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2010年9月14日 第3回薬害を学び再発を防止するための教育に関する検討会 議事録

○日時

平成22年9月14日(火) 17:00 ~ 19:10


○場所

厚生労働省専用第18、19会議室


○議題

※互換性の問題から、「丸囲い数字」と「ローマ数字」はアラビア数字に置き換えています。


○衞藤座長 皆さん、こんにちは。定刻より少し前ですけれども、おそろいになりましたということでございますので、ただいまより第3回「薬害を学び再発を防止するための教育に関する検討会」を開催いたします。委員の皆様には、お忙しい中、御出席をどうもありがとうございます。
 なお、本日は残念ながら御都合が合わず、大杉委員だけが御欠席となっております。
 本日は、前回に引き続きまして「教材に盛り込むべき事項」をメインテーマとして議論をいただくことを考えております。
 まず、前回日程が合わなかったこともございまして、薬害被害のお立場からお1人、佐藤嗣道さんからヒアリングを行いたいと思います。その後、委員の皆様には「教材に盛り込むべき事項」につきまして御意見を提出していただいておりますので、委員の皆様より提出していただいた意見について御紹介をいただきたいと思います。
 それから、引き続き事務局からの資料の説明を伺ってから意見交換をしてまいりたいと考えております。
 特に前回は意見交換の時間が十分取れなかったということがございますので、意見交換の時間を多目に取ってまいりたいと考えております。是非とも活発な議論をお願いいたします。
 それでは、議事に入りたいと思いますが、その前に事務局の方から本日配布しております資料の確認をお願いいたします。

○医薬品副作用被害対策室長補佐 本日は資料を大きく4種類、それから机上配布として2種類の資料をお配りしております。
 まず、事務局の方で用意させていただきました資料が資料1と資料2で、資料1が「これまでの議論のポイント」、資料2が「関連資料」ということでお配りしております。
 それから、本日ヒアリングさせていただきます佐藤さんから提出していただいた資料を1ということでお配りしております。
 それから、各委員の方から提出していただきました御意見につきまして、それぞれ資料AからHまで資料を配布させていただいております。
 それから、前回検討会の中で勝村さんからのヒアリングの際に、本来配布すべき資料が漏れておりましたので、追加という形で恐縮ではございますけれども、配布させていただいております。
 それから、机上配布ということで手嶋委員から提出していただきました『沈黙をこえて』という冊子、それから矢倉委員から提出していただいております『スモン年表』について、机上配布ということではありますけれども、配布させていただいております。
 資料の不足等がございましたら、事務局まで御連絡いただければと思います。

○衞藤座長 ありがとうございます。
 それでは、議事に入りたいと思います。前回に引き続きまして関係者からのヒアリングということでございまして、本日は被害者のお立場から佐藤嗣道さんより「教材に盛り込むべき事項」についての御意見をいただきたいと考えております。それでは、10分程度という大変短い時間で恐縮でございますけれども、よろしくお願いいたします。

○佐藤参考人 財団法人いしずえの佐藤と申します。本日はお時間をいただきましてありがとうございます。
 財団法人いしずえは、サリドマイド被害者の団体です。お手元に資料が配布されているかと思いますけれども、先にこちらの資料の方をごらんいただきたいと思います。
 1枚めくっていただきますと、「サリドマイド薬害について」という資料がございます。これの2ページ目から4ページ目までが、私どもサリドマイド被害者がいろいろな大学などで講義をさせていただくときにいつも配布している基本の資料でございます。
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 それでは、こちらのスライドに沿ってお話をさせていただきます。
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 サリドマイド薬害事件は皆さん御存じかとは思いますけれども、サリドマイドという薬は1950年代から60年代の初めに販売された鎮静・催眠薬で、この薬を妊娠初期に服用すると胎児の手、足、耳、内臓に奇形を起こします。この作用を催奇形性と言いますけれども、この催奇形性により世界で数千人から1万人、日本で約1,000人の胎児が被害に遭ったと推定されており、日本では309人が認定されています。
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 教材として盛り込むべき内容として、実は厚生労働省が近々発行する予定のサリドマイド安全手帖というものがありまして、個人輸入によって今も実はサリドマイドが使われているのですが、個人輸入によってサリドマイドを使う患者さん向けの教育ツールとして厚生労働省が発行する予定のものです。この内容の原案にいしずえがかなり協力をしましたので、それを御紹介いたします。
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 こちらはいしずえが出した原案で、実際につくられる安全手帖は少し内容が異なると聞いておりますけれども、あくまでもいしずえがつくった案の段階のものということでごらんいただければと思います。
 「サリドマイド薬害事件とは?」ということで、「奇形の発生」ですね。まずドイツで新たなタイプの奇形がたくさん生まれて、レンツ警告があってヨーロッパでは各国で販売停止と回収が行われたということです。
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 「日本では」ということで、それから10か月間販売が続けられて、この間に被害者の数が倍に増えたと言われております。
 それから、「被害者数」です。
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 「裁判と和解」があって、10年間の裁判の結果、和解が成立して、それによって「いしずえ」が設立されました。
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 このサリドマイドが1965年にブラジルで再び使われるようになりまして、実はブラジルではわかっているだけで120人もの新たな被害児が1965年以降に生まれているという現実があります。ブラジルでは教育が十分でないということで、医療関係者すらこの薬の危険性を十分認識していない中で被害が起きています。
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 サリドマイドの催奇形性ですけれども、妊娠の初期3か月間で、この時期は胎児と言っても胎芽と呼ばれる体の長さで言うと1センチにも満たない小さな時期で、このときに体の各器官がつくられるのですが、この時期にサリドマイドを母親が飲むと体の発達を妨げるということになります。
(ppt)
 実際に生じた奇形のタイプですけれども、まず「手足の障害」があります。ここにいろいろなタイプがあります。これは、薬を飲む時期によって異なってきます。
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 それから、「耳と顔面の障害」ですね。これも、耳たぶが全くない人から耳たぶが小さい人、耳たぶはきちんとあるんだけれども顔面神経麻痺があって聴覚に障害を持っている人など、さまざまなタイプがあります。
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 それから、「内臓の奇形」ですね。心臓の奇形を持って生まれた人は、我々被害者の中にもたくさんおります。実は、2年ほど前に心臓の突然死で亡くなった被害者がいまして、我々の心臓はこれから大丈夫なのかという不安を多くの被害者が持っています。あるいは、消化器の奇形ですね。胆嚢やいわゆる盲腸がもともとないという人もかなりの割合でいるようです。
 実は、この辺りの内臓の異常に関してはまだ十分な実態がわかっていないということで、これから厚生労働省に調査をしていただこうというお願いをしている最中ですけれども、恐らく通常の先天奇形と違うのは、薬の影響というものが単に骨格だけではなくてすべての臓器に及んでいて、我々はそれにもかかわらず生まれてこの年までは生きてきたわけですけれども、今後年齢を重ねるにつれてそれがどのような影響を及ぼすかというのはいまだだれにもわからないというのが実態でございます。
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 「服用時期と障害される器官の関係」というのは、おおむねわかっています。
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 お手元の資料に図が出ておりますので、先にそれを見ていただいた方がいいと思います。
 これが最終月経後の日数で、これが実際の胎児の日齢です。これが、胎児の胎芽という時期の大きさです。最初は2ミリ、4ミリから、月経後60日目ごろでようやく1センチを超えるという非常に小さな時期で、この時期におたまじゃくしの手が出て足が出てという発生が行われる時期ですね。 この時期は1日単位でどんどん成長していきますので、1日薬を飲むタイミングがずれただけで起こる障害が変わるということです。
 例えば私自身ですけれども、右手と左手で障害の程度が違って、右手は親指が非常に小さいんですけれども、既に形ができ上がった後に薬に曝露されてもその部分は障害されなくて、ちょうど発達しているところに薬が曝露されたところが障害を負うということで、私の場合は右手はほぼできていて最後に親指ができるタイミングだったのですが、左手の方はまだそこまででき上がっていなかったということで、実はその胎児の発達は右と左が必ず同じタイミングではないということが実例をもってわかります。
 この図は、既にドイツで3,000人もの被害者が生まれた、その例を基にレンツ博士がまとめられたものです。
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 そういう身体的な被害実態もあるんですけれども、それと同時に障害を持って生まれたということで家庭自身が非常に大変な苦労をしてきたということがあります。
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 時間がありませんので詳しくは述べませんけれども、幼児期の日常生活動作の自立の問題に始まって、ちゃんと学校で教育を受けるということが1つ大きな課題で、学校時代にもいろいろなことがありました。
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 それから高校、進学・就職、生活の自立は結婚、家事、育児ということを経てきて……。
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 今、我々は障害を負っていても何とか人並みにということで、かなり無理をして頑張ってきたわけですけれども、それによって体が悲鳴を上げている状態で、今サリドマイド被害者は40代後半から50歳に差し掛かろうとしているんですが、若いころのように無理がきかなくなってきて、使い過ぎによる二次障害とか、あるいは内臓が中年から老年期を迎えるに当たって加齢に伴う影響と相まって内臓自身にどういう影響があるかということに関して皆さんすごく不安を感じています。
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 ここから後は、教材の材料になる資料としてこんなようなものがあるといいのかなということでスライドにしてきたものですけれども、時間がありませんので、さっと流すだけにしたいと思います。
 これが、サリドマイド薬害事件の歴史です。
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 その後にブラジルで使われるようになって、その後アメリカで認可され、多発性骨髄腫への効果が報告されて各国で承認されて、日本でも2年前に承認されて現在使われているという状況です。
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 それから、サリドマイドに関する教育は現在この薬が使われているということを十分意識して考えなければいけないと思います。サリドマイドはこのような病気に効くことがわかっていまして、その他に研究中の病気もあります。
 リスクとしては、催奇形性のほかにこのような副作用もわかっております。
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 これは、「ブラジルでの新たな被害」です。とにかく、医師からの患者への説明がないとか、医師の処方なしで薬が買えるブラック・マーケットとか、ひどい状況があったわけですけれども、最近は大分改善されたにせよ、まだ生まれ続けているというのが現状です。
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 それから、サリドマイドのことでひとつ重要なのは、男性の患者さんが薬を飲む場合にも避妊が必要ということです。サリドマイドは精液と精子に移行しますので、特に男性の患者さんがサリドマイドを飲んでいて性交渉する場合にはコンドームを用いて精液を女性パートナーに触れさせないということが極めて重要な注意事項になります。
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 実は、かつてアメリカはサリドマイドを認可しなくて被害を未然に防いだ国なわけですけれども、98年にサリドマイドを認可しました。それと同時に、S.T.E.P.S(ステップス)と呼ばれる非常に厳格なリスク管理システムを構築して認可に踏み切ったわけです。
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 これは、当時の新聞記事です。
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 我が国では、このような経緯でサリドマイドが承認されました。
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 このときに、承認の前に「サリドマイド被害の再発防止のための安全管理に関する検討会」というものが特別に設けられて、日本でのサリドマイドのリスク管理システムについて検討が行われて、このリスク管理システムの実施を条件に承認となったわけです。
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 このときの検討会での確認事項です。胎児の健康被害を二度と起こさない。これは、やはりこれだけ社会的に大きな問題になった薬ですので、胎児の被害が1例でも起こると非常に社会的なインパクトが大きいということで、とにかく1例も起こさないということを目指したいというふうに我々は考えています。
 それと同時に、患者さんが治療を受ける権利や人権に配慮するということも非常に重要です。また、このような行政の取組みというのも約束されました。
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 日本でのシステムはTERMS(タームズ)と言いまして、藤本製薬が運用しているシステムです。このTERMSの中の一つの大きな柱として教育の実施というものがあります。患者さんに対する教育、あるいは医師、薬剤師に対する教育というものであります。
 それから、薬の流通・処方・調剤・使用を一元的に管理するシステムですね。こちらは、アメリカのS.T.E.P.Sに準じたリスク管理システムが構築されています。
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 患者、医師、薬剤師はあらかじめ登録されていて、避妊などについてのチェックあるいは妊娠検査の結果などの確認を経ないと薬が患者さんに渡らないというシステムになっております。
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 これは、患者さん、医師、薬剤師、それぞれがチェックすべき内容です。
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 それからもう一つ重要な問題として、承認後もサリドマイドの個人輸入が残っている問題があります。実は、藤本製薬のシステムは適応症である多発性骨髄腫に使う場合はそこでカバーされるのですが、適応外使用はカバーされないことになっていまして、いまだに個人輸入が残っています。実は、個人輸入のサリドマイドの使用登録システムというものが今年の3月から動き出しています。
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 ただ、そのシステムはTERMSと違って登録した患者をリアルタイムにフォローする機能が全くありません。ですので、TERMSに比べると非常に弱いシステムです。妊娠検査の結果をモニターする機能もありませんので、もし問題が起こるとしたらこちらの方で問題が起こる可能性が高いと考えていて、TERMSとのダブルスタンダードの解消が急務であると考えています。
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 こういう状況も念頭に教育のことを考えていただきたいのですが、これが、個人輸入のシステムです。SMUD(スマッド)と言いますけれども、「SMUDへの患者登録状況」です。236人の患者さんが登録されています。
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 それで、ここに書いてあるようなさまざまな病気に使われています。固形癌とか、ベーチェット病とか、サルコイドーシスとか、さまざまな病気に使われています。
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 これが、妊娠可能な女性の割合です。実は、多発性骨髄腫の患者さんは高齢の方が多くて妊娠可能な方は余りいらっしゃらないんですけれども、実はそれ以外の疾患で10代とか20代の女性患者さんがサリドマイドを使っているという現状があります。
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 若い世代に対する教育は非常に重要で、去年の8月にサリドマイドを20代の看護師が別の患者さんに誤って投与するという事件が起きました。看護師は特殊な薬という認識しかなくて、どういうふうに危険なのかということをよく知らなかったということがあります。
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 それから、PMDAがサリドマイド服用中の患者さんに対するアンケート調査を行ったんですけれども、そのときにサリドマイドが薬害を起こしたことを治療開始前に知っていた人、これは骨髄腫の患者さんですから一般の人よりも知る機会が多いと思うんですが、30代だと3分の2くらいで、3分の1は知らないということです。40代以上は過去の記憶があって恐らく知っていらっしゃる方が多いと思うんですけれども、これがそのデータです。
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 これは、全体で見るとおおむね8割、9割ですけれども、30代だけを取ってみるとここでがたんと割合が少ない。数は少ないんですけれども、こういう実態です。20代だと、恐らくもっと知らないだろうと思います。
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 それからもう一つ重要なのは、先天異常教育です。万が一ですけれども、新たな被害が起きたときにこの異常、この奇形がサリドマイドによるものであるかどうか、鑑別診断できる医師はほとんどいないと言ってもいいかもしれません。一般的に先天異常に関する鑑別診断のできる医師は非常に限られているのが恐らく日本の現状だろうと思います。医学教育で先天異常に関する教育が十分になされていないということを何とかしなくてはいけません。
 それから、一般教育でも先天異常についての教育は重要で、特に原因は何であれ、薬であれ遺伝であれ、先天異常のある子どもたちが安全に生まれて差別を受けることなく成長して幸福な人生を送る権利を保障するという観点を、やはり中学、高校あるいは小学校の段階から皆で共有して教育してほしいと強く思っています。
 以上です。どうもありがとうございました。

