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2010年4月28日 第34回厚生科学審議会疾病対策部会臓器移植委員会議事録

健康局疾病対策課臓器移植対策室

○日時

平成22年4月28日(水)
17:00~


○場所

厚生労働省 省議室


○議題

(1) 省令及びガイドライン(案)について
(2) その他

○議事

○長岡補佐 ただいまより、第34回厚生科学審議会疾病対策部会臓器移植委員会を開催いたします。本日は、相川厚委員、木下茂委員、白倉委員、町野委員、山勢委員から欠席のご連絡をいただいておりますが、定足数を満たす11名のご出席を賜っていますことをご報告いたします。
 次に、資料の確認をさせていただきます。議事次第に沿って確認いたします。
 本日の資料1-1「臓器の移植に関する法律施行規則」一部改正(案)の概要は、1枚の資料です。次に資料1-2「臓器の移植に関する法律施行規則」一部改正(案)新旧対照表は、9頁まであります。続きまして、資料2-1「臓器の移植に関する法律の運用に関する指針(ガイドライン)」一部改正(案)のポイント(概要)は、2頁の資料です。次に資料2-2「臓器の移植に関する法律の運用に関する指針(ガイドライン)」一部改正(案)新旧対照表は、12頁あります。資料3「「臓器提供意思表示カードの様式見直し(案)」の意見募集について」に対して寄せられたご意見等について(案)が3頁あります。
 参考資料1は、前回の臓器移植委員会に提出した資料ですが、「臓器の移植に関する法律の運用に関する指針(ガイドライン)」一部改正(案)新旧対照表は、11頁あります。参考資料2、ガイドラインにおける「臨床的に脳死と判断した場合」の規定については、3頁あります。最後が参考資料3で、臓器提供意思表示カードの様式の見直し(案)で、1枚の紙です。
 以上が本日配布の資料ですので、ご確認いただきたく思います。不備等がありましたら、事務局までお伝えくださいますようお願いいたします。また、机の上に、いつものように紙ファイルを2種類用意しています。1つは現行の法令・ガイドライン等をまとめたもので白いテープが貼ってあります。もう1つは、第31・32回の委員会で研究班や作業班よりご報告をいただいた資料を綴じたものです。これは黄色いテープを貼っている紙ファイルです。この2種類については、議論の際に参考ということで置いていますので、ご活用いただきたいと思います。なお、この資料は次回以降も使用しますので、会議終了後は持ち帰らずに机の上に置いていってください。よろしくお願いいたします。
 それでは資料に問題がないようでしたら、議事進行につきましては永井委員長にお願いいたします。ここで報道のカメラの方はご退出ください。では、よろしくお願いします。
○永井委員長 前回の委員会は、本年7月の改正法施行に必要な省令・ガイドラインの改正案についてご議論をいただきました。本日は、前回に続きまして、7月の改正法施行に向けた省令・ガイドラインの改正案についてご議論をお願いいたします。では早速、議事に入りたいと思います。
 初めの議題は、3月の当委員会でご議論いただきました「臓器提供意思表示カード」の様式見直しに関してです。今回、パブリックコメントの結果がまとまったということですので、事務局より報告をお願いいたします。
○辺見室長 資料3と参考資料3に従って、臓器提供意思表示カードの様式見直しについてご報告を申し上げます。参考資料3、1枚紙ですが、「臓器提供意思表示カードの様式見直し(案)」という記載があります。現行意思表示カードが中段にありますが、これを新しいカード、下の(案)に改正するということです。いくつかポイントがありますが、選択肢を脳死後及び心臓が停止した死後の提供というものと、心臓が停止した死後に限るという選択肢に分けるといったことですとか、親族優先提供を考慮して特記欄を設けるといったような改正を行ったものです。これにつきまして3月8日の本委員会でお諮りし、その結果を受けて、3月23日から4月21日まで、パブリックコメントということで意見募集を行ったところです。
 資料3は、横長の資料です。パブリックコメントの結果、19件のご意見・ご提案等をいただきました。こちらの資料は、適宜集約して12件ほどにまとめていますが、ひとつひとつ読み上げるのは差し控えさせていただきます。例えば1つ目は、カードを所持していなければ、提供しないという意思があるのであろうから、「提供しない」という項目は不要ではないかといったこと。今後、提供できる臓器が増えた場合を考えれば、提供する臓器を特定するような欄は不要ではないかといったご意見が、それぞれ1、2件ずつありました。また、3番目の心停止後に提供できる臓器と脳死後に提供できる臓器の違いについて、誤解が生じるのではないかといったことですとか、4番目の家族署名は任意であることについて説明が必要ではないかというご指摘については、基本的にはカードと併せて配布しますリーフレットにしっかりと説明を書いていきたいと考えています。
 いずれにしても、このカードに伴う問題の1点は、併せて配布するパンフレットについては、普及啓発に関する作業班で、また、カードが配られますとどうしても誤記載の問題が出てきますので、その場合の取扱いについては、意思表示に関する作業班で、それぞれご議論いただきたいと考えております。差し支えなければ事務局としては、カードの様式につきましては、パブリックコメントにかけましたカードの案で進めさせていただけないかと考えています。以上です。
○永井委員長 ありがとうございます。それでは、ただいまのご報告に何かご質問・ご意見ございますでしょうか。
○奥山委員 すみません、いま1つ気づいたのですが、これが運転免許証とか健康保険証に書かれるときは、この天使側のほうはなくなるのですか。この左側の文章だけになるのでしょうか。つまり、ちょっと気になったのは、この問い合わせ先が消えるとまずいなと思ったので。
○辺見室長 今回、パブリックコメントをかけましたこのカードは、このカードとしてのパブリックコメントです。運転免許証や保険証について、裏面にどういった記載をするのかということで、それぞれパブリックコメントが行われていますが、基本的にはこちら側の表面のほうの情報は、ちょっと掲載が難しいと思っています。ただ、おっしゃられるように、問い合わせ先といったことは重要な情報ですので、免許証であれば免許センターを通じて、保険証の関係であれば保険者との協力も得ながら、パンフレット等をお配りしなければいけないと考えています。そういった中で、必要な情報の伝達に努めていきたいと考えています。パンフレットの中にしっかり書いていただくということです。
○永井委員長 よろしいでしょうか。ほかにございませんでしょうか。
