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2013年12月13日 第41回 がん対策推進協議会(議事録)

健康局がん対策・健康増進課

○日時

平成25年12月13日(金)15:00~17:00


○場所

全国都市会館 3階 第2会議室
(東京都千代田区平河町2-4-2)


○議題

(1)今後のがん対策の方向性について
(2)がん対策に関する評価指標の検討ついて

○議事

出席委員:門田会長、緒方委員、工藤委員、内藤委員、中川委員、永山委員、野田委員、濱本委員、細川委員、堀田委員、道永委員、湯澤委員、阿南委員、上田委員、佐々木委員


○林がん対策推進官 それでは、定刻となりましたので、ただいまから第41回「がん対策推進協議会」を開催いたします。
 委員の皆様方におかれましては、お忙しい中お集まりいただきまして、まことにありがとうございます。
 初めに、本日の委員の出欠状況でございますが、本日は、池田委員、石井委員、川本委員、内藤委員、西山委員より御欠席の御連絡をいただいております。また、道永委員、田村委員は遅れて御出席の旨を伺っております。
 それでは、以後の進行は門田会長にお願いいたします。
○門田会長 皆さん、こんにちは。師走の本当に忙しいときにお集まりいただきまして、ありがとうございます。本日も、ここに準備しておりますテーマについてディスカッションをお願いしたいと思いますので、よろしくお願いいたします。
 それでは、最初に、事務局より資料の確認をお願いいたします。
○林がん対策推進官 資料の確認をさせていただきます。議事次第と座席表に続きまして、資料1として「がん対策推進協議会委員名簿」。
 資料2として「今後の議論の進め方について(案)」という1枚紙。
 資料3として「今後のがん対策の方向性について」というとじたもの。
 資料4として「研究班の設置について」という1枚紙。
 資料5として「がん対策評価指標に関する検討について」というとじたもの。
 資料6として「がん登録等の推進に関する法律の概要」という1枚紙となっております。
 それから、「がん対策推進基本計画」を別に置かせていただいておりまして、これが参考資料1。
 参考資料2として「協議会における検討の進め方について(提案)」という1枚紙。
 参考資料3として「今後のがん対策の方向性について」、前回同じ趣旨で御討論いただいたときの資料でございます。
 参考資料4として「がん登録等の推進に関する法律」。
 以上でございます。資料に不足・落丁等がございましたら、随時事務局までお申しつけください。
 以上をもちまして、カメラの頭撮りは終了いただきますよう御協力をお願いいたします。
○門田会長 資料のほうは皆さん問題ございませんでしょうか。特に問題がないようでしたら、本日の議事に入りたいと思います。
 議題1、今後の議論の進め方について。まず、事務局から資料2に基づいて御説明をお願いいたします。
○事務局 よろしくお願いいたします。事務局の山下でございます。
 資料2を御確認ください。これまで協議会において今後の議論の内容という格好で検討を進めていただきました。その中で、この資料の上段1.今後のがん対策の方向性に関する検討、そして、下段の2.中間評価に関する検討、大きく分けましてこの2つを今後の協議会での議題として掲げて進めていくということが、前回までに決められたことであると考えております。
 そこで、1.2.のそれぞれに平成27年3月までの今後の議論の進め方についてということで、門田会長とも御相談させていただきながら、このような資料をつくっておりますので、御説明させていただきます。
 まず、1.今後のがん対策の方向性に関する検討ですが、これは大きなテーマとして、すべての患者が尊厳を持った生き方を選択できる社会の構築といった方向性の議論を進めていってはどうかというような検討がこれまでなされてまいりました。この大きな筋に沿って、前回の協議会から一番左の黒の四角に記載がございますように、協議会委員による発表、意見交換を進めてきたところでございます。こういった発表・意見交換を今年度中をめどに進めていきまして、平成26年春をめどと記載しておりますが、こういったがん対策の大きな方向性についてもう一つ個別のテーマの抽出を行って、来年度では個別のテーマについて議論を進めていってはどうか。その際、有識者からのヒアリング等を活用して議論を深めていってはどうかということでございます。そして、平成27年3月をめどに、そういった検討をとりまとめて、今後のがん対策の方向性に関する検討のとりとまめとして資料を残してはどうかと考えております。そういったものを次の基本計画の見直しであるとか、それより後の今後のがん対策の方向性という形で提言をいただけないかということでございます。
 2.の中間評価に関する検討に関しては、前回の協議会で研究班を設置して検討を進めていこうということが決められましたので、一番左端に書いてあります研究班による評価指標案の検討を現在進めていただいているところです。こういった研究班での検討には、協議会委員の先生方からも協力をいただいて、さまざまな意見を出していただいて指標案というものをつくっていこうということでございます。これも来年の春をめどに研究班による指標案の検討を進め、春にはそれを協議会で報告いただきまして、評価指標を決めていきたいと。それ以降は、決まった評価指標の測定を進めまして、これと並行して事務局からこれまでの行政施策の進捗報告もさせていただきながら、評価指標の測定結果を受けた行政施策の進捗に関する検討を進めていってはどうかということでございます。こちらも平成27年3月をめどに中間評価に関する検討としてとりまとめていただきまして、その後の中間評価につなげてはどうかということでございます。
 以上です。
○門田会長 ありがとうございました。
 本日の参考資料2に書いております今後の進め方についてということで、1.2.を挙げておりましたけれども、それをタイムスケジュールに沿って整理してもらったものが、今説明いただきましたものでございます。このような形で主な作業を進めていきたいということでございますが、この件についてどなたか御発言ございますか。よろしいですか。
 これから検討していくわけですが、ただ、1つだけ1.で、真ん中あたりに挙げています個別テーマについて議論ということにすると、今まで個別というのはよく使ってきましたけれども、本当に具体的なお話が多かった。それを個別という扱いにしてきましたので、こういう書き方をすると、急に個別が始まるのかなと誤解される方もいらっしゃるかもわかりませんが、以前私も一度お話しさせていただきましたけれども、今の第1期、第2期の基本計画の中で、どちらかというと病気の問題だったり、患者さんの問題だったりということをテーマに、徐々に社会全体に広がってきているということで今まで来ていますが、さらに、そういう流れの中で我々が見逃していることはないのか、今のタイミングでディスカッションをしておかなければならないことで余り触れていないことはないのかということを抽出していきたいという意味での個別でございまして、余り小さな個別の問題、今までやってきたこととは少し個別という意味が違うということを御理解しておいていただいたほうがいいのかなと思っております。
 前回も出しましたけれども、やはり長期的に見たときに、我が国は予防だ云々と言っている割には、罹患率一つを見ても年齢調整をかけながらまだふえ続けているというあたり大きな課題であると、例えばそういう問題。あるいは、これから高齢者がふえ、死亡者数がふえていくことは明白でございますけれども、病床の問題あるいはそれをどうしていくかということ、今の時点でどういうことが考えられるかといった意味のことを含めて、皆さんと話題にし、専門家の意見を聞いて、患者関係の委員のいらっしゃるこの協議会で、少なくとも今の段階での意見を出し合って、ある方向性を示せればと思っている位置づけだという御理解をお願いしたいと思います。
 この件はよろしゅうございますか。堀田委員どうぞ。
○堀田委員 先回、会長から、ちょうどこの時期はは第2期がん対策基本計画の半ばにあって少し時間的に余裕もあるので、ここで時間をかけて大きな枠での話もしたらどうかという提案をいただきました。会長が御提案になったような国全体から見たときに、がんが今どうなっていて、どういう対策が大きく必要なのかということについても、専門家の御意見をヒアリングなりあるいは意見としていただきながら協議していくと、とてもいいと思います。賛成でございます。
○門田会長 ありがとうございます。
 そのほかの委員の皆様方はよろしいですか。では、一応こういう方向性で、もし、1.について御意見があれば、今お話しさせていただいた個別という意味を御理解の上、事務局に挙げていただけたら助かると思いますので、よろしくお願いいたします。
 それでは、次にまいります。今後のがん対策の方向性ということで、前回、緒方委員、阿南委員、内藤委員と湯澤委員から御発表いただいて意見交換を行ってまいりましたが、本日もさらに引き続きまして、委員の皆さんから御発言いただいて、その内容について皆さんの御意見をちょうだいしたいと思います。
 本日は、患者さんの立場ということで、患者に寄り添う立場ということから工藤委員から、報道の立場からということで、がん対策をずっと見ておられる永山委員から、3人目として、がん治療、がん教育を特に一生懸命やっていただいております中川委員から、お三方のお話を聞かせていただいて御意見をちょうだいしたいと思います。3人の委員の皆さんの発表を通して聞いていただいてディスカッションしたいと思います。
 それでは、最初に、工藤委員にお願いしたいと思います。
○工藤委員 座ったままでよろしいでしょうか。患者委員ということで意見というか、お話しさせていただきます。秋田県がん患者団体連絡協議会きぼうの虹の工藤といいます。きょうは患者委員として、私の経験したことをお話しさせていただきます。
 今、日本は2人に1人ががんになる時代と言われていますが、我が家は同居する夫の父が60歳で食道がんに始まり、大腸がん、前立腺がん、2度目の大腸がんで5年前に亡くなっています。私自身は、乳がんで右乳房全摘をしております。ことしは16年たちました。夫は肺腺がん4期の診断を2年前に受けまして1年半休職しました。その間、治療に専念しまして、現在は幸いなことに復職しまして、3週間ごとに抗がん剤治療を続けています。
 私は仕事を辞めたことをきっかけに、自分の病気を知りたいということでキャンサーネットジャパンの乳がん体験者コーディネーター講座で勉強を始めました。開講初日が、がん対策基本法が施行された平成19年4月1日でした。なぜ覚えているかというと、キャンサーネットジャパンの方が、きょうは大事な日だと、がん対策基本法がきょうから施行される、そういう記念すべき日にこの講座が始まるということで説明をされました。それでよく覚えています。
