが、今回はいちばん最後の24頁の「次回調査・議論への提言」というところで、ささやかかもしれないし、もしかしたら大きなものかもしれませんが、かつてない一歩を記しているわけです。これが重要だと思っています。
 私も大学で教えていて、学生に宿題を課すのが仕事というか、つまり大した先生ではないということだと思いますが、これから申し上げることは宿題というのはおこがましいので単に希望というだけで、私はここの文章はこのままでいいと思っています。だから、文章を直せという話ではないですが、最後の●で「次回議論に関しては、終末期は患者によって期間、状態も異なり、課題も多様であることから、焦点を絞って議論し、よりよい終末期医療を実現するための、具体的な方向性を示すことが期待される」。これは、いままでの会とは違うものが表れています。違うといっても100%、黒が白になるという話ではないと思いますが、少なくとも次回からは一歩踏み出したようなものを考えていったらどうかということまで言っています。それは非常に大きなことで、そのためには次回はどうしたらいいかなということを、十分に深く考えているわけではないですが、少しだけ申し上げます。もう最後かもしれないのでというのでお時間を取って申し訳ないですが。

○町野座長 実は、これからあとの議論の問題というのは、このあと時間を若干頂戴してやるつもりですが、そのことをご承知の上で。いまの議論は、報告書の6)以下のところをどう直すかという問題です。だから、いま言われました思い切って「次回調査・議論への提言の1つとして、より具体的な政策の提言が望まれる」みたいなことを入れたらどうかというのが、樋口委員のご意見と。

○樋口委員 いやいや、文章としては十分ですが、その意味について希望を述べておきたいというだけです。

○町野座長 そちらのご意見は、この報告書全体についてのご意見ですか。

○伊藤委員 報告書全体についてでよろしければ、そういう具合で言いますし、どこで言っていいのかがわからなかったので。私は、全体としてはまとめや文章は、このままで大変結構だと思います。いろいろな意見が反映されていると思いますので、そんなに訂正点はないですが、患者、家族の立場からのお願いというか、危惧する点を反映されなくても結構ですが、言っておきたいと思います。
 時代が変わって、技術が進めば進むほど情報量は多くなるということで、情報の格差はむしろ広がっていくと思います。同時に、福祉や介護の制度もいろいろ変わっていって、拡充されればされるほど関連する職種も増えますし、用語も増えますし、手続も非常に複雑かつ膨大になっていくわけです。ある意味では本当に情報の洪水みたいなところがありますが、これらがすべて患者本人の選択と決定とか、いろいろな書類も全部本人の申請ということになるわけですから、非常に危機的な状況あるいはパニックになっているような家族に、すべて決定権や本人申請ということで、手続だけでも膨大になっていくこと。それに加えて、ものすごく専門化され、細分化された情報が押し寄せてくるとなると、患者本人や家族への大変な負担になりはしないかということを危惧しますので、何らかの方策が見つかればいいのですが、そのことも患者家族としてはこの結果についての意見として、一言申し添えておきたいということです。以上です。

○町野座長 ありがとうございました。実は30分を取るつもりでしたが、残り時間が既に20分を切りました。最後にいちばん最初に申したとおり、それから先ほどの樋口委員から発言がありましたとおり、次回以降の議論の問題をご議論いただきたいと思います。報告書の最後では「次回調査・議論への提言」と非常にコンパクトにまとめる格好になっていますが、終末期医療の今後の調査について、どういうやり方をしたらいいか。あるいは、それと関連するとは思いますが、終末期医療に関する議論というのはこれで終わったわけではないことは皆さんご存じだろうと思いますし、より具体的にいろいろなことを議論していく必要があると思いますので、残りの時間はあまりありませんが、そこらのことについてご議論いただけたらと思います。

