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2010年11月2日 第3回医療裁判外紛争解決(ADR)機関連絡調整会議議事録

医政局総務課医療安全推進室

○日時

平成22年11月2日(火)


○場所

専用第22会議室


○出席者

会議メンバー(五十音順)

今田健太郎 (広島弁護士会仲裁センター代表)
植木哲 (医事紛争研究会会長)
小野寺信一 (仙台弁護士会紛争解決支援センター代表)
北川和郎 (総合紛争解決センター)
児玉安司 (第二東京弁護士会代表)
小山信彌 (日本病院団体協議会代表)
佐々木孝子 (医療過誤を考える会代表)
鈴木利廣 (東京弁護士会代表)
田口光伸 (愛媛弁護士会代表)
徳田宣子 (福岡県弁護士会医療ADR代表)
中村芳彦 (法政大学大学院法務研究科教授)
西内岳 (第一東京弁護士会代表)
橋場弘之 (札幌弁護士会紛争解決センター運営委員会委員長)
前田津紀夫 (全国有床診療所連絡協議会代表)
増田卓司 (愛知県弁護士会紛争解決センター代表)
宮脇正和 (医療過誤原告の会代表)
山本和彦 (一橋大学大学院法学研究科教授)
和田仁孝 (早稲田大学大学院法務研究科教授)
渡部晃 (日本弁護士連合会代表)

参考人

石渡勇 (茨城県医師会副会長)

オブザーバー

岡崎克彦 (最高裁判所事務総局民事局第二課長)

厚生労働省

大谷泰夫 (医政局長)
岩渕豊 (医政局総務課長)
木村博承 (大臣官房総務課参事官(医療安全担当))
渡辺真俊 (医政局総務課医療安全推進室長)

○議題

1 医療裁判外紛争解決(ADR)機関の取組等の紹介及び意見交換
2 その他

○配布資料

資料1第2回連絡調整会議議事録
資料2−1総合紛争解決センターにおける医療ADR(北川弁護士提出資料)
資料2−2仙台弁護士会紛争解決支援センターからの報告(小野寺弁護士提出資料)
資料2−3福岡県弁護士会紛争解決センターにおける医療ADR(徳田弁護士提出資料)

○議事

○医療安全推進室長 ただいまから「第3回医療裁判外紛争解決機関連絡調整会議」を開催します。本日は、お忙しい中当会議にご出席いただきまして、誠にありがとうございます。本日の出欠の関係ですが、水田弁護士、山田教授からご欠席との連絡をいただいています。また、小松先生の代理として、茨城県医師会から石渡先生がお見えでいらっしゃいます。7月30日付で事務局に異動がありましたので、紹介します。医政局長の大谷、大臣官房総務課参事官の木村です。以降の進行について、山本座長、よろしくお願いします。

○山本座長 本日の会議を始めたいと思います。本日は、お忙しいところお集まりをいただき、誠にありがとうございます。はじめに、大谷局長からご挨拶をお願いしたいと思います。よろしくお願いします。

○医政局長 7月末から医政局長を拝命しております大谷でございます。よろしくお願いします。皆様方には大変お忙しい中お集まりいただきまして、誠にありがとうございます。医療事故にかかる民事訴訟による紛争解決に、第一に解決までに時間がかかること、次に訴訟にかかる費用が高い、さらに経過や結果が公開されるなど、患者側や医療機関側の双方にとって大きな制約もあると承知しております。このような背景の中、医療分野におきましても、訴訟とは違う紛争解決手段として裁判外紛争解決であるADR制度の活用が注目されているところでございます。
当会議においては、これまで各医療ADR機関の取組状況をご紹介いただくことにより、活発なご議論や情報共有を行っていただいていると聞いております。このことが患者側や医療機関側の双方が利用しやすい環境を整えていくための一助になればと考えています。皆様方の引続きの活発なご議論をお願い申し上げまして、冒頭、私からのご挨拶に代えさせていただきます。どうぞよろしくお願いします。

○山本座長 冒頭のカメラ撮りはここまでとさせていただきたいと思います。最初に、本日の資料について事務局からご確認をお願いします。

○医療安全推進室長 お手元の配付資料について確認をします。本日の議事次第、資料1、第2回のこの会議の議事録、資料2-1、総合紛争解決センターにおける医療ADR、資料2-2、仙台弁護士会紛争解決支援センターからの報告、資料2-3、福岡県弁護士会紛争解決センターにおける医療ADR、あと、植木先生から医療紛争相談センターの利用状況ということでお手元に資料が届けられているかと思います。

○山本座長 資料の欠落等はありませんか。よろしいですか。議事に入ります。前回の会議では、札幌弁護士会法律相談センター、茨城県医療問題中立処理委員会、及び広島弁護士会仲裁センターについて、それぞれその取組状況をご紹介いただき、最後に意見交換を行いました。今回も前回に引き続きまして、各機関の取組状況をご紹介いただきたいと思います。今回は北川弁護士から総合紛争解決センターにおける医療ADRの取組状況について、小野寺弁護士から仙台弁護士会の紛争解決支援センターの取組状況について、徳田弁護士から福岡弁護士会紛争解決センターにおける医療ADRの取組状況について、それぞれご紹介をいただき、そのあとでまとめて意見交換を行いたいと思いますので、ご協力のほどよろしくお願いします。資料1について、事務局からご説明をお願いします。

○医療安全推進室長 資料1は、第2回議事録です。すでに委員の皆様方には内容をご確認いただいて、厚生労働省のホームページにも掲載していますが、さらに何かあるようでしたら、会議終了後、そのあとでも構いませんが、当方までお申出いただければと思っています。

○山本座長 本日の中身の審議ですが、各機関の取組状況についてご紹介をいただきたいと思います。はじめに、北川弁護士から総合紛争解決センターにおける医療ADRの取組状況等について、ご説明をお願いします。