○山本委員 細かいことで申し訳ありませんが、リーフレット、あるいはパンフレットという言葉の使い方を何か統一したほうがいいのではないかと思いますが、何か意思があって2つ書いてあるのか。もう1つは、リーフレットと一緒に意思表示カードをお渡しするという、そのリーフレットはもうできているのか、どうなっているのか。その辺のところを2つ質問させていただきます。
○辺見室長 用語の統一については検討させていただきます。パンフレットの案自体ですが、先ほどご説明させていただきましたように、良いパンフレットができるように普及啓発に関する作業班で、再度ご議論をいただきながら進んでいきたいと考えています。
○山本委員 まだできていないということですね。
○辺見室長 現時点ではまだできていません。
○相川(直)委員 細かいことですが、いま山本委員がおっしゃったように、資料3ではリーフレットという言葉が使われていて、参考資料ではパンフレットという言葉が使われて、これは同一のものですか。
○辺見室長 同一のものでございます。ですので、用語の統一は図るようにしたいと思います。
○相川(直)委員 では、資料3のリーフレットがいまの説明のパンフレットということでよろしいわけですね。
○永井委員長 いかがでしょうか。パンフレットのほうがいいですか。
○相川(直)委員 どちらでもいいのですが、しっかり同じ言葉で言っていただかないと、別のものがあると思ってしまいますので。
○永井委員長 よろしいでしょうか。特段ご意見ございませんでしたら、当委員会としては現在の案で了承ということで、今後は、発行主体の厚生労働省、及び(社)臓器移植ネットワークで進めていただくということにしたいと思います。新しいカードと配布するパンフレットの内容、新しいカードへの記載不備の取扱い、これらにつきましては、それぞれ関係する作業班でご検討いただくということにしたいと思います。よろしいでしょうか。
                (各委員了承)
 はい、ありがとうございます。では、事務局より、各作業班の班長の方々にその旨をお伝えいただきたいと思います。
次の議題にまいります。7月の改正法施行に向けた省令・ガイドラインの改正案について、ご審議をお願いいたします。はじめに省令の改正案についてご審議をお願いいたします。事務局より、前回の案から修正した点を中心に、資料の説明をお願いします。
○辺見室長 それでは、資料1-1、及び1-2をご覧ください。資料1-1を中心にご説明しますが、修正しました点は2点です。1点目、1.の下にあります枠囲いの中、「年齢による除外」の右側、改正後の「生後12週間」とされていたところを「生後12週」と「間」を取るということに改めます。
 2点目は「体温による除外」のところです。現行、直腸温32度「以下」の者とされているところを、前回の委員会でご指摘を受け、直腸温32度「未満」の者という表現に改めたいと思います。なお、前回の委員会において、直腸温の表現について改めるべきではないかというご意見もありました。前回、冒頭で申し上げたとおりですが、深部温とした場合の定義の問題もありますので、法令上の用語としては「直腸温」という用語を維持させていただきたいと思います。ただ、現行においても、省令上「直腸温」と書いてありますが、運用上、他の膀胱温や食道温といった深部温での測定についても可能という取扱いをしていますので、その取扱いについては引き続き維持したいと考えています。本資料の説明は以上です。
○永井委員長 ありがとうございます。ご意見・ご発言ございましたらお願いいたします。よろしいでしょうか。ただいまご説明がありました省令の改正案につきましては、「生後12週間」の「間」を削除したということ、それから、直腸温32度「以下」を「未満」にしたということ、「直腸温」という表現は変更しないということ、そういう点ですね。もしご意見ございませんでしたら、今後事務局において、パブリックコメントを行っていただくということにさせていただきたいと思います。
                (各委員了承)
 はい、ありがとうございます。続いて、ガイドラインの改訂・改正案につきましてご審議をお願いいたします。事務局より、前回の案から修正した点を中心に資料の説明をお願いします。
○辺見室長 資料2-1でポイントの概要がありますけれども、変更点を中心にご説明させていただきたいと思います。資料2-2、これが前回から改めましたガイドラインの新旧の対照表です。こちらと、後のほうの参考資料1、こちらが前回の委員会に提出しましたガイドラインの新旧ですので、申し訳ありませんが、資料2-2と参考資料1を照らし合わせながらご説明を進めさせていただきます。
 まず、資料2-2の1頁目、第1に関する部分ですが、2段落目、「臓器を提供する意思がないこと又は法に基づく脳死判定に従う意思がないことの表示については」という段落の最後のところです。拒否の意思表示がある場合に、年齢に関わらず、臓器提供及び脳死判定を行わないということです。その拒否の意思表示について、以前の案では、臓器提供も拒否、脳死判定も拒否という場合を、「これらの意思表示」ということでまとめていましたが、まとめた結果、分かりづらくなっているということでしたので、現在の案のように、「年齢に関わらず、臓器提供をする意思がないことを表示した者からの臓器摘出及び脳死判定に従う意思がないことを表示した者に対する法に基づく脳死判定は行わない」と、それぞれ分けて書くようにしました。
 次の点ですが、その下の「知的障害者等」で始まる段落です。こちらの一番最後の行の「当面」とした後に、脳死判定及び臓器摘出は見合わせるとありますが、結論的には、1つで意味を表しているということで、「臓器摘出は見合わせること」と修正をしています。
 次は、3頁の虐待の関係です。前回ご説明させていただきましたように、警察庁や法務省との調整の関係がありまして、他省庁の名前が出てくる部分については、記載を控えたペンディングの形で資料を提出させていただきました。その後の協議状況を踏まえ、こちらに追加記載をしています。
 1つ目は、4頁の臓器提供を行うために体制を取っている医療機関に、一般的に取っていただきたい対応の流れです。医療機関において、虐待が行われていた疑いがあると判断した場合の対応です。前回の資料の中では、虐待防止法に基づいて児童相談所等に通告すると書いていたのですが、前頁から続く2の(2)、下から2行目、「警察署へ連絡するなど関係機関と連携し」ということで、この時点で警察に連絡することも含めて書かせていただいています。
 次は、2の(3)に該当する、4頁の半分より少し上、「なお、その後」で始まるところですが、これは前回の案にはありませんでした。委員会でのご議論の中で、奥山先生から医学的理由により否定された場合の対応についてご指摘がありました。それを踏まえて、医学的理由により否定された場合に、その旨を関係機関に連絡した上で、虐待対応の継続の要否について検討するということをこちらに記載させていただきました。
