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2013年10月30日 障害年金の額改定請求に関する検討会(第3回)議事録

○日時

平成25年10月30日(水)17:00~


○場所

経済産業省別館3階 各省庁共用310号会議室


○出席者

構成員

石本晋一構成員 市原眞仁構成員 草野佐構成員 小沢忠彦構成員
田熊淑男構成員 竹田宏構成員 豊原敬三構成員 中島八十一構成員 和田高士構成員

○議事

○中島座長 定刻より少し早い時刻ですが、構成員の方々が全てそろいましたので、ただ今より第3回障害年金の額改定請求に関する検討会を開催します。本日は大変お忙しいところ、本会合にご参集いただき、誠にありがとうございます。それでは本日の資料と議事について事務局よりご説明をお願いします。

○和田事業管理課給付事業室長補佐 本日の会合資料の確認をさせていただきます。お手元の座席表・構成員名簿の他、議事次第のもと資料として「額改定請求の待機期間を要しないこととする対象について」、参考資料として「用語の説明」をお配りしています。お手元にございますでしょうか。不足がございましたら、お申し出ください。

続いて本日の議事ですが、資料のうち「検討に当たっての考え方」と「対象として規定するための条件」についてご確認いただいた後、「額改定請求の待機期間を要しないこととする対象(案)」について構成員の皆様からご意見をお伺いしたいと思います。どうぞよろしくお願いします。

○中島座長 それでは早速議事に入ります。初めに資料のうち「1.検討に当っての考え方」、「2.対象として規定するための条件」この2点について事務局からご説明をお願いします。よろしくお願いします。

○栗原障害認定企画専門官 初めに「検討に当っての考え方」からご説明します。お手元にある資料の1ページをご覧ください。今回の検討会では、既に障害年金を受給されている方に対し、障害の程度が増進したことが明らかである場合には、1年間の待機期間についての例外規定を設け、前倒しして額の改定を請求できる範囲を定めるものです。従って、障害年金そのものを受給できる範囲を定めるような趣旨ではございせん。また、障害の程度を審査した結果、必ずしも上位等級が認められるわけではございません。これは国民年金法及び厚生年金保険法で規定しているところの趣旨であり、障害の程度が増進したことによる額改定請求を行い、その程度を審査した上で改定することができる規定になっています。

 お手元の資料の7ページ、最後のページになりますが、参考として額改定請求に関する条文を付けていますので、ご参照ください。国民年金法第34条第3項及び厚生年金保険法第52条第3項の傍線部分が今回の法律改正による追加部分です。

 1ページに戻っていただき、中段をご覧ください。これまでの検討会における議論については3つの内容が取りまとめられました。1つ目として、数多くある傷病名ごとに規定することは無理であり、また、傷病名よりは障害の状態で整理した方が全体を補足するという点では適切であるため、原因となる傷病名は特定せずに増進した障害の状態で規定する。2つ目として、永続的に固定する症状のみとすると対象がかなり限定されてしまうため、一定程度症状の固定が認められ、その後改善する可能性もあるものの基本的には症状の改善が期待されないものも含めて対象とする。3つ目として、精神障害については、疾病の特性として1年以内に急性増悪し、その後固定するという状態には当てはまらないため、今回の議論の対象としない、以上です。

 また、前回の検討会においては障害者団体の皆様よりヒアリングを行いました。そこでは多くのご意見をいただきましたが、主に症状が急激に悪化する場合の事例についてご意見があった他、1年を待たずに障害の程度が増進することは傷病名に限らず起こりえることであり、その障害の程度については、主治医の診断書や本人の申立書などを踏まえて診査を行い判断すべきとのご意見がありました。一方では、構成員の先生から申請を受理する窓口において明確な規定でないと困るのではないかという意見がありました。明確でない基準を定めた場合は、実務上統一的な運用が難しくなる他、受給権者が額の改定請求の判断に迷ってしまうことにより、診断書を取ったり事務所へ来訪するなど、余計な負担を負うことにもなりかねないのではないかと考えられます。額改定請求の待機期間を要しないこととする対象、いわゆる1年を待たずに障害の程度が増進したことが明らかである場合については、そうした観点を踏まえ、一定の条件を満たした場合について規定することが適当ではないかと考えています。

 3ページに一定の条件を記載しています。対象として規定するための条件をご覧ください。法律の規定の趣旨やこれまでの検討経過を踏まえると、(1)から(7)全ての条件を満たすことが必要ではないかと考えています。7つの条件については、(1)原因となる傷病名は特定せずに増進した障害の状態で規定すること。(2)急激に障害の程度が増進したこと、また、個人ごとの状態を評価しなくても増進したことが明らかであること。(3)障害の固定が認められること、こちらについては永続的に固定する症状のみでなく、一定程度症状の固定が認められ、その後改善する可能性もあるものの基本的には症状の改善が期待されないものも含みます。(4)精神の障害でないこと。(5)厚生労働省、日本年金機構、請求者など、判断する者によって結果が異なることのないよう、明確な要件であること。(6)一定期間、安定的に適用できるような判断基準であること。(7)法令上、紛れなく規定することができること。(1)、(3)、(4)については第2回の検討会で取りまとめられた内容です。(2)については法律の規定の趣旨を記載しており、また(5)から(7)については運用面での内容を記載しています。

 以上で検討に当っての考え方ならびに対象として規定するための条件についての説明を終わります。

○中島座長 ありがとうございました。ただ今、事務局から今回の検討会の趣旨である障害年金の額改定請求の待機期間を要しないこととする対象について、考え方や条件などのご説明を受けましたが、これについて構成員の先生方からご質問やご意見などがございましたら、お願いします。ございませんか。そうしましたら、資料のうち「3.額改定請求の待機期間を要しないこととする対象(案)」について事務局からご説明をお願いします。

○栗原障害認定企画専門官 お手元に配布している資料の4ページをご覧ください。「額改定請求の待機期間を要しないこととする対象(案)」ですが、先ほど対象として規定するための条件についてお話しした7つの条件に基づき、事務局において規定が可能と思われるものを4ページに、規定について検討が必要と思われるものを5ページに、規定が困難と思われるものを6ページに分類しています。

 4ページにお戻りいただき、規定が可能と思われるものについては上記2の条件を全て満たしており、対象として規定が可能と思われるものを記載しています。マル1の両眼の視力の和が0.04以下となった場合やマル2の両眼の視力の和が0.05以上0.08以下となった場合については、構成員の先生より基本的に不可逆的とのご意見があり、また政令別表に規定された障害等級の状態により明確に判断が可能と考えています。マル3の人工内耳を入れた後、両耳の聴力レベルが100デシベル以上になった場合については、構成員の先生より人工内耳手術を行うと内耳が壊れ、不可逆的な状態となるとのご意見をいただきましたので、判断が可能と考えています。マル4の四肢又は指の切断(再接着手術が行われていない場合)については、切断の事実は明確であり、不可逆的なものであり、認定要領にも欠損障害に記載されてあることから判断は可能と考えています。なお、構成員の先生より再接着手術が行われた場合については、障害の状態がはっきりするまで1年間程度かかるとのご意見をいただいたので、(再接着手術が行われていない場合)と括弧書きとしています。マル5の心臓移植又は人工心臓(補助人工心臓)の使用については、1級に該当すると認定要領に記載されており、判断は可能と考えています。なお、補助人工心臓についても人工心臓と同様に取り扱っていることから括弧書きとしています。後ほど構成員の先生方よりご意見をお伺いしたいと思います。

