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2013年9月20日 第40回 がん対策推進協議会(議事録)

健康局がん対策・健康増進課

○日時

平成25年9月20日(金) 11:00~13:00


○場所

三田共用会議所 3階 大会議室A~E
 (東京都港区三田2-1-8)


○議題

(1)協議会における検討の進め方について
(2)今後のがん対策の方向性について
(3)がん対策に関する施策の進捗について

○議事

出席委員:門田会長、上田委員、阿南委員、池田委員、石井委員、緒方委員、川本委員、工藤委員、内藤委員、永山委員、西山委員、濱本委員、細川委員、堀田委員、道永委員、湯澤委員

○林がん対策推進官 では、定刻となりましたので、ただいまから第40回「がん対策推進協議会」を開催いたします。

 委員の皆様方におかれましては、お忙しい中お集まりいただきましてありがとうございます。

 事務局を務めさせていただいております健康局がん対策健康増進課がん対策推進官の林と申します。去る9月10日付で着任いたしました。どうぞよろしくお願いいたします。

 初めに、本日の委員の皆様の出欠状況でございますけれども、本日は、中川委員、佐々木委員、野田委員から御欠席との御連絡をいただいております。また、細川委員におかれては、もう間もなくお見えになるということでございます。

 次に、事務局に異動がございましたので御紹介いたします。

 健康局長の佐藤から、まず最初に御挨拶を申し上げます。

○佐藤健康局長 健康局長の佐藤でございます。きょうお集まりの皆様方におかれましては、これまで何度か御挨拶をさせていただきましたが、この第40回のがん対策推進協議会ということでは、初めてお目にかかる先生もいらっしゃるかと思いまして、御挨拶方々、私自身のことを申し上げますと、7月2日付で前任の矢島鉄也の後を受けて現職にございます。どうかよろしくお願いいたします。

 申し上げるまでもありませんけれども、国のがん対策は、このがん対策推進協議会はもとより、昨年見直しが行われましたがん対策推進の基本計画に基づいて推進されているところでございます。ちょっと気の早い話ですが、平成27年にはその中間見直しも行われるということでございます。そういう中で、ここでの議論がそのがん対策の中間評価や、さらには、その先の方向性についてもつながるような御意見をいただくという大変重要な会であろうかと思います。短い時間ではありますけれども、どうか忌憚のない御意見、御指導を賜ればと思います。

 簡単ではございますが、私自身の紹介とあわせまして冒頭の挨拶にかえさせていただきます。どうかよろしくお願いいたします。

○林がん対策推進官 佐藤局長でございますけれども、本日、公務のため途中で退席、失礼させていただくことをお許しください。

 続きまして、健康局がん対策・健康増進課長の椎葉でございます。

○椎葉がん対策・健康増進課長 椎葉です。よろしくお願いいたします。

○林がん対策推進官 また、文部科学省、経済産業省からの出席者を御紹介させていただきます。

 文部科学省研究振興局の阿蘇研究振興戦略官でございます。

○阿蘇研究振興戦略官 阿蘇でございます。よろしくお願いいたします。

○林がん対策推進官 同じく、文部科学省の林先端医科学研究企画官でございます。

○林先端医科学研究企画官 林と申します。よろしくお願いいたします。

○林がん対策推進官 次に、経済産業省製造産業局の江崎生物化学産業課長でございます。

○江崎生物化学産業課長 江崎でございます。どうぞよろしくお願いいたします。

○林がん対策推進官 商務情報政策局の覺道医療・福祉機器産業室長でございます。

○覺道医療・福祉機器産業室長 覺道でございます。

○林がん対策推進官 また、本日は、文部科学省スポーツ・青少年局の大路学校健康教育課長も途中から出席いただく予定となっております。

 それでは、以後の進行は門田会長にお願いいたします。

○門田会長 皆さん、おはようございます。久しぶりというか、猛暑を避けて会を開いているような感じになりましたが、御出席いただきましてありがとうございます。本日もどうぞよろしくお願いいたします。

 それでは、最初に事務局のほうから資料の確認をお願いいたします。

○林がん対策推進官 お手元の資料を一通り確認させていただきます。

 座席表

 議事次第

資料1 がん対策推進協議会委員名簿

 資料2 協議会における検討の進め方について

 資料3 今後のがん対策の方向性について

 資料4 がん対策に関する施策の進捗について

 その後に、資料4の一部でございますけれども、がんの教育総合支援事業という1枚紙がついております。

 参考資料1 がん対策基本法

 参考資料2 がん対策推進協議会令

 参考資料3 がん対策推進基本計画

 参考資料4 今後のがん対策推進協議会における検討テーマ等について

 参考資料5 がん対策関連の検討会と検討の概要について

 参考資料6 平成26年度がん対策予算の概要要求について

 参考資料7 「今後のがん研究のあり方について(報告書案・暫定版)」に関する主な御意見

 参考資料8 「がん登録等の推進に関する法律案骨子(案)とその概要」に関する主な御意見

 それから、委員の皆様の机上には、がん登録等の推進に関する法律(案)の概要というものと、それから、内藤委員の御提出資料の補足となっております写真の資料を置かせていただいております。

 もし不足等がございましたら、随時、事務局にお申しつけください。

 以上をもちまして撮影を終了していただきますよう、御協力をお願いいたします。

○門田会長 ありがとうございました。特に資料について問題ございませんか。よろしいですか。

 よろしいようでしたら進めたいと思います。

 まず最初に、前回を思い起こしていただきたいのですが、会長に改めて就任させていただきまして、会長代理を指名しろと言われたのですが、皆さんと初めてお会いしたということで、次回まで元気にしておきますから勘弁してくださいとか何かと申し上げたのですけれども、よく考えてみたら、医者としてあるまじきことを言ったのかなと。やはり人間、生身の体の身でいつ何が起こるか分からないわけで、特にどなたかにお願いしておかなければならなかったなと、ちょっと反省しております。

 そういうふうに思いまして、改めてきょう、今からお願いしたいと思いますが、そういう事態が発生するということを前提にというのもおかしな話ですけれども、そうなったときに、会長の代理をしていただくということになりますと、まず、今までの経緯を十分御存じの方にお願いすべきだなと思いますので、やはり第2期目、あるいは第3期目というのですか、複数回委員として加わっている方にお願いすべきかと思いました。それと、もう一つ考えましたのは、ここにはいろいろな組織の代表の方がいらっしゃいます。組織の代表者は、組織の人事の異動によってはかわる可能性があるということから、そのあたりのことを考えまして、私は、上田委員にお願いしたいと思いますので、御了承願いたいと思います。

 そういうことで、上田先生、まことに申しわけないのですが、ぜひよろしくお願いしたいと思いますが、一言御挨拶をお願いします。

○上田委員 

只今指名された愛知医科大学腫瘍免疫講座の上田でございます。よろしくお願いいたしたいと思います。

 今、門田先生からの御挨拶にもありましたが、先生はまさかのことなぞ有りようもない、非常に健康体でございますから、御心配なぞしなくても大丈夫と思われます。ですから、私は今までどおり、一介の委員としてフロアーから自由闊達に意見を述べさせていただきます。万が一サポートが必要な際には、門田先生、御心配なく。できる限りのご支援をさせていただきます。皆様よろしくお願いします。

 

○門田会長 ありがとうございました。御迷惑がかからないように努力したいと思いますが、万が一のときにはよろしくお願いいたします。

 冗談はさておきまして、それでは議題のほうに進みたいと思います。

 まず、第1番目、協議会における検討の進め方についてということでございますが、第39回、前回のときに幾つかのディスカッションがございました。特に、第1期の基本計画において、質的なものの評価というのがどうなっているのだという、具体的な数値目標はほとんどクリアしているけれども、質の評価はどうなっているのかと、質の評価の重要性を指摘されながらなかなか具体化していなかったということでした。今回ももう既に第2期目に入ったわけですが、その2期目のスタートにおいても、その質的な評価をどうするかということで、皆さんに、御報告し、ディスカッションしていただきました。そういうことにつきまして前回ディスカッションしていただいたのですが、私なりに少し整理をしておくべきかと思いましたので、資料2のほうを見ていただきたいと思います。

 資料2の「協議会における検討の進め方について(提案)」と書いておりますが、ちょっと今までのものを整理したということでございます。

 まず、左半分のがん対策推進基本計画があって、それを厚生労働省のほうで実際に実践していただいていると。その過程において、幾つかの専門的な意見が必要で検討を要するというものについては、その下に書いておりますが、検討会を幾つか立ち上げて、その検討会の意見を参考に厚生労働省のほうで施策を進めることになっているということでございます。

 下の四角の中に上げておりますけれども、各分野の施策についてのアウトプット評価、それからまた、その最終的なアウトカム評価ということが、先ほどもちょっと触れましたけれども、これが非常に重要で、今期の今のタイミングで非常に差し迫った仕事であるということでございます。

 そういうことで、右側のほうに移りますが、がん対策推進協議会は、前回まではがん対策の基本計画をつくるというお仕事をし、その後、幾つかのディスカッションをしてまいりましたが、この段階で、今申しましたように、先にマル2のほう、この評価指標の決定、それから施策評価の実施という、これが非常に重要なことでありますと同時に、時間に非常に追いかけられているということになっております。

 そういった意味で、前回御報告いたしましたけれども、まず、パイロットスタディーを行って、そのパイロットスタディーをもとに実際の調査をし、そしてそれを中間評価としてまとめ上げていくという仕事になっているということで、現在、厚生労働省科研のほうですね、研究班としてそれを具体的にやっていただいていると。前回、幾つかの意見をちょうだいしたわけですが、それはパイロットをやって、そして、それから今度、本調査に入るときに皆さんの御意見をさらに入れて調査票を作成する、そういうことをやりましょうということで、その段階においては、上から研究参加という矢印が行っておりますが、委員の皆さんから研究班のほうにも、できる方には参加していただいて、これを、実質的な内容の協議会としての意見を踏まえたものをつくり上げていくというのが、今からの時間に追いかけられた仕事で、これがマル2です。

 もう一つ、マル1のほうに、上のほうに上がっておりますが、そもそもこの協議会は、がん対策推進基本計画をつくるときには、厚生労働大臣は、がん対策推進協議会の意見を聞くものという形で、本来のミッションの一番大きなところが、がん対策の基本計画の策定といいますか意見を述べることになっております。それが昨年終わったところでございますけれども、実は、後ほど少しお話しさせていただきたいと思いますが、前回の協議会のときに、一応計画案をまとめた段階で、私は前回の協議会の委員の皆さんに、会長としての将来に向けての御意見を述べさせていただきました。そういうことを改めて皆さんにお話しさせていただきたいと思い、後ほど話をさせていただきます。そういうことについて、これから先、次期基本計画、あるいは、場合によれば、その長期的なビジョンに基づいた計画を考えていくということを今からディスカッションする必要があると考えておりますので、この協議会とすれば、この2つのことを中心に進めていきたいと考えております。

 では、裏のほうを見てください。今申しましたように、平成24年6月で基本計画が閣議決定されたというのが上に載っております。そして、これを見てみますと、もう既に平成25年9月の後半にさしかかっているというところまで進んでいるわけですが、この協議会は、この間の平成25年、26年が任期ということで、直接、基本計画の見直しあるいはその策定というところには、タイミング的には外れております。しかし、長期的に見ますと、今、動いているものに対しての評価をすることと同時に、将来に向けての基本計画のあるべき方向性のディスカッションをやっていく必要があると思っております。また、平成27年に入りますと中間評価を、デューティーとしてやっていく必要があると思います。こういう形になっていくということでございますので、あえてきょう提案させていただきますのは、メインは、この評価のことをさらに進めること、そして中間評価につなげること、それから、将来的ながん対策の基本計画の方向性をいま一度見ていくという作業を中心に進めたいと考えております。

 そういうふうに考えましたが、委員の皆さん、何か御意見ございましょうか。そういう基本的な方針について。よろしゅうございますか。

 基本的なことですので、では、大きくそういうことを中心に進めていくということにさせていただくことにいたします。ありがとうございました。

 それでは、次に進みたいと思います。今後のがん対策の方向性についてということで、皆さん方からいろいろな御意見をいただきました。私もいろいろと読ませていただきましたが、それを事務局のほうで整理してもらいましたので、その報告をまず最初にお願いしたいと思います。

○事務局 それでは、資料3を御確認ください。1枚おめくりいただきまして、資料3-1について説明させていただきます。よろしいでしょうか。

 前回の協議会での御議論を受けまして、事務局より、今後のがん対策に関して重要と考える視点や課題について、先生方に意見調査をさせていただきました。その内容についてまとめてございます。

