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2010年7月7日 第11回 厚生科学審議会感染症分科会 予防接種部会

健康局結核感染症課

○日時

平成22年7月7日(水)
14時~17時


○場所

厚生労働省 省議室


○議事

【出席委員】(50音順)
飯沼委員、今村委員、岩本委員、岡部委員、加藤部会長、北澤委員、倉田委員、
黒岩委員、澁谷委員、廣田委員、古木委員、保坂委員、宮崎委員、
【参考人】
渡邉参考人、神谷参考人、高畑参考人、岡田参考人
【行政関係出席者】
上田健康局長、中尾大臣官房審議官、福島健康局結核感染症課長、
正林健康局結核感染症課新型インフルエンザ対策室長、高井医薬食品局長
熊本医薬食品局総務課長、亀井医薬食品局血液対策課長、
鈴木新型インフルエンザ対策推進本部事務局次長、松岡健康局生活衛生課長、
佐原大臣官房企画官、土肥健康局健康対策調整官


○事務局次長(新型インフルエンザ対策推進本部) 定刻より若干早いですが、定刻に来ら
れる予定の先生方はお揃いのようですので、「第11回厚生科学審議会感染症分科会予防接種
部会」を開催させていただきます。事務局より、本日の先生方のご出欠状況についてご報告
いたします。本日は、宇賀委員、木田委員、坂谷委員、櫻井委員、山川委員からご欠席のご
連絡をいただいております。また、今村委員、宮崎委員は遅れて出席されると伺っておりま
す。したがいまして定足数に達しており、会議が成立することをご報告いたします。それで
は座長から、議事をお願いしたいと思います。
○加藤部会長 皆さんこんにちは。お暑い中、お集まりいただきましてどうもありがとうご
ざいます。ただいまより議事に入りたいと思います。まず事務局より、本日のヒアリングの
趣旨、ならびに目的と資料の確認についてお願いします。
○事務局次長 前回までの引き続きですが、第一次提言で詰めるべき事項として6つ事項を
挙げていただいておりましたが、今回、そのヒアリング及び議論の整理の最終回で、「疾病
の追加」と「費用の負担」の2項目についてヒアリングを含めてご議論をいただきたいと思
います。
 資料の確認ですが、机上に座席表がありまして、委員名簿はいちばん後ろに付いているか
と思います。議事次第の裏が資料の一覧になっています。資料1は、本日のプレゼンテーシ
ョンについてということで、疾病の追加についてはテーマ丸1です。感染症研究所の渡邉所
長、神谷予防接種推進専門協議会の委員長からプレゼンをいただきます。そのほか、被接種
者のお立場から高畑参考人からもプレゼンをいただきます。テーマ丸2の費用負担について
は、事務局からご説明を申し上げます。
 資料2は、ファクトシートについてということで、過去の経緯等についてまとめてありま
す。資料3は、ファクトシートの本体です。資料3-1はヘモフィルスインフルエンザ菌b
型ワクチンに関するファクトシート、いわゆるHibです。
 資料3-2-1、肺炎球菌の小児用のもの。7価のコンジュゲートワクチンについてのファク
トシートです。資料3-2-2は、肺炎球菌の成人用ポリサッカライドワクチン、23価のファ
クトシートです。資料3-3は、ヒトパピローマウィルス(HPV)のワクチンに関するファクト
シートです。資料3-4は、水痘ワクチンに関するファクトシートです。資料3-5は、B型肝
炎ワクチンに関するファクトシートです。資料3-6は、おたふくかぜワクチンに関するファ
クトシートです。資料3-6は、赤字のところ、15頁だけ差し替えが1枚あります。資料3-7
は、ポリオワクチンに関するファクトシートです。資料3-8は、百日せきワクチンに関する
ファクトシートです。ここまでがファクトシートです。
 資料4は、ファクトシート作成をお願いした国立感染症研究所の渡邉所長から、作成に関
わった経験からのコメントをいただいております。また資料5は、推進専門協議会の神谷委
員長から、コメントをしていただいた立場からお話をいただきます。
 資料6は、被接種者の立場から細菌性髄膜炎からこどもたちを守る会の高畑事務局長にプ
レゼンをいただきます。資料7は、個別ワクチンの評価・分析の進め方についてです。ここ
までがワクチン疾病等の追加に関する資料です。
 資料8は、費用の負担の現状についてということで、事務局から申し上げます。現在、ど
のような仕組みになっているか、諸外国はどうか。調査をした結果、自治体ではどうなって
いるかということについて記したものです。資料9は、本日ご欠席の木田委員から、1枚紙
の意見の提出をいただいております。そのほか、参考資料として、これは廣田委員の求めに
応じての資料です。肺炎球菌による疾患の予防で、米国のACIPの勧告の本体です。もう1
つ、全員に配付しているものが、プレスリリースです。これは「新型インフルエンザワクチ
ン開発・生産体制整備臨時特例交付金」交付事業の採択結果についてです。これはまたあと
でご説明申し上げます。
 机上のみ配付している資料は2つあります。1つは、ピンク色の冊子です。これはACIP
の勧告で、インフルエンザの予防と勧告というものです。
 もう1つは、HPV、ヒトパピローマウィルスについてのACIPの検討の経緯がわかる、
横文字の細かい資料で恐縮ですが、机上のみ配付しております。乱丁、ご不足等がありまし
たら言っていただきたいと思います。よろしくお願いします。
○加藤部会長 ありがとうございました。資料のほうはよろしいですか。それでは議事に入
ります。まず、本日は予防接種法の対象となる疾病・ワクチンにつきまして、及び接種費用
の負担のあり方についてをテーマとして、有識者の方々からのヒアリングと質疑応答を行い
ます。資料1にある4名の方々に参考人としてお越しいただいております。
 各疾病、ワクチンのファクトシートの事務局及び参考人の方々からプレゼンテーションを
していただきまして、その後質疑応答を行たいと存じます。ただし、質疑応答に関しては、
なるべく多くの委員の方々からご発言をいただきたいと思っておりますので、簡潔にお願い
いたしたいと存じます。
 まず、ファクトシートにつきまして、今回作成の経緯などにつきまして、事務局鈴木次長
より説明をお願いいたします。大体5分程度でできればお願いいたします。
○事務局次長 お手元の資料2に沿ってご説明いたします。1.作成の経緯については、先ほ
どザッと申し上げましたが、本年2月に取りまとめたられた部会の第一次提言の中で、今後
議論が必要と考えられる事項の1つとして、「法の対象となる疾病・ワクチンのあり方」が
挙げられました。
 その後、第7回の部会(4月)については後ほど申し上げるような項目について、いわゆ
るファクトシート、事実関係についてエビデンスを収集すべきだということで、国立感染症
研究所を中心に整理を行っていただくということになりました。
 2.対象とした疾病は8つあります。1)~6)までが、いま現在は法の下で接種になっていな
いものです。7)と8)については、一部対象となっておりまして、ポリオはOPVという口か
ら入れるものについては対象となっていますが、IPVという注射のものについては対象にな
っておりません。百日せきについては、昨今成人の増加等が課題になっておりますが、2期
の10代の前半等に行うものについて、百日せきを加えるかどうかということが課題になっ
ておりますので加えております。
 3.具体的記載内容については、大きく分けて3点あります。病気そのものがどういうもの
なのか。2番目は、ワクチンを導入するとどういう効果があるのか。3番目はワクチンその
ものの安全性、現状等についてどうなっているのか。
 国立感染症研究所では策定をしていただいて、その後、1つは予防接種推進専門協議会の
委員長の神谷先生が本日出席ですが、そこからコメントをいただきました。ワクチンの需給
状況についてはメーカーしかわからない部分がありますので、これは企業から情報をいただ
いたということです。5.作成に当たっての留意点については、いろいろな必要なデータが指
摘されていますが、文献等で確認できなかった事項については載せていないということです。
基本的には事実の記載に留めていただきましたので、政策的な意見については今回は掲載は
されていないということです。したがって、そういうところをどうするかということが課題
になります。
 付け加えて2点ほどご説明いたします。1点は、非常に今回は短期間で作成をお願いした
感染症研究所、予防接種推進専門協議会の先生方には、お忙しい中を非常に多大なご協力を
いただきまして、厚く御礼を申し上げます。非常に詳細なものが出来上がって、我々として
も参考にしたいと思います。
 2つ目は、机上のみに配付している英語の横文字のものを若干ご説明いたします。これは
アメリカのACIPで、HPVというヒトパピローマウィルスの4価のものを特に取り上げて
いますが、2価のものもあとに付いていますが、これを検討する際にどういうタイムスケジ
ュールで検討したのかザクッとご説明いたします。
 冒頭は、2004年2月の議事録です。これが2004年になっているのは、2004年以前のも
のはリクエストをしないと紙をくれないということでしたので、インターネットで取れる範
囲で取っております。2頁目をご覧いただきますと、黄色で書いてありますが、ワーキング
グループを2002年に作ったということです。3頁目は、2004年6月のACIPの議事録です。
これでワーキンググループで議論をしたということがわかります。7頁目は、2005年6月
のACIPの議事録です。ここで8頁をご覧いただくと良いと思うのですが、ここで初めてワ
ーキンググループがHPVに関するレポートを提出しております。おそらくこのレポートが
今回お願いしたファクトシートに当たると思います。
 12頁、13頁は、2006年6月のACIPの議事録です。この目次をご覧いただきますと、
HPVについて、「proposed recommendation」と書いてありますが「勧告案」です。ワーキ
ンググループで勧告案を作った上で、勧告案についてACIP本体に上がってきたということ
と、ACIP VOTEと書いてありますが、これはACIPで最終的な投票を行って、結論を得た
のが2006年ということです。
 最後が24頁ぐらいに当たります。これは最終的な勧告が発出されたのが2007年3月に
なっておりますので、2002年にワーキンググループができてから、実際に勧告が発出され
るまで、約5年の期間がかかっていることが実情であるということを、追加的に説明させて
いただきました。以上です。
○加藤部会長 ありがとうございました。続きまして、今回のファクトシートを作成してい
ただいた方々からのご説明をお願いしたいと存じます。参考人のお一人目は、国立感染症研
究所所長の渡邉参考人より、各疾病、ワクチンのファクトシートの概要及び今回ファクトシ
ートの作成を通じての課題等について、ご説明をお願いいたします。よろしくお願いいたし
ます。
○渡邉参考人 まず、ヘモフィルスb型ワクチンに関するファクトシート、資料3-1をご覧
ください。限られた時間ですので、1つの項目に対して2、3分でまとめて話すようにと言
われていますので、概略だけを述べさせていただきます。
 ヘモフィルスインフルエンザb型菌は、これによって起こる疾患としては、肺炎、髄膜炎、
咽頭蓋炎等があります。感染経路としては、気道器分泌物の吸引、または直接接触によるヒ
トーヒト感染でもって起こります。米国CDCのデータでは、3~6%が死亡し、生存患者で
も20%が永続的な聴覚障害等の後遺症を残すと言われております。この疾患は、ヘモフィ
ルスインフルエンザ菌の感染によって起こるわけですが、その中で特にtype bと呼ばれて
いる血清型の菌が非常に高病原性を呈します。
 2頁のいちばん下当たりに、不顕性感染が書いてありますが、一般的にこの菌は鼻咽頭に
保菌されておりまして、米国のデータによりますと、40~80%の人が保菌していると言わ
れる菌です。3頁目をご覧ください。日本においては、ヘモフィルスインフルエンザ株のう
ち、7.4%がtype b型に当たります。これらの分離・同定がいちばん重要で、どういう血清
型の菌によって感染が起こるかを調べることが、非常に科学的には重要なデータになります。
 4頁目をご覧ください。治療法については、一般的にセフォトリアキソンとかメロペネム
と言われているペニシリン系の薬が化学療法として使われております。ただ、昨今、資料
1-1をご覧いただくと、耐性菌が非常に多くなっております。2009年のデータで、赤い印
の所がありますが、この耐性菌の頻度が60%以上の菌において見られるということで、大
きな問題になってきております。これらは耐性菌があることも含めて、予防法としては、
Hibワクチンが世界的に使われておりまして、CDCは1990年代からこれを米国で使って、
5歳未満の子どものHib感染症の99%が減少していると報告しています。10万人に1人よ
り少ない発生率であるという形で、この効果を解析しております。
 5頁目をご覧ください。この菌はヒトーヒト感染を起こして、一般的には自然界から検出
されることはありません。ワクチンの成分として使われるのは、この菌が持っている莢膜多
糖体、ポリリボシルリビドーリン酸(PRP)と呼ばれるものがワクチンの成分として使われ
ております。日本における100例のデータでは、2歳未満の約60%において抗体価が低い。
つまり、40%ぐらいしかこれに対して防御できる抗体を持っていないということですので、
感受性者が非常に高いということになります。
資料1-2をご覧ください。細菌性髄膜炎で起こる多くのもの、特に赤で書いてあるヘモフィ
ルスインフルエンザは、5歳以下の子どもに多く髄膜炎が発症しているのが、このデータか
らおわかりいただけると思います。6頁目をご覧ください。資料1-3は、千葉県におけるヘ
モフィルスインフルエンザの罹患率を調べたデータです。2003年~2005年にかけて、人口
10万人当たり、6.1~11.7と増加していることが、このデータからわかります。8頁目をご
覧ください。これも資料1-5、これは1道8県において行われたデータです。やはり、2007
年~2009年にかけて、人口当たり5~7.1と、かなりの数の患者が見られております。
 9頁目をご覧ください。中程に研究班のデータによると、Hib髄膜炎244例のうち、88.5%
が治癒しておりますが、後遺症が11.1%、死亡が0.4%ということで、子どもにとっては非
常に大きな負担になる病気です。海外におけるデータでは、資料1-7に罹患率がHib髄膜
炎で31%、死亡率が13%、つまり、10万人当たりの数が出ておりますが、日本よりも高
いデータになっております。資料1-8をご覧ください。Hibのワクチンを導入前後における
髄膜炎の比率が出ております。導入前は各国の罹患率は31%とか数10%の水準を示してい
ますが、導入後には10万人当たり1%以下になっているということで、ワクチンが顕著な
効果を示すということがおわかりいただけます。
 12頁の資料2-1をご覧ください。ワクチンを導入したあとに、type bの頻度がどのぐら
いになったかということが示されております。1989年は34%だったのが、1995年では
0.4%になっているということで、type bの分離率が非常に低下してきていることがおわか
りになります。
 12頁の(2)公共経済学的な観点から、Hibワクチンを導入することによって、年間82億
円の費用の削減が見られたという報告もあります。日本における報告では、13頁目の資料
2-2に、82億円の削減になるというデータが出ております。
 14頁の3、日本で使われているワクチンについては、乾燥ヘモフィルスb型ワクチンで
す。サノフィパスツールから出ているワクチンが日本で導入されております。このワクチン
は、莢膜多糖体を含むワクチンです。このワクチンは、莢膜多糖体だけでは十分な免疫効果
が出ず、17頁をご覧いただくと、ここにキャリア蛋白が結合した形を作って、初めて細胞
性免疫等の活性が起こると考えられており、そのキャリア蛋白としては、17頁の(イ)に
書いてありますが、破傷風毒素トキソイド、またはジフテリア毒素トキソイド、ほかの外膜
蛋白質等を付けたものが使われております。
 有効性に関しては、18頁目の丸2長期感染阻止抗体レベル保有率として、初回免疫3回
のみで61.5%、追加免疫後に100%になると論じられております。丸3の副反応について
は、副反応は局所的なもので、大体一過性程度で重篤なものは認められないという報告にな
っています。20頁目の安全性等については、これは国家検定においてエンドトキシンの問
題、また破傷風トキソイドがちゃんと不活化されているかということが、国家検定等で検査
されて、その安全性を担保しております。
 22頁目の供給に関しては、2011年は550万本が計画されているということです。Hibワ
クチンのスケジュールとしては、23頁目のいちばん上に、2カ月齢から5歳未満というこ
