ホーム> 政策について> 審議会・研究会等> 健康局が実施する検討会等> 原爆症認定制度の在り方に関する検討会> 第22回原爆症認定制度の在り方に関する検討会議事録(2013年7月18日)




2013年7月18日 第22回原爆症認定制度の在り方に関する検討会議事録

健康局総務課

○日時

平成25年7月18日(木)10:00~12:00


○場所

厚生労働省 低層棟2階 講堂


○議題

1.開会

2.議事
 (1)制度のより詳細な検討について
 (2)その他

3.閉会

○議事

○榊原室長 開会に先立ちまして、傍聴の方におかれましては、お手元にお配りしております「傍聴される皆様への留意事項」をお守りくださいますよう、お願い申し上げます。

 これ以降の進行は、神野座長にお願いいたします。

○神野座長 それでは、第22回になりますけれども「原爆症認定制度の在り方に関する検討会」を開催させていただきたいと存じます。

 きのうややお湿りがありまして、若干涼しくなったとはいえ、猛暑のみぎり、委員の皆様方には、万障を繰り合わせて御参集いただきましたことを感謝する次第でございます。

 それでは、議事に入ります前に、事務局のほうから委員の出席状況などの御報告と資料の確認をお願いしたいと思います。よろしくお願いいたします。

○榊原室長 本日の出席状況でございますが、石委員から欠席との連絡をいただいております。また、広島市副市長の交代により、佐々木委員より新しく西藤委員が就任されましたので、御案内いたします。なお、本日は用務により欠席との連絡をいただいております。

 次に、お手元の資料について御確認をさせていただきます。

 議事次第、資料一覧に続きまして、

 資料1 第21回検討会における主な発言

 資料2 議論のポイントと各方向性の整理表(集約版)

 資料3 前回の議論の整理

 資料4 長瀧委員提出資料

 資料5 田中委員提出資料

資料に不足、落丁がございましたら、事務局までお願いいたします。

 あと、今般、事務局で異動がありましたので、御紹介いたします。

 健康局長の佐藤敏信です。

○佐藤局長 おはようございます。健康局長の佐藤敏信でございます。

 7月2日付で矢島前局長の後を引き継ぎました。どうかよろしくお願いいたします。

 私自身は、およそ15年ほど前に原爆の担当をしておりましたので、改めましてこの仕事をやらせていただくことになりました。既にお顔を覚えていただいている方もいらっしゃるかと思いますが、また引き続き頑張りますので、どうかよろしくお願いいたします。

○黒木室長補佐 カメラはここまででお願いします。

(報道関係者退室)

○神野座長 どうもありがとうございました。

 それでは、議事のほうに入りたいと思いますが、お手元に議事次第が行っているかと思いますが、本日は前回に引き続いて、制度のより詳細な検討を進めていきたいと思っております。

 前回は、原爆症の対象疾病についての考え方をめぐって、過去の裁判の判例を含めて議論を頂戴いたしました。また、前回の最後で御報告いたしましたように、疾病の放射性起因性に関する科学的知見に関しまして、長瀧先生におまとめいただくということを御報告いたしまして、委員の皆様方の御了承を得たところでございます。

 長瀧先生には、本当にお忙しい中をお時間を割いていただいた上に、大変御苦労の多い作業をお願いいたしました。長瀧先生には、心から御礼を申し上げる次第でございます。

 今回、その御報告を頂戴できるという運びになりましたので、これらの資料をもとにしながら、疾病に関する議論を整理できればと考えております。

 まず、初めに事務局のほうで準備していただいた資料について、御説明いただければと思いますので、よろしくお願いいたします。

○榊原室長 まず、資料1でございます。「第21回検討会における主な発言」ということで、確認いただければと思います。同じものが資料2のほうに記載されておりますので、こちらのほうで御説明申し上げたいと思います。

 まず「資料2 議論のポイントと各方向性の整理表(集約版)※第21回の発言は下線部」ということでございます。

 2枚おめくりいただきまして、3ページをごらんいただきたいと思います。

 前回の発言、方向性1に関してでございますが、左のほう「残留放射線を被爆した人たちの放射線量はどう推定できるか、これが最大の課題である。今は方法がない」という御意見。

 「認定ではグレーも含めて決めて、認定されている疾病に対してどういう手当がふさわしいかという議論を次にすればいい」という御意見。

 中ほどに進んでいただきまして「原爆症認定は放射線とのつながりを認めるというところから出発するので、ある程度学問的に認められている範囲に絞られてくるのではないか。新しい審査の方針では、疾病名で言えば、かなり広まっていると思う」という御意見。

 「新しい審査の方針の書き方では、『放射線起因性が推認される』として、『以下の疾病については』として、後の方で『起因性が認められるこれこれの病気』とある。大阪地裁とか千葉地裁の判決では、これを分かった上での判決かどうか疑問を感ずる。追認されることを一旦認めていながら、後のほうで『起因性が認められる』と二重にかぶっており非常にわかりにくいので、ぜひ整理をすべき」という御意見。

 「起因性を認定する一番骨格のところは、放射線の被爆量を何とかして把握しようということが出発点であり、目標ではないか。もっとはっきりこの認定の基準の中で明示する方向で検討するべきではないか」という御意見。

 下のほうに進んでいただきまして、残留放射線について「何らかの科学的なものが出るとき、考えていくことでいいのではないか。不正確なままで、認定する方法論として制度の中にでき上がるのか疑問を持っている」という御意見。

 「でき上がるかどうかではなくて、どういうものがつくれるかという議論をして」いるので「つくるしかないのではないか」という御意見。

 次のページに進んでいただきまして、中ほど左側、方向性1に関してですが「肝機能障害の医療費は国が出すが、手当は別の考え方をしましょうと議論をすればいい。その議論をしないで、医療特別手当という高額なのを出すのだから、認定する枠を一生懸命狭めよう、狭めようという議論になってしまっている」という御意見。

 中ほどですが「認定と給付は別というが、抽象的な認定なとどいうのはない。今、問題にしているのは、医療特別手当での原爆症認定であり、あらゆることの認定ではない。どういう効果を持った要件を認定するかということと不可分に結びついている」という御意見。

 次のページに進んでいただきまして、左側でございますが「例えば心筋梗塞は政府側が勝訴したのは1つぐらいしかない。あとは圧倒的に原告が勝訴している。理由を2つ並べるとフィフティー・フィフティーの感じを受けるが、実際はそうでない」という御意見。

 「裁判では、残留放射線、特に入市した人、遠距離での被爆者でも、症状を見ていけば原爆症と認定すべきではないかということも含めて判断している」という御意見。

 「放影研が疫学調査をやって国際的にもかなり信用されている。不確定な部分もあるが、今の段階での考え方として認めないわけにはいかない。一方では、ICRPの防護のための基準を認定の当てはめてくるのはおかしいのではないか。また、ICRPの基準がいいかどうかにも疑問を持っている」という御意見。

 「裁判所の場合は一人一人の線量を余り考えていない。政府は一人一人の線量を考えてやると思う。裁判は、疾病の中身についていろいろ判断していると理解している」という御意見。

 「原爆被爆者の被爆線量を推定するのは、もうできないのだから、少なくとも科学的に放射線と関係があるという病気にかかった場合には、原爆症になったという判定をすべきではないか」という御意見。

 中ほどに進んでいただきまして「新しい審査の方針下での処分の裁判では、国の誤りということを言われる率が下がってきているということを考えれば、それほど司法と行政のギャップを重大視して、放置できないと言うまでのことではない」という御意見。

 「例えば心筋梗塞一つとっても、現在の科学的知見は、とりあえずしきい線量があるという形でUNSCEARICRPも考えましょうという形にしているが、裁判が勝ったほうの事例を見ると、しきい線量のない確率的影響と考えるべきであるというような判断をしている。同じような事例を何回出しても同じだろう」という御意見。

 「認定の基準を狭めようとして議論しているのではなくて、科学的に判断したときにどこまでリーズナブルかという形でやっている。少なくとも国費を使っているので、放射線起因性というところは守らなければいけないが。その中でどこまで取り込めるかという形で議論しているつもり」という御意見。

 次のページに進んでいただきまして「どのくらい被爆されておられるかの事実と、疾病そのものが放射線の影響によるものなのか、2つに分けられると思う。放射線と病気との関係については、さらに精緻にしていけば、それが共通のベースになっていくのではないか」という御意見。

 「司法では、放射線防護上、あるいは今までの知見で確定的影響であると言っているものに関して、確定的影響と言うべきではなくて、確率的影響と言うべきであるというような形の判断をされている。新しく資料を提示されても、司法と行政の乖離が埋まるのか」。

 「しきい値の議論で、判断ができないということが一つ。また、しきい値がある、ないにかかわらず、どのくらい線量として浴びたのか、事実認定で争われている。2つに分けて考えて、新基準の判断でしきい値の有無か、事実認定のところで争われているのか分析すれば、ある程度ギャップを埋めていくことにつながるのではないか」。

 「裁判例を整理することをやってもいいと思うけれども、個々のケースから一般的、普遍的な部分というのは多分出てこない」という御意見。

 「今、何段階かある手当の枠をどうするかが、検討会としてのポイント。もう一つ、認定に不満が多々あるから、それでグレーゾーンを解消しようとしても、残留放射線をどう測定するか。今となってはできないのだから、制度設計としては割り切るしかない。少し制度に立脚した形で議論しないと、どうも議論がぐるぐる回り、徒労感に終わる」という御意見。

 「グレーゾーンも、あるいはわからない面があるのは、被爆者を救う方法へ行ってもらいたい。次善の策というのか、少しでも被爆者に有利に働いてもらいたい」という御意見。

 最後のページに進んでいただきまして、左側ですが「物すごい予算を食うようになるのだとしたら、病気の治療の度合いで線引きしてもいいのではないか、段階を設けていいのではないでしょうかという提案をしている。何でもいいというふうには言っていない」という御意見。

