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2010年11月2日 平成22年度第7回薬事・食品衛生審議会医薬品等安全対策部会安全対策調査会議事録

医薬食品局安全対策課

○日時

平成22年11月2日(火)17:00~


○場所

厚生労働省 共用第8会議室


○議事

○事務局 ただ今より平成22年度第7回 薬事・食品衛生審議会医薬品等安全対策部会 安全対策調査会を開催します。本日の調査会は、公開で行いますが、カメラ撮りは議事に入るまでとします。マスコミ関係者の方々においては、御理解と御協力をお願いします。
 傍聴者の方は、傍聴に際しての留意事項、例えば「静粛を旨とし、喧噪にわたる行為をしないこと」、「座長及び座長の命を受けた事務局職員の指示に従うこと」などの厳守をお願いします。
 本日御出席の先生方においては、お忙しい中お集まりいただきましてありがとうございます。本日の出席状況ですが、全員の御出席をいただいていることを御報告します。
 続いて、本日御出席いただいている参考人の先生方を五十音順で御紹介します。大阪大学大学院医学系研究科血液・腫瘍内科学教授で、日本血液学会理事長の金倉先生です。独立行政法人国立がん研究センターがん対策情報センター薬事・安全管理室長の柴田先生です。福岡大学医学部内科学第一講座教授で、日本臨床腫瘍学会理事長の田村先生です。名古屋大学大学院医学系研究科血液・腫瘍内科学教授で、JALSG(成人白血病治療共同研究グループ)代表の直江先生です。国立がんセンター中央病院副院長の藤原先生です。国立病院機構名古屋医療センター院長の堀田先生です。これ以降は議事に入ります。議事進行は松本先生にお願いします。
○松本座長 事務局から、審議参加に関する遵守事項について報告してください。
○事務局 まず、薬事分科会審議参加規程についてです。本日出席された委員、参考人の方々の過去3年度における関連企業からの寄付金・契約金等の受取状況等を報告します。本日の議題について、ゲムツズマブオゾガマイシンの製造販売業者及び「再発又は難治性の急性骨髄性白血病」治療薬を製造販売する競合企業並びに多剤併用療法として用いられる主な薬剤を販売する競合企業である、ファイザー株式会社、日本新薬株式会社、明治製菓株式会社、あすか製薬株式会社から、過去3年度における寄付金等の受取について申告をいただきました。なお、競合品目・競合企業については、事前に各委員、参考人に資料をお送りして、確認をいただいています。
 まず委員です。五十嵐先生から、ファイザー株式会社から50万超え500万円以下の受取、土屋先生からファイザー株式会社から50万円以下の受取との申告がありました。従いまして、審議に御参加いただけない委員はいらっしゃいませんが、議決については、4名の委員のうち五十嵐委員には参加いただけません。
 参考人の各先生です。金倉先生、田村先生、直江先生、藤原先生が、ファイザー株式会社から、50万円超え500万円以下の受取りとの申告をいただいています。また、直江先生、堀田先生は、ゲムツズマブオゾガマイシン開発時の治験に関与されていました。なお、参考人の先生方は議決には御参加いただきません。以上です。
○松本座長 ただ今事務局から説明がありました、審議参加に関する遵守事項についてはよろしいでしょうか。特にないようですので、競合品目、競合企業の妥当性を含めて了解いただいたものとします。ありがとうございました。
 続いて本日の資料の確認を、事務局からお願いします。
○事務局 本日、机上に御用意した資料を御覧ください。座席表、議事次第、委員名簿があります。
 続いて、配布資料一覧を御覧いただきながら資料の確認をします。右に当日配布資料と赤字が打ってあるものですが、こちらが「AML15試験最終結果解析」です。こちらについては、資料5に関連するものとしてお配りしたもので、本日御出席の藤原先生より情報提供いただいたものです。公表前の論文ということですので、委員、事務局のみの配布となっていますので、御了承ください。
 資料1は医薬品医療機器総合機構からの「調査結果報告書」です。資料2-1はSWOG試験の公表資料」です。資料2-2はBloodの文献の「Abstract」です。資料3は「Prospective Observational Studyの結果について」ということで、企業から米国FDAに提出された資料です。こちらについても、ファイザー株式会社より社内資料であるということですので、本日の審議のみに使用し、公表しないようにとの要請がありました。こちらも委員及び事務局のみの配付としています。資料4は「全例調査結果の概要」です。資料5はBloodの文献の「Abstract」です。資料5-2は「Oncologie2007」ということで、こちらも文献の資料です。資料6-1はファイザー株式会社から提出された医療機関への情報提供資材となっていまして、「「マイロターグ点滴静注用5mg」の御使用に関するお願い」という表題のものです。資料6-2は横の1枚の資料ですが、「マイロターグ投与前のチェックリスト」です。資料6-3は「同意書の(案)」です。
 続いて参考資料です。参考資料1は「マイロターグ点滴静注用に関する米国での措置について」という発表資料です。参考資料2-1は「米国FDAのプレスリリース資料」です。参考資料2-2は「米国ファイザー社のプレスリリース等」の資料です。参考資料3は「欧州EMAの対応に関する「REFUSAL ASSESSMENT REPORT」」です。参考資料4は日本臨床腫瘍学会からの「米国マイロターグ発売中止に対する日本臨床腫瘍学会の見解」についての資料です。参考資料5は「マイロターグ点滴静注用の審査報告書」です。参考資料6が「添付文書」となっています。参考資料7がJALSGが実施した「臨床第I、II相試験について」という資料です。資料7が「レブラミド管理手順の改訂について」という新旧対照表の資料です。資料8は「レブラミド新旧対照表」です。資料9は「ゲフィチニブ服用後の急性肺障害・間質性肺炎等に係る副作用報告の報告例数等について」という資料です。資料は以上です。
 なお、先日資料を送付していますが、一部修正がありますので、本日お手元に配布した資料を御覧いただければと思います。足りないものや落丁などがありましたら、お申し出ください。よろしくお願いします。
○松本座長 議事に入ります。議題1は「ゲムツズマブオゾガマイシンの安全対策について」です。事務局から説明をお願いします。
○事務局 資料1「ゲムツズマブオゾガマイシンの安全性に関する調査について」です。本剤は急性骨髄性白血病の治療薬として承認されている医薬品ですが、本年10月15日付けで米国における承認が取下げとなりました。本調査結果報告書は、これを受けて我が国での取扱いについての調査検討を行ったものです。
 1ページです。本剤の国内外における開発状況及び承認までの経緯についてです。本剤は米国においては、平成12年5月に「細胞傷害性化学療法の適応とならない60歳以上の初回再発CD33抗原陽性の急性骨髄性白血病患者」を効能・効果として、本剤の単独投与が迅速承認されています。なお、米国FDAは承認に際し、企業に対して製造販売後に本剤の臨床的有用性を確認するための臨床試験の実施を、Postmarket Commitmentとして求めていました。