とで、初回免疫3回で、追加免疫1回、計4回が行われております。米国CDCのACIPに
おいても、そのような勧告がされております。ヘモフィルスインフルエンザについては以上
です。
 資料3-2-1をご覧ください。肺炎球菌コンジュゲートワクチンです。2頁目をご覧くださ
い。これは肺炎球菌による感染症、特に菌血症、敗血症、または髄膜炎等が、特に小児にお
いて起こりますが、それらを予防するワクチンとして肺炎球菌コンジュゲートワクチンがあ
ります。肺炎球菌の場合に臨床症状の丸1の下に、髄膜炎の予後としては、治癒が88%で
すが、後遺症が10%、死亡が2%ということで、かなり重篤化する疾患です。これに関し
ては、先ほどのヘモフィルスと同じように、不顕性感染、無症状のままで上咽頭に菌が存在
しており、3、4カ月の検診時に17.6%の割合で不顕性感染が見られているという報告があ
ります。
 3頁の我が国の疫学状況については、5歳未満人口10万人当たり、髄膜炎以外の侵襲性
感染症が21%、髄膜炎が2.6%というデータが我が国から出ております。肺炎球菌には93
種類の血清型があります。そのうち今回の7価コンジュゲートワクチンがどのぐらいのカバ
ー率になるかということが、図1に書いてあります。黄色で示した所が、7価コンジュゲー
トワクチンに含まれている血清型です。このカバー率は77.8%になっております。交差免
疫等を含めると83.1%になります。1の所は、小児侵襲性感染症由来肺炎球菌の血清型です。
図2が、小児髄膜炎由来肺炎球菌の血清型です。この場合にも7価コンジュゲートワクチン
のカバー率は71.4%ということで、3分の2以上をカバーしていることになります。
 5頁目をご覧ください。予防接種の直接的な効果として、7価コンジュゲートワクチンを
使うことにより、侵襲性感染の予防効果は97.4%というデータが出ております。
 6頁目をご覧ください。表2を見ていただきますと、先ほどの97.4%というのは、7価の
各トータルの血清型に対してですが、各血清型の感染をどのぐらいブロックするかというこ
とが書いてあります。例えば、19Fの血清型に対しては、84.6%、14については100%の
効果があるということになっております。6頁の(2)、ワクチンによる直接および間接的な
効果については、米国においては、現在、接種率が93%である。その結果、どういうこと
が起こったかというと、図3に、小児においては、このワクチンが導入される以前は、80%
以上から菌が分離されていたわけですが、導入後においては赤の線に見られるとおり、2002
年~2007年にかけて非常にその分離率が低下していることになります。ワクチン導入前は
罹患率が81.9人/10万人であったものが、2006年~2007年は0.4人/10万人まで減少し
ているということです。このワクチンは子どもに使われているわけですが、間接的な効果と
して、成人の所を見ていただきますと、成人においても赤のバーで示すように、7価に含ま
れている血清型と同じ感染症の成人における分離率は、やはり、明らかに低下してきており、
間接的にも成人の感染を防いでいるという結果になっております。
 7頁目をご覧いただきますと、上から3行目に「ワクチン接種を受けた小児の上咽頭に存
在する肺炎球菌が減少し、その結果、高齢者の感染も減少したと考えられる」ということで、
集団免疫効果があるという論文があります。7頁目の下から3行目に、「7価コンジュゲー
トワクチンには侵襲性感染防止効果に加えて、肺炎、中耳炎に対する効果も見られている」
という報告がなされております。8頁目をご覧ください。医療経済効果、7価コンジュゲー
トワクチン接種率を100%、接種回数4回とした場合、我が国におけるワクチン接種の総費
用は296億円で、その結果、髄膜炎等が起こった場合の費用としては687億円ということ
で、これを引いた額がワクチンによる削減になるわけです。
 9頁目に、ワクチンの種類としては、現在のところ7価コンジュゲートワクチンが出され
ておりますが、今後、10価、13価等が出てくることは考えられております。安全性に関し
ては、9頁目の下の所に、ポリサッカライドワクチンの副反応としては、局所反応が高率に
見られるが、重篤な副反応は観察されないということになっております。10頁目の図5に、
7価コンジュゲートワクチンのスケジュールが書かれております。初回免疫を2カ月齢以上
7カ月未満で開始し、27日間間隔で3回接種、追加免疫をそのあと1年から1年後に1回
行うというのが標準スケジュールになっております。
 続いて、肺炎球菌ポリサッカライドワクチンの資料3-2の2をご覧ください。これは成人
用の肺炎球菌ワクチンの予防ということで、高齢者の場合に、2頁目に不顕性感染は、やは
り3.1%~5.5%の割合で上咽頭に菌を保有しており、これらの菌が肺に落下した場合は肺
炎を起こします。3頁目に「我が国の疫学状況」の図1をご覧いただきますと、高齢者にな
るに従って、肺炎の率が高くなって、日本においては死亡率の第4位を肺炎が占めておりま
す。そのうちの4分の1から3分の1が肺炎球菌によって起こっていると考えられておりま
す。
 成人用のワクチンは23価ですので、図2の所に、血清型の分布が書かれていますが、ワ
クチンでカバーできる血清型は82.5%になります。4頁目の1ワクチン接種による効果につ
いては、我が国における1,006人の高齢者を用いた研究によりますと、肺炎球菌による肺炎
の発生頻度は40.7/1,000/年ということです。それにワクチンを投与した場合、表1をご
覧いただきますと、すべての肺炎の減少率が44.8%、肺炎球菌性肺炎が63.8%という報告
が出ております。表3の65歳以上の高齢者における肺炎球菌ワクチンのすべての肺炎によ
る入院の減少効果として、65歳以上で41.2%という結果が出ております。
 表4におきましては、これは米国における後ろ向きコホート研究の結果、表4の真ん中に、
すべての血清型肺炎球菌による菌血症が0.56%ですので、44%減少させる結果になったと
いう報告が出ております。
 7頁目の表5をご覧いただきますと、インフルエンザワクチンとの両方の接種において、
肺炎がどのぐらい減少するかというと0.71%となっております。表5の肺炎と両方接種群
の所の値を見ていただきますと、0.71%ということで、入院の減少が見られるということに
なります。
 医療経済効果におきましては、65歳以上の高齢者に肺炎球菌ワクチンのすべての肺炎に
よる直接医療費を有意に削減させたという結果が表6に載っております。各国の状況により
ますと、現在、61カ国で承認されて、カナダでは65歳以上のすべての高齢者に接種を推奨
しており、EUでも多くの国で60歳から、または65歳以上の高齢者に接種が推奨されてい
ることになっています。我が国では2010年度で65歳以上の高齢者で接種率は7.8%と低い
値になっています。現在、ワクチンの安全性については、23価ポリサッカライドワクチン
であるということで、65歳以上の高齢者を対象としたワクチンになっております。2回接
種等に関しては、米国のACIPは65歳未満で肺炎球菌ワクチンを接種し、その後、5年を
経過した場合に再接種を推奨しておりまして、我が国も再接種が2009年10月から可能に
なっております。
 続いてヒトパピローマ、資料3-3をご覧ください。ヒトパピローマ感染によって前がん病
変が起こります。その結果、子宮頸がんが起こることがあります。ヒトパピローマワクチン
を接種することにより、その感染が防御され、結果的に子宮頸がんの発症防止にもつながり
ます。また、尖圭コンジローマ等の病変も予防することが可能となっております。
 2頁目の臨床症状の真ん中辺の粘膜型のパピローマウィルスは、遺伝型において100種類
以上に分かれております。そのうち粘膜型の15種、HPV16、18、31と書いてありますが
これらが子宮頸がんから分離されるタイプで、高リスク型HPVと呼ばれております。現在、
使われているワクチンは、粘膜型のうちのHPVの16とHPV18を含んでいるものです。こ
れらは子宮頸がんにかかわっている感染症の約70%をカバーしていると考えられておりま
す。HPVの6や11もあるわけですが、これらは尖圭コンジローマを起こす原因、つまり良
性のいぼを起こす原因のウィルスと考えられております。低リスク型HPVと呼ばれており
ます。ヒトパピローマに感染した場合、子宮に増殖性の変化が起こってきて、その変化の度
合によって、CIN1、2、3と分けられております。2、3になるほど、前がん状態に近づい
ていくわけです。
3頁目のいちばん上の「HPV感染は子宮頸がん発生の必要条件となるが、十分条件ではな
い」ということで、感染したからといって、必ずしも全部ががんになるわけではなくて、が
ん化するためには感染後10年という経過がかかりますので、その間にほかのいろいろな因
子によって、よりがん化に進むような変化が起こってくると考えられております。丸2顕性
感染の割合、海外において性活動を行う女性の50%以上は、生涯で1度はHPVに感染する
と推定されております。丸2の真ん中の所で、潜伏感染細胞の消長、潜伏感染細胞からHPV
の増殖が起こる頻度、増殖するウィルス量などの正確な情報はないということで、まだ分か
らないことがたくさん存在しているということです。いちばん正確な検査法としては、患部
からHPVのDNAを検出するということです。
 5頁目をご覧ください。予防法としては、HPVのワクチンが、やはり、最終的に子宮頸
がんの予防として重要であるということです。特にHPV16/18を含むワクチンがそれを予
防することになります。HPV6/11を含むワクチンは、尖圭コンジローマを予防するとい
うことになります。(2)我が国の疫学状況です。高リスク型HPVの持続感染は、子宮頸がん
発生の最大リスク要因であって、ほぼ100%の子宮頸がんで高リスク型HPV DNAが検出
されるというデータが存在しております。6頁目、我が国の子宮がんの罹患患者数は、年間
1万7,476人という報告が2005年に出ております。そのうち子宮頸がんが8,474人という
ことで、かなりの数が出ております。図2を見ていただきますと、特に子宮頸がんは40代
以下の女性に多い。子宮体がんは、むしろ40歳以上にピークが出ております。
 8頁目の図5を見てください。2004年と1985年を比較した場合、子宮がん罹患率はどう
変化しているかというのがこの図です。赤が1985年、黄色が2004年です。明らかに2004
年には、若年者にこのがんが増加していることが、この図からおわかりになっていただける
と思います。
 9頁目をご覧ください。死亡者数については、我が国の子宮がんの死亡者は年間5,709名。
子宮頸がんが2,486名という報告が、2008年に出ております。10頁目をご覧いただきます
と、これは子宮頸がんの死亡率推移です。2008年はグレーになっており、1965年等から比
べると、明らかに死亡率は低下しております。1つは、子宮頸がんのがん検診、及び治療成
績の向上によると考えられておりますが、依然として死亡率はかなり高い値になっているこ
とがおわかりになると思います。10頁目においては、子宮頸がんの受診率ですが、我が国
はほかの諸外国に比べると、がん検診率は21.3%と非常に低い値になっております。米国
の場合は、85%ということです。
 11頁目を見ていただきますと、HPVの遺伝子型の分布です。現在のワクチンには16、
18が含まれていますが、このデータは米国とか海外のデータに基づいているわけで、海外
の場合にはHPV16、18が全体の70%ですが、この型は国によって異なっています。我が
国での分布は、子宮頸がん患者では上位からHPV16が42%、HPV33が9%、HPV58が8%、
HPV18が7.7%ということで、少し諸外国とパターンが違った形になっております。16型、
18型の分離される割合は、検査の感度とか、検査の方法によって違ってきております。我
が国の場合でも、50~70%という形で少し幅があるということは、データを報告される研
究者によって違ってくるということです。
 13頁目の「予防接種の目的と導入により期待される効果」については、先ほどから申し
上げていますように、これが導入されてからまだ日が浅いので、実際に子宮頸がんの発生が
どのぐらい下がるかというのは、やはり、10年以上の経過を追わないとはっきりしません。
そのために、現在は、前がん病変をどのぐらい減少させるかということで判定されているの
が現状です。ワクチンのあと、この効果等を見るには、やはり、これから10年、またはも
っと長い経過で、実際の子宮頸がんがどうなるかのデータが今後は必要になると考えており
ます。
 公共経済学的な観点から、13頁のいちばん下の所に海外での子宮頸がんの検出率70%を
用いて、我が国でのHPVワクチン導入の費用対効果を数学的モデルで試算した結果により
ますと、ワクチン導入の費用対抗果が180万円/QALYということで、かなりの削減効果
があるということになります。ただ、なかなかまだ我が国は、実際の検出率が確定しており
ませんので、費用対効果の正確な評価は難しいというのが現状です。
 14頁の(3)現在、日本で使われているワクチンは、2価ワクチンの「サーバリックス」(グ
ラクソ・スミスクライン)によるものと、4価ワクチンの「ガーダシル」、これは2010年5
月時点ではまだ承認されておりませんが、今後導入される予定のワクチンとなっております。
 15頁目にガーダシルの有効性試験が表1に出ています。どのぐらい子宮の増殖CIN2、3
というステージになるのを、このワクチンがブロックしているか。その有効性がCIN2で
100%、3で97%という結果になっております。サーバリックスもほぼ同じような結果が報
告されております。
 16頁の「有効性期間の持続性」については、3回接種によって、抗体価が徐々に減少す
るが、5~6.4年までは維持されていると。つまり、導入されてからいまの時点までは抗体
価がかなり維持されているというデータが出ております。
 17頁の副反応については、サーバリックスの臨床試験では、局所反応が報告されている
が、重篤な副作用は見られていないということになっております。接種スケジュールにおい
ては、4頁目にアメリカのACIPのリコメンデーションでは、11歳~12歳の女児に定期接
種対象者として推奨されているということです。ただ、その場合にも、ワクチン被接種者も
引き続き子宮頸部の細胞診のスクリーニング検査を行う必要があるということで、ワクチン
をやったから100%がんが防御されるというわけではないので、やはり、ちゃんと検診はや
らなくてはいけないというリコメンデーションになっております。
 資料3-4をご覧ください。水痘は、水痘帯状疱疹ウィルス、VZVによって起こされる伝
染性疾患です。これによって、水痘に自然に感染した患者400人に1人が入院するという
結果が得られております。また、100万人に20人が死亡するという報告もあります。合併
症としては、中枢神経系に、このウィルスが侵入した場合、1万例に10人以下に急性の小
脳失調症等の神経合併症が起こる。その80%は治癒するが、20%は後遺症が残るというの
が現状です。また水痘にかかった場合、妊婦がそれに罹患すると発生頻度は2%ですが、胎
児・新生児に重篤な障害、いわゆる先天性水痘症候群が発生するということです。
 3頁目をご覧ください。不顕性感染は極めて稀ということです。検査法としては、やはり
ウィルスDNAを検出する方法がいちばん直接的な方法であるということになっています。
 5頁目を見ていただいて、治療法としては、ヘルペスの抗ヘルペス薬としてアシクロビル
やバラシクロビルが投与されますが、投与方法等によっては耐性ウィルスの出現が出ること
もあるということで、あまりむやみに抗ウィルス薬を使うことは推奨されておりません。
 予防法としては、1番は水痘ワクチンであるということです。6頁目をご覧いただきます
と、このウィルスは少し特異性が高く、主にヒトのみ感染するということと、神経系の脊髄
後根神経節に侵入して、そこで終生継続的に潜伏感染を起こすということで、将来、細胞性
免疫が低下した場合には、これらが活性化されて帯状疱疹等を起こすことがいちばん問題で
す。
 8頁目の「予防接種の目的と導入により期待される効果」については、重症の水痘の予防
にこのワクチンは非常に有効であるということで、我が国では罹患者100万人当たり、
重症化に伴う入院者は4,000人、死亡者が20人となっております。先天性水痘症候群は、
20週以前に妊婦が水痘に罹患した場合、2%程度の奇形等の重症的な障害が起こるというこ
とです。
 入院に伴う医療費の実態としては、8頁の丸1、平均日数7.7日、平均約20万円の医療
費がかかるということです。費用対効果におきましては、表1をご覧ください。複雑な表で
すが、直接的費用対効果は、罹患に伴う費用/予防接種に伴う費用の比と書いてありますの
