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2014年1月29日 第96回労働政策審議会職業安定分科会議事録

職業安定局

○日時

平成26年1月29日(水)13:45~15:00


○場所

中央合同庁舎5号館 厚生労働省職業安定局第1,2会議室(12階)
(東京都千代田区霞が関1-1-2)


○議題

(1)職業安定法施行規則及び建設労働者の雇用の改善等に関する法律施行規則の一部を改正する省令案要綱について
(2)今後の労働者派遣制度の在り方について

○議事

○阿部分科会長 定刻より若干早いですが、委員の皆様お集まりですので、ただいまから第96回労働政策審議会職業安定分科会を開催します。

 本日の委員の出席状況は、公益代表の鎌田委員、宮本委員、労働者代表の勝野委員、中島委員、使用者代表の河本委員、田沼委員、深井委員が御欠席です。

 それでは、議事に入りたいと思います。

 最初の 議題は「 職業安定法施行規則及び建設労働者の雇用の改善等に関する法律施行規則の一部を改正する省令案要綱について」 です。

 本件については、1月17日付で厚生労働大臣から労働政策審議会長宛てに諮問を受けており、本日の労働力需給制度部会において、あらかじめ御議論をいただいております。

 資料及び部会での議論について、事務局から説明をよろしくお願いします。

○派遣・請負労働企画官 それでは、私から資料No.1-1、資料No.1-2、資料No.1-3につきまして御説明申し上げます。

 ただいま分科会長からお話がございましたように、本年1月17日付で、資料No.1-1を1枚おめくりいただくと、厚生労働大臣から労働政策審議会宛て、本省令案につきまして、貴会の意見を求めるという形で審議が求められているものでございます。

 この後ろについております内容につきましては、資料No.1-3に基づきまして御説明申し上げます。

 今回、省令の一部を改正する理由でございますが、御承知のとおり、本年4月1日から消費税が8%に引き上げられることになっております。これに伴いまして、現在、有料職業紹介事業者におきましては、届け出をしない限りは厚生労働省令で定めている手数料、受付手数料、紹介手数料などに基づきまして手数料を取る形になっております。

 今回お願いしておりますのは、この省令で定めております、届け出をしていない事業者に係る受付手数料についての、消費税見合いの引き上げをお願いするものでございます。

 また、あわせまして職業紹介事業につきまして、より詳細なデータを把握いたしまして、民間職業紹介事業のさらなる活用に向けた議論に役立てるという目的のため、職業紹介事業報告書の修正をさせていただきたいと考えております。

 内容につきましては「2.改正の内容」をごらんください。

 1.で、職業安定法施行規則の一部改正でございます。本省令につきましては、職業安定法第32条の3に基づきまして、この省令が定められてございます。

 「(1)手数料」でございます。有料職業紹介事業者が徴収できることとされている手数料の最高額につきまして、以下のとおり見直すこととすると書いております。下のほうに受付手数料、紹介手数料、紹介手数料で臨時賃金を除く場合というものが書かれております。

 まず、課税事業者、免税事業者の違いでございますが、売り上げが1,000万円以上の場合は消費税法上、課税事業者。1,000万円以下の場合は免税事業者となっております。また、免税事業者の方につきましても、いわゆる仕入れ、例えば事業所の賃貸料ですとか、あとはさまざまな物品の購入費等で消費税がかかりますので、その分の見合いのことを考える形になってございます。

 ごらんいただいているとおりでございますが、例えば受付手数料であれば、課税事業者は現行670円のものを690円、免税事業者の場合は現行650円から660円。紹介手数料は、課税事業者は現行10.5%から10.8%、免税事業者は現行10.2%から10.3%。紹介手数料の臨時賃金を除く場合につきましては、課税事業者は現行14.2%から14.5%、免税事業者は現行13.7%から13.8%という形で今回見直しを行いたいというものでございます。

 続きまして「(2)職業紹介事業報告」でございます。後ろのほうの参考資料にもつけさせていただいておりますが、今回、有料・無料職業紹介事業報告書、これは法令に基づくものでございますが、様式第8号に定められているもの。それと、特別の法人無料職業紹介事業報告書(様式第8号の2)及び地方公共団体無料職業紹介事業報告書(様式第8号の3)につきまして「有効求人数」を追加するというものが1つ目の見直しでございます。

 次の2ページをごらんください。有料職業紹介事業報告書(様式第8号)につきまして「収入状況」の欄に「職業安定法第32条の3第2項の規定による手数料」の報告項目に件数、何件、そのような手数料を得ているか。現行はそれが入っておりませんので、これを追加するという改正。

