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2014年8月4日 障害年金の認定(言語機能の障害)に関する専門家会合(第2回)議事録

○日時

平成26年8月4日(月) 17:00~


○場所

厚生労働省 専用第12会議室(12階)


○出席者

構成員

中島八十一座長、石本晋一構成員、加藤元一郎構成員、武田克彦構成員、田山二郎構成員
豊原敬三構成員、夏目長門構成員

○議題

(1)関係団体からのヒアリング

(2)障害認定基準(言語機能の障害)の見直しの検討

(3)その他

○議事

(中島座長)

 定刻になりましたので、ただいまから第2回障害年金の認定(言語機能の障害)に関する専門家会合を開催いたします。

 本日は、ご多忙中、また猛暑のさなかにもかかわらず、本会合にご参集いただきましてまことにありがとうございます。

 構成員の中で石本構成員におかれましては、本日は欠席とのことで承っております。

 それでは、本日の資料と議事について事務局より説明をお願いいたします。

 

(和田事業管理課給付事業室長補佐)

 本日の会合資料を確認させていただきます。座席表、構成員名簿、参考人名簿のほか、お手元の議事次第のもと、資料1といたしまして「日本喉摘者団体連合会からの意見要旨」、資料2といたしまして「全国失語症友の会連合会からの意見要旨」、資料3といたしまして「全日本ろうあ連盟からの意見要旨」、それから資料4でございますけれども、「障害認定基準(言語機能の障害)の検討事項」、資料5といたしまして「障害認定基準(言語機能の障害)の事務局見直し案(たたき台)」、最後に資料6といたしまして「夏目構成員提出資料」をお配りしております。お手元にございますでしょうか。不足がありましたら、お申し出いただければと思います。

 続きまして、本日の議事でございますが、まず初めに、本日ご出席いただきました団体の皆様方から、生活実態の状況や認定基準に関する意見などについてヒアリングをさせていただきます。1つの団体から約10分程度のお話をいただいた後に、構成員の皆様方からご質問いただく時間を5分程度とり、それを3回繰り返して行いたいと思います。そのヒアリングが終わりましたら、見直しの検討を前回に引き続きお願いしたいと思います。また、本会合に当たり、夏目構成員より資料を提出いただいておりますので、簡単にご説明をお願いしたいと存じます。その後、ヒアリングの内容も踏まえながら、ご議論いただきたいと思います。どうぞよろしくお願いいたします。

 

(中島座長)

 ただいま事務局から説明がありましたが、本日は前半をヒアリング、後半を前回、すなわち第1回からの引き続きの検討事項と見直し案のたたき台について議論を進めていきたいと思います。

 まず、参考人として発言いただきます皆様、お忙しい中を本会合にご出席いただきまして、ありがとうございました。限られた時間ではありますが、質疑応答を含めまして、お話をお伺いいたしたいと思います。

 それでは、最初に、日本喉摘者団体連合会の松山様からお話をいただくということでございますので、よろしくお願い申し上げます。

 

(特定非営利活動法人日本喉摘者団体連合会 松山参考人)

 松山です。座ったままお話しさせていただきますので、よろしくお願いいたします。

 このたび、このような機会をいただき、ありがとうございます。資料1に沿って説明させていただきます。

 日本喉摘者団体連合会は、喉頭、咽頭、甲状腺、食道などの腫瘍のため声帯を摘出し、声を失った人たちが食道発声、電気式人工喉頭発声、シャント発声などの代替音声の獲得をお手伝いする全国の58のボランティア団体で構成されています。

 喉頭摘出者は全国に約3万人と言われていますが、多くの場合、病気の再発、生活、経済的・精神的不安を抱えての生活を強いられております。喉摘者の最大の後遺症は、大切なコミュニケーション手段である声を失うことです。術後の訓練で声を取り戻せるといっても、喉摘者が完全に健常者と同じように話せるわけではなく、食道発声では朝起きてからの発声練習が欠かせません。一晩寝ると会話することは難しく、まず発声練習で喉をつくることから始めます。疲れぎみであったり、風邪を引いたりと体力の落ちたときは発声が難しくなります。食道発声は声が小さく、やかましい場所での会話は難しくなります。EL発声はある程度の大きな音量を出すことはできますが、異様な器械音で周囲の方の迷惑になります。

 その他の後遺症としては、首の根元にある呼吸用の永久気管孔から痰を排出しますので、人前では憚られ、人目のない場所で頻繁にちり紙を用いて排出します。ふろでは気管孔に水が入らないように、脇下から上はお湯に浸かれません。シャワーには細心の注意を払います。鼻に空気が通らないため、鼻をかむことはできません。匂いも感知できず、熱いものを口で冷ますこともできません。手術は済んだとはいえ、病院通いは一生続きます。従いまして、実生活では多くの壁があるのが現実です。

 仕事では、営業職だった人は内勤へ、事務職だった人でも職場を変えられたりする人がいます。週3回発声教室へ通うことで、本格的な仕事をするのは難しくなります。声が小さく、健常者のテンポで話せず、会話の輪に入れず、自ら会社を退職する方が多くなっています。私自身も仕事と発声訓練の両立が難しく、仕事を辞めました。

 食道発声の習得、継続には絶えざる努力が必要です。万一発声の練習が途絶えると、発声不能に陥ります。喉摘者は外見でわからないため、さまざまな誤解を受けることがあります。買い物では「下さい」が言えず、病院や役所で名前を呼ばれ、「はい」が言えないで怒られた経験を持つ喉摘者はたくさんいます。気が弱く気おくれする喉摘者は引きこもりになります。私も気管孔にカニューレを入れているため、声がうまく出せませんが、公に話すときはカニューレを外し、発声練習をしてから場に臨みます。カニューレも3時間以上外していると気管孔が狭くなり、入らなくなります。その場合は無理に入れますので、気管孔の周りが傷つき、出血して大変です。

 次に、第1回の障害認定基準の検討課題の資料の中で我々喉摘者に関係する部分は、検討課題3「その他の検討課題」(1)、(2)ですので、この2点ついて意見を述べさせていただきます。

 まず、(1)では、言語機能の障害に関して、常時装着する人工物又は補助用具はあるか。

 シャント発声では、常時プロボックスと呼ばれる飲食物の逆流防止弁つき装着物がついています。EL発声では、発声時にELを補助用具として必ず使います。私のようにカニューレをつける人もいますが、これは発声の邪魔になっても、助けになることはありません。食道発声では、声が小さいので、携帯用の拡声器を使うこともあります。

 次に、その人工物を装着又は補助用具を使用している場合、どのように等級を決定するか。

 後述の参考事例、社会保険審査会の裁定では、音声の解釈は「肺、気管支、気管から送り出されてきた空気は、咽頭にある声門を通り、声帯を振動させる。その結果、音声を生じる」とされていますので、これらの人工物又は補助用具を使ったとしても、これは言語音声とは言えないことになります。

 次に、(2)では、手術を施した結果、言語機能を喪失したものについては、2級と認定する。

 手術後に食道発声の習得や人工喉頭の使用によって発声が可能になった場合でも、声帯による発声は永久に不可能であり、また、前述したように食道発声を始め、その代替音声は極めて不安定なものであるから、2級の認定は妥当なものと考えます。

 喉頭全摘出手術をした場合の他に、例示すべき事例はあるか。喉頭全摘ではないが、喉頭亜全摘手術についてどのように扱うか。舌がんによる舌の切除で発声が難しい場合は、どのように扱うか。

 これらの事例の発声力は、手術内容により、かなり大きく異なるようです。

 次に、参考事例について説明申し上げます。

 平成101225日、喉頭を摘出し声を失った当会会員が食道発声法を習得して社会復帰を果たしたときに、声を取り戻したと認定され、手術当初に認定されて障害基礎年金や障害厚生年金の等級を下げられて支給額が大幅に減額されるという事例が平成9年に発生しました。当会は1年4カ月にわたり、この裁定は不当であると再審議を要求して運動を続けました。平成1012月の再審委員会で全面的に降等裁定を覆し、もとに戻すという新裁定を得ました。この場合の論点は、いかに食道発声に習熟して会話の明瞭度が上がったとしても、獲得された音声は声帯の部分で生成される正常な音声とは異なるものであり、疾病の回復に伴う症状改善と同一視することはできないというものでした。

 このような事態を重く見た社会保険庁では、この裁定を受けて、喉摘者については、いかに食道発声に習熟したとしても術後の無喉頭状態が続いているという解釈に基づいて2級に認定することに決め、このことは平成11年3月10日に社会保険庁内で開かれた障害者認定審査委員事務打ち合わせ会で確認されたのであります。

 裏側に当時の日喉連の会報の詳細が記述されていますので、添付しておきます。参考にしていただければと思います。

 以上です。

 

(中島座長)

 どうもありがとうございました。

 それでは、ただいまの松山様のご意見及び意見書の内容に対しまして、構成員の先生方の中からご質問ございますでしょうか。夏目先生、いかがでございましょうか。

 

