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2013年12月26日 第6回改正障害者雇用促進法に基づく差別禁止・合理的配慮の提供の指針の在り方に関する研究会 議事録

職業安定局高齢・障害者雇用対策部障害者雇用対策課

○日時

平成25年12月26日(木)
10時00分~12時00分


○場所

厚生労働省職業安定局第1・第2会議室


○出席者

【委員】山川座長、阿部(一)委員、阿部(正)委員、伊藤委員、北野委員、栗原委員、小出委員、塩野委員、武石委員、田中委員、富永委員、加藤代理、上條代理

【事務局】内田高齢・障害者雇用対策部長、藤枝障害者雇用対策課長、松永調査官、田窪主任障害者雇用専門官、境障害者雇用対策課長補佐、寺岡障害者雇用専門官

○議題

1.差別禁止指針について 2
2.その他

○議事

○山川座長

 ただいまから、第 6 回「改正障害者雇用促進法に基づく差別禁止・合理的配慮の提供の指針の在り方に関する研究会」を開催いたします。

 本日は、市川委員と本郷委員が御欠席ですけれども、市川委員の代理として加藤様、本郷委員の代理として上條様にお出でいただいております。武石委員は間もなく到着されると思います。毎回お願いしていることですけれども、御発言の際にはお手を挙げて、お名前を言っていただいてから御発言をお願いいたします。

 本日は、議事次第にありますように、前回に続きまして、「差別禁止指針における論点」について御議論をいただく予定になっています。前回の御議論を受けまして、事務局から前回の資料を修正した資料が提出されています。事務局において、一般社団法人全日本難聴者・中途失聴者団体連合会とヒアリングを行いました際に提出された資料と、前回研究会に伊藤委員から御指摘がありました事項に関する資料もありますので、併せて事務局から御説明をお願いいたします。

○障害者雇用対策課長補佐

 障害者雇用対策課長補佐の境です。よろしくお願いいたします。
 資料について御説明させていただきます。資料 1 です。今、座長からもお話いただきましたように、これは前回配布させていただきました資料について、前回の御議論を踏まえて修正したものとなります。修正箇所には波線を引いております。順次御説明いたします。
 2 ページを御覧ください。 2 「基本的な考え方」についての、【その他記載すべき事項について】の箇所です。この<第 1 回から第 5 回までの意見>の所の下 3 つのマルが意見として追記したものです。阿部(一)委員と田中委員から、一人の社員として受け入れることを指針に記載してはどうか、との御意見。北野委員から、義務ではないにせよ、「重要である」との文末を「求められる」に変えられないか、との御意見。伊藤委員から、職場の同僚を追加すべき、との御意見をいただきました。これらの御意見を踏まえて、「基本的考え方」に「障害者も共に働く一人の社員であり、事業主や同じ職場で働く者が障害特性に関する正しい知識の取得や理解を深めることが望まれる」と記載してはどうかと考えています。
 4 ページを御覧ください。「差別の禁止」についての項目についてです。<第 1 回から第 5 回までの意見>の下 2 つのマルです。伊藤委員から、職場復帰等について既存の項目で読めるとしても、別に項目を立てても良いのではないか、との御意見。山川座長から、指針の最終的な書き方については、指針の解釈等の問題、法体系的に不整合といった印象を与えていいのかといった点もあるので、更に検討する必要がある、との御意見をいただきました。これらの御意見を踏まえて、今後、既存の項目に沿って指針の具体的な記載を検討する際に、必要に応じて職場復帰等が含まれることを明確化してはどうかと考えています。

 5 ページです。【募集及び採用について】です。田中委員から、募集・採用において一定の能力の条件を付することが業務遂行上不可欠でないと差別にあたることについて、直接差別又は準ずる効果を持つもの等の表現を入れてはどうか、業務遂行上不可欠なものと認められない基準が設定された場合に差別的と推認すると思われるが、その場面でも必ずしも差別的意図がないこともあるので、救済の場面の問題と思われるが、障害者から申出があれば事業主が必要不可欠な条件であることの説明をすることが事業主と障害者の相互理解にも質する、との御意見をいただきました。

 北野委員から、企業は偏見を持っている場合もあるので、「あえて」という表現を落とすべき」との御意見。伊藤委員から、合理的配慮の提供を前提に条件を満たしているか否かを判断すべき、との御意見。栗原委員から、大企業では業務が限定できるかもしれないが、中小企業は 1 人がいろいろな仕事を担当し、業務を他の労働者に頼むことができないこともあるため、そのような違いも含めて判断すべき、との御意見。富永委員から、差別意図を考慮しないと、必要不可欠でない条件の場合は即差別となり、不合理である、との御意見。小出委員から、代表的なものを列挙してはどうか、との御意見。塩野委員から、差別意図について表現を工夫した形で入れるべき、との御意見。市川委員から、差別について主観が入ってくるので、事業主は説明すべき、との御意見。武石委員から業務遂行上不可欠という表現が、日本の現状に合っているのか、との御意見。山川座長から、間接差別そのものを盛り込むという御意見では必ずしもなく、現行法の下で障害を理由としてということをどう考えるかという点は共通している。業務上の不可欠さも会社によって状況が異なることは共通の理解となっている、との御意見。市川委員から、簡単な暗算等を例示に出すのは適当でないとの御意見をいただきました。

 これらの御意見を踏まえて、四角の中の 1 つ目のマルですが、趣旨を明確化する観点から、一般求人において、障害者は正社員にはしないというような対応を行うことが差別ということが分かるような修正を行いました。
 2
つ目のマルでは、市川委員の御意見を踏まえ、単に「一定の能力を有すること」としました。また、企業によって状況が違うことを踏まえて、「当該企業において」との表現を追記しました。更に、「業務遂行上不可欠」の表現について、既存の法令の用例を調べましたところ、「業務遂行上特に必要」との表現のほうが一般的でしたので、「業務遂行上特に必要」との表現に修正しました。
 3 つ目のマルですが、「あえて」の表現について、「障害者を排除するために」と修正しました。そのうえで、一定の条件に関しては説明が重要であること。元来、一般求人であっても、障害者専用求人であっても、事業主は求人内容について問合わせがあれば、その内容について説明していると考えられますことから、 4 つ目のマルとして、「なお、応募しようとする障害者から求人内容について問合わせ等があった場合は、事業主が説明することが、事業主と障害者の相互理解の観点からも重要であるので、その旨を指針に記載してはどうか」を追記しました。
 6 ページの下の四角ですが、これは上の箇所との表現ぶりを合わせた修正を行っています。
 7 ページです。【差別に当たらない事項について】、<第 1 回から第 5 回までの意見>、下の 3 つのマルです。北野委員から、合理的配慮は、基本的に平等な取扱いをするために行うものではないか、との御意見。それに対し、富永委員から、合理的配慮を提供し労働能力を適正に評価して、合理的配慮を受けていない人に比べて違っていた場合に、その結果として異なる取扱い、それに応じた取扱いをすることは問題ないのではないか、との御意見。本郷委員から、障害の状況等の確認は合理的配慮の提供のみに限定されないのではないか、との御意見をいただきました。これらの御意見を踏まえて、 8 ページ、四角の中の最後のポツですが、「合理的配慮を提供するためなど雇用管理上必要な範囲で、プライバシーに配慮しつつ、障害者に障害の状況等を確認すること」と修正させていただきました。

 参考資料 1 について御説明させていただきます。これは一般社団法人全日本難聴者・中途失聴者団体連合会から、今回の指針に関するヒアリングを事務局において行った際に、同団体から御提出していただいた資料です。その内容について簡潔に御紹介させていただきます。