○衞藤座長 どうもありがとうございました。
 それでは、佐藤さんからのお話に対して御質問等があるようでしたらお願いいたします。
 倉田委員、どうぞ。

○倉田委員 SMUDで並行輸入する個人輸入するときの薬価と、それからTERMSで患者さんが使っている承認されたお薬の薬価とどれだけ違うのか、教えていただけますか。

○佐藤参考人 承認された薬の薬価は、1カプセル6,000円弱です。1日1カプセルですので、自己負担は3割負担で1日2,000円弱です。ですから、1か月で30日ですと6万円の自己負担ということです。実は高額療養費に単純にいくと引っかからないという大変な問題があって、その問題は今、安全対策課の方で検討されています。
 一方、個人輸入は1カプセルで安いところだと数百円で入ってくることがあります。特にインド製などの安い製剤の個人輸入が可能です。
 結局、今の薬価の根拠は、リスク管理システムの維持管理コストが高いということに尽きるんですね。製造原価は非常に安いので、インドなどで恐らくリスク管理が全くなされずに薬がつくられているので、製造原価だけでインドの製薬会社は薬を出せるということです。ここの価格差も個人輸入が残る大きな要因になっていると思います。

○倉田委員 ありがとうございました。

○衞藤座長 ほかにございますでしょうか。
 それでは、どうもありがとうございました。次の議題に入りたいと思います。前回の検討会では余り議論の時間を確保できなかったということもございまして、前回の検討会の最後に「教材に盛り込むべき事項」に関して御意見を出していただきたいということで、委員の皆様にお願いをさせていただきました。非常に短い期間ではありましたけれども、委員の皆様の御協力をいただきまして意見をいただいておりますので、委員の皆様からそれぞれ御提出いただいた意見について簡単に御紹介をいただければと思います。
 なお、質問や意見につきましては委員の皆様からの御意見の紹介と、事務局からの資料の説明の後にまとめて時間を取りたいと思いますので、あらかじめよろしくお願いいたします。
それでは、目安としてお1人3分程度でお願いしたいと思います。資料番号の順に従いまして、大杉委員が御欠席ですので倉田委員からお願いできればと思います。よろしくお願いいたします。

○倉田委員 よろしくお願いします。私は、薬害の教育については薬教育全般の一部であるというふうに認識しています。まず薬の教育を初めにして、それから薬害の教育をする方がいいと思っています。
 「薬害を防ぐ社会の在り方」として、何を考えなければならないかというと、この3つを考えます。まず、「薬害の歴史で何が起きたか」ということ。それから、2番目には「原因・なぜ、拡まってしまったか」。3つ目に、「なぜ繰り返すのか」ということをやはり生徒たちも考えてもらいたいと思います。
 1番の「薬害の歴史」については、以前事務局からいただいた関連資料の表ですとか制度改正の表があると思いますが、それらを見ながら生徒たちと話し合っていくという方法でいくといいのではないかと思っています。
 2番目の「原因・なぜ拡まってしまったか」というところですが、それには「原材料の問題」と、それから2番目の「企業・医療者・政府の問題」、それから「患者の問題」の3つに分けられると思っています。
 「原材料の問題」としては、当時は不適切だとは思っていなかった、知らなかったというところから始まったんだと思いますが、その後、不適切だということがわかってはきますが、最初は知らなかったというところがあったかもしれません。
 2番目の「企業・医療者・政府の問題」としては、海外からの報告があったにもかかわらず対応しなかったり、それが遅れたりということが挙げられると思います。先ほど佐藤さんからもお話がありました、1960年代は厚生省としては海外で有名な有力な医薬品はすぐにでも日本に紹介して使おうという風潮があったということを教えていただきましたが、そういうことだったのかなと思います。
 だったら、海外で何かあったときにもすぐに反応してもよさそうなものだったのにと思いますが、そこはそうならなかったということだと思います。製薬会社にしろ、企業にしろ、医療者にしろ、人命よりも経済が優先されたというようなことが言えると思います。あとは、保身や隠蔽が行われたり、医療者間への情報提供が遅れる。企業から医療者間への情報提供が遅れるということもあったと思います。また、国民への情報提供が少なかったり、遅れたりということも原因にありました。それから、システムが充実していないということも挙げられると思います。
 3番目に「患者の問題」ですが、体に変調があってもその原因に見当がつかずに対応が遅れた。情報がないということもあるでしょうし、自分から発信したくてもどうやって発信していいか、すべがなかったというか、わからなかったということも挙げられると思います。
 これらに対して政府の対応がどうであったかというのは、「制度の変更や新設」という2つを挙げました。
 それから、なぜ繰り返すのか、なぜ拡まってしまったかわかっているのに、それが改善しなかったから拡まってしまったのではないかということを生徒たちにもわかってほしい。
 情報提供が不均等であったり、倫理観の欠如ということが言えると思いますが、これは企業倫理だったり医療倫理だったりということが言えると思います。
 二度と薬害を繰り返さないために何をしたらいいか、中学生レベルでも何かできることはないだろうかというふうに生徒たちには問いかけたいと思います。まず、できること、自分たちで考えられることは、その直前に習うであろう健康の三原則だとか、医療に関わる人の図というものがありますが、その図でも、では今はどうなのか。情報は増えているのか。その情報は本当に使えているんだろうかということをやはり生徒たちに話し合ってもらいたいと思います。
 それと、自分の体の変調や情報を医療者に伝える。自分から発信するということは常日ごろから中学生でもできることで、これは情報の双方向性という意味で自分たちでもできることだとわかってほしいと思います。
 それから、相手の身になって、相手の立場に立って状況を考えて、その上で行動するということは、小学校や中学校の子どものころからでも、その人の身になって考えるということはできるはずで、それをやはり子どもたちと話し合うことが大切ではないかと思います。以上です。

