ホーム> 政策について> 審議会・研究会等> 医薬・生活衛生局が実施する検討会等> 医療情報データベース基盤整備事業のあり方に関する検討会> 第3回 医療情報データベース基盤整備事業のあり方に関する検討会 議事録(2014年2月24日)




2014年2月24日 第3回 医療情報データベース基盤整備事業のあり方に関する検討会 議事録

医薬食品局安全対策課

○日時

平成26年2月24日(月)
18:00~


○場所

厚生労働省専用第22会議室


○議事

○事務局 定刻になりましたので、第 3 回「医療情報データベース基盤整備事業のあり方に関する検討会」を開催いたします。

 本日の検討会は公開で行いますが、カメラ撮りは議事に入る前までとさせていただいておりますので、マスコミ関係者の方々におかれましては、御理解と御協力のほどよろしくお願いいたします。また、傍聴の方々におかれましては、「静粛を旨とし喧噪にわたる行為はしないこと」「座長及び座長の命を受けた事務局職員の指示に従うこと」など、申込時の留意事項の厳守をお願いいたします。

 本日、御出席の構成員の先生方におかれましては、お忙しい中お集まりいただきまして、誠にありがとうございます。本日の検討会は、秋山構成員より欠席との御連絡をいただいており、 13 名中 11 名が現在御出席ですので、本検討会の開催要綱に基づき、定足数に達しており、会議は成立していることを御報告いたします。また、おそれ入りますが、冒頭、安全対策課長が所用にて遅れております。また、本日、石川構成員におかれましては、 7 15 分頃退席予定とのことです。

 それでは、これより議事に入りますので、カメラ撮りはここまでとさせていただきます。よろしくお願いいたします。以後の議事進行については、永井座長にお願いいたします。

○永井座長 早速ですが、本日の配布資料について、事務局から説明をお願いします。

○事務局 お手元にお配りしています資料について、説明いたします。一番上に座席表があり、続いて議事次第、裏面に配布資料一覧がありますので、併せて御確認ください。開催要綱と構成員一覧。資料 1 「検討課題と主な議論等」。資料 1( 参考 ) 「第 2 回医療情報データベース基盤整備事業のあり方に関する検討会の主な議論等 ( 概要 ) 。資料 2-1 「大江構成員提出資料」。資料 2-2 「青木構成員提出資料」。資料 2-3 「川上構成員提出資料」。資料 2-4-1 MIHARI プロジェクトの概要」。資料 2-4-2 「医療情報データベース基盤整備事業の現状の課題と利活用の方策」。資料 3 「今後の検討スケジュール」をお配りしております。また、当日配布資料として、構成員の席には、前回の議事録案をお配りしております。また、ファイルとして、参考資料をお配りしております。資料については以上です。

○永井座長 では、議事に入ります。まず、前回の議論について簡単に確認した上で、本日の検討課題に関する事項について、大江構成員、青木構成員、川上構成員、最後に PMDA から御説明をいただくことにいたします。時間も限られておりますので、よろしく質疑応答、意見交換をお願いいたします。まず事務局から、検討課題と前回の主要な論点について、説明をお願いいたします。

○事務局 資料 1 を御用意ください。本検討会における検討課題と、前回の主な議論等について、確認の意味も含めて簡単に説明申し上げます。なお、前回、前々回の資料で示した内容については、右上に再掲と示しておりますので、ここでは飛ばしながら説明いたします。また、資料 1 とは別に、資料 1 の参考として、前回の議論を事務局にて整理したものをお配りしておりますので、適宜御参照ください。

 資料 1 のスライド 4 を御覧ください。前回 ( 2 ) の検討会では、主に上の 4 点、 (1) 本事業のあり方。 (2) データベースの必要な規模。 (3) データの代表性 ( 一般化可能性 ) (4) 地域連携のあり方 ( 実効性 ) という課題について議論いただきました。本日 ( 3 ) の検討会では、主に下の 3 点となります。 (5) 本事業に参加する協力医療機関のメリット等。 (6) データベース活用 ( 試行 ) による実績の提示。 (7) 本事業の運営等のあり方などについて検討いただきますが、本日用意した内容も多くなっており、議論の時間も限られるかと思いますので、 (7) 本事業の運営等のあり方については、次回 ( 4 ) にも引き続いて検討いただければと考えております。

 スライド 6 を御覧ください。「本事業のあり方」について、前回 ( 2 ) の検討会では、「本事業の継続の必要性について:現在の 10 協力医療機関における基盤整備事業は、医薬品等のリスク・ベネフィット評価を含めた、特に安全対策の向上には有用で、継続実施が必要である」。また、「ナショナルレセプトデータベースとの関係性について:両者は、薬剤疫学研究で利用可能なデータソースとしてはお互いに補完関係にある。残念ながら現状ではリンクは不可能であるが、これは、この事業だけの問題ではなく、中長期的な課題であり、前提条件として社会的な合意や法整備など環境整備が必要になる。将来的に可能になった場合は当然対応することが重要である。」といった議論がありました。

 続いて、スライド 8 を御覧ください。前回は、「データベースの必要な規模について:データの精度を向上させるためにも、数千万人規模のデータベースを目指すべきで、まずは一千万人規模を目指す。しかし、 300 万人だから意味がないということではなく、有用性を示していく必要がある。」また、「医療情報の保存期間について:通常、大学病院等における電子カルテの情報を一定期間経過後に削除するというのは、むしろ考えにくい。本事業の標準ストレージ、統合データソースに蓄積するデータの削除は、今のところ想定されていない。」ということが議論されました。

 続いて、スライド 10 を御覧ください。前回の議論で、「データの代表性(一般可能性)について:確かにレビューの指摘のとおり、全国民を代表するデータを提供するものではないという限界はあるが、それだからといって、本事業の有用性は否定されるものではない。まず第一歩として、この事業をきっちり行っていくこと。将来的には、地域の中核病院、中小病院、診療所ともつないでいくということ。今回の事業は、第一歩として、またモデルとして標準化したデータを蓄積することができるという意味として非常に重要である。」また、「拠点病院の拡充のあり方・拡充する場合の医療機関の特性等について:今後増やす場合には、異なる地域、対象疾患、グループ病院等の参加を考えていく。」といった議論がありました。

 続いて、スライド 12 を御覧ください。前回の議論で、「地域連携のあり方(実効性):地域の医療機関における受診・処方データは非常に有用であるが、まずは 10 拠点のデータをしっかり作っていくということが重要である。更に今後は、地域医療ネットワークとの関係を試行的な調査研究から検討を始める等もありうる。」という議論をいただきました。

 続いて、スライド 13 の「本事業に参加する協力医療機関のメリット等」以降については、本日の検討課題ですが、第 1 回の主な御意見については、前回簡単に御紹介いたしましたので、本日は説明を割愛させていただきます。議論に際して、適宜御参照いただければと思います。資料 1 については以上です。

 続いて、ファイルとしてお配りしております参考資料のうち、本日の検討課題に関連する部分について、少し説明したいと思います。ファイルの参考資料を御覧ください。一番上に、机上配布資料としてお配りしています「「医療情報データベース ( 統合データソース ) に保存されるデータ項目」について」は、現時点ではまだ公表されていない資料となりますので、構成員の机上配布のみとさせていただきます。会議後に、ファイルは回収させていただきますが、データの利活用に関する検討に当たり、医療情報データベースのどこにどのような情報が出力、加工されて入っているかという一覧を、参考としてお配りしております。

 続いて、参考資料 3-2 を御覧ください。こちらは前回も御確認いただきましたが、平成 23 3 25 日付けの「医療情報データベース基盤整備事業協力医療機関の公募について」です。申請に関する諸条件を改めて御確認いただければと思いますが、「 1  協力医療機関の申請条件」。「 2  協力医療機関の実施する事項」。「 3  採択件数」。「 4  経費等」が示されております。「 6  選定方法等」の所に示されているような項目を審査した結果、現在の 10 病院が選定された経緯となっております。また、「 7  留意事項」の所に、本格運用を見据えて、「 (4)  協力医療機関に選定されない医療機関であっても、本事業において構築する医療情報データベースと同等のものを自己資金により構築できる医療機関については、厚生労働省が別に認めた場合、本事業に協力することができることとする。」「 (5)  医薬品等の製造販売業者が、医薬品の市販後調査等のためにデータベースを利活用する場合にも、一定の条件の下で使用を認めるものとする。」といったことが示されております。事務局からの説明は以上となります。

○永井座長 では、続いて「構成員等からの意見提供と意見交換」を行いたいと思います。まず、大江構成員から、拠点医療機関の代表のお立場ということで、参加のメリット、課題等について、御意見を御説明いただきたいと思います。よろしくお願いいたします。

○大江構成員 協力医療機関の 1 つとして、データベースの導入を経験してきましたので、その経験を基に意見を申し上げたいと思います。 1. として、本事業に参加する協力医療機関のメリット等です。本事業に参加する協力医療機関にとっては主としてメリットは包括的なものがあると思います。 1) は、医薬品副作用のデータベースからの検出に関心を持つ医療者を啓発することができる。 2) として、本システムが標準ストレージの導入をはじめとして、多施設での医薬品安全性研究はもちろんのこと、医療データベースを活用した様々な研究の共通 IT 基盤として使えるということであろうと思います。

○永井座長 資料 2-1 ですね。

○大江構成員 はい。しかし、今回導入されたシステムは、当然のことながら完成された既製品の導入ではないために、導入過程で様々な解決すべき課題が発生いたしました。特に、臨床検査部門や薬剤部門などのスタッフの協力なしにはできない導入作業があり、新たな協力医療機関を今後募っていく場合には、こうした部門職員の理解と協力を得るための、主として院内の、講演や説明会などを合同で開催して、病院全体として協力しているということを PR することが必要であろうと思います。

 ところで、半ば定常的に本システムを用いたデータ抽出作業が発生する場合は、その作業は医療機関スタッフの業務の一部として行われることになります。今回の事業の当初の協力医療機関は別としても、今後本事業に参加する医療機関を増やすためには、治験や製造販売後調査の委託に関する費用の支払いと類似の考え方を採用して、医療機関にデータ抽出調査委託料 ( ) といった概念の料金を支払うというような枠組みを設計することが必要であろうと思います。