○樋口委員 今回の懇談会が、次回の懇談会ないし検討会を拘束できるかというと、そんなことはできるわけがないので、単純に希望ということで聞いていただければいいと思います。
 まず24頁で、そこにはっきり書いてありますが、池上さんがいちばん最初から言ってくださっているように今日だけではないのですが、調査のあり方についてもう少しいろいろな目で考えてみようよということが宿題として残っていて、これは次回に何らかの形できっと反映されるだろうと希望します。
 2つ目に最後の●に行きます。先ほど読み上げたようなところですが、終末期がさまざまなもので、それで焦点の絞り方として2つあると思っています。前の頁のリビング・ウィルの3つ目ですが、「終末期医療のガイドライン」等が例えば日本医師会のものがある。今日は医師会の人も、病院協会の人も出ておられると思いますが、そういうガイドライン。それから山本先生の関係だと思いますが、救急医学会のほうでガイドラインがある。つまり終末期といっても多様で、もちろん一人ひとり多様だけれども、ものすごく大雑把に言うと救急の場面と、がんのような比較的中期といったらいいのかそういう中期的なプロセスをたどるものがある、それから学会でいえば老年病学会で扱うようなところの終末期医療のガイドラインや指針(これはゆっくりした過程を通常たどるはずです)というようなものを、少し国のレベルで並べてみるというか、まとめてみるというか、あるいはその全部ではなくて、ある部分について焦点を絞ってということがあるかもしれないですが。さまざまなガイドラインが乱立するのは、それはそれでいいことなのではないかと思っていますが、それを比較検討しながら、終末期にもいろいろあって、それぞれに対処法が異なるところと同じ部分があることをもっと明確にする。そうすると、「あっ、やっぱり」ということで、それこそ国民と専門家との間の情報格差を埋める手段にもなるような形で、次の検討会が働くことがあり得ます。
 最後に、もう1つ別の焦点の絞り方で、しかも具体的な方向性を示す話になると、例えば22頁から具体的に4点の主要な点がありましたということで並べていますよね。このとおりだと思いますが、「緩和ケアについて何々が重要である」と書いておいても、それだけでは作文です。それで、どうすればいいだろうかという話があって、厚生労働省は研究班とかいろいろな形のものがあるので、検討会の下部組織みたいな話でなくても、あるいは独立でもいいと思いますが、これらそれぞれについてもう少し議論の糧になるような話がないだろうか。
 緩和ケアでいえば林先生からも教えていただきましたが、林先生がおられるような病院だと、相当に進んでいる緩和ケアがあるかもしれない。しかし、それは日本全国で行われているわけではなくて、いちいち遅れている所を批判する必要はなくて、それは仕方がないことではありますが、現在の状況として、全国的な調査までは望まなくていいので、ある地域だけをパイロットでということでいいと思いますが、この時点では緩和ケアの状態の充実度というのは、こういう状態になっていますということをまず知識としてというか、情報として得て、それをある期間を経てもう1回何らかの施策があると、どういう形で変わっていったかを追求していくような方策を考えるような緩和ケア班みたいなものを1つ。
 リビング・ウィルについても、そもそもリビング・ウィルの意味とか、今日もいろいろ難しい議論がありましたが、病院によっては、書面主義はいけないと言われるかもしれないけれども、かといって意思をどうやって確かめておくかという話はあるから、何か書いておいてもらっている病院もあるはずです。そういう病院というのがどのくらいあって、そこでどういう問題を抱えているか。書いておけば、それでいいという話は現場の中できっとないと思います。それが、どういう形で生きているのか、生きていないのかみたいな話を私は全部調査しろと言っているわけではないですが、どこか現実的な、いまの状況を把握するというのがあって、そこでまさに現場で出ている、この場に出てこられている人はそういうことを本当はもっとご存じでしょうけれども、それを踏まえた上で、これをどう考えたらいいかを考えるところ。
 情報格差も、いま伊藤さんがおっしゃったように、単に情報格差があるからといって情報だけをどんどんもらっても、本当に情報過大でどうしようもないのです。ここは方策を考えるような、わりにクリエイティブな話になると思いますが、といっても情報格差を埋めるためにはどうすればいいかが基本ではありますが。それから、埋めるというので本当に患者はただ喜ぶのか。本当は、どういう情報が必要でというような話をもう少し精査してくれるような研究班みたいなもの。何でも研究班を作れば、すぐばら色の未来が開けるとは思っていませんが、そういう話があって話が前に進むのではないでしょうか。グリーフケアもそうですよね。特に、子どもを亡くされた方のいろいろなケアに取り組んでおられるNPOであれ何であれ、そういうものの状況というのを国も関心を持って調べてくれるというのはいいことなのではないかと思っていて、それをこういう形で広げていったらどうですかという提言を検討会の中でまとめていく話があってもということです。大熊さんが言うように、場のあり方というのも、本当は望ましい場のイメージが患者にあり、そういう場がほしいけれども、なかなか実現できないということを、場のあり方班みたいなもので何人かで調べながら検討してくれるという話があってもいいかもしれない。でも、これを全部やったら大変なことですので、宿題を言いつけるのは先生が勝手なことを言っているわけです。私はこの場では、先生でも何でもないわけですから、単に希望としてだけ申し上げました。

