ホーム> 政策について> 審議会・研究会等> 障害保健福祉部が実施する検討会等> 長期入院精神障害者の地域移行に向けた具体的方策に係る検討会(「精神障害者に対する医療の提供を確保するための指針等に関する検討会」から改称)> 第2回長期入院精神障害者の地域移行に向けた具体的方策に係る検討会議事録(2014年5月12日)




2014年5月12日 第2回長期入院精神障害者の地域移行に向けた具体的方策に係る検討会議事録

社会・援護局障害保健福祉部精神・障害保健課

○日時

平成26年5月12日(月)17:00~20:00


○場所

厚生労働省 専用第12会議室
(東京都千代田区霞ヶ関1-2-2)


○出席者

伊澤構成員、伊藤構成員、伊豫構成員、岩上構成員、荻原構成員、柏木構成員
河崎構成員、吉川構成員、倉橋構成員、佐藤構成員、澤田構成員、田川構成員
田邉構成員、近森構成員、千葉構成員、中島構成員、長野構成員、野沢構成員
葉梨構成員、樋口構成員、平田構成員、広田構成員、山本構成員、良田構成員

○議題

1 長期入院精神障害者等からの意見聴取結果の報告
2 退院意欲の喚起、本人意向に沿った支援等に関するヒアリング
3 長期入院精神障害者の地域移行に向けた課題と対策の方向性について
4 その他

○議事

○北島精神・障害保健課長 

それでは定刻になりましたので、ただいまより「第2回長期入院精神障害者の地域移行に向けた具体的方策に係る検討会」を開催します。本検討会は公開のため検討会での審議内容は、厚生労働省のホームページに議事録として掲載される予定ですのであらかじめ御了承くださいますようお願いいたします。

 本日は、まず初めに構成員の交代を御報告致します。これまで香山構成員より御参画いただいておりましたが、日本作業療法士協会より交代の申し出があり、後任として荻原常務理事事務局長に御参画いただくことになりましたので、御紹介させていただきます。一般社団法人日本作業療法士協会常務理事事務局長、荻原喜茂さんです。

 また、本日はヒアリングのため構成員以外にも5名の方に御出席いただいておりますので御紹介申し上げます。社会福祉法人巣立ち会、田尾有樹子理事長。特定非営利活動法人大阪精神医療人権センター、山本深雪副代表、同じく吉池毅志さん。茨内地域生活支援センター、岡部正文施設長とピアサポーターの方です。どうぞよろしくお願いいたします。

 また、千葉構成員、岡部施設長とピアサポーターの方は、都合のため閉会前に御退席の予定と伺っております。中板構成員からは、御欠席との御連絡を頂いております。長野構成員からは、やや遅れるとの御連絡がありました。佐藤構成員もやや遅れているようです。 ここからの議事は、座長にお願いいたします。どうぞよろしくお願いいたします。

 

○樋口座長 

1回の検討会が328日に開催されましたが、それから1か月半ほどたち、この間に作業チームの検討会が2回ありました。長期入院患者の地域移行に係る課題とその対応を整理してまいりました。これに基づいた議論を今回はこの検討会において行ってまいりたいと思います。

 議事を始める前に、まず今後の検討会の進め方について事務局のほうから説明をお願いいたします。

 

○尾崎課長補佐 

それでは資料1を御覧ください。本日第2回の検討会において、長期入院精神障害者等からの意見聴取結果の報告ということで、まず事務局から全体の事業の結果概要について説明をし、その後に事業の1つを担っていただいた田尾理事長様よりその他の報告をしていただきたいと考えております。その後に先ほど御紹介申し上げました方々よりヒアリングを行いたいと思います。それらのヒアリングを踏まえ3つ目の○で、長期入院精神障害者の地域移行に向けた課題と対応の整理。これがこれまで48日と425日の2回の作業チームの中で整理したものです。この内容について深めていただく御議論を頂きたいと考えております。

 その後については、520日、29日、65(予備日)23回作業チームを開催し適宜ヒアリングを行いながら具体的に方策の在り方、今後の方向性について議論いただきまとめる方向にしていきたいと思っております。

 第3回、次回の検討会は、617日を予定しており71日も一応予備日として設定しております。以上です。

 

○樋口座長 

それでは早速議事に入りたいと思います。長期入院精神障害者等からの意見聴取の結果に基づいて、取りまとめた報告を頂きたいと思います。事務局から意見聴取結果全体について御説明をお願いいたします。

 

○尾崎課長補佐 

それでは私から資料2-1から2-3について御説明したいと思います。資料2-1が意見聴取事業の概要についてです。第1回検討会でも御報告しましたが大きく分けて2つの意向確認をしております。

1つ目は、入院中の精神障害者に対する意向確認。これについて地域の関係者の方に精神科病院等を訪問いただき意見聴取を実施しております。後ほど説明しますが、これの結果が資料2-2になっております。事業実施主体は、大きく3つに分けております。また、それぞれの事業ごとに意見聴取担当者の性格が異なっております。

 例えば田尾理事長から御説明いただく社会福祉法人巣立ち会においては、東京都の独自事業をされているコーディネーターの方がヒアリングをしております。医療法人新淡路病院、先日、作業チームのほうで柳保健所所長がピア活動について紹介されておりましたが、これと関連した淡路精神障害者生活支援センターのピアサポーターが意見聴取の担い手となっていただいております。長野構成員が常務理事をされている公益財団法人正光会、こちらは地域活動支援センター等の地域の事業所の精神保健福祉士、保健師の方、こういった方々が意見聴取をしております。

 これら全体の事業の対象者数として、入院患者の方170名、退院した方40名となっております。意見聴取の方法としては面談により実施をし、入院患者さん等から聴き取った内容について担当者の方が記載している状況です。なお、この意向確認に関する資料については後ほど資料2-22-3でまとめておりますが、事業ごとに意見聴取の担当者の属性、訪問病院の環境、退院支援の取組等が異なること、サンプル数が一部十分ではないところもあるので、こういった点に御留意いただければと思います。

2つ目の意向確認の調査です。退院支援施設、地域移行型ホームというのが現在、新規指定はできませんが、一部その地域移行の過渡的な居住サービスを担っている形態としてありますが、これについて入所している方、退所された方について以下の対象者数のとおりアンケート調査を実施しております。これについては施設に調査票を郵送し、一番下にありますが、対象者から聴き取った内容について施設の担当者が記載したり、または対象者自身が記載している調査になっております。

 具体的に結果概要について説明します。資料2-2です。飽くまでも今回は、単純集計結果についてまとめました。こちらは先ほどの資料2-11番目の意向確認事業です。入院中の精神障害者に対する意見聴取の結果で、資料2-22ページ目の下半分に今回の意見聴取対象者の主な特徴をざっと整理しております。40から64歳ということで、65歳以上の方の割合はやや少なくなっております。

2つ目の○で、入院年数は、5年未満が多く約4割。その他5年から10年が約3割。10年以上が約3割という状況になっております。3つ目の○の後段で、入院回数は1回の方が最も多く2割程度。5回以上繰り返し入院されている方も約4割という状況です。以上がざっと今回の対象者の特徴です。

 引き続き意向確認の結果を11ページから御覧ください。こちらは御本人に聞いた概要です。現在入院されている方に、今、病院に入院している理由は御本人としては何ですかということです。最も重要な理由として挙げられたのは、病気の状態です。退院の許可が病院からおりていない、住むところがない、この辺が多くなっております。なお、先ほど冒頭に申し上げましたが、事業実施主体によりばらつきはありますので、こちらはトータルの4事業で見ますとこのような結果が多くなっているという状況です。

13ページの上側で、端的に退院の希望ですが、退院したいか、したくないか、決められないかについて聞いたところ御本人は、退院したい方が72.9%。調査の事業主体によっては、6割から8割の間でばらつきはありますが一番多いという状況です。しかし退院したくない、決められないといったような方も一定程度いるという状況です。こういった退院したくない、決められないと言っている方の自由記載の理由について、次の14ページの上側に整理しておりますので、参考に御覧ください。例えば家族の反対、食事を自分で作れない等が挙がっているところです。

14ページの下で、いつ退院したいかです。これについては、条件が整えば退院したいと言った方が多く、すぐにでも退院したいというのが4割。条件が整えばのほうが5割ということで多くなっている状況です。

15ページ下半分は条件とは何かで、例えば住むところが決まっていない、主治医の許可がおりたら、家族の了解を得たい、そのようなのが条件だというような状況だそうです。

16ページでは退院したくないと回答した患者さんのうち、以前はどうだったかと聞いたところです。以前は退院したかったが5割弱。やや退院したかったも含めますと半数を超える状況になっております。

17ページの問3で、希望する退院先はどこですかと聞いたところ、調査によっては、グループホームが最も多い場合もありましたが、全体としては自宅との回答が多かったとなっております。賃貸住宅、グループホーム/ケアホームと回答した患者さんの方に希望する条件というのを尋ねたところ、その住まいはやはり街の近くとか、病院スタッフや友達とすぐに会える場所であれば退院したいと回答した患者さんが多くなっております。

 なお、19ページの敷地内ならどうかという質問には、結果からいうと退院したくないが6割、退院したいが3割となっております。ただ事業の実施主体によっては、退院したくないが全体では6割ですが、その中でも3割という事業実施主体もあれば、8割という事業実施主体もあります。

 なぜ敷地内で退院したいか、したくないかという自由回答は、20ページにありますので御覧いただければと思います。退院したくない理由の中で、退院した気にならない、自由な行動をしたいといったような回答もあります。

17ページに戻り一番下の行で、一人暮らしをしたいと回答した患者も多いという結果になっております。ただ、24ページにあるように食事の世話などをしてくれる人と一緒に住みたいかということについては、住みたいと、住みたくないが拮抗するということで、一人暮らしがいいけれども食事の世話などをしてくれる人であれば一緒に住みたいということが増えるという結果になっております。

25ページで、退院後使用したいサービス、必要な支援についてです。退院後の生活の不安はあると考えている患者さんが多く、その内容として経済状況、家事の中でも特に食事に対する不安が多いという状況になっております。以上が入院されている御本人への意見聴取の結果です。

27ページからは、一部同じような質問について病院職員に聞いております。病院に現在患者さんが入院している理由で最も重要なものは何かですが、病気の状態、住むところがないというのが、それぞれ32.9%、14.1%という状況です。病気の状態については本人より病院職員のほうが高くなるという傾向です。本人の意向では病院の許可が多かったのですが、病院の職員ではそこが少なくなっている状況になっております。

28ページで、退院可能性があるかどうかを聞いたところ、現在の病状で退院可能性があると回答されたのは6割強となっております。3つ目の○で、今回の入院中に御本人が退院していいと伝えられたかどうかという問いについて、47.1%があると回答しているものの、44.1%がないということで割とないところも多いとなっております。ただし退院可能性がない患者さんが多い病院については伝えていない場合もあるとのことです。

31ページは退院の際に必要な住まいはどういったものかということについて、病院職員さんとしてはグループホーム/ケアホームの回答が最も多くなっています。本人の希望が高かった自宅については15.5%と低くなっております。住まいを敷地内に設置した場合の退院可能性として、病院職員としては退院の可能性ありというのが7割弱という状況になっております。以上が病院の職員に対する意見聴取です。

 今までは入院患者さんに対する調査でしたが、既に退院をしている患者さんに対する意見聴取結果が35ページからです。36ページ上半分に、その方々の属性があります。今はグループホーム/ケアホームに居住している方、単身生活の方が多いとなっております。この調査では入院回数は2回が最も多く、5回以上というのも4割弱という状況になっております。

43ページからが退院された方御本人への意見聴取結果です。退院のきっかけの最も重要な理由として挙げられたのは、退院の許可がおりたからです。病院からの働きかけが重要だということが示されております。

45ページには退院して良かったことを挙げていただいております。最も重要な理由として挙げられたのは、自由があるということ、その他複数回答で様々な回答がありますが、やはり比較的自由があるといったようなものに類似するような回答、プライバシーがあるといった回答が多くなっております。

46ページには退院後の住まいとして、病院の敷地に居住施設があった場合、住みたかったかどうかについて、どちらかというと住みたかったを含め住みたかったが32.5%。一方住みたくなかった、どちらかというと住みたくなかったが6割。住みたくなかったのほうが多いという状況になっております。住みたかった理由としては、外来やデイケアなどに通うのに近くて楽だということ、住みたくなかった理由では自由がない気がするからという回答が多くなっております。

48ページは退院された方が地域でもっと受けたい支援、サービスは何かについてです。いつでも相談できる場所というのが半数になっております。以上が入院患者さん、退院された方への意見聴取結果です。

 続いて資料2-3が退院支援施設、地域移行型ホームへの調査結果です。次のページで現在入所中の方に対する意見聴取で、なおこの方々の属性は、先ほどと同じく40から64歳の方が多くなっています。この方々はこの施設に出られておりますので、過去の入院回数としては1回から3回が多いですが、10回以上の方も12割いるという状況です。その他は割愛させていただきます。

8ページからがこれらの施設に入所されている方の御本人への意見聴取結果です。この施設を選んだ理由は何かですが、最も重要な理由は病院からの紹介です。外来などに通うのに近くて楽、知っているスタッフが近くにいて安心といったようなことが地域移行型ホーム、退院支援施設において選択されております。

11ページで入所前に利用した人の話を聞いたことがあるかについては、実は聞いたことはなかったという回答がそれぞれの施設両方ともに67割と多いという状況になっております。

14ページにこれら施設に入所されている方が病院との生活の違いとして最も重要なものは何かについて挙げています。全体的に自由がある、友人、助け合える仲間ができた、病気や症状が良くなったというのが地域移行型ホームでは多くなっています。退院支援施設でも自分のことは自分で決められる、自由がある、そういったような回答が多くなっております。

15ページで、この施設で便利なことは何かについて、最も重要なこととして挙げられたのは、知っているスタッフが近くにいると安心、外来などに通うのに近くて楽、そういった回答があります。最も重要なこと以外ですと選択されるのに、病院の敷地内に居ると安心という回答も入っております。

17ページで、この施設で不自由なことは何かです。重要なものとして挙げられたのは、社会に出て世界をもっと広げたい、退院した気がしないというのが地域移行型ホームで選択されております。また、最も重要なこと以外で見ると、病棟での人間関係を引きずりたくない、監視されている気がするといったような選択肢もございます。

18ページで、この施設は両方とも利用施設に住む期限がありますが、この施設以外で住んでみたいところはどこかで、地域移行型ホームでは賃貸住宅が最も多く、退院支援施設では自宅、グループホームが多くなっております。入院患者さんの先ほどの資料2-2の調査では自宅が割と一辺倒でしたが、こちらのほうでは他の選択肢も増えている状況になっております。