○北川構成員 総合紛争解決センターの北川と申します。よろしくお願いします。総合紛争解決センターについては特殊な団体となっていますので、そちらの説明から簡単にさせていただきたいと思います。内容については、資料2-1でお配りしてあるとおりですが、その他、その資料にまた資料1、資料2といったものを添付していますので、これを見ながらお聞きいただければと思います。
総合紛争解決センターといいますのは、大阪府下の士業団体、消費者団体、経済団体と地方公共団体などがそれぞれ参加してADRを運営するために設立した公益社団法人です。ここでは各参加団体、それぞれ多様な専門性を持った団体ですが、そういう団体が専門的知識を持ち寄ってあらゆる種類の紛争をここの場所1カ所で解決してしまいたいと、そういうことで設立されました総合型のADRということです。
経緯については、設立は昨年1月にできたばかりです。準備期間としては結構かかっていますが、1月に設立、3月にセンターの運営を開始、9月に公益認定を受け、さらにADR法による認証を受けたということです。団体としての信用性を高めたり、ADRの利便性を高めるということで、こちらの手続は積極的にトライしてきました。
事業の運営については、運営委員会と財務委員会、この2つに分かれており、実際に運営に携わっているのは運営委員会です。運営委員会については、総務部会、事業運営部会、広報部会、研修部会、この4つからなって、広めたり自己研鑽を図ったり、内容的に使いやすいものにするように努力しているという状況にあります。
参加団体については、資料1のパンフレットにも記載してありますが、レジュメの4に書いてある団体が参加して設立しました。ただ、今年になり金融ADRという制度ができました関係で、各地では協定を結ぶだけで金融ADRを始めたようですが、大阪の総合紛争解決センターでは、賛助会員という形で法人に参加していただいた方と協定を結んで、そこと金融ADRを実施するという形にしいますので、今後、参加団体については相当増加していくものと思われます。
総合紛争解決センターは、目的でもあります和解あっせん手続と仲裁手続、これだけを事業として行っています。手続については、少し重たいのではないかとよく言われるのですが、すべての事件について、和解あっせん人・仲裁人は、3人が担当するというやり方になっています。3人の内訳については、弁護士である和解あっせん人が1人と各紛争類型に応じた専門性を有する和解あっせん人2人、合計3人ということになっています。医療ADRについては、特殊ですのであとでまとめてお話したいと思います。
申立件数については、現在、設立から約1年半経っていますが、220件ほど申立てがありました。
どういう事件を扱っているかについては、限定がありませんので、4のアに記載してありますように多岐にわたっていますが、比較的多いものとして不法行為や不動産賃貸借が目立っているようです。220件のうち不法行為関係では、交通事故が20件といちばん多いのですが、医療事件についても13件ということで、相対的に多い分野になっています。
こちらのセンターについては、市民の視線から見てできるだけ利用しやすいようにということを念頭に置いて手続の運営をしています。前回少しお話しましたように、本人申立ての場合に申立てをしやすいように、申立ての補助を採用したりという形で、その辺を徹底していますが、その結果、6割弱の事件において双方ともに代理人が付かずに事件を進めることができています。前回のこの会議の時点では7割弱あったのですが、若干下がってきたようです。これは特に理由などはない、単なる流れではないかと推測しています。申立人だけ見れば、全事件の8割5分以上で代理人なしの本人申立てということで、本人に極めて利用しやすい手続になっているのではないかと自負しています。
終了原因については、成立が3割、不応諾が3割、その残りが不成立となっています。中身については、資料2の一覧表がありますので、それをご覧いただければと思います。
肝心の総合紛争解決センターにおける医療事件ですが、これについても総合型ということで、その専門分野の1つとして実施して、特別な機関を置いたり手続を設けたりということはしていません。
専門的知見の担い手ですが、設立当初、医師会をはじめいろいろな団体に参加をお誘いさせていただいたのですが、当初は医師資格を持った方のおられる団体の参加はありませんでしたので、医療の専門的知識の必要な事件は東京三会と同じ方式で、医療事件に習熟した弁護士、すなわち患者側をよく代理する弁護士と医療側をよく代理する弁護士という、それぞれ医療事件に習熟した弁護士各1名をもって専門家として扱ってまいりました。
ただ、うちのセンターの設立の趣旨から言いますと、医師資格を持った医療の専門家、弁護士の場合、医療紛争の専門家ではあっても医療そのものの専門家ではないのではないかということで、医療の専門家を求めてやまなかったわけですが、この度医師資格を持った和解あっせん人候補者を交付者名簿に登録させていただくことができました。それが資料3になります。本来ならば団体に参加していただければということだったのですが、いまのところそれがかなっていませんで、大阪府立病院機構の理事のお1人から私的に推薦していただいた方に、個別に承諾をいただいて登録させていただいたということになっています。いずれも専門的知識にも優れているし人格的にも優れた方とお聞きしています。ただ、外科がないなどすべての診療科目を網羅していませんので、今後、医師資格を持った示談あっせん人の確保に一層努めていきたいと考えています。
医療ADRにおける和解あっせん人はどのようになっているかですが、従前については東京三会と同じ方式だということで説明しましたが、今回、医師資格を持った和解あっせん人の登録ができましたので、従前の医療事件に熟知した弁護士2人に加えて医師の合計3人で和解あっせん手続を進めていくことになります。
医師資格を持った方にどのような形で手続に入っていただくのがいいかは、いろいろご意見もあるようですが、当センターにおいては、和解あっせん人として加わっていただく、主体として加わっていただくことになりました。ただ、ADRにはまだ慣れておられないかと思いますので、今後慣れていただければ、専門的知識を十分発揮した手続をしていただけるのではないかと思います。
医師がどのような形で知識を提供するかについては、東京などでは主張整理の手助けをしていただくのがメインだとお聞きしていますが(発表者注:東京三会では,医師の関与はないとのご指摘をいただきましたので,謹んで訂正させていただきます。他の場面でも類似の発言をしておりますが同様です。)、今回、和解あっせん人として登録していただきましたので、それだけにとどまらず評価的なご意見などもいただく可能性もあるかと思いますが、基本的には和解あっせん人の裁量の部分になりますので、合議で決めていただく形になっていくのではないかと思います。今後、どのような形に発展していくかはまだ未定ですが、いずれ事例が蓄積した段階でこちらのほうでまた紹介させていただく機会をいただければと考えています。
これまでの事件の傾向ですが、これについては資料4をご覧ください。これが現在に至るまで約1年半の申立ての事件の一覧表になります。昨年度1年では4件だったのですが、今年半年で約9件で去年の倍以上来ていますので、この調子でいきますと医療事件についてもどんどん申立てが来るのではないかと考えています。
本人申立ての割合が特徴的ではないかと思いますので、これについてお話したいと思います。申立人に限定すれば、100%代理人なしの本人申立てになっています。この辺でいかに使いやすい手続になっているかがわかっていただけるのではないかと思います。ただ、13件の申立書をざっと拝見しますと、そのうち1件だけはおそらく弁護士が作ったのではないかという申立てがありますので、申立に際しては、本人申立てであっても弁護士と相談した上で申し立てているのがあるのではないかとは想像がつきますが、いずれにしても本人で十分やれる手続になっているということです。
相手方については、現在13件のうち5件代理人が付いており、単純計算しますと38%となっていますが、どう進むかがわからない事件がまだ3件ほど含まれていますので、これはあまりあてになる数字ではないと思われます。
応諾については、現在、3件が応諾待ちで、残りの10件のうち9件が応諾、1件が不応諾という状況になっています。約9割が応諾していただいているということで、相手方にとってもハードルが低いのではないかと考えています。
事件の分野としてはいろいろありますが、目につくところでは歯科医院の事件が若干多いのではないかという印象がありますが、これもまだあくまでも現時点における印象に過ぎません。
申立ての趣旨については、これは資料4の紛争額を見ていただきますと、いちばん上の事件については算定不能となっていますように、これについては説明と謝罪だけを求める申立てでした。あとで説明しなかったことの慰謝料を付け加えたということはあったのですが、当初は説明と謝罪だけを求める申立てで、訴訟にはなかなか乗りにくい事件が申し立てられたのではないかと考えています。あとの事件についても、金額は慰謝料やその他の損害賠償が含まれた申立てになっていますが、説明を求める、謝罪を求めるというのを併合した形で申し立てられている事件が多いように思われます。
終了原因については、これはまだ6件しか終わっていませんので、なかなか有意義なデータということはできないかと思いますが、6件のうち成立3件、不成立1件、取下げ1件、不応諾1件となっています。全体の6件のうち半分が一応成立、応諾があったもののうちということに限定しますと60%ということで、比較的高く成立しているのではないかと思われます。
終了した事件について若干コメントを付けさせていただきますと、表の上からになりますが1つ目の事件については、1回期日が開かれたあと、結局、見込みがないということで不成立で終わりましたが、この事件については、相手側から出席したのが管理部長で、医者ではなかったので、申立人のほうは医者に出てきていただきたいということをご希望なさっていたようですが、医者の出席は無理だということになって、結局、話合いの糸口がつかめずに終わったという事件です。
2つ目の事件については、これは歯科医院の事件ですが、苦痛や説明不足の慰謝料という事件だったのですが、これについては当初100万円の金額に固執しておられましたが、相手方のほうでは、支払った治療費に2、3万円加える以上のことはできないということで対立が深く、なかなかまとまらなくて申立てに及んだという事件だったのですが、結局、期日を2回重ねた結果、ほぼ相手方の提案どおりの形で和解が成立しました。いろいろ話合いをした上で、和解あっせん人のほうも10万円以上の賠償は無理ではないかという認識を持って、そういう方向で進めたということもあったのだとは思われますが、ほぼ相手方の提案額で成立しました。当初は100万円でないと訴訟も辞さないというお話でしたが、結局、話合いの中である程度納得なさったので、当初の金額で落ち着いたのではないかということが考えられ、これもADRを申し立ててよかった事件ということになるのではないかと思われます。
3件目については、過失の有無についても争われていたもので、内容的には話合いの余地が十分あるのではないかと思われましたが、相手方が破産をしてしまいましたので、これ以上話を進めるわけにもいかないということで、取下げで終わってしまったという残念な事件です。
特徴的なものでいいますと、6番目の事件、これについては乳がんの検査でがんを発見できなかったという過失が争われた事件だったのですが、これについては、もともとお金というよりも責任の所在を明らかにしたいということが主眼だったようで、金額的にも相当額ということで、別に金額にもこだわっておられなかったのですが、これについては相手方が謝罪文を申立人に出すという形で、それほど金額的には大きなものではありませんでしたが、プラス慰謝料を支払うことで話合いができたもので、謝罪文をお渡しするということが決めてとなって円満に解決できた事件です。
あとは成立する可能性がある事件もあるのですが、まだ進行中の事件ですので、ここでのコメントは差し控えたいと思います。

○山本座長 ありがとうございました。具体例にわたって興味深いお話をいただけたと思います。ご質問等もおありかと思いますが、先ほどお話しましたように、全体のご説明が終わってから討議とさせていただきます。
引き続きまして、小野寺弁護士から、仙台弁護士会紛争解決支援センターの取組状況についてお願いいたします。

○小野寺構成員 仙台の小野寺です。資料2-2にレジュメが出ておりますのでご覧ください。仙台のADRは平成18年4月に発足しました。ですから比較的後発でありまして、それまでの2年間、先進地の調査を行いまして、各地のいいところをいろいろ取り揃えて発足させました。申立件数は、ここに書いてありますように、大体100件から110件ぐらいのところを推移してきたのですが、今年はまだ41件ですので、ちょっと今年は100件に届かないかなということで、いまそのためのテコ入れを考えているところであります。
仙台弁護士会の会員が約330人ぐらいですので、会員比としては、会員の数からすると申立件数はまずまずなのではないかと考えています。そのうち、医療事故の申立件数は右側に書いてあるようになっております。医療事故についての結果は4項に書いてあるとおりで、比較的応諾率が高いのではないかと考えております。これは、医療側の弁護士の多くがADRのあっせん人の名簿に入っていて自らあっせんを試みてADRのいいところを知っていることが原因ではないかと推測しています。仙台会の場合には「プレ審理」というものがあって、仲裁人が申立人と会ってADRに馴染むかどうかチェックをしますので、その段階で取下げというものもあります。相手方の不応諾で取下げということもあります。ただ、申立人に代理人が付いている場合にはプレ審理は行わないですぐに審理に入ることになっています。和解の中身は5項に書いたとおりですが、金額の比較的少ないものから比較的多いものまでいろいろであります。平成21年度の4,000万円というものは過失に争いのないケースで、損害のみをADRで決めたケースです。
仲裁人は、事件の規模によって1人ないし2人。2人の場合は患者側と医療側からそれぞれ出していますが、金額の小さなケースについては、患者側で経験を積んだ弁護士、あるいは医療側で経験を積んだ弁護士が1人、仲裁人として対応しています。当初、医師の専門委員を置く必要があるかどうかと議論されたのですが、名簿を用意して声を掛けないでしまうのも何だろうということで、様子を見ることにしたのですが、これまでのところ医師の専門委員を付けたケースは2件のみでありまして、仲裁人の弁護士に専門委員が必要かどうかを聞いてみたのですが、自分の持っている知識と事件を引き受けたときの勉強で、学習によって大体間に合っているということなので、専門委員のリストを作るという考えはいまのところ持っておりません。
6番をちょっとおさらいしてから医療事故に戻りたいと思います。私たちは2年間の調査を経て発足したのですが、1週間かけて先進地の調査に行ってまいりました。そこでの私たちの印象としては、ADRは「お勧めメニュー」だ、裁判以外にもう1つ解決のルートがあるのだと知った次第です。裁判所のように判決という解決手段を持っていませんので、説得と納得のみが武器だという意味で非常に「奥が深い」のではないかという印象を持ちました。それから、ADRはある種の運動ではないか、要するに、組織を作ってお店を開けば黙ってお客さんが入ってくるものではなくて、セールスをしたり、看板を塗り替えたり、中の商品を取り換えたり、いろいろと絶えずやっていかなければいけないのだろう、つまり「やり方次第」なのではないかという印象を持った次第です。
特徴としては、昨年、全国の仲裁センターの連絡協議会がたまたま仙台で開かれたということで、その講演者に柳田邦男氏をお呼びしました。柳田氏は「2.5人称の視点」、つまり第三者が見る3人称の視点と、肉親などを見る2人称の視点の中間の視点を唱えているわけで、柳田氏の唱える2.5人称の視点というものを、これが仲裁人の視点ではなかろうかということで、皆さんで学習をしました。
同時に、仲裁人の質の向上は、弁護士と依頼者の関係の中にあるのではないかという仮説の下に、9人の先輩弁護士を訪問して、依頼者に対する説得のノウハウを聞き取って、会内誌『cafeADR』に掲載しました。これは大変好評でして、この連絡協議会が終わった後、現在もう1回そのシリーズを復活することが計画されています。
運動の一環としては、ADRを使った弁護士と使わなかった弁護士とを仙台会の弁護士の中で分類してみますと、使っている人は絶えず使っている、使わない人はほとんど使わないという、区別がはっきりしていることがわかったものですから、やはりともかく体験させることが大事だということで、新人弁護士をADRの仲裁人の補助者として採用して、若いときからADRに馴染ませようと、補助者の積極採用を方針として取り入れて行っています。私自身も最近、補助士と一緒に仲裁をすることになったのですが、新人弁護士といえどもやはり熱心に事件のことを考えておりますので、相談相手として非常に有用だし、2人でいろいろ相談しながら争点をまとめることができることなどからしても、仲裁人にとっても役に立つし、新人弁護士としても役に立っているのではなかろうか。ただ、補助者としてお金を払うか払わないかが問題になっていて、財政との関係でただにするのか、それとも一定の金額を払うのかが現在問題になっています。
それから、先ほど申し上げましたように、弁護士と依頼者との関係。私たちは依頼者を抱えて、いつもそこで苦しんでいるわけです。その苦しみの中からいろいろ発見したノウハウが仲裁人の質につながっているのではないかという視点から、この先輩弁護士訪問シリーズを復活して『cafeADR』に掲載していきたいと思っています。
仙台の場合は応諾率は比較的高いのですが、しかしまだまだ、ADRが医療事故を解決する有力な手段であるという認識が医療側に染み透っていないだろうということで、広報を目的とした病院あるいは損保会社向けの講演会を開催する予定で執行部の承諾を得た段階です。
仙台会の場合は、医療ADRとしての特別な機関などはございません。全体の中の一部ではありますけれども、大体、全体の1割強の申立てがありまして、仙台地裁の受理件数とほぼ同じなのです。そういう意味で、裁判と並ぶ解決手段として定着しつつあるのかなと考えています。
私は申立人にもなっているし仲裁人にもなっているのですが、その印象を申し上げますと、裁判所の要求する過失、因果関係のハードル、それを越えるのがなかなか難しかろう、しかしながら申立人の言っていることは無視できないという、そういう灰色と言うか、そういったケースは結構多いのです。そういったケースを仲裁人に預けて、仲裁人の説得能力によってそれなりの解決をしていただけるという点では、申立人にとっては非常に便利な制度ではないかと思っています。
それから、争点の整理をADRの中でやる機能もあるのだろうと思います。証拠保全をして説明会を求めたり、あるいは質問書を出して回答してもらったりももちろんあるわけですが、ADRの中で裁判の前哨戦のようなものをやる中で、争点がはっきりして、それでは後は裁判所でもう1回やりましょうと終了する事件もあります。それから、医療側に責任を取らせることが無理であることを、ADRをやる中で確認をして、申立人に納得してもらって終了宣言をしてもらったというケースもあるので、いきなり裁判所に持って行くというリスクを避ける意味でも有用なのではなかろうかと考えております。以上です。