 その次の3の(3)、前回の規定においては、ペンディングという字が書いてあります。「虐待が行われていた疑いがある児童が死亡した場合には、臓器の摘出は行わないこと」の後に「P」と書いてあった場合です。一定の場合に、摘出が行われる場合があり得るということで「P」と書いてありました。1つは、医学的理由によって否定された場合の対応については、先ほどお話したように、2の(3)に明記させていただきましたので、後のほうで書く必要がなくなっています。また、意思表示作業班で指摘されていました、因果関係が否定された場合について、移植の可能性をとのことでしたが、実際に医療機関で、因果関係を確認することは現実的には困難であることも考慮して、ここは格別に但書はせずということでこのまま記載しています。
 その下の(4)ですが、倫理委員会等で児童への虐待が行われた疑いがないということで臓器摘出は可能であると判断した場合であっても、検視等の手続が行われることになりますので、捜査機関との連携を十分に図ることと記載させていただきました。虐待の関係で修正させていただいたところは以上です。
 5頁の上のほうですが、患者の家族等に説明する流れの中で、臨床的に脳死と判断した場合、とありますが、こちらについては、別の資料で改めてご説明させていただきたいと思います。第6以降の基本的なことについては、手順に関して、法律的に臓器摘出の要件が追加されたことにより、記載が増えてきたことを踏まえ、例えば、1は「主治医等」という小見出しをつけて主治医等が行うことを整理し、次の6頁は、2「コーディネーター」という小見出しをつけて、コーディネーターが行うことを整理しました。そのほかは、法律上の要件が変わったことに伴う記載の修正です。
 7頁、8頁はあまり変更はありません。
 9頁の上のほうの段は第8の、鼓膜損傷がある場合の取扱いについてです。前々回に、「小児脳死判定及び臓器提供に関する調査研究」のご報告をいただきましたが、こちらに準拠することにより、鼓膜損傷がある場合においても、判定が可能という旨を記載しています。また、9頁の下のほう、(4)の「判定医」ですが、小児科医を加えるということです。後は、省令変更や法律の改正により、所要の変更を加えているということです。
 戻りまして、第6の上段で説明を飛ばしました、「臨床的に脳死と判断した場合」です。参考資料2をご覧ください。1頁目は、前回の委員会で提出した資料と同じです。端的に申しますと、現行のガイドライン第5にこうした規定が置かれています。この流れは、主治医等がご家族に説明を行うタイミングを示している標準的な手順の一番最初の段階です。そのきっかけは、「臨床的に脳死と判断した場合」という記載があり、またその場合を説明する括弧書きの中で「自発呼吸の消失を除く」という言葉です。これについて、まずは「臨床的に脳死と判断した場合」という法的脳死や臨床的脳死と言われている表現上の問題が1つ。もう1つは、そのような脳死の場合に「自発呼吸の消失を除く」と書かれていることによって、自発的呼吸が消失していなくても、脳死と判断されるのではないかという誤解を生じさせる点。この2点の問題があることをご説明させていただきました。
 2頁目、前回のご意見等も踏まえ、【改正案】として、この案を考えさせていただきました。先ほど飛ばしました資料に書いてあるものも、こちらと同じ書きぶりです。臨床的に脳死と判断した場合というのも改めまして、「主治医等が」の後ですが、「患者の状態について、法に規定する脳死判定を行ったとしたならば、脳死とされうる状態にあると判断した場合」としました。また、自発呼吸の消失を除くとされていたところについては、まず第1に、脳死と判断する際には、前提条件を満たしていることが必要だということで、旧来の規定ですと、資料の3頁の施行規則第2条第1項を引用しまして、下のほうの第2号、一、二、三、四が確認された場合で、五番は除きますという書き方をされています。これを前提条件であります2条の1項、上段のほうが確認されて、かつ下のほうの一、二、三、四が確認された場合という書き方に改めます。
 これによって自発呼吸はどうなるかというと、2条の第1項の下線部分に「自発呼吸を消失した状態」ということが書いてあります。要は、深昏睡、自発呼吸の消失、また原疾患の確定診断が前提条件になるのですが、この中に自発呼吸の消失が入っているということです。これにつきましては、資料2頁の細則で、前提条件としての自発呼吸の消失について説明を書きたいと思っています。細則の3行目以降で、「その場合の『自発呼吸の消失した状態』とは、中枢性呼吸障害により臨床的に無呼吸と判断され、人工呼吸を必要としている状態にあることをいい、必ずしも、法律に基づき脳死と判定する際に実施する無呼吸テストを行う必要はない」ということです。これは、以前竹内基準の補遺ということで出されたものの中に解説として載っていることです。その考え方を踏まえて細則としてご提示させていただきたいということです。
 以上、ガイドラインの改正につきまして前回の資料から改めた点をご説明させていただきました。よろしくお願いします。
○永井委員長 それではガイドラインの記載順にご審議いただけますでしょうか。資料2-2をご覧になりながらご意見・ご質問をお願いいたします。1頁目の第1「臓器提供に係る意思表示等に関する事項」は、少し噛み砕いて文章を作っていただきましたけれどもいかがでしょうか。よろしいでしょうか。第3についてはいかがでしょうか。これもよろしいでしょうか。第4は、日本小児総合医療施設協議会の会員施設が明記されています。
 3頁の第5、「虐待を受けた児童への対応に関する事項」については、ご意見ございませんでしょうか。2(1)、及び(3)に「虐待対応」という言葉があるのですが、大体意味は通じるのでしょうか。(3)では「虐待対応の継続」という言葉が出てきますが、これはよろしいのですか。もう少し細かく書かなくていいのかどうか。事務局はいかがでしょうか。これはもうある程度概念がはっきりした言葉なのでしょうか。
○辺見室長 実は、他のところで概念規定があるという話ではないのですが、全体の流れの中で、虐待対応のための院内体制を取っておくことを基準として設け、その虐待対応のための院内体制を前提として設けておりますので、同じ言葉をその後も使っています。噛み砕いて言うと、虐待児への虐待に関する必要な対応ということになるのだと思うのですが、この表現からすると、「虐待児に対しての」というのがどうしても言葉上必要になりますので、「虐待児に対しての虐待防止に対する対応」などと、長く書くのも冗長かと考えますので、こういった言葉で記載させていただいています。
○相川(直)委員 「虐待児」ではなく「被虐待児」に統一したらいかがでしょうか。書く、書かないは別としまして、この委員会の中での発言でも、前の資料でも虐待児という言葉と被虐待児という言葉が2つ使われていましたが、これも被虐待児のほうがよろしいと思いますが、いかがでしょうか。