○衞藤座長 ありがとうございました。
 それでは、栗原委員からお願いいたします。

○栗原委員 一貫して1回目、2回目と主張してきたことです。しつこく申し上げますが、すみません。紙とペンしかないところで書いたもので。
 予防接種法に基づくワクチンという医薬品の接種、投与によって健康被害が起こる。しかも、当初は罰金3,000円をもって強制されたという、この医薬品投与の在り方は、そしてそこにてんかんのワクチンであったり、あるいは被害発生後の対応の問題があったりして、いわゆる薬害事件化する場合、その性格はほかの医薬品による薬害事件をもって代表できない特異性を持っている。ですから、結論的には、書きぶりはともかく、この法定接種における薬害事件は必ず言及すべきであるというのが私の主張です。
 その他に丸の数字を付けて書いておきましたけれども、通常は健康な子どもが将来の感染症を予防するために接種をしてとんでもないことが起きるという特性であったり、あるいは中枢神経系がやられますので、非常に深刻な障害を負ってしまって自己主張など全くできない状態の被害が発生する。あるいは、罰金を恐れて子どもに打たせてしまった。これは実際、1948年の京都、島根のジフテリア予防接種禍事件の被害者遺族の聞き取りの中からそういった事実が出てきております。ですから、障害を負った子どもを一生涯、親が自責の念を抱えつつ、介護負担も合わせて背負っていくという、そういう辺りに非常に大きな特異性があるんだろうと思います。
 以上のようなところから、これは書きぶりはともかく、言及すべき重要な問題だろうというのが私の主張です。
 ただし、予防接種における健康被害がすべて薬害だとは言いません。今、確実に言えるのは1948年のジフテリア予防接種禍、これは死亡が84名、死亡を含めた被害総数約1,000名、それから1989年から93年のMMR事件、これは認定被害者が現在で1,041名であります。そこは間違いなく薬害事件です。あとは、国内に天然痘の発生がない中で法律に残っていたために種痘脳炎、その他死亡という被害が続き、結局、訴訟が起こっていくわけですが、これも極めて薬害性が高いというふうに思います。以上です。

○衞藤座長 ありがとうございます。
 続きまして、小林委員からお願いいたします。

○小林委員 新しい学習指導要領の保健体育におきましては、中学校では個人との関わりを学ぶということに対しまして、高等学校では個人及び社会との関わり合いについて学ぶということになっております。また、新学習指導要領では、医薬品に関する教育が中学校、高等学校と発達段階に応じて積み上げられております。以上から、私どもは薬害教育は高等学校で学ぶのがベストではないかと思っております。
 しかし、公教育で教えることを目指しているということでございますので、中学校3年生で教える際には教材の構成イメージにも書かれていますように、医薬品の基本的事項をしっかり理解させた上で薬害教育を実施しませんと、薬害に対する理解が浅くなるばかりか、例えば学校でよくやられています調べ学習などでは生徒なりの思考が醸成されない可能性があると考えております。
 これが基本的でございまして、あとは教材に盛り込む事項でございますが、「医療と医薬品の歴史」、「医薬品が本質的に持つベネフィットとリスク」、「医薬品には審査があること」、「副作用には予期できるものと、予期できないものがある」ということ。それからこの「副作用をより少なくするために何が必要か」ということで、3つ掲げさせていただきました。
 ベネフィットとリスクを科学的に検証する能力と技術を高めなければならない。
 それから、検証された情報を関係当事者が共有するシステムがなければならない。
 3番目は、情報を基にした医薬品の適正使用を推進する機能がなければならない。この3つを考えております。
 それでは、薬害はどうして起こるのかということも問題かと思います。そして、どんな薬害が起きて、どんな苦しみがあったのかということを幾つか1、2の具体例をここで示して子どもさんたちに理解していただくことが大事かと思います。
 それから、同じ過ちを繰り返さないために私たちはどうするべきかということを調べ学習等で学んでいっていただければいいかと思っています。
 それから、医薬品の副作用救済制度というものもありますということも付け加えたらよろしいかと思います。
 最後に、薬害を通して医薬品の適正使用の大切さを学んでほしいということでございます。
 そして、最後の資料集として本文で触れられなかった薬害事件についてとか、医薬品等による主な健康被害の年表などを付けたらよろしいのではないかと考えております。以上でございます。

○衞藤座長 ありがとうございます。
 続きまして、高橋寛委員より御説明をお願いいたします。

○高橋(寛)委員 資料の方をごらんください。私は薬害だけを取り上げるのではなくて、やはり社会が薬をどうやってつくって、どういうふうに使っているのかという中で薬害を取り上げてみてはいかがかということで、少し箇条書きにさせていただきました。
 まず、第1に「薬の役割」ということで、やはり薬というのは人を助けるために必要でできてくるわけで、それを社会がどうやってつくって、どのように使うかというところをきちんと子どもたちに教えてはいかがかと思います。
 ただし、薬害にいく前に、やはり薬の作用、副作用、薬害という違いをわからせる必要がありますので、まずはその薬の作用、副作用ということを教えてあげて、その後に薬害ということを教えてはどうかと思います。
 「薬害の定義」と書いていますけれども、薬害がどういうものかということよりも、副作用とは違うということがわかればいいのではないでしょうかと思います。
 やはり大事なことは、歴史的な事実をきちんと伝えるということですね。特に紙だとなかなか難しいんですけれども、できるだけ多くの被害者の方の声を盛り込んでみてはどうかと思います。先ほど皆さん同じようなことを言っていますけれども、なぜ起こったのか、どこに欠陥があったのかということもきちんと記載する。そういう中で私たちは学んでいくわけですから、その学んだこともきちんと記載する。社会は少しずつ変わっていくんだということですね。
 先ほど、またサリドマイドが使われるということがありましたけれども、そういうものであっても、やはり人を助けるために使わなければいけないというときにどうすればいいかということも教えるということです。大事なことは、こういう資料を読んだ子どもたちがやはり考えるということですので、君たちでも何かができるんじゃないかということを少し促すということですね。
 最後に、「薬を正しく使う」ということがいかに大事かということを教えて、できれば授業だけで終わるのではなくて、おうちに帰ったらお母さんに話してみるとか、だれか友達と話してみるとかというようなことでどんどん広がっていくのではないかと思います。恐らく、1回の授業ではなかなかできませんので、場合によっては小学生とか、そういうところから基本的なことをやって、中学生で薬害とか社会の仕組みというものが理解できるように、もう少し長い年月をかけて教えてはどうかと思います。
 あとは、自分がなる可能性もあるのでどうやって見つけるか、それからどうやって守るのがいいかということも当然教えなければいけないですし、恐らく膨大な資料がありますから8ページには載りませんので、インターネットからダウンロードするとか、文字ではなかなか伝わりませんので写真とか、声とか、そういったものが活用できるような教材も一緒にインターネット上に載せてみてはということであります。
 それからもう一つ、後ろの「我が国の副作用被害事件と安全対策強化の流れ」という資料がありますけれども、このようにいつ何があってどうしたのかという形で記載してはいかがかという例示だけ御紹介させていただきました。以上です。

○衞藤座長 ありがとうございました。
 それでは、続きまして手嶋委員からお願いいたします。

○手嶋委員 薬害ということで、被害者から一言申し上げます。
 私は、やはり薬と言われるでしょうけれども、薬とか副作用の問題ではなく、社会が薬害を発生させてきた。それを今後、繰り返さないためには、再発防止のためにはどういうふうにしていったらいいか。これを子どもたちに考えさせることが一番の使命ではないかと思っております。
 「総論」として、薬害は人間の命と健康にかかわる社会問題である。薬害の教育の理念は、薬害という比較的新しく大きな命と健康にかかわる社会問題について、薬害の歴史と事実を学び、薬害をもたらし続ける社会構造を知って、その改革を考える題材を与えることになる。
 2は、「薬害から学ぶこと」です。教材に盛り込むべき事柄です。
「教材の基本的な考え方」は、教材は薬害という人の命と健康にかかわる社会問題を通じて、やがて社会の担い手となる子どもたち、生徒たち一人ひとりが社会参加へ道筋を主体的にたどるものとして位置づけて取り組むことができる、そういうツールであるということになってほしい。
 すなわち、生徒一人ひとりが主体的に考えて、クラス、そしてそういう討論を経て、命と健康にかかわる薬害という社会問題に民主的な学習をして、そういう教材となる必要があります。
 ここの部分ですね。国に私たちは謝罪していただいたんですけれども、なぜ薬害被害者に謝罪しなければならないのかとか、国はなぜ被害回復を果たさなければならないのか。薬害を検証し、再発防止を約束し、果たさなければならないのか。こういうことを、生徒や子どもたちに考えさせる。
 人の命と健康に関わる企業として、製薬企業が果たすべき社会的役割というものもあります。私たちは、まだ実際にそういう社会的役割というのをしていただいたようなことはちょっとないんですけれども、薬の利用者としての多くの国民は受動的にただ受ける側の役割だけでよろしいのか。これらを薬害被害者の薬害からの回復の過程でメッセージを出していきますけれども、考えて、皆で討議して自主的に取り組んでいくことのできるような教材となってほしい。
 「薬害の歴史の年表」としては、やはり大きな流れ、発生とか、そういう順番がありますけれども、被害拡大の原因というものも入れてほしい。サリドマイド、スモン、エイズ・ヤコブ、肝炎、そしてHIVも入っていましたけれども、社会構造体としての問題点もあった。
 3に「解決までの経過の枠組みと概要」、大まかな社会問題化と国の解決までの道筋というのも入れてほしい。
 4に「加害企業、製薬企業の取り組み」、これはまだ実際そういう取組みを私は見ていないので何とも言えないんですけれども。
 5は「各薬害の被害の概要」です。被害者の規模とか薬害被害者のメッセージですが、こちらに『沈黙をこえて』というのを皆さんにお配りしていますけれども、これの最後の方に50代主婦と書いてありますが、東京原告の13番の方のメッセージがあります。社会問題としての薬害は、私たちは薬害肝炎判決と国の謝罪ということを是非教材の方に入れていただきたい。被害回復のための法律、今後の政策、そして検証と再発防止、製薬企業の役割というのは何なのだろうか。これは子どもたちもやはり疑問に思うし、全く謝っただけで何か取組みをしていくということが表に出ていない。最終的に、国民、市民のできることですね。
 そして、最後に教えていただく側の方に現場での活用に当たって教材の使い方で、このまましっかり効果的な現実的に即したような教え方、そしてそれが無駄にならないようにしていただきたいということです。以上です。

