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2010年7月27日 社会保障審議会児童部会児童虐待防止のための親権の在り方に関する専門委員会第4回議事録

雇用均等・児童家庭局

○日時

平成22年7月27日(火) 17:00~20:00


○場所

厚生労働省 共用第7会議室


○出席者

委員

才村委員長 磯谷委員 長委員 佐藤委員 庄司委員
松風委員 豊岡委員 中島委員 水野委員 吉田委員
(欠席:大村委員、松原委員)

オブザーバー

古谷参事官 (最高裁判所) 進藤局付 (最高裁判所)
飛澤参事官 (法務省) 羽柴局付 (法務省)

厚生労働省

伊岐雇用均等・児童家庭局長 香取大臣官房審議官 田河総務課長
藤原家庭福祉課長 杉上虐待防止対策室長 千正室長補佐

○議題

(1) 関係者からのヒアリング
  ・武藤素明氏(児童養護施設二葉学園施設長)
  ・星野 崇氏(全国里親会理事)
  ・青葉紘宇氏(NPO法人 東京養育家庭の会会長)
(2) 里親委託中又は一時保護中の児童に親権者等がいない場合に児童相談所長等が親権を行うものとする制度について
(3) 施設入所等の措置及び一時保護が行われていない未成年者に親権者等がいない場合に児童相談所長が親権を行うなどとする制度について
(4) その他

○配布資料

資料1  武藤素明氏へのヒアリング事項
資料2  武藤素明氏提出資料
資料3  星野崇氏、青葉紘宇氏へのヒアリング事項
資料4  星野崇氏、青葉紘宇氏提出資料
資料5  第4回児童虐待防止のための親権の在り方に関する専門委員会論点ペーパー

○議事

○才村委員長
 定刻になりましたので、ただ今から「第4回社会保障審議会児童部会児童虐待防止のための親権の在り方に関する専門委員会」を開催させていただきます。委員の皆さま方には、本日は御多用のところ、また非常にお暑い中をお集まりいただきまして、誠にありがとうございます。
 本日は、大村委員、松原委員お二方の欠席につきまして御連絡をいただいておりますが、それ以外の10名の委員の方々には御出席いただいております。
 早速ですが、はじめに事務局から資料の確認をお願いしたいと思います。

○千正室長補佐
 資料の確認をいたします。最初に議事次第、座席表がございます。それから、資料1としまして「武藤素明氏へのヒアリング事項」、資料2「武藤素明氏提出資料」がございます。資料3は「星野崇氏、青葉紘宇氏へのヒアリング事項」、資料4は「星野崇氏、青葉紘宇氏提出資料」、資料5としまして「第4回児童虐待防止のための親権の在り方に関する専門委員会論点ペーパー」でございます。
 資料は以上です。不足等がございましたら、お申し出ください。

○才村委員長
 よろしいでしょうか。続きまして、本日の議事進行ですが、本日は施設関係者や里親の方々にお越しいただいておりますので、前半の1時間30分程度でヒアリングをさせていただきたいと思います。
 そして、後半は前回に続きまして議事次第の(2)(3)のテーマにつきまして、自由に御意見を頂戴したいと思います。
 まず、事務局方からヒアリングにお越しの方々を御紹介いただきたいと思います。よろしくお願いします。

○杉上虐待防止対策室長
 本日は、実際に日々子どもの監護に当たっておられる児童養護施設の施設長と里親の方々にヒアリングのためにお越しいただいております。お忙しい中をお越しいただきまして、どうもありがとうございます。
 御紹介いたします。まず、児童養護施設二葉学園の施設長をしておられ、全国児童養護施設協議会の制度政策部長でもあられます武藤素明さんでございます。
 それから、里親をしておられます星野崇さんでございます。全国里親会の理事もしておられます。
 同じく、青葉紘宇さんでございます。NPO法人東京養育家庭の会会長でもいらっしゃいます。本日は、どうぞよろしくお願いいたします。以上でございます。

○才村委員長
 よろしくお願いします。それでは、資料1および資料3の「ヒアリング事項」を中心に、まず武藤さんから20分程度御説明いただきまして、その後星野さん、青葉さんお二人から同様に20分程度御説明いただきたいと思います。
 その後、委員の皆さま方から御自由に御質問・御意見をお出しいただければと思います。
 それでは武藤さん、お願いします。

○武藤参考人
 御紹介いただきました児童養護施設二葉学園の施設長をしております武藤といいます。よろしくお願いします。
 施設入所児童は、ちょうど1週間ぐらい前に夏休みになりまして、子どもたちも夏の行事でほとんど皆出かけているということで、特に虐待を受けた子どもたちというのは経験不足のところがありまして、できればいろいろな自然にふれさせたいということで、海へ行ったり山へ行ったり、サイクリングしたりということで、夏にいろいろな行事をしながら自信を付けさせていきたいと思って、そんな子どもたちと今、接しているところです。
 今日は、親権の在り方に関する専門委員会に呼んでいただきまして、現場の状況をヒアリングしていただくということでしたので、全国の児童養護施設長の意見なども取りまとめながら発表させていただきたいと思っているところです。
 最初に申し上げたいことは、昨今の報道でもあるように、児童虐待防止法等が制定されて10年になるのですけれども、なかなか児童虐待の状態が止まっていない。しかも下手をするとエスカレートしているのではないかというような状況です。特に、都市部にいたっては施設に満杯の状態で、一時保護所も満杯の状態であるということで、抜本的な改善というのでしょうか。いわゆる今回ここで検討している法務整備と併せて体制整備の部分、その両面を充実させていかないと、この状態はもっとエスカレートするのではないかという危惧を現場としては持っているところです。そういう意味から、ぜひ現場の状況も報告したいと思っているところです。
 ただし、20分ということで時間がありませんので、資料をまとめてきましたので、それを見ていただきながら、と思っております。私に課せられたヒアリングの事項ということで、資料1に?@~?Dとあります。これを中心に話をしたいと思います。特に?@ですが、親との関係でさまざまな親権に由来する問題について、ぜひ聞かせてほしいということですが、私は法制審議会にも呼ばれまして、全国の状況も少し報告したところであります。資料2の3枚目に、この専門委員会の参考資料ということで付けさせていただきました。
 まず、どのようなことが実態として児童養護施設の現場で親との関係で問題になっているのかということについては、4ページ以降に幾つかの項目を付けてまとめさせていただいています。これについて一つ一つ説明すると時間がないので、ぜひこれを参考にしていただきたいという意味で資料を付けさせていただきました。これは全国児童養護施設協議会の各都道府県の代表者が集まって重要なことについて協議し決定する機関として協議員総会というものがあるのですけれども、その協議員の人たちにアンケートをとって実態調査をした資料であります。前回の法制審議会は6月の中旬でしたけれども、この中でまとめている部分と重なっているところもあります。3分の2ほどは重なっていますけれども、3分の1は後で追加した項目であります。このような事案で親との関係が非常に問題になっているということを具体的に書かせていただいたところであります。ぜひ、参考にしていただきたいと思います。
 特に私のヒアリング事項の?@の中では、施設の退所時又は退所後にどのような問題があるのかということについては、この資料の17ページを御覧いただきたいと思います。ここに退所後の困難を抱えている事例を書かせていただいています。その次のところに、退所後にどういうことでトラブルになっているかということで、特に施設にいるときは施設長が身上監護に近いような形で責任を持って子どもたちに対応しますけれども、出ていってからの保証人というところについて、親がなかなかなれないというところで施設長がその保証人になるケースが多く、私も現在13、14名の保証人になっているところです、そういう意味からすると、親が親権の行使をしないという意味からすると、そこの代行をゆくゆくまでやるという現状にあることが、この中でも多分わかるのではないかと思います。
 それから、金銭にかかわるところでのトラブルという部分があって、在園しているときはさることながら、卒業して退園した後に親が子どもに無心に来る。そういう経済的な問題のトラブルという部分も多く発生しているということで、主に18~19ページにそのような事例を載せさせていただきました。
 それからヒアリングの?Aの事項です。具体的にどのような対立があるのかということについても、事例の中に幾つか入れておきましたので、それをぜひ見ていただきたいと思っているところです。特に意見が対立した場合にどうするかということについては、担当の職員が対応することになるのですけれども、担当職員だけではなかなか難しいので、昨今配置された家庭支援専門相談員や主任、場合によっては園長なども親の対応という部分に時間をかけて話し合いを行うということになります。それから児童相談所の関与という部分も不可欠で、児童相談所の児童福祉司に対応してもらうことになります。しかし、児童相談所と親が敵対しているケースもあるものです、非常に多問題を抱えている親御さんについては非常に調整が難しくて、児童相談所だけとか施設だけということにはならなくて、場合によっては病院や福祉事務所のケースワーカーなど、多くの機関にかかわってもらう。連携しながら親の支援をしなければ、1か所だけでは親の多問題に対応できないのではないかということで、意見の対立等があった場合には、何か所かが一緒になって連携をもって対応することが望ましいのではないかと思っています。
 それから、この事例の中にもありますけれども面会時に勝手に、強引に連れ去ってしまうケースなども最近は多くて、アメリカなどでは施設の前に警備員を置く所も多いのですが、日本の場合はまだそういう状況ではなくて、勝手に連れ去る事件も多いです。これは後でまた児童相談所なども入れながら対処するということになって、そのまま引き取ってしまって、その後を福祉指導という形で見守りに入るケースも中にはあります。
 それから、日常的な部分については職員が対応しますけれども、子どももさることながら職員の精神的な負担も、親の対応で追われてしまって、夜中に何回も電話がかかってくるというようなこともあって、この辺りの精神的な障害を抱えている親御さんの対応というのは、一朝一夕にはなかなか難しい状況で、職員の精神的な負担は相当過酷になっているのが現状であります。
 それから、医療行為については、やはり保護者の同意がないと難しいということになりますから、粘り強く対応することになります。究極的には施設長が病院とかけ合って、早急に対応しなければいけないときは親の同意を得ずに医療行為をすることも日常的ではありませんがケースとしてはあります。もしその医療行為が失敗するということがあれば、たぶん施設長の責任が問われることになるのではないかと思います。その辺りの整理をきちんとすべきではないかと感じています。
 それから、地域による違いがあるのかということですけれども、都市部では児童相談所や諸機関と常に連携しながら進めることになるのですが、地域によっては施設と児童相談所が相当遠いという場合もあります、例えば北海道などはそういう状況ですけれど。ですから、連携しながらということもあるのですが、実際には施設が親の対応という部分をやらなければいけない実態があると思います。
 それから、今回はサポート体制の必要性という部分が私に課せられている課題の中に一つ挙げられていますけれども、これは何といっても児童相談所が一緒になって対応する体制整備を強化することが現実的には必要ではないかと思っています。ですから、児童相談所が施設に措置をした後で、ケース的にはかかわっていただける部分もあるのですけれども、そうでないケースも多々あるわけで、これは施設の中の体制整備もさることながら、児童相談所の体制整備を十分しながら、やはり児童相談所と施設が一体となって支援していく。それから退園後のアフターケアなども含めて対応する。いわゆるパーマネンシープランというものを現実的にきちんと対応できるようなシステムづくりという部分がとても必要ではないかということを現場としては感じております。
 それから、?Bで入所児童の身上監護について、親権よりも施設長の権限が優先することを導入することについて、ぜひ現場の意見を聞かせていただきたいということですが、入所児童の身上監護という部分については、例えば、この中にもありますけれども健康管理や経済的な行為、それから髪形です。髪形についてのクレームは今回非常にたくさん出されているのですけれども、それから、子どもの教育にかかわるものや身の回りのことも含めてですけれども、日常生活にかかわる部分については、やはり一番身近にいる施設長の権限という部分を、現実的には優先化することがとても重要ではないかと思っています。しかし、設置に関することや進路に関することなど、その子どもの行く末にかかわることには原則的には親の意見を十分聞きながら対応する。そこのところのすみ分けという部分もとても重要ではないかと、現場としてはひしひしと感じているところであります。
 それから、親との対立状況を調整する機関としては、児童相談所が一時保護や措置にかかわる役割を担っているというところで、第一義的には児童相談所ということになると思います。ただ、児童相談所の意見を全く聞かないというような親御さんが昨今は少なからず存在しているという部分では、これは以前から私が主張してきたことですけれども、やはり法的関与といいますか、家庭裁判所等の司法の関与が今後も重要になってくるのではないかと思っておりますので、今回検討している親権の一部、一時停止も含めて、親へ直接勧告するような手法も確立していくべきではないかと現場としては感じているところであります。
 だいぶ時間もなくなってきていますけれど、?Cの裁判による親権制限が行われるようになった場合に、施設長が親権代行を行う事例が増える可能性があるということですが、これも今?Bで述べたところと同じように、ぜひ日常的な部分に関しては施設長が親権を代行する部分も必要ではないかと思っています。ただし、多問題を抱える親御さんや非常にトラブルが想定されるケースは、施設の中で親と施設長がぶつかってしまう可能性もありますから、より困難が想定される場合やそういう問題が生じた場合については、やはり措置権者である知事や児童相談所長が親権代行的なことを行うという両面を考えてよいのではないかと思っているところです。それから、施設長が個人として親権代行的な対応を行うのではなくて施設長としても職責で、これは多分児童福祉法第47条第1項ではそのような形になっているのではないかと思いますけれども、そういう規定をしっかりと確立すべきではないかと思っているところであります。
 それから最後の「その他」に何点か入れておりますけれども、1点は、親権の代行権もさることながら、措置制度は都道府県等の公的な責任体制という部分が強い制度だと思いますので、部分的、一時的に親権代行を施設長が行うということであっても、総体的には措置権者である都道府県がしっかりと責任を持って進められるようなシステムが必要ではないかということについても、多くの施設長さんたちからそのような意見もだいぶ出ているところですので、ぜひ考慮いただきたいと思っております。それから、3ページに「その他親権問題に関しての意見」の案ということで(1)~(3)を入れておりました。特に(1)の「未成年後見人制度について」も、やはり現状からすると、もう少し使いやすい制度にしていく必要があるのではないかと思っています。特に退所後の状況として、先ほど言ったようにトラブルになるケースが非常に多い。また、保証人になるということについても、なかなか確立しにくい子どもたちですので、ぜひ未成年後見人制度という部分を退所後の支援確立のためにも充実が望まれるのではないかと思っているところです。
 それから、親の支援のところでは、やはり虐待した親に対して、特に小さい子どもたちもそうですけれども、家庭再統合といいますか家庭復帰を進めるケースも必要ではないかと思いますので、こういう法整備と併せて、虐待せずに子どもたちと向き合う治療プログラムやトレーニングを義務付けながら、また親子が再統合で生活できるようなシステムの強化も必要だと思っています。法整備と併せて、児童相談所および児童養護施設の体制整備をぜひ、よろしくお願いしたいと思っているところです。少し時間をオーバーしてしまったかもしれないですけれども、以上で終わらせていただきます。よろしくお願いします。

