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2013年9月26日 第23回原爆症認定制度の在り方に関する検討会議事録

健康局総務課

○日時

平成25年9月26日(木)10:00~12:00


○場所

厚生労働省 9階 省議室


○議題

1.開会

2.議事
 (1)これまでの議論の整理・総括的議論について
 (2)その他

3.閉会

○議事

○榊原室長 開会に先立ちまして、傍聴者の方におかれましては、お手元にお配りしています「傍聴される皆様への留意事項」をお守りくださいますよう、お願い申し上げます。

 これ以降の進行は、神野座長にお願いいたします。

○神野座長 それでは、定刻でございますので、第23回になりますが「原爆症認定制度の在り方に関する検討会」を開催させていただきます。

 委員の皆様方には、大変お忙しいところ、また足元の悪い中をわざわざ御参集いただきまして本当にありがとうございます。伏して御礼を申し上げる次第でございます。

 それでは、議事に入ります前に、事務局のほうから委員の出席状況の報告及び資料の確認等をお願いしたいと思いますので、よろしくお願いします。

○榊原室長 本日の出席状況でございますが、高橋滋委員、石委員から欠席との連絡をいただいております。また、広島市副市長の交代により、佐々木委員より新しく西藤委員が就任されましたので、御案内いたします。

○西藤委員 西藤と申します。どうかよろしくお願いいたします。

○榊原室長 次に、お手元の資料について御確認をさせていただきます。

 資料1 第22回検討会における主な発言

 資料2 議論のポイントと各方向性の整理表(集約版)

 資料3 検討会におけるこれまでの議論の整理

 資料4 田中委員提出資料

資料に不足、落丁がございましたら、事務局までお願いいたします。

 あと、今般、事務局で人事異動がございましたので、御紹介いたします。

 健康局総務課長の伊原和人です。

○伊原課長 伊原でございます。よろしくお願いいたします。

○黒木室長補佐 では、カメラのほうはここまででお願いいたします。

(報道関係者退室)

○神野座長 どうもありがとうございました。

 それでは、議事のほうに入りたいと思いますが、その前に委員の皆様方に御報告かたがた御協力をお願いしたい件がございますので、述べさせていただきたいと存じます。

 これも既に御案内かと存じますけれども、8月の広島、長崎の原爆平和記念式典の際に、総理大臣から厚生労働大臣に当検討会の議論について年内に取りまとめるように御指示がございました。これを受けまして、年内の取りまとめにつき御尽力いただきたいという旨のお話がございましたので、私も力が至りませんけれども、委員の皆様方の御協力を得ながら、これから年内の取りまとめに向けて作業を進めていきたいと思っておりますので、御協力方よろしくお願いをいたしたいと伏してお願いを申し上げる次第でございます。

 前回は、疾病の放射線起因性に関する科学的知見ということに関しまして、長瀧先生から御報告を頂戴いたしました。前回の最後に私のほうから、今回については、いよいよこの検討会も詰めの段階に入りますので、まとめに向けた議論を行いたいと委員の皆様方に申し上げた次第でございます。この取りまとめに当たって私のほうから事務局にお願いをいたしまして、これまでの議論を整理いたしました資料を作成していただいております。これにつきまして事務局のほうから御説明いただければと思いますので、よろしくお願いいたします。

○榊原室長 お手元の資料でございます。まず「資料1 第22回検討会における主な発言」ということで、これは資料2のほうに内容を盛り込んでおりますので、説明は割愛させていただきます。

 続きまして、資料2でございます。「議論のポイントと各方向性の整理表(集約版)」ということでございます。

 前回の御議論を紹介させていただきます。「(原爆症の)制度が、本当にグレーゾーンを含めてこなかったのか。むしろ、認定あるいは手帳の問題等々に至るまで、(グレーゾーンを含めた)認識の中で対応してきたのではないか」という御意見。

 「原爆症認定制度だけではなく、被爆者援護の国の仕組みは、健康管理手当や原爆手帳も含めて、全体として被爆者援護の制度をつくり上げている。原爆症の仕組みを今のままで援護として足りるか解決策を考えるときに、原爆症認定(制度)を改善できなければ不十分かというと、必ずしも不十分だという結論にはならない」という御意見。

 「どうやって制度設計をするかというと、制度全体の健康管理手当などの存在を踏まえて、(援護が)十分かどうかということを踏まえて判断すべき」という御意見。

 1枚おめくりいただきまして「(放射線に起因する病気につき)学問的な見地からいえば、何らかの限度はあるだろう。その限度をつかまえるのは、やはり線量ではないだろか。どの疾病が放射線に起因する疾病なのかということを考えていくには、何でもいいというわけにはいかないだろう」という御意見。

 「既に新しい審査の方針の中で対象疾病に取り入れられている中にも、学問的にいうと、必ずしも起因性が十分説明されていないものもある」という御意見。

 次のページに参りまして「原爆放射線による健康影響の調査結果は、被爆者の献身的な協力があって初めてできたものであることを忘れてはいけない。10万人を超す疫学的な調査集団で、男女とも広い年齢層で、詳細な完全な追跡調査ができている。(この成果が)国際的な合意の中心になっている」という御意見。

 あるいは「放射線に起因する疾患について、晩発影響の場合、1人の患者さんをどんなに調べても、放射線の影響か他の原因かわからない。遺伝子まで調べてもわからないし、臨床的、病理解剖的な従来の医学的な判断では、晩発影響を見るのは不可能である。したがって、疫学的にしか決めようがない」という御意見。

 あるいは「(成人健康診査で)過剰死亡者数が50年間で527名おり、年間10名程度の方が過剰に放射線のために死亡したという計算になる。これだけの計算をきちんと求めて、相関を出して、放射線によってがんの死亡者が増えるという疫学的な研究は、大変に難しいものである」という御意見。

 「(100ミリシーベルト以下の影響について)例えば、がんのリスクが1.05倍とすると、日本では『肥満』『やせ』『運動不足』『野菜不足』のほうがリスクが大きいことになり、ほかの発がんのリスクに紛れてしまう。放射線の影響だけを取り出すことはできないというのが、正確な表現である」という御意見。

 「(一般の放射線被曝基準につき)100ミリシーベルト以下の影響は疫学的に無いというのが科学的な事実であるが、100ミリシーベルト以下にも影響があるとしてリスクを比較するのが防護の考え方である。防護としての被曝線量は国際的にも同意された考え方と説明され、ポリシーとして規制の基準になっている」という御意見。

 「科学的、疫学的な放射線との相関は客観的に調べた結果であるが、援護について、原爆被爆者の方が今まで本当に大変な思いをしてきたこと、あるいは科学的な結果を共有した上で、この検討会で対話をしていただきたい。科学を踏まえ、援護として議論するときも、世界に対してこの病気はこういう理由で援護するんだと発表できるきちんとした論理で決まっていくとありがたい」という御意見。

 それ以外に「援護の立場をどうするか。科学的知見は現在の到達点というのは、不十分さはあるが、ここまでわかっているという報告だった。(科学の)不十分さをどう私たちが認識するか、今後また変わっていく可能性があり、新しい事実が出てきたら修正されるので、それを共通の理解にすれば良い」という御意見。

 「(放射線の影響に)幅がある場合、科学ではまだはっきりしていないということになるが、その幅を被爆者に近い方向へ持っていくようにしてもらいたい」という御意見。

 「積み上げてきた科学的、疫学的な事実は置いて、ここがおかしいから援護を、という議論ではなく、(科学的・疫学的な事実を)我々の共通の認識とした中で、こういう理由で援護としてこれを入れましょうと言えることが重要」だという御意見。

 「(原爆放射線を浴びた方で)がんの95%は放射線以外で亡くなるとしても、(放射線の影響以外との)区別ができない。ある条件のもとでは全て放射線によってがんになったと認め、(純然たる)科学から離れて被曝したがんとして認めましょうという言い方は、(認める)一つの理由になる」という御意見。

 「疫学調査の限界を前提に科学的知見をはっきりさせて出発点にし、どこまで広げていくかの議論をする。それから、将来的に変わるかもしれないということも前提に置いて、柔軟性も残しておく。そこを固めるべきではないか」という御意見。

 「やはり国際的合意というのをどう取るかというとき、まさにICRPとかUNSCEARがどう判断しているかというところを根拠として、現時点ではこの範囲内で判断していきましょうというのではないか」という御意見。

 「裁判では、C型肝炎につき共同成因という言葉が使われて原告が勝っている。直接の原因はウイルスかもしれないが、ウイルスによる肝炎が発症するもとになったのは、放射線被曝ではないかというのが裁判での判断である。(裁判では)援護の立場と、原告の病歴などで判断をしており、科学的な今の知見の到達点を機械的に当てはめてはいけない」という御意見。

 「認定する被爆者の線量はわからないし、特に残留放射線の影響は推定できない。大小にかかわらず間違いなく残留放射線を浴びているので、原爆症の審査で被爆者の線量を決めつけてしまうやり方はしないでほしい」という御意見。

 「科学的には、残留放射線と直接被曝線量を比べて議論するようなものではない。線量が全然違うので、個人への被曝線量として計算されている外部被曝線量が放射線の健康影響のもとになっているのは、間違いのないことである。その上で援護を考えるということで、科学を無視すると、議論がどこかへ行ってしまう」という御意見。

 「実際の認定に当たって被曝線量をどうするかという問題以前に、放射線起因性があるかどうか、どう分類していくかをまず決めた上で、その上で被曝線量をどうするかということではないか」という御意見。

 2ページ飛ばしていただきまして、6ページの下でございます。

 「(裁判では)科学的な普遍性ではなく、援護をどう考えるか、でやっている。例えば『科学的知見にも一定の限界が存するのであるから、科学的根拠の存在を余りに厳密に求めることは、被爆者の救済を目的とする法の趣旨に沿わない』という言い方を(判決で)している」という御意見。

 「国が負けたものを見ていくと、例えば、3.5キロ以遠はだめだと言いながら、実は入市要件が裁判で初めて主張されて認められた。当初から入市の事実関係が明らかであれば、恐らく国も認めたでしょうという例が結構入っている。このように、国の負け方を点検していくと、それほど大きなギャップは無いのではないか。最後は今の審査の方針の枠組みというものを維持した上で修正をしていくかどうかだろうと思う」という御意見。

 「この検討会では、国際的な分野から個々まで全て含めて議論し、考え方を決めていくので、裁判の結果はもちろん参考にはするけれども、裁判でこう言ったから、そちらに従うというのは方向は違うのではないか。裁判も含めて援護のどういう制度設計をしていくかという、その参考に裁判の話があるということではないか」という御意見。

 以上でございます。

 引き続きまして、資料3について御説明申し上げます。「検討会におけるこれまでの議論の整理」ということでございます。

 「1 方向性について」ということでございます。

 これまでの検討会では大きく2つの意見となっているということでございます。

・被爆者援護法に基づき支給される各種手当を一本化し、被爆者健康手帳を有するすべての者に支給する被爆者手当の創設を図るという意見。

・放射線起因性を前提として、疾病の重篤度を踏まえ、手当額を段階的なものとする。併せて一定のものを認定対象に取り入れ、その審査基準について、できる限り明確化するという意見。

