ホーム> 政策について> 審議会・研究会等> 医政局が実施する検討会等> 死因究明に資する死亡時画像診断の活用に関する検討会> 第1回死因究明に資する死亡時画像診断の活用に関する検討会議事録




2010年6月15日 第1回死因究明に資する死亡時画像診断の活用に関する検討会議事録

医政局総務課医療安全推進室

○日時

平成22年6月15日(火)


○場所

省議室


○出席者

検討会メンバー(五十音順)

相田典子 (神奈川県立こども医療センター放射線部長)
池田典昭 (九州大学大学院医学研究院法医学分野教授)
今井裕 (東海大学教授)
今村聡 (日本医師会常任理事)
北村善明 (日本放射線技師会理事)
隈本邦彦 (江戸川大学メディアコミュニケーション学部教授)
塩谷清司 (筑波メディカルセンター病院放射線科科長)
菅野健太郎 (自治医科大学消化器内科教授)
長谷川匡 (札幌医科大学教授)
宮崎耕治 (佐賀大学医学部附属病院長)
門田守人 (日本医学会副会長)
山本正二 (Ai学会理事長)
和田仁孝 (早稲田大学法務研究科教授)

オブザーバー

警察庁刑事局捜査第一課
文部科学省高等教育局医学教育課
日本医療安全調査機構

厚生労働省

足立信也 (厚生労働大臣政務官)
阿曽沼慎司 (医政局長)
岩渕豊 (医政局総務課長)
杉野剛 (医政局医事課長)
塚原太郎 (大臣官房総務課参事官(医療安全担当))
渡辺真俊 (医政局総務課医療安全推進室長)
石川義浩 (医政局医事課課長補佐)

○議題

1 死因究明に資する死亡時画像診断の活用に関する検討会の設置について
2 医療機関等における死亡時画像診断の現状等について
3 当面の進め方について

○配布資料

資料1死因究明に資する死亡時画像診断の活用に関する検討会開催要綱
資料2診療行為に関連した死亡の調査分析モデル事業 これまでの総括と今後に向けての提言(抜粋)
資料3異状死の死因究明に資する死亡時画像診断の活用に関する厚生労働省の取組について
資料4Autopsy imaging:死後画像診断の現状と問題点(塩見先生提出資料)
資料5Aiの現状について(山本先生提出資料)

○議事

○医療安全推進室長(渡辺) 定刻になりましたので、ただ今から「第1回死因究明に資する死亡時画像診断の活用に関する検討会」を開催いたします。進行役を務めさせていただきます厚生労働省医政局総務課医療安全推進室長の渡辺です。本日お集まりの皆様方におかれましては、ご多用の折り、当検討会にご出席いただき誠にありがとうございます。
 それでは、議事に入ります前に、私から当検討会のメンバーの皆様のご紹介をさせていただきます。神奈川県立こども医療センター放射線部長の相田先生、九州大学大学院医学研究院法医学分野教授の池田先生、東海大学医学部基礎診療学系画像診断学教授の今井先生、日本医師会常任理事の今村先生、日本放射線技師会理事の北村先生、江戸川大学メディアコミュニケーション学部教授の隈本先生、筑波メディカルセンター病院放射線科科長の塩谷先生、自治医科大学消化器内科教授の菅野先生、札幌医科大学附属病院病理部教授の長谷川先生、佐賀大学医学部附属病院院長の宮?ア先生、日本医学会副会長の門田先生、早稲田大学大学院法務研究科教授の和田先生、Ai学会理事長の山本先生です。それと本日はご欠席との連絡をいただいておりますが、弁護士の木ノ元直樹先生にも委員をお引き受けいただいておりますことを申し添えさせていただきます。また、入口付近ですが、オブザーバーといたしまして警察庁刑事局捜査第一課、そして文部科学省高等教育局医学教育課、日本医療安全調査機構からご出席をいただいておりますことを申し添えさせていただきます。
 厚生労働省からの出席者の紹介です。厚生労働大臣政務官の足立です。医政局長の阿曽沼です。医政局総務課長の岩渕です。医政局医事課長の杉野です。大臣官房総務課参事官(医療安全担当)の塚原です。医政局医事課長補佐の石川です。最後に、私は医政局総務課医療安全推進室長の渡辺でございます。
 それでは、厚生労働大臣政務官の足立信也よりご挨拶を申し上げます。よろしくお願いいたします。

○足立政務官 改めまして、おはようございます。たぶん、皆さん、傍聴の方も含めて睡眠不足だと思いますが、ワールドカップで日本以外で初めて日本チームが勝利したということで、それはまずおめでたいことだと思います。本日は、明日を会期末という中で、何としてもこの検討会は、この会期中に立ち上げて検討すべきだという方向性の中で急遽ご参集いただきました。お忙しい中だと思いますが、本当にありがとうございます。
 いま、2つの大きな流れがあるのだと思います。これは、数年来ですが、診療関連死においても、またそれ以外、異状死体、いわゆる非自然死体、この死亡の原因は何なのかということに対して、広く多くの国民の方々に亡くなった原因が何であるということを納得していただけるシステムがどうしても必要だという動きは、皆さん間違いなく共有されていることだと思います。そのような中で、死因究明ということがございますが、私はそうではなくて死亡原因診断だとそのように思っております。私も、外科医でしたが、以前は、急性腹症の場合でもお腹を開ければわかるのではないかということがございましたが、いまそういう行為をとる外科医はほとんどいないと思います。可能な限り、非侵襲的に診断をして、そして対処に臨むということだろうと思います。
 ということは、取りも直さず亡くなった原因が何であるのかということは、さまざまな手段で原因を確実に確度を上げることが必要である。そして、またそれを望んでいると私は思います。その中で、いま全国でAiセンター、Autopsy imagingセンター等が立ち上がっておりますが、やはり、できるだけハードルの低い形で死因、死亡原因が診断できるのであれば、それに越したことはない。多くの納得も生まれますし、また、これを全国に広めることも昨今のIT技術、画像診断レベルから考えて可能なことだと私は思っております。ですから、この検討会は、いかに多くの国民の皆様が、亡くなった原因についてその納得度を高めることができるためには、この死亡時画像診断をどのように活用していくべきなのかということを検討していただきたいと思っております。
 何も、診療関連死だけではございません。より多くの非自然死体というものがこの国に存在するわけですから、皆さんが納得できるような、あるいは、中には犯罪が隠されているかもしれません。そのような死亡、死体に至ったときに、確実に確度の高い診断により一歩でも近づけるように、このAutopsy imagingというものの使い方、活用の仕方を是非とも検討していただきたい。そしてそれを、何よりも実施して利用できるように、その仕組みを構築、あるいは考えて提言をいただきたいと思っております。急な召集でしたし、また、8月末までの概算要求にある程度反映できるような議論も必要かと思いますので、短期集中的に開催される可能性が高いと思いますが、是非とも皆さんの英知を結集して、これは国民の納得のために資する検討会であっていただきたいと思います。どうか、よろしくお願いします。

○医療安全推進室長 ありがとうございました。続きまして、お手元の配付資料の確認をさせていただきたいと思います。議事次第、配付資料として資料1、資料2、資料3。資料4が、塩谷先生からの提出資料、資料5が山本先生からの提出資料ということになっております。以上ですが、資料の欠落等ございませんか。よろしゅうございましょうか。それでは、先に進めさせていただきます。現在、座長の席が空席になっておりますので、座長の候補者を事務局から提案させていただきたいと思いますが、いかがでしょうか。

(異議なし)

○医療安全推進室長 よろしいでしょうか。それでは提案をさせていただきたいと思います。当検討会の座長を日本医学会副会長の門田先生にお願いしたいと思いますが、いかがでしょうか。

(異議なし)

○医療安全推進室長 ありがとうございました。皆様方のご賛同をいただきましたので、門田先生に座長をお願いしたいと思います。大変恐縮ですが、座長席にお移りいただきたいと思います。
 ご挨拶のほうをよろしくお願いいたします。

○門田座長 ただいま選任していただきました門田でございます。ここでは日本医学会副会長ということになっていますが、私の所属は大阪大学でして、現在、理事・副学長ということで務めております。もともとは外科医でして、特に肝臓の外科、生体肝移植などでは、非常に画像には助けられました。今では血液の流れている臓器の画像に助けられたということではないかと思いますが、今回のテーマは、先ほどの足立政務官のお話を伺いましても、非常に重要なことをおっしゃっていただいたと感じております。と申しますのは、死、すなわち国内で発生している患者さんの死因、あるいは、異状死体についても、我々がなかなか理解ができないままに処理されていったことが改めて問題視されているということです。そして死因究明が進めば、延いてはそれより前の状況、すなわち我々に関係します治療という所を反省させられる材料が実はたくさんあるはずなのです。そして、医療まで、生きている所まで返してくるという意味においても非常に重要だと思います。ですから、先ほどもおっしゃられましたが、単に医療関連死だけではなくて、異状死を含め、いろいろな死、我々が行ってきた医療に基づく死ということも考えて、これを社会に還元するといった意味において、これが大きく利用できるように。また、どこまで利用できるか、どこまでそれを拡大できるか、逆に限界は何かという辺りを、是非、皆さんと一緒に考えさせていただきたいと思います。政務官がおっしゃいました8月末までに、概算要求の云々という、果たしてこれは時間的に足りるかどうか、ちょっと自信がないところですが、一言申し上げさせていただいて、できるだけご要望にお答えしたいと思って、皆さんと一緒に頑張ります。どうぞ、よろしくお願いいたします。
 ご挨拶させていただきましたが、私も生身の体でして、いつ何時どういうことが発生するかもわからないということから、副座長をどなたかにお願いしておく必要があるのではないかと思います。そこで、実は私のほうからご指名させていただきたいと思うのですが、今井先生にお願いしたいと思いますが、いかがでしょうか。

(異議なし)

○門田座長 それでは、今井先生、よろしくお願いいたします。

○医療安全推進室長 カメラ撮りのほうは、ここで終了させていただきたいと思います。では、以後の進行は、門田座長、どうぞよろしくお願いいたします。

○門田座長 それでは、議事に入りたいと思いますが、その前に、本日も傍聴席にたくさんの方がみえておられますが、基本的にこの検討会の内容につきましては、すべて公開で行い、議事録につきましても、厚生労働省のホームページで公表することとしたいと思いますので、この点につきましてご了解をお願いいたします。
 それでは、議事に入らせていただきます。議題(1)「死因究明に資する死亡時画像診断の活用に関する検討会の設置について」、事務局から説明をお願いします。

○医療安全推進室長 資料1について、ご説明させていただきます。趣旨の所、3行ほどございますが、本検討会におきましては、異状死や診療行為に関連した死亡の死因究明のために、死亡時画像診断を活用する方法等について、幅広く検討を行うこととする、というものです。検討課題につきましては3つほど挙げてございますが、これまでの死亡時画像診断に関する現状ですとか、科学的知見の整理。そして、このことにつきましての今後の取組方策。その他、死亡時診断に関すること、ということです。検討会の位置づけ等につきまして、大臣政務官が主催する検討会とし、その庶務は事務局にて行うとして、検討会のメンバーは、いまご紹介させていただきましたが別添にあるとおりです。以上でございます。