2 番目に、データベースの活用による実績の提示、あるいは今後の利活用の方向性についてです。大学病院の場合は、様々な研究でこうしたデータベース活用のニーズがありますので、今回の試行期間終了後にも本データベースは維持され、利活用されると考えられますし、利活用されなければならないと思います。私の病院の場合には、本システムの利用者端末を使用できる専用の部屋を院内に整備し、定期的な講習会を開催して利用熟練者を養成し、この熟練者とともにデータ抽出・解析ができるようにしていきたいと考えています。現時点では、まだ試行期間でいろいろテストをしていますので、院内に公開はしておりませんが、来年度以降院内にこうした専用の部屋を用意して、説明会などを開いていきたいと思っています。

3 番目に、本事業の運営、特に費用負担のあり方についてです。本事業は、現在試行期間中であり、協力医療機関が人件費、光熱費を持ち出しで運用しています。試行期間が終了して、本運用を始めるのであれば、システム維持に必要な経費と、抽出作業に必要な人件費等のコストの一定程度は、先に述べたような枠組みでデータ抽出結果の利用者が負担できるようにすべきだと思います。そのためには、医療機関側が利活用料金の設定をすることも必要であろうと思います。

 しかし、一方で、これは第 1 回の検討会でも申し上げたことですが、本データベースシステムを利活用することによる最終受益者は、国民であるはずです。したがって、全てのコストをデータ抽出結果の利用者が負担するという枠組みではなく、費用の一定程度は間接的に国民が負担するといったような枠組みの設計をしていくことが望ましいと考えています。私からは以上です。

○永井座長 質問は後ほどお受けしたいと思います。続いて青木構成員から、製薬団体の立場から、医療情報データベースへの期待と御意見をいただきたいと思います。よろしくお願いいたします。

○青木構成員 私からは、資料 2-2 のスライドを 4 枚準備しましたので、それを紹介したいと思います。まずは、 1 枚目のスライドを御覧ください。「安全性活用における得手 / 不得手」という表現をしております。活用の可能性ということで、先ほど事務局から提示いただきましたお手元のファイルの参考資料 3-2 にもありましたが、医薬品産業においては、医薬品等の製造販売業者が医薬品の市販後調査等のためにデータベースを利活用する場合にも、一定の条件の下で使用を認めるということもあり、我々が使う場合に、どのようなところが使い勝手がいいだろうかを検討してまいりました。 1 つは、活用が期待されるものとしては、処方初期に発生するようなタイプのイベント・副作用、検査値の変動で見られるようなもの、より重篤なもの、処置薬を伴うもの、休薬や減量処置を伴うタイプのもの、性別や年齢の差、あるいは併用薬で考察が必要となるようなもの、あるいは頻度が少ない数万件に 1 例といった程度のものに対する期待をしているところです。

 何に対する期待かは少し曖昧にしておりますが、 1 つは使用成績調査に取って代えてというような視点もありまして、 1 つは先般のナショナルレセプトデータベースと比べてという視点も少し混っており、そこは御留意いただければと思います。

 その視点で、例えばどのような調査の場合は可能であろうかと考えた場合に、新薬 A における投与開始 30 日以内の重篤な白血球減少について、これまでの治療とのリスク比を求めるといったタイプのことであるならば、このデータベースは活用の期待が大きいのではないかと考えております。活用が少し難しいと思っている所が幾つかありまして、長期投与でリスクが高まるようなものは、データのリンクの問題にも関わり、得意とはしないだろうと考えています。それから、既往歴、既存治療歴も、今度はヒストリカルに考えますと、事前情報としてのリンクが難しいことから、この影響による補正等は難しいであろう。それから、処置がなされないものといったところは、レセプト病名の特徴でもあるかと思いますが、軽微なものに関しての観察は得意とはしないだろう。それから、次世代への影響、妊産婦等、その後のお子様の容体のようなことに関しても、リレーションの問題があり、得意とはしないだろう。それから、地域差、生活水準差、あるいは発売早期のものが得意としないということです。×を付けておりますが、手足のしびれの発生や重篤化について、投与累積量別に比べるといったようなタイプの調査の場合は、このデータベースは得意としないだろうと考えております。

 次のスライドを御覧ください。前回は、特段有効性の補正についてはすべきであろうけれども、安全性についてはどうであろうかという議論で、それほど調整の必要がないというような御意見もありましたが、我々としてはやはりきちんとした安全性の解析をしたい場合には、補正のようなアプローチが必要だと考えております。その事例を、 1 枚のスライドで準備いたしました。この例は、 A 薬では肝の合併には慎重投与であり、 B 薬は特に肝の合併に対する慎重投与を定めないという 2 つの有力な治療薬があった場合に、肝合併例の患者に対しては、 B 薬に圧倒的に処方されてしまうと。ここで、補正がないという場合の例で、ストーリーを準備しております。 A 薬の場合、一般の方であるならば、肝の副作用の発現の推定が 10 %、合併している方は 50 %と多いですが、 B 薬のほうは特に定めていません。これは、肝臓に関する副作用のリスクが少ない薬で、こちらの場合は一般の方では 5 %、肝の合併がある方であっても、 30 %ぐらいしか肝の副作用が発生しないと期待されます。圧倒的に A 薬のほうは、肝の副作用の心配が高いという場合であり、調整しない実際の観察結果がどのように見られるかを、少し図示しております。

A 薬の場合、 1,000 例のうち 140 例、 B 薬は 150 例というように、逆転というか、同じような副作用の発現が観察されるであろうということを推定しています。なぜそうなるかというと、内訳を御覧いただきますと、肝臓の合併症のある方には A 薬が処方されることは極めて少ないことから、 1,000 例の中で 100 例ほどしか処方がされないと。 B 薬のほうは、むしろ肝の合併を慎重投与ではないことから、 1,000 例のうち 400 例が投与されることから、こうした処方の歪みがあることから、観察としてはあたかも同点であったり、 B 薬のほうがむしろ肝臓の合併が心配ではないかというような観察が得られます。

 これは、もちろんこの A 薬や B 薬の特性をよく御存じの先生方の場合、誤解することは特にはないと思うのですが、これがメディアを通じたり、一般の患者が御覧になったときに誤解を与えるのではないかということから、調整した結果ということで、統計手法は傾向スコア法の応用のような方法を想定しているのですが、この肝の合併の比率を同じようにして補正するということで、一般の方 1,800 例、合併症の方 400 例ということで算術することで、 A 薬が正しく 1.8 倍のリスクがあることの算術が可能であるということで、補正はやはり安全性の解析の場合もやるべきであろうということが、我々の考えです。

3 枚目のスライドを御覧ください。安全性懸念事項に関しては、我々は昨年度よりリスクマネジメントプランを承認申請の場合は義務化されて対応しております。安全性に関して、継続的に監視をすることを、公式に公表しながら対応していくのですが、安全性の懸念が例えば白血球減少、皮膚炎、重篤な血小板減少、小児への投与と懸念事項が幾つかある中で、現在日本における対策として考えますと、少しプアーでして、全ての案件に対して「長期特定使用成績調査」 1 つだけで全てを満たそうというような感じで対応することが多いです。これがふさわしいことではないというのは自明で、データベースが活用できる世界を想定しますと、下に○を 3 つ書かせていただいておりますが、白血球減少や重篤な血小板減少については、本事業のようなデータベースを活用する。小児については、これまでどおり「小児の特定使用成績調査」で観察をする。皮膚炎については、特段の追加の対策を行うわけではなく、飽くまでも自発報告等にて安全性の監視を継続して行うというようなことです。データベースのある世界を想定する中に、情報取得の早期性、実施の負担、妥当性、何より科学合理的なリスクマネジメントプラン、医薬品のリスクの管理がふさわしい形にできることに貢献することを期待しております。

 最後のスライドです。本事業の運営のあり方等について書かせていただいております。現在の場合は、こちらとしても、拠出をさせていただいておりますが、いずれは国費や拠出という形ではなく、多くのユーザーの期待に応えるような形で、より自立した形でのビジネスモデルになることを期待しております。

 「スポンサーの視点」として書いておりますが、利活用を促進し、得られた収益にて運営の人件費やデータの品質の維持をすべきであるということで、先ほど大江先生からありましたが、人件費、光熱費の持ち出しでやっていることは、ふさわしい運用ではなく、やはりやるべき対応をして、そのサービスを享受できたユーザーからお金をもらうというとあれなのですが、財務上のふさわしい見返りがあり、運用するのがふさわしいだろうと考えております。

 もう 1 点だけ追加して申し上げるように仰せつかっておりますが、これまでこの拠出した財務について、財務諸表をまだ頂いていないもので、厚労省の方、できれば我々に今、拠出したお金がどのように活用されているかを、早期に御提示いただきたいということを仰せつかっておりますので、よろしくお願いします。

 また、「主要ユーザーの視点」ということで、安全性への活用のための創意工夫、利用価値の向上への訴求をしたいということで、第 1 回より申し上げているとおりですが、このデータの価値というところで申し上げますと、やはり拠出した理由というのは、安全性の監視への活用ですので、どのようなことをすれば安全性の監視ができるか、ふさわしい投資として優先すべきは何かといったことも含め、より適切な投資をしながら、利用価値の向上をしていただきたいということが、我々の願いです。以上です。

○永井座長 続いて、川上構成員から、薬学研究者の立場から御意見をいただきます。川上先生は、平成 23 年度から 3 年間、厚労科研でこの事業にも参加しておられ、大学病院 4 施設や研究者と協力して市販後安全対策のため医療情報データベースを活用した薬剤疫学的手法に関する研究をされてこられました。本日は、本事業に示唆を与える取組の 1 つとして、その成果について御紹介いただきたいと思います。よろしくお願いいたします。

○川上構成員 永井座長、どうもありがとうございます。資料 2-3 を使ってお話します。

 まず、「薬学研究者の立場から」についてです。薬学研究というのは大変幅広く、薬そのものや薬が作用する生体メカニズムに関する基礎薬学の研究や、ヒトにおける薬の体内挙動や作用を評価する薬物動態、臨床薬理等の研究もありますが、本日は、集団における薬の使用状況と作用を評価する、薬剤疫学に関する研究の事例をお話したいと思います。