で、これが1以上になると、費用対効果が高く、1以下は予防接種の効果が薄いということ
になります。表1は、直接費用のみで計算すると1以下になるのですが、機会費用というの
は、患者が発生した場合、その看護にかかる費用や、また重篤な障害が起こった場合の損失
にかかる費用等を加えたものが機会費用です。この機会費用の比は1以上になっております
ので、費用対効果は非常に高いことになります。
 11頁の丸3、日本での費用対効果の平均は4.4という計算になっております。各国の状
況で、WHOは有効性・安全性から見て水痘生ワクチンを推奨しております。12頁目の丸
2、米国・カナダの中の米国においてもACIPは定期スケジュールに組み入れて、2008年
には1回接種で、推定91.8%と非常に高い接種率に至っている。2006年には2回接種を推
奨しているのが米国の現状です。19頁の「ワクチン製剤の現状と安全性」については、こ
れは弱毒生ワクチンであり、1999年5月にゼラチンフリーワクチンが認可されたというこ
とになっております。我が国の水痘ワクチンの接種状況については丸2です。我が国では水
痘ワクチン接種率は低かったが、徐々に向上し、地域差はあるものの、現在は30~40%程
度になっているということです。
 20頁目をご覧ください。高齢者になった場合、先ほどの潜伏感染している水痘ウィルス
が活性化されて、帯状疱疹を発症させる危険性があるわけですが、この帯状疱疹にもこれが
有効かどうかということが調べられた結果、米国のデータで、20頁の下段の真ん中、60歳
以上を対象にワクチン接種後の帯状疱疹後、神経痛の発症に対する効果を平均3.12年追跡
した結果という形で、51.3%の減少、重症度も61.3%の減少ということで、帯状疱疹等に
も有効性があると考えられております。
 21頁目をご覧いただくと、水痘ワクチンは継代培養して弱毒化させたワクチンですので、
図9に見られるように、変異VZVのmix populationであるということになっておりますの
で、そういう意味では品質管理が非常に重要で、mix populationの率が変わると、また効
果も変わってくる可能性もあります。
 24頁目の丸3「水痘ワクチン製剤の安全性」、ワクチン接種により重篤な副反応を合併す
ることはほとんどないということになっており、そのデータ等が表8、9、10等に書かれて
います。29頁目の「ワクチン接種後の抗体持続性」については、1回接種で、抗体価が5
倍以上の陽性率を示したパーセンテージとありますが、9年目のところで、95.3%というこ
とで、かなり高い抗体保持率を示しています。2回接種の場合は、97%ということになりま
す。
 続いて、B型肝炎に移ります。2頁目をご覧ください。これはB型肝炎によって起こる疾
患は、世界では20億人。そのうち3億5,000万人が持続感染症で、年間50~70万人がB
型肝炎やB型肝炎に起因する肝硬変、肝がんで死亡していると推定されております。このB
型肝炎ウィルスは、血液や性液、いわゆる性感染症の1つにも考えられていますが、そうい
うものを介して感染するということです。図1を見ていただきますと、この感染様式として
は、一過性感染と持続感染があります。一過性感染の場合には、不顕性感染が70~80%、
急性肝炎を起こす場合は20~35%、ほとんどが治癒しますが、稀に劇症肝炎になることも
ある。持続感染の場合はキャリアの状態になりまして、無症候性のキャリアとして存在する
のが90%、10%ぐらいが慢性肝炎から肝硬変、肝がんへと経過することになっております。
 3頁目をご覧くださいHBVは8種類の遺伝子型、A~Hに分類されております。その型
によって、少し重症度等が異なっております。日本は遺伝型がCとBが多い。諸外国にお
いては、慢性化しやすい遺伝型Aが多いわけですが、昨今、日本においてもA型のものが、
増加しているということが注目すべき点になっております。日本では1972年からB型肝炎
スクリーニングが行われて、1986年から母子感染の防止事業が行われ、垂直感染の防止と
いうことで、実際垂直感染の率が低下してきております。ただ、やはり、このスクリーニン
グから逃れてしまうような事例があることは注意しなくてはいけないことです。また、先ほ
ど述べた性感染症としての疾患も増えておりますので、その辺は注意しなければいけないこ
との1つになっております。
 6頁目の「我が国の疫学状況」については、WHOは5歳児のHBVキャリア率を2%以
下である場合、この地域のB型肝炎はコントロールされているとみなすということになっ
ております。我が国は1997年段階では、この2%以下を達成していると推察されておりま
す。このデータが、キャリア対策事業等を行っている所のデータですと、キャリア率が
0.75%という値を示したデータが出ていますが、全国的なサーベイとしてのデータがありま
せん。ないと言いますのは、8頁目をご覧いただくとこれは感染症発生動向調査の結果です
が、急性B型肝炎が報告義務になっております。この例で言うと、2009年は170という形
になっていますが、表4を見ていただくと、これは国立病院急性肝炎共同研究班のデータに
よりますと、2009年は51で、全入院患者数はこれから試算すると、1,800人程度と推測さ
れておりますので、実際、感染症発生動向調査で出ているデータとの齟齬がありますので、
必ずしもこの発生動向調査ですべての患者数が把握されているとは限らないことになりま
す。
 9頁です。図4で、近年、性的接触の占める割合が増えていまして、1999年は43%程度
でしたが、2008年は66%になっています。
 10頁の「重症者数、死亡者数等」です。肝硬変による死亡者数は9,000人前後です。肝
がんによる死亡者数は年間1万人前後であったのが、2006年から2008年は3万3,000人
台なっているということで、増加しているのが現状です。
 世界における状況ですが、先ほど述べましたように20億人のHBV感染者症がいて、持
続感染者が3億5,000万人、その多くは出生時のHBV母子感染によるキャリア化が原因で
あると考えられています。
 11頁の下の「予防接種の目的と導入により期待される効果」です。現在ワクチネーショ
ンのやり方としては、12頁、ユニバーサルワクチネーションと、セレクティブワクチネー
ションの二通りがやられています。ユニバーサルワクチネーションというのは、すべての小
児にワクチンを接種するというプログラムです。セレクティブワクチネーションはHBVの
キャリアの母親から生まれる子どもを対象にした感染防止のプログラムです。日本は、現在
セレクティブワクチネーションが行われています。
 13頁です。表6のいちばん下の辺りに、このプログラムを完全に実施できれば、94~97%
の高率でキャリア化を防ぐことができるとなっていますが、実際にはこれほど高い形で行わ
れていないのが現状です。
 図8です。世界において発生頻度の低い、スウェーデン、ノルウェー、UK等は、セレク
ティブワクチネーションが行われておりますが、発生頻度の高かったUSやイタリア等は、
ユニバーサルワクチネーションに方向転換しています。赤い図がUSで、1991年には10
万人当たり8前後だったものが、2007年には2くらいまで減っています。
 公共経済学的な観点からですと、日本ではまだ経済的な効果については報告されていない
ということで、本格的な費用対効果のデータが今後必要だろうということになっています。
 15頁です。現在日本でつくられているワクチンは、組換え沈降B型肝炎ワクチンで、表
8にあるように、ビームゲンとヘプタバックス?Uという形で、遺伝子型はCとAです。安
全性に関しては、安全性の問題はいままでに世界的に起こったことがないということで、副
反応も5%以下の確率で、軽症の副反応が見られるということです。
 有効性に関しては、40歳までの抗体獲得率が95%で、そのあと年が経つにつれてだんだ
ん減ってくるということで、抗体価が高い間においては、有効性があると考えられます。た
だ、遺伝子型が異なったウイルスに対して、ワクチンの有効性がどうかということは、現在
のところは不明であります。
 17頁の丸5「抗体持続時間」です。ワクチン3回接種後の防御効果は20年以上続くと考
えられています。接種スケジュールは、3回接種で、一般的なスケジュールとしては、0、1、
6カ月の3回投与が行われているということです。
 続いて、おたふくかぜワクチンです。おたふくはムンプスウイルスによって起こる疾患で
す。表1を見ていただきますと、自然感染の場合と、ワクチンを打った場合との合併症の比
較が出ています。自然感染ですと、60から70%は耳下腺腫脹、無菌性髄膜炎が1~10%で
起こるとなっています。ワクチン接種の場合には、無菌性髄膜炎が0.1~0.01という結果が
報告されています。
 5頁です。治療法として、おたふくかぜに特異的な治療法はないということで、予防法と
しては、ワクチンがいちばんエッセンシャルであるということになります。
 図2です。我が国の状況としては、MMR導入により、その流行の患者数が少し減りまし
たが、MMRワクチンが中止された期間からは、同じようなパターンで患者数が出ていると
いうことになります。2007年では、43.1万人が患者として報告されています。そのうち3
歳から6歳が60%を占めています。重症化する例としては、先ほどの表にありましたよう
に、髄膜炎を起こしたり、または睾丸炎、熱性痙攣を起こすという形で、重症化の例が報告
されています。
 6頁の公共経済学的観点からです。費用対効果は、オーストラリアでは3.6、アメリカで
は6.7ということで、かなり高い費用対効果を示しています。
 諸外国の状況です。2009年の時点において、表3ですが、118カ国でMMRワクチンが
使われて、ほとんどの国で2回接種が行われていることがわかります。表4には、我が国の
主なおたふくかぜワクチンがどこでつくられているかです。武田薬品、北里研究所で、いま
現在ムンプスワクチンがつくられています。そのほか、MMRワクチン等に関しては、武田、
北里は承認書の返納、阪大微研は中止、化血研等もムンプスワクチンは中止しています。
 11頁です。その大きな理由は、日本の場合にMMRワクチン統一株ということで、表6
を見ていただきますと、統一株Urabe-AM9、AIK-Cと、To336、つまりMMRワクチンが
いくつかのメーカーのものをミックスした形で、統一株として使われた経緯があります。そ
のときに、無菌性髄膜炎の頻度が0.16とかなり高い値を示したということで、このワクチ
ンがその後使用中止になっています。そのあとのいろいろな経過に関して、単味ワクチンで
も、どのくらいの無菌性髄膜炎があるかを調べたのが、12頁の下の図ですが、発生頻度と
して0.6%ということで、国産の単味ワクチン自身に無菌性髄膜炎を起こす副反応があると
いうことで、先ほど示したように、我が国において現在使われているワクチンとして、中止
になっているところがかなりあるというのが現状になっています。
 13頁で、「ワクチンの持続期間」です。米国ですが、定期接種後、おたふくかぜの患者数
は減っていまして、2回接種後にさらに減っているということです。14頁の丸2ですが、
海外のおたふくかぜワクチンの輸入承認申請が行われているところですが、このワクチンに
ついてはゼラチンが含まれているということで、ゼラチンアレルギーの問題と、副反応とし
て、国産のものよりも発熱の頻度が少し高めであるということが、データとして上がってき
ています。
 続いてポリオワクチンに関してです。2頁です。ポリオウイルスによって起こる疾患とし
てポリオがあるわけですが、その症状としては、不可逆的な急性弛緩性麻痺を起こすという
ことで、大きな問題を起こす疾患です。これを防ぐためのワクチンとしては、現在、経口生
ポリオワクチン(OPV)が日本では使われていますが、世界的には不活化ポリオワクチン
(IPV)が使われています。
 我が国においては、ポリオは2類感染症として指定されていまして、実際にポリオのケー
スというのは、3頁の図1がポリオの世界的な推移です。2000年以降から患者数が非常に
減ってきていますが、現在野性型ポリオが分離されるのは、パキスタン、アフガニスタン、
インド、ナイジェリアの4カ国なっています。
 我が国においては図2になりまして、1960年代の初め頃は、ポリオの患者は非常に多か
ったわけですが、ポリオの生ワクチンが緊急輸入され、それが使われて以降、急激に患者数
が減り、1980年以降は、ポリオの野性株は分離されておらず、ポリオケースというのはワ
クチン関連麻痺症例という形で、ワクチンに由来した疾患という形になっています。
 表2に、我が国におけるポリオの患者数が表示されています。現在見られているのは野性
型ポリオによるものではなく、ワクチン関連麻痺(VAPP)またはワクチン由来のウイルス
(VDPV)が分離されているというのが、この表の結果です。7頁です。予防法として、経口
ポリオワクチンと、不活化ポリオワクチンがありますが、我が国は経口ポリオワクチンが使
われています。
 9頁のいちばん下のほうです。自然感染後あるいはOPV接種後、腸管でウイルスの増殖
過程で、腸管免疫及び血中中和抗体を効果的に誘導することによりポリオウイルスに対する
免疫を付与し、ポリオ発症を予防するというのが原理です。ただ、このポリオはRNAウイ
ルスですので、増殖過程において変異を蓄積しやすく、腸管でのウイルスの増殖過程で病原
性復帰変異株の割合が増加します。それらが便から排泄され、それが感受性の人たちに感染
した場合に、ポリオ関連の麻痺が起こるということで、これがいまいちばんの問題になって
いるわけです。
 13頁です。表3の下に「ポリオ根絶の最終段階及び野性株ポリオ根絶達成後においては、
このVAPP(ワクチン関連麻痺)発性及びVDPV(ワクチン由来ポリオウイルス)に由来するポ
リオ流行のリスクを無視できない」ということで、世界全体のIPV導入により、ポリオウ
イルスによる集団免疫を維持した上で、世界的なOPV接種停止を実施するようなシナリオ
が、WHO等で考えられています。将来的には、日本もこれに向かって進まざるを得ないと
考えられます。
 16頁です。現在使われているのが経口ポリオワクチンですが、日本でも不活化ポリオワ
クチンの開発が、いま行われています。国内においては、国内で開発中のIPV含有ワクチ
ン、DPTとIPVをコンジュゲートしたワクチンが、現在臨床試験中です。このデータは、
近々出てくると考えられます。
 日本で使われているIPVは世界で使われているIPVと少し違うところがあります。世界
で使われているものは、野性型ポリオウィルスを基にしてつくられたものですが、日本のも
のは弱毒化ポリオウィルスを基にして、つまりSabinワクチンを基にしてIPVを製造して
います。1つの理由は、バイオセーフティの問題が絡んでいます。
 今後の問題としては、SabinのIPV含有ワクチンを使う場合のSabinIPVの抗原の至適
化、またはこの抗原性、抗原量の測定方法の国際的な標準化が、今後の問題となってくると
考えられています。
 続いて百日せきワクチンに関するファクトシートです。百日せきワクチンは、百日せき菌
によって起こる疾患、特に小児に起こる百日せきに関連するいろいろな発作性のせきを起こ
す疾患ですが、これを予防するために百日せきワクチンが使われています。最近問題になっ
ているのは、青年や成人層に百日せきの患者が増えているということで、それを防止するた
めには、ワクチンの追加接種等を考えなければいけないということです。
 4頁です。百日せきは乳幼児に感染すると重篤化しやすく、約半数の乳児が呼吸管理のた
めに入院、加療となっています。成人が罹患した場合には、症状は軽いわけですが、菌を周
りにばら撒いてしまう可能性があります。
 6頁です。百日せきの治療法としては、マクロライド系の抗菌薬が効きますが、予防とし
ては百日せきワクチンがいちばん効果的です。現在日本では、DPT(ジフテリア、破傷風、
百日せき)の三種混合ワクチンが使われています。ただ、先ほど言いました追加接種をする
ためのワクチンとして、諸外国の状況は、アメリカでは大人から子どもへの感染防止を目的
に、2005年に青年・成人用破傷風、ジフテリア、百日せきの三種混合ワクチンのDTapと
いうものと、ADASELが認められて、米国のACIPにおいては11歳から12歳時に、これ
らの段階接種が推奨されています。
 我が国の疫学状況を見ていただくと、図4のブルーの部分が、2008年くらいに大学生な
ど、大人の集団感染事例があったために、このような増加傾向を示したというものです。赤
の部分は2010年ですが、19週辺りから上り調子になっているものです。2008年、2009
年、2010年辺りから、全体的なカーブが上昇傾向にあるということが、図4でおわかりい
ただけると思います。