 一方欧州においては、平成17年12月に、米国の承認申請に用いた海外第II相試験成績を主要なデータとして、EMAに承認申請されたものの、ランダム化比較対象試験なしで評価することは困難であり、本剤の臨床的有用性が未確立であると評価され、承認に至っていません。本剤は平成22年6月までに、米国を除きアルゼンチン、インド等、8カ国で承認をされています。
 本邦においては、総合機構における本剤の承認審査において、急性前骨髄球性白血病以外のAMLのうち、再寛解導入療法として、シタラビン大量療法が標準的に行われている「60歳未満の初回再発例」に対する臨床的位置付けは、ランダム化比較対照試験を実施しない限り、明確にはならないと判断しています。
 一方、シタラビンの大量療法等の他の再寛解導入療法の適応とならないと考えられる症例に対しては、提出された国内外の臨床試験にて、完全寛解となった例が確認されていることから、他の再寛解導入療法の適応がない、再発又は難治性のCD33抗原陽性のAML患者のみに、本剤が単独投与されるのであれば、本剤の有用性が期待できると判断され、平成17年7月に承認されています。
 なお、国内での治験症例は限られており、国内外の臨床試験において、肝機能障害等の重篤な副作用の発生が認められたことから、製造販売後に全症例を登録した使用成績調査を実施することが「承認条件」とされました。
 また、本剤の添付文書では、本剤の【効能・効果】を再発又は難治性に限るとともに、【効能・効果に関連する使用上の注意】において、本剤使用の必要性を慎重に検討するとともに、他の再寛解導入療法の適応がない患者を対象とすることとしています。また、警告においては、臨床試験以外では単剤化学療法として使用すべきであることを注意喚起しています。
 2ページで、今回の調査の経緯です。米国においてはSouthwest Oncology Group(以下は「SWOG」)により初発AML患者を対象として、標準的な初回寛解導入療法であるダウノルビシンとシタラビン併用療法に本剤を上乗せした場合の有用性、並びに本剤大量シタラビン療法による地固め療法後に本剤を追加投与した場合の有用性を確認するための比較臨床試験、「S0106試験」が、平成16年から平成21年にかけて実施されています。なお、米国ファイザー社はこのS0106試験の成績をPostmarket commitmentである製造販売後における本剤の臨床的有用性を確認するための臨床試験成績として位置づけました。S0106試験成績の詳細は後ほど御説明しますが、このS0106試験の結果では、本剤の有用性は認められないとして、平成22年6月21日にFDAと米ファイザー社は、米国における本剤の自主的な承認取下げを公表しています。米国においては、平成22年10月15日に承認が取り下げられていますが、今後も治験薬としての提供が継続されることとなっています。
 なお、平成22年6月時点で、米国以外で承認を保有する8カ国においても、すでに自主的な承認取下げ、あるいは販売が中止される措置が取られています。
 この調査報告書では、これら諸外国の状況を踏まえ、本剤の本邦における効能・効果、用法・用量の臨床有用性を調査するために、現在までに利用可能なエビデンスを整理しています。今般評価した資料として、S0106試験、全例の国内における製造販売後調査を3ページ以後にお示ししています。
 まず、S0106試験の概要です。S0106試験は18歳から60歳の初発AML患者を対象として、標準的な寛解導入療法に本剤を上乗せした場合、並びに地固め療法後に本剤を追加投与した場合の有効性及び安全性の評価を目的としたランダム化非盲検比較試験です。
 表1に示す用法・用量において、寛解導入療法として、被験者は標準的な寛解導入療法又は標準的な寛解導入療法への本剤の上乗せ投与のいずれかにランダムに割付けられます。寛解導入に達した場合、大量シタラビン療法による地固め療法が実施され、地固め療法後に寛解導入を維持した患者を対象とし、本剤の追加投与又は追加投与なしのいずれかにランダムに割付けられます。
 本調査報告書においては、データカットオフである平成21年7月23日時点で登録された627例の中間解析結果をお示ししています。完全寛解率は本剤上乗せグループで54.6%、寛解導入療法群で69%でした。また、無再発生存期間の標準寛解導入療法群に対するハザード比は1.00であり、有意差が認められませんでした。
 一方、治療との関連が否定できない致死的有害事象の発現率は、本剤上乗せ群で5.8%、寛解導入療法群で0.8%と、本剤上乗せ群で有意に高率でした。地固め療法後の本剤追加投与群は88例、無治療群は90例、計178例が登録されています。無病生存期間の無治療群に対するハザード比は0.66%であり、有意差が認められませんでした。
 一方、本剤追加投与群において、治療との関連が否定できない致死的有害事象を発現しなかったもののGrade4の有害事象は67%で認められました。
 この中間解析結果から、寛解導入療法への本剤上乗せによる完全寛解率の増加並びに無再発生存期間の延長が認められないこと、地固め療法後の本剤追加投与による無病生存期間の延長が認められないこと、寛解導入療法期における治療関連死亡が本剤上乗せ群で有意に増加したことから、本剤の臨床有用性が期待されないとして、平成21年8月にS0106試験は中止されています。本日配布資料2-1においては、S0106試験が中止された平成21年8月時点の637例を示していますが、結果に相違はありません。
 4ページで、国内で承認条件として実施された全例調査の概要を御説明します。また、配布資料4が全例調査の概要です。全例調査の観察期間は6カ月間、本剤投与2年後までは、半年ごとに追跡調査を実施すると計画されました。全例調査は、平成21年12月14日に終了しています。安全性評価対象症例753例における副作用発現率は88.1%、Grade3以上の副作用発現率は78.9%で、このうちの主な副作用は発熱性好中球減少、血小板数減少等の血液障害、敗血症、肺炎等の感染、静脈閉塞性肝疾患、VOD等の肝障害等でした。
 7ページに全例調査における副作用発現状況と承認時までの国内第I相、第II相試験成績を比較した結果をお示ししています。表6のように、Grade3以上の副作用発現率は治験時97.5%、全例調査時に78.9%でした。Grade3以上の血液毒性の発現率は表8にありますが、治験時に95%、全例調査時に64%であり、Grade3以上の肝障害の発現率は治験時で17.5%、全例調査時で14.1%でした。
関連性が否定できない死亡症例は表9ですが、治験時に5.0%、全例調査時は9.8%でした。全例調査の重点調査項目であるVOD、感染症、出血、Infusion reaction、肺障害、腫瘍崩壊症候群については、8ページの表10で、承認時及び全例調査時の副作用発現率をお示ししています。このうちGrade3以上のVODの発現率は、治験時で0%、全例調査時に4.4%でした。米国において、VODの類洞閉塞症候群の発現率の推定及び危険因子の抽出を目的としたProspective Observatinal Studyが実施されています。本日配布資料3がPOSの試験結果です。
 このPOSにおける重症VODの発現率は3.9%でした。重篤度の判定基準がPOSと全例調査で異なることから、単純に比較することはできませんが、POSにおける重症VOD発現率と、全例調査におけるGrade3以上のVODの発現率は表12に示しているとおりです。