○衞藤座長 ありがとうございました。
 引き続きまして、望月委員お願いいたします。

○望月委員 私は前回こちらの方に出席できませんで、なおかつ長期に出張をしておりまして、実は先生方の御意見がまとまった段階で、それを拝見してから御意見を出させていただきましたので、ちょっと羅列のような形になっております。
 1つは、何人かの先生がおっしゃっていました、薬害を語る前に薬の本質的な部分について説明がある程度必要かなと、そんなにページを割く必要はないと思いますが、効果と副作用という両面を有すること。
 それから、2番目に内在する副作用を最小化し、効果を最大に引き出すために正しく使うということも必要で、開発段階のみならず市販後に至っても、こうした効果と安全性に関する情報をつくったり、集めたりすることが必要で、その開発と維持に多大な労力と費用を要するものであるということの解説が必要かと思っております。
 なおかつ、そうした情報が企業からは添付文書とか、医薬情報担当者と言われるMRという人を通じて医療者とか患者さんに提供されなければならないことと、提供を受けた医療者側あるいは患者側はその受けた情報を基に、それを活用して正しく使うことが必要であるということ。これが、薬事法の第77条の3というものに明記されております。このことについても、触れていただけるといいかと思います。
 4番目ですが、薬害という言葉について、なかなか定義をするのは非常に難しいことではあると思うんですけれども、人によってかなりイメージが異なっているような気がいたします。これは、倉田委員が薬害の原因についてかなりきれいに整理をしてくださっているのですが、いろいろな形の原因があった上での薬害、社会的な構造で広まって拡大していってしまったというところについて、大まかな概念を共有化する部分を持つ必要があるかと思います。
 それから5つ目ですが、いろいろなタイプの薬害があるんですけれども、今日、佐藤参考人の方が御紹介くださったサリドマイドというのが、薬害がなぜ起き、それにどう対応され、どう解決され、そして更に再度販売中止後、復活するに至った軌跡と言うのは、問題をどう解決していくのかを議論する課題としてはよいのかなと思いました。一つの例として、少し詳し目に取り上げていってみてもいいかと思いました。
 それから6番目ですが、被害の拡大を防ぐには適時適切な情報発信と、その受け止めと活用が必要であることをきちんと伝えていく資料になってほしいと思っています。これは、情報を発信するのは企業、行政、医療者側だけではなくて、患者さんも情報発信していただく。あるいは、その患者さんから発信された情報をきちんと医療者が受け止め、あるいは企業が受け止め、行政が受け止めて、それを更に次の対策につなげていくというような循環ですね。そこをきちんとそれぞれの果たすべき役割、それからここで倫理観について言及し、それが醸成されるような内容を盛り込んでいただければと思います。
 それから7番目ですが、実は薬学部は大学での講義にこうした薬害の被害者の皆様に直接お話をいただいて、学生の医療者としての倫理観、それから責務などを自覚させるということを行っています。
 ただ、今回の資料のページの制限を考えますと、被害者の方々の声とかお気持ちとかを細かく取り上げていくことが難しいように思いますが、できればその臨場感に近いものを出せたらという意味で、そうした記事を囲み記事などで複数の被害者の方からの声を入れてはどうかというのが御提案でございます。以上です。

○衞藤座長 ありがとうございました。
 それでは、矢倉委員からお願いいたします。

○矢倉委員 私は1回、2回目の検討委員会で、やはりスモンという薬害について十分言い尽くしていないということで、検討委員としてスモン被害者の全員にやはり私は責任を持たなければならない。そういう自覚から、今日はそれを補足する意味で発言させてもらいたいと思います。
 例えば、スモンはわかっているだけでも1万2,000人からの世界最大と言われる薬害被害なんです。皆さんの机上に、これがどうして起こったのかという年表を置いておりますので、その部分を見ていただきたいと思います。「京都スモン基金資料」というものが置いてあります。
 一応、ポイントになるところに印を付けておきましたが、もう既に昭和11年から内務省省令で劇薬指定になっているわけです。ところが、3年後にこれが解除されている。なぜ解除されたのか。これは、アメーバー赤痢によく効くということで、政治判断で海外への派兵、そういったものにキノホルムが必要であったという非常にきちんとした理由があるわけです。
 ところが、昭和12年、既に内務省衛生試験所はキノホルムの新合成法を開発しておりまして国産化しております。そして、その後すぐにスモン患者が発生し出しました。
 昭和20年にディビッド博士が、キノホルム剤をアメーバー赤痢以外に使うのは危険と警告しております。ところが、それにもかかわらず、昭和28年から31年度の間にチバ・武田、エンテロ・ヴィオフォルム、田辺、エマホルムの製造販売開始を始めました。そして、その間にたくさんのキノホルム、スモン患者が生まれました。
 昭和35年、またFDAからキ剤の厳重規制、「アメーバー赤痢に適応限定、幼少児への使用制限、要指示薬指定」と、そういうふうな警告を発しております。しかし、それも無視して製薬会社は販売を始めました。
 昭和40年、チバ社らはキノホルム剤のイヌとかネコへの使用中止措置を取る。後で写真がこの中に入っておりますので見ていただければわかると思います。
 飛ばしていきますと、そのころ、昭和42年に岡山県井原で患者が多発しました。
 昭和43年、岡山大を中心に、感染説が広まり、自殺、安楽死が相次ぎました。これも、この資料の中に新聞記事付きで入れております。
 そして昭和43年、ベルグレンが再度警告を発しております。しかし、製造販売はそのまま続けられました。
 そのうちに、今度は岡山大のウイルス説、京大のスモンウイルス説、こういうことが次々に出てきまして、スモン被害者はまさに村八分に遭って疎外、家族離反、離婚、いろいろな経済的な状況も含めて大変困難を期しました。
 ところが、スモン研究班というのがありまして、連絡協議会というものが実はあったわけですが、一遍解散されているのですが、昭和45年ですけれども、患者の尿からキノホルムが突き止められました。その尿というのは、東大近辺の三楽病院の看護師さんが患者さんの尿を調べていたら緑色になっているよと。キノホルムは緑色をしていますから、それによってキノホルムが突き止められたわけです。それで、45年に椿教授がキノホルムとスモンの間に因果関係ありと発表しまして、厚生省に報告しました。
 そこで、昭和45年9月8日に、厚生省はやっとキノホルムの使用販売中止をいたしました。キノホルムの含有薬品186種類、103社に及ぶ大量生産、発売されたキノホルムです。この販売中止をもってスモンは激減し、新たなスモン患者はほとんど生まれておりません。
 それで、昭和47年にスモン調査研究協議会はこれまでの研究成果を総括して「スモンはキノホルムの服用によるものと判断される」と最終結論を発表しました。
 次に、7枚目を見ていただきたいと思います。これは私が慌ててつくってきた資料ですので、申し訳ありません、7枚目にはちょっと四角いような表がたくさん入っていますが、その下の部分を見てください。「キノホルムの毒性値」というところです。キノホルムがどれだけの毒性値を持っていたか。これは専門の先生が出された数値ですから、普通のものは見ても余りよくわからないんですが、体重10kgの人に対して0.1gのキノホルムです。ですから、体重60kgの人は0.6gがせいぜい限度であろう。そして、3日間投与したらそれ以上続けない。4日休んで様子を見てからまた使用する。これはチバ社の測定値にも出ているわけですけれども、秘密にされてスモンがキノホルムと断定されるまで、これは公表されていませんでした。
 その横のグラフを見てください。これは、「キノホルムの年次生産量および輸入量とスモン患者の年次別発生数の関係(甲野礼作氏による)」です。甲野礼作さんとおっしゃるのは、スモンの研究班の先生です。先ほど表に出ていたと思いますが、この表を見ていただいたらわかりますように、国産のキノホルムがずっと出ていって大量につくられております。
 その次に、輸入製剤E、輸入製剤M、これはたくさんのキノホルムが輸入されたり製剤されたりしております。この点々も含めて見ていただければいいと思います。
 そこで、キノホルムの生産量と患者の発生数の関係を見ていただきますと、患者の発生数は黒点が付いておりますが、大体生産量に比例して増えている。最終、キノホルム剤の発売中止措置をとられた段階で患者の発生数がすとんとグラフが下に下がっております。そういう実態が証明されているわけです。
 私たちが子どもたちに薬害を教えるときに、先生方は作用と副作用の問題を教えたらいいんじゃないかとか、薬の適正使用を教えたらいいんじゃないかとか、そういう言い方をされますけれども、サリドマイドにしても、スモンにしても、こういう意図的な計画的な手段によって被害が拡大した。これは、私としては本当に国民の健康と命、安全を無視した、国の責任もそうですが、企業の製造責任、販売責任、これは決して許せるものではなかろうと思います。こういうきちんとした歴史のあるものは、たとえ中学3年であろうとわかるはずですから載せていただきたいと思います。
 スモンに関しては、症状についてはいろいろあるんですが、写真入りを見てください。写真の入っているもので、黒っぽくなっておりますので見にくいと思いますが、これは皆、スモン患者です。一番上は、足が変形しています。18歳でスモンになって、家の中で歩けないから家の中で補装具を付けて歩く練習をしたんです。
 その横の写真は、もう歩けなくなってしまったスモン患者の足です。
 その横は、失明ですから読めないので舌毒と言うんですか、そういうものをやられたと聞いています。これは全部、京都スモンの患者です。
 それから、次へ飛びます。

○衞藤座長 矢倉委員、そろそろおまとめいただけますか。大分、時間も経過しておりますのでおまとめください。

○矢倉委員 今日はちょっと遅れるけれども、申し訳ありません。もう少し時間をください。
 ここに感染説、ウイルス説、それからエンテロ・ヴィオフォルム、これの容量について非常に危険な曖昧なものが載っております。
 それから、最後に186種類の医薬品の名前を載せております。これも参考資料として是非見ていただきたいと思いますし、私は被害者として、薬というものはやはり安心して服用できるものでないとあかん。それから、薬は命や健康を守るものでないとだめだ。一たん失ってしまったら、もう失った機能は二度と戻りません。そういうことは、子どもでもわかるはずなんです。
 それから、薬を服用して異常が出た場合、すぐに相談できる機関が近くにある必要があると思います。全国の患者を代表して言いますと、今も非常に重症化して寝たきりになったり失明したりして、いまだに苦しい生活を続けておりますし、若年発症した患者は自分で生活できなくて親に保護されて今、生きておりますが、親が死んだらだれが面倒を見るのかという課題が残っております。
 そういう観点から考えると、薬害というのは単に薬をどういうふうに教えたらいいかというだけの問題じゃない。これだけつらいものなんだよということを、やはりしっかり指導する必要があるんじゃないかと思います。以上です。

