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2010年8月23日 第16回政策評価に関する有識者会議議事録

○日時

平成22年8月23日(月)15:00~17:00


○場所

経済産業省別館1111会議室


○出席者

   高橋座長、阿部委員、梅田委員、川本委員、菊池委員、野川委員、堀田委員、森田委員


○議事

(以下、議事録)
 
○高橋座長
 定刻になりましたので、ただいまから第16回の政策評価に関する有識者会議を開催させていただきます。大変な猛暑の中をお越しいただきましてありがとうございます。今日の出欠等については、事務局から後ほど言及していただくとして、最近、事務局の交替がありましたので、恒例の人事異動でございますが、ご紹介も併せてお願いをいたします。

○政策評価官室長補佐
 7月30日付けで新しく政策評価官を拝命いたしました篠原と申します、どうぞよろしくお願いいたします。あとは評価審議官が8月5日付けで八田に替わっております。遅れておりますが、到着しましたらご挨拶をさせていただきます。よろしくお願いいたします。

○政策評価官室長補佐
 また、本日委員の皆さまですが、篠原委員と本田委員がご欠席になっております。森田委員は少し遅れているところでございます。

○高橋座長
 それでは議事に入らせていただきたいと思います。今日はいろいろ資料がたくさんございます。まず(1)1平成22年度に実施する政策評価として、?@施策中目標「新医薬品・医療機器の開発を促進するとともに、医薬品産業等の振興を図ること」?Aとして施策中目標「労働者の安全と健康が確保され、労働者が安心して働くことができる職場作りを推進すること」の2つのテーマを取り上げて、ご議論をお願いしたいと思っております。そのあと議事で言いますと(2)になりますが、「厚生労働省における政策評価に関する基本計画(第3期)」の策定に向けてについては、事務局から説明をしていただき、議論をしていただくことにさせていただきます。そういうわけで、今日は2つの具体的な政策評価をめぐって委員の皆様から議論をいただく形で、これが今日の主たるテーマということになろうかと思います。
 まず、平成22年度に実施する政策評価として(1)の?@になりますが、政策中目標として、「新医薬品・医療機器の開発を促進するとともに、医薬品産業等の振興を図ること」という目標に関する政策評価がございますので、これにつきましてテーマ設定について事務局より説明をいただきたいと思います。

○政策評価官室長補査
 本日選んでおります2つのテーマについてご説明いたします。例年、夏の有識者会議では経済・社会情勢等に鑑み、また、昨年や一昨年については、総務大臣が政策評価独立行政法人評価委員会に意見を聞いて定めていた重要対象分野というものがございましたが、こちらを踏まえてご議論いただくテーマを選んでまいりましたが、今年度についてはこの総務大臣が決めておりました重要対象分野というものが選定されておりませんので、本年は経済情勢や社会情勢等に加えまして、考え方としては近年取り上げていなかった分野についてご意見をいただきたいと考えまして、こちらの2つ「新医薬品・医療機器の開発を促進するとともに、医薬品産業等の振興を図ること」、「労働者の安全と健康が確保され、労働者が安心して働くことができる職場作りを推進すること」この2つをテーマに選定させていただきました。関連する実績評価書案をお示しておりますので、ご意見を賜りたいと思っております。よろしくお願いします。

○高橋座長
 はじめに「新医薬品・医療機器の開発を促進するとともに、医薬品産業等の振興を図ること」というテーマについての議論をさせていただきたいと思います。まず、担当課から15分以内でご説明をいただき、そののち20分ぐらいかと思っておりますが、質疑を行わせていただきたいと思います。テーマごとに入れ替わりという形でやらせていただきたいと思います。医政局から担当官がお越しいただいておりますので、よろしくお願いをいたします。
(所管課からの説明)