 資料1の10ページです。有効性評価対象症例528例における完全寛解率は9.8%、奏効率は18%でした。
 続いて12ページの表16です。承認時までの国内第I相、第II相試験の成績における完全寛解率は25%、奏効率は30%でした。製造販売業者が実施した統計解析結果によると、全例調査の有効性評価対象症例における完全寛解率は、治験時と比較して有意に低かったものの、患者背景のうち初回寛解持続期間「1年未満」の構成比の違いが、完全寛解率に影響した可能性が挙げられています。
 13ページです。これらの試験及び調査の結果を踏まえて、総合機構は、まず1点目として、S0106試験は本邦の効能・効果、用法・用量と異なる使用方法にて実施されたものであり、S0106試験の成績のみで、国内における本剤の有用性に及ぼす影響を評価することは適切でない。2点目として、全例調査の有効性評価対象症例における完全寛解率及び奏効率が、試験時と比較して低値を示したものの、その低値の要因として、試験時と全例調査時との患者背景の構成割合が異なることによる可能性は否定できず、再発回数が2回以上等の、化学療法の有効性が期待されにくい患者群においても、完全寛解となった症例が認められていることから、本剤の有効性に関する判断は承認時と変わるものではない。3点目として、全例調査における本剤との関連性が否定できない副作用による死亡率が、試験時と比較して高値を示したものの、試験時の登録例数は限られており、死亡率の値のみをもって、本剤による死亡リスクが増加する可能性を考察することは困難だと考えられることから、承認以降、新たな安全性の問題は見い出されていないとしています。
 なお、本剤と他の抗悪性腫瘍剤との併用については、S0106試験の結果に加えて、本日配布資料5及び当日配布資料にある、英国で実施された標準的な寛解導入療法に本剤を上乗せしたランダム化比較試験、(AML15試験)の結果においても、本剤の上乗せによる無再発生存期間、全生存期間の改善は示されていなかったことから、承認時と同様に、推奨されないとしています。
 資料1の14ページです。総合機構は、従前の安全対策に加えて、承認時より特定されていたVOD等の副作用の発現には引き続き注意をし、白血病患者のモニタリングと治療に対応できる、十分な設備の整った医療施設において、急性白血病の治療に十分な経験をもつ医師によって、適切な患者への投与がなされること。本剤投与前の患者チェックリスト及び患者に対する本剤の使用に関する同意書を作成、配布し、これらの資材を活用し、適切な投与対象、投与方法による使用を推進するといった、製造販売業者が計画している方策を講じ、適正使用の推進を図ること。製造販売業者がS0106試験の情報に加え、AML15試験成績の概要についても適切に情報提供を行い、「本剤を他の抗悪性腫瘍剤と併用しない」旨を徹底すること。製造販売業者が、本剤の使用患者の患者背景の把握並びに安全性及び有効性に関する情報収集に努めるとともに、必要に応じ、さらなる適正使用のための措置を講じること。こういった安全対策が適切に実施され、また、本剤の使用に当たっては添付文書の記載事項が遵守されるのであれば、他の再寛解導入療法の適応とならない患者においては、本剤の単独投与時の臨床的有用性は承認時と変わるものではないと判断しています。資料1の説明は以上です。
 なお、米国では治験の枠組みの下で、本剤が提供されることも鑑み、製造販売業者より今後の安全対策措置案として、本日配布資料6が提出されています。
 資料6-1です。医療機関への情報提供資材ですが、この資材には米国における本剤の措置概要、S0106試験成績、AML15試験成績、全例調査結果の概要が示されています。資料6-2は、本剤を単剤療法にて使用することなどの確認するための、本剤投与前のチェックリストです。資料6-3は、本剤の適正使用に関する説明を受けたことに対する同意書です。これらの資材案も併せて御確認いただきまして、全例調査及び臨床試験の結果を踏まえた、本邦における本剤の販売継続の必要性について御議論いただきますよう、お願いします。
 なお、本調査会の論点として、SWOGが実施したS0106試験の試験デザインの妥当性、他の併用化学療法に本剤を組み込んだ試験であるS0106試験、AML15試験等の結果が、本邦の適用である本剤単独投与時のリスク・ベネフィットバランスに与える影響、並びに全例調査及びこれらの試験成績の結果を踏まえた本剤の販売継続の可否についてなどが挙げられます。以上です。御審議のほど、お願い申し上げます。
○松本座長 本日は関係学会、関係団体の先生方に参考人として出席していただいています。ただ今事務局から説明いただいたことに関して、皆様方の御意見を伺います。いかがでしょうか。
 この度、外国においてゲムツズマブオゾガマイシンの承認取下げのきっかけとなった第III相試験、S0106試験の試験デザインの妥当性は大変重要かと思うのですが、これに関して藤原先生からコメントをいただけますか。
○藤原参考人 私は血液の専門家ではありませんが、SWOGの試験自体に、デザインに問題があるとは思えないと考えています。
○松本座長 ということになると、この結果はかなり妥当性があると判断してもいいわけですか。
○藤原参考人 適切なデザインのもとで実施された試験自体の結果は、アドオン効果がなかったことを示しており、妥当だと思います。その結果を本邦での単剤使用の可否判断にどう応用するかについては、皆さんが苦慮されているところではないかと思います。
○松本座長 この点に関して、どなたか御意見はありませんか。
○堀田参考人 名古屋医療センターの堀田です。このSWOGのデザインそのものは、きちんと統計的な観点からデザインしているので、これ自体は問題がないのでしょうけれども、併用するゲムツズマブオゾガマイシンの用量が6mgなり5mgなりとなっています。通常は単剤の場合は9mgが承認用量です。コンビネーションで、通常の化学療法と組み合わせるときに、このドーズ設定がどうやって決まったのかは、この資料では読み切れませんでした。ドーズ・ファインディングなりフィジビリティ・スタディーなどどのような結果に基づいてデザインされたかについて、分かる方がいれば御紹介願えればと思います。
○直江参考人 私も、併用するマイロターグの用量は非常にクリティカルなポイントだと考えています。参考資料のいちばん最後にMRCの、現在藤原先生からいただいたJCOのインプレスというデータを見ると、3mgの併用です。全体的にはベネフィットはないのですが、よく読んでみると、染色体で予後良好群には相当の上乗せ効果があるように見えます。
 それから、参考資料7ですが、JALSGで2006年から2年間くらいかけて行った併用試験は、ドーズ・ファインディングのフェーズ1試験で、いちばん最後のconclusionを読んでいただくと分かるのですが、GOにイダルビシン・アラシー(IDR・Ara-C)を加えるもの、ダウノルビシン・アラシー(DNA・Ara-C)を加えるものについて、3mgからドーズを上げていきまして、MTDが5mgであるということで、推奨するのは4mg程度ではないかということが、JALSGの結論です。