○町野座長 ありがとうございました。続いてお願いします。

○石島参考人 いま、樋口先生がおっしゃった前半のことについては大賛成です。というのは救急患者、がん患者、老齢者によって終末の様子はまったく違います。私が前にここでお話したときに、終末期には急性型、亜急性型、慢性型と3つあるということを言ったはずです。この3つは全く違うので、これらを一緒くたにして議論していたら話がこんがらかって、何が何だかわからなくなります。絞るという意味で3つに分けて話を進めていくことが非常に大切だと思います。それが1つです。
 もう1つは、これからまた調査を続けてくださるということなので、その調査についての希望です。資料1の(別添)の37頁の遷延性意識障害の治療について、具体的な事項が書いてあります。つまり、「人工呼吸等、生命の維持のために特別に用いられる治療まで中止」、「胃ろうや中心静脈栄養などによる栄養補給まで中止」、「点滴等の水分補給など、一切の治療を中止」と書いてあります。実は、これは今回の調査だけではなくて、最初の調査の時からこう書いてあります。私はそれを読むたびに、ものすごく違和感を持っていました。こういう聞かれ方をしたら、答えは全然真実と違ってしまうと思うのです。というのは、遷延性意識障害では私もあのとき申し上げましたが、呼吸機能は保たれているので、いわゆる植物人間はレスピレーターは付いていませんから、人工呼吸器云々というものは、質問の中に入れるべきではない。それから胃ろう、その他、点滴というのは同じものでありまして、一括して水と栄養を続けるか、切るかという質問にすべきです。質問すべき問題は別にあります。
例えば、こういう人たちはよく肺炎になります。肺炎になったとき、普通の病院では抗生剤を使って肺炎を治します。それを治すのか。それについての質問のほうが、ずっと重要です。一般論として言えば、合併症が起こった場合に、その治療をするか否かという質問が是非必要です。というようなことで、この質問は全面的に変えていただきたい。ただ、いままでやってきたのと全部変わってしまうので、継続性がなくなると言われるでしょうが、今までの質問では遷延性意識障害に対する医師、看護師あるいは一般国民の意識の本当の姿は出てこないと思います。以上です。

○町野座長 ありがとうございました。次の検討会をやるということはほぼ確実ですね。仕分けられない以上は。

○秋月課長補佐 もちろん、いまの状態で意思決定したというわけではありませんが、従来5年ごとにやっていますので、その中で検討していただこうと思っています。

○町野座長 確実なほうから言いますと、そこのところで調査をいままでと同じように、ほとんど変わっていないで続けてきている状態です。そして、始まったときに変えたほうがいいのではないかという議論もいくつか出るのですが、時間的に余裕がなくてワッと行ってしまうところがありますので、そのための準備はある範囲でやっておかなければいけないということは、当然次のことがある話ですね。質問の仕方を変える、項目を変えることと同時に、関心が少しずつ変わっていますから、どういう方向についてまず質問しなければいけないかについても変わってくるところがあるので、次回の検討会のこれからの行き方についての検討会みたいなものが、もしかしたら必要かもしれない。どういう格好でこれをやるかは樋口委員が言われたように、研究班みたいなものをもう1つ作るかどうかは厚労省が判断されることだろうと思いますが、これはおそらくやっておく必要はあるだろうという具合に思います。それ以外にも、樋口委員のご意見にいろいろありましたが、続きまして何かありますか。