19ページの問11で、どのようなサービスがあればもっと生活しやすいかです。こちらについてはいつでも相談できる場所、家事支援、日中の居場所といった選択肢となっております。

20ページからは、これらの施設を退所された方に対する意見聴取結果です。属性は21ページにあるとおり現在住んでいる所として、地域移行型ホームからは賃貸、グループホーム/ケアホーム。退院支援施設からは、グループホーム/ケアホームが多いという状況になっております。

 その上で27ページは、これら施設を退所された方の御本人への意見聴取結果で、入所していたときにこの施設を選んだ理由は何かです。こちらについては入所者と同様、病院からの紹介が多くなっております。次にスタッフが近くにいて安心、敷地内にいると安心といったような回答も入所者よりやや多くなっております。

32ページは、この施設の利用をして良かったことです。自由がある、友人、助け合える仲間ができた。最も重要なもの以外については、2つ目の○の4行目にある病気や症状が良くなったといった回答も入っております。

33ページで、この施設で便利なことについては、先ほどの入所と同様で、知っているスタッフが近くにいると安心、外来などに通うのに近くて楽、そういった選択肢があります。

 一方35ページで、この施設で不自由なことは何かです。最も重要なことでは、病棟での人間関係を引きずりたくないといった回答がありました。その他に社会に出て世界をもっと広げたい、寝る場所が変わっても病院の枠から抜けていないと思う、監視されている気がする、退院した気がしないといったような回答が多くなっております。以上です。

 

○樋口座長 

内容が大変たくさんありまして、御質問もたくさんあろうかと思いますが、その御質問等の意見出しはその後にしていただきまして、この意見聴取の一部に携わられた巣立ち会の田尾理事長にお越しいただいていますので、田尾理事長から、それに携わられた部分の意見聴取結果と、そこから分かる課題とか、対応策等について、資料に基づいて御説明をお願いしたいと思います。その後に全てまとめて御質問、御質疑をお願いします。では、田尾理事長、よろしくお願いします。

 

○社会福祉法人巣立ち会理事長田尾氏 

今お話いただいたものの最初の報告の一部を切り取った形になりますので、重複する所が随分あるかと思います。私はスライド番号で言っていきますので、よろしくお願いします。スライド2で、私たちが対象にしているのは、入院者50名、退院者10名で、対象病院は両方合わせて21病院になっています。スライド番号で言うと20までが基本情報になるのですが、年齢は先ほどの情報と同じようにかなり高齢化してきているということがあります。

 スライド9に行ってください。入院時の入院形態は強制入院が少し多いですが、現在の入院形態は88%が任意となっています。スライド11です。それにもかかわらず入院期間は、5年以上が61%とかなりの長期入院になっています。スライド16です。主病名は、95%が統合失調症です。

 スライド20です。GAF得点、私は平均得点を出してしまったのですが、平均得点51.7点です。これは中等度の障害ということで、社会的・職業的又は学校の機能における中等度の障害ということで、少なくとも入院レベルではないという対象者がこれだけの入院をしていることになります。

 スライド22ですが、ここからが入院中の患者さんに対する意見聴取になります。最も重要な入院理由に関しては、この病院に入院している理由は何ですかという質問に対して、御本人たちが感じていることでは、最も退院を阻む理由は住む所がないことを挙げています。これが43.9%。退院の許可がおりていない、不安であるのが続きます。病院にいたいと答えたのは、50名中2名でした。

 スライド23ですが、それ以外の入院理由は、病院からの許可がない、病状、住む所、不安と続きます。スライド24です。現在入院している病院から退院したいですかという質問に対して、50名中42(84)が退院したいと答えています。時期については、すぐにも退院したいが26%、条件が整えば退院したいのが72%。スライド25で書いてあります。

 スライド26では、退院したくないと答えた3名も、以前は退院したかったと答えていて、退院できない理由が解消されたら退院したいと3名とも言っています。この辺は先ほどのデータと同じです。

 スライド27です。退院したとしたら、どこに住みたいですかとの質問に、ここではグループホームが最も多く、次に賃貸住宅、自宅と続きます。このデータでは、既にグループホームはどのような所かを知っている人が多く、説明を受けてイメージを持っている人が多いことがうかがえます。今回、この質問をしているのが、病院の外部から入っている相談支援員であることが、情報を増やすことに影響しているかと考えられます。

 スライド28ですが、住まいや街の近くなら退院したいかとの質問に、90%が退院したいと。スライド29です。住まいが病院の敷地内なら退院したいかの質問には、81.1%が退院したくないと答えています。

 スライド3034ですが、住まいが病院スタッフなどと会える場所なら退院したいかという質問に、3分の2(67.6)が退院したいと言っています。病院の友達と一緒に退院したいかに関しては、これは退院したくないのほうが多くなるのですが、43.2%は一緒は嫌だと。

 スライド32の一人暮らしがしたいですかに対しては、78.4%が一人暮らしがしたいと。スライド33の誰かと何人かで住みたいですかが、住みたくないが62%と。この辺に関してみると、プライバシーが保たれることを望んでいると見受けられます。一方で、問3(2)、スライド34、世話をしてくれる人と住みたいですかに対しては、43.2%が住みたいと。一人暮らしに関するアンビバレントな様子がうかがえます。

 スライド35ですが、退院後の不安に関しては、73.5%があるということで、比較的現実的だと思われます。生活上の不安に関しては、これも先ほどと同じ食事と経済状況が突出して高いです。これも非常に現実的な反応だと思います。

 ここから病院職員の意見聴取に入ります。スライド38です。入院を継続している最も重要な理由について、職員に聴いたものと本人に聴いたものを比べると、許可がおりていないという状況認識が、本人が17.1%で、職員が2.5%とかなり食い違いがあります。病状については、本人が9.8、職員が17.5と、これも職員が高くなっています。これもかなり食い違っている。住む所については、両方とも一番に挙げられていますが、本人は43.9%、職員は32.5%と少し少なくなっています。不安は本人が14.6%、職員が22.5%と職員が少し高くなっています。

 スライド39です。入院を継続しているほかの理由について、職員が住む所が最も多くなり20名、不安が17、病状が12、許可が9、家族が7と続きます。本人との差は、上位4つは余り変わらないのですが、それ以外では本人はお金が心配であり、職員は家族の意向を気にしていることが想像されます。

 スライド40からですが、現在の病状で退院して生活できると思いますかに対して、退院の可能性有りと職員は94%が答えている。生活能力として退院して生活できると思いますかに対して、90%が可能性有り、できると答えています。経済的に退院して生活できると思いますかに関しても、94%が退院してできる可能性があると答えています。

 スライド43で、退院してよいと伝えられたことがあるかについては、74%と低くなっています。これは本人が退院許可をもらっていないという数値と一致してきます。職員は退院できると思いながらも、それを勧める働きかけを起こしていないことが想像されます。職員の20%ぐらいの人は退院できると思っても、それを積極的に本人に話し、退院を勧めることはしていないことが想像されます。

 スライド44です。退院する場合に必要な住まいや施設で、グループホームは群を抜いて多くなる。本人の質問でも希望者が多いですから、それを上回ります。スライド45では、住まいを病院の敷地内に設置したら、退院可能かに対して、85.4%が可能であると答えています。スライド46では、それがグループホームであることがより望ましいというように、病院職員は病院敷地内のグループホームなら、退院生活がより順調で可能になると感じていることが分かります。地域移行の支援を行っていると、病院職員からはまず住まいはグループホームと勧められることが非常に多いです。単身アパートは難しいと感じているようですが、本人や我々相談支援員との考えとずれがあると感じることがしょっちゅうあります。

 スライド47です。患者さんが退院される場合の必要なサービスですが、ここでは医療従事者が自分たちで提供できるサービス、通院とか、訪問看護とか、デイケアは、共に高くなっています。

 スライド54で、退院した患者さんへの意見聴取です。スライド5556で、退院できた最も重要なきっかけで最も多いのは、相談に乗ってくれる人がいたから、次に許可がおりたと続きます。その他の退院のきっかけではその順位は逆転しますが、住む所が見つかったは、最重要のきっかけでは半分以下になります。入院中の患者さんの結果と比べて、振り返って退院できた要件を考えると、退院したくても、その協力者を得られていなかったと感じていることが想像されます。

 スライド57です。これは同じです。退院して最も良かったことは、彼らは自由があると繰り返し繰り返し言っています。

 スライド59です。病院敷地内の住居があったら住みたかったかという質問に対しては、住みたかった人が1名で、それに対してどちらかというと住みたくなかったも含めると8割が住みたくなかったと答えています。これも入院中の患者さんと一致する数字となっています。

 スライド62です。もっと受けたい支援で、75%がいつでも相談できる場所と答えています。これは今後の我々への方向性を示唆するものと思います。

 最後に2枚まとめのスライドを出しましたが、今回の意見聴取の対象者はコーディネート事業を受けているという特徴がありますが、入院期間は5年以上が61%という長期入院者が中心でした。とはいえ、GAF51.7と入院レベルではない人たちが多かったです。退院の希望については、ほとんど全員が退院したい、あるいは条件が整えば退院したいと考えているようです。病院敷地内には、8割が退院したくないと答えていますが、一方で病院スタッフなどと会える場所に退院したいという人も68%いました。病院職員の聴取からは、病院職員は対象者が退院できると思いながらも、退院許可も含めた十分なコミュニケーションを患者さんと取っていないことが分かります。病院職員は、病院敷地内のグループホームが安心して退院できる場所だと考えているようですが、それは患者さん自身の希望と大きく食い違いのあることが明らかでした。退院者の聴取から、いつでも相談できる人がいることが退院につながり、退院後の生活の安定にもつながっていることが分かりました。

 

○樋口座長 

田尾理事長、ありがとうございました。先ほど申し上げましたように、最初に事務局からの報告をしていただきました資料の2-12-22-3、それから、ただいまの田尾理事長からの報告がありましたヒアリングの資料2-4、ここまでの所をこれから30分ぐらい時間を取って質疑をしていきたいと思います。どなたからの御質問でも結構です。いかがでしょうか。

 

○平田構成員 

田尾さんにお伺いしたいのですが、10ページのスライド20です。GAFの平均得点51.7とありますが、これは分布は分かりませんか、GAFのヒストグラム。

 

○社会福祉法人巣立ち会理事長田尾氏 

作らなかったのです。

 

○平田構成員 

例えば、51点以上の人が何割ぐらいいるかは分かりませんか。

 

○社会福祉法人巣立ち会理事長田尾氏 

御免なさい。今、そこのデータは持っていないです。

 

○平田構成員 

これがないと、退院できそうな人が多いか少ないかが言えないのです。

 

NPO法人大阪精神医療人権センター事務局長山本氏 

お尋ねですが、資料2-1の最初にあります「退院支援施設及び地域移行型ホーム等への調査」で、各々2か所、19か所と出てくるのですが、これは何県でしょうか。

 

○樋口座長 

事務局、分かりますか。

 

○尾崎課長補佐 

退院支援施設は山梨県と新潟県です。ちなみに、先ほどの平田構成員の御指摘について、資料2-2の全体調査の中のGAFの分布はありまして、11ページの問16を御覧いただきますと、4事業全体のGAFの分布はありますので、御参照いただければと思います。

 

NPO法人大阪精神医療人権センター事務局長山本氏 

19か所の届けもお願いします。

 

○尾崎課長補佐 

北海道、青森、山形、千葉、神奈川、兵庫、山口、徳島、福岡が3つ、鹿児島、沖縄が2つ、指定都市で北海道札幌市、名古屋市、岡山市、中核市で富山市と高知市の計19です。

 

○樋口座長 

よろしいですか。

 

NPO法人大阪精神医療人権センター事務局長山本氏 

はい。

 

○平田構成員 

資料2-211ページの問16は、大雑把過ぎです。50かどうかが1つの分かれ目になっているわけだから、これでは判断できませんね。

 

○樋口座長 

これは基本データはあるわけですから、後ほどまたその辺の分析をしていただく。

 

○佐藤構成員 

この意見聴取の対象者は、大体どのような属性かは特に合わせてないわけですね。聴取をした人がどのようなレベルの人かということの大体のすり合せはなくて、調査主体に任せられているということでいいですか。

 

○尾崎課長補佐 

入院期間については、今回、長期入院者ということで、原則として1年以上入院している方ということでお願いはしていますが、そのほかの条件については特に設定していません。

 

○社会福祉法人巣立ち会理事長田尾氏 

私どもが調査した人たちは、基本的に退院支援コーディネート事業に乗っている人たちなので、病院もある程度了解して退院できると判断している人たちが対象になっていると思います。

 

○長野構成員 

私たちの所は、基本的に150床から55床まで病床削減をしてきて、残っている方、みんな何とか帰したいという状況ですので、ほぼ全体の方を調査させていただきました。2病院で調査させてもらっていますが、こちらの2つの調査に関しては、GAF50以上の方はいらっしゃらないです。

 

○社会福祉法人巣立ち会理事長田尾氏 

それでも退院はできるということですね。

 

○長野構成員 

その方向で動いている状況です。

 

○樋口座長 

そのほか御質問は何かありますか。もし今なくても、後半またこういった内容も含めてディスカッションをしていただきますので、取りあえずの質問がなければ、先に進んでまいります。

 

○河崎構成員 

日精協の河崎ですが、事務局にお聞きしたいのですが、今回の調査は基本的にはどういうことを抽出したいということで組み立てられているのかが、これまでの検討会の中でも余り議論がなかったので、その辺りはいかがですか。というのは、先ほどから御本人の意向とか、職員の意向とかの説明がずっとあったのですが、それと御本人の病状とか、生活のしづらさ等の部分、先ほどのGAFのスコアなどもそうですが、その辺りを綿密にクロス集計をするとか、そういうことを今後考えておられるのか、あるいは今回の調査の中でどういうところを抽出しようと考えておられるのか、今回の議論の材料としてこういう形で提供なされた理由を含めて、その辺りを含めて何か調査そのものの組立ての説明が必要なのではないかと思うのですが。

 

○尾崎課長補佐 

予断をもっての調査ではなくしようということで、サンプル数が限られているので限界はありますが、正に入院されている方御本人がどういう意向かを丁寧に聴いていくことを目的とした調査です。確かにもう少し詳しく、例えば年齢とか、入院期間別とかいう分析は必要かもしれませんが、サンプル数が少ないので、このデータをそのまま皆さんにお示しして、そこから感じられる課題や、こういう状況であればどういった支援が必要かなど御議論をいただく材料としていただきたいと考えております。

 