 それで、今、会長から提案いただいた内容にもございましたが、協議会での議論の方向性として、今後のがん対策の大きな方向性に関するところというものに焦点を当てて進めていってはどうかというこれまでの御意見を受け、会長と相談させていただいた結果、いただいた御意見を大きく2つに分けてございます。まず、括弧でくくっている大きな方向性に関する御意見、そして、1ページ目の中段にございますが、具体・個別の施策に関する御意見と整理をしております。それで、具体・個別の施策に関する御意見といったところの項目に関しては、協議会以外の各種検討会であったりという議論の場がございますので、そういったところも活用しつつ議論を進めていってはどうかと考えております。

 簡単に御紹介させていただきますが、具体・個別の施策に関する御意見としては、まず、がん患者・家族の希望に沿った療養を実現するための医療連携の確保、そして、2ページ目、めくっていただきますと、自らの価値観に基づく判断を可能とするためのがん教育、情報支援体制の確保、そして、高齢者の尊厳を確保したがん医療の普及、小児がん及びAYA世代のがん対策の推進、働き盛り世代の患者の社会参加を促すための就労対策の推進、3ページ目に移りまして、質の高いがん医療を確保するための専門家の育成・確保、がん検診等の「予防・早期発見」のさらなる推進、患者に届く成果を確実に上げるためのがん研究推進体制の確保、実効性のあるがん対策推進体制の確保といったところでございます。

 そして、1ページ目に戻っていただきまして、いただいた御意見の中から、先ほどの資料2の提案にありましたように、がん対策の大きな方向性に関する御意見として、会長と相談させていただきまして抽出したものがこちらになりますが、「積極的治療を終了した患者、働きながら治療を行う患者など、全ての患者が尊厳をもった生き方を選択できる社会の構築」といったところで1つまとめてございます。

 具体的にどういう内容の御意見があったかといいますと、社会全体でがんと向き合う視点であるとか、がんになっても自分の希望する生き方を選択できる社会であるとか、みずからの価値観に基づく判断を行うための苦痛の解除であったり、個々国民による自覚を促すための教育の提供、情報支援体制の確保でございます。

 そのほか、個別の詳しい内容に関しては資料を確認いただければと思いますが、委員の皆さんからいただいた御意見として御紹介させていただきます。

 以上です。

○門田会長 ありがとうございました。皆さんからいろいろな御意見をいただきました。それをまとめてみますと、今、事務局の報告にあったような形にまとめることができるかと思いました。

 本日は、実質的には第1回目ということでございますので、まず、先ほど私がお話しいたしましたように、私自身の考えというのか気持ちを少しお話しさせていただき、そして、前もって出していただいております御意見の中から、事前にお願いしておりますご意見を述べていただいて、その件について大きな方向性についてのディスカッションをしてみたいと思います。

 それでは、今のとじたものの続きで、資料3-2を見ていただきたいと思います。私が先ほど申しましたが、今の国のがん対策について少し考えてみたというものでございます。参考までにお話しさせていただきます。

 では、1枚めくっていただきたいと思いますが、6ページ目です。これはもう皆さん御存じのとおりです。とにかく死因が脳卒中を超えてトップになって、それがふえ続けているという図でございますし、また、右側は、しかし、そうは言っても、年齢調整をかけるならば、減少しつつあるということになって、いろいろな施策がある程度進行しつつあるということだと思います。

 その次の7ページ目の図を見ていただきますと、これが疾患別に見た、臓器別の年齢調整死亡率ですが、今、申しますしたうに全体的には下がっている、右肩下がりになってきていると。ただし、赤い四角で囲んでいますように、乳がんについては、年齢調整をしているにもかかわらずふえ続けているという状況が外国と違うという大きな課題が残っているということです。

 8ページ目を見てください。これは、年齢調整の罹患率のほうの話です。青の四角をつけていますものは、これは罹患率が低下しておりますが、そのほかのものは全て、まだ年齢調整にもかかわらず罹患率はふえ続けているというデータであります。

 9ページ目のデータですけれども、まず、四角で囲んでいる、がん全体で見てステージ1,2,3、4と計というグラフを見ていただきますと、全がん協ということで、がん専門の病院のデータということで見ていただきたいと思いますが、全体でも5年生存率は6割を超えているという状況になってきている。さらに、もしステージ1,2で発見されれば、8割は5年生存できるということ。しかし、3,4と進行するにつれて、その成績は悪くなっているという状況です。

 では、その次を見てください。10ページ目、これは我が国の全体的ながん対策の歩みを書いたものです。私がみずから言うのもあれですが、がん研究会が発足したのが1908年という、その次、国立がんセンター、そして、先ほど言いましたけれども、がんが死因のトップになる。そして、それから後、対がん10か年戦略が3回、10年、10年と続いてきておりますが、その途中として、がん対策基本法が2007年に施行された。それで、そのときから第1期のがん対策推進基本計画、それで昨年より第2期という形に進んできているといのは、皆さん御存じのとおりだと思います。

 このがん対策基本法ができてきたとき、患者さんが、当時、ある程度がんが治るようになってきたという時代になればこそ、いろいろな格差が問題になった。地域格差がある、あるいは病気によっての違い、そういうもの、情報の格差がある、あるいは、どこかにかかったけれども、治療不能ということで「がん難民」という単語が出てきたりなど、そういうことを踏まえて医療に対する不信も出る。そういうものに対してのいろいろな患者さんたちの活動、特に、国会のほうでは、山本孝史議員が頑張られて、2006年に成立したものだということでございます。

 そしてその次、これも皆さん御存じのことです。これも特に、当時の中心的なことは、がん医療の均てん化と。当然、予防とか早期発見、研究とありますが、均てん化ということが大きな話題になった。そして、左側に上げておりますが、がん対策推進基本計画をつくるときには、がん対策推進協議会の意見を聞くという、私たちのこの協議会の存在する意義がそこにあるということであります。

 その次、13ページを見てください。これは先ほど申しましたけれども、氷山の一角、上のほうにいろいろな問題が出ておりますけれども、この問題が発生するというのは、その問題だけが問題ではなくて、実は、この水に隠れている部分にいろいろなものが複雑に組み合わされた課題があるのです。その結果としてあらわれてきているということから、単に上の問題を目標、目的とするというよりも、全体的な対策が必要ではないかということで、第2期のときには、がん登録も、がん教育も、あるいは医療提供体制そのものの見直しという感じでやってきています。こういうものを徐々に幅広く広げていく対策を講じることによって、徐々に進歩しつつあるということが言えると思います。

 次の14ページを見てください。これは、がん対策基本法に決められたそれぞれの部署の責務の話です。特に、国民の責務としては、がん検診を受けるとかというようなことが責務として法律に書かれているわけですが、なかなかうまいこといっていない。そういう中に、昨年、がん対策推進基本計画第2期のものがスタートして、この四角で囲んでいますが、このあたりが新たに追加になったということであります。

 そこで、今度、今までの流れを私なりに整理してみますと、第1期というものは、特に病気あるいは病気を持っている患者さんというヒトを対象にした基本的な計画であった。そして、今度第2期目に入ったら、その次に、社会全体の体制の中に対策を広げていく必要性があるということを皆さんお考えになられて、今申したようなことが出た。そして、それに加えて量的なもの、第1期は非常に量的な、数値目標がたくさん上がっておりましたが、数値目標よりも質的なものの改善をどうするかというあたりが課題であるという話になっております。

17ページですが、質の話をいたしますと、医療そのものの質を私たちがどう考えるかということで、ここにはQALYの考え方を上げておりますけれども、右側の図なんかは、ある処置をすることによってQOLはちょっとよくなるけれども、途中で悪くなった。そして、生命予後は延びたかもわからんけれども、全体としてのクオリティーはどうなのだということをどうするのがいいのか。今回、QOLを含めての評価案になっておりますけれども、このあたりを個々の国民と一緒に考えていくということをした質的評価がどうしても求められるということだと思います。

18ページを見てください。これは先ほど出した図ですが、右側の年齢調整死亡率というのは、一見進歩しているというようなことは言えるのですが、現実は、左側ですね、やはり亡くなっている方がどんどんこういう形でふえている。高齢者がふえるとともにこういう形になっていることは、まさにこれが問題だと考えなければなりません。

 そして、19ページ、今の我が国の医療費の問題もそうですが、こういう形で40兆円近い医療費が、しかも毎年1兆円ずつふえる、こういうことを、金と比較してどうこうという話ではなくて、現実の問題として、こういう状況の中でどうするかということを考える必要があろうかと思います。

 そして、20ページを見てください。今、2013年から、近いうちに、2025年問題とよく言われますが、第1次ベビーブーマーが後期高齢に達するとき、そして、さらに第2次ベビーブーマーたちが達する2055年、こういうことというのは、もうはっきりと来ることは決まっているわけです。こういうものに対して我々がどうしていくのか。当然この内容にがん対策も一緒にかぶせていくときに、どうしていくのかということが求められる。そういった意味で、今回までは平面的な広がりをやってまいりました。しかし、これからは、どうしてもこれに立ち向かうための時間軸でがん対策を見る必要があるのではなかろうかと思います。

 それで、21ページにそう上げました。そういった意味で、この現実を直視しながら、どうするかということを一度ここで話題にし、そして、何らかの方策をディスカッションする必要があるのではないかということであります。

22ページを見てください。これは、金澤先生が講演で使っておられたものですが、イノベーション、技術革新というイノベーションはいろいろ出きています。だけれども、技術革新だけではなくて、医療に関しては制度の改革が必要だということ。そういうふうに大きく意識を変えていく必要があるということでございますが、もう一つの意識改革、いわゆる一般、普通の意識改革レベルより、もっと大きな、深掘りした意識改革をする時期に来ているのではないかと考えられます。そういう一種危機感を共有する必要があるのではないかということであります。

 それからその次、私が日ごろ患者さんと接していて思うことですが、つい、今までは、患者さんは患者さんと見てしまう、健康な人は健康という形になっていると思います。ですから、患者さんは、きのうまで健康だった人が、ある日、患者という、病気を持っているということを言われた途端に、患者さんになってしまう。患者さんは病院に、健康な人は働くという感じになっていますが、今から我々が見ることは、患者さんは、患者の部分があるけれども、大部分は普通の人である。人として患者さんを見る。健康な人もほとんど重なっている人、ちょっと違うところがあるぐらいの違いしかないのではないか。つまり、ここのギャップが非常に大きい。今までの医療の世界ではこれが残っていた。ここをどうにかしていく必要があるのではないかということであります。

 その次を見てください。そういう状況の中で社会がどういう状況かといいますと、高度成長期のときというのは、健康な人は健康、非健康は非健康ということで、健康な人が労働するのだという形ではっきりと区別したものでもよかったかもわかりません。しかし、これから先、高齢者がふえ、あるいは患者さんといいますかサーバイバーといいますか、いろいろなタイプの非健康と称されるかもしれませんものがふえてきたときに、今までのやり方では、これは世の中は、多分持ちこたえることが難しいのではなかろうかといった意味で、社会体制そのもののイノベーションを起こすということの必要性があるのではないか。

 もっとわかりやすく言いますと、今までの世の中では、健康と健康でないところに明確な線が引かれ、就労とか病院へ入院が決められていたが、これからの高齢者やがんサバイバーが増加した場合、社会全体としてシームレスにそれに対応できるようにするには、どういう社会体制を考えるのか、それに伴う就労とはどういうものなのか、あるいは病気、医療、介護というものをどうするのかというのは、必ずしもどこかで線が引けるものではないので、シームレスに対応できるものをつくっていく必要がある。

 そして、最後ですが、そういうことから考えて、今からは、やはり患者さんが受動型の支援ということを、どちらかというと今までは主なテーマだったかもしれませんが、今からは、やはり患者さんも社会の一構成員として、ともに協働する、そして能動的に働きかける、そういう社会体制をつくり上げていって、対策を講じることによって、2025年問題、2055年問題というものに立ち向かう必要性があるのではないか。特に、この協議会の中には、患者委員の方が5人いらっしゃいます。ほかの協議会、審議会ではそんなことはほとんどないと思いますから、ここの中で、社会全体の構図としてあるわけですから、この中から社会体制のあるべき方向性を示していきたいというのが、きょう、今、皆さんにお話をさせていただきたかったことであります。

 また後ほど御意見を聞くことにして、ちょっと私自身が長くなりましたけれども、きょうお願いしております方々の御意見を引き続き聞かせていただきたいと思います。

 では、まず最初に、緒方委員、お願いできますか。

○緒方委員 皆様こんにちは。私は、ただいま御紹介に預かりました緒方真子でございます。神奈川県立がんセンターの患者会コスモスにかかわらせていただきまして11年になります。私自身が1993年に子宮頸がん、1999年に肝臓がんという2度のがんを経験しています。また、夫も実は前立腺がんで神奈川県立がんセンターに通院している。今、症状はとても落ちついているのですけれども、私は、自分ががんの経験者であると同時に、家族という立場できょうはお話しさせていただきたいと思います。

