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2013年11月7日 第4回改正障害者雇用促進法に基づく差別禁止・合理的配慮の提供の指針の在り方に関する研究会 議事録

職業安定局高齢・障害者雇用対策部障害者雇用対策課

○日時

平成25年11月7日(木)
13時00分~15時00分


○場所

厚生労働省共用第8会議室


○出席者

【委員】山川座長、阿部(一)委員、阿部(正)委員、市川委員、伊藤委員、小出委員、塩野委員、武石委員、田中委員、富永委員、本郷委員、堤氏

【事務局】内田高齢・障害者雇用対策部長、藤枝障害者雇用対策課長、松永調査官、田窪主任障害者雇用専門官、境障害者雇用対策課長補佐、寺岡障害者雇用専門官

○議題

1. 経済団体等からのヒアリング
 ・ 一般社団法人 日本経済団体連合会労働政策本部長 高橋 弘行氏
 ・ 全国中小企業団体中央会労働政策部長 小林 信氏
 ・ 日本商工会議所産業政策第二部副部長 高山 祐志郎氏
 ・ 日本労働組合総連合会総合労働局雇用法制対策局長 伊藤 彰久氏

2.その他

○議事

○山川座長

 定刻となりましたので、第 4 回「改正障害者雇用促進法に基づく差別禁止・合理的配慮の提供の指針の在り方に関する研究会」を開催いたします。

 本日、御欠席の委員は北野委員、栗原委員です。北野委員の代理として、堤委員に御出席いただいています。市川委員はまもなく到着されるものと思います。

 また、前回以降、委員の交代がありました。事務局から新たに委員に就任された方の御紹介をお願いいたします。

○障害者雇用対策課長補佐

 お手元の参考資料 1 の参集者名簿を御覧ください。新しく委員に御就任された方について、下線を引いております。そちらを御参照いただければと思います。杉山豊治委員が辞任されまして、後任として、日本労働組合総連合会総合労働局雇用法制対策局長の伊藤彰久様に、新たに就任いただいたところです。

○伊藤委員

 どうぞよろしくお願いします。

○山川座長

 それでは、本日も関係者の方々からのヒアリングが予定されています。 4 団体の発表者の方にお越しいただいています。本日は大変お疲れさまです。毎回お願いしていることですが、皆様、発言されるときは手を挙げて、お名前を言っていただいたうえ、発言をお願いしたいと思います。

 早速、本日の議事に入ります。本日は差別禁止や合理的配慮の在り方について、経済団体と労働組合からのヒアリングと質疑を行いたいと思います。これまでと同様に、まず、それぞれの団体から御発表をいただき、そのあとで全体として質疑を行うという流れにいたしたいと思います。各団体の皆様方、御提出いただいた資料のうち、特に強調されたい部分につき発表をいただきますようお願いいたします。また、発表後の質疑、意見交換の時間を確保いたしたいと思いますので、発表時間につきましては各団体 10 分、最大でも 15 分ということでお願いをいたします。場合によっては、私のほうから時間について御注意を喚起させていただくこともあるかもしれませんので、よろしくお願いいたします。

 それではヒアリングに入らせていただきます。議事次第のとおり、まずは一般社団法人日本経済団体連合会労働政策本部長の高橋弘行様よりお願いいたします。

○高橋弘行氏 ( 日本経済団体連合会 )

 本日は私どもの意見を申し上げる機会を頂きまして、誠にありがとうございます。配布資料の 1-1 に沿って御説明を申し上げたいと思います。

 初めに、差別禁止の指針の構成につきましては、前回の会合で、日本てんかん協会さんが御指摘されましたように、差別を禁止する事項を取りまとめるのではなく、どのようにすれば差別にならないような取組が可能になるのか、そのためには主な内容・項目についての具体的な対応策や事例を示したほうがよいと考えております。また、指針におきましては、いろいろと差別の具体例を幾つも並べるのではなく、障害者の特性を踏まえた典型例についてのみ整理し、積極的差別是正措置など合理的な理由がある場合には、異なる取扱いをしても法違反とならない事例についても併せて例示する必要があります。

 禁止される差別の具体例につきましては、例えば、障害者団体から、募集段階で障害の有無を聞くことはやめてほしいとの意見が示されています。しかしながら、事業主が採用選考において、合理的配慮の提供を行うとともに、障害者が採用後、活躍できる就業環境を提供するためには、障害者に限定した求人に際し、募集・採用の段階で、障害の有無や特性について積極的に情報を得ていくことが労務管理上、必要不可欠でありまして、禁止される差別に当たらないと考えております。この点につきましては是非、御理解いただきたいと思います。また、採用選考の結果、当該障害者を採用しなかったからといって、ただちに差別的取扱いをしたことにはならない旨を明示する必要があります。

 その他としまして、次のような視点も必要であるといえます。差別的取扱いの禁止及び合理的配慮の提供につきまして、障害者手帳を保持せず、また障害をお持ちかどうか外観からはよく分からない方も対象となりますので、ハローワークや医療機関などの外部機関の支援を得ることなどが不可欠であります。事業主の予見可能性を担保するための、具体的な対応策を例示すべきであると考えております。

 次に、「合理的配慮」の指針について述べたいと思います。初めに合理的配慮の指針の中に明記するという趣旨ではありませんけれども、企業側の声として、委員の皆様方にお届けしたい点があります。それは、企業の取組により障害者雇用が着実に進展する中で、合理的な配慮の内容の規定次第で、事業主が大きな負担を負うという形になってしまいますと、かえって障害者の就業機会が縮小しまして、場合によっては、職場定着が阻害されることを大変危惧しているということです。そのため、指針では企業の経営状況とか、職場環境、障害特性、従事する職務などによって、対応が異なる合理的配慮の内容につきましては、個別性が強く千差万別ですので、一律の基準を設けることは大変難しく、あくまで障害者と事業主の相互理解の中で、柔軟な対応が可能となる仕組みが不可欠であるということです。このことは、審議会の意見書取りまとめに当たりましても確認されている事実です。

 こうした考え方の下、まず、法律の枠組みを前提としまして、合理的な配慮というものは、障害のある労働者の方の具体的な請求権ではなく、事業主の提供義務として位置付けられているということを、指針においても改めて明示する必要があると考えております。

 次に、合理的配慮は障害者から具体的な申入れがあり、相談を行った上で提供するものですので、合理的配慮の内容を決めていくに当たりましては、まず第 1 段階として、合理性の判断が求められると考えております。合理性の判断要素としては、例えば目的の正当性、職務遂行上の必要性、技術的な困難度・対応の容易さ、優先度合いといった実現可能性に関わるもの。更には社内の秩序・規律への影響度合いなどが考えられます。その上で第 2 段階として、過重な負担となる場合、事業主は提供義務を負わないことを指針に明示する必要があります。

 加えて、要求の内容に対して、仮に現段階では 100 %の提供ではなくても、その時点で対応可能な範囲での提供を行えばよいという仕組みも認めていくべきです。例えば、現在は自社のビルが古い社屋で、なかなか対応ができないけれども、数年後に移転する新しい社屋では対応が可能といったような場合。言い替えれば、単年度では実現できないが複数年度かけて実現を図っていくといった、時間軸を認めていくといった考え方が求められると思います。併せて、代替措置の選択については、同一の効果に限定して捉えるのではなくて、当事者の話合いの中で決定すべきであります。

 更に個々の障害者による申告がなく、善管注意義務をはらっていても事業主が当該障害の有無を知り得なかった場合には、仮に合理的な配慮が提供されなくても、法違反が問われないということを明記すべきと考えております。もちろん、全ての事業主を対象にして合理的配慮の提供を促すためには、障害者雇用納付金制度など事業主に対する経済的負担の軽減策が求められますので、この点についても一層充実させていく必要があろうかと思います。

 続いて、合理的配慮の内容についてです。当該障害者と事業主との相談の上で、個々に決定されるべきものではありますけれども、指針の中で合理的な配慮の具体的な事例を数多く並べるという形になると、企業側はそれらを必ず実現すべき義務内容であると誤解するおそれがあり、企業現場に大きな混乱が生じることを危惧しています。したがって、指針においては具体的な事例を多く列挙するのではなくて、むしろ、合理的な配慮の内容を障害者と事業主の間で決定するための手続を明記することにとどめて、合理的配慮の内容の妥当性をその手続を踏むことによって担保をしていく方が有効ではないかと考えております。例えば、障害者からの配慮事項についての申入れがあり、次に障害者と事業主間の相談・協議があり、そして事業主による対応方針の策定及び実行といった相談のプロセスを経て決まった内容は、合理的配慮というのではないかと考えております。