○樋口座長 

よろしいでしょうか。それでは、後ほど調査の結果も含めて御議論を頂きますので、取りあえずは先に進みまして戻っていきたいと思います。本日は、関係者からのヒアリングということで、今回主に退院意欲の喚起であるとか、御本人の意向に沿った支援に関連して、2グループの方にお越しいただいております。まず、大阪で長年退院意欲の喚起、あるいは本人意向に沿った支援に関する事業を行っている大阪精神医療人権センターの山本副代表と吉池さんから、その取組について、資料3のヒアリング資料を基にお話をしていただくことになっております。それでは、山本副代表、吉池さん、よろしくお願いいたします。

 

NPO法人大阪精神医療人権センター事務局長山本氏 

初めまして。大阪の精神医療人権センターという認定NPO法人で、1992年からスタッフとして、面会相談や電話相談などに参加してまいりました。

 私たちは、河崎先生もいらっしゃる大阪府下において、19979月から大阪府下の全ての精神科病院で、滞在型で1病棟60分という時間の限定があるのですが、その中で訪問活動を担ってきております。私自身は現在6巡目に入っております。

 訪問スタイルとしては、入院体験のある者と地域で支援活動を担っている者の2名の1班で動いています。1つの病院について、4ないし8名で滞在型で、入院患者さんの声を聴く。そして、何があれば自分の人権が守られた安心してかかれる医療と呼べますかという趣旨のお話をしてまいりました。環境としての安心感というのが、何があれば守られるのかという眼差しです。

 私自身は入院経験のある者として、その場に参加をしてまいりました。本日の御案内を頂いた折に感じたことを、まず最初にお伝えしたいと思います。

 「退院意欲の喚起」という言葉は、入院されている方に失礼ではないかなと感じます。それは入院している立場である私だったかもしれない方、この際Aさんとしてみると、お願いですから家に帰らせてくださいという言葉を何度かけられたことでしょう。そして、何度扉を叩かれたことでしょう。その上で、何度戒められたことでしょう。その度に薬や注射が増えるということを体で学び身に付けていかれたことでしょう。そういうことの時間の経過の中で、訴えなくなることを医療従事者の方々は「沈静」と評価されてきたのではないでしょうか。刺激を避けることを良しとして、情報遮断をし続ける環境を提供されてきたのではないでしょうか。

 私は、こうした退院を懇願した経験のある方というのが、検討会の委員の中に過半数を占めていない状況があることを少し違和感を持っています。

 その上で大事な眼差しというのは、国、あるいは病院、地域社会に向けた退院支援意欲の喚起ということが、本質的な焦点ではなかろうかと思います。それは、全ての方は地域社会を妨げられないわけです。私たちは、大きな問題の解決というのが、患者さんの退院意欲の喚起に帰結していいとは思いません。現状退院支援意欲の喚起の部分が本当に求められているなと感じてきています。それは病床を削減して、仮設住宅ではない、プライバシーの守られる住居だと思えるところの場所の提供が本当に必要であるということ。支援を保障しながら、先ほどは「相談窓口がある」という言葉で表現されていましたが、地域住民の一人としての暮らしを保障していただきたいと感じています。

 これまで入院している空間の中では、いろいろ持てないこと、してはいけないこと、禁止事項がたくさんありました。その中で「退院できないんだよ。あんたは今はそういう時期ではないんだよ」ということを言い続けて、それ以外のやり取りはなく、何年、あるいは何十年と経過してきた方々にとって、「退院できないんだよ」と繰り返し伝えられてきた事柄は、「今は違うんだよ、すまんかったな」とお伝えしていただきたいと思います。

やはり、これから退院してあなたらしい暮らしを作っていこうねという声かけを、時間をかけて、本人がそういう気持ちになっていくような関わりをきちんとしていくことが必要だと思います。

 さらに、これまで退院できない理由として、そのための説得として使われてきたグループホームは今は空いていないからね。あるいは、家族が退院には賛成してくれないよね。などなどに対して、それに対応していく予算計上が不可決であると思います。その部分が本当の退院支援意欲の喚起につながると思います。

 この間、議論の経緯の中で、一部委員の方々から、地域移行が進んでいない中で、残された時間がないという御発言が見られます。その中で、病床転換型の居住系施設を認めようという御意見も読まれました。しかし、このことは根拠にはならないと私たちは感じています。

 本日のお話を聞いていても、万策を尽くしたと言えるような状況にはないと感じます。それは、病院の中でスタッフの働きかけとしてできることはしたと言える状況でしょうか。さらに、地域においてできることはしたと言える状況でしょうか。私たちの目から見れば、病院間格差が非常に大きくあります。地域間格差もとても大きくあります。また、地域コンフリクトの状況で、グループホームの建設反対運動などに手を付けられないまま時間が流れてきていることなどが先決課題であると感じます。

 そうした状況の把握と要因分析等はされたのでしょうか。平均在院日数が33日という病院もあれば、全国を見渡せば2,500日を超える病院というのもあります。果たして、毎年「2万人の死」と言われるのはどこで起きているのでしょうか。これまでの退院支援員が多く活動してきた市町村でしょうか。病床・病棟転換による数値の転換はできるでしょう。病床削減指針の乗切りもできるでしょう。そちらの数値的なものが待望されているのではないでしょうか。

 こういう流れの中でいくと、これまでの「2万人の死」と言われるものは、「2万人の死」のまま続くことでしょう。私としては、こうした課題に対する近道はない。退院を支えていく本当の地域生活支援の人手への予算計上こそが、着実な成功の道であると思っています。

 その上で、世界に障害者権利条約の批准を表明した日本ですので、有識者の代表が集まられているこの場で、院内退院という形を選択することがないように願っております。医療機関というのは、地域社会の1つの社会資源です。医療機関の中での暮らしというのは、地域生活そのものではありません。病院敷地内での暮らしというのは、病院での暮らしであって、地域生活ではありません。病院は病気の治療を提供していただく場です。

 私たちは、地域生活というのは病者や障害者だけではない。あるいは施設職員だけに限定されない、様々な年齢の方、幼な子や高齢の方まで、そして属性も様々な方が住んでいる多様な住民世帯が生活する場での暮らしを求めています。

 これまで意見が言えない人がいる。黙っているしかない方がいると言われてきました。そのことには、訪問していて、長期入院の方とお話をしていると、「本当は退院したいんです」と言われます。退院したいんですとストレートに言わずに、「本当は」と言葉を付けなければいけなかった背景には何があるのでしょうか。ここは大事な言葉だなと感じています。

 また、長期入院の方とお話をしていると、「退院が不安だ、このまま病院にいたい」という声を聞くこともあります。それらの理由をずっと伺っていると、職員に対して、患者のほうから相談をしていくという関係が築かれていないことが伝わってきます。聞くと「薬が増えるから」とおっしゃいます。「家族と暮らすんだ」ということの、「これまで自分が入院前に暮らしてきた家に帰るんだ」という答えもとても多く聞かれます。それ以外にも方法はあることを御存じでないことが伝わってきます。お金がないということもよく聞きます。そのためには生活保護や年金という制度があることも伝わっていないことも伝わります。お弁当のこと、食べ物のことの心配もよくされています。それらには、地域で生活支援センターであったり、グループホームやホームヘルパーなどの社会資源や、お店で買うことができるような世の中になっていることを御存じでない方がよく分かってきます。そういう声がよく伝わります。

 あるいは入院に至った家族との関係、近隣の関係のごみ出しなどに伴うトラブルの再開を恐れる声も聞こえます。そうした日常生活に関する事柄も、ヘルパーさんに頼めることも、長期入院の方では、「ヘルパーさんってどういう方」ということで、やはりここも伝わっていないんだなと。地域でのサービスの中身を知らない状態、情報を遮断された状態で暮らしていることがよく伝わってきます。

 これらの話を聞いてくる中で、一人一人の患者さんに継続して関われる利害関係が直接ない、医療従事者ではない、地域の第三者の権利擁護者の関わりがとても大事だと実感してきました。

9ページ、長期入院の方の退院支援については、長年厚労省においても検討されてきています。しかし、必要なこと、具体的にはソーシャルワーカーなどの人手、リハビリの支援をされる人手。あるいはグループホームなどの人件費などが安定して予算が付けられてこなかったと見えます。その辺の予算上の問題点がそのままにされてきたり、あるいは精神障害者の特性として、利用する折と利用したくないと思う折の波があるという、障害の特性を理解した予算措置がされてきていない事柄がグループホームの利用数が思ったように伸びなかったことの背景にある。そうした部分で、合理的配慮がなされないままに時間が経過してきたのではないかと感じています。そうした問題を放置し、棚上げにしたままで病棟の名前を変えるという事柄では、それは退院でも、地域移行でもないと。やはり、利用者から見れば隔離と地域生活から閉ざされた場所での収容の延長線にあるなと。そのことに国の予算が使われていくとすれば、それは1960年代に歩んだ同じ過ちの道に踏み出していくことにつながると強く感じています。

 私たちのセンターには、旧援護寮と言われていたところからも、退院したいという声が届いていました。そうした意味からも、成すべきことに予算を付けていくというスタンスがとても大事だと思っていますので、そのままの状況の中での病床転換・病棟転換については反対を表明します。大事なことは、本当の地域での暮らしを実現させていくために必要な事柄に、御本人の不安の声に寄り添う人手をきちんと付けていくこと。まだまだ足りていない地域生活支援に必要な人員に予算配分をしていただくこと。地域移行と定着支援事業の人材を確保できるようにすることであると思います。

 現状で予算が不安定なために、各地で不足してきた精神障害者の訪問ヘルプサービス、グループホームなどの退院後を支えるサービスがより手厚くなること。そして、同じ病の体験や境遇を共有しているピアサポーターの関わりを継続して、充実させていく施策が必要であると感じています。これまで長期の入院により、退院後の暮らし、地域で暮らすことに対して自信が持てないと感じている不安の声を出しておられる患者さんが、人として地域で暮らしていくための自信を取り戻していく。そういう支援こそが充実させていかなくてはいけないと思っています。それが私たち地域社会の義務であるとも言えます。

 以下、大阪での取組を載せております。

 スライドナンバー22、病院とのやり取りなどで変わってきた事柄を記載しております。最後のページを読み上げます。検討項目として、職員の名前や写真を掲示していただきたいということが声として上がりました。そのことに対して、病院側の対応として、詰め所の前に職員の写真と名前を掲示します。あるいは担当医師の写真も掲示しましたというお返事が返ってきています。退院のための相談窓口をきちんとしてほしい。情報提供をきちんとしていただきたいという検討項目におきましては、病院側の対応としては、掲示されているPSWの業務内容を、入院時の案内とか、病棟に掲示していきたい。あるいは常勤の精神保健福祉士は、より増員を図りたい。全患者に対して担当ソーシャルワーカーが付いているということを頻繁に関わっていくことはもちろん、病棟に相談室の案内を掲示するなどして、患者さんに分かっていただくように周知徹底に努めていきたい。

 地域の社会資源についての情報提供が病棟でできていなかったので、それらをできるよう努めてまいりたい。将来的に数字目標を上げながら、退院に向けての取組を行っていくという議論も院内で行っています。また、退院の話をはぐらかされていると感じている患者さんの声をすくい上げられるような看護。生活支援を行っていけるよう、それらの内容を研修しながら検討して、職員の間に周知徹底していけるような機会を持つようにしていきたい。以上のような、病院側とのやり取りが大阪ではなされています。こうした関係が、全国においてなされることを望んでいます。以上です。

 

○樋口座長 

ありがとうございました。お二人にはこの後も残っていただけるということですので、御質問等については、次にヒアリングをさせていただく方のお話も終えた後に、全体の討論の中で御質問も交えてお願いしたいと思います。続きまして、実際に長期入院から退院されたピアサポーターの方から、どのように退院に向けた意欲を持って退院されて、地域生活を送られているかについてのお話を伺いたいと思います。ピアサポーターの方と、その支援に関わっている柏崎市の茨内地域生活支援センターの岡部施設長から、資料4に基づいて御説明をお願いします。それでは、ピアサポーターの方、岡部施設長、よろしくお願いします。

 

○茨内地域生活支援センター施設長岡部氏 

15分程度、当事者の方の発表ということで頂いておりますのでよろしくお願いします。私は同伴で来ておりますので、主人公のピアサポーターの方から御発表をいただきますので、よろしくお願いします。また、帰りの電車の都合で中座をさせていただきますことをお許しください。

 

○ピアサポーター 

当事者体験発表。自己紹介。H.Hと言います。58歳です。新潟県出身です。平成2010月、精神科病院に入院、統合失調症と診断される。平成249月、アパートへ退院。入院は310か月。趣味は将棋と読書。

 平成259月、定着の日(退院から1)を迎え、振り返って「私のリカバリーストーリー」を語ります。ここで言うリカバリーとは、単に病気が回復するだけでなく、退院して地域で暮らし、自分の役割と希望を見つけて生きることです。

 

○茨内地域生活支援センター施設長岡部氏 

H.Hさんの本題に入る前に、皆さんにお願いがあるということだったと思います。そこを1回御紹介ください。

 

○ピアサポーター 

できれば名前は隠して、ここだけでお願いします。

 

○茨内地域生活支援センター施設長岡部氏 

ありがとうございます。それでは、入院までの6年間からお話を続けていただきます。

 

○ピアサポーター 

失業46歳、その後の大手術。貯畜もなくなり、派遣社員での最低限の生活で、糖尿病で派遣の仕事を失う51歳。実家での生活。ストレスと家族との度重なる口論、喧嘩。警察介入と入院52歳。孤独で辛いストレスフルな生活だった。

 

○茨内地域生活支援センター施設長岡部氏 

H.Hさんは御家族はどんな構成でしたか。

 

○ピアサポーター 

母親、弟が2人。ただ一緒に住んでいるのは、弟1人です。

 

○茨内地域生活支援センター施設長岡部氏 

お母さんと1人の弟さんと3人暮らしであった。

 

○ピアサポーター 

はい、そうですね。

 

○茨内地域生活支援センター施設長岡部氏 

御家族は皆さん御健康なのでしょうか。

 

○ピアサポーター 

いえ、弟が精神障害者です。

 

○茨内地域生活支援センター施設長岡部氏 

病名は言えますか。

 

○ピアサポーター 

病名は分かりません。本人は言いません。

 

○茨内地域生活支援センター施設長岡部氏 

それでは続けて、52歳で初めて入院したお話に移ってください。

 

○ピアサポーター 

はい。平成2010月、強引に精神科病院に入院させられ、初めて精神科病院というものを知る。強引に入院させられたので、いいも悪いもなかった。出たくて、出たくて、仕方なかった。

 統合失調症と言われ、精神病ということが恥ずかしかった。というか、精神病を認めたくなかった。保護室に入れられた辛さ。急性期病棟の保護室に入れられて、入院時の担当医に逆らったからこらしめられて。

 

○茨内地域生活支援センター施設長岡部氏 

そういうふうに思っていたということですか。

 

