ホーム> 政策について> 審議会・研究会等> 健康局が実施する検討会等> がん検診のあり方に関する検討会> 第6回がん検診のあり方に関する検討会議事録(2013年7月3日)




2013年7月3日 第6回がん検診のあり方に関する検討会議事録

健康局

○日時

平成25年7月3日(水)


○場所

厚生労働省 9階 省議室
(東京都千代田区霞が関1-2-2)


○議題

がん検診の受診率向上施策及び精度管理について

○議事

○岡田がん対策推進官 それでは、定刻より少し前ではございますけれども、御出席いただく皆様方がお集まりいただきましたので、ただいまより第6回「がん検診のあり方に関する検討会」を開催させていただきます。

 本日は、日本対がん協会より小西宏参考人にお越しいただいております。

 また、前回の検討会以降、事務局に人事異動がございましたので、まず最初に御報告申し上げます。

 公務のため、後ほどおくれて出席いたしますけれども、健康局長が佐藤に異動となってございます。

 また、健康局がん対策・健康増進課長の椎葉でございます。

○椎葉がん対策・健康増進課長 椎葉でございます。よろしくお願いいたします。

○岡田がん対策推進官 同じく課長補佐の赤羽根でございます。

○事務局(赤羽根) 赤羽根でございます。よろしくお願いいたします。

○岡田がん対策推進官 続きまして、お手元にお配りさせていただいております資料の御確認をよろしくお願いいたします。

 資料1 がん検診の受診者数とクーポン券の効果に関するアンケート集計報告書(小西

     参考人提出資料)

 資料2 がん検診受診率向上施策に関する議論の整理及び論点案

 資料3 福井県における国民生活基礎調査と全数調査によるがん検診受診率の違い(松

     田構成員提出資料)

 資料4—1 がん検診の精度管理について(斎藤構成員提出資料)

 資料4—2 がん予防重点健康教育及びがん検診実施のための指針について 精度管理

       の観点から改訂が必要と考えられる点(斎藤構成員提出資料)

 資料4—3 検診機関チェックリスト/仕様書に明記すべき必要最低限の精度管理項目

       〈変更案〉(斎藤構成員提出資料)

 参考資料1—1 市区町村におけるがん検診の実施状況調査 一部暫定集計状況(7月

         1日時点)

 参考資料1-2 市区町村におけるがん検診の実施状況調査 調査票

もし資料に不足、乱丁等がございましたら、事務局までお申し出ください。

 また、構成員、参考人の皆様方の机上配付資料といたしまして、第4回、第5回検討会の資料及び平成20年3月に「がん検診の事業評価に関する委員会」が取りまとめられました報告書を置かせていただいております。適宜、御参照いただければと思います。

 撮影のほうは、以上をもちまして御遠慮いただければと思います。

 この後の進行を大内先生、よろしくお願いいたします。

(報道関係者退室)

○大内座長 それでは、本日の議題に入りたいと思います。

 本日の議題は「がん検診の受診率向上施策及び精度管理について」でございます。

 前回の第5回におきましては、がん検診の受診率向上施策につきまして、菅野構成員、渋谷参考人、福吉参考人、山本参考人よりヒアリングを行いました。今回は、その議論を踏まえ、今後の受診率向上施策のあり方について、さらに議論を深めたいと思います。もう1点は、精度管理のあり方についても斎藤構成員のほうから提示いただきまして、議論を始めたいと思います。

 まず、受診率の向上施策につきましては、最初に日本対がん協会の小西参考人から、日本対がん協会における受診者の推移等のデータを御紹介いただきます。その後で事務局から受診率向上についての論点案を提示していただきまして、さらに松田構成員からこの論点に関しまして福井県の状況の説明をいただきます。その後に皆さんで討論させていただきます。

 第2点の精度管理につきましては、お手元の冊子体に平成20年の資料がありますけれども、「がん検診事業の評価に関する委員会」で作成されたチェックリスト等の見直しが今、行われておりまして、がん検診の精度管理における現状、課題等について斎藤構成員からお話しいただきました後に、議論を進めたいと思っております。

 では、早速ですが、小西参考人のほうから、御説明をお願いいたします。

○小西参考人 日本対がん協会の小西です。それでは、よろしくお願いいたします。

 日本対がん協会は、主に自治体から住民検診、がん検診を受託して、検診業務を行っております。全国自治体のうち6割から7割ぐらいを受託しております。

2009年度に、乳がんと子宮頸がん検診におきまして、女性特有のがん検診ということで無料クーポン券が導入されました。それによってどのように受診者数が推移するか、日本対がん協会は基本的に受診率というのは実態的に出せないので、受診者数の推移を見ております。無料クーポン券が導入されたことによって受診者数がどのように変化するのかということに関しまして、導入されました2009年度の翌2010年度から毎年6月ごろに調査を実施しております。ことしは導入から5年目ですけれども、4年間一体どういう状況であったのかということを、過去の調査を踏まえて、新しい調査を加えて振り返ってみました。それを報告します。

 6月半ばに私どもの41支部で検診を行っておりますけれども、アンケート調査をしました。回収が31支部からですので、回収率がちょっと低くてまだ中間的な段階ということを前提にお話をお聞きくだされば幸いです。

 まず、2ページ目ですけれども、下の段の表に、無料クーポン券が配られている乳がん、子宮頸がん、大腸がんの受診者数の推移をあらわしてございます。この表の説明の「3年間継続受注自治体に限定」というのは、数字を比較する上で、受注している自治体数に変化がございますと比較できませんので、過去3年間、少なくとも2010年、2011年、2012年度の3年間において同一自治体から受注している、そういう自治体を限定して、乳がん検診、子宮頸がん、大腸がんの受診者数の推移がどうなったかということを調べています。

 実際の受診者数は70万とか90万の数なのですけれども、対前年度比を右側の表に出しております。2010年度を1とした場合、2011年度が乳がんの場合は1.01、ほぼ横ばいですけれども、2012年度は0.93、やや減少、そういうふうに見ていただければと思います。大きな変化はここ2年間はないというふうに見ております。

 今のは受診者数全体でしたけれども、3ページ目の表は、クーポンを配布している対象年代、年齢においてどうなったかということを調査しております。上から乳がん、子宮頸がんで、大腸がんの男性と女性となっております。左側の表の右側に小さく「n」とありますのは、有効回答だった支部数です。数字のデータのとり方が違っているところがございますので、若干分母が変わっております。

 乳がんですけれども、前年度比で見ていきますと、2011年度、2012年度は、やや減少傾向かなという印象です。

 子宮頸がんにつきましても、一部ふえている部分もありますけれども、全体として横ばいもしくは減少傾向というところが見てとれるかと思います。

 大腸がんに関しましては、導入が2011年度でしたが、私どもの支部の大腸がん検診受診者数が2011年度は2010年度に比べて2倍前後になっているということです。女性の場合は、年齢が高くなるとその増加率は少し下がりますけれども、40歳においては2011年度は2倍、2012年度も13%の増加が見られたということです。

 次の4ページの表は、これまではクーポンを配布した年齢全体を見たわけですけれども、そのうち初回受診者がどれだけあったかというものです。過去3年以上検診を受けていなかった方を初回受診者としておりますが、それがこの表です。乳がんと子宮頸がんに関しましては、やや減少傾向、大腸がんに関しましては、2011年度はかなりふえている。継続して受診している人を含めた数よりも初回受診者の方に関しては伸び率が高かったということがいずれの年代でも言えるかと思います。

 次の5ページのグラフですけれども、これは今年度の調査と過去の調査を比較して並べたものです。2011年度の調査におきましては、上のグラフですけれども、2008年度と2009年度に注目していただけるとわかりやすいかと思います。2008年度は無料クーポン券を導入する前の年、2009年度が導入された年です。その後は配布が続いていっている年の推移です。2008年度から2009年度にかけては、乳がん、6ページ目の子宮頸がん、いずれも受診者数が非常にふえております。

 7ページの大腸がんですけれども、全体としては乳がんや子宮頸がんほどの伸びはなかったという印象があります。

 8ページ目のグラフですけれども、赤い線がクーポン対象年齢者の推移です。黒い線が全体の数字です。上のグラフですが、2008年度から2009年度、2010年度は、やはりクーポン対象者においては伸びが非常に高かったと感じております。その下は2013年度の調査ですけれども、横ばいか、やや減少ぎみという傾向が見てとれます。

 9ページ目は子宮頸がんです。乳がんよりも子宮頸がんのほうが非常に伸びが高い。導入した2009年度並びに2010年度もその効果がやや続いていたという印象です。ただ、2010年度以降余り伸びていないという状況です。

10ページ目は大腸がんに関しての調査です。大腸がんに関しても、乳がんや子宮頸がんほどではないのですけれども、同様の傾向があったかと感じております。

 クーポン券と同時に配布されましたがん検診手帳、これに関して私どもの検診業務に携わっている者にアンケート調査をした結果が11ページです。無料クーポン券を導入して4年が経過したが、その効果についてはどのように感じるかということが、一番下の表をごらんいただくと出ています。「受診率が伸びてきた。このまま継続すればいいと思う」というところもある一方で、「受診率は伸びたが、頭打ちの傾向がある」。要するに、2008年度から2009年度にはぐっと伸びたのですけれども、それ以降の伸びはなかなかなくて、頭打ちもしくは減少傾向にあるということで「新たな活動も必要ではないか」というのがほぼ半数近い支部からの回答でありました。