 続いて5ページの規定について検討が必要と思われるものについては、上記2の対象として規定するための条件に照らし、特に問題なく規定できるのか、何らかの限定が必要なのか、あるいは規定は困難かを検討する必要があるのではないかと考えておりますので、ご議論をお願いいたします。後ほど個別にご説明しますが、こちらについては検討が必要なものとして、視野障害、聴力障害、四肢又は指の麻痺、心疾患の重症心不全、人工透析療法、人工肛門関係、脳死状態や人工呼吸器の装着を柱に記載しています。

 最後に6ページの規定が困難と思われるものですが、上記2の対象として規定するための条件に照らし、規定することは困難ではないかと思われるものを記載しています。こちらについても後ほどどのような理由で困難と判断したのかをご説明します。困難なものとして、傷病名によるもの、一般状態区分によるもの、喉頭全摘出手術を施したもの、胃ろうの造設をした場合のもの、手術後に状態が悪化したもの、悪性新生物関係のものをこちらに記載しています。

 以上で説明を終わります。

○中島座長 ありがとうございました。対象事例として、「ア.規定が可能と思われるもの」、「イ.規定について検討が必要と思われるもの」、「ウ.規定が困難と思われるもの」の3つの項目に分けていただきましたが、まず「ア.規定が可能と思われるもの」について先生方からご意見を伺います。マル1とマル2については眼科に関することですので、小沢先生にご意見を伺いたいと思います。

○小沢構成員 前回も申し上げましたが、眼科的には不可逆かつ数値で明確なため、規定が可能と考えています。

○中島座長 続いて石本先生、マル3については、いかがですか。

○石本構成員 人工内耳を入れること自体が、先ほどご説明がございました通り、内耳を壊してしまいますので、完全に壊れてしまうということで、100デシベル以上と判断して、明確な規定だと思います。

○中島座長 それでは市原先生、マル4についてはいかがですか。

○市原構成員 これもこの通りでよろしいと思います。

○中島座長 マル5については、和田先生、いかがですか。

○和田構成員 先ほどご説明がございましたように心臓移植又は人工心臓(補助人工心臓)の使用については1級に該当します。また、それを装着するということが明白ですので、これについては規定が可能と考えます。

○中島座長 ありがとうございました。マル1からマル5について、これを規定可能とすることに対して、ご異論はございませんか。

○市原構成員 これでよろしいと思いますと申し上げましたが、他の4つと比較すると、少し言葉が足りないのではないかと思います。「四肢又は指の切断により明らかに障害状態が増進したもの」と記載した方が良いのではないかと思います。なぜこのようなことを申しますかというと、例えば指の切断がいくつか追加されても障害状態としては級が上にならない場合も多々ございますので、そのようなものの申請が出てくる可能性があると思います。はっきり分かるようにしておいた方が良いと思います。

○中島座長 ただ今の市原先生のご意見ではマル4の文言を「四肢又は指の切断(再接着手術が行われていない場合)により明らかに障害状態が増進したもの」ということでしょうか。

○市原構成員 それでよろしいかと思います。

○中島座長 事務局はいかがですか。

○和田事業管理課給付事業室長補佐 今回の規定に関しては、考え方のところにも記載しておりますが、切断という事実は明確であり、不可逆的なものですが、今回の規定において1年の待機期間の前倒しを認めるということで、必ずしも全部上位等級に該当するものを規定するわけではございません。併合の場合なども考えると、予め上位等級に該当する場合に限って受け付けるということを全てやることは困難ですので、このような規定の方法としました。前倒し請求が認められても必ずしも、市原先生がおっしゃるように、上位等級に該当しない点について、窓口で混乱が生じないように、例えばQ&Aを作成するなど、そのようなことで混乱がないように運用していきたいと考えています。

○中島座長 市原先生はいかがですか。

○市原構成員 分かりました。

○中島座長 それではマル1からマル5の事例については、額改定請求の待機期間を要しない対象にするということにしたいと思います。

 次の「イ.規定について検討が必要と思われるもの」については疾患ごとに区切って議論していきます。まずマル6・マル7の眼の障害について事務局からご説明をお願いします。

○栗原障害認定企画専門官 規定について検討が必要と思われるものについては、上記2の対象として規定するための条件に照らし、特に問題なく規定できるか、何らかの限定が必要なのか、あるいは規定は困難なのかを検討する必要があるのではないかと考えています。また、構成員の先生方より前回の検討会後にご意見を頂戴していますので、それを踏まえて記載しています。マル6とマル7の視野障害についてですが、構成員の先生より基本的に不可逆とのご意見がございましたが、視力のように施行令別表に明確な記載がされていないことから、省令に規定が可能かという点で検討が必要でした。そこで今回視野の障害の2級相当に該当する条件をマル6とマル7の2つを記載しています。マル6はシンプルに規定が可能で、マル7は文言が長くなっていますが、この記載内容であれば、上記2の対象として規定するための条件が、(5)の「判断する者によって結果が異なることのないよう、明確な要件」という点や(7)の「法令上、紛れなく規定することができる」という点では問題ないと考えていますが、構成員の先生方のご意見をお伺いしたいと思っています。以上です。

○中島座長 ありがとうございました。これについてはいかがですか。小沢先生。

○小沢構成員 それでは眼科の立場からお答えします。眼科の2級の場合は、元々は「日常生活に著しい制限を加えることを必要とする程度のもの」という客観的な表現だったものを数値で表すということをさせていただきました。従って、数字で表れるという意味では非常に分かりやすくなっているわけで、特にマル7の文章が長いというご指摘もございましたが、これ以上は短くなりません。ですので、マル6・マル7は非常に、私はすばらしい文章だと思っていますし、特に問題なく規定できるものと判断しています。どうぞよろしくお願いします。

○中島座長 他に構成員の先生方から何かご意見はございますか。ご異論がなければ、マル6・マル7の眼の障害については額改定請求の待機期間を要しない対象にするということにしたいと思います。それでは、先ほど規定が可能と思われるものとしてマル1からマル5まで挙げましたが、そのカテゴリに入れることになります。

 続きましてマル8・マル9の聴覚の障害について事務局からご説明をお願いします。

○栗原障害認定企画専門官 マル8とマル9の聴覚障害については一過性の場合があり、必ずしも不可逆でないため、ある程度経過期間を定めるべきか検討が必要と考えました。構成員の先生より可逆性の疾患では聴力が悪化した場合でも90デシベルを超える状況にはならないとのご意見をいただきましたので、現時点では両耳の聴力が90デシベル以上まで低下した場合については良くなることはなく、固定の点では問題ないと考えていますが、構成員の先生のご意見をお伺いしたいと思います。以上です。

