ホーム> 政策について> 審議会・研究会等> 厚生科学審議会(健康危機管理部会)> 第6回厚生科学審議会健康危機管理部会 議事録(2014年3月26日)




2014年3月26日 第6回厚生科学審議会健康危機管理部会 議事録

厚生労働省大臣官房厚生科学課

○日時

平成26年3月26日(水)13:00~15:00


○場所

厚生労働省 共用第8会議室(中央合同庁舎第5号館 19階)


○出席者

(委員)

宮村部会長 明石委員 石井委員 大友委員 大石委員 吉川委員 倉橋委員 黒木委員 山本委員

○議題

1 健康危機管理調整会議の開催報告について
2 国際保健規則(IHR2005)に基づく活動について
3 世界健康安全保障イニシアティブ(GHSI)について
4 原子力災害対策について
5 健康危機管理に係る厚生労働科学研究について
6 その他

○配布資料

資料1 健康危機管理調整会議の主な議題について
資料2 IHR(国際保健規則)に基づく我が国の連絡窓口(NFP:National Focal Point)の平成24年度~平成25年度の活動内容について
資料3 世界健康安全保障イニシアティブ閣僚級会合概要
資料4 緊急被ばく医療体制整備について
資料5 厚生労働科学研究費健康危機管理・テロリズム対策研究分野について
参考資料1 国際保健規則(IHR2005)について
参考資料2 世界健康安全保障イニシアティブについて
参考資料3 第13回世界健康安全保障イニシアティブ閣僚級会合共同声明
参考資料4 第14回世界健康安全保障イニシアティブ閣僚級会合共同声明
参考資料5 厚生労働科学研究費の概要
参考資料6 厚生科学審議会健康危機管理部会関係規定
参考資料7 健康危機管理・災害対策室への改組
参考資料8 厚生労働省健康危機管理体制のイメージ図

○議事

○山口健康危機管理・災害対策室長 定刻になりましたので、ただいまから、第 6 回厚生科学審議会健康危機管理部会を開催いたします。

 私は、厚生労働省大臣官房厚生科学課健康危機管理・災害対策室長の山口と申します。よろしくお願いいたします。委員の皆様には、本日、御多忙のところ、お集まりいただきまして御礼を申し上げます。

 本日は、大野委員、加茂委員、工藤委員、野村委員、古米委員より欠席の御連絡を頂いていますが、委員 14 名のうち出席委員は過半数を超えていますので、会議が成立していますことを御報告いたします。

 まず、前回の開催以降、新たに当部会委員となられた方を紹介申し上げます。国立感染症研究所感染症疫学センター長の大石先生です。荒川区保健所長の倉橋先生です。

 また、前回の開催から、人事異動及び組織改編により事務局に変更がありましたので紹介申し上げます。三浦技術総括審議官です。宮嵜厚生科学課長です。よろしくお願いいたします。事務局を代表しまして三浦技術総括審議官より一言挨拶を申し上げます。

 

○三浦技術総括審議官 第 6 回になりますが、健康危機管理部会の開催に当たりまして、一言、挨拶を申し上げます。まず、委員の皆様方におかれましては、本日は大変お忙しいところをお集まりいただきまして誠にありがとうございます。厚く御礼を申し上げます。

 本部会の役割は、原因の明らかでない公衆衛生上の緊急事態に際しまして、臨時に会議を開催し、事態の対処について御議論いただくというもので、事態が起きたときの対応になりますが、本日は定期の開催で、現に何か、この会議を臨時に開催しなければいけない事態が生じているわけではありません。これは毎年度 1 回開いておりますが、昨年度開催して以来に生じました健康危機管理上のトピックスについて、私どもから報告申し上げまして、危機管理事案への対処の適切な在り方について御議論いただきたいと考えています。

 また、東日本大震災と、それに引き続く原子力発電所の事故、こういう大災害が発生してから 3 年が経過しましたが、厚生労働省としても省を挙げて対応してまいりました。本日の話題の 1 つとして、この間の緊急被ばく医療体制の整備状況の進捗について報告申し上げ、健康危機管理の在り方という観点から、先生方の御意見を頂きたいと考えています。

 このほか、食中毒、国内外の感染症の発生など、国民の生命、健康の安全を脅かす事案は度々発生しています。これらを含めまして、健康危機管理発生時における適切な対応について委員の皆様方の御意見を頂きますとともに、併せて、御理解、御支援を頂きたくお願い申し上げます。簡単ではございますが、御挨拶とさせていただきます。どうぞよろしくお願い申し上げます。

 

○山口健康危機管理・災害対策室長 続いて、本日の会議資料の御確認をお願いいたします。資料の欠落等ございましたらお知らせください。よろしいでしょうか。

 議事に入る前に、事務局より 1 点、報告申し上げます。当職の役職は、これまでは健康危機管理官でしたが、平成 25 10 1 日より健康危機管理・災害対策室長となっています。これにつきまして、恐縮ですが参考資料 7 を御覧ください。従来、社会・援護局が所管していました災害救助法等を内閣府に移管したことに伴い、自然災害関係の対応事務についても当室で担当することになりました。これによりまして、テロ等による健康危機事案、また、自然災害対応事案における初動対応と取りまとめを行う組織が当室に一元化されたことになります。両者の職務はもともと類似性がありましたし、また、自然災害には健康危機事案も含むものもありますので、両者の一元化は組織の効率化、調整の円滑化といった面で多くのメリットが期待できると考えています。

 それでは、この後の議事進行につきまして、宮村部会長にお願いいたします。

 

○宮村部会長 早速、議事に入ります。まず、本日の議題 1 「健康危機管理調整会議の開催報告について」、事務局から説明してください。

 

○山口健康危機管理・災害対策室長 お手元の資料 1 を御覧ください。健康危機管理調整会議の主な議題についての資料です。厚生労働省においては厚生科学課長を主査とする健康危機管理調整会議を毎月開催しています。関係部局における健康危機に関する情報共有と、それから、必要に応じて対応の調整を行っています。本資料は前回の危機管理部会以降の健康危機管理調整会議で議題となったテーマを報告するものです。かいつまんで説明いたします。