 仮に、合理的な配慮の具体的な事例を明記するとしても、厚生労働省の表彰事業で紹介されているようなベストプラクティスといったようなものを取り上げるのではなく、現在、中小事業主を含めて、実際に企業現場において障害者雇用に当たって数多く取り組まれている施策自体が、合理的配慮であるということを周知する必要があると考えております。

 次は、合理的配慮の具体例についてです。これまでのヒアリングにおいて、複数の障害者団体から通勤時の移動支援を求める声がありました。しかしながら、労働法上、通勤は労働時間外であり、通勤時の移動支援についてまで合理的配慮に含めることは適当ではないと考えております。これらは福祉施策の中で解決するべきものです。また、就業時間中の通院に関わる時間についても、賃金補償を求める意見がありましたが、「 NO work,NO pay 」の原則の下、障害をおもちでない方と同様に、例えば無給の扱いをしたとしても、合理的配慮の不提供には当たらないと考えております。更に障害者であることを理由に、追加の特別休暇を付与したり、私傷病休職期間を延長したりしなくても就業規則上の規定にのっとって対応するのであれば、合理的配慮の不提供には当たらないと考えております。

 次に、過重な負担の判断要素については、ここにありますとおり、企業規模、企業の財政状況、業種、事業所や施設等の地域性・立地状況、障害者の雇用実績、合理的配慮の取組状況、合理的配慮に対する経済的な公的支援の有無や内容、健康配慮義務を含む労務管理上の必要性、職務遂行への影響、企業の経営方針などを総合的に勘案しながら事業主が個別に判断すべきであると考えております。

 加えまして、過重な負担を判断する場合には、合理的配慮の提供のために要する事業主の負担と、合理的配慮に伴って期待される成果とを比較衡量して判断することも必要な場合もあり得ると考えております。

 また採用後、時間の経過とともに障害が重度化して、当該職務の遂行に重大な影響を及ぼすこともありますので、過重な負担に当たりましては、障害が進行性の場合など、採用後の状況変化についても勘案する必要があります。

4 ページを御覧ください。相談体制の整備等について、相談体制の整備の具体的方法、プライバシーの保護、合理的配慮に関して相談したこと等を理由とする不利益取扱いの禁止の周知について、記載することでよいと考えております。その際、禁止される不利益取扱いの具体的な内容については、企業現場が混乱することのないよう、特に明確に規定することが求められます。

 最後に、その他として。特例子会社だからといって、合理的配慮の提供について何でもかなえるべきであるというものではありません。特例子会社と申しましても、特定の障害者に特化したものから、多様な障害者を受け入れているものまで様々であることは皆様御存じのとおりです。したがって、特例子会社を一くくりにすることなく、指針の中でその実情を踏まえて整理していく必要があると考えております。また、現在、障害者を雇用していなくても、過去に雇い入れていたり、あるいは今後積極的に雇入れを行う予定がある場合には、障害者に配慮した施設や設備の整備等が既に行われていることもあります。個別の障害者への対応ということではなくて、今後の対応を踏まえて行う事前的改善措置についても、合理的配慮との関係を整理する必要があると考えております。私からの説明は以上です。

○山川座長

 ありがとうございました。続きまして、全国中小企業団体中央会労働政策部長の小林信様より御発表をお願いいたします。

○小林信氏 ( 全国中小企業団体中央会 )

全国中小企業団体中央会の小林でございます。この度はヒアリングの機会を与えていただきまして、誠にありがとうございます。厚く御礼申し上げます。

 資料 1-2 に基づいて説明させていただきます。まず、「差別禁止」について述べさせていただきます。「指針の構成について」は、第 1 回研究会で提出されました資料 5( 別紙 ) で示された、「差別禁止指針の構成 ( ) 」、の第 3 で示された項目に沿って、具体的な事例をもって指針を作成されることをお願いしたいと思います。

 第 2 「禁止される差別の具体例について」。指針作成に当たって、応募・採用時の際、その後の障害者を雇用する上で差別に該当する禁止事項について、できるだけ分かりやすく例示されることをお願いしたいと思います。それに当たって「応募・採用」について、応募に当たっては雇用条件・採用基準に合った全ての人が応募できる環境を提供すること。採用選考に当たっては、ここに書いてあります、マル1応募者の基本的な人権を尊重すること、マル2応募者の適正・能力のみを基準として行うこと、この 2 点が我が国における公正な採用選考を行う基本と考えております。これは障害者においても同じだと考えます。

 次に、障害者に限定して行われる障害者雇用に当たっては、特に障害者からの障害の特性の開示の下、どのような支援、配慮を必要としているかといった率直な意思疎通が図られないと雇用に結びつきません。そのため、面接時に応募者に対して障害の状況、能力等を詳細に把握するためのいろいろなヒアリング、試験等を行うこと、これを差別として取り扱わないように御配慮をお願いしたいと思います。必要によっては、重度障害者など、企業が障害の特性による生活面での支援が求められる障害者の方もおられます。これらは障害者のプライバシーに関することを把握するケース、生活面での特にプライバシーというのを把握するケースが必要かと思いますけれども、これを差別として取り扱われては、企業としては対応できないという側面もあるかと思います。その面でも十分な配慮をお願いしたいと思います。

 障害者雇用に当たってもう 1 つ、企業で面接・試験だけではなく、適正・能力を判断するために、トライアル雇用制度を雇用の前段階でこの制度を利用して、採用に結びつけていくということがあります。これが有効であるという声をよく聞くところであります。トライアル雇用制度の充実・強化、特に今後、精神障害者の方が障害者雇用の義務化の範囲に入ってきます。精神障害者の方は特に期間的に、例え発作が起きるとかということが、期間が長い間に起こるということもあります。短期間でのトライアル雇用期間では分からないというようなこともあろうかと思いますので、その辺にも十分配慮した制度の充実・強化をお願いしたいというのが 1 つです。

 それから、障害者団体・障害者支援団体から採用条件として、「自力通勤が可能なことを条件としないように」という声が以前のヒアリングでありました。しかし、通勤送迎を行うことができる企業は限られています。自力通勤を採用条件とすること、それから障害者への通勤支援ができないことを障害への差別としないように、できるだけ御配慮をお願いしたいと思います。

 次のページは「採用後」についてです。採用後の賃金、配置、昇進、昇格への待遇については、障害者の適性・能力に応じて事業主が判断するものと考えております。特に、中小企業の場合、どうしても業務が限られた人数の中で行う。その場合になかなか業務の絞り込みとか、配置転換とかも限られたこともあります。昇進、昇格といっても同じようなこともありますので、この辺は事業主の判断の下、行うものだと思っております。

 次に、加齢、障害の進行によって職業能力が低下した障害者の従業員の対応について述べさせていただきます。企業の就労現場での状況に応じて、退職勧奨を差別として取り扱わないように配慮をお願いしたいということです。これは 1 例ですが、どうしても加齢、障害の進行によって作業能力が落ちる方がいらっしゃいます。そういう方々は、実際の企業での就業現場から福祉支援の作業などに移行というほうが本人にとっても幸せな場合もあると思います。企業側の退職勧奨というものを差別として取り扱わないようにしてくださいというお願いです。

 「その他」について。障害者雇用を促進する見地から、企業における差別禁止の理解を深めるため、行政として積極的に企業経営者、人事担当者への周知、啓発に取り組んでいただきたいというお願いです。それから一方で、企業内で差別ということについて紛争が起きた場合、企業としても相談できる公的機関、相談窓口についても、広く企業に周知をお願いしたいということです。

 続いて、「合理的配慮」についてです。 1 「指針の構成について」。これも第 1 回研究会での資料 6( 別紙 ) で示された「合理的配慮指針の構成 ( ) 」のとおり、指針を作成されることをお願い申し上げます。 2 「合理的配慮の具体例について」。障害者の障害の特性によって、その配慮に対する要求も多種多様であることが想定されます。そのため、個別具体的な事例を提示することが、かえって個々の企業にとっても負担になることが予想されます。指針の作成に当たっては、これらの点にも十分配慮をお願いしたいということです。特に中小企業における障害者雇用の合理的配慮の具体例については、従前から高齢・障害・求職者雇用支援機構が、障害特性に応じた障害者雇用事例集というものをまとめておりますので、この公表されている事例集等を参考に、今後、御検討いただければ有り難いと思っております。