○中島座長 ありがとうございます。これについてはいかがですか。石本先生、お願いします。

○石本構成員 聴覚に関しては、もともと難聴の方でさらに増悪した場合、ステロイドを使った治療を行います。90100デシベルの場合は確かに戻るのはなかなか難しいですが、治療をして多少は戻る可能性もあるのではないかと思います。90100デシベルだと完全に戻らないかというと、完全に否定できないのではないかと思っています。人工内耳を入れた場合は完全に壊れますから、完全に不可逆性のものですが、100デシベルになると、平均値を出すと多少ずれて90に戻ることもないわけではないのではないかということで、考え直しています。

○中島座長 室長、どうぞ。

○池上事業管理課給付事業室長 固定をどのくらい見るかという部分ですが、3ページの(3)にあるように、永続的に固定する症状のみではなく、一定程度症状の固定が認められ、その後改善する可能性もあるものの基本的には症状の改善が期待されないものも含むというふうに、第1回のご議論で少しそこは幅を広げていただいていましたが、そこも加味してご意見をお伺いできれば良いかと思っています。そこでもどうしても障害が固定したかどうかが不明確なものについては※で記載していますが、一定程度の経過期間を定めることが必要になるものと考えています。

○石本構成員 確かになかなか改善は期待できませんが、例外として戻ることもあるのではないかと思い、100%のものを規定しないといけないかと思い考えたのですが、このマル3から考えると、100デシベル・90デシベルは入れても良いのではないかと思いました。100デシベル・90デシベルだとかなり高度で全く聞こえないような状態ですから、そこから改善することは非常に厳しい状態なので、入れて大丈夫ではないかと思い、規定しても良いのではないかと思います。

○中島座長 そうすると現行のマル8とマル9の文言はそのままでよろしいという結論でしょうか。文言をそれぞれ整理する必要がありますか。

○石本構成員 これで良いと思います。

○中島座長 このままでよろしいということですね。

○石本構成員 聴力に関しては100デシベル・90デシベルという規定で1級・2級とクリアカットに分かれているので、文章的にはこれで良いかと思います。

○中島座長 それでは、このまま額改定請求の待機期間を要しないこととする対象に含めてよいというご意見でよろしいですか。

○石本構成員 はい。

○中島座長 それではマル8・マル9についても規定が可能と思われるもののカテゴリに入れていきたいと思います。すなわち額改定請求の待機期間を要しない対象とすることにしたいと思います。

○池上事業管理課給付事業室長 ご意見をありがとうございました。そうしますとマル8・マル9が規定できるということになるので、初めにマル3のところで人工内耳を入れた場合に100デシベル以上になった場合という内容を特出しして記載していましたが、マル3についてはマル8に吸収されるということでマル3が削除になり、マル8・マル9が該当する事項になるかと思うので、そうさせていただきます。

○中島座長 ただ今、事項の整理についてご提案をいただきましたが。

○石本構成員 その通りだと思います。

○中島座長 それでは次の検討事項に移ります。続きましてマル10の神経系統の障害について事務局からご説明をお願いします。

○栗原障害認定企画専門官 (神経系統の障害による)四肢又は指の麻痺(完全麻痺に限る)(脳血管障害については6か月以上継続した場合)については、神経系統によるものだけを限定していいのか、完全麻痺したものに限定したものでいいのか、また脳血管障害によるものについては良くなる場合があり、一定の経過期間を置く必要があるのか、それぞれ検討が必要と思われるものと考えています。また、完全麻痺については完全に運動機能を失った状態であれば判断しやすいと思いますが、不全麻痺ですと各々の日常生活動作の障害の程度を全て確認して判断しなければならず、上記2の対象として規定するための条件(5)の「判断する者によって結果が異なることのないよう、明確な要件である」という点から規定が難しいことから、完全麻痺と限定した方が良いのではないかと思います。なお、6か月の根拠については第9節の神経系統の障害の認定要領(4)のアに脳血管障害により機能障害を残しているときは、初診日から6月経過した日以降に、医学的観点から、それ以上の機能回復がほとんど望めないと認めるときに障害認定日として取り扱うこととしています。それに準拠していますが、構成員の先生方のご意見をお伺いしたいと思います。以上です。

○中島座長 ありがとうございました。これについてはいかがですか。豊原先生、お願いします。

○豊原構成員 この場合には再発作が多いのですが、前回と相当因果関係のある脳血管疾患であるという要件が必要です。例えば脳の同一部位が前回と同じ原因で、出血性か虚血性病変を来した場合。ただし、治療中のものに限る。具体的には心房内に血栓があるとか、頸動脈が片方ないしは両側でかなり狭窄を起こしている場合などにおいて、再発作を起こすことは十分考えられます。このように相当因果関係のある脳血管疾患の再発であれば、しかもそれが完全麻痺に限るのであれば、待機期間を設けないで、発症後6か月の時点で判断して、さらに上位等級の2級か1級かという認定をしても良いのではないかと考えています。

○中島座長 ありがとうございました。市原先生はいかがですか。

○市原構成員 脊髄麻痺に関して申し上げますと、従来も最低6か月は待っていただいて判断することにしています。完全麻痺においてそのようにしていますが、不全麻痺ということになると、かなりの割合で良くなってくることがあるので、本来3級であった人が2級相当に一時的になったとしても、この規定の中に含めるのは問題があるだろうと思います。

○中島構成員 ただ今の市原先生のご意見は、やはり「完全麻痺に限る」という文言があった方が良いということですか。

○市原構成員 そう思います。

○中島座長 いかがですか。他の構成員の方々、ご意見などはございますか。事務局は何か足すことはございますか。

○和田事業管理課給付事業室長補佐 市原先生にご確認したいのですが、脳血管障害について6か月以上ということを記載した場合に、脊髄の障害はここに含まれると考えてよろしいでしょうか。それとも別になるということでしょうか。

○市原構成員 要するに四肢麻痺という意味では脳血管障害においても脊髄麻痺においても障害としては同じですが、原因が異なるので、表現としては脊髄麻痺の場合も「完全麻痺に限る」という文章は必要になるだろうと思います。

○和田事業管理課給付事業室長補佐 そうしますと「脳血管障害及び脊髄障害については」ということでしょうか。

○市原構成員 それでよろしいと思います。

○中島座長 1点ご確認ですが、豊原先生にもう一度お尋ねしておきたいのですが、先生の先ほどの脳血管障害のご説明に基づくと、今までは右の脳の血管が詰まっていたけれども、今回は脳の左の血管が詰まったというのは別扱いという理解でよろしいですか。

○豊原構成員 そうです。

○中島座長 あくまでも1つの病気として認められるような疾患であるということを条件とするということですね。そうしますと、ただ今の市原先生と豊原先生のご意見を総合すると、マル10は(神経系統の障害による)四肢又は指の麻痺(完全麻痺に限る)(脳血管障害及び脊髄障害については6か月以上継続した場合)ということで、まず文言の整理ですが、事務局はそれでよろしいですか。