 MRCも個人的に聞いたときには、最初のスタディーはもう少しマイロターグの量は多かったとバーネット先生が言ってらっしゃいました。SWOGがどうして6mgになったのかは私も存じませんが、ここが大きな一つの問題点かなと理解しています。参考になればと思います。
○松本座長 ほかに御意見はございませんか。これと関連するかと思うのですが、他の併用化学療法に本剤を組み込んだ臨床試験、SWOGもそうですが、AML15試験、JALSGのAML206試験の結果が、本邦の適用である本剤単独投与時のリスク・ベネフィットバランスに与える影響について、いちばん知りたいところなのですが、この点についてコメントをいただけませんか。血液の分野から金倉先生いかがでしょうか。
○金倉参考人 この併用化学療法はアドオン効果、併用の追加的な効果があるかどうかという試験だと思います。それはあくまでもフレッシュの疾患を対象にしてということで、認可された対象の疾患、再発、難治の症例とは、全く対象が異なるので、承認事項の事象、併用で認めれば、また追加承認になるのでしょうけれども、承認されたときの事象が変わっているということではないです。ですから、本邦での有用性については、あまり影響がないと私は考えていますし、多くの血液の人が考えているのではないかと思います。
○松本座長 本邦のように単独使用の場合に関しては、その影響はあまり受けないということですね。臨床腫瘍学の面から、田村先生、何か御意見いただけませんでしょうか。
○田村参考人 日本臨床腫瘍学会はがん薬物療法の専門家の集まりで、このメッセージは直江先生が中心になって作られたのですが、私、堀田先生、畠先生、谷本先生、そのような臨床腫瘍学会に所属している血液の先生にお集まりいただいて、この見解を出させていただきました。
 基本的には直江先生がおっしゃったように、このスタディーのデザインの中では、ドーズがいちばんクリティカルだったのではないかと思っています。確かに、6mgでやったSWOGのデータは、かなり毒性が出ているように思いますので、そこがいちばん問題ではなかったかと思っています。
 それから、日本の場合は適応のステージが全然違うので、同じレベルでの話はできないと思います。従来と異なるひどい副作用が出てきているのであればまた別ですが、そうではないので、市販後の調査でも一定の範囲内での安全性は担保されると言えますので、このような形で見解を出させていただきました。
○松本座長 ということになりますと、直江先生も堀田先生も、同じような御意見でよろしいわけですか。
○堀田参考人 一方で、ヨーロッパのEMAでは同じデータを使って承認していません。米国の第II相試験を使っての評価だとすると、そこは米国では迅速審査で承認されているけれども、このギャップをどう解釈したらいいのかというのは、もう一つ、この資料を読んでいての疑問点です。
 おそらく米国のSWOG試験がポジティブに出れば、EMAは承認するつもりだったのかなと思うのですが、この辺りもどなたかお分かりになれば教えていただければと思います。
○松本座長 その辺はいちばん知りたいところなわけですが、この辺に関してはいかがでしょうか。
○直江参考人 白血病の薬を認めるときに、ほかの薬では効かない難治・再発を対象にして、一般的には完全寛解率ないしは奏効率が20%、30%ということがあると、例えばAra-Cの大量とか、こういう場合に認められてきました。マイロターグもその線で認められてきました。だから、そのときのエンドポイントというのは、寛解率、奏効率なのです。
 これを見ると、EMA、ヨーロッパの考え方は、要するにサバイバルに寄与するかどうかをエンドポイントにしているので、我々の感覚では、何も効かない患者さんが、例えば血小板が回復し、白血球がよくなるという状況をもって、これは有用な薬だろうと考えるのか、生存まできちんと延ばさないと認めないのかの差かと思っています。
 日本ではフェーズIIのデータを基に、完全寛解率が30%弱だったと思いますが、これをもってこれはいい薬であるということを認めています。かつての日本のスタンスは、どちらかというと寛解率、奏効率で評価しているのかと。その違いだと思います。
○松本座長 市販後調査で完全寛解率が10.9%あるということは、単独で使用する場合の理由づけとしてはあり得るということでしょうか。
○直江参考人 そうですね。資料1の10ページを見ていただくと、例えばM3という病気は非常にマイロターグの効く病気だと言われていますが、市販後のデータでも50%のCRが出ているということで、これは非常によく効く薬だと思います。化学療法で2回も3回も再発した人で、このくらいのデータが出ています。我々の身近に知っている症例でも、どちらかというと本当に予後の不良な人のパーセントよりは、こういうM2、M3の方が、どうもCRレートが高そうだという感触を得ています。このような人がいらっしゃることは確実だと思います。
○松本座長 タイプを選べば、非常に有効な例もあり得るということですね。ほかに御意見はございますか。
○柴田参考人 国立がん研究センターの柴田です。あとでいろいろ言われると困るので、経歴をお話しておきます。私は以前PMDAで一時働いていたことがありますので、そのような立場にいたこともある人間の発言だということで、その辺は差し引いてお聞きいただければと思います。
 直江先生からコメントいただきました件について、もし誤解して世の中に伝わるといけないので、コメントを追加させていただきます。
 このものについて、例えば米国では承認されて、EUではリフューザル、日本では米国に引き続いて同じようなデータで、日本の治験のデータが付け加えられて承認されている状況ですが、日本でのみフェーズIIのデータで承認されているわけではなくて、そのことについては、米国でも同様にフェーズIIのデータで承認されているのであって、日本の基準が緩いから承認されたものではないことは、はっきりさせておくべきかと思います。
 ただし一方で、米国におけるOncology Drug Advisory Committeeの議事録を見直してみましたら、そこでは申請されたインディケーションがそのまま承認されているわけではなくて、申請されたインディケーションは広すぎて、Oncology Drug Advisory Committeeではそれは全部認めるのはよくないのではないかというネガティブな判断がされています。 一方でその中で、高齢者に絞ったところにおいては、フェーズIIのデータにおいて、リスク・ベネフィットバランスから考えて承認に値するのではないかという結論が導かれて、承認されたという経緯があるので、日本のハードルが低くて、日本だけ承認されているわけではないことは明らかにしておくべきだと思います。
 もう1点です。では現状はどうなったのかについて、私は臨床試験などにかかわっている立場からコメントさせていただきます。例えば日本のファイザーのプレスリリースなどを拝見しますと、AML15試験について触れられていない、あるいは米国で承認され、日本で承認された後に、同じようなデータを見て欧州においてはリスク・ベネフィットバランスが良好ではないという判断でリフューザルされていることについては、全く述べられていないのは、リスクに関する情報、ネガティブに関する情報の扱い方として、少し甘いところがあるのではないかと感じました。