 中ほどに進んでいただきまして「問題は、放射線が起因する病気として出ている白内障だ、前立腺(がん)だ、心筋梗塞というのは明らかに加齢現象で、高齢化社会で患者が増えている。こういう患者を全部放射線が起因する病気の中に入れた場合は、社会保障費が幾らあっても足りず、無制限にはできない。議論の一つのポイントは、国民的視点から見た公平、国家的見地から見た責任である。それを忘れると制度設計は難しくなり、野放図との批判を浴びて立ち往生する」という御意見。

 以上、資料2でございました。

 続きまして、資料3ということで「前回の議論の整理」ということでございます。対立する意見等を並べて併記させていただいております。

 「(1)過去の裁判例について」ということで、

 ・訴訟で、例えば心筋梗塞では被告が勝訴したのは一つくらい。あとは原告が勝ってい 

 る。

 ・原告が勝訴した判決をみると、しきい線量のない確率的影響として考えるべきである

 という判断をしているが、同じような事例を何回出しても同じだろう。

 ・新しい審査の方針による処分での裁判では、国の誤りといわれる率が減少してきてい

 るのではないか。

 ・被爆の事実の状況と、疾病そのものが放射線の影響によるものなのか、乖離の内容も

 二つに分けられるのではないか。

 ・裁判例を整理してもいいと思うが、一般的な傾向は出てこないのではないか。

次のページに進んでいただきまして「対象疾病の考え方」ということで、

 ・科学的に放射線と関係があるという疾病にかかった場合には、原爆症になったという

 判定をすべきではないか。

 ・白内障、前立腺がん、心筋梗塞というのは明らかに加齢現象。無制限に認めるのはど

 うか。

 ・裁判所は一人、一人の線量をあまり考えて判断していない。一方、政府は、一人一人

 の線量を考えて判断している。

 ・残留放射線をどう見るか、今となっては分からないのだから、制度設計としては割り

 切るしかない。制度に立脚した議論をすべき。

 ・「放射線起因性が認められる」という文言は非常にわかりにくい。整理すべき。

という論点がございました。

 以上、資料2、資料3について御説明しました。

○神野座長 どうもありがとうございました。

 この件につきましては、後ほど長瀧委員から御説明を頂戴した後で、まとめて御議論、御意見を頂戴したいと思っておりますが、何かここで特に御発言があれば頂戴しておきますが、よろしいですか。田中委員、どうぞ。

○田中委員 1つ、前回私のほうからお願いしたのですけれども、裁判では原告側と政府側が勝った、負けたという数がいろいろあるはずで、それを出していただけませんかというお願いをして、用意できますというお話でしたね。

 きょうは出されていないのですけれども、私の名前で出してあるところに書いてありますので、それは了承いたしますけれども、そういうことでよろしいわけですね。

○神野座長 後ほどでも構いませんが、今、事務局のほうで何かお答えできるようなことがあれば、よろしいですか。

○榊原室長 出していただきましたし、もともとはちょっと後で見ましたところ、過去の資料にもありましたので、ちょっとそれも御説明を必要があればしようかなと思いましたけれども、基本的にはここに出されているものがございますので、圧倒的な差とおっしゃる、数が多いというのは、ここに出ているとおりだと思っています。

○神野座長 よろしいですか。あと、御意見のほうはまた後ほど頂戴できればと思っております。

 引き続きまして、先ほど冒頭に申し上げましたように、長瀧委員に大変な御苦労をいただいて資料をまとめていただいております。提出いただきました資料について、御報告をお願いしたいと思います。よろしくお願いいたします。

○長瀧委員 資料4でございますが、前回、座長から御指名をいただきまして、これは大変な役割であると、かなりちゅうちょする気持ちもあったのですけれども、誰かが引き受けなければならないということで、非常に大きな責任を感じながら、お話しさせていただくことにいたしました。

 また、今回のまとめに関しましては、私自身が責任を持って記述したという立場でお話しさせていただきます。

 タイトルが「放射線に起因する疾患」と、これはこの委員会の今までの言葉をそのまま使いました。

 その疾患を述べるだけではなくて、その前後の事情も、かなり原爆自体が風化しておりますので、もう一度ここで思い起こしていただくという意味も含めて、少し周辺の事情についてもお話しさせていただきます。

 4つに内容が分かれておりまして、最初は「原子爆弾による被害」。

 これをもう一度思い起こしていただくということで、20万人以上が亡くなったということが、他の戦争被害とは違う。

 後で詳しく申し上げますが、そこでその被害との違いで、放射線の起因性が出てきたということ、内容に関しましては、これは今回調べているうちに新しいこともわかったので、いろいろの文献がわかったのですけれども、日本の人たちが非常に努力して、占領中にまとめたということも一緒にお話しさせていただきます。

 そういうことから始まって「原爆放射線による健康影響の調査結果」で、私自身、一番心にありますのは、これは被爆者の献身的な協力があって初めてできたものであるということであります。

 晩発影響に関しては、詳細な疫学的な調査計画が、1950年、占領中でありますが、そのときにできて、10万人を超す調査集団で、男女とも広い年齢層、詳細な完全な追跡調査ができている。これは、これ以上の疫学調査はないと言ってもいいぐらいの立派なものであります。

 放射線の人体影響の科学を世界に向けて発信してきた、国際的な合意の疫学的な知識の中心になっている、これが被爆者の協力によってでき上がる。これはやはり現在の我々はこれを忘れてはいけないと思います。

 あと、その「放射線に起因する疾患」は、タイトルのとおりのところであります。

 「国際的合意に基づく放射線に起因する疾患」、ただその程度によって分けただけでありますが、起因性について合意に至らなくても、疫学調査で放射線被爆との関係が認められている。あるいは、被爆直後の原爆被爆者調査で調査されているけれども、放射線被爆との関連について再現性が得られていない、再現性が得られていないというのは、ここではプラスという結果もあるし、マイナスという結果もあるという意味で選ばれてこういうところに至りました。

 最後は、原爆被爆者調査で調査はされているけれども、放射線被爆との関連が認められていない疾患というものも、ここにまとめました。もちろん、調査されていないものはたくさんございまして、それはわからないままであります。

 ただ、きょうお話しする「放射線に起因する疾患」の位置づけでありますけれども、これはその最後の「原爆放射線に起因する疾患の援護」ということになりますと、ここで私がきょうお話ししますことは、日本が世界に発信してきた原爆被爆者の調査結果というものを、委員の方々が全部共有していただいて、それを共有した上で、日本のあらゆる利害関係者、被爆者も行政も司法も全てが含まれまして、これがこの委員会であると思うのですけれども、この委員会でその科学的な知識を共有して、そこで援護について対話を続ける。

 そして、援護に関する対話から得られた援護の理由も、やはり世界に模範として発信できるような議論がここでできればいいと考えておりまして、こんな内容で順番にお話しさせていただきたいと思います。

 最初が、1番目と2番目のことを一緒にして、次のスライドといいますか、絵になっておりますので、これを使いながら、ちょっと小さなところもございまして、見にくいところもございますが、これについて、これを使いながらお話しさせていただきたいと思います。

 原子爆弾、いきなり写真を持ってまいりましたけれども、大変なものだったという印象をもう一度思い出していただく。20万人以上の方が亡くなって、薬も治療もなくて、そのまま見ている中でどんどんと放射線による被害で亡くなっていったということが、原子爆弾の被害でありまして、だから、他の戦争被害とは違うということが国民の感情として残っていたというのがあるということであります。

 だけれども、ほかの戦争災害との違いはというときに、ここで放射線が取り上げられた。また、放射線がという議論が進んでいきますと、科学的に放射線の起因性があるものが、とだんだんと印象が変わってきたということで、最初は、非常に大変な悲惨な原爆の方たちを援護しようという、国民的な感情から始まったのだと思います。

 最後にちょっと書きましたのは、この急性被爆の影響は、意外に日本で知られておりませんでしたけれども、非常に詳細な記録があるということをお話しさせていただきます。

 左の下でありますけれども、被爆直後には、海軍であるとか陸軍であるとか大本営、いろいろな報告書がございますけれども、この中には一部現在でも有用なデータもないわけではありませんが、全て占領されたときから、日本人は原爆について調査もしてもいけない、話してもいけない、新聞にも書いてもいけない、そういう統制の時代が5年間以上、占領期間中続いたわけであります。

 ですから、我々は全く原爆に対しての一般国民は知識がないまま、そのときに唯一手に入りましたのは、今になってみますと、この右の下の本がございまして、これはかなり読まれているらしくて、1977年に第3版が発行されております。

 これによりますと、原爆実験、これはアメリカしかデータはないわけでありますが、原爆の50%は爆風がエネルギーである、35%が熱線である、残りの15%が放射線となっております。これが原爆のエネルギーです。

 では、その人間の被害はどうだったかということは、ここに6冊の本の絵がありますが、これはJoint Commissionといいまして、日本のお医者さんも1,000人以上参加しています。

 特に東大からその当時の都築先生、中泉先生という外科、放射線科の先生が一緒になって調査しておりますが、これが現在は放影研に1冊オリジナルがありまして、私が理事長のときにこれをコピーして、長崎と広島に置きましたけれども、ほかにないと思っておりましたら、今回調査しましたら、これは全部インターネットでとれるようになっておりましたので、まとめて国にも関係機関にも、ここでも後でお配りしようと思います。6冊が全部読めるようになっております。

 ただ、これは日米協力で出したのですが、非常に感激しましたのは、日本語の発表がきちんとできているということでありまして、これは対日講和条約、お忘れの方は多いと思いますけれども、サンフランシスコ平和条約でありますけれども、発効は52年でありますけれども、その調印した年に、日本学術会議が「原子爆弾災害調査報告集」というものを学術振興会から出版しておりまして、53年には分冊が右のようにございます。

