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2013年10月18日 第2回労働市場政策における職業能力評価制度のあり方に関する研究会議事録

職業能力開発局能力評価課

○日時

平成25年10月18日(金)10:00~12:00


○場所

中央合同庁舎第5号館専用17会議室(16階) 
(東京都千代田区霞が関1丁目2番2号)


○出席者

参集者

今野参集者(座長)
阿部参集者
大久保参集者
北浦参集者
黒澤参集者
笹井参集者
谷口参集者
松浦参集者

事務局

杉浦職業能力開発局長
伊藤能力評価課長
篠嵜主任技能検定官
小野能力評価課企画調整専門官
鈴木職業安定局派遣・有期労働対策部企画課長
岡労働基準局労働条件政策課労働条件確保改善対策室長

○議題

1 労働市場政策における職業能力評価制度のあり方について

2 その他

○議事

○今野座長 ただいまから「第2回労働市場政策における職業能力評価制度のあり方に関する研究会」を開催します。本日は北浦委員が若干遅れて参加されます。また、内藤委員は御欠席です。

 議論に先立ちまして、第1回研究会で欠席された委員の方を紹介させていただきます。まず中央大学経済学部教授の阿部委員です。

○阿部参集者 よろしくお願いします。

○今野座長 国立教育政策研究所生涯学習政策研究部長の笹井委員です。

○笹井参集者 よろしくお願いします。

○今野座長 それでは、前回の委員の意見等を踏まえ、事務局で資料を用意していただいていますので、まず説明をお願いしたいと思います。

○伊藤課長 能力評価課長の伊藤です。よろしくお願いします。

 それでは、お手元の資料の14について、今回御議論いただく追加・補充の材料という位置付けで御説明したいと思います。資料の1は、前回、第1回の研究会で委員の皆様から頂戴した御意見を、私ども事務局のほうで要点としてまとめさせていただいた資料です。技能検定のカバレッジ等のデータ分析、資格の意味付け、それから、この研究会での議論の焦点や枠組み、また国際的動向などについて、ここにあるような幅広い御意見を頂戴したところです。

 このうち、特に今ほど申し上げました3点目、この度の研究会での議論の焦点、ターゲット設定について、特に多岐にわたる御議論を頂いたということで、次の資料の2として、2枚ものの資料を私どものほうで、いわば叩き台ということで準備させていただきました。

 資料21枚目は、基本的に前回の研究会でお示しした資料と一緒ですが、右下の赤枠の部分を付け足しています。前回申し上げましたように、今回の「職業能力の見える化」に関わる議論は、6月閣議決定の日本再興戦略に示されました「多元的で安心できる働き方の導入促進」をはじめとして、上記にあります労働市場政策上の課題を踏まえての業界検定等の能力評価の仕組みを整備し、職業能力の見える化を促進するという観点から、評価制度全般について御議論いただきたいというものですが、前回の皆様方の御議論を踏まえ、右の赤枠ですが、この具体的な検討に当たって、能力水準、労働移動の形態、対象者の属性、業種・職種などの各観点から、今ほど申し上げたような政策目的・着眼点に即したものであるかどうか。それから施策の有効性、検定などのツールが労働市場上「効く」のかどうか。そして実効性、コストや手間などの制約も踏まえた上で実際に活用されるのか。また、代替性、同等以上の有効性、実行性を備えた他の政策手段が仮にあるとするならば検定等というのは必ずしも使われないだろうといった切り口から、予めターゲット設定を明確化していく必要があるのではないか、というように一旦整理させていただきました。

 その次の資料です。いささかテクニカルな資料で恐縮ですが、今申し上げたような考え方の枠組みを踏まえて、本研究会の検討のターゲット設定の考え方の試案として、準備させていただいた資料です。今ほど申し上げましたが、能力水準、労働移動の形態、業種・職種等、こうしたディメンジョンを設定した上で、職業能力の見える化の有効性、実効性等と活用可能性の水準と言いますか、グラデーションといったものについて、整理を試みた資料です。

 それから全体の構造ですが、今申し上げたディメンジョン、これが3つ以上あるものですから、1つのマトリクスに収まりきらないということで、いささか複雑になっているのですが、まず上のほうの図です。縦軸が1業種職種固有の知識・技能の水準、横軸が2労働移動の形態。3対象者の基本属性は、これらと完全独立次元ではありませんので、それと関連づける形で軸の設定はしていません。それから、独立した別の軸として、下に4労働移動先の業種・職種(分野)。まず、こういった枠組みの設定をしています。

 その上で最初に、上の縦軸、1業種職種固有の知識・技能の水準です。これに関して、前回のエントリーレベルということも何回か出てまいりました。下のほうがエントリーレベル、上に行くと、字が隠れて恐縮ですが、これはもともとハイエンドと書いてあるものです。まず1点言えることとして、この縦軸を設定した場合に、社会通念上のエントリーレベル、これが横のずっと線で引いている部分ですが、まずこのエントリーレベル未満の領域では、いわば業種・職種・能力別の能力が十分備わってないということで、ここは基本的には評価のしようがないのではないかということで一旦整理をしています。その上で、エントリーレベル以上のレベルに関しては、縦の紫の矢印ですが、水準が上がるほど、能力のあり様が個別化し、また、評価のコスト、負担増というものが生じるのではないか。いわば実効性の観点です。

 それから、キャリアアップ支援の切実性、政策目的の観点で言うと、一般的には下の水準ほど、支援の必要性が高いのではないかということを、論点として触れていまして、この矢印のグラデーションの濃いほうが、全体としては必要性が高いのではないかという大まかな意味合いです。

 次に横軸、労働移動形態等です。ここでは上のほうにいきまして、1企業内キャリアアップ、2産業内・企業間転職、3産業間転職、4は、いずれにも該当しない、いわば職務経験ではなく教育訓練の成果による新規入職という、大まかな4つの分類をさせていただいています。

 これらの関係ですが、上の黄色っぽい横矢印です。左に行くほど、非常に端的に申し上げると、それまでの職務経験をより直接的に活かすことが可能な移動形態ということが言えるのではないだろうか。とするならば、大まかに言うと左のほうほど、移動時の能力、キャリアの水準というのは、相対的には高くなる。

 それから、検定等の一定標準化された評価指標の活用可能性も、より大きなものになるのではないだろうかということで、これも矢印の色のグラデーションについては、左のほうを濃くしている。ですから大まかに言うと、この2つの次元の中では下ほど、また左ほど、検定等を指標として活用した「職業能力の見える化」の有効性、実効性、活用可能性は高いということが、大まかには言えるのではないだろうかということです。

 それを踏まえて、この色の意味合いですが、左下の凡例にありますように、濃いピンクが今回の見える化議論の重点分野と、大まかには言えるのではないか。その下の薄いピンクが、対象にはなるけれども濃いピンクほど重点とは言えないのではないか。それから、下の白抜きです。これは、ほかのアプローチがマッチング等上、効果的と考えられるのではないだろうかという、大まかな考え方の整理です。

 という考え方で、この濃いピンクの部分については、上のマトリクスで言いますと、エントリーレベルよりも上の領域で、それぞれの労働移動の形態ごとに存在するのだけれども、企業内キャリアアップ、あるいは産業内企業間転職のほうが、3,4に比べると重点のエリアが、縦軸でより広くなるのではないだろうかということを示しています。

 しからば、それより上の部分については何ら手立ての講じようがないかというと、そういうことではないだろうと考えています。例えば1,2の薄いピンクの部分で申し上げますと、検定等の評価ももちろん有効です。ただ、レベルが上がるほど、先ほど申し上げた客観評価の設計、あるいは運用上の負荷が高まるという点と、それから仕事ぶり評価のウエイトが高くなるといった点について留意する必要がある。いわば組み合わせが必要ではないかということです。

 それから、23の一番上の白抜きですが、当然、能力評価を踏まえたキャリア支援というのは必要になってくるのですが、そこでは検定など、いわば標準化されたツールと言うよりは、高度なキャリア・コンサルティングなどを通じた個別評価、それらを踏まえたマッチングキャリア支援という、いささか別のアプローチが必要になるのではないかといった考え方を、ここでは示しているものです。その上で前回も御議論いただいたような、対象者の基本属性で、若年・非正規雇用労働者、子育て女性、リスクにさらされたミドル層等と、なかなかきれいに対応はしないのですが、大体この辺りに対応するのではないかということを、吹き出しでお示しをしている。これが上のマトリクスです。

 それから、下の4労働移動先の業種・職種(分野)、これもなかなかグルーピング、分類等は難しい部分がありますけれども、大まかに下にあるように、医療福祉等の専門職サービス分野、運輸等分野、ものづくり技術、ものづくり技能、それから業種共通の事務系分野、更に左記以外の販売、生活サービス等のサービス分野といった、大まかなグルーピングをさせていただきました。更に、それから完全にはみ出す形で、非ジョブ型採用、メンバーシップ型の採用というグルーピングを、ここでは仮説的にさせていただいています。