○医政局経済課長
 医政局の経済課長でございます、よろしくお願いいたします。本日ご議論をいただきます政策は、経済課と医政局の研究開発振興課の2つの課に関わるものです。資料としては資料1-1、資料1-2です。定められた政策評価のフォームに従い、記入したもの、いわゆる実績評価書は資料1-1です。本日はわかりやすく全体像、あるいはポイントをご説明するために別の資料として資料1-2を用意いたしましたので、こちらでご説明をさせていただきます。
 まず1頁目です。この2つの課にまたがる政策の目標について、新医薬品・医療機器の開発を促進すること、それから併せて、医薬品産業等の振興を図ること、これが中目標です。その全体の政策のフレームを記載したのが1頁目です。政策の立案、いわゆるプランの部分、それから真ん中に政策の執行の部分、プランドゥのドゥに当たると思います。右のほうにはその状況を把握するという意味でシーまたはチェックについて記載しております。
 まず、政策の立案に関しての話ですが、医薬品、医療機器産業振興のためのビジョン、あるいはアクションプランを作るというところから我々は始めています。この中目標に関わる目標を大きく捉えますと、これは我が省の中でも複数の局あるいは複数の課にまたがってまいります。まず、その全体を束ねた考え方を整理し、その課題、現状を整理してビジョンあるいはアクションプランを作り、各局、各課が行うべき政策のいわばベクトルを合わせることをいたしております。
 ビジョン・アクションプランのところで書いてありますが、新薬あるいは新医療機器を生み出していくこととともに、ドラッグ・ラグあるいはデバイス・ラグというのを解消していくことが目下の政策課題としてあります。
 大きな中目標の中では後発医薬品、いわゆるジェネリック医薬品のことですが、後発医薬品の使用促進を図るということもありまして、これについてもアクションプログラムを定めています。同じくこの中目標の中には、医薬品・医療機器の流通改善も入ってきます。そういうものについて、まずプランを作り、それから真ん中のほう、政策の執行をそれぞれの局、それぞれの課で行うことになります。この医薬品・医療機器産業の振興という観点で捉えますと、研究の助成とか、あるいは臨床研究、治験体制を整備していくことであるとか、医薬品・医療機器ともに承認の審査というプロセスがございます。その承認審査のプロセスの迅速化を図るとか、質を向上する。この部分は医薬・食品局の仕事になっていますが、そういうことがあります。それからジェネリック医薬品の普及啓発の促進を図るということも、個別の事業を掲げて行っています。
 右のほう、その状況の把握という点では、それぞれ事業についての実績を捉えてフォローアップを行うということもありますが、その他に定例的な調査として、産業の実態調査であるとか、そういう全般的な調査で状況を把握する、あるいは関係者から構成される懇談会・協議会の場を設けて、意見交換を行っています。
 2頁目に、画期的な医薬品・医療機器等に係る研究開発の促進と治験環境の整備が小目標としてあります。その下に医薬品を上市するまでのプロセスについて記載していますが、まず最初、医薬品も医療機器も同じですが、研究開発というプロセスから始まります。これはある意味では実験室の中、机上の理論というようなことで、研究開発がそれぞれのメーカーにおいて行われるわけです。
 その研究開発のプロセスは、カラー絵としては下の箱で書いてありますが、昨今、企業の研究開発コストが増大してきているということ、また、医薬品や医療機器の研究開発の点では、いわゆるライフイノベーションという切り口で、政府が科学技術の振興という意味で研究開発助成を行うことがありますが、これが従来から米国等進んでいる国に比べて少ないという課題が挙げられています。
 実験室等での研究開発が進みますと、次には2つ目の箱ですが、臨床研究・治験のプロセスに進みます。これは実際にヒトに使ってみて有効性あるいは安全性を確かめるデータを集積するプロセスのことです。これについては、諸外国と比べた場合、治験あるいは臨床研究に時間がかかる、あるいはコストがかかるという問題があります。有効性・安全性を蓄積し、データを集積して、そのデータを用いて、当局の審査のプロセスに進みます。それが3つ目の列で承認審査です。ここでは承認申請が出されてから承認が下りるまでの間に時間がかかるという問題があります。
 この臨床研究・治験及び審査において、特に先進国と比べた場合、欧米の国と比べた場合に時間がかかることになりますと、その審査の列の箱の中に書いてあるドラック・ラグという問題が昨今、指摘されているわけです。海外では承認をされている薬が日本の国ではまだ承認がされていないということや、あるいは適応外の薬と言っていますが、海外では、例えば大腸がんと乳がんに効くというような適応を持っている薬が、日本では、乳がんにしかまだ承認の実績がない場合、海外では大腸がんにまでその承認実績があるので、日本でも、その適応の部分を増やしていく必要があるということがあります。そういうところで、諸外国に対して遅れると日本では使えるまでの間の時間が空いてしまい、患者さんに薬が届かないことになるわけです。
 次、審査が終わりましたら製造とか販売というプロセスになります。ここでは薬価の価格付けについてのこういうような問題が、昨今指摘されているところです。
 3頁、先ほど総合的なアクションプランを作ると申し上げましたが、現在動かしているアクションプランの全体像を書いたものが3頁です。平成19年に当初設定しまして、5カ年間でやるべき事柄を整理しています。世界の他の国では使われているような水準の医薬品・医療機器を国民に提供するということ、産業という点で見ますと、医薬品・医療機器の産業を日本の成長牽引役にしていくという大きな課題を掲げまして、下に書きましたような側面ごとに、先ほど申し上げたフェーズごとに具体的な政府の施策を整理しています。?@は研究資金の集中投入で、医薬品とそれに投じられる研究予算の重点化、拡充を図ることが課題としてあります。?B臨床研究・治験環境の整備という点、これはあとで事例として申し上げますが、こういう課題があります。
 ?D審査というプロセス、これは医薬・食品局ないし、具体的には独立行政法人医薬品・医療機器総合機構が審査を実際には行っていますが、新薬の上市までの期間を2.5カ年短縮する。これは米国と比べた場合のギャップである2.5カ年日本では上市までの期間が遅くなっているということから、これを解消するということ、具体的には医薬品・医療機器総合機構の審査人員の数を増やす、あるいは質を上げていく取組をすることで、審査の迅速化・質の向上を図ることに取り組んでいます。こういうことをアクションプランとして掲げて、これに沿ってそれぞれの部署でやるべきことを行っております。
 4頁目ですが、その中で医政局で所管しています分野としては、先ほどのステップの中で臨床研究、治験環境の整備の実施があります。それについての事業と実績の評価を4頁に書いています。治験を着実に日本の国でも実施していくことが大きな意味での目標になります。それを果たすための事業としては、これも治験という分野に限り、従来から3カ年計画あるいは5カ年計画を作りまして推進をしています。
 具体的な話については、右の事業の真ん中に書いてありますが、治験実施体制の整備として中核となる病院、あるいは拠点となる医療機関を指定して、その治験ができるように整備をしていきます。これは治験の具体的なプロトコールの企画までできるような医療機関を全国で10カ所、中核病院として指定しています。実際の実施という意味で拠点になる医療機関として30カ所、大学病院等を中心に指定して、そこに人材を集中的に整備しています。
 具体的な人材の点では、真ん中の1つ目の○の3つ目のポツに中核病院・拠点医療機関におけるCRC配置数の推移と書いていますが、このCRCの2つ目の大きな○に臨床研究コーディネーター(CRCと呼んでいます)、これは実際にこういう医療機関でヒトにメーカーから持ち込まれた薬を投与するわけですが、それに治験をするに際しては一定の業務があります。これを医師とか看護師が通常の業務のかた手間で行いますと、なかなか、はかどらないということがあり、専従でこういう治験の業務を行うスタッフを整備していく。そこで患者さんへの説明とか、製薬企業との連絡調整を専従的に行うスタッフをこういう中核となる医療機関では増やしています。
 2つ目の○は、こういう医療機関を含めて、全国のほかの医療機関でも治験をする場合に、臨床研究コーディネーター(CRC)を養成する事業を行っています。ここに記載したのは、CRCの研修事業を国として関係のところに委託をしてやっておりますが、その実績です。
 3つ目の○では、治験にかかる手続きのスピードを早くするという意味では、治験の書式を統一することも推進しています。製薬企業ごとあるいは医療機関ごとに治験にかかる書式がバラバラですと非効率だという話がありまして、それを統一することを国で呼びかけて整備しております。
 その評価を下に書いていますが、治験に関してはコスト、スピード、質の点に分けて考えることができると思います。まずコストについては、治験の手順を効率化するためには、その手順を明確化するとか、必要でないようなものがあるとすればそれを省いていくという点で、統一化を図っていくようなことで、なおまだすべき課題があると考えています。ただ、スピード・治験にかかる期間とか、質ということに関しては、従来に増してスピードがあるいは質の向上が図られてきているという評価を我々はいただいております。こういう評価に当たりましては、関係者からなる検討会を設けて具体的には、平成19年から5カ年計画でスタートをしていますが、平成21年、ちょうど中間の年に当たりますので、中間の見直しをするという意味で、メーカーあるいは医療機関から構成される検討会を設けて、検討をした結果としてもこういう評価が出ています。
 左の上にグラフがありますが、治験届出数があります。かつて1996年から一時期、国内で治験の展開されている数が減っています。これは新しい治験基準が1997年に出来て、従来よりは厳格な手続が必要になったということもあり、一時期数が減りました。それをさらに増やしていくことが課題でしたので、この治験活性化計画を作りました以降、こういうふうに数字としても治験として展開されている数が増えてきている状況にあります。これが臨床研究・治験環境の整備についての話です。
 5頁以降はもう1つの(小目標)、中目標の中での1つの小目標として後発医薬品の使用の促進です。後発医薬品はいわゆる新薬、先発品と比べて有効性・安全性ということでは同じであるけれども、価格は低いという位置付けのものです。したがって制度としては医療保険財政、あるいは患者負担の軽減に貢献をするということから、政府としても数量目標を掲げまして、平成19年に平成24年の時点で数量ベースで3割に目標を増やしていくという目標を掲げて使用促進に取り組んできているところです。
 6頁と7頁に後発医薬品の使用の促進を図るためのプランをこういう形で立てて、それに沿って事業を展開しているというものです。これも同じく目標を掲げた平成19年に後発医薬品の安心使用促進アクションプログラムという形で作り、数量シェアを30%以上にもっていくための課題として何があるか、それにどう取り組まなければならないかということを整理しています。いくつかの側面にこれも分けられまして、6頁の上のほうには、安定供給という課題が出ています。医療機関でジェネリック薬品を使おうとした場合に品切れが起こったり、実際医療機関に届くまでに時間がかかったりする。新薬に比べてそういうラグがあるということであると、安心して使えないということから、国及びメーカーにおいて安定供給を図る。例えば後発品メーカーのやるべき事柄が書いてありますが、納品までの時間の短縮を図るということで、数的な目標を立てて平成19年から取り組んできているわけです。
 2つ目には品質の確保という点があります。薬事上の承認はもちろん取っていますが、実際、製造されるプロセスにおいて、いわゆる先発薬と比べて、その品質が確保されているかどうかという疑念がありますので、国において後発薬のメーカーにおいても品質試験を定期的に行い、その結果を公表することを行動計画として立てています。
 7頁には、そういう情報の提供を後発品のメーカーからユーザーである医療機関あるいは薬局に対して、実際に使うときの情報が的確に届くという意味でのその情報の提供であるとか、?Cには使用のための環境整備ということで、これは国全体でいまは取り組んでいる内容を書いていますが、都道府県のレベルにおいて、その地域に即した課題、あるいはアクションプログラムを作るということで、都道府県レベルでも協議会を設置してやるべき事柄を整理していただくとか、国においてはポスターとかパンフレットを作りまして、その普及啓発を図るということをしております。
 さらに制度という意味では、?D医療保険制度上、後発医薬品を使用する場合の制度の変更であるとか、診療報酬、薬局の調剤報酬上、後発医薬品を多く使った場合にはメリットを与えるということで、インセンティブを与えるということもして取り組んでおります。
 8頁はアクションプログラムの評価です。これも1年に1回定期的に数的なものについては数的な評価をしまして公表しているものです。8頁はその全体像です。
 結果としていま後発医薬品がどれぐらいまで進んでいるかが9頁です。平成17年、数量ベースで16.8、これを大体16%の倍にもっていくということで、平成24年30%という目標を立てたわけです。直近は平成21年9月の数字ですが20.2%、まあ2割ということです。増加はしてきていますが引き続き3割の目標に向けて、先ほど申し上げましたような安定供給あるいは品質確保、環境整備に取り組まなければならないというふうに感じている次第です。以上でございます。

○高橋座長
 ありがとうございました。評価という意味ではファクターが非常に多いということと、いろいろなコンペティションとコントロールという、そういう相対立する概念がある領域ということですが、評価ということではなかなか興味深いテーマだと思いながら伺いつつ、難しいなと思いながら伺った次第でございます。いまの経済課長さんのプレゼンテーションと、資料1-1がその全文でございますが、何かお気づきのことを少し、要するにこのコンテンツのことはさることながら、政策評価の1つのイッシューとして今日はプレゼンテーションをしていただきましたので、そういう視点から少し、委員の皆様からまずはご自由にどうぞご質問等をお願いしたいと思います。2つの小目標もある意味ではベクトルがなかなか複雑な感じですね。ジェネリックとイノベーションという2つのテーマということですから、これもなかなか興味深い報告ではございますが、いかがでしょうか。

○菊池委員
 資料1-1に関してです。ご説明ありがとうございました。1点、アウトカム指標の関係でお尋ねしたいのですが、資料1-1の5頁です。中目標が新薬の開発促進、それから医薬品産業振興ということで、その指標としての1位として新薬承認取得件数が達成率が挙がっているのですが、目標との関係で言うと、これは新しく出来た高度医療評価制度との関係の対象になるということだったかと思うのですが、最終的にはやはり保険適用になるというのが、目標との関係ではある意味でより重要なのかなという気がするのですが、つまり、この制度の適用になるかということと、それからさらに保険適用になるという、そこの第一段階の目標であると思うのですが、そこだけをつかまえてその目標との関係で十分なのかなというよう思ったの。
 施策大目標分野10に医療保険制度とあるので、これは9ですが、医療保険に薬価基準の収載というものが、10に当たるのかもしれませんが、その辺りどう整理されて考えておられるのかを確認したいのです。

