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2014年4月2日 第4回医療法人の事業展開等に関する検討会 議事録

医政局指導課

○日時

平成26年4月2日(水)14:00~16:00


○場所

厚生労働省専用第22会議室(18階)


○出席者

委員

田中座長 猪熊委員 今村委員 大道委員 梶川委員
川原委員 鶴田委員 西澤委員 長谷川委員 日野委員
松井委員 松原委員 山崎委員

○議題

1 非営利ホールディングカンパニー型法人制度に係る報告について
2 医療法人の透明性の確保等に係る論点の追加について

○議事

○田中座長 定刻となりましたので、ただいまより第 4 回医療法人の事業展開等に関する検討会を開催します。

 皆様、お忙しい中お集りいただき、ありがとうございました。始めに事務局より資料の確認をお願いします。

○伊藤指導課長補佐 それでは資料の確認をさせていただきます。お手元の資料を御確認ください。本日の資料は、資料 1 の「非営利ホールディングカンパニー型法人制度について」、資料 2 の「医療法人における透明性の確保等について」です。参考資料として、「成長戦略進化のための今後の検討方針」となっています。資料に不備等がありましたら事務局にお伝えください。

 また、指導課長については、遅れて出席させていただく予定になっていることを御報告します。以上です。

○田中座長 ありがとうございました。早速議事に入ります。 1 つ目は「非営利ホールディングカンパニー型法人制度に係る報告について」です。まずは事務局から資料の説明をお願いします。

○伊藤指導課長補佐 非営利ホールディングカンパニー型法人制度については、本年1月に産業競争力会議で決定がありましたので、この御報告です。非営利ホールディングカンパニー型法人制度に関しては、現在、事務局で必要な調査等を行っています。これを踏まえて、今後、たたき台を作った後、委員にご議論いただこうと思っています。したがって、今回は産業競争力会議の決定についてご報告させていただくということでご承知ください。

1 ページ目です。医療法人については、持続可能な社会保障制度の確立を図るための改革の推進に関する法律第四条第 4 項第 1 号の二において、病床の機能の分化及び連携等を進めるために、医療法人間の合併及び権利の移転に関する制度等の見直しを進めるという大きな枠組みが決められています。

2 ページ目です。この医療法人間の合併及び権利の移転に関する制度等の見直しの 1 つの手段として、ホールディングカンパニー型制度を作ってはどうかということで、 2 ページ目の上の部分、社会保障制度改革国民会議報告書でも、その旨の記載はされているところです。

 そして、今回御報告させていただくのは、 2 ページ目の下の部分です。平成 26 1 20 日に、「成長戦略進化のための今後の検討方針」が産業競争力会議で決定されました。

 具体的には、「非営利ホールディングカンパニー型法人制度(仮称)」を創設すること、その上で、具体的内容については、平成 26 年中に結論を得て速やかに制度的措置を講じることとされています。

 したがって、非営利ホールディングカンパニー型法人制度については、年内に決論が出るように、今後この検討会を中心に議論を進めることとなり、本年中に結論が出れば、平成 27 年以降に、例えば、政省令の改正など、場合によっては法律改正といった作業が出てくるという段取りとなります。

3 ページ目です。こちらは参考となりますが、産業競争力会議の下に医療・介護分科会が設置されており、同分科会で平成 25 12 26 日にまとめられた中間整理です。医療・介護分科会において、非営利ホールディングカンパニー型法人についてはこのような論点があるのではないか、また、このような論点については、このような検討をすべきではないかと指摘をされたものを、下の部分にまとめています。

 順番にご説明します。 1 つ目が、新法人が、医療法人や社会福祉法人等の傘下法人を社員総会等を通じて統括できるようにしてはどうかという論点です。これについて、現在、医療法人の社員については株式会社を除き、法人も社員となることができます。このような法人も社員等に認めるといった現行の規制の緩和について検討をしてはどうかということです。

2 つ目は、新法人の下でグループが迅速かつ柔軟な経営判断を行えるよう、法人の意思決定方式の自由度を高めてはどうかという論点です。これについては、議決権等について定款で自由に定めることを可能とするなどの措置について検討をしてはどうかということです。

3 つ目は、グループとしての経営の一体制・効率性の確保、緊密な業務連携を可能とするために、資金調達の円滑化や余裕資金の効率的活用を可能としてはどうかという論点です。これについて、現在、剰余金の配当禁止等との関係で、どこまで認められるかということが、大きな論点になってきます。

 最後は、新法人及び傘下法人からなるグループが、地域包括ケアを担う医療介護事業等を行う営利法人と緊密な連携を行うことを可能としてはどうかという論点です。これについて、非営利ホールディングカンパニー型法人がこのような事業を行う営利法人に対して出資することなどについて検討をしてはどうかということです。

4 ページ目及び 5 ページ目は、医療・介護等分科会の中間整理の全文です。

6 ページ目です。非営利ホールディングカンパニー型法人制度については、今後、事務局でまとめた、たたき台をお示しした後、具体的な議論に入っていくことをご説明しましたが、この非営利ホールディングカンパニー型法人制度については、この 3 点がポイントになってくると考えています。

1 つ目は、理念を共有することです。つまり、非営利ホールディングカンパニー型法人とこれに参加する医療法人等が協力して、社会に対してどのような貢献をしていくのか、その事業体がどんな理念を実現していくのか。まず、このような理念を共有することが必要であると考えています。

2 つ目に、この理念を実現するために行われる、意思決定を共有することが必要であると考えています。具体的には、この地域の医療や介護を充実していこうという理念があったときに、例えば、ここの病院の機能強化を図っていかなければならない。ここの地域のこういった介護保険サービスを充実していかなければならない。このような個別の意思決定をグループ内の法人間で共有できるような仕組みが必要であると考えています。

3 つ目は、このような理念や意思決定を実現できるように、グループに参加する医療法人等の(ヒト・カネ・モノ)を有効に活用できるようにしていかなければならないと考えています。

 この中で、特にポイントとなるのは 2 つ目の意思決定を共有することと考えています。具体的には、意思決定をグループ内の法人間で共有することを担保する仕組みをどのように構築していくかが大きな論点になると考えています。

 またもう一つのポイントとしては、 3 つ目の特にカネの部分と考えています。具体的には、現在、剰余金の配当禁止が医療法で定められていますので、これとの関係でどこまで認めるのかというのが大きな論点になると考えています。

7 ページ目です。非営利ホールディングカンパニー型法人制度のイメージの一例です。これはあくまでも一例であって、今後、御議論いただいた結果は、これとまったく異なる形態となることも考えられます。これを踏まえた上で、イメージの一例としては、社員総会に自然人やグループ内の法人などが社員となって理事を選び、更に理事長を選ぶ。