○門田座長 はい、ありがとうございました。何か、この点でご質問がございますか。よろしいですか。
 それでは、その次、議題(2)「医療機関等における死亡時画像診断の現状等について」ということです。まず厚生労働省の取組状況を事務局から、実際に死亡時画像診断を活用されている塩谷先生及び山本先生から問題点等のご説明をお願いするという予定です。
 まず、厚生労働省の取組状況を事務局からお願いしたいと思います。

○医療安全推進室長 資料2と資料3につきまして、簡潔にご説明させていただきたいと思います。資料2にございますが、こちらにつきましては、平成17年度から死因究明に「診療等に関連した死亡の調査分析モデル事業」というのを進めてございまして、5年経ったあとの総括をしたというものです。6年目からは、今日、オブザーバーでみえております日本医療安全調査機構に事務局となっていただき進めることになっております。内容につきましては詳しいご説明はいたしませんが、1頁から13頁まで、このような形で2年間の総括、取りまとめということで、こちらのモデル事業の運営委員会のほうから出されたということをみんなで確認いたしまして、今年度平成22年度以降につきましても新たに各種の方針を打ち出してやっていかなければいけないということと議論がされており、このAiにつきましても取り入れながら進んでいくということで、先先週開かれました運営委員会で大きな方針が確認されたところです。また、政務官のご指示もいただきまして、本日の検討会と本年度以降も進めることとしておりますモデル事業の運営委員会と有機的な連携をとって、情報の交換等を十分にしながら進めるという大きな枠組みのもとに進めることとしているものです。資料2の説明については、以上です。
 引き続き、資料3の説明も併せてさせていただきたいと思います。1枚紙ですが、「異状死の死因究明に資する死亡時画像診断の活用に関する厚生労働省の取組について」ということですが、医政局の医事課がメインで取り組んでいるものです。平成22年度の新規事業として、大きく2点ございます。1点目が、異状死死因究明支援事業、2点目が死亡時画像診断システム整備事業ということです。1点目については、監察医制度が運用されている地域以外で、異状死の死因究明のために、法医学教室との連携等により独自の解剖の取組を行っている自治体に対し、Aiを含めるのですが、解剖経費等の財政支援を行っていく経費を平成22年度予算において計上したというものです。基準額が1箇所あたり554万6,000円というものです。
 次に、2のシステム整備事業ですが、医政局で、大きめの施設・設備整備事業の枠がございます。そこのメニューの一つとして、死亡時画像診断の実施に必要な施設の新築、増改築及び改修に要する工事費又は工事請負費を追加するということになっています。このような2点の事業につきまして、平成22年度、新規で用意しているということです。
 以上、資料2と資料3について、若干ですが、Aiに関しまして厚生労働省で取り組んでいるところの事業についてご紹介をさせていただきました。資料2と資料3の説明については以上です。

○門田座長 はい、ありがとうございました。いろいろあるものを簡潔に説明していただきました。どなたか、ご質問はございませんか。これはいまの取組ということで、いずれAiを動かした場合に費用の問題が発生してくると思いますが、こういう形で前もって、厚労省サイドとして準備していますよということをおっしゃっていただいたということでよろしいのですか。

○医療安全推進室長 確認的に申し上げます。モデル事業においてAiをやって発生した経費については、モデル事業のほうから出すような大きな方法が確認されたというのが今年度の運営委員会です。また、資料3のペーパーでは、解剖経費等、Aiを含むものとして、Aiの設備整備につきましても、補助のメニューを用意しているというようなことで、座長がおっしゃられたように、厚労省のほうでも、若干ですが予算の枠は用意してあるというような状況です。

○門田座長 はい、わかりました。ほかの先生方、何かご質問ございませんか。よろしいですか。話が進んでいって、何かございましたらご発言いただくということで次に進みたいと思います。
 それでは、続きまして、先ほどの資料4につきまして、塩谷先生のほうから、ご説明よろしくお願いいたします。

○塩谷先生 筑波メディカルセンター放射線科の塩谷と申します。よろしくお願いします。30分ほどお付き合いください。「Autopsy imaging:-死亡画像診断の現状と問題点-」を述べさせていただきます。
 当院の紹介ですけれども、中規模病院であり、救命救急、地域がん、剖検センターを持っています。そして剖検センターでは、病理専門医と法医学専門医が病理解剖と行政解剖を施行しています。近々、司法解剖を施行する予定にしています。当院は1985年の筑波万博の年に開院しましたけれども、それ以降、死後CTを施行しています。
 現在のつくば市の様子です。関東平野の山と言えば、このように筑波山ぐらいしかありませんが、当院はここにあります。このようにヘリポート棟を持っておりまして、救急搬送を受け入れています。そして、茨城県の筑波剖検センターを持っています。
 当院における死後画像撮影の実施形態の一つ目です。救急外来の異状死、入院患者の突然死、警察依頼の検死に対する死因スクリーニング、フィルターリングに死後CTを施行する。こういった方は死亡直後に読影することが多くなっています。
 そしてもう一つですけれども、解剖の前にそのガイド、相補的役割を果たすために、死後のCTプラスMRIを施行しています。こういった対象は、亡くなって1日から3日経ったご遺体が多くなっています。
 死後画像診断の歴史ですが、いまから約100年前にレントゲン博士がX線を発見しました。そして、このような法医放射線医学の教科書がありますが、こういった本によりますと、X線が発見された3年後には既にご遺体のX線撮影がなされていたそうです。そして、ここ2、30年で死後画像撮影へのCT、MRIの応用が始まりました。例えばCTでこのようなことができるようになった。これを人体に応用しますと、このとおりです。最近では表面スキャンも組み合わせて、このようにペタッと貼ってしまうというようなこともできます。そして、西暦2000年ですが、欧米でVirtual Autopsy、日本でAutopsy imagingの概念が発表されました。
 これまでの死後画像診断のエビデンスですけれども、2000年以降、論文が多数出版されています。最近では2009年の『Radilogy』という雑誌に載った論文ですけれども、全身のCT、MRI、そして超音波下生検を組み合わせたMinimally Invasive Autopsyと呼ばれているものと通常のトラディショナルな解剖を比較したところ、高いセンシティビティーとスペスィフィシィティーを示したということです。
 日本発のエビデンスですが、欧米と日本では死因究明の状況が異なりますので、発信するエビデンスも異なると考えています。例えば2008年の12月、世界最大規模の北米放射線学会で、日本の救命救急病院の放射線科医が救急異状死の死後CTによるスクリーニングを発表したところ、効率がよく安価な方法として非常に注目されました。これがそのときの様子です。次から次に質問する方がいらっしゃって、休む暇がなかったということでした。
 欧米の死後画像の状況ですが、異状死の解剖率は概して高い中で行われています。アメリカやイギリスは50%以上あります。そして特定の法医学施設が死体専用機を使って、主に外因性、外傷性死を対象に解剖のガイド、相補的役割を果たさせるために死後画像を撮影しているという現状があります。
 その欧米の諸施設といいますのは、ここにも挙げた通りであります。例えばスイスのベルン大学法医学教室。これは2003年の北米放射線学会でのプレスリリースですが、「法医放射線学は仮想解剖を実現する」。この発表以降全世界に広まっていきました。
その中心人物が、ここにいますドクター・ターリです。ターリは、バートプシーというシステムを立ち上げて精力的に活動しています。
 2003年に発表したスライドを少し借りてまいりましたが、ピストルの玉がどこをどうやって通っていたかというようなCTとMRI像、そしてCTと解剖はよく対比できると。
 また、これは刺し傷ですが、解剖とMRIもよく対比できるというスライドです。
 最近ではこのように死後の血管造影も行っており、既にこのような『The VIRTOPSY APPROACH』という本を出版しています。これはアメリカのデラウエア州にあるドーバー空軍基地であります。日本における三沢、岩国基地と同じような基地ですが、わかりますでしょうか。

(PC中断)