○山本座長 ありがとうございました。最後になりましたけれども、徳田弁護士から福岡県弁護士会紛争解決センターにおける医療ADRの取組状況についてお願いしたいと思います。よろしくお願いいたします。

○徳田構成員 福岡の徳田宣子と申します。私から、福岡県弁護士会の紛争解決センターの中の医療ADRの頑張っているところを報告させていただきたいと思います。福岡の紛争解決センター自体は来年10周年を迎える制度です。私は専ら利用者の立場で、医療ADRが始まるということで、もともと私は九州山口医療問題研究会の幹事をしていたのですが、患者側代理人の経験がある弁護士という立場から、医療ADRの設立に参加させていただくことになりました。
福岡では、去年の10月1日に従前のセンターの一部として医療ADRが始まりました。お手元に資料を3つ付けさせていただいていますけれど、資料の1つ目のパンフレットをご参照ください。実物はカラーで目立つように弁護士会の相談センターに置いたり、会員に配布したりしています。2頁目に「医療ADRのお知らせ」として医療ADRが始まったことを強調して載せています。
福岡では医療事件に限らずADRを利用するためには、まず弁護士の法律相談を受けなければなりません。その弁護士が紹介弁護士になって紹介状を作成します。これは申立書とは異なるもので簡単に事案の概要だけを書くものになっています。申立書は実際に申し立てるご本人様であったり、代理人が付いている場合は代理人が書くことになります。申立てに必要な費用は1万円と消費税をいただいておりまして、記述手数料はいただいておりません。合意に到った場合は解決額に応じて成立手数料をいただいています。ここまで話したところは通常事件も医療事件も変わりません。
医療ADRで特徴なのは、東京三会をモデルにさせていただいたのですが、仲裁人を原則3名にしている点です。通常事件では原則1名となっています。主任仲裁人と、あとは医療機関側代理人の経験豊富な弁護士、患者側代理人の経験豊富な弁護士の3名を専任しています。比較的特徴的だと思うのは、主任仲裁人は元裁判官の弁護士や学者出身の弁護士など、紛争の解決に比較的慣れている方を多く専任していることです。
実際に去年の10月に始まってどういう状況になったかをご報告させていただきたいと思います。資料2に簡単な集計表を付けています。平成21年度と平成22年度を書いています。平成21年度は10月から3月までの半年間、平成22年度は4月から10月15日までの半年ちょっとの集計です。去年は開始直後から申立てが相次いで、申立てが半年間で22件もありました。嬉しい悲鳴を上げる一方で仲裁人が回っていくのか心配するほどでした。申立件数が当初から多かった理由を考えてみたのですが、1つは地元の新聞社がかなり大きく、夕刊の1面だったと思いますが報道してくれたことや、医療ADRが始まるに当たって資料1のパンフレットを改訂して会員に配布したこと、福岡の患者の権利オンブズマンが医療ADRにかなり期待してくれて紹介してくださった、そのようなことがかなり大きく貢献したと思っております。今年に入っても半年間で9件で、申立数は順調だと思います。
順調に始まったかと思ったのですが、不応諾が相次ぎました。去年は1件まだ回答がないのですが、回答があった21件中不応諾が12件で、半数以上が不応諾という回答でした。運営委員会ではどうして応諾率が低いのか、どうやったら応諾率を上げていけるのか、取組みを行ってきましたので、この点を後ほど詳しく紹介させていただきたいと思います。今年は回答があったのは7件ですが、4件応諾していただいていて、半数を超えました。私たちの努力の成果が出たのかなと思っています。
当初の不応諾の理由は共通しているものがとても多く、これは医師会の顧問の方に相談して回答書を書いたのかと思うぐらい共通していたのですが、大きく分けて3つです。「医師会の医事調停委員会で協議されて紛争解決を図られているから、そもそもADRを使う意味がないと考えている」、「当該事件についてこれまで具体的な請求がされていないのでまだ医事調停手続が開始されていないのでADRに応諾することはできない」、「説明を求める申立てに対しては、医療行為に関する説明は仲裁手続ではなく病院内で行います」という理由が書かれているものが多数を占めました。特に、福岡の医師会は医事調停委員会がかなり踏み込んだ活動をしていると医師会の先生方から聞きましたので、医師会を中心とした医療機関側に、ADRという制度があることと、患者側から見て中立的な紛争解決手続の選択肢の1つとしてADRがあると考えてもらうことが必要だと思いました。
もう1つ、応諾率が低かった理由の1つとして、ほかの地域に比べて申立側に代理人が付いている件数が少ないという面もあるのかと思っています。去年は申立件数の22件中6件しか代理人が付いていなくて、今年度は9件中2件しか付いていません。一方、応諾された場合相手方は8割近くは代理人が付いています。ただ、このように応諾率は低いのですけれども、一旦応諾されたときは和解に到る割合が高めで、応諾された12件から継続中の6件を除いた6件のうち5件について和解が成立しています。単なる金銭円満賠償だけでない柔軟な解決として、例えば、インプラント治療がうまくいかなかった事案で、インプラントの除去を相手側病院で無償で行うことが和解内容に盛り込まれたというものも中にはあります。
それでは、応諾率を上げるためにどのような取組みをしたかを紹介させていただきます。まず、運営委員会として、相手方になった当該医療機関に理解を求めるための働きかけをしていくことになりました。医療機関側は、突然ADRの申立書と呼出状が来て、混乱したり憤慨するような反応がありましたので、資料3にお付けしていますが、医療ADRとはこういうものですという説明文書を一緒に送ることにしました。その中で、あっせん・仲裁として呼出状などを送っていますけれど、あくまで強制力はありませんということや、医師会の医事調停制度と同時進行できる制度ですということ、裁判をする前に話し合いを一旦持つことは仮に裁判になったとしても不利益に働くことはないのではないかということなどを強調するような文章にしました。特に個人の開業医のドクターなどは平日の昼間に出向くことは到底考えられないという意見がありましたので、開催時間や場所なども柔軟に対応しますのでと伝えるようにしました。それでも不応諾の回答が来ることがあるのですけれど、ねばり強く諦めないようにしようと、申立書を見てこれはしょうがないという事案は置いて、これは場合によってはADRの手続に乗せられるのではないかという事案は、運営委員会の委員が相手側の医療機関に応諾できないかの働きかけをしています。これは従前は仲裁人から連絡していた時期もあるのですが、そうすると仲裁人がまるで申立人の立場で応諾を求めているように思える問題点があり、中立的立場が保てないのではないかという意見が出たので、いまは仲裁人以外の弁護士が担当しています。
医師会の協力が必要だと考えましたので、医師会との協議の場を持ちました。最初は医療問題研究会が独自で医師会の顧問弁護士と医事調停委員会の担当理事との間で医療ADRに関する協議会を持ちました。その後、弁護士会の運営委員会と医師会の顧問弁護士との間で率直な意見交換をした経緯になっています。不応諾の理由は様々なのですけれど、当初既に確定判決が出ている事案や、明らかに当事者適格がそもそもない、応諾しても解決に到ることは絶対にないと思われるような事案がかなり申し立てられてきて、ADRの制度そのものに不信感があったことがわかりました。ただ、話を進めていくうちに、「医師会の医事調停との連携を図って欲しい」、「診療時間外や電話会議での実施を検討して欲しい」、また、本人の申立てだと相当額の請求をする事案が結構多く、「100万円以上か以下かで日医の手続に乗るかどうかが異なってくるので、できれば請求額を明示してもらったほうが応諾しやすい」という意見が出されました。話をしていくうちに、医療機関側も中立的な第三者を入れたいという事案もあって、こちら側からの申立ても検討したいという積極的な意見も最後は出ました。
医師会からのこのような意見を通じて、そもそも申立書に問題があるものはどうにかできないかと、いまは運営委員会の委員が申立書をチェックして紹介状を書いた紹介弁護士を通じて補正を試みています。例えば、注意義務が漠然としていて読んでもよくわからないという事案の場合は、注意義務の内容をもう少し具体的にできないかと補正を試みているようで、これが功を奏して応諾に到った事案もあると聞いています。
このような取組みの成果だと思いますが、今年に入って応諾率も上がってきました。今後もより多く医療ADRを使ってもらうために、弁護士向けに研修を実施したり、相談室の目立つところにADRのパンフレットを置くなど、地道な努力をして幅広くADRを利用してもらうとともに、医師会との協議も今後も続けて応諾率がさらに上がるよう取り組んでいきたいと思います。
福岡で和解成立に到った事案は、書くのが憚られるぐらい金額が小さいものも多いのですが、実績を上げていくことで医療機関側もADRを使ってよかったと思っていただければ、より高い応諾率に結び付いていくのではないかと思います。何より、これを利用した当事者が使ってよかったと思える制度にしていければいいと思っています。実際にADRを使った当事者の方の感想を聞いたことがあるのですが、医療事件というと医者と患者の対立構造になって硬直化してしまいがちなのだけれど、その方は、「第三者に入ってもらうことで、医療という限定されたフィールドの中ではなく、もっと広い世界というフィールドの中で判断してもらって、お互いの整合性を見出すことができた。ADRを使って本当によかった」と言われました。このことに尽きると思いました。これからも頑張っていきたいと思います。以上です。