 これは、もちろん大学にも放影研にも国会図書館にも厚労省にもあるということは確かめております。これは、このときに一緒にこの分冊をつくった方々が原爆の被害に関して詳細に日本語にしている。

 その次のページでありますけれども、それがさらに岩波文庫から出版されております。確かに詳しく書いてございます。その右側は表紙でありまして、小さな字で申しわけありません。

 「初期の身体障害—急性期原子爆弾傷」という名前がついて、原爆傷というのはこのときから名前がついておりますが、この原爆傷は「原子爆弾熱傷」「原子爆弾外傷」「原子爆弾放射能症」と分けて書いてございます。それぞれに詳細な記録がございます。

 それをお話しするつもりはありませんが、少なくとも全体、広島、長崎で21万人の方が亡くなった。ただ、その亡くなった原因は、爆風が熱風か放射線かはわからない。ただ、今の常識からいいますと、非常に大量の場合は、爆心地に近いところは放射線で亡くなったかもしれませんけれども、当然そこは爆風も熱線も強いわけでありますから、わかりません。

 ただ、この本に書いてありますのは、その20日後に生存していた被爆者がどうなったか、6,000人以上を広島と長崎でフォローをしております。ただ、このフォローと言いましても、これはまさに治療も看護も全くなくて、ただただ亡くなっていくのを見ていたという段階でありますけれども、その中で254人とか174人を合わせますと、その後、放射線によるがんで亡くなった方と同じぐらいの方が急性症状で亡くなっております。

 死亡者の大部分が2キロ以内であるということ、死亡者はほとんどが50日以内に亡くなったということも記載してございます。

 ここで特に私が言いたいのは、急性に関しての最後の表でありますが、右の下に書きましたように、放射線の被害は原爆による被害の一部である。

 特にチェルノブイリのときに放射性物質の放出は「原爆の2000倍」であるという言い方がはやりまして、私はそれにずっと反対しておりましたが、今度は福島でも、福島の原発事故では「原爆の200倍」の放射性物質が降ったという言い方をしておりますけれども、原発が2000倍、これはソ連のときに申し上げたのですが、原爆が2,000発落ちたら、4億人亡くなって、ソ連の人口が当時2億人でありますから、それ以上の方が亡くなるぐらいの被害、200発になりますと4,000万人でありますから、東北地方の方はみんな亡くなるぐらいの被害だった、それが原爆だということをやはり忘れないで、我々は気持ちの上で、あるいは新たにして被爆者というものに対して考えていきたいというのが、最初の段階であります。

 その次が、放射線に起因する疾患がどうやって見つけられたかということを、できるだけわかりやすく書いたつもりであります。

 一番大切なことは、急性障害の場合は、見ている前で亡くなります。皮膚に異常があったり下痢をしたりという、臨床的な症状、特徴的な症状があります。解剖しても臨床的な特徴的なものがわかる。ですから、この方は被爆によって起こったと同定できるのですね。

 ところが、一番の特徴は晩発影響の場合、これは急性影響の後から起こって現在も続いている影響といいますのは、1人の患者さんをどんなに調べても、放射線の影響か他の原因かわからない。例えば、肺がんの患者さんが来ましたときに、この患者さんの肺がんは放射線によってなったのか、たばこによってなったのか、現在の医学ではそれを区別することができない。

 少なくとも、臨床症状から解剖したもの、あるいは遺伝子まで調べても、現在はわからない、臨床的な病理解剖的な従来の医学的な判断では、晩発影響では不可能だ、これは非常に大きな特徴でありますので、決めていくときの不確実性がいろいろなところで出てくるのは、これが原因だということです。

 したがって、疫学的にしか決めようがないということであります。疫学的な調査でしか決めようがないのですが、原爆被爆者の調査は、これは世界でも類いのない疫学的な調査であるということで、それを少し具体的にお話しさせていただきたいと思います。

 右の図は、これは占領中、1950年に初めて終戦後の国勢調査が行われたときでありますが、このときに原爆被爆者として申請した方が、28万人おられます。

 その方の中から、広島、長崎で今後調査ができるという方が、マスターサンプルで19万人選ばれました。その方たちについて、申告あるいは近距離の被爆に関しては、全て面接して詳細な記録が残っております。その中から条件を決めて、1950年に寿命調査集団、12万人の集団を選ぶ。1958年には成人健康調査集団というものを選びました。これは疫学の常識で、最初に集団を決めて、それをずっとフォローしていくということは疫学の基本でありますが、まさにその典型的な恰好です。

 しかも「調査集団の内訳」で左の下に書きましたように、寿命調査の場合には第1群として、これは爆心地から2キロ以内の方、被爆者を全員登録してございます。ですから、2キロ以内の被爆者は全てこの寿命調査に入っている。

 それから、2.5キロまでも入れた。あとは2キロまでの人たちと性と年齢が一致する人たちを2.510キロまでの間から選んだ。

 第4群といいますのは、そのときたまたま市内にいなかったという方を選んで、こういう選び方をしておりますので、これでこのまま調査を続けていくと、少なくとも距離との関係、あるいは直接被爆でいえば、線量との関係がわかっていく、そういう母集団、調査集団をつくったということであります。

 また、成人健康調査は2万人でありますけれども、爆心地から2キロ以内で急性症状を示した方の5,000人と、急性症状を示さなかった5,000人、あるいは同じ年齢、性の一致する3キロ以上の被爆者というものをまとめまして、やはりこれも被爆の影響がわかるような集団です。

 この方たちは、2年に1回診察して結果を出していくという格好であります。

 寿命調査、成人健康調査のほかに、胎内被爆者が3,300人、あるいは被爆二世88,000人がおられます。

 この方たち全部について、個人の線量、一人一人の線量の推定ができているということであります。それは、もちろんこういう状況でありますので、科学的に不備なところはたくさんございますが、少なくとも現在科学的に最も信頼できる方法ということを、その時代その時代に合わせて計算して被爆線量が決まっていく。

 その次のページでありますが、これは左の上が13報、その下が14報と2003年と2012年でありますけれども、同じ調査を続けて、その結果をそのたびにまとめて報告しているということであります。

 例えば、この右のほうは2012年の昨年の報告書でありますが、19502003年までの結果をまとめております。ここで表を出しましたのは、どれだけ正確にできているかということをここで見ていただきたい。

 最初に線量、グレイ、原爆ではこうやっておりますけれども、現在ポピュラーに使われておりますのは、これをシーベルトとしても結構です。ですから、一番上が5ミリシーベルトになりますし、最後は2,000ミリシーベルトになります。

 各線量の対象者が何十何人というまで正確に数えられております。もちろん100ミリシーベルト以下の被爆者が非常にたくさんおられるということもここでわかります。

 各群のがんによる死亡者数は、死亡診断書からあるいは戸籍から割り出しておりますので、ほとんど100%近く死亡者数がわかります。

 がんは診断書によるわけでありますが、そうするとそれぞれの数が出ておりますが、その次の過剰死亡者数の計算方法であります。これは、放射線に被曝しなくても、もちろん亡くなるわけでありますから、実際の方法はちょっと違うのですが、これはわかりやすくと思って持ってまいりました。

 例えば、一番上に38,509人の中から4,621人が19952003年までの間に亡くなった。これは、被爆線量が非常に少ない。だから、少ないのだけれども、4,600人は自然に亡くなる方であるということで、この比率を覚えておきます。

 そして、その比率以上に亡くなった方の数がその下に書いてございます。例えば、100ミリシーベルト以下でありますけれども、そこの対象者は29,961人で、亡くなった方は3,653人です。しかし、その5ミリシーベルト以下の人に比べると、比率を引きますと49人は過剰に亡くなっている。

 同じようにだんだんとやっていきますと、2,000ミリシーベルトを浴びた方は、過剰に亡くなった方が124人の中で70人は過剰に亡くなっている。56%は被爆のせいで亡くなったという計算になりまして、この比率が線量がふえるに従ってふえていくということで、放射線に被曝するとがんになることが多いという結論になるのでありますけれども、ここでもう一度見ていただきたいのは、過剰死亡者数が50年間で527名であります。これは、2キロ圏内の方は全部入っております。

 ですから、年間10名程度の方が過剰に放射線のために死亡したという計算になるのですが、これだけの計算をきちんと求めて、それで相関を出して、放射線によってがんの死亡者がふえるという疫学的な研究は、非常に大変な苦労、難しいものだということを、ここで皆さん、共通のものとして持っていただきたいと思ったわけであります。50年間で527名、これは調査集団の中でありますけれども、調査集団の中には2キロ以内の方が全部入っているということであります。

 これを統計学的に線にしますと、左の下のようになりまして、被爆線量がふえるとがん死亡のリスクが直線的にふえるという結論になります。

 ところが、先ほど言いましたように、500人ぐらいの値を計算しているわけですから、非常に統計学的に難しいところがございますが、それに加えて、自然にがんになった人のリスクが何倍になったという言い方をします。

 これで計算しますと、1,000ミリシーベルトを被爆したときに、0.5といいますのは、がんが1.5倍になるという意味です。右の図に示しましたように、1,000ミリシーベルトを被爆しますと、ガンが1.5倍になる。ですから、100ミリシーベルトになりますと、ガンは1.05倍ということになります。

 ただ、1に相当する自然発生のがんがふえたという言い方でありますので、もともとの自然発生のがんがいつもコンスタントなら、細かいところまで見られますけれども、この自然発生のがんについて、その次のページにお示ししました。

 これは、きょう昨年のをとったのですが、「都道府県別 悪性新生物の死亡率 人数/10万人/年」当たりの数であります。高い県は2006年に10万人で106人亡くなっておりますけれども、低い県になりますと66人、県が違っただけで死亡率が30%ぐらい違う。

 それから、その下は今度は同じ県で、例えば長野県を見てみますと、2005年は76人だったのですが、2010年には68人、10%ぐらい下がった。それぐらいがんの自然発生というのは動く。地域によって動くし、年代によって動く。