 医薬品関係については、例えば、献血時のシャーガス病疫学調査において抗体陽性例が出たことについて報告がありました。こちらは、日赤において、平成 24 10 月から、シャーガス病流行地域である南米出身者、それから、 4 週間以上の中南米滞在歴のある方について、献血時に同意を得て疫学調査を行ってまいりましたが、平成 25 8 月に初の陽性事例が報告されたという事案でした。また、平成 25 12 月、 HIV 陽性の血液を用いて製造された血液製剤が肝炎の患者に投与されたという事案がありました。投与された患者は、検査の結果、 1 名が HIV 陽性、 1 名が HIV 陰性であったということでした。

 続いて、食品関係です。広島、浜松等で、ノロウイルスを原因とする大規模食中毒が発生したという事案がありました。それから、米国において「 OxyElite Pro 」という健康食品、これはダイエット・サプリですが、これを摂取し急性肝炎を発症した方が 29 名おられました。我が国においては、輸入実績はないものの、個人輸入等で入手した方 2 名が急性肝炎を発症したという事案がありました。また、記憶に新しいと思いますが、マルハニチロ・ホールディングスの連結子会社であるアクリフーズで製造された冷凍食品の一部から農薬マラチオンが検出されるという事案がありました。

 感染症の関係です。まず、鳥インフルエンザ H7N9 H5N1 につきまして、また去年の 9 月以降、中東を中心に流行している MERS コロナウイルスの発生状況について、最新の情報の共有を図ってきました。これらの疾病につきましては、現時点で我が国での感染事例は報告されておりません。

 

 それから、マダニを媒介とする重症熱性血小板減少症候群 (SFTS) の感染事例が平成 25 1 月に初めて報告されました。さらに、その後、国内分布調査が行われ、ウイルスを保有しているマダニは、これまで感染事例が報告されていない地域も含め、国内に広く分布している可能性が示唆されております。

 感染症関係の一番最後は、デング熱の関係です。平成 26 1 月にドイツより、去年夏に日本を旅行した帰国者がデング熱に感染していた可能性があるとの情報提供がありました。これについて、感染研でも御検討いただきまして、確度が高いということだったと思いますが、これを受けて、全国の自治体に病院への情報提供について協力依頼を行ったという事案がありました。

 このほか、がん治療に係る有害事象について、事例があった場合に適宜報告を頂いていますので、それらの情報共有。その他として、印刷事業所場での胆管がんの発生について、健康危機管理初動情報伝達手順例等の作成についての報告、インシデントコマンド・システム (ICS) に係る現地調査についての報告がありました。資料 1 の説明は以上です。

 

○宮村部会長 ただいまの説明に関して御質問、コメント、御意見はございますか。

 デング熱の報告について、ドイツ人が帰ってから発症して、日本で感染したのではないかということですが、結論はどこまで調べられていて、どのようにまとめられているのでしょうか。

 

○大石委員 感染研の大石です。当該症例がデングウイルス感染症であったという事実には間違いありません。状況証拠として日本に渡航中に感染したであろうということが推定されています。また、確かに Aedes albopictus (ヒトスジシマカ)というデングウイルスを媒介する蚊は日本にいるのですが、何時、どこでヒトスジシマカに感染したという状況証拠はまだ確認されていません。この事例に関連して、現在、海外渡航歴のないデングウイルス感染症の患者が発生した場合の対応・対策の手引きを準備中です。

 

○宮村部会長 何か補足はありますか。

 

○山口健康危機管理・災害対策室長 私どもとして補足することは特にありませんが、我々としても、平成 26 1 10 日付けで結核感染症課長の名前で各自治体に対して「国内感染疑いの症例について」ということで、情報提供と協力依頼の通知を発出しています。協力依頼の具体的な内容は、管内の医療機関関係者への情報提供のお願いと、海外渡航者への注意喚起、海外からの帰国者に本疾病の患者が発生した場合には患者が媒介蚊に刺咬されないよう注意し、万一、患者、家族等から発症する者があった場合には速やかに医療機関の受診と保健所への報告を行っていただくよう助言をお願いしますというものです。

 

○宮村部会長 ほかにございますか。

 

○石井委員 日本医師会の石井です。救急・災害を担当しています。せっかく専門家がいらっしゃるのでお聞きします。コロナウイルスは、散発で、大体終わったように聞いているのですが、その後どうなのでしょうか。日本でもし発症例があったときは、どういう体制なのかを教えていただきたいと思います。

 もう 1 つ、カナダでエボラ陽性の患者が出て、まだ同定されていない、エボラではないかもしれないと報道されています。アフリカから外にエボラが段々と出始めたり、それと類似の出血熱症例が出るというのは大変な事態ではないかと思います。何か教えていただきたいと思います。

 

○大石委員 よろしいですか。まず、コロナウイルスについては、現在 200 例弱、 197 例の症例が報告されていまして、必ずしも流行が終わっているという認識はありません。むしろ、この半年間は継続的に、主にサウジアラビアから報告されています。ウイルスの検出能力が上がっているということもあると思います。ただ、感染源となり得る動物としては、ヒトコブラクダが報告されています。ある程度のリスクにはなり得ると思われますが、どの症例もがヒトコブラクダとのばく露があるわけでも必ずしもありません。ですから、まだまだ調査が必要な感染事例だと思います。

 国内に発生、輸入例があった場合の対応については、これも H7N9 と同様ですが、医療機関には感染症課から通知が行っていて、中東地域からの帰国者で疑われる症例については、地衛研で MERS コロナウイルスに対する PCR 検査できるように体制が整えられていると思っています。それから。

 

○石井委員 エボラですね。

 

○関谷国際健康危機管理調整官 カナダのエボラ疑い例ですが、結果は陰性でした。

 

○大石委員 分かりました。

 

○宮村部会長 ほかに何かございますか。では、次の議題「国際保健規則 IHR2005 に基づく活動について」、事務局から説明してください。

 

