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2014年8月8日 第1回へき地保健医療対策検討会(議事録)

○日時

平成26年8月8日(金)14:00~16:00


○場所

三田共用会議所(3階)B~E会議室
東京都港区三田二丁目1番8号


○議事

○西嶋救急・周産期医療等対策室長 定刻前でございますけれども、委員の先生おそろいでございますので、ただいまより第1回「へき地保健医療対策検討会」を開催いたします。

 本日は先生方におかれましては御多忙のところ御出席をいただきまして、まことにありがとうございます。

 座長選出までの間、事務局で進行をさせていただきます。

 まず、本検討会開催に当たりまして、二川医政局長より一言御挨拶を申し上げます。


○二川医政局長 医政局長の二川でございます。

 私は医政局長になりまして、まだ1カ月ぐらいでございます。どうぞよろしくお願い申し上げます。

 本日は構成員の皆様方におかれましては、御多忙の中お集まりいただきまして、また、遠方より御参加をいただいている構成員の方も多数いらっしゃると思います。まずは厚く御礼を申し上げたいと思います。

 御承知のとおり、我が国のへき地保健医療対策は、昭和31年から始めておりまして、現在、第11次のへき地保健医療計画を推進しているところでございます。

 これまで、御承知のことかと思いますけれども、へき地診療所やへき地医療拠点病院の整備といったことに取り組むとともに、最近ではへき地医療支援機構を都道府県単位で設置をするということで、へき地の医療対策の総合的な企画調整を担うといった役割を期待して、そういったものの整備を進めているといった対策をもろもろ講じまして、へき地における医療の確保に努めてきているところでございます。

 また、最近の医療情勢、特にへき地医療の関連につきまして申し上げさせていただきますと、この通常国会で6月に成立いたしました医療介護総合確保推進法でございますけれども、これにつきまして2025年の超高齢社会、団塊の世代の皆さん75歳以上の後期高齢者になる。これが2025年ということで、2025年の超高齢社会を見据えまして、地域において医療と介護サービスを一体的に確保するといったことを目的にした法律でございます。

 その中で今度の消費税が4月から8%に上がっておりますけれども、消費税の増収分を活用して、各都道府県に基金を設置していくといったことを法定されております。その基金におきましては、これまでの既存のへき地医療対策の補助金では対応できないような地域医療の関連事業についても活用が可能となってございまして、その辺につきましては各都道府県においてどういった分野に使っていくかということは県のほうでお考えいただくことになるわけでございますけれども、そういった制度も今回の法律で成立をしているということでございます。今年度は全国で900億円余りの予算でございますが、こういったものは今後も継続的に確保されていくだろうと思っているところでございます。

 もう一つ、御承知かと思いますけれども、へき地におきましてはさまざまな医療ニーズに対応するために、幅広い診療能力を有する総合診療医の育成が必要だといったことになろうかと思います。総合診療医につきましては、その専門性を評価する総合診療専門医として、専門医の1つとして位置づけるといった方向で、ことし5月に設立された日本専門医機構が認定を行っていこうということで準備が進められているところでございます。

 そういった形で、へき地医療に関連するようなもろもろの医療対策がいろいろ講じられている。無論、へき地だけにかかわるわけではございませんけれども、そういった医療の体制が進められきつつあるということでございます。

 繰り返しになりますが、我が国におきましては、他の先進諸国と比べまして例を見ない速さで高齢化が進行しているわけでございます。2008年をピークに既に人口減少社会になっているわけであります。そういった中、特に離島や山間部などのへき地では、他の地域よりも高齢化が進んでいるということでございまして、地域のコミュニティを維持していくためにも、この医療の確保対策というのは大変重要な分野の施策だと考えているところでございます。

 今後のへき地保健医療対策のあり方あるいは対策を進めていくに当たっては、ぜひとも皆様方のお知恵をお借りし、へき地におけます住民の方々に対して、より適切な医療の確保が図れるような方策に取り組んでいきたいと考えているところでございます。

 どうか忌憚のない御意見、御指摘をいただけますよう、よろしくお願い申し上げます。

 簡単でございますけれども、冒頭御挨拶させていただきます。どうぞよろしくお願いいたします。


○西嶋救急・周産期医療等対策室長 医政局長は、途中、公務により退席をさせていただきますので、御承知おきいただければと思います。

 続きまして、構成員の方を御紹介させていただきます。構成員の名簿につきましては資料の3ページ目にございます。

 日本薬剤師会常務理事、有澤賢二様でございます。

 自治医科大学教授、梶井英治様でございます。

 金田病院理事長、金田道弘様でございます。

 美郷町地域包括医療局総院長、金丸吉昌様でございます。

 日本医師会常任理事、釜萢敏様でございます。

 北海道枝幸町役場保健福祉課保健予防グループ主幹、工藤裕子様でございます。

 日本歯科医師会理事、佐々木俊則様でございます。

 高知県へき地医療支援機構専任担当官、澤田努様でございます。

 隠岐広域連合立隠岐島前病院院長、白石吉彦様でございます。


○白石構成員 島根県の隠岐島からやってまいりました白石といいます。よろしくお願いいたします。


○西嶋救急・周産期医療等対策室長 全国離島振興協議会会長、白川博一様でございます。


○白川構成員 全離振会長、長崎県壱岐市長の白川でございます。どうぞよろしくお願いします。


○西嶋救急・周産期医療等対策室長 広島県看護協会訪問看護事業局局長、高村艶子様でございます。

 朝顔のたね- 千厩病院を守り隊 - 、畠山とき子様でございます。


○畠山構成員 岩手県一関市から来ました畠山です。隣は平泉です。よろしくお願いします。


○西嶋救急・周産期医療等対策室長 長崎大学大学院
薬学総合研究科、前田隆浩様でございます。


○前田構成員 長崎大学の前田でございます。いつもは五島列島の福江島と長崎県の長崎大学を行ったり来たりして仕事をしております。よろしくお願いします。


○西嶋救急・周産期医療等対策室長 六ヶ所村国民健康保険尾駮診療所保健相談センター所長、松岡史彦様でございます。

 なお、本日議題に関連いたしまして、参考人といたしまして自治医科大学地域医療学センター、森田喜紀様にお越しいただいております。

 続きまして、事務局の御紹介をさせていただきます。

 医政局長の二川でございます。

 大臣官房審議官の福島でございます。

 地域医療計画課長の北波でございます。

 歯科保健課長の鳥山でございます。

 地域医療計画課長補佐の森井でございます。

 なお、私は救急・周産期医療等対策室長の西嶋でございます。よろしくお願いいたします。

 続きまして、議題4の座長の選出でございます。

 座長の選出につきましては、構成員の互選ということで進めさせていただければと思います。

 座長の御推薦につきまして、委員のほうから何かございましたら挙手をお願いします。

 澤田構成員、お願いします。

○澤田構成員 梶井先生を御推薦申し上げます。


○西嶋救急・周産期医療等対策室長 ただいま梶井構成員というお声がございましたけれども、いかがでございましょうか。


(拍手)


○西嶋救急・周産期医療等対策室長 ありがとうございます。

 皆様の御賛同を得ましたので、梶井構成員に本検討会の座長をお願いいたしたいと思います。梶井先生におかれましては、座長席のほうへお移りいただきますよう、お願いいたします。


(梶井座長、座長席へ移動)


○西嶋救急・周産期医療等対策室長 それでは、以降の進行を梶井座長にお願いいたしたいと思いますので、よろしくお願いいたします。


○梶井座長 改めまして、自治医科大学地域医療学センターの梶井でございます。

 思い返しますと5年前、前回の検討会に参加させていただきました。あれから本当に5年たったんだという非常に感慨深いものがございます。

 この後、森田から私どもの研究班の御説明を申し上げますけれども、研究班として、各都道府県におかれましての取り組みをずっと見せていただきました。そういうことも踏まえながら皆様とこの会ではへき地医療の現状と課題、それから、これからという部分が非常に大事だと思います。そのあたりを意識しながら深い議論が行われ、これからの充実に向けて、方向性がきちんと示すことができればと思っております。どうぞよろしくお願いいたします。

 それでは、議事を進めてまいりたいと思います。まず資料の確認を事務局よりお願いいたします。


○西嶋救急・周産期医療等対策室長 資料の確認をさせていただきたいと思います。

 配付資料としましては、座席表、構成員名簿がございます。

 資料1「へき地保健医療対策検討会について」。

 資料2「へき地保健医療対策の現状について」。

 資料3「へき地保健医療計画の今後の対応について(案)」。

 資料4としましてパワーポイントで森田先生からいただいたものと、委員の先生方には研究班のパンフレットがございます。

 資料5といたしまして、工藤構成員からいただいている資料がございます。

 その後に参考資料が4つございます。

 参考資料1「へき地保健医療対策関係予算の概要」。

 参考資料2といたしましては、第11次へき地保健医療対策検討会報告書の概要と本体をつけさせていただいております。

 参考資料3といたしまして、医療計画制度についての概要と、その内容。計画そのものについてつけさせていただいております。

 参考資料4「平成25年度へき地医療現況調査の結果」。

 資料の過不足がございましたら、事務局にお申しつけください。

 また、カメラ撮りについてはここまでとさせていただければと思います。


○梶井座長 それでは、議事に入りたいと思います。

 本日の議題は6点でございます。

 第1点は、検討会の趣旨説明でございます。

 第2点としまして、へき地保健医療対策の現状についてであります。

 第3点目は、へき地保健医療計画の今後の対応についてであります。

 第4点目は、厚生労働研究班からの報告です。

 第5点目は、各構成員皆様からの御意見を賜りたいと思います。

 最後の第6点は、その他となっております。

 それでは、まず議題1の検討会の趣旨説明と、議題2のへき地保健医療対策の現状について。議題3のへき地保健医療計画の今後の対応について、事務局より御説明をお願いいたします。


○西嶋救急・周産期医療等対策室長 事務局より御説明を申し上げます。

 まず資料1をごらんいただければと思います。資料1といたしまして「へき地保健医療対策検討会について」ということでございます。

 開催の目的といたしまして、無医地区及び無歯科医地区における医療を提供する体制を確保するため、昭和31年よりへき地保健医療計画に基づいてその対策を実施してきているところでございますけれども、平成27年度におきまして第11次計画が終了するということでございます。

 そのため、今後のへき地保健医療計画策定等を含め、平成26年度中に3~4回程度開催し、今後の方向性について御議論いただくことが目的ということでございます。

 資料2をごらんいただければと思います。資料2につきましては、これまで厚生労働省が行ってまいりましたへき地保健医療対策についてまとめさせていただいているものでございます。

 「1.これまでの対策」でございますけれども、昭和31年から11次にわたるへき地保健医療計画を策定しているところでございますが、平成18年度からの第10次の計画からは、国で策定した指針をもとに都道府県ごとにへき地保健医療計画を策定し、地域の実情に応じたきめ細やかな体制を整備するという内容になってございます。

 こういった昭和30年代からの計画を進めていく中で、これに伴い無医地区の数は表に示しているとおりになってございます。昭和41年、無医地区数が2,920カ所あったところが、平成21年、直近の調査では705カ所になってございます。