 次に、「過重な負担の判断要素について」。企業規模、財政状況、職場環境、業種特性などによって、過重な負担の捉え方が異なることが想定されます。特に企業の事務所、工場等が自己所有か賃貸かによって、施設等の改善、修理等、これも建物の事情にもよると思いますけれども、可能であったり不可能であったりするケースもあります。また、事務所や工場等が狭隘のため、施設等の改善、修理等がなかなかできないというケースもあります。こういったことにも十分御配慮をお願いしたいと思います。また、人的側面では障害者従業員の障害の種類によっては、サポートするための人員を確保することが必要となる場合も考えられます。これがかえって小人数の中小企業にとっては、過重な負担になることもありますので、この点も御配慮いただきたいと思います。

 次に、 4 「相談体制の整備等について」です。障害者雇用を行う中小企業では、経営者若しくは総務・人事担当者が相談担当者となって、障害者従業員からの相談に対応しているところが見られます。重度障害者を雇用する場合においては、生活支援面の担当者を別に設置しているところもあります。合理的な配慮が義務化されることに伴い、企業において相談担当責任者の設置などの相談体制を整備することが不可欠だと承知しております。とは言え、個々の企業の実情は、従業員の人数とか人事の体制もあるとは思うのですが、それらの中、十分に配慮いただいて、相談体制の整備ということが可能かどうかというのを、十分御検討いただくことが必要だと思っております。また、プライバシーの保護、不利益取扱いの禁止について、これは当然だと思いますので、十分配慮するように、これも周知をお願いしたいと思います。

5 「その他」について。現在、高齢・障害・求職者雇用支援機構で、障害者への就労支援の機器の貸出しサービスを実施しています。現在実施されているのは、伺うところによれば確か墨田区の錦糸町にある障害者職業支援センターここ 1 箇所と聞いております。障害者の方々は日本全国にいらっしゃいますし、障害者を雇用される企業は日本全国に展開しているわけですので、このサービスの充実・強化を是非ともお願いしたいと思います。

 支援機器というのは、合理的配慮の 1 つの方法だと思うのですが、これをどんな機器を使えばいいかというのは、実際に購入して使ってということになると、なかなか買い換えるにも難しいので、一旦、こういう貸出しサービスを利用して、これがいいとか、この障害者にはこれが合っているとか、拡大鏡もこんなのがあるよとか、幾つか利用できて最適なものをお使いいただいて就労に結びつけるという、これは合理的な配慮だと思いますので、行政としても支援の充実・強化をお願いしたいということです。以上でございます。

○山川座長

 はい、ありがとうございました。それでは、続きまして日本商工会議所産業政策第二部副部長、高山祐志郎様より御発表をお願いいたします。

○高山祐志郎氏 ( 日本商工会議所 )

 日本商工会議所の高山です。このような場で発言の機会を与えていただきまして、ありがとうございます。本指針の在り方を考えるに当たりましては、障害者雇用の経験の少ない中小企業、また初めて障害者を雇用しようとする中小企業にとっても、分かりやすい内容であること。そして、中小企業が障害者の雇用に萎縮することにならないような内容にすることが重要であると考えております。

 それでは、お手元の資料に基づいて御説明をさせていただきます。資料 1-3 はまず 1 つ目、「指針の構成について」です。対象となる障害者の範囲については、障害者雇用促進法第 2 条第 1 号に規定する障害者とすることが適当と考えております。また、事業主の範囲については、全ての事業主を対象とすることが適当ということでよろしいかと存じます。差別の範囲については、障害を理由とする直接差別とすべきと考えております。間接差別については分科会の意見書にもありますとおり、合理的配慮が提供された上で、どのようなものが間接差別に該当するのか明確になっていないことなどから、現段階では禁止規定を設けることは困難ではないかと考えております。差別の禁止の項目については、第 1 回研究会の資料で示された、構成案の第 3 に掲げられた項目例に沿った項目とすることが適当と考えます。

 第 2 「禁止される差別の具体例について」です。ここでは禁止される差別の具体例だけではなくて、禁止される差別に該当しない内容についても、指針に例示することが必要ではないかと考えています。積極的差別是正措置、それから労働能力の適正な評価、障害特性における教育と、 3 つ例示をさせていただいておりますが、いずれにしても分かりやすさが重要ということで考えております。

 まず、積極的差別是正措置として、例えば通常の採用枠とは別に障害者の枠を設けて、募集・採用を行うことは、障害者を雇用しようとする事業主の是正措置でして、これらは禁止される差別に該当しないものとして指針に明示する必要があると考えています。合理的配慮が提供された上で、労働能力などを適正に評価した結果としての異なる取扱いは、禁止される差別に当たらないということなど、同様に盛り込むべきと考えております。仕事内容や職場環境への慣れなどを考慮して、人事異動のサイクルを長くすること。障害特性に応じて、別の内容・方法で教育訓練などを行うことは、正に合理的配慮の一還でして、禁止される差別には当たらない。そういったことも指針に盛り込んではいかがかと思います。

2 ページ目です。第 3 「その他」について。冒頭にも申し上げましたが、禁止すべき差別として何もかも指針に盛り込むようなことになりますと、事業主がかえって雇用に萎縮してしまうようなことが懸念されますので、注意が必要であると考えております。

3 ページ目の「合理的配慮」の部分です。まず、第 1 「指針の構成について」のうち、合理的配慮の提供の考え方です。合理的配慮に複数の選択肢がある場合、障害者の意向を踏まえた上で、より事業主が提供しやすい措置をとることが認められることを、明記する必要があるのではないかと考えております。更に、障害者が望む配慮が過重な負担である場合には、事業主が過重な負担にならない範囲での、何らかの代替措置をとることが認められることも必要ではないかと考えております。

 第 2 「合理的配慮の具体例について」。合理的配慮は、個別性や多様性が強いため、事業主と障害者、その家族や支援機関を含む当事者間での話合いによって、可能な限り提供されるべきものです。最初から指針によって細部まで固定した内容のものにすることは、実効性の観点からも適切ではないと考えております。従って、まずは既に多くの障害者雇用の現場で定着している合理的配慮の具体的な内容を指針に盛り込んでいただき、施行後の状況を見ながら、必要に応じて見直していくことでよいのではないかと考えております。

 第 3 「過重な負担の判断要素について」です。例えば、経済的な負担、人的な負担、時間的な負担などについて、企業規模や業種、企業の置かれている財政状況、経営環境、合理的配慮に対する経済的な支援、これらを総合的に勘案して判断することが適当ではないかと考えております。

 今、経団連、中央会からも話が出ましたが、通勤については、やはり国の社会福祉政策の充実で支援すべきと考えております。労働時間外の移動について、中小企業の事業主に負担を求めることは適当ではないと考えております。

 第 4 「相談体制の整備について」です。まずは、社内で相談を受ける担当者を選任し、障害者やその家族に周知することが必要と考えております。また、必要に応じて、その担当者が外部の支援機関や医療機関、福祉機関等と連携を取れる仕組みを構築することも重要です。不利益取扱いの禁止の周知の記載については、まずは社内における意識づけが重要でありますので、異論はございません。

 第 5 「その他」については、繰り返しになるので省略をいたします。

 最後に、本指針とは直接的な関係はないかもしれませんが、地方都市の商工会議所からはよく聞かれる悩みなのですけれども、県庁や市役所など、そういった公的機関若しくは大企業などを志望する障害者の方が非常に多い。また、強く希望する御家族の方も非常に多いということで、なかなか中小企業に就職先として目を向けていただけないという状況があるという声を聞いております。今回、指針の作成に当たりましては大都市、大企業のみを念頭に置いた議論にならないように、中小企業を安心して就職先として選んでいただくことや、居住地が遍在しているなどという現状があります。そういった点も十分考慮していただきながら、指針を作成していただきたいと思います。以上です。

○山川座長

 ありがとうございました。それでは、続きまして日本労働組合総連合会総合労働局雇用法制対策局長の伊藤彰久委員よりお願いいたします。

○伊藤委員

 伊藤です。では、連合としての差別禁止及び合理的配慮についての考え方を述べさせていただきます。初めに申しますと、連合としては働くことを軸とする安心社会ということで、誰もが働くことを通じて社会に参加して自己実現できるような社会、ということを政策の実現目標として取り組んでおります。そういう意味では、障害者が雇用の場を通じて社会に参加していく、積極的にこの指針を作っていくことを提起したいと考えております。

 少し申し上げておきますと、この意見書を作るに当たって、障害者の労働組合員を組織している複数の組合に集まっていただいて意見を聞いてまいりましたが、連合全体で悉皆の調査を行って意見をまとめたというわけではありません。把握できる範囲でまとめた我々としての考え方であるという前提で説明させていただきたいと思います。

