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2013年10月25日 第80回厚生科学審議会科学技術部会 議事録

厚生労働省大臣官房厚生科学課

○日時

平成25年10月25日(金)15:00~17:00


○場所

厚生労働省 省議室(中央合同庁舎第5号館 9階)


○出席者

永井部会長
相澤委員 井伊委員 今村委員 江藤委員
大澤委員 川越委員 西島委員 野村委員
松田委員 門田委員 山口委員 山田委員
渡邉委員

○議題

1 平成26年度厚生労働科学研究費補助金の公募について
2 ヒト幹細胞臨床研究について 
3 その他

○配布資料

資料1 平成26年度科学技術関係予算の概算要求と新たな医療分野の研究開発体制の検討状況について
(参考)平成26年度医療分野の研究開発関連予算要求のポイント
資料2 平成26年度厚生労働科学研究費補助金公募要項(案)
資料3-1 ヒト幹細胞臨床研究実施計画の申請について
資料3-2 ヒト幹細胞臨床研究実施計画に係る意見について
資料3-3 ヒト幹細胞臨床研究に関する実施施設からの報告について
資料4 遺伝子治療臨床研究に関する実施施設からの報告について
資料5 研究費補助金の不正使用及び研究不正への対応
資料6-1 高血圧症治療薬ディオバン(一般名:バルサルタン)の臨床研究事案
資料6-2 高血圧症治療薬の臨床研究事案を踏まえた対応及び再発防止について(中間とりまとめ) 
資料7 戦略研究新規課題に係る研究実施計画書作成の公募結果について
資料8 平成25年度厚生労働科学研究費補助金公募要項(三次)
参考資料1 厚生科学審議会科学技術部会委員名簿
参考資料2 遺伝子治療臨床研究実施計画の申請及び遺伝子治療臨床研究に係る生物多様性影響評価に関する参考資料
参考資料3 ヒト幹細胞を用いる臨床研究実施計画の申請に関する参考資料
参考資料4 平成25年度戦略研究に向けた研究実施計画書作成に関する研究公募要項

○議事

○中山研究企画官 

まず傍聴の皆さまにお知らせしますが、傍聴に当たっては、既にお配りしております注意事項をお守りくださるようにお願いいたします。それでは定刻になりましたので、ただいまから、第80回厚生科学審議会科学技術部会を開催します。委員の皆さまには御多忙の折、お集まりいただきまして御礼を申し上げます。本日は7名の委員から御欠席の連絡をいただいておりますが、出席委員は過半数を超えておりますので、会議が成立いたしますことを御報告いたします。

 続きまして、本日の会議資料の確認をお願いいたします。まず配布資料としては、資料1として「平成26年度科学技術関係予算の概算要求と新たな医療分野の研究開発体制の検討状況について」、資料2につきましては「平成26年度厚生労働科学研究費補助金公募要項」です。資料3-1から3-3までありまして、3-1は「ヒト幹細胞臨床研究実施計画の申請について」、3-2「ヒト幹細胞臨床研究実施計画に係る意見について」、3-3「ヒト幹細胞臨床研究に関する実施施設からの報告について」というのがあります。資料4は「遺伝子治療臨床研究に関する実施施設からの報告について」、資料5として「研究費補助金の不正使用及び研究不正への対応」、資料6-16-2がありまして、6-1が「高血圧症治療薬ディオバンの臨床研究事案」ということで、資料6-2の「高血圧症治療薬の臨床研究事案を踏まえた対応及び再発防止策について」という形になっています。資料7としては戦略研究新規課題に係る研究実施計画書作成の公募結果について」、資料8が「平成25年度厚生労働科学研究費補助金公募要項(三次)」というものです。このほか、参考資料1~参考資料4までがあります。以上です。資料の欠落などありましたらお知らせいただきますようお願いいたします。よろしいでしょうか。それでは永井部会長、議事の進行をよろしくお願いいたします。

○永井部会長 

議事の1ですが、「平成26年度厚生労働科学研究費補助金の公募」につきまして、審議いただきたいと思います。平成26年度科学技術関係予算の概算要求と新たな医療分野の研究開発体制の検討状況を併せ、事務局より説明をお願いいたします。

○中山研究企画官 

資料12に基づき説明をさせていただきたいと思います。まず、厚生労働科学研究費につきましてはおおむね3年計画で実施されており、今年度で終了を迎える研究課題につきましては、同趣旨の内容で継続する、または新しい内容に衣替えするというものも含め、例年この時期に公募要項案を作成し、科学技術部会の審議を経て11月上旬頃までに公募を開始する。さらに、採択などの評価を経て、来年4月に研究開始をできるようにという手続を取っているところです。

 ただし本年は、いわゆる日本版NIHという構想の検討が進んでいるということがあります。厚生労働科学研究費の中には、いわゆる日本版NIHに一元化していく予算と、そうではなく、従来どおり引き続き厚労省において取り扱う予算があります。日本版NIHで一元化される予算については、現段階では検討が進んでいるということで公募を開始できる状況にはないということで、今回は日本版NIHで一元化されない部分の厚労科研費についての公募要項案について、御審議いただくという位置づけになっているところです。

 まず最初に、前回説明しましたけれども、いわゆる日本版NIHの構築に向けた状況を簡単に復習したいと思っております。資料119ページ以降になりますが、簡単に復習します。現在日本版NIHの検討におきましては、20ページにありますとおり、82日付けですけれども健康・医療戦略推進本部と申しまして、本部長を内閣総理大臣とする推進本部が出来上がっている状況です。この推進本部においては、いわゆる健康・医療分野の成長戦略としての健康・医療戦略というものが既に6月に作成されておりますけれども、健康・医療戦略を推進することとともに、医療分野の研究開発の司令塔機能としての、いわゆる日本版NIHの本部の役割をするという機能を持っているのが推進本部です。この推進本部には政策的助言を行う、左のほうにある健康・医療戦略参与会と、専門的・技術的助言を行う医療分野の研究開発に関する専門調査会が置かれています。

 そこで21ページですが、日本版NIHというのは何を指しているかということですが、いわゆる今申し上げました推進本部と、このページの3番目にある一元的な研究管理を行う独立行政法人と書いてありますが、この2つが1つとなって、いわゆる日本版NIHと呼んでいるということかと思います。この独立行政法人については、この後触れますけれども来年の通常国会で法案が審議されて、再来年度の予定だと思いますが設置される予定なので、来年はこの独法はない状況になります。推進本部の機能としては、2に書いてあるとおり今年からこの取組が始まっていますけれども、それぞれ来年度の概算要求はこれまで各省でそれぞれやっていたということですが、今年から概算要求については事前に、財務省に概算要求をする前にここの推進本部において事前の予算要求、配分調整が行われるという仕組みが導入されているということです。

23ページです。今、申し上げたことの繰り返しになりますが、推進本部があって、A省、B省、C省とありますが、それぞれ厚生労働省、文部科学省、経済産業省といった省庁と思っていただいて結構ですが、それぞれが推進本部による予算、要求配分の調整を受け概算要求をする。獲得した予算について、補助金として新独法に集めて一元的な研究、管理を行うということが、いわゆる日本版NIHと言われているもののイメージであるということです。

25ページです。今、申し上げたことが6月に健康・医療戦略ができ、8月上旬に推進本部ができ、その推進本部による調整を受けて8月末に概算要求が進みましたということで、現在の10月の状況は、平成26年度の予算編成がされているという状況です。もう一つ大事なことは、9月~12月にかけて、上の段に書いてあるとおり、現在、医療分野の研究開発に関する総合戦略が策定中です。これにつきましては、実際に医療分野の重点領域について具体的な、例えば2020年までにどういったところまでの目標を達成するかというような目標を立てていく。どういう戦略で医療分野の研究開発を進めるかということをまとめあげるというものですが、今作成中であり、これが内閣官房の健康・医療戦略室が事務局となって作成しているわけです。その作成に当たって、冒頭で紹介しましたが、専門調査会が置かれていて、現在までに第2回の専門調査会が開かれているという状況であり、そういった流れで今進んでいるということを申し上げたいと思います。

8月末に概算要求をしたと申し上げましたが、その内容について御説明申し上げます。1ページです。「平成26年度の厚生労働省科学技術関係経費概算要求の概要」という表題になっておりますが、実際は厚生労働科学研究費補助金として、一般会計としては平成25年度で約440億だったところ、平成26年度概算要求では約511億円ということになっています。これに東日本大震災復興特別会計計上分を加えますと、それぞれ451億、平成26年度要求が521億になるということです。

4ページです。511億円規模の平成26年度概算要求を厚生労働科学研究費でしていると申し上げましたが、この内訳です。4ページの上にあります新独法対象研究事業が、いわゆる日本版NIHで一元的に管理がされる対象となる予算要求で、下のそれ以外のもの、厚生労働科学研究費のうちでそれ以外のものというのが新独法対象外研究事業ということで103億円という内訳で、511億円の概算要求をしているうちの内訳はこういった形になっているということです。

