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2010年10月20日 第11回労働政策審議会勤労者生活分科会議事録

労働基準局勤労者生活課

○日時

平成22年10月20日(水)


○場所

中央合同庁舎第5号館 専用第12会議室


○議題

(1)勤労者財産形成促進法施行規則の一部を改正する省令案要綱について(諮問)
(2)財形制度に係る平成21年度業務実績等について(報告)
(3)その他

○議事

 出  席:(委員)
       公益代表
        宮本分科会長、権丈委員、高木委員、村井委員、山川委員
       労働者代表
        秋山委員、勝尾委員、高橋委員、津田委員、北条委員
       使用者代表
        上原委員、遠藤委員、増田委員
      (事務局)
        渡延大臣官房審議官(労働条件政策担当)、三浦勤労者生活課長、
        瀧原勤労者生活課調査官、廣瀬勤労者生活課長補佐




○分科会長
 それでは、定刻になりましたので、ただ今から第11回の労働政策審議会勤労者生活分科会を始めます。
 本日のご欠席ですが、勝委員、西村委員、那珂委員、西野委員、伊藤委員、田沼委員、塩野委員がご欠席でございます。
 本日の議題に入る前に、委員の異動、それから厚生労働省の内部組織改正がありましたので、事務局のほうからご説明いただきたいと思います。よろしくお願いいたします。
○勤労者生活課長
 8月5日付けで勤労者生活課長を拝命いたしました三浦でございます。よろしくお願いいたします。
 早速でございますが、前回の分科会以降、新しく委員に就任された皆様をご紹介させていただきます。なお、お手元に委員名簿をお配りしておりますので、ご参照いただければと思います。
 まず、公益代表委員といたしまして、全国銀行協会理事の??木伸委員でございます。それから、労働者代表といたしまして、全国生命保険労働組合連合会中央書記長の津田栄治委員でございます。それから、使用者代表委員といたしまして、三菱電機株式会社人事部労政福祉グループマネージャーの増田邦昭委員でございます。
 次に、厚生労働省の内部組織の改編と人事異動についてご紹介をさせていただきます。
 資料として参考1でお配りしております資料でございますが、厚生労働省組織令の一部を改正する政令の概要をご覧いただきたいと思います。8月5日付けで厚生労働省の内部局の一部改正がございまして、職業安定局に非正規対策を扱います派遣・有期労働対策部が新設され、労働基準局に従来ございました勤労者生活部が廃止されたということでございます。また、これまで財形制度を所掌しておりました勤労者生活部企画課が廃止されまして、財形制度につきましては勤労者生活課で所掌するということになりました。勤労者生活課は、財形制度に加えまして中小企業退職金共済制度、労働金庫などを扱うこととなります。
 続きまして、新しい事務局のご紹介をさせていただきます。
 勤労者生活部の廃止ということになりまして、勤労者生活課は労働基準局に直接置かれる課となりましたので、本日の分科会におきましては労働基準局長の金子が出席を予定しておりましたが、急な所用が入りましたので欠席させていただいております。所用が終了次第、可能な限り出席する予定でございます。
 それでは、財形制度を担当いたします労働条件政策担当審議官の渡延でございます。勤労者生活課調査官の瀧原でございます。勤労者生活課課長補佐の廣瀬でございます。
 それでは、ここで審議官の渡延よりご挨拶を申し上げます。
○大臣官房審議官(労働条件政策担当)
 おはようございます。審議官の渡延でございます。
 本日は、大変お忙しい中、委員の皆様方にはご参集を賜りまして、誠にありがとうございます。
 ただ今、課長から説明いたしましたように、ただいま細川厚生労働大臣、それから政務三役主催の会議がございまして、急遽、局長が呼ばれております。終了次第、こちらへ急ぎ駆けつける予定でございます。一言おわびを申し上げる次第でございます。
 先ほど、機構図に即してご説明を申し上げたところでございますが、厚生労働省の組織編成について、8月5日付けで非正規対策に光を当てる切り口からの機構の改革が行われました。結果的に、従来、勤労者生活部企画課と勤労者生活課で行っておりました財形制度、中退制度、労金制度等々の業務につきましては、新しく局長のもとに直接置かれました勤労者生活課において、労働条件政策を所管する各課との連携のもとに強力に推進するという思想に基づく再編でございます。これに伴いまして、こちらの事務局体制にも変動が生じたところでございます。役人の側の都合でございまして、委員の皆様方にご迷惑をかけることがないように努めてまいりたいと考えているところでございます。
