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2010年3月23日 第7回臓器提供に係る意思表示・小児からの臓器提供等に関する作業班議事録

健康局疾病対策課臓器移植対策室

○日時

平成22年3月23日(火)
15:00~


○場所

厚生労働省 共用第6会議室


○議題

(1) 施行に向けた検討課題について
(2) その他

○議事

○長岡補佐 定刻になりましたので、ただ今より第7回臓器提供に係る意思表示・小児からの臓器提供等に関する作業班を開催いたします。本日は、手嶋班員、本山班員から欠席のご連絡をいただいております。また、オブザーバーとしまして、筑波大学の宮本信也先生、社団法人日本臓器移植ネットワークのコーディネーターの小中節子さんにご出席を賜わっております。どうぞよろしくお願い申し上げます。
 続きまして、議事次第に沿って資料の確認をいたします。本日の資料は1種類です。「改正臓器移植法の施行に係る論点について」、これが4枚の資料です。
 続きまして、参考資料1「臓器移植法に基づく虐待を受けた児童への対応について(案)」、参考資料2「検討課題に関する国会及び審議会での議論の状況について」、参考資料3「検討課題に係る国会審議の状況について」です。不備等がありましたら、事務局までご連絡をいただければと思います。また、いつものように机上に紙ファイル「審議会・作業班参考資料」を置いておりますので、こちらにつきましても、議論の際に活用いただければと思います。
 それでは、以後の進行は新美班長にお願いします。ここで、報道のカメラの方はご退席をお願いいたします。
○新美班長 まず、改正臓器移植法の7月施行に向けた検討については、今年に入ってから、3回にわたってご議論をいただいたところでございます。短期間でしたが、極めて熱心に精力的にご議論いただいたところです。その中で、概ね方向性は定まってきたと思っております。まだ論じ残された点はないわけではありませんが、相当煮詰まってきていると考えております。そこで本日は、本作業班の議論の成果を臓器移植委員会に報告するために、個々の課題について、改正ガイドラインの原案となることを念頭に置きながら、最終的な詰めを得るためにご議論をしていただきたいと思っております。
 それでは議事に入りたいと思います。事務局から資料の説明をお願いします。
○辺見室長 それでは私のほうから資料のご説明をいたします。(案)と付していませんが、(案)でございますので、ご検討をいただければと思います。「改正臓器移植法の施行に係る論点について」ということです。全体で5つほどの論点にまとめておりますが、順に読み上げます。
1.「遺族及び家族の範囲に関する事項」
(1)脳死判定・臓器摘出について書面により承諾する遺族の範囲 
○ 現行制度では、広い範囲の親族を「遺族」として設定し、臓器提供を拒否する権限を与えている。このことは、臓器提供を拒否する意思があった可能性をできる限り拾うこと、また、臓器提供について遺族の総意として同意しない限り、臓器提供を行わないという慎重な判断があったものと考えられ、現時点では、これを踏襲することが妥当であると考えられる。
○ 死亡した者が臓器を提供する意思を表示している場合に臓器提供を拒むことができる者と、死亡した者の臓器提供に関する意思が不明な場合に臓器提供について書面により承諾する者は、法律上、同じ「遺族」という用語が用いられている。したがって、遺族について異なる範囲を設けることは法解釈上困難であると考えられる。また、諸外国の立法例では、承諾する遺族に優先順位を付けているものもあるが、本邦の臓器移植法ではそのような規定がなく、解釈によりこれを行うことは困難と考えられる。
(2)小児からの臓器提供に際しての留意点 
○ 法律の規定から、小児の臓器摘出について承諾する「遺族」の範囲と、成人からの臓器摘出について承諾する「遺族」の範囲は同じとしても、未成年者であること等に鑑み、小児とその両親の関係は重視する必要があると考えられることから、死亡した者が未成年者であった場合には、特に父母それぞれの意向を慎重かつ丁寧に把握することが求められる。
○ なお、臓器摘出についての承諾を得る方法については、家族構成等に応じて現場の対応に委ねられるべきであるが、それぞれの夫婦間の関係等には十分な配慮が必要である。
2.「小児が表示する臓器を提供しない意思について」
○ 改正法に係る国会審議の過程においても同趣旨の答弁があったように、臓器を提供しない意思が表示されていた場合には、絶対に摘出しないとすることが原則である。
○ 年少の児童にあっては、凡そ意思表示と捉えることが困難な“気持の現れ”である場合もあり、これを直ちに有効な意思表示であるとすることは必ずしも妥当であるとは言えないが、当該意思を有効に表示することができる意思能力について、一律に年齢で区切ることは困難である。
○ したがって、臓器を提供する意思がないこと又は法に基づく脳死判定に従う意思がないことの表示がされていた場合には、年齢に関わらず、当該意思表示を行った者に対する脳死判定及びその者からの臓器の摘出は行わないとすることが妥当である。なお、年少の児童が当該意思を表示していた場合には、コーディネーターは、臓器移植に関する家庭内での会話等について家族から丁寧に聴取することが重要である。
3.「知的障害者等の意思表示の取扱いについて」
○ 知的障害者等の意思表示の取扱いについては、ガイドラインにおいて、今後さらに検討すべきものとされている。この点に関し、改正法に係る国会審議の過程において、拒否の意思があったことを否定しきれないとの観点から、知的障害者等に対する脳死判定は引き続き見合わせる旨の考えが提案者から示されたことを踏まえ、知的障害者等に対する脳死判定は見合わせることが妥当である。
○ また、ガイドラインでは、知的障害者等の意思表示については、年齢による意思表示の有効性と同じ項目に位置づけられているところであるが、心停止下での臓器提供に関する意思の取扱いについては、明確な言及がなかったところである。これについては、改正法に係る国会審議において、拒否の意思があったことを否定しきれないとの観点から、知的障害者等に対する脳死判定を見合わせるとしていることからも、心停止下での臓器提供も見合わせることを明確化する必要がある。
○ したがって、知的障害者(知的障害児を含む。)等の意思については、次のように取り扱うことが考えられる。・ 知的障害者等の意思については、表示されていたか否かに関わらず、その取扱いについて、今後さらに検討すべきものであること。・ 主治医等が家族等に対して病状や治療方針の説明を行う中で、患者が知的障害者等であることが判明した場合においては、当面、法に基づく脳死判定及び臓器摘出については見合わせること。
4.「臓器を提供する意思がないことの表示又は脳死判定に従う意思がないことの表示の確認について」
○ 臓器を提供する意思がないことの表示又は脳死判定に従う意思がないことの表示については、法律上、書面性を要求していないところであるが、考え得る表示方法に照らし、その確認については、・ 臓器提供意思表示カード(運運転免許証等)の所持及びその記載内容の確認。・ 臓器提供意思登録システムへの意思登録の有無及びその内容の確認。・ 家族に対する確認。(確認する家族の範囲については、脳死判定・臓器摘出について書面により承諾する家族・遺族の範囲と同じとすることが合理的であると考えられる。)を行うことが必要であると考えられる。
○ 臓器を提供する意思がないことの表示又は脳死判定に従う意思がないことの表示が確認されなかった場合、家族・遺族が書面により承諾することで脳死判定・臓器摘出を行うことができるが、当該書面の作成に当たっては、上記の確認が行われたことも併せて記録しておく必要があると考えられる。
5.「虐待を受けた児童への対応について」
○ 改正法の附則第5項においては、虐待を受けた児童が死亡した場合に当該児童から臓器が提供されることのないよう、移植医療に従事する者がその業務にかかる児童について虐待があるかどうかを確認し、その疑いがある場合に適切に対応する旨規定されている。
○ これまでも、内因性疾患により脳死状態にあることが明らかである者以外に対し、脳死判定を行おうとする場合には、所轄警察署長に連絡することとされており、また、医師には医師法第21条の規定により、異状死届出の義務が課せられているところである。
○ 改正法の附則第5項は、こうした制度を踏まえ、さらに対応を求める趣旨と理解されるが、児童虐待防止の観点からは、疑いの範囲が幅広くなる可能性があり、後に事実が判明し、実際には虐待を行っていなかったときの、親の臓器提供への思いも考慮すれば、臓器提供の段階でより厳格な判定が望まれるところではある。
○ 他方、医療機関においては診療の初期段階から虐待への対応が行われるべきものであり、虐待防止の枠組みでは、虐待を受けたと疑われた児童について児童相談所への通告が求められているところである。このため、医療機関の判断としては、診療を行った後、何らかの形で虐待を受けた児童である疑いが否定される事由が生じない限り、当該患者から臓器を提供することは避けることとする取扱いが、現時点で考えられる方策としては、適当であると思われる。
○ 改正法の附則第5項に規定する「虐待を受けた児童が死亡した場合」については、当該規定の文言からは、脳死又は心停止になった原因が虐待でないことが明白な場合まで含むものではないが、直接の原因が虐待である場合に限らず、「児童の死亡について、虐待が関与している場合」との解釈ができる。しかし、一方で、児童の死亡に係る虐待の関与については、因果関係の強弱や明白さにおいて様々であり、これを医療現場で判断することは困難な要素を孕んでいることからも、法的な解釈とは別に、実際の運用としては、「虐待旁止の観点から保護すべきと判断した児童が死亡した場合」とすることが現時点では、現実的な対応との考え方もある。
○ こうしたことから、移植医療に従事する者は、児童相談所や警察などの関係機関との連携により進められる虐待診療を通じて、その業務に係る児童について虐待が行われた疑いがあるかどうかを確認することが現実的であると考えられる。
○ また、「児童」とは、児童福祉法の規定等を踏まえ、18歳未満の者とすることが妥当であることから、主治医は18歳未満の患者について、当該患者に対する虐待が行われた疑いがあると判断した場合には、当該患者が臓器を提供する意思を表示していたか否かに関わらず、その者からの臓器の摘出は行わないことが求められる。
 以上でございます。
○新美班長 ただいまの、ほぼガイドラインの原案としての案を出していただきましたが、それを順次ご議論していただき、確定をしてまいりたいと思います。資料の順序にしたがって、進めたいと思います。
 まず、1.の「遺族及び家族の範囲に関する事項」の(1)(2)についてですが、ご意見がありましたら、お願いします。また、修文したらいいということがあれば、修文の案もお示しいただきたいと思います。
○水野班員 具体的にここを修正していただきたいということではありませんが、1.の部分なのですけれど、これは非常に幅広く同意権というか、要するに拒否権、vetoを親族に認めているという扱いになります。このこと自体は、私は、脳死という概念についての疑問を持っている人々がたくさんいる今の日本の現状からは、やむを得ないと思っていますけれども、ただいちばん危惧しているのが、親族優先提供意思があったときに、これが適用される場面です。これだけ幅広くvetoを与えておいて、それでも何とか回っていたのは、匿名のドナーから匿名のレシピエントへという枠が守られていたおかげで、レシピエントがveto行使権者に働きかけようもなく、vetoを行使されたことを知りようがなかったからでした。しかし親族優先提供の場合には、それが崩れてしまっています。いままでも何度か申し上げておりましたが、親族優先提供はこの匿名の枠を崩してしまい、非常に危なくて、パンドラの箱を開けたような状態です。例えば夫が妻に臓器を提供するという親族優先提供の意思を残していたときに、夫側のずっと遠縁の親族たちが枕辺に集まって、vetoを行使できることになり、もしvetoを行使しないでほしいのなら、遺産からいくらか分け前を寄越せという圧力をかけることもありうるわけです。私は相続法が専門の領域なものですから、このような事態を、非常に危惧します。家庭裁判所判事に聞きますと、遺産が1,000万あったときには、兄弟仲がそれで壊れてしまうといいます。それくらい遺産をめぐる親族間には非常に難しいものがありますので、そういう事態が起こることを非常に危惧しています。立法されてしまいましたから、これはここでどうこうできることではないのですが、親族優先提供とこの広範なvetoが結び着いたときに起きる危険についてお考え置きいただきたいと思います。
○新美班長 この点について、ご意見がありましたら、どうぞ。これは、親族優先提供の意思があるということは、もう始めから明らかになっているという前提でよろしいですか。そうすると、水野さんがおっしゃったことは、まさに修羅場になる可能性があるということですね。いかがでしょうか。これは、扱いとしては、慎重にやるということしかないのではないか。でも、どうにかうまく解決の道がありますかね。
○水野班員 私は親族優先提供に批判的なのですが。
○新美班長 これは、始めからこのカードがありましたので、親族優先提供の意思がありますということは、始めからオープンになるわけですね。そうすると、明らかにそういう思惑が働くことは否定できないですね。
○水野班員 そうだと思います。
○町野班員 よろしいですか。臓器移植ネットワークが作られる前、つまり旧法時のころには、やはり親族優先というか、本人の意思とか遺族の意思で誰かにいくという話はあったわけですよね、実際には。そのころは、やはりいまのような問題が生じたことはありますでしょうか。
○小中参考人 過去に、何例か私も対応をしたことがあるのですけれども、実際のところ、そういうような事例はなかったのですね。私が対応したものも、それからそれ以外のものでも、その話は聞いたことがないので、なんとも申し上げられないところですけれども。
○町野班員 あまりそういう厄介なことはなかった。
○小中参考人 いままでは、なってないです。
○町野班員 しかし、これからはちょっとわからないというのは、これだけたくさん出てきますと、正面から制度が作ったという話になりますと。