 門田先生のきょうのお話は 共感するところがたくさんあって、これから、方向性が同じ意見を述べさせていただきますことを誇りに思います。ありがとうございます。

 それでは、早速お話しさせていただきます。お手元の資料3-3の27ページ、私の資料の1のところに入りたいと思います。

 門田会長からの御指示を踏まえ、今後の「がん対策」に関し、重要と考えられる視点や課題ということをいただきまして、私は、「がんになっても守られる自分らしさと尊厳」というのを提案させていただきました。そして、その視点や課題について、求められる取り組みやなすべき議論というのは本当にいろいろあるかと思うのですが、その一つとして、私は、「常日頃から、がんに対する国民自らの意識向上を図る」ということが大事ではないかと上げさせていただきました。

 それでは、次のページをおめくりください。皆様も御存じのように、がん対策推進基本計画の内容の大半は、患者や家族が、医療者サイド、行政のサイドから、いかによりよいがん医療とよりよい社会的環境を提供してもらうかということが盛り込まれております。いわば、患者や家族は受け身の立場であるということに傾きがちだと感じています。もちろん、それは、患者の立場としましては大変ありがたいことで、感謝にたえません。

 次のページです。でも、私は常日ごろから、患者自身もできること、しなくてはならないことがあるのではないかという思いがございました。それで、常日ごろから、がんに対する国民みずからの意識向上を図るということを掲げてみました。そのことは、「自分らしさと尊厳」が守られることに通じるとても大切なことだと感じています。

 4ページ目をおめくりください。現在、国民の「もしもがんだと言われたら」ということに対しての意識や関心は、決して高いとは言えません。国のがんへの取り組みも拠点病院のシステムのあり方等も、国民の多くは知りません。いざがんになったときに、道しるべとなり、きちんと自分や家族のがんと向き合うために役立ってこそのがん対策推進基本計画であり、それに基づく国の取り組みや医療システムづくりに価値があると思われます。しかし、現状はそういった働きは国民には届かず、せっかくの国の取り組みが空回りしている感があります。

 次のページです。その結果と言えると思うのですが、がんと診断されたとき、まるで人生の敗者になったように落胆する患者は少なくありません。「まさか自分が」という思いから、困惑し、恐怖と悲嘆に陥ることも少なくないのです。ほとんど命に限りがあることを考えたこともない国民が、がんと向き合う中で、緩和ケアに対する誤解や抵抗感で、つらい痛みがあるにもかかわらずターミナルケアにさえなかなかつながれない。近くの病院へ医療連携を示唆されたとき、担当医から見放されてしまったと落胆する。在宅医療や介護サービスの知識がなく、ひとり暮らしなのに、不自由な療養生活を送っている。また、がんの宣告、特に余命告知に、生きる力を失い、家族までもが困り果てる。そんなことが私の周辺では少なからず起こっています。

 次の6ページ目をお願いします。そこで大切なことは、「国民自らが賢くなること」だと思います。国民一人一人が、常日ごろからがんについて関心を寄せ、自分自身のこととして心構えを持つことで、国の取り組みやがん医療システムの現状を知ることにつながります。相談支援の窓口にも比較的容易にたどり着けるのではと考えられます。国民個々の価値観、人生観、死生観に即した尊厳のある治療選択や命との向き合い方につながるのではないでしょうか。

 余談になるのかもしれませんが、7ページ目をごらんください。がんの経験者が、がんになったからこそ見えてきた生きる喜び、家族の愛、人と人とのつながりの大切さなどなどを口にされることがあります。そして、これからのがん患者さんや御家族のために何かできないだろうかという思いから、ボランティア活動を始める方もいらっしゃいます。実は、私もその一人と言えます。それは、「自分らしさと尊厳」が守られた医療と社会環境の中からこそ生まれる思い、感謝の気持ちからだという気がいたします。また、満足のいくみとりができた御遺族にも同じことが言え、ボランティアを始める御遺族もいらっしゃいます。

 一人でも多くのがん患者や家族がそんな思いを持てるためにも、私は、がんになっても守られる「自分らしさと尊厳」ということを提唱したいと思います。また、そのための取り組みの一つとして、常日ごろから、がんに対する国民みずからの意識向上を図るということを希望してやみません。

 きょうは、このような立派な場で患者サイド、また患者の家族のサイドで私に発言するチャンスをいただきましたことを大変に感謝いたします。御清聴ありがとうございました。

○門田会長 ありがとうございました。本当に、患者さんなればこそ、自分らしさ、尊厳というお話をしていただきました。

 それでは、引き続きまして、阿南委員からお願いできますか。

○阿南委員 今、御紹介をいただきました、本日は、非常に未熟で、まだ経験の浅い私のような者の話を聞いていただく機会を与えていただきましてありがとうございます。

 早速ですけれども、本日は私の体験談をもって、若い世代のがん患者がどのようなことに困っているかということ、あるいはどういったことを望んでいるかということをお伝えしたいと思います。

 私は、体験談をもとに、がん教育の重要性、それから若い世代のがん患者への個別の支援やケアの必要性ということを強く望んでおります。現在31歳なのですけれども、私は23歳のときに子宮頸がんになりまして、子宮を全摘出、そして後遺症を抱えました。23歳のころは、8年前ですね、当時は全くがん教育などなく、子宮頸がんという言葉さえ知らない人がほとんどでした。そして、若くしてがんになるということは、一般的な皆さんは、何か原因があって若くしてがんになるのだというような間違った認識をお持ちの方がたくさんいらっしゃいまして、私の両親も実際にそうでした。そして、個々にがんになった原因というものを調べまして、当時、間違った情報もたくさんありました。その中で拾ってきた情報から、母は私に、あんたは男性の経験が多いのかと言いました。それに対して私は何の知識もなく、何も言い返すことができませんでした。そして、家族は何年間も、私ががんになったことを親戚に隠して過ごしてきました。私自身も、「若いのにかわいそう」とか「どうしてあなたのような若い人が」と言われること、思われることが嫌で、看護師さんや友達にそのつらい思いを話すこともできず、患者会などに入ることもできませんでした。

 経過観察の5年間というのは、それを乗り越えることは大変な目標ではあったのですけれども、無事に生きてこられたからこそ、私は20代に本当につらい思いをしました。といいますのは、23歳で私ががんになったとしても、周りのほとんどの同級生たちには、一般的な時間というものが流れていきます。就職、結婚、恋愛、出産という、20代で人生の大きな変化がやってくるわけですけれども、私はその全てに、がんの治療による影響が支障になりました。例えば就職に関しましても、実務経験ですとか国家資格がない、キャリアがない自分が、さらに後遺症を抱えているということで、私は履歴書にも後遺症のことも書けず、面接官に「健康ですよね」と言われれば「はい」とうそをつくしかありませんでした。そして、結局後遺症で皆さんに御迷惑をおかけし、全員に子宮頸がんの治療をしたということをお話ししても、それでもみんなに迷惑をかけているという負い目から、会社をやめざるを得ませんでした。

 そして、恋愛に関しても、実際に若い男性と交際をしていたのですが、やはり自分の子供が欲しいと言われ、その悲しみをどこにぶつけることも、誰かを恨むこともできず、ただ泣くしかありませんでした。それからは、自分が子供を産めない体であることをどのタイミングで男性に伝えればいいのかがわからなくて、恋愛にも臆病になり、それでも、将来はどうしても子育てがしたいという思いから、市役所に里親制度について問い合わせをしました。そのときも、健康であることというのが条件の一つであると聞き、本当にとどめを刺されたような大きなショックを受けました。

 友達とのつき合いにも、当時は特に外見に気を使う年齢でしたので、大きな傷がおなかにできたことによって、20代は、プールや温泉にも行けず、洋服にも、それほどみんなと同じようなおしゃれをすることができませんでした。

 しかし、長い年月の中、がんになったことで気づいたことがたくさんありまして、毎日、本当に今は幸せを感じて、もう日々感謝をして生きております。ただ、20代の私のころと同じようなつらくて孤独な日々を過ごしている若い患者さんがいるならば、私は少しでも早くその方々を救いたいと願っています。

 最後に、まとめになりますけれども、就職、恋愛、結婚、出産、その時期をこれから乗り越えていかなくてはならない世代だからこそ、偏見や差別を受ける機会が多くあります。偏見というのは、本人がどれだけ前向きになったとしても、社会全体の認識が変わらなければ、それによる苦しみを何年も抱えていくことになります。そのためにも、私は、本当に地方の田舎のほうで、等しく日本の端から端まで、どこの地域でも、がんの正しい知識を学ぶ機会を積極的につくるべきだと考えています。そしてもう一つは、若い患者は、若い患者なりの価値観があります。おしゃれや恋愛や夢に夢中な年代であるということを踏まえた上で、例えば若い患者の苦しみを分かち合える同世代のピアサポーターの育成、若い患者自体が少ないと思いますが、インターネットを使える方が多いので、例えばテレビ電話ですとか電話などを使えば、全国の若い患者さんをサポートできると思っています。そのように、若い年代だからこそという価値観を尊重したケア、それから、これから社会に出ていく年代であることを尊重したケアとか制度の実現をぜひお願いしたいと思っております。

 まとまりがなくわかりづらい点も多々あったことをおわび申し上げます。これからも、がん制圧を目指し、微力ながら頑張ってまいりたいと思います。ありがとうございました。

○門田会長 阿南さん、どうもありがとうございました。自分は変わることができても、社会を変えていかなければいけないというお話をいただきました。

 ここまで患者委員のお二方にお願いしました。今度は、終末期医療の現場で患者さんに寄り添うということで、そのお話を内藤委員からお願いしたいと思います。

○内藤委員 内藤でございます。よろしくお願いいたします。山梨県の甲府で小さな診療所を運営している臨床医です。

 きょうは、私が30年以上前から、そして甲府では20年近く、在宅で、もう積極的治療によってがんが治らないという段階の方々が、家にいたい、できれば最後まで家にいたいという、そういう希望を支えるための取り組みをしてまいりました。なぜそれができたのか。今、こうして国を挙げて、在宅ケアも含めて血の通ったシステムにしようということで、この協議会でもいろいろとお話し合いが進めておられるということを大変うれしく思いますが、そういうシステムがほとんどなかった時代になぜできたのか、そのことが少しでも皆様の御参考になればと思いまして、この30年の取り組みを少しまとめてまいりました。

 委員の皆様には、私が患者さんや御家族から許可を得たお写真が参考資料ということで渡してあります。私が100万遍しゃべるよりも、この患者さんたちの顔、家族の顔、どうやって家で暮らしたのかということを見ていただくと、一目瞭然、システムに頼らずにでもこういうことができたということを後でまた見ていただきたいと思います。

 私は、実は初めて在宅ホスピスケアと呼ばれるようなことをしたのは、27歳ぐらいのときでした。約30年前になりますが、先ほど御紹介のあった患者さんの代表としての委員の意見と同じように、23歳の女性のがん患者さんにめぐり会いました。どこから末期と言うのか、どこから進行がんと言うのかというのは大変専門的な意見になりますが、私たちが、医局でいろいろな話し合いをして達した結論は、恐らく3カ月前後、恐らく100日ぐらいの命ではないかという余命の判断でした。

 その当時、30年前、きょういらっしゃるお医者様方はわかると思いますが、患者さん本人には、ほとんど告知というものがなされませんでした。そして、御家族、お身内にその様子を知らせるということはありましたが、今とは大変違った状況です。そのときに私は、医療者だけが、命の主人公である御本人の行く末の情報を知って、そして、私たちとその家族だけで治療方針を決めていいのだろうかという悩みに突き当たりました。そして、本人と非常に信頼関係が持てたときに、直接、その言い方は大変難しいところですが、今これから積極的治療がまた始まる。でも、御本人は、胸水がたまり、腹水がたまり、痛みと熱に苦しむという状況の中で、「もしこの状況が小康状態になったら何をしたい?」という私の質問に対して、ご本人は、迷いなく「どんな短い時間でもいいから家に帰りたい」ということを言いました。

 私はそのとき御両親に、娘さんの願いは、たった1日でもいいから、2日でもいいから家に帰りたいということです。今の状況は厳しいけれども、小康状態になったときに、私がボランティアで助けるから家に帰りますかということを提案しました。御両親は、もちろん大切な23歳の娘さんですから、末期と言われても治療をしたい、いろいろな先端の治療をしたいというお望みがあったにもかかわらず、じっくりと考えてくださって、娘の希望をかなえたいという選択を選びました。そして、御本人に、「さあ、ぐあいがよくなったから帰ろう」ということを、実現したわけです。そうして彼女は、1日、2日ではなく、100日、病院に戻ることなく東京の下町のお家に戻り暮らすことができた。それが私の30年前の初めての在宅ホスピスケアでした。