12ページは、中間的な報告、まとめなのですけれども、今も申し上げましたとおり、導入初年度はぐっと伸びた。これは、無料クーポン券、無料だったということに加えて、マスコミ等でかなり大々的に報道されたということ、無料クーポン券が各検診受診対象者に個別に配布されたといったこともあって、かなり大幅に伸びたと感じております。一方で、その伸びは一旦上がったのだけれども、過去3年間を見る限り横ばいで、それ以上の伸びはない、もしくはやや減少傾向を見せているということで、現状の無料クーポン券をこのまま続けてもこれ以上の伸びは見込めないという印象です。ただ、ここで無料クーポン券をやめてしまうと一旦上がったところがまた下がってしまう可能性は否定できません。ということで、今の無料クーポン券に加え、何らかの新たな施策が必要ではないかと今のところ感じております。

 以上です。

○大内座長 ありがとうございました。

 ただいま小西参考人から、日本対がん協会の関係する各支部、提携団体のデータをもとに無料クーポン券の効果に関するアンケート集計報告をいただきました。導入直後の1年目、2年目には顕著な増加傾向がありますが、それ以降はやや減少傾向にあるということで、新たな啓発活動あるいは受診率向上施策が必要ではないかというのが論点かと思いますが、御質問はございますか。

 では、祖父江構成員。

○祖父江構成員 無料クーポン券を配るのは5歳刻みですね。子宮頸がん、乳がんに関しては2年に1回の受診ということになっていて、ちょっと整合性をとりにくいところですね。そういうのを自治体はどう整理してやっておられますか。

○小西参考人 無料クーポン券は、基本的に2年というのは、気にせずと言ったらおかしいのでしょうけれども、2年のはざまに入った人には配らなかったかというと、決してそういうことはなくて配布されていますので、3年連続受診という方もいらっしゃるというのが実情かと思います。そういったことも踏まえた、クーポンを配布した人たちの受診者数というのが今お示しした数字です。その部分、では2年に1回という例えば子宮頸がん、乳がんですけれども、指針どおりに自治体が実施したかというとそうではない。ですので、かなり事務が繁雑になったということは聞いております。

○大内座長 子宮頸がん、乳がんに関しては隔年検診ということがうたわれていましたので、無料クーポン券の導入によって逐年検診の数もふえたということも事実ですが、恐らく自治体ごとに対応も一定ではなかったと思います。

 ただ、今、小西参考人が言われたのは、日本対がん協会の各支部においてはそういった逐年検診のデータも入ってきているということが実態で、多分、全国的に無料クーポン券を配布するときに厚生労働省のほうからも都道府県等に対して説明もあったと思うのですが、基本的には乳がん検診、子宮頸がん検診については隔年検診というのががん検診の指針でうたわれているので、それを前提とした形での受診勧奨があったと記憶していますが、いかがでしょうか。

○祖父江構成員 ということは、無料クーポンは、具体的には乳がんであれば40歳、45歳、50歳、55歳までですか。60歳までですかね。通常は2年に1回の受診を勧奨するのだけれども、それに加えてエキストラに45歳と55歳に関しては無料クーポンを配った、そういう理解でいいですか。

○小西参考人 はい。

○大内座長 2009年ですので、今、そのときの対応を細かく確認はできないと思いますが、祖父江構成員の御質問というのは、隔年検診が標準である乳がん、子宮頸がんに対してどのようなクーポン券の配り方をしたのかということですね。そのことについては、今の答え、全てではないと思いますので、自治体とかの対応によってもまちまちだと思いますが、対がん協会が把握しているのにはそれがまじっているということですね。

○小西参考人 そうです。対がん協会は受診に来られた方の数字を把握しているということですので、基本的にどのような配布をされて受診券を手にしたかということに関してまでは把握できていません。検診機関側として、40歳、例えば偶数年齢で配られる本来の検診のはざまに45歳と55歳が入っているわけですけれども、全てとは言いませんが、その方たちも来られたという数字だと思います。

○祖父江構成員 私の言いたい点は、受診数が伸びたということと、目標とすべき2年間隔で少なくとも1回受けた受診率というものと1対1になっていないところがやや注意すべき点かなと、そういう点です。

○大内座長 そのとおりだと思います。がん検診の受診率を計算するには、子宮頸がん、乳がん検診については2年に1度ということでうたわれておりますので、そういった観点からの質問だと思います。そういったデータの出し方ではないということは言えますね。

 斎藤先生、何かありますか。

○斎藤構成員 受診率以外の面への影響を、都道府県での情報を基にコメントしておきます。

 一つは、奇数年にクーポンが配布された受診者の台帳管理に支障を来したということを少なからず聞いております。

 もう一つは、自治体のほうには、平成19年に隔年にしたことに対する理解が、本来逐年のほうがいいという誤解と、隔年があるべき検診間隔だという正しい理解と両方あるわけです。そのときに、正しい理解の自治体が正しく進めようとする上で支障になったということも把握しています。

 受診者側へのメッセージとしても毎年受けるのがやっぱりいいということになり、受診者側の理解の妨げになっているかもしれないという情報も聞いております。

○大内座長 がん種ごとの受診間隔、逐年と隔年とがありまして、そこに混乱を招いたことも事実です。そういったことでの追加の質問ということでよろしいでしょうか。

 ほかになければ進めさせていただきますが、では、事務局のほうから受診率向上施策について論点を整理していただきましたので、まずこの御説明をお願いいたします。

○事務局(吉本) では、資料2をごらんください。これまでの「がん検診受診率向上施策に関する議論の整理及び論点案」をお示ししています。

 まず、2ページ目ですが、第4回、第5回検討会の経緯ということで、矢内参考人、本日もお話をいただいた小西参考人、前回は菅野構成員を初め、渋谷参考人、福吉参考人、山本参考人から具体的な事例等をお話しいただきました。また、下の四角には第4回で提示した論点案を記載しております。

 次の3ページ目からですが、「がん検診受診率向上施策に関する議論の整理」ということでマル2からマル5までまとめております。簡単に御説明をしていきます。この整理は、今までの議論でしたので、また本日の御意見等も踏まえて修正といいますか、追加をしていきたいと思っております。現時点での今までの整理です。

 まず、3ページ目の1ポツ目ですが、御存じのところと思いますが、がん検診の受診率は、がん対策推進基本計画で50%、胃と肺と大腸は当面40%の目標を掲げています。ただ、3年に一度実施されている国民生活基礎調査のデータによりますと、がん検診の受診率は、市町村以外、職域や個人で受診する検診を含めても2~3割程度であるということです。

 受診率向上施策の考え方については、お手元にお配りしている、平成20年に「がん検診の事業評価に関する委員会」が取りまとめた報告書において、個別受診勧奨、利便性の向上、PR活動などを組み合わせることが重要ということで指摘がされています。しかし、今回、市区町村にお願いをして実施したアンケート調査によりますと、何らかの形で個別受診勧奨を実施している市区町村は5~6割程度でした。また、再勧奨を実施していると回答いただいた市区町村は2~4割程度にとどまっていました。

 次のページをごらんください。4ページ目には、がん検診推進事業についての記載をしております。厚労省では平成21年度から5歳刻みの方にクーポンを配っています。クーポンの利用率をここに記載しております。

 表のほうも用意しておりまして、13ページをごらんいただければと思うのですけれども、無料クーポンの利用率は、がん検診推進事業の対象者を分母として、無料クーポンの利用者数を分子として計算したものです。子宮頸がん検診であれば2123%台、乳がん検診についても24%台程度、大腸がん検診については男性が低く9%台、女性は18%、こうした結果でございました。

 4ページに戻っていただきまして、こうした無料クーポン事業なのですが、がん検診推進事業の開始前後で市区町村のがん検診の受診者数を見てみますと、子宮頸がん・乳がん検診では、平成20年度から平成21年度にかけて、小西参考人から今お話をいただいたように、事業対象年齢を含んだ年齢階級において受診者数がかなり増加しているということが認められています。ただ、これは地域保健・健康増進事業報告というもので把握をしているものなのですが、これは5歳階級ごとの把握ですので、その年代が把握できないといった限界はございます。平成21年度以降は、同様の増加というのは見られませんでした。

 大腸がん検診は、23年度からクーポンを配っておりますけれども、22年度から23年度にかけて、やはり乳がん、子宮頸がんと同様に受診者数の増加が見られました。

 次のポツですけれども、国民生活基礎調査によると、これは職域も含んだ受診率をアンケートのような形式で把握していますが、子宮頸がん・乳がん検診は、クーポンの配布前後で、配布前の平成19年と比較して平成22年では上昇傾向が見られていました。

 暫定的ではありますけれども、以上より、がん検診推進事業の効果は一定程度あったものと考えられるということが言えるかと思います。一方で、ただいま申し上げたとおり、市町村からの受診者数の把握が5歳階級であること、今、御指摘いただいたとおり、当該年度における2年連続受診者の把握が困難であること、また無料クーポンを利用した方のうち前回まで職域で受けていた方がどの程度含まれているのか、つまり職域まで含めた影響がどの程度であるのかが不明であること、また国民生活基礎調査が3年ごとであるといったことなどから、全国的に詳細な評価を実施するにはまだまだ課題があるといったことが言えるかと思います。

 5ページに行っていただきまして、今までのは全体的な無料クーポンに関するデータでございますが、また一方では一部の自治体や研究によって具体的な事例もいただいているところです。