○和田事業管理課給付事業室長補佐 そうしますと、ご確認したいのですが、(神経系統の障害による)という部分は入れるということでよろしいですか。

○中島座長 私から一言足しますと、(神経系統の障害による)という括弧付きの表現は、障害認定基準の神経系統の障害という、第9節に基づくという意味ですが、これを足しておく必要があるか、それとも不要なものとするかということですが、いかがでしょうか。

○豊原構成員 神経系統の障害といってもいろいろな種類があります。例えば神経変性疾患の中で、錐体外路系疾患であるパーキンソン病のようなものや、多系統萎縮症のようなもの、脊髄小脳変性症、運動ニューロン疾患などがあげられます。臨床的経過は、緩徐に進行するものが大半なので、待機期間を置かずに急激に悪くなるということは考え難く、(神経系統の障害による)というものは、私は除いた方が良いのではないかと考えています。

○中島座長 市原先生、いかがですか。

○市原構成員 要するに括弧書きなしで「四肢又は指の麻痺(完全麻痺に限る)」として、その後の括弧付け、それでよろしいのではないでしょうか。

○中島座長 それでは、マル10は「四肢又は指の麻痺(完全麻痺に限る)(脳血管障害及び脊髄障害については6か月以上継続した場合)」ということで、これを額改定請求の待機期間を要しない対象にするということにしたいと思います。よろしいですか。

 それでは、続いてマル11の心疾患について事務局からご説明をお願いします。

○栗原障害認定企画専門官 (重症心不全により)CRT、CRT-Dを装着した場合については、心疾患では重症心不全の方が装着した場合に2級と認定することとされていますが、重症心不全は認定上、検査数値等で判断しており、上記2の対象として規定するための条件(2)の「急激に障害の程度が増進したこと、また、個人ごとの状態を評価しなくても増進したことが明らかである」という点や、(5)の「判断する者によって結果が異なることのないよう、明確な要件である」という点から問題があると考えましたが、構成員の先生方のご意見をお伺いしたいと思います。以上です。

○中島座長 ありがとうございました。これについては、ご意見はいかがですか。和田先生、お願いします。

○和田構成員 まずマル11だけが括弧が付いて原因、(慢性心不全により)というものが付いていて、いささか違和感がございます。私が提唱したいのは「慢性心不全を呈し、CRT、CRT-Dを装着した場合」ということを提言したいと思います。CRT、CRT-Dは何のために行うかというと、不整脈の非薬物治療のためで、とりわけ慢性心不全を、基礎疾患を呈しながら、かつ心電図のQRS幅が120ミリセカンド以上、つまり房室の伝導路障害を呈している場合に、このような治療が行われます。CRTというのは両室ペーシングによる心臓再同期療法であり、通常の3級に相当するペースメーカーは左室のみですが、右室も賄わなくてはならない。つまり、伝導路障害が広範囲に及んでいるということです。一方、CRT-Dは両室ペーシング機能付き植込み型除細動器ですが、この適用についても慢性心不全を呈し、左室機能、いわゆる左室駆出率が35%以下に低下している、あるいはQRS幅が120ミリセカンド以上という伝導障害を起こしているような場合に行われる治療ですが、いずれにしても必ずしも重症心不全によりというよりは、むしろ不整脈がベース、伝導障害がベースになっているので、ここの言葉は「重症心不全を呈し」と変更していただければと思います。

○中島座長 最後の結論のところで、先生がご提案しているのは。

○和田構成員 (重症心不全により)ではなく、括弧を外していただき、「重症心不全を呈し、CRT、CRT-Dを装着した場合」ということです。

○中島座長 冒頭では慢性心不全とおっしゃいましたが、慢性心不全ではなく。

○和田構成員 失礼しました。「重症心不全を呈し」です。

○中島座長 分かりました。もう一度整理しますと、「重症心不全を呈し、CRT、CRT-Dを装着した場合」ということですね。ご確認いただきたいのですが、参考資料の用語の説明として付けられている2ページによると、循環器学会のガイドラインでは「幅広いQRS」という表現です。先生は今、「120ミリセカンド以上」ということでしたが、120ミリセカンドという数字は。

○和田構成員 ここの出典の一番下に記載してある不整脈の非薬物治療ガイドラインに、適用基準としてQRS幅の120ミリセカンド以上と出ています。つまり何が言いたかったかというと、重症心不全を呈し、かつQRS幅、つまり心不全に対して治療をしているのではなく、QRS幅を延長させるような状態を起こしているものに対して、CRTあるいはCRT-Dを入れるものですから、このように「重症心不全を呈し」というふうに考えました。

○中島座長 そうするとCRTは適用になる病態であり、かつ先生がおっしゃる重症心不全を加えるということは、ニューヨーク・ハート・アソシエーションでいくと、クラスいくつの設定ですか。

○和田構成員 ニューヨーク・ハート・アソシエーションにはクラス1からクラス4があり、クラス1が一番軽症です。だいたいクラス2が3級相当、クラス3が2級相当になりますが、近年クラス2でCRTを入れる例が出ています。よって、CRTを入れただけでは、少なくとも2級にはならないという意味で「重症心不全を呈し」というものを入れたいと考えます。

○中島座長 そうすると先生がおっしゃるところの重症心不全というのは、ニューヨーク・ハート・アソシエーションのクラス4を想定しているという理解でよろしいですか。

○和田構成員 3以上です。

○中島座長 3以上を想定しているということですか。

○和田構成員 2が3級相当ですので、今回の議題になっているのは、上位等級に上げる、つまり3級から2級あるいは2級から1級ということになりますので。

○中島座長 今そのようなご提案をいただきましたが、事務局どうぞ。

○和田事業管理課給付事業室長補佐 ただいま、和田先生から「重症心不全を呈し」という言葉でご提案がございました。先ほど説明もいたしましたが、対象として規定するための条件の1つとして、明らかに明白であるということで、例えば(5)の運用する側もそうですし、請求者の方にとっても、先ほどの視野や聴覚のように数値による判断という点では、なかなか分かりにくいということがあると思います。あとは個人ごとに状態を評価し、重症心不全かどうかという判断もしなければならないということで、そういった点からはなかなかこの条件を満たすことにはなりにくいのではないかと思っています。

○和田構成員 今の文言ですと、重症心不全が原因であると、その結果CRTを入れた。つまり、重症心不全の改善したCRTについてはどうなのか。つまり、CRTを入れる過程が、いわゆる医師が判断した理由が、QRS幅が延長している、心房細動があるという例で入れた場合、どう判断されるのかという問題が出てくるということです。

○池上事業管理課給付事業室長 ここの項目は事務局としてもいろいろ迷って、どうするのが良いのか、まだ答えにたどり着いていません。今、和田先生からおっしゃっていただいたように、CRT・CRT-Dを入れるのが、重症心不全によるものと言い切れるものではないというお話を頂戴しました。その意味で括弧書きの中に記載している文言が不適切だったのではないかと感じています。