○塩谷先生 申し訳ございませんでした。続きから発表します。これは、アメリカのデラウエア州にあるドーバー空軍基地です。日本における三沢、岩国基地と一緒なのですが、イラクやアフガニスタンで亡くなった兵士、年間約800人ほどいらっしゃるそうですが、アメリカに帰ってくるときには、必ずここに帰ってくるということです。そして、ここで必ず解剖されてから、家族に返される。なぜ解剖されるかというと、死んだ原因を知ることによって、効果的な防御方法を探るということです。
 そういった経緯が2009年のニューヨークタイムズ紙に掲載されておりますが、「戦死者の解剖は兵士を救う方法を表す」。2004年以降は、戦死者全員にCTが施行されているということです。ここで働いている、AFIP、ARMED FORCES INSTITUTE OF PATHOLOGYと言いますけれども、米軍の病理学研究所にいらっしゃいますハルケ大佐、これはカーネルサンダースと同じカーネルという称号を持った大佐ですけれども、71歳の法医放射線科の科長です。この方が、監察医を対象にして講義したスライドがあります。これを借りてまいりました。
 仮想解剖、画像診断と法医病理との融合、AFIPにおけるVirtual Autopsyは、実際の法医解剖に取って代わるわけではないと。ただ、重要な情報を解剖執刀医に与えることで、解剖の効率を上げるというように認識されています。実際、AFIPで使っておられる単純X線撮影装置、あとは16列のGE社製のヘリカルCT、こういったワークステーションを使って解析されています。通常の単純X線写真よりも、CTにおける3Dのほうがわかりやすいですし、異物の位置も、CTにおけるこのような水平断層のほうがわかりやすい。CTですと、このようにアーチファクトをひきますので単純X線も撮影しているということです。ここに記載してあります損傷、射創、鈍的損傷、熱傷、鋭器損傷、溺死といったものに関して非破壊的な損傷評価を行っています。
 この辺は少し流しますけれども、盲管射創、射創管に沿ってこのように金属片が入っていますが、CTで玉の経路がよくわかると。あとは、体内反跳、ピストルの玉がいろいろなところに跳ね返って、ここら辺に留まっている様子。
 あとは貫通射創ですとか、射出口は射入口よりも大きいとか、ピストルの玉が通った跡がCTでよく評価できます。
 これも同様です。あとは、こういったピストルの玉とかだけではなくて、交通事故のような鈍的外傷にもこういったCTが応用されておりまして、解剖よりもこういった骨の骨折や脱臼といったものは、CTのほうが評価しやすくなっています。
 これは鋭器損傷。
 飛ばしますけれども、体内の様子は解剖ですと刺し傷はわかりづらいですが、CTですと明瞭に示すことができるというものです。
 あとは、溺死。溺死は除外診断です。
 ここも少し飛ばします。副鼻腔内の液体貯留や気道内の水性肺気腫。これは砂です。胃の中の砂といったものもCTでわかると。Virtual Autopsy Limitationsといたしましては、これは限界のことですが、亡くなって数日経ちますと、腐敗が目立ってきます。死後変化が出てきますと、有意な病理学的変化となかなか区別しづらい。また、血管損傷の部位は示せない。臓器損傷の過小評価をしてしまうことがあるということです。実際、亡くなって何日か経ちますと、血管内にガスが出てきますし、これがより高度になりますとこのような状態になる。こうなってしまうと死因の評価ができません。将来的にCTだけではなく、MRIや血管造影にもやれば有用であろう。あとは、通常の監察医業務でも使用できる。入院患者の病理解剖前もやれば非常に有用であろう。解剖される場合には、その焦点を絞った低侵襲な解剖の役に立つということが言われています。彼らが実際にやっているDIGITAL AUTOPSYというものですが、これは画像診断を併用した解剖ということで、各専門家による共同作業になる。まず最初に、監察医が外表所見の情報を取得した後に、放射線技師が撮影して、放射線科医が読影。そのあとにまた監察医が最後に解剖して、すべての情報を統合するという方法を取っておられます。実際、ハルケ大佐が書かれたレポートですが、X線とCTの情報を基にして、どこどこの部位にこのような外傷があるというようなレポートを書かれます。
 オバマさんがまだ大統領になられる前の『Newsweek』日本版ですけれども、どぎつい写真の画像が載ったことがあります。内容は、千葉大のオートプシーイメージングセンターとオーストラリアのビクトリア州法医学研究所の紹介でした。ビクトリア州法医学研究所で行われていますコロナ制度というのは、世界でいちばん進んでいる制度と言われていますが、ビクトリア州は500万人いらっしゃいまして、ご遺体の取扱数が5,000件で、そのうち解剖が3,000件行われて、全件にCTをやっておられるということでした。このようなご遺体専用機を使って画像を撮っていると。
 去年、ここで働いておられます、自らをnecro-radiologist、死体放射線科医と呼ぶ、クリス・オドンネル先生という方が日本に2回いらっしゃって、講演をなさいました。そのときの日本語のスライドを借りてまいりました。突然死の画像診断です。ビクトリア州法医学研究所。CTの導入は、2005年の4月に司法省の予算にて導入。これまでに1万例以上撮影したということです。これは1施設においては世界一です。CTの有用性を述べられた後に、CTは必ずしも有用ではないと。もちろん限界はあります。ただ、結論としましては、CTを含めた断層は死体の検査に非常に有用。日常のルーチン検査となっている。解剖するかどうかの判断材料。自然死、外傷死とも有用。法医学実務に有用。診療関連死に有用という結論でした。
 次はスウェーデンのLinkoping university。Anders Persson博士が去年の10月にスウェーデン大使館の招きで日本にいらっしゃいました。大使館の招きでいらっしゃったというその理由は、日本で死因究明にお金がつくという話が広まったようで、このような「the Virtual Autopsy table」という商品の売込みにいらっしゃっておりました。これはiPodを非常に大きくしたようなボックスなのですが、中にこのような画像が撮影して、作成してあって、いろいろなやり方ができると。犯罪にも応用でき、人だけではなくて、猿やミイラにも応用できるということです。外国の方は、非常に宣伝がうまいですから、もう既にVirtual Autopsyというのは科学捜査班といったような、こういったドラマにも使われております。ドラマ上では、きれいなCGなのですが、演出上はこれでよいのでしょう。
 それから、ハンブルクの法医学研究所です。解剖室の中のタイル張りの部屋の中にCTが設置してあります。
 こういった欧米の状況に対しまして、日本の死後画像といいますのは、異状死の解剖率が非常に低い中で行われています。10%程度です。一般病院が臨床機を使って、主に内因性、非外傷性死を対象に、その死因のスクリーニングを行っているという状況です。Autopsy imaging、以下Aiと略しますが、これに関する全国アンケート調査は、いままでに大きなものが3回行われています。日本全国の主要な救命救急病院の9割がAiの経験がある。日本全国の一般病床を有する病院の36%はAiの経験があります。そして、日本救急医学会の会員の専門医に尋ねたところ、その費用は保険請求3割、病院負担3割、遺族負担1割という内訳になっており、将来的には保険収載されるべきと考える専門医が80%にも上りました。
 今年に入りましてのAiの流れですが、変死体分析をCT診断で石川県警と医療機関、これは金沢大学その他の医療機関ですけれども、ネットワークを設置したと。こういったネットワークは全国で初ということです。そして、国家公安委員会定例会議。これはインターネットにも載っているのですが、石川県を視察された吉田委員が、上に書いてあるような言葉を述べておられますが、「放射線の医師が画像を解析できるということは、死因究明に関する医師の数が随分増えたという感じがしたが、どうだ」という問に対して、刑事局長は、「放射線科の医師の見立てで本当に完璧かというと議論があるところだと思う」と答弁なさっています。これは本当にそのとおりで、我々も画像だけで何でも判断できるとは思っておりませんし、読影するときにはいろいろな情報を聞いてから読影しております。画像だけで何でもわかるとは思っておりません。
 今年の2月、厚労省全国医政関係主管課長会議におきまして、Aiシステム整備事業を実施し、それに必要なCT、MRIを設けるものとすると。先ほど資料3に述べてあるとおりです。
 そして医師会の定例会見。今年の3月ですけれども、Ai活用に関する検討委員会、その答申内容が発表されております。
 この委員会といいますのは、法医・病理・放射線・救急・警察医等の各専門医と放射線技師を含む11人の委員で構成されておりますが、3番目のAi活用に際しての提言。どのような提言かといいますと、全異状死体にAiを行うことはなかなか難しいので可能なところから開始しましょうと。それには小児、特にこれは虐待の有無を見たいということで小児、あとは、来院時心肺停止状態で救急搬送された患者さんには全員やりましょうということで、次のように提言されております。費用は国庫から拠出すべきである。小児、約2億5,000万、救命救急患者が年間10万人として約50億円、これだけの費用がかかると試算されています。Aiという言葉は、もう既に何回も国会でも取り上げられております。古川先生や足立先生も言及されております。そして首相官邸のホームページを見ますと、最後のほうに「地域連携によりAiによる死因究明を促進する」と記載してあります。
 実際、死因究明CT撮影は全国的に増えているようでありまして、今回の資料にもありましたし、診療死究明でAi活用もという、このような共同通信社の記事も載っております。
 ちなみに、日本全国に死体専用機所有施設といいますのは、ここに挙げたとおりです。まだ20はいかないのですが、今後はどんどんと設置される予定であると聞いております。
 これは群馬大のオートプシーイメージングセンター。中古のCTをご遺体専用機に転用したということでした。
 日本において、死後画像が撮影される最多の状況としては、救命救急外来に来院時心肺停止状態で搬送された後に死亡した症例、これは異状死ですが、これに対して死因をスクリーニングするために、CTを施行する。
 CTは、単純X線より情報が多く、超音波より客観的で、MRIより短時間で施行可能ということから、その施行数は、他のモダリティを圧倒しております。
 Aiと言いましても、Ai≒Postmortem CTと。Postmortemというのは死後の、検死のという意味ですけれども、以前、パトリシア・コーンウェルの『検屍官』という本の原書名が“POSTMORTEM”でありました。
 日本のPMCT事情ですけれども、監察医が非常に少ない中で行われています。日本における監察医制度は、東京、横浜、名古屋、大阪、神戸といった大都市でされていますけれども、日本の人口の85%は監察医制度のない地域に住んでいます。その反対に、CTの設置台数は世界一です。世界中のCTの半分は日本に集まっているのではないかと言われています。
 故に、死因を正確に診断したい。そして遺族の気持ちに応えたい。この「遺族の気持ち」と言いますのは、解剖はしたくないけれども死因は知りたいという、そのような気持ちです。これに応えたい救命救急医が苦肉の策として、以前より死後CTを施行してきたという現状があります。
 その死後CTの役割としましては、解剖の承諾は得られない場合の死因スクリーニング、解剖が絶対に必要な症例のフィルターリング、解剖が行われた場合にそのガイド、相補的な役割を果たします。
 死後CTの所見としましては、死因を大きく外傷と非外傷に分けています。そして、それらについて死後変化、蘇生術後変化の3つに分けると我々は読影しやすいと考えています。
 外傷性死後CTですが、これは外傷性死因の特定に非常に有用です。以前より散弾銃の玉がどこにあるかとか、ピストルの玉がどこをどうやって通っていたかという評価に、単純X線写真が撮影されておりましたが、最近ではこのようにCTも撮影されるようになりました。射入口、射出口、射創管といったものが明瞭に描写されています。
 実際のご遺体の画像ですけれども、拳銃自殺された警官の方です。
 そして胸を刺されてしまった方、左の大量血気胸を認めます。
 頭をハンマーで殴られた方、頭がクラッシュした状態、交通事故です。これは首が切れて体内の血液が外に流出した状態。
 頚椎の脱臼骨折。これも頚椎の骨折ですけれども、4番目の頚椎よりも上部をやられますと、呼吸中枢が冒されますので、その場で生存能力が無くなってしまうということです。ただ、単純X線写真でも、心臓大血管内のガスというのはわかりますが、CTを撮りますと、両側の血気胸といった所見も明瞭に示すことができます。
 これは飛び降り自殺ですけれども、心臓は通常左側にありますが、右側に寄っていて、心臓と大動脈は離断しています。
 次の方ですけれども、心臓大血管が先にやられますと、血圧が急激に下がるために、骨盤に大きな骨折があっても出血してこないという、生活反応の欠如として示されます。
 右下の像ですが、これは常磐道で、車外放置された後に後続の車、数台に引かれたという方ですが、この方は体内がミンチ状になっています。ここで重要なことは、体内でミンチ状になっているにもかかわらず外側の輪郭が保たれているということで、外から見ただけでは体内の様子がわからないということを示しています。この方のように外から見てもこれで亡くなったのだということがわからない限りは、CTを撮る意味があると考えています。
 この方は自殺目的で線路に横たわっていた方で、ちょうど線路の幅で首と足が切れています。
 そしてこの方は水平断層だとわかりづらいのですが、首つり自殺ですけれども、病院の横に公園があります。朝5時頃、患者さんが散歩をしていますと、雲梯からぶら下がっているこの方を発見しました。遺書が置いてあったそうですが、警察の方がいらっしゃるまでに、こういった縄は外せませんが、画像上だけではこのように外せます。これが何の役に立つかといいますと、このように実際の画像は裁判員制度では出すことが生々しくてやりづらいということで、こういった画像が役に立つのではないかというように考えています。
 実際の症例を提示します。31歳女性、車運転中、中央分離帯に衝突しました。この方はシートベルトの装着がなく、エアーバッグのみが展開しておりました。この方のCTを撮りましたところ、心臓周囲に血腫を認めましたので、おそらくは心タンポナーデで亡くなったと考えましたが、外表面に何の所見もないためにこのように解剖が行われております。外表面は所見なく、このように皮下組織や筋肉にも外傷性変化を認めませんが、心臓を開けましたところ、心臓周囲に大量の血液貯留を認めました。これはどういうことかといいますと、右心耳が破裂しておりました。こちらにゾンデが通っています。CTで解析しますと、胸骨と椎体との間に右心耳が挟まれてしまって破れたのだろうというように考えました。実際、5月の企業プレスリリースで、トヨタがバーチャル人体モデルを発表しておりますけれども、ハンドルやエアーバッグは展開したときには、胸がへしゃげるぐらい衝撃があるということであります。
 次は55歳の男性。職業は土木作業員。朝出勤し、現場で倒れているところを同僚が発見しました。この方も外表面では擦過傷程度しかありませんでしたが、CTを撮りましたところ、このように肝臓周囲や脾臓周囲、ダグラス窩に血栓や腹水を認めました。解剖でもそれを確かめております。肝左葉外側区に亀裂があり、解剖でも肝破裂の状態でした。あとは、多発肋骨骨折、大動脈の離断、椎体の離断という、このような所見を認めました。これはどういうことかと言いますと、同僚が本人を掘削機械と地面との間に挟みつけてしまって起こった事故ということが判明しました。同僚たちは嘘をついていたわけですが、現場の状況とCTの画像情報が非常に乖離しているために、解剖に回り、最初は行政解剖だったわけですが、途中から司法解剖に変わりました。もしCTが行われていなければ、虚血性心疾患と判断されて、見逃がされてしまった可能性があります。
 ここで一つ、犯罪見逃しの概算いたしますと、非犯罪死体という前提で運ばれてきた死体の中には、1.25%の割合で犯罪死体が紛れ込んでいると言われています。これを日本の統計に当てはめますと、日本の異状死は年間約15、6万人と言われています。この1割は解剖されますが9割は解剖されません。これに1.25%を掛けますと、年間約1,700人の犯罪見逃しがあるというように計算できます。これは統計に出てこない暗数となっています。
 実際Aiが事件を暴くということから、警察が医療機関に託してご遺体のCT撮影をした例が約1,800件、このうち数件で犯罪が見つかってきたということです。これを日本全国に当てはめますと、CTだけで数百件の犯罪見逃しが見つかってくるという計算になります。
 公安委員会の定例会議の会議録から取ったものですが、「非犯罪死体の中でも、毒物等を使って病死のように見せかけて、結果的には事件にもならないケースがたくさんあるのか」という問に対して、「たくさんはないと思う」と答えておられます。先ほどの1,700名のうち、数百人がCTでわかるとしても、薬物や毒物を使った殺人はCTではわかりません。「おそらくCTでも判断するのは難しいのではないか」と述べられていますが、これはそのとおりです。この定例会議の話ですが、刑事局長はいつもいいことをおっしゃるのですが、「むしろ重要なのは、死因を究明するための知見やノウハウの蓄積がそれぞれの医者にどれくらいあるかということになる」と。
 我々が最も多く遭遇する死後画像としましては、早期の、亡くなられた直後であるとかいう非外傷性の死後CT。これがいちばん多いために、これが画像所見の基本になります。非外傷性死後CTは、出血性死因は画像だけで診断可能であります。死後変化は循環停止によります。そして蘇生術後変化の主な所見は、血管内ガスであります。例えば、くも膜下出血、こでは解剖でも確かめられますが、脳幹の出血。これは橋の出血です。画像と解剖はよく対比できます。大動脈解離、解剖でもそのとおりです。腹部大動脈瘤破裂、これもそのとおりであります。こういった出血性死因はCTだけで診断可能です。
 非外傷性の死後CTで認める所見。死因、死後変化、蘇生術後変化、頭部、胸部、腹部と分けて、このような表を作ることができますが、もう既に新潟市民病院の高橋先生が、次のようなチェックシートを作っておられまして、このチェックシートを使うことで、ご遺体の画像の診断経験があまりない医師でも、効果的に、再現性のある読影ができるということです。死後CTで診断可能な死因として、虚血性心疾患や肺動脈血栓塞栓が挙げられますが、全くわからないということではなくて、おそらくそうだろうということまではわかります。例えば、虚血性心疾患の診断であれば、まず外傷性や出血性死因は除外して、直接所見が出てきませんので、あとは画像だけではなくて、既往歴や現病歴、検査所見、例えば心電図上のST上昇やVF、トロポニン上昇といったような検査所見、死後CT上の間接所見を総合的に判断します。間接所見はどういったものかというと、猛烈な肺水腫が出てきますので、急性者心不全の方はこのようにテカテカパンパンといったような像を呈しますが、CTで見ると両側びまん性の陰影が出てきて、こういったものから虚血性心疾患だろうというふうに診断しています。
 こういった直接所見が描出できないという欠点を補うために、最近では造影による死後CT、これは経静脈的に造影剤を注入しながら2分間心臓マッサージをすると、亡くなった後でも心大血管が造影されるということがわかってきました。
 例えばこの像ですが、亡くなった後にされた造影CTですが、このようにきれいに大動脈解離ということがわかります。
 このように、肺動脈の3Dや冠動脈の3Dまでできるように、造影能が保たれますので、ここら辺にある血栓塞栓が診断できるようになるのではないかと考えています。ちなみに、死後造影CTは「正当業務行為」に相当し法的には問題ないという言葉をいただいております。
 これは筑波山から見た富士山です。
 そして、もう一つは、死後のMRI。MRIはCTと比較してコントラスト分解能が非常に優れますので、CTでは評価困難な虚血心筋や頚髄損傷、肺動脈血栓塞栓や肝損傷などが検出できます。
 例えば、この方はコンバインで納屋に入ったすぐ後に亡くなっておられました。どうも天井に頭をぶつけて頚椎が過伸展したようですけれども、CTでは第6頚椎が背側に変位しているということはわかりますが、MRIだとその部分の頚髄損傷や椎間板の損傷、椎体の前面の血腫といったものまで描出することができます。これは解剖でもそのとおりでありました。
 39歳、男性。自宅で亡くなった状態で発見されましたが、この方も肺動脈の中に血栓が充満していそうだということで、この方も肺動脈血栓塞栓ということが事前にわかりました。
 この方は亡くなる前日にバイクで転倒したといわれますけれども、亡くなった状態で発見されました。肝臓周囲に腹水、肝臓に亀裂が入っているということは、下の画像のMRIではわかるのですがCTでは評価できません。実際、解剖では肝破裂でした。
 46歳、男性。自宅で亡くなった状態で発見されましたが、CTを撮りましたところ、両側びまん性の肺水腫。解剖では左冠状動脈前下行枝のプラーク破裂による血栓閉塞ということがわかりましたが、MRIのT2強調像で心室中隔から心尖部にかけて虚血心筋を示すような高信号を認めております。
 次の方も、虚血心筋をMRIで認めることができます。このように、心内膜下梗塞までMRIでは指摘することができます。
 亡くなってしばらく経ってご遺体専用機でないときにいちばん困るのが臭いですが、このようなボディーバッグを使うことで臭いは抑えることができます。
 これは最後なのですが、以前に内閣府で同じような講演をさせていただいたときに示した提言であります。解剖自体は強力な死因究明手段ですけれども、その実施率は非常に低い状態に留まっております。異状死は全例CTでスクリーニングすべきではないかと考えますし、こうやることで解剖率も上昇していきます。これは生前、診察、画像診断、手術に対応させて、亡くなった後にも検視、検案→画像診断→解剖を確立するということであります。結論は以上のとおりです。ご清聴ありがとうございました。