 続きまして、地方公共団体無料職業紹介事業報告書の報告内容につきまして、産業別区分での報告から「取扱業務等の区分」として職業分類区分での報告とさせていただきたい。これによって、報告内容を全報告統一したいと。このように考えてございます。

 2.の、建設労働者の雇用改善等に関する法律施行規則の一部改正につきましても、先ほど御説明申し上げました有料職業紹介の手数料を基本的にはのっとっておりますので、同様の改正を行うものでございます。

 施行期日は、消費税の引き上げと同日の平成26年4月1日と考えております。

 なお、この省令案要綱につきましては、先ほど分科会長からもお話がありましたとおり、本日の労働力需給制度部会におきまして、あらかじめ御議論いただいております。この結果、部会として省令案要綱を妥当と認めることとし、その旨、分科会長宛て報告することとされております。

 報告文は、資料No.1-2としておつけしております。

 私からの説明は以上でございます。

○阿部分科会長 ありがとうございました。

 それでは、本件について御質問・御意見がありましたら御発言ください。

 よろしいでしょうか。

 それでは、特にないようですので、当分科会は厚生労働省案を「妥当」と認め、その旨を労働政策審議会会長に御報告申し上げたいと思いますが、よろしいでしょうか。

(「異議なし」と声あり)

○阿部分科会長 ありがとうございます。

 それでは、報告文案の配付をお願いいたします。

(報告文案配付)

○阿部分科会長 お手元に配付していただきました報告文案により、労働政策審議会会長宛て報告することとしてよろしいでしょうか。

(「異議なし」と声あり)

○阿部分科会長 ありがとうございます。それでは、そのように報告させていただきます。

 それでは、次に移らせていただきます。次の議題は「 労働力需給制度部会報告書について」です。

 本件については、本日午前中に開催された 労働力需給制度部会において報告が取りまとめられておりますので、橋本委員より御報告をお願いいたします。

○橋本委員 それでは、御報告申し上げます。

 労働者派遣制度につきましては、平成25年8月30日に労働力需給制度部会で検討を始めて以降、計13回にわたり精力的な議論を重ねてきたところです。

 部会におきましては、平成24年の改正労働者派遣法案についての国会の附帯決議の御指摘、例えば派遣期間のあり方について、派遣労働者や派遣元、派遣先企業にわかりやすい制度となるよう、速やかに見直しの検討を開始することなどを踏まえて検討を行ってきました。この結果、本日11時から開催されました第204回労働力需給制度部会において、部会として報告を取りまとめるに至ったところです。

 この報告は、労使双方にさまざまな御意見があった中で、労使の意見が付記されている項目もございますが、公労使の各側委員が真摯に議論を重ね、また、取りまとめに向けて御尽力いただいた結果、本日の取りまとめを御了承いただいたものであると認識しております。

 私からは以上ですが、具体的な内容につきましては事務局より読み上げていただきたいと思いますので、よろしくお願いします。

○派遣・請負労働企画官 それでは、事務局から資料No.1につきまして、1枚おめくりいただきまして「労働者派遣制度の改正について(報告書)」を読み上げさせていただきます。

 

労働者派遣制度の改正について(報告書)

I 基本的考え方

1 労働者派遣制度については、平成24年改正労働者派遣法の国会審議の際の附帯決議において、その制度の在り方について検討するとともに、派遣労働者や派遣元・派遣先企業に分かりやすい制度とすることが求められている。

2 また、労働者派遣事業が労働力の需給調整において重要な役割を果たしていることを評価した上で、派遣労働者のキャリアアップや直接雇用の推進を図り、雇用の安定と処遇の改善を進めていく必要がある。

3 さらに、業界全体として、労働者派遣事業の健全な育成を図るため、悪質な事業者を退出させる仕組みを整備するとともに、優良な事業者を育成することが必要である。

4 以上のような考え方に基づき労働者派遣法を改正し、以下のような具体的措置を講じることが必要である。

II  具体的措置について

1 登録型派遣・製造業務派遣について

経済活動や雇用に大きな影響が生じるおそれがあることから、禁止しないことが適当である。

ただし、これらの派遣労働に従事する者については、雇用が不安定になることを防ぐため、後述の雇用安定措置等を講ずるものとすることが適当である。

2 特定労働者派遣事業について

特定労働者派遣事業と一般労働者派遣事業の区別を撤廃し、すべての労働者派遣事業を許可制とすることが適当である。

その際、派遣労働者の保護に配慮した上で、小規模派遣元事業主への暫定的な配慮措置を講ずることが適当である。

また、現在の特定労働者派遣事業の許可制への移行に際しては、経過措置を設けることが適当である。

3 期間制限について

(1)新たな期間制限の考え方

労働者派遣事業は、労働市場において、労働力の迅速・的確な需給調整という重要な役割を果たしている。その一方で、派遣労働の雇用と使用が分離した形態であることによる弊害を防止することが適当である。すなわち、派遣労働者の雇用の安定やキャリア形成が図られにくい面があることから、派遣労働を臨時的・一時的な働き方と位置付けることを原則とするとともに、派遣先の常用労働者(いわゆる正社員)との代替が生じないよう、派遣労働の利用を臨時的・一時的なものに限ることを原則とすることが適当である。

