ホーム> 政策について> 審議会・研究会等> 厚生科学審議会(科学技術部会遺伝子治療臨床研究に関する指針の見直しに関する専門委員会)> 第3回遺伝子治療臨床研究に関する指針の見直しに関する専門委員会議事録(2013年8月30日)




2013年8月30日 第3回遺伝子治療臨床研究に関する指針の見直しに関する専門委員会議事録

厚生労働省大臣官房厚生科学課

○日時

平成25年8月30日(金)10:00~12:00


○場所

厚生労働省 専用第23会議室


○出席者

(委員)

山口委員長 谷委員長代理
位田委員 伊藤委員 今村委員 梅澤委員
小野寺委員 辰井委員 中畑委員 中村委員
那須委員

(参考人)

内田室長

(事務局)

厚生労働省:三浦技術総括審議官 宮嵜課長 中山研究企画官 許斐課長補佐 松倉専門官
文部科学省:伊藤安全対策官

○議題

1.前回(第2回)委員会での主な議論について
2.遺伝子治療臨床研究に関する指針の見直しにおける検討事項について
3.その他

○配布資料

資料1 前回(第2回)委員会での主な議論
資料2 遺伝子治療臨床研究に関する指針の見直しにおける検討事項
資料3 遺伝子治療の定義および適用範囲について
資料4 対象疾患について
資料5 iPS細胞を用いた臨床研究の取り扱いについて
参考資料1 遺伝子治療用ベクターの定義と適用範囲

○議事

○中山研究企画官 

ただいまより、「第3回遺伝子治療臨床研究に関する指針の見直しに関する専門委員会」を始めます。本日はお忙しいところ、またお暑い中お集まりいただきまして、どうもありがとうございます。本日の委員会ですが、本田委員から欠席という御連絡をいただいています。なお、今回は3回目ですが、位田委員におかれましては1回目と2回目は御欠席だったということで、初めての出席ですので御紹介させていただきたいと思います。

○位田委員 

同志社大学の位田でございます。ちょうど金曜日が授業日になっておりましたので、長らく欠席ですみませんでした。できるだけ出てくるようにします。よろしくお願いします。

○中山研究企画官 

今日は参考人として、国立医薬品食品衛生研究所の内田恵理子先生にも御参加いただいております。よろしくお願いいたします。

 次に、配布資料を確認したいと思います。議事次第、座席表、委員名簿に続き、資料1は第2回委員会での主な議論をまとめております。その3枚目に資料2ということで、「遺伝子治療臨床研究に関する指針の見直しにおける検討事項」ということで項目を並べている紙があります。その11つについて、「現状と課題」「検討のポイント」「見直しの方向()」という論点があります。これらは事務局的な案で、たたき台ということでこれから先生方の御意見をいただいて、いろいろ修正していくものですけれども、その論点が123ということで、それぞれ資料345というように振ってあります。その3枚があります。加えて、今日、内田先生から御紹介いただく参考資料として、「遺伝子治療用ベクターの定義と適用範囲」という、パワーポイントの資料があります。

 また、委員の先生方の机上には、各種指針などをつづったファイルを配布しておりますが、いつものとおり会議終了後は机上に置いたままの御退席ということでお願いしたいと思います。なお、前回の会議でお示しした「遺伝子治療用医薬品の品質及び安全性の確保について」の指針を、新たにこちらのファイルにつづらせていただいているということで、資料5として追加しております。それ以降、資料番号が前回から1つずつずれているという状況を御承知置きください。過不足などがございましたら、事務局までお知らせいただきたいと思います。