 ここでの体験は、同じ病気を持ち人同士の交流がとても心を軽くしてくれたということを今でも思い出します。自分の体験が役に立つのであればという思いで、きぼうの虹が始めましたがんサロンにボランティアとして参加しました。また、4年前からは患者・家族、医療者、行政、メディア、教育者、学生、企業などのいわゆる七位一体という立場の人たちが一緒になりまして開催しているイベント「あきた がん ささえ愛の日~がんになってもあきらめない~」と銘打ったイベントです。これは、サバイバー登山や、ひとり暮らしのがん患者さんの在宅療養を考えるシンポジウムや、がんになりにくい生活習慣についての講演など、さまざまながんにかかわるジャンルのイベントを開催しました。少しでもがんについて知ってほしい、関心を持ってもらいたい、そして、支え合える秋田県民でありたいという気持ちでかかわっています。自分のできることを細く長くと考えていますが、続けられているのは仕事を辞めた自分にとって社会とのつながるところだったこと、そして、支え合う仲間がいることが大きかったかもしれません。
 ここで少し夫の父や夫の闘病で感じていること、感じたままをお話しさせていただきます。
 まず、義父ですが、最初は60歳で食道がんになりました。3カ月の入院生活を送りました。その後、大腸がん、前立腺がんとなりましたが、これは発見が早く、手術のみで治療を終わることができました。これまでのがんについては、本人には私たち家族の希望として告知を望みませんでしたし、その希望をお医者様にも聞き入れていただきました。
 82歳で2度目の大腸がんになりましたが、このときはいきなり本人に大腸がんという告知がされてしまいました。しかし、家族の心配をよそに本人は、がんと言われた認識がなかったようでした。手術半年後、肝臓への転移が見つかりました。もう手術ができない状態になっていたのです。そして、認知症症状も見られるようになりました。私1人での介護は難しい状態になり、亡くなる直前までデイサービスのお世話になりました。最後は病院で亡くなりましたけれども、痛みのコントロールをきちんとしていただいておりました。その点は本人にとっても家族にとっても救いとなりました。
 余計な情報ですけれども、秋田県は死亡率も1位なのですが、モルヒネの使用量も全国1位だそうです。
 また、別の問題として、認知症のがん患者はこれからももっとふえていくと思うのですが、がんのケアもできる介護施設がふえてほしいと、父のケースを考えて本当に切実に思いました。
 2年前の夫の突然の4期の診断には非常に驚きました。ただ、余命何カ月という言葉がなかったことが救われました。お医者様は普通、4期であれば何もしなければ6カ月という話があると思いますけれども、聞きませんでしたし、お医者様も余命については語りませんでした。
 3剤の治療がすぐあり、一安心したのもつかの間、維持療法に入ってからも間もなく脳転移が見つかりました。しかし、秋田県にもガンマナイフ治療ができる病院があり、すぐ治療が受けられたのは幸運だったと思っています。その後、薬を変えてアリムタ単剤の治療を続けています。吐き気や便秘の時期には薬で対処できています。今一番困っている副作用は手足のむくみと冷え、しびれ感です。つい最近、薬剤師さんに相談して牛車腎気丸から五苓散に変えて様子を見ることにしました。薬については、医師直接よりも薬剤師さんに相談したほうが詳しく説明していただけました。最近は、入院中にチーム医療ということで、患者のもとを薬剤師が訪問し、薬のお話をしてくれます。
 仕事や金銭的な問題についてですが、夫は幸いにして1年半で復職することができました。ただ、最後の2カ月が無休休職となり、社会保険料などの負担が10万円弱で収入はゼロです。生活費や治療費は貯蓄や生命保険の給付金で賄いました。ただ、無休がもっと長く続いていたら、もし、この先収入がなくなったらと、とても考えてしまいました。もちろん傷病手当はあるにはあるのですが、実際お金を受けとるには請求して2カ月近くかかります。
 がんと診断されたときは、まずは治療のことを考えるのが第一になり、勤務先での手続は後回しになりますし、本人はもちろん家族も細かいことには気が回りません。こんなとき病院や勤務先の厚生担当者が適切にアドバイスをしてくれたらと切実に感じました。
 夫も私も、先に向けての医療や経済的なことの不安を抱えつつも、今はがんと付き合いながらごくごく普通に毎日を過ごすことができています。治療法がもうありません、お金がないので抗がん剤をやめましたなどという切実な方が身近にいますが、そのような方々に対して申しわけないほど普通の生活ができています。
 がん対策も時代に沿って内容を少しずつ変えています。今、私たちはすべての患者が尊厳を持った生き方を選択できる社会の構築を目指し、議論を始めています。がんの治療の充実はもちろんですが、私は尊厳を持った生き方の大きな要素の一つは、人とのかかわりだと思っています。このことについては前回、緒方委員も話されています。しかし、人とのかかわりをがん対策に反映し、どう評価するかというのは大変難しいことです。そのヒントは自分の活動、がんサロンやささえ愛の日など社会とのかかわりの中にあるのではないかと思い、がんと付き合いながら生きる時代にも合ったがん対策につながるように考えていきたいと思っています。
 きょうは、患者、そして家族として貴重な発言の機会をいただき、関係者の皆様に感謝申します。どうもありがとうございました。
 最後に、ささえ愛で患者さんや御家族の手紙を募集しています。その中から、1年目に投稿された手紙を御紹介します。患者の心情の流れ、周囲への感謝と警告、すべて盛り込まれている65歳の女性のすばらしい手紙です。ただ、この方はこの手紙を書いて2年後に亡くなっています。では、手紙を読ませていただきます。
      「健康なみな様へ」
  わーーーーっ!!うそっ、なんで、なんで、頭の中が、「がん」「がん」「がん」…
 とがんという言葉でいっぱいになりました。
 詳しく丁寧に、絵を書きながらの医師の説明も、全く目・耳・頭に入ってきません。
 真っ白になるって本当ですね。どんな思いで、クルマを動かし家へたどり着いたのか記
 憶にありません。2年前の6月のことでした。
 それは、それは、ものすごいショックでした。落ち込むだけ落ち込み、最悪の状況だけ
 が思い浮かぶなか、「負けてたまるか」という気持が湧いてきました。病気と治療の事
 は、全て病院にまかせ、私は、笑顔、空元気、負けるな、この3つを心掛け、前にだけ
 進もうと決心しました。様々な治療を受けるうち、がんになったから、転移したからと
 言って、明日死ぬ訳ではないと実感しています。医学の進歩はすさまじく、生きるか死
 ぬかでなく、その中間の状態を、長く、いかに元気で人間らしく生活できるかで、必ず
 しも苦痛の中で絶望して死んで行く病気では無いと思うようになりました。残りの人生
 を有意義に過ごす為にも、医学の進歩を願うだけでなく、それにあわせ、患者も変わら
 なければ…自立した患者でありたいです。
 健康な、みな様、されど、がんはきびしい病気です。転移、再発は特にきびしいです。
 完治は難しくても、その中で自分の人生を心残りなく過ごすことを考える為にも、早期
 発見がとても重要です。
 がんは特別な病気では無くなったそうですがどれ程医学が進歩しようが
 がんには絶対にならないで下さい。私のお願いです。こまめに検診、早目の受診ですよ。
 私のがんは、転移性乳がん、既にリンパへ転移しておりました。一年半で大腿骨、胸骨
 に転移し、今また抗がん剤の治療中です。髪が無くても美しい…、となりました。その
 代わり、元気という生きる源をいただいております。お世話になっている病院には、「た
 んぽぽの会」というがん患者の会があります。月1度、おしゃべりするだけですが、こ
 の会にも助けられています。
 健康な、みな様、みな様のあたたかい支えにより、2008年から私は元気です。

 追伸 私は患者の患の字が大嫌いです。いかにも身と心が串にさされている様子です。
 とても痛いです。看護師の看は大好きです。ナースは、手と目で私たちを支えてくれま
 す。
 ありがとう!!                      65歳 女性
 この手紙は、中学校や高校のがん教育の現場でも御紹介しています。聞く人それぞれの立場で、いろいろな問題やこの人の生き様を感じていただければと、いつもこの手紙を読ませていただいています。
 どうもありがとうございました。
○門田会長 ありがとうございました。最後のお手紙も含めて、それぞれ心に伝わってくるすばらしい御発表をいただきました、ありがとうございました。
 それでは、引き続きまして、永山委員からお願いいたします。
○永山委員 永山です。本日はどうもありがとうございます。実は最初におわびを申し上げなければいけないのですが、パワーポイントで資料をつくってしまい、一部御紹介したいシートが重なって見えないものがございます。最低限のものは見えておりますので、それを使いながらお話しできればと思っております。
 本日、お話ししたいことは2枚目に書きました、がん医療と尊厳ということで、自分自身の取材の経験をもとにして、どういうがん医療が患者・家族の尊厳を守るものになるのか、そういった視点から気づいたこと、感じていることをお話できればと思っております。
 今、工藤委員がお話しされた内容とも重なるところではありますが、やはり患者さんは患者ではなくて1人の人として生きているのであるということ。そして、がんは幸いにして治る病気になってきました。がん対策基本計画によって、いろいろな医療の充実や均てん化が進んで、治療の悩みが解消されていく一方、新たな悩みや苦しみが生まれてきている、そんなことをお話しできたらと思っております。
 国内外の取り組みを取材して気がついたことということで、最初に、海外の事例から御紹介することをお許しください。私は、この事例を取材したことによって、こういう視点が重要だ、今まで自分は学んだことがなかった視点だと思いましたので、まず海外の事例からの紹介させていただくことにしました。と言いましても、実は私はこの現地に足を運べておりません。この施設で活躍している方が日本に来日された際にお話を伺って、大変感銘を受けたという内容です。
 既に日本からも多くの方が見学にいらっしゃっているということで御存知の方も多いと思いますが、マギーズ・キャンサー・ケアリング・センター、通称マギーセンターという施設がイギリスを中心に活動を広げています。現在利用者が12万人以上いるという場所です。いわゆるがん相談を受け付ける施設です。
 最初のきっかけになりましたのが、マギーさんという女性の方ですが、この方は1988年に乳がんと診断され、その5年後に再発して、その際には余命数カ月と宣告されたとのことです。マギーさんは病院の待合室でいろいろな人と話をするうちに、自分が持っている疑問や不安が自分だけのものではないと感じるようになったそうです。がんの患者さんは80年代、90年代の頃、既に大変多くの情報に接していて、逆にどの情報を選択すべきか悩んでいるという状況でした。そのときに決断しなければいけない患者さんは、がんという非常に脆弱な状況に置かれている。そこで、マギーさんは何か患者の助けになるようなものが必要なのではないかと感じたそうです。最初は、ハンドブックをつくることを思いついたそうなのですが、その後、マギーさんがアメリカに行く機会があって、彼女はそこで、ハンドブックという冊子ではなくて場所が必要だということに気づいたそうです。アメリカでは患者さん同士が互いにサポートし合っている、いわゆるがんサロン的な場所だと思いますが、そういったものを見て、「場所をつくろう」と考えたそうです。
