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2014年6月25日 第2回職業能力開発の今後の在り方に関する研究会議事録

職業能力開発局

○日時

平成26年6月25日(水)10:00~12:00


○場所

中央労働委員会事務局講堂(7階)


○議題

(1)職業能力評価制度について
  ・ 有識者からのヒアリング
   大久保幸夫 株式会社リクルートホールディングス 専門役員・リクルートワークス研究所 所長
  ・ 外部労働市場型の職業能力評価制度の構築について
(2)その他

○議事

○今野座長 時間になりましたので、ただいまから、第2回職業能力開発の今後の在り方に関する研究会を開催いたします。

 本日は阿部委員が欠席です。原委員は途中で退席をされます。

 本日は、前半は職業能力評価制度の議題になっていますので、それについて、まず有識者からのヒアリングを行い、それから議論を行いたいと思います。後半は前回の研究会の意見を踏まえ、さらに議論を深めていきたいと考えています。まず、最初の議題の職業能力評価制度について、「有識者からのヒアリング」ということで、大久保委員に資料を用意していただいていますので、御説明をいただきたいと思います。よろしくお願いします。

 

○大久保委員 お手元に配布されている資料を基に、少しお話をさせていただきたいと思います。「職業能力評価制度の構築に関して」と題して、いくつか私なりに職業能力評価制度の在り方について、現在の課題、あるいは認識を整理してみました。職業能力開発と職業訓練と職業能力評価というのは、いわば職業能力開発行政の車の両輪のようなものだというように認識をしています。現状は職業訓練の領域が当初スタートした施設における「ものづくり訓練」から、徐々に多様な領域に広がり、委託訓練や求職者支援訓練という形に広がっていますけれども、一方でそれに対応して、職業能力評価制度の整備、制度設計が進んできているかと言えば、そこは十分ではないのではないかと思っています。職業能力評価制度が整備されることによって、職業訓練の質の向上が期待できると思っていまして、特にこれから、委託訓練の質を上げていくとか、求職者支援訓練の質を上げていくという上で、その職域に伴う職業能力評価制度が整備されることが大変重要だろうと思っています。現在はカバーされていない領域について、どうしていくのかを考える必要があるということです。

 昨日も日本再興戦略が出たところでありますが、職業能力評価制度の整備を必要とする環境が整ってきたのではないかというように思うのです。その一連で産業競争力会議等々で、現在の議論の中で出てきているトーンというのがあると思うのですが、それは雇用維持型から労働移動支援型に軸足を移していくという、その政策の視点であったりとか、あるいはもっと言うと、日本型雇用というものに関して、いくつかの課題が目立ってきているというものです。第一次安倍政権のときに、年齢差別禁止をかなり強く推進して、年齢を軸とした日本的雇用に対する1つの問題提起をしていますが、企業では、能力というのはあまり明確に測定をすることをせずに、年齢によって代替してきたのですが、その能力を明確に評価できるようにすることが様々な問題を解決する上で非常に重要な入り口になると認識をしています。

 そういう意味で、職業能力評価制度の整備というのは今日的な課題なのだろうと思っています。非正規の対応において、ジョブ型の正社員を普及させていこうということとも密接に関わっていて、ジョブ型正社員、あるいは地域限定社員と呼ばれているような者を導入する際に、現在有期で雇用している人たちの中から、誰を無期にして誰をそうでなくするのかということについて新たな基準を設けなければいけないときに、それぞれの職域ごとにどのような能力を持っているのかを見るというのが課題としてあります。そういうことも含めて、今、職業能力評価制度というのが、ちょうどそれを整備する旬にあると考えたほうがいいのではないかと思うのです。

 それでは、特に領域的にはどこから手をつけていくのだろうかということですが、3ページ目にデータをつけてみました。これは私の所でやっている調査で、職種(中分類)ごとに、働いている人の比率を全体が100になるように割り振ってパーセンテージをつけたものと、直近5年以内の転職率(黄色網掛け部分は転職率が高いもの)と、それぞれの職種ごとに資格や免許がないと仕事ができないのか、あるいは、それは必要とされているのか(黄色網掛け部分は、その値が低いもの)を聞いています。数が多くて、流動性が高くて、しかもまだ資格制度が整備されていない領域は率先して手をつけるべき領域でしょう。その3つを全て満たしているのは、「接客・給仕職業」と「商品販売従事者」になります。これは対人サービス業の領域の典型職種ですが、こういう所を手始めにしながら、職業能力評価制度の構築というのを進めていく必要があるのではなかろうかと思います。現在、資格・免許が整備されていないという領域については、次に転職率の高さや従業員数の多さということを基準にしながら、順次、制度の整備を図っていくことも必要なのだろうと思っています。

 もとのレジメのほうに戻りますけれども、3番目に、職業能力評価制度の目的を書いています。職業能力評価制度を作って、どういう状態を目指すのかということですが、第1の目的はやはり「職業能力開発の促進」だろうと思います。それは、する側、される側の双方の動機付けであったり、あるいは職業能力開発の質を向上させたり効率化させたりするということであり、また、これが整備されることによって職業能力開発の成果が測定できるということです。こうした仕組みが公共職業訓練はもちろん、企業内のOn-the-job Traning(OJT)にも活用されるようにする。そうして、全体の職業能力を促すような目的に資することが第一だろうと思います。これは職業能力評価制度を作る上ではどうしても到達しなければいけない、必ず置いておかなければいけない目標だと私は思っています。

 第2の目的は、それがさらに浸透していったときに、どういう次の価値が生まれてくるかということなのですが、それは採用する段階における活用、あるいは非正規から正規に登用するときの段階での活用ということが出てまいります。さらに処遇条件を決定するときの活用ということが出てきます。これはときどき誤解されることもあるのですが、これだけで採用するとか、これだけで処遇を決めることはほとんどあり得ないということであって、これは決めるときの重要な参考指標の1つになるということです。これが第2の目的ではないかと思います。ここまで達成したときの本当の意味で、生きた職業能力評価制度になっていくのでしょう。

 次のページにいきます。そうなるためには、実践的な職業能力を評価しているものでなければいけない、つまりそれをもっていることが、本当にその仕事で成果を上げることができるということを語っていなければいけないと思うのですが、これまでの資格検定制度というのはその職業能力の実践性をなかなか語っていなかったところがあるのではないかと思うのです。実際にやってできるということを評価するためにはどうするのかというと、代表的な方法は2つあるのではないかと思っています。実際にそれを実践の場で行っている様子を観察して評価するということ、これは1つの方法でありますし、もう1つの方法は、実際にその仕事を行って、上げた成果をエビデンスとして確認をするという方法とが、あるのだろうと思います。

 ところが、この2つの評価の仕方について、これまで十分にノウハウが構築されてきたかというと、そうではなかったと思います。私が手掛けたキャリア段位制度というのがあります。「介護プロフェッショナル」が、実際にやってできるかを見ようとしているわけです。介護をしている現場で何ができるか等をチェックしていくというものですけれども、これは介護職のプロセス評価としては世界初のものだというように言われています。それを悪戦苦闘しながら作り上げていったわけですが、そういったものとか、あるいはもう1つの、「食の6次産業化プロデューサー」ではエビデンスを出してもらってそれを評価するという方法をとっています。こういう評価方法について十分に研究していく必要があるのではないかと考えています。

 もう1つ大事なことがあります。生きた評価制度にするためには、それぞれの職業ごとに中心的な役割を果たしているリーディングカンパニーが、職業能力評価制度の設計の当初の段階からコミットしているという状態が重要だろうと思うのです。リーディングカンパニーが入っていない状態で作られた職業能力評価制度はやはり業界内に普及していかないと思っています。

 更に理想的には、その分野でまだ十分な職業経験を積んでいない人たちがその領域に参加する「エントリーレベル」での評価というところから、本当にプロとして日々仕事をしているという段階の評価に至るまでの、ある種の階層性をもっているということが働く人たちの1つのキャリアアップの目安にもなるということだろうと思っています。 このようなことが整備されることが重要だと思いますけれども、加えて、重要だと思っているのは、こういう制度を活用して資格や検定を受けようとする受検者のモチベーションの問題がしっかりと制度的に担保されるということです。その資格を取ったとき、それが誇らしく名刺に書けるということ。これはネーミングのセンスが要求されるのだろうと思いますけれども、そういう名称を付ける必要があると思いますし、あるいはバッチのような形で、実際に仕事をしているときにお客さんにそれがPRできるというようなものも非常に大きなモチベーションの要素になると思います。

 さらに幾つか留意点について最後に書いています。接客とか販売は非常に広いものですので、それと職種と特定の業界というものを掛け算することによって、明確になるところがあるわけです。ただ同じ販売の仕事でも、業界によって違うところと共通しているところがありますので、ある種の共通している部分を横展開できるように行っておかないとカバー率はどんどん下がっていってしまう、展開性がなくなっていくということで、これは当初から考えておく必要があるというように思います。普及させるためには、国がコミットした信用を担保するところと、ある種、民間の中でその資格制度の検定料、あるいはそれを指導するための料金によって独立採算で自走していけるように設計するのが本来は理想的であると思います。今後、ここをどのような形で作っていくのかということも重要なポイントになっていくのではないかというように思います。これらをなるべく当初の段階から幅広い関係者の参加を得て進めていくことが必要で、どうしても限られた人たちで作っていくと、スタンドアローンになり、使われないことがあるのです。職業能力評価制度というのは労働市場のある種の、インフラのようなものなので、なるべく多くの人たちを巻き込みながら作っていくプロセスに重要なポイントがあると思っていますので、官民のマッチング当事者なども参加させながらやっていく必要があるのだろうと思っています。

 先程来から申し上げているとおり、今、追い風が吹いているテーマでもありますけれども、実際に作ろうと思うと結構なエネルギーがかかります。時間もかかります。にもかかわらず、やるときは勢いをつけて、スピードをもってやらないと定着しないものなのです。長い時間、何年もかけてやっているうちに環境が変わってしまい、いつの間にか何をやっているんだっけとなるのです。この失敗をくり返さないようにするためにもスピード感というものを、もう1つ最後に押さえておきたいポイントとしてお話をしておきたいと思います。ざっとですけれども、私なりの考え方を少し御紹介させていただきました。

 

○今野座長 一番最後の国際展開のことをちょっとよろしいでしょうか。

 