 あとはご意見をいただきたいのは、そもそもここになぜ括弧を付けたかという部分です。心不全があって、それが重症であるかどうか、今のお話の中で用語説明の中のクラスの何以上というお話もございましたが、例えば請求を窓口で受け付ける事務の職員あるいは請求をする受給権者の側など、それで迷いなく分かるかどうかという部分で自信がなかったので、括弧書きを付けました。どういう選択肢があるのか、まだ考え途中ですが、今、クラス2でも入れる例があるというお話がございましたが、もしそのような例が少ないということであれば、判断に迷う括弧書きを落とせば、前倒し請求自体は分かりやすいですね。CRTやCRT-Dを入れた場合は前倒し請求をして良いと、ただ上位等級が認められるかどうかは診査次第ということを予めよく周知する形で、門戸自体は少し広めに開けるという方法もあるかと思ったり、もし重症心不全以外でもそのような装着例がかなりあるということであれば、なかなかそこは規定自体が難しくなってしまうのかと思ったり、その辺りも含めてお話を伺えればありがたいと思っています。

○和田構成員 医療の進歩において今後3級相当あるいは重症心不全でなくてもCRT-DあるいはCRTを入れる例が今後出てくるだろうと。将来のことを考えて、このような発言をさせていただいたということと、現時点の障害認定のやり方自体はCRTを入れただけで2級にしているのではなく、心機能、イジェクション・フラクションの値等を見ながら3級から2級に昇格をしています。あるいは初めての2級ということもございますが、そのようなところとの整合性をどうしていくかという問題も出てくるかと思います。医療機器はどんどん進歩し、また医学の進歩により、いろいろな場面で適用されてくるのかという懸念があったものですから、先ほどのようなご提案をしました。

○中島座長 今かなり詳細に和田構成員からもご説明いただきました。事務局からもこれに対応する質疑をいただきましたが、CRT・CRT-Dを装着した場合については、今のご意見を伺っていると、今一度、文言の整理をする猶予を提供したいということで、マル11については次回の会合で、さらに議論したいと思います。

 続いてマル12の腎疾患について事務局からご説明をお願いします。

○栗原障害認定企画専門官 マル12の人工透析療法の施行については3か月という経過期間を限定することで問題ないか、検討が必要と思われます。3か月の根拠については、第12節の腎疾患による障害の認定要領(7)のイに障害認定日前に人工透析療法を受けた方は初めて受けた日から起算して3か月を経過した日を障害認定日として取り扱うという規定となっていますので、それに準拠していますが、構成員の先生方のご意見をお伺いしたいと思います。以上です。

○中島座長 ありがとうございます。これについてはいかがですか。田熊先生、よろしくお願いします。

○田熊構成員 もともと慢性腎不全であった人が透析を開始する場合には二通りあります。ひとつは急速に悪化した場合、もう一つは徐々に腎不全が悪化した場合です。急に悪くなった場合は急性腎不全を合併したという言い方ですが、その場合は、対処が早ければ良くなる可能性がある。ただ急性腎不全というのは長引いて、回復期が1か月以内になりますので、3か月以上回復しないとなれば、もともと腎臓がおかしかったわけで、急性腎不全の回復率よりは悪いわけです。そのようなことからいって3か月間を設ければ、間違いなく非可逆性と言えると思うので、この文章で良いのではないかと考えます。

○中島座長 いかがですか。マル12について他の構成員の先生方は何かご意見はございますか。それでは腎疾患のマル12については額改定請求の待機期間を要しない対象とするということにしたいと思います。

 続いてマル13・マル14・マル15の消化器疾患について事務局からご説明をお願いします。

○栗原障害認定企画専門官 マル13の人工肛門を造設し、かつ、新膀胱を造設した場合(人工肛門については6か月以上継続した場合)、マル14の人工肛門を造設し、かつ、尿路変更術を施した場合(6か月以上継続した場合)、マル15の人工肛門を造設し、かつ、完全排尿障害(カテーテル留置又は自己導尿の常時施行を必要とする)状態にある場合(6か月以上継続した場合)については、経過期間の限定はこれで良いのかということの検討が必要と思われます。なお、構成員の先生から新膀胱については永続的なものであり、人工肛門・尿路変更術・完全排尿障害については一時的に利用する場合もあるとのご意見をいただきましたので、固定して良いかどうかを判断するため、新膀胱以外のものに6か月という期間を定めていますが、構成員の先生方のご意見をお伺いしたいと思います。以上です。

○中島座長 ありがとうございます。これについてはいかがですか。

○草野構成員 今のご説明のように新膀胱については新しく作ったということなので、これについては不可逆性なもので問題ないと思います。ただ、人工肛門については6か月以上継続した場合、これは文章があるのですか。

○栗原障害認定企画専門官 こちらについては他の先生にお聞きしたものです。3か月ないし6か月以内で閉鎖することもあるとお聞きしましたので、私ども事務局側で6か月という期間を定めました。

○草野構成員 どこかに文章があるということではないのですか。

○栗原障害認定企画専門官 文章はございません。

○草野構成員 ここは6か月で良いかと思います。中には1年たって人工肛門を落とす場合、落とすというのは表現が悪いですが、人工肛門を普通の人工肛門ではなくする。私たちは落とすと表現上使うのですが、人工肛門ではなくする場合、1年以上たってから手術する場合も結構あります。これは後でまた議論になるかと思います。

 他にもう1つ、人工肛門を造設し、かつ、尿路変更術を施行した場合、6か月以上継続した場合ということなので、これはおっしゃる通り、尿路変更術ですから一時的なことが圧倒的に多いものですから、6か月は見ていただきたいと思います。

 カテーテルの場合、完全排尿障害は6か月で良いのか、もちろんここだけを3か月にするのもおかしいと思ったので、6か月でよろしいかと思います。完全排尿障害になった場合、非常にレアな症例で戻る方もいらっしゃいますが、それは本当にレアなので、先ほどの(3)の条件に当たるので、これも6か月見ていただければと思います。

 もう1つお願いしたいのですが、関係団体からご指摘されましたように、反対の場合がありますということで、それはおっしゃる通りなので、人工膀胱を作っておいて人工肛門になったという人もいらっしゃる。これは解説書に入れていただければ良いと思います。ここに文章を入れると非常に長くなってしまうと思うので、解説書へ入れていただきたいと思います。

○中島座長 そうすると先生のご意見ではマル13の(人工肛門については6か月以上継続した場合)を1年以上継続した場合にした方が良いというご提案ですか。

○草野構成員 ここだけを1年以上にしてしまうと違和感もありますし、ほとんどは6か月で良いと思います。1年以上というのはほとんどなくなったと思います。昔、私が現場にいたころはあったのです。今はほとんど6か月以内で作り変えていらっしゃると思うので、ここだけを1年間にするのは違和感があると思うので、6か月でよろしいと思います。

