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2010年6月16日 第9回 厚生科学審議会感染症分科会予防接種部会 議事録

健康局結核感染症課

○日時

平成22年6月16日(水)
16:00~19:00


○場所

コンベンションホールAP浜松町(Fルーム)


○議事

【出席委員】(50音順)
飯沼委員、岩本委員、岡部委員、加藤部会長、北澤委員、倉田委員、
黒岩委員、廣田委員、保坂委員、山川委員
【参考人】
大澤参考人、吉川参考人、清澤参考人、古賀参考人、齋藤参考人、
蒲生参考人、畑参考人、宇野参考人
【行政関係出席者】
上田健康局長、福島健康局結核感染症課長、
正林健康局結核感染症課新型インフルエンザ対策室長、高井医薬食品局長、
岸田大臣官房審議官、亀井医薬食品局血液対策課長、
鈴木新型インフルエンザ対策推進本部事務局次長、松岡健康局生活衛生課長、
佐原大臣官房企画官、土肥健康局健康対策調整官

○新型インフルエンザ対策推進本部事務局次長(鈴木) それでは、定刻になりましたので
第9回「厚生科学審議会感染症分科会予防接種部会」を開催いたします。
 まず、事務局より本日の委員の先生方のご出欠の状況についてご報告をいたします。本日
は、今村委員、宇賀委員、木田委員、坂谷委員、櫻井委員、澁谷委員、古木委員、宮崎委員
から、ご欠席のご連絡をいただいております。また澁谷委員の代理として、全国保健所長会
副会長の金田委員、今村委員の代理として、東京都福祉保健局技監の桜山委員にご出席をい
ただいております。これで定足数に達しており、会議が成立することをご報告したいと思い
ます。それでは、加藤座長のほうで議事をよろしくお願いします。
○加藤部会長 それでは、ただいまより開始いたしますが、事務局より本日のヒアリングの
趣旨、目的、さらに資料の確認についてお願いいたします。
○新型インフルエンザ対策推進本部事務局次長 前回、以前からも引き続きですが、2月に
第一次提言をまとめていただいたときに、6つのこれから抜本改正に向けて検討すべき事項
というのがありました。その事項に関係して7月までの間、ヒアリングを通じてご議論いた
だいて、課題の整理をするということで毎回進んでおります。本日は、評価・検討の組織の
あり方、情報提供のあり方という2つの課題について、ヒアリングを中心に議論をしていた
だきたいと思っております。
 お手元の資料の確認です。座席表、委員の先生方の名簿のあと、議事次第があり、議事次
第の裏に配付資料の一覧があります。資料1は、プレゼンテーションの一覧になっており、
テーマが2つあります。評価・検討組織のほうでは、感染症課から概況を申し上げた上で、
齋藤参考人、清沢参考人、宇野参考人、北澤委員というプレゼンテーションになっています。
情報提供のあり方については、事務局から申し上げたあと、大澤参考人、吉川参考人、保坂
委員、畑参考人、古賀参考人、蒲生参考人という順番です。資料も大体これに沿って用意を
しています。
 資料を確認しますと、資料2-1は1番目の議題の事務局の資料、資料2-2は齋藤先生の
ACIPに関係する資料、資料2-3は清沢先生の学会からのこういう組織に関係するご意見、
資料2-4はメーカー側からのそういう組織についてのご意見、資料2-5はメディアからのご
意見ということで北澤委員にまとめていただいています。以上が評価・検討組織についてで
す。
 次は情報提供のあり方ですが、現状について事務局から資料3-1でご説明します。資料
3-2は杉並区の状況に関して、特にHPVワクチンの導入に際してご苦労いただいた点につ
いて、大澤参考人にお話をいただきます。資料3-3は心理学の観点から情報提供について、
慶應大学の吉川参考人にお話をいただきます。資料3-4は実際の現場の接種者の立場から、
保坂委員からお話をいただきます。被接種者の立場ということでお二人から、資料3-5
「SSPE青空の会」の資料、3-6は「ワクチントーク」の資料。資料3-7は情報提供に関し
てメディアの立場から、「たまひよコミュニケーション」の蒲生さんからの資料です。
 資料4は北澤委員からもありましたが、予防接種制度改善に向けてのご意見を募集したら
どうかということで、とりあえず5月31日までの1カ月間程度、意見を伺った概要につい
て、大体こういう状況ですというのが一枚紙で整理をしています。資料5は6月10日に今
回の「新型インフルエンザ(A/H1N1)の対策総括会議」の報告書がまとまりましたので、後
ほどご説明しますが、その資料です。
 以上が本資料ですが、これ以外に、テーブルにお座りの方には3つの資料があります。1
つは参議院の厚生労働委員会の会議録のコピーで、北澤委員からのプレゼンテーションとも
関係しますが、今回の予防接種法の一部の改正法案について、参議院でご議論をいただいた
内容です。
 カラー刷の右肩に「別添取扱い注意」という資料がありますが、「ヒブ肺炎球菌の接種状
況等々」で、これは資料3-7について蒲生参考人からおっしゃっていただく関係の資料です
が、中身がまだ社内資料だということですので、机上だけに限定しております。
 資料4関係の厚い綴りがあると思いますが、これは予防接種法に関係する皆さんからのご
意見で寄せられたものを、すべてコピーで付けております。ちなみにこれは厚生労働省のホ
ームページでもご覧いただけるようにいたしますので、机上だけに限定をしております。
 以上、資料、特に乱丁、ご不足等がありましたら、おっしゃっていただければと思います。
以上です。
○加藤部会長 資料のほうはよろしいですか。よろしいようですので、ただいまより議事に
入ります。前回に引き続きまして、本日もヒアリングを中心に、今後の予防接種制度の見直
しについて、議論を進めていくことといたします。
 本日は「予防接種に関する評価・検討組織」および「予防接種に関する情報提供のあり方」
をテーマとして、有識者の方々からのヒアリングを行いたいと思います。本日は、資料1
にあります8名の方々に参考人としてお越しいただいております。それぞれのテーマにおい
て、事務局及び各委員、参考人の方々からプレゼンテーションを行っていただきまして、そ
の後、質疑応答をしたいと存じます。しかしながら、時間に制限がありますので、質疑応答
に際しては、お一人、約1分程度にさせていただきますので、十分にご用意のほどをお願い
いたします。
 それでは、ヒアリングテーマの1つ目の「予防接種に関する評価・検討組織について」の
議題を行いたいと思います。まず、わが国における予防接種に係る審議会・検討会等につい
て、結核感染証課よりご説明をお願いしますが、約10分程度でおまとめをお願いします。
○結核感染症課長(福島) 資料2-1に従って、「わが国の予防接種に係る審議会・検討会
等について」の概要をご説明したいと思います。1頁の下のほうに、どういうものがあるか
という全体像を示しています。いちばん上の矢印が間違っております。予防接種部会と公衆
衛生審議会感染症部会予防接種問題小委員会の間に少し間が空いており、厚生科学審議会に
統合したときに予防接種部会がなかったものですから、この絵が少し間違っておりますが、
現在では、いまここでお集まりいただいております予防接種部会があるということです。
 それから日脳の小委員会も同時に開かれております。予防接種に関する検討会は、いまは
予防接種部会という形に変わってしております。さらに、麻しん対策推進会議、ワクチン産
業ビジョン推進委員会、インフルエンザワクチン需要検討会が開かれています。新型インフ
ルエンザワクチンに関する意見交換会を臨時的に行いました。また、予防接種後副反応報
告・健康状況調査検討会があります。新型インフルエンザ関係も含めて薬食審の医薬品等安
全対策部会安全対策調査会があり、この前の新型インフルエンザ予防接種事業のときに、副
反応検討会を立ち上げて、新型インフルエンザについては、合同開催をいたしました。
 認定のほうでは、疾病・障害認定審査会感染症・予防接種審査分科会があります。ポリオ
生ワクチンの2次感染者対策検討会については予算事業で行っています。
 2頁は、かつてあった「公衆衛生審議会」の予防接種問題小委員会(現在は予防接種部会)
の根拠はここにあるとおりです。具体的にはどういうことを行ってきたかというと、例えば
平成6年の法改正のときは、義務接種から勧奨接種に変え、インフルエンザについては対象
疾患から外すということです。具体的中身は下にありますが、この中身についてのご議論を
いただいて、この成果を法改正につなげているということです。
 右のほうですが、平成13年の法改正のときは二類疾病ができ、高齢者に対するインフル
エンザが入ったということです。これもここにあるような背景を基に、公衆衛生審議会でご
議論いただいて、その中身を法改正に反映させたものです。また平成18年に感染症法と結
核予防法を統合する際の議論がありましたが、これは感染症分科会そのもので議論をしてお
ります。
 「予防接種に関する検討会」は、平成13年の予防接種法の改正のときに、5年を目途と
する見直し、あるいは評価・検討するための検討組織として、健康局長の私的検討会として
設置したもので、平成17年3月に中間報告を取りまとめ、平成18年3月には麻しん・風
しんの予防接種のあり方等で審議をし、政令改正をして現行の3期、4期の麻しん・風しん
の予防接種を行っています。
 4頁は「ワクチン産業ビジョン推進委員会」です。ワクチン産業ビジョンは平成19年3
月に策定され、これは前の部会でもご紹介しましたが、このフォローアップのためのものと
いうことで、医薬食品局長の私的検討会として設置されているものです。
 「インフルエンザワクチン需要検討会」ですが、これは次のシーズンにインフルエンザワ
クチンの需要を予測するということで、これも医薬食品局長の私的検討会として設置されて
おり、毎年のインフルエンザワクチンの安定供給に関する通知という形で、その成果が反映
されています。
 5頁の上の「新型インフルエンザワクチンに関する意見交換会」は、いま予算事業で行っ
ている新型インフルエンザ(A/H1N1)のワクチン接種の進め方について、いろいろな専門家
あるいは国民の声を反映させるということで、その会ごとにテーマに応じてメンバーにお集
まりいただき、いろいろなご意見を伺い、我々の意思決定の参考にさせていただきました。
 「麻しん対策推進会議」は、「麻しんに関する特定感染症予防指針」がありますが、これ
に基づいて、麻しんの排除を目指しているわけですが、その施策の評価・見直しに関する提
言等をいただくための会です。これについては、いろいろな通知、ガイドラインの策定とい
うことで成果を活かしております。
 6頁からは副反応関係のものです。「予防接種後副反応・健康状況調査検討会」について
は、前の副反応のときにご説明しましたので、フローチャートについての説明は省略したい
と思います。
 7頁の下のほうも、そのときにご説明しました。これは薬食審の安全対策調査会と、新型
インフルエンザ予防接種後副反応検討会の合同開催という形で行ったものです。7頁の上の
ほうは、そのフロー図で、これもご説明したと思います。
 8頁の下のほうですが、これはこの予防接種部会とは別に、健康被害を受けた方について
は、厚生労働大臣が認定をするわけですが、その際に専門家の意見を聞くことになっており、
そのための審議会が、この「疾病・障害認定審査会感染症・予防接種審査分科会」です。市
町村に対して健康被害を受けた方から申請がされ、都道府県を通じて私どものほうに進達さ
れてきたものについて、審査会でご議論いただき、認定した結果について、都道府県を通じ
て市町村に通知をし、その結果に基づいて市町村が給付をすることになっています。
 9頁にありますように、ポリオの生ワクチンについて、2次感染者に対する救済制度を予
算事業で行っています。予防接種を直接受けた方であれば、先ほどご説明した予防接種法に
よる認定審査のほうになるわけですが、2次感染者の場合は予防接種を受けておられないと
いうことで、予防接種法の救済の対象にならないことから、予算事業として別途行っていま
すが、これについても予防接種法と同様の仕組みで行っています。以上です。
○加藤部会長 それでは、引き続きまして参考人の方々からのヒアリングを行いたいと思い
ます。参考人の1人目は、国立成育医療研究センター感染症科医長の齋藤昭彦氏です。齋藤
参考人には、まず「米国等における予防接種に係る評価・検討組織について」ご説明をいた
だき、質疑応答といたします。それでは、齋藤参考人、よろしくお願いします。約10分程
度でご説明をお願いします。
○齋藤参考人 成育医療研究センター感染症科の齋藤と申します。どうぞよろしくお願いし
ます。今日はACIP(Advisory Committee on Immunization Practices)、米国の予防接種に
関する諮問委員会について、簡単にまとめさせていただきます。
 まずACIPというのは、米国において、いまから約50年以上前に設立されたものです。
その背景としては、ポリオワクチン、インフルエンザワクチン、麻しんワクチンなどのワク
チンが1950年代から1960年代に発明され、その有効性が確認されました。その当時の大
統領であるJohn F. Kennedyが、「アメリカの子どもたちがポリオ、ジフテリア、百日ぜき、
破傷風などの病気にもう苦しめられることはない。みんなでワクチンのプログラムを作り上
げ、、この4つの病気をなくしてしまおう。」という宣言をして、そこで高額の国の予算が付
けられました。その2年後の1964年にACIPが設立されています。
 この目的としては、ワクチンによって予防可能な疾患(VPD:Vaccine Preventable
Diseases)の発生頻度を減少させることと、ワクチンとそれに関連する生物製剤などの安全
使用を推進するということです。
 このACIPがどのようなところに影響力を与えているかというと、米国の医療制度の決定
機関は、大統領がそのトップで、次に国会、そしてHHS(連邦保健省)、日本でいう厚生
労働省があって、更にその下にCDC(疾病管理予防センター)があるわけですが、ACIP
は連邦保健省と疾病管理予防センターの2つに助言と指導をします。そしてACIPのVoting
Member(会の15名の代表)は、HHSから任命を受けます。ここで決まったことが最終的
にCDCのオフィシャルなレポートであるMMWRを通じて発表されます。これは紙媒体で
もありますし、インターネットでも閲覧可能です。
 ACIPの構成員は、上に投票権のある15人のVoting Memberがいて、その下にSteering
Committee、Exofficio members、Liaison membersというメンバーがおります。Voting
Memberは15人おりますが、彼らがどのように選択されるかといいますと、製薬会社、企
業などから研究費、援助、アドバイサーなどを一切引き受けていないことが条件です。公募
され、CDCから推薦され、HHS長官から任命されます。任期は4年で、議長は15名のメ
ンバーから選出されます。メンバーの少なくても1人は、ワクチンを接種される側から選出
されています。現在は法律家が入っています。
 実際の会場の様子ですが、ACIPのVoting MemberとSteering Committee、各部門の代
表の方21名が真ん中に座られて、その周りを学会の関係者、ワクチンの製造の方30名が
取り囲んで、後ろには200人ほどの一般の方々がおられます。これは参加を希望すればど
なたでも参加できて、意見を言うことができるというオープンな会です。
 活動内容は、そのワクチンの適応と接種スケジュール、安全性と効果、現在の推奨の成果
と実施のしやすさ、ワクチン供給の平等性、コスト、他の学会の指針との統一を行っていま
す。会は1年に3回行われ、会合はすべて公開されており、内容はインターネットで閲覧が
すべて可能です。
 最近ACIPという組織の必要性が大きく取り上げられていますが、この会には、その下に
いろいろな下部組織があって、特にワーキンググループといって、各ワクチン、各問題点に
おけるワーキンググループが存在します。そこにはACIPのVoting Memberが2人、各学
会からの代表者、CDCからの代表、そうれぞれの領域の専門家がメンバーを作って、20~
30人ぐらいのワーキンググループを作って活動しています。実際の医療現場においては
ACIPの推奨がCDCの推奨となって、各地域の保健所などに伝わり、そして実際の現場で
この接種が推奨されるということになります。