5ページです。厚生労働省だけではなく文部科学省、経済産業省合わせて、いわゆる新独法の一元化対象経費がどの規模になったかということです。御覧いただくと分かるとおり、平成26年度概算要求として、3省合わせた新独法一元化対象経費概算要求額ですけれども1,382億円規模です。ここについては、1,382億円のうち、実際にこれを要求額として基本的にこの程度は維持できるであろうというレベルのものと、さらに今後新しくいろいろな研究を追加したいということで、要望して追加したいというものに分けますと、1,065億円と317億円規模の要求になっているということで、日本版NIHで一元的に管理される予算は、おおむね1,000億規模レベル以上が想定されることになろうかと思っています。概算要求をするに際しては、3省で連携したプロジェクトを一つの売りとしたというところがあります。

 その下のとおり、主な取組として挙げられているのが、がん研究に関するジャパン・キャンサーリサーチ・プロジェクトなど、右に行って疾病克服に向けたゲノム医療実現化プロジェクトまで7つの連携プロジェクトという形と、その連携の関連プロジェクトとして、医薬品・医療機器体制の取組ということで2つのプロジェクトがあります。そういったものを一つの連携プロジェクトとして今回の3省連携の売りとして、主な取組として挙がっているということかと思います。それぞれのプロジェクトについての連携した内容が以降のページで、参考資料として付いていると思っていただければと思います。

17ページです。現在、先ほど申し上げましたように、総合戦略が策定中で専門調査会が実施されているということで、実際、108日と1021日に第1回、第2回が行われたということです。ここに挙げているように永井先生を座長とする専門調査会が置かれ、今、実際に行われているところであります。これで資料1は一旦終わります。

 資料2については、こうした流れを受けて平成26年度の厚生労働科学研究費補助金公募要項ということで、この内容は冒頭に申し上げましたように、日本版NIHで一元的管理になるもの以外のものです。いわゆる今回厚生労働行政の推進施策に密着したという形の研究の公募ということになろうかと思います。厚生労働省の各部局において、行政施策上必要と考えられる研究を網羅的に掲げているという位置づけになろうかと思います。公募要項の内容として一つ一つ挙げるのは、また時間もかかりますので、例えばということで紹介します。

 がんの研究の例でいきますと、43ページから44ページを見ると分かるとおり、がんの治療薬の実用化にかかる臨床研究の研究費というようなタイプのものは、いわゆる日本版NIHの一元化管理に回るタイプのものですが、ここで挙げられているものとして、例えば43ページの下から4分の1ぐらいのところにありますけれども、領域1としてありますように、充実したサバイバーシップを実現する社会の構築を目指した研究領域ということで、がんと診断された人が充実した社会生活を送ることに役立つような研究とか、あるいは44ページの下から3分の1ぐらいのところにありますが、がん対策の効果的な推進と評価に関する研究領域ということで、いわゆる、がん対策の経済評価のための研究が挙げられているのが例えばの例です。

 さらに、難病研究では52ページを見ると分かりますが、難病研究のうち疾患概念が確立されていないもの、さらには疾患概念が確立されているものについて、その診断基準の策定や診断基準の改訂を行うための研究が挙げられています。こうしたものは医療費助成の施策と関係しているということで、非常に行政施策と密着した研究であるといえるかと思います。このようなものが今回の公募要項には含まれております。このほか日本版NIHに一元管理するのは医療分野の研究開発なので、これには該当しないタイプで重要なものとして化学物質対策や食品衛生、あるいは危機管理といったような関係の研究も、厚生労働科学研究費の中には入っていますので、こういった重要なものについても公募要項の中に含まれているということです。更に付け加えますが、厚労科研費の公募要項の中で、手続の部分で主な変更点を加えた部分があります。これについては、この後、今回の会議の報告事項として報告する予定のところもあるのですが、研究不正の関係の対応を報告する予定ですが、その方向性を踏まえたうえで公募要項についても一部記載を追記した部分があります。

 例えば8ページを開きますと分かるとおり、「応募に当たっての留意事項」があります。ここで補助金の管理及び経理についてという部分を追加していますが、ここの内容の新たな点としては、採択された場合に交付申請書の提出をする際にいろいろな補助金適正化法等の関係法令など、さらには関係の規定について遵守するということについて誓約書の提出を求めることとしており、当該誓約書の提出がない場合は補助金の交付は行えない予定ということを追記していることや、あるいは9ページの上から3分の1ぐらいのところに()というのがありますが、「所属研究機関に対する研究費の管理体制に対する調査の協力について」という記載があります。

 実際、この後御報告しますとおり、研究不正に対する防止としてガイドラインを策定することになっていて、厚生労働省の求めに応じて研究費の管理体制に関して調査を行うこととしています。したがって、厚生労働科学研究費を受けている機関に対しては、管理体制に関する調査に協力いただくということが前提となることを追加した記載があります。ほかにも一部書きぶりの明確化ということで一部変えたところがありますが、こういった内容を追記しているということです。

 なお、公募要項については、103日~15日の間でパブリックコメントも実施しておりますが、パブリックコメントはゼロ件であったということですので報告したいと思います。以上です。

○永井部会長 

ただいまの御説明に御質問、御意見等ございましたら、御発言をお願いいたします。

○西島委員 

質問です。資料15ページの新独法一元化対象経費の御説明は分かったのですが、その下の「インハウス研究機関経費」というのはどのような関係になるのでしょうか。

○中山研究企画官 

ここは、例えば厚生労働省で言えば、ナショナルセンターあるいは基盤研といった研究機関における運営費交付金を積み上げた額だと思っていただければいいかと思います。

 なぜここに入っているかというと、22ページを御覧ください。医療分野の研究開発はナショナルセンター、文科省で言えば理研、経産省で言えば産総研で、医療分野の研究開発も実施しているわけですが、そうしたものについては、この真ん中の部分が新独法に管理が一元化されるというタイプなのですが、そこにはインハウスの研究は入れないけれども、推進本部による一元的な予算要求配分調整の対象とはなるという位置付けなので、先ほど先生から御質問いただいたところにも、新独法一元化対象予算とインハウス研究の額が、推進本部の調整を経て、概算要求がされたという意味として載っているということです。

○西島委員 

もう1点です。厚労省の予算額が、最初の御説明のときには510億円ということで、額が若干違うのですが、この辺はどういうことになっていますか。

○中山研究企画官 

5 ページにおける「新独法一元化対象経費」の中には、いわゆる厚生労働科学研究費というものとともに、臨床研究中核病院などのような、拠点整備に係る事業費というものも、一部入っているものですから、その点で額としては合わないことになります。

○松田委員 

日本版NIHについて、確かこの審議会でも以前に議論があったかと思います。日本版NIHというのは、日本の成長戦略の議論の中で、より産業化を目指すという方向性の中で議論されてきたということで、いろいろな学会からも基礎基盤的な研究がおろそかになるのではないかというような要望も出されているかと思います。厚生労働科学研究費は目的が非常にはっきりした研究費で、各省庁の研究費よりは明確化されているとは思うのですが、こうした基礎基盤的な研究がおろそかになるのではないかという危惧に対して、今回の新独法対象あるいは対象外という住み分けについて、拝見しますと、対象の所にも「厚生科学基盤研究分野」というように、比率が厚くなっているかとは思うのですが、この住み分けを厚生労働科学研究費についてはどういう価値判断基準でしたのかを確認させていただきたいと思います。

○中山研究企画官 

厚労科研費の場合は、臨床的なものをはじめとして応用部分の割合は高いのですが、確かに基礎分野の研究もあります。ただ、これについては基礎であっても、実用化を念頭に置いた上での、目的が明確な基礎研究については、独法の一元化対象予算としてまとめたという整理になろうかと思います。

 一方で、これは、なおですが、22ページにあるとおり、いわゆる文部科学省が持っておられる科研費については、研究者の発意によるボトムアップの基礎研究ということで、そういったことについては、今回の日本版NIHに対しての一元化の対象外になっているということかと思います。

○渡邉委員 

先ほど、今後の厚生科学補助金で出る課題について説明があったのですが、いわゆる社会的、医学的、公衆衛生学的な側面での課題というのは、結構ここに挙げられているとは思います。今度、新独法のほうに移行する予算の中に、先ほどの区切りという話もあるのですが、一部は同じような基盤的な研究で、例えば我々の分野でしたら、ある意味のサーベイランス的なこともその中に含まれているのだと思います。

 今度新独法にいったお金を使うに当たっての課題選定に関して、どのぐらい厚労省の意見等がそこに聞き入れられるのか。これは余り言いすぎると、省益をうんぬんといういろいろな問題にも絡むのだと思うのですが、例えば研究費の補助が実用化研究という形で、実用化に絡まないような基盤的研究は谷間になってしまう可能性もあると思うのです。