 まず、パネル 1 です。医療情報データベースを使って薬剤疫学研究を行うことの意義やメリットについてお話します。最初に研究の背景を少し述べた後に、副作用の検出や発現率を評価した事例として幾つかお話します。 1 つ目は、対照群と比較して副作用の検出や発現率を見たもの。 2 つ目は、このデータベースの特徴でもありますが、検査値を利用できるので、その検査値を利用して評価アルゴリズムを作成し、それに基づいて副作用の検出を試みた事例です。 3 つ目は、行政施策の反映・効果の確認として、複数の医療機関のデータベースを使って薬剤の処方動向を評価しました。これらを順に紹介いたします。

 パネル 2 を御覧ください。先の「医薬品の安全対策等における医療関係データベースの活用方策に関する懇談会」が「日本のセンチネル・プロジェクト」という提言をまとめたのは皆さん御存じだと思います。その中で、データベースの活用に期待される役割として、医薬品等による副作用、安全上のリスクの抽出、リスクの定量的評価などが挙げられています。こういった成果については、実際にデータベースを構築する前に評価方法などを確立しておく必要があるのではないかと私どもは考えました。

 パネル 3 を御覧ください。平成 23 年より、「医薬品等の市販後安全対策のための医療情報データベースを活用した薬剤疫学的手法の確立及び実証に関する研究」という研究班を立ち上げ、私が研究代表者となり、パネルにお示しした分担研究者の先生方と進めています。研究班としては、医療情報データベース基盤整備事業に参加している一部の病院になりますが、 4 施設が参加しています。それらの施設のデータベースを活用しながら、副作用の発現率や背景因子の探索を行ったり、また、行政施策の反映・効果の確認などを試みています。

 パネル 4 からは、最初の事例です。ニューキノロン系抗菌薬 (FQs) 、海外ではフルオロキノロンというため「 FQs 」と略していますが、 FQs による腱障害の発現を見たものです。この研究内容は『 Pharmacoepidemiology and Drug Safety 』に一昨年、公表しています。背景としては、海外でニューキノロンによる腱障害のリスクが疫学研究の結果として報告され、 2000 年代後半より、ニュージーランドや米国 FDA などではニューキノロンの使用においては腱障害のリスクがあるという注意喚起がされています。一方、日本では症例報告が散見されるのみで、日本人において発現頻度を検討した報告はありませんでしたので、私どもがそれを試みたものです。

 パネル 5 を御覧ください。対象データとしては、浜松医科大学病院の 15 年分のデータを使いました。対象薬剤としてはニューキノロン (FQs) 、それから、対照群としたセファロスポリン系の抗菌薬です。対象患者は入院と外来の患者 ( 院外処方の患者も含む ) で約 20 万人です。このうち、処方されていた患者は、 FQs は約 1 7,000 人、セファロスポリンが約 3 8,000 人です。腱障害の病名があった人は、 FQs 14 人、セファロスポリンで 5 人です。その内訳及び比較をパネル 6 に示しています。

 表の中ほどと下のほうの、少し濃い色で表示している「 Total of FQs 」「 Total of Cephalosporins 」の 2 つの行を御覧ください。一番下の「 Total of Cephalosporins 」を見ますと、対照群の発現頻度すなわちベースライン・リスクは 1 万人に 1.3 人です。前回、 1 万人に 1 人の副作用とは何かという議論がありましたが、このように何かターゲットとする薬剤の副作用を見ようとするときには、同じような感染症の患者に類薬が使われているような状況下で、まず、ベースライン・リスクがどのくらいかということが、そのデータベースで評価できないと、本当に見たいものを見ることができない。そういう事例として、これは 1 万人に 1 人の有害事象を見ていることを御確認いただきたいと思います。

 その少し上の「 Total of FQs 」を見ますと、発現頻度が 0.082 です。そのリスク比を取りますと、セファロスポリンを 1 とすると FQs 6.29 なので、セファロスポリン系の抗菌薬に比較して FQs では腱障害の発現頻度が約 6 倍高まることが分かります。この発現頻度は低いので、この結果をもって直ちに抗菌薬の使用を中止するとか、その使用に慎重を期すというほどではないかもしれません。日本の医療において処方される頻度が比較的高い抗菌薬については、単独の医療機関の 15 年分のデータからでも、このような形で副作用の検出及びその発現率が評価できたという事例でした。

 パネル 7 からは、ヘパリン起因性血小板減少症 (Heparin-induced Thrombocytopenia HIT) の検出事例を紹介いたします。この研究は『 Journal of Clinical Pharmacology and Therapeutics 』に昨年公表しています。 HIT には、ヘパリンによる比較的軽度な血小板凝集作用による血小板減少の「 Type I 」もあるのですが、ここではヘパリン依存性の自己抗体が作られて、血小板を活性するために引き起こされる「 Type II 」という血小板減少症をターゲットとしています。 Type I HIT は内科領域・外科領域それぞれパネルに示すような発現率です。特に HIT で注意しなければいけないのは、 HIT を起こした患者の 1/4 から 1/2 に、血栓塞栓症を伴って、ときに致死的な結果に至ることがあります。副作用報告も年間 100 件又はそれ以上あるということなので、臨床的にも重篤な副作用としての対応が必要です。

HIT の発症時期は、初回治療時の場合には使用開始から 5 14 日後くらいに起こることが分かっています。また、過去 100 日以内にも使用していたような再使用例においては、 24 時間以内に起こると言われています。

 実際に臨床検査値の推移を追いながら、どのように HIT を検出したかについて、そのアルゴリズム、すなわち検出過程について説明いたします。パネル 8 9 を併せて御覧ください。パネル 8 のグラフでは、横軸が日数の経過で血小板数の推移を示しています。パネル 9 には、どのような検出アルゴリズムを構築したかを示しています。

 データベース上の対象患者は浜松医科大学病院の 4 年分のデータを使っています。まず、対象薬は未分画ヘパリンで、投与前すなわちヘパリン投与に当たる「開始基準日」の 14 日前以内に検査がされており、投与前後の血小板数が測定されていることが条件です。また、投与前 4 週の間に抗悪性腫瘍薬の投与がないことも確認しています。そして、実際に血小板減少が投与後 4 14 日以内に起こり、血小板が一番下がったときには処方前値から 30 %以下の減少であること。それから、最終投与すなわちヘパリンの投与を止めてから 14 日以内に回復していること。このような検査値の動きを示す患者をデータベースから抽出し、同時に、 DIC 等の HIT 類似疾患との鑑別が必要ですので、類似疾患の確定診断例は除外しています。ここまでではデータベースから抽出してきているだけなので、血液内科の医師による陽性的中率 (Positive Predictive Value PPV) を研究としては評価しています。結果としては、 PPV=87.2 %で、比較的良好な的中率が得られていることがお分かりいただけると思います。

 また、こういった発症率を算出するだけではなく、パネル 10 には HIT 疑い症例の背景を示します。ここで「疑い」というのは、先ほどのパネルで「 HIT 確定患者」としているものはあくまでもレトロに解析をしているので、実際の診療時に確定したものではないという意味で「疑い症例」と書いてあります。先のアルゴリズムで検出された 41 例と HIT が未検出だった残りの約 2,800 名とを比較しますと、「投与日数 4 日以上」の項目でのみ有意な違いがあり、その他の年齢や性別等の項目では有意な違いがなかったというような患者背景の違いも分かります。

 パネル 11 では、 HIT 検出の有無をアウトカム変数とし、他の項目を共変量とした多重ロジスティック回帰分析を行ったところ、投与日数 4 日以上でオッズ比 5.38 です。この結果から直ちに 4 日以上の投与をやめなければいけないというわけではありませんが、臨床上の必要性があってヘパリンを 4 日以上投与する場合には、短期間投与の患者よりも HIT が発症するリスクが高まることを臨床には示唆する結果かと思われます。

 パネル 12 からは、最後の事例で、 10 代へのオセルタミビル投与の原則差し控えの例をお示しします。資料には「 Submitted 」となっていますが、この内容は先週に『 Journal of Clinical Pharmacology and Therapeutics 』誌にアクセプトされています。皆さんも御存じのとおり、オセルタミビルに関しては 2007 年に緊急安全性情報と添付文書が改定されまして、 10 代の患者に対してはハイリスク患者以外への投与を原則差し控えるよう注意喚起が実施されました。実際にこういった行政施策が現場の医薬品使用実態にどういった影響を与えるかを見てみました。

 パネル 13 14 を御覧ください。パネル 13 には研究に用いた解析法を示しています。 Interrupted time series 回帰分析というもので、 intervention すなわち行政施策を行う前までの直線との比較から、行政施策を行った直後の短期的な効果として前後の水準の差と、その後の長期的な現象として傾きの差を、それぞれβ 2 とβ 3 として分けて解析する方法です。

 その結果がパネル 14 のグラフで、これは 4 病院のデータを統合してあります。大都市部としては東京と福岡、比較的地方の都市にある新設医科大学のデータとしては浜松医大と香川大学のデータと地域性も考慮して使っています。グラフを一目でお分かりのように、○で示した 20 代以上のコントロール群の患者でも、僅かにβ 2 という短期的なレベルの効果も見られていますが、特にターゲット群として見ている 10 代の患者においては、行政施策によって処方量が低下し、その後もそれが維持されています。研究では上のパネルに示す各データの値を解析していますが、資料には有意な差が見られたβ 2 について の値のみお示ししています。このような方法で、行政施策の結果を処方動向やその他のデータから評価することができます。

 医療情報データベースを使うことの意義やメリットはなかなか実感としてお分かりいただきにくい部分もあろうと思いますが、私どもの研究から、具体的にこういった使い方ができるということを少しでも御理解いただけると幸いに存じます。

○永井座長 ありがとうございました。最後に、 PMDA から、本事業を開始する前から検討されてきた電子医療情報を利用した試行調査「 MIHARI プロジェクト」について紹介していただきまして、その後、本事業の現状の課題と利活用について説明していただきます。よろしくお願いします。