○小中参考人 どうなのでしょうね。
○丸山班員 これまでなかったというのは、親族提供の意思があったけれども、親族の中に患者がいることが少なかった、脳死の何例目か以外は少なかったということなのですか。
○小中参考人 脳死の提供については、1例だけはありましたけれども、それ以外は親族優先に提供したいという、家族からの申し出は、実際に提供になった中にはないです。
○丸山班員 なかったですか。現行法が制定される以前の角腎法の時代についても、親族優先の意思が表明されていたことはあったけれども、親族に患者がいることはなかったというようなことで少なかったとおっしゃったのですか。
○小中参考人 すみません。説明が足りなかったかと思うのですが、親族に提供したいというご本人の書面は残されていませんでしたので、家族からそのように本人が申し出たという表現で言ってこられました。それで、親族へご提供したという事実は過去にあります。ただ、それについて、いまおっしゃったような問題は生じていなかったという話です。
○丸山班員 ありがとうございます。
○新美班長 いかがでしょうか。これは、始めてみなきゃわからないというところですかね、そうすると。ただ、始めから親族優先提供の意思があるときには、単なる杞憂に過ぎないというには、ちょっと心配事は大きいと思いますが。ほかにご意見がありましたら、お願いします。いい対応策が出てこないですね。水野さん、何かヒントになるようなお考えはありますか。
○水野班員 刑事罰で恐喝罪の構成要件になってしまうということはあり得るかもしれませんが、現実問題として、それが恐喝罪として刑事立件されることは考えにくいでしょう。最悪の場合には、その脅しを言っておくということぐらいしか思いつかないですね。
○新美班長 それも入れるとなるとぎらつきますので、現場で少し慎重にというぐらいしかないかもしれませんね。ですから、遺族の範囲があるということですけれども、これも書くのが難しいから、現実には親族優先提供が認められたことから、より慎重に遺族の意見聴取をするということぐらいの対応でしかできないのではないかと思いますけどね。
○水野班員 よろしいですか。長期的には、私はこの会議でも何回も申しておりますけれども、ドナーの意思登録を本人確認して、きちんと登録しておくことによって、本人意思があるからという形で、本人意思に反する結論はなるべく封じられるという方向に行くのが長期的にはいいだろうと思っています。今回は、その登録の案は通りませんでしたが。
○新美班長 そういう意味では、水野さんのおっしゃったことは、要注意事項ということで、今後、もう少し様子を見るということにしても、この点はとりあえず原案どおりでやっていくことにしましょうということに受け止めさせていただきたいと思いますが。他に、(1)(2)についてご意見はございますか。
○丸山班員 これまでも触れてきたことなのですが、1.の(1)の最初の○のところの4行目、「また、臓器提供について遺族の総意として同意しない限り」という「同意」は、本人による提供がある場合の遺族の拒否しないという態度と、本人が提供に関して意思を表示していない場合、提供も拒否もしていない場合に遺族が承諾をする場合、この双方含めて同意というふうに書かれているのですか。
○辺見室長 はい。この書きぶりについては、そのとおりです。
○丸山班員 その趣旨なのですね。その意味なのですね。そこを確認しておきたいということと、できたらいま私が話したようなこと。
○新美班長 注か何かを入れておくといいですね。
○丸山班員 そうですね。
○新美班長 同意とは、要するに、本人同意で拒否がない、遺族により拒絶がないことと、本人の意思が不明な場合に遺族の承諾、両方を含む。それは注意書き、コメントか何か、注に入れておいたほうがいいのではないかと思います。
○丸山班員 その後のところは丁寧に書いていらっしゃいますので。
○新美班長 そうですね、そのほうが。事務局は、そういう注を入れるということはかまいませんか。
○辺見室長 記載ぶりについてはあれですけれども、可能だと思います。
○新美班長 どうですか。私は丸山さんのご意見に賛成なのですが、他の委員の皆様はどうですか。
○町野班員 私は、もちろんそれでいいのですけれども、実はこれは現行法の趣旨とは違うことですからね、このようにいたしますと。つまり、現行法では遺族がいないときについては、改めて遺族の拒否のそれを求めなくていいわけでしょ、本当はね。しかし、この文章ですと、それは必要ですよね。同意する人は、誰かいなきゃいけないですから、本人はイエスと言っていても。そうなりますから、あまり細かく書かないほうがと私は思います。
 もちろん、法律の理屈から言いますと、丸山さんが前から主張されているように、これは同意ではなくて、拒絶しないということなのだから、この書き方はおかしいということになると思いますけれども、現在の実際の実務がこのようになっておりまして、そしてさらに遺族がいないときについては、提供に至ったことがないはずなのですよね。ただ、それは法律違反だという意見もあり得るわけですけれども。しかし、こう書きますと、これはその限りでは少しぼやかした書き方のほうがいいのではないかと思います。もし、法律違反であることをあえてはっきりさせたいということならば、全部きちんと書けということになりますけれども。
○新美班長 その点、丸山さんはどうですか。いまの町野先生のご指摘ですが、遺族がいなかったら、本人が「うん」と言っても移植はしていないのですか。
○小中参考人 意思表示カードが残っているということですよね、「うん」と言えばということは。実を言いますと、それは法律的には可能になりますよね。遺族が本当にいないかどうかを確認している最中に家族が出てこられますので、いくら疎遠になっていて、この人は家族がいませんよというようなお話でも、最終的にはいないということの確認ができた事例はないです。
○新美班長 そういう事例がない。仮に臓器の摘出をするタイムリミットのようなもの、長引かせれば長引かせられると思うのですけれども、出てくるまで待つという趣旨でしょうか。それとも、出てこなかったらやってしまえるのでしょうか。
○丸山班員 いなければやっていいというのがその当時の角腎移植のときの議論で。
○新美班長 ただし、その例がないというだけですね。
○小中参考人 そうですね。意外に早くという言い方はおかしいですけれども、やはりいらっしゃるのですよね、確認は。
○丸山班員 それで、先ほどの町野先生のご発言ですが、注記でするとそうなるので、私が言ったように両方分けて書くと、本人の提供意思がある場合については遺族は拒まないということで、遺族がない場合も含めて読めますので、そうしたほうが。やはり、端から法律に定められたことと反対のことを文言にするのは避けたほうがいいのではないかと思います。
○新美班長 いかがですか、町野先生。
○町野班員 いや、別に。
○新美班長 では、書きぶりについては、最後に詰めていただくとして、「同意しない限り」という文言については、丸山先生がおっしゃったように、本人の承諾があって遺族が拒絶しない場合と、本人の意思が不明で遺族による承諾がある場合の両方を含むというような注書きをしていただくということで進めていただきたいと思います。ほかに1.についてご議論はございますでしょうか。では、1.の(1)(2)については前回まで相当程度詰めていただいているところですので、大体いま言った丸山さんからのご指摘を受け入れるということを含めて、この原案で進めていただきたいと思います。
 では、2.の「小児が表示する臓器を提供しない意思について」ですが、○が3つありますので、いずれについてでもかまいませんので、ご意見をいただきたいと思います。これも修文を含めてご意見がありましたらお願いします。2.については、前回までに相当詰めが行われてきて、それをこの原案で表していただいていると思いますが、いかがでしょうか。これでよろしいでしょうか。では、また後で読み直してみたらということがあれば、出していただくことにして、とりあえず2.については原案どおりということで扱わさせていただきます。
 続きまして3.の「知的障害者等の意思表示の取扱いについて」、これは○が3つありますが、いずれでも結構ですのでご議論をいただきたいと思います。いかがでしょうか。
○山本班員 この前も質問したのですが、「知的障害者等」という場合の「等」はいったいどこまで入るのかということが必ずしも詰められてないと思いますので、そこは詰めなくてもいいということなのでしょうか。
○新美班長 この点については、特に詰めるという議論はしていませんでしたが、詰め切れないのではないかというのが1つの議論だったと思います。むしろ、知的障害者等の後ろに付いている、意思表示ができない者というふうに掛かっていくということだったと思いますので、あまりここは詰めることはしない、詰めきれないのではないかという議論もあったのですけどね。その辺はいかがですか。
○丸山班員 精神障害者も一部含むということですね。
○山本班員 それは、要するにコーディネーターの判断に任されるということですか。
○辺見室長 前回もご説明させていただきましたけれども、Q&A的に知的障害者等、本人の意思が有効でないと思われる症例ということについて、どういう場合が当てはまるのかというのがありまして、様々な事例が考えられるため、一定の基準を示すことは困難であり、個別の事例に応じて慎重に判断せざるを得ないという書きぶりになっています。
 ガイドライン上は、こちらのA案に起こさせていただいたものに似ているのですけれども、主治医が家族等に対して病状や診療方針の説明を行う中で、そういった状況であるということを確認した場合というふうに書いてありまして、ある意味そういった診療行為の中でのやり取りでの判断に委ねてきたこれまでの扱いがあります。そもそも、全体について検討が必要だということはずっとあるのですけれども、この機会に改めて検討をするか、それとも、ここまでこういった疑義解釈も示し、同じような扱いできていますので、基本的には7月においてその取扱いを変えるというよりは、課題の1つとして引き続き残るものとなるのではないかと考えています。
○新美班長 実は、立法者も非常に曖昧な表現をしていて、我々で詰め切れないのです。知的障害者等という場合に、現行法では意思表示ができないという書き方ですよね。ところが、立法者の提案理由の中に、意思表示が難しい方という言い方をしているものですから、これをここでどのように詰めるのかというのが、まさに難しいというところがあります。立法提案者のように広げてしまうと、なんでもかでもこの中に入ってくるという可能性がありますし、現行法ですと、まさに意思表示ができない方を知的障害者等ということで括っているということだと思います。
○町野班員 これは結論を最後のところまで持ってくるかが最大の問題だと思うのですけれども、前のところで知的障害者等については、現在のガイドラインでは意思表示能力のところにありますよね。ところが、それが今回の国会の答弁では拒絶意思が表示できない者ということになっていますから、そうなりますと、かなり概念そのものが違うのですよね。だから、したがって、国会で質問者が、ALSの患者などはどうするのかということを聞いているのは、あれは知的障害とは関係がなく、ただ本当に意思表示ができないという人ですから、それについて否定も肯定もしていないですよね。だから、まず、どの方向で考えるのかが1つだろうと思いますけれども。
 ガイドラインでは、未成年者の意思表示能力に併せて、その次に書かれていますけれども、これをこのままそういうことで書いたらますます意味がわからなくなりますから、やはりこれは議論せざるを得ないだろうと思います。おそらく、詰めているかどうかわからないのですが、障害者について、やはり特別な配慮が必要だという意図だけはわかるわけです。だから、それを活かしながら、やはり少し考えた方がいいように思います。このところで、もし立法者の意思に従うならば、どこまでやるかということではなくて、拒否の意思表示をすることができない人については特に配慮を要するから云々、ということになるのだろうと思いますけれども。そうすると、ガイドラインの子どもの所の後に入っているのは、やはり変えなければいけないということですよね。同じようにできないですね。
○新美班長 そうすると、これは我々の最終的なまとめとすると、別の所に、小児の場合とは別に項目を分けて書くべきだということになるのですかね。
○町野班員 だから、そうなると、「知的障害者等」という「等」の中には、精神障害者ばかりではなくて、おそらく物理的に意思表示ができない人間も入るということになりますから、いずれにせよ、かなり大変な話ですよね。
○新美班長 ただ、これを我々の検討班で詰めろということは、不可能だと思いますので。
○町野班員 だから、考え方をはっきりさせておかなければいけない。ガイドラインを決めるのは親委員会だろうと思いますけれども、やはりそちらのほうで困りますから。もう1回最初から議論しなさいという話になりますと、ではもう1回ここでやってくださいという話になりますから。
○新美班長 いかがでしょうか。いま言ったようなところで何かいい案はありますか。知的障害者等というのは、前はまさに意思表示ができない人ということだったのですけれども、ここでは、立法者にすると、拒絶の意思が表示できない者と書いておくというのが1つの案ですね。私もそれでいいのではないかと思うのですけれども。
○丸山班員 この置かれている位置が本人提供のところですね。だから、遺族による提供の場合の拒絶できない人とは場面が違うのです。
○新美班長 他にいかがでしょうか。問題提起者の山本さんとしては、どのようにしたらよいと思われますか。
○山本班員 私も案があるわけではないのですが、1つ言えるのは、このように曖昧にしておいて方向性が定まらないと、知的障害者を不当に差別するということになるのではないか、その印象を与えるのではないかということが、非常に危惧されるだろうと思うのですね。ですから、やはりそこをきちんと方向性だけは詰めておいたほうがいいのではないかという趣旨なのですが。
○新美班長 それは、前からおっしゃることは議論されていたのですけれども、基本的には、小児と同じ扱いをしない限りは差別だということになるのは明らかですよね。
○山本班員 ですから、もし本人の意思表示の問題だとすれば、知的障害者をこのようにするのは、やはり差別の問題だろうと思うのですよね。ですから、どのようなガイドラインを書くかというのは、私もいま案を持っているわけではないのですが、難しいですね。