 それでは、議事に入りたいと思います。山口委員長、お願いいたします。

○山口委員長 

それでは、議題の進行の予定に従って進めてまいりたいと思います。最初に議題1、前回委員会での議論内容について、事務局から説明いただけますか。

○許斐課長補佐 

では、資料1を御覧ください。前回の委員会での主な議論です。1番から10番までの項目がありました。まず1の「遺伝子治療の定義及び適用範囲について」です。「遺伝子標識については現在、ほとんど行っていない」「腫瘍溶解性ウイルスのうち、遺伝子組換え技術を用いたウイルスは指針の適用範囲に入るが、生ウイルスは現行の指針では入らないことになる」「合成したDNAやメッセンジャーRNAなどを定義に含めるか」「がんワクチン投与は予防に当たるのではないか。術後の再発予防として用いることもあるので、予防も定義(適用範囲)に含めるか」「治療ではなく医療とすると、予防も含まれる。文言を医療に変えてはどうか」「プラスミドを用いたDNAワクチンの健常人への投与はどう扱うか」「肝炎予防ワクチンは予防であるが、米国では治療に含めず、欧州では含めるといった違いがある」などの意見がありました。

 次に、2の「対象疾患について」です。「遺伝子治療が開始されて20年経ち、安全性・有効性が確立されてきたので、生命を脅かすものだけに限定してよいか」「現行の指針では、治療効果が現在可能なほかの方法と比較して優れていることが十分予測される必要があるが、同等以上でもよいのではないか」「既存のベクターについては対象疾患を拡大してはどうか」「現状の3つの要件を全て満たす条件は外す方向でよいのではないか。現行の指針に従うと、ほかの治療法がない状態になってから遺伝子治療を行うことになるが、この場合は治療成績も悪くなる。もう少し早い段階で治療が開始できると良い」といった意見がありました。一方、「現状の3つの要件を外した場合に、どういった疾患を対象とするか分からない」といった御意見もありました。

 続いて、3の「iPS細胞を用いた臨床研究の取扱いについて」です。「両方の審査会で別々の結論が出ると問題が生じるので、現状のヒト幹細胞を用いる臨床研究に関する審査委員会に、遺伝子治療の専門家が加わって行う審査体制が良い」「将来的に遺伝子導入を行わないでiPS細胞を作製できれば、ヒト幹細胞を用いる臨床研究に関する審査委員会のみで十分である」との御意見をいただいております。

 続いて、4の「多施設共同研究について」です。「複数の大学が同一のプロトコールで研究を行う場合、研究の全てを統括する責任者がいない」「ベクターを作製する施設における標準作業手順書(SOP)について、現行指針では規定がない」といった御意見がありました。

 また、前回の委員会にて、臨床研究においてベクターなどの作製について企業が関連した場合、薬事法などの規制について注意が必要であると、事務局側からお話いたしました。具体的に言いますと、遺伝子治療用のベクターを企業が作製して研究機関に提供する行為が薬事法の承認を受けていない未承認薬を提供する行為として、薬事法上問題にならないかといったことです。これについては確認させていただきました。

 基本的な考え方としては、医師又は歯科医師が主体的に実施する臨床研究であって、国が定める指針を遵守して実施されるものについては、一定の要件を満たす限り、薬事法は適用されないという定義になっております。この要件ですけれども、例えば、提供する企業が未承認の効用等を標ぼうしたり、パンフレットを使って顧客の購買意欲を高進させて提供したりといった行為をしないこと、提供に際し発生する費用は提供者側の営利目的と見なされない範囲にとどまるものであることとなっております。したがって、本指針を遵守して行われている遺伝子治療については、ベクターなどの作製に企業が加わること自体が薬事法上の問題になるわけではないということになっております。

 続いて、5の「審査体制について」です。「複雑なベクターについては、施設内倫理委員会だけで評価するのは難しい」「指針が作製された当時は、安全性や効果についての情報の蓄積がなかったが、同一ベクターを用いたり、同一疾患に対する治療等、いろいろな経験の組合せが出てきたので、新規性について幅広く考えてもよいのではないか」「国の審査委員会で審査する内容を明確にして、施設内倫理委員会と国で審査する内容を役割分担してはどうか」「施設内倫理委員会では倫理性やプロトコールを、国の審査委員会では品質・安全性などの確認を行うという理解でよいか」「研究者の変更などは施設内倫理委員会の審査でよいのではないか」「いかに迅速に審査を進めるかが重要である」といった御意見をいただきました。