 これのベースで見て、これの1.05倍になったというときに、どこまで判定できるかということが問題になるわけであります。

 その右は、今度は放射線以外のリスクをがん研究センターがまとめたものでありますけれども、これも小さくて申しわけありません。一番下の赤い丸で囲ってあるところが、先ほど原爆100ミリシーベルトで1.05倍と申し上げました。それと同じような計算をしまして、100200ミリシーベルトに相当するのは1.08としますと、野菜を食べないと1.06、受動喫煙者は1.021.03、これはちょっと100ミリシーベルトよりも低い。

 だけれども、今度は「肥満」とか「やせ」とか「運動不足」になりますと、もう100ミリシーベルトのがんのリスクよりももっと高いリスクがある。我々はそういうところに生活しているということでありまして、ですから、100ミリシーベルト以下の影響について、随分いろいろと議論をされておりますけれども、例えば、科学的に放射線の影響が認められない、だけれども、ないというわけではないということになりますと、影響がわからないから怖い、わからないのになぜ安全と言えるかという議論になります。

 だけれども、今の調査結果をそのまま翻訳いたしますと、100ミリシーベルト以下の影響は、100ミリシーベルトよりも少ないということになります。

 例えば、今のがんのリスクが1.05倍としますと、日本では日常生活のがんのリスクより少ない「肥満」「やせ」「運動不足」「野菜不足」などのほうが、リスクが大きいということになりまして、ほかの発がんのリスクに紛れてしまうので、放射線の影響だけを取り出してあるかないかということはできないというのが、正確な表現であろうと思います。

 それは、国際的にも認められておりまして、これは2010年のUNSCEARの報告書でありますけれども「発癌のリスクが統計学的に有意に上昇するのは100から200ミリシーベルト以上である。疫学的な研究では,これらの被爆線量以下で有意な上昇を示すことはないであろう」これが2010年の段階の国際的な発表の状況、知識の状況であるということで、これはあくまで科学的、疫学的に放射線の影響を見ようとしたときです。

 最後のページでありますけれども、これは「被爆線量と発癌リスクは直線関係」であるということで、1,000ミリシーベルトで原爆の場合、がんのリスクが1.5倍になります。100ミリシーベルトでは1.05倍、そこら辺がぎりぎりで、その後はわからないというのが、UNSCEARの報告あるいは日本からの被爆者についての報告であります。

 ただ、今度はICRPのほうは、2007年の報告でありますけれども、100ミリシーベルト以下も影響がある。しきい値はない。それから、100ミリシーベルト以上の直線関係が100ミリシーベルト以下も「存在すると仮定する」と書いてございます。

 仮定すると、この赤い点線のように、100ミリシーベルト以下もある。こういうふうにあると仮定して、ほかのリスクと比べましょうという、例えば、2007年勧告で、左の下でありますが、職業につくということだけで、ある程度がんのリスク、死亡するリスクがふえる。これはイギリスのリスクを参考にしたものでありまして、例えば炭鉱で働くとか造船で働く、あるいは事務的な職業であったら、そういう職業のリスクというものの計算がございます。

 それと同じリスクが放射線で計算するとどうなるだろうということで計算しまして、職業被爆が5年間で100ミリシーベルトは、ほかの職業につくのと同じぐらいのリスクであるので、これを限度にしましょうということが1990年に決まったわけですね。その前まではもっと甘かったのですが、90年に100ミリシーベルト/5年、あるいは年間20ということが決まりました。

 では、一般の人はどうするかというときに、これも記録があるのですが、では、どうするかということで、簡単に言えば、職業の人の10分の1にした場合に1ミリシーベルトになるから、それで1ミリシーベルトというのは自然の放射線と同じだから、公衆の人は10分の1で1ミリシーベルトということにしましょうということを決めたわけですね。我々の防護という考え方の中から決めた。

 ですから、最後に書きましたように100ミリシーベルト以下の影響は疫学的にないというのは、これは科学的な事実でありますけれども、100ミリシーベルト以下にも影響があるとしてリスクを比較する、これは防護の考え方です。ですから、1ミリシーベルト、5ミリあるいは20ミリシーベルト以下の線量で影響があるという科学的な根拠はありません。これも、先ほどから繰り返して言ったとおりでございます。

 ただ、考え方として、防護としての被爆線量は国際的にも同意された考え方と説明されて、この場合ポリシーとしましたが、規制の基準になっている、これが放射線の影響に対する、科学とポリシー、考え方とのところを少しまとめて、時間をとって説明させていただきました。

 こういうベースにのっとって、次の放射線に起因する疾患をどう考えるかということについて、お話しさせていただきます。これは、次の資料にあるとおりでありまして「放射線に起因する疾患」と書きました、この検討会の言葉をとったのでありますけれども、現実には、疫学調査における放射線被爆との関連に基づいたということであります。もちろん、急性被爆はここでは取り上げておりません。

 「国際的合意に基づく放射線に起因する疾患」は「固形がん」がございます。これは先ほど申し上げましたように、被ばく線量が増加するとがんリスクは直線的に増加する。これは、確率的影響ということが国際的に認知されている。

 ただ、先ほど言いましたように、寿命調査集団のがん死亡者で見ますと、表に出ましたように95%は自然発生のがんで、5%が放射性起因性である、区別はできないのですが、計算の上からこれだけのものをきちんとフォローできたので、直線的に増加するという結論が出てきたのだということであります。

 それから、疫学的に線量相関が、一つ一つのがんについてどうかということであります。これは、私は放影研の理事長のときに外で発表しますと、がんをまとめて扱うとは何事だというのは常に非難されました。男も女も一緒にして、がんの原因を同じだとあなたは考えるのですか、がんを全部一緒にして出てきたということがどれだけ意味があるんだ、特にフランス、ドイツの先生方から言われました。

 それは、統計学的に数が足りないからと言うと、足りないからといってなぜ一緒にするんだ、全然論理が合わないではないかということを言われまして、その後も各疾患別にどこまで有意差が出るかということを努力して調べているわけでありますけれども、現在のところは食道がん、胃がん、結腸がん、肝臓がん、胆嚢がん、肺がん、乳がん、卵巣がん、膀胱がん、腎盂・尿路がん、これに関しては統計学的に有意な関係が出ている。

 しかし、UNSCEARで書いてありますのは、膵がん、前立腺がん、子宮頸がん、精巣がん、子宮がん、非ホジキンリンパ腫、ホジキン病、多発性骨髄腫は、放射線の被爆とは関係がまだ認められていないとはっきりと書いてございます。がんによって違う。

 だけれども、今お話ししましたのは、いろいろな問題はありますけれども、がん全体を取り出して、その原因は同じであると推定した場合にこの関係が成り立っているということで、これは固形がんでありました。

 その次「白血病」に関しましては、これも線量と関係して増加する。現在は増加の程度は低下しておりますが、疫学的にやはり線量相関が認められますのは、急性・慢性の骨髄性白血病、急性リンパ性白血病でありまして、慢性リンパ性白血病については、放射線の関連はほとんどないとUNSCEARは言っておりますし、このほか、成人T細胞性白血病についても疫学的に線量相関がない、これはウイルスの感染によるものでありますけれども、これは寿命調査で言われております。

 白内障に関しましては、非常に多くの論文がございます。これは確定的影響ということで、多くは500ミリシーベルト以上と言われておりますけれども、一番少ない論文は100ミリシーベルトというものもございます。

 「循環器疾患」というのは、UNSCEARに書いてあって、有意の相関があるというのですか、これは全てCardiovascular、心臓も血管も脳も全部入れてありますので、なかなかそれをここで書くわけにはいきませんので、これは次の各疾患名として通るものにして、分けて書いてございます。

 その次が、起因性について国際的合意に至らなくても、疫学調査で放射線被曝との関連が認められるというものでありますが、これは、まず、それを2つに分けまして、原爆以外の職業被曝、医療被曝でも再現性があるものとしてここに挙げましたのは、骨髄異形成症候群がございます。

 これは、長崎の原爆被爆者で認められておりますが、放射線治療によっても発症が認められる。これは確率的な影響に入れてもいい。これは、今、独立して話しておりますが、これは今まで病気の中に入っておりません。

 副甲状腺機能亢進症、これは広島の成人健康調査あるいは被爆者で認められておりまして、放射線治療でも発症が見られるということで、これはまだ確率的かどうかというのはわかりませんので、クエスチョンを書いてございます。

 それから、被爆者の調査では再現性があったのだけれども、それ以外では再現性がないというものに関して「子宮筋腫」がございます。これは、特にある時期に意識して調べたということもあるのですが、19911993年、超音波で子宮結節を認めると、それは相関があったとか、ただし、500ミリシーベルト未満では、リスクの増加は認められなかった、あるいは成人健康調査で5898年、これも正の線量相関があったということでございますので、ここに入れておきました。

 その次はかなりたくさんございまして、調査はされているのだけれども、再現性がないといいますのは、ある調査では相関がある、ある調査では相関がないという両方の報告があるものであります。これをどう受け取るか、保障と援護とをどうするかということは別にしまして、正確に申し上げます。

 「心筋梗塞」に関しては、成人健康調査で40歳未満では関連が認められたけれども、対象者全体ではない。500ミリシーベルト以下あるいは1,000ミリシーベルト以下の群ではリスクの増加は明らかではない。もっと高いところ、全部を入れてということになります。

 それから、寿命調査集団では、心筋梗塞のリスクは線量相関はなかった。それが心筋梗塞の立場です。

 「肝硬変を含む慢性肝疾患」は、成人健康調査で肝疾患に線量相関が認められました。ところが、やはり500ミリシーベルト未満の群ではリスクの増加は明らかではない。脂肪肝ははっきりと示唆的であったのですが、脂肪肝以外の慢性患者は有意ではなかった。