○医政局経済課長
 ありがとうございます。最終的なゴールをどこに置くかということだろうと思います。確かにここの整理は、医政局及び医薬局、医薬食品局が併せてやっていますこととして、先ほど全体の説明をいたしました。まずここで整理をしている中では、ゴールとしては役所の承認が得られるまでのところ、あるいはそのスピードを目標として確かに置いています。その先、実際、我が国では皆保険の制度でありますし、薬が医療機関において実際に使えるということは、保険で薬価収載がされて初めて患者さんに使うということが通例である。自費ではあまりその薬を買うようなことにはならないということから考えますと、保険に収載されるまでの全体像を捉えて、そのスピードなり、期間なりを評価するということもあり得ようかとは思いますが、ここでの整理は画期的な、あるいは新しい薬をまずは日本の国で日本の国民にも効くという薬を生み出してもらい承認をする、というところまでをこの制度のターゲットとして置いています。
 高度医療評価制度という話がいま先生から出ましたが、高度医療評価制度も医政局で実施しています。これはどういう位置付けのものとして考えるかですが、実際上、まだこれは未承認の、承認が取れていない段階の薬なのですね。承認が取れていない段階の薬ですが、治験のステップまできますと、これを医療機関において使った場合には、保険のほうからその薬代そのものはファイナンスできませんが、実際薬を使うための前の検査の段階であるとか、あるいは投薬の技術料であるとかいうものは、共通的な経費として保険でみてもいいだろうと、保険のほうからファイナンスしてもいいだろうということがあります。高度医療評価というステップに至りますと、薬代そのものはまだ承認もされていませんし薬価も付いていませんので、薬そのものは患者ないし医療機関の負担になってしまうのですが、その薬を投与する周辺の技術といいますか、その部分は保険の財政でファイナンスをする。最終的に薬価が付きますとそれは全部保険でファイナンスされますが、その中間的な仕組みを作ると同時に、そういうことによって治験のプロセスですので、治験が進めやすくなる。保険で一部ファイナンスする部分が出てきますので、先ほどのスピードアップの点にも資するということから、高度医療評価制度を設けて、医政局の仕事としてやっています。

○菊池委員
 わかりましたけれども、一時的にはそういった形でというのはわかるのですが、その最終目標がやはり保険適用、それが産業振興という意味でも目標であるというのであれば、併せてそこまで広げて、例えばそこから収載された何であるかという、そこも見せてもいいのかなという気がしました。

○医政局経済課長
 具体的には薬事法の承認がなされますと、そのあとステップとしては確かに別なのですが、薬事法の承認が取れたあと保険適用の申請が出てまいります。ですから、これはこれで一定の手順が定まっていまして、これは大体年4回承認申請をするとか、保険適用の申請があってから、大体何カ月ぐらいで薬価基準に収載するとかいうようなことが決まっていますが、その手順に沿ってできているかどうかというような評価が別途、保険局なりでは行っていますし、実際上いまのところは日本の国においては薬事で承認されたものは、医療用で使う薬、ワクチンとかああいう保険外のものは別にすれば、ある一定期間の中には薬価が付いて、保険に収載させて使えるようになるということで進んできています。実態としてはそういうことです。

○高橋座長
 いかがでしょうか。堀田委員どうぞ。

○堀田委員
 素人ですのでピンボケな意見もあるかと思いますが、3点ほど意見を申し上げたいと思います。まず、大体、後発医薬品のことを頭に置きながらの意見です。第一に中目標、新医薬品・医療機器の開発を促進するとともに、医薬品産業等の振興を図ること。これに無理があるのではないかということが第1点です。厚生という観点からしますと、新医薬品・医療機器の開発促進、これは大いに頑張って行政としても支援していただきたい。ところが、この医薬品産業等の振興を図るということになりますと、厚生的な見地もありますが、そのほとんどは産業政策の問題。特に後発医薬品を使えという話は、これは専ら財政上といいますか、国民の負担といいますか、そういう観点からの話であって、厚生、健康の話ではない。ですから、この新医薬品・医療機器の開発と、この産業、特に財政的な見地からの産業政策は全く関係がないといいますか、理念が別のことであって、政策の立て方も違うし、政策の実施の仕方も違うし、効果を測定する基準も違うので、こういう違うものが1つの中目標に入っていると、非常に整理がしにくく混同が起こりやすいということがあるのではなかろうか。これはもう少し政策理念に沿って中目標の分類を考え直す必要があるのではなかろうか。これが第1点です。これは中目標で2つが混同されているために、新薬の開発と後発医薬品をどんどん使いなさいという話が、現象的に衝突するような話になってしまっているというふうに思います。
 2番目に、それでは後発医薬品を進めるというその理念、これは財政理念、財政、国民負担の見地からの目標と思いますが、そういう点がはっきりされていない、そういう点をしっかり政策目標を掲げて、このためにこういうふうにしてほしい、後発医薬品を使ってほしいというPR、政策推進をしなければいけないのではなかろうか。その点が理念と政策とが、もう少し明確にされなければいけないのではなかろうか。それが2番目の意見です。
 3番目、関連するのですが、後発医薬品が30%という目標を掲げていますが、なかなかそれに到達しない。要するに後発医薬品が思ったほど売れない、その原因の分析が不十分ではなかろうか。原因の分析が不十分だから対策の意味もはっきりしてこない。だから行政がどれだけ努力をすればどこまでいくのかという、そこの道筋が見えないという評価になってしまっているのではなかろうかと思います。
 非常に単純に言えば、後発医薬品と先発医薬品とが効能が一緒である。むしろ後発医薬品のほうがいろいろな実験、体験結果が証明されている、むしろ優れた点がある。しかも後発医薬品のほうがグッと安い。この2つの条件が揃えば市場原理からいけば、後発医薬品はほとんど先発医薬品を席巻するぐらいに売れていいはずであって、後発医薬品のない先発医薬品は別ですが、後発医薬品がある先発医薬品は市場原理から言えば、席巻されてしまって当りまえ。それが20%とかその辺りになっていて、目標の30%というのが、そもそもなぜそうなのか、市場原理からいけば後発医薬品が売れるはずのものが、なぜ売れないのか、その辺りをしっかり分析する必要があるのではなかろうか。
 もちろんいろいろ分析されていますが、これは素人の感覚ですが、例えば医者の処方が先発医薬品のほうに傾いているのではなかろうか。医者の持っているデータが先発医薬品のほうをつい見てしまうようになっているのではなかろうか。もう少し言えば、病院経営からして先発医薬品のほうが有利になるというような経済というのですか、経営上の構造があるのではなかろうか。その辺りの分析がきちんとなされないと、どういうふうに対応策をとるのか、こちらが一生懸命患者にPRしても、処方せんでもらう患者はどうしようもないわけです。後発医薬品と先発医薬品が一般の市販のところで競合しているというような状況はあまり想像できないのです。あまり関係のないところで一生懸命に頑張っていても20%を30%にするというのは難しいのではなかろうか。その辺りの原因と対策。これはたくさん原因があり、たくさん対策があると思いますが、それぞれ分析し、それぞれの比重をある程度考えて、そしてこれなら30%いける対策だとか、最初にそういう評価があって、目標があって、それから個々の評価が出てくるのではなかろうかと思います。それが3番目の意見です。

○高橋座長
 それぞれ難しいテーマでございますが、私も薬を処方してもらって薬剤師に「政府はジェネリックを推奨していますが、あなたはどうなさいますか」と言ったら返答に窮したという経験がありまして、いまの堀田委員のご質問はその経験を思い出しながら聞いていました。大事ではありますが、なかなかコメントしづらい、お答えしづらい問題かと思いますが、課長さんから、必要なご回答をいただけたらと思います。

○医政局経済課長
 堀田先生から非常にポイントを突いたお話をいただいたと思います。今日は時間の関係もあって舌足らずな説明になっていますが、実際上、我々も後発医薬品に関しては、いろいろな側面があると思います。それを分析して対応を立てるということは実際上いたしております。先生がおっしゃいましたようなことも確かにございまして、医師の処方という点で見たときに、それがどうかということがあります。従来、日本の国での伝統的な医師の処方は薬の個別の銘柄の名前を書きまして処方をする。したがって薬の名前を知っているのは先発薬のほうが多いわけです。どこのメーカーが作っているどの薬という、銘柄を処方するのが一般的なスタイルです。そのスタイルのままでやっていますと、どうしてもそれに縛られてしまいますので、先ほどは話を飛ばしましたが、具体的には処方のフォームを制度として決めているのですが、平成20年ですが変えてもいいですと、薬局で変えてもいい場合には変えてもいい。逆に言うと変えていけない場合だけチュックマークを付けてくださいと、名前としては確かに先発のメーカーの薬のほうをお医者さんはよく知られているわけですから、それを書かれるのが多いわけです。それが実際に後発医薬品がある場合には薬局のレベルで患者さんがよければ変えてもいい。変えていけない場合にだけチェックマークを付けてくださいという形に変えまして、実際、従来のやり方が縛っているところがあれば、それを変えるというようなことも対応していますし、それから先生がおっしゃいましたような、実際に医療機関では後発医薬品の場合のほうが薬価が安いわけで、先発のほうが高い。そうしますとその薬価差が医療機関にはございまして、医療機関と薬価ということがあります。そういう点も実際にこれを使う場合の金銭的にはそういう面が出てきます。したがって、先ほども調剤報酬、診療報酬上でのインセンティブと申し上げましたが、技術料でそれをカバーするような評価を付けるようなこともして、全体で成り立つようなことを行ってきています。いろいろな側面で我々もアンケートを取ったりして分析をして取り組んできているというところです。ありがとうございました。