 もう1つ、ここでNVAC(National Vaccine Advisory Committee)という、先ほどのACIP
がImmunization Practices、すなわちワクチンをどのように接種していったらよいのかと
いうのを推奨するところに対して、これは実際に、もっとどういうワクチンを製造したり、
供給したらいいのか、安全性はどうなのか、ワクチン開発の優先順位を決定したり、よりど
のワクチンをこれから作っていったらいいのか、更には、各組織の連絡、各州への連絡など
の戦略を立てる場所です。それがNVPO(National Vaccine Program Office)に対して助言・
指導をします。
 これが米国の0-6歳に推奨されるワクチンのスケジュールになります。時間の関係で詳細
は割愛させていただきます。7-18歳がこのようなスケジュールになっています。
 「米国で定期化されていて、日本で任意、未承認のワクチン」のリストです。日本で任意
ワクチンという形でヒブ、肺炎球菌、水痘、インフルエンザ、流行性耳下腺炎などが挙げら
れます。未承認のものとしては、不活化のポリオ、ロタウイルス、髄膜炎菌などが挙げられ
ます。
 これは私が実際に主要先進国ののワクチンプログラムを簡単にまとめたものですが、○が
定期接種とされているもの、△がリスクのある患者に接種するもの、任意接種が□になって
います。いちばん下の欄が日本ですが、ヒブ、肺炎球菌のワクチンが任意接種のカテゴリー
に入っています。B型肝炎のユニバーサルワクチンは日本では行われていません。諸外国で
は、すべての子どもたちにワクチンを接種して、垂直感染だけではなく、水平感染も予防す
る方策がとられています。、先進国においてはポリオは、ほとんどの国がIPVへの移行が終
わっていますが、日本では、依然OPVであります。
 副作用のところに簡単に触れたいと思います。米国ではどのようにしてワクチンにおける
副反応、あるいは有害事象をキャッチしているかといいますと、VAERSというサーベイラ
ンスのプログラムがあります。これは1990年にCDCとFDAが共同で始めたもので、イン
ターネット、手紙、ファックス、電話など、さまざまな形でワクチン接種に関係があるかも
しれない事象をすべて吸い上げ、情報を集める組織があります。
 これが機能した例としては、例えば1999年にロタウイルスワクチンというのが始まり、
全米で約20名ぐらいの腸重積の症例の集積がありました。このようなレポートがたくさん
集まることによって、このワクチンに関しての安全性が再検討され、半年後にはこのワクチ
ンのプログラムがナショナルプログラムから削除され、新しいワクチンがまた始まっていま
す。そのような形で年間約3万件の報告があるそうですが、そのほとんどが軽症であり、因
果関係が明らかなものは非常に少ないとの報告です。
 仮にそのワクチンの副反応が認められ、その接種者にどういう補償がされているかという
ことですが、VICP(Vaccine Injury Compensation Program)というプログラムがあります。
1986年に設立されたプログラムで、これはCDCやHHSの傘下ではなく、全く別の
HRSA(Human Resources and Service Administration)の傘下にある組織です。CDCが推
奨するワクチン接種後に問題となった症例に対して、国からの十分な補償が規定されていま
す。このプログラムは、ワクチン1本当たりに75セント(70円ぐらい)をかけることによ
って、補償するという制度です。
 以上から私がACIPの特徴と日本版ACIPの設立を考えた場合に、参考となる事項として
いくつかまとめてみました。まずその会がワクチンに関連するさまざまな職種の代表から構
成されること。直接国のワクチン政策に影響を与えることができること、決定事項は国民に
すべて公表されること、下部組織が充実すること、継続的な審議が行われること、各組織、
各学会との連携が必要であること、最後に、これは本当にACIPの仕事かどうかわかりませ
んが、補償制度の整備も、この事項を進めていく上で非常に重要な点と考えています。以上
です。
○加藤部会長 どうもありがとうございました。それでは、先ほどの事務局からのご報告と、
齋藤参考人のプレゼンテーションについて、各委員からのご意見がありましたら伺います。
○山川委員 基本的なことについて質問したします。ACIPというのは、連邦法に基づいて
設立されているものですか。
○齋藤参考人 そうです。法の下に作られている組織です。
○山川委員 Vaccine Injury Compensation Programもそうですか。
○齋藤参考人 そのとおりです。
○山川委員 その前にあるNational Vaccine Advisory Committeeも全部そうですか。
○齋藤参考人 そのとおりです。すべて法律の下の組織です。
○山川委員 それから、VICPはCompensation Programですが、接種後に問題となった
症例への国からの十分な補償というご説明がありましたが、例えば申請、因果関係の認定、
給付決定、不服の申立てなどは法律で定めがあるのでしょうか。
○齋藤参考人 法律上の定めはないと思いますが、最終的にこのワクチンにおいてはどうい
うことが起こったときに、このワクチンとの因果関係があるということで、その認定がされ
るという基準から決まっており、それに基づいて、その基準を満たしたものに対して補償が
されるということです。いわゆる紛れ込みというのが非常に多いので、それをできるだけ排
除させるということで、最終的にこの条件を満たしたものはこのプログラムで補償されると
いうのが規定されています。
○山川委員 そこは非常に詳細な、具体的な定めがされているのですね。
○齋藤参考人 そのとおりです。
○山川委員 先生ご承知のように、日本では因果関係の判定に非常に微妙な難しい事例があ
って、専門家の先生方が頭を悩まされるわけですが、アメリカではそういう問題はあまり起
こらないのでしょうか。
○齋藤参考人 もちろん、そのとおりだと思います。結局紛れ込みかどうかの最終的な判断
は、ワクチンの接種した時期とか、例えば生ワクチンであれば株が分離されているのかどう
かとか、ワクチンを接種している群と、していない群を比べて、している群で起こっている
のかどうかとか、いくつかの条件があると思いますが、それをすべて満たすものというのは、
なかなか1線を引くのは非常に難しいと思います。
○山川委員 専門家の判定というのは、専門家の委員会のようなものがあるわけですね。
○齋藤参考人 そのとおりです。
○廣田委員 VCIPでは、詳細なテーブルで関連する病状や疾病をリストしているというこ
とですが、そのリストにない場合は補償を受けようとする者、その本人が関連を立証しなけ
ればならないということを聞いたことがありますけれども、そういう状況ですか。
○齋藤参考人 もし、例えば新しい事象であって、それが今までに報告されていないような
ものであれば、当然そこで問題提起をされて、最終的にそれを立証しなければいけないとい
うことになると思います。
○加藤部会長 両委員ともよろしいですか。ほかの委員の方々はいかがですか。
○北澤委員 すごく基本的なことで教えていただきたいと思います。スライドの6枚目で、
ACIPからCDCに矢印が伸び、CDCの下にLocal Governmentとか、Practice Fieldがあ
りますが、ACIPの決定はイコールCDCの決定と考えてよいのですか。
○齋藤参考人 そのとおりです。そこで決められたことについてはそのほとんどが決定事項
となります。
○加藤部会長 では、倉田委員から。
○倉田委員 私も30年近くCDCに出入りしていて、どのように組織が変わってきたかを
見ております。どうしてACIPができたのか、最近も数箇月前にきちんと調べてきましたが、
これはACIPのそのまま決定にはならないのです。ACIPからCDCの長官がそこに問題が
あれば差し戻しをし、CDCが長官が承認署名したものはワシントンに上がって、米国厚生
本省でもう1回きちんとしたクリアされ、ワシントンでは特に他機関WHO、FDA、財務
関係との調整が行われます。厚生長官がイエスと言わなければ、システムとして最終決定に
はなりません。
 もう1つですが、ワーキングというのは軽くワーキングというわけにはいかないのです。
いまCDCはどうしているかというと、いろいろな資料は全部CDCが作っています。よそ
から入ってくるわけではありません。学者が作っているわけでもありません。情報をすべて
分析して、かつてはバラバラにやっていたものを、3、4年前に、正式に言うと2006年に
全部再構成して、各ワクチンごとに、いわばワクチンをチェックしているグループの人も含
めて、FDAから直接いろいろな情報を得るわけですが、それのワクチンだけのサーベイラ
ンスをやっている人たち、実際にワクチンの研究をやっている人たち、ワクチンのいろいろ
な情報を集めているグループの人たち、そのワクチンに関わるウイルスや患者サーベイラン
スの研究をしている人たちが実際にCDCにいるわけですが、それを1つのグループの中に
入れる。これは新しい試みでどこでもやっていないと思いますが、そういうやり方をして、
その中でACIP用の資料を作っています。ですから資料づくりは、どこかに寄せ集めなどを
やる話とは全然違っていて、実務上はCDCの、つまり米国厚生省の職員(現在対ワクチン
ACIP関連のみで350名)が直接やっているということです。米国厚生省行政そのものです。
 それに対して、もちろんワーキングの外部の先生方が意見があれば、当然あるが、実務上
のものはすべて米国厚生省が作っています。ついこの間、私は実際の担当者と話をしてきま
したが、そういう仕組みです。それがACIPのときの会議の基本的な資料になります。大学
の先生がこの資料を作っているわけではありません。
○加藤部会長 ほかにいかがですか。
○岡部委員 いまの時期にはちょっと間に合わないかもしれませんが、今年の12月に
ACIPの委員長のDr.Lary Pickeringをワクチン学会で招待をすることになっていますので、
こういった会合がそのころにありましたら彼の話を部会として伺ってもいいのではないか
と思います。直接いろいろなことが聞けると思います。
○加藤部会長 齋藤先生、どうもありがとうございました。それでは、引き続きまして専門
学会の立場、産業界の立場・マスコミ等の立場からのご説明、コメントをお願いします。2
人目の参考人は、社団法人日本小児科学会感染症・予防接種委員会担当理事を務められてお
り、現職は京都第二赤十字病院小児科部長の清沢伸幸氏です。3番目の参考人は社団法人細
菌製剤協会理事の宇野信吾氏です。それでは、専門学会の立場から清沢参考人からプレゼン
テーションをお願いし、ご意見を伺いますが、時間は約7分程度でよろしくお願いします。
○清沢参考人 小児科学会の清沢です。私は小児科学会の立場と、一般臨床35年間やって
おりますので、一般臨床でワクチンを接種している立場でお話したいと思います。結論的に
言えば、先ほど齋藤参考人が言われた「ACIPの特徴と参考となる事項」を、日本において
も早期に実現していただきたいというのが、私たち小児科学会の願いでもあります。
 感染症に対する対策というのは、国防と同じ観点で国家戦略としての位置づけが必要だろ
うと思います。今、普天間の基地問題等が議論されています。一方、宮崎は口蹄疫で非常な
事態に陥っています。このように感染症は国を滅ぼす、あるいは国を厳しい状況にさせるも
のあり、感染症対策は国家戦略として捉えていくことが必要だろうと思います。国家は国民
を守るということで、初めて国家は成り立つわけですから、ワクチンというものは個人を守
るだけではなく、国をも守るという観点で捉える必要があるのではないでしょうか。
 確かにワクチンの接種対象者は子どもだけではなく、成人、特にいまは成人のワクチンが
問題になっていますが、人口的に見ても、接種人口は成人のほうがはるかに多いかもしれま
せん。しかし接種すべきワクチンの種類、あるいは子どもを守ることによって成人を守ると
いうことから、ワクチン行政に関しては小児科医の意見を多く取り入れてほしいと考えてい
ます。この予防接種部会には加藤座長、岡部委員、保坂先生といった小児科医の先生が参加
していることは、私たち小児科学会としては非常に心強く思っております。小児科医の意見
をより強く反映することが、予防接種行政にとって重要ではないかと考えております。
 小児科学会は明治29年に設立され、かれこれ100年以上の団体で、現在は2万人近い会
員を有しており、専門医として1万4,000人余を養成しております。また、私の属している
感染症・予防接種委員会をはじめ24の委員会があり、また、日本小児感染症学会等23分
科会を持つ日本最大の小児科医の組織であり、小児科医を代表する組織であると考えており
ます。その意味で小児科学会を代表する人間がこういった会議で発言し、あるいはそういっ
た機会をいただけることは、大変意義のあることだと考えます。
 いままで小児科学会から会長名でワクチンに関するいろいろな要望を出してきました。そ
の点についてレジュメでまとめておりますので詳しい内容は割愛させていただきます。基本
はワクチンをすることが可能な疾患はすべて防ぐべきだろうということにあります。私たち
としては予防接種の将来ビジョンを検討するこのような部会が何年続くかわかりませんが、
ACIPのような継続的な組織の確立が必要であろうと思っております。
 現在、予防接種に関して討議する組織としては、いくつか分科会的なことがあろうかと思
いますが、各学会においても「感染症・予防接種に関する委員会」があります。そしてまた、
学会ごとを横につなぐ形で「予防接種推進専門協議会」あるいは「三者協」といったものが
あります。しかし、そういった組織は、いずれにしても審議が主で、ワーキンググループと
いう形でいろいろな研究をし、それを反映させていく組織ではなく、単に審議することが中
心になっております。ワクチンや感染症を研究するものに対して、研究班会議、科研費とい
った形で研究費が出されています。現在、厚生省労働省の班研究として6つの予防接種に関
する研究がなされています。これに使われている費用が約2億円ですので、今回、子ども手
当として支払われる金額の1万分の1の金額にしかすぎないわけです。国を守ると言いなが
ら、たった1万分の1の金額しか使われていない。せめて10倍、20倍というお金を使うべ
きだろうと思います。
 結論として、長期的展望に立った開かれた予防接種の実際に関して検討する場が必要であ
ろうと思います。これは先ほど齋藤先生が言われた日本版ACIPのことになろうかと思いま
す。そのためにはいろいろな資料を集めている研究、あるいはいろいろなデータを一括し、
それを統括する人材と費用がなければ、単に審議していく、あるいはどこかの学会にあった
ものを持ってくるというのではなく、積極的にそういう部会が中心になってワーキンググル
ープを作り、そして、ワーキンググループがまた責任を持っていろいろなお金を使って研究
する。国としてはそうしたデータを基に、次の予防接種をどうするか、あるいはどう対処し
ていくかといった形で話し合われてこそ、初めて本当の意味での日本での予防接種に関する
討議ができるのだろうと思います。
 現在の時点ではいくつかの部会がありますが、そこに研究のための費用が使われているわ
けではなく、できれば臨床研究のための予算化されることを切に望むところです。また、維
持運営していくためには多数の人材が必要です。これは子どもを守るための資金であること
から、子ども手当の見直しがなされ、その予算の1%でも2%でも予防接種のために使われ
ることになるように、もし、子ども手当ての5%のお金が予防接種に使われれば、日本では
定期接種されていないワクチンを含めて、こども達全員に予防接種ができることになるでし
ょう。
 そういったことで予防接種は子どもを守り、国を守るという国家戦略の1つであります。
また予防接種を作るワクチン製造業者に関しても、国防のための兵器を作るのと同じような
観点で考えていかなければならないというのが結論です。
 もう1つ、お話したい内容は接種率の向上です。例えば、麻疹を例にとると、国において
無料で接種すると言っても、なかなか接種率の向上が得られないのが現状です。その接種率
の向上をどうするかということも議論の対象にすべきではないかということで、私自身の私
見を持ってまいりました。
 予防接種向上の方法として、1つには広報活動、ポスター、CM等があります。今日は時
