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2014年2月18日 第82回厚生科学審議会科学技術部会 議事録

厚生労働省大臣官房厚生科学課

○日時

平成26年2月18日(火) 15:00~16:30


○場所

厚生労働省 省議室(中央合同庁舎第5号館 9階)


○出席者

永井部会長
相澤委員、江藤委員、大澤委員、川越委員
菊池委員、桐野委員、塩見委員、玉腰委員
西島委員、野村委員、橋本委員、福井委員
松田委員、宮田委員、門田委員、山口委員
山田委員、渡邉委員

○議題

1.遺伝子治療臨床研究について
2.ヒト幹細胞臨床研究について
3.報告事項

○配布資料

資料1-1 遺伝子治療臨床研究実施計画及び遺伝子治療臨床研究に係る生物多様性影響評価に係る意見について ・ 自治医科大学附属病院
資料1-2 ・ 岡山大学病院
資料2 ヒト幹細胞臨床研究実施計画に係る意見について
資料3-1 平成26年度厚生労働省科学技術関係予算案について
資料3-2 医療関連イノベーションの一体的推進について
資料4 平成26年度厚生労働科学研究公募要項
資料5 厚生労働科学研究費補助金における研究不正への対応について
参考資料1 厚生科学審議会科学技術部会委員名簿
参考資料2 遺伝子治療臨床研究実施計画の申請及び遺伝子治療臨床研究に係る生物多様性影響評価に関する参考資料
参考資料3 ヒト幹細胞を用いる臨床研究実施計画の申請に関する参考資料
参考資料4 厚生労働省の科学研究開発評価に関する指針