○阿部委員
 実績評価書の資料1-1の5頁以降の評価と今後の方向性のところで、私が少しお話したいのは、ここで用いられている指標、あるいは目標値がなぜこの指標を設定しているのか。あるいはなぜこの目標値が設定されているのかを、もう少しお書きになると評価書を読む側としては、わかりやすいかなという気がします。4の部分は中目標に関する指標と目標値だと思うのですが、中目標はそこの最初に書いてあるとおり、新医薬品・医療機器の開発を促進するとともに、医薬品産業等の振興を図ることということが書いてあって、医薬品産業等の振興を図ることと書いてあるとすれば、例えば医薬品産業の売上げとか利益がどれぐらいになっているのですかというのは、まず最初に見ておきたい数字かなと私などは思うのですが、そういうのがここにはない。
 その一方で、医薬品産業実態調査の回答率ですとか、医療機器産業実態調査の回答率と、調査の回答率が医薬品産業の振興にどう影響しているのかよくわからないというところもあったりして、どうしてこの指標がこう促えているのかというのは、もう少し詳しくご説明になったほうが読む側としてはわかりやすいかなと思います。
 特に中目標は小目標と違って、かなり大きな目標ですので、小目標から少し指標を選んできたというのだと、少しわかりにくいので、中目標のところでどういう指標を使うのかというのは、丁寧な説明がもう少し必要なのではないかなと思います。
もちろん後ろの5番目の施策、指標目標ごとの指標とか目標値についても、もう少し丁寧にお話しいただけると、その後の指標の分析のところを読むときに、少しわかりやすくなるかなという気がします。
 これは実績評価書全体がそうだろうと思うのですが、今日お作りいただいた資料1-2のところで、いろいろ絵を使っていただいてわかりやすくなっていると思うのですが、実績評価書にはこういった絵が全く入らない。その辺りは実績評価書の作り込みのところで考えられたらどうかなという気がいたしました、以上でございます。

○高橋座長
 あの政策評価のレベルをわかりやすく、これは最終的にはさまざまな使い方が政策評価書に基づいてあるわけですが、基本的にはこれをインターネットで公開されるという視点から言えば、阿部委員からこれをどれだけ理解しやすいものにするかという大事なご指摘を、これは単に医薬品だけではなくてほかの評価項目にも共通する大変大事なご指摘をいただいたような気がいたしますが、いまのご質問について、このテーマでいえば何か改良の方向性みたいなものがございますでしょうか。

○医政局経済課長
 実際、我々もこういう数字目標で、特にこのアウトカム指標のところは書くようになっていまして、これをどういうものを入れるのがいいのかというのは、いろいろ議論もいたしますし悩ましいところです。特に目標を立てて、しかもこれ達成率とか、前年に比べて上がっていくとか下がっていくとか、こういうふうに書きますと、それをどう見るかで、先ほど先生がおっしゃいましたような、確かに産業という点から見ますと、売上げとか利益というのは、当然、先ほどの調査の結果として見ているのですが、そういうものが大きくなることが目標としてダイレクトに立てていいのか、各年ずっと増えていくことが目標になり得るのかどうかというのは、必ずしもそう言えない面もある。
 ただ、実際その政策を評価する点では実態を把握しなければならないというのが一つ課せられたことでもあることは事実で、いろいろ考える中で回収率みたいなものを出しているということですが、確かにそれが端的に政策の評価を表わしているかどうかというのはあると思います。またいろいろ考えまして、どうすればいいかを検討したいと思います。

○政策評価官
 評価の結果が見づらいというか、わかりにくいのではないかというご指摘はいままでもあります。今日、最後のほうでフリートーキングの時間がありますが、平成24年度から第3期の基本計画の期間に入ります。その際の論点の1つとして、ロジックモデルというのがあります。後ほど詳しくご説明しますが、いかに見やすくするかというのが、今度、計画改定に当たっての主要な議論だろうと考えています。

○高橋座長
 実は非常に興味深いテーマではありますが、与えられた時間が限られていますので、次のテーマということにさせていただきたいと思います。今日は医政局の経済課長さん以下ご苦労さまでございました。ありがとうございました。
(所管課入れ替え)

○高橋座長
 それでは「労働者の安全と健康が確保され、労働者が安心して働くことができる職場作りを推進すること」という施策中目標について、担当課から15分程度のご説明をお願いし、その後質疑をさせていただくということにしたいと思います。

○労働基準局安全衛生部長(平野)
 「労働者の安全と健康が確保され、労働者が安心して働くことができる職場作りを推進すること」という中目標につきまして説明をさせていただきます。資料といたしまして、資料2-1「実績評価書」と、資料2-2「安全衛生業務について」という説明資料を提出させていただいておりますが、主に資料2-2を中心に説明をさせていただきたいと思います。
 まず、安全衛生指導業務の基本的方向性ということですが、安全衛生業務、労働災害の現状がどうなっているかと申しますと、平成21年度の労働災害の発生状況は、休業4日以上の死傷者数で約10万6千人、不幸にして亡くなった方が1,075名となっております。左側の下のほうにその災害発生状況を図示してありますが、長期的には大きく減少してきております。死亡災害で申し上げますと、最高のところが昭和30年代の半ばごろに比べると6分の1ぐらいまで減ってきたという状況になっています。そういう意味で、労働災害を減少させるという業務に関しては一定の大きな成果を挙げてきたと考えております。
 しかしながら、労働者の健康ということに目を向けますと、下の真ん中の図で、健康診断の結果何らかの項目で有所見だと言われる労働者の割合がだんだん増えており、平成21年度でも半分以上の方が、健康診断結果に「スター」が付くという状況になっているわけです。また、脳・心臓疾患に係る労災認定が年間に293件、精神障害等に係る労災認定も年間に234件という高い水準で推移しており、今後、私ども安全衛生業務に関しましては、労働災害をもっと減らしていくとともに、メンタルヘルス対策、アスベストのような労働者の健康対策、受動喫煙対策、そういうことにもさらに力を入れていかなければならないと考えております。
 次頁にまいります。まず、労働災害の防止対策についてです。先ほど現状で申し上げたように、死亡災害で1,075名、休業4日以上で10万6千人の方が被災されているという状況にあるわけです。
 これの評価に関しては、資料2-1の実績評価書の5頁に示してあるように、アウトカム指標として、前年と比較して死亡災害を減少させる、あるいは平成19年と24年を比較して、その間で20%減少させる。休業4日以上の死傷者数も、前年と比較して減少させる、さらに平成19年と24年と比較して20%以上減少させるということを目標としておりますが、実績で示されているように、基本的に順調に推移していると考えております。
 災害の多い主な業種として、製造業と建設業があります。死亡災害のベースで、製造業では186人の方が亡くなっており、これは全産業の17%です。建設業では371人の方が亡くなられており、全産業の35%を占めております。そういう意味で高い割合をこの2つの業種で占めているわけですが、こういう災害が多く発生している業種を重点に、いろいろな労働災害防止対策を進めております。
 業務の内容として、建設工事を計画したとき、あるいは工場に機械設備を設けるときには労働基準監督署にきちんと届出をしてもらうことになっており、そこで十分な安全性をチェックして、場合によったら計画を変更してもらう。さらに、いろいろなケースを通じて事業場に対して労働災害防止対策を指導することにより、災害防止対策を進めております。
 製造業でいいますと、機械を使いますので、どうしても機械による災害が多くなっておりますし、建設業に関しましては、高い所での作業が多いので、墜落災害が多くなっております。
 これに関する評価は実績評価書の8頁にアウトカム指標として上のほうに載せてありますが、平成19年と比較して毎年減少しており、機械設備あるいは墜落・転落災害に関しても、現在のところ順調に推移していると評価しております。
 今後の災害防止対策として、さらに減少させるためにはどういうふうに進めていくかという点に関しましては、より減少を図るためには、職場に潜在する危険性あるいは有害性を減少させていかなければならないということで、リスクアセスメントという手法がございます。これは各職場での危険有害性を特定して、そのリスクを見積って優先度を設定して必要な対策を取っていくという一連の流れを事業場の中で、特に中小規模事業場の中で定着させていくということが非常に重要であると考えております。建設業に関しても、中小企業を中心に、災害の多い墜落災害に関しては昨年も規則を改正して、対策の充実を図ったところですが、そういう対策の定着を図りつつ災害防止対策を進めていこうと考えております。
 次頁はメンタルヘルス対策に関してです。これは労働の場だけではありませんが、自殺者は10年連続で3万人を超えている、うち労働者9千人が自殺をされているという現状にあります。さらに要因として「勤務問題」を理由とする自殺者は2,400人です。ただ、この数値は、警察が遺族とか遺書を調べて複数の要因を挙げて、その中で勤務問題を2,400人の方が挙げられているということで、勤務問題が主な要因で2,400名が自殺をされているということではありません。
 一方、職場において強いストレスを感じる労働者は約6割という状況にあります。ところが、平成19年ベースで、メンタルヘルス対策に取り組んでいる事業場は3割という状況です。もっと事業場のほうでメンタルヘルス対策に取り組んでいただきたいということで、業務の内容に書いてありますように、「労働者の心の健康の保持増進のための指針」あるいは「復職・職場復帰のときの手引き」、そういうものを示しつつ、職場でのメンタルヘルス対策に事業場が取り組んでくださるよう、いろいろな指導、支援を実施しているところです。
 これは実績評価書の13頁にも載せてありますが、今後のメンタルヘルス対策の方向として、メンタルヘルス不調の発生防止のために、職場におけるストレス等の要因について適切な対応が実施されるように、職場におけるメンタル調査の把握方法、あるいはそれを把握したあと適切に対応するための実施基盤の整備について、現在、検討会を設けてご検討いただいております。もうすぐまとまると思いますが、その後労働政策審議会で議論をしていただこうと、そういうことも通じて、メンタルヘルス対策の充実も図っていきたいと考えております。
 次は、過重労働による健康障害防止に関してです。健康診断の結果「有所見」と言われる労働者が多くなっています。これについても実績評価書の5頁にアウトカム指標で目標を定めておりまして、ずっと増加傾向にあるのを、平成24年度までに何とか減少傾向に持っていきたい、歯止めをかけたいということを目標にしておりますが、平成20年、21年は19年と比較して上昇しているという状況にあります。このため、事業場に対して、特に健康診断結果についてまとめたものを監督署に報告していただくようになっておりますので、その中で有所見率が高い事業場に関しては、労働者に対する保健指導の実施とか、産業医の意見を聞くとか、そういう適接な対策を実施するように指導するという対策を今年度からとりつつ、何とか有所見率の減少に向けていきたいと考えております。
 最後の頁は職業性疾病予防対策に関してです。このうち石綿につきましては、平成18年9月から製造等が全面禁止されておりますが、一方で、すでに建築物に断熱材等で使われた建物の解体が今後本格化します。解体のピークは平成40年度ごろと推定されておりますが、石綿による粉じんばく露がされないような形での解体工事の実施を引き続いて指導していきたいと考えております。
 職業性疾病予防対策のうち、典型的なじん肺と化学物質管理について説明いたします。じん肺対策に関しましては、実績評価書の14頁にアウトカム指標を示してあります。これは粉じんを吸うことによって起こる職業性疾病ですが、新規に、つまり新たに粉じんを吸うことによってじん肺になる人の数を、平成19年と比較して毎年減少させるということを目標にして、指標として評価することとしておりますが、20年、21年は順調に推移しています。例えば有機溶媒中毒のような化学物質による業務上疾病も、平成19年と比較して減少させるということを指標にしておりますが、これについても現在のところ順調に推移しているという状況です。こういうことを通じて現在、安全衛生業務を推進しています。以上です。