○辺見室長 おっしゃるとおりです。表現が適切ではなく申し訳ございません。ガイドライン上は、虐待を受けた児童のことで略称はしておりませんが、被虐待児であるという趣旨で書いております。
○大久保委員 私はわからないのですが、4頁の3の(3)で、「虐待が行われた疑いがある児童が死亡した場合には、臓器の摘出は行わないこと」といいますのは、これはどこまでかかる言葉なのですか。私はよく理解できません。その前に2の(3)で、「なお、その後、医学的理由により当該児童について虐待が行われたと疑いが否定された場合」と。要するに死因なのか、それとも全体なのか、私にはよくわからないです。その辺は、どのように解釈したらいいですか。
○辺見室長 表現としましては、これは虐待が行われていた疑いがある児童が、というのがその死亡の主語ですので、死因との関連性を特定しているわけではなくて、虐待が行われていた疑いのある児童ということで、概念を一旦確定して、その児童が死亡した場合には、とのことで記載させていただいたところです。
○大久保委員 もともとの法律の文章に載っている虐待のところが非常に曖昧なので、おそらくこのような表現になっていると思います。虐待といいますと非常に範囲が広いので、それを全部含んだ形での虐待全般なのか、1年前、2年前に虐待にあった児童は全部駄目と解釈するのか。どこまでを考えているのか。もともと法律自体が非常に曖昧な書き方をしているので、私もどう取ればいいのかはよくわからないのです。おそらく、現場の方達がその辺の難しい判断をするためには、ある程度こちらのほうでもう少し書き込まないと。全部これを提供施設なり、もしくはネットワーク、コーディネーターに任せるのはどうなのかという気はしますが。
○永井委員長 いかがでしょうか。
○貫井委員 確かに大久保委員が言われた3は問題だと思います。現場で非常に混乱する。確かに新美先生の案が、ここで報告されたときには、虐待が死亡の原因に密接な関係がある場合に、とおっしゃったのです。資料がないので確認しようがないのです。過去に遡って虐待があったか、なかったか。これは、施行規則、あるいはガイドラインでなくてももう少し細かい、はっきりとしたものを入れてもらわないと現場は動けません。
 もう1つは、大久保委員が指摘されました2の(3)も、果たして警察に通報したあと、警察の情報が得られるのかどうか。医療機関が虐待はないと判断したとしましても、それ以外の捜査で何か出てきたときに非常に困る。これも曖昧なのです。医療機関としましては行動のしようがない。対応の継続について検討することと書いてありますが、どうしたらいいのか。現実には、大変困るのではないかと私も思います。この辺は、更に詳しい追加説明なり、何かをするのかどうか。このまま出されると現場は大変です。これは一度、班会議でも過去の虐待はどう考えるのか意見が出ていまして、新美先生の班の報告を聞いて、そのようにしっかり限定するのはよかったなと思っていましたが、これですと、全くどうしようもないのではないでしょうか。
○奥山委員 過去か現在かだけでは、因果関係も特定できないと思います。例えば、性虐待を受けていた、この1年はなかったけれども、それが原因で自殺したとなれば、これは因果関係はありますから。過去だからいいというわけにはいかなくなってしまうと思います。非常にそこのところが難しいので、どういう考え方かを決めないかぎり。例えば、本当に直接的な因果関係があるものだけを取るのだといいのですが、先ほどおっしゃったように、附則に書かれているのは、虐待を受けた子供から臓器の摘出がないようにと。たぶん子供の人権を考えた場合には、子供の権利として、やはり自分たちの人権侵害が行われてきたのが虐待ですから、そういうことがあったのだということがわかることなしに死んでいくことが、非常に人権侵害として、また当てはまるのではないかが1つ考えられること。もう1つは、やはり虐待をしている、虐待をしているのを防げなかった親が承諾をするということに対しての倫理的な問題点と。その辺のところで考える以外はないのではないかと思います。これは私の意見です。
○貫井委員 それはわかりますが、現場の人たちにわかるように、今のようにしてもらわないと動けない。それは代諾権の問題とかいろいろあって、たぶん新美班でやっていると思いますが。こういう文面だけで出されると大変です。判断ができない。虐待に関して、色々な考え方があるのは班会議を通じて知りましたが、それを公表して、ある一定の基準を示していただかないと現場は大変です。迷ったら専門家に相談するという道は当然あるわけですが、その辺は、このままで出してしまうのかを心配しています。
○大久保委員 私もよくわからない。児童は何歳までを言うのですか。
○貫井委員 虐待に関しては18歳。
○大久保委員 18歳となると、いままでは15歳以上ですが、17、18歳の人間が自分が臓器を提供したいと書いていたらどうするのですか。意思表示をしていたらどうしますか。
○辺見室長 いくつか質問がありますので、分けて解答させていただきたいと思います。児童が何歳までかは、18歳未満です。これは前回も示したとおりです。
 意思表示をしていた場合にどのようになるのかは、意思表示班においても議論がされたところです。附則5項において、虐待を受けた児童が死亡した場合に、臓器摘出は行わないようにという規定があることからすれば、それは、臓器摘出を行わないことを優先することでやむを得ないのではないかとのことです。
 もう1つ、この条文がわかりにくいかどうかという話では、条文につきましては、こちらの白いテープのほうの審議会作業班参考資料の4のところに、法律の新旧対照表がついていますので、そちらをご欄ください。附則ですので、いちばん最後の4頁になります。(検討)附則5項として、「政府は、虐待を受けた児童が死亡した場合に当該児童から臓器が提供されることのないよう、移植医療に係る業務に従事する者がその業務に係る児童について虐待が行われた疑いがあるかどうかを確認し、及び疑いがある場合に適切に対応するための方策に関し検討を加え、その結果に基づいて必要な措置を講ずるものとする」と書いているところです。
 因果関係の話につきましては、この虐待を受けた児童が死亡した場合というものを、どのように解するのかということで、先ほど貫井先生のほうから話がありました。資料は、別途お配りしております紙ファイルの黄色いテープのほうで、1番が、意思表示班の新美先生からご報告いただきました資料です。
 目次の次の1頁目は(概要)です。貫井先生がご指摘された1つは、いちばん下の四角の中で「虐待を受けた児童への対応について」ということで、附則5項の「児童虐待の防止ではなく、証拠隠滅を防ぐこと等であり、また、その求めるところは、虐待が児童の死亡に深く関与していた場合に、臓器提供の対象としないことと思料」と書いております。右側のまとめのところでは、「虐待が児童の死亡に関与していた疑いや虐待を受けた疑いそれ自体が否定された場合には、臓器提供は可能」と書いてあるところです。「深く関与していた場合」というのは、右側のほうでは、「それ自体が否定された場合」という書き方になっています。
