ホーム> 政策について> 審議会・研究会等> 厚生科学審議会(科学技術部会)> 第60回厚生科学審議会科学技術部会議事録




2010年10月13日 第60回厚生科学審議会科学技術部会 議事録

厚生労働省大臣官房厚生科学課

○日時

平成22年10月13日(水)
17:00~19:00


○場所

厚生労働省 省議室(中央合同庁舎第5号館 9階)


○出席者

永井部会長
井部委員  今井委員  岩谷委員  金澤委員
川越委員  桐野委員  末松委員  高杉委員
西島委員  福井委員  南(砂)委員  望月委員
森嶌委員

○議題

1 平成23年度科学技術関係予算の概算要求について
2 平成23年度厚生労働科学研究費補助金公募研究事業について
3 厚生労働省の科学研究開発評価に関する指針の見直しについて
4 その他

○配布資料

資料1平成23年度科学技術関係予算の概算要求について
資料2-1平成23年度厚生労働科学研究費補助金公募要項(案)
資料2-1別紙厚生労働科学研究費補助金の応募に係る府省共通研究開発管理システム(e-Rad)への入力方法について
資料2-2「平成23年度厚生労働科学研究費補助金の公募について(案)」に対する意見募集について
資料3-1厚生労働省の科学研究開発評価に関する指針の見直しについて(案)
資料3-2厚生労働省の科学研究開発評価に関する指針 新旧対照表
資料3-3厚生労働省の科学研究開発評価に関する指針(案)
資料4今後の厚生労働科学研究における主な研究課題等について
資料5戦略研究の事後評価について
資料6遺伝子治療臨床研究に関する実施施設からの報告について
参考資料1厚生科学審議会科学技術部会委員名簿
参考資料2厚生労働省の科学研究開発評価に関する指針(平成22年4月1日厚生労働省大臣官房厚生科学課長決定)
参考資料3厚生労働省の平成23年度研究事業に関する評価(概算要求前の評価)
参考資料4平成23年度科学技術関係予算概算要求について(内閣府報道発表資料平成22年9月9日)
当日配布資料【訂正】資料2-1