 また、準無医地区ということで、無医地区ではないけれども、準じた形の地区としては371カ所ということが都道府県から上がってきてございます。

 ※印のところに書いてございます。無医地区の定義といたしましては、おおむね半径4キロの区域内に人口が50人以上居住している地域であって、通常の交通機関を利用して医療機関までが片道1時間を超えるなどとする、そういった地域を定義した統計だということでございます。

 以降「2.へき地保健医療対策の推移」ということでございますが、第1次以降、主な計画の項目を示させていただいてございますが、6ページの次に少し大きな資料を用意してございますが、へき地保健医療計画の変遷を1枚紙にまとめさせていただいております。第1次から第3次、昭和30年代、40年代の3回の計画で無医地区に診療所の設置を進めるということで、巡回診療等の機動力の充実あるいはドクターの派遣への助成ということで、へき地の基本的な対策を40年代で行ってきたということでございます。

50年代以降は、例えば第4次であればへき地の中核病院の整備あるいはへき地保健指導所の整備運営ということが、新しい計画として新しい項目が盛り込まれてございますし、第5次、6次あたりであれば医療情報のシステムということで、初期診断の機器あるいは静止画の画像の転送システム等、さまざまなシステムを使ったへき地の診療支援が1つの項目として上がってきています。

 第9次では、新たに、へき地の医療支援機構の設置が提言されました。

 最初に御説明いたしましたように、第10次の中では医療計画の策定を通じた住民の納得の得られた持続可能な体制の確立ということで、より都道府県に地域の実情に合った計画をつくっていただくということで、大きな位置づけが変わったものだというふうに認識をしているところでございます。

 資料を少しお戻りいただきまして、5ページ、6ページで現在の主な取り組みをまとめさせていただいてございますが、基本的な考え方といたしましては、2次医療圏単独ではなかなか医療過疎地域の医療需要が対応し切れないということで、より広域的に都道府県単位での対策ということの基本的な考え方で、我々としては現在、取り組みを行っているというところでございます。

 その取り組みの概要は先ほどの大きなペーパーの次の紙になります。9ページになりますが、体系図という形でお示しをさせていただいているところでございます。真ん中の上のところにはへき地医療支援機構ということで、各都道府県単位でへき地診療所への代診医の派遣要請等の企画調整というふうな役割として、へき地医療支援機構ということがございますし、それが下のところに書いてありますへき地医療拠点病院と連携をして、そういったへき地の医療を担っていただいているということかと思います。

 また、そういうときにはへき地の診療所、過疎地域と特定診療所ともそれぞれ支援をしながらやっていただいているというところでございます。

 右側のところには大学の医学部、寄附講座も含めた医学部との連携がそれぞれ機構でなされているというところでございますし、右下のところには巡回診療ということで、医、歯科それぞれ巡回診療の仕組みの中で、へき地の医療を確保するという取り組みもしていただいてございます。

 こういった大きな方針につきましては、左上にあります国(厚生労働省)と書いてございますが、まさに本日の検討会で全体的な計画、指針の策定をこれまで行っていただいておりまして、それに基づいたこういった取り組みを厚生労働省としては推進をさせていただいているという現状だと認識をしております。

10ページ目には、へき地の医療体制整備の状況ということで、都道府県ごとにどういう状況にあるかということをお示ししてございます。4つの府県については、へき地がないということで色塗りをさせていただいてございますけれども、それ以外の県においては、一部へき地医療支援機構の設置は未定という県もございますが、おおむね多くの県で設置を進めていただいているところでございます。

 また、右側の備考ということで無医地区の数ということで、平成16年と21年の都道府県別の数をお示ししてございますけれども、結果、無医地区の数が減ってきている都道府県も、こういった取り組みによって減ってきている都道府県もあるということがわかっていただけるのではないかと思っておりますので、御参考いただければと思います。

 続きまして、資料3でございます。こういったへき地保健医療計画につきまして、今後どのように対応すべきかということで、案を事務局から提示をさせていただいてございます。このへき地保健医療計画につきましては、おおむね5年ごとに計画策定をしていただいているところで、現在11次の実施の期間中でございます。

 一方で、平成18年の第5次の医療法の改正の際に、医療計画の中で現在5疾病5事業ですけれども、医療提供施設相互間の機能の分担及び業務の連携を確保するための体制に関する事項を記すことになってございまして、都道府県は第5次の医療計画より、へき地の医療連携体制についてもその旨を策定することになってございます。

 したがいまして、昭和30年代から行ってまいりましたへき地の保健医療計画と、平成20年からスタートしております医療計画は、ともにへき地医療対策について計画をするという観点では共通の部分がある状況でございますけれども、参考のところにお示しをしてございますが、2つの計画が改正の時期がずれているという状況でございまして、厚生労働省としては、統一的なへき地医療対策のあり方を十分に示すことはできているのかどうかということを考える時期に来ているのではないかと考えてございます。

 また、都道府県もそれぞれ2つの計画を策定する必要がございますので、別の時期にそれらを都道府県にお願いをしている状況でございます。その整合性を図るということが困難ではないかという現状ではないかと認識をしてございます。

 そういったことで、次回の医療計画の改正、第7次の医療計画が、イメージ図のところを見ていただければわかりますが、平成30年から始まりますので、このへき地保健医療計画と30年から始まる医療計画の期間を合わせる、あるいは統合するということで、より効率的な計画にすることができるのではないかと思っています。また、1つの計画に統一することで医療を受ける側の国民にとっても、より理解しやすい計画になるのではないかという御提案でございます。

 イメージ図に示したとおりでございますけれども、そういった場合に28年、29年が2年間、へき地保健医療計画ということで言えば準備期間ということで、30年からの改正に向けて準備期間に充てることができるのではないかということで、この資料3を事務局から御提案をさせていただければと思います。

 以上でございます。


○梶井座長 ありがとうございました。

 ただいまの事務局からの御説明について、御質問、御意見等ございますでしょうか。

 白川構成員、どうぞ。


○白川構成員 スタートの時点が今、2年ずれているということで、これを同じスタートにするということは大賛成であります。また、考え方として第7次医療計画の中にへき地保健医療計画も入れるということでございますけれども、1つ心配なのは、第7次医療計画、大きないわゆる医療計画の中で、その中で見るというのは考えますと一緒に総合的に進むんだということでいいような気がいたしますが、私個人的にはその計画の中に埋没してしまうのではないかという不安がございます。ですからスタートは一緒でいいと思っていますけれども、全体の中に入れ込むというのではなくて、2つで走ったほうがいいのではないかという気がいたしますが、私も医療のプロではございませんので、先生方の御意見をお聞かせ願えればと思っております。


○梶井座長 今、皆様に問いかけがございましたけれども、いかがでしょうか。すごく大事な視点だろうと思います。


○釜萢構成員 日本医師会の釜萢でございますが、白川構成員の御指摘の御懸念は私も同感でございます。

 ただ、このへき地医療の問題は、決して埋没させることなくしっかりと対策をとらなければならない大事な問題だと認識しておりますが、へき地医療のいろいろな問題は必ずしもへき地医療に特化したものではなくて、例えば医師が偏在をしておるとか、診療科の偏りがあるとか、先ほど二川局長さんからお話がありました総合診療医というような考え方も大事でありますけれども、それもいろいろな医療の場面で出てくる問題でありまして、必ずしもへき地医療対策に限ったことではないという面もありまして、医療計画の中で全体として取り上げて、決してへき地医療対策が埋没することのないような注意が必要だと思いますけれども、一方で医療計画全体の中で捉えなければならないという面もあるように感じまして、発言をさせていただきました。


○梶井座長 ありがとうございました。

 そのほかの委員の先生、金田構成員、どうぞ。


○金田構成員 金田です。

 中山間地の中小病院の経営者を28年間している立場から申し上げますと、当地でも中小病院がこの5年間に2つ倒産をいたしました。今後の発想として昨年の社会保障制度改革国民会議にありますように、競争から協調へという姿勢こそ大事であって、各病院がどのように生きていくかではなくて、この地域の責任をみんなで協力して、協調してどのように持っていくかという発想が極めて大事になってくると思います。持続可能な社会保障制度を築く上においても、医療計画の中できちんとへき地を我々のこととして思うように、全体でそういうような意識を持つようなためにも、医療計画の中に明確にへき地の役割、位置づけということもみんなで考えていくほうが適切なのではないかと思います。

 以上です。


○梶井座長 ありがとうございました。

 事務局どうぞ。


○西嶋救急・周産期医療等対策室長 事務局から説明を追加させていただければと思います。

 参考資料3をごらんいただければと思います。参考資料3では今、各委員から御発言がありました医療計画制度について、1枚でまとめさせていただいてございまして、現在、この2つ目の枠のところを見ていただければと思いますが、平成25年から平成29年で始まっている医療計画ですけれども、新たに精神疾患を加えた5疾病5事業及び在宅に係る目標、医療体制及び住民への情報提供の推進策をまとめさせていただいているということでございます。

 この5疾病5事業というのは、具体的には5つの疾病、がん、脳卒中、急性心筋梗塞、糖尿病、精神疾患。5つの事業ということで救急医療、災害時における医療、この中にへき地の医療ということが位置づけられております。また、周産期、小児医療ということで、この5つの事業の中に明確にへき地医療ということが現在、位置づけられているという状況になってございます。

 具体的にめくっていただきますと、この資料の2ページ目以降に若干抜粋でございますけれども、へき地の医療体制構築に係る指針ということで3ページから書かれておりますが、これがまさに医療計画の中のへき地医療の指針となってございます。

 具体的に見ていただきますと、それぞれの項目の中で今回この検討会の議論の対象でありますへき地保健医療計画を参照にする必要がある、あるいはその連携をする必要があるということの記載があるというのが現状になってございます。2つの計画を連携するべきだという記載がございますけれども、その期間が今、ずれているという現状になっているということでございます。


○梶井座長 何かございますでしょうか。前田構成員、どうぞ。


○前田構成員 2つの計画でございますけれども、へき地保健医療計画といわゆる医療計画は、お互い、へき地医療の取り組みと地域医療の取り組みがいろいろな部分で連動してまいるわけです。いろいろな部分で連動してきて、へき地医療だけ切り取って計画を立てるというのは、なかなか困難ではないかと思います。今、時期的な問題の整合性といいますか、時期的な問題の合理性もありますが、へき地医療の対策でもって議論してきたロジックとストラテジが、そのまま全て地域医療のほうに応用できますし、お互いに利用できるような立場にあるのではないかと思うのです。ですから切り取って計画をつくるというだけではなくて、連動することを考えて、もう少し広い視野から考えていったほうがいいのではないかという感じがいたします。


○梶井座長 大体皆様の御意見がまとまったように思います。今、前田構成員が取りまとめていただいたように、私もそのように思います。ただし、白川構成員からの御指摘のように、そうは言うものの非常に小さな部分だということで埋没させてはいけない。そこのところを意識したり、あるいはそこをきちんと明確にするような取り組みの体制を前提に医療計画を立てていただくことが大切なのかなと思います。

 ということで事務局からお示しになられた案で今後、この検討会でも検討を進めていくということでよろしゅうございますでしょうか。


(「異議なし」と声あり)