○才村委員長
 ありがとうございました。武藤さんからは施設現場の実態を踏まえて、非常に幅広に提言していただきました。単に親権制度の在り方の問題だけではなくて、現行の制度の中での運用についても課題提供していただきましたし、体制の在り方についても御意見を頂戴しました。非常に具体的な話をお伺いすることができました。ありがとうございました。
 それでは、今度は里親さんの立場で星野さん・青葉さんから、よろしくお願いします。

○星野参考人
 それでは、最初に星野から少しお話しさせていただきます。この資料3はヒアリングの項目ですけれども、資料4の6ページ目に「児童福祉法における親権の制限に関する要望書」ということで全国里親会の会長から専門委員会あての紙を付けておりますけれども、日ごろより私ども里親への御配慮をいただき本当にありがとうございます。
 里親制度は昭和23年から始まっておりますけれども、実親さんの生活力・養育力が回復するまでの間、お子さんをお預かりするということで里親は日夜努力しているわけでございますけれども、家族再統合は、それほど簡単にできるものではなく、長期委託になるケースがかなり多いのが実態であります。また、自立に向けてかなり苦労しているのが現実でありまして、特に18歳での措置解除後20歳までの法律の谷間における里親の苦労は並大抵のものではありません。
 短期間お預かりするケースにおきましても、現在の親権制度におきましては不都合なことがいろいろとあって非常にやりにくい場面がしばしば見られております。里親には監護権・教育権・懲戒権が一応あるのですけれども、なかなか子どもを実際に育てていこうと思いますと、後ほど青葉から具体的な話があると思いますが、例えば予防接種をするという問題におきましても、それほど簡単にはできない。それでも、やはり子どもたちに「家庭とはこういうものだよ」と「あなたたちも大人になったら、しっかりした家庭をつくれるようにしてくださいね」という希望を持って子どもたちと心を合わせて日々暮らしているわけでございます。ですから、里親は単に衣食住を提供するだけではなくて、子どもたちとの心のふれあいを一番大事にしていきたいので、それがやりやすいように親権制度を見直していただきたいというのが本音でございます。
 私があまり長く話すと時間がなくなってしまいますので、青葉から少し具体的な話をさせていただきたいと思います。

○青葉参考人
私からは厚生労働省からの質問事項に答える形で具体的な話を幾つか、時間になるまでさせていただきます。資料の1ページをお開きください。まず、前提的な話をさせていただきます。里親といってもいろいろな里親さんがおられまして、一括りでは語れない面がありますので、中身を少し申し上げます。
?@早い段階で実親が子育てをギブアップしている場合は特別養子縁組になりますし、児童相談所はそのように進めますから、これは今日の話題から外れます。?A縁組が良いと思っても、たまたま実親から承諾書が取れなくて、そのまま養育里親という形があります。?B虐待などで非常に負の影響が大きい子どもも今、里親に結構来ております。?C相当期間ほったらかしといいますか音信のない実親の場合で、養育里親として実親に代わってしなければならない課題がいろいろと出てきます。?Dこれとは反対に実親のかかわりが大いにある場合もあります。具体的には短期里親が経験するところで、子どもを通じて実親との接点も出るし、実親抜きには子育てが成立しません。短期里親の場合は、厚生労働省の統計ですけれども、一昨年の統計で委託期間が1年未満のケースは23%でした。その統計で1~2年まで計算に入れますと措置解除になった子どもは40%です。東京都の例で申しますと、1年未満の短期委託が6割です。ですから、それを前提に実親との関係を考えなければいけないと思っております。
 質問2から入ります。「実親と対立があったときの対応」ということですが、里親の場合は児童相談所が一生懸命中に入ってくれまして、基本的にはそんなに大きなトラブルはありません。児童相談所が全部受けてくれるということです。そのような意味では安心なのですが、実親との行き違いといいますか、発想の違いに出会うことがあります。親子交流をさせたときに、相手の親の人生観とこちらの人生観がずれておりまして、子どもが帰ってくると「お寿司をいっぱい食べたから良いお父さん」とか「一日中ゲームをさせてくれるので良いお母さん」という形で子どもは戻ってきます。里親ではお客様扱いではなく普通の生活ですので、そのような点では困ったなというところがあります。この問題を児童相談所に投げかけると、それは人生観の問題だから公的機関の関与は勘弁して欲しいという話になることもあります。
 措置解除になるに当たって、高校2年生位から引き取りを巡って実親と緊張関係に入る例が幾つかあります。これも多分児童養護施設も同じだろうと思いますが、いろいろな人生観がぶつかるということで、事例に幾つか載せておきました。
 児童福祉法の関連としてこの場をお借りしましてお願いしたいのは、虐待を受けた知的障害児の解除のときに、制度の運用の問題が残っています。自立支援法の体系に高校卒業後は入る訳ですけれども、その際に出身地に戻って手続きをし直すということになります。同じ県の中であれば療育手帳も全部共通するのですけれども、県を越えた場合には最初から登録をし直さなければならないとか、実親が動いてくれればまだよいのですが、動こうとしない場合は、子どもの行き場が決まらなくなります。その実例も例として挙げておきました。
 質問3「身上監護面で里親を優先とする案」という問題です。先ほど心を養育すると星野が申し上げました内容をもう少しご説明しますと、里親は我慢強い子どもに育てなければいけない、躾をきちんとしなければならない立場にあります。躾のときにはある種の厳しさが伴いますので、実親の影が見えると、そちらに気持ちが流れてしまうということで、心からこちらに向かなくなるということがあります。ですから、いろいろな難しい法律の問題は別にして、ちょうど躾なければいけない大事な時期は、大人を一本化しなければいけないと思っております。つまり実親と里親が対立するとか、児童相談所と方針が食い違うなどということがあったとしても、「君はこの人の言うことを聞くのだよ」という一本化した関係をある時期作っていく必要があります。
これは身上監護面で里親優先ということで、実際の場面では現に養育している人が子育てに全面的に受け持つのが自然と思っております。ただし、この場合は児童相談所をはじめとして公的調整機関が入ることが前提とならなければならないと考えます。この種の通常の生活場面を通しての躾の問題などは児童相談所でなくても、地域で出来上がりつつある里親支援機関が制度化されようとしておりますので、何も児童相談所がおっとり刀で駆けつける必要は無く、地域の支援機関と一緒に取り組めるものと考えます。
 質問4「未成年後見があるまでの間、里親が親権代行すること」については、親権を持つ大人がいない場合は、必要に応じて特別養子縁組という路線を児童相談所が敷きます。関与する人の中で親子関係を結べる人との出会いがあれば、特別養子とは限らず普通養子を組めばよいわけですから、ここでは話題の設定にはしません。いろいろな事情で親権を行使する大人がいない場合に限定された設定で申し上げます。
明らかに養育する意思がないといいますか、音信のない子どもについては制度的には未成年後見を付けられるという条文がありますので、そこのところは是非、未成年後見をつけていただければと思っております。これは民法の話になってしまいますので、ここでは省略します。
 未成年後見を就ける件について現状はどうかといいますと、要保護児童に関しては実際ほとんど手付かずで、件数も少ないようです。これは厚生労働省の統計があると思いますけれども、実際に問題というか事例が起きて児童相談所に相談をしても、この子どもは財産がないからそっとして置きましょうということで、ほとんど取り組んでもらえない。財産がある場合は手続きをして頂いているようですが、これを全面的就けていただきたいと思います。いわゆる児童相談所長の申請する権限というのか、申立てをして頂いて、親のない子ども、またはそれに近い子どもについては、全員に未成年後見をつけていただきたい。里親としては未成年後見の監督の下に、子育てをしていきたいと思っております。
 「未成年後見に児童相談所長が就任する」ことにつきましては、切羽詰った場合は仕方の無いことと思いますが、実のところ余り賛成ではありません。形式で整えると、将来は形式だけが残るからです。私達が後見人に期待したい内情をご理解いただきたく思います。事例を申し上げた方がわかりやすいので、事例の末尾に未成年後見の具体例を載せておきました。5ページです。子どものことを熟知していて、困った時に相談にのってくれる人が欲しいのです。
私たちが求める未成年後見人は従来の財産管理のためだけではなく、のこの事例のように一喝して子どもを帰してくれるような未成年後見人がほしいのです。財産管理への取り組みはルールを決めることで簡単にいくと思いますが、子どもとの関わりが生まれる部分への関与を期待したいと思っております。
もう一つの事例は未就籍の外国人の委託を受けたということで、児童相談所の要請で後見人になって国籍取得の手続きをした例です。普通の里親ではできませんので、未成年後見人になるのであれば、ここまでお願いしたい。このようなことに耐えられる後見人を必要な子ども全員に就けていただきたいと思います。
事例の話になりますが、残された時間が少しですので、簡単に上から申しあげます。3ページです。監護の領域の問題、これはどこでも出てくる一般的な話ですので、省略いたします。契約の問題も携帯電話が主なのですが、要するに大手の企業はかなり厳しく親権代行者とか親をと言ってきます。住宅のアパートを借りるのも、町の不動産屋は適当にやってくれるのですが、大手の不動産屋は非常にガードが固いです。大手の企業とは大体駅前にあるチェーン店のようなところです。そのような所は必ず親権代行の判子を持ってこいということで、現実には20歳未満の子どもを契約当事者にはしてくれません。里親はかろうじて保証人という形で場が収まるというのが、大手不動産屋を相手にした時の取り組みです。里親仲間でいろいろと話が出る時は、うまくいったという話は出るのは、概して町の中の昔ながらの不動産屋との契約いうのが現状のようです。
これと同じように、アルバイトの就労についても、大手の企業は親権者から判子をもらって来いということになります。多くの町の中の企業は余り難しいことは言わないで、日本的解決で済ませているようです。契約の方の携帯電話につきましても、昔は町の中に小さな携帯電話の販売店があって、そこのおじさんが適当にやってくれたのですが、最近は三つの大きな携帯電話会社が全国展開しておりまして、ここはかなり厳しく20歳未満の未成年の契約は受けてくれません。ですから大体が里親の名前で契約する例が多いと思います。生活の中ではうまく対処できる例もあるのですが、それは法の谷間をくぐった手法であって、公式の話にはならないだろうと思っております。
 里子の入国管理のパスポートの問題もいつでもどこでも出る話題です。実親がいる場合は海外渡航も同じような課題を抱えており、困った例を申し上げます。実母の判子を貰おうと思うとしても実母が逃げ回っていて、実際にパスポートを使うときに間に合わないとか、離婚や再婚をしていて戸籍謄本を児童相談所に送るのを渋って間に合わないというのが報告されています。
実親との接点は先ほど申し上げました。実親との交流については児童相談所が上手にやってくれていると思っております。18歳の措置解除後の問題は重要で、20歳までの法的空白時期の問題です。これも多くの場面で争点が明確になっていますので省略いたします。私の用意しました事例は終わります。