 また、本日議題の中で改めてご説明申し上げますが、今臨時国会、ただ今開催中の臨時国会において、独立行政法人雇用・能力開発機構法を廃止する法律案が12日に閣議決定を見まして、衆議院に提出されたところでございます。この機構改革の関係、財形制度の移管でございますが、既に当分科会でも一度ご報告申し上げているところでございます。財形制度は、中小企業退職金共済制度を扱っております勤労者退職金共済機構に移管する予定でございます。1つの独法で財形と中退と両制度を扱うという形に変わる予定でございます。今後は、私ども行政本体も独立行政法人も、財形制度と中退制度とが連携をとって進めていく形になろうかと考えております。両制度を中核といたします勤労者福祉の諸制度がより一層働く方々の福祉の向上に役立つものとなるよう、適切な財形制度運営に努めてまいりたいと考えております。運営に当たりまして、関係の有識の先生の皆様方のより高いところからのご指導、ご鞭撻を賜りますようにお願いを申し上げまして、ご挨拶といたします。
 よろしくお願い申し上げます。
○分科会長
 ありがとうございました。
 それでは、議題1の前に、先ほどご説明がありました組織改編に伴いまして本分科会の運営規程の改正が必要となりますので、事務局よりご説明があります。
 事務局、お願いいたします。
○勤労者生活課長
 先ほど、組織改編の資料を見ていただきましたが、参考4の労働政策審議会勤労者生活分科会の運営規程をご覧いただきたいと思います。そこの10条は庶務関係の規定でございます。中小企業退職金共済部会というのは本分科会の部会でございますけれども、そことあと基本問題懇談会の庶務に関する規程がございますので、先ほど説明申し上げました組織改編に伴いまして、この庶務はどちらも勤労者生活課が行うこととなりますので、その旨を規定する内容に改正させていただきたいと思っております。見え消しの形で書かせていただいておりますけれども、よろしくお願いいたします。
○分科会長
 ただ今のご説明についてご意見、ご質問ございますでしょうか。
 よろしいですか。
 ないようですので、勤労者生活分科会の運営規程につきましては、ただ今のご説明のとおりの改正で決定させていただきます。
 それでは、議題に入りたいと思います。
 本日の議題はお手元の議事次第にありますとおりですが、まず議題1、勤労者財産形成促進法施行規則の一部を改正する省令案についてです。
 厚生労働大臣から労働政策審議会宛てに諮問がなされておりますので、事務局からご説明をいただきたいと思います。
○勤労者生活課長
 それでは、ご説明申し上げます。
 施行規則の一部を改正する省令案要綱を、諮問させていただいております。
 資料1を1枚めくっていただきまして2ページですが、大臣から労働政策審議会の会長宛てに諮問させていただいております。
 続いて資料の3ページに別紙がございます。これをわかりやすくしたものが参考資料の2ページにございますので、そちらをご覧になりながらお話を聞いていただければと思います。
 今回の改正につきましては、福利厚生会社の登録基準を見直すことを目的といたしております。財形の持家融資制度といいますのは、これは直接融資という形ではなくて、今は機構が事業主を通じて勤労者に対して貸付を行います転貸融資制度というのを基本としているわけでございます。長期の債務負担や事務負担といった事業主の負担を考慮いたしまして、事業主の社内融資制度の代替措置として、福利厚生会社が事業主に代わって財形の持家融資を行うことができるということとしているわけでございます。これによりまして、事業主は福利厚生会社に出資することで、自社の従業員に対する財形の持家融資制度の事務を代替してもらうということができるわけでございます。
 福利厚生会社につきましては、厚生労働大臣の指定が必要でございましたが、平成21年3月の勤労者財産形成促進法施行規則の改正によりまして、一定の基準に適合するということであれば登録するという形に移行されまして、手続の簡素化・透明化が図られたところでございます。しかし、その後、新たに登録申請をした会社がなく、厚生労働大臣の登録を受けております福利厚生会社は、現在のところ財形住宅金融株式会社の1社のみという状況でございました。このため、新規参入をさらに促進する観点から、登録基準の見直しを行うことといたしました。