(夏目構成員)

 特にございません。よく理解できました。ありがとうございました。

 

(中島座長)

 ほかにご意見ございますでしょうか。田山先生、いかがでございしましょうか。

 

(田山構成員)

 もっともなご意見だと思って拝聴しておりました。

 

(中島座長)

 ありがとうございました。

 それでは、続きまして、全国失語症友の会連合会の八島様と園田様、よろしくお願いいたします。

 

(特定非営利活動法人全国失語症友の会連合会 八島参考人)

 私達は、本来、障害年金とは重い障害を負って日常の生活ができない者が人間として当たり前の生活をしていく上での最低の保障だと認識しています。

 というわけで、つっかえつっかえなものですから、話すとか書くとか、あるいは計算する、聞いたことを理解する、このようなことが失語症の特徴なんです。それから、失語症者の年金が余りにも低過ぎる。それから、障害者の就労が余りにも低過ぎる。これは8%だと言っています。というわけで、そんなことを念頭に置いていただければと思います。

 あとは園田さんにお願いしたいと思います。

 

(特定非営利活動法人全国失語症友の会連合会 園田参考人)

 では、かわりまして園田が発言させていただきます。

失語症は、人間として生活をしていく上で必要不可欠な人との言語によるコミュニケーションを断絶するものだと思います。脳の前頭葉、言語野の言語領域の損傷による言語機能の障害は完治することがございません。したがいまして、失語症の家族は、若い者は、扶養している親が亡くなった将来どのように1人で生活していったらよいか、また大黒柱が失語症に陥ったときに、その家族はほとんど、働き盛りの者が多いものですから、路頭に迷う、家族離散あるいは離婚、自死などの悲惨な現状も表面化しているということを伺っております。

 失語症は、会話が困難ということだけではなく、文章をつくること、理解すること、書くこと、計算すること、聞いたことを理解することがとても困難で、さまざまなコミュニケーションに対する障害のある失語症者が人間として当たり前の生活を送ることは甚だ難しい現状にございます。そして、それらの機能が障害されております上に、ほかの代替手段、つまり指文字や点字などの代替手段がほとんど使えないことが日常生活をさらに困難にしていると思われます。

 また、他の障害と比較してはいけないかもしれませんが、障害者年金1級に該当していらっしゃいます方々でも、社会復帰をなし、就労されている方々が多いと認識しております。ところが、重度の失語症者はコミュニケーション障害という言葉を操る機能が損傷しており、就労が甚だ難しいということでございます。失語症に関していえば、年金におきまして就労権の保障あるいは雇用市場の状況を加味していただいて、年金の認定基準を考えていただくわけにはいかないでしょうかと思います。

 また、失語症は大脳の損傷である障害であるために、失行を伴うことが多いです。失行というのは、ジェスチャ一等も的確にできず、道具なども誤作用することもあります。日常生活は常に見守りが必要な者が多いという現状がございます。ここにも介護者の常の見守りの必要性が生じております。

 就労や復職の状況を見てみますと、第一次産業、自営業、家事補助、いわゆる主婦というか、それがほとんどを占めております。言語を用いる情報の処理の欠かせない職種、いわゆる事務職、営業職、技術職、管理職等への復帰あるいは就労は皆無と言っても過言ではございません。

 このような根拠により、重度であっても失語症のみでの障害の年金基準がもう少し上がってほしいと私どもは思っております。人間として当たり前の生活を担保していただきたい。そのような障害年金の認定基準をお願いしたいと思っております。

 ありがとうございました。

 

(中島座長)

 どうもありがとうございました。

 それでは、ただいまの八島様と園田様のご意見及び意見書の内容に対しまして、構成員の先生方の中からご質問あるいはご意見ございますでしょうか。

 

(豊原構成員)

 実際に認定に携わっている豊原という者ですけれども、失語症の方は高次脳機能障害として、失行も含めて、例えば記憶障害とか遂行機能障害とか社会行動障害とか、そのほかの障害も有しているわけですよね。そういうことであれば、精神の器質性精神障害としても診断書を上げていただければ、併合ができますので、より上位の等級になる可能性は十分あると思います。ぜひとも知っていただきたいと思います。

 

(特定非営利活動法人全国失語症友の会連合会 園田参考人)

 ありがとうございます。加算ということでしょうか。

 

(豊原構成員)

 はい、そうです。

 

(特定非営利活動法人全国失語症友の会連合会 園田参考人)

 精神障害の診断書と身体障害の診断書を2通お出しすると。

 

(豊原構成員)

 そうです。ここは身体障害ではないんですけれども、器質性精神障害としても診断書を上げていただければ、併合認定でより上位等級になりますので、そういう道がありますので、ぜひとも知っていただきたいと思います。

 

(特定非営利活動法人全国失語症友の会連合会 園田参考人)

 ありがとうございます。

 

(中島座長)

 言葉を足せば、障害年金の話であって、障害者手帳の話ではございませんので。

 ほかに。武田構成員。

 

(武田構成員)

 私は武田といいます。大体よくわかったんですが、失語症の方は脳血管障害がやはり多い訳です。そうすると運動麻痺を伴っていることが多いと思うんですけれども、麻痺のない方も確かにいらっしゃると思うんです。私の理解が不十分かもしれませんが、例えば運動麻痺が加わったりしていて、そのために1級になっている方もいらっしゃるかと思うんですけれども、実際には1級になっている方は少ないというふうに考えてよろしいのでしょうか。

 

(特定非営利活動法人全国失語症友の会連合会 園田参考人)

 右麻痺の重度というか、中度ぐらいの方は、失語症が重ければ1級の方がいらっしゃいます。ただ、その方々がどのぐらいいらっしゃるかというのは、すみません、私どもではわかりません。

 

(武田構成員)

 実際問題として、麻痺のない方もたくさんいらっしゃると思うんですけれども、そういう方はやはり2級にとどまっているという認識ですか。

 

(特定非営利活動法人全国失語症友の会連合会 園田参考人)

 2級より3級のほうが多いと聞いております。

 

(武田構成員)

 どうもありがとうございました。

 

(中島座長)

 ほかの先生方はよろしゅうございますか。どうもありがとうございました。

 それでは、最後になりますが、全日本ろうあ連盟の長谷川様、お願いいたします。

 

(一般財団法人全日本ろうあ連盟 長谷川参考人)

 こんにちは。ただいまご紹介いただきました一般財団法人全日本ろうあ連盟副理事長の長谷川と申します。よろしくお願いいたします。

 私は、聴覚障害、それから言語障害の2つをあわせ持っております。私の経験の立場から申し上げますと、このレジュメに書いてありますように聴覚障害者の場合、その聴覚の程度または音声言語の獲得環境により音声発声ができない方もいます。また、発語しても、発声機能が喪失している場合もあります。しかし、多くの聴覚障害者の場合は、自分自身が聴覚障害を持っておりますので、音声を自分の耳で聞き取るということが困難です。ですから、国民年金、厚生年金、障害者認定基準にあります言語機能喪失ということについてのそれによって年金を申請できるという認識というものが希薄な面があります。

 また、聴覚障害者の場合、自分自身の言語機能として、手話や音声言語による文字等によって意思疎通を行いますが、手指の例えば欠損によって手話での会話が困難になる方々もおられますし、また視力が低下した場合に文字が読めないということで、聞こえない、見えないという非常に重い困難を発生している方々も多くおられます。このような実態というものを障害者認定の中でぜひとも勘案し、配慮をご検討いただければ幸いです。

 それから、やはり聴覚障害者にとって一番大切なことは、手、目という機能です。24時間365日、手話が必要ですので、手をけがしない、あるいは視力が低下しないように気を付けています。もし四肢欠損があった場合には、コミュニケーションができません。もし目が見えない、耳が聞こえなくなった場合、全くの暗闇の中で、いわゆるヘレン・ケラーのように三重苦という生活を強いられるということになります。ですから、私としては、時々、少し目にごみが入った程度でもすぐに病院に行くなど、視力を非常に重要にしております。例えば、手が痛いとなったら、すぐに医師の診断を受けるようにしています。手話は手や目が非常に重要になることからきています。

「音声又は言語機能の障害」があるものの認定基準に、2つの項目があります。音声又は言語を喪失する、又は音声・言語機能を著しく損なっているために身振り等によって補完するというようなことが必要なものという記述があります。また、4種の語音のうち3種以上のものが、例えば発声不能や不明瞭だということのために、日常生活の会話が誰にでも聞き取り、理解することができないものというような記述があります。

 聴覚障害者の場合は、自身の発音を自分の耳で確認できないという状況がありますので、一般に発音訓練、発声訓練をいたします。しかし、発音訓練をしたとしても、発語の状況というのは非常に個人差が大きいという特徴がありますので、聴覚障害者の障害程度に必ずしも比例をしないということも一つの特徴になっています。