○議事

○尾崎研究企画官
 傍聴の皆様にお知らせします。傍聴に当たっては、すでにお配りしております注意事項をお守りくださいますようにお願いします。
 定刻になりましたので、ただいまから第60回「厚生科学審議会科学技術部会」を開催させていただきます。委員の皆様方には、ご多忙の折、お集まりいただきまして御礼を申し上げます。
 本日は佐藤洋委員、橋本信夫委員、廣橋説雄委員、松田譲委員、南裕子委員、宮田満委員、宮村達男委員、町野朔委員からご欠席のご連絡をいただいています。少し遅れて見える委員もいらっしゃいますが、委員22名のうち出席委員は過半数を超えていますので、会議が成立することをご報告します。
 続きまして、本日の配付資料の確認をさせていただきます。委員の皆様方には事前に資料を送付させていただいていますが、資料2-1、資料3-1、資料3-2、資料3-3、資料5については、多少修正等が行われていまして、本日机上に配付しているものが最終会議用資料になります。よろしくお願いします。
 まず資料1「平成23年度科学技術関係予算の概算要求について」、資料2-1「平成23年度厚生労働科学研究費補助金公募要項(案)」、資料2-1別紙「厚生労働科学研究費補助金の応募に係る府省共通研究開発管理システム(e-Rad)への入力方法について」、資料2-2「『平成23年度厚生労働科学研究費補助金の公募について(案)』に対する意見募集について(結果)」、資料3-1「厚生労働省の科学研究開発評価に関する指針の見直しについて(案)」、資料3-2「厚生労働省の科学研究開発評価に関する指針(案)新旧対照表」、資料3-3「厚生労働省の科学研究開発評価に関する指針(案)」、資料4「今後の厚生労働科学研究における主な研究課題等について」、資料5「戦略研究の事後評価について」、資料6「遺伝子治療臨床研究に関する実施施設からの報告について」。
 参考資料1「厚生科学審議会科学技術部会委員名簿」、参考資料2「厚生労働省の科学研究開発評価に関する指針」、参考資料3「厚生労働省の平成23年度研究事業に対する評価(概算要求前の評価)」、参考資料4「平成23年度科学技術関係予算概算要求について」。配付資料一覧には載っていませんが、そのほかに1枚紙で「資料2-1の訂正」、厚生労働省のプレスリリース関係の資料として、「『厚生労働科学研究成果発表シンポジウム~わかりやすいネット時代の研究成果発表実験~』の開催について」があります。資料の不足等がありましたら、事務局へお知らせください。
○永井部会長
 議事に入ります。始めは「平成23年度科学技術関係予算の概算要求について」です。事務局より資料の説明をお願いします。
○尾崎研究企画官
 資料1です。1頁は「厚生労働省科学技術関係経費概算要求の概要」の表です。いちばん下の合計を見ていただくと、平成22年度の予算額は、1,541億円であったところ、平成23年度の厚生労働省科学技術関係経費の要求・要望額は1,601億円で、対前年比率103.9%となっています。なお、この表の中の下から3つ目に「医薬品等の研究開発に対するバイ・ドール委託費」とありまして、これについては、平成22年度は4億円でしたが、平成23年度の要求・要望額はゼロです。独立行政法人医薬基盤研究所で行っていたものですが、独立行政法人整理合理化計画により事業の見直しとなり、この事業は今後新しく行わないということで、ゼロとなったものです。
 2頁です。科学技術関係経費のうち、厚生労働科学研究費補助金の概算要求の表です。平成23年度の厚生労働科学研究費補助金の要求・要望額については、477億円ということで、平成22年度の予算額が472億円でしたので、対前年度比率101.0%となっています。なお、この合計の1つ上の行を見ていただくと、「元気な日本復活特別枠」で、「健康長寿社会実現のためのライフ・イノベーションプロジェクト」を出していまして、その中で、難病・がん等の疾患分野の医療の実用化研究経費で、厚生労働科学研究費に関して94.5億円が含まれているので、この94.5億円を含めての額が477億円です。
 それぞれの研究経費について対前年度比率を見ていただきますと、基本的に100%を切る状況にあります。これについては、厚生労働行政の推進のため、より必要性の高い分野に配慮しつつ、事業全体を効率化したというところで、このような額となっています。
 対前年度比率の上から6つ目の「厚生労働科学特別研究経費」だけが、184.5%になっていますが、この研究経費については、緊急性が高く社会的な要請の高い諸問題について単年度で研究を実施する場合の研究ということで、平成23年度に何か起こったときのためということで、ここについては基本的に増額しているものです。
 3頁です。「平成23年度厚生労働省概算要求のフレーム」で、左側の年金・医療等に係る経費等については、このようになっています。それ以外の右側の四角の中の公共事業関係費、人件費、義務的経費、裁量的経費については、平成23年度は1.3兆円の中の10%を効率化することがありまして、これを原資に特別枠がそれぞれ提出されている状況にあります。
○永井部会長
 ただいまのご説明に関して、ご質問、ご意見はございますか。
○望月委員
 2頁の表についてですが、いずれも非常に大幅に減っていると思うのですが、難治性疾患克服研究経費が額として多く減っているのは、何か特別な理由があるのでしょうか。
○尾崎研究企画官
 効率化を目指すということですので、各研究費はいろいろな研究費の規模があるので、その辺を踏まえてこのような額になっています。なお、難治性研究に関しては、先ほど言いました特別枠の94.5億円がありますが、その中で少し視点を変えた研究ということで、40億円を要望させていただいている状況にあります。
○永井部会長
 ほかにございますか。
○森嶌委員
 効率化ということで、だいぶご努力をされたことはよくわかります。医療を成長産業ということで、政府としても1つの目玉にしているときに、これだけの減額というか、特別枠を除くとだいぶ減額です。ここには、もう少したくさんとか、何となく一律的に少しずつ減らしている気がしてしようがないのですが、もう少し減り張りを付けて、概算要求はもう少したくさん要求をしてはどうかと思うのです。この基礎的な研究が、将来的には医療、産業、その他の成長にも結び付くと思いますので、もう少し減り張りを付けた方法はないのかと思っています。
○尾崎研究企画官
 研究費全体について見直したわけですが、例えば総合科学技術会議のアクションプラン関係の施策や、先ほど申しましたように必要性の高いもの、再生医療、エイズ、がん、肝炎などについては、見直した中でも重点化しまして、割合的には高い値になるようにはしてあります。どの研究費についても、いろいろなご意見があるところではありますが、それぞれに重要と考えていますので、現時点ではこのような要求・要望をさせていただいています。
○川越委員
 平成23年度の概算要求については、各省庁で10%減らすという方針があったと思うのですが、この科学技術関係予算にはそのことは反映されているのでしょうか。
○尾崎研究企画官
 基本的には、裁量的経費の関係ということで反映しているものです。
○川越委員
 たしか10%という数字が出ていたと思うのですが、それでいうと減らしていないと理解してよろしいのでしょうか。あるいは全体にプールをして、減り張りを付けてもう一度予算を組み直すという話を伺っておりましたが、その辺のところはいかがでしょうか。
○塚原厚生科学課長
 同じ資料の最後の頁をご覧ください。いま川越委員からご指摘がありましたように、今回の予算要求のフレームの中で、自然増を認めていただける部分と、総予算の組替対象経費の2つに分けて、予算要求の作業をさせていただいています。
 具体的に自然増を認められているのは、医療や年金などに係る経費で、これは自然増はそのまま認められています。そのほかの裁量的経費については、一律10%カットで、正確に言うと、それぞれの省庁で1割削って要求しろというルールになっています。これが厚生科学研究費も含めて、厚生労働省の対象経費が10%減額してというルールに該当するのが1.3兆円あります。この中から、該当する経費のうち1割に該当する1,287億円を縮減しなければいけない、効率化しなければいけないということで、要求と要望と書いていますが、要求の部分は1,287億円を縮減するということで、研究の費目によって少し減り張りを付けさせていただきましたが、減らしているということがベースになります。
 これを財源にして、従来の枠組みではなかなか実施のできなかった大規模な研究などについては、元気な日本復活特別枠ということで要望が可能でしたので、厚生科学研究費でいうと、こちらに94.5億円に相当する研究費を別途特別枠で要望しています。これについては、今後コンテストが行われて、最終的には総理のご判断で、内閣で決定がなされます。ということで、いまその準備をしているところです。
 重点化をしたと申し上げましたが、特に先ほど企画官からもご説明しましたように、94.5億円のうちの40億円は難病ということで、そのほかに、がんが30億円ぐらいで、再生医療が10億円ということで、大体94.5億円は、再生医療、がん、難病の3つで大多数となっているのですが、そのほかに肝炎、精神疾患に一部新規的な要素を含めた要望ということで、取りまとめをさせていただきました。
○永井部会長
 特別枠は必ずしも保証されているわけではないですね。査定されたときに、中身をどのように振り分けるのか。特に、個別に査定は行われるのでしょうか。それともまとめてなのでしょうか。
○塚原厚生科学課長
 これは今年初めて導入された仕組みですので、正直申しまして、今後どのような形になるのかはわかりません。現時点で決まっておりますのが、いまパブリックコメントが行われていまして、たしか10月19日までだと思いますが、この研究事業も含めて、厚生労働省から15ほどの事業が特別枠で要望に出ているわけです。他省庁も入れると相当の数が出ていると思いますが、それについて、パブリックコメントで必要だとか、これはどうだとか、いろいろなご意見が出されている状況です。おそらくパブリックコメントの状況も踏まえて、内閣で然るべき手順を踏んで決定されるだろうと思います。
○永井部会長
 ほかにいかがでしょうか。しかし、ほかの減額されたところは本当にやっていけるのか、そこは十分に検討されていらっしゃるのでしょうか。
○塚原厚生科学課長