間の関係でできませんが、有名テレビドラマで「ER」というのがあります。緊急救命室の
中に麻疹に関する内容が含まれており、7分程度にまとめることができます。これをうまく
利用すれば、副作用の問題あるいは幼稚園・保育園での感染症が発生したときの危機対策等
が非常にうまくドラマの中で演じられています。しかし、残念ながら、私には広く頒布する
だけの費用もありませんので、個人的に提供しているだけにすぎません。もし、テレビ等で
放映されれば効果は大だと思われます。新聞の記事を通じての警鐘、接種勧奨も一つの方法
ですが、しかし、最近は一面に記事が載っていても、新聞を読んでいない子どもや親御さん
が結構多いので、テレビのほうが、効果がより高いという気がします。
 また市町村の接種勧奨に関して、例えば小さい自治体の接種率が非常に高いのは、人口が
少ないから当たり前で、接種率を上から並べますと、下位にくるのが東京、大阪といった大
都市圏です。そういった大都市圏では、担当者が必死になって接種指導しても人口の移動の
激しい所では接種率の向上は非常に難しいだろうと思います。
 代わりうる方法の一つとして、学校や園を利用することです。学校には養護教諭という存
在があります。特に、学校教育を利用することが非常に大事ですが、学校教育における保健
体育の教科書の内容に、ワクチンの重要性に関する項目はほとんど入っておりません。すな
わち学校では全くワクチンのことについては教えられていないのが現状です。この場は厚生
労働省で、文部科学省ではないのですが、小学校入学、あるいは小さいときからワクチンの
重要性を教育することの大切さが必要ではないかということ、できれば保健体育の教科書の
中にワクチンの必要性が入れられることを、私は切に望みたいと思います。
 次にほとんどの子どもが幼稚園・保育園に通園しております。少子高齢化がすすみ、小児
人口は私が生まれた時と比べたら、約3分の2以下になっているにもかかわらず、保育園は
満杯で、多くの幼児が待機状態として続いています。これはますます女性の働く必要性ある
いは女性の労働力が必要になっているからだろうと思います。最も感染症にかかりやすい、
乳幼児を対象にしているにもかかわらず、保育園では健康を守る職種は義務化しておりませ
ん。児童福祉法において0歳児を預かる保育園においては、そういった職種の必要性が書い
てありますが、保育士と兼任することができ、いわゆる専任としての職種はありません。ま
た、学校であれば保健室がありますが、保育園では発熱を認めた子どもを隔離する、あるい
は子どもを少しの間、看護するという場所すらないのが現状です。
 園での危機管理、予防接種ということで取り組むのであれば、そのための資料を持ってま
いりました。もし、保育園・幼稚園から家族への感染症・予防接種に対する指導を徹底する
ことができれば、接種率の向上が望めます。私はある150名前後の保育園の園医をしてお
りますが、卒園時にはすべての定期予防接種が完了できてから卒園させています。もし、定
期接種が未完了なこどもがいたら、園の保育士から家族に指導することによって、卒園時点
ではゼロになっています。このように保育園あるいは幼稚園での接種率の向上に向けて、こ
どもの健康を守る職種ができ、感染症や予防接種に対する指導をすることができれば予防接
種率は向上するだろうと思われます。今後、いろいろなワクチンが公費として認められた場
合、親にすべて任せるのではなく、接種率の向上を可能とするようなシステムが必要ではな
いかというのが私の意見です。
○加藤部会長 清沢先生、どうもありがとうございました。引き続きまして産業界の立場か
ら宇野参考人、お願いします。
○宇野参考人 細菌製剤協会の宇野でございます。私は本日、産業界の立場からということ
で組織のあり方について、資料2-4を用いて述べさせていただきます。1頁は、4月21日
の本部会で私どもの協会の荒井理事長が申し述べた資料の中から組織に関する3項目を再
掲しております。1つ目は、恒常的な評価・検討の組織ということですが、先ほどACIPが
定期的に年3回行われ、その中でどのようなワクチンが必要で、そのときどきに得られたエ
ビデンスを用いて評価されており、より良いワクチンプログラムが提唱されるという説明が
ありました。
 このワクチンの分野でも非常に変化が激しくて、日本でも新しいワクチンが最近導入され
ておりますし、より安全でより有効な使い方もいろいろ出てきております。これが医療現場
に早く届くように検討がなされるということで、恒常的な検討が必要ではないかと考えてい
るところです。
 2つ目は、各部署を調整(統合)するような組織。先ほどあったNVPOを日本でも各機
関、各部署を統合して、いわゆる施策の立案、実施に責任を持つ横断的な組織の設置が望ま
しいと思っています。描いたビジョン(ゴール)、各部署が連携して同期して正しい方向に
向かっているか、あるいは進捗を十分管理できているか。そしてワクチンプログラム局とい
われるようなものが強いリーダーシップで、高い接種率を求めることがゴールではないかと
考えています。
 3つ目は、中長期的な国の施策の明確化です。どのワクチンを、いつまで、どのぐらい、
そしていつになったら定期になるかという国の施策がはっきりわかれば、より明確な企業と
しての判断ができて、研究開発も供給もうまくいくのではないかと思います。もし大量のワ
クチンが必要になるのであれば、生産設備を拡充したり、新設したりする。設備だけではな
く、人を教育したりという問題もありますので、明確化されることは大きなメリットがある
と考えています。
 これを受けて「産業界の期待」です。組織に関して数年先までの具体的な項目で、こうい
うものがあれば先を見越した議論ができ、その中で我々産業界も参加して、意見を述べる機
会があれば、非常にありがたいと思います。
 「中長期政策の明確化への期待」ということですが、国として中長期的な政策の策定、策
定したものを実行して統括調整する。先ほどワクチンプログラムといったところで、強いリ
ーダーシップを持った部署が設置されることを期待しているということですが、そうなりま
すと、私どもとしても開発の計画、生産の計画がうまくいくのではないかと考えています。
 企業の使命としては、安定供給というのがあります。ワクチンは少し他の医療用医薬品と
違う点があって、生産から供給までにかなり長いリードタイムがあります。作り始めて6
カ月ぐらいかかって、製品がようやく出るという特性がありますので、長期的なビジョンが
あれば、前から準備して生産することができるとも考えています。開発においても、いつま
でにどのような、どのぐらいというのが分かれば、どのワクチンを優先して開発をしていこ
うかということも見えてくるのではないかと思います。
 最後の頁です。これはヒューマンサイエンスのレポートから引用した予防接種に関する政
府機関等の一覧表です。私どもは研究から供給に至るまで多くの部署と連携させてもらって
います。先ほどのワクチンプログラム局のようにリーダーシップを持っていただいて、全体
を統括できる横断的な組織の設置があると、非常にありがたいと思っています。以上です。
○加藤部会長 宇野参考人、どうもありがとうございました。引き続きましてマスコミのお
立場から北澤委員からお願いしますが、時間は7分程度でお願いします。また資料にもあま
すが、事務局への質問事項があります。このことに関しては議題の最後に事務局からお答え
したいと思いますので、よろしくお願いします。
○北澤委員 日経BP社の北澤です。これまでのこの部会での議論を踏まえ、私の個人とし
ての意見を述べさせていただきます。お願いしたいことは7点あります。まず1、感染症サ
ーベイランス体制を充実させてほしいという点です。第8回部会及び新型インフルエンザ対
策総括会議でも指摘されたように、インフルエンザに限らず、感染症のサーベイランスが不
十分であることは、予防接種対策だけでなく、感染症対策全般に関わる大きな問題であると
思います。評価・検討組織を考える前に、まず感染症サーベイランス体制を充実させていた
だきたいと思います。加えて、集めたデータを研究者が閲覧・利用しやすくするというご提
案がありましたが、それも非常に重要なことだと思いました。
 2幅広いステークホルダーが対等な立場で参加できるようにしてほしい。現在、本部会も
含めて審議会委員の人選は事務局が決めており、必ずしも多様な立場の意見が反映されてい
るとは限りません。評価・検討組織は、ワクチン接種を行う側、受ける側の双方をはじめ、
予防接種に関わるすべてのステークホルダーが対等な立場で参加、議論できる場であってほ
しいと思います。本部会では委員やヒアリング対象者に限らず、さまざまな方の意見を今後
の議論に反映させる目的で、一般から意見を募集しました。今日もその結果が配付されまし
たが、そういった意見を踏まえてほしい。
 3委員の利益相反を開示してほしい。医薬品・医療機器等の医療関連産業に関係のある問
題を審議する審議会や検討会は、すべて各委員の当該業界との間のCOIを開示すべきだと
思います。これはすぐにでもできることなので、本部会でも是非ご検討ください。評価・検
討組織においても、委員のCOIの開示は当然なされるべきだと思います。
 4接種対象疾患やワクチンは、柔軟に追加/変更できるようにしてほしい。現在、予防接
種法に一類疾病が明記されているために、対象疾患の変更に際して法改正が必要となり、機
動的な対応ができない点は問題だと思っています。評価・検討組織での検討に基づいて柔軟
に追加/変更できるようにしていただきたいと思います。
 5ワクチンの有効性は「患者/国民アウトカム」で評価してほしい。ワクチンは承認段階
では代用アウトカムが評価され、真のアウトカム(=患者/国民アウトカム)は市販後に確
認するしかないにもかかわらず、肝心の接種後の評価が不十分であるとの指摘がありました。
ワクチンの有効性評価は、治療薬に比べて難しい点が多いことは理解できますが、「有効か
どうか分からない」ワクチンの接種を国民に推奨することはできないと思います。また、長
年にわたってワクチンが接種され、感染症の発生そのものが減っている状況では、一人ひと
りの接種者にとって、いまワクチンを接種することの意味は少なくなるのではないかと思い
ます。評価・検討組織においては、当該ワクチンが本当に社会全体の利益になるのか、国内
外の疫学研究等のレビューを含む実証的な検討に基づいて判断してもらいたいと思ってい
ます。
 6経済評価は実現可能性を精査してほしい。前回の部会で紹介がありましたが、ワクチン
に限らず、医療技術評価に経済評価を加味することは、英国などで既に行われています。し
かし、日本で実施する場合、モデル作成に必要な諸データが入手困難、または入手不能なこ
とが予想されます。その場合は、何らかの仮説・推測の基に経済評価をせざるを得ませんが、
そうして得られた結果が政策決定に適用できる(程度に妥当性が高い)かどうかについては、
精査が必要と考えます。また、ワクチン接種にゴーサインを出す際の増分費用対効果比
(ICER)の閾値をいくらにするかについて、日本ではまだ十分な議論がなされていないので
はないかと思います。
 7ワクチンの副反応情報は幅広く収集し、健康被害の救済につなげてほしい。有効性の評
価と同時に、害の評価も重要な課題です。この点について、予防接種法に基づく報告と、薬
事法に基づく報告の二通りがある。そのために副反応情報の収集が、かえって徹底していな
いおそれがあるのではないかと感じました。両者間で報告する範囲や内容が異なることも問
題です。
 これは私の個人的な意見ですが、根拠となる法律は薬事法に統一し、報告範囲等は両者を
統合して、定期接種に限らず全ワクチンを対象とする。重篤な副作用は企業に報告を義務づ
ける。非重篤な副反応は基準に沿って報告する。報告段階では因果関係の有無を問わない。
患者や保護者からの直接報告も受け入れる、とすればよいのではないでしょうか。ワクチン
に限らず、医薬品全般について、副作用情報は企業や医療機関からの報告に限定せず、患者
や保護者からの直接報告もできるようにしていただきたいです。
 健康被害の救済に関しては、今後の部会で議論されることと思いますが、接種者自身の利
益だけでなく、社会全体の利益のために国がワクチンの接種を推奨する以上、健康被害につ
いては、できるだけ幅広く情報収集し、幅広く救済する方針で臨んでいただきたいと思いま
す。以上です。
○加藤部会長 清沢参考人、宇野参考人、北澤委員にご意見のプレゼンテーションをしてい
ただきましたが、このお三方に対しまして委員の方からご質問、ご意見がありましたらお聞
きします。
○岡部委員 北澤委員に質問です。ちょっと意味が分からなかったのが、資料2-5の?Dでお
っしゃっていた、「長年にわたってワクチンが接種され、感染症の発生が減っている状況」
ということ、これは確かにそうだと思うのです。それで、ワクチンを打っても打たなくても、
個人的には病気にかからない可能性が高い。この言葉が意味しているのは、病気が少なくな
った場合にはワクチンが要らないという言い方なのですか。それとも、そういうことをもう
少しきちんと説明しなさいという意味合いでしょうか。
○北澤委員 もう少しきちんと説明してほしいという意味です。
○廣田委員 北澤先生が、養護教諭の方々との協力というお話に触れられました。それで、
今日、委員の先生方に意見を広くお伺いしたものが配られていますが、その79頁に、養護
教諭の方々の団体から否定的な意見もありますので、養護教諭の先生方にも、予防接種関係
の情報提供あるいは啓発をよろしくお願いいたします。
○加藤部会長 その点は事務局のほうでよくお読みいただいて、ただいまの廣田先生のご意
見を反映していただきたいと存じます。ほかにご意見はございますか。
○倉田委員 北澤委員がお話になった後半のほうのことですが、ワクチンの副反応、副作用
ということと被害者の救済を広範にやること、これはよろしいのですが、例えば亡くなられ
た例で、米国の場合は、きちんと解剖しろというルールがあります。日本は解剖されるとい
うことでは非常に数が少ないのです。私も職業上、解剖されたものを、かつて認定部会にい
たころに随分見ていますが、全部違う病気なのです。はっきりと違う病気の死亡でした。
 ワクチンによってどうかなったと考えられるなら、それをいろいろな格好で救済すること
と、医学的に本当にそうであったかどうかという追及は別なのです。そこのところが日本は
非常にいい加減なのです、はっきりと言いますが。つまり、「因果関係否定できず」という
のは全部医学的に証拠がないということなのです。私は、ワクチンを接種して、ある一定期
間に起きたことに関して救うことは、日本が福祉国家なら当然やれと、もう20年も前から
言い続けています。それはそれでいいのです。今までは、裁判で負けなければ補償が出ない
というので、福祉的な意味で全部厚労省が負けたのですが、これは医学的には少しも正しく
ないのです。そこのところをきちんとする。
 遺伝子も化学も今ものすごく進歩しました。私はこの前のとき少し触れたと思うのですが、
製品のあるロットに反応が出ているというのは、過去いろいろ見た中でいろいろあるのです。
私は具体的なことを言う立場ではありませんから言いませんが、そういう資料をずっと見て
いくことによって、感染症研究所は品質管理をラボでやっています。そういう所で出たデー
タと、どういうワクチンを接種された方にどのようなことが起きたかということをきめ細か
く照合しますと、はっきりした傾向といいますか、トレンドといいますか、それをつかまえ
ることは可能なのです。そうすると、どこでどういう品質管理の仕方をすればいいかという
のも出てくるのです。医学の証拠はそちらのほうで出るのであって、患者さんの段階ではた
ぶん出ません。
 ですからこれははっきりと、患者は救えということでやれということであるべきで、医学
的な証拠というのは、今ある最高度の技術を使って徹底してやるべきだ。裁判で負けた、そ
れなら仕様がないと言って厚労省は金を払う。これでは10年経っても、50年経っても問題
は全く解決しないのです。今ある技術を最高度に使って因果関係を調べるということ、それ
は品質管理の場でしかできないので、もちろん事前もそうだし、事が起きた後もそうですが、
そこのところをきちんとワクチンの品質をチェックしていく。
 日本は非常に高度なことを、それなりに非常に良い立場でやっているのは私もわかってい
ますが、さらにそれをやるためには、1例1例の症例から大事な情報を得るということだと
思うのです。患者救済ということと医学的証明は別だということをはっきりしておかないと、