 「差別禁止」については、募集・採用時の差別の具体例として、募集条件にその職務との関連性を明確にすることなく、「電話が出来ること」、「接客が出来ること」等といった状件を付けることや採用面接時に「情報保障・コミュニケーション支援」など応募者が求める必要な配慮を用意しないことなどを挙げています。また、採用後の差別の具体例としては、就労後の処遇について、障害者を職務評価に係らない差異を付けることや、会議等において磁気ループや要約筆記等の情報保障・コミュニケーション支援を行わないこと等を挙げています。そのほかには、就労後障害を持つ中途障害者の問題に留意すべき、との御意見をいただいています。

 次に、「合理的配慮」のパートです。募集・採用時の合理的配慮の具体例として、会社説明会などにも必要な情報保障を準備すること、などを挙げています。採用後における合理的配慮の具体例として、筆談、要約筆記の手話通訳など多様な場面に合わせた方法を取ること、補聴援助システムや拡声機能付き電話、電話リレーサービスの利用を整備すること、職場の朝礼・会議などでは、極力事前資料を配布することなどを挙げています。

 「相談体制の整備」については、相談体制に問題解決のコーディネーター、スーパバイザーの役割を与えることや学校、医療機関等のチーム対応で構成すること、といった御意見。相談することによる不利益取扱いが起こらないようにすること、といった御意見をいただいています。簡単ですが、以上です。詳細については、資料を御確認いただければと思います。

 参考資料 2 です。前回の研究会において伊藤委員から最低賃金の減額特例制度について御質問があったものです。減額特例制度については、斉一的に運用するための許可基準が定められています。具体的には、 2. 許可基準になります。マル1精神又は身体の障害がある労働者であっても、その障害が当該労働者に従事させようとする業務の遂行に直接支障を与えることが明白である場合のほかは許可しないこと。マル2当該業務の遂行に直接支障を与える障害がある場合にも、その支障の程度が著しい場合のみ許可すること。この場合、支障の程度が著しいとは、当該労働者の労働能率の程度が当該労働者と同一又は類似の業務に従事する労働者であって、減額しようとする最低賃金額と同程度以上の額の賃金が支払われているもののうち、最低位の能力を有するものの労働能率の程度にも達しないものであること、とされています。

 「減額率の算定方法」は、裏のページになりますが、 3. 減額率の算定方法となります。精神又は身体の障害により著しく労働能力が低い方の減額率については、使用者からの申請に基づき、労働基準監督署の労働基準監督官が事業場に赴き、マル1減額対象労働者と比較対象労働者の労働能率を、作業の実績により数量的に把握し、減額率の上限を算出の上、マル2減額対象労働者の職務内容、職務の成果、労働能力、経験などを把握し、これらを総合的に勘案して定めることとしています。なお、許可件数は、 4 .減額特例の申請・許可件数ですが、平成 24 年は 5,965 件となっています。許可件数が申請件数よりも大きくなっていますが、これは当該年に申請があった件数、許可した件数を機械的に集計したことによるものです。例えば平成 23 年の年末に申請したものは平成 23 年の申請件数に含まれる一方、許可が平成 24 年に行われた場合、許可件数は平成 24 年に計上されるといったことが起こることなどが理由です。

 事務局からの説明は以上です。

○山川座長

 ありがとうございました。事務局から説明がありましたが、委員の皆様方から御質問、御意見がございましたらお願いいたします。田中委員、どうぞ。

○田中委員

 日本盲人会連合の田中です。いろいろと修正の御努力を頂きましてありがとうございました。 2 点ほど意見を申し上げます。
 1 点目は項目の整理についてです。前回、座長からもありましたように、あまり大きな修正になるとほかの法律との整合性が乱れることもありますので、基本的にはこの案に賛成ではあります。が、やはり漏れがないようにという意味では、最後に、その他の労働条件というような項目を入れて、全て網羅されるということを考えてもいいのではないかと思います。
 2 点目は、差別について、募集・採用時にしろ、採用後にしろ、例えば条件の設定や異なる取扱いについて、それが特に業務遂行上の必要かどうかという判断になると思います。判断者は恐らく労働局長と第三者が判断されると理解していますが、そこまでいかなくても、できれば企業と障害者との話合いの中で必要ない条件や異なる取扱いについては改善していくという方向が一番良いのではないかと思っています。

 具体例をお話したいのですが、例えば採用条件に「電話対応可能な者」という条件が付されていたとする。その場合、これが業務遂行上、特に必要だという場合も十分に考えられます。特に中小企業の場合にはあると思います。が、業務遂行上必要でない場合であっても条件が付されることがあります。これは、特定の障害者が排除されるなどといったことにかかわりなく、何となく付いている場合もあります。そういう場合は、応募しようとする障害者から恐らく問合せがあると思います。そのときには、企業の事情も十分に検討された上で、付された条件の削除について前向きに障害者と協議するといった方向を示していただきたいと思います。以上の 2 点です。

○山川座長

 ありがとうございました。差別の禁止の項目の記載の仕方、それから、事業主の説明の位置付け、問合せがあった場合には説明を受けて対応を当事者間で検討することも考えられるといった御意見でした。ほかに、御質問、御意見はございますでしょうか。では、上條委員。

○本郷委員 ( 上條代理 )

 本郷委員の代理で出席している上條です。前回の本郷委員の意見を取り入れて修文いただきましてありがとうございます。修文いただいた 8 ページの一番下の 4 つ目のポツについて、この確認のイメージですが、まだ、採用した後の合理的配慮を提供するためのみというように受け取れてしまうのではないかと感じています。しかし、実際はまさに採用選考のときにも、仕事として何をしていただけるかを考えるときに、その方の能力や適性を判断するため、選考のための材料としても障害の状況を確認することが必要だと思います。これを明確にするために、例えば、「障害者専用求人の採用選考又は採用後において」という文章の後に、「仕事をする上での能力や適性の判断や合理的配慮を提供するためなど」などの言葉を入れていただくと、その辺が明確になるのではないかと思います。御検討いただきたいと思います。

○山川座長

 ありがとうございました。 8 ページの、障害の状況等を確認することについて、例示を更に加えてはどうかという御意見だったと思います。先ほどの田中委員の御意見も踏まえて、事務局として何かございますか。

○障害者雇用対策課長補佐

 課長補佐の境です。まず、先ほどの項目の件について、ここの修正の意図は、そもそもの話として、どのようなものが差別になるかの具体的なイメージがある中で指針は規定していくべきだと思っています。今後、具体的な指針の記述を検討する際に、どのようなことが考えられるのかを考え、それに応じて項目、記述を決めるのだと思っています。今の項目では明らかに読めないようなものがあるのか、ないのか、そういったことについても御議論を頂いて、実際の指針の記述を考えることにしてはどうかと考えています。

 企業と労働者の話合いが大事ということでしたが、例えばハローワークの障害者の求人であれば、ハローワークでも求人の内容・条件について必要な助言などもできるようになっています。事業主と障害者との間で、例えばハローワークが間を取り持つことも考えられると思います。
 8 ページの修正案について、ここはどこまで具体例を書くかということなので、御議論いただきたいと思います。ここでは雇用管理上としていますが、雇用管理というのは、一般的には募集・採用から在職中の処遇、退職に至るまでの雇用に関する一連の管理のこととされていますので、ここは雇用管理の中に、当然、募集・採用の段階も含まれるのではないかとは考えます。また、合理的配慮を提供するためということは、実際の募集・採用時において、この方はどのような合理的配慮をすることが必要なのか、その段階で恐らく検討が入るのではないかと考えます。そうなりますと、その合理的配慮の提供を考えるに当たっては、その方が実際に何ができるのか、今どのような状態にあるのかを把握することが大前提になると考えていますので、今の案でもそういったことは意識した文章です。ただ、明確化、分かりやすさの観点から更に表現の追記が必要かどうかについては御議論いただきたいと思います。