○高橋座長
 労災と労働衛生関係は、ある意味で指標は端的に出てくる領域かと思いますが、いかがでしょうか。
 初めに、ものすごく素朴な質問をさせていただきます。建設工事の死亡数が実数で出ているのですが、この期間に、実は母数がだいぶ変動していませんか。建設労働者が減少しているとか、全体として、労働力がそれぞれの業界でだいぶ変動があるのではないか。そうすると、単なる絶対数の減だけでアウトカムになるのかしらという非常に素朴な質問なのです。建設関係労働者何人当たりということで指標を取らないと、本当の数字にはならないのかなと思うわけです。

○労働基準局安全衛生部長
 ご指摘のとおりで、建設業の従事労働者数につきましては、現在のところ毎年減少しております。この指標の数字だけでいいますと、例えば平成16年には584万人だったのが517万人と減少しているのですが、死亡者数でいきますと、594人がその間に371人となっておりまして、従事者数よりも死亡者数のほうが大きく減少しているというのが実情です。

○高橋座長
 いろいろな効果を知る資料としてはどうかという素朴な疑問を持つのですが、ご専門の委員の皆さんもいらっしゃいますので、よろしくお願いいたします。

○野川委員
 労働法の研究者の立場からこういう資料を拝見してまず考えますのは、これは安全衛生部の政策評価なのですが、そこで自己完結できる内容なのかということなのです。つまり3頁のメンタルヘルス対策のところの現状で、自殺者が非常に増えていて、勤務問題を理由とする自殺者が約2,400人とあります。この勤務問題というものの中には職場での人間関係、労働条件に関すること、俗に言うハラスメント等に絡むこと、あるいは人権侵害等々が当然含まれているわけです。そうすると、これらの問題の中には、安全衛生部の担当というよりも基準課といいますか、労働条件を管轄する部署が絡んでくる問題もあろうかと思うのです。そういったことを合わせて「メンタルヘルス」という大きな枠の中で扱ってその改善をどのように評価していくか、こういうことにならないと、大きなパースペクティブでの政策評価の質は上がらないと思うのですが、その辺をどのようにお考えなのかお伺いしたいと思います。

○労働基準局安全衛生部長
 メンタルヘルスの問題に関しましても、あるいは過重労働による健康障害の問題に関しましても、その予防という点については、安全衛生部が担当しております。しかし、労働時間の問題、あるいは残業の問題等就業上の条件は当然大きな影響を与えます。そこは基準局内で十分連携をしながら対策は進めています。
 さらに、ハラスメントについては、基準局として今後の検討課題だとは考えております。そういう意味からしますと、施策自体も基準局全体としていろいろな面を連携しながら進めなければならないわけですから、政策評価に関しましても、単に安全衛生、あるいは労働衛生という観点ではなくて評価されるべき課題だろうとは思っております。

○野川委員
 労働時間とか、数字でそこからもたらされる影響が、ある程度相関関係で分かるようなものは、わりとフォローしやすいと思うのですが、最近の労働判例を見ていると、判例の登載雑誌のかなりを労災にかかる判例が占めているという状況があります。それも、多くはメンタルヘルスで、特に広い意味でのハラスメント、あるいはそれに近い状況が目立ちます。ここで掲げられた「労働者の安全と健康が確保され、安心して働くことができる」という言葉の中には、当然いま申し上げたような問題も含まれていると認識されると思いますので、力を入れて、どのように効果的にそれを含んだ形で政策に反映し、それが評価システムの中に繰り入れられるのかと考えていっていただきたいと思うのです。これは要望です。

○高橋座長
 ありがとうございました。労働安全というのは概念が随分、時代とともに、生産からホワイトカラーへ焦点移動する中で、いろいろな新しい課題が起こっているなということが政策評価の際にどう反映されるのか、そういうご指摘かと思いますので、少し研究をしていただけますように。ほかに何かありますか。

○梅田委員
 説明された資料2-2の1枚目で、左から右へ基本的方向性が書かれているのですが、果たしてそうなのかなと思いました。詳しく読んでいないのですが、実績評価書の流れを見て、これは意見になるかもしれませんが、メインはいちばん左側の労働災害防止対策です。これはここ10年、減ってはきていますが依然としてあるわけで、さらにそれを減らすためにどうするか。評価書の記載は、減っているから、有効だったとか効率的だったとかという評価が簡単にされているわけですが、私が言いたいのは、ではなぜこういうふうに減ってきているのか。行政が関与して従来からいろいろなことをされている。年年いろいろ工夫というか、改革・改善をされながら、行政が関与しておられると思うのですが、そのうちのどこをどうやったから有効的に減ってきたのかとかといった分析をもう少ししていただかないと。これは個人の意見ですし、さっきのご意見とも少し関連するのですが、左側がメインであって、これをさらにより良くするために今後どうすべきかということの分析と今後の方向性というものがこの評価書に欲しいなと思うわけです。この基本的方向性がいかにもシフトしていくという絵になっているのですが、果たしてそうなのか。評価書には必ずしもそうは書いてないのではないか。つまり、このいちばん右側に出てきたのは、従来から行政が関与すべきテーマだったのか、新たに行政が関与することとしたのか。別に、重点が移るということではないのではないか、政策評価的な論点から言うと違うのではないかという感じがするのです。言いたいのはその2点なのです。