 また、理事会で決定をした事項を医療法人等の間で共有する仕組みが必要であると考えています。

資料についてのご説明は以上です。

○田中座長 ありがとうございました。では、ただいまの説明に対して御質問や御意見があればお願いします。

○今村委員 名は体を表すというような言い方もありますが、そもそもこの「非営利ホールディングカンパニー型法人」という名称そのものが、どうしても株式会社の持ち株会社というものを想起させます。このこと自体で、医療界といいますか、医療に携わる者としては非常に抵抗感があるということです。ほかにも、もっときちんとした言い方がないのかどうかということから、まず検討をしていただきたいと思います。

 理念を共有すること、これも非常に基本的な問題で大事なことだと思います。ただ、社保審で言われている、地域に密着した医療を充実させるというような考え方と、産業競争力会議等で言われているような、あるいはここでの説明もあったかと思いますが、アメリカの IHN みたいなものを想定したような理念は、全く相容れないものではないかということで、どちらの理念でもいいのかというのではなく、やはり私どもとしては地域の医療をきちんとやっていくという。この理念を大事にしていただきたいと思います。

○田中座長 ありがとうございました。

○松原委員 私も、今村委員と全く同感です。ここで名前をどうするかもありますが、「非営利ホールディングカンパニー」と冠に非営利とついているのであくまでもここで非営利なんだということを徹底しないと。

 そもそも、最終目的は地域で必要な医療を、なるべく低廉で良質な医療を地域包括的に提供することであって、その手段として新たな法人形態が提唱されているにすぎませんので、そのためにわが国の医療制度の根幹を覆すようなことがないように是非お願いをしたいと思います。

 例えば、持分に応じた議決権を許容しようという話があります。また持分という名前がまずいなら、寄付金額に応じた議決権なら、持分と寄付金では性質も異なるのでいいのではないかという話もあります。しかし寄付金に応じた議決権、これもやはり資本を多く持っている者が経営権を握る資本の論理導入になりますので、そういった現在守られている非営利性が、ホールディングカンパニー制度を導入することによって、浸食されないようにしていただきたい。そもそもの目的は何だと。これは手段の 1 つにすぎず、手段を活用するために、わが国の医療制度の根幹を揺るがすことがないことを徹底していただければと思います。

○日野委員  7 ページに書かれている非営利ホールディングカンパニー型法人というのは、たくさん現存しているのですよね。これと、これから練ろうとしている構想とどう違うのか、あるいは現在こういう形で運営されているコングロマリットという名前がいちいち付いていて、現在どう呼ばれているのか分かりませんが、こういう法人とどこに問題点があって、なぜこういう新しいものを持ってこないといけないのかが、よく分からないことが 1 つ。

 もう 1 つ、現在、私はこういう形態のものを運営していますが、ここに書かれている理念の共有とかいうのは、これからして非常に難しいです。共有はなかなかできないです。それから、先ほど説明がありましたが、職員の理念を共有して、人材教育とかいうことを言われるのですが、病院単体にしても非常に人材教育は難しくて、 1 つにまとめることに四苦八苦しています。病院は、待遇面ではまだ何とか職員の要望に応えられるのですが、ここに入ってきている社会福祉法人はまだましですが、介護の分野にわたっては給料が払えない土木業界と同じような状況で、これを変えていただけるのであれば、あるいは望みが持てるかと思うこと。

 たくさんのことを言って申し訳ないけれども、 3 番目の理念等を実現するためには、ヒト・カネ・モノですが、カネのことは先ほど言いました。ヒトも言いましたが、モノについては、どの組織もそうですが、価格決定が許されないので、身動きがとれない、縛りがたくさんあり過ぎるのです。それは思い切った規制改革をやっていただけるのであれば、これはまだ何か動きがとれるかという気はしますが、現在のように法の網が張り巡らされていると、何らかの改良をしようと思っても、なかなかできないという現状があるので、その点についても今後検討していただきたいと思います。

○田中座長 御意見でよろしいですね。御意見として承ります。

○山崎委員 イメージ図で見ると、法人間、医療法人、社会福祉法人、その他の非営利の法人等が、横で連携して 1 つのホールディングカンパニーをつくるということなのだけれども、これは全部それぞれ税法が違います。税法が違う法人が 1 個になったときは、それぞれ単独の税法で対応するのか、あるいは、どれかの税法に合わせた形で対応するのかという問題とか、現在の法律の中で性格の違う法人間の資金の融通が、これは可能なのですか。

 例えば、社会福祉法人の留保金を同じ理事長がやっている医療法人に融通することは、法律的には多分認められていないと思うのです。そういうことを含めて可能にして、この法人を統括した場合、非営利ホールディングカンパニーとして、連結決算は一本でできることですか。それとも各自の法人が決算をする仕組みか、その辺が何かはっきりしないと思うのです。

 あと、下に付いている株式会社は、 MS 法人でやっている所は幾らもあって、これはそれとどこが違うのかがよく分かりません。

○田中座長 税制についての検討が既にあるのか、資金は融通できるように検討するのかどうか、 MS 法人と株式会社の違いは何か等の質問がありましたので、お答えください。

○伊藤指導課長補佐  1 つ目は、グループ内の各法人の税制をどうするのか、例えば、どれか 1 つの法人の税制に合わせるのかという御質問だと思います。これについては、税制改正要望等で財務省の担当者といろいろ話している感じでは、正直に言って、例えば、社会福祉法人は非課税ですので、このグループに入れば医療法人も非課税にできるかというようなことは、相当、難しい面があると思います。

 ただ、山崎委員の御指摘は、この仕組みを使って税も含めてどのようにメリットを出していくのかという御指摘だと思いますので、この検討会での議論を踏まえ、必要に応じて財務省の税制担当とも相談するなどしつつ、考えていきたいと思っています。

2 つ目は、現在、性格の異なる法人間でカネの融通はできるようにするのかといった御質問だと思います。現在、医療法人については、剰余金の配当禁止ということで、医療法人は剰余金を法人外に出せないという仕組みになっていますし、社会福祉法人についても、障害や保育など、それぞれで出された利益は外に出せない仕組みになっています。これについて、ホールディングカンパニー型法人内で、例外的にできる仕組みはできないのかということです。今後、ここでの検討会の議論を踏まえつつ、他制度の調整も、おっしゃるとおり必要ですので、そこは引き続き対応していきたいと思っています。

3 つ目は、ホールディングカンパニー型法人の会計処理はどうなるのかということですが、そこはおっしゃるとおり、連結するかどうかということも重要なポイントになってくると思います。私が聞いたところによると、四病協の医療法人会計基準の議論でも、連結についてどうするかという中で、非営利ホールディングカンパニー型法人制度の創設に関する動きもあるので、それも見つつ引き続き考えていくこととしたと聞いています。いずれにせよ、このような形のホールディングカンパニー型法人になれば、当然、連結決算をどうするかということは、会計基準の議論として重要なポイントになってくると考えています。