 このジョブ型の左側のグループについての軸ですが、水色の横向きの矢印です。左に行くほど職務内容・職業能力が、個々の顧客ニーズ等というよりも、制度や技術によって規定される度合が大きいのではないか。言い換えれば、予見性が高い、あるいは恒常性が高いということが言えるのではないだろうかという点と、もう1点は左に行くほど職業能力と、顧客等の生命・安全確保のレリバンスが、より高いのではないかという概念設定をしています。

 こういった考え方で整理しますと、左側のabc辺りについては、既存の免許型等の資格が一定機能している。もちろんこれが十全かどうかということは御議論いただきたいと思いますが、という意味で薄いピンクに整理をしています。ものづくり技能については、技能検定制度があるわけですが、後ほど事例でも紹介しますが、外部労働市場での活用は限定的ということで、ここは濃いピンクで整理をしています。また、業種共通の事務系分野、サービス分野については、外部・内部市場を含め、実効性ある評価の仕組みが非常に限定的ではないかということで、これも濃いピンクで整理させていただきました。

 右側のメンバーシップに関しては、これはエントリーレベルの下と、ある種同様ですが、こういった業種職種固有の能力というよりは、分野の基礎共通能力評価のツールの整備が、より重要ではないかという整理です。先般公表されましたPIAACで評価をしている能力などとも、相通ずるものと認識していますが、そのような大枠の整理をさせていただいています。

 当然のことながら、あくまでも考え方の枠組みの試案ですので、こういう軸の設定そのもの、それから、その上でのグラデーションの考え方についても、この後幅広く御議論いただければと思います。

 次に資料3です。検定・能力評価に係る業界団体ヒアリングから、この度の研究会の問題意識等を踏まえ、この間、事務局のほうでかなり多数のヒアリングを実施していました。その中で、この研究会で資料提出をすることについて御了解を頂いた10事例について、とりあえず今回お示しをしています。技能検定都道府県方式関係が3事例、同じく指定試験機関方式関係が3事例、認定技能審査関係が1事例、その他、全く独自の業界検定が3事例、こういった内容になっています。

 それぞれジャンル別に、かなり内容的には共通性が高いものですので、それぞれ代表事例についてキーワード的に御紹介したいと思います。

まず6ページ、都道府県方式の説明上の代表選手として、「株式会社ミツトヨ」という川崎市にある精密測定機器のメーカーです。ここでは「機械加工」「機械検査」を含め、かなり幅広い職種の技能検定を活用し、また、会場設備の提供等にも協力いただいています。また、合格者には報奨金の支給、掲示等のインセンティブを提供するとともに、技能検定でカバーできない部分について、前回も御紹介したビジネスキャリア検定、また、少し違う視点での、社独自の「スキルマップ」の作成といった、能力評価に係る多面的な取組みを実施しています。

 技能検定の目的は下のほうにありますように、チャンピオンの育成というよりも企業、組織全体の技能の底上げ、また事前の訓練プロセスを通じて、特定の人への技能の偏りを排する。個々の能力評価という以上に組織の技能力向上ということに、かなり力点を置いているという説明でした。労働市場との関係で言いますと、中途採用において技能検定は参考にはするけれども、それ以上にそれまでの経験キャリアを重視しているといったコメントです。

 次に指定試験機関方式についても1事例、10ページです。これは大阪大学における知的財産管理技能検定の活用の事例。大学の話ですので、委員の皆様方は、非常にイメージはつきやすいのかなと思っていますが、大阪大学における産学連携、知財グループにおける活用の事例です。

 中段の2にありますように、当該グループの特任事務職員の採用において、この知財管理技能検定を積極的に活用。具体的に申し上げますと、求人応募条件に、2級又は3級の知財技能士以上又は同等ということを具体的に付している。かなり少数例ではあるかと思うのですが、こういった形で活用するとともに、当該部門に限定しない教職員の研修の中にも、この知財の要素を位置付け、かつ出口の能力評価として、この知財3級の受験、訓練と評価を結びつけているという事例です。

 こういった、いわば外部市場型の活用をすることによりまして、採用後の教育、コストの合理化が図られる。即戦力の確実な確保ができる。それ以外の能力については、当然面接で確認をする。いろいろ聞いてみますと、他の大学や企業等の知財部門との間で、この分野の外部労働市場というものが、ある程度形成されつつあるということを伺わせるような内容でした。

 それから、独自の業界検定関係の中で1事例、14ページです。スーパーマーケット協会における、俗に「S検」と言われている、スーパーマーケット検定の事例です。全てのスーパーマーケット企業が、当該協会にオーガナイズされているわけではないということを御留意いただければと思います。

 本協会におきましては、当方の委託事業によりまして、平成16年に職業能力評価基準を既に整備していたところです。これを1つのベース、足がかりとした上で、業界独自にスーパーマーケット検定の開発・運用をしています。具体的には中段にありますように、スーパーマーケットスタッフの総合的あるいは管理能力を評価するラダーとして、ベーシック級、マネージャー級、バイヤー級、こういった体系が1つ。それから、独自の職域ごとに対応するものとして、チェッカー、レジです。それから、食品表示管理といった分野での検定。具体的には筆記試験プラス実技試験、チェッカーでいえば挨拶からチェッカー処理の正確さ、迅速さ、苦情対応、こういったところまで幅広く見るロールプレイ型の実技試験。中段にありますように、昭和62年からの累計受験者数48,000、合格者26,000ということで、かなり大きなロットになっているところです。顧客対応上、レジでの対応というのが、一番スーパーマーケットの姿勢の現れ、苦情も発生しがちということで、本分野での教育訓練の充実、評価、人材育成、質確保という観点から有効活用し、給与あるいは昇進の要件としては、積極反映をしていると。

 ただ、外部労働市場との関わりで言いますと、基本的には会員企業の従業員受験が原則という考え方です。内部市場型の活用ですので、結果として、S検を他社で取って役立ったというケースはあるようですが、体系的なS検の外部労働市場型の活用には至っていないという辺りがポイントではないかと思っています。

 最後に資料の4です。前回も諸外国の能力評価制度に関わりまして、2012年のJILPT報告の要約表を御提示しましたが、今後ヒアリングでも取り上げるテーマということで、更に追加で2つほど資料を付けさせていただいています。15ページ以下が、同じJILPT報告書の中から、諸外国における能力評価制度の概況、総括的な記述の部分について、今回改めて添付させていただいています。時間の制約がありますので、この辺りについては質疑の中で、国際動向について御議論いただいた際に、また適宜、補足をしたいと思っていますが、キーワードだけ御紹介しますと、15ページの下の下線付きにありますように、労働市場において有用な人材育成という観点から、教育訓練の融合、更に「資格」と教育訓練の融合が図られているといった点。そういう大きな流れの中で、次の1718ページにかけてですが、資格の枠組み、Qualifications Framework作りというのが各国で行われているとともに、更に、18ページ以下に出てまいりますように、EUにおいてはEU共通の資格枠組み、EQFの整備といったことが進んでいる。いわば資格枠組みの更に枠組み、こういうことになってくるのかなと思っています。このEQFに関わっての学位と連動したレベル設定、その他の基礎的な資料を添付しています。また必要に応じて、補足をします。

 一番最後に23ページ以下ですが、昨年OECD編著で日本語訳発行されている「若者の能力開発 働くために学ぶ」です。この本の中で教育訓練制度を支援するための資格枠組み活用ということに一節が割かれています。これもこの研究会の議論に非常に関わりが深い記述ということで、引用させていただいています。先ほども申し上げたような、欧州資格枠組みの創設が、各国の国単位の枠組みの開発を奨励しているといった記述があります。それから資格枠組みに関しては個々の資格を特定ランクに割り当てる資格レベルの序列であり、学習レベルに対する一連の基準に基づいて、資格を分類するものだという資格枠組みの基本的な考え方です。また、この資格枠組み導入の政策的な意義、意味づけに関しては、23ページの下にありますように、資格を様々なレベルに位置付け、互いの関係を明確化することで、教育制度内での発展経路づくりを促進することに役立つ。職業教育訓練制度に関する様々な利害関係者が協力するフォーラムを構築する。また、与えられたランクに値することを証明するという試練を課すことによって、質保証メカニズムを改善し、コンピテンスレベルについて、雇用主に明確な視野を与えるというような労働市場政策的な観点からの資格枠組みの意義について、ここで研究されています。また、次の24ページには、この資格枠組みのデザインに関して、厳格なもの、緩やかなもの、包括的なもの、部分的なもの、中央官庁()による設計、ステイクホルダーによる開発という、いくつかの資格枠組みの類型についての軸、次元について、提示がなされているところです。

 ほかにも御紹介したい部分はありますが、予定している時間ですので、とりあえず事務局からのポイント説明は以上とさせていただきまして、後ほど質疑の中で、また必要に応じて補充をさせていただければと思います。また、お手元のファイルに前回、第1回の資料についても、改めて皆様のお手元に置かせていただいています。その中にあります、前回の論点や叩き台、資料なども含めて、また、今日申し上げた補充資料の関連も含めまして、御議論いただければと思います。どうぞよろしくお願いします。

○今野座長 今回は、前回と同じように、今後政策などを考える場合の論点やターゲットは何か、考える場合のポイントは何かというようなことを、また自由に議論をしていただこうと考えております。折角、資料を出していただきましたので、その前に本日出していただいた資料について御質問があれば、それをお受けして、そのあとにフリートーキングに入りたいと思います。いかがでしょうか。特に、資料2の複雑な図については、いろいろ御意見があろうかと思いますが、それも含めて御自由に発言ください。

