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2014年2月14日 第1回東電福島第一原発緊急作業従事者に対する疫学的研究のあり方に関する専門家検討会  議事録

労働基準局安全衛生部労働衛生課

○日時

平成26年2月14日(金)
13:30~15:30


○場所

経済産業省別館8階 850共用会議室 (8階)
(東京都千代田区霞が関1-3-1)


○議事

○得津電離放射線労働者健康対策室長 それでは、本日はお忙しい中、御参集いただきまして誠にありがとうございます。定刻になりましたので、第 1 回「東電福島第一原発緊急作業従事者に対する疫学的研究のあり方に関する専門家検討会」を開催いたします。本来であれば、ここで厚生労働省安全衛生部長の半田より御挨拶させていただくところですが、他の業務のため遅れております。時間も限られておりますので、先に進めさせていただきます。

 次に、出席者の方を御紹介いたします。お配りしております資料 1 3 ページになります。こちらが参集者となっております。本日は、放射線医学総合研究所理事の明石先生、それから、長崎大学の高村先生が御欠席ということでございます。それ以外の方は御出席ということでございます。この名簿順に御紹介をさせていただきます。まず、財団法人放射線影響研究所理事長の大久保先生、放射線影響協会放射線疫学調査センター所長の笠置先生、財団法人放射線影響研究所主席研究員の児玉先生、放射線医学総合研究所緊急被ばく医療研究センター生物線量評価研究チーム、チームリーダーの数藤先生、大阪大学大学院医学系研究科社会環境医学講座教授の祖父江先生でございます。

 続きまして、本検討会には座長を置くことになっております。事務局としては、放射線影響研究所の大久保先生に本検討会の座長をお願いしたいと考えておりますが、よろしいでしょうか。

                                   ( 異議なし )

○得津電離放射線労働者健康対策室長 それでは、今後の議事進行につきましては、大久保先生にお願いいたします。

○大久保座長 御指名でございますので、不肖、大久保が座長を務めさせていただきます。皆さん御承知のとおり、今回の福島の事故においては、緊急作業に従事した労働者の方々の被ばく線量が一番大きいわけで、この方々の調査をしっかりとやっていくことが、そのあとの労働者や、あるいは住民の方々の健康問題を理解する上で非常に重要であろうと思うのです。そういうことで、私に何ができるか分かりませんが、皆様のお助けを得て立派な研究計画が作れればと考えておりますので、よろしくお願いしたいと思います。

○得津電離放射線労働者健康対策室長 ありがとうございました。それでは、あらかじめお伝えしていますように、カメラ、ビデオ撮影につきましてはここまでとさせていただきますので、どうぞよろしくお願いいたします。

○大久保座長 それでは、資料確認をお願いします。

○安井電離放射線労働者健康対策室長補佐 それでは、資料の確認をいたします。まず、表紙です。第 1 回検討会ということで、次第です。次ページに開催要綱があります。次に、 4 ページの資料 2 は「専門家検討会の進め方 ( ) 」、 5 ページから資料 3 で「東電福島第一原発緊急作業従事者に対する長期健康管理の取り組み」、 7 ページから資料 4 で「東京電力福島第一原子力発電所における緊急作業従事者等の健康の保持増進のための指針」、 12 ページの資料 5 は「東京電力福島第一原子力発電所緊急作業従事者の長期的健康管理の実施状況について」、 17 ページの資料 6 は「放射線健康影響の疫学調査」で児玉先生のスライド、 29 ページの資料 7 は「日本の原子力発電施設等業務従事者の調査」でスライドがあります。 36 ページの資料 8 は「東京電力福島第一原発作業員の甲状腺の調査等に関する研究」、 39 ページの資料 9 は「東電福島第一原発事故作業者の染色体分析による線量評価」のスライド、 44 ページの資料 10 は「検討に当たっての論点」です。資料は以上です。

○大久保座長 欠損などありませんでしょうか。それでは、揃っているようですので、まず、事務局からこの検討会の進め方について御説明をお願いします。

○安井電離放射線労働者健康対策室長補佐 資料 1 の開催要綱について御説明します。本検討会については、東京電力福島第一原子力発電所において、平成 23 3 14 日から 12 16 日まで、緊急被ばく線量限度を一時的に 100mSv から 250mSv に引き上げていた経緯があります。この間、 2 万人の方が緊急作業に従事されて、そのうち 173 人の方が 100mSv を超えたということです。こういう方々については、被ばくによる健康障害の発生が懸念されるということがあって、大臣指針に基づいて、厚生労働省で被ばく線量等を蓄積するデータベースを構築するとともに、離職後も含めた長期的な健康管理を行っているところです。

 長期健康管理に関する検討会が平成 23 10 月に報告書を公表していますが、データベースで管理される情報は、一定の条件で疫学調査に活用されることを想定しておくべきだと。その場合は、適切な調査計画に基づき実施されるべきという提言があります。このため、このデータベースで管理される情報を含めた今後の緊急作業従事者に対する疫学調査のあり方について、検討をいただくということで有識者の御参集を求めているところです。

 検討項目としては大きく 5 点あります。 1 つ目が、集団設定、調査手法のあり方、 2 つ目が必要な医学・生物学的検査などの項目及び実施頻度、 3 つ目が生涯被ばく線量等の調査手法、 4 つ目が交絡因子等の項目及び調査手法、 5 つ目が研究体制、中長期スケジュールです。

 続いて、 4 ページの資料 2 を御覧ください。「本検討会の進め方」です。全部で 5 回、現時点で予定しています。第 1 回が本日です。現状の把握と論点提示、それから疫学研究のあり方についてのフリーディスカッションをいただく予定です。第 2 回が 2 27 日、第 1 回で御質問等をいただいたものに回答をするとともに、論点ごとの御検討をいただきます。第 3 回目は 3 26 日、ここで、第 1 2 回の御議論を踏まえた形で骨子 ( ) を提示しますので、それについて御検討をいただくことになります。第 4 回目は 4 21 日、骨子 ( ) の議論を踏まえて報告書 ( ) を御議論いただくことになります。第 5 回は 5 16 日、報告書 ( ) の最終的な御議論をいただき、報告書の公表ということで 5 月中をめどにしたいと考えています。なお、本検討会は、報告書の公表後も継続的に開催する予定でして、その後の進め方については今後御相談をする予定です。以上です。

○大久保座長 お聞き及びのように、かなり短期間のうちにさっと結論を出さなければいけない。しかし、その後は、継続的にこの実現に向けてまた仕事が待っているようです。よろしくお願いしたいと思います。今、ちょうど部長がお着きになったので、では、御挨拶をお願いします。

○半田安全衛生部長 安全衛生部長の半田でございます。本日はお忙しい中をお集まりいただきまして、ありがとうございます。それにもかかわらず、私が遅参いたしまして大変申し訳ございません。ちょっと国会関係の用務でそちらのほうに行っておりまして、大急ぎで戻ってきたところでございます。

 さて、この疫学に関する専門家検討会でございますが、御案内のとおり、東電福島第一原発で、平成 23 3 14 日から 12 16 日まで、緊急被ばく限度を 100mSv から 250mSv まで引き上げておりました。この間に 50mSv を超える被ばくを受けられた方が 900 人、 100mSv を超えられる被ばくを受けられた方が 173 人に上っておりまして、その中に更に 6 人の方が 250mSv を超えるという状況でございます。

 厚生労働省では、これらの緊急作業者の被ばく線量などについてデータベースを構築いたしまして、長期健康管理のためのフォローアップを図っているところでございます。放射線の健康影響は、過去の文献から被ばく線量 100mSv を超える場合に統計上有意な疾病のリスクの上昇が認められると言われております。しかし、 100mSv 以下の被ばくの健康影響の有無については知見が十分とは申せません。今回、御検討をいただく疫学調査は、厚生労働省のこのデータベースを活用いたしまして放射線被ばくによる健康影響の有無に新たな知見を加えようとするものでございます。なお、今回の事故の被ばくデータにつきましては、諸外国からも注目を集めているところでございまして、その疫学的な分析は日本の責務であると考えております。

 緊急作業従事者に対する疫学的研究は、平成 25 年度予算で一部実施し、平成 26 年度予算でも一定の予算を確保しておりますが、本格的な研究の実施は平成 27 年度からと考えておるところでございます。本検討会では、今後長期的に実施されます疫学的研究の実施計画について御議論いただくというわけでございまして、 5 月中には報告書を取りまとめていただきたいと考えております。その結果を踏まえて、平成 27 年度予算要求につなげていきたいと考えております。

 こういった大変タイトなスケジュールで、先生方に大変申し訳ないことでございますが、この研究は今後長期間にわたるものでございまして、最初の段階での設計が非常に重要であると考えております。本検討会での自由闊達な御議論をお願い申し上げまして、私の挨拶とさせていただきます。大変申し訳ございません、遅れて来た上に申し訳ないのですが、この後がちょっと詰まっておりますので、しばしお話を聞かせていただきまして、途中で退席させていただきますが、どうぞお許しいただきたいと存じます。よろしくお願いいたします。

○大久保座長 どうも御挨拶ありがとうございました。というような趣旨で私どもに仕事をいただいたわけです。第 1 回目ですので、これまでの放射線関係の疫学調査など疫学研究についての知見を、それぞれの御専門の方のお立場からまず御紹介をいただいて、私どもの議論のスタートラインにしたいと思います。一応、資料を準備していただいていますので、順番にお願いします。まず、第一に、資料 3 を事務局から説明してください。