 図5は年齢分布です。赤のところは15歳以上の成人ですが、昨今はこの比率が増えてい
ます。黄色の部分が20歳以上ですが、やはりこの割合が増えていて、2010年では56%以
上を占めていまして、成人の百日せきが大きな問題になっていることが、日本の現状でわか
ります。
 13頁です。健康人のポピュレーションにおいて、百日せきの毒素に対する抗体価がどう
なっているかを示したものが図1です。このブルーのところを見ていただくと、子どもにお
いては、10ユニット/ml以上を示す割合が、1歳以下は80から90%近くあるわけですが、
成人になるに従って、その値が50から60%に減ってきていて、免疫の持続が大人になるに
従い弱くなっているのが現状であり、それが成人において百日せき様の軽症の疾患が増えて
きている1つの原因と考えられています。
 15頁の表5です。いまワクチンは生後3カ月以上で使われるわけですが、3カ月未満で
の子どもの発症例に、重症発症例が見られるというものです。1カ月とか3カ月くらいの子
どもで、予後が死亡例というものが結構見られます。この1つの原因は家族内感染と考えら
れています。おそらく大人のかかったものが、3カ月未満の子どもにかかることにより、重
症例が出てきているということで、そういう意味では大人の感染を防御することが必要だと
考えられる1つの根拠になっています。16頁です。医療経済学的な観点から、この費用対
効果は2.46と計算されています。
 20頁の図17です。米国においては、3から6カ月目にDTPが3回、1歳から2歳で1
回、4歳から6歳でもう一度ブースターがかけられて、11歳から12歳で、含まれている
DPTの比率を変えたものとして、DTapと言われるものが追加明記されています。我が国は、
3カ月、6カ月で3回、1歳から2歳の間に1回ということで、そのあとは行われていませ
ん。先ほどの大人の問題、または抗体価がだんだん減衰していくことを加味した場合には、
11歳から12歳辺りの再接種の検討の必要が考えられています。19頁の表8に、神谷先生
たちを中心に臨床的に調べた結果が出ていまして、11歳から12歳にブースターをかけた場
合に、抗体がかなり上がることがわかります。
 続いて資料4です。コメントを申し上げたいと思います。感染研を中心に、このような形
でファクトシートをまとめたわけですが、そのまとめる過程で、今後考えていただきたい点
をまとめました。1「情報の収集・解析に関する体制の強化」です。今回、導入すべきワク
チンに関して、副反応、効果等を文献などから調べたわけですが、これはかなりの仕事であ
りまして、データの信憑性、その評価を科学的に行わなければいけないので、感染研はこの
予防接種部会からの依頼を受け、所内で各ワクチンの専門家を集めてきまして、これに約2
カ月かけてまとめました。今後このようなことを行う場合に、それなりの体制を整えなけれ
ば、なかなか難しいのではないか。アメリカのACIPの場合には、CIPはあくまでも審議会
のようなもので、そこにデータが出されて議論するわけですので、データをまとめることが
いちばん重要です。それは現在米国のCDCで100人規模の専門家集団が、データの収集解
析を行って、それがACIPに出されています。そのような組織を日本でも作るかどうかは、
今後検討されるべきことだと思います。
 次に「ワクチンの認可後の効果判定に関する体制の強化」についてです。まず、血清サー
ベイランスですが、今回お示ししましたデータにも、ワクチンの効果を見るのに、健康人が
その疾患に対してどのくらいの抗体価を保持しているかを見るのが、重要なデータになりま
す。現在感染研を中心に、ポリオ、インフルエンザ、日本脳炎、風疹、麻疹、百日せき、ジ
フテリア、破傷風について、毎年血清サーベイランスが細々と行われていますが、今後は現
在ワクチン接種の審議対象になっている疾患に関しても、このような血清サーベイランスを
恒常的に維持していくことが必要だと考えられます。
 2番は患者サーベイランスです。いま感染症法に基づいて患者数が出されているわけです
が、先ほどいくつかの疾患で示したように、感染症法によって医者からの報告義務として上
がってくるデータが、実際をどのくらい反映しているかについては、B型肝炎のデーターで
示されましたようになかなか難しい点があります。本当にやるためには、アクティブ・サー
ベイランスという形でターゲットを決めて、ポピュレーションでどのくらい疾患が起こって
いるかを見い出し、全人口に対してどのくらいかを出すのが、正確な値を示すと考えられま
す。そのような方法を今後導入すべきかどうかも、検討する余地があります。
 もう1つは病原体サーベイランスです。各ワクチンは、パピローマ、肺炎球菌、Hibにし
てもそうですが、各血清型あるいは遺伝型に依存するわけです。ですので、菌の血清型また
は遺伝型が異なってしまうと、ワクチンが効かなくなってしまう可能性があります。そのた
めに、そういう菌やウイルスの性状がどのように変化していくかを見ることも、ワクチンの
効果判定には重要になります。そのようなことを考えた場合には、病原体サーベイランスの
特に抗原性、遺伝子型の問題を、体系的に検査、またはその情報を収集するシステムが重要
になってくると考えられます。
 ワクチンの品質管理に関してですが、感染研が国家検定を行い、品質の保証、つまり承認
されたものと同じ品質のロットのものが国民に使われるようにするということで、国家検定
が行われているわけですが、1つは承認をする前にいろいろと検査を行っているわけです。
そのときに、実際は、メーカーによって決められた項目をやることが前提になっているので
すが、それ以外に科学的に必要と考えられるものを適時できるようなシステムが必要だと考
えられます。その例として、Hibの例を記載しておきました。
 それと、承認後の副反応調査です。これも重要で、異常な副反応が見られたときには、そ
のワクチンのロットの回収等の措置が重要です。ワクチンの品質を保証するためには、承認
前にちゃんと調べることと、検定等で一定の品質のものが確保されるかどうかを検査するこ
とと、市販されて使われたときに副反応がどのくらいあるのか、異常な副反応が出ているの
か出ていないかを検証すること(市販後調査)、これらの総合的なことでワクチンの品質を
管理するべきだと思います。いま実際は、予防接種法に基づく副反応の調査及び医療機関か
ら報告される安全性情報がありますが、それらのものをできれば一体化し、それとワクチン
の国家検定のデータ等を照合できるようなシステムを今後構築することにより、異常な副反
応を起こすワクチンがあれば、そのロットがどれであるかが即座にわかるシステムが必要で
あると考えています。
 次に「ワクチン効果に関する研究の強化」です。いままで述べてきたワクチンは、どちら
かと言うと抗体が主だったのですが、抗体だけでなく、細胞性免疫というのもワクチンの効
果を見る上では重要だと考えられています。その辺の研究がまだ十分でないので、今後促進
する必要があると考えます。
 2番として、ワクチンのための「アジュバントの研究」です。どのようなアジュバントを
使えば、そのワクチンによる免疫を効果的に高めることができるのかというのは、まだわか
らない点が多いので、その辺の基礎研究等を十分にすることにより、よりよいワクチンのた
めのアジュバントを作る必要があります。
 あとワクチンの力価測定系です。最終的にはヒトに使うわけですが、ヒトに使う前に、よ
りよい動物モデルで、それが検証できる体制が重要です。なかなか動物モデルがないような
疾患もあるので、その辺の研究も促進されるべきだと考えられます。5は「医療経済的効果」
です。これは我が国ではそんなに得意な人がいないのが現状で、この辺のことをしっかりと
対応できる人材の育成が、今後必要だと考えています。
○加藤部会長 渡邉参考人、ありがとうございました。続いて予防接種対策推進協議会委員
長の神谷参考人より、今回のファクトシートの作成に当たり、臨床系学会の立場からご協力
いただいたところですが、今回の検討の経緯などから明らかになった今後の課題等について、
約10分以内でお話をいただきます。よろしくお願いします。
○神谷参考人 今日は予防接種推進専門協議会を代表しまして、岡田委員と私が出席させて
いただいております。いま渡邉所長から内容については詳しくお話をいただきましたので、
私たちがどのような役割を果たしたかということと、その途中経過において、どのような問
題点を感じたかについて、臨床側から報告させていただきます。
 資料5「協議会での検討の経緯」です。いまご説明いただいたファクトシート(案)とい
うのは、国立感染症研究所で原案が作られました。それが結核感染症課に送られたあと、結
核感染症課から予防接種専門協議会に依頼されました。6月4日付で、当協議会へは、ファ
クトシートの臨床的部分を中心に、協議会で時間的に可能な範囲で、以下の手法について意
見をまとめてほしいということでした。
 2枚目以下に書いてありますが、各学会から代表委員を選んでいただきました。本当は全
員がやれるといいのですが、何人かがダブりましたので、1人がいくつも持っても大変だと
いうことで、時間の制約を守るためには1人に1つずつやっていただこうということで、私
たち協議会も、私、岡田委員、岩田委員が世話役で人選をしまして、2枚目の裏にあるよう
に、各学会から推薦の委員の方々に、いちばんお得意と思われるところについて担当してい
ただき、ご意見をいただきました。
 そのご意見が6月26日の段階で出てきまして、それを協議会の役員が手分けをして、1
人2項目ずつくらいをまとめ、厚生労働省へお返ししました。
 それが逆に感染研へ行きまして、6月30日に、私たちのまとめたものと、感染研で基礎
を中心にまとめたものの摺合せを行い、それを最終的に本日までの間に、感染研で責任を持
って、いま渡邉所長からご説明のあったようなことをやっていただきました。これが経過で
す。
 3枚目です。いままでこのようなことはほとんどやられていなかったと思いますので、そ
ういう意味では、臨床と基礎が一緒になって、このようなものを作ったことは大変貴重なこ
とであったと感じています。各学会の理事会まで戻す時間はありませんでしたので、今日の
あとでこれを戻しますが、それぞれ皆様ご意見はいろいろあると思いますが、一応1つの成
果としては認めていただいていると考えています。
 ただ、先ほど所長も言われましたが、先ほどのHPVでも米国で5年間かかってあれを作
り上げたというお話のように、1、2カ月でこれを作ること自体が、組織のない中で、皆さ
んの知識を結集してやらなければならないわけですから、非常に無理な話で、細かなところ
まではとてもいかないことを強く感じました。したがいまして、この経験からは、ワクチン
に関する科学的知見について、基礎研究者、感染疫学者、臨床家等が、時間的余裕をもって、
検討や討議のできる恒常的な場の必要性を強く感じました。今後そのような組織の作成につ
いての検討を是非お願いしたいと思います。
 2番目は「ファクト」を集めて討議するというものです。臨床では、必ずファクトがなく
ても、実際に患者を診て、印象としてはこのようなことだということが、かなりあるわけで
す。その推定によって、意見がいろいろありました。しかし、今回については、ファクトシ
ートということを守りましたが、実際はワクチン製作のあり方についてはいろいろと意見が
ありました。それについては元の原案は残っていますが、今回は出していません。したがい
まして、出された担当者の先生方においては、これを最終的に見るといろいろ不満もあるか
と思っていますが、それは私が責任を負うということで、そのような形にしています。
 今回討議した8種類のワクチンは、ただいまの渡邉所長のご説明をお聞きになって、委員
の先生方も大事なものだということはわかっていただいたと思います。いま世界的に見れば、
Vaccine Preventble Disease、すなわち予防接種で予防できる疾患そのものです。先進国で
は、言葉はいろいろありますが、日本で言えば定期接種として実施しているものです。我が
国でも、このファクトシートに見るように、国民への接種はすべて必要なものです。当然、
これは接種を補償すべきものであると思いますし、それはやはり国がやらないといけません。
予算的な問題等がありますので、各地方自治体でやれることではありません。したがいまし
て、臨床としては、国にやっていただくことを今後強く推進していただきたいと思いました。
 最後に、ワクチンの種類が非常に多くなってきています。いま国立感染症研究所でワクチ
ンの接種スケジュールのモデル案を作っていただいていますが、各学会が認知しているもの
でもありません。いまご説明の中にもありましたように、今後いろいろな打ち方が出てきま
して、いくつかのワクチンが同時に増えてきますので、国としてこのようなスケジュールで
予防接種を実施するという、スケジュールをどうするか。アメリカのCDCが出しているよ
うなものをきちんと作らなければいけないと思います。
 それと、同時接種をしないと、必要な年齢でワクチンが接種できません。しかし、同時接
種は不可能なことではなくて、気をつけてやればできますし、その子どもたちの痛みの回数
を減らし、実施率をあげるためには、世界では多価混合ワクチンの利用もされています。多
価混合ワクチンについては問題点もありますが、これは我が国独自の力でその中身をしっか
りと検証し、今後積極的に取り上げていく方向性を検討していただくことが、このファクト
シートのお手伝いをして私たちは考えましたので、是非ご検討をお願いします。
○加藤部会長 神谷参考人、ありがとうございました。続いて、被接種者の方々のご意見も
非常に大切です。本日は被接種者のお立場から、細菌性髄膜炎から子どもたちを守る会の事
務局長の高畑参考人からプレゼンテーションをしていただきます。よろしくお願いします。
○高畑参考人 いまご紹介いただきました、細菌性髄膜炎から子どもたちを守る会という患
者会で事務局長をしております高畑と申します。本日はこのような機会をいただきまして、
本当にありがとうございました。私の長男がHibによる細菌性髄膜炎に罹患した経験を持
っています。そのようなVPD罹患者の保護者という立場も含めて、本日は意見と要望を述
べさせていただければと思います。スライドは動きのないものですので、お手元のものをご
覧になっていただければと思います。
 まず1点目です。大上段に構えた言い方になりますが、予防接種にかかる理念の転換をし
ていただきたいと思います。現状の予防接種法ですと、第1章第1条で、その目的として、
「伝染のおそれのある疾病の発生及びまん延を防止する」と掲げられています。現状ですと、
WHOの方針のように、「ワクチンで予防可能な疾患はワクチンで予防する」、という考え方
に世界的に変わってきています。これを法の中に書き込むことが重要なのではないかという
ことです。
 いただいたテーマは「予防接種法の対象となる疾病・ワクチン」ということでしたが、い
ま渡邉先生、神谷先生からありましたお話に重複することにもなりますので、個々の疾病に
ついて意見を申し上げることは、今回はあえていたしませんので、その点はご了承いただけ
ればと思います。
 続いて、接種を受ける側としては、国民へわかりやすく、かつ十分な情報提供をしていた
だきたいと思います。どの疾病、どのワクチンを予防接種法に位置づけるのかを考える際に、
いままさにファクトシートの内容で網羅されていた内容を、かつわかりやすく国民に対して
情報提供していただきたいと思います。そもそも、ワクチンで予防可能な疾病というのはど
のようなものがあるのか、罹患したらどうなるのか、治療内容はどうなのか、予後、後遺症
といった情報がなければ、国民としては予防接種をすべきかすべきではないかの判断は、非
常に難しいと思います。
 また、そもそもワクチンとはどういったものなのか、予防接種とは何のためにやるのか。
これは基本的な啓発という部分にもなりますが、例えば、予防接種を受けたら100%疾病に
かからないかといったら、そんなことはないわけです。その予防接種、ワクチンの限界も、
きちんと知らせておくべきでしょうし、逆に100%の安全ということもないと。これは多く
の方はご存知だと思いますが、やはり周知していただきたいと思います。それと、そもそも
の公衆衛生の概念、とりわけ集団免疫、間接効果といったものが、いま一つわかりにくくな
っています。いろいろな先生方のご講演を伺いますと、非常にわかりやすい図表などを用い
ながら、集団免疫や間接効果についてご説明いただき、非常にわかりやすいと感じています
ので、そういったことも周知していただきたいと思います。
 また、ワクチン、予防接種のメリットとデメリットについてですが、これはしつこいほど
周知していただいていいかと思っています。接種した場合のメリット、デメリットはもちろ
んのことですが、接種しなかった場合のデメリットについて、もう少しきちんと情報を提供