 最後、株式会社についてですが、おっしゃるとおり、資料の 7 ページ目に書いてあるとおり、例えば、医薬品の共同購入を行うとか、シーツのクリーニングを一括で行うといったものは今でも MS 法人でやっています。これについて、現在、例えば、理事長が個人のお金で出資して株式会社という形でつくっていますが、これは制度上これしかないということでやられていると考えていますが、このような個人のやり取りによる仕組みではなくて、非営利ホールディングカンパニー型法人が出資することによって、このカネの関係も非営利ホールディングカンパニー型法人の会計処理の中に含めることで透明化を図ってはどうかということで、このような提案をさせていただいております。

 今後についても、山崎委員がおっしゃるとおり、いろいろな議論があるとは思いますので、ここについては、たたき台をお示しした後で、いや、こうではないのではないかとか、こうあるべきではないかとか、そこはいろいろと議論していただこうと思っています。

○田中座長 よろしいですか。

○山崎委員 はい。

○今村委員 今の議論を聞いていると、仕組みの違う法人間での資金のやり取りは結構難しいところがあるということですが、例えばここの図を見ると、「非営利ホールディングカンパニー」を通して資金の融通をすることは可能ということですよね。とすると、このホールディングカンパニーの後ろに大きな金融機関が付いていたとすれば、そこを通じていろいろな医療法人に資金の提供ができるということで、すなわち、これは企業による医療法人の経営といいますか、丸ごとそうなってくる。しかも、ここに書いてある言葉によると、経営とか、カネとか、モノとか、そういうものが露骨に出てきているのですよね。

 このイメージ図だけを見ても、日頃、地域医療を担っている医療人としては、とても納得できない仕組みだということが言えると思います。少なくとも社保審が考えている仕組みと産業競争力会議、規制改革会議が考えている仕組みは、同床異夢だと言わざるを得ないと思います。そういう意味では、これをゼロベースから考え直すと、このイメージ図自体を取っ払って、もう一度地域に密着した、足の着いた議論をしなければ、なかなか難しいのではないかと思います。

○伊藤指導課長補佐 今村委員が御指摘された、一から医療にとって良いものになるように考えていかないといけないのだというのは、ごもっともだと思います。あと、幾つかホールディングカンパニーの金融機関との関係について御指摘もありました。例えばイメージとしては各グループ内の法人が債務保証をしつつ、非営利ホールディングカンパニーが金融機関からお金を借りて、それを各医療法人における病院の建て替えや機能強化などに使っていくこともありますので、御指摘のとおり金融機関との関係性が強くなる部分はあるとは思います。

 これについて通常の医療法人であっても、病院の建て替えなどのときには金融機関からお金を借りたりすることがあり、金融機関と一定の関係性があるということは変わりませんので、それと同視できるのか。そうではなくて、実質支配に当たるのであれば、それは問題であるというのは、御指摘のとおりですので、いずれにしても、そういったカネの関係については、具体的にどういう仕組みにするかどうかも含めて、また引き続き検討していきたいと思っています。

 また、ヒト・カネ・モノを強調すれば、多分、今村委員がおっしゃったような危惧・危険性は出てくると思います。我々としては、理念が一番重要だと考えており、地域において医療をどうやって充実していくか、その理念をしっかり固めた上で、あくまで手段としてヒト・カネ・モノを使っていく。ヒト・カネ・モノを使うのは目的ではないという認識のもとで、今村委員のおっしゃったように、今後、医療にとって本当に良いものになるように検討していきたいと思っています。

○今村委員 確認ですが、この名称についても、もう一度検討いただけるということですか。

○伊藤指導課長補佐 そこは全くおっしゃるとおりで、 2 ページ目を御覧ください。 2 ページの下で、本年 1 20 日の産業競争力会議で決定した今後の検討方針の中でも、「非営利ホールディングカンパニー型法人制度」は仮称とされていますので、今村委員のおっしゃったとおり、この名前についてもどう決めるかは重要なポイントになってくると思っております。

○田中座長 今のところは、仮称だそうです。

○山崎委員 非営利ホールディングカンパニーは、どうして唐突に出てきて検討しなければいけなくなったかが分からないのと、これと TPP とは何となく関連しているのかなという気もするのと、もう 1 つは、医療職と、医療法人と社会福祉法人は、給与体系が全然違います。だから、単純に人を異動して病院から社福にやるといっても、社福のほうが介護保険の点数が安いですし、給与も安いわけですから、移れと言っても移らないです。同じだから給与体系の法人間での人的な異動は分かるけれども、全然性格が違う法人間の人的交流をしたから効率化になるかといったら、そうはならない話だと思うのです。

○伊藤指導課長補佐 順番にお答えしますと、ホールディングカンパニーの仕組みが今どうして議論に出てきたかという御指摘だと思いますが、今後、我々としては、病床の機能分化・連携及び医療提供体制の再構築を進めていかなくてはならない。こうした中で医療法人が合併のように全く一体化するのではなくて、それぞれの独立性を前提としつつ、横の連携を強める仕組みの 1 つとして、ホールディングカンパニーも選択肢の 1 つとして考えることができるのであれば、選択肢の 1 つとして認めていってはどうかということで厚生労働省としては考えております。

TPP の関係については、これまでの検討会でも山崎委員から御心配の声があったと思うのですが、我々としては先ほど申し上げた、あくまでこのような目的の下で制度設計していきたいと思っておりますので、直接関係のないものであるということで考えております。

3 つ目、給与体系についてですが、先ほど日野委員からも介護の給与については、正直に変えていくことは難しいという御指摘もあったように、それぞれ根本となる制度が違いますので、例えば、保険制度をとっているとか、税を 100 %財源にしている制度をとっているとか、それぞれによって、取っている制度が原因で、制度間での給与体系がそれぞれ難しいというのは、様々な大規模な法人の話を聞いてみると、そのようなお話はよく聞くところです。

 したがって、例えば、全体のグループの中で福祉に限って同じ給与体系を持つ法人間、このグループ内で社会福祉法人が 2 つ、 3 つあったら、その中で給与体系が同じ範囲内で人の交流をしていくのも考えられるでしょうし、医師のようにある程度同じ給与を保障できる職種については、そういうのも飛び越えて交流することもできるでしょうし、多分、この仕組みをつくったからといって、その給与体系を全く無視して医療法人、グループ内の法人において自由に人材を活用するのは、正直、おっしゃるとおり難しい面はあるかと思います。それぞれのグループ単位の判断によってどこまで人材の交流をしていくかは、個々の判断になってくるのかと思っています。いずれにしても山崎委員が御指摘いただいた点は、重要なポイントだと思っております。