 彼女が相談したのが、この記事の中に写真が出ていますローラさんという方です。この方はマギーさんの担当看護師でした。ローラさんと話し合って、ローラさんが勤めていた、マギーさんが通っていた病院の敷地内に新たな場所をつくろう、病院の中ではなくて外がいい、という話になりました。何故かというと、病院の中というのはどうしても医療関係者が主役になってしまう。そうではなく、患者が主役の場所が必要と二人は考え、第1号のマギーセンターが病院の敷地内にできたわけです。
 マギーセンターがどんなところかというのが、次のページになります。いわゆるおうちのようなスペースです。病院、医療、介護の施設といったにおいが全くしないところ。さらに、御紹介した写真はロンドンのセンターですが、とても印象的な外観ですよね。普通のおうちとも違う、とても象徴的な建物。なぜ?こういう建物にしたのかというと、マギーさんの御主人が建築家だったということもあるそうなのですが、患者自身が大切にされている、自分たちは差別とか区別とは別の意味の特別な存在である、そういった目で見てもらっているという誇りを持てるような施設にするべきであると考えからだそうです。今、英国だけではなくて香港も含めて世界で12カ所ありますが、どこの施設も非常にユニークで印象的でおしゃれな、街にあったらみんなが、「あれって何」「どんなところ、」と良い意味で関心を持ってくれる、そういう建物になっているそうです。
 もう1枚めくっていただきまして、この方はバーニーさんという今、ロンドンのセンターの責任者をやっていらっしゃる方です。今年10月に来日されました。そのときにお話を伺った写真です。バーニーさんのお話で私の印象に残ったのは、「患者を患者と呼ばない」というメッセージです。バーニーさんによりますと、どうしても医療者というのは、自分ががんの専門家だと思ってしまう傾向があるようなのですが、がんの専門家は実は患者さん自身である、と。医療者は、がんの専門家ではないのだ、それをまずきちんと認識する必要がある、というメッセージでした。
 マギーセンターの特徴は、訪ねていらっしゃった患者さんに、まず食卓やリビングに座ってもらって、1杯のお茶を出す。そのお茶を飲むことで、一言一言本音が出てくる。非常に悲しみ、苦しんでいた人が1杯のお茶から本音を話せるようになる。それは、パンフレットを渡して、これを見たらあなたの悩みに応えられる、と言うこととは異なり、会話や対話があるということになります。それが「場所がある」ということの効果ではないか、という話をされていました。
 次のページは、国内の取り組みの御紹介です。最初に御紹介したかったのは、宮崎市にあるホームホスピス「かあさんの家」というところを取材したときの経験です。そこでは、先ほどの工藤委員のお話もありましたけれども、がんの方もいらっしゃいますし、認知症の方もいらっしゃる、両方を抱えていらっしゃる方もいる。そういった方たちを改装した民家で、1軒につき5人だけ受け入れるというサービスをしています。5人しか受け入れませんので、ケアの費用はやや高めになってしまうそうですが、逆に一般的な施設とは違って、どんな状態の方でも受け入れるということをポリシーとして取り組んでいます。
 私はどうしてそのような取り組みを一般化できないのかと考えながら、その代表を務めている市原美穂さんにお話を伺いました。市原さんは、「私が主婦だからできました」と話すのです。市原さんはもともと医療者ではありません。医療者ではない、主婦の感覚、一般的な感覚でつくることで、こういう施設ができたというのです。
 宮崎のかあさんの家を訪ねますと、まさに普通の民家で、玄関があって、靴を脱いで「こんにちは」と言って入っていって、入ったところにお勝手があって、奥には居間があって、そこで利用者方たちが本を読んでいたり、テレビを見ていたり、何か遊びをしていたり、そういった風景が広がります。
 市原さんのお話で印象的だったのは、入居されてすぐ亡くなってしまった方がいたそうですが、その後、御家族がかあさんの家にやってきて、お葬式が出るまでの3日間をそこで過ごされたそうです。御家族によると、「本人にとっては短い期間だったものの、この場所をとても気に入っていた。だからここが本人の家なんです」と。これまでに聞いたことがない、とても印象的なエピソードだと感じて記事にまとめました。
 またこのようなホームホスピスという取り組みが全国に広がっているということを紹介した毎日新聞の記事も、参考に添付させていただきました。
 次のページにいっていただいて、先ほど申し上げましたように、がんを病んでも抱える問題は1つだけではなくなっています。例えば、認知症を持つがん患者さんが増えている。ここに書いてあるような事象はは現場の先生方は御存知かもしれませんが、実際に自分自身や家族になってみると、ここまで大変なのかという状況になってしまうということです。
 また1ページめくっていただきますと全く逆のケースで、乳がんのような自覚症状を持った高齢の女性が、本当に進行した状態で病院にやってきた、と。なぜそうなってしまったのかというと、御家族が高齢の御主人で認知症を患っていらっしゃる。そして、息子さんはアスペルガー症候群。この女性は家族に迷惑はかけられない、自分が病気になったらこの家族はどうなるんだろう、そう考えて自覚症状があっても一切家族には告げないし、知り合いにも告げない。どうしても病院に行かざるを得ないという状況に追い込まれてから病院に行ったところ、「進行がんです」という告知を受けることになってしまったということです。さらに、そういった状況になってしまうと、病院に入院し続けるわけにはいかなくなり、自宅に戻ってこなければならなくなった。そこにつながった訪問看護師さんが、「こんな例は二度と繰り返してはいけない」とおっしゃっていたのが印象に残る取材でした。
 がん患者を取り巻くさまざまな問題としては、経済的負担の問題、さらに経済的負担が実は心の病にもつながってしまっている。がんという病気の闘病時間が長くなることによって、問題が広がっているという実感を持っています。
 そういった問題について、どう対応できるのかという例を御紹介したいと思います。「暮らしの保健室」の記事ですが、この暮らしの保健室というのは、東京都新宿区の戸山団地という高齢化が進んでいる団地の空き店舗を利用して、看護師さんたちがつくったスペースです。地域の無料相談所として2011年7月に開かれました。医療者も入れかわり立ちかわり滞在していますが、基本はボランティアの方がいらっしゃって、看護師や臨床心理士、場合によっては医師につないでいくという場所です。
 訪問者の悩みの内容は、自分の病についての悩みもあるのですが、家族の病ですとか介護、最近病院に行っていないものの体調が悪いけれども大丈夫だろうか、など病院に行っていない段階の悩みが話題になるということでした。
 次のページは、がん患者さんの相談を受けている方の取材をしたときの記事ですが、そのときの悩みというのはより広くて、例えば、恋愛の話であるとか、医療者との相性であるとか、さまざまなことが今の患者さんや家族の悩みになっていると知りました。今までの国の議論やがん対策の方向性を考える際は、病気をどうとらえるか、どうやっていい治療法を患者さんに届けるかということが中心でしたが、患者さんの悩みはそれ以上に広がっているんだなということが見えてきました。
 次のページは、最近、日本糖尿病学会とがん学会が発表された、とても画期的な研究成果の記事です。糖尿病患者さんのがんのリスクが高くなるという研究結果で、私はこういった研究をどんどん進めていただければと思っていますが、この記事について読者の方からの反応でハッとさせられたのが、糖尿病患者さんがもともと糖尿病ということで社会的に胸を張れない心境でいるところに、がんにもなりやすいと言われてしまうと、患者の皆さんはつらいという反響があったのです。患者さんたちはこういった情報の出し方についても、一つ一つコミュニケーションを考えて段階を踏んで知らせていくということが必要なんだ、ということに気付かされました。
 次のページですが、こういった多様な悩みに対してどんなことが壁になっているのかを考えてみました。まず、医療現場では、何よりも忙しさだと思います。また、チーム医療の実現に向けて医療機関では工夫をされていらっしゃいますが、どうしても専門性の壁が残る。そして、医療者と患者が向き合うと、どうしても医療者のほうが偉くなってしまうといった関係性の問題があると思います。
 私たちが報道で伝えるなど普及啓発をするときの壁としましては、例えば報道ですと分かりやすい表現になりがちであるということがあります。先ほどの糖尿病とがんの関係などもそうですけれども、その裏の意味まで丁寧に上手に伝えにくいというところがあります。また、問題が単純化されがちであり、多様な悩みに対応するのが不得手という問題があると思いました。
 では、そういった患者さんの多様な悩みや苦しみにどう対応していけばいいのかということを考えてみました。「尊厳を守る医療」で目指すべきゴールは、患者、医療者双方の納得なのではないかと思います。今挙げてきました患者さんや家族のいろいろな悩みというのは、いわゆる緩和ケアで言う「全人的苦痛」と共通しているのではないかと考えます。緩和ケアの精神、全人的苦痛に対応するという取り組みについて、は緩和ケア治療を全国に広げていくという取り組みが進んでいるところではありますが、治療に限らず、例えば、緩和ケア的なケアや、緩和ケア的な医療者側の心構え・姿勢といったものが普及することも重要なのではないかと考えます。一番忘れてはいけないのは、医療者と患者のコミュニケーションです。結果がどうなろうと「納得」が欠かせないのではないかと感じました。
 また、これらの取材をしていて感じますのは、患者の方だけではなく、家族の方たちが実は非常に苦しんでいて、悩みも持っていらっしゃる。家族の方が苦しむと患者さん自身も萎縮してしまいますから、そういった家族の方への配慮ということも、ぜひ検討が必要なのではないかと感じました。
 最後になりますが、これらの取り組みというのは実は水平展開ができる非常に重要な取り組みなのではないかと感じております。こういったがん患者・家族の方が抱える悩みや苦しみは、多くはほかの疾患を抱える患者・家族の方とも重なると思います。非常に個人的なことになりますが、私自身も昨年の春に父を亡くしまして、父がその際に約2カ月間入院しました。そのとき本人や家族が非常に苦しむことになったのは、担当の主治医の方とのコミュニケーションでした。とても若い医師で、優秀な医師だったのだとは思いますが、コミュニケーションが成立しませんでした。私自身がこういう仕事をしておりますので、努力したほうだと思うのですけれども、うまく意思疎通ができませんでした。
 そういう医師は非常にレアだとは思いますが、忙しい中でどんどん何人もの患者さんに対応しなければいけない、父は非常に状態が悪かったことからそういった対応になっていたのかもしれないと思いますが、そこでうまくコミュニケーションができれば、残された家族の後悔も少なかったのではないか、と感じています。
 患者になった人は患者としてどう生きていくのかということではなくて、人として家族として、この社会の中でどう生きていくか。これは門田会長が以前にお話しされていた、患者ではなくて人としてどう生きていくかという問題、まさにそれが投影された問題だと思います。
 がんが今、国民の2人に1人がかかるということですから、がん医療というのは本当に人ごとではない医療になっています。そこでがん患者・家族の尊厳が守られるケアが確立できれば、日本全国のどの人がどのような病気になっても、その取り組みを広げていただき、嫌な思いをしない、納得できる医療を受けられるという形になっていくのではないかと感じました。