○山本座長 ありがとうございました。以上で、本日予定しておりました3つの機関からご報告をいただいたことになります。ただいまのご説明あるいは資料に関するご質問等も含めまして、委員の皆様から幅広くご発言をいただきたいと思います。ご質問等がある方は挙手をしてご発言ください。

○宮脇構成員 医療過誤原告の会の宮脇です。仙台の小野寺先生ですが、「裁判所の因果関係のハードルの高さを被害者に求めないADRの役割」という表現は、すごくわかりやすく、誰が聞いてもADRとはそういうものなのだということが、被害者にとってもわかりやすいと思います。質問ですが、トレーシングで、ADRに馴染むかどうかの基準を一旦やるとおっしゃられていましたけれど、どういう基準でやられているのかを教えていただきたいということ。
もう1点、大阪の北川先生に、紛争解決金の算定というか、本人の申立てが結構多いということで、歯科の先生のところのものが反映しているのかとは思うのですけれども、その算定額はどう決められているのか、その点を教えていただきたい。その2点をお願いします。

○小野寺構成員 プレ審理を採用しているのは、結局、本人申立ての事件が結構あるということです。これは医療事故に限らないわけですけれども、当該仲裁人の弁護士が見て、これはどう考えてもちょっと話し合いには馴染まないだろうという事件はやはりあるのです。医療事故に関しては、本人が不満はあることはわかるけれども何を言っているのかよくわからないというケースもありますし、言っていることはわかるけれども、それは誰が見ても根拠がないのではないか、裏付けがほとんどないようなケースもあるわけです。ですから、プレ審理を何回が繰り返すこともあります。2回、3回と繰り返して、ここはどうなっているのだ、その根拠は何なのだと繰り返す中で、これは相手方を呼び出したところでおそらく無理だろうというケースについては、よくそこを説明して申立てを回避してもらうことはやっております。本当は、苦情を苦情として受け付けるような機関があればいいのでしょうけれど、なかなかそういうものがない状況で、病院に言っても全然受け付けてもらえないということでADRに回ってくることがたまにあるのです。そういうものを、ちょっと言葉はよくないですが、篩い分けて、ADRに馴染む事件を取り上げることはやむを得ないのかなとは思っております。

○宮脇構成員 東京の三弁護士会のまとめの中でも、申立人の暴走や申立人が相手を批判するために手続を利用しているなど、分析の中でもそういうものがあったと思います。被害者にとっては最初はかなり混乱するといいますか、自分の身内がいきなり事故に遭ったり、特に重度の障害であるとか、亡くす場合はあるので、私たちも被害の相談を受けるときには結構辛抱強く聞きながら、40分ぐらい経つと大体言っていることがわかったりするということがあるのです。そういうかなり緊張するということでありながら、落ち着いていくのを待つということもあると思うのです。
仙台の弁護士会ADRの特徴という中に、「依頼者に対する説得のノウハウ」というのがあったものですから、そのようないろいろな申立てのところでの説得のニュアンスがあるのかなと思うのです。やはり傾聴というのを入れながら、被害者に対する生活を含めて立ち直っていく上でのADR機関の果たす役割も多いと思うので、ADRに馴染む基準については説明でもよく理解できはするのですが、被害者自身は混乱期があって、一定期間の後に徐々に落ち着くという点も考慮いただいて、ADRの運営のところでも是非そういう点も考慮いただければと思います。

○山本座長 大変貴重な問題提起をいただいたかと思います。もう1点、ご質問がありましたが、それは北川先生からお願いします。

○北川構成員 先ほどのご質問のご趣旨は、和解額の金額はどのように決まったかと、そういうことでよろしいでしょうか。

○宮脇構成員 そうですね。損害額の算定についても、本人申立てということもあるので、どのように計算されているのかなというのがちょっとわからなかったものですから、解決金と損害申立てが本人の申立てでも金額が出ているので、その辺りは本人が……。

○北川構成員 それは申立ての金額をどう決めているかということと両方ですか。

○宮脇構成員 両方です。解決金は話し合いの中で決まっています。

○北川構成員 申立てについては、大雑把な慰謝料的なところも結構見られるのですが、治療費を返せとか、よそで治療した費用とか、そのような形のものを積算しているのが比較的多いのではないかと思われました。あと、相当額というだけのものもかなり見られるのですが、これについては本人も申立段階ではほとんどわからなかったので、話し合いの中で決めていきたいということぐらいしか考えておられなかったのではないかと思います。むしろ、あっせんの土俵に乗せるために、少し金額があったほうがいいだろうという形で乗せているだけの場合もあるのではないかとは思われます。
和解の金額については、先ほどの2番目の事件については、支払った治療費プラス2、3万ということで、これは実質裁判になれば、おそらく認められないだろうという前提だったのではないかと思われます。金額はそのように決まっています。
6番目については、資料を拝見しても、金額についてほとんど議論しているところがありませんでしたので、これは気持だけで決まったのではないかと思われます。
もう1件成立しております4件目なのですが、これは腰痛治療を受けたときに余計ひどくなったという事件だったのです。これについては、実は相手方のほうは代理人が付いていると書いてあるのですが、示談交渉の段階から代理人が付いておりまして、保険を使ってお支払いしたいから、ほかの医療機関で診断書をもらってきてもらえませんかというお話をさせていただいたらしいのです。ところが、ほかの治療した病院ももちろんなのですが、それ以外の病院でも診断書をお願いしたら紛争になっているところには出せないということで、皆さん出されなかったので、やむを得ず示談あっせんを申し立てて、そこで決めてほしいという話になったようです。
これについても、結局そのような第三者的な診断書を得られなかったので、実際の通院日数、通院の治療費、休業の日数などで積算したのを相手方代理人のほうで、このぐらいの金額はどうですかというのを提示して、それにいくらか上乗せした上で解決額が決まったようです。このぐらいでよろしいでしょうか。

○和田構成員 いまの宮脇さんのご質問に補足するような形なのですが、ずっと伺っていて、仙台のシステムも福岡のシステムも、いきなりADRということではなくて、事前のところで相談を受けられたり、プレ審理ということがあって来られるわけです。やはり制度もリソースに限りがあるでしょうから、一定のスクリーニングというのは必要だと思うのです。ただ、それを単なるスクリーニングということではなくて、いま宮脇さんがおっしゃったように、まず患者さんが来られて非常に混乱された状態で不安があって、なかなか語れないことも多く、その最初のプレ審理なり相談なりのプロセスというのが、それ自体としておそらく患者さんにとって非常に大きな意味を持つ場面だと思うのですね。そこを丁寧にやっていくことが、ADR本体の手続と同等にすごく重要なのではないかという気がします。
ただ、そこでの人材の活用などを考えた場合に、もちろん法的なサポートは必要だと思うのですが、それだけではなくて、例えば千葉のADRの例ですと、最初の相談の段階でお医者さんやナースの方などを活用しているように聞いております。それから、可能性としては別に医療者だけでなくて、患者の立場を代表するような、例えば宮脇さんの所でいろいろご協力いただいて相談している所にお手伝いいただくということも可能だと思うのです。そのようにして、少し幅を広げて連携しながら相談を充実させていくのは非常に重要かなと思うのですが、私の意見ということで、補足させていただきました。

○山本座長 植木先生、いまのに関連でしょうか。

○植木構成員 いまの議論は、ここでご報告があった内容が、すべて法律相談センターによる解決の一環としてやっていらっしゃる相談業務であることと関係しています。要するに法律相談前置主義という前提をとられたための問題点だと思うのです。だけど、申立人の本当に解決してほしいのは、そういう法律相談ももちろんあるとは思いますが、中身は医療相談のほうが主たる関心事ではないかなというのが私の印象です。我々は医療紛争処理センターをずっと運営してみて、医療相談をじっくり1時間かけて聞いてあげますと、多くの紛争原因の中身がわかり、どの辺で解決するかという目安がつきます。その内容は、一般的には本来は個々の診療機関がそれを前もってやるべきはずであった内容と関連するのです。それが事前に十分なされていないから紛争になっていると考えます。その辺を真摯に解いてあげないと、なかなか紛争そのものの本質が見えてこないし、当事者の対応も変わってこないと思います。このためには医療相談業務を中心にしてやるということが大事な点です。私には別の質問がありますが、あとで発言してもよろしいでしょうか。