○町野班員 知的障害という言葉を取ってしまうのは具合が悪いですか。
○新美班長 それは、あり得ると思うのです。
○町野班員 つまり、「障害等の事由により、拒絶の意思を表示することができない者については」云々という。
○新美班長 知的というのを取る。
○町野班員 だから、これによりかえって広がるわけです。もし、立法者の意思に従うということならば、そういう答弁ですから、拒絶者が拒絶意思能力はおそらくあったかもしれないけれども、きちんと表現できない人のことを考えたのだという議論ですから。
○山本班員 それは物理的に表明できないという趣旨ですね。
○町野班員 例えば、ALSのような患者さんのような場合がそうだということが国会で聞かれていますから。
○山本班員 むしろ、そういう方向のほうがいいと思うのですよね。
○町野班員 むしろね。現在と変えませんと言っているけれども、メチャクチャに変えましたよという内容ですからね。
○山本班員 それのほうが、方向性としては、私は妥当だと思うのですけれども。
○町野班員 精神障害とかそれを持ち出すのは、私はやはり差別だろうと思うのです。
○新美班長 ほかにいかがでしょうか。
○丸山班員 それは、遺族による提供の場合に、障害により拒絶の意思を表示できない者については対象としないという趣旨ですか。
○町野班員 そこまで来るかどうかというのは、次の問題ですね。結局、もしいまのようなあれを申しますと、そういう障害をもった人からは絶対に脳死判定もできないし、臓器提供もできないという、最終的にはそれですよね。一応、案として出ているものですよね。その次に残る問題なのです。現在は、オプトインについての同意意思だけだったから、あまりぎらつかなくて済んだのですけれども、今度こうなりますと、拒絶意思が問題だということになるから、180度考え方が違ってしまっていたということですよね。
○丸山班員 違っていることを認識せずに、議員の人は同じ扱いにしようとおっしゃっているのですかね。
○町野班員 もっと深く考えていたか、それはわからないけれども。
○新美班長 我々は、邪推はできないですよね。それを考えた上でやっているのかどうかわかりませんが、ただ、議論の中では、いまあったように、拒絶の意思が表示できない方については、カテゴリカルに外しましょうということですから、これは知的障害者等というものをわざわざ出して例示とするには、少し穏当を欠くので、「障害等により」と書いたほうが、障害等によって拒絶の意思の表示ができない人は除外する、という書き方だったらどうかということですけれども、その辺はどうですか。事務局としては、そういう書き方になると、これは国会の議論とは違うということになりそうですか。
○辺見室長 知的障害以外の障害についての議論内容について要確認ではありますけれども、これまでの従前のガイドラインを維持するといったような答弁の場合というのは、念頭に置かれているのは、知的障害者等ということであって、その場合の判断の仕方というのは、拒絶の意思を表示することができないという点において、「知的障害者」の「等」ですので、知的障害者に類する理由によって意思表示をすることができないという判断がされてきたというのが、これまで示されていた内容からすれば、これまでも知的障害者等としか示しておりませんので、そういうことかと思いますけれども。
 いまのご議論の中で、これを「障害者等」とした場合、知的という言葉が外れることによって広がる部分もあると思うのですけれども、狭くなる部分もあるのかどうかということについて、より悩ましい点が別のところで出てくると思います。ですから、現行の取扱いについて、ある意味、個別の事情ということで現場に委ねられた部分があって、クリアに論理的に説明が必ずしもできない部分があるということで、ご指摘のとおりかもしれませんけれども、変えることによって、では現場における取扱いについて別のクリアな説明ができるようになるのかという点については、いまのところ案が思いつきませんので、少々対応には困るところかと思います。
○宮本参考人 この問題は、町野先生が言われたように、拒絶の意思表示能力に問題があると判断すると、最後に書いてある「主治医等が」という所も、医療現場はむしろ判断しやすくなるだろうと思います。つまり、患者が知的障害者等であることが判明した場合においては、見合わせることとなっていますが、これが主治医等が医療の中で患者さんの拒絶の意思表示能力に著しく問題があると判断できた場合には、見合わせるとしていただいたほうが、医師のほうは楽ですね。そうしませんと、この前乱暴な意見を申しましたが、染色体異常がイコール全て対象外なのかという、そういう機械的な議論を避けることができる。
 もう1つは、この場合の意思表示能力に問題があるというのは、なんらかの障害、この場合の障害はインペアメントですが、障害によって意思を表示する能力、アビリティーに問題があるということだろうと思うのですね。したがって、そのインペアメントがなければ能力が発揮できているはずの人だと、そのように理解すれば、乳児は染色体異常云々であっても、今度は対象にならないことになります。なぜならば、その乳児においては、どんなインペアメントがあろうがなかろうが、例えば生後1カ月の子に拒絶の意思表示をする能力、アビリティーはないからです。ですから、それはインペアメントによってアビリティーがないというような判断であれば、乳児等をどうするのだという議論を避けることができるように思います。
○新美班長 それは、発達段階だと。では、発達障害や発達の遅れた人は、やはり障害で捉えられますか。遅滞の場合。
○宮本参考人 先日も言いましたが、子どもたちの能力は変わりますので、1歳でできなくても10歳ではできるかもしれません。
○新美班長 ほかに、ご議論いかがでしょう。いま、宮本先生からは、むしろ障害等により拒絶の意思表示ができない者、要するに知的障害者というカテゴリーと、拒絶の意思表示ができない者というのが、必ずしもぴったりこなくて、2つの判断をしなければいけなくなるので、むしろ判断の対象を1つにしてもらったほうがいいと。その対象としての原因が障害であるということが示されていたらいいということですね。
○宮本参考人 そのような場合ですと、例えばALSの患者さんでも、なんらかの方法や筋肉の動きで意思表示ができると判断されれば、対象外ということです。
○新美班長 いかがでしょうか。実態は変わらない、要するに最後の判断はまさに拒絶の意思表示ができるかどうか、その者であるということは変わらないわけですね。その理由として、いま言ったような「知的障害者等」という例示を入れるか、あるいは宮本先生がおっしゃったように「障害等」によって拒絶の意思表示ができない者とやるのかの違いだと思いますが、事務局としては、その辺はいかがですか。
○町野班員 おそらく、ガイドラインを作るときに、順番として、いまの議論ですと、前のところに置いておくことはできないでしょうね。小児の意思表示能力の所で、15歳云々の所に続けて、現在はあるわけですけれども、それと同じにはできないということになると、この資料の3頁にある拒絶意思の確認についてという4.の中におそらく入れるということになるのでしょうね。だから、そのラインでいくかどうかが、1つだろうと思いますね。
○山本班員 要するに、法の前提が変わったわけですから、やはりそのようにするのがガイドラインとして。
○町野班員 それで、これによって、むしろ、おそらくは例えば障害等という例示がありますから、それによる能力、事実上も含めて意思表示ができないというように広げて。やはりこれのほうが実際に適合しているのではないでしょうか。
○山本班員 そのように私も思います。
○町野班員 というのは、おそらく、例えばいろいろな弱い立場の人間がいるわけですよね。そういう人たち、例えば受刑者とか、あるいは死刑囚など、そういう人からの臓器の提供はおそらく受けないでしょうね、本人が何も言っていなくても。遺族がいいと言ったって、できないのは、おそらく、ここでは障害等という具合にして、一応それが外れる格好になっていますけれども、考え方としては、おそらくいまのような実際上自分の意向を表明することが難しい人間については、やはり考えようということなので、精神障害とか知的障害とか、そういうことだけではないという話だと思うのですね。そうすると、一番ある意味で抵抗も少なく、逆差別だという批判もおそらく、そこでは当たらないということになるだろうと。もちろん、子どもの場合との均衡というのはこれらにも依然として残っていますけれども。
○山本班員 まだ、いいです。
○町野班員 まだいいだろうということなのですけれども。それで、実際にも、それほど大きく取扱いが変わるということはないのではないかと私は思いますけれどね。
○辺見室長 ガイドラインの位置づけの話に関して言えば、ペーパー・ファイルの参考資料3に現行ガイドラインが付いております。知的障害者の話は、第1のところの「書面による意思表示ができる年齢等に関する事項」と書いてあります。町野先生は、ここの中では難しいのではないかというご指摘ですけれども、ここはこの位置に書くのか、この位置のタイトルをどうにかするのかというご議論かと思います。先ほどの意思表示がないことの確認の4.は、流れとしては、ガイドライン上、4頁目の第5のところに標準的な手順がありまして、むしろそちらに乗っかってくるかと思います。ガイドラインのいまの部分に書けるのか書けないのかという観点は、編集上の考え方でやらせていただければと思います。むしろ、いまの知的という言葉を外して、障害者というか、むしろ障害等の理由というのがここの趣旨で、障害等の説明について、障害等により拒絶の意思表示ができない場合。
○新美班長 できない者ですかね。
○辺見室長 現行のガイドラインのいま見ていただいているところの流れからすると、主治医等が家族等に対して病状や治療方針の説明を行う中で、患者について障害等により拒絶の意思表示ができない者、できない状態であることが判明した場合といったような書き方であれば、趣旨も明確であり、主治医サイド、医療現場のほうも判断が可能、その場合の障害というのは、先生がおっしゃったようなインペアメントで、というようなことで判断が可能ということでしょうか。
○新美班長 今言ったような方向で取りまとめをするということでよろしいでしょうか。
○丸山班員 文言は、いまのでいいと思うのですけれども、やはり前段が本人提供ができる者の範囲を未成年者について定めているので、第1とは切り離したほうがいいのではないでしょうか。本人提供ができる者と、いま文言を提案されたところは、遺族による提供から省かれるというところに焦点が当てられている問題ですよね。だから、ここはガイドラインの項目を分けたほうがいいと思うのです。一緒にすると。
○町野班員 私も、それを分けざるを得ないと思いますけれどね。というのは、全然考え方が違ってしまったわけでしょ。要するに拒絶の意思が表示できない者ということですから、これは必ずしも意思表示能力というか、そういう問題だけではなくて、実際上できない、精神面については何の障害もないけれども、物理的な面で障害がある人も含みますから、ということですよね、おそらくは。ただ、先ほどのALSの患者さんのように、ALSの患者さんだと直ちにそうというわけではないしということですから、それはある程度わかるという。
○新美班長 ガイドラインでは、拒絶の意思表示について1項目起こさざるを得ないのではないかということですね。
○辺見室長 拒絶の意思表示という切り口でいきますと、実はこの上にある小児の拒絶の意思表示の場合なので、拒絶の意思表示ということに着目して、この小児の拒絶の意思表示とここを一緒にしたのを1つ立てるのか、それとも年齢に近い話なので、年齢にくっつけておいて整理するのかという、その辺がどう整理したらきれいに全体の中で収まるかということかと思っていますので。何でも同じで、年齢でやっていったら整理がうまくないというご指摘をご理解いたしましたら、全体を見た上で。
○丸山班員 室長はおわかりだろうと思うのですけれども、未成年者についても提供の意思表示は15歳以上にするのですね。だけれど、拒絶はもう少し低いところ、10歳なり低いところに定めるということですから、その辺りの違いを明らかにする趣旨でも、分けたほうがいいのではないかと思うのですけれども。
○辺見室長 分けるべきなのか、タイトルを整理すべきなのか、小見出しを付けるべきなのか、その辺があるかなというところです。
○新美班長 いずれにしても、同列ではないということは確認できて、積極的に提供の意思表示をする場合と、拒絶の意思表示をする場合には、中身自体も違っているから書きぶりもそれに合わせてということは、していきたいと思います。それから、知的障害者等の意思表示については、いまのように、障害等により拒絶の意思表示ができない状態にあるということで、ほぼ合意ができたと思いますが、いかがでしょうか。よろしいでしょうか。
○小中参考人 主治医が判断をするというところに最終的にはいくとは思うのですが。例えば、先生からお話があった染色体異常でも、年齢によって変わっていくというお話がありましたけれども、例えばALSにおいても段階によってできるできないが変わっていくと思うのです。現状では、例えばご本人さんが提供するという意思を、いままででしたら意思表示カードなどで表わされていますよね。ところが、病状が進んで、意思表示できる段階ではなくなったときであれば、それはその意思は拒絶できる意思がないから、提供できないという、その辺りの段階というのは、すごく難しいと思っているところなのですけれども。すみません、あまりにも現実的なところで。発言してよいのか迷ったのですけれども。
○新美班長 これまでの考え方からいくと、要するに拒絶の意思表示ができる能力のある人が、拒絶のチャンスがありながら拒絶していないのだったら、それで遺族の同意でゴーサインを出すというのが法律の仕組みですから、それはとにかく主治医がずっと見ていて、そういう能力が備わったことがあるということが認定できればいいのではないでしょうかね。それは、どうしましょうか。一瞬でもというか、いろいろあると思いますけれども、それは健常人でもそうだと思いますけれども。
○丸山班員 あまり厳密に言うと、いまの健常人でも、その瞬間は脳死状態で拒絶ができなくなっているのでというようなことに繋がっていきますね。