 寿命調査集団の最近の結果では、肝硬変に線量相関は認められていない。B型のウイルスは増加しているけれども、C型では関係がない。

 機能低下症に関しましては、長崎の成人健康調査で、甲状腺自己抗体と関係したものがという証拠がございましたけれども、またその後に合同したら、その増加が認められなくなった。

 しかし、ビキニの原爆実験では、現地の子どもに甲状腺機能低下症が多発しているという報告はございます。

 また、医療で非常にたくさんでありますが、放射性ヨウ素を甲状腺機能低下症にするために使うということがございます。

 くも膜下出血、脳出血、これは出血性脳卒中、これもその時代によって病気の定義と調べ方が違うのでいろいろございます。ただ、19802003年、最近になりますが、これの調査で出血性脳卒中には線量相関が認められた。ただし、男性で501,000ミリあるいは1,0002,000ミリの群で、それぞれについてリスクの増加は明らかではない。女性については50

1,300ミリでリスクの増加は明らかではない。寿命調査ではくも膜下出血、脳出血において、それぞれ線量相関は認められなかったということであります。

 あとは症状がないとか比較的軽度なものでありますけれども、良性の甲状腺疾患あるいは総コレステロールが高いかとか血圧が高いかということに関しましては、いろいろな結果がございます。

 少しここで研究中のものも拾いまして、まだ症例数が少ないというものとして、慢性腎臓病、糖尿病を挙げさせていただきました。これもまだ結論は出ていないということです。

 最後にまとめましたのは、原爆の被爆者の調査で調査されたけれども、被爆との関連が認められていないというものであります。これは、胃・十二指腸潰瘍、パーキンソン病、大動脈瘤、脳梗塞、前立腺肥大、認知症、関節リウマチ、骨粗鬆症、結核、こういうものは一応調べられておりますけれども、線量との相関があるという報告はないということで、これを最後にまとめて表にいたしました。

 「放射線に起因する疾患」ということで、これは「疫学調査における放射線被ばくとの関連に基づく」ということにしております。

 先ほど申しましたとおりでありまして、国際的合意に基づくものとして、悪性腫瘍、白血病、放射線白内障、片方は確率的影響であるし、国際的にしきい値は500ミリです。

 起因性について至らなくても、疫学調査で関連が認められているというもので、骨髄異形成症候群、副甲状腺機能亢進症、子宮筋腫を取り上げました。

 被爆調査で調査されているのだけれども、再現性がない、どちらの結果も出ているというものとして、ここにたくさんありますが、心筋梗塞、慢性肝炎・肝硬変、甲状腺機能低下症、くも膜下出血・脳出血、良性の甲状腺腫、総コレステロール、血圧、慢性腎臓病、糖尿病です。

 調べられたけれども、関連が認められないものとして、胃・十二指腸潰瘍、パーキンソン病、大動脈瘤、脳梗塞、前立腺肥大、認知症、関節リウマチ、骨粗鬆症、結核というものがございます。

 これは、先ほど最初に申し上げましたように、科学的、疫学的に放射線との相関があるかないかということを客観的に調べた結果であります。

 きょうここではお話しいたしませんけれども、では、これに対して援護はどうするかということは、少なくとも原爆被爆者の方が今まで本当に大変な思いをして、あるいは原爆症ということを世界に対して調査した結果を発表してきたその科学的な結果、世界に発信してきた結果をやはりこのメンバーの方たちの頭の中で共有していただいて、その上で今このあらゆる利害関係者、ステークホルダーの集まっているこの研究会のメンバーの中で対話をしていただくということです。

 ただ、そのときに気持ちとしては科学をこれだけ日本、世界で発達したわけなのですから、援護としてここで議論することも、世界に対してこの病気はこういう理由で援護するんだということを、やはり発表をできるようなきちんとした論理づけた格好で援護が決まっていくとありがたいと思っております。

 どうも御清聴をありがとうございました。

○神野座長 どうもありがとうございました。

 先生の御発表で、これまでの原爆被爆者の献身的な協力に基づく調査から始まって、先生の最後のメッセージ、これまで日本が発信してきた原爆被爆者の調査の結果をこの委員会でも共有しながら対話を重ねて、世界に発信できるような合意が取りつけられればと思っておりますし、先生がきわめて体系的にかつ要領よくおまとめいただいたことに感謝を申し上げるとともに、これまでの先生の研究活動にも畏敬の念を表したいと思っております。

 それでは、今、長瀧先生から御発表いただきました資料、事務局からの資料でも構いませんけれども、委員の皆様方から議論を頂戴したいと思っておりますので、どなたからでも結構でございますので、御発言を頂戴できればと思っております。いかがでございましょうか。田中委員、どうぞ。

○田中委員 長瀧先生、本当に詳しい御報告をありがとうございました。

 最後に先生がつけ加えていただいたことが非常に大事だと思いまして、私もまた後で発言させていただきたい、援護の立場をどうするかということですね、お話ししたいと思うのですけれども、これまで裁判をたくさんやってきて、その中で科学的知見は現在の到達点というのは、今、御報告を受けたところであろう、先生も認められていましたけれども、不十分さはあるけれども、ここまでわかっているという御報告だったのだと思います。

 だから、不十分さをどう私たちが認識するかということと、今後また変わっていく可能性があるわけですね。新しい事実が出てきたら修正されるということもあるということだと思いますので、そのこともあわせて皆さんの共通の理解にしていただければいいかなと思っております。

 そうではないよと長瀧先生がおっしゃれば、また別なのですけれども、多分、疫学調査、確かに私どもの十何万人の人たちを対象にしてやられてきたのですけれども、できるだけ詳しくはやってきたと思いますけれども、あくまでも推定なのですね。

 一人一人の被曝線量はかなり正確に推定されていると長瀧先生は御説明になったのですけれども、それでもなおかつ推定値なのですね。そのとき、直後にきちんとそれぞれの人たちの行動だとかいた場所だとかを確認しているわけではないのですね。

 先生もおっしゃいましたように、5年たってABCCの調査が始まるし、10年間は放置されましたしね、5年間の間にいろんな人たちの行動が不明になってしまっているということがあったりしますので、原爆を実際に体験してその後どういう経過を被爆者たちが経たかということを考えれば、かなりいろんなことを調査されたと思うのですけれども、やはり不十分さがかなりあると御理解いただければいいのではないかと思っておりますので、発言させていただきました。

○神野座長 ありがとうございました。

 ほかはいかがでございますか。高橋先生、ございますか。

○高橋滋委員 大変詳細な御報告をありがとうございました。

 ここで、疾病の関係なのですけれども、長瀧先生のレポートのところで、心筋梗塞とか肝硬変を含む慢性疾患とか甲状腺機能低下症については、関連性はあるけれども、再現性が必ずしもないということで御説明いただいて、これは新しい基準でも、そこは放射線起因性がある場合は認定しているということだと思いますが、一方、くも膜下出血と脳出血については、同じようなグループに入っているのですが、これが新指針には入っていないように見られるのですが、その辺の関係というのは、どう考えればよろしいのでしょうか。

○神野座長 長瀧先生、よろしいですか。

○長瀧委員 くも膜下出血、脳出血に関してはどうかという御質問ですね。

 これも昔、卒中と言っていた恰好での統計をとってみたり、くも膜下出血といわゆる脳卒中、脳出血と区別をつけて統計をとったりとらなかったり、時代によっていろいろ違いますので、報告が違います。

 ただ、その中の、これは両方あるけれども、ポジティブのほうが意見が強いんだとか、ネガティブのほうが意見が強いんだというのを分けますと、かなりいろんな主観が入ってきますので、一応ここではまとめて両方の結果があるということにいたしました。

 ただ、一つ一つの疾患について、もし援護についてお話しするのであれば、そこで出てきた今までの論文の信憑性であるとか数であるとか、そういうことの議論はその場その場でやらせていただきたいというつもりでここではひとまとめにしたということ、両方あるということだけ、今お話しさせていただきました。

○高橋滋委員 どうもありがとうございました。

○神野座長 よろしいですか。ほかはいかがでございますか。坪井委員、どうぞ。

○坪井委員 原爆の関係の放射線の問題で、ただ、原発のほうのいわゆるチェルノブイリとかスリーマイルの問題でも、みんな隠すというか余りよく調べていなかったような感じがするのですね。だから、それはそれで、大体これぐらいだろうというぐらいでみんな抑えてしまったのですね。

 日本の場合は、先ほど言われたように、サンフランシスコ講話条約があった後にいろいろと出たというのもある。そういうことを考えていきますと、やはり非常に厳しい目で見た結論を我々は持っていないと思うのですよ。

 きょうは、長瀧先生が一生懸命この資料を出していただいたのですが、たとえばこの病気の名前でも、本当は医学からいえば、病気のがんの何なのか、がんというのは、その中にまたいろいろとあるわけですね。それは私たちはわかりません。

 だから、同じような名前をがんで胃がんだ胃がんだと言っても、それは胃がんだという問題でもね、がんを全てこちらのほうの人は認定された、こちらは認定されないとか却下されたとか、それは細かいそこらへ行ったら我々はわからないですね。だから、医学がどの程度進んでいるかの問題があります。

 そういうことから考えてみまして、我々はその過程の中にまだあるのだという感じからすれば、先ほどちょっと言われましたが、やはり100ミリシーベルトの下のほうもよくわからないところがあるわけですが、やはり科学あるいは医学がどこまで行っているかはわからないとしても、やはり科学でできるところはそれでも、はっきりしている部分は、もうばんとやらないか。

 そうでない場合は、どうしても、ポリシーと言われましたが、そういう方向で考えないと、その場合に私はよくわからないときにあっても研究中であっても、被爆者を援護する立場かどうかが、それを政策的にというか、ここでいろいろまとめていくべきではなかろうかと思うのですよ。

 ここで医学の中の論文をどうだこうだという問題ではないですからねと私は思っているのですよ。したがって、やはり、今、非常に詳しい医学的な問題を出していただきました。それを知って、それでは、我々は政策的にはどういったらいいかというのは、なかなか論文的なことは出なくとも、とにかくそういう方向で原爆による放射線を考えていただきたいと思う。