○安井電離放射線労働者健康対策室長補佐 それでは、資料 3 について、東電福島第一原発緊急作業従事者に対する長期健康管理の取組の状況について御説明します。

5 ページが資料です。下にありますが、被ばく線量管理の状況で、今、被ばく状況が表になっています。これは、平成 23 3 月の事故の発災から昨年の 12 月末までの累計となっています。総計で言いますと、 3 1,383 人の方が実人員として発電所で現在まで従事をされたということです。そのうち、通常の 5 年の被ばく限度の 100mSv を超えた方が 173 人おられまして、そのうち、緊急に引き上げられた被ばく限度である 250mSv を超えた方が 6 人おられます。一方、表 2 の平成 25 年度です。これは年度別の線量を示していますが、平成 25 年度については、現在通常被ばく限度を使っていますので、年間 50mSv を超えた方はいない状況です。現在のところ、 8 か月分ですが、平均の被ばく線量は 4.42mSv です。

6 ページです。これが長期的な健康管理の全体像です。まず、法的な枠組みとして、電離放射線障害防止規則という安全衛生法に基づく省令がありますが、こちらを改正して、事業者から、左側に入っています氏名・生年月日・連絡先、事業場名、被ばく線量、業務の内容、健康診断の結果などについて厚生労働省に報告することを義務付けています。それを、厚生労働省の中で設置されているデータベースの中に蓄積をしています。このデータベースは、本来的には、右側にありますが、離職された緊急作業従事者などが希望された場合に、国が実施する保健指導、健康相談、あるいは被ばく線量に応じた健康診断等の実施に使うという趣旨で収集しているものです。ただし、ここで収集している氏名・生年月日・連絡先、あるいはその被ばく線量については、疫学研究等にも使うことができると右下に書いてあります。最初からそういう制度設計になっています。

 下にあるのが、長期健康管理で実際に行われていることです。まず、上が緊急作業従事者、これは平成 23 12 16 日のいわゆるステップ 2 までに緊急作業に従事された方、 2 万人ですが、この方についてはデータベースの登録の対象となっています。右にありますが、健康管理を併せて実施していて、全ての緊急従事者について法令に基づく健康診断に加えて、メンタルヘルスケアを含めた健康相談、保健指導を実施しています。

 また、 50mSv を超える緊急作業従事者については、白内障に関する眼の検査を 1 年に 1 回実施をしています。それから、 100mSv を超える被ばくをした緊急作業従事者については、甲状腺の検査、がん検診 ( 胃、肺、大腸 ) を実施しています。全ての緊急作業従事者に対しては、データベースに登録したという登録証を交付しています。また、 50mSv を超える方については、申請に基づいて手帳を交付しています。そして、その手帳があれば健康診断等を受けるという取扱いをしています。

 丸 2 です。緊急作業従事者以外の方で、これは、主に、平成 23 12 16 日以降に初めて発電所に入られた方については、法令に基づく健康診断、それから法令に基づく健康相談、保健指導を事業者において実施をしています。

7 ページの資料 4 です。これは、先ほど申し上げた内容を正式に定めている指針ですので、内容の説明は割愛します。

○大久保座長 ちょっといいですか。今の資料 3 で、そこまでで何か御質問ありますか。私は 1 つ質問があります。 5 ページの表で、平成 25 12 月までが左側の表で、平成 25 4 月から別な人のように作ってあるのは、これはダブッている人は一人もいないのですか。

○安井電離放射線労働者健康対策室長補佐 いえ、全員ダブッています。

○大久保座長 いますよね。

○安井電離放射線労働者健康対策室長補佐 はい、左側の表のうち、平成 25 年度に働いた方を右側の表に抜き出しています。

○大久保座長 分かりました。それだけちょっと確認をしたかったのです。ほかにありますか。よろしいですか。では、次の資料に入ってください。

○安井電離放射線労働者健康対策室長補佐 資料 5 の御説明をします。これは、長期健康管理の実施状況について最新の状況をまとめたものです。まず、 1 番です。登録証の発行状況です。緊急作業従事者の人数としては 1 9,346 人います。このうち、現時点までのところ、 1 8,874 人、 97.6 %の方に登録証を発行済みです。登録証を送付できていない方は 472 人いまして、この内訳としては、転居先が分からない、あるいは長期不在、これは送っても受取人がなくて返ってくるという状況ですが、この方が 410 人。それから住所不明が 62 人、この方は、住所がそもそもホテルとか旅館を書いていて、その後、携帯電話等に電話をしてもつながらないということで、かなりコンタクトが難しい状況になっている方が 62 人いるということです。ただし、この 472 人の方々について、平均被ばく線量としては 7.67mSv で、最大 45.07mSv でして、 50mSv 超えがいないことは確認しています。

 続いて、手帳の発行状況です。これは、 50mSv を超える緊急作業従事者に対して、「特定緊急作業従事者等被ばく線量等記録手帳」というものを発行しています。これは、申請に基づく発行ですが、現在のところ、対象者数 903 人のところ 747 人、 82.7 %の方に手帳を発行済みです。これについては、いつでも申請できる状態で、いつでも申請してくださいという通知については、全員に行き渡っていることは確認しています。

3 番目が、健康診断実施結果のデータベースの登録状況等です。まず、 (1) です。これは、特定緊急作業従事者ということで、 50mSv を超える方に対する健康診断の実施状況を特別に調べた結果です。平成 23 10 月から平成 24 9 月までの 1 年間の数字ですが、特殊健康診断、一般健康診断、共に 98 %の実施が行われていることを確認しています。

(2) が、平成 23 10 月から平成 24 9 月まで、緊急作業従事者のうち、放射線業務に従事された履歴に残っている約 2,000 人について調査をしたものです。特殊健康診断については 87.2 %、一般健康診断については 74 %の方がデータベースに現在登録されています。ただし、これは、次のページの注に書いてありますが、平成 25 8 月に提出率が低かったことで督促をかけていまして、その後、大量に登録のデータは出てきています。その中で、まだ内容確認等によってデータの登載ができていないものも含まれるので、もう少しパーセントは上がる予定です。

4 番目が、指針に基づくがん検診です。これは、 100mSv を超える方の状況です。表の 3 ですが、特定緊急作業従事者についてどういう状況になるかを調べてあります。白内障に関する眼の検査については、実施率が 70.9 %、それから、がん検診等については 98.2 %でして、白内障に関する眼の検査については若干実施率は低い状況です。

 表の 4 です。これは、実施されたものがデータベースにどの程度登録されているかの状況です。白内障に関する眼の検査は 19.9 %、がん検診等については 96.8 %です。この 19.9 %と言うのは、注の 1 に書いてありますが、年度の切れ目で、 9 月以降に実施された東京電力分の 310 人が集計外になっていますので、実際のところそれを入れると 6 割程度にはなるので、先ほどの実施調査結果とそれ程変わりはない状況にはなっています。こちらについては、未提出の者について督促を行っていまして、現在、内容を確認次第随時データを投入しているところです。

 表の 5 です。これは、離職をされて国によって健康診断を実施される対象になっている方です。白内障に関する眼の検査については、実施率が 38.3 %、がん検診は 40.0 %です。こちらについては、当初から通知をして、ここのこういう健診機関に行けば無料で健康診断が実施できることを御案内しているわけですが、必ずしも御希望にならない方については受診されないので、現時点ではこういう状況になっているということです。

5 番が、健康相談、保健指導を行っていますが、これの国が行っているものの相談状況です。もともとまだ離職者が少ないので、総数としては今年度上半期は 111 件という程度です。内容については、やはり、今後の健康管理、そういうところに御質問が多いというところです。私からの説明は以上です。

○大久保座長 ありがとうございました。今のデータベースの登録状況で、 13 ページの特殊健診の登録状況という言い方をすると 87 %ですが、白内障と限ると 19 %で、この乖離はどうして起こっているのですか。

○安井電離放射線労働者健康対策室長補佐 法定の健康診断にも眼の検査も含まれているのですが、 50mSv 超えの方については、細隙灯顕微鏡という。

○大久保座長 なるほど、分かりました。

○安井電離放射線労働者健康対策室長補佐 特別の機器を使った検査を求めていますので、一般の多く行われている健康診断にはそういう機器は使っていないので、このような乖離が発生しています。

○大久保座長 分かりました。ほかによろしいですか。これで、 3 4 5 全部終わったのですか。

○安井電離放射線労働者健康対策室長補佐 はい。

○大久保座長 全部通してよろしいでしょうか。これは大事な所で、ここの理解がスタートになります。また後で分からなければ御質問を伺いましょう。

 それでは、先ほど間違えてお願いした児玉先生から、次の資料をお願いします。

○児玉委員 資料 6 を使って説明します。今回のポイントは、恐らく調査の方法についてだと思いますので、結果については触れません。

 「原爆放射線健康影響調査」についてお話します。 17 ページを御覧ください。原爆が投下された時期は、皆さん御存じだと思いますが、昭和 20 8 6 日に広島に、 8 9 日に長崎に原爆が投下されました。それから 2 年弱たって、昭和 22 年に「原爆障害調査委員会」という、原爆被爆者の方々、被爆二世の方々の健康影響の調査に特化した研究所が設立されました。 1975 ( 昭和 50 ) に「放射線影響研究所」に衣替えし、 2012 ( 平成 24 ) 、それまで財団法人でしたが、公益財団法人に衣替えをしております。

18 ページです。放射線健康影響の疫学調査には必須の要件が、大きく 3 つあります。 1 つは、調査対象集団をきちんと定義されたものとして設定する。もう 1 つは、放射線の健康影響ですから、その対象集団に属する方々の一人一人の被ばく線量が推定されなくてはなりません。そして、健康影響ということで、健康情報、あるいは死因を把握する必要があります。