○山口健康危機管理・災害対策室長 資料 2 を説明いたします。 IHR に基づく我が国の連絡窓口の活動内容についてということですが、その前に、 IHR の説明として参考資料 1 を添付していますので簡単に説明いたします。 IHR WHO 憲章 21 条に基づく国際規則です。全ての WHO 加盟国が遵守することになっています。加盟国の責務として、自国で発生した国際的な公衆衛生上の脅威となる恐れのあるあらゆる事象を WHO に報告するという義務を負っています。 WHO IHR 事務局は、受理した情報を各国で共有すべきだと判断した場合に各加盟国の IHR 窓口に周知されることになっています。 IHR の簡単な説明は以上です。

 これを前提として、資料 2 について説明いたします。 IHR の窓口は我が室が担当していますが、平成 24 年度、平成 25 年度にどのような活動をしてきたかを説明いたします。

1 点目は、 WHO との間の情報共有です。前回開催した部会以降、現在までに我が国から WHO に報告した事項は 2 件ありました。いずれも先ほどの資料 1 で説明したもので、米国発のダイエット・サプリ「 OxyElite Pro 」の摂取に伴う急性肝炎の発生事案でした。平成 25 12 26 日に 1 例目、平成 26 1 10 日にも 2 例目の患者の発生を報告しています。それから、冷凍食品のマラチオンの関係はここに書いていないのは、マラチオンも大きな話ですが、輸出の実績がなかったので IHR とは別の、 WHO FAO の下の IINFOSAN という食品に関する同様の情報ネットワークへの通報を行っています。その際に、 WHO IHR の事務局にも情報共有をしております。

2 点目は、他の IHR 参加連絡窓口との間の個別の情報交換です。具体的には、結核や麻疹等の感染者や接触者が我が国に渡航した場合に、出発国の IHR の窓口から通報を受けた事例が 10 数件ありました。逆に、我が国から結核患者の接触者の情報を他国 ( 韓国、インドネシア ) に通報した事例が 2 件ありましたので報告いたします。

3 点目、そのほかの活動としては、 APSED 会合への出席がありました。 APSED は、 WHO の西太平洋地域事務局 (WPRO) 管内の WHO 加盟国の IHR への対応能力を強化するためのロードマップとして策定されたものです。これに関する会議が、平成 24 7 月にフィリピン、平成 25 7 月にネパールでそれぞれ開催されており、我が国からも職員を派遣しています。会議では、 IHR APSED の実施状況の確認や、アジア・太平洋地域における新興感染症の状況等の確認、今後の方策の議論、また、各国の IHR 窓口との意見交換などを行っています。この会議は基本的に IHR の対応能力が達成できていない国にどのように対応能力を付けていくかということがメインの関心事項なので、日本としては有益なアドバイスや支援を行っていくことが求められております。

 最後の点は、訓練です。 WHO IHR 窓口を対象として毎年行っている「 Exercise Crystal 」という訓練があり、これに参加しました。訓練は、 WHO がコントローラーとして仮想のシナリオを基に各国窓口に状況を付与し、それを受けた各国窓口が連絡等の必要な対応を行っていくというものです。それが実際に適切に行われたかどうかを最終的に WHO が評価する形で実施されています。資料 2 の説明は以上です。

 

○宮村部会長 これについて御質問、コメントはありますでしょうか。 IHR について、担当室がナショナル・フォーカル・ポイントになっていて、去年、今年と 2 つの事例を報告していますが、それらを集めて、 IHR 側からの、こういう報告が出たという重要なものは、どのような形で国内に情報をリリースされる仕組みになっているのでしょうか。

 

○関谷国際健康危機管理調整官 今の御質問に回答いたします。 WHO の情報は、まず EIS Event Information Site )というイベント発生情報のウェブサイトに載ります。そこに何か情報が掲載されると WHO から各国のナショナル・フォーカル・ポイントに情報を掲載したというメールが届きます。各国担当者はウェブサイトにアクセスしてその情報を確認します。情報の共有ですが、省内関係者で情報共有用のメーリングリストを作っていますので、結核感染症課や食品安全部など関係課と情報共有をするようにしています。

 

○大石委員 宮村部会長のご指摘は大事な点だと思います。私も健康危機管理について保健所の職員等を対象とした感染症危機管理講習会などで講義をすることがあります。しかしながら、 IHR で扱われた感染症事例がどういったものであったかという情報は余りまとまった資料になっていません。新興感染症についての WHO からのまとめも 2009 年以降は余り出されていなくて、資料がかなり限られています。 IHR 取り扱いの感染症情報を国民や健康危機管理部署の担当官にしっかり情報共有をしたほうがいいのではないかと認識しています。

 

○関谷国際健康危機管理調整官 ありがとうございます。イベント発生情報のウェブサイトに載ったものはコンフィデンシャルとされているので国民への説明に使うときには情報を出すタイミングが少し難しいかもしれないのですが、関係者にはその都度、情報共有をしていかなければなりません。 WHO EIS 自体はコンフィデンシャルであるものの、その数日後には WHO の誰しもがアクセスできるウェブサイトに情報が掲載されます。説明責任という観点からも公表するタイミングは大事だと考えます。

 

○宮村部会長 大切な検討課題だと思いますので、よろしくお願いします。ほかに御質問、コメントはありますか。

 次に、「世界健康安全保障イニシアティブ (GHSI) について」、事務局から説明してください。

 

○山口健康危機管理・災害対策室長 資料 3 、世界健康安全保障イニシアティブ (GHSI) について説明いたします。まず、参考資料 2 GHSI の概要・内容の資料を添付していますので、そちらを御覧ください。 GHSI は、 2001 年の 9.11 の同時多発テロを契機として、各国のテロに対する準備と対応を話し合う場として発足しました。 GHSI の参加国は、 G7 諸国 (G8 マイナス、ロシア ) 、メキシコ、 EC となっています。また、オブザーバーとして WHO も参加しています。このイニシアティブの枠組みとしては、一番上に閣僚級の会合、その下に高級事務レベルのネットワークである世界安全保障行動グループ (GHSAG) があります。我が国からは国際保健担当の審議官が参加しています。その下に、「リスク管理及びコミュニケーション」「世界検査ラボネットワーク」「パンデミックインフルエンザ」「化学イベント」「核・放射線の脅威」と、それぞれのテーマごとに専門家によるワーキンググループが設置されています。我が国は地下鉄サリン事件を経験したこともあり、英国と共に化学イベントのワーキンググループの共同議長国になっています。 GHSI はこれまで 14 回開催され、 15 回目の今年 12 月は東京で開催されることが決まっていますので、現在、事務局として準備を始めています。