○北川構成員 総合紛争解決センターの場合は、法律相談前置はとっておりません。直接申立ていただいても結構です。ただ、先ほど申し上げましたように、ご本人の申立てが多いものですから、申立てしやすいように、申立てのアドバイスをしたり、申立書の書き方をお教えさせていただいたりしているということです。申立補助の相談に関しては、その中身と離れた申立てというのはないもので、ある程度中身の問題も真剣にお伺いしているという実態があるようには聞いております。
法律相談でほとんどの場面が解決するのではないかというお話については、おそらく訴訟もそうなのだとは思いますが、当事者間で話し合いができなくなった、私的自治が壊れてしまった場合に、それを復活するためのお手伝いをさせていただいているだけではないかと思っていますので、法律相談も大切だとは思いますが、こういう場もやはり必要になってくるのではないかと思っております。

○渡部構成員 日弁連の渡部でございます。法律相談前置のことで徳田先生にお伺いしたいです。日弁連のADR特別部会でも質問したのかもしれませんが、代理人が付いている場合です。要するに、もう既に患者側に代理人が付いている場合、あるいは医療側にも代理人が付いている場合がありますよね。その場合でも、法律相談前置でやられているのでしょうか。

○徳田構成員 おそらく代理人に委任契約をする際に、まずは法律相談から入っていると思いますので、それを法律相談という形にするということで、どちらかというと法律相談前置主義というのは、ご本人の申立ての場合も、弁護士の法律相談を受けて法的問題だということを、一応弁護士からの紹介という形でやってほしいという趣旨ではないかと考えております。

○渡部構成員 それは、個別の弁護士の紹介というわけにはいかないわけですか。

○徳田構成員 個別の弁護士の紹介でもいいです。

○渡部構成員 そうすると、医療側では大体代理人が付かれていることが多いと思いますが、今後医療側から申立てがある場合は前置がなくなるということになるのでしょうかね。

○徳田構成員 福岡はまだ医療機関側からはないのですが、制度の仕組みとして法律相談前置主義をとっているので、どこかの弁護士、医師会の顧問弁護士などに相談していただくことになると思います。

○渡部構成員 わかりました。

○中村構成員 北川先生に質問させていただきたいのですが、申立ての一覧表を拝見すると本人申立てが多くて、逆に弁護士が代理人で付いているという申立てがほとんどないという特徴のようですが、この辺の理由はどういうことだと考えていらっしゃるのでしょうか。特に法律相談前置もとっていない。総合紛争解決センターということは、直接弁護士会がかかわっていないということも関係しているのかもしれませんが、その辺りの理由はどこにあるのでしょうか。本人申立てがしやすくなっているADRというのはすごく大事だと思いますし、先ほどお話が出ました相談からADRの連鎖が非常にスムーズにいくということが、ADRを活性化させる1つの大きな理由になると思うのです。ほかの弁護士会の場合は比較的代理人の弁護士が付いているケースが多い、あるいは法律相談前置になっていることが多いようですが、それと比較しての大阪の特徴みたいなものがありましたら、ちょっと教えていただければと思います。

○北川構成員 この点については、実際100%本人申立てになっておりますので、代理人が付いていない理由というのはちょっと図りかねるところがあるのです。例えば先ほどお話しましたように、2件目の事件については、ほぼ間違いなく弁護士が書いた申立書だと思われますので、そのような形で事前に弁護士の相談を手続外で済ませている事件は、比較的多いのではないかとは思っております。その上で、おそらく弁護士が付くと、報酬などの関係で本人にとってメリットが大きくない事件などについては、自分が受任せずに、簡単な手続だからということで進めてくださっているのも、比較的多いのではないかと思います。
そういう形で手続選別が進められているとすれば、そういうパターンで相談があって、問題になりかけた事件については、もしかすると訴訟のほうに行っている可能性も高いのではないかと推測します。もしそうだとすれば、訴訟とADRの棲み分けが比較的うまいことできているのではないかという気もしますが、現時点では代理人付きの申立事件がゼロですので、ちょっとそれ以上のことは推測がつきかねるところではあります。

○山本座長 佐々木さん、これについてどうですか。

○佐々木構成員 いままでお話を聞いてまいりましたが、申立人はまずは弁護士の所へ行かれるのですか。医療者のほうへ行かれるのでしょうか。医療者のところで説明が聞けなかったので弁護士のところの申立人は来られるのでしょうか。そこをちょっと聞きたいのですけれども。徳田先生のほうでも、いま申立人の話が出ていましたので。

○北川構成員 どこに行っているかというのは。

○佐々木構成員 まずは、医療者に聞きには行っておられて、自分が不信感を持って弁護士の所へ申出を出しているのでしょうか。

○北川構成員 私のほうで記録・検討させていただいたところによると、説明を求めたりしている事件については、ほとんどの場合、まず医療側にお話に行っておられるようですが、そこで納得できるような説明が得られなかったということで、直接うちに申立てに来られるか、弁護士に相談にいかれているかというパターンではないかと思っています。事件によっては弁護士の匂いが全くしない事件もいくつかあるようですので、弁護士に必ず相談しているということはないと思っております。

○佐々木構成員 それで、ちょっと私見になりますが、私は医療過誤裁判をいたしております。しかし、人間の生命・身体を裁判でするということは、そこに謝罪とか、感情などといったものがないということですので、これは医療者と患者との当事者同士で話し合うということが、まず大切ではないかと私は思うのです。患者は病院で不信感を持ったときに、どうして亡くなったのか、何があったのか、その説明を聞きたいということです。医療者の所へ聞きにまいりますが、医療者がそこで初期段階でちゃんと説明すれば、患者も納得するわけなのですが、それがないということですよね。
だから、私が思うのは、医療者と患者にトラブルが起こりますと、院内で話をする。そこにはリスクマネージャーとか、いまコミュニケーションできる技法を習っている方がたくさんいらっしゃいますので、医療者と当事者同士が会うということ。看護師などは患者に対して共感を持って、ちゃんとお話していただける。主人公は医療者だと思うのです。だから、そこでちゃんと話をしていただければ、ミスでないという場合があります。そこで医療者がちゃんと説明することによって、情報を開示することによって、納得されて、ミスでなかったということで、払拭される意見もあるわけなのです。もしミスがあるのであれば、しっかりと謝罪をしていただきたい。そこで謝罪をしていただいて、問題点を指摘し、二度と起こさないようにと医療者側も努力されて、そういったシステムを構築して安全な医療をしていければ、患者被害者、また遺族の方は納得されるわけなのです。
だから、被害者というのは、どうしてこうなったのか、何でこうなったのか。そしてまた、亡くなったのを返せと言いませんが、情報開示をして、ちゃんと説明してほしいという望みを持っておられます。だけど、医療者側も、やはりそうする責任があって、思いは同じなのです。ちゃんと最後まで原因を追求したいと、本当は医療者がしっかりとしていただきたい。自浄作用、それを望みたいと思います。
そして第1段階として、医療者と患者の当事者同士が会って話をする、これは私は大切だと思います。第2段階として、弁護士の方、そのあとのいろいろな法的な手続がありますね。損害賠償のこと、また調停など、被害者が弁護士に話をしてもらいたいとか、そういうことをやりますが、まずは当事者同士が院内で話をする、これは医療者の責任だと思うのです。しっかりと説明して、隠すという体制はこの時代に合わないと思います。情報がこれだけありますので、そこはちゃんと誠実に話していただきたいと思います。

○小松構成員代理石渡氏 今日、茨城県から来ました。小松が用事があって来られなくて、代理の石渡でございます。茨城県は平成18年から21年の4年間に49件の申立てを受けております。その中で、患者側が47件、医療側が2件です。ほとんどが患者側からの申立てで、そこには代理人という方がおられません。ほとんどは患者自ら、あるいは遺族の方が申立てるわけですが、その中でなかなか内容がつかみにくい事例もあります。その場合にも両者が話し合いに応ずるということがわかりました場合はすべて受けております。したがって、49件のうち46件の応諾となっております。紛争のほとんどは医師の説明不足、あるいは患者が理解できなかったこと、そういう誤解に基づいての背景として紛争が起きてきて、その解決の手段がないのでこじれていくという事例が多いわけです。第1回目のときに、患者側がどういうことを聞きたいか、何を知りたいか、そういうことを聞きます。医療側が医療の説明をきちんとなさいます。同じテーブルについてそれをされますので、お互いに代理人とか弁護士という方は介添えしておりません。
お互いにポイントがわからない場合には、そこで一応整理して、2回目の委員会のときにもう1回やっている状況です。かなり誤解に基づく、あるいは説明不足に基づくものについては、お金ということではなくて解決をしております。お金で解決した場合には、それは完全に紛争が解決したとはとても思えませんし、お互い納得することが非常に重要なことで、あとの医療を続けることにおいても重要なことだと思っていますので、茨城県ではそういう形にしています。
申立ての手数料はいただいておりません。ですから、第1回目の委員会で、あっせんという会議の中で馴染まない事例だった場合には、その時点で中止ということになりますが、申立ての料金をいただいておりませんので、そういうところはわりとスムーズに処理ができているという状況です。仮に現在は大体61%、きちんと合意がなされています。その中のかなりの部分がいわゆるお金が発生していない、そういう状況です。
それから、慰謝料であれ、あるいは医療費が高額になった場合には、これと医師賠償責任保険と、どのような絡みでやっていくかということで、いまちょっと問題がありますが、それはあとでいろいろな先生方からご意見をいただきたいと思っております。茨城県の状況はそうです。

○小山構成員 医療側を代表いたしまして、いまの佐々木委員のご意見を深く受け止めたいと思います。ADRそのものの位置づけという形になってくると思うのですが、小野寺委員の所から出ております、例えば平成21年度は105件の申立てがあって、うち医療事故13件とあります。これを医療事故と判定する定義というのですか、その手続は、107件のうちこれは医療事故と、どのようにして判定するのでしょうか。