○新美班長 ですから、まさに、それは主治医の判断がそこで大きく意味を持ってくると思います。大体、主治医も瞬間というよりも、全体を見て、この人はこれぐらいの期間きちんと表示ができたというような判断をするのだろうと思いますので。その辺り、いかがでしょうか。いま言ったようなまとまりでよろしいでしょうか。それでは、3.については、いま言ったような方向でまとめていきたいと思います。ほかに3.についてはございませんか。
 では、4.に移ります。「臓器を提供する意思がないことの表示又は脳死判定に従う意思がないことの表示の確認について」について、ご議論をいただきたいと思います。ここは、前回確認されたことがほぼそのままというか、それを少し整理した形で示されているかと思いますが、いかがでしょうか。1つ目の○は、実態的にこれとこれというものが確認の対象として挙げられていて、2つ目の○は、手続として確認をするということを記録しておきなさいということが書いてありますが、いかがでしょうか。大体この方向でよろしいですか。この確認方法については、2つの○のとおりで、ほぼおまとめいただいたということで扱いたいと思います。
 5.に移ります。これが、先回から引き続き大議論になってきていますが、これについて今日最終的なまとめができればと思います。「虐待を受けた児童への対応について」、どうぞご議論いただきたいと思います。基本的には児相等に通知するという判断ができたら、とりあえずは移植の対象、脳死判断の対象から外しましょうというのが原案になっていると思いますが、これについてご意見がありましたらお願いします。
○水野班員 これは、私にはあまり理解できません。全体に大きくこの構造には、虐待と移植の捉え方には、前回から申し上げているように疑問があります。最初に、この対応の児相への通知ですが、一般に脳死になるような患者はある日突然事故に遭って、救急医療機関に搬送されてくる場合が圧倒的多数だと思います。そのときに、過去はどうだったのかがまずわからないだろうと思いますし、そのときも脳死になってしまうような重篤な場合について、児相に連絡するのは防止のためだと思いますが、法的にはまだ生きているからといっても、医学的にまず救命は無理だろうと思われるような子どもについて、医療機関に虐待防止のために児相に通告することを求めるのは、非常に筋違いの要求ではないかと思います。この提案は、現実的に合理的でもないし、望み得ないことではないかなと思います。
 ここの中でも、何度か児童虐待防止の観点からはと出てきますが、前回も申し上げましたが虐待児童の附則の5項は、私は立法趣旨がよくわかりません。というのは、少なくとも児童虐待防止とは何の関係もないとしか考えられないからです。日本の児童虐待の防止の体制が、それはそれはひどいものであるというのは、だいぶ社会もわかってきていただいています。日本はあまりにも急速に近代化、都市化が進んでしまいました。子どもが殴られているときに隣近所のおばちゃんたちが縁側から駆け込んでいって救出してあげるというのは、本当に昭和30年代ぐらいまではあり得たわけです。しかし、そういう社会の関与が急速に失われてしまって、孤立した家庭の中で、ひどいことが起きてしまう。この対応について、近代化や都市化がもう少しゆっくり進んだ先進諸国は、ものすごくたくさんのお金をかけて子どもたちを救出していますが、その体制が日本では全然整っていません。だから、非常に悲惨な状態であることは全く否定されないわけですが、だからといって児童虐待防止と言った途端に思考停止しているようではいけないのであって、なぜここで虐待児童の問題と脳死提供の問題というのが重なってきたのか。立法された附則5項があるとはいえ、極力合理的に考えていかなければならないと思います。
 これが、被虐待児童であるからといってドナーにできないという話はないはずで、欧米でも被虐待児童が虐待が原因で脳死状態になっても、当然ドナーになるわけです。日本でこの附則5項がなぜ入ったかという立法理由を合理的に考えると、まあ無理して合理的にというところがありますが、1つは証拠隠滅になってしまうことと、もう1つは虐待をしたような親に、提供に対する同意権限を与えるのはいかがなものかという、この2つだろうと思います。
 そうではない形で、何か児童虐待防止とか、そういう関係のない観点を入れるときには、これは私の邪推かもしれませんが、脳死の児童から臓器を摘出するのは、まだ生きている児童に対する加害行為だという判断をどこかに引きずっておられるのではないかと思います。これは、脳死そのものに対する評価という、いちばん原理的な対立の部分ですが、この原理的な対立の部分をここで抱え込んだままでは、論理的破綻がもたらされてしまうだけではなくて、まさに小児の臓器提供の判断の場面で、いわば相容れない原理が絶えずぶつかり合うことになって、現場もダッチロールしながら移植医療を進めることになってしまうだろうと思います。原理的な対立の消極派が納得してくれるようにということで、ここで安全を図ろうということになりますと、もう移植をしないということが優先してしまって、小児の提供を認めたという今度の改正案の中身が、いわば第5項によって骨抜きになる形になってしまうのでしょう。
 先ほど第1項のところでも申しましたが、これだけ脳死移植への反対者が多い日本で、脳死移植への消極的な態度をある程度考慮していくような立法をしなければいけないという要請はあり、その要請に添った立法やガイドラインを作らなければいけないという判断は私自身もその立場に立っていますが、その要請を正面から整理もせずに内包して抱え込んでしまっては、臓器移植は不可能になるだろうと思います。原則は、脳死は死であって、臓器移植を認めたのであって、そこを動かしてはならない。国民の中にある脳死移植に対する消極的な態度というのは、先ほどの第1で決めましたように、幅広く親族に拒否権を認めるということで汲み取っていくしかないのではないかと思います。
 ここのところを合理的な解釈をしようとすると、虐待をするような親に臓器移植の同意権を与えるのはよくないことと、虐待死の証拠隠滅になってはならないということだろうと思います。それぞれに別々に対応すると、なんとかなるでしょう。まず、虐待をするような親に同意権を与えるのはよくないという理由は、虐待をするような親に同意権を与えない、つまり同意権を剥奪する構成をとれば足りるはずで、この同意権剥奪構成をとった場合には、ほかの遺族が同意していれば臓器提供できるという結論をとれば、それでいいだろうと思います。一族郎党、すべての同意権を剥奪しないといけないという議論はおよそあり得ないと思いますし、平たく言ってしまいましたら虐待していた親、同居していた親の言うことなどは信用できないから、ほかの遺族が提供に同意している場合には臓器提供できるようにしようということで足りるでしょう。これが素直な理解だろうと思います。この場合には、虐待と死亡との関連性が多少あやうくても、ほかの遺族の同意をとれば足りるというわけですから、あまり現場も悩まなくて済むだろうと思います。
 もう1つの虐待死の証拠隠滅という理由ですが、こういう場合には死因が虐待である可能性が非常に高い、したがって、刑事立件のために証拠保全が必要である場合ですから、必ず警察に通報する必要が出てくるわけで、逆に言いますと警察に通報する場合に限り、臓器移植を控えるという判断になるはずです。主治医は、警察に通報するか、臓器移植をするかという二択にするのであれば、附則5条が入るからといって、過剰に小児の臓器移植を控えるということにはならないだろうと思います。この解釈ですが、附則の5項から十分合理的に導けると思っています。
 技術的だと言われるかもしれませんが、附則の5項は、虐待を受けた児童と疑いがある場合というのを区別して規定していて、前段と後段はそれぞれについて別個の内容を定めたと読めます。すなわち、前者は虐待を受けたことが明白な事例を指して、この場合には臓器提供は禁止される。ただし、死因と無関係だという場合には除かれるけれども、そのような場合には警察へ情報を提供する。疑いにとどまる場合というのが後段ですが、この場合には適切に対応することと必要な措置というのが求められていることになりますから、最終的に臓器提供がなされることが排除されるというものではないだろうと思います。適切な対応として、慎重な事実確認のプロセスを定めて、それによって虐待死であることが明白に確認されれば、虐待死の事例として警察届出の対象となり、虐待死でないことが確定すれば通常の手続に移行することになって、事実調査の結果、「明白に虐待があった」とも「明白になかった」とも言いきれない場合が残るときには、必要な措置として同居親族の同意権を剥奪すれば、有効な臓器提供意思があったものとして臓器提供を認めることに、この条文上の法律の障害はないと思います。それが合理的な解釈というものであり、小児の臓器提供を附則5項を考慮しながら運営していく解釈論なのではないかと考えています。
○新美班長 ありがとうございます。水野さんはそうではなくて、虐待死というのは虐待が原因で死亡したと限定するわけですね。
○水野班員 虐待が原因で死亡した、もちろん、それには強い疑いがあるという場合も含まれてくるでしょうけれども、そこは警察に届け出る。警察に届け出るぐらいでなければ、臓器提供が可能な場合のほうに振れて、そのときに虐待したかもしれないと疑われるような親がいる場合には、その親の同意権を剥奪する形で、同居の親以外の者の同意をとっていれば、それで提供のほうに進めるということにすれば、立法者意思を害することにもならないし、おそらく附則の5項の解釈論としても十分に成立する合理的な解釈ではないかと思います。
○新美班長 いまの議論はいかがでしょうか。
○丸山班員 最後におっしゃった解釈論ですが、このファイルの5番目の資料が改正法ですね。それの最後に附則の5項がありますが、「政府は、虐待を受けた児童が死亡した場合に当該児童から臓器が提供されることのないよう」までが目的のクローズですね。そのあとに「移植医療に係る業務に従事する者がその業務に係る児童について虐待が行われた疑いがあるかどうかを確認し、及びその疑いがある場合に適切に対応するための方策に関し検討を加え、その結果に基づいて必要な措置を講ずるものとする」ということで、虐待があった場合と疑いの場合と分けて、その効果を定めているとはこの条文からは思えないのです。虐待を受けた児童という最初の1行半は、要件効果を定めているところではないですね。あとのところが、必要な措置を講ぜよということで、その中で虐待が疑われる場合について確認する。その場合には適切な対応を取ることが、本来の要件効果を定める条文規定ではないですか。それが普通の読み方ではないですか。
○水野班員 そういう解釈がもちろん成り立つとは思いますが、私は民法学者ですので合理的な解釈論を積極的にやります。そして、この5項が小児の臓器提供というのを封じるのではないような解釈、かつ合理的に理由のあるような場合を整理して考えなくてはならないと解釈するとすれば、これは前段と後段とで分けて読むという論理的な解釈が成り立ち得ると思います。当然、丸山先生に申し上げるまでもなく、条文というのは一義的な解釈ではなくて、何通りかの解釈がありますが、その何通りかの解釈のうち、これが副詞節であって、あとのほうを拘束するという読み方もありますが、私のようにその他の要素を加味して、法律全体の中の趣旨と併せて合理的に読んでいけば、前段と後段はそのように分けて解釈するほうが合理的であるという解釈論、読み方は十分成立するように思います。
○丸山班員 法律全体の枠組からというのは難しいのではないかと思います。水野先生のお立場からは、そういうふうに理解すべきだということになるというのはわかりますが。
 もう1つは、警察が関与する場合です。前回か前々回に芦刈さんに確認したように、事故死の場合、ほぼすべて警察に相談を移植ネットワークがされていると思うので、それが臓器移植法の7条の関係の警察への確認か、それとも医師法21条の届出による警察への連絡か、いま水野さんのおっしゃっているのは、どちらを念頭に置いて警察へ届け出る場合とおっしゃっているのですか。
○水野班員 21条で、しかも虐待死の可能性が高いという通知を念頭に置いています。
○丸山班員 そうなると、21条による警察への届出と、そうでない確認の意味でこういう事項があって摘出することに問題ないでしょうかという確認と、現場では意味が違うのでしょうか。警察の対応というか。
○新美班長 いまのところは虐待の場合には死亡でなくても、一応警察には届け出るわけですか。それはしない。
○宮本参考人 原則は別にしまして、現実的には一義的にはそうはなっていません。もっと極端に言えば、死亡の場合でも残念ながらそうはなっていません。
○丸山班員 現在の案の4頁の最初の○の「内因性疾患により脳死状態にあることが明らかである者以外に対し、脳死判定を行おうとする場合には、所轄警察署長に連絡することとされており」というのは、必ずしもそうでないということですか。
○宮本参考人 いいえ、これは脳死判定のほうですから。私が言ったのはそうではなくて、異状状態であっても警察に通報しない場合は、残念ながらまだ。昔よりは増えてはいます。
○丸山班員 けれども、移植が想定される場合は、病死以外は相談か届出かはわかりませんが、連絡するのですね。
○小中参考人 実際は、内因性疾患以外のものは異状死体として、警察のほうに連絡をしているのが我々が関与させていただいている事例になります。
○辺見室長 いまのは資料の4頁のいちばん上に書いてありますが、「内因性疾患により脳死状態であることが明らかである者以外」は医師法21条ということは、ガイドライン上も明記されています。その他の場合はともかくとして、脳死の場合はこれが明記されていますので、そのようなことをネットワークにおいても現場でも確認をした上で移植にとなっているということで、むしろ内因性以外の場合に広く警察への連絡が行われているというのが。
○新美班長 これは21条に基づいてではなくて。
○小中参考人 ではないです。
○新美班長 これは、移植法に基づいて。
○長岡補佐 ガイドライン第11の5に「検視等」がありまして、「内因性疾患により脳死状態にあることが明らかである者以外の者であるときは、速やかに、当該者に対し法に基づく脳死判定を行う旨を所轄警察署長に連絡すること」という規定を設けております。