 次の報告書の中に出てまいりますが、実際の意思表示班での議論の中で、医療機関において、因果関係の程度というものについて、実際にこれを判定することは難しいであろうけれども、確実に否定されることはあり得るのではないかとのことで、右側の結論に導かれているところです。概念上、確実に否定される場合があり得るとして、逆に医療機関は本当に否定できるのかという話が1つあります。また、実際に警察等が捜査を始めているような状況であるとするならば、そういった状況下において、なおさらのこと、医療機関で因果関係が否定されることで、移植すると判断をするのが妥当なのかという問題があります。そうしたことを踏まえまして、現在の書きぶりにしているところです。
 現在の書きぶりの意味について、資料2-2の4頁、3の(3)、「虐待が行われていた疑いがある児童が死亡した場合には」というのは、全体の流れからして、院内体制において医療機関が、虐待が行われていた疑いがあると疑った児童のことです。これは先ほどの条文に照らしますと、「移植医療に係る業務に従事する者がその業務に係る児童について虐待が行われた疑いがあるかどうかを確認し」と書いてありますので、基本的には、医療機関において虐待があるかどうかを確認することが法律の要請であると考えております。
 一方で、貫井先生のご指摘のとおり、警察等が別途情報を把握している可能性というのはあり得るわけです。これは、被虐待児に対して、関係機関の連携ということで解決していくべき問題であると認識しております。したがって、実施に移すまでにあと数カ月ございますので、可能な範囲でどこまで協力できるか、さらに捜査に関することですので、難しいところはありますが、協力可能であれば、より具体的な捜査当局といいますか、警察等との連携につきまして、通知等で示したいと考えているところです。以上でございます。
○永井委員長 いかがでしょうか。
○大島委員 私が理解できないのかどうか。要するに、虐待が疑われるというか、何らかの形で年齢は関係なく疑われた場合は全部やらないということですか。
○辺見室長 おっしゃるとおりです。
○大島委員 要するに、体に傷があって、その傷がいまから5年前、6年前の傷であり、それがあったから、おそらく虐待されたのだろうと疑って、いまそれは全く問題がなかったとしても、その死因自体が関係のない交通事故であってもやらないということですか。
○辺見室長 虐待と疑われる場合には、移植を行わないとのことで記載させていただきました。
○奥山委員 それに関しては、それを因果関係というのは非常に難しいと思います。虐待を受けていたために、飛び出すような行動の問題が出てしまって、交通事故が起きた可能性もなくはない。
○大島委員 それはわかります。だから、小さい子供のときに虐待をされていて、虐待の傷が体に残っていている子供が16、17歳になって、何らかの交通事故で死んだときに因果関係があるとか、ないとか言えるのかどうかが問題なのです。それでもそれを含めて小さいときに虐待を受けていたら、その子供が15歳であろうが16歳であろうが、17歳までは児童ですから、その人たちも絶対やらないということなのか。それを全部徹底させるのかということです。
○辺見室長 まず、全体の流れとして、傷があるような状態において、医療機関が虐待があるかどうかを疑うという状況はあるのだと思います。それが死因と関係があるかどうかということについて、誰がどういう判断を行うのかということがございますが、死因究明等につきまして別途制度があり、確定されるような状況があるのであれば格別ですが、現行下におきまして、一方で捜査等が進む中で、医療機関がこれは確かに因果関係が切れると言い切れるのかどうかということが論点かと思います。引っ繰り返して言いますと、切れることでなければ、虐待が疑われるものにつきましては、移植は控えるというのが結論であると考えているところです。
○相川(直)委員 いまのところ、私は(3)の書きぶりで、かなりうまくカバーをしているのではないかと思います。その理由は行われていた疑い、行われていた、という意図というのは、やはり臓器移植をするか否かの状態に続いていると。過去において、虐待が行われ、その虐待に関しては既に完了している。例えば、18歳の人が3歳のときに虐待され、また両親も変わってしまってと、いろいろな状況があったとします。その人が電車に乗っていて、電車自体の事故が起こったと。自分から飛び出したのではなくて。そのようなことに関しては臓器の摘出は行ってもいいように読み取れる。これが行われていたというところが、そこの妙味なのではないかなと。行われたではなく、行われていたという。行われていたことがその時点においても関連すると。英語でいいますと、現在完了形みたいな表現なのかなと私は考えるので、この文章自体はそれほど悪くないし、他の書きぶりがあるとすれば、どのように書くのかということなのです。
○山本委員 3の(3)が、3番目にあるというところが、何か気になるところです。それは、行われていたというところは、昔というのがあるかもしれませんが、死因との因果関係が否定されているのは、いいのだということを常に考えるのならば、この(3)をいちばん先にもっていって。そして、いまの(2)はこれが大前提であって、2番目に虐待防止委員会がここに入ってきて、最終的には倫理委員会が入ってくるという流れがあってもいいのではないのかなと私は思いますが、いかがですか。
 もう1つは、(3)を前に持っていくことと、倫理委員会と虐待防止委員会が2つあることに、意味があるように私は思いながら読んでおりましたが、いかがでしょうか。最初は虐待防止委員会がやると。最終的には倫理委員会が出てくると。そうではないのでしょうか。
○永井委員長 いまの点いかがでしょうか。
○辺見室長 虐待防止委員会と倫理委員会に至る流れにつきましては、山本先生のご指摘のとおりです。基本的には、この虐待が行われていた疑いに関してというのは、同じ頁でいきますと、その上の(2)のところに同じような表現があり、虐待が行われていた疑いのある場合の対応というのも書いてあります。流れ的には、虐待防止委員会等の仕組みの中で、虐待が行われていた疑いのある児童、これはまだ治療中というか、ご存命の状態です。そういった場合の対応を(2)のところに書いて、そういった児童が治療を行っていたけれども、非常に重篤な状態に陥ってしまったという場合が(3)です。そういう意味では、(3)のどこかのところにこれを書くとのことですが、順番的には、(1)は家族に告げるという最初の段階をいい、その後が(2)と(3)になっているのですが、順番については、すぐ良い案が浮かばないので、考えてみたいと思います。