 マル1として挙げていますのが、無料クーポンの効果としては、自己負担の軽減によるものと個別受診勧奨によるもの、それぞれが考えられるわけですけれども、前回の検討会で福吉参考人から御提示いただいたものを1つ目の米印に記載しています。事例としましては、従来から乳がん検診を自己負担500円で実施していた自治体で、この推進事業の対象者に対してクーポン券と検診手帳を配布した。それ以外の一定年齢の方には、自己負担が500円で受けられると明記した受診券を配布したところ、以前から自己負担500円であったのですけれども、何も配布していない方のグループの受診率が12%であったのに対して、無料クーポン券を配布したグループでは22.2%、500円の受診券を配布したグループでは20%にいずれも上昇したとの報告をいただきました。

 また、下の米印は、前回、渋谷参考人からお話をいただいたものです。従来からがん検診を無料で実施していて、乳がん検診については70%台の高い受診率であった自治体において、さらに無料クーポン券と検診手帳を配布したという事例ですが、この事業開始後に70%の受診率を誇っていたので、さらに数パーセントの上昇が見られた。子宮頸がんについては、20代、30代で、特に20代の受診率が著明に上昇したというお話を前回いただきました。

 これらのことから、がん検診推進事業の個別受診勧奨には大きな効果があり、自己負担の軽減にも一定の効果があるものと推測されると記載をしております。

 マル2といたしましては、無料クーポン券の効果の持続ということで、これはさらなる取り組みが必要ではないかと記載しています。具体的な事例としては、前回、菅野構成員からお話をいただいたものなのですけれども、無料クーポン券を配布した年度の対象者においては、八王子市では受診者数が4~5倍程度に増加したというお話をいただきました。しかしながら、その対象となった方が再び乳がん・子宮頸がん検診の対象となる2年後には、過去に無料クーポン券を利用してくださった方においても、特段の個別勧奨をしない段階では、2年後の予約をいただいた方というのが子宮頸がんは16.9%、乳がんは24%程度であったということでした。そこに個別受診勧奨を加えることにより予約率を2倍程度に向上させることができたといったお話をいただきました。

 また、最後のポツといたしまして、がん検診推進事業の副次的な効果としては、市区町村が一定年齢の住民の全員に対して無料クーポン券を配布したことによって、対象年齢の住民の網羅的な台帳やデータベースが整備されることになり、またクーポンを利用した方については受診状況が台帳やデータベースに登録される体制が整いつつあるといった副次的な効果があるのではないかという御指摘もいただいたところです。

 6ページをごらんください。これは無料クーポン券とは別の話に入っていきますが、一部の自治体や研究でソーシャルマーケティングの手法を取り入れた個別受診勧奨を実施した事例ということで、前回、福吉参考人、渋谷参考人、山本参考人等から御報告をいただきました。多様な住民の特性を把握して受診を勧奨することの重要性や、今後は得られた知見をどのように広げていくかということが課題であるといった御指摘をいただきました。

 2ポツ目として、これは職域のがん検診の話なのですけれども、がん検診は、健康増進法に基づいて市区町村が実施する検診のほかに、保険者や事業者が任意で実施する検診や個人が任意で受ける人間ドッグなどがあります。がん検診受診者のうち、4~5割が任意で実施するがん検診を受診していると推測されています。厚生労働省では、こうした職域のがん検診も重要な役割を占めているということで、平成21年より保険者や事業者の協力を得て、職域における普及・啓発活動を「がん検診企業アクション」ということで実施しているところです。

 7ページをごらんください。これらを踏まえまして「受診率向上施策に関する論点案」ということでまとめております。上の四角ですけれども、今、申し上げたとおり、がん検診推進事業の実施もあって、市区町村によるがん検診を受診した方については台帳やデータベースに登録される体制が整いつつあります。一方で、職域における受診機会の有無などまで把握することは困難であるといった現状があります。今後のさらなる受診率向上施策としては、検診の対象者を今までのように一律ではなくて、下の図のように分けて考えて、それぞれの特性に応じて今後必要となる対応を検討してはどうかということで示しております。

 下の図をごらんいただきますと、この四角全体が住民と思っていただきまして、真ん中の丸が無料クーポン券を使用して市区町村が実施するがん検診を受診した方です。これは具体的には2~3割程度ということかと思います。その背景といたしまして、左側は職域でがん検診を受診する機会がない方、右側は職域でがん検診を受診する機会がある方、2種類あります。職域でがん検診を受診する機会がある方の中にも、マル2のように職域で受けたので無料クーポン券を使用しなかった方もいれば、マル3のように職域で受診する機会があるけれども受診していなくてクーポンも利用していない方もいるということです。行ったり来たりしますけれども、マル4のように、職域でがん検診を受診する機会がなくて、さらに無料クーポン券も利用していない方もいらっしゃる。こうしたことに分けて議論してはどうかと考えております。

 具体的に事務局といたしまして、今までの議論を踏まえてこうではないかというのを下にまとめています。

 マル1については、つまり無料クーポン券を利用して受けていただいた方には、継続したコール・リコールが必要ではないか。

 マル2の職域で受けたので無料クーポン券を利用しなかった方には、継続した職域からの受診勧奨を御協力いただくということが必要ではないか。

 マル3については、職域で受診機会があるけれども受けなかった方ですので、市区町村と職域との連携による受診勧奨のほか、市区町村がソーシャルマーケティングの手法を踏まえてきめ細やかな受診勧奨をすべきではないか。

 マル4については、市区町村として、マル1マル2マル3の実態把握をすることでマル4に当たる方がどこにいるのか、誰なのかということを把握した上で、ソーシャルマーケティングなどの手法を用いてきめ細やかな受診勧奨、受診率向上施策をすることが必要ではないかと記載しています。

 最後に、市区町村がこれらの職域での受診勧奨を把握するために、職域との連携を今後さらに推進することが重要ではないかということでまとめております。

 済みません。長くなりましたが、これ以降の資料については、今までの関連する受診率やデータをまとめております。また、平成20年度の報告書で特に関連するところを抜粋しております。

 また、参考資料の1-1と1-2といたしまして、今年の4月から5月にかけて市区町村に協力いただいて実施したアンケート調査の中で、特に受診率向上施策や精度管理にかかわることについて項目を抜粋して暫定的に集計したものを添付しておりますので、議論の際に適宜御参照いただければと思います。また、これ以外の項目も記載をしていただいておりますので、最終の結果はまた次回の検討会で御報告したいと思っております。

 以上です。

○大内座長 ありがとうございました。

 事務局のほうからがん検診受診率向上施策に関する論点の整理を行っていただきました。今までの参考人あるいは構成員等からの意見を踏まえたまとめとなっております。

 7ページにありますポンチ絵は、通常の市町村によるがん検診と職域でのがん検診ということで分けて考える必要もございますので、国民全体を網羅的にカバーできるような視点で検討できるようにということで提示があったと思います。

 ちょっと誤植がありましたけれども、7ページの図の上、「職域でがん検診を受診する機会がない者」ということで訂正願います。右側が「機会がある者」ですね。こちらは保険者や事業者が任意で実施するがん検診ということになります。その対応ということで下に5点が記載されていることになります。

 関連しまして、議論をいただく前に、松田構成員のほうから、この件にも関連しますので、福井県の事情について御説明願います。

○松田構成員 

福井県健康管理協会の松田でございます。

 健康管理協会と申しますのは、対がん協会グループの福井県の支部という呼び方を従来しており、福井県内の全ての市や町のがん検診をほぼ100%独占的に行っております。

 もう一つは、先ほどから職域というお話が出てきたのですが、職域で一体どれだけがん検診が行われているのかということを5年前から把握してきて、ことし6年目になり、まだ今年の数字は公表されていないので、昨年出た数字までをお見せしたいと思います。

 私のスライドだけ文字が大き過ぎて見にくいかもしれませんが、お許しください。

 国民生活基礎調査による受診率と、県内でどれだけがん検診が行われているかという全数調査というものがどれぐらい違っているのか、あるいは似通っているのかということも含めてお話ししたいと思いますし、私が専門にしております大腸がん検診の無料クーポンが本当に効果があったのかどうかということを今の観点でお話をしたいと思います。

 ちなみに、福井県は人口が80万人弱しかございませんし、私どものところが全ての市や町の検診を行っているということ、県をまたいでの受診が非常に少ないということ、県外の検診機関がほとんど入ってきていないということ、特殊なクローズドな集団なので、こういう数が把握できると御理解いただければと思います。

 2ページ目ですけれども、がん検診の形態は先ほど御説明もありましたが、地域で私どもがやっている検診と職域検診というものがあります。実はこちらのほうがクーポン券事業の対象者は非常に多いのですが、どれだけ行われているのかよくわからない。

 もう一つは完全に自己負担で純粋な任意型の検診として行われているものもあります。これも全くわからない。我々が持っているものは地域の検診で、これが地域保健・健康増進事業報告ということで報告をされているだけで、知らない数字が余りにも多過ぎるということをぜひ御理解いただければと思います。

 受診率をどうやって把握しようかというときに、国民生活基礎調査というものが3年に1回集計されておりまして、これで例えば県なりの比較をしよう、あるいは全国的な受診率がどうなったのか把握しようということですが、これは正しいのか、何か問題はないのかというと、聞き取り調査なので、受診に関する記憶は非常に曖昧です。検診機関は、初回受診かどうかというときには、本人の申告ではなくて必ず我々のところに受診歴があるかどうかで見ているので、そういう意味ではちょっとアンケートに関する調査とは違っています。本当に今、質問しているものががん検診だと理解しているのかどうか、そういう疑問もあります。