また、派遣労働への固定化及び派遣先の常用労働者との代替の防止のためには、後述する直接雇用や均衡待遇の推進及びキャリアアップ措置を併せて講じることも有効である。

26 業務という区分及び業務単位での期間制限は、分かりにくい等の様々な課題があることから撤廃し、26業務か否かに関わりなく適用される共通ルールを設けることとした上で、雇用の安定やキャリアアップが図られる等の一定の条件を満たすものを除き、派遣労働者個人単位と派遣先単位の2つの期間制限を軸とする制度に見直すことが適当である。その際、期間制限が派遣労働者の雇用の機会やキャリア形成に悪影響を与えないよう、必要な措置を講ずることが適当である。

また、制度見直しの時点で現に行われている26業務への派遣については、新制度への移行に際して経過措置を設けることが適当である。

労働者代表委員からは、派遣労働を臨時的・一時的な働き方とする原則の実効性を担保し、派遣先の常用労働者との代替の防止を図るため、期間制限の在り方について、26業務を今日的な視点から絞り込んだ上で、引き続き業務単位による期間制限を維持すべきとの意見があった。

使用者代表委員からは、有期雇用派遣の問題点を強調し、派遣労働の利用を臨時的・一時的なものに限ることを原則とすることは、派遣という働き方を自ら選択している多くの派遣労働者への配慮を欠いたものであり、労働者の多様な働き方の選択肢を狭めることになるとの意見があった。

(2)個人単位の期間制限について

派遣先は、(5)で述べる例外を除き、同一の組織単位において3年を超えて継続して同一の派遣労働者を受け入れてはならないものとすることが適当である。

組織単位は、就業先を替わることによる派遣労働者のキャリアアップの契機を確保する観点から、業務のまとまりがあり、かつ、その長が業務の配分及び労務管理上の指揮監督権限を有する単位として派遣契約上明確にしたものとすることが適当である。

派遣先が、同一の組織単位において3年の上限を超えて継続して同一の派遣労働者を受け入れた場合は、労働契約申込みみなし制度の適用の対象とすることが適当である。

(3)派遣労働者に対する雇用安定措置について

派遣元事業主は、(2)の上限に達する派遣労働者に対し、派遣労働者が引き続き就業することを希望する場合は、以下の措置のいずれかを講ずるものとすることが適当である。

1 派遣先への直接雇用の依頼

2 新たな就業機会(派遣先)の提供

3 派遣元事業主において無期雇用

4 その他安定した雇用の継続が確実に図られると認められる措置

※ 1から4のいずれを講じることも可とする。1を講じた場合に、直接雇用に至らなかった場合は、その後2から4のいずれかを講ずるものとする。

1年以上継続して派遣先の同一の組織単位に派遣された派遣労働者が、上記(2)の派遣期間の上限に達する前に当該組織単位での派遣就業を終了する場合であって、派遣労働者が引き続き就業することを希望するときには、派遣元事業主は、上記1から4の措置のいずれかを講ずるよう努めるものとすることが適当である。

派遣先は、上記(2)の派遣期間の上限に達する派遣労働者について、派遣元事業主から1の直接雇用の依頼があった場合であって、当該派遣労働者を受け入れていた事業所で従事させるために労働者を募集するときは、当該情報を当該派遣労働者に周知するものとすることが適当である。

また、派遣先は、1年以上継続して同一の組織単位に派遣された派遣労働者について、派遣元事業主から1の直接雇用の依頼があった場合であって、当該派遣労働者が従事していた業務と同一の業務に従事させるため労働者を雇用しようとするときは、当該派遣労働者に対し労働契約の申込みをするよう努めるものとすることが適当である。

(4)派遣先における期間制限について

ア 過半数組合等からの意見聴取

派遣先は、(5)で述べる例外を除き、同一の事業所において3年を超えて継続して派遣労働者を受け入れてはならないものとすることが適当である。

派遣先が、事業所における派遣労働者の受入開始から3年を経過するときまでに、当該事業所における過半数労働組合(過半数労働組合がない場合には民主的な手続により選出された過半数代表者。以下「過半数組合等」)から意見を聴取した場合には、さらに3年間派遣労働者を受け入れることができるものとすることが適当である。その後さらに3年が経過したとき以降も同様とすることが適当である。