○大久保参集者 4ページの資料なのですが、産業内、産業間という整理がされています。今回の職業能力の見える化でいうと、同じ業界の中で転職するかどうかというよりも、同じ職種で転職するかということがポイントになるのではないでしょうか。業界検定という名称だからかもしれませんが、どちらがいいのかでしょうか。

 もう1つは整理の仕方の問題で、どの観点から整理するかということです。企業の中でその人にスキルを高めてほしいときは、当然企業がニーズを持っているわけですね。会社の経費を使って、個人にこういう資格を取らせようとする。一方で、転職の場面になれば今持っている職業能力をきちんと次の会社に説明できるようにしたいと思うので、個人がそれを認定してほしいと思うようになる。さらに新しい技術を身に付けさせようとする教育機関は、それを身に付けさせた証として、それを認定させようとする。ニーズの基は、企業と個人と教育機関と3つありますね。
○伊藤課長 大久保委員から前半で御指摘があった産業と職業の関係です。申し上げるまでもなく、産業と職業の間でレリバンスが非常に高い分野と、業種共通職種といわれるように、必ずしもレリバントでない分野が存在するわけです。ここで、とりあえず産業ということを前面に出した意図としては、まさしく今、大久保委員からお話がありましたように、業界検定といった取組を念頭においていることから、とりあえず産業という切り口を全面に出したことが、資料作成の意図です。ただ、実際の活用の場面を考えた場合に、産業内外かという以上に、あるいは同等に、職業内か職業間かが、より重要な意味合いをもつ場面があり得ることは、私どもは認識をしております。そういう意味で言いますと、より正確に申し上げると、産業&or職業内、あるいは産業&or職業間という概念整理になるのだろうという認識はもっております。ただ、全体として今の図でも十分複雑なものですから、余り要素を注入しすぎると、全体構造についてますます御理解いただきにくくなるのかなということで、捨象してしまったということで御理解いただきたいと思います。実質的には、職業という視点は大変重要であると思っております。

 それから今回、後半の説明材料として使わせていただいている有効性や実効性というのは、誰にとっての実効性なのか、有効性なのかという意味で言いますと、これも委員から御指摘があったように、労働者。求職者、企業、プロバイダーそれぞれの立場での有効性があるというのも、御指摘のとおりだと思っております。ですから、そういう意味では濃いピンクの部分でも、今申し上げました3つのステークホルダー、あるいは主体との関わりで、この観点で特に有効なのだ、ニーズが高いのだという分け方は当然あり得るのだと思います。端的にどう整理したらいいのか、私も具体の知恵があるわけではありませんが、御指摘の趣旨は大変よく理解できるところです。その辺りも、継続的に私ども事務局の立場でも整理に努めつつ、具体的にここはこの立場から特に設計が必要といった点についても、更に御意見をいただければ有り難いと思います。

○今野座長 今の観点で、職業資格でよくいわれるのは、イギリスやアメリカなどは、企業の観点から職業資格を作っていくと。ドイツや大陸ヨーロッパ型は、個人の観点から見ていくと、よくいわれますよね。ですから、極端なことを言いますと、アングロサクソン系は今の仕事ができるか、つまり企業のニーズからして、今の仕事ができるかということで、qualificationを決めると。大陸型は、例えば何々職業の広い能力を個人が持っているかどうかで、qualificationを決めていくのと近いかなと思って、話を聞いていました。

○伊藤課長 今、座長が御指摘になった点、職務に着目か、能力に着目かといった議論とも。

○今野座長 うまく整理できないのですが、要するに職務に着目する、つまり企業のニーズに着目するときには、別に企業間で共通性を持っているからといっても、極端にいうと、そのようなものには興味がないですよ。しかし、今度は人からいくと、企業間で社会的に、その職業がどれだけできるかどうかを認定すると、少し極端に言っていますが。ですから、私の認識では、EQFもそういうアングロサクソン系でいく人たちと、国と、個人からいく国で、やはり考え方が違うので、すり合わせが非常に難しいと私は認識しています。

○松浦参集者 4ページの図について、3つ質問があります。1つ目は、企業内キャリアアップと産業内・企業間転職と産業間転職と新規入職で、一番上のハイエンドの高さが違う理由です。2つ目は、おそらく「切実性」引く「困難性」に基づいて、濃いピンク(重点分野)や薄いピンク(対象分野)などを決めておられるのだと思うのですが、産業内・企業間転職と産業間転職に薄いピンクがある理由です。

3つ目の質問として、企業内キャリアアップは、ハイエンドの上限まで全部薄いピンクが掛かっているのですが、この部分は、切実性はそれほど高くないが、困難でもないという意味で、こういう色分けをされたのでしょうか。

○伊藤課長 まず、1点目です。先ほど、説明に不足があったと思ったのですが、1234の高さの違いに関しては、労働移動のタイミングでの高さ、能力であったりそれに対応するキャリアの高さです。例えば、一番右側であれば、基本的に職務経験がなくて教育訓練だけで入るということになると、入り口の高さは当然ミドル以下ですよね、という意味合いです。当然、そこから先のキャリアアップの天井という意味でいうと、高さは違わないということになるのであろうということです。

2点目は、大胆に3つに色分けをした意図は、今、松浦委員がおっしゃったとおりで、いわば必要性と困難性と。本来的には、次元が違うものはあえて概念的に引き算をした場合にということですから、この高さそのものには絶対的な意味があるわけではなくて、飽くまでもイメージということでとらえていただければと思っております。
 2の産業内と3の産業間ですが、先ほど申し上げましたように、意図としてはそこに更に職業というものも含まれていると、併せて御理解いただければと思います。ここで、濃いピンクや薄いピンクの高さが変わっている点に関しては、とりあえず、ここでは前回も説明しましたように、主に業種職種固有の知識・技能、かつ企業間共通のものに着目をした検定といったある種標準化した能力評価の手法を活用してはどうかという仮説から出発をすると。そういう観点でいいますと、同じ産業、職業内の転職のほうが、これまで培った職業能力について、標準的な手法によって評価できる余地がより大きいのではないかと。もちろん、跨がったとしても、その余地が全くないわけではなく、能力の重なりがあるわけですから、そこを抽出する努力、あるいは実行可能性はあると思っております。その活用可能性がより大きいという意味では、3よりも2の企業内あるいは同一職種内のほうが大きいであろうという仮説のもとで、23の高さを変えているということです。

 それから、最後の企業内キャリアアップについて、一番上まで薄いピンクで書いているのですが、これも基本的には松浦委員の御指摘どおりの考え方です。必要性というよりは、どちらかというと活用可能性が高いと。ただ、先ほど申し上げましたように、上のほうにいった場合に、いわば内部労働市場型の活用にかなり近くなってくるわけですから、専ら標準化された手法で評価するなどということはあり得ないわけで、申し上げましたように、そこに仕事ぶり、一般的に言われているような人事管理上の能力評価といった手法も組み合わせ、あるいはむしろそちらのほうの要素が強くなるような形で活用されるのではないかということを想定しつつ、一応活用可能性はあるということで整理をしているという、この図の意図です。内藤参集者

○松浦参集者 分かりました。ありがとうございます。

○今野座長 そうなると、この凡例の一番上の濃いピンクの「今回の見える化議論の重点分野」という書き方がいけないのですね。

○伊藤課長 はい。

○今野座長 標準的な検定が適用可能な範囲ということを言いたいのですね。

○伊藤課長 適用可能性が、より高い分野ですね。

○今野座長 そういうことなのですね。

○伊藤課長 はい。

○今野座長 しかし、それが緊急性があるかどうかは別だということですね。

○伊藤課長 そうです。政策的なプライオリティーが高いかどうかということになると、別であろうということです。

○大久保参集者 先ほどの話なのですが、要するにこれは業界検定と言っているではないですか。業界検定ということは、やはりその業界の企業が集合体として作っているのですから、企業の視線が中心にならないと、整理しにくいのではないかと思うのです。その企業が、自社の従業員を育成するときの目安になるものであると。ただ、それは個別の企業の独自の考え方だけですと、なかなかエンプロイアビリティーにつながらなかったり、あるいは一部の教育、訓練を外にアウトソーシングしたり、ベンダーを活用したりするときにもやりにくいというようなことがありますので、やはりある程度、業界として標準化されているほうがやりやすい。その企業からすると、それを丸々導入するのか、若干、会社にアレンジメントをして導入するのかはあると思いますが、おおむねそういうものがあったほうが自社の教育が促進される。自分の所だけで全部やり切るのは難しいので業界団体に一部の機能を持ってもらうということもあるでしょう。

 個人の話というのは、たまたま業界で訓練サービスメニューを作ったので、第2の顧客として業界内企業に所属していない個人にもオープンにするというような話なのかなと思いました。何か、業界検定という名前と、この複雑さが少しすっきりしないところがあります。