○大久保委員 技能検定も、海外で人材の教育にも使われてきたところがあると思うのですが、職業能力評価制度というのは、それぞれの作った国の企業がグローバル展開していく足並みにあわせて海外で使われていく性格があります。例えば、日本で対人サービス業のものを作ったとしたら、海外に日本の百貨店が展開していって、現地の人材を雇って教育をするというときに、国内で整備したそのような制度があると、有効に活用されていくのではないかと思います。この辺りの視点は今から作るものであれば当然、持っておかなければいけないのではないかと思いますので、それも併せてお願いしておきたいと思います。

 

○今野座長 ありがとうございました。今日は大久保さんのお話に加えて、事務局のほうで外部労働市場型の職業能力評価制度の構築についての資料を用意していただきましたので、それを説明していただいてから議論をしたいと思います。伊藤職業能力評価課長、お願いします。

 

○伊藤能力評価課長 それでは引き続き、資料2番について説明いたします。昨年度、今野先生を座長におまとめいただいた職業能力評価制度研究会報告書、3月に公表したものです。この概要を中心として、本日の議題である職業能力評価に関わる様々な施策や提言、現行制度の概要、その実績評価、このような点について説明いたします。ただいま、大久保委員から労働市場施策における能力評価制度の構築の意義、在り方のポイント等について、お話いただきましたので、極力、重ならないようにポイントを絞ってお話させていただきます。

 資料22ページが、昨年度、取りまとめた能力評価制度のあり方に関する研究会報告書概要の資料です。1.はじめにの部分です。このきっかけは昨年6月、日本再興戦略において、業界検定などの能力評価の仕組み整備、これを非正規雇用労働者などのキャリアラダーという位置付けで整備をし、職業能力の「見える化」の促進を図るという施策課題が提示されました。先ほど大久保委員のお話でも、日本型雇用に関わる課題といったようなお話もありましたが、そういったことの1つの表われです。そのような観点から、現行の技能検定制度を含めた能力評価制度全体の在り方について、労働市場で活用するという観点から、国内外の事例検証も含め、その方向性、明確化という観点で広く御議論を頂き、取りまとめさせていただいたものです。

 研究会での検討の視点、あるいは重点について、この資料の左下の2の部分です。職業能力の構造について台形図がありますが、「業種・職種共通的に求められる基礎能力」の上に、「業界内共通能力」さらに、「企業特殊能力」、おおまかには、このような構造と言えるのではないかと思います。こうしたことを前提として、ただいま申し上げたような政策的な要請を踏まえて、この度の議論の必要性、緊急性、有効性などの観点から、重点をどこにするのかということについて、集中的に御議論いただく中で、対象労働者像については、能力開発に関わる外部性が高い、非正規雇用労働者等を始めとするキャリア形成上の重大な課題を抱える各層であるということ。

 評価する能力としては、ジョブ型労働市場において、赤点線の部分ですが、取り分け重要な業界内共通能力のレベル(能力水準)としては、エントリーレベル以上おおむねミドルまでのレベルを中心とした評価の仕組みの整備が特に重点、といった議論をまとめていただきました。その上で、国内の様々な検定事例、あるいは諸外国の動向についてもヒアリング調査も行ったところです。

 そういった中で、右下にある職業能力開発と能力評価が、諸外国の車の両輪として制度設計され、教育訓練、学位との連動性が重視されているといった点が共通性が認められているためです。我が国でも、もともと職業訓練と能力検定を二本柱に位置付けており、このような基本に立ち返った制度設計の運営が重要ではないかといった点です。また、その中での現行の主要な制度である技能検定制度については、先ほど大久保委員から、動機付けといったお話がありましたが、労働者の能力向上の目標、あるいは職場の共通言語といった観点では、現状でも相当程度、役に立っていると。ただ、外部市場型の活用はまだまだ不十分であり、今後、重視されるであろう対人サービス分野などでは親和性が低いのではないかといった点については御確認いただいているところです。

 その上で、今後の能力評価制度の設計に関わり、その上の図を拡大したものが5ページにありますので、それも併せて御覧ください。職業能力評価制度の設計に関しては、対象とする業種・職種の職業能力の特性に応じた設計、運営が必要ではないか。その際に、上に矢印がありますが、より厳格に職業能力評価を行う必要性、あるいは職業能力は制度・技術・規格等に規定され、普遍性が大きいか、あるいはその逆で、変化の程度が小さいのか、あるいは労働市場における流動性や能力開発に係る外部性が大きいのか、これは右側の逆向きの矢印です。こういった幾つかの基軸の基に、業種、職種についてのグルーピングが可能なのではないか。一番厳格な能力評価を求められる「医療・福祉専門職等」、これについては、おおむねライセンス制度が既に確立されています。その次に厳格な能力評価が必要と思われる「ものづくり技能職等」の分野では、主に今の技能検定制度がこれをカバーしています。逆に一番右側には、検定などによる標準性を重視した能力評価がなじまない分野があるということで、言わば、その間のエアポケットにあるのが、対人サービス職種等であると。今、大久保先生からも同種のお話がありましたが、これまではこの分野については厳格な能力評価の必要性が相対的に低いということで、市場性のある能力評価の仕組みや構築に至っていなかったので、正にこの分野が、4の提言の部分にありますが、非正規雇用労働者等の現行の雇用対策のターゲット層、キャリアアップ上の課題が明確化され、今後、雇用吸収力が見込まれます。同時に、今も申しましたが、市場性のある資格制度、評価制度が未確立ということで、ここにターゲットを当てた上で、新たな業界検定の整備の必要性があるのではないかということです。

 その業界検定の意味合いとして、現場をもち、実践力などの能力を直接把握し、分析し得る、また、人事、採用との主体となる立場で、業界や企業が主体となり、対応性を持った職業能力にマッチした実践能力評価の仕組みを整備し、信頼性を担保し、普及を図るために、国が弾力的な質の保証の管理をしていく。こういった仕組みが必要ではないかという点です。

 また、こうした能力評価と教育訓練・プログラムとの間で、言わば共通の人材像に基づいて、可能な限り一体的な開発・運用を図るべきではないかといった点です。さらには、既存の技能検定制度に関して、外部労働市場の観点からの試験実施方法、試験内容の改定、対象分野の拡大、このような取組が必要ではないかといった御提言を頂戴しました。

 今、申し上げたようなことを具体的にどのように展開していくのかを簡単にお示ししたのが、4ページの図です。業界検定に関しては中段にありますが、採用・人事での活用方針明確化、階層性、多様な評価手法、教育訓練との一体性等、こういったキーワードを掲げさせていただいております。

 こうした検定の仕組みと、右側にある能力開発プログラムの仕組みをうまく組み合わせることにより、上にラダー、階段の図がありますが、必要な能力開発を行い、それにマッチした評価の仕組みで、その成果を、例えば合格という形で客観化し、その成果を持って求職者が非正規雇用労働者としての就職を実現し、更に上のレベルでの能力開発、能力評価という、このようなキャリアアップの模式図をここでお示ししております。ただ、既にこのような業界検定等のモデル事例があるわけではないので、中段のピンクの部分ですが、本年度から予算事業により業界検定スタートアップ支援事業、モデル先行事例の創出に取組んでいます。お手元の資料の17ページに拡大した図があります。本年度と来年度の2か年計画での開発、施行実施、検証に取組んでいくということです。左下にあるように、流通業、健康産業、学習教育業、派遣請負業の4つの業種から各1団体を既に選定しており、既に開発作業に着手している段階です。

 こうした取組の成果を踏まえながら、また本研究会での議論も踏まえて具体的な仕組み、整備、更に具体化を図っていきたいという考え方です。次ページ以下に、昨年度の評価研究会の中で御議論いただいた主要な資料を添付しております。

 例えば、6ページですが、職業能力評価に関わる諸施策について、国の関与というものに幾つかの段階、グラデーションがあります。国の関与の仕方と検定等の資格の社会的効果について、対応関係があります。更には、職業能力評価の在り方を規定する当該業種、職種の職業能力の特性とも対応関係があることが言えるのではないかという点です。

 次ページですが、今ほど言った役割が期待される業界検定構想に関して、現行の技能検定制度との対比で、どのような機能が期待されるのか、どのような特徴を備えるべきなのかといったことについて簡単に整理した表です。先ほど、大久保委員から御紹介いただいたことを、ある種、抽象的に整理した表とも言えますが、評価対象となる能力要素について、実践性をより重視すべきといった点や、マル5にあるように、そのような観点から評価の手法についても、学科試験、実技試験の手法だけではなくて、仕事ぶり評価、教育訓練歴、その他、多様な観点からの評価を行うべきではないかといった点です。あるいは「何らかの継続的質保証の仕組み」が必要ではないか。検定の効果に関しても、受検・活用のインセンティブ等の観点から検討を要するのではないかといった御提言を頂戴しました。

8ページ以下には、現行の能力評価制度に関わる概要資料をお示ししております。そのアウトラインが9ページですが、9ページと併せて15ページに現行の能力開発促進法の中での能力評価制度に関わる中心的な概念である職業能力検定と、技能検定の関係についてお示ししております。職業能力検定がより広い概念で、中段にあるように、職業に必要な労働者の「技能及びこれに関する知識」についての検定という定義付けをした上で、事業主の責務、その他、様々な規定の中で、この職業能力検定を位置付け、具体的な支援を行う。この中での具体的な法に基づく検定制度として、技能検定制度があります。

9ページに戻っていただくと、技能検定制度に関して、国家検定制度という位置付けで都道府県を実施機関とし、114職種、民間の指定試験機関を実施機関とするものは14職種、このような構成です。これを補完する仕組みとして、告示による「認定技能審査」、「認定社内検定」、更には、これらのある種のインフラとしての「職業能力評価基準」が、現行、52業種を対象に整備しています。

 これら諸制度の労働市場におけるカバレッジに関しては、例えば10ページ、技能検定制度のカバレッジについては、それぞれの検定職種に対応する職種の就業者数が、全就業者数の33%、3分の1に達する。ちなみに先ほど申し上げた対人サービス分野、空き地の部分に関しては、一定の仮定のもとで20%強ぐらいの市場規模があるのではないかと、こういった粗い試算も行っております。他方、能力評価基準のカバレッジ、インフラの部分については、12ページにありますが、既に就業者数で言うと、50%。今、半分ぐらいまでをカバーしており、1階のほうが当然カバレッジが広く、このような構造になっております。