 まず、調査対象集団ですが、調査対象集団としては原爆に遭って生き残られた方々、ここには「原爆被爆生存者」と書きました。また、胎児で被爆をされた方々、両親又は片親が被爆者である、いわゆる被爆二世の方々、この 3 つの調査集団を対象にしております。今日は原爆被爆生存者の部分だけ申し上げますが、 12 万人からなっており、その 12 万人を私たちは「寿命調査集団」と呼んでおります。この 12 万人は、被爆者 9 4,000 人と、原爆が投下されたときに広島、長崎にいなかった方々、いわゆる「非被爆者」と一時呼ばれていた方々ですが、その 2 7,000 人を合わせて 12 万人となっております。その下に「成人健康調査集団」と書いているのは、この寿命調査集団の一部の方々で、 2 年に 1 度の健康診断を受けていただいている方々です。

19 ページです。成人健康調査集団ですが、寿命調査集団約 12 万人の中から、下記の条件で設定をされています。まず、 a 、爆心地から 2km 以内で被爆をして、急性放射線症状、脱毛や皮下出血といった症状を呈した方が約 5,000 人。 b 、同じく爆心地から 2km 以内で被爆をした方でも、急性放射線症状を呈さなかった方がおられるので、その約 5,000 人ですが、これは a と広島・長崎の割合、男女の割合、年齢構成を合わせて、 5,000 人を選んでおります。以上は爆心地から 2km 以内でしたが、 c 3km 以遠で被爆した方約 5,000 人、 d は非被爆者、原爆投下時に市外にいた方約 5,000 人、合計 2 万人です。

 次に、個々人の被ばく線量推定です。 20 ページです。私どもの被ばく線量推定は、大きく「物理学的線量推定」「生物学的線量推定」があります。物理学的線量推定は、この後で説明をしますが、いわゆる 2002 年の被ばく線量推定体系、 DS02 と呼ばれるものです。生物学的線量推定は、これはまた後でお話があると思いますが、リンパ球の染色体異常、また歯のエナメル質における ESR 、これは研究の意味と物理学的な線量推定を補助する意味合いでやっております。 2002 年の被ばく線量体系は、詳しく申し上げると時間が掛かるので、こういう大きな報告書ができていて、このシステムンにのっとって推定をしております。

21 ページです。基本的なことだけ申し上げますが、原爆から放出された放射線の量と質、距離によってどのように減衰したかの情報と、被爆者の方々は爆心地からの距離、実際は原爆が炸裂した地点からの距離が必要なのですが、その距離と遮蔽、家の中で被ばくをされたか、あるいは屋外で被ばくをされたかといった遮蔽の情報を合わせて、 1,000 通り以上のコンピュータ・シミュレーションに従って線量の推定がされています。

 次に、健康情報、死因の把握です。 22 ページです。大きく 3 種類あって、いわゆる死亡調査、死因ですが、これは寿命調査の方全員に行っております。がん罹患調査、これも寿命調査の方ですが、がん登録の情報を利用してがんの罹患を調べております。 3 番目は臨床調査ですが、これは成人健康調査で、いわゆる健康診断の情報、健診のときに血清やリンパ球を保存しております。これが将来、特殊な研究に使えるものになります。また、情報を一部補う意味で、郵便調査もしております。

 それぞれの調査方法の利点と欠点を述べます。死亡調査 ( 死因調査 ) ですが、これは日本に世界に冠たる人口動態統計があって、簡単ではありませんが、情報の把握が比較的容易です。欠点は、診断の精度にかなりばらつきがあって、特にがん以外の疾患の精度は、ものによりますが、必ずしも芳しいものではありません。がんでも、治療がきちんとできて、死亡されない方々がいらっしゃいます。致命率の低いがんの把握は、死亡という形で把握することはできないので、難しいことがあります。死因以外の健康情報はありません。病気にかかって死亡までの間は人様々ですから、発症時点はつかみにくいということがあります。

23 ページです。がん罹患調査ですが、これはがん登録で正確ながん罹患データが得られます。特に広島、長崎には非常に精度の良いがん登録があります。そのがん登録の理由によって致命率の低いがん、今回問題になるかもしれませんが、甲状腺がんや乳がんといったものはなかなか死亡に反映されないので、致命率のがんの把握が可能になります。欠点は、これは将来改善されると思いますが全国的なデータがこれまでは欠如しておりました。

 次に臨床調査です。利点は、がん以外の疾患の罹患データが入手できます。致命率の低いがんの把握も可能です。病気以外の健康情報、例えば血圧の測定や身長・体重等、いろいろな検査値が得られます。情報の量が豊富に得られるので、放射線以外の因子へのばく露情報も分かりますし、先ほど申し上げた血液、尿といったものの保存が可能です。非常に大事な利点は、結果を受診された方に還元できるということで、病気の早期発見や保健指導につながります。これは非常に大切なことだと思います。欠点は、費用が掛かります。人件費、検査費に莫大な費用が掛かります。私どもの所では 2 年に 1 回の健診というサイクルで行っていますが、その間の情報が欠如することがあります。それ以外に、やや専門的になりますが、ずっと健診を受け続けている方々は健康志向が高いので、病気の頻度が減ります。逆に受診されない方に病気が固まるということもあるので、受診者、あるいは非受診者による偏りを生じることがあります。

24 ページです。今申し上げた死亡調査、がん罹患調査、臨床調査は、 1958 年でスタートしております。ただ、死亡の情報は 1950 年から入手できているので、今日まで 64 年間、実際は入手に時間が掛かるので、 60 年ぐらいの情報があるとお考えください。がん罹患情報は 1958 年、臨床調査も 1958 年にスタートして、現在 28 回目の周期に入っております。

 その臨床調査の部分ですが、 2 年に 1 回の健診で、余り特別なことをやっているわけではありませんが、問診から始まって身長・体重、メタボ健診開始以来腹囲も測っています。血圧を測り、心電図を採り、血液検査をし、胸のレントゲン、あるいは腹部の超音波検査、喫煙や飲酒といった細かい情報を入手できます。当然、医師による診察があります。通常の情報の範囲では、ある病気が放射線と関係しているかもしれないと、大体の傾向をつかむことが可能ではあるのですが、確認する必要が出た場合には、「特別調査」とありますが、甲状腺調査や心臓血管疾患調査を必要に応じて導入することがあります。

25 ページです。細かい話になるので今日はいちいち申し述べませんが、これが受診された方が受ける臨床検査の一覧です。臨床調査の非常に大事なものが精度管理です。特にバイアスをたくさん含むと、出てきた結果が間違ってしまうこともあるので、一番大事なものは高い受診率を維持する必要があるということです。また、医師がばらばらに診断を付けると、同じものを扱っているかどうか分からないということも起こるので、診断の統一、検査値もいろいろな装置を使って、いろいろな検査室でやると出てくる値がばらばらになっても困るので、精度管理が必要です。調査員を訓練したり、これは医師も含めてですが、診断基準を統一したり、検査の標準化、これは外部精度管理という方法もあるので、当然内部でもやりますが、外部精度管理をしています。

26 ページです。血液や尿の保存ですが、これもかなり資源を必要とします。超低温冷凍庫、これは -80 ℃です。液体窒素、これは -190 ℃近くになると思いますが、ものによってはこういうもので保存する必要があります。データの保存と管理も非常に大切で、健診記録はきちんと保管をしますし、それ以外にいろいろな情報を連結する必要があります。ただ、連結の部分までは個人情報を含んでいるので、これを研究者にそのまま渡すことはできないので、研究のデータベースを作り直す必要があります。こういうことも、長期の調査をする上では考えていかなければいけないことになります。

 結果の還元が非常に大事と言いましたが、健診の結果報告はできるだけ迅速に受診者にお返ししますし、必要に応じて医療機関へ紹介をしております。 2 年に 1 度の健診と言いましたが、その間も必要な情報をお届けしております。これは健康管理に役立つリーフレットの送付です。

27 ページです。研究の体制ですが、これも非常に大事だと思います。放影研における研究企画、遂行並びに評価の流れ図です。新しいプロジェクトを立ち上げると、きちんとした研究計画書を書いて、研究計画書審査委員会で審査をします。血液や尿といった生物学的試料についての検討が必要な研究ということであれば生物学的試料委員会、特に重要なのが倫理委員会です。倫理委員会も、一般の疫学研究の倫理委員会だけではなく、遺伝子研究に関する倫理委員会も特別に持つ必要があります。そこで承認されたら、常任理事会で更に最終的に承認をし、研究を実施するということです。研究を実施して、その結果を論文にまとめた時点で勝手に投稿することはできず、研究報告書審査委員会できちんと審査をした上で、その承認に基づいて学術誌に発表ということになります。更に大切なのは、「科学諮問委員会」とありますが、年に 1 度、外部の評価委員会によって研究の進捗状況を報告し、いろいろなコメント、助言を頂いて、あるいは新しい研究をしなさいという勧告も頂いて研究をしております。この外部評価は非常に大切です。

28 ページです。毎年行っている外部評価に加えて、私の研究所ではほぼ 20 年ごとに非常に大規模な拡大外部評価委員会が開かれております。最初は 1955 年で、フランシス委員会といいますが、ここできちんとした調査集団を作って疫学調査をしなさいという勧告が出され、それに従って今もやっております。 20 年後の 1975 年にはクロウ委員会、更に 20 年後の 1995 1996 年にはブルーリボン委員会が開かれました。その後は 20 年周期ではなく、 10 年空けて、 2006 2008 年に上級委員会で非常に詳しく研究を総さらいしていただいて、そのときの状況だけではなく、 5 年後、 10 年後、 20 年後どうしなさいということも含めて勧告を頂いております。

 たくさんのことを短い時間に言いましたが、下に載せたのは私どものホームページで、そこで更に詳しい情報が得られますので、必要に応じてそちらを御覧いただければと思います。以上です。