 非常に雑ぱくなお話になってしまいましたが、以上で終わりたいと思います。ありがとうございました。

○門田会長 ありがとうございました。報道の立場だけにとどまらず、家族としての思いも一緒に語っていただきました。どうもありがとうございました。
 それでは、最後に、中川委員の御発表をお願いいたします。
○中川委員 資料3-3でございます。かなり分量が多いので駆け足でお話しさせていただきますが、ぜひ、また振り返ってお目通しいただければと思います。
 27ページの「中長期の視点から見た、がん対策の課題と提案」ということでございます。
 1)急速な高齢化によるがんの急増と認知症との併発。現在、日本人男性の58%、女性でも48%ががんになる。ただし、これは2008年のデータでございますので、恐らく現在においては男性は6割を超えるだろうと推定されるわけですけれども、この主因は、がんが簡単に言うと一種の老化と言えるからでございます。
 そして、問題は、この老化のスピードが我が国において極めて早いということなんです。現在65歳以上の高齢化率は24.1%ですが、これが7%になった社会を高齢化社会、14%になると高齢社会、我が国は21%以上の超高齢社会ということなのですが、この7%が14%になる期間、これが高齢化のスピードと言われておりますが、日本では1970年から1994年までの24年間でございます。一方、フランスでは実に114年、スウェーデンでも82年。つまり、西欧社会が100年近くかけて達成した高齢化というものを非常に短期間でなってしまった。そのために結果的には、がんの増加のスピードが世界史上類を見ないほど早くなった。この余りのスピードに対して、社会のあり方、行政、教育あるいは個人の知識や心構えといったものが非常に遅れているというのが我が国の姿だろうと思います。
 また、がんは体の老化、一方、心あるいは脳の老化は認知症と言いますので、実は既に認知症の患者さんが462万人、このほか軽度認知障害が400万人、そして、今世紀半ばには高齢化率は4割に達します。この結果、実はがんと認知症が同時並行的に急増する社会が到来する。この中で、従来の早期発見・早期治療のパラダイムに若干変更を求められる可能性があると思います。
 28ページです。2)職域でのがん対策の必要性。がんは知るか知らないか、情報戦的なところがございます。国民ががんを知るということの重要性は私も長く強調してまいりましたが、その場としては、やはり学校あるいは職域ということになると思います。
 そして、下の図にもございますように、女性の社会進出、これは若い職域での若いがん患者さんをふやします。そして、雇用の延長は、実は60歳さらに65歳までのがん患者さん、つまり従来はリタイアされていた方々が現役の会社員としてがんを罹患するということになります。この結果、実は会社でのがん患者さんが急増し、また後で少し述べますが、医療費の増加とも相まって健保組合の財政を直撃するということになろうかと思います。
 職域でのがん対策、啓発活動を含めた、あるいはデータヘルス計画などにおいても、がん対策を盛り込むべきだろうと思いますし、また同時に就労の問題も従来以上にクローズアップされてくるはずでございます。
 29ページ、3)学校での「がん教育」の推進。新しい基本計画の中では、がんに関する理解を深める教育が不十分であるとした上で、下にありますような記述をしてございます。とりわけ健康と命大切さについて学び、そしてがんに対する正しい知識とがん患者に対する正しい認識を持つよう教育する。ここは非常に大きなポイントだと思ってございます。つまり、がんを学ぶことによって命の大切さを結果的に学ぶような、そういった仕組みをつくる必要があると思ってございます。
 最終的には、学習指導要領の改定の中でも扱われるべき、がんが一つの柱になるべきだと思っておりまして、その理由は現在、生活習慣病の中にがんが位置づけられているということなんです。これですと、がんになった患者さん方の生活習慣が悪いということになって、場合によっては差別・偏見を助長するような可能性があると思います。
 そしてまた、教育の現場で必ずしもこれまでがん教育が十分なされてきていないという背景もございまして、とりわけ学習指導要綱の改定までどう教えるか。私は、無用の誤解・偏見などを教育の中で与えてはいけませんので、ある程度中央側が推奨教材などを指定した上で、それを現場の教師の先生方が自主的に尊重していくというような形が必要かと思っております。そういう意味で、別紙1としまして、がん教育の推進に関する提案、また別紙2、副教材についての提案、そして、委員の先生方には、がん教育の副教材としてのDVD。これは公益財団法人日本対がん協会の制作でございますが、お手元にございます。また、別紙3としまして、このDVDに関する教師の先生方用の教授用の資料についてもつけてございます。
 がん教育は非常に重要なテーマなので、後で振り返って少しだけ補足させていただきますが、参考としまして製薬メーカーと共同で2年ほど前から「生きるの教室」という出前授業をしております。既に10校ほど、先週も行いましたので11校になりましたが、約1,300名の中学校2年生に授業をしてまいりました。
 30ページです。このうち9校、約1,100名の中学校2年生に関して事前・事後、そして6カ月後のアンケートした結果を毎日新聞のホームページから引用してございます。例えば、予防できる病気という認識は、受講の直前23%だったのが84%に上がり、64まで残って、6カ月後、生活習慣病が1位の病気についてもこんな結果が出ております。ただ、怖い病気というがんに関するイメージが、子どもたちは一旦下がるものの、また元に戻ってしまっていると。また、このアンケートでは受講後に89%の生徒が家族にがん検診を受けさせたいと言い、そして、6カ月後には実際、約半数の生徒が受けるように勧めたという回答をしております。こういった逆世代教育というものも重要かなと思っております。
 4)がん登録及び共通番号を活用した医療ビッグデータの活用。12月6日に、がん登録推進法が成立いたしました。先進国の中で非常に遅れたスタートになりましたが、今年5月に成立した共通番号法などによりまして、がんを含めた医療データを包括的に扱う土台ができたのではないかと認識しております。その中で、いわゆる後発国ゆえのメリットをぜひ逆手にとってやるべきではないか。とりわけ我が国が進めておりますクラウドコンピューティングなどの最新の情報処理を使うことによって、例えば、医療画像を含めたビッグデータを扱う環境が整っていると思っております。先進国が行っている数値データに限定してきたがん登録の枠組みを超えた仕組みができないか。また、共通番号を利用した検診の精度管理、あるいは企業健保のレセプトの活用、あるいはもっと言いましたら、がん検診そのものを医療保険の中に組み入れて、そしてループを回すということもできないかということも考えてございます。
 31ページの5)チーム医療の促進(医学物理士などの活用)と記載しておりますが、下の図は我が国における放射線治療患者数の推移でございます。これは大体10年間で倍増しておりまして、10年後がん患者さんの半数が放射線治療を行う。一方、病院の放射線科において放射線診断と治療の分離が進まないということがありまして、放射線治療の専門医の数は1,000名にとどまっております。この中で、従来の医師・看護師あるいは診療放射線技師を超えた多職種なチーム医療を行わなければ、がんの医療も崩壊の危機にあるのではないかと思ってございます。
 32ページです。実は私の近しい身内が大腸がん今年2月に48歳で亡くなりました。大変残念なのですが、医療費は私が伺ったところ月々50~60万円ということでございます。こういったがんの医療費が上がっていく中で、中医協においても費用対効果の議論などがあるわけですけれども、この議論はQALYを含め患者目線での指標の選択と評価がなされるべきだろうと思っております。この医療費の適正化は、皆保険の維持には非常に重要だと思いますが、一方、その身内などもそうでしたが、がん患者さんが新薬に対してどれほどの期待を寄せているのかといった気持にも寄り添う制度設計を期待したいと思ってございます。
 7)「多死社会」に向けた死生観の再構築。平成元年で80万人、現在年間125万人の日本人が死んでございます。これはふえ続けており、2038年には年間死亡数が170万人に達する。ここが日本民族の年間死亡数のピークですが、多死社会を迎えると言っていいと思います。ただ、一方で、在宅死が減り、そして核家族化が進む、老いや死というものが非常に可視化できない社会になっておりまして、ここに記載しているように小学生の約3分の1が人は死んで生き返るというような回答をしている。今後、がん対策の根底にあるであろう死生観というものも考える必要があると思いますし、また、死は悪であり、生きていることのみが当たり前といった戦後日本社会の死生観を問い直す必要もあるかもしれません。
 最後に、がん教育について少し駆け足で触れさせていただきます。33ページです。がん教育の推進に関する提案書でございます。
 文部科学省は、前回の協議会の中で議論されておりますように、委託事業として日本学校保健会の中で「がんの教育に関する検討委員会」を設置し、議論してございます。そして、ここにあります7人の委員の有志で、今後のがん教育の推進に関する提案を行いまして、大筋合意を得つつあります。この内容を若干修正しまして、協議会に御報告させていただく次第でございます。
 時間がありませんので詳しくはお話ししませんが、先ほど申し上げたように、根本には命の大切さを育むがん教育ということ、そしてまた、とりわけ当面は、例えば、先ほど御照会したDVDなどをある程度中央が示すことによって、それを取捨選択していただくという体制が必要ではないかと思っております。時間がありませんので、これは見ていただきたいと思いますけれども、やはり命の大切さを育むがん教育ということを進めていただきたいと思いますし、そのことをぜひ協議会の中でも共有していただきたいと思います。
 例えば、36ページにありますように、外部講師の方の参加、これは医療者あるいはがん患者さん、あるいはがん経験者に、こういった教育の中で参加していただくという必要もございますので、また協議会でも御議論いただきたいと思ってございます。
 それから、副読本という内容が出ておりましたので、私が非常に印象に残った書籍を御紹介したいと思います。闘病記『あきらめない』、今手に持ってございますが、これは小学校5年で脳腫瘍、高校1年で大腸がん、高校3年で白血病を経験された山下貴大さんという方が書かれた本で、大変印象的なのは、基本計画の中でがん教育が行われることを知り、そして、生徒へのメッセージとして書籍をつくったということなんです。そして、病床の中で「お母さん、学校でがんの教育が始まるよ!」というようなことをうれしそうに報告されて旅立っていかれたということでございます。
 最後に、駆け足になりますが、DVDの内容を少し御紹介して終了させていただきたいと思います。
(DVD再生)
 お手元にDVDがありますので、ぜひともごらんいただいて、また、別紙3には先生方への虎の巻というか、教授用資料、また、ナレーションの全文が書かれております。
 子どもたちに対するケアする部分も非常に必要だということです。