○議事

○中山研究企画官 
時間となりましたので、まずは傍聴の皆様には、既にお配りしています注意事項をお守りくださるようにお願いいたします。
 ただいまから、第82回厚生科学審議会科学技術部会を開催します。委員の皆様におかれましては、御多忙の折、お集まりいただきましてありがとうございます。
 本日は、井伊委員と今村委員の2名の委員から御欠席の連絡を頂いております。出席委員は過半数を超えておりますので、会議が成立いたしますことを御報告いたします。
 続きまして、本日の会議資料の確認をお願いいたします。まず資料1-1、遺伝子治療臨床研究実施計画の自治医科大学附属病院。1-2、遺伝子治療臨床研究実施計画の岡山大学病院。資料2「ヒト幹細胞臨床研究実施計画に係る意見について」ということで、東京大学大学院医学係研究科からの申請です。資料3-1は「平成26年度厚生労働省科学技術関係予算案について」のA4縦のものです。資料3-2として「医療関連イノベーションの一体的推進について」、資料4「平成26年度厚生労働科学研究公募要項」、資料5「厚生労働科学研究費補助金における研究不正への対応について(報告)」の資料です。参考資料1~4まで添付しています。1~3は通常付いているものですが、参考資料4は「厚生労働省の科学研究開発評価に関する指針」を一部見直したので、御参考までに添付しているという状況です。以上です。過不足などがありましたらお知らせください。よろしいでしょうか。
 それでは、永井部会長、議事の進行をよろしくお願いいたします。
○永井部会長 
審議に入ります。最初に、「遺伝子治療臨床研究実施計画及び遺伝子治療臨床研究に係る生物多様性影響評価に係る意見について」です。これは自治医科大学病院からの申請となりますので、私はこのプロジェクトに関わっていますから、部会長代理の福井委員に進行をお願いいたします。また、本件の審議について発言は控えさせていただきます。よろしくお願いいたします。
○福井部会長代理 
それでは、自治医科大学附属病院の実施計画について、審査委員会の検討結果を事務局より説明をお願いいたします。
○中山研究企画官 
御説明します。資料1-1の2ページを御覧ください。まず、自治医科大学の臨床研究実施計画についての概要ですが、2ページの(5)対象疾患については、CD19抗原陽性の難治性B細胞性悪性リンパ腫です。これは患者の末梢血からTリンパ球を採取して、CD19抗原を特異的に認識するキメラ抗原受容体遺伝子、CARと言っていますけれども、これをレトロウイルスベクターを用いてTリンパ球に導入し、患者に戻すという治療法です。投与量は3段階としまして、目標症例数としては各群3例としています。したがって目標症例数としては9例です。また、遺伝子導入Tリンパ球の投与前に、内在性のTリンパ球を除去するために、前処置として、化学療法剤のシクロホスファミド又はベンダムスチンを投与することとなっています。2ページの下の(6)にあるとおり、本研究は安全性の確認を主たる目的とした第I/II相臨床研究です。
 3ページの上の(7)にありますとおり、米国において、慢性や急性のリンパ性白血病さらに悪性リンパ腫の患者に対して、同様の遺伝子治療が実施された実績があります。米国での臨床研究では、Tリンパ球の活性化に起因する高サイトカイン血症、あるいはCD19抗原は正常リンパ球にも発現していますので、正常Bリンパ球の減少による低グロブリン血症などの有害事象が報告されているということです。死亡例も2例あったということです。このため米国では、投与細胞数の減少や分割投与などの安全性を高める対応がとられ、我が国ではこの改良後の方法で実施する計画となっているということです。審査委員会でも、本臨床研究の安全性について重点的に議論が行われ、患者への同意説明文書において、海外における死亡例を含めた重篤な有害事象などについて、十分に説明するような記載をさせるなどをするということとなったものです。
 この審査委員会につきましては、審査委員会に先立ちまして事前の意見・照会と回答が行われています。3ページの上から1/3ぐらいの所から、審議概要が書いてあります。幾つか掻い摘んで御紹介させていただきたいと思います。審査委員会の開催前においては、例えば4ページの半分から少し下の所に「オ」というのがありますけれども、照会事項として、前処置としてシクロホスファミド又はベンダムスチンを投与することになっているけれども、米国の臨床研究において多くはシクロホスファミドを利用しているところ、なぜベンダムスチンを使用するのかと。また、どのような条件でどちらの薬剤を使うかといった選択方法を明確にすべきといった指摘が出ています。
 回答として、シクロホスファミドは悪性リンパ腫の治療における標準的治療薬であることから、被験者は同剤の投与歴があることが予想される。一方、ベンダムスチンはシクロホスファミドをはじめとする他のアルキリ化剤と交差耐性を持たない薬剤であって、また副作用については、シクロホスファミドと異なるプロファイルを持つことが報告されています。本研究では、シクロホスファミドが投与困難と判断された症例にも前処置が可能となるよう、1.として、ベンダムスチン耐性例であること。これはベンダムスチンの投与歴があるということです。あるいは、2.のシクロホスファミドの予測される副作用が容認できないと担当医師が判断した場合にのみ、前処置としてベンダムスチンを選択可能とすることとし、その旨を実施計画書に記載しました、という回答がありました。これを回答としては妥当であると判断したということです。
 次に「カ」として、照会事項としては、前処置として投与する化学療法剤は、残存するT細胞の除去に重要であって、遺伝子導入細胞の生体内維持に重大な影響を与えると思われるが、予定症例が少ない中で上記のような薬剤の使い分けを行うことは、試験結果の評価に影響を与えるのではないかという照会もさせていただいています。
 回答としまして、米国の臨床研究においても、前処置に用いる薬剤や治療強度は様々であって、現在のところ、CAR遺伝子導入T細胞療法における前処置の位置付け、適切な前処置方法については統一した見解がないと。
 一方、一般に難治性悪性腫瘍に対する新規治療の有効性を検討する臨床研究においては、被験者の治療歴は様々であって、本研究の被験者においても登録前の免疫状態は様々である。そのため、仮に同一の前処置でTリンパ球除去を行ったとしても、CAR遺伝子導入T細胞の生体内維持の評価に際し、被験者の本研究エントリー前の免疫能の影響を排除することは困難であると考える。本研究では、血漿サイトカイン、制御性T細胞の解析も併せて行い、CAR遺伝子導入T細胞の生体内維持に与える影響については、様々な角度から解析を行う予定である、という回答がなされました。これについても、回答としては妥当であると判断されています。
 さらに5ページの真ん中辺りの「キ」にあるとおり、CAR遺伝子導入Tリンパ球の投与により、正常なB細胞が減少し、低ガンマグロブリン血症が起こることが予想されるため、その可能性と当該有害事象に関する安全性面の検討について、実施計画書に詳細に記載することという指摘をしています。回答としまして、実施計画書を修正するということで、1.~3.のような記載を行うことという回答がありました。