○大久保座長 質問は、まとめて後でやりたいと思います。次に笠置先生、お願いします。

○笠置委員 資料 7 「日本の原子力発電施設等業務従事者の調査」について説明します。私も放射線の被ばくと健康影響を調査しています。先ほど寿命調査のお話がありましたが、結果についてはここには載せておりません。どういう集団をどのように追跡調査しているかについてお話します。

1 つ目が内容ですが、集団の設定、被ばく線量の把握、また健康影響の評価ポイントですが、私どもはエンドポイントとして死亡を考えているので、評価は死亡ということになります。その後に交絡、これは調査にとって非常に重要なことですが、目的としている放射線以外の要因をしっかり把握しておく必要があるということで、交絡因子の調査も行っているので、どういうことが起こるのかということも、例を示しながらお話していきたいと思います。最後に、同意の確認についても少しお話をしたいと考えております。

2 枚目のスライドは、私どもの調査に関わる歴史を書いております。日本原研は、 1957 年に日本最初の原子炉臨界ということで産声を上げました。 1970 年代に入って、商業用の原子炉がかなり出てきたので、そこで従事している人の線量の把握が非常に重要だということで、何も 1 か所で従事するわけではなくて、ほかの発電所に行って従事するとなると、一人の人を一元的に、しかも全国規模で管理することが必要であるということで、 1977 年に放射線影響協会に従事者の中央登録センターが設置され、そこで線量の一元管理しているということです。

1990 年には、健康影響の調査いうことで疫学センターが発足しました。 1991 年から、我々の死亡の追跡は住民票で行っていると申し上げておきます。

3 ページですが、集団の設定です。先ほど申し上げたように、中央登録センターにおいて原子力発電施設等での業務従事者として 1999 3 月までに登録された方を対象としております。それ以後新規に登録された方は、今のところ対象としていないということです。 27 7,000 人の方々が登録をされております。先ほど、住民票で生死の追跡をすると言いましたが、住所が分からないと追跡ができないということで、住所が不明の方、またその住所にはおられなかった方、先ほど申し上げたように、被ばくされている方は 1957 年から既に始まっているので、 1990 年に私どものセンターで住民票で追跡ということは、除票は 5 年間保存ですから、そういうことで除票の保存が経過された、あるいはそこにいないということで、人数の落ちがあったということになり、住所地への住民票によって生死を確認した人数が 20 5,000 人ということです。このうち、女性も従事者の中におられますが、その数は少ないので、男性を対象にということです。年齢は 20 85 歳で追跡を行っております。約 20 4,000 人が、現在も解析対象の人数になります。

4 番目は放射線被ばく線量の話ですが、どのように線量を把握しているのかということです。先ほど中央登録センターで従事者一人一人が正確に全国規模で一元的管理・把握されていると言いましたが、そこから一人一人の線量を提供いただくということで、各個人の年度別の線量の提供を受けております。被ばく線量は年度別の線量を加算して、累積線量として扱って、解析のばく露量として考えております。原爆被爆者の場合は 1 度の被ばくですが、ここでは従事していく年度に従って累積されるので、累積線量が非常に大きなポイントになっております。

5 ページです。エンドポイント ( 死亡・死因 ) の把握ですが、住民票で生存の確認を行ったそこが追跡開始のベースラインで、それ以後、住民票で調査をしていくという追跡方法です。住民票の請求を行ったときに、死亡除票、あるいは転出除票がありますが、転出除票ならば、行った先で住民票の請求を行うということです。死亡除票の交付が得られれば、そこで死亡を把握していることになります。住民票の写しでは、生死は把握できたとしても死因が分からないので、死亡除票を得られた方に対しては厚生労働省承認を受け、人口動態調査死亡票と突合して、その中にある死因を把握していくということです。これが私どもの追跡のエンドポイントになっております。

 交絡因子 ( 生活習慣等 ) 調査ですが、アンケート調査を 1997 年と 2003 年の 2 回行っております。調査対象者は、第 1 回目の調査では原子力発電所に現に従事している方です。 2 次では少し変えて、抽出条件を変えて調査対象者を選んだということです。調査項目は、第 1 次は喫煙、飲酒、原子力以外の業務、医療被ばくについて、 2 次ではそれ以外、もう少し社会・経済的な要因も交絡になるということで職種・職位、教育年数・単身赴任歴等々の情報を提供いただいたということです。 20 万人全員の調査ではないので、そのうち 8 万人の調査になっております。そこから得られたことで、こういうことが起こるということで、交絡因子はしっかり調査しておくべきということです。

8 ページですが、例として被ばく線量と喫煙の割合です。交絡因子の調査の中から得られた結果ですが、このような正の相関を持っているということです。被ばく線量と健康影響を考えるときには、喫煙が非常に大きな交絡をもたらすということの 1 つの例だろうと思います。

9 ページです。喫煙率だけではなく、本数も累積線量に応じてかなり正相関を持っているということです。

10 ページは特殊健康診断受診歴ですが、累積線量と受診歴ありで、有害業務ですが、原子力業務以外にどういう業務をしているかを書いております。有機溶剤を扱う作業、粉じん、アスベスト作業が正に累積線量と関連しているということで、このようなことにも気を付けながら調査をしなければいけないということです。

11 ページです。雇用機関も非常に大きな要因になります。横軸が喫煙歴ですが、雇用機関においても喫煙歴との違いがあるということです。もちろん、雇用機関と死亡率の関係があるということで、ある面では社会的な状況の把握が必要ではないかと。生活習慣も必要ですが、バックグラウンドをしっかりつかまえておくことも、線量と健康影響を見る上では必要なことではないかと思っております。職種・職歴もです。

12 ページは説明と同意の確認の調査ですが、私どもはこのような調査をしました。平成 13 年か 14 年からでしょう個人情報保護に関して社会的な要請と意識の高揚ということが出てきたので、そういうことを鑑みて、 2003 年から 2004 年にかけて約 20 万人を対象に、当時の生存者ですが、同意の確認について調査をしました。私どもはオプトアウト方式によって同意確認の調査を実施しました。この調査に関して説明をして、対象になることに不同意の申出を受ける方式で行ったということです。もちろん、不同意の申出があった対象者については以後の生死追跡を行っていないということです。右側がその内容ですが、放射線疫学調査の対象になることに同意しない場合にはということで、同意確認のオプトアウト方式による確認を行ったということです。当時、 20 万人の方々にこの調査を行って、不同意が約 1 2,000 人であったということも、 1 つの情報として御報告します。以上です。

○大久保座長 続けて、祖父江先生、お願いします。

○祖父江委員 資料 8 を御覧ください。今までの大規模な疫学研究に比べると少しコンパクトな話ですが、東電の作業員に直接関わる話です。甲状腺の調査等に関する研究ということで、今年の特別研究として始まったものです。私は主任研究者を担当していますが、ほかにヨシナガ先生が放医研から、タニグチ先生が自治医大から、ミヤカワ先生が虎ノ門から、オオモト先生が日本原子力研究開発機構から参加されています。

 真ん中の図を御覧ください。ばく露群ですが、緊急作業者の中でも、甲状腺の等価線量で 100mSv を超える人が 1,972 人おられます。この方に対して、東電で独自に、先ほど安井補佐から説明のあった通常の健診に加えて、甲状腺の超音波検査による健診を行います。それだけでは高線量の所見しか得られないということで、それよりも低いレベルの方々を対照群として設定して同様の調査を行い、更にばく露群に対しては、内部被ばくなので線量の再評価を行って、ばく露群、対照群との間で超音波検査による甲状腺の結節、あるいは腫瘤の発見頻度を比較するという概要です。目的は発見割合を比較することですが、調査対象者はばく露群、対照群間の今申し上げたとおりの定義です。

 次のページです。内容ですが、対照群に関しては研究班としてやるということで、アンケート調査、被ばく線量の把握、超音波検査、ばく露群に関しては基本的には東電からデータを頂くということですが、アンケート調査、被ばく線量の把握、超音波検査をこのようにします。ばく露群に関しては、線量再評価として種々の調査で得られたものを日本原研で再評価をしていただくことを計画しています。統計解析としては、データを集めて発見割合を比較し、それを線量との関係で解析するということです。検査結果は、要精検になった人は更に詳細な臨床情報を集め、最終的に有病率の把握をばく露群、対照群の間で行って、事故による被ばくが甲状腺に与えた影響に関する総合評価を行うということです。以上です。

○大久保座長 引き続き、数藤先生、お願いします。

○数藤委員 私は放射線医学総合研究所で、東電福島第一原発事故の緊急時作業者の染色体分析を行っております。これに関しては、お配りしておりませんので補足しますが、 2011 3 月から 7 月まで高線量の被ばく、つまり 1Gy 以上、 1Sv 以上の可能性があった全ての福島原発事故作業従事者が放医研で染色体検査を受けました。この 1Gy 以上という設定は、急性放射線症候群が発症するラインです。結果的に合計 12 名が受診され、 ISO( 国際標準化機構 ) 及び IAEA( 国際原子力機関 ) の設定している生物線量評価のマニュアルに適合した検査が必要と判定された 24 時間後から 2 週間以内に受診をされております。その中で、結果的には検査で実際には高線量被ばく者、 1Sv 以上は見い出されておらず、急性放射線症候群の発症者もなく、検査結果と臨床像は一致しております。さらに、主治医からのオーダーにより、この 12 名中 6 名が 1 年後の健診において染色体検査を受け、着実に回復が観察されております。また、 2011 8 月から本日現在まで、作業者に関する染色体検査の必要とする症例は出ておりません。