 だから、何でも幅がある場合、それが科学ではまだはっきりしておりませんということになるわけですよ。その幅を被爆者に近い方向へ持っていくようにしてもらいたいということです。

○神野座長 ありがとうございました。荒井委員、どうぞ。次に潮谷委員です。

○荒井委員 大変詳細で、しかもこの放射線と疾病との関係について、学問的に、また被爆者援護の制度の沿革にまでさかのぼっての整理、取りまとめをいただきまして、大変ありがとうございます。勉強になります。

 感想的なことしか申し上げられないのですが、一つはその前に質問をさせていただきたいのですけれども、このペーパーの1ページの一番最初のところに、ほかの戦争災害との違いはというところで「放射線起因性が選択」という言葉が使われております。「放射線起因性が選択 被害の一部」と、この選択という言葉が、まさに言葉の意味でございますけれども、ちょっとわかりにくいのですが、そこをまず教えていただければと思います。

○神野座長 よろしいでしょうか。

○長瀧委員 結局、区別するために放射線の被害しかないといいますか、そういうことで本当に放射線起因性を原爆の被害にしましょうという意味で、選択という言葉を使ったのですが、例えば被害ということからいえば、爆風だろうが熱傷だろうが急性の影響が今も残っているというものも全部被害に入るわけですけれども、ただ、それの大部分が、例えば普通の空襲と共通する部分があると、そこが分けられないので、原爆だけ特別にある範囲でというときに、放射線の影響というものが選択された。

 それは、被害に対する科学的な判断というよりは、区別するための政治的、社会的なものとしてこれが選択された、そういう意味で選択という言葉を使いました。

○荒井委員 起因性を選択したというか、が選択されたという理解ですね。わかりました。ありがとうございます。

 先生のおまとめいただいたことをどう理解するかなのですけれども、私の勝手な理解を感想と同時に申し上げさせていただきますと、一つは、大変なこの被爆者の方々の協力も得ながら、疫学調査が相当綿密なる、世界に発信できるほどの内容を備えた調査も行われた。

 現時点では、未解明のところもあるけれども、かなり学問的にどこまで説明ができるかということでは、国際的にも日本で積み上げてきた研究成果というのは評価されている。仮に放射線とのつながりで、放射線に起因する病気はどこまでだということを言うときには、やはりそこには学問的な見地からいえば、限界といいますか、何らかの限度というものがあるだろう。その限度をどこでつかまえるかといえば、やはりこれまでの研究方法として考えられてきたのは、線量というものではないだろうか。

 そういうことを前提にしていくと、ある程度、私の勝手な理解かもしれませんが、原爆の被災者の方々の中のどの疾病が放射線に起因する疾病なのかということを考えていくについては、極端なことを言えば、何でもいいというわけにはいかないだろう、これが一つです。

 もう一つ、現在の裁判例だけではなくて、既に新しい審査の方針の中で、対象疾病に取り入れられている疾病の中にも、学問的にいうと、必ずしも起因性が十分説明されていないものも既に認定対象にされているものがある、これが私なりの理解なのです。

 さて、そこで今後対象疾病をこの「在り方検討会」の中でどう考えていくか、できるだけ広げられれば広げたいという方向で考えていくについて、そこに限度はあるのでしょうけれども、なかなか我々でそこをきょうの先生に取りまとめていただいたものをどう受け入れ、受けとめ、そしゃくできるかというと、きょうの御報告をもとにして、この疾病はいいとか悪いとか、それはちょっとこの「原爆症認定制度の在り方検討会」で決めるには無理があるだろうと、言えることは、お取りまとめいただいた学問的成果ということを念頭に置きながら、今後の制度設計の場面で考えていただくしかないのだろう。

 もう一つのメッセージとしては、これは今回に限らないと思うのですけれども、放射線とのつながりで疾病を考えていく場合には、学問的な限度があるだろう、それが被爆者援護という、もう一つ大きなといいますか、別の立場から見たときに十分であると言えるかどうかという、一つのメッセージが込められていたように理解させていただいたのです。

 その点、一番最後の援護として十分かどうかという場合、問題についてどう考えるかというのは、いずれ、きょうに限らないのですけれども、それぞれの委員が、やはり自分の考え方というものを整理して、意見を述べるべき役割があるだろうと思うのですね。

 私自身は、被爆者援護という意味で言った場合には、これもこれまで何度か議論になってきたと思うのですが、いわゆる原爆症認定制度だけではなくて、被爆者援護の国の仕組みというのは、それは健康管理手当あるいは原爆手帳のようなものを含めて、それを全体として被爆者援護の制度としてつくり上げてきているのだろうと思うのですね。

 それでは、原爆症の対象疾病なり今の仕組みを今のままで援護として足りるか足りないのか、あるいはここで何らかの解決策を見つけていくときに、この部分だけを原爆症認定のところだけ、何か改善できなければ、援護として不十分かというと、必ずしもそう簡単に不十分だという結論に私はならないのではないかと、そんなことをいろいろ考えさせていただきながら、聞かせていただいたわけでございます。

 ありがとうございます。

○神野座長 ありがとうございました。

 では、潮谷委員、お願いできますでしょうか。

○潮谷委員 長瀧先生、ありがとうございました。改めて原爆被爆者の献身的な協力が、今論議をしている根拠性の中でも、深く関わっている事を感じました。7月お盆、8月お盆という民族的な出来事を私たちは今、経験するわけですけれども、改めて哀悼の意をささげたいと思います。それが1つです。

 一つは、先生のお話の中で、科学的知見の共有をこの審議会はやっていくべきではないかということと、同時にもう一つお触れになられましたのは、援護の理由、ここにもやはり私たちは客観性が求められていると考えます。

 もう少し別の言葉で言えば、私は制度を設計してくときの品性といいましょうか、そういったものも同時に求められているのではないか、そんな思いをいたしました。同情ではなくて、私たちが本当に援護ということで、この制度を考えていかなければならないという感想を持ったところであります。

 そういった前提の中で、一つ先生にお伺いしたいのは、寿命調査と成人健康調査、これは大変客観的に私たちも捉えさせていただいたのですが、タイムラグが8年あるということと、客体の数が10万差がある、非常に客体差が大きい、それは何か根拠性の中でそういう形になったのかということを、お伺いしたい。

 もう一つ、では、これまでのこの制度というものが、本当にグレーゾーンを含めて私たちがその範疇の中に入れてこなかったかというと、私はむしろそうではなくて、認定あるいは手帳の問題等々に至るまで、認識の中で対応してきたのではないかという感想を持っております。

 それから、裁判所の例というのは、これはあくまでも個別性ということでありますので、その個別性を一つの論拠という形で制度設計を見直していくということは、これは相当困難性が伴うことではないかと思います。

 あと対象疾病の広がり、これが、やはり大きなポイントになっていくと思います。これは荒井先生がおっしゃったのと同じように、私どもの能力の限界ということが感じられる思いも抱いているところであります。

 ただ、これは厚労省に対しての感想ですけれども、やはり却下されていくケース、そういったことに対して、やはり科学的な知見、もう一つ疫学的な知見、そういったことを含めてやはりきちんと説明をしていくということが、大変大事になっていくのではないのか、そこあたりを丁寧にやっていくことによって、この制度の理解ということも深まっていくのではないかな、これは私の感想です。

 以上です。

○神野座長 それでは、2つの調査の相違とか、2番目のグレーゾーンの問題を含めたお答えをいただければと、よろしいですか。

○長瀧委員 申し上げたとおりの繰り返しになりますけれども、このでき上がった、世界に発信してきた、科学的な事実の積み重ねというのは、やはりこれは本当に被爆者の方の献身的な努力、もうそれなしにはできなかった。

 それから、それを世界に発信するということは日本の責任でもあるし、そうやってきた。そういうものを今ここで援護のために持ってきて、ここがおかしい、不安だというのは、重箱の隅をつつくようなことを議論するのが、本当に援護のためにいいのだろうか、あるいは被爆者のためにいいのだろうかという感じが非常にします。

 ですから、今の積み上げてきた科学的なあるいは疫学的な事実というものは、そのまま置いておいて、ここがおかしいから援護をという議論ではなくて、それはそのまま我々の共通の認識としてある中で、こういう理由で援護としてこれを入れましょうという、そのときにやはり世界に今まで発信してきたものに対して、こういう理由で日本は援護しているのですということをはっきり言えるような、客観的な、ただごね得とかそんなものではなくて、やはり国民全体、国全体として制度の上できちんとした理由があって、ここまで援護をしているということが言えると、この検討会の一番大きな意味ではないかなという感じがいたします。

 例えばでありますけれども、では、そのがんの患者さん、先ほど言いましたように、本当に科学的にいえば、全部で50年間で500人ぐらいが放射線のためにがんで亡くなったというのは、調査結果ですね。

 あとの95%の方はそうでなくても亡くなるのだけれども、例えば、その区別ができないから、ある条件のもとのがんの患者さんは、全て放射線によってがんになったと認めると、それは科学から離れて、援護という立場から全てのがんを被曝したがんとして認めましょうという言い方は、一つの理由になりますね。

 だから、例えばそういう、外に対しても我々の中でも、きちんとした理論、理由づけができるような意味で、科学的な知見を頭に置いて援護を決めていく。そういうことを非常に希望しているということでございます。

○神野座長 ちょっと技術的に細かい話かもしれませんが、寿命調査と成人健康調査の12万と2万と、年月がかなり離れている差異について、何か御説明があればいかがですか。

○長瀧委員 失礼しました。先ほどの大事なところをメモをしながら、答えるのを忘れてしまいました。

 寿命調査が一番基本なのですね。これは全部十何万人を擁する。

 後で58年にできましたのは、特に被曝した方のメーンが急性症状を示した5,000人というのが2万人の中の中心でございまして、非常にたくさん放射線を浴びた方を全部見て、そういう方たちの影響を見ていこうということです。