 一方、その点については、日本臨床腫瘍学会の見解の中にも、その辺が甘く書かれているのではないかという印象を、最初に見たときに抱きました。一方でAML15試験、欧州のネガティブなデータ、市販後の毒性のデータなども踏まえた上で、現状において、承認された当時とリスク・ベネフィットのバランスが変わっていないという判断がされるのであれば、その辺は臨床の先生の専門の御判断は十分に尊重すべきだと私は感じていますが、大事なことは、ネガティブな情報、都合の悪い情報まで表に出して議論した上で、最終的な結論が下されているものであることを明らかにしておくことも必要かと思いました。2点追加させていただきました。
○田村参考人 ヨーロッパのコメント(EMEA)もリビューしましたし、AML15のデータも参考にして見解を出しています。基本的な臨床試験において、フレッシュなケースでのマイロターグの上乗せ効果はなかったが、日本での用法・用量、インディケーションが異なるところを中心に、基本的な見解として出させていただきました。
○松本座長 この点について、ほかに御意見はございませんか。御意見を伺っていますと、全例調査、臨床試験の結果を踏まえると、ゲムツズマブオゾガマイシンの販売継続の必要性が、ある程度あるという御意見が多いような感じがするのですが、この点に関してはいかがでしょうか。
○堀田参考人 日本の現状で、これまでの市販後全例調査の700~800例ぐらいの分析からいうと、9.8%の完全寛解率があるということで、これは再発・難治の白血病はほかに手立てがないという点からいうと、寛解率だけでものは言えませんが、一定の臨床的な価値はあると言えます。
 それに対してリスクはどうかということですが、VODなどは治験の段階よりは多くあったようですが、全体としてプロファイルが変わるほどのものではないことから言えば、私は日本の白血病の治療の現状において一定の価値があると考えています。
○松本座長 実際に使っている先生がいちばんよくお分かりになると思うのですが、有用性とリスクを考えた上で、金倉先生、いかがなのでしょうか。
○金倉参考人 難治例に対する適応ですので、ほかに何も手立てのない方に、マイロターグを使用すると、寛解、部分的寛解になったりして、ある程度退院できたり、そのような方も多うございます。
 我々は臨床試験のデータを見て、VODが結構高率に起こるリスクの高い薬剤であるという認識でいましたが、専門医が使えば、十分に使用に耐える、それほど大きな問題の起きない薬剤だと認識していまして、一定の患者を対象として、専門医が使えば、十分に有用な薬剤であるという認識でおります。
○松本座長 ということになりますと、万が一継続することになると、その場合の安全対策をどうするかが大きな問題になろうかと思いますが、会社の方から、企業の情報提供の内容が資料に示されていますが、この程度でよろしいでしょうか。
○事務局 資料6-1~6-3でございます。
○松本座長 資料6-1の11ページからですが、実際に使う立場としては、チェックリスト、インフォームド・コンセントの問題をある程度クリアすれば、継続することに問題は少ないと判断していいかどうか。
○直江参考人 チェックリストは、使用する主治医が自己点検のために自主的にやるのか、これをどこかに出すというものなのか、使用法がよく分からないのですが。
○松本座長 事務局、これはどのようなことから出てきているのでしょうか。このようなリストを作るという、ファイザーさんからの提案なのですか。
○安全使用推進室長 これは製造販売業者からの御提案で、基本的には効能・効果ですとか、効能・効果に関連する注意に当てはまる方に、しっかりお使いいただくということで、それを確認するために先生方に御利用いただく補助資料ということです。ですから、これをまた回収するということでは必ずしもございません。先生方が確認するための補助ということです。
○松本座長 この程度のことで、有効性及び安全性が保てるかどうか。いかがでしょうか。
○直江参考人 これがきちんと守られるということで、ドクターが1人でやって、1人で見てということだと、ほとんど効果がないと思いますが、例えばそれが薬剤部、院内のリスクマネージ、倫理委員会、ILD等に、何かの仕組みがあれば、もちろんチーム医療だと思うので、これがワークすると思います。そこは運用の仕方だけだと思います。
○藤原参考人 ファイザー社の資料6-1を読んでいても、添付文書に書いてあるから医者が真面目に守るだろうという第三者的スタンスに終始していて、これまでの過去のいろいろな薬による健康被害は、すべてそのような医者に任せておけば大丈夫だろうという思い込みから生まれているきらいがあるので、懸念としております。
 ネットなどで見てみると、JALSGさんも、マイロターグを使った併用療法の臨床試験をすでに進めておられます。海外では承認を全部取り消されて、アメリカではリサーチINDをFDAに届けてやろうとしているわけですし、ほかの国がどのようになっているかは分かりませんが、例えばコンパショネートユースというのでEUがやっているのであれば、それも国が管理して、使用患者の適正度を第三者的に評価しているわけです。
 日本で各医療機関の倫理審査委員任せにして、投与が本当に大丈夫かどうかというのは、私は高度医療評価会議の審査をやっていますが、心配です。というのも各医療機関での科学的評価、倫理評価は少し甘いときがあって、本来は第三者評価をしっかりしてもらうとして設置されている倫理審査委員会がうまく機能していない場合も散見されます。海外でこれだけみんなやめろと言っている中で、日本だけが販売を継続するのであれば、この程度の対応でいいのかなという懸念は持ちます。ただ、血液学会の先生方がそれで大丈夫だとおっしゃるのであれば仕方ないところなのですが。
○金倉参考人 入口としては、このようなチェックリストがあるというのは一歩進歩だと思います。あとは、それを使われた人たちが、もうすでに市販されて、市販後調査も終わった薬剤ですので、それをどこまで今後使われる症例をフォローアップしていくかの問題だと思うのです。
 今、現状としては、ほとんどこのような事態になっているので、薬剤はあまり使われていないと思います。ですから、薬剤としてはある程度製薬メーカーの責任はあると私は個人的には思うので、今となっては全例調査も難しいと思うのですが、聞取りなどは定期的にやっていただいて、ある程度の症例の蓄積をしていくことは、何らかのスタイルで必要ではないかという印象を持っています。
○松本座長 かなり限定した形で使用することになるわけですね。
○金倉参考人 そうだと思います。
○松本座長 その場合に、どうしても学会の協力が必要ではないかと思うのですが、いかがでしょうか。日本血液学会としてはどうですか。
○直江参考人 使われた症例を学会としてすべて把握して、掌握していくことは、難しいことだと思います。ただ、使われた症例が最も分かるのはメーカーではないかと思うので、ある程度のレジストリーみたいなことは可能だと思います。例えば何か有害事象が起これば、それに対して登録してほしいということは可能だと思いますが、どこまで厳密にできるかをこれから議論させていただかないと、学会で使われた症例をすべて把握して、すべてのことに責任を持てるかと言われると、それは難しいと言わざるを得ないと思います。
○松本座長 JALSGの立場としてはいかがですか。
○直江参考人 併用療法は臨床研究として、ドーズ・ファインディングのために行ったもので、もちろんこれは終了していますし、このような流れを受けて、今後フェーズII、フェーズIIIをやる予定はありません。そのことが一つです。