○永井委員長 先ほどの相川委員のご指摘の、虐待が行われていたというところは、実は記載の仕方がいくつかあります。第5の事項の2行目、これは虐待を受けた児童がです。4行目から5行目にかけては、虐待が行われた疑い。第5の2の(1)では、虐待が行われた疑い、(2)では虐待が行われていた疑い。3の(3)は虐待が行われていたのを疑う。完了形と過去形が一緒になっていて、これをどう考えるかですね。
○貫井委員 虐待の問題は、非常に大変な問題だと思っておりまして、班会議でも一応被虐待児を臓器移植から除外するマニュアルを作って、この間、班員の山田先生に報告していただいたわけです。そういうマニュアルの中に、過去の虐待、「した」というのは過去形ですから、いま奥山先生が児童の人権とかいろいろなお話をされましたが、その辺の考え方を具体的にマニュアルというか、現場の人たちに示すような何かを作っていただく、文言の某というよりも表している意味がはっきりしないです。
 ですから、具体的にこういうマニュアル的なものをこれからさらに検討して、しっかりと作る計画があるのかどうか。作ってもらわないと大変だと私は思うのですが。この間作ったマニュアルもまだ完全ではありませんし、過去の虐待に関することでは、ちょっとまだ不足だろうという意見もあったものですから、その辺をお聞きしておいたほうがいいのかなと思いました。
○奥山委員 おそらくおっしゃるとおり、ここに全部いろいろな場合を組み込むのは非常に難しいのではないかと思うのです。ですから、それを何らかの形で、別にいろいろ検討して示していく以外にないのではないかと思うのです。それを言ってしまったら、一番はじめの知的障害もそうなります。現場としては、例えば仮死で生まれて、そのままだんだん弱くなって脳死に至ったら、これは障害児なのかどうかというのは、かなり質問も出ています。ひとつひとつの事例で、本当にこれはどうなのだろうとみんなが迷う部分は、どの部分にもいっぱいあるので、特に知的障害のところと虐待のところは、今後実際の事例での「Q&A」を整備していかないと無理なのではないかと思います。
○永井委員長 ただ、基本的には過去に虐待を受けた場合は、因果関係があろうとなかろうと、臓器摘出の対象となるのかならないのか、これについてご意見いただけますか。
○奥山委員 因果関係ということだけに特定すれば、過去であっても因果関係のある場合はあると思うのです。
○永井委員長 死亡と因果関係のない場合です。
○奥山委員 死亡との因果関係がないと言えるかどうかということですか。言える場合があるかどうかですか。
○永井委員長 いやいや、その因果関係がはっきりしない場合でも、脳死の対象とならないということでいいのかどうかです。
○奥山委員 因果関係がはっきりしないということはわからないということですよね。ということは、因果関係があったかもしれないということですよね。
○相川(直)委員 いまの点について、因果関係がないと言えるかどうかというお話ですが、私が先ほど出した例ですが、電車に乗っていて、その電車が脱線事故を起こしたと。これは明らかに過去の虐待、あるいは現在の虐待が電車の脱線事故に影響したとは思えませんから、明らかに否定できることもあり得ると私は思います。
○奥山委員 ただ、それは、本当に附則の趣旨と合うのかどうかと思うのです。つまり、虐待を受けた子どもが、たまたま事故で亡くなったから、虐待を受けたということに対しての検討がなされないままになってしまうということは、人権の問題としても大きいと思いますし、それに対して虐待をしていた親が、子どもの代弁をする、代諾をするということもやはり問題があるのではないかと思います。
○相川(直)委員 おっしゃることはよくわかります。代諾のこと、人権のこと。でも、因果関係が否定できることがあるかないかについて私は言っただけでして、先生はポイントをさらに広げておっしゃっている。まず私は、虐待を受けた子どもが、虐待によって死亡したのではないと言い切れる場合がないという立場で先生がおっしゃったので、そうでない事例も救急の現場などではよく体験することだということを言ったわけです。人権、並びに親の承諾に関しては、また別のマターだと。ですから、虐待によって死亡したことが、否定できないことがあるかないかということについて私は言ったまでです。その後で、人権とか親による承諾については、また別のマターで言ったらどうですか。
○奥山委員 虐待との因果関係がわかるかわからないかということ。
○相川(直)委員 「虐待による死亡の因果関係が否定できるものはない」というようなご発言だったので、私はそれに対して、「虐待によって死亡したという因果関係が否定できる例はある」ということを言ったまでであって、人権とかは別のことです。
○奥山委員 すみません、私は例がないとは言っていないので、それがわからない場合はどうなのかというご質問だったので、わからない場合はその因果関係がないとは言えないということになるのではないかというふうに答えたということです。
○相川(直)委員 私は違うふうに聞きましたが、結構です。
○大久保委員 因果関係があるかないか、両方あると思うのですが、因果関係がなかったとしても、虐待の人は一切やらないのか。因果関係が全くなくて否定されたときにはしてもいいのか。その文言だけはきちんと決めないといけないということだと思うのです。
○永井委員長 その点はいかがでしょうか。
○山本委員 これは文章が、非常に簡単に言えば簡単になるのに、難しく言っているから何だかわからなくなってしまうので、因果関係が否定されれば移植はやりますと、そういうようにポンと言っても、事務局案としては問題ないのではないかと思いますが、いかがですか。
○辺見室長 奥山先生がおっしゃられている話を、私なりに若干整理して申し上げると、因果関係の話が1つと、現に虐待が行われている子どもが、相川先生がおっしゃったような電車で亡くなった場合と、大久保先生がおっしゃったようなその虐待が過去で、それで電車で亡くなったような場合とかいろいろあり得るのだと思うのです。その過去の虐待が現在まで続いていたかどうかというのは、これは電車で亡くなってしまうと、現在虐待が行われていたかどうかというのは、非常に判断が難しいというところであるかと思います。
 一方において、虐待を受けた児童が死亡した場合にというのがこの条文の書き方で、まず、このガイドラインでどう書くかという以前の問題として、この条文がどうかという問題があります。どういった場合を除くのかということについて、法律の解釈の寄辺は何かということですが、結局、立法時の議論、国会における議論ということになりますが、実はここのところについては、正確な議論が残っているわけではなくて、こういう場合を除きます、因果関係については切れた場合は除きますということが明確に議論されているわけではありません。
 したがって、奥山先生がおっしゃるように、虐待を受けている児童が死亡した場合というのがあり得るわけで、そういった場合も含めてより慎重に運用するという趣旨も現在のガイドラインの書きぶりには書いて、趣旨としては含まれるということです。