 そして、疫学情報。
 今の中学生に受けるタッチで、こういったものを自由にダウンロードできるような形で提供いただけることを対がん協会側にもお願いさせていただいております。
 先々週、小学校5年生に使いましたが、十分通用しました。
 たばこの部分です。
 これは部分、部分でダウンロードして、先生方が自主的に使えるような内容になっております。
 検診の部分です。
 それから、治療の話です。ちょっと時間がないのでこれは割愛させていただきます。
 緩和ケアの部分です。
 最後に、こういうがんを学ぶことによって命の大切に気づいてもらうということを述べております。詳しくは先ほど申し上げました別紙3の中に書いてございますので、ぜひ御参考にしていただければと思います。
 少し長くなりましたが、終了したいと思います。ありがとうございました。
○門田会長 ありがとうございました。
 ただいま3人の委員の方から患者さんのお立場、それから、それをメディア・報道の立場から見て、また、中川委員からは医師として全体的なお話、さらには教育における重要性について述べていただきました。三者三様いろいろな問題が存在するということを整理していただいたと思いますが、これをどういうふうにかみ砕いて整理し、次に我々の大きなテーマに組み立てていくかという作業が残りますが、せっかくの3人の委員の皆さんの御発表でございますので、どなたか内容についての質問あるいは御発言をちょうだいしたいと思いますが、いかがでしょうか。
 阿南委員どうぞ。
○阿南委員 中川委員のがん教育についてなのですけれども、私も今までいろいろな先生と一緒にがん教育をやらせていただいてきたのでのすが、中には禁煙教育のことをがん教育と呼ぶ先生がいたり、子宮頸がんに特化した授業のことをがん教育と呼ぶ先生がいたり、先生によって難易度も違いますし、取り上げる部分も違うということから、本当にこういった基礎的な教材があれば、一定の内容でみんなに広がるかなというのと、あと、これは実際に私も一度自分でがん教育で使ってみたことがあるのですけれども、やはりこういったものがあれば、特に医師が確保できない場合でも一定の質で授業ができると思っております。
○門田会長 ありがとうございました。
 確かに全体としてどこまで教えるのが我々が描くがん教育かということで、特に決まりがなしに皆さん思いつきのまま今までやってきたというのが事実だと思うので、今からどういう形にしろ、そのあたりは整理されていかざるを得ないし、いかなければ、特に今回がん教育を取り上げているということの意味も薄れると思いますので、おっしゃられるとおりだと思います。どういう形でやっていくのが一番いいのか、どういう形で入っていくのかということを検討しなければいけないと思います。
 そのほか、どなたかございますか。緒方委員どうぞ。
○緒方委員 今お話を聞いた中で感じたことですけれども、ただ単純にがんになるだけではなく、高齢化に伴いさまざまな病気や認知症などを抱えつつもがんになるということがこの先もふえるということがよくわかりました。それで、都道府県の拠点病院は、かなりがんの専門病院、県立だったり、そういうところで実際にそういった病気を抱えていながらがんになった人に、この先どういうふうに向き合うのかといった対策があるのでしょうか。よく連携ということは言われていますが、連携ではなく、むしろ共同とか協力といったことが必要な時代がやってくるのではないかと、ちょっと危惧をいたしました。
○門田会長 これはどなたがいいですかね。堀田委員、いかがですか。
○堀田委員 私が答える立場かどうかわかりませんけれども、今、拠点病院ではどちらかというと病院で自己完結してしまっているという問題点がこれまでも指摘されておりますので、これに対して地域でどう対応するかが問われています。例えば、退院後のサポートあるいは在宅でのサポートといったものをつなげていかないと、拠点病院だけで全部を賄うことは多分難しいし、キャパシティーがないと思います。ですから、これは医療提供体制の大きな課題だと思います。
 そして、今のそういった問題と医療者はどうやって向き合えるかということについては、がん教育もそうですけれども、医療者も緩和ケア研修等を充実して、医療の中身にもっともっときめ細かい対応ができるようなトレーニングが必要なのだろうと思います。私どもは治療の効果や生存率について何パーセントというような言い方をしてしまうのだけれども、患者さんにとってはパーセントではないんですよね、自分にとっては1か100かになるわけですから。そういった意味でも、もっと患者やその家族に寄り添える医療というものをどうやってつくっていくか。恐らくそのキーは、ライフステージをふまえて、個々の状況に合わせて最良の医療をどうやってつくっていくかということになるのではないかと思います。ちょっと偉そうなことを言って申しわけないですけれども、そんな印象を持ちました。
○門田会長 田村委員どうぞ。
○田村委員 今、堀田委員がおっしゃられた、点ではなくて面で地域の医療機関と連携してというシステムを構築する以外に、高齢者の対応が非常に難しくして、我々医療者自身に高齢者のがん患者をどうやってマネージしたらいいかというコンセンサスがまだないんです。「高齢者のがんを考える会」を立ち上げたのですけれども、その中で包括的に機能を評価して、どのような治療が適切かというツールをつくっていこうということでやりつつあるのですけれども、非常に難しいです。我々、医療者側の体制づくりもとても重要ではないかと思っていまして、ぜひ、この協議会でもそういう議論をしていただきたいし、政策的にもそういうことをターゲットとした研究費をつけて、きちんとしたガイドラインにはならないかもしれませんが、ガイド的なものをぜひつくっていただければと考えております。
○門田会長 ありがとうございました。お二方におっしゃっていただきましたけれども、教育に限らずいろいろな問題が、今まではどちらかというと拠点病院に代表されるように、施設単位で病院完結型とよく言いますけれども、そういう形のものが多かった。しかし、これから先はそうではなくて、単に診療科のチームだけではなくて、組織を挙げての地域完結型的な発想でどうやっていくのが我々が目指す方向に行くのかという非常に重要なポイントだと思います。いい医療のみならず、多分予防もそうでしょうし、介護もそうでしょうし、場合によっては看取りもそうなるかもわかりませんが、そういうものを全部含めて、まだまだ我々が働きかけなければならない問題が残っているということだと思います。
 これは一つには、がん治療連携病院という形のあり方ということだけではなしに、がん診療の提供体制をどう考えるかということで、一応、検討会のテーマにはなっているのですが、ここでもう少し大がかりなところを検討しておく必要があるのかなと思いますので、一つのテーマとして後日検討するということさせていただけたらと思いますが、よろしゅうございますか。
 そのほかの件について、どなたか。上田委員どうぞ。
○上田委員 お三方から非常に臨場感のある御発表をいただいて、非常によかったと思います。中川委員から具体的なプロポーザルもあって、きょうは一つずつ固めていかなければいけないと思いますが、がん教育のことで、地方自治体も教材をつくろうとかいろいろなことが話題になっています。私も名古屋市での作成の責任を取らされているのですけれども、只今発表して頂いたような立派なものがあれば、そうたくさんは要らないのではないかとも思います。このようなモデルをもう少しみんなでポリッシュアップしたり、補足をしていけばよいのではないかと。
 そのときに一番私が問題にしているのは、依頼しているのは健康福祉局、言ってみれば厚生労働省的なところ。学校の担当は、いわゆる教育委員会。その両者が出てこられるんです。両者が出てきて健康福祉局の方がずっと夢をしゃべられる、その会議に趣旨に合ったような賛同の話をしてくださる。それでまとまるのかなと思うと、そのあたりからいわゆる教育委員会が出てきまして、お話はよくわかるけれども現実には時間とお金がない、外部の人も呼びたいけれども、フリーハンドの時間としては唯一自由教育の時間があるからそれを使ってくださいというのが精いっぱいであるとか、現実の問題では結構難しい問題があるというのを、2度ほど委員会を開いてみて早速感じております。また、その辺に関していいアイデアがあれば教えていただきたいと思います。
○門田会長 中川委員どうぞ。
○中川委員 全くおっしゃるとおりで、私も各都道府県で同じような経験をしています。そのことは文科省もわかっておられて、来年度22の都道府県でモデル事業という形でやります。そのときに、まずは教育委員会に投げるわけですが、保健福祉部局にも必ず参加していただくという枠組みをつくっております。一方、学校現場が忙しいということも全くそのとおりでございまして、そういう意味ではこういった教材の活用、それから、患者さんにでも映像として出ていただいて、このアニメとドッキングするようなことも考えてございます。
○門田会長 そのほか、どなたかございますか。いろいろ御意見もあろうかと思いますけれども、少し時間も押してまいりましたので、先ほども言いましたけれども、きょうもいろいろなポイントを御指摘いただいたと思います。これを少し整理して、どういう形で個別の整理に持っていくかはまた検討したいと思いますが、皆さん方もきょう発表があったこと、あるいはそれに関係するようなこと、こういうことが必要ではないかということがあれば、事務局までメールなりでお届けしていただけたらと思います。
 それをお願いして、ちょっと時間も押していますので次に移りたいと思います。3番目、がん対策評価指標に関する検討についてです。これは、前の協議会のときから出ていましたが、我々のメーンテーマの1つとして、どうしても評価指標をはっきりさせて中間評価に結びつけていくという大きなミッションを抱えてございます。そういった意味で前回は、総合的な、最終的なことは協議会でお諮りするけれども、その前段階としては研究班として検討していただく。そして、また、その中には委員の皆さんもできるだけ参加していただいて、中に御意見を入れていただいて、最終的にはここで諮って、新しい年度に入れば、早速その調査を始めるということが先ほどもございましたが、今、新しく研究班としてスタートしていただいております若尾参考人、それから、加藤参考人、また、緩和のほうでは細川委員にも担当していただいておりますので、順次今の進捗状況、今までの準備状況をお話ししていただきたいと思います。
 まず最初に、事務局から全体的なお話をしていただきたいと思います。
○事務局 それでは、資料4「研究班の設置について(分野別施策と全体目標の評価指標について)」という資料をごらんください。現在、基本計画に基づいて青の枠で書いているような各分野別施策が進んでいるところでございます。こういった施策というのは、右側の全体目標、赤の枠の部分でございますが、こういったことを達成するために進めているということになっております。
 今回、研究班を設置して、がん対策を評価するための指標案を検討いただくのですが、まず左側、青の分野別施策の進捗状況等を評価するための指標、そして、右側、全体目標の達成度を評価するための指標といったことについて検討を進める必要があるだろうと考えております。
 裏の表を御確認いただければと思いますが、先ほど門田会長から御発言がありましたように、きょうも3名の先生方にこの後御発表いただきますが、若尾参考人、加藤参考人、細川委員にそれぞれ研究班を立ち上げていただきまして、これらの検討を開始していただいております。