○安全第一部長 まず、 MIHARI プロジェクトについて、資料 2-4-1 で紹介いたします。 MIHARI プロジェクトは電子診療情報の活用方法の検討プロジェクトです。本検討会の主題となっている医療情報データベース基盤整備事業はデータベースそのものを作成・構築するという事業ですが、 MIHARI プロジェクトは、電子診療情報の活用方法を検討していくというプロジェクトです。 MIHARI プロジェクトはスライド 2 にあるように、 PMDA における医薬品の市販後安全対策を強化していく上で、副作用の自発報告以外の情報源を用いた安全対策、医薬品の安全性評価を行っていこうというもので、電子診療情報の二次利用による評価体制を構築するという、電子診療情報の活用方法の検討を行ってきたものです。

 スライド 3 を御覧ください。緑の枠で囲ってあるとおり、 MIHARI プロジェクトが始まった平成 21 年当時は副作用報告を基に安全対策を行っていましたが、今後は、赤い枠で囲まれてあるように、電子診療情報も活用して安全対策を検討したいということで、このプロジェクトが始まっています。

 スライド 4 は、 MIHARI プロジェクトの検討の流れですが、下から上に進んでいきます。 1 段階目は、電子診療情報へのアクセスの確保の検討。 2 段階目は、データの特性など、分析するデータの評価の段階。最後の 3 段階目は、データの活用ということで、解析方法の検討。このように順を追って検討していくということで MIHARI プロジェクトを進めてまいりました。

 スライド 5 です。まず、第1段階目の電子診療情報へのアクセスの検討です。平成 21 年度から平成 22 年度にかけて、データ収集方法の検討として医療機関の方々との調整などを行いました。また、データのチェックやデータクリーニングなどの検討を行っています。

 スライド 6 は、第2段階目のデータの評価の検討です。電子診療情報を二次的に使用するので、副作用の発生というようなことをどのように特定するのかという検討を行いました。右側にあるとおり、例えば急性腎不全や腎障害の患者を特定するときに、マル1のように病名だけで特定できるのか、あるいは、マル2~マル5にあるように、検査値も含めて患者を抽出すれば患者が特定できるのかを検討しました。このようなマル1~マル6の条件で抽出した患者について、実際に病院の先生方にカルテ等を見ていただいて、本当にこの病名の患者なのかを確認していただき、陽性的中率を計算する検討を、平成 23 年度から平成 24 年度まで行いました。

 スライド 7 です。第3段階目の実際のデータの活用の検討事例として、安全対策措置の影響調査に関するものです。これは糖尿病薬であるシタグリプチンとスルホニルウレアの併用について添付文書が改定されて注意喚起がされたことについて検討したものです。スライドの左側は、その措置の前と後で、併用の患者の割合がどれぐらい変化したのかということの試行調査です。右側のグラフは、グリメピリド (SU ) 1 日処方量がどのように変化したかの試行調査を行っています。これが平成 23 年度から平成 24 年度の試行調査です。そのほか、 MIHARI プロジェクトにおいては電子診療情報を用いて幾つか試行調査を行っています。スライド 8 9 にこれまで行った試行調査の例を一覧表で示しています。

 スライド 10 は、電子診療情報の活用の仕方の検討を行ってきた MIHARI プロジェクトの観点から、利用した診療情報データの限界をどのように認識しているか示したものです。 MIHARI プロジェクトではデータの規模が小さいので、使用頻度の低い医薬品や、まれな有害事象についての調査が難しいということがあります。

MIHARI プロジェクトの観点から医療情報データベース基盤整備事業 (MID-NET) に期待される点としては、 10 医療機関なので、大規模なデータが利用可能になるだろうという点です。また、スライド 8 9 で示したように、私どもは MIHARI プロジェクトのデータの活用方法の検討をしてきましたので、そういった知見などを大規模データである医療情報データベース基盤整備事業での調査に活用できるのではないかと期待しています。以上が MIHARI プロジェクトの紹介です。

 続いて、資料 2-4-2 を御覧ください。医療情報データベース基盤整備事業の現状の課題と、その利活用の方策について説明いたします。スライド 3 は、本検討会でも厚生労働省から既に説明されていますが、事業の計画を示したものです。この事業は、平成 23 年度からの 3 年計画でデータベースを構築し、その後、 2 年間データを蓄積するという 5 年計画で開始されています。

 スライドの 4 です。こういった大規模な医療情報データベースの必要性については、日本のセンチネル・プロジェクトという検討会で示されました。現在の副作用報告では母数が把握できないので、副作用報告の頻度が把握できないという限界があります。頻度が把握できないので、副作用の発生頻度の比較、薬の間での比較や安全対策措置前後での比較ができないという限界もあります。また、原疾患により副作用と同じような症状が出る場合に、そういった副作用について比較、鑑別が難しいので安全対策をしていいのかどうかが分からないという課題があります。それから、副作用報告は医療関係者の方が報告してくれないとその発生が分からないという課題もあります。医療情報を活用することで分母が分かり、発現頻度が比較できるようになると、スライド 4 の一番左にあるとおり、薬の間での副作用の発現頻度の比較や、真ん中の図のように、原疾患でも副作用と同じような症状が出る場合、薬を投与して更に有害事象の頻度が増すのかといった、医薬品による上乗せ効果の検証ができることが期待できます。また、一番右の図のように、安全対策措置の前と後で副作用の発生頻度の割合が比較できることも期待できます。データベースができると、これらのことが可能になるのではないかと考えています。

 スライド 5 は、医療情報データベース事業の当初の計画です。混み入った図ですが、左側に薄い水色の右矢印が並んでいて、平成 23 年度の 3 つ目に「 1 病院システム開発・導入」とあります。平成 23 年度には 1 つの病院にデータベースのシステムを構築しようという計画でした。右に進んで、平成 24 年度は更に 6 病院にデータベースのシステムを導入する計画でした。平成 25 年度は更に 3 病院にデータベースのシステムを導入し、合計 10 病院にシステムを導入してデータを蓄積して活用していこうというのが当初のスケジュールです。

 しかし、事業を始めてみるといろいろと困難な要因が出てきていまして、スライド 6 の一番下にありますとおり、現時点では 9 か月程度の事業の遅れが発生しています。困難な点は、表で示すとおりで、まず 1 つ目は、当初は 5 拠点を協力医療機関として公募してデータベースを整備しようと計画していましたが、実際には 10 拠点を公募により採択し、拠点数が増加しました。

2 つ目は、当初の計画では協力医療機関の電子カルテのデータを 1 か所に集積して分析する予定でした。それをスライド 7 8 に示しています。当初の想定では、各病院で持っている電子データを 1 か所 (PMDA の分析用 DB) に集積して解析する予定でした。しかし、事業開始後、各協力医療機関の方々と調整した結果、原則として、データは各病院でお持ちいただいて、そこで統計処理した集計結果を統合分析センターにお送りいただくという形で分析を行うということになりましたので、データの持ち方や分析の仕方が変わったところがあります。

 スライド 6 に戻って、困難になった 3 つ目の要因は、医療情報データベースは 10 拠点の先生方に御協力いただいていて、 10 拠点の医療情報を標準化してデータを統合して分析していこうという計画でしたが、実際に開始してみると、各協力医療機関における医療情報の持ち方が違っていたり、各病院で独自の院内コード体系を持っていたり、ということで、標準化に膨大な作業が発生したということがあります。

 困難になった要因の 4 つ目は、私どもが当初想定していたのは、同じ開発企業が開発した電子カルテを導入している医療機関には、同一の企業が開発した電子カルテシステムを導入している医療機関に設置したデータベースシステムを安価に容易に導入できるのではないかと考えていましたが、実際に事業を開始してみると、スライド 6 の右下にあるとおり、電子カルテでは、同じメーカーであっても医療機関ごとにかなりのカスタマイズがされていて、協力医療機関ごとに初めからソフトウェアの個別開発が必要だという状況でした。このため、現時点で 9 か月程度計画が遅れている状況です。

 スライド 9 にその状況を計画図で示しています。上から 3 つ目の右矢印の「 1 病院システム開発・導入、データ蓄積」は、先ほどのスライド 5 では平成 23 年度に終わる予定でしたが、平成 24 年度一杯かかっている状況です。次の「 6 病院のシステムの導入」については、平成 24 年度から平成 25 年度にかけて行っている状況です。更に進んで今年度末、現在ですが、 3 病院のシステム導入を進めているところです。この導入が終わりますと、その右側に「データ蓄積」とあるとおり、各協力医療機関で持つ過去のデータを、導入したシステムに移行して蓄積していく段階になるというスケジュールです。このような開発の状況にあります。

 さらに、この事業を進めていくに当たって、各協力医療機関の先生方の負担がかなり大きいという問題があります。大江先生の説明にもありましたが、スライド 10 にあるとおり、構築期間中の設計の段階や標準化のために、院内のコードと共通コードの対応表を作成していただく作業や、そういった段階での PMDA との調整の作業などでかなりの人的負担をお願いしているということがあります。また、システムを導入するに当たり、システムの設置場所を御提供いただいたり、システム設置に付随した院内設備の工事で物的や経済的負担もお願いしたりしているような状況です。

 それから、今後発生すると想定される医療機関側の負担です。人的負担については、定期的にお願いすることとして、システムの日常運用やデータの抽出作業が想定されます。随時お願いすることとして、機器類の日常点検、また、院内コードも更新されていくでしょうから、院内コードと共通コードの対応表の更新などの作業が想定されます。また、今後もシステム設置場所の提供や運用に係る人件費・光熱費など、医療機関側の先生方に相当の負担が発生すると考えています。

 続いて、医療情報データベースの利用に関して説明いたします。スライド 12 を御覧ください。医療情報データベースの医療情報の利活用については、昨年 4 月~ 6 月にかけて厚生労働省で検討会が開催されまして、そこで平成 27 年度までの試行期間の使い方を御検討いただきました。試行期間中に医療情報データベースを利活用するに当たっては、利活用の申出を PMDA が審査しますが、その審査に当たっては、一番下の真ん中辺りにある「有識者会議」、専門家の先生に集まっていただく委員会に原則付議をしまして、意見をいただいた上で審査するという手続を決めていただきました。

 スライド 13 は、 PMDA における医療情報データベースの利活用体制についてです。現時点では、 PMDA においては、データベースを構築することに重点が置かれていますので、下のほうの●にあるとおり、データベースを用いた薬剤疫学的な手法に基づいて安全対策を推進するための人員の確保や育成については、私どもは今後の課題と認識しています。