 今回は、福島原発事故の作業従事者についてこのように申し上げておりますが、このほかに、放医研では高線量被ばくの可能性がある対象ではないのですが、依頼として検査委託を受けております。それが 2011 3 月から 7 月ぐらいまでの間、福島第一原発のオンサイトと周辺 10km 圏内以内で作業された自衛隊員です。これは、防衛医大等からの委託検査として約 1,000 名を受け入れておりますが、この調査については委託検査であって、研究ではないので、内容を申し上げることは控えさせていただきます。

 資料に戻ります。染色体検査の必要性ですが、一般的には物理線量評価、特に作業者の場合は個人線量計などをお持ちなので、ある程度物理学的にその方の被ばく量が分かります。ただし、建物内の遮蔽影響、また今回は特殊な例ですが、個人線量計の使い方を誤った場合等いろいろな状況があり、空間線量及び何時間、何日そこに滞在したかといったことからの物理線量再構築にある程度時間が掛かります。そこで必要であるというときにすぐに生物線量評価を行うことで、それぞれを補佐するような結果ともなるわけです。

 ヒトの染色体は、 39 ページにありますように、決まった染色体の形と本数を持っています。御覧になってお分かりのように、染色体には真ん中にくびれが 1 つだけあります。それが放射線被ばくを受けて DNA の修復に失敗すると、様々な異常な形をした染色体が現れます。そのときに、くびれが 2 つあるような染色体異常が非常に特徴的で、検出しやすいので、この染色体異常の検査を行います。

 もう 1 つ、今回の調査に関して覚えておいていただきたいことは、このほかに真ん中に示すような相互転座という染色体異常があります。これは、くびれは 1 個なのですが、異なる染色体同士が染色体の部分交換を起こしております。これは形態的には区別が難しい。ただし、正常な形態をしているために、何十年たっても体の中で保存される、つまり安定型の染色体異常です。緊急時に利用する染色体異常はくびれが 2 個あるので、次の細胞分裂で 2 分の 1 の確率で失敗し、その細胞は失われていきます。というわけで、先ほど申し上げたように、 24 時間後から、できれば 4 週間以内に調査しなければならないことになります。

40 ページの下です。実際に、実験的な照射をした末梢血リンパ像を御覧いただきたいと思います。くびれが 2 つあるものを、動原体が 2 個あるということで「二動原体染色体」といいますが、それが右上です。このほかに、つながり方でリング状につながる場合もあって、それが「環状染色体」です。ただし、この環状染色体は小さいと輪っかが見えないというか、鑑定に苦労するので、検査には入れません。

 この染色体異常ではどのように線量を評価するか、線量推定ができるかを次にお示しします。これは、既に福島の調査に関連して昨年 10 月に Health Physics 誌に掲載された論文で、左側が、実験照射において末梢血のリンパ球に 0Gy から 5Gy まで照射したときに、 1 細胞当たり何個のくびれが 2 つある染色体異常が出るかを調べるものです。これを右側のようにグラフ化すると、御覧のように数学的な関係があることが分かると思います。照射線量、あるいは照射線量に対してこのような曲線を描き、数式は上にお示しします。二動原体の頻度が一定の割合で増加することがお分かりになると思います。

 もう 1 つのポイントは、このときの実験照射の線量の一番下、この表で示す 100mGy が、この検査での検出限界となります。つまり、 100mSv 100mGy 以下のものに対しては正確な数値は出せませんが、それ以下であることは分かります。さらに、灰色の点線で示すのが 95 %信頼限界です。 1 回の検査ではどうしても誤差範囲があるので、こういったものも指標になります。このような数学的な関係を利用して、患者を受け入れたときの染色体の異常頻度から、 Y 軸の数値からこの検量線に乗せて、 X 軸の被ばく線量を推定することになります。

 もう 1 つのポイントは、先ほど申し上げた二動原体、くびれが 2 つある染色体異常は残りにくいことから、そのほかの様々な病気、あるいは加齢、年を取って自然に増えていく染色体異常とは区別ができます。直近の 4 週間以内に受けた被ばく事故などを確実に反映していると言えます。

 こういったこともあって、全ては ISO 及び IAEA でマニュアルが作られており、私自身が日本の代表として ISO の委員を担当しております。このプロトコールを作ったり、いろいろな取決めをしたり、実施したりすることに参加しております。放医研の評価システムにこの全ての標準手順を導入しており、 2011 年当時、ここに示すような検査受入れシステムを持っております。まず、被ばく者の疑いがあった場合、国の第 3 次機関として、放医研が持っている被ばく医療ダイヤルという 24 時間ダイヤルに連絡が来ます。そこで、今回も原発の作業者 12 名については受け入れているわけです。実際には末梢血からリンパ球を分離し、 48 時間培養、これは細胞が初めて 1 回分裂をして、染色体像が見えてくる時間ですが、これによって染色体の解析をし、線量評価まで持っていきます。

 ここで重要なのは、聴取り調査です。問診の中で必ず聞いていただく内容があって、年齢・性別・飲酒・喫煙、 4 週間以内にどのような医療を受けたか、どんな薬を飲んでいるか、また医療被ばく歴、通常の健康診断で、 X 線や特殊な健康診断、 CT スキャンなどの影響が多少線量を上げるので、推定線量を正確にするためにはこのような情報が必要です。職業被ばく者に関しては職業被ばく歴、年間どれぐらい受けているかといった情報も頂いております。さらに、研究論文として報告してよいかどうかを含めて、倫理審査及び御本人からの同意書を受けております。

 以上のような流れで、実際にこの 12 名について調査した結果が Table3 です。この中で 10 名お示ししているのは、同意書が頂けたのが 10 名ということです。残りの方に関しては、ほとんど同じような結果を得ております。二動原体から推定した線量は最大で 171mGy 、ほぼ 171mSv とお考えいただければよろしいと思います。これで 95 %信頼限界の上限値から最大 299mGy 以下であったということが言えます。

 これを簡単にグラフ化したのが下の図で、緑色の○が 10 名の作業者、それ以外が私たちの所で年齢をマッチさせて調べている一般の方々の頻度です。ここでほとんどの方、 5 名が一般の方と同じ程度、 0.004 以下が通常の原発等作業者の平常値です。それを超える方が上の 3 つです。いずれにしても、今回は治療を必要とするような緊急被ばく医療が必要な結果はなく、実際に急性放射線症候群の発症者はありませんでした。

 さらに、研究として、一部の方は個人線量計の値を明かしていただけたので、その方について生物線量評価の推定値との比較をしてみたところ、この図のようなものが得られました。これまで 100mSv 以下の染色体異常、あるいは生物線量評価と物理線量評価との関係性がまだ研究段階にあります。どのようなカーブを描くのかといったことが明らかでないので、このように調査しております。人数が少ないので、決定的なことは申し上げられませんが、かなり一致していて、生物線量推定値が僅かに高い傾向があると言えます。現在、自衛隊員の御協力で、個人線量計の値が分かっていて、生物線量評価も分かっているものを蓄積しており、この部分について 100mGy 以下でもどこまで測れるか、あるいは生活習慣その他の影響はどれぐらいあるのかといったことを調べております。

 また、今日お示ししておりませんが、実は内部被ばくの被ばく線量の情報も得ました。そこで私たちは、僅かに押し上げられている生物線量の値が、どれぐらい内部被ばく、体内に存在するセシウムやヨウ素の影響を受けているかを現在評価しています。まだヨウ素の計算しか終わっておりませんが、 ICRP の計算に基づいても数 mSv 以下であろう、つまり、今回見ている染色体異常の値を僅かに押し上げる力がある可能性はありますが、非常に少ないということは見い出しております。

 以上のようなことをまとめると、福島原発事故の作業者 12 名のうち、 10 名の推定線量は 300mGy 未満でした。急性放射線症候群は見られませんでした。残り 2 名も、同意書がないので具体的数値は申し上げられませんが、ほぼ同じような状況であると申し上げておきます。 1 年後健診の 6 名の検査では、染色体異常は着実に減少している、あるいはほぼ同じ量が出ているということで、回復が見られております。

 現在は、最初に申し上げた安定型染色体を用いて長期追跡調査、あるいは将来、過去に遡っての調査が可能である転座染色体異常を指標にして、 FISH 法という方法を使った調査を進めております。この方法は、現在 ISO( 国際標準化機構 ) でも非常に重要なテーマになっており、今後、線量評価、生物線量評価の中心になってくる可能性があります。ただし、実験手法は確立していますが、加齢の影響、あるいは様々な生活習慣の影響などがどれぐらいあるかということで、どのような換算計算ができるかも含めて討議しており、今年 6 月、第 1 回の会合をロシアで持ちます。

 いずれにしても、今申し上げた問題点は、 1 本の検量線、つまり私のラボの誰かの血液を使って作成した検量線に対して、どんな人でも当てはめられるかといった問題なのです。もし、作業者、あるいはどのような方でも、作業従事前に 1 度自分の検査をして自分の検量線を作成すれば、非常に正確な線量推定ができます。ただし、これは疫学的、特にこのような作業者が毎月 3,000 人規模で発生するような場合には、余り現実的ではありません。二動原体染色体、くびれ 2 個の染色体異常は非常に安定していて、バックグラウンドが先ほどの図でも分かるようにほぼゼロですので、どなたでも 1 つの検量線で計算ができるわけですが、この安定型染色体異常に関してはどうしていくかを、ここ 1 2 年ぐらいで ISO で決めようと考えています。これは、取りあえず血液を採って標本さえ作っておけば、いつでも実験自体は可能で、線量推定自体は ISO で規定が決まってから計算するような形でも可能ではないかと考えています。