○才村委員長
 ありがとうございました。まず星野参考人からは里親養育の真骨頂というのは心の養育にあるのではないかというお話を頂戴しました。そのような視点から青葉参考人は非常に多岐にわたって、細かいエピソードとそこからの課題や方向性について具体的にお話をいただいたと思います。どうもありがとうございました。
 それでは、お三方に御質問等を頂戴したいと思います。どなたからでも結構ですので、お願いいたします。庄司委員、お願いします。

○庄司委員
 武藤参考人に伺いたいのですけれど、一つは質問の3です。実親よりも施設長の親権を優先することについては、必要ないとか現状で対応できるという意見が多かったのですけれども、それは全体が割と慎重な考えなのでしょうか。それとも、もっと積極的に施設長にという意見はなかったのかというのが1点です。
 もう1点は医療行為に関して、失敗すれば施設長の責任になることも考えてとおっしゃいましたけれど、医療行為については児童相談所あるいは所管課と当然協議をしてということではないのでしょうか。その場合には責任はどこにいくのか。措置している以上は、所管課で負ってくれるのではないかと思います。その辺についてはいかがでしょうか。

○才村委員長
 武藤参考人、いかがでしょうか。

○武藤参考人
 1点目の施設長の身上監護のことに関してです。これについては、先ほども述べさせていただきましたけれども、日常的な諸問題については、目の前の施設長という部分が優先化するということは必要ではないかと感じています。ただし、本当に命にかかわることや先ほど言ったように、その子どもの一生のことや進路のことに関しては、しっかり親の意見を聞くという部分が必要ではないかと思っています。ただし、これもここの資料の中に、先ほどは触れ忘れたのですけれども、ここの資料でいいますと20ページからです。全国の児童養護施設長の意見も聞いたところです。でも、ここにあるように、条件付賛成や現状の改善が必要、導入には反対とか、賛否両論いろいろな意見が出ているところです。でも相対的には、日常的な部分については施設長が優先するということは必要ではないかと考えております。ただ、その中身の区分けという部分もある程度しないといけないのではないか。何でもかんでもすべてを施設長が持つということにはならなくて、そのような一部とか一時とか、停止の論議を今していると思いますが、そのような部分で特に日常的なことに関しての身上監護権という部分については、施設長が持つべきではないかということを私自身は感じているところであります。
 2番目の医療行為に関しては、当然児童相談所と協議をしながら進めるということになります。ですから、すべてにわたって、最終的に親がそれに仮に失敗して損害の責任をということで裁判になったときは、すべてが施設長になるかということになると、今までのいろいろな事例や事案を考えてみると、公的な部分と十分協議をしながら進めるということであれば、公的なところの責任という部分も最終的には問われることになるのではないかと思います。そういうことで、現実的には医療行為といっても、手術や命にかかわる部分と、日常的な病気になったので薬を飲むとか注射をするとか、そのような部分との区分けをしながら現実的には進めているということになります。特に命にかかわる部分については、親に同意を得るのだけれども難しいということであれば、当然児童相談所と協議しながら、最終的な判断をそこで児童相談所と施設長を含めてするということになります。病院の方でも多少対応の仕方が違ってくるという部分もあるのですけれども、そのような所と協議しながら進めることになると思います。以上です。

○才村委員長
 庄司委員、よろしいでしょうか。特に命にかかわる重要事項について、もちろん親と十分に話し合うのは当然ですが、現実問題なかなか同意されない場合があります。今おっしゃったのは児童相談所と施設長で協議して判断すべきだということで、例えば親権制度との関係で、こうあるべきではないかということがあれば、お伺いしたいと思います。今おっしゃったのは現行の運用の中でやっていけるのではないかというお話でしょうか。

○武藤参考人
 親権制度との兼ね合いなのですけれども、ここのところも明記した方が良いのではないかと思います。仮にそこで重大な事件が起こるということであっても、それについては最善の判断をしたことを明記して、最終的には先ほどから何回も言っているように、施設長も含めてということになるかもしれないけれども、公的な責任という部分が問われるということになると思いますので、そこの明記という部分を、今回この親権の検討の中で、どこかにきちんと位置付けることが必要ではないかと、現場としては感じているところであります。

○才村委員長
 ありがとうございます。特に今のやりとりに関して、御質問・御意見がありましたら頂戴したいと思いますが、いかがでしょうか。松風委員、お願いします。

○松風委員
 確認といいますか、教えていただきたいのですが。武藤参考人の資料の3ページの「措置との関係について」の二つ目の丸のところです。今のお話と関係するのかなと思いながら見ていたのですが、近年の児童相談所の権限強化では、現実的には児童相談所が司法的権限を有していないため、児童相談所と親との関係において紛争状況となっている例があるということは、児童相談所に司法的な、要するに権限をもっと付加して強化すべきであるということなのか。それとも、児童相談所が権限強化され過ぎているので、もう少し司法の関与が必要だということなのか。その辺りを教えていただきたいと思います。

○武藤参考人
 少し抽象的な書き方をしてしまいましたけれども、具体的に言いますと、児童相談所がもう少し権限を持ってということで、権限の強化をしたということですが、実際的には親とバッティングをしてしまうケースが多いと思います。その際に、司法という部分の権限をある程度持っている部分が必要ではないかと思っています。特に私どもであったケースで、親が子どもを連れ去ってしまったケースのときに、非常に児童相談所としても躊躇する部分があるのです。本当に子どもの命を守るという点からすると、そこにもう少し権限強化という部分での司法の関与という部分があって、紛争状況という部分を整理するようなシステムが必要ではないかということを感じているところです。

○才村委員長
 松風委員、よろしいでしょうか。

○松風委員
 司法が関与するシステムということですね。ありがとうございました。

○才村委員長
 磯谷委員、お願いします。

○磯谷委員
 武藤参考人と青葉参考人に伺いたいのですが、親権よりも施設長等の権限を優先するという枠組みが今、議論されているのですけれども、さらにその先として、そういった権限を児童相談所長が持つのか、もしくは施設長ないし里親が持つのかというところが一つの論点になっています。それとの絡みで実情をお尋ねしたいのですけれども、児童相談所長との意見交換といいますか、調整といいますかそのような点で、まず第一に日常生活の範囲というお話が出ていますが、その日常生活に関して、児童相談所長と意見交換をしたりされているのか。あるいは日常生活については、むしろ任されているという形なのか。それが1点。
 二つ目は、そうではなくて今度は重要な事項について、重要な事項になると多分私の想像では、児童相談所長と意見交換といいますかディスカッションすることになるのではないかと想像するのですけれども、仮にそうだとすると、児童相談所長と意見が対立したときにどのようにされているのか。その辺りをいろいろな事例があると思うので、あくまでも一般論的なところで結構ですが、教えていただければと思います。

○才村委員長
 お願いします。

○武藤参考人
 まず私から説明したいと思います。まず児童相談所と施設の意見の交換の状況です。日常的な生活に関する部分については、児童相談所長と施設長が直接話をするということにはならなくて、現実的には児童福祉司と担当や家庭支援専門相談員が日常的なことについては話し合いをします。ただし、私の資料に書いているように、バッティングした場合は時間をかけながら親との調整をすることになるわけです。親御さんが日常的なことに対していろいろなクレームをつけてきたりすることがあるわけで、それは先ほど言ったようにいろいろな立場の状況で親御さんを説得をしたりということで、実態的には時間をかけながら説明することになります。
 特に2番目に言われましたけれども、重要な事項で児童相談所長と施設長・施設がぶつかる場合、これは割と家庭に帰るべきなのか、帰さざるべきなのかがバッティングすることは多々あるわけです。施設からすると、これはもう少し施設に置きながら見ないと難しいのではないかという意見、児童相談所の方はもうこのような取り組みをしてきたので、そろそろよいのではないかというところで、措置に関しての部分で割とバッティングすることはあります。これも今では例えば家庭再統合のところについては、チェックリストのようなものを作りながら、具体的に例えば20項目。どうして帰すのかということの判断を児童相談所としたのか。施設としては難しいとしたのかということを、どこがどのような形で項目的に違うのかどうかを含めて、擦り合わせをするところです。少し時間をかけてやりましょうという部分で、そこの協議を十分行いながら、最終的には措置に関しては児童相談所が施設の方から割と意見具申という形で行うのですが、最終的には児童相談所および都道府県の権限という部分で、私たちは措置の依頼を受けている状況で、意見はしますけれども最終的には児童相談所の判断に沿うような形で進めるというのが、現実的にはあるということであります。そのような重要なことに関しての措置権限は、私自身は措置制度という部分であれば、都道府県および児童相談所の権限は強いのではないかという判断をしながら進めるということであります。

○才村委員長
 よろしいでしょうか。では、お願いします。

○青葉参考人
 「実親が非常に強い主張をしてきたときにどうするのか。」児童相談所が子どもを実親に返すと言ってきたときが一番悩ましい問題です。子どもと非常に仲良くなって、実の親子関係のような生活が成り立っているときには悩ましい問題になります。児童相談所が親元に返すということで、子どもを引き取っていくときの辛さは、里親会では絶えず話題になっています。では、どうするかということで、私どもは子どもをお預かりしているのだということを肝に銘じるようにするしかないと思っております。この後この様な事例が増えるのであれば、親を助けるのが里親制度だと割り切るように、これから我々も勉強していかなければならないと思っています。
 「児童相談所長と意見が異なった時」ですが、相談所は実親などのいろいろな情報を持っておりますので、とにかく里親とは情報量は比較になりませんので、児童相談所が言ってきたことに淡々と従うということです。ごく少数ではありますが公的機関の方針に異を唱える例も無いことはありません。普通の里親には無理でしょう。 以上です。

○才村委員長
 磯谷委員、どうでしょうか。よろしいでしょうか。今の議論で、特に措置解除や委託解除は現行制度の中の運用の問題ではないかと思いますが、例えば施設長と児童相談所長が特に親権の関係で対立するような場面がありましたら、エピソードとして教えていただきたい。措置解除以外の親権マターで対立する事態がありましたらお伺いしたいと思いますが。ありますか。

○青葉参考人
 実親との緊張関係についてはこれで申し上げた通りです。軸を少しずらせると、児相との関係で辛い立場になることもあり、結果的に実親との辛い関係に発展する場合があります。里親が虐待しているのではないかと通報される場合です。児童相談所が来て、そこでいろいろとやり取りがあるのですが、これも辛いやり取りです。この種の話題は他者にオープンにできませんし、真実のところは分かりませんので、里親1人が児童相談所とやり取りするしかありません。相談する相手もおらず焦燥感のみが残り精神的負担が大きくのしかかります。辛い対立です。

○才村委員長
 ありがとうございます。では千正室長補佐、お願いいたします。

○千正室長補佐
 事務局から失礼します。先ほど、要するに例えば入所措置を継続するか解除するかのようなことについての判断が児童相談所と施設で違う場合についてのお話を武藤参考人からいただきました。そこについては、実態上もちろん日常を見ているのは施設の方だと思いますので、そちらの意見も勘案しながら児童相談所が決めることになると思いますけれども、法律上の権限としては児童相談所の方に措置の権限がありますから、最終的には児童相談所の責任で判断するということになろうかと思います。
 入所を続けるか、措置を解除するかということの他に、入所中の日常の監護は児童福祉法第47条第2項で施設長に権限があると思いますけれども、例えばここに書いてあるような医療行為や口座の開設、携帯電話、あと教育上の問題。重要なものとごく日常的なものといろいろとあると思いますけれども、そういった監護の範囲の中で親と意見が対立した、あるいは親の意向が確認できないときに、では実際にどうするのか。髪を切るなど軽易なものだと児童相談所に相談しないと思いますけれども、例えば医療行為を受けさせるのかどうかという話になったときなど、重要な判断だというところは児童相談所に相談したりということがあるのではないかと思いますけれども、そういった場合に児童相談所の意向と施設側の意向が違うことがもしかしたらあるかもしれない。その場合に、どのような調整をされるのか。例えば児童相談所の意向になるべく沿うのか。あるいは監護権は施設にあるから、児童相談所の意見は意見として最後は施設の方で判断するのか。ケースバイケースかもしれませんけれども、そういった事例について少しエピソードがあればお話しいただければと思います。お願いいたします。

○武藤参考人
 先ほどの質問も併せてですけれども、現実的には日常的なことに関して児童相談所と施設がぶつかるところはほとんどありません。やはり、最善の利益を追求しようという姿勢を児童相談所も持ちますし、施設も持つという点で、割と親と児童相談所、親と施設はバッティングするところがあるのですけれども、施設と児童相談所が日常的に子どもたちの日常生活でバッティングするところはほとんどない状況です。ただし、親の状況を考えてみると、少しここのところは親の言うことを聞きましょうということで、そこで親の言うことを聞いてしまうと子どもが不利益を被るのではないかということなどを含めて調整するというところはあります。ペースを少し遅らせたり、判断するのを少し待って、少し時間をかけて判断しましょうと。そうでないと親がもっと不安定になるのでということで、そこのところの調整として児童相談所と施設が協議をしながら進めることはありますが、完全にバッティングしてしまうということが日常的な部分では現実的にはほとんどないというところです。