○相川(直)委員 いまのはわかりました。そうすると、結局、先ほど山本委員もおっしゃったのですが、どのような日本語の書き方をしても、いろいろ迷う事例が出てきます。それで、先ほど奥山委員がおっしゃったように、例えば「Q&A」のようなもので、非常に起こり得るような具体的なもの、このような場合には臓器提供、移植をしていいのですかとか、そのときにさらに説明を加えるような、具体的な例からさらに少し波及した例でも、説明によって解釈ができると。それを「Q&A」などで補完するというような方法もあるのかなと。やはり1つの文章で書くと、解釈も人によって違います。行われていたというのも、私は現在完了形と解釈したのですが、人によっては現在完了形ではないというふうに解釈することもありますので、その辺のところは奥山委員のおっしゃった「Q&A」というような方策もあるのではないかと思っています。
○永井委員長 しかし、その「Q&A」はいつ決める必要がありますか。なるべく早い時期に決めないと、施行に当たって混乱が起こります。
○辺見室長 ちょっと、ご回答漏れになっているところですが、前回お示しさせていただきましたように、このガイドラインとは別途、通知を出す必要があると考えております。その中には、貫井先生の研究班でご検討いただきましたチェックリストですとか、基本的にはどういった場合に移植が可能かという前提として、どういった場合に虐待が疑われるのかということになると思いますので、そういったチェックリストですとか、小児科学会でもマニュアル的なものを出しておりますので、そういったものを参考に作ってほしいというのが、まず1つです。
 それともう1つ、虐待をどういう場合に探知するのかということが、まずこの場合のポイントだと思います。そのような観点から、新しい知見があれば、それに基づいて見直しをしてほしいということと、何に基づいて作ったのかということは、常に参照できるような形にしておいてほしい。こういったような通知は、最低でも出したいと思っております。そのうえで、必要な事項があれば、それに対して対応していくことになるかと思います。
○松原委員 単純な質問ですが、いたとか行われたというのは、私たちの感覚でも過去形になるので、いるとか行われているというようにしてはいけないのですか。
○辺見室長 ちょっと表現がぶれていたところは大変申し訳ありませんが、我々は戻るとしたならば、法律に戻るというのが原則になってしまうと思います。そういう点からいくと、先ほどご説明させていただきました附則の第5項の書きぶりについては、「移植に従事する者が」の後なのですが、「虐待が行われた疑いがあるかどうかを確認し」と書いてありますので、この条文に沿って虐待が行われた疑いがあるかどうかを確認するという書き方にしていくのが、法律に沿った書き方だと思っております。
○永井委員長 そのときに、それは過去形、もしくは過去完了形ということになるわけですね。過去完了もそれは対象になるという理解になりますね。
○相川(直)委員 それは確かに現在とつながっていなくても、先ほど奥山委員がおっしゃったように、過去に虐待が行われて、虐待行為は終了していたけれども、心理的なトラウマとか何とかで道路に飛び出して事故に遭ったというようなことに関しては、時間的な経過は色々なケースがあると思います。
○永井委員長 ということでよろしいでしょうか。いずれにしても「Q&A」は必要だということで、それはまた事務局と相談してご用意させていただきます。ほかの点はいかがでしょうか。
 第6では、前回話題になり、議論されました臨床的脳死という問題ですが、これはいかがでしょうか。臨床的脳死というものがあるわけではないのです。脳死は1つなのです。臨床的に判断したというところにかかるわけで、臨床的な脳死と判断したわけではないということですね。この辺の書きぶりを、今回は主治医等が患者の状態について、法に規定する脳死判定を行ったとしたならば、脳死と判定され得る状態にあると判断した場合と。かなり噛み砕いて、脳死というものは1つであって、判断する状況を述べたという書きぶりになっています。いかがでしょうか。これで少し明解になったでしょうか。
 そのほか、第6のコーディネーターの件、この辺りはいかがでしょうか。よろしいでしょうか。第7は削除になっています。第8で脳幹反射消失の確認のうち、鼓膜損傷がある症例における前庭反射の確認については年齢に関わらずというところですが、たしか鼓膜損傷があっても、これは判定できるとしたわけですね。ここが今回の改定になっています。
 それから判定医に麻酔・蘇生科・集中治療医、又は小児科医と少し書きぶりに変更があります。
○相川(直)委員 これは山本委員のご意見を聞きたいのですが、現行を作った時点では、救急に関して医療法の改正前で、救急科という診療科名がなかったわけですね。その後、救急科という診療科名が認められました。そうすると、ここは救急医という言葉のほうがいいのか、それとも何となく響きはまだよくないのですが、救急科医という言葉のほうがいいのか。つまり、これは診療科の標榜名に沿って、ここに科を入れたほうがいいのかどうかということですが、標榜科が変わりましたのでどうでしょうか。実態はどちらがよく表すかということですが。
○山本委員 救急科医というのは何となく言いにくいですよね。
○相川(直)委員 私もそう思うのです。何となく言いづらいし、何となくまだまだですが。
○山本委員 まだ浸透していないですものね。
○相川(直)委員 救急科専門医という言葉もできているのですよね。
○山本委員 ええ、そのほうがいいです。
○相川(直)委員 ですけれども、ここでは専門医という言葉を使っていませんので、この時点ではそれぞれの診療科名が書かれているので、救急科という診療科が正式になった時点でも、このまま今回はいいかと、私もそう思うのですが、ここで一応確認しておいたほうがいいかと思います。
○永井委員長 よろしいでしょうか。第7、第8は前回修文の時間が取れませんでしたので、改めてご議論をお願いしたいと思います。第7は、旧のガイドラインが削除ということで、その前に新たに6が第7になっているわけですね。「角膜及び腎臓移植の取扱いに関する事項」が削除になっているのは、別個にガイドラインがあるからということですね。
○長岡補佐 第7については、今回の改正法の中で、角膜及び腎臓の移植の取扱いに関する附則の規定が削除されております。その関係で、省令についても、相当する部分を今回削除しますし、ガイドラインについても削除とさせていただいています。これは、臓器摘出の要件が、実は角膜と腎臓は一部異なっていたのですが、今回の改正でその他の臓器と同じ要件に改正になりましたので、角膜と腎臓の特則の部分を維持する必要がなくなったということで、法律で削除されています。それに伴うものなので、今回、ガイドラインについても削除ということになっています。