 スライド 14 は、医療情報データベースの長所と限界についてです。長所としては、診療情報や保険請求の情報など多様な情報源に由来する医療情報が存在すること。また、レセプトとは違って、病院の先生方がお持ちの検査データ等が利用可能であること。また、今回は患者数の多い医療機関を中心にデータベースを構築していますので、そういった長所があると考えています。ただし、現在構築している医療情報データベースの限界としては、転院前や転院後の情報が得られないこと、また、現時点では医療機関数が限られていることが限界として考えています。こういった長所・限界を把握した上で利活用を進めていくことが必要だと考えています。

 スライド 15 は、実際に何かしらの分析をしていく上でデータベースの規模がどの程度必要なのかについて検討したものです。ここでは、 1,000 人に 1 人の割合で発生するような副作用を調査する場合に、例えば 2 倍の差を検出するためにはどれぐらいの患者数が必要なのかを統計的に計算しますと、大体 2.4 万人程度の患者が必要だということが出てきます。 30 万人という規模のデータベースがあった場合に、その 30 万人の 8 %の方が使っているような医薬品で使用患者数が 2.4 万人になります。つまり、使用割合が 8 %ぐらいの医薬品を調査するには 30 万人規模のデータベースが必要ではないかという計算結果が出ます。 300 万人規模のデータベースが構築された場合には、使用割合が 0.8 %以上の医薬品であればデータベースで分析できるのではないかと考えられます。本事業の当面の目標である 1,000 万人規模のデータベースであれば、使用割合が 0.24 %以上の医薬品が分析可能になるのではないかと考えています。

 医療情報データベースの今後の利用の検討の流れについては、 MIHARI プロジェクトの検討と同じような段階を踏んで、データの利用を進めていくことが必要だと考えています。それをスライド 16 に示しています。

 スライド 17 を御覧ください。 1 段階目と 2 段階目の、データのアクセスの確保とデータの評価についてです。(マル1)データへのアクセスの確保については、現在データベースの構築を進めているところです。データベースが構築されてデータの移行が進みますと、今度はデータの特性の評価を進めていく必要があります。

 そういった段階を進み、次に、スライド 18 の試行的な利活用です。当初は「試行的な」ということで、既に知られているような有害事象についてデータベースを用いた調査を行って、どのような医薬品や有害事象についてデータベースが利用できるかを検討していくことが必要だと考えています。これはデータチェックというデータの評価の段階と並行して進めていくということで、こういった試行的な利活用で得られた結果は参考値として取り扱うことになると考えています。

 データチェックを行いながらも、現時点で利用できるデータで可能な調査についてです。現在、東大病院でデータベースが構築されていまして、大体 30 万人規模のデータが利用可能という状況です。ただし、このうちの過去の検査データについてはまだ移行の最中で集積中という状況です。

 こういったデータを用いて試行的な利活用をすることについては、スライド 19 の黒いポツの下にあるとおり、使用頻度の高い医薬品や医薬品群を対象に、検査データが移行中なので、現段階では、発生頻度が高く、検査データ以外で同定可能な有害事象などを対象にシンプルな分析をするということが可能ではないかと考えています。

 スライド 20 です。試行が終わり、データが十分に蓄積された後に本格的な利活用という段階になります。このデータベースが利用可能になれば、データベースの利用結果と副作用報告の結果を組み合わせて安全対策措置の根拠にしたいと考えています。

 最後に、スライド 22 に私どもが現在考えていることをまとめています。 PMDA としては、この医療情報データベースの構築・維持・利用は PMDA の第三期中期計画の主要な課題の 1 つと考えていますが、そのためには解決しなくてはいけない課題があります。厚生労働省と PMDA の行政側として、まず 1 つ目として、構築・維持・利用体制の確立に係る費用の確保が課題であろうと考えています。 2 つ目として、データを活用する人材の育成、これは PMDA 内の人材だけではなく、 PMDA 外の人材の活用もすることが必要ではないかと考えています。

 それから、データベースの試行を進めていく段階で利活用実績を蓄積していかなくてはいけないと考えています。また、先生方からもお話がありましたが、財源の検討も進めていかなくてはいけないと考えています。国費や製薬企業からの安全対策拠出金、あるいは、データベースの利用者の負担などの検討も必要だと考えています。さらに、協力医療機関に関する課題としては、先ほど申し上げたとおり、協力医療機関にかなりの負担をお掛けしていますので、そういった費用負担への対応も検討しなければいけないと考えています。

 本日 PMDA からは、これまでの MIHARI プロジェクトの経験と、医療情報データベース基盤整備事業の実施主体として、事業の現状と今後の利活用について説明いたしました。以上です。

○永井座長 皆様から御意見を伺いたいと思いますが、初め 10 分か 15 分ぐらい全体的な議論をいただいて、その後、課題に沿って議論を整理したいと思います。幾つか論点があったと思うのです。この事業に参加する医療機関のメリットの問題とか、負担への対応の仕方、特に費用の問題が出ております。利活用の仕方、その他、運営の仕方、いろいろな問題があろうかと思います。いかがでしょうか。

○石川構成員 日本医師会の石川です。最初に、大江先生の御発表の中で、 2 ページの「本事業の運営等のあり方」で費用負担、大きな提言があったわけです。私はこの医療情報データベースシステムは日本にとって極めて大事なものだということを考えております。もちろん、国民にとっての財産であるという観点からいいますと、下から 4 行目に書いてある「最終受益者は国民であるはずだ」ということは、もっともなことだと思うのです。しかし、ここを本当にそうだと位置付けるのは、利活用のところで判断をする、審査をする PMDA 、あるいは有識者会議の役割に負うところがすごく高いと思うのです。そこの働きが発揮されて、初めてこの利活用の研究が、いろいろな所の研究者が目的・意識的に手挙げしてくるわけですが、そこがきちんと機能すれば、そのような国民の財産ということで使えるのではないかと考えます。そこがどのようなあり方で作られるかというのはとても大事だと考えます。

 今までの経過の中で、 10 医療機関は構築されてきて大変努力をされたのだと思うのですが、私たち、今まで医療情報データベース基盤整備事業は、医師会の役員会のほうでもいろいろと報告をしていますが、その 10 医療機関の中で、公的な財産を扱うというところで、手挙げでやったのはいいのだけれども、本当にそれでふさわしいのかという疑義が多少あったことは、一応発言しておこうと思います。したがって、今後は国民の財産なども本当にうまく使えば大変有意義なものができるわけなのですが、そうであっても途中、運営のところで問題が生じてきたときには、罰則も含めて何か考えていかなければいけないということは、今の段階から考えておいていただいたほうがいいかなと思います。以上です。

○永井座長 今の点、いかがでしょうか。運営について、受益者は最終的には国民だけれども、今そこまで言えるかということですね。基本的なことは皆さん理解されていると思うのですが、もしそれが理解されたときには、場合によっては企業、あるいは患者は医療費の一部とか、そういう議論もいずれ出てくる可能性はありますね。副作用基金というのは前からありましたね。あれはこういうものには使えないのですか。

○安全使用推進室長 現在、医薬品については医薬品の副作用被害救済制度ということで、意図せず起きてしまった副作用を救済するために、救済の拠出金を製造販売業者からいただいて PMDA のほうで管理しています。それは、起きてしまった副作用への医療手当とか、被害者に対する補償的な意味を含めた給付を行うものですので、このデータベースに対して直接そういうお金を使える状況ではないと思っております。

○永井座長 ただ、前は副作用機構から研究費の補助もしていましたが。

○安全使用推進室長 昔、 PMDA の成り立ちの中で、研究振興業務をしていた時期がありましたが、これは救済の拠出金とは別の勘定から出ている予算で運営されていたものです。

○永井座長 それはもうないのですか。

○安全使用推進室長 いろいろな業務再編の過程で、独立行政法人の医薬基盤研究所、基盤研と呼んでいる所にそういう業務が移っております。

○永井座長 そうすると、基盤研がこういう所に支援してもいいということになるのでしょうか。

○安全使用推進室長 研究振興業務のテーマの中に入っているかどうかまでは存じ上げておりません。

○永井座長 いかがでしょうか。

○石川構成員 早く退室させていただきますので、もう 1 点だけお願いします。最後の PMDA からの御発言で、資料 2-4-2 で、 12 ページのパワーポイントです。「 MID-NET の医療情報の利活用の流れ」で、先ほどの御説明で有識者会議のところに触れていたわけです。これは前の厚生労働省のときの検討会は大江先生が座長でいらっしゃったかと思うのですが、そこでこの有識者会議はどういう意味合いを持つかとかいうことで、議論をした覚えがあります。やはりこの有識者会議についてで、当初、試行のところでは当面はより公的な研究だとかそういったものを手掛けるということがあったと思うのです。そこは少し試行のところで、きちんと徹底していただきたいというのが 1 つ要望ではあります。

 機密性のある情報がこのデータベースに入っておりますので、きちんと守られて使われるという、試行ではより公的なところで研究をしていただくことを加えていただきたいという要望がありますので、よろしくお願いします。

○永井座長 製薬企業がこれを使うときには、どうしたらよろしいのでしょうか。医療機関ではありませんね。

○安全第一部長 先ほど石川先生から御指摘がありました資料 2-4-2 12 ページですが、昨年の 4 月から 6 月にかけて厚生労働省で検討していただいた検討会では、平成 27 年度までは試行期間との位置付けなので、スライド 12 の右上に書いてあるとおり、平成 27 年度までの試行期間中は、利活用者としては厚生労働省と PMDA とデータベースが導入されている協力医療機関の方々のみで使っていこうということで、合意が得られているところです。

○永井座長 でも、最大のユーザーの 1 つは企業ではないかと思うのです。自社の製品について、どのぐらい副作用が発生しているか。そういうことをどのようにしたら検討できるのか。また産学連携ではないのですが、どこか大学に頼んで研究してもらうとか、そういうことなのですか。