 例えば、便潜血検査は大腸がん検診と思っている方はまだまだそんなに多くないかもしれませんし、胸部のエックス線を肺がん検診と思っていない方は実は非常に多いので、このあたりの問題があります。

 もう一つは、病院で自覚症状があって検査を行った場合、それをがん検診と答える人が決して少なくないだろうということがあります。

 ちなみに、大腸がん検診受診率は、日本の国民生活基礎調査と米国のナショナル・ヘルス・インタビュー・サーベイを見てみますと、非常に大規模な調査をやっているのですが、押しなべて半分ぐらいなので、同じような答え方をしているのかなと思って、書いておきました。

 次が全数調査、2011年の数字です。地域と職域で受診率が随分違っているということです。肺がん検診は職域では8割方受けています。合計というのは、例えば40歳以上、あるいは乳がん、子宮頸がんであれば20歳以上の全ての県民を分母にした数字を拾っております。これは私どもが行った地域の検診と福井県医師会の全ての施設で行ったがん検診ですから、症状の検査は全く含めずに、あくまで検診という名のもとに行われた数のみを申告するようにとお願いしているのですが、そうすると、胃がんが21.6%、肺がんが54.1%、大腸がんが27.3%という数字になっているのをごらんいただければと思います。これが全数調査の結果です。

 次、5ページ目をごらんいただきますと、人間ドックなどの職域検診と地域で行われている検診が違っているのかというと、実はほとんど同じです。ただ、決定的に違っているがん検診があって、これが胃がん検診なのです。胃がんは今度また議論になるのかもしれませんが、医療機関では6割方、内視鏡です。もっと多い医療機関もあると思いますが、一方で地域では、福井県内ではまだ内視鏡検診を行っておりませんので、全て100%エックス線です。ほかの肺がん、大腸がん、乳がん、子宮頸がんは、地域の検診と職域はほとんど同じだということもごらんいただければと思います。

 次のページをごらんください。2010年の国民生活基礎調査による受診率が出ております。これは全国と福井で比較していますが、全国も福井もほとんど同じ回答をしているということが見てとれます。福井の受診率が全国平均よりちょっと高い。全ての項目がそうなので、異なった回答をしているわけではないのですが、先ほど申し上げた全数調査で2010年と比較をしてみますと、実は非常に違っているのです。大腸がんはまあまあ似通った数字かと思いますが、胃がんは、本来がん検診を受けてはいないのに「がん検診を受けた」とアンケート調査で答えている。肺がん検診は「私は受けていない」と答えていても、実は相当数の人が受けている。この2つの検診については相当なギャップがあります。都道府県の比較は同じ傾向なので、それはいいのかもしれませんが、そういう問題点があるということはぜひ認識してこれから使っていく。経緯を見るのはいいのかもしれませんが、必ずしも正確な数字をあらわしていないというふうにお話をしたいと思います。

 次は7ページ目、無料クーポン券ですけれども、先ほど申し上げた全数調査と無料クーポン券を配ったときに、先ほど事務局からの御説明もあったのですが、本当にがん検診を受けているかどうか、そういう調査にもぜひ無料クーポン券を使ったらいいのではないか。要するに効果判定も含めたもの、個別の受診勧奨だけではなくて、受けたかどうかの確認にも使っていただいたらいいかなと思っています。

 8ページ目が大腸がん無料クーポン券の効果です。2011年から始まりまして、結論から申し上げますと、地域の検診はとても増えています。私どもの大腸がん検診受診者数はとても増えていますし、今も増え続けています。一方で、職域と呼ばれる検診の数が同じ数だけ減っています。ですから、前年度は職域で受診した人が地域へシフトしてきたと言われてもおかしくない。ただ、2010年はちょっとふえているので、これは単年度の経過だけかもしれませんが、職域の検診というのは企業の業績によって幾らでも削られてしまう可能性があって、その人たちが我々の目の前にやってくると、あたかも受診率が非常に上がっているように見てしまう。そして、これまで私どもの検診を受けていない人たちが我々の目の前に来ると、その人たちは初回受診者とカウントされてしまうので、あたかもクーポン券が初回受診者をふやして受診率を上げているというふうに見てしまう可能性があるので、全体像を把握することが必要だということを強調したいと思います。あと、4059歳で数がふえたのかどうか、60歳が抜けているので非常に申しわけないのですが、クーポン券の対象になった人たちは実は減っている。なぜか。職域の数が減っているからだと思います。

 こういうことも踏まえて、9ページにありますが、クーポン券を全ての人の受診勧奨に使う。地域の検診を受ける人もいる。職域で本来受けられる人もいれば受けられない人もいる。受けられない人たちは全て地域の検診に誘導する。職域でそのまま受けられる人はそのまま受けてください。ただ、どこで受けたのか、あるいは受けるつもりがないのかどうかということもクーポン券とセットで把握する必要があるのかなということと、前回、菅野構成員からもありましたが、職域ががん検診を減らしてくる可能性は多分にあると思うので、その人たちを全部地域の検診に抱え込むだけの覚悟が必要だと思います。それともう一つ、それだけのスクリーニングできるのかどうか、精検ができるのかどうかということも踏まえて、これから検討していく必要があると思います。

 最後、まとめとしては、今、申し上げたとおりなのですが、やはり効果があるのかどうかということも含めて、受診率は職域の把握を抜きにしては語れないので、どういう形がいいのか。福井の全数調査は極めて例外的にできるのだと思いますので、全ての人にクーポン券を配っているこの事業を一つのモデルとして、サンプリング調査でもちろん構いませんが、受けているのか受けていないのか、受けるつもりがないのか、どこで受けているのかということを把握することと、行く行くは職域の検診の精度管理ということにも踏み込んでいかないといけないと思います。

 済みません。長くなりました。以上です。

 

○大内座長 ありがとうございました。福井県における実態調査、特に全数調査というのはほかの県でなかなか得られないデータですので、参考になるかと思います。

 結論にありますように、働く世代のがん検診推進事業ということが最初にうたわれていますが、やはり職域を含めた受診率の向上が欠かせないであろうということでの提案でございます。

 それでは、これから受診率向上に関しての議論を深めたいと思いますが、先ほど事務局のほうから提案のありました論点案、資料2に戻っていただきまして、7ページがそのまとめになるかと思いますけれども、事務局、それから松田構成員の今の説明について、まず構成員のほうから御質問があればいただきます。

○菅野構成員 事務局がまとめていただいた論点案の7ページのマル3のまとめの「市区町村等によるソーシャルマーケティングの手法を用いたきめ細やかな受診向上施策」ということなのですが、これは職域の人に対しても市町村がやるというイメージをおっしゃっているのでしょうか。

○事務局(吉本) こちらのイメージは、職域で受診機会があっても受診されないという、クーポンや画一的な受診勧奨が響かないような層であるとも考えられますので、そこは市区町村からもきめ細やかな受診向上施策が必要ではないかというイメージでここに記載しております。

○大内座長 いいですか。何か意見は。

○菅野構成員 現状では、さすがに職域のがん検診を受けたらどうですかとまでは言っていないので、それが職域連携なのかなと思いながら、ちょっと質問しました。

○大内座長 ほかにいかがですか。どうぞ。

○福田構成員 私も7ページなのですけれども、まず住民をこういうような形で区分して、それぞれのターゲットに対してどうアプローチをとるかというのを議論するのは非常にいいと思うので、そこの整理はいいかなと思っています。

 確認のためにお尋ねしたいのですけれども、もともと無料クーポンは5年ごとに出すわけですから、この図を描くのは5年ごとのイメージなのでしょうか。つまり、無料クーポンは来ていないけれどもという年齢の方がいらっしゃるわけで、例えば地域で言うと、マル4に入っている中で、クーポンの対象者ではない年齢層で受診している人もいるし、していない人もいるはずなので、本来そこを分けるという考え方もあるような気がするのです。

○岡田がん対策推進官 そうです。基本的にはおっしゃるとおりで、クーポン券は5歳刻みということでやっていますので、そういうことなのですけれども、今年度中に5年間たつということも前提に、これまでの一段レベルアップしたところをこの先さらにもう一段上げていくにはどうしたらいいかという視点で提案させていただきました。

○福田構成員 そうすると、例えばマル1の無料クーポンを使用して受けたという中には、その年ではなくて過去何年かのうちに受けたという方も入るということですね。

○岡田がん対策推進官 はい。

○福田構成員 マル4ではなくてということですね。例えば該当する年齢ではないのですけれども、該当するときには受けましたという方はマル1に入るということでよろしいですね。

○岡田がん対策推進官 そうですね。そういうつもりです。

○福田構成員 わかりました。

○大内座長 ほかにいかがですか。

 いわゆる市町村事業と職域検診とに分けたのはいいのですけれども、一方で、今、福田構成員から指摘されましたように、無料クーポンのことを前面に押し出すと、これが継続されるということが前提になってくることも憂慮されますので、その点についてはまだ国がどう判断するかわかりませんから、もう少し違った整理の仕方も必要かと思います。

 実態としてはこういった資料が出てきたわけですが、無料クーポンの扱いについてはここで決めるわけではございませんので、私たちはこの検討会として受診率向上のためにどんな解決が必要かということの議論だと思います。その点からもう一度御議論いただければと思います。いかがですか。どうぞ。