 表にまとめておりますが、なぜそれができたのかということを、そのときとても私は考えたのです。いろいろその御家族と本人からは教えていただきました。私はそのとき、こんな医療者のサポートがあればできるのだということがすごくわかったのです。それは、がんによって起こる痛みの緩和が必ずできる医療者が付き添っているということです。当時、在宅ケアのシステムというのは、皆さん御存じのように、ほとんどありませんでした。往診してくれる先生が一番いなかった時代です。病院に頼り、病院で治療を受け、今のようではなく、どんなに長くても病院で入院させてくれて、病院で亡くなるということが非常に多かった時代、そういう時代に在宅でのみとりができた。

 そして、家にいる方を安心してサポートするためには、24時間いつでも応えてくれるシステムがなければならない。24時間オンコールという厳しい体制を私たちが持たなければならない。このときは、皆さん、携帯電話のない時代なんです。だから、私は彼女専用のポケットベルを腰につけて、鳴ったら、まず公衆電話を探して走るという、今の皆さんには想像できない在宅ケアをしたのですね。

 そして、100日支える中で学んだことは、家族を含めた全人的な痛み、トータルペインに向かい合う医療者がいなければ、臓器や病気だけの視点を学んだ医療者では、家で過ごす患者さんを支えることはできないということを学びました。そしてもう一つ、私も若かった、家庭がなかった私だからできましたが、これは1人ではできないケアである。できれば、心の通う看護師さんと、心の通うヘルパーさんと、心の通う人たちとチーム体制で当たれば、もうちょっと数多くの人の選択を支えられるのではないかと思いました。

 この最初にあります、がんの痛みの緩和が必ずできる医療者というところで、実は、厚生労働省のほうでも非常に尽力していただいて、18年前から、がん疼痛緩和と医療用麻薬の適正使用推進のための講習会というものが続いております。私も、私が師と仰ぐ、元埼玉県立がんセンターの総長である武田文和先生に指導を仰ぎながら、この講習会もお手伝いしているところですが、今月の末にも有楽町でございますが、これは武田先生からいただいた最新の資料ですが、世界の医療用麻薬というのは、がんの痛みを緩和する上で一番大事な指標となる薬です。その薬が、80%が先進国8カ国で消費されているという状況の中で、日本はまだまだ1桁も2桁も少ない状況が続いています。これは、痛みの緩和がまだ十分行われていない現場で、実践の不十分さを反映していると私どもは思っています。

 棒グラフのほうは、ちょっとわかりづらいものではありますが、日本の現状、先ほど門田先生がわかりやすい表で示してくださいましたが、がんの発生数やがんの死亡数に比べて、まだまだがんの痛みどめは消費量不足ではないかとみなされています。世界でも、日本はどうしてもう少し痛みどめを使わないのかという疑問が長く持たれておりました。でも随分違います。私がこの甲府で20年在宅緩和ケアをした中で、いろいろな先生方や医療従事者がいろいろと学んできてはいますが、まだ足りません。痛いという言葉を、先ほど緒方さんがおっしゃったように、患者さんの尊厳も守り、その人らしい生き方をするためには、まず、がんによって起こる体の痛みというものを、どこに住んでいても、どの先生に診ていただいても合格点になるような状況でなければ、それは実現できません。

 それで、スコットランドというところに私は数年暮らしまして、非常勤でホスピスで研修をいたしました。当時、それはホスピスムーブメントと言われてイギリス全土に広まっていた、いわば医療と福祉と文化の大きなムーブメントでございました。この中に生活者として私が体験できたのは、本当に勉強になったのですが、御存じのように、どの国も、医療制度、社会保障制度は常に課題を抱えております。イギリスだからいいとか、日本だからいいとかということはあり得ないと思うのですが、御存じのように、イギリスでは国を挙げてのホームドクター制度がございます。それプラス緩和医療、それからホスピスというふうにたくさん患者さんたちの選択肢を広げる世界が広がっておりました。

 皆さんにはちょっと写真でお見せしているのですが、私が老婦人の肩を抱いている写真がございます。痩せてはいますが、この方を見ていただくと、数日の命の方です。この数日の命の方が、パジャマを着ているのではなくて、自分の大好きなお洋服を着て、髪の毛をセットして、そしてほほ笑んでいる。これは、この方のトータルペインを医療者や家族やかかわる人がしっかりと支えたという、その証拠写真だと思います。この方は、家で亡くなることよりホスピスで亡くなるということを選んで、そして、余命数日のときに入院してきた方です。

 その次の写真は、老人施設のデイケアではないのです。ホスピスのデイケアです。痛みの緩和を受けた人たちが、こうやってデイケアに赴いて、専門医の診断を受けたり、社会性を保つためのアクティビティーをしている。この2つの写真を見ただけで、ホスピスケアの全てがわかると私はいつも思っています。

 現在の問題点と課題ということを考えました。これは、あくまでも私の意見ではありますが、30年ホスピスというものを学び、そして20年、甲府で在宅でがん患者さんたちが命を終えるまでのサポートというお手伝いをした私の意見です。それは、疼痛緩和の知識と実践力がまだまだ医療者に不足している。今までのいろいろな計画の中で、そういうことができる専門医をふやすとか、緩和ケアセンターを充実させるとかということはもちろんございますが、これからお年寄りがふえる、がん患者がふえるという状況の中で、専門医、専門のセンターだけではなく、一般の臨床医、一般の診療所の先生、かかりつけ医として選ぶ先生たち、そういう方たちが、これだけはできるというWHO推進の安全な疼痛緩和を、本当に均質に全国で手にしていただく。そういうことでなければ、専門のところにつながるということは、全ての人にとって可能ではないと思うのです。この実践力と知識があれば、もっともっといろいろな地域の先生方が、病院から戻る患者さんを安心して引き受けてくださると思うのですね。今、よしきたと言って引き受けてくれる先生が100%ではないと思います。この実践力。

 そして、患者さん側への私からの希望なのですが、がんになった、治したい、もちろんそれは当然です。しかし、治癒への大き過ぎる期待がもし長引くと積極的治療と緩和ケアと、どっちをとるかというときに、その暮らし方の質、それからいのちの深さについて、御本人にとってつらいほうを選択する可能性が出てくるような気がいたします。

 そして、先ほどの緒方さんの御意見にもあったように、今まで私にかかわらせてくださった患者さん方は、在宅へ戻るということを本人が選択した積極的な方々でした。しかし、今後のシステムの導入やいろいろな推進に伴って、基幹病院やがん治療の専門の病院は、治療が専門だから、さあ、もうお家へ帰ってくださいと、本人にとっては、戻されてしまった、老人の家庭です、ひとり暮らしですといういろいろな状況の中で、もう強制的に戻されてしまった「見捨てられた」という敗北感とともに、がんと向き合う、そういう方々が少なからず私の周りにもふえております。

 4番目は、本当に連携をしっかりとってくださるのかというのが、地元で患者さんを引き受ける私たちと患者さんと家族の中に、大変不安材料としてございます。特に、これから認知症の患者さんでがんの患者さんがふえるわけですが、少しでも認知症状があったり、不穏症状があると、専門の病院で引き受けてくれないということが起きています。では、どこに行くのか。老人病院と言われるところへ行くのか、老人施設というところへ行くのか。では、そこで緩和ケアがしっかり実施されるのかというのは、まだまだ現状では不安材料です。ですから、大きな基幹病院、都会ではたくさんありますが、地域では基幹病院イコール、みんなが頼りにする病院なのですね。病院が多くないので。そういう病院で、もうだめです、積極的医療以外は連携はしません。肺炎ぐらいだったら別のところへ行ってくださいというような、放置されるというか、放り出されるという体験をする方がふえないようにと、大変心配しているところでございます。

 高齢者、特に増加するこれからの認知症を持ったがん患者さんたちの増加に伴う受け入れ体制と支援体制というのは、この協議会でも引き続き大きな柱として考えていただきたいと思います。

 委員の皆様の手元の写真をさっとごらんください。猫と向かい合っている50代の男性は、さっきの抑鬱とかショックとかという状況に思われがちですが、実は、お家に帰りたいという一つの希望の柱は、ずっと競馬をしたいという、有線放送で競馬をしたいということで、この方はこのとき、競馬新聞でどの馬にかけようかということを考えているところです。そして、もう一つは、この方はマージャンが大好きで、家でも友達と家族と、これは娘さんと息子さんで徹夜マージャンをしていたところです。

 その下の写真は、今まさに稲刈りのときですが、60年百姓だったこの方は、家にもどりがんの痛みにのたうち回っていました。私に紹介があり、モルヒネの持続皮下注入という方法で痛みが緩和されたとき、「今、何をしたいですか」という質問に、即答でした、「稲を見に行きたい」と。そしてそれ以後、亡くなるまで毎日、モルヒネの交換を私たちがしながら稲刈りの監督をしたという、そういうすばらしい、誇らしい、まさしくこの方の尊厳をサポートした、私たちにとっては、ここでちょっと委員の方に見ていただきたいのは、本人より、そばに寄り添う御家族、奥さんの顔が非常に誇らしいということです。患者が苦しむとき、家族も苦しみます。私たちは、家族とともに痛みに向かい合うということを学びました。

 さっと行きますが、最後まで水まきをした末期のおじいちゃん、それから6歳の孫も看護に参加するという、これは大変注意深い私たちの見回りが必要ですが、しかし、小さな子も家族の一員であるということが可能になった一場面です。

 それから、乳がんでしたが、モルヒネの座薬を使いながら、北海道の友達に最後の別れを告げ、自分が最後に着る服を選び、友達にドレスをつくってもらい私たちに見せてくれた方。

 そして、私たちは、みとりの仲間として、お葬式に出ることもございます。最近出会ったこのピンク色の服を着た患者さんは、93歳で、重症な認知症でした。病院では、慣れない場所ゆえ、認知症が悪化します。そういう方が大変多く見受けられますが、お家に帰って、なれた環境で私たちが注意深く痛みを緩和しながら、この方はぎりぎりまでヨガの練習をし、仏様のような顔と言ったらちょっと申しわけないのですが、満面の笑顔であの世に旅立ちました。

 認知症の方の症状緩和というのは、また、より高度な緩和ケアの勉強が必要だと思いますが、お家でこういう方たちをサポートするためには、熟練の看護師さんたちの手助け、そして家族の手助け、いろいろなことがございます。

 今後、この協議会の中では、がんの研究というのはどんどんもちろん推進していただきたい。しかし、もう一つ私が求めたいのは、治療成績の公開を推進していただきたいということです。病気の種類やステージでこの治療をすることが、果たして患者さんのQOLにプラスなのかと。しかし、QOLというのは、本人が選び体験するしかありません。本人が本当に本当のところを知らなければ、選ぶということはできないわけです。今回、これからの方向性ということで大変、この辺が強調される柱を立ててくださるのかと大変期待するところが出たわけですが、ぜひ、患者さんが選択するための情報の開示というものを推し進めていただきたい。

 それから、きょうは文部科学省の方もいらしておりますが、開業医の私たちはこれまでの医学部教育の中で、在宅ケア、緩和ケアの勉強をしっかりしておりません。志ある者が各地域にたまたまいれば、その方たちが自主学習をして、モルヒネの勉強も含めて、「あっ、この地域でよかったね」ということでは済まないと思うのです。どの医学部に行っても、在宅ケアと緩和ケアの勉強は、合格点に行くだけの教育システムをぜひさらに入れていただきたい。そういうことによって各地域の地域差は減っていくのではないでしょうか。

 長くなりましたが、最後に、「どの選択をしても幸せに生きる道はある」ということを支えられる医療者、支えられる地域、支えられるネットワーク、それがきょう発表してくださいました緒方さんや阿南さんの御意見に報いる道かなと思いながら私の発表を終わらせていただきます。長くなりました。ありがとうございます。

○門田会長 どうもありがとうございました。医療サイドのお話でしたけれども、いろいろと考えさせられることがありました。

 それでは、最後に、働き盛り世代の患者さんの社会参加をサポートしているというお話を湯澤委員にお願いしたいと思います。よろしくお願いします。

○湯澤委員 

湯澤でございます。よろしくお願いいたします。

 私からは、働き盛り世代の就労に関する社会的支援についてということでお話をさせていただきたいと思います。

 皆さん、がんに罹患された方々が、どういう就労状況になっているかというのを御存じでしょうか。依願退職や解雇を合わせますと、約4割強の方が、働きたくても働けない状況だという調査があります。企業の規模であるとか治療を受けながら働ける制度の充実度によって就労継続に差が出ているのも現実です。