 また、語音によって、例えば発声することと、また文章によっての会話の中で発声するということについては、その聞き取りやすさというものは全く別物とも言えます。例えば、語音の一つ一つが明確に発声できたとしても、これが文脈の中で、会話の中で用いるといった場合に非常に不明瞭になる聴覚障害者もかなりおります。例えば1つ、「か」と「が」とか「さ」ということは発音が明瞭、しかし、例えば「きょうはとても暑いです」というような文脈の中で発音する場合にはなかなかうまく伝わらないというケースが多いです。

 ですから、語音によって4種類の語音のうち3種類以上がということで掲げられておりますが、これは音声による日常生活の中で理解が困難な基準ということにそぐわない面があるのではないかと考えられます。音声による日常生活の会話の中での理解の度合いがどうであるかによって考えるべきで、語音の一つ一つの明瞭さによって確定するものではないと考えますので、ぜひ言葉の組み合わせ等さまざまな、例えば文の長短、音の高低差・強弱等、また短文、長文などを用いた発音の明瞭さというようなことを勘案しながら、文章に伴った日常生活の会話の理解度によって判断できるかどうかということも重要な要素となります。したがって、4種の語音の発語による明瞭度のみで判断するということではなく、繰り返しますが、日常生活の会話によって成り立つかどうかという、あらゆる要素を勘案した総合的な判断をぜひお願いしたいと思っております。

 聞こえる人たちは、単語の例えば「が」とか「あ」とか、そういう言葉のきれいさというものに重きを置いたと思いますが、実は日常生活での会話というものが非常に重要になります。

 実は、ある聾者の例なのですが、仕事を終わって信号待ちのときに、ある高齢の方が暑くて倒れた場面を見たんです。すぐに対応しなければと支援をしようと思ったんですが、自分の発語がうまく伝わらないのではないかということで臆しまい、十分な支援がし切れないということがありました。一言、声をかければいいのでしょうけれども、例えば「大丈夫ですか」といった言葉の組み合わせの中で、その高齢者の方とうまく会話ができないというような場合があります。

 また、自分自身の経験を申し上げますと、岡山駅で、上りのエスカレーターで年配の方が転倒しました。目の前で見て何とかしなければと思ったんですが、私は声がうまく出せないということでちゅうちょしてしまいました。でも、とにかく支援しなければと思ったのですが、私がいるから、周りの人たちは何も手を出さない。私は声も聞こえない。皆さんから見えない障害です。私だけに任されて、余り周りの人が手をかしてくれなかったので、私は筆談で「皆さん、助けてください」とアピールしたんです。そのように、一つの発語だけではなく、長い会話ができないというところで大きな支障があります。それをご理解いただきたい。

 それから、3級の認定基準が書かれていますが、「日常会話や電話による会話」は家族は理解できる、しかし他人は理解しがたい程度というような文言があります。音声言語による日常生活の不自由さということに対して本当に正しく反映できる基準になっているかどうかと思います。家族は理解できるかどうかという文脈ですが、そうではなくて他者に自分の意思が伝えられるということ、伝えることができるかどうかということが非常に重要になりますので、「家族は理解できる」という記述は見直していただければと思います。

私は母とコミュニケーションを全くできません。父も同じです。発語を家族が聞いて何とか理解はできますが、例えば将来の仕事の問題等、人生において大事な問題等については、やはり筆談せざるを得ない。家族ですら、そういう状況です。短い、例えば「寒い」とか「暑い」など日常生活レベルでしたら、ある程度伝わる。そのレベルなんですね。家族ですらそうなんです。本当に自分の考え方を伝えるということは、家族ですら、音声では無理なんです。聴覚障害者のほとんどが同じような経験を持っています。

 また、電話においても同様に、一方通行なのです。つまり、自分が家族に電話をかける。家族はその電話を聞いて、わかったようなわからないような、微妙なんですけれども、恐らく家族は、自分の息子のことですから、勘で何かこういうことを言っているだろうという、あくまで想像なんです。伝わっているわけではありません。

 自分の経験もそうです。今は、携帯からメールを発信できますが、私が若いときは公衆電話以外に通信手段がありませんでした。公衆電話を触り、何か振動があったら、(お金が落ちて)向こうが多分受話器をとってたのだろう。「お、か、あ、さ、ん」と辛うじて声を絞り出して言うと、母は「はい」と言っているんでしょうけれども、私には聞こえません。お父さんが出たのか、お母さんが出たのかもわかりませんし、家族の誰が出たのか私には全くわからない。そういう電話のかけ方以外になかったのです。

 「今日は遅くなるので友達の家に泊まります」と、とにかく言って切る。多分家族は聞いているだろうと思って切るだけなんです。翌朝、家族から怒られました。「遅くにどこへ行った」と。私は「電話したじゃないか」と。でも、電話で何を言ったかわからず、いたずら電話だと思って、家族は電話を切ってしまった。私が話していた声は家族には伝わっていなかったんです。そういうことが多々あります。

 

(中島座長)

 恐れ入ります。時間をかなり超過していますので。

 

(一般財団法人全日本ろうあ連盟 長谷川参考人)

 すみません。最後、3番だけお願いします。

 聴覚障害者の場合には、音声機能障害で聞き取れない結果、発語がうまくできないということもありますが、聴覚障害者の言語機能の認定について、実は声の言語機能の認定のことを知らない聴覚障害者がいます。聴覚障害ということだけの認識は持っていますが、言語障害の認定があるということを聴覚障害者のほとんどの人が知らないのです。ですから、きちんとした言語機能障害の認定があるということを周知することもぜひお願いしたいと思います。

 長くなって申しわけありません。以上です。

 

(中島座長)

 ありがとうございました。

 ただいまの長谷川様のご意見及び意見書について何かご意見ございますでしょうか。田山先生、いかがでございましょう。

 

(田山構成員)

 私、第1回目の会議で指摘というか、発言させていただきましたが、確かに発音不能な言語を何種類かで音声言語機能を判定するのは難しいと。実際の症例でも音声言語の機能と発音不能な言語がマッチしていない症例も多く、これは参考として取り扱うべきだというような意見でございます。

 それから、会話状態に関してですが、家族というのはご本人のバックグラウンドを知っているという意味合いだと思います。そして、聞く態度が非常に熱心に聞いてくれるということを前提にしていると理解しておりまして、それから電話というのは単なる音声のみの情報で、対面して話をすると、いろいろな他の情報が入ってきますから、より理解しやすくなるといった規定で、これが以前あったものだと理解しております。ただ、非常にあいまいなところをもう少し現在に合ったような方向づけができれば、より明確になるとは思っております。

 どうもご意見ありがとうございました。

 

(中島座長)

 ありがとうございました。

 それでは、当事者団体の方々からのお話は以上ということにいたしたいと思いますけれども、全体を通じて何か、手短にお願いいたします。

 

(一般財団法人全日本ろうあ連盟 長谷川参考人)

 3団体の考え方、意見は同様だと思いますけれども、障害者権利条約、日本政府としても批准をしましたので、障害者権利条約については、今までの医療モデルという考え方を社会モデルに転換するという形になりました。このような社会モデルという観点から、あらゆる社会参加ができるという文化的な、言語的な、制度的な障壁なるものを排除する必要があると思います。

 ですから、同じように、例えば医学的なといえば、発語レベルで決定するのではなく精神、メンタルの面というものも非常に大きな負担がかかってくる。社会参加がなかなか難しく引きこもり状態になり、1人で悩んでしまうというご発言もありました。人々とつき合いができない。その精神的な部分は大きな負担です。例えば、会社に入っても、結局は雇用条件もなかなか難しく、隅の方で窓際というような形で働かざるを得ないという社会的ないろいろな制約も出てきます。また、経済的な格差というものも問題として発生しておりますので、そういう現状から、社会モデルというものをぜひとも勘案していただければありがたいと思います。

 以上です。ありがとうございました。

 

(中島座長)

 それでは、参考人の皆様、今日はご多忙中、貴重なご意見をいただきましてありがとうございました。

 ここで参考人の皆様には席を後方に移っていただきたいと思います。その上で、次の議事に進みたいと思います。

 それでは、事務局のほうから資料の説明をお願いいたします。なお、本日の資料は、前回、第1回目の議論を踏まえたものとなっています。この後の議論では、先ほどの当事者団体の皆様方のヒアリングも参考に行っていただければと思います。

 事務局、お願いいたします。

 

(大窪障害認定企画専門官)

 それでは、お手元の資料4「障害認定基準(言語機能の障害)の検討事項」及び資料5「障害認定基準(言語機能の障害)の事務局見直し案(たたき台)」について説明させていただきますので、お手元に2つの資料をご用意いただきたいと思います。

 まず、資料4ですが、こちらは前回の第1回専門家会合で構成員の先生方にご議論いただいた内容につきまして、検討課題ごとに異論が出なかった事項と、今回の会合でさらにご検討いただきたい事項に分けて記載しております。また、資料の下段には前回会合で構成員の先生方からいただいた主なご意見を記載しております。