○松井委員 私もホールディングカンパニー型法人が良いのかどうかについては、まだ議論の余地があると思っているのですが、ひとまずそれを留保してお話をします。今後、この法人について考えるに当たって、2点ほど検討していただきたい点がございます。

1 は、ホールディングカンパニー型法人とその下にある子法人の利益が対立する場合にどうするか、ということです。

 例えば、 7 ページの図で言いますと、 A B C D の法人の中のある特定の法人が資金面で非常に苦しい状況に陥った場合を考えてみます。これに対して、他の法人にはある程度余剰資金があるときに、その資金を余剰のある法人から苦しい法人に移せという圧力が上からかかってくる可能性があるかもしれません。特にグループ内での資金の融通を自由にするという議論をした場合、こういったことも制度的に認められる可能性がありそうです。

 この利益相反の問題は非常に難しい問題で、ホールディングカンパニー型法人ではなく、特定の人間が複数の法人の支配をしても同じ問題は起こります。いずれにしても先の例ですと、ある法人において、その法人の利益とは違う利益を追求しなければならない場合が出てきます。この種の利益相反の問題が起こりうるときに、これをどうやって防止するのか、制度設計するのは非常に難しいのですが、一応、今後の議論の上で念頭に置いておいたほうがいいだろうと思います。

 第 2 は、今の話と関連する話ですが、個々の法人の利益よりも、グループ全体ないし、グループに関わる地域全体の利益を優先することを制度的に認める可能性に関する問題です。このような可能性がなぜ認められるかといえば、グループ全体でその理念を共有しているからです。その意味で、私もこの理念の共有という考え方は非常に大事だと思っています。この理念の共有こそが、個々の法人以外の利益を追求することの理論的な裏付けになっていくわけです。ただそうしますと、この理念の内容について、どこまで具体的なものとして考えておられるのかが問われることになります。

 つまり、この理念を抽象的に書けば、何でもありになってくるのです。広く地域のためと言ってしまうと、何でもできてしまうかもしれない。それでは結局、法人間の利益相反を防止しようとするときにも全く機能しなくなってしまう。個々の法人、例えば C 社会福祉法人であれば、 C 社会福祉法人固有の利益がありますから、これを守りつつ、可能な範囲でグループ、地域全体とのバランスをとっていく必要があるわけです。

 そのようなバランスがある程度具体的に明確になる形で理念の共有をしないと、難しい問題が生じる気がいたします。要するに、個々の法人の利益もあり、グループないし地域の利益もあり、これらの調和を具体的に実現する形でこの理念を考えておかないと、場合によっては傘下の法人が、思わぬ不利益を被る可能性、あるいはその利害関係者が不利益を被る可能性があるかもしれないという感じがしています。

○田中座長 確かに検討すべき課題を言っていただきまして、ありがとうございました。

○今村委員 今の松井委員のお話とも関連するのですが、そういった法人間の利益相反が起こった場合に、脱退の自由というか、そういうものは十二分に保障されているのですか。

○伊藤指導課長補佐 実はそこは 1 つ重要なポイントでして、 1 度非営利ホールディングカンパニー型法人に参加した法人について、脱退を可能とする仕組みとするのか、それを認めるのか認めないのかは、おっしゃるとおりで、 1 つ大きな論点になると考えています。したがって、それを安易に認めた場合、例えば、今、松井委員がおっしゃったような理念には沿うのだけれども、自分の法人の利益にならない決定がされたときには、自由に脱退できるとしてしまうと、正直に言ってホールディングカンパニーとしての事業性は保てない部分もあります。

 一方で脱退ができなくなる仕組みになると、今度、法人の個々の独立性を制度の前提とした場合、そことの兼ね合いが難しくなってくるので、その脱退の自由をどうやって、どこまで認めるかは、大きな論点の 1 つだと思っています。それについては、今後、検討していきたいと思っています。

○大道委員 こういう形態が出てきたのは、現状で医療法人が多くの規制の中で非常にタイトな中でやっているのがベースだと思うのですが、それならその規制を洗いざらい挙げてみて、その中で緩和できるものはしていくのが先で、本筋ではないかと思うのです。こういう形態の非営利ホールディングカンパニー型法人は、力のある法人が、医療法人とは言いません、どのような法人でもいいのですが、自身の事業を広げたいときには非常に有利な方法かも分かりませんが、我々病院単体としてはかなりの違和感があります。

○鶴田委員 前回の検討会において、非営利ホールディングカンパニーについては、州レベル、都道府県レベル、都道府県をまたがったレベルの説明を受けていますが、地域包括ケアシステムを円滑にうまく機能するような非営利ホールディングカンパニーは州レベル、都道府県レベル、地域レベルで少し違うのではないかと感じます。法律ができるとそのレベル、規模に関係なく一様に適応されることになると思いますが、そのレベルというか規模によって、こういう制度をつくったときのメリットとか、デメリットとかがわかれば議論しやすいと思うのですが。

○田中座長 皆様それぞれ、検討すべき課題を言っていただいています。

○西澤委員 これについては産業競争力会議で決定したものですから、議論しなくてはなりませんが、資料をみると、国民会議の報告あるいは産業競争力会議の議事録では、今の保険制度は維持すると。もう 1 つは、改革に対応しなくてはならないと。そのために機能分化、連携を進め、対応しなくてはならないとか、目的として書いてありますよね。

 「このため」ということで、その中間の議論が抜けて、「非営利ホールディングカンパニーが必要だ」になっていますが、「このために」どうあるべきかという途中の議論が抜けている気がします。要するに、これをつくらないと本当にできないのかという議論がないのです。ほかの形では駄目なのかという議論も必要だと思います。そういう議論があって、他ではできないから、こういうものが必要だというのなら、分かります。

 逆に言うと、ホールディングカンパニーを、新しい制度、法律でつくれば、できるのかという議論もないのです。議論は、これはつくらなくてはならないということで、その形をどうするかという議論になっている気がします。ここは医師会など医療関係者が集まっているので、そういう中間の議論を一度しっかりしてから議論したほうがいいのではないかと思います。

○田中座長 形をどうするか以前に、上側、下側の議論を先にすべきであると、西澤委員の御意見でした。

○長谷川委員 全体像はなかなか難しくて、まだ、理解できない部分もあるのですが、組織論、組織からいくと、非常に巨大で、パワフルな組織ができます。資金の融通等も柔軟にできることを考えると、非常に有利であろうし、規模の拡大もしやすい。意思決定についても、迅速に行うことができます。

 ただ、若干、懸念するというか、しっかりと議論しないといけないのは、意思決定を定款等で自由に定めることができるとあります。これは柔軟性という面では評価できるのですが、資本の原理以外に、どういう形での意思決定の手法があり得るのかが、なかなか見えてきません。