それで終わってしまうのです、すべて今までどおりに。しかし、それではまずい。それだけ
は言っておきたいのです。
○加藤部会長 事務局の方、ただいまの件はノートしていただきたいと思います。
○黒岩委員 清沢先生にお伺いします。先ほど北澤委員からありました問題点ですが、感染
症サーベイランスの体制が不十分であるという認識、これを共有されるかどうかをまずお伺
いしたいのです。その上で、先生のおっしゃった、予防接種に関するエビデンスを整理でき
る人員と予算が必要であると考えるならば、そして、もし感染症サーベイランス体制が不十
分であるということであるならば、日本版ACIPを作る前に、そちらが先だという感じがす
るのですが、いかがでしょうか。
○清沢参考人 私は同時のほうがいいだろうと思います。副作用の問題やサーベイランスを
含めて、疫学調査は必要だろうと思うので、そういうことをきちんとした組織が管理しなが
らやっていくことが重要だろうと私は思っています。そういう意味で北澤委員と同じで、サ
ーベイランス事業は不足する部分の1つになっていると考えております。
○廣田委員 患者や保護者からの直接報告もできるようにと、副反応情報の件で北澤委員が
おっしゃいましたが、私もそれに賛成です。最初に齋藤先生がご発表になった米国の
VEARSも、患者や家族からの直接報告を認めております。これは、何か副反応の可能性が
出たときに、その報告件数をずっとたどると、いちばん接種率が伸びた頃以降でも、その報
告数が増えていないとか、やはり増えているとか、そういった関連を見るときにも有用です
ので、私は北澤委員のご意見に賛成です。
○岡部委員 その点は事務局がお答えになったほうが正確だと思うのですが、もし日本で被
害が起きた場合には、その被害を受けた保護者の方、あるいはそれを診た医師、どちらでも
報告できるようなシステムにはなっていると思います。
 付け加えますが、私は予防接種で被害があった場合の被害認定に関する審査を行っている
の予防接種健康被害審査認定分科会の委員長をやっているのですが、その中でいつでも議論
になるのは、救済ということを幅広く捉えるのが本来あるべき姿だと思うのですが、そこで
幅広く救済すると、それは予防接種が悪いという形になって、その後の司法判断等々にも結
びついていく。そのことで逆に、今度はきつい医学的な因果関係を問う。医学的な因果関係
を問うていくと、疑わしいものは一体どちらにしたらいいのだということになる。いつもそ
のような矛盾点を抱えているということがあるのです。先ほど倉田委員がおっしゃった、被
害の救済や補償をする場合と、医学的な因果関係を徹底的に追及していくというのは別に考
えていかないといけないのではないか、ということが今後の仕組みの中で絶対に必要な部分
だと思います。
○保坂委員 北澤委員のご提案には非常に賛成するところが多くて、ほとんど賛成なのです
が、?Fの副反応情報のことで、報告段階では因果関係の有無を問わず、患者さんや家族・保
護者からの直接の報告も受け入れるということになった場合に、あまりにも多くのことが予
防接種によるものではないかと思って報告が上がってくるということも、実は心配しており
ます。そこで、このことも含めて、国民に対して予防接種のことについてきちんと広報をし
っかりした上で、こういうシステムを運用していかないと混乱するのではないかと思います
ので、その点を今後ご配慮いただきたいと思います。
○廣田委員 全く保坂委員のおっしゃるとおりです。先ほどの齋藤先生のご報告でも、
VEARSでは年間3万件の報告があるということでした。
○加藤部会長 米国ではたくさんの報告があるということですが、ほかにはよろしいですか。
よろしいようです。3人の参考人又は委員の先生方、ありがとうございました。次のテーマ
に移ります。
 予防接種に関する情報提供についてのヒアリングです。まず、「予防接種に関する情報提
供」について結核感染症課よりご説明をいただきますが、時間の関係上10分以内でおまと
めいただきたいと思います。
○結核感染症課長 資料3-1に従いまして、「予防接種に関する情報提供の現状について」
説明いたします。
 まず1頁の下のほうです。予防接種法では、法第19条におきまして、国は、国民が正し
い理解の下に予防接種が受けられるよう、予防接種に関する知識の普及を図るものとされて
おります。また施行令で、予防接種の実施主体である市町村長は、予防接種の実施について
公告を行うほか、接種を受ける方や保護者の方に対して、接種期間や注意事項等についての
周知をするということになっております。さらに、実施規則で、あらかじめ被接種者に対し
て、効果及び副反応について、当該受ける方や保護者の方の理解を得られるように適切な説
明を行い、文書によって同意を得なければならない、このようなことが定められています。
 2頁です。実施要領(通知)でも、いまのことについて再度触れております。例えば、丸
12は同じことですが、丸3は、母子健康手帳の持参、費用等についても周知する。あるい
は、外国籍のお子さんが増えているということも含めて、英文等による周知等にも努めてい
ただくようにお願いしております。さらに、一類定期のものについては、やむを得ない場合
を除いて、個別通知で確実な周知をお願いしております。
 下のほうは、新型インフルエンザについて今予算事業で行っている接種に関する実施要綱
です。その中で、国、都道府県、市町村がどういう役割分担で広報していくかについて示し
ています。
 3頁です。具体的な事例として、国はホームページで情報提供を行っておりますし、Q&A
も作っています。また、啓発資料として、文科省と厚労省連名のパンフレットやポスターも
作っています。
 3頁の下のものは、新型インフルエンザのときのホームページですが、いろいろな情報が
あります。特に右側では、「ワクチン関連情報」という形でまとめています。また、それぞ
れの入口から入ってもワクチンのところにたどりつくことができるようにしています。
 次は4頁の上のほうです。母子健康手帳の後ろのほうに予防接種の記録を記載する欄があ
ります。右のほうには「その他の予防接種」という欄もありまして、予防接種法の定期接種
とそれ以外の任意接種に係るものについても、ここに記録していただけるようになっていま
す。また、4頁の下のほうにありますが、母子健康手帳の中に、予防接種に関する情報提供
を市町村にお願いしたいということで標準的情報を示しています。
 5頁です。感染研ではこのような形で予防接種に関する情報の提供も行っています。5頁
下は、「予防接種リサーチセンター」において、保護者あるいは従事者向けの小冊子が作ら
れ、いま配布しています。国等の取組みは以上です。
○加藤部会長 引き続いて、地方自治体における定期予防接種についての情報提供の取組み
方について、澁谷委員代理の金田代理委員から説明をいただきたいと存じます。
○金田代理人 特別資料は用意してありません。荒川区の場合、定期の予防接種については、
いま厚労省の方からお話があったような形で、基本的に定期予防接種は個別接種ですること
にしております。私どもの区ですと、生後2カ月のときに、乳幼児期にする予防接種全部に
ついての接種票、それから先ほどお話のあった「子どもの健康」等も一緒にセットで送付し
ております。ですから、基本的には個別にお送りしております。ホームページには当然全部
載せておりますが、区報には、ポリオの集団接種についてだけ出しています。学童になって
も、一度にたくさん送っても無理なので、学齢期になってからの予防接種はそれぞれ個別で
送るという中で、その中に、その時点での情報を周知しているところです。
○加藤部会長 続いて、定期接種以外のものについての情報提供の取組みについて、杉並保
健所健康推進課長の大澤章彦参考人より説明をお願いいたします。時間は10分ぐらいでお
願いいたします。
○大澤参考人 子宮頸がんワクチンが昨年承認、発売されましたが、杉並区では逸速く、中
学1年生の女子全員に全額補助で接種をすることを決めました。その2年前ぐらいから区議
会のほうでも、承認されたら速やかに対応してほしいという要望がありましたので、私ども
のほうでも、そういう会合がある度に状況等について調べました。
 そこでわかったことは、ウイルスによって子宮頸がんが引き起こされる、そしてワクチン
が世界100カ国以上で承認され、その効果も実証されているということについて、さまざ
まな立場の方があまりまだよくわかっていないということでした。今年2月に区長記者会見
で、平成22年度から中学校の女子に接種するということを発表したわけですが、まず学校
関係者、そして保護者の方がそのワクチンの有効性等について十分知っていただかなければ
いけないと考えました。そういうことで参考資料を付けております。
 平成22年2月に中学校の校長会に出向きまして、子宮頸がんとはという話、それからワ
クチン接種の状況について説明をいたしました。そのほかに、中学校のPTAの協議会に出
向いて同じような説明をいたしました。加えて、中学校の養護教諭の研究部会にも出向いて
同様の説明をして、子宮頸がんとその予防ワクチンについての知識を広めていただきました。
養護教諭の方の中にはいろいろな立場で養護教諭になっている方がいらっしゃって、看護師
の資格をお持ちの方もいらっしゃれば、そうでない資格をお持ちの方もいらっしゃる、力が
アンバランスだというようなこともありまして、養護教諭向けの研修会をこれまで2回行い
ました。
 次の頁を開いていただくと、区として政策決定をしたということですが、まず、接種まで
の間に十分な周知期間が必要であろうということで我々も計画を立てております。
 「中学入学お祝いワクチン」というチラシが付いていますが、これは中学校部会等で代表
を出していただいて保健所側と検討会を持ちまして、どうしたら保護者に有効に情報を伝え
られるかということで、入学式のときがいちばんいい。保護者会とかお子さんを通じてだと、
保護者になかなか情報が伝わらないということがありましたので、入学式のお知らせの中に、
まずこういう事業があると。子宮頸がんという病気があって、ワクチンで予防できる。そし
て、杉並区としては事業を今年度実施する、というようなことをまずお知らせしました。
 「中学1年生女子の保護者の方へ」ということでお知らせをしたのが5月末です。これに
つきましては、中学校入学のときにお知らせできたのが区立中学校だけなのです。区立中学
校に通っている生徒というのは、区の中で65%ぐらいしかありません。35%は私立の中学
校や区外の中学校に通っているということで、杉並区内にある私立の中学校の校長先生には
同様の書類を送付してお知らせしましたが、区外に通っている中1の方には情報が行かない
という部分がございますので、5月末に「中学1年生女子の保護者の方へ」、それから次の
「子宮頸がんから命を守ろう」というチラシを出しました。
 また、保護者向けの講演会を6月20日に行うということで、そのチラシを1,600人分一
斉に配りました。ただ、6月20日の講演会については、当初はかなりの数来ていただける
のではないかということで申込み制にしたのですが、申込み状況が非常に悪くて、電話がか
かってきたのが15人ぐらいということで、関心があるのか、それとも全額補助ということ
で、始まれば打てばいいと考えているのか。その辺りの状況は始まってみないとわからない
という状況があります。私どもとしましては、ただワクチンを打つだけではなくて、子宮頸
がんやそのワクチンの有効性等について十分知っていただく。また、それを二十歳からのが
ん検診にもつなげていきたいと考えております。
 もう1つは教育委員会との絡みです。子宮頸がんについては、性教育という部分もかなり
重要なファクターになっているのですが、中学校1年生の段階で、性教育の中ですべてのこ
とを生徒に教えることは非常に難しいという判断でした。私どもの立場としては、健康とい
うことで、将来健康を守る、がんにならない、がんで命を落とさない。命を落とさないまで
も、出産ができなくなったり、後遺症が残ったりしないようにするために、女性として健康
な生活を送れるようにというような立場で周知をしたいと考えております。私どもとしては、
いまのところ、7月20日ぐらいから接種を開始するという予定です。
○加藤部会長 続いて、リスクコミュニケーションの専門のお立場からの説明をお願いしま
す。5人目の参考人として、慶應義塾大学商学部准教授である吉川肇子氏にご意見を伺いま
す。
○吉川参考人 今日は「予防接種の情報提供について」ということで事務局からお題をいた
だきまして、心理学が私の専門ですので、心理学的な立場からどのような情報提供手法があ
るか、ということについてお話を申し上げたいと思います。ただし、これはお断りしておき
たいと思うのですが、心理学にはたくさんのコミュニケーション技術があります。これはこ
のあと順次ご紹介することになるわけですが、コミュニケーション技術というのはそれ自体
無色透明なもので、良いようにも悪いようにも使える。こう言うと語弊がありますが、悪意
を持って使えば悪意のある使い方ができますし、良い使い方をすれば良い使い方ができると
いうものです。それは理解してお話を聞いていただきたいと思います。
 子どもを対象とした予防接種の情報提供について、「心理屋」からどのようなことが言え
るかと考えてみますと、その強みは、対象が非常に限定的だということです。お子さん自体
にお話ができるわけではありませんので、その保護者を対象にすることになるかと思うので
す。ただ、保護者といいましても、いわゆる一般国民にアクセスするのと違いまして、アク
セスする機会は比較的限定的で、しかも数が多いというところがあるのかなと思います。例
えば保健所とか小児科とか育児雑誌などは、その1つの例であるということができるかなと
思います。
 この分野に関するリスクコミュニケーションの研究を網羅的に見てみました。比較的有利
な状況もあるのですが、過去の研究を見てみますと、いくつかこの辺が困難な点だという指
摘があります。1つは、小児科に対する信頼です。一般的にご両親の信頼は高いのですが、
信頼していない親御さんが一定数います。これは数が減りませんので、それをどうするかと
いうのは問題点として指摘されているところです。
 パンフレットのようなものは諸外国でも配られているのですが、基本的には口頭での説明
を希望されていることが多いのです。ただ、実際には注射する直前に話をすることになりま
すので、10秒程度の説明しか行われていなくて、これは短いのではないかという指摘があ
ります。それから、これも海外の研究なのですが、わかりやすいパンフレットというのは基
本的に好意的に受け取られているのですが、パンフレットで両親の理解度が上がるわけでは
ないということも指摘されていて、これは今後考えていく必要があるかと思います。
 大雑把にまとめてみますと、大体のレビューなのですが、紙媒体の啓発では限界があるの
ではないかと私自身は考えていて、接種直前というかその以前というか、その前の医療従事
者の話し方や情報提供手法を検討する必要性があるのではないかと思います。
 「強み」を利用した上で、有望と思われる手法についてお話します。「集団討議法」が基
本的には有効かなと思われます。なぜかというと、比較的親御さんが集まる機会が多いとい
うこと。この研究は非常に古く、第2次世界大戦中に行われた研究なのですが、その後繰り
返して有効性が確認されているので、非常にお勧めできるかなと思います。
 どういうことをしているかというと、元の研究は3つの実験からなっています。何をして
いるかというと、母親に、子どもに肝油を与たり、内臓を食べることが栄養上非常によろし
いというようなことを普及啓発するのに、どういう方法がいいかということでやっているの
です。細かい数値は見て頂かなくてもわかるのですが、要するに何を言っているかというと、
例えば専門家が、子どもに肝油を与えることは良いことですよとか、内臓を食べることは栄
養上よろしいというふうに講義をするよりも、母親同士で話し合って決めてもらったほうが
実行率が非常に高く、しかも、それは長期にわたって維持されるという研究結果なのです。
 その理由は何かということなのですが、この研究結果を支持する2つの理論的な背景があ
ります。1つは「手続き公正」です。これは公衆衛生の話に限らず、発言の機会があると、
参加者の満足や公正感が高まるという理論です。直感的には自分の意見が決定に反映される
と満足度が高まりそうなのですが、それは反映されなくても必ずしもよくて、意見を言う機
会があることが非常に重要だということです。
