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2010年10月25日 第11回高齢者医療制度改革会議議事録

○日時

平成22年10月25日 17:20~19:20


○場所

中央合同庁舎5号館 厚生労働省内省議室(9階)


○出席者

阿部委員、池上委員、岩村委員(座長)、小島委員、神田委員、見坊委員、小林委員、
近藤委員、齊藤委員、白川委員、樋口委員、三上委員、宮武委員、横尾委員
細川厚生労働大臣、岡本厚生労働大臣政務官
<事務局>
外口保険局長、唐澤審議官、武田保険局総務課長、吉岡保険局高齢者医療課長、
伊藤保険局国民健康保険課長、吉田保険局保険課長、村山保険局調査課長、
鈴木保険局医療課長

○議題

費用負担について

○議事

○岩村座長
 委員の皆様方には、本日、御多忙の中をお集まりいただき、誠にありがとうございます。定刻になりましたので、ただいまから第11回「高齢者医療制度改革会議」を開催させていただきます。
 本日の委員の出席状況でございますけれども、岩見委員、岡崎委員、鎌田委員、堂本委員、藤原委員が御欠席ということでございます。
 本日は、皆さん御承知のように、第11回目の改革会議ということになります。前回から、言わば第2ラウンドの議論に入っておりまして、前回は、「国保の運営のあり方及び保険料等」について御議論をいただいたところでございます。
 今回第11回目は、「費用負担について」ということを議題としまして、事務局の方から提出していただいております『本日の議題に関する基本資料』や『医療費等の将来推計及び財政影響試算』というものを基にして御議論をいただきたいと考えております。
 まず初めに、細川大臣から御挨拶をいただきたいと思います。どうぞよろしくお願いいたします。

○細川大臣
 大変お忙しいところ、お集まりをいただいておりまして、ありがとうございます。
 今日は、高齢者の医療が増大をする費用をどう負担していくかという、負担のあり方について御議論をいただくことになっております。これは本当に一番難しいところでもございますし、ひとつよろしくお願いしたいと思います。
 これまで、全国各地で、いろいろな御意見をいただくために公聴会も進めてきたところでございます。7回やりまして、最後10月5日に東京でやりまして、そちらの公聴会の方が終わったところでございます。この公聴会には、4,800人ぐらいの方が参加をされたそうで、そのうち1,800人ぐらいが御意見を言われたということで、そういう御意見も踏まえて、いろいろこれから検討をしていただくことになろうかと思います。
 これから年末に向けましてとりまとめをしていただくためには、なかなか時間も短いということで、あと4回ばかり予定をされているところでございますけれども、本当にお忙しい先生方、委員の皆様方ばかりでございますが、ひとつよろしく御検討いただきますようお願いいたしまして、御挨拶といたします。
 どうぞよろしくお願いいたします。

○岩村座長
 細川大臣、どうもありがとうございました。
 それでは、冒頭のカメラ撮りはここまでとさせていただきたいと思います。よろしくお願いいたします。
(報道関係者退室)