 資料 3 にお戻りください。 GHSI の閣僚級会合については、前回の部会で報告いたしまして以降、 2012 12 月にドイツのベルリンで第 13 回が開催され、 2013 12 月にイタリアのローマで第 14 回が開催されていますので、概要について簡単に報告いたします。まず、 2012 年のベルリンでの閣僚級会合では、世界銀行中東・北アフリカ地域事務局からエニス・バリ保健栄養人口部門長を迎え、世界銀行の保健分野及び健康安全分野での取組を聴取した後、意見交換をしています。また、国際的な医薬品の共有問題、いわゆるデュアル・ユースが懸念される研究などについて、 GHSI の協調的な取組の必要性が確認されました。共同声明も採択されています。説明は省略しますが、参考資料 3 として添付していますので適宜御覧ください。 2013 年にローマで開催された閣僚級会合では、 WHO のケイジ・フクダ事務局長補から鳥インフルエンザ (H7N9) MERS コロナウイルスの発生状況が報告され、その後、検体共有の問題について、具体的な事例を想定しながら意見交換が行われました。また、英国主席医務官のサリー・デイビス教授から、薬剤耐性菌の問題についての講演があり、その後、意見交換が行われています。共同声明も採択され、参考資料 4 として添付しています。いずれの会議にも我が国からは国際保健担当の審議官が大臣の代理として出席しています。国会の日程等との調整がありますので、大臣の出席は毎回なかなか難しい部分がありますが、今年は日本開催なので、その際にはホスト国として大臣に議長を務めていただくことになると思っています。以上です。

 

○宮村部会長 これについても御質問、コメントはありますか。感染症がグローバルになり、 1 つの国だけで対応できないということが問題だと思います。先進国でイニシアティブを取って考えるときに最も大事なのは検体の共有についてだと思います。今の説明では、直近の平成 25 年のイタリアでディスカスされたようですが、このイニシアティブに参加している国は G7 とメキシコということなので、肝腎の中国やインドネシアなど、喫緊の問題となる所や、最近のロシアなど、そういう所はどのようにこれにコミットしているのでしょうか。

 

○山口健康危機管理・災害対策室長 これも重要な御指摘だと思いますが、検体共有と言うと各国の利害も絡む非常に複雑な問題で、実際、 GHSI の場でそこまで踏み込んだ議論はできていません。また、 GHSI というのは、もともとテロが主眼となっていますので、そういった問題を話し合う場として適切かどうかという議論もそもそもあろうかと思います。アメリカなどを中心として、検体共有にかなり興味を示している国はあるのですが、 GHSI の枠組みでは、現時点ではそこまで踏み込んではいないという状況です。

 

○関谷国際健康危機管理調整官 補足します。検体共有については、利害関係もあって共有が進まないところもあるので、まずは GHSI の枠組み内でフレームワークを作って検体共有を進めていこうと、これから動き出すところです。 GHSI 各国の中の国立の研究所間で検体共有ができるようになったら、その枠を広げて、ほかの国や WHO を巻き込んでいくことは、 GHSI 内での構想としてありますが、今後の課題です。

 

○宮村部会長 ほかに御意見、コメントはありますか。

 次の議題は、「原子力災害対策について」です。事務局から資料 4 に基づいて説明してください。

 

○山口健康危機管理・災害対策室長 資料 4 を御覧ください。緊急被ばく医療体制整備についてです。前回の会議の後、緊急被ばく医療体制への対応については様々なイベントがありましたので、その報告という趣旨でこの資料を付けています。資料の上段は、原子力防災の一環として原子力規制委員会が行ってきた取組。下段では、こうした取組に対して厚生労働省が支援してきたことについて記載しています。

 まず上段です。平成 24 9 月に原子力規制委員会が発足しました。その後、原子力災害対策指針が 2 度にわたり改定されています。特に、平成 25 6 月の改定では、安定ヨウ素剤の事前配布の方針が示されています。これを受けて、同年 10 月に安定ヨウ素剤の配布・服用に関する解説書の改定を行っています。これらについては厚生労働省としても協力をしてきています。さらに、平成 25 9 月には、原子力防災会議において、地域防災計画の充実化のために原発地域ごとにワーキンググルーブを設置して、各地域の計画充実に向けての支援を国として行うことになりました。平成 25 12 月には、被ばく医療体制実効性向上調査事業、被ばく患者救急医療体制実効性向上調査事業がそれぞれ実施されています。このような中で、緊急被ばく医療体制について検討が行われているという状況です。

 下段は、厚生労働省の取組についてです。まず、平成 24 7 月に原子力災害対策調整官を厚生科学課に新設しています。平成 25 10 月には、安定ヨウ素剤の配布・服用に関する解説書の改定に向けて技術的な助言をしています。それを受けて、日本医師会並びに薬剤師会宛てに連名で協力依頼をしています。そのほかにも、先ほどの地域防災計画の充実化のための支援の枠組みにも参加して、技術的に助言をしてきています。また、被ばく医療体制実効性向上調査事業などにオブザーバーとして参加しています。平成 26 1 月には、毎年開催されている全国厚生労働関係部局長会議の場を通じて、自治体の保健医療福祉部局に対して、原子力防災部局や危機管理防災部局との連携、協力を要請しています。今後については、「検討中」と書いてありますが、医療機関等の施設における原子力災害時の業務継続計画や避難計画の策定をしていただくことが必要になっていますので、仮にこの計画の策定が自力では困難な施設があれば、そのためのガイドラインを作るといった対応も考えられるのではないかと思います。また、救急医療、災害医療との連携、施策の検討などもやっていきたいと考えています。資料 4 の説明は以上です。

 

○宮村部会長 これについても御質問、コメント、御意見はございますか。

 