○ピアサポーター 

そうです。当時は、物事を被害的に受け止めやすかった。家族も警察も病院も全部敵だと思っていました。初めての精神科薬とストレス。さらに不眠に悩む。隣の重症患者が夜10時から明け方まで吠えているような人でした。入院1か月後、4人部屋に移され、睡眠が取れ、タバコと読書を許可され、正に生きた心地がしました。

 

○茨内地域生活支援センター施設長岡部氏 

その後初めての退院の転機が来るわけですね。

 

○ピアサポーター 

はい。入院して半年ぐらいたったころ、主治医から生活訓練施設への退院の話がある。しかし、12日の体験をして合わないな。生活訓練施設に行くしかないなら、病院にいたほうがいいと白紙へ。生活訓練施設の話をきっかけに仲間ができる。

 

○茨内地域生活支援センター施設長岡部氏 

その後仲間ができたのだけれども、御自身の体調が悪くなっていったんですね。

 

○ピアサポーター 

そうです。糖尿病による体調不良で、退院の話もなくなり、その後、足元のふらつき等、体調不良と失明の危機。転院と手術。退院というムードも消えて、全く退院なんて考えられない。失明した状態では、アパートは無理。それならこういう施設にいたほうがいい。

 

○茨内地域生活支援センター施設長岡部氏 

こういう施設というのは病院ということですか。

 

○ピアサポーター 

そうです。ケースワーカーとの関わりもなくなり、退院の話もなくなったし、このままいてもいいんだと思った。開放病棟で仲間もでき、居心地アップ。

 

○茨内地域生活支援センター施設長岡部氏 

しかし、その後病気は回復していったのですね。

 

○ピアサポーター 

はい。マル1主治医の変更。マル2服薬調整による改善。ふらつき、便秘、睡眠。マル3作業療法。将棋。マル4外出したり、行事に出掛けたり。結局、ベストな状態になるまで2年数箇月。病気の回復を実感。

 

○茨内地域生活支援センター施設長岡部氏 

かなり、薬が合ってきて、体調も良くなってきて、動けるようになったという状況が2年数箇月かかったということですね。

 

○ピアサポーター 

はい。

 

○茨内地域生活支援センター施設長岡部氏 

それで止まっていた話が、また主治医から出始めたということですね。

 

○ピアサポーター 

はい。主治医から退院の話が出る。薬が合い、目に見えて元気になる。主治医から退院の話がある。2年にわたる主治医との攻防のスタート。最初のころは「福祉ホームはどうか」「退院しましょう」。「いや、いいです」というやり取りが続きました。

 

○茨内地域生活支援センター施設長岡部氏 

しかし、その後、決断したのですね。2年間先生に「退院どうですか」と言われて、「いや、いいです」と言い続けて、2年後にまた転機が来たということですね。

 

○ピアサポーター 

そうです。退院に向けての支援を受けることを決断。SSTへの参加。病棟調理実習への参加。主治医がアパート退院を納得。地域移行支援の利用の話合い。ついに決断。駄目もとで話に乗ろう。俺を退院させられるものならやってみろという気持ちだった。

 

○茨内地域生活支援センター施設長岡部氏 

何でそこで「退院させられるものならやってみろ」という気持ちだったのですか。

 

○ピアサポーター 

失礼な言い方なのですが、当時は、俺は好きで入院したんじゃねぇ。退院ぐらい好きにさせろと思っていました。でも、早速、病棟と支援者8人が集まり退院に向けて動き出す。師長の一言、「退院のレールに乗ったね」。

 

○茨内地域生活支援センター施設長岡部氏 

「退院させられるものならやってみろ」というときに、前にお聞きしたことがありましたが、自分は精神病であるとか、住む家もないしとか、そういったお話も前してくださいましたが、その辺を御紹介いただいてもいいですか。

 

○ピアサポーター 

実家は拒絶されていたので、ただ、生活訓練施設というのは居心地が悪かったので、とにかくアパートしかないと思っていました。

 

○茨内地域生活支援センター施設長岡部氏 

しかし、働いていない自分に貸してくれるアパートがないとか、そういうお話も前にしてくださいましたが。

 

○ピアサポーター 

そうですね。前に無職だけでアパートはなかなか借りられなかったのですが、それに精神障害者と付くと、まずないだろうと。ないだろうと思いながらも、支援を受けるということでした。

 

○茨内地域生活支援センター施設長岡部氏 

ありがとうございます。それでは、続けていただいて。


○ピアサポーター 

退院しなければと思い始める。NHK「ためしてガッテン」で、認知症にならないためには、マル1自分で食事を作る。マル2睡眠と昼寝。マル3歩く。入院生活はこれとは真逆で、認知症への道にまっしぐら。これはマジにヤバイ。このときから1日も早く退院しなければと思うようになった。当時の病棟では50代でも車いす、介護入浴、紙おむつ、トイレを汚れっぱなしの人が大勢いました。数年後の自分が目の前に大勢いる。NHKスペシャル「認知症800万人時代」より、認知症初期症状チェックリスト。10項目は読んでください。認知症の初期症状に気付いてくださいという意味です。

 

○茨内地域生活支援センター施設長岡部氏 

そうこうして、地域移行支援が入って、いろいろなアパート探しとかを踏まえて、退院に至るわけですね。

 

○ピアサポーター 

はい。うれしい退院。実は退院したらしたかったことがあった。退院して思い描いていた生活が実現できた。入院中、入院生活は80点だったが、退院して今の生活を100点とすると30点。退院して分かったことがたくさんあった。うれしい誤算がたくさんあった。孤独死を心配していたがネットワークが広がっていく実感が。あれもしたい、これもしたいと欲が出た。

 

○茨内地域生活支援センター施設長岡部氏 

うれしい誤算というのはどういうことでしたか。

 

○ピアサポーター 

食費が思ったより安かったとか、電話料が安かったというのがあるのですが、最大の誤算は、「俺、何で退院したくなかったのだろう」と思ったことです。

 自分が思う退院準備。マル1主治医が「あなたは退院しなさい」と本人、保護者に通告する。そして、退院先を想定する。マル2地域移行支援関係者を集めて会議をする。これが決め手。まず関係者の役割を説明し、本人の意向を元に、退院計画を立てる。マル3主治医との面談や、SSTでその計画の進捗状況を確認する。裏情報で大切なのは、退院先の人間関係。前提として、病棟の居心地がいいと良くない。

 私の今の生活ですが、真ん中にアパートがあって、スーパーまで200m、コンビニ、バス停まで300mという絶好の立地です。一番行くのが病院と支援センターですが、そこまではバス停3つです。あとはボランティア、将棋連盟や図書館等に行っています。退院したいと思う住まいの確保。

 

○茨内地域生活支援センター施設長岡部氏 

その前に、今の私の生活はというのは、うちの地域移行の担当者に、こういう条件で探してこいという希望をいただいたのですよね。

 

○ピアサポーター 

そうです。絶対無理だろうと思って出しました。

 

○茨内地域生活支援センター施設長岡部氏 

御希望にかなうものが来たので、退院を決断したと。

 

○ピアサポーター 

そうですね。ここまできたら引き下がれないと。生活のためのネットワーク。私の周りには、病院、社協(権利擁護)、社協(ヘルパー)、市の福祉課、実家、親戚関係とありますが、その中で生活支援センターが一番付き合いの頻度が多いです。支援センターには退院から定着まで。マル1地域移行支援(退院支援)。マル2サービス等利用計画。ピアサポーターとしての協働作業。マル1体験発表。マル2昼食交流会。地活での患者同士の交流。

 退院しても支援者、障害者対応のプロに囲まれているから、マル1差別や偏見を感じることがない。この1番があるから、退院したくないという人は結構います。マル2孤独ではない。マル3私の生活が成り立っている。マル4趣味で生活が潤っている。マル5地域で暮らしている人との交流が増えていく。

 退院して思うこと。マル1精神障害者は、重症の人もいるが、軽症の人も多い。マル2強制入院は、医師や家族に対して怒りや恨みを持つが、落ち着いてから病名と薬の作用・副作用を説明して納得させてほしい。患者同士の会話でも、体験談でも、拒薬、怠薬する人が本当に多い。

 退院して思うことマル2、回復、退院には、薬3割、生活習慣7割。マル1薬が合い、それを飲み続けること。マル2十分な睡眠をとること。マル3家事をすること。マル4外出して歩くこと。マル5ストレスを感じる人に会わないこと。()入院時はマル1マル2以外にOTSST、調理実習、外出等をすること。

 ピアサポーターとして前向きに生きていこうと思った転機。ピアサポーターという役割を知る。マル1体験発表。仲間に地域の良さ、サービスを伝えたり。マル2地域で生活している仲間との交流。地活の利用。マル3自分と同じく退院を目指している仲間に語る活動。昼食交流会でOBとしての関わり。そして今、この役割にやりがいを感じている。前向きに生きていこうと思う転機になった。

 地域移行・定着を推進するために。マル1患者本人や相談支援だけでなく、病院(精神科医)や家族会にもリカバリー志向になってほしいと思います。マル2重症患者。特に2002年以前に精神分裂病と診断され、致命的な絶望感を感じ、何十年も入院してきた人には行政の格段の支援をお願いしたいと思います。私からは以上です。

 

○茨内地域生活支援センター施設長岡部氏 

どうもありがとうございました。

 

○樋口座長 

ありがとうございました。大変貴重な体験のお話をお聞かせいただきましてありがとうございました。お二人にもこの後時間が許す限り同席していただけるということですので、その中で御質問を頂きたいと思います。およそ7時半ごろには退席されるということですので、もし質問を用意されている方は早めに質問していただければと思います。

 それでは、本日の議事の3番目ですが、1回目にも話が出ていた「長期入院精神障害者の地域移行に向けた課題と対策の方向性について」ということに移ります。まず、事務局からこれまでの議論の内容のまとめをしておりますので、資料5-2を基に簡単に説明をしていただければと思います。

 

○尾崎課長補佐 

それでは、資料5-1と資料5-2について説明いたします。資料5-1は資料5-2の議論を頂く前提として、どういった考え方で御議論いただきたいかを、これまでの第1回の検討会や、その後の作業チームで皆様方に御議論いただいた結果を踏まえ、地域移行の流れをイメージ図として図示したものです。その前提として、上の枠囲みの中にありますが、この検討に当たっての基本的考え方を2つ大原則として整理しております。

1点目は、長期入院患者本人の意向を最大限に尊重しながら検討するという点です。2点目は、地域生活に直接移行することが最も重要な視点ですが、新たな選択肢も含め、地域移行を一層推進するための取組を幅広い観点から検討するというものです。そして、その検討の進め方を以下の図に整理しています。

 地域移行の段階を大きく2つに分けて、アの「退院に向けた支援」とイの「地域生活の支援」という2つに分け、更に「退院に向けた支援」の中にはア-1の「退院に向けた意欲の喚起」という段階、ア-2の「本人の意向に沿った移行支援」の段階というものがあるのではないかということで、このア-1、ア-2、イ、それぞれについてどういった課題があるか、どういった対策の方向性があるかを皆様方に御議論いただきました。

 なお、その前提として、図の一番左側にありますが、入院医療の必要性が薄い場合は退院が基本で、退院を前提とした支援をすべきという考え方を左から矢印で示しているつもりです。そして、こういった地域移行の流れの根っこには、一番下の紫の囲みがありますが、地域移行を阻害する構造的な見直しということも検討していくべきではないかというお話がありましたので、後の資料5-2でその辺りも整理しております。

 これらを踏まえ、資料5-2について、事前にお配りしていますので簡単に御説明したいと思います。今申し上げたア-1、ア-2、イのそれぞれ左側に課題、右側に構成員の皆様などから御提案のあった対応案を整理しております。基本的に課題のほうをざっと御説明したいと思います。

 まず、退院に向けた意欲の喚起として、課題の1つ目としては意欲の前提となる御本人への情報提供が不十分な点があるのではないかということです。2番目は、ピアサポーターの活用が不十分であるといった課題があります。次のページですが、3番目は、面会に制限があることです。面会というのも、患者仲間や友達といった方の面会について制限があるといった御指摘がありました。4番目は、院内スタッフの退院支援に向けたモチベーションが低い、若しくは院内スタッフ自身の情報不足があるということもありました。5番目は、生活保護を受給している患者さんも多いので、その方への退院支援が不十分であるといった課題です。6番目は、1年以上の入院患者について、今回、法改正がありましたが、退院に向けた検討体制を設けることが必須となっていないことが課題という御指摘がありました。7番目は、病院から押し出すのではなくて地域側から長期入院者を引っ張る仕組みがないといったことが挙げられています。以上が、退院に向けた意欲の喚気に当たっての課題です。右側にそれぞれの皆様からの対応案がありますが、そこは御覧いただければと思います。

 続いてア-2は、ア-1で本人の意欲が出て、その方の意向に沿って支援を行うに当たっての課題です。1番目が、地域生活の体験機会が不足している点です。2番目は、意欲の喚起から地域移行までのつなぎの支援が不十分だということです。例えば、本人が退院を迷っている段階で行う相談支援についての報酬が不十分といったことも挙げられています。3番目は、入院している方は要介護認定や障害支援区分認定を受けている人が少なく、退院後の支援が円滑に行われないといった課題です。4番目は、既存の宿泊型自立訓練施設を含めたステップが軽症者向けになっており、利用期間が短いのではないかといった課題。5番目は、都道府県、保健所といった行政機関等の相談体制が不十分といった課題がありました。

 それから、今度はその地域移行支援を受けて、実際に地域生活が始まった後の課題がイの1からです。1番目は、退院初期には不安があるので、その不安を軽減する対応が必要ではないかということ。2番目は、入院費よりも地域で生活するほうが経済負担が大きいことが妨げではないかということ。番号はありませんが、居住資源が不足しているという点については、右側にそれぞれ、グループホームで空き家を活用できないかとか、次のページで、単身生活者支援を行うための方策が挙げられています。それから、高齢者にもサ高住の充実といった対応案を挙げていただいています。こういったそれぞれの対応策をやって、居住資源が不足していることに対応すべきという御指摘でした。

7ページです。3番目の課題は、家族が困ったときに頼れる支援が不足しているといった課題。4番目は、中等症以上の患者を対象にした施策が必要ということ。5番目については、65歳以上の高齢精神障害者が介護保険や障害福祉サービスを利用しにくいといった課題です。6番目は、サービスメニューの量と質を拡充することとして、右側に多くの案を頂いております。