 例えば、米国のインテグレーテッド・ヘルスケア・ネットワークという非営利の形のものですと、地域の代表が理事会をつくって、それが理事長を任命します。理事長が行うべき業務の内容と達成基準を、一定の要件として課して、ある期間が過ぎたら、きちんと働いたかどうかとかを評価します。その報酬を決める委員会などもあります。例えば地域の医療をきちっとやっていくことを期待するのであれば、地域の医療という点から見たある種のコントロールを、どういった形で課していくのかの組織のガバナンスの点から仕組みが担保されないと難しいのではないかというのが 1 つです。

 もう 1 つ、結合の強さですね。ホールディングですが、 1 1 個の法人は離脱できるのかできないのかみたいな議論が出てくるのですが、離脱できる緩い結合というと、通常のホールディングのイメージとは違うので、そういった緩い結合体か、あるいは、 1 回入ったらなかなか出るわけにはいかない固い結合なのかによって、議論が異なってきます。結合の強さについては、議論が実りあるものにするためにも、そこは、はっきりしておかないといけないのではないかと思います。

○田中座長 今後の論点ですね。

○今村委員 今、大道委員、西澤委員からも出ましたように、ホールディングカンパニー型法人有りきという議論は、いかにも時期尚早というか、全く議論が煮詰まっていない感じですよね。地域医療の充実を達成するために、それでは今有る医療法人のどこを改善すべきか、あるいは、そこに規制の緩和があるとすれば、それは何だというもっと丁寧な議論の後に、それでもどうしても駄目だというときには、こういうのもあり得るべきと思いますが、余りにも飛躍した考え方です。

 また、長谷川委員がおっしゃったように、ガバナンスのあり方についても、今まで地域医療を担ってきた私どもの感覚としては、相当感覚が違う。こういうものに縛られながら地域医療をやるのは、いかにも納得がいかない感じですので、このことについてはゼロからやっていただきたいと。こういうイメージが出てくる前の段階で検討することをお願いします。

○山崎委員 貸付金の話ですが、例えば、 A 医療法人から B 医療法人に資金を貸し付けた場合は、 A 医療法人の貸付金として計上するのか、それとも同じ性格の法人なのだから、財布は 1 つだから、そうはならないのかという話です。もう 1 つは、「医療法人」と簡単に書いてあるのがあるのですが、社会医療法人があるし、特定医療法人があるし、同じ医療法人でも財団・社団とあるわけです。全部それぞれ人格が違うわけでして、その人格の違う医療法人を簡単なチェーンで 1 つにまとめられるのかという疑念があります。一番引っかかるのは、最初に指摘したように、税法上の問題は、国税がこれを本当に OK するかという疑問です。

○田中座長 最初の点は御質問ですね。

○伊藤指導課長補佐 例えば A から B に資金を貸し付けるときに、 A 医療法人の財務諸表上、その貸付けがどう書かれるのかということでしょうが、 A 医療法人と B 医療法人のそれぞれの会計処理で考えれば、 A から B に貸し付けたという行為はあるわけですので、それを財務諸表に適切に書かないと、 A の財務状態を適切に示した財務諸表とはなりませんので、記載することが前提だとは思います。ただ、これを含めた会計基準についての整合性については、おっしゃるとおり、論点でありますので、会計基準の議論として、それはまた別途進めていきたいと考えています。

○田中座長 私からも 1 つ質問させてください。産業競争力会議でホールディングス型を論じておられるときに、これはオプションとして言っておられ、既存の普通の今までの医療法人と並列する形で論じられているのですか、全ての医療法人がこういう所に入れという意味でしょうか。

○伊藤指導課長補佐 そこは、冒頭申し上げたとおり、医療法人として単独で運営することがあれば、また、医療法人同士の協力の仕方として言えば合併もある。このような選択肢ではなくて、医療法人の独立性を保ちつつ、横の連携を強化する仕組みとして、選択肢の 1 つとして非営利ホールディングカンパニー型法人制度を考えられないかということです。したがって、おっしゃるとおり、これができたから、全国の医療法人は、このどこかの非営利ホールディングカンパニー型法人に所属しないと駄目ですという形には、当然ならないと思っています。

○田中座長 その確認が大切だと思いました。議題 1 については、ほかによろしいですか。それでは、議題 2 に移ります。 2 番目は、「医療法人における透明性の確保等に関わる論点の追加について」です。事務局から資料の御説明をお願いします。

○伊藤指導課長補佐 こちらは論点を追加したいということで、具体的な議論については今後、請求資料を整理した上で、また御議論をいただこうと思っています。順番に御説明します。

1 ページ目です。検討会における論点として、以下の大きく 2 つの事項を追加してはどうかと考えています。 1 つは、医療法人の透明性の確保です。もう 1 つは、医療法人制度におけるガバナンスの強化です。

1 つ目の医療法人の透明性の確保については、さらに、1経営規模の大きい医療法人の運営に係る透明化について、2医療法人と MS 法人との関係の透明化について、という論点があると考えています。以下の資料で順番に御説明いたします。

2 ページ目です。そもそも医療法人の透明性の確保については、前回及び前々回の医療法人に関する検討会においても重要な要素として議論をされてきました。例えば、前々回の平成 15 3 26 日に出された検討会の報告書では、医療法人において、「非営利性」の確保を大前提に「効率性」、「透明性」、「安定性」の諸要素を高めるよう努めることにより、これらの要素が好影響を及ぼし合い、連続的な「正(プラス)の循環」を生み出すことで、非営利性の確保を大前提としつつ、透明性の要素も高めていかなくてはいけないと示されています。

 また前回の平成 17 7 22 日に出された報告書でも、資料の下線部分に示されているとおり、厚生労働省においては、透明性の高い医業経営を各医療法人が遂行できるようにするため、医療法人制度について、継続してそのあり方を見直すべきであるとされています。したがって、これらを踏まえると、医療法人の運営の透明化は医療法人制度において重要な要素であり、国民の指摘等を聞きつつ、引きつづき継続して、そのあり方について見直していく必要があるということでこれまでも進んできたところです。

3 ページ目です。これは第 1 回の検討会に示させていただいた資料です。ここでも非営利性の確保を大前提としつつ、その要素の一つとして、透明性の確保も重要な要素として、挙げられていました。

4 ページ目です。これらの認識を踏まえた上で、 1 つ目の論点です。1経営規模の大きい医療法人の運営に係る透明化ですが、医療法人については、例えば、戦後、医官の方が故郷に戻られたりして診療所等を開設した後に、地域の住民の医療需要に応じて、医療を提供していく中で、例えば病院を作って欲しいとか、ベッドを増床して欲しいとか、そのような地域住民の要望に応えて、その規模を徐々に大きくしていくとともに、運営形態も個人から法人へと変化するなどの経緯を経てきました。またその後も救急医療をやって欲しいとか、高齢者医療をもっと充実して欲しいということで、老健を作ったりするなど、そうした医療に係る需要が更に高まる中で、医療法人の運営規模もどんどん拡大し、毎年収益が数百億円を越すような大規模な医療法人も出てきました。その一方で、現在の医療法については、経営の規模を斟酌することなく、小規模な医療法人も大規模な医療法人も基本的に同一の規制を設けていることもあり、国民からは、特に大規模な医療法人について、もう少し経営の透明性の確保を進めた方がいいのではないかと指摘する声もあるところです。