16ページですが、技能検定制度に関しては、制度設計の枠組みについて、都道府県方式と指定試験機関方式を対比する形でお示ししております。ポイントは指定試験機関方式も含めて、技能検定制度については、国家検定として、いずれも厚生労働大臣が実施主体、また、計画の策定主体となり、職種等の設定を行っている。ただ、試験実施に関しては、左側は、実施業務としては都道府県、その業務の一部を能開協会に委任されており、こちらが実施機関となり、右側の図に関しては、一定の要件を満たす民間の指定試験機関に委任されているという違いがあります。実施主体とそれから名称独占という効果は、同一であるということです。

19ページ以下は、能力評価と教育訓練、キャリア形成支援一体ということで、能力評価制度と職業訓練をはじめとする様々な関連制度の現行制度上の関連付けと考え方を示ししております。必要に応じて、質疑の中で補足的に御説明したいと思っております。

 資料3ですが、ただいま申し上げた現行の能力評価制度の枠組み、また昨年度の評価研究会でまとめていただいた業界検定整備を含めて、今後の能力評価制度の在り方等を踏まえ、本日の議題1で議論を頂きたい論点を幾つかお示ししております。まず、いわゆるジョブ型労働市場の広がりを踏まえた、労働市場インフラとしての評価制度の役割、今後の在り方。これと教育訓練、キャリア形成支援マッチングとの具体的な連携の在り方。次に、対人サービス分野などをターゲット設定をした上で、業界検定といった、業界が主体となった能力評価の仕組みを整備することの意義。また、その実施体制や、国、公が関与することによる質保証の在り方。更には、国が必要な支援を行うことや、合格の社会的な効果や普及について、どのように考えていくのか。さらにこうした検定等、評価の仕組みを人事・採用といった外部労働市場の場面で有効に活用していく上で、どのような方策が必要かという点です。また、現行の技能検定制度に関しても、この業界検定の整備に併せ、外部労働市場での活用等の観点から、どのような役割、発揮が期待されているかという点を、本日御議論を頂きたい論点として御提示しております。

 昨日閣議決定された「再興戦略改訂版」の中でも、この外部労働市場の観点から、先ほどのサービス分野等における実践的な業界検定の整備拡大、教育訓練との一体的な運用を図ることの必要性について提示しています。今、説明いたしました内容も御参照いただいて、このあと幅広く御審議いただければと思っております。どうぞよろしくお願いいたします。

 

○今野座長 今、大久保さんと事務局から説明していただきましたので、その点に関連して御質問、御意見をお願いいたします。特に後半戦は、細かい絵がたくさんありますが、いろいろ御質問したいことがあると思います。どうでしょうか。

 

○吉川委員 まず、大久保委員から出たもので、思い当たるところが幾つかありますので、お話させてください。一番最初の新たな能力評価制度の必要性の所に関して、委託訓練等の話が出ました。私が北欧にいたときに聞いていた話では、T3Cという発言をたくさん聞いていました。これは何かと言うと、要は、このような能力評価制度の形をやると、大体外部試験を使う。外部試験は上がり型の試験なのですね。この到達ですと、T3C3つのTという意味なのですが、プリテスト、トレーニング、ポストテスト。そしてCが アンド サーティフィケーション。そのときにサーフィティケーションはいわゆる上がり型でいいのですが、プリテスト、ポストテストは、トレーニングに対して、当然ながら前と後ろで研修の効果を図る意味合いもあります。例えば、スウェーデン銀行にいたときに、この仕組みを使っていて、外部試験を行っているのかと聞くと「いや、社内資格にしているのです」と。T3Cだけ使って試験を変えている。そういうところを考えていくと、うまい制度を作っていくと、トレーニングに対してみんなモチベーションも上がり、効果も上がるということです。そのような概念というのがT3Cということで、北欧で結構いろいろなところで聞いていたのですね。だから、私たちが思っていることを、能力評価に対する資格は、上がり型だけではないのだというような形が出てきたので、こういうのは参考事例になるのではないかと思っていました。

 もう1つは、事例として頭に浮かんだのは、CompTIAという試験、IT試験があるのですが、この試験は非常に面白くて、一番最初にIT業界で共通の試験を作ろうとしたのですが、うまくいかなかったと。どうしてうまくいかなかったと言うと、当時、IT技術者が余りいなかったので、皆、奪い合いになったりするので、ノウハウを隠したかったということです。どのようなスキルセットがあるかというのが、良いように出てこなかったのです。それで崩壊してしまったのですが、そのうちにマイクロソフト社が試験を作り、オラクル社が試験を作り、たくさんの試験を作ってきた。そうすると、各試験でどうしても共通項目が出てくる。すると、それを受験者は2回受けるのですか、3回受けるのですかという話が出てくるので、そのときに出てきたのがCompTIAで、共通基盤をCompTIAが吸収しましょうという形です。そうすると、CompTIAの試験がITの共通基盤試験になって、それより上の試験を各社でやるというような仕組みになっています。更に何が起きたかというと、CompTIAの試験を取っていないと就職できなくなったのです。つまり、IBMにエントリーするためにはCompTIAの試験が必要になってきたのです。つまり、それがいわゆる業界スタンダードになってきて、それがエントリーレベルの資格試験になり、エントリーレベルの資格試験とハイエンドの試験の形ができてきたので、エントリーレベルの資格試験を通ってくれば、もちろん就職できる話をしているのではないのですが、就職のチャンスがもらえる。大久保委員の中で出てきたもので、優遇制度という話は、要は、優遇は、もう一歩上の試験かもしれませんが、エントリーレベルの形になってくると、また違う試験になり、それが業界の中でうまく位置付けられていくことがCompTIAの中では面白かったと思っています。そのような先行事例があるので、それは面白いと思っています。

 そのような事例のほかに、ちょっと気になったところでは、実際にやってみるという話とか、効果測定の話が大久保委員から出ていたのですが、例えば今、飛行機の場合は、フライトシュミレーターをかなり受けるということで、なぜ、フライトシュミレーターを受けるかというと、トラブルは現実に起こせないからです。フライトシュミレーターをやったほうが、むしろ信用できます。どうしてかと言うと、いろいろな場面に対してできるからという概念があるとおり、今、企業の中でハイエンドの人たちに対する試験は、例えば、ビルを丸ごと借り切って、その会社を興したかのようなやり方で試験をすることもあるのです。それだけではなく、コンピュータのシミュレーションを使って、そこをやってみるという形になっているのです。何が彼らの中で求めているのかというと、本当にパフォーマンスを示すかどうかというのと、それと試験がグラウンディングされていないと、信用されない形になってきている。今、検定試験の所で、グラウンディングがどれだけ担保されているのか。必要だというスキルセットを上げているだけというのと、グラウンディングされていることによって、格付けが全然、試験で違ってきているということがあり、そのようなところを担保しているかどうかというのも1つ大きなポイントになるかなと思いました。と、いうところが感想ですが、大久保委員の話から、頭にあったことを言わせていただきました。

 

○今野座長 今、おっしゃった全半の北欧って、どこですか。全部。

 

○吉川委員 私が行ったのは、主にスウェーデンです。

 

○今野座長 スウェーデン。

 

○吉川委員 はい。

 

○今野座長 プリテストで、資格って、要するに訓練する前に、事前に能力を見て、それで出口は決めているから、そこの差を考えて教育訓練は設定すると思います。プリテスト段階を資格化するというのは、どうするのですか。

 

○吉川委員 スケーリングはテストの中にされているので、何点というのがあって、ある点を超えると、一応社内資格がもらえる形になりますが、点数が出てくるので、プリテストのときも点数で分かります。

 

○今野座長 そういうことね。

 

○吉川委員 はい。最初から基準点を超えている人もいるのです。

 

○今野座長 そうだろうね。今おっしゃられたのは社内的な資格。

 

○吉川委員 最後のサーティフィケーションに関しては、当然ながら社内ではなくてやっているのはたくさんあるのですが、外部の試験も使えますと言っている、社内の試験と言っているところもありました。社内資格で、ある種の能力を図るためのテストというのと、サーティフィケーションを分けて作っていたりとか、サーティフィケーションだけ外部を借りたりとか、そのようなバリエーションがありました。

 

○今野座長 なるほど。大久保さん、何かありますか。

 

○大久保委員 今の吉川さんのお話を受けて、私も追加しておきたいと思います。最初にITの共通部分の所を切り出してというお話がありましたが、職業能力評価制度の中で、認定社内検定があるのですね。認定社内検定をもっとうまくいかしたほうがいいと思っており、業界検定を作るきっかけで、認定社内検定も活性化させたいと。つまり業界として、標準的に取組む部分と更にアドバンスドの部分を企業が作るということでも良いですし、あるいはそことつなげることによって、リーディングカンパニーを巻き込めることにもつながりますので。

 もう1つは、競争力を担保するところは、やはり個別の会社でやりたいという気持ちは常にあるので、教育研修などでもカスタマイズ・ニーズというのがあり、業界標準だと満足しないという心理が働きますので、その意味では業界検定と、認定社内検定をうまく組合せて普及させていくのが、いいやり方なのだろうと思います。

 また、ロールプレイング的なシミュレーションのお話がありましたが、日本でも随分いろいろな領域でやられていて、実際には事故を起こすことができないので、それをシミュレーションでやることもありますし、それはサービス業の領域でも、展開が期待されている領域だと私は思っております。以前、イギリスで、教育訓練のプログラム、ITベースのものですが、実際に自分が体験させてもらったときには、ファッション販売職で、映像ですが、お客さんが店舗に入って、そのやり取りをするというシミュレーションゲームみたいな形で出てきて、先ほど言ったような飛行機で事故を起こすことはできないのと同じように、販売職もお客さんを怒らすことはできないので、どのようなクレームを受けたときにどう処理をするかは、やはりシミュレーションとか、ロールプレイング的なものになるのですね。そこの開発は非常に重要で、対人サービスでも重要なテーマになっていると思っております。実際に、そのプログラムの一部ができているところもあると思います。

 