 その中で、がんになっても安心して暮らせる社会の構築を目指す基本的な考えというものを「結果形成への参加」と考えています。結果形成への参加というものは、病状や自身の状況を理解して、希望に近づくための方法を自分が中心となって考えて行動していくことであります。就労背景の違いによる影響を少なくできる考えです。自営業であるとか、中小企業であるとか、大企業であるとか、そういったような背景の違いの影響を少なくするということです。

 また、働き盛り世代だけでなく、がん治療を受ける方をそれぞれのライフステージにおいてお支えする際の共通の視点ということで上げていますが、治療をしている御本人や御家族が、病状を理解して、今後の姿、希望する生き方をイメージできるよう社会全体で支援をするということ、それから、医療現場は、がんの治療だけでなく、1人の人生を支えていく力、希望を与える力を持っているということです。

 基本的な考えであります結果形成の参加というものを就労の場で進めるために、本人を中心とした、医療と働く場の連携促進の取り組みをご紹介いたします。がんの診断というものは、御本人、御家族、そして同僚にとっても大変重い告知になります。がんの診断を受けた御本人が、病気になる前の人生設計を振り返り、これからの生き方や自分の希望と向き合う機会と受け入れられるように、職場では、本人の気持ちに寄り添うことを心がけて、産業保健スタッフがお話をお伺いするようにしています。

 働き盛りのがんの方は、生活の中心が、仕事環境から病院になってしまうことへの喪失感が大変大きいです。失望感であるとか職場に迷惑をかけるかもしれないという思いから、退職を考える方も少なくありません。診断のときから、治療と復帰に会社も精いっぱいの支援を行うという方針を伝え、協力体制をとることは、依願退職や誤解による解雇などを抑制する効力があります。人材一人一人を大切にする社風というものも礎になります。また、御本人にも、自分で仕事と縁を切らない、縁をつなぎ続ける努力をするということが求められます。

 本人が希望する生き方のために、どんな治療と支援が受けられるのか、情報を得ることも大切です。ここには、情報提供と情報整理をサポートする人の支援が必要になります。職場で本人が主治医から聞いている治療方針や状況を担当者がともに確認し、治療への不安を整理して、次回の診察時に何を質問するかも一緒に考えています。これにより、主治医にも職場が協力体制をとっていることが伝わり、連携がとれるケースもあります。

 医療機関から進める治療と就労の両立支援として、本人が中心となり、医療機関と職場が連携したケースを御紹介いたします。

52ページをごらんください。この方は、2度の脳腫瘍摘出1年後に、病気前と同じ環境でリハビリ勤務をしていた方です。その際、人の名前が出てこない、新しいことを記憶する力の低下を感じる、言われたことも忘れてしまうなど、高次脳機能障害の症状が出ました。御本人からは、主治医から、術後一、二年で高次脳機能障害が出る可能性があるよと聞いていたけれども、時期がぴったり合っている、恐らくそうではないか。手術後は、現在のポジションで仕事をすることに大変こだわっていたが、今は仕事を失いたくない。自分が復職できる場所でのリハビリに切りかえたいという希望が伝えられました。

 職場や主治医と相談の結果、専門機関で障害の程度と保持されている機能の検査を行い、診断書が主治医から出されました。それがこちらの診断書です。これは職場復帰のための診断書であり、医療現場における就労支援の一環であると考えています。

 診断名と治療経緯は標記のとおりです。この中で、「今後の就労を考える上では」というところでコメントが書かれてあります。「作業の速さなどに関して周囲からの理解及びサポートが必要であると判断する。」、また、「本人が現在の状況を受け入れられるように配慮していく事も必要である。」。この診断書からわかることは、本人の今後の生活における希望が主治医に伝わっているということです。さらに、本人からの情報を得て、主治医が職場をイメージした上での就労支援が行われています。また、本人の性格や特性を把握して、状況に合わせた判断がなされているということです。

 これに対して職場は、厳重な情報管理を前提としますが、御本人が仕事を継続するために必要な情報が正確に職場に伝わることで対応を進めていきます。主治医や医療機関からの就労支援により、実際の業務に近い環境でトレーニーを実施し、評価後に、本人が納得の上で配置を検討することができます。職場の対応は、本人から主治医にフィードバックをしていただきます。これは、連携を継続するために大変重要なかかわりです。

 就業規則の中で、病状に配慮しながら、御本人の能力を最大限発揮できる部署への復職を進めます。この方は、後遺症また病状として症候性てんかんというものをお持ちでしたが、これは御本人と相談をして、本人の個人情報、医療情報も含めて、発作時の対応手順を記入したカードを職場に設置し、緊急時の対応を職場全員で確認するという方法(追加)をとりました。本人、医療、職場が連携をして、がんの治療と就労を支えていく一例でございます。

 前の51ページにお戻りいただきまして、そのほか、今後の就労に関する社会的支援を進める上でのポイントでございます。

 まず、平等なルールの中で、本人の「継続雇用」と企業の「人材活用」を目的に進めるということです。誰もが病気にかかる可能性がある中で、平等なルールの中での支援というものが周囲の理解と協力を得るためのベースになります。現状、企業の場合は就業規則に沿って対応しておりますが、国が主体となり、治療者の雇用対策や病気休暇制度、医療費の給付制度などの整備に関する議論も必要かと思います。

 そして、働く世代の人間が職場に戻ることで、収入を得て、納税義務を果たす。一人一人が国の財政を支える大切な担い手という視点、これを持っていただいて、社会全体で支援していくということが必要だと思います。

 また、就労者も、労働を提供する立場として、病気の予防や早期発見の健康管理を行うことが求められます。がんの教育の推進、がん検診の受診率向上は、今後の課題です。

 就労スタイルに対応した受診環境の整備、これは、夜間診療、休日診療のほか、個別の痛みや副作用に合わせた治療スケジュールの作成など、今後さらなる推進を希望いたします。

 最後に、職場復帰の実績から、お互いが支え合い、「がんになっても戻れる職場」が醸成されると思っております。働き盛り世代の職場復帰が、皆様の身近に感じられるという環境が一助となって、がんになっても安心して暮らせる社会が構築されることを望んでいます。

 発表は以上でございます。貴重なお時間、ありがとうございました。

 

○門田会長 湯澤委員、どうもありがとうございました。また別な角度からお話しいただきました。

 さて、冒頭に私がお話しさせていただきました。それで、4人の委員の方からのお話もいただきました。基本的には、本日は、大きな方向性をどうするかということを、ある程度の方向性が打ち出せればということで話をしていただきましたが、ここで皆さんの御意見をちょうだいしたいと思いますが、いかがでしょうか。濱本さん、どうぞ。

○濱本委員 

門田先生のお話の中にありました2005年のがん患者大集会、これは第1回を大阪のNHKホールでいたしたのですけれども、私は、そのときの実行委員長を務めさせていただきました。当時は、がん患者であることのカミングアウト、それ以前に、告知自体がポピュラーではなかったころでした。ですが、そのときに全国から8,000人以上の御応募がありまして、皆さんがお顔を隠すことなく、ある方は点滴の台を引っ張って大阪NHKホールまで来られました。私は、これは非常にエポックメーキングなことなのではないかといささかの自負をいたしました。

 ただ、その後、痛感したことがありり、それは、1つのムーブメントに終わってしまったのでは、ということです。やはりがん患者さんというのは、不幸にして亡くなられてしまう方が多いです。そして、新しい患者さんが続々と出てこられます。概ねの患者さんの意識は、やはり患者でないと患者の気持ちはわからない、そういったところからスタートすることが多いです。そのときに受け止める社会の意識が成熟しているかというと、当事者意識がないため相変わらず余り関心がなくている。患者さんもどこか溝をつくってしまう。そういった悪循環が、まだしばらくの黎明期をつくってしまったのではないかと、思っておりました。

 ただ、その間に手をこまねかれていていたわけではありませんで、いろいろな診療体制の整備ですとか施策が施されていきました。それへの構造的な評価がなされて、このたび質的な評価、こちらのほうに軸足をいよいよ移していこうとしています。

 こうなった場合に、患者が社会に対して協働するときに、後支えになって迎え入れするという体制をつくるという点では、今、改めてスタートラインに立てる時期に来たのではないかと、思います。ただし、それは理念ではありませんで、細かい緻密な評価を乗り越えた質的な担保、その覚悟があってのことだと思います。やっと患者と社会との意識の疎通ができたなと、後でこの時期を振り返ることができることを大いに期待しております。

 ありがとうございました。

○門田会長 ありがとうございました。

 そのほか、どなたでも御意見を。直接大きな話ということで、皆さんそれぞれ御自分のお立場あるいは経験からお話ししていただいておりますが、そのほかの御意見でも結構でございます。どなたか何かございますか。堀田委員、どうぞ。

○堀田委員 門田会長から大枠の体制的なお話も含めて御紹介いただきましたが、全くそのとおりだと思います。今、がん全体の置かれた状況というのは、これから2030年をピークに患者数は、全体として年齢調整死亡率が下がるものの、罹患率が上がるというこのギャップの中で、がん体験者はどんどんふえています。いわばがんサーバイバーの方がふえるという状況です。、それから、高齢化社会の到来とともに最終的に亡くなる人の総数はふえてくるという状況の中で、それにどう対応していくかという大きな視点も必要だろうと思うのです。

 今の医療供給体制についても、これはこの協議会で話すようなテーマではないかもしれませんけれども、ざっっくりと言いますと、現在、病院で亡くなる方は、がんのみとは限りませんけれども、大体8割の方は病院で亡くなっている。なくなる方の12%ぐらいが今のところ在宅です。国のせ策として在宅のほうに移行するという全体の動きがありますけれども、これを受ける在宅支援診療所は、先ほどの御紹介にあったように、非常に献身的にやっておられるのですけれども、まだまだこの在宅支援診療所の機能というものは十分に生かされていないという状況です。在宅支援診療所の中には、医療用麻薬を使うということに抵抗感が実際問題あるのが現実なのですね。医療用麻薬を扱っていると、強盗に入られるので麻薬は扱いたくないということを現実に聞いたこともあります。そんな流れの中で、これから先、どういうふうに終末期患者を受け入れたらいいのだろうかということも大きな問題だと思っています。

 がんに限りませんけれども、今のままの状況で推移いたしますと、今から20年後には、50万人ぐらいの終末期の患者さんが、病院はもう目いっぱい、それが在宅に移行できないとしたら、言い方がよくないですけれども、看取りの場所が見つからないという状況にもなりかねない状況です。こういった大きな視点で考えると、これから医療供給体制も含めてどのように国の形を構築したいったらいいかということについても、ここで結論を出すことではないですが、そういった視点というか意識も必要なのだろうと思います。

 ありがとうございました。

○門田会長 ありがとうございました。確かに、皆さんそこに問題点が残っているということは徐々に認識されて、今度の国民会議でも、何か、病院完結から地域完結というような表現が入っていたりして、皆さんそっちの方向に向かってはいるけれども、では、具体的にどうするかというあたりですよね。ここでディスカッションするのか、ここは基本的なことだけでいいのかちょっとまだあれですけれども、いずれにしても、ここの問題を避けては通れないと思ったりしております。

 そのほかどなたか。細川委員、どうぞ。

○細川委員 仰るように具体的なことをひとつひとつ片づけていくということが非常に大事になってくると思います。もちろん1つのことを解決するだけで全てが解決はしませんが、例えば今日のお話の中で、内藤委員がおっしゃったようなこと、1つはホームドクター、つまりかかりつけ医の問題がありました。それから、内藤委員が言っておられたケアはさどちらかというと終末期の部分なのですけれども、さきほど阿南委員がおっしゃったような、がんが治癒された方やサーバイバー、まだがんとともにおられる共存されている方々と、いろいろいらっしゃるわけですね。これらの方々の、緩和ケアをいかに考えるか。

 まず1つ目の提案なのですけれども、厚生労働省は緩和ケアに関して、「がんと診断されたときの緩和ケア」の推進というものを2期がん対策推進基本計画の中で公式に掲げておられます。今、がん患者さんの在宅医療、在宅緩和ケアというのは、終末期の部分で取り上げられることがほとんどです。しかし実際には、最初“がん”と診断されて入院されて、例えば手術をされ、または抗がん剤を使い、あるいは放射線療法をされて、結果はいろいろですがほとんどの患者さんはそれで一度退院されますね。そうすると一旦医療機関からそのときに離れてしまうのですね。つまり、“がん”患者さんが退院されて、がんを持っておられる患者さんは皆そうだと思うのですけれども、例えば風邪をひいてせきが出れば、肺転移を起こしているのではないかと心配される、膝や腰が痛ければ、骨転移を起こしているのではないかと心配される。そうしますと大きく分けて2つのタイプがありますが、ちょっと心配されると、例えば手術をされた外科の先生のところに逐次行かれるようなタイプ、もう一つは、迷惑をかけるんじゃないかとか、いやいやそうじゃない、でもやはりなどと、どこにも相談に行かれないで1人で悩まれるケースなどが出てくるのですね。こういったときに、外科の先生というのは手術でがんを治すことがメインなので、風邪でせきをして、それはもちろん診てくださることはとてもいいのですけれども、もし風邪や単なる筋肉痛などなら時間的には専門でないことを貴重な時間を使ってやることになってしまう。これは非効率です。