○黒澤参集者 今のお話を伺っていて、やはり企業におけるスキルレベルアップに能力評価制度を使う意義は、確かにあるとは思うのです。それは、特にそういったノウハウの蓄積が少ない中小企業により大きくある。ただ、そうでない所は自分たちでやっていますし、能力情報というのは中で蓄積されているわけですから、それ以上に資格というものを使わなくてもいいのではないかという部分もあると思うのです。もちろん中小企業にとっては、公的にというか、資格などを導入することによって、企業におけるスキルレベルアップを促進させるべき部分は非常に大きくあると思います。しかしながら、国全体で見たときの資格の必要性を考えると、やはり労働者なのではないかなと思ってしまいます。それはなぜかというと、最近の労働市場の大きな流れの中で、企業が人的投資を余りできなくなっているという状況があり、では、個人がやるのかというと、余りに情報がなさすぎるという問題があるからです。そのうちの情報の欠如の一部が、自分が何か勉強したりスキルを身に付けても、それを市場で分かってもらえるかわからないという能力情報の欠如であり、それを補うというのが、この見える化のプライオリティーというか、一番大きな目的なのではないかと。ただ、その見える化が有効に、実効性あるものにするためには、企業で使えるものではなければいけないので、ですから企業におけるスキルレベルアップにも使えるようなものではないといけないというストーリー展開になったほうがいいかなと、思ったのですが。

○北浦参集者 遅れてきまして、すみません。説明があったのかもしれませんが、4ページの絵は大変含蓄があると思います。今回の研究会は、前回も言いましたが、労働市場政策におけるという冠が付いているので、やはり、そこの労働市場の見方をどう考えるかという所をきちんと押さえていかないといけないだろうと思います。そのように考えると、2点あります。

1点は、ここでは厚生労働省の政策研究会なので、どうしてもこれは企業の中での、企業に就職をするというような形での就業形態を想定しています。今後の形を考えていきますと、かなり自営型や独立など。これは、最初の段階はともかく、途中段階でも出来上がりますし、そういうところがまたできないと、雇用機会も生まれない。そうすると、そのようなものの位置付けも少し視野に入れて考えないといけないのではないか。これは、多分厚生労働省は一番弱いところだと思います。そういう点が1つあります。

 特にそれを考えるのは、中小企業の場合や、大企業でも既に結構そういう形で、途中段階でいろいろ考える、あるいは定年に近づいて、そのような選択をするという形も出てきているからです。それは、企業が後押しするような形もやっている場合と、そうでない場合といろいろあります。いわば、雇用だけでなくもう1つのマーケットがあるだろうということです。

 それから、もう1点は、これは書き方として、どちらかというとエントリーレベルから入っています。職業訓練で大事なのはそこなのでいいのですが、今、これからむしろ重要なのは、70歳までの雇用などと言ってますので、このエンドの部分をどう考えるかということです。恐らく、中高年の能力開発という昔から言われている命題は誰も答えが出ていないのですが、このエンドの所をどう考えるかというところの視点も入れておかないといけない。しかも、そのエンドの所というのは、実に今、はっきりしていないのですが、だんだん多様化してきている。そこの機軸も入れないと政策としては完結しないかなというのが、1つです。

 それから、先ほどの松浦さんの話で、山がどうしてずれるのかなというのがあったのですが、転職ということになると、下のレベルから入るような形になっていますが、高いレベルからどんどん上に上がっていく転職もありますし、ローから入るのもあります。そこのところは、この絵の書き方だけですと、すごい誤解を招くという感じがします。そのように転職行動のところも既に議論は出ていますが、様々な所がありますので、そこも整理をして考えないといけないだろうと思います。

 そのようなところで、労働市場政策の視点をもう少し整理をした上で、これを考えないといけないかなという点で、感想的なものです。

○阿部参集者 私は、皆さんの議論に追加的に補論的なものなのですが、4ページの絵を個人的に書くのだとしたら、多分横軸に年齢を取るかなという感じです。年齢を取って、正社員の場合には、例えば皆さん、賃金プロファイルを想像していただければ分かると思いますが、山のように上がっていくわけですよ。それが、本当にスキルのレベルを表しているかどうかは議論があるところだと思いますが、多分大体そのように上がっていくのだろうと思いますね。

 一方で、非正規労働者の場合には、ほとんど横にずっとべったりいくわけですね。今、問題になりつつあるのは、この中高齢者の中に非正規社員が増えてきていて、その人たちの雇用の安定や生活の安定をどう図っていくかも問題になりつつありますね。それと同時に、今後もまさに中高齢者などの雇用の不安定さが多分出てくると思います。それから、企業の人たちと話をすると、特にホワイトカラーなどは、企業特殊的な能力などないのではないかと言っていて、全部外に吐き出す、あるいはスポット的に労働力を調達したり排出したりするのは不可能ではない。しかし、それが今はいろいろな面でできないからやっていないだけで、できるのではないかというような話もあるわけですね。そういうところを考えていくと、入り口や今まで新卒、あるいは30歳ぐらいまでで考えていた入り口や出口が、もう少し後ろのほうに出てくることを想定しながら作っていったほうが、この能力評価制度は長生きするかなと思っています。

 そこに、この評価制度の意義があり、企業の中でいろいろなレベルの仕事があり、そこに就くためにはどういうスキルが必要かなどを明確にしておけば、いろいろな所に入り口が出てきて、正社員ではなくても、例えば転職によって雇用の安定は図れるようになるとか、そういった所にも意義が出てくると思うのですね。ですので、4ページのものですと、入職、転職、企業内と大体同じなのですが、これを逆にして年齢を横軸にしたら、どのようなことが書けるのかというのは、私はそちらのほうがいいかなという気がしました。

○今野座長 何かありますか。

○伊藤課長 この間、何人かの委員から御指摘いただいたことに関してですが、この概念整理全体について、表し切れていない、欠落している視点を補充するという観点での御指摘については、これをどのぐらいクリアカットできるかは非常に難しいなと、頭の中で思っているのですが、可能な限り、そこはバージョンアップさせていただきたいと思います。

 それから、先ほど大久保委員と黒澤委員からあったお話に関して、実態として、能力評価基準整備以上の業界に対する具体的な支援を行っていない中での業界検定の発達過程を見た場合には、ガリバー企業であれば1企業で十分なロットが形成できる。私どもの制度でいえば、例えば認定社内検定といった仕組みを使いながら、企業特殊&結果的には業界内共通能力についても、かなり制度の高い評価を行い、それを人事管理に反映すると。ただ、そこまでの企業ロットがない場合には、先ほど大久保委員からお話がありましたように、業界として、ある程度ロットの形成をしないと実際にオペレーションができません。あるいは説明は割愛いたしましたが、葬祭ディレクター技能審査のように、業界の信頼アップという、業界の特別な意図をもって業界検定に取り組むと。ただ、その場合には、基本的には各企業が主体の、かつ従業員が対象の能力評価から出発をして、ただその延長線上で折角こういうものを作ったのだから外部労働市場でも活用できないかというようなことを、少し考え始めているというのが、今の実態だと思うのです。

 ただ、今回の職業能力見える化の意図としては、これは先ほどの黒澤委員のお話とも直接つながってくるのですが、それぞれの労働者が今の産業構造変化、労働市場の構造変化の中で置かれている状況に鑑みて、その人たちのキャリアアップをどう図っていくのかという観点でいうと、これまでの自然体の中で到達している業界検定のツールだけでは、多分その人たちにとって本当に有用な、外部労働市場に置かれている方々を含めての有用な職業能力の見える化は十分に果たせずにいる。そこに国や制度、事業といったものがどう関わっていくかということによって、企業プロバイダーだけではなく、労働者にとっても意義ある職業能力見える化の仕組みができるのかというのが、私ども厚労省に与えられている命題です。そういったことも少し先取りをして考えた場合に、活用可能性がある分野としてどういう分野があるのか、活用可能性の高い分野はこういう所ですよねというようなことを試案的に整理をしたのが、今回の資料です。全体の部分の説明が少し欠落していたと思います。そういう意味では、実態とあるべき論と少し行ったり来たりする必要があるのかもしれませんが、そのような問題意識を持ちながら各委員の話を聞かせていただきました。そういう政策意図と、具体論との関係で、委員の皆様の御意見をいただきながら、更に何段階かの整理が必要なのだと思っております。

○今野座長 今の皆さんのお話を聞いていると、例えば入職段階、非正社員でもフリーターでもいいのですが、その人たちがどこかで訓練を受けて、エントリーレベルの能力を持っているかどうかを認証する、アピールするのに使うという話もありましたし、いや、キャリアを持つミドルの人たちだって今後どうなるか分からないのだからという話もありましたし、最後の高齢者の出口の所も問題だという話もありましたから、これは全部やらなければいけないのかと思いました。

○阿部参集者 しかし、緊急性がどこにあるのかは、またあるので、問題提起は問題提起でいいと思うのですよ。

○今野座長 しかし、先ほどの話は、皆、緊急と聞こえたので。

○松浦参集者 説明をお聞きして、この図がいろいろご検討された末の図だということが分かったのですが、困難性と切実性の双方を加味した結果がプロットされているので、やや解釈が難しい面があります。困難性だけで判断された図と、最も重要な緊急性・切実性だけで判断された図があれば、それらを見比べて、より具体的な議論ができそうな気もします。また、緊急性について議論するにあたっては、まず、企業のためか、個人のためかという点について、コンセンサスを得ておいたほうがいいと思います。私も、黒澤先生と同じ意見で、政策的な優先順位としては、個人のため、のほうが高いと考えます。