○梶井座長 どうもありがとうございました。

 それでは、続きまして議題4、厚生労働研究班からの報告についてということでございまして、森田参考人から御説明をお願いします。よろしくお願いします。


○森田参考人 よろしくお願いします。自治医科大学の地域医療学センター地域医療学部門の森田といいます。

 厚生労働科学研究補助金事業として、平成22年度から23年度「都道府県へき地保健医療計画策定支援とその実施に関する研究」。24年度から25年度は「第11次都道府県へき地保健医療計画の実行支援とその評価に関する研究」この2つの研究班の活動を続けてまいりました。

PP

 研究班のメンバーですが、この場にいらっしゃる梶井先生を研究代表者として、前田先生、澤田先生もこの場にいらっしゃいます。あと、ほかにこのような先生方で研究班が構成されています。

PP

 全体の流れですが、第11次へき地保健医療計画は2011年から2015年、5年間行われております。我々研究班「都道府県へき地保健医療計画策定支援とその実施に関する研究」が平成22年度から23年度、「第11次都道府県へき地保健医療計画の実行支援とその評価に関する研究」が24年度から昨年度まで行われています。

PP

 まず、平成22年度から23年度「都道府県へき地保健医療計画策定支援とその実施に関する研究」ですが、第11次へき地保健医療計画策定年度でしたので、各都道府県がへき地保健医療計画の策定を支援することを目的に研究班が立ち上がりました。また後で具体的な内容を述べますけれども、調査であったり連絡会議の支援であったり、都道府県の訪問であったり、このようなものを2年度にわたって行っています。

PP

 先進的なへき地保健医療対策の取り組み事例の検討を行いましたらが、これはへき地に勤務する医師のキャリアパスについて、特に先進的な取り組みを行っている都道府県について分析を行っています。高知県、長崎県、新潟県、この3県について研究班で分析を行っています。

 概要ですが、既存のシステムをいかに活用するか、それから大学や行政、へき地医療拠点病院との協働、また、へき地に勤務する医師がどこか寄って立つ場所、それが大学である場合もありますし、へき地医療支援機構である場合もありますし、このような帰属できる場所をしっかりとつくっていくことが重要ではないかと思われます。あと、そのようなシステムをいかに維持していくか。その場で終わってしまったらだめですので、持続可能性のあるようなシステムをつくっていくことが重要だと思われます。

PP

 調査として、へき地を中心とした地域医療分析などの調査を平成22年度に行っています。これはただ単に調査を行うだけではなくて、このような115項目という非常に多岐にわたる調査項目なのですけれども、これがへき地保健医療計画策定指針にも盛り込まれ、あと、何より各都道府県が計画を策定するときの調査にも反映されています。各都道府県に調査用紙を配付して、回収率は100%でした。

PP

 全国へき地保健医療支援機構等連絡会議というものが厚生労働省で行われていますが、研究班ではこの連絡会議の支援を行っています。特にグループワークがこの連絡会議で行われているのですけれども、このグループワークのファシリテーターを担って、このようなテーマで行っています。PDCAサイクルの理解であったり、改善案の見直しであったり、へき地医療の各テーマに沿ったディスカッションを、6~7都道府県を1グループにしてグループワークを行っていただきました。このような形で顔を合わせて、膝を突き合わせて、テーマに沿ったディスカッションを行っています。

PP

 平成22年度は、都道府県個別訪問による技術的支援を行っているのですが、これがどのようなものかといいますと、研究班のメンバー1~2人でほぼ全都道府県を訪問し、各都道府県のへき地保健医療計画担当者の方々とおよそ約2時間面談を行っています。国のへき地保健医療計画策定指針に沿った計画が策定されているかどうか。それを確認させていただきました。ただチェックするというだけではなくて、ほかの都道府県の取り組みの情報を紹介したり、各都道府県それぞれ事情がありますので、ちょっと困っていることだとか事情を聞きながら、こういうふうな都道府県の事例もありますのでどうでしょうかというような具体的な助言を行ってまいりました。

PP

 実際に第10次へき地保健医療計画の策定は29都道府県で行われましたが、第11次へき地保健医療計画の策定は36都道府県で策定されました(平成23年度時点で)。へき地保健医療対策協議会、これは平成21年では8都道府県でしか開催できていなかったものが、平成23年度には33都道府県がへき地保健医療対策協議会を計画の策定に当たって開催しています。

PP

 ちょっとこの資料はわかりにくいのですけれども、第11次へき地保健医療計画についての評価と書いてありますが、各都道府県が策定指針で定められた項目、どの程度策定したかというものをまとめています。記載されている内容も具体的な項目が多ければ青い部分が多くなりますし、十分記載されていない項目が多ければ紫の部分が多くなるようになっています。ごらんのように非常にばらつきが大きいです。ほとんど内容も具体的に書かれているようなところもあれば、なかなか計画の策定が不十分、記載内容が不十分な都道府県がありました。都道府県による計画の策定はできてますが、記載内容のばらつきが多いという現状がありました。

PP

 そこで平成24年度から25年度にわたって、第11次へき地保健医療計画における都道府県の策定、取り組み状況にばらつきがありましたので、引き続き各種調査であったり、連絡会議の支援であったり、やはり各都道府県に直接個別訪問をして、具体的に計画がしっかりと実行していただけるように支援を行う研究を行っています。

 これらを第11次へき地保健医療計画の実施2年目、3年目にわたって行っています。調査であったり、連絡会議であったり、改めてまた後で述べますけれども、リーフレットの策定、事例集の作成、このようなものを行いました。

PP

 平成24年度に、都道府県第11次へき地保健医療計画の進捗状況調査を行っています。ちょっと抜粋して書いてありますけれども、へき地保健医療対策に関する協議会、この協議会は非常に多様な参加される方、参加される組織があります。医師会関係者、大学関係者、都道府県担当者というのはおおむね参加されているのですが、中には看護協会、薬剤師会、住民団体が協議会に参加しているという協議会も少数ながら見られています。

 キャリアデザインについてですけれども、へき地医療に従事する医師のキャリアデザインは自治医大卒業の義務年限の医師もいれば、地域枠の卒業医師も含まれています。6割の都道府県が平成24年度の調査時点ではまだ十分キャリアデザインが作成されていないような状況でした。

 地域医療支援センターも23都道府県、徐々に地域医療支援センターが各都道府県で設置されるようになったのですが、一番各都道府県で期待されていた地域医療支援センターの役割がやはり、この地域枠のキャリアデザインの作成でした。

 その他ドクタープール、へき地医療への動機づけ、へき地保健医療計画に住民、患者の視点を反映させるための方策であったり、へき地看護、へき地歯科医療について取り組み状況などの調査を行っています。

PP

 これが平成25年度に行った調査になりますが、へき地に勤務する医師を評価するモデル、へき地医療指定に関するアンケート調査を行っています。これは研究班でつくった、あくまでも仮のモデルになります。いろいろな要件があって試験を受けて、このような指定医を認定する。これが最終案ということではないのですけれども、これに対して実際にへき地診療所に勤務する先生方がどのように考えているかについて調査を行いました。

PP

 へき地に勤務する医師を評価する必要性、これは過半数以上の実際の現場で働いている医師は肯定的な意見が半数を占めていたのですけれども、実際に参加するかとなると、なかなか認定に対する不安であったりとか、離島にいるのでそういう講習とか研修というのが大変だということで、実際に参加するとした回答自体は少なかったです。長くへき地で診療を行っている医師と比べると、若手の医師、若い医師のほうがへき地に勤務したことを評価するシステムを望んでいる傾向にありました。

 一方で、このような資格や認定が逆にそういう資格、認定がないとへき地医療に勤務できないのではないかとか、あとはそういう資格を持っている人間にへき地医療を任せてしまえばいいということに対する危機感であったり、あとは認定、資格よりも診療、生活環境の改善のほうが、よりへき地診療に従事する医師を確保することに有効ではないか。このような意見も見られました。

PP

 昨年度、おととしも同様に全国へき地医療支援機構等連絡会議のグループワークを行っています。平成24年度のテーマは6つのテーマをつくって、へき地医療を担う医療従事者を確保するためのドクタープールであったり、研修プログラム、キャリアデザイン、へき地医療支援機構と地域医療支援センターとの連携、へき地保健医療対策に関する協議会の活用、へき地医療拠点病院の代診医派遣、住民・患者の視点を反映させるための具体的な方策、このようなテーマに沿ってグループワークを行っています。

 昨年度行ったテーマですけれども、計画の進捗状況の把握に期待されているへき地医療対策に関する協議会の活用。それから、へき地看護の充実、へき地歯科医療の充実に向けて。新しい視点として、へき地での薬剤師の役割について。このようなテーマもグループワークで取り上げています。

PP

 これが実際のグループワークで作成された、各都道府県の方々の発表資料になるのですけれども、非常に各テーマに沿って充実した議題、グループワークが行われています。協議会の開催時期についても年に何回だとか、どこで開催すればいいかとか、どのような関係者が参加すればいいかだとか、そういったことがより具体的に書かれています。

 また、へき地における薬剤師の視点の提示については、木屋平で実際にへき地での薬剤師の取り組みをされているNPO法人山の薬剤師たちの方々の取り組みも紹介させていただいて、今までなかった視点というものを都道府県の方々に提示することができたかなと思っております。

PP

 個別訪問も行っていますが、平成24年度は43都道府県のうち40都道府県を訪問させていただいて、特に促進因子、阻害因子の抽出を個別訪問で行っています。

PP

 各都道府県を訪問させていただいて、どのような阻害因子があるかということを伺ったのですけれども、へき地医療拠点病院でも医師が不足しているという診療機能の低下であったり、実際に人口が減ったり高齢化が進んだり、交通の利便性がいい地域ほど逆に不便なところとの医療格差の拡大が起きているというへき地特有の課題があったり、なかなか関係者が一堂に会する場がないだとか、地域全体を見据えたシステムがないという関係者全体の連携不足、このような阻害因子を挙げる都道府県が多かったです。かたや都道府県境の医療であったり、まだまだ看護と歯科医療に関しては、取り組みが不十分ではないかというさまざまな課題が残っていました。

 逆に促進因子としては、協議会だとかそのような場を設けて行政、大学、医療機関、医師会、看護協会、薬剤師会、多様な関係者が顔が見える関係をつくって対話と共同作業が取り組めるようになった。そういう多様な関係者が一堂に会する場が促進因子になったというような都道府県もありました。あとはフォーラムやシンポジウムの開催といった住民視点、それから、地域枠の育成というものが今後へき地医療を充実させるに当たって非常に重要な鍵になるのではないかという都道府県がやはり多かったです。

 あと、各都道府県それぞれ都道府県の事情に合わせて非常に多様な取り組みをされておりまして、都道府県の方々もほかの都道府県の取り組みがもっと知りたいというところもありました。なので、こういう具体的な取り組みをいかに共有するかというのが鍵になるのかなと研究班のほうでも考えております。

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 昨年度の個別訪問では都道府県庁だけではなくて、へき地医療拠点病院であったり、大学であったり、厚労省の方と訪問された県もありますけれども、都道府県庁以外も訪問対象としています。促進、阻害因子を中心とした助言を行うとともに、より現場に近いところでのへき地医療の実態はどうかだとか、そういったものを分析しています。