○門田座長 途中トラブルが発生しましたけれども、非常に大量の資料を示していただきまして現状のご説明をいただきましたが、全体的にはまた後ほどディスカッションしたいと思いますが、特にいまのご発表に関連したことでご質問がありましたらお受けしたいと思いますが、いかがでしょうか。

○長谷川先生 我々の所でも、PMCTというか、それと解剖を併用してやっているわけですが、先生がおっしゃるように、特に虚血性心疾患はわかりにくいとか、CTだと限度がある。CTは非常に普及もされているわけですが、造影CTもいいのではないかということも確かに言われているのですが、現実的にそういう不得手な分野も補えるのかどうかというのはいかがなのでしょうか。MRIでないとわからないとか、その辺はいかがですか。

○塩谷先生 内部組織の評価については、虚血の心筋とか頚髄の損傷とか、こういったものはCTでは全部のっぺりとした画像になりますので、そこが異状だというふうには描出されてこないです。MRIだと、CTよりもコントラストが良いために、こういったものが描出できる。もちろん、現在、CTで確実に画像だけで診断できるのは出血性の死因、脳出血、くも膜下出血、胸部の大動脈解離と腹部大動脈瘤破裂といったような出血性死因はCTだけで診断できますけれども、それ以上確実に物を言おうかと思うと、CTだけだともう一つ造影したりとか。MRIだとコントラスト分解能が優れているために今はCTでの死因診断率は3割と言われていますが、それが6割程度までにはもっていけるのではないかと考えております。

○長谷川先生 ただ、先生も中でおっしゃられていたけれども、MRIというのは撮影に非常に時間がかかるという難点がありすね。その辺で、MRIだけでやっていくというのも、時間の制約というのがどうしてもあるのかなと思うのです。

○塩谷先生 そうですね。うちも、1回撮るのに、全身撮影しますけれども、最低限1時間程度かかります。それに対して、CTだと5分程度で終わりますので、MRIをやるときには救急外来で亡くなった人をすぐ撮るというわけにはいきませんで、解剖が前提となった方を対象に準夜帯、夜9時から12時の間にやっております。確かに、MRIは非常に時間的な制約が大きいものですから、全例をやるのは非常に有用なのでしょうけれども、生きた患者さんが優先ですので、昼は生きた患者さんで、準夜帯や早朝にご遺体を撮影しているということです。

○門田座長 そのほか、いかがでしょうか。

○和田先生 私、門外漢なので教えていただきたいのですが、いまのCTとMRIの関係で、例えばCTをバーッとやって、それが一種のスクリーニングになって、このケースはMRIをやったほうがいいなとか、これは要らないなとか、そういう判断をする、2段階での形というのはあり得る話なのでしょうか、あるいは全く十分ではないのでしょうか。

○塩谷先生 世界でもアメリカにしてもそうですが、CTが基本になっています。早くできますし、CTは空気や骨を描出するのが非常に得意ですので、外傷に関して非常に得意である。だから、外傷に関してはCTだけで大丈夫だろうなというふうに皆さん考えられていますが、非外傷では内因性死、特に死因の半分以上を占める虚血性心疾患だと心筋の状態とか冠動脈の中の欠損を描出しないといけないのですが、CTだとそこは無理かなと。だから、画像だけではなくて、急に胸が痛いと言って倒れたような現病歴とか、もともと陳旧性の心筋梗塞や狭心症を持っていたという既往歴とか、運ばれるときに心電図上STが上昇していたという、心電図の異常ですが、死後CTの間接所見、非常に肺水腫、水っぽくなってきますので肺に猛烈な白い陰影が出てきますが、そういったものを総合的に判断して虚血性心疾患と。だから、ある程度は想像はつくのですが、直接所見が描出できないという意味で信頼できないというふうに言われておりますので、CTでスクリーニングをして、それ以上はMRIをやるほうが最も効率的な方法かなと思います。

○門田座長 ほかにいかがでしょうか。よろしいですか。それでは、次に行って、また後ほど時間があったらディスカッションを続けたいと思います。次は、山本先生から資料5に基づいてご説明をお願いしたいと思います。