○山川座長

 今の回答も含めまして、更に御質問、御意見がありましたら、お願いいたします。伊藤委員、どうぞ。

○伊藤委員

 業務遂行上の不可欠に関して、田中委員からも御指摘がありましたが、この中の議論でも、中小企業などでは必須業務とその周辺業務を分けられないという話もありました。業務遂行上不可欠の判断は、それぞれの企業によって考えなくてはいけないことも多分あると思いますが、裸でそれを企業に委ねるのは少し心配なところがありますので、例えば他の従業員がどれぐらい周辺業務までやっているのかなど、そういったことも考慮した上で判断するということも例示として挙げることが必要なのではないかと思います。

 別の意見や質問でもよろしいですか。

○山川座長

 はい、どうぞ。

○伊藤委員
 2 つあります。まず、修文はされていませんが、前回質問しました定義の所です。障害者雇用促進法と障害者基本法の定義については、同じ概念であるという説明を頂いていますので、そのように理解したいと思います。そうだとすると、今般の障害者基本法の改正により社会的障壁まで含めた定義付けになっていると思いますので、その意味でも、障害者雇用促進法における障害者の範囲は同じ概念であるという理解をしてよいということを確認したいと思います。合理的配慮との関係が出てくると思いますし、もう一度、そこを教えていただきたいと思います。

 もう 1 つは、本日の資料で、最賃の減額特例の取扱いについて説明をいただきありがとうございました。現場を監督官が訪問して、 3. にあるような判断をしているということなので、判断の基準に基づいて事業主からの申請と結果としてほぼ同じぐらいの件数の許可が出ているのだろうと思います。 8 ページに、採用後で差別に当たらない事項として指針に記載してはどうかという 4 点が出ており、その 2 点目に、「合理的配慮を提供し、労働能力等を適正に評価した結果として異なる取扱いを行うこと」は差別に当たらないというのがあります。この「労働能力を適正に評価した」というのは事業主がそれぞれ判断することになります。それが障害当事者の納得性の点で問題が出るとよろしくないので、行政機関の判断基準を示すといったことが必要なのではないかと現時点では思います。その辺について、どのように対応することが考えられるのかを説明していただきたいと思います。

○山川座長

 では、北野委員、お願いします。

○北野委員

 今の伊藤委員の意見とよく似ていますが、追加として幾つかお話します。
 1 つ目は、 2 ページに、いろいろな方の意見を入れて修正していただきましたが、私からは、「重要である」というよりは、むしろ、理解を深めることが「求められる」という言葉に変えてほしいと申しましたが、「求められる」ではなく「望まれる」という表現に変えていただいています。「求められる」というのは義務ではないけれども、かなり強い表現だったつもりなのですが、それが「望まれる」と変えると、かえって「重要である」という表現よりも弱まってしまう可能性もあります。元の「重要である」に戻していただくほうがまだましではないかと思います。
 2 つ目は、まさに伊藤委員がおっしゃったように、 3 ページの障害の定義の部分です。 2 つ目のマルに「同じ概念である。」と書かれていますが、障害者基本法も差別解消法も、それぞれ第 2 条の定義で「心身の機能の障害がある者であって、障害及び社会的障壁により継続的に社会生活において相当な制限を受ける者を対象とする」と、差別解消法も障害者基本法も明確に書いています。ここは明確にそう書いておかないと、異別取扱いや合理的配慮の不提供が差別であるという法的な根拠は、まさにこの社会的障壁というものがあって差別や合理的配慮の不提供が問題であることになっていますので、ここは明確に「社会的障壁」という表現を入れておかなければ合理的配慮の根拠性を失うことになります。ここは明確に表現を入れるべきであると思いますので、検討をよろしくお願いしたいと思います。
 3 つ目は、 3 ページの、間接差別の部分です。よく読んでみて、少し気になったことが 1 つあります。マル2の「直接差別に当たらない事案についても合理的配慮の提供で対応が図られると考えられることから」とあります。そういう場合もありますが、合理的配慮によっても間接差別が修正されない事例もあり得ると思います。この表現では全て図られてしまうと読めますので、「直接差別に当たらない事案についても、合理的配慮の提供で対応が図られる場合もあると考えられる」と、「場合がある」という表現を入れておかないと、全てと読まれてしまうと、ここは難しいだろうと思います。「場合もある」という表現を入れていただきたいと思います。
 4 つ目は、 4 ページです。これは、私からも、日身連の方も、伊藤委員もおっしゃっていましたが、特に精神の場合には、精神的な疾患を持たれて一旦休職されて、後で職場復帰される場合というのは非常に大きな問題なので、特段の配慮をお願いしたい、と前回申し上げました。職場復帰に関しては、確かに合理的配慮の問題だと言われてしまうと、合理的配慮は大事なのですが。今回はあえて新しい項目は作らずに、配置や応募及び採用で中に組み込むことができるとおっしゃいましたが、もし可能であれば、職場復帰に関しては、あえて新しい項目として起こしていただきたいと思います。これは特段の御配慮をお願いしたいというのが、みんなねっととしての思いです。

 最後に質問です。私の理解が乏しくて、よく分かっていないのですが、 8 ページの、 4 つのポツの 2 つ目の「合理的配慮を提供し、労働能力等を適正に評価した結果として異なる取扱いを行うこと」というものと、 3 つ目の「合理的配慮の提供の結果として障害のない者と異なる取扱いを行うこと」との意味の違い、どう違うのかについて説明していただきたいと思います。

○山川座長

 先ほど手が挙がったと思いますが、阿部 ( ) 委員、どうぞ。

○阿部 ( ) 委員

 日身連の阿部です。議論のときに、障害者専用求人の話なのか、又は、一般求人の話なのか。一般雇用の話なのか障害者雇用の話なのかが交錯して、なかなか理解が難しいときもありますので、その辺を整理していただきたいと思います。両方に共通することもあると思いますが、その辺の議論を深めることも大事だと思います。特に文章を整理するときには分かりやすくしていただきたいと思います。

○山川座長

 ありがとうございました。今まで、様々な御意見、御質問を頂きました。伊藤委員からは、障害者の定義に関して、また、最低賃金の判断基準を指針の中に活かすことができるかどうかという、これは御質問も兼ねてのものだと思います。それから、御意見として、 7 ページの、業務上の必要に関して例示を加えてはどうかという点でした。北野委員からは、障害者の定義について、特に社会的障壁との関係に関する御意見だったと思います。それから、 2 ページの「望まれる」というのはむしろ「重要である」に戻していただきたいということ。また、間接差別との関係について、意見書の表現に関わることかもしれませんが、合理的配慮の提供で対応が図られる「場合もある」ということではないかという御意見。職場復帰に関して、特に項目立てができないかということ。さらに、 8 ページで、「合理的配慮を提供して、労働能力等を適正に評価した結果として異なる取扱いを行うこと」と「合理的配慮の提供の結果として障害のない者と異なる取扱いを行うこと」の違いをどう考えるかという御質問。これらが主な事項だったと思います。御質問に関わることについて事務局から何かありますか。

○障害者雇用対策課長補佐

 課長補佐の境です。まず、定義については、前回も御説明いたしましたとおり、差別解消法や障害者基本法、障害者雇用促進法、いずれも心身の機能の障害がある者であって継続的に社会生活等において相当な制限を受けるということで、ここは同じものとしています。それは、今回の法改正の議論でもそういう説明をしてまいりました。社会的障壁について、これも結局、障害というものが 1 つの起因になっていますので、そこも含めて同様であると理解しています。

 伊藤委員からの、適正な評価の事例については、これはどのようにというのは、なかなか難しいと考えています。例えば賃金であれば、恐らく賃金の評価とか評価基準のようなものがあると思うので、そういった評価基準に従って行っていただくことがまさに適正だと考えています。ここで、そういったことをどこまで網羅的に書けるのか、事例を書けるのかは難しい問題もあると考えています。裏を返せば、適正でない、障害者に限って何らかの低いことをやっていることがあれば、それは適正ではないということになると思います。具体例として適切なものがあるとして御意見が一致することがあれば、当然記載すると思いますが、そこは御議論いただきたいと思います。