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 へき地医療を充実させるに当たって個別訪問、調査を踏まえて研究班のほうで分析を行いましたが、やはり今後はへき地を有する市町村との協働、都道府県だけでやるのではなくて、各地域ベースで協議会を開催して、地域住民の方々も参加していただいて、どのようなへき地医療を展開していくか。そのような協働であったり、へき地医療に対する社会的な理解と評価を得るために、積極的に住民の方々にへき地医療の情報発信を行っていったり、あと、へき地医療を担う医師の育成として特に今後、地域枠の学生がどんどん現場に出ていきますので、しっかりとしたキャリアデザインを地域医療支援センターなどと連携してつくっていくこと。この育成も大学だけで行うのではなくて、地域で医師をいかに育成するか。育成された医者をいかにへき地も含めた現場に輩出していくか。そこでずっと固定ではなくて、いかに循環できるか。そのようなことが重要かと思います。

 診療自体もへき地診療所、へき地医療拠点病院単独で負担を抱えてもらうのではなくて、ほかの玉突き方式であったりとか、社会医療法人であったりだとか、いかに重層的に支援をしていくか。このようなことが重要かと思います。そういうことでへき地でのチーム医療だとか、そういったものが成立して、地域へ根ざした医療の実践、このようなことができるのではないかと考えます。

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 あと、お手元の資料にもありますが、リーフレットを研究班で作成しています。これが平成24年度の総括研究報告書のダイジェスト版になるのですが、平成24年度に行った調査計画、見開きを開いていただければ、中には個別訪問で抽出した促進因子、阻害因子、そのような項目についての解説を書いています。このようなリーフレットを各都道府県に配付しまして、研究班のグループワークなど、そういったものにも活用させていただきました。

 特徴的事例集もお手元にDVDがあると思うのですが、個別訪問で集めた取り組み事例の資料をへき地医療担当者の方々で共有できるように作成しております。これも各都道府県に配布しているのですが、それを利用することでほかの都道府県がいかにへき地医療に関して取り組みを具体的にやっているのか。そのようなことを共有することで、いろいろな施策に反映できればと思います。

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 まとめになります。計画の策定に関しては協議会を開催した都道府県、へき地保健医療計画を作成した都道府県が増加したという結果があります。平成24年度、25年度の都道府県個別訪問で計画の実行自体を評価しましたが、協議会の活用もより十分に活用しているところが増えていて、協議会でへき地保健医療計画の進捗状況の把握を行っている都道府県も増えてきている印象があります。

 へき地医療支援機構の活用ですけれども、へき地医療支援機構の環境整備をしたり、専任担当官の業務をいかに支援するか。このようなことで前年度と比較して、へき地保健医療対策が進展したような都道府県も個別訪問のときにお話を伺いました。あとはへき地診療のバックアップ体制として、24都道府県でへき地医療拠点病院以外の基幹病院と連携していたり、12都道府県で社会医療法人と連携していたり、5つの都道府県で玉突き方式で診療支援を行っているところがありました。

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 キャリアデザインにおいては、地域枠の卒業医師について、これも9都道府県で作成されており、25都道府県では作成中でした。自治医大卒業医師に関しては、多くの都道府県でキャリアデザインを作成しているのですが、地域枠のキャリアデザインについても、年々作成している都道府県が増えている印象があります。あとはイメージ戦略で中学、高校生も含めて、よりへき地医療が魅力のある診療の場であるとか、仕事する上でやりがいのある場だというところのイメージ戦略を、多くの都道府県で実施されていました。

 へき地看護、へき地歯科医療についても、徐々にグループワークなどを通じて取り組みをやっていこうというところが増えています。あとは全国へき地医療支援機構等連絡会議の支援を行ってきましたが、このような会議で都道府県間、横のつながりが出てきたように思われます。特徴的な取り組み事例を通じた情報共有であったりだとか、問題意識の共有が図られるようになってきたと思います。

 個別訪問自体ですけれども、これはへき地医療拠点病院を訪問したり行いましたけれども、研究班、行政担当者で各病院を訪問させていただきましたので、現場の医師を交えた意見交換であったり情報共有、そのようなものができたと思います。

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 今後の課題は、今後へき地においても医療需要がどういうふうに変わっていくか。人口も変わっていきますし、高齢化率も変わってきますので、より将来推計に基づいた医療提供体制の構築といったものを行っていかなければならないと思います。ただ、これも一方的に行うのではなくて、住民、現場の医療者を交えて協議を重ねて、どういうふうに医療提供体制を整えていくかというものを決めていく必要があるのではないかと思います。

 あと、診療機能だけではなくて、教育機能も含めたへき地医療拠点病院の役割であったり、社会医療法人との連携というのもまだ課題として今後残っていくかと思われます。

 キャリアデザイン、先ほどの総合診療の話もそうですけれども、育成だけではなく、それをどのように配置するのか、どのように気持ちよくその場で仕事をしてもらえるのか。そのような人材活用が重要になると考えております。

 へき地看護については潜在看護師であったり復職支援であったり、新人看護師等の臨床研修を大きい病院などでできるような体制を整えることができるのかどうか。へき地歯科医療については、公共保健支援センターの活用であったり、へき地においても在宅歯科医療をどのように展開することが可能なのか、そのようなことが課題としてまだ残っています。

 今後ICTの導入という意味では、まだITによる診療支援というのは不十分であることもありますし、なかなか現状自体が十分つかめていない部分もありますので、このような具体的取り組みのピックアップも今後、図られていく必要があるかと思います。

 長くなりましたけれども、以上になります。ありがとうございました。


○梶井座長 ありがとうございました。

 ただいまの御報告について何か御質問、御意見ございますか。松岡構成員、どうぞ。


○松岡構成員 発表ありがとうございました。随分努力されたのではないかと思います。ありがとうございます。

 2点、教えていただきたいことがあるのですけれども、これは第11次へき地保健医療計画の中間チェックといいますか、プロセス評価ということだと思うのですが、そもそもの話、こういった計画そのもののメインアウトカムというか、評価するべき項目というのは設定されているものなのでしょうか。


○森田参考人 本来、策定指針でもそういう数値目標を掲げるように書いてあるのですけれども、そこも各都道府県によってばらつきが多くて、数値として目標を掲げているところもあるのですが、なかなかそこを盛り込んでいない都道府県もまだありまして、個別訪問のときに都道府県に伺ってみたところ、なかなか目標の設定が難しいと言われるところもありました。なのでアウトカムの設定といった点では、まだそこは不十分なところがあるのかなという印象はあります。


○松岡構成員 アウトカムがないとなかなか評価というか、難しいかなと思いました。

 もう一つよろしいですか。私は現在ナースプラクティショナー(診療看護師)と一緒に働いたり研究したりしているところなのですが、へき地看護というのはそういう方の意味ですか。


○森田参考人 いや、これはへき地診療所であったり、へき地医療拠点病院で勤務されている看護師さんであったり、いわゆるへき地診療にかかわっている看護師の方々、そのような意味合いです。


○松岡構成員 そうすると、診療能力を持った看護師さんという意味ではないわけですね。


○森田参考人 違います。


○松岡構成員 わかりました。ありがとうございます。


○梶井座長 ありがとうございました。

 そのほかいかがでしょうか。松岡構成員が言われたアウトカムというところに関しては、森田参考人が御説明しましたように、都道府県でこれがまちまちなのです。示されていないというところもありますし、私たちが各都道府県を見せていただいて、かなり取り組みの姿勢、計画自体に格差があるように思われました。ですから、まず格差をなくして標準化していくことが大切だと思いました。

 そして、多分9次、10次までの計画でかなりの要素は出ていたと思うのです。例えばへき地医療支援機構であるとか、へき地医療拠点病院であるとか、協議会とか、ですけれども、それがうまく動いていないというのが一方では現状としてあったのではないか。そういうものがきちんと動けば、かなりのへき地医療に対する対策あるいはプロダクトが出てくるのではないかという感じはしました。

 今回、私たちが研究班でかかわらせていただいたのは、主にそういうようなところを意識しながらかかわらせていただきました。残念ながら先生がおっしゃる部分はまだまだだと思います。


○西嶋救急・周産期医療等対策室長 事務局からの補足でございます。

 へき地保健医療計画には、確かにアウトカムということは明示されてございませんが、先ほど少し議論がございました医療計画の中に少し記述がございまして、参考資料3をごらんいただければと思います。非常に難しいところで、10ページ目のところにへき地の医療計画、都道府県がそれぞれ策定をするときに、どういう観点で策定をすべきかということが示されているわけでございますけれども、その中で10ページの「1 現状の把握」というところで言えば、医療資源、連携等に関する情報について調査をするべきであるとか、あるいは(2)に指標による現状把握をすべきであるとか、そういったことがへき地のみならず、医療計画全般で今回の医療計画から明示化されているところでございます。

 ただ、御指摘のように、これに必須指標、推奨指標というものを今回、資料としては御用意いたしておりませんが、厚生労働省としてもお示しをしていて、それを各都道府県がどの程度採用しているかどうかというのはまだ把握できていないかと思いますけれども、こういった形で指標という観点を医療計画のほうでは示す。各都道府県が設定をし、PDCAサイクルを回して、今度30年の医療計画の改正の際には、それを参考にしながら改正をしていく。こういう仕組みが今回導入されたということでございます。


○梶井座長 ありがとうございました。

 そのほかいかがでしょうか。澤田構成員、何か研究班のメンバーとしてございますでしょうか。


○澤田構成員 

資料4の10ページの下にあるスライドになりますが、今後へき地や中山間地域の急激な過疎化、超高齢化を迎えるにあたって、へき地診療所のあり方ということも今後真剣に考えていかなければならない時代になっていると思います。これまで常勤医師がずっと配置されていたから今後もずっと常勤医師を、という思いは地域住民にとっては当然強いわけですが、患者数が減ったり、常勤医師の日常業務量が激減したりということになりますと、今後はもしかするとへき地診療所における常勤医師の確保が極めて困難になっていく可能性が高いと考えております。その対応策としまして、診療所の出張診療所化などの方策が選択肢として挙げられ、循環型で複数の医師を派遣していく体制とか、いわゆる集約化やブロック制といった形でへき地診療所を維持していくというような見直しの議論も大変重要になってくると考えています。

 その医師派遣の仕組みこそが、このスライドの左上にあります重層的な支援ということであり、この仕組みは今後、へき地医療拠点病院や社会医療法人のへき地医療要件に基づく指定を受けた病院などから、へき地診療所に対して医師を継続的に派遣していけるような仕組みを意味しています。へき地診療所に常勤医師が確保できなければ、その診療所はすぐに廃止ということには恐らくならないと思うのです。地域住民のへき地診療所に寄せる信頼やニーズは非常に高いものがありまして、それに加えて日々の生活の安心を求めたり、自分の健康に対する不安などがあれば、それらを診療所の先生方は解消して下さる存在であって不可欠な位置づけでもあります。そのへき地診療所に、万が一常勤医師の確保ができなくなった場合、私は即廃止ということではなく、できれば拠点病院などから、この重層的支援によった医師を継続的に派遣していけるような仕組みを構築することによって、へき地診療所の孤立化を防ぎかつ持続可能なへき地診療所のあり方につながっていくのではないかという思いを持って、この発表を聞いておりました。