 もう1つ「合理的行為の理論」というのがあります。これは人間の態度、考え方と実際の
行動とは意外と連関がない。直接には影響がなくて、態度を測っても行動に結びつかない。
そのことを説明するのに何が影響するかを調べてみると、実は、周りの人がどうしているか
が非常に重要だという理論なのです。
 簡単な絵を描きましたが、行動に対する態度は行動意図にどう影響しているかというと、
周りの人がどうしているか、あるいは周りの人がどうすべきだとその人は思っているかとい
う主観的規範が、行動を決めるときに考慮しなければいけないというところで1つは重要で
ある。つまり、周りの人がどう思っているか、みんなはどう考えているかということも考慮
しなければいけないということがこの理論から言えるかと思います。
 では、専門家の話を必ずしも聞いていなくて、母親同士で話をしているのに何で実行率が
高くなるのかということです。関連して「接種理論」という理論があります。接種理論とい
うのは、たぶん医学の予防接種と同じ仕組みなのですが、あらかじめ弱い反論を聞かせてお
くと説得されにくくなるということなのです。何を言っているかというと、みんながこれは
当たり前だとか、当然だというように、自明の理に近いと思っている信念というのは反論に
非常に弱いのです。それに対して、あらかじめ何か反論を聞かせておくと、なかなか態度が
変容しにくくなるというのがこの理論の話です。
 例えば、リサイクルすることは環境によいと多くの日本人はいま思っていると思うのです
が、これはある意味自明の理です。ところが、数年前のベストセラーにあるように、リサイ
クルすることがかえって負担をかけているというような論者がいると、「そうか」というこ
とで、非常に容易にみんなの意見が変わりやすいわけです。ところがその前に、「ペットボ
トルをリサイクルするのには製造単価の4倍近くの費用がかかると言う人がいます」という
ような弱い反論をあらかじめ聞かせておくと、リサイクルがかえって環境に負担をかけてい
るというような論者が現れても、そうやすやすとは意見変化をしなくなるという理論です。
 これがなぜ重要かというと、何でそういう仕組みが起こるのか、予防接種的なことが起こ
るのかというと、あらかじめ弱い反論を聞くとか、反論があるということを知っておくと、
その人たちは心の中で何回か意見に反論したり、自分で考えたりという自発的な思考をして
いるはずなのです。それは自分の中で反芻するということなのですが、そういうことが先ほ
どの、討議したほうが実行率が高いということに影響していると思われます。
 実際、自発的思考をどういうふうに誘発しているかということなのですが、例えば、先ほ
ど言ったような反論もあらかじめ伝ておく。それから、修辞疑問文をメッセージに入れると
いうというような方法があります。例えば、こういう言い方がいいかどうか分かりませんが、
「予防接種をしなくても、一生はしかにかからないでいられるでしょうか」と言うことで、
その問題について個人の中で考えるようになるわけです。そのことが、この問題に対する認
識も高めるし、実際の実行率を高くする。あるいは、次に話すことは何であるかというテー
マについて事前予告をするというようなことも、この手法の1つとして考えられます。
 話合いの手法として実際にどういうことがあるかといいますと、先ほど紹介した集団討議
法の有効性を明らかにした研究は、その時点ではその技法の応用までは考えられていません
でした。実際に、いま世の中でどういう方法が使われているかというと、オピニオン・リー
ダーと呼ばれる方、例えば親御さんのグループの中でも意見をはっきり言われる方とか、情
報をたくさん持っておられる方を中心に話合いをしてもらうやり方が多いと思います。
 この技法の背景となっている理論は、「マス・コミュニケーションの影響の2段の流れ」
です。マス・メディアというのは、人々の行動には直接影響を与えなくて、オピニオン・リ
ーダーを通して影響を与えるというものなのです。実際にこれが皆さんの日常でどのように
使われているかというと、広告では物は売れないわけですが、店頭販売の際に、「広告で宣
伝していた○○ですよ」と言うと「ああ、そうか」と思って買うというのはまさにそういう
例です。それから、雑誌でしばしば主婦モニターが新商品を使ってみて、こうでしたという
ようなレポートがありますが、これは実際にオピニオン・リーダーを使った例であるという
ことができます。
 これも大事なことだと思うのですが、マスコミというのは直感的、素人的には非常に影響
があると思われるのですが、実は口コミの影響というのが非常に大きいのです。実際に情報
伝達の速度も速いし、広範囲に伝わるので、こういう手法は有効だと考えられます。
 具体的な例を提案したわけですが、実際の予防接種に関するリスクコミュニケーションの
例を最近の例でいくつか見てみますと、3つ重要な研究があるかなと思います。1つは典型
的な失敗例ですが、MMRワクチンについて英国で実際に起きた騒動です。実際に接種率が
下がったということですが、逆に言うと、これに学ぶべき失敗の3つの教訓があるかと思わ
れます。
 1つは、2年前にBSE問題が起きて、政府の信頼が非常に低下していたという状況。2つ
目、これは非常に大事だと思うのですが、科学的に証拠があるということは大事なのですが、
実際に掲載された科学誌は非常に権威がある雑誌でしたので、それが逆に騒動を大きくした
ということです。3つめとして、これは予防接種に限らないと思うのですが、どんな病気で
あっても、病気にかかるというのが非常に不合理というか、理性的には納得できないもので
すが、そこに妥当に見えるような説明を与えたというところに失敗の原因があったかなと思
っています。その3つの失敗の教訓からは学ぶべきではないかと思います。
 2つめの重要な研究として、子どもにワクチンを受けさせるかどうかについて、シナリオ
実験をしたものがあります。つまり、こういう状況で、あなたなら子どもにワクチンを受け
させますかという設定のシナリオで問うと、オミッション・バイアスが見られたという研究
があって、それもとても重要かと思っています。「オミッション・バイアス」というのは、
後悔の大きさを比べたときに、行動するほうが、不行動、つまり行動しなかったときの後悔
よりも大きいというものです。特に新規のワクチンについてはオミッション・バイアスが大
きいという研究があるので、新しいワクチンについては、こういうバイアスがあるというこ
とを前提にコミュニケーション戦略を考えたほうがいいかなと思います。
 3つめの研究として、周りの人がどうしているかということは非常に重要だと先ほど言っ
たのですが、これを確認した研究もあります。「バンドワゴン効果」と言っていますが、ほ
かの人はみんな受けていますとか、誰も受けさせていますと言うと接種率が向上する。特に、
他人に対して利他的な人、これは心理学的に測定することができるのですが、そういう人に
対しては、誰も受けさせていますというような言い方が効果的だったという研究がありまし
て、コミュニケーション手法の1つの参考になるかと思ってご紹介いたしました。お約束の
15分が経ちました。ちょっと早口でしたが、以上コミュニケーション戦略についてお話い
たしました。
○加藤部会長 ただいまの事務方のご説明、それから金田代理委員、大澤参考人、吉川参考
人のプレゼンテーションについて、各委員から何かご意見、ご質問がございましたらお受け
いたします。
○黒岩委員 大澤さんにお伺いしたいのです。杉並区で子宮頸がんワクチンについて決めて
実施するというのは、非常に画期的だと思うのですが、副反応の可能性とか、そういうこと
に対する説明、それから、万が一事故が起きたときにどうするかというようなことについて
は、何か話し合われたのでしょうか。
○大澤参考人 副反応について、我々の調査の中では、通常のワクチン接種と同様程度、あ
るいはそれよりも安全性が高いと言われていますが、最終的に、7月に接種する場合に、接
種に必要な書類を保護者の皆さんにお送りするわけですが、そこに副反応のリスクについて
は十分に明記する予定です。
 それと、6月10日に区の医師会へも、内科と小児科の先生に対する研修会を開かせてい
ただきました。子宮頸がんというと婦人科の領域ですが、ワクチンを打つということになる
と、中1ですと内科や小児科で打つことが多い。内科、小児科の先生方については専門の範
疇外であるということがありますので、副反応が起きたときのリスクと、そのときの対応等
についても十分に説明していただいたところです。
○岩本委員 吉川先生に質問があります。ワクチンのリスクコミュニケーションを考えた場
合に、ある特定のリスクコミュニケーションをしたときの評価方法は、ワクチンが実際に接
種された数とか、そういうものしかないのかというのが1つめの質問です。
 2つ目は、例えばリスクコミュニケーションをするのに、例えば座長の加藤達夫先生がツ
イッターをやるとか、そういう発信の仕方に関してはどうお考えですか。
○吉川参考人 まず、全体にお話をしておきたいと思うのです。ワクチンのリスクコミュニ
ケーションについては、この課題をいただいたので再度きちんと調べてみましたが、心理学
者による研究はあまりありません。なぜかというと、心理学的には、あまり新しい技術を使
ってないというか、新しい発見がないからなのです。ですから、コミュニケーションの効果
をどう見るかについては、それをやりたい方、例えばお医者様がされるのであれば「接種率
向上」という形で見るということになると思います。心理学者が何に興味を持つかというと、
実際の接種率向上でも測るかもしれないし、情報のわかりやすさでも測るかもしれないので
す。従属変数を特に何で取るべきというようなことは決められないということです。
 ツイッターは確かに情報発信の手段としていいかもしれませんが、私は懐疑的です。口コ
ミは非常に怖いと思っていますので、公的な機関がそういうものに頼るのはどうかなと考え
ています。これは私の意見です。
○飯沼委員 大澤さんの大変良い話で、これが全国に広がればと思います。国がやらないな
ら各自治体がやる、というふうになるかどうかはわかりませんが、お聞きしたいことは、こ
ういうことをやるには、首長の指導力とか先見性が非常に大事だと思うのですが、どの辺り
からこういう話が出てきたかということが1点。
 それから、相当なお金がかかると思いますが、トータルでどのくらいの予算を用意されて、
それが区のトータルの予算の何パーセントになるか。例えば30%の接種率だったら、区の
トータルの予算の何パーセントになるかという具体的なお話を、できたらしていただきたい
のです。
○大澤参考人 まず1点目ですが、先ほどもお話しましたように、議会等でも承認前から、
発売されたら速やかに対応をとるようにという要望がございました。そして12月に発売で
したので、行政としては予算の枠組みは既に決まっておりますので、当初予算の中に入って
おりませんでした。最終的には区長査定で、区長が英断をして予算配当したということです。
 トータルの予算としては十分に取れていませんで2,000万円。接種率が25%ぐらいでぎ
りぎりいっぱいになってしまうと思います。接種率が高くなれば補正等を用意して、それで
対応するということで考えております。
○飯沼委員 杉並区の人口はどのぐらいですか。
○大澤参考人 人口は53万人です。
○飯沼委員 対象者は何人ですか。
○大澤参考人 1,600人です。
○山川委員 せっかくの事業のリスク面についてお伺いするのも少しためらうのですが、区
の事業としてお始めになって、もし万が一、このワクチン接種に由来する事故が起こった場
合には、どうすると考えておられるのでしょうか。
○大澤参考人 いまのところ任意接種ですので、任意接種における一般的な救済措置という
ことで考えてはおります。
○山川委員 「入学のお祝いワクチン」ということで区が勧奨して行われた場合に、完全に
任意接種なのですか。任意接種だから、起こったら「ソーリー」ということで済むと思って
おられますか。あるいは製薬メーカーのグラクソ・スミスクラインの責任だ、そちらに言っ
てください、というふうにされるのですか。
○大澤参考人 その辺りは難しい問題だと思うのですが、製薬会社だけの責任ということに
はできないと思ってはおります。ただ、区としてどのような対応がとれるかというのは、ま
だきちんと話合いがついていないというところです。
○加藤部会長 それが現状ということですが、よろしいですか。
○倉田委員 この遺伝子型は16と18で、日本で多い31、33、52と58型とは違います。
そういうものをクロスで防げるという保証はかなり低い。それはきちんと説明しておくべき
ですね。ここには書いてありますが、被接種者にそれは説明してありますか。そして、接種
する側の先生方はみんな、現在の日本のものと遺伝子のタイプが違うということをご存じの
上でそれをやっているのでしょうね。
○大澤参考人 16型、18型のパーセンテージが海外に比べて少ないということはお話して
おりますし、100%このワクチンで子宮頸がんを防げるというわけではない、ということは
きちんと説明しております。それから、二十歳になったら子宮頸がんの検診を受けるという
ことをセットでお話をしていきたいと考えております。
○倉田委員 日本ではこういうものがメインです、しかし、今これで防げるのは16と18
です、ということをきちんと書いておくべきでしょう。親切に言うなら、きちんとした遺伝
子型の論文が日本にいくつもありますし。それも10年、15年したらわかりませんが、現在
は、あるいは今までのわずかな経験ではというだけの話です。そこをはっきりしておかない
と、将来のワクチンの問題、がんに対するほかのワクチンが出来たときにいろいろなところ
で起用されるので、これは注意して、現在わかっている科学的事実を述べておくべきだと私
は思います。
○加藤部会長 ほかにご意見はありませんか。では次にいきましょう。続いて、ワクチンを
接種する立場、またワクチン接種を受ける立場、メディアの立場からご説明をいただきます。
まずワクチンを接種する立場から保坂委員よりご説明をいただきますが、5分程度でお願い
いたします。
○保坂委員 まず私が感じますことは、資料3-1で結核感染症課長からご説明いただきまし
たけれども、予防接種についての情報提供は予防接種法で、まず国がやる、それから市町村
がやる、それから、接種する接種者がやるということに決められていますし、それが筋であ
ろうと思います。ただ、接種する立場から申し上げますと、国がやっている知識の普及につ
いて、本日いただいた資料を拝見しますと、ホームページ等に載せているという、非常に受
け身である。ホームページをのぞいた人には情報が提供できるけれども、ホームページをの
ぞくということをしない人には、情報はチラシ等でちょっと提供されているだけであるとい
うことについて、非常に残念に思います。ですから、先ほどリスクコミュニケーションのお
話もございましたが、どういう手段を使ったら国民の皆さんにより理解していただけるかと
いうことを考えて、情報提供をしていただきたいというのが現場のいちばん強い希望です。
 ホームページのようなものを作るとしても、googleで「予防接種」と調べたら、そこの
ページにつながって、そこに細かい活字ではない、非常にわかりやすいもの、漫画のような
ものであっても何であっても、いろいろな知識の幅の国民が見て理解できる、そういう広報
手段を是非とっていただきたいのです。
 それから、先ほど副反応のお話もございましたが、いままでの予防接種行政、日本の国の
中で不幸な歴史があったために、予防接種によって被害を受けた方が救済を受けられない、
というようなことがあった反面、予防接種に対する間違った危険意識が国民の間に広がった
ということがあったわけですが、そういうことをきちんと整理していくことも、情報伝達の
中で非常に大切なことであろうと考えております。
 本日は資料を持ってまいりました。予防接種法の中で、情報提供について決められている
地方自治体と現場が、どういうふうに実際にやっているかということを、皆様はたぶんご存
じないと思うので持って来た資料です。最初のほうは東京都八王子市、あとのほうには横浜
市のものが付いています。最初のほうはパンフレット等で、これが市町村等が行う予防接種
法の広報のいちばん基になっているものです。ほとんどの自治体がこういうパンフレット等
を作って、接種対象の方の保護者に向けて広報して、昔はこれを、ただその辺に置いてとい
うことだったようですが、最近はきちっと接種対象者の所に個別に送り、啓発というか広報