○岩村座長
 では、事務局の方から、今日お配りいただいている資料につきまして、御説明をいただきたいと思います。どうぞよろしくお願いいたします。

○吉岡課長
 高齢者医療課長でございます。お手元の資料のクリップを外していただきまして、座席図の次からの資料でございます。
 まず、横長の資料1「本日の議題に関する基本資料」でございます。本日の議題となっております費用負担の各論点などにつきまして、私どもの考え方を整理させていただいたものでございます。
 1枚おめくりいただきまして、目次の次でございます。
 2ページ目は「国保の都道府県単位化の進め方」ということで、改めて整理をさせていただいております。
 一番上にありますように、第一段階におきましては、75歳以上について都道府県単位の財政運営とするということであります。
 2つ目の枠囲みにございますように、市町村国保につきましては、保険財政の安定化、そして保険料負担の公平化等の観点から、全年齢を対象として都道府県単位の財政運営とすることが必要でありますけれども、一挙に都道府県単位化した場合には、3,600万人の保険料は大きく変化することになるわけですので、環境整備を進めた上で、第二段階において期限を定めて、全国一律に、全年齢での都道府県単位化を図ってはどうかということでございます。
 そしてその上で、3ページは「費用負担に関する論点」の全体像を整理しているものでございます。
 75歳以上の財政運営を都道府県単位化する第一段階におきましては、現行の財政調整の仕組みを踏襲することが適当ではないかということでございます。
 また、2つ目の○にありますように、こうした基本的な財政調整の仕組みの問題のほか、費用負担に関する論点は、○1高齢者の保険料の負担率を始めとしまして、大きく6点あると考えております。
 4ページから、それぞれの論点ごとに考え方を整理しております。
 まず、4ページ「○1高齢者の保険料の負担率」であります。
 現行制度におきましては、現役世代の負担の増加に配慮いたしまして、「現役世代人口の減少」による現役世代の保険料の増加分を高齢者と現役世代で折半して、高齢者の保険料の負担率を段階的に引き上げるという仕組みになっているわけであります。
 5ページは、現行制度の問題点でございます。
 高齢者と現役世代の保険料の違いというものを考慮していないために、こうした仕組みでありますけれども、基本的に高齢者の保険料の伸びが現役世代の保険料の伸びを上回るという構造になるという問題があるわけであります。
 したがいまして「高齢者人口の増加」と「現役世代人口の減少」に伴います現役世代の保険料の増加分を、高齢者と現役世代の保険料規模に応じて分担するという仕組みに改めることが必要ではないかということであります。これによりまして、高齢者と現役世代の1人当たり医療費の伸びが同じであれば、それぞれの保険料の伸びはほぼ均衡することになるわけでございます。
 また、この点につきましては、新制度の問題というよりも、現行制度の問題であり、早期に改善すべき点でありますので、新制度の施行に先立って実施することも検討する必要があるのではないかと考えております。
 その下に「負担率の変化の見通し」という表がございます。
 現行制度のままですと、現在10%から10.26%になっている負担率が、24年度には10.62%という形で推移するわけでございますが、現行制度の次回の保険料改定であります24年度から、下の欄の10.48%の方に移行することが適当ではないかということであります。
 その下は「保険料額の変化の見通し」がございます。
 現行制度ですと、高齢者の保険料の伸び率の方が大きい形になっておりますけれども、見直し後におきましては、保険料の伸び率がほぼ均衡するという形になるわけであります。
 6ページ、論点の2つ目が「○2公費のあり方」であります。
 2つ目の囲みにございますように、現在、75歳以上の高齢者の医療給付費に約5割の公費を投入しているわけであります。この約5割でありますが、※にございますように、現役並み所得を有する高齢者の方々は約7%いらっしゃいますが、こうした方々の給付費に対しましては公費負担がないために、実質47%の公費負担割合となっておりまして、公費がない分は現役世代の支援金による負担となっているわけであります。そうした中で、中間とりまとめでは、公費については、高齢者や現役世代の保険料負担の増加を抑制するために、効果的な投入を図りつつ、充実させていくことが必要であるという充実の方向性がうたわれたわけでございます。
 そうした中で、一番下の囲みにありますように、公費の問題につきましては二段階で考えることが必要ではないかということであります。将来的には、高齢者や現役世代の保険料負担の増加を抑制するために、効果的な投入を図りつつ、充実させていくことが必要でありますけれども、現時点で、では平成何年度に何割の公費にするかということを決めるには、医療費もこれからどのようになっていくのか、あるいは経済もどのようになっていくのか明らかでない中で、なかなか現時点では決められないわけでありますので、定期的に、例えば4年ごとに医療費の動向や社会経済情勢等を踏まえながら、公費のあり方を検討する仕組みにする。こうしたことを法律に明記することが必要ではないかということであります。
 また、そうした前提の下で、平成25年度の制度移行時には、実質47%の公費負担割合を実質50%に引き上げることが考えられるのではないかということでございます。そのための所要額は2013年度で3,500億円ということでございます。
 7ページ、論点の3つ目が「○3被用者保険者間の按分方法」でございます。
 具体的には、支援金について、被用者保険者間の按分方法をどう考えるかということでございまして、中ほどにありますように、中間とりまとめでは、財政力の弱い保険者の負担が過重なものとならないよう、負担能力に応じた公平で納得のいく支え合いの仕組みにすべきであり、その具体的な按分方法については、引き続き検討するとされております。
 そして、この問題につきましては、次の囲みにありますように、新制度における支援金については、すべて総報酬割とすべきではないかと考えております。
 また、その反射的な効果としまして、支援金の負担がすべて応能負担となった場合には、健保組合・共済組合との財政力の違いに着目した協会けんぽの支援金負担への国庫負担約2,100億円が不要になるわけでございます。
 8ページの(参考1)をごらんいただきますと、個々の保険者の負担増減がどのようになるのかということであります。
 「全面総報酬割導入」によりますと、例えば健保組合ですと負担増が872、負担減が590ということで、負担増の保険者数の方が多いわけでございますが、その右側「加えて、現役並み所得を有する高齢者に5割公費を導入した場合」には、負担増が540に対して、負担減が922ということで、負担減となる健保組合の方が多いという状況になるわけでございます。
 一方で、共済組合の場合には、総報酬割の影響の方が勝りますので、負担増の保険者数の方が多いということでございます。
 1ページ飛びまして、10ページは、論点の4つ目「○4保険者間の財政調整」です。具体的には、65歳から74歳の前期の財政調整であります。
 新たな制度におきましても、65歳から74歳の高齢者が国保に偏在をいたしますので、これを是正するための財政調整の仕組みを現行と同じような形で継続すべきではないかということで考えております。
 さまざまな配慮措置というものもあるわけでございますけれども、これにつきましても、引き続き設けることが適当ではないかと考えております。
 11ページ、論点の5つ目「○5患者負担割合(特に70~74歳の患者負担割合)」でございます。
 現在、2割負担と法定されている中で、毎年度の予算措置によりまして、2,000億円補正予算で国費を投じまして、1割負担に凍結しているという状況がございます。
 中間とりまとめでは、個々の患者の負担の増加と各保険者の負担の増加の両面に配慮しつつ、そのあり方について引き続き検討するということにされているわけであります。仮に1割負担で恒久化した場合には、2,000億円の医療給付費の増加が生じまして、ご覧のような各保険者の負担増が生じるわけでございます。
 そこで、この問題につきましては、個々の患者や各保険者が負担増とならないよう、既に70歳に達し、1割負担となった方は引き続き1割負担とし、それ以外の方は70歳到達後、順次2割負担としていくことが適当ではないかと考えているところでございます。すなわち、現在69歳の方は3割負担でありますけれども、この方々が70歳になって1割まで下げなくても、2割負担でも下がったという実感はしていただけるのではなかろうかということで考えております。
 12ページは、論点の6つ目「○6特定健保組合のあり方」であります。
 特定健保組合につきましては、現在、後期高齢者医療制度がございますので、75歳になるまで加入するものとなっているわけでありますけれども、制度として、年齢による一律の区分はなくすこととして、75歳以上の扱いにつきましては、個々の特定健保が規約で定めるという形にしてはどうかと考えております。
 13ページからは「財政安定化基金」の関係でございます。
 後期高齢者医療制度では、給付の増加や保険料の収納不足が生じた場合に、一般財源からの財政補てんを行う必要がないように、各都道府県に財政安定化基金を設置しております。先般の制度改正では、保険料の上昇抑制のためにも活用できるようにしたところでございまして、新制度においても同様の基金を設けて、国保の財政運営の安定化を図る必要があるのではないかということでございます。
 中ほど以下、まず論点○1といたしまして、活用方法について整理をしております。
 左側が後期高齢者医療制度の基金、これに対して右側が新制度の基金ということでございます。
 新制度では、まず○1給付の増加に対応するために「都道府県単位の運営主体」に貸し付ける。
 ○2保険料の収納不足に対応するために「市町村」に対して貸し付ける。
 ○3保険料の上昇抑制のために「都道府県単位の運営主体」に交付するという仕組みでどうだろうかということであります。
 14ページは、論点○2といたしまして、基金の規模・負担割合でございます。
 右側にございますように、現在の後期高齢者医療制度の基金につきましては、単年度財政リスクの6年分の基金を保有するという形になっておりまして、かなり安全を見た仕組みになっておりますが、今日までの経験を踏まえますと、新制度の基金につきましては、3年分の保有とすることが適当ではないかということで考えております。
 また、標準的な拠出率、現在0.09%でありますけれども、3つの要因を踏まえて、拠出率を0.096%とし、これを国、都道府県、保険料で1:1:1の割合で負担するという仕組みを維持することが適当ではないかと考えております。
 具体的な拠出率の計算の内訳につきましては、15ページに整理をしたところでございます。
 こうしたことの結果といたしまして、15ページの一番下の段にありますように、後期高齢者医療制度では、積立規模2,000億円程度ということで見込んでおりますが、新制度の基金につきましては、1,200億円程度の積立てが必要ではないかということで考えております。
 資料1につきましては、以上でございます。
 続きまして、資料2-1が『医療費等の将来見通し及び財政影響試算』のポイントを整理したものであります。
 1ページ、まず1点目が、医療費、給付費の将来見通しでございます。
 近年の実績を踏まえまして、1人当たり医療費の伸び率、自然増を年1.5%と仮定し、将来に投影して推計しますと、国民医療費は2010年度の37.5兆円から2025年度の52.3兆円ということで、年平均の伸びが1.0兆円、2.2%ということであります。
 また、医療給付費はご覧のとおりであります。
 一番下の※にございますように、前回の推計と比較いたしますと、18年度制度改正時の見通しでありますけれども、このときには2025年度で48兆円という医療給付費を見込んでおりました。また、当時の48兆円という推計値は、医療費適正化の中長期的な方策として6兆円の適正化効果を織り込んだものであるわけであります。それに対しまして、今回の45兆円というのは、こうした適正化効果を織り込んでいないわけでありますので、実額で比較いたしますと9兆円ほどの下方修正になるということでございます。
 この要因は、今回1人当たりの医療費の伸び率が年1.5%ということで、前回の推計時よりも大きく下回る伸び率になったということが、その原因となっているわけであります。
 その上で、2ページの2.でございます。新制度における財政負担の将来見通しがどうなるかということでございますが、医療保険に限った給付費で見ますと、2010年度の29.4兆円から2025年度の41.8兆円ということで、年平均で0.8兆円、2.4%の伸びになるわけでございます。
 その内訳でございますが、保険料負担は5.4兆円増加ということで、年平均の伸びは1.7%。これに対しまして、公費は7.0兆円の増加、年平均の伸びは3.3%ということで、公費の伸びが保険料の伸びを大きく上回るという形になるわけでございます。
 75歳以上の医療給付費に対します公費負担全体としては、国、都道府県、市町村の負担割合を4:1:1で維持するということを前提にいたしております。これにより、公費負担の内訳は、国の負担は2025年度で12.9兆円、都道府県の負担は3.2兆円、市町村の負担は2.1兆円にそれぞれ増加をするということでございます。
 「3.新制度における制度改正等の影響」であります。
 まず「(1)高齢者の保険料の負担率の見直し」でございます。
 3ページにございますように、先ほど申し上げましたように、この点については、新制度の施行に先立って、現行制度の次期保険料改定時から見直すこととして試算をいたしております。したがいまして、純粋な新制度への移行による財政影響は、次の(2)でございまして、それは主にA~Dの4つの要因によって生じるわけでございます。
 まず(A)は、適用関係の変更であります。
 被用者保険の方に、被扶養者約190万人が戻ることになるわけでございます。被扶養者からは保険料を徴収しないわけでありますので、この点、被用者保険にとっては負担増要因になるということであります。
 (B)は、支援金の総報酬割でございます。
 財政力の弱い組合は負担減となりますが、健保組合、共済組合全体としては、負担増要因になるわけであります。
 4ページ、(C)の公費を5割に引き上げるという点につきましては、すべての保険制度において負担減要因となるわけであります。
 (D)の70~74歳の患者負担の段階的な見直しにつきましては、医療給付費は段階的に縮減し、すべての保険制度において負担減要因となるわけでございます。
 これらA~Dの結果といたしまして、新制度への移行による全体の財政影響は、負担率の見直し後をベースラインといたしますと、2013年度の制度切替え時には、協会けんぽで600億円の負担減、健保組合で200億円の増、共済組合で600億円の増、市町村国保で600億円の減という形になるわけでございます。
 更に患者負担の段階的な見直しにつきましては、徐々に財政効果が出てまいりますので、2025年度のところで見ていただきますと、協会けんぽで▲1,800億円、健保組合で▲200億円、共済組合で+800億円、市町村国保で▲1,200億円と推計いたしております。
 5ページは、公費がどのように変化をするかということであります。
 公費につきましては、全面総報酬割に伴う減、現役並み所得を有する高齢者も5割公費とすることに伴う増などなどの影響によりまして、制度改正の影響は全体として2013年度で700億円の増ということで、その後、500億円、200億円、600億円という状況でございます。
 また、国と地方の公費負担割合につきましては、国、都道府県、市町村が4:1:1の比率で負担している現状でございますけれども、引き続き、国民全体で高齢者の医療費を支え合う観点から、この負担割合を維持することにいたします。
 一方で、被用者保険者に対して地方が公費負担を行うことにつきましては、これまでもこの会議で適当でない旨の御指摘がございましたので、被用者保険へ投入する公費は、地方負担相当額を国が代わりに全額負担し、その分、地方公共団体が国保に多く負担することによりまして、全体としては、国、都道府県、市町村の負担割合を4:1:1で維持することにいたしております。
 6ページ「4.加入者一人当たり保険料の将来見通し」でございます。
 現行制度では、75歳以上の高齢者の保険料は、現役世代の保険料よりも大きく増加することになっていたわけでありますが、保険料の負担率の見直しによりまして、伸び率は高齢者と現役世代でほぼ均衡すると見込んでおります。
 また、「5.参考試算」にございますように、今回の試算では、参考試算といたしまして、新成長戦略に基づいて、経済成長率年3%、賃金上昇率年3.5%、またそれに伴いまして、診療報酬改定率年1%を見込んだ場合の試算も併せて行わせていただいております。
 「6.新制度における協会けんぽ、健保組合の保険料率の将来見通し」でございます。
 この保険料率の将来見通しにつきましては、賃金上昇率の設定方法によって変化をすることになるわけであります。賃金上昇率イコール診療報酬改定率とした場合につきましては、協会けんぽの保険料率は現在の9.3%から2013年度の9.9%、以後ご覧のような状況でございます。
また、健保組合の保険料率7.6%は、2013年度は8.3%、以後ご覧のような状況になるということでございます。
 最後、7ページは「7.留意点」として、3点掲げさせていただいております。
 今回の試算は、先ほども申し上げましたように、適正化による効果というものを織り込んでいないわけでございますが、効率化できる部分の効率化を進めることによりまして、全体にわたり国民負担の軽減が図られることになるわけであります。
 2つ目、公費につきましては、47%から50%の引上げ部分については試算に含まれておりますけれども、今後将来的に定期的に検討する結果によって、また財政影響は変動することになるわけであります。
 財政調整につきましては、国保の都道府県単位化の第一段階における財政調整を前提としておりますので、第二段階でこれを見直した場合には、その限りにおいて財政影響は変動することになるわけでございます。
 以上が資料2-1でございます。
 資料2-2につきましては、将来見通し及び財政影響試算の本体でございます。
 さまざまな形での分析をさせていただいたもの、また、その前提となる数字もすべて明らかにさせていただいているところでございますが、説明は省略させていただきます。
 資料3は『参考資料』でございます。本日の議題に関係するさまざまなデータ等につきまして、整理をさせていだたいている参考資料です。
 資料4は、先ほどの大臣の御挨拶にもございましたように、7か所においての公聴会を終了させていただいたところであります。各公聴会でいただいた御意見の概要をすべて整理させていただいておりますので、また御参考にしていただければと存じます。
 資料5は、前回の会議での各委員の御意見を整理させていただいたものであります。
 最後、資料6は、今回『委員配付資料』として、近藤委員から、医療費窓口負担に関する意見書を御提出いただいております。
 資料については、以上でございます。どうぞよろしくお願いいたします。

○岩村座長
 ありがとうございました。
 それでは、ここから、委員の皆様方から御意見、御質問などを頂戴したいと思います。今日のテーマに鑑み、皆様方それぞれ御発言をされたいと思いますが、できるだけ多くの方々に御意見を頂戴したいと存じますので、御発言に当たっては、ポイントを絞って、手短に御発言をいただくようにお願いしたいと思います。
 それでは、どうぞお願いいたします。横尾委員、どうぞ。