 さらに「ク」にありますとおり、正常Bリンパ球の減少の有無の確認及び被験者血清中の免疫グロブリン濃度の測定に関し、具体的にどのように検査を実施するかを実施計画書に記載することということで、1.正常Bリンパ球の検査はフローサイトメトリーを用いて行い、そのマーカーとしてCD19を用いるほか、Bリンパ球系腫瘍と区別するために、各症例の腫瘍細胞が付加的に発現している他のマーカーを併せて用いることなどの実施計画書の修正が行われることとなりました。
 「ケ」としては、米国の臨床研究において報告された重篤な高サイトカイン血症の有害事象について、同意説明文書における記載は簡潔すぎであり、死亡例が出ていることも踏まえて、海外の症例を参照しつつ、より詳細に記載すべきというような指摘も出ております。これについても、記載ぶりについては詳細な記載、具体的な記載を盛り込むこととなっています。
 「コ」としては、被験薬を分割投与(初日に1/3量、翌日に2/3量)にしたのは、有害事象のリスクを下げるためと理解するけれども、1/3と2/3という分け方にした理由とか、分割投与のうちの2回目を翌日にした理由を説明すること。最高投与量では1/3量といえども、かなりの投与量になると考えるが、安全性上に問題はないか、という指摘もされています。
 回答として、米国組換えDNA諮問委員会は、CAR遺伝子導入T細胞を用いた遺伝子治療の臨床研究遂行に当たって、急性毒性のリスクを減らすために、Tリンパ球を2日又はそれ以上にわたって分割投与することを提言しているということとです。また、本研究の投与スケジュールは、共同研究者である米国メモリアル・スローン・ケタリングがんセンターのプロトコールを参考に作成している。彼らは輸注レベル1として、1×10^7個/kgを設定しているところ、本件における輸注レベル1は、1×10^6個/kgであり、最大輸注レベルでも、1×10^7個/kgに設定している。そしてMSKCCの臨床研究が安全に遂行できていることから、本研究の投与量及びスケジュールには問題はないと考える。さらに本研究は用量漸増試験であるために、1/3量は1回投与量として、前の輸注レベルにて安全性が確認されている量に相当する、という回答がありました。
 以上の回答があったということですが、これを受けて、平成25年12月17日に審査委員会が実施され、照会事項を踏まえた指摘として、幾つかの照会もされ、それに対する回答もなされています。そこを御紹介しますと、7ページの「ア」にあるとおり、本研究において発生が予測される有害事象について、同意説明文書における説明内容が十分であるか、ということを改めて見直すとともに、有害事象が生じた場合の対処方法についてもより具体的に記載することということで、同意説明文書を修正して、各有害事象が生じた場合の対処療法をより具体的に記載する。免疫グロブリン製剤の投与基準と頻度、投与継続の必要性を追記しますという回答がなされました。以上の回答などを踏まえて、審査委員会としては、本実施計画の内容について、科学的に妥当であると判断されたということです。
 加えまして、第一種使用規程について182ページを御覧ください。第一種使用規程に関しての審査結果が出ております。「他の微生物を減少させる性質」については、申請されている第一種使用規程に従った使用を行う限り、本遺伝子組換え生物の環境中への拡散は極力抑えられているということ。また、本遺伝子組換え生物は、幅広い動物種に感染し得るけれども、増殖能を失っているため、特定の細胞に感染した場合等を除いて増殖することはないと。したがって、第一種使用規程に従った使用を行う限り、本遺伝子組換え生物は環境中に拡散したとしてもやがて消滅すると考えられるということです。本遺伝子組換え生物及び増殖性レトロウイルスは、微生物には感染せず、また、競合、有害物質の産生により他の微生物を減少させることはないと考えられるということです。
 「病原性」につきましては、本遺伝子組換え生物及び増殖性レトロウイルスは、幅広い動物種に感染し、挿入変異によってはがん化を引き起こす可能性などがあります。しかし、第一種使用規程に従った使用を行う限り、環境中への拡散は極力抑えられている。また、本遺伝子組換え生物は、ヒト血清により速やかに不活化されるとともに、本遺伝子組換え生物は増殖能を欠損しているので、通常の細胞に感染してもウイルス粒子を産生することはないと考えられます。さらに、増殖性レトロウイルスの出現可能性や、患者体内に増殖性レトロウイルスが侵入する可能性は極めて低いということです。
 「有害物質の産生性」については、本遺伝子組換え生物の有害物質の産生性は知られていないということです。
 「核酸を水平伝達する性質」についても、第一種使用規程に従って行う限りにおいては、本遺伝子組換え生物の環境中への拡散は極力抑えられていて、野生動物に核酸が伝達される可能性は非常に低いということであり、増殖性レトロウイルスの出現の可能性も極めて低いということです。
 結論としまして、本遺伝子組換え生物を第一種使用規程に従って使用した場合には、生物多様性影響が生ずるおそれはないとした生物多様性影響評価書の結論は妥当であると判断した、という審査結果が出ております。以上です。
○福井部会長代理 
ありがとうございました。ただいまの御説明について、御意見、御質問等がありますでしょうか。
○桐野委員 
サイトカインストームを起こすというのはちょっと気になるのですが。フェイズIで死亡例があるので有名なのが記憶にあって、今、携帯で調べたけれどもすぐ出てきましたので、有名な例らしいのですが、イギリスのフェイズITGNの1412という例で、CD28に対する抗体を使ったところ、患者が次々にほとんど瀕死の状態になって、死んだ症例はなかったようですけれども、大変な大騒ぎになったという例がありました。これはファースト・イン・ヒューマンなので、こういうことが起こったらしいのですが、このケースではファースト・イン・ジャパニーズのフェイズI/IIのようなので、ずっと安全性が高いとは思いますが、是非、慎重にお願いしたいと思います。
○福井部会長代理 
ほかにはいかがでしょうか。随分と科学的側面、それから生物多様性影響の両側面について、慎重な審査が行われたような記録にはなっていると思います。よろしければ審査委員会からの報告について、科学技術部会として了承し、厚生科学審議会へ報告したいと思います。よろしいでしょうか。
                  (了承)
○福井部会長代理 
ありがとうございます。
○永井部会長 
続きまして、岡山大学病院の実施計画について、審査委員会の検討結果を事務局より御説明をお願いいたします。
○中山研究企画官 
御説明します。資料1-2を御覧ください。まず臨床研究実施計画について、これは岡山大学病院から申請のあったものです。2ページの対象疾患は、悪性胸膜中皮腫です。細胞のアポートシスに関与するREIC/Dkk-3と呼ばれる遺伝子を、アデノウイルスベクターに組み込んで投与いたします。今回、安全性への確認を主たる目的とした第I/II相試験となっています。4段階の投与量群で各群3例、目標症例数は12例となっています。
 2~3ページにかけての(7)のとおり、REIC/Dkk-3遺伝子をアデノウイルスベクターに組み込んだ遺伝子治療臨床研究については、既に前立腺がんを対象として実施されているということで、平成25年7月までに20症例の実績があります。grade1~2の発熱が見られたものの、重篤な副作用は認められていないという状況です。ちなみに、この試験については、安全性評価を主目的とした研究であるために、有効性については検証されたものではありませんが、一部症例において、腫瘍マーカーの低下等が見られているという結果も得られています。