○才村委員長
 千正室長補佐、よろしいでしょうか。

○千正室長補佐
 ありがとうございます。

○才村委員長
 今の御質問の関係でしょうか。では豊岡委員、お願いいたします。庄司委員はもう少し後で。

○豊岡委員
 児童相談所の中でいろいろと調整なり、施設側からこの問題が上がってきて、児童相談所の方も親権を超えた判断は非常に難しいのではないかという印象で今お話を伺っていたものですから、具体的にどのような場面で児童相談所がOKを出したり、よいと言えるのかというのは難しい。私自身も所長時代にそうそうできない。音信不通の親、あるいは所在がわからない、なかなか連絡が取れないということであればあり得ても、その対立を越えて施設側にOKを出すのは難しいと思います。

○才村委員長
 ありがとうございます。庄司委員、今のこのやり取りの関係でしょうか。

○庄司委員
 千正室長補佐のお話の前段にかかわることで。

○才村委員長
 では、お願いいたします。

○庄司委員
 特に措置解除のときに施設と児童相談所が対立する、里親の意向が十分に聞かれないことはよくあることではないかと思います。そのときに「児童相談所の判断は善である」という考え方は適切ではなくて、児童相談所も誤ることはある、あるいは十分に説明しないことはよくあると思いますので、そこをもう少し調整することが必要です。これは現行の仕組みでは児童福祉審議会が活用できるのではないかと思いますけれども、実際にはその背後に親権の問題があって、ですからここでいろいろと議論していると思いますけれども、納得できない措置解除がかなりあるのではないかと思います。

○才村委員長
 ありがとうございます。先ほど豊岡委員がそもそも児童相談所長に身上監護権が委ねられていないのではないかということですけれども、この辺がよくわからないのですけれど。措置を受けるということは実質的な身上監護を含めて施設の方に委託しているという考え方はできないのでしょうか。これは法律的にどうなのでしょうか。

○豊岡委員
 いえ、そのような日常的な身上監護というよりも、重大な医療行為にしても、それから高校進学、携帯電話の契約、予防接種にしてもそうですよね。そこのところで児童相談所長がOKしたからよくて、そうでないところで意見が食い違っているというようなお話だったものですから、児童相談所長が判断できないこと、決断できないこと、権限がないことはそうそうないということ。そもそも児童相談所長には権限がないのではないですかということを申し上げたということです。

○才村委員長
 それはまた次の議題の(2)、(3)にもかかわってくる問題だと思います。極めて大事なテーマだと思いますが、その関係で何か他に、御質問・御意見はありませんか。では、水野委員。

○水野委員
 本日お話を伺っておりまして、監護者として一番求めておられるのは、事情をよく知っていて、かつ強い権限を持っていて、監護者をサポートしてくれるような存在で、そういう存在があればやりやすいと思っておられるように思いました。そして、そのようなものとして児童相談所に対する期待があるように伺えて、ただし武藤参考人のお話ではもう少し児童相談所に頑張ってもらいたいという批判的なニュアンスがあって、そして里親の方のお話では児童相談所長が随分と相談に乗ってくれて頼りになるという肯定的な評価に分かれていたかと思います。
 そして今、児童相談所長にある程度強い権限を与える可能性について検討しているわけですが、先ほどの松風委員からの質問にありましたように、2ページと3ページの最終段落のところで、司法による強いサポートを求めるという判断がここに出ています。つまり、児童相談所長よりもさらに強いものとして強い権限を行使して監護者を守る、かつ、その事情をよく判断してくれるような存在として、ここで司法の可能性を考えていらっしゃるのだと思います。そのようなものがあればよいと私もまさに願うのですが、現在の裁判官の数、裁判所の体制というようなものから考えて、これは非常に難しいのではないかと思います。外国のようにもっと裁判官がたくさんいて、児童虐待に対応する手だてを専門に担当している裁判官が大勢いる所では、以前に研究会ででた言い方をすると、行政の児童相談所長と裁判官とが一緒に実親と相撲をとってくれるということなのです。役割は違いますから、それぞれ裁判官は行政の側もきちんと見ながらですが、それでも一緒に相撲をとってくれる。ところが、日本の裁判官はそうではなくて、完全に行司役をしていて自分は実際には相撲をとらずに、児童相談所長の方でたくさんの書類をつくって土俵に上がってきたときに初めて行司として働いてくれる。また、そのような形でしか働けないような存在として司法がいるのが日本の伝統です。その前提で、司法に支援を求めると、児童相談所長はただでさえ忙しいのに、膨大な資料を作って土俵に上がらないと何も強制できないことになりかねない。私はそれを非常に危惧しております。ですから、日本のそもそもの司法インフラの不備を前提にすると、児童相談所長は行政権ではあるけれども、ある程度強い権限を持って、司法の許可なく、それを使っていただくしかない。子どもたちを守るためにはそれしかないのではないかと考えているのですが、その点についての武藤参考人の御感想をうかがえれば、というのがひとつの質問です。
 それから、もう一つついでに質問ですけれども、これは里親の方々のことで、2ページの下から二つ目のポツです。未成年後見人の職務は財産管理にとどまらず、形式的な面だけではなく、親に代わって20歳まで養育に関与する役目があると思います。児童相談所長が充て職で就任するような形式的な性格のものではないはずですと言われました。ここでも6ページの方でも、先ほど本人を一喝して帰してくれるというような後見人がほしいといわれたわけですが、ここで語られているような未成年後見人は、まさに先ほど申しましたように、その子どもの事情を非常によく承知していて、かつ強い権限を行使して具体的に監護している里親たちを守ってくれるような存在というイメージが求められています。今の未成年後見人は親権者がいないときだけですが、今ここで議論していますように、親権を総合的に制限することになりますと、親権を奪われてしまう実親の存在も出てきて、この未成年後見人も適用される範囲が大きくなってきます。そうすると、ここでイメージしているような未成年後見人というのは、児童相談所長よりもいわばもっと子どもに近いような存在であって、かつ里親ではなく権限を行使できるような強力な存在になりますが、そのような存在の制度的イメージがあまり湧きません。里親自身が未成年後見人になれないとき、児童相談所長しかしかたがないのではないでしょうか。親権喪失させて後見人が必要となったときは実親からの攻撃もあって一層危ないから、私人では難しいでしょう。後見人の供給源も不明ですし、後見人がしっかりした存在だという公的な保障もありません。現在の家裁の事情で考えると、裁判所は無理ですし、強い権限をもつ後見人も考えにくく、児童相談所長には過剰負担になってしまって申し訳ないのですが、児童相談所長ぐらいしかなかなか考えにくい。総合的に考えると、児相長しか考えにくい気がいたします。もちろん税金を多額に投入して、たくさんの人手を入れるという形になれば、裁判官も増やすし、未成年後見人をプロフェッショナルでやってくれるような人材供給源も準備するとすれば、それが一番良いとは思いますが、現在のさまざまなインフラの不備を前提にしたときに、ここで考えていらっしゃる未成年後見人のような職務をしてくれる方として、児童相談所長以外にどのような方の可能であるとお考えなのでしょうか。どちらも現在の悲しい制度状況を前提としたときのお答えを伺えればと思います。

○才村委員長
 2点、御質問がありました。では、お願いいたします。

○武藤参考人
 私の非常に舌足らずな記述で本当に申し訳なかったのですけれども、児童相談所と司法の権限の強化と行使の仕方という部分について、少し私なりの私見を述べさせていただきたいと思います。ここに書いているように、近年、児童相談所の権限強化という部分は、権限強化というのか体制的な部分としてはそのようなことはなされてきているのではないかと思います。ただ、現実的にやはり体制整備です。例えば児童相談所の児童福祉司の増員なども含めてそのようなことをしないと、現実的には施設に措置した後に、先ほどもちらりと言ったのですけれども、施設措置後も非常にかかわっていただける児童福祉司もいらっしゃるのですけれども、中には施設に措置した後に全くかかわれないという状態もあるわけです。人口5~8万人に1人で、1人で100ケースも抱えているという状況で、これだけの虐待の問題に対応しなければいけない状況です。現実的にやはりそのような体制整備が追いついていないのではないかということを感じているところです。ですから、権限は強化されたけれども、それを行使する現実には至っていないのではないかという状況です。ですから、まずそこを強化していくことを本日は厚生労働省の委員会ですので、そういったところを現場からも言いたいところです。
 やはり、親の状況によっては段階があって、児童相談所で対応できる段階と、それからやはりもっと司法的な権限で対応する部分もあってよいのではないかと思っています。本日の資料の中に、出所後や暴力団や性的虐待のひどいケースなど、そのようなケースも幾つか載せていますけれども、なかなかソーシャルワークだけで対応できないようなケースもあるわけですから、そういう意味からすると、やはりそこに司法の権限をきちんと持たせる。やはり、親の親権の状況に応じたシステムづくりの部分が必要ではないか。そのような部分からすると、児童相談所の対応の範疇を超えた部分については、やはり司法がもう少し介入できるようなシステムを構築する必要があるのではないかと思っております。司法といってもやはり予算や体制整備の部分から児童福祉司の増員などを含めて、急に倍増するわけにはいかないとは思いますけれども、そのような方向性やビジョンをしっかりと示して、数年かけてもよいのではないかと思います。体制整備をしながら法的な部分に現実的にきちんと対応できるようなシステムづくりが必要なのではないかということを結果として非常に感じているところです。

○青葉参考人
 里親の立場から申し上げて、里親と施設の関係は施設から里子が回ってきます。子どもの状況や親の状況は児童相談所はもちろんですが、施設側もかなり詳しいです。そして一つの方法としては、施設の方に未成年後見人になってもらうということも一つの途かと思います。実際に子どもも施設の先生の言うことを聞きますし、流れが自然でその方がよいと思っております。
 もう一つ、これは民法の問題ですから法制審議会にメモを届けさせていただきましたけれども、未成年後見制度も幾つか改正して頂きたいと思います。現行だと後見人の戸籍には記載されませんが、子どもの戸籍に後見人のことが載ってしまうのです。20歳で制度が終わってしまうのに、20歳を過ぎても戸籍の中に3行位いろいろと載ってしまうのです。後見人の本籍なども載ってしまうので。それはもうやめて、成年後見制度が適用しているような届出制度にしてもらいたいと思います。
地域の中に市区町村単位で地域権利擁護制度が既に発足して機能しているわけですから、成年後見制度と上手に組み合わせれば、そこに少し乗せていただければ制度の広がりを持てるのでないかと思います。地域で後見人になる場合はプロばかりではありませんので、研修等いろいろなことが必要でしょうから、地域権利擁護制度の中でフォローできるという利点もあります。後見人の確保も地域には民生委員や保護司、人権擁護委員の方などが探せばいらっしゃいますので、児童相談所がそのような人と上手につなげていただければと思います。人間調整の豊かな方なら、いろいろなやり取りを経験していますから、そのような人を地域でこれから作っていくように、ぜひシステムを組んでいただきたいと思います。
 長いこと子どもと関わる里親の場合も、未成年後見人になる一つの方法かと思います。18歳以降も一緒に生活する場合もあり、子どもと関わるのも仕方がないと決めている場合もありますので、人情の通う里親が後見人になるのは、私は良い方法だと思っております。以上です。

○星野参考人
 私も、よろしいですか。全く青葉参考人に同感です。後見人のインフラがまだ整っていないのではないかという御指摘がありましたけれども、それはないと思います。それどころか法律的にはきちんと何かがあれば児童相談所長は未成年後見人を立てなければならない。正確な文章を私は覚えていませんけれども、そのようにきちんと書いてあるにもかかわらず、それを実行してこなかったのが現実であって、そのために里親と里子が苦労しているのが現実だと思いますので、その点をよく考えていただきたいと思います。

○才村委員長
 ありがとうございます。吉田委員、お願いいたします。

○吉田委員
 施設と親の間でのトラブルの問題ですけれど、先ほどから話が出ていますが、施設での対応が難しいということが出ていました。もう少し突っ込んでいきますと、施設の職員の方の対応力が果たしてどうなのだろうか。例えば在職期間、経験年数です。果たして大変難しい親に十分に対応できるだけの力が備わっているのかどうか。前回も少し出ましたが施設長の資格の問題がありますけれども、それに加えて、そうした施設長の対応能力なりも課題になると思います。と言いますのは、残念ながら施設の中での虐待の問題、子ども同士のいじめの問題もありますし、また施設職員からの暴力等もある。それは単に個人の問題だけではなくて、施設の管理能力の問題でもあるわけです。そうした観点からすると、親とやっていくだけの対応力が、十分に施設長に任せられるのかどうかというところで、全国児童養護施設協議会で把握されている状況などを教えていただければと思います。