8ページです。7番目は、介護が必要でないが生活能力に問題がある方について受け皿が不足している点。8番目は、合併症や身体機能の低下への対応支援が必要であるということ。9番目は、地域特性に合わせた柔軟なサービスができないといった課題。10番目は、生活支援の観点からの地域での危機介入のシステムが未整備な点です。11番目は、個別支援では地域移行が困難な層が一定存在するとした場合に対応ができていないといった点です。12番目は、地域における相談窓口や支援の制度はあるのだけれども機能していないという人材の課題です。13番目も人材育成の仕組みが不十分といった課題となっています。14番目は、(自立支援)協議会が機能していないといった課題。15番目は、保健所内の保健師等が不足していること。1617番目は、地域、社会との兼ね合いの課題が挙げられています。18番目は、地域生活を支える人材に限りがあるといった課題が挙げられています。

 「その他のご意見」として、地域移行の構造的な問題が多いのですが、1番から6番まであります。1番目は、病床があって、病床を埋めなくてはならないという経営的構造的な問題が積極的な退院の妨げになっているのではないかということ。2番目が、本来的な病院の役割を考えれば、医療の必要性のない患者を病院が抱え込むべきではないといった御指摘。3番目は、精神科医療において人員が不足しており、診療報酬も不十分ということ。4番目は、安全管理と個別対応が相反する場合があるという点。5番目は、病院への政策誘導も必要ではないかといった点。6番目は、新たな社会的入院を生まないための取組が必要であるといったことです。

 先ほど申し上げたとおり、右側には構成員の方から御提案のあった対応案を示しております。以上です。

 

○樋口座長 

ただいま説明がありましたように、ワーキンググループの中で、こういう形で、とりあえず3つの視点に分けて議論をしてきておりますので、もちろん相互に関係するところもあるので絶対に枠の中での議論にとどめる必要はないのですが、便宜上、まずはアの「退院に向けた支援」のア-1、ア-2で議論を進めていきたいと思います。後半はイの「地域生活の支援」ということで分けさせていただきます。しかし、先ほど申し上げたように、相互に絡んでくることもありますので、そこを余り厳密にしてしまう必要はなかろうと思います。

 まずは、ア-1、ア-2で挙げられた退院に向けての課題と、これまでに構成員の方々から頂いた対応策を御覧いただいて、更にここに加えるべき事柄や、これはどうなのかという内容的な疑問等がある方は御指摘いただくなりして進めていきたいと思います。どなたからでも御発言ください。

 

○澤田構成員 

H.Hさん、発表ありがとうございました。質問が1つあるのですが、病院で仲間ができたことは、H.Hさんのリカバリーや退院にどのような作用をしたのでしょうか。なぜこういうことを聞くかと言うと、7ページの一番下に、「前提として病棟の居心地がいいと良くない」とあるのですが、私は入院中、お医者さんも看護師さんも看護助手さんもひどいもので、本当に入院中はひどい目に遭ったというか、辛い思いをしました。

 病院は癒しの場だと思うのですが、症状は薬で取れましたが、心は癒されるどころかズタズタにされまして、そんな中で仲間の存在だけが支えだった。仲間がいたから耐えられたという状況だったのです。そして、仲間から離れたくないから退院したくないとは思わなかったのです。退院しても面会に来るし、会えるし、ずっと友達ということで、私の場合はそうだったのですが、H.Hさんも、上のスライドでは、入院生活は80点だったけれども今思えば30点ということで、本当は決して居心地は良くなかったのではないかなと勝手に解釈しているのですが、その辺りを少しお話いただけますでしょうか。

 

○ピアサポーター 

まず、入院中の仲間というのは、患者同士は結構お互いがストレスなのです。何十年にも渡る因縁関係などがあり、すぐに手が飛んできたり、怒鳴ったりというのが結構ありました。それで、こちら側の人間としての仲間、喧嘩相手に対する自分としての仲間です。それにプラスして、その仲間から病院のことを全て聞きました。それから、退所、生活訓練施設のことも聞きました。「あそこには誰々と誰々がいるから必ずもめ事が起こる。行くのはやめといたほうがいいよ」と。「ああ、そこなら行ってもいいんじゃないか」とか。「いや、あそこは何々さんが行ってるから何とか面倒見てくれるだろう」とか。そういう情報は正規のルートでは入りません。そういったことを総合して、退院までこぎ着けました。

 

○澤田構成員 

ありがとうございました。そうですね、私も年金や手帳などは仲間から教わりましたし、病院の話ですが、病院はやはり居心地が良くて癒しの場であるべきではないかと思います。病院の居心地が良いから退院しないということはないだろうと。居心地が悪いというか、それどころか、心をズタズタにされるから退院できないのだと思うのです。ちょうど、家庭が居心地が良ければ子どもは巣立っていって自分の家庭を築くけれども、家庭が居心地が悪いとそれが難しい。それと同じようなことではないかと思っております。

 

○ピアサポーター 

今までが、病院か自宅かの選択肢だったのです。退院しても自宅に帰れば家族や隣人とのあつれきが待っている。でも、それとは違う第三のグループホームなどという選択肢も新潟県でも出てきたのです。そういう所は居心地が良いという話ですから。

 

○澤田構成員 

ありがとうございました。

 

○伊澤構成員 

山本さんから少し補足的に情報を頂きたいのですが、資料として触れられなかった部分なのですが、7ページです。療養環境サポーター制度という、これはまた大阪の独特のものではないかと。非常に不見識で申し訳ないのですが、少し御解説いただきたいと思います。

 大阪はピアヘルパーもそうですし、平成15年の退院促進の事業をスタートさせたということで、非常に大きな推進力というか新しいことを始めて、それが後に全国展開という流れを作っていく機動力といったものをすごく感じていて、この辺りを少し解説いただきたいと思います。

 それから、ここも触れられなかった部分なのですが、4ページの下のほうの「退院が不安」「このまま病院でいい」という声の背景です。私たちは地域移行退院支援を行っていると、こういう方々にたくさん出くわすのですが、ここの記述の最後の3行ほどに、やはり、福祉サービス未体験、利用実態がよく分からない、どう使っていいかが分からないと。なので、お試し利用やトライアルや試行など、試しに使ってみる体験を私は推奨しているのですが、そういったことについてのコメントを少し頂ければと思います。

 

NPO法人大阪精神医療人権センター事務局長山本氏 

始めのお尋ねは、療養環境サポーター制度ということで、スライドナンバーで言うと1314の所でしょうか。

 

○伊澤構成員 

そうです。

 

NPO法人大阪精神医療人権センター事務局長山本氏 

先ほどの中では話を割愛させていただきました。スライドナンバー11で、大阪の取組ということを書かせていただいています。これは、19973月に、大阪府の精神保健福祉審議会の委員に入りませんかということで、「ぼちぼちクラブ」という大阪精神障害者連絡会というネットワークに入っていた私に声かけがありました。1人で入っても緊張するだけですので、地域生活支援で関わっておられるソーシャルワーカーの方、それから、家族会の方、弁護士会の方、地域生活支援の取組をされている方という、一緒に5人の枠であれば私も発言できるかなと思って入りました。

 その中で、これのきっかけは大和川病院事件です。19932月に起こりました。病院の中で不審死がおよそ20数件発生していました。そのことに行政がきちんとした対応を取れていない中で、中の患者さんと私たちとは連絡が取れる関係が作れていっていましたので、その後、訴訟の提起もして、10数件の訴訟で全部勝訴判決となりました。それを受けてのこの事態ということになっていますが、生活人権部会という所で、とても長い間の症状的には入院をする必要性はないのだけれども社会的入院という事態になっている方が、そのままになっていること自体が行政の人権侵害であるということで、これを放置しておいてはいけないということを府知事に答申をしました。その中で、地域移行と、現在、地域定着支援事業と呼ばれるような全国事業へと展開していきました。

 それと、その答申を終えた後に、医療の中においても、地域生活だけではなくて、医療の部分においても人権が侵害されているということで、1999年から2000年の意見具申まで、医療人権部会というものを立ち上げて、月数回の作業部会を行ってきました。医療の提供者側と利用者側と、間に立つ学識経験者の3名が基本になりながら作業してきた記憶があります。

 最終的には、下に書いているような、入院中の精神障害者の権利に関する宣言、常にどういうときでも個人としてその人格を尊重される権利に始まる10の権利を宣言しました。この宣言が、きちんと病棟において守られているかどうか見守りにいく人が要るということで、見守りに行く人を派遣しようということで、現在は、その人間を療養環境サポーターと呼んでいます。そういうサポーターを委嘱するのが大阪府の心の健康センターを事務局としている療養環境検討協議会という場です。そこから委員を委託して、委員だけでは担いきれないので、臨時委員として35名ないし40名の方の臨時委員を常に委託してきました。その者たちで病棟に伺って、先ほど申し上げた各病棟ごとに1時間の滞在型のスタイルで、この権利宣言が守られているかどうかの辺りのお話を、入院患者さんをメインにしながら、スタッフの方にも「いかがでしょう」ということを聞いています。そして、当日、医療機関の方とその結果を話合いする場を持って、質問などもさせていただきながら、解決すべき課題はなるべく早く解決すると。その上で、解決しづらい問題については検討協議会の場において書面で報告書を提出して、それを受けた検討協議会のほうから医療機関の側に、「こうした報告書が提出されていますが病院側としての意見はいかがですか」というやり取りをキャッチボールをしていく関係ということで築いてきました。

 その中で、双方が、入院している者がどのように思っているのかという心模様や、あるいは医療を提供している側がどのような事柄を考えながらそういう事態になっていたのかという事柄が、大分、理解し合える関係になってきたとは思います。そういう事柄でよかったでしょうか。

2点目のお尋ねのスライドナンバー8です。これらの情報が入院中の方に伝わっていない中で、家族の元に帰る以外知らないというのが現状としてある。グループホームやホームヘルパーさんを利用することができるということも未体験だという現状が深刻な実態として横たわっているなと常に感じてきました。これらが試行事業として実施されるということです。

 それは大阪でも、確か、そういう取組を退院促進支援事業の中で、退院支援委員の方が付いて、地域の、当時は作業所と呼んでいましたが、昼間通う場所に行ってみましょうかなどということから始まったり、喫茶店に通ってみましょうかとか、外泊できる場所を利用してみましょうかとか、そういう体験を何回か利用していくというモデル試行事業のような形で、そういう期間を設けましょうと。最初から退院促に乗りましょうということではなく、ちょっと試してみませんかみたいな、お試し期間という気軽な乗りでやっていくことがいいですねというような事柄は実施されていたと記憶しています。

 

○近森構成員 

基本的な話なのですが、私は事前に送られてきた資料を見ていて、ものすごく違和感を感じました。というのは、この精神科の委員会というのは、専門家ばかりですので、かなり細かいところに行ってしまっているのではないかと思います。

 基本的に、精神科の診療報酬というのは点数が低いのです。低いから満床にしないとペイしない。これが基本なのです。ですから、どうしても患者さんで病床を埋めないと経営ができないという精神科の病院の経営的な構造があります。これを何とかしないとどうしようもないのです。ですから、今、山本さんがおっしゃった「退院意欲の喚起」という言葉ではなく、国、病院、地域社会に向けた「退院支援意欲の喚起」が本質的な焦点、これが本質を突いています。国にしても、診療報酬を変えなければいけないし、病院にしてもそうです。地域社会でもそうです。そういう、「退院支援の意欲の喚起」、私はこれが本質だと思います。

 これをポンと置いておいて、後のほうの「その他」という所にちょこちょこと書いてあって、それで細かい話をワーワーやっている。ですが、ここへ来ている病院の先生方は動きますよ。いい先生ばかりですから。だけど、ここへ来ていない、どうしても精神科の病院を経営しないといけない、だって苦労されている地域の先生方にとって、ここの議論というのはもう絵空事ですよ。本音の話になっていない。ですから、私はこの「退院支援意欲の喚起」をどうするのだというところを根本的に考えないとうまくいかないのではないかと思います。余りにも細かいところに入り過ぎて、大枠をもう少し検討していただいたほうがいいのではないかと思うのですが。

 

○千葉構成員 

大変大きな話というか、本当に、今、診療報酬と言いましたが、恐らくそれだけではなくて、障害福祉サービスのほうの障害報酬のほうも上げてくれないと、いろいろな意味で整備ができないし、人材も、受けるだけの人材やいろいろなことができないのです。ですから国のほうが、まず、精神科病院や地域でいろいろな受け皿をやっている方々が意欲を持つような形でやれるようなものを喚起していただければということはあるかと思います。それは、今の先生の御意見に対しての話です。

 それとは別に、資料を拝見して伺いたいと思ったことがあります。以前からずっと、病院の敷地外の話がよくあるのですが、私はずっとよく分からないのです。というのは、山本さんがおっしゃっているような病棟転換がどうのこうのということは置いておいて、そうではなく、病院の敷地内にあるという考え方というのは、いろいろな意味で中身に象徴的なことがたくさん含まれている言葉なのだろうと思うのです。その象徴は何なのだろう。つまり、どういうことが敷地内ということで凝縮されているのだろうということが大切なので、病院の敷地から、一般住宅や普通の方々との間に、別にラインが引いてあるわけでもないですし、鉄条網やベルリンの壁のような所でずっと囲ってあるわけではない。ヨーロッパなどの古い昔の病院はそういうような塀で囲まれていたのかもしれませんが、全然そんな境などはないですよね。病院のスタッフも、もちろん入院していた方々も、恐らくどこからが敷地内でどこからが敷地外であるかなどという区別など全然つかないのだろうと思います。

 なぜこういうことを申し上げるかというと、例えば病院の隣にある一般の民家の方々のお家を、古くなった、あるいは転居されるからということで、病院で購入することはよくあります。そうすると、病院の現在の敷地にその敷地が隣接してあった場合に、そこを購入すると病院の敷地になってしまうのです。ですが、それをそのまま、例えば別の会社を作って会社が、あるいはNPOを作ってNPOがそこの所を買い求めさせていただく。そして、それをグループホームにするということは可能なのです。ところが、それを病院が買ってしまうとグループホームにはならない。お分かりになりますか。つまり、この関係というのは、よく一般病院あるいは一般診療所が門前薬局というお薬屋さんを目の前の自分の隣に建てて、その土地の名義を、例えば奥さんにして、会社を別に作って会社をする。そして、そこに院外処方を出すという、あのシステムによく似ている。あの院外薬局も、自分の病院の敷地内に建てては駄目だということなのです。ですから、その敷地の中であるのか外であるのかというのは、非常に、その言葉だけの定義からすると、とても曖昧であやふやなのです。