 それから、JALSGの中でも白血病の専門医がたくさんいるのですが、このような流れを受けて、適正使用をしていかないと、韓国やアメリカを含めて、ほとんどの国でこれが取下げになる状況で、日本だけが発売を続けてくれて、必要な患者さんに必要な薬剤を届けることができるというのは、少し特殊な状況なのだということは、日本の多くの臨床医も分かっていると思うのです。
 ただ、JALSGが今の全例調査に加わるかというのは、本来の目的が臨床研究の推進ということでやっているグループですので、仕組みとして、全部のドクターに使う前に登録しろという仕組みは、現在の段階では無理だと申し上げざるを得ないのかと思います。
 先ほど藤原先生から、それは甘いのではないかという話がありましたが、ドクターが自己責任だけでやるというのは、ほとんど意味がないと思うのですが、施設の中でそれがちゃんとワークする仕組みを作ることのできる施設にお使いいただくことを、医療機関としてやっていくべきではないか。血液のドクターだけで完結する問題ではないと考えます。
○松本座長 日本臨床腫瘍学会としてはいかがでしょうか。
○田村参考人 基本的には薬物療法について、血液のグループもかなり入っていますので、その先生方と相談しながらになりますが、少なくともホームページ等に注意喚起並びに学会の学術集会等で、何らかの注意喚起、アピールはしていくべきではないかと思います。
 それから、直江先生がおっしゃったのは非常に重要なポイントで、主だった血液を専門としている医師が所属している医療機関は、大体チームでやっていると思いますし、化学療法委員会あるいはそれに類似した組織が必ずありますので、そういった組織を利用して、安全、適正使用を促すことを条件に、この薬を使う形をとる、マストにするのは難しいかもしれませんが、そのような形がいちばんプラクティカルかなということが一つです。
 それから、藤原先生は非常に甘いとおっしゃいましたが、血液を専門とする医師が、難治性の白血病を治療して、10%前後のCR率と、それプラスPRを寄せると、20%近い奏効率、並びに安全性についてはセカンドライン、サードライン、フォースラインで使って、VODが少し多そうですが、比較的初期の段階、リストに書かれているような、高齢者で初回再発例といったことも含めて、ある程度チェックをしながら、注意喚起してやれば、安全にやっていかれるのではないかと思っています。
○松本座長 これだけ専門の先生がおられるわけですが、実際に手を出される先生というのは、どのような先生がおられるのでしょうか、これくらい話題になっていながら、さらに使ってみようというのは専門以外の先生が使うでしょうか。
○堀田参考人 血液の領域で、ある程度難治のケースについて、あまり血液をやったことのない人が触るということは、まず考えられないです。ですから、その点については、血液専門医が絡むのは間違いないと思います。
 私が心配するのは、血液専門医だからかえって踏み込んでいろいろなことをしてしまう場面がないわけではなくて、市販後全例調査のうち110例が、マイロターグの添付文書の警告で化学療法と併用するなと書いてあっても、何かの抗腫瘍剤と併用している実態があります。これは臨床試験の枠の中で、きちんとデザインされた形でやっていれば、いいのですが、プラクティスとしてそこに踏み込んでやってしまっている実態があるとしたら、私はかなり危険だと思います。そこの歯止めをどうするかは、学会として考えておく必要があると思います。
○松本座長 そうですね。そういう点は学会として情報提供することによって、ある程度継続が可能ではないかという気がするのですが、いかがでしょうか。チェックリストも幼稚な気もしないでもないのですが、ないよりはいいのではないかと思いますし、製造業者からの情報提供の内容も、ある程度このような提供をしてもらうことでと。全例調査がかなり難しいということなのですが、藤原先生、そういうことである程度条件を絞ることで、継続することに関してはいかがでしょうか。
○藤原参考人 私も臨床腫瘍学会の薬物療法専門医は完璧だと思うので、彼らが使う分には何も問題はないと思うのですが、全世界の国が市場から引き上げている中で日本だけ残るのであったら、世界に対して、これを使った方がよかったのだというような臨床試験成績を見せてあげた方が、日本のレピュテーションが上がるとと思います。例えばEMAのレポートを見ると、フィジシャンチョイスの再発例に対する化学療法に対して、このゲムツズマブオゾガマイシンを使った化学療法のランダム化比較試験などを組んでやってみたら、シングルエージェントとしての効果がもっとはっきりするのではないかとディスカッションに述べられていますので、先ほど堀田先生もおっしゃいましたが、各施設が手探りで併用療法をばらばらに検討するというよりも、JALSGさんなどでそのようなランダム化比較試験は組めないのかなと思います。どこかでみんなが手を取り合って、ランダム化比較試験の結果を出して、シングルエージェントの効果を世に示すことができるのかというのは、血液の専門の先生方の意見を聞いてみたいのです。私は販売を継続することに関しては、専門の先生方が使うことで問題ないと思います。
○松本座長 その辺について、金倉先生からいかがでしょうか。
○金倉参考人 確かに臨床試験のデータを蓄積することを、もう一回きちんとやれば、本当はいちばんいいのかなと思います。そういうことができるかどうかについては、主導的に討議していきたいとは思いますが、ちょっと考えて、専門家の間で討議していければと思います。
○松本座長 そうですね。田村先生と直江先生も、その辺を考えていただければと思いますが、そういうことでよろしいでしょうか。何か御意見はございますか。
○柴田参考人 いまのお話は、専門の先生方がどのように慎重に使っていただくか、適切に使っていただくかというお話だったと思いますが、もう一つ、逆の目で見たときに気になることが一つありまして、例えば厚生労働省が承認をしているのだから、この薬を使わなかった場合に裁判で負けてしまうという懸念を先生方が持たれるとか、あるいはこのようなものがあるのに使わないお医者さんはきちんとした勉強をしていないお医者さんだと誤解をされてしまうようなことがあってはならないと思いますので、こういうものは、例えばチェックリストはありますが、ぎりぎりの患者さんに対してチェック、イエス、ノーの所に当然ボーダーラインの患者さんもいると思いますが、そういうものに関して患者さんとお医者さんの、それぞれの専門家の判断の中で、判断が下されるものである。つまり、これは承認されているけれども、専門家の先生としては使わないこともあるし、ちょっとぎりぎりだけれど使った方がいいというものもあるかもしれない、というものがきちんと分かるようにしておかないと、これは承認されているのだから使わないのはけしからんとかということを、かえって言われるようなことがあってはならないと思いますので。そこのところはやはり臨床試験の結果、今分かっているものは確かにエビデンスとしてシングルアームの結果から使ってよいだろう、単剤としての根拠はあるだろうとは分かるわけですが、その結果はあくまでも確率的なものであって、100人の患者さんに使われたときに、100人の患者さんに思いどおりの結果が出るわけではないので、あと、患者さんの側も、こういうものはリスク・ベネフィットの評価として、やはり結構微妙なものであって、その微妙なところで先生方も悩まれながら判断されて使っているものであるというのを、ちゃんと伝える必要があると思います。