 次に、資料5についてですが、こちらは前回会合での議論を踏まえ、一部についてですが、認定基準の事務局見直し案を議論のたたき台としてお示ししているものです。なお、朱書き部分が変更した箇所になります。

 それでは、資料4の1ページ、検討課題1、「対象疾患の定義について」をごらんください。併せて、資料5の13ページをご覧ください。なお、見直し案のページについてですが、これは障害認定基準(全文)における該当ページをそのまま抜粋しておりますので、13ページ、14ページとなっているものです。ご了承ください。

 検討課題1、「対象疾患の定義について」ですが、前回会合では、「音声・構音障害」「失語症」「耳性疾患」それぞれの症状などの定義をよりわかりやすく整備することについては、異論が出なかった事項としております。

 前回会合で、言語機能の障害はいろいろなところで起こるので、「構音障害」「音声障害」「失語症」「聴覚障害」というように症状や損傷の場所に分けて並列に記載すると、もう少し明確に規定できるのではないかとのご意見があったことから、ご意見を踏まえて見直し案を作成しております。

 資料5の13ページをごらんください。

 本検討課題に係る見直し案を2点ご説明いたします。

 1つ目は、節の表題を「音声又は言語機能の障害」に変更したものです。

 2つ目は、認定要領(1)の定義を整備いたしました。

 まず、1つ目についてご説明いたします。

 本節では、表題が「言語機能の障害」となっているものの、認定基準内では「音声又は言語機能の障害」という記述になっており、表記内容が統一されておりません。本節の対象障害をより適切に表現しているのは「音声又は言語機能の障害」であると思いますので、今回変更したいと考えております。

 次に、2つ目についてご説明します。

 認定要領(1)の定義について、まず「音声又は言語機能の障害」を「発音にかかわる機能又は音声言語の理解と表出にかかわる機能の障害」と定義しました。

 次に、その具体的な障害を症状や損傷の場所に応じて「構音障害又は音声障害」「失語症」「聴覚障害による障害」の3つに分けることとし、それぞれの障害の状態を次のように記載いたしました。

 ア「構音障害又は音声障害」につきましては、「歯、顎、口腔(舌、口唇、口蓋等)、咽頭、喉頭、気管等の発声器官の形態異常や運動機能障害により、発音にかかわる機能に障害が生じた状態のものをいう」、イ「失語症」については、「大脳の言語中枢の後天性脳損傷(脳血管障害、脳腫瘍、頭部外傷や脳炎など)により、一旦獲得された言語機能に障害が生じた状態のものをいう」、ウ「聴覚障害による障害」については、「先天的な聴覚障害により音声言語の表出ができないものや、中途の聴覚障害によって発音に障害が生じた状態のものをいう」としております。

 この際、検討事項として挙げております「脳性(失語症等)」、それから「耳性疾患」をどのように定義するかについてですが、「脳性(失語症等)」につきましては、失語症のほかに発声、構音器官の神経や筋に障害が出る運動性構音障害や脳性麻痺に伴う障害などがございますが、前回会合で失語症などの中枢性の障害と末梢性の障害は明確にしたほうがよいというご意見がございましたので、脳性とされる障害のうち、失語症以外は構音障害又は音声障害に含めることとしました。耳性疾患につきましては、前回会合で、高度な難聴では構音が自分で確認できないため、言語のひずみが出るといった障害があるというご意見がございましたので、引き続きこの節の対象障害とした上で、その病態をあらわすべく「聴覚障害による障害」と記載を改めました。

 この見直し案について、先生方のご意見をいただければと思っております。

 次に、資料4の2ページ、検討課題2の-1、項番(1)「「発音不能な語音」の評価」をごらんください。あわせて、資料5の14ページ、認定要領(5)もごらんいただければと思います。

 現在、発音不能な語音につきましては、「4種の語音」のうち、発音不能な語音が幾つあるかといったことが障害等級の判断基準となっておりますが、前回会合において、「4種の語音」は、「会話状態」と診断が平行していない。音声・構音障害の状況を見る参考には使えるが、語音数で等級と結びつけることからは外すべきであるというご意見があったことなどから、「4種の語音」は評価項目とはしないことを異論が出なかった事項としております。

 そこで、今回検討していただきたい事項として2点挙げてございます。

 1つ目は、「4種の語音」に代わる評価項目はあるかです。

 前回会合では、語音発語明瞭度検査のご提案がございましたが、同検査を現場で行うのは難しいのではないかという意見もございました。この件について、引き続きご議論をお願いしたいと考えております。

 2つ目は、発音の状態を確認する検査を、評価の参考として診断書に記載することを求めるか。この場合、現行の「4種の語音」を評価の参考とするかについてです。

 これは、前回会合での意見を踏まえ、「4種の語音」を評価項目とはしない場合であっても、会話状態における評価を補完又は裏づけする参考とすることができるのではないかと考えたものです。

 ここで、資料5の認定要領(5)をごらんください。

 これはあくまでもたたき台ということで、ごらんいただきたいのですが、現行の「4種の語音」は評価の参考として、ほかに、例えば語音発語明瞭度検査等が行われた場合はその結果などを診断書に記載していただき、それを確認するという方法もあるのではないかと考えたものとなっております。これらについてご意見をいただきたいと思います。

 続けてご説明します。資料4の3ページ、項番(2)の「失語症に関する発語等の評価」をごらんください。

 こちらにつきましても、前回会合で、失語症の場合は、発音不能な語音は参考材料でよいのではないかというご意見があったことなどから、「4種の語音」は評価項目とはしないことを異論が出なかった事項としてまとめております。

 また、今回検討していただきたい事項として、2点挙げております。

 1つ目は、失語症の重症度を判定できる適切な評価項目はあるか。

 2つ目は、「会話状態」の評価の参考となるものはあるかです。

 これに関しまして、4ページに評価項目又は評価の参考のたたき台の案として2例挙げております。前回の会合で、実際の認定事例を10例ほどご紹介しました際に、診断書の「現症時の日常生活活動能力および労働能力」などの記載欄に記載されていた内容が失語症の重症度の判断に非常に重要な項目となっていることをご説明いたしました。このたたき台の案につきましては、認定場面において失語症の重症度に係る情報をより簡便に得られるようにできないかと考え、作成したものでございます。

 まず、例1ですが、こちらは日常的に使用する単語や文章が話せるか又は理解できるかという観点から失語症の重症度を確認するものとなっています。項番1から3では単語の呼称や文章の発話の可否を確認し、項番4から6では単語及び文章の聞き取りの可否を確認します。

 続いて、例2でございますが、こちらは日常生活における基本的な動作の可否から失語症の重症度を確認するものとなっています。各項目の左の欄は失語症患者の発話の可否、例えば項番1ですと、ご自分の名前や住所が言えるか否かについて確認し、右の欄は失語症患者の話しことばの理解、例えば項番1ですと、「あなたは誰々さんですね」と聞かれたときに自分の名前が理解できるかを確認いたします。

 なお、両例の現在空欄としている評価方法やメリット・デメリットについてですが、これらたたき台の案を仮に評価項目とした場合には、具体的な評価方法をどうするか、例えばどの項目に幾つ該当した場合はどうするかといったことや各例を運用現場で実施することが可能かといったことなど、考えられるメリット・デメリットなどについて先生方のご意見をいただき、その結果を第3回会合でお示ししたいと考えております。

 続けてご説明します。

 資料4の5ページ、項番(3)の「「会話状態」の評価」をごらんください。

 こちらについては、前回会合で異論が出なかった事項として、現行の「会話状態」を引き続き評価項目としつつ、失語症の症状も勘案した、よりわかりやすい表現にすることとなっております。

 また、前回会合でのご意見を踏まえ、今回検討していただきたい事項として3点を挙げております。

 1つ目は、「話しことばの理解」も取り込んだ評価とすることでよいか。

 2つ目は、ボストン失語症重症度評価尺度を参考に見直すこととしてよいか。

 3つ目は、「読み書き」については、どう取り扱うかです。

 このうち、上の2点に関しましては、議論のたたき台として、6ページの右側に「会話状態」の変更例を挙げております。ごらんください。

 なお、左側の会話明瞭度検査は、前回会合にて構成員の先生からご提案があったものです。真ん中のボストン失語症重症度評価尺度は、原文と訳文をそれぞれ併せて載せております。

 「会話状態」の変更例ですが、まずボストン失語症重症度評価尺度の評価手法を参考とするに当たり、現在4段階の「会話状態」の各尺度が6段階あるボストン失語症重症度評価尺度のどの区分に近いか考え、「会話状態」の区分4がボストン失語症重症度評価尺度の区分0に、「会話状態」の区分1が評価尺度の区分3に相当するのではないかと仮定し、各区分の表現を参考に変更したものでございます。例えば、ボストン失語症重症度評価尺度の区分0、「実用的な話しことばも理解できることばもない」は「会話状態」の区分4、「日常会話が誰が聞いても理解できない」と同程度、ボストン失語症重症度評価尺度の区分3の文中にございます「日常的な問題の大部分について、ほとんど、または全く援助なしに話すことができる」は「会話状態」区分1の「日常会話が誰が聞いても理解できる」と同程度と考えられます。また、同様に「会話状態」の区分3及び区分2につきましては、ボストン失語症重症度評価尺度の区分1及び区分2の表現を参考に、それぞれ修正することといたしました。