 そういったときに厚生労働省のほうから、できれば推奨というような形で、最初の退院のときに、必ずある程度の“がん”の知識と、“がん”患者への理解のある“掛かりつけ医”を地域連携室から紹介することを初回がん患者さんの退院時の前提であるとしてやっていただきたいのです。そうしますと、開業医、診療所の先生方の中でも、がん患者さんの在宅に手を染めたいといいますか、診たいという方もたくさんおられると思うのですけれども、どこから手をつけていいかわからないし、何を勉強していいかもわからない、それに終末期の状態の悪い患者さんをいきなり診るのは自信がないなどという方が多いと思います。でも、もし国の、厚生労働省の施策、がん対策推進基本計画としてそういう方向性や推奨が出てくれば、よし、では、自分もやってみようかという先生方が必ず出てくると思います。終末期というのは、かなりテクニカルなものや知識も必要になるのですけれども、最初退院されたときでしたら、普通の患者さんを診るのにプラスわずかながんの基本知識を身に着けていただくというところで始められるのです。そういった患者さんやその家族にかかわっている間に、やはり終末期というようになったときにも、この患者さんなら今までの経緯もあるし、最後まで診ていこうというように、がん患者さんの終末期や看取りの在宅に手を染めていただける方も出てくると思うのです。そうする経験から次も診ていこうというように徐々に広がっていくと思います。この前、“緩和ケア推進検討会”のほうの中間報告の中には盛り込んでいただいたのですけれども、ぜひ、このような最初の治療が終えたと退院時に、在宅のかかりつけ医を紹介するというシステムをつくるか、もしくは推奨していただくということを厚生労働省的に、公的にやっていただきたいというのがまず第一点です。

 次にもう一つは、先ほど内藤委員が教育の普及ということをおっしゃったのですけれども、実はご存知のように、我々日本緩和医療学会のほうで“癌診療に携わる医師に対する緩和ケア研修会”をやっているのですけれども、年々参加者が減ってくるという事実がまずあるのですね。ここで提案、もしくはお願いしたいのは、これは多分、厚生労働省の医政局のほうの担当になると思うのですけれども、研修医の方、2年間、2学年おられますね。現在やっている研修会の教育内容は、大体卒後3年ぐらいを対象としているので、研修医の2年目ぐらいの先生でも十分理解、対応できる内容です。ですから、研修の2年間、の間に、つまり2年間の研修は義務として受けているわけですから、その2年間にこの緩和ケア研修会を受けるということも義務化してもらうことができないかということです。つまり、現在、年間8,000人の医学部卒業生がいるのですけれども、それだけでも5年間で緩和ケア研修修了者が4万人確保できるということになってくるのです。今、研修受講修了者の目標が8万人程度ということを考えると、そのシステムにしていただければ、5年、10年たつと、ほとんど“がん診療携わる医師に対する緩和ケア研修”つまり緩和ケアの初期基本教育を終えることになります。何とか、このシステムを研修医2年間のデューティの中に盛り込むということをやっていただきたいです。

 この緩和ケア研修会は人数がふえたとしても、つまりは20人でやっても、40人でやっても、そのかかる経費、手間はほとんど一緒なのです。40人が400人になればなかなか大変かもしれませんけれども、少々人数がふえるということは、やるほうにとってもアクティビティーは上がって来ますし、関係者のモチベーションも保てるということになります。

 ぜひこの2点を、公的なところから発動していただくということをお願いします。会長が具体策とおっしゃられたので、ここで具体的な提案として申し上げました。何卒よろしくお願い申し上げます。○門田会長 ありがとうございました。具体的なお話をしていただいたのですが、今、具体的なところは検討会のマターになる可能性があると思うのですが、それから、全体的なこととして、医師の資格のところに緩和研修のディーティー化というのは何回も出てきますよね。医師そのものの資格だ、緩和という特別なものではないと。先ほどの内藤委員も、やはり全ての者がというところですよね。その部分が全体的な医学教育そのものも関係してくるというような大きなところもあるかもしれませんが、これまた、今ここでは、きょうはそれ以上の余り具体的な話になりませんが、きょうは項目を挙げてもらいますので、一応記録にとどめて、次にまた検討したいと思います。

 そのほか。田村委員、どうぞ。

○田村委員 ライフステージを考えたがん医療の体制の強化ということで、今までの議論の中で2つ多分抜けているところでありまして、きょう、阿南委員からAYAの世代というのがありましたけれども、彼女の話は、二十を超えて、結婚、出産、そういう話があったのですけれども、実は16歳から22歳ぐらいまでの、いわゆるアドリーサントの部分というのは極めてセンシティブな年齢で、そういう世代のがんの患者さんのケアというのはかなり難しくて、その場合に、小児科ではで対応できないし、我々は、どちらかというと高齢者を扱うことが多いので、アドリーサントの部分をどうやってケアしていくのか。今の医療体制の中では、多分これから整備されてくる小児の拠点病院がその部分を強化するような形を考える必要があるのではないかというのが一つあります。

 それからもう一つは、働く世代とオーバーラップするのですけれども、20から39歳の年齢、私も時々、乳がんの患者さんで、35歳ぐらいの患者さんが結構終末期を迎えるのですけれども、子育ての真っ最中の患者さんで、子供が2人いるのだけれども、旦那さんは金を稼ぎに外に行かないといけない。しかし、骨転移があって、体がなかなか動かせないというときに、サポーターがほとんどいないのですね。今の介護制度の中では、そこの部分が完全に欠落していて、介護保険も使えないし、その他の公的な支援が得られない年代なのですね。だから、そこの部分をどうするのかというのが一つあります。

 それからもう一つ、最後ですけれども、今までのがん対策の中で、がんによる死亡者数を減らすというのは75歳未満なのですね。でも、実際は75歳以上のがん患者さんが猛烈な勢いでふえていて、その年齢の検診率も低いし、それから死亡率も高いという、すぐには無理だとしても、そこの部分に少し焦点を当てた議論も必要ではないかと。

 この3点をこれから考えていく必要があるのではないかと思いました。

 

○門田会長 ありがとうございました。

 川本委員、どうぞ。

○川本委員 先ほど内藤委員から、心ある看護職、ヘルパー職とともにやっていくことが大切であるということをお話しいただきました。現在、日本看護協会では、超高齢化社会に向けて、在宅看護のほうにシフトし、訪問看護ステーションの強化を推進しております。一方、今回の意見調査時に具体的な課題として提出しましたが、がんケアに強い訪問看護ステーションの設置が必要であると考えております。このようなシステム構築、制度の創設時には、体制がバラバラにならないように、連携を考えた体制づくりが必要ではないかと思います。

○門田会長 ありがとうございました。いろいろなところに出てきますよね。これはこう、これはこうというので、何とかいろいろな意味で統合した発想でやっていくことが非常に重要だと思います。おっしゃるとおりですね。

 そのほかいかがでしょうか。池田委員、何か。

○池田委員 先ほどお話しされた16歳から22歳あたりの小児の拠点病院にそういった世代も診てもらうようなシステムを、仕組みをというようなお話でした。それから、その前の細川委員も、これは緩和ケアなのでしょうか、それではなくても、退院するときに、次のかかりつけ医をきちんと紹介できるようなシステム、これは小児の場合も全くそれが言えていまして、小児の場合、今、親にとって一番問題になっているのが長期フォローアップ問題で、小児科医でも診てもらえなくなってしまうし、専門医へ行くと、今まで全然関係ないから診てもらえない。それが今、非常に大きな問題となっていますので、そういったことを国のほうでシステム的に何か形をつくっていっていただけるとありがたいと思います。それは、検討会での各論ということになるのかもしれませんが、そのあたりもよろしくお願いしたいと思います。

○門田会長 ありがとうございました。

 湯澤委員、どうぞ。

○湯澤委員 私からは就労に関する意見ですけれども、先ほど高齢社会はもう予測されて、必ず訪れるというお話しが門田先生のご説明の中にもございましたが、高齢社会になりますと就労年齢というのも上がるかと思います。60歳定年から、65歳、70歳、と定年の年齢が上がり、それから年金の受給の開始年齢も上がっていくことが予測されます。ということは、人生の中で就労している時間というものが、これからより長くなってくる。就労年齢が上がるということは、就労の場でがん患者さんもふえていくということになるかと思うのですね。ですので、がんの治療と就労を両立できる支援というものを、今から整備していかなくては今後訪れる高齢社会に時間的なところで間に合わないかと思っております。

○門田会長 ありがとうございました。

 緒方委員、どうぞ。

○緒方委員 

がん患者は、介護保険を実は65歳にならなくてもある年齢から受けることができます。ただ、条件があって、末期でなくては受けられない、担当医から末期であることの証明が必要なのです。そのことがネックになっていて、介護を十分に受け入れられない、それで介護保険を全く使わないまま不自由な生活を強いられている人がいるのです。

末期だから受けられるのではなくて、必要だったらがん患者は受けられるとなるといいなと思います。

○門田会長 ありがとうございました。

 そのほか。永山委員、どうぞ。

○永山委員 

やや大雑把になってしまうのですが、本日の緒方委員、阿南委員、内藤委員、そして湯澤委員のお話を伺った印象と、私がふだん感じていることで非常に重なるところがあったので、その点を述べさせていただければと思いま。私が今、新聞社というところで仕事をしておりまして、がんの患者さんの記事ですとか、高齢者の方の介護の記事などを掲載したときに、読者の方からいろいろな反応が参ります。その中で最近目につきますのが、それぞれの方の苦労自慢なのですね。私たちが取り上げている内容、例えばがん患者さんがこんなことで苦労されているけれども、こういうことで乗り越えられていますと、その課題を乗り越えられているところをぜひ皆さんに読んでいただいて、参考にしていただきたいと思ったり、介護の問題でも、こういう地域のサービスですとか専門職の方に頼ってみたりしてはどうでしょうかということを書いても、うちはそんなものではないんだ、もっと大変なのだという苦労自慢のお手紙や御意見が多い印象を持っています。さらにきょうのお話を伺って感じましたのは、やはりがんになる、病気になるということは非常に不幸なのですが、ただ、そこで人生が終わってしまうわけではなくて、先ほどの緒方委員のお話にもありましたけれども、その後の人生というものがございますから、そこをいかにポジティブに、前向きに生きていけるかということの環境整備ということが、これから必要なのかなと感じています。

 「病気になった、だからもう不幸だ」、「介護しなければいけない、だからうちの家庭はもう家庭崩壊だ」となってしまわないような形に、皆さんが前向きに人生を生きていけるような形の施策というものを考えるとき、まだ私は具体的なものが思い浮かびませんけれども、先ほどの細川委員がおっしゃっていたように、治療の初期からの何らかの頼れる人、頼れるお医者さんなのかもしれませんし、頼れる地域の医療職の方かもしれませんし、福祉の関係、保健師の方、そういう方かもしれませんけれども、そういうところにいかにつないでいけるか、そういったシステムや制度があると、その方の病気になった後の人生というものが、悪いことばかりではない人生にできるのかなというのが、きょうのお話と、ふだん読者の方からの声を重ね合わせて感じましたので、述べさせていただきました。○門田会長 ありがとうございました。

 本日は、皆さん、そんなお話がたしか多かったですね。ちょっと時間も次に進む時間になってまいりましたので、いつものように、ここでは発言できなかったけれどもということを、また文章にして事務局のほうに届けていただいて、それをもとにまた事務局のほうでまとめてもらうということで、いつものようなやり方をしたいと思いますので、ぜひ御意見がございましたらお寄せください。よろしくお願いいたします。

 では、そういうことで、この方向性については、引き続き意見交換しながら、場合によりますと、やはり話が結構大きくなりますので、私たちの意見を交換するのと同時に、そういうことをどこかで講師を呼んで、お話を聞きながら勉強するということを考えていく必要があるかとも思いますので、それはまた事務局のほうと相談させていただきたいと思います。

 それでは、次のがん対策に関する施策の進捗についてということに参りたいと思います。これは、事務局からお願いします。

○事務局 そうしましたら、資料4に基づきまして、がん対策に関する施策の進捗についてということで御説明させていただきます。

 まず、資料4のページをめくっていただきまして、1ページ目、資料4-1をごらんいただければと思います。この中で、がん対策関連検討会等の進捗状況についてまとめさせていただいております。