 例えば今お話のあった、補助金の公募課題にしても、非常に少ない、3つぐらいの課題で、恐らくそれだけだと厚労省のいろいろな基盤的な研究というのが、カバーでききれないのだと思うのです。過去の課題であったら、こちらの補助金に入ってよさそうな課題が、新独法の中にも入り込むのではないかと思うのですが、そのときに、課題の選定に当たってのプロセスがどうなるのか、そこは結構重要だと思うので、どこでどのように決められるのかがよく分からないと、厚労省の意思がどのぐらい反映されるのか心配なところもあるのではないかと危惧します。そうすると、谷間ができてしまう可能性があると思うので、その辺はどのように考えればよろしいのでしょうか。  

○中山研究企画官 

今、お答えできることであれば、資料123ページを御覧いただければと思います。これも先ほど述べたことと繰り返しになる部分がありますが、新独法に一元化されるという予算については、各省において、必要な研究費がどういった領域にあるのかを検討し、それを概算要求案としてまとめ上げ、その段階で推進本部から、各省がどういった要求をしようとしているかの調整が入ることにはなりますが、各省がそれぞれ財務省に概算要求をし、獲得した予算を、研究の管理という観点で新独法に委ねる形になります。

 やはり、実際にそれぞれの省が、どういった行政上の必要性があって、そういった予算を必要としているかという部分は、そうした流れの中できっちりと入ってくることになろうかと思っています。

 なおですが、この公募要綱については、例えば指定研究という形で、公募をしないタイプのもの、あるいは今年1年目とか2年目で、まだ来年も継続する予定というタイプのものは含まれておりませんので、ここにあるものがNIH以外の全部であるということではありません。これは留意点として申し上げさせていただきます。

○渡邉委員 

そうすると、推進本部等で決められた課題というのは、今回のこれと同じように、科学技術部会に課題名が上がってくることになるのですか。いわゆる厚労省の予算の申請のところで、厚労省の意向がそこに入るとなると、ここにそういうものが上がることになるのでしょうか。

○中山研究企画官 

資料の4ページを見ていただくと分かりますが、いわゆる新独法対象研究事業ということで、こういった研究費の事業名が上がってきますが、現在のような形で、科学技術部会の審議を経てという形を取るものという前提で考えているところです。

 ただ、いろいろと制度設計がされているところなので、断言はできないところがありますことは、御留意いただきたいと思います。

○永井部会長 

私も、今、ここの委員会に加わっていますが、まだ議論が始まったばかりで、どういう設計になるかということ、あるいはどこまでカバーするかはよく分かりませんので、とりあえず平成26年度はこのような枠組みで出していくと。

○中山研究企画官 

そうです。

○永井部会長 

平成27年度になると、また違った枠組みになる可能性があるということです。

○門田委員 

この過渡期に難しいことになるのだと思うのですが、少なくとも厚労省として、今のお話のように新独法もここで対象となるのであれば、我々が将来的にその方向性が厚労省の方向なのだと言える様な大きなベクトルの方向性は必要だと思うのです。

 だから、その辺りは、ある程度の方向性を主張すべきではないか。厚労省の主張というわけではなく、あるべき方向としてはです。

○永井部会長 

それは、正に今、検討しているところで、平成26年度は過渡的にこのようにすると。これは、テクニカルに必要だということですね。事務局から何かありますか。

○中山研究企画官 

基本的には厚労省としての概算要求をどうするかについては、こうした審議会の場において、しっかりと方向性を、有識者の方々の御意見も踏まえながら進めていくことについては、間違いないことかと思っています。

○江藤委員 

日本版のNIHというのは非常に素晴らしい発想で、大いに期待できると思います。私が関わっていた福祉とか障害の分野に関して、例えば生活支援、自立支援は、経産省関係の研究費でもやっているのですが、なかなかまとまった研究が出てこないのです。

 ここに、「健康・医療戦略推進本部」ということで、「健康」という概念はかなり広いですよね。その中で、今、出ているモデルだけを見ると、非常にdiseased orientedで、疾患中心の感じがあって、例えば難病も障害の対象にするということになっています。そういう場合に、どのくらい生活の困難度があるかとか、そういう面の研究というのが、従来の枠の中でも、長寿・障害の枠でやるのですが、どうも恵まれないようなところがあるのです。

 デザインとしては、医療機器、ここでも医療機器が挙げられていますが、その中にロボットなどに関しては、生活の自立支援といった面があるので、そういう面から「障害」「リハビリテーション」といった言葉も、どこかに入っているといいかなと思うのです。

 アメリカなどですと、NIDRRというDisability and Rehabilitation ResearchInstituteがあるのですが、我々の国立の障害者リハセンターですと非常に規模が小さくて、なかなかそのように手が回らないのです。障害関係の研究となりますと、かなり省庁横断的なプロジェクトになると思うので、日本版のNIHには非常に期待しているわけなのですが、そういう項目もどこかに入れていただけるといいかなと思いました。

○永井部会長 

例えば資料14ページの表で、江藤先生のおっしゃった福祉・障害関係はどこに入るのでしょうか。

○江藤委員 

多分、(4)です。長寿・障害総合研究。

○永井部会長 

それは、対象外として枠は確保してあるということでしょうか。

○中山研究企画官 

新独法を対象経費としてということになります。

○永井部会長 

ただ、トータルの額は大体同じなのですか。408億と103億ということで、研究費の額はそんなに変わっていないということですね。前年度比でどのくらいになるのでしょうか。

○中山研究企画官 

1 ページを御覧ください。一般会計で申し上げますが、平成25年度予算額が440億で、平成26年度の概算要求額が510億ということで、対前年度で116%の要求になっていて、510億の内訳となるのが、408億と103億ということです。

○永井部会長 

よろしいでしょうか。よろしければ、平成26年度厚生労働科学研究費補助金の公募については、資料のとおりに進めるということにしたいと思いますが、よろしいでしょうか。

                                  ( 異議なし)

○永井部会長 

字句等の修正がある場合には、事務局において行いますし、必要に応じて私のほうで確認した上で、内容を確定したいと思いますので、了承いただきたいと思います。

 議事2「ヒト幹細胞臨床研究実施計画の申請について」です。関西医科大学及び湘南鎌倉病院からの申請については、1011日に厚生労働大臣より諮問され、1016日に当部会に付議されております。事務局から説明をお願いいたします。

○堀再生医療研究推進室長 

資料3-1に基づき、新たにヒト幹指針に基づいて申請いただいた2課題について、紹介いたします。

4ページです。関西医科大学の楠本先生からいただいております。研究課題名は「自己脂肪組織由来幹細胞を併用した遊離脂肪移植による乳がん手術後の乳房再建法の検討」です。対象は、乳がんに対する乳房温存術後(術後1年以上を経過した症例)の乳房変形に対し使う細胞で、ヒト皮下脂肪組織由来間質幹細胞です。実施期間は5年間、症例数は5症例です。

 治療研究の概要は5ページです。患者の腹部若しくは臀部若しくは大腿部から、最大300mLの脂肪を吸引し、半分については自動細胞処理装置を用いて、脂肪幹細胞を含んだ組織を取り出します。残りの半分については、洗浄を行い、これを合わせて患者の乳房に移植をするという技術です。治療後12か月までの全身状態と、乳房形態の評価を行うという技術です。

2件目は18ページです。湘南鎌倉総合病院の小林先生からいただいています。研究課題名は「維持透析療法中の慢性重症下肢虚血患者を対象とした自家末梢血CD34陽性細胞移植による下肢血管再生療法」です。対象疾患は、維持透析中の慢性重症下肢虚血の患者です。用いる細胞は、ヒト末梢血CD34陽性細胞です。実施期間は試験開始から2年間、対象症例数は10症例です。

 治療研究の概要です。52週間の観察期間で治療の安全性、有効性を評価することが目的で、G-CSF製剤を5日間皮下注し、その後、アフェレシスにおいて静脈から単核球を取り出し、更に磁気細胞分離装置を用いてCD34陽性細胞を分離し、取り出した細胞を麻酔下で、血流の悪い下肢の筋肉内に注射で移植します。

19ページを御覧ください。先行して、2009年からG-CSFを用いた単核球を採ってくる研究が行われておりまして、その概要を記載いただいています。単核球を用いた研究については、この施設で10症例行っていただいたということで、そのうち透析患者は9症例です。この透析患者については、特にCD34陽性細胞の動員数が少なかったということで、今回は対象疾患を維持透析中の患者に限り、更にCD34陽性細胞のみを選んできて投与するという、新しい研究ということです。2研究の概要については以上です。

○永井部会長 

ただいまの御説明に、御質問、御意見がありましたら御発言をお願いいたします。

○今村委員 

2 番目の維持透析療法中うんぬんということなのですが、責任研究者というのが、医療法人沖縄徳洲会湘南鎌倉総合病院ということですが、この医療法人については、現在公選法の違反等で非常に問題になっている。この医療法人自体の倫理性が非常に問われている状況の中で、当然この中にも倫理審査委員会というのがあるのでしょうけれども、そのような所で審査したものを、ここで承諾とはなかなかいかないのではないか。この問題というものの決着が付くまで、少なくとも承認はなかろうと私は考えます。