していただいたほうがいいと考えています。
 それから、ワクチン・ギャップと呼ばれる状況は、社会全体で認識を共有すべきではない
かと考えています。日本は、残念ながらワクチン後進国と言わざるを得ない状況にあります。
そして、私自身も息子が髄膜炎にかかって、さらにその髄膜炎はHibワクチンで予防でき
るという事実を知るまで、日本がワクチン後進国だという実態を知りませんでした。いま定
期接種されているものを打っていれば、子どもたちはVPDから守られると考えていたとい
うことです。そうしますと、予防接種はいまのままで十分ではないかと考える方が、まだま
だ多くいるというのもやむを得ないのかと考えています。ですので、日本はこのような状況
なのだということを、是非知らせていただきたいと思います。
 例えばWHOが勧告しているワクチンの中で、大体3分の1は我が国では定期接種がさ
れていません。あとは、1990年以降、日本ではワクチンの承認が非常に滞っていまして、
空白の20年があったという事実を、きちんと知らせていただきたいということです。
 そういった情報提供を行った上で、議論、合意形成の場に、接種を受ける側の意見、考え
方を是非加えていただきたいということです。接種を受ける側が不在では、国民的な合意形
成は望めないと考えています。この空白の20年、ワクチンの必要性を説く専門家、小児科、
感染症医などの声というのは、絶えずありました。私たち守る会の活動においても、ここに
お並びの先生方が積み上げられてきた論文、データ、研究といったものをベースに活動をし
ています。先生方というのは、本当にずっと努力されていたのだということを改めて感じて
います。
 一方で、接種を受ける側から、ワクチン接種を求める声というのはなかったのです。その
結果、専門家は知っていて、必要性も理解していて、声を上げているけれども、社会的合意
形成には至らないという歴史があったと考えています。
 また、話題になっている日本版ACIPですが、ここも接種を受ける側の参加は絶対に必要
だと思っています。接種を受ける側の不在の議論では、いままでの20年という空白の期間
を繰り返してしまう。お手本となる米国のACIPでは、Voting Memberのうち、1人は接種
を受ける側が必ず入ることになっています。そういった接種を受ける側を議論に加えていき
ながら、長期的戦略をもって議論をしていただきたい、これはこの部会の目的でもあります
ので、あえて詳しくは触れません。
 これは特に強調したいことなのですが、そういった議論の中で、「定期接種化しない」こ
との被害者の存在をよく考えていただきたいと思っています。ワクチンというのは、効果と
副反応の両方が必ずあります。これは不可分なものです。考慮すべきは、不可能な二者択一
ではなく、不可分な両者のコントロールなのではないかと考えています。これはお薬でも一
緒でして、その効果を享受できないという場合には、ドラッグラグなどと言われますが、ラ
グの被害になります。副作用の被害をコントロールできなかった場合に、それが拡大して薬
害、ワクチン害という事件になります。
 この不可分なものをいかにコントロールしていくかが肝になると思うのですが、では、効
果を受けられないことによる被害者の存在というのは、いままで認識されていたかというと、
私は社会的には認識されていなかったと考えています。接種されていれば罹患しなかった被
害者の存在というのは、是非認識していただきたいと思っています。また新たな知見という
のは、速やかに反映すべきだと考えています。
 接種しなかったことによる被害者ですが、細菌性髄膜炎のワクチンラグによる被害者に限
って申し上げますが、Hibワクチンは20年のラグがあります。7価肺炎球菌は10年のラグ
があります。こういった中、Hibワクチンに限って申し上げても、20年というと長期すぎ
るかもしれませんが、WHOの勧告以降の10年間でも、Hibのワクチンを受ければ助かっ
たはずの命が、300名以上失われている計算になります。後遺症を負わざるを得なくなった
子どもも1,000名近いということです。この存在を、もう一度よく考えていただきたいと思
っています。
 そして、これは極論だと思いますが、定期接種化「しない」という判断をした場合の被害
者というのは、これも補償されていいのではないかと個人的には考えています。ワクチンが
ないというのであれば、防ぎようがありません。それはもうやむを得ません。だけれども、
ワクチンが存在する、WHOも勧告している、そういう中で定期接種化の決断をしないとい
うことは、それは定期接種化するという判断をしないということではなくて、定期接種化し
ないという判断をしたものと同じだと私は考えています。定期接種化した場合の被害につい
ては、健康被害救済の制度があります。しなかった場合の被害というのはどうなるのか。こ
れは現状では何の補償もないわけです。具体的に、私は補償してほしいということを求めて
いるわけではないのですが、そういった考え方も成り立ちますよと。そのくらいの覚悟で、
是非国民的に論じましょうということをあえて申し上げたいと思います。
 また、接種を受ける側としては、いくら私の息子がHib髄膜炎にかかったからといって、
やはりすべてのワクチンを無条件で受け入れるという気持にはなれません。やはり何かあっ
たときの補償制度というのは、極めて重要だと考えています。それで現状の補償制度を考え
ると、不十分な面が多々あるかということです。
 そもそも国民的合意の下で、集団免疫、社会的防衛を期待して、定期接種をするという側
面がある以上は、予防接種に伴う被害は社会全体で支えるものであって、被害者の方が自ら
動いて、努力して、救済を受けるという筋のものではないと考えています。
 現状、例えばポリオの二次感染の被害は、同居の家族しか補償されないという話を伺った
ことがあります。また、糞便の中からポリオのワクチン株ウイルスが検出されたとしても、
他に麻痺を伴うようなウイルス等が検出されると、補償を受けられないということも聞いた
ことがあります。正確かどうかはわかりません。そういったものを、被害を受けたご本人が
証明するというのは、非常に難しいと思います。被害を生じた場合の手続というのは、迅速
かつご本人に負担のかからないように、そして十分な補償をということを、是非定期接種化
を論じる上でご検討いただければと思います。
 あと、この後の議題になってしまうのですが、接種は是非無料でということを徹底してい
ただきたいと思っております。まず、費用をとるということは、格差が生じるということは
いろいろな面でご理解いただけると思います。あと、費用負担を求めるというのは、そもそ
もなぜ求めなければいけないのかという理由が大事なのではないかと考えています。個人に
負担を求めるという発想はどこから来るのでしょうか。現状の任意接種ワクチンすべて公費
で賄ったとして、1,300億円から2,000億円あればできるというお話をされる専門家の先生
がいらっしゃいます。国家財政規模からしたら非常に微々たる金額なのではないでしょうか。
子ども手当の一部を回せばすべてできる金額です。そして、そもそも、個人の受益という観
点で自己負担を設けるということであれば、これは個人の益を受けないという権利も当然そ
こに発生する考え方になると思います。定期接種はすべて無料で行うべきだということを、
接種を受ける側として求めたいと思います。
 あと、必要なワクチンは弾力的な対応で迅速に確保してほしいということをお願いしたい
と思っています。海外にはあるのに日本にないワクチンというのは、是非、輸入してでもい
いから確保していただきたい。例えば、Hibワクチンが足りない。足りない間に罹ってしま
ったお子さんを私たちは数多く知っています。足りないのであれば、日本向けのHibワク
チンが足りるまでの短期間、期間限定でも構いませんので、是非ワクチンを輸入することを
ご検討いただくこともあってもよかったかなと。また、ポリオのIPVに関しても、OPVか
らIPVに切り替える、そしてSabin株のIPVに切り替える。この段階の2番目をすっ飛ば
しているのが今の日本の状況だと思っています。第3段階を実現するまでの間、第2段階は
輸入で対応する。そういったことを検討する。今からだと時間的に厳しいのかもしれません
が、そういった発想があってもよかったのではないかということを考えています。
 あと、「日本向け」のワクチンという考え方について、もう一度、社会的に合意を図るべ
きだと思います。日本向けがハイスペックであることは非常に望ましいと思いますが、オー
バースペックであってはならないのではないか。ここら辺でどこまで求めるのかというのは、
国民を含めた合意が必要なのではないかということを考えております。
 最後に、これはプロジェクターのほうにしかないのですが、この右側に映っているのが
Hib髄膜炎に罹った私の長男です。幸い、後遺症もなく、無事、サッカーのユニフォームを
着ていますように、日本代表になりたいと言って毎日サッカーをしています。私自身は、努
力をすれば、かなわない夢はないと思っていますので、息子にも「頑張れよ」という声はも
ちろんかけています。しかし、イギリスの調査で、実は全快したと思われる子どもであって
も、高校時点の学力がHib髄膜炎経験児が有意に低いという調査なども出てきております。
もちろん、なぜそうなのかという原因はまだはっきりはしていません。ただ、将来の可能性
をスポイルするそういった可能性があるのだと。全快したと言われていてもあるのだと。後
遺症というのはゼロか100ではないですよね。そのときに、私は自信を持って「頑張れよ」
と言えないのです。そういう思いを二度と繰り返してほしくない。そのためにも、是非、定
期接種化、先ほどファクトシートに挙げられたものはすべて大至急決断していただいた上で、
恒常的に議論する場をつくっていただき、そこに接種を受ける側も加えて、常に予防接種に
対して社会全体で取り組めるという環境をつくっていただきたいということを皆様にお願
いしたいと考えております。非常に早口でしたけれども以上でございます。ご清聴ありがと
うございました。
○加藤部会長 それでは、ただいまの事務局のご説明、渡邉参考人のファクトシート、神谷
参考人からのファクトシートについてのご説明、また、いまは高畑参考人からのプレゼンテ
ーションを踏まえまして、各委員からご意見、ご質問等がありましたらばお伺いしたいと存
じます。
○黒岩委員 このファクトシートをまとめてくださった皆さんのご努力に本当に感謝した
いと思いますが、私はいま衝撃をもって聞いておりましたが、初めての試みであったという
ことで、こういうことは今までやっていなかったのですか。どのワクチンがどのように効い
て、どういう臨床のあれがあって、どういう基礎研究があって、海外でどうなっているかと
いうことを、これは当然のごとくそういう研究をしていると思ったのですが、それが初めて
だったというのはすごく驚いたのですが、これは誰か教えていただきたい。なぜこういうこ
とをやっていなかったのでしょうか。
○加藤部会長 事務局、お答えになりますか。
○結核感染症課長 予防接種検討会において、一部同様の作業はしたことがあります。そう
いう面では、ここまで精密なものといいますか、例えば基礎論文も明示したものまでまとめ
たのは初めてということですが、過去に全くないわけではありません。
○岡部委員 今までの検討会その他でも、当然、資料は出たことがありますし、それと別個
に例えば感染研の中でワクチンに関する書物が出てきたり、あるいはそれぞれの個別の研究
者がそれぞれのものに出したり、私たち情報センターでは、はしかの検討会のときには、非
常に重厚なと自分でも思っているのですが、資料を出したことがあります。ただ、おそらく
は神谷先生が初めてという表現を使ったのは、これだけの作業を短期間で、しかも事務局と
してつくったのではなくて、事務局の依頼を受けた臨床側と基礎側が一緒になって、学会を
あげてつくったということが初めてだというふうには思います。ですから、つくったことが
ないと言えば、私も今まで委員などもやっていましたし資料を出しましたから、やったこと
がないわけでは決してないと思います。
○加藤部会長 神谷先生、追加ですか。
○神谷参考人 いまの岡部先生の答とほとんど一緒ですが、要するに基礎と臨床と、こうい
う形で感染研も全部まとめて全員をあげてつくったというようなことは、今までなかったと
思いますし、学会のほうもそれぞれがバラバラにはいろいろなことをやっいます。みんない
ろいろなことをやっていますが、学会間共通でいろいろ意見を言うようなことをやれたのは
初めてであって、こういう組織がこれをもう少ししっかりさせたものとして検討ができれば、
決して外国に負けないような組織が出来上がるだろうと。いかに上手につくっていくかとい
うことが今回大事だなということを感じたので、そういうふうに申し上げました。
○黒岩委員 ということは、副反応の事故が1個起きたときに分母がわからないというのが
現状だったということですね。
○岡部委員 サーベイランスをやっている立場から申し上げれば、分母がないわけではない。
その度に分母を出して、大体このぐらいだというのはありますけれども、厳密な意味でのど
の程度の精度を求めるかということでは不十分なところもあるので、これはさらに良いもの
を構築しなければいけないというように思います。
○加藤部会長 よろしいですか。
○黒岩委員 はい。
○加藤部会長 では、岩本委員、議題を移して結構です。
○岩本委員 質問が3つと意見が1つあります。3つとも似たような話です。1つの感染症
に対してワクチンが2つ併存しているのか、あるいはこれから併存する可能性があるのでは
ないかということに関して3つ質問があります。1つは、水痘ワクチンです。このワクチン
が帯状疱疹にも効くのだというお話があって、それはわかるのです。しかし、帯状疱疹ワク
チンという言葉がファクトシートの中に出てくるのですが、アメリカで例えば水痘ワクチン
と帯状疱疹ワクチンは同じものについて言葉を使い分けているのか、別のワクチンとして存
在するのか、というところがわからなかったので、それが1番目の質問です。
○加藤部会長 1個ずついきましょう。感染研、どうぞ。
○渡邉参考人 株は同じだけれども量が違うのです。
○岩本委員 力価が違うというので使い分けているのですか。わかりました。2点目と3点
目は事務局への質問かもしれません。パピローマウイルスのワクチンは2つ例が出てきたと
思うのですが、内容的に16と18のタイプのものと、それらに加えて6と11が入っている
タイプのものが出てくることになるというお話があったと思います。これらのワクチンの価
格はこの部会で議論するのでしょうか。それとも、すでにある程度固まった考え方があるの
かというのが2番目の質問です。
○加藤部会長 これはいまここで議論は無理です。この後で少し触れましょうか。
○岩本委員 わかりました。3点目は、ポリオワクチンは生ワクチンに替わって不活化が使
われる可能性が議論されました。切替の仕方はどうなるのでしょうか。ある時点で完全移行
するのか、あるいは一定の移行期間併存させた上で替えるのか、それともずっと併存させる
のか、考え方がいくつかあると思います。いかがでしょうか。
○加藤部会長 それは疑問だけでよろしいですか。
○岩本委員 どういうふうにしていくのだろうか、決まっていれば教えていただきたいと思
います。
○加藤部会長 先ほど来少しこの話題は入っていると思いますが、結論は出ないと思います。
感染研のポリオの方、これに関して何かご意見ありませんか。
○渡邉参考人 先ほどのファクトシートにも書きましたように、それも議論をすべきである
という形でまとめは書いてありますので、完全にシフトしてしまうのか徐々にやっていくの
か。アメリカの例は、しばらく共存してIPVに完全に移行したというデータがありますの
で、そういうものを基にしながら考えていくべきだと思います。
○岩本委員 病原体サーベイランスの話が出てきたと思います。診療現場では、PCR等の
遺伝子増幅検査が感染症に対してよく使われるようになってきました。検査法の開発が非常
に速くなり、いろいろな検査会社でできるようになります。そうすると、保険適用等の問題
はありますが、いろいろな検査機関に非常にオーダーしやすくなる。一方で、検査会社から
病院とか診療所に結果は返っても、ほかの機関にはデータが行きませんので、サーベイラン
スの観点で考えると、その点は逆に非常に問題がある。今まで日本の経済が良いときには、
たぶん両方併立できたかもしれませんが、なかなかそうはいかなくなるだろうと思います。
私は、どうしたらいいかと申し上げているのではなくて、病原体サーベイランスには何が必
要だということと、できるだけ診療現場のニードに応じて検査をしやすくして迅速に診断す
るということは両者並立できないかもしれない、と申し上げているつもりです。その辺の議