○横尾委員
 発言の機会をいただきまして、ありがとうございます。
 実は今回の資料についてもそうですし、毎回申し上げておりますが、事前にどこかから漏れていまして、報道に出て行くわけです。実際に広域連合の現場で起こっていることの一部を紹介しますと、一部がデフォルメされて記事になっていきますので、やはり不安があったり、疑問に思ったりという問い合わせが広域連合に来たりしております。もし、出す必要が事前にあるのであれば、ほかのやり方としては、事務局の方で事前記者レクをしていただいて、「解禁日は何月何日何時何分以降」としていただいた方が、情報が均等に行くし、メリット、デメリットを併せてきちんと説明していただくことも大切かと思っています。
 では、意見を申し上げたいと思います。
 前回の会議の中では、例えば年齢区分といいますか、対象年齢につきましては「75歳以上」というのが今回提案されているのですが、65歳以上とするか、75歳以上とするかということについては、継続協議といった部分もあったかと思います。今回、1つのパターンを主に示されたということは、このことを主と考えていらっしゃるのかと受け止めますが、そのほかのことはないのかというのが1点目です。
 2点目は「公費」という言葉が再三出てくるわけです。我々もそういった言葉は使いますけれども、ただ、国民の皆さん、一般の皆さんからすると、それが実態としては「国費、都道府県費、市町村費」となっております。できればポイントポイントでは、その辺を峻別して使った方が、より正確に伝わっていくのではないかと考えています。
 また、いただいた基本資料の3ページ等に関することです。公費負担についての概念図が掲げられておりまして、現行制度から右側の新制度へ移行するということになっていますけれども、例えば年齢区分ではなくて、一般の国保とそうではない被用者保険という形での区分にしようという基本フレームだと思います。もしそうであれば、その基本的理念にしたがって考えるのであれば、全体の財政措置についても、それぞれに峻別をして、例えば国保と職域保険であります被用者保険とを分けて、それぞれに財政措置を考えていくというのが、ある意味で理念的に一貫性があるのではないかと思います。
 同じ趣旨で、例えば権限等について考えますと、被用者保険については国保から直接関わることもできないわけでありますので、基本的な考え方、そういった権限の有無等をかんがみますと、ここに地方費を投入するというのはなかなか理解がしにくいところもあるでしょうし、そういった声が今後地方から出てくるのではないかということが予想されるところでございます。このことについては、若干手当をするということで先ほど御説明もあったわけでございますが、でき得れば、理念的なことを尊重していけば、「帳尻合わせ」というと変な言い方ですけれども、数字合わせ的な対応よりも、きちんと理念に合わせたシステムをつくり、そのことで運営をしていくというふうにした方が、説明責任としてもわかりやすいし、はっきりするのではないかと感じているところでございます。
 また、公費の在り方につきましては、今日は御欠席でありますが、高知の岡崎市長とも、同じ市長としていろんな意見交換をさせていただいておりまして、ほかの市長さんたちの思いも含めて、少し述べたいと思います。
 いただいた資料3を見ていくとわかりますけれども、実は医療費は確実に伸びていきます。特に65歳以上、そして75歳以上になりますと、着実に医療費が伸びているのが、1人当たり医療費の推移ということで、保険ごとにも表示されています。こういった状況に直面しながら、国民皆保険制度を現状の仕組みのままやっていくのは、なかなか難しい部分があるだろうと、多くの人たちも心配をしております。特に国民健康保険に関しましては、低所得者の方が多いという特徴もあります。そこでいきなり保険料増額で負担してくれというのは、なかなか難しいという局面があるのは、是非お伝えをしておきたいと思っております。中には「国保の保険料が高い、払いたくてもなかなか払えない」という問い合わせ等も、いろいろな自治体にも寄せられているように聞いておりますので、こういったところを鑑みますと、公費負担につきましては、恐らく今後増やしていくことが必要になるだろうと予想されます。そういった意味では、いきなり幾らということははっきり申せませんが、例えば定期的に被保険者の負担能力や経済的な状況、医療費の動向等を分析した上で、国費としての公費負担のあり方を検討していく仕組みということが今後必要ではないかと感じております。
 次に、基本資料の7ページに「○3被用者保険者間の按分方法」というのが出ております。これにつきましては、資料の中とか、あるいは最初にこの会議が立ち上がったときの6原則の中にもございますが、「国保への極端な負担には配慮する」という文言。また、前通常国会の国民健康保険法改正問題を審議した参議院の厚生労働委員会におきましては、「高齢者医療制度の負担調整は若年者の負担が過大なものとならないよう、公費負担を充実すること」との附帯決議も入っているように承っております。
 こういったことを考えますと、按分方法といたしましては、先ほどと重なりますけれども、やはり国費ということがどう関わるか非常に重要であるし、このことの検討も今後は必要と感じます。
 次のポイントは、基本資料の11ページに「○5患者負担割合」ということで、70~74歳に1割から2割というところがございます。段階的に上げるということで、3割の方が今は1割になるけれども、年齢的に5年間かけて3割が2割になるという形で推移していこうというスケジュール感だと思いますが、先ほど申し上げましたように、国保の窓口、現状では、「自己負担額がなかなか支払えず何とかならないか」という問い合わせ等もある現状をかんがみますと、なかなか厳しい面があるというのが率直なところでありますので、例えば少なくとも所得区分を設けるなど、いろいろな配慮も今後必要になるのではないかと感じられるところでございます。
 あと、後の方で、次のポイントとしては、「財政安定化基金」のことを御説明いただいたところでありますが、これについてはさきの岡崎委員からも、「分賦金の方式が後退したイメージがある」などの御発言がございました。現在、いろんなことを考え、国保の広域化等について基本方針を各都道府県別に策定をする作業が進んでいるところ、今から着手するところ、検討するところがあります。国保の広域化というのが片方では大きなテーマになっているわけでございますが、このときに貸付金方式のみで推進することになりますと、なかなか国保の広域化に関しまして、将来的に障害になるようなことは、できれば避けるべきではないだろうかと思います。そういった意味からしますと、現状のやり方も尊重しながら、国保の広域化は、厚労省として将来きっと射程に入れていらっしゃるかと思いますが、こういったことに向けて支障がないようなプログラム組みを是非やっていくべきではないだろうかと感じているところでございます。
 最後でございますが、国保の高齢者医療費に関する支え合いということで、同じく9ページにございますけれども、若年者からの負担ということでございましたが、若年者の国保の負担が軽減されることになりますと、市町村国保における赤字補てん、あるいは繰上充用の解消にもつながる面も出てきますので、全年齢を対象とした国保の都道府県単位での統合等に向けて、先ほどのコメントと重なりますけれども、こういったことも是非検討していくべきではないかと感じているところでございます。
 時間も制限がございますので、以上で終わります。

○岩村座長
 ありがとうございました。
 御質問あるいは御意見に対する事務局の考え方の説明は、2、3発言をいただいてからまとめてということでお願いしたいと思います。
 それでは、いかがでございましょうか。池上委員、どうぞ。

○池上委員
 今回の議論の中心は、被用者保険料が上がることが課題になるかと存じますが、実は前回申し上げるべきだったかもしれませんけれども。第一段が後期高齢者医療制度の廃止、第二段が国保の都道府県ごとの統合、再編ということですが、実は第三段として、被用者保険と国保との統合が、有識者のアンケート調査では最も支持が高かったわけです。したがって、第三段階を見据えた上で今日の議論をしていただければと存じます。
 第2点は、保険料負担に関して言えば、被用者保険については、賦課の対象は給与所得のみであります。したがいまして、前期高齢者の場合は、年金所得は賦課の対象外となります。後期高齢者も同様でございます。
 したがって、例えば被用者所得として月10万円あって、厚生年金で月30万円の収入があった場合に、保険料の賦課対象は10万円に限られることになりました。これは高齢者の雇用促進には寄与するかと存じますが、国民の間の不公平感につながりますので、総報酬制度という別の意味で、給与所得以外も前期高齢者の場合は特に考慮するべきだと考えています。それについて今日の試算では対象となっていませんので、より長期的な課題として御検討いただければと存じます。
 以上です。

○岩村座長
 ありがとうございました。
 それでは、白川委員、そして小林委員ということでお願いいたします。そこで1回切らせていただいて、事務局の方からお答えいただくということにしたいと思います。

○白川委員
 どうもありがとうございます。
 非常に試算結果が複雑でございまして、私どもでも分析をさせていただきました。全般的には、いわゆる公費の負担を充実するということが中間とりまとめで書かれておりますけれども、新たな財源がほとんど望まれない中で、今の負担構造を変えようということですから、簡単に言うと、負担増と負担減の保険者がどうしても出てくるということになります。そのこと自体は、制度改正でございますので、ある程度やむを得ないと思いますが、ただ、この原案を見ますと、余りに若年層の負担が過大になっているということが私どもとしては問題視しております。
 その他、具体的には75歳以上のところの負担構造が、私どもの言葉で言うと、公費負担の肩代わりのような使われ方をしている問題でありますとか、いわゆる前期のところが全く今と同じ財政調整のやり方ということで、我々健保連として以前から問題指摘をしておりました点が全く改善をされないということにつきましては、非常に不本意な内容という気がしております。
 前々からいろんな形で意見が出ておりますとおり、税と社会保障の一体的な改革の議論とすり合わせをしないで、高齢者医療制度だけ変えるということについては、いかがなものかなというのが全体の印象でございます。
 具体的に何点か申し上げますと、1つは、現役の方、あるいは被扶養者約190万人が広域連合の方から被用者保険の方に入ってくる。それによる被用者保険の負担増が、この試算ですと約1,000億円ということになっております。ただでさえ、今いずれの組合・保険者も財政難で苦しんでいるときに、1,000億円の負担増というのは非常に重い。何らかの措置が必要ではないかというのが1点目でございます。
 2点目は、75歳以上で現役並みの所得を有する方に5割の公費を新たに入れることを検討すると書かれておりまして、その所用費用が3,500億円ということになっております。この3,500億円の財源がすべて公費でありましたら特に問題はないんですけれども、その財源として、総報酬割で浮いたと言ったら語弊がありますが、協会けんぽに助成されております2,100億円を引き揚げてこの財源に充てるという構図になっているようでございまして、これが私どもは肩代わりと言わせていただいているものでございます。
 現役並み所得の方全体に5割の公費が入るということでございますので、当然いろんな保険者が負担減につながるわけでございますけれども、被用者保険に助成された財源を引き揚げるのであれば、それは被用者保険の中で使う形にしていただきたいというのが、私どもの要望でございます。
 前期の高齢者に係る財政調整の仕組みは、何が問題かというのは、実は本日の資料1の10ページに書かれております。上から2つ目の○の※の最初ですけれども、65歳から74歳の高齢者に係る支援金についても、これらの高齢者の偏在に伴う負担であり、すべての保険者で負担を分かち合うべきであることから、現行の前期財政調整においても調整対象となっている。旧退職者医療制度でもそうなっていたという書き方をされておりますが、そもそも中間とりまとめでは、被用者保険と国保の間は加入者割をするというのが原則であったと思うんです。これはわかりにくい方もたくさんいらっしゃると思いますが、要は国保の方に高齢の方がかなり加入していらっしゃるので、その分の75歳以上に対する支援金まで被用者保険で持てという仕組みになっておりまして、それは不合理だということを従来から主張していたのですが、この金額は約3,000億円でございます。これについては、改革というからには、是非合理的な考え方に立って是正をしていただきたいというのが2番目の要望でございます。
 70~74歳までの患者負担は、確かに今、御発言がありましたように、2割負担は厳しいというお話もあると思いますが、ただ、法律としては、2割負担ということになっておりますので、できるだけ早く2割負担という法定どおりに変えるのが筋ではないかと考えております。平成25年から5年間かけて順次戻していくというやり方は、ある意味では、70~74歳までの方の不公平感ということにもなりかねませんので、1日も早く法定に戻すべきと考えております。
 最後に、特定健康保険組合のことが出ておりますけれども、前にも申し上げたとおり、特定健康保険組合制度というのは、健保組合の保険者機能を果たし、医療費の適正化という意味では、非常に効果のある仕組みであると認識をしております。是非残していただきたいし、御提案の趣旨で継続させていただきたいと思いますが、我々としては、いい制度ですので、是非運営にインセンティブをつけるような形で詳細設計をしていただくようにお願いをいたします。
 ちょっと長くなりましたが、以上でございます。