 同意書のほうには例えば現状で、どうして・どのように使うか、また臨床現場で先生が考えられるところだと思いますが、本剤の米国での措置の内容と、日本の状況というのをお伝えするだけでは、やはりまずいのではないかと思います。これはリスク・ベネフィット、例えば欧州ではネガティブなリスク・ベネフィットバランスの評価がされている、ただし、それでも先生方が御相談されて、やはり使ってみようと判断されたというところの、このエビデンスがどういうものであるのかというのがある程度伝わるような、日本だけ感情的に流されて使っているわけではなくて、こういう理由で大丈夫だと思って使うのだというのが、ただし外国ではそれを違う判断をしている人たちもいるのだということが、分かるような形の説明をしていただく必要があるのではないかと思います。ここは単なるコメントですので、最終的には御検討いただければと思います。
○松本座長 今の段階では、それに関していかがでしょうか。先生は答えられることがありますか。今は継続が問題になる時期で、もし万が一それを使わないことによって、患者さんが不利益を被ることがあり得るというのに関して。
○柴田参考人 そうではないです。
○松本座長 ちょっと違いますか。
○柴田参考人 つまり、これを使うとか使わないというのは、全ての患者さんに画一的に使うものでもないし、画一的に禁止するものでもなくて、それはやはり専門家の先生方がプロフェッショナルとしての判断をされたもので使うものであるので、承認されているけれども、やはり専門家の先生が使われるものであると。普通に専門家の先生以外の方が漫然と使われるものではないので、そういう意味でも安全対策というのは、ちゃんと考えた上で使われるものだということが、伝わることが必要かなと思います。
○田村参考人 基本的にはインフォームドコンセントをきちんととりなさいということですよね。結局、最初に成功して、そして再発した場合、あるいは初発例で治療したのだけれど寛解に入らないという症例の、次のセカンドラインというのは、実は標準治療がないのです。その中でワンノブゼムとしてこれがあると説明をして、その中で特に2回目、3回目くらいになると、AP、急性の前骨髄性白血病などはかなり厳しいので、そういう場合にこのデータを見るとかなりいいという、そういう症例を選ぶとか、そういった形で患者さんに説明しながら、この薬を選んでいくのではないかなと思っています。
○松本座長 その辺まで絞られていけば、もっといいのではないかと思うのですが、他に御意見はございませんか。
○直江参考人 この薬によく似たという意味では、シタラビン大量療法がよく似ているケースだと思うのです。シタラビン大量療法も普通だとパースクウェア、例えば100mgというのが通常量ですが、それを2g、3gと欧米では使って、ある患者さんにベネフィットがあるということで、日本もそれを追認して、今は承認になったのですが、どんな患者さんでもそれを使うといいのかというと、実はほとんどメリットがないという。ただ、ある患者さんの特定のサブセットを見ますと、非常にこれはベネフィットがあるということが、徐々に臨床研究の中で分かってくるので、薬があるから使ってみようかという考え方で、たぶん白血病を治療されている人はほとんどいないと思うのですが、だからこの場合のリスク・ベネフィットというと、どういう患者さんに寛解例が多く出るのか、それから寛解例が少なくて、毒性だけが出るのかということが、おそらく臨床の中でかなりデータが蓄積しておりますので、このことをやはり使用者やメーカーの人がもう一度リマインドして、限られた患者さんに大事に使っていくということが、今いちばん必要なのだろうということだと思うのです。
 だから、先ほどからそのことをどうやって使用者の方に適正にリマインドさせるか、そこら辺の方策が、少しお話があったとおりだと思うのです。
○松本座長 直江先生は先ほどからそのようにおっしゃっていましたが、市販後調査はかなりの量が溜まっているわけですので、ある程度、もう少し具体的に何かのことが言えればと思ったのですが、今の段階では先ほど言われた程度に、ある程度当たりをつけるということくらいはできるのではないかと思うのですが。
○直江参考人 そうですね。だから、あとは藤原先生が言われた、もう少し前向きに取り組めないのかということについては、現在これは再発・難治という縛りがありまして、これはAra-Cと、先ほどのAra-Cの大量とよく言っているのですが、例えばMDアンダーソンなどでは、ハイリスクのAPLの人にCRのためとして使っていくという、これも臨床研究として彼らがやっているのですが、むしろそういうことが日本でも必要なのかなというように、これしかないとか、これでもやってみるという治療よりは、やはりこういう患者さんが非常によく効くということが段々分かってきますので、そういう人に絞った使い方というのが組めればと思います。
 ただ、世の中の流れとして、これに非常に逆風が吹いておりますので、おそらくなかなかこれを積極的に組み入れるというところはいかないのかなと、私は個人的に思っていますが。
○松本座長 この辺は、事務局はそれをバックアップしていくということは、なかなかいかないのでしょうね。どうなのですか。各学会の方が、しっかりとした計画のもとにいろいろと練っていただきたいのは山々なのですが、もう少しオーソライズされるような形でできればと思うのですが、その辺はいかがなのでしょうか。
○安全使用推進室長 これからの対応として、いろいろな意味で学会と、また一緒に協議をしていきたいと思っています。それは今、藤原先生から御指摘いただいたような、前向きな何かができるのかとか、また、適正使用のためにきちんと先生方にも何かレジストリーを作っていただくようなことができるのかとか、または今、御指摘をいただいたように、いろいろな情報として蓄積があって、大体効く患者というものが分かっているということであれば、何らかの使用ガイドラインのようなものを学会でも作っていただくような方向にいくのかとか、そういう大きく3つの選択肢、3つの方向性というものがあろうかと思いますが、そのどれも考えてみると、難しい部分ではあるかと思いますが、少しメーカーにも協力をいただきながら、どれか一つでも前に進めるような対応というものも、少し学会に御協力をいただきながら、検討させていただければと思っています。
○松本座長 継続が決まった段階においては、その点も考慮していただきたいと思いますので、この辺で他に御意見はございませんでしょうか。ないようでしたら議決を取りたいと思いますが、よろしいですか。
○安全使用推進室長 1点、事務局から補足です。先ほどチェックリストのところで、先生方は自主的にと申し上げた部分ですが、ファイザーの方が提出してきた資料6-1と、審査報告書の部分が、やや記載が異なっている部分があります。調査報告書の方の資料1の13ページの上の方の(3)の所ですが、製造販売業者としてファイザー社は、これらの資材の活用状況ですとか、施設ごとの患者の選択方法、同意取得状況を1年に1回程度調査をして、安全対策の効果を検討する予定であるというところをかなり明確に、こちらの調査報告書の方ではメーカーが宣言しておられるのですが、資料6-1の方の「御使用に関するお願い」の方では、遵守状況のリマインドを行うとか、注意喚起を実施していきますということのみが書かれています。どちらかというとここは調査報告書の方に書いてあるように、しっかり実施状況を1年に1回、もしくはそれ以上という御意見があれば少しまた御意見をお伺いしたいと思いますが、原則1年に1回程度調査をしていただくということで、きちんとやっていただくという、そういう姿勢でよろしいかなとは思いますが、いかがでしょうか。