 一番左の列に課題名、代表者の後、まず分野別施策の評価指標という枠をつくっておりますが、まず、分野別施策の進捗に関しては、緩和ケアの部分を加藤参考人の班に、そして緩和ケア以外の分野別施策の部分を若尾参考人にということで進めていただいております。
 もう一つ下になりますが、全体目標の評価指標では、全体目標に関しては一番下に※でも書いておりますように、がんによる死亡の減少については指標が明確ですので、これまでも測定と評価というのが進んできているところです。今回、療養生活の質の維持向上という部分と苦痛の軽減という部分が、これまで指標を作成して評価を進めていくというところに十分着手できていなかったということがありますので、今回、全体目標の評価指標としては、療養生活の質の維持向上に関する部分を若尾参考人の研究班に、そして、苦痛の軽減に関する指標案策定の部分を細川委員の研究班にという形で進めていただいております。
 また、がんになっても安心して暮らせる社会の構築に関しては、今回の研究班による評価指標案の策定を目指すというところまでは、まだ段階としてはちょっと早いのかなというところもありますが、評価に向けた検討には着手していくということで、若尾参考人の班で検討いただくことになっております。
 こういった指標案を策定いただきまして協議会に報告いただくと。それをよりブラッシュアップしていただくことになるのだと思いますが、了承が得られたときには、中間評価に関する指標計測等という部分で、各指標のデータの収集であったりとりまとめを進めていただきたいと考えているところです。
 以上です。
○門田会長 ありがとうございました。
 それでは、早速、若尾参考人から御説明をお願いできますか。
○若尾参考人 それでは、資料5をごらんになってください。国立がん研究センターがん対策情報センターの若尾と申します。このたび、只今御紹介いただきました、がん対策における進捗管理指標の策定と計測システムの確立に関する研究班を管理省の指定研究班として11月からスタートしておりますので、こちらについて御報告いたします。
 まず、資料の2ページをごらんになってください。只今、事務局から御紹介がありました3つのカラムのうち、私のところでは赤枠で囲っています一番左の部分を担当します。
 3ページをごらんになってください。研究班の班員という形では、こちらにあります私とがん対策情報センターの東部長、さらに、がん対策情報センターの高山部長、東京大学の宮田先生の4名で班を構成しております。ただし、これはあくまで班の事務局という形で、この班には多くの推進協議会のメンバーを初め、研究参加者に御協力いただく形になっております。
 4ページをごらんになってください。アウトラインとしましては、先ほど御説明がありました、分野別施策のうち緩和ケアを除く部分の分野別施策について指標策定を行います。これはデルファイ法という手法を用いて行います。
 それから、全体目標であります療養生活の質の向上に関する評価方法につきましては、フォーカスグループ法を使います。
 さらに、先ほどの資料4の表側で予防分野、早期発見の検診の分野などがありませんでしたが、こちらにつきましては既存の指標がある程度確立されているということで、既存の指標についての収集と公表についても、あわせて行わせていただく予定です。
 5ページをごらんになってください。がん対策推進基本計画、昨年6月に第2期のものが閣議決定を受けておりますが、そちらに個別目標がございます。それで指標となり得るかを検討させていただいたのですが、今の個別目標そのままでは指標とするのはなかなか難しいと考えております。なぜならば、定義が非常に曖昧だったり、あるいは数値化ができないものがあったり、あるいは単なるアクションプランとなっているということで、進捗を図るための指標には、なかなかなりがたいと考えました。
 6ページをごらんになってください。指標策定の目的としましては、今年度まず、がん対策の関係者の幅広い方の意見をいただきまして、客観的手法でそれを集約し、優先度の高い進捗管理指標を策定することを考えています。来年度になりましたら、測定体制を構築して、その過程で不足している資源・制度について明らかにしていくということ。指標の策定と計測システムの構築を段階化して、測定すべき指標を忘れない形で進めさせていただきます。
 具体的にどのような形でやるかというのは7ページをごらんになってください。先ほどデルファイ法という形で御説明しましたが、これは意見集約と集計のフィードバックを繰り返して意見の集約を図る方法です。臨床指標の策定などにも使われております。
 まず、スタートは、事務局のほうで指標案を提示させていただきます。それを研究参加者の方々に評価していただいて、それをフィードバックしていただくということと、さらに、研究参加者の方々には、事務局が出しているもので足らない部分について、新たな指標案を提案していただきます。事務局では1回目で戻ってきたものに対して評価を集計するとともに、新たに作成していただいた指標案の整理をしていきます。このループを3回繰り返すことを現在予定しております。
 資料の8ページをごらんになってください。それでは、どなたに参加していただくかということをまとめさせていただいております。基本的には、1番目、がん対策推進協議会の委員の方々を中心に意見をいただくことを想定しておりまして、参加を了承していただいたがん対策推進協議会委員の方々。今の時点で13名の方に参加を了解していただいております。
 3番目、第2期の基本計画につきましては、前期のがん対策推進協議会のメンバーが策定しておりますので、前期の委員の方々にもお声がけしております。前期で終了した方11名のうち8名の方に参加の了解をいただいております。
 それから、2番目、がん対策推進協議会の委員の方々から各分野すなわち、医療分野、研究・開発分野、社会学分野の3分野の専門家について推薦していただいております。その推薦していただいた専門家も参加者として御協力をいただくことを現在、手続を進めているところです。
 それと、4番、がん対策推進協議会の委員の方々から推薦された専門家だけでは少ないと思われた分野におきましては事務局が推薦し、そこで参加を御了解いただいた専門家を加える予定です。各分野20名程度の専門家を加えますので、トータル80名程度の研究参加者の御意見をいただきながら集約していくという作業を進めていきます。
 9ページをごらんになってください。新しい指標を提案していただくに当たりましては、対象とする分野がどこであるか、指標がどのようなものであるか、データ源として何を用いるか、調査の対象をどこに置いて、どのような形で算定するかということ。あと、指標の根拠について提案していただきます。
 デルファイ法を用いる利点について10ページで御説明させていただいております。衆知を結集するということで、80名のがん対策のことを日ごろ考えていただいている方々にお集まりいただきまして、その中には専門家もいれば患者さんも含まれておりますし、家族の方など、あらゆる分野の方を含めまして衆知を結集することを考えております。専門家が気づかなかったようなことの提案もいただければと考えております。
 それと、恣意的なものではなく、多くのメンバーで評価した結果を集計し、そのままお出していくということで恣意的でない形でまとめることができます。
 それと、3回繰り返しますので、繰り返すことによりまして、回答する方々は十分考える時間があるという形で行います。
 11ページをごらんになってください。3回の意味ということで、まず、1回目は指標の評価に慣れていただく。それから、初回の指標案を収集するということです。2回目では、他の評価者の意見を参考にしながら、指標の評価を初回指標案及び新指標案について行う。3回目で最終指標案を確定して、最終的な検討会を開くということを考えております。
 12ページをごらんになってください。どのような形で評価するかということですけれども、1.施策目標との関連性、2.問題の大きさ、3.意味の明確さ、4.測定可能性につきまして、9段階の点数をつけていただきます。9段階という形で細かいようですが、上の中とか下の上という形で、まず上中下の3段階に分けて、その中でどの程度に位置するかということで点数をつけていただければと思います。1~3について単純に集計しまして、その点数をつけていくことを考えております。
 13ページをごらんになってください。ゴールとしましては、次年度、各分野5つぐらいの指標を選んで計測することを考えております。評価の高いもの、さらに測定可能なものを選ぶことを考えています。
 将来としましては、体制として継続的な定期的評価ができるような形、あるいは指標も見直して改善していくことを考えております。
 スケジュールとしましては、11月28日にキックオフミーティングを開かせていただきました。そのときは門田会長を初め、協議会のメンバー4人の方にお集まりいただきました。やはりお忙しい方が多い中、なかなかお集まりいただけないという中で、追加の説明会を昨日及び17日、さらに12月27日に今設定しております。当初は協議会のメンバーを対象とした説明会だったのですが、より多くの方に参加していただいたほうが理解も深まるということで、現在は前協議会のメンバーの方、さらには推薦いただいた分野別の専門家の方もこの説明会にお呼びしております。
 第1回のサーベイを12月中旬に発送し、1月中旬に回収。2回目を1月下旬で、2月に回収。さらに、第3回を2月に送付して3月中旬に回収し、最終検討会を3月21日、22日に予定しております。
 この第1~3回のサーベイは郵送で行いまして、実際にお集まりいただくのは最初の説明会と最終の検討会を想定しております。このような形でお集まりいただく時間をとらずに皆様の御意見を反映するという形で、このような形で進めさせていただくよう検討しております。
 それから、全体目標である療養生活の質の向上の評価方法を確立するという課題もいただいております。こちらにつきましては、今年3月に行われました第38回協議会で了承された指標案をもとに、基礎としたパイロット調査が行われておりますので、そちらについてもフィードバックを受けるということと、さらに、評価するためのパイロット調査でカバーされていない要素を探るためのフォーカスグループインタビューを実施することを考えております。
 このパイロットスタディーにつきましては、今年度に入りまして実施主体がなくなってしまったということで、国立がん研究センターの運営費交付金がん研究開発費でその後それを引き取りまして、実施させていただいているところです。
 16ページをごらんになってください。3月の協議会で了承されたもので進めさせていただいています。
 17ページは、質問の構成を書かせていただいております。
 18ページをごらんになってください。パイロット調査は今年7月から行われておりまして、検討内容としましては、調査項目の選定、さらに調査実施方法の検証を行っております。
 19ページをごらんになってください。もともと今回のパイロット調査の対象としましては、がん診療連携拠点病院の外来患者さんを対象に進めるということで3月時点では了承いただきました。ただし、その後6月の第39回がん対策推進協議会で、それだけは視野が足らないだろうということで、拠点病院だけではなくて、その他の病院あるいはクリニックあるいは在宅の方、それから、患者さん本人だけではなくて御家族など、もっともっと診療の体験を広く集める必要があるだろうという御意見をいただいております。