○永井部会長 

事務局、いかがでしょうか。

○堀再生医療研究推進室長 

今回、紹介させていただきました2課題については、ここで紹介させていただきまして、審査委員会で審議いただくことについての御了承をいただけるかどうかの御判断を頂くということです。ヒト幹審査委員会のほうで、手続も含めて、きちんと行われているかについて審査を頂くということです。

○永井部会長 

審査委員会で、その問題については議論するということでいかがかということですが。

○今村委員 

この部会の中で了承するということになれば、その意味というのは、どういうことになるのですか。

○堀再生医療研究推進室長 

本日、御審議をお願いしたいのは、審査委員会で審議を頂くことについて、御了承いただけるかということですので、審査委員会で審査を頂きました結果につきましては、再度科学技術部会に報告させていただき、最終的に実施してもいいかどうかについて御判断いただくことになります。

○今村委員 

そういうことであれば、私としては否と申し上げたいと思います。

○門田委員 

申請が上がってきたら、ここで諮られ、次に下に降ろされますよね。ここでは何を評価するのですか。

○永井部会長 

そこへ審査に付議していいかということと、最終的な審査委員会での判定を了承するかということです。

○門田委員 

そうすると、下に回してもいいかどうかというのは、今の事務局の説明ですと、医学的な倫理性うんぬんというディスカッションは、当然下でやられると思うのですが、それ以前の、この組織がどうなのかということは、下に譲っても下も困るのではないでしょうか。ここである程度の方向性を決めるという、今村委員がおっしゃっていることは理解できると思いますが。

○相澤委員 

先例なのですが、審査を開始することを保留した例というのは、今までにあるのでしょうか。

○堀再生医療研究推進室長 

これまでにはないと承知しています。本委員会で、ヒト幹の審査委員会で審査を頂くに当たって、こういう観点をちゃんと見ていただくようにという意見を頂いて、それを審査委員会にお伝えするといったことはあったと思います。

○相澤委員
    いろいろな御意見があると思いますが、審査を開始するということは、承認することを意味しているわけではないと思います。

   審査を留保するとするには、審査を留保するきちんとした理由が必要であると思います。さまざまな報道はされていますが、この会合では、具体的な事実関係を把握した説明がなされておりませんので、さまざまな事情を含めて、審査をしていただく方が良いと思います。そして、承認すべきか否かを判断するときに、事実関係を踏まえて判断すべきものであると思います。その時に、事実関係が不明であるということであれば、保留にすべきではないかと思います。今までも慎重に審査をするようにということで、意見を付して審査に回した件があったと記憶しています。

○堀再生医療研究推進室長 

技術的な観点から御意見を頂いて、それを審査委員会に伝えたことはあると承知しています。

○門田委員 

相澤委員がおっしゃるとおりだとすれば、ここで諮る理由は何なのか。

○相澤委員

申請が様式を満たしていない場合、例えば、十分な記載がされていないという場合は、記載の補充を求めなければいけないと思います。あるいは、この時点で既に問題が明らかになっている場合、例えば、記載された治療方法は適切ではないということが、審査をするまでもなく明らかであるという場合には、審査に付す必要はないだろうと思います。

   ただし、留保する場合には、留保する理由を付さなければいけないと思います。

   そうすると、報道されているだけで留保していいものかどうかということがあります。承認をするには、事実関係を明らかにしなさいということができると思います。仮に、留保をするのであれば、こういう事実関係を明らかにすれば、審査に付すということを申請者に伝える必要があると思います。

   そこで、この医療法人では十分な医療が行われていないといえるのでしょうか。

   この医療法人の医療について、現時点で、何か問題が指摘されているということでしょうか。

    それから、我々のmandateはどこにあるのかを、事務局として明らかにしていただければと思います。

○今村委員 

これは、そういう技術的な問題ではないのではないですか。こういう医療行為を11つ点検して、おおよそ大丈夫とか、そういう技術的なことを議論する以前の問題で、この医療法人自体が持っている、大きな社会的な課題をクリアしなければ、研究責任者という方に対して、ではお願いしますということを、国としては言えないのではないですかという話です。

○堀再生医療研究推進室長 

本件につきましては、ヒト幹の指針に基づいて申請がなされているものです。この部会で御判断いただきまして、必要な意見、このようなところをヒト幹に照らして見てくれという御意見を頂いた上で、審査委員のほうでヒト幹の指針に照らして、体制、倫理的な面での審査が適正に行われているかという御審議を頂き、再度その結果をこの科学技術部会に報告させていただくという形です。もし差し支えなければ、この件についてはヒト幹審査委員会でそこをよく見ていただいた上で、再度この科学技術部会に報告して、審議を頂くとさせていただきたいと思います。

○永井部会長 

要するに、審査委員会は技術的なことだけを審査する場ではなく、医療法人の適格性までを含めて審査すべきだということですね。

○今村委員 

おっしゃるとおりです。

○永井部会長 

そこを是非注文として伝えていただくということで、いかがでしょうか。

○門田委員 

直接関係ないのですが、法人が医療法人としてどうかは知りませんが、病態腎移植の問題も、この徳洲会病院から出てきましたよね。確か、それで臨床試験としてスタートしたのですかね。今、学会と訴訟になっていると思うのですが、これは臨床試験だからこことは関係なかったのですね。ほかの委員会で認められているのですね。同じ法人だと思うのですが、小さな所で違うかも分かりませんがそういうことが2つ上がってきていることのこれは2つ目。その辺りの所、過去については、こういう意味で、こう解釈する、あるいはこれはこうであるという、ある程度の方向性を出しているのであれば、座長がおっしゃられるような形で、それはそれでもいいのかなと思います。

○堀再生医療研究推進室長 

今、門田先生から御指摘いただきました件ですが、ヒト幹の指針の対象の範囲がありまして、臓器の移植については、この指針の対象としていないことから、その件がヒト幹の指針に基づいて上がってくることはないという事実関係です。

○永井部会長 

法人の適格性という意味では、いろいろなことがリンクしているのだと思うのです。それについては、当然ヒト幹審査委員会でも審議することになると思います。

○門田委員 

そこの解釈がどうなるか、ここが直接は関係ないというのはそのとおりなのですが、実際我々は、社会全体がどういう位置付けで、あの臨床試験を走らせ、それを認めている、そして、これは今おっしゃられたような形でやっていく。その整合性がとれれば、それは1つの方策としてそれはそれでいいのだと思うのですが、その辺りをクリアにしておく必要があるのではないかという気がするのです。今、先生がおっしゃったような法人としてですね。

○井伊委員 

今のやり取りでよく分からないのですが、ヒト幹の指針の中に、法人としての適格性を幅広く審査するというものがあるのでしょうか、ないのでしょうか。ないのであれば、そこをお願いしなければいけないのか、あるからそれを前提でお願いすればいいのか。ちょっとよく分からないのですが。

○堀再生医療研究推進室長 

ヒト幹指針上規定されているのは、研究の体制が整っているかという観点から、研究者の責務、研究される方の責任者の責務、研究機関の長の責務、倫理審査委員会がこのような要件を満たしていなければならないといった要件が規定されていますので、そういった運用について、指針に沿ってなされているかを見ていただくということで、直接、法人うんぬんといった規定はヒト幹にはありません。

○相澤委員

きちんとしておいたほうがいいのは、法人そのものを問題にするのは、別にmandateにしている機関があるはずです。ここでは何を議論するのかを明らかにしていただければ、と思います。

 それをきちんと整理しておかないと、今村委員が御指摘された問題が、この審議会で審査すべきか否かということが明確でなくなると思います。
○堀再生医療研究推進室長 

医政局で所管している部会で、そちらについては議論が行われるものと承知しておりますので、ここで御議論いただくのは、研究としてきちんと行っていただける体制なのか、その倫理性も含めた中身の話になります。

○永井部会長 

医療法人の適格性が揺らいだら、研究体制も揺らぐということだと思います。

○相澤委員 

この件を含めてという御指摘だと理解をしてよろしいでしょうか。

○永井部会長 

そういう理解でよろしいでしょうか。そうしましたら、そのことを審査委員会に伝えるということで、またその審議の結果をこちらで更に御議論いただくことにしたいと思います。

 続いて、「ヒト幹細胞臨床研究実施計画に係る意見について」、御意見を頂きたいと思います。昭和大学藤が丘病院、国立成育医療研究センター、奈良県立医科大学、産業技術総合研究所、朗源会ウェルフェアグループ、新潟大学医歯学総合病院、福岡徳洲会病院の申請について、審査委員会の検討結果を事務局より御説明をお願いいたします。