意見聴取にあたり、派遣先は、当該事業所における派遣労働者の受入開始時からの派遣労働者数と無期雇用労働者数の推移に関する資料等、意見聴取の参考となる資料を過半数組合等に提供するものとすることを指針に規定することが適当である。

イ 適正な意見聴取のための手続

過半数代表者は、管理監督者以外の者とし、投票、挙手等の民主的な方法による手続により選出された者とすることが適当である。

過半数組合等が、常用代替の観点から問題があり、現在の状況を是正すべきとの意見を表明した場合は、派遣先は、当該意見への対応を検討し、一定期間内に過半数組合等に対し対応方針等を説明するものとすることが適当である。

派遣先は、意見聴取及び対応方針等の説明の内容についての記録を一定期間保存するとともに、派遣先の事業所において周知するものとすることが適当である。

派遣先が、過半数組合等の意見を聴取せずに同一の事業所において3年を超えて継続して派遣労働者を受け入れた場合は、労働契約申込みみなし制度の適用の対象とすることが適当である。

派遣先による過半数代表者への不利益取扱いを禁止することが適当である。

使用者代表委員からは、過半数組合等への意見聴取の手続き違反として、労働契約申込みみなし制度を適用することは、ペナルティーとして重すぎるとの意見があった。

(5)期間制限と常用代替防止措置の特例について

以下に該当する者及び業務に関する派遣について(2)から(4)の措置の対象から除外することが適当である。

1 無期雇用の派遣労働者

2 60歳以上の高齢者

3 現行制度において期間制限の対象から除外されている日数限定業務、有期プロジェクト業務、育児休業の代替要員等の業務

派遣元事業主は、無期雇用の派遣労働者を派遣契約の終了のみをもって解雇してはならないことを指針に規定すること、また、派遣契約の終了のみをもって解雇しないようにすることを許可基準に記載することが適当である。

有期プロジェクト業務に係る派遣については、終期が明確である限り派遣期間を制限しないことが適当である。

4 直接雇用の推進について

派遣元事業主は、雇用する派遣労働者の希望に応じ、派遣労働者以外の労働者として雇用されることができるように雇用の機会を確保し、これらの機会を提供するよう努めることとすることが適当である。

5 派遣先の責任について

国は、派遣先の使用者性に関する代表的な裁判例及び中労委命令について、整理を行った上で周知することが適当である。

派遣先が適切かつ迅速な処理を図るべき苦情の内容として、派遣先におけるセクハラ・パワハラ等を指針に例示することが適当である。また、派遣先が苦情処理を行うに際しては、派遣先の使用者性に関する代表的な裁判例や中労委命令に留意することを指針に規定することが適当である。

国は、派遣先責任者講習の受講を促進するための施策を講ずるものとすることが適当である。

6 派遣労働者の処遇について

(1)均衡待遇の推進

ア 賃金について

派遣先は、派遣元事業主の求めに応じ、派遣元事業主に対し派遣労働者と同種の業務に従事する労働者の賃金に係る情報提供等の適切な措置を講ずるよう配慮するものとすることが適当である。

以下の内容について、指針に規定することが適当である。

・派遣先は、派遣料金を決定する際に、就業の実態や労働市場の状況等を勘案し、派遣される労働者の賃金水準が派遣先の同種の業務に従事する労働者の賃金水準と均衡が図られたものとなるよう努めるものとする。

・派遣先は、派遣契約を更新する際に、就業の実態や労働市場の状況のほか、派遣労働者が従事する業務内容や当該派遣労働者に要求する技術水準の変化を勘案して派遣料金を決定するよう努めるものとする。

・派遣元事業主は、派遣料金が引き上げられたときは、それをできる限り派遣労働者の賃金の引上げに反映するよう努めるものとする。

・派遣元事業主は、派遣先との派遣料金の交渉が派遣労働者の待遇改善にとって重要であることを踏まえ、交渉にあたるよう努めるものとする。

・派遣元事業主の通常の労働者と有期雇用の派遣労働者との通勤手当の支給に関する労働条件の相違は、労働契約法第20条に基づき、諸般の事情を考慮して不合理と認められるものであってはならない。

イ 教育訓練について

派遣先は、派遣先の労働者に対し業務の遂行に密接に関連した教育訓練を実施する場合は、一定の場合を除き、派遣元事業主の求めに応じ、同じ業務に従事している派遣労働者にも実施するよう配慮するものとすることが適当である。

ウ 福利厚生施設について

派遣先は、受け入れている派遣労働者に対しても、派遣先の労働者が利用している一定の福利厚生施設(給食施設、休憩室、更衣室)の利用の機会を与えるよう配慮するものとすることが適当である。