○岩村座長
 ありがとうございました。
 それでは、お待たせしました。小林委員、どうぞ。

○小林委員
 資料1の6ページ「○2公費のあり方」についてです。一番下の枠を見ますと、公費拡充の方向性と定期的な見直しの必要性が打ち出されておりますが、この考え方は、今後の医療保険制度の持続可能性を担保していく上で極めて重要な点であります。
公費拡充の目的は、ここに書いてあります高齢者や現役世代の保険料負担の増加を抑制することになります。是非この考え方が具体的な制度としてビルトインされるよう、御検討をお願いしたいと思います。
 7ページは、負担の公平性という観点から、協会けんぽが要望してまいりました総報酬割の導入が反映されたものと受け止めております。現在、非常に厳しい財政状況と中小企業の賃金水準の低さという現実問題を抱えており、被用者保険間の保険料負担の格差が拡大傾向にありますので、今後も格差是正につながる方向について、御検討いただきたいと考えます。
 次に、11ページ70~74歳の患者の負担割合についてです。現在、70~74歳の患者負担は、特例的に引き下げられているものであり、公費で対応しているといいながら、保険者には波及増による財政負担が生じているのが実情です。高齢者医療制度の基本として、社会全体の支え合いという本来の形を考えますと、高齢者にも相応の負担をしていただくのが適当であり、是非この方向で見直していただくようにお願いしたいと思います。
 最後に、資料2-2の9ページです。ここに健保組合と協会けんぽの将来見通しが出ておりますが、これについて一言申し上げたいと思います。
 試算を出していただくことはありがたいのですが、協会けんぽの被保険者の標準報酬の実態を申し上げますと、平成10年度以降、平均約29万円から現在は約27万円という水準まで、ほぼ一貫して下がり続けております。このような実態から見ますと、この将来推計については、少なくとも協会に関しては、前提条件が甘いのではないか、すなわち賃金上昇について、もう少し厳しい前提も併せて提示されなければ、実態と乖離しており、ミスリードになるおそれがあるのではないかと懸念いたします。
 また、保険料率もさることながら、その中で高齢者に係る支援金等がどの程度で推移するかがわかるような資料にしていただけたらと思いますので、よろしくお願いしたいと思います。
 以上です。

○岩村座長
 ありがとうございました。
 それでは、ここまでのところで、事務局の方からお答えいただけるものについてはお願いいたします。

○吉岡課長
 それでは、お尋ねいただいた点を中心にお答えさせていただきたいと思います。
 まず、横尾委員から、国保の都道府県単位化について、75歳以上を第一段階で広域化するということでありますけれども、それ以外についての考察は、という御指摘でございました。
 これにつきましては、お手元の基本資料の2ページにございますように、中間とりまとめでは、75歳以上にするのか、65歳以上にするのかという選択肢でございました。そこで、2ページの下段にありますように、第一段階で対象年齢を65歳以上とした場合の問題点ということで整理をさせていただいております。
 具体的には、仮に65歳以上といたしますと、第一段階で65~74歳の方々の保険料が急激に上下動し、また第二段階の広域化の際にも同様に上下動するということで、混乱のおそれがあるのではないかということ。
 3つ目にありますように、市町村国保によっては、この65~74歳の保険料収入に大きく依存しているところがあるわけでございまして、市町村国保によっては大きな負担増が生じるということなどを考慮いたしますと、第一段階におきましては75歳以上を都道府県単位の財政運営とすることが適当ではないかということを、改めて今回の資料でも整理をさせていただいたところでございます。
 国保と被用者保険に対する財政支援については、それぞれの状況を踏まえた形の制度にすべきではないかという御指摘でございました。御指摘のように、国保と被用者保険はそれぞれの若人部分につきましては、それぞれの状況を踏まえた支援の枠組みにしているわけでありますけれども、75歳以上のいわゆる高齢者部分につきましては、これまで後期高齢者医療制度として一体的な形でこの費用負担の仕組みをつくっておりましたので、やはり75歳以上の高齢者部分につきましては、加入関係が国保と被用者保険に分かれたとしても、引き続き国民全体で支え合っていくという観点から、基本的には同様な財政調整の仕組み、費用負担の仕組みにすべきではないかということで考えているわけであります。
 それから、公費につきまして、今回、75歳以上の医療給付費全体に対して4:1:1という形にしつつ、先ほど申しましたように、被用者保険の方には地方負担を行うことが適当でないという御指摘がございましたので、言わば国保への公費分と被用者保険の公費分を相殺するような形にいたしております。これにつきまして、まさしく75歳以上の医療給付費に対して、国と都道府県と市町村が4:1:1という基本理念に基づいて、引き続き国民全体でしっかりと支えるという形で考えているわけでございます。
 白川委員から御指摘がございました。前期財政調整が今のままということはどうかという御指摘でございました。今回、第一段階の広域化を75歳以上という形にいたしますと、65~74歳の高齢者の保険料だけを取り出すということはできないわけでございますので、この前期財政調整を今の後期高齢者医療制度のような仕組みにするわけにはまいらないわけであります。
 そういうことで75歳以上の財政調整と65~74歳の財政調整の方法は、現行どおりの仕組みを踏襲することが適切ではないか。それ以外の方法はとり得ないのではないかと考えております。
 190万人の被扶養者が被用者保険に戻ることによる負担増分についての御指摘がございましたけれども、各保険者の財政影響につきましては、制度改正全体としての財政影響として、それが適切かどうか。そういう観点から御判断をいただければと思っております。
 それから、公費を実質47%から50%に引き上げるわけでありまして、そのための所要経費が3,500億円ということでございます。この点について、言わば財源として総報酬割による支援金に対する国庫負担の減分が充てられているのではないかという御指摘でございましたけれども、私どもの基本的な考え方としては、この費用負担の論点につきまして、一つひとつどのような形の答えを出すことが適当かという観点からのアプローチを行ったわけでございまして、総報酬割の問題につきましては、まさしく、財政力の乏しい保険者の負担というものが重くならないように、軽くなるようにという観点から、総報酬割にすべきということで考えたものでございます。
 前期財政調整の仕組みについての御指摘がございました。具体的には、前期高齢者に係る後期高齢者支援金分まで調整するのは問題ではないかという御指摘でございましたけれども、前期財政調整につきましては、65~74歳の高齢者が国保に偏在しているという不均衡を調整するためのものでありまして、その不均衡というのは給付費だけではなくて、前期高齢者に係る支援金につきましても前期高齢者の偏在に伴う負担であると考えております。
 確かに前期高齢者に係る支援金については、1人当たり支援金額という形で定められておりますけれども、これは実際にお1人お1人が負担すべき額として定められたものではございませんで、1人当たり支援金額に各保険者の前期高齢者の数というものを乗じたものが各保険者の負担額になっているものでありますので、国保に前期高齢者が偏在していることから、この前期高齢者に係る支援金を含めて調整を行わなければ、国保の負担が重くなるわけであります。
 その他の諸点につきましては、それぞれまた改めてそうした考え方も踏まえ、私どもも対応策について検討してまいりたいと考えております。

○岩村座長
 ありがとうございました。
 それでは、引き続き御発言をいただきたいと思います。
 まず、阿部委員、小島委員ということでお願いしまして、その後、こちらをまたお願いするということにしたいと思います。

○阿部委員
 ありがとうございます。
 本日の基本資料の3ページ「費用負担に関する論点」の最初の○の※のところです。「全年齢を対象とした都道府県単位化(第二段階)の際の財政調整のあり方について、第二段階の前に、保険料のあり方等と併せて具体的に検討し、再度、法改正を行う」となっているわけですが、私はこの改革会議は、第二段階における財政調整とか、保険料とか、公費の在り方というものを議論して、それを最終とりまとめに明示すべきだと考えています。
 したがって、まず保険料については、応能負担を原則としながら、第二段階では全年齢統一の保険料を設定すべきだということを既に申し上げていますし、年齢構成の違いによる財政調整については、65歳以上の全年齢を対象とする、また、公費については75歳以上の医療費の5割を負担するということを申し上げています。このような事項について改革会議で議論し結論を得て、最終とりまとめに反映するということなのではないかと思います。これらすべてが第二段階の前に再度議論するということでは、第二段階へ移行するのにさらに時間を要することになるのではないか。
 また、こういうことを先送りすることによって、第二段階の移行年度を決めることができるのかどうか。前回の改革会議で、私は平成25年の新制度への移行後、最短で2年、最長で4年ということを申し上げました。これに対し岡崎委員から、2年というのは無理があると。市町村国保の決算をしなければならない、1年半ぐらいかかるというお話でした。それは行政の専門家のお話ですから、そのとおりだと思うんですが、やはり4年が限界ではないかと考えています。このことに対する事務当局の考え方を聞かせてもらいたいし、また、座長としても考えてもらいたいと思います。

○岩村座長
 ありがとうございました。
 それでは、小島委員、お願いいたします。

○小島委員
 ありがとうございます。私も簡単に3点ほど申し上げたいと思います。
 1点目は、国保の都道府県単位化の進め方です。第一段階、第二段階という形で都道府県単位化を進めるという方向性については、現実的にはそういう方向であろうと思っておりますので、そこはやはりきちんと第二段階を踏み出すということを前提の上に、その第一段階として今回とりあえず75歳からの医療費について都道府県単位の財政運営とするという方向性を、きちんと位置づけておく必要があるだろうと思っております。
その際に、第一段階は75歳ということで、今回はこれで決め打つという感じがしないわけではないんですが、ここは前回も話したように、中間報告の中では65歳以上ということも考えられるということでありますので、先ほど課長の方からは、65歳にした場合には問題点が指摘されましたので、65~70歳の場合はどうかといったようなことの検討もあってもいいのではないかと思っていることが1点であります。
 2点目は、公費のあり方と財政支援のあり方であります。今回、75歳以上の医療費についての公費負担、実質的な負担の47%を50%に引き上げるということで、そのための財源として3,500億円ぐらいの公費が必要だということで、その大方の部分を協会けんぽの総報酬割導入に伴う国庫負担の相当分2,100億円を充当するという考え方でありますが、これについてはこういう考え方ではなくて、やはり3,500億円の公費負担増については、新たに真水といいますか、その分をきちんと手当すべきだと思っております。
 そして、もし仮に総報酬制を入れる場合は、協会けんぽへの補助に使っている2,100億円については、協会けんぽの保険料は現在9.34%で、先ほど小林委員から指摘されましたように、今回の見通しは甘く、二つの試算とも10%を超える程度で済むという見通しになっているということでありますので、その協会けんぽの国庫負担率16.4%を20%に引き上げるために充当するということも当然考えるべきではないかと考えております。
 それから、今回の後期高齢者医療制度廃止に伴い被用者保険では、新たに75歳以上の方を220万人ほど受け入れるということで、そのうち190万人程度が被扶養者扱いということであります。それに伴う負担増というのが被用者グループでは1,000億円ぐらいあるということでありますので、そういうところにも充当するということも考えるべきではないかと考えております。
 最後に3つ目でありますけれども、特定健康保険の在り方です。今回の考え方については、基本的に75歳以上の方については、任意に特定健保の規約で定めるということでありますので、現実的には、今回の基本的な考え方については妥当であろうと思います。これは全被用者グループでこの特定健保の考え方を導入すれば、それはまさに「突き抜け方式」になると言えるので、その第一歩と受け止めて、今回の基本的な考え方については妥当であると考えております。
 以上でございます。