○小野寺構成員 医療に関するトラブルというように捉えています。

○小山構成員 申立件数というのは、紛争解決全体が107件で、そのうちの13件が医療事故という形で捉えているのですね。

○小野寺構成員 そのとおりです。

○小山構成員 わかりました。先ほど佐々木委員がおっしゃったみたいに、我々が捉えているADRの考え方と、弁護士の先生方が考えているADRと、異次元とまで言わないのですが、少し差があるかなというところを感じます。それは我々医療機関側は、いま佐々木委員がおっしゃったように、ADRは当事者同士が出てきて話し合う場所を設けてくれる場所かなという理解でいたのですが、その中身によっては、場合によると代理人同士ということも出てくると思うのです。先ほど徳田委員は、代理人が出てきたほうが紛争が解決しやすいみたいなお話をされたのですが、特に患者側の気持を汲んだ場合には、本当の解決というのは自分たちがいちばん納得する解決を望んでおられるのではないかと思うのです。その場合に、代理人だけの話し合いの中ではそのようにならないのかなと思うのです。
そこで、これは座長に質問なのかもしれませんが、このADRというものの考え方を、代理人同士が出てくるのがADRだというように考えるのか、あるいはそうではないと。いま佐々木委員がお話になった病院の中でやれればいちばんいいのだけれども、病院の中ができないから、その次の段階として、すぐ裁判に行くのではなくて、病院の中にメディエーター的な人がいないために、ADRを使って当事者同士の話し合いの場を作ってもらうのをADRの位置づけとするのか、あるいはADRの1次とADRの2次というのがあるのかもしれませんが、その辺の位置づけは、これから議論をしていくときにどのように考えたらよろしいのでしょうか。

○山本座長 私自身がお答えする立場にあるかどうかというのはよくわかりませんけれども、おそらくいままでの議論に出てきているように、ADRと言っても多様なものがあって、先ほど佐々木構成員がご指摘になられたように、当事者間で本来は医療側からこういう手続とは全く関係なくご説明がなされるべきところが、そこが何らかの事情でうまくいかないで、第三者がその間に立って仲介したほうが当事者間の話し合いがうまくいくという種類のADRも、もちろんある。他方では、どちらかといえば裁判に近いような、先ほどもお話に出たその原因等には全然争いがなくて、ただ賠償の金額をめぐって紛争があると。これはどちらかと言うと医療事故に固有の紛争というよりは、お金を貸して返さないとか、そういう場面でもあるような紛争だと思います。そのような類の紛争を解決するADRもあるだろう。
私の認識では、ここで議論されるADRというのは、医療をめぐって発生する紛争について裁判外で解決する仕組みという、かなり広い枠で捉えていて、何か1つの類型のみを捉えたものを議論する必然性は必ずしもないだろうと。構成員の皆さんがお互いイメージしている、あるいは念頭に置いているADRというものが若干食い違って、それが議論が少し食い違う原因になる可能性はあるように思いますので、その辺りはそれぞれご注意をいただいて、どのようなADRを念頭に置いておられるのかということは、ある程度明らかにしながら議論したほうが生産的なものになるのかなと、議事整理役としてはそういう印象は持っていますけれども。徳田委員、いかがでしょうか。

○徳田構成員 私の説明が少し悪かったので、誤解をさせてしまったのかもしれないのですが、代理人が付いているかどうかということで、代理人が付いている場合も、必ずご本人は基本的には来られる前提です。特に医療機関からの説明を受けたい、あるいは話し合いがしたいという場合は、代理人だけ出ていて説明を聞いても、それはご本人の納得にはなかなかつながらないと思いますので、特にそういう事案ではご本人も必ず同行していただくということになろうかと思います。特にADRの特徴としては、私は医療過誤訴訟などもやっていますが、裁判は中にはご本人がいらっしゃらなくて、弁護士だけが裁判所に行って、書面のやり取りをしてというものがありますが、ADRはそうではなくて病院と患者側が話し合いをするというのが基本的な制度だと思いますので、裁判よりもよりそういう部分が強く出ていると思います。
それで、私が代理人が付いているもののほうが応諾率が高いと言ったのは、代理人が付いているほうが注意義務などがきちんと整理されていて、責任原因だとか、因果関係だとか、請求の根拠だとか、損害額だとか、申立書が比較的、法的にきちんと構成されているので、相手方も対応しやすいという意味で応諾率が高いのではないかと考えているということですので、説明不足でした。

○宮脇構成員 いまのに関連して、紛争解決というのがある、そういう表題でなっているのですが、医療過誤裁判に至る私見ですが、医療ミスがあったからすべて医療過誤裁判になるのではなくて、決定的なのは、1つは事実関係が全く違うと。医療側が主張しているのと被害者が体験したのが全く違うということで、これはいくら話し合っても事実関係が違うので、裁判でどちらが言っているのが正しいのかと、やらざるを得ない。これはADRには乗っからないなと思うのです。もう1つは、医療過誤、医療の事故があったときの対応が悪いということで、最後まで丁寧に説明もないし、逃げまくったりとか、非常に不誠実な、口を閉ざして弁護士に丸投げするとか、そういうことで何とか裁判を通して懲罰を掛けていきたいと。そういうことに対する態度というのが裁判になっていく経過の中であると思うのです。
ADRについては東京の報告書の中にありますが、事実関係についてお互いに認識が一致したものについては、ほとんど解決に至っていくということがあるので、そういう対応の悪さであるとか、誤解であるとか、懲罰的なものを求めたいという被害者のところの大部分がこのADRで解決されるのではないかと思います。また、これはお互いに医療の内容を将来向上していく上でも、そこから教訓を汲み取って、紛争になっていかないようになっていくことは、ADRの役割としては非常に大きいなと思いますし、期待しているところなのです。
九州のパンフレットは、紛争解決のためのパンフレットという形になっているのですが、これだと医療機関の側の方が見たら、ほかの所も紛争と前面に出しているので、実はまだ紛争に至っていなくて、トラブル段階だと思うのです。だから、トラブル対応センターみたいな形でやると、もう少しこの役割が正確に九州の場合でも、医療機関の側でも理解しやすくなるのではないかなとは思うのです。だから、もう少しお互いに知恵を働かせながら突き詰めていって、最終的な決裂になったり、裁判まで行かざるを得ないぐらいに矛盾が大きくなってしまう前に、十分ADRの役割というのはあるし、そういう点での推進の会議だと思っているところです。

○前田構成員 診療所側の委員の前田でございます。ADRの総論で、先ほど小山委員から話がありましたので、私も2回、3回と会議に出席して、感想を言わせていただきたいなと。あとは委員の先生方の発表にちょっと質問させていただきたいのです。ADRというのは、従来の紛争のフィールドがあって、その紛争を同じ数の中で裁判に発展するものを減らそうとするものなのか、それとも紛争というフィールドがあって、それよりももっと閾値の低い、もう少し浅い紛争をさらに増やそうとするものなのか。皆さんの発表を見ていますと、私たちはあるADRは裁判を減らそうとしているように受けて取れますし、ある県のやっていらっしゃるADRは、どうもそうではないように思われるのです。要するに、それは裁判ではとても勝てないけれども、医療者と何らかの接触をして、できれば謝罪させたいという意図も見えるような部分も、今日の話とか、前回の話を聞いていて、ちょっとそういう感想を持ちました。
もちろん、それは悪いことではなくて、もし患者さんがご不満であれば、当然、医療者のほうは誠意をもって、何らかの形で対応するべきだと思いますが、それが果たして謝罪であるのかどうかも含めて、それはそれでおそらく多くの医療者が求めているADRではないと思うのです。私個人の私見としては、それがあってもいいと思うのですが、ある種紛争を患者さんの側にとっても、医療者側にとっても、面倒な紛争に発展することを避けるために考案されてきたのがADRではないかと思ったのです。裾野を広げるだけであれば、ちょっとこれは違うのではないかなという感想が1つありました。これは皆さんそれぞれご意見があると思いますので、これは1つの感想です。
それから、ある弁護士会のなさっているADRでは、仲裁人が医療者を選任されておられますし、大阪では残念ながら医師会が乗ってこなくて、選任されていなかった。それでも、委員をお選びになってリストを見せていただきました。これは質問なのですが、大阪の場合は福岡と同じように、医師会のほうで何かADRをなさっているから、このADRに乗ってこられなかったのでしょうか。

○北川構成員 ご趣旨がちょっとよくわからなかったので、もう一度お願いできますでしょうか。

○前田構成員 呼びかけたときに、医師の団体から参加がなかったということですよね。それは、おそらく医師会とか医療関係の学術団体が参加してこなかったということだと思うのですが、例えば福岡で同じ話が出たときには、福岡は医師会でADRにちょっと似たような取組みをしていると。だから、入ってこなかったのではないかという話がありましたね。大阪でもそうなのでしょうか。

○北川構成員 大阪については、医師会の方の弁護士会に対するガードが固かったというように聞いております。弁護士は患者側を代理して、医療側をいじめるものだというお気持が医師会に強かったために、お話に乗っていただけなかったというようにお聞きしています。
ついでにお話させていただきますと、そのあと大学病院とか、いろいろな団体に参加を働きかけてきたわけなのですが、先ほどちらっとお話しましたが、いったいお医者さんがどのような形で参加するか、どのような専門知識の発揮の仕方をするかということについて、なかなかイメージが湧かないということもあったように思われます。ほかの医療以外の分野については、専門家が入ってきますとある程度確立したパターンがありまして、こんな場合にはこういう結論になりますよというお話を比較的しやすい分野があるわけです。医療の場合にも、そのようなものがあれば話がしやすいということは間違いなくあるとは思いますが、いまの段階でそこまで提供していいのかどうか、そのようなことについては相当及び腰の方が多かったと認識しております。
その関係で、東京などは事実整理、主張を整理するためのお手伝いをしてもらうための知識を提供してもらうことに徹するのであれば、もう少し広くお医者さんの参加が求められやすかったのかもしれないとは思いますが、いまとなってはちょっとまだ分からないところです。以上です。