○才村委員長
 では武藤参考人、お願いいたします。

○武藤参考人
 私の資料の3ページのところに施設長の資格の検討が必要ということで1行書かせていただきましたけれども、これについてはこの親権制度だけでなく、吉田委員がおっしゃっているとおり、昔の施設は親代わり的な役割をしたのですけれども、今はほとんど親がいるという中で、虐待を受けている、発達障害などの障害を抱えている子どもたちもたくさん来ていることなども含めてリスクが非常に高い施設です。日常的にもさまざまな事件や事故が起きつつ、やはりそれを1日処理能力というのでしょうか、そのようなものを持っていかないといけない。親にも非常に高度ないろいろな対応能力が必要になる。何回もここでお話ししているとおり、特に精神的に障害を抱えている親も非常に多いということです。そのような親への専門的なアプローチを施設職員自身もできないといけないし、それをマネジメントする施設長についても相当な対応能力なり、資質や専門性という部分は問われる時代であるということを全国児童養護施設協議会としても認識していますし、そこについても検討していこうということも内部的には意見が出ているところです。
 ですから、この親権のところだけでなくて、もう少し広く捉えたところで、児童養護施設の施設長の、ここでは「資格」と書いてしまいましたけれども、資質なり専門的な力量、能力という部分についても十分つけていく必要があるのではないかと思っているところです。具体的に今、施設長の研修制度のようなものも始まっておりますので、今現在求められる施設長の能力なり専門性という部分、どういうことが必要なのかを具体的に明記しながら、それをどうしたら自分たちが確立できるのかについても、今後ぜひ研究をしていきたいと思っているところです。
 それから職員ですけれども、職員については吉田委員がおっしゃるとおり、親の支援をすることについては相当の経験を積まないといけないのではないかと思っています。ともすると、目の前の子どもたちでさえ結構大変で、それから試し行動もひどくて、職員も結構子どもから暴力を受けたりということも含めて疲れきっている。中には3年4年ぐらいして、もう自分はこの仕事に向いていないのではないかということで、バーンアウトという言葉は使いたくはないのですけれども、この仕事は難しいと退職していく職員も最近非常に多くなってきています。それから平均勤続年数も以前からするとやや落ちているのではないかと現場としても感じているところです。ですから、職員のメンタルな部分のケアや長期的に働き続けられるシステム、それから対応能力、特に親への対応能力でどういうことが必要なのかということも含めて、現実的にいろいろなトレーニングなども含めてやっていく必要があるのではないかと感じているところです。以上です。

○才村委員長
 吉田委員よろしいでしょうか。あまり時間がないのですが、他に御意見等がございましたらお願いしたいと思います。中島委員お願いします。

○中島委員
 ありがとうございます。武藤参考人の資料で一つお聞きしたいところがあるのですけれども、3ページの4ポツのところで、かなり困難ケースを想定した場合、親との関係で親権代行に児童相談所長や知事と書いていただいております。先ほどの司法権限の話ではないのですが、多分、権限のより強いというイメージで公的関与を強めることをおっしゃっているのではないかと思ったのですけれども、職権で実親との関係をより断ち切りやすいということを意味していると理解してよろしいのでしょうか。
 もう一つは、具体的に知事が代行した場合、実施や具体的なやり取りはやはり児童相談所なり何らかの担当のところになると思いますけれども、その辺の具体的な事例というかイメージが想定されていたら教えていただきたいと思います。

○才村委員長
 では武藤参考人、お願いします。

○武藤参考人
 具体的なイメージというのは、なかなか具体的にこうですという部分については、私もここには出したのですけれども、具体的にこうあったらよいのではないかということについては、まだまだそこまでいっていないのです。ただ、私が何回かここで説明したように、やはり子どもは社会がもう少しきちんと責任をもって見るべきではないかと非常に感じているところです。親だけに責任を持たせるというのが民法上の考え方ではあるのですけれども、もうそろそろ日本も親だけではなくて社会が共に育てるという意味で、特に親が養育が難しいことに関しては、公的な関与という部分をもっと強めた方が良いのではないか。そこのすみ分けをもう少しはっきりしていく方向を日本も取るべきではないかと、特に児童養護施設の現場にいると感じているところです。
 そういう意味からすると、公的な関与ということであれば、やはり都道府県が一定の措置制度についての責任を持つという今の制度においては、都道府県ということであれば知事ということになるのではないかと思って、ここには「児童相談所長や知事」という形で併記させていただいたところです。児童相談所長という部分は、末端の行政の責任ということになるのですけれども、ひいては広域的に見るとやはり知事が親に代わる責任を持ってもよいということも、もうそろそろ日本でもきちんと整備をするというところでさまざまな体制整備をする。そういうことをもっと抜本的な制度改革の中で打ち出してよいのではないかと思っているところです。具体的にこういうことで法律をこう変えるべきだとか、制度をこう変えるべきだという部分については、先ほど言ったように具体的な部分ではまだ思い付かないところもあるのですけれども、ぜひこういう場で議論をいただきながら、お知恵をいただければと思っているところです。

○才村委員長
 よろしいでしょうか。ありがとうございました。あとお一人、どなたかおられませんでしょうか。佐藤委員お願いします。

○佐藤委員
 感想めいたことで恐縮ですけれど、今までも何回か同じようなことを発言してきましたが、先ほどからのお話をずっとうかがっていて、いわゆる家族の再統合というのはそんなに口で言うほど簡単なことではないと、私も全くそう思っていまして、今日たくさんの資料の事例を見ましても、本当に大変な現実があるということを改めて痛感しています。お二人の話を聞いていて、それぞれに抱えておられる現場で仕事をしていく上で強力なサポートが欲しいということで、それは恐らく行政に司法的な権限をもっと強化するという中身も含めてだと思いますけれども、児童相談所を中心とした行政機関が、しっかりした権限をもって社会的に子どもを守っていく、育てていくという考え方に基づいて、そういう問題をきちんとコントロールしてほしいという強い気持ちがあることを改めて思いました。
 やはり、どこかがきちんと責任を持たないと、結局こういう現実のところに子どもを戻してしまうということは、恐らく子どもの利益にはならないのではないかと思います。これは私の誤解というか勉強不足であれば、むしろその方が良いと思いますけれども、やはり伝統的な家族観のようなものがあって、それがどうしても家族の再統合という言葉とどこかで結びついているような危惧があります。そうでないことを祈りたいと思いますけれど、今日お話を伺っていて、非常に現実が厳しい中で、公的な、ある意味で言えば力が登場すべき道を、いろいろな法律の改正を通してやるべきではないかと思いました。雑駁な感想のようなことで申し訳ありません。

○才村委員長
 ありがとうございました。まだまだ御質問も御意見も頂戴したいと思いますが、時間の関係でヒアリングは以上にさせていただきたいと思います。先ほど吉田委員からも施設長や施設職員の専門性の問題が出ていました。また児童相談所の体制の問題も先ほどの議論であったと思いますが、いずれにしても子どもの権利を守っていくためには、制度の整備そのものももちろん大事ですが、それを支える人材について、これがあまり議論されていなくて、やはりこれは常にセットで考えていかなければいけないのではないかと武藤参考人の御意見も頂戴しながら感じました。今日は本当にお三方には、現場の非常に具体的なエピソードも踏まえながら貴重な御意見を頂戴しました。本当にありがとうございました。それではヒアリングはこれで終わらせていただきたいと思います。
 あと、議事が(2)(3)とあるのですが、ここで休憩を取らせていただきましょう。今が40分ですから、10分間休憩で50分再開ということでお願いしたいと思います。

(休憩)

○才村委員長
 それでは再開させていただきたいと思います。議事次第の(2)(3)のテーマについての議論に移らせていただきたいと思います。まず、事務局から資料の説明をお願いしたいと思います。

○杉上虐待防止対策室長
 それでは、資料5になります。今回はまず、「親権を行う者がない子を適切に監護等するための手当て」ということです。問題の所在は二つ目の段落でございますけれども、親権者の親権を制限した結果として親権の全部または一部を行う者がいない状態になる場合、一部、この場合は現行法でいうと管理権の喪失ですけれども、そういった場合、通常子を適切に監護するためにその権限を行使する者が必要となるということで、民法においてはこのような者として未成年後見人が選任されることが予定されているところです。
 ただ、「もっとも」以下にありますとおり、現実には未成年後見人となる者を確保することが困難な問題、あるいは個人のプライバシーということで、先ほど参考人からも戸籍の問題等の御発言がございました。そういった問題。あるいは報酬確保の問題等が指摘されているということでございます。
 2ページに移りまして、現在、児童相談所長等が個人として未成年後見人に選任されることがあること。児童相談所長あるいは施設の職員、施設長、里親といった方々が個人として未成年後見人になる例があると我々は聞いております。そういった場合に、異動等の役職、特にこれは児童相談所長でございますけれども、私人の立場で未成年後見人になることは実情にそぐわないといったことも指摘されているということです。いずれにしても引受手を確保することが困難な場合であっても親権を行う者のいない未成年者を適切に監護養育することができるように今の制度をどうしていくのかといったことが研究会において検討がなされたということでございます。
 そこで、2番目でございますけれども、「法人による未成年後見」ということで、※印で書かせていただいておりますけれども、これは現在、法制審議会において検討中の論点でございます。(1)の最後のところにありますとおり、引受手の選択肢を広げるためには法人を未成年後見人に選任することができるようにすることが考えられるのではないかということで、既に御承知のとおり成年後見については法人でも可能となっているところでありまして、今般、未成年後見につきましても、こういった形で検討が進められているということであります。
 (2)の「今後の検討課題等」ということで、真ん中辺りですけれども、この点については例えば事実上自立した年長者の場合であれば、未成年後見人が現実に引き取って世話をするということはなく、財産に関する権限の行使が主な職務となることを考えると、法人が未成年後見の職務を行うことは不適当であるとは一般的にはいえないといった意見があったわけです。
 説明が逆になりましたけれども、現在、未成年後見人において私人しかなれないというのは、まさしくここの未成年後見人の場合につきましては、成年後見と違いまして財産管理以外の部分が主な業務として考えられており、それについては事例によっては法人でできるのではないかという前提で話が進んでいることです。
 3ページですけれども、これも二つ目の段落の「なお」書きのところでございます。ここは御紹介だけになるわけですけれども、必ずしも未成年後見人は一人でなければならないとする規定も考えようがあるのではないかという議論もされたところです。
 引き続きまして3番です。「里親等委託中又は一時保護中の児童に親権者等がいないときの取扱い」です。(1)の現状のところですけれども、施設入所中の児童で親権者及び未成年後見人のない者については、施設長が、親権者又は未成年後見人があるに至るまでの間、一応有期的という考え方ですけれども、親権を行うものとされているというのが児童福祉法第47条第1項です。これに対しまして、里親等委託中又は一時保護中の児童については、現行法上、未成年後見人の選任で対応しなければならない。いわゆる法律上、施設長の権限に親権を行う者とされていると、同様の規定がないためにこのように解釈されるわけです。
 「しかしながら」以降ですけれども、同じく引受手を確保するのが困難等の問題があるということで、このページの一番最後のところですけれども、児童相談所長が個人としてではなく機関として親権を行うものとすることも考えてよいのではないかということになっているわけであります。
 次に、(2)ですけれども、その場合にどういった方を親権を行う者の主体にするかということでございます。3行目以降になるわけですけれども、例えば一時保護中の児童に対しては児童相談所長とし、里親等委託中の児童に対しては里親等とすることも考えられると。この場合、まだ決めているわけではございませんけれども、そういう意見がありました。ただ、この点についてはそれぞれの場面においてどの主体が親権を行う者とするのが子どもにとって適切かといった観点から、施設長、里親あるいは児童相談所長、それぞれの現状や特質等も踏まえて検討する必要があるということで、この辺につきまして御議論いただければと思っているところです。
 引き続きまして、4番「施設入所等の措置及び一時保護が行われていない未成年者に親権者等がいないときの取り扱い」です。在宅ケースと考えていただければよいかと思います。現状とその問題点の真ん中辺りですけれども、引受手を確保するのが困難というのは同じ状況でありますというようなこと。最後の行のところでございますけれども、福祉のために必要があるときは親権者又は未成年後見人があるに至るまでの間、児童相談所長に親権を行うことができるものとするか、又は、行政機関としての児童相談所長をその未成年後見人に選任することができるものとすることが考えられるということで、児童相談所長を親権を行うことができるものということも考えてよいのではないかということです。
 この点の関係で言いますと、児童相談所長がかかわりのなかったケースについてはどうなるかという関連の御議論もあるかと思います。また、御紹介になるわけですけれども、1ページ戻っていただきまして4ページの欄外、※印の6番でございます。児童相談所長、先ほど個人として未成年後見人になる場合がありますと申し上げました。今申し上げたところは児童相談所長が行政機関の長として選任されることもあってよいのではないかということです。※印の6番に書いてありますのは、平成19年改正法によりまして、児童相談所長が未成年後見人の選任を請求した未成年者に対しては当該児童相談所長が、親権を行う者又は未成年後見人があるに至るまでの間、親権を行うものとされたということです。前回の平成19年の改正法におきまして、これは議員立法ですけれども、児童相談所長等が個人で未成年後見人になっているケース等に対応するため、こういった規定が設けられており、この規定を根拠といいますか先例として考えてよいのではないかという議論がなされたわけです。
 5ページに戻りまして、5ページの(2)「今後の検討課題等」について、研究会の報告書の抜粋を載せております。ただ、今申し上げた児童相談所長の話ですけれども、もっとも児童相談所長が適切に行うことができるのかといった実務的な問題がありますということ。あるいは、仮に児童相談所長がやるにしても、真に未成年後見人の引受手を確保することができない場合等に限られるのではないかという問題提起も併せて研究会でなされたところです。
 次の6ページでございますけれども、「具体的制度設計」について。仮にそのようなことができるとした場合の制度設計について検討されたところであり、一つ目は家庭裁判所において未成年後見人に児童相談所長を選任することができるものという形で規定を入れるやり方。そうではなく、都道府県知事の判断等に基づいて、行政手続によって親権を行うものとする制度設計。この二つの方法が考えられるのではないかとなっておりまして、これについて、さらに検討を深めていただきたいと。研究会の報告はなっているところであります。いずれにしましても6ページの最後の行にありますとおり、行政機関である児童相談所長が、本当に司法と行政との関係において、私人として未成年後見人になる場合と同様の仕組みでよいのかどうかということも、いろいろ問題があるのではないかということで、そういったことも含めて、さらに検討が必要とされたわけであります。以上でございます。