○堀再生医療研究推進室長 

資料3-2に基づき御説明をいたします。この7件は、ヒト幹審査委員会での審査が終了したものとして今回部会にお諮りをするものです。件数としては7件ありますが、1件目、2件目の昭和大学、成育医療センターについては共同研究、また4件目、5件目は産総研、朗源会ウェルフェアグループの共同研究です。

1件目より研究の概要と審査委員会での指摘の御報告を申し上げます。2ページを御覧ください。1件目は昭和大学です。研究課題名は「自己骨髄間葉系細胞移植による末梢動脈疾患への血管再生治療」です。対象疾患は、慢性閉塞性動脈硬化症、バージャー病等です。用いる細胞は、自己骨髄間葉系細胞です。資料の修正をお願いしたいのですが、実施期間が今年の11日からとなっていますが、実施の許可日から2016年の12月末までということで、10症例を予定しています。

3ページ以降に審査委員会での主な指摘とそのやり取りを記載しています。プロトコールとしてヘモグロビンの濃度の基準について、また説明同意文書について、感染症検査の結果が被験者に細胞を投与した後に明らかになった場合の対応についてきちんと説明をするようにということ、4ページには倫理審査委員会のやり取りが分かる議事録を添付してもらいたいというやり取りがあり、対応いただいた結果、今回承認ということになりました。

27ページを御覧ください。2件目は、成育医療センターです。細胞の調整を行うということで同じ研究です。実施期間は先ほどと同じで、修正をお願いしたいと思っておりますが、実施の許可から2016年末まで、10症例を予定しています。審査委員会による指摘は、28ページ以降です。細胞培養法をする施設ですので、品質・安全性、培養の期間、CPCの中の室圧、用いる資材・試薬について、汚染防止等についてのやり取りがあり、審査委員会として承認をいただきました。

3件目は、奈良県立医大からいただいている技術です。45ページを御覧ください。研究課題名は「関節鏡視下自己骨髄間葉系細胞移植による関節軟骨欠損修復」、対象疾患は、外傷性あるいは離断性骨軟骨炎による膝関節軟骨損傷です。用いる細胞は、自己骨髄間葉系細胞です。実施許可から3年間で、細胞移植群40例、対照群40例ということで臨床研究を行う予定です。腸骨から骨髄液を約30ml採取し、これを10日間培養いたしまして、必要細胞数まで増えたらヒアルロン酸を加え、関節内に移植をするということです。これまで関節を開いて手術をするといった療法はありましたが、ジェル状の培養した細胞を関節鏡下に投与するということで、侵襲が少ないというものです。

 大阪大学を細胞の調整施設として、多施設共同研究として行われているものです。広島大学、兵庫医科大、大阪市立大、近畿大学等については、5月の部会で承認を頂いているものです。審査委員会での主なやり取りは、46ページです。この細胞の品質・安全性について培養の継代は1回だけなのかという確認、また、実際に細胞を調整するCPCについて記述が混在するため、内容の検討をしてくださいといった指摘があり、対応いただき、審査員から承認を頂いています。

4件目、73ページを御覧ください。産総研、朗源会ウェルフェアグループの共同研究で、細胞の調整を行う産総研のほうです。研究課題名は「重症末梢動脈疾患に対する自家間葉系幹細胞を用いた血管再生」ということです。対象疾患は重症末梢動脈疾患、用いる細胞は自家骨髄由来間葉系幹細胞、2年間で5症例を予定しています。共同研究期間である大熊病院で採取した約20mLの患者の骨髄を産総研に搬送し、これを培養するということです。従来、骨髄600mL程度の採取が必要だったという技術があるわけですが、今回は少量の骨髄でそれを培養するということが新規性だということです。

 審査委員会での主な指摘は74ページ以降です。主に感染症の試験、特にマイコプラズマの否定試験について審査委員会から指摘があり、第1回、第2回とやり取りがあり、対応いただいたということです。

 共同研究の相手側である朗源会ウェルフェアグループについては93ページです。94ページ以降が審査委員会とのやり取りになります。プロトコールについて、第3者性のある血管外科医が、従来の治療では治療困難であるということを判定してから行ってくれといった指摘、輸送中の温度管理について、患者の同意文書については分かりやすい記載をしてほしいといった指摘等しているほか、95ページの下を御覧いただきますと、倫理委員会の議事録で話し合われたことについて記載をしてくれといった指摘をしまして、御対応いただき、審査委員会で承認となっています。

127ページを御覧ください。新潟大学の南野先生から頂いているもので、研究課題名は「重症虚血肢患者に対する体外増幅自己赤芽球移植と自己骨髄単核細胞移植による血管新生治療の比較試験」です。対象疾患は、既存の治療に抵抗性の末梢動脈疾患・難治性血管炎です。用いる細胞は、培養自己赤芽球あるいは自己骨髄単核細胞ということで、2018331日までに赤芽球移植群24症例、自己骨髄単核細胞移植群24症例の2群の比較をするということです。移植の約2週間前に4060mLの骨髄を採取し、赤芽球を培養増幅して、筋肉内注射に移植するということです。これを既存の骨髄採取から筋注するものとの比較をするということです。

 審査委員会のやり取りは128ページ以降です。プロトコールについて、骨髄採取の手技に習熟をした血液内科医の協力をしていただくようにという依頼。また、今回赤芽球を培養したものと、従来法との比較をするということを中立的に記載をするように出しています。患者への説明について、記載の修正等について依頼をし、対応いただいたということで、ヒト幹審査委員会で承認となっています。

161ページを御覧ください。福岡徳洲会病院からいただいた申請で、研究課題名は「ヒト皮下脂肪組織由来間葉系前駆細胞を用いた重症虚血肢に対する血管新生療法についての研究」です。対象疾患は、閉塞性動脈硬化症、バージャー病、膠原病による重症虚血肢です。用いる細胞は、ヒト皮下脂肪組織由来間葉系前駆細胞で、意見発出日から5年間、40症例の実施予定です。本件については名古屋大学、信州大学医学部附属病院との共同研究ということで、名古屋大学については昨年8月に、信州大学については今年の3月に本部会で承認をいただいています。

 ヒト幹審査委員会での主な指摘は、162ページです。この研究に掛かる費用について、研究費で行うのかということの確認、説明同意文書について、難解なので修正をといった指摘があり、対応いただき、ヒト幹審査委員会で了承されました。7件の概要については以上です。

○永井部会長 

いかがでしょうか。先ほどの件が絡んでいますが。審査は7月に行われています。

○今村委員 

この審査委員会が開かれたときには、例の公選法違反の問題については問われなかったということで、審査委員会の結論としては妥当かと思いますが、それではこれを良とするかということについて言えば、とても困るなと思います。

○永井部会長 

いかがでしょうか。ほかに御発言は。事務局、そういう場合はどのように対応したらよろしいのでしょうか。正に法人としての適格性の問題ですね。理由を述べてどのように先方に伝えるかということになります。

○堀再生医療研究推進室長 

正に先ほどの件について御指摘いただいた部分も含めて、審査委員会で見ていただくようにということだったと思いますので、もう一度審査委員会にそういう御指摘があったということかなと思いますが。

○永井部会長 

先ほどの件はそちらでするということですから、多分この件も併せてもう一度法人の適格性を審査するということでいかがでしょうか。

(異議なし)

○永井部会長 

では、そのようにさせていただきます。ほかの件についていかがでしょうか。よろしいでしょうか。御意見ございませんでしたら、福岡徳洲会病院の件は、もう一度法人の適格性を審査委員会で再検討するということ。ほかについては了承とさせていただきます。よろしいでしょうか。

(異議なし)

○永井部会長 

ありがとうございます。

 続きまして、「ヒト幹細胞臨床研究に関する実施施設からの報告について」です。鳥取大学医学部の報告については、1011日付けで厚生労働大臣より諮問され、1016日付けで当部会に付議されております。事務局から説明をお願いします。

○堀再生医療研究推進室長 

資料3-3を御覧ください。本件については既にヒト幹の臨床研究ということで実施をいただいていたもので、712日付で行われた本部会において、変更申請が出ていた技術です。変更申請の内容は、当初5症例でやりたいということでしたが、10症例に拡大したいということと、実施の期間を延長したいということで、変更申請が出ていた案件です。今回は、ヒト幹指針に基づきまして、重大な事態ということで報告いただきましたので、御報告をさせていただきます。

 概要は45ページです。臨床研究の名称は「自己皮下脂肪組織由来細胞移植による乳癌手術後の乳房再建法の検討」ということです。今回御報告をいただいたのは、52歳の女性の患者に対して重大な事態と判断したということで御報告をいただきました。

 その重大な事態と判断した理由は、入院又は入院期間の延長ということです。エピソードの詳細については、5ページを御覧いただければと思いますが、昨年の9月に臨床研究に参加することについて、患者から文書で同意を得て、1025日に入院をされ、術前のヘモグロビン12.7gでした。1026日に脂肪の採取と細胞の移植を実施したわけですが、術後にヘモグロビン8.41027日にヘモグロビン6.3、更に1日たちまして1028日に貧血の進行ということで、ヘモグロビン5.7と頻脈を認め、輸血4単位を施行しました。その後バイタル、ヘモグロビンの値は改善をし、1031日に退院をされたということで、学内での報告を経まして、今回重大報告ということでいただきました。概要は以上です。