○山本先生 ご紹介いただきありがとうございます。資料提供したスライドと今日提示するスライドが若干違いますので、見える方は手前のモニターをご覧ください。私は、今、Ai学会の理事長という形でやらせていただいていますし、死後画像の読影については読影専門の第三者組織としてAi情報センターというものを昨年立ち上げまして、そこの代表理事という形でも勤務をしております。その資料についてはいちばん最後の頁が患者様向けの資料となっております。
 今回のテーマは、私が聞いたときには、モデル事業の補足をするような立場でのAiの活用なのか、そういうような形なのかと最初は思っていたのですが、足立政務官のほうからお話をいただいたときには、今回はAiを活用するためのAiを中心としたような形での死因究明を有効に使っていきたいと。そういうお話をいただきました。今までいろいろな検討会がありまして、法医学の先生の立場、病理の先生の立場、実際の読影にかかわるところ、その私たち放射線科の立場、また、実際に撮影するのは診療放射線技師の方々なのです。それぞれの立場からの話というのが今まであるのですが、どうもよく考えてみると遺族の視点が欠けている。いちばん問題なのは、最初の足立先生の挨拶にもあったとおり、遺族が納得できる、現在日本で行える死因究明は何なのか。その視点に立った話が、どうも上滑りなのかわからないのですが、なかなか深まっていかないというのがあると思います。
 では、何が遺族の視点に立った話なのかというと、一つには、遺族が受け入れやすい検査である必要があると思います。また、その検査結果、3割しかわからないといったとしても、それの検査をすることによる納得が得られる検査、また、公平な判断ができる検査。監察医療制度というのがあるのですが、大都市に限定されているのです。ただし、日本の85%以上の方は大都市の圏外に生活している。そういった所の方々も平等に死因究明をできる、そういったシステムをつくらなければいけないというふうに私は考えております。
 これは小説の影響もあるかもしれないのですが、現実には、私たち医療関係者以上にAiという言葉を遺族の方が知っておりまして、実際に千葉大で勤務していたときには、「Aiをやってください」と直接遺族から頼まれることもあるのです。それぐらい、世の中にはこのAutopsy imagingという言葉が広まっているという現実があります。
 ただし、こういった現実はなかなか伝わりにくくて、実際によく出てくる新聞報道は、これは6月12日の、本当につい先日の記事です。「死後画像で十分」は、わずか3%、厚労省班研究。この班研究は、実際に私と塩谷先生も入っていたのですが、首班の先生が病理の先生ですので、病理の先生の立場から見ると画像だけでは十分ではないという認識になってしまうのです。
 それで、私たち放射線科医としては、別に、取って代わろうとは思っていないのですが、新聞記事のほうでは、「解剖の代替は困難」という形の記事になってしまいます。遺族が望んでいるのは、体に傷を付けたくない、ただしある程度死因は究明したい。それが普通の方の真っ当な意見だと思うのです。そういうことを全く考えないこういう記事が出てしまうのは、私としてもすごく心外です。
 それで、これは一体なぜこういうことが起こるのか。解剖というものが普通の医療行為だと何に当たるかというと、おそらく、手術に当たると思うのです。私たちは魔術師でも何でもないので、自分に来た患者様を直接表から見ただけで「あなたは癌があるから手術をしましょう」と言う外科医の先生はいないと思うのです。癌と判明して、それが治療効果がある手術に持っていくためにはいろいろな検査が必要だと。そのための一つの方法が画像診断だと思うのです。ですので、患者様が来た。そこのために、まず、解剖が必要かどうかのスクリーニングのため、異状死を発見するためのスクリーニングとしてAiが必要だと。そういった使い方をしてほしい。
 海外だと剖検率が高いという前提があるので、別に、それは構わないのかもしれないのですが、日本は解剖率が低いです。異状死に対する解剖率は10%とかいうのですが、本当の異状死というのは病院の外で亡くなったものだけなのか。いま問題になっている診療関連死というのは病院の中で亡くなっている事例なのです。そういうものも含めた全体の解剖率というのは、実は、2%台なのです。これだけしか解剖ができていない。100人いたら97人、98人は表から見ただけで死因を決めているのです。どう見てもこれは異状だと。解剖は、先ほども言ったように、遺族にやさしい検査ではないので、これはなかなか受け入れられない。そういって困ったところで救急の先生方が使いだしたのがAiだというところはあります。
 先ほど塩谷先生もおっしゃっていたのですが、別に、私たちは画像だけで診断していません。通常の読影業務でも、臨床情報、電子カルテの情報を全部参照にし、生前のデータがあるのでしたらそれも参考にした上で画像診断をするのです。ですので、そういったものを加味した上で判断するべきです。私たちが本当に素直に「画像だけで3割」と言うのを、ほかの先生方が使った場合には、あなたたちは本当にそういった情報を何も信用しないで解剖だけの所見でやってみたらどれぐらいなのか、ということを逆に聞きたいと思います。
 ですので、死因究明というのは、おそらく、いろいろなモダリティ、情報もありますし薬物検査もありますし検死の情報もある。ある先生から聞いたところでは、検死の情報だけで6割ぐらいは死因究明ができるというところの意見もありますので、異状死に関してはこの検死情報とAiを組み合わせるというセットが、日本である程度広まっていけたらなと考えております。
 ここからはスライドにあると思います。もう一回おさらいします。どうしても取って代わろうとは思わないのですが、利点・欠点を述べなければいけない場合には、対象となるものは解剖という形になります。この解剖というのは、遺族の承諾がなかなか得にくくて、現実として2%台です。これは、解剖医を増やそうが何をしようが、遺族のほうから「やってください」というお願いがない限りは増えないのです。放射線科もそうなのですが、依頼をされて初めて検査が成立するのです。これは、司法の強制解剖以外はみんな同じ立場だと思います。それに対して、Aiというのは遺族にとって優しい検査だと思うので、拒否例はほとんどありません。また、もう一つ重要なのは、情報提供までの時間です。検査時間は10分程度で終わって、ざっとした意見だったら数時間以内に遺族にすぐ伝えることができる。それに対して、解剖は、固定標本をつくって、顕微鏡で覗いて結果をまとめるまで数カ月かかってしまうのです。
 それから、これは情報センターをつくったところの意義にもあるのですが、第三者としての評価が可能かどうか。画像データは院外に持ち出し、これは改竄できないとかセキュリティの問題をクリアした上ですが、第三者の事件をその画像を提供することでみんなで評価することができます。それに対して、一度破壊検査をしてしまった場合には、それをもう一回検査するというのはなかなか難しいと思います。また、検査費用に対しても値段がかなり違う。もう一つ、裁判員制度の場合には、画像情報は提示することが可能ではないかということも言えると思います。
 ですので、今回、画像診断という形で検討会が立ち上がったと思うのですが、基本になるものはCTです。これは全国一定レベルでどこでも行える。簡便に行われて遺族に優しいというところがあるので、まずこれを基準に判断すべきで、MRがどうだ造影CTはどうかというのは、またその後にこの制度がきちっとできて、予算請求ができた上ですべき問題だと思います。ここで重要なのは、Aiを行うのは診療放射線技師なのです。Aiを読影するのは画像診断ですから、放射線科医なのです。どうも、放射線科というのは今まで日陰者でして、あまり表に出てこなかったので、画像診断は誰がするのだろうと。今まではこの死因究明という大きな括りの中で考えられていたので、おそらく、死因究明にかかわる人たちは法医学の先生方あるいは病理の先生方というところにコンサルトをして、「どうしたらいいのでしょうね」という形の依頼が多かったのですが、私たちも、やっとやらなければいけないなと。社会的なニーズがあるということ、必要に迫られているということがあって、やっと発言し始めたというのが現状です。
 ここで費用が必要だと。これは何の費用なのかというと、先ほどの資料で、厚労省の方々はお金を付けてくださいました。確かに、画期的なことだと思うのですが、要は箱物なのですね。実際に私たちは現場でもうAiをやっているのです。国から箱物に費用が付いたからやっているのではなくて、自発的にやっているのです。では、何が必要なのかというと、撮影したその技師に対する正当な費用、あるいは読影したときに対する正当な費用、これを払ってください。それさえ払えれば、現状である程度施設があります。ただ、死体損壊が激しい症例などについて専用のものが必要かもしれないので、それに対する整備が必要かもしれないのですが、CTはオモチャではないのです。高等な撮影診療機械ですので、それをきちんと動かせる技師が必要です。なおかつ、どういった形で撮るというプロトコールを決める放射線科医の判断が必要です。ですので、そういうことを加味した費用を是非付けていただきたいと思います。
 Aiセンターですが、これは私が千葉大に所属していましたので少し話しますが、現実には2005年の11月から始めています。今年の5月で350例です。かなりの件数をこなしています。ただ、いろいろな段階がありまして、私も最初は病理と対比しないとどんな現象が起こるかわからない。ですので、病理解剖とセットで行うことを始めました。ただし、解剖数が限られていて検査件数がなかなか増えないので、2007年からは院外の病院からも受け付けるようにしました。これがAiセンターの名称の基になっています。
 それで、2009年からは病理解剖の有無にかかわらず、遺族が承諾したものに対しては全例Ai実施となっています。そうするとどうなるかというと、グラフで表したように、2005年から年々増加の一途を辿ります。病理解剖数は、いちばん下にあるのですが、年間40例前後で推移しているのですが、検査件数は増えてくる。ですので、病理解剖があったに越したことはないのですが、解剖と画像検査は別という認識を持ってください。そうしないと、解剖医がいない所の施設ではAiができないということにもなりかねません。
 こういった形で、現在ではいくつかの病院でAiセンターが稼働しまして、今日委員として参加なさっている宮?ア先生の佐賀大学医学部でもAiが稼働し始めた、札幌医科大学でも教育GPを獲得して検査をしているという実情があります。
 また、Ai学会のほうで10施設で実施しているものに申請してくださいといった場合には、もう10何施設以上登録という現実もあります。ですので、社会的にはある程度認知されて、実際の臨床の現場で動いているというのがAiの現状だと思います。ただし、なかなか難しいところがあって、やりたくないという方もあるのです。それは、社会制度としてきちっと認定されていないから、あるいは院内のコンセンサスが得られていないからです。では、そのために何をしたらいいのかという形で臨床のいろいろな各科医が活動を始めています。Ai学会は2003年から、日本医師会は今まで積極的に検討していただいて2007年からで、今年も中間答申を出していただいております。今後も活動は続くと思います。また、技師会のほうも2008年からです。この診療法射線技師たちがCT装置を使ってやる検査という認識がものすごく強くて、こちらも活用検討委員会なのです。2008年から継続的に検討会を行っていまして、今度の7月にはシンポジウムも行われる予定です。
 本来でしたら、いちばん最初に動かなければいけなかったのは法射線専門医会、あるいは法射線学会なのですが、諸般の事情として、まず死後画像について慣れている先生がいなかった。あと、当然、費用が付かなかった。読影をした場合に、間違ったことを書いて、それが何か問題が起こるのではないか。裁判所に出廷して意見を言わなければいけないとか、通常の日常業務でも生きている患者の読影で忙しいのです。そういったものに加えて、なぜただ働きまでしてリスクを背負わなければいけないのかというのが今まで根底にありましたので、なかなか前向きにならなかった。ただし、社会的な意義はある、そしてこれは必ず必要になる検査なのだ、というところで2009年にAiのワーキンググループが設立されました。
 この目的というのは何か。おそらく、Aiが新しい死因究明制度に組み込まれるだろう。それを予測して、見越した上で臨床医側に立った死因究明制度。画像診断がAiの中心ですので、司法解剖、病理解剖と切り離した、まず画像診断で何ができるか、何をしなければいけないのか、ということを考える目的の会です。そのために、いちばんネックとなっていたのが適切な報酬を付けてくださいと。また、きちっとした読影を行うためにはデータの集積と教育が必要だろう。そういった形の活動もしなければいけない。こういった形での教育制度、先日、札幌で第1回目の研修会も開かれたのですが、やっと動き出したぐらいです。
 問題点としては、まだ読影できる先生が少ないということ。それから、得られた所見がどう解釈すべきか。ここら辺の統一が、読影本はできているのですが、まだ難しい。臨床の先生方がいちばん恐れているのは、間違った場合に訴えられてしまうのか。そういったリスクがあるのでなかなか難しいところがあります。ただ、こういった先生方は、読まされたら読むかもしれませんが、もしかして別にコンサルトできるシステムがあったらそちらに流すということも可能なのです。放射線科医というのは、撮影についてもある程度の意見を言いますので、その施設のCT装置でこうやって撮ってくれ、というサジェスチョンは絶対にできるはずなのです。ですので、Aiは撮る、ただし読影については第三者機関に回す。そういったシステムも必要なのではないかというのがこのAiのワーキンググループでの課題になりまして、今のこのAi情報センターの設立につながっています。活動としては、ガイドラインをつくる、読影のための本をつくるということになっております。
 それで、やっとワーキンググループが活動しまして、情報センターをつくろうと。この情報センターの役割は何なのか。一つは、遺族が求める情報が、私たち医療者側が必要とする情報とは違うのではないか。私たちは、今まで、生きている患者に対して正しいレポートを書くことが絶対に必要なのだなと。そういったことを重点的に考えて正確なレポートをつくる、そのために研鑽を重ねていろいろ勉強していたのですが、どうも、遺族はそれだけではないのではないかと。遺族が求めたいのは公平、公正中立的な第三者としての意見が聞きたいということがあるみたいなのです。