○原委員 質問です。私自身が混乱しているので確認したいのですが、能力開発あるいは職業訓練を行う主体というのは、教育訓練・職業訓練機関など民間訓練機関だけを考えるのか、それとも企業まで含めて考えるのか、大久保先生と事務局に質問です。大久保先生、勉強になりました。どうもありがとうございました。大久保先生の資料ではちょっと分からないところがあったので質問させていただきたいのですが、その下の3番に、職業能力評価制度の2段階の目的が書かれていて、第1の目的は私も賛成いたします。先生から職業能力開発を行う側と、受ける側の両方の動機付けが大事だというお話がありましたが、私も正にそのとおりだと思っています。昨晩、これをメールで送っていただいて、パット見ると、職業能力開発とは何かなと思いまして、公共職業訓練のことなのか、企業が行う訓練なのか、労働者が主体で行うのか、ちょっとよく分からないなあと思っていました。大久保先生のお話を伺って、ここでは公共職業訓練あるいは委託訓練をお考えなのかと思いましたが、念のため確認させてください。訓練の実施の主体として何をイメージすればいいのかが1つです。そうでなければ、公共職業訓練かと私が誤解ながら先生のお話をうかがっていたのかもしれませんが、資料の「OJTと接続していることが肝要で」というところが、ちょっとつながらなくなってしまいました。このOJTというのは、実践的な職業訓練を考えていらっしゃって、それが何らかの経路を通じて企業内教育を促進することを考えていらっしゃるのだと思いますが、その辺の経路をもう少し先生のお考えを教えていただければ有り難いです。

 もう1つは事務局のほうですが、5ページの一番上の所で、訓練の実施機関、教育訓練機関と書かれていて、これは公共職業訓練機関や民間の教育訓練機関かなと思って読んでいたのですが、たとえば技能検定では、そういう教育訓練機関での話ばかりではなくて、企業で学んだことを生かし、この検定を受けていく方はいる、つまり企業の役割もあるかと思うのですが、そういう理解でよろしいですか。

 

○今野座長 では、最初に。

 

○伊藤能力評価課長 今のお尋ねですが、まず、教育訓練機関プログラムとしてここに掲げているのは、下に表現をしております能力評価の仕組みと教育訓練、あるいは官民の需給調整機関におけるキャリア形成支援マッチングを総合的に運用することが有意義であるという観点で、この資料上は表示しております。したがって、ここで言う訓練機関は、一般的な公共能力開発施設、民間教育訓練プロバイダー、学校といった典型的な教育訓練機関を念頭においております。先ほど能力評価の実施機関に係るお尋ねがありましたが、教育の訓練については、教育訓練プロバイダーとか、教育訓練のプロバイダー市場というような言い方がされており、教育訓練を、専ら事業とする組織というものが相当程度存在していますが、能力評価に関しては、能力評価を、専ら事業内容としたプロバイダーはほとんど存在しない。強いて言えば、公性のある機関であると、先ほど、技能検定の都道府県方式に関しては、能力開発協会に委任されていると申し上げましたが、中央能力開発協会及び都道府県能力開発協会が、能力評価にほぼ特化した数少ないプロバイダーと言えるかと思いますが、他には教育訓練と合わせて、その質保証等を行う、あるいは先ほど、プリテストの話もありましたが、言わば、入学試験として教育訓練機関が、能力評価検定を行うケースとか、事業主団体や企業が、それぞれの運営目的に照らして必要な検定等を行う。大久保委員から、先ほど御紹介いただいた社内検定についても、基本的には実施主体は企業で、企業が人材育成、教育訓練に関わる営みの一環として、社内検定を活用しているということです。ですので、能力評価サービスのプロバイダーというのは、必ずしもその市場として明確になっているわけではない。インフラとして、十分に確立されていないような見方を私どもとしてはしております。

 

○原委員 すみませんが、ちょっと続けさせていただいてよろしいですか。そうすると、職業能力評価制度、もちろん市場の中で転職に役立つ役割もあると思いますが、大久保先生が書かれているように、職業能力開発の動機付けは大事になっていると思います。企業を実施主体に含めるのであれば、2つの可能性が考えられると思っております。私は経済学者ですが、経済学はいろいろな可能性を考える学問なので、いろいろな理論が出てきますが、90年代初頭の理論では、職業能力評価制度が市場に普及すると、企業が訓練をしなくなるという理論が作られたのです提示されました。それはなぜかと言うと、やはり労働者の能力が目に見えてしまうと、ほかの企業に引き抜かれてしまうので、自社で訓練しなくなるというのがその理論のエッセンスです。しかし、それ以外のメカニズムもあるのではないかそれはどうかなということになり、2000年代に入ってから別の新しいモデルが出てきて、アセモグルやピシュケといった人たちが提示しているのですが、自身の能力が見えるということが、労働者にとっても職業能力訓練を一生懸命に受けることのインセンティブになって、回り回って企業も効率的な訓練を行えるようになるので、こういう職業能力評価制度が社会に普及すると、むしろ企業は、従業員に一生懸命訓練を行うようになるのだという理論的可能性を示したペーパーなどがあります。多分、大久保先生はそのことをお考えになっているのかと思いながら聞いていたのですが、今までのお話を聞いていて、労働者、受ける側のメリットがすごくあるなあと、それが明確になるような御説明で、これまでにも事務局からも伺ってきたのですが、やはり企業にもメリットがあるというような説明をきちんとした上でやっていくと、両方でうまくいくのかと。大久保先生がリーディングカンパニーを巻き込むことが大事だというお話をされていましたが、そのことにもつながっていくのかということを考えました。1点、大久保先生に御質問で、事務局にお答えいただきましたので。

 

○大久保委員 今回、私は、階層性が重要だと申し上げています。そうすると、業界で、全く経験がない人が、例えば委託訓練や求職者支援訓練を受けて、その業界の職種に就こうとする。例えば介護の例を挙げると、介護職になりたいと思う人がいて、その人は現在失業者だとして、公共職業訓練で介護のプログラムを受けると。そうするとエントリーレベルの検定の合格が取れて、これは介護職になるためのスタートアップになるということです。そういう意味では、公共職業訓練とは密接に結び付いたほうがいいと思いますが、そこで止まるのではなく、一人前のレベルとか、本当のプロレベルというところまでいくとなると、今度は、その企業内でのOn-the-job Trainingの問題になってくるのですね。その人たちに何年かの経験を積ませる上で、本当に介護のそれぞれの場面で必要な行動が取れているかどうかということを指導や、あるいは評価するという場面が出てくるのです。そこで観察評価したものによって、今度はもう1個上のレベルの所の検定が取れるようにしていくということ。その意味でいくと、公共職業訓練と企業内訓練が、階層性を持ったことによってつながっていくという、そういうものを狙っているのです。

 

○原委員 分かりました。ありがとうございました。

 

○今野座長 ほかにいかがでしょうか。

 

○武石委員 今の議論を聞いていて思ったのですが、そもそも外部労働市場型の職業能力評価制度というテーマからすると、エントリーレベルのところでの評価というのは、外部労働市場の中で新しい業界に動いていくというところで、国として関与していく意義というか、役割がとても大きいのかなという気がするのですが、その後の「一人前」「上級レベル」にいく評価の仕組みというのが、先ほどの原委員のお話にもあったように、能力の高い人は企業の中で、なるべく抱え込みたくなっていくということで、その評価を受けると逆に内部労働市場の中で抱え込むような方向になっていく可能性もあるのですよね。

 要するに、外部労働市場型の職業能力評価制度を考えるときに、エントリーレベル、一人前レベル、上級レベルを一緒くたに議論してもいいのかどうか、よく分からなくなってきたのです。

 それで、エントリーレベルに関しては、国の公的な職業能力開発機関が、今の例で言えば介護の能力をエントリーレベルの能力を付与するというところで、役割を発揮すると思うのですが、それ以降は実務経験をしながらということになると、企業の中でそういう経験を積んでいく。どういう積ませ方が重要かとか、どういう能力を持つことが重要かということが、業界検定の中に盛り込まれていくのだと思うのですが、そこは具体的な現場レベルでの教育・訓練に依存していく部分が多くなっていくと思うので、公的なところの関わり方がエントリーレベルと、それより上のレベルだと、能力開発という部分で変わってくるのかなという感想を持ちました。

 

○伊藤能力評価課長 今の武石委員の御指摘に関連する評価研究会での議論についての私の認識をお話し申し上げます。レベルによって評価する職業能力、それに対応した評価の仕組みの在り方について、イコールではない。質的に異なる可能性があるということは、そのとおりであると思っております。その上で、今回評価研で御議論いただく中でも、先ほどもありましたように、エントリーレベルだけではなく、少なくともミドルレベルまでは視野に入れた設計が必要ではないかということで、おまとめいただいた考え方としては、1つは、今回のこの能力評価研究会の議論に関して、先ほど申し上げましたように、日本再興戦略における「多様な働き方実現」「非正規雇用労働者等のキャリアアップ」という政策課題の下で御議論いただいています。したがいまして、例えば非正規雇用労働者の方が、4ページの図に端的に表れていますが、非正規雇用労働者がエントリーレベルの更に1つ上のレベルの能力開発プログラムを活用し、その成果を一連の階層性を持った検定で成果を証明し、そのエビデンスをもって、例えば職務限定正社員としてキャリアアップをしていくというような絵姿を想定した場合に、それに対応した評価の仕組みがエントリーレベルだけでは、そこから先のキャリアアップにつながらないのではないか。そういった対象層も念頭に置くべきではないかということが1つです。

 それから、今日繰り返しお話させていただいていますように、能力評価の仕組みについて、能力開発の目標であり、また自らのキャリアアップの目標と置き付けという側面もあろうかと思っておりますが、そういったことを考えた場合に、エントリーレベルだけではそこから先の展望が見えない。能力開発の機会プラス、エビデンスの機会としての能力評価の仕組みをセットとして、一定のレベルまでは構築することによって、そこに向けての一連の一貫した能力開発あるいはキャリアアップの展望が開け、動機付けが図られる。こういった仕組み全体としての効力、効用を考えた場合に、そこまでの設計をすることが望ましいのではないかといった考え方の下で、ここにあるような、本当に大まかな方向性ではありますが、この能力評価制度の設計の考え方を提示しています。