 「主な内容」としまして、意見1に関連しまして、

・被爆者の人生の苦悩に慰謝する意味から、被爆者援護法に基づき支給される各種手当を一本化した上で、

 ア 被爆者健康手帳所持者の全てに「被爆者手当」を支給

 イ アの手当について障害を持つ者には加算を図る

 意見2は、

・放射線起因性を前提として、疾病については、科学的知見などを踏まえて、一定のものを認定対象に取り入れる。

・生命や日常生活への影響の程度、治癒や再発の可能性などから疾病の重篤度をグループ分けし、手当額を段階的なものとする。

・認定制度の審査基準について、できる限り明確化する。

 続きまして、2ページです。

 「2 テーマ毎の議論について」ということでございます。それぞれ、これまで議論されたテーマを取り入れてございます。

 「(1)放射性起因性」ということで、

○ 放射線起因性については、被爆者全員に手当を支給すべきという意見がみられた一方、国民の理解や、他の戦争被害との区別といった観点から、原爆症認定には放射線起因性という要件は欠かせないという意見がみられた。

 「主な議論」として

・被曝者であれば、何らかの放射線の影響を受けているのだから、全員に手当を支給すべきではないか。

・被爆者全員に手当を支給することは、手当の趣旨が異なる上、国民の理解を得られず、他の戦争被害と区別がつかないことから、放射線起因性を要件とすべき。

 続きまして、3ページ、

○ 放射線起因性について、現行では、一定の被爆状況の悪性腫瘍等について、積極的に認定する範囲としている。

  これについて、この範囲に関わらず、全ての被爆者を対象として認定すべきとの意見がみられた一方、放射線起因性を判断する際には、距離や被曝線量等の客観的な判断基準に基づかざるを得ないとの意見や、既に科学的には放射線の影響が不明確な範囲まで積極的に認定範囲を広げており、この範囲を更に拡大することは難しいといった意見がみられた。

  また、放射線の影響が不明確な範囲まで認定が行われていることについても、分かりやすく説明すべきとの意見が見られた。

 「主な議論」としまして、1つ目は再掲でございます。

・個人の被曝線量を決めるのは、ほとんど不可能ではないか。

・放射線起因性を判断する一番骨格のところは、放射線の被曝線量であり、これを何とかしようとするのが出発点。

・一人一人の影響の有無を距離などによって推計し、判断するという外形標準で判断するしかないのではないか。

・科学的には既に放射線の影響がはっきりしないものを含んで認定が行われており、現状以上に、要件を緩和するのは適当ではないのではないか。

 続きまして、4ページでございます。残留放射線についてでございますが、

○ 残留放射線の影響は今となっては測定できず不明確であることから、全ての被爆者を対象として認定すべきとの意見がみられた一方、その影響は相当小さいとの意見や、積極的認定範囲を広げる根拠となるほどの知見はないとの意見がみられた。

 「主な議論」として、

・被爆者であれば、何らかの放射線の影響を受けているのだから、全員に手当を支給すべきではないか。

・残留放射線については、長崎のデータ、DSO2などを見ても、初期放射線に比べて相当少なく、健康に影響を与えるような量が確認されたことはないというのが科学的知見である。

・様々な疫学調査が行われているが、少なくとも3.5kmを変えなければならない知見はこれからも出てこないのではないか。

・残留放射線については、原爆症認定制度に取り込めるほどに健康への影響があったという知見はないのだから、制度設計としては取り込めないと割り切るしかない。

 5ページ目でございます。

○ 積極的に認定する疾病の範囲については、現行では、悪性腫瘍、白血病、副甲状腺機能亢進症、放射線白内障並びに放射線起因性が認められる心筋梗塞、甲状腺機能低下症及び慢性肝炎・肝硬変とされている。

  長瀧委員から、放射線に起因する疾患に関して、科学的な知見の整理が示され、本検討会で共有された。また、科学的な知見を共通の認識として大切にしつつ、援護を行う際には確たる根拠に基づいて行うべきとの認識が共有された。

  科学の進歩等により、放射線に起因することが明らかになった疾病にかかった場合には認定すべきという意見がみられた。

 「主な議論」としまして、

・科学的な知見あるいは疫学的な事実を共通の認識として大切にしつつ、世界に対してきちんと発表できるよう客観的な根拠があってここまで援護していると言えることが必要。

・今後、最新の科学的知見が出てくる中で、現行の7疾病以外に放射線起因性が認められる疾病があれば、取り入れられるのではないか。

 続きまして、6ページでございます。

○ 白内障、心筋梗塞、甲状腺機能低下症、慢性肝炎・肝硬変の認定に当たっては、放射線起因性が認められることが要件となっている。

  こうした疾病の認定に関して、爆心地から3.5km以内の直接被爆等については全て放射線起因性を認めるべきとの意見がみられた一方、放射線の影響に基づいて認定すべきであり、無制限な認定は困難との意見や、認定範囲の明確化や分かりやすい説明に努めるべきとの意見がみられた。

 「主な議論」として、

・裁判所は一人一人の線量をあまり考慮せず、症状を見て判断している。一方、行政は一人一人の線量を考えて判断している。

・放射線起因性を判断する一番骨格のところは、放射線の被爆線量であり、これを何とか把握しようというのが出発点。

・「新しい審査の方針」の書きぶりは、7疾病全体を「放射線起因性が推認される」疾病としておきながら、後段で再度「放射線起因性が認められる○○」となっている。わかりやすくするため、整理すべき。

・白内障、前立腺がん、心筋梗塞というのは加齢でも起こるものなので、無制限に認定するのは適当ではないのではないか。

 7ページ目「(2)要医療性」、

○ 要医療性に関して、治癒する見通しの高い疾病については、新たに対象疾患として拡大すべきではない、との意見があった。

  また、要医療性の範囲の明確化や、客観的に確認する手続きの整備を求める意見があった。

 「主な議論」として、

・昔と違って現在はがんも治るし、普通の甲状腺がんの場合は、9割以上の方が手術して30年ぐらい生きている統計がある。白内障もだれもが罹る病気なので、放射線起因性があったとしても何年も手当が出るのは国民が納得しない。

・病気が治癒する見通しが強く持てるようならば、あえて手当の対象として広げる必要はないのではないか。

・現行の制度では治癒したら特別手当に移行するが、実際にはかなり長い期間を要医療性があると認められてきたケースがある。3年に1回の認定の現況届について、的確に運用できるよう、見直すべきではないか。

 続きまして「(3)手当の区分の設定、基準などについて」ということでございます。

○ 疾病の重篤度等に基づいて手当額の区分を導入すべきとの意見がみられた。一方、実務上の観点や、手当額が減少する方が出ること等から、区分の導入には慎重にすべきとの意見がみられた。

 「主な議論」として、

*区分の導入を求める意見

・生命や日常生活への影響の程度、治癒や再発の可能性などから疾病の重篤度をグループ分けし、手当額を段階的なものとすべきではないか。

・医療特別手当の意味を考えると、病気の重篤度に応じて手当の額が違ってよいのではないか。

・手当額の区分については、例えば、疾病ごとなど大くくりの基準とするとか、あるいは疾病によっては認定期間を限定することも考えられるのではないか。

*区分の導入に慎重な意見

・絶えず変化する症状に応じて額を変更するのは、基準設定が難しく、また煩雑となるため受給者の負担軽減、行政事務の簡素化の観点から適当なのか。

・段階を付ける新制度を導入するのであれば、現行よりも手当額が下がる人が出てくるのではないか。

 続きまして、9ページ目「(4)司法判断と行政認定の乖離の解消について」です。

○ 過去の裁判例については、判例に基づいて認定の方法を改めるべきという意見がみられた一方、判例は個別例であり判例を一般化して基準を設定することは困難との意見がみられた。

 「主な議論」として、

・約30の判決の大部分では、今の認定の方法がおかしいと判断している。科学的な知見に基づく認定だけでは救われない人がおり、認定の方法を考えるべきというのが言外にある。

・判決では、残留放射線、特に入市した人や遠距離の被爆者であっても、症状を見ていけば原爆症と認定すべきではないかということも含めて判断している。

・裁判例を整理しても、もともと個々の判断であるため一般的、普遍的な部分は出てこないのではないか。

・予め入市が明らかであれば、行政も認めると思われる例があるなど、新しい審査の方針のもとでは、判決との乖離も減少しているのではないか。

○ 司法判断と行政認定の乖離を解消する方策について、認定制度そのものを廃止すべきとの意見がみられた一方、認定要件を明確化することなどにより訴訟の減少を目指すべきとの意見や、裁判では個別の事例に基づいて判断が行われることから乖離は完全には解消しないとの意見がみられた。

 「主な議論」として、

・現行制度では乖離を埋めることができないのだから、制度自体が破綻しているのではないか。

・放射線起因性の影響において、認定要件等を明確にすることで、乖離が減少するのではないか。

・被爆した事実をもってすべての方々に手当を支給するとしても、司法への申立権は個人の権利なので、裁判に訴えるということはずっと起きると考えられる。

・個々の司法の判断にはばらつきがあり、行政の判断とは次元が違う。司法の判断をそのまま行政認定に取り入れられない部分もあるので、乖離は完全には解消しない。

 「(5)国民の理解など」です。

○ 財政負担をお願いする国民の理解を得るためには、原爆症認定には、引き続き放射線起因性を要件とすることが必須であるといった意見や、疾患が重篤であるといった要件があった方がよいとの意見があった。

  また、被爆者への援護には一般の福祉施策と異なる理由があること、認定を申請した被爆者の理解を得るためには、認定結果の理由を明確にして丁寧に説明すべきとの意見があった。

 「主な議論」として、

・ポイントの一つは国民的視点から見た公平、国家的見地から見た責任である。放射線起因性の認められる疾病の中には、加齢現象等により疾病にかかる事例も見受けられるため、放射線起因性を要件にしなければ、財政的に野放図との批判を招く。

・医療特別手当の意味を考えると、例えば、生命にとって大変危険であるとか、日常生活が困難であるとか、こういう要件を入れることで説明しやすくなるのではないか。

・原爆症認定や医療特別手当の給付といった被爆者に対する援護には、一般の福祉施策とは異なる理由があることに留意すべき。

・認定にあたり、その理由等をきちんと説明する等、申請者の納得が得られるような丁寧な対応が必要ではないか。

 以上でございます。

○神野座長 どうもありがとうございました。

 それでは、本日の議事につきましては、今、御説明いただきました資料3をもとに委員の皆様方から御意見を頂戴したいと思っております。これは、ここでの委員の皆様方の意見を可能な限り集約したものでございますので、議論を生産的に進める上でも、それから、皆様の御意見を確認していく意味でも、まず、議論を項目別にやっていきたいと思っております。

 差し当たり最初の項目でございます、1ページ目の「1 方向性について」につきまして何か御意見、あるいはまとめ方の質問などでも結構でございますので、御発言いただければと思います。

○田中委員 その前に皆さんにお断りしなくてはいけないのですけれども、きょうの資料に入っておりますが、大阪地方裁判所の判決を受けて、私どもが地方裁判所の結果をどういうふうに検討会の委員の皆さん方に受け取っていただきたいかということのお手紙を差し上げさせていただきました。お読みいただけたかどうかは別にしまして、きょうは本当は最初にその意見を述べさせていただきたいと思っているのですけれども、時間の関係もありますので、お読みいただいていない委員の方がいらっしゃいましたら、ぜひ読んでいただいて、議論の中で私がその関連するという格好で発言をいたしますので、よろしくお願いいたします。