 現在、私の所では職業被ばく者、宇宙飛行士の線量評価でこれの利用を進めております。渡航前の血液から検量線を作成し、フライトから帰って来られた方の染色体異常の増加を見て、滞在中どれぐらい被ばくされたかが分かります。これは私の所だけでなく、カナダ、ドイツ、アメリカの NASA でも使っている方法です。ただし、今回のテーマに関しては、 3,000 人、あるいは 1 万人の全ての方にそういったことをするのは困難と思われるので、換算係数を今後作っていくという段階です。以上です。

○大久保座長 本日、用意しているのは 4 つの説明でしたが、全部まとめてやっていただきましたので、御質問があれば自由にお願いします。既に御存じのことが多かったと思いますが。

○児玉委員 笠置先生に 1 つ質問です。例の、被ばく線量と喫煙との関係について、私が記憶している限りでは、原爆被爆者の方ではそういうものはなかったと思いますが、これを見ると、作業者の方では見事に線量と喫煙、しかも喫煙の本数とも関係があるということですが、何か特別な事情があるのでしょうか。

○笠置委員 スライド 11 で少し申し上げましたように、喫煙率というのは雇用機関と結構相関があるのです。雇用機関というのがまた線量と相関して、そういう関連があって喫煙と線量との間に関連が見られたのではないかと思います。

○児玉委員 雇用されている機関によっては、こういう関係は見られない所もあるのですか。

○笠置委員 例えば、請負の中でですか。

○児玉委員 はい。

○笠置委員 請負の中では。そういう中でどうだったかというのは見ていませんが、多分、 8 ページのバックにはそういう背景要因が入り込んでいるのではないかと思います。今、先生が言われたように、電力の中で被ばく線量と喫煙率との関係は見ていません。言いたいのは、社会的、経済的な要因というのもしっかり押さえておくことが重要ではないかということでお示ししました。

○大久保座長 ですから、これは例えば雇用機関との関係で言えば、研究機関、電力会社と別々にはやっていないのですか。

○笠置委員 それは見ていません。

○大久保座長 見ていないのですか。

○笠置委員 はい。

○大久保座長 では、もしかしたら 100 %、その機関の特徴が出ているだけのことかもしれないと。

○笠置委員 特徴が出ているかもしれない。

○大久保座長 そういうことですね。

○笠置委員 ですから、それを抜きにした解析はいけませんということです。

○大久保座長 分かりました。ほかは、どうでしょうか。よろしいですか。

○安井電離放射線労働者健康対策室長補佐 数藤先生の所で内部被ばくの話が若干出ました。内部被ばくはいわゆる預託線量なので、今後ずっと、じわじわということもありますが、現実問題としては、福一の場合はヨウ素が多かったので、余り長期にわたるという現実は余りありません。

○数藤委員 そうですね。

○安井電離放射線労働者健康対策室長補佐 事後的に安定型永続まで測れるのかということもありますが、内部被ばくの影響を事後的に調べて何か出るぐらいの検出率はあるのでしょうか。

○数藤委員 現在そういったことで、テストランとして、この 12 名について実施しています。この 12 名というのは何かというと、全作業者の中で最も高い、つまり、検出が可能であるとすれば最も検出され得る人々というわけなので、現在テスト的に計算してみています。いつからいつまで、どれぐらい作業されていて、何月何日に採血したか。つまり、採血時点で内部被ばくを終了しますので、それまでの減衰なども考慮しています。末梢血のリンパ球が内在するヨウ素とセシウムからどれぐらい被ばくしたかという計算を現在しています。

 ここで線量は全部の合計の線量がグレーで示されています。今までは一般的に、どんな事故でも大体が単純な外部被ばく放射線事故が多くて、外部被ばくイコールこの値であるということでしたが、今回は非常に特殊で、ヨウ素などの吸い込みもありましたので、それがこの数値の中のどれぐらいを占めるかといった計算を進めています。現在、残りはセシウムで、今年度中に論文を出す予定です。

○大久保座長 よろしいですか。それでは、時間の関係もありますので、今までの知見に基づいて、今後の調査の設計に当たって、どんな点を考慮しなければいけないのか、これを事務局であらかじめまとめていますので、論点について説明していただけますか。

○安井電離放射線労働者健康対策室長補佐 資料 10 について説明いたします。 44 ページからです。論点としては 6 点ほどを挙げています。この資料の作り方としては、 (1) に、既存研究でどういうことをやっているのか、 (2) に、留意事項としてどういうものがあるか、 (3) に、四角く括ってあるとおり、本検討会で御議論いただきたい点、という構成になっています。この形で論点ごとにまとめています。

 まず、 1. 「集団設定、調査手法」です。既存研究については説明がありましたので割愛させていただきますが、 (1) エのチェルノブイリのことだけ、本日は説明がありませんでしたので申し上げます。チェルノブイリの場合の集団設定というのは、 Russian National Medical and Dosimetric Registry ということなので、何らかの登録をされた事故処理作業者を対象にしていて、 18 万人ということだそうです。調査手法としては前向きコホートを行っているという情報が出ています。本日、説明いただいたものは基本的に全て前向きコホートで、厚生労働省が現在行っている甲状腺だけは断面調査です。

 次に、留意事項です。集団設定に関しては、厚生労働省の長期健康データベースに入っているのが 2 万人ということで、この 2 万人以外を研究対象に入れる場合は新たな集団設定が必要になります。

 検討いただきたいポイントとしては、大きく 2 つあります。 1 つ目は、対象と規模です。長期健康管理データベースで管理されている緊急作業従事者は多分全員入れることになると思いますが、これ以外に、例えば年齢等でマッチングした上で、ほかの方も入れるかどうかという点があります。それから、研究手法としても、前向きのコホート調査が原則だと考えていますが、検出力が 2 万人で足りるかどうかということもあると思いますので、そういったことについて御議論いただきたい。また、例えばケースコントロール・スタディのようなものを組み合わせるかなど、そういったことについても御議論いただきたいと考えています。

46 ページの、 2. 「必要な医学・生物学的検査等の項目及び実施頻度」が 2 つ目の論点です。広島・長崎の既存の研究について御議論がありましたが、これについては表にまとめていますので、 52 ページの表 1 を御覧ください。列が 3 つありますが、一番左側の列が原爆被爆者に対する疫学調査のうちの成人調査で、 11 項目ほどがあります。真ん中の列が当初の指針で定めている検査で、 100mSv 超えの方については、甲状腺の検査、各がんの検査を行っています。一番右の欄は法定健診で、一般健康診断と電離健診がそれぞれあります。実際に行う場合には、法定健診のデータを重ねる必要はないとか、そういったこともありますので、この辺りを十分に組み合わせるという形で行うことになろうと考えています。

53 ページにも 3 つの列があります。これはターゲットで、そもそもどういう疾病をターゲットとして狙うかということです。一番左の列は、たまたま厚生労働省で委託研究を行っていた放射線による発がんの影響がある、あるいは、非がんの影響があるということでレビューの対象となった疾病で、丸 1 18 、そのうち、非がんが 2 つあります。それから、世界保健機関 (WHO) の報告書に言及されている疾病が真ん中の列で、白血病、甲状腺がん、乳がん、固形がんとあり、また、非がんも 7 つほど並んでいます。これらの疾病は単に列挙されているだけで、全てに有意なリスクが認められているわけではありませんが、そもそも、あるかないかが分からないので調査するということもありますので、どこまで狙うのかを考えていただく必要があります。ターゲットとする疾病をカバーできるような検査をどこまでできるのかということを御検討いただく必要があるということです。

46 ページに戻って、 (2) の留意事項を御覧ください。表 2 に列挙されている疾病は、過去の文献等でレビューの対象となったということなので、必ずしも有意なリスクの上昇が認められているものではありません。また、既存研究では、心理的影響についての指摘も最近は増えてきています。

 検査の前の法定健診については、在職中は実施されるということなので、そのデータは活用できます。それから、受検者の負担もありますので、検査の頻度について、毎年なのか、 2 年に 1 回なのか、 5 年に 1 回なのかということになると思いますが、これも検査ごとに最適化の必要があります。また、染色体の関係もありますので、これもどのように盛り込んでいくのかという議論があります。さらに、人口動態調査、がん登録制度といったものもどのように使っていくのかという議論が必要です。

 次のページに、検討のポイントを挙げています。まず、表 2 に列挙されている過去の文献の研究対象とされてレビューの対象となった疾病について、どこまで研究の対象にするのか。心理的影響について入れるかどうか。研究の対象として、疾病等を特定した上で、どのような検査をするのか。また、検査の頻度。これについては疾病の進行速度等を踏まえて最適なものとしていただく必要があります。それから、染色体に関する検査。血液検体の保存。人口動態調査、がん登録制度などをどのように活用していくか、というところが論点です。

 次のページは、 3. 「生涯被ばく線量等の調査手法」です。特に、 (1) のウにあるとおり、今回行っている甲状腺の疫学研究で議論になっているのは、ホールボディ・カウンターの受検のタイミングが遅かった関係で、ヨウ素が検出限界以下になっている方が相当いらっしゃいます。セシウムは出ていますのでヨウ素もあっただろうという推定をしていまして、実測されていないけれどもヨウ素の線量をかなり乗せています。しかも、かなり保守的に乗せているという方が多数あります。こういった方について、どの程度入れていくのかという議論があります。また、事故前の線量については、放射線影響協会の中央登録センターの御協力が必要です。それから、数藤先生からのプレゼンもありましたが、染色体を使った何らかのフォローアップをするのかどうか。