 私のところの病院は、法人の敷地の中に病院があって、すぐ隣接して老人保健施設が建っています。その場合、どこからが老人保健施設の敷地で、どこからが病院の敷地になるのでしょうか。私の友人の精神科の病院は、12階が精神科病院で、34階が老人保健施設です。この場合には、どこが病院の敷地で、ということになるのでしょうか。ですから、病院の敷地、敷地外という概念は、これは障害サービスのほうのほかの障害、知的障害やその他のサービスでも同じように、敷地内、敷地外の話がよく出てきます。そういうときに、とても判断に困る。私が思っているのは、やはりそれは大変象徴的として、何かが良くない、あるいは、こうであってはいけないということの表れというか、その言葉として使われているということは分かるので、例えば病院の敷地から離れた所にあるグループホームでも、例えば管理や監督や、そういうような自由度がないとか、厳しいものがあったりとか、夜になったら施錠してしまうとか、何かかんかそういうものがあれば、それはそれで良くないのだと思うのです。ですから、敷地内だ、外だ、の話の部分ということよりも、どういうことがいけないのかということを、もっときちんと話し合って、きちんと分かるようにしていただかないといけない。

H.Hさんのスライドを見ていて、多分そういうことなのではないかと思っているのは、最後のほうの8ページの「退院したいと思う住居の確保」という所に、「病院の近くに行きたくなるようなグループホームを建設してほしいと思います」とありますが、その前のスライドの、今、HHさんがなさっているような生活ができて、そういう利便性があって、そして9ページの「退院しても支援者に囲まれていて安心できる」というものが良いほうのスタイルなのだろうと思います。

 では、行きたくない、その対極の駄目なもののスタイルはどういうものなのか。それが、多分、大きな意味で「病院の敷地内」ということに凝縮されているように思うのです。ですから、そこのところを具体的にこういうふうなのは駄目なのだということでお話を詰めていただく、あるいはそれをする必要があるのではないか。ただ登記簿上の敷地の線で、良いのだ、悪いのだという話は幾らでも変わってしまう。先ほど言ったように、別な会社を。

 

○千葉構成員 

大切なところなので許してください。

 

○近森構成員 

そこね、ちょっといいですか。

 

○樋口座長 

ちょっと待ってください。

 

○千葉構成員 

申し訳ありません、まとめます。要するに、ハードの面ではなくてソフトの面だということが言いたいのですが、もっとそういうところをきちんと検討していくのが必要なのではないかと思います。そこで、先ほど山本さんや田尾さんからのお話があり、田尾さんのほうでは、そういうヒアリングをされる方はどういうイメージで、そういう敷地内・外の話を伺ってきたのだろうか。その人たちのイメージはどういうふうに思われてそこをお聞きになったのか。山本さんのほうでは、その敷地内・外の考え方はどんなふうにお考えになっているのだろうかと。その言葉の用語を教えていただきたいということです。長くてすみません。

 

○近森構成員 

ちょっといいですか。

 

○樋口座長 

今のに関連してですか。

 

○近森構成員 

関連してです。

 

○樋口座長 

どうぞ。

 

○近森構成員 

援護寮を考えていただいたらいいのです。援護寮というのは、精神障害者が在宅、地域に帰るための良い施設でした。ですが、精神病院がどうしたかというと、援護寮に住まわせて、その下のデイケアに下ろして、そこでデイケアで稼いで、また援護寮へ帰すという、もう入院と同じ体制にしていました。ですから援護寮の制度はなくなりました。

 ですからそれと同じで、要は、地域で精神障害者が自立して暮らすのか、それとも、地域にはいるけれども、病院の1つの金もうけの種として病院が飼っているかの違いなのです。それが病院内にあろうが、地域にあろうが関係ないのです。いわゆるハードの問題ではなくソフトの問題です。病院の金もうけのために飼っている患者なのか、地域で自立している患者の違いだと私は思うのです。ですから、そこはもう、病院の敷地内にあろうが、どうしようが、それは関係ない。ですが、どうしても敷地にあると金もうけの種になってしまうということです。

 

○樋口座長 

それでは今の点について、山本さん、あるいは田尾さんからお願いします。

 

NPO法人大阪精神医療人権センター事務局長山本氏 

私はこれまで聞いてきた話の中で、入院中の方が、退院したいとおっしゃっているのは、いろいろなアンケートにも重なる部分がたくさんあったなと思っていましたが、「自由がある」という言葉がありましたよね。その「自由がある」というのは具体的には何かというと、例えば、誰にどんな電話をかけているかをチェックされない自由ということであったり、何時に帰ってこないといけない、夕方4時には帰ってこないといけないと。前の日までには先生の許可を得て、書面を提出しておかないといけないというようなことではなくて、外出したいなと思ったら外出できる自由。そして、4時までに帰っておかないといけない、ではなくて、何かボーっとしていたら6時、7時になってしまったというのもありの自由ということだと思うのです。

 あと、感じたのは、自分で選べる自由というのを言っているなと思いました。選択の自由です。外へ出てびっくりしたのは、コンビニエンスストアで今晩何を食べようと考えたら、こんなにメニューがあることにびっくりしたと言われるのです。ああ、そうだなと私も思います。喫茶店へ行っても、コーヒーを飲みたいと思ったら、紙コップで出てくるのではなく、いろいろなメニューがあって、そこから自分が選べるということにびっくりした、うれしかったと。自分がすごく価値があるものという扱いをされているなと思ったと。そんな気持ちって伝わりますよね。そういう、どうしても医療機関の中では、選べる自由というと、100円玉を入れて選べる、その範囲内が押せる範囲です。選択できる範囲です。それとはまるで違う幅の広い選択できる自由が、外の世界にはあった。そのことが、最初は驚きと同時に喜びだった。それだけ自分が大事にされていると感じたというふうなお話だったと思います。

 ですから、その辺りの暮らしが、病院の敷地の中で援護寮があった場合に、大概、私たちの目に映ってきたのは、お昼御飯も晩御飯も病院の食堂で、病棟の方が終わってから頂きましょうとか、帰ってくる時間は、病棟の時間と基本は一緒ですよと。入口は別ですけれども、帰って来る時間は管理されているわけです。「そのほうが安全でしょう」と言われれば「安全ではない」とは言えませんから、誰も返事はできずに、結局、管理された時間の中で、管理された動きで、管理された洋服を着てということで、自分が飼い馴らされてしまっているという気持ちにフッと気が付くときがあるのです。そのように、自分が飼い馴らされていることがすごく悔しいと感じるときがあるのです。そう感じざるを得ないような暮らしぶりを強要される空間は駄目ですよねということだと、私は聞いていて感じています。

 

○樋口座長 

田尾さん、どうぞ。

 

○社会福祉法人巣立ち会理事長田尾氏 

もう話すのはやめようかと思っていたのですが、やはりしゃべらずには帰れないと。私は学校を卒業してすぐに精神病院へ勤めて、どうしてこの人が入院しているのかなと思っていたら、30数年間ずっと退院支援をやり続けてきています。やり続けてきているのですが、それこそ今退院してる人たちは3日に1回ぐらい私の幻聴が聞こえると言って電話をかけてきますから、GAFで言うと、もう30とか20とかという人たちです。そういう人たちを退院支援し続けていて、でも、変わらないのです。全国的な数字では入院者の数は変わらないのです。ほとんど変わらない。

 その原因が、今、近森先生がおっしゃったように、病床があると埋めなければならないという経営の論理です。病院経営者だって被害者ですよね。だって、国がどんどん作れ、作れと言って病院を作ってきたわけですから。その結果、今になって病床が多いだとか、退院させろとか言われたって、何だろうという話だと思うのです。私は、これはやはり国策の間違いだと思うのです。国策が間違ってやってきたことを、国がきちんと責任を取る時期だと思うのです。病床があれば入院は減りません。シジフォスの神話です。幾ら退院させても入院患者は減りません。病床を減らさなければ駄目なのです。

 減らすに当たって医療点数を高くするのも必要なことですし、私は、今回ここで議論されている敷地の中だとか外だとかと言わずに、病床が減ったらそれに対する対価を払うというぐらいに国が譲歩すべきだと思うのです。そうすれば、そのお金で、例えば、生涯のん気に暮らそうという先生もいるかもしれないし、老健を作ろうという人もいるかもしれないし、敷地の外に何かやろうかという人もいるかもしれない。それでいいのです。中にアパートを作る、それもそれでありかもしれませんよね。何でもいいから、とにかく病床を減らすことを国の責任でやってほしいと思います。それは、もちろん対価が必要な話ですから、それを要求するような検討会にしていただきたいと思います。以上です。

 

○樋口座長 

次の方に発言していただく前に、先ほど申し上げましたが、岡部さんとH.Hさんがあと5分ぐらいで退席されます。もしここで御質問のある方がおられたら先にお願いしたいと思います。

 

○澤田構成員 

H.Hさんに質問なのですが、病院の近くで住みたくなるような住まいとおっしゃっているのですが、病院の近くというのは、何も病院の目と鼻の先という意味ではないですよね。窓から病院が丸見えとかじゃなくて、通うのがしんどくない所という程度の意味ですよね。どうでしょうか。 

 

○ピアサポーター 

いや、というよりも、私はこの1年間で長期入院10年から20年選手4人と話合い、交流会をやってきたのです。彼らが退院といって何をイメージしているかと言うと、まず病院があって、病院の近くのスーパーをイメージしてその先にある信金をイメージしている。だから、そのスーパーと信金とコンビニを使える所に住居があったらいいなという話になるのです。もう何十年も入院していますのでそういうイメージしかできないのです。

 

○澤田構成員 

分かりました。つまりその患者さんにとって、地域というのは病院を中心とした地域なので、それで住み慣れた地域という意味で病院の近くということなのですね。ありがとうございました。

 

○樋口座長 

ほかに御質問はありませんか。それでは、広田さんどうぞ。

 

○広田構成員 

ありがとうございました、新潟の方。匿名だということで。それで、今日お話、深雪ちゃんのとかみんなの話を聞いていて懐かしくなって。私も26年前に注射の副作用で入院して退院したときに、何だかすごい状態で退院をしているのだけれど、「結婚を前提に付き合ってください」と言われた男性のことをいま思い出しました。1年間付き合っていて、頼っていたのですが、病院のPSWは、「広田和子さんはあなたなんか相手にしないわよ」と私本人に聞かないで答えた。相手のお母さんは、「患者同士結婚をすると共倒れになるから結局和子さんを幸せにできない」という話になって、そのときに私は元気になっていました。作業所に行っているときは、この業界の人と違って作業所のメンバーは、恋愛というより頼っていた私を支えていた彼をカップルと思って何も言わずに温かく見ていてくれた、これが仲間の優しさだと思います、一貫して、今の時代も。恋愛等に口出ししません、仲間は。関係者は口出しして引っかき回しますけれど。それで、その時、彼を必要としていなかったか分からないけれど、副作用がかなり回復していて自律し始めていました。合意して別れたことまで思い出したのですが。近森さんって言う名字?

 

○千葉構成員 

うん、近森さん。

 

○広田構成員 

診療報酬が安いのだったら高くしろという話を一方でしておかなければいけないのに、安いから、病棟転換だとか敷地だとこだわっているの。ただ、私がいろいろな先生の所を全国的に泊まり歩いていると、今は違ってきたかもしれないけれど、何かを作ろうとすると反対が起きた、精神障害者が借りようとしても反対が起きたということがありましたね。

 そういう問題は、もうここだけの話ではなくて、やはりこの国のマスコミ、今もですよ。男を叩き、教師を叩き、警察官を叩き、公務員を叩くから、叩かれたらどうしようという姿勢で仕事をせざるを得ない。様々な問題が起きています、議員立法で成立させた今大流行のストーカー法もDV法も女性相談員として悪法だと思う。そういうものを生み出している日本のマスコミが本来のジャーナリズムになる、そうでなければ日本が危うい。先ほど田尾さんが言った、「隔離収容施策を謝罪してお金を付ける」、私も、ずっと言っています。

 神奈川県警を中心に16年間現場を回っていますが、警察の保護室の中に今日も患者が泊まるというこの豊かな日本の現実。それで、「警察官に偏見がある」と私も最初は言っていたけど、警察の現場に患者がいっぱい押し寄せている。話し相手とか愛まで求めて。偏見どころの騒ぎではない。なんでもかんでもさばかざるを得ないで、自分たちが鬱。この日本の鬱列島をいろいろ考えるときに、田尾さんの今日の話は、去年の東大が事務局を担った精神保健予防学会で聞きたかった。あの日やたら東大の医者達は「日精協の山崎先生にああ言え、こう言え、広田和子から言え」って言われたけれど、今日のように国民が聞いたときに、医療関係者と地域関係者が一枚岩にならないと。私はこの国の精神医療の被害者として、委員を担っている。この国の厚生労働省、厚生省時代に取ったマスコミに押された施策。常にそうですよ、戦争も東条英機さんが「戦争するぞ!」と町を歩いたわけではなくて、マスコミが報道した。現駐日大使キャロリンさんのお父さん、ケネディ大統領の時代に日本ではライシャワー事件が起きて、マスコミが大騒ぎした。そして、隔離収容施策を加速させて国はどんどん安い金利でお金を貸して精神病棟を建てていった。それを国は謝罪していない。方向転換していない。

 一度だけ謝罪をしています。手帳が付いたときに、精神保健課の高橋課長補佐(当時)が、手帳の説明会を当時の課長の反対を押し切って3人の課長補佐たちがやった。説明会見が、東京からスタートを切ったときに、この国のそれまでの精神障害者の施策について謝罪した。それでも患者は納得できなくて、名古屋では卵をぶつけた、「その洗濯料は愛知県から厚生労働省に出たらしい」。謝罪を国としてするときがきていると思います。それは今、6,000人、100万円未満の年収しかない、弁護士さんがおいしい話だとして一人一人に訴訟を起こさせる話ではなくて。「隔離収容施策を今こそ方向転換する。」と謝罪すべき時です。

 国民の皆さん!北朝鮮だけではない。日本の精神科病床にいるこの国の拉致被害者ですよ。そういう人がいるのだということをこの国の国民は知りません、知ってもらわなければ。私は小泉さんにも言った、10年前に会うとき大騒ぎになりましたけれど、「現役の精神障害者が内閣総理大臣と総理官邸で会う」ということで。

 それから、今日いっぱい資料を持ってきました。深雪さんと出ている医療観察法の「等しく裁判を受けたい」、彼女は「まず安心できる医療を」、2人とも同じことを言っている。変わっていないのです12年間、全然変わっていない。皆さん、お疲れ様でした。

 

○樋口座長 

どうもありがとうございました。

 

○樋口座長 

どうも御苦労様でした。

 

○広田構成員 

日本病院・地域精神医学会の評議員をやっていました。これも当事者として初めて入って、そこでも書いています、「日本の隔離収容施策の誤りを認め国民に謝罪し抜本的改革を:精神医療サバイバーとしての経験と提言」、何もいかされてない。それから日精協にも書いています。「韓国の患者さんは覇気がある、医者も6万人のうち3万人が厚生省にデモをかけた。だから、みんなで人間の鎖で厚生省を包囲しよう」と呼び掛けているのを日精協で書いている。「日精協も謝罪すべきだ」ということも私はずっと言っている。