○斎藤構成員 ちょっと細かい点ですが、これまでの参考人のプレゼンテーションにも共通してあったように、コール・リコールが一番基盤になることはエビデンス上も揺るぎがないということは、多分皆さん異論がないと思います。それに関連して、参考資料1—1の1ページ目の2のマル1で「がん検診の対象者の把握状況」を聞いています。これは非常に重要なのです。ここで数字を見ると、排他的にこの5項目を聞いていると思います。足し上げて100%になります。

 一番上の「名簿が何かしらの形で存在する」というのはどういう定義で聞いているのでしょうか。「何かしらの形」というのは、作成しようと思えばできるけれども、実際には対象者名簿としてはまだ使えるようになっていないのもかなり入っていると思うのですが、そのあたりどういう聞き方をしているのでしょうか。

○事務局(吉本) 済みません。今、気づきましたが、これは回答のほうが切れてしまっておりましたので、参考資料の1—2の調査票のほうをごらんいただきますと、最初のページの問1で選択肢の「ア」として聞いております。「40歳以上(子宮頸がんは20歳以上)の住民全ての名簿が何かしらの形で存在する」と、こちらで聞いております。

○斎藤構成員 了解しました。これを重要視するのは、基盤を整備するのにこのパーセンテージがどのぐらいかというのは非常に重要と思うのです。この83%は、今のお話ですとスタンバイできているという市町村の割合ではなくて、ポテンシャルがある自治体の割合であるという解釈でよろしいですね。

○事務局(吉本) そうですね。「何かしらの形」として聞いておりますので、そういったポテンシャルがあるということかと思います。

○斎藤構成員 ありがとうございます。

○大内座長 今回の無料クーポン事業の中で皆さんお認めいただけるのは、名簿、台帳の整備というのがかなり進んだのではないか、しかもそれは地域、職域、問わず、全数調査へのきっかけになるのではないかというのは同じ思いを持っているかと思います。

 今、提示のあった参考資料1—1、詳しい説明は時間の関係でなかったのですけれども、これは途中経過ですが、このようながん検診の対象者の把握状況があるということで、少なくとも前向きに台帳整備をやっているところが83%になっているということは少し明るい兆しかなと思っております。

 何回か議論になりましたけれども、台帳、データベースの整備についてはしっかりと本検討会では書き込むということが必要かと思いますが、よろしいでしょうか。

○斎藤構成員 さっきの補足ですが、ポテンシャルがあるのとスタンバイできているのとはちょっとギャップがあり、実は我々の2年前の調査で、共同通信と共同調査なのですが、首長さんにインターネット調査をしていて、40%が台帳の整備と個別受診勧奨が重要な施策として挙げています。ですから、実態はそれほど整備がされていない可能性があるということです。多分、財政的な問題で、83%がスタンバイできているというよりは、するポテンシャルはあるのだけれども、実現はまだできていないのかもしれないと思います。○大内座長 そろそろまとめに入って、受診率向上施策に関しては、議論を集約した上で、さらに後で事務局のほうでもんでいただいて、次回への提言に行きたいのですが、資料2の7ページに5つの観点がございます。

 マル1について、コール・リコールの必要性、皆さん必要性については認めておられると思います。

 マル2は、職域からの受診勧奨をさらに促すということですね。

 マル3は、市町村と職域との連携、さらにソーシャルマーケティングの手法を用いたきめ細やかな対策です。先ほど菅野構成員から、これを市区町村に押しつけるのはいかがなものかというところで、気になるところでありますけれども、まとめ方とすればやむを得ない表現ですかね。

 マル4は、マル1・マル2・マル3を区分して明らかにした上で対応するということになります。

 骨格としてはこのような形で進めたいと思っておりますけれども、祖父江構成員、どうぞ。

○祖父江構成員 確認ですけれども、マル1マル2マル3マル4を継続的に個人の名簿として管理していくのを市町村が主体として行うというイメージですか。

○岡田がん対策推進官 はい。今の検診の全体像からして、市町村にマル2マル3マル4も含めて管理していただくという方向だと理解しております。

○祖父江構成員 となると、無料クーポンを行って受診した人、あるいは無料クーポンを配る際につくった個人の名簿、これは存在していると思いますけれども、マル2マル3の区別というのは個人単位では市町村にはないですね。企業側からとか検診機関側から個人単位で情報を得る、そういう意味での連携を職域と行うということですか。

○岡田がん対策推進官 我々は、そういう方向性というのはどうなのかというのを先生方にお聞きしたいのです。

○祖父江構成員 それはかなりの作業量を伴うということなので、相当覚悟を決めてやらないと、必要性に関してもきちんと吟味した上でいかないと軽々には言えないところだと思います。やるなと言っているわけではないですよ。結構大変なことになりますね。

○大内座長 大変なことになります。菅野構成員からどうぞ。

○菅野構成員 私は、この表自体は5年間続けてきた中でのまずまとめとして受けとめているのですけれども、きょうの小西さんのお話をいただいても、これまでをまとめても、松田構成員がおっしゃったような、新規の人に実は職域の人がまざっているというバイアスはあるにしても、この5年間でクーポン券の効果としては、新規の掘り起こしはあったけれども、継続につながらなかったというのが大きなまとめだと思うのです。

 この20年に受診率を向上するためのものというのが結構出ているのですけれども、にもかかわらず、それに取り組め切れなかったというのは、やはり自治体の財政が厳しいという面もあって当然いかなかったと思います。正直、このまま職域に目をつぶっていいとも思えないですし、そういう意味で、先ほど紹介いただいたように、全てを自治体が負うか、もしくは職域の分は職域がやると決めるか、もう一つ第三の道的にあると思うのが実はこの表のまとめではないかと思っております。

 マル1の方というのは、これを通じて台帳の整備ができたと思うのですけれども、市区町村で受けてもらえました。ところが、市区町村のクーポンで受けた人以外の人が、要するにこういうふうに実際には区分として自治体の台帳には載っていないわけですね。それがさっきの、80何%整備されていても、その人のカテゴリーがどこかわからないというようなことなのかなと思うのです。そこのポテンシャルのところをしっかり形にするためには、職域の方に例えば無料クーポン的な施策を打って、いろんな自治体に職場がありますので、市町村がその人を把握するのはすごく大変だというところに、例えば特定健診で見られるような国保連を使った仕組みとして職域で受けた人を市町村が把握するとか、市町村に職域で受けた人のデータが流れてくるとか、あるいは職域で勧奨した人のことも市町村に教えてもらえるような仕組みがあれば、おのずとカテゴリー分けもできてきます。

 マル1の人は今後も継続受診をしてもらうという取り組みが必要だと思うのですけれども、マル2、マル3の人は、職域に何らかの補助をすることによって結果のデータをそのかわり自治体に下さいというようなことを例えばする。そうしたら、マル4が浮かび上がって、マル4の人には今度は市町村が手をつけるみたいな、これから先という意味ではそういったこともこういうカテゴリーで考えればあります。このカテゴリーをまず自治体が把握することと、このカテゴリーをもとに、職域が特に問題ですので、マル2、マル3に何か手をつけるみたいな手が打てればどうかと思います。せっかくクーポンで結構財源がありましたので。

○大内座長 大変貴重な御意見ありがとうございます。最後の中ポツの「市区町村がマル2、マル3の状況を把握するため、職域との連携を推進する」、これは主語、述語を逆転した文言も必要だということですね。職域もデータを市区町村に出しなさいということですね。そうすれば両方でチェックできますので、全体像が見えてくる。

○福田構成員 今のことに関連してですが、私も職域との連携というのはとても重要だと思いますし、そこで台帳が少しずつ整備されてというのはいいことだと思いますが、参考資料1—1の3ページのマル4という表を見ると、事業所や被用者保険の保険者で実施されているものを把握していないというのが8割ある一方、上の2つのカテゴリーもあって、全ての対象者について受診状況の有無を把握しているところが、割合は少ないですが、全国で66市町村あるということで、例えばこういうところでどうやっているかというのは既に手法としてはわかっているものなのかというのを教えていただければと思います。

○大内座長 まさしく先生が指摘されたとおりで、事業所等では把握されていないというのが実態です。これを見えるようにするということも恐らく書き込む必要があるだろうと思いますが、いかがでしょうか。事務局のほう、この点について何かございますか。

○事務局(吉本) 済みません。3ページの66市町村にはまだ個別には詳細を伺えておりませんので、今後伺うことを考えてみたいと思います。

 また、マル4の中で「その他」と回答いただいた市町村の中には、例えば一部の事業所に同意を得た上で実施状況を検診機関に依頼し、把握といった例を記載してくださったところもございました。

○大内座長 途中でございますが、今度着任されました佐藤健康局長が見えましたので、御挨拶いただけますか。

○佐藤健康局長 皆さん、こんにちは。熱心に御議論いただいている途中に水を差すような形で大変恐縮に存じます。

 今、御紹介いただきましたが、昨日付で健康局長に就任をいたしました。今のお話を聞きながら思い出したのですけれども、私のことを申しますと、1983年に厚生省に入省したのですが、そのときがちょうど、がん対策に国や地方自治体が真剣に取り組むきっかけになった老人保健法とそれに基づくがん検診だったというふうに記憶いたします。