○高橋座長
 いかがでしょうか。

○労働基準局安全衛生部長
 まず、いま梅田委員から言われたように、私どもとして、いままでずっと重点にやってきた災害防止対策、労働災害の発生件数を減らしていくこと自体を、いままでより力を削ぐとかという観点は考えていません。ただ、一方でメンタルヘルスとか、新たに力を入れて注がなければならない課題が出てきたときに、相対的な話として、どこを重点にということになると、いままでよりは、労働者の健康確保問題に関して力を入れていかざるを得ないだろう。特に人的な面で申し上げますと、全体として決まった人員しかないわけで、そこの部分にいままでよりはウエイトをかけるということになるだろうと思います。ただ、一方で労働災害防止対策について、さらに減らしていかなければならない。そういう意味で効率的、効果的にやっていかなければならないわけです。
 今どうして災害が減ってきたのかという問いかけがあったわけです。1つの要因として、行政がそれを促している部分は当然あるわけですが、事業場のほうで、あるいは企業で自主的に労働災害防止対策に取り組んできた、そこが非常に重要で、それが大きいと考えております。そして、それをより効果的にやってもらうために、先ほどの説明の中でも少し触れましたが、リスクアセスメントという手法がございます。これは非常に事業場の安全衛生活動を効率的、効果的にやれる手法ですので、それを自主的にやってもらう。それを定着させることによって、労働災害の潜在的な危険性を事業場の中でもっと減らして災害を減らしていきたい、そういう形で進めていきたいと考えております。

○堀田委員
 簡潔に2点申し上げます。1つは労災問題です。これが減ってきているというのは当然です。これを増やすメリットは全くない。経営者だって、労働者だって何としても減らしたい。だから、本来減るはずのものなのです。それで、その減らし方について、機械なら機械、有毒物を使うようなものなら、有毒物をなるべく使わない。使うにしても、その管理がしっかりできるようにする。そういう経営努力によって、いわば起こらないようにしてしまう、リスクが生じないようにしてしまう、これが最も基本的な労働災害発生を消す原因なので、そういう点をまずしっかり指導し、見ていくということが1つあるのだろうと思います。
 その場合に、大企業は当然一生懸命頑張るでしょうけれども、問題は、設備投資等がなかなかできない中小企業の場合に、なかなかリスクをゼロにできない。そうすると、そのリスクをゼロにできないところについては、リスクを起こさないように、万一にも過失を起こさないように十分留意するという労働者の訓練によって労働災害の発生を避ける、そうせざるを得ない場面がいろいろあるだろうと思います。だから、経営者側の資本によって対策もいろいろ変わってくるのです。行政が特にしっかり見なければいけないのは中小企業、いわばリスクが、機会とか環境からして多い所でいかに防ぐようにするか、ここの指導、場合によってはいろいろなテコ入れをされる必要があるのではなかろうか。そういう分析、そして実態評価、さらに指導のありぶりをご報告いただければよいのです。これもたぶん、きちんとそちらでやっておられるでしょうけれども、みんなが発生の防止に協力しやすい、そういう評価、分析になってくるのではなかろうか、それが第1点です。
 第2点はメンタルヘルスについてで、これも大変難しい問題です。野川委員がおっしゃったように、パワハラとか、ワーク・ライフ・バランスであるとか、直接の対策のベースになるいろいろな関連対策が必要だと思うのです。それは検討委員会でやっておられるということなので特に申しませんけれども、たぶん検討委員会の中で出てこないおそれがあるかなと私が懸念しておりますのは、転職が簡単にできる社会にするという対策です。日本の企業は、特にアメリカと比べますと、転職しても行き場所がない。難しいのです。しかし、自分の能力に合ったところで仕事をしないと、一杯いっぱいでやっておりますと、どうしても精神面で壊れがちですので、ぴったり自分に合うところへ転職が自由にできて職場を替われるような環境を作る、ということが1つの大きな対策になるのではなかろうかと思うのです。
 この辺は厚生労働省で戸苅さんが次官か局長だったときに、小野さんが座長で「人間開花社会」という報告書を出していると思うのです。私も一員として、清家さん等も参加したのです。それは人間の能力を職業面で思いっきり生かすという観点からですけれども、そのことが同時に、このメンタルヘルスのいちばん基本面での対策になるのではなかろうかと私は思います。検討会で出ていれば幸せですが、もしなければ、そういう点もしっかり対策として取り上げて、その点についての評価をしていただくということが問題解決のいちばん基本になるのではないかと思います。

○高橋座長
 ありがとうございました。とりわけ建設というのは労使関係が非常に複雑ですが、そういうことを含めて、いまのご指摘について何かございますか。

○労働基準局安全衛生部長
 1点目の中小企業の問題に関しては、おっしゃるように災害の発生率でも、中小企業のほうが非常に高いのです。そういう意味で私どもの指導も、大企業は行政が何も言わなくても自主的にやってくれるというスタンスで、事業場に対する指導も中小企業中心にやっています。その際に事業場の場合ですと、人がいないとか、どうすればいいか分からないとかということで、なかなか進まないのです。しかし、今は中小企業でも、災害が起きていいなどと考えている事業主は絶対にいませんので、きちんとした対策ができるように指導・支援をしていくということが重要です。例えば私どもの監督官が監督・指導ということで臨検監督に行きますが、基本的に中小企業を中心にやっておりますので、中小企業のレベルアップを図っていきたいと思います。

○高橋座長
 安全衛生業務についての評価のご報告をいただき、それぞれの委員の皆様からご意見を頂戴しました。是非、バージョンアップのためのアドバイスということで対応していただきますように、よろしくお願いをいたします。どうもご苦労さまでした。

○労働基準局安全衛生部長
 よろしくお願いいたします。
(事業所管部局入替)