 これもそれぞれの所管課にはかなり無理を言いまして、節約あるいは効率化を図っていただいたところです。そういう意味では、先ほど少し触れましたが、厚生科学特別研究ということで、緊急性の高い部分の研究費について、当初想定しなかったようなものについて、研究事業ができるような費目を用意していますが、ここだけ増額をしています。かなり無理をして節約をしていただいた部分で、支障が生じるようであれば、これで対応することも可能かと考えています。概算要求で取りまとめをさせていただいた額で頑張っていただいて、どうしても何とかならないことがあれば、この特別研究事業なども活用していくことを考えています。
○末松委員
 このようにもう表ができていますから、もう遅いのかもしれませんが、資料1の2頁の対前年度比率で見ると、第3次対がん総合戦略研究経費と、認知症などの長寿関係、感染症対策総合研究経費は、大幅な減額ではあるのですが、ほかに比べると少し歯止めがかかっていると思います。元気な日本復活特別枠の難病・がん等のところで、ここで賭けに出たわけですよね。これは当たるか当たらないかはわからないわけです。そういうことなのですか、復活枠で。
 要は、戦略としてがんが二股になっているわけです。それは何か特別なお考えがあってこのようにしたのか。このジャッジを受けるときに、本当にこれが復活できるのかどうか、何か目算があってこのようにやっているのですか。その辺に何かお考えがあるのでしょうか。
○塚原厚生科学課長
 賭けに出たというのは、必ずしもそういうことではありません。今回の組替えの考え方というのは、従来の予算で節約できるところはできるだけ節約し、従来の枠組みの中ではなかなか手が付けられなかった新規性の高い事業に予算を振り向けていこうではないか、という趣旨でできた制度だと理解しています。なおかつ従来のように財務省と各省庁とで調整していくというよりは、国民のご意見も聞きつつというような趣旨が入ったものだと思います。
 私たちとしては、例えばがんの部分でいうと、今年の7月にアクションプランということで、がんのワクチン、がんの新しいバイオマーカーの研究、がんそのものの増殖に着目した新しい治療法の開発といった、概ね3つの分野について、総合科学技術会議で、特に厚生労働省はここに力を入れるべきだというご指摘もいただいた経過があります。その3つの分野については、従来の研究費の枠の中でやるのではなくて、元気な日本復活特別枠の中で、新たな取組みということで要望していくという考え方です。復活というのは日本が復活するわけで、縮減した予算が復活するわけではありませんので、そこは誤解のないようにお願いします。
○永井部会長
 さらにこの議論は出てくるかと思いますので、先に進ませていただきます。議事2「平成23年度厚生労働科学研究費補助金公募研究事業について」です。ご説明を事務局よりお願いします。
○尾崎研究企画官
 資料2-1、資料2-1の別紙、資料2-2です。今回の資料2-1の公募要項(案)については、特別枠で要望しているもののうち、厚生労働科学研究費補助金関係で、一般公募の研究を予定しているものについては含まれていませんので、ご承知の上、お願いいたします。
 まず資料2-2です。前回までの部会で、今回の厚生労働科学研究費補助金公募要項については、パブリックコメントを実施するという話があったかと思いますが、今回については、各研究事業の概要、新規課題の採択方針を対象に、広く国民の皆様から意見を募集しました。その結果をまとめたものが資料2-2です。
 意見募集期間は、平成22年9月14日から28日までの2週間です。意見数は合計189件です。研究事業別集計は、7頁に研究事業ごとに件数が集計されています。
 主な意見です。?Wに「主な意見」とそれに対する「対応」を載せていますので、そのうちのいくつかをご紹介します。まずは「1厚労科研費全体についてのご意見」です。“厚生労働科学研究費補助金の課題の採択から評価までの透明性を高めるべき。”というご意見がありました。これについては、各中間評価結果の公開や評価委員会の議事概要等の開示を行うことを今後検討していきたいと考えています。
 その次に、“国民の健康の維持増進を図るためには、大規模コホート研究を推進すべき。”というご意見をいただいています。これの対応としては、現状では対応不可ですが、今後の検討予定ということで、対応の内容はここに書いてあるとおりで、一部のコホート共同研究は実施しているところですが、ご指摘のような大規模コホート研究については今後の検討課題だと考えています。
 2頁の真ん中上の辺りに、“タバコの健康影響研究は厚生労働省としても重要テーマであることからも、別途研究事業として独立的に公募してはどうか。”というご意見をいただいています。その対応として、公募要項に一部反映ということで、ここに書いてあるような研究事業で、2011年度(平成23年度)において、タバコに関する研究を課題設定し、実施することとしています。
 下の「2個別の研究事業についてのご意見」で、3頁の(4)創薬基盤推進研究事業において、“希少疾患の小児がんに関して何らかの新薬開発のメソッドについての研究をお願いします。”というご意見、(6)医療技術実用化総合研究事業について、“小児がん領域における臨床試験の推進のための研究を行ってもらいたい(同旨6件)。”、というご意見をいただいています。これらについては対応済みになります。
 4頁です。(8)第3次対がん総合戦略研究事業に対してのご意見として、“希少疾患である肉腫に関する研究を実施してもらいたい。”、というご意見が同旨132件でいちばん多い意見で、189件の大部分でした。対応状況は、公募要項に一部を反映していることと、平成23年度は稀少がんに対する標準治療などの確立を目指した臨床研究として公募課題を設定したところで、対象疾患の中にGIST等の肉腫も対象である旨を明記しています。
 5頁の(12)難治性疾患克服研究事業に関しては、“患者の力を活かした患者主体の取り組み、教育支援プログラムに関する研究の必要性、発展を期待する。”というご意見をいただいています。対応としては、今回の公募要項に反映していて、横断的基盤研究分野の中で、患者の立場からの患者支援のあり方や難病対策のあり方などについて、研究することとしている状況です。
 主なところを説明しましたが、これらの意見のうち、対応することとした事項等については、これから説明する資料2-1の公募要項(案)に反映する等、対応をとるものですので、ご承知ください。
 資料2-1の公募要項(案)のご説明です。まず「?T厚生労働科学研究費補助金の目的及び性格」です。ここについては「なお」以下で、この補助金は補助金適正化法の適用を受けることを、従来と同じように記載しています。
 1頁から2頁の黒い枠組みの中には、今回の平成23年度の公募研究事業について、目次的に記載しています。予算成立前のいまの状況ですので、組替えも含めて、新規となるものについては括弧で(仮称)と付している状況にあります。全く新規のものは、前回の部会の概算要求前評価でも説明していますが、6の(4)の「慢性の痛み対策研究事業(仮称)」のみです。2頁の四角の枠組みの下の※に、この公募要項案については、予算の成立状況によっては新規採択課題数を下回る場合があること、公募研究事業名の「(仮称)」は予算成立後に削除する予定であることを記載しています。3頁は、特に注意して欲しいことをまとめて記載しています。
 4頁、「?U応募に関する諸条件等」です。1年前の平成22年度の公募要項から大きく変更した事項はおおよそありませんが、いくつかの事項を選んで、簡単に説明させていただきます。
 まず7頁の「キ間接経費について」です。平成23年度も平成22年度と同じく、新規採択される課題に係る間接経費は、研究費の額を問わず、30%を限度に希望することができるとしているものです。
 9頁です。「ウ利益相反の管理について」は、10頁の最後のフレーズで、「COI委員会が設置されず、あるいは外部のCOI委員会への委託がなされていない場合には、原則として、厚生労働科学研究費補助金の交付を受けることはできません」と、引き続き記載しています。
 11頁です。「ク府省共通研究開発管理システムについて」は、平成23年度もこれを用いての公募を行うということで、郵送、メール等は行わないということを明記しています。
 本日お配りしている資料2-1別紙で、「厚生労働科学研究費補助金の応募に係る府省共通研究開発管理システム(e-Rad)への入力方法について」をご覧ください。このシステムはe-Radと申していますが、この入力関係については、この別紙の資料をホームページに載せていくことを考えています。操作上間違いやすいところについて、全体として一層わかりやすく改訂しました。例えば2、3頁を見ていただきますと、研究者が特に注意しなければならない事項について、今回は特に明記しました。2頁にあるように、今回もe-Rad以外は受理しないことを明記しています。?Bには、締切を過ぎた応募は一切受理しないと明記しました。その意味合いとしては、余裕をもった応募をして欲しいということです。?Dでは、所属機関に申請した段階では応募は完了していないことを書いています。昨年度に多少誤解があったことについて、ここで述べたものです。この資料の内容については、公募要項とともにホームページ等に掲載し、申請者の応募に資するようにしたいと考えているものです。
 資料2-1の13頁です。真ん中辺りに「(5)公募期間」とあります。ここにあるように、今後1カ月を超える期間を想定して、公募をかける予定にしています。
 14頁です。「(7)その他」の真ん中辺りに、「イ国民との双方向コミュニケーション活動について」ということで、新しい項目を追加しています。この項目の下の「参考」とありまして、「『国民との科学・技術対話』の推進について(基本的取組方針)」という平成22年度6月19日の総合科学技術会議での報告に基づく対応の1つということで書いているものです。この公募要項(案)においては、イの中ほど辺りに“1件当たり年間3千万円以上の公的研究費の配分を受ける研究者等においては、本活動に積極的に取り組むようお願いすること”を公募要項の中にも明記して、お願いすることを考えているものです。
 続いて17頁です。「コ歳出予算の繰越しについて」ですが、歳出予算の繰越しに関しては、交付決定時には予想し得なかったやむを得ない事由に基づいた場合であって、年度内に補助事業が完了しない見込みのあるものについては、補助金を翌年度に繰り越して執行することができるとなっているものです。この項目について、研究者の方があまり知らないという状況もあるので、平成22年度には公募要項には記載しなかったのですが、今回はその旨を記載することにしています。繰越しについては、平成20年度の研究事業については4件、平成21年度は8件の繰越しが行われた例があります。