 私は、その後1985年から1987年ぐらいにかけまして、当時、この局でございますが、保健医療局の老人保健部にありました老人保健課におりまして、検診の見直しだとか受診率の向上というものを担当しておりましたので、こういう言い方はありふれておりますけれども、古くて新しい問題なのだなという印象を強くしました。

 しかし、それにしましても、昨年6月のがん対策推進基本計画の中でも受診率の向上というのは精度管理と並んで重要な柱と位置づけられております。今の新しいお考えに沿って受診率が向上していくためにどうしたらいいかということを御検討いただいているのだろうと理解をいたします。

 その意味で、私も20年以上のブランクを埋めるべく頑張りますので、また御議論のほうも熱心にお進めいただきたく、大内座長ほか構成員の皆様にお願いをいたしまして、簡単でございますが、挨拶にかえさせていただきます。どうかよろしくお願いいたします。

○大内座長 突然振りましたが、ありがとうございました。

1983年、ちょうど30年前になります。構成員の方々御存じかと思いますが、実は今度、がん対策・健康増進課長に異動されました椎葉茂樹先生も10年ほど前は老健課におられて、このがん検診の検討会の最初のところを担当された方ですので、事情はよく御存じかと思います。

 つけ加えて申しわけございませんが、先ほど福井県のデータを出されましたけれども、椎葉課長は富山県に出向されてがん検診の対策にも取り組んでこられたという経験もお持ちですので、ぜひそういった観点から、より踏み込んでいただきたいと思います。

 さて、受診率向上施策に関しましては、多々また議論があるかと思いますが、事務局でまとめた論点案を基軸にさらに皆様から御意見をいただこうと思っております。その上で次回の検討会までに整理させていただくということでいかがでしょうか。よろしいですか。

(「異議なし」と声あり)

○大内座長 では、本日、議題は1つですけれども、その中には実は2つございまして、精度管理です。この点については、今、国立がん研究センターの部長であります斎藤構成員が精度管理項目について改めて見直し作業をしているところでありますので、斎藤構成員のほうから現状について説明願えればと思います。

○斎藤構成員 がん研究センターの斎藤です。

 それでは、精度管理についてお話し申し上げます。

 資料4—1を1枚めくっていただきます。がん検診で死亡率を減らすためには3つの柱が必要でまず有効性を前提として行うということ。それを徹底的に精度管理して、正しく行う。そして、その上で受診率を上げて、維持することで当該がんの死亡率が減るという仕組みであります。先ほど局長さんの御挨拶の中にもありましたが、受診率、精度管理とともにとおっしゃいましたが、ここが実は非常に要諦であります。

 次のページですが、この3つの柱は昨年6月の第二期基本計画の中にもきちんと反映されております。取り組むべき施策の中に、最初に科学的根拠に基づくがん検診の実施、2番目にそれを職域にまで適用すること、3番目に県の管理指導協議会で2番目の柱の精度管理の取り組みをすること等々、それから5番目に受診率が書いてあります。

 それに対応して個別目標にも、全ての市町村で科学的根拠に基づくがん検診、全ての市町村で精度管理を実施する、その上で受診率、この3つの個別目標が新たに設定されています。

 ところが、実態は、受診率が低いことだけではなくて、実は前の2項目の指標に関しては100%が基本なのでありますが、これがまだ全くその水準にはいっていないということが問題であります。

 なお、ちょっとつけ足しますが、施策の中に、不安を軽減するための説明とか、がん検診の欠点についても普及啓発するというようなことにも言及がありまして、第二期基本計画はそういう意味ではオリジナルから比べるとかなり踏み込んだ、計画であると評価しています。

 1枚めくっていただいて、我が国の精度管理のこれまでの経緯です。精度管理という言葉は老健時代、1983年からあったのだと思いますが、系統的な取り組みは割と最近のことでありまして、本検討会の前身の検討会であります「がん検診に関する検討会」で初めてこの手法が議論されました。次いで、平成19年に基本計画が策定され、その中に全ての市町村が実施すべきことが明記されました。この検討会の前身の検討会で新しくつくったチェックリストという体制指標、構造指標とプロセス指標の基準値を用いて精度管理を行うべきこと等々がこの検討会で議論されて、それが報告書にまとめられて、平成20年に健康局長通達で全国に周知されたという経緯です。この指標によって具体的に状況を把握し、評価も可能になり、フィードバックもある程度基本的なものが可能になったという経緯であります。

 がん検診チェックリストはがん検診の質を担保するために最低限必要な項目、約40項目から成り立っています。その40項目が受診率を高く保つために必要な分野1の項目群から、精検受診率を高くするための分野4、分野5といったところまで、6分野がありまして、この40項目群の実施項目数と各分野の実施項目率、この2つを指標にして自治体の体制を評価するというものです。今やっていることは「yes」、やっていないことは「No」で回答していただいて、次年度に「No」を「yes」に転じていただくことで向上を図るという仕組みであります。既にこの指標が有用であるということは、妥当性は評価が終わっています。つまり、この項目実施率が高い、点数がいい自治体ほど質がよいということがわかっています。

 1枚めくっていだいて、この指標はがん対策推進基本計画の中間評価に使われています。80%実施している自治体、そういう緩い基準を満たしている自治体の割合が、導入前に50%台だったのが最近の24年度では10ポイントから16ポイント改善しています。改善は見られますが、先ほども言いました本来100%を目指したいところがまだ70%以下に低迷しているということで、全く安心できる数値ではありません。

 もう一つ、プロセス指標、これはがん検診達成度をはかるがん発見率、精検受診率等々ですが、それについても基準値が設けられました。この基準値の理念というか、目標はボトムアップでありまして、精度管理状況の下位30%の成績が余りよろしくない自治体と上位70%の境目の値を許容値として設定しています。目標値は、もう少し志が高い上位10%の自治体の平均値です。乳がんだけ、大内先生のお力などで水準が高いので別立てしていますが、4がん共通です。

 その中の重要な精検受診率を見ますと、許容値、志の低いほうの最低限の基準をクリアしているのが3がん。大腸がん、子宮頸がんといったところはまだこの許容値さえ全国の平均値がクリアしていないということで、まだまだ改善が必要です。

 精検受診率というのは100%に近ければ近いほどいいわけで、できれば90%以上クリアしたいのですが、そのレベルからはまだまだ距離があるということであります。

 いずれにしろ、この2指標で全国の自治体の実態が把握可能になりました。

 次、めくっていただきます。今、もっと厳しい基準でということを申しましたが、そのお手本になるのがヨーロッパにおける、いわゆるオーガナイズド・スクリーニング(組織型検診)ですが、これについては、乳がんと子宮がん、最近、大腸がんで精度管理の科学的根拠に基づいた手法によるガイドラインが発刊されています。ここに示すのは、大腸がんの主に体制指標に関する達成基準です。

 ここで許容値、目標値が示されていますが、これを見ますと、例えば受診率を上げるための対象者へのインビテーションは最低95%やりなさいと書いていますし、結果の通知までに2週間とか、精検を受けるあるいは9番の内視鏡後治療まで1カ月以内達成を95%以上の自治体で行うべきという厳しい基準があります。 このように死亡率を下げる成果につなげるためには、我が国の現状よりもっと厳しい精度管理を行わなければいけないと考えられます。 これは他人の家の話かというとそうでもなくて、日本の例を示しますと、検診に関してすべからく先進県と言われます宮城県の中核組織である宮城県対がん協会の例ですが、宮城県対がん協会の島田先生のスライドをそのまま引用します。

 ここでの骨子は、これは大腸がんに関するものですが、大腸がん検診は精密検査の受診が非常に低いのが問題ですが、精検をみずから担当するとともに、市町村と共同で精検体制を構築し、精検を行うだけではなくて、結果の把握、フィードバック、それらをチームとして行う。オーガナイズド・スクリーニングの定義に書いてあることを積極的に行うことで精度管理を高める、維持するという趣旨であります。

 次のページ、組織型検診のアウトラインです。検診だけではなくて、その後の診断、治療まで含めて実施に対して責任のある運営チームを市町村とともに対がん協会が組織して、検診の質を保証する集計、チェック、フィードバック、指導といった仕組みも備えています。こういった我が国の検診で欠けている部分を積極的に取り込んで行っているというわけです。

 その次のページに成績を示します。上段に学会の全国集計を地域、職域、人間ドック別に示していますが、それに比べて宮城県対がん協会の精検受診率というのは一目瞭然で非常に高い。これはヨーロッパの合格点のレベルに届いています。この例に見るように、オーガナイズド・スクリーニングを目指し市町村ときちっと連携してやるということが非常に重要です。

 次に、1枚めくっていただいて、現在の健康増進事業の大きな問題点の一つとして、個別検診の問題があります。個別検診の精検受診率が5がんともに従来の集団検診に比べて非常に低い。健康増進事業というのは、個別と集団から成っているわけですが、2種類の対策型検診の間に大きな精度管理上のギャップがある。それが精検受診率としてあらわれているということです。

 次のスライドを見ていただきますが、個別検診の提供形態が年々ふえていまして、5がんで差はありますが、青で示す平成16年度と5年後の21年度を比べますと、いずれもふえていて、大腸がん、乳がん、子宮がんでは優に過半数を超えています。ということは、このままいきますと、精検受診率の低い、質の悪い検診に置換されていくということで、早急な対策が必要です。

 1枚めくっていただきます。どうしたらいいか対策を考えるために調査いたしました。上のグラフは、個別検診を1がん以上行っている市町村について調べたものですが、医師会の協力を得て精度管理の検討を行っている市町村が半分に満たないということです。相談しても協力が得られないかもしれませんが、相談していないということでしょうね。