 具体的には一定規模以上の医療法人について外部監査を取り入れてはどうかと考えています。 5 ページ目は、今、法人累計毎に外部監査に関する規定がどうなっているかを示した資料です。一番左の医療法人の所の対象規模の※ですが、負債額 100 億円以上の法人は、公認会計士又は監査法人による監査等を受けることが望ましいとなっています。ここについては一定規模については外部監査を受けることは望ましいとはなっていますが、義務付けられてはいない状況です。

 厚生労働省が所管する社会福祉法人制度を見ますと、こちらも資産額 100 億円以上等については、 2 年に 1 回の外部監査が望ましいとして、義務付けではない形で、一定規模以上の所については、外部監査を進めることとなっています。このように、厚生労働省所管の法人制度を見ると、それほど違和感があるわけではないですが、資料の右側の一般社団法人等と比べると、正直に言って十分だとは言えない状況です。具体的には、一般社団法人・一般財団法人の負債額 200 億円以上では、会計監査人の設置が必要として義務化されています。また公益社団法人・公益財団法人についても、収益、費用損失 1,000 億円以上等については、会計監査人の設置が必要として、こちらも義務付けられています。さらに学校法人については、 1,000 万円以上の助成を受けている場合には公認会計士等の監査報告書が必要として、こちらも 8 9 割の学校法人が外部監査を受けている状況になっています。

 これを踏まえ 4 ページに戻りまして、 4 つ目の○です。こうした他法人制度の状況を見ると、医療法人制度においても、社会的責任も考慮して、一定規模以上の医療法人を対象に公認会計士等による監査を義務付けるなど、経営の透明化を進めることを検討してはどうかと考えています。なお、一定規模以上としては、例えば収益 200 億円以上 300 億円未満の規模の法人を見ると、 500 床の病院を 3 ヵ所運営し、 200 床の病院を 2 ヵ所運営し、さらに 100 床程度の老健を運営しているといった規模感になっています。さらに収益 300 億円以上の規模の法人となると、例えば 900 床程度の病院を運営し、 600 床の病院を運営し、 400 床程度の病院も運営し、さらにクリニックとか検診も行っている規模感ですので、このような規模感を踏まえると、収益 200 億円以上の医療法人については、外部監査を導入してはどうかと考えています。これが 1 つ目の論点です。

6 ページ目です。 2 つ目の論点は医療法人と MS 法人との関係の透明化についてです。 MS 法人については皆様御存じのとおり、医療法人の業務が限定されている中で、その経営の効率化を支えるため、医療法人と密接な関係をもって、医薬品や医療機器など医療機関で使用される物品の共同購入、不動産管理、シーツ等のクリーニング、病院内の売店の管理など様々な業務を行っています。資料中の※に記載しているとおり、医療法人と MS 法人との取引について市場価格等から見て妥当な価格を超えた取引が行われた場合には、医療法第 54 条に定める剰余金の配当の禁止に当たるものとして、指導監督がなされる仕組みとなっています。ただし現状として、個々の医療法人と密接な関係を有する MS 法人としてどのようなものがあって、どのような取引を行っているかなどが明確になっていないこともあり、 MS 法人との関係について透明化が必要ではないかという指摘があります。

7 ページ目です。これに関しては、本年 2 月に四病協を中心に、医療法人会計基準がまとめられました。この会計基準において、財務諸表に加え、注記表をつくることになっています。この注記表の中で関連当事者に係る注記として、( 3 )の「注 20 」の下の1に記載しているとおり、関連当事者の範囲について、当該医療法人の役員及びその近親者が支配している法人など、一定の範囲を定めるとともに、さらに注記する取引の範囲についても一定の事項を定めております。

8 ページ目です。こうした関連当事者の一定の範囲の取引については「参考」にあるように、役員が支配している法人、名称(株) A 、所在地、総資産額等を記載したり、右から 4 つ目に、取引内容として、医薬品の購入を行っていること、取引金額について記載することとなっています。次に、同じページの上の 3 の個別論点と実務上の対応の( 9 )の下線部を御覧ください。こうした注記表がなされるのは、法人運営に当たり、当該法人と密接に関係する者との取引は、他の者との取引と異なる取引条件等により、財務諸表の数値に影響を与えて財務諸表の利用者の判断を誤らせるおそれがある。このため、補足情報として、当該者の範囲を明確にするとともに、取引内容について注記することが適当とされています。この注記というものはさらに、他の民間非営利法人である学校法人会計、公益法人会計、社会福祉法人会計でも導入されており、医療法人においても同様に重要な情報であるということで、今回、医療法人会計基準にこのような注記表をつくることになりました。

7 ページ目に戻ります。ただし、上の( 2 )第 4 3 、次の項目は、社会医療法人を除き、注記表として記載することを省略することができるとなっています。

6 ページ目に戻ります。下の 4 つ目の○です。医療法人と MS 法人との関係の透明化を一歩進めるために、社会的責任も考慮して、社会医療法人に限らず、先ほどの一定規模以上の医療法人についても、この関連当事者に係る注記を記載すべき対象とするなどについて検討してはどうかということを、論点として追加させていただきたいと考えております。

9 ページ目です。参考ですが、 MS 法人のような共同事業性のある法人についての透明化については、国会でも議論になっています。下線部に記載されているとおり、医療法人が非営利であることに安住するのではなく、その周りにある会社についても共同事業性があるようなグループについてはしっかりと管理すべきではないかという質問に対し、原医政局長から、検討会で今後検討をしていくと答弁しております。

10 ページ目です。下線部において、医療制度、医療サービスの効率的な、かつ、医療の質の高いサービスを提供するための政策ですが、厚労省は一生懸命やっていると。それは理解しています。実は根本のところで、きょう申し上げたような、正当な経営力の差で生まれている収益は、例えば困難な離島の医療とかに投資をされたり、あるいは慈善事業に投資されたり、そういうことであればいい。ただ、経営力のあるグループでは違うような形をしていることもあるのではないか、ということで、そうした共同事業性のあるような、利益の部分について、何らかの規制をすべきではないかという指摘について、原医政局長は、例えば、それがグループの MS 法人という形で、そういう株式会社から買う。そうすると、そこに利益が当然たまってくる。そういう仕組みがあることは十分理解していますし、それをどのような形で規制していくか、そこはいろいろな検討課題があろうかと思います。また、大臣からも、そうしたものは必要に応じて議論をして、防げるような方策を考えていただくようにしていきたいと思っています、という答弁がされています。