○永井部会長 

いかがでしょうか。この件については委員会でも検討されたのですが、いわゆる幹細胞移植の前に、やはり脂肪吸引の技術ということが問題になりました。これはある程度慣れた方とよく打合せをして細胞のプレパレーション、吸引プレパレーションをしないといけないであろうということで指導をしております。その上で症例を増やすかどうかというのは、報告を十分伺った上で安全性試験の延長を議論させていただきたいということです。よろしいでしょうか。

○門田委員 

よろしいですか。どのように考えているか教えてほしいのですが、この方法は既に幾つかの所でやっていますよね。それで乳房を再建ということがメインの仕事として申請があったのかと思っていたのですが、採取のところで発生した問題ですね。今部会長がおっしゃられたような、そこのところの問題は、一般的には余り大きな問題にならなかったところがたまたま出てきたということなのですよね。

○永井部会長 

そうです。

○川越委員 

その前の段階でセルーションの方法は認められた方法ではない。乳腺に使うというのは研究として始まっているけれども、セルーションで。

○永井部会長 

脂肪吸引は認められた方法で、そこで問題が起こっているということです。

○門田委員 

そうですよね。この研究以前で、問題が発生しているという話になっている場合、どう解釈するのでしょうか。

○永井部会長 

ですから、そこをしっかり原因を究明して、また技術指導を受けながら研究していただくということです。圧迫の仕方などにもまだ改善の余地があるということです。

○門田委員 

ついでに言わせていただきますと、CTを撮ってみて血腫が分かったとか、皮下脂肪を採ったところで、初歩的な診察によってうんぬんとか、本当に読んでいて不思議に思います。

○永井部会長 

そういうことが指摘されております。

○川越委員 

今のと少し関係するかもしれませんが、これで見ると26日に入院されて、その5日後に退院されたと。その間いろいろなトラブルがあったということはよく分かるのですが、これは入院期間を延長ということで、ここで審議しなければいけないほどのことなのでしょうか。この間に起こったことに関しては、それは医学的にしっかり究明、解明しなければいけないと思いますが、その点いかがでしょうか。

○永井部会長 

結構強度の貧血になったものですから、副作用の報告を挙げてもらったということです。それから、手技的な問題、診察上の問題もあるのではないかということです。

○川越委員 

もしそうだとすると、4ページの「理由」について、入院又は入院期間の延長ということではなくて、むしろ障害とかその辺りに入るのでしょうか。ちょっとよく分からないので教えてください。

○永井部会長 

合併症という扱いだと思いますが。その結果として入院期間が延長になったということです。

○門田委員 

やはりこの同種血輸血というのは、有害事象ですよね。幹細胞移植よりもそちらのほうを受けざるを得ないというのは、この人にとったら障害だと思いますが、文章とすればその辺りも強調されたほうがいいと思います。

○永井部会長 

今は報告書を待っている段階です。

○堀再生医療研究推進室長 

本件についてはもともと挙げられていた研究計画の変更と併せまして、ヒト幹審査委員会で審査をいただいた上で、また御報告申し上げたいと考えています。

○永井部会長 

ということでよろしいでしょうか。

(異議なし)

○永井部会長 

この件についてはそのように進めさせていただきます。

 続きまして、「遺伝子治療臨床研究に関する実施施設からの報告について」を事務局からお願いいたします。

○松倉専門官 

資料4を御覧ください。遺伝子治療臨床研究に関する実施施設からの報告について、表紙にある4件について順に説明をいたします。成育医療研究センターからの変更報告書、九州大学病院からの変更報告、同じく九州大学からの重大事態等報告、最後に三重大学からの重大事態等報告です。真ん中の2つは九州大学からの報告で2種類ありますが、こちらは下側の重大事態が発生したことを受け、実施計画書や患者への説明書を変更したという変更報告が上側になります。資料の順番とは違うのですが、九州大学につきましては、下の重大事態を先に御説明することといたします。

1ページです。成育医療研究センターの慢性肉芽腫症に対する遺伝子治療臨床研究についての変更報告です。変更内容については4ページです。一番上の項目名が空欄になっていますが、前ページの一番最後の行から続いているためであり、ここが変更内容になります。同じ「変更内容」という項目名の行がその下にもあるのですが、これは変更のある資料の種類が違うということで、それぞれ書き分けていただいていますが、変更の中身としては同一ですので、まとめて御説明をいたします。

 変更内容として1から4まで記載があります。1の誤記訂正というのは単純な訂正ですが、2の新規研究者の追加、3の体重34kg以下の被験者に対するブスルファン前投与に関する記載の追加、4の全被験者に対するブスルファン血中濃度の測定に関してということで、この3つは関連しております。

 変更の趣旨は、この臨床研究は患者から造血幹細胞を取り出して、それに正常な遺伝子を導入して再び患者に戻すという作業を行うのですが、患者に細胞を戻す前に、その生着を促すため、ブスルファンの前投与を行って造血機能の抑制を行うというプロトコールになっております。このブスルファンを投与するときには体重あたり何ミリグラムと決まっているのですが、体重34kg以下の方、これは小児を想定しているのですが、この場合には、体重あたりの投与量を細かく設定しているという事情があったり、あるいは個人差が大きいという事情がありまして、ブスルファンの前投与を行うその更に前に、テストのための投与を少量行い、その血中濃度を測定した上で、前投与の投与量を決めるというプロトコールになっております。そこで、どういった方法でブスルファンの投与量を決めるかといったことなどを、今回細かく記載をしたということになります。

4番の全被験者に対するブスルファン血中濃度の測定に関してというのは、今申し上げたとおり、全ての被験者に対してブスルファンを投与するのですが、血中濃度を測定することを新たに計画書に加えたものです。これは、臨床研究であるため、データをなるべく蓄積するためにブスルファンの血中濃度の測定を行うという趣旨だそうです。これら、血中濃度の測定を行うために、研究者を新たに追加したというのが、この2番の「新規研究者の追加」ということであり、3点とも関連した一連の変更になります。

 具体的な変更内容については、5ページ以降に横書きで新旧対照表があります。先ほど申し上げたとおりの変更ですので、一つひとつの説明は省略させていただきます。

 続きまして、19ページを御覧ください。九州大学からの重大事態報告です。最初に申し上げたとおり、資料の説明の順番が前後して恐縮です。19ページは九州大学からの重大事態報告ですが、遺伝子治療の臨床研究の課題としては、網膜色素変性に対する遺伝子治療臨床研究となります。

 重大事態の中身は21ページです。下から3分の1辺りに、重大事態等の発生時期という欄があり、発生時期は本年の716日、重大事態の概略としては網膜剥離手術となっています。これは臨床研究薬を投与してから0.5か月後に発生したものであり、また、3症例目で生じたということです。

 具体的な経過については、22ページに時系列に沿った記載があります。この中で201372日、右眼に臨床研究薬を投与。120μL3か所に投与したとあります。この臨床研究は、網膜に薬液を直接投与するという特殊な投与の仕方をしておりますが、右眼に投与をした結果、その下に時系列に沿った記載がありますように、79日の時点で網膜剥離を認め、さらに710日には剥離が広がっており、712日にも剥離の範囲が拡大していることを認めたということで、716日、臨床研究薬の投与から2週間後に網膜剥離手術を行っております。

 その後の経過は23ページにかけて記載がありますが、手術後、網膜剥離の再発なしということで、矯正視力についても、臨床研究開始前とほぼ同程度に改善をしています。

 その後の対応状況という所に、倫理審査委員会における評価結果の記載があります。遺伝子治療臨床研究審査委員会において審議した結果、(1)から(4)までの判断がされています。(1)今回の有害事象は手術手技自体に起因する合併症として発生した可能性が高いと考えられること、(2)臨床研究薬自体が、網膜剥離発生の直接の原因だった可能性は限りなく低いと考えられるが、症例の集積をもって患者においての因果関係を判断する必要があること、(3)今後の症例においては投与部位を慎重に選択すること、(4)今回の有害事象の発生に関して、実施計画書や説明同意書に追加記載し、また、患者への説明を文書により十分行い、承諾を得るという前提で、引き続き研究を慎重に進める、という判断になっています。この件につきましては、国の審査委員会でも確認をした結果、了承されております。

 続いて12ページです。こちらが九州大学からの変更報告になります。変更内容については15ページを御覧ください。一番上の行の変更内容の所ですが、先ほど申し上げた網膜剥離の有害事象に対応する計画書等の変更となっておりまして、予想される副作用とその対処方法を新たに記載いただきました。また、被験者の同意の取得方法を定めていただいています。具体的な変更内容については16ページ以降に新旧対照表がありますが、詳細は省略させていただきます。