 20頁です。「?W研究課題の評価」の記載の内容については、次の議題である「厚生労働省の科学研究開発評価に関する指針の見直し」についての内容に基づき、適宜追加修正されることを予定しているものです。いまは平成22年度と同じ記載になっているものですので、ご留意ください。
 23頁からは「?X公募研究事業の概要等」です。まずは公募要項については、一般公募型と若手育成型の公募要項であることが記載されています。真ん中の辺りの「各研究事業の概要及び新規課題採択方針等」をご覧ください。これ以降については、各研究事業について、平成23年度の事業概要、新規課題採択方針、研究費の規模や研究期間、公募研究課題の概要、各課題の留意点などを、基本的には共通して記載しているものです。今回については、平成23年度予算は効率化、重点化を図ったこともありまして、全体的に見れば課題数などが昨年度より少ない印象もありますが、新規で公募する研究事業が各事業で平成22年度と同じではないこともありますので、予定課題が増えているところもあれば、減っているところもあることにご留意ください。また、個別の研究事業の各項目ごとに、予算成立前に公募を行っており、成立した予算額に応じて研究費の基礎、最大件数の変化が生じることを共通して記載しているものです。
 各研究費の状況について簡単に説明していきます。まず23頁の真ん中です。「1行政政策研究事業」の「ア政策科学推進研究事業」です。事業概要にありますが、具体的には社会・経済構造の変化と社会保障に関する研究他について一般公募を行うことと、若手育成型の研究についても公募予定であるというものです。24頁を見ていただくと、それぞれの課題のこの分野についての研究費の規模や採択予定件数を載せています。
 26頁です。「イ統計情報総合研究事業」です。この事業については、平成23年度には一般公募型として、厚生労働統計調査の調査手法及び精度の向上に関する研究他の研究を行うこととしています。さらに、この研究テーマについては若手育成枠を設けて、次世代の保健医療をはじめとする厚生労働統計の専門家の育成を図ることを予定しています。新規課題採択方針に、研究費の規模、予定数について記載されています。
 28頁です。「(2)地球規模保健課題推進研究事業」についてです。新規課題採択方針にありますが、ここでは、?@アフリカにおける研究ネットワーク構築に関する研究と、?A技術移転に関する研究、非感染性疾患対策について行うということです。?@は一般公募型、?Aは若手育成型で行うものです。
 29頁の真ん中の下の辺りから、「2先端的基盤開発研究事業」の「(1)再生医療実用化研究事業」について記載しています。この事業においては、一般公募型として、各分野における再生医療技術の臨床応用を目標としたエビデンスを創出するための研究を行うことと、再生医療を早期実用化促進及び汎用性向上のための周辺基盤技術の開発を行うもので、若手育成型として、再生医療における革新的治療技術の開発を目指した研究を行うことを予定しています。
 32頁です。「(2)創薬基盤推進研究事業」の中の「ア創薬総合推進研究」です。この事業においては、公募研究課題の?@にあるような、新規の疾患モデル動物の開発に関する研究、?A自然発生病態動物の開発法・システムに関する研究、ほか5つほどの公募研究課題について公募するということです。また、若手育成型の研究も行う予定にしています。
 34頁です。「イ政策創薬総合研究(仮称)」です。新規課題採択方針にありますが、本研究事業は官民共同研究方式を原則として行う研究で、エイズ医薬品等を含む希少疾病治療薬の開発に関する研究や医薬品開発のための評価科学に関する研究などを行うものです。ポイントは官民共同研究方式をとるということです。
 37頁です。「ウ創薬バイオマーカー探索研究」です。この研究については、新規課題採択方針にありますが、動物におけるトキシコゲノミクス・データベースの活用を促進する研究とともに、ヒトへの安全性評価の外挿性や肝・腎毒性以外のターゲットへの拡大の研究などを行うということです。具体的には公募研究課題に書いてある内容です。
 39頁は「エ政策創薬探索研究」です。これについては、前回の8月23日の部会でもご検討いただき了解された、概算要求前の評価の当該研究項目でも説明させていただきましたが、独立行政法人医薬基盤研究所が行っていた基礎研究推進事業の新規採用分を、国で行うことになったことに伴う研究項目です。内容は真ん中の辺りにありますが、画期的な医薬品の開発を目指した研究、画期的医療機器の開発を目指した研究などを行うものです。40頁には若手育成型の研究も行うことが書いてあります。
 41頁は、「(3)医療機器開発推進研究事業」です。まず、その中の「ア医療機器開発(ナノテクノロジー等)総合推進研究(仮称)」についてで、ナノテクノロジーを活用した疾患の超早期診断・治療システム等に係る医療機器等の開発に関する研究について公募を行うというもので、42頁にあと3つほど課題が書いてあります。当該研究についても、若手育成型の研究ということで、ここに書いてある研究に対しては公募をするということです。
 44頁です。「3臨床応用基盤研究事業」の中の「(1)医療技術実用化総合研究事業」で、「ア臨床研究推進研究」です。これについても、4つの研究課題について公募を行うことを考えています。当該研究事業については、若手育成型は設置されていません。
 47頁は、「4成育疾患克服等次世代育成基盤研究事業」です。この研究については、例えば先天性サイトメガロウイルス感染症の診断法と治療法の開発に関する研究のほか、?B重症の慢性疾患児の在宅と病棟での療養・療育環境の充実に関する研究などについて、公募を行うこととしています。また、若手育成事業について、不育症の診断法と治療法の開発に関する研究を予定しています。
 49頁は、「5第3次対がん総合戦略研究事業」です。本日配付資料の1枚紙で後ろから2枚目に、「訂正資料2-1」を挟んでいますが、出していただければと思います。第3次対がん総合戦略研究事業のうち、「(1)第3次対がん総合戦略研究事業」については50頁です。研究分野としては1から7の分野があるのですが、平成23年度は研究分野の4と7の2分野について公募を行います。若手育成型の研究についても行うとしています。
 52頁は、「(2)がん臨床研究事業」についてです。先ほどの1枚紙の訂正内容は、53頁の公募研究課題の一般公募型では、分野1と分野2の2つしかなく、資料の53頁では分野1について?@から?Cまで、分野2については?@から?Dまでとなっていますが、それぞれその後に1つずつ、ここに書いてあるような課題について公募をすることが抜けていましたので、追加するものです。
 55頁は「6生活習慣病・難治性疾患克服総合研究事業」で、そのうちの「(1)循環器疾患・糖尿病等生活習慣病対策研究事業」についてです。この研究については、平成23年度の新規研究分野について、今後の生活習慣病対策の推進に必要なエビデンスを構築するべく、[1]健康づくり分野、[2]健診・保健指導分野、[3]循環器疾患分野、[4]糖尿病分野、[5]その他の生活習慣病分野の研究について、一般公募を行うことになっています。56頁から59頁にかけて、先ほど申しました[1]から[5]の各分野ごとに、研究の規模や新規採択課題の概要について示していますので、見ていただければと思います。60頁には、若手育成型の研究の公募も行うとなっていて、ここでは生活習慣病対策の経済的効果に関する研究を行うことにしています。
 61頁は「(2)免疫アレルギー疾患等予防・治療研究事業」です。これについては、新規課題採択方針を見ていただくと、免疫アレルギー疾患の分野と、移植医療分野の2つの分野がありますが、62頁以降に各々4課題ずつの研究について、新規課題を採択することとしているものです。また、若手育成型の研究の公募をする予定にしています。
 63頁の「(3)難治性疾患克服研究事業」です。この研究については64頁目以降を見ていただくと、「臨床調査研究分野」、「重点研究分野」、「横断的基盤研究分野」、「研究奨励分野」の4つの分野について公募を行っているものです。最初の「(ア)臨床調査研究分野」については、臓器別、疾患別の希少難治性疾患に係る科学的根拠を集積・分析し、疫学的研究を含む疾患の実態解明等を図る研究を行うとしています。65頁から68頁までに詳細が記載されています。
 68頁の「(イ)重点研究分野」については、希少難治性疾患に対する新たな医薬品開発に関する研究を公募するとしています。(ウ)は「横断的基盤研究分野」ということで、これについては、希少難治性疾患患者に対する医療の向上及び患者支援等のあり方に関する研究を公募するとしています。69頁は「(エ)研究奨励分野」で、?@から?Bの研究について公募する予定です。
 73頁は、「(4)慢性の痛み対策研究事業(仮称)」です。この事業は平成23年度から新規で立てようとしている事業で、慢性の痛みという症状に着目して、本研究事業の成果により、より良い医療の提供等を推進し、痛みを有する者の生活の質の向上と痛みによる社会的損失の軽減につながるような行政施策に反映されることを目的としています。研究の規模としては、一般公募型で、1課題当たり1,000万円から3,000万円(1年あたりの研究費)で、研究期間は3年です。新規採択予定課題数は5課題程度を考えています。一般公募をする内容については、公募研究課題に書いてある4つとしています。
 75頁です。「7長寿・障害総合研究事業」の「(1)長寿科学総合研究事業」についてです。76頁を見ていただくと、一般公募型としては、介護予防プログラム開発に関する研究のほか、3つの研究について公募する予定です。若手育成型の研究も行う予定です。
 77頁は「(2)認知症対策総合研究事業」についてです。この内容については78頁で、一般公募型としては、自立支援機器による認知症者の生活を支援する方法の開発に関する研究のほか、2課題について公募する予定としています。若手育成型の研究も、若手研究者が主体となって行う認知症対策に係る研究ということで公募を予定しています。