○才村委員長
 どうもありがとうございました。それでは(2)と(3)を分けて、まず(2)の「里親委託中又は一時保護中の児童に親権者等がいない場合に児童相談所長等が親権を行うものとする制度について」につきまして、御質問・御意見を頂戴したいと思います。いかがでしょうか。

○千正室長補佐
 この論点で、特に御意見をお伺いしたいのは、まず一つは施設に入所措置が取られているときは、もちろん親権者がまず第一義的にいて、親権者がいない、あるいは親権が制限されているときに未成年後見人がなったりするのは、これは2番目だと思いますが、その両方がないときのいわば最後の受け皿として施設長が親権を代行するという規定がございます。それは一つは里親委託中や一時保護中について同じような最後の受け皿を法的に設ける必要があるのかどうか。「児童虐待防止のための親権制度研究会」では、概ねそれに対して反対の意見はあまりなかったと記憶しておりますが、その必要性があるのかどうかという御意見をいただきたいのと、それから恐らく一時保護中は児童相談所の管理下にございますので、誰が親権代行者になるかという論点です。例えば一時保護中であれば児童相談所長、あるいは里親委託中の場合は、里親なのか、先ほどのヒアリングでも少し論点がありましたけれども、里親ではなくて、その場合でも児童相談所長が受け皿となるのかなど、いろいろなパターンが考えられると思いますが、その辺りについて御意見をいただければと思います。

○才村委員長
 いかがでしょうか。まず、一時保護、里親委託にも施設と同じような仕組みが必要かどうかということと、そういった仕組みが必要であるとすれば、そもそも誰が親権を行使するのか。その辺について、御意見を頂戴したいということですが、いかがでしょうか。磯谷委員、お願いします。

○磯谷委員
 まず必要性については、今日のお話を伺っても、やはり必要性が非常に高いだろうと思いますし、以前から私もそう考えております。その先の点で、では誰が親権を行使するのかという点については、私は基本的に児童相談所長が望ましいと考えていまして、むしろ現行の児童福祉法第47条第1項の方を改めて、施設長ではなく児童相談所長に権限を持たせるべきであると思います。その理由としては、一つはやはり施設長にしても里親にしても親と対立するときに、自分が権限を持っている者として親の矢面に立つというのは大変苦しいだろうと考えておりまして、むしろ、そこは本来の措置権者であります児童相談所長が最終的に決定権があるという前提で向き合う方がなおやりやすいだろうと思うのが一つ。
 それから、もう一つは先ほどの議論でも出ましたが、施設長あるいは里親には立派な方もいらっしゃるけれども、一方でやはりいろいろと問題があることも現実的にあるわけでして、特に施設長も何ら資格等もない状況下で権限を持っていただくのは、私としてはあまり望ましくないと思っていまして、そういう意味でも、やはりここはまとめて児童相談所長が権限を持つ必要があるのではないかというのが私の意見であります。

○才村委員長
 ありがとうございました。今の御意見に関連して、御質問・御意見、いかがでしょうか。豊岡委員、お願いします。

○豊岡委員
 磯谷委員の御発言ですけれども、法律上の一定程度、児童養護施設であれば手当てができている。それをあえて児童相談所長に持ってくる意味が非常にわかりにくい。児童相談所の体制の問題でもありますけれども、そこまでやって、果たして児童相談所がもつかという懸念はあります。手当てがされていないところの里親委託中あるいは一時保護中に関して児童相談所が何らかの対応をしていくというのは方策としては考えられると思います。児童相談所の現場の実態をよく見て、考えてやっていくべきだろうと思います。

○才村委員長
 松風委員、お願いします。

○松風委員
 実態として豊岡委員の御意見は非常に理解できるのです。ただ、措置権と親権の監護権を施設長が持たれること、または里親が持たれることについて、措置権との対立が起こってくる可能性があります。例えば被措置児童虐待が起こったときに、児童相談所長はもちろん措置権限をもって調査に入りますけれども、そのときに何を調査するのかというと、それは、ある意味親権の代行者として調査しているのではないかと考えます。そういう意味からすると、措置権の中に含まれていて、その中で日常的な監護権を措置とともに付託するという手続となっているのではないかと思いますので、そういう意味からすると、磯谷委員がおっしゃることについての論理性はあるのではないかと私は理解いたしました。
 ただし、豊岡委員がおっしゃるように児童相談所長にすべての権限が集中することについての危惧は私も持っています。それから、措置をめぐっては、児童相談所長は施設長と同様に親権者とは二者関係にあるわけです。第三者ではないわけです。そうしますと、二者関係の中での対立を、すべて児童相談所長が解決できるのかどうかということについては、何らかの補完的な対応がないと、実際には混乱を極めるのではなかろうかという意見を持っています。

○才村委員長
 今、「補完的な対応」と言われたのですが、具体的にはどういったイメージですか。

○松風委員
 先ほど、武藤参考人と星野参考人、青葉参考人がおっしゃっていたのですが、どこか第三者が喝を入れてくれて収まるといったような、それは非常に日常的な行動の中での話ですけれど、司法に何を期待するかというと、現場はそういうことを期待しているのです。ですから、施設は児童相談所長にそれを期待するし、児童相談所長は裁判所にそれを期待するというのが今の実態だとすれば、その機能をどこが担うのかということについて議論しないと、実態的な解決には至らないのではなかろうかと思います。それを裁判所でやるのか、別の第三者機関でやるのか、児童相談所の中にそういう機能を入れ込んでいくのかという議論が必要であると私は思っております。

○才村委員長
 ありがとうございます。豊岡委員、松風委員から、磯谷委員の御発言に対しての御意見がいろいろ出されたわけですが、それについて磯谷委員、何か御発言がありますか。

○磯谷委員
 私は勘違いをしていたかもしれませんが、今のところは里親委託中、一時保護中で親権者がいないときの議論ですよね。少し勘違いをしてお話をしましたので、申し訳ございませんでした。

○千正室長補佐
 親権が制限されているけれども未成年後見人のなり手がないようなケースというのも中には想定されるかもしれませんが、基本的には親権者がいないケースなので、親の対立というのは一部だと思います。

○才村委員長
 豊岡委員と松風委員の御発言に関連して、磯谷委員、何かありますか。よろしいでしょうか。

○磯谷委員
 とりあえず、ありません。

○才村委員長
 よろしいですか。水野委員、お願いします。

○水野委員
 私も磯谷委員と一緒にこの研究会に出ておりましたので、基本的には児童相談所長しかないのではないかという印象を持っておりました。そして、児童相談所長と言ったときに、児童相談所長個人はもちろん私人ではなくて、あくまでも機関としての児童相談所長であって、そしてその位置づけとしては、外国の国家後見というような形でむしろ行政が公的な後見の責任を負う制度に近いという意味でございます。具体的には、児童相談所長がその権限を自分で行使するのではなく、日常的な監護権を里親に与え、子を委託する形で行使しているのですが、責任の主体としては児童相談所長が国家を代表して責任の主体となるというイメージでございます。具体的に児童相談所長が自分で親権行使をするという意味での御負担を考えていたわけではなかったのです。
 それから、補完的な対応ですが、これはまさに二者関係といいますか、行政権が親権者に代わって親権を行使するとき、それを補完する、本当なら司法権が補完するのが筋なのだろうと思います。これから親権制限が行われるようになりますと、問題がある親が親権を奪われて、それに対して対峙する存在になりますので、その存在は、これは相当強い存在でなければならないと思います。それで国家権力としての児童相談所長と考えていたのですが、松風委員が先ほどおっしゃいましたように補完的な対応ですね。この補完的な対応というのがなかなか難しいのは、親への対峙を一緒に助けて、司法が土俵に上がって一緒に相撲をとってくれるというようなことをお考えになるのは、今の司法インフラの不十分さでは、これも難しいです。ただ、やはり行政権でしかも親権という大事な権限を強制的に奪うわけですから、それを客観的に正しいと言ってくれるような仕組みを何らかの形で組み込まなければならないと思っています。親の方でも、不当な親権制限だと文句を出しやすいようなシステムであるべきなのですが、これに裁判所が応じきれるかどうかというのは、まだ私はそこに不安を持っております。
 少し考えていますのは、同じようなものを諸外国では司法が担当するところを司法がそういう意味では全然機能を果たし得ないので別の第三者機関が審査しているというのは、精神障害者の強制入院のケースにあります。諸外国であれば司法の許可を得て強制入院するということになるわけですが、そのようなことをしていてはとても無理なので、親族の承諾、つまり保護者の同意という強制入院ができる、行政権が、あるいは家族が司法の許可なくやれるということにして対応していました。そうすると残念ながら、残念ながらといいますか、今の児童福祉施設は本当に赤字で、当事者たちもバーンアウトしながらやっていらっしゃるわけですが、精神病院は儲かるものですから、たくさんできて、そして人権侵害が起きて、国際的にも問題になって、そして精神医療審査会という審査機関を行政の中につくって対応をしました。審査会を裁判所に当たるものであると国際的にも説明しました。
 そういう形の、児童相談所長が親に文句を言われたときに全部一人で対応するのではなくて、そのときに児童相談所長としては、「あなたの言い分を聞いて審査してくれる審査会があるから、そこに申し立てなさい」という形で対応する、行政の中にもう一つ客観的な審議会を組むということも現実的であり得るのではないかという気がしております。どういう形でやるのがよいのか、本当に限られた税金をどこに回すのか、審査会に回せばよいのか、それとも、それこそ先ほどヒアリングで話題になりましたように、現実に現場で努力していらっしゃる方を増やすために専門家を養成する方に回すのがよいのか、これも究極の選択ですが、正当化する必要があるということでしたら、そういう仕組を組むということも選択肢としてあり得ると思います。

○才村委員長
 では、吉田委員、お願いします。

○吉田委員
 里親委託中で親権者がいない場合ですけれども、今の児童福祉法第47条第1項では、明確な定めがありません。親権者がいない場合は。第2項は入っていますけれども、いない場合は施設長が行うと。これは立法の経緯で里親を入れなかった意味はあると思います。やはり、里親と施設長ではサポート体制も違うし、それから機能も。ですから、それは当時この改正があったときも、その点は考えて、里親が施設長と並んで親権者がいない場合もできるとしなかったという意味はあると思います。そういうことをみていくと、親権者がいない場合に里親に親権を代わりに行わせるというのは、やはり立法の経緯などから見ていくと妥当とはいえないのではないかというのが一つです。
 それから、一時保護の場合ですけれども、一時保護に関しては、理想をいえば裁判所関与で親権制限というのが本来のあるべき姿だと思います。それを明確にすることによって親権者に自覚を促し、またソーシャルワークにつなぐ。しかし、現実にそれが難しい。ケースからすれば相当難しいということを考えていくと、一時保護の場合は、そもそも一時保護の施設に関しては最低基準で児童養護施設を準用することになっていますので、やはり機能的にも設備的にも似ている部分があるところから考えるべきだと思います。
 あとは、一時保護所にいる場合に、やはり保護所長としての児童相談所長がそこの管理・運営に当たるわけですから、当然その子どもの中での生活に関しては、一時保護所長である児童相談所長が責任を負う。その意味は児童福祉法47条にあるような施設長と同様の意味であると考えていけば、一時保護の場合には児童相談所長が負わざるを得ないだろうと思います。
 ただし、これも議論にありますけれども、一時保護のときの同意と職権と法的にどういう区別があるかは別としても、親のその後の対応を考えれば、一律に児童相談所長が自動的に権限を代行できるというのは少し乱暴だと思います。運用の問題でいえば、同意のときには必ずきちんとしたインフォーム・ド・コンセントをし、どういう権利制限があるのかということで、基本的には2か月ですから、そこでのスケジュールを立てたり、プログラムを立てやすいだろうと思います。それがなければ、親は納得しないわけです。
 強制的な職権入所の場合に、やはり児童相談所長が親権を代行することができるという正当化の根拠は結構あやしいところがあると思います。ですから、仮にそうだとしても、どこかでそのプロセスを検証しなければいけないだろうと思います。本来であれば、司法だけれども、そうでなければ親の言い分をきちんと聞き、そして親が納得できるような形での権利制限につなげるような仕組みというものを考えてよろしいのではないかと思います。そうしたところで児童福祉法第47条は実際に制度ができたときの運用まで視野に入れて制度設計すべきではないかと思います。