 最後になりますが25ページです。三重大学からの重大事態報告です。課題名は、治療抵抗性食道癌に対する遺伝子治療です。重大事態の中身は28ページです。28ページの中程より少し上に、重大事態等の発生時期という欄がありまして、本年93日に発生しております。重大事態の内容は被験者の死亡であり、原因は食道癌の増悪による死亡となっています。患者はもともと食道癌ということで遺伝子治療を受けておられ、原疾患である癌の増悪によって亡くなられたということです。経過については、時系列を簡単に申し上げると、今年の18日に遺伝子導入細胞の輸注を実施いたしました。その遺伝子治療実施後は、関連する有害事象は観察されなかったものの、頸部リンパ節の転移など病変が増大いたしまして、化学療法などを行ったものの十分な効果がなく、亡くなられたということです。

 倫理審査委員会での判断は、遺伝子治療との関連性は認められないということです。ちなみに、この臨床研究につきましては、10例の症例登録が全て完了いたしまして、新たな登録はありません。報告は以上です。

○永井部会長 

ただいまの御説明で御質問等いかがでしょうか。よろしいでしょうか。御質問なければ、この件については了解とさせていただきます。

 続きまして、「研究費補助金の不正使用及び研究不正への対応」について、事務局から報告をお願いいたします。

○中山研究企画官 

報告させていただきます。研究費補助金の不正使用及びデータねつ造などの研究不正が依然として見られるということで、厚生労働省と文部科学省で共同で対応方策を、これまでもいろいろと強化しているところですが、更に強化する部分がないかどうかということで、検討を進めてきました。その結果について、厚生労働省においては資料5にありますとおり、927日、文科省においては26日に方向性についての取りまとめが公表されましので、ここで御報告させていただきます。

 文科省の公表資料は3ページ以降です。1ページが厚生労働省の公表したものですが、次のような対応を行うことを検討しています。大きく分けて3つです。1つ目として、「不正事案に対する措置の強化」ということで、この内容の主な点としては、これまでも研究者に対して不正があった場合には、研究費の返還とか、一定期間交付を停止するとか、そういった措置はやってきたわけですが、それに加えて、研究機関に対しても管理体制について指導をし、更に指導をしたにもかかわらず改善が見られないといったような場合には、研究活動経費としての間接経費の削減や、厚労科研費補助金の一時停止といった措置も追加するという方向で検討したいということです。

 さらに大きな2つ目としては、「モニタリング体制の強化」ということで、研究機関内による自主的な監査も行ってもらいますが、さらに厚生労働省等による監視の強化ということで、研究機関に対し管理体制に係る実地調査を実施し、調査結果を公表するというような、国による監視の強化も実施する方向で検討しています。

 さらに大きな3つ目としては、「不正を事前に防止するための施策の充実」ということで、倫理教育等の義務化ということで、倫理教育等を受講しなければ、研究費補助金を交付しない措置を実施するとか、あるいは、個人情報の保護に留意しつつ、研究データの一定期間の保存を義務化するといったようなことも加えていきたいと考えています。

 このような取組についてガイドラインという形でまとめまして、研究機関に通知して、平成26年度から実施するということを予定しています。以上です。

○永井部会長 

ただいまの御説明に、御質問、いかがでしょうか。

○野村委員 

ここで私が言う立場のものではないかもしれないのですが、今、文科省や厚労省のものを拝見しますと、数がなくならないということでこういう対応を取られているということであるならば、もう1つ入れていただくことが可能だったら入れていただきたいのは、患者という対象があった場合の研究に関して、不正があった場合、あったとしても、患者さんたちの安全が守られるようなセーフティネットについての検討というのがここにはどこも入っていないなというのがあったものですから、あるという前提でというのは、非常にあれなのかもしれないのですが、何か起きたとしても、速やかに患者の安全や、私たちへの周知ができるというような方向性を、今正解を持っているわけではないのですが、何か検討していただくという方向が入ると、有り難いし、是非やっていただきたいなと思っています。あとは、ここにも入っていないなと思ったのは、真摯に研究されている方たちが真に使いやすい研究費のあり方であるということも、不正を防ぐ1つの方策であるかなと考えているのですが、研究費を真摯に使おうとしている現場の方たちから使いやすい研究費のあり方について、現場の声を聞くというような体制もあったらいいのではないかと思ったのですが。

○中山研究企画官 

最初のものについては、具体的には触れられていませんが、一方で臨床研究や疫学研究に関する倫理指針の見直しの作業も進めておりますので、そういった中での対応に含まれる部分ではないかと考えております。

 後者についても、いろいろと御意見を伺っているところですので、委員の御指摘のような方向での対応が可能かどうかということについては検討していきたいと思います。

○永井部会長 

ほかに御発言いかがでしょうか。よろしいでしょうか。

(異議なし)

○永井部会長 

よろしければ次の報告事項へまいります。

 続きまして、「高血圧症治療薬の臨床研究事案を踏まえた対応及び再発防止について」、事務局から報告をお願いいたします。

○河野治験推進室長 

医政局の治験推進室長です。お手元の資料の6-1に基づいて、「高血圧症治療薬ディオバンの臨床研究事案」の件について御報告いたします。

 資料6-11ページです。東京慈恵会医科大学や京都府立医科大学などが中心となって実施されていたノバルティスファーマ社の高血圧薬バルサルタンに関する研究論文について、昨年の末ぐらいから血圧値に関する疑義が京都大学の医師や循環器学会などから指摘があり、学会誌等から相次ぎ関係論文の撤回がなされたという実態がありました。また、これらの研究に関し、ノバルティス社の当時の社員が大坂市立大学非常勤講師の肩書で関わっていたといった指摘があったことから、厚生労働省としては、本年の5月、ノバルティス社から事情を聴取した上で事実関係の調査及び再発防止について指導を行ったといったことがあります。また、これ以降、関連大学に対しても調査等の実施につき指導を行っています。

 その後、本年7月に、京都府立医科大学及び慈恵会医科大学からデータの操作が認められたと、内部調査の結果が公表されています。また、ノバルティス社からは、当時の社員による意図的なデータ操作等を行ったことを示す証拠は発見できなかったといったような内部調査の結果が公表されています。

2ページです。これらを踏まえたこれまでの取組として、まず、本年8月に厚生労働大臣の検討委員会として、「高血圧症治療薬の臨床研究事案に関する検討委員会」を設置して、状況の把握及び再発防止策に関する検討を開始しています。第1回は89日、第2回は92日に実施しています。その後、関係者からのヒアリングを実施し、第3回の検討委員会において中間とりまとめ案を議論の上、108日に正式にとりまとめ案として公表されています。この中間とりまとめについては、お手元の資料6-2にあります。内容については後ほど御説明します。また、これと並行し、今年8月末に文部科学省とも協力の上、医療機関・研究機関の臨床研究に関する自主点検の実施をお願いして、その結果についても930日のこの検討委員会において集計結果を公表したところです。

 また、補足として、臨床研究に関する倫理指針の見直しについて、昨年12月から文部科学省とも協力の上、疫学研究に関する倫理指針等と併せて見直しをするという対応を図ってきています。

3ページです。検討委員会における目的、主な検討項目が記載されています。検討委員会の主な構成員の名簿が記載されています。スケジュールについては先ほど申し上げたとおりです。

4ページです。この検討委員会における中間とりまとめの概要について御説明します。まず、事案の背景と問題の所在として、大きく5つの点の御指摘がありました。1つ目は、今回の事案に関して、医学的研究課題の解明に向けられたものとは言えないのではないかといった御指摘があり、被験者保護の観点からの問題があるのではないかという指摘がありました。また、実態として、ノバルティス社の関与については、一個人というよりも会社としての関与といった指摘がありました。それから、大学及びノバルティス社双方において利益相反管理上の問題があるという指摘であること、データ操作に関わっていないということの説明責任をノバルティス社側も大学関係者側も十分果たしていないのではないか、こういった事案に基づく結果や、我が国の医学界に対する信頼性の低下に対する責任は、双方で負うべきではないかといった指摘がありました。このほか、実施責任者・倫理審査委員会への対応が十分ではないという指摘であるとか、資料が廃棄されていて検証が難しかったといった指摘がありました。

 これらを踏まえた当面の対応と再発防止策として御提言いただいていることについては、まず、法制度に関する検討について、来年の秋までを目途に進めるべきだという指摘であるとか、倫理指針の見直しの一貫として必要な対応を図るべきだといった話があります。具体的には、(2)(3)の所にありますが、倫理審査委員会の機能の強化とか透明性の確保、研究責任者の責務の明確化と教育・研修の徹底、データ改ざん防止体制の構築とか、資料保管に関する体制・ルールの整備。また、利益相反管理、ガバナンスの観点からしても透明性の確保とか、製薬企業のガバナンスの徹底といったところの指摘をいただいています。