 留意事項としては、外部線量については、ほぼ実測ですので、かなり信頼性が高いのですが、内部被ばくについては推計を使っているデータが多いという状況です。

 検討のポイントとしては、事故前の被ばく線量は中登センターを利用させていただくことが恐らく必要だということ。それから、イの、ヨウ素 131 については、測定の方法もいろいろありまして、ホールボディ・カウンターを使っているものもあれば、サーベイメーターという本来は空間線量率を測るものを喉にドンと当てて測ったデータもあれば、全く検出されていないものをセシウムから推定したものもあります。こういった点については信頼性が異なるということがあります。また、長期健康管理の観点から、内部被ばく線量については最大限高めに出るようにしていますが、これは疫学研究としては、量反応関係をすると傾きが寝てきて検出されにくくなる、言ってみれば、非安全側の方向にいきます。これについては、疫学研究の観点から、疫学研究のためだけに、中央値を採用するなどリーズナブルな推定方法にする必要があるのではないかということです。

4. 「交絡因子」についてです。これは笠置先生からも御説明がありましたが、これも表にまとめていますので、 54 ページを御覧ください。 3 つの列の一番左の列は、広島・長崎で実施されている調整因子です。健診時に毎回調査する事項と、初回又は定期的に調査する事項の 2 つに分かれています。真ん中の列が、厚生労働省のデータベースに登録が可能とされている交絡因子です。ただ、これについては提出が任意になっていますので、必ずしも全員が入力されているわけではないという状況です。一番右の列は、現在行っている甲状腺の調査において把握している交絡因子です。

49 ページに戻りまして、留意事項です。笠置先生からも御指摘があったように、交絡因子を適切にコントロールしませんと、特に放射線業務従事者は業務従事期間が長いのでかなり影響が出てくること。また、特に作業者の場合、笠置先生のデータにもありますが、ほかの化学物質等の発がん要因にばく露されている可能性がありますので、その辺りの調査も非常に重要であろうと考えています。

 検討のポイントとしては、どういった交絡因子を入れていくのかということになります。今までに挙げられたものでは、職歴、家族歴、既往歴、喫煙状況、因子状況等とありますが、ほかに入れるべきものがあるかどうかということです。

50 ページは、 5. 「研究の体制」です。留意事項として、緊急作業従事者 2 万人のうち福島県内の居住者は既に 5,300 人程度に減少していまして、東北・関東を中心に見事に全都道府県に分布しています。法定の健康診断を実施する場合には多数の健診機関や医療機関のデータを使うことになりますので、精度管理が非常に難しい。追加検査では、医療機関をどのように選ぶのかという問題も出てきます。それから、血液検体を保存することになりますと、冷凍庫をどうするのかという問題も出てきます。同意書の話も出てきましたが、研究内容や研究機関が異なる度に同一人物から何度も同意書を取るというのは現実的ではありませんので、ここをどう整理するのかというのは大きな問題になっています。

 検討いただきたいポイントとして、第 1 点目の研究体制については、 2 万人だということと全都道府県にまたがっていることもあり、 1 つの研究機関で完璧に実施することは難しいと考えていますので、何らかの共同研究の仕組みが必要ではないか。共同研究だったとしても、中心となる機関は必要で、事務局的な機能も必要ではないか。また、研究機関が毎年コロコロ変わるわけにはいかないことと、当然、財源的にも安定した財源が必要ではないかということ。また、共同する場合は、それぞれの研究機関の強みを生かしたうまいコラボレーションが必要ではないかと考えています。

 検査の実施体制については、全国に対象者が散らばっていますので、これをどのように把握・フォローアップしていくのか。これは主に厚生労働省のデータベースが行う仕事ではあると思いますが、そういった問題があります。それから、多数の異なる機関で実施した場合の精度管理。追加検査等を実施する医療機関の選択の基準。血液検体の保存。同意書の一括取得。これらについて、どういった点に留意するのかということが論点です。

 最後に、 6. 「中長期スケジュール」です。例えば既存研究の広島・長崎の関係では、成人健康調査は 1958 年から継続していますし、寿命調査は 1950 年から継続しているという状況なので、我々の研究も相当長くなることは予想されます。また、放射線業務従事者については、 5 年ごとに、1期、2期、3期と期を切って研究をしている状況もあります。検討のポイントとしては、生涯の追跡調査が必要だと考えていますが、ほかに何か方法があるかということ。数年から 5 年ごとのように期を切って、研究機関を区分して研究内容の更新等を行っていくという考え方もありますので、御検討いただきたいと思います。

7. 「その他」は、ほかに何か検討すべき項目があれば挙げていただきたいということです。以上です。

○大久保座長 我々がやらなければいけない作業をほとんど全部やっていただいているような感じもします。議論の進め方として、本日は事務局でたたき台を作っていますので、 3 時半までの 20 分ほど、各委員から、項目に追加がないかどうか、同じ項目の中でも考えなければいけない内容があるかないかなど、御自由に発言していただきまして、それと事務局案とをまとめて、次回に系統的に議論したいと思います。先に申し上げてしまいますが、本日解散した後で何か気が付くことがあると思いますので、次回の資料を作るために、来週の 20 ( ) までに御連絡いただければ次回の資料に入れるということにしたいと思います。ですから、本日お帰りになってからでも考えていただいて、来週 ( ) までにメール等で事務局までお伝えください。本日これからの議論とそれを合わせて、また、事務局でも更に検討して、次回の討議資料を作っていただきます。我々は、次回、それに沿って集中して議論したいと思います。

 では、この論点ペーパーの中で足りない点、あるいは、お話したい点など、自発的にあればお願いします。

○数藤委員 検討いただく参考までに、染色体分析について何が分かるかということを補足いたします。安井さんから、染色体分析による線量評価という説明がありましたが、実際には、染色体異常からはそのほかのことも分かります。今回の、くびれが 1 個ある染色法では、ほぼ線量評価しかできません。また、それぞれの人の情報が多いほど詳しい線量推定ができます。例えば、頻回被ばく、何か月又は何年に 1 回、あるいは、 1 回に何か月間被ばくしているかといったような職業歴が分かれば、より正確に出すことができ、また、どのように蓄積していくかも計算できます。それから、局所被ばく、部分被ばくを検出することができます。現在、私たちの所では、最も良い条件では、体積比として 7 %以上の局所被ばくがあれば検出できます。こういった場合、個人線量計からは見出せないような重要な被ばくが検出できることになります。

 もう 1 つ、安定型染色体を調べる方法として FISH 法というものがあります。 46 本全ての染色体を区別して見分ける染色法と、特定の染色体だけを選んで調べる方法があります。特定の染色体を調べる方法は非常に安くすみますが、ほぼ線量評価しかできません。全ての染色体を検出する手法では、線量評価以外に様々な染色体異常が分かります。先天異常や先天異常になり得る異常の保因者、子孫がそれを受け継ぐ可能性があるような異常など、また、様々ながんをはじめとする疾患から見出される染色体異常、つまり、その方が血液系のがんなどになりつつあるとか、なっているという場合には、その異常が見えてくるわけです。ここでは、同意書の中で、線量評価に関わる以外の異常が見付かったときに知らせてほしいか、といったものが必要かどうか。それから、数の異常です。有名なものは 21 トリソミーという疾患がありますが、そういった保因者なども分かります。また、男女、正常な XX 又は XY でないことが分かることもあります。予算の問題として、 46 本が分かる方法では非常に高いということがあります。以上を検討において考慮いただいたほうがいいかもしれません。

○大久保座長 非常に重要な情報ですが、値段だけではなくて、もし詳しいことをやるとすると、現実的に 1 年間に何検体ぐらいできるのですか。

○数藤委員 それは機械が何台と検査者が何人いるかで変わってきますが。

○大久保座長 急に増やすわけにはいかないでしょうから、現在の例えば放医研の実力、あるいは、私どもも入れて一緒にやるとすると。

○数藤委員 今のところ、そうですね、現実的には 100 人とか。

○大久保座長 年間 100 人程度は何とかなる。

○数藤委員 高線量側ですね、例えばですが。つまり、こういった検査というのは、担当医・主治医と被験者の方がいつ結果を知りたいかにもよるのです。絶対に結果を教えてほしいとなったときに、さすがに何か月も待たせるわけにはいきませんので。特に今回の福島作業者 12 名に関しては翌週までに答えをお知らせできる状況にしていました。そういったことを要求されると数が減ります。ですが、例えば 2 年以内に教えるということであれば余裕は出てきます。

○大久保座長 取りあえず、健診ということで必要なことだけ知らせて。

○数藤委員 つまり、 2 種類のモードがありまして、トリアージというか迅速モードと、精細に調べるモードがあります。まず、迅速な判定で異常はなしですということでとどめるとか、疫学研究として個人個人には返さないというスタンスを取るのであれば全く問題なくなってきます。

○大久保座長 そうですね。ほかに、いかがでしょうか。

○祖父江委員 事務局にお聞きします。資料 5 に登録証の発行状況がありますね。厚生労働省のデータベースの中に、現在この 1 9,000 人なり 2 万人なりの方のデータが蓄積されていて、今後このデータをアップデートしていくことになるのだと思いますが、その追跡の方法として、御本人にコンタクトをすることをずっと継続的にできる仕組みはあるのですか。

○安井電離放射線労働者健康対策室長補佐 最初は非常にドタバタしましたが、今は大分落ち着いてきましたので、現状のやり方では年に 1 回現況調査を行っています。それは引き続き行う予定です。

○祖父江委員 それは基本的には個人に郵送するという形ですか。

○安井電離放射線労働者健康対策室長補佐 はい。厚生労働省から郵送しています。

○祖父江委員 企業を通じてという形のコンタクトはないのですか。

○安井電離放射線労働者健康対策室長補佐 現実問題として、行方不明になった方が発生した場合は企業に調べていただくケースが非常に多いのですが、ダイレクトに住所が把握できている場合は直接コンタクトします。

○祖父江委員 追跡の方法というか、データを取得するソースとしてレセプトのデータは重要だと思いますが、そういうものを使える可能性というのはあるのですか。

○安井電離放射線労働者健康対策室長補佐 ちょっと、それは保険者と保険局と相談させていただかないと分かりませんが、現時点でスッと使える状況にはありません。やるとすると相当な検討が必要だと思います。