○才村委員長
 ありがとうございました。磯谷委員、お願いします。

○磯谷委員
 先ほど前提を誤ってお話ししましたので、仕切り直しで話したいと思います。とはいっても、結論的にはやはり同じで、一時保護のときには児童相談所長が、そして里親や施設長、里親委託あるいは施設に措置されている場合にもやはり児童相談所長が権限を行使すべきだというところには変わりはございません。その理由ですけれども、一つは先ほど親との対立という話をいたしましたが、親権者がいないという前提に立っても、その親権者がいないというのが、親権が停止されているという状況であれば潜在的なトラブルがあるということで、そこのところはやはり施設長や里親が受け皿になるのはなかなかつらいだろうというところは恐らくいえるところだと思います。
 それから二つ目は、先ほど松風委員がおっしゃったところとやや似ていますけれども、やはり根本的には措置権限が児童相談所長にあるわけで、厳密には都道府県知事ということになるかもしれませんが、そうすると論理的にそこと親権とを一致させなければいけないかどうかはともかくとして、措置権限と親権の所在というものを一致させた方がわかりやすいし、また整理もつきやすいだろうというのが二つ目の理由です。今、親権という言い方をしていますけれども、かなり行政的なところも含みますので、本当のところどう呼ぶかはよくわかりませんけれども。
 三つ目としては、やはり施設長にしても里親にしても本当にいろいろな方がいらっしゃるので、そのばらつきが生じやすいのではないかと思われて、その点、児童相談所長ということであれば、そういったところが少なくなるであろうとも思っています。
 豊岡委員から、児童相談所の負担という話もございましたけれども、現実的には日常生活に関しては、施設長なり里親にお任せすることになるのは恐らく当然だろうと思います。そこのところについて例えば第三者にそれを証明する必要がある場合は、何か制度的に工夫して、例えば委任状のようなもの、あるいは権限の証明書などそういったものを児童相談所長が発行することにすれば、実際には施設長や里親でしかるべき権限行使をして対応ができることにもなりますので、そうすると日常的に児童相談所長が子どもの親権のことについて、いろいろかかるということにもならないだろうと思いますので、ある意味、最終的な決定権というような形であれば、現状ともそれほど大きな違いはないと思いますので、今のように整理をさせていただきます。

○才村委員長
 ありがとうございます。今までのことを整理すると、まず、一時保護については、やはり児童相談所長が親権を行使すべきではないかと思います。里親についてもやはり児童相談所長が行使すべきではないかと。ただし、それは私人ではなく、あくまで機関後見というのですか、ここはよくわからないのですが、機関としての後見の仕組みを考える必要があるだろうと。その辺りは一致していると思いますが、詰めないといけないのは、一つは調整機関です。調整機関を置くのかどうか、置くのであればどういった位置付けになるのか、どういったことを機能を盛り込むのかということ。
 もう一つは先ほど吉田委員がおっしゃった一時保護について、やはり同意の一時保護と職権とを切り分けて考えるべきではないかという、その辺をもう少し御意見を頂戴できたらと思います。いかがでしょうか。

○千正室長補佐
 先ほどの吉田委員の発言に参考といいますか、情報提供させていただけると、平成16年の児童福祉法改正のときに、児童福祉法第47条第2項の監護、教育及び懲戒に関して必要な措置をとることができるという規定に、それまでは施設の長しか入っていなくて、里親は入っていなかったのですが、里親を入れたという改正を行っています。これは2項の話です。そのときに、1項については里親を入れずにそのまま施設長だけに残してあるという経緯がございます。そのときの考え方を紐解いてみると、やはり里親は個人であり、一方で施設の長は社会福祉法による明確な指導監督を受けるといった法人、ステータスであるということで、里親に対して財産管理であるとか法律行為の代理までも、身上監護の部分を越えて、親権全体を一律に行使するというのは少し難しいのではないか、同列に論じるのは難しいのではないかという考え方であったと承知しております。
 もう一つは、一時保護中に親権代行を児童相談所長が行うという点については、一時保護所の長としての児童相談所長というケースもあると思いますが、すべての児童相談所に一時保護所があるわけではありませんし、隣の児童相談所に附置されている一時保護所に一時保護しているケースもあります。あるいは一時保護委託といって一時保護所でない施設や里親などに一時保護の委託をしているというケースもございます。ですから、離れている一時保護所に子どもがいるのだけれども、やはり一時保護中は児童相談所長の範囲内にあるので、児童相談所長なのかどうかという点も、そのようなケースも踏まえて御議論をいただければと思います。

○才村委員長
 吉田委員、よろしいですか。

○吉田委員
 一時保護委託の場合と措置による施設入所の場合とは形は同じですけれども、やはり措置ということであれば、相当、児童相談所の中での検討がなされて、そして施設と子どもとのマッチングなり、将来のプログラムを考えた上での措置になるわけですから、やはり一時保護委託と同一視することはできないだろうと思います。委託の場合には児童相談所長による親権行使というのは残しておいた方がよろしいのではないか。当然、一時保護委託自体も変わる可能性もあるわけですから、現象面だけを見て同一と見る必要はないのではないかということです。

○才村委員長
 他に、御意見はいかがでしょうか。磯谷委員、お願いします。

○磯谷委員
 今、千正室長補佐がおっしゃったのは、一時保護委託ではなくて、一時保護処分を、要するに隣の例えば東京都には児童相談所が11か所あります。そして一時保護所は確か今5か所あると思いますけれど、例えば仮に立川児童相談所で見ている子どもについて、立川児童相談所の一時保護所に入れることもありますが、西部一時保護所に入れることもあるわけです。例えば西部一時保護所に入れた場合に、その権限を行使するのが立川児童相談所長なのか。西部は児童センターですか。では児童センター長なのかというところの問題が一つあるという趣旨の御指摘ですか。

○千正室長補佐
 はい。そういうことです。どのような意味での児童相談所長なのかということを併せて御意見いただければと思います。

○磯谷委員
 そうすると、一時保護処分をしたというところを重視すると、今の例でいえば立川児童相談所長になるでしょうし、子どもが住んでいる所ということになると児童相談センター長ということになるわけですね。私自身は処分をしたところが適当ではないかと思いますけれども、確かにこの点は一つ論点かもしれません。

○才村委員長
 他に、御意見はありますか。そろそろこの(2)のテーマは終わらせていただきたいと思いますが、特にありましたら。豊岡委員、お願いします。

○豊岡委員
 繰り返しになるのですけれど、例えば施設入所の子どもについてもということになりますと、かなり財産管理も含めて児童相談所がやらなければいけないと思うのです。そうすると、そのすべての事務を児童相談所がやるということに関して、どうなのかという危惧があったという趣旨でございます。

○才村委員長
 体制の問題ですね。よろしいでしょうか。

○吉田委員
 それは一時保護委託の内容として。

○豊岡委員
 いいえ。一時保護委託ではなくて施設入所の話ですので、今のこの里親委託中と一時保護委託とは別の課題になります。

○才村委員長
 いろいろと御意見もあるでしょうが、時間の関係で最後の(3)です。今度は「施設入所等の措置及び一時保護が行われていない未成年者に対する親権者等がいない場合に児童相談所長が親権が行うなどとする制度」について、御意見を頂戴したいと思います。

○千正室長補佐
 冒頭にすみません。ここの論点について御意見をお伺いしたいポイントでございますけれども、資料の7ページを御覧いただきたいと思います。ここに枠囲みで「参考」ということで現行の児童福祉法第33条の8という規定が掲載されています。1項は、親権を行う者及び未成年後見人がいない児童等について、その福祉のため必要なときは、児童相談所長は家庭裁判所に未成年後見人の請求をしなければならないという義務が課せられています。それと一体でございますけれども、2項のときは、1行目の「児童等」の後で、括弧で「児童福祉施設入所中の児童を除く」とありますけれども、これは要するに在宅の場合です。これについて請求を行ったけれども未成年後見人が見つからない場合において、親権を行う者あるいは後で未成年後見人が見つかるときまでの間、最後の受け皿として児童相談所長が親権を行うという制度が今ございます。そのような規定がございまして、確か豊岡委員から発表いただいた児童相談所長会のアンケートによりますと、これが適用されている例も何件かあるということだったと思います。このように在宅の場合に、未成年後見人請求を児童相談所長がして、誰もいなければ未成年後見人が見つかるまでの間、児童相談所長が自ら親権を代行するという制度が現行はございます。これを越えて、何かさらに設計をする必要があるかという点について、御意見をいただければと思います。よろしくお願いします。

○才村委員長
 事務局からの趣旨はそのようなことです。磯谷委員、お願いします。

○磯谷委員
 今、児童福祉法第33条の8の御紹介があったものですから、この現状の運用について、厚生労働省または裁判所にお尋ねしたいと思いますけれど、この未成年後見人が、本来であれば児童相談所長が後見人の選任の請求をする場合に、候補者が挙がっていることが望ましいと思いますけれども、現実的には難しい場合があると思います。このときに、以前この制度ができたときの議論で、確か裁判所からはできるだけ未成年後見人の候補を探す努力をしていただきたいと。ただ、それがどうしても難しい場合は、その難しい事情を何らか明らかにしてほしいということでしょうか。そのようなことを言われていたような記憶があるのですが、この辺りは現在はどのようになっているのでしょうか。つまり、特に未成年後見人の候補はなくても、普通に請求をして、そしてすぐに児童相談所長が親権を行うという形になっているのか。何か若干ハードルのようなものが運用上あるのか。この辺りは、いかがでしょうか。

○進藤局付(最高裁)
 統計的に候補者が申立て時にあったかどうかは把握できておりません。全体としては多くの事件で候補者が添えられた状態で申立てがあると聞いています。ただ、候補者にどうも適格性がないようだと判断されるような事案ですとか、どうしても候補者が見当たらない事件については、裁判所で未成年後見人候補者を見つける努力をしております。その1例が先日、法制審議会の部会で参考人の聴取があったものと御理解いただければと思います。

○才村委員長
 ありがとうございます。よろしいでしょうか。

○杉上虐待防止対策室長
 これは先般も豊岡委員から御報告いただいた全国児童相談所長会がアンケート調査を出しております。その中に児童相談所長が未成年後見人を予定しないまま選任請求を行った事例について聞いておりまして、平成20年度で3件、平成21年度は3件、合計6件あると承知しております。ただ、この中で、具体的に選任請求をした以降に、本当に揃ったのか揃っていないのかは承知していないところであります。

○才村委員長
 ありがとうございます。他に御質問・御意見はいかがでしょうか。吉田委員、お願いします。

○吉田委員
 児童福祉法第33条の8の2項ですけれども、御承知の方は多いと思いますけれども、ここでこの制度ができたのは選任の請求にかける「児童等」のところです。18歳を超えた未成年者について親権者がいない場合に、これをどのようにするか。これは確か親権喪失とも関連してくるのですけれども、このような未成年者について、保護者を本当は選任請求して、未成年後見人を置かなければいけないのだけれども、それまで児童相談所長が行うということで、むしろ18~20歳までの人を想定した規定がこの2項なのです。さらに言えば、施設入所中の者に関しては施設長が親権を行使することができますから、この運用自体としては極めて限定的にこの制度をつくっているという経緯があると私は記憶しております。
 ですから、先ほどお話がありましたように、未成年後見人の選任の申立てをして、実際に選ばれないとしても、児童相談所長がこれを代行することを予定しておりますから、それはそれだとしても、本来の未成年後見の趣旨からすればイレギュラーです。制度創設のときの経緯を考えれば、それも「あり」だということではないかと思います。今回これを運用としてもさらに広げるということです。つまり、「児童等」を当初予定していた18歳以上の未成年者ではなくて、施設に入所していない18歳未満の子どもにまで広げるかどうかということになってくるのではないかと思います。そうなってくると、今お話ししたように中途半端な運用というわけにはいかないだろうということで、違った配慮が必要になってくるのではないかと思います。

○才村委員長
 今、吉田委員から18歳以上の未成年を想定しているというお話だったのですが、そこは事務局はどうでしょうか。私もそこは存じ上げなかったのですが。

○杉上虐待防止対策室長
 多分親権喪失の申立てとセットの話でありまして、そこの部分も念頭に置いておりますが、私の承知している範囲では、あくまでも未成年後見人が見つからない。これが親権喪失の申立ての躊躇する一要因ともいわれたわけでございまして、前回の法改正の中において、イレギュラーではあるのですけれども「見つかるまでの間」という限定的な取り方をして法律の中に入れ込んだと理解しているところであります。吉田委員の意見を必ずしも全部否定しているわけではありませんけれども、そういったことも射程に入っていたと承知しております。