○宮本参考人 私が先ほど申しましたのは小児の場合ですので、いままでは脳死判定云々がなかったわけですから、異状状態で受診した患者に関して、必ずしも医師がすべて警察に連絡している状況には、いまのところない。ただ、臓器提供が考えられる場合には、そういう状態はすべて警察に連絡することと付けていただければ、もっとそれは広まるだろうと思います。現実的に、いま虐待で死亡している事例は、公になっているので年間大体60例、1週間に平均1例です。ところが警察が把握した人数、関与した数は、もっと少ないです。
○丸山班員 2つ目の水野先生の質問というのは、いずれにせよ警察の関与は移植が想定される児童については、出てくるのではないかなと思います。
○水野班員 虐待死としての捜査が発動されるような21条の通知という意味であって、これから脳死移植をしますよという通知ではありません。
○丸山班員 警察のほうが、その2つを分けて取り扱うのか、同じように取り扱っているのかということですね。
○新美班長 これは、異状死であると判断して脳死判断をする場合には、現実には二本出すのではなく一本でいくのではないのですか。脳死の原因が犯罪の疑いがある場合には、脳死で脳死判定しますよというときには、21条の異状死届出と併せて一本でいくのではないのですか。別々にやるのですか。
○小中参考人 21条のことはわからないですが。
○丸山班員 21条の届出の前提としては、脳死を判定しなければならない、死亡の判断がなければ。
○新美班長 死亡の判断をとらなければね。そうすると、論理的にはまず警察署に脳死判定をするという届出をして。
○丸山班員 届出というか、相談をして。
○新美班長 そのときに、虐待のおそれがあるということは一切言わない。
○宮本参考人 それは、疑っていれば言うだろうと思います。
○水野班員 司法については、これから作っていくわけですよね。いままで前例は一切ないわけですから。そのときに、虐待死の可能性が高いと思われるという21条の異状死届出というのをされるような場合は、証拠隠滅のおそれがあるということで移植の対象に回さないという措置上の二択であれば、合理的だろうと思います。
○丸山班員 先ほどのガイドラインの12の5は、21条の届出は別途行うべしと書いてありますね。どうも失礼しました。
○新美班長 そもそも、このロジックでいくと虐待死の場合には、脳死判定を行ってはいけないというのですから、基本的には行おうとしてはいけないわけですよね。これは論理だけの問題ですが。虐待されているかどうかの判断がついたら、脳死判定なんて思ってはいけないということですから、警察への届出もしないということになりますか。
○辺見室長 警察への届出の話は別の論理かと思いますが、1つは脳死状態であることを判定した上での臓器移植の手続において、脳死の判定を行おうとする前に警察に連絡する。判定を行ったあと、異状死届出を行うという流れがありますという話と、虐待かどうかがわかったような場合というのは、もともと虐待の話は移植にくっ付いている話ではありません。医療機関に来た時点で、おそらく判断がされていると思いますので、この時点でどうかとくっ付けて判断するかというのは疑問があるところです。
 もう1つは、水野先生から脳死のお話がありましたが、この条文は脳死、心臓死を分けていません。附則5項ですが、心臓死においても虐待を受けた児童が死亡した場合、その臓器が提供されないようにというのは心臓死の場合も含めて書いてあると解釈をされますので、脳死の場合は先ほど私が申し上げたような手続がありますが、心臓死の場合はどうするのかという話は出てまいります。その場合、いずれにしても異状死届出でする場合は異状死届出としなければいけないとは思いますが、こちらはどちらかというと外因性であり比較的広く死亡状態に着目して届出がされていると思いますが、先生がおっしゃるような虐待の可能性というのをそこにさらに加えてやるということが、異状死届出の実務上可能かどうかは、いまのところ私どももあまり知恵がないというか、現状においてもその時点で虐待かどうかという話をするのではなくて、虐待のおそれがある場合はむしろもっと早い段階で対応しているのが現状ではないかと考えています。
○水野班員 下から2つ目の○の「こうしたことから、移植医療に従事する者は、児童相談所や警察などの関係機関との連携により進められる虐待診療を通じて、その業務に係る児童について虐待が行われた疑いがあるかどうかを確認することが現実的であると考えられる」という文言の意味がよくわかりません。移植医療に従事する者は、虐待診療を通じてというか、移植医療に従事する普通の小児科が虐待児童の面倒を見ていて、その面倒を見ている児童は児相と連携をしていて、既に虐待で児相のほうで関与はしているけれども、引き離すまでは至らないというような介入が行われているような児童が連れてこられて、脳死状態になったというシチュエーションであれば控えましょうという場合を考えられるのであれば、下から2つ目というのは理解できますし、ある意味、現実にもそんなに、ずっと児相と連携しながら虐待の対応をしてきた掛かりつけの医師が、いよいよ死んでしまった場合に、この子をそのまま脳死で移植の対象に回せないという判断をするのは、そんなに問題はないというか、あり得る1つの解決策かもしれないと思いますが、それは、ここに書かれているシチュエーションのうちのごく限られた一部だと思われます。下から2つ目の○を、全体に広げていったときに、いったいどういう機能をお考えなのかがよくわからないのです。
 先ほど申しましたように緊急で担ぎ込まれて、全然いままでかかったことのないような児童が瀕死の状態で重篤になっているときに、児相に連絡をしてこの子はどうでしょうねと確認するということを、これは救命がとてもできそうにないと思っている小児科医に対して要求するのだとすると、下から2つ目は何を意味している要求なのかがわからないのです。
○新美班長 基本的には、児相と確認するだけの時間がないときにどうするのかということですよね。
○水野班員 確認する時間もないでしょうし、システムも動いていない。殴られて怪我をして、絶えず医師にかかっているとき、その主治医が児相と連絡をして、この子は危ないという連携をかねてよりやっておりましたという場合ならばわかりますが、そうではないし、おそらく脳死が問題になる状況というのは、児相と連携を取っていたかかりつけの医師以外のところへ担ぎ込まれて、瀕死状態という場合が圧倒的に多いのではないかと思います。
○辺見室長 件数的には厳密にはわかりませんが、いま水野先生がおっしゃられたパターンの間に結構、症例があるのではないかと考えています。すなわち、医療機関に搬送されて1週間なり1カ月以上の期間、救命のための治療を受けながら結果として死に至ってしまうようなケースというのも、症例的には一定程度はあると考えています。ごく短期間で死に至ってしまった場合に、確定ができないケースもあるかもしれませんが、流れ的には水野先生がおっしゃられたもう片方の掛かりつけの状態もありますが、その間にもう少し広い、医療機関において治療を受けながら死に至る、もしくは死に至らずに退院する可能性も秘めた形の状態はあり得ると想定して、こちらの文章を書かせていただいています。
○宮本参考人 以前も申しましたが、現実的には心臓死であろうが脳死であろうが、虐待行為によってそういう状態に陥った子どもたちが受診した場合、ほとんどの医師はそれは最初の時点でかなり虐待を疑えるだろうと思います。つまり、そこまでの状態があるわけですから、かなりの暴力や福岡のネグレクトのように、どう考えてもこれは通常ではない状況からほとんどわかる。もちろん、それでも見逃すことはあるだろうと思います。見逃しの1つはSIDSの中に含まれる窒息、溺死とかの事故です。当初、いろいろご批判をいただいた案は、そこまでも慎重にしようとするといろいろな所に足枷をかけてしまうことになりますが、逆に言うと、こんな言い方をしてはあれですが、これまでも見逃されていたわけですから、同じ状況というふうに考えれば、受診時に虐待が疑われる状況で、大体は医療現場がそんなに困ることはないだろうと思います。実際には、虐待による脳死はそれほど多くはありません。ほとんどの場合は、来たその日か次の日に死亡する心臓死です。あるいは、かなり重篤で駄目かなと思っても、いまはかなり助けられますが、寝たきりになることのほうが多いです。実際には、かなり重篤な頭蓋内出血で入ってきても、いろいろな治療をやって、変な言い方ですが亡くなっていませんので、入ってから数日以内で警察よりはまず児相に通告するほうが先になっています。そして、児相と相談の上で警察まで通告するかという議論がされる展開も、必ずしも少なくはないだろうと思います。
 来たときに死んでいる状態であれば、21条によって、つまり異状死で連絡することになりますし、死んでいない場合には、これもとても変な言い方ですが、大体は地域の基幹病院に送られます。そうすると、そこはある程度そういう虐待に対するノウハウも持っていますし、皆さんご承知かどうかはわかりませんが、大体は小児科医であればネットを持っていますので、こんな患者が来たよということで情報を集めてしまうことが多いです。これは虐待診療の話になります。
 私がいちばん危惧しているというか、ある程度方向性を示していただきたいのは、何度か申し上げたように、虐待がかなり強く疑われる、あるいは虐待があることはまず間違いないけれども、虐待行為以外で死んだ事例をどうするか。それは私は情緒的と言いましたが、医師の側でもかなり心情的なためらいが生じることはあるだろうと思います。ここに指針を示していただかないと、病院によって、あるいは医師によって判断が異なってくる状況が生じるのではないか。そこを少し危惧しています。
○新美班長 いまのお話ですと、まず医療の現場では虐待があるかどうかが、突然死症候群でない限りははっきりしている。確認できる。
○宮本参考人 死亡まで至るような事例であればです。
○新美班長 それは、脳死の場合も含みますか。
○宮本参考人 脳死は、その前がありますので。
○新美班長 ですから、大体わかる。むしろ、交通事故で虐待とは関係ないような場合にどうするか。虐待の痕はあるけれども、虐待とは関係ない死亡をどうしたらいいのかというのをもっと明確にするほうが大事、ありがたいということですが。
○水野班員 その場合の情緒的なためらい感については、虐待と関連させる理由を合理的に理解していただくことによって、割り切っていただくしかないのではないかと思います。虐待が原因になっていて、刑事立件になる可能性があるので、証拠保全の必要性から警察に渡さなくてはならない場合は、その提供対象から除くのだと考えていただければ、警察への届出か提供かという二択になるでしょうし、同意権の剥奪については、虐待をしていたような親が、それ以外の原因で死んだ場合だけれども、そんな親がそれについて同意をするのはいかがなものかという場合だったら、その親以外の親族の同意権によって提供できると考えていただければ、それで足りると思います。
○新美班長 後者の場合は法律には書いていなくて、親を外して残りの者で総意でどうやって決めるのかという、法文上の難しい問題がありますよね。同意権をなくするという仕組みは、とりあえずは法には書いていない。
○水野班員 でも、合理的に考えれば、そうとしか考えられない。
○新美班長 そうだと思いますが、民法でいくと普通は、まず親権を剥奪していくしかないわけで。
○水野班員 親権の剥奪とは別の問題だろうと思います。つまり、親権の剥奪の場合には親権は子を代行する権限ですが、いちばん最初に議論しましたように、ここでは親権者は親族の中の特に重要人物ではありますが、その親族の1人として同意権ないし拒否権を持つ人間なわけですから、その親についてはノーカウントにしてしまうということで足りるのではないでしょうか。
○新美班長 それは、おっしゃるとおりですよね。現場で誰がそういう捌きをするのかという問題です。コーディネーターのところに行くしかないですが、それが可能かどうかは非現実的ではないかと思います。
○水野班員 それは、コーディネーターがその場で、この人は虐待しているから、ノーコメントの権限だということをきちんと決めて捌いていくというのは難しい、当然、親はそんなことをしていないと言うでしょうし、現実的ではないでしょう。誰が虐待者で誰が虐待者でないかということは、それこそ調べ上げないとなかなか立証できない話ですので、一刻を争う同意権を取る段階で、コーディネーターがそんなことを判断して仕分けるのは不可能だと思います。
 しかし、このケースは同居している親が虐待をしていた可能性がある、死因は別であるけれどもという場合には、同居している親以外の親族がみんな提供に合意している、それでゴーサインを出していいと考えれば、親がそこにいて「僕も賛成だ」と言っていても別に全然構わないわけで、それを覚悟していただければいいと考えれば、それほど難しいことではないのではないかと思います。
○新美班長 いかがでしょうか。いまの議論で、だいぶわかってきたと思います。
○町野班員 ご趣旨はわかります。しかも、臓器移植委員会の中で、1人の医師はいまのような考えを言われましたよね。考えというか、代行権を失うというあれです。そのときに、もしそうだとすれば水野先生のように考えられるのが筋道だということだと思いますが、法律の趣旨はそうではなかったと思うので、あまり合理的ではないかもしれません。
 説明するとするならば、その子どもが虐待死という悲惨なことを招いたのは、親族全員の責任であるということでしか説明のしようがないのではないかと私は思ったわけです。もちろん、条文上の解釈としてはかなり難しい解釈であることは、水野先生も理解されるだろうと思いますが、実際には、おそらく立法者はそういう意図ではないし、これは合理的な説明は不可能なことですよね。いちばん最初にこれを提案されたときも、どうしてできないのかと、いまのように虐待した親を除いて、全員で同意することにすれば足りるはずではないかということを言っていたわけですが、それを無視してああいう格好になったわけですから、やはり、これはやむを得ない。そうすると、合理的に説明できないので、どうするのかという話になるのでクルクル回ってあれですが。
○水野班員 証拠保全の話が紛れ込んできたから、グチャッとなっただけではなかったのでしょうか。
○町野班員 そうではなかったと思います。これを誰がいちばん最初に言い出したかはわからない話ですが、児童虐待ということがあるから児童からの臓器の提供については問題があるという発言があったわけですから、そこからだと思います。