 まず、「差別禁止」です。障害者が職場で生き生きと働くことができる環境を整備するために、企業の積極的な取組を促す指針とする必要があると考え、(この差別禁止及びこの後に出てきます合理的配慮にも同様に書いてありますが、)この改正法の目指す趣旨を指針に改めて記載すべきと考えております。また、差別のない職場を作るためには、事業主や職場に働く労働者の障害に対する正しい理解の促進と情報の共有が重要だと考えています。もちろん、プライバシーに配慮するということは前提でありますが、特に外見だけでは判断できないような障害も多々あることに配慮しまして、様々な障害の特性や職場において配慮すべき点についても記載すべきと考えております。

 第 2 は差別の具体的な例として、どういうことを記載すべきかということです。募集・採用に当たっては、活字や口頭による試験に対応できる方や、自力通勤ができる人、あるいは電話対応有りなどの募集条件をかけることによって、特定の障害を持つ人を排除することにならないようにしていくことは、具体例として明示すべきだと考えます。また、フルタイムで働くことができることや、顧客とのコミュニケーションが取れるといったような表現を使うことによって排除することも、同様に明記すべきと考えております。

 採用後について言いますと、体調不良を理由にフルタイム勤務から短時間勤務への変更を申し入れたときに、当初の契約条件と違うので勤務変更を認めない、辞めてくれ、というようなことにならないようにすることも具体例と考えます。また、あなたにはこういう仕事がふさわしいでしょうと一方的に決めて、特定の仕事しか与えない、過度に単純な作業しか認めない、あるいは特定の職場や業務のみに配属先を限定するといったことも、この間の障害者のヒアリングの中でもあったかと思いますが、明示すべきと考えております。

 その他留意すべき点等についてですが、 1 つ目の留意点としては、中小企業など資力が乏しい企業において職場環境が整っていないことを理由に障害者の採用を拒むことについては、一律に差別とみなすことは難しい面はあるのではないかと考えております。 2 つ目については、女性の障害者特有の状況と書きました。差別禁止部会でも議論になったところですが、複合差別について留意する必要があるのではないかと思います。

3 つ目は、実際に障害者が職場で働いているときに、「私生活」と書いてありますが、要は自立のためにいろいろな生活面への関与をしているというような現実があります。これが差別に当たるのか、当たらないのかといった点について、会社側からの戸惑いがあり、具体的に明らかにしていく必要があるのではないかという意見がありました。公的機関における取扱いなどの点は、公務員自体は今回の改正障害者雇用促進法の対象ではないということですが、非常勤職員の取扱いなど、今回の指針の適用範囲について整理する必要があるのではないかと思います。

 次に「合理的配慮」についてです。第 2 の具体例の所からです。募集・採用時で言いますと、募集情報に障害者がアクセスできるように、テキスト形式でホームページに掲載するといったことは当然です。 2 つ目にありますように、採用試験に際して、事業主が提供する配慮事項をあらかじめ明示して、受験者が求める配慮を伝えられるようにしていく必要があると思います。 4 つ目の所、知的障害者については、個人の適性や求める職務内容に応じた試験も考える必要があると思います。精神障害者にあっては、通常の採用試験のスタイルそのものが不利になるという可能性も考えられます。面接会場や、面接方法などの配慮、休息場所の確保といった配慮なども必要だと考えております。

 これはむしろ人事担当者側の問題として、人事担当者・採用担当者向けにシミュレーション研修といったものも含めて、十分に対応できる体制をあらかじめ作っておく必要があると思います。また、採用面接に当たっては、支援者の同席を認める必要もあると考えております。

 それから、採用後について申し上げます。職場の環境、労働環境を変更する際に、障害労働者に説明するのはもちろんですし、必要な措置等について意見を求めるということも、合理的配慮という観点から位置付けられるのではないかと考えております。

 移動支援のことですが、この間も大分様々な意見があります。一般公共交通機関を利用できない場合にあっては、自家用車・福祉移送サービス等の利用の移動支援を行うことについても、必要と考えております。また、自力で通勤する場合については、柔軟な通勤時間、勤務時間の設定も考えられます。

 また、異動のことですが、これは様々な考え方があると思います。障害当事者の納得のもとで障害のない労働者と同等の異動機会を保障するということも、やはり考える必要があるのではないかと思います。異動に際しては、事前に異動先の職場の状況についての情報を、その障害当事者に提供することも配慮の 1 つと考えました。研修機会等も、当然確保する必要があると考えております。

 障害の重度化や進行を防ぐための対応として、通院時間の確保、労働時間上の配慮、休息時間の確保なども必要と考えます。職務の内容にもよるとは思いますが、出張が必要な場合にあっては、障害の特性に応じた配慮が必要と考えております。また、中途障害の場合にあっては、職場復帰に向けた措置が必要になると考えております。災害時の対応に関するマニュアルを作成し、音声や視覚による災害状況や被害等に関する情報提供体制の整備と、訓練を実施するということが非常に重要だと考えております。

 また、会社側、受入れ側の対応としては上から 4 つ目の所にありますが、職場の上長が以前は非常に障害について理解がある人だったのが、異動することによって対応が変わっていくというケースがあるという指摘もあります。そういった上長の異動に際しての引継ぎ事項を徹底すること。また、一番下の所ですが、全ての管理職・労働者に対して、障害や合理的配慮に関する研修を実施することも重要と考えております。

 「過重な負担の判断要素について」は、個別に判断されるところだと思いますが、説明責任は事業主が負うべきと考えております。

 「相談体制の整備等について」です。ここでは、合理的配慮の申入れ方法、合理的配慮がなされない場合の相談方法、社内の苦情処理機関、それから公的機関への申立などという流れについて、分かりやすく明示をすべきと考えております。事業主における窓口や協議の方法、それから支援者の同席、労働者及び事業主の説明責任の在り方についても、あらかじめ明示しておくことによって、スムーズな解決、相談対応ができると考えております。また、企業における自主的解決については、男女雇用機会均等法における紛争の解決方法を参考にして、労働組合のある企業では労働組合と会社の労使協議による解決もその 1 つだということを、例示として記載することも重要と考えております。相談したことを理由に、不利益取扱いはしない。これは当然なことだと考えております。企業内で解決できない場合の方法についても、記載すべきと考えております。

 「その他」の点としては、ジョブコーチや障害者就業・生活支援センター等の企業への支援体制の充実・強化、ハローワークのマッチング機能の強化などについても重要と考えています。長くなりました。以上です。

○山川座長 ありがとうございました。これで 4 団体の皆様からの発表が終わりました。これ以降、頂いた発表について質疑応答に移ります。どの団体の御発表についてでも結構ですが、御質問等ありましたらお願いします。

○富永委員

 富永です。ヒアリング、大変勉強になりました。最初に 2 点ほど確認ですが、経団連の高橋本部長から御説明のあった合理的配慮の関係で、資料 1-1 2 ページの上から 4 つ目に線が引いてある所ですが、 2 段階でチェックをされるというお話で、合理性の判断と、過重な負担になる場合があり得るのではないかということをおっしゃっていたと思います。

 また、 3 ページの過重な負担の判断要素についても、 2 つ目の項目で、加えて過重な負担を判断する場合、合理的な配慮の提供のために要する負担と成果とを比較衡量して判断する、とあったと思います。中身はそのとおりかと思いますが、個別の措置について、そこまでやらなければいけないようなものかという過重性の話と、措置と言ってもたくさんありますから、何十人も障害者の方を雇用されると思いますので、全体の絶対枠としての、予算枠としての過重な負担と、過重な負担の内容としては両方あるという御趣旨でしょうか。

 もう 1 つは、 2 ページの合理的配慮の指針の構成の 5 個目の◇で、合理的な配慮については、要求内容に対し、仮に 100 %の提供でなくても、その時点で対応可能な範囲での提供、時間的なものも考慮して行えばいいという仕組みを認めるべきであるとあります。現在は古いビルで、いっぱい段差があるけれども、 3 年後には新しいビルに移るという例を出して、古いビルでわざわざエレベーター工事や段差つぶし工事を全部しなくても、 3 年後に期して、今できることをやれば大丈夫ということだと思いますが、例えば 3 年後はちゃんとバリアフリーが実現されるとして、今の段階では、特によく使う通路の段差は斜めの板をあてがうといった形で、今できることについては合理的配慮をされるということですね。そこだけ確認したいと思います。

○高橋弘行氏

2 番目の質問は分かりやすかったのですが、最初の質問は、質問の意味が今ひとつよく分からなかったので、もう一度教えていただいてもよろしいでしょうか。

○富永委員

 富永です。 2 ページの線が引いてある、合理的な配慮の提供については相談を経た後に行うというところについてですが、目的の正当性や必要性、実現可能性等で合理性の判断がまず求められるし、その上で、さらに過重な負担となる場合にも、事業主は提供義務を負わないことを改めて明示する必要がある、という話だと思います。