○石井委員 今の説明の経緯の中で、安定ヨウ素剤の配布と、それから、いざとなったときの服用の基準について、臨床医のほうから「ガイドラインを欲しい」という声もあります。そこで、明石先生の御指導も頂きながら日本医師会で作りまして、つい先日、全国に配布したところで、これから説明会をします。少しゾーンが広がりまして、 30km 圏まで広がりましたので、今までそういうことに関わっていない方々にも配付し、浸透させて、今度いざ原子力災害が発生したときに対応すべき手順を普及させなければいけません。日本医師会も、地域の医師会が一所懸命に頑張るのを支援するという形を取りました。よろしくお願いします。

 

○宮村部会長 良いコメントをありがとうございます。実際のヨウ素剤はどのように準備されていて、備蓄されているのでしょぅか。

 

○寺谷原子力災害対策調整官 事故前から電源等交付金を中心とした原子力防災の枠組みの中で、自治体毎に備蓄がなされていました。今回、対象となる範囲が広がるなどしていますが、これまでのスキームと同様に、地方公共団体が備蓄しています。備蓄に必要な数が増えていますから、現在、対応しているところと聞いています。それから、実際の配布に当たっては、医療者の立会い等を含めて説明会等も開くようにということを政府全体として打ち出していますので、正にこれから進めていくところであるということを聞いています。先ほど石井先生にもフォローしていただきましたが、説明会を行うときには地域の医師会の先生方にも関与していただくことを考えています。また、説明会で受け取ることができなかった方をどうしていくかということも課題になっているので、地方公共団体が準備はするのですが、こちらも地域の医師会などとも連携しながら進めていくと聞いています。

 

○大友委員  4 月以降、検討中ということで、医療機関等施設における原子力災害時の BCP 、避難計画の策定のガイドラインということですが、この対象となる医療機関はどの辺りを念頭に置いているのでしょうか。

 

○寺谷原子力災害対策調整官 今般、改訂された地域の防災計画の中で、避難若しくは屋内退避、また、そもそも施設ごと避難しなければならない可能性がある所を対象と考えています。ですから、施設としては当然、医療機関も入ります。それには災害拠点病院も入れば、精神科のような病院も入る全ての医療機関。それから、福祉施設。つまり、人が住んでいる施設に対しての BCP 、避難計画の策定が必要になるということです。今のところ、先進的、前向きな地域はどんどん進めている所もあると聞いていますが、今後、日本全体でやっていくこと、また、それぞれのクオリティを考えると、国レベルでのある程度の標準的なものは示す必要があるだろうと考えています。原子力規制庁、被ばく医療の有識者の方々と調整しながら、我々の側からもこのようなことを進めていくことを考えています。

 

○大友委員 そうすると、原子力発電所周辺の 30km 以内の所は全ての医療機関が対象だということですか。

 

○寺谷原子力災害対策調整官 今のところは、恐らくそこがメインのターゲットになると考えています。

 

○大友委員 分かりました。避難計画については、福島の原発近隣の医療施設の緊急避難の際、無計画にやってしまうと多くの命が失われるということが判明したので、ここをしっかり準備しておくことが大事だと思います。よろしくお願いいたします。

 

○明石委員 放医研の明石です。先ほどヨウ素剤の話が出ました。ヨウ素剤で一番重要なことは正しいときに正しい量を飲むということです。そうでないと意味がないことが多いと思います。今回は、医師会の先生方、厚生労働省もヨウ素剤については積極的に参加いただいていて、今までとは大分違って、かなり前に出てきたというのが実感です。今までは、災害が起きたときに、子供の場合はまだ水で溶かなくてはいけない、シロップに溶いてというような、かなり時間が掛かるということから、見掛け上はまだ完全に進んでいるようには見えないのですが、製剤についても考え方が進んできています。これは 10 何年か前から言われてきたことがやっと動き出したというのが我々の実感です。医師会、それから、厚生労働省の方々も是非その辺については積極的に御参加いただきたいと思っています。よろしくお願いいたします。

 

○宮村部会長 良いコメントをありがとうございます。ほかに、委員の先生からコメント、御質問はございますか。では、今のコメントを反映させてください。

 次の議題に入ります。議題 5 「健康危機管理に係る厚生労働科学研究について」、事務局から説明してください。

 

○山口健康危機管理・災害対策室長 資料 5 です。これについても、大枠をつかんでいただくという観点で、まずは参考資料 5 を御覧ください。「厚生労働科学研究費について」という資料を添付しております。厚生労働省においては、国民の保健医療、福祉、生活衛生、労働安全衛生等に関して、行政施策の科学的な推進を確保する、それから、技術水準の向上を図るといったことを目的として、厚生労働研究費というものを確保して研究を実施しております。

 具体的な研究分野については、 2 ページにありますが、「行政政策研究分野」「厚生科学基盤研究分野」「疾病・障害対策研究分野」「健康安全確保総合研究分野」「健康長寿社会実現のためのライフ・イノベーションプロジェクト」という 5 つの分野になっています。今回の健康危機管理という観点で言えば、 4 つ目の「健康安全確保総合研究分野」の所に分類されるということです。

3 ページは予算の規模についてです。厚生労働科学研究費の予算の総額については、復興庁が計上する復興対応分も入っていますが、これを除くと総額 481 億円になります。この 481 億円ですが、この度、革新的な医療技術の実用化を加速するという目的の下に、医療分野の研究については、基礎研究から実用化までを一気通貫で管理するための中核機能を果たす新たな独立行政法人、日本医療研究開発機構を設立するという方針で、現在、関連法案が国会に提出されています。その法人が設立された場合には、この厚生科学研究費の大部分が、この法人による管理の対象となってきます。具体的には、 481 億円のうち、医療分野の研究開発に関する経費である 407 億円がその対象となり、残りの 74 億円は引き続き厚生労働省が管理することになります。健康危機管理分野の研究費については約 2,000 万円ありますが、厚生労働省に残る部分ということです。

 この会議の前に、部会長からの御指示がありましたので、この厚生労働省が管理する研究の採択までの流れについて、資料はないのですが簡単に御説明します。まず、厚生科学研究の課題設定については、まず、有識者に参画いただく企画運営委員会というところで御議論をいただきます。その議論を経て設定された課題については、研究者に対して公募を行うという形になりますが、どの研究を採択するかは、これも有識者が組織する事前評価委員会というところで、研究計画の適切性、実現可能性などを踏まえて判断されることとなります。その後は当然、中間評価、事後評価などで研究継続の可否、研究成果の達成状況の評価などが行われることになります。