○衞藤座長 ありがとうございました。
 それでは、本日御欠席の大杉委員の御意見を事務局から御紹介をお願いしたいと思います。

○医薬品副作用被害対策室長補佐 本日、大杉委員は御欠席ということで、資料Aになりますけれども、こちらの方を御紹介させていただきます。読み上げさせていただきます。
 「8月30日の会議で多くの委員から出された意見は、教材を資料集的なものにするということでした。その場合、以下のような構成が想定されます」ということで書かれております。
 「1資料は全ての薬害を取り上げ、概要(原因や被害状況)を説明し、被害者の声や思いを記述する。教材は「薬害の事実と被害者の思い」を知ることを中心とした資料集となる。この場合、保健体育科や社会科のいずれでも使用が可能であり、いわゆる授業の「導入」段階での活用が想定される。
 2資料は特定の薬害だけを取り上げ、概要とともに、何が原因で起こり、どのような取り組みがなされ、どのような救済の仕組みがあり、どのように救済され、今日どのような課題があるか、といった一連のストーリーにそって解説や図式資料を配列すうるものとなる。社会科が中心となる。
 この場合、薬害問題の原因や救済、薬害を防止するための仕組みを一つの事例を通して学習することとなり、他の薬害について学ぶ機会は少なくなる。
 3資料はほとんどの薬害を取り上げ、簡単な概要(原因や被害状況)を掲載した後、1、2の薬害について、被害者の声や思いをとりあげるとともに、どのような取り組みがなされ、どのような救済の仕組みがあり、どのような課題があるか、一連のストーリーにそって解説や図式資料を配列すうるものとなる。社会科が中心となる。」ということでございます。
 それらの1から3についての見解、意見ということでございます。
「上記1は、前回会議で出された「薬害を知ること被害者の声を聞く」という委員の意見を反映できる。しかし、学習のための基礎資料として、特定の教科に即した資料ではなくなる。
 上記2はストーリー性があり、社会科の消費者被害の解決に向けた授業展開が想定しやすいが、事例的な学習となるので、特定の薬害についてよく学べるが、他の薬害の学習の機会は提供できない。
 上記3は1と2の折衷案であるが、多くの薬害の事実を知るとともに、どのような取り組みがあり、どのような救済の仕組みがあり、どのような課題があるのかを学ぶことが可能で、また教える側も授業イメージを持ちやすい。
 以上の点を考えると、教材は3のように作成した方がよいと考える。
 なお、取り上げる内容については、適時性について考慮する必要があり、中学生の成長段階や理解力にあったものにしなければならない。そのため言葉を易しくしたり、説明も簡潔なものにしたい。」ということでございます。

○衞藤座長 ありがとうございます。
 では、以上で各委員からの御意見の発表を終わりにいたします。
続きまして、事務局からの資料の説明をお願いいたします。

○医薬品副作用被害対策室長補佐 それでは、資料1が「これまでの議論のポイント」ということでお配りさせていただいております。
 資料1につきましては、前回配布させていただきました資料、第1回会議の議論のポイントというものに前回の議論、もしくはこれまで提出いただいた委員の御意見を踏まえまして、特に共通する部分などについて追記させていただいたものということでございます。追記した部分につきまして、簡単に御紹介させていただきます。
 「2.薬害から学ぶこと(教材に盛り込むべき事項・構成)」ということにしておりますが、1として「教材の基本的な考え方」ということで追記させていただいております。多くの委員の方から提出された意見にもございましたけれども、やはり中学生の成長段階や理解力に合ったものにするべきであるということがございましたので、こちらを追記させていただいております。
 それから、教材の構成につきまして、特に大杉委員の意見でも御紹介差し上げましたけれども、社会科の教育を想定する中で、特に事実を知るという段階、それからその原因を理解するという段階、それから今後どのようにすればいいのかを考える段階と、そういう形を経ていく学習の展開が考えられるということでございましたので、そういった構成が一つの基本的な考え方になるのではないかということで追記させていただいております。
 それから、2としまして「医薬品に関することを学ぶ」ということで追記させていただいております。こちらに関しても、医薬品に対する社会的な仕組みとか、あるいはその関わりを学んだ上で薬害に対して正しい理解をしていただくという構成が必要なのではないかということで、そういった御意見について追記させていただいております。こういった構成にするということについても、本日御議論いただければ良いのかなと考えております。
 次のページになりますけれども、「3薬害被害を学ぶ」、あるいは「4薬害に関する事実を学ぶ」という点につきまして、前回、薬害の伝え方についても、薬害の原因といったところをしっかり示さなければなかなかその薬害自体伝わりにくいんじゃないかという御指摘を多くいただきましたので、そういった観点から記述を追記しております。
 それから、個別の薬害につきましてこういったものを加えるべきではないかということで、予防接種関連についてもこちらに記載させていただいております。
 それから次のページになりますけれども、5としまして「薬害を防ぐためにできることを考える」という部分につきまして、先ほどの議論の中でも幾つかございましたが、やはり子どもたちが自ら何をすべきなのかということを考えてもらうといった視点が大事だという御意見たくさんいただきました。そういった観点から内容を追加させていただいております。
 それから、「7教材の構成について」ということで記載させていただいております。こちらは、1枚おめくりいただいて別添ということで、教材の構成についてイメージという形でお示しさせていただいております。いただいた御意見をいろいろ見させていただいた結果、大体共通する点はこういったところかなということで議論の参考になればということで提示させていただいております。
 簡単に申し上げますと、全体の教材は最初にお示ししたとおり8ページの教材ということを前提といたしますと、1ページ目は表紙になるということだと思うんですが、次には先ほどもちょっとお話がありましたとおり、まずはその医薬品について学ぶということがもし入るとすれば、2ページ、3ページということで医薬品に関するものを盛り込む。
 それから、4ページから7ページ目になりますけれども、こちらの内容は順不同という形にはなると思いますが、例えば薬害の概要、歴史、原因、被害状況、そして先ほど議論にもありましたけれども、1つ2つの具体的事例を取って、具体的に経過や原因を追っていく。そこから導かれる被害者の方の声や思い、それから薬害から学ぶことといったものを盛り込んでいくべきではないか。
 それから、実際に生徒に考えていただくということで、自分たちは何ができるかという観点から、例えばさまざまな関係者がいらっしゃると思いますけれども、どのような役割を果たすべきなのか、あるいは、消費者の視点からどういったことができるのか、あるいは倫理観という観点から自分たちはどういうふうに考えるのかといったことが問いかけできるような、そういったものを盛り込むべきではないか。
 それから、8ページ目は背表紙になると思いますけれども、いろいろ自分たちで調べて、よりその情報が広がるようにということで、いろいろなものを盛り込むということが考えられるのではないかということで提示させていただいております。
 こちらの裏のページの方に、前回ヒアリングの際にも少しお話がありましたけれども、「ハンセン病の向こう側」というようなパンフレットの例ということで記載させていただいております。こちらの委員の皆様はお手元に前回、前々回の資料をとじたファイルがございますけれども、そちらに実際のパンフレットをお配りしております。大体の構成としては、ハンセン病とはそもそもどういう病気なのか、歴史について、隔離政策がなくなるまでの経過、被害の実態、それからこういう問題から何を学ぶのかといった構成になっているというところでございます。
 それから、4ページ目に少しお戻りいただいて、「3.現場での活用に当たって」というところで2つ目の丸を追記させていただいております。やはりページ数が限られているということもございまして、盛り込めない内容につきましてはいろいろな形で補足するべきではないかという御意見がありましたので、そういった観点から付け加えさせていただいております。
 資料1につきましては、以上です。
 それから別途、資料2としまして関連資料という形で配布させていただいております。こちらは、前回配布させていただいた資料を、一部御指摘いただいた部分を修正したものということでございますので、議論の参考にということで机上に配布させていただいております。こちらの説明については省略させていただきます。

○衞藤座長 ありがとうございました。ただいま事務局より、これまでの議論を踏まえた「教材に盛り込むべき内容」をまとめていただいたと思います。実際の8ページをイメージして、どういった観点から資料をつくるかということに関してのイメージを持たれたと思います。次回の検討会までに、教材に盛り込むべき内容と構成の大枠についてはある程度、共通の認識を持ちたいと考えておりますので、意見を本日余すところなく本日の検討会で出し切っていただきたいと考えております。
 前回は余り時間が取れませんでしたが、本日あと35分ほど時間を取れると思いますので、まずは委員の皆様の御意見を伺いたいと思います。
 まず、先ほどの委員の皆様の御意見に対しての質問等がある方がいらっしゃったらそちらから出していただいて、その後、自由な意見交換に移ってはどうかと思いますが、いかがでしょうか。どなたか先ほどの皆さんの意見に関しまして、御発言ございますか。
 どうぞ、花井委員。

○花井委員 前回は欠席させていただきましてすみません。
 まず、今日も佐藤さんの方からサリドマイドの話をされ、また、矢倉さんの方からも更にスモンの詳しい話をされたわけですが、やはり各薬害は全部ちゃんと載せるべきという思いを新たにしましたので、コンテンツとしてすべての薬害を載せる。
 それから、それはそれぞれの薬害の被害者の観点というものがあろうかと思うのですが、今、端的に聞いていても、この薬害はここがやっぱり特色だなとか、ここがひどいなとか、ここだよなというところがやはりあるように思います。つかみですね。そこは多分小さい分量、スペースになると思うので、うまくそれを出した形で各薬害を全部扱う。特にここにはソリブジン、クロロキンの被害者の方が出て来られていないので、やはり来られていないような薬害についても記述はちゃんとしておくべきじゃないかということをまず思いました。
 それから、さっきの佐藤さんの話でも思ったのですが、被害者の被害というところに差別ですね。スモンで言えば、自殺に追い込まれる。ウイルス説で自殺に追い込まれる。HIVではウイルス説は当たっているんですけれども、自殺者もうちも何人かいるんですが、二度引きじゃないですけれども、被害に遭っておいてまた世間からたたかれている。サリドマイドで言えば、恐らく佐藤理事長は先天性障害の問題と一般で、その子どもたちがということでしたが、激烈に生きていく中で世間というものはそんなに優しいばかりではなかったようなところはあったと思うんですけれども、そうしたところを押さえておくべきかと思いました。是非、そこをお願いしたと思います。
 それから、もう一ついいですか。資料1の1の丸の2つ目は、もしかして私が発言したんですか。