エ その他

派遣元事業主は、派遣労働者の均衡を考慮した待遇の確保の際に配慮した内容について、派遣労働者の求めに応じて説明するものとすることが適当である。

労働者代表委員からは、派遣労働者の処遇の在り方について、諸外国では派遣先の労働者との均等待遇を定める例が多くあること等も踏まえ、我が国においても均等待遇を原則とすべきとの意見があった。

(2)労働・社会保険の適用促進

派遣元事業主は、派遣労働者として雇用しようとする者に対し、労働契約の締結の際に、労働・社会保険の加入資格の有無を明示するものとすることが適当である。

労働・社会保険に加入していない派遣労働者に対し、加入していない理由を通知することを定めた派遣元指針の内容を法律等に格上げすることが適当である。また、派遣開始後に労働・社会保険に加入させる場合について、派遣元事業主は、一定期間内に派遣先に対し加入の通知を行うものとすることが適当である。

派遣元事業主は、社会保険に加入させた上で労働者を派遣する場合は派遣の開始までに、派遣の開始後に加入させる場合には加入後速やかに、派遣先に当該派遣労働者の被保険者証等の写しを提示すること等により、派遣先が加入の事実を確認することができるようにすることが適当である。

7 派遣労働者のキャリアアップ措置について

(1)派遣元事業主が講ずべき措置

派遣元事業主は、雇用する派遣労働者に対して、計画的な教育訓練を実施するほか、希望する派遣労働者に対してはキャリア・コンサルティングを実施するものとし、特に無期雇用の派遣労働者に対しては、長期的なキャリア形成を視野に入れてこれらを実施するものとすることが適当である。

労働者派遣事業の許可・更新要件に「派遣労働者へのキャリア形成支援制度を有すること」を追加することが適当である。キャリア形成支援の具体的な在り方については指針に規定することが適当である。

派遣元事業主が行うキャリアアップ措置の取組については、労働者派遣事業報告により把握することが適当である。

キャリアアップ措置を適切に実施することを派遣元責任者の責務に追加することが適当である。

(2)派遣先が講ずべき措置

派遣先は、派遣元事業主の求めに応じ、受け入れている派遣労働者の職務遂行状況や職務遂行能力の向上度合に関する情報を派遣元事業主に提供するよう努めるものとすることが適当である。

(3)紹介予定派遣の推進

紹介予定派遣を推進するため、派遣元事業主が職業紹介事業の許可を申請する際の手続の簡素化等を進めることが適当である。

(4)派遣先での正社員化の推進

派遣先は、新たに正社員の募集を行う場合は、募集を行うポストがある事業所に1年以上受け入れている派遣労働者に対して当該募集情報を周知するものとすることが適当である。

(5)国及び事業主団体の責務

国及び事業主団体は、派遣労働者のキャリアアップのための必要な環境整備を行う責務を有するものとすることが適当である。

(6)派遣先による直接雇用への対応

関係者間でのトラブルの発生を未然に防ぐ観点から、派遣先が派遣契約の終了直後に、受け入れていた派遣労働者を直接雇用しようとする際の取扱いについて、派遣契約に定めるものとすることが適当である。

8 平成24年改正法について

平成24年改正法の規定については、施行状況についての情報の蓄積を図りつつ、見直しについて引き続き当審議会において検討を行うことが適当である。

一方、日雇派遣の原則禁止については、以下の観点に留意しつつ、法改正を行わずに実施できる見直しについて、今回の制度全体に係る見直しと併せて実施することを検討することが適当である。

1 労働者が日雇派遣による収入に生計を頼ることがないようにしつつも、現在の年収要件を見直すことにより雇用の機会を拡大すること

2 教育訓練を十分に受けていない労働者が日雇派遣に従事することによる労働災害の発生を防ぐこと

なお、今回の見直しによる業務単位での期間制限の撤廃後も、日雇派遣の原則禁止の例外であるいわゆる17.5業務については引き続き政令に規定することが適当である。

使用者代表委員からは、今回の見直しにおいて、問題の多い平成24年改正法について十分な検討が行えなかったことから、日雇派遣の原則禁止、グループ企業内派遣の8割規制、労働契約申込みみなし制度、離職後1年以内の派遣労働者としての受入れの禁止などについて、廃止を含めた抜本的な見直しの検討に速やかに着手すべきであるとの意見があった。