○高橋座長
 次の議事として、「政策評価に関する基本計画(第3期)」の策定について、事務局から説明をお願いいたします。

○政策評価官
 資料3-1と資料3-2の関係でご説明を申し上げます。「厚生労働省における政策評価に関する基本計画」は現在第2期で、この第2期は平成19~23年度までです。したがって、平成24年度から第3期に入りますので、これから約1年半の間に第3期の基本計画の策定作業をしていかなければなりません。そういうことで、本日から第3期に向けた議論を始めたいという趣旨です。
 資料3-1に検討課題が5つほど並んでおります。別にこれだけではなくて、いろいろな論点があろうかと思いますが、例えばこんなものはどうだろうかということで掲げたものです。
 まず1番、これは政策評価の1つのコアだと思いますが、予算との連携をこれまでもいろいろ努力してきておりますが、さらにどう進めていくかということです。平成19年度からの第2期の段階で、政策中目標を予算書における項(予算の流用ができる単位)、それから決算書における事項と一致させて、政策評価と予算・決算との連携を強化させた。そこまでは一応理念的にやっているのですが、その後、特に査定資料としての活用はどうかというところがあります。自分のところで評価をして自分のところの予算要求に反映させるところまでは並行して何とかなっているのですが、その後の査定資料としてどうかというところが1つのポイントです。
 2番目は事務事業の取扱いです。昨年度から概算要求で、施策中目標は予算書の項に対応しているということですが、1つ1つの事業を見れば、さらに施策の小目標ごとに支出の削減、効率化の観点が要るだろう。そういうことで?@の重要な役割を果たすとか、?Aのように、ひょっとしたら問題があるのではないかといったようなもの、それから、これは今年度からですが、省内の事業仕分けをやっていて個別に指摘を受けたものを選定して評価を行うことにしておりますが、こういった取扱いをどう考えていくかということが論点としてあろうかと思います。
 続いて3頁目です。政権交代のあと、「事業仕分け」あるいは行政事業レビューが行われております。行政刷新会議でまず事業仕分けを、昨年に第1弾、今年に入って第2弾として国の事業、それから独立行政法人や公益法人の事業について実施しておりまして、今後は第三弾として、この秋ぐらいに特別会計を中心とした事業仕分けが予定されております。
 また厚労省におきましては、刷新会議の事業仕分けに加えて独自の省内事業仕分けを、長妻厚生労働大臣の指示に基づいてやっているところです。さらに、事業仕分けをより一般化した形の行政事業レビューが行われておりまして、各部署が事業のレビュー、予算の支出先や使途の実態把握、点検等に取り組んでおります。その一部分は公開プロセスという形で公開されております。厚労省の場合はそれを省内事業仕分けと一体的にやっておりますが、そういったことが行われている。この辺り、つまり事業仕分けと政策評価の関係というところが必ずしもはっきりしていない。これは総務省や内閣府に聞いても、はっきりしていないのですが、この辺りを今後基本計画を考える際にどう考えていくかというのが論点の1つであろうと思います。
 次の頁に移ります。実績評価におきましては、目標を立ててその達成率を見るということをやっているのですが、昨年から人事評価というのが始まっておりまして、人事評価のための目標を立てております。それは結局、一人ひとりが目標を立てて、その目標の達成度合で業績評価や能力評価を行うということをやっているのですが、その目標は別に網羅的なものでもありませんし、組織管理的な目標も入ったりしているのです。そうは言っても、完全に無関係というのもどうかということになろうかと思いますので、この辺りとの関係がどうかというところも論点の1つになるのではないかと思います。いまご説明いたしました事業仕分けの関係や行政レビュー、それから厚労省の組織目標、その具体的なものは参考資料にお付けしてありますので、適宜ご参照いただければと思います。
 5番目は、先ほども少しお話に出てきましたが、評価対象政策に関するロジックモデルの作成です。これについては、総務省の政策評価・独立行政法人評価委員会の政策評価分科会というところで、評価に当たっては次のような点を明らかにすることが望ましいということになっております。ロジック・モデルという言葉を使っているのですが、評価対象施策についての位置付けと効果の発現に至るところを示せということです。関係する政策体系の中での評価対象施策の位置付けがどうか。評価対象とする政策の実行によって解決しようとする政策課題やニーズは何か。その解決やニーズの充足に至る道筋や外部要因は何か。Inputsがあって、Activitiesがあって、Outputsがあって、Outcomesが流れているというのとその概要、それから、結果・成果をこの指標で捉えるかを明らかにする。これは文章で書いてあるので、文章自身が分かりづらいところがありますが、要は、本日も、政策評価の説明と言うと別途パワーポイントの説明資料を用意するような状況ですが、そういった形で分かりやすいものを提示できないか。政策評価の全体像をうまく、パワーポイントを使うような形で分かりやすく提示できないかというところが1つの論点だろうと思います。もちろん、先ほど議論がありましたが、単純にパワーポイントで評価対象矢印で結んであるとなるほどと思ってしまいますが、本当にそうかと考えなければいけないところもあるので、単純化しすぎるのもまた別の問題があろうかとは思いますが、この辺が1つの論点になろうかと思います。
 資料3-2で、第2期ではどんなことをやってきたかということについて簡単に整理してあります。平成19年度からやったというのは、第2期の基本計画の最初からやっていたということになるわけですが、まず当然、制度改正を反映し、また、政策体系との整合性をとっております。2番目としまして、達成水準と時期の明確化ということで、アウトカム指標化ということでできるだけアウトカムを指標化する。また「参考統計」を整理することを行いました。3番目は政策評価と予算・決算の連携。これは先ほど申し上げたとおりで、中目標と予算の項を一致させる。さらに、小目標ごとに事務事業を選定して評価をするということを行っております。4番目では、国際化あるいは科学技術の振興、IT化、こういった政策に関しては、あちらこちらに散らばっているものを再掲して、総合的に一覧できるように訂正いたしました。5番目は、施策の小目標体系の整理です。若干細分化されすぎているところもあったので、体系化して整理をしたというところです。
 4頁からは、評価書様式の見直しです。まず評価対象施策の位置付けの明確化で、大中小、それから基本目標を視覚的に一覧できるように改善する。事業評価シートで個別のものを評価できるようにしたこと。評価結果分類に検討の方向性等を記入するようにしました。それから、よりわかりやすい評価書の作成ということなので、図表やグラフの評価書への添付を促進しました。なかなかグラフまでは、いっていないようですが方向としてはそういうことです。さらに、実績評価書の見直しと施策体系や評価予定表を別の図として添付する。それから、関係した統計資料や答申等の掲載先を網羅的に記載いたしました。
 5頁は、厚労省のホームページの政策評価関連部分を改良するということで、必要な情報へのアクセスをできるだけ容易にしようということ。掲載情報は充実しようということ。国民によるチェック機能を機能させるということで、ご意見メールを随時受け付けることにいたしました。
 最後に6頁、その他の改善ですが、これはいずれも今年度にやったことです。まずは現状把握の徹底ということで、事業者からの報告聴取、苦情・相談の分析、自治体職員等との交流、こういったことを通じて現状把握をできるだけ徹底してやるということです。
 2番目は有識者による評価内容のチェックで、事務方だけではなくて、審議会に諮る。そこまでできなくても、有識者に個別に、あるいは検討会を立ち上げて依頼する。そういった形で有識者の知見の活用状況についても記載をしていただく、ということをしております。
 3番目は、アフターサービス推進室の設置です。これはまだ設置できていなくて、近いうちに設置する予定ですが、各制度あるいは事業が本来の目的どおりに機能していないという場合に、専門家に聞いたり現場に行ってみたりしてその現状を調査・分析し、連携して改善策を図るという取組みを近いうちに開始しようとしています。説明は以上です。

○高橋座長
 ありがとうございました。政策評価のさまざまな環境的な側面の話と、基本計画の改訂の方向性、改善策のいくつかの方向性について、2種類の資料でご説明いただきました。いろいろな意味でそれぞれの委員の皆さんからご意見を頂戴できればと思っておりますが、森田委員、いろいろな意味で、最近の環境の中で政策評価をどう位置づければいいかという議論も含めて何かご示唆をいただければと思います。

○森田委員
 私も一応行政学を専攻しておりまして、政策評価も研究の対象に入っているのです。もう少し言いますと、総務省の政策評価独立行政法人評価委員会の専門委員もやっていますし、事業仕分け人もやったので、いろいろな立場があります。簡単に申し上げますと、いま政策評価ということで随分ご努力されています。今日の2つの事例についても、評価のいまのスキームでいいますと一定の効果は上げているということで、大変努力をされていると思うのです。皆さんが何となくお感じになるところは、空しさ。すごく労力をかけてやっているのですが、これで具体的に何がよくなっているのだろうかということがいまひとつ見えてこないという気がしております。この原因として私自身が思いますところは、1つは、いまの評価法の仕組みそのものが必ずしも国民の期待に応えるような評価のスキームになっていないのではないかということです。
 その1つの理由は評価の仕組みです。評価については随分細かく評価法で定められているところがありますし、仕組みは出来ているのですが、評価の対象である政策とは何なのかということが非常に曖昧な制度になっておりまして、それが1つの大きな混乱要因になっているのではないかと思います。本来ならば効率化するといいましょうか、限られた財源を有効に使うために評価をするというのがそもそも導入の理由だと思うのですけれども、漸く決算の枠組みと一致させて概算要求と結び付けるという話になりましたが、本当にそれがどうなるかはよくわかりません。だからこそ事業仕分けのような形で、かなり乱暴なやり方で削減をする。しかしながら、期待されたほど切れなかったというのが現実ではないかと思っています。
 では、どうすればいいかということについて簡単に言いますと、私自身が総務省の評価をしていたときにも、こういう発想で入れてはということで、政策評価独立行政法人評価委員会にも入ったのですが、いわゆるロジックモデル、すなわち最終的な目標を達成するための因果関係というものをもう少し分析して、その中で行政が何をしているかということを明らかにするような、そうした発想と評価の仕組みというのがいいのではないかと思います。
 具体的な例を申し上げます。厚生労働省の場合、いま問題になっているように、失業者が増えてきています。そこで失業対策をどうしようかということで、そのために職業紹介であるとか、いろいろな施策を講じていらっしゃるわけですが、最終的に失業率がどうなるかということは、厚生労働省がおやりになるさまざまな施策にもよりますが、それ以外に経済情勢によって変わってくるわけで、景気がよくなれば、失業者は減ってくる、そうした経済的要因があります。
 ここで言いますと、いまの資料の1枚目の最後にロジックモデルがありますが、外部要因というのは一体どういうものなのか、そこが明らかにされませんと、本来の政策ないし施策というものがどれぐらい最終的なアウトカムに寄与しているかということが見えてこないのです。そこのところを必ずしも明確にしないままアウトカム指標をやりますと。簡単に言いますと、失業率というのは景気がよくなれば自ら改善できて、たぶん厚労省は何もしなくてもよくなるだろうと思います。先ほど建設労働者の死亡のお話もありましたが、要するに住宅需要、建築需要が落ち込んでくると、事業数そのものが減るわけですから、当然事故に遭うケースも減ってくるのではないか。他方で失業が増えるかもしれませんが。そうした意味で言いますと、その辺についてやっていらっしゃる政策が最終的な目標としてのアウトカムにどの程度貢献して、どういう因果関係がそこにあるかということをもう少し明確にする。これは実際には相当難しいことだと思いますが、少なくとも、そうしませんと、やっている政策そのものの評価というのは非常に見えにくいのではないか。
 さらに申し上げますと、最終的なアウトカム結果を出すために今やっていらっしゃる政策がどれぐらい貢献度があるか。もっと貢献度があるとしたら、そちらの政策を選択するほうが合理的ではないか。そういう議論が政策評価においてきちんとなされるということが重要なのではないかと思っております。いま評価法がちょうど10年経って、来年当たり大規模な見直しの時期に来ていると思いますので、こちらの有識者会議もそうですが、できればその辺を整理していただいて、厚生労働省のほうからも、こういうふうにしたほうがいいのではないかと。膨大なペーパーワークで分かりにくいような気がします。評価というのは世界でいろいろやっていますが、イギリスの行政改革のときには、とにかくアウトプットを変えないでコストをいかに下げるか、それを1つの指標にしてやりましたから、それを1つの指標にしてやるというのも1つの考え方ではないかと思っております。脱線していろいろなことを申し上げましたが、そうした意味で言いますと、こういう場を通じて制度そのものの見直しの提言をする、そういう機会にしていただいたほうがいいような気がいたします。