 これと並行しまして、参考資料5というところで、もう少しこの関連の検討会と検討の概要について詳細な資料、まとまった報告書ですとか、それから、その概要といったものをつけさせていただいておりますので、これも御参考にしていただきながらと考えております。

 まず、進捗状況について、資料4-1で御説明させていただくのですけれども、まず、1番目ですが、がん診療提供体制についてでございます。

 こちらは、昨年12月にがん診療提供体制のあり方に関する検討会というものを設置しまして、その後、ことし4月に中間取りまとめを1回行っていただいております。その後、ことしの5月以降、ワーキンググループで検討を行っていただきまして、ことしの8月に具体的な拠点病院の指定要件、それから、空白の医療圏に設置していく地域がん診療病院といったものの指定要件について報告書をまとめていただいております。

 こちらのワーキンググループの報告書が、参考資料5の11ページからつけさせていただいております。

 それから、このワーキンググループの報告書を踏まえまして、今度は、ことしの9月に検討会の報告書というものがまとまっております。今後としましては、こちらの報告書を踏まえて、拠点病院、それから地域がん診療病院等の要件の策定、それから指定というところを進めさせていただく予定でございます。

 こちらの検討会の報告書は、参考資料5の7ページからつけておりますので、御参考までによろしくお願いいたします。

 それから、2番目でございます。がん研究についてということでございますが、こちらは、第3次対がん10か年総合戦略を今までやってまいりましたが、これに続く新しいがん研究戦略の策定ということで、ことしの4月に、今後のがん研究のあり方に関する有識者会議を設置いたしまして、議論を行っていただいて、8月に「今後のがん研究のあり方について『根治・予防・矯正~患者・社会と協働するがん研究~』」報告書を取りまとめていただいております。今後につきましては、こちらの報告書、それから政府において取りまとめられる医療分野の総合戦略の検討を踏まえながら、第3次対がん10か年総合戦略に続く新たながん研究戦略を策定して、これに基づきながら、がん研究を推進していく予定でございます。

 こちらの有識者会議の報告書につきましては、参考資料5の37ページからつけさせていただいておりますので、こちらも御参考にしていただければと思います。

 それから、3番目、緩和ケアについてでございます。こちらは、昨年4月に設置された緩和ケア推進検討会というところで緩和ケアの推進方策を検討いただきまして、昨年9月、緩和ケアセンターの整備と基本的緩和ケアに求められる方策というところを盛り込んだ中間まとめを行っていただきまして、こちらについて平成25年度予算で対応したというところでございます。

 その後は、拠点病院における人材配置、それから専門的な緩和ケアのアクセスの改善、緩和ケアにおける地域連携との観点から議論を深めていただきまして、緩和ケアセンターの具体的推進方策、拠点病院の指定要件につきましても、緩和ケア以外の部分については、先ほど申し上げたがん診療提供体制のところで検討いただいたのですけれども、緩和ケアについては、こちらの緩和ケア推進検討会のほうで御検討いただきました。それから、医療者に対する緩和ケアの教育体制、緩和ケアの普及啓発等についても議論を行っていただきまして、ことしの8月に「第二次中間とりまとめ」を報告いただいております。

 済みません、こちらは少し間違いがございましたので修正させていただきますが、緩和ケアについての1ポツ目のところで、平成24年4月に設置した「緩和ケア推進検討会」において、これまで計「10回」と書いてあるのですけれども、こちらが「12回」の誤りでございますので、済みません、訂正させていただきます。

 それから、もう一点でございますが、2ポツ目の4行目のところで、平成25年「9月」に「第二次中間とりまとめ」を報告したと書いてございますが、こちらは「8月」が正しいものになりますので、こちらも訂正をお願いいたします。

 こちらの緩和ケアについての今後というところでは、拠点病院の緩和ケア提供体制における実地調査に関するワーキンググループを設置して、拠点病院の緩和ケア提供体制について実地調査を行って、実態を把握・評価というとこで、課題の抽出を進めていっているところでございます。

 それから、2ページ目でございまして、4番目としてがん検診についての検討も御紹介させていただきます。こちらは、昨年5月にがん検診のあり方に関する検討会で、科学的根拠に基づくがん検診の推進、それから受診率向上方策のあり方といったところの検討を行っていただいております。こちらの中で、ことしの2月には、子宮頸がんの検診の方法というところで今後の方策に関する報告を取りまとめていただきまして、これに基づいて、HPV検査検証事業というところを実施しております。

 その後、ことしの8月に、さらに受診率向上施策、それから精度管理というところも検討いただきまして、さらにこれに関する中間報告書もまとめていただいております。今後は、他のがん検診の検診方法等を御検討いただく予定とさせていただいております。

 それから、こちらに載せさせていただいております、検討会等の動きがこの3カ月なかったので載せさせていただいておりませんが、小児がんにつきましても、ことしの2月に小児がん拠点病院を指定させていただいた後、また計画書等を提出させていただいておりますので、その計画書の確認ですとか、それからまた、進捗の検証といったところを進めさせていただければと考えております。

 資料4-1に関しては以上でございます。

 それから、続きまして少し御紹介させていただいくのですけれども、資料の中にはないのですが、机上配付資料ということで置かせていただいております「がん登録等の推進に関する法律(案)の概要」といった少し厚目の資料があるかと思うのですけれども、こちらの机上配付資料ですが、これは、国会がん患者と家族の会という超党派の議連で現在、こちらのがん登録の推進の法律案が検討されているということで、6月の協議会でも御紹介させていただいたところなのですけれども、今回、具体的な条文案とかがまとまっておりまして、こちらの議連のウエブサイトにもアップされて、9月30日までということで意見募集も行われておりますので、御紹介させていただきました。

 それから、もう一点ですけれども、こちらも机上に置いていただいているのですけれども、「がんになったら手にとるガイド」ということで、国立がん研究センターのがん対策情報センターでつくっている、がんになったときに役に立つ情報というところを集めていただいたガイドになるのですけれども、こちらを、最近リバイスがなされたということで置かせていただいておりますので、こちらも御紹介させていただきます。

 もし堀田委員から何か補足等ございましたらお願いいたします。

○堀田委員 一言だけ追加します。これは、がん情報サービスのウエブサイトからダウンロードできますので、買わなくても見られますが、コピーすると買うぐらいの値段になりますので、お求めいただければ幸いです。できるだけ広く使っていただきたいと思います。

○事務局 済みません、恐縮ですが、少しだけ続けさせていただきます。

 それから、また資料4に戻らせていただきまして、資料4-2をごらんいただければと思います。3ページからになりますが、こちらで「平成26年度がん対策予算概算要求の概要」というものを載せさせていただいております。こちら概算要求額ということで、平成26年度255億円を要求させていただいております。少しその項目別のリストということで、1番から7番まで載せさせていただいておりますので、またごらんいただければと思います。

 これに関するもう少し詳細な説明というところで、参考資料6で、項目別にまた情報を載せさせていただいておりまして、補助先、補助率等も載っておりますので、こちらも御参考にしていただければと思います。

 事務局からは以上でございます。

○門田会長 ありがとうございました。

 ただいまの事務局からの御報告、どなたか何か御質問ございますか。濱本委員、どうぞ。

○濱本委員 質問ではありませんけれども、感銘を受けたことがありますので、ここでお話しさせてください。

 今後のがん研究のあり方について、これは参考資料のほうに詳しくありますけれども、あり方に関する有識者会議の報告書を添えていただいております。前回御提出いただいた暫定版に加えられて、今回、「患者・社会と協働するがん研究」という新しいキャッチフレーズがありますが、

ここだけではなく本文の中にも、患者のニーズですとか視点、患者との協働という言葉が散りばめられております。目の前の患者に向き合うという姿勢がとてもよく、強く打ち出されていると思いまして、うれしく思いました。がんの研究というのは、イコール未来の患者への恩恵というイメージがありましたけれども、これによって、それが今闘病中の患者にも間近にあるというような印象を持ちました。

 中でも、この目標とするがん医療と社会の姿(今後のあるべき方向性)の3ページ、この冒頭の文章、「今、がんと闘い、ともに生きる患者とその家族にとっての共通の思いは、第一にがんの根治である。」と上げていただいております。まさにそのとおり、この結 句は患者の 究極の望みだと思います。ただ、ここまで明言された文言には私は久しくお目にかかっておりませんでした。何としてもがんを根治させたいという、患者から、大きい声でそれが叫びにくくなっている風潮が今あるような気がいたしております。そういうことで、今現在がんと闘っている患者や、もう治療法がないと見捨てられたような気持ちでいる、そういう思いを持つ患者には、自分のその希望が、未来が手の届くところに来たような、光になる。。ですから、進行がんですとか難治がんを初めとする患者へのがんの根治を目指す施策を、ぜひ最優先課題の一つとしてお取り組みいただきたく願うものであります。

 ありがとうございます。

○門田会長 ありがとうございました。

 西山委員、どうぞ。

○西山委員 

がん診療提供体制のあり方委員会にも、私、所属しておりまして、私が質問するのはおかしいのかもしれませんが、本日のさまざまな御意見の中でも一致している重要なポイントは、在宅ケアだと思います。がん診療提供体制のあり方では、緩和ケアについては別の会議で論じるという形で進み、そちらの議論のなかで緩和ケア医療センターというものが出てきているのですけれども、全体のネットワークとして見たときに、がん診療連携拠点病院、がん診療病院、それから、そうした緩和医療センターの機能に、在宅や在宅のケアに関するソーシャルネットワーク的な議論が欠如しているように思われるのですが、この辺についてはいかがなのでしょうか。

 と申しますのが、最初の前の段階で私は意見を述べようと思ったのですけれども、おのおのの会議でおのおのの課題に関しては検討がすごく進んでいて、教育何々と分かれてそのあり方が提示されているのですけれども、患者さんのいろいろな段階でのがん対策という点から見ると、そのつなぎ目がすごく弱い。対策が、分離しているというようなことがあって、そうしたことは、今度この対策協議会ではとても重要なポイントになるのではないかと思われるのです。各検討会の報告の中では、在宅の、例えば内藤委員のような個人でやられている在宅ケアと、いろいろな病院との連携とかに関する部分の検討が欠如しているように思われるのですが、この辺の記述はいかがでしょうか。

 

○門田会長 よろしいですか。前も同じことをお話ししましたが、このがん診療提供体制のこの検討会で、最初は、拠点病院のあり方という名前で入りかけたのですね。そういうことで、いやいや拠点病院ということで区切るのではなくて、がん診療提供全てを入れられる範囲内ということで、こういう拠点病院という単語を外してもらっているのですね。ですから、それは、先生が今、委員だとすれば、ぜひそのディスカッションをしてほしいのです。

○西山委員 最初から検討会が分かれていたのでですね。13ページに書いてありますけれども、「緩和ケアに対する要件は『緩和ケア推進検討会』において検討することとする。」となっていて、完全に分離されていたので、そこのところの突合、まさしく突合がどうなっているかということについてお聞きしたわけです。

○事務局 そうしましたら、事務局から少しお答えさせていただきます。

 まず、緩和ケアとがん診療提供体制のほうで検討したことの突合というところにつきましては、事務的にも進めさせていただいて、なるべくギャップが出ないような形できっちり通知として出させていただきたいと考えております。

 それから、今、西山委員から御指摘があった点なのですけれども、参考資料5の11ページから、がん診療提供体制のワーキンググループの報告書がございます。こちらの15ページ、ページの下の真ん中の下の数字の15ページのところで病病連携・病診連携の協力体制というところがあるのですけれども、この中で5.病病連携・病診連携の協力体制の1ポツ目のところで、「当該圏域内のがん診療に関する情報を集約し、地域診療等を行う医療機関等に対し、情報提供を行うことを求めるべきと考えられた。」というところで、在宅ですとか、そういう明示的な形ではないのですけれども、1つ書き込みがなされているということで御紹介させていただきました。

○門田会長 ありがとうございました。

 それぞれの場所でやっていて、形式的なことを言っても仕方がないのではないかと思うのですね。ぜひ、よろしくお願いいたします。

 時間もなくなりましたので、その次の文部科学省のほうで、がん教育のことについての御報告をお願いできますか。

○大路学校健康教育課長 それでは、失礼いたします。文部科学省学校健康教育課長の大路と申します。本日は、貴重な時間をいただきましてありがとうございます。

 がん教育につきまして、最近の動きを簡単に御報告させていただきたいと存じます。資料4-3のところでございますけれども、どれぐらい時間がいただけるかわからなかったもので大量の資料をつけておりますが、ごくごく簡単にお話しさせていただきたいと思います。