○水野班員 そうだとすると、最初に私が邪推かもしれませんがと申し上げたように、そもそも論のところの対立がここに流れ込んできているのだとすると、ますます本当にこれで動きがとれなくなってしまいます。
○町野班員 そうですね。まさにそうで、だからこれをなんとかという話ですよね。
○水野班員 ですから、出来上がってしまった条文を前提に、なんとか合理的な解釈をと思って考えるしかないでしょう。
○町野班員 それは不可能だと思います。少しよろしいですか。いまの問題はかなり重要だと思いますが、事務局の用意された案についてイメージを固めたいのです。子どもが運び込まれてきた。脳死になるか心臓死になるかは話は別だけれども、運び込まれてきたあとで死ぬ。そのときは、虐待の可能性があったときについては、なるべく早く通報するというのが法の趣旨だから、それをやる。そのあとで、4頁の下から2つ目の○で、虐待診療を通じて対応しなさい。その間に、これは虐待ではないということが明らかになったときについては、そのあとに死亡したとしても臓器移植の対象になる。しかし、それが消えない以上は、1回通報した以上は絶対駄目だというお考えなのですね。
○辺見室長 そのとおりです。
○町野班員 そこがあれなので、現場がどのように動いてくれるかという話だと思います。どういうときに通報するのだろうか。簡単に言うと、通報されたら駄目という話ですね。警察に行くか、いずれにせよ児相に行くのでしょうけれども、そのときは駄目だと。だから、そのときに前に問題にされましたように、SCANのときのカタログ、リストに従って、これでやって疑いがあるときは必ず通報するという話になったとしたら、かなり大変な話ですよね。
○宮本参考人 そこは手続論になりますが、先ほどもお話しましたように、臓器提供の対象となるということは、基本的には死を前提としているわけです。そうすると、ほとんどの事例は受診して数日以内に死亡しています。したがって、これは大体警察に連絡します。1日か2日です。そうでない場合には、かなり持たせられるのがほとんどですから、まず児相という流れが一般的だと思います。
○町野班員 つまり、現行法では、疑いを持ったときは通報しなければいけない義務規定になっていますよね。
○宮本参考人 はい。
○町野班員 これをもう少しシビアに考えろというのが最初のお考えだったように思うので、現在は通常の場合、それほどはやっていないと思うので、もう少しこれをやりなさいということになって、火傷があったりすると、すぐその場で虐待を否定する理由がないと思ったときは通報しろという話になるのかなと。そうすると、あとは絶対にできませんよと。それが、皆さん方がいちばん心配されている話ではないかと思います。
○宮本参考人 その辺は、どこまで慎重になるかということで、現実的には先ほどもお話したように、ほとんどの事例はそういう状況以前として判断できる。ですから、どこまで見逃しをおそれるかの考え方によることになります。でも、それは確かに書き方や表現によっても、ある程度違うだろうと思います。
○新美班長 いま先生がおっしゃった児相と警察それぞれに報告するときに、何か違いはありますか。それとも全く要件は同じですか。
○宮本参考人 基本的には大きな違いはないです。
○新美班長 それは医療機関の判断で、警察か児相かのどちらかという。
○宮本参考人 はい。
○新美班長 そうすると、先ほど町野先生がおっしゃったように、かなり予防的な意味合いで報告すべきだということになると、相当幅広く虐待診療が始まって移植ができなくなるということにつながりますね。
○山本班員 前回それを随分議論しまして、それよりももう少し絞ろうということである程度合意できたのではないかと思っていたのですが、今日のこのまとめを見ましたら、それがまた元に戻ったような感じになっているものですから、ちょっと唖然としました。かなり絞って、そのときのガイドラインの書き方はどうしましょうかということで、なかなか書き方は難しいので「関与」ぐらいでいいだろうというような話で、その議論はもう越えたように思っていたのですが。
○新美班長 広すぎるから絞りましょうというのは、例の別の作業班の議論であって、現状を前提にした場合にどうなるかという議論と違っています。いま、宮本先生がおっしゃったのは、現状を前提にするならばということです。
○山本班員 そうですが、このガイドラインの書き方としてどう考えるかというのは、この作業班でやらざるを得ないわけですね。
○新美班長 そこで出てきたのは、基本的には同じところで虐待診療で予防的な通知と、移植のための判断の2つの判断をさせるのかどうか、現実的かどうかという問題が出てくるわけです。ここでは2つの判断をさせるというのは非現実的だということで、虐待診療のほうに一本化すべきだという案が出てきた。
○町野班員 上から3つ目の○でそれが残っているからなのです。そして、あとの診療のほうでそれが打ち消されるという話ですから、通報のそれが最初に来ていますから。宮本先生のお話を伺っていると、それほどあまり心配することがないのかなと思います。ただ、こういうことでガイドラインで児童虐待防止の趣旨からは、きちんとこういう制度を作りなさいと。そして、これで通報したときについては、それが消えない以上は駄目だとなると、非常に広く網が掛かったまま進行するわけですよね。これでいいのかなと、書きぶりの問題だと思います。
 日本で、児童虐待の防止のための体制をもう少しきちんとしなければいけないというのは誰でも思っていますが、その2つを一遍にここでやるかのように書かれているので、これが問題だろうと思います。おそらく皆さん方の頭の中にあるのは、虐待防止の対策、いろいろな中での虐待のチェックの体制というのは、実は臓器移植とは関係なくして行わなければならない話なのです。そのことをまず書いて、そして話を進めると少し誤解は避けられるかなという感じがします。つまり、虐待防止の体制について我々が言うべき話ではないのはたしかだけれども、これとは話が別だということだと思います。もちろん、実務上の連動はこうなっていますよというのは理解できます。しかし、この実務上いままでやってきたことと、これからのこれとがうまくなっていればいいけれども、1歩先に行って、もう少し予防的措置で通報しなさいという具合に見えますから、そうすると問題が生ずるという話ではないでしょうか。
○辺見室長 少々記載が不十分かもしれません。4頁の2つ目の○の5項ですが、「虐待防止の観点からは、疑いの範囲が幅広くなる可能性があるので、後に事実が判明し、実際には虐待を行っていなかったときの、親の臓器移植への思いも考慮すれば、臓器提供の段階」、ここは「臓器移植法の観点からは」というのが入るかもしれませんが、「臓器提供の段階でより厳格な判定が望まれるところではある」という書き方で、いまのご趣旨からすると、厳格な判定というのではなくて、もう少し言えば疑いはあくまで疑いですので、事実により近いということが確定できれば、それでいいのかと思います。
 こういった書きぶりをしている趣旨は、虐待防止の観点からはより広くなってしまうけれども、臓器提供の観点ではより厳格な判定が望まれるところであろうということを、前提としてまず置いています。それ以降は、現状でどういう扱いがなされているかということで記載をしていますが、結論的に先ほどの第2項の「より厳格な判定」という話を現実のものとして運用していくためには、誰がということと、どういう基準でということが決まらないと動けないものですから、そういった問題が出てくるところは明記はしていませんが、あると考えています。さらにという場合には、2つ目の○から議論が不足だということであれば、ここを追記して書くことと、より具体的な方法があるのであれば検討の余地はあるかと思いますが、現時点では難しいかなと思います。
○町野班員 2番目の○の最後に「厳格な判定」とあるのは、虐待死の存否についての厳格な判定ということですか。
○辺見室長 はい。
○町野班員 この文章ですと、最初のところでは虐待防止の観点から広く通報しなさいと。
○辺見室長 虐待防止の観点からの運用とすると、疑いの範囲が幅広くなってしまう可能性があるけれどもという、どちらかというとそういう趣旨です。
○町野班員 冒頭にあるのは、通報のときの内容を言っているわけではないわけですね。
○辺見室長 厳密にはそうではないです。この趣旨を仮定して考えたらというだけです。
○町野班員 つまり、ここは総論的な叙述であって、児童虐待防止の問題と虐待死した児童からの臓器の提供の禁止の問題とは、一応別のレベルの問題であると。
○辺見室長 そこは、そういったお話がありましたので。
○町野班員 総論がここであって、そのあとで通報するときに、児童相談所について、その求められる要件については、いまのような予防的観点で広くあっていいという判断は入っていないという話ですね。
○辺見室長 広くあっていいというか。
○町野班員 先ほど申しましたとおり、現在よりかなり広く、少しでも疑いがあったときは通報しなければいけないというのがあって、そのとおりになるとしますよね。そうすると、それが後から虐待でないことが明らかになった場合だけできることになると、疑いを打ち消すのはかなり難しい話ですから、かえって難しくなるのではないかという話ですよね。これは総論だとすると、現実の通報については現在よりきつい基準というか、提唱されているようないろいろなマニュアルとかSCANのあれを取り入れたようなものになるのが望ましいという話ですか。
○新美班長 そこまでは書いてないでしょう。
○辺見室長 おっしゃるとおりです。結論が望ましいというふうになってしまうと、ちょっとこの文章の書きぶりと違ってしまうと思います。むしろ現実的には、その他の方策をとるよりは、そういった現在の虐待防止の枠組みをとるということが、現実的な方策としてはやむを得ないというか、その他の方策は考え難いということでございます。
○町野班員 要するに3番目の○のところは、要するに予防的観点から云々という言葉は書いてないかもしれないけれども、児童虐待防止の観点からは疑いの範囲が幅広くなるということについては、それでいいというあれではないのですね。
○辺見室長 他に方策がないと。
○町野班員 要するに心配というのは、もちろん児童虐待防止のことをやらなくてはいけないのだけれども、それで、例えばムシ歯が何本かあって、総合的にもしかしたら、これはネグレクトかもしれない、学校に行っていないということがあったらすぐ通報しろと、そして、通報したときに、これが虐待でないことが明らかであったときだけ、あとで死亡したときに臓器の提供ができるということなのかと。
 問題がいくつかあるのは、では、通報については現状を肯定するわけですか。あまりやっていなくてもかまわないと。それは言えないわけでしょうね。
○辺見室長 全体としては、虐待防止について、ある意味、合理的で現実的なマニュアルを備え、院内の体制を整えることは必要かと思います。その合理的なマニュアルがムシ歯が何本あったら即通報というのは、合理的かどうかというのは即答できませんが、マニュアルや院内体制をとっているということは、前提になるというふうに考えております。
○丸山班員 少し的外れかもしれないのですが、児童相談所への通報を必ずかませなくてもいい。その子どもの治療に当たる医師が虐待の有無を判別できる場合が多いということであれば、3つ目の○の前段はいらないのではないですか。ここはやはり言及する必要があるものなのですか。3つ目の○のところは「このため」を取ってしまって、「医療機関の判断としては」云々のところだけ、この法律の関係する部分だけ記述するというのでは、駄目なのかなと。
 それから、同じような観点からもう1つ言ってしまうと、下から2つ目の○のところも、児童相談所というのを挙げる必要が必ずしもないのではないかと。今日は前回と参考資料1の表もたぶん異なっていて、前回、児相が出てきていたと思うのですが、今回は出てきていなくて、私は当初これを見たときは、ちょっと安心して、突然死、事故死などの場合については、児相の関与する暇がないのではないかということで、そういう場合についても対応できるのかなと思っていたのですが、4頁は児相のいま指摘したようなところが、かなり前面に出てくるので、必ずしもそれをかまさなくても、関与がなくても対応できるのではないかなと思うのですが、いかがなものでしょうか。
○町野班員 ご趣旨はわかりますけれども、おそらく事務局も宮本先生もかなり苦労されているのは、医師の判断でこれは虐待がなかったということを判断してやってしまうことについて、ものすごいためらいというのがあるわけですよね。ですから、相当な理由があるときに、児童相談所に通報するとかやっておいて。そうすれば、そこのところでよくよく見た上で、あっ、これは関係なかったということが分かれば、やっていいという話になるから、ということがあると思うのですね。おそらく、それでこの手続は非常にこだわっておられるだろうと思うのですよ。
 私はいろいろお話を伺っていると、これは逆の意味でこのほうが現実的なのかなと。ただ、動かし方がもしマニュアルをギチギチに作って、一緒に合致させるべきだと、理想を追及することになると、おそらくかなり難しい事態が生ずるし、親御さんにものすごい被害を与えると私は思うのですよね。だから、そのところをどのようにしていったらいいかという話だろうと思います。
○宮本参考人 児相への通報云々は、実際にはごく限られた状況を除けば、主治医が1人で判断してやるということは、まずあり得ないです。例えばムシ歯がたくさんあるから、では、即通報かといえば、そうではなくて、大体は院内でディスカッションをして総合的に判断するのが実際ですね。私がいまこれを見ていてふと思ったのですが、とにかく私どもが危惧するのは、医師にあらゆる判断の責任がふりかかってくることに関しての非常な負担感や、それによってかえって現場が萎縮してしまいかねないかという、そこなのです。例えば窒息や溺死は見逃している可能性があるから、全て排除しようというふうな考え方もありますが、一方では、もし、それが脳死判定あるいは臓器提供にいくとすれば、通常の脳死判定のこれまでのガイドラインでも、事故ですからそれは警察に通告しなくてはいけないわけですよね。ですから、そのルートでそういったものは乗せられるということであれば、虐待が強く疑われる場合には、むしろこの21条のほうでの通告で、両方カバーできるのかなという気も若干してきております。