 個々の措置について、例えば 1 人の障害をお持ちの労働者について、何か合理的な措置を求められたとします。その方への措置については、額としては小さく、全体での予算枠は 100 あったとして、その中でその措置のコスト 5 とか 10 とかにすぎませんが、その措置から上がってくる効果に比して見ると、その措置への投資が大き過ぎて不合理であると、そういう意味で、個別の措置についての過重性みたいなものがある。それはクリアしたとしても、全体の予算枠が会社ごとにあると思いますので、合計した全体の予算枠で過重となる場合がある。過重性と言っても、中身はそういう2つがあるということですか。

○高橋弘行氏

 高橋ですが、質問の意味は理解しました。まず、簡単な 2 番目の御質問ですが、 100 %の提供でなくても、その時点での対応可能な範囲での提供ということで、先ほど富永先生からありましたような、例えば、今は古いビルだけれども、何年後かに移転するという例を私が出したことについて、何年後かに移転するから、今は古いビルで何もしないのだという意味ではないということは明らかです。ただ、古いビルの中で可能な限りの対応としてどういうことがあるのかは、事業主と当該の障害をお持ちの方との話合いの中で、どういうことが対応可能なのか話し合い、解決策を模索していくということであって、何もしないということを意味しているわけではありません。

 過重な負担の判断要素に関わるところですが、ここは非常に難しい内容で、先ほど申し上げた第 1 に合理性を問う必要があるという趣旨のことについて、少しお話ししたいと思います。私の考えでは、当該の障害をお持ちの労働者からの要望であれば、全て合理的配慮に含まれるのかどうかといえば、そこはいろいろな考え方があり得るのではないかと思います。当該労働者にとっては、合理的な配慮だと思って相談した内容であっても、当然、相談の過程でいろいろなやり取りがなされると思います。その段階で申し入れられている内容そのものについて、まず合理性があるのかどうかは問われてしかるべきではないかということです。

 合理性と言ったときに、なかなか難しいのですが、御要望を実現するために求められる正当性や必要性というのは当たり前ですが、先生が御指摘のように、大企業であればあるほど多くの障害者を雇用するので、ある方にとってはとても大切な要望、申入れであっても、全体として見たときに、果たしてその方の要望にそのまま対応することが本当に合理的なのかどうか、ということも問われてしかるべきではないかと思っております。また、そうした特定の方の御要望に対して最大限対応していく際に、予算だけではなく、社内の秩序や規律等への影響も勘案していくことも含まれると考えております。

 したがって、 3 ページに判断要素として 10 個ほどの要素を提示したわけです。これら全てにわたって関わるものもあるでしょうし、幾つかのものを組み合わせながら判断するという形になってくると思います。非常に個別性が高い判断が求められると思っておりますので、会社全体としての合理性もさることながら、個々人に対する合理的配慮の提供に当たっての合理性の双方が、ミクロ・マクロで問われるのではないかと考えております。

○富永委員

 ありがとうございました。

○阿部 ( ) 委員

 日身連の阿部です。今日のお話の中で、移動支援についてです。障害があって、移動の支援があれば働く力を発揮できる人がいるということは事実だと思います。ただ、今日の 3 団体、日本経済団体連合会、中小企業団体中央会、日本商工会議所からは、通勤の支援までを雇用主に負担することには無理があるというお話がありました。福祉のほうでできるかということもありましたので、その辺りについて事務局で、検討するときには資料を出していただく必要があるのではないかと思いました。

 併せて、今こちらでは改正障害者雇用促進法に基づく差別禁止と合理的配慮の提供の指針について検討していますが、内閣府では障害者差別解消法についての検討がこれから行われるところだと思います。各省庁、民間企業についての対応要領、対応指針は来年度からの検討になると思いますので、移動支援の在り方についての一定の結論が出た場合には、福祉の領域等、雇用主だけの負担では難しいということであれば、その仕組みについて内閣府に申し送っていただかなければ、移動支援自身が縦割りの検討の中で明確な検討がなされないという状況になってくると思います。

 福祉の領域の移動支援は、私が知るところでは継続的な支援はなかなかできない、単発の支援に限られるようです。その場合の社会参加は非常に限定された、どこかに買物に行くといったことで、ともすると地域生活支援事業の中で自治体の裁量、国は裁量的経費で、自治体によって格差が生じるような領域にもあると思いますので、この辺りを指針の在り方に関する研究会のときにも十分に理解を深める必要があります。そのためにも私たちが検討する資料として事務局に整理していただいて、提出していただきながら検討を進めていかなければならないと思います。

 今日のお話を伺って、移動支援の企業主の御負担は難しいかということですが、この移動に関する支援があれば働ける人、この方々の移動支援、通勤支援をどのようにするかは大事なことなので、どうか検討をお願いしたいと思いました。

○山川座長

 前にも申し上げましたが、福祉との連携は重要な要素になると思いますので、この研究会での議論の推移も含めて、内閣府と適宜連携を取っていただければと思っております。

 もう 1 つ、情報提供の御要望もありましたが、事務局から何かありましたらお願いします。

○障害者雇用対策課長

 障害者雇用対策課長の藤枝です。現行の総合支援法の中でどういったサービス提供になっているか、改めて資料を整理したいと思います。今の御意見はもっともですが、総合支援法も 3 年後の見直しに向けてこれから議論がされていく中で、我々の障対法に基づく合理的配慮としてどこまで事業主の方々に求めていくべきなのか、指針として書いていくべきなのかという議論は、それはそれで拝聴したいと思っておりますので、よろしくお願いします。

○阿部 ( ) 委員

 今のお話のように、それぞれの法律の谷間になってしまわないように、こちらでも議論を尽くしていただきたいと思いますが、その結果についても総合支援法、移動支援については差別解消法のところでも話題になると思いますので、谷間、隙間にならないような御配慮をお願いします。

○田中委員

 日本盲人会連合の田中です。阿部委員の御質問との関連質問をします。今お話があったように、障害者にとって通勤支援は非常に大きな問題です。総合福祉部会でも議論がありましたが、それは雇用のほうでやってくれという話になっています。雇用の分野だと福祉のほうでという話になって、阿部委員が言われるように谷間になってきていると思うので、何とか考えていかなければなりません。

 それで、情報提供で併せて事務局にお願いですが、少し調べたら、企業への補助制度の中に通勤援助者の委嘱という制度があるようです。これは期間は限定的で、 2 か月ぐらい、通勤に慣れるまでという狙いなのかなと思っていますが、制度の利用状況等がもし分かれば、是非、御提供いただきたいと思っています。もし必要であれば、通勤援助者の委嘱の制度を拡充していくことによって、通勤支援につなげていくという考え方もできるかと思いますので、この点をよろしくお願いします。

○山川座長

 これも御要望ということで、事務局として情報があれば、今後御提供いただくということでよろしいでしょうか。

○障害者雇用対策課長

 障害者雇用対策課長の藤枝です。今御指摘いただいたのは、納付金制度の中の助成金で通勤の一部支援を行っているものがありますので、その利用状況等については整理して御提供させていただきます。

○山川座長

 ほかにいかがでしょうか。今の点に関連するものがあれば、そちらを優先して御発言いただきますが、よろしいでしょうか。

 私から、通勤支援とやや別の視点になりますが、以前、厚労省で障害者の在宅就労の研究会があったと思います。その検討結果で、もし今回の点に関連するようなものがあれば、併せて御提供いただければと思います。

○富永委員

 富永です。通勤支援について、どういったものが通勤支援なのかという話と関係するかもしれませんが、 3 団体とも通勤支援は合理的配慮に含めるのは厳しいというお話があったと思います。ただ、オフピーク通勤といったものも通勤支援になるのではないでしょうか。そういったものは、さほど過重の負担にならなければ認めても差し支えないような気もします。その辺りは過重の負担かどうかの判断になるかと思いますが、カテゴリカルに全て駄目というわけでもないのかなという気もしました。意見です。

○山川座長

 通勤時間をずらす点は、連合の伊藤委員からも若干言及されましたが、もしこの点について何か御発言、御回答等がありましたらお願いします。今の富永委員の御発言は、一部意見としての色彩も持っていたようにも思いますが、特にありませんか。

○小出委員

 通勤支援、これは福祉で考えると移動支援になりますが、勤めている人が通勤のために移動支援を使いたいとなると、福祉で言われるのは、それは就労支援になってしまうから福祉的なサービスはできませんと。継続的な、毎日使うことになるものですから、それはできませんと、私は当事者ですが、言われます。