 また、3ページの上の、悪性胸膜中皮腫を対象とした遺伝子治療としては、千葉大学医学部のNK4遺伝子発現アデノウイルスベクターを用いた遺伝子治療臨床研究があります。
今回は、前立腺がんの場合と比べて投与部位が異なるということ。ライセンスの関係ということですが、ベクターのプロモーターが改変されているということが相違点ですが、審査委員会では主にその相違による安全性について議論があったということです。
 審査委員会における審議の概要が、3ページの上から1/4ぐらいの所からあります。主な照会事項と回答について御紹介させていただきますが、まず、真ん中辺の審査委員会の前の事前の照会ということです。「ア」としまして、前立腺がんに対する臨床研究で用いられたベクターはCAGプロモーターと言われていまして、これについて実施された安全性試験等が、改変後のベクター、これはCMVプロモーターと呼ばれていますけれども、その安全性評価等にどの程度利用可能かという照会をさせていただきました。
 回答としては、両ベクターには構造上の違いがあるものの、挿入されたREIC/Dkk-3遺伝子を発現し、REIC/Dkk-3タンパク質を発現するという点では全く同じ機能を有します。実施計画書にはその同等性について記載していまして、前立腺がんに対する臨床研究で用いられたベクターについて実施された安全性試験などは、改変後のベクターの安全性評価等に全て利用可能であると考える、という回答がなされました。
 3ページの下の「ウ」ですが、胸腔内投与の場合は、アデノウイルスベクターの吸着・侵入において腫瘍選択性はなく、正常中皮細胞への遺伝子導入が避けられないため、その点に関する安全性評価が必要である。また、その他の胸腔内及び腹腔内臓器への移行等の可能性についても評価することという指摘がされました。
 回答としては、胸腔内投与の場合はアデノウイルスベクターの吸着・侵入等による正常中皮細胞への遺伝子導入が避けられないと考えられるが、アデノウイルスベクターを胸腔内投与したマウスの実験においては、明らかな副作用、毒性等を認めず、また、投与後14日目の各臓器の組織学的解析においても、明らかな組織学的異常を認めなかった。アデノウイルスベクターの胸腔内及び腹腔内臓器への移行等の可能性は否定できないものの、上記動物実験において、臨床研究の開始ドーズ(投与レベル1)の300倍~3,000倍に相当する過剰な量を投与して、明らかな毒性を認めなかったことを踏まえると、正常細胞へのREIC/Dkk-3遺伝子導入による影響は、固体の安全性を脅かすものではないと考える。以上の点については実施計画書に追記した、という回答がなされています。
 「エ」として、胸腔内投与と腫瘍内(病変部)投与とで有効性・安全性は同様と考えられるかという照会をしています。
 回答としては、マウスを用いた実験における胸腔内又は腫瘍内に投与した場合の有効性・安全性に関する検討の結果などから、胸腔内投与と腫瘍内投与のいずれの投与法においても同様に有効性・安全性が期待できると判断される、という回答がされています。
 「オ」にあるとおり、個々の患者において、どのような場合に胸腔内投与し、どのような場合に腫瘍内(病変部)に投与するかの判断基準について、その理由とともに説明することと照会がされています。
 回答として、原則として胸水が貯留しており、胸腔内に安全にアデノウイルスベクターを投与できる症例を胸腔内投与の対象症例とする。また、胸水の貯留が少なく、安全に胸腔内に投与できない症例も存在するため、そのような症例については腫瘍内投与が必要と考える、という回答がされています。
 これを踏まえまして、平成25年1月9日に審査委員会の審議が行われております。ここでも照会事項を幾つかしていますが、その照会事項や回答について一部紹介します。5ページの「ア」、アデノウイルスベクター投与後のウイルスモニタリングについて、投与部位が胸腔内又は胸部腫瘍内であることを踏まえ、血液及び尿に加え、喀痰の検査を実施することを検討することということで、喀痰の検査を実施することとして、実施計画書を修正したという回答などがありました。
 以上のようなやり取りがあって、投与部位が異なる点については、ウイルスベクターの正常細胞への影響について確認するなどした上で、本臨床研究の実施計画の内容は科学的に妥当であると判断されたということです。
 次に、第一種使用規程については134ページを御覧ください。まず、「他の微生物を減少させる性質」について。本遺伝子組換え生物及びそれに由来する増殖性アデノウイルスの感染性は、野生型ヒトアデノウイルス5型と同一と考えられ、微生物には感染せず、他の微生物を減少させる性質はないと考えられるということです。また、申請されている第一種使用規程に従って使用する限りにおいて、本遺伝子組換え生物及び増殖性アデノウイルスの環境中への拡散は極力抑えられており、拡散したとしてもその量は微量であると考えられる。また、本遺伝子組換え生物は増殖能を失っているということです。さらに、本遺伝子組換え生物が自然界で感染する対象はヒトに限られており、ヒト体内の同一細胞に本遺伝子組換え生物及び野生型アデノウイルスが感染する可能性は極めて低い。したがって、第一種使用規程に従った使用を行う限りにおいて、本遺伝子組換え生物は環境中に拡散したとしても、やがて環境中から消滅すると考えられるということです。
 「病原性」について。本遺伝子組換え生物及び増殖製アデノウイルスの感染性については、野生型ヒトアデノウイルス5型と同一と考えられますので、自然界で感染する対象はヒトのみです。そして、本遺伝子組換え生物が感染したヒトで、一過性にREIC/Dkk-3遺伝子を発現する可能性はありますが、これによるヒトへの病原性は知られておりません。仮に増殖性アデノウイルスが出現したとしても、その病原性は野生型ヒトアデノウイルス5型と同等であると考えられます。ヒトアデノウイルス5型を宿主とする遺伝子治療用ウイルスは1990年以降、国内外で汎用されていますが、環境への悪影響に関する報告はないということです。
 「有害物質の産生性」については、本遺伝子組換え生物の有害物質の産生性は知られていないということです。
 「核酸を水平伝達する生質」については、本遺伝子組換え生物及び増殖性アデノウイルスが自然界で感染する対象はヒトのみです。ヒトへの水平伝達は考えにくい。仮に増殖性アデノウイルスが出現したとしても、核酸を水平伝達する性質は野生型のヒトアデノウイルス5型と同等であるということです。
 したがって結論として、本遺伝子組換え生物を第一種使用規程に従って使用した場合に、生物多様性影響が生じるおそれはないとした生物多様性影響評価書の結論は、妥当と判断したという結論です。以上です。
○永井部会長 
ありがとうございました。ただいまの御説明について、御質問、御意見をいただけますでしょうか。よろしいでしょうか。もし、御意見がありませんでしたら、審査委員会からの報告は、科学技術部会として了承し、厚生科学審議会へ報告させていただきます。よろしいでしょうか。
                  (了承)
○永井部会長 
ありがとうございました。