○梶井座長 ありがとうございました。よろしいでしょうか。森田さん、ありがとうございました。

 それでは、議事の5番目に入りたいと思います。この検討会にはさまざまな分野の先生方においでいただいております。それぞれがへき地医療の対策についてどのような御意見をお持ちなのか。皆さんで共有を図ることがまず第一だと思います。その後でさまざまな議論を進めていけば、より議論が深まっていくのではないかと思いますので、この後、残りの時間でそれぞれの立場の先生方から、お一人5分程度をめどに御意見を賜ればと思います。

 金丸構成員は台風の関係でこの後、御退席されますので、金丸構成員からお願いできればと思います。


○金丸構成員 中途退席をするものですから、順番を崩して申しわけありません。

美郷町は宮崎の県北西部に位置しています。私が赴任したのは平成4年1月。ちょうど23年この地で勤務をさせていただいています。その当時は村でして、人口は3,600人。今は平成18年に3つの村で合併して、それでも人口は約6,000人。当時いた村の人口からすると3,600人から2,000人に減少した地域で、高齢化率は45%。いわゆる平均的な中山間地の場所で勤務をさせていただいております。

 これまで、いろいろな変遷をこの目で、この足で確認しながらいるのですが、現在は、へき地であっても暮らしの中でどう医療を確保して、この村が、町が壊れないための役割を何とか果たせないのかというのが気になっています。

 幸い、宮崎県は県の地域医療支援機構、そして宮崎大学の地域医療学という寄附講座あるいは県の医師会を初め、関係の先生方との協働の中でさまざまに政策がなされています。私たちの地域は、新医師臨床研修制度の中で何か役割ができないかということで、研修2年目で、地域医療が必修化されたおかげもあり、少ないですけれども、研修医の先生が年間7名程度、クリニカルクラープシップ、大学の卒前教育、そしてさまざまに県が医師確保に取り組むガイダンスあるいは高校生等へ働きかけ等をさせていただいております。前後しますが、私たちのところは29床の病院ですが平成18年4月に県のほうでへき地医療拠点病院に指定を受けて、いざというときのささやかですが医師の派遣と、研修の場の提供をさせていただいています。

 ただ、今後見るに地域枠、特別枠の流れがあるのですが、御案内のようにキャリアデザインということがまさに今、途中でありまして、そのことと新たに始まる専門医制度の中でどうキャリアデザインを組むことが、いわゆる地域の、結果としての医師確保につながり、そして、結果としてその地域を回る若い先生の一種のキャリアアップにつながって、そして、結果として地域住民の最初申し上げました医療の確保につながらないのかなということを非常に強く意識して、そのようにあることを志しながら関係機関との協議を重ねて、現場では実際には研修教育に携わっています。名刺にも一部表現していますが、研修道場をつくり、楽しみながら地域の人と交わっていただきながら、暮らしを感じながら研修医の始まりの部分を、医師としての入口を感じて、そして地域医療の魅力、よさ、誇りということにつながっていけないかということを、ささやかですけれども、今、取り組んでいるところです。

 ぜひ、そういう新たな専門医制度の中でいい形のキャリアパスが組めないか。さらに私たちの地域は全国に40町村しかないと言われている消防の非常備化の地域の1つです。なぜか宮崎に7町村あるわけで、その7町村の1つなものですから、先ほどへき地診療所のあり方で意見がありましたが、やはり踏み込んで地域医療を充実しつつ、かつ、救急はしっかりと担保しつつ、そして住民にとっての安心の部分を落とすことなくどうしたらできるのか。

 もう一つは、就労環境の改善。これは不可欠だと思っています。少ない人数で36時間勤務をこなしていかなければ対応できない現実が、私たちのところには本当に普通の世界にあるわけで、これをこういった制度の改正の中で、住民の理解を一番に根本としつつも、何かいい形でキャリアデザインに組み込めないかということを今、腐心をしているところです。そういった流れの中で今回、構成員として参加をいただいたことは、大変感謝をしているところであります。

 長くなりましたけれども、本当に時間をいただきまして、ありがとうございました。中座することをお許しください。


○梶井座長 ありがとうございました。

 それでは、これから順番に御意見を賜りたいと思います。

 有澤構成員、お願いします。


○有澤構成員 日本薬剤師会の有澤でございます。

 薬剤師の立場からお話をさせていただきます。

 へき地とは少し異なるのですが、地域医療という観点から、薬局も調剤をする薬局は医療提供施設として位置づけられておりまして、特に在宅等、積極的にこれから参画をしていくような形で今、進めております。

 もう一方、薬局や医療提供施設である反面、OTCとか医療機器あるいはそういった健康、介護に関する相談も含めて、街角の健康相談拠点というふうな形をとっておりますので、こういったものもへき地医療対策の中で活用していただけるのではないかと考えております。

 全国に5万3,000~5万5,000ぐらいの薬局があります。ちなみに私は北海道の出身でして、北海道のほうの薬局は現在2,200ぐらいあります。確かに薬局のない市町村もありますが、大概のところの地域では薬局がある程度1軒、2軒はあります。現在、厚生労働省のほうで地域健康拠点薬局推進事業という形で、それぞれの小学校あるいは中学校の校区ごとに、薬局がその町の中の相談拠点になるような事業を推進しているところでありますし、在宅に関しても以前はなかなか推進が見られなかった。ところが最近は地域の包括支援あるいはほかの連携、多職種の連携で検討会を開くことによって、大変いい形で推進しております。

 同じような形で協議会というものがあるので、ぜひ薬剤師も積極的に参加をして、そういった中で連携を組むことで、さまざまなへき地の医療に対して貢献できるのではないかと思っています。

 折しも薬学が6年制になりまして、それぞれ臨床適用能力が高い薬剤師あるいは意識が高い薬剤師が出ております。同じように医師、歯科医師、看護師さん、その他のコメディカルの人たちと本当にその地域のために連携をしてやっていくことが大変重要でありますし、特に医師の負担軽減にもある程度つながるのではないかと考えております。診療が1回でも60日分なり、2カ月に1回ぐらいの診療の頻度であっても、その間を薬局の薬剤師が薬物治療的な部分できちんとカバーをしていく。そういったことを今、個々の薬局に対してやれるように推進しておりますので、こういった観点からもぜひ薬剤師を組み入れていただきまして、私どももしっかりと情報共有も図って、各地方の薬剤師に発信をしてまいりたいと思いますので、ぜひその辺のところを御検討いただけると助かると思います。

 以上です。


○梶井座長 ありがとうございました。

 金田構成員、お願いいたします。


○金田構成員 社会医療法人緑壮会金田病院の金田と申します。よろしくお願いします。

 岡山県北部の真庭市、真庭医療圏にあります172床のケアミックス病院でありました我々の病院は35年間に5回に分けてダウンサイジングをしまして、もともと278床ありました。その病院の理事長を28年間勤めております。本年4月まで病院長を16年間勤めておりました。公的委員としては、厚労省関係では中医協、DPC評価分科会の委員の6年目を務めております。また、地元の岡山県では岡山県保健医療計画策定協議会の委員や、岡山県へき地医療計画推進協議会委員を務めております。

 さて、先ほど申し上げましたように、昨年のちょうど1年前の8月6日に報告書がまとめられました社会保障制度改革国民会議のポイント、この1つは医療提供体制の再構築であると考えています。すなわち戦後、特に1950年代に国立病院であるとか労災病院であるとか済生会病院等の公的病院は、医療ニーズの高い都市部にそれまでの基礎となる病院を基盤に発展し、都市部の基幹病院として重要な役割を果たしております。

 一方、都市部以外の中山間地、へき地の人口密度の少ない、経営効率の比較的よくない地域医療の責任を中心的に担ってきたのは、きょうお集まりの自治体病院、県立病院、民間病院等でありました。

 ただし、今、社会保険旬報に特集で書かれておりますけれども、1950年代、特にこれら医療機関が戦後自由に、無計画につくられた。すなわち医療提供体制における医療資源の適正配置がなされていないという歴史的現実があります。構造的に持続可能な経営の困難性がある自治体病院にかわって、地域医療の主体を担うべく、2007年の第5次医療法改正で、我々社会医療法人の制度が創設されました。社会医療法人は公益性を重視した医療法人で、現在までに225カ所程度つくられております。地域医療における大切な役割を県や自治体病院と連携しつつ担ってきています。

 段階の世代が75歳を迎える2025年に向けて、私たちは持続可能な社会保障制度の構築のために、そのためには医療提供体制の再構築は必須な事項と考えています。超高齢化と医療の高度化に伴う医療費の急速な伸び、一方では地方中山間地を中心に既に超高齢化、人口減少が進み、地域の病院では医師不足。この医師不足の原因にも幾つかありますが、医師が大病院とか都市を志向するということが1つ。医師の高齢化と医師の死亡ということも出てきています。医師が亡くなったら後継者がいなくて診療所がなくなるということが、我々の医療圏でも次々起きてきています。そして、看護師不足に加えていよいよ患者不足の時代になってまいります。

 つまり、私たち中山間地、へき地の医療は日本の数十年後あるいは数年後が現実になっているわけであり、ある意味、日本の最先端地域、日本の近未来地域と言えると思います。

 地域医療ビジョンは今年度ガイドラインをつくられ、来年度から各都道府県で3年程度かけて作成されることになっておりますけれども、医療資源の適正配置をデータに基づいて適切に行うとするものであり、自分たちの病院が近隣の病院と闘ってどうやって勝ち抜いていくかという発想から、地域医療、介護における責任をどのようにして近隣の医療機関と協力して、行政、大学等と協力して創造していくかという発想の転換が、我々病院経営者に求められています。

 私どもの病院は、先ほど申し上げましたように20キロ圏内の中小病院が最近5年間に2カ所倒産いたしました。1カ所は破産であります。今後このままだと全国各地に病院倒産が相次いで起こる事態になると私は予想しています。すなわち、これに対する対応としては、人口減に対して病院経営者は覚悟を持って適切なダウンサイジングを行うことが1つ。もう一つ、やはり統合、合併というのはなかなか難しいのです。それぞれの病院に組織文化や歴史があるから。そうではなくて、各医療機関の主体性を残しつつ連合していく仕組みであるところの非営利ホールディングカンパニーに向けた法人制度を検討することが、人口減時代の医療資源の確保のためにはぜひ必要と私は考えています。

 さらにきょうも少し協議に出ましたが、へき地医療推進協議会と岡山県では非常に有効に機能しております地域医療支援センター。このへき地医療支援機構と地域医療支援センター、自治医大の卒業生と地域枠の卒業生、これらの役割を一体的に検討するようなことも、今後の課題ではないかと思います。

 すなわち、以上申し上げたようなことが社会保障制度改革国民会議で示された競争から協調、協働へといって、みんなで地域の責任を持つシステム、持続可能なシステムをつくっていくための1つの重要な課題ではないかと思います。

 以上です。ありがとうございました。


○梶井座長 ありがとうございました。

 続きまして、釜萢構成員、お願いいたします。


○釜萢構成員 既にお話が出ておりますけれども、これから地域医療ということが非常に大きく問題になりまして、そして先ほどの法律に基づいて病床機能報告制度、また、地域医療構想という形でそれぞれの地域に即した医療体勢を整えていこうという大きな流れがございますが、へき地医療はこの地域医療の最も先取りをして、そして、いろいろな問題点がへき地医療の中にいろいろあらわれている。今後の地域医療を考える上で、へき地医療対策のいろいろの今までの積み重ねというものが、今後さらに大きな役割を担うことになるという思いをきょうは大変強くいたしております。