 79頁の「(3)障害者対策総合研究事業」です。本事業については、「身体・知的等障害分野」、「感覚器障害分野」、「精神障害/神経・筋疾患」の3分野について、公募を行ってきているものです。各3分野について、各々記載されています。最初の「身体・知的等障害分野」は80頁です。?@から?Fの研究について、公募を行っていきます。82頁にあるように、若手育成型についても公募をしていきます。続いて「感覚器障害分野」ですが、これについては83頁にあるような研究について公募を行うこととしていて、若手育成型の研究についても公募を行う予定です。84頁は、「精神障害/神経・筋疾患分野」です。「精神障害分野」については、84頁の下から86頁にかけて12の研究、「神経・筋疾患分野」については87頁の2の研究について公募を行うとしていまして、若手育成型についても公募を行うものです。
 続きまして88頁で「8感染症対策総合研究事業」の「(1)新型インフルエンザ等新興・再興感染症研究事業」です。公募研究課題としては、89頁にある新型インフルエンザへの対応に関する研究分野、同じく89頁の[2]の感染症の新たな脅威への対応及び感染症対策の再構築に関する研究分野、91頁で、国際的な感染症ネットワークを活用した対策に関する研究分野、同じく91頁の[4]の感染症対策にかかる基盤整備に関する研究分野、これらの研究分野について、記載されている研究について公募を行い、若手育成型公募も、92頁の上のほうにある内容のものを行います。
 92頁は「(2)エイズ対策研究事業」です。これについては93頁の公募研究課題にあるような内容についての公募を行っていきます。94頁にあるように若手育成型の公募も行う予定にしております。
 94頁の下からは、「(3)肝炎等克服緊急対策研究事業」です。これについては、95頁から96頁にかけての4つの研究について一般公募を行います。96頁では、若手育成型の研究も行います。
 96頁の真ん中辺りからは、「9地域医療基盤開発推進研究事業」に関してです。この事業については、公募研究課題として6課題を一般公募型として公募することを予定しています。その6課題については、97頁の真ん中辺りの一般公募型と書いてあるものから、98頁までの6つの研究課題について公募を行う予定としています。若手育成型の研究については99頁にありますが、これについても行う予定です。
 99頁の下からは「10労働安全衛生総合研究事業」です。これについては100頁からあるとおり、例えば職場におけるメンタルヘルス対策の有効性、費用対効果等に関する調査研究などを行っていきます。
 103頁の「11食品医薬品等リスク分析研究事業」で、まずは「(1)食品の安全確保推進研究事業」です。この事業については、食品リスク分析調査研究、健康食品等の安全性確保に関する研究、牛海綿状脳症対策研究、添加物に関する研究、食品中の微生物対策、横断的推進研究ということで、104頁から107頁にかけて、それぞれについて1課題から3課題、もしくは5課題で公募を予定していることが記載されております。107頁のいちばん下の辺りでは、若手育成型に関する研究についても公募を行うとしています。
 108頁は、「(2)医薬品・医療機器等レギュラトリーサイエンス総合研究事業」です。この内容については110頁に公募研究課題と書いてあり、一般公募型については110頁から112頁にかけて?@から?Cの研究について公募を行う予定としています。全体の研究採択予定課題数は15課題程度としています。若手育成型の公募も行うということが112頁に書いてあります。
 113頁は「(3)化学物質リスク研究事業」です。この研究については114頁から115頁に記載されているように、化学物質の有害性評価の迅速化・高度化に関する研究そのほかの研究の公募を行うことを予定しています。若手育成型の公募はしないことになっています。
 115頁で、「12健康安全・危機管理対策総合研究事業」です。これについては117頁から119頁に記載されているとおり、地域健康安全の基盤形成に関する研究分野、水安全対策研究分野、生活環境安全対策分野をそれぞれで公募を行う予定としております。若手育成型については、地域健康安全の基盤形成研究を行う予定です。その3つのうちの1つについては若手育成型を行うと書いてあります。
 各研究分野公募の内容については119頁になります。120頁は、公募研究事業のスケジュール表です。121頁から130頁については、各種の単価基準額の一覧です。131頁から158頁にかけては、131頁に題目がありますが「研究計画書の様式及び記入例」です。基本的には平成22年度の研究計画書と同じ内容です。134頁の9番で「期待される成果」とあり、この内容についてはより具体的に書くようにということで、(1)(2)の記載について少し修正させていただきました。これは、先般ご報告させていただきました省内検討会、研究助成の改善等に向けた基本的な方向性についての省内検討会の概要を踏まえた内容で、修正させていただいているものです。
 159頁からは、「『マスキング審査用』研究計画書の様式」です。これについては、平成22年度と同じものを付けさせていただいています。この後に、先ほどの途中の説明で資料2-1別紙(付その3)というのがこの後ろに付くということで、公募要項案ということになります。公募要項案の説明については以上です。
○永井部会長
 大変膨大な内容で、これをすべて頭に入れて質問するのはなかなか大変かと思います。お気づきの点からで結構ですのでご質問、ご意見をお願いいたします。
○森嶌委員
 若手育成型というのは、将来のために素晴らしいと思います。課題によってはいくらいくらの助成をしますとか、何件ぐらいとか、ただ資格要件だけ書いてあるところもありますが、これは何か違いがあるのですか。
○尾崎研究企画官
 公募要項の中で若手育成型と書いてあり、特に若手育成型何件と書いていないものについては、その全体としての課題数が書いてある中で何件かを選ぶ予定にしているという記載になっています。
○森嶌委員
 なんとなく、書いていないところは採用しないみたいな感じを少し受けるものですから心配しています。
○金澤委員
 いまの森嶌委員のご意見とちょっと関係があるのですけれども2つお伺いします。1つは、若手と一般とあるわけですけれども、大まかにいって比率はどのぐらいを考えているのですか。森嶌さんのご意見とはちょっと違うかもしれないのだけれども、あまり若手、若手と言うと、本来の仕事がうまくいかないということがないわけでもないのです。ですから、あるバランスが大事なのですが、数字は出ないのですか。
○眞鍋主任科学技術調整官
 厳密な数字はいますぐには出ませんが、各研究事業でバランスがあろうかと思います。全体の予算の中で、いわゆるミッションを達成するために必要な研究がこのぐらいあって、その中で若手に割けるのはどのぐらいと。見ていただいたらわかりますとおり、定額の予算で数件程度というのが大体のバランスかと思っております。
○金澤委員
 これもバランスの問題なのですけれども、文科省の科学研究費では、間接経費を充足させるために、実際に直接経費が減っています。厚労省はどちらかというと間接経費には慎重だったと思うのです。しかし、30%に向けて動き出されましたが、これは直接経費が少し減っていることはないのでしょうね、ということを伺いたいのです。
○眞鍋主任科学技術調整官
 全体の額は増えない中で、間接経費を増やしていくことになっておりますので、どうしても本体研究費のほうが影響を受けます。ですから、間接経費を増やしていこうとすると、本体研究費のほうが若干影響を受けているということはあろうと思います。
○末松委員
 いまの金澤委員のご質問に関係することで1つ伺います。厚労科研費に限らず、すべての研究費が国のバジェットの政策で削減されている中で、お金の使い勝手、フレキシビリティをもっと増やして、たとえ額が下がっても非常に使いやすい研究費にしていこうという工夫。例えば、当初の申請計画と異なって、備品や消耗品の比率が年度内で大幅に変えられる。
 この冊子のアプリケーションフォームを毎年見るのですが、申請する方が並行して取っている研究費、これはあえて申し上げますけれども、いわゆる混合使用の問題が一方であります。しかしながら、こういう非常事態のときに、これは文科省との話合いになるのかどうかわかりませんけれども、研究によっては現在取得している研究費、これは省庁は関係なく使用目的の棲み分けに十分留意しつつも、有機的な連携をやることによって相乗効果が出るような研究課題はあると思うのです。
 具体的に言うと、ある研究フィールドで、主にマウスを用いて基盤的な知見を解明していくような研究費を既に文部科学省などの研究費を持っている方が、厚労科研費でそれをヒトに応用したものをやっていく。その間というのは、明確な境界なく研究者はやっていくことが実際にはかなりあるのではないかと思うのです。そういうところの、有機的連携があらかじめ期待できるところがきちんと申請の中に書いてあるのであれば、研究費の使用目的や、研究の進捗の程度、あるいは思わぬプラスの知見が出たときに、その計画を予算の範囲内で大幅に変えて、フレキシビリティを持った使い方をあらかじめOKを出しをしておく。
 文科省関係のお金も相当使いやすくはなったのですけれども、まだ工夫の余地はあると思うのです。厚労省の研究費でもそういうことを、お金が限られているときこそきちんとしてあげるのが、研究者側にとって非常にいいことではないかと思うのですが、その辺についてはいかがでしょうか。
○尾崎研究企画官
 研究費の使い勝手については、総合科学技術会議のほうで、その使い勝手をより良くしようという検討がいま進んでいるところですので、その検討を踏まえて対応を考えていきたいということです。もともと我々のほうでも自ら気がつくことがあれば、それは今後の検討課題とさせていただければと思います。
○高杉委員
 先ほどからの話にちょっと関係するかと思うのですが、文科省の科学研究と、厚労省の科学研究とどのような連携が取られているのか、あるいは力を入れているところがダブってはいないかとか、うまくやればもっと効率的になるのではないかという素朴な質問です。そこの相互連携とか、うまく仕組みを考えているのか、それが私たち外部にはよくわからないし見えないのです。
 もう1つ言わせていただきますと、ライフ・イノベーション、あるいは新成長戦略でいろいろなことを大きく掲げていますけれども、我々の味方である厚労省は声が小さい。経産省とか財務省、あるいは内閣府のライフ・イノベーションの計画はボンボン出てくるけれども、そこに厚労省が加わっているのかということも併せて話を聞かせてください。
○尾崎研究企画官
 最初のご質問については、例えば資料2-1の16頁目のカの「競争的研究資金の不合理な重複及び過度の集中の排除について」のところで、先生のご指摘の話とはちょっと違うかもしれませんが、少なくとも不合理な重複というものは、それぞれの研究事業の中でチェックないしは、そういうことが起こらないようにしています。