 それでは、議事の2にまいります。「ヒト幹細胞臨床研究実施計画に係る意見について」、御審議いただきます。これは東京大学大学院医学系研究科からの申請となりますが、私はこのプロジェクトに関わっていましたので、部会長代理の福井委員に進行をお願いいたします。なお、私と東京大学に所属しています塩見委員は、本件の審議について発言を控えさせていただきます。よろしくお願いいたします。
○福井部会長代理 
それでは、東京大学大学院医学系研究科について、審査委員会の検討結果を事務局より説明をお願いいたします。
○堀再生医療研究推進室長 
資料2を御覧ください。今回、ヒト幹細胞臨床研究の審査委員会での審議が終わった案件は1件ということで、東京大学から頂いておりました、角膜内皮細胞シート移植の臨床研究について、審査の概要を御報告させていただきます。
 まず、昨年8月の本部会で技術の概要は説明させていただきましたけれども、改めて技術の概要を先に御説明いたします。2ページを御覧ください。研究課題名、角膜内皮細胞減少眼に対する他家培養ヒト角膜内皮細胞シート移植の探索的臨床試験ということで、東京大学の山上先生より頂いております。対象疾患は水疱性角膜症、ヒト幹細胞の種類はヒト他家培養角膜内皮細胞、実施期間は厚生労働大臣意見発出日から3年間、対象症例数4症例ということです。
 治療研究の概要は、主に安全性の評価を行っていただくということで、5ページに絵がありますので、そちらを御覧ください。まず、左上のアメリカのアイバンクから購入しました角膜を用いて、1.他家角膜内皮細胞の分離・培養・保存を行います。次に2.角膜内皮細胞シートの作製を行い、ゼラチンシート上で角膜内皮細胞を培養し、約1週間で培養ができますので専用容器に充填をします。3.患者に細胞シートを移植するということです。移植後のフォローアップですが、4.の、術後の経過観察をここに書いてあるようなスケジュールで実施していただく。主な評価項目としては、視力・角膜の厚さ・角膜内皮細胞の密度等の評価を頂くという技術です。
 戻りまして3ページの審査委員会における主な審議の概要ですが、7月末に行われました委員会で審議が行われております。主な概要が1.投薬のスケジュール。細胞シートを移植した後の投薬スケジュールについて明確に記載をしてくださいということで、点眼薬や内服薬の投薬スケジュールの回答を頂いています。
 2.ウイルス試験を実施してくださいというお願いをしています。前房内は免疫寛容が成立しているということが考えられるということで、この環境にウイルスが混じると感染症が成立するおそれがあるということで、インビトロウイルス試験の実施をお願いしています。実施を頂き、全ての試験で陰性であった。また電子顕微鏡で細胞の観察を行っていただき、ウイルスのパーティクルは認められなかったという回答を頂いています。
 3.エンドトキシン試験について、この許容量について、さらに厳しい基準を設置してくださいというお願いをしています。測定可能な最も厳しい基準である検出限界以下という設定をいただき、検出限界以下であるという回答を頂いています。
 4.細胞シートについては、15ロット作っていただいた中から1ロットを選んでいただいて、それをさらにウサギに移植して有効性を確認するということですが、このウサギで確認する際の基準をどういう基準で評価したのかということの質問をしています。回答として、1ロット選んだ上でウサギに移植をしていますけれども、この移植4週後の角膜の厚さを測定し、コントロール群と比較をして、細胞シート移植群について有意に角膜の厚さが薄くなっている、これが有効だという指標になっているということです。
 5.として、説明同意文書ですが、非臨床研究で短期的な有効性が確認できているけれども、長期観察は実施できていない旨を患者さんへの説明文書にちゃんと記載するようにということです。後のほうに、患者さんへの同意文書を付けていますけれども、少し飛びまして、25ページを御覧いただければと思います。1-5「これまでの研究結果と臨床試験での課題」として、有効性については、動物を用いた実験で1か月の観察期間で有効性を示すことは確認しているけれども、長期間での動物実験が不可能なため、確認できていないという記載を追記していただいています。
 このような資料が適切に提示されたということを受けて、ヒト幹細胞臨床研究実施計画が承認されております。以上です。
○福井部会長代理 
ありがとうございました。ただいまの御説明について、御意見、御質問等はありますでしょうか。よろしいでしょうか。
                  (了承)
○福井部会長代理 
それでは、審査委員会からの報告につきまして、科学技術部会として了承し、厚生科学審議会へ報告したいと思います。ありがとうございました。
○永井部会長 
続きまして、議事3「報告事項」です。平成26年度厚生労働省科学技術関係予算案について、事務局より御説明をお願いします。
○中山研究企画官 
資料3-1を御覧ください。平成26年度厚生労働省科学技術関係予算案です。
 次のページに、「平成26年度厚生労働省科学技術関係経費予算(案)の概要」という資料があります。厚生労働科学研究費については、上から3段目にありますように、平成25年度予算額が約440億円でしたが、平成26年度予算案では約480億円、約9%増となっています。その1段上は、東日本大震災復興特会計計上分も含んだ形の厚生労働科研費ですが、約10億円ほど上積みされるということで、平成25年度予算額が451億円、平成26年度予算額が490億円になるということです。
 次のページですが、約481億円という数字がどういう内訳になっているかです。左側が平成25年度の厚生労働科学研究費440億円ですが、これまでも御説明したとおり、来年4月にできる予定の新独法の対象となる研究と、今年までの厚生労働科学研究費と同じような形で、厚生労働省として執行し管理するタイプの研究を分けたのがこの表です。新独法対象研究事業については、約481億円のうちの407億円、新独法対象外研究事業としては74億円と分けられるということで、事業としても新独法対象かそうでないかで分けた形を取っております。
 次のページですが、新独法対象経費で、厚労省、文科省、経産省でどれぐらいの規模であったかという予算です。平成26年度決定ですが、新独法対象経費として約1,215億円で、平成25年度当初1,012億円でしたので、約20%の増となっています。内訳で、厚労省の部分が平成26年度決定で476億円とあります。これは、先ほどの厚生労働科学研究費の新独法対象研究事業の407億円と数値が異なりますが、新独法対象経費は研究費だけでなく、臨床研究の拠点整備といった予算も新独法対象経費にすることになっており、厚労省の臨床研究、中核病院を整備する予算なども含めると、厚生労働省としては476億円になるという意味です。インハウス研究についても、これはインハウス研究といっても独法、又は国立研究機関の運営費交付金を足し合わせたものということで、全部が全部研究費ではないのですが、なかなか切り分けられないということで、こういった数え方をしております。これぐらいの規模のインハウス研究関係機関経費が積み上がっているということです。