 それから、Nを示していませんが、この中で集団検診の成績が非常によろしい114自治体にさらに調査をかけたところ、精検結果の把握に医師会の協力を得ているところは20%にすぎない。このことから、個別検診における精度管理に医師会に明確な役割を担っていただくという仕組みが必要なのだと思います。 もう一つ、先ほど職域の問題がありましたが、職域検診については基づくべき指針がないことがまず大きな問題であります。さらに精度管理の仕組みを欠いているということも大きな問題です。これは全国集計による精検受診率ですが、地域より明らかに低い。さらにそれが右肩下がりに低まっていて、どんどん質が悪くなっていることがわかります。

 1枚めくっていただきます。こういった状況で、向上するにはどうしたらいいかですが、平成20年の委員会の報告書に、国の役割、都道府県の役割、市町村の役割が明記されています。その中で、都道府県は、先ほど申し上げました協議会を中央の装置として各市町村及び各検診機関の事業評価を行い、それを公表する。市町村は、その管区内の検診機関、市町村内での実施体制について都道府県に報告するということで、手を相携えて精度管理の仕組みを向上させていくことが必要と思います。

 このときに、都道府県が基本計画の骨子をきちっと理解して、先ほどのオーガナイズド・スクリーニングを標榜して高めていくということが求められるのではないかと思います。

 次のページですが、そういう意味で、都道府県の実施計画に冒頭の3本柱についてどのような施策が書いてあるか、見てみました。

 概要でありますが、次の18ページをお願いします。計画施策案の中の3項目、つまり「現状と課題」「取り組むべき施策」「個別目標」で見てみますと、受診率については、先ほど来の議論の、把握できないこと、低迷していることにははっきりした認識があって、それに対する施策も書いていますし、目標も立てられていますが、あとの2本柱のアセスメント、マネジメントについては余りその認識が見られない。計画案を見る限りはそういうふうになっています。これを明確に意識して、それに対する施策、目標を立てている都道府県は限定的であり、記載はあるのですが、中身を見ると実効性につながるような記述は非常に限られます。

 次のページに、すぐれた取り組みと思われる4府県の共通部分と特色あるポイントを抜粋していますが、3つについてきちっとバランスよく、しかも基本計画に沿って書いてあります。

 時間の関係上、マネジメント、精度管理だけ触れますと、協議会のアクティビティーについてきちっと書いてある。情報公開についても書いてある。例えば、がん登録とのデータ照合などを行って精度管理を行う。職域についての精度管理にも言及している等であります。施策の目標としては、基本計画の骨子、個別目標をしっかり意識して、全ての市町村でということについてきちんとした具体的な目標値が設定してあります。それから、アウトカムをきちんと設けているということですね。こういった都府県が非常に限定的であるという現状を改善していくことが必要と思います。

 まとめですが、今後検討すべき課題としては、今の健康増進事業によるがん検診については精度管理にオーガナイズド・スクリーニング(組織型検診)を標榜することが必要だと思います。そのために、指標はまだ限られていますが、今の枠内できちっとそれを標榜してやること、具体的にはそれを基本計画の中できちっと推進していくような仕組みをつくること、大きな個別の問題として、個別検診の精度管理体制を構築する。これは非常に大きな課題だと思います。

 職域のがん検診については、いろいろ制度の問題がありますので、一概には言えませんが、今後、精度管理体制も含めた構築を検討する必要があるかと思います。

 最後に、今まとめた健康増進事業によるがん検診の推進のための技術論として、先ほど事務局からも御紹介がありましたが、前検討会で指標を決めて行い、あるいは指針の改訂を行ったわけですが、それら指針や学会のガイドラインの変更等、チェックリストについては運用開始後に明らかになった問題点など、それからプロセス指標については既に改善が認められていますので、ボトムアップの目的からはさらに上方修正するといった必要性が多分あるかと思います。

 それらについては資料4—2と4—3に示してありますが、4—2のほうだけ簡単に御説明します。4—2は、指針に改訂の検討を加えるべき点です。

 1つは肺がん検診の問診の扱いでありまして、血痰は患者扱いにするということ、それから読影方法等々であります。乳がん検診については、視触診の扱い等々です。こういった改訂点があると思います。

 5ページ目に書いてありますが、精密検査の結果が回収できないということがありまして、個人情報保護法を理由にする場合が多いのですが、それは免責といいますか、担保されているわけでありまして、そのことの周知を何らかの方法で図ることも精度管理上必須であるかと思われます。

 資料4—3のほうは、各論は申し上げませんが、エラーの少ないチェックリスト内容ということを目指して改訂案を示してあります。

 以上、精度管理について申し上げました。

○大内座長 ありがとうございました。

 がん検診の精度管理についてということで、本日は斎藤構成員からアウトラインについて御説明いただいて、時間がまだございますので、少し御意見をいただきたいのですが、いかに精度管理が重要かということは論をまたないと思います。第二期がん対策推進基本計画の中にもそのように文言が記載されておりますので、本検討会ではこの点についてしっかりと議論を踏まえて提言を出そうと思っているところです。

 オーガナイズド・スクリーニングが例えばEUではもう制度化されているということ、そこには達成目標値、許容値がございます。こういったものを我が国でとられているところは極めて少ないというところがおわかりかと思います。やはりオーガナイズド・スクリーニング(組織型検診)をきちっと行うべきであろうということですが、これが日本全国ばらついているということは否めませんので、この点をどのように形をつくってチェックしていく体制にするかというところが大事かと思っています。

 今までの経緯についての説明はありましたが、精度管理について、ややもすると市町村事業によるがん検診、いわゆる健康増進法のみと捉えがちですけれども、そうではなくて、さっきの受診率向上施策に関しても意見がありましたように、職域についても十分に利用するということが前提であることは皆さんに御確認いただければと思います。

 お手元にこの冊子体があるかと思いますが、平成20年3月の報告書です。この検討会の前の「がん検診に関する検討会」、その中でアドホックに別に改めて設置されたのが「がん検診事業の評価に関する委員会」ということで、15ページにその委員会の委員名簿がございます。当時、垣添国立がんセンター名誉総長が座長を務められておりましたが、このときに、斎藤博先生、私も入っておりましたけれども、提言として「今後の我が国におけるがん検診事業評価の在り方について」ということでまとめています。

 1ページを見ていただきたいのですけれども、「はじめに」の4段目のところです。「市町村事業としてのがん検診のみでなく、職場におけるがん検診等も含めた、わが国のがん検診について」というふうにここにも明記されているとおりでして、当時からやはり職域も含めてしっかりとした精度管理を行いましょうというのがあったわけです。そういった形で当時、チェックリスト、先ほど概略だけ説明いただきましたけれども、国の役割、都道府県の役割、市町村、さらには検診実施機関の役割ということで定めたところです。

 あれから5年経過しました。先ほど斎藤構成員から説明のあったように、検診の実施主体も変化が見られるということで、特に精度管理の面で危惧される点がある。それはなぜかといいますと、資料4—1の13ページ、近年個別検診の実施割合が増加している。個別検診の場合の精度管理については大変な問題があるということが指摘されているところですので、そこを踏まえた見方が必要です。

 それから、各種がん検診、基本健診の中身も変わってきておりますので、その見直しも含めて、指針の改訂のつなぎ役としての本検討会の提言も必要かと思います。それが資料4—2で、現行の指針と、赤字で変更案が示されていることになります。

 きょう詳しくは時間の関係でお話しいただけませんでしたけれども、資料4—3は、各種、5つのがん検診のチェックリストです。検診実施機関から始まって市区町村、都道府県、国の役割ということでそれぞれありました。平成20年3月に定めたものを今回見直し作業に入っているということで、その変更案がここに示されているということになるかと思います。

 おさらい的なところもございますが、まずこういった流れであることは御理解いただけますでしょうか。よろしいですか。

 これに追加して、祖父江先生、何か御意見ございますか。

○祖父江構成員 突然振られましたが、何でもいいですか。何でもいいのであれば、職域の検診の精度管理の話でいいですか。前半で受診率の話がありましたけれども、もちろん職域の検診の受診状況を市町村に集約して全体を網羅する、把握するという仕組みは非常にいいのですが、市町村単位で行うとかなり手間がかかります。むしろ実態として職域の検診というのが相当数やられていて、その精度管理が余りよろしくないということのほうが受診率向上というよりも喫緊の課題ではないかと思います。

 それをどう進めるかについて、まず職域の検診を考える際に、実施主体でいけば企業や健保組合、そういったものの単位というのがありますけれども、実際に検診をやっているのは検診機関ですから、精度管理を進める上で実際に検診をやっている機関単位に精度をはかるということのほうが、精度を管理するというか、把握をして悪いところに関してきちんと改善を求めるということについては直接的な行為だと思います。

 そういう検診機関単位のデータをどこが把握するかについて、市町村にまたそれを返すというのはちょっと単位が細かくなり過ぎるので、県ぐらいの単位で、それも企業、職場の所在地別ぐらいで、各個人の居住地になるとそれは手に負えないので、職場が所在しているところの県に対して各検診機関が精度管理指標に関するデータを報告するというようなことが現実的にできることではないかと思うのです。そこのところを今はやられていないので、そうすると県が割と精度管理ということに関しては主体的にデータを集めて、地域、自治体から上がってくるデータと検診機関の職域をカバーするデータとして上がってくるものを両方ともにらんで、県全体のがん検診に関する精度管理に関して評価あるいは改善を求めるというようなことをするのが現実的ではないかと思うのです。