しているところだと思います。
 7頁から見ていただくと、ここに予防接種の予診票というものを付けています。この予診
票のいちばん上の質問事項に、この予防接種について市から配られている説明書を読みまし
たかという項目があります。予防接種にいらっしゃると、この紙を書いていただきます。あ
るいは自宅で書いてきていただくこともありますが、それで私どもの所に来たときに、まず
現場で熱を測り、記入項目に漏れがないかどうかの確認を受付でします。その後に接種者の
接種をする医師の所に患者さんと保護者が来るのですが、そこで「読みましたか」という質
問に対して「いいえ」にマルが付いていた人には、読んでもらわないと困るのです、読んで
ない人に全部説明するわけにいかないのですと、かなり大まかなことでやっています。大抵
の方はそう言われたくないものですから、読んでいなくても「はい」にマルを付けてきます。
あとチェックのところで問題がなければ、「何か気になることがありますか」とお尋ねし、
予防接種を希望するか聞いて、下から2番目の段の保護者記入欄の「希望します」にこちら
でマルを付け、サインは先にしておいていただく。そういう経過でやっています。もちろん、
それから診察をします。
 先ほどの吉川先生のお話にもありましたが、現実には10秒程度の説明しか行われていな
いのは事実です。これを改善するとすれば、大体、現在は1時間で20人程度やっています
が、それを1人に15分程度かければ、丁寧な説明と診察をして接種することは可能だと思
いますけれど、現在の状況では経済的にも何もできない状況ですので、この辺のところをど
ういうふうにしていくかは、これからの課題かと思っています。
 同じもので横浜市のものが後ろに付いています。横浜市は1冊にまとめた「予防接種のし
おり」というのが毎年作られ、これがその年齢の方に年の初めに送られることになっている
ようです。以上です。
○加藤部会長 保坂先生、ありがとうございました。引き続きワクチンを受ける立場の方々
から、ご説明をいただきたいと存じます。6人目の参考人として畑秀二氏、「SSPE青空の
会」でございます。また古賀真子氏、NPO法人「日本消費者連盟運営委員/ワクチントー
ク事務局」でございます。それでは、まず畑秀二氏、よろしくお願いします。
○畑参考人 ご紹介ありがとうございました。「SSPE青空の会」の畑でございます。この
SSPEというのは亜急性硬化性全脳炎という、かなり重篤な病気ですが、この子供を持つ親
の会です。資料の最初に2009.6.16と書いてありますが、これは間違いです。1年前から我々
親の気持といいますか、変わっていないということで2009になりました。昨年度から実は
麻しんに対しては、かなり劇的に発症率が減ったという状況はあるのですが、我々の会に新
たに入会する子ども、亡くなっていく子ども、この状況は去年も今もまだ変わっていないと
いうことで、2009とつい書いてしまいました。
 我々の思いですが、麻疹にさえ罹らなければこんなことにならなかったと。現状を言いま
すと、24時間全介護生活をして5年から15年ぐらい、平均10年ぐらいでみんな亡くなっ
ていきます。そういう状況の中でいろいろな治療法が多少は検討されていますが、具体的に
いいものがなくて治せないというのが現状です。治せないなら、少なくとも病気は無くした
いと、実際に無くすことができるという現実がある以上、それを実施してもらいたいという
のが我々の思いです。それを可能にする麻疹の予防接種ということを徹底してもらいたいと
いう思いです。
 予防接種に対する世間の認識はどうか、我々が感じているところを書いたのをここに挙げ
ています。予防接種というのは感染予防のための手段であって、受け入れるか否かは個人の
責任だ。怖い感染症、インフルエンザのようなものだったら受けるけども、感染リスクが少
なければ受けなくてもいいのではないか、副作用も心配だしと。特に麻疹のようなものは治
るものであって受けなくても構わないと、そういったようなことが一般には思われているの
ではないかと思います。実施サイドのほうも、今日もいろいろ議論がありますけども、副作
用、副反応の責任もあって、なかなか強制的な施策はとりづらい状況で、今日のような議論
が続いていると思います。
 そういうものでいいのだろうかというのが我々の思いですが、予防接種の意義を我々はど
う考えているかということで、まずここの写真を見ていただきたいと思います。皆さんの資
料には出ていませんが、3人ほど前に写っていて全部我々の会の会員です。真ん中の女性は
英国人を父に持つ日本で生まれた女性で、お父さんが後ろのほうに写っています。14歳で
発症して一昨年、31歳で亡くなられました。なぜこういうふうになったかということで、
親のほうから聞く意見ですが、もしこの子が英国で育っていたら人生は全然変わったのでは
ないか。幸せな人生を送っていたはずである。なぜならば、英国では麻しんは流行しておら
ず、麻しん流行国の日本で生まれ育ったからこういう悲劇になってしまった。日本に来たこ
とが悲劇だったということで、その時、日本に来たことを悔やんでおられます。
 ここで言いたいことは何かというと、予防接種というのは単なる個人の病気の予防手段で
はないと、麻しんのような病気の場合は考えています。ウイルスが原因の重篤な病気を無く
して、子どもを育てる安全な環境を作る手段、そのための国民の責務であると考えています。
 ここで、安全な環境ということを例でお話したいのですが、よく子どもを砂場で遊ばせま
す。そこに数百万粒の砂が入っているとします。その中に1本だけ触わると絶対死んでしま
う毒針が入っているとします。ほとんどの人は、その砂場で遊んでいても、それに触わる可
能性は確率的には非常に低いです。だけど、もし触わってしまったらその子どもは確実に死
ぬとなった場合に、その砂場で皆さんの子どもを遊ばせるでしょうか。そういうことをさせ
るでしょうか。確率的に言えば、SSPEというのは200万人に1人ぐらいしか罹りません。
そういう非常に確率の少ない病気だけども、もしなれば確実にそういうことになるような悲
劇があるというのであれば、では何をするかといったら、その砂場からその針をなくすこと
をするというのが、当然の国民の責任だと思います。そうすることで、その次に後から遊び
に来る子ども、たまたま自分の子どもは何も被害がなかったとしても、また次に来る子ども
がその針に触わって死ぬかもわからない。針を無くすことをやることが予防接種の意義だと
いうふうに考えています。
 要は、予防接種を受けないということは、自分自身がウイルスの媒介となってウイルスを
生き延ばせて、SSPEを発症させる環境づくりに加担する。将来の子どものSSPEの犯人に
我々もなっている、ということだと思います。そういうことがないように、ここに「責務」
という言い方を我々はしています。
 SSPEの具体的に伝えるべき情報ということですが、SSPEのこういう非常に厳しい状況
の実態、希少であるけれども、もしなったら非常に重篤であるという実態、これが世の中に
は全然伝わっていないということ。確率論で、非常に少ないから受けなくてもいいのではな
いかという話ではなくて、もしなったら無限大の悲劇があるということ。そういうことをし
っかり伝えていきたいと思っています。
 国別に見れば、既に無くしている国がある、無い状態になっている国があるということ。
もう1つ事実として、副反応のリスク、それとSSPEの重篤度、それを比較したときにど
っちのほうが厳しいかということ。こういうことを伝えていただきたいと思っています。
MRワクチンにも副反応のリスクが多少あると思います。だけどSSPEの重篤度に比べれば、
それから将来の子どものことを考えれば、それぐらいはカバーできるのではないかというの
が我々の思いです。
 我々としては、ここで「伝えるべき相手」ということで、予防接種の対象者だけでなく、
予防接種をするということの意味を、予防接種は命を守る日本の「文化」であると、そうい
う大局的な意識で、将来に向けた考え方で「全国民」に対して伝えていっていただきたい。
施策を行う方々に対しても、することのリスクより、しない結果のリスク、次世代へのSSPE
というものへの責任を考えたことをやっていただくことを伝えていただきたいと思ってい
ます。
 最後に、お願いしたいこととして、流行のない、流行がかなり減ってきた現状では、表向
きの「勧奨」では徹底しないという状況がありますが、ここで「実質、強制になる施策」を
望みたいということです。先ほど清沢先生からもいろいろなアイデアがありましたけれども、
私どもも何かを考えたいと思っています。「全国共通の接種履歴記録のしくみなど」と割と
マイナーなことを書いていますが、例えば健康保険証の裏書きなどに、やったかどうかがわ
かるように「見える化」する、そんなことをやっていただければと思っています。
 ただ、こういうアイデアということよりも、今日いちばんお伝えしたかったことというの
は、予防接種の意味が、我々みたいな者からすれば人類とウイルスとの戦いで、絶対無くさ
なければいけないものであるということ。天然痘撲滅の例に見るように、無くなれば将来、
予防接種自体もしなくてよくなるわけです。副反応の問題も考えなくてよくなるわけです、
無くなればいいわけですから。無くなった時点では予防接種なんか要らないわけですから、
そういう時代を早く作っていただきたい。そういう責務を早く作ることに精を出さずに、今
の現状で副反応をどうしようかということを長々と議論していくことに対しては、我々は非
常に忸怩たる思いをしているところでございます。以上で終わります。ありがとうございま
した。
○加藤部会長 畑参考人、ありがとうございました。引き続き先ほどご紹介した古賀参考人
にお願いします。時間は約7分程度でよろしくお願いします。
○古賀参考人 本日、予防接種に関する情報提供のあり方について、接種を受ける側からの
意見ということで、お呼びいただきましてありがとうございます。ワクチントーク事務局、
それから日本消費者連名の運営委員をしております古賀と申します。「ワクチントーク事務
局」というのは1990年8月、当時、集団接種されていたインフルエンザの接種率が20%
まで下がったときに、ワクチンについて本当に必要かどうか、安全なのか、副作用について
どうなのかという立場から、医師、研究者、それから自治体の職員、保護者、被害者の方が
中心になって作った組織です。
 「接種を受ける立場から知りたい情報」ということですが、私たちは、正しい情報、必要
な情報、わかりやすい情報というものを求めています。これはごくごく当たり前のことです。
そして私たちが今までしてきたのは、予防接種制度の改善、被害者救済の運動をしてきまし
た。その立場から今回の新型インフルエンザの問題をもとに、情報提供について私たちがど
ういったものを求めているかを、お話したいと思います。
 正しい情報というのは大変難しいと思うのですが、たぶん接種を推進したい人、接種に対
して慎重に考えたい人の分水嶺というものが、どこにあるかということを考えたときに、こ
の予防接種というのが対国家的な制度であるために、社会機能維持や社会防衛の公的な要請
というものと、ワクチンで病気を防ぐという個人防衛の考え方、この2つのことが重要な点
になり、これについての考え方は、推進する方も私たちのように慎重な者も基本的に同じよ
うな立場に立っていると思います。しかしながら、本来、個人に介入しながら公益実現のた
めに国家が補償することが立前のはずであったこの予防接種制度について、不可避的に生じ
た副作用問題の対処に歴史的に問題があったことが、この推進論と慎重論を分けてきた根本
的な原因だと思います。
 いま、非常に公益とか新ワクチンの必要性が強調されて、接種推進の流れが作られつつあ
るように見受けられますけれども、うつる病気をどこまで防げるのか、防ぐべきか、防ぐ必
要があるのかという根本的な議論がされているとは、私たち接種を受ける立場からは言えな
いと、残念ながら言わざるを得ません。情報提供によるワクチンの価値を国民が正しく判断
できるように、正しい情報、確率性の高い情報を提供していくと現政権も言っていますが、
この正しいと判断するのはどこかということから、まずもって非常に問題の発生があると思
っています。
 今回の制度改正について、私たちは単純に3つの疑問を持っています。1つは、本当にワ
クチン行政は20年遅れているのか。新規ワクチン、リニューアルワクチンが本当に必要な
のか。先ほど子宮頸がんワクチンの話が出ましたけれども、これについてもし時間があれば
あとでお話をしたいと思います。
 2つ目は、今回の予防接種法改正の意味というものは何なのか。昨年の新型インフルエン
ザを私たちは騒動と呼んでいますけれども、その新型インフルエンザの特措法というのは、
非常に問題点のある法律だったと思っていますので、これについても後ほど申し上げたいと
思っています。
 3つ目は、「防げる」病気を防ぐことがどこまで可能かということ。これは小児科学会の
先生方が、まず防げる病気を防ぐことが基本だとおっしゃっていることと、真っ向から対立
してしまう形になるのですが、実際、私たちは防げる病気を防ぐことは可能だということに
ついても、疑問を挟んでいます。
 「正しい情報」であることへの「不信の原因」を、果たして取り除くことができるのでし
ょうか。現状ワクチンについても、市民運動レベルでも歴史的にいろいろ議論してまいりま
した。私たちのワクチンの問題については、「いらないワクチン」を強制されないという運
動の歴史があります。本当にその病気があるのか、ワクチンが有効なのか、安全なのか、副
作用の情報公開はされているのかということが、常にこれに付きまとってきた問題です。
 副作用の強調によって20年遅れたのではなく、救済がされないこと、多年を要したこと
への不信感が根強くあります。4大訴訟といわれている予防接種の被害訴訟でも、26年以
上の年月がかかっており、また近時ではMMR訴訟では13年の長きにわたる司法救済への
長い道程という歴史があります。
 これらのワクチンが一旦中止された場合にも、原因や評価がうやむやにされ、また忘れた
ころに必要性が強調されて復活するという歴史が残念ながらあります。これはインフルエン
ザやMR、日脳など、一緒くたに言ってしまうのではなく本当に多くの議論を必要とします
が、今回、時間がないので例を挙げるに止めます。
 「問題が生じても存続させる体質への疑問」があり、これはMMRワクチンの教訓という
ふうに私たちは思っています。4年にわたり、初期から副作用が多発したにもかかわらず、
長らくMMRワクチンが接種され続けたわけです。それを存続させた体質への非常に長い疑
問があり、今回、本を持って来ましたけれども、そういったことが不信の原因として根底に
あると思います。利益相反と利益誘導は先ほど北澤委員がおっしゃったので割愛します。
 一度導入されるとやめられない、止めたこと、やらないことによる責任を問われることを
恐れる「事なかれ官僚主義」で、これはちょっときつい言葉ですけれども、そういうところ
も無きにしも非ずということを、私たちは長年の省庁とのやり取りで感じています。
 今回、新型インフルエンザ対策を振り返って、受ける立場から必要な情報とは何だったの
かを考えてみたいと思います。感染者の人権侵害はなかったかという問題ですが、初期の情
報公開のあり方については、6月10日に新型インフルエンザについての総括の会議がされ
たようで、この点については発言を差し控えますけれども、今回、ワクチンの副作用情報は
私は公開されたと考えています。ただ、公開されたけれども、それが政策に活用され、反映
されたかについては非常に疑問だと思っています。
 接種をいろいろ決めたりする段階の昨年の問題ですが、接種の優先順位について合理的説
明があったか、季節性と新型の違いは正しく説明されたか、このようなことが非常に問題で
あったと思っています。ここは印刷が見えていなくて恐縮ですが、私たちが本当に知りたい
情報は何かというと、新型ワクチンの有効性についての情報は、今後、公開されるのかどう
かということです。公的接種にまでするということが、いま議論されていると思いますけれ
ども、本当にこのワクチンが感染症対策に有効であるかについて、今、まだ情報としてはな
いと考えています。
 ところが、後ろに資料を付けましたので見ていただきたいのですが、IASRの速報を2010
年6月3日に出していただきました。鹿児島県の南東にある知名町という所で新型インフル
エンザの集団発生が認められました。この知名町というのは人口6,000人ぐらいの大変小さ