 上記経費に加えて、※の「科学技術イノベーション創造推進費」、総合科学技術会議のところですが、500億円の一部については健康・医療戦略推進本部で調整費として充当することになっており、この35%が医療分野に回ってくると公表されているようです。したがって、その1,215億円と500億円の35%が医療分野の研究開発関連予算ということで、案としては来年度予定されているということです。
 資料3-2を御覧ください。これは厚労省予算としてまとめたもののうち、「医療関連イノベーションの一体的推進について」という形でまとめた部分の関連資料です。医療イノベーションの一体的推進に953億円という予算が付いておりますが、先ほどの新独法対象経費476億円、インハウス研究については触れませんでしたが、厚生労働省分として運営費交付金の形で455億円あるので、それが1の「医療分野の研究開発の司令塔機能の創設に伴う研究開発の促進等」で、新独法対象経費の476億円とインハウス研究の運営費交付金455億円があるということです。
 ただ、医療関連ということではその他もあって、それが「医療関連産業の活性化」22億円です。この中には「再生医療の安全性確保等に向けた取組」ということで、再生医療等提供計画の審査や、細胞培養加工施設の調査に必要な体制等を整備する事業も1.5億円という予産案が出ております。さらに、「新たな医薬品・医療機器の開発の促進」ということで、オールジャパンでの創薬支援ネットワーク事業の強化や、希少疾病用再生医療等製品の開発の支援・促進等、医療機器については開発人材の育成等で7億円という予算が付いております。
 次のページですが、「革新的製品の実用化を促進するための審査・安全対策の充実・強化」ということで、PMDAにおける薬事戦略相談の充実、医療情報データベースの整備といった事業で8.6億円、「医療の国際展開等」で4.5億円という予算案が出ております。以降にそれぞれの事業のポンチ絵も参考に付けております。以上です。
○永井部会長 
それでは、ただいまの説明について御質問、御意見を頂きたいと思います。
○西島委員 
資料3-1の2ページに新独法対象外研究事業がありますが、これはいわゆるインハウスに含まれる経費なのですか。この事業の経費と先ほどの455億円のインハウスの予算との関係がよく分からないのです。
○中山研究企画官 2ページの新独法対象外研究事業の74億円は、飽くまでこれまで厚生労働科研費として、補助金として実施してきた競争的資金と同じ性質のもので、インハウスとは全く別のものです。今まで厚生労働科研費として実施してきたものについて、医薬品や医療機器、あるいは医療技術の実用化という視点の研究費のタイプと、危機管理や行政施策に必要な研究費と大きく2つに分けて、医薬品、医療機器、医療技術などの実用化の部分については独法対象経費として独法で執行管理されるタイプの予算になり、危機管理などの行政施策に必要な研究費については、これまでどおり厚生労働省が予算を執行し、管理もするものになったということです。
 インハウス研究はそれとは全く別で、がんセンターや国立感染症研究所、国立医薬品食品衛生研究所といった所の運営費交付金の額を集計した額として、455億円という数値が出ております。
○西島委員 
そうすると、具体的には、国立感染症研究所や医薬品食品衛生研究所は一部独法対象に移るということで、いろいろ研究費が減らされていると耳にしていますが、その辺りは実際にはどうなのでしょうか。
○中山研究企画官 
減らされているということはないのではないかと思いますが、恐らく、新独法対象外研究事業については行政施策上必要な経費ということで、国立研究機関にはこの研究費にお世話になっている部分があると思いますが、今回、新独法の対象研究事業において増額をさせていく過程で、新独法外については一部減額せざるを得なかった部分もあるので、そのことをおっしゃっているのではないかと思いますが、必要な経費はしっかり確保できるように努力していきたいと思っています。
○西島委員 
国立研究機関の業務として、安全性や評価に向けた研究が公募対象の研究対象にはなりにくいということで、どうしても目が向きにくくなっている傾向があると思うのです。是非、そういうことのないようにお願いしたいと思います。
○永井部会長 
これは実際、新独法対象外研究事業の中でかなりカバーされていると思っていたのですが、そうではないのですか。
○中山研究企画官 
カバーというと。
○永井部会長 
そこに含まれて確保されていると思っていたのです。国立の研究機関が独法でやらなければいけない部分です。
○中山研究企画官 
本来、国立研究機関でやらなければいけないものについては、1番がインハウスの中での研究費ということでしっかりあるとともに、新独法対象外の研究事業において指定型の研究の形で研究費をお出ししている部分も多いかと思います。確かに、新独法対象外研究事業が一部減額をされている部分もあるということなので、しっかり確保するようにという御指摘だと思いますので、国立研究機関のあるべきところについてはしっかり確保できるように、今後とも努力していきたいと思います。
○渡邉委員 
現職の国研の所長なので、立場的に言いにくいところもありますが、インハウス予算は、例えば感染研の場合は5%削減です。そこに消費税が含まれていないので、実質的には8%の削減になると思います。
 新独法対象外研究事業は、ここに残ったがゆえにかどうかは分かりませんが、半額になります。今までもらっている額の半額になるわけです。予算のやり繰りでどのようになっているのか、私も分からないところがありますが、現実的には国研又はそれ以外のセンターも、実質的なインハウス予算は削減になっていると思います。
○松田委員 
「医療関連イノベーションの一体的推進について」という資料の12ページで、医療情報データベースの基盤整備事業が2.2億円と記載しています。額はそれほど大きくないのですが、私もほかの省庁で関連しているプロジェクトで、医療データベース、あるいは医療機関をベースにしていろいろなコホート研究をしたデータベースを整備していこうということで、取組を始めようという段階にあります。これは今までもそうでしたが、データベースが孤立化すると、非常に手間暇掛けて、もちろん個人の情報管理という問題も付いて回りますが、なかなか活用されないというのが今までの状況だったと思います。
 これはいろいろな省庁で似たようなプロジェクトが幾つかあると思いますが、こういうデータベース、特にビッグデータの取扱いが非常に最近話題になっておりますが、効率よく進める意味、あるいは精度を上げる意味もありますし、個人情報の法整備の問題も一貫して取り組むべき課題なので、是非、省庁を超えて取り組んでいただきたいと思います。
○野村委員 
ついでに教えてください。今と同じところで、松田委員がおっしゃったように、最初のポツ「国民が安心してこれらの新技術を享受できるような環境整備が重要」とあります。要は、今年度2.2億円でやられるということから、国民が安心してという環境整備までの全体像がこれだけでは分からないので、今年度単位はこれだけということなのでしょうが、その後どうなっていくのか教えていただけますか。
○中山研究企画官 
ここの担当部局が今いませんので、正確なお答えができません。申し訳ございません。
○荒木主任科学技術調整官 