○岩村座長
 ありがとうございました。
 それでは、齊藤委員、樋口委員までで1回切らせていただきたいと思います。お願いいたします。

○齊藤委員
 小林委員や白川委員の御発言と多少重なりますけれども、2点申し上げます。
 まず1点目ですけれども、今回の推計は、高齢者医療への現役保険からの拠出額の数値と、現役世代の保険料収入に占める割合についての試算が示されておりませんので、次回以降、推計をお願いしたいと思います。
 現在のように、現役保険料からの拠出割合が4割から5割に上るような状況が続くようでは、もはや保険とは言えないのではないかと考えております。現役世代の保険料を支払うことへの納得が得られないと考えます。
 経団連としては、以前から申し上げておりますように、高齢者医療を支えるために、現役世代の保険料収入に過度に依存する形をとると、現役世代の働く意欲、活力をそぐ上に、雇用等にも悪影響を及ぼすと考えています。
 新制度発足時点だけではなく、将来的にも現役世代の保険にこれ以上の負担を求めることのないよう、公費投入を拡充すべきであると考えます。現役の社会保険料から拠出する額に上限を設け、無尽蔵に拠出を求めることのないよう、政府としてしっかり決めていただきたいと思います。
 2点目です。高齢者医療制度の持続可能性を確保する上で、高齢者にも負担能力に応じた適切な負担を求めることが重要だと考えます。この観点から、70~74歳までの患者負担を本則のとおりに段階的に2割とするように求めたいと思います。特にこの点につきましては、政治的には落とされやすいと心配しておりますので、是非しっかりお願いしたいと考えております。
 以上でございます。

○岩村座長
 ありがとうございました。
 それでは、樋口委員、どうぞ。

○樋口委員
 ありがとうございます。3つほど申し上げたいと思います。
 大臣がいらしているので、是非お願いしたいと思います。やはり皆さんおっしゃることですが、あえて言えば国難と言ったら舌禍事件になりかねませんが、もう前代未聞の高齢化の中で、この直面する高齢社会の課題について基本的にだれが責任をとるべきかといったら、やはりぎりぎりのところでは国に責任を取っていただきたい。その意味で公費負担を今、増やさざるを得ないところへ来て、財源もないのにみんながあちこちで「公費」と言いますので、大臣もさぞ頭の痛いこととは存じ上げますが、やはり方向性として、医療、介護、子育て、教育、言ってみれば、広い意味で人間のケアに関わることでは、公費を少し増やしていっていただく。税制改革などの折には、やはり頑張ってこの部分にとっていただくということをまずお願いしておきたいと思っております。
 第2番目に、今のような不況の中で、実はどこの保険者も被保険者も経営者も大変ですけれども、一番大変なのは、数年前の雇用政策の明らかな誤りだと思いますが、やはり若い労働者のところに大きなしわ寄せが行っております。ですから、今、日本経団連の方もおっしゃいましたが、何はともあれ、今は多少ともゆとりのあるところに御負担をお願いして、今を乗り切る以外ないのではないか。ですから、私もその高齢者の1人ですけれども、高齢者でも、少しゆとりがある人の応分の負担はやぶさかでないつもりでございます。経営者団体も、法人税も下がりそうでございますから、どうぞ一定の負担をよろしくお願いしたいと思っております。
 3番目ですけれども、実はこんなことを申し上げるのは、文字通り老婆心と言われてしまいそうで言いたくないんですが、実は今日ちょっと気の重い思いでこの会議に出ております。というのは、昨晩にっぽん子育て応援団という団体の大集会をやってまいりました。団長は、さわやか福祉財団の堀田力さんと私と、若い世代で勝間和代さんと安藤哲也さん。最後に、私はこの問題を世代間対立にしては絶対にいけないと締めくくらせていただきました。シンポジウムの間には、若い世代の方々から、日本は高齢者にはたくさんお金をかけているけれども、そのほんの何分の1しか子どもや家庭にはかけていない。OECD諸国の中でも際立っている、というような意見が幾つか出ました。一定の事実ではあります。私は、やはりこの人生100年を、子育ても高齢者も支えることをすすめようと言って、そこで合意を得て終わりました。
マスコミの方もたくさん来ていらっしゃいますから、このあらゆる福祉の問題を世代間対立をあおるような形ではなくて、社会保障を通して世代間が協力していく。日本ほど0歳から100歳代まで、縦のダイバーシティーの豊かな国はないのですから、この縦のダイバーシティーを生かした豊かな社会をつくるということで進めていただきたい。
 現状は高齢者にかけ過ぎているのではなく、社会保障全体が低いのです。子どもにかけ方が少ないというのは一定程度事実だと思います。今度、政権が代わって、子ども手当という現金給付には異論はございますが、しかし、新子ども・子育てシステムなど、新しい方向性が出されて、子育てや家族支援に少し予算が向くこと、政策が向いていることは賛成でございます。
そうでございますから、この議論も高齢者だけが欲張っているとか、高齢者だけが利益を主張しているということには絶対にならないように。たとえば、70歳の2割負担の問題ですけれども、私は中間的な意見でして、法定どおり2割にいきなりするのではなく、暦年ごとにやっていくという方法ならまあまあだと思いますと同時に、近藤委員の提出資料にもございますが、日本は若い人にも大変格差がある。この10年間に30代の年収は、大体30~50万下がっています。一方で70代にいきますと、所得の格差は若い人よりも大きくなります。ですから、2割というのは、やはり低所得層には1割を堅持する、中間の人には2割になってもらう、現役並みの人は3割負担してもらう。折衷案としてはどうだろうかと思っておりますので、申し上げました。
 以上です。

○岩村座長
 ありがとうございました。
 それでは、ここで1回切らせていただいて、事務局の方でお答えいただけるところをお願いしたいと思います。

○吉岡課長
 阿部委員の方から、第二段階への移行の問題についての御指摘がございました。前回もいろいろと御議論をいただいたわけでありますけれども、阿部委員の御指摘といたしましては、できるだけ早く高齢者と現役世代の保険料水準を一本化させるべきであり、第二段階の具体的な姿を明らかにすべきという御指摘でございました。その点につきましては、各委員さまざまな御意見があろうかと思います。皆さん方の御意見の中では、やはり第一段階の施行を見ないと、最終的にそうした判断ができないのではないか。あるいはまた、第二段階の財政調整の仕組みを今日合意することができるかとなりますと、なかなか困難な面があろうかと思います。
 そういうことで、私どもの方からは、第二段階の移行年次は明らかにする必要があるのではないか。そうでなければ、現在進めている広域化等支援方針に基づく広域化の取組みつきましても、しっかりと進めることができないのではないかという問題点も御指摘をさせていただいたところでございます。改めてこの国保の問題につきましては、運営主体の問題と併せまして、次回御議論いただければと考えております。
 小島委員の方からは、第一段階の広域化について、70歳以上とする考え方があるのかという御指摘がございましたけれども、これについては、65歳以上とする場合と同様の問題点があると思っております。
すなわち、70~74歳の方々の保険料が、第一段階でも、更に第二段階でも上下動するという混乱についてどう考えるかという点。市町村国保によっては、70~74歳の方々の保険料収入に大きく依存しているところがあって、そうした国保が負担増になるという点。これは同じような問題点があるのだろうと思っております。
 齊藤委員、先ほど小林委員からも御指摘いただいた試算の御指摘につきましては、改めて整理をさせていただきたいと思っております。

○岩村座長
 ありがとうございました。
 それでは、先ほどお手が挙がっていた神田委員、三上委員、そして宮武委員のお三方の順番でお願いしたいと思います。
 それでは、神田委員からお願いいたします。

○神田委員
 ありがとうございます。長いこと出していただくようにお願いをしておりました推計が、やっと出たわけでありますけれども、拝見をすると、やはり幾つか心配な点やら、問題点が出てきたような気がいたしております。
 まず、簡単に若干の推計についての印象を申し上げたいと思うんですが、特に医療費の推計については、半年出てくるのが遅かったと思います。これを前提にして、さまざまな豊かな議論ができたと思います。つまり今回、将来どれだけの費用負担になってくるのか、それをどう分かち合うかという議論で、とても残念に思っております。
 それは別として、実は今回出てまいりましたのは、2025年までのそれぞれの節目節目の見通しでありますけれども、2025年というと、団塊の世代がやっとさしかかったという年次です。私どもが知事会の会長名でお願いをしたのは、今後20年ぐらいのものをお願いしました。つまり、団塊の世代が後期高齢者の世代に入り、そして5年なり、10年なりで飛躍的に医療費が増嵩する姿を我々はやはりきちんと抑えていく必要があるだろうと思いましたので、2025年では、残念ながらその後の推移がわかりません。したがって、これはいたし方ありませんけれども、2030年あるいは2035年を追加で至急出していただくことを求めたいと思います。
 それから、医療費あるいは医療給付費でありますけれども、全体の平均の伸び率が2.3%、75歳以上では4.3%というデータが出てまいりました。4.3%は大変な数字だと思います。
 なお、平成20年から平成21年にかけての75歳以上の概算医療費は、5.5%という数字が出ておりますので、この4.3%は大変な数字だと思っていますけれども、更に上に増える可能性も当然あります。1%変わってくると、2025年には3.3兆円ぐらい増加するので、やはり幅を持った推計で物事を議論していかなければいけないと思っております。
 問題は、財政見通しの中での経営負担であります。今回お示しをいただいたものでは、2025年1.3兆円増、1.68倍ということでございまして、大変大きな伸び率になっております。問題は、都道府県がそれを負担するだけの状況に今あるかどうかということでありますけれども、率直に言って、47都道府県並べてみましても、こうした1.68倍という数字に耐え得る県がどれだけあるのか、とても心配をしております。
1.3兆円というのは、先ほどの推計に基づくものでございますけれども、併せてお示しをいただいた試算では、1.8兆円となっておりますので、更にそれに輪をかくわけでありまして、とても心配をしているわけであります。
 先ほど、樋口委員からもお話がありましたけれども、今回の話は何かというと、平成37年に2025年に出ている18兆円を超える公費が必要だと。それをどこから捻出してくるかということが一番重要なことでありまして、現状を踏まえた上で、あっちへ持って行ったり、こっちへ持って行ったりというよりも、これだけ増えるものをどこから恒久財源として出してくるのか。私は、税制改正ということをこの場でもかねてから申し上げておりますけれども、それと切り離して、本当に持続可能な制度設計ができるだろうかと、大変心配しているところでございます。
 これに関連しては、政府与党において、社会保障費の財源確保に向け、税制の抜本改革の方向をとりまとめるという報道にも接しておりますが、今これがどうなっているのか。これは大臣にお聞きするのがいいのか、事務局にお聞きするのがいいのかわかりませんが、やはりそれときちんとにらみ合って事を進めていかないと、後から大変後悔することになるのではないかと思っているところでございます。
 それから、第一段階、第二段階という今回の考え方であります。ステップアップしていくということはよくわかるんですが、第二段階の姿がなかなかよく見えてきていないというのが現実の世界でありまして、国保の中で今、別会計にしようとミシン目が入っているんですね。将来このミシン目をどうするのか。保険料の基準をどうしていくのかということも何もわかっていません。更に言えば、今後の国保のあり方として、兼ねてからここでも申し上げておりますけれども、構造的な問題をどう打開するのか。法定外繰入をしたり、繰上充用をしたりということでやっていることをどうしていくのか。
 それから、広域化に基づいて、保険料をどう統一していくのか。これも何一つ議論されていないし、それを議論せずに、第二段階のことまで今フレームをつくろうとしています。本当にこれでいいのかということは、何遍も繰り返して申し上げてきたとおりであります。
 あと1、2点だけ。
 今回、いろいろ御提案いただいた中を拝見いたしますと、例えば被用者保険に移行する関係で公費を2分の1入れる。その公費2分の1の投入を国と都道府県と市町村で4対1対1。これを地方公共団体が負担しないということであれば、国保に対する国費を削るという論理立てであります。
 しかし、4対1対1というのを地方が負担しているのは、あくまでも地域保険だから地方も負担するということであって、いわゆる被用者保険、職域保険に対して、この都道府県やら市町村が負担するということは、やはり本質的に問題だと思っております。
 財政安定化基金の問題でありますけれども、これから保険料が上がるであろうことをどう調整するか。この財政安定化基金というものが一体何かという原点を見れば、本来そういうものに使うべきではなく、もともと保険料の上昇に対応するということでは、保険料をどうすべきかということでやるべきであります。しかし、財政安定化基金を使うということであれば、本来、今の使われ方が定められております基金とは性格が全く違うので、1:1:1というものではなく、4:1:1という形で、やはり本質的な見直しが必要になってこようかと考えております。
 そのほか、いろいろ申し上げたいことがありますので、必要に応じて、また文書で出すつもりでおりますけれども、私はやはりもっと本質的な論議が必要ではないかと率直に思っておりますので、その点をよろしくお願いいたします。
 以上です。