6の「実施施設から厚生労働大臣への各種報告について」は事務局からの報告で、特に皆様からの御意見はございませんでした。

7が「情報公開について」です。「情報公開はすべきで、電子データで登録すべきである」「情報の公開についてはその他の倫理指針でも示されており、それらに準じて記載していくべき」「国民が分かるような公開がよい」「社会に公開すべき内容については全て公開すべき。ただし知財に関する細かい部分については、その必要はない」との御意見でした。

 続いて、8の「記録の保存について」です。「記録のみならず、患者の経過観察も必要。アメリカ食品医薬品局(FDA)では、ベクターによっては経過観察が15年必要としている」「保存期間として10年、ベクターの種類によっては10年以上など、議論が必要」「保存期間が過ぎて記録が無くなると、全てが正当化されてしまわないよう、検討が必要」といった御意見がありました。

9が「個人情報の保護に関する措置について」です。こちらに関しては「疫学・臨床研究に関する倫理指針の統合後の指針を参照するのでよいのではないか」といった意見がございました。

 最後に、10の「人権保護に関する事項について」は、「インフォームドコンセントの年齢は1516歳からでよいのか」「単なる同意ではなく、子供であっても、なぜその治療が必要なのか納得してもらう必要があるのでは」「疫学・臨床研究に関する倫理指針では包括同意の問題があるが、遺伝子治療に関わる部分については包括同意ということはないであろうし、厳格に取り扱ってほしい」「試料・情報が主体となるような研究も適用範囲に含まれる疫学・臨床研究に関する倫理指針に比べると、遺伝子治療はより医療として高度な部分があるので、これらの研究指針の見直しに合わせて緩め過ぎることがないよう、注意が必要」といった御意見がございました。

○山口委員長 

先回議論をさせていただいた点について、1から10までにまとめていただきました。細かい点については今後、これから議論をするのですけれども、事務局からまとめていただいた内容について、御質問等がございましたらお願いいたします。

 よろしいでしょうか。では、一応前回までの到達点はそういうところだということにさせていただきたいと思います。

 続いて議題2、「遺伝子治療臨床研究に関する指針の見直しにおける検討事項について」に移ります。資料2を御覧いただけますか。第1回と第2回については、事務局から説明していただきましたけれども、それらも含めて事務局と打合せをして、本指針における検討事項を資料214項目まとめさせていただきました。このような検討事項について本日以降、皆様に議論していただきたいと思っているわけですが、本日は14項目の中の1から3までを主に議論させていただければと思っております。その議論をするために議論の材料として、前回も少し議論をしていただいたところですが、検討事項をもう少し深めるためにも、今日は国立衛研の内田先生に来ていただいておりますので、参考資料1に基づき、遺伝子治療に関する国内外の知見や動向について、特に1から3を中心に説明していただきたいと思います。それでは内田先生、よろしくお願いします。

○内田室長 

本日は「遺伝子治療用ベクターの定義と適用範囲」ということで、主に遺伝子治療を専門としない方を対象とした用語説明的な説明の内容になりますけれども、遺伝子治療の定義と遺伝子治療用ベクターの種類と特徴、適用範囲を考える上で海外の指針との比較や類似する製品との相違点について、御説明したいと思います。

(p3)これは1回目の島田先生の図にも、似たような形で出ていたと思います。現行の指針の定義として、遺伝子治療とは、「疾病の治療を目的として遺伝子又は遺伝子を導入した細胞を人の体内に投与すること」とされております。この遺伝子というのは、はっきりした定義がないところですけれども、治療用のタンパク質を投与する代わりに、タンパク質をコードする遺伝子を体内に投与して、体内で発現したタンパク質によって治療を行うのが遺伝子治療というように定義されています。遺伝子はそのままでは投与することができませんので、「ベクター」と呼ばれる遺伝子を導入する運び屋に載せて投与することになります。ベクターとしては様々なものが使われておりますが、これについては後ほど説明いたします。