 北野委員からの、間接差別については、おっしゃる趣旨は分かりますが、これは分科会の意見書の記述そのものです。この意見書はこれで合意されて確定したものです。当時、御議論いただいた際に、合理的配慮の提供で対応できないことはあるのだろうか、という議論をしましたが、そのときにはいい例がなかったということです。ただし、そのときになかったからと言って未来永劫あり得ないかというと、そういうことではないので、その後の事例収集等で、やはり合理的配慮では対応できない場合があるということがはっきりしてきたら、いわゆる間接差別の規定の必要性について改めて議論するということになっています。表現がなかなかというところはあると思いますが、北野委員の問題意識に沿った記述ではないかと考えています。
 8 ページの、「合理的配慮を提供し、労働能力等を適正に評価した結果として異なる取扱いを行うこと」について単純化して申し上げますと、何らかの配慮をして、同じようにある業務ができるようになり、例えば、その人が作った個数に応じて賃金を払うようなことがあったときに、同じようにその個数を作る条件までは整えた。その後、例えば時間当たり 10 個作った、 20 個作ったといったことは、労働者によって差が生じると思います。そうなったときに、 10 個できたのだからそれに応じた賃金、 20 個だから 20 個に応じた賃金ということがあると思います。これは、実際にその方が出した成果に基づく賃金なので、それを差別と言うわけにはいかないということをイメージしています。

 次の、「合理的配慮の提供の結果として障害のない者と異なる取扱いを行うこと」については、合理的配慮の議論を先取りして申し訳ないのですが、事例として、研修をするに当たって、知的障害者の方などはやや時間を多く取るとか、理解のスピードに応じて研修を行うことも合理的配慮ではないかという御意見があったと認識しています。

 そう考えますと、合理的配慮をすると、障害がない方は 3 日間の研修でやるとなったものを、知的障害者には理解のスピードに合わせて合理的配慮として 5 日間やりましょうというようなことが想定されると思います。実際の研修期間が、障害のない方には 3 日、知的障害者の方には 5 日となると、 3 日と 5 日という異なる取扱いにはなっています。それを、なぜ知的障害者だけ 5 日もやらせるのかなど、そういったことを差別と言われると事業主としては非常に困ります。あくまでもその方が理解するためにあえて長く時間を取ったにもかかわらず、それを異なる取扱いだから差別と言うのはいかがなものか、という問題意識で御意見があったと理解しています。そういう意味でここの文章を書き分けています。

○障害者雇用対策課長

 補足をよろしいでしょうか。課長の藤枝です。伊藤委員からありました最低賃金の関係で補足いたします。前回も御指摘いただきまして、本日資料で説明いたしましたので繰り返しになって恐縮です。最低賃金の減額特例というのは、最低労働条件たる最低賃金制度の中で、どういった基準で例外を作るかという観点で減額率の算定方法が定まっています。あくまでも最低賃金制度の例外を作るときの減額の考え方として、ここでは、減額率の算定方法の※ 1 に「従事する作業の実績により数量的に把握することとしている」と書いています。これは労働基準局に確認したところ、実際に監督官が現場に入り、例えば製品の数について、一定の時間に作れる数を比較可能なほかの方と比べて能率を計算して、それを基に減額率を算定しているということでした。ですから、こういった数量的な把握の仕方も大きな意味での能力評価の 1 つの手法でもあるかもしれませんが、あくまでもこれは最低賃金法の例外を定めるときにこういったやり方をしているということであって、各企業においては職業能力の評価はいろいろなやり方をされていると思います。

 この研究会の趣旨としては、各企業での能力評価の取扱いについて、当然、合理的配慮を提供した上での評価については、健常者と合理的配慮の提供を受けた障害者との関係で差別的な取扱いのないようにということです。減額特例の算定方法は例として、 1 つの例とはなるかもしれませんが、そういう位置付けとして捉えていただきたいと思います。

○山川座長

 ありがとうございました。回答、説明のあった点につきまして更に何かございますでしょうか。先ほどの阿部 ( ) 委員からの御意見は、一般求人・専用求人それぞれどういう場合に使われるのか、あるいは共通して使われるものなのかというのは、今回一部訂正しましたが、全体として洗い直すと言うか、分かるようにしてほしいということでしょうか。

○阿部 ( ) 委員

 議論の中で、両方とも兼ねる場合もあれば片方だけのこともあるのかどうかということを確認したいと思います。

○山川座長

 ありがとうございました。では、事務局からの説明等がありましたが、その点について何かございますか。では、田中委員、どうぞ。

○田中委員

 日本盲人会連合の田中です。先ほど北野委員からの質問があった点に関連しての確認です。事務局の説明では、雇用促進法上の定義は、障害者基本法あるいは差別解消法と同様だということですが、「社会的障壁」という言葉が入っていない場合に何が危惧されるかというと、例えば難病の方でこれから症状がどんどん重くなっていくといった場合に、現時点では業務遂行上特に困難さなどは生じていないわけです。しかし、難病に罹患していることによって、障害に対する無理解とか偏見によって排除されるなどということも考えられなくはない。そこを少し心配しています。そういった場合であっても、雇用促進法の定義規定から「障害者」に当たるのだという理解でいいのかという点について確認させていただきたいと思います。

○山川座長

 では、境課長補佐。

○障害者雇用対策課長補佐

 課長補佐の境です。差別解消法などもそうですが、基本的には、障害があり、社会生活等において何らかの制限を受けているということは共通ではないかと考えています。難病の方も当然症状の進行によって何らかの制限等が出てきますと障害者に該当します。基本的には、どの条文にも制限というものが概念として入っていると理解しております。

○山川座長

 よろしいでしょうか。制限は入っているという説明でしたが。

○田中委員

 そうですね。特に、この場で詰めて考えたいというわけではありませんが、例えば難病の方で、現時点では症状が出ていない場合には、差別解消法等では心身の機能の障害はあり、かつ、偏見等によって排除されることになれば、観念ということになりますから、社会的障壁にも該当する。したがって、そういう場合にも障害者に該当するのです。しかし、雇用促進法の場合、「社会的障壁」という言葉がないので、偏見等、ものの考え方で排除されても障害者に該当しないわけです。職業生活上、著しく困難だということがないと、障害者に該当しないことになると若干ずれるのです。そこを少し心配しているのです。少し分かりづらいかもしれないので、もう少し考えてから質問します。

○山川座長

 どうぞ、境課長補佐。

○障害者雇用対策課長補佐

 基本法の定義を読ませていただきます。「身体障害、知的障害、精神障害 ( 発達障害を含む。 ) その他の心身の機能の障害がある者であって、障害及び社会的障壁により継続的に日常生活又は社会生活に相当な制限を受ける」ということですので、やはり、継続的に日常生活、社会生活に相当な制限を受けるということは、基本法においてもそこは必須条件になっています。そこの細かいニュアンス等については別途また確認させていただきたいと思います。

○山川座長

 北野委員、どうぞ。

○北野委員

 田中委員がおっしゃっていることについて、私も同じですが、今回、「社会的障壁」という言葉を障害者基本法や差別解消法に入れた理由は、こういうことなのです。例えば、就労は社会生活の大切なことですが、あなたは障害者だからこの仕事はできないだろうという理由で、直接差別された。そのことによって、実際にはそのことが可能であるのに就労から排除されることによって社会生活に相当な制限を受けるわけです。

 今回ここで言っているのは、いわゆる心身の機能だけではなく、差別ということによって社会的な生活に相当な制限を受けることもあり得るから、わざわざ「障害及び社会的障壁」という言葉を入れたのです。そこは明確に理解していただきたいと思います。それをなくすために今回この議論をしているのですから、当然これは障害及び社会的障壁が前提であることは分かっているのです。あえて言うのは、根拠として「社会的障壁」という言葉を入れておかないと根拠性が弱いのではないかということを今は議論しているのです。