○安全使用推進室長 事務局から説明させていただきます。製薬会社の方がどうやって安全にといいますか、個人情報などを適切に管理しながら使っていけるかということも含めて、試行期間中に検討していきたいと思っております。ただ、先ほど座長からもちょっとお話があったかと思いますが、個別の医療機関に対して協力研究のような形で、依頼し、医療機関が研究を行うことも可能です。

○青木構成員 製薬産業としても、試行期間中のこの流れに関しては合意はしているのですが、その後の形が見えてきていないということで、不安な声が挙がっております。先ほども申し上げたとおり、財務諸表などもいただいていなくて、こちらは半額ほど拠出しているけれども、それがどのように使われているかというところが、なぜ今日まで見えないのかというのは疑問が大きいと我々は言われておりまして、その辺のところの御回答も是非いただきたいと思うのですけれども。

○安全使用推進室長 財源的な確認も含めて、 PMDA と調整した上で、お答えするようにさせていただきます。

○青木構成員 大江先生の 2 ページ目にもありまして、渡邊部長からもありましたが、熟練者の養成ということがとても大切だと思っています。なぜなら、国民が最終受益者である。その視点でいったときに、熟練者というのをどこまで広げていいか。個人情報を保護しながらですが、 10 拠点の先生方だけなのか、それとも PMDA の分析の方なのか、あるいは製薬産業の人も必要があるのか。一体、どのぐらいの熟練者が目指すべきところなのか。もしお考えがあれば、大江先生にも教えていただきたいと思うのですけれども。

○大江構成員 この熟練者というのを書いた意味は、現在のシステムは何か調べたい、分析したい調査課題を頭の中でイメージしたときに、そのイメージした課題を抽出スクリプトと言われるプログラムのようなもの、具体的に言うと、どういう条件式の組合せでそれを効率よく抽出するかというものですが、それに変換しないといけないのです。その変換の仕方によっては、すごく結果が変わってくるわけです。ですので、そういう課題ごとにこんな課題だったらこのような抽出条件の組合せにすると、このデータベースはうまく抽出できるのだという熟練者を養成していく必要があるという意味で、これは経験とも関係してくるのですが、いろいろな練習問題的なものもやりながら、身に付けていく必要があると思います。まずは、そういう熟練者を養成することが、このデータベースをうまく使いこなすポイントではないかと感じているのです。

 どういう所属機関の人たちになってもらうかというのは、まだ具体的なイメージはないのですが、もちろん研究機関、医療機関の具体的な課題を持っている臨床医の方々を 1 つは想定しています。もう 1 つは、薬学系の出身者、あるいは製薬企業の出身者、あるいは PMDA の方々、そういった方々でデータベースに精通していく必要のある人を養成する必要があると思っています。そういう意味では、かなり拡大すべきではないか。近い将来的には、そういう熟練者を養成する養成団体というか、養成機関というか、そういうものも必要で、そこで一定の熟練したというスキルの証明を持った人が医療機関に来て、利用者端末を操作するというのがいいのではないかと思います。

○永井座長 これは薬学会等はどのように見ておられるのですか。特にこういうものに参加するメリット、デメリット、人材育成ですね。

○土屋構成員 薬学会はまだこれに対して具体的にというのはないのですが、直接の当事者でもありますので、こういったことをどうやっていくか。恐らくそこは成果を見ながらとかですね。そうすると、より具体的なプログラムが書けていくのかなという気がします。こういうものでサイエンスにしていかないといけない部分はいっぱいあるわけですので、データベースの利活用については、基本的にはその必要性は十分分かっているけれども、まだ今言われたような人材育成とか、そこには至っておりません。しかし、研究者は、ある程度はその辺が分かってやっているかなという気がします。

○永井座長 得てして人のデータは知りたいけれども、自分でデータを出すのは面倒くさいということが起こり得るので、ここに参加するメリットを何かインセンティブとして与えないといけないと思うのですが、その辺いかがですか。

○川上構成員 今日も私が説明の冒頭に申したのですが、従来の薬学の研究教育というと、基礎的な分野か、あるいは基礎でないにしても薬物動態、臨床薬理などが主体であって、こういった薬剤疫学の研究を薬学部の講座で行ったり、指導する研究者や教員がいて、その下に大学院生がいてという構造ではなかったように思います。ただし、今後は薬学教育が 6 年制になったことに伴って、恐らく薬学の中でもこういった医薬品の安全性等を視野に入れた疫学研究が広がってくるのではないかと思います。薬剤疫学講座等が増えてくれば、そういった研究を経験した人たちがある程度、医療業界、あるいは薬業界でも活躍していくようになるのではないかとは思います。

○赤沢構成員 私は 1990 年の終わりから 2000 年にかけて、アメリカで薬剤疫学等の教育を受けた経験からちょっと述べさせていただきますと、アメリカでも最初はデータベースをどのように使っていこうかという話のときは、研究者がいないとか、データベースをどう活用していくのかがなかなか見えてこなくて、まず大江先生がおっしゃられたように、データをきちんと抽出して、データベースを構築するという段階と、そのデータを活用して薬剤疫学的な研究成果を出すというのは、 2 段階に分かれていると思います。 1 段階目を全部の研究者がやっていくというのは、なかなかハードルが高いと思います。

 私が受けた教育の中では、 2 段階のデータベースからある程度抽出されたものを使って、どういう成果を出していくかというところの教育が主でした。そのときに、データベースを構築した先生方が中心になって、データベースをどのように使ったら研究になるのかという啓蒙活動、若しくはこのデータをどうやって使ったら研究ができるのかという教育研修。もっと言いますと、研究者が使ったときに、何か問題が起こったときに、それを支援するサポート。結構そのような啓蒙とか教育とかサポート体制がきちんとあった上で、こういうデータベースを構築して薬剤疫学研究に使ってくださいということをやっています。例えばメディケアみたいな公的なものでも、確か大学がそういうセンターを作ったり、データベンダーがデータベースの抽出作業を全部やって、その費用は当然、利益者が払ってやりましたが、そういう形でこのデータベースを作った以上、正しく使っていただくという教育サポートを含めて、これを考えていただくほうがいいかなと。そうすると、正しく使って成果を出していくことによって、データベースを提供するなり、利活用することによるメリットを、患者を含めてですが、御理解していただけるのではないかと思っていますし、そういう段階になれば薬学部とか医学会も、こういうデータベースを使って研究をしていこうと。アメリカではかなりたくさんの研究者が携わっていますが、本当に一から十まで知っているかというのは分かりませんが、かなりの数の研究者が急に出てきたというところは、そういうところに大きく影響しているのではないかと私は考えています。

○永井座長 ただ、アメリカと日本は医療状況が大分違いますね。市場原理で動いている国とそうでない国の違いというのはあるわけで、全部体制ができたならば参加するというのだと、多分うまく回らないのだと思うのです。そこにもうちょっと学会としての支援なりを、まだ未完成の段階から表明していくとか、あるいは例えば認定とか、専門医、専門的な薬剤師とか、そういうところに何かちょっと学会の関わりを絡めておくと発展していくような気がするのですが、いかがですか。とにかくたくさんの施設が使わないと回らないわけです。システムが動き出してから乗りますというのと、動く前から一緒に動かしていきますというのと、スタンスとしては違いがあると思います。それは学会のコミットは非常に大きいように思いますが、いかがでしょうか。

○大江構成員 医療情報のほうだと医療情報学会があるのですが、そこでは医療情報技師の認定制度がありますので、今後そういう中にもこういったシステムのトレーニングを入れていくと、確かにいいかなと思いますね。もう 1 つは、この事業の中で e ラーニングをきちんと作っていくと。それを一とおりやれば、どういう課題のときにはどのようにやるのがいいのかということが学べる仕組みも作ることで、使えるスキルを持った人の底辺を広げることが大事なのではないかと思います。

○青木構成員 裾野を広げるという意味で、認定という制度などは私も大変共感するところです。素朴な疑問でもあるのですが、資料 2-4-2 8 枚目のスライドが現在の構図ということで、渡邊さんから御紹介いただいたのですが、今の例えば熟練者を育成という形の視点で見ると、この構図は慎重論という意味では納得性があると思うのですが、この形で集計結果がセンターに合流するという形をとると、普通に考えると熟練者を育てることができるとしたら、機関 A B C の中だけということにならないかなと。本来的な当初の想定で言うならば、 PMDA に集積される分析のデータベースを何らかの理由で了解されたものを分析すれば、その者たちは熟練者になり得ると思うのですが、この構図は試行期間限定の話なのか、それともこの MID-NET は未来永劫この形でいくということが決定されることなのか確認したかったのですが、いかがですか。渡邊さんが詳しいようでしたら御紹介いただきたいのですけれども。

○安全使用推進室長 事務局からお答えさせていただきます。現在のデータベースの構成概念図としては、このような形で構成されておりますので、今後、集計されていくデータも各大学に設置されているデータベースの中に溜まっていく形になります。ただ、ここに記載されております「標準化ストレージ」から、イメージ図として見にくいところがあって申し訳ないのですが、各大学で置かれた最終的な統合データソースが実際にスクリプトを投げる先のデータソースになりますが、そこは A 大学も B 大学も C 大学も、ほぼそろった状態で入っていますので、投げるスクリプト自体がそんなに違うことはないのではないかとは思います。ですので、 A 病院と B 病院と C 病院の結果を合わせて抽出するというオーダーを掛けるというところが、多分、分散型と集中型での違いかなとは思っております。認識不足でしたら、大江先生からも補足いただけますと。恐縮です。

○大江構成員 私は当面この構成を変えることはないのではないかと思います。それは医師であっても、あるいはほかの職種のメディカルスタッフであっても、患者の診療の実施をするときには病院の外ではできないわけで、病院の中に行ってするわけですね。それと同じように、こういうセンシティブな情報の集積を扱うというトレーニングを受けるときには、病院の外で医療者がいないところで、ああでもない、こうでもないとやるのではなくて、どこかの協力医療機関に行って、そこで研修をさせてもらうことが必要ではないかと思います。だからといって、それが医療機関の所属者である必要はないわけで、外から申し込んで研修が受けられるような、そういう仕組み作りをしていけばいいのではないかと思いますね。