○今野座長 今の第1点目については、この図の縦軸には緊急性は入っていないので、したがって先ほど私が言い直したのは、例えば濃いピンクは単に検定の適用可能範囲を示しているだけだと私は理解しています。要するに、松浦さんの言葉で言うと、困難性を書いてあるので、緊急性は一切ここには入っていないと。

○松浦参集者 切実性のなかで、緊急性も多少は考慮されているのではないかと思いましたが、違うでしょうか。

○今野座長 そのように、私は理解しましたが。

○伊藤課長 まず、今の点に関して言えば、政策プライオリティーまでは盛り込んではないが、標準化された能力評価ツールを活用することによって、スムーズなキャリアアップや就職、転職が実現されるかどうかという、いわば広い意味での効果について、まずプラスの要素として盛り込んでいると。それぞれ効果があるのだが、限られた資源をどちらに、より優先的に充当するかまでは考えていないと。そこから、実施の困難度や負荷のようなものを差し引いているという作成の意図です。

○今野座長 それが、適用可能範囲なのではないですか。違うのですか。

○伊藤課長 今申し上げたことを一言で表現するとするならば、座長がおっしゃったことになります。

○今野座長 緊急性は入っていないのですか。やはり、政策上の緊急性とか。

○伊藤課長 入っていないですね。

○今野座長 入っていないと考えないと、混乱してしまうから。

○伊藤課長 政策緊急性やプライオリティーまでは入っていないです。それぞれの立場で見た場合に、役に立つかどうかは見ていますが、並べてどちらが、より優先的に着手しないといけないかは見ていないということです。

○今野座長 要するに、使えるかどうかですね。標準的な検定等が使えるかどうかを示したということですね。それで、この図がそういう観点から合っているかどうかは別ですが、そのようにして。

○大久保参集者 先ほどの整理なのですが、黒澤さん、松浦さんのお話にもあったのですが、もともとこの政策の一番の方針や目的が、一人一人個人のキャリアアップであり、失業なき転職の実現であると置くのであれば、この政策のステークホルダーは、まずメインが個人ということになりますよね。それは、そのように置きましょう。では、その機能をどこに担ってもらうのかというと、探したが業界ぐらいしか適当な所がなさそうだということで、業界にその役割機能をもってもらおうと考えましょうと。ただ、個々のキャリアアップや失業なき転職と言われても、業界はモチベーションが上がらないので、少し翻訳をする必要があると思います。例えば競争力の向上だったり、社員のモチベーションの向上、あるいはそこでたくさんの人たちが一定レベルの能力を付けることが、顧客にとって非常にアピーリングになったりするというような形にしないと、多分業界はやる気にならないと思うのです。ですから、手順を考えれば、その目的、ステークホルダーとその方法論という形に、整理をすることなのかなと思いました。

○今野座長 そういう整理からすると、根本にかえると、業界である必要はないかもしれないという選択肢もあるかもしれませんね。

○伊藤課長 飽くまでも、それは手法です。

○今野座長 先ほど大久保さんが言われたような立論でいくと、最後の実際の実施の段階で、とりあえず主体はないから業界団体と言っていますが、ほかに選択肢があるかもしれないという議論はあり得るかもしれないですよね。

○伊藤課長 そういった可能性もあるということも、私どもは認識して、再興戦略でも業界検定「等」と。代表的、あるいはフィジビリティーが高いのは業界検定かもしれませんが、ほかの手法選択肢を予め排除しているわけではありません。

○今野座長 多分そういう観点が強いと、先ほど少し私が言ったヨーロッパの大陸型のように、教育訓練やqualificationを考えるときに、全部、職業教育訓練機関に主体を持っていっていると。そうではなくて、イギリス型にいくと、業界団体へもっていっているということなので、そこは選択肢があるのかもしれません。

○笹井参集者 私が仕事をしている機関が、国立教育政策研究所という教育に関わる機関なのですが、昔からよく言われていますが、先ほど先生がおっしゃったように、大学や専門学校、あるいは個人と業界や企業が、要するにスキルに対しての意味付けが違うことがよくあります。自分のキャリア形成で、ある特定のスキルがどういう意味を持つのかという、自分が意味付けするのと、大学や専門学校や学校が意味付けするのと、企業が意味付けをしてくれるのと、やはり違うのです。もちろん、重なる場合もありますが。よく経済界から、全然大学はいろいろな人材を育成していないのではないかという御批判を既に浴びる結果になってになっているのだろうと思いますが。

1つは、結局自分、個人なりがキャリア開発をして、力量をアップしていくことは、結果的には教育行政的にはそういうものは大事なのだろうと思いますが、厚労省的に言えば、企業が求めているスキルを根っこに考えていることがいいだろうと。企業がそのスキルに一体どういう意味をもっているのかが、そのスキルの内容あるいはそのスキルが社会的に流通していく、評価されていく上で、大きな意味をもっているのだろうと思うのですね。ですから、検定制度でもある種の社会的な評価のシステムが、企業のニーズなり、企業がそれをどう意味付けているかと、できるだけギャップを少なくしていくことが大事だと思います。

 もう1つは、先ほど大久保先生がおっしゃっていたのですが、私どもが業種と職種の調査をしてみると、やはり職種と業種で求められている同じ会社のスキルであっても、そのスキルの中身は変わってくるので、基本的にはそれを軸に、こういう業種でこういう立場の人だったら、こういうスキルが求められると。そういう意味で、彼ら、彼女らが求められているスキルはどういうもので、それがどこまで役に立っているか、それは見える化の話だと思いますが、そのように考えていったほうがいいのではないかと思いました。

○今野座長 お待せしました。
○黒澤参集者 すみません、もうひとつ大きな潮流として、外に見えるような、つまり一般的に汎用的なスキルでも今まで企業が訓練してあげていたというところがある。こういうふうに非正社員化、流動化がどんどん進んでいくと、そういう訓練を企業はやりにくくなっていくわけです。そこで問題になってくるのが、いわゆるポーチングというか、ほかの企業で訓練を受けた人を自分たちの所で安く手に入れるという行為です。経済学では引き抜き外部性と言いますが、そういう外部性がある限りにおいては、もっと人的投資がされるべきところがされなくなってしまう、そういう非効率性が起こる。

 そのときの1つの緩和策としては、その外部性を内部化しようという話になってきて、その内部化がどこでできるかと言えば、その外部性がどこに飛び散るか、つまり人がどう移動しているかによるのです。だから、先ほどから職種、業種というのがありますけれども、あるスキルについては業種間でそのスキルを持って移動する現象が頻繁に起これば、それはその業種スペシフィックなスキルとして内部化されるべきだし、逆に、ある職種スペシフィックなスキルで移動が起こるのであれば、その職種スペシフィックな部分で内部化されるべきです。

 ただ、職種スペシフィックな部分でというのはすごく難しいので、何らかの形で内部化すれば、まず例えば業界団体のほうがやりやすいわけです。そこで移動が起こりやすいような業界の中で、共通するスキルが持ち去られやすいのだったら、それを見える化して、それを業界単位の資格として樹立していく形に推進してあげるというか、誘導してあげるといいかなと思います。もちろん、実際、そうしたことが個別にどこがやりやすいのかというのが、4ページの下の部分だと思いますが、そういう考え方が背後にあるということは、何か明確化したほうがいいかなと思います。

○今野座長 黒澤さんと笹井さんのお話を聞いていると、例えば業界団体に任せるといったときに弱いのは、職業能力評価基準もそうですが、人事や経理など業界共通職種というものを作っています。そういう共通のものについてどうするかというときに、業界団体主導方式は意味がないのです。いずれにしてもそれが弱いですね。だから業界内でクローズするような職種の場合だったら業界団体でいいですが、その辺、難しいですかね。

○伊藤課長 今の議論は、検定の実際の担い手という観点も含めての御議論だと思いますが、業種横断職種に関して現実的に可能性があるのは職能団体、それから先ほど少しお話が出たプロバイダー側からの提供、いずれもないのであれば公的機関が中心となる。例えば前回の資料でも御紹介したビジネスキャリアに関して申し上げるならば、3つ目の類型でスタートして、申し上げましたように事業仕分け等の経過があって、今は公的事業という位置付けでなく特別民間法人たる中央協会の自主事業という位置付けになっています。

 今申し上げた3つの選択肢のうち、職能団体に関して言うと、ごく一部の領域を除くと、日本の場合、あまり発達していないという実態もありますので、現実論という観点からすると、教育訓練プロバイダー側に寄せて、教育訓練&評価という設計でいくのか。あるいは関連度の相対的に高い業界団体等の協力を得ながら、公的機関が全体をオーガナイズしてやっていくのかという選択肢が、現実的なものではないかと考えています。

○今野座長 先ほど問題になったホワイトカラー系でキャリアが上の人が、定年後でもいいですけれども移動した場合に、産業間などはすごく多いのではないか。もしそこが政策的に重要だとなると、業界ベース資格は意味がないという話ですね。