 22ページをごらんになってください。今の体験調査では足らない部分について協議会の委員の方々を中心に、何が足らないのか、そして、全体目標を達成するには何をどうすればいいのかについてフォーカスグループインタビューを実施して、御意見を集約したいと思います。前回の案が協議会の先生方の十分な御了解をいただけなかったのは、今まで案をつくるに当たってコミュニケーションがどうしても十分でなかったと感じまして、今回は委員の皆様の意見をしっかりと聞いた上で、新しい指標案をつくっていくということで対応させていただければと考えております。
 資料を戻っていただいて20ページ、21ページです。こちらは参考ですけれども、今年度パイロットを行っている7つの病院についての状況です。今済んでいますのは1施設だけで、3つの施設で実施中となっています。まだ結果は集計作業をしているところです。
 最後に24ページをごらんになってください。フォーカスグループとしましては、協議会の現メンバーの方々、さらに前委員の方々には計画策定に込めた思いを伺い、さらに、今がん対策情報センターに100名の全国の患者さん・家族あるいは患者支援者の方々による患者・市民パネルというグループがございますので、その中の有志に患者・家族の立場で思いを伺うということで、1月17日、20日、24日の3回のフォーカスグループインタビューを予定しております。もちろん、この日付は2日しか用意できておりませんので、両日とも御都合のつかない協議会の委員の方々には、紙面で御意見を伺う予定です。
 このような形で、分野別施策及び全体目標について指標を今年度中に作成することを計画しております。
 以上となります。
○門田会長 ありがとうございました。
 それでは、引き続きまして、加藤参考人から緩和ケアの評価に関して御報告いただきます。
○加藤参考人 私は、国立がん研究センターがん対策情報センターがん医療支援研究部の加藤雅志と申します。がん医療支援研究部というところで、拠点病院の支援や研修の実施などをやっている一方で、精神腫瘍医として臨床もやっており、がん患者さんの心のケアに取り込んでいます。また家族ケア外来というものも最近やっており、がん患者さんの御家族や御遺族を専門とした外来などをやっておりますので、どうぞよろしくお願いします。
 資料の26ページをごらんください。私の担当する部分は真ん中の部分で、番号として1、2、3と書いてあります。これに対応するように27ページもごらんいただきたいのですが、1、2、3-1、3-2となっています。
 1に具体的に課題名、内容を書いてありますが、デルファイ法による緩和ケア分野に関する評価指標の作成を行います。これは今、若尾先生が御説明した部分と連携して進めていく部分になります。
 2番は、既存の指標から見たがん対策基本法前後の緩和ケアに関する全国指標の推移の把握となります。
 また、3-1は、がん対策推進協議会の委員等の関係者、患者さん、医師、看護師から見た緩和ケアの変化に関するインタビュー調査です。これは後ほど説明いたしますが、質的な検討をするものになります。3-2は、医療者から見た緩和ケアの変化に関する質問紙調査ということで量的検討をするものになります。これらを総合して調査結果を総括して、今後への提案につなげていくということを考えています。
 具体的なことを見ていきたいと思いますので、28ページをごらんください。1と2という列と、3-1と3-2という列がございます。1と2は、どちらかというと指標に関する研究を進めていくものになります。その一方で、3-1、3-2はこの研究班の独自のものになりますが、これまで行われてきた緩和ケアに関するがん対策としての取り組み、こちらのほうは、がん対策推進基本計画を進めていく中でいろいろな施策が取り組まれてきているかと思いますけれども、実際にその効果がどうだったのかということについてベースラインがないために十分な評価が難しいという現状があります。その中で、実際に臨床の現場でどんな変化が起きているのかを何らかの形で検討できないかということで、3の研究がございます。
 これらについてそれぞれ説明していきたいと思いますので、29ページをごらんください。こちらは今、若尾先生が御説明した部分の緩和ケアに該当する部分です。基本的に若尾先生がやっているものの緩和ケアの部分を私が担当するということで、さまざまな調査をしていく中で一緒にやらせていただきます。その中で、緩和ケアの分析などについて私が担当するということで、皆様方におかれましてはは同じ調査の一連の中で緩和ケアというものが含まれていくことを予定しておりますので、ぜひ、こちらも御協力いただけたらと思っています。また、これを進めていくことで、今後の緩和ケアについて、進捗状況などを把握できる指標を定めていくことができたらと考えております。
 30ページをごらんください。こちらは既存である緩和ケアに関連する指標をもう一度整理しようというものです。もともと指標があるのであれば新しい指標をつくる必要はないのではないかという御意見もあるかと思いますが、見ていただければわかるとおり、緩和ケアをそのまま測れるような指標というものはございません。緩和ケアに関連する幾つかのものが確かに存在しているのですけれども、緩和ケアの進捗情報を実際に継続可能な形で図れるものがまだないというのも現状です。例えば、アウトカムとして患者さんから見た変化ということで受療行動調査とかで評価する方法が最近整理されてきておりますので、そういったものをもう一度総合的に整理して、がん対策の指標として使えるものがないかということを検討させていただくのがこちらになります。
 続きまして、31ページをごらんください。こちらはこの研究班が独自で行っていくものですが、先ほど少し御説明したように、緩和ケアのこれまでの取り組みをもう一度振り返って、何が医療の現場、また患者さんが受けている緩和ケアとして変わってきているのかというものを、もう一度検討しようという内容になります。
 実際にはどのようなことを考えているのかといいますと、対象者として、緩和ケアに関連して、深くかかわっている方から、それほど緩和ケアにかかわっていない方までを含めて、それぞれの方が、この数年間でどのような緩和ケアの変化を感じているのかということをインタビューしていきたいと思います。その中で例えば、緩和ケア研修会が進むことによって、医療用麻薬を処方する医師の数がふえたと感じている医療従事者もいるかもしれませんし、緩和ケアに関しての理解が進む、例えば、専門家に対して相談しやすくなったと感じているような医療従事者もいるかもしれません。そういう部分を質的な部分として、まず検討していくということを考えております。
 32ページをごらんください。そういった質的に変化が出てきたものについて、一体そういう変化をどれくらいの人が感じているのか。医療従事者の中でそういう変化を感じているのはどれくらいいるのかということを量的な調査をしたいと思います。質的研究で明らかになった項目をもとにして、全国でそういった変化を感じている医療従事者がどれくらいいるのかということを評価します。本来であればベースラインがあって前後などで変化を見られればいいのですけれども、そういうものがない現状で緩和ケアの取り組みがどれくらい世の中に影響してきたのかを検討するような方法として、このような方法で質的検討に基づいた量的検討をぜひ行っていきたいと思っております。
 33ページになりますが、全体を総合して中間評価では今後どういうふうに緩和ケアの取り組みを進めていけばいいのかという材料を提供できたらいいなと思っております。
 以上です。
○門田会長 ありがとうございました。
 それでは、引き続きまして、細川委員からお願いいたします。
○細川委員 私の資料は5-3になります。研究課題といたしましては、以前より問題になっています、がんの痛みに関する緩和といったもの、特にがん診療拠点病院におきましてがん疼痛緩和に対します取り組みの評価と改善に関する研究という名称なのですけれども、実際の目的は、本邦の緩和ケアの均てん化が大きな目的だと思うのですけれども、そのためにがん診療の中心になっておりますがん診療拠点病院におきまして、がん疼痛緩和の質の評価を検証するために、定期的に実施可能な各種評価指標を用いた評価システムを確立することにあるわけでございます。このために、主ながん診療拠点病院の実地調査を行いまして、実際に各種の評価指標について検証いたしまして、それにさらに追加修正を行う形で、がん疼痛緩和の質の評価を可能ならしめることとしております。
 ただ、実はがんの痛みに限らず痛みそのもの、ある疾患にかかわる痛みに関しまして評価する指標、ある患者さん個人とか、同じ施設での評価というのは可能なのですけれども、バラバラの施設をそれぞれ評価するという指標は過去何十年にもわたりまして疼痛学の方面では世界中でやられてきたのですけれども、正直なところ、そういったものを1つのものでできるようなシステムが確立されておりません。方法論のところに研究者によって系統的文献検索でレビューを実施と書かれていますが、これは今回の研究を始めるに当たりまして、既に文献検索をやりますと同時に、一般的に緩和ケアが進んでいるという国のこういった方面の研究の一任者に質問状を出しまして、そういった評価システムがあるか、もしくは評価指標というものがあるかということのデータ取りをしたのですけれども、あると答えた国は1つもございませんでした。
 そういったことで、一見簡単そうに見えるのですが、時間的なもの、施設の違い、質問する方、それが看護師であったり、家族であったり、医師であったり、それ以外の第三者であったりによって全く数字も変わってきます。ただ、現在のところ3)に書かれておりますように、各国である程度の評価指標という内容で、ここにありますような幾つかの指標が出されております。日本においては除痛率という言葉やオピオイド消費量という言葉もございますけれども、そういったものを一度実際に評価いたしまして、何となく実際の臨床における動きとパラレルである可能性のあるものをもう一度引っ張り出しまして、それにさらに上記に書きました追加修正という形で、少しでも現場で使えるものにならないかどうか、そういったことを含めまして、今のところの予定は10~20施設程度にフォーカスグループインタビューという形でインタビューを行いまして、まず、質的な分析を行ってみたいと思っております。この分析から得られましたデータをもとに、ある程度確立された指標とまではいかないのですけれども、臨床指標に耐え得る可能性のある指標を用いまして、全国のがん診療拠点病院におけるがん疼痛緩和の質の評価をすべての病院に通年ごとに行うことを何とか可能にしたいと考えているわけでございます。
 ただし、5)、6)におきましては、この1年から1年半の間の本研究の結果を踏まえて、そういった指標をもし見つけることができた場合においては実施可能ということで、一度、全世界的に言われている指標に関しまして検討を加えて、実施可能な評価システムを何とかつくっていこうということが大きな目的でございます。これは12月1日からスタートという形でございまして、大体のラインは出たのですけれども、実際の運営に当たってはかなり難しい研究であることは承知の上でございます。