○岩村座長
 ありがとうございました。
 それでは、お待たせしました。三上委員、どうぞ。

○三上委員
 70~74歳の負担を法律どおり1割から2割に上げるんだという報道がされたことは非常に遺憾なんですけれども、ここでの議論が前もって一般紙すべてに載って、世論が誘導されるようなことというのは非常に問題だと思いますので、御注意いただきたいと思います。
 その上で、資料2-1の4ページの(D)ところに書いてありますが、1割から2割に上げた場合にどうなるかということですけれども、保険者すべての負担軽減につながるんだということが書かれてあります。
 基本資料1の11ページに、凍結した場合の財源は2,000億ほど影響があるんだということで、その分が振り分けられるんだろうとは理解しますが、基本的には70~74歳の方の負担が大きくなって、その分保険者が楽になるんだろうということではないかと思います。
 今日は資料3の9、10ページのところに、年齢別の医療費が書かれてありますが、これで見ますと70~74歳といいますのは、30代あるいは40代の現役世代の方の4~6倍ぐらいの医療費がかかっているということになりますと、2割負担になる場合でも、現役世代よりはるかに多い負担になる。1割負担でも、それでもまだ多いのではないか。70~74歳の方の窓口負担は大きいのではないかと思います。
 その上で、受診抑制の問題ですが、今日は近藤委員も資料を出されています。前回も3割負担なら受診抑制が確実に起こって、死亡率が上がるんだということを発表されました。昨日、日本医師会でも代議員会がございまして、北海道の方の事例が紹介されまして、平成20年、22年の社保、国保の受診延べ日数、あるいは支払い確定額が発表されておりましたけれども、いずれも大きくマイナスになっております。そして救急搬送例につきましても、軽傷と中等傷については減少しておりますが、重症例や死亡例が非常に増えているということがあり、やはり受診抑制が大きな影響をもたらしているのだろうと思います。
 受診抑制というのは、今、負担が低いのでアクセスがよく、軽傷のときに外来等を受診し過ぎるんだということを言われるかもしれませんが、今、さまざまな厚生労働省の中でも戦略研究がされておりまして、いわゆる一般高齢者に対する予防的な介入と、ハイリスクの人たちに対する介入については、ハイリスクの人たちへの介入の方がはるかに費用対効果がいいと言われています。ですから、軽傷のときにアクセスをよくして、そのうちに治してしまって、重症化をさせないということが医療費抑制には一番効くのではないかと思いますし、医療保険の理念にものっとっているのではないかと思いますので、是非この1割から2割に上げるということについては、再考いただきたいと思います。
 保険料についてお願いしていた資料は、資料3の20ページにも載せていただいて、各被用者保険の保険料についての比較を出していただき、ありがとうございます。これにつきましては、先ほどから現役世代の負担が大きくなるのではないかということでしたが、この資料3の3、4ページに、健保組合及び共済組合の保険料率の幅が書かれてあります。健保組合の方では3.1%から10.0%までの開きがあります。10%のところはやはり負担が大きいと感じますが、3.1%のところはやはり負担が少ないのではないかと思いますし、国家公務員共済は5.17から7.15の割合でありますので、これも負担が大きいとは言えないのではないかと思います。
 その上で、20ページにありますように、協会けんぽ並みに引き上げた場合の財政的な影響が1.4兆と0.3兆と1.7兆円と出ているわけでありますから、こういった財源が財政調整の中に用いられれば、相当楽な形になるのではないかとも思います。
 ただ、先ほどありましたように、保険料率をどこまでも上げるというものではありませんので、一定の上限を加えて、当然公費を投入するということは大事だと思います。
 基本資料の6ページに、公費を5割から6割に増やすということが踏みこんで書かれたということは、今回初めてということで、第一歩ということで、これは歓迎させていただきたいと思いますので、御検討をよろしくお願いいたします。
 以上です。

○岩村座長
 ありがとうございました。
 それでは、事務局の方でお答えいただければと思います。

○吉岡課長
 まず、神田委員の方から5点ほど御指摘をいただきました。
 医療費の推計について、2025年度以降の推移がわからないという御指摘でした。先ほど御説明させていただきましたように、今回の推計は前回の平成18年度の制度改正時の試算と随分違った数字になっております。医療費全体として9兆円ほど下方修正になったということでありますけれども、これはその前の時点の医療費の実績がかなり大きく違ってきたということがあります。やはり短期保険である医療制度につきまして、長期の推計を出すということは非常に無理があるということは御理解をいただければと思っております。
 2つ目に財源の御指摘でございました。最終的に成案がまとまった際には、当然ながら国といたしましては、地方負担分も含めてその必要な財源を確保するということを大前提として考えなければいけないものだと思っています。また、そうでなければ閣議決定という形で法案は出せないということでもございます。
 そうした中で、税と社会保障の議論の御指摘がございましたが、与党の方の議論は既に始まっておりますが、政府の議論も間もなく開始されると聞いております。今回の私どもの案でも、定期的に将来の公費のあり方などを検討するという仕組みを法律の中に盛り込んではどうかという御提案をさせていただいておりますが、その具体的なあり方につきましては、そうした税と社会保障を一体的に議論する場でも、今後十分に御議論をいただく必要があるのだろうと思っております。
 第二段階の国保の広域化についての具体的な議論がないのではないかという御指摘でございました。前回、知事は御欠席でございましたが、この点につきまして、前回もさまざまな御指摘をいただいたところでございます。また改めてこの問題につきましては、次回の会議で御議論いただければと思っております。
 それから、4:1:1という公費負担の内訳についての御指摘がございました。これは後期高齢者医療制度からというよりも、かつての老人保健制度におきましても、加入関係が被用者保険と国保に分かれておりましたが、4:1:1という負担でございました。
 今回、被用者保険に地方負担を入れない一方で、国保の高齢者医療分は、引き続き仮に国、都道府県、市町村は4:1:1と負担するということになったとすれば、国は3,300億円の負担増、都道府県と市町村は1,700億円ずつの負担減という形になるわけでございまして、このように高齢者の加入関係が変更されることのみを理由として、地方が少し手を引かれるということについては、考えることはなかなか難しいのではないかと思っております。
 財政安定化基金の財源についての御指摘がございました。財政安定化基金につきましては、後期高齢者医療制度と同様に、介護保険の方にも仕組みがございまして、これも国と都道府県と保険料が1:1:1ということでございます。医療保険につきましては、医療給付費の公費負担以外に保険基盤安定制度とか、高額医療費共同事業とか、さまざまな面で公費を投入しているわけでありますが、その負担割合というのは給付費に対する定率負担割合、すなわち4:1:1と同じものではないわけでありまして、それぞれの制度ごとに考えていく必要があるだろうと思います。介護保険とも1:1:1ということになっている中で、今回この負担割合というものを変える必然性は、私どもとしてはないのではなかろうかと思っております。
 三上委員からは、窓口負担についての御指摘がございました。この点につきましては、先ほど来、各委員からも御指摘があったところでございますので、最終的なとりまとめに向けまして、また改めて御議論をいただく必要があろうかと思いますけれども、1点だけ私どもの方から申し上げさせていただきますと、この患者負担につきましては、どこの医療保険制度に加入しても、給付が公平なものになるように、年齢階層別の医療費の水準に着目しまして、小学校入学前は2割、それ以降69歳までは3割、そして70~74歳は法律上は2割とし、75歳以上は1割という形で、制度横断的に年齢に応じて患者負担割合を設定する方向で今日まで見直してきたところでありまして、この仕組みというのは、一定の合理性があると考えております。
 また、定率負担が高額となる場合の軽減を図る仕組みとして、高額療養費制度があるわけでございます。特に低所得の方の負担に配慮する必要があると思っております。高額療養費の自己負担限度額につきましては、2割になっても低所得の方は1割負担の方と同額になるわけでございます。必要な医療まで抑制されることがないような配慮というものが、この高額療養費制度で行われるのではなかろうかと思っておりますが、いずれにしても、この点はまた改めて御議論いただければと考えております。

○岩村座長
 ありがとうございました。
 それでは、お手が挙がっておりました宮武委員、お願いします。

○宮武委員
 大臣がおられる間に話したかったんですが、公費のあり方という基本資料です。もう一度繰り返しになって恐縮ですけれども、6ページ目です。何人かの方が御指摘になりましたけれども、現役並み所得のある方に対しても公費の補助をつけることによって支援金の軽減をするということで、その3,500億を投入ということですが、ここは4:1:1ですから、国費という面で見れば2,200億円とか2,300億円の軽減ということです。併せて次のページを見ると、総報酬制にすることによって、協会けんぽに対する支援金の軽減策がなくなるので、2,100億円が不要になるということがありまして、それでほとんど差し引かれ、適用関係の分も含めるとちょうどゼロになる。公費負担は700億円増えるけれども、その内訳で言えば国費はゼロで、都道府県が200億円、市町村が500億円という分担になるんですね。
それにプラス70~74歳までの方を2割負担することによって、国費は500億円ほど低減されるわけですから、合わせると何か国だけが焼け太りみたいになってしまって、これで本当に皆さん納得するのかなと、第三者から見ていても、そう思わざるを得ない。
民主党は、医療と介護の再生をマニフェストに掲げて政権の座に就かれました。OECD加盟国平均並みに医療費を上げると高らかに宣言されたわけでありますので、私は前の大臣と前の政務官がおられたときに、是非言いたかったんですが、お辞めになったので大変申し訳ないですけれども、引き継いでおられるわけです。公費のあり方については、事務局は制定された条件の中でしか組めないですが、これこそまさに政治主導で、公費というものをどういう形で増やしていくのかということを、是非この会議を通して決意を表明していただきたいと思います。
 私は社会保険である限りは、保険料がやはりメインでありまして、保険料でできる限りカバーしていくというのが当たり前で、日本の被用者保険の保険料は、フランスやドイツに比べればちょうど半分程度です。フランスもドイツも14%~15%の保険料に耐えているんですね。しかし、公費のあり方として考えるときに、まず優先的に何に公費を使うべきだということになると、やはり社会保険の最大の弱点は、支払い能力がない人、乏しい人が制度の外に追いやられてしまう。その保険料や一部負担金の減免に公費を重点的に投入することを考えていただきたいと思います。
 なおかつ国保の場合は、給付の半分は保険料、半分は税金という大枠はなかなか壊すことができない。しかし、低所得者の負担減免は福祉的な分野・措置という考え方で公費を投入する。本体の財源構成とは切り離して、別の財政構成で公費を投入することは可能ではないか、是非そういうことをお考えいただきたいと思っております。
 以上であります。