○山川座長

 境課長補佐、どうぞ。

○障害者雇用対策課長補佐

 課長補佐の境です。そこも含めて同じであると説明していたのですが、私の説明が悪く、申し訳ありません。障害者雇用促進法においては、「障害があるため」と書いています。ですから、障害がある者が障害がある者にとって職業生活を営む上での社会的障壁により職業生活の相当の制限を受ける場合も含まれると解釈しています。社会的障壁というのは一方で機能の障害があっての社会的障壁なので、「障害があるため」の部分で、社会的障壁に起因するものも読むことができるという解釈の下に、同様であるという説明をいたしました。その点、私の説明が的を射ず申し訳ありませんでした。趣旨としては、いずれにせよ、そういったことも含めて、この条文では読めるということです。そこは私の説明の不十分さであったと思います。申し訳ありません。

○山川座長

 では、小出委員。

○小出委員

 育成会の小出です。障害者基本法の中に、社会的障壁とは何ぞやということで 4 項目ほどあります。事物やハード的な面もありますが、慣例・慣習や概念があえてその 4 項目の中に入っています。これを「社会的障壁」という丸めた言葉にせず、具体的なことを示すことが、雇用主はじめ一般社員の方々に対しても、「こういうことが障害のある人にとって障壁になるのだ」という、それが日常生活においていろいろな制限になるのだということを明記する。ガイドラインとして本文の中に入れないまでも、社会的障壁にはこういう 4 項目があって、こういうことだということを、注釈のような所に列記するぐらいのことをしていただきたいと思っています。

○山川座長

 どうぞ、境課長補佐。

○障害者雇用対策課長補佐

 課長補佐の境です。まさに社会的障壁を取り除くために行うものが合理的配慮であると理解しています。ですから、障害者雇用促進法上は、合理的配慮について、「職場における何らかの支障を改善するための措置」と書いていますが、そういった支障となるものがまずあって、そこから合理的配慮をするという考え方になります。恐らく、合理的配慮が何かということを御議論いただく際に、それがなぜ必要なのか、それは何らかの具体的な支障を改善するために措置をするのだという考え方になると思われます。そこは、合理的配慮の配慮の措置の内容ともセットになってくる議論ではないかと考えます。ここは雇用分野ですので、雇用分野での合理的配慮の考え方のところで、まず、そもそもどういった配慮が必要か、それはなぜ必要なのかということも議論になると思いますが、そういった中で御議論が明確化するのではないかと考えています。いずれにせよ、今の点については今後また御議論いただく中で検討したいと考えています。

○山川座長

 どうぞ、藤枝課長。

○障害者雇用対策課長

 度々すみません。 3 ページの上の括弧の中ですが、これは確か第 1 回にも同じような議論を頂いて、それを踏まえて書いています。境から説明したとおり、我々も当然、同じ概念の下に、障害があることを理由として職業生活に相当の制限を受けることをもって、法律上は当然同じ概念と考えてよいということを法制局とも整理しましたので、法律上はこうなっています。概念は障害者基本法と同じだということを我々としてもきちんと鮮明にしなければいけないという御意見を頂きましたので、この括弧書きの中で、「なお」として、「同じ概念である」と書いています。我々としては、御意見を踏まえて押えたつもりです。また最終的な書き方のときに検討はしなければいけないと思いますが、ここで考え方、概念は押えたつもりです。

○山川座長

 ありがとうございました。この指針自体は障害者雇用促進法に基づく指針ということですので、あくまでそれがベースになるということです。解釈上は「社会的障壁」という言葉は使っていませんけれども、偏見や先入観も含めて心身の機能の障害があるためというところの解釈として、同じような把握になると理解しました。先ほど小出委員からもありましたが、指針なり研究会報告なりの最終的な出来上がりのイメージとも関わる問題かと個人的には思っています。つまり指針だけを社会に向けて明らかにするのか。それに加えて考え方や例示を挙げてはどうかなど、様々な御意見がありますけれども、考え方や例示等も含めて指針にプラスアルファする形になるか、あるいはその前提になる研究会報告の中でどう説明するのか。そのあたりをまとめてお考えいただくことになるのではないかと思っています。そういう方向も含めて御検討いただきたいと私としては思います。何かこれまでの点で更に御質問、御意見はございますか。

○塩野委員

 塩野です。今回、お示しいただきました資料につきまして、意見を 2 点と、事務局への質問を1点させていただきます。まず意見ですが、 4 ページにある「差別禁止」の項目ですけれども、今回の項目は均等法の指針を踏まえたものであり、事務局案にありますように、今後、具体例を記載していく過程の中で、必要であれば対応するということでよいのではないかと思っています。
 2 点目ですが、 6 ページの差別禁止のところです。今回の案で「業務遂行上不可欠」という言葉を、「業務遂行上特に必要」なものと変更していただいています。これは既にある法令に使われている用語ということなので、新しい用語を使うと企業の現場では判断で混乱することも考えられますので、こういう既存の言葉に変えていただいたのは妥当ではないかと思っています。

 最後に、 6 ページの求人内容の問合せについて質問させていただきたいと思います。現在、企業においては求人内容について問合せがあれば、当然、それに対してお答えしていると認識していますけれども、この問合せの内容というのはどの程度のものを想定されているのか確認させていただきたいのと、もう 1 つ、事業主が説明するとありますけれども、これは例えば何度も説明を求められるようなことまで想定されているのかについて、事務局にお聞きしたいと思います。

○山川座長

 境課長補佐、どうぞ。

○障害者雇用対策課長補佐

 この問合せの内容ですが、例えば何らかの条件が付されていた場合に、その条件というのが、業務との関係でどういった業務をしなければいけないのかの確認があると思います。正しく何を求められているのかといったことの確認の中で、どういったことができなければいけないのかという話にもなりますので、通常、これは障害のない方であっても、業務内容を自分が本当にできるかどうなのかという確認はあると思いますので、障害者だからということでなく、いわゆる業務内容とか、どういったことをしなければいけないのか確認することがあるのではないかと考えています。

 何度もというところですが、これは正直、個別ケースに応じるところはあろうかと思いますけれども、通常、一般的に見て事業主のほうから誠実にお答えいただいているときに、それを更にといったところまで一般的には求められないのではないかと考えています。

○山川座長

 ありがとうございました。よろしいでしょうか。伊藤委員、どうぞ。

○伊藤委員

 先ほど最賃の減額率のところの説明をいただき、おっしゃるとおりこれは 1 つの方法ということで、事業主のところでそれぞれの評価の仕方があるのだと思います。合理的配慮を含めて、そこは適正に評価するべきなのだという御説明だったと思います。それは理解したいところですが、適正に評価というときに、それが適正かどうかということは、多分、どこまでいっても心配になるところだと思います。それはもしかしたら障害者についての問題だけではないことかもしれません。でも、ここは障害者の雇用の差別がないようにするための指針を検討する場ですから、障害者ということであえて意見を言います。評価を本人が納得できるように、少なくとも説明責任は果たされることが必要だと思います。適正な評価をしたという説明がきちんと本人に果たされることがなければ、逆にそれは差別なのだということも含めて必要だと考えます。

 それから、北野先生が御指摘になった 6 ページの 3 つ目の○です。「あえて」が消えていて、その後に「障害者を排除するために条件を付していると判断されるときは」とあり、「障害者を排除するために」という目的が入っているわけです。差別の意図を問うと、どうしても判断が入ってくるというか客観性が確保できなくなる可能性がありますので、心配だと思っています。男女雇用機会均等法の指針のほうでは、差別の意図の有無にかかわらずということが、逐条解説の中で出ていたりして、そこは差別の意図は問わないのだということですので、それは分かりやすいと思います。こういう「あえて」とか「障害者を排除するために」というのが入ることで、その意図がある場合のみと読めるということは、依然として本当は意図はなかったのですということで逃れられる問題があると思いますので、このように目的を書く形にしないことが一番望ましいと私は思っています。