 ただ、同時に、評価研の中でも、更に上のレベルになった場合には、検定といった標準性を重んじた能力評価の手法では、より限界が明確になってきて、むしろ個別コンサルティング手法型による能力評価のほうが適しているのではないかといった御議論もいただいたことも事実です。業種、職種の特性プラス、今お話いただいたような、レベル等に応じたふさわしい能力評価の仕組みあるいはその組合せ、先ほどお話ししていただいた共通性を持った検定の仕組みプラス、社内検定的な仕組みのコンビネーションということも、その1つの類型ではないかと受け止めております。そういった、より具体的な能力評価制度の全体構造についての議論、この場でもいろいろ御議論いただいた上で、更に検討を具体化していかなければいけないと思っているところです。

 

○今野座長 今の点で追加なのですが、2ページを見てください。全体の把握としては大久保さんが言われたように、外部労働市場で移動するときは能力認定があったほうがいいというのはいいので、企業内も、先ほど大久保さんが言われたように、年齢によるみなし能力評価というのは難しくなっているので、だんだん能力そのものをいかに評価するかということが重要になってきている。そうすると、日本では企業内外に関わらず、能力評価はどうするかということが非常に重要になっているということが前提です。

 ただ、そのときに、公共がどこに関与するのかという問題があります。そのときに、この2ページの大きな「2.検討の基本的視点」の最初の○に、必要性、緊急性、有効性、実効性から考えたら、どの分野がプライオリティが高いのかということを議論して、先ほどから伊藤さんがおっしゃっているような、5ページにある、そのほかにもいろいろあったのですが、今まで公共がやっているところも含めて、残っているところと、先ほど言った緊急性、実効性とかを考えると、業界検定の仕方で、比較的エントリーからその次ぐらいが、一番プライオリティが高いのではないかという設定をしたというのが、この報告書ということなのです。

 先ほどの原さんの質問からすると、企業内も企業外も個人がやろうが、全部視野に入っているのですが、そういうところで公共がどこに関わるかと絞るときに、先ほどのような基準で絞っていって、5ページのような結論になったというのが、この報告書です。ですから、何でもかんでもやろうとは思っていないのです。緊急性とかの観点から、とにかくプライオリティを付けようではないかということでこうなったということです。

 

○武石委員 私が全体の体系を理解していないのもあるのですが、だんだん分かってきました。

 要は、ミドルクラスの能力評価、ミドルクラスまでのキャリアアップというのは、ミドルクラスが何かというところもあるような気がします。一旦サービス業ならサービス業に入った非正規のような人たちが、次の正社員にいくまでのステップのところをミドルと考えるのか、ミドルと言ってもいろいろだと思うのです。今の非正規から正社員へという辺りをミドルと考えるのであれば、かなり個人が主体になって、自分の能力を引き上げていって評価してもらうところのインセンティブは大変重要になってくると思うので、そういう意味で、インセンティブ、動機付けという意味では、個人が、そこにトライしていくところのインセンティブをどう高めるのかは重要になるのかなという気がしました。

 

○今野座長 先ほどの例から申してもそうなのですが、最大のインセンティブは、持っていれば就職できるというものです。これが最大のインセンティブなのです。

 そうすると、大久保さんが言うように、労働力の買い手のほうがその気にならないと駄目です。そうすると、設計、運用の段階で、どうやってリーディングカンパニーを中心にした関連の人たちを噛ませるかということが非常に重要になってくるかなと思います。

 

○大久保委員 今の議論に関連して、企業側にとってどのように見られるものを作ればいいのかという観点なのです。

1つは、対人サービス業の領域は、有期の従業員比率が大変高いです。かつ、有期の人たちの常用雇用有期の人たちでベテラン層の人たちが、実質的にその企業の競争力を決めていると言ってもいいぐらい、中核的な役割を担っている状態です。

 この人たちをどうやって採用して、リテインできるかどうかによって、その会社の展開力が決まると言ってもいいぐらい重要なポイントだと思います。

 もちろん、その人たちをみんな正社員に登用すれば、それはリテインできるのですが、それはコスト面では厳しい。

 そうなると、多くの人たちは正社員にはできないのだけれども、大事な仕事をしてほしいと思っているという状況ですので、その引き付ける力を担保するためには、エンプロイアビリティを高めることに関し会社が熱心である、そういうことを作り上げないと人が集まらないのです。

 特に、今は人手不足の中競争しているので、その会社で3年働いて先がなくなりましたというのでは、話にならないわけです。そこにいて、ある程度の技能を身に付けたこと自体が、同業のほかのところに行ったときにも、高く評価されるという状態にして、はじめて良い人を引き付けられると。そのことに対する施策は重要な経営課題になっているということが1つです。

 それから、従業員の能力開発機会をつくり、仕事に対して意欲を持ってもらうことがES(employ satisfaction)を通じて、最終的にはCS(customer satisfaction)につながるという考え方を、多くのサービス業多くの会社は持っているということで、要するに顧客満足を高めるためのプロセスの中に組み込まれているという状況だということです。

 ところが実態としては、集合研修をやることは、ほとんど不可能で、そうすると店を閉めなければいけなくなってしまうので、なるべく現場に近い所で教育をやりたいと思うわけですが、現場でのOn-the-job Trainingの指導者が足りないというのが、一番の大きな課題なのです。

 そのような現状とニーズを、新しく開発する業界検定が捉えていれば、企業においてもインセンティブになりますし、普及の材料になっていくのだろうと思います。

 

○吉川委員 私は長らく企業経験もあり、そこで人事採用などをしたことがあります。そこでやると、この20年で企業の見方が変わってきたと思っています。

 何かと言いますと、今まで企業は自分の会社の中の人員を見ていたのです。ですから、有能な人材は出したくないというのがあったのですが、最近は企業の枠を超えて、ソーシャルネットワークのほうにいっています。そうすると、企業で評価されているのと、彼らのコミュニティの中で評価されているという別の軸があるのです。

 そうすると、先ほどありましたように、優秀な人間を企業が抱えているとなると、実態的にはそこに仕事がいくのです。安心安全で、彼がいるから大丈夫、任せられるという話になっているので、そういう別の評価軸が厳然と存在してしまって、有能な人材がもう外部に見えてしまっているのです。

 そういうような業種が全てにわたっているわけではなくて、今は過渡期なので、見えている業界と見えていない業界があって、正に大久保先生がおっしゃったように、対人分野は余り見えていないのです。

 ですから、それが時代的に見えてくるのかもしれませんし、何らかの加速器を付けないと見えていかないかもしれませんが、そういう形で、外からの評価と企業の評価という、2つの軸においてやっている。

 そうすると、先生方は学会などに行かれているから、学会の中でやると、ほかの大学に移れるとか、転職ができると思うのですが、そういうような見えている業界ですと、転職できてしまうのです。

 問題になっているのは、非正規の方というのは、そもそもそういうコミュニティに入れないわけです。そこまで持っていってあげれば、あとはひとりでにそこの中で頑張れる加速器が付くわけで、評価されていけばどんどん自分のポジションが上がっていくし、そのことも会社は分かってきているから、だんだん分かっている会社は評価し出すような形を取っているという。今では会社の中だけの評価ではなくなっている動きがどんどん出てきていますが、何度も申し上げますが、過渡期なので全部の業界がそうだとは言いません。このような話になっていて、この辺が設計する上で面白いところかなと思います。

 正にエントリーの意味が2段階あって、本当のエントリーと、そういったコミュニティに上げるためのエントリーがあるのではないかと思っています。

 

○今野座長 対人サービスの分野では、コミュニティはどんなことが考えられますか。例えばエンジニアの場合だったら、コミュニティは考えやすいですよね。これまでも学会のようなものがあったのだから、民間企業のエンジニアの、特に研究職に近い人はみんな学会に入っていましたから、そこではコミュニティがあるわけですが、対人サービスのような職種ではどのようなコミュニティが考えられるのかなと思いまして。

 

○吉川委員 ホテルマンはコミュニティがあるのです。そうすると、いい接客をしている人たちは見えているわけですから、そういう人たちは次のホテルを立ち上げるというときには、引き抜かれたりするのです。

 

○今野座長 そうすると、これまでの伝統的な言葉を使うと、職能団体を作れということに近いな。

 

○吉川委員 それが団体という形ではなくて、ソーシャルネットワーキングで、ひとりでに出来上がってきているのが面白いところで、そこの中で評価をお互いにし合っているという関係なのです。

 

○今野座長 大久保さんも含めて、お二人にお話を聞いて私が思っているのは、大久保さんの話は、訓練して、評価して、資格というか、エンプロイアビリティを与えるということは、一種の従業員のリテインのための報酬になっているということですよね。そのようなことがあって、企業にとってはメリットがあるのだと。吉川さんの話は、社会的な評価軸を入れることが、企業にとってもいいことがあるのだと。

 では、何で広がらないかということなのです。そこが問題なのです。客観条件はできている。そこは合意できたとすると、あとはそれを突破する方法をどうするかという話ですね。ここの基本認識が違ったら、戦略がまた違うのですが、その基本認識が皆さんで共有できているとすると、どうやって突破するかなということです。事実は突破できていないということですよね。

 大久保さんが言われたように、個々の企業はそう思っているかもしれないけれども、集団になるとそう思わない。これまでの業界検定もなかなかうまくいかないという事実もある。そこで、いいアイデアはないかなと思ったのです。

 

○橋本委員 アイデアはないので恐縮なのですが、突破は難しいと思う次第です。先ほど大久保先生が、「いてほしいのだけれども、みんなを正社員にできない」とおっしゃったのですが、労働者の立場からすると、ミドルクラスの実力を付けて、そこにずっといたいと思うのです。そこにいられないという状況が、これは能力開発の問題以前かもしれないのですが、そこが難しいのかなと感じています。

 

○今野座長 少なくとも大久保さんの話で、エントリーレベルについては、もし非正規の人たちが何かの能力評価を受けて、この能力を持っているということが明確になり、買い手が分かるようになれば、企業にとってはすごくメリットがありますよね。それはどの企業もそう思っていて、そこは間違いなくて、問題はそこから上です。

 そこのエントリーレベルでメリットがあったとしても、なかなか業界検定はこれまでうまくいかなかったのです。なぜなのだろうと思いますが、なぜですかね。

 

○谷口委員 アイデアになるかどうか分かりませんが、申し上げたいのが、ジョブ型正社員の普及という1つの課題が話されておりますし、大久保委員の話の中でも、実践的な能力を評価するということがかなり大きな課題でもあるということ。そして、業界検定あるいは社内検定といったものがかなり有力な分野として期待されること。これらを総合しますと、今、能力評価として求められている原理というのは、職務遂行能力をいかに評価できるかというところが、大きな課題にあるのではないかと思うのです。残念ながら、職務遂行能力をきちんと評価できる方法が確立されていないというのが現状だと思うのです。