 既に国の施策によって、都道府県にへき地医療に関するいろいろな優れた仕組みが構築できるようなノウハウが提供されております。先ほどの研究班の御発表にもありましたように、それらが徐々に各都道府県においてしっかり機能しつつあるということもきょうは確認できたように感じます。ですから、そのせっかくの仕組みが都道府県においてさらに活用されていって、機能していく方向に私どもも努力をしなければいけないと思います。

 へき地医療を担う人材をどう確保するかということが大変大事でありますが、きょうはいろいろな皆様が御出席でありますけれども、今後はへき地医療こそチーム医療という考え方をさらに推し進めていって、そしていろいろな職種の方々の得意分野を結集してやっていかなければいけないと感じます。

 これは地域医療において、今後はチーム医療は非常に大事だということは申すまでもないのでありますが、このチーム医療の1つのモデルとして、へき地医療の対策ということが大きな意味を持つのではないかというふうに思います。

 へき地医療に携わる人材の確保の中で、医師の問題が大きなウェートを占めるわけでありますけれども、へき地に勤務した医師のキャリアがその後どういうふうに大きく役に立っていくかということに対するデザインはぜひ必要でありまして、先ほどの地域枠の学生の活用とか、自治医大は入学の時点でそういう役割を担うという覚悟のある方に入っていただいているわけですが、やはりへき地の医療にぜひ役に立ちたいという思いを強く抱くような教育ということも大事でありまして、これはへき地だけではありませんけれども、大学の医学部の教育の中において、医師の使命として地域にどういう貢献をしなければいけないかということについて、改めて学生が深く考えられるような機会を与えていくことがぜひ必要だろうと思います。

 ちょっと横道に逸れますが、私ども日本医師会が『DOCTOR-ASE』という雑誌を年に4回出しておりまして、まだそれほど積み重なっておりませんで、最新号が10号であります。これは医学部に入った学生が医師になるために、いろいろな勉強や物の考え方を積み重ねていく中で、医師になっていくための酵素、「ASE」というものがつきますと触媒としての酵素という意味で、造語でありますけれども、医師になるために医師に向けていくための起爆剤としての雑誌という思いでつくっておりますが、こういったものも活用しながら、学生の段階からしっかりと地域あるいはへき地の医療に身を投じて役に立ちたいという思い思いが高まるような方向づけがぜひ必要だろうと思います。

 先ほどからお話が出ておりますが、しっかり待遇を保障することも必要でしょうし、また、へき地における医療の体験がその後のキャリアにつながる。そのことが大分いろいろ国を中心に考えられていることは大変望ましいことだと思いますけれども、そういう方向を今後もさらに進めて、ぜひへき地の医療に携わりたいという人材をいかに多く確保するかということが、今後必要になるだろうと思います。

 診療科目も実は偏在がございまして、必要な医師が十分に確保できるような体制でない部分があります。このことについての情報を今、特にこの方面の専門家が足りないという情報を国民全体で共有して、そして積極的にそういう方面の医師を育てるというような工夫も必要だろうと思います。職業選択の自由という大変大事な基本的人権がありますので、なかなか難しい問題がございますけれども、国民全体の医療を守るという点では、そういう方向づけが必要だろうと思いますし、それがへき地医療にも必ず役に立つと思います。

 少し長くなりましたけれども、以上でございます。


○梶井座長 ありがとうございます。

 それでは、工藤構成員、お願いします。


○工藤構成員 パワーポイントを使って説明をしたいと思います。

 北海道枝幸町から来ました工藤です。へき地医療過疎地域で27年、保健師として働いています。その前は札幌の臨床現場で看護師をしていたのですが、進学したときに枝幸町で保健師がゼロになってしまうということを聞きまして、出身校の先生にぜひそこに行ってみないかということで現在に至っております。

 簡単に地域の現状について最初に話したいと思います。

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 地図で出したのですが、ここが枝幸町でピンクになっていて、色がついているのは島2つを含めて全部宗谷管内、宗谷岬だとかよく歌に出てくるのですが、そこが全部宗谷管内なのですけれども、すごく広くて、この枝幸町とほぼ同じ広さというのが札幌市なのです。枝幸町は平成18年に隣の町と合併してこういう広さになりました。

 交通の便なのですが、一番近くの中核の名寄市にほとんど患者さんは行くのですが、そこに行くのに車で1時間30分かかります。旭川まで行くのに高速バスで3時間30分。私は今回、近くの空港がこの時期とれなくて、札幌市まで高速バスで出て5時間かけて千歳から飛んできたのですが、バスも高速バスが1日1往復とかそういうような状況です。JRがありません。

 行政区域としては稚内市に支庁があるので、そちらに2時間かけて、また、帰りも2時間ということで、このような会議には4時間ぐらいかけて出ているというのが日常です。

PP

 これがメインの枝幸国保病院の状況で、83床あります。

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 これは事務長さんにこういう会議に出るのでということで、ちょうどいい資料があったのでいただいたのですが、固定医師が医師3名いたのですが、平成23年で私より2年先に枝幸町におられた先生が65歳で定年で、23年度でおやめになりました。その後、固定医師が2人体制になってしまいました。それで患者数はほとんど変わらないのですが、医師の負担がこのようにどんとふえてしまったという状況です。

PP

 これは入院の患者です。入院の患者数もそれほど変わっていないのですが、やはり医師が1人減るとこのように負担がふえるという状況です。

PP

 看取りのことなのですが、合併したこともありますし、病院を再編したのです。それで国保病院が2カ所あったものを、1つを老健施設と診療所になりましたので、平成23年度からは先ほどのメインの枝幸国保病院でほとんど入院ということになりましたので、看取りの件数もこちらに全部集まって、看取りというのは昼も夜も関係なく先生方働かなければならないので、すごく大変な状況だと思っています。

PP

 これは救急搬送なのですが、枝幸町内です。端から端まで1時間かかるのですが、枝幸の国保病院に救急車が来るのもこのような状況です。やはり合併して医療を再編したことで、隣の地区にあった国保病院の患者がそのまま上乗せしたという状況になっています。

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 先ほど言った枝幸町から一番近い中核都市へ救急の搬送は、右肩上がりでこのようにふえています。これは住民の方にもこういう資料をつくって説明したり、皆さんコンビニのタクシーがわりとか、そういうことではなるべく使用しないでほしいというような話にも使っています。

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 ドクターヘリなのですが、平成21年からドクターヘリも始まりました。ただし、実際に飛んでいるのは赤いグラフのほうで、天候不良があります。冬期間がほとんど吹雪だとか、いろいろなことで飛べないような状況もあります。

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 これは保健活動の中で私が取り組んできた中身なのですが、私が就職したころというのは難病患者さん、国で認めている、登録している方が少なかったのですが、どんどんふえてきて、枝幸町もそうですし、宗谷地域全体で4倍ぐらいにふえてしまいました。

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 そういった中で、地元には精神科だとか難病の先生とか専門医はいないわけです。それで10年間相談会という形で都会にいる先生をお呼びして、一緒にこういうものをやってきたら、フォーラムでこういう状況だというふうに発表しましたら、理事者だとか議員さん、地元の先生方も、やはりここでもそういう診療がないと困るよねということと、住民のほうからどんどん病気が悪くなって、都会にはもう行けない。それを何とかしてほしいという住民の声もあって、理事者も何とかこの対策を頑張って保健師さん進めなさいということでした。

PP

 実は南宗谷の中で枝幸町ともう一つ中頓別町というもっと小さな町があるのですが、そこで枝幸町のほうに相談会に来ていたリウマチ・自己免疫疾患の先生が札幌から、旭川医大から神経難病の先生が、この地域に年数回入ってくれることになりました。コンサルテーションの外来です。ふだんは地元の先生が検査をしたり診療をしていて、その先生が来るときには検査もしておいてくれて、相談をしたりして、また帰って地元の先生がふだんは診療しているということで、今そのシステムを南宗谷難病医療システムということで私も書いたのですが、継続しています。その一人一人の専門の先生を地域に置くだけの患者数はないのです。だけれども、専門の先生が時々こういうふうにコンサル外来をやってくれれば、何とか地域はいろいろなことで住民にはサービスが届くというふうに思っています。

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 これは平成11年の訪問看護ステーションの設置状況。平成11年というのは介護保険法が12年に始まる前に、国のほうから訪問看護ステーションをつくりなさい、在宅ケアを推進しなさいということで、介護保険の5つの柱の1つです。枝幸も手を挙げたのですが、実は取り下げをしました。そして、厚労省の直接補助だったと思います。私は取り下げをやってすごく大変な思いをしたのですが、実は看護師さんがいなくて取り下げをしてしまったのです。その後、北海道総合在宅ケア事業団という第3セクターがあります。町の国保病院の看護師さんを初めてそこの訪問看護事業に派遣したのです。道庁のほうも初めてだけれども、やってみようということで許可してもらって、ステーションの所長を国保病院の所長を派遣するという形で、看護師さん2.5人をようやっと確保してつくりました。8年かかって訪問看護ステーションができて、ようやっと介護保険の1つのサービスができるようになった。40歳以上は介護保険料が全部引かれています。だけれども、サービスがないのです。余りにもひどい格差だなということで、婦長さんたちと頑張って力を合わせてやりました。

 自分も含めてそうなのですが、どうしても医療職というか、病院に勤めたときはぱっと解決できないと嫌になった、地域もやめてしまおう、ほかに行ってしまおうと思ったのですが、実はこういうふうに何年もかかって取り組んであきらめないで来たらできたのです。そういうところは私もふだんから一緒に働いている皆さんとそういう気持ちをつくりあげていきたいなと思ってやってきました。

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 それでステーションができたのですが、開設当初20人から経営可能な40人まで上がったのですけれども、看護師さんが1人やめてしまうことでまた下がって、在宅ケアの推進といっぱいうたわれているのですが、実際はなかなか進みません。どこか1つが欠けるとなかなか進まないというのが地域の現状です。本当に私は看護婦さんの確保も含めて、病院の看護師さんのことも含めて一緒に婦長さんたちと今、力を合わせてやっています。

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 ということで最後のほうなのですが、実は枝幸町では光ファイバーで30億かけて総務省のお金をいただいて、光のネットワークをつくりました。それをせっかくつくったので、私は札幌市が開発している遠隔看護の相談システムというものを今一緒に研究したり構築事業をやって、ことしからスタートさせています。ただ、光をつなぐときにはお金を出すのですが、こういうソフトを新たに開発しているとか、そういうものには全然お金がなくて、きのうも予算のことですごく言われて、なかなかお金がかかるのですけれども、サーバーをどこに置くとか、そういうことでお金がなくて今、苦労している状況です。

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 現在の状況です。枝幸のメインの国保病院、そして診療所と老健になったもう一つのところ、そして、ことし3月まであって民間の病院が先生がやめてしまいました。ということで枝幸国保固定2名、もう一カ所が内科医師1名ということで、3名で今やっております。ということであります。


○梶井座長 ありがとうございました。

 非常に具体的で、今後の議論を進めていく上で重要な指摘をしていただいたのではないかと思います。

 皆様にちょっとお願いですけれども、時間が大分押しています。時間厳守でいきたいと思います。まことに申しわけありません。以後の方々は3分ということで、より順番をお待ちになりながら絞り込んでいただければと思います。