な町ですが、ここで10検体中、9検体から新型インフルエンザウイルスの遺伝子が検出さ
れ、年齢層は6~56歳と幅があります。表を添付していただけなかったのですが、56歳の
方以外は全員が新型インフルエンザワクチンを接種し、季節性のインフルエンザワクチンを
接種した方も1名いました。こうしたインフルエンザワクチンを接種しながら、実際に感染
してしまったという情報が出ています。
 この情報は、新型ワクチンの効果について、分析可能な初めての情報と思われるのですが、
対象集団のワクチン接種率や罹患率がわからないのと、罹患率や町民全体の接種率の調査公
開は非常に難しいと思われます。ここの子どもたちは大体6~12歳までの子どもたちです
ので、小中学校の接種率なら把握可能だと思われます。そういう情報が私たちはほしいし、
本当にこの新型インフルエンザワクチンが必要かどうか、有効性も含めて判断するためには、
そういった情報こそ今後も公開し、情報提供してほしいと思っています。
 新型インフルエンザワクチン接種の副作用情報の報告が、政策に活かされたかどうかです
けれども、この辺は読んでいただいて、インフルエンザワクチンの接種後副反応報告及び推
定接種者数についても、厚生労働省で非常に詳細なサーベイランスがされていると思ってい
ます。今回、本当に厚生労働省の方は寝る暇がなかったのではないかと思うぐらい、今回の
新型インフルエンザについては、いろいろな情報を収集されたと思っていますけれども、本
当にそれが政策に反映されているかについての説明があったかというと、私たちにはちょっ
と疑問であったということです。
 現実に副作用が生じているわけですが、実際に2,000万人(最大で2,200万人)ぐらいの
方に接種をして、ワクチンによる副作用が2,421名、うち重篤な副作用が414名、死亡者
131名、うち65歳以下の死亡者17名、65歳以上の死亡者114名となっています。今回、
厚生労働省のホームページで、新型ワクチンの実際の感染による死亡推定者数が199名と
なっているのですが、これで本当にワクチン接種の必要性があったのかどうかについては、
また改めて詳細な議論をしていただきたい。そして、それを情報提供していただきたいと思
っています。
 実際、このワクチンを7,000万人ぐらいに接種すると言われていたのですが、2,200万人
の規模の接種に収まったことの評価はどうされたのか。その事実は、その後の今回の法改正
にどのようにつながるのかについても議論して、情報提供していただきたいと思っています。
 「市民の立場からの批判」と書きましたが、今回、鳥由来の強毒性インフルエンザが発生
した場合の新型インフルエンザ対策マニュアルを使った混乱が、非常に見られたということ
で、「国家危機管理」として地方自治体などでも混乱が見られたということ。マスコミも異
常な反応で、毎日、新型インフルエンザで1人死んだ、2人死んだ、どこで死んだ、マスク
が必要、手洗いが必要と、私どもに言わせると、型インフルエンザ・パンデミックパニック
といわれるものが起きたと考えています。本当に人類は感染症と共存して歴史を作ってきた
わけですし、重症化しやすい人には手厚い医療と正しい情報の提供こそが必要だったのでは
ないか。今回の新型インフルエンザは、まさにそれを検証する格好の例であったのではない
かと思っています。
 今回、いちばんおかしかったのは、危機管理として使えないワクチンを輸入までしたとい
うことです。これは、危機管理として新型のワクチンを海外から輸入するということで、そ
れはおかしいのではないかと、私どもは厚労省の担当官とやり取りをしたのです。その中で、
これは審議会の議論の中でもあったそうですが、掛け捨ての保険だという考え方です。掛け
捨てだったら輸入のものは買っても使わないという選択肢もあります。いま危機ではないで
すから、危機はだれが判断するのですかという私たちの質問に対して、「危機はどこで判断
するか決まっていないし、輸入ワクチンを使わないかはわからない。今後、強毒化するおそ
れもある」という回答をされました。もし本当に強毒化するほど変異したのであれば、ワク
チンは全く効かないのではないかと言ったことがあるのですが、この輸入ワクチンの最終的
な処理についての情報公開、責任追及はなされたのかどうか。限られた医療資源の中で本当
に有効な感染症対策がなされているかについても、この場を借りて申し上げておきたいと思
います。
 「新型インフルエンザ予防接種による健康被害の救済等に関する特別措置法」の補償は、
名ばかりと言わせていただきたいと思います。これは2類接種なみで、現在の定期インフル
エンザ接種と同じであると思います。認定基準は従来と変わらないし、認定されなければ裁
判するしかないということで、今回、公的接種が本当に必要かどうかの前提議論がないまま
に、また効果判定がされずに公的接種を導入することには疑問というより、むしろ反対の立
場をとっています。
 市民の立場から、封じ込めが意味をなさないと国がわかった時点で、今回の新型インフル
エンザが季節性のインフルエンザと、それほど変わらない対策でよかったはずであると考え
ています。そもそも臨床試験も済んでいない海外ワクチンまで買ってしまった。そして特需
を起こしてしまって後戻りができなくなり、特措法から、ワクチンを予防接種法に位置づけ
るために法改正まで行うことについては、市民、国民に対する説明が必要だと考えています。
 結びに代えて、「受ける立場に立つということ」について最後に申し上げたいと思います。
受ける立場にとって、その制度に納得できるのかということです。予防接種というのは、い
まのSSPEの方の発言にありましたように、必要な予防接種というものもありますし、そ
の病気を防ぐ必要性の非常に高いものもあるわけですが、実際にはそれと逆の立場で、予防
接種を受けたがために、同じように人生を台無しにされた人もたくさんいます。ですから、
そういったゼロリスクではないけれども必要性に疑問があるもの、ワクチン自体に問題があ
るもの、違法なものによって生命を奪われ、身体障害を負い、家族を含めた生活を破壊され
た者を生じさせる、その負の側面を持っているのが予防接種制度です。
 うつる病気にどう対処するのか。「良いものはやりたい、ただでやれる」ということが福
祉ではないし医療ではありません。理念のないばらまきでは駄目だと思っています。この点
で私は、子宮頸がんワクチンが本当に必要かどうかに大変疑問を持っています。そうした被
害の状況、副作用の不可避であることを含めて、マスコミ報道も含めて緊張関係を意識した
議論と情報提供を、マスコミの方にも是非要望したいと思います。
 わかりやすい情報というのが非常に難しいのですが、最近の厚生労働省のホームページは
本当にわかりやすくて、以前に比べると積極的な情報公開の姿勢が見られると思っています。
ただ、情報公開が政策に反映されるかというと、それは非常に疑問もあるところです。予防
接種制度は情報公開が制度の正当性を担保する大前提ですので、市民の疑問には真摯に応え
ていただきたい。
 しかし、制度が正しいか、なぜその制度が必要かについては、どこまで丁寧に説明しても、
受け手の問題を含めて情報提供が常に完璧ではありえない。それは当たり前のことです。世
界的に見て乳幼児死亡率の低い日本で、新規のワクチンについて新しいものがいろいろ言わ
れていますが、その導入する意味の説明が果たして十分であるか。
 学校でいろいろな集団接種が始まったことについて、これはインフルエンザもそうですし、
子宮頸がんワクチンも集団接種の可能性があると思いますが、そうした国と地方の整合性は
どうなのか。国ができないことを地方がやるというのが、果たしていいことなのかどうか。
国としての感染症対策のきちんとした考え方があってこそ、地方も分権という意味で正しい
医療を提供していけるのだと考えています。
 情報提供の前提として最後に申し上げたいのは、民主主義、自由主義社会においては選択
の自由こそ保障されたい。価値観の多様化を尊重して、受けたくない人の権利を守る制度、
強制されない制度設計が必要だと思います。政治に左右されない厚生労働省の力量、そして
審議会の役割も期待されていると思います。ご清聴ありがとうございました。
○加藤部会長 古賀参考人、ありがとうございました。次にメディアの立場から蒲生参考人
にお話をいただきます。蒲生真美氏は株式会社「風讃社」、たまひよコミュニケーションデ
ィレクターであります。では蒲生参考人、よろしくお願いします。10分程度でお願いしま
す。
○蒲生参考人 ご紹介に預かりました蒲生と申します。よろしくお願いします。私は「たま
ごクラブ」「ひよこクラブ」「こっこクラブ」という、いま日本の一般の育児雑誌の中では、
いちばん部数の出ている雑誌の編集に関わっています。今日は「ひよこクラブ」における予
防接種の特集をお話させていただきますが、「ひよこクラブ」とは何ぞやというところを、
簡単にご説明します。
 「ひよこクラブ」は、0カ月から大体1歳前後のお子さんをお持ちの、主にお母様を対象
にしています。創刊されて去年で16周年を迎えています。毎月発売されているのですが、
大体、月に25万部程度発行されています。弊社の調査では、第1子をお生みになったお母
様の約8割が1回は買っていただいている状況です。私は、その「ひよこクラブ」で14年
間編集をしていて、そのうち6年間編集長を務めていましたので、その経験の中から、今回、
読者に対する情報提供として、こういうことをやっていますというお話をさせていただきま
す。
 予防接種の特集についてですが、特集内容は15年間にだいぶ変化しています。1993年
11月号、創刊号ですが、ここで初めて予防接種の特集をしました。タイトルは「予防接種
って何故受けるの?」でした。今と状況が全く違い、保護者の方には通知が行き、これ受け
るのねという形で行くようなもので、非常に受動的な面が多くありました。そのために、何
の病気をどうやって防ぐのかもわからないまま受けている状況があったので、そこに一石を
投ずる意味も含めて、ちゃんと知りましょうという特集をしています。
 その翌年に予防接種法が改正され、保護者の責任で受けさせるということが決まった途端
に、お母様たちは非常に慌てたというか戸惑いを持ったというか、これまでは受けろと言わ
れたから受けてきた方が大半だったのですが、自分で判断しなければいけない。我が子に受
けさせるか受けさせないか、勉強しなければいけない状況になりましたので、予防接種がど
ういうふうになっていくのかという特集が非常に望まれ、そこから年に2回程度、予防接種
の特集が始まっています。
 1年ぐらいして、多くの方が基本的なことがわかってくると、今度は細かいことに対する
疑問を解決するための特集が組まれるようになり、創刊してから約2年後に別冊付録という
ものになりました。別冊付録というのは今も毎年1回付いているのですが、本誌とは別に別
添の保存できる付録をいいます。この付録というのは売りのいちばんの武器になるものです
し、この付録によって売上げが左右されているので、予防接種が付録になっているというこ
とは、すなわち非常に売れるということ。それだけお母様たちの要望が強いと考えていただ
いて構わないでしょう。
 直近では2月号で別冊付録を付けました。この直近の付録の内容ですが、基本は、予防接
種には定期と任意がありますとか、個別接種と集団接種がありますとか、ごく基本的なこと
です。多くのお母様は、お子さんを出産して初めて予防接種というものに触れます。それま
でほとんどよくわかっていない。インフルエンザのことは知っているけれど、0歳代でこん
なにたくさんの煩雑な予防接種を受けさせるということを、初めて知りますので、その部分
は専門家の先生方から見れば笑ってしまうような、本当に基本的なところから説明をしてい
ます。
 大体、ご覧になっているような内容ですが、いちばん評価が高かったのは接種スケジュー
ルです。いつ、何を、どう受けさせるか。次が副反応について、3番目が基本となっていま
す。この付録の評価を全部取って次の企画につなげるのですが、この付録の満足度を、「と
ても満足」「満足」「普通」「あまり満足できなかった」「満足できなかった」と5段階で取っ
ていて、トップ2の「とても満足」と「満足」を合わせると9割以上の満足度を得ています。
 「ひよこクラブ」の記事の作り方の特徴は大きく3つあって、第1に徹底した読者調査を
します。どういうことを望んでいるのかをベースにして構成を組み立てています。2番目に
読者の声を非常に取り入れています。Q&AのQに関しては毎回、大体700人規模でアンケ
ートを取りますので、その中からピックアップしています。体験談も非常に多いです。3番
目に、読者の方たちは女性であって非常に忙しいです。0歳代を育てていますので、机の前
に10分座ることはできません。本当にご飯も落ち着いて食べることもできないような状況
の中で、いかにわかりやすく誌面を作るか。小見出しを読んだだけで内容がわかるようにと
いうのが鉄則で、文章はできるだけ短く、なるべくイラストや漫画や写真を使って、開いて
パッと見たときに、大事なことがわかるような誌面づくりを非常に心がけています。
 一方、母親が育児情報をどこから取っているかという調査もしました。断トツなのが育児
雑誌とインターネットです。これはほぼ同数ぐらいで、この2つで約7割近くを占めていま
す。非常に使い分けをされているので、それは読んでいただければと思います。次に小児科
医、ママ友といわれている人たち、それから自分の母親となっています。
 予防接種に関してどんなことを知りたいか、というアンケートも1回取るのですが、いま、
いちばん出てくるのは任意接種は必要なのかということです。定期接種はたぶん怖い病気な
のだから受けなければいけないのだろうなと感じているのですが、任意接種は受けても受け
なくてもいい病気なのよね、というのが一般的な感覚です。そのため任意接種は受けなくて
もいいのでしょうというのが前提にあって、その必要性をきちんと説明してほしいという要
望が非常に多く寄せられています。私どもとしては、任意接種も含めて受けるという立場を
持っていますので、いろいろ議論や意見は分かれるところですが、そういう立場で説明はし
ています。
 あとは新しいワクチンのこと、それから同時接種についてもいま出てきています。日本脳
炎とか、任意と定期の違いといったところが数多く上がってきます。
 この特集をするに当たり、いろいろ調査をしていて私どもの反省というか、今後考えたい
こととして、「ひよこクラブ」は出産した方が読まれるものなのですが、ヒブは出産してか
ら読むのでは、情報提供しても遅いのではないかという疑問がいま編集部のほうにあります。
妊娠中に読んでいただく「たまごクラブ」のほうで触れたほうがいいのかなと、いま考えて
います。私の発表は以上です。ありがとうございます。
○加藤部会長 ありがとうございました。保坂委員、畑参考人、古賀参考人、蒲生参考人に
各々プレゼンテーションをしていただきましたが、各委員、参考人に対して、ご質問、ご意
見がございましたら簡略に、先ほどお約束したとおり1問約1分程度で、約10分程度ご意
見を伺いたいと思います。
○桜山代理人 古賀参考人にお聞きします。私は代理ですが東京都から出ておりますので、
5頁に「東京都では『隔離ベッド』の増設などもされたが」とありますが、もう少し詳しく
意味を教えていただければと思います。と申しますのは、私ども医療体制の確保で都内の病
院に病床の確保を要請しましたけれども、いわゆる感染症法の指定病床の増設というのは、
今回の事例をきっかけには行っていなかったと思いますので、ちょっとその辺を。
○古賀参考人 区によっては防災課の担当になるなどして、危機管理体制を整えて何とかし
なければいけないという話がすごく出たみたいなのです。私たちは、新型インフルエンザ対
策市民会議というのを昨年9月に立ち上げて、その時に各自治体の市議の方たちが50名ほ
どこれに賛同してくださったのですが、その中に都議会議員の方がいて、東京都では既に隔
離ベッドをすると、結局、どういう対策をしたらいいのかが非常に混乱している中で、うつ
さないためには感染源を断つというか、隔離してしまうしかないのではないかと言って、そ
の隔離ベッドのための予算を要求する話が出ているということがあったのです。
○桜山代理人 事実はちょっと違うのではないかと思います。わかりました。
○古賀参考人 そうですか。ではそれは訂正ということで、ありがとうございます。
○岡部委員 畑参考人のお話にコメントです。わが国で今から10年ぐらい前ですと、麻疹
は10万人から30万人ぐらいおられたと推計されています。となると、その当時麻疹で亡