○医薬品副作用被害対策室長補佐 発言いただいたことを参考にして書かせていただいております。

○花井委員 このテキストは、ちょっとひどいと思います。「二度と薬害の被害者も加害者もつくりたくない、被害者問題でも企業の責任問題でもなく」、もしかしたら言ったのかもしれませんが、「被害者問題でも企業の責任問題でもなく」などと書かれてしまうと、では薬害って何だよということになりますので相当誤解を招くし、被害者問題なんですね。もっと言えば、企業の責任問題なしに薬害などはない。
 ただ、そういう問題とだけとられると極端なものになるでしょうという趣旨で私が言ったのかもしれないんですけれども、削除しておいていただきたいです。文章としては、「二度と薬害の被害者も加害者もつくりたくないという被害者の思いを踏まえ」、それ以降の文章ということにしておいてもらえますか。そうしないと、さすがにこれをもし私がしゃべったとなったら、これはとんでもないです。以上です。

○衞藤座長 ほかにいかがでしょうか。今のことに関連してでも結構です。
 では、高橋浩之委員どうぞ。

○高橋(浩)委員 まだ私自身考えが整理できていないので今日も意見は出さなかったんですけれども、今、皆さんの御意見を伺っていて、教材をつくる上で1つ大きなポイントになるのは、薬とはみたいな、そもそも薬とはというところを入れるのか、入れないのかというところだと私は受け止めています。
 薬とはというのは、やはり光と影というか、そもそも薬の特性みたいなものを扱って、そうすると適正利用みたいな話も出てくると思うんですけれども、薬の世界に入ってくる中学生にとっては、いろいろな問題を理解する上でとても大事なこともあると思うんですが、逆に今度は薬害というものが単なる副作用のようなものとは違う。
 特に社会的な行政に関しても、あるいは企業に関しても問題があった上で起こるということにするとしたら、薬とはという入り方はそれなりにある程度の分量を取ってしまうし、そのつながりから言ってもちょっと難しいところができるかもしれない。
 逆に、薬とはというのは基本的にはなしにして、いきなり薬害でこういうことが起こったんだというところから入ると、大杉委員が書かれたようなことなんですけれども、非常にすんなりと何が起こっていて何が原因と言えるのだろうか。これから何ができるのかという形で、すんなりと流れていくということは言えると思います。
 ただ、その場合に、中学生にとって、子どもたちの今の身近な感覚とか、子どもたちが何ができるのかということからちょっと離れるというか、そういう教科の社会という発想で扱うことになると思うんですけれども、なかなか難しいような面もあるかもしれない。
 ただ、薬とはというのは余り扱わずに、すっと薬害から入っていくということにすれば、結構すんなりいくような気もします。
 今、伺っていると、薬とはというところを入れるのか、入れないのかということは結構お考えが委員の間で割れているんじゃないかと思いましたので、ちょっと発言させていただきました。

○衞藤座長 ありがとうございます。薬とはということに関して今日も異なる御意見があったと思いますし、その部分に焦点を当てたいと思いますけれども、いかがでしょうか。
 栗原委員、どうぞ。

○栗原委員 今のお話は非常によく伝わってきたのですが、患者側が適正に使えば避けられた薬害事件などというのはないんですよね。ですから、どうも1回目からの場の様子を見ているとかなり多くの皆さんに、あるいは厚労省側にも、適正使用を合わせてというお考えが非常に強い印象を感じたのですが、その中で1回目に花井委員の方からその辺りのお話も出たと思うんですけれども、やはり今の高橋委員のお話のとおり、すっきりした形で入る。これがいいのではないかと、私も今、改めて思いました。

○衞藤座長 ほかの委員の方々は、いかがですか。
 では、小林委員どうぞ。

○小林委員 高等学校の薬教育が終わった後にこの内容を学ぶということであれば今、御意見があったような形で薬害のみということで進むのも結構かと思うんですけれども、先ほど申し上げましたように、中学生の3年生というのは薬教育が最初に行われるときなんですね。そのときに、ほかの考え方なしで薬害が最初に薬と触れ合う接点であるということに対してはちょっと疑問がある。
 本当に子どもさんたちが薬害ということに対して理解ができるのか。それを膨らませていけるのか。そこら辺が少し心配になっております。

○衞藤座長 いかがでしょうか。

○栗原委員 今度の指導要領では、保健体育で正しく使う云々というのが入ってきて、そこで適正使用に関わる学習が始まっていくわけでしょうし、そこは保健体育の指導要領に記載された教育に期待をするとして、小林委員はお書きになっていたと思いますが、その後にというふうなことも述べられているようですので、そういう言い方でいいのではないかと思います。

○衞藤座長 今の点はいかがでしょうか。
 望月委員、お願いします。

○望月委員 私も薬の光と影というふうに表現しますと、光の部分も最初に触れていただきたいという意見を持っています。
 ただ、ページ数をそれほどたくさんこれについて割くということに期待しているわけではないんです。理由は、たしか1回目のときに文科省の方が現在の公民の学習指導要領の説明をしてくださったときに、この薬害について現在も多少触れていらっしゃるということで、それはその他もろもろのさまざまな社会的な問題から発生してくるいろいろな事件の一連の流れの中で、その一つとして扱われていたという記憶があるんですね。
 今回、薬害をクローズアップしていく場合、薬という側面がどうしても強調されてしまって、もちろん薬の持っている固有の毒性というものもありますが、先ほどからほとんどの委員がおっしゃっているように社会的な構造的な問題とか、いろいろな情報の非対称性の問題とか、さまざまな問題、政策の問題とかが関わって起こってきている部分をきちんとここでは学んでいただくことが重要なので、その一つの例としての薬害というところが私はあるように思います。
 そのときに、やはり余り薬害だけでその学習をしていただくということよりは、多少薬の光の部分を知った上で、だけれども、こういういろいろな社会的な欠陥からこういうものが起こってきて、私たちは将来こういうことを二度と起こさないためにどう対応していくのかという展開でつくっていただく方がよいのではないかと思っています。

○衞藤座長 全体のスペースの関係から、薬というものに関しての理解にはそれほどスペースは割かなくてもあった方がよいという御意見と、積極的にない方がよいという御意見まで若干幅があるようですけれども、今、幾つかの御意見が出てきて、薬というものの理解があった方がいいという御意見も、それほどその部分に大幅なスペースを割く必要はないというような観点の方がやや多いように思いますけれども、いかがでしょうか。全体としてそれを見渡したときにどうかということです。
 では、手嶋委員お願いいたします。

○手嶋委員 これだったら、全体的に薬害関係と薬で2対1の割合ということになりますね。2ページ、3ページと、4ページから7ページで、2ページと4ページということで、薬害の問題というのは先ほども言いましたけれども社会的害ということで、私は副作用とか薬とかのそういう問題とはちょっと違うのではないかと思っていますので、高橋先生が言われた薬害の再発を防止するという教育、その点において薬関係を前に持ってきてというよりも、やはり薬害で占めてもらった方がよろしいかと思います。

○衞藤座長 花井委員、どうぞ。

○花井委員 先ほど小林委員のお話にもあったのですが、薬の教育は薬の教育でこれは必要で、文科省の方がやる。
 私たちの理解からすれば、薬の光のことを伝えたい人はたくさんいて、それに対するリソースは膨大にあって、薬害という問題については、ともすれば薬のリスク、ベネフィットの問題だよねとずっと言われ続け、薬害という問題について理解されずに苦節十何年やってきてここへきているわけです。だから、私たちからすれば影だけでいいじゃないかと思うんですが、ここはやはり全体の構成の具体的な話ですから、そもそも4ページ以降に薬害の概要を書くのに薬のことを記述せずに薬害と書けないと思うんです。
 そのテキストの内容に、やはり薬というのはというのがあっていいし、多少望月先生に御執筆いただいてということがあっていいと思うんですが、2、3ページにがっちり薬関係というのは、これはなしじゃないか。全体の分量から言えば、影の部分だけでも埋もれかねないようなコンテンツでしかない。
 恐らく、これも政治的なんですけれども、小林先生が御心配になっているのは、薬というのをちゃんと学ぶ前に強力な薬害というイメージがだっときちゃったら、薬を正しく学ぶことを阻害するんじゃないかという御懸念だと思うんですが、そういう使い方はしてほしくないと思うんです。
 だけど、このコンテンツ自体にその効果も入れようというのはちょっと欲張り過ぎで、このコンテンツは強力な毒も含むコンテンツなわけです。薬害という問題を扱った一つの副読本なんですから。
 だから、これを教える前にはやはり薬のことをちゃんと教えた上で薬害もやるというのは、現場で何とか、それは文科省が動いてやるべきだし、薬の教育に関してのパンフレットを日薬とかがつくってすばらしいものがあるんですけれども、ああいったものもありますし、それと合わせて現場で使っていただければより効果的なもので、これは1コンテンツなわけです。だから、そこに全体の論点があるんだからと言ってそれに盛り込むというよりも、これは薬のというよりも社会のある種、不完全性を伴った問題系の一つの、いわゆる光と影で言えば影そのものであって、私から言えば影に埋め尽くしていいんじゃないか。
 ただ、影だからと言ってある種のバイアスがかかったような影ではなく、その影の中に普遍的な問題系をちゃんと入れ込めるかどうかというところに注視して、その普遍性の中に医薬品というものに対するニュートラルな記述というものが入れば、そんなに変なものにならないんじゃないかと思うので、論点化すると確かに対立項なのですが、どうでしょうか。ここにこういう雰囲気でこの辺のニュアンスを盛り込んでみたいな感じで議論していくと収れん可能じゃないかという気がします。
 私は極論で、これは影に徹すべきというふうに思います。