 修正に当たりましては、現行の発話面の状態に言語理解面の状態も加味し、かつ各々の障害の程度が判断しやすいようにしております。例えば、変更例の区分4では発話が全くできない場合、言語理解が全くできない場合、発話と言語理解の両方が全く又はほとんどできない場合のいずれかに該当し、日常会話が誰とも成立しないものを2級相当としています。区分3から区分1についても、同様に修正しているところです。当方の考え方も含め、変更例を参照していただきつつ、ご意見をいただきたいと考えております。

 続けて、資料4の7ページ、「等級判定の基準について」をごらんください。

 等級判定の基準ですが、これは資料5の13ページ、認定要領(2)から(4)に当たりますが、その評価項目でございます「発音不能な語音」及び「会話状態」については、本会合にて見直し方法をご議論いただくこととなっておりますので、その内容を踏まえた上で見直し案を第3回会合にてお示しし、ご議論いただきたいと考えておりますので、今回このページに関するご説明は省略させていただきます。

 続きまして、資料4の8、9ページ、検討課題3、項番(1)「人工物の装着や補助用具を使用している場合の判定について」をごらんください。あわせて、資料5の14ページ、認定要領(7)をごらんください。

 前回会合では、言語機能の障害、主に構音障害、音声障害におきまして常時装着する人工物や常時使用する補助用具があるとした場合、どの状態をもって、どのように等級判定すべきかについてご議論いただきました。その中で、顎顔面補綴物につきましては、欠損部に補てんすることで構音障害の改善が可能であり、永続性があるので、装着後の状態で判断すべきであるとのご意見がありました。

 また、8ページの一番下に記載しておりますが、第5節「そしゃく・嚥下機能の障害」の認定基準におきましては、「歯の障害による場合は、補綴等の治療を行った結果により認定を行う」となってございます。これらを踏まえ、ご意見にありました顎顔面補綴物については、補綴等の治療後の状態で認定を行うことが一つの方策ではないかと考え、たたき台の案として示させていただきました。

 なお、ここで検討事項として2点挙げておりますように、顎顔面補綴物以外に、常時装着する人工物又は常時使用する補助用具はあるか、また、人体に永続的に装着され、障害状態の改善が見込まれる人工物については、装着後で判定すべきか、他に考慮すべき点はあるかについて、本会合でご議論いただきたいと思っております。

 最後ですが、資料4の10ページ、検討課題3、項番(2)「喉頭全摘出手術した場合の基準について」及び「喉頭全摘出手術した場合の他に、例示すべき事例はあるか」についてごらんください。あわせて、資料5の14ページ、認定要領(6)をごらんください。

 こちらでご検討いただきたい事項は、喉頭全摘出手術をしたものは、手術後に食道発声法の習得や人工喉頭の使用によって発声が可能となった場合も含め、発音にかかわる機能を喪失したものとして、2級と認定してよいか。また、喉頭全摘出手術をした場合の他に、例示すべき事例はあるかになります。

 前回会合でも同じ事項についてご議論をいただきまして、喉頭全摘出手術につきましては、手術後の食道発声法の習得や人工喉頭の使用があっても、本人の音声とは異なるので、等級は現行のままがよいとのご意見がございました。これを踏まえ、引き続き2級と認定することでよいか再度確認させていただきたいと考えておりますので、ご意見をいただきたいと思います。

 加えて、資料5の14ページ、認定要領(6)について、見直し案を提案させていただきました。

 これは、先ほどご説明いたしました認定要領(1)の「対象疾患の定義について」の中でお示しした見直し案において、構音障害又は音声障害は、「発音にかかわる機能に障害が生じた状態のもの」として定義することとしたところです。この定義とあわせて、今回、「発音にかかわる機能を喪失したもの」に変更したものでございます。また、喉頭全摘出手術をした場合の他に、例示すべき事例がございましたら、ご意見をいただきたいと考えております。

 以上、私のほうからの説明を終わらせていただきます。ご議論のほど、どうぞよろしくお願いいたします。

 

(中島座長)

 ありがとうございました。

 続きまして、夏目構成員のほうから資料6として提出資料を受けましたので、簡潔に説明をお願いいたします。

 

(夏目構成員)

 お手元の資料6でございます。

 言語機能障害においては、より客観的に判断するという改善が必要ですが、現在までは診断書の6センチ×5センチぐらいのスペースしかなかったという現状がございました。そこで、前回提案をさせていただきましたのが、診断書の裏面を利用して評価の内容をより正確で客観的なものにしたらどうかということでございます。

 それから、2点目としては、言語聴覚士という制度ができて、私も国家試験幹事等をやってまいりましたけれども、前回の改定時にはまだこの制度は経過段階でございまして、国家資格を有して正規の教育課程を学んでいる言語聴覚士のみではなくて、現場でそういった特別なトレーニングを踏んでいない者もおりましたが、それより16年たちまして、現在ではほとんどの言語機能障害を判定する医療現場においては言語聴覚士が配置されていますので、発語明瞭度、それから発話明瞭度の判定が可能になっております。そういったことを踏まえて、施設によって、患者さんの中でもこの先生は診断評価が辛いとか甘いとかということが言われておりますので、そういったことがないような客観的な数値であらわしていったらどうかというふうに思っております。

 次のページをお願いいたします。具体的に例を示しました。

 言語機能の評価におきましては、会話の明瞭度を1から5で判定いたします。発語明瞭度に関しましては、パーセントで客観的に数字で示します。そして、ここで歯牙以外の欠損がある場合、ない場合、それから歯牙のみの欠損の場合というふうに分けさせていただいておりますが、お示しいただきました装具の装着状態におきましても、聴覚障害では補聴器の装着前の状態、松葉杖でも松葉杖をしない状態、それから先ほどヒアリングでもお話が出ましたが、大きな欠損のある方の場合は長時間話すことができないであるとか、話としては理解できるけれども、音の質が違うといったような問題がございますので、ほかの障害との判定の平等性を保つという意味では、そしゃくと同様に、歯のみない場合は補綴物装着後、しかし上顎や舌が切除されているといったような実質欠損がある場合は、ほかの聴覚でありますとか四肢と同じように装具の装着前の状態ですべきだと考えております。また、この面に関しましては、従来の表面で十分記載は可能と考えております。

 裏面の利用についてでございますけれども、先ほど来4種類の分類で不十分ということがございましたが、実際にはその4種類の項目の重さによって会話の状態が全く違うということがありますので、より具体的に、ここに示しましたような客観的に全ての音を表記できるようにしたらどうかと考えております。ただ、これに関しましては、参考として、また、より客観的に再現性を持たせるという意味での記載ということを考えております。

 次のページをお願いいたします。

 会話の明瞭度につきましては、参考資料を出させていただいておりますが、10段階、5段階とございますが、5段階の簡易法でいいと思っております。

 発語明瞭度におきましては、ここに示しますような各パーセンテージの言語障害の判断がされていますので、それを準用してはどうかと思っております。

 最後に、失語症に関連してでございますが、一番最後のページを見ていただきたいと思います。

 失語症重症度の認定についてということで、一番最後のページでございますが、先般もボストンの資料を出させていただきまして、幾つか意見を賜りました。その中で、やはり海外の情報も考えながら、今回の認定とした場合に、試案1と試案2を出させていただいておりますが、特に時間を短縮する意味で試案2を説明させていただきます。

 試案2は、試案1との大きな違いは、実用となる読み書きの能力について記載をしております。自分の名前がごく限られた単語のみ書ける、こういったことを入れることにより、より客観的に判定ができると考えておりますので、私としては試案2を採用してはどうかと考えております。これはあくまでも試案でございます。

 先ほどいただきました資料に関しまして、例えば前にいただいた資料によりますと、電話の対応ができるできないということは臨床の現場で確認することが困難でございます。また、ほかの項目もそうですが、家族の方の意見を聞く問診の形で診断をしなければいけないので、客観性という意味では、臨床の現場で診断医が幾つかの行動で判断できるような項目ということで、こういった項目に仕分けさせていただいております。

 以上です。

 

(中島座長)

  夏目構成員、どうもありがとうございました。

 それでは、先ほど事務局から提示がございました検討事項について、構成員の先生方にご意見をお伺いしたいと思います。検討課題ごとに順次検討を加えていきたいと思いますけれども、一言加えますれば、まだこの会合は次回、次々回と続きます。従いまして、今日合意をしたものが絶対的なものではなくて、後刻、先生方で、よく考えたらこうだと思われることがあろうかと思います。従いまして、本日1つずつ検討課題を押さえていきますけれども、それが絶対ではございませんので、その点はお含みおきの上、議論をしていただければと思います。その上での合意形成でございます。