 こうしたことを踏まえて、資料 5 の説明に移ります。先ほどのプロセスを経て、健康危機管理・テロリズム対策分野で現在どういう研究がなされているかを表にしたものが、 1 ページの資料です。 1 つ目の○は、災害医療センターの小井土雄一先生を代表者とする研究です。内容としては、急性期から中長期にわたる災害医療体制をより一層強化することを目的として、ガイドラインやマニュアルを提示して、政府総合防災訓練、 DMAT 研修で試行して、最終的には政策提言につなげていくという研究をしていただいています。

2 つ目の○です。これも災害医療センターの近藤久禎先生を代表者とする研究です。内容としては、先ほど御説明した GHSAG 等を通じた CBRNE テロに関わる最新の知見の集約といったものを行う。それから、災害危機発生時における保健医療関連分野の分野横断的、フェイズ横断的コーディネートの在り方についてモデルを提示し、実際のコーディネートに携わる方の研修カリキュラムに反映していくことを目的とした研究です。

3 つ目の○です。こちらは東京医科歯科大学の大友先生を代表者とする研究です。御本人がいらっしゃるのに恐縮ですが、私から内容を簡単に申しますと、救急医療機関、消防、警察などといった機関とともに、 CBRNE 事態における医療・公衆衛生の現場対応の現状の課題を明らかにして改善策を整理する。最終的には、救急医療や保健所の体制に関して、地域防災計画の改定、それから、医療計画に役立つ具体的な材料を提供することを目的に研究を行っていただいています。さらに、消防や警察などの関係機関の対応計画に関しては、必要な体制改善・整備を提案するということです。

4 つ目の○です。これは、国立保健医療科学院の金谷泰宏先生を代表者とする研究です。内容としては、過去の地下鉄サリン事件、新型インフルエンザの流行などを基に、保健医療行政の行動、被災者の行動をモデル上で再現するということ。それによって、保健医療体制の脆弱性を明らかにする。あとは、放射性物質を用いた事案に関しては、保健医療行政機関、医療機関を交えた図上演習を行うことで、現行の連携モデルの課題を明らかにするといったことを目的とした研究をしていただいています。以上、 4 つの研究については、平成 25 年度から平成 27 年度にかけての研究ということで実施していただいています。来年度には 2 年度目を迎えるという状況です。

2 ページです。こちらは平成 24 年度の特別研究です。この特別研究というのは、先ほどの 4 つの研究とは別枠の研究ですが、平成 24 25 年度に実施していただいているので御紹介します。

 まず平成 24 年度の「化学テロ等健康危機事態における医薬品備蓄及び配送に関する検討」です。こちらは、日本中毒情報センターの吉岡敏治先生を代表者とする研究です。内容としては、化学剤等によるテロなどが発生した際に必要な解毒剤の備蓄形成、自治体での管理供給システムの構築状況などを検証するという目的です。研究においては、都市型自治体モデルとして、大規模サリン散布事案、ヒ素食品混入事案の 2 つのテロ、それから、地方型自治体モデルとして、サリン散布事案、シアン化学災害のテロ・災害シナリオといったものを想定して、現状で可能な対応を検証するというものです。それで、備蓄解毒剤の最適配置・配送についての検証を行うものでした。

 この研究で提示された結論によると、現在の医療機関や医薬品卸が保有する解毒剤の量では、小規模の化学テロ災害にも対応に支障が生じることが明らかになったと結論付けられています。国や自治体における備蓄について更なる検討が必要という御指摘を頂いています。

3 ページです。平成 25 年度においては、国立保健医療科学院の山口一郎先生を代表者とする研究を行っていただいています。具体的にはリスクコミュニケーションの手法を活用した地域保健医療福祉分野での原子力災害対策の実践的な活動の展開と、その検証に関する研究ということです。内容としては、平成 24 年度に同じ特別研究の枠組みで行われた欅田尚樹先生の研究を引きついで、それを更に発展させるものですが、具体的には、原子力災害からの回復期における保健医療福祉分野での放射線リスクコミュニケーションの手法を研究、開発するものです。具体的な成果として、保健医療関係者向けの研修ツールキットの開発、保険センター等での関連業務支援のモデルの提示などが行われることになっています。説明は以上です。

 

○宮村部会長 これについても、御質問、御意見、コメントなどがあればお願いします。

 

○黒木委員 日本中毒情報センターの黒木です。資料の 2 ページの特別研究。「化学テロ等健康危機事態における医薬品備蓄及び配送に関する検討」で分担研究もさせていただきました。また、 2000 年の九州・沖縄サミットで、首脳等に対する C テロ対応ということで、解毒剤を準備するといったところから、化学テロ対応の解毒剤備蓄に関して関わってまいりました。ようやく特別研究で、都市型モデル、地方型モデルができ、提言もしたところです。これから先は研究というよりも、より実効性を持たせて、予算も確得し、実際の配備体制を考えていかなくてはいけないと思います。

G7 各国の中で、日本だけが国家備蓄を持ちません。国家備蓄や地方備蓄、都道府県備蓄と、この 3 段階の備蓄を持っていないのは日本だけです。アジアの国でも、このような備蓄を持っている国があり、中毒コントロールセンターが中心となって検討しています。ですから、実際の配備をどうするか。予算をどうするかといったことを更に詰めて、是非、来年度は予算取りまで動いていただければと思っております。いかがでしょうか。

 

○山口健康危機管理・災害対策室長 御指摘、大変ありがとうございます。我々としても、オリンピックもこの先ありますので、こういったテロ対策というのは、更に非常に重要になってくると考えています。そういった中で、せっかくこういう研究をしていただいて、提言もしていただいていますので、そういったものを実現していくためにどうしていったらいいのか。夏の予算までに余り時間もありませんので、これからピッチを上げて検討を進めていきたいと考えております。

 