9 指導監督の強化等について

(1)無許可事業所に対する指導監督について

無許可で労働者派遣事業を行う者に対する行政上の措置を強化することが適当である。

(2)初回の更新時のチェックの強化について

労働者派遣事業の許可の取得後最初の許可更新の際に、当該更新を受けようとする派遣元事業主が許可基準を満たしていることを当審議会に報告することが適当である。

(3)優良な派遣元事業主の推奨等について

労働力の需給調整という労働者派遣事業の役割が適切に発揮されるためにも、悪質な派遣元事業主に対する指導監督を強化するとともに、優良な派遣元事業主を認定し推奨する事業を推進していくことが適当である。

派遣元責任者の要件として、派遣元責任者講習の受講を規定することが適当である。

10  上記以外の事項

(1)関係法制度の必要な整備について

この他、関係法制度について、必要な整備がなされることが適当である。

(2)施行期日について

施行期日は、平成27年4月1日とすることが適当である。

労働者代表委員からは、当部会の運営について、直接の利害関係を有する派遣元事業主が非常に多くの発言を行う等、委員以外の構成員と委員の発言機会のバランスに懸念があったことから、今後、許可制度をはじめとする労働者派遣事業の規制の在り方等に関する議論を行う際には、派遣元事業主の参画の在り方について慎重に再検討すべきとの意見があった。

以上でございます。

○阿部分科会長 ありがとうございます。

 それでは、本件について御質問・御意見がございましたら御発言ください。

 新谷委員、どうぞ。

○新谷委員 午前中に行われました労働力需給制度部会において、ただいま事務局から御報告をいただいた内容について取りまとめに至ったということでございます。

 昨年8月末から今回の派遣法改正の論議を労働力需給制度部会で行ってまいりましたけれども、本当に激しい労使のやりとりがございまして、そうした真摯な論議を経て、本日、報告書の内容のとおり、一定の結論に至ったことにつきましては、御尽力をいただいた公益の先生方、関係者の皆さんの御努力に敬意を表したいと思っております。

 ただ、残念なことに、今回の報告書にある派遣法の改正方向のいわゆる一番肝の主要部分について労働側としては反対意見をつけざるを得なかったということについては、非常に遺憾であると思っているところでございます。

 内容については、労働側の意見をつけさせていただいておりますけれども、今後、この方向で法律案要綱が 労働力需給制度部会で 審議 されます。その後、国会での審議が控えているわけでありますけれども、今回のこの報告書に盛り込まれた基本原則であります、派遣は臨時的・一時的な労働であるということ、その活用についても臨時的・一時的であるということがきちんと法律案要綱、および法律案の中に盛り込まれることは非常に大事なことだと思っております。

 また今回、労働側としては足りないと思っております、派遣労働者の処遇の改善について、私どもの加盟組織の中に派遣労働者が組織している組合もございますし、またいろいろな集会の中で悲惨な事例も聞いております。7年勤めても、いきなり派遣契約の改定に伴って労働契約も切られてしまった労働者であるとか、せめて通勤手当は出してほしいといった声も聞いておりますので、今回まとめられた内容が本当に派遣労働者の雇用の安定と処遇の改善につながる改正となるように、引き続き十分な検討をしていただきたいと思いますし、私どももその検討に参画をさせていただきたいと思っております。

 このまとめに当たっての労働側の意見として申し上げたいと思います。

 以上です。

○阿部分科会長 ありがとうございます。

 御意見として承りましたが、事務局のほうで何かありますでしょうか。なければいいですが。

○派遣・請負労働企画官 新谷委員から御発言がありましたとおり、これから法律案要綱の御審議もございますので、この建議の中身を踏まえまして、事務局で適切に法律案要綱を作成して、また御審議いただきたいと考えております。よろしくお願いいたします。

○阿部分科会長 ありがとうございます。

 ほかにはございますか。

 太田委員、どうぞ。

○太田委員 少し読ませていただきまして、ただ、十分にまだ私が理解していない点なのだろうと思うのですけれども、雇用安定ということを非常に重要視して、直接雇用あるいはキャリアアップを図っていくと。そういう面が非常に出ている報告書だなというふうに読まさせていただいたのですが、その直接雇用というものはどういう意味での直接雇用なのか。すなわち、比較的いろいろなタイプが恐らくあると思いますので、例えば無期雇用から比較的短期のものまであると思うのですけれども、特にここでは触れていないと思うのです。

 そうした場合に、例えば3ページの「 (3)派遣労働者に対する雇用安定措置について」で、まず1で直接雇用の依頼というものがあった場合に、その直接雇用で労働者のほうが、例えば派遣先に無期雇用として直接雇用されたいというふうにこれは読むべきなのか。そこは特に限定せずに考えるべきなのかということ。さらには、1~4の優先順位というものは全くないのか。例えば、派遣労働者がこうしてほしいといった部分がここにどう反映されてくるのかというのがいま一つ文章から十分に私は理解できていないので、その点をお教えいただければと思います。