論はここが適当なのかどうかわかりませんが、病源体サーベイランスの話が出ましたので意
見として申し上げました。
○加藤部会長 この件に関して何かありますか。
○渡邉参考人 その病源体サーベイランスの場合に2通りあると思うのです。地方衛生研究
所が担当できるものとそこから外れるもの。それは市販の検査会社等にデータが集まるもの。
ですから、現在のものに関しては主には地方衛生研究所が対象になっています。将来的には、
そういう市販の検査所からのデータもアベイラブルにするような体制は必要だと思います
が、そのときに、1つはクォリティコントロールをどうするかということのQAEの問題。
その辺は考えていかなければ、同じ物差しで本当に測れるのかというところが問題になるの
ではないかと思います。
○岡部委員 もう1つは、サーベイランスの強化で法的な問題もあるのではないかと思うの
です。病気の発生動向調査は感染症法に基づいて行われているのですが、病源体に関するサ
ーベイランスは非常に裏付けが弱くて、法的な根拠をもってきちんとやるということが曖昧
になっています。これは、おそらく、この議論はこの委員会ではなくて感染症分科会のほう
が適当だと思いますが、感染症分科会がなかなか開かれていないので、それが議論になかな
か上がりにくい。それから、地域保健法の問題もあると思うのですが、これは近々開催され
るというふうには聞いています。
○倉田委員 これは、たしか、黒岩委員が前にも質問されたと思うのですが、いま岡部さん
が触れた病源体の地方衛生研究所で担っているものは、感染研との協議の上で1つのマニュ
アルをつくって、同じ検査法でやって病源体を調べているという点では非常に質的には高い。
もう一つは、ウイルス学会その他で、民間のコマーシャルラボのデータの問題に関して、も
う10年以上いろいろな度に議論していますが、民間のコマーシャルラボはそういうデータ
は一切出せないと。病院との個人的な関係であるということで、そちらのほうのサーベイラ
ンスは一切できないようになっているのです。そういう意味では非常に大事なことが一方で
完全に欠落しているということがあります。
 もう一つ、地方衛生研究所について言えば、これは法律に基づいている保健所のような格
好ではないのです。ですから、県によっては検体をそのままコマーシャルラボに送ってしま
うというような所もある。つまり、設立そのものが非常に弱体な基盤であるということで、
たしか、局長通達か何かだと思うのですが、そういうことで非常に大事なことを背負ってい
るけれども、はっきり言えば、そこのところがわりあいいい加減な位置づけになっている。
今は76カ所ありますけれども、非常にきちんとやる所とやらない所の落差があまりにもひ
どいということがあります。そういう点で、これを本当にやるならば、別に、これは予防接
種だけではなくて、感染症の問題をきちっと把握するためには、地方衛生研究所の法的位置
づけに加えて、それなりのマンパワーも必要だしお金も必要だし、そういうようなところが
見事に欠けているというのはいま指摘されたとおりです。
○加藤部会長 わかりました。先ほど岡部先生がおっしゃったように、これは予防接種でも
必要ですけれども、感染症分科会も必要かと思います。
○岡部委員 この部会としては、いま言ったような議題は感染症分科会で是非取り上げてい
ただきたいというのが要望ではないかと思うのですが、岩本先生、いかがでしょうか。
○岩本委員 いつも申し上げることですが、感染症と予防接種の話は車の両輪みたいなとこ
ろがあります。ほかの場所で議論していただくといいと思いますが、常にそのことも議論し
ていかないと、時期とともに一方だけが変わっていくので、ときどき見直しが必要だと思い
ます。
○廣田委員 意見と要望です。本日、私、資料として肺炎球菌とインフルエンザの翻訳をこ
こに提出しています。ファクトシートが今回出ましたが、将来的にはこういった勧告みたい
なものが出てくると思うので、それとの関連です。先ほどの神谷先生のご報告で、ワクチン
に関する科学的知見について基礎研究者、感染疫学者、臨床家等が時間的余裕を持って検討
や討議のできる恒常的な立場の必要性を強く感じると書いてありました。特に、ワクチンの
有効性とか副反応との関連というものを、その調査のデザインとか結果の解釈、妥当性を見
極めるとなると疫学者が必要なわけですが、この基礎研究者、疫学者、臨床家でいちばん不
足しているのは疫学者です。似たような例で、かつて、肺がん健診が有効かどうかというの
が問題になったときに、疫学者と臨床家がタッグを組んでそれを見極める作業をしたわけで
す。そのときに、本来もともとの日本の疫学者はほとんどが脳卒中とか高血圧をしていたの
です。ところが、当時の厚生省のがん研究助成金で30年ぐらいかけてがんの疫学者を育て
たのです。それで、がんの疫学者が一大勢力になった。そういう意味から、すぐがんの疫学
者がこれに取り組むことができたという歴史があります。したがって、是非とも、この感染
症についても、厚労省の力で疫学者を育てるというような動きを持っていただきたいと思い
ます。
○宮崎委員 意見と質問です。1つは、今日、ファクトシートは7月7日版と書いてありま
す。臨床家からすると、意見は出しましたけれども、最終的には感染研でまとめられている
ので、なお意見を言いたいときにはそれを吸い上げてこれを改訂していく予定があるかどう
か。もう一つは、高畑参考人が、足りないものは海外からという話が最後に出ましたが、こ
れは足りないときに臨床試験をすっ飛ばして(省略して)でも入れたほうがいいとお考えか。
あるいは、前々回も聞きましたが、臨床試験を国内できっちりやって入れたほうがいいのか。
この辺は感染研の立場もあるでしょうし、使用側もあると思うので、一言だけご意見をいた
だきたい。
○加藤部会長 それは高畑さんにご質問ですか。
○宮崎委員 はい。それと、感染研と両方の立場で。
○加藤部会長 高畑さんはいかがですか。実情はわかりにくいと思いますけど。
○高畑参考人 その疾病の重篤さとか発生状況とか、あとはワクチンの海外での使用実績と
か、そういうことを加味して判断すべきだと思いますので、一概にすっ飛ばしていいか悪い
かというのは何とも言えないかなと思っております。
○事務局次長 よろしければ、いまの最初のほうの質問との関連で、資料7、つまり今後の
進め方と一緒にご説明させていただければと思います。
○加藤部会長 ここで先に進めさせていただこうと思ったのはそういうことでありまして、
次に、個別のワクチンの評価・分析の進め方につきまして、いま鈴木次長からお答がありま
したが、ここにいきましょう。お願いします。
○事務局次長 先ほど岩本先生からもありましたが、これから個別ワクチンの評価・分析を
さらに進めるにはどうするかということで、資料7です。1の所には、いま7月7日版と書
いてありますが、ワクチン8つについてつくっていただきましたということの事実関係だけ
を書いています。2と3が重要な点ですが、2の所は、1つは、前提としては、高畑さんも
おっしゃいましたが、予防接種というのは何なのか、国の予防接種は何を目指すのかという
ところの検討が車の片輪としてあるだろうと。もう一つは一つひとつのワクチンをどうする
かということがあるのですが、両輪として検討していくという前提だと思います。その上で、
今回の7月7日版を踏まえてどういうことが必要かということを3点ほどまとめさせてい
ただきました。1つは、データの捉え方をどうするか。今回もそういうある一定のデータが
なかったり、もしくはデータ相互間で矛盾を来たしていたりということがあったりする場合
がありますが、その場合にどのようにどのデータをとるのか。もしくは、ないとしたらそれ
をどう判断するのかということが1つあると思います。2点目は、データの分析・判断のポ
イントということで、これは(3)とも関連しますが、例えば医療経済学的分析で、先ほども
渡邉所長の説明の中にありましたが、医療費という直接費用だけに限定する場合と間接費用
も入れて計算する場合で、最終的な結果が全然違うということもあります。その際に、この
部会としてはどうやって判断するのかということも検討していく必要があろうかと思いま
す。
 3点目ですが、これは先ほど私の説明でも申し上げ、先ほどの岩本先生のご質問にもあり
ましたが、この部会で最終的にご判断いただく前に、具体的に個々のワクチンについて誰を
対象にどういう人に接種するのか。キャッチアップはどうするのか。もう一つは、もし移行
があるのだったらその移行をどう考えるのかというような勧告の案をつくっていただく必
要があろうかと思います。
 そういうものの進め方として、次の3の所ですが、前提としては法の目的、国としてやる
予防接種をどうするかということがありながらという前提ですが、具体的に検討の仕方とし
ては2つあると思います。1つはこの部会全体で議論をしていく場合、2つ目は部会の下に
小委員会を設けて検討をする場合です。これはいろいろメリット・デメリットがあると思い
ますが、事務局的に言わせていただけるのであれば、比較的短期間のうちに一定の結論を得
るということを前提とした場合には、部会全体で個々のワクチンについて深い突っ込んだ議
論をしていくということと、大枠の法全体の議論を両方ともこなしていくというのは日程的
に相当大変になるということもありますので、小委員会を一定程度つくらせていただければ
運営は楽になるのではないかと思います。その場合に、どういう構成、どういう運営方法を
するかということについて、もしこの段階で先生方のご意見を伺えることがあれば伺ってお
きたいと思います。
 それから、(3)の所ですが、今回の8つのワクチン、病気についてファクトシートをつく
っていただきましたが、もちろん、これ以外のものもあるわけで、将来に向けて今後どのよ
うな疾病ワクチンについてファクトシートを準備し、さらには勧告案に進んでいくのかとい
うことについても議論が必要ではないかと思っております。
○加藤部会長 ただいま鈴木次長のほうから個別ワクチン等の評価・分析の進め方を今後ど
のような方法で進めていったらよろしいかと。しかも、比較的短い期間の中で議論を進めて
いくにはどのような方法がよろしいかということで提案がされたわけですが、ズバリ申し上
げると、いまここでお話し合いをしているように、各論に際しましてこの部会でこのような
ことをやっていくことが正しいやり方であろうか。または、一つひとつについて、今日もい
ろいろな質問が出ましたが、小委員会的なものをつくって、そこで同時にといいますか、や
っていただき、そこの小委員会でまとめたものについて、この部会で大枠を議論するという
方法でやったらどうかと。こういうような提案だと思いますが、今後の進め方について委員
の方々からご意見を伺いたいと存じます。いかがでしょうか。
○岩本委員 今後の進め方ではないのですが、このファクトシートの件です。大変立派なも
ので、これはまとめられた先生と個々に関与された先生に感謝いたします。こういう労作は
この部会の議論のたたき台となった資料として、ファクトシートだけでもある時点でホーム
ページなりに公開されたほうがいいと思います。いろいろな意見も出てくるでしょうから、
今後議論に役立つと思います。
○事務局次長 本日付けかどうかは別ですが、資料については早急にすべてホームページ上
に載せることになっております。
○加藤部会長 よろしいでしょうか。それでは、先ほどの話に戻しまして、今後の進め方に
ついて何かご意見がありませんか。倉田委員、どうでしょう。
○倉田委員 これは技術的な問題がかなり深い点があるので、そこは集中的にこの技術関係
の人でやって、それをまたこの部会に上げるというような格好でやったほうが効率的だし、
かつシビアな議論ができてうまくまとめられると思います。私が1つ気になるのは、この中
をずっと見ていると、はっきり言って、副作用・副反応は全部品質の問題なのですね。もち
ろん、1,000人だったらどのぐらいの個人差というのは確かにありますが、それに加えて、
品質の問題なのです。ところが、この部会にはワクチン被害の議論があるが、品質の関係の
委員もお見受けできないし、そういうことに詳しい薬事関係の人が加わることが絶対に必須
だと思います。そういうものを前提にしてだったら私は賛成です。
○加藤部会長 わかりました。品質の問題を含めた上で、薬事関係に強い方も中に入れた小
委員会をつくるべきであるというご意見ですね。
○宮崎委員 これだけの分量のものをこの部会の中でやるのはなかなか大変で、私たちはあ
る程度基礎知識があるので先ほどの説明もよくわかりましたが、個々にやるときには専門家
集団、ワーキンググループになるのでしょうか、そこで論点を整理してもう一回出し直して
ということは必要なのかなと思います。
○北澤委員 私も特に反対というわけではないのですが、今日の議論を聞いておりまして、
ないよりはあったほうがいいというデータはあると思うのです。例えば、人員にしても、い
ないよりはいたほうがいいのだろうというのがあるのですが、この部会としてお金に糸目を
付けずに、これもやってあれもやってと言っていいのかどうかがわからないので、その辺り、
事務局に伺いたいと思います。
○加藤部会長 整理ができるかどうかというご質問だと思いますが。
○事務局次長 少なくとも、今回もいくつか既存の医療経済学的分析についてデータを出し
ていただきましたが、当然、その勧告案という段階で議論をしていただく際には、個々のワ
クチンをこういう人を対象にこのぐらいの形でやるとすればいくらぐらいの費用になると
いうことは、部会の先生方にはお示しするということになると思います。ただ、純粋な科学
的な検討以外にも、当然、自治体側のご意見、全体的な財政的な意見、さまざまなものがあ
ると思いますが、そういうものも含めて検討していただくことになると思います。
○加藤部会長 澁谷委員、今後の進め方についていかがでしょうか。
○澁谷委員 私も小委員会を設置するのに賛成です。
○加藤部会長 今村委員、今後の進め方についていかがでしょうか。
○今村委員 個別ワクチンの評価に関しては小委員会でないと現実的に無理だと思います
が、いちばん最初のワクチンの予防接種法上位置づける際の、評価基準等の作成の最初の部
分をきちんと議論しないで、すぐ3番にいくのは私自身はちょっと。これは並行してやるの
でしょうか。
○加藤部会長 これは基本的な問題ですので、事務局ではどうお考えでしょうか。
○事務局次長 当然ながら、それがワーキンググループになるか小委員会になるかですが、
その中できちっと合意をされた上で、ここに入っているというふうに理解しています。
○今村委員 それならばいいです。
○加藤部会長 そもそも論をつくった上で各論に入っていくということです。飯沼委員、今
後の進め方についていかがですか。
○飯沼委員 基本的にはそれでよろしいと思います。
○古木委員 私も賛成です。
○岩本委員 小委員会で進めるのに賛成ですが、先ほどもあった多価、混合ワクチンの件や、
今日議論に出なかったようなワクチンを、今後どうしていくのかような様々な問題を考える
と、小委員会のまとめが出てきて最後に全体の委員会でポッと議論をするというのでは、あ
る意味、ちょっと足りないような気もします。いくつ小委員会をつくればいいのかという問
題もありますが、少し横断的なものとか、どこかで一回全体に出してさらに小委員会でやっ
ていただく、ということも必要かなという気がします。
○加藤部会長 整理しますが、ここに出てきていないワクチンについても、先ほど鈴木次長
から出ましたが、それを含めた上でのファクトシートも考えているということは出ましたの
で、それは考慮に入れていくということでよろしいと思います。
○保坂委員 小委員会に対する考え方がそれぞれ委員の先生方で違うのではないかと思う
のです。小委員会を、例えば疾病のワクチンの種類ごとにつくるとか、そういうイメージの
方もいらっしゃるように思いますし、そうではなくて、専門的なことを協議するために、よ
り密度の高いことでワーキンググループをつくるというふうに考えていらっしゃる方もい
るのですが、事務局の考えとしては、例えば最初の位置づけのための小委員会のときは、小
委員会のメンバー全員が集まって、それをさらに小分けしてそこでもう少し詳しいことを決
めていく、それからその中で、ということではなくて、1つの小委員会でいま出てきていな
いものについても、すべてやっていくというイメージなのでしょうか。
○事務局次長 具体的に、8つの小委員会をつくると、たぶん、マネージができなくなると
思います。しかしながら、1個だけでいいかというとそういうわけにもいかないということ
で、できれば、例えばやり方としてはコアメンバーはある程度決めておいて、あとは疾患ご
とに専門家が入れ替わりながらやっていくということが1つのアイディアだと思います。そ
れから、岩本先生がおっしゃった件については、当然ながら、小委員会で預かったら最後ま
で出さないということではなくて、途中で何回か予防接種部会本体にもお諮りしながらやっ