○塚原厚生科学課長
 ライフ・イノベーションの存在が薄いのではないかというご指摘でした。ライフ・イノベーションの予算関係については、現在文科省と経産省と3省庁でいま政務レベル、あるいは事務局レベルで何回か打合せをしながら連携して実施をしていこうという準備をしております。具体的には、先ほども「元気な日本復活特別枠」で厚生労働科学研究費94.5億円とご説明いたしました。研究費以外の事業も含め、厚労省は233億円予算要望しております。これは、新成長戦略を踏まえて、例えば日本で作られたシーズをいかに創薬に結び付けていくかということ。ドラッグ・ラグ、ディバイス・ラグをいかに解消していくかということも含め、臨床研究をする体制基盤をさらに一歩充実させていこうということも含めて、要望の中に取り込んでいます。
 具体的には9月10日に3省庁の政務三役が集まり、今後の進め方についても連携してやっていこうということが政務レベルでも会合が行われておりますし、事務的にも課長クラスで何回か相談しながら、重複がないように、あるいは抜けがないようにということで相談をしながらいま進めております。そんなことですので、今後もご支援いただければと考えております。
○永井部会長
 ほかにはよろしいでしょうか。もしご異議がないようでしたら、ただいまの資料のとおりに進めることにいたしたいと思います。今後、字句等の修正がある場合には事務局で行い、必要に応じて私のほうで確認した上で内容の確定を行いたいと思います。以上の点ご了承いただきたいと思います。
 議事3「厚生労働省の科学研究開発評価に関する指針の見直しについて」ご審議いただきます。事務局から説明をお願いいたします。
○尾崎研究企画官
 本件については資料3-1から資料3-3に基づいてご説明いたします。資料3-1「厚生労働省の科学研究開発評価に関する指針の見直しについて(案)」については、前回の科学技術部会でもご報告させていただきましたが、「厚生労働省の研究助成等の在り方に関する省内検討会」が設置され、検討会において7月の終わりに「研究助成の改善に向けた基本的な方向性」が取りまとめられました。その中に、今後検討する事項が書かれており、それに基づいた評価に関する見直しを今回行うものです。
 見直しのポイントとしてここに書いてありますが、これは研究開発の指針に書いてある順番になります。まず「中間評価の積極的活用」ということで、研究開発課題の中間評価の時期を「3年の研究であれば2年終了時」となっていたものを、「毎年度」に変更するというものです。これについては資料3-2「新旧対照表」の6頁のウに3年の研究であれば2年の終わりというのを、毎年度に変更したと書いてあります。次のポイントは、中間評価結果の具体的活用例に「計画変更」を追加しました。これは資料3-2の8頁の真ん中辺りの5の(2)で、中間評価であまりにも大幅な変更になれば中止ということですが、著しい変更でなければ計画変更もできるようにするということです。
 次の見直しのポイントは、資料3-1で「追跡評価時期の明確化」です。これについては資料3-2の7頁のエ研究開発施策及び研究開発課題の追跡評価について、これまではそれを行うことは「必要に応じて追跡評価を行い」と書いてあったのですが、今回は先ほどの基本的な方向性に基づき「研究終了年度から3年を経過した後を目処に追跡評価を行い」と明記いたしました。
 次は「重点評価項目の導入」のところで、基本的な方向性の文書の中で重点評価項目についていくつか入れてくださいとなっていましたので、それを今回入れたという内容です。資料3-2の12頁の4「評価事項」の(1)事前評価の評価事項で、左側の下線の引いてあるところがそれに当たります。13頁の下から10行目辺りの(2)中間評価の評価事項がここから始まっていて、14頁ではいろいろ変化しているところは左側に下線を引いて書いているものです。14頁の下から10行目辺りの(3)事後評価の評価事項で書いてあり、15頁に書いてある状況まで見てください。「重点評価項目の導入」については、研究開発課題の評価項目として、政策等への活用(公的研究としての意義)、効率的・効果的な運営の確保、国民へのわかりやすい説明・普及等の努力を項目として導入しなさいとういことです。最後の1項目は事後評価のみを対象とする項目です。新旧対照表で下線が引いてあるような項目を、指針の中に追加記載させていただきました。
 次の項目としては「段階的評価の詳細化」です。これについての配点評価の段階がこれまでは「5段階等」と書いてあったのを、「5~10段階等」にするということで、より細分化した評価ができるようにするということです。これについては資料3-2では、12頁の3「評価方法」(1)の「5~10」に下線が引いてあります。
 資料3-1の「国立試験研究機関等における専門的評価体制の整備」については、「重点的資金及び基盤的資金による研究開発課題の評価について、国立試験研究機関又は法人の評価委員会は、外部の専門的視点から評価できる体制とする旨を記載」というところで、これについては資料3-2の16頁の真ん中の下辺りの(1)評価の実施主体のところに追加させていただきました。今回の見直し案の概要については以上のとおりです。
 スケジュールとしては、平成23年度の研究課題の事前評価から、新たな厚生労働省科学研究開発評価に関する指針(案)による評価を導入したいと考えております。以上です。
○永井部会長
 ただいまの説明についてご質問、ご意見がありましたらお願いいたします。
○桐野委員
 複数年度の場合には2年目ではなくて、毎年ということなのですが、評価にはそれなりの時間的コストがかかって、そのコストをかけるだけの意味がなければ、あまり細かく評価ばかりしても仕方がないと思うのです。研究費というのは、入口で評価する方法もあれば、出口で評価することもあれば、中間で評価することもあると思います。それを、よりきめ細かく毎年評価するとしなければならなかった理由は何でしょうか。
○眞鍋主任科学技術調整官
 「厚生労働省の研究助成等の在り方に関する省内検討会」を開催いたしました。これが今年の6月にキックオフして、その後7月末にこの検討会報告書がまとめられました。この中の議論で、中間評価についてもなるべくきめ細かくやろうという方針が決定され、それで3年の研究でしたら、これまでは2年目の終わりでやればいいとなっていたものが、なるべく毎年やってくださいという書き方になったものです。
 ただ、必ずという書き方はしておりませんで、先ほどの説明の中にもありましたとおり、資料3-2の新旧対照表の6頁の下のところに、研究開発課題に関して、これまでは「3年の研究開発期間の場合、原則2年目で中間評価」というのを、「原則として、毎年度」ということで、必ずとは書いてありません。ここは事業担当課においてご判断いただくところがあろうかと思っております。
○桐野委員
 しかし、このように書かれると、普通は毎年やることになると思うのです。本当に毎年必要なのかどうか私はよくわからないのは、厚生労働科学研究の多くは、症例を収集して、ある治療や診断法の効果などを測定するということなのです。1年目は、どうしてもその症例を集める準備で取られてしまって、やっとスタートできるかどうかというときに、毎回毎回評価することになると、簡素な外形標準的な評価なら確かに効果があるかと思いますけれども、それを詳細に評価するということが本当に効果があるのか、それだけコストをかけるだけの効果があるのかと思います。それでも、なおかつ毎年基本的には、原則的にやるということでしょうか。
○眞鍋主任科学技術調整官
 ここに書いてあるとおりで、原則はお願いしたいということです。評価の仕方については工夫する余地はあろうかと思います。それは、事業担当課でその研究の内容に応じて変えていただければいいのではないかと思います。
○桐野委員
 そのうちに、6カ月に1回などとならないように望みたいです。
○永井部会長
 そういうことをよく考慮した上で進めていただきたいと思います。
○高杉委員
 研究の質によっては、報告程度で済ませてもいいのではないかと思います。評価というと、なかなか難しい面がいっぱいあります。ただその進み具合を確認したいのなら、そんな報告は無駄だと思います。
○森嶌委員
 関連してですが、もしおやりになるとすれば、報告あるいは評価用のフォーマットのようなものを用意するのですか。先ほど桐野先生がおっしゃったように、研究者への負担が増えると思うのです。そういう面では、こういう形でというものを明確にしたほうが書きやすくもなりますし、申請のときと同じように用意したほうがよろしいかと思います。
○眞鍋主任科学技術調整官
 評価の仕方に関しては、それこそ研究事業ごとにだいぶ違うだろうと思います。例えば成果発表会のような所で発表していただいたのを聞いて評価する、あるいはこの研究報告書をもって評価するとか、いろいろな工夫をそれぞれの事業担当課でやっていると思います。そこはやりやすいようにと。ただ、評価の項目自体はこちらで定めておりますけれども、それに応じてその事業担当課でやりやすいようにやっていただく余地はあろうかと思っております。
○永井部会長
 やはり運用が大事だと思うのです。あまり杓子定規にならないようにお願いいたします。議事4は報告事項です。「今後の厚生労働科学研究における主な研究課題等について」を事務局から説明をお願いいたします。
○尾崎研究企画官
 資料4「今後の厚生労働科学研究における主な研究課題等について」です。これについては、当部会で2、3回議論していただいている内容です。前回8月23日の科学技術部会において、いちばん最後の●以外についてはご了解いただいたと考えております。いちばん最後の●については、よりわかりやすいようにということで、例を入れて書いたらいいのではないかというご指摘がありましたので、それに基づいて変更したものです。読み上げます。
 「新たな科学技術の開発を目指す研究だけでなく、既存の科学技術の評価及び政策の評価に関する研究も重視する」。その既存の科学技術の評価については具体例というか例示として、「既に確立していた疾患概念やガイドラインなどを最新の視点で再度評価し必要に応じて是正すること」と説明文を付け加えて、この内容で最終確認をしたいということで報告させていただくものです。
○永井部会長
 いかがでしょうか。この下線はどういう意味なのですか。
○尾崎研究企画官