○黒木委員 あと、来年度が一番いいという理由がもう 1 つありまして、実は、 2000 年沖縄サミットの際に解毒剤を準備したときに、国内未承認で、海外から医師の個人輸入で取り寄せて準備したものがありました。それが、シアンに対するヒドロキソコバラミンと、セシウムやタリウムに対するプルシアンブルーと、メトヘモグロビン血症に対するメチレンブルー、メタノールやエチレングリコールに対するホメピゾールの 4 品でした。既にヒドロキソコバラミンとプルシアンブルーは国内承認されています。メチレンブルーとホメピゾールについても、今、承認申請中で、その段階まで来ました。日本中毒情報センターと日本中毒学会が一緒になって厚生労働省にお願いしてきた結果です。ですから、すぐ承認されていくと思いますので、是非、この機会を逃さないでいただければと思います。

 

○宮村部会長 とても大切なところで、そうすると、ここでリストアップされた解毒剤は、予算が認められれば、それぞれ十分な備蓄量はセオリティカルには可能なものになっているわけですか。

 

○黒木委員 はい。研究報告書のほうでは備蓄量の案として、どの薬剤を何人分という案は出しています。それが実行可能かどうか、また、配備体制なども含めて、少し検討を加えた上でとは思います。

 

○山口健康危機管理・災害対策室長 御指摘ありがとうございます。確かに、実際にどれだけの備蓄をどういう形でやっていくのかという検討を、かなり具体化した上で、予算の要求ということになっていくかと思いますので、更に内部で検討し、外部の有識者にも入っていただいて検討を進めていくことが必要になってくるのではないかと、今の段階では考えております。また、進め方については、いろいろと御助言を頂ければと思います。

 

○倉橋委員 関連なのですが、実際にこういう備蓄をする予算取りをして、自治体が備蓄するなどとなったときに、使用期限の問題があります。備蓄品の形態によっては、いわゆる市販品の流通等、使用期限を長く変更することも可能ではないかと思います。薬剤だけでなくて、消毒されている輸液維持関係の器具も含めて、材質を厚くするのか、どういうふうにすればいいのか、私は詳しくは分かりませんが、それなりの条件と、温度や湿度などの保存形態などの条件を基に、ある程度の期間を長期に渡って保存できるような、災害備蓄用の条件というものが、現在検討されているのでしょうか。もしされていないようでしたら、ある程度そういう形をとっていただいたほうがいいのではないかと思うのですが、いかがでしょうか。

 

○山口健康危機管理・災害対策室長 これも大変重要な御指摘かと思います。確かに使用期限というのは、薬事法の世界になってくるかと思いますので、なかなかこちらについては、来年すぐになどというスパンでというのは難しいと思うのですが、確かに、備蓄している上で、今後も更に使えるのに使用期限が来てしまうものもありますので、そういったものについて、どういう取扱いができるかどうか、担当部局とも議論をしていきたいと考えております。

 

○石井委員 こういう御検討は非常に有り難いと思います。我々日本医師会は JMAT というチームを作りました。それから、持ち運ぶ薬剤の基本リストを昨年作り、全国に公表したのですが、基本的に、医師会という所は医療機関ではないため、厚生労働省の制度では、医薬品を販売できないことになっているのです。医療機関を持っているのならいいのだけれども、医師会というのはそうではない場所です。医師会立病院や医師会運営のクリニックがあれば別なのですが。ですので、薬剤師会とコラボして、薬は薬剤師会のほうで備蓄してくださいと、いざとなったら一緒に動きましょうと、今、備蓄できない所はそういう形を取ろうとしているのです。

 問題なのは、こういう、いよいよ特殊な場合を想定して、基本薬剤プラスオプションの医薬品をどうやって備蓄していくということになるわけですが、基本的にこれは使わないほうがいい薬なのです。ほんの一部分、アトロピンやホリゾンなどはいろいろな医療機関でも使うと思いますが、そうでないものは、まずこういう事象がないと使わないものなので、医療機関や薬剤師会でもなかなか備蓄しにくいだろうと思います。

 したがって、これは行政中心ということになるのだと思いますが、問題は、この A 30 分以内と書かれると、例えば東京をイメージして、 30 分でロジスティクスで必ず運べる場所の範囲はどのぐらいの円で描けるかというと、なかなか大変だろうなと思います。 23 区でもとても済まない。ということは、それも複数考えていくとなると、本当に小分けに、だけど必要なときにはドカッと持ってくるというシステム論を作らなければいけません。まして、都会は都会で問題ですが、地方は地方で山 1 つ向こうではとても駄目だとなれば、どこまでの範囲で備蓄するかというシステム論は、これは実際に考え始めたら大変なことになるのではないかと思います。

 

○寺谷原子力災害対策調整官 ありがとうございます。薬の種類と実際の使い方によって、少し重層的に考えていく必要があると思います。この間、黒木先生にも御相談させていただいたのですが、海外などにおいても、備蓄するのは国レベルで持つべきものや公共団体で持つべきものもあれば、もっともっと地域に近い所で持つべきものもあるだろうし、あとは値段や使用期限なども考えつつということだと思います。非常に難しい作業なのですが、やはり今の状態が余り良くないのは確かですから、少なくともその中でやれることを考え、先生方に御意見を頂きながら、かつ、きちんと要求できるようなパッケージの案を作っていきたいと思っていますので、何とぞ御協力のほどをよろしくお願いいたします。

 

○宮村部会長 ほかに何かありますか。それでは、本日用意した議題は全て説明いただき、ディスカッションもいたしました。これ以外に何か報告事項等、委員の先生方からありますでしょうか。

 

○山本委員 今の 5 番目の議題でテロ対策などがありましたが、予防の観点も含めて、厚生労動科学研究で、食品防御の研究班が動いていることを情報提供しておきたいと思います。昨今のアクリフーズの関係もありますし、食品企業がそういう意識を持って対応するのはなかなか難しい面が多いのですが、早期の発見・探知ということも、やはり重要なことになってくるかと思います。そういうことになると、健康危機管理の対策室も動く必要がある場合が出てくるかと思いますので、その辺りのシステムを構築していくようにお願いしたいと思っております。よろしくお願いいたします。

 

○山口健康危機管理・災害対策室長 御指摘を頂き、ありがとうございます。担当部局と連携しながらしっかり対応できるようにしていきたいと思います。

 