 それでは、続きまして佐々木構成員、お願いします。


○佐々木構成員 佐々木と申します。日本歯科医師会から発言させていただきます。

 先ほど研究班の報告書の中にも、ダイジェスト版の中にへき地歯科医療について報告がございますが、第11次へき地保健医療計画等でも23都道府県がへき地歯科医療の記載がございました。また、25年からの医療計画の中でも、へき地について何らかの歯科の記載がある都道府県が徐々にふえているように思います。歯科医師会といたしましても、都道府県歯科医師会を通して組織的に地道に支援をしていることが、そのような必要性が少しずつ認知されてきているのかと思います。

 しかしながら、口腔の問題が十分に把握されているかどうかの実態把握やその実態や取り組みの状況は先ほどもありましたように、地域の温度差が非常にあるかと思っております。そういう意味でも、前回の平成22年の報告書からもまだ解決していない問題は引き続き抱えているかと思いますし、研究班の最後のまとめの中にやはり課題として載っておりましたが、引き続き歯科の問題も検討をお願いしたいということでございます。

 特に御承知のように、歯科医療は回数のかかる治療が多いこと。また、治療機具が複雑、設備の完備等に手間がかかったり、どうしても対面行為を要することが歯科の特徴になっております。へき地での処置が最低限になってしまい、痛みを取るだけの治療や安易に歯を抜いてしまう治療は、口腔の健康格差が大きくなる可能性があります。そのような意味で歯科医療のアクセスや後方支援としての病院歯科等の位置づけとともに、医療機関等への搬送手段の確保について重要だと考えています。

 その報告書にもありましたように、少し時間の関係で省略しますが、今後とも高齢者がふえてくる環境にあって、へき地に限った問題ではないかと思いますが、へき地においてはなおさら環境がシビアになってくるわけですが、要介護高齢者の誤嚥性肺炎等の予防を含めた口腔ケアや口腔管理の重要性は、当然、今は言うまでもないことでございますが、単なる歯科医療のみならず、計画的な歯科治療支援が実施できるような体制整備が必要になってくるかと思います。特に自治体や地域包括支援センターとの連携、また、他医療職種、他団体と歯科との連携等、情報の共有等も重ねてお願いしたところでございます。

 研究班の中に7県で行われました歯科関連の報告の中にも1つ、食支援というキーワードで食べることへの支援がQOLの向上には非常に重要な視点になってくるかと思います。そのような意味で、住民の方は複数の基礎疾患を持つ方が多いかと思われますので、医科病院等への入院時に歯科の情報もともに共有でき、歯科口腔外科における集中治療ができるような視点も大事だと思っております。

 先ほど日本医師会の釜萢構成員からもお話がありましたように、教育、チーム医療の重要性から最後にへき地医療教育について、歯科大学や研修施設での充実はもちろんのことですが、へき地医療拠点病院や医師等の歯科以外の職種に対する教育、カリキュラムへの歯科及び口腔の問題について、歯科職種が教育できるような体制の整備とともに、へき地におけるチーム医療にも歯科が参加できるような施策をぜひお願いしたいと思います。

 以上です。


○梶井座長 ありがとうございました。

 それでは、澤田構成員、お願いします。


○澤田構成員 

私はへき地医療支援機構専任担当官として、へき地医療拠点病院に対する代診医師の派遣調整などを通常業務で行っております。その立場から発言をさせていただきます。第11次の計画でへき地拠点病院の指定を受けることによって、その病院が何かしらのメリットを感じられるようにということで、DPC上、地域医療係数2による診療報酬上のインセンティブを設けていただきました。また、医師不足に難渋する自治体病院だけでは難しいということで、民間病院の活力も有効に活用していくために、社会医療法人のへき地要件も新たに設けていただきました。

 これらの制度改革によって、ここ数年のへき地診療所への支援形態も随分変化してきたものと考えています。しかしながら、お手元の参考資料4をご覧いただきたいのですが、この2枚目に拠点病院の状況が示されていますが、その中で医師派遣とか代診医派遣を行った実績の割合がゼロというのが実は半数以上もあるわけです。しかも参考として書かれている資料では、いずれの支援実績も実施してない施設というのが67施設もあるといった現状であります。

 私は、先ほどへき地診療所を孤立化させないために、診療所に対する重層的支援や循環型の医師派遣の必要性について述べましたが、今後こういった拠点病院とか、へき地医療要件で指定された社会医療法人の役割というものが、非常に重要な時代になってくると考えています。そのためにも過疎地やへき地に医師を派遣する病院に対する国からのより高い評価によって、へき地医療拠点病院に対するもっと強い動機づけが必要になると考えています。

 例えばここで支援実績がゼロの病院であっても、へき地医療拠点病院の指定があればDPC上のインセンティブが受けられるのです。その一方で、年間100日以上支援に行っている病院もあるわけで、両者のインセンティブには全く差がないのです。そのため、可能であれば、その支援実績によってインセンティブにも若干差がつくといった形であれば理想ですし、やはりへき地を守っていこうとする政策や事業、病院に対して今以上にさらなるメリットやインセンティブを、是非国策として御検討いただきたいと考えております。

 今後、過疎地、中山間地域の高齢化、人口減少はさらに加速して、へき地診療所の常勤医師確保はより困難な時代になってくると思います。そのために診療所廃止に追い込まれ地域もきっと増加してくるはずであり、その対策として是非ともへき地拠点病院やへき地要件による社会医療法人に対するより強い動機づけや評価に対して、さらなる御検討をお願いしたいと考えております。

以上です。


○梶井座長 ありがとうございました。

 続きまして、白石委員、お願いいたします。


○白石委員 隠岐島からやってきました白石と申します。

 先ほどの『DOCTOR-ASE』最新号に私が載っているのではないかと思うのですが、載せていただきました。また見てみてください。

 私はフェリーで2時間半ぐらいの離島で、6,000人が対象で44床の病院で院長をしています。縁もゆかりもない島なのですけれども、17年目になりました。そういう立場で、どうするとへき地でやれるのかなというのを思いながら話をさせてもらいたいと思います。

 非常に公的な健康サービスというものを私的に運用してきたツケが、釜萢先生も言っていましたが、今、来ているのだろうなと。このままではとてももたないだろう。

 その中で、例えば重層的な支援だったり、難病相談なんかでも医療情報というものを誰のものかというものをもう一度はっきりと考えて、私自身の考えとしては非常にパブリックなものである。患者さんのものでもないし、病院のものでもない。なぜかというと税金の投入されたのも医者で、あるいは税金を投入された病院で医療機器を使って診断を受けたもの、それはやはりクラウドのような形でパブリックなところに置いておいて、患者さんの同意を得て、それを管理している医療機関が利用するというようなものになると、そこの情報のところを一元化するといろいろな診療支援であるとか、あるいは相談であるとか、重層的な何とかというのが非常にうまくいくのではないかと思っているので、そういうことを全体のことを考えながらという意味で、このへき地医療計画みたいなことが、県のへき地医療計画だけではなかなかそういう目線は出てこないので、非常に重要なものではないかと思っています。

 島で17年やってこられているときの問題というのは、やはり人の確保、それから、うちは自治体病院なので首長との関係。医者としては後方病院がちゃんとしているかどうかなのです。後方病院が自分のところでできないものを、はいどうぞで受け取ってくれるかどうかというストレスはすごく大きくて、ただ、今これも公的なものが私的な病院もいっぱいあって、どこの病院がそのカバーをするかというのが余り明確になっていない。あるいは明確になったからといって、受けたからといってメリットがそんなにないというところですね。そこのところが結局、今の時点では院長が院長にお願いして、うちのカバーをお願いしますね。その院長が気が利いていると、救急当番の医者にあそこからのものは全部受けろ。そうするとうまくいくのですけれども、院長が変わるとまた変わったりする。それが今のへき地医療の現状です。だからそこは何とかしてほしいなと思っています。

 人の教育という意味で言うと、へき地医療は実はやはり楽しいのです。本来は。満員電車に揺られることはないし、うまいものは食えるし、ゆったりと生活できる。ただ、やはりそこのところを学生、医学生、看護学生、歯科ももちろんそうだと思いますし、薬剤も学生時代に義務として教育期間の中に入れるということを考えていかないといけないのではないかと思っています。

 島根大学は医学部はそういうことを8年前に3週間、長い人は5週間、地域に出すということを授業の一環としてするようになって、かなり流れは変わってきていると思います。ところが、看護なんかに関しては、普通は7対1の500床、1,000床の病院でしか看護の研修はないのです。ところが、中小の病院も結構いい看護をしているところがあるので、ぜひそういうところを看護カリキュラム、教育のカリキュラムの中に入れていただくと、流れは変わるのではないかということを思いながら日々やっております。

 以上です。


○梶井座長 ありがとうございました。

 続きまして、白川構成員、お願いします。


○白川構成員 全国離島の白川でございます。

 日ごろから、離島医療の確保につきましては、厚生労働省を初め、関係者の皆様に大変お世話になっております。近年では国、都道府県及び各種関係機関の御協力によりまして、ドクターヘリの整備も進んできたところでございまして、心から感謝いたしております。しかしながら、離島の医療の現状を申し上げれば、多くの離島地域では無医地区が多く、また、医療機関があっても医師不足に加え、看護師、保健師等の医療従事者の慢性的な不足状態が続いているというのが実情であります。

 医療機関もなく、医師もいない島に住民は定住することはできません。これら無医地区の対応について、関係機関の御尽力を加えて、市町村長の個人的な人脈を駆使するなどして人材の確保に取り組んでいるところでございますが、自治体の努力にも限界があるため、国によるドクターバンクの設立等の御支援をお願いしたいと考えております。

 総合医などの1次医療などを担う人材の確保については、地域医療再生基金にかわるような中長期的な予算の確保が必要でございます。加えて医師へのサポート体制、医師間ネットワークの構築など、遠隔診療に加えた情報基盤の整備が必要だと考えます。

 また、離島におきましては人材の確保以外にも、離島の特性に合わせた1次医療の受診はもちろん、高度医療を受けるための交通費の支援、医療費、医薬品、医療機器の輸送費の軽減、また、妊婦だけではなく妊産婦への支援拡充などの支援施策が必要であります。改正離島振興法におきましては、国の責務による離島定住の確保がうたわれております。離島の命綱であるへき地医療保険制度の見直しに当たっては、離島定住を確保するという離島振興法の精神に照らし、必要な定住条件、医療環境の整備に加え、地域の実情を反映した計画となるような制度の構築をお願いしたいと存じます。

 ここで少しだけ壱岐の現状を申し上げます。壱岐市は人口2万8,000人の島でございますが、1つの自治体病院と4つの民間病院、10の医院診療所で医療の提供をいただいておりますが、医師の絶対数は当然不足をしている状況にございます。

 そういった中で、壱岐と本島以外に3つの有人属島、いわゆる2次離島を掲げております。これらが無医地区でございました。これらの島の医療について大変熱心に使命感を持ってへき地医療に取り組んでいただいている医療法人理事長様の御提案によりまして、市が診療所を開設し、その理事長様御自身が週1回島に渡り、診療をいただくというシステムができ上がりました。