 具体的には、福利厚生会社の登録基準のうち、参考2に書いてあります、次の2つの要件について見直しを行うこととさせていただきたいと思っております。まず、1つ目といたしまして、「主として住宅資金の貸付の業務を行う法人であること」の「主として」を削るということによりまして、住宅資金の貸付が主業務でない法人も参入が可能となるようにしたいと思っております。それから、2つ目でございますが、これは申請日の属する会計年度に住宅資金の貸付業務を開始いたしました法人につきましては、住宅資金の貸付の対象者に関する要件を、申請日の属する会計年度の翌会計年度におきまして、当該法人に出資します事業主等の雇用する勤労者に対する住宅資金の貸付額が、当該会計年度におきます住宅資金の全貸付額の概ね100分の50以上であることが確実であると見込まれることといたしまして、過去に住宅資金の貸付実績がない法人も参入可能とする改正を行うということといたしております。また、あわせましてその他の所要の整備を行うということとしております。
 今後の予定といたしましては、答申をいただきました後、速やかに省令の改正作業を行いまして、公布、施行したいと考えております。
 なお、行政手続法に基づきまして、平成22年8月27日から平成22年9月26日までパブリックコメントを実施いたしましてご意見を募集いたしましたが、寄せられたご意見はございませんでした。
 説明は以上でございます。
○分科会長
 ありがとうございました。
 ただ今の説明についてご意見、ご質問ございますでしょうか。
 よろしゅうございますか。
 それでは、結論としては、厚生労働大臣からの諮問を適当と認め、労働政策審議会会長宛て報告をいたしたいと思いますが、よろしゅうございますか。
 ありがとうございました。
 それでは、諮問を適当と認めるということで、労働政策審議会会長宛て報告をすることにしたいと思います。
 事務局で報告案を用意していただき、読み上げていただきたいと思います。
○勤労者生活課長補佐
 それでは、読み上げさせていただきます。
 「勤労者財産形成促進法施行規則の一部を改正する省令案要綱」について。
 平成22年10月20日付け厚生労働省発基1020第1号をもって労働政策審議会に諮問のあった標記については、本分科会は、下記のとおり報告する。
 記。
 「勤労者財産形成促進法施行規則の一部を改正する省令案要綱」について、厚生労働省案は、妥当と認める。
○分科会長
 ただいま朗読していただきました文案によりまして、労働政策審議会会長宛て報告することにしたいと思いますが、よろしゅうございますでしょうか。
 異議なしと認めます。ありがとうございました。
 なお、労働政策審議会令第6条第9項によりまして、分科会の議決をもって労働政策審議会の議決とするということが定められておりますので、今ご承認いただきました報告によりまして、労働政策審議会から厚生労働大臣宛て答申をすることにしたいと思います。
 それでは、次の議題に入りたいと思います。議題の2と3はいずれも報告案件ですので、議題の2、財形制度平成21年度業務実績についてと議題3のその他をあわせて説明していただきたいと思います。
 事務局、よろしくお願いいたします。
○勤労者生活課長
 議題の2と3のご報告をさせていただきます。
 まず、資料の6ページ、財形制度の平成21年度業務実績から御説明させていただきます。
 まず最初に、財形貯蓄でございますが、これはいわばサラリーマンが会社を通じて給与天引きでこつこつと積み立てていく貯金でございますが、使途を限定しない一般財形貯蓄、それから60歳以降の年金払いを目的といたします財形年金貯蓄、それから住宅の取得、増改築等を目的といたします財形住宅貯蓄の3つのタイプがあります。平成21年度の数字で見ますと、一般財形の契約件数が652万4,000件、貯蓄残高10兆3,812億円、年金貯蓄が契約件数212万9,000件、貯蓄残高3兆7,811億円、住宅貯蓄が契約件数105万5,000件、貯蓄残高が2兆5,669億円となっており、総契約件数が971万件、総貯蓄残高が16兆7,292億円となっております。
 グラフをご覧いただくとお分かりのとおりでございますけれども、減少傾向であるということでございます。これにつきましては様々な要因があるかとは思いますけれども、1つは、収入の減少により勤労者の貯蓄残高が減少しているということとか、あるいは金融商品の多様化で相対的に財形貯蓄そのものの魅力が薄れつつあるのかなということで、複合的な要因で財形貯蓄の残高が下がっているものと考えております。
 それから、次の7ページ、財形給付金と財形基金制度の実績でございます。こちらにつきましては、財形貯蓄を行います勤労者を事業主が支援する制度でございまして、給付金の形で行うものと基金の形で行うものがございます。具体的には、事業主が財形貯蓄を行う勤労者のために、毎年一定の金額を拠出しまして、これは限度額がございますが、年間に例えば10万円とか、そういった限度額以内の一定の金額を拠出いたしまして、7年ごとに満期給付金として勤労者の財形貯蓄口座に繰り入れるという仕組みとなっております。給付金のほうは実施していただいている企業数が1,595社、総資産高が442億2,000万円となっております。それから、下のグラフ、基金のほうは基金数が42基金、総資産高で6億1,000万円という状況となっております。