○神野座長 かいつまんでいただいた上で、ばらしていただいても構いませんが。ばらしてというのは、項目別に言っていただいて、そのところどころで発言していただいても構いませんけれども、まず要点を最初に言っていただいても構いませんが。

○田中委員 基本的には「新しい審査の方針」の中で放射線起因性が認められるという頭言葉がついたものについては、荒井委員から時々それはもう認定されているのではないかというお話がありましたけれども、ほとんどは却下されていて、それが大阪地裁の判決では8人の原告は全員認定すべきであるという結論が出ているということであります。その理由がいろいろ判決文の中に書いてありますので、そういうことを御理解いただきたいということです。

 以上です。

○神野座長 わかりました。それでは、今の御意見を承った上で、田中委員には申しわけありませんが、後でまた再度論点別のところでも適宜御発言いただければと思います。

 それでは、まず「1 方向性について」、1ページ目のところで何か御発言がございましたら、どうぞ。

○荒井委員 この資料3というのはこの検討会でのこれまでの議論の整理ということで、冒頭で座長から御指摘がありましたように、年内目標で取りまとめに向かっていくという今後の議論の前提としてこれまでの検討会での議論の整理をしていただいたと理解した上での意見なのですが、これまでの議論の整理として、ある意味で客観的にとるか、平面的に拾い上げるとこういう議論があったなという意味では満遍なく拾われていると思われました。

 「1 方向性について」の前に一言申し上げたいのですが、ただ、私がこれ全体を読み通してみたときに感じましたのは、論点としては平面的には出ているのですけれども、せっかくこの検討会でいろいろ議論を重ねてきた議論の経過といいますか、それぞれの議論の意見についてのウエートづけのようなもの、これは大変難しい整理になろうかとは思うのですが、そこをもう少し書き込んでいくべきではないか。議論の整理としては間違っているというわけではないのですけれども、いよいよ最終的に取りまとめに向かうことを念頭に置きながらの整理となりますと、どうウエートづけをしていくかということをもうちょっと配慮していただいたらどうかなという気がいたします。

 それを前提にして、まず「1 方向性について」の意見なのですが、なるほど、これもこういう整理にはなっているのですが、もっと基本的にいえば、これは田中委員を初めとして、かなり早い段階から具体的な御意見の提示が繰り返しございましたね。それは何十回かの検討会での大きな流れとして、司法と行政との乖離を含めて、今の認定制度は破綻しているから全面的に考え直すべきであるという御意見と、それに対して、いや、そうまでは言えないのではないかと。今の認定制度をよりよくするという観点から議論を詰めていくべきではないかと。振り返ると、そこが一番議論の出発点だろうと私は思うのです。ここの1ページの1で整理していただいていることは、言ってみればそれの各論のようなものでありまして、そこのところをあえて先ほどのウエートづけということからいいますと、破綻しているということで根本的な見直しということは、ここの委員の大方の意見としては、そうではないという前提でよりよくするための議論を重ねてきたのではないかと。そこをやはりこの方向性のところでは一番押さえていくべきではないかという気がいたします。

 とりあえず。また各論は後ほど申し上げます。

○神野座長 ありがとうございます。

○田中委員 いいですか。

○神野座長 ちょっと待ってくださいね。

○田中委員 はい。

○神野座長 いずれにしても、私が申し上げたのは、いつも事務局のほうで整理していただいている皆様方の御意見を、可能な限り、最小公倍数というのか、最大公約数というのかわかりませんが、重ね書きができるところを中心にしながらまとめたつもりでございますので、おっしゃるとおり総花的になっているということは間違いないのですが、ウエートづけをしてそこが合意を得られるようなことであれば、ある程度そういう方向性をもう少し具体的なフェーズでにじみ出るような書き方が可能になりますけれども、まさにそういうことをどこまで具体的なレベルで合意が取りつけられるかということをやるためにこれからの議論をいたしますので、御面倒でもまた個別に御指摘をいただければと思います。

○荒井委員 わかりました。

○神野座長 今の荒井委員の意見に関連してですか。次は草間委員が先に挙がっていたので。

○田中委員 関連してなのですが、どういうふうにこの議論のまとめをしていくかというときに、最初、この検討会は何を目的にしてつくられたかということからきちんとつくり上げていかなくてはいけないと思うのです。検討会に任されたのは、司法との乖離をできるだけ埋めて、そして、裁判にかけなくても済むような制度をつくっていくにはどうしたらいいかということを検討しようということですので、司法と行政の乖離がどういうところにあったかということをきちんと最初に議論をされて、それが今回もそういうものであったというところから入っていかなくては本当はいけないのではないかと思っております。

 だから、つくり方については、今後、変えていってもいいかと思っておるのが1つということです。ですから、乖離が生じているのはなぜなのか。それはどうやって埋められるか。そのためには認定はどうあるべきかということから議論が組み立てられていって、最後にこの制度はどう変えていったらいいかということになっていくのだろうと思っております。それが1つです。

 もう一つは、今、荒井委員がおっしゃいましたけれども、私どもも提案をしました。それは議論の参考になればいいかと思って提案していたわけです。何が何でもそれを主張しようということでは当時はなかったつもりです。ですけれども、議論をしていただけなかったという感じがしております。というのは、いろいろ注文は出ましたけれども、注文に対して私どもはどう考えているかということのさらなる反論といいますか、発言みたいなものが十分に与えられなかったと、私はそういう印象を持っておりますので、その辺は少し釈明をさせていただきたいと思っております。

 以上です。

○神野座長 ありがとうございます。

 それでは、草間委員、お待たせしました。

○草間委員 今回はこういう形で議論の整理をしていただいて、大変わかりやすくなったかと思います。そういう中で、今、荒井委員も言われたように、これ全体を通しますと、こういう意見が見られたという形で軽重がないですね。いずれにしましても、12月に検討会の報告書をまとめるとしたら、何らかの形で収束の方向に持っていかなければいけないのではないかと思います。そういったことを考えたときに、意見が見られたという形だと、どちらがマジョリティーなのか、どちらがマイナーかというのがわかりにくいような気がするのです。

 したがいまして、例えば、この方向性についても意見1、意見2という形で書かれているわけですけれども、確かに最初のときは方向性1、2、3という形で、1が方向性1という形で示されたわけですが、この22回の検討会の中ではもちろんさまざまな御意見があるのですけれども、どちらかというと、意見2のほうが私はマジョリティーだったような気がするのです。だから、そうなりますと、こういう順序として多分事務局のほうは方向性1、2、3という形でまとめられたのではないかと思いますけれども、具体的にいうと、順序がこういう形でいいのかどうかというのを疑問に思いながら見させていただいたのです。

○神野座長 ほかにございますか。

○潮谷委員 方向性について、非常にわかりやすいのですけれども、もし、今、草間先生がおっしゃったような形の中で、仮にこの2のところでまとめに入ったときに、これまで1を主張しておいでになられた方たちが、いや、我々はやはりこの問題については承服しかねるというような意見というのも、このままだと今後出てくる可能性があると思います。私は、今までの論議の流れからして、こういう経過があったけれども結論的にはこちらのほうの意見が重かったとか、あるいは、方向性としてはこういう流れの中にあったとかという、その明確性が議論の整理の中では必要ではないかという思いがあります。

 それから、「新しい審査の方針」ができ上がったときに、ドクター、行政の側、当事者の側から、でき上がったものを共有して、それぞれが国民に向かってきちんと啓発をし、理解を得ていくことが大事と思っています。長瀧先生のお話にもありましたように、世界が、なるほど科学的な知見というのは限界があったけれども、援護というのが日本においてはこのような形の中で進められてきたのだなということの重要性も御指摘になっていらっしゃいますので、私はやはり最終的な方向性はそういう形が見えてこなければいけないのではないかと思っています。

 以上です。

○神野座長 ほかにいかがですか。

 どうぞ。

○三藤委員 方向性について2つの意見ということで集約がされているのですけれども、私は、この考え方は、すんなりそうですかという感じは持っていないのです。なぜかと申しますと、意見の2の中に「認定対象に取り入れる」という文言が入っております。科学性云々ということは私も否定するつもりはありませんので、当然、科学的な根拠を持って認定制度が成り立っておけば、その部分についてを否定するつもりはございません。ただし、前回の長瀧先生の見解からいっても、科学的に証明できない部分というか、説明できない部分が必ず残っているわけですよね。ところが、それと同時に私たちは乖離の問題の解消をこの検討会のほうで検討する必要性があると。そうなると、認定制度に取り入れるという前提だったら、科学性がないものは入ってこない危険性が高くなってくると私は思うのです。だから、そういう部分についての考え方として、集約というか、この部分を残していただきたいと。その部分の議論なくして乖離の解消は生まれないと私は思っています。

○神野座長 あと、いかがでございましょう。

 高橋先生、どうぞ。

○高橋委員 まとめということを考えると、皆さんが感じておられるのは、どうしても両論併記になってしまうのではないかと。その場合には私はウエートづけという問題が出てくるのだと思うのですが、ただ、やはりその前の段階として、この委員会では乖離を埋めるべく努力をしてきたわけで、そういう意味では、議論の結果、一致が見られる点、あるいは一致できず違いがはっきりしてきています。結論では、どこまで一致する点として到達したのか、そして、その先、一致できず意見が分かれる部分はここ、という形で持っていっていただいたほうがいいのではないか。お互いに歩み寄って、歩み寄り切れなかった。だから、両論併記にするということでもあると思うのですが、もう最初から両論併記を前提とした書き方でいったのでは、結局、互いに相入れないということだけで終わってしまうのではないかと思います。

○神野座長 ありがとうございます。

 ほかはいかがでございますか。

 ここで集約をするわけではありませんが、今の高橋委員の御意見のようなことを私も考えておりまして、運営でも今の制度そのものを根底から否定してしまうということが、最後というか、いろいろな論点を煮詰めていって、今の制度を前提にして改善がもうとても不可能だということになったらば、そちらのほうに移りましょうねと私も言っていた手前がございますので、出し方を、出し方というのは、これはあくまでも議論のたたき台でこう書いてありますけれども、議論の経過からすれば2案、3案と言っていたものを1つにまとめているところがありますが、大体大きくこの2つの流れがあったと。それで、この2つの流れの中で目標とする頂はこちらの頂かこちらの頂かと違うかもしれないけれども、言い方は少し不適切かもしれませんが、第1キャンプ、第2キャンプ、第3キャンプぐらいまでは大体同じ道だろうということが合意できるところがあれば、今の高橋先生の意見ではありませんけれども、なるべくそこで書き込みながら、それが少しでもステップアップをしていく方向に動けばと思っておりますので、整理の仕方はいずれ考える、このまま出すということではありませんので、今、頂戴した御意見を参考にしながら、つまり最初のところでAかBかという選択を迫るような書き方ではない書き方にしながら、まとめ方にしようかなとは思っております。

 時間の関係もありますので、次の2もテーマ別のほうの「(1)放射線起因性」に関するところはいかがでございましょうか。

○田中委員 さっき私が申しました司法と行政の乖離をどうするかということから議論をすべきなのです。ですから、これをまとめるに当たっても、いろいろ並列的に出されていますけれども、その問題で整理されているところがこれでいいのかどうかというところから入っていかないと、また錯綜してしまうと私は思うのです。その乖離しているところで認定の問題を司法はどうしたか、行政はどうしたか、そこの中で科学的知見を司法はどう見たか、行政はどう見たかということでまとめていかないと、またぐるぐると堂々めぐりになっていくのではないかと思います。