 最初に、資料5、たたき台の13ページにあります障害の定義について議論をお願いしたいと思います。資料の4につきましては、1ページの検討課題1ということになります。

 前回の検討事項としては、脳性の失語症や耳性疾患について、どのように定義するかということで、たたき台としてこのようなものが出てきたわけですけれども、この記載内容でいかがでしょうか。

 

(豊原構成員)

 その前に、実際の現場で認定している者といたしましては、知っておいていただきたいのは、この診断書というのは神経内科の先生とか脳神経外科、精神科の先生方、耳鼻科の先生、それからまた専門分野が異なる開業医の先生方も作成しなければいけないということなので、余り専門的になり過ぎても診断書が作成できなくなる可能性もありますので、そのことも踏まえてご議論していただきたいというふうに考えております。

 

(中島座長)

 今、豊原構成員の言われることは、要するに医師だけで医療専門職がいない施設でも書く必要があるという理解でよろしゅうございましょうか。

 

(豊原構成員)

 はい。

 

(中島座長)

 それでは、この定義について、いかがでございましょう。加藤先生。

 

(加藤構成員)

 ここは、この前議論したとおり結構よくまとまっていて、これでいいのではないかと思います。

 

(中島座長)

 ほかにご意見ございますでしょうか。

 

(武田構成員)

 失語症の定義のところでもよろしいですか。最初のところ、「大脳の言語中枢の」と書いてあるんですが、言語中枢というのは難しいので、例えば最近は言語野と言われていることが多いのではないかと思うんですけれども、フィールドとかエリアと。言語野のほうがいいのではないかと思います。

 

(中島座長)

 ありがとうございました。貴重なご意見として考えてみたいと思います。

 ほかにご指摘の点はございましょうか。

 そうしますと、言語中枢でいくか言語野でいくかというところは、先ほど述べましたとおりで、広く先生方一般が、ご専門でない方もこの書類を書かれると思いますので、どちらが適切かということを勘案した上で文言を整えたいと思います。おおむねこのたたき台の案で合意が得られたというふうに考えたいと思います。

 続きまして、資料4、検討事項の2ページにあります「「発音不能な語音」の評価」についてご意見をお願いしたいと思います。資料5のたたき台のほうでは、14ページの(5)のところになります。

 前回の検討では、現行の「4種の語音」は評価項目とはしないということで合意を見ております。従いまして、検討事項といたしましては、「4種の語音」に代わる評価項目はあるか、発音の状態を確認する検査を評価の参考として診断書に記載することを求めるか、この場合、現行の「4種の語音」を評価の参考とするかということになります。その上で(5)のような記載をいたしたわけですけれども、構成員の先生方のご意見はいかがでございましょう。

 

(夏目構成員)

先ほど申し上げましたが、実際、臨床では、例えば歯茎音に障害が集中した場合は、ほとんど会話はできないんだけれども、軽い認定になってしまう。ところが、非常に軽くても、口唇音と歯茎音と軟口蓋音に若干でも問題があれば重い判定になってしまうということで、臨床では現状の障害の認定に関しての客観性、この問題は患者の側からも現場からも指摘されていますので、そこの部分に関しましては、先ほども簡易に診断できるということと客観性に関しては慎重にご検討いただきたいというふうに考えております。

 以上です。

 

(中島座長)

 ありがとうございました。従いまして、前回の合意事項としてこれを評価項目とするのでなく、これができないという評価の参考とするということで、先生、よろしゅうございましょうか。

 

(夏目構成員)

 もちろんです。

 

(中島座長)

 田山先生、いかがでございましょう。

 

(田山構成員)

 よろしいかと思います。障害部位に応じた発音項目ですから、そういう意味では参考資料としては十分役立つと思っています。

 

(中島座長)

 それでは、「「発音不能な語音」の評価」については、たたき台の案でひとまずいきたいと思います。また、後刻、先生方のお考えで異論が生ずるようであれば、また次回ご意見を伺わせていただければというふうに思います。

 続きまして、資料4、検討事項の3ページから4ページ、「失語症に関する発語等の評価」について、参考例とあわせてご意見をお願いいたします。資料5、たたき台のほうにつきましては、今回の議論を踏まえて検討するとなっていますので、ご覧いただく必要はございません。どの部分かと申しますと、13ページから14ページにかけての(2)から(4)でございます。ただし、今日のところは、このたたき案のほうは伏せていただいて、資料4の3ページから4ページにかけての部分をご検討いただければと思います。

 すなわち、「失語症に関する発語等の評価」、前回異論が出なかった事項は、現行の「4種の語音」でもって失語症の評価項目とはしないということ、検討事項といたしましては、失語症の重症度を判定できる適切な評価項目はあるか、あるいは「会話状態」の評価の参考となるものはあるかということで、4ページに1つの案が提示されておるわけでございます。そして、前回の第1回専門家会合におきましては、豊原構成員から、失語症の場合は、「発音不能な語音」は参考材料程度に留めるということでよいのではないかというご意見があったことをつけ加えておきます。

 先生方、いかがでございましょうか。

 

(豊原構成員)

 「失語症の重症度を判定する評価項目又は評価の参考について」、資料4の4ページですけれども、私としては例1のほうがわかりやすい。表出面1、2、3、それから4、5、6は理解面ですね。例1のほうが私はわかりやすいというふうに思います。

 

(中島座長)

 夏目先生、いかがでございましょう。

 

(夏目構成員)

 先ほど申し上げましたように、この中でも一番大事なことは、診断をする診断医ができるということと、それからいろいろな要因を含むということになりますと、電話の対応ができるできないはなかなかその場では判断ができない。それから、例えば読み書きができるという部分に関して、例1の場合ですと、単語の理解が読み書きということになるのかわかりませんが、書くというファクターは大事な項目なので、私はそういったことも含めて試案で出させていただきましたが、そういった要素を含めていったほうがいいのかなというふうに考えております。

 以上です。

 

(中島座長)

 加藤先生、いかがでございましょう。

 

(加藤構成員)

 ちょっと議論を変にするかもしれませんが、4ページのやつは失語症の重症度判定というか、よくわからなくなってしまっているんです。失語症の重症度を判定するのは、どちらかといえば6ページにあるBDAEの翻訳版みたいなもので、これは会話状態を評価しているのではないんですか。4ページは、ここが逆転しているような気がするんです。

 

(池上事業管理課給付事業室長)

 どういった考え方でこの資料を準備したかをご説明させていただきますと、6ページのほうは「会話状態」について総合的に評価を行うということかと思います。これまでも「会話状態」、最終的に誰が聞いても理解できるのかどうなのかというようなことで判定しておりました。4ページのほうは、そこの最終的な判定に向けての、1つは評価の参考にするという考え方があろうかと思います。「会話状態」は、6ページの何区分かで判断するんですけれども、それを判断するに当たっては、ここで書いてあるような例1とか例2のような項目にチェックをつけていただいて、判断するための参考にしていただくと。

 過去の認定事例を第1回でごらんいただきましたけれども、診断医に書き込んでいただいた記述が非常に判定上有効であったということもあろうかと思いますので、よりシステマティックに情報を記載していただくための工夫ということだと思います。

 

(加藤構成員)

 持っていく方法はそれでいいと思うんですけれども、「重症度」と「会話状態」のレッテル、表題のつけ方が逆なのではないかと言いたいだけです。

 「「会話状態」の評価について」と書いてあるのは失語症の重症度の評価で、「重症度を判定する評価項目又は評価の参考について」と書いてある表は「会話状態」の具体的な評価なんです。そういうことで、そこが逆転しているというのが気になるということです。

 

(池上事業管理課給付事業室長)

 表現ぶりのところですね。

 

(加藤構成員)

 はい。

 それから、これは武田先生にも聞きたいんですけれども、例1は余りに、これはどうなんでしょうね。失語症検査の要約みたいなもので、これはどうなんですかね。これをクリニックの先生たちがつける。つけられるかというか、STがつければ簡単です。それから、失語症を知っている精神科医なり神経内科医、脳外科医がつければ簡単にできますが、これは失語症検査の要約みたいなもので、一番大事なのは、きょう失語症友の会の方も言われましたけれども、言語によるコミュニケーションがどの程度障害されているかということが大事なので、例えば単語が理解できるかどうかなどというのは、大事なんですけれども、自動車と言えるかどうかということではなくて、もう少し言語によるコミュニケーションがどうかということを重点にしたほうがいいような気がするんです。そうすると、例2になりますけれども、これも何か電話とか、どうなんですかね。よくわからないんですけれども。

 

(武田構成員)

 加藤先生が言われているのは、患者さんは、できるときもあればできないときもあるというような面がありますね。ですから、必ずある一定の、こういうふうに単語の呼称ができないから重いとかといっても、それがある文脈の中に出てくれば言えたりすることもあるとか、先ほどのお話もあったように、そういうこともありますので、参考にはなるのかもしれないですが、これだけでは確かに難しいかなと思いますね。