 そういう意味で、この業界がもめていて、日精協と反日精協の地域派で、私はあきれる。業界の私があきれる、国民が分かるはずもない。だからこの前も言ったけど、ここにいる福田さんが課長として日本デイケア学会で「とにかく中でもめていると、厚生省も困っています」と言いました、率直に。800人の前で。私が出て行った時には公開講座で1,000人に増えていた。一般の人も入って。「業界の中の確執、それが解決しないことには、高々30人だか40人の、精神障害保健課、名前が変わっても逆立ちしても変えることもできない」と言った。地域と病院が信頼関係がない。どうして患者が良くなるの、どうして国民が理解できるの。両者が癒着や共依存ではない信頼関係を。

 人間のベースは信頼と愛です、ヒューマンという。日精協の中では私を「獅子身中の虫」と言っている人もいる。地域派からは「日精協に取り込まれたって」。この業界が変わらない限り患者は安心して、というより国民は安心して患者になれない。1に予防、2に予防、3に安心して24時間利用できる精神科医療、業界の医療から国民の精神科医療に変えてもらいたい。

 そのために13年間国の委員をやっている。私は60代。見かけは40代ですが。先日、厚生労働大臣から社会保障審議会の臨時委員をまた任命され、業界の人から、「勲章をもらう、賞状をもらう」とか。とにかく下世話。一般の人に話をすると、「レベルの低い世界ですね」そのとおり。

 原点に返って、深雪ちゃんとはこの間何度か、マスコミが、「静の深雪に明るくて動の広田和子」と言っています。それは今日も同じです、彼女は知的で、綿密に資料も作ってきた、恐らく昨日あたりまで出来ていなかったかもしれない。私はこういう大らかな人間。大らかであろうと、彼女のように緻密であろうと、澤田さんのような質問をされようと、彼のように「匿名です」と言っていても、みんなここにいる人は認知症予備軍。誰もが安心して利用できる国民の精神科医療に今こそしてほしい。

 私はマスコミにそういうふうなことを呼び掛けるときに、「はい、今の安倍晋三さんとてもお元気そうです、内容はそっちにおいて」。だから、是非国会で代表して、謝罪してほしい。それから田村さんも私とフレンドリーに話していましたから、一見官僚批判だけれど、あれはため口だった。友人みたいな関係だった、一時だけ、初めて会った人だから。田村さんにも謝罪してほしい。そして、方向転換を高らかに国がやって仕事をやりやすいようにする。そういうものがなければ診療報酬がどうだ、精神科特例がどうだ、欠格条項はまた入ってしまうと言っても国民は分かりません。我が家の六畳間は精神医療サバイバーとしての資料がいっぱいある。新聞もいっぱい出た、週刊誌も夕刊紙もワイドショーも出た。私は日本で一番有名な精神障害者。それなのに13年間何も変わってない。

 田尾さん、今度日精協がいないときもきちんと先ほどのような話をしてほしい。どこへ行っても同じ話をする人になって。全ての人が。あっちへ行ったらこう、こっちへ行ったらああではなくてということです。足の引っ張り合いとか、信頼を裏切るような背信行為は自分の弱さです。柏木さんもこの前言ったけど、自分が患者になってこの病院で入院できるのか、病棟転換、とてもではないけれど理解できない。そういうものは退院と言えません。

 では福祉のいわゆるグループホームに行ったからパラダイスかといったら、福祉の囲い込みもある。何でもかんでも相談、相談って。そうではなくて、国民が、ああそうなのね、北朝鮮の拉致被害者だけではなくて、日本国内にこんなに20万人も、優しくしましょう、私たちもその病院を利用するかもしれないですものという気持ちにならなければ、国民の理解がなければ安心して暮らせませんよ。愛がなければ。地域のそっと見守り許容する愛が重要ということです。

 

○樋口座長  

それでは、伊藤構成員、どうぞ。

 

○伊藤構成員 

本日は、お二人の方どうもありがとうございます。山本様の御活動は前から伺っていて、またニュースレターも拝見して、地道に着実なお仕事をされていることいつも感銘を受けております。また、グループホームに人手をもっと厚くしていくというお話もそのとおりと思います。第1回目の資料を見ますと、少しずつ社会福祉系の施設であったり、予算が増えてきていますから、それをもっとスケールアップしていくということも大変大事だと思います。

 実は、先ほど田尾様が病床は変わらないとおっしゃったこと、これはやはり大変深刻な問題だと思います。実は、このビジョンを策定してから10年間、病床数はほとんど変わっていない。ある意味で山本様が活動されてから20年間ほとんど変わっていないわけです。ですから、この検討会で一定の方向を示さないと、この先10年もまた変わらない危険性があるわけです。どのような可能性でも、もし危険性があるのであればそれを条件に付けて、トライをしてはどうかというのを基本的に考えています。

 先ほど田尾様が国からの制度が必要だとおっしゃっているのですが、日本の根幹となる医療制度に自由開業制があります。つまり、各医療機関、特に民間の医療機関がどのような組織で運営するかは各医療機関に任されていることを意味します。現在、何が起きているかと言いますと、19501960年代ぐらいから病院が出来てき建て替えの段階を迎えていますが、各病院としては、病床数を変えない建て替えを検討しているわけです。そうすると、1度建て替えると借金もあり、病床数は簡単には減らすことができません。すなわち、あと何十年も病床数は変わらないというリスクがあるわけです。そういう病院の皆さんに、次はこういうステップがあるといういろいろなメニューを何とか出せないかというのを悩みながらこの検討会に参加しています。先ほど千葉構成員が、一般病院の場合には老健を一緒の建物でできるというような事例がありました。

 

○千葉構成員 

いや、それは一般ではない精神の病院でも可能です。

 

○伊藤構成員 

精神の病院でもあるのですか。

 

○千葉構成員 

はい。

 

○伊藤構成員 

それはよかったです。このような選択肢も含め、そういうあらゆる可能性というものをどんどん支援していく必要があるのではないかと思います。山本様からお話を伺っていて、自由に電話をかけられること、また、いつでも喫茶店に行ける、また食事が外でできること、こういった条件も加えてあらゆる可能性を検討していく必要があるのではないかと思いますが、いかがでしょうか。

 

NPO法人大阪精神医療人権センター事務局長山本氏 

今のお話の枠組みがとても貧困だというか狭いと正直感じます。そういうふうに発想を貧困にしていけばいくほど現状よりもより貧しいものにしか行き着かないということは明らかですので、そういう考え方はやめませんか。むしろ大事なのは、先ほど近森先生がおっしゃっていた、診療報酬が低いから満床にしないといけないと思ってしまった医療の実態があるとおっしゃいましたね。そうだと思います。そこが非常に情けないと私自身も感じてきました。何で医師会の中で精神科の医師会、医師会というか精神科のほうを代表して自分たちも内科と同様のことをやっていると、むしろいろいろな機械がない中でより苦悩しながらやっているということをきちっと言っていただけないのかということを尋ねてきました。そこら辺は利用者としてはそう思いますから。同じ人間の体の中を見、その中での診察をしている作業を低く見られて、2分の13分の1か分からないですが、低く見られて当然とする関係をそのままにしていること自身が非常に不思議だし、利用者としてはとても何か憮然とするという思いです。

 なぜもう少しそこで堂々としていただけないかという感じがします。それは多分、今までの厚労省との関係というのは私は知らないので、言ってこられたのかもしれませんが、もう少し強く言っていただいて、満床にすることで何とかかんとか青色吐息ということではなくて、自分たちが必要とする医療を提供することで安心して運営できるとしていただくこと、そういうスタンスを基本的に持ってほしいと思います。やはり、抱え込みをしないとどうしようもないというのはやめましょうよ。そこら辺は。 

 

○樋口座長 

それでは、佐藤構成員が先に手を挙げられましたので、その後河崎構成員。

 

NPO法人大阪精神医療人権センター事務局長山本氏 

そこでは、多分ユーザーとセラーサイドの話だけではなくて、国も交えた様々な診療報酬の規定も交えた議論が必要なのでしょうが、何て言うのでしょうか、より惨めになっていく議論の方向性だけは止めたいと強く思います。

 

○佐藤構成員 

別に厚労省とか行政の立場に立っているわけではないのですが、医療費の予算は一応決まっていますね。税金をどんどん上げていけばいくらでも高くなるのでしょうが、そう簡単には、消費税も含めて簡単に上げることはできないとなると、それはやはり、精神病院の診療報酬を今のままで病床数を維持しながら上げればすごいことになってしまって、それは一般病床にも煽りがくるわけで、病床数を下げれば診療報酬も上げられるのです。ですから、ただ上げるのではなくて、やはり病床数との兼ね合いが必要なので、その辺りの議論が進んでいかないと、やはりただ上げるとはならないような気がしますが。

 

○河崎構成員 

山本さんとはいつも大阪で御一緒ですので、御意見はよく理解しています。今、佐藤先生もおっしゃられたように、もちろん診療報酬をしっかりと要求をして、そして一般並の診療報酬で評価をしようと思うと、当然ベットは適正化をしなければ私は無理だと思っています。今のままのベット数で診療報酬だけ一般科並などということはありえない話ですね。この検討会は、実はそういうことをきっちりと提案するための検討会だろうと思っていますし、先ほどの伊藤先生の御発言は、私は何も貧困でも何でもなくて選択肢の1つとしては有り得るのだろうとも思ったりするのです。それが全ての方向性ではないはずですよ。ですから、やはりある程度一般並の診療報酬を勝ち取るためには段階的な人員のアップということも必要になってきます。それは、これまでの国の検討会の中でもそういうような議論はなされてきていますし、今のままでいいなどとは誰一人も思っていないと思うのです。ですから、この検討会の中でどういう形でそれの実現に向かっての提言をしていくか。でもスケジュールを見ると、あと作業チームが2回、多くても3回、その後この検討会が1回、あと予備に1回、一体どのように事務局はこの議論をまとめていかれるのか、もう楽しみというのか、楽しみにしていますが、その辺りがどう収斂していくのかというのをとてもやはり心配します。

 

○河崎構成員 

ただ、この指針の検討会のときに、やはり国はこの辺りを認めて「国及び地方公共団体は、必要な財源の確保を図る等の環境整備に努め」という文章をしっかり書き込んだわけです。財源の確保ということが非常に重要であるということは、この前身の指針の検討会でみんながやはり一致して、それについても国のほうとしては認めたわけですから、先ほどの退院支援意欲の喚起とか、あるいは田尾さんに本音の話を今日はしていただきましたが、そういう実現に向かっての財源の確保というものがないと何も始まらないと私は思っています。そのお金さえしっかりと国が用意できれば、いくらでもその辺の実際的な議論はできていくのだろうと思います。そういうつもりで精神科病院の立場では思っているということは御理解してください。

 

○中島構成員 

河崎構成員の尻馬に乗るわけではないのですが、今の精神科医療は患者48人に1人の医師でいいというのが、今も続いているのです。今回の改定でやっと急性期病棟では16人に1人の医師配置を認めましょうということが初めて出たのです。ですから、そういう流れも一方では知っておかないと、ただ単に原則論を言っても通じません。元に帰って、今日の報告をずっと聞いて、ヒアリングもお聞きして、一番思うのはやはり、患者は自由が欲しいと思っているのです。これは間違いないことです。この自由が欲しいということに、我々は応えてきたかという、そこが抜けていると思います。抜けているというか、応えていないのです。特に退院意識の喚起というと、職員の意識を喚起しなければ駄目ではないかと深雪さんは言われましたよね。これは絶対に当たっています。ということは、全国の精神病院の院長をまず集めて、講習会をやりなさい。ちゃんと人権についての講習会をやらないと駄目です。自由が欲しいといったら、病状がそれ相応に悪くなければ、もし自由を奪ったら、これは人権侵害で重大な罪に問われるのですよ。そのことを分かっているのかと、分かっていて医者をやっているのかということを、やはりきちんと教育する必要がある。

 次にはその下の世代か、一般の職員の方々にもきちんと教育をする必要があるだろう。このことを是非厚労省の方々は、やったら方がいいと思います。

 もう1つは千葉構成員が分かりにくく言われましたが、それを非常に分かりやすく言われたのが近森先生なのですが、精神科医療を金もうけの種にしたら、必ず自由を奪うということが起こってきます。私の患者で、もうずっと外来に10年以上通って来られていた。その人が3か月に1回ぐらいはもう退院させてくださいと言われるのです。これはつまり、岡山県立病院という所に関係のあるデイケアへ通っていたからです。つまり、そういう風に感じてしまうという当事者の側の意識を、我々医療者はきちんと分かっていなければいけないということが、とても大切なことです。本当は何もそこまで考えなくてもいいのかもしれませんが、ついつい考えるのが精神科医の悪い癖で、特に山本深雪さんが出された6ページ、スライド12、入院中の精神障害者の権利に関する宣言、これはもうこのとおりです。一方で、一般の精神障害でない人たちで、これらが保障されている人々がどれだけいるのかも考えなければいけない。

○樋口座長 

それでは近森構成員どうぞ。

 

○近森構成員 

参考までに一般医療についての方向性をお話させていただきます。今回の診療報酬の改定というのは、71看護に対して厳しい制限が起こっております。それはなぜかというと、平均在院日数、重症度、医療・看護必要度、在宅復帰率が入ったのです。だから、これによって71というのは本当に急性期の医療をしないと、しかも重症の患者を診て、早く患者を治して、早く家へ帰さないとやっていけません。だから、平均在院日数というのは患者を早く治して、そして退院、転院させなければいけませんし、重症度、医療・看護必要度というのは、重度の患者を入院させないといけない。

 在宅復帰率というのは、早く患者を家に帰さないといけない。しかも、急性期から自宅とか、回復期リハ、地域包括ケア病棟、在宅復帰型の療養病棟とか老健、老人ホーム、サ高住という施設に帰らないと、在宅復帰率が算定できません。それが75%求められています。しかも、在宅復帰型の療養病床というのは在院日数が304日で、退院患者の半数が在宅へ帰らないといけない。これは100床の療養病床で毎月10人の患者が退院して、そのうちの半分が在宅に帰らないと在宅復帰型にはなりません。だから、在宅復帰型でなければ、急性期から患者の紹介がないということです。

 恐らく次回か次々回の改定では在宅復帰型でない療養病床はかなり点数を下げられると思います。そういう非常に厳しい枠組みが作られています。私も以前、この会で各病棟の機能をなぜみんな言わないのだというお話もしたことがありますが、やはり私は急性期は急性期でさらに機能を上げ、療養病床は療養ではなくて回復期病棟にすべきだと思います。在宅に帰る回復するための病棟、そういう病棟にすれば、急性期は早く一生懸命に治して、精神障害者でも回復期で在宅に帰るようなトレーニングを終えて帰っていく。