くなられた人数が80人から100人、SSPEに罹るであろうと思われる方は年間に1人から
2人おられました。その後、いろいろな麻疹に対する取り組みが始まり、多くの方の理解で
麻疹の予防接種が進み、昨年、国内の麻疹の患者さんの数は740数人まで減少しています。
ということは、SSPEの患者さんはわが国では100年に一遍しか出てこないというところま
でなりました。麻疹で亡くなられる方は、て数年にお一人ぐらいであろうと。ただ、それを
今後維持していくためには、予防接種という手段を協力に進めていく必要があります。そう
すると今度は古賀参考人のおっしゃったような予防接種の陰の部分が出てきて、おそらく麻
疹の予防接種による事故の方が、数年に1人は出てくる可能性があると思います。
 そうなったときに、最初の議論ですけれども、これに対して救済をきちんとやっていく。
麻疹対策お手を緩めると、再び麻疹の死亡、SSPEの患者さんが出てしまうことになります。
これは悪いということになるとまた元の木阿弥に戻りますから、きちんとした救済をおこな
い(補償ではありません)、情報の公開はもちろんですが、そういうことをやりながら進ん
でいかなければいけないというのが、感染症対策のひとつの矛盾点でもあると思います。し
かし、本来の「病気」というのは私たちは忘れられないのではないかと思います。
○加藤部会長 ほかにご質問、ご意見、どうでしょうか。よろしいですか。それでは次のテ
ーマに移ります。議題2「予防接種制度の見直しに向けたご意見の集計結果」についてです。
予防接種制度見直しに向けたご意見の集計結果について、事務局よりご説明をお願いします。
○新型インフルエンザ対策推進本部事務局次長 時間もありませんので手短に説明させて
いただきます。資料4をご覧いただきたいと思います。テーブルに座っていらっしゃる方に
はさらに参考資料として、実際に寄せられたコメントが付いているのですが、これは近日中
に厚生労働省のホームページにすべて載せる予定です。まとめが1枚付いていますが、状況
としては約1カ月と1週間ぐらいで330件、団体としては73件、それ以外は個人でした。
属性としては30代から50代が非常に多くありました。男女別では女性のほうが多い。職
業でいうと医療関係の方が多く、医師が81名でいちばん多くなっています。
 中身は、いま我々のほうも見ているところですが、我々の見た範囲でのまとめを簡単に申
し上げますと、公費負担を拡大すべきだ、定期接種を拡大すべきだ、ACIPを設置すべきだ、
ワクチンの行政を統合するべきだ、情報提供や相談窓口をもっとやるべきだ、いろいろな接
種の類型を廃止すべきだ、研究開発を促進したり混合ワクチンを開発すべきだ、迅速な救済
をすべきだという意見がありました。また集団接種に関して、慎重な意見と積極的な意見が
分かれていたものもありました。さらに分析を進めて今後の我々のほうの議論、それから部
会に活かさせていただきたいと思います。以上です。
○加藤部会長 ありがとうございました。ただいま事務局から簡略なご説明がございました。
後にホームページに出るそうですが、この段階で何かご質問、ご意見がございますか。よろ
しいですか。それでは、ただいまいただきました数々のご意見につきましては、今後、本部
会における議論の中で、必要に応じて参考の意見とさせていただくことにします。
 用意しました議題の3番目、「その他」ですが、これは報告事項となります。議題3の「そ
の他」として、事務局よりご説明をお願いします。新型インフルエンザ対策総括会議につい
て、正林室長からお願いします。5分程度でお願いします。
○新型インフルエンザ対策推進室長(正林) 資料5をご覧ください。これは、先週の6
月10日に「新型インフルエンザ(A/HINI)対策総括会議」の報告書がまとまり、座長から大
臣に提出されたものです。3月31日に1回目が開かれて合計7回、この間、医療体制、ワ
クチン、広報等さまざまなテーマに沿って、約40名超、延べにして55名の特別ゲストの
方にお越しいただいて議論していただき、最終的に取りまとめをしていただいたものです。
 この報告書の構成ですが、最初に「全般的事項」があり、総括に当たってというのがあり
ます。提言として総論的な提言が2頁から3頁にかけてまとまっています。各論としてサー
ベイランスとかいろいろあるのですが、それに大体共通するようなことが総論的にまとまっ
ていて、病原性等に応じた柔軟な対応とか、迅速・合理的な意思決定システム、地方との関
係と事前準備、感染症危機管理に関わる体制の強化、それから法整備と、それぞれについて
いろいろご提言をいただいています。
 3頁以降からサーベイランス、広報・リスクコミュニケーション、水際対策、公衆衛生対
策、医療体制、ワクチンと、それぞれのテーマに沿って提言がまとめられています。特にA
とBに分かれていますけれども、体制制度の見直しや検討、事前準備を要する問題と運用
上の課題と分けて、それぞれまとめられています。詳しくはここでは述べませんが、後ほど
ご覧いただければと思います。
 私どもはこの提言をいただき、今後、来ると予想されるいわゆる第2波、再流行に向けて、
あるいは来たるべきH5N1に向けて準備を進めるべく、もともとあった行動計画、ガイド
ラインの見直しといった作業、あるいは必要な予算、人員の強化といった作業に取りかかり
たいと思っています。以上です。
○加藤部会長 ありがとうございました。ただいま正林室長よりご説明がございましたが、
この件に関して何か委員からご質問がありましたら、お受けします。
○倉田委員 これは、まとめはさらっと書かれていますが、日本は亡くなられたのは190
何例ありますが、実際はインフルエンザの抗原が見つかった中で解剖された例では、本元の
H1N1によるインフルエンザの例は、ほんの5例あるかないかなのです。あとはインフルエ
ンザ肺炎死ではない。米国でも、この前ちょっと触れましたが、1万を超えるぐらいの死亡
者の中で、やはり1,000人ぐらいのインフルエンザで、その中で実際にインフルエンザのこ
れのというのは、日本に比べると桁違いの数です。その中で解剖されてきちっとしたものの
中で、このA/H1N1によるインフルエンザだろうというのは400例以上あります。日本と
は桁違いに多いですね。
 もう1つ日本の医療と全然違うのは、バクテリアの感染、肺炎で亡くなっているのが大量
にある。日本にはたぶん、今回、細菌感染症で亡くなっている、インフルエンザに合併した
肺炎というのは、今までわかっている範囲ではないと思います。ですから、ここに医療のア
クセスがいいと書いてありますが、いいなんていうものではなくて、24時間体制で患者を
診ていた国はどこにもないです。私は欧米の関係者に聞きましたが、そんな所はどこにもな
い、日本だけです。ですから自慢していい。そういうところはあまり遠慮して書いてはいけ
ないです。
 メディアもそうですが、日本の体制が悪い悪いと。それは確かに私も検疫のところの規定、
あれはちょっと話が違います。ウイルスは臍から入るわけではないし、足の裏から入るわけ
ではないし、手から入るわけではない。その点では私も大いに批判しましたが、その後の医
療の問題に関しては、最終的にインフルエンザ対策がよかったかどうかの評価は、どれだけ
重症者が出たか、どれだけ死亡したかです。基礎疾患のある人への対策がうまくとれたか、
であると思います。その意味では、世界で最高だったと私は思っています。いろいろ最近、
外国の連中と接する機会があって全部聞いていますけども、それは自慢していい。それを今
後もきちっとやる体制を作ればいい。
 しかももう1つ、この医薬品です。ワクチンでなく薬のほうです。これを各自治体で持っ
ている。東京都が43%ですか、あとで教えてもらいたいけれども、そのほか12%ぐらい、
県でも全部持っています。これだけのやり方をしている国も世界のどこにもないです。それ
をもっと強調されたらいいですよ。一方的に政治の方々とメディアが厚労省を叩くのは、私
は許せないと思う。現実の数字を世界と比較したらどうですか。そういうことをきちっとや
らないで、厚労省悪い悪いと言うのは私は筋違いだと思います。
 もう1つ、検査に関して、これは地方衛生研究所では24時間体制で何かあるときは全部
対応しているのです。こんな国はどこにもないですよ。私自身、担当とも話してきましたが、
そんなことをしていません。だからそういう点も、日本の体制は決して悪いことをやったわ
けでもないし、一方的に非難を受けて黙っているようでは駄目なのです。頑張ってください、
厚労省、それだけ。
○加藤部会長 ということでございます。ほかにご意見はないようです。それでは先ほど北
澤委員から、資料2-5の最後に「事務局への質問」という項目があります。この件について
事務局よりお答えをいただきます。鈴木次長と福島、亀井各々課長、どうぞ。
○新型インフルエンザ対策推進本部事務局次長 北澤委員からの質問事項の1点目は、今般
の予防接種法等の一部改正案はどうなりましたかということです。実は今日、通常国会の閉
会日で、この部会では2月19日の第5回の会合で提言をまとめていただき、その後、国会
に提出されて、参議院先議ということで参議院で先に議論されました。2回の議論を経て4
月14日に参議院で採決されて成立していました。衆議院にも付託はされましたが、結局の
ところ国会が閉じてしまったということで、先ほど報告を受けましたが、継続審査というこ
とになりました。厚生労働省は政務三役以下、是非、今回の国会でお願いをしたいというこ
とで、お願いしていたわけですが、残念ながら力及ばず継続審査ということになりました。
精力的にご審議いただいた部会の先生方に大変申し訳ないと思っています。
 ただ、継続審査とされたわけですので、できるだけ早く成立していただけるように、一刻
も早くお願いをしたいということで、今後とも働きかけていきたいと思っています。また今
年の秋、おそらく10月以降、新しいワクチンの準備も整うということですので、市町村、
接種を受ける国民の方、接種をする医療機関の方々にご協力を賜りながら、混乱を起こすこ
とがないようにさせていただきたいと思います。
 また、いま部会でご議論いただいている予防接種法の抜本改正のご議論というのは、これ
に関わらず我々のほうとしては精力的に進めていくということですので、引き続きよろしく
お願いしたいと思います。
○加藤部会長 ありがとうございました。続きまして「2010/11年シーズンのインフルエン
ザワクチン株について」の質問がありましたので、福島課長からお願いします。
○結核感染症課長 結論から申し上げますと、正式に決定はしていませんが、WHOが今回
も新型とH3N2とBと、この3株で作ることを推奨しており、感染研からも来シーズンの
流行状況の予測からは、そのようなワクチンを作るべきではないかというご意見をいただい
ているところです。その場合に、どういうふうに接種をするかということですが、季節性の
ものと新型のものとの混合したワクチンになるわけですので、この場合、どういう事業形態
で行うかについては、いまの国会の状況もあり、現時点では、今後整理をしなければいけな
いと考えているところです。
○加藤部会長 ありがとうございました。引き続き「新型インフルエンザワクチン開発・生
産整備臨時特例交付金」について、ご質問があります。亀井課長。
○血液対策課長(亀井) 特例交付金の件で1次公募、パイロットプラント事業ですが、こ
れの交付先については、6月中を目処に専門家から成る評価委員会で、いま精力的に評価を
進めているところです。交付先が決まり次第、公表する予定としています。以上です。
○加藤部会長 北澤委員、ただいまのお答えですが、何かご質問はございますか。
○北澤委員 では、いつごろ決まるのですか。
○加藤部会長 ?Aについての決定時期のご質問です。
○結核感染症課長 ?Aにつきましては、これまで、6月中には、と申し上げていましたので、
なるべくその時期には決めたいと思っています。できるだけ早い時期に、この部会でもご報
告できるようにしたいと思います。
○加藤部会長 北澤委員、ほかの2件についてはよろしいですか。
○北澤委員 はい。
○加藤部会長 ほかの委員の方、特にいま、北澤委員からのご質問に対する3課長からのお
答えですが、これでよろしいですか。では北澤委員が了解ということですので、よろしいと
いうことにさせていただきたいと存じます。何かトータルでご質問はございますか。
○黒岩委員 1つだけ違和感を覚えたので言っておきます。倉田委員が先ほど、えらい強調
されましたが、日本は誇るべきなんだということ。しかし、この統括会議の結果を見ても、
先ほど北澤委員の報告にありましたけれども、感染症のサーベイランスは不十分であること
を認めているわけです。不十分であるという中で、いま出ているデータを見ながら、世界に
冠たる誇るべきものなのだと何で胸を張るのか、それは完全に矛盾していると私は思います。
○倉田委員 反論するわけではないですが、いま私が言ったのは、重症者が非常に少ない、
亡くなった人が少ない、24時間体制で患者を診ている。こういう国はどこにもなくて、結
果としては世界断トツに被害が少なかったということを言ったのです。サーベイランスの問
題に関して、確かに実数と出てきた推計数が違うとか、それは前から指摘しているとおりで、
そういうことはいま検討している段階が、既に別のグループがやっていますから、そこでや
ればいい話です。
 完全なサーベイランスというのは結構難しくて、非常に少数なもの、日本脳炎のようにぱ
らぱらと出る、これだったら全数のサーベイランスをやられていますよね。インフルみたい
な1,000万とか800万とかに関して、全数サーベイランスとか、どこまで出たら完全なの
かというのは非常に難しいところです。そしたらその中で、今度は医療の対応のところでき
ちっとやるということが実際の現場で行われましたよね。だから私がお聞きしたいのは、そ
れではどれだけの数を把握できたら、今度の例えばインフルエンザのサーベイランスは完璧
だったと、あるいは満足できるとお考えなのか。それを私はお聞きしたい。
○黒岩委員 そんなこと、私が答えられるはずもないわけです。何も厚労省が悪いとか叩こ
うと思っているわけでも何でもなくて、要するに、より良い体制を作っていこうというわけ
でしょう。そしたらば情報がきちっと開示されていない。それにみんなアクセスできない。
こういう問題が出ているということは十分認識した上で、この問題を克服していきましょう
ということを我々はこの部会で考えるべきであって、我々が世界に誇るべきものなんだと、
このような会はやる必要がないじゃないですか。
○岡部委員 サーベイランスに関する問題点が、北澤委員からも指摘されました。新型イン
フルエンザ総括委員会の中で私が申し上げたのは、いまの致死率等々に関しては、ある数字
で出てくるわけですけれども、日本がどこに比べて良いか悪いかというのは、なかなか基準
が難しいのです。決してそんなに悪いほうではないけれども、では今の致死率は季節性イン
フルエンザに比べるとどうなのかというと、これは数字が出てこないのです。あるいは代表
性について、どの程度の信頼度があるかというのは、これがまた出てこない。これは我々が
サボッているわけではないのですが、制度上、なかなか難しいところがあったり、北澤委員
が指摘された通常のサーベイランスの強化を図っていかないと、結局、標準となる物差しが
ちゃんとできていないことになる、ということです。この総括委員会でも、サーベイランス
の担当として申し上げたのは、そういう物差しの作り方を、もうちょっとわが国はしっかり
していくべきだろうと、極めてそこは積極的なことを申し上げました。
○加藤部会長 ありがとうございました。岡部先生がまとめた意見のようなことをおっしゃ
いましたが、それに尽きるのではないかと思います。ほかに特にご発言はございますか。よ
ろしいですか。それでは時間となりましたので、本日の予防接種部会は、これで終了したい
と存じます。事務局から次の予定等について、ご説明をお願いします。
○新型インフルエンザ対策推進本部事務局次長 次回は6月23日(水)、16時から、省内
の18階、22会議室を予定しています。よろしくお願いします。
○加藤部会長 本日は長時間にわたりましてご議論いただき、誠にありがとうございました。
これをもちまして第9回「予防接種部会」を終了します。ありがとうございました。


照会先:健康局結核感染症課(03-5253-1111 内線:2077)


(了)

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