○山川座長

 ありがとうございました。 2 点、最賃との関係で能力評価の在り方についての御意見、それから、 6 ページの「障害者を排除するために」という書きぶりについての御意見でした。栗原委員、どうぞ。

○栗原委員

 栗原です。今の除外申請の件でお話をさせていただきたいと思います。誰も最初から除外申請をする経営者はいないと私は思いたいですね。ただ、健常者も同じだというお話もありましたが、確かに長い間雇用されて、例えば 20 代、 30 代はよかったけれど、 40 代、 50 代になるとだんだん体力が落ちてくる。そうすると 1 日のうち短時間であれば全然問題ないけれど、長いスパンだと体力的なことで生産性やいろいろなものが落ちてくることもないわけではない。聞いた話ですけれど、例えば監督官の方が調査に来られて、この人はほかの人に比べて体力が落ちてきたので、減額申請をしたいという話をして見ていただいたときには非常に頑張る。そうするとほかの人とあまり差がないから、この人は全然問題ないですねと言ってお帰りになる。ところが、 1 日のスパンで見て 1 か月やっていってほかの人と比べると差が出てくる。そういうことがあるという話も聞いています。

 手前味噌になりますけれども、うちは 10 代から 60 代まで 36 名いて 1 人も減額申請はしていません。これは私の考えでもってやらない。ただ、本当に全員がそれなりの能力、体力、いろいろなものを持っているのかというと、そうでないというのはお分かりいただきたいと思います。それは減額申請をしたからどうのというのでなく、企業として私の考えでは長くその人たちを雇用したいということで、あえて減額申請をすると考えていますので、今、言ったように現場の人が見て、この人はだんだん体力的に落ちてきていると判断します。今は最賃も結構上がってきていますね。神奈川県でも 868 円ですし、そうなると、その金額を出してずっとこれからも上がっていく最賃に対して、片や多少能力的、体力的に落ちてきた人の雇用に結び付けるためには、そういうのが必要だということも、ある意味では理解できると私は思います。

○山川座長

 ありがとうございます。富永委員、どうぞ。

○富永委員

 富永でございます。伊藤委員から 2 点、御意見があったところで、 1 つは適正評価の話だったと思いますが、適正評価に不満な人が、その評価について使用者が説明責任を尽くさない限り差別になると。これはちょっと行き過ぎではないかと私自身は思っています。人事評価というのは会社が行うべきであって、裁判所やほかの人は経営者でも何でもありませんので、そこは評価できないのではないか。そこはあまりにもおかしい。同じ仕事をしてその人だけ悪かったとしたら、それは使用者がこういう理由があるというように言うべきかもしれないけれども、それ以外のものについてはそういったことは言えないのではないかと思います。それが 1 点目です。
 2 点目として、差別意思の話が出てきましたけれども、私自身は差別意思で切るしかないのかなと思っています。逆に差別意思が全くないのに、ほかの理由というのはいくらでもあり得るわけで、少しでも合理性が欠ければ全て障害者の方の差別になるとは思えないと思います。私から以上です。

○山川座長

 先ほど、境課長補佐から手が挙がったでしょうか。よろしいですか。

○障害者雇用対策課長補佐

 この差別のところでございますが、話を分けて考えていただきたいと思っています。まさしく障害者は雇わないといったことは差別意図も何も、ずばり差別そのものです。障害者をまさしく排除するということは、差別です、と整理しているところです。ここの差別意図というところを書いているのは、障害に着目しているのではなく、ある一般的、中立的な基準です。能力条件というのは障害のない方にも当然かかる基準ですけれども、そういった基準があったときに、それが障害者を排除するために使われることもあるのではないか。そういったことは差別意図があることになるので、そこは今回、差別として明確にする必要があるのではないかという考え方です。

 今回、ここでもし差別意図を問わなければ、事業主としてはそういった意図が全くないにもかかわらず、能力条件を付すことは一般にあると思います。それがいろいろ考えてみれば業務遂行上特に必要とまで言えなかったこともあるかもしれません。ではその瞬間に差別と言うのかということが問題であり、今回、分科会意見書においても間接差別は扱わないことになっています。前回、座長からも、委員の御意見はそういうものではないとしていただいたと理解しています。引用された均等法の逐条解説が何か分かりませんが、少なくとも均等法においても直接差別と間接差別の違いで、間接差別のほうは差別の意図は問わない、そこが直接差別と違うという過去の議論があったと理解しています。要するに障害者を最初から雇わないといったことは差別で、その対応自体が差別であるということ。そうでなく、一定の障害のない方にも適用されるものについては、障害者を何らかの形で排除するという意図が推認されれば、差別に当たると整理してはどうかということです。差別意図は問わないと言われている間接差別を入れないという整理になっている中でこういった議論の整理をさせていただいたものです。

○山川座長

 ありがとうございました。ただいまの御議論、幾つか御意見もいただきましたけれども、何かございますか。伊藤委員、どうぞ。

○伊藤委員

 適正評価のところですが、説明責任を果たしてもらいたいということについては、御理解いただけるのではないかと思います。もう 1 つ差別意図のところですが、男女雇用機会均等法第 3 条の男女人権の尊重のところで、男女が性別による差別的取扱いを受けないことの解説として、「差別の意図の有無にかかわらず、性別による差別的取扱いを受けないことを基本理念として規定されている」とありますので、先ほどの意見を申し上げました。

○山川座長

 境課長補佐、どうぞ。

○障害者雇用対策課長補佐

 今、均等法の 3 条は啓発活動という条文になっていまして、読み上げますと「国及び地方公共団体は、雇用の分野における男女の均等な機会及び待遇の確保等について国民の関心と理解を深めるとともに、特に、雇用の分野における男女の均等な機会及び待遇の確保を妨げている諸要因の解消を図るため、必要な啓発活動を行うものとする」となっております。いずれにしても、均等法というのは間接差別という概念を一部取り入れています。その際に間接差別と直接差別の違いとは何かを議論し、間接差別は差別意図を問わないという整理をしました。逆に言うと、均等法に規定されている間接差別と言われているものは差別意図を問うていません。あくまでもその基準に合理性があるかどうか等を見ていると理解しています。

 繰り返しになりますが、差別意図は問わないと言われている間接差別については、今回は法改正で入れないという整理になり、冒頭、御議論がありましたように、そうは言っても本当にそれで問題がないのかということについては、実際の具体的な事例の集積を待って、必要があれば改めて検討するということで御議論いただき、かつ結論をいただいています。それを受けた法改正でしたので、それを基に、御議論をさせていただければと思います。

○山川座長

 伊藤委員、どうぞ。

○伊藤委員

 繰り返しで申し訳ありません。先ほど御説明したのは古い資料だと思いますので、それは訂正いたします。差別意図のところはこれまで連合から何度も言っておりますが、事案として指摘されていることですので、ここの表現として、仮に「障害者を排除するために」というのを入れるとしても、それを例示的に説明していく中で是非、実際の事業主において適切な取扱いがされるような表現ぶりを更に追求していければと思います。

○山川座長

 阿部一彦委員、どうぞ。

○阿部 ( ) 委員

 今、議論になっているところですが、先ほども申し上げました。これは一般求人を念頭に置いて考えたらいいのか、障害者専用求人を念頭に考えたらいいのか。両方とも兼ねるのかと最初は思っていましたけれども、この「障害者を排除するために」ということであれば、一般求人ということでの例示ということなのですか。分かりました。もう 1 点、減額特例制度についてですが、減額の特例を受けた場合、これが解除になるとか、障害があって熟練度、習熟度が上がって個数もたくさんできるようになったら、特例の解除という例もあるのですよねということと、それはどのようにして行われるか説明をお願いします。