 伊藤さんから御説明いただいた資料の中でも、2ページの左下のほうに図がありますが、何を評価するかということで、「知識、技能、実践力」という言い方で表現されています。正に、ここで言えば実践力に相当するものが職務遂行能力ではないかと。ヨーロッパなどでは、コンピテンスとかコンピテンシーといった概念で表現されているのではないかと思うのです。

 こういう点で私が注目しているのが、ジョブカード制度の職業能力形成プログラムで、企業の評価を含んだ能力評価、これというのはOJTが訓練の過程に含まれていますので、実践的な能力を評価するという意味では、注目すべき部分だろうと思うのです。

 大久保委員でも、観察を通して行うという方法が、2つのうちの1つと挙げられておりましたが、正に、そうした目を持っているという意味で、ジョブカード制度の能力形成プログラムの評価制度というのは、1つ注目していいのではないかと思うのです。ただ、それが本当に課題という点では、いかに客観性というものをきちんとするかが大きな課題ではないかと思うのです。

 いずれにしても、職務遂行能力を原理として評価、訓練のシステムも、実は公共職業訓練というのは日本のカルチャーからいうと、ドイツなどと同じように、インプット型というもので、イギリスはアウトプット型と表現されていますが、そういう意味ではなかなか原理としてはなじまないところがあるのです。

 ですが、これからの職業訓練の主体を企業の中とか、あるいはそうしたものを利用した民間の教育訓練機会が中核的な形になれば、またカルチャーも実践力というか遂行能力を基準とした原理で、訓練も評価も行われるような方向に、持っていけそうな可能性を持っていると思うのです。

 

○今野座長 ということは、現在業界検定があっても一部しかないし、一部でもそんなにアクティブではないという理由は、きちんと能力評価できていないということなのでしょうか。

 

○谷口委員 能力評価の方法を、例えば企業が社内検定でたくさん作られていますが、これは基本的にOJTも訓練の1つの形式に含めていけば、いわゆるOff-JTによる成果を評価するという方法と、OJTという仕事で覚えたことを評価するというのは同一のプロセスとして評価することを求められるのですが、企業の中の社内検定というのは、必ずしも職務遂行という視点で評価しているかどうかが、私の見た目でははっきりしないと。

 評価しやすい方法でやってみる。例えば知識とか技能といった視点でしか評価されていないのではないかと思うのです。

 

○原委員 今野先生の質問に戻ってしまうのですが、職業能力評価制度というのは、理論上はすばらしい制度であるのに、実際にはどうして普及しないのかなと私も常々考えてはいるのですが、答えが見つかっていないのが現状です。

 それで、考える手掛かりとして、何か調査というのはないのでしょうか。例えばJILPTとか、職業訓練とか、職業能力評価制度に関してとか、一生懸命いろいろな調査をなされているので、もし企業などに、使っているならどうして使っているか、導入していないならどうして導入していないのかとか、そういったことを聞いた調査があれば。

 

○今野座長 この報告書に出ています。

 

○伊藤能力評価課長 JILPTにも、企業における資格評価の活用等については、これまでも幾つかの調査を行っていただいています。今も実はお願いしているものがありますが、そういったものも蓄積し、またこういう場でも御紹介したいと思います。昨年度の能力評価研究会の中で純粋民間検定の開発運用主体、あるいは、その成果を活用している企業などから幾つかヒアリングをした中での気付き、先ほどの座長の問題提起に関わる私ども事務局としての気付きについて数点申し上げたいと思います。

 従前に活用されていない1つの理由として、精度の高い有用な検定を開発するためには相当なコスト、手間、時間がかかる。それを先ほど申し上げたような個別の業界団体、個別の企業がファイナンスも含めて、その資源を捻出することが非常に難しいということがあろうかと思っています。

2点目として、これは今の1点目とも少し関わってきますが、検定能力評価という営みの性格上、その行為が基本的にそれぞれの実施主体の中でクローズされて、検定の開発プロセスとか、場合によっては評価基準が完全オープンにならない。これが教育訓練とは違う点ではないかと思っています。なおかつ、先ほど委員からのお尋ねにお答え申し上げましたように、能力評価プロバイダー業界といったものがあるわけではない。あるいはアセスメント・アンド・エバリュエーションの学会があるわけでもないということで、より精度の高い有用な能力評価の仕組みを作るための、言わばノウハウとか学術的バックグラウンドが社会全体として整備されていないことが、2点目としてあるのではないか。

3点目として、評価の仕組みを作って活用する側からすると、いくら有用なものを作ったとしても、それを活用する受検者の側が、あらかじめその資格、能力評価のバリューを認知した上でないと、それを活用しないということになるわけです。いわゆる御墨付という言葉が今でもしばしば使われるわけですが、仮に相当程度有用な検定手法、内容であったとしても、外形上、その価値が分からないと受検者もそれを使いたがらないし、結果として普及もしない。その、より分かりやすい信頼性や安心性といったものを、どのように裏打ちしていくのかという課題もあるのかなと思います。

 さらに申し上げると、企業の側からすれば、例えば中途採用の採用選考のメルクマールとして何を使うのか。先ほど来、ジョブ型市場ということで、それに対置した概念としてメンバーシップ型市場という概念もあるわけですが、実際にはジョブ型労働市場になりつつあるのに、企業の採用選考行動としてはまだまだメンバーシップ型の意識で、先ほどの台形図で言うと、実際に求めているのはこの赤点線の業界内共通能力なのに、採用選考の基準としてはむしろその下の基礎能力重視型で、結果として、そういった部分の能力評価であるならば、今までどおりのメンバーシップ型と同じような面接のほうが手っ取り早いし機動性がある。実際に求めている人材像、評価しようとしている能力と手法とにずれが発生している側面もある。そういう、今、申し上げたような幾つかの要素の複合的な影響として、幾つかのそれなりに工夫された純粋民間検定がないわけではないのですが、そういったものも含めて十分な市場性であったり、あるいは信頼性をもって普及に至っていないということではないか。昨年度のヒアリングを通じて、断片的ではあるかもしれませんが気き付きとして持っているところです。

 

○今野座長 全体的にはこういうことだと思います。使われているけれど、大久保さんの定義でいくと2つの目的があり、相対的に能力開発にはかなり使われている。たとえば技能検定などは、大企業のメーカーなどは広く使っています。それも能力開発目標として非常に使われている。ただし、採用に使いますかというと、一部しか使わない。だから多分、これも大久保さんが言われたことですが、上に行けば行くほど会社が必要としている能力の一部しか表現していないのでしょうね。だから採用段階では参考にするけれども、それでは決めないよねという、この辺が全体像です。だから民間でやっている資格も、個人が使ったり企業が使ったりするときは、多分、そういう使い方です。能力開発目標で使うけれど、ほしい能力のほんの一部だから、それを持っているからとして採用するわけではない。多くの企業が持っていれば資格手当を払ってあげるという施策をとっているのは、資格を完全に能力開発目標にしている例であす。全体としてはそういう感じかなと思います。

 でも、ここでは採用にも使ってほしいのですよね。外部労働市場でも動くと。そうすると谷口さんが言われたように、ちゃんと全体能力を評価していないのではないかという問題が、どうしても出てくるというのが全体の構図かなと思います。

 

○大久保委員 ものづくりの領域とサービスの領域では、随分違いがあると思っています。サービスの領域は社会全体を広く見渡しても、それぞれの職域における技術とか知見みたいなものは研究されていないし、教育機関のプログラムにもなっていないものがあまりにも多いのです。未成熟だと言ってもいいと思います。だから企業からすれば、そういう教育をちゃんとやっている所があれば、そこの教育機関を活用したいと思うかもしれません。

 高度な技術とかノウハウは、それぞれの領域におけるリーディングカンパニーが暗黙知として蓄積して、それを継承しているということになっているので、もしそういう会社の社内検定的な取組があるのであれば、そういうものを拡大して、業界で使っていく形が理想的なのではないかと思います。リーディングカンパニーが持っている知見は、競争の源泉だから公開しないのではないかと思われるかもしれませんが、本当のリーディングカンパニーはそんなことは考えていないものです。

 

○今野座長 本当、太っ腹。

 

○大久保委員 形式化できるものは公開したって大丈夫なのです。本当の競争力になるともっと先の話なので、そのレベルを公開して戦えなくなるようだったらリーディングカンパニーではないのです。なので、私はリーディングカンパニーの知見を、この業界検定にうまく取り込んでいくところが非常に重要だと思っています。

 例えばホテル業などでも、要するに帝国ホテルは帝国ホテル独自の技術、サービスノウハウを持っていますし、リッツカールトンはリッツカールトン独自に持っていて、むしろそのことをブランディング化して公開することによって、その会社の地位を確立したいという方向に、どちらかというと志向はいっているので、それをうまく吸収できるかどうかというのが1つのポイントになるのではないか。日本のサービス業の領域は、国際競争の中でも「おもてなし」というのが競争力があると言われているのですが、何ら体系化されていなくて、イリュージョンではないかと思うような状態に今はなっているので、本当にその領域をうまく知見として形式化していくことが、すごく大事なのだろうと思います。

 

○今野座長 実は今日、もう1つ資料があって、もういいかなと半分思うのですが、前回、議論した内容を整理していただいているのです。もうフリートーキングになっているからいいのですが、前回、どんな議論をしたかということを頭に入れておいていただいて、またフリーにしたほうが効率的かなと思うので、それを簡単に紹介してください。

 

○田中総務課長補佐 簡単に御説明させていただきます。

 

○今野座長 資料はいくつでしたか。

 

○田中総務課長補佐 資料41枚紙です。よろしいでしょうか。「第一回職業能力開発の今後の在り方に関する研究会」の主なご意見についてということで、(1)の総論では、前回、冒頭に大久保委員から御指摘いただいた5点を1つ目のポツで記載しています。現在の職業能力開発が、最近、10年、20年で変わってきている。これらのことに対してどのぐらい対応できているのかということで、マル1はコーディネーターとしてサービス業の職域などでの知見の蓄積や提供機関の育成ができているか。マル2は多様化する対象者に対してノウハウの蓄積等ができているか。マル3は学び直しや高齢者に対する対応ができているか。マル4はe-ラーニング等のIT化に対応できているか。マル5はグローバル化への展開の対応ができているか。この5つの軸を御指摘いただきました。2つ目のポツは、武石委員、原委員、そのほか複数の委員からも御指摘がありましたが、職業能力開発の機会に恵まれない非正規労働者といった人に対して重点的に支援を行っていくという視点についてです。