 そこで、これはお願いでございますけれども、できましたら次回の会議の折りにでも、これらを含めた壱岐のへき地医療の状況について説明、発表の機会をいただけたらと思っています。医療資源の限られた離島における医療のあり方の参考になると思っておりますので、ぜひよろしくお願いいたしたいと思います。

 本日はその医療法人の理事長様初め、5名の方々が本席に傍聴にも見えております。それほど熱心にへき地医療に携われておられますので、ぜひよろしくお願いいたします。


○梶井座長 ありがとうございました。

 続きまして高村構成員、お願いいたします。


○高村構成員 今回この検討会に参加するに当たりまして、私はへき地医療に直接かかわっておりませんので、広島県のへき地医療支援機構運営委員会からの意見を聞いてまいりました。

 先ほどの研究発表と重なるかと思いますけれど、まずは無医地区の定義の見直しについて挙がっておりました。中山間地域で診療されている医師の中には高齢の方も多く、数年のうちには診療所を閉院するという状況が発生しています。これが現実になると現在、無医地区の定義は50人以上の居住者となっておりますが、今後は200人、300人、それ以上の単位での無医地区化が進行していく可能性があるということです。無医地区の再定義や対応策の検討が必要ではないかということです。

 次に、無医地区への医療支援の考え方についてですけれど、移動診療車を活用して無医地区への巡回診療が行われていますが、自宅から移動診療車まで出かけてくることが困難な高齢者がふえている状況です。医療だけの問題ではなく、生活支援を含めた検討をする時期がきたのではないかということです。

 次に、へき地医療拠点病院の指定要件、補助要件の見直しについてですけれど、へき地医療拠点病院の常勤医師が減少傾向にある中で、へき地診療所等への医師の派遣や診療支援が厳しい状況になっています。へき地医療拠点病院を支援する医療機関として、都市部の中核病院をへき地医療支援病院として指定をしたらどうかという意見も出ておりました。先ほどの研究班の発表でも述べられていました。

 その他といたしまして、へき地医療拠点病院は医師も不足しておりますが、特に看護師の不足が目立ってきており、へき地医療拠点病院も疲弊状況になっているということです。地域の実態に見合った支援策の検討が必要と考えられます。研究班の発表では8都道府県がへき地看護師の充実への取り組みをされたという発表がありました。ぜひとも8都道府県の発表内容を具体的にお聞きしたいと思っております。

 広島県看護協会では、広島県の委託を受けて復職支援事業を実施しておりまして、潜在看護師の掘り起こしを積極的に行っていますが、それほどの効果が得られず、なかなかへき地まで看護師を充実する状況には至っておりません。市内の中心部の病院でも不足という状況で、今後のことを考えますと、看護師の不足は本当に深刻な状況だと思います。

 先ほど釜萢先生から、医師の立場から御発言がありましたが、医師の教育において学生の段階でへき地医療、地域医療について行っていると述べられましたが、看護教育も学生の段階から地域医療、へき地医療の重要性、やりがいを見出すような教育を行っていかないと、なかなかへき地のほうに看護師を派遣することは難しいと実感いたしております。

 人材確保と人材育成、これが今後の看護の大きな課題と考えます。

 以上でございます。


○梶井座長 ありがとうございました。

 それでは、畠山構成員、お願いいたします。


○畠山構成員 時間も迫っておりますので端折ります。

 岩手県一関市から来ました畠山といいます。よろしくお願いします。

 岩手県一関市というのは、宮城県境にあって岩手県の一番南のほうにあります。私たちは岩手県立千厩病院があるのですけれども、私たちの住む一関市は人口が約126,000人、平成の大合併で東京23区がすっぽり入るくらいの面積を持っています。そこに県立病院が3つあるのですけれども、岩手県というのはほかの地区と少し変わっていて、広大な面積を持っているので戦後の中山間地が多いので、過疎農村地域が大変多いので、公的な病院が地域の医療を担ってきました。

 ところが、平成21年には一時常勤医が20人以上もいた 千厩病院が6人に減ってしまって、このときに県立病院の医師が大量に退職してしまったのです。診療科もどんどん減ってしまいました。私たちがそれを知った一部の住民で、このままでは県に署名をしてもしようがないから、私たちが今できることをやっていって、何とか千厩病院を残してもらいたいということで活動を始めたの 22年の1月です。今、5年目に入っています。

 現在の活動としては会報の発行、花壇整備、あさがおランチ、これは毎月第1、第3木曜日に医師にランチを提供しています。1年に1回、病院をコンサートホールにして、職員の皆さんにも安らぎの時間を提供しています。それから、講演会、研修会の開催をしています。なかなか医療というのは壁が高くて、一般住民には難しいところがありますけれども、私たちは15分程度の寸劇をして一般住民の方たちにも医師の過酷な状況や適正受診を呼びかけています。

 以上です。


○梶井座長 ありがとうございました。

 前田構成員、どうぞ。


○前田構成員 手短にお話をしたいと思います。

 私は長崎大学の医育機関から来た者の立場として発表させていただきます。

 先ほど申し上げましたように、へき地医療は医療連携であったり救急搬送、ヘリ搬送だったり、へき地医療と地域医療というのは非常に連動するわけです。あらゆる分野で、あらゆる部分で連動いたします。ですから地域医療とへき地医療を分けて考えるのではなくて、一体として考える。広く捉えるといったところが非常に重要なテーマではないかと思います。

 医師不足が深刻化したのを受けまして、全国的に医学部の入学定員がふえています。この7年間で1,444人ふえております。これは医学部が14個できたのと同じぐらいの増加であります。

 一方、地域枠の学生の入学定員がふえておりまして、ことし平成26年の入学定員で1,420人になっております。この募集枠全員が地域枠で入学したわけではありませんが、こういうふうにふえているということです。

 方や教育はどうなっているかといいますと、医学教育モデルコアカリキュラムというものがあります。これは医学教育のガイドラインなのですが、平成19年の改訂版には6年間一貫して学ぶべきものとして地域医療というものが挙げられています。そして臨床実習の中に地域医療臨床実習というものが加わって、全学生が地域医療臨床実習を受ける、地域医療教育を受けるということが盛り込まれております。

 こういったバックグラウンドがあるわけですが、大学が学内で保健・医療・福祉・介護、いわゆる地域包括医療の教育を学内で教育できるのかというと、とてもできないわけです。どうしても学外の協力が必要なわけです。だから大学としては教育フィールドを学外に求めておりますし、是非学外の地域医療教育フィールドが必要なわけです。医学教育に地域医療の現場あるいはへき地医療の現場が参画していただいて、教育というキーワードから地域医療あるいはへき地医療を盛り上げていくという方向性を考慮することが非常に重要なテーマではないかと思います。

 最近、特に地域は高齢化が進行しておりまして、高齢化すると病態としては複雑化しますし、慢性化します。一方、医療やケアの発達によって高度なケアとか先進的なケア、個人の価値観といったものを尊重したケアというものが要求されています。ですから、地域医療の現場は患者中心の保健・医療・福祉・介護、地域包括ケアシステムの絶好の教育の場でもあるわけです。地域医療やへき地医療の関係者に、是非、教育に参画していただいて、ともに教育という切り口でもって地域医療、へき地医療を盛り上げていっていただきたいと思います。

 これまで地域医療とかへき地医療を取り巻く環境というのはかなり変わってきております。地域医療再生基金事業であり、班会議であり、研究会であり、この検討会であり、いろいろな意味でかなり変わってきているわけです。まずはこの5年間ぐらいの取り組みを総括して検証して、そして次の対策を検討していければと思います。

 私の考えとしましては、へき地医療はへき地医療支援システム、これはキャリア支援も含めてですが、へき地医療支援システムの構築と教育という切り口の両面からへき地医療、地域医療の対策、検討に当たっていければと考えます。

 以上です。


○梶井座長 ありがとうございました。

 それでは、最後に松岡構成員、お願いします。


○松岡構成員 自治医大を卒業して、再処理工場で有名な六ヶ所村なのですけれども、そこで25年、診療所をやっています。そういう観点からの意見を3つに分けて1分で。

 1つは、へき地のお医者さんのキャリアそのもののこと。

 もう一つは、へき地中核支援病院のこと。

 最後に、ナースプラクティショナーさんのことです。

 へき地の医師のキャリアそのものというのはどういう意味かと申しますと、へき地に関するこういう計画ではお金でやっていただくとか、キャリアアップのための何かいい方策を考えてあげるとか、あるいはコンサートまでやってくださるとか、そういう話をしていらっしゃるのですけれども、私から見ると議論が逆なのではないかと思うのです。

 そろそろへき地医療が特別なスペシャリティであることを理解するべきだと思います。そこにはとても興味深いものや研究すべきテーマがあります。また都会からは遠いのですが、海外の田舎とはすごく近いのです。スコットランドやオレゴンへ見学に行ったのですけれども、彼らがへき地でやっていることは同じなのです。同じ視点だったり、同じ問題点だったり、同じカルチャーで勉強します。ですから都会の視点で見るのではなくて、グローバルな視点でへき地医療というスペシャリティとしてやるべき時代なんだと思います。そうしない限り、いつまでたってもやっていただくとか、お金で買うとか、そういった議論が尽きないのではないかというのが1つです。

 もう一つは、海外と交流するためには時間が必要だということです。へき地中核病院の話になるのですが、今はへき地中核病院そのものに医者が少ないので代診をする余裕がありません。400床とか500床の病院でERと総合診療部に10人から20人スタッフのいる病院をへき地支援施設として指定するべきだと思います。そこで常時1人か2人医者を余らせ、余裕を持っていただければそういうことができるのではないかと思うのです。小規模の病院にはお願いできないと思います。

 もう一つはナースプラクティショナーさんのことなのですけれども、今、一緒に働かせてもらっているのですが、とても有能です。イギリスやアメリカでは、本来へき地で活躍している人たちなのですが、外来をやっていても医者の0.5人分の能力があると思います。ふだんの臨床も助かるのですけれども、地域の人口規模が小さくなって診療所が撤退するようなときでも、彼女たちが十分活躍できる感触はあるのです。ですからへき地医療のパートナーとしてもとても有効だと思っています。

 以上です。ありがとうございます。


○梶井座長 ありがとうございました。

 時間が多少過ぎてしまったのですけれども、皆さんの御意見を賜りました。

 皆様の御意見の中に、やはりこれから検討すべきテーマというものがたくさん出ていたと思うのです。それを今後詰めていかなければと思います。

 きょうはへき地保健医療計画の今後の対応について皆様に御検討をいただいて、そして、事務局案でこれから検討していこうということになったと思います。その上で御意見を賜りました。ありがとうございました。私自身の意見は次回にでも述べさせていただきたいと思います。

 最後に議事6になりますけれども、その他とありますが、事務局から何かございますでしょうか。


○森井地域医療計画課長補佐 ございません。


○梶井座長 予定の時間もまいりましたので、本日はここまでとしたいと思います。

 それでは、今後の検討会について事務局から御案内をお願いいたします。


○森井地域医療計画課長補佐 次回の検討会ですが、日付が決まりましたらまた御連絡させていただきます。


○梶井座長 それでは、以上をもちまして第1回目の検討会を終わらせていただきたいと思います。本日はどうもありがとうございました。


(了)
<照会先>

医政局地域医療計画課救急・周産期医療等対策室

直通電話: 03-3595-2194

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