○川島委員 町野先生の意見には賛成です。ぶっつけ本番で懇談会を開いても、いろいろなことを詳細に組めないままで、また前回と同じような調査になってしまう危惧がありますので、事前にきちんと項目分けして、それに対して小委員会のようなものを作って、事前準備をすることが必要なのではないかと考えています。
 あと、樋口先生がおっしゃられたように、何か新たな実地調査をするかどうかは当然、本省の方々に考えていただくことになると思いますが、実際には既にいろいろなデータが出ています。例えば用語の適切な使用があるかどうかについては、私が医政局の特別研究で去年やりました報告書もありますし、その他についてもいろいろなデータがありますので、むしろそういうデータを収集や解析してみるというのが、事前に行えたらよろしいかなと思う次第です。
 例えば「終末期」という言葉も、本当に適切なのか。人間必ず終末期があるかというと、終末期のない方もおられるわけです。即死する人は終末期はありませんし、「五体不満足」の乙武君のように、たとえ障害を持っていても、その障害の程度が植物であっても脳死であっても、まさにいま生きている、存在しているということをそのまま念頭に置いて生きている方もおられるわけで、そういう方々には「終末期」という言葉が適切ではない。つまり、終末期というのは私たちが頭の中で勝手に考えている構成概念で、終末期という実態があるわけではないというところもきちんと共通した意見として、情報格差を縮めていかなければならないことだと思いますので、こういうことも含めて検討していただければと思います。

○大熊委員 出たばかりの『ケア従事者のための死生学』という本をあとで座長に進呈しますが、その中で一節割り当てていただいたものですから、こう書きました。私は「終末期医療のあり方に関する懇談会」の委員になりました。けれども、出席するや否や、最初に「終末期」と「医療」という言葉に苦情を言いました。終末期というものの見方、医療の世界だけで物事を運ぼうとするこれまでの日本の文化が、人生の締め括りを台無しにしていたのではないかと思います、とこう書きました。いま終末期については川島先生に言っていただいたのですが、この懇談会は医政局長が司っているし、この縦割社会では非常に困難ではあると思いますが、あと5年も経ったらもっと医療と福祉と両方の乗合がないと、人生の締め括りはうまくいかないのではないか。日本は9割の人が病院で亡くなって、それをみんなは嫌だなと思っていて、一方この地球上には9割の人が在宅又は在宅に非常に近いケア付住宅で亡くなっている国があります。何が違うかというと、医療の技術は別段違わないけれども、福祉が違うわけです。5年も経ったら世の中は医療福祉と変わるでしょうから、今回の意見の中でも「医療福祉」という言葉が度々登場するので、ご一考いただけたらと、無理と知りつつ言っております。

○町野座長 ありがとうございました。それほど無理とは思いません。いろいろご意見を承りまして、まして非常に活発なご議論をいただきました。いまの意見というか提言とかいろいろありますが、この点について事務局から何かありますか。

○大谷医政局長 今日いろいろご意見、ご提言をいただきました。私どもとしても、この問題は大変重要な問題であり、今後とも検討を続けなければいけないと思うわけですが、願わくば継続して調査を実施して、終末期医療という言葉についても議論がありましたが、この問題に対する意識の変化を把握し続ける。また、いまおっしゃったように事務局が医政局だけであり続けるかどうかというご意見もありましたが、そういうことも含めて省全体で必要な対応をしていきたい。例えば、そのテーマとしても今日もご議論に出ましたが、在宅における終末期の問題や、いま出たいろいろなプロセス、それから次回の調査や全体の検討の進め方についても、事前準備ということもありました。そういうことについて、できるだけ前向きに、具体的な政策あるいは成果につながるような形で検討してみたいと思います。

○町野座長 どうもありがとうございました。私は第3期から席を汚していますが、これは第5期に当たるわけですか。私がずっといた感じでは、かなり議論が収斂してきていたような状態ですので、ここで終わるのではなく、ここからスタートという感じが私個人はしています。今日もそういうことでいろいろな方のご意見をいただきまして、それほど大きな対立というものはなくて、ほぼ分かり合った上で議論ができている。先に進めるような状態になっていると思いますので、是非厚労省側としても、この点をよろしくお願いしたいと思います。
 これでおしまいと言っていいかはわかりませんが、本懇談会はこれで閉会とします。もし何かありましたら、もう1回おでましをいただくことになるかもしれません。

○中川委員 1つよろしいですか。ここで説明させていただいていいですか。皆様にお渡ししているかと思いますが、私どもの病院では以前から終末期医療、特に慢性期高齢者の終末期医療ですが、やっていますので、当院もこの4年間毎年1冊ずつこういう冊子を作って皆様にお配りしていますので、どうぞご一読いただければ幸いです。以上です。

○町野座長 ありがとうございました。今日は、大変ありがとうございました。


(了)
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