○岩村座長
 ありがとうございました。
 それでは、お待たせしました。見坊委員、どうぞ。

○見坊委員
 私自身の体調が悪くて欠席したわけではなくて、家内の介護が非常に目が離せなくなったということで、前回は欠席をいたしました。そういう状況で、医療保険、介護保険を主に活用させていただいておりますが、実際には家族でなくてはできないことが非常に多いわけで、介護保険にしても、医療保険にしても、あるいは年金その他でも、財布は1つです。ここからすべて出しております。
 今回の高齢者医療制度改革といったものに、私たちは非常に期待いたしました。しかし、実際のところ、この論議が進めば進むほど、事務当局の苦心は痛いほどわかります。これだけの膨大な資料をそろえてやっていますが、ただし、この資料を理解するということは、私どもは非常に困難です。一般の高齢者においては、ますます困難であります。
何が一番問題になっているのか。我々は今回の政権交代に非常に期待したわけであります。今、政務官もいらっしゃるわけでありますが、高齢者自身は非常に期待をいたしました。特に社会保障制度のあり方、これの基本に触れる問題だと思っております。高齢者医療制度は、ただ高齢者の医療だけの問題ではないんです。国民の生活実態に合った制度の改革でなくてはならないと我々は主張してまいりました。しかし、国会で決まったことについては、我々は従ってまいりました。今回の高齢者医療制度改革会議もあと3回で締めくくらなくてはいけないという状況でありますが、その出口が見えない。また、どういう姿になっていくのかということもわからないと実感としてとらえております。
 厚生労働省では、5月に全国のアンケート調査をされました。このアンケート調査は、いろいろな窓口負担についても聞いております。それを有識者と一般の方に分けてやっていますが、老人クラブは全国で会員総数が700万を超えるわけであります。そのリーダー層に対して、同じようなアンケートをやりまして、厚生労働省のアンケートと比較して見てまいりますと、ほとんどその内容はそれほどの差異はないです。
この窓口負担をどのぐらいにするか。1割負担の保険料でいいか、あるいは2割にした方がいいのか、現役並みの3割に近づけた方がいいのか。このアンケート調査を比較しますと、有識者も一般の方も、また現役世代もそうです。ほとんど現状維持、1割負担を支持しております。特に65~74歳の高齢者は64%が1割負担を支持しています。窓口負担を増やす方向が正しいという回答は、全体で15%になっております。
今回の窓口負担の問題に対しまして、せっかくあれだけの今までなかったアンケート調査をやったんですから、そのアンケート調査の結果を尊重していただきたいと思っております。応能負担ということが我々の主張であります。応能負担をごっちゃにしていただきたくないと思っておりますが、保険料に関する応能負担と窓口負担に対する応能負担ははっきり分けていただきたい。
 私もそうでありますが、窓口負担が1割が2割になるということは、医療にかかっている高齢者にとっては大変なことです。2倍になりますからね。これはそう簡単に結論づけるわけにはいかない。特に窓口負担というのは、医療にかかっている人はあれですが、この医療にかかる人は、特に低所得者が多いんです。しかも、低所得者自身も窓口負担、医療だけではありませんからね。その点で、増えることに対しては非常に反対をしております。
年金が減る、あるいは金利はゼロ、そしていろんな点で経済的に負担が増えていく。その中で少子化であり、高齢者が増える。その高齢者は医療費を食いつぶすような関係になっているということで、高齢者はもっと負担しろと簡単に言われますが、その負担に耐えられる人たちは、かなり裕福なんです。余裕のある人。低所得者は耐えられないんです。だから昨日まで窓口に来ていた人が来なくなったという実態は、数字ではわかりませんが、お互いそのことを見ておるわけであります。2割負担を凍結しているのはなぜだろうと。2割負担ということを凍結するというのは、高齢者医療制度を廃止するということを公約にされた新しい政権の約束だと。そして、それはこれから3年後に実施するのではなくて、直ちに実施したと同じような姿にしてもらいたい。そういうことで、2割負担というのは凍結だと。特例ではありましょうが、将来この方向付けとして、2割負担にするということは、あるいは考えられるわけでありますが、今は社会情勢の中、非常に上から考えますと問題で、多くの高齢者は財政のつじつま合わせではないかという見方をしています。問題は公費です。新たな恒久財源の確保がなければ、事務当局は本当に大変です。
 15年後のことをいろいろ試算しておりますが、今の我々高齢者の多くは、10年間も生きているかどうかわからない。今の医療をどうしてくれるんだということで、いろいろ要望しております。だから、一貫性がないと見ておりますのは、高齢者区分です。保険料は2区分、窓口負担が3区分、高額療養費の自己負担の限度額もまた2区分。なぜ75歳なのか、なぜ65歳なのか、70歳なのか、わからないんです。ですから、こうした点は、やはり知恵を出していただいて、国費で改善していただきたいと思っていますが、時間がかかりますね。
政務官もおられますから、政治主導で今回この会議は開くということで約束されたものでありますから、政治的な判断というものを明確にして、公費負担を増やすことを是非御検討いただきたい。そういうことで論じなければ、ただ皆さんの意見を聞いておるだけということでやられていないで、座長も多分おまとめには非常に苦労されるだろうと思っていますが、よけいなことかもしれませんが、一言申し上げました。

○岩村座長
 どうもありがとうございました。
 そうましたら、近藤委員、どうぞ。

○近藤委員
 今日、私が発言したい内容は、資料6『委員配付資料』にまとめてあります。それを見ていただきながら意見を述べたいと思います。資料がいっぱいあるようですが、後半はその根拠資料で、私が言いたいことは1ページにまとめてあります。
 「医療費窓口負担に関する意見書」と書いてあるところです。
 結論から言えば、医療費の窓口負担を、今回70~74歳で1割から2割へ引き上げることに反対です。本則に戻すだけという話ですけれども、実態から見れば引き上げです。あと、本則に戻すことを急ぐべきだという意見はあるんですが、いまは法律を変えようという話をしているわけです。どのような法律、制度にすべきかという話ですので、2割に引き上げるべきではないと考えております。
 では、その財源はどうするのかという御指摘については、若い者への負担が多過ぎるのはいけないというのは、私も同感するところがあります。それを高齢者自身に御負担いただくのなら窓口負担の代わりに保険料か税で確保するという選択肢も、少なくとも同等の重みで検討すべきではないか。個人的には、保険料でご負担いただくのが一番現実的かなと考えております。
 「背景と対案」というところですけれども、2,000億円の財源が要るんだ、それを工面しなくてはいけないんだという事情はよくわかります。あと、現役世代の負担、国庫も限界だということもわかります。では、高齢者に負担していただこうというときに、方法が2つあります。
 1つは、事後的に、医療を受けてから窓口で負担するという方法です。それ以外に、事前に、医療にかかる前にだれが病気にかかるかわからないので、みんなで均等に負担しましょう。それを保険料、税で賄おうという方法があると思います。
 一長一短あるんだという論議もあろうかと思いますが、以下で述べる理由で、私は事後的に窓口で負担する割合を増やすというのは、問題点の方が多い、副作用の方が多いと考えて、反対という意見を述べたいと思います。
 窓口を引き上げることには、長所はいろいろあるんだ、無駄な医療を抑制できるんだという意見がありますが、逆に副作用もあるということもわかっております。国際的には、いろんな国がやった政策の影響を分析した結果から、必要な医療も抑制されているというデータがいっぱい出ております。そのことに基づいて、あとは国内の実態から見ても、既にそのような現象があるということをお示しした上で、反対と述べたいと思います。
 そもそも受益者負担だからいいではないかという意見があるんですけれども、「病気になりたい」「医療をたくさん受けたい」「薬をいっぱい飲みたい」という人が果たしているのか。「受益」という言葉が、医療に果たして当てはまるだろうかということをまずお考えいただきたいと思います。望まないんだけれども、病気になったのでやむを得ず受けるという方が多いのではないか。むしろ、医療を利用せずに済んだということの方が幸運といいますか、恵まれている。医療費かかる費用に対して応分の負担を、支払い能力に応じて出し合うというのが社会保障の原点ではないかと思います。
 それから、先ほども言いました必要な医療も抑制されるという実態です。これについては、根拠資料の2ページに、国際的な経験を載せました。日本ではこういう医療に関わる研究が足りないのですが、海外ではこういう研究がいっぱいやられております。WHOだとかOECDがそういうレポートを出しておりまして、ここではWHOがまとめた医療財源論という本から記述を抜粋してきました。今までいろんな国で自己負担を上げた後、どのような現象が起きたかということを総括的にレビューした結論を、そこに5~6行で書いてあります。
逐一読み上げることはしませんが、不要な医療が減るのも事実だけれども、必要な医療も減っている。例えば糖尿病に対するインシュリンのような本質的な薬も、費用負担を理由に使わなくなっている人が多数発生しているというのが国際的な経験で、自己負担を増やして、財源確保ということは勧められないというのが国際機関のレポートの結論です。
 日本で実態はどうかということについての資料が1ページです。
 上の段は以前にお示ししたものです。低所得の人ほど受診を控えている実態があるというのは、すでにお示しいたしました。前回は割愛した中に、1割負担であった70歳以上で受診抑制した方の割合と、65~69歳、3割負担であった人たちが受診を抑制した割合も、この論文の中にはありました。それをグラフにして、下に付けてあります。一目でわかるように、3割負担であると、より多くの人が受診を我慢しているという実態があります。
 先ほど、高額療養費制度等、低所得者に対する配慮の制度はあるというご意見がありました。あの制度は、とてもいい制度だと思っていますが、その制度が既にあった時点での、2006年の調査です。それでも、これぐらいの差がはっきりと出ていますので、1割でもひょっとしたら受診抑制があるかもしれない。ただ、高所得者でも忙しいからとか、医者は嫌いだからと我慢している人もいるようですし、窓口負担をゼロにするというのは、今の全体の状況から難しいかもしれません。が、少なくとも実態として緩和措置で1割になっておりますので、この1割を維持していくべきではないかというのが私の意見です。
 次に、自己負担を増やすことで公的な医療費が安上がりに済むということを、どの国でも期待して導入しているんですが、意外にその効果がないよということが先ほどのレポートにも書かれております。2ページ目の資料2のところです。
 自己負担で得られる総収入は期待するほどではないというのが、いろいろな国で自己負担を増やした結果です。長期的な効果をモニタリングすると、結局自己負担が上がると、低所得の人たちが窓口で払えない。それはかわいそうだから、税金で補てんしようという話になると、結局公的に負担する量は期待したほど減らなかったというのが国際的な経験です。
 そのもう一つの現れは資料3になります。窓口負担が増えるにつれて治療費未払いが増えていく。民間病院に行きますと、入院したいんだったら入院保証料を払ってくださいというところが、この間、未払い者が増えたことに伴って、民間病院の経営努力として現れております。その結果、お金のない人たちは公的な市立病院等に行きます。そこで未収金がより増える。結局、それを税の一般財源で補てんするということになる。ここでも結局自己負担を増やして、公的な負担が減るかといいますと、別のところで一般財源で負担せざるを得ない。結局、公費で負担する量は減らない。これが日本でも起きておりますし、国際的にもそのような経験をして、自己負担を増やすというのは、余りいい方法ではなさそうだということがレポートにまとめられております。
 A4の1枚の方に戻りますけれども、黒ポツの4つ目になります。低所得者層には、実は病気が多いという実態があります。これは日本にもあります。そうしますと、窓口の負担、事後的に医療にかかった人の負担を増やすということは、実質的に逆累進的な、低所得者の人ほどたくさん医療費を負担する、高所得の人は病気が少ないので結果的に負担が少なくなる、という実態をもたらすことがそこからわかります。
 それらの結果が、甚大な健康被害に及んでいなければ許容範囲なのかもしれません。が、資料4に入れましたように、これは前回もお示ししたものですが、現在の日本で、男性で特に、死亡率で3倍もの差があります。これをゼロにするのは、現実的には難しいのかもしれませんが、3倍の死亡率の差がある社会をよしとするのか、3倍は少し著しいというので抑制しようとするのか、ここが今、問われているのだと思います。
 ちなみに、数字は切り方によって幾らでも動く面がありますが、WHOのSolid Factsというレポートの第1章の社会格差の中では、「最下層の人たちの死亡率が少なくとも2倍に達する」というのが国際経験でして、日本には、それを上回るかもしれない実態があります。それがあるということがわかっていながら、あえて低所得者が医療に受けられない制度設計にするんですかということが今、問われているんです。そう理解して、私は反対意見を述べています。
 このような意見を述べると、「研究者でそういう極端な意見を言う者はよくいるよな」と思われるかもしれません。しかし、実は日本政府も入っているWHOが、加盟諸国に勧告していることなんです。いろんな国が医療費をどう賄おうかということでいろんな努力をした。それでいろんな期待した効果もあれば副作用もあるということがわかってきた。その経験をまとめて、そのことを踏まえよう。一方で、低所得者層の健康が悪い状態がこんなに歴然としてあるんだということが2000年前後から次々と研究成果がたまってきた。多くの国々で「こんなに大きいとは思っていなかった。こんなにあるということが事実だとしたら、これは対策をとるべきだ」ということで、WHOの専門委員会がレポートを出しただけではなくて、2009年のWHO総会で決議を上げて、加盟諸国に対応を迫っております。
その中身は、資料5のところに、その決議から幾つか文章を抜粋しておきました。今、私が述べてきたようなことが書いてあります。社会階層間で健康の格差があるという事実をしっかり踏まえて対応を練るべきである。それが行政の責務であるということが書かれております。法律によって、弱者を社会的排除、医療を受けられないというのは社会的排除の1つだと思うんですが、法律によって弱者を社会的排除から守ることができる。そのことを考慮して、各政府はその責務を果たすべきだということが加盟諸国に問われております。WHOは日本も入っている国際機関です。今、法律を変えようという論議をしているわけですから、是非そのWHOの決議に沿って、その人たちを排除しないような制度設計にすべく、最終案のとりまとめをしていただきたいと思います。
なお私の意見は、70~74歳のところだけという意見ではありません。中長期的には、全年齢層で自己負担を下げるべきだと考えております。
 資料の下の方に、かわりの財源としては保険料で賄うべきだと。その方が社会連帯で健康格差の抑制に作用すると期待できるということを書いております。
  財源はどうするんだということにつきましては、公費を増やすべきだというと、この場で全員一致するんです。けれども、公費はただちに手に入る見込みがあるかと聞かれると、これは政務官に聞いた方がいいのかもしれませんが、今も論議になっています。税で確保する見通しがどれほどあるかというと、年金にも持っていかなくてはいけないとか、いろいろな制約もあります。そのことを考えますと、医療にだけ使う保険料というのが、より現実的ではないかなと考えます。
 事務局にお願いをして計算してもらったところ、2,000億円を同じ年齢層、70~74歳の方たちに事前に保険料で負担していただく場合の額を機械的に試算したものは、1か月約440円御負担いただくと、この2,000億円をねん出することができます。窓口負担を2割から1割に抑えるかわりに、月々の平均で440円を負担するのがいいのか。あるいは保険料は440円安いけれども、窓口負担が2割に上がる方がいいのか。是非そういう選択肢を示して、国民に問うていただきたいと思います。
 もし保険料で負担するという案を国民が支持しないというのであれば、医療政策を専門とする者の意見としては、譲れない根拠がありますが、国民が窓口負担の方がいいというのであれば、それは受入れます。しかしその場合にも、是非その影響をモニタリングしていただきたいと思います。これもやはりWHOが、4ページの資料6、健康インパクト評価というものをやるべきであるということをやはりあちこちで書いております。これは環境インパクト評価のように、環境への影響も重要だけれども、人間の健康に対する影響も重要だと、あらゆる公共政策において、人々の健康にどのような良い影響、悪い影響があるのかをモニタリングすべきだ、および事前にアセスメントすべきだということを述べております。高齢者の医療制度というのは、高齢者の健康にまさに直接影響する政策です。この窓口負担を引き上げるという政策で、受診抑制が増えないのかどうか。そのために健康格差が広がらないのかどうか、そういうことを是非政府がモニタリングしていただきたいと思います。もし協力を求められれば、喜んで協力したいと思います。
 以上です。