○阿部分科会長 事務局、どうぞ。

需給調整事業課長 御質問に対しましてお答えいたします。

 今回、報告書の中で直接雇用という文言が入ってきておりますけれども、これは中には派遣労働を希望する方もおられるのですが、中には不本意に派遣労働という形で働いておられる方もおられることがありますので、希望に応じて直接雇用の道も開いていくという趣旨が「 4 直接雇用の推進について」 の記載ぶりにつながっていると理解しております。

 御質問のところの3ページの「 (3)派遣労働者に対する雇用安定措置について」の中の「1 派遣先への直接雇用の依頼」という言葉がございますけれども、これについてはまさしく文字のとおり、直接雇用の依頼でございますので、別に無期とか有期に限定して書いているものではございません。

 ここで重要なことは、派遣元事業主は雇用主でございますので、雇用主の責任として派遣労働者の雇用が、派遣契約が切れてもつなげていくということを責任持って対応いただくことが必要なのではないかということでございます。

 それで、この1から4については、雇用がつながることが一番重要なことでございますので、どれから始めなさいということについては、この報告書の中では優先順位をつけているものではございません。

 以上でございます。

○阿部分科会長 ほかに御意見・御質問はございますでしょうか。

 では、玄田委員どうぞ。

○玄田委員 今回の労働者派遣制度見直し提案を含む部会報告につきまして、分科会公益委員及び経済研究の立場から一言だけ申し上げたいと思います。

 結論から申しますと、広く雇用契約期間の長期化につながる可能性を有する今回の見直しを私自身は高く評価したいと考えております。

 雇用形態にかかわらず、あらゆる労働者が豊かで安定した勤労生活を送ることは、立場を超えて全ての国民の合意する目標と言えます。その際、克服すべき喫緊の課題とは、およそ100万人に上る派遣労働者を含む、いわゆる正社員以外の処遇改善にあることも多くの認めるところです。

 正社員以外の処遇改善には、技能形成の機会の見直しが不可欠であります。翻って、正社員以外の労働者にとって技能形成の機会が損なわれている背景には、業務内容の問題もさることながら、1つの職場で働き続けることのできる期間の短さにあるように思われます。どのような業務でも短期間での習得は困難であり、一定期間継続して働いてこそ、その仕事を理解し、より深く掘り下げていくことを可能とする技能は形成されます。それは正社員、パート、アルバイト、派遣、契約、嘱託、あらゆる職を超えて全てに共通する事実と思われます。その事実は、正社員以外から正社員への転職を実現した労働者について詳細に観察することからも証明できます。

 一般に非正社員から正社員への転職は困難と言われておりますが、総務省統計局労働力調査によりますと、離職した非正社員のうち、1年以内に正社員へと転職した人々が年間30万人程度存在いたしております。そして、正社員への転職に成功した非正社員の人々の特徴として、多くが2年から5年程度、同一の職場で続けて働いた経験を持つ事実が統計分析からは発見されます。石の上にも三年という言葉があります。正社員でなくても、粘り強く1つの職場で3年程度、地道に努力して働くことで技能も形成され、より安定した仕事に移行可能となることをその事実は示しています。

 一方、2012年に実施された総務省統計局就業構造基本調査を見ますと、雇用契約期間が1年以下の人々は非正社員で774万人と、非正社員全体の38%を占める現実があります。派遣労働者に限っても、契約期間が1年以下は66.9万人と、派遣労働者全体のいまだ56%を占めているのが現状です。今回の制度見直しにより、派遣労働者にまずは3年及び期間の定めなく働く機会が拡充していくことは、正社員以外の人々全般にとって技能形成の機会を普及していく重要な第一歩になると予想されます。

 その意味で、今回の労働者派遣制度見直し提案に至るまでの公労使の関係者皆様の御尽力に敬意を表すると同時に、制度の見直しが着実に実現・実行されることを希望します。

 以上です。

○阿部分科会長 ありがとうございました。事務局から特にはないですね。

需給調整事業課長 はい。

○阿部分科会長 ほかに御意見・御質問はございますか。中村委員、どうぞ。

○中村委員 今の玄田先生のお話で気になった点を、教えていただければと思います。

 今回の派遣法の見直しの中で、いわゆる正社員の雇用が重要であるというお話をいただいたと思っていますけれども、その関係でいくと枠組みが変わってしまうのですけれども、いわゆる旧26業務で勤めている派遣の方たちについては、たしか3年を超えたときに派遣先が同種の業務で雇用するときには優先して雇用しなさいと。当然、その場合、派遣で働いている人に声をかけるだけで、派遣で働いてくれれば派遣でいいということになっていたと思います。