 また、通勤支援の中に、ヘルパーが同行してというイメージがありますが、そういうことではなくて、先ほど言われたように、通勤の時刻をずらすといったことも通勤支援の中に入ると思いますので、一概にできないと、労働時間以外ということでくくらないほうがいいと考えております。

○高橋弘行氏

 先ほど、オフピーク通勤が合理的な配慮の提供ではないかという問題提起がありました。そもそも論ですが、合理的な配慮の提供は本当に個別性が高くて、多様性の高い概念です。例えば、当該企業がフレックスタイム制度を敷いてコアタイムを指定していれば、十分に対応が可能となるケースもあるわけで、一律にオフピーク通勤が合理的な配慮の提供であるという類型化も難しいと思いますので、その点を是非御配慮いただきたいと思います。要するに、企業と当該障害者の間で話合っていただいて、何が一番よいかを模索する。そのプロセスがとても大事で、その結果、両者がお互いに納得して、最も良い方法で働いていただくことに意味があるのであって、これが合理的な配慮だとか、これは合理的な配慮ではないと一律に選別していくような決め方は、是非避けていただきたいと思っております。

○山川座長

 恐らく、一律に全てということは委員の皆様もお考えではないであろうと、座長としては理解しております。先ほど課長もおっしゃったように、通勤支援も様々な形があり得るかもしれないので、その点についても雇用の領域でどこまでできるかということも、 1 つこちらで考えていくテーマではあると思います。

○北野委員 ( 堤代理 )

 全国精神保健福祉会連合会の堤です。今日は代理です。ヒアリングを伺いまして、大変勉強になりました。ありがとうございました。

 質問というか、意見も含めてですが、全国中小企業団体中央会の小林さんが発表された中で、 1 ページに「障害者雇用に当たっては、障害者を雇用する企業から面接・試験だけでは適正・能力が判断できないケースも多く、トライアル雇用制度を活用することが有効に機能しているとの声を多く聞きます。トライアル雇用制度の充実・強化をお願いいたします」という本当に有り難い御意見がありました。実は、トライアル雇用をやっておられる企業が渋谷にあります。そこは精神障害の方だけでも何百人と雇用されております。そこの方からいろいろお聞きしたのですが、精神の場合はトライアル雇用からやったほうがいいのではないかということがあったので、是非お願いしたいと思います。

 質問ですが、充実・強化をお願いいたしますということは、国に対する御要望でしょうか。

○小林信氏

 全国中小企業団体中央会の小林です。国でトライアル雇用を支援する助成金があるのですが、それが第 1 回目の利用だけとか、障害者の方を初めて受け入れる企業がトライアル雇用の助成金を使える仕組みになっていると記憶しています。 2 回目、 2 人目、 3 人目のときは、この制度が適用できない形になっていたのではないかと思います。そういう意味では、障害者の方を受け入れるたびにトライアル雇用の助成金が使えれば有り難いということです。

 もう 1 つ期間的な話で、先ほども少し申し上げましたが、障害の特性によって判断基準が、企業でも自力で勤務していただく方を望んでいるわけですから、そういう意味でこの業務に適しているかどうか、トライアルの期間の問題があると思います。その期間を障害の特性に応じて長くできるといったものも 1 つ考えようなのかと思います。

 先ほど精神障害というお話がありましたが、精神障害の方に安定的に働いていただくことは、企業側にとっても有り難いことですし、障害者の方にとってもここは安定的に働けるかという判断をする必要があるかと思います。その上で、現状の期間がもう少し延ばせるような仕組みがあってもいいのではないかということで書きました。

○北野委員 ( 堤代理 )

 もう 1 点、同じく小林さんへの質問ですが、合理的な配慮の 3 ページで、「過重な負担の判断要素について」の一番下に「障害者従業員の障害の種類等によっては、サポートするため人員を確保することが必要となる場合なども、企業にとっては『過重の負担』となる場合が考えられます」とあります。全くそのとおりだと思います。大企業においては、ジョブコーチ制度を設けて成果が上がっている所もたくさんあります。もちろん、精神の方は大企業にもいらっしゃいますし、特に最近デパートなどで精神の方が採用されております。そういうこともあって、就業率も雇用率も上がっているかと思われます。

 中小企業においては過重な負担、どの程度が「過重な負担」かはこれから論議するようになるかと思いますが、確かにおっしゃるとおりだと思いますので、私ども精神障害者が雇用していただいて、安定的に働いて、国に若干でも税金を納められるように働くためには、是非とも過重の負担とならないような財政的支援というか、そういう面も国で考えていただければ有り難いと思います。

○山川座長

 御意見ということでよろしいですか。

○北野委員 ( 堤代理 )

 はい、そうです。

○山川座長

 トライアル雇用及び支援ということですが、支援と言っても社会福祉領域の支援ではなくて、労働の領域での支援に位置付けられると思いますが、いかがでしょうか。

○障害者雇用対策課長補佐

 障害者雇用対策課長補佐の境です。今 2 点ほど御意見を頂きました。まず、トライアル雇用に関してですが、法改正において精神障害者を法定雇用率の算定基礎に入れるに当たって、障害特性に応じた支援の充実が求められるという御意見を頂きました。トライアル雇用の期間をもっと精神障害の特性に応じて長くできないかという御指摘も頂きましたので、そういった点を踏まえて、見直し等々を進めたいと考えております。

 ジョブコーチについては、初回に簡単に御説明しましたように、今、地域就労の支援の在り方についての研究会も別途開催しております。そこでの大きな問題として、障害者がどのように職場で定着していくのか、そのために地域がどのような支援を行うことができるのかがメインのテーマになっております。そういった中で、企業自らジョブコーチを配置していただくことも重要ですが、なかなかできない場合もあるだろうと。そういったときに、外部の支援機関がどのようにスムーズに支援を行うことができるのか、そういったことをどうやっていくべきかを御議論いただいているところでありますので、我々もそういった御議論を踏まえながら支援の充実を図っていきたいと考えております。

○山川座長

 いわば社会福祉領域というよりも、労働行政の中での就労支援もある。社会福祉、労働の中での支援と、更に差別禁止、合理的配慮という、少なくとも 3 つの柱で相互間の連携、あるいは情報共有を図る必要があるということかと思います。

○小出委員

 育成会の小出です。中央会の小林さんは、合理的配慮のところで入口と採用後のことを書いていただきました。また、最後のページには出口のこと、出口というのは「加齢・障害の進行により」ということで、職業能力が低下した場合に退職勧奨ということで、これは正に会社を去る出口のところを書かれていると思います。通常の方も加齢ということで、定年前であっても、実は私どもは障害があるということで、通常の年齢と比べると加齢が早く来ることもあって、就業年齢よりも短いことも多くあります。障害の進行もあると思いますが。そのときに退職勧奨について明記したということですが、通常の場合はどのような扱いになるのでしょうか。

○小林信氏

 全国中央会の小林です。加齢、障害の進行は、障害の種類によっては健常者で言う定年制の問題以前に、かなりの部分で職業能力が落ちる方もいらっしゃると思います。そういう意味で書いたのですが、実際、企業で障害者の方が働くというのは、自力で就労できるというのが大きな条件だと思います。それによって、障害者の方も社会に進出していただいて、十分企業の戦力となっていただくことが前提だと思います。

 しかし、加齢や障害の進行によって、能力の低下は当然あると思います。その場合、先ほど申し上げたように、福祉の現場では福祉作業所等より単純な作業を行うような、就労と違った意味で福祉の中での作業をやられる現場もありますし、かなり障害が進めば病院に行ったほうがいいのかもしれないし、施設に戻ったほうがいいという方々もいらっしゃると思います。全てが自力で就労できると御自身が思っていたり、御家族が判断されている中で、そうしてほしいという気持ちのほうが強いと思うのです。ところが、実際には就業能力の部分でかなり低下する方もいらっしゃるわけですから、その方々がより就労現場で働き続けることが逆に苦痛につながるのかもしれない。

 一部の企業から伺ったところによると、福祉の作業現場に戻っていただいて、より楽になったと。本人も負担が少なくなったという方もいらっしゃるということですから、それは企業の現場で見て、その方々の能力低下はやむを得ない部分があるわけですから、退職勧奨と言っていますが、こちらに行ったほうがいいのではないですかとか、病院に行ったほうがいいのではないですかということが起こると思うのです。それは就労に対する差別だと言われては困るので、その辺りにも十分配慮いただきたいという思いを込めてお願した次第です。