○山川座長

 それでは、阿部一彦委員から 2 点、御質問がありました。その前の伊藤委員の御意見についても含めて、境さんからお願いいたします。

○障害者雇用対策課長補佐

 課長補佐の境です。伊藤委員がおっしゃるとおりで、できるだけ障害者の方の雇用に結び付くことが重要です。そういった中で障害者雇用促進法においても、例えば障害者の求人の観点で、その条件についても助言・指導といったこともできます。一般求人においても例えば御相談を受ければ事業主に、こういうことであればできるけれども、どうかといった一般的な問合せ、確認等はできると思います。そのようなことが、今後、非常に重要になると思っています。事務局として申し上げていましたのは、あくまでも行政取締法規において、何らかの違反を確認し、何らかの指導をする対象として差別意図がない場合をどうするのかということを整理させていただいたと思っています。一般論として、障害者がより雇われるために何か工夫ができるのではないかといったことは、また別途あるのではないかと考えています。

 最低賃金減額制度ですが、申し訳ありませんが、私どもが聞いた範囲で御回答させていただきますけれども、まずこれは減額期間というものが定められています。初回の申請時は原則として 1 年以内ということで許可することになっていて、当然、期間が来ればまた申請をする形になっています。 2 回目以降は、対象障害者の労働能力に変化がないときは最長 3 年を認める。ただ、労働能力に向上の余地が認められるのではないかというときは 1 年の期間を設けて許可する取扱いになっていますので、一度許可したらずっとそのままということではなく、期間を区切っての許可であると御理解いただければと思います。

○山川座長

 先ほどの阿部一彦委員の御質問は、 6 ページの 3 番目のマルの条件云々に関する点は、一般求人を想定しているのかという御質問でしたが、その点も簡単にお答えをお願いします。

○障害者雇用対策課長補佐

 障害者専用求人というのは障害者を雇うためにあえて障害者に限定している求人ですので、ここで我々がイメージしていましたのは、一般求人において何らかの条件がある場合です。一般求人に障害者が応募した際に、例えば障害者はそもそもうちの採用選考過程に乗せませんというようなことは明確な差別になってきます。その次の段階として、一方でこの研究会でも御指摘いただいた、一定の条件というのが障害者にとって非常に不利に働いている場合がある。その問題をどのように整理したらいいかということで、この議論の整理を提示させていただいたと理解しています。

○山川座長

 阿部一彦委員、どうぞ。

○阿部 ( ) 委員

 日身連の阿部です。最初、「障害者を排除するために」と入る以前は、両方とも兼ねての例なのかなと思っていたので確認させていただきました。障害者専用雇用であっても、障害によって排除する障害があったりすることも考えたかなと思ったのですが、今は一般求人ということだという確認ですね。ありがとうございました。

○山川座長

 この 3 つ目のマルについては、恐らく間接差別の禁止を報告書の内容に反して入れるという御意見はないのではないかと、私としては理解しています。ただ、直接差別、差別意図ということの中身をどのように考え、あるいはどのように書いていくかという御議論だろうと理解しています。この点も先ほど伊藤委員の御意見もありましたけれども、 3 番目のマルは指針に記載してはどうかと、指針にここまで盛り込むというお話で、より分かりやすく、先ほど申し上げたように説明を加えていくことは、また別個考えられるのではないかと思っています。その点も併せてお考えいただければと思います。

 あと、今の御質問等にありましたように、障害者固有の不利な条件については、 1 番目のマルでカバーしていて、 3 番目のマルはまさに障害者にも非障害者にも適用される、形式上は中立的な条件であるけれども、差別の意図が推認されるような場合を指針に特に書くということだと理解しています。あとは差別意図をどのように把握するかということ。これもどこかで説明が出てくるかもしれませんが、直接排除する意図のほかに、偏見に基づいて排除することも差別意図に含まれると私は考えています。ほかはいかがでしょうか。田中委員、どうぞ。

○田中委員

 日本盲人会連合の田中です。少し別の意見を申し上げたいのですが、先ほど来、労働能力の評価の問題が出ています。労働能力をどう評価するかというのは非常に難しい問題のようで、ヨーロッパやオーストラリアの例で評価基準はあるけれども、一方で、それが妥当かどうかも問題視されているようです。先ほど境課長補佐からハローワークの関与という言葉が少しありましたが、労働能力を評価する場合、ハローワークやジョブコーチといった人たちも入れた上で、当該障害者にはこういう労働能力がありますということを企業側に説明することは必要かと思います。そうすると企業の側でも、こういったこともできる、こういう補助があればこれだけのこともできるという発見があるかもしれません。その発見に基づいて適切な議論を振り分けることも可能になることが考えられます。ですから、そういった労働能力の評価という意味では、ハローワークやジョブコーチの意見等も含めて、企業と障害当事者が協議、調整をして適切な判断をするといった内容を、ガイドラインに入れてはどうかと思いますが、その点は御意見をいただきたいと思います。

○山川座長

 藤枝課長から、どうぞ。

○障害者雇用対策課長

 課長の藤枝です。差別の指針と合理的配慮の指針とまたがるようなお話になっていて、そこは区切れないのに区切って議論していただいて恐縮ですが、今、田中委員が御指摘になったのは、例えば募集の段階での合理的配慮であるとか採用後の合理的配慮の在り方として、確かヒアリングでも、就労支援機関やハローワークも入れた話合いを持ってほしいという御意見があったと思います。合理的配慮について次回以降に議論いただきますので、その合理的配慮の議論の中でもあるべき姿を御議論いただいた上で、差別指針のほうに書くべきなのか、合理的配慮の指針のほうに書くべきなのかは整理させていただければと思います。

○山川座長

 私の感想ですが、先ほど栗原委員から好事例のお話もありましたけれども、評価はこれから重要になると思いますので、禁止云々のレベルの話とはちょっと違ってくるかもしれませんが、どういう形で障害者の方々の能力を適正に評価するのか。高障機構のデータがあればと思いますし、何らかの形での情報提供ないし支援の問題にも関わってくるかもしれませんので、一定の情報提供等ができましたら、御検討いただきたいと感じたところです。先ほど境課長補佐から手が挙がりましたが、よろしいですか。北野委員、どうぞ。

○北野委員

 北野です。今、いろいろな議論を聞いていて、山川座長から説明していただき、まとめ方として私もそういうふうにしていただけたらと思います。つまり指針があって、指針の考え方というか解釈があって、好事例なり例示が明確にあるという形でまとめていただけることが非常に有り難いと思っています。実は栗原委員がおっしゃるように、熱心な企業はちゃんとされているということは私たちもよく分かっているのですが、一方でいわゆるブラック企業の場合にはブラックができないようなチェックを掛けることは大事だと思います。例えば 6 ページに「業務遂行上特に必要な」とありますが、特に必要であることについては当然、事業主の裁量権が大きいことはよく分かっています。しかし、裁量権が濫用されてブラック企業に何もかも「業務遂行上特に必要な」とされてしまったのでは、障害者の雇用は進みませんので、ここは明確にブラック企業がブラックではできないように、良い所ができる形での表現にしていただきたい。それと同じように、合理的配慮を提供した上での労働能力の適正な評価についても、当然、これは企業主の裁量権が大きいのは分かっていますが、それをあまりに裁量権を濫用してブラック企業が何でもやれることにならないように、ここは明確に一定の方向性と、好事例というか、こうあるべきであるということを明確にしていただきいのが 1 つです。

 もう 1 つ、私が話をしてなかなか取り上げてもらっていないのですが、 4 ページの部分です。「職場復帰」を新しい項目で入れていただくことが難しいことはよく分かっていますが、 4 ページの丸括弧の中に書いている表現を、もし「職場復帰」という項目を新しく追加項目として入れていただけないのであれば、表現としてこういう表現にしていただきたいと思っています。「今後」というところです。「今後、既存の項目に沿って指針の具体的な記載をする際に、上記内容を含めて明確化してはどうか」と。つまり、今後、具体的な記載をする場合は、「職場復帰」「労働時間」「再雇用」を含めて明確化するということ。ここははっきりさせていただきたい。項目は増やさない、しかも中身も入れないでは困りますので、ここは明確に、「今後、既存の項目に沿って指針の具体的な記載をする際に、上記内容を含めて明確化する」という表現にしていただきたいと思います。