○永井委員長 ということですので、よろしゅうございましょうか。9頁の第8、鼓膜損傷のある症例についての記載はいかがでしょうか。もし、ご異議・ご意見がございませんでしたら、ただいまご意見をいただいた分について、事務局で文言を修正いたしまして、また、最終的な文言については座長預かりとさせていただいて修正のうえ、パブリックコメントを行うことにしたいと思います。ありがとうございました。
○貫井委員 先ほどした細則は、また全然別な場所に出るのですか。無呼吸テストに関する説明があって、こういう説明はいいと思うのですが、読むほうは第6の下に解説として書いてあると非常に読みやすいのです。規則、ガイドライン、細則と分けて、これは第6のところには、第1項から1号から4号までの項目のいずれも確認された場合と、今度は全く自発呼吸にはここに触れていないですね。細則はきちんとできていますから、そちらを見ろと分けて書く。
○辺見室長 通知の様式としては別ですが、お配りしている白テープのファイルの参考資料3に、ガイドラインを示しています。こちらの2頁を見ていただきますと、親族優先の関係で細則を作ったところが書き込んであります。通知は別なのですが、こういった細則をここに入れ込んで見やすいバージョンを作りまして、皆様のお手元に届くようにするものには、こういった見やすいバージョンでお配りするようにしたいと考えております。
○永井委員長 もしご意見がございませんでしたら、本日予定した議題はすべて終了です。
○宮坂委員 先ほど救急科の話があったのですが、麻酔は、日本麻酔科医学会なのです。ですから正式な診療科を入れておいたほうがいいのかなと。救急は、正式な診療科名を救急科医とは言わないのですよね、言うのですか。
○相川(直)委員 要するに診療科というか、標榜科ですね、標榜できる診療科としては救急科というのが認められたのです。
○宮坂委員 だから救急科医というように。
○相川(直)委員 ですけれども、それに「医」を付けると、いまはあまり言われていない、例えば小児科ならば小児科医、あるいは婦人科ならば婦人科医ということは一般的に言われているわけですが。
○宮坂委員 麻酔科は麻酔科医になったのです。学会の名前も科を入れたのです。
○相川(直)委員 麻酔科医ね。
○宮坂委員 科を入れておいたほうがいいかもしれないですね。
○相川(直)委員 ですから、私も救急科という診療科ができて、1年この方、そろそろ救急科医という言葉があり得るとすればね。救急科がない時代には、救急医という表現で言ったのですが。
○宮坂委員 法律ですから。
○相川(直)委員 ここでは救急科医という言葉もあり得るのではないかと思って、提言したわけです。ただ、まだまだそのようには実際には呼ばれていないということで、これは今回の趣旨とはあまり直接は関係することではないですし、また、それぞれの診療部門の医師の表現をここで定義するということも、なかなか難しいのではないかと思いますので。
○宮坂委員 後で学会が書いてありますので、あまり関係ないですよね。
○相川(直)委員 とは思っていますが、ただ私も聞いてみただけです。私自身としては現行のままの表現でも、今回の改正ではいいと思っております。
○永井委員長 よろしいでしょうか。奥山委員どうぞ。
○奥山委員 「その他」ということで1つ。ガイドラインとか執行省令とかを検討してきているわけですが、先ほど出ましたように、虐待もすごく判断に困りますし、実は小児科では子どもの領域で、知的障害も非常に判断に困るということもあります。そのところをきちんと検討する体制。もう1つ、特に子どもの場合、親御さんのショックも非常に大きいものがありますので、初期からどのようにお話するかということが、非常にグリーフケアにも関係してきますし、国会でもグリーフケアのことをきちんとやるようにと、たしか答弁がなされていたと思うので、そこのところもある程度、現場がわかりやすいような指針みたいなものが出されたほうがよろしいのではないかと思っています。その他、いろいろ検証をきちんとやるとか、その辺のところを今後は是非検討していただきたいと思います。
○大島委員 いま移植の臓器提供との関連の議論になっているから、非常に深刻な話になっていますが、救急一般について言えることであります。ここで議論する必要がないなどということはもちろん言いませんが、救急のすべてのところでいま先生がおっしゃられたようなことが関わってくる話ですから、その部分でもっと広く議論をされるべきではないでしょうか。
○永井委員長 事務局、何か提案はありますか。
○辺見室長 両先生のご指摘はそれぞれごもっともですし、重く受け止めないといけないと思います。虐待もそうですし、グリーフケアといいますか、看取りの関係もそうですが、臓器移植ということで、いま問題がこの場に上がっているところです。もともと、それ以外の場合も含めて考えていかなければ、特に看取りのような問題というのは、頭から臓器移植ということではないはずですので、そういったようなことも含めて考えていかなければいけないと思っています。
 そういった点からすると、私どもは虐待についても然りですが、関係部局とよく連携を取って、そのような状況にも目を凝らしながら、一方で臓器の中では確実に何らかの対応をとっていかなければいけない話です。十分に検討し、またご指導をいただきながら進めていきたいと考えております。
○永井委員長 よろしいでしょうか。特にご発言がございませんでしたら、本日の議題はすべて終了でございます。事務局より連絡をお願いいたします。
○長岡補佐 本日は活発なご議論をいただきまして、どうもありがとうございました。事務局より2点ご連絡がございます。まず、本日ご議論いただきました省令とガイドライン案についてですが、本日のご議論を踏まえまして、永井委員長とご相談しながら、文言の調整をして作成し、パブリックコメントを実施したいと考えております。当委員会には30日間のパブリックコメント終了後にその結果を踏まえた最終的な案をご確認をいただきたく考えておりますので、引き続きよろしくお願いいたします。
 次に、本日ご欠席ですが、相川厚委員より、前回委員会におけるご発言の中で、誤解を招く恐れのある表現があったために、議事録において正確を期すための修正を行いたいというご依頼がありました。
 議事録については毎回そうですが、公表前に各委員にご確認や事実関係等についての訂正をお願いしているところですが、その際に修正をいただきたいと考えておりますので、ご承知おきをいただければと思います。
 次回の開催ですが、各委員の日程を調整させていただきまして、決まり次第、文書にてご連絡を差し上げます。お忙しいところ恐縮ですが、日程の確保をどうぞよろしくお願い申し上げます。
○永井委員長 それでは、これで終了させていただきます。ありがとうございました。


(了)
<照会先>

厚生労働省健康局疾病対策課臓器移植対策室
代表 : 03(5253)1111
内線 : 2366 ・ 2365

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