 起因性というか、疾病について司法はどう見たか、行政はどう見たか。それが全部乖離になってつながっていたわけですから、そこのところを仕分けして整理をして、組み立てていかないといけないのだと思うのです。その最後の段階で方向性というのが出てくるのだと思います。ところが、最初からこの検討会はグレーゾーンを含めた方向性を議論したものだから、こんなに長く時間がかかってしまっているのだと思いますので、まとめのところではきちんとまとめの流れを整理して、議論をしていきたいと思っております。

○神野座長 今の2の(1)のところについて、具体的にそれを反映させていただくと、どういう御発言になりますか。

○田中委員 ですから、そうだとすれば、司法は放射線起因性についてどう考えているか、科学的知見についてどう考えているか、行政はどう考えたかということを議論するということになりますので、ここに挙げられている挙げ方とは違うと私は思うのです。

○神野座長 どうぞ。

○荒井委員 今の田中委員の御発言、御意見に関連して申しましたら、そういう整理の仕方も確かに1つだろうとは思うのですが、これまでのここでの議論というのは、検討会に付託された趣旨というのは何だろうかと。司法と行政との乖離の問題というのは、確かに検討会で議論をしていく1つの大きなきっかけになったことは間違いないと思うのですけれども、そもそも論からいうと、司法と行政とのギャップというものを絶対に埋められないものかどうかということについてのイメージがそれぞれの委員によって違っていたのではないかと思うのです。そこで各論的に、今の制度をよりよくしていく方向でいいのではないかと。全部御破算にして制度設計をするというのは現実的ではないのではないかということで議論が始まって、まず、放射線起因性というものを離れた制度設計があり得るかと。それはそうはいかないだろうと。ほかの戦争被害と比べて、なぜ原爆の被害を受けた人の疾病に対して特別の制度をつくるべきかといえば、やはり放射線との関係を無視はできないだろうという議論から始まってきていると思うのです。ですから、今の田中委員の御発言というのは、9ページの「司法判断と行政認定の乖離の解消について」という柱が確かに後ろのほうになっています。これを前のほうに持ってくる整理は、どちらかというと、そのほうが議論の流れからいうとベターかなとは私も思うのですが、今、田中さんのおっしゃったような方法でないと整理ができないとは思いませんので、その柱の入れかえといいますか、そういうものはまた後ほど意見を申し上げる機会もあろうかと思いますので、今は起因性についてのこの整理がどうかというところでいいのではないでしょうか。

○田中委員 入れかえだけでは済まされない問題がありますので、事務方には次の出し方を整理のときに考えていただきたいと思うのです。例えば、放射線起因性と言いますが、司法が起因性をどう見ているかということについては今までも余り議論がないのです。それから、法律そのものの中で「放射線起因性」という言い方は本来していないですよね。ですから、それだけを取り出していきますと、科学的知見だとかそういう議論が先行してしまう。だけれども、科学的知見については、司法は、科学的知見は重要だとしても、それにこだわってはいけないといいますか、そういう言い方もしているわけですから、そういうものであるという議論をしていかないといけないかなと思うのです。援護の立場から放射線起因性をどう見るかという、これは長瀧先生がおっしゃったと思いますけれども、そういう議論が十分今までできていないので、それを踏まえておかないと、この問題の上げ方ですと、また科学的知見は重要であり、それを踏まえなければということになってしまうのではないかという心配が私にはあります。

○神野座長 どうぞ。

○荒井委員 それはこれまでの議論だから、そうなってしまうのですよ。それはこれまでの議論の整理なのだから、仕方がないのではないでしょうか。今からもう一度議論の順番を変えて、改めて議論という段階ではもうないのではないでしょうか。

○神野座長 別にタイムプレッシャーということではありませんが、今まで議論をしてきたものをまとめていくという、いよいよバックストレッチの段階に入っていますので、当面は今まで議論をしていただいたテーマ別で議論を行っております。

 今、田中委員がおっしゃっていることも、ここでも議論をしてきたとは思いますけれども、ここの起因性をテーマにした議論のときにはこういう意見が大体多かったということで例示を拾っているわけです。私の理解では、確かに司法と行政との乖離というのが重要なきっかけの1つであることは間違いありませんけれども、ここに課せられた使命というのはあくまでも認定制度のあり方ということで考えているわけで、そのためには多面的な視点が必要であろうということから議論が進んでいるのではないかと思っております。だからこそ、さまざまな立場の方々に委員としてお入りいただいていると了解しておりまして、単純にそういう乖離そのものだけの問題であると、私とか専門外の人間は余り言うことがなくなりますので、むしろこの制度そのものが非常に多面的な観点から検討していく必要があるということで議論があると思います。まとめ方は幾つか総合的にまとめざるを得ないので、ただ、その総合的な要素をどうやって個別に分解していくのかという分解の仕方、それから、荒井委員がおっしゃったような意味で、分解した後を構成していくやり方については幾つか御議論をいただければと思いますが、当面ここでまとめているのは、今までずっと回を重ねてきた議論の順番でまとめておりますので、もしもそこでこうやれという意見があれば、いよいよ最終段階ですので、もっと具体的に出していただいたほうが生産的になるかと思います。これからそういう議論を始めろといっても、先ほど申し上げましたように12月末までというタイムプレッシャーの中でやろうとすると限界があるかなと了解をいたしております。

 高橋委員、どうぞ。

○高橋委員 最後まとめるときに、やはり司法と行政の乖離の問題というのは重要なところ、議論の出発点でもあったので、そこについてはきちんと整理する必要はあると思います。この9ページの整理だと、まだいろいろな項目がごっちゃになってしまっている。例えば、この委員会の中でも司法の専門家からは、裁判所の判断のグループの中にも乖離があるとか、ばらつきがあるという御指摘もあったわけですし、だから、行政と司法との間で両方で統一見解があってガチンコしているわけでもないということでもあったので、そういうことも含めて司法と行政の乖離がどういうものなのか、どこから生まれているのかということは一度きちんと整理しておいたほうがいいと思います。

 ただ、その中で放射線起因性であるとか、仕切りの問題だとか、幾つかのテーマが出ている。乖離の具体的な中身としてそういうものが出てきていると思いますので、テーマ別ということで議論することは非常に重要なことではないのかなと思います。ですから、報告書の書き方として、行政と司法の乖離のことについて、どういう原因でどこに違いがあるのかということは、今までの検討結果をきちんと集約する形でまとめる必要があるとは思います。けれども、それはいわば書き出しの部分であって、その後はやはりテーマ別にきちんと詰めていくという作業になっていくのだろうと思うのです。ですから、この行政と司法の乖離のことについて、どういう書きぶりにするかというのは次回までの宿題にさせていただくとしても、このテーマ別についてはやはりきちんと議論をしなくてはいけないのではないかと思うのですけれども、いかがでしょうか。

○田中委員 もう時間がありませんから、私も議論されてきたことから踏み出した議論まで、それを超える議論をこれから3カ月の間にまたやろうと提案をしているわけではないのです。でも、残念ながら、本当に議論しなくてはいけなかったことが議論できないところが私はたくさんあると思っているのです。それを埋めるためには、議論されたものを組み立てていくときに、もともとは何が重要であったかということを踏まえておいていただきたいというのが私の意見なわけです。会議の根本的なのは、今の法律の趣旨を司法と行政が正しく理解しなかったというところに私はあると思っているのです。だから、そういう趣旨から見て、起因性をどう見たか、疾病をどう見たか、援護のあり方をどう見たかということを考えながら今までの議論をまとめていくということしかないのかなと思っています。

○神野座長 高橋委員、どうぞ。

○高橋委員 そこについては異論があるのですが、というのは、司法の側で統一的な見解があって、それに基づいて全ての判断が下されてきたのであれば、行政と司法の側に明確な違いがあるということで、その違いが何かということを明確化しないと始まらないのかもしれませんが、ただ、私は司法の専門家ではないので受け売りになってしまいますが、司法判断というのは個別の判断の積み上げですから、最初から統一見解が何かあったというようなことではないのだと思うのです。ですから、最初からそこは違う議論に立ってしまうとちょっとおかしいのではないでしょうか。

○田中委員 原告については個別判断であるのですけれども、全ての判決の中で総じて総論みたいなものが全部ついているわけです。今の法律はどういう趣旨でつくられているかというのが述べられているわけです。それは30の判決の中でほとんど共通しているわけです。私は、そういうことを最初の議論の中できちんと踏まえてほしいと思って事務方にもいろいろ提案をしていたのですけれども、それは出なかった。それは先生も読んでいただければわかると思いますけれども、判決のほとんどが今の法律の趣旨は何であるかというのを書いてあるのです。それはもう国の補償的な立場に立つ援護であるということを書いてあるのです。

○長瀧委員 この間のお話の続きだと思うのですが、司法と行政の乖離というのは、ある範囲の放射線の影響について議論が違うということであって、もう誰もが認めるように本当に放射線で亡くなった方もいっぱいいる。それから、急性影響があった方も少なくとも5,000人は登録されているわけです。そういう人たちを調査して出てきた科学的な結果というのは厳然として存在するわけです。わからない部分もあるけれども、本当に原爆はこんなにひどかったのだという事実は既にあるので、その事実を無視してしまって、あるかないかというところに全体の援護の話が行ってしまうと、何かちょっとずれてしまうような気がするのです。ですから、本当に原爆はこういうものだったと。そして、誰が見てもわかるような急性影響があったと。そして、これだけの方が今まで亡くなって、そして、また協力してこれだけの科学ができてきたのだと。それを全部無視して行政と司法から始めるということに抵抗するところがあるというのは、今まで亡くなった被爆者の方たちは、これだけ科学の事実を世界に伝えるために努力してこられた。そういう貢献したものを全部ここで無視していいのだろうかという気持ちが一方で非常にあります。ですから、科学的にわかったものと科学的に問題があるものとは、やはり考え方の上で少し差をつけてもいいのではないかなという気がしましたので、それだけ。

○神野座長 ありがとうございます。

○田中委員 私はそれを無視しているつもりは全くありません。かなり裁判官はそのことを考慮しながら判断をしていったわけですけれども、行政が却下した人の大部分を認定すべきだと言ってきた背景は科学的知見だけではないのだということを私は言いたかったのです。

○草間委員 よろしいでしょうか。

○神野座長 草間委員、どうぞ。

○草間委員 放射線起因性をどう判断するか、科学的知見だけでは放射線起因性を判断できませんよというのは何回かここの中で議論されたことだと思うのですけれども、少なくとも、今、このテーマの議論の放射線起因性に関しましては、もう前提が原爆放射線に起因した疾病をきっちり手当していきましょうということなので、まず放射線起因性をどう解釈するかというのは、司法と行政で、行政が新しい審査の指針でやるという形で、それを必ずしも司法が認めなかったということですけれども、いずれにしましても、放射線起因性というのは外せないよというのは多分ここで一致した意見なのだろうと思うのです。だから、そういう意味では、司法と行政の乖離をどうするかというのはまた9ページのところで議論していただくにしましても、とにかく前提としては、放射線起因性ということを外すと、ここにもありますように、沖縄はどうなるの、東京大空襲もどうなるのということになるので、放射線起因性については外せないというのは、多分、田中先生も含めてここの一致した意見ではないかなと思うのです。