 そういったことに気づいた一つの要因は、亀田のテオフィリン中毒の訴訟というものがありまして、カテーテルを挿入したときに血管を傷つけて出血したのではないかという形に遺族が訴えたのです。ただし、この症例に対して病院内の病理解剖が行われている。病理解剖で血管に傷はないのです。ただし、裁判になったときにそれが証拠採用されないのです。
 なぜかというと、医療事故において、院内の解剖所見というのは同じ組織の中の人間が行った手技ですので証拠能力がないという形の鑑定になってしまう。Aiも、同じ院内で読影の先生が読んでしまった場合に、これが問題になる可能性がある。病理解剖が認められなかった最高裁の判断としては、客観性がないから証拠採用しなかった。そういうふうに検察が言っているのは合理的だろうと。CTというのは画像診断で、第三者にも意見が求められる。だから、そこで血管が傷つけられたようなアーチファクトが出たとしたらそちらのほうを優先するというのは判断として合理的ですよ、というのが最高裁の判決でした。
 それで、実際には、今後、裁判員制度があって、解剖の所見よりもAiの所見のほうが証拠採用される率が高くなってくるでしょうし、どこかの事例でAiが証拠採用されたとすると、今度、裁判官の方は、あの事例ではAiが情報として提供されたのになぜ今回は提示されないのか、ということにもなりかねないと思います。
 もう一つ、この第三者の意見を遺族が必要としているという事例を提示いたします。これは名古屋大学の事例なのですが、1歳のお子様が手術の後に急変して亡くなった。遺族は第三者としての解剖をしてほしいと病院に言ったのですが、擦った揉んだでなかなか決まらなくて、そのご遺体が2カ月間そのまま安置されてしまったというものです。名古屋大学は、基本的に、以前に事故があったということで「隠さない、ごまかさない、逃げない」という原則をつくって、院内のリスクマネージメントはきちっとしているのです。しかし、遺族のほうが病院に対して治療に不信感を持ってしまった。こういう場合は、いくら病院のほうが高邁な理想を掲げても、遺族としては殻の中に閉じこもってしまって意見を聞かない。ただ、名古屋はモデル事業の地域で、もう一つ、剖検運営システムといって、輪番制でほかの施設の解剖を受け入れるという形のシステムもあったのですが、これは、もともと、自分の所で病理解剖できないときに受け付けますよ、というタイプのシステムでしたので、名古屋大学は自分の所でできる、ではなぜこんなものを使うのか、という形で最初は利用しなかったようです。
 それで、後から考えると、これはモデル事業のほうがいいのではないかという声もあったのですが、これに対しては、モデル事業を異状死に限定して運用していると。ただし、名古屋大の判断では、医療過誤にあたらないと院内の検討会で判断したらしいです。自分の所で、これは異状死でないと判断してしまったために、モデル事業には届け出られなかった。ここが問題なのです。遺族としては第三者の意見を当然聞きたい。医療機関としては、自分は正しい医療行為を行っていて、院内の検討会も開催している。ただし、医療関連死かどうかわからないのです。その判断材料もないのです。モデル事業に届け出るには、診療行為に関連した死亡例を受けるということになっているので、そうかどうかわからない段階ではなかなか難しい。ここがこの医療機関とモデル事業の間のジレンマなのではないかと思います。
 では、ここでAiを活用したらどうなるか。なおかつ、第三者の意見としてのAiを取り入れると、情報センターに意見を聞くことが第三者としてはできる。医療機関者としては、院内の検討会のときにこの客観的な情報も参考にして、これはやはりモデル事業に届け出るかどうかというのも判断できるのだと思います。ここまでは医療機関で行う行為。もしこれが今後続くかもしれないモデル事業で行われた場合には、この情報と剖検を組み合わせて、精度の高い報告を行ってくれという形になるのではないかと思います。ただし、これは別ルートからAiを依頼されています。
 ここでポイントなのは、そこの病院でやるAiについては遺族は何ら文句を言わないのです。それに対して、第三者の意見が聞きたいという形で画像が私の所に送られてきました。名古屋大の先生も、きちんと読影をしておりまして、そこの所の読影結果と私たちの読影結果は相違点がありませんでした。そして、その結果をまた遺族に説明すると、遺族のほうからは本当に感謝しましたという形で直接御礼がくるのです。今まで、私は生きている方の読影をずっと10年以上やっているのですが、診断された方から直接レポートの報告書について感謝されるということはまずないのです。レポートを通して、なおかつ主治医を通しての媒介ですので、私たちがこういうふうな形で社会貢献ができるのだというのが、このAiというものの特徴であり、放射線科医がかかわるべきところなのかもしれないと思います。
 ただし、解剖はどうなったかというと、最初に揉めてしまいましたから、遺族側の弁護士立ち会いで、2時間で、傷みがひどかったと。死因に結び付くような話は特になかった。なおかつ、病理の結果はさらに1カ月かかる。これがよくある報告例となってしまいます。
 ですので、モデル事業は、こういった形で診療行為に関連した死亡を適当と考えられる事例を受け付けると言っているのですが、医療機関側からすると、どれが適当か適当でないか決められなくて迷っているのです。そこが問題なのです。ですので、これをきちっと決めるために何が使えるのか。たぶんAiなのではないかと思います。
 実際にAiを活用していないモデル事業はどうなっているかというと、結果は10カ月以上で、1例当り94.7万という形になっているので、このままだといかんだろうと。ですので、今後の死因究明システムはどうすればいいのか。一つは、今まで既存の形のモデル事業を中心としたものがあるかと思いますが、もう一つ、今回の検討会をベースにしていただいたAiを基盤とした死因究明システムも検討していただきたいと思います。この場合のAiというのは、解剖の代替ではないのです。スクリーニングとしてやってください。これは客観性があって、第三者に依頼することができる。また、即時性があって遺族にすぐ説明ができる。ここら辺が遺族に優しい検査という形になると思います。なおかつ、異状を見つけることだけが問題ではないのです。医療事故の場合とうのは、おそらく、みんな医療事故かもしれないという形で疑心暗鬼になっているのです。ですので、画像を撮って、所見がなくても構わない。逆に、所見がないことのほうが重要なのです。要は、医療事故に伴う出血や臓器損傷がないのですよ、ということを言ってあげることができれば、まずその病院の段階での患者と医療者側のコンフリクトがなくなるのではないかと私は考えます。
 それで、ここの図では、現在のモデル事業は医療関連死に関連した部分と。どうも、今まで、解剖の事例でどこが重要かというと、この異状死16万体について1万6,000体しか解剖ができていません、10%ですよ、ということが言われているのですが、本当に異状死は病院の外だけなのかというと、絶対にそんなことはあり得ないのです。多く亡くなっているのは当然病院の中なので、この中にも異状死は当然入ってきます。なおかつ、モデル事業というのは、この病院の中で亡くなったものの中のごく一部の医療関連死しか扱っていないので、これのおまけとしてAiが使われたら、本当に顕微鏡の虫眼鏡で見るような形の検査にしかならない。これはやめていただきたい。
 では、どうするか。とりあえずスクリーニングとして全体にAiを行ってください。ですので、たぶん、異状死に関しては不明死体から事件性のものをスクリーニングしましょう。検死の情報と併せて初動捜査を確実にする。そうすると、たぶん、捜査費用がどのぐらい軽減するかということがエビデンスとして出てくるかもしれません。また、病院の中に関しては、医療過誤死とかいう問題もあると思うので、そちらに関しては、Aiを行うことによって訴訟リスクがどのぐらい減るかというエビデンスも出てくるかもしれません。ですので、院外であろうが院内であろうが、Aiをやることのデメリットはあまりないのではないか、やるためにはきちんとお金を付けてくださいと。
 それで、問題としてすごく挙がっていたのは、医療訴訟になるときの問題が遺族と担当医に情報が共有できないため、溝があったと。それを埋めるのがAiという客観データというふうになると思います。この情報を基にすると、医療者側のみが情報を持っているのではなくて、遺族側にも提供できる。情報格差もなくし、なおかつ第三者の意見も聞けるということになります。
 では、なぜAi情報センターが必要なのか、各地にAiセンターができたからいいのではないかと。どうも、Aiを行えるのは一般病院、最近増えてきたAiセンターや法医学教室のCT装置というのもあります。もう一つは、モバイルCTの活用も検討されるべきだと思います。ただ、それぞれに利点と欠点があって、一般病院ではきちんと検査の撮影ができる診療放射線技師はいるのです。ただし、読影できる医師がいるかどうかは不明である。法医学教室では、おそらく、放射線科医が所属している所がほとんどない、協力できている所もまだ少ないので読影できるかどうかわからない。あと、一般病院では外からの症例について引き受けるという所はまだ本当に限られています。ですので、撮る所で全部読影まで行おうとすると無理がある。これを解消するために何をすればいいか。一般病院の問題というのは、あまりうちでAiをやっているというのは大きな声で言ってほしくないんだよねと。自分の病院で亡くなったときにはしょうがないけれども、外からの検査なんて絶対に引き受けたくないんだよと。実は、放射線科の先生が死体を読んだことがないから読みたくないと言っているんだよねと。講演会でやると、こういう声がいくつか聞こえてくるのです。そうすると、何が問題かというと、検査だけはきちんと行ってください、読影はどこか引き受ける施設があればそこに回せばいいのではないかという形の意見になります。ですので、院内で実施できる場合にはそこでやってもらう。院内で実施できない場合は、受付先としていて今だいぶ増えてきたAiセンターを利用してもらう、あるいはモバイルCTを利用してもらう。また、読影に関しては専門医会が立ち上げたAiワーキングとか、メンバーが所属しているAi情報センターを活用していただきたい。
 それで、どれについて行うかというのが今回の検討会で是非議論していただきたいところです。よく言われるのは大きなイベント、手術の後に急変した症例という意見もありますし、児童虐待についてやっていただきたいというのも日本医師会の提言としてあります。また、もう一つ、これは多くの遺族がそうなのですが、どんな普通の病気でも最後は急変することが多いのです。そうした場合に、何が起こったかわからないから、別に、病院を疑っているわけではないのだけれども何が起こったか知りたい、死因をある程度推定したいというのがあります。そういった場合にも、遺族の要望に対して応えられるような形でAiを実施できる体制を整えていただきたいと思います。
 ですので、この場合は検査と読影を分ける。検査は診療放射線技師、読影は放射線科の専門医、それぞれ別に費用が必要だということをまず認識していただきたいと思います。そうすると、検査の実施は各施設で行うことができて、少なくとも、これを各県に一つ、外部からの依頼を受け付ける機関ができれば、そこでまずAiだけを行ってしまう。もしそこで読影ができるのであればそこで任せてもいいでしょうし、そこで読影できたとしても第三者の意見が聞きたいという遺族の要望があった場合には、それをAi情報センターに送っていただく。こういった形のフォローができれば良い制度ができるのではないかと思います。
 それで、医療事故の場合に何が問題なのか。ポイントは、起きたときにすぐ亡くなる事例以外のものがたくさんあるのです。医療者側も必死に救命しようとするので、事故が発生したとき、それから患者さんが亡くなった場合にタイムラグがあるのです。そうすると、起きたときの画像と亡くなったときの画像の間でいろいろ情報が変わってしまう。今までこういったことに言及しないで行われてきたのが剖検だけなのです。剖検というのはすごく優れているのですが、発生したときの状況にいろいろな情報が修飾されてしまうところが問題です。事件が発生したときと亡くなったときの両方でAiを撮ってあげれば、この画像2つを比較して、どういったイベントが起こったかということを今まで以上に精査できるのではないかと思います。
 その情報を、院内の安全委員会だと第三者の意見ではないという意見があるかもしれないので、これを情報センターで読影する。それで異状死の疑いがあったら、この後、解剖に回す。そういう流れもあっていいのではないかと思います。ですので、院内での実施、情報センターの活用、最後に剖検という流れができると思います。現在、Ai情報センターについてはホームページである程度活動が紹介できています。年間3,000例ぐらいまでは読影可能です。メンバーとしてはワーキンググループの中の6名の放射線科の専門医が所属しています。
 今後なのですが、前に放射線科のニュースレターで載ったのですが、4%ぐらいの人を向ければ、異状死16万体は何とかなるのではないか。そのために向けて、現在、研修会の制度あるいはガイドラインなどの整備を整えている途中です。費用はどのぐらいか。日本医師会のほうの答申で、1体の費用を5万2,500円という形を試算していますので、これがベースになるのではないかと思います。また、情報センターでの読影依頼は1件について3万円という額を今のところ設定しております。読影方法についてはインターネットを経由した簡易なシステムで、普通にパソコンが使える方でしたら使えるようなシステムを目指しています。
 そういった形で、社会的にも活用するためのデータベースの蓄積も行っていくというのも、今後、情報センターの活動の一つです。目的としては、Aiは医療の現場のエンドポイントで医療従事者が診断しましょう。費用は医療費外から医療現場に支払ってください。Ai情報については医療従事者並びに遺族の関係者にも中立的かつ公平に提示するシステムにしてください。そういうふうになっています。
 最後です。遺族の立場での死因究明制度を是非とも確立してほしいと思います。今回のAiというのは基本的に画像診断です。検査を行うのは技師であり、読影は放射線科専門医が行います。それぞれについて、物ではなくて人に費用を付けてください。Aiをスクリーニングとして活用してください。これが私としての意見です。どうもありがとうございました。