 前回から変えているところです。前回は「技術評価、技術再評価、政策評価に関する研究も重視する。」という記載で議論を行いました。技術評価とか、技術再評価とかその辺の用語の意味がやはりわかりにくいので、具体的な説明が必要だということ。少なくとも新しい研究については、既存の研究についても検討を行っていくのだということは書いたほうがいいのではないかということもありましたので、こういう表現にさせていただきました。
○永井部会長
 要するに、新しい診断・治療法の開発だけではなくて、既存のものについても、たくさんの患者さんの中で評価していく研究も大事だということですね。
○福井委員
 いろいろな意味で、「既存の科学技術の評価」という言葉を使っていると思うのです。例えば、既存の科学技術の現場での有効性評価みたいな意味もこれには入っているわけですね。なんとなく既存の科学技術の評価と言われると。
○永井部会長
 確かにそういう意味なのです。厚生労働科学研究なので、科学技術と書いていますけれども、実際は有効性とか副作用という評価ということですね。
○福井委員
 現場で実際に使われてどうなのかという、そういう意味合いが直接伝わる言葉になるともっといいと思います。そうするとかえって幅が狭くなってしまうのかもしれませんが。
○永井部会長
 臨床医学では、いわゆるEBMもちゃんとやりましょうとこれは取れるのだと思いますが、そういうことでよろしいですか、EBMの重要性も入っているということですね。
○尾崎研究企画官
 はい。
○永井部会長
 そのわりに来年度の概算要求を見ると、疫学とか、患者さんの情報といった評価の研究費はどうなのですか、そこは十分に反映されているのでしょうか。先ほどの分厚い資料のほうなのですけれども、そこは考慮されているのですか。全面的にカットされていて、現実にはなかなか難しいかという気がするのです。
○尾崎研究企画官
 先ほど説明した資料については、前回の科学技術部会のときに概算前にはこのようなことを出していますということでの、当部会でご了解いただいたものを踏まえたものです。また、パブリックコメントも一部行い、その内容も踏まえているものです。いま先生が言われた具体的なところがどうなっているかについてはわからないのですが、そうした手続きを経て先ほどの資料はできています。
○福井委員
 私も、永井先生と同じ印象を持ちました。先ほどの公募要項の厚い資料の説明のときに、少なくとも資料4に書いてある、「既存の科学技術の評価及び政策の評価」という切り口が明確に見えなくて、ほかのいろいろなテーマの中にこれが組み込まれていっているのかと思いました。もし将来、こういうところに重点を置くということであれば、これに関する枠を別に1つ作っていただければ、重点化するという意味がより伝わるのではないでしょうか。
○尾崎研究企画官
 少なくとも今後、平成24年度については各研究事業のところで、ここに書いてあるようなことについて、新規の課題として立てられないかという検討をしていただくことを要請したいと思います。
○永井部会長
 是非よろしくお願いいたします。
○今井委員
 いまの部分なのですが、評価ということは先に進む意味のみが考えられているのかなと。また前回のように、それは環境省と相談しますというような話になってしまうかもしれないのですが、今般の名古屋のCOP10で、その前に行われていた会議なども含めると、例えばアフリカなどの生薬がかなり先進諸国で使われていて、エイズの画期的な治療薬とか、モルヒネの効かない疼痛に関しても劇的に効く鎮痛剤といったものが出てきています。
 そんな中で、先ほどの厚労科研費の中もそうなのですが、ある程度昔のTBAのストマイのように、バッと劇的に一気に効いてしまったみたいなものは今の世の中にはないと思うのですが、ここのところで付けている今後のデータを必要としていたのが、そういう医薬品の開発などで、一般的には安易に治せるものになってきたりという変化が出てきているみたいです。世の中的に言って、西洋医学を押し進め、抗生剤開発をさらに進めようと言ってきた人たちがちょっと振り返って、国際的にはいろいろ考え始めている。
 そうすると、ここでずっと守ってきた、継続は力なりなので、西洋医学的な枠組みの中で進めてきた今のこの形の中に、もしかするとちょっと合わないものも出てくる可能性があるし、もうあまり必要なくなるものも出てくると思うのです。そういうことを考えると、国際的な動きも絡めて考えたときに、ここにある新たな科学技術の「新た」という言葉を、「既存の」というところでフォローしている部分に、評価というのはさらに進める評価もあり、トーンダウンする評価もありみたいなところで考えると、例えば有効性を評価するかみたいなことではなくて、もっと幅広く取っておかれたほうがよいのかと思うのです。以上です。
○永井部会長
 事務局からコメントはありますか。幅広くというところを、もうちょっとご説明いただけますか。有効性だけではなく。
○今井委員
 既存のものの評価について、洗い直さなければならない部分が、厚労科研費の中で決めている項目についても洗い直していかなければならないものが出てくるだろうな、というぐらい幅広く考えておいたほうがいいかなと。確かに継続は力なりなのですが、その中でひょっとしていまの国際的な流れの中から削れていく部分もあるような気がするのです。
 実際にいま多国が血眼になってアフリカに向かっているときに、こちらではアフリカに関しての話がこの厚労科研費の中に出てくるのは、むしろ現地に向かって何かをしてあげる、指導をしてあげる、フォローしてあげる、そちらの部分のことの研究しか入っていないわけです。そうすると、こっちをちょっと減らしても、国際的な方向にも乗るかみたいな話も出てくるのかという気がするのです。
○永井部会長
 これはそういうことも踏まえていると理解していたのですが、よろしいでしょうか。
○塚原厚生科学課長
 非常に重要なご指摘だと思います。そういうものも含まれているという理解でおります。
○永井部会長
 ほかにないようでしたら、こういう形でさらに進めていただくことにいたします。次は議事4の(2)戦略研究の事後評価について、事務局から説明をお願いいたします。
○塚原厚生科学課長
 時間が押していますので、簡単にご説明させていただきます。資料5「戦略研究の事後評価について」です。2頁です。戦略研究というのは、平成17年の専門委員会でご提言いただいたものの中の1つです。厚生労働省が所管している問題について、行政課題を解決するために、大規模な介入研究をやって、その成果を踏まえて行政施策に反映させていきましょうという趣旨で、平成17年に新たにスタートした研究スキームです。
 平成17年に最初の2つの研究がスタートしましたが、5年間の研究期間です。従来の3年よりは長いスパンでということで、平成21年に最初に採択された2つの研究が終わり、つい最近事後評価が行われましたので、その事後評価が行われたということでご報告させていただきます。「事後評価における評価指標について」は、3頁にありますように専門的・学術的観点からの評価と、それから行政的観点からの評価と、総合評価の3つの項目から専門家のご評価をいただいたということです。
 平成17年度にスタートした戦略研究は2つあります。2頁に黄色い線が引いてある上に書いてありますように、「糖尿病予防のための戦略研究」と「自殺対策のための戦略研究」の2つが平成17年にスタートして、平成21年に終わりました。1つ目の「糖尿病予防のための戦略研究」は4頁です。この戦略研究は3つの課題からなっています。1つは「2型糖尿病発症予防のための介入試験」です。糖尿病のハイリスク者を対象に、発症率を低下させるような効果を検証するということです。2つ目は「かかりつけ医による2型糖尿病診療を支援するシステムの有効性に関する研究」です。これは、糖尿病患者の治療中断を、どのように介入したら有効に半減できるかということで実施していただきました。3つ目は「2型糖尿病の血管合併症抑制のための介入研究」です。これは、糖尿病になった方の合併症をいかに抑えるかを目的とした介入研究です。目標としては、糖尿病の合併症の進展を30%抑制するという目標を立てて研究をしていただいております。
 それぞれについて、5頁以降に研究デザイン、それから研究の実施内容、研究目的の達成状況および成果、それから研究成果の評価とまとめさせていただいております。1つ目だけご紹介させていただきますと、8頁をご覧ください。糖尿病の介入試験の1つ目の、発症を減らすという介入試験ですが。総合評価は、科学的観点からも行政的観点からも、非対面式介入の有効性を検証する意義は非常に大きかったということで、大きかった比較試験であるという評価をいただいております。
 一方、脱落症例数が多かった点ですが、これはコホートを確定するのに予定よりも少し時間がかかったということもあり、経過観察期間が当初予定していたよりも短かったという問題点があるので、さらに引き続き研究をフォローする必要があるのではないかというご指摘をいただきました。
 厚生労働省としては、7頁にあるように、もともと糖尿病の研究は平成17年から平成21年で完結する予定でしたけれども、先ほどのような評価がありましたので、平成22年、平成23年についてもさらに指定研究という形で、フォローアップの期間をあと2年やっていただくという形で今後も対応したいと考えております。
 糖尿病に関する残りのあと2つの研究についても、同じような理由で、指定研究という形で、しばらく研究をフォローしていただくことを予定しております。
 19頁で、2つ目の「自殺対策のための戦略研究」です。これは、2つの介入が行われています。1つは自殺の予防という形で、複合的な自殺対策プログラムを行うことによって、地域で介入することによって自殺を減らしていこう、ということを検証する研究。もう1つは、救急施設に搬送された自殺未遂者に対するケース・マネージメントを通して、自殺企図再発防止効果を検証するという2つの研究が行われました。これについても、時間の関係で後ほど読み取りいただければと考えますが、研究デザイン、研究の内容、成果、研究の評価について、それぞれまとめてあります。これについても一部、観察期間が十分でなかったというようなご評価をいただいています。
26頁をご覧ください。自殺予防の研究の2つ目の研究についても、指定研究という形で観察期間をもうしばらくとっていただき、解析もしていただくという方向で、評価を踏まえた対応ということをさせていただきたいと考えています。
 非常に駆け足でご説明をさせていただきましたが、足らない部分はお読み取りいただければと思います。
○永井部会長
 ありがとうございます。ご質問はいかがでしょうか。
○川越委員