こちらに書いてありますように、平成23年度からこの事業は始まっていて、その拠点において医薬品の使った場合の副作用などのデータを、主要な10か所の大きな病院ですので、非常にデータとしての量があります。それを基に、平成25年度、あるいは来年度も含めて集積データの検証ということで、変なデータがないかどうかを見て、それが使用に耐え得るのかどうかを検証して、次のステップとして、野村委員が御指摘のように、それを国民にどう還元するかを検討していくと考えています。
 ざくっとした考え方ですが、具体的なタイムラインは現局に確認してお答えします。
○野村委員 
一応ここまで下りてくるまで、スケジュール的にはあるということですか。
○荒木主任科学技術調整官 
そのように伺っております。
○永井部会長 
これは副作用情報、数百万人単位、1,000万人のデータベースを作ろうという事業ですね。基本的な設備投資はもう終わっていて、あとはいかにこれを円滑に走らせるかということで予算が計上されていると聞いております。
○相澤委員 
こういったデータベースをやると、必ず個人情報保護法が問題になってきて、個人情報保護法がかえってみんなのデータベースの共有化、ひいては健康の増進、安全性の向上の妨げとならないように、法制度的な検討も是非やっていただきたいと思います。
○永井部会長 
そのほかにはいかがでしょうか。よろしいでしょうか。
 よろしければ、続いて「厚生労働科学研究費補助金における研究不正への対応について」、事務局より説明をお願いします。
○中山研究企画官 
資料4については後で触れますので、資料5を御覧ください。「厚生労働科学研究費補助金における研究不正への対応について」ということで、御報告です。課題としては、これも従来から申し上げているとおりですが、研究費の不正使用や研究上の不正行為についてはいろいろ防止策が講じられてきておりますが、不正が疑われる事案等が発生しています。我が国の研究に対する信頼を揺るがしかねないということで、不正防止に向けた改善方策が求められています。
 対応については、2ページ目は昨年9月27日付けの厚生科学課の紙ですが、10月に開かれた科学技術部会で御説明したものです。その後、この方針に基づいて具体的なガイドラインを作成すべく検討を行っているということで、文科省においても同様の問題意識に基づいて見直し作業が進められています。研究機関における管理体制などについては、公的研究費の制度にかかわらず、国としては同様の対応が図られる必要があることから、文科省の検討を踏まえて、厚生労働省においても同内容のガイドラインを適用して、平成26年度から実施することとしております。
 この後に、参考1と参考2で、公的研究費の管理・監査のガイドラインと、研究活動の不正行為への対応のガイドラインの見直し案が文科省から提出されているので付けておりましたが、公的研究費の管理・監査ガイドラインは本日付けで文科省が決定をしたようです。ここで見直し案として付けたものと、基本的には同内容のものと思います。
 2ページですが、内容について再度簡単に御説明します。基本的には添付している文科省のガイドライン案と同内容の趣旨のものとしてまとめています。「不正事案に対する措置の強化」ということで、基本的には(3)の研究機関の組織の管理責任の明確化を図ろうということです。文科省のガイドラインでも、機関内の責任体制について最高管理責任者を置く、統括管理責任者を置く、コンプライアンス推進責任者を置くといった形での責任体制の明確化が1つの柱となっておりますが、そういったことを行う。また、1(1)ですが、研究活動経費の削減ということで、改善指導を行う。それでも改善がされない場合には、研究活動経費の削減なども行うということです。
 文科省のガイドラインでも、体制整備などの不備について改善事項とその履行期限を1年とすることを示した管理条件を付すことになっております。管理条件の履行が認められなければ、間接経費を上限15%まで段階的に削減することもできるということをガイドラインで規定しており、基本的にはそれと同様なガイドラインを厚労省としても出したいと思います。
 さらに、「モニタリング体制の強化」ですが、研究機関による不正調査の迅速化ということで、内部における監査、あるいは厚生労働省、文部科学省などによる外部からの監視といった体制も強化するということです。
 「不正を事前に防止するための施策の充実」ということで、倫理教育の義務化は、公的研究費の管理という観点でも、研究活動の不正行為の防止という観点でも必要かと思います。また、これは研究活動の不正行為への対応になるかと思いますが、研究データの一定期間の保存の義務化も、まだ案の段階ですが、文部科学省のガイドラインでも規定されております。これについても、保存の義務化をする方向でガイドラインを整備していきたいと考えております。
 文部科学省が先行して、公的研究費の管理については今日付けで出ているということですが、不正行為への対応についても近くガイドラインが文科省でも出されるものと思われます。厚生労働省としても、平成26年度から実施する予定で対応したいと考えております。
○永井部会長 
御質問、御意見を頂きたいと思いますが、いかがでしょうか。
○門田委員 
これは本当に大変な問題だと思います。何らかの対応策をというのはよく分かるし、早急にすべきだと思いますが、こういう話になると、これは言っても仕方がないかもしれませんが、省庁単位で物事を進めるのが基本になってしまうのです。国費を用いて研究するのは、文科省であろうと厚労省であろうとそれほど大きく変わりないので、何かそういうものを統一して、国の方針を作って、それぞれの省庁の特色があるのであれば、そこは内部としてやるということを努力すべきではないかと思うのですが、いかがでしょうか。
○事務局(厚生科学課)
御指摘の点は全くそのとおりかと思います。現在、文部科学省と厚生労働省が先行して取り組んでいる状況ですが、同時に、こういった公的研究費を出している関係府省庁においても、同じガイドラインを政府全体として横展開することについて議論をしているところです。
○相澤委員 
こういうことになるとモニタリングが重要になりますが、仕組みから言うと、研究費には費用が割かれているのですが、モニタリングには十分な費用が割かれていないのです。本当を言うと、きちんとしたモニタリングをしようと思うと相当なコストが掛かるわけです。そういうことも考えていかないと、モニタリングはきちんとできないのではないかと思います。紙の上で作るだけではモニタリングが働かないのではないかという意見です。
○永井部会長 
これはこれからの研究費の在り方にも関わってきますが、今の点はいかがですか。
○事務局(厚生科学課) 
今、間接経費として30%措置しております。この間接経費は、事務的な研究支援体制なども含めて、その管理・運営のために充てていただくことも目的としているので、そういった経費を活用していただいて、管理体制もしっかりやっていただきたいと思います。
○野村委員 
1つお願いですが、厚労省にも文科省にも様々な情報の「公開」「公表」といった言葉がありますが、全てにおいて「する」ということしか書いていないのです。公開・公表は速やかにされるのが一番大事だと思っているので、「速やかに」の感覚も一般と私たちのような仕事と皆さんと違うのかもしれませんが、可及的速やかに、とにかく起きたらすぐにという感覚があります。文言に書くことが難しいのであれば、是非とも速やかな公表を、後から大分たって出てきて「えっ」ということはいつもあるので、公開するからには速やかな公開をお願いしたいと思います。
○事務局(厚生科学課) 