 あとは、放射線起因性をどう解釈するかという問題なのだろうと思うのです。だから、それに対してはまた別に放射線起因性をどう解釈するかということで御議論いただけばよくて、ここの前提は、ほかの何かはいろいろ御意見があるかと思いますけれども、少なくともこのテーマの(1)に関しては、ここの検討会では全員一致して、まず放射線起因性ということを念頭に置いて議論しましょうというのは変わらないのではないかと私は思っているのですが、田中先生、いかがでしょうか。

○田中委員 放射線起因性そのものを議論することは一向に構わないし、やらなくてはいけないことだと思います。ただ、そのときに、私たちは大前提を念頭に置いて議論していきたいなということを言っているのです。

○神野座長 はい。

○田中委員 法律の趣旨からいいますと、これも議論になるかもしれませんが、放射線起因性というのは、先生もおっしゃいましたけれども、原爆起因性みたいなものが法律になっているのです。あれは、傷の場合、明らかに放射線でないものについて放射線が影響しているかどうかを見ろとなっていますので、もっともっと広い起因性が問われないといけないなと私は思うのです。だから、そういうことも踏まえて放射線起因性を議論していきたいと思ったりしております。

 その上で、ここに書いてあるように「放射線起因性については、被爆者全員に手当を支給すべき」だというのは、放射線起因性で言っているのではないですよね。私たちは被爆者手当を全員に支給すべきであるという主張をしましたけれども、それはみんな放射線起因性があるからと私は言ったことは一度もないのです。原爆がいろいろ被爆者を苦しめてきたことから考えれば、被爆者全員に相当の手当があってもいいのではないかという言い方をしたと思うのです。だから、こういう格好で言われてしまうと、これは被爆者認定みたいになりますけれども、とんでもないという話になってしまいますので、そういうところはちゃんと正しく表現していただきたいと思います。その上でないと、国民の理解や、戦争犠牲者との区別がないという批判を受けるという文章につながっていきますので、被爆者対策については、原爆被害というのはどういうものであったかというのを国民にきちんと理解を求めていれば、そんなめちゃくちゃな要求を私たちはしているつもりはありませんし、理解を得ることはできると思っています。それをやらないと誤解を受けますので、そういうものを踏まえてきちんと表現していただきたいと思います。

○神野座長 荒井委員。

○荒井委員 田中委員の御意見でまたわからなくなるのが、ここでの議論は、先ほどの草間委員のお話のように、原爆症認定制度の中で放射線起因性という要件を外すことは無理だろうというのが大方のここでの意見のまとまりだったように私は受けとめているのです。田中委員は、今、2ページの「主な議論」の上のポツのところについて「被爆者であれば、何らかの放射線の影響を受けているのだから」という表現が正確ではないとおっしゃるのですけれども、私の理解は、もともと田中委員は、放射線起因性という要件は外してしまうべきだと、外してしまいなさいと。もしそれが無理だとしても、放射線起因性を要件にするとしても、起因性をどの程度のものとして捉えるのか。グレーゾーンという言い方もありましたし、線量がつかみにくいとかいう話もいろいろありました。原爆の被害を受けた人は、起因性を要件にするとしても、俗な言葉で言えば、極めて薄い放射線の影響性でもいいではないかということで、全く放射線起因性をネグレクトするのが本来の制度のあり方だけれども、どうしてもみんなが起因性と言うのなら、それは要件としても構わないと。ただ、しかし、極めて薄いのも拾いなさいという御意見ではないのですか。つまり、ここで言う起因性については要らないという意見でないとやはりまずいのですか。

○田中委員 いえ、そういうことは言っていないつもりなのです。提言の中でもう破綻していると言ったのは、放射線起因性を狭い議論しかできない。それを認定の条件にするようであれば、もうこの法律は運用すべきではないだろうというのが提言なのです。だから、放射線起因性を提言でも無視しているわけではなくて、手当の加算をするのも放射線起因性があるものを重視しているわけですよね。ほとんどは放射線が起因するという疾病について手当を加算しなさいということを言っているわけですから、無視しているわけでは全くありません。

○荒井委員 ということになると、冒頭のこれは起因性の総論のような部分ですけれども、そこでいえば、起因性を原爆症認定制度の基本の要件に置くこと自体には必ずしも反対ではないということでよろしいのではないですか。あとは、どの程度の影響性で認めていくのかというレベルでの意見の違いと考えればいいのではないですか。

 だから、冒頭の高橋委員あるいは草間委員のお話に少し関連して言及をさせていただくと、ここでは「意見が見られた一方、こういう意見が見られた」と完全に並列するようになっているのですけれども、むしろここで一番言いたいのは、放射線起因性を基本的な要件にするということは大方のコンセンサスだったと。しかし、中には、そうではなくて、起因性については薄くても原爆被害を受けた人には全部認めるべきだというような意見があったということを、完全一致とはいかないとすれば、少し意味合いを薄めた形で後のほうにつけ加えて書くというのならわかるのですが。今の表現ですと、これは完全に2つの意見があったという、いわば平板的な書き方になっているので。

○田中委員 2ページ、3ページはそういう書き方になっているのですね。2ページはまさに私たちが主張もしていないようなことを主張しているかのように書いてある。これは被爆者たちが主張していることはもう全く間違いだろうと、大前提に書かれているわけです。私たちはそれはもう納得できない。起因性を否定しているわけではないのです。しかし、起因性をこういう趣旨で被爆者が主張していると書かれているのは全く納得できないので、最初に私は発言をしました。だから、3ページあたりから入っていくということであればまだいいのですけれども、どうしてこの2ページが起因性の大前提になるのでしょうか。

○神野座長 わかりました。いずれにしても、ここで整理すると、起因性の有無、あるかないかということと、条件にするかどうかということのイメージですね。それと、強弱という問題があるとして、上のことについていうと、起因性という要件は欠かせないと。ここはいずれの立場にとっても、もう既に前提ではないかと、そういう理解でよろしいのですね。そうすれば、その次の起因性について、強弱という表現をしていいのかどうかはわかりませんが、因果関連を議論していけばいいということで、まず、とりあえずここについてはそう大きな相違はないと理解させていただいていいということでしょうか。

○田中委員 ただ、2は間違っているということをここで合意していただきたいのです。ここでは主張はしておりません。

○神野座長 だから、それはそうなのですが。

○田中委員 2ページですね、科学的根拠の一番最初の。

○神野座長 つまり、おっしゃっている意味は、被爆者全員に手当を支給すべきだというのは、放射線起因性と結びつけなくていいという話で主張しているのではないということですよね。そういう理解でいいのですか。

○田中委員 これは原爆と結びつけるのではなくて、放射線起因性だけに結びつける主張ではないということです。

○神野座長 だから、原爆に伴って。

○田中委員 だから、起因性の議論の中にこれを持ち出していただいては困るということです。

○神野座長 だから、原爆というのが、放射線とかいろいろな被害があるのだけれども、そのうち原爆というのは放射線以外のさまざまな問題、要因が含まれているのでという御意見でやったということです。

○田中委員 異議がないという言い方もあれですけれども、起因性という科学的な用語の問題ですよね。私が主張してきましたのは、全員に精神的な苦しみ等々があると。だから、そういうことを含めて、全員に手当というのはいいのではないかということを申し上げたことがあります。たしか高橋先生にもそういう考え方もあるとおっしゃっていただいたことを覚えていますけれども、だから、精神的な苦しみは放射線と全く関係ないということは言えない。むしろ放射線と関係があって高障害が出るものではないかという不安が精神的な苦しみにもなったりしているわけですから、全くという言い方になると大変違うので原爆起因性と私は申しましたけれども、「原爆」という言葉の中に放射線は必ず含まれるのだよということであれば、私はやはり原爆起因性というような中身のものにしてほしいということです。

○神野座長 では、潮谷委員。

○潮谷委員 「主な議論」の中の括弧のところですけれども、田中さんは「何らかの放射線の影響を受けているのだから」という、ここを外して「被爆者であれば、全員に手当を支給すべきではないか」というのがお気持ちということですね。そして、その括弧書きの中で「原爆症認定には放射線起因性という要件は欠かせない」という点では認めていらっしゃると、このように理解してよろしいのでしょうか。そこを明確に。

○神野座長 それだと私も腑に落ちるのですが。というか、理解ができる。

○田中委員 強弱はありますけれども、限りなく薄くなんて考えていないのです。強弱はありますけれども、それはいいと思います。

○神野座長 わかりました。

 草間委員、何かございますか。

○草間委員 また繰り返しになってしまうかもしれないのですけれども、要するに、法の10条の中で、ここで原子爆弾の障害作用に起因して云々というのを言いかえて、その後で「放射能に起因する」ということがきっちり10条で書かれているわけです。だから、これについては田中先生もお認めいただいたということで、今、この全員に支給すべきどうこうというのは起因性云々ではないということだとすれば「被爆者全員に手当を支給すべきという意見もみられた一方」という、これは関連させないような形で削除してしまえば先生も御理解いただけるのではないかなと思ったのです。

 いずれにしましても、法律は、昔だったので多分「放射能」という言葉を使ったのだろうと思うのですけれども、放射線起因性というのをきっちり法の中でも言っているので、この法を覆さない限り、やはり放射線起因性というのはここにまず準拠して考えていきましょうということは、強弱というか、放射線起因性をどう解釈するかというのが次の問題としてあるとしても、多分ここで田中先生も含めて全員お認めいただくということで、おまとめいただいたほうが私はいいのではないかと思います。

○神野座長 では、その上で次の3ページ目、つまり同じ起因性についての議論がずっと続いておりますので、もちろん飛んでいただいても構いませんが、できれば収れんさせる意味で、3ページ目の起因性にかかわる問題についてはいかがでございましょうか。

○田中委員 1つ質問をしてもよろしゅうございますか。

○神野座長 はい。

○田中委員 括弧の中に書いてある、放射線の影響が不明確な範囲まで積極的に認定範囲をという、これは距離と時間と理解してよろしいでしょうか。

○神野座長 この不明確な範囲というのは、距離と時間というか、入市とか、そういう条件ということですか、今のを含めてということですか。

○田中委員 この不明確な範囲というのは、疾病の範囲なのか被爆の条件の範囲なのかわかりにくいものですから、どちらを指しているのかなと思ったのですが。

○神野座長 不明確というか、私の理解では、放射線の影響がということが不明確。かなり広げているということです。

○田中委員 ということは、疾病ですか。

○神野座長 草間委員がいつもおっしゃっている、しているところ。

○草間委員 これに関しましては、新しい基準の中で、がんについては3.5キロ以内は積極的に認めましょうという形になっているわけですけれども、前回、長瀧先生からお出しいただいた資料でもおわかりのように、広島、長崎の12万人を対象にした疫学調査でさえも、100ミリシーベルト以下のところでは発がん性に関して正確なデータが出せないという状況ですが、少なくとも認定に関しては、がんに関しては3.5キロ以内の方たちは積極的に認めているということで、かなり放射線の影響が不明確。この不明確という表現がいいかどうかはわかりませんけれども、不確かさが大きなところについても認めていますということで事務局がおまとめいただき、ここの意見もそうだったと思っていますが。