○新美班長 いまのお話ですと、現実の場面では、脳死判定の際の警察への通告か21条でいける場合と、それから、ある意味でそれではどうしようもない、そういう形ではいけない場合に、結局、第三者の判断を要するような場合もあるからということですかね。常に児相とか警察に通告をしてからと、まあ、警察に通告をすることになるのですかね。脳死判定のための警察通告の際に、虐待の可能性ありというようなことを言うのですかね。
○宮本参考人 死亡ということであれば21条で。
○新美班長 21条で、脳死判定のために警察へ通告をしますね。そのときには、どうされますか。
○宮本参考人 そのときには既に脳死判定に至る前の重篤な脳損傷がありますので、それで最近は警察へ通報することが多いだろうと思います。つまり、最近の医師の情勢を見ていますと、死亡以外にかなり子どもの状態が重篤な場合には通告をするという傾向が出てきています。
○新美班長 そのときには虐待の可能性があるかどうかということもされますか。
○宮本参考人 はい、大体、虐待の疑いで連絡することが多いですね。
○新美班長 死亡まではいかないけど、窒息して脳死状態になった場合も、同じようなことがあるかないかは、窒息では難しいわけですね。
○宮本参考人 これは判断できないです。ただ、それがもし脳死状態になって、ドナーの判断をする場合には、むしろ脳死判定のガイドラインで警察にいくわけですから、それでも難しいでしょうけど。
○新美班長 そうすると、ここでは分けるとしたら最初の○にあるような場合で、通告をしたりするということと、いずれにしても警察などの関係機関。ちょっと難しい。そうしますと、虐待診療を通じてというのは、常ではなくなるわけですね。いま言ったような脳死判定のための警察への報告というのは、虐待診療とは関係ないのですね。
○宮本参考人 はい。
○新美班長 その場合も一応、代替してやってしまうわけですね。要するにその場合は、一応、虐待の可能性があるよということを併せて警察に報告をして、脳死判定をするということになるのですか。
○宮本参考人 いえ、おそらく虐待を疑っている場合で重篤な状態の場合には、虐待のほうで。
○新美班長 ……的にいかない。
○宮本参考人 はい、先ほどお話をしたのは、そうではなくて、例えばSIDSのような形で、でも100%否定はできないよねというのを、どうするのだというときにまで、21条でいかなくても、脳死判定のほうのガイドラインで警察で犯罪性を検証してもらうというルートに乗せられるのではないかと思います。 
○新美班長 いかがでしょうか。
○町野班員 いま宮本先生が異状死体の届出の問題で処理できるかなということを言われたのだけれども、皆さんがそう思ってくだされば、かなり楽な話なのですよね。いちばん最初の臓器移植委員会のときに、私はそのような考えを言ったのですが、いや、それではありませんということで、早速否定されましたので、それではできないのかなというように思いますが。おそらく虐待を見逃さないためには、非常に厳しいといいますか、制度を作るべきだということが、もう1つ組み合わさっているわけで、もし、いまのように異状死体の届出義務だけでいけると、その話と児童虐待の場合もこれを見逃さないようにしようというそのコンテクストであるならば、非常に事は楽で、これも非常にガイドラインも短くて済むという話になりますけれども、これは現実的なのでしょうかというのが、私のほうからの話です。
○辺見室長 いまの宮本先生のご趣旨は、前提として医療機関において、すぐ死亡に至るようなケースにおいて、児相に連絡するのではなくて警察に連絡することを先行させる場合があるということで、それ以外のケースにおいて、若干というか、どのぐらいの時間かはわかりませんが、時間がある場合においては児童相談所に連絡するということがむしろ一般的に先行しているという中での話です。部分的な話ですね。
○町野班員 私はそれは分かっていますけれども、要するに虐待死を見過ごして、そのまま異状死体の届出をしないという事態は避けるべきだということであるならば、それに収斂したような書き方になるだろうという話なのですよね。だけど、それはできないという考え方でこれは出来ていますから。通常、通報をするかどうかというのは、いつ通報するかというのは現場の問題で、これをどう変えるかの問題なのですが、基本的に考え方です。
 これがどうして虐待死体からの臓器の摘出を認めないかというと、1つはやはり証拠隠滅になる可能性がある。それは結局のところは犯罪が見過されることを避けるのが異状死体の届出義務ですから、そちらのほうに収斂して理解する話になるわけですね。それに対て、虐待されて死んだ子どもというのはかわいそうだから、その子どもから臓器を取ってはいけないということになりますと、これも非常に難しい問題になってくるわけですよ。
○宮本参考人 そういう議論ではないと思います。
○町野班員 それは異状死体のほうで踏みきってくだされば。
○新美班長 それはまさに水野さんの問題意識。
○町野班員 そうなると少しは理解できる。
○水野班員 それならばなんとか大丈夫でしょう。
○宮本参考人 ただし、現場の医師がみんなそうかというところの問題。
○宮本参考人 そうですね。ただ実際にはこういったものは、かなり現場の裁量で動きますね。 
○新美班長 例えば先ほどあったように、1カ月ぐらい入院していて、それでだんだん悪くなっていったというようなケースは、児相にいくかいかないかでずるずるしますよね。ですから、ぎりぎりになって児相に相談、警察にいくということもあります。
○宮本参考人 例えばこれが今回の法改正で小児もドナーとなり得ることになったので、心臓死も脳死もその状態になったら、必ずドナー、臓器提供の有無を全てにおいて確認しなさいというのであれば、その手続が必ずありますが、実際にそこからも手をつけないという医者はいるだろう。
○新美班長 ガイドラインでそれを書き分けられるかどうかですね。難しいですね。
○山本班員 異状死体と書いても難しいですか。
○新美班長 死の判定ができなければ、異状死体と言えないわけですので。
○山本班員 それは犯罪によって死んだということですね。
○新美班長 ですから、それは脳死も判定してからですね。ただ、虐待児の場合には、そもそもカテゴリカルにそこから外せと言っているわけですので。死体として入ってきたときには異状死体でいいのですが、脳死判定をするかどうかというときには、必ずしも異状死体のことでは対処できない。
○町野班員 現行のやり方はそうですから、検視のときに関係してですから、そのときにもう脳死になりそうだといったときについては、向こうに通知をして、そのあと検視が行われる、そういう段取りですね。それは対応できますけど、問題は、これも立法者の趣旨だけですが、そうではないわけでしょうね、異状死体なら。 
○山本班員 私は異状死体を見過すなと。
○町野班員 それだったら別に書かなくてもいいという話ですよね。これは虐待児だけの問題ではないので、どこかで交通事故に遭ってもそうだし。
○山本班員 しかし、虐待の場合にはそれを特に書いたという趣旨しかないのではないですか。
○町野班員 注意規定であると、それもかなり難しい解釈ですよね。先ほどの水野先生のも難しいけど、これももっと難しい話ですね。
○山本班員 それ自体、合理的に解釈をすることはできない。証拠隠滅のおそれというのは、まさにそれですよ。
○町野班員 もし、ここで皆さんがそれでまとまって出てきてくれれば、いろいろ議論はあるのだと思うけれども。
○山本班員 やはり合理的に説明できないものを認めるというのは、やはり妥当ではないのではないでしょうか。
○町野班員 つまり、もしこれ異状死体の問題だけだということになると、児童虐待の防止というのは、この委員会の関係するところではないのですよね。だから、この部分を全部取れるという話ですよ。そうすると、非常に短くなると。
○山本班員 そもそも、児童虐待の防止ということと、水野先生が言われたように、臓器移植をどうするかというのは、全く別の問題ですよね。
○町野班員 そうなのですよね。
○山本班員 そのことをこの委員会ではっきりさせるというのは必要なのではないでしょうか。
○新美班長 理屈はそうですが、ガイドラインですからね。これ移植の現場にこうしなさいと言うわけですから、移植の現場は虐待防止も臓器移植も両方担うわけです。
○山本班員 しかし、この場合の趣旨は、虐待防止というのはそれは別個の問題ですよね。
○町野班員 それは別個の問題ということは分かるのですが、それを1つの医療機関に同じ現象を別個にやれということを要求するのかということですよ。
○山本班員 ですから、その場合には異状死体に限るということで。
○町野班員 いや、おそらく要求はしないのでしょうね。それは小児の臓器移植があったから、だからこれから児童虐待のことを一生懸命にやりますという理屈は全然ないわけですから、これを関係なくやらなければいけない話ですから、言わなくてもやってくれるだろうという話になると思うのですね。理屈はそうです。理屈はそうなのだけどもというと、えらい年をとったと言われるかもしれないですけど、やはり立法者といいますか、これはそういう考え方で進んでいないですから。これは拘束されると考えざるを得ないのでしょうね。
○新美班長 ここではとりあえず、いまのところは虐待についての通告については、現状を前提に考えているということで書いてあるのですが、これはさらに予防的な観点が広がってきたときには、また考え直すということにならざるを得ないのだと思いますけど。
○町野班員 おそらくもう1回予備日をやらなくてはいけないのだと思うのであれなのですが、私は結論的に言うと、この流れで一応いいだろうと思います。ただ、やはり非常に誤解を招くところがありますので、この2つのことを現状のままでいいというのは、やはりまた問題なのですよね。だからそのことに触れないで、しかし、虐待防止のための何かをやりながら、これで現場の医師に過度の負担にならないようなことができればいいのかなと。皆さん方が考えていることはあまり違っていないと思うのです。ただ、それをどう表現して、思想がはっきりしませんので、児童虐待防止のためにこの制度があるなんて考えておられる方もかなりいるわけですが、それはやはり違うのだけれども、それをどううまい具合に書くかという話だろうと思いますけれども。
○新美班長 いまの話、皆さんの考え方は同じというのは、そのとおりだと思うのですけれども、私自身はこの書き方で、まさに多義的な関わり方をしているので、これで進めるのが現実的かなと思っているのです。というのは、○の3番目は「通告が求められているところである」いうことで、将来どれだけ予防的なものを入れるかというのは書いてなくて、現状認識を書いているだけなのですよね。
○丸山班員 だけどこう書くと、特段の理由がないかぎり通告をしなさいとなりますね。急速に死の判定にいきそうな事例でも。
○新美班長 それはいまの虐待防止法でも求められているところですね。そう書いてある。
○町野班員 だから、それでいってしまうと、そこからあと疑いが晴れない以上は駄目という、それが問題だという話ですね。
○小中参考人 小児の場合も異状死体は警察に届けていますよね。何か大人とあまり変わらないというふうに思っているところなのです。ですから、通常、我々が臓器提供について話を聞きたいと呼ばれる前には、もう既に警察に届出が全て終わっていますので、この方の場合は臓器提供の意思があるけれどもということで警察に確認すると、まだ捜査が終わっていないので関与してもらっては困ると言われる場合もありますし、このまま進めてもいいよと言われる場合もありますので、それと全く同じような考え方をしていたところなのですけれども。
○宮本参考人 議論を最初に戻すつもりは全くないのですが、そのとおりなのです、異状死体と判断すれば。そこが違うのです。大人の場合には大体誰が考えてもこれは異状だと、だけど、子どもの場合には親がそう言えば、ああそうだったのかで素通りしてしまう、そこに対する危惧なのです。
○新美班長 脳死判定のための警察への連絡というのは、臨床的な脳死になってからですか、その前。臨床的な脳死になってから報告ですね。
○宮本参考人 そうです。臨床的に脳死と判断をした場合です。
○新美班長 それで法的な脳死判定にしようとするときに警察への。
○宮本参考人 はい、そうです。
○新美班長 そうすると、ある意味で脳死判定をしようとする場合の警察への連絡とか、異状死の届出をする場合には、基本的にはもう虐待防止の観点からは外れていると、むしろ犯罪防止だろうと思うのですが。
○丸山班員 3つ目の○の第1パラグラフはいらないのではないかなと思うのです。児相への通告というのは。
○新美班長 だからその場合と、ずうっと経緯があって、それで虐待を疑われていて通告をしているという場合もありますね。
○丸山班員 ええ、あります。それは児童虐待防止の問題ではないかなと思うのです。
○新美班長 その通告をしたあと、例えば脳死とか心臓死になってしまった場合に、それは移植から外れるかどうかという議論をしておかなければいけない。
○丸山班員 それならば第2パラグラフで済むのではないかなというふうに。
○新美班長 第2パラグラフで済むというのは、要するにまだ捜査段階で、虐待があるかないかわからないけれども、児相と警察へ通知したあと死亡した、返事がまだこないというときに移植から外すのか外さないのかという議論をしておく必要がある。
○丸山班員 それはもちろんそうですが、繰り返しで恐縮なのですが、児相は必ずしも。
○新美班長 通す必要はない。
○丸山班員 3つ目の○の第1パラグラフはいらないのではないかということです。
○新美班長 これはそういう意味で1番目の○のところからいくと。
○丸山班員 児童相談所への通告が、必ず必要かのように読めてしまうので。
○町野班員 おそらく事務局が苦労をされたのは、児童相談所への通報を1回かまさないと、その手続に乗らないと現場がかなりきつい話になるのではないか、ということだったのではないですか。そうでもないのですか。
○辺見室長 たぶんいまの丸山先生のご懸念からいうと、警察に連絡をして臓器移植を控えるという方針でもう動いているのだから、あえて更に児相に連絡をする必要はないのではないかと、こういうご趣旨でしょうか。
○丸山班員 警察関与で十分対応できるのではないかと。
○辺見室長 そこはあまり私の立場で言う必要もないのかもしれませんが、病院に来た段階で児童虐待の疑いがあると思った人は、虐待防止法上の通告の義務があるのかどうかという話がたぶんありまして、その条文の解釈からすると、通告の義務がありますという話になるのだと思うのですが、それをここで言う必要はないではないかというご趣旨ですね。いずれにしてもその場合、児相に連絡をしてもしなくても臓器移植に向けての動きはもう止まっているという前提ですね。