○山川座長

 ありがとうございます。境課長補佐、どうぞ。

○障害者雇用対策課長補佐

 我々も、これを指針単体で考えるのではなく、好事例の普及やハローワークを通じた啓発といったものを通じて、この障害者雇用をより良くしていくことが大事であると考えています。この指針というのは、今回の法改正を受けて事業主にどう行動していただくのかに関するものですから、どうしてもそういったやや広がりのある話は書きにくいところがあります。ただ、施策を展開するにあたって、この指針単体で考えるのではなく、総合的に考えるべきことであろうと思っています。高障求機構においても、障害者を雇用している企業の例といったデータベースを構築しています。どのような業態なのかといったことも検索できるようになっていますので、そういったものを今後とも充実していく必要があるのではないかと考えています。特に今回、合理的配慮の議論で検討を深めていただきますので、その際に出てくるいろいろな事例を、事業主に確認し、現に行われているものを充実、強化していくことは非常に重要だと考えています。

 適正な評価ということで、田中委員からもございましたジョブコーチという話ですが、その障害者の方が何ができるのかがまず最初にあることだろうと思っております。この障害者の方は、実はこんなこともできます、といったことについて、正しくジョブコーチが事業主との間に立って、そういった支援を行うことは非常に重要であると思っていますし、ハローワークにおいても、就職後にその雇われた障害者が職場に適応するための指導・助言ができるようになっております。

 今、北野委員からいただいた修正ですが、ここは御議論いただければと思っていますけれども、「具体的な記載」と書いたのは具体的な事例というよりも、指針の記載を検討する際、要するに指針に何をどう書くかを検討する際にという意味で書きました。ここはややミスリーディングなワーディングだったかもしれません。冒頭、私のほうから説明させていただきましたが、指針にどう書くべきか議論していく際に、今、北野委員がおっしゃった職場復帰をしっかり書くと。具体的にはこういう実際の問題が起きているからということで、研究会、分科会等で御意見がまとまることがあれば、当然、書くということだろうと思っております。そこは具体的にどう書くかという議論を、もう少ししていかなければいけないということで、このような記載にさせていただいたところです。

○山川座長

 ありがとうございます。藤枝課長、どうぞ。

○障害者雇用対策課長

 課長の藤枝です。先ほどの伊藤委員の差別意図や能力評価の問題ですが、基本的にこの指針は差別をできるだけ防止するための指針であるべきですし、企業にとっては、障害者雇用を進めていただく上で分かりやすい指針であることが必要だと思いますので、指針にできるだけ両方の観点から書き込むべきということは感じているのですが、能力評価の話とか差別意図というのは最終的に救済とセットの議論で、どうしても最後まで納得しない場合も当然出てきますし、巧妙に差別意図を隠している企業もあるかもしれません。その点については、この指針と併せて、法律上、労働局長の指導や紛争調整委員会の特例など、そういう救済手段も今回の法改正で仕組みを設けていますので、制度の厳格な運用とセットで進めていく話かと、今、お聞きして理解しています。

○山川座長

 ありがとうございます。先ほどの北野委員の御意見について、今、境課長補佐からも御説明がありましたけれども、 4 ページの下の囲みの本文と言いますか、マルの所では既存の項目に含まれるということは、恐らく御異論がなかったので、それを前提にしてこのような記載になったという理解であろうかと思います。また、合理的配慮との関係もあるかもしれませんので、それも含めて検討していくことになろうかと思います。この点も含めて何か御議論、御意見はございますか。よろしいでしょうか。全体的で結構ですけれども、何か御意見、御質問がございまたらお願いいたします。

 本日の御議論は、既にいろいろな方から御指摘がありましたけれども、合理的配慮と関連する部分がかなりあるという感じを抱いていますので、次回以降は合理的配慮の指針の話になりますから、そこでまた差別禁止の指針との関連性が議論の対象になるであろうと考えています。両者の指針についての検討を踏まえて、また全体として最終的に検討する機会も更にあると考えています。まだ若干時間がありますけれども、何か特段ございますか。阿部正浩委員、どうぞ。

○阿部 ( ) 委員

 阿部正浩です。今、いろいろ皆さんのお話を伺っていて、私、よく分からないものですから、よく分からないままお話しますが、差別と合理的配慮、あともう 1 つ労働能力というのをうまく区別できたら、もう少し分かりやすいものになるのかなと思っています。後ろのほうでは、労働能力を適正に評価していくことは差別ではないと言いながら、その能力評価がどこまで本当なのかというところに疑問が湧くという問題提起もあったと思います。あるいは採用の段階で何を見ているのかというところで、労働能力なのか、そうでなく周辺部分の例えば障害の部分を見ているのか、そのあたりが判然としていないのです。みんな全部ごっちゃというふうに思われるので、そのあたりを整理できたら、もう少し分かりやすい指針ができるのかなと思っています。そういう意味で基本的な考え方に全体的な見取図が書けたらいいのではないかと思っています。

 皆さんのお話を聞いたり他のいろいろなものを読んだりして、個人的な意見ですが、雇用の場面では能力が有るか無いかが大事なのではないかと思います。生産性という言葉か出てきますが、アウトプットが出てこなければ雇うわけにはいかないというのがあると思います。その上でアウトプットができたのに対して、適正な対価を支払うというのはあると思います。ただし、そのときにハンディキャップがあるために、例えば会議に出られないとか会議でコミュニケーションをとってくれないとか、そういったところを持ち上げてあげて、それが合理的配慮だと思いますが、そうすることによって一定のアウトプットが出るような形にすることを、私は念頭に置いているのです。そういうことでいいのか、そういった基本的見取図を書いたら、もう少し後ろの指針が見やすくなるのではないかと個人的に思っています。それは私がよく分かっていないからなのかもしれませんが、ただ、私のようなのが一般的な方々ではないかと思いますので、一般的な方々にも分かりやすい見取図は是非とも必要ではないかと思います。

○山川座長

 ありがとうございます。重要な問題提起がございましたが、境さん、どうぞ。

○障害者雇用対策課長補佐

 今後、研究会・分科会で御議論いただき、指針を策定させていただくわけですが、当然、この指針は策定すること自体がゴールではなく、その内容をどう雇用の現場の方に御理解いただくかが重要なところですので、指針の策定に当たりましては、分かりやすく明確化することも非常に重要な観点であると考えています。今の段階でどう書くかというのは難しいですが、今後、こういった場での御議論を踏まえて、どのように分かりやすくしていくかということを意識しつつ、この研究会の場で御議論いただければと考えています。

○山川座長

 ありがとうございます。現行法は差別と合理的配慮をしないことを別個の禁止類型として定めているわけですけれども、これまでの御議論にありますように、特に能力ということを媒介すると両者の関連性が非常に問題になるということで、合理的配慮の指針をこれに追加して検討する際に、さらにそのあたりの分かりやすさは検討していくことになろうかと思っています。ほかに特にございませんか。では今回の議論はこのあたりで終了したいと思います。今日、いただきました御議論を更に取りまとめの際に反映していただければと思います。次回の日程につきまして事務局からお願いいたします。

○障害者雇用対策課長補佐

 次回は第 7 回になりますが、 1 28 ( )13 時から 15 時の開催になります。次回からは合理的配慮の提供の指針の御議論に入っていただきたいと考えています。場所は未定ですので、決まり次第、改めて御連絡させていたただければと考えています。以上です。

○山川座長

 それでは、これをもちまして本日の研究会は終了いたします。年内はこれで最後ということですので、皆様方、良いお年をお迎えください。本日はお忙しい中、ありがとうございました。


(了)

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