ていくということを考えています。
○岡部委員 小委員会のほうは私は賛成なのですが、「将来に向けて」という所がこれから
難しいところで、この部会が将来に向けてのことを検討してそれでお仕舞いというふうにな
ってしまうのではいけないと思います。例えばACIPというものが1つのお手本であるとす
れば、あそこは年に3回親会議をやって、アジェンダが数回先まで決まっていて、その次に
数年先に何を議論するかということをもとにしてワーキンググループをつくっていきます。
今、この部会で将来に向けてのワクチン問題を全部一気にやるのは難しいだろうと思います
から、先ほどいくつかの提言もあったように、そういうところを将来的に向けて長期的な議
論をやるところを設置しておくべきである、という意見です。
○加藤部会長 ほかにご意見ありますか。
○宮崎委員 少し細かい議論ですが、混合ワクチンの話が先ほど出ましたが、混合ワクチン
に関しては医薬食品局のほうがワーキングクループをつくって議論してきた経緯もあるの
です。ただ、国がそういう議論をなかなか形に持っていかなかったというか、途中でうやむ
やになりがちなところが、今までもあります。これまでの議論を今回のいろいろなワクチン
のところにも反映させていけば今までの努力も無駄になりませんので、そういうことも局を
超えてきちんと協力していただきたいと思います。
○加藤部会長 当然そういうことになると思います。
○廣田委員 情報収集の対象とする疾病・ワクチンということですが、これを小委員会です
るのは私も賛成です。しかし、そこで対象としたものが、当然、予防接種法に盛り込まれて、
実際の接種制度の対象になるという、すぐそのようにつながってしまって無理が生じること
になるのではないかと思うのです。例えばもっと柔軟に、感染症法の五類感染症で、サーベ
イランスだけをして情報を提供するというような位置づけの疾病もありますよね。何か、そ
ういった部分、ワクチンの生産状態とか品質であるとか、現在どのぐらい受けているかとか、
その疾病の状況がどうか。そういうことを調べる対象の疾病あるいはワクチンもこの予防接
種法で対象とするというような、柔軟な考え方もあっていいのではないかと思います。
○加藤部会長 ちょっと私には意味不明なのですが、もう少しわかりやすく端的に言ってく
ださい。
○廣田委員 実際に、「接種を実施するだけの制度」ではなくて、情報を収集することも含
めた制度という意味です。ちょうど五類感染症と一緒です。
○加藤部会長 わかりました。そういうご意見も含めてこれから議論の中に入れていくとい
うことですね。ほかにご意見ないでしょうか。
○岡部委員 関連すると思うのですが、今のサーベイランスの対象が、例えば定期接種であ
るからやる、任意接種だからあまり深く追いかけないというようなところが、現行のサーベ
イランスの元々の根っこのところにあります。先ほどご紹介して頂いた血清疫学情報も非常
に重要な情報ですが、定期接種の対象の、例えばDPTとか、はしかならばできるけれども、
現在任意接種の対象であるムンプスのデータは何なのというと、対象外として全く出てこな
いような状況です。そういうようなところも、ワクチンで防げる病気ということに対するサ
ーベイランスを強化するべきではないでしょうか。
○加藤部会長 岡部先生と廣田先生はほとんど同じ意見ですね。それを当然ひっくるめて今
日もファクトシートが出ているわけなので、そういうことをひっくるめた上で、部会でやる
か小委員会でやるかということのご意見を伺ったところですが、事務局から出された資料7
の3をもう一回読んでいただくとわかるように、これらに記載されたような事項を中心に今
後の評価基準について検討を進めると。そういうことにしたいと。皆さんも小委員会を開く
ことが、部会でやることよりも有効的であろうというふうに伺いましたので、今後の運営等
につきましては、事務局におかれましては具体的な案をつくっていただく、これがまず第1。
そして、その上、小委員会を開いていただきまして、その後、作業を広げていくということ
にしたいと思います。そういうことでよろしいですね。ここで部会ですべてをやることは無
理だということですので、いまの私の意見でよろしいでしょうか。今後のワクチンの評価・
分析の進め方につきましては、小委員会を設置して検討を進めることといたしますけれども、
具体的な運営方法等については、本日いただいた各委員からのご意見を事務局で整理してい
ただきまして、次回以降また改めて議論をするということでよろしいでしょうか。
(承認)
○加藤部会長 では、了解と認めます。この議論はここで終了いたします。次の議題の2
にいきます。接種費用の負担のあり方につきましてお願いいたしますが、これには接種費用
の負担の現状、地方自治体への調査結果、諸外国における状況につきまして、結核感染症課
より簡略にご説明をお願いいたします。
○結核感染症課長 お手元の資料8に従いましてご説明いたします。1頁目、予防接種法の
現行体系ですが、定期一類、二類、臨時接種があります。定期接種については実施主体が市
町村ということで、接種費用は市町村が支弁するということになっております。接種費用の
徴収については、経済的困窮者を除いて実費徴収可能となっております。臨時接種について
は、現行臨時接種の実施主体は都道府県または都道府県が指示した場合は市町村ということ
で、その接種費用は、都道府県が実施した場合は国・都道府県で2分の1ずつ、市町村が実
施した場合は3分の1ずつ支弁することになっています。現行臨時接種については実費徴収
はありません。無料です。
 次の頁は条文ですから省きます。3頁目の下のほうに、いまご説明したものを図示してお
りますが、定期接種については、経済的困窮者は実費徴収可能ではありませんので、その部
分について地方交付税で手当をしているということです。ただ、実態的には、一類定期、子
供の定期接種については実費徴収をしていない市町村がほとんどです。これについてはまた
後ほどご説明いたします。臨時接種は先ほど申し上げたとおりです。それから、今般の新型
インフルエンザワクチンの接種事業については、低所得者減免分について、国2分の1、都
道府県4分の1、市町村4分の1という事業で行っております。
 次の頁ですが、これは諸外国の予防接種の費用負担の状況です。日本についてはご説明済
みですので省きます。米国では、多くの場合は基本的に民間の医療保険が償還対象としてお
りますが、それ以外の上記の対象ではない場合は、例えばこれはCDCのVFCというプロ
グラムでカバーされる部分については、ここにあるように、一定の子どもさん等については
ACIPが推奨するワクチンについてはワクチン代は無料、手技料(接種費用)は15ドル程
度を上限として徴収できるということです。ドイツでは、ワクチンの購入は民間がしており
ますが、実際にその9割は公的医療保険のほうが支払い、1割が民間医療保険が補足的に支
払っている。保険者等については社会保障制度で行われているということです。手技料につ
いては疾病金庫と各州の保険医協会との交渉で決められていますが、おおむね5.5ユーロか
ら8.9ユーロぐらいとなっています。フランスは、85%は民間医療機関、民間医が行ってお
りまして、15%が公的なクリニックで行われている。公的クリニックでは、接種義務のあ
るワクチンについて、あるいは無料で勧奨されているワクチンのいくつかも無料になってい
ます。民間医療機関ではそのワクチン代の65%は疾病金庫から償還されておりまして、残
りは自己負担ないしは民間の保険で支払われている。「なお」書きにありますように、13歳
以下への小児のMMRとか高齢者一部の方についてのインフルエンザ接種については社会
保障制度で支払われているということです。
 カナダについては、どのワクチンを無料にするかは各州が決めているということですが、
ハイリスクに限って無料のことがあるということです。英国はナショナルヘルスサービスで
全部無料になっております。インフルエンザワクチンの費用負担についても、左側の通常の
インフルエンザについてはいまご説明したとおりですので省きますが、新型インフルエンザ
については、今回臨時的に行われた各国もそういうことで少し状況が違っております。アメ
リカではワクチン代が無料、接種については民間医療保険と公的医療保険がそれぞれカバー
している。イギリスでは、優先接種対象者については無料である。フランスではいずれも無
料になっているということです。ドイツではこれも無料ということです。
 次の頁ですが、各市区町村が一類定期、二類定期、法定接種以外のものについてどういう
助成をしているかということについて調査をしたものです。3月に実施いたしまして、その
時点で判明しているものについて集計していますが、1頁目についてはこの6月に再度聞き
取り調査を追加で実施いたしました。回収については全体の市区町村のうち1,744市区町村、
99.4%から回答をいただきました。右側、7頁の上ですが、一類定期につきましては、その
回答があった市区町村のうちの99.6%の市区町村において全額公費負担をしており、7市区
町村においてのみ一部自己負担があるということです。具体的事例はここにあるとおりです。
二類定期ですが、これは高齢者の方を対象とした季節性のインフルエンザワクチンですが、
全額公費負担をしているのは68の市区町村、67市区町村では一部公費負担、あるいは一部
の自己負担を求めているということです。金額は、ここにありますように、2,000円から
3,000円程度を助成しているのがいちばん多くなっております。
 次の頁ですが、法定接種以外の疾病ワクチンの公費助成の状況です。Hibに関しましては、
平成20年度から導入され、平成21年度、平成22年度と増えていますが、平成22年度に
なると全体で204市区町村、11.7%の市区町村で助成がされております。金額については1
回当り3,000円から4,000円の所が最も多くなっております。
 次の頁です。小児用の肺炎球菌ワクチンでは、まだ導入されて日がないということもあり
まして、今年度で11市区町村、0.6%になっております。1回当りの接種費用では5,000円
以上が最も多くなっております。成人用の肺炎球菌ワクチンは、327市区町村、11.8%で助
成がされていまして、1回当り3,000円から4,000円が最も多くなっております。
 次の頁です。HPVワクチンにつきましては、平成21年度については実績がありませんの
で、平成22年度から開始するという答があったものですが、6月時点で再確認したもので
すが、114市区町村、6.5%で助成がされておりまして、1回当り1万2,000円以上を助成
している所が7割弱に上っております。水痘ワクチンは、59市区町村、3.3%の市区町村で
助成がされております。これも平成21年度、平成22年度になって増えております。1回当
りの助成金額は、最も多いのは5,000円以上ですが、3,000円以上から5,000円以上までの
所が大多数を占めております。
 最後の頁ですが、おたふくかぜにつきましては、61市区町村、3.5%で助成をしておりま
す。これも最近また助成を始めたところが増えております。金額のいちばん多いのは3,000
円から4,000未満の所が3割強となっていますが、5,000円以上の所も4分の1程度ありま
す。以上です。
○加藤部会長 費用の実情、現状についてご報告がありました。引き続いて、全国市長会の
相談役として委員でおられますが、今日はご欠席の木田委員から資料が出ておりますので、
この資料につきまして福島課長からお願いいたします。
○結核感染症課長 資料9をご覧ください。資料9は木田委員からのご意見ですが、この「記」
以下の所に意見が書いてあります。上の6行についてはいまご説明をしたとおりなので、そ
の下を読みます。「予防接種法に基づく定期接種については、市町村が実施主体となってお
り、接種を行うために要する費用は、市町村の支弁とされている。また、当該費用について
は低所得者を除き、実費徴収ができることとされている。しかし、実費徴収が可能な接種者
の経済的な負担等を考慮し、多くの市町村では全額公費において措置しているのが実態であ
る。
 今後の予防接種法の抜本見直しにあたっては、WHOが推奨する予防接種の定期接種化に
ついても検討がなされているが、併せて、国・都道府県・市町村の役割分担及び国庫負担の
導入など費用負担のあり方について、十分議論した上で法律上明確に位置づけることが必要
である。
 当然のことながら、その際は住民に最も身近な市町村の意見を尊重して頂きたい」。以上
でございます。
○加藤部会長 ただいまの事務局からの予防接種にかかる費用の負担の現状についてのご
説明及び木田委員からご提出がありました意見を踏まえまして、予防接種費用の負担のあり
方は議論がたくさんあると思いますが、なかなか解決しないことが多いと思いますが、特に、
全国町村会からの古木委員、何かご意見ありますか。
○古木委員 町村会として、いま市長会からのご意見もありましたが、町長としての立場か
ら一言ご意見を申し上げたいと思います。
 まず、現在の定期接種についてですが、最近、子宮頸がんワクチンなどについてどこそ
この町で、県内で初めてワクチン接種にかかる費用を全額助成することを決めたというよう
な報道が多く見られます。また、ある県では県が一部を助成をし、市町村が残りを負担する
というようなことも報道されておりました。
 私の町でも住民の関心は非常に強く、高く、議会でも頻繁に質問されるのですが、現状
では援助を行っている市町村は少数でありまして、居住する市町村の財政力によって、予防
接種を受けられないといった事態が現実に生じております。
 予防効果が高いワクチンについては国が責任をもって法律で位置づけていくべきであり
まして、それにより、個人の病気予防のみならず医療費の抑制や安定的なワクチンの供給体
制が整備されるのではないかと、このような思いもしております。
 一方、現在の定期接種の一類疾病に位置づけられている予防接種については、実費徴収が
できない低所得者分のみ地方財政措置がされているのですが、実際には、低所得者以外の
方々から実費徴収を行っている市町村はほとんどありません。各市町村が一般財源で全額を
負担しているというのが実態でありまして、実費を徴収することができるという法律の条文
は、どちらかというと有名無実化しているのが現状であります。
 現行の定期接種の一類疾病に、子宮頸がんなどの新たな疾病を追加するとなりますと、
現在の実態から考えると市町村の負担が大幅に増加することが容易に想像できます。
 今後、財政力の弱い自治体は財源確保ができず、全額助成を断念せざるを得ないという
ようなことが必ず出てくるのではないかと、このような思いもいたしております。
 「定期接種は実費徴収できるのだからすればいい」と国はおっしゃるかもしれませんが、
現場で住民と向かい合っている市町村としては、住民にそのような説明をすることは難しい
と言わざるを得ません。
 定期接種の一類疾病に位置づけられているような予防接種については、どの市町村に居
住していても無料で接種を受けられるようにすべきでありまして、地域間に格差があっては
ならないと私は考えます。したがいまして、本来は国の責任において実施すべきであります
が、全額国庫負担が難しいのであれば、例えば国は2分の1を負担してその責任を果たし、
都道府県と市町村が残り2分の1を負担し合って地方としての責任を果たすという仕組み
も考えられるのではないかと、このようにも思います。
 定期接種の枠組みを広げることには賛成ですが、単純に枠組みだけを広げて、あとは市
町村任せで、負担だけ地方に押し付けるというような制度改正には反対であることを申し上
げておきたいと思います。
 次に、臨時接種についてですが、現行の臨時接種は都道府県ごとの地域的な蔓延を想定し
ておりますが、現在、交通網が飛躍的に発展し、人や物の移動が容易になった現在において
は、地域的な蔓延で済むようなケースはむしろ希であると考えられ、この点も法律と実態が
乖離していると言えるのではないかと、このような思いを持っております。
 今後の抜本改正にあたっては国家的な危機管理の問題として全国一律に統一して実施す
べきであり、全額国費で行うということを基本に検討されるべきではないかと、私はこのよ
うに思いますので私の意見として、あるいは町村の意見として発表させていただきます。
○加藤部会長 ただいまは古木委員から費用の負担について、格差が生じないような方法で
行っていただきたいと。大体、木田委員とほぼ似ている。
○古木委員 おおむね似ております。
○加藤部会長 その他の委員、いかがですか。
○飯沼委員 客観的に物を判断するにはエビデンスがないと駄目なので、費用対効果の例え
ばカネダ先生が昔発表されたHibワクチンの費用対効果とか、いろいろあるわけですが、
この国にあるエビデンスはこのファクトシートに入ってるものに全部入っていますか。もし