 2点でございまして、実は、本年度の事業の中で、日本学校保健会への補助事業の中で、がん教育のあり方についての検討委員会を新たに立ち上げたという御報告が一つでございます。それからもう一つは、来年度の平成26年度の概算要求の中で、文部科学省直轄の事業として、新たに検討委員会を立ち上げるということと、それから、モデル事業を学校で実施していただくということを新たに要求したい、そういう内容でございます。

 資料4-3からずらずらっと続いておりますのは、1点目に申し上げました日本学校保健会の検討会議の第1回目の会議で配付させていただいた資料をそのまま配付させていただいておりますけれども、ごらんいただきますように、7月26日に第1回の会議を開催し、それから、9月5日に第2回ということで、年間5回ぐらいの会議の開催ということを想定してございます。設置の要綱、それから委員の名簿につきましては、12ページ、13ページをごらんいただければと思います。

 資料として、15ページ以降に今の学習指導要領の概要を添付しております。これも後でごらんいただきたいと思いますけれども、がんの教育をやっているかやっていないかと言われると、やっておるわけでございまして、それは、いわゆる生活習慣病を取り上げるテーマの中の一つとしてがんを取り上げているということで、例えば15ページの小学校の指導要領を見ていただきますと、一番下のほうの行、下から3行目のところに肺がんという言葉が入ってきておるわけでございます。これは、指導要領というよりも、指導要領の解説というもう一段下の段階のものでございますけれども、中学校、高等学校も同じようにちょっと御参考で添付させていただいております。

 それから、20ページ以降に教科書でどのように取り上げられているかということをつけさせていただいております。これも、例えば20ページをごらんいただきますと、右上のほうに主な生活習慣病といろいろある中の一つとしてがんがあるといったような示し方が教科書の中にされていると。中学校、高等学校に行きますと、それぞれの段階で若干詳しくなってきているという現状がございますけれども、何が言いたいかと言いますと、がんの教育をやっているかやっていないかというと、やっている形にはなっておるのでございますけれども、これで果たして十分かどうかという問題意識を持っているということでございます。

 今の指導要領を前提としつつ、がんということを1つテーマ的に教育の中で取り上げていくということが、やはり必要ではないかという問題意識を持っているところでございまして、がんというテーマのもとに、例えば病気そのものの理解、それから予防について、治療について、さらには、経験者の話を通じた命の大切さといったようなことを、道徳的な側面も含めて教育するようながん教育の取り組みが必要なのではないか、そういう問題意識を持っているということが一つでございます。

 もう一つは、指導の体制の問題でございますけれども、保健の授業を中心に行われておりますので、保健の先生を中心に保健の指導というのは行うというのが基本的な考え方になっておるわけでございますけれども、これはがんに限った話ではございませんで、健康医療の課題というのは非常に複雑になってきているものを、保健の先生だけで対応するのが、子供たちに教えるのはなかなか難しい側面もあるだろうと思っておりまして、そういう保健の先生と、それから外部の医療の専門家の先生方ないしその経験者の方々、そうした方々とタイアップをして学校で指導するということを1つやはり展開していく必要があるのではないかという問題意識を持っているところでございます。そういうことを来年度のモデル事業の中で実践して、まずはモデル校の中で実践する、それは、いずれ全国展開を図っていくといったようなことで取り組みを進めていきたいと考えているところでございます。

 そういうことで、今年度は、いろいろな委員会の中で課題の整理をしつつ、どういうモデル事業が考えられるのかというあたりを中心に議論していただきまして、来年度以降、本格的に学校を指定して、モデル事業を実践していただいて、その中から出てくる課題を、文部科学省直轄の検討会議の中で抽出して、今後さらに改善を図っていくといったような取り組みに来年度から新たに着手したいと考えているところでございます。

 予算の資料も、ちょっと別紙になってしまって申しわけございませんけれども、新規要求として2,500万円、大変ささやかな金額でございますけれども、要求させていただいているところでございますので、これはぜひ頑張ってとって、実施を進めてまいりたいと考えているところでございます。ぜひ、いろいろ先生方にも御指導いただければありがたいと思っているところでございます。

 簡単でございますが、以上でございます。

○門田会長 ありがとうございました。ここの協議会のほうから、がん教育というのを1つの個別目標として上げて、そして、文部科学省のほうでも非常に積極的に、今お話を聞きますと、この直下の検討会が新たにスタートするのですね。そういう取り組みをしていただくということを聞いて大変うれしく思いますが、どなたか、この教育について、文部科学省に御質問あるいは御意見が何かございますか。池田委員、どうぞ。

○池田委員 子供のころからがんの教育をするというのは非常にいいことだと思いますので、ぜひ進めていただきたいと思うのですが、これを拝見して、ちょっと1つ気になるところがございまして、がんは生活習慣病ということはいいのですけれども、今、子供自身の、小児がんの子供もいるわけですね。小児がんの子供というのは、今、小児がんも治る時代になって、復学するケースが非常に多くなっています。そして、復学した子供がこれを見たときに、自分は生活習慣病ではないよと。だから、小児がんというのは原因不明でなる病気ですので、その辺の、小児がんについては、これは、原因は不明だというようなところをどこかに表記するとかするような、そういった配慮もぜひ今後検討していただければと思います。

○門田会長 ありがとうございました。

 緒方委員、どうぞ。

○緒方委員 今の意見につけ加えてですけれども、子供さんの中には、親御さんとか兄弟とかをがんで亡くしていて授業に参加するというケースもあるかと思うのですが、そうすると、やはり何か落ち度があって自分の親は死んでしまったのかという思いにもなるかもしれませんので、やはり原因不明のものもあるのだということも明記していただきたいと思います。

○門田会長 ありがとうございました。

 ほかはよろしいですか。阿南委員、どうぞ。

○阿南委員 済みません、1点お願いします。

 そのモデル事業をこれから実施されていくということなのですけれども、いろいろな学校で、単発でやるということも一つかもしれないですけれども、1つの学校で定期的に実施をしていくという、その両方を比べていただいて、検討していっていただきたいと思います。よろしくお願いします。

○門田会長 ありがとうございました。

 工藤委員、どうぞ。

○工藤委員 文部科学省のほうでもがん教育に取り組みが始まるということは、非常にうれしいことで、また、教育要領にそういう生活習慣病ということで載るのは、それなりに理解できます。ただ、今、池田委員とか緒方委員が話されたように、生活習慣病でがんになったということが、子供自身とか親御さん、そういった世代に誤解を生むようなことであれば、それはちょっと問題かと思います。

 それと同時に、今、既に「いのちの授業」ということで、がん患者、体験者が話をして、お医者さんの話とがん患者、体験者の話で「いのちの授業」というものをやっています。そちらのほうは、そういった生活習慣病が原因ということよりも、がんになっても、こんなに頑張っているのだよということに重きを置いて、命の大切さとか、病気になっても頑張っている、患者さんとしてはそういうほうに向けてのお話をしている方が多いかと思います。ですので、先ほどいろいろなところの連携が言われましたけれども、文部科学省と厚生労働省との「いのちの授業」という部分でも連携をしていっていただければいいかと思います。

○門田会長 ありがとうございました。

 今後も文部科学省のほうのこの進捗状況は、こちらに報告はずっとしていただけるのですか。

○大路学校健康教育課長 当然、私ども求めに応じてと言うとちょっと余り主体性がないですけれども、厚生労働省の事務局のほうと相談させていただいて、適宜、報告させていただくことは十分考えたいと思います。

○門田会長 ぜひよろしくお願いしたいと思います。こっちから発信したことでございますので、皆さん興味を持って見ていると思いますので、よろしくお願いします。

 そのほかいかがですか。濱本委員、どうぞ。

○濱本委員 がん研究、がん教育のこともそうですけれども、今回、3省共同の予算的にも一大プロジェクトですね。ですので、今回厚生労働省の概算要求の大枠が示されましたけれども、この全容や予算の配分なども、また進捗に応じて見せていただきたいですし、都道府県の施策や予算にもそちらをもとにしたなぞらえができるかとも思いますので、どうぞよろしくお願いいたします。

○門田会長 そのほかはよろしゅうございますか。西山委員、どうぞ。

○西山委員 1つだけ確認をさせていただきたいのですが、この学校でのがん教育は、教員、すなわち保健体育の教員による保健体育の中での授業を大前提とされているのでしょうか。

○大路学校健康教育課長 これは、学校によっていろいろなやり方があると思っておりまして、むしろ、今回の新たな取り組みは、学校の外から専門の方なり経験者の方に入っていただいて教育をするといったところに重きを置いた取り組みになるかと思っているところでございます。ただ、それをそのままやってくださいという形で、言葉は悪いのですけれども、丸投げをするということではなくて、いわゆる学校の中で、これは保健の先生になるのか、あるいは別の先生になるのかというところは別にして、子供たちの成長の、発達の段階に応じて、やはりその辺のコーディネートをうまくやった上で指導をやっていただくことが必要だろうと思いますので、そういったことをちょっとモデル事業を通じてやり方、方法も含めて検討していきたいと思っているところでございます。保健の授業には限らず、特別活動でありましたりとか、いろいろな場所で行うということを想定しているということを、今の時点では申し上げておきたいと思います。

○門田会長 それでは、道永委員、どうぞ。

○道永委員 よろしいでしょうか。このモデル事業の実施のところで、専門医等の講師派遣というのはいいのですが、小中高には学校医がいますので、必ずそちらとのネットワークというものを入れていただきたいと思います。日本医師会で学校保健委員会というものがありまして、今、健康教育の中でがん教育を入れようということを推し進めていますので、ちょっとここに入れていただけないと困ります。

○門田会長 ありがとうございました。

 では、石井委員、それから緒方委員。

○石井委員 学校教育は非常に大事だと思いますけれども、やはり社会全体ががんに対する知識をもうちょっと深めないといけないという意味では、社会に出ていく人たちですね、だから、高校生、それから大学生、その辺を含めたがん教育をもうちょっと充実させないと、例えばこの高校生の教材なんかを見ても、これは内容的に非常にプアな状況になっていますので、もう少しその辺の充実を図っていければと思いますし、大学のいわゆる一般教養におけるがんの教育というのは、どういうふうになっているのでしょうか。これはちょっと管轄外かもしれませんけれども。

○大路学校健康教育課長 御指摘のとおりでございまして、やはり先ほどいただいた意見も含めて、今まで先生方から御指摘があった点を十分反映させていただいて、指導の内容の充実を図っていきたいと思っているところでございますが、今の時点で、どういう方向性でこのモデル事業をやっていくかということは余り固まっておりませんので、これから、今いただいたような意見を反映させるような形で充実させていきたいと思っているところでございます。

 そういうことを申し上げた上で、大学につきましては、まことに申しわけございません、高等教育局のほうの担当になるということでございますので、私からお答えできる部分は非常に限られているかと思っているところでございます。申しわけございません。

○門田会長 ありがとうございました。

 では、最後に緒方委員。

○緒方委員 実は、私は神奈川県のがん教育の委員会に入っておりまして、1回だけ参加させていただきました。そのとき、教育界のほうからももちろん委員が参加されていたのですが、学校の現場で、教科書に取り上げて授業に取り組むことに関しては、比較的受け入れられやすいようですけれど、学校行事としてがん教育のために時間をとるということは、今はその他の行事で目いっぱいで、たいへんらしいのです。がんの学校教育プロジェクトの内容を私はスライドを見せてもらって感動しました。本当に充実したもので、このような教育ができたら、すばらしいと思いました。でも、教育現場の方は時間的な余裕がないということもあって、必要性は理解できても、どこの学校でもすんなりと受け入れられるものではないような印象を受けました。その辺の理解や歩み寄りも必要で、上手に取り組んでいただきたいと思います。

○門田会長 いろいろ注文が出ておりますが、今から検討に入ると、今、2回目が始まったところですから、今の御意見をそちらのほうに反映できるべく御検討をお願いしたいと思います。その後の進捗状況もまた聞かせていただいて。ここでは、この教育の問題に皆さん興味を持っておられますので、ぜひよろしくお願いいたします。

 そういうことで、本日の予定しました議題はこれまでですが、もう既に15分オーバーしてしまいましたけれども、特に問題なければこれでお開きとしたいと思いますが、最後に事務局のほうから何か御案内がございますか。

○林がん対策推進官 まことにありがとうございました。次回の日程については、調整させていただいているところでございますけれども、正式に決まった時点でまた御連絡させていただきます。

○門田会長 それでは、本日はこれで終わりたいと思います。途中で申しましたけれども、御意見等、申し足りなかったことがありましたら、事務局のほうまで届けていただきたいと思います。

 では、これで終わります。どうもありがとうございました。


(了)

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