 それから、8ページが財形の持家融資の実績でございます。こちらは、勤労者が住宅を取得するために必要な資金を融資する制度でございまして、融資限度額が財形貯蓄残高の10倍まで、最高は4,000万円までという限度がございます。最長35年間の返済期間を設定できることとなっております。平成21年度で貸付件数が2,206件、貸付決定額が463億円、融資残高が1兆7,715億円となっております。これにつきましては、長引く不況とかあるいは住宅ローン市場全体の規模が縮小傾向にあることや、昨今の低金利の下での民間金融機関の優遇金利の設定等もございまして、実績が減少しているところでございます。
 それから、最後の9ページのところが財形教育融資の実績でございます。こちらは、勤労者本人またはその親族が教育を受けるために必要な資金について融資する制度で、融資限度額が財形貯蓄残高の5倍まで、最高450万円、最長10年間の返済期間を設定できるものでございます。なお、この教育融資につきましては、平成20年12月の閣議決定「雇用・能力開発機構の廃止について」によりまして廃止が決定しておりまして、その廃止を含んだ独立行政法人雇用・能力開発機構法を廃止する法律案が今の臨時国会に提出されているところでございます。平成21年度で32件、貸付決定額は2,933万円という状況になっております。
 以上、簡単ではございますが、平成21年度の実績についてご説明をさせていただきました。
 それから、その他といたしまして、参考資料の3ページに独立行政法人の雇用・能力開発機構法を廃止する法律案の概要がございます。こちらは今臨時国会に提出しております法律案の概要でございますが、目的といたしまして、独立行政法人に関わります改革を推進するために、先ほど申し上げました閣議決定を踏まえまして、独立行政法人雇用・能力開発機構を廃止し、独立行政法人高齢・障害者雇用支援機構に能力開発業務を移管するなどの改正を行うということでございますが、財形業務の関係でいきますと、?Uの法案の内容の(3)のところでございます。勤労者財産形成促進法及び中小企業退職金共済法の一部改正等ございまして、先ほどの独立行政法人雇用・能力開発機構の財形関係業務のうち、財形教育融資を廃止いたしまして、財形持家融資業務等につきましては、独立行政法人勤労者退職金共済機構に移管するというところと、(4)その他所要の規定の整備の?Aのところでございますが、独立行政法人雇用・能力開発機構の職員のうち、希望、意欲及び能力のある者は独立行政法人高齢・障害・求職者雇用支援機構及び独立行政法人勤労者退職金共済機構の職員として採用するということでございまして、施行期日が平成23年4月1日となっているところでございます。
 以上でございます。よろしくお願いいたします。
○分科会長
 ありがとうございました。
 それでは、ただ今のご説明につきましてご意見、ご質問がありましたら、どうぞお出しいただきたいと思います。
 はいどうぞ、勝尾委員。
○勝尾委員
 感想めいたことをちょっと申し上げるんですけれども、財形の残高を見ていますと、住宅が減ってくるというのは何となく分かるかなという感じがしていますけれども、人口の問題もありますし、いろんな形で減っているのかなと。でも、もう少し年金はという感じがして、年金も相当ある意味減っているんじゃないかなという気がして、そういう意味では年金にまで回らないんじゃないかと、勤労者の今のこの先行き不安等を考えると。ということで、何とか一般財形は減り方としてはそんなに減っていないような気がしたものですから、そういう意味で将来不安や何かがこういうことに影響しているのかなと。それはちょっと感想めいた感じで思ったことであります。
 それで、ちょっと意見といいますかお願いといいますか、いわゆる雇用・能力開発機構が廃止されまして、こちらの住宅財形等の業務が退職金共済機構に移管されるわけでありますけれども、もともとこの財形の話は、中小企業等への浸透度合いが割と少ないといいますか、なかなか中小企業では利用されていない実態もあったかと思います。そういう意味で、せっかくこの勤労者退職金共済機構というのは中小企業向けに退職金を整備しようということでやっているところでありますので、そういうことからも含めて、この財形についても中小への普及ということを一層やっていただけるような、そんなことで努力していただけるとありがたいかなと思っております。
○分科会長
 ただ今ご意見が出ておりますが、いかがでございますか、事務局。
○勤労者生活課長
 まず、年金の実績なんですけれども、確かにニーズとしてはもう少し出てきてもいいかなというところなんでございますが、その辺りの減り具合といいますか減少の度合いとかを、今後もう少し分析をさせていただいて、重要性等々にかんがみ、検討をさせていただきたいというのが1点。