○丸山班員 止められるというか。
○辺見室長 止められるという前提ですね。
○丸山班員 医療機関で止まるか、警察の関与で決まるか。児相が関与しなくても止まるものは止められるのではないか。
○辺見室長 ある意味ガイドライン上書く立場からすれば、児相への通告義務を果たしてもらうかもらわないかがいちばん大事ではなくて、臓器移植に進むか進まないかが大事ですので、丸山先生がおっしゃるような整理は可能かと思いますが、いずれにしても通告義務はあると考えれば、結局やはり言っているのではないかという気もしますので、あまりそこで使い分けをする必要がないような気はいたしますが。
○水野班員 いま丸山先生がおっしゃったのは、医者が止めるか警察が止めるかということをおっしゃったわけですが、医者だけで止める、これが虐待かもしれないというので児相にも行かなければ警察にも行かずその場でやめる、ということを認められるわけですか。
○丸山班員 移植をしようと思えば、摘出しようとするならば、必ず警察には行かざるを得ない。いまはそのようなシステムになっていますので。
○水野班員 摘出をせずにということなのですが、そうすると、摘出もせず警察にも届出ずという形になるという選択肢が、いちばん増えてしまいませんか。これは虐待死かもしれないな、そうすると、これは移植をすると危ないかもしれないからやめよう、それをいちばん恐れているのですが。
○宮本参考人 私たちもそれをいちばん恐れている。だから確実なものにしておこうかと。
○水野班員 だから異状死届出をするか、臓器提供をするかの二択にしたいと申し上げているのはそれなのです。
○丸山班員 児相を関与させることで得られるメリットというのは。
○水野班員 事務局がお考えいただいたのは、医者だけが判断して移植をやめてしまうというのではなしに、おそらく三択ぐらいにして実際の移植をするか、警察へ届け出るか、児相とずうっと関与があるかという、その3つぐらいに増やそうとお考えいただいたのかなと想像をしているのですが、児相とずうっと関与するという選択肢が、一方では本当に幅広く網をかけて児相へ通報して、虐待をスクリーニングしてくださいという、今後そちらの方向にいってもらいたいという動きがありますから、それとリンクしてしまいますと、三択ではなくて自分でやめてしまうかわりに児相に通告をしてやめるという、そちらがたくさん増えるだけになりはしないかという気がするのです。
○辺見室長 いまの児相に通告をして移植をやめるのか、移植をやらないことにして児相に通告をしないことにするのかというのは、想定上の話としてはあまり差があるようには思えないですが、丸山先生のご質問の、児相に通告をするメリットがどうかという点でこれが整理されているのではなくて、むしろ虐待の疑いがある児童かどうかということに対してのスクリーニングというのは、虐待防止の観点からちゃんとやらなければいけならない。
 これはある仕組みを導入したときに、あまりいい加減に投網を掛けるような形でやりますと、それはやはり信頼性が失われますので、おそらく医療機関におけるスクリーニングも投網を掛けるような形よりも、しっかりと合理的な考え方に基づいてやられているのではないかというふうに想像しますが、いずれにしてもそうした形で虐待の疑いがあるかないかを分けるという仕組みがあると。
 問題はその仕組みをそのまま使うのか、別の仕組みを作るのかということで、児相に通告することにメリットを感じているわけではなくて、そういう前者の場合に児相に通告するという仕組みになっているというところですね。それは医療機関において疑いがあるかどうかをスクリーニングすることが前提になっていますので、その効果として通告するかどうかを必ずしも求めているわけではなくて、そこの判断にとっかかりを設けているわけです。ただ、通告をする場合はそのあとの調査がありますので、その後、ほかの機関の目で見て、更に調査が行われて事態が変わるというのは、当然、通告をすればあり得るということになります。
○町野班員 要するにメリットがあるのではないですか。
○辺見室長 どちらにとってのどういうメリットかはちょっと。
○町野班員 もし何の関係もないのであれば、書く必要は全然ないですね、丸山先生の言われるように。
○丸山班員 関係ないとは言わないけれども。
○町野班員 児童虐待の防止ということだけでやらなければいけないのは、これ明らかなので、それだけ考えればここに書くか書かないかは無関係な話なのですね。私は好意的といいますか、そう理解をしたのだけれども、これをやるのは、現場の判断が医師だけで進んでしまっていいのだろうかということがあるので、何か1つ検証のシステムみたいなのを、これ児相の助けを借りながらやったらどうだろうかと。
○辺見室長 おっしゃるとおりです。
○町野班員 私は基本的な枠組みはそれでいいのではないかと思います。ただ、書き方が山本先生や皆さんが非常に危惧されるようなことがあるので。
○山本班員 やはり児童虐待防止ということと、虐待児について臓器移植をしないかどうかは別問題ですよね。そこをきちんと、虐待児童について臓器移植をしないというのは、やはり水野先生が言われたように、証拠隠滅しかないのだろうと思うのです。証拠隠滅と同意権の剥奪という理屈しかないだろうと。そこはやはりきちんと分けなければいけないのであって、そうだとすると、丸山先生はその趣旨だと思うのですね。これは児童虐待の防止の問題であって、それは臓器移植の問題ではないということを明らかにするために、これはやめろというご趣旨だと思うのです。私もそれに賛成なのです。
○町野班員 もっと前から言ってくださいよ。
○山本班員 ですからそうだとすると、証拠隠滅の恐れをなくすのだということであれば、やはり異状死体ということで限定せざるを得ないというのは理屈であると。それをガイドラインに書くのは我々の役目だと。
○町野班員 おそらくそれほど変なことにはならないというのが私のあれなのですが、その中で、先ほど言いましたとおり、異状死体だけに、それは合理性がありますよ。それだったらあえてここのところに条文を作る必要はないわけですよ。これが書かれたというのは、やはりそうではないという考え方でできているので、それに賛成するかどうかは別だけれども、これはやはり尊重せざるを得ないということだろうと私は思います。
○山本班員 尊重するとものすごく広がるわけですね。
○町野班員 それが広がらないようにということですよね。だから尊重はするのだけれども、その尊重の仕方というのは異状死体だけではなくて、とにかく虐待を受けて死亡した子どもからは臓器の摘出はしないと。理屈はいろいろあるだろうけれども、とにかくしませんよということがあって、そのために作られている条文ですから、虐待死を見逃してはいけないと。これは異状死体の届出が怠られてはいけないのとは、また別のレベルで考えられている問題だということだろうと思うのです。そうなってくると、そういうものとして運用できるようにしなければいけないという話になって、その判断はいずれにせよ、異状死体については、かなり明確に判断できるわけです。おそらくそんなに間違えることはない話だろうと思うのです。ときどきあるみたいですけれども。
○山本班員 その方が医療現場にもいい。
○町野班員 それはいいのだけれども、それ以外のことまでいま求められているわけでしょう。疑いを除くような体制を作れということですから、そうすると、そのようなものとしてどうやったらいいだろうかという話になって、それで医師だけでこれ判断してもらっていいものだろうかなということで、それで苦労があるというところだろうと思います。
○新美班長 いかがでしょうか。要するにここで確認するための手段ですね。虐待であるかどうかを確認するための措置が何であるかということを、どう構築するかということだと思うのですが、原案ではとりあえずは虐待診療というものの中で確認をしていくのだという提案があるわけですが、それ以外で何かいい方法があるかということだと思うのです。
○宮本参考人 現実的なことを考えますと、通常の虐待診療の枠組みを使わざるを得ないのではないかと思うのですね。脳死判定、臓器移植のための虐待のシステムをまた作るというのは、どう考えても負担が大きいですし、それと、私も先ほど異状死体であれば警察、21条だしと。現場の医師が、特に虐待をやっている医者がいちばん心配する、どうしても一抹の不安は、それでも見逃すだろうと。異状死体と判断できたら話は簡単で、異状死体と判断できるかどうかのところに、グレーがあるというところの不安があるのだと、ご理解いただければいいのではないか。何を言いたかったかというと、実際にはいろいろな所見や状況から総合的に判断することが、実際には行われるだろうと思います。
○新美班長 要するにここでは、グレーな部分が結局、虐待診療を通じて確認されるということを意味しているということですかね。いかがでしょうか。結局、このまとめの仕方では、非常に多義的であって、ガイドラインになりきるかどうかというのは、少し疑問の余地もないわけではないのですが、もともとが多義的な、まさに意味の持ち込みがいろいろある条文ですので、それをクリアカットに書ききれるかどうか。唯一というか、その中で丸山班員から3つ目の○の前段を取ってしまったらどうかという提案があったわけですが、それはいかがでしょうか。
○丸山班員 今日まとめる予定なのですか。
○新美班長 いまのところは合意があるならばまとめようという話です。
○丸山班員 それなら、まずいまの問題を片付けるのでしょうかね。下から2つ目の○の「こうしたことから」のあとの「移植医療に従事する者は」というのは、レシピエント側の医療者をイメージされかねないので、ドナー側ということで、「当該患者の診療に従事する者は」に改められたら、その辺り明確になるのではないかと思います。
○水野班員 3番目の○の全体が私はよくわからないのです。○の前半を取ってしまうと、「医療機関の判断としては、診療を行った後、何らかの形で虐待を受けた児童である疑いが否定される事由が生じない限り、当該患者から」というのは、これはものすごく広くなってしまいます。ほとんど駄目になってしまうのではないかと思うのですが。前半を取ると、真っ白でないと駄目だという文章になってしまいますね。前半があるので、児相へ虐待の疑いをもって通知をした児童については、疑いが晴れないかぎりは控えようという文脈になりますが、前半を取ると真っ白な子でないと全部やめようになってしまうというように。
○町野班員 前半を取るなら、全部医師がこれを判断しなければいけないので、かなりきつい書き方になりますよね。真っ白と書くともうこれは本当に。我々も虐待している可能性は、それは誰も胸に手を当てると必ずあるわけですから。
○水野班員 それも一緒に臓器移植はやめましょうという結論になりますね。
○町野班員 虐待診療というのは、最初からではないこともあるかもしれないけど、全体を通じてのあれですよね。虐待診療というのが登場するのは、つまり通報等があって、児相のほうに通知がいって、そこから虐待診療のプロセスが始まったり、あるいは警察に通報がいったり、そういう話ですよね。
○辺見室長 はい。
○町野班員 だから、これをやってから次に通報をするという話ではなくて、その前にやるのは参考資料1で点線で囲まれた対応策の所で、そのSCANという委員会がこれを一応SCANした上でやるという話ですよね。そして、疑いがあると判断したときについては、児相とかそういうところに通報にいきますと。その過程で虐待診療だとかそういうことが出てくる。そういうあれですよね。
○辺見室長 そうですね。広義ではそのスクリーニングしている時点から虐待診療かと。
○町野班員 これは院内の体制ですから、もちろんそこで話を聞くこともあるかもしれませんが、分かりました。要するに全体的なものですね。
○新美班長 だいぶ時間も過ぎておりますが、いかがでしょうか。虐待についてはいま具体的な案としては、下から2番目の○のところで、ドナー側の者であるということをはっきりしたらという提案がありましたが、それ以外はいかがでしょうか。いまの○の3つ目については削ったらどうかという意見と、残したらどうかという意見が出ていますが。
○町野班員 今日おまとめになる。
○新美班長 いや、まとまらなければ予備日を入れます。
○町野班員 この前のところの知的障害者等についても、まだちょっと積み残しがありますから、今日やるのはかなりきついという話です。
○新美班長 もう1回やっても着地点が見えていないから、たぶん無理だろうと思いますけどね。
○町野班員 私は見えたような感じが実はしておりまして。
○新美班長 いかがでしょうか。では、もう1回設けるということでよろしければ、そのようにしたいと思いますが。予備日をとっておいたところでもう1回。移植委員会が4月5日ですから、それまでにということなので、次回の予定を立てていただいて、もう1回ということにいたしましょう。
 今日の議論はこれぐらいにさせていただきたいと思いますが、基本的にはいまの虐待の問題と、知的障害者の問題を少し町野先生が積み残しがあるということですから、それを次回に絞って、それ以外の論点は格別の意見がなければ今日ご議論いただいたことでまとめることにしたいと思います。今日の議論については事務局で整理をしていただいて、次回に再度ご議論をいただくことにしたいと思います。事務局から日程等についてご連絡があればよろしくお願いいたします。
○長岡補佐 本日は長時間にわたりご議論いただきましてありがとうございました。次回、開催ということでございますが、来週開催するということで、最終的な日程はご連絡を差し上げますので、申し訳ないのですが、来週もう1回お時間を空けていただければと思います。そこで、本日いただいたご議論も踏まえまして、少し今日の資料を手直しをした上で、再度議論ということにしたいと思いますので、よろしくお願いいたします。本日はどうもありがとうございました。
○新美班長 遅くまでご苦労さまでした。また来週ということでお願いいたします。 


(了)
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代表 : 03(5253)1111
内線 : 2366 ・ 2365

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