 駆け足での説明ということで、私も理解できなかったところがあります。これを見ますと、全研究に関して研究期間が指定研究という形で延びていますよね。そうすると、これは研究に意義があったという理解でよろしいのでしょうか。その場合、研究の内容によっては数値目標をかなりはっきり出しているところもありますよね。それはもうほぼクリアされたと考えてよろしいのですか。
○塚原厚生科学課長
 観察期間3年ぐらいを想定して、5年間の研究期間のうちの3年間ぐらいを研究して評価をしようと考えていた研究課題だと思いますが、観察期間が1年などと非常に短くなってしまいましたので、その数値目標を評価するまでまだ至っていないということで、観察期間を延ばすということです。
○永井部会長
 よろしいでしょうか。それでは、ただいまのご報告を了解したということにしたいと思います。続きまして、「遺伝子治療臨床研究に関する実施施設からの報告について」説明をお願いします。
○尾崎研究企画官
 それでは、資料6をご覧ください。本日報告する内容としては、1頁にあるとおり、三重大学の遺伝子治療臨床研究関係の変更報告書、東京大学の重大事態等報告書、九州大学の重大事態等報告書と変更報告書の内容です。
 まず三重大学ですが、実施計画書の変更報告書の提出がありました。三重大学では、「MAGE-A4の抗原特異的TCR遺伝子導入リンパ球輸注による治療抵抗性食道癌に対する遺伝子治療研究」を進めているところでして、総括責任者は珠玖先生です。今回の変更届けでの内容については、3頁のいちばん下に変更内容が書いてあります。「実施計画書における事項」というところで、総括責任者以外の研究者が異動によって替わったというところと、有害事象の関係のところをより具体的に整備したということです。変更の理由については4頁に書いてあります。詳しくは5頁以降に関係の書類の新旧対照表が載っています。本件の変更内容については、作業委員会の先生方にご確認いただいています。
 9頁をご覧ください。9頁は、東京大学で行われている遺伝子治療臨床研究の重大事態等の報告書です。研究の名称については、9頁、10頁に書いてありますように「進行性膠芽腫患者における増殖型遺伝子組換え単純ヘルペスウイルスG47Δを用いた遺伝子治療(ウイルス療法)の臨床研究」です。まず結論が10頁に書いてありますが、東大の審査委員会では、「今回の死亡については、遺伝子治療による直接の因果関係は認められないが、今後も安全性の確認と治療効果の把握に努めながら遺伝子治療を継続願いたい」というのが結論になっています。
 重大報告の概要については11頁に書いてあります。重大事態の発生時期は平成22年8月2日です。内容としては、被験者の方が亡くなったということです。この被験者の方については、平成21年12月22日に遺伝子治療を受けられて、平成22年1月5日に2回目の投与を受けられて退院されたということです。その後、3番目の「ウイルス療法後の経過」というところですが、平成22年8月2日にお亡くなりになったということです。「ウイルス療法との関連」については、4番目に書いてありますが、プロトコルの治療としては終わってから6カ月経過していることと、初回の開頭手術から死亡まで37カ月の経過であり、本臨床経過および画像所見は再々発の膠芽腫の進行に伴うものとして矛盾しないことから、原疾患の進行であろうと推定されるという報告になったものです。この報告については、同様に遺伝子治療臨床研究作業委員会の委員の先生方にも確認していただいているということで、この内容でいいということになっているものです。
 13頁をご覧ください。13頁は、九州大学で行われている「遺伝子治療臨床研究重大事態等報告書」です。研究の名称については、「血管新生因子遺伝子搭載非伝播型組換えセンダイウイルスベクターによる慢性重症虚血肢に対する血管新生遺伝子治療臨床研究」でして、九州大学の前原先生のところで行われているものです。この重大報告については、発生時期は2010年6月19日で、重大事態の概略としては、病気の進行によって結果的には右下肢を外科的に切断することになったという内容の報告です。
 これについての九州大学の審査委員会の意見は、16頁の「その後の対応状況」にあります。今回の事例はすでに臨床研究薬投与後4年近くを経過しており、同成分が残存する可能性は理論的に低いとする研究者の考察は妥当であると考えられるものの、いろいろ今後フォローアップ体制等に改善すべき点がある、という内容になっています。
 この報告についても、遺伝子治療臨床研究の作業委員会の先生方にもご確認いただいています。ただ、本報告については、重大事態の発生時期が6月19日ですが、13頁を見ていただきますと、その報告がされたのは9月16日という状況にあります。指針上では発生から15日程度で報告をしなさいということになっています。この報告については、九州大学の前原先生に「より早く報告するように」と。特に、16頁の「その後の対応状況」のところに、標準業務手順書に則り、先進医療適応評価委員会における症例のレビューが行われたのが6月29日で、この委員会におけるレビューのあとに、遺伝子治療臨床研究倫理審査委員会を開いて、そこで8月までかかったような内容になっています。こうした事例については、重大な事例であるので、例えば先進医療の適応評価委員会の評価は早めにやっておられるということなので、そこの状況を踏まえたところで、暫定的にまず一報を入れてほしいと意見を出しています。それについて、そのような対応をするという回答をもらっています。
 18頁は、九州大学の「遺伝子治療臨床研究実施計画変更報告書」です。この変更の内容については20頁にありますように、研究者他の異動があったための変更と、効果判定委員会にかかわる実施計画書別紙の改訂ということで、先進医療適応評価委員会の委員に3名を追加するという内容の変更です。この変更届けについては、当該報告の変更内容についても同様に、遺伝子治療の臨床研究作業委員会の先生方にご確認いただきまして、問題ないだろうということになっています。報告は以上です。
○永井部会長
 ありがとうございます。ただいまのご説明に、ご質問はありますでしょうか。九州大学の事例は、院内の体制が必ずしも十分でなかった、あるいは認識が十分でなかったということでしょうか。
○尾崎研究企画官
 九州大学では、まず先進医療適応評価委員会にかけて、そのあとにIRBにかけるという対応をされていたようなので、IRBの日程調整に時間がかかったという状況があったようです。その前に先進医療適応評価委員会が開催されていて、その時点でまずは継続するかどうかの議論がされているようなので、一報として入れてくださいとお願いしたということです。
○永井部会長
 院内でどうするかという話と、とりあえず厚労省への報告というのは、並行して進めていいわけですよね。全部学内で結論を出してからでないと報告できないということではないわけですね。
○尾崎研究企画官
 そのとおりです。我々もその重大報告を見たところで、情報が入れば必要な対応ができるというところがありますので、そのようになります。
○川越委員
 2例目の東大のケースですが、死亡されたということで、状況証拠的には因果関係はないだろうということのようですが、オートプシーをされたのでしょうか。あるいは、しようとする努力はされたのかどうかお聞きしたいのですが。
○永井部会長
 これは、たしか治療して、また転院されてしまっているのですね。ずっと大学病院でフォローしているわけではなかったと思います。
○尾崎研究企画官
 報告書の11頁の「重大事態等の内容及びその原因」という欄の3「ウイルス療法後の経過」というところです。3月2日に退院して、その後、外来での普通の併用療法を再開して、自宅で療養していたと。それで、神経症状が進行したため通院加療は困難となり、6月7日に紹介された元病院に再び入院という経緯がありまして、8月3日に紹介元の病院の担当の先生から、東大の担当の先生に情報が入ったということになっていますので、そこまではたぶんされていないかと思います。
○川越委員
 ちょっと私はそこは目が届かなかったのですが、12頁のいちばん下の欄に、紹介元病院で病理解剖がなされたとあります。これはいわゆる原疾患のために亡くなったという所見だったと思いますので、もしこれを療法との関連ということで、死亡は推定される云々と書いてあるわけですが、そちらに追加するのはまずいと言ったら変ですが、したほうがいいのではないかと思ったのですが。
○永井部会長
 追加といいますと。
○川越委員
 剖検をして原疾患と確定されたと書くのでしょうか、診断されたとするのかどうか、ちょっとわかりませんが、11頁の「ウイルス療法との関連」、4番にありますが、そこに記載してもいいのではないかと思うのですが。
○尾崎研究企画官
 剖検につきましては、我々のほうからも、それを入手するようにということは先生方の意見を踏まえて出しています。その情報については、東大と我々のほうにも報告をもらうという予定にしています。ただ、剖検の結果については数カ月ぐらいかかると聞いていますので、東大にはその時期ぐらいに我々のほうと同時に提供されると聞いています。
○永井部会長
 よろしいでしょうか。ほかにはありませんか。もしよろしければ、ただいまの報告を了解したということにさせていただきます。予定した議事は以上です。その他、事務局から連絡事項等をお願いします。
○尾崎研究企画官
 先ほど本日の配付資料の確認をさせていただきましたが、最後のPress Releaseの紙を見ていただきたいと思います。題名にもありますが、「厚生労働科学研究成果発表シンポジウム」で、10月23日(土)の9時55分から6時半まで、目的は四角の中に書いてあるような内容なのですが、厚生労働科学の研究成果の中で代表的なものについて、国立保健医療科学院でシンポジウムを開くことにしております。情報提供させていただきたいと思います。ご承知ください。
 次回については別途日程調整をさせていただいていますが、いまのところ12月22日(水)の10時から12時に開催する予定としております。正式なご案内は詳細が決まり次第送付させていただきますので、よろしくお願いいたします。
○永井部会長
 ありがとうございます。それでは、本日はこれで終了させていただきます。どうもありがとうございました。


(了)
<【問い合わせ先】>

 厚生労働省大臣官房厚生科学課
 担当:情報企画係(内線3808)
 電話:(代表)03-5253-1111
     (直通)03-3595-2171

ホーム> 政策について> 審議会・研究会等> 厚生科学審議会(科学技術部会)> 第60回厚生科学審議会科学技術部会議事録

ページの先頭へ戻る