○門田座長 非常に説得力のあるご発表をしていただきましたが、まだ10分か15分ぐらいの時間はあると思いますので、いまの山本先生からのご発表についてのご質問をお願いしたいと思います。

○今村先生 2点あります。日本医師会は、例えばこの制度をつくるためにはきちんとした費用拠出をしていただかなければできないとうことは申し上げていて、塩谷先生や山本先生も金額について触れていただいたのですが、現在、千葉大のAiセンターは年々読影が増えているということがあるのですが、この費用についてはほとんど持ち出しということでよろしいのでしょうか。今、全国にAiセンターが多数できている中で、皆さんはどのように運営されているのかなということが1点あります。
 もう1点は、情報の共有というか、集約というのはとても大事だと思っているのですが、今、Ai情報センターのほうには読影の依頼がどんどん増えてきているのでしょうか。現状だけ教えていただけませんか。

○山本先生 1点目の千葉大での検査の状況なのですが、基本的に病院持ちです。もともとが科研費を少し付けていただいて始めたものなのですが、技師の協力と放射線科診断医が生体の読影の合間をぬって何とかこなしているというのが現状です。私たちの施設でしたら、何とか我慢してねという形で言えるかもしれないのですが、全国に広げる場合には絶対にあってはならないことなのです。正当な行為に対しては正当な費用を拠出していただきたいというのが私たちの要望です。
 もう1点、Ai情報センターなのですが、実際に郵送受付を始めたのは4月からです。まだ、アナウンス不足というのがありまして、郵送でぼちぼち来ているだけです。なおかつ、一般財団法人という形ですので、国の援助が全くない状態で、私もほとんどただ働きで給料が出ていないのです。早く何とかしていただきたいというのが、もう一つ私の希望としてあります。

○北村先生 山本先生、Aiに対する考え方、詳しい解説をありがとうございました。日本放射線技師会でも2008年からAi活用検討委員会ということで、山本先生と相談させていただきながらいろいろなことで活動してきております。その中で、Aiの検査を行うのは我々診療放射線技師ということで、CT等を使った院内ガイドラインを作成して今年春に出させていただいております。それは感染の問題とか撮像法の問題を含めて、診療放射線技師がどこでも同じような形でできないと駄目だということでそういうガイドラインを出させていただいております。また、調査等を行った結果、これまで全国の病院でほとんどの所はこういうAiの検査を行っていると。その中で、先ほど説明の中であったとおり、医療費の中で30何%とか、病院の持ち出し30%という形で、実際にはそういう検査をやっていくと費用の問題も嵩んでくるということがありまして、それをどう扱うか。今回こういう検討会の中で、そういう費用負担の問題も含めて、さらに診療放射線技師をどう使うかということも含めた形の検討をお願いしたいと思っております。

○門田座長 先ほどの今村先生のご質問に対して、山本先生は郵送でとおっしゃられたのですが、郵送なのですか。今のこの時期に郵送なのかと思ったのですが。

○山本先生 施設によっては、直接ネット経由でやるとセキュリティがと考える病院もあるのです。ですので、そういった所からも受け付けられるような形と、もう一つは、こちらとしてはネットがいちばん楽なのですが、それには設備投資をしなければいけないのですが、そのお金があまりないと。ですので、いまはミニマムスタートで、7月からは読影をネットで受け付ける予定なのですが、今後件数がすごく増えたら当然大変になってしまうかなというのが現状です。

○池田先生 両先生のお話を聞いていて、私は両先生をよく存じ上げていますのでいまのお話については大変ありがたく拝聴したのですが、この検討会にもかかわることなのですが、そもそも死因究明を何のためにするかということで、山本先生は比較的ご遺族の立場に立っているなと。塩谷先生は、異状死体の中に犯罪の見落としもあるとか、あるいは死因を究明して後の医療に役立てようとか、観点のニュアンスがちょっと違うと思うのですが、この検討会はそもそも死因究明に資する死亡時画像診断ですので、死因究明を何のためにするかというところを委員の先生方が共有しないと話が進まないのではないかと思うのです。何のために死因究明をするかというのは、たぶん、立場によってそれぞれ違うはずなのです。例えば病理の先生だったら、原因を明らかにして次の患者に役立てるとか、あるいはモデル事業でしたらば、死因究明、再発防止が第一義的な目的ということになりますし、そのほか、保険の公正のあり方とか公衆衛生の向上とかいろいろあると思うのですが、私は法医学者ですけれども、解剖するしないは別として、死因究明というのは、先ほど山本先生が言いましたけれども、我々医療者ができる最後のことですので、それは究極的には死者のためにというか、死んだ人のためにするものだというふうに我々は学生時代から習ったのですが、そういうふうな観点がいちばん大事になる。それは延いてはご遺族のためにもなりますし、保険給付の公正にもなりますし、結局、それが国のためになるのだと。ですから、本来、ご遺族のためにとか、犯罪の見落としをなくすためにとかいうふうな、そういうふうな議論でこの死亡時画像診断の活用を狭く考えると、意見の違う人たちではまとまらないのだと思うのです。ですから、死因究明は死者のために、死んだ人が最後の情報を発信しているのを正確に捉える、それが、結局、みんなのためになって国民のためになるのだというふうな観点から議論していただきたいなと私は思います。

○門田座長 この件について、どなたかご発言がありますか。いまおっしゃっていただいた池田先生のお考えも、死者のためであるが、そこから発展して最終的には国民のためであり、いま生きている人のところまで返ってくるというご理解を、というふうなことをおっしゃっていただいて、特に、例えば診療関連死云々というところに目的を絞っているわけでも決してないし、たぶん、足立政務官が最初にお話されたのもそこにつながっているかのごとく思ったのです。そういう方向かなということで私も最初にご挨拶申し上げさせていただいていると思うのです。

○宮崎先生 私の大学でAiセンターを開いたとき、何のためにそれをしたのかという質問をいろいろ受けたのですが、一時期に、法医の教授が転出されておられない時期を1年ちょっと経験して非常に困った時期が過去にある。それで、私どもの所は救命救急センターに年間8,000人ぐらいの救急患者が来られるわけです。その中で、CPAの患者さんが結構入ってくる。それを見ると、法医がいなかった時期もあるということもあって、最初から体表検視で返されてしまうのです。それを後から報告書をずっと見ると、果たしてこれは本当にこれでよかったのかと。死因は、結局、疑いのままなのです。
 本当に死因が究明できないということもあるのですが、もう一つは、本当に犯罪を見落としていないのか。大学病院の外来まで来ていながらそれを見落としてしまうということは避けたい。そういうこともあって、専用のCT機器を入れて、それで開いたのですが、開くときに医師会と県と県警本部の方に集まっていただいて、これを外に向かってオープンとするかどうか。それは、一つは、先ほど山本先生がおっしゃった、を最初から考えておかないといけない。これは、池田先生の言われた何のためかということと関係するのですが、誰が希望するのか。もし死者そのものということであれば国が見るべきだろうと思うのですが、実際は要求はさまざまなのです。家族の方が、解剖はしたくないけれども死因ははっきりさせていただきたいという方もおられるし、警察のほうは、司法解剖をするかどうかという事前の少し時間が経ったようなものを受けてもらえるかどうかとか、医師会のほうは、自分の病院で起こった問題に対してそういうことでやってもらえるかとか、立場はそれぞれあります。それで、うちのほうでいろいろ検討した結果、それぞれの要求する側から料金はいただこうという、ちょっとファジーな制度をつくったのです。それで、料金規定は独自でいろいろなことを計算した結果は、この検討委員会が提出した5万強のこの額とほとんど一緒で、読影料と撮像料は逆転していますけれども、そういう料金を設定いたしました。それで、実際にどうかというと、司法のほうは料金規定を決めた後は頼まなくなったのです。これはどうかなというのはちょっと問題があるのですが、いちばん多いのはご遺族です。解剖はしたくないけれども、5万円強を払えばそれをしてもらえるならばということで、精度は30%以下だということはご説明した上ですけれども、いちばん多いのはご遺族だという現状です。