○神野座長 というか、草間委員等々の皆様方から出た意見をまとめさせていただいているということですね。つまり、ありていに言ってしまえば、科学的には確たるものがない領域ももう既に認めていますよということですよね。そういう意味での範囲と。

○田中委員 両方ですね。

○草間委員 非がん疾患に関してどう考えるかというのは、これからまたさまざまな議論が出てくるかと思いますが、少なくともがんに関して3.5キロ以内の方たちを積極的に認めているということは、かなり疫学調査等ではデータが明確ではないところについても認めていますよということなので、これはぜひ書いておいていただかないとさまざまなところに影響が出てまいりますので、これは絶対に書いておいていただきたいなと思います。

○田中委員 もう一回聞きます。疾病も含めるのですね。それから、被爆条件も含めるのですね。

○草間委員 もちろん。

○田中委員 両方ですね。わかりました。

○神野座長 あと、いかがでございましょうか。

 よろしければ、後で戻っていただいても構いませんので、4ページ目の残留放射線等々の問題について、いかがでございますか。

○草間委員 よろしいでしょうか。

○神野座長 どうぞ。

○草間委員 最初の四角の中の表現を私はやはり正確にしていただきたいと思います。まず最初に「残留放射線の影響は今となっては測定できず不明である」というのは、これは今もう既に広島の先生とか、さまざまな先生方が残留放射線について測定したりしていただいているわけですので、ここは「測定できず不明である」というのではなくて「残留放射線の影響は今となっては検出限界以下のレベルであること等から」というような形にしていただいたほうがいいかなと思います。「測定できず不明」というような言い方ではなくて。

 それと、次に「その影響は相当小さいとの意見」とあるのですけれども、その次のところで「積極的認定範囲を広げる根拠となるほどの知見はないとの意見」と。ここの意見はいいのですけれども、この前の意見ではなくて、これは「その影響は相当小さく」という形で、放医研の出された声明等も含めまして、ここの意見ではないですね。事実としてあるということですので、ここは「小さいとの意見」ではなくて「小さく」としていただいて、その後は「意見がみられた」という形にまとめていただいたほうが正確ではないかなと思ったのですけれども、いかがでしょうか。

○神野座長 わかりました。正確を期すようにいたします。ここでの意見を前提にした場合の意見ということですね。つまり、同じ意見でも、ここでの意見とそうではないところの意見をまずきちんと分けなさいと。それから、あとは、表現その他についても、もう一度検討させていただきたいと思います。

 あと、いかがでございますか。

○草間委員 よろしいですか、もう一つこれに。

○神野座長 では、坪井委員に先に。

○坪井委員 中身についてどんどん話が進んでいるし、今までにやってきたわけですが、それをさらに正確なものとか、あるいは国民に理解ができるようにというようにいろいろ知恵を絞っていくわけですが、私が少しだけ言わせてもらいたいのは、そもそもこの検討会は原爆症認定に関する検討をやってくださいというのですね。それは裁判をやったりしてからがたがたしないようにするために、しっかりしたものをつくってほしいということだったのです。しかし、裁判では、さっきからもう皆さん御承知のように、いろいろなことがあるのです。その裁判のほうを無視するわけにはいきません。だから、大いに入れ込まれたのですけれども、それだけではないわけです。科学の面から、あるいは経済の面から、あるいは司法、行政の面からいうように、いろいろな面を考えて我々はやってきたつもりなのです。だから、この放射線の問題になると科学的な問題と医学的な問題が物すごく大きなウエートがあるわけですから、それを勉強しながらやってきたわけです。形の上でどうまとまっていくか、これから幾らでもできると思うのですが、中身をしっかりしなければいけないと思うのです。それは、今のようにいろいろな面を考えて我々はやってきたのですが、それは今生きている被爆者に対するものでなければいけないでしょう。やがて被爆者もまたできるだろうから、準備のためにやるのではないです。私に言わせると、被爆者の寿命のことも考えなくてはいけないですよ。

 だから、私は、広島では7団体とともに安倍さんにもやりました。そうしたら、安倍さんが年内には必ず検討会から結論を出してもらいますということを所轄官庁の大臣に指示しますと言われたのです。長崎でもそうだったのです。この前、厚生労働大臣と会う機会がありまして、被団協と原告団と司法の弁護士会のほうと。そのときに大臣は、検討会のことを参考にしたいと、そればかり一生懸命やると。そうすると、ますますこの検討会というのは重いものだなと思って、私も生きるだけ生きていきたいと思うのですけれども、被爆者の目の前の問題もあると。やがて福島の問題にもひっかかるかもわかりませんが、いろいろ修正は小さいところがあっても、もう大きくはこれで行こうと。それはやはり「新しい審査の方針」にあるわけでしょう。それにプラス裁判のほうの問題が出てくるから、それも大いに入れ込まなければいけない。しかし、それだけではない。我々は科学の世界、医学の世界から勉強しながらやっていかなければいけないと思いますので、中身のほうをもう頑張っていこうではないかということです。

○神野座長 ありがとうございます。重く受けとめたいと思います。

 どうぞ。

○荒井委員 4ページについて、かなりこれは残留放射線問題のいわば結論的なところを捉えていると思うのですけれども、この問題の出発点としては、やはり田中委員のほうから、司法はある程度そこを評価しているのだけれども、行政は残留放射線の問題をほとんどネグレクトしているのではないかという趣旨の御指摘があって、いや、それはそうではないのではありませんかと。全く行政も残留放射線問題をネグレクトしているわけではないでしょうという議論があったわけですよね。それで、科学的知見としてはどういう捉え方があるのかと。それから、司法はやはり個別司法だからということで、そこの影響性を行政がどの程度に受けとめるべきかというような議論があったと。ここで具体的にいえば、行政は残留放射線の影響性について考慮していないとか、無視しているとか、それはそうではないのだという議論を少し拾い上げておいていただくほうが議論の経過も出るのではないだろうかと。ここに書かれていることはこのとおりかもしれませんけれども、いわばその前後の議論の経過を少し書き込んでいただければと思います。

○神野座長 ありがとうございます。

 ほかはいかがでございますか。

○草間委員 ちょっといいですか。

○神野座長 どうぞ。

○草間委員 それに関連して一番最後のフレーズが、残留放射線については「制度設計として取り込めないと割り切る」という、これはもう既に新しい審査の基準でも残留放射線については取り込んでいるわけです。だから、制度設計に取り込めないと割り切ってしまうということになると、新しい審査の指針も何かということになってしまうので、だから、例えば、現状の審査以上の知見を取り込むことができないとか、何かそういう形にしていただかないと、今のこの書き方だと残留放射線については制度に取り込めないような形になってしまうので、正確に書いていただいたほうがいいかなと思いました。

○神野座長 出されたもともとの意見と参照しながら、そうでない意見もあったということを比較させていただきます。ありがとうございます。

 ほかはいかがでしょうか。

○田中委員 2番目の「健康に影響を与えるような量が確認されたことはない」というのが科学的知見であると。これは長瀧先生もそうおっしゃいましたけれども、何かここは言い切っていいのかなと。例えば、内部被曝の影響もどうするかという問題もありますし、裁判で争った人で広島の近距離の建物で長い間救護をした女学生の方がいました。あれは随分遅く入っているのですけれども、明らかに同級生がたくさん早い時期にがんになっているので、私たちは影響があったと思っていまして、司法は認定したのです。2週間以後にたしか入ってきて2週間近く滞在していたのですが、あれはたしかコンクリートの建物なのです。コンクリートの建物の場合は鉄筋がたくさん使われているので、その鉄筋にあった誘導放射線が長期間あったこともあり得るのではないかと思っていたりするのです。だから、ここまで言い切ってしまっていいかどうか、私は疑問に思います。三好女学校という。

○神野座長 わかりました。いずれにしても、主な意見というか、議論を拾っているだけなのですが。

○田中委員 はい。そういう場合が。

○神野座長 実態について、何か長瀧委員から御意見があれば、頂戴しておきますが。

○長瀧委員 いや、特別に今ここではございません。

○神野座長 そうですか。わかりました。

○長瀧委員 例えば、この上のほうの「積極的認定範囲を広げる根拠となるほどの知見はない」というのが、草間委員が言われたように、影響は相当小さく積極的に広げる根拠となるほどの知見はないと、これがある程度結論にあるわけですね。

○神野座長 はい。ここではそういうことになるわけですね。

 それでは、時間がございませんので、またもとに戻っていただいても全然構いませんから、5ページ目の件に関してはいかがでございましょうか。よろしいですか。次の6ページも一緒に考えていただいても、関連いたしますので、構いませんが。

○長瀧委員 ここで、疾患に関して国際的にも我々の検討会でこう決めたという議論のときに、放射線にかかわる疾患の確定的影響と確率的影響があるということは、もう全ての教科書に書かれていますし、ですから、3.5キロ、がんというのは確率的な影響であって、どんなに少なくても起こるというものであるし、あるいは、急性影響のように、ある被曝を浴びてある期間にものが起こらなければ、もうそれは影響がないと決めるという2つの大きな分け方がありますけれども、どうも日本の文章の現在の規定で見て放射線起因性が認められるということは、また改めてついているところは、どうも確定的影響の疾患がついているような感じがしまして、そうすると、やはり確率的影響と確定的影響は感覚的には分けて考えるということが、ここで疾患の場合に必要ではないかなと感じます。

○神野座長 ありがとうございます。

 あといかがでございましょうか。

○荒井委員 よろしいでしょうか。

○神野座長 どうぞ。

○荒井委員 5ページと6ページは関連していると思いますので、どちらかというと6ページのほうについての意見なのですが、下のほうに、枠組みの中では認定範囲の明確化に努めるべきだと。これに関連して、下の3つ目のポツの「新しい審査の方針」の書きぶりを整理したほうがいいと。

 それから、最後のところで白内障、前立腺がん、心筋梗塞が例示されておるのですが、もう少しここをふやしていただければと思うのは、やはりがん、白血病のたぐいと、それから、新しい審査の方針で「放射線起因性のある」という枕詞のついた追加された疾病とでは、やはりここでの議論、あるいは長瀧先生の前回いただいた御説明、あるいは資料によっても、かなり放射線との関係性というのは濃淡があるように思うのです。そうすると、新しい審査の方針の書きぶりをただわかりやすく整理するというだけではなくて、むしろがん、白血病とそれ以外のものとはいろいろな意味で違うのだということをもう少し明確にしていくほうが、恐らく科学的な説明もしやすいということになりましょうし、また、司法と行政とのギャップとの関係でいえば、これは推測しかできないのですけれども、新しい審査の方針で追加された疾病というのが、放射線起因性はやはり線量単位で考えていくしかないということをどの程度司法が理解しておられるのか、そこに若干私は疑問を持つこともあるのです。そこを明確にすることによって、幾らかそういう意味でのギャップというのがあるとすれば、解消していくきっかけになるのではないかと思いますので、6ページの一番下のポツの「無制限に認定するのは適当ではないのではないか」ということをもう少し敷衍して、新しい審査の方針でもそこは明確にしていくべきではないかという趣旨をつけ加えていただけると、ありがたいと思います。