 私は、「物品の要求」とかというのもわかりにくい言葉なんです。物品を要求できないというのは、例えば何かを持ってこいというようなことができないとかという意味なのか、わかりにくいところがありますね。私は、確かにコミュニケーション能力を見るような方がいいのではないかというふうには思っています。

 

(豊原構成員)

 4ページのところの評価項目ですけれども、これは会話能力の障害に関して、一つの参考として、こういうことを脳裏に置いておいて、そして6ページのボストンの失語症検査のほうに行けばよろしいのかなと。そして、4ページのところと6ページの実際の重症度との間に整合性がなければいけないかなというふうに考えております。

 

(中島座長)

 確かにネーミングに問題があって、失語症の重症度を判定するというところは次項に譲らなければいけないかなと思いますが、大切なのは評価の参考に使用する項目として、失語症があるかないかをまずチェックしなければいけないと思います。そこのところはご理解いただきたいと思います。

 失語症のあると分かっている人にこれを訊いて何の意味があるのかと言われれば、そのとおりなんですけれども、まず大前提として、この人は失語症があるのかないのかというところのチェック項目であるとご理解いただくと、幾つかは生きてくると思います。要するに、失語症の専門家ばかりが必ずしも診断書を書くとは限らないものですから、そこのところを押さえるのはどうかという視点をお持ちいただけると議論が進むと思います。そうでなければ、最初からこの項目は要らないんです。だから、失語症があるということをどこで押さえるかという評価の参考としては、どこかで押さえなくてはいけません。

 

 

(夏目構成員)

 ただ、そうすると、診断基準の話になってしまうと、あらゆる疾患に同じことが言えると思うんです。あらゆる疾患に関して、例えば粘膜下口蓋裂があるかないかという診断基準を入れなければいけないとすると、これはすごく膨大なものになってしまうと思うんです。

 ここはあくまでも言語の機能の障害の現状の判定ということであれば、前回もお話しさせていただきましたが、「会話状態」でも「家族は理解できるが、他人は理解できない」という言葉に関して、逆に家族の多くが、私が理解できないのに、なぜこういう判断になるんですかということをすごく言われていて、今回も、電話の話がわからないのに、なぜこういう判断になるんですかと現場で言われたときに非常に困るような状況があるのではないかというふうに危惧いたします。

 

(中島座長)

 ありがとうございました。

 

(田山構成員)

 1つよろしいでしょうか。短文の発話と長文の発話の違いというのは、どこで区切っているかということが1つと、それから例2のほうは認知的な要素が非常に多く入ってきてしまうのではないかなと、この項目を見ると思えるんです。

 最初の例1のほうでの短文というと、主語、述語とか単純なやつはどうなのか。これは目的語が入ってきていますけれども、その辺のところのどこからどこまでが短文で、どこからが長文なのかというような何か明確な基準はあるのでしょうか。僕は失語症のほうは専門外なので、お聞きしたいんです。

 

(大窪障害認定企画専門官)

 それでは、ご説明させていただきます。

 例1の短文と長文の違いでございますが、私ども、先ほど先生のご意見にもございましたように、例1につきましては、一般的に使われております標準失語症検査から幾つか引用させていただいておりまして、短文、長文につきましては、単純に文節の数で区切らせていただいております。2番の「短文の発話」のところで例に挙げております「女の子が本を読んでいる」というのが2から3文節、「長文の発話」につきましてはそれ以上、4、5、6文節ぐらいが話せれば長文というふうにできるのではないかと、こちらのほうで判断して、そのように書かせていただいております。

 例2のほうでございますが、こちらにつきましては、第1回目の会合のときにも議論の中であったんですけれども、現在の身体障害者手帳の認定基準のほうの認定要領を幾つか参考にさせていただいておりまして、そのような中からコミュニケーション能力を確認する項目として1番から5番を引用させていただきました。

 先ほど武田構成員のほうからも、よくわからないというふうに言っていただいた「物品の要求」などは、まさに左側のほうが、例えば「あれをとって」というふうに言うことができない。右側は、「あれをとって」と言われた側として、失語症患者が言われた意味がわからないというようなつくりになってございます。

 以上です。

 

(中島座長)

 この項目につきましては、なかなか議論が多いところでございますので、次回改めて検討項目といたしたいと思いますので、またそれまでの間に先生方の意見を伺いながら、よりよいものをつくっていきたいと思います。

 それでは、資料4の5ページから6ページにあります「「会話状態」の評価」について、先生方のご意見を伺いたいと思います。

 

(豊原構成員)

 資料4の6ですけれども、「会話状態」の評価について、ボストンの失語症検査で、これは英文の日本語訳なんですね。なかなか日本人には余りなじめないような気がいたします。そして、恐らく0から1というのは2級で、2というのが3級で、区分3、要するに厚生年金の別表第2の障害手当金相当だというふうに考えます。

 夏目先生のほうから資料6をいただきまして、日本人向けに書かれたものがありまして、試案2の、ボストンの失語症尺度をもとに、新たに文字言語機能の評価を加えた評価尺度というものがあって、これは日本人には理解しやすい表記であるというふうに考えています。障害2級相当、障害3級相当、さらに私が加えるには、障害手当金というものもありますので、その表現も加えなくてはいけないと思います。

 後で文字を起こしていただければいいんですけれども、手当金相当というのは、僕が考えるには、患者は意思を伝達するのに適切な言語がすぐに思いつかないために、応対に時間がかかる、又は本人の意思を聞き手に理解させるのに多少相手の促しを要する、これが障害手当金かなと思います。そして、書くものになれば、短文の読み書きには問題を生じないというぐらいのものかなと。これが障害手当金の程度として適当ではないかなというふうに考えております。

 

(中島座長)

ありがとうございました。

 私から、座長としてではなく構成員の一人として、6ページの表について一言申し上げますと、ボストンの評価尺度0、訳文には「実用的な話しことばも理解できることばもない」ということがありますけれども、原文には「auditory comprehension」と、「auditory」がついております。

 右のカラムの認定基準の現行の「日常会話が誰が聞いても理解できない」というのは、聞いても理解できないのは聞く側の健常者なんですね。でも、変更例の「全く話せない又は全く話が理解できない」というのは、聞く側が話が理解できないか、あるいは本人の聞き取りの問題なのか、ここのところがよくわからない。要するに、発話ができないのか、聞き取りができないという意味なんだろうと実は思うんですけれども、ぱっと読んだ限りでは、現行の「誰が聞いても理解できない」に軸足を置くと、「全く話が理解できない」というのは、相手側が理解できないと混同しかねないところがあって、ボストンの本来の英文のような歯切れのよさがありません。実は訳文にもありません。変更例そのものは、私はこういう区分はいいなとは思っていますが、文章そのものはもう少し日本語を整理していかないと、このままでは混乱が出かねないなというふうに思いました。

 以上です。

 加藤先生、いかがでございましょう。

 

(加藤構成員)

 先生おっしゃるとおり、英語は随分考えてつくったと思うんですけれども、割とすっきりしていて、日本語に訳すのが難しい。「burden」ですとか、いろいろ難しいなと思うような言葉が入っているので、もう一回こなした訳にして、なおかつ日本人にすぐ理解できるような、いい言葉にしたほうがいいなというふうに思いました。

 

(中島座長)

 武田先生、いかがでございましょう。

 

(武田構成員)

 先ほどの問題 に戻って恐縮です。 BDAE などの 認定基準によって 判定された重症度などが、 先ほど 示された 失語症の評価項目例1、例2 ですか、 それと食い違っているような記載がみられた場合に、実際のところがどのようであるのかということを問い合わせるようなことができれば、この失語症の評価項目は生かすことができると思います。

ただこの例1、例2でもって失語症かどうかを判定するというような用い方は難しいのではないかと思います。 この書類を申請する方は、失語症というのを理解して書いていただいてくるとしてよろしいのではないでしょうか。失語症かどうかの判定をこの例1、例2でするというのでは大変であると思います。その申請する書類には病巣がどこであるか書いてくるでしょうし、その病巣が言語野を含んでいれば、 MRI など今はされているでしょうから、それなども参考にして、認定を認めるのであって、例1、例2で失語判定するというのはちょっとどうかと思われます。

 

(中島座長)

 ありがとうございました。

 そうしますと、6ページの右側のカラムの「認定基準(「会話状態」)」、現行から変更例に変えた趣旨は、要するに感覚性の失語も加えようかということにあります。先ほど私が述べましたとおり和文には幾らかまだ工夫が必要だと思いますけれども。このBDAE、ボストンに合わせたような分類で今回はいこうということについては、どうでしょうか。異論はございませんでしょうか。

 

(豊原構成員)

 私は異論はありません。

 

(中島座長)

 その点よろしゅうございましょうか。そこの点では合意ができたというふうにいきたいと思います。もう少し変更例というものをこなれたものにして、次回またご提示いただきたいと思います。