 相変わらず療養病床に固執して、患者をうめている病院は、点数を徹底的に下げればいいのです。そういう精神科の病床にも回復期リハ病棟とは言いませんが、回復期病棟というものを作って、少なくとも100床当たり10人は毎月退院させてください。そのうちの半分は在宅に帰してくださいという点数を作れば、自動的に患者はいなくなりますからベッドも減るし良くなると思うのです。隣の一般医療でいいことをやっているわけですから、精神科のほうもそういうのを学んで、もうどんどん改革していったらいいのではないかと私は思うのですが。

 

○広田構成員 

質問です。河崎先生は作業チームに入っていない。私は「入ったら」と言ったのですが。厚労省の委員に入れば「厚労省に囲い込まれ」、日精協のアドバイザリーボードに参加すれば、「日精協に囲い込まれて」と、いろいろすごい。先ほど話した病床の削減、まずは人質の解放ですよね。社会的入院者を解放して、病床を削減して、マンパワーを増やして、明らかに少ない診療報酬も上げるという4点セットを私は「厚労省謝罪して方向転換」とずっと言い続けている。何ら解決していないけど、日精協はその基本路線なのでしょうか。そう思って日精協アドバイザリーボードにも入って言いたいことを発言しているけど。

 

○河崎構成員 

そういう今、広田さんがずっと言い続けている4点セットについて私たちは、それは私は望ましいと思っています。だから、そのためにはやはりしっかりと評価すべきところは評価し、ということになっている。

 

○広田構成員 

社会的入院の開放、長期入院という言い方は私は嫌いです、社会的入院を置きざりにしてしまったから。社会的入院72,000人といって、私は読売新聞に依頼された連載記事の中でも、社会的入院のことを書いてますが、それを置きざりにしたまま長期入院にしている。社会的入院者仲間の解放と、病床削減と、マンパワーをきちんと配置して、点数をきちんと上げる。そのために国民のムーブメントを起こすときだと思います。予防とセットで。

 素敵な厚労省の中谷補佐がWHOに行っている、クラーク勧告はきけなかったけど、WHOなら勧告はきけるかなと思わせるムーブメントをやらないで、もうやれ日精協がどうした、地域派がどうしたで。本当に必要な税金を投入して。今回こそ、カモちゃん、北島さん。社会入院者の解放ができるようにやりましょうよ。政治家も現実社会を分かっていません。ストーカー規制法を議員立法で作ったみたいに。あれがどれだけ大変なことになっているか、その政治家を説得するのがあなたたちの仕事だから。

 

○樋口座長 

広田さん、質問はいいですね。

 

○広田構成員 

質問は。先ほど4点セット。そして予防です。

 

 

○樋口座長 

はい、それではどうぞ。

 

○長野構成員 

今回の調査を通じていろいろ意識をしてきたつもりですが、やはり改めて感じさせられることもいろいろあって、そのうちの1つが、やはりア-14の院内スタッフの意識のところです。2つの病院を見比べていると、やはり院内スタッフの意識がそのまま投影されているようなアンケート結果になってきます。その中で、今回、院内スタッフの注意喚起、研修のことは随分、義務化のこともきっちり入れられているのでとてもいいなと思うのですが、そこで研修をしたときに、上司がうまくフォローアップしないと、基本的にはバーンと押していきます。今、中島先生がおっしゃったように、やはり病院経営者の研修を義務化すべきだと思います。

10年前に院長になったときに経営者としての勉強会に何かと思ったときに、実は研修機会は非常に乏しいです。ここ10年間、経営者としての研修に何か行けたかというとほとんど行けていないです。今、介護保険ではもうすっかり制度化されていますが、結局経営者の方向性はとても大事で、経営者の研修を義務化することがものすごく大事で、その次に権限を一番持っているのが主治医ですので、医師の研修も義務化をしないと、基本的に都合のいい研修、自分の方向性の研修に行って勉強してきますから、大きな流れは同じ方向にはまだ行っていませんので、やはり方向性の研修を義務化の中で受けられる仕組みにしないと、変わっていかないだろうと思っていて、病院間格差、地域間格差がこれ以上広がらないように、少しでも歯止めをかけていく1つの方策になるのではないかと思っています。団体委託という形とかではなく、統一した行政の義務研修、法定研修というものが必要なのではないかと思います。これが1点。

 もう1つは、保健所生活保護の役割はすごく大きいと思うのですが、今の体制ではとても無理です。方向性を決めてしっかり人員強化をしていただくということと、保健所生活保護の方が、行き先のなくなった方の受皿探しと地域で暮らすということを、相反するようなことになることを同時に常に受け持たれていて、どっちに振れるかということで、非常に現場は混沌としていると思うのです。だから地域に帰す係の生活保護保健所の皆さんと受け皿を一生懸命に探す係の人を逆に分けられるぐらいの人員を付けて、連携しながら地域に帰すとしないと、12役がこなしきれていないところが結構あるのではないかと思っていて、ここはしっかり理念として上げていくのであれば、具体的に予算も含めて、期間限定でも構わないと思うのです。10年間は強化するとか、ここの強化がないと、これは本当に絵に描いた餅になるのではないかというように、地域の現場では思います。

 

○樋口座長 

ちょっと待ってください。一斉に手が挙がりまして、あと8分です。発言をされていない方を優先させていただきますので、そちらからいきましょうか。

 

NPO法人大阪精神医療人権センター吉池氏 

人権センターの常務理事をしています吉池と申します。私の気掛かりな点は在院日数が長期化している病院の分析がこの場でなされていないということです。私自身は電話相談と面会活動を14年してまいりました。大阪だけではなく北海道から沖縄まで全国から相談がまいります。

 その中では、本当に精神保健福祉法が守られていない。例えば退院請求を書いたら、主治医に目の前でこういうのは嫌いなんやと破られたとか、あるいは6人拘束をされているとか、大きな話にはなっていませんが、そういった問題が多々あります。

 もちろん積極的に熱心な活動をされている病院もあります。この場で検討されてきて、また示された内容は、例えば長野先生の病院であるとか、非常に汗をかいている病院のお話が多かったです。けれど本来ヒアリングが必要なのは、例えば2,000日、2,500日を超えている精神科病院の現状なのではないか。それが全く見えません。例えば、1,000を超える精神科病院の平均在院日数30日から1,000日、1,500日、2,500日と、どんな分布があるかすら、この場では共有されていないと思います。まず、そこで、そういった2,500日を超えている病院などでは、レッドカードはおろか、イエローカードも出されていない現状ですので、そこの要因分析から始めていく必要があるのではないかと思っています。

 

○樋口座長 

山本構成員どうそ。

 

○山本構成員 

先ほど中島先生が言われたことは大事なことだと思うのです。やはり治療の必要性がもうなくなっているにもかかわらず、病院に抱え込んでいるというのは人権上非常に問題ですので、その点、改める必要があるだろう。そのためのシステムとして、1つは精神保健指定医の制度があって、人権を保障するという意味で、もう1つは精神医療審査会の充実が必要で、今はそれが余り退院請求に対するチェックという点で、必ずしも十分に機能していないのではないかと思うのです。したがって、そういう意味でも精神医療審査会の機能をもう少し機動的かつ充実させるという方向性を打ち出すべきだろうと思います。

 中島先生が最後に言われた点は私はちょっと賛成できないのです。やはり人間の尊厳、個人の尊厳はやはり憲法上の権利であり原則で、それを基にシステムを構築するというのは重要なことですので、そこは検討会ではそういうことはきちんとしておかなければいけないと思います。

 

○樋口座長 

それでは伊豫構成員。

 

○伊豫構成員 

まず、医療の必要度の話が出たのですが、長期入院、社会的入院になっているということは、裏を返すと生活の場と医療の場が一緒になっていて、しかも医療の必要度が非常に低い。ですから、本来それは入院の場所ではなくて、病棟ではなくて、本来生活の場なのです。そうなると、生活の場で行動制限がされていると、言い換えることができます。例えば消灯時間にしても何にしても、入院の医療がもう必要がないのに、そういうことになっているとなると、やはりそれは本来の病棟ではないということになります。そうなると、ではなぜそれが医療として継続するかというと、それはスタッフも医療従事者だということと管理者が医者だということです。

 ですから、やはりここで大きく変えるには、医療の場と生活の場を適切に見分けていく。又は医療の必要度、何が医療でどこからが生活の支援なのかというのを適切に見分けないと、またいろいろな理由で長期入院とか、先ほどちょっとお話があったような囲い込みというような形になってしまうだろうと思います。

 生活の自由度というものと医療の必要度というものを適切に分けて考える必要があるのではないかと思います。したがって、先ほどから院内でのそういった病棟転換に関しては反対という御意見もあるのですが、むしろ本来病棟ではないものなのです。ですから、それを明確化するということが極めて大事だというふうに考えています。

 それから、患者さん方によって、退院に向けての不安度は違います。また生活の自立度も違うと思います。したがって、退院先の選択肢は多様性があるべきだろうと思います。

 

○樋口座長 

それからどなたでしたか。発言されていない方から優先させていただきます。どうぞ。

 

○岩上構成員 

今日は山本さんの貴重なお話を伺って、とてもよかったです。田尾さんの思いもお聞きできました。田尾さんがおっしゃったことをきちんとこの検討会、あるいは作業部会で進めていかないと、いくら良いことをやっていても、それをずっと繰り返しやり続けなければいけないということは変わらないと思います。ですから、山本さんから御提案があった退院支援のための様々な仕組みは、それはそれとして手厚くしていかなくてはいけないと思いますが、多分、それだけでは日本の精神医療は変わらないのではないかと思います。今、ここでもかなりまとまってきている、診療報酬をきちんと一般医療化しなければいけない。人員配置も厚くする必要があること。そして病床を適正化していきましょうということ。そこが根幹だと思うので、その議論を今後もしていかなければいけない。

 それともう1つは、吉池さんが最後におっしゃったように、きちんとした分析ができていないことです。それを私が指針の検討会の1回目からずっと言い続けているように、改革ビジョンで、そしてあり方検討会で出したことがきちんとレビューされていない。そこがうまくいかなかったから、今の議論をまだ続けなくてはいけない。そして、10年後に向けてどういうビジョンを示すのか、そのためにきちんとした検討会を設けて、そこを見せる必要がある。私はこの間ずっと、いろいろな方々から批判を受けているときに言われることは、やはり日本の精神科医療が信用されていないということなのか、看板の掛け替えをするのかと。看板の掛け替えなど誰もしたいなどと思っていないけれども、そういう議論で進められてきているわけです。

 それは、今後の10年間について、今般の指針はあるにせよ、今後の進める方向性が見えていないから、もうこれ以上、悪くにならないようにみたいな議論になっていると思います。是非、この検討会で今後は先ほどの広田さんからも御提案があったところを、集中的に話をして、それで足りないところはきちんと以前のレビューと、今後の方向性を示すと、それが一番重要ではないかと思います。

 

○樋口座長 

では、河崎構成員どうぞ。

 

○河崎構成員 

先ほど中島先生と長野先生からいわゆる経営者、あるいは病院管理者等の医療の責任を持つ立場の人たちの研修ということが必要だと、私も本当にそう思います。それは国が責任を持ってそういうような形でやっていくということは、その裏側にはそういうようにやっていけば、必ず病院の維持ができていくんだよということの保障としての研修でないと、私はいけないのだと思います。ですから、その辺りまで含めてきちんとした方向性を、是非早く出していただかないと、理念だけをこうだ、こうだという話では、若干不十分ではないかというお話を今しました。

 それと発言が私が最後になると思うので、田尾さんに最後にお聞きしたいのですが、先ほど敷地内、敷地外の話とか、様々な、あるいは病棟転換の話がありましたが、もし、何らかの病床を削減して、そして敷地の外にそういう居住系の施設を建てていくということであれば、それはどういう方法であるかというのは別ですが、理念的にそういうものであれば、これは受け入れられると思われますか。

 

○社会福祉法人巣立ち会理事長田尾氏 

基本的にまだまだ社会資源が足りない状況ですから、それを医療機関がやっている現状は今でもありすまし、あえてそれに反対するという理由にはならないと思います。私はもっと大きく精神に限らず、老人も含めていろいろな病院に経営の在り方があると思うのです。そういうことを広く含めて、選択できるような選択肢を病床削減とともに、国は与えていいのではないかと考えています。

 

○樋口座長 

それでは田川構成員どうぞ。

 

○田川構成員 

今の大事な議論から少し外れてしまうのですが、今の病床の問題とか病院での強制の問題、自由の問題であるとか。これはやはり大学を卒業する医者になる前の学生さんと、医者になってからの研修医の人に徹底的に教えていただきたい。薬だけで治る、処方だけすればいいと思っている先生もおられる。病院から地域へと言われている中で、大学の教育の中にしっかりそれを落とし込んでいただきたいと思います。

 

○樋口座長 

では最後に伊藤構成員。

 

○伊藤構成員 

山本さんに貧困と指摘されてしまいました。おかげで気持ちの整理がつき、考えるところをさらに率直に申し上げることにします。近森先生のご発言にコメントさせていただきます。入院医療の機能分化の御指摘をされましたが、もう私は入院医療での機能分化は、1996年以来15年以上進められてきました。それでも病床数は変化しなかったというのが私の現状認識です。長期の入院医療費をどうしていくかの方向性は、ある意味3つしかありません。1つは外来医療費にしていくか、福祉費にしていくか、介護高齢者の枠組みにしていくか、この3つしかないのではないかと思います。

 

○樋口座長 

ありがとうございました。まだまだ今日は議論が不十分かもしれません。時間になってしまいましたので、本日の議論を終えたいと思いますが、冒頭で事務局が説明しましたように、本日の議論を踏まえて、先ほど来これでどうやってまとめていくのかと御心配もいただいておりますが、とにかく残る作業チームでの2回、あるいは3回のワーキングをやって、その中で次のまとめを提示していくことになろうかと思います。次回はその報告書案というものの原形が多分お示しできると思っていますので、それを基に御議論をいただきたいと思います。事務局から連絡がありましたらお願いします。

 

○尾崎課長補佐 

構成員の皆様、夜分まで長時間にわたりありがとうございました。次回の検討会は617()10時から行います。場所は追ってお知らせいたします。また、作業チームの構成員の皆様におかれましては、次回は520()17時から19時半で省内専用第22会議室で開催いたしますので、よろしくお願いいたします。

 

○樋口座長 

本当に長時間にわたりましてありがとうございました。これをもちまして、第2回の地域移行に向けた具体的方策に係る検討会を閉会としたいと思います。どうもお疲れ様でした。


(了)

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