○永井座長 ですから、これは研究者の立場からというだけでは、なかなか動かないところがあるのではないかと思うのです。ある程度アカデミアとして行う、基盤として進める話だという認識、もちろん業界としてもそうだと思うのです。そういうところでどのように協力を得ていくかということを、少し時間をかけて考えていく必要があると思います。それから、維持費の負担の問題です。協力機関がたくさんあれば解決できるのでしょうけれども、どんな方策があるかです。利用者とか、医療費でとか、業界としてとか、先ほどの基盤研としてなどという話もあるかもしれないのですが。

○青木構成員 度々すみません。資料 2-4-2 6 枚目のスライドで紹介いただいた中でちょっと分からなかったのですが、 3 つ目、「開発の困難要因」ということで、「 9 か月程度の遅延」をしていることの理由の中で、「膨大な標準化作業が発生」とあります。素朴な疑問で申し訳ないのですが、これは先ほどの 8 枚目のスライドの構図からすると、標準化は果たして時間を順延して人件費負担をかけて、本当にやるべきことだったかどうか、ちょっと分からなかったのですが、なぜ時間を順延させて標準化をトライしたのか。率直に申し上げますと、各集計の、例えば臨検値ですと前後比を比較することができれば、ある種の安全性監視対策は対応可能です。もちろん標準化されることに関しては大歓迎なのですが、期限を順延したり、 10 拠点の先生方の負担を増やす必要があるというジャッジメントがなぜされたかを、少し教えていただきたいのですけれども。

○永井座長 大事なのはデータを出すということであって、標準化は理想的であるけれども、場合によってはそれは後回しでもよいのではないかと思います。

○事務局 事務局からお答えします。おっしゃるとおりの点は確かにあるかと思います。しかしながら、これは集計結果を主として解析するというシステムではありますが、将来的には個別のデータを統合解析できるように、このシステムを発展したいと考えておりまして、そのときを見据えて今のうちから標準化を進めようと考えていたところです。

○大江構成員 もう 1 つ重要なことは、協力医療機関 10 なら 10 の病院全てが同じ条件式で検索しないと、得ている結果が異なってしまうのですね。全く同じ条件式を全ての医療機関に適用するためには、例えばある疾患の患者を抽出するときに、その疾患のデータは疾患のコードで書かれているわけです。そうすると、各医療機関がまちまちのコードで、そのコードの意味する疾患が違っていると、同じ疾患のデータを抽出したつもりですが、実際には違うものを集めて解析しているということが必ず起こります。例えば医薬品の投与にしても、何々系の医薬品といったときに、その薬に対応するものは何かというのは、個々の医療機関のデータベースは全部ローカルなコードで書かれていますから、それと対応しておかないといけないわけですね。これを最初にきちんとやっておかないと、先ほどお話したように同じデータを抽出したつもりだけれども、実は違う集団を抽出しているということが必ず起こります。ですので、最初に検査コードと医薬品コード、病名コードは、きちんと標準コードに変換してから蓄積して、それを対象に全く同じ抽出条件で抽出する。そういう仕組みにしたらいいと。これは極めて重要なことで、 1 年遅れてもやるべきことで、今やっておかないと非常に悔いを残すだろうと私自身も思いますし、協力医療機関の WG の皆さんがそのように考えて、まずこれをきちんとやる。でも、実際にはやってみると非常に手間が掛かったので、思っていたよりも作業量が増えたということだろうと思います。

○永井座長 標準化の問題は、医療情報学会とか、電子機器工業会とか、そういうところで対応は取れないのですか。余りバラバラにはしないで欲しいと要望する必要があります。標準化を念頭に置いて考えるようにと。

○山本座長代理 私が答えるべきことかどうか分かりませんが、歴史的な背景みたいなものがあって、我が国の医療情報システムというのは、主に医療経済的な視点でどんどん導入されたので、その際、 1 つの医療機関の中で扱えれば、それで用が足りたのです。それが他の国と比べると、相当程度発展してしまったがために、今、標準コードに置き換えるという作業が非常に大きくなっています。その情報システムに誰がお金を出すかというと、それぞれの医療機関がお金を出しているわけで、大した補助が出ているわけではないのです。そうすると、その医療機関にとって最も適切なシステムに対してお金が支払われるので、公益目的でこういうデータベースを作るというのは、どうしても後回しになっているので、そのためにそれぞれ標準は、これは今新しく作ったわけではなくて、既に存在する標準を適用しているのですが、その適用自体に何のインセンティブがあるのかというのが常に問題になって、今までそれほど進んでいなかったというのが現状だと思うのです。ですから、こういった価値がどんどん出てくれば、つまりこれで結果がどんどん出てくれば、そのことによる標準化の推進にもつながると私は考えていますので、是非これは成功させてほしいと思っています。

○永井座長 でも、これが成功してからというよりも、早いうちからそういう働きかけをしていく必要があるのではないかと思います。

○山本座長代理 働きかけは常にしているのですけれども。決して働きかけをさぼっているわけではなくて、常にしているのですが、ここでもお分かりになるように、かなりの労力が掛かることなのです。したがって、この労力に対する対価をどうやって工面をするかということになってしまうのです。

 例えば診療所でいえば、アメリカはほとんどシステムが入っていなかったので、次に入れるときにはそれは初めから標準化に対応したシステムを入れればいいのですが、我が国の場合は特に大きな病院はもう既に本当に実稼働しているシステムが入っている状態で、それを手間をかけて標準コードに置き換える、あるいはテーブルを作っていくというコストはどうしても相当なものになるので、我々ごときの働きかけではなかなか進まなかったというのが現状です。ただ、やっていないわけではなくて、常にそういう努力は続けていかなければいけないと思っています。

○永井座長 この辺りは行政的にはどうなのですか。そういうテーブルは、もたれていないのですか。

○山本座長代理 部署が違うと答えにくいと思いますから少し補足しますが、政策統括官室で現在、大江先生が座長をされている医療情報標準化会議、専門家会議というのがありまして、そこで厚生労働省推奨標準というここで使われている標準を決めていて、例えば国の補助金を使うようなプロジェクトでは、これを使わなくてはいけないというような方向付けはしているのです。とはいえ、それが日本中に広がるほどのプロジェクトになっているわけではないということです。

○永井座長 松村先生、山口先生、その辺りいかがですか。松村先生にはこういうプロジェクトの位置付けを含めて、御意見をいただきたいと思います。

○松村構成員 大江先生がおっしゃるとおり、これはまずコードの標準化をしてからでないとできない事業であることは、間違いないと思います。ただ、薬の標準コードについては、比較的対応がしやすいのではないかと推測しております。といいますのは、まず 1 つは医事のレセプトコードは標準化されていて、そこをたどって標準コードをひも付けるというのは、割と機械的にもできる作業なので、そういう手法を使えばそれほど大変ということではないのではないかと推測します。問題になるのが検体検査結果のコードではないかと思うのですが、これが現在 JLAC10 というコードが日本での標準コードになっているわけですが、若干、コードに細かい概念が含まれているということがありまして、何か検査項目として、我々臨床家としては認識している粒度があるわけですが、それに加えてどういう方法でその検査をしたかということまで含めてコード体系が決まっているというものなのです。ですので、自院でやっている検査がどういう方法で検査しているのかということを 1 つずつ調べないと、コードが付けられないというところがあります。

 そういうことが付けられれば非常に有益なのだということは分かるのですが、標準コードにひも付けるための作業量がどうしても増えてしまうという欠点も、一方であるかと思います。ですので、安全性評価を考えるときに、方法・コードのようなところをなしにして作ってしまうという逃げも、できなくはなかったのではないかと思います。ただ、ここは先々のことまで考えると、丁寧に付けたいということは理解できますし、非常に難しい判断ではなかったかなと思います。有害事象を見るための検査項目が必ずしも全てということではないのだろうと思うのです。

 ここも非常に判断が難しいところで、早く成果を得たいということであれば、有害事象で見る範囲の検査項目について、標準コードを付けていくことを先行させるという手はなくはないと思うのです。これを全項目について標準コードを付けようとすると、非常に膨大な作業になることは容易に想像ができます。今後、各病院に展開していくときに、そこが非常にネックになっているということであれば、そういう意味での妥協策ということも検討してもいいのではないかとは思います。この辺は大江先生がむしろよく把握されていることだとは思いますけれども。

○永井座長 山口先生、御意見はいかがでしょうか。

○山口構成員 私は医療情報システムの専門家ではないのです。標準化が重要だということと、その観点から始められたという大江先生、山本先生の先ほどの御意見は同意いたします。引っ掛かっているというか、今更なのですが、何年か前に公募して、そのときに手を挙げなかった機関の先生方がよくおっしゃっていたのですが、結局これは人件費が付いていない。そこが一番大きかったのではないかと。先ほどからの議論があるとおりで、人材育成、教育等々も含めて、物理的なインフラの整備はもちろんですが、人件費なり、人にかけるお金はどうにかならなかったのか、あるいは今後でもいいですから、何とかならないのかなというのが個人的な希望というか、感想といいますか。私は公募機関の審査をやらせていただいたのですが、結局、人件費が出ないというところ、各医療機関で負担する、そこが一番大きくて、断念せざるを得なかったという医療機関を数多く知っていますので、その辺も含めて、今後でもいいので、先ほどから議論になっていますが、方策が何かないかなと考えなければいけないと思っています。

○永井座長 これは各機関にどのぐらいの人件費が必要になりますか。例えば SE1 人プラス、データマネージャーとか、 2 人ぐらいの人件費は拠点病院ならば必要だと思いますが。

○大江構成員 そうですね。概算は難しいですが、主として検査系に十分知識のある方 1 人とエンジニア 1 人、あるいはかなり詳しく薬剤的な情報を扱える人とエンジニア 1 人ぐらいが、本当は最低必要だと思います。

○冨山構成員 歯科で使う医薬品の部分においても標準化は問題になっていますので、今後も進めていただきたいと思います。

 もう 1 点は、石川構成員も言っていたところです。今後この事業が試行期間に入りまして、様々な研究が始まってくると思いますが、報告書をまとめるに当たりまして、機微な医療情報の部分の取扱いについては、きちんと記載していただきたいと思います。今後、複数医療機関のデータが統合されますと、ますます漏えいのリスクなども出てきますので、その辺は試行期間の中からきちんと固めておいていただきたいと思いますので、よろしくお願いします。