○中島座長 事務局はどうですか。

○和田事業管理課給付事業室長補佐 今回の対象は待機期間の1年要件を前倒しするということですので、1年待つのであれば必要ないということに、その場合はなりますが、先生から6か月というご意見をいただいたので、6か月でよろしいかと思います。書き振りは「人工肛門を造設し、かつ、新膀胱を造設」ですので、逆のケースで先に新膀胱があって人工肛門という場合でもこれに当てはまるという書き方になっています。

○中島座長 第2回の当事者団体からご意見をいただいたときに出ました順番が逆である、膀胱が先であるというケースについても、この中で読み込むということでよろしいですか。

○和田事業管理課給付事業室長補佐 そのとおりです。

○中島座長 そうするとマル13からマル15までの3項目は、ここに記した文言通りということでよろしいですか。他の先生方からご異論はございませんか。なければマル13・マル14・マル15の消化器疾患について、これらを全て額改定請求の待機期間を要しない対象とすることにしたいと思います。

 続いてマル16の脳死状態又は遷延性植物状態とマル17の人工呼吸器について事務局からご説明をお願いします。

○栗原障害認定企画専門官 マル16の脳死状態又は遷延性植物状態になった場合については3か月という期間を限定することが問題ないか、検討が必要と思われます。3か月の根拠については、お手元に配布しております参考資料の用語の説明の6ページ、遷延性植物状態のところの7行目に記載されています。診断基準としては、以下の6項目を満たし、かつそれが3か月以上継続しほぼ固定している状態とされています。

 続いて、資料に戻っていただき、マル17の人工呼吸器の装着については1か月という期間限定をすることで問題ないか、検討が必要と思われます。また、1か月以上常時継続した場合であれば、一時的ではないと構成員の先生からご意見をいただきましたので、記載しています。なお、人工呼吸器の装着はあくまでも前倒し請求を認めるための判断に用いるだけで、障害の程度の判断は他の部位で見ることとなりますが、先生のご意見をお伺いしたいと思います。以上です。

○中島座長 ただ今、マル16・マル17のご説明を事務局から頂戴しましたが、議論をすっきりと進めるために、まず切り分けてマル16から入りたいと思います。マル16について何かご意見はございますか。特にございませんか。それではマル17の人工呼吸器の装着、事務局からは1か月という数字も検討しなくてはいけないというご指摘を受けましたが、マル17の人工呼吸器の装着(1か月以上常時継続した場合)という規定について、構成員の先生方、ご意見はございますか。竹田先生、お願いします。

○竹田構成員 竹田です。対象状態として人工呼吸器の装着というのは、結論から言うと括弧付けを含めて私は妥当だと思っています。補足ですが、人工呼吸器の装着そのものは、規定する条件の中の誰が見ても明確という意味では妥当なのではないかということで、人工呼吸器装着というのはよろしいかと思います。括弧付けの期間や条件を設けていることですが、人工呼吸療法というのは他の体内に植え込むような人工臓器の造設とは違いますので、肺そのものの治療ではなく、元の基礎疾患と、それに加わった急性増悪の要因や状態によって非常に幅が広いものですから、そちらの治療をする間、これで凌ぐという形ですので、非常に大雑把な言い方ですが、極端に言えば数時間単位で離脱できるものもあれば、一生離脱困難なものもあるので、ある一定の期間をという意味で設けてありますが、ただ1か月というのは非常に難しいところが実はあります。通常長期の呼吸管理が必要になる場合、ここで言う人工呼吸器装着というのは口から気管挿管して人工呼吸器を装着した状態のことを想定していますが、気管チューブを入れていることによる気道の障害などのいろいろな問題があるので、従前から一般的な例として2週間程度というのは、長期に亘って呼吸管理が必要と想定される場合には、気管切開を行うというのが従来からあると思いますが、一方で、そのために病院スタッフが皆努力し、1週間ちょっとでもちろん離脱できる場合が当然あるので、2週間では厳しいという意味で、少しそこの幅を見て1か月。これがあまり長期になってしまいますと、1年を要しないという条件から外れてしまうので、そこを認めました。

 それから、常時と入れていますが、用意されている用語の資料に「人工呼吸器とは」という資料が参考資料の7ページにございますが、これは辞典から取られたものだと思います。上から4行目に鼻マスクや顔マスクを使用した陽圧換気、非侵襲性の陽圧換気療法は今非常に普及してきており、これはそもそも機械的人工換気による、いろいろな損傷を少しでも防止したいということで、できるだけ侵襲を避けてという、こういう方法が今急性期あるいは慢性期疾患でも間欠的に使用されたり、できるだけ機械的人工呼吸の導入を避ける意味で使われています。このケースですと、そのまま一生ずっと非侵襲的な陽圧換気でやっていくということは、通常は想定されていないので、そのような意味で常時という言葉をここに入れてあるということでよろしいかと思います。以上です。

○中島座長 結論としてはいかがでしょうか。

○竹田構成員 括弧付けも含めて、この文言で、この対象でよろしいかと思います。

○中島座長 他にご意見はございますか。今一度マル16に立ち返りますが、脳死状態又は遷延性植物状態になった場合は、これでご異論はございませんか。それではマル16・マル17両項目とも額改定請求の待機期間を要しない対象とするということにしたいと思います。

 次にページが変わり、ウの規定が困難と思われるものについてですが、これについても項目を区切って議論していきます。まずマル18・マル19について事務局からご説明をお願いします。

○栗原障害認定企画専門官 規定が困難と思われるものについては、上記2の対象として規定するための条件に照らし、規定することは困難ではないかと考えて記載しています。マル18の白血病等個別の病名によるものについては、既にこれまでの議論で整理されていますが、傷病名で障害の全てを規定することは困難であり、増進した障害の状態で整理した方が、全体を補足するという点で適切であるため、規定が困難と思われるものとしています。また、マル19の一般状態区分オに該当すると判断される場合(ウ及びエも同様)の判断については、一般状態区分はさまざまな情報を読み取った上で判断すべきものであり、3ページの条件2の(5)の「判断する者によって結果が異なることのないよう、明確な要件である」ということ、(2)の「急激に障害の程度が増進したこと、また、個人ごとの状態を評価しなくても増進したことが明らかである」という点、(3)の「障害の固定が認められる」という点に該当しないと思われます。従って、規定が困難と思われるものとしていますが、構成員の先生方のご意見をお伺いしたいと思います。以上です。

○中島座長 ありがとうございました。それではマル18の白血病等個別の病名によるものについて、豊原先生、いかがですか。

○豊原構成員 最近白血病の治療法が非常に進歩していますし、効果的な化学療法による治療もかなり進歩しています。例えば前骨髄性白血病は完全に治ります。慢性骨髄性白血病もほぼ治ります。しかし、中には治らないものもあります。もう1つ成人のT細胞白血病は治りにくいと言いますが、診断書などを見ますと、完全寛解に近い状態を維持しているものもあるので、「病名によるもの」というものは、各個人の治療による反応性も異なるので、規定することは難しいと考えています。