○岩村座長
 ありがとうございました。
 事務局の方から何かございますか。

○吉岡課長
 先ほど宮武委員の方から、今回の財政影響は国だけが負担が楽になっていないかという御指摘をいただきました。
 また、先ほど来、47%の公費を5割に引き上げる話と、総報酬割にする話が、何かトレードオフのようなものではとの御指摘をいただいているわけでけれども、私どもは今回の費用負担の論点一つひとつについて、どうあるべきかという観点から答えを出してきたところでありまして、例えば公費を47%から50%に引き上げるという点につきましては、やはり現行制度、そして新しい制度の下で現役並みの高齢者の方に公費をつけないということは、やはり理由としてなかなか乏しいものがある。ここはやはり国民の皆さんの御理解をいただくためには、5割に引き上げる必要があるのではないか。
 一方で総報酬割の問題につきましては、負担能力の乏しい保険者の負担を軽減するという観点から必要ではないかということで、一つひとつ答えを出した結果として、財政影響試算というものができ上がっているということであります。
 御指摘のように、公費の内訳を見ますと、国の負担増はなくて、地方の負担増だけとなっておりますけれども、そもそも75歳以上の高齢者の医療給付費に対します公費の負担割合が4:1:1ということでありますので、2025年度にかけての実額の変化で見ますと、国は毎年0.3兆円負担が増加する。都道府県、市町村はそれぞれ毎年0.1兆円ということでありますので、制度改正による地方の負担の増加を大きく上回って国の負担が増加するということも、数字上の事実であるということを申し上げさせていただきたいと思います。
 また、費用負担の問題につきましては、先ほど来、さまざまな御意見がございましたので、年末に向けまして、改めてまた御議論をいただきたいと考えております。

○岩村座長
 ありがとうございました。
 横尾委員、お願いいたします。

○横尾委員
 我々は現在の制度を運営している立場なのですけれども、そういう立場から一言だけ申し上げたいのです。
 費用負担については今回射程に入っておりませんが、実はいただいた資料4の21ページに、各公聴会での意見が出ています。その中で岡山県の方の御指摘に、「制度変更で幾ら予算はかかるか」という御質問に対して、厚労省からの回答は、「最も経費がかかるのはシステム改修費であり、特に市町村国保のシステム改修費に多大な費用を要する」と回答されております。まさにそこは非常に大きな問題だと思いますので、そういった試算もしていただく必要があると思います。
 あと、個人的にも存じ上げておりますSEクラスの方とお話をしてみましたが、かなり複雑で、これは本当に相当な費用がかかるそうでございます。今の制度をやめるのに費用がかかり、新たな制度をつくるのに費用がかかります。その合計額は、恐らく事業仕分けを数回する分ぐらいの費用が捻出できる。このことは、やはりきちんと分析しておかないと、結局それは公的負担になっていくわけですので、重要だと思います。特にそのときに、今回の制度は市町村から見ますと、「国がやめ、国がつくり直す制度であるならば、できれば全部国で負担していただきたい」というのが大方の自治体の声ではないかと思います。

○岩村座長
 ありがとうございました。
 それでは、政務官、お願いします。

○岡本政務官
 皆様、本当に今日は熱心な御議論をありがとうございました。所用がありまして、遅参をいたしましたことは申し訳ありません。また、議事録を見させていただいて、今日の議論に私も追い付きたいと思っております。
 政治主導で民主党が始めたということで、税と社会保障のあり方はどうなのかという御議論を最後にいただきました。党の方では、既に税と社会保障のあり方という全体の話がスタートしてきております。
また、政府の方においても、そういった全体的な議論はスタートをするわけでありますが、どなたかの委員がおっしゃられましたように、こういった社会保障の中でも、負担と給付のあり方というのが一定程度見えるような仕組みをつくるというのは、現実的には必要だと今でも思っておりますし、そういう意味で、すべて公費という名前で、どこに使うかわからないようなお金で全部集めてというわけにはなかなかいかないということは、御理解をいただきたいと思います。それは皆さんお分かりいただいていると思います。
 その中で、先ほど言われました窓口負担でいくのか、保険料でいくのかという負担のあり方を含め、また近藤先生から出た、大変興味深い資料。低所得な方ほど受診率が高いという話。逆もあるのかと。要するに、医療を必要とする方が多いという話。これは、医療を必要とされている方だからこそ、逆に言うと働けなくて低所得という裏の見方もあるのかもしれません。そういう意味では、こういった資料をどういう角度から見るのかということも含め、せっかくいただいた資料でありますから、また事務方の方でしっかり吟味をしていきたいと思っていますし、今、お話をさせていただきました最終的には税と社会保障全体の政治決着、これは年金も含めてですけれども、していくことにはなりますが、これは官邸の方とも議論をしながら、高齢者医療のあり方については、ここまで各委員の皆様方に先行して議論していただいてきております。他の社会保障制度と切り分けて、できれば速やかな結論を得たいと思っておりますので、このとりまとめは、確かに回数が限られてくるとは思いますけれども、闊達な御議論をいただいて、また、いただいた御議論は、事務方の方で真摯に検討するように、私の方からも話をしたいと思っております。今日の各委員の皆様方の見解、本当にいろんな意味で大所高所からいただいたと考えておりますので、感謝を申し上げたいと思います。ありがとうございました。

○岩村座長
 政務官、ありがとうございました。
 今日は費用負担のあり方ということで、公費の問題、被用者保険の間での総報酬制を導入するかどうかという問題、あるいは70~74歳の患者負担の問題など、多方面から御議論をいただいたと思います。そういったことも、今日の議論を踏まえて、事務局の方でまた検討を進めていただいて、とりまとめに向けて、更に議論を進めていきたいと考えております。
 座長の不手際で時間が超過してしまって申し訳ございませんが、今日はこの辺で改革会議を終了させていただきたいと思います。
 今後の予定でございますけれども、次回の第12回におきましては、運営主体及び医療費効率化、積み残しとなっている課題について御議論をいただきたいと考えておりますので、よろしくお願いしたいと思います。
 次回の日程でございますけれども、既に事務局の方から御案内が行っていると思いますが、11月16日火曜日の午後5時30分~7時30分までということで予定をしております。詳しいことにつきましては、事務局の方から改めて御連絡を差し上げますので、よろしくお願いしたいと思います。
 それでは、今日は大変遅くまで、お忙しいところをありがとうございました。これで終了させていただきます。


(了)
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