 その方にとっては、さまざまなキャリアをやっていて、職業の中でキャリアを重ねているといったときに、派遣先で同様に派遣を続けることのほかにも、派遣先で直接雇用されるということもキャリアにとっては一つの大きな選択であると思っています。そこのところだけが今回、何か抜けているような気がしておりまして、いろいろな議論の経過があったと思いますが、そこら辺の考え方だけ参考までに教えていただければと思います。

○阿部分科会長 それは事務局ですね。どうぞ。

需給調整事業課長 今回、今、中村委員から御指摘のありました、旧26業務に従事されている方について、3年超、継続して受けている場合について、無期の方は除きますけれども、直接雇用の申し込みをするようにしなければいけないという規定については整理されてしまうということで、その考え方でございます。

 今回、26業務がこの報告書の中では廃止されるということで、個人に着目しまして3年を一つの節目として見ますというときに、そこで今回の報告書の中で強く出ておりますのは、派遣元事業主に対しまして雇用安定の責任をしっかり果たしなさいということを位置づけているということでございます。

 したがって、今後の位置づけといたしましては、まず3年経過したときにどうするのかというのは派遣元事業主がしっかりと対応を考えるということで、その中で派遣先に対しまして直接雇用をお願いしますというときには、派遣先の方はその申し入れを真摯に受けとめていただきまして、直接雇用するとか、それは御検討いただくという位置づけになっているということでございます。

○阿部分科会長 新谷委員、どうぞ。

○新谷委員 今、玄田先生から貴重な御指摘をいただいて、本当にそのとおりだと思います。

 ただ、残念ながら、 労働力需給制度部会でも論議をさせていただいたのですけれども、派遣労働者においては、勤続が長いことでスキルアップをしたということが必ずしも処遇に結びついていない現実がございまして、これは賃金センサス等を見たときに、本当に派遣労働者の賃金が年齢別にみても完全にフラットのままになっています。また、これも厚生労働省の研究会報告の中に出ていましたけれども、大量観察のアンケートで見ても、派遣元で無期雇用という、安定して長く働いているはずの派遣労働者の賃金が派遣元での有期雇用と全く変わらずに、77%が年収300万円以下の現状のまま全く変わらない現状にあります。

 これも労働力需給制度部会での論議の中で、このスキルアップというものが今回、許可要件の中に入ってきたのですけれども、そのスキルアップだけでは不十分だと思います。要するに、賃金制度なり処遇制度と結びついて初めて意味があると私どもは主張してきたのですが、そこのところは今回、研究会報告には至っておりません。やはり玄田先生も御指摘いただいたような、スキルアップしたことが派遣労働者の処遇改善に結びついていくという、そこの詰めが今後、この制度を活かしていく上では重要だと思いますので、そこについても引き続き私どもとしては論議してまいりたいと思っております。

 以上です。

○阿部分科会長 ありがとうございました。 ほかにございますか。

 深澤委員、どうぞ。

○深澤委員 報告書の中にも取り入れていただいていますので、あえて繰り返しませんけれども、平成24年度の改正法につきまして速やかに検討を着手していただきたいという声が企業側に非常に多いということでありますので、ぜひその点についてよろしくお願いしたいと思います。

○阿部分科会長 御意見として承ります。

 ほかにはいかがですか。

 もし ないようでしたら、当分科会は労働力需給制度部会報告書をもって厚生労働大臣へ建議すべきであるとの結論とし、その旨を労働政策審議会会長に御報告申し上げたいと思いますが、よろしいでしょうか。

(「異議なし」と声あり)

○阿部分科会長 ありがとうございます。

 それでは、報告文案の配付をお願いいたします。

(報告文案配付)

○阿部分科会長 お手元に配付された報告文案により、労働政策審議会会長宛て報告することとしてよろしいでしょうか。

(「異議なし」と声あり)

○阿部分科会長 ありがとうございます。それでは、そのように報告させていただきます。

 これをもって、厚生労働大臣に対する建議となりますので、御了解ください。

 ほかには議題はありませんが、特に何か御発言のある方はいらっしゃいますでしょうか。

 特にないようでしたら、本日の分科会はこれで終了したいと思います。

 本日の会議に関する議事録につきましては、労働政策審議会運営規程第6条により、分科会長のほか2人の委員に署名をいただくこととなっております。

 つきましては、労働者代表の林委員、使用者代表の坂倉委員にお願いいたしたいと思います。どうぞよろしくお願いします。

 本日はどうもありがとうございました。


(了)
<照会先>

厚生労働省職業安定局総務課                                                                                   平、高畠、松永、武山、市川(内線5711)

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