○前田構成員 ちょっと残念な経過だと思いますが、まさに前回のこの会議で小山委員が、紛争解決を望んでいない医師などいないとおっしゃったのですが、是非、大阪でも医師会の方が乗ってくるといいかなと思います。それには、やはり長い歴史の中で、まさにおっしゃったとおり、皆さん苦笑なさっていましたが、我々はいまはともかくとして、昔はそういうイメージを持っていました。弁護士にいじめられているという図式は、やはりどうしてもイメージとして持っておりましたね。決してそんなことはないと私は信じていますけれども。
ですから、そんな歴史があったということもある程度踏まえていただきたいし、佐々木委員にしても宮脇委員にしても、いままで非常に苦労してこられたことを本当に高く評価したいし、皆さんのおっしゃることを我々は本当に真摯に受け止めて、真面目に自浄作用に取り組んでいかなければいけないことはよくわかります。本当にひどい医療が行われて、あるいは隠蔽が行われてきたことも、これは歴史的に確かだと思います。
その反面、これは感情として無理もないと思いますが、まだ決着が着いていない紛争に関して、過誤という言葉を付けたり、どのような背景があるかまだはっきりしていないことに対して被害者という表現をしたりするのは、医療者側としてはまだ少し引っかかりがあるのです。もちろんそういう現実に側面していらっしゃる方々から見れば、そんなことはちゃんちゃらおかしい意見かもしれないけれども、そこはお互いの歩み寄りだと思いますし、そこを何とか解決していくのがこの会議ではないかと信じておりますので、皆さん今後とも是非良いADRを組み立てていただきたいと思います。

○和田構成員 一括りで言うと応諾率の件なのですが、まず、ミクロな観点から言えば、ドクターが出てくるかどうかです。先ほど大阪の1番目のケースで、患者側がそれを望んでいるのに、病院側はドクターが出てこないというので、もうそれで終わってしまったというのがありました。これはやはりドクターに出てきてもらいたい。それは佐々木さんもおっしゃっていたような、やはり向き合う場であってほしいということですね。ADRであっても、特に患者側は向き合うことを求めることが多いと思うのです。やはり出てきてもらいたいと思います。
では、なぜ出てこないかというと、1つは医療者の側が逃げているという場合も、もちろんあるかと思います。それも1つの理由だと思うのです。あるいは全く取り合わないというケースもある。もう1つは、これも仄聞するところですが、医療者側は出て話をしてもいいと言っていても、病院側の顧問弁護士が止めてしまうということも間々あるようです。弁護士が出てきていて、医者は出さないとおっしゃる場合もあったりするようです。そのようなことを踏まえて考えると、できるだけ出ていただけるようにするにはどうすればいいか、課題を見極める必要があるかと思います。
それから、もっと広い意味で、応諾率そのものを上げていくにはどうすればいいか。医療側がおそらく気にするであろうことは、そのあともし裁判になったときに、ADRの中でいろいろ言った発言とか、提案とか、示した文書とか、そういうものが裁判でまたそのまま出ていって活用されると。そうすると、そんなことはあまり出さないほうがいい。だから、ADRにも乗らないほうがいい。裁判の影があると乗らないということも多いと思うのです。おそらく各ADRで、その証拠や主張に関する不開示契約のようなものを結んでやられると思うのですが、果たして日本の裁判所で、その不開示契約自体がどれぐらい意味があるのかということはちょっとよくわからないところです。その辺りの、医療側があまり何も恐れずに、裁判の可能性を念頭に置かずに、本当に患者側に真摯に向き合っていけるような環境を作っていくことが大切かと思います。そこで応諾率を高めるという意味で、ADRの中で行われた議論についての取扱いという辺りは、それぞれどのような工夫をされているのか、ちょっと教えていただければと思います。

○山本座長 これは今日ご報告をいただいた北川先生ですか。

○北川構成員 基本的にはそれをそのまま当事者にお渡しするという扱いはしておりませんので、当事者が相手にお渡ししたような書面は相手に渡っているとは思いますが、それ以外のものについては制度的に丸々利用するという形にはなっていないのではないかと思っています。ただ、個人情報開示の関係がありまして、その手続もあるので、どこまで出てこないようにできるかということについては事案ごと、書いている内容ごとに変わってくる可能性もあるかもしれませんので、その辺ははっきり全くあり得ないというお話はできないかとは思います。おそらくいまの段階においては、あくまで話し合いの前提として、金額的な提示もあるということに徹していただければ、訴訟における責任を認めた形に、つながっていかないのではないかとは思っております。

○小野寺構成員 ADRで主張した書面、あるいは証拠を裁判で使わないという約束などは全くしていませんので、例えば私がやったケースでは、ADRで話がつかなくて裁判所に持ち込んだときは、ADRの書面、証拠を全部そのまま甲号証で出してしまってやったということがありまして、相手からも特にそれに対する批判というのはありません。ただ、ADRの仲裁人の記録そのものを出すかどうかというのは、これは全く別の話で、弁護士会のほうに取寄せなどがまだ来ていないわけですが、来たときには出すかどうかということはたぶん議論になると思うのです。主張書面と証拠は、特に裁判に持っていったときにどうだこうだということは、議論しないでやり取りしていますし、医療側もいずれ裁判になるかもしれないということを念頭に置いて対応していますので、どうしても出してまずいようなものをADRで出してくるということも考えられないので、その辺はあまりそのことをめぐって議論になっていない。
むしろ先ほど申し上げましたように、裁判前にこの事件はどういう事件なのかということを、お互いが認識し合って、そして裁判に行くものは行かせるし、行かないで済ませるものは済ませると、そっちの機能のほうが大きいので、ADRで出してまずいから出さないなどという駆け引きというのは、私はあまり見聞はしていないのですが、よろしいでしょうか。

○渡部構成員 東京三会で議論しているのは、調停の秘密の問題がありまして、調停の内容等について裁判所から調査嘱託がきても、おそらく拒否するだろうと思います。弁護士会ADR自身の調停記録などは外部には出しませんが、ADR手続の中で当事者間で渡し合った資料について、それを後日裁判となった場合に当事者双方が利用することは一般的にやられていることです。また、弁護士会ADRで、その紛争が解決して裁判所に行かない場合もあるわけです。弁護士会ADRで医療機関側の説明をすることによって、患者側が納得されて調停が成立する場合もあるのですから、それは説明方法の一環として、いろいろと資料が渡され、その場での話し合いをすることはやはり促進すべきだと思いますし、その渡された資料をどこに出したらいけないという制限はちょっと掛けられないのではないかなという気がいたします。

○小山構成員 応諾率が悪いということで、我々が責められているような感じなのですが、いまみたいな話もあるかもしれません。大変高級な話なのです。もっと低次元な話で、先ほど前田委員がお話になったように、呼び出されるので、最初から罪人として扱われているような感じがするのです。だから、お白洲の場に首を洗って出てきなさいというのは、ADRの位置づけなのです。そうではなくて、それぞれのいろいろな意見を聞きましょうという場でなくて、弁護士が集まってきて、あなた方にこれだけのことをしなさいとか、賠償金をこれだけ払いなさいという場所のような、これは誤解だと思うのですが、そのような位置づけになっている。
確かにいままでの前回、前々回などを見ても、解決金が0というのはほとんどないわけです。全部医療側が悪い。そうすると、ADRに行くと必ず罰せられる、そういうのが発生するのだというイメージであって、決して皆さんがいまここで論じているような患者さんと医療者側の意見を聞いて、上程をするのだというのではなくて、そうではないように取られているから、応諾率が1つ悪い理由はその辺にあるのではないかと私は思います。

○山本座長 その点、非常に重要な点だと思いますが、小山委員のご感触は私もたぶん誤解ではないかと思うのですが、それを解く方法として、何か具体的な方策で、こういうことがあればいいのではないかということが、もしあれば。

○小野寺構成員 ちょっとそれは誤解ではないかと思うのです。いまのような苦情をADRのほうが医療側から受けたという試しはないのです。

○小山構成員 私も「誤解ですけど」という話をしていた。これは誤解だと思いますが、そのように誤解をしている医療機関が多いというお話をさせていただいたわけです。

○小野寺構成員 むしろ医療機関側が応諾しないというのは、もう既にそのことは十分ご説明したとか、あるいはいくら説明したって、もうわかってもらえないとか、そういう患者側に対する逆の不信感があって、またそこに行って説明する必要はないのではないかと。そういう我々の所に来るまでの過程があって、患者に対する医療側の不信感、それが濃厚な場合はもう行ったってしょうがないということのほうが多いので、ADRに対する不信感ということではないのではないかと思っています。

○山本座長 たぶんいろいろな要因が連鎖しているということだと思います。これは非常に大きな問題だろうと思います。

○植木構成員 千葉の事例で言いますと、認証を受けたあとでは応諾率はグッと上がっています。それは実績がだいぶ出てきたということだろうと思います。それと認証以前は単なる私的な機関に過ぎませんから、それに対してどこまで信頼できるのか、ある種の懸念も若干はあったろうと思います。だけど、ちゃんとした仕事をやり、実績を上げれば、信頼が少しずつ出てきて事後に認証された暁には、むしろ応諾率が徐々に上がっていくというのが現実だと思います。
それはそれとして、私がこの場でちょっと疑問に思いますのは、ADRをどのように位置づけるのかということが重要です。これは座長もいろいろな考え方があるというご意見であって、私もADRの二面性を重視しておりまして、第一に医療相談に対してちゃんとした一定のお答えをするという役割と、もう1つは判決類似のある種の解決策を提示すること、そういう両方の面があると思っております。
今日の仙台の方の資料と照らし合わせて、特に後者の点に関連して質問させていただきます。平成21年度に4,000万円の解決事案が出てきたと、このようにご説明があった。このときの問題、これはどういう事案でどういう解決をされたのかというのは私にはわかりませんが、これのときに因果関係が議論されなくて4,000万円もの解決金が出るというのは、普通は考えにくい。もう1つは、そのときの判断を医師でない専門の法律家、委員の方だけで独自に判断されたのか。それは本当に可能かどうかという点(自白があれば別ですが)。もう1つは、4,000万円という額が出た場合に、どういう形で実際の補填が行われているのか。つまり保険会社から出ているのかどうかという問題です。出ているとすれば、どういう合意の下で出たのか。その点を少しお聞きしたいということが1つです。
次に、大阪でもこれから医師の専門家が入る可能性があるとおっしゃっていますから、いままでに医師の専門家が入って解決された事例と、そうでない事例があるのか、そのときどのような違いがあるのか、そういう経験があるのかどうか、その点を併せてお聞きします。