 それから、中小企業の関係でございますけれども、財形制度の中小企業の普及というのは従来から課題になっているという認識はしているところでございまして、今、これから勤労者退職金共済機構への移管ということでございますので、退職金機構そのものが中小企業の事業主を対象とした業務をやってございますので、少なくとも今考えておりますのは、これから円滑な移管をやっていかなきゃいけないというのは当然でございますけれども、普及促進活動などは、既に退職金共済機構が中小企業とのルートを持ってございますので、そういったものを活用しながら対応は可能かなと思っておりますので、そういう中小企業向けというところにも注意して対応していきたいと思っております。
○分科会長
 勝尾委員、いかがですか。よろしいですか。
 そのほかいかがでございましょうか。
 はいどうぞ、秋山委員。
○秋山委員
 今、財形の関係の減少のご説明等はいただきました。私も非常に心配をしているところなんですが、とりわけ近年の状況で顕著なのは、賃金が減少しているということで、特に住宅ローン等をお持ちの方の場合には、それを返済できないというような事情があって、預貯金を取り崩すということが多く出てきています。私もいろいろ支店等の現場からお聞きしますと、住宅ローンをいろいろ金利の減免であるとかあるいは返済期間を猶予するとか、そういう制度はつくるんですけれども、むしろ勤労者の方はそういう制度を利用するよりも、今の貯蓄を取り崩して充当するというようなことで対応されている方が非常に多いということであります。
 そういう中で考えてみますと、これまで財形の件数、残高が減少してきましたけれども、近年、若干そういう内容が変わってきているのではないのかなと。要するに、これまでですと、住宅だとかそういうような何か将来の展望のある目的のために使うと、取り崩すということも多かったんでしょうが、生活が厳しい中でそれを逆に取り崩していくということが増えてきているのではないかというふうに思っております。そういう意味で、財形制度については、何か緊急の際、生活の安定のために備えるということでの意味は十分果たしてきているとは思います。
 今後、そういうような状況を見ますと、大きく2つ我々としては言えるのではないかと思います。それは、若いうちからきちっと貯蓄をしていくという、そういう教育というんでしょうか、そういうものを改めてやっていくということが、これまでもやってきましたけれども、そういう中で、緊急の場合でも生活を維持できると、そのためのこういう制度であるということも改めて強調する必要があるのではないかと。
 それからもう一点は、これは残念ながら教育の関係の融資制度が廃止になるということで、これはこれで利用も少ないということなんですが、逆に、大学の先生もいらっしゃいますけれども、大学の生協の話なんかを聞きますと、親が経済的に厳しい中で、中途で退学される方が非常に増えていると。今、大学生協が持っている援助金というんですか、補助金なんかはそういう方のために使って、かなり底をついてきていて、非常に大変な状況もあるということですので、我々としては、そういう一方では通常の生活をきちっと支える面での貯蓄と同時に、これから将来を担っていくそういう若い世代の人にこの財形貯蓄をうまくその資金を使っていけるような、そういう仕組みというんでしょうか、融資でやるのかどうかというのはちょっとあるんですが、それはまた別に子育ての手当だとかそういうことでやるのかもしれませんが、もう少し教育というものに財形制度が扱っていけるようなものを改めてつくっていく、あるいはそういうものをこれから考えていく必要があるのではないか。これからを担う若い世代が成長をしていきませんと、やはり日本の社会そのものが荒廃をしてしまうというのがありますので、そういうところをぜひ今後テーマとして、私どもは考えていきますけれども、この分科会の中で財形制度ということにとらわれることなく、少し広く検討していただければと思います。
○分科会長
 今の秋山委員のご発言に委員の方から何か関連するご発言はありますでしょうか。
 よろしゅうございますか。では、事務局のほうから、もしおありになりましたら。
○勤労者生活課長
 秋山委員のご意見、大変重要な点をご指摘いただいていると思います。特に、労働金庫でいろいろ生活資金の融資ですとかそういうのをやっていらっしゃるということで、活用もかなり増えているということで、非常に感謝をしているところでございます。
 2つございましたうちの1つ目の、若いうちからきちっと貯蓄をするような教育ですが、教育のほうでどこまでできるかというのは、ちょっと私どものほうでは、今こうできますよというのはなかなか答えが出せないんですけれども、財形制度のPRの在り方というのは、ちょっと今のものでいいのかどうかも含めて、今後の検討課題かと思っております。