○神野座長 ありがとうございます。

 ほかはいかがでございますか。よろしいですか。

○田中委員 その区別、何かつけることが認定にかかわるのですか。もう前から私も手当と認定とかごちゃごちゃに議論されてきたのであって、何か条件をつけるとがんと非がんでは何か違うということは認定にかかわるのでしょうか。認定できるか、できないか。

○荒井委員 もちろん、そうです。認定の要件のところで明確にしてもらったらいいのではないかという意見でありますから。

○田中委員 それで、大阪の裁判、そればかりではなくて、前の集団訴訟の中の裁判も、非がんの疾病でかなり認定すべきだという司法の判断がありますね。それは間違いだと。何が間違いなのですか。

○神野座長 分けたほうがいいとおっしゃっているわけですよね。長瀧先生の言葉を使えば、明確に確定的と確率的に分けたほうがいいという御意見ですよね。そうではないのですか。

○荒井委員 いや、そこまで私は専門的なことを言っているわけではありませんで、やはりがん、白血病と比べると、追加された疾病というのは関係性がかなり薄いものも含まれていると。いわゆるグレーゾーンも含まれていると。そこの趣旨をはっきり書いていくべきだろうと。認定と給付とは違うということをしばしばおっしゃるのですけれども、あくまでもこれは新しい審査の方針に書いてあるのも認定の要件なのですね。だから、田中委員のおっしゃることは、私はよくわからないのです。

○田中委員 認定の要件ですから、2つか、種類があったらその認定をどうするのかという最後の結論になりますよね。認定をどうするかということでしょう。原爆症と言うか言わないかでしょう。そうすると、がんと非がんとは差があるといったときに、その差は認定でどう出るのでしょうか、というのが私の質問です。

○荒井委員 それは具体的に要件を書いてみなければいけませんけれども、私が言うのは、そのほかも全部がんや白血病と同じように3.5キロとか、時間的な制限の中では、積極的に全部認定していくということではないのだということを明確にするということです。ですから、あくまでも認定の要件というレベルでの話です。

○田中委員 そうすると、今の方針から外れることになりますね。今の方針は、積極的認定があって、その中で放射線起因性のあるものという条件をつけてしまったのですよね。この前は3.5キロとか。

○荒井委員 いや、積極的認定はいいのですけれども、現在だって、積極的に認定するのに縛りがかかっているのです。がんや白血病と、下の放射線起因性があるというほかの病気とでは、そこは区別されているのです。ところが、それをあえて誤解されている向きも私はあると思うので、全てその下のほうの白内障とか心筋梗塞についても、3.5キロ、100時間という時間的、距離的な制限に合っておれば積極的に認定されるべきなので、外しているのはおかしいという議論が結構出ていますよね。そこは違うのではありませんかと。

○田中委員 行政は区別していたのです。でも、放射線起因性があると言われているだけで、基準ではその区別がはっきりしないでしょう。だから、それがまた新たな裁判になってしまったのですよね。それを司法はまた認めろという判決をみんな出したのですよね。

○荒井委員 司法との問題ということになると、またかねがね出ているような一般論になってしまうのですけれども、大阪の判決を含めて、やはり個別判断にすぎないということを私は言っているわけです。

○草間委員 よろしいですか。

○神野座長 どうぞ。

○草間委員 いずれにしましても、先ほど長瀧先生からも御発言があったように、ここに関しては、やはり確率的影響と確定的影響についてはしっかり分けて考えていきましょうということで、そこをしっかり書いていただいて、少なくとも白血病を含めたがんに関しては、もう3.5キロ以内という形になっているので、そこは確率的影響の適用をするものであり、確定的影響とは分けて考えていきましょうというのを明確に最終的な報告書の中で書いていただくということが大事なことではないかなと思っています。その後の細かい基準をどうするかというのは、ここの問題ではないと思いますので。

○神野座長 と、私は荒井委員の意見を理解したのですが、それでよろしいのですよね。

○荒井委員 結構です。

○神野座長 ということをさっき確認をとったのですが。

 ほかはいかがでございますか。

 またこれも戻っていただいても構いませんので「(2)要医療性」のほうに入っていただければと思います。この要医療性に関してはいかがでございましょうか。

 どうぞ。

○田中委員 私は質問があったのです。括弧の中の一番上のところに書いてあるのは、治癒する見通しの高い疾患は対象疾患とするべきではないという意味でしょうか。要医療性に関して、治癒する見通しが高くても、病気になっている間は要医療性があるのですよね。それを対象疾患にするべきではないという意味がわからない。しかも、早く治るものにしても、治療している間、1年にしても、その間はやはり認定をしなくてはいけないので、対象にする必要はないとか、してはいけないとかというのはおかしい表現ではないかと思うのです。という意見があったということなのですが、どなたの意見か覚えていないのですけれども。

○神野座長 これは、下からだと下の意見から拾えているわけですけれども、これはあれかな。

○田中委員 これも真ん中の議論の趣旨からいけば、やはり手当が絡んできてしまったのですね。だから、認定はするけれども、手当はまた別の処置をとってもいいのではないかというのであればわかるのですが、認定の対象疾患から外せというのはやはりおかしいのではないかと私は思います。いつもごちゃごちゃに議論をするから、こんな言い方になってくるのではないか。

○神野座長 丸ポチの2番目の御意見から拾っているのですね。

○田中委員 そうでしょうね。

○神野座長 「病気が治癒する見通しが強く持てるようならば、あえて手当の対象として広げる必要はないのではないか」という御意見があったので、それを拾っているという感じです。

○田中委員 これはおかしいですよね。これは皆さんも合意していただけますよね、この表現は。

○神野座長 これはいかがですか。

○高橋委員 やはり何かはしょった書き方になっているような気がしますね。もう少し正確に書いていただいたほうが、確かにこの表現だとおかしい気がします。

○神野座長 あとはいかがでしょう。8ページ目の「(3)手当の区分の設定、基準などについて」はいかがでございましょうか。

 時間もないので、それでは、9ページ目のほうの「(4)司法判断と行政認定の乖離の解消について」とまとめられているところについては、いかがでございましょうか。

○田中委員 よろしいですか。

○神野座長 はい。

○田中委員 判例はみんな個別判断だと。それを一般化して基準に設定するのは難しいという書き方になっているのですけれども、一人一人の原告に対する判断は個別判断なのです。しかし、私どもも集団訴訟をやったために、例えば、集団で10人とか20人の判断をどうすべきかという判例がやはり書いてあるわけですよね。そのことは1つの傾向として基準の中に生かしていかないといけないのだと私は思うのです。これもたしか高橋先生から、たくさん例があるものは一般化するという、どういう表現だったか覚えていないのですけれども、何かおっしゃっていただいたと思うのですけれども、そういうことであろうと思うのです。原告については個別なのですけれども、大量の人たちが同じ傾向の判断を示されて、行政が誤りを指摘しているということは必ず取り上げないといけないことではないかと思っておりますので、ここの表現は適切ではないのではないかと思います。

○神野座長 これも繰り返しですが、意見が出ているので2つ書いているということです。だから、田中委員の御意見は上のほうになるわけですね。つまり、判例に基づいて認定の方法を改めるべきということですよね。大体判例で共通している考え方や何かがあるのだからという御趣旨の御発言ですよね。

○田中委員 そうです。はい。

○神野座長 こういう意見もあるので拾っているということでございますが、これについて何か御意見があれば頂戴しておきます。さっきも濃淡をつけろというようなことがある場合に、どちらのほうにウエートがかかるかというようなことを含めて御意見を頂戴できれば。

○高橋委員 この下の意見を上の四角の中に集約するときにやはりはしょりがあって、結果的に誤解を招くようなことになっているのではないか。要するに、司法判断は個別の判断だから、取り入れてもしようがないということで議論が出発しているのであれば、そもそも乖離を埋めようなんていう話にはなっていないわけですから、やはりそこは四角の中をもう少し丁寧に書く必要があるのかなとは思います。

○神野座長 ありがとうございます。

 どうぞ。

○潮谷委員 少し論議が戻る形になるのですけれども、8ページのところの私の理解は、この四角のところの「区分の導入には慎重にすべきとの意見がみられた」という、そうではなくて、これは区分の導入そのものを慎重にすべきというようなニュアンスになっているのですけれども、区分の導入に慎重な意見というところの中身は、むしろそうではなくて、区分を導入した場合にこういった丸ポツ2つが出てくるので、それに対して慎重な意見があったと、このような理解をしているのですけれども、そこはいかがでしょうか。私の理解が違っていて、本来的には区分の導入そのものを慎重にすべきという形だったのでしょうか。

○神野座長 そういう意味では、意見はどうとでもとれるようなことになりますよね。つまり、区分をやると2番目のようなことが起きるので、区分そのものは入れるべきでないということなのか、丸ポチ2つのようなことがあるから、区分を入れるにしても、その入れ方について慎重なのかと。発言内容ではそこは必ずしも明確ではなかったというのが私の印象ですが。

○荒井委員 私も8ページに戻らせていただくと、ここで上の黒枠で書いてあるほど区分の導入に賛成と反対の慎重論とが対立していたという理解ではなくて、むしろ区分ということがうまくできるなら、それはベターではないかという意見のほうが大勢ではなかったのでしょうか。今、潮谷先生がおっしゃった、下のほうの導入に慎重な意見の最初にある「絶えず変化する症状に応じて額を変更するのは」と、これは確かに議論になって、私も、症状に応じてというのは現実的な制度としては無理でしょうと。むしろ病気、疾病の態様といいますか、例えば、そもそも命にかかわる病気かどうかというところで区別なり、段階づけをしていくことは可能ではないかというような議論をしたように記憶しているのです。そういう意味では、もうちょっとこれまでの議論を整理、見直していただいて、どちらかというと区分の設定はそう大きな意見の違いはないというまとめ方で、それを区分していくときにどういう点に注意をしていくべきかという点についてのさまざまな意見があったという方向で整理していただくほうが実情に合っているかなと思います。

○神野座長 それはよろしいでしょうか。

 高橋委員、どうぞ。

○高橋委員 おっしゃるとおりだと思うのですが、それに関連して申し上げると、この最後の一文も「現行よりも手当額が下がる人が出てくるのではないか」と。下がる人が出るかもしれないから問題だ、だめだと捉えてしまうべきではないのではないかなと。たしかここでは、不公平が出ないようにするためにはむしろ下がってもしようがないと。ただし、経過措置をつくるべきだという議論だったように思います。だから、決して障害にはなっていないと思うのですが。

○神野座長 わかりました。

 どうぞ。

○山崎委員 一定の配慮という言い方でしょうか。

○神野座長 わかりました。ありがとうございます。

 大体そういう方向であれば、いずれにしても、四角で囲っているところは、主な議論、つまり拾った議論のまとめですので、まとめでいいかどうかということで、今のように言っていただけると、こちらもまたこれを少しフェーズを上げて書けますので、ありがたいと思います。

 この「(3)手当の区分の設定、基準などについて」は、ここで特に御意見がなければ、今のような御意見の趣旨として読ませていただくということにさせていただければと思います。

 あとはいかがでございましょうか。9ページのほう、9、10とまたがりますが。

○高橋委員 9、10ページの乖離の問題で、一つ一つの議論は確かにこうだったと思うのですが、先ほども別のところでありましたけれども、乖離がどこから生まれて、それがどこまで埋められるのかということについての議論の経過があったわけですから、論点を並べるだけではなくて、過去の行政の対応も含めて、ここで出た意見も含めて、やはりその埋めようとした経過というのを少しきちんと整理したほうが、多分これを前のほうに持っていくのだと思いますので、そのときにはいいのではないかと思います。