○中島座長 今のマル18についてはいかがですか。それではマル19についてご意見を頂戴したいと思います。田熊先生、いかがですか。なかなか一般状態区分は判定する者によって結果が異なるのではないかというご指摘を受けましたが。

○田熊構成員 内部障害の診査をやっていますと、いろいろな疾患の方の診査をやらなくてはいけないので、今まで出てきたもの、かなり厳格に規定するのは良いのですが、どう考えてもなかなか難しいものがあるだろうと思います。患者さんの団体がそのようなことをおっしゃっていましたが、いろいろなケースがあるとすれば、どうしてもここから漏れるものは出てくるだろうと。そのようなものを拾うような形は必要なのではないかと思いましたので、補足のようなものが必要なのではないかと考えます。

○中島座長 豊原先生、どうぞ。

○豊原構成員 一般状態区分オに関してですが、私もさまざまな診断書を見ていて、例えばある先生は人工透析をしていて、それがしかも安定して行われているにもかかわらず、一般状態区分がオと評価されました。「おかしい、そんなことはあるわけないのに」ということで、主治医の先生に照会をしたら、「人工透析をしている間は寝たきりだろうから、オなのだよ」という先生もいらっしゃいますので、常識的に考えて、それはないだろうと考えて、私はオでも1級にはしませんでした。あとは臓器障害の程度と一般状態区分との整合性もまた問題になることがあり、臓器障害が軽いにもかかわらず、ある先生はオになるし、臓器障害が重いにもかかわらず、ある先生は一般状態区分をイにすることもあるので、これはなかなか診断書作成医によって判断が異なることがあります。それは私の感想ですが、あとは皆様方にご意見をお聞きしたいと思います。

○田熊構成員 今回の場合はもともと3級ぐらいの病気があり、それが悪くなったという場合なので、一般状態区分が変わったから申請するということですから、それなりの根拠はあるのでしょう。ですから、単純に変わったということではなくて、それを説得し得るような客観的なデータの変化など、当然求められると思いますが、全て客観的な、例えば数字で出せるようなデータが出せるような病気ばかりかと言われると、なかなか難しいです。そういうことから言うと、現実的にはなかなか受け付ける側は全て難しくなるし、あえて厄介な項目を入れない方が、単純化はされますが、この制度が動いてみたら患者さんなどから、このようなものに関しての不平不満が出てくるのではないか、拾い上げるような何かが必要なのではないかという感じは持ちます。

○中島座長 和田先生、どうぞ。

○和田構成員 私も豊原先生と同じような事例は、特にペースメーカー・CRT・人工弁を入れた例ではよく見られます。それはどうしてかというと、診断書の一般状態区分を判定した日、つまり何年何月何日のその日の時点でオなのかエなのかという書き方に診断書はなっています。すなわち手術をしたその日は当然寝ているわけで、当然オに丸をしてくる。しかし、退院したらこれはどう見てもアやイに変わっていくだろうというものも多々見られますが、オに丸をしてこられる方、それはペースメーカーを入れた日の何年何月何日は、まさにそうかもしれません。しかし、今の診断書の書き方がそのような形式を取っている以上、オに丸をしても主治医の判断ミスというわけにはいかない。すなわちマル19を適用するのであれば、1か月以上に亘って常時一般状態区分がオに該当すると判断するという文言が加われば、それはよろしいでしょうが、今の診断書の書き方・形式では厳しいと思います。

○中島座長 ありがとうございます。なかなか議論のあるところで、田熊先生のおっしゃること、豊原先生・和田先生のおっしゃることももっともだと思います。この点については今一度議論を重ねたいということで、次回にもう一度検討したいと思います。この場ではマル18については額改定請求の待機期間を要しない対象とはしないということにしたいと思います。

 続きましてマル20からマル22までについて事務局からご説明をお願いします。

○栗原障害認定企画専門官 マル20の喉頭全摘出手術を施したものについては、第6節の言語機能の障害において喉頭全摘出手術を施した結果、言語機能を喪失したものについては、2級と認定すると記載されていますが、3級を受給していた方が喉頭全摘出手術をしたことにより、額改定請求をすることは考えにくく、ほとんどが新規裁定におけるものではないかと思われましたので、今回は対象外ではないかと考え、こちらに記載しています。

 次にマル21の胃ろうを造設した場合については、3ページの条件2の(2)の「急激に障害の程度が増進したこと、また、個人ごとの状態を評価しなくても増進したことが明らかである」という点、(3)の「障害の固定が認められる」という点に該当しないものと思われます。従って、規定が困難と思われるものとしています。

 また、マル22の手術後に状態が悪化したものについては、先ほどのマル21で述べたように、条件2の(2)の「急激に障害の程度が増進したこと、また、個人ごとの状態を評価しなくても増進したことが明らかである」という点、(3)の「障害の固定が認められること」という点に該当しないものと思われます。従って、規定が困難と思われるものとしていますが、構成員の先生方のご意見をお伺いしたいと思います。以上です。

○中島座長 ありがとうございます。これについてはいかがですか。

○石本構成員 耳鼻科の石本です。マル20の喉頭全摘出は適切だと思います。これは明らかに手術をしたことによって機能が廃絶してしまいますから、本来は明らかに、規定はできるものだと思います。ただ、事務局が言われましたように、1級ではなく2級ですので、それで3級が言語障害に関しては語音の障害まではいかないので、皆さん、喉頭全摘出手術をしたというところで出してこられます。喉頭全摘出手術をする場合は、頭頸部がんの治療の場合と誤嚥性肺炎の場合でどうしても喉を取らなければいけないという、2通りがあると思いますが、本来は規定に入れた方が良いと思います。ただ、事例としては3級で出すことはないということで、どちらが良いのかよく分かりませんが、機能自体は廃絶してしまいますから、先ほどの人工内耳の場合のように手術をしたことによって声が出ないということになりますから、クリアカットではあります。

○中島座長 クリアカットですが、新規申請ということではなくて、今回の額改定ということになると。

○石本構成員 そういう事例はほとんどない。

○中島座長 そうすると、これは規定困難ということでよろしいかと思われますが、よろしいですか。

 それでは、続きましての胃ろう造設、手術後の状態悪化について、草野先生、いかがですか。

○草野構成員 胃ろうについてはご存じのように、一時的に作らなければいけないような胃ろうもございます。食道がんの手術後など、大きな手術の後、胃ろうを作ってチュービングで栄養を確保しようという、これは論外です。永久的に食べられないということで胃ろうを作ることが圧倒的に多いのですが、ご存じのように、これは第5節のそしゃく・嚥下機能の障害のところで評価なさっていると思います。脳血管障害から来る方が圧倒的に多いので、だいたい1級を取っていらっしゃる方が多いので、等級を上げるということが、まずないと私は思います。ですから、胃ろうについては今回の対象とすることはないだろうと思います。胃ろうを作ったからといって状態が悪くなったわけでは決してないので、むしろ胃ろうを作ることによって栄養状態が良くなる人もいるわけで、悪くなったということは、逆に考えづらいかと思います。胃ろうについては今回の対象にはならないかと思います。