○小野寺構成員 この4,000万というのは、実は私が申立人になって出した事件なので、中身はよくわかっているのです。アレルギー治療で脊椎に注射をしていたときに神経を損傷させたということで、これは証拠保全のあとで医療側の弁護士と被告側の弁護士とやり取りをしていく中で、医師会のほうも有責を認めたというケースなのです。そうなると、あとはもう損害だけだったのです。裁判に持ち込まなかったというのは、この方ですね。この事故以来、注射とか、病院というのを聞くと、フラッシュバックを起こして過呼吸になってしまって、ちょっと裁判に耐えられないだろうという見通しがあったので、ADRのほうに申し立てました。申立金額はたしか6,000万円を超えたと思うのですが、仲裁人のほうが示談案というのでしょうか、書面による和解案を出してくれました。そして、相手方、医療側の弁護士が開業医ですので、医師会の保険会社を説得してくれて、その仲裁案を双方が飲むということで解決した事案ということです。私はちょっと保険会社の説得が無理なのではないかと思っていたのですが、医療側の弁護士が非常に熱心に説得してくれたおかげで、裁判に持ち込まないで解決ができたというケースですが。

○植木構成員 そうすると、それは日本医師会の保険を使っているということですね。

○小野寺構成員 はい、開業医ですから。

○植木構成員 千葉でも1,300万円で和解をしたことがありまして、そのときには日本医師会にも事情を説明いたしまして、できれば保健から出してほしいということを事前に交渉をしておりまして、それをスムーズに出していただきました。それが4,000万円ぐらいになりますと、本当にそう簡単に出るのかどうか、私にはちょっとよくわかりませんが、そうなったときにたまたま今回は保険で処理が可能であったという話になっているからいいようなものでしょうけれども、それが例えば日医が反対をされたとか、難色を示された場合はどうなるのでしょう。解決金の中身があまりにも大きいというお話になったときに、結局、最後に問題になってくるのは、ADRの守備範囲がどこまで可能かという問題が浮上してきます。それに関しては、結局は裁判所との棲み分けをどうするのか、将来的にはそこがいちばん重要になってくるところだと思っているのです。それゆえ将来的には両者の棲み分けを考えないといけない。それは因果関係の認定問題だって同じことだと思うのです。責任の調整問題、損害額の決定問題、やはりそれも含めてADRの機能を総合的に考えないといけないのかなという印象を持っています。

○山本座長 いま大阪のほうにもご質問がありましたが。

○北川構成員 先ほどおっしゃいましたように、新たに医師資格を持った方の和解あっせん人登録がありましたので、可能性ではなしに、今後、医療関係の事件については必ず1名、そのあっせん人名簿から選任させていただくことになります。いままでの事件については、13件目の事件は既に先ほどのリストの中から和解あっせん人を選任させていただいております。ただ、期日までは開かれておりませんので、どういう進行になるかはまだわからない状況です。これについても相当額ということになっておりますので、植木さんが心配しておられるような事態はあまり起こらないのかもしれません。
実際のところは、これまでに医師が参加していなかったかということになりますと、1件目の事件については社会福祉士というのがありますが、この社会福祉士の方は医師資格を持った方でしたので、実際はいままで関与がなかったわけではありません。ただ、この事件については、先ほどお話いたしましたように、相手方の医師の出席をいただけませんでしたので、話し合いのきっかけがつかめずに不成立になってしまったということがありまして、残念ながらどのように発展すべきだったかというのもわからない状況です。
今後どうなるかということについては、うちの規則では和解あっせん人がその手続をどう進めるかということについては特に制約は設けておりませんので、東京三会のような形で事実整理のお手伝いをさせていただくために、専門知識を利用していただくのか、評価的なものまでいただくのかということについては全くお任せせざるを得ない状況です。というよりも、お願いするという形になるかとは思いますが、どういう形であれ専門的な知識を発揮していただきたいという希望がありますので、そのためのお手伝いをこちらのほうでさせていただくという形になるかと思います。その点、事案が集積すれば、医師の和解あっせん人の場合にどういうメリット・デメリットがあるかという報告は、今後させていただけるのではないかと思います。

○小松構成員代理石渡氏 茨城の状況ですが茨城は4年間で49ありまして、去年度の澪では61%合意しております。お金の問題なのですが、50万円以下で解決しているものが17のうちの8、全く金銭的な問題なく解決したものが3件あります。いちばん高額は、400万円台が2件と200万円台が2件、100万円台が2件あります。これと医師賠償責任保険との絡みについては、私はいま詳細なデータを持ってきていないので何とも言えませんが、あまり高額の賠償がそこに発生するような事案については、茨城県でやっているADRは少し馴染まないのではないかという感じです。
あくまでも茨城県の場合は、患者と医療側との誤解を解くということがいちばんの目的で、そういう意味で非常に少額なところで、ほとんどが説明と謝罪と多少の見舞金ということで解決が着いております。そういう意味では、私たちは茨城県で非常に良いADRが行われているという、そのような感じを持っています。
○小山構成員 大阪で医師を入れるのに非常に苦労されたというお話なのですが、看護師などというのは、こういうところには馴染んでこないのでしょうか。どうしてそんなことを言うかというと、医師ですと、例えば外科なら外科の知識は豊富なのですが、全般的な患者さんのいろいろな話を聞くのは、看護師のほうがどちらかというと長けている場合もあるかなと思うのです。逆に、専門的な知識になると、本当にその専門家でないと出てこれないという話になってくる。そうすると、これは逆にADRのレベルというよりも、裁判のレベルかなという感じさえするのですが、それはどうなのでしょうか。

○北川構成員 その点は、看護師については看護師なりの専門知識はお持ちだと思いますが、一般的に医療事件ということについて考えられているのは、若干違っているのではないかなという印象を受けます。そこまでの専門的な知識は訴訟に馴染むのではないかというお話もありましたが、それは先ほども言いましたように壊れてしまった当事者間の私的自治といいますか、交渉関係を復活させるための道具としては十分使えるのではないかと。見込みもわからないまま、当事者の間を取り持つ、お手伝いするということはなかなかできないことですが、その辺はある程度特化した知識をお持ちであったとしても、それ以外の知識も周辺的に十分お持ちだと思っておりますので、十分、医師資格をお持ちの方に活躍していただけるのではないかと思っております。

○小山構成員 医師は、特に大学病院などにいる医師は非常に忙しいのです。裁判所のほうにカンファレンス鑑定というのがありますが、この人を選び出すのはとても大変なのです。その時間を調整するのは、とても大変なのです。ですので、なかなか現役の医師というのは難しいので、1つの方法とすると、ある意味リタイアした、経験豊富だという方もいらっしゃいますが、看護職などはある意味でメディエーター的なことになるかもしれませんが、非常に有用だと私は感じておりますので、意見として申し上げます。

○宮脇構成員 和解金額で、ADRに枠をはめるとか、一定額以上は裁判とか、そういう認識ではなくて、基本的に話し合いで解決できればいちばん良いと思いますし、また、事実認識が違った場合でも、別途専門家による事故調査委員会などを作って、そこでお互いの合意ができれば、裁判によらなくても解決できるわけです。ADRについては、基本的な考え方としては非常に発展させていくべきだし、発展させていってもらいたいなと思いますので、被害者にとっても納得できるところがいちばん大事だと思います。そういう点では、金額が大きくなって、今回4,000万円などということについては、それは大事にして、ADRの役割そのものについては存分に発揮できるような、そういう方向での考え方を大事にしていっていただきたいと思っています。

○山本座長 時間ですので、大体よろしいでしょうか。本日も前2回に引き続きまして、大変有意義なお話をいただきました。いままでも出ていた議論、応諾率を上げる方法として、どういうことがあるのかと。不開示特約というご提言もありましたし、ADRに対する医療側の不信があるのではないかというお話、あるいは医療と患者の間の相互不信の問題があるのではないかという、いくつかの原因の分析があったかと思います。この点は、引続きさらに議論をして、深めていく必要があるのだろうと思います。
また、ADRにおける医師のかかわり方の問題、大阪では新しい取組みがなされているというお話がありました。それに対して、医療側のほうからはリタイアした医師の活用、あるいは場合によっては看護師の活用というご提言もあったところです。あるいは、金額の問題については、保険とのかかわりというのが、これもこの調整会議当初から問題になっていたところが、やはり課題であるということになろうかと思います。さらに、本日はより根本的な、ADRのあり方、ADRに至る前の相談の問題、それを弁護士が行うのか、あるいは弁護士以外の人材が行っていくのかというお話。あるいは、望ましいADRのあり得るモデルとして、当事者間の話し合い、医療と患者との間のパイプを復活させるというところに力点があるのか、あるいはどちらかといえば法的なアプローチといいますか、紛争解決という点に重点があるのかという点についても、ご議論があったかと思います。
これらの問題は、もちろんすぐにどうこう解決できるというお話ではないかと思いますが、引続き議論をしていただく材料は非常に豊富に出していただけたのではないかと思います。私の不手際で時間を若干超過しておりますが、今回はここまでとしたいと思います。
次回ですが、次回も今回と同様、おおむね3機関程度から取組状況のご紹介をいただいて、そのあとに意見交換を行えればと思っております。この検討会のメンバーでADRに取り組んでおられる機関で、まだ発表をいただいていない所としては、愛媛弁護士会、岡山仲裁センターのみということになりましたので、恐縮ではありますが、最後ということで是非、次回お願いができればと考えています。別途、事務局のほうから、ご連絡をさせていただきます。よろしくお願いいたします。本日の議題はこれで終了になりますが、最後に事務局から何かありますか。

○医療安全推進室長 次回、第4回の会議の日程ですが、別途、日程調整をさせていただきます。また、いま座長からもありましたが、次回の取組状況のご発表については、個別にまた別途お願いをさせていただくことになろうかと思いますので、ご協力をお願いしたいと思います。以上です。

○山本座長 最後で恐縮ですが、植木先生から貴重な資料のご提供をいただきました。本来はご説明をいただければよかったのですが、私の不手際で時間がなかったものですから、是非皆さんにはこれをお読みいただいて、また、場を改めてご説明をお願いできる時間をとりたいと思います。それでは、長時間にわたるご議論、どうもありがとうございました。


(了)
<照会先>

医政局総務課医療安全推進室

室長 渡辺真俊: 内線2570
室長補佐 今川正三: 内線4105

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