○衞藤座長 ありがとうございました。
 望月委員、どうぞ。

○望月委員 花井委員のおっしゃっていることはとてもよくわかるんです。私がこの薬のところで特に入れていただきたいと思っておりましたのが、先ほどキノホルムのことを矢倉委員がお話されたときに、毒性試験の結果のデータが公表されていなくてというお話をされていたと思うんです。薬の開発のプロセスの中で、さまざまな動物を使った試験ですとか、細胞を使った試験ですとか、あるいは人を対象にした試験等々のデータが出てくるんですけれども、それをきちんと評価し切れていただろうかというところは、薬害の一つの問題の原因になっているところもあると思うんです。
 サリドマイドは無理だったかもしれないですけれども、ひょっとしたらもっときちんと動物のデータを取っていたら変わったのか、あるいはヒト特異的なのかということもあるとは思うんですけれども、そういうきちんとした薬の負の側面を評価できるようなデータを、薬を開発していくプロセスの中では出しているんだ。出して、でも評価し切れなかったものも原因になっているというところを知ってもらうためには、どうしてもそこのプロセスがあるということをどこかで知っておいてもらわないといけないのかなということが1つあるんです。
 それともう一つは、その薬が製品になって発売された後にも、きちんとそれをモニターしなければ薬害は防げない。そのモニターをする仕組みというのがあっても、きちんと機能できていなかったんだということも理解してもらうためには、ここの一連のプロセスが最初にどこかにインプットされていないといけないのかなと私は思っています。そういう意味でも、ここに2から3ページを取るかどうかは別にしても、そこが入っていてほしいと思っております。

○衞藤座長 ありがとうございました。

○佐藤参考人 参考人の立場ですみません。今のことで思うところがありまして、ちょっとだけ述べさせていただきたいと思います。
 医薬品はもちろん効果があって、でも副作用があって、だからこそ行政で審査をし、安全対策をするし、企業にもそれをきちんと適切に使ってもらうためのいろいろな情報提供をする責務があるわけで、それが果たされなかったからこそ薬害が起きたわけですね。
 ですから、そういうコンテキストの中で薬というのはこのように役立ってきて、皆の健康の向上に役立ってきたけれども副作用というものがあって、通常は一般の患者さんの自己判断でリスクを背負わせるのは大変なので、それをきちんと適正に使ってもらうための社会の仕組みがうまく構築されてきたんだけれども、その過程の中でそれが十分ではなかったためにこんなことが起きちゃったんだ。
 そういうコンテキストの中で、イントロとしてそういう医薬品の役割、歴史、市販の仕組み、作用と副作用ということが語られるのであれば非常に収まりがいいと思うんです。だから、どういうコンテキストでそれを語るかに尽きるのではないかと思います。それだけのことを言うためであれば、恐らく20行ぐらいあれば十分ではないかという気がいたします。最初の半ページなり、3分の2ページぐらいで足りるのではないかという気がいたします。

○衞藤座長 どうもありがとうございました。
 薬害の取り上げ方についても少し議論をしていただければと思います。
 では、矢倉委員どうぞ。

○矢倉委員 私は、今の佐藤さんの発言と同感です。薬品は本来こうあるべきなんだけれどもというのはイントロデュースでいいわけです。しかし、薬害はそうじゃなかったわけです。ということが薬害の副読本ということであれば、これはやはり薬害の歴史としてきちんと載せるべきじゃないか。
 これを生徒たちが使っていくわけですから、これは教科書ではないですが、副読本は歴史に残るわけです。いいかげんなものをつくってしまったのでは、今でも例えばデータ隠しとかいろいろ起こっているわけですから、そういう意味で余り薬とはというような大上段に振りかぶった内容のものを先にばんと載せてしまうよりはイントロデュース的な役割にしておいて、やはり薬害を中心にして、人の命や健康を守るために、こういう薬害が起こってたくさんの人が苦しんでいる。そういう苦しみの状況、被害者たちの声を載せていただきたいという思いです。

○衞藤座長 ありがとうございました。その薬害の取り上げ方、示し方とか、どういう観点からやるかとか、そういうことに関しても少し御意見いただけたらと思いますが、いかがでしょうか。
 高橋寛委員、お願いします。

○高橋(寛)委員 1回目に出ていなかったこともあるんですけれども、今のお話を聞くと、今のような流れの中で資料がある。つまり、この資料をどう使うかという位置づけだと思うんですね。多分、薬害の8ページ物をつくってもいいですけれども、結局それを出す前にはやはり何かの情報が必要なのではないかということだと思うんです。
 それで、8ページの中に何を盛り込むかというときに、今みたいに薬の問題は必要なのか、要らないのかという議論でもちろんいいんですけれども、中3の子どもたちの頭の中に何もない状態で薬害だけ出ると、もしかしたらインパクトが大きいんじゃないですかという気持ちがあります。
 ただ、その指導要項の中で、もしかしたら中3のときに子どもたちの認識がどの程度なのかというのが私にはわからないので、そこはちょっと判断できませんけれども、いずれにしろ薬ってこうだよね、それからこういうふうにしてできてくるんだよねということはやはり必要なのではないかと思います。
 それをこのパンフレットに盛り込むかというのは、そういう授業ができるかどうかによって変わるのではないか。そこをちょっと教えていただきたいと思います。

○衞藤座長 いかがでしょうか。
 では、倉田委員どうぞ。

○倉田委員 私も、高橋委員と同じ考えを持っています。やはり薬害だけで入っていってしまうと、その以前に生徒たちが薬について何を学んできたかというところに大きく影響されると思うんですが、そこのベースがあって薬害というものを学んでいってほしいとやはり思います。

○栗原委員 少し質問があります。第1回目の資料の中に最終提言の抜粋がありますが、この中に学習指導要領に盛り込まれるよう関係者が努力すべき云々という表現があります。
 この教材づくり、配布の話はとりあえず今年度のお話をしているわけですけれども、次年度以後、あるいはいつまでという、その辺りの先の展望を医薬食品局の方はどのようにお考えになっているのかということを聞いておきたいのですが。

○衞藤座長 では、この点につきましては事務局からお答えいただけますでしょうか。

○医薬品副作用被害対策室長 次年度以降ということであれば、今回予算を取ってこういう検討会をお願いして教材づくりをお願いしているわけですけれども、1年限りということではなくて、少なくともある程度継続しないと、ある1学年だけ勉強する機会があるということでは余り意味がありませんし、文科省さんともお話ししながらですけれども、継続して現場に提供できるようにしたいということがまず1つあります。
 それから、今年はこういうふうに議論をしていただいているわけですけれども、最初の一歩みたいなところですので、今年度できることが100%のところまでいくものではない。最初からあきらめるわけではもちろんありません、できる限りやるんですけれども、例えば現場でより使いやすくしていくとか、よりよく使ってもらうようにするためには教材そのものや、それ以外の工夫もいろいろあるのではないかというようなこともありますので、そういったところについても2年目以降議論できればいいなという気持ちもあります。
 もちろんこの検討会では教材だけではなくて、いわゆる薬害資料館ということも一つのテーマになっています。予算そのものは毎年度、毎年度セットされるものですから、今の時点でこうですみたいなことはなかなか言い難いんですけれども、我々の気持ちとしてはそういうことを思っているということです。

○衞藤座長 栗原委員、よろしいですか。
 では、小林委員どうぞ。

○小林委員 先ほどございました、今の中学生の薬教育がどこまで進んでいるかということですが、皆さんも御存じのように平成24年から新学習指導要領に盛り込まれて、中学生は初めて授業としてこれから受けるということでございます。それまでにはやられていないのかと言いますと、学校によりましては総合学習とか保健指導の中でやられているところもございます。
 しかし、それはほんの少数だと私どもは認識しております。現状、私どもが薬の正しい使い方の教育に関係する先生方に対して行っている啓蒙内容は今後、保健体育の先生が中心に授業としてやられることになります。
 しかし、現実的に皆さん保健体育の先生方をイメージしていただきたいんです。保健体育の先生が薬のことを御存じですか。どちらかと言うと体育中心で保健に関して、特に薬のことを教えられるとは現状思えないですね。今は、その保健体育の先生に薬の授業をどういうふうに進めていくのかということを啓蒙している段階です。それと同時に、学校薬剤師の先生方ですとか養護の先生方にもどのようにサポートしてゆくか啓蒙している段階です。
 保健体育の先生が薬の正しい使い方を教えるわけですが、私は現状、本当に平成24年からできるのかという事に大きな危惧を持っております。そういう現状でございますので、余計、薬害教育が中学校3年の中で最初に行われるということに対しても非常に危惧を持っているわけです。以上です。

○衞藤座長 いかがですか、時間がそろそろあと10分弱なんですけれども。
 高橋寛委員、どうぞ。

○高橋(寛)委員 個人的には、皆さんの薬害に対する気持ちを全面的に入れていただきたいという気持ちはあります。
 ただ、最後に子どもたちに何ができるかということをもし問うたときに、何ができるかの前の情報、つまりどういうふうになってきているのかという部分がちょっとないと、皆に何ができるかと問うたときに迷うと思うんです。その部分だけは入れてほしい。
 薬そのものは特になくてもいいんですけれども、世の中こうやって薬ができていて、こことここに原因があったんだよと、そういうことを踏まえて薬害のことを話して、さあ君たちにどういうことができるかと。子どもたちのレベルですから細かいことはわからなくてもいいんですけれども、こことここだったらできそうだねという部分の参考になる部分だけはちょっと入れていただきたいなと思います。

○衞藤座長 花井委員、どうぞ。

○花井委員 今までの議論と、それから先ほどの望月先生の話を聞いて思ったんですけれども、結構薬害って古い、60年代とかの時代のことですし、実は私どもがよく使う資料があるんですが、結構薬事行政とか医薬品、薬事法そのものが薬害の教訓を踏まえて、踏まえて増築しているという歴史がある。これは、肝炎の検討会でかなり詳しい資料が出ていて資料化されているんです。
 だから、今の制度というのは逆に言えば被害、これは私たち薬害被害者の思いなんだけれども、私たちのいしずえに立って今の制度があるという思いがあるんです。現に副作用報告なんかしなくてよかったのが、サリドマイド被害でさすがに副作用モニターしなければいけないのではないかという話になったんですね。それはサリドマイドの被害があったから、さすがに副作用はモニターしましょうと言ったわけです。いわゆる医薬品が危なければ、回収権限などというのは79年改正ですからまさにスモンの運動ですよね。逆に言えば、79年改正以前の薬事法では副作用報告は義務じゃなかったわけです。
 そういう具合になっていて、望月先生からさっきLD50のお話が出ていましたけれども、例えば治験に入るときに、ではLD50データを企業は出してくれるのか。それでどのぐらい動物が死んだんですかと聞いても教えてくれなかったりするわけだし、動物実験データをもうちょっとちゃんとしようというのを今アップデートすべき論点もあるから、今後も多分制度は進化していくんだろうけれども、そういう意味では現行の制度と薬害の歴史を踏まえた変化をしているという記述が最後にあれば、ちょっといいかなと思ったんです。
 だから、例えば医薬品がモニター制度、例えばサリドマイドのことでモニター制度はここで始まったけれども、今は海外同様に厳しいレギュレーションがあるわけですけれども、そこに今はもうちゃんとしてすばらしいことになっていますみたいな話にされちゃうと、被害者はやはりそこはどうしても引っかかるんです。だから、薬害の歴史とともに医薬品の制度がレギュレーションとか、そういうものが整備されて、今はこのような形でモニターされていますよというものだったら私たちの感覚に整合的かなと。
 先ほどの望月先生のお話は本当に洗練されていて、ちょっと難しくもあるお話だと思うんです。でも、その今の洗練された制度設計というものに至るまでの泥臭い何十年、ここを私たちは体現していると思っています。それで、それは今、直ってパーフェクトな社会になって十分できちゃったというのであれば別に取り上げなくていいんです。
 ところが、意外にそのプロセスの中に、今後の社会をアップデートするためにいい知恵がたくさんあるんだという確信があるからこれをやっているわけです。それは、そういう形で取り上げると非常に中学生でも理解できるように書き得るんじゃないかと思います。可能かどうかは別としてですね。