 それから、教育融資の話がまだまだ重要だという、こういうお話かと思うんですけれども。教育融資制度につきましては、実績ということもございますけれども、どうしても行政改革の一環の中で、1つの独立行政法人を廃止して新しい退職金機構に移管するという整理の中では、やはり業務全体をスリム化しなきゃいけないと、そういうことがありまして、教育融資制度につきましては廃止をさせていただくということでございます。これをもう一度ということになりますと、現状では正直なかなか復活させるというのは難しいわけですけれども、今のご意見はご意見として拝聴させていただくということでよろしいでしょうか。
○分科会長
 そのほか。はいどうぞ。じゃ、秋山委員。
○秋山委員
 申しわけありません。私が申し上げたのは、今の教育の融資制度、廃止されるものを復活させるとか、そういうことではなく、これ自体は民間の教育融資というのがほとんどでき上がっていますので、当然の結果だなというふうには思いますが、それ以外のもっと直接的に生活苦あるいはどうしても学業をやめざるを得ない、そういう人たちに対する直接的な何か、補助だとかというものを考えていく必要があるんじゃないのかなと。そういう視点で、もう少し融資とかそういう次元じゃなくて、もっと社会政策的に考えるべきじゃないかと、こういう趣旨でございます。
○分科会長
 何かおありになりますか。
○勤労者生活課長
 今の課題は大変重要な課題なんですけれども、財形制度の中での対応というのはなかなか正直言って難しいので、またどういう手だてがあるのかというのはすぐには思い当たらないんですけれども、ご意見として承りたいと思っております。
○権丈委員 今の若い世代ということなんですけれども、最近の財形貯蓄制度の利用の減少というのは、制度を持っている企業が減ったところと、それから制度のある企業の中で実際に契約している労働者の割合が減っている部分と、2つあるかと思います。それで、就労条件総合調査では5年ごとに資産形成について調査が行われているようで、そちらを見ますと、制度のある企業の常用労働者に対する契約労働者割合というのが出ておりまして、両方、導入率とそれからそういった契約労働者割合が下がっているというふうなことが確認できるわけなんですが、その点をもしできれば、年齢ごととかあるいは男女別とかいう形の状況が分かれば、これからの対策がまた立てやすくなるのではないかなと考えました。
 それから、もう一つの点は、財形は基本的に常用労働者、正社員を中心とした制度かと思いますが、若い世代で非正規労働者が増えていることは、ご承知のとおりだと思います。そういう状況がありますので、もともと制度に加入できない人たちがいるということで、その部分をどうするか。多分、以前の中間報告等でも出ているのかなとは思いますが、その辺りもやはり今後考えていただければというか、考えていきたいなと思っております。
○分科会長
 ただ今のご意見ですけれども、いかがでございましょうか。
○勤労者生活課長
 企業の規模別の財形貯蓄制度の導入状況だけということで見ますと、やはり1,000人以上の大企業の導入割合というのは、それだけ見ましても、10年前の平成11年とそれから平成21年の数字を見ましても、91%から82%に減っておりまして、極端な話ですが、30人から99人のところの企業規模でございますと、平成11年が56%であったのが平成21年では40%と減っているという、その辺りのところの数字までは把握してございますので、一つの参考にはなるのかなと思います。
 それからあと、非正規社員の対応ということでございますけれども、これにつきましては、1つございますのは、一応この制度は、例えば1年勤めて、中断というのが2年間認められておりますので、例えば1つの会社に入って、そこで財形を始められ、次の会社に移られたとき、例えば間が1年あいたということで次の会社に移られても、これは財形制度としては継続はできますので、そうした対応というのは可能ではあります。ただ、従来、以前の中間報告などでもご指摘はいただいておりますので、ちょっとその辺り今後どう考えていくのかというのは、まだ正直いい案がないというような現状ではございます。
○分科会長
 権丈委員、よろしゅうございますか。
 そのほかいかがでしょうか。
 よろしいでしょうか。
 それでは、本日はまだ大分時間が残っておりますけれども、ご意見も出尽くしたということで、これで終了にしたいと思います。
 最後に、本日の議事録の署名委員ですが、高橋委員と増田委員にお願いいたしたいと思います。よろしゅうございますでしょうか。
 それでは、本日はこれにて散会といたします。
 どうもありがとうございました。


(了)

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