 いずれにしても、まずは医療法人と MS 法人の関係の透明化については、今は明確になっていないですので、それを一歩進めるとともに、また引き続き必要であれば、実施状況等も踏まえつつ、またさらに必要に応じて検討をしていくという段取りを踏んでいきたいと思っています。

11 ページ目です。医療法人制度におけるガバナンスの強化に関しては、前回の医業経営の非営利性等に関する検討会でも、並行して行われていました「公益法人制度改革に関する有識者会議」における議論も踏まえつつ、議論を進めてきたところです。前回の報告書においても、医療法人制度の議論をする中で、公益法人制度の改革の議論も踏まえていったことについて、下線部に記載されているとおり、公益法人制度改革における検討が行われていたのは、民間非営利部門による公益的活動が果たす役割とその発展を図ることが極めて重要であるからであるとし、同じように、民間非営利部門である医療法人についてもその方向性については、期待される役割と軌を一にしているということで、前回の医療法人の検討会のときには、並行して行われていた公益法人制度改革に関する有識者会議の議論も踏まえつつ検討していました。

3 つ目の○、さらに同報告書においては、医療法人制度におけるガバナンスに関して、「医療法人については、設立者の意思を尊重しつつ、その自律的な運営を確保するために必要な規律を定めることが重要」とされ、ガバナンスもしっかり考えていかなければならない、と指摘されていたところです。これらの認識を踏まえた上で、最終的にまとめられた「公益法人制度改革に関する有識者会議報告書」や、これを受けて整備された「一般社団法人・一般財団法人に関する法律」の規定と、医療法の規定を比べると、ガバナンスの面について規定が必ずしも十分ではないという点がありますので、これについて改善することを含めて検討してはどうかと考えています。

12 ページ目です。「公益法人制度改革に関する有識者会議報告書」の 2 の( 3 )の3のウにおいて、ガバナンスについて報告されています。例えば、監事の役割や、次の 13 ページに記載されている、財団形態の非営利法人の評議員会等については、前回の平成 18 年の改正でもかなり整備が進んだところです。ただ、 2 の( 3 )の3のウの(イ)の「また、」以降の部分、民法は理事の法人又は第三者に対する責任を明定していないが、法人運営の適正を確保するため、理事の法人又は第三者に対する責任規定を設けることとする。さらに、他の理事によって理事の法人に対する責任が不問に付され、法人の利益が害されることを防ぐため、株式会社制度と同様の社員による代表者訴訟制度を新たに設けることとする、とされています。ここについてポイントは、ただし以下の所です。こうした責任規定等を強化することにより、理事による法人運営が萎縮したり、理事の人材の確保、なり手の確保が困難になることを防止する観点から、理事の法人に対する責任制限に関する規定を設けてはどうか、と報告されています。具体的には、今の医療法人については報酬をもらっていても、例えばボランティアのように、報酬をもらっていない状況でも、無制限で責任追求がなされる仕組みになっていますので、報酬の有無等を勘案して、責任制限に関する規定を設けてはどうかということを報告されています。

 また、濫訴防止の観点からの仕組みについても検討してはどうかと、指摘されています。ここについては、 14 ページ目以降を御覧ください。一番左が「公益法人制度改革に関する有識者会議報告書」です。真ん中の部分が一般社団法人・一般財団法人に関する法律です。右側が、今の医療法の規定です。順番にいくと、同様に医療法の規定も平成 18 年の改正のときに整備されつつあるのですが、 15 ページ目以降が先ほど申し上げた点です。民法は理事の法人又は第三者に対する責任を明定していないが、法人運営の適正を確保するため、理事の法人又は第三者に対する責任規定を設けることとする、ということで、一般社団法人・一般財団法人に関する法律については、第百十一条、役員等はその任務を怠ったときは一般社団法人に対し、これによって生じた損害を賠償する責任を負う。第百十七条、役員等がその職務を行うについて悪意又は重大な過失があったときは、当該役員等は、これによって第三者に生じた損害を賠償する責任を負う。また、その下の第二百七十八条、社員は、一般社団法人に対し、責任追求の提起を請求することができる。このような規定が医療法にはありません。

16 ページ目です。先ほどポイントと申し上げた部分がここです。第百十二条、役員が責任というものは総社員の同意がなければ、免除することができない、逆に言えば総社員の同意があれば免除することができるという規定です。第百十三条、当該役員等が職務を行うにつき善意でかつ重大な過失がないときには、一定額を限度として、社員総会の決議によって免除することができる、とされています。この一定額については、第二号、当該役員等がその在職中に一般社団法人から職務執行の対価として受けた利益の一年間当たりの額にイ、代表理事は六掛け、ロ、代表理事以外の理事は四掛け。ハ、外部から来られた理事や監事又は会計監査人については二掛け、その範囲内で責任を負うという形で社員総会の決議でこうした免除ができるという規定がございます。

17 ページ目です。同様の規定が第百十四条、下線部です。理事会の決議によって定款で定めればこうした免除ができるという規定です。

18 ページ目です。第二百七十一条、濫訴防止の規定で、特にポイントは第二百七十七条です。一般社団法人等の組織に関する訴えを提起した原告が敗訴した場合において、その訴えた方に悪意又は重大な過失があったときは、訴えた者は訴えられた者に対して、連帯してその訴えた者に対して発生した損害を賠償する責任を負うなどの濫訴防止の規定がありますので、医療法人についてもこのような規定を整備することを議論してはどうかということでお示ししています。資料についての説明は以上です。

○田中座長 ただいまの説明について、御質問、御意見を伺います。

○日野委員 先ほどのホールディングカンパニーと、この透明性との問題は関係があるのですか。

○伊藤指導課長補佐 この論点については、一般の医療法人を対象としたものです。

○日野委員 それならそれで結構ですが、先ほど述べられたように、一般社団の会計基準を四病協でつくりまして、近々発表する予定なのですが、社員と理事との区別がついていない法人がほとんどという現状は認識していただいておりますね。ガバナンスを論じるときに、その事実を踏まえてやはり論議をスタートさせていただきたい。余りにもこれは飛躍しているというか、非現実的というか、現状はほとんどの一般社団の持ち回りの法人というのは、理事長の独裁です。理事の発言が責任を問われるようなことは何も決裁もなく、下手をすると理事会の開催も行われていない。社員総会に至ってはもっと少ないです。そこからのスタートですから、これだけ既にできている法律にも関わらず、こういうことは我々は医学部では習わなかったですから、ほとんど無知で手探りで勝手にやってきて、その結果がどうなったかというと、一人の独裁という、ガバナンスとしてはそれが好ましくないというのであれば、それはそれで理由を付けて出していただきたいと思います。医療法人という社会性がいつになっても成熟しないというのはこの辺に原因があるのかなと思ったりもしますが。よろしくお願いしたいと思います。