○永井座長 それは暗号化とか匿名化の方式とか、大江先生、その辺は技術的にも進歩しているのでしょうか。

○大江構成員 実はその辺りもあったので、協力医療機関 WG では、資料 2-4-2 8 番目のスライドにありますように、基本的には各医療機関内でまず抽出をして、統計的な情報に近づけてから集めるという形をとったということで、できる限り元データを集めて解析することを避けたのです。それが一番効果が大きいのではないかと。その上で、もちろん調査課題によってはかなり個票レベルのデータを 1 か所に集積しないと解析できないものもあると思いますので、そういったときはシステム的に、できる限り個人情報はもともとのデータベースでは匿名化、あるいは削除されていますから、あとはそれをいかに丁寧に安全管理の下で扱うかと。これはガイドラインで人が守らないとできないことで、技術だけに頼るとかえって危険かなと思います。

○永井座長 個別の機関でデータベースを持っていれば、その機関の研究はできるわけですね。一括でデータベースを持った場合に、申請してそれを使わせてもらうというのはかなりの手間で、現場のインセンティブをそぐ可能性がありますね。

○大江構成員 そうですね。

○永井座長 その辺どうでしょうね。

○川上構成員 それも結局、研究課題によるものかと思います。本日私は 3 つの研究を紹介させていただいていますが、最初のニューキノロンによる腱障害と 2 番目の HIT の検出ですと、両者それぞれ整形外科医の診断内容の確認と、血液内科医によるカルテレビューに基づく陽性的中率の検討を行っているので、最終的には診療録を見ることを研究として実施している内容です。片や、最後に紹介したオセルタミビルの処方状況に関しては、 4 つの医療機関で抽出し統計処理が終わったデータを最終的に集めて解析しておりますので、こういった方法ですと、解析時には個人情報の取扱いは発生しないやり方で研究を進めております。

○永井座長 全体的な利活用の方向性についてはいかがでしょうか。大分議論もされていますけれども。

○松村構成員 このデータベースを使って研究する場合に、いわゆる臨床研究計画書というものは、出す必要があるとお考えでしょうか。それとも匿名化されているので要らないというお考えでしょうか。

○安全使用推進室長 基本的には先般、推進検討会で利活用要綱を決めさせていただきましたので、その中で利活用の申請書みたいなものは作っていただいて、これは統合したデータを使う場合になりますが、それを有識者会議で確認の上、問題なければ了承という形になると思います。ですので、細かい疫学指針に基づいた臨床研究計画書などは、そのような対応はしなくても大丈夫ではないかと考えていますが、少なくとも利活用要綱に定めるところの利用申請みたいなものは出していただいて、その範囲で確認をさせていただくというように考えております。

○松村構成員 ということは、各医療機関に対しての申請は要らないという御判断だということですね。

○安全使用推進室長  PMDA のシステムを複数施設、統合データ処理センターを利用して利活用するときにはそういう必要はないのかなとは考えております。

○永井座長 山本先生はナショナルレセプトデータベースの検討をなさっていますが、そちらでの利活用を踏まえて、このプロジェクトをどう御覧になられていますでしょうか。

○山本座長代理 ナショナルレセプトデータベースは高齢者の医療の確保に基づく法律に基づいて作られたデータベースで、それを第三者提供するという利活用のルールを作っているのですが、向こうはかなり厳しいルールを作って提供しています。ただ、このデータベースは、明確に医薬品等の安全性についてという目的があるシステムですよね。したがって、これだけはっきりした目的があるのだから、その目的に合致しているかどうかというのは、比較的決めやすいといいますか、見やすい問題ですので、そこを最優先に決めていくべきではないかと考えています。

 だから、対象が誰であるかという議論よりは、本来目的に沿って医薬品等における安全という公益目的であるかどうかというのは、割と簡単に判断できるのではないかと考えていますので、それに従って将来的には利活用を決めていけばいいと思います。ただ、まだ今は試行期間ですし、データベースも完全に動いているわけではないですから、最初は当然ながら慎重に運用していくのだと思いますけれども。むしろ目的が達せられないほうが、このデータベースに対しては問題が大きい。これがあるにもかかわらず、探せば分かったはずの有害事象が見逃されたというほうが非常に大きなことだと思うので、本格運用のときにはそういうことがないということを近い将来できるように、利活用の方法を決めていくべきではないかと思っています。

 レセプトデータベースの場合はそういうのがないので、飽くまでも目的の妥当性から始まって、全てを審査しなくてはいけないということになるのですが、それとはちょっと違うのかなというように考えています。

○永井座長 これは研究者が PMDA に申し込むわけですね。 PMDA から各医療機関、参加医療機関にデータの抽出を依頼するわけですが、参加医療機関にしてみると厄介な仕事が舞い込んで、その人件費をどのように負担するのだという話が出てきませんか。 PMDA に一括しているというのは危ない面もありますが、そこはそれで利活用はしやすいというところがありますね。いかがでしょうか。

○大江構成員 正にそうで、そういう視点で私は意見書の中で、今後、本格的に運用するのであれば、調査単位ごとに課金をするというのはあって当然の仕組みではないかと。

○永井座長 ただ、余り課金すると使うのも面倒だという話で、特に拠点機関以外の方々にとっては、少しバリアを高くするわけです。そこの実際の運用の問題はあるような気がしますけれども。余り低くても、過剰ニーズを生み出し、高いとそもそも動かなくなってくるという懸念があるかと思います。

○大江構成員 ある種、ほかの領域でも共同利用施設の利用料金というのはあるわけですし、少し前までは大規模なデータベースを使うとき、解析のためには使用料を払うというのもあったわけですから、今回のデータベースのようにかなりセンシティブなデータで、各医療機関が安全に管理した上で、分析を依頼されて行う必要があるという場合には、当然それなりのコストはかかるわけで、そういう研究を計画する方はそのコストもかかるということを含めて、研究費を獲得されて、一定の負担をするというのはやむを得ないのではないかと。それによって質の良いデータが保たれるのではないかと私は思います。

○永井座長 そういう意味でも、やはり学会のコミットは必要になってきます。何かの認定のときに、こういうケースを幾つ出しなさいとかです。日本の医療は市場原理ではないという非常に良い点があるのですが、こういうものは甚だ動きにくいのだと思います。それはアカデミア関係者がある程度自主的に努力しないと難しいのではないかと思います。全体を通して、いかがでしょうか。今日は特にメリット、インセンティブの問題、負担の問題、データベースの利活用の問題、この辺りを中心に御意見を伺いましたけれども。

○赤沢構成員 私は MIHARI プロジェクトも関わっているので、ここで言うべきかどうかちょっと迷ったのですが、 MIHARI プロジェクトの成果は学会では報告しているのですが、余りペーパーになっていない。川上先生がおっしゃられたように、幾つかペーパーにしていくと、査読の段階とか、海外の専門家からいろいろ指摘を受けられますし、いろいろな意味でデータベースの良いところ、弱点とかがある程度明らかになっていく気がします。ですから、この試行利活用においても、厚生労働省若しくは PMDA がやられるものは、パブリケーションを前提としたような形で、特にバリデーションを含めてなのですが、このデータベースはこのような利点があります、こういうところは弱点ですということを、きちんと分かるような形で共有できたら、次の研究者の方々もそれを踏まえながら論文化していけると。そういう意味では、後に続く例えば医療機関の先生方がパブリケーションしやすい形になるのではないかと期待しているので、是非そういう形で成果を公表していっていただきたいと思っています。

○永井座長 大体時間になりましたので、論点を整理しますと、この事業に参加する医療機関側のメリット、イセンティブですね。これをどう考えるか。参加するメリットはあるとは思うのですが、課題としていかに幅広く使用してもらうか、そもそも SE とかデータマネージャーの人件費をどうするかとか、相当の負担が発生していることは事実であるということですね。対応策としては、私が何度か発言しましたように、学会が認定制度に絡めて活用するような方向で牽引することも必要ではないかという気がいたします。

 負担への対応、これも非常に多くの問題があります。もちろん教育の問題もありますが、利用者の使用料、参加費というところも議論されました。もう 1 つは、いずれ医療情報データベースが本当にメリットがあるということが分かってくれば、医療費に転嫁してもよいのではないかと思います。私も社会保障国民会議でそういう発言をした記憶があります。報告書に書いてもらったかどうか、ちょっと忘れましたが、医療費のうち 1 件あたり 10 円でもよいから経費分を付け加えれば随分違うような気がしますけれども。これは私の個人的意見でありますが、かつて副作用機構ではこういう研究を支援していたのが、今、基盤研が行っているということであれば、ある意味では基盤研の支援研究の 1 つに挙げてもよいように思います。

 標準化の問題、これはとにかく進めないといけないということですが、そのためにもいろいろな学会、あるいは業界との対話が必要です。そのほか、利活用のあり方については、確かに個別医療機関にデータベースを置くことは研究しやすいということですが、参加協力機関以外から見ると、少しバリアが高くなる可能性はあるかと思います。しかし、個人情報の安全という意味では、個別医療機関で管理するのがよいということではないかと思います。しかし、いずれにしても e ラーニングを含めた教育の仕組み、人材育成、研修体制、こうしたものが必須だということではないかと思います。その他、たくさん御意見をいただきましたので、また次回までに整理して、第 4 回でも引き続き運営のあり方、拡充のあり方等について議論したいと思います。全体を通して御質問、御意見はありませんでしょうか。よろしければ、事務局から連絡事項等をお願いいたします。

○事務局 最後に、今、御確認いただいておりましたが、資料 3 、今後の検討スケジュールになります。次回、第 4 回は 4 2 17 時から 19 時に開催予定です。議題としては、今回までの議論についての整理ということで、報告書の骨子を検討いただく予定としておりますが、本日の検討課題であります本事業の運用等のあり方については次回も引き続いて御議論いただきたいと考えております。資料 3 については以上です。

○永井座長 次回は本日の議論の続きと報告書骨子についての検討をいただくことが予定されております。また何かお気付きの点がおありでしたら、事務局まで御意見をメール等でお寄せいただければと思います。以上で本日予定した議題は終了いたします。ほかに御発言等なければ、本日はこれで閉会とさせていただきます。どうもありがとうございました。


(了)

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