○大内座長 大変貴重な御意見をありがとうございます。

 恐らく斎藤構成員が示されていたのは資料4—1の19ページでしょうか。「好事例と評価できる基本計画施策案(4府県からの抜粋)」とあります。生活習慣病検診管理指導協議会というのが各都道府県に設置されているのですけれども、がん検診についてどこまで踏み込んで精度管理までされているかというのは大きな開きがあると思います。4府県とありますけれども、多分これは大阪府と宮城県が入っているということですね。

 祖父江先生の御意見はごもっともで、実は先ほどの冊子体にもう一度戻っていただきたいのですけれども、平成20年3月の報告書の13ページを開いていただきますと、ここに絵が描いてありまして、職域も一応ここでは入れています。それが機能していないというのが実態かと思います。

 ですから、この検討会ではここを改定して、さらに今、祖父江構成員が言われたように、都道府県にある程度、どこまで入れるかは国の立場で事務局のほうで考えていただきたいのですが、今、企業等が実施するがん検診については市区町村だけで把握する、あるいは管理指導するのは無理だと思いますので、例えば宮城県の生活習慣病検診管理指導協議会の中でも、必ず職域のデータもいただいた上で、それぞれ市町村だけではなくて職域にも指導をしているという実態がございます。そういうことをより具体的な形で盛り込めないかなというのが気持ちとしてあるのですが、いかがでしょうか。

○松田構成員 

きょうは職域の検診ということと精度管理が非常によくないということが浮かび上がってきたと思うのですが、その理由の一つは、先ほどもちょっと申し上げましたが、職域の検診というのは、サービスの一環として、やれるところはやっている。中身は問われない。自分たちがいいと思うことをやっている。それが野放しになっているということがあるのだと思うのです。

 市や町と職域との連携ということを言うのであれば、職域で検診を受けられない人たちは市の検診をどうぞということであれば、職域であろうと、斎藤構成員が言われたように正しい検診が正しく行われるということがなされなければ、何も補完する形にならないですね。ですから、職域の検診は一体誰が責任を持つのか。全て市区町村という決め方もいいと思うのですが、もう一つは、祖父江構成員も触れられたのかもしれませんが、保険者に課すでもいいのかもしれません。今は、非常に責任の所在が曖昧なので、どれだけやっているかもわからないし、中身もわからないしということになるので、今回そこまで踏み込めるかどうかは別ですが、少なくともまずは検診機関の精度を個々の検診機関ごとに公表するというところから始めるということも、それは学会ベースでも構わないかと思います。職域や市区町村、どこで受けても構わないというのであれば、職域の検診の精度にぜひ踏み込むべきだろうと思います。

○大内座長 ありがとうございます。

 斎藤構成員が示された資料4—1の3ページ、がん対策推進基本計画の抜粋、ここに書いてありますね。職域については2番目に書いてあって、都道府県の役割についても「生活習慣病検診等管理指導協議会の活用により」と明記されていますので、ここはもっと具体的に踏み込めるのではないですか。いかがですか。これは基本計画の中に入っているわけですね。事務局、いかがですか。

○岡田がん対策推進官 この会議としてどういうお考えかということをまずまとめていただくことが主になるかと思います。

○大内座長 いかがでしょうか。斎藤構成員のほうからの提言がありましたが、これをまずベースに議論するとしても、きょうは過密なスケジュールの中で議論を深めることができないので申しわけないのですが、ここで確認しておきたいことがございましたらどうぞ。

○道永構成員 個別検診というのは、先生方が考えていらっしゃるのは、恐らく検診機関というよりも各地域の医療機関ですね。そうすると医師会がそこに入っていないことはあり得ないので、医師会との協力がないのが2割というのはどういうことなのか理解できないのです。個別になったことで精度が落ちていて質の低下があるのでは大変なことなので、医師会としてはそういうことを積極的にやらなくてはいけないと思っていますし、個別検診に関するチェックリストというのが必要であると思いました。

 これを拝見したときに、これはすごく大変で、医療機関はそれぞれもちろん単独ではできません。、医師会で恐らく、例えば胃がん検診とか全部二重でチェックしているはずです。そういうことはやっているはずなので、そういうものがちゃんと表に出ていないのかもしれないです。チェックリストはぜひつくっていただけたらと思いました。

○大内座長 先生の御指摘は、斎藤構成員提出資料4—1の14ページのデータに基づいていると思うのですが、私もつくづく思っていまして、地域医師会はがん検診に深く携わっておりますし、例えば宮城県の生活習慣病検診管理指導協議会の議長は医師会長になっています。そういう仕組みにしてあって、地域の医師会にも伝わることになっていますし、恐らくその形態からまず見直す必要があるのだろうと思います。少なくとも都道府県の決定機関であります協議会に医師会の理事クラスが入っていないことにはこれは全然進まないわけですから、それをしっかりやっていただく。実際にデータを見ると、個別検診精度管理に関しての取り組み状況においては医師会が活用されていないということが浮かび上がりましたので、その点はやはり必要かと思います。

○斎藤構成員 道永先生、ありがとうございます。個別検診のチェックリストは今、研究班で作成しています。

 現在のチェックリストをつくるときに個別検診を含めるかどうかという大きな議論をやったのですが、やはりまずは現状が違うものを含めずに、個別検診の特異性を取り込むと収拾がつかなくなるという議論になりまして、まずは集団検診をつくったわけです。ところが、この検討会の前身の会でも医師会の代表の先生のコメントにもあったと思いますが、特に個別検診については、医師会を一検診機関とみなして例えば精度管理をする等の何らかのアプローチが必要であるという議論になったかと記憶しています。いよいよそういうことで個別検診のチェックリストを今、作成しておりますので、この検討会の中でそれを基礎資料にして御議論いただく場面もあるかと思います。

○大内座長 極めて重要な点、ありがとうございます。

 きょう斎藤構成員から提案がありましたチェックリスト等の改正案も含めてどのように議論していくか、また事務局のほうに整理していただいて、次回提示していただくということでさらに議論を深めたいと思いますが、よろしいでしょうか。

○菅野構成員 2点お話しさせていただきたいと思います。

 1つは、今の個別検診です。自治体の現場としてということなのですが、本市は、受診率を除き、大腸がん検診を除いて、そのほかの指標で目標値をクリアしているのですけれども、実は個別検診で全部やっています。これは言っていただいたように、八王子市の場合は医師会が核になっていまして、各医療機関の御協力をいただいて、例えば肺がん検診でしたら読影は医師会でまとめてやるとか、そういったことを通じて非常に精度の高い検診が提供できているということが言えると思います。

 これは地方都市と都市でしょうか、一つの検診機関に全部任せているところは、例えば対がん協会さんとタイアップで直接お話しすれば精度は上がるというところがあると思うのですけれども、個別検診の場合は医師会等を軸にして、逆にいろんな医療機関があるということを医師会に出して、医師会自身が考えると結構精度が上がっていくというのが八王子市の例です。

 もう一点、職域のことですけれども、職域に関しましては、先ほど私、ちょっと先走ったような話だったかもしれないですが、受診率向上で4つのカテゴリーがあって、職域に補助したらどうかというようなことを申し上げたのですが、例えばあのような仕組みを通じて、要は職域がいかに報告してくれるかということが大事なので、指針内の検診をやっていただいて、その結果を報告するということを条件に例えば補助を出すとか、こういった仕組みを通じてやらないと、単にこの数字でやってくださいねと言っただけでは、お金もかかるし、そんな報告するのは面倒くさいからやめるということになってしまってはどうかということです。

 2点申し上げました。

○大内座長 医師会の関与の仕方、職域での精度管理の改善に向けての貴重な提言でございますので、これは議事メモに残りますから、これも踏まえて反映していただいて、事務局として案をまとめていただければと思います。

 ほかに意見ございますか。

 重要な受診率向上、精度管理と非常に難しい課題にわずか2時間で議論し尽くせなくて申しわけないのですが、そろそろ時間ですので、きょうはこの辺で閉じまして、事務局のほうにマイクをお返しいたします。

○岡田がん対策推進官 熱心な御議論どうもありがとうございました。

 本日、斎藤構成員から御提案いただきました精度管理のためのチェックリストの改訂案、がん検診の指針で変更すべき箇所としてお示しいただいたことについては、また改めてメール等で御意見を伺いたいと思いますので、御協力をよろしくお願いいたします。

 また、受診率向上と精度管理の質の向上については、本日いただいた御意見も含めて取りまとめの案のような形で事務局のほうで作成させていただきます。次回検討会までの間に御相談をさせていただきますので、よろしくお願いいたします。

 次回の検討会の日程等につきましても、皆様方の御都合を調整させていただいて、御連絡をさせていただきますので、引き続きよろしくお願いいたします。

 事務局からは以上でございます。

○大内座長 それでは、本日の第6回「がん検診のあり方に関する検討会」をこれにて終了いたします。構成員、参考人におかれましては、御協力ありがとうございました。

 


(了)

健康局がん対策・健康増進課

代表 03-5253-1111(内線2945)

ホーム> 政策について> 審議会・研究会等> 健康局が実施する検討会等> がん検診のあり方に関する検討会> 第6回がん検診のあり方に関する検討会議事録(2013年7月3日)

ページの先頭へ戻る