○伊藤課長 手法として有効ではないと。

○今野座長 もう1つは、エントリーレベルの非正社員の人やフリーターの人たちというのは完全に業界横断的ですね。そうすると業界団体にやらせてもしようがない。業界団体に任せるというのは比較的真ん中ですか。

○北浦参集者 業界団体でやる場合には、先ほどあったように内部での能力向上で、それは各企業における人的資源の向上といった、部分が非常に大きいと思います。あるいは業界の中で移動する場合も現実的にあるかもしれませんし、外に行く分までは面倒は見られませんから、結局、内部でのというところになってくるだろうと思います。

 ただ、どうなのでしょうか。業界特殊とか先ほどの職業特殊、職種特殊という議論でいくと、日本の場合は、本当に職種特殊というのは、資格系ではきっちりしています。これが今後、きちんと増えていくという前提であればいいのですが、現状からいくと全然違う。業界特殊性がそこに滲み出てしまう場合もあったり、もっと言うと企業の経営スタイルによって仕事のさせ方が違ってしまう。その特殊性というのがあって、今言われた企業特殊と言われている部分ですね、それが効いてしまう部分があるから、業界という括りでどこまでできるか。資格職種的なところが相当確立している所だけになってしまうのかなという感じになる。ただ、先ほど言ったような内部での能力向上は大久保さんが言われたとおりで、非常に有効だと私は思います。

○大久保参集者 転職の状況を数字で分析すると、医療・福祉分野というのは業界内転職が多いのですが、それ以外の業種では産業間をまたいで転職している人のほうが圧倒的に多いのです。失業なき労働移動を目指すのであれば、業界をまたいだ転職のところに相当効果的なものを作っていかなければいけない。それって職能団体はイメージがまだあるのですが、業界団体は、そこのところに関して業界をまたいだ転職には関心がないと思いますので、本当は業界団体だけではカバーしきれない。ただ、職能団体というのは日本であまり発達していないような感じがあるので、実際には受け皿が結構難しいのだと思います。そうすると業界団体でも職能団体でもない、第三の何か受け皿がないだろうか。ただ、受け皿は一般的な教育機関だと企業の日々の仕事の実態から離れてしまうので、ちゃんと企業内の評価と結び付くようなものでないと機能しないと思います。そうすると、企業内の教育をアウトソーシングして受けているようなベンダーなどが、1つの候補にはなってくるので、少し受け皿について幅広く検討してみないと、業界だけではカバレッジは相当低くなってしまうのではないかという感じがします。

○今野座長 つまり能力表示でなく、能力開発だったらいいのですね。そうするとすごくすっきりするのです。表示のほうだから移動も考えて、そうすると業界団体は限界があるという話だと思います。

○伊藤課長 今のことに関してですが、大久保委員の御指摘に関連して少し関連する事例について述べさせていただきます。今回の資料で御提示した事例の中には含まれていないのですが、業界団体と教育関係者のジョイント型で運営されている業界検定の事例がホテル業界であります。これに関して申し上げると、実際の教育訓練プログラム&評価検定の開発の部分について教育関係者が主になり、その活用に関しても業界内での活用もあり、かつ、その開発の担い手が教育関係者ですから、大学・専修学校のプログラムなどにも位置付けられているということで、既に業界にいる方以外についても教育訓練受講&能力評価という利益を享受できるような仕組み、発想にはなっている。今回、資料では御紹介申し上げていないのですが、今後の具体的な能力開発&評価の受け皿のパターンとしては、少し参考になり得る事例なのかなということを、今、委員のお話を聞いて感じたところです。

 それから、先ほど北浦委員からお話のあった業界特殊職種、企業特殊というのを、このマトリックスの中でどうか考えていくのかですが、今回の再興戦略における業界検定等というアプローチの出発点に関して、前回も台形の資料で少し御説明申し上げたように、当然、共通能力があり、業種、職種共通能力があり企業特殊能力がある。その台形の上の部分に関して言うと、当然、企業特殊もあるのですが、それよりも業種・職種内の共通能力のウエイトのほうが、一般的には高いのではないかということを前提にして、そこに着目した業界検定、その他のツールを開発、運用することが、職業能力の見える化労働市場における活用に役立つのではないかという仮説で出発しているところです。

 ただ、今申し上げたような仮説が当てはまる分野は多々あると思いますが、全ての業種、職種に当てはまるとは言い切れない部分もあり得る。そういう意味では、業種・職種内の共通能力と企業特殊能力のウエイトといったものが、仮に業界検定を中心に運営していくことを考えた場合に、それが効く分野設定ということで考えなければいけない切り口の1つになり得るのかなということも、今の委員の御指摘を伺って感じました。

○今野座長 そのときの前提は、今ある能力を全部売れると思っているでしょう。

○伊藤課長 そうですね。売れ得るものと。

○今野座長 極端なことを言えば、捨てて売ればいいのです。

○伊藤課長 それもあります。

○今野座長 そうすると、その捨てた部分をちゃんと評価できているかどうかというのは問題だと思います。だから全く今ある能力をそのまま売れるなんて、そんな状況は想定しないほうがいいと私は思っています。特殊なんていうことは私はあまりないと思っていますが、もしあるとしたら、それは捨てて、共通部分はちゃんと持っていますということが認定できれば十分だと思います。

○伊藤課長 捨てている部分はキャリコン等で。

○今野座長 いや、もう使えないです。諦めです。

○伊藤課長 諦めているということを確認するとか、あるいは督励するプロセスという意味では、キャリア・コンサルティングが役に立つ。

○今野座長 使えないものは使えないのですから、だから特殊と言っているのですから。

○北浦参集者 今の説明の補足的なところですが、社内検定というのがあって1社だけでも実施できる制度があるわけです。よく見ると業界全体でやったらいいのがたくさんあるのに、なぜこの会社だけかというのも結構ある。それは企業の正に経営戦略に発しているところが若干あって、そこで差別化するから、そうならないという問題があります。あるいは工法の違い、技術の違いで違うとか、そこのところで特殊性を乗り越えていくことがないと横断化できないから、業界にならない部分が現実に出ています。ですから、その辺はその辺として、なり得るものと、なり得ないものとが混在する形で、結局、今のところはやっていかざるを得ないのではないかと思います。

○今野座長 谷口さん、いかがですか。

○谷口参集者 今の北浦委員との関連で申し上げると、そもそも業界検定では、問題の設定は、要するにスキルを売る側と買う側の両者で、資格制度はどちらのサイドで発達してきたかという見方があるわけです。そうすると業界検定というのは、正にスキルを買う側の都合で制度化されてきている。

 実はイギリスなどを見ると大変面白いのですが、スキルを売る側の都合で多くの資格制度が発達してきたにもかかわらず、80年代半ば以降のNVQなどは、いわゆる買う側の仕組みとして大きく作られてきたように思います。スキルを買う側の制度として作り上げていく中で、これまで発達してきたスキルを売る側の仕組みをいかに取り込むか。そういうところの綱引きみたいなのがあったのではないかと思います。

 さらに、遡って北浦委員が言われた点ですが、そもそもこの問題設定が労働市場政策を前提に問題設定していることを考えると、スキルを売る側の視点がここには最初からあるのではないか。つまり厚労省が設定するということではね。そういう意味で実際に業界や産業界を見たときに、この能力評価制度に関して、スキルを買う側としてどれだけ切実性があるか。直感ですけれども、あまりない気がします。そういうことで、これは問題設定としては個人の側というか、スキルを売る側で考えていくしかないのかなという気がします。

○阿部参集者 皆さんのお話を聞いてくると、どこにターゲットを絞るのか議論してからのほうがいいのではないかと思います。皆さんの話は理論的にも非常に面白いし結構なことですが、例えば企業特殊性を考えたときには、その特殊性が高い人と低い人では全然有り様が違います。外部性の話も外部性がある場合とない場合があって、例えば私が想定しているのは、はっきり言えば非正規社員ですが、非正規社員の場合にはそんなに特殊性はないだろうし、外部性ばかりでどうするのかと。それを内部化とするときに業種でと言ったら、業種ではできないだろうし、社会的な基盤として何かないといけないだろうと思ってしまうのです。だからターゲットをまず絞って、そこからのほうがいいのかなという気はしました。それだけです。

○今野座長 要するに非正社員だけに絞れと。

○阿部参集者 個人的にはそう思います。

○今野座長 大久保さん、どうぞ。

○大久保参集者 企業特殊能力ということですが、企業特殊能力と、そうでない一般汎用的能力は、個人が持っている職業能力の中でどんなものなのか関心があって、個人に聞いたことがあるのです。それは「ワーキングパーソン調査」というもので、個人に自己認識を聞いたわけですが、そうしたら企業特殊能力のウエイトがとても高かったのです。

 ところが、実態はそうでないだろうと思っています。つまり個々人が、自分の持っている能力はこの会社でしか通用しないのか、外で通用するのかということを、多分、個人は分かっていないと思います。