 そのほかの重要課題として、薬事法に基づく対応の必要性であるとか、学会ガイドラインについての検討が必要であるとか、医療保険財政への影響に関する検討や、非常勤講師の委嘱の在り方についての指摘がありました。また、自主点検の結果についてもここで触れているというものです。これらを踏まえた今後の検討委員会の進め方としては、詳細な調査結果を公表していない大学もありますので、こういった大学からの報告も受けながら引き続き検討委員会においては、状況の把握及び必要な対応等の検討を実施する予定になっています。具体的な取りまとめについては資料6-2にあります。事務局からは以上です。

○永井部会長 

いかがでしょうか。

○今村委員 

ちょっと教えていただきたいのです。一番最後のページ4、その他の重要課題の所で、(2)「学会ガイドラインについて」がありますが、この学会ガイドラインがきちんと守られていないとか、そういう言い方になっているのでしょうか、教えていただきたいのです。

○河野治験推進室長 

具体的には、資料6-221ページの一番下から22ページにかけてガイドラインに関する記載があります。今回の事案に関しては、高血圧学会に関係の論文が引用されているという状況もあり、学会はこういったガイドラインを引用した経緯であるとか、利益相反について検証すべきであるとか、学会においてもガイドライン作成時の利益相反については十分徹底すべきだと、こういった御指摘をいただいています。

○今村委員 

ありがとうございます。

○永井部会長 

ほかにいかがでしょうか。

○門田委員 

よろしいですか。同じく4ページの「今後の対応と再発防止策」の1番目に、信頼回復のための法制度の必要性ということがここに挙げられているのですが、信頼回復をするという、出口の最終的なところに問題のためには法制度というのは、私は必ずしも正しくないのではないのかなと。

 やはり、今回のこの事件の発端は、きちんとした医学研究者が研究論文をまとめ上げて、その過程は置いておいても、そしてそれを提出し、それをそれぞれのジャーナルのレビュアーが読んで、そしてそれを認められているという過程の中で生じて来ているわけですね。永井先生とも医学会の中で表を一緒に検討させていただきましたが、我々が見るととんでもない数値がいっぱい出て来ているという、そういうことから考えていくと、やはり、本当に執筆者がどのくらいそれを見たのか見ていないのかということを考えてみると、非常に疑わしいという感じさえするのです。しかも、それがレビュアーを平気で通っているという状況で、これを何とかすることのほうが法整備よりもよほど大切である。特に我々医学会関係者とすれば恥ずかしいことではあるのです。本当に恥ずかしいことだと思います。

 この事件が発生して今の高久会長が医学会のホームページに声明文を上げていますが、やはり一番問題なのはその研究者であるということで上げています。それで、今回もどちらかと言うとそれはそっと置かれて、研究責任者の責務の明確化と。研究している人たちが真実を求めてそれを論文に書くというのは当たり前の話で、明確もクソもないわけです。だから、そこの辺りのところは非常に劣化して来ているというこの今の事実は、やはり憂うべきことである。まず、何はともかくそれがあって、そして更に法整備云々となる可能性はありますが、本当に恥ずかしい話ながら、これはやはり医学コミュニティの重大な問題だという認識をもつべきだと。

 医学会はいつも医師会はプロフェッショナル・オートノミーという単語を使われますが、本当にそれを磨き上げていかなければ良いものはなかなかできないのではないのか。だから、安易に法制ということで解決しようとすることは私は問題があるのではないかと思います。

○河野治験推進室長 

御意見ありがとうございます。今の門田先生の御指摘は、臨床研究の質の確保を今後どうしていくのかといった重要な御指摘だと思います。御指摘のとおりに質の問題は臨床研究の検討委員会でも議論がいろいろなされています。法制度については、お手元の資料6-214ページに書いてあります。法制度の検討に当たっては、実施機関に対する影響も十分考慮する必要があるといった御指摘もあるので、今後その必要性を検討するに当たっては、そういった点も含めて検討する必要があると理解しています。

○今村委員 

先ほど、私が学会のガイドラインのことを申し上げましたのも、先ほど門田先生が言われたことと裏腹の関係であって、まさに私ども医師というものプロフェッションがそのことを十分意識して、この学問に関わる部分の公権力の介入というのはやはり少なくすべきだと思います。自立的な運用と法制度の整備と、法制度と言っても、法律に関わるいわゆるハードローと呼ばれるものと、要するに運用とかガイドラインとかそういうものにあるソフトローと、こういうものの組合せが非常に大事になってくるのではないかと思います。法律あるいは省令、制令などにガタガタ書き込んでいろいろなことを規制するのはやはり余り望ましいことではないと思います。

○永井部会長 

ほかにいかがでしょうか。

○相澤委員

法律では万能ではなく、限界を画する手段でしかないと思います。法制度を整備すれば解決するのだという議論については、やや疑問があります。特に、研究等の自由に関わる問題について、15ページにもありますが、研究機関が非常に研究に影響を与えることを十分に留意した上でなされる必要があるのだろうと思います。もちろん、生命の身体、安全等に影響がある場合に法制度を使うことを否定するものではありませんが、法律で規制すればよいというものではないと理解しています。
○永井部会長 

これは、臨床研究のデータを薬事審査に使えるようにするには法制度の整備が必要だという話と、信頼性回復のためにどうするかという話がちょっと一緒になって書かれているのだと思うのです。そこはやはり分けて考えないといけないのだろうと思いますが。この委員会は、まだ活動を続けていずれ最終報告書が出てくるということでしょうか。

○河野治験推進室長 

資料6-1の一番最後の4ページにもありますが、まだ調査結果を公表していない大学もいくつかありますので、そういった大学からの調査結果を受けながら、更なる状況の把握であるとか対応の必要性などについてこの検討委員会は引き続き行うことになっています。

○永井部会長 

よろしいでしょうか。よろしければ次の報告事項へまいります。「戦略研究新規課題に係る研究実施計画書作成の公募結果」についてお願いします。

○宮嵜厚生科学課長 

お手元の資料7です。平成26年度から開始予定の戦略研究に向けて、今年度、研究実施計画書作成に関する研究を実施することについて、前回の79回科学技術部会で御了承いただいたので、それを踏まえて公募を行った概要を報告します。

1.公募の概要。平成26年度予定の「認知症予防のための戦略研究」を実施するための研究実施計画書作成に関する研究について公募を行いました。概要は表のとおりです。2.e-radとかホームページ、あるいは公募説明会を開催して公募を行いました。3.審査結果です。3件の公募があり、選考の結果、筑波大学医学医療系の朝田教授が研究代表者の研究が選考されました。4.研究実施計画書の評価についてとありますが、平成26年度からの「戦略研究」としての採択については、研究実施計画書、それから介入方法等の実行可能性の検証結果等を評価をした上で判断することとしており、研究実施計画書の評価結果によっては当該戦略研究を実施しない場合もあります。以上です。

○永井部会長 

ありがとうございます。いかがでしょうか。よろしいでしょうか。よろしければ次にまいります。「平成25年度厚生労働科学研究費補助金三次公募」について、報告をお願いします。

○中山研究企画官 

御報告します。資料8をめくり、今回、三次公募で感染症対策総合克服事業で3件の公募をしました。1つ目は、肝硬変患者の合併症に関する新規治療法の開発を目指した研究、2つ目はB型肝炎の治療法に関する研究、3つ目は、利便性の高い混合ワクチンの開発に向けた研究で、それぞれ3件公募を行いました。912日から1010日に公募を実施し、実際にそれぞれ応募があったということです。以上報告です。

○永井部会長 

いかがでしょうか。何か御質問ありますか。よろしいでしょうか。以上が予定した議事です。何か全体を通して御発言等ありますか。

○井伊委員 

先ほどの、「高血圧治療薬の臨床研究事案を踏まえた対応及び再発防止策について」のこれは、期限と言いますか、3回検討委員会が終わって、108日に取りまとめて、さらにまだ調査結果を公表していない大学もあるので引き続きということですが、いつ頃に最終的な報告書が出るかというのはどのような計画なのか。

○河野治験推進室長 

結論としては現時点では未定です。急ぎ、残りの大学の方々にも調査結果を早く公表するようにというお願いを私どもからしていますので、なるべく早く対応はしたいと考えてはいますが、最終報告がいつ出るかについては現時点では未定です。

○井伊委員 

今年度中とか、そういうのもないということですか。

○河野治験推進室長 

ちょっと現時点では今年度中に取りまとめができるかどうかについてはまだ分かりません。

○永井部会長 

よろしいでしょうか。ほかにありませんか。それでは、事務局から連絡事項についてお願いします。

○中山研究企画官 

次回の日程については、また改めて委員の皆様方に御連絡差し上げたいと思います。御協力をよろしくお願いします。事務局からは以上です。

○永井部会長 

では、これで本日は終了いたします。どうもありがとうございました。


(了)
<【問い合わせ先】>

 厚生労働省大臣官房厚生科学課
 担当:情報企画係(内線3808)
 電話:(代表)03-5253-1111
     (直通)03-3595-2171

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