○宮村部会長 平成 24 25 年度の厚生科学特別研究事業の話がありましたが、平成 26 年に関しては何か予定されているのですか。それと、これから独法ができて、これは厚生省プロパーの研究になるわけですが、そういう全体を見たときに、特別研究というものを今までのように臨機応変に作り上げていける環境にあるのでしょうか。

 

○宮嵜厚生科学課長 研究費全般については、先ほど山口からも御説明しましたが、医薬品や医療機器の開発の関係は、基本的に今審議されている新しい独法のほうで取り組みます。こちらの健康危機管理などでいろいろ実態を把握したり、あるいはマニュアルを作ったり、どういうふうに進めていったりという政策的なところ、危機管理的なところは厚労省の今までどおりのプロパーの研究費でやっていくような中で、本日も御説明させていただいたのですが、一番後ろの 2 つは特別研究という整理になっています。特別研究というのは、平成 24 25 年度もやっていますが、平成 26 年度は、特別研究としてはやるのですが、どの分野のどういう研究をやるかというのはこれからになります。というのは、特別研究は、先週に予算が成立しましたが、その段階では想定されていないような研究テーマについてある程度短期的というか、実質的には 1 年間ぐらいで成果が出るようなものについて、優先度の高いものから取り組むという仕組みになっていますので、何かいろいろ状況の変化が起こったとか、急に何か感染症のようなものがあって調べなければいけないなどという事態に、臨機応変に対応できるような形で特別研究のテーマを設定して、執行していくという形になりますので、平成 26 年度はこれからということになります。

 

○山口健康危機管理・災害対策室長 宮嵜課長からの説明のとおりですが、平成 26 年度に何かないのかと言われれば、アイデアは幾つかあります。またそれは全体の調整の中で対応ということになるとは思います。

 

○大友委員 まだ時間がありそうですので、また改めてお願いということになると思いますが一言申します。私どもの厚生労働科学研究班で、現在の 3 年か年計画のものの前の 3 か年の研究班の成果として、あらゆる災害拠点病院若しくは救急医療をアクティブにやっている病院が、その近くでテロが起きる、例えば化学テロ若しくはダーティーボムのようなテロの際に、汚染した患者さんが大量に発生する、それが直近の救急病院にたくさん運ばれてくる状況がある。それに対してどのような体制を組んで対応すればいいかということに関して、具体的にマニュアルを作り、必要な資機材や必要な設備などを全部整理しております。

 ですから、研究班レベルでは、もうやるべきことは全部まとめてあるのですが、実際に各病院がどうなっているかというと、その体制を整備するに当たって必要な予算が、各病院が自己努力で獲得しなければいけない状況になっています。現在、各病院それぞれ採算性が取れるか、取れないかぎりぎりのところですので、収益につながらないものに関してはなかなか予算を取れないということで、実態としては、テロによる汚染患者の受け入れ体制が整備できていません。このためそういうテロ事案が起きたときには、間違いなくテロ発生現場近くの病院は、汚染されて悲惨な二次被害になるという状況です。

 これに対して、厚労省としては予算取りをしていて、各病院に対して、約 600 万円の補助金が取れるようになっています。地方交付金の積算根拠となっているのですが、これが残念なことに、実際にこの目的に使うか、使わないかは各地方自治体の判断になってしまうので、積算の根拠になっているのだけれども、実際に病院に配付されない状況になっています。そこをもうちょっと具体的にうまい方法で、各病院がちゃんと体制整備できるようになるような形の予算の配分をしていただけると有り難いと思います。

 

○山口健康危機管理・災害対策室長 今の御指摘については、国のほうでせっかく補助金を使っても、それが地方自治体との協議の中で、実際にその自治体が負担してくれないということで使えないということなのかと思います。よく言う補助裏という話だと思いますが、こちらについては、自治体もやはり負担者として、それが必要かどうかを彼らとしての論理で判断するということになりますので、国としてなかなか口を出しづらい部分ではあるのです。

 

○大友委員 昔はドクターヘリの予算も、そうやって予算が配分されていたのですが実際には使われていなかったのです。各都道府県に 1 か所整備するということが固まってきたので、ああいうふうに実際に使われるようになってきたのですが、そういう工夫があればいいのではないかと思いました。難しいとは思いますが。

 

○山口健康危機管理対策・災害対策室長 思い付く点としては、当然、その事業の有効性や必要性を自治体にきちんと分かってもらうことが必要になってくるのだと思いますので、そこはまた、担当部局には申し伝えたいと思います。

 

○石井委員 その点でちょっと考えてみれば、病院の備えだけが万全でも、では警察、消防機関の要員がバタバタ倒れていて運べないという話ではどうしようもないので、それこそ、自治体が関わり、自治体ごとセットアップしていないと、これは病院だけ整備しても仕様がない。逆に言うと、病院ごと、自治体が全体を整備しない限り有効性はないので、そのように整備する形を取ったほうがいいと思います。

 

○大友委員 一応、サリン事件の後、消防と警察には大量の予算が投入されて、防護服もたくさん配備されていますし、内容に関しては私ども研究班でよりいいようにしていかなければいけないのですが、訓練も実施されていることになっています。ただ、消防が扱うのは被害者のうちのごく一部であって、大多数は汚染したまま消防の手によらず勝手に近くの病院に行ってしまうので、聖路加のときもそうでしたので、やはり各病院も、汚染患者対応に関しては、きちんとした備えが必要だと思っております。

 

○宮村部会長 ありがとうございました。本日の議事が終了いたしました。次回の開催は未定ですが、緊急に開催を要することがなければ、今までどおり年に 1 回程度、定例で開催したいと考えております。その際は、また追って日程調整等の御連絡をいたしますので、どうぞよろしくお願いいたします。本日はこれで閉会といたします。ありがとうございました。


(了)
<照会先>

厚生労働省大臣官房厚生科学課
健康危機管理・災害対策室 雨貝
電話:03-5253-1111(3818)

ホーム> 政策について> 審議会・研究会等> 厚生科学審議会(健康危機管理部会)> 第6回厚生科学審議会健康危機管理部会 議事録(2014年3月26日)

ページの先頭へ戻る