 一方で、教育ベンダーに話を聞くと、その業界なら業界でこういう教育プログラムを作り、それを売りに行くわけです。売りに行くと、ほとんどの企業はちょっと変えたいと言う。「分かりました、喜んで」とカスタマイズして提供するのですが、実際のベンダーの立場から言うと「同じだよ」と思っているわけです。顧客の自己満足のためにカスタマイズするだけであって、実際はかなり汎用的なものだと思っている。実際の企業特殊的能力と概念的に言われていますが、この実態は意外に今はもう小さくなっているのではないかという感じもしていて、企業特殊能力にばかりウエイトを置いていたら、会社経営はやっていけないと思っているのてす。そういうところで企業特殊能力に引っ張られすぎると訳が分からなくなるところがあるので、それは俯瞰的に見ておいたほうがいいと思います。

○笹井参集者 先ほどホワイトカラーの話が出ましたけれども、今から10年ぐらい前にビジネススクールの教育の研究をやったことがあります。つまり、社会人ですよね、経営者の卵みたいな人に対してどういうふうに教えているのかを調べたら、ケーススタディが圧倒的に多いのです。もともとはハーバードのビジネススクールを1つのモデルとして、慶應にしても早稲田にしても青学にしても進めてきている。今の日本のほとんどのビジネススクールはかなりのウエイトでケーススタディを取り入れているのです。慶應の人にも聞いたのですが、ケーススタディというのは、答えを出さないのです。答えを出さずにケースをしてみんなで議論しておしまいなのです。それで何で能力形成ができるのか。抽象的な答えで経営判断力を養成するとか訳の分からないことを言っていましたが、ある意味、スペシフィックでなく非常に広いジェネリックなスキルというか、コンピテンシーというか、そういうものをビジネススクールで養成することを目指しているのだろうと思います。

 それは、要するにスキルの構造や階層みたいなのがあって、一番広く言えばコンピテンシーみたいな抽象的な、しかし核になるような能力があって、ジェネリックなスキルがあり、スペシフィックなスキルがあり、更に言うと企業特殊的なスキルがあるみたいなところがあって、そうするとスキルのコンテンツ、中身にもある程度視野を広げていかないと、検定制度の持つ意味が明らかにならないのではないかと思います。

○今野座長 先ほど私が言いましたけれども、今回は汎用的な検定等の適用可能範囲とか、適用するにはどうしたらいいか考えようということですから、理論的に言うと、ここでは最初から企業内スキルは興味ないのです。それを考慮する必要はないと思うのです。基本的には、そこを一生懸命に考慮して資格をどうこうしようと考える必要はないということですね。

○伊藤課長 私どものもともとの出発点として、前回の台形の資料にあるように、座長のお話のとおりです。あとは、そういったものを作った上で、それぞれの企業単位で運営するに当たって、そこに仮に企業特殊というものがあるとして、それをどう付け加えてカスタマイズして運用するかは、そこから先の話としてあり得ると思います。

○今野座長 先ほどから皆さんのお話を聞いていて、メインのステークホルダーは個人だと考えると、企業内でどうカスタマイズするかは興味がない、自分を売れるかどうかだと。そこだけに焦点を当てて今回の見える化を考えればいいことになりますね。

○黒澤参集者 どこにプライオリティ、対象を絞るかですが、そこは理論的に考えることが必要だと思っています。それは能力情報が見えにくい、その見えにくさがどのくらい甚大なのかとか。先ほど私が言った業界内での内部化ですが、業界スペシフィックで、すごく見えやすいところは、はっきりすでに言ってもうやっているわけです。実は、そういうところは放っておいてもそういうのができているので、それで有効に機能しているところは、逆に、公的に支援して資格を作る必要性はあまりない。だから先ほどの困難性というか、もうできていてやりやすいところは公的に今回の資格化、見える化でも、国としてやることは交通整理ぐらいでいいかもしれない。けれども、能力情報が見えにくいことによって、いいマッチングが起こりにくいという非効率性が大きいところがどこかということを見つけるのは、公的に今回の見える化で支援するところを決める上では、とても重要だと思っています。

 もう1つは、先ほどの外部性で、外部性はどこでもあるかもしれないけれども、その外部性がとくに大きいところはどこかというのも、1つのプライオリティを決めるクライテリアになると思います。

○今野座長 そうすると、スキルの見やすい分野と見えにくい分野で軸を取って、もう1つは外部性の小さいところと大きいところを取ってマトリックスを作ると、スキルが見えにくくて外部性が高いところがプライオリティが一番高い。そういうことになりますね。

○黒澤参集者 はっきり言って、それが非正社員だと思います。

○大久保参集者 優先順位を決めてやっていくときに、新規求人が動いているとか、一定の規模があるところに絞ったほうがいいのではないかと思います。それも1つの判断基準に入れたらどうかと思います。

○今野座長 効率性があるから、それプラス規模ですか。それは今度は効率性の問題ですね。そうすると、先ほど黒澤さんが言われたような観点は。

○黒澤参集者 そのターゲットの上に、今度は3ページの赤い中で追加していただいた有効性、実効性というクライテリアがそこで入ってくる。それが今、大久保さんがおっしゃったようなクライテリアという感じです。

○今野座長 でも黒澤さんの言ったのは有効性ですよね。

○黒澤参集者 有効性、実効性、どう違うのかなという感じも。

○今野座長 分かりました。

○伊藤課長 今、御議論いただいているのは、各象限にどういう分野がプロットされて、スキルが見えにくく外部性が高くロットが大きい。そういうことに該当する分野をどういうふうに特定するか。

○今野座長 非正社員と言われましたが、例えば先ほど出ている定年後の高齢者の再就職を考えたときに見えにくいですね。もし企業が教育などをしないと、それは外部性というか、回収期間が短いからというのもあるけれども。

○伊藤課長 労働市場政策上の課題ではあるけれども、この枠組みの中にはフィットしにくいのではないかと思います。

○今野座長 結局、外部性を言っているのは、誰も教育投資をしなくなってしまうという意味で重要だということですね。企業がしなくなってしまう。そのときには外部性があるから教育投資をしないということですが、高齢者の場合は回収期間が短いから教育しない。

○黒澤参集者 ただ、高齢者の場合は、もう教育されている部分がすごくあって、その能力情報は若い人たちと違って、長年雇用していた企業が持っているわけです。

○今野座長 だけど、今、想定しているのは、そういう人たちが転職してしまう場合だから。

○黒澤参集者 そうそう。だから、その人たちが転職するときに、その情報を何らかの形で開示してくれる仕組みを何か考えるというか、そういう若い人にはないオプションもある。だから全く違うことをやり始めるという意味においてはおっしゃるとおりですが、今までやってきたことを生かしながら何かやる。実際、そういった形で再雇用の場合、関連企業に行ったりなどいろいろなされているわけです。だから、その部分はそれほど大きな問題はないのではないか。ただ、新しいことをやるとなったときには確かにそうです。

○今野座長 だから多くの人たちの場合、もしそういう人たちが業界を越えて移動するとなると、黒澤さんが言う新しいことになるわけですね。

○北浦参集者 だから能力開発とリンクするか、しないかという問題で、非正規の場合では能力開発と絶対リンクしていかないと就職ができない。高齢者の場合にはもうできている人もいる。むしろ評価の仕方が正確かどうか、そっちの問題が議論になってくるのだろうと思います。もちろん、ほかの所へ転職するときに多少能力開発もしないといけないということはあると思いますが。そこの能力開発とのリンクとの関係をどう見るかという違いがあるのだと思います。ここでの議論は、評価制度の問題が中心ですが、能力開発とのリンクまで考えた評価制度というところで市場政策上の意味を考えるのであれば、非正規の問題が大きいということになってしまうかもしれません。そこを考えなければならない。

○今野座長 最近の大手の電機メーカーはがんがんリストラして、中高年というかミドルエコーの人たちが転職していくときに、企業は一生懸命支援しているわけですけれども、あんなに苦労しているのは相手側にスキルが見えないからではないですか。

○阿部参集者 いや、見えているでしょう。

○今野座長 スキルは見えているけれど、使えないというのが分かったという問題ですか。完全にスキルギャップの問題で、見えている、見えていないではないと。では見えているのですね。

○阿部参集者 ただ、見えないものはあるかもしれない。

○今野座長 では見えていない。

○阿部参集者 ただ、それは職業能力と言ったら、私たちが言っているスキルではないかもしれない。

○今野座長 スキルではなくて能力全体。

○大久保参集者 先ほどの見えにくいかどうかというのは、一番大事なポイントだと思います。例えばミドルなど特に見えにくいという感じがあるのです。

 それから、2つ目に、北浦さんがおっしゃった能力開発についてですが、ミドルシニアになった人たちが転職しようと思った場合、もともと持っている経験をうまく生かそうとするのですが、実際に転職を成功させるためには、ちょい足し的な能力開発が必要なのです。そういうことを、どういう基準で見えるようにするかというのはポイントとしてあるのかなと思います。

 もう1つ、今、非正規の話が出ていて、確かに非正規の問題は重要ですが、一方で非正規、若年のところに関しては、そういう様々な問題を解決するための施策や制度みたいなものは相当充実していて、一方でミドルシニアのところについては、あまり支援策はないのです。全体政策のバランスの中で、その観点も含めて考えたほうが私はいいかなと思います。