○田中座長 いかがですか。

○川原委員 ガバナンス強化の点で少しお話をさせていただきたいと思います。このたび、医療法人の適正な運営に関する調査研究の取りまとめを行ったのですが、その中でやはり責任の範囲、特に役員についてどのような責任があるのかといったところで、善管注意義務とか一般的な部分かな、というような議論になりました。そういう意味で、きちんと「どのような責任があって」というような部分の明確化は非常に必要な部分だと思います。

 一方で、ただ余り責任が重すぎると、実際に運営のときに、今、日野委員もおっしゃられたような部分での弊害とか、あと特に監事について、なり手がなかなかいない、というような現状があります。監事に就任依頼しても、ちょっとというように断られるケースが多いような話も聞きますので、その辺の現場レベルとの頃合いと言いますか、バランスをきちんと図っていただきたいと思います。

○田中座長 事務局からの表明はこの 2 点を、当検討会で検討すべき論点に加えてはどうかという問いかけになっています。それについて、特段の異論はないようですね。ほかに中身について、御質問、御意見はありますでしょうか。踏まえておくべき観点などありましたらお願いします。

○松井委員 ガバナンスに関する点で、理事等に義務違反があったときに責任を負うという話は、現在でも債務不履行に該当するものとして、仮にそのような規定がなくても理事等は責任を負わなければいけないわけです。第三者に対する責任も、現在でも不法行為責任を負う可能性がありますから、大きく現状に変更を加えるものには多分ならないだろうと思います。

そうなりますと、恐らく今回の提案の中で、 1 つ懸念が生じるとすれば、やはり代表訴訟が入るところだと思います。通常の株式会社と違って、医療法人でこの代表訴訟が使われる場面というのは、数少ない社員間に内紛があって、その内紛のツールとして用いられるときだろうと思います。検討しなければいけないのは、そのような場合でも、医療法人の経営が適正化される限り、やはりそういうツールが必要だということになるのか。あるいは、そのようなツールを利用させるとかえって医療法人内の紛争が泥沼化する可能性があるので、制度の導入には慎重であったほうがいいのか、という価値判断だと思います。

さらに、仮に代表訴訟制度を医療法人に入れるとした場合に、濫用防止措置をどうするのがいいのかも検討する必要があります。特に、和解ができるということは明確にしたほうがいいのではないかと思います。実際、株式会社でも多くの代表訴訟が和解で終わりますから、和解ができることもきちんと念頭において規律をつくるべきでしょう。いずれにしても代表訴訟のところは、そういった制度が本当に必要かどうかというところも含めて、慎重に検討したほうがいいのではないかという感じが私個人としてはしております。

○田中座長 貴重な御指摘をありがとうございました。ほかによろしいですか。

○松原委員 非営利ホールディングに戻って、一言だけ話をさせてください。資料 1 の非営利ホールディングで何をしたいか、目的は大きく 2 つあると考えています。 2 ページにありますように、社会保障制度改革国民会議報告書の一番下の行に、「医療資源の適正な配置・効率的な活用」とあります。これがまず第 1 の目的だろうと。

 もう 1 つは、この産業競争力会議の狙いと思われるのが、大規模化を図って、経営効率化を進めるということだと思われます。そこで 7 ページの、皆様からもこれは日本でもできているのではないのというお話がありましたが、日本の場合には、トップが理事長で、法人ではなくて理事長が事業資金を拠出してそれによって各法人をコントロールし統一した意思決定をしています。アメリカの場合は理事長、個人ではなくて、ホールディングカンパニーという法人が新たな事業を始めるときに事業資金を拠出する、又は別の法人を買収するなどをして、そういう形で、どちらも日本も米国も事業資金を拠出したというこの事実でもって、統一した意思決定を図って行われているということです。そのために、この組織の形成には長い時間を要します。先ほど申し上げた第 1 の目的、医療資源の適正化については、この非営利ホールディグカンパニーをつくれば、医療法人が仲良しグループをつくって、連携してくれるのではないかというイメージだと思うのですが、実態は日本もアメリカもそういう仲良しグループでやっているのではなくて、強い所が弱い所を買う、又は強い所が新しいものをつくっていく形で発展してきていますので、第 1 の目的は、なかなか実現するのは非常に時間がかかるだろうということになります。

 第 2 の目的である大規模化・効率化については、非営利ホールディングカンパニー導入によって達成しやすくなると思われます。問題はこうした大規模化とか、効率化とかというのを医療において実施していく際の問題点、先ほど今村委員もおっしゃいましたように、例えば金融機関がバックに入って、こういうのをつくったらどうなるのだという御指摘がありました。そのように、こういうものをつくったときに、医療の非営利性とか公益性とかというものをいかに担保していくのかを検討することが非常に重要なのではないかと思います。

○田中座長 遡って、大切な点を指摘いただきました。

 議題 2 は、今後透明性の確保並びにガバナンスの強化について、事務局で論点の中身を詰めて、また議論するということですね。論点に加えることについては委員の方々に特段の反論はありませんでしたので、その方向でお願いします。

 先ほどの松原委員のように、言い忘れたことがある方はほかにいらっしゃいますか。

○梶尾指導課長 冒頭に紹介があったかもしれませんけれど、衆議院の厚生労働委員会で一般質疑をやっており局長はちょっとまだ来られませんし、丁度同じ時間帯に、 2 つ目の議題で照会のありました議員から今日も MS 法人の問題ですとか、非営利ホールディングの話とかの質疑もあったのでそちらに行っておりまして、今日遅れました。前半がちょっと聞けなかったのであれなのですが、今日は 2 つの議題をお願いしまして、また今日いろいろ御意見を頂戴したというように思っています。いずれも今後の議論をしていかなければならない話で、特に非営利ホールディングの話については、紹介のあった 1 20 日の検討方針について、総理から厚労大臣を含め、関係大臣に対して具体化について検討せよという指示も出ていることですので、本日いただいたものも含めましてしっかり論点を整理して、厚労省としてしっかり検討していきたいと思っておりますので、また御協力を頂ければと思っております。

2 つ目の話も論点に入れていただいて、今日いただいたことにも留意しながら、また次回以降、こうしたことでどうでしょうかということを、お願いしたいと思っておりますのでよろしくお願いいたします。

○田中座長 本日はここまでにしてもよろしいですか。様々な御指摘をありがとうございました。

 次回の案内をお願いします。

○伊藤指導課長補佐 本日はありがとうございました。次回につきましては、冒頭申し上げたように、引き続き必要な調査等を行うためにお時間をいただくとし、開催日等については、追って御連絡させていただくということでお願いしたいと思います。

○田中座長 本日はお集りいただきまして、どうもありがとうございました


(了)

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