○富永委員

 富永です。今のことと関連して、加齢や障害の進行等で職業能力が低下する場合があるということについてですが、経団連の高橋本部長が合理的な配慮のところでお書きになっていますが、資料 1-1 3 ページの過重な負担の判断要素の一番下の◇で、「過重な負担の判断に際し、障害が進行性の場合など採用後の状況変化についても勘案する必要がある」とあります。採用したときは、このぐらいの過重な負担だったら大丈夫だろうということで採用されて、能力もそれで補うことができたとしても、その後で能力を維持するために合理的な配慮に要する費用がどんどん上がっていってしまった場合は、難しいところがあるかと思いました。個人的には、合理的な配慮が尽くせなくなったからではなくて、合理的な配慮を過重な負担にならない程度ではやっていただいて、それでもやはり能力が落ちてしまうということなら、同じ能力の、障害者でない方と同じ取扱いだったら差別にはならないのではないかと、思っております。意見です。

○阿部 ( ) 委員

 日身連の阿部です。小林さんのお話の中で、最後に就労支援機器の貸出しサービスなどは、東京にはあるかもしれないけれども、地域の状況ではいかがというお話をいただいたことは、とても大事な有り難い指摘だと思います。このような情報については、地域でも使えるのだとは思いますが、地域の格差が貸出しサービスの情報周知や展示施設があるかどうかで起きてくることとも考えられますので、このようなサービスを地域でも使えるように様々な周知活動をお願いしたいと思います。

 これからの検討の枠組みの中でも、中央というか、東京や大阪の検討だけではなく、もちろんそのようには進めていかれるのだと思いますが、地域におけるということを意識した検討を進めていただきたいと思いました。意見です。

○山川座長

 今の点は、地域格差をどう考慮するかというお話で、具体的な対応としては、差別禁止、合理的配慮の中身と先ほどの就労支援との関係が出てくるかと思いますが、就労支援の研究会では、今話題になったようなことも検討対象になるのでしょうか。

○障害者雇用対策課長補佐

 障害者雇用対策課長補佐の境です。機器の貸出しがどうあるべきかという細かい論点としては議論はされておりませんが、視点として地域によって利用できる地域資源に差があるのではないか、例えばジョブコーチが地域によってどれだけおられるのかといった問題意識があります。そういった地域間格差、あるいは地域の資源の偏在に対応して、どのような就労支援を行っていくべきかを御議論いただいております。

 今、機構の機器の貸出しについて御指摘いただきました。確かに 1 か所ですが、全国に郵送対応をしております。郵送料は機構持ちになっており、実際に沖縄県などでも御利用された実績があると伺っております。そういったことができるということをきちんと周知していくことは非常に重要であると考えておりますので、その点については真摯に受け止めて対応したいと考えております。

○阿部 ( ) 委員

 日身連の阿部です。この貸出し機器の展示については、かつては私の地元である仙台でも行われていたところが、事業の縮小とともに地域ではなくなってきておりますので、ただいまの事務局からのお答えは有り難いと思います。その周知をよろしくお願いします。

○山川座長

 有益な情報がこの研究会の中でもいろいろ出てきますので、結論はそちらの研究会でということですが、情報としてお伝えいただければ非常に有益になるのではないかと思います。

○市川委員

 遅れまして申し訳ありません。小林さんにお伺いしたいのですが、 3 ページの合理的配慮の具体例に、個別具体的な事例を例示することが、かえって個々の企業にとって負担になる可能性があるということですが、 JDD ネットとしては、今、あまりにも企業の中で発達障害が知られていないので、上司が代わったら会社のために活躍できるのに、代わると要らない人間になったり、同僚の関係といった面でなっております。こういうことはもっと個別な事例を例示して、知っていただかなければいけない段階にまだあると考えておりますので、もちろん負担にならないようにとは思いますが、たくさん事例を知っていただければ有り難いと思っておりますので、よろしくお願いします。

○小林信氏

 全国中央会の小林です。個別具体的な事例の例示が、例えば特例子会社の施設を見ると、私も幾つか伺ったのですが、近代的な設備を持って、休憩所があって、かなり充実した施設で、障害者の方々も働きやすいのだなと感じます。それを全ての企業に、中小企業にも同じようにやれと言われても、できることとできないことがあるという意味で、特に合理的配慮については先ほど高橋さんがおっしゃった先進的な、モデル的なところを全面に出されてしまうと、そこに追い付きたいとは思いますが、企業では対応できないところもあるのです。簡単に取り入れられる、こんな簡単な合理的配慮もあるのだという意味での例示は幾らでもして結構ですし、それぞれの障害の特性に合った障害者を受け入れているいろいろな事例を書いていただくのは良いと思いますが、ハードルの高いものを掲げられても困るという意味で書いたので、書き方が悪かったかもしれませんが、そういう意味で書かせていただきました。

○市川委員

 発達障害の立場から言うと、その以前の段階で対応の仕方とかスケジュールの提示の仕方とか、ごく簡単なことでうまくいったり、うまくいかなくなったりすることがあるのです。決してお金のかかることをやれということは考えておりませんので、よろしくお願いします。

○山川座長

 ただいまの御発言は、指針に書くことの意味の問題ではなかろうかと思います。つまり、義務の内容を全て義務付けるような趣旨で書くのか、例示的な意味で書くのか、あるいは書き方の問題で、常にこうすべきというものと、こういうものが適当なものとして事案によってはあり得るということで書くのか。ある意味では情報提供的な色彩も、推奨的なものも含むのかもしれません。その辺りは、改めてこの委員会で指針の位置付けなり書き方も含めて検討していくことになろうかと思います。

 この点は、経団連の高橋さんからも出されていたことで、誤って理解をする恐れがあるというのがポイントだと思いますので、そういう形でないようにするということについては意見が共有されるのではないかと考えています。この点は今後の検討の在り方にも関わることですが、この点でなくても結構ですので、何かありましたらお願いします。

○小出委員

 育成会の小出です。経団連の高橋さんも冒頭で言われているように、差別を禁止するという項目を全面に出すというよりも、事業主にとって、障害者雇用を推進する資料にというのは私も賛成です。今、市川先生が言われたように、たくさんの事例を挙げて、発達障害に関しては、私ども育成会ですが、学校現場で言うと特別支援学級に発達障害の方も結構含まれているのです。私の支部は、中学に行くと IQ120 とか、知的でない人も育成会に入っているので、同じ悩みです。

 就労支援をやっていると、朝会った課長の目つきがいつもと違うと。それが気になって落ち込んでしまう。ずっと気になっているということがありました。それが続くと、職場の中で働くような状況ではなくなります。そうしたときに、福祉の就労支援事業所に、短期ではありますが、一旦帰ってクールダウンをして、またリフレッシュで勤め直すということをされている所もあります。それは雇用する会社と福祉がうまく機能して、つながっているということです。今 3 年ぐらい勤めていますが、継続して勤められているということもあります。ですから、いろいろな特性でいろいろな対応ということを明示していただけると、高橋さんが言われたように、このような形で障害者雇用は推進できるのだというものも例題として挙げていただけると、非常に有り難いと思います。

○山川座長

 今の点に関連して私から質問です。差別を禁止する事項を取りまとめるのではないという日経団連の高橋さんのペーパーですが、およそ禁止される事項は書かないとまでおっしゃっているわけではないという理解でよろしいでしょうか。こういうことは差別に当たらないと、むしろ推奨されるようなことで積極的な面につき、先ほど小出委員から例示ということがありましたが、そういう位置付けで理解してよろしいでしょうか。この研究会自体が、もともとのミッションは、どういうものが禁止される差別に当たるかということが 1 つの出発点だったので、書き方は趣旨に応じてですが、両方書くことになるかもしれません。そこはこれから検討していくことですが、禁止される事項のみではなく、差別にならないような推奨される取組も何らかの形で盛り込んでいただきたい、という御趣旨と理解してよろしいですか。何か補足はありますか。

○高橋弘行氏

 経団連の高橋です。まさに今座長が指摘されたとおり、禁止されるべきものを一切書くべきではないと申し上げたわけではありません。あくまでも障害者雇用の促進につながるという観点から、事業主として、これは差別として絶対やってはならないということを書いていただくことは必要だと思いますが、それを書くだけの指針では不十分ではないかと思っております。差別には当たらないものも併せて例示していただくことが必要ではないかということです。

○山川座長

 その点は、委員の中からもそうした御意見が出ていますので、今後この研究会でどのような形にしたらいいか、更に検討することになるかと思います。

○塩野委員

 塩野です。企業の立場から意見を少し述べたいと思います。皆様からいろいろな御意見を伺っていく中で、今後企業がどのように対応していくのか、非常に重要なことだと思っていますが、全体としては、今回の法改正によって企業が混乱することなく、障害者の方の雇用の促進にうまくつながっていくような内容の指針にしていただきたいというのが基本的な考え方です。