○今野座長 バランスを取ろうとすると、入口と出口の両方をやろうかなと。

○松浦参集者 私もミドルのところが1つの課題になると思っています。先ほど大久保さんがおっしゃったように、本人は企業特殊能力だと思っているけれど、実は読み替えると汎用能力だというケースが相当ある一方で、それを言語変換してあげられる仕掛けが不足していると思っています。もちろん、学び直しに対する支援も必要ですが、まずは過去に蓄積した能力の中で適正に評価されていないところを、産業間転職や産業内の企業間転職で生かしていくことが、政策的には重要なのではないかと思っています。

○阿部参集者 今、松浦さんが言語変換と言ったと思いますが、言語変換で済めばそれだけやればいいのです。

○松浦参集者 それはそうです。

○阿部参集者 教育訓練まで含めてやるというところは入らないわけですね。

○松浦参集者 まずは言語変換が必要だと思っていますので、取りあえず、入りません。

○阿部参集者 そうすると大事なのは、能力評価というのは、ただ評価するだけでなくてキャリアアップまで考えると、先ほど北浦さんが言っていましたが、教育訓練とセットになっているところが切実なのではないか。もちろん、ミドルが全然問題がないというわけではない。だから言語変換ができる人たちをもっと育てるような方法でやればいいのですが、そうでなくて教育訓練とのセットでやらなければならないということは、本人自身も上げていかなければいけないわけですから、全然違うのではないかと思います。だから切実なのは本人のキャリアアップを目指している人たちをどう支援するかのほうが、労働市場政策としては大事です。

○今野座長 要するに、非正社員だと言っているわけですね。

○阿部参集者 そう。

○黒澤参集者 確かに若年の人たちの政策は、とても充実してきてすばらしいことだと思います。これはヨーロッパでもよく議論されることで、アメリカでもそうですが、ワークファーストという考え方があります。つまり、施策的には、失業から、とにかく何でもいいから仕事に就けという形で公的訓練がなされると、キャリアのラダーにつながるような仕事に就けるとは限らないわけです。その中での非正社員という位置付けがあって、そういう人たちがラダーを昇ろうとしたときに、企業は手助けしてくれないから自分で何か追加的な能力、スキルを身に付けて、ラダーの一番下に乗せられるようなポジションを得ないといけない。そのときに、この見える化がすごく大事で、そこで阿部さんがおっしゃったような訓練とセットされていることが大切かと。ですので、非労働力化している人が新たに参入するとか、失業者が参入するときのエントリーだけではなく、そこからもうちょっと真ん中くらいのキャリアのラダーにつながるような、そういう見通しが持てるようなところまでみたいな形が、何となくイメージとしてあります。

○阿部参集者 だから、例えば非正規や派遣が正社員へのステッピングストーンになっているかどうかの議論や研究がありますね。ヨーロッパでは「ある」と言ったり「ない」と言ったり、いろいろあるのですが、日本ではほとんど「ある」というのがなくて、「ない」というのが大勢で、何でヨーロッパで「ある」と言われる研究がある一方で、日本は「ない」のかと考えると、そうなっていないからなのではないか。教育訓練やキャリアアップが、労働市場の中に全然組み込まれていないのではないかという気がするのです。そこは大事ではないかと私は思います。

○北浦参集者 私は、心情的には本当はミドルをやってほしいのです。だけど絞れと言うので。

○今野座長 まだ絞れとは言っていない、両方もあるのです。

○北浦参集者 役所側の意図もあると思いますが、移動という場合、円滑な移動であるとか、あるいは、その先においてステップアップにつながるような形で移動ができるとなると、移動のボリュームゾーンがどこにあるかがポイントになります。そうすると、まだニューエントリーの部分が大きいということになります。ただ、ニューエントリー部分でも転職は少なくないが、まだ少ないということであれば、特にそこで問題があるのは非正規だということになるかもしれない。しかし、同じ論理を当てはめてしまうと、高齢者のほうがボリュームゾーンだということになってくる。もちろん内部での継続雇用もかなりあるけれども、かなり外部化してきている部分があるのです。そこのところを円滑にするのが政策課題です。ただ、そっちまで広げてしまうといけないと言われると思って、先ほどは前者だけと言ったのですが、労働市場政策の課題としたら、入口と出口の両方が絶対必要だと私は思います。

○今野座長 黒澤さんの意見を踏まえて、多分、訓練で言うとイニシャルトレーニングぐらいですか。企業で言うと新人教育段階くらいまでのイメージですね。そのぐらいをターゲットにして、資格を考えればいいという話になって絞れますね。今回は、そこから上はどうでもいいと。

○黒澤参集者 もうちょっとかな。

○松浦参集者 一人前の手前ぐらいでしょうか。

○阿部参集者 だって、例えばコンビニ店長は正社員ではないです。でも店長です。だからそこら辺までは見えないといけないのではないですか。非正規の求人情報誌に出てくる職業というか職種みたいなものまでは、射程に入れておいたほうがいいのではないですか。

○今野座長 NVQで言うと2級ぐらいまで。イメージとしては下から2段階目ぐらい、そんなイメージですね。

○大久保参集者 今のお話ですが、どのぐらいのレベルにするかという話と、対象が若手なのか高齢者なのかは別の話で、こういうものはあまり上のほうでなくて、ある程度エントリーレベル、プラスアルファのところのほうが、現実的に機能しやすいし必要性も高いだろうと思います。ただ、対象は非正規だけにするのは私はやりすぎだと思っています。

○今野座長 それはいいのですね。レベルさえちゃんとそこでやれば、たまたまそこが非正規が入ったり高齢者が入ったりしてということでいいと思う。

○大久保参集者 もう1つ、先ほどミドルシニアの重要性について言いましたが、これは実際には企業を巻き込んでやらないと多分実現できないと思いますけれども、企業の関心は若手でなくて中高年、特にミドルなのです。多くの会社が若年は、そこそこできていると自己認識していて、課題があるのはミドルなのです。そういうこともひとつあると思います。

○今野座長 ということで、今日はフリートーキングということで、フレームワークとしていいアイデアが出て、どこにターゲットを置いたらいいかと、それはなぜかということについてだいぶ整理ができてきました。本日は、この辺で終わりたいと思います。第3回と第4回では、能力評価等に関する国際的な動向、企業、業界団体の有識者よりヒアリングを実施する予定にしています。この点について事務局から説明をお願いします。

○小野専門官 第3回、第4回のヒアリングの件について、口頭で恐縮ですが御説明させていただきます。ヒアリングに関して、委員の皆様から具体的な候補に係る情報提供等、御協力いただきまして感謝いたします。前回、第1回でも御説明しましたが、大きく国際動向関係と、検定活用等の業界団体・企業等事例の2テーマに関して、第3回、第4回でヒアリングさせていただくということで、事務局において座長とも相談の上、ただいま人選と日程調整等、最終調整中です。

 国際動向関係については2点、主にイギリスの取組に関して、資料にも付いていますが、2012年のJILPT調査をまとめたJILPTの国際研究部、それと、もう1点として主にドイツとアメリカの取組に関して、本研究会の委員である谷口先生に、それぞれ御相談して内諾をいただいているところです。もう1点の業界団体・企業等事例については、本日、資料で提出した団体・企業を中心に、相談させていただいているところですが、まだ本日時点で最終的な了解は得ていません。まだ調整中です。これらを基に最終的な具体的日取りについては、ヒアリング候補者の御都合を調整し、決まり次第、開催日時を含めて委員の皆様に御連絡申し上げる計画にしています。

 また、検定等を活用の業界団体で企業等事例のヒアリングについては、その性格を勘案し、また類似の対応事例などを参考に、非公開の取扱いとさせていただく予定にしていますので、御了承いただきますようお願いいたします。また、第3回、第4回はヒアリングになりますが、この研究会の場にいらっしゃる先生方は、それぞれの分野の第一人者ということでもありますので、ヒアリングという位置付けにはならないかもしれませんが、個別の事例については委員の先生方からも積極的に紹介いただきますように、よろしくお願い申し上げます。以上です。

○今野座長 御質問、御意見はございますか。よろしいですか。それでは、次回以降の日程について事務連絡をお願いします。

○小野専門官 先ほども申し上げましたが、次回、第3回の日程につきましてはヒアリングを予定しています。具体的な日取りにつきましてはヒアリング者の予定を調整しまして、また追って御連絡させていただきます。以上です。

○伊藤課長 第3回、第4回の日取りについて、委員の皆様方にそれぞれ2つほど日時候補を御連絡して、お忙しい委員の皆様には恐縮ですが、今、仮押さえさせていただいている段階です。できるだけ早くヒアリング対象者を決め、その御都合も踏まえた上で、どちらか1つの日時に決めて御連絡したいと思っているところです。

 それから、ヒアリング対象者の数によっては、各回、ヒアリング及び質疑以外に、引き続きフリートークいただく時間設定が可能な場合もありますので、それに向けて本日いただいた御意見、それから今、既に準備中のいろいろなデータ分析等の資料についても、その時間の枠組みの中で適宜、私どもから追加で御説明し、それらに関連した御議論をいただければと思っていますので、よろしくお願い申し上げます。

○今野座長 それでは、ほかによろしいですか。今日は終わります。ありがとうございました。


(了)

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