○神野座長 ありがとうございます。

○田中委員 いいですか。

○神野座長 では、どうぞ。

○田中委員 そのときに私が前から主張したかったのは、結局、乖離の基本になったのは、さっきも言いましたけれども、法律の趣旨を正しく理解、相互がどう解釈しているかというのをここで十分に議論できなかったからではないかと思っているのです。司法は最高裁の判例をずっと持ってきて、この法律には国家補償的配慮のある法律であるということを言って、科学的な起因性について余りこだわってはいけないということを言っているのです。そういう流れの中で高度な蓋然性と言っているわけですから、相当な蓋然性ではだめだという意味での高度な蓋然性であって、放射線起因性を厳密に言わないといけないということを言う高度な蓋然性ではなかったはずなのです。そこの解釈がやはり一番大きいと私は思っております。これを議論できなかったような気がするのですけれども、そのことをぜひ考慮して記述していただければなと思います。

○神野座長 高橋委員、どうぞ。

○高橋委員 この委員会でさんざん議論してきたことは、まさにそこの趣旨を踏まえているからだと思うのです。過去の行政のあり方も反省しながら、より歩み寄っていこうということで議論してきたと理解しています。ですから、いわずもがなと言うと言い過ぎかもしれませんが、そういう法の趣旨があるからこそ私たちは議論をしていると、そのぐらいのことは言ってもいいのかもしれないと思います。

○神野座長 ありがとうございます。

 荒井委員。

○荒井委員 冒頭で発言させていただきました1ページの「方向性について」というところで、現在の認定制度が破綻していると見るのかどうかというところを補充していただければと思います。

 それと関連すると、これも冒頭で申し上げたことですけれども、9ページ以下の司法と行政認定の乖離の解消は各論的なものではなくて、むしろこの検討会の議論に何か伏流水みたいにずっと流れていたテーマだろうと思うのです。だから、どちらかというと総論的な検討項目だと思いますので、私も具体的なイメージがまだ整理できていないのですけれども、2ページのテーマごとの議論についてよりはやや前のところに位置づけていただいて、どうしても後のこのテーマごとの議論に全部これは関係してくるのですね。前のほうに持っていっていただくほうが全体としてわかりやすくなるかもしれないという、まだ余り自信がないのですが、御検討をいただければありがたいと思います。

○神野座長 あと、いかがでございましょう。

○田中委員 並べ方の問題もあって、私は並べ方について最初に申し上げましたので、乖離の問題を最初に持ってきて、それから認定をどうするか、手当をどうするかということになって、最終的に制度をどうするかという議論に組み立てていただければいいなと思っておりますので、ぜひお願いしたいと思います。

 それと、2つ目の括弧の中に「乖離は完全には解消しない」という表現がありますけれども、乖離というのが一人一人の原告の判断の違いを言うのであれば、そうかもしれませんが、さっきも申しましたように、基本的な考え方の乖離ですから、それを解消しないと言ってしまうと、結局、個別判断ですよというところに戻ってしまいますので、たしか荒井委員がおっしゃったような気がするのですけれども、こういう表現はしていただかないほうがいいかなと思います。

○神野座長 あと、いかがでございましょうか。よろしいですか。

○長瀧委員 よろしいですか。

○神野座長 長瀧委員、どうぞ。

○長瀧委員 先ほども申し上げましたけれども、行政との乖離というとある範囲に限られてしまうので、我々は、被爆者の援護ということがこの委員会の一番の意義ですから、裁判にかからないもう明らかな被爆者がいっぱいいるということ、それはやはり一緒に議論しなければいけないのではないか。決して裁判にかかる人たちが被爆者ではない。もっともっと大変な思いをした被爆者もいるのだと。その人たちの援護をやはりきちんと議論して、そういうものがあるのだと、科学的に証明された影響があるのだということをどこかにきちんと押さえた上で、今、議論になっている、あるかないかとは別個にはっきりとこの委員会としては援護の中に入れていただきたいと。それはもう科学的にも証明されているものがあるということをぜひお願いしたいと思います。

○神野座長 わかりました。

 あと、いかがでございましょうか。

○荒井委員 9ページから10ページにかけての田中委員の御指摘の、乖離は完全には解消しないというのが、ぶっきらぼうといいますか、余り印象はよくないですね。これは私の発言、あるいは高橋滋委員の御発言にも関連していたかと思うのですけれども、そもそも行政と司法との役割が違うのだということから、乖離と言われるものについて埋めていく努力は必要だろうと。そういう制度設計なり、運用に向かっていくことが必要であると。しかし、やはり役割が違うことからして、乖離が残ることはやむを得ないところがあるというニュアンスだったのです。だから、完全には解消しないというと何か切り捨ててしまうみたいな感じなので、真摯な議論をしてきた経過からいうと余り適切ではないかもしれませんので、表現を工夫していただければ。

○神野座長 ありがとうございます。

 どうぞ。

○山崎委員 乖離は一定程度は残らざるを得ないということではないかなと思います。

○田中委員 その場合は最高裁まで行くことになるのでしょう。今度の集団訴訟はそうでないやり方をしましたけれども、その場合はもう最高裁まで行ってどちらか判断をつける。その場合はもう乖離というよりも、お互いがそこで納得するしかないのではないかと思いますが。

○神野座長 ありがとうございます。

 あと、いかがでございましょう。最後の「(5)国民の理解など」につきましては、いかがでございましょうか。

 どうぞ。

○潮谷委員 先ほど長瀧先生が少しお触れになったのですけれども、今回は各論的なところをどうするかという、この委員の了解をとるということが中心になっていますけれども、しかし、私は、やはりその援護の対象に、申請しなかったり、あるいは申請しても却下されたり、あるいは逆に自分の意思の中で申請しないと思っている方々も被爆者の中にはいらっしゃると思うのです。ですから、今後の総論としての方向性の中で、被爆するという本当に不条理な中で被爆した方々がいるということを私たち国民はしっかりと理解をしていくという、そのアピール性と制度をどのように設計していくかということをきちんとリンクさせて、方向性を見出していくということが大事なことではないでしょうか。

 冒頭に申し上げましたように、今後、原爆ということに対して、ドクターの側から、あるいは行政の側から、それからまた当事者の側から、そういった不条理な中で起きたのだという共感といいましょうか、そういったことをやはり国民にきちんと理解していただかないと、どこかで認定をされた方々に対してあってはならないバッシングが出てくる可能性もあるのではないかと思います。将来的な方向を踏まえて、国民の理解という点では、そういったこともこの委員会の中では認識したということが大事と思います。

 以上です。

○神野座長 ありがとうございます。

 ほかはいかがでございましょうか。

 荒井委員、どうぞ。

○荒井委員 同じ趣旨のことを、田中委員の御発言で、裁判所は援護の制度であることをよく理解しているけれども、行政は必ずしもそうではないと聞こえる御意見があったと思いますので、裁判所はもちろんそうでしょうし、行政もこの今の原爆症認定制度というのは、援護法の運用として医療分科会を置いて、そこで検討、審査しているわけですよね。そうすると、援護法の冒頭に書いてあるのは、これはやはり援護対策を講じるという法律なわけですから、我々も援護ということは当然の前提として、その具体的な内容をどこまで考えるのが適当かということで議論をしているわけですから、当然といえば当然のことですけれども、そこは最終的な報告で再確認しておくほうがいろいろな意味で社会的に国民的な理解も得られやすいのではないかという気はいたします。田中先生の御指摘の中の、科学は科学だけれども、援護という思想といいますか、そういう考え方が前提に、根底になければいけないという御趣旨は、私も全く同感なのです。だから、それは最後のまとめのときにやはりはっきりと確認しておいたほうがいいと思います。

○神野座長 ありがとうございます。

 田中委員。

○田中委員 お言葉を返すようですけれども、司法が繰り返し言っているのは、行政はそう考えているかもしれないけれども十分でないよということなのです。全ての判決でほとんど言っていますから。考えていないと私は言っているのではないのです。司法はそこを強調しているというのを申し上げたのです。

○神野座長 ありがとうございます。

 ほかはいかがでございましょうか。よろしいですか。

 それでは、そろそろ定刻でございますので、資料の全体をもう一度見渡していただいて、言い残した点や、少し時間の関係で先を急ぎましたので、発言できなかったようなことがあれば頂戴したいと思います。

 どうぞ。

○荒井委員 多少重複になるかもしれないのですが、議論の経過をなるべくあらわして書き込んでいただければということの1つに、結論的なこういう意見があったというだけではなくて、Aという意見に対してどういう見地からどういう内容の反論があったということについても、全てというわけにはいかないと思いますけれども、大事なところは、なぜ1の意見がまずいのか、2の意見がまずいのかということについての意見も少し拾っていただくほうが議論の経過が分厚くなるのではないかと思います。

○神野座長 ありがとうございます。

 あと、いかがでございましょうか。よろしいですか。

 それでは、この辺で今回の検討会の議論は閉めさせていただきます。

 最後まで熱心に御議論をいただき、また、生産的な御意見を頂戴したことを深く感謝する次第でございます。

 本日頂戴いたしました御議論を踏まえて、私のほうで事務局のほうに御協力を得て、できれば報告書に向けた骨子みたいなものを次回お出ししたいと思います。きょうは大変大きなさまざまな意見をいただいておりますので、どこまで結論めいたものを書き込むかどうかというのは、今、思案しますけれども、構成などについては、この検討会のそもそものミッションがわかるような形にするとか、それから、例えば、きょうの資料でいきますと、四角囲いのように委員の皆様方の意見をまとめると、高橋委員からも御指摘がありましたが、どうしても不親切といいますか、丁寧さが欠けるという場合もありますので、骨子ですからそれそのものが報告書になるわけではない、いわゆるぼきぼきみたいなものになってしまうけれども、とはいえ、なるべく誤解を招かないようなことに気をつけつつ、それから、やはり最後に荒井委員からも御指摘がありましたけれども、この委員会ができた経緯を含めて、この委員会でやってきた議論の経緯その他も読み取れるような、行間ににじみ出るような形にさせて骨子を提出させていただいて、それに基づいてまた御議論を頂戴できればと思っております。

 何か御議論がなければ、閉めさせていただきますが。

○田中委員 要望なのですけれども、事務方は大変だと思うのですが、これからの議論は非常に重要になると思いますので、どういうことを議論されるかというのはもう少し早い時期に私どもにいただければありがたいなと思っています。

○神野座長 可能な限り早くいたします。

 それでは、本日の検討会はこの辺で閉じさせていただきたいと思いますが、事務局のほうから連絡事項がありましたらお願いいたします。

○榊原室長 次回の日程につきましては、日程を調整の上、追って御案内いたしますので、よろしくお願いいたします。

○神野座長 それでは、本日の検討会はこれにて終了させていただきます。皆様方に貴重なお時間を頂戴して、また、熱心な御討議をいただいたことを重ねて感謝申し上げて、終わらせていただきます。

 どうもありがとうございました。


(了)

照会先
健康局総務課原子爆弾被爆者援護対策室
代表: 03-5253-1111
内線: 2317・2319

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