○高橋座長
 とりわけ厚生労働省の評価対象事業数というのは、たぶん省庁でいちばんではないでしょうか、評価書の厚さが違いますので。それだけに、いまのご提言はものすごく重要なのです。細々したものがワァッとあって、比喩的には、外務省がこのくらいだとすれば、こちらはこのくらいある、だいぶ前に省庁間の担当会に出たときにそんな印象を持っています。事業仕分けという話がありましたが、あの乱暴さと膨大なペーパーワークの中間ぐらいで何か良い方がないものかと、そんな感じをいつも感想として持っているのです。委員の皆さんから何かございませんか。

○川本委員
 私も、難しいですねと感想を申し上げたいと思います。確かにこういう政策評価については、因果関係をどうやって見るのか、あるいは数値目標をどうやって見るのかとかいろいろあるわけです。ただ一言だけ言えるのは、この問題は「木を見て森を見ず」でも本当は困るし、「枝葉末節」でも困る。だからといって、森だけは見ているのだが木は見られないので全然動かないのでは困るということなのです。したがって、個々の政策そのもの、事業なら事業そのものでバランスよく見ていただくしかない。そして、多くの方の意見を聞きながらやっていただくしかないかなと思います。予算はカットしたけれど、本質的に機能しなくなったら意味がありません。あるいは、少しカットしたのだけれども、本当は必要のないものが続いているのだったら意味もない。一方で、すごく大事で予算をカットすべきではないものが、何となく事業の人も減らされて動きがよくなくなったというのだったら、本当は意味がないのです。個々の政策について、よく精通しているものとそうではないものがありますが、バランスを見つつ進めていただければと。答になっていないのですが、そういうもの言いしかできないかなという気がします。いずれにしても、本質は国民生活がよくなるという目的に沿って、どうやっていくかということなのかなと思っております。
 ついでに一言申し上げます。いま「たくさんありますよね」というお話がありましたが、まさしく、そうです。その中で最近私が思っておりますのは、一般会計でやっているものと、いわゆる特別会計でも、労災保険でやっているもの、それから雇用保険というものがある。また雇用保険も、政府と労使の保険料でやっているものと企業だけが払っているものと、いわゆる雇用保険二事業があるのです。ですから、評価をする方々の持っている立場は本来違っていいはずなのかなと思うわけです。例えば雇用二事業であれば、保険を払っている人とそれを活用している人、これは両方とも企業なのですが、そういう人を中心に議論をしなければ、本当の事業の中身がいいのか悪いのか、使われているのか使われていないのかもよく分からない。一方で、保険料が高いのか低いのかも分からない、そういう問題があるかなと思います。
 いま全体的に、みんな1割2割減らせというようなことが続いてきています。一つひとつの絞り込みができないのでそういうことになっていると思いますが、「本当はそうではないですよね」ということは大変疑問に思っているところです。この辺は支払い側、それから、多くは中小零細さんがお使いのところが多いのですが、そういう中小零細企業の、活用している皆さんのご意見をうんといただいた中で、予算の効率化であったり、事業の見直しであったりということを検討していただければなと常々思っているということだけ感想として申し上げたいと思います。

○堀田委員
 2点ほど申し上げます。どちらの点もこの委員会発足当時から森田委員と私が言い続けてきた問題で、資料3のペーパーでもそれがまだ解決されていないのです。
 1つが、政策の優先順位がこの評価の中でつけられていないということです。政策の優先順位をつけるのは、限られた予算の中で政治家のやること。官僚側に求めるのはもともと無理なので、評価自体の持っている一種の限界なのですが、これは非常に大事なのです。優先順位の低いものを一生懸命、すごいお金を入れてやって高いものを手抜きしたら、一生懸命やったこと自体がまずいということになるわけですから、やはり優先順位というのは大事にしなければいけないのです。
 それをいま政治がしっかりつけていないのです。事業仕分け、これは政策の優先順位だけではないのですが、限られた予算の中で活かすという視点から、かなり優先順位の視点が入った仕分け評価をされている。森田先生には申し訳ないのですが、非常に荒っぽいのです。出ている結果も納得できないものが多かったかと思いますが、あれは1つの優先順位のつけ方ですので、あの事業仕分けをしっかり行政側で受け止めなければいけないだろうと思うわけです。
 ところが実態を見ますと、厚生労働省はかなりしっかり受け止められておりますが、省庁の名前は挙げませんけれども、完全に頭から無視してしまって、出してきた答が肩すかしもいいところで、事業仕分けで言っていることを全く守っていない。そういう成果・結果を出して、そういう考え方で進んでいるというところが見受けられます。それは非常に好ましくないので、やはり、事業仕分けの中で優先順位的な視点が出れば、それをしっかり受け止めて活かす、そういう評価をこちらの評価の中に取り入れていかなければいけないのではなかろうか。
 だから、事業仕分けと項目を合わせるというのは大変いいのです。厚生労働省はかなりいいと思いますが、仕分けの結果はもう少し誠実にしっかりと受け止めて、きちんと実施するという体制を作る、これは評価官の仕事ではないかと思います。そこが1つあるのではないかと思います。
 もう1点は評価、そして政策の考え方です。Inputs、Activities、Outputs、Outcomesとしておりますが、この評価の基準は、1つの政策を絶対として、しかも行政が全面的に責任を負ってやるという場合の、つまり基本パターンの評価方式、考え方なのです。ところが実際は、その主たる責任は民間にある。それをうまくリードするという形で行政が政策を実施する、そういう政策のほうが現実には圧倒的に多いのです。そういう場合に、民間側はどうすべきなのか。そこは外部要因ということになるのでしょうが、そこのところを大前提にしっかりした分析をする。そして、行政はこれだけやらなければいけないと。ただし、これは民間がやらなければほとんど成果は上がらないという性質のもので、行政としては十分やったという場合もあり得ます。そういう評価ができるような、つまり原因が複合している場合の行政についての評価方法はまだ確立されていないのです。これはこの評価方式の中で確立できるはずですから、そこのところの開発が要るのではなかろうかと私は思います。

○高橋座長
 ありがとうございました。政策評価の根拠で先ほど森田委員がおっしゃった、政策評価法が10年経って、今おっしゃったような環境の中でこれからどういう方向づけをしていくかということでも、いまの問題は重要だと思います。

○阿部委員
 ロジックモデルがうまく出来て、因果関係が分かったとして、それが分析しているのは制度とか法体系、そういった制度みたいなもので、その運用についてどういうふうに評価していくかというのは抜け落ちているのではないかと思うのです。厚生労働省は特に現場の部分が非常にあって、そこで制度をどう運営しているのかとか運用しているのかというのが、各都道府県労働局だとかその他のところで違っていたりする。そういうことはないと思うのですが、もしそういうことがあったりすると、制度設計がうまくいったのか、それとも運用がうまくいったのか、あるいはその逆なのかといったところも必要になってくるのではないかと思います。今たぶん都道府県労働局は、地方分権といったことで、都道府県に移るとか移らないとかといろいろ議論されていると思うのですが、もし移った場合に、運用のところはそちらに任せる。そうすると、国は制度設計のところだけ評価されるということになるので、運用と制度設計、あるいは制度をどうするかといったところをどういうふうに評価していくかというのは課題ではないかと思います。

○高橋座長
 大事なご指摘をいただきました。とりわけ厚生労働省の施策は本当にアクターが千変万化いろいろあるわけだから、ロジックモデルの作り方も、インタラクティブないろいろなモデルとロジックモデルの関わりみたいなことで試作品を作りながらいろいろご検討をいただく必要がありそうです。そこら辺の努力を第3期の準備の中で行うことになると思います。具体的にタイムスケジュールはどんな感じで予定されておられますか。

○政策評価官
 まだ1年半ありますので厳密には決まっておりません。今日できるだけたくさん参考意見を伺って、大体半年に一回の会議なので、次回にもう少し。まだ形にはなっていないと思いますが、今日の大雑把な論点からもう少し進めたものをお出ししてご議論いただいて、さらに来年、ちょうど1年後ぐらいになりますから、そろそろ形になったものをご議論いただいて最終決定に持っていく、そんなイメージでおります。まだ確としたものはないのです。

○高橋座長
 時間もそろそろ予定の時間ですので、よろしいでしょうか。事務局から何か報告事項等はございますか。次回以降の予定が何かありましたら、心づもりでお話いただけたらと思います。

○政策評価官
 次回は例年どおり年度末ごろに、来年度の実施計画についてご議論いただきたいと思います。その中で、いま評価官からお話がありましたような基本計画策定に向けた議論も、お時間をいただければやりたいなと思っております。

○高橋座長
 本日の会議はこれで終わらせていただきます。熱心にご討論いただきまして、どうもありがとうございました。



(了)
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