検討したいと思います。
○宮田委員 
国がガイドラインを作れば不正がなくなるかという根本的な問題を伺いたいのですが、多分こういうものは全部後知恵になってしまうので、むしろ3番の教育の充実や、あるいは本来なら科学者はプロフェッショナルですから、学会が自律的にこういったことをマネージしなければいけないのです。ですから、そことどうするか。日本の場合は政府に何でも頼むという姿勢があって、科学などはそれでうまく取り締まれないと思うのです。そういう意味では、科研費のマネジメントに関してはよく分かるのですが、科学研究が本当に公明正大に信頼を取り戻すためには、国家だけではなく、科学者のプロフェッショナリズムをもう少し何とかすることを、このガイドラインには盛り込めない場所なのですが、科学技術会議といった所にもう少ししっかりしてもらうことも重要なのではないかと思います。
 ここでガイドラインができたら全部なくなると考えるのはとても甘くて、むしろ職業意識としての科学者をもう少しきちんとやってもらわないと、最近の新しい再生医療でも、今、不正問題で大騒ぎになっていて、我々は一体何をやっているのかと、ものすごく呆然としている状況なのです。これで全てが終わったと国も認識していただいては困るし、学者も是非そこは頑張っていただいて、国税によってこれだけの研究が行われているので、付託に応えるようにしていただきたい。これだけで問題は終わらないということだけは、議事録に残したいと思います。
○松田委員 
前にも申し上げたかと思いますが、そもそも悪意をもって何か不正をしようということは、当然ペナルティを科すという対策でやらなければいけないと思いますが、不正を防止する目的でどんどんルールを厳格化して、ペナルティを科してということでイタチごっこになって、根本的な解決にならないのではないかと思うのです。もちろん、モラルを向上させる教育は一方では必要だと思いますが、不正の中身をもう少し丁寧に精査して、なぜそれが起こったかをもう少し深掘りしてみる必要があるのではないかと思うのです。
 1つには、省庁によって科研費の使いやすさには随分差があるように聞いているので、そもそも不正には悪意を持った不正と、この程度ならやむを得ないという不正があるのではないかという気がするのです。ですから、ルールを厳格化というよりも、個人の研究者の使いやすさ、満足度を向上させるような方向でルール改正をすれば防げるような事案もかなりあるのではないかと思うのです。一方的にただルールを厳格化する対策だけで、事の本質は収まらないような気がするので、不正の中身まで踏み込んで、根本的なルールづくりのところまでいかないと、これはなくならないような気がします。
○菊池委員 
法学部の観点からお話します。私はある病院のコンプライアンス関係の仕事をしておりますが、これは本当に不正とくくっていいのか分かりませんが、いわゆる不適正な使用方法がなかなかなくならないという現実を目の前にしております。それは研究費がぎりぎりになって出されるとか、非常に使いにくいという問題もありますし、特殊な研究だと、随意契約をしたいときに、それをどういう角度から調査しても、その随意契約に対してノーと言い切れないところもあります。また、実際に通報者が出ても、学会で将来的に自分の生きていく道を考えると、ここで名前を上げられない様々な事情があって、どうしても氏名を公表して告発できないということがあります。そうすると、我々は不正が分かっているのに、調査の権限が限定されているので、調査して明らかにできない、諦めざるを得ないところもあります。
 結局、幾らコンプライアンスを強化しても、やる人はやる。そう考えると、各機関に委ねられても難しいところがあると思うのです。ですから、国としてどういうことをやるかを少し考えていただかないと、難しいかなと日々思いつつコンプライアンスの仕事をしているので、一言だけ申し上げます。
○桐野委員 
使い勝手は昔に比べれば少しはよくなっていると思いますが、大学から見ても、交付機関が交付決定書を早く出してくれさえすれば、交付前執行が十分可能だと思うのです。つまり、お金は来ていないけれど、大学のプールのお金を使って大学が立替払いをすることが十分可能ですし、それは大学が工夫すればいいことだろうと思うのです。
 確かに、聞いただけでこれはアウトという真っ黒な不正もありますし、費目の間の移動をやってしまったようなものも不正なのです。やむを得ず個人経理にしてしまったら、これも今の状態では不正です。全部ひっくるめて同じように不正と言われてしまうという問題は確かにあるので、少し言葉を変えたほうがいいと思うのです。本当に真っ黒な、犯罪としか言いようがないようなものもあることはあるので、何とも言えませんが。
 それから、研究機関は利益相反委員会が弱いですね。研究するときに、こういう研究の協力の受け方はまずいということについて、いい加減と言えばいい加減なのですが、大学が企業と協力して何かをやることは、始まって日がそれほど長くないので、ついいい加減にやってしまうところがあって、そこは各大学とも利益相反委員会を強化する必要があると思います。
○相澤委員 
法律家から言うと、規制と科学の発展という非常に深遠な問題があって、学問の自由のために余り皆が介入をすると自由が削がれる。コンプライアンス、コンプライアンスと言って規制を行う。これは非常に深遠な問題なので、先ほど宮田委員が御指摘のように、規制をすれば問題が解決するわけではないというのはそのとおりですが、非常に難しい問題があるのだろうと。すみません、法学者として、法律学者はそういうことをやっているので。規制と自由は常に我々が直面している問題なので、一言意見を申し上げました。
○永井部会長 
ほかにございませんか。よろしいでしょうか。
 ないようでしたら、議事は以上で終了ですが、事務局から何かありますか。
○中山研究企画官 
今回、資料4としてお配りしておりますが、12月の科学技術部会で新独法対象経費の公募の内容について御確認いただきました。その後、これまでの厚労科研費は補助金として行うということでしたが、平成27年から新独法で行うものは全て委託により行うという方針があり、来年度についても、新独法対象経費は厚労省から委託で行うことになっております。委託に係る手続ということで、12月から1月にかけて省内でいろいろな手続を経たという経緯があります。そこで、1月31日段階で公募を開始しました。2月28日まで公募を実施している期間であるということを御報告いたします。
 さらに、参考資料4で「厚生労働省の科学研究開発評価に関する指針」も付けています。これについても、これまで厚生労働科学研究費は補助金のみでしたが、委託費も含まれるようになったということで、補助金と委託費の両方で読めるように事務的な改正を行ったという御報告も兼ねて、参考資料4を付けております。資料については以上です。
 次回の日程ですが、委員の皆様には改めて日程、開催場所等について御連絡させていただきます。以上です。
○永井部会長 
それでは、本日はこれで終了といたします。どうもありがとうございました。


(了)

【問い合わせ先】
 厚生労働省大臣官房厚生科学課
 担当:情報企画係(内線3808)
 電話:(代表)03-5253-1111
     (直通)03-3595-2171

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