 36ページに研究の背景ともたらす結果として書かれておりますが、先ほども言いましたように、オピオイドの使用ということですが、実はオピオイドという言葉の定義自体が国によってさまざまでございます。日本ではモルヒネということになるのですが、現場の先生方はよく御存じのように、モルヒネを使用する施設は年々減ってきております。といいますのは、モルヒネ以外のオピオイド鎮痛薬が出てきているということ。現在、医療用麻薬にしてされていないオピオイド鎮痛薬というのがございます。ところが、日本以外の国では、日本で医療用麻薬に指定されていないものが強オピオイドとして指定されているケースなどもございまして、全く横での検討ができません。ある国のオピオイド使用量、モルヒネの量が多いと言われても、モルヒネを使わなくなっている国もございます。実は関西と関東におきまして、国内においても既にオピオイド鎮痛薬の使用が、これは多分製薬会社の販促に関する動きというものとある程度連動することがあるかもしれませんけれども、実は随分ばらつきが出て、関西と関東におきましても大きな違いが出てきています。そういったことから、ある程度の目安にはなるので、できればモルヒネ以外のオピオイド鎮痛薬にも言及したいと考えておりますが、どこまでやれるかに関しまして余り期待していないのもちょっと困るなという思いもありますが、できるだけ臨床使用に耐えるものを何とか開発させていただきたいと考えておりますので、少し長い目で見ていただければと思っております。
 どうぞよろしくお願いいたします。
○門田会長 ありがとうございました。
 この3つの班について、ただいま御説明いただきましたけれども、基本的には細川委員のところは別ですが、前の2つは皆さん方に加わっていただくデルファイ法という、私はよくわかりませんが、意見を交換しながらやることになっていますので、そこで御意見をおっしゃっていただければいいかと思いますが、全体的なことで御発言があればちょうだいしたいと思いますが、いかがでしょうか。
 濱本委員どうぞ。
○濱本委員 今の細川委員の御発表についてお尋ねいたします。痛みに関して同じ患者ですとか、同じ施設内でならできるけれども、疼痛学としての多施設比較というのはなかなか難しいというお話がございましたけれども、今回のほかの2つの検討内容プランと比べまして、細川委員の御研究では特に患者側のインタビューや患者への直接のアンケートみたいなお取り組みは考えていらっしゃらないのでしょうか。
○細川委員 もちろんそこが最大のポイントとなるところなので、医療者側が幾ら満足しても患者さんが満足されていなかったら全く意味がないので、そこにいきたいと思っております。ただ、幾つか申し上げておりますけれども、患者さんによりましては痛みがとれていない、つまり痛みがあっても頭がクリアーで、ふだんのことができるということを重視されている患者さんのパーセンテージというのは随分高いものがございまして、痛みをゼロにするという発想が、がんの痛みというのも実は初期の段階では骨転移でありますとか内臓転移という、がんそのものによる痛みが中心だったので、痛みをゼロにしようという方向だったのですけれども、66%以上の方が現在サバイバーとしておられるということになりますと、例えば、放射線治療による痛み、しびれ、抗がん剤によるしびれ、痛みというのはがんセンターの先生方がよく御存じだと思いますけれども、これは治療にも差しさわる段階に来ております。そういたしますと、そういったものは痛みの世界では慢性疼痛という範疇に入ります。がんの患者さんが慢性疼痛を持たれますと、がん性疼痛として扱われるケースが多いので、何とか痛みをとろう、レスキューを使おうという発想になるのですけれども、実は慢性疼痛というのは痛みをとるのが大前提ではなく、その患者さんが行いたいADLを保つためのレベルに痛みを下げるということになりますので、実はレスキューを使うという発想すらないんです。この辺が今は随分コンフューズされてきまして、実は痛みの専門家の中では5~6年以上前から話がございましたけれども、これも裏を明かしますと、せっかく今がんの患者さんにオピオイドを使って何とか痛みをとっていこうという動きが前に進んでいるところに、いや、余り使わないほうがいい部分もあるんだということはちょっと言いにくいということもありまして、時期を待っていたというケースもございます。ただ、これだけ生存率が上がってまいりますと、治療に伴う痛み、それから、高齢者が多くなりますと、もともと持っている腰が痛い、ひざが痛いといったものも含まれてくるんです。これを全部がんの痛みとして考えて治療をやりますと、非常に違った問題が出てきます。ですから、クラスはちょっと上がってくるのですけれども、痛みだけをゼロにしようという形ではなく、いわゆるどれだけカンファタブルな生活を患者さんや家族が送れているかという指標、しばしばこういったものはサティスファクトリーインデックスという満足度で評価することも多いのですけれども、できれば痛みプラスそういったものも含めた形で、あくまで指標は患者さんと考えていただいて結構だと思います。
○門田会長 ありがとうございました。
 そのほかいかがでしょうか。阿南委員どうぞ。
○阿南委員 若尾先生に1つお聞きしたいのですけれども、こちらの分野別施策の結果ですが、どれくらい特色を絞れるのかといいますか、例えば、小児がんとか希少がんの患者さんに対して質問をする場合と、それ以外の患者さんに小児がんとか希少がんの質問をする場合が混ざってしまうとというところでお聞きしたいと思います。
○若尾参考人 先ほど少しお示しした問題の大きさというところで、それぞれの委員の方の考え方によって点数のつけ方が変わってくると思います。その分野が非常に大事だと思われる方は高くつけると思いますし、その分野は大事だけれども全体の中で考えると少し点数が下がると考える方もいらっしゃり、、それらを集約していくような形で検討を進めます。今回の指標ですべての分野を網羅するということではなくて、網羅するためには非常にたくさんの指標をつくらないといけなくなることもあり、実際に計測することができて、がん対策の全体の進捗を見ることができると参加者に評価された上位のものに絞っていくことになります。その中には、必ずしもすべての分野が含まれるということにはならないと考えております。
○門田会長 よろしいですか。
 そのほかいかがでしょうか。よろしゅうございますか。多くの委員の皆さんに参加していただくという意思表示をもらっておりますので、これから短期間の間に3回のやりとりがあるわけですので、そこでいろいろと意見をおっしゃっていただきたいと思います。私が一番心配していますのは、非常に時間に迫られてやっている作業ですので、80人もの人たちがやりとりして大丈夫かなと一瞬不安に思うところもあるのですが、そういった意味で遅れることのないというか、何とか間に合うような形でぜひやっていただきたいと思います。そのためには委員の皆さんにはいろいろと御協力いただくと思いますので、ぜひ、よろしくお願いいたします。
 では、次にまいりたいと思います。最後のテーマが、がん登録等の推進に関する法律について。先ほども話がありましたが、これは成立しているということで、簡単に御報告をいただきたいと思います。事務局からお願いいたします。
○事務局 事務局から、がん登録等の推進に関する法律につきまして御報告させていただきます。
 資料6をごらんいただければと思います。先ほど中川委員からもお話がございましたが、12月6日にこちらの法律が成立しております。
 内容を御説明させていただきますが、まず下にございますように、全国がん登録、これは地域がん登録を再編成して全国がん登録となるものですが、こちらの全国がん登録と拠点病院を中心に実施されています院内がん登録を主に推進していく法律となっております。
 全国がん登録についての内容ですが、真ん中の「全国がん登録」とついております図をごらんいただきながら聞いていただければと思いますが、主に3点ございます。まず、1点目は、これまで地域がん登録、都道府県で健康増進法の努力義務として実施されてきたものですけれども、全国がん登録になりますと病院に罹患情報の届出義務がかかりまして、これが都道府県を通じて国に提出される仕組みになっておりますので、これまで都道府県によってばらつきがあった登録状況というのが、すべての病院に届出義務がかかることによって悉皆的に罹患情報が国に提出されるという状況になります。
 もう一点目、これまで予後調査についても都道府県がそれぞれ行っている状況でしたが、全国がん登録においては死亡情報を国において一元的にとりまとめて突合していくという仕組みになりますので、例えば、都道府県をまたいだ死亡に関する情報なども国において整理・突合が可能になります。
 3点目でございますが、センシティブな情報を扱うものでございますので、情報保護についてはしっかりやっていく。秘密漏示等についても罰則を設けております。
 それから、大事なところでございますが、このように集めた情報について今後、国、都道府県、医療機関、研究者を含めてきちんと活用していく。そして、最も大事なことでございますが、きちんと国民に還元していくということでやっていくことになっております。
 今後、平成28年1月施行を目指して、国においても準備を進めてまいりたいと考えております。
 以上、簡単ではございますが、御報告とさせていただきます。
○門田会長 ありがとうございました。
 このがん登録については、この協議会としてもがん対策を進めていく上でしっかりとしたデータが世界各国と比べて非常に遅れている。それで、がん対策を云々というのもおかしいので、ぜひ早いうちに成立をという請願書を送ったりとかやってきましたし、前の協議会の患者委員の皆さんには、議連まで出ていっていただいて、その必要性を国会議員の前で述べていただいた。私はあのときの国会議員の顔つきの変化といいますか、患者さん自らが自分のデータを登録してほしいのだと、そして、将来の人に使ってほしいという、あの訴えが非常に響いたというか、きいたのではないかと思います。
 そういった意味で、今回これが成立したことは非常によかったのではないかと思います。ぜひ上手な運用と、いろいろな整備をして、がん対策の推進の上でも本当にそれにふさわしいデータに基づいてやれるようにしていただきたいと思っています。多分、国立がん研究センターは新たに仕事がふえるということで大変だと思いますけれども、ぜひうまくやっていただきたいと、御協力していきたいと思いますので、よろしくお願いいたします。
 がん登録の件はよろしゅうございますか。
 それでは、少し時間も回りましたが、予定した議題は以上です。その他で事務局から何かありますか。
○林がん対策推進官 次回の日程でございますけれども、皆様の御都合を今、調整中でございますので、決まり次第御連絡を申し上げたいと思います。
 以上でございます。
○門田会長 ありがとうございました。
 今年度始まってきょうで3回目ということで、今出していただいたようないろいろな意見から考えまして、もう少し回数をふやして皆さんとの意見交換、議論を進めていきたいと思っておりますので、また御協力のほどよろしくお願いいたします。
 それでは、本日はこれで終わりたいと思います。どうもありがとうございました。


(了)

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