○衞藤座長 室長、どうぞ。

○医薬品副作用被害対策室長 事務局としては余りまとめるような立場にはないのですけれども、次回に向けて作業をしていく上に当たって今日は非常にいいお話を伺ったので、大体こんな感じで作業ができたらということをちょっと御紹介させていただいて、そんな感じでいいのかどうかということについて御意見をいただきたいと思います。
 共通するところは、もちろん薬害の被害とか歴史とか実態とか、そういったところに中心を当てるということと、それらを材料にして中学生の生徒たちにどういうことを考えてもらうかといったところに大きな柱がある。
 そういうことを考えてもらう上で、薬のそもそもの仕組みだとか、関係者の役割だとか、そういったところを必要な範囲ではやはり入れておいた方が、きちんとした理解につながりにくいのではないかということだろうと思います。後者の部分が、今日の資料にある構成のイメージだと何だか先にそちらの方に焦点が当たるような形になって、肝心なところが相対的にピントがぼけるかもしれないという御心配があったんじゃないかと思います。
 そこで、そこは最初の2ページ、3ページを使ってやるというより、もうちょっとほかのやり方、もっとボリュームを縮小するとか、あちこちにばらけるようにするとか、そういったやり方を考えた方がいいんじゃないかというような趣旨が1つあったのかなと感じました。
 それからもう一つは、より本質的には最初に高橋浩之先生がおっしゃったことで、薬の副作用は避けられないという問題と、薬害の問題との関係をどういうふうに理解したらいいのかというところは、かえってわかりにくくなるかもしれないという面があるとすると、そこのところは実際に書くときにどういうふうにすれば解決されるのか、ちょっと考えなければいけないのかなという感じがします。
 そういう意味で、花井さんがおっしゃっていたところは、制度的にはまさしく今も進歩を続けているところで、例えば肝炎の事件を契機とした議論があったからこそ今、議論されているのは、患者さんからの情報をどういうふうに受け止めて対策につなげていくかとか、医療機関にたくさんあるデータをどういうふうにシグナルとして取り上げていくことができるようにしていくかというような議論が、今まさしく始まりつつあるところです。こういったところは過去の事件があったからこそというか、そういうことが一つの基盤になっているわけです。
 そこで、中学生なりに是非考えてもらえたらいいと思うのは、こういった社会的な仕組みというのは最初から完全なものではなくて、特に薬というものの本質みたいなものがあるからこそ非常に厳しい歴史もあって、そういうものを踏まえて、また関係者がそれぞれの役割を持つ中でだんだん世の中をいいものにしていくというところに、人ごとではなくて中学生にも自分たちの問題でもあるし、それから社会を構成していくとか、あるいは社会の運営を担っていく一人の人間として主体的に考えてもらえるようにしたいというようなことを思っています。
 そういう意味では、さっき伺ったようなところは大きな材料になるかと思っています。

○衞藤座長 そろそろ時間がきそうなんですけれども。
 では、矢倉委員どうぞ。

○矢倉委員 今、室長さんがおっしゃったことの意味が、実はよくわかりません。
 私たち患者が、日ごろどう言っていると思いますか。寝たきりの患者が、厚生省のお役人も、製薬会社のお偉いさんも、一遍キノホルムを飲んでみたらどうですか。自分が薬害になったとき、寝たきりになったときのことを考えてくださいと、いつも言います。そういう被害者の立場をやはりきちんと受け止めて、そういう被害を二度と起こしてはいけないんですよというような観点で持っていけるんじゃないかなと私は思います。

○衞藤座長 それでは、今日いろいろと御意見をいただきました。特にどういうふうに取り上げるか。実際に教材にするということを想定しながら、どういったことに重点を置くかとか、どういうことを付記すべきかというようなことも御意見をいただきましたので、本日の議論を事務局で整理していただきまして、次回の検討会で教材の内容について共通理解を得られたらよいのではないかと思います。
 今後の進め方ですけれども、第1回の検討会で予定として示されたと思いますが、次回の検討会で「教材に盛り込むべき事項」と「構成の大枠」、それから教材の原案を作成するための「具体的な資料、(材料)」についての一定程度の取りまとめを行えればと思います。
今後のスケジュール等につきましては、また追って事務局の方から御説明があると思いますけれども、教材の原案は業者が作成するということになるので、ここで行う取りまとめは業者が原案を作成するに当たって、どのような観点や構成で原案を作成すればよいか。その際、どのような資料を参考とすればよいかといった大枠についての取りまとめということになろうかと思います。今回の取りまとめがそういったものであるということについての御理解をいただいて、次回に取りまとめができますように、どうか御協力いただければと思います。
 本日、出していただきましたさまざまな御意見は、これまでの議論をまとめた資料等を参考にしながらまとめる形になろうかと思いますが、その内容につきましては引き続きまた御意見もいただきながら、これから「教材に盛り込むべき事項」に対応する具体的な資料や材料についてはまだまだ現状では不足しているというふうに思います。
 したがいまして、原案を作成する業者の方が、実際に教材に盛り込むべき内容を選ぶに当たって、こういう材料があった方がよいというふうなことがございましたら、是非事務局の方に御提出をいただきますよう、お願いしたいと思います。
 例えば、「薬害被害の実態を伝える」という事項に対応するものという意味で、被害者の方の実情がわかるものとか、写真とか、声とか、そういったようなものでも結構だと思いますし、今日は大杉委員の御意見等にありましたけれども、社会科の中の消費者教育という観点から盛り込むべき事項というようなものに対応するという意味で消費者教育に関する資料などとか、そういった具体的なものがあれば役に立とうかと思います。前回と同様、追って事務局から御連絡を差し上げる形にしたいと思いますので、御協力をお願いいたします。
 それでは、次回の進め方につきまして、事務局から御案内の方をお願いいたします。

○医薬品副作用被害対策室長補佐 今後の進め方でございますけれども、先ほどちょっと座長からもお話がございましたとおり、原案につきましては業者の方に原案を作成していただくということになろうかと思いますが、まずはその業者を選定するという形になりまして、それから特に今回の検討会で御議論いただいた内容とか、あるいはある程度取りまとめていただくその大枠とか、具体的な材料から業者で原案を作成するという形を想定しています。
 そして、業者が作成した原案を基に、また検討会の方で御議論いただいて、具体的な教材をどうするかということを議論していただくという形になろうかと思います。
 次回の日程は、10月5日火曜日18時からということになってございます。場所はまだ未定ですので、追って御連絡差し上げたいと思います。

○花井委員 質問をいいですか。業者というのは冊子をつくる業者という意味だと思うんですけれども、一般のいわゆる行政の委託事業と違って普通は編集者がつきますよね。編集と、それからテキストについては業者がライターを使うとか、テキストも業者が起こす可能性があるんですか。どういうイメージですか。

○医薬品副作用被害対策室長 教材については、ここで改めて議論をいただく必要があるので、そのための材料を業者につくってもらうということになります。その業者がつくってもらうための材料を、まずここの委員会からのアウトプットとしていただきたいと思っているわけです。
 先ほどの御説明は、大きく言えば3つある。
 1つ目は、これまで議論いただいているような、どういう考え方で教材をつくるのかというのが、資料1で言うところの「議論のポイント」です。
 2つ目が、構成そのもの。資料1の5ページにあるようなものです。
 3つ目が、具体的な被害者の方の声だとか、意見だとか、あるいはその歴史だとか、それから制度改正がどうだったとか。そういったところについてはこれまで事務局で整理できるものは事務局から用意していますけれども、被害者の方からの分についてはまだ十分ではないというか、まだまだあるんじゃないかと思っていますので、そういうところはいただきたいと思っています。
 例えば薬の今日の議論でいけば光と影みたいな問題だとか、関係者の役割みたいなところは、これまでお出しした資料の中にある程度入れてはいますけれども、そういったところについても十分でないとか、例えばここにこういういい資料があるとか、こういうところは参考になるんじゃないかというようなところがあれば、それは是非いただきたいというふうに思っています。

○花井委員 業者はテキストを書くんですか。

○医薬品副作用被害対策室長 そういった材料を基に、編集をしてもらう。

○花井委員 通常のこういう進行管理だと、編集者は進行管理があって、こういうコンテンツは全部載せろと依頼者からありますよね。そうすると台割りを作成して、台割りに原稿依頼して、ここの枠の執筆者はだれだれ先生ですと振り分けて内容を書いていくという進行で、例えば書く役割の人に頼む進行なのか。
 今、言っている業者にテキストも書いてもらってこんな内容でというのでは大分違うし、編集者に要求されるスキルも大分変わるので、そこを聞いているんです。

○医薬品副作用被害対策室長 今、想定しているのは後者の方です。ですから、そのための材料をここでなるべく出してもらいたいと思っているということです。

○花井委員 わかりました。そうすると、その業者がかなりレベルの高い仕事をしなければいけなくなりますね。

○医薬品副作用被害対策室長 もちろんここに出してもらう前に、我々との間では議論をしていくことになると思いますし、皆さんからも個別にこういう材料とか、ああいうものとかというのがあれば、そういうこともなるべくいただいた方がやりやすいと思います。

○衞藤座長 それでは、少々時間を超過してしまいましたが、本日の検討会はこれにて終了したいと思います。
 長時間にわたり、どうもお疲れ様でございました。ありがとうございました。

(了)
<連絡先>

厚生労働省医薬食品局総務課
医薬品副作用被害対策室
TEL 03-5253-1111(内線2718)

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