○大久保座長 次回までに問合せだけしておいていただけますか。

○安井電離放射線労働者健康対策室長補佐 見込みを聞いてみます。

○数藤委員 交絡因子として少しお考えいただきたいことです。私は人類年学の分野でいろいろなフィールドワークをしてきました。その 1 つの、東京都の老人研が大々的に続けてこられた「健康で長生きのための調査」の 65 歳以上の集団調査で、参加者が元は学校の先生だったなど健康や疫学に貢献したいといったような意識の高い方にどうしても偏りがちです。抽出段階では東京都の人口をそのまま圧縮したような比率で人を選んでいたのですが、最後まで来ていただける方にはもしかすると偏りがあったかもしれないという危惧があります。今回、放医研で独自に個人的な勉強会をしたときに、どうすればそれが把握できるかということで、簡単な調査法でないと聴き取りは難しいのではないか。例えば、学校は中学校まで行ったとか、高校まで行ったというような、教育レベルがどれぐらい反映できるかといったことを考えてみてもいいのではないかということでした。意識が高いかどうかといった調査を数値的に表すのはどうしても難しいので、聴き方としてはこういうことになってしまうのではないかという話をしました。

○大久保座長 これからの問題だと思います。今は 98. 何%を追跡できているので、これが落ちていくときに、そういう問題が絡んでくる。

○数藤委員 生活習慣の、例えば今回の喫煙については、非常に厳しい所で働いている方の喫煙率は、喫煙率ではなく喫煙量が高く、外れ値を示す染色体異常の方が出てきます。 1 20 40 本のタバコを吸うと、どうしても染色体異常の頻度がやや上がるといったことがあります。それも、職場環境、ストレス、厳しい所にあるといったことなのか、こういったことは体に悪いという理解がより少ない教育というか、気持ちの状況なのかが分からないので、どのように調査すればそういったものが区別できるようになるのか、今の時点では私には分かりませんが、頭の隅に入れておいていただきたいと思います。

○大久保座長 そういうことを最初から意識するかしないかというのは大きな違いになると思います。貴重な御発言をありがとうございます。ほかに、どうでしょうか。

○笠置委員 データベースについて、私は全然知らないので、基本的なことで申し訳ありませんが。健康診断は一体どこでやっていて、情報はどこからそのデータベースにどのような流れで入ってくるのか、そのルート、流れはどのようになっているのでしょうか。

○安井電離放射線労働者健康対策室長補佐 法令上、各雇用事業者に健康診断実施義務がかかっていまして、法令上の報告の義務も各雇用事業者にかけています。ただ、現実問題としては、 1 5 ぐらいまでの重層下請になっていて、雇用事業者では事業場の規模も小さいという実態もありますので、元請にお願いしまして、集約して報告していただいているというのが実態です。

○笠置委員 その検査はどこでされているのですか。

○得津電離放射線労働者健康対策室長 事業者が健診をお願いしている所から出てきますので、幾つかある所からデータが集まってきています。

○安井電離放射線労働者健康対策室長補佐 いわゆる職域健診機関というものが巷に多数ありまして、そういう所で受検される方がほとんどです。場合によっては医療機関に行って受けている方もあります。

○大久保座長 まあ、健診データがあるけれども、今回、我々はそれでいいのか、それではなくて、きちんと設計した機関で計画的にやるのか、これが 1 つの論点になると思いますし、もう論点の中に入っています。

○笠置委員 これは全国に行っておられますね。例えば放影研のように 1 か所でやるということは、まず無理ですね。

○大久保座長 とても無理です。

○笠置委員 そうすると、幾つかをどう選択するのか、その標準化をどうするのか。

○大久保座長 正にそれが論点ペーパーの中で何回も出てきましたね。

○安井電離放射線労働者健康対策室長補佐 法定健診は法律で事業者に実施が義務付けられていますので、逆に言うと、事業者の費用で行うものですから、ここでやりなさいということは現実的には難しいという実態があります。

○笠置委員 事業者の費用ですね。

○安井電離放射線労働者健康対策室長補佐 できるとすれば、いかに精度管理をするのかという側面支援的な、そういう形になるのではないかと思います。

○笠置委員 退職された後はどのようになっているのですか。

○安井電離放射線労働者健康対策室長補佐  50mSv を超えた方については退職した後は国が指定する健診機関で受診していただくことになります。これは現時点では都道府県に 1 個しか指定しておりませんので、大分状況は良くなると思います。

○大久保座長 原爆の健診の場合には、やはり法定の健診があって、それはいろいろな所で受けられるのです。その一環として、放影研が研究のための健康調査を行っているのです。放影研で受けた方については法定健診を受けたのと同じということで、放影研は逆にお金を頂いています。ですから、今の点から言うと逆をする可能性がある。この研究で予算を取って健診を行った分については、事業主の義務を外してあげるということで、かえって事業主は喜ぶかもしれない。

○大久保座長 こちらでやってしまうということですね。ですから、その辺は、これから我々は慎重に実行可能性も含めて考えなければいけないことだと思います。

○笠置委員 我々は死亡を追跡しているのですが、特に作業者の方は、年齢はどのぐらいか分かりませんが、私どものほうでは 50 数歳だろうということなので、ずっと長い調査というのが必要になってきます。

○大久保座長 それは重要な事項ですね。この年齢分布はありますか。

○安井電離放射線労働者健康対策室長補佐 年齢分布はあります。次回にお出しします。平均年齢は 40 歳後半ぐらいということになっています。

○笠置委員 結構長い期間が掛かりますよね。それほどの覚悟がないといけないのでしょうけれども。そうすると、健診のデータというのは、チェックする上では非常に大きな意味を持つのではないかと思っています。そこをどのように標準化しつつ追跡していくのかということが問題だと思います。

○安井電離放射線労働者健康対策室長補佐 ただ、御留意いただきたいのは、法定健診にはがん検診などが入っていませんので。

○笠置委員 そうですね。

○安井電離放射線労働者健康対策室長補佐 もちろん、非常に基礎的なデータはありますが、それで十分という情報ではないということはあります。

○笠置委員 地域がんで本当にがんが全国的に捉えられるかということも、考えておかなければいけないことだと思います。

○祖父江委員 がん登録で。

○大久保座長 健診は大事だから、健診は通らないと。

○笠置委員 がん登録で、がんの罹患をどう取り得るかということが。

○祖父江委員 ですが、それは今後 3 年先ぐらいには全国がん登録ができますから。

○祖父江委員 それに期待するというということで。結構、情況は変わると思います。

○大久保座長 タイミング的にはいいですよね。

○大久保座長 今、企画しておくと、全国がん登録が次第に完全なものになり、将来役に立つ。

○笠置委員 同意は最初の出発点だということを考えているのですか。私どもが先ほど話をしたときに、やはり、後追いで同意を取るというのは大変難しい。全国に散らばっていますので。

○得津電離放射線労働者健康対策室長 そういった意味では、できるだけ研究計画を明確にして、包括的に同意を取っておくほうがいいと思っているのですが。

○数藤委員 特に、もし生体試料、血液を保管する場合に、今後、様々な新しい技術が何十年もの間に生まれてきます。初期の包括同意では相当な包括にして、今後生まれ得るどんな必要な技術で検査する可能性があります、ということまで入れてしまうのか。あるいは、染色体しか見ません、というような同意になってしまうかで、随分と違います。染色体では遺伝子検査ではありませんので、遺伝子の倫理指針にかかりません。ですが、幾らでも DNA を抽出できるわけで、廃棄にするのか、可能な状態を残しておくのかといったことも検討事項になると思います。同意書ですね。最初に取るのを失敗したら本当に大変です。二度と取れない。

○大久保座長 その場合に、ここにも書いてありますが、とにかく全国に散らばっている所で採血しますので、検体の輸送と保存、それをどうしたらいいかということまで、この 2 3 か月の間に我々としては案を決めないといけない。実際にできるかどうかは別として。その辺は是非、先生のほうで考えておいてください。

○数藤委員 線量評価と絞ってしまう場合と、それから、血液から分かり得るあらゆる情報を取るという態度になるかとで変わってきます。

○大久保座長 染色体検査ではどうも線量のことを考えておられるようですが、そのほかに検査項目をどうするかという質問があるので、今の先生の話はそちらに入ってしまいますね。

○数藤委員 分かりました。

○大久保座長 さて、そろそろお約束の時間がまいりました。もし、おっしゃりたいことがなければ、この辺で閉じたいと思いますが。

○笠置委員 最初の「検討のポイント」で、データベースで登録・管理されている全員を対象とするというのは、そうだと思います。その下の、マッチング等で緊急作業従事者以外をどう選ぶか、追加すべきかどうかという議論になると思いますが、もし、するとなると、先ほど言ったような年齢だけのマッチングではなくて、ほかの要因でもきちんとしておかないと、後でそれがバイアスになることがありますので。そうでなければ、緊急作業者だけを対象とするかですね。

○大久保座長 質問するのではなくて、案を考えてください。

○大久保座長 御協力どうもありがとうございました。一応、予定どおり終わりましたので、本日はこれで閉じたいと思います。

○安井電離放射線労働者健康対策室長補佐 先ほど御説明がありましたように、追加の御意見、御質問等がありましたら、 20 日までに私のほうに電子メールでお寄せいただければ、次回に回答なり、反映させていただきます。

○得津電離放射線労働者健康対策室長 以上で、第 1 回「東電福島第一原発緊急作業従事者に対する医学的研究のあり方に関する専門家検討会」を閉会いたします。本日はどうもありがとうございました。


(了)

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