 ですから、5,000人があくまで被爆者集団の中心であって、その5,000人の方は全部急性症状、臨床として何らかの急性症状があった方、その方がどうかということで、それが成人健康調査になりまして、非常に被爆している方が多いので、2年に1回、ちゃんと身体検査も含めてフォローをしましょうという集団でございます。

 片方のほうは、面接その他ではなくて、本当に統計学的にフォローしていったという、そこはかなり大きな違いがございます。

○神野座長 高橋先生、御予定が後であるようでございますので、何か御発言があれば、お願いいたします。

○高橋進委員 一言だけ、これで出させていただきます。

 やはり私が感じましたのは、現在の到達点としての科学的知見というものを、できるだけこの委員会で共有するといいますか、はっきりさせていただく。もちろん、限界がある部分はありますけれども、でも、そこが全ての出発点ではないか。

 現在の到達点をはっきりさせて、そこからどこまで援護という観点で離れていくかということが初めて議論できるわけですから、やはり科学的知見というものはきちんと出していくということ、そこをはっきりさせるということが必要だと思います。

 ただ、そのときに、今のお話の途中だったと思うですが、この疫学調査の限界というものも前提として置いておいて、その上で科学的知見をはっきりさせて、そこを全ての出発点にして議論をして、どこまで広げていくのかという議論をする。

 それから、将来的にそれがまた変わるかもしれないということも前提に置いて、柔軟性も残しておく。そこをまず固めるべきではないか。

 そこは割と皆さん、何といいますか、共通の意見として持てるのではないかということをきょう改めて感じました。

 ありがとうございます。

○神野座長 ありがとうございます。それでは、御発言、どうぞ。

○三藤委員 科学的な知見の必要性とか意義とかというのは、私も認識をしているつもりです。そのような意味では、今、長瀧先生がおっしゃられたような考え方がベースになって、現行の認定制度を形づくっている、そう理解をしております。

 ただ、そういう現行の認定制度がある中で、なおかつ司法判断が示されてきたということが、今、課題になっているわけですから、これは長瀧先生も従来言われておったように、やはり科学には限界もあるし、不明な部分もありますよと。

 その部分に対してどう答えを出していくかというのが、この会議の私は責任だと思っておりますので、科学は尊重しますし、参考にもさせていただきますけれども、それをベースに置きながらも、やはり何らかの対応策を打ち出していくべきだと、私はお話をお聞きしながら改めて感じました。

 以上です。

○神野座長 ありがとうございます。

 草間委員、ございましたら、どうぞ。

○草間委員 きょうは、長瀧先生、本当に原爆の最初のところからしっかりまとめていただきまして、本当にありがとうございました。

 先ほどから議論がありますように、ここでどう判断していくかという、そういう意味では科学的資料として、現在の時点をお示ししていただいたというのは、大変参考になるのではないかと思います。

 いずれにしましても、医療特別手当をどうするかといったときに、基本的には、これに関しましては、放射線起因性があるということは前提としてやっていきましょうという、この前提は田中先生も含めて、皆さんに御了解いただいているのだろうと思います。

 確かに科学が限界があるということ、だから、いつもいつもリサーチが行われているわけですので、そういう意味では限界があるわけですけれども、現時点でここまで明らかになっているというのを、きょうお示しいただいたわけですので、やはり私たちはこれをもとに何らかの判断をしていかなくてはいけないのではないかと思います。

 だから、そういう意味では、きょう幾つかのカテゴリーに分けていただきましたので、やはりこれをもとにどう放射線起因性を判断していくかということを、判断していただかなくてはいけないと思います。

 それと先ほど荒井先生が言われたように、援護という視点から考えたときに、医療特別手当だけではなく、健康管理手当も含めた全てでやはり援護という形でやっているわけですので、ここでは、少なくとも医療特別手当の認定に当たって、放射線起因性をどうするかということに関しては、きょうお示しいただいた、現在までの科学的な知見をもとに、何らかの判断をしないといけないのではないかなという印象を、きょう強く思いました。

 先ほど、田中先生も言われて、これから新しい知見が出てくるだろうと、確かにそうだろうと思います。

 というのは、心筋梗塞とか白内障のしきい線量などは、かつてはもっと高かったわけですけれども、調査期間が長くなりというか、観察期間が長くなり、また原爆被爆者だけではなく、職業被曝、医療被曝、さまざまな疫学調査がこういった原爆被爆者の疫学調査をサポートするようになってきて、新たな知見が出てくるわけです。

 国際的合意というのをどうとるかといったときに、先ほど長瀧先生も言われたように、まさにICRPとかUNSCEARがどう判断しているかというところを、一つの根拠として、現時点ではこの範囲内で判断していきましょうというのは、一つの判断ではないかなと印象を強く思いました。

○神野座長 ありがとうございます。

 田中委員、どうぞ。

○田中委員 先ほど言い忘れたことがありまして、一つは、この疫学調査の基本になっている線量の推定が、あくまでも多分、初期放射線、爆発のときの放射線の被曝線量で推定されているのではないか。

DS86とかDS02というのが、そういう推定方式ですので、そういう線量に基づいているということも合意していただければいいのかなと思います。

 もう一つ、裁判の中でいろいろ争われたのは、ここではC型肝炎のことが線量関係がないと言われているのですけれども、裁判ではC型肝炎については共同成因という言葉を使われて、原告が勝っているのですね。

 というのは、直接原因はウイルスによる肝炎かもしれないけれども、ウイルスによる肝炎が発症するもとになったのは、やはり原告だった被爆者の放射線被曝ではないかというのが裁判の判断ですね。

 だから、援護の立場でそういう判断を一つはしてきているというのと、それから、原告の人の病気の経歴などを求めて、そういう判断をしているということがありますので、これは合意されていることだと思いますけれども、科学的に今の知見の到達点を機械的に当てはめてはいけないのではないかということを、合意していただきたいということがあります。

 もう一つは、何回もここで申してきましたけれども、認定する場合の被爆者の線量は、あくまでもわからないということです。特に残留放射線の影響は推定できないわけですね。大小にかかわらず間違いなく残留放射線を浴びているわけですから、原爆症を申請している被爆者の線量で決めつけてしまうというやり方は、やらないということをぜひ理解していただきたいと思っております。

 石先生は、外形標準とかいう言い方をよくされていましたけれども、一人一人で判断しないということが必要ではないかということを申し上げたい。

○神野座長 ありがとうございます。長瀧委員、どうぞ。

○長瀧委員 個人の被爆線量の推定というのは、調査の上では、これは世界の中でこれほど正確にできているものはない。それを壊して、線量がないという言い方、そこら辺が私は一番、日本の科学、被爆者の方が今まで協力してここまでできたものをここで壊す、援護のために壊すのはよくない。

 やはり科学は科学として残して、その線量はどこかに不備はあったとしても、あれだけ努力して、個人個人の被曝線量を推定しているわけです。それが正しくないと言って、全部をぶっ壊してしまうような議論は、ここではしたくない。

 そして、その残留放射線と直接の被曝線量と同じような扱いにするのも、これは全く世界の常識から外れたことなので、援護のための議論と、もともとある国際的に我々がつくってきた、被爆者の方が協力してつくってきた現実、事実というものは、きちんと分けてここで認識すべきだということであります。

 科学的には、残留放射線と直接被曝線量を比べて議論するようなものではない。線量が全然違いますから、そこは人間に対する影響からいっても、個人の、今、被曝線量として計算されている外部被曝線量が放射線の健康影響のもとになっているということは、もう間違いのないことでありますので、そこはそことして受け取っておいて、その上でそれに加えて援護を考えるということで、そこで科学を無視して援護を考えると、何か議論がどこかへ行ってしまうと思います。

○田中委員 私の申し上げたことが、長瀧先生は誤解されているように思うのです。

 私は、疫学調査の結果を否定をしているのではないのですね。それはそれとして認めなければいけないけれども、実際に認定をするというときに、一人一人の被爆者の被曝線量を、今までだったら距離、あなたの距離はここだから被曝しておりませんという判断をされてきたわけですよ。そういうやり方はしないということを確認していただきたいというのが、私の発言であります。

○神野座長 草間委員、その後、潮谷委員、どうぞ。

○草間委員 今、長瀧先生が言われたように、特に寿命調査、線量に関係しましては、去年の12月に放影研、放射線影響研究所が共同声明を出したように、残留放射能についてどう考えるかということを共同声明を出しましたので、これが疫学調査に関する被曝線量の現在の知見であるとお考えいただかないといけないと思います。また、寿命調査の方たちに関しては、残留放射能についての線量が含まれていないのではないかという御発言ですね。

 それに関連しましては、放射線影響研究所が昨年12月に出した共同声明のように、初期放射線に比べて残留放射線は、そう大きな影響はしていないのだろうというのが、現在の科学的な知見ではないかと思っています。

 荒井先生が言われるように、これは医療分科会も決して機械的に現在やっているわけではなく、一人一人の判断をしていると思います。

 今ここで議論しなくてはいけないのは、実際の認定に当たって被曝線量をどうするかということの問題以前に、放射線起因性があるかどうかというのをどう分類していくかということをまず決めた上で、その上で被曝線量をどうしていくかということではないかなと思っています。

○神野座長 ありがとうございます。潮谷委員、どうぞ。

○潮谷委員 行政と司法の認定の乖離の問題ということを先ほども少しお触れになられたのですけれども、また田中委員が出されている資料の中身等々を拝見しましたときにも、実は旧の審査方針で見られた裁判と、新しい審査方法で見られた裁判の結果というのは、違いが相当出てきているのではないか。むしろ、国側が負けている率というのは、旧の審査方針の中では非常に高い形で出てきているように感じるのですね。