(2)も、1つ目、2つ目のポツについては大久保委員、原委員等、複数の委員から御指摘いただきましたが、訓練の効果、検証の仕組みについての必要性、また訓練行政全体にかけている予算に対しての成果、概念化といった視点です。4つ目のポツですが、吉川委員から、ニーズという言葉が気になるという御指摘とともに、企業においてもどのような人材が必要となるか分からない面があるという御指摘を頂きました。5つ目のポツは谷口委員からいただいた、就業困難者のための訓練システムがあってもよいのではないかという御指摘です。

(3)では、個人のキャリアについて、正社員であっても企業任せではなく、キャリア自立のための何らかの支援が必要ではないかといった御議論とか、2つ目のポツで、キャリア・コンサルティングが重要だという認識のもと、ただ、現状、不十分な点に対して質と量の充実を図るべきという御指摘を頂いています。

(4)は、外部労働市場型の職業能力評価制度の構築の観点で、本日も御議論いただいていますけれども、構築の重要性というところでの御指摘を頂いています。

(5)はその他としてまとめていますが、堀委員から御意見を頂いた、学校教育からの接続という意味で教育行政との連携に力を入れるべきといった点、2つ目のポツですが、一旦、労働市場を離れた人に対して、職業能力開発に関する情報を提供することが重要ではないか。また、最後のポツですが、若年求職者のための支援について、利用者側から見て分かりやすい整理が必要ではないか。こういった御指摘を頂きました。

 まとめてしまって恐縮ですが、御議論の御参考にと思いまして、このような形で1枚にまとめています。

 

○今野座長 ありがとうございました。これも参考にしていただいて、フリートーキング継続ということでいきたいと思います。

 

○堀委員 話が戻ってしまうところもあるのですが、先ほど、なぜうまく普及しないかというお話で大久保委員がおっしゃった、なるべく多くの人を巻き込みながら職業能力評価基準を作っていく、そのプロセスそのものに意義があるということに賛成です。そこで、先ほどのお話ですとリーディングカンパニーが大変重要だということで、全くそのとおりだと思いますが、公共がやるということでリーディングカンパニーに加えて様々な団体の方に、是非、参加していただきたいのと同時に、手前味噌ですけれども、今回、サービス業ということなので専門学校の関係者にも参加していただいて、そうした形でカリキュラムレベルでのそういった接続を重視することは、大変重要ではないかと考えています。同時に、将来的に業界団体が、例えば専門学校のカリキュラムのアクレディテーションをするような形まで発展していければ、座学的な部分については非常に充実していくのではないかということを、ひとつ感じたということです。

 それから、先ほど谷口委員から、ジョブポツカード制度の有期実習型の雇用型訓練のことかと思いますが、大変有効ではないかというお話がありました。特にこれはサービス業にある程度フィットするのかなと私は考えています。ただ、非常に有効だということは恐らく誰しもが認めるところだと思いますが、なかなか普及しない原因は、先ほども谷口委員がおっしゃった客観性もありますけれども、評価する企業の側の納得性を、いかに高めていくかというところがなかなか難しいところで、ここが最初に戻るのですが、できるだけ多くの人を巻き込んでやっていくような、そうしたプロセスの重要性につながっていくのかなということを感じました。

 

○今野座長 どうしましょうか。

 

○吉川委員 経験則というか、幾つか聞いている話も含めてですけれども、企業でやっているときに中小企業やベンチャー企業の場合、特にベンチャー企業は顕著ですけれども、仕事が安定していないので一時的に人がたくさんいたり、仕事がなくなると排出したりということを繰り返しています。そういうことをやっていても、良い人材というのは非正規で雇った人にもあるパーセンテージで必ずいるのです。そういう人たちをどうするのかというと、知合いで人が必要な所に教えるのです。つまり、ある意味の労働移動をむしろ積極的にしている。だから、「良い」という評価はその企業にとって「良かった」わけですが、受け手にとって「良い」人材でなければ受取り側はその「企業」を信用しなくなる。つまり、出すということは「信用」とともにあるわけです。

 何でそれができるかというと、結局、彼のパフォーマンスを評価しているのです。パフォーマンスを評価し、その評価が個別企業ごとに企業A、企業B、企業Cで統一されている。先ほど谷口さんが言った客観性は何もないのですが、パフォーマンスを評価して出してあげる。受け取る側は、あそこの会社がこう言っているのだったらオーケー、あの会社でこの程度だったら駄目と考えてやっている。

 何が言いたいかというと、検定試験という話で考えるのであれば、パフォーマンスと結び付いていると、それだけの評価で安心して雇用してくれるのです。それが先ほど言ったグラウンディングがどこにされているのか、パフォーマンスがグラウンディングされているかということです。検定試験、知識とスキルという話だと、パフォーマンスがグラウンディングされていない話になりますから、そうすると参考値だけになってしまうというのがあります。

 でも、先ほど伊藤課長がおっしゃったように、検定試験は普通にスキルレベルとか知識レベルを作るだけで結構な額がかかったりしますし、さらにパフォーマンス評価という形になるととんでもない額がかかってしまうので、それにどれだけ個別企業は耐えられるのかというと非常に厳しいものがある。それに対してサポートは十分あるし、先ほど言ったA会社、B会社、C会社というので客観性がないので、統一という意味での必要性というのも、そこにはあるだろうと思います。そういうふうに、今、現実的に動いている会社のものを参考にするのも1つの手かなと思います。

 

○今野座長 今、おっしゃった意味の下に行けば行くほどスキル・知識ベースが大きくなる。だから評価しやすくなるわけですね。

 

○吉川委員 それはありますね。

 

○今野座長 したがって、そこだけ見れば上はやらないで下をやったほうが効率がいいわけです。でも例えば、中高年の人で会社を代わらなければいけないような人は、多分、そういう評価では駄目なのです。おっしゃったパフォーマンスのことを考えなければいけない。したがって、あまり「したがって」ではないのですが、先ほど言ったように外部性などの問題も考えて、比較的、エントリーレベルと次ぐらいにプライオリティを置くという背景には、そういうこともある。谷口さんが言うように、パフォーマンスまで測れる、ものすごく精度の高い立派な手法が開発されれば、またちょっとあの絵も変わるかもしれないという気がします。

 

○谷口委員 実は能力評価システムで一番優れた現状の事例というのは、自動車運転免許ではないかと思います。つまり、どういうことかというと、ものづくりであれサービスであれ、基本的に今行っている検定というのは要素分析を行い、その要素を訓練して、その要素ができるかどうかをまず確認するのです。それが自動車運転免許ですと、最初にやる仮免許で、取りあえず要素がきちんとできるかどうかというのが仮免許なのです。そして路上試験がありますね。

 

○今野座長 あれは総合テストね。

 

○谷口委員 総合テスト、あれは観察を通して評価しているのです。あれっていうのはドライバーとしての最低限度のスキルを、最終的に観察を通して評価しているわけですが、その上のハイエンドなA級ライセンスだとか、何かそういったふうなことについての評価というのはまた別の仕組みで行われているので、あれが一体化できればいいわけです。

 

○大久保委員 違うことを言っていいですか。

 

○今野座長 どうぞ。

 

○大久保委員 実際に業界検定を進めていく上では、結構、人の問題が大きいかなと思っています。先ほどから言っているとおり、それぞれの業界の中のある種のリーディングカンパニーに知見が溜まっている。ただ、それは一般的に形式化された状態で公開されているわけではないし整備されていない。ではどうしたらいいかと言うと、そういう会社で長年働いてきた人たちで、積み重ねてきた知見を若い世代に継承していきたいと思っている人たちがいる。そういう人たちが業界検定の運営者の中核に置かれて、その人たちの実感に基づいてちゃんと機能するものを設計していただくことが、すごく大事な感じがしています。それを、ただオペレーションするだけのスタッフでやるのとでは、多分、出来が全然違ってくるのだろうと思います。

 

○今野座長 これは、先ほどから話が出ている業界のリーディングカンパニーを見つけて、周辺も巻き込んでやっていこうというときに政府は何をするのか。いろいろな業界で一遍にやらなければいけないという話になったら、手足なんかないですよね。どうやるのか。つまり、そういうプロデューサー、セールスマンといった人がかなりいないとね。今のところは業界団体でやってというふうに任せて、そのやり方でもいいですが、もしかするとそのやり方では十分でないとすると、もう少しネジを巻く人を大量に作ってばら撒かなければいけないことになる。

 

○伊藤能力評価課長 今、大久保委員からもお話いただきましたように、現状、リーディングカンパニーにより、私どもの大臣告示によるところの社内検定でも、相当洗練されたロールプレイング試験なども盛り込んだ、社内検定を運用している事例があり、そこで評価している能力というのは、この2ページの台計図で言うと必ずしも黒点線の企業特殊能力だけでなく、実態としては業界内共通能力も含めて評価をしているものと私どもは見ています。

 ただ、その位置付けそのものは○○社社内検定であり、したがって、その受検者はもっぱらその従業員ということで、その主体、性格上、現状のままでは労働市場性は持ち得ないということで、ノウハウとしては社内検定のノウハウ、リーディングカンパニーのノウハウ、あるいは人的資源を基盤の形としつつ、その目的を広げ、運営をどう開放していく仕掛けを作っていくのかという、そういう命題ではないかと思っています。

 当面の取組としては、先ほど御紹介申し上げましたように今年度、業界検定スタートアップということで、先ほど申し上げた膨大にかかる開発等のイニシャルコストについては、その業界のためだけの取組ではなく、それはモデルケース先行事例です。類似性がある業種、職種でも横展開しましょうという意図のもとで、国費による開発を行う仕組みを作り、なおかつ、それぞれの業界任せだけですと最終的な質のレベルを揃えることは大変難しいということで、それぞれの業界団体の取組みの中でも有識者の方に御参画いただいての委員会を設けるとともに、全体を通じてのアドバイザリーボードといった仕組みを設ける中で、先ほど申し上げた非常に不足しているノウハウの中に、今の座長の言葉を借りるとネジを巻くような機能を、そういったところで設けていく。それが当面の仕組みです。