足りなければ、費用対効果についての論文を外国のものも取り入れるべきだと思うのです。
そうでないと、財務省に対する説得力は絶対にないと思います。私も全額国でやっていただ
きたいという派ですから、それだけを申し上げても仕方がないとので、エビデンスをはっき
り出すようにお願いします。
○加藤部会長 費用対効果は外国の例も先ほど入っていたと思います。事務局、どうぞ。
○事務局次長 もし違えば渡邉所長に訂正していただければいいと思いますが、いまのファ
クトシートの中には、少なくとも、アベイラブルな範囲、国内だけではなくて海外のデータ
も含めてこういう分析がされているということは書いてあります。ただ、もちろん、国内に
なくて海外のデータだけを紹介する場合に、日本と価格が違う部分がありますので、そこを
どう評価するかというところは、いまは全く触れずに書いてありますので。
○飯沼委員 細かくやるときは、当然、数字が出てくるわけですよね。
○事務局次長 ええ。先ほどの話とも関係しますが、当然、小委員会をつくるということに
なれば、その中で、ここをどうするのだというところも話していただくことになろうかと思
います。
○北澤委員 法定接種以外の疾病ワクチンの公費助成の状況ということで、資料を今日示し
ていただきました。確認したいのですが、助成金額と1回当り接種費用というのがそれぞれ
のワクチンで出ていますよね。例えば、小児用の肺炎球菌ワクチンだと、1回当りの接種費
用が1万円内外と出ていますが、この図を見るときに例えば4,000円公費で助成していると
いう自治体があったとして、その場合は大体4,000円を税金で見てくれて、あとの6,000
円は親が払うという、そういう読み方をすればいいのですか。
○結核感染症課長 そのとおりです。この調査自体は、だいぶ遅くなりましたけれども、澁
谷委員からお求めがあったものを出したものですが、そういうふうにお読みいただければ結
構です。
○北澤委員 それと、1回当りの接種費用で例えば1万円と出ている場合に、薬代と技術料
というのはどのように分かれているのですか。
○結核感染症課長 これは技術料もワクチン代も全部込みの金額になっております。
○北澤委員 私自身、それぞれのワクチンがいくらぐらいなのかというのがわからないので
判断はできないのですが、資料の意味はわかりました。
○岡部委員 対費用効果を考えるときに、データとしては必ず必要であり重要なデータにな
ると思うのですが、あまり対費用効果に重点を置くとなると、前にも申し上げたような気が
するのですが、例えばポリオの生ワクチンを不活化ワクチンにかけるというのは、対費用効
果の問題ではないのですね。ですから、ワクチン問題に関して意思決定するときにはそうい
う対費用効果に関するデータを得た上でということがあっても、費用効果が絶対的前提にな
ってはいけないと思うので、よろしくお願いします。
○加藤部会長 例えば、いま流行していないような病気の場合でもワクチンをしなければい
けないときには対費用効果だけでは評価できないという意味ですね。ほかにご意見を。
○倉田委員 ちょっと違った観点から、いま全部国でと言いましたが、これは英国のものが
1つ参考になると思うのです。要するに、英国で承認されているものを競争入札。それで、
とことん政府は叩く。それは、応札する所は、いま言われた全国隅々まで配付する義務があ
る。そういうものを前提で、12歳一部まで入れて全部で義務としてやってもらうものに関
しては650億(人口6000万人)ですか、だから非常に安い。あまり安いので聞いたら、そ
ういうやり方をする。ですから、市場ルートは壊すかもしれませんが、その料金の大体半分
以下で済む。そういうことも1つの参考ではないですかね。ただし、限定2年ということで
また次にというようなやり方をしているようですが、それも考え方で、今の制度を壊すこと
になるかもしれませんが、それも安くて良いものを提供するということの考え方だと思いま
す。
○黒岩委員 この費用の負担はどうあるべきかと、どうすべきかということは、まさに予防
接種とは何かという根本の議論とつながった話だと私は思っています。非常に簡単に言うと、
予防接種というのは国民に対する健康安全保障だと思っています。それは、防衛と同じこと
であって、防衛費は誰が負担するのか、国が負担する。当たり前のことであって、その基本
方針をしっかり守れば、これは国が全部負担するということが当たり前。それを決めるのは
政治の仕事、政権の決意だと私は思います。
○澁谷委員 事務局に伺ってもいいのですが、最終的なことを決めるときの選択肢として、
今回は例えば国が負担するのか、都道府県が負担するのか、市町村が負担するのか、公費な
のか個人なのかということが問題になると思うのですが、パブリックコメントの中にもあっ
たのですが、医療保険を使うということの選択肢は最終的には出てこないのでしょうか。
○加藤部会長 その件に関しては若干難しい問題がありまして、保険医療との兼ね合いで、
事務局で答えられますか。法律が絡んでまいりますが。
○結核感染症課長 この部会のかなり早い時期でこの費用の議論をしたときも、その議論は
出されていたというふうに承知しております。ただ、現行の健康保険法は予防給付というの
は給付の中に入っていないわけですので、そこについてはまた大きな議論が必要な課題だと
認識しております。
○加藤部会長 いまのお答は、保険の話もありますが、そこにいくと今の健康保険法は予防
というものには絡んでこないので、健康保険法そのものを改正しなければならないのではな
いかというご回答です。
○北澤委員 澁谷先生のご意見もあったのですが、そういう考えも選択肢としてあるのでは
ないかと言うことはこの部会でできるのですか。
○加藤部会長 局長、どうですか。
○健康局長 1つの考え方ですし、海外でもそういう事例があるわけですから、我々省内で
しっかりそこは局を超えて、これは大臣の下で判断をしていくということになります。ただ、
権限として、ここで提言はいいのですが、意見具申という形にはならないのだとは思うので
すが、そういうことも検討してほしいということはここで言っていただくのは大いに結構な
ことだと思います。
○加藤部会長 局長というと健康局長ばかり指してしまって申し訳ありませんが、医薬食品
局長もご意見があったらどうぞ。特にありませんか。今村委員、どうぞ。
○今村委員 要するに、私も最初の時点で保険も考えるという発言をしている理由は、本来
どれを定期予防接種とするかという議論の中で、もしその弾かれた中に、すなわち定期接種
にしない中に、保険という概念で医療保険の中で考えられるものもあるのではないかという
意味です。そういう意味ではいちばん根本的な、何を入れていくかということを議論する中
で、提言の1つとしてここで議論ができると私は思います。
○健康局長 保険にもっていくのは、いま申し上げたように、法改正が必要だと。それから、
実際には保険の財政構造というのは31%が税金で、その他は個人負担及び保険料ですから、
逆に言うと、69%は国民に負担をしていただくという構造になる。このことは頭に置いと
いて議論していただかないと、単なる付け替えになってしまうということもあるということ
です。
○保坂委員 いまの局長のお話とか、先ほどの黒岩委員のお話で私の言いたいことは尽くさ
れていると思うのですが、保険でやるというと、いま局長が言ったように、あたかも公費負
担でやってもらっているように誤解する。でも、それは違う。先ほど黒岩委員が言ったよう
に、予防接種を国家の安全保障と考えるのであれば、国民が負担しているのが3分の2以上
であるような健康保険の所でそれをやるというのはちょっと違うのではないかと思います。
それに、保険の仕組みを使ってやるということは不可能ではないと思うのですが、ここで公
費で定期接種化してくださいという結論が出たとしたら、それをどういう形で公費に持って
いくかということは、先ほど黒岩委員がおっしゃったように、まさに政治の問題で、そうい
う細かいことまで、この法律をこう替えてこうしてくださいということまで、こちらで言う
ような権限もないし、そこまで踏み込むような能力と言うとおかしいですが、キャパシティ
もないと思いますので、あくまでも、どういう仕組みでお金を出してもらうかというところ
まではこの部会としては踏み込まないで、国民の負担なしにやってもらうとかというふうな
レベルのことを中心に、お話いただいたほうがよろしいのではないかと私は思います。
○廣田委員 私も、保険というのは議論に挙げるべきではないか考えております。保険も個
人負担という考え方もありますが、そうなると、市町村が支弁するとしてもそれは税金とい
うことで国民の負担ということになってしまうわけです。保険はあくまで予防だというのが
大上段にあるわけですが、例えば禁煙補助剤が認められたことを考えると、何となくあと一
息という気もしないわけではない。
○岩本委員 たぶん、同じような意見だと思うのですが、国防と同じだという表現を使うか
どうかは別として、定期ワクチンについては国民の健康を守るために公的負担がいいだろう
と思います。ただ、いわゆる任意ワクチンというのは自己負担だからといって、「うたなく
ても任意ですよ」というわけではない、ということを強調したいと思います。これから予防
医学に重点が置かれるようになっていくのであれば、医療法の中に、全部国なり公共的に補
助するものと、例えばトラベラーズワクチンとか、あなたの健康を守るためにこの部分は医
療保険で、一部は自己負担でとか、そのワクチンの種類によって負担の異なる考え方があっ
ても、国民的な合意さえあればいいのではないかという気がしました。
○保坂委員 ここでの議論にふさわしいかどうかわかりませんが、健康保険についての支給
の範囲を狭めようという流れがある中で、それを拡大していくようなことは非常に難しいの
ではないかと思うので、ここでもし保険でということになれば、それはここで定期接種にし
て公費でというような流れができても、実現できなくなるのではないか、ということを皆さ
んに一つ申し上げておきたいと思います。健康保険法の改正ということまでになると、ここ
で予防接種のことを一生懸命にやったとしても、健康保険法の改正をしてそういうふうにと
いうことになると、何年も先のことになるのではないかというふうに危惧しております。
○加藤部会長 最後ですが、今村委員に反論を。
○今村委員 ちょっと誤解を受けているかもわからないので言いますが、定期接種化したも
のに関して保険を考えているわけではないのは、この辺りみんな一緒です。すなわち、定期
接種を本当に厳重に選んでいきたい。その中でもし弾かれる今あるワクチンがあれば、それ
をどういうふうに考えるかということも一応議論しておいたほうがいいのではないかとい
う意味です。定期接種を保険でとは考えているわけではないというのは岩本先生も一緒です
ね。
○岩本委員 はい、一緒です。
○今村委員 みんなそう思っています。
○加藤部会長 そういうご意見ですので、事務局は十分ノートオンをしておいてください。
たくさんの意見が出ました。これからの、まさに、小委員会を行っていく上におきまして十
分な参考ご意見が出尽くしたと判断いたしますので、この議題はここで終了いたします。議
題に「その他」とありますが、その他として事務局より特段のご報告がありますか。
○血液対策課長 時間がないところ恐縮でございます。机上配付させていただいた「新型イ
ンフルエンザワクチン開発・生産体制整備臨時特例交付金交付事業(第一次分)の採択結果
について」を、簡単にご報告を兼ねましてご説明させていただきます。この内容につきまし
ては、今村委員からご質問を受けておりまして、前回の部会で、この採択結果が出たらご報
告しますとお約束させていただいた内容です。その1枚目を見ていただければおわかりのと
おりですが、これにつきましては前年度から精力的な議論を進めてきておりまして、7回に
わたる会議の結果、1ですが、細胞培養法の開発事業につきましては、そこに示してある4
つの企業が応募された事業が採択されたということです。2番目として、鶏卵培養法の生産
強化事業につきましては1つの企業のみの応募でしたが、この事業を採択させていただきま
した。3番目としまして、「第3世代ワクチン」等の開発推進事業ですが、そこにお示しし
た2企業が応募した事業を採択したということです。詳細は2頁、3頁にお示ししてありま
すのでそちらをご覧になっていただければと思います。以上でございます。
○加藤部会長 新聞でリリースされた内容ですが、飯沼委員。
○飯沼委員 おそらく、課長は今村先生と私とを間違えたのだろうと思います。質問したの
は私です。
○血液対策課長 どうも失礼しました。
○飯沼委員 それは別として、この内容が、特に参考の3という所に「5年を目途」と書い
てあって、これがリリースされていますが、私が組織培養の話をしたのは今から4年前です。
そのときに5年ぐらいでできるという話だったのですが、まだ5年かかるのですか。こんな
ことをやっていては駄目ですよ。この間、学会の話も私はここでしましたが、卵の継代のウ
イルスを使っていくとエビトープが変わってしまうわけです。その証明がこの間されたでは
ないですか。早くティッシュカルチャーでやらない限りは、今のあんな高い抗原量ではやら
ない。逆に言うと、ティッシュカルチャーのものを使えば抗原量がうんと少なくてできるわ
けです。アジュバントの開発のことも、おそらく、この中に入っているとおっしゃえばそう
だけれども、アジュバントを使ってすごい少ない抗原量で良いワクチンができるためには、
5年もかかってもらっては困ります。お答をどうぞ。
○血液対策課長 言葉が足らず、しかもお名前を間違えて失礼いたしました。たぶん、北澤
委員からも同様の質問をいただいていたと思います。それにお答えする形ですが、ここの参
考3という紙の下を見ていただくと、おわかりにくいかと思いますが、新型インフルエンザ
ワクチン開発生産体制整備事業というのは、実は、昨年度、補正予算で認めていただいた事
業です。ですので、この5年目途というのは、正式には今年の1月ぐらいが起点になるかと
思いますが、ここから5年という事業でお認めいただいたものです。今回、私がいまご説明
させていただいたものは、細胞培養のところにつきましては実験プラント整備事業、増殖性
試験実施事業等でありまして、まず実験段階のものをやっていただく。この後、実生産体制
につきましては、1頁目のいちばん下に※で小さく書いてありますが、今回の公募は細胞培
養法開発事業について、実験プラント整備等を補助対象にしたものであり、今後実生産工場
整備等のための公募がなされる予定ということで、こちらのほうでまた新たに公募させてい
ただくという仕組みでこの事業を対応させていただこうと思っております。
○倉田委員 この「新型」という言葉は非常に気になるのです。世界のどこも使っていない
言葉だし、今後新しく登場するものに対する用意なのか。H5N1で新型も使っているし、今
度のAH1N1/カリフォルニア/2009-2010に対しても使っているし、これは何ですか。こ
の言葉は新しく登場するという意味ですか。この言葉が非常に気になりますよね。
○血液対策課長 科学的には、たぶん、先生ご指摘のとおり、新型インフルエンザワクチン
といった場合にいろいろ想定されるということで、混乱を招くということでは大変申し訳な
いと思っております。が、行政的に使っている用法ゆえ、このままでお許し下さい。ここで
言っている新型インフルエンザワクチンというのは鳥インフルエンザ、つまりH5N1を想
定したものです。
○加藤部会長 この間の新型ではないという意味ですね。
○倉田委員 スペシファイしたほうがいいですよ。表に出たらどこにも通用しないですよ。
○飯沼委員 「新型」を取ればいいのです。将来すべてのインフルエンザはティッシュカル
チャーでやるということです。
○加藤部会長 そういうご意見です。よろしいでしょうか。亀井課長、どうもありがとうご
ざいました。それでは、こちらで用意しました議題は終了いたしました。時間もだいぶ超過
しましたので本日は終了とさせていただきます。事務局から今後の予定についてお願いしま
す。
○事務局次長 ありがとうございました。先ほど、小委員会の進め方の具体的な案というこ
とがありましたし、今回で6つのテーマについてヒアリングを含めて議論していただきまし
たので、次回はそのまとめ等々についてまたご相談したいと思います。具体的な日程、議事
等はまたご相談申し上げます。
○加藤部会長 本日は長時間にわたりましてご議論いただきましてありがとうございまし
た。これをもちまして第11回の予防接種部会を終了いたします。

照会先:健康局結核感染症課(03-5253-1111 内線:2077)

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(了)

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