 

(田山構成員)

 例えば、この変更例にした場合、現行ではこうであったというような記載というのは付記しておくのでしょうか。過去において、認定基準の変更をすると、例えば再認定のときとか、そこで区分が若干異なる。そうすると、変更例そのものだけにするのか、現行例も参考程度に書いておくのか、どのような対応になるのでしょうか。

 

(中島座長)

 認定基準の文章が変わるということについて、事務局、お願いいたします。

 

(池上事業管理課給付事業室長)

 認定基準を変更していただきます場合には、基本的には新たなものに乗りかえていくということになります。その意味でも、従来の認定基準とかけ離れたものを設定いたしますと、これまで認定されていた方が認定されなくなるとか、そういったような問題も生じてきますので、今ある基準を基にはしつつ、それをよりわかりやすく具体化するにはどうしたらいいかという視点での検討が必要かと思います。

 

(中島座長)

 ありがとうございました。

 それでは、検討課題2-2の「等級判定の基準」につきましては、ここまでの構成員の先生方のご意見並びに本日は当事者団体の皆様方のご意見も伺ったところでございましたので、次回に向けて、資料5の事務局案のたたき台を今一度見直していただき、また次回以降におきまして改めて議論いたしたいと思います。

 続いて、もう一つの課題の課題3、資料4の8ページになります。この検討事項は、8ページと9ページにあります懸案について議論をいたしたいと思いますけれども、本日は2つに分けて、1と2に分けて順に議論をしていきたいと思います。

 まず、資料4、検討事項8から9ページにあります「人工物の装着や補助用具を使用している場合の判定について」、この項目につきましてご意見をお願いいたしたいと思います。そして、これは資料5のたたき台のほうでは14ページの(7)「顎義歯、エピテーゼ等」というところになります。

 人工物の装着又は補助用具の使用について、前回の検討事項といたしましては、顎顔面補綴物以外に、常時装着する人工物又は常時使用する補助用具はあるか、人体に永続的に装着され、障害状態の改善が見込まれる人工物については、装着後で判定すべきかという検討事項が残っておりまして、今日ご欠席ですけれども、前回石本先生からご意見を伺っております。

 夏目先生、いかがでございましょう。

 

(夏目構成員)

 先ほども申し上げましたように、(7)の事務局案ですと、エピテーゼ等の場合も補綴物を装着した状態で判定するということになりますと、先ほど喉頭摘出者団体の代表の方もおっしゃっていましたけれども、検査の瞬間はある程度スコアがとれても、長時間話せないとか、音の質ですね。相手には伝わるんだけれども、相手がそれに対して違和感を感じるといったようなことがこの判定に加味されない。非常にご苦労されて、長時間しゃべれない。それから、伝わるんだけれども、人の前で話すような音質でないということに関しては発語明瞭度では評価できないという問題点がありますので、ほかの装具、例えば補聴器でありますとか、松葉杖でありますとか、その他と同じように、その場合はやはり装着前で判定すべきと考えております。

 一方、そしゃくもそうですが、物を食べるということに関しましては、これは歯がない状態、これは装着後でいいと思いますので、やはりそこはきめ細やかに障害の状態を分ける、障害の状態を勘案するという意味で、エピテーゼの場合ですと、眼球も含めて、ないような状態が多くございますので、そういった方と、それから私ども実際こういったものをつくっている立場からしますと、通常に虫歯、齲蝕等になって歯をなくした方の補綴物とは分けて考えるべきかというふうに考えております。よろしくお願いいたします。

 

(中島座長)

 ただいまの夏目先生のご意見は、そしゃくの場合と発音補助装具では違うのではないか、取り扱いは別にすべきというご意見です。

 

(夏目構成員)

 そしゃくに関しては、このままで全然問題はないと思います。

 

(中島座長)

 田山先生、いかがでございましょうか。

 

(田山構成員)

 やはり口蓋が大きく欠損したとか、そういった状況でとなると、補綴後判定となると、実はそれを取り出したときに非常に構音障害はあるわけなので、歯の障害という部分と口蓋の障害とか、程度はやはり分ける必要があるのではないかと思うのですが。

 

(中島座長)

  例えば、夏目先生が言われたそしゃく、歯の欠損というのはどうでしょう。

 

(田山構成員)

 歯の欠損というのは、どこでも義歯は対応できると思うんですが、口蓋の欠損までいくと、きっちり対応できるというのは技術の問題も出ると思うんです。ですから、検討課題3の一番下、「歯の障害による場合は、補綴等の治療を行った結果により認定を行う」、この表現は非常にいいと思うので、それ以外の大きな欠損は治療前の状態で判定可能なようにしたほうがよいのではないかと僕は思うのですが、いかがでしょうか。

 

(中島座長)

 ありがとうございました。

 ただいまの人工物の装着、補助具に関して、それぞれ目的によって対応が異なるのではないかというご意見をいただきまして、たたき案という幾つか異なる点が出ました。本日は時間も迫っておりますので、この点につきましては、次回に改めてもう一度ご議論をお願いいたしたいと思います。

 最後に、資料4、検討事項の最後の10ページになります。

 喉頭全摘につきまして、検討事項として、喉頭全摘出手術したものは、手術後に発音が可能になった場合も含め、発音にかかわる機能を喪失したものとして、2級と認定してよいか、喉頭全摘出手術した場合の他に、例示すべき事例はあるかということで、下に記しましたように田山先生及び石本先生からご意見をちょうだいしておるところでございます。

 たたき台の方では14ページの(6)「喉頭全摘出手術を施したものについては」ということで、アで「言語機能を喪失したもの」を「発音にかかわる機能を喪失したもの」というふうに訂正した上で2級と認定するという文章になりましたけれども、田山先生、いかがでございましょう。

 

(田山構成員)

 厳密に言うと、音声機能のほうが正確ではないかと思います。発音というと構音という部分が入ってきますから、もともと発声器官がなくなるということで、発声もしくは音声、「音声又は言語機能の障害」とありますから、ここのところでは音声という言葉を用いたほうがいいのかなと思います。

 

(中島座長)

 夏目先生、今の田山先生の、いかがでございましょう。

 

(夏目構成員)

 おっしゃるとおりだと思います。

 

(中島座長)

 音声機能ですね。

 

(加藤構成員)

 これは音声でなければいけなくて、喉頭全摘出手術をした場合に言語機能は失われません。言語の理解は100%オーケーですから。100%音声でないと間違いになります。

 

(中島座長)

 ここでは「発音にかかわる」という文言にしたんですけれども、それを……。

 

(加藤構成員)

 発音でもいいです。

 

(田山構成員)

 より正確なのは音声ということになります。

 

 

(池上事業管理課給付事業室長)

 ここでは「発音にかかわる機能」という表現ぶりをさせていただきました。正確には、今、田山先生からおっしゃっていただいたとおりだと思います。

 そうした理由は、13ページの2の(1)の2行目のところをご覧いただければと思うんですけれども、「音声又は言語機能の障害」について、今回定義として「発音にかかわる機能又は音声言語の理解と表出にかかわる機能の障害をいい」と、大きくこの2つに分けた表現ぶりをさせていただいていますので、後ろのほうではそのうちの前者だということがわかるように記載させていただいたところでございます。

 ただ、より絞り込んで特定したほうがいいのかどうか、またほかのところでの表記ぶりともあわせて検討させていただこうと思います。どうもありがとうございました。

 

(中島座長)

  今の田山先生ほか、先生方のご意見をまとめますと、書きぶりはともかく、言語ではないということでは皆さんご了解いただいていると思います。それに従って、よい文言にしていきたいと思います。

 本日は時間の都合もありますので、細かい議論はこのあたりで終わりにいたしたいと思います。大変有益なご意見、ご指摘を構成員の先生方から頂戴いたしまして、この検討事項についてはぐんと前に進んだように思います。したがいまして、あと2回程会合を開きますので、この検討内容がよい方向に進むように、またご協力をお願いいたしたいと思います。

 それでは、事務局のほうから、次回の進め方や日程についてお願いいたします。

 

(和田事業管理課給付事業室長補佐)

 本日は構成員の皆様並びに団体の皆様方、お忙しい中にもかかわらずご出席いただき、大変ありがとうございました。

 次回は、本日のご議論などを踏まえまして、認定基準の改正案であるとか、それから診断書の見直しのたたき台などもお示しさせていただき、またご意見をお伺いしたいと思っております。

 なお、次回の日程ですが、9月8日月曜日の午後5時からの開催を予定しており、後日改めまして開催場所のご連絡を差し上げたいと存じます。

 以上です。

 

(中島座長)

 それでは、本日の第2回の会合はこれで終了とさせていただきます。構成員の皆様方並びに当事者団体の皆様方におきましては、長時間にわたりどうもありがとうございました。

 以上で終了といたします。ありがとうございました。


(了)
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代表: 03-5253-1111(内線3603)
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