○門田座長 それでは、今村先生。

○今村先生 池田先生のおっしゃることは本当にそのとおりだと思っています。別に、山本先生のお答えを私がするのは変なのですが、山本先生もよくわかっておられて、患者の視点というのが抜けてしまうのでそのことをあえて強調されて言われたのかなと私は理解して聞いておりました。とにかく、いまある死因の究明というのがほとんどなされていない状況を少しでも改善するためには、こういうスクリーニングとしてAiを入れたらいいのではないかということについてはほとんどの方も合意というか、同じ考えなのではないかなと私は思っています。

○今井先生 塩谷先生と山本先生のお話を伺って私たちもほぼ同じような意見なのですが、山本先生がおっしゃっているAiのスクリーニングという意味は、私は少し違和感を感じます。病理解剖が減ったのはなぜかというと、画像診断学が進んで、死ぬ直前まで画像も撮れて、遺族もどうして亡くなったのかの説明もきちんと受けていて、そういった場合に新たにAiをやる必要があるかというのは大きな問題だと思います。ですので、Aiをやるには適用をきちんとガイドライン等で決めておく。こういった場合にはAiをやる、そして必要であれば解剖にいく。あるいは、Aiは解剖のための情報として非常に必要だというような位置づけでやっていくというのが必須だと思います。
 もう一つは、私たちは救命救急以外ではあまり経験しないのが法医関係の事例だと思いますが、そこはまた、私は直接法医解剖等の関連の仕事をしていないのでわかりませんが、基本的にいろいろな情報が少ない中でやりますので、先ほど塩谷先生がお見せになられたような、体表からは全く変化がないけれども内臓はミンチ状態だったというようなものはAiでないと無理だと思いますので、そこは、そういった場合を考慮するとスクリーニングという考え方も成り立つと思います。ですので、その状況、院内死亡か院外死亡か、あるいは院内でも本当の異状死と遺族が考えているかどうか等によって考えていくべきかなと思います。

○門田座長 ほかにどなたか。

○隈本先生 実際にどれぐらいの費用がかかるかとか、どのぐらいの人間が要るのだろうかということを具体的に考えてこの検討会で提言すべきだと思うのです。今、その5万円というのはこのAi情報センターにコンサルトを依頼した場合はプラス3万円ということで8万円ということになるのでしょうか。それから、具体的にどのぐらいの人数が実際に診断が必要になるのか。もう一つ、各病院にいろいろなCTがあると思うのですが、実際に診断をするのは各県のAiセンターだけになるのか。それとも、各病院でやった画像をAi情報センターで読影するというのが理想のイメージなのでしょうか。その辺を山本先生にお伺いしたいと思います。

○山本先生 読影に関しては3万円という額で規定させていただいております。各施設で行う場合にはそれぞれの規定がいろいろあるのですが、今のところはそこの施設で検査と読影を行った場合に5万円から5万2,500円、6万円までの間というのがある程度共通認識かなと思っています。あと、どれぐらい行うかと。これは、本当にもし全例行うのでしたら、年間116万体という形になります。全部の死亡になります。そこまでは必要ないだろうと。病院の外でしたら16万体が対象になるかもしれませんが、それも判断が分かれるところです。要は、誰がオーダーを出すか。一つは主治医の先生が判断する場合、もう一つは遺族が判断する場合、そういった場合に要望があったらできる体制を整えて、どのぐらい要望が出てくるか。これはAiの認知度によって違ってくると思うのです。千葉大の場合だと、大体年間400例ぐらい亡くなっているのですが、全例実施しますよというアナウンスをしても年間100体ぐらいです。これは医師がまだよく知らない、特に研修医の方々がAiの意味が分からないというのがありますし、タイミングというのもあると思います。これについては、今後、蓄積していかなければいけないところです。
 あと、Ai情報センターの活用方法なのですが、基本的には、そこの病院で検査と読影をして、遺族が納得していただけるのでしたらそれでおしまいでいいと思います。そこで第三者の意見が聞きたいとか、読影している先生がここは分からないからほかの人の意見を聞きたいと言ったときに、情報センターを活用していただければと思います。

○門田座長 それでは、菅野先生。これで最後の質問にさせていただきたいと思います。

○菅野先生 この問題については、まず医療関連死と異状死と分けて考えないと議論が進まないと思うのです。医療関連死の場合は、Aiは確かに一つの有力な手段になってきます。私自身もそれを読まされたこともありますので、非常に有力な情報が手に入る。しかし、Aiの他にも医療関連死の死因究明には行うべきことがいろいろあります。例えば処置中に突然亡くなられる方の場合は、生体モニタリング情報が付随していることがありますが、その保存規程が定まっていない。モニタリング装置の電源をうっかり切ってしまうと、不整脈がその前にあったのかどうかという情報が保存されない場合があります。大きな施設の手術室等ではそれが保存されるシステムがありますが、それには費用が数千万円かかるというようなことがありまして、それと併せてやる必要があります。それから、Aiの診断有用性が30%というお話がありましたが、十分ではないわけでありまして、ネクロプシーとか生体成分分析等、そういうものも併せて多面的なアプローチをできるような体制をとる必要があるのではないかということが一つあります。
 それから、異状死に関して、今、千葉大学は死体専用のCT施設をお持ちですが、病院は生きている患者を扱っていますので、異状死体の中には感染性の不明な危険な場合もありますから、医療安全あるいは感染制御の立場から、生きた患者ときちっと設備を分けて扱うべきではないかと思います。その場合の死体専用設備も、質の保証が必要だと思います。日本はCT装置が普及しているわけですが、その画像の質は、千差万別でありまして、最低どのぐらいの室の解像度が必要なのか、つまりマルチディテクターCTを必須とするのであれば16列程度を標準とするのかどうかなど、そういう統一基準が必要ではないかと考えます。持ち運び型のCTもあるというお話でしたけれども、それで質の保証ができるのか疑問です。従ってAiに要求される画像の問題をきちんと考えておかないと、Aiが十分機能しないのではないかと思います。それから、読影の問題をおっしゃいましたけれども、先日の日本医学会で、放射線学会から検診画像等の読影を中国に依頼している事例があるというような問題提起があって、放射線読影医のマンパワーが患者の画像読影においてさえ、絶対的に不足しているのではないかという可能性が指摘されました。この問題についても十分に議論しておかないと、Aiをスクリーニング的に使うということに対してはすぐタンド、ギブアップになってしまうのではないかということでありまして、そこら辺りを整理して考えたほうがよろしいのではないかと思います。

○足立政務官 池田先生も菅野先生もおっしゃることは、冒頭、室長がこの検討会の趣旨ということを、この文書以外に話したこともありましたので、いまは質問からだんだんアジェンダ設定になっていますけれども、次回の一つのテーマとして趣旨をしっかりするということをお願いしたいと思います。そこで、相田先生にお聞きしたいのですが、来月改正臓器移植法が施行されます。小児の虐待に対しては、いまお2人の先生からもこれが非常に有用であろうという話がありました。その点に関連してご意見を伺いたいと思います。

○相田先生 最後に発言させていただこうか迷っていたところですが、小児の医療のほうの視点からすると、虐待を見落とさないことは臓器移植法とも関連しますし、非常に大事な問題なのですが、いまのようにAiがご家族の希望やご家族の同意で行われるとすると、連れてくるのは虐待したかもしれない親族、親御さんですので、たいがいAiは希望されないということになってしまうと、制度的にある程度法的な規制をしてもらわない限り、私たちがAiをしたいと思っても拒否されてしまうということになると思いますので、その辺の制度的な問題もあると思います。それがいちばん大きいなと思います。それと、小児というのは必ずしも大人と一緒ではないというか、かなり複雑な問題がありまして、読影する数が少ないといまおっしゃっていただきましたけれども、まして、小児の専門家というのは日本では絶滅危惧種ぐらい人数がいないものですから、例えばAiセンターであっても、さらに小児であるとコンサルトされるようなことになると思うのですが、専門家の育成も含めて医学放射線学会のほうのバックアップも受けて、両方でやらないと、制度をつくっても実際は機能しなくなってしまうということを心配しております。ただ、小児は死亡自体は少ないですけれども、その中でどうしても拾い上げなければならないこと、あるいは医療事故を疑う親御さんというのは、子どもはかわいいですから、率としては多いので、そういうニーズに応えるために、実際のケースは少ないでしょうけれども、また大人の方と違う視点で考えていただきたいとすごく思っております。

○門田座長 ありがとうございました。第1回目でそれぞれ重要な問題がいくつも挙げられてきております。最後に足立政務官から宿題をいただきましたけれども、とにかく最初の段階で本来の趣旨をはっきりと皆さんで共有しているところでスタートするという、これにつきましても次回また引き続き皆さんの意見をお受けするという形でやらせていただきたいと思います。いま出ておりましたいくつかの問題、費用の問題、件数の問題、クオリティの問題、教育も含めてやっていくとか、今日だけでもいろいろな問題が挙がってきておりますので、これにつきましても今後引き続き検討させていただきたいと思います。この検討会も、今の予定では12月いっぱいまでに提言としてまとめたいと思いますが、骨子は冒頭に足立政務官がおっしゃられたように、8月ぐらいまでにある方向性をということが出ておりますので、一応、その方向でディスカッションは進めたいと思いますが、いまのような複雑な話になれば、そんなに簡単でもないかなというふうにも思います。しかし、問題点は徐々にクリアになると思いますので出していきたいと思っておりますので、よろしくお願いいたします。
 今後の予定ですが、例えば医学法射線学会とか、放射線技師会等も含めて、いろいろな現場のご意見をさらにもう少し聞かせていだくし、あるいはそのほかの情報を提供していただけるようなことに対してはこちらからもお願いしたいと思います。また、同時に皆さん方のほうで、この方の意見を聞きたい、というようなものがありましたら事務局のほうにおっしゃっていただきたいと思います。時間も過ぎておりますので、一応、本日の予定していた議題はこれで終わりということにさせていただきたいと思いますが、事務局から何か連絡事項はありますか。

○医療安全推進室長 次回第2回ですが、7月中の開催を予定しております。日程調整はまたさせていただきたいと思いますので、それにつきましてもご協力方お願いいたします。

○門田座長 それでは、本日の検討会はこれで終わりたいと思います。どうもありがとうございました。


(了)
<照会先>

医政局総務課医療安全推進室

室長 渡辺真俊: 内線2570
室長補佐 今川正三: 内線4105

ホーム> 政策について> 審議会・研究会等> 医政局が実施する検討会等> 死因究明に資する死亡時画像診断の活用に関する検討会> 第1回死因究明に資する死亡時画像診断の活用に関する検討会議事録

ページの先頭へ戻る