 それで、新しい審査方針の中で、もちろん原告の皆さんが勝訴されているというケースはあります。現在そういったことを分析をして、それを普遍化させて認定の中に取り組んでいくということが、果たしてできるのかどうか。

 結局、裁判というのは、あくまでも申請されたことの個別性に基づいて裁判官が判断をしてまいります。その個別化されたものでもって、そこから普遍化できるという要素が本当にあるのかどうか。

 乖離を埋めるという、その手段の中に裁判の事例を普遍化できるか、ちょっと難しいのではないのかなという気が、するのです。荒井先生、そこあたりはどうですか。

○田中委員 その前にちょっと申し上げたいのです。

○神野座長 では、田中委員、どうぞ。

○田中委員 普遍化できないのではないかということなのですけれども、前から申しましたように、数が圧倒的に多いわけで、そういう意味で、きょうは私の資料の2番目の赤いので囲ったりしているのがあります。赤いのは原告が勝っているものですけれども、この資料は、前回、荒井委員がおっしゃいました放射性起因性が認められると書いてある、非がんの疾患の裁判の事例なのですね。例えば、甲状腺機能低下症の距離というのを見ていただければ分かるのですが、これはもうかなりの人たちが裁判で勝っているわけですね。圧倒的な人たちが勝っているわけです。

 でも、この人たちは新しい審査の方針で、というのは、放射性起因性が認められるという冠がついている審査の方針、積極的と言いながら、これは全部却下されています。だから、裁判にまたなってしまったのですね。集団訴訟は終結するよう、私どもで努力したのですけれども、全部これが却下されているのですね。

 だから、それはどう判断するかというので、科学的な普遍性で裁判は却下したり認めたりしているのではないのですよ。やはりポリシーといいますか、援護をどう考えるかという考え方でやっているので、そこの普遍性はきちんと押さえていく必要があるのではないかと思う。

 そういう意味で、私の意見の最初のもの「判決の述べる科学立証の内容と程度」どういう立場で裁判官は判断をしていったのかというのを事例として挙げておきました。

 ここでは時間が余りありませんから読みませんけれども、8つの判断の基準というのを出させていただきました。その基準になる判決も後のほうで例文として出しておりますので、その対応する判決は以下のとおり、その○で示しております。

 例えば「放射線が人体に影響を与える影響の判断手法のまとめ」のところで「科学的知見にも一定の限界が存するのであるから,科学的根拠の存在を余りに厳密に求めることは,被爆者の救済を目的とする法の趣旨に沿わない」という言い方をされているわけですね。

 法というのは何かというのは、国家補償的な配慮があるということになっているわけだから、そういう立場からの援護をしないといけないというのが法の趣旨だというのが、裁判の一貫した流れですので、そういう理解をしていただかないといけないのではないかと思って、これを出してあります。

○神野座長 ありがとうございます。

 総括的に、荒井先生にお答えいただくということでよろしいですか。

○荒井委員 先ほど潮谷先生の御指摘、私も同じ認識でありまして、前回たしか発言させていただいたと思うのですが、旧審査の方針の時代と新しい審査の方針のもとでの裁判例とでは、国の判断が裁判で是正される率というのは、随分変わってきているのではないかと、一応申し上げているのですね。

 というのが、旧審査の方針を新しい審査の方針に切りかえるときには、やはり裁判で国が随分負けたということを踏まえて、先ほど来、長瀧先生からの御説明もありましたように、科学的な知見だけでは無理なところまで、ある程度新しい審査の方針では疾病を取り込んできているのですね。これは一つ申し上げたいことです。

 だから、旧審査の方針の時代の司法との乖離を前提にして、ここで新しい制度設計を考えようという考え方をするのは、余り適当ではないのではないかということを申し上げたい。これが一つです。

 もう一つは、田中委員御提出の資料の赤枠で、国がいわゆる負けたという、これを一つ一つ見ていきますと、確かに国の判断と違ったというのはもちろんあるわけですけれども、例えば、3.5キロ以上はだめだと言いながら、実は入市要件が裁判で初めて主張されて認められた。それは、当初から入市の事実関係が明らかであれば、恐らく国だって認めたでしょうという例が結構入っているのですよ。

 入市が認められていない例でも、その疾病とか要医療性の問題をちょっと抜きにしますと、客観的な審査基準に照らして言えば、つまり認定といいますか、距離なら距離のところで、こちらの段階では4.2キロなんていうのが、実は3.5キロを満たしているという認定の仕方で、原告の申し立て、訴え提起が認められたという例も結構あると思うのです。

 だから、そういう国の負け方ということを点検していくと、田中委員がおっしゃるほどギャップということはないのではないか。もちろん、それには長い裁判の頑張ってこられた結果が、新しい審査方針に反映しているという面があるかと思うのですけれども、それほど大きなギャップとは私は考えていないのですね。

 やはり最後は今の審査の方針の枠組みというものを維持した上で修正していくかどうか、そこにかかるだろうと思うので、私は、それでは、今残っている司法とのギャップをどう考えるかといえば、やはりそれは個別ケースを中心にどう考えるか、あるいはどう要件を満たしていると認定していくかというのと、全体として原爆症認定の対象をどういう要件のもとに制度設計していくかという行政判断とでは、ある程度、細部まではいっても違いが残るということは、やむを得ない部分があるのではないかということでございます。

○神野座長 ありがとうございます。では、高橋委員。

○高橋滋委員 私は行政法が専門で、この問題だけではなくて、いろんな行政認定の制度設計とか判決の勉強をしているのですけれども、例えば、水俣病の認定の話もありまして、最高裁との関係でいろいろ議論になっていますけれども、やはり司法の場合は、制度があって、それについてまさに認定するかしないかについて白黒つけるという問題で、裁判所は判断するわけで、そこでは、やはり制度のある種の所与を前提とした判断をせざるを得ないという部分があります。

 それに対して、これから今どうやって制度設計をするかという場合については、そこは社会援護というのをどう考えるか、それもいわゆる制度全体の健康管理手当とかというものの存在を踏まえて、荒井先生もおっしゃいましたように、十分かどうかということを踏まえて判断すべきだと思うのですね。

 そのときに、やはりこの制度設計、つまりいわゆる医療手当の制度設計というのは、やはりほかの方々と違う給付をするということの積極的な根拠は、やはり行政上の制度としては必要だと思いますので、そういう意味ではやはり放射性起因性というものを余り乖離した形での制度設計は、やはりすべきではないのではないかと私は思いますし、援護の話について、どう考えていくのかというのは、もうちょっと全体の制度設計の中で考えていくべきではないかと思います。

 以上です。

○神野座長 ありがとうございます。

 ほかはいかがでございますか。よろしいですか。長瀧委員、最後にどうぞ。

○長瀧委員 司法と行政のギャップがずっと話題になっておりますけれども、ここで伺うと、ある限られた世界の中で、それぞれの裁判の決定がなされていくということもございます。

 ですから、この委員会というのは、国際的な分野から個々まで全て含めて議論し、考え方を決めていく委員会ですから、裁判の結果はもちろん参考にはするけれども、裁判でこう言ったから、我々がそちらに従うというのとちょっと方向は違うのではないか。

 我々は、裁判も含めてこの委員会は援護というものをどういう制度設計をしていくかという、その参考に裁判の話ができるという立場ではないかなと思っておりますので、ちょっと一言、つけ足しておきます。

○神野座長 ありがとうございます。ほかになければ、そろそろ時間でございますので、きょうの議論はこの辺で打ち切らせていただければと思っております。

 極めて生産的に御議論をいただきましたことを感謝いたしますし、また、そうしたことができたのも、長瀧委員の御苦労でございますので、改めてお礼を申し上げる次第でございます。

 潮谷委員のまとめを利用させていただくと、長瀧委員の御発表から、私たちは2つのこと、一つは科学的知見ということを共有していく。これは、今、長瀧委員が御報告していただいたことがほぼ私たちが科学として到達点だと。これは科学という言い方はあれですが、私も科学者の端くれでいくと、真理、我々は、人間は間違いを犯しますけれども、これが真理だということについて言えば、現在の科学の到達点と判断せざるを得ないわけですね。

 その上でもう一つのメッセージは、それを導き星にした上で、援護の理由はここでどう考えていくのか。重要な科学的な知見というのは一つの導き星になるので、その理由、品性という言葉がありましたけれども、どう考えていくのか。

 そのことをもとにして、これも荒井委員から御指摘がありましたけれども、疾病の病名、つまり非常に具体的にどのフェーズまでここの委員会で踏み込むかということは別にして、いずれにしても制度設計の重要な導き星をきょういただいたと理解をしていて、そこまではほぼ共有できたのではないかと思っております。

 きょう、つまり疾病という論点について御議論いただいたのですけれども、一応きょうの議論で主要な論点別に取り上げるテーマについては、一当たり御議論を頂戴したと思います。

 そこで、今、残されたテーマ、援護の諸理由を踏まえながら、制度設計に結びついていくということを念頭に置きながら、次回は、今までの議論の不足部分を含めて、これまでの議論をまとめていく、論点別にやってきたことを少しまとめていくという議論に入っていければと次回以降を考えておりますので、御協力をいただければと思います。何か御発言があれば、そのようにさせていただいてよろしいでしょうかね。

 それでは、一応、次回をそのようなことにさせていただくということで、お暑い中お集まりいただいたことを深く感謝を申し上げながら、この辺で終わらせていただきたいと思います。

 事務局のほうから、連絡事項その他、ございましたら、お願いいたします。

○榊原室長 次回の日程につきましては、日程を調整の上、追って御案内いたしますので、よろしくお願いいたします。

○神野座長 それでは、議事運営その他に御協力をいただきましたことを深く感謝いたしまして、本日の検討会をこれにて終了させていただきます。

 どうもありがとうございました。

 


(了)

照会先
健康局総務課原子爆弾被爆者援護対策室
代表: 03-5253-1111
内線: 2317・2319

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