 モデル事例創出の段階では、そういった仕組みで行って対応できると思っていますが、ここでの議論も踏まえ、それをより普遍化して仕組みとして整備し、さらにサービス分野でより幅広く展開していくことになった場合には、それ全体をコーディネートするような機能は、確かに別途、必要になってくるのだろうなと私どもは問題意識として持っています。そういったことも含めて、在り方、方向性を御審議いただけると大変有り難いなと思っています。

 

○今野座長 先ほどから出ている研究会で、先ほど堀さんが言われた件に関連してこんな議論がありました。関係者を巻き込むというのは、実はヨーロッパ、北欧が大体そうなっている。訓練を設計するときに職能団体とか労働組合が、こういうカリキュラムをしろと訓練機関に言うが、それと同時に訓練を終えて労働市場に出てくる労働者には最低幾ら払うということについて企業側はちゃんとコミットしている。そういう形に比較的近い。でも社会の歴史が日本は違うから、そうすると特別にアイデアがないとそうならないですね。報告書ではアイデアはないのです。困ったなで終わった。どうでしょうか。

 

○杉浦職業能力開発局長 意見ではないのですが、いろいろ御意見を伺いたいと思っているのは、研究会でこういった業界検定を進めるといった方向性を出していただきました。ここでは今後の能力開発施策の在り方ということで更にもう一歩進めて、制度化も含めた方向性を、どういうふうに位置付けていくかというところまで御議論いただけると非常に有り難い。つまり、先ほど大久保委員の話にもありましたが、育成も含めて公的な関与の仕方をどこまで踏み込んでやるべきなのか。例えば、技能検定みたいに大臣の国家検定としてぐらいにまで格上げするのがいいのか。民間を主体的に考えていくとするならば、そこまではやらなくて、もう少し柔らかいところで抑えておくぐらいのほうがいいのか。あるいは、こんなのは民間に任せておくほうがいいのか。例えば予算事業としてやるのはいいけれども、制度化するほどではないとか、いろいろなランクが考えられると思うのです。我々としては、せっかくああいった研究会の報告も頂いた以上は、制度として公なものにすることによって認知度も高めて、我々の支援もしやすくするといったようなことができればと実は思っているのですが、その辺の是非も含めて御意見を頂けると有り難いと思います。

 

○今野座長 どうでしょうか。

 

○吉川委員 検定試験団体というのをさんざん見てきた経験から言わせていただくと、例えばTOEICとか英検などいろいろな試験がありますけれども、検定試験が根付くまでに大体15年間赤字なのです。つまり根付くというのは非常に時間がかかる話なのです。なぜそうかと言うと、先ほどから議論が出ていますように受ける人にとって最初の頃はメリットが何も見えない。そうすると受検者が少ないわけです。その人がよかったのだというのが出る。特に、こんな人物が出るんだというふうに明らかに自分がなりたいような人が出てくると、試験というのは加速されるのです。だから就職して華々しくいったのは、エントリーのレベルでこの試験を通っていたからだというぐらいになってくると、急速に拡大期に入っていく。そうすると検定試験は国の関与が全くなしに独りで動いてくるのです。それだけの15年間、バジェットを担保できる企業というのはないというのが、多分、一番大きな話です。そうしてくると何らかの形で担保をして、しかも、これから人材が流動化する話が出ているわけですから、そこを横串で見るという意味での国の関与をある程度制度化するというのは、私は意義があると思います。

 

○今野座長 なるほど。ほかにいかがですか。何か今日は業界検定みたいなことが中心に議論されましたが、それを例にして政府はどういうふうに関与するのか、しなくてよいのか。いろいろ段階があるということだと思いますけれども。

 

○谷口委員 今、局長が提起されたことに関して、昨年も能力評価に関する在り方研究会で御紹介したことがあるのですが、もう一度申し上げると、アメリカのスキルスタンダードに関しては、我々としてはとてもいい教訓を含んでいると報告させていただいたことがあります。それは何かと言うと、業界でいわゆる任意団体という形で進めていくということ。最初は国が業界団体に対して資金を提供し、スキルスタンダードを作るところまでは国が支援しますが、それを動かしていくことに関して、そこから先は時限的に行っているものですから、国からの資金支援がないということです。結局、定着したかどうかを評価すると、12の産業分野しか定着していないということが総括して言えると思います。それは以前も申し上げたのですが、結局、エントリーレベルで入ってくる人材の質を、それなりに確保したいという需要がある業界は定着していっている。しかしながら、スタンダードとして作ったはいいけれども、それが定着しないというのは、そういう需要が少ない業界というか、そんなふうな教訓を私自身は得たのです。そういう国からの支援というものが、全ての業界にわたってうまくいかないという可能性を持っています。

 

○今野座長 今のは結局、あれですか、下のレベルが流動性が高くて、しょっちゅう採用しないといけないような業界だと定着すると。

 

○谷口委員 そうですね、小売だとかそういった業界。

 

○今野座長 ということは、ここで問題になっている対人サービスはいけるということですね。もう1つは、ちゃんと業界を選べということですね。

 

○谷口委員 そうですね。

 

○大久保委員 今の論点というか、国がどういうふうに関与するかというのは、前回の職業能力評価研究会でも議論が出ていたところだと思いますが、今日配布された資料の6ページに5つのケースの比較表が載っているかと思います。先ほど吉川さんが言われたとおり、ある程度、収支がペイして自走していけるまでに時間がかかる。ただ、15年かかるのはしんどいので、もっと短い時間で自走できるようにしていかなければいけない。そのためには一番最初の段階で、その資格検定制度が信頼できるものであり、しかも立ち上げの段階で受検者の数が相当急速に増えていくというプロセスを辿らないと、15年のプロセスを短くすることができない。それがある種、国の役割なのだということ。その15年を例えば5年にするとか、できれば3年にするとか、それが国が関与することの目的なのだと思います。

そのためには根拠法が必要です。職業能力開発促進法上の位置付けがされなければいけないと思いますし、国が関与するという形をとるのであれば、この表でいけば業界団体とのバランスを考えると、マル3に書いてあるような認定・認証型というのが一番目の候補になるのではないかというのが、研究会のときの結論だったと思います。研究会の中では何となくそういう議論で終わっているのですが、それ以外の選択肢があるのかどうかが、私はよく分からなくて、消去法で見ればここにいくのではないかという感じもするのです。それはどうなのでしょうか。それ以外の可能性もあるのですかね。

 

○伊藤能力評価課長 あくまでも論理的な選択肢ということで申し上げると、現行の技能検定制度は先ほども少し御紹介しましたように指定試験機関方式ということで、実施主体はあくまでも厚生労働大臣、国ですが、プレーヤーとしては一定の要件を満たす民間団体です。その中には事業主団体又はその連合体も含まれており、実際、そういう位置付けでリーディングカンパニーも含めて運用している主体もあります。先ほど局長も申し上げましたように、国家検定型でプレーヤーとして民間を有効活用していくという選択肢です。

 また、先ほど申し上げましたように、現状で法律上の位置付けまではせずに、概念的には能開法に基づく職業能力検定の一ジャンルですけれども、認定技能審査あるいは認定社内検定といった事業主団体あるいは個別企業が主体となっての業界横断、あるいは企業特殊能力等に焦点を当てての能力評価の仕組みがあります。そういう幅の中で、今、御議論いただいているような業界の主体性と同時に、短期間で一定の普及を図る観点も含めての国の関与による安心性、信頼性確保という、そこのバランスを考えた上で、今申し上げた想定される幾つかの選択肢の中で、どういう仕組みが最も望ましいのかを更に御審議いただくのかなと思っています。

 

○今野座長 研究会ではこれしかなかった。ということは、研究会に参加したメンバーはこれ以上アイデアを出す義務はない。それ以外の人が何かいいアイデアを出してくれるということになる。

 

○武石委員 それ以外の人ですが、国がどこまで関与するかということで言うと、ジョブ型の市場を作ることにどこまで本気ですかという気もするのです。要は、この評価制度だけでジョブ型が作れるわけではなく、いろいろな雇用政策全体が、今までのメンバーシップ型からジョブ型に変わっていく中の1つのツールというか、アプローチだと思います。

 今のジョブ型の議論ですごく重要なのは、非正規の人たちが増えてきていて、その非正規の人たちを、どうやって安定した雇用に持って行けるかというところが非常に重要な議論としてあります。ハイエンドの人たちは、ある意味、放っておいても自分たちで自助努力ができる人たちだとすると、この非正規の人たちがうまく、正規や、ある程度安定した仕事や、長期的にキャリアが形成できるような仕事につながっていくような仕組みとして、この評価制度なりを位置付けるのかなという気がしています。そういういろいろなことを考えるといろいろなことがあるのですが、そこの弱い人たちというか、今の労働市場の中でジョブ型を作ったほうが救われる人たちのために、何が必要かということを考えた上で、そこにある程度の焦点を当てるのだとすると国の関与というのをしていかないと、企業はなかなかそこには踏み込めないし、個人も、なかなかそこは自分で何かやろうと思っても、金銭的な面だったり情報が足りないということで行動ができない人たちだと思うので、そこに国が関与する意味があるのかなと、ちょっと抽象的ですけれどもそんな気がしています。

 

○今野座長 ほかにいかがですか。今、おっしゃったことで重要なところは、非正規とか非正規から一歩上がっているような人たちですね。

 

○武石委員 外部労働市場を整備することによって一番、誰のためにこの議論をしているのかということだと思います。

 

○今野座長 その辺の認識は、報告書で一致していると考えていいですよね。ほかにいかかですか。そろそろ終わりにしますけれども、別にまとめる気はないので時間になったらパッとやめようと思っています。言い残した方、よろしいですか。我々は楽しく好き勝手に議論させていただきましたので、どういう方向に議論を持って行くかは事務局にまた整理してもらいますけれども、その後に事務局と相談しながら、今後、どうやっていくか考えたいと思います。今日は時間ですので、この辺で終了させていたただきたいと思います。次回の日程について事務局からお願いします。

 

○田中総務課長補佐 次回は79日、1012時ということで予定しています。会場については別途事務局より御連絡させていただきます。

 

○今野座長 ありがとうございました。これで終わります。


(了)

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