マル22の手術後に状態が悪化したもの、これは非常に抽象的でよく分かりませんが、もちろん手術によって状態が悪化したというのは、癒着によってか、それとも腸閉塞を起こしたなど、そのようなことを想定なさった言葉なのか。これがずっと続くのかとなると、それは逆に私たちの立場から言うと、それはないと思います。

○中島座長 適切なご指摘をいただいたように思いますが、他の構成員の先生方はいかがですか。今、石本先生と草野先生からご説明いただいた通りです。マル20からマル22まで、この3項目については額改定請求の待機期間を要しない対象とはしないということで結論付けたいと思います。

 それではマル23・マル24に移ります。マル23の悪性新生物による終末期の状態にある場合、マル24の悪性新生物について緩和ケアを行っている場合、これについて事務局からご説明をお願いします。

○栗原障害認定企画専門官 マル23の悪性新生物による終末期の状態にある場合やマル24の悪性新生物について(積極的治療は行わず)緩和ケアを行っている場合については、末期の線引きなど個々によりいろいろなケースが考えられ、3ページの条件2の(5)の「判断する者によって結果が異なることのないよう、明確な要件である」という点や、(7)の「法令上、紛れなく規定することができる」という点に該当しないと思われます。従って、規定が困難と思われるものとしています。

 続いて欄外の※の難病についてご説明します。難病については、治療方法が確立されていない点で一定の固定性が認められるものの、様々な症状や進行度があることから、全体を網羅するような障害の状態を規定することは困難であると考えています。ただし、省令に規定される障害の状態に個別に該当する場合であれば、1年間の待機期間を要しないこととなると考えています。

 また戻りますが、先ほどのマル23・マル24について、構成員の先生方のご意見をお伺いしたいと思います。以上です。

○中島座長 それではマル23・マル24について構成員の先生方にご意見を伺いたいと思います。いかがですか。豊原先生、お願いします。

○豊原構成員 悪性新生物、緩和ケアに関してですが、あくまでも障害等級の認定というのは、症状が固定したところで認定します。ところが、マル23のような場合は症状が悪くなっていったり症状が動揺したり、決して症状が固定することはない、また、いつ急変するか分からないなどの観点から、待機期間の1年を待たずしてという範疇には、私は該当し難いと思います。

○中島座長 マル24についてはいかがですか。

○豊原構成員 マル24についても緩和ケアというのは末期ですから、これもいつ急変するか分かりませんので、私は今回の対象とはしない方が良いと考えています。

○中島座長 ありがとうございました。今回の検討会では趣旨がございまして、その趣旨にそぐわないのではないかというご指摘を頂戴しましたが、他の先生方はいかがですか。

○竹田構成員 マル24ですが、今、豊原先生から末期という言葉がございましたが、そうではなくて資料が付いているかと思いますが、参考資料の9ページの「緩和医療とは」の本文の上から2行目ですが、「治療の場にかかわらず病気の全経過にわたり」と記載しているように、やれることがないではなくて、痛みのコントロールだけではないのですが、急激に進んだということではなく、できるだけその方の安楽を少しでも、という介入ですので、急激な障害の増進というものに緩和ケアというのは適当ではないと考えられると思います。以上です。

○中島座長 ありがとうございました。他に先生方、ご意見はございますか。それではマル23・マル24の事例については額改定請求の待機期間を要しない対象とはしないということにしたいと思います。

先ほど事務局から※の難病についてご説明があり、これを読みますと、難病については症状の質・進行度などにいろいろなパターンがありますが、省令に規定されるような障害の状態に個別に該当する場合には、1年間の待機期間を要しないこととなるということで、これは対象となるというご説明だったと思います。これについてご意見はございますか。

○豊原構成員 私は、エイズの患者さんの障害等級も見ていますが、そういう方々は免疫機能不全に起因する進行性多巣性白質脳症というものを起こすことがあり、そうした場合であれば非常に進行が早いものですから、1年を待たずして、ほとんど寝たきりになる。1級か2級相当になるというのは経験していますので、個別に該当する場合には1年の待機期間を要しないという、この文言に対して賛成します。

○中島座長 和田先生、どうぞ。

○和田構成員 事務方にご質問ですが、2行目の「ただし」というのは、あくまでも難病についてということですか。

○和田事業管理課給付事業室長補佐 そういうわけではありません。今回ご議論いただいている対象の規定に該当すればということです。今、対象案にマル1から順番に挙げていただいている、これに該当すれば額改定請求を行うことができるということになります。

○和田構成員 できましたら、行替えをして、アスタリスクをもう1個、「ただし」の前に付けないと、この文言でいくと、難病指定疾患について、「ただし」ということに読み取れてしまうということと、昨日の厚労省の委員会で難病が確か50から300ぐらいまで広がることにもなって、今度は300になると、我々もどういう病気が300に該当してくるか分からないということもあるのです。いずれにしても「ただし」というのが、難病のみならず全てのという意味であれば、誤解を招く書き方かと思い、ご質問しました。

○中島座長 事務局いかがですか。

○池上事業管理課給付事業室長 ご指摘いただきまして、和田からもお答えしました通り、難病に限らず全ての病気について病名ではなくて障害の状態で見て、該当すれば1年を要さないということになります。難病を一律に排除するものではないということをお伝えしたかったので、ここに並べて記載してしまいましたが、ご理解いただいている通りで、私どもと考えが一致していると思っています。

○中島座長 この文言については、よく周知をしていただくということで、ご理解をいただきたいと思います。それではマル23・マル24については額改定請求の待機期間を要しない、対象とはしないということにしたいと思います。ただ今の難病については事務局からご説明があった通りですので、この文言をよく周知する、理解を深めていただくということに伴って、この文言でいきたいと思います。

 本日は皆様方から一通りのご意見を頂戴しました。2点、マル11とマル19を継続的な議論に委ねるという、次回に持ち越しということになりましたが、それ以外の点については今日の提案通りに対象とする、あるいは対象としないということに整理したいと思います。今回の議論で2つ継続する事項ができましたが、その他、全体を通じて何かご意見はございますか。よろしいですか。それでは本日の議論は、この辺りで終わりにしたいと思います。

 それでは次回の進め方及び日程について事務局からお願いします。

○和田事業管理課給付事業室長補佐 次回の日程につきましては、1115日、金曜日の午前10時からの開催を予定しています。後日改めて開催場所のご連絡を差し上げたいと思います。また次回ですが、対象となる項目について最終的な整理を行うとともに、考え方をまとめた文章の案もお示ししたいと考えておりますので、どうぞよろしくお願いします。以上です。

○中島座長 それでは本日の会合はこれで終了します。構成員の先生方には長時間に亘り、どうもありがとうございました。


(了)
<照会先>

厚生労働省年金局事業管理課給付事業室

代表: 03-5253-1111(内線3603)
直通: 03-3595-2796

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