 合理的配慮についても、現在も障害者の方に働いていただいているので、弊社においてもいろいろな配慮をしているつもりです。ただ、今回の法改正によって、現在弊社で行っている配慮がどのように変わっていくのかが非常に気になっています。実際、配慮をしてみると、本当に 1 1 人配慮の仕方が違いますし、御本人の希望される内容も違ってきます。先ほどの通勤に関しても、どういう制度を会社が持っているかによってもいろいろな配慮の仕方があるかと思っています。そういった中で、今後いろいろな合理的配慮と言われたときに、企業側としては混乱しないでうまく判断していけるような基準を、この指針の中で示していただけると非常に有り難いと思います。

○阿部 ( ) 委員

 中央大学の阿部です。日本商工会議所の高山さんに、どういう意味でおっしゃったのかを確認したかったのです。一番最後の部分で、このようにお話になったと思うのです。県庁、市役所、大企業には目を向けるのだけれども、中小企業を選択するような障害者が少ないので、考慮をしていただきたいということをおっしゃったと思うのです。そこの意味がどういう意味なのかを少し確認したいと思います。

 私が個人的に考えたのですが、中小企業を選択する障害者の方が少ないので、同じ網に中小企業を掛けられると困るという趣旨で御発言されたのか、それとも中小企業を選択するように支援をしてほしいということなのか、あるいは他にどういう意味があるのか私は理解できなかったので、確認させていただければと思います。

○高山祐志郎氏

 日商の高山です。最後に今回のヒアリング項目とは別に発言した件ですが、今、商工会議所は全国に 514 か所あって、大都市もあれば地方都市もある中で、地方都市の方には障害者雇用に是非取り組みたいけれども、自分の地域にいないという声が結構あります。たまたま 1 人内定を出したら、同じタイミングで市役所でも内定が出て、そちらに行ってしまったと。そういう地域が実は非常に多くて、そういう中で地方都市の中小企業と大都市の大企業と同じように扱うことで、何か問題が起きるようなことがあれば、一律に決めてしまうと、地方都市の中小企業が対応できなくなる懸念がありますので、そこは配慮してほしいという意味で申し上げました。

○山川座長

 よろしいでしょうか。座長から伊藤委員に、細かい点ですが、資料 1-4 で、これまでのヒアリングでも若干出てきた問題意識ですが、差別禁止のヒアリング項目の 2 ページの第 3 「その他」に、「社会的自立支援としての私生活への関与 ( 教育 ) が差別とされないような整理 ( 配慮 ) が必要」とあります。これは具体的な内容もお教えいただければ有り難いと思います。

○伊藤委員

 伊藤です。実際に構成組織から話を聞いた中から出てきたことですが、労働組合としてどのように考えるかというレベルの意見にはなっていなくて、今、企業の中で障害当事者である労働者に対して生活面の支援を行っている例があるということです。具体的な話までは聞いてはいませんが、私生活への関与にまで至っているところがあるということで、その点について、もしかしたら差別と言われるのではないかという部分も感じながら、今のところは保護者との信頼関係を頼りに実施しているようです。今般、この取扱いがどうなるのか気になるというお話がありました。

○山川座長

 この点は、全国中小企業団体中央会の小林さんの資料 1-2 1 ページにも書かれていたと思います。情報の把握が配慮にとっても重要だということとの関連かと思いますが、この点について何か補足されることがあればお願いします。

○小林信氏

 全国中央会の小林です。生活面での支援が、この研究会の委員の栗原さんの会社は、福島の工場は確かグループホームのような施設を持って、栗原さんの企業の工場に行かれているということで、付加的な生活面での支援も兼ねてやられていると伺っております。福祉の NPO の施設に入られたり、支援施設に入られて、企業や工場等で働く方も数多くいらっしゃると思います。そういう方々ができるだけ企業の現場で戦力になっていただくことは必要だと思いますが、そのときにどういう施設に入られているといったことを伺う、生活面での話を伺うことは多々あると思うのです。プライバシーの保護に十分注意しなければならないことは確かだと思いますが、立ち入って生活支援のことで企業として何かお手伝いできることがないかということも、考えることも可能だと思います。

 そういう意味で、立ち入ったお話を伺うことがプライバシーの侵害になるのではないか、逆にそれは差別ではないかと言われるケースも多々あるのかもしれません。その辺りも含めて、障害者の方の障害の種類や特性だけではなく、生活面のことについても立ち入ってお伺いすることが出てくると思いますので、そういう部分についてはある程度、個人の捉え方の違いで差別と言われてしまうと困るというのが企業側の思っていることです、という意味で書かせていただきました。

○富永委員

 今の点に関連して、合理的な配慮を提供されるために情報を把握するといったことは、もちろん必要だと思います。仮に私生活で障害を持っているけれども、仕事上の合理的な配慮は必要ないという場合があって、一般求人で応募された場合に必要がなく聞くのはまずいけれども、ということですね。

○小林信氏

 そうです。

○富永委員

 ありがとうございます。それだけです。

○山川座長

 確認ということでよろしいですか。

○富永委員

 はい。

○小出委員

 育成会の小出です。一昨年、虐待防止法ができました。その中で、それが虐待に当たるかどうかのジャッジは、虐待で通報される側は擁護者、保護者、施設の職員、雇用側の使用者です。誰がそれを虐待だと、通報された場合、通報した人がそれは虐待かどうかというジャッジは関係なくて、通報してそれを取り上げて、そこで虐待かどうか判断して措置をするということになっております。

 それでは、ここの差別は、これは差別だと言ったときに、誰が判断するのか。社内でやると、他の会社ではこうだけれどもこの会社ではどうだという一律の指針、ガイドラインは。合理的配慮は、ガイドラインはここで指針として一律のものを決めると思いますが、それが差別だという第三者的なところはあるのか、将来的に作るのかどうかというのはここでやるべき問題なのかどうか、それはどうなのでしょうか。

○障害者雇用対策課長補佐

 障害者雇用対策課長補佐です。今御指摘いただいた点は、差別ではないかと紛争が起きているときに、その解決を誰がどのように図っていくのかということではないかと考えております。法律上は、差別や合理的配慮の提供に関して、事業主と労働者の間で何らかの紛争が生じたときは、まず企業内で自主的に解決することを求めております。ただし、これはあくまで努力義務です。なぜ、そうしているかというと、労使に関わる話は労使でというのが基本ではないかという考え方です。なかなか企業内で解決ができないということがあれば、 1 つは必要に応じて労働局長が指導・助言等を行うことになっております。さらに、実際に紛争に当たって何らかの解決策を提示する必要があるときには、労働局の紛争調整委員会において調停を行うという法的な仕組みにしているので、今御指摘いただいた点は労働局長なり調整委員会で解決を図っていくことになるかと思います。

○山川座長

 第三者機関が介在することが予想されていて、その第三者機関が禁止された差別に該当するかどうかを判断していくということだと思います。私の個人的な感じとしては、客観的に差別に当たるものが明らかな類型と、ハラスメント事案的なもののように、主観的な要素がかなり関わってくる類型と、行為類型によっても違うのかなという感じもあります。特に主観的なものについてはコミュニケーションが取れているかどうか、セクシャル・ハラスメントやパワー・ハラスメントについても同じようなことが言われているので、そういった発想が企業内の苦情処理との関係で生かされてくることになるのではないかと思っております。

 おおむね時間になりつつありますが、何か特に最後に御発言はありますか。

○市川委員

 発達障害の立場から、私の経験ですと、大企業でうまくいって中小企業でうまくいかないことは実際にないので、中小企業のアットホームな雰囲気でうまくいく方もいますし、大企業では人が大勢いて、かえって連携がうまくいかなくなることもあるのです。この流れを見ると、全て中小企業が大変だという話になっているように思いますが、決してそんなことではなく、障害や職種によって若干違いはあると思いますが、是非よろしくお願いします。

○山川座長

 御要望ということでよろしいでしょうか。

○市川委員

 はい。

○山川座長

 それでは、その他に特にないようでしたら、本日はこの辺りで終了したいと思います。本日も大変充実した質疑応答になったと思っております。次回からは、これまでのヒアリングも踏まえて論点整理を行った上で、本格的な中身になっていくような議論をしたいと思います。次回の日程等について、事務局から御説明をお願いします。

○障害者雇用対策課長補佐 事務局です。次回は第 5 回目となりますが、 12 4 ( )10 時から 12 時の開催になります。場所については、追って連絡をさせていただきます。以上です。

○山川座長

 それでは、これで本日の研究会を終了いたします。お忙しい中、どうもありがとうございました。


(了)

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