○松本座長 いかがでしょうか。この辺に関しては、そのほうがいいとは思うのですが、御異論はありませんか。他によろしければ承認可として報告させていただきます。
 他に御意見はございませんか。ないようでしたら、そろそろ確認を取りたいと思うのですが、よろしいですか。議決を取りたいと思います。五十嵐先生は御参加できません。賛加できるのは3人しかおりませんが、一応、土屋先生、大野先生、よろしくお願いします。
 ゲムツズマブオゾガマイシンの市販後調査から見て、他の再寛解導入療法の適用とならないものにおいては、本剤の単独投与時の臨床的有用性は承認時と変わらないもの、先ほども御意見があったのですが、という考えでよろしいでしょうか。他によろしければ承認可として報告させていただきます。
 それから今般、米国の措置は本剤の単独投与時の臨床有用性に影響を与えるものではない。先ほどこれも同じように御意見をいただきましたが、このようにしてよろしいですか。他によろしければ承認可として報告させていただきます。
 ありがとうございます。承認時の効能・効果及び用法・用量を遵守する等の、適正使用を確保するための安全対策措置を講じることによって、先ほどいろいろと述べていただきましたが、本邦においても製造販売を継続するということでよろしいでしょうか。他によろしければ承認可として報告させていただきます。
 特に御異論がないようですので、ゲムツズマブオゾガマイシンの製造販売は継続することが妥当であるとします。ありがとうございました。
 同時にファイザー株式会社に対しては、適切な安全対策措置を講じていただくとともに、日本臨床腫瘍学会、日本血液学会、JALSGに対しても、本剤の適正使用及び使用実態の把握のための取組について、その実施を検討していただくことをお願いしていただきたいと思います。全体的にはこういうことでよろしいですね。他によろしければ承認可として報告させていただきます。
 それでは事務局から、今後の予定についてお願いします。
○事務局 今回の審議を踏まえて、今松本先生の方からもおまとめいただきましたが、まずファイザー株式会社に対しては、速やかな情報提供資材の配布、それからチェックリスト、同意書の使用徹底のための取組について、指示をします。
 また、関係学会とも先ほどございましたような取組について、今後、御相談させていただくようにします。
○松本座長 それでは続きまして、レブラミド適正管理手順の改正について、事務局より説明をお願いします。
○事務局 それでは資料7を御覧ください。変更前と変更後を並べてあるものですが、今般セルジーン株式会社よりレブラミド適正管理手順、RevMateの改訂案が提出されましたので、御報告させていただきます。
 先日、9月15日に開催された安全対策調査会におきましては、サリドマイド安全管理手順、TERMSの定期確認表において、患者の精神的な負担を軽減するという観点から、「手順を遵守しない場合の治療の中止」という文言を削除、「授乳の禁止」の項目を削除、「精子の提供」の項目を削除、「性交渉や避妊方法に関する表現を変更」という決定がなされたところです。
 このRevMateの改訂案については、9月15日開催の安全対策調査会において議論された趣旨に基づきまして、遵守状況確認の記載を整備するとともに、同意説明文書や処方確認表でも同様に記載を整備したものです。
 具体的に申し上げますと、資料7の16ページで「処方が中止される可能性がある」という記載を削除。41ページの様式17において、同じく「処方が中止される可能性がある」という記載を削除。42ページの様式18についても、同じく「処方が中止される可能性がある」との記載を削除。同じく43ページの様式19でも、「処方が中止される可能性がある」との記載を削除。44ページの様式20で、精子の提供に関する項目を削除。46ページの様式22で、授乳の禁止に関する項目を削除。同じく47ページの様式23でも、授乳の禁止に関する項目を削除。53ページの様式28で、「処方が中止される可能性がある」との記載を削除。精子の提供に関する項目を削除。性交渉や避妊方法に関する表現を変更。54ページの様式28で、授乳に関する項目を削除。性交渉や避妊方法に関する表現を変更という改訂がなされています。
 その他、医療現場の実態に合わせて、専門医の確認方法の変更や、患者事前登録の実施などの改訂がなされています。具体的に申し上げますと、資料7の8ページにおいて、専門医の確認方法を変更。10ページにおいて、患者の事前登録も可能にしたという記載の追加。同じく11ページにおいても、患者の事前登録を可能にしたという記載の追加。14ページにおいて、入院時におけるキットの使用を必須にしないことの追加。14ページにおいて、ハンディ端末の不具合時の対応を追加などとなっており、これらの改訂に合わせた様式の記載を整備するという改訂となっています。また、資料8においては先ほど申し上げた改訂箇所のみ抽出して、新旧対照表の一覧にまとめたものです。
 なお、このRevMate改訂案については、事前に前回9月15日開催の安全対策調査会に御出席の委員、参考人に送付しまして、改訂内容について御了解いただいていることも、併せて御報告させていただきます。以上です。
○松本座長 ありがとうございました。ただいまの事務局の説明に対して、御質問、御意見はございますか。
 それでは、その他の議題ですが、事務局から何かございますか。
○事務局 それでは続きまして資料9を御覧ください。ゲフィチニブ服用後の急性肺障害、間質性肺炎等に係る副作用報告の件数等については、これまでも安全対策部会や安全対策調査会において、機会をとらえて状況を報告させていただいているところです。
 今回は本年9月末までの状況について、アストラゼネカ株式会社よりデータが提出されましたので、御報告します。まず1ページと2ページが、本年9月末までのゲフィチニブ服用後の急性肺障害・間質性肺炎等に係る副作用報告の報告例数及び死亡例数の推移を月ごとに示したものです。報告例数は総数2,179、そのうち死亡例数は819となっています。
 また、3ページ目にゲフィチニブに係る新規処方患者数及び継続投与患者数等について、四半期ごとに整理された表を付けています。継続投与では大体7,000人程度、新規投与では大体2,000人程度となっています。以上です。
○松本座長 ありがとうございました。今の報告でよろしいでしょうか。それでは最後に事務局から何かございますか。
○事務局 特にございません。先生方には本会議において、貴重な御意見を給わりまして、本当にありがとうございました。
○松本座長 それでは、本日の会議をこれで終了とします。長い時間、活発な御議論をありがとうございました。


(了)

照会先: 医薬食品局安全対策課
電話番号: 03-5253-1111

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