○才村委員長
 よろしいでしょうか。私は吉田委員がおっしゃったように、18歳というのは自立を迎える年齢で、契約などいろいろな課題が出てきます。そのような意味で、画期的な条文であるとは思いますが、これを越えて、このような事態もあるからこうすべきではないかということがあれば、おっしゃっていただきたいと思います。では松風委員、お願いします。

○松風委員
 実態的にそんなに数は多くはないということで、あまり現実的な問題としては見えてこないのですが、これが広がっていくということになりますと、児童相談所の機能の変化が起こるという、既に条文的にはそうなっているのですが、要するに未成年後見人になって、それを実行する責任を追うということになりますと、例えばいろいろな契約や損害賠償などの後見人としての責務を、児童に対する指導・監督のようなものの責任を追うということになりますので、非常に大きな役割を担うことになろうかと思うわけです。従来の児童相談所の機能を超えた機能を担うということになろうかと思いますので、ある意味で児童相談所の在り方として今後どうあるべきなのか。または組織的にどうあるべきなのかといったようなところを、併せて議論する必要があるのではなかろうかと思っております。
 もう一つは、非常に現実的な話として、損害賠償を国家賠償法で行うことになるわけです。要するに行政が負担するのですが、実際に負担する場合に、その予算化なり、執行に対する公正または的確性の判断を、児童相談所長だけで良いのかどうか。それが予算執行を行う上で、公平性の担保が行われていると認められるのかどうかといったようなところについての組織的補完も必要になってくるのではないかと思っております。

○才村委員長
 児童相談所をバックアップするといいますか、児童相談所の後見機能をオーソライズしていくような仕組みが要るのではないかというお話で、そこはとても大事なところだと思います。今の御発言に対して、何か御意見がありましたら頂戴したいと思います。磯谷委員、お願いします。

○磯谷委員
 今、松風委員は「機能」という話をされましたけれども、私はここは「理念」のところでも、大きく違うのではないかと思います。つまり、今の児童福祉法第33条の8というのは、あくまでも社会福祉の中だけれども未成年後見人という、本来であれば私人のところにお願いをしようという枠組みだろう。それがどうしても見つからない場合に、暫定的に児童相談所長が、子の親権を代行をするという枠組みだと思いますが、ここでもし児童相談所長が自ら親権を行うという形になりますと、これはそういった民間私人にお任せということではなくて、国ないし行政が責任を持って未成年の子どもを扱っていこうということになる。そこは恐らく理念的には随分違ってくるのではないかと思います。ちなみに私は児童相談所長が親権を行使するのが望ましいやり方ではないかと思いますけれども、一方で、ここのところは確かにいろいろと難しい面があるだろうと思います。これは実は先ほど調整機関というお話もありましたが、児童相談所長が権限を持つということは、一つとてもよいステージですが、一方で本当に子どもの利益というものをきちんと代弁してもらえるのかというところは、具体的に制度として何か担保するものが必要ではないかと思いますので、単に児童相談所長がすればよいということではないのだろうと思います。
 損害賠償についても、この辺りは私もあまりよく理解していないのですけれども、いずれにしても未成年後見人ということになると、民法の不法行為の中の、監護の責任者の非常に重い規定がかかってくることになると思いますけれども、親権を行う場合に、一体どれぐらいの責任になるのかというのは、必ずしもよくわからない。もちろん、その過程で過失があったりすれば、国家賠償なのか、民法709条なのかよくわかりませんけれども、当然、何らかの責任を追うとして、それ以上の責任を追うことになるのかどうかは、ある意味少し詰める必要があるところではないかと思います。それにしても、私人たる未成年後見人に負わせてしまうよりは、やはり良い制度ではないかと思っております。

○才村委員長
 ありがとうございます。水野委員、お願いします。

○水野委員
 今、磯谷委員が言われましたように、ともかく諸外国を考えますと、子どもが保護なく放り出されていることは、憲法上の国家の義務違反という位置付けで、子どもの人権を守れなかったということですから、国ないし公共団体が損害賠償を請求されても仕方がないという事態であるはずなのです。ただ、日本はそのようになっていないということは御存じのとおりです。基本的にその理念でいくべきだと思いますが、この問題につきまして質問ですけれども、4ページの本文の下から2行目の「子の福祉のため必要があるときには」という限定が入ってきています。これがどの程度のものとして効くのかということについてお伺いしたいのです。つまり、施設入所等の措置及び一時保護が行われていない未成年者であって、親権を行う者及び未成年後見人のない者というのは、非常に広範囲です。親権者が交通事故などで死んでしまった場合に、事実上その段階から、その子どもは未成年後見という状態にはなるのですが、後見人がいなくて実際には親族が面倒を見ていたりして、そしてそれはいわゆる社会的改札口といいますか、生命保険金を受け取らなくてはならないとか、あるいは養子縁組をするというときに、未成年後見人を選ばなくては話が進まないので、では親族の中で誰が未成年後見人になるか、大おじさんがなるかというような話になって、申立てていくことになるわけです。おじさん夫婦が虐待もせずに育てている、そのような状態にある子どもたちまで全部カバーすることになると、少なくとも現在の状況に対して、非常に大きな改革をすることになります。そして、例えば保険金を巡って父方の親族と母方の親族の間で、誰が後見人になるのかともめていて、なかなか申立てをしないという場合まで入ってくるかもしれません。そのときに「福祉のため必要があるとき」というのは、実質的にはまともに面倒を見る人間が誰もいなくて、非常に子どもの福祉が危うくなっているときという実質的な制限がかかってくることになると、現状とはあまり違いない制度設計だと思います。その辺の御提案はどのように考えていらっしゃるのかをお伺いしたいのです。
○杉上虐待防止対策室長
 その点も御議論いただきたいと思いますけれども、少なくとも現在、児童相談所で例えば親権を行う者がいないときに、どのようにしているのかというと、まず核となる親戚の人を探したりして、その人に親権者になってもらうことを優先してやっていると思います。それはそれで引き続きやった上で、本当に子どもの福祉のために誰もいないということであれば児童相談所がということで、研究会の取りまとめがまとめられ、それを基にここで御議論いただくことになると思います。ただ、正直言って、児童相談所がこれまで全く関与していなかったケースについて、どこまで対応できるのかという実務的な問題は当然あると思います。

○水野委員
 法制審議会のところでも出たケースでそのような話になったのですが、プライベートの私人に任せておいて、核になってくれる人だと思った親族が虐待するということがあり得るわけで、もし、そこまで考えていただけるのであれば本当は一番良いと思います。児童相談所長が権限としてはあって、そして通常の場合は親族から申立てがあり、ない場合は児童相談所長で公的に探して、きちんと育ててくれる監護者をつければ、きちんと育っていった子どもが親が交通事故で孤児になってしまった場合も事実上はそんなに問題にならないと思いますが、そのような場合でも法的な枠組みとしては児童相談所長が潜在的にはカバーしているという設計での御提案だと理解してよろしいわけですね。つまり「子の福祉のため必要があるときには」というので、あらかじめ要件を限るというのではなく、しっかりした親族がいる場合は、表には出てこないけれども、潜在的には児童相談所長がカバーする可能性を含めた提案と理解した上で議論をしてよろしいのですか。

○千正室長補佐
 行政の権限の行使になりますので、今言われた虐待のようなケースは別になると思います。要保護児童ということにもなりましょうし、虐待されていれば通告があって、場合によっては一時保護をしたりというスキームもございます。そうではなくて、虐待はされていないけれども、要するに親権者、未成年後見人がいないという子ども、未成年が世の中にいたときに、親族間で解決しようとしているときにまで、児童相談所が自ら出向いて行って「止めなさい」とか「このようにしなさい」と言うのかというと、そういうことでは恐らくないと思うので、「子の福祉のために必要があるとき」という概念の中には、出て行かなければいけないとき、児童相談所が請求することがその子の福祉のために必要だというときに出て行くという考え方であろうと思います。

○水野委員
 わかりました。私は、相当今までのやり方とは変わると思いますが、事実上は平和裏に親族の間で行われる場合が多いとしても、潜在的に児童相談所長の受け皿を用意しておくことの方が良いと思います。

○磯谷委員
 水野委員がおっしゃったように、変わることを期待はするのですけれども、あえて申し上げると機能としては変わらなくても、変わらないかもしれないのです。つまり今この児童福祉法第33条の8で対応しているような案件を、ダイレクトに児童相談所長が親権を行使するという形で決着をつける。そのような形であれば、実際に対応する案件としては、あまり変わらないかもしれない。それでもなお、先ほどのような制度を導入する意味はあるだろうと思います。恐らく児童相談所の扱いからすると、最初に何らか通告等の形で受理をするということになるわけでしょうけれども、そのときに、児童ではありませんが、恐らく要保護児童という形で、とにかく児童相談所の流れに乗ってくるのだろう。そしてその中で調査をした上で、援助方針会議などで方針を決定して、例えばその子どものケースについては、児童相談所長が親権を代行する、行使する必要性があると考えて、何らかの処分をするという流れになってくるのかなと思います。もしそうだとすると児童相談所の業務の中でも、それほど大きな手続き的なインパクトがあるわけでもないのではないかと思います。

○松風委員
 インパクトはあります。決定までのインパクトは今おっしゃったとおりで、通常の要保護児童の調査、それから判断ということになろうかと思いますが、その後の親権の行使、未成年後見人としての権限の行使というところで、非常に大きなインパクトがあります。

○磯谷委員
 児童相談所長が未成年後見人として、それを行使するかどうかは別問題で、要するに親権を行うという形にすることも考えられるし、もちろん未成年後見人となるということも考えるし、そこは制度設計があり得ると思います。

○松風委員
 すみません。そこがよくわからないもので。実際に何か問題が起こったら、誰かが相談を受けて、その問題の解決に当たらないといけないわけです。そのような機能は期待されるわけです。ですから、実際に例えば施設を卒業した18歳以上の子どもたちが、家賃を払わずにどこかへ行ってしまったとか、携帯電話料金の滞納を起こして損害賠償を求められたというときには出て行かないといけないわけで、そのような手続きとかそのことについての指導をしないと、それを公費で払うことについても合意が得られないわけです。仕方がなかったのですということで公費は出せないわけですから、どれだけの努力をしたのかが問われるわけで、その指導の責任と、いわゆる相手方との交渉、損害賠償の適否についての判断といったことも含めて、運用に非常にインパクトがあるということを申し上げたかったのです。

○磯谷委員
 そこはいろいろ詰めなければいけない問題があるということは理解しますが、現状は親権を行うという枠組みには、児童福祉法第33条の8で暫定的にも親権を行うことになっているわけで、そのような意味では変わらないといえば、変わらないかもしれないと思います。

○才村委員長
 長委員、お願いします。

○長委員
 6ページの制度設計としては二つ方向が考えられると思います。国が行政的に子どもに対して責任を果たしていくということになるのだとすれば、制度設計的にはこの二つのうちの後者の流れになると思います。私人としての未成年後見人が選任されるというわけではありませんから、二つの議論の中でいけば、後者になると思います。それがインパクトがあるかどうかということになれば、それなりのインパクトといえばインパクトでしょうし、いろいろな問題点があるという御指摘もそのとおりだと思います。

○才村委員長
 時間をオーバーしていますが、最後に庄司委員、一言お願いします。

○庄司委員
 児童福祉法では18歳問題があって、それはこの問題にもかかわってくるわけですけれども、この年齢を変えることはできないのですか。

○才村委員長
 児童福祉法の18歳という年齢ですか。

○庄司委員
 20歳までにすれば、解決する問題がいろいろあるのではないですか。

○才村委員長
 それはこの専門委員会で議論をするかどうかという。これは以前から言われていた課題ではあると思いますが、ここでは馴染みにくいのではないかと。そこは御了解いただきたいと思います。よろしいでしょうか。
 すみません。議論が盛り上がってきて、まだまだ御意見があろうかと思いますが、残念ながら時間が過ぎてしまいました。事務局から、今後の予定についてお願いしたいと思います。

○杉上虐待防止対策室長
 次の委員会の日程については、秋ごろということで、各委員に御連絡したいと思っております。なお、本日まで4回の委員会において各論点について一応一巡の御意見をいただいたところでございますので、次回は事務局でいただいた御意見をまとめたものを提出したいと思っております。それまでの間、これまでの委員会の御議論いただいた各論点等について、追加で御意見等がいただけるようであれば、メール等で事務局にお知らせいただきたいと思っておりますので、引き続きよろしくお願いいたします。以上です。

○才村委員長
 ありがとうございました。追加の御意見等がございましたら、ぜひメールでということでございます。
 それでは、本日はこれで閉会とさせていただきます。ありがとうございました。


(了)

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