 このように、目的遺伝子をベクターに搭載したもののことを「遺伝子治療薬」と呼んでおります。遺伝子治療の方法としては、遺伝子治療薬を直接体内に投与する「in vivo遺伝子治療」と、細胞を採り出して体外で遺伝子導入を行った後で遺伝子導入細胞を投与することで治療を行う、「ex vivo遺伝子治療」と呼ばれているものの2種類の方法があります。

(p5)次に、ベクターについてです。遺伝子治療用ベクターは、大きく分けてウイルスベクターと非ウイルスベクターに分けることができます。ウイルスベクターというのは、ウイルスが細胞に感染する機構を利用した遺伝子導入法で、遺伝子治療の場合、主に「非増殖性ウイルスベクター」という、細胞に感染して遺伝子は発現しますけれども、ウイルスとして増殖することがないように改変されたものが使われています。それにはレトロとかアデノとか、様々なウイルスがベクターとして開発されています。ただ、最近は増殖性を持ったウイルスも使われるようになってきています。

 「非ウイルスベクター」と呼ばれるのは、プラスミドやバクテリアベクター、細菌のベクターなどです。「プラスミド」というのは、もともと大腸菌などの細菌にある染色体外で独立して複製する環状の2本鎖DNAで、これに遺伝子を載せることで様々な分子生物学的な組換え操作が行われております。このプラスミドは、「Naked DNA」と呼ばれている裸のDNAのままで投与する場合もありますが、導入効率を上げるためにリポソームに包んだり、ポリマーと複合体を作らせて投与するということが行われています。

(p6)ここに主な遺伝子治療用のベクターの構造の模式図を示しております。ウイルスはウイルスゲノムというものがカプシドと呼ばれる殻に包まれており、更にウイルスの種類によっては、エンベロープという脂質膜に包まれた構造をしております。ウイルスベクターというのは、ウイルスゲノムの中の増殖に関わる部分とか、構造タンパク質部分の遺伝子を除いてしまい、特にレトロやAAVなどではほとんどの遺伝子を除いてしまって、その代わり目的遺伝子を載せています。そのような構造をとっています。一方、プラスミドベクターは、このような環状のDNAに目的遺伝子を載せたものです。

 次に、スライド7の表です。ここには遺伝子治療で使われている主なベクターの特徴をまとめてみました。これまでに様々なベクターが開発されており、それぞれに長所・短所があるということで、いろいろな治療目的に応じて、ベクターが選択されているという状況です。レトロウイルスベクターとレンチウイルスベクターは、宿主染色体に自身を組み込ませるための酵素を持っているので、染色体に組み込まれて遺伝子が発現します。そのために長期間の遺伝子発現ができますけれども、染色体への組込みによる挿入変異という安全性上のリスクがあります。主にex vivoの遺伝子治療で用いられています。

 そのほかのウイルスベクターやプラスミドに関しては、染色体へ積極的に組み込ませる機構は持っておりませんので、組込みが起こったとしても低頻度です。アデノウイルスの場合は非常に導入効率は高いのですけれども、遺伝子発現が短期間ということがあり、特にがんの遺伝子治療によく使われています。AAVは最近よく使われるベクターで、野生型のウイルスには病原性がないということで、安全性が高いと考えられております。また、非分裂細胞では長期間遺伝子発現が得られるということで、in vivoでの遺伝子治療で遺伝性疾患や神経疾患などでよく使われています。センダイウイルスベクターは日本で開発されたベクターで、細胞質で遺伝子発現を行うということで、核には入らないので、これに関して染色体組込みは全く起こらないと考えられています。プラスミドベクターはウイルスを使用しないということで、安全性が高いと考えられているベクターですが、遺伝子導入の効率は低く、遺伝子発現は短期間です。次のページは同じことですので省略いたします。

(p9)ウイルスベクターの安全性として最も懸念されるのが、ウイルスベクターによる挿入変異のリスクです。「現状」に書かせていただいたのは、昨年春の遺伝子治療臨床研究作業委員会の報告から抜き書きしたものです。レトロウイルスベクターの挿入変異リスクに関しての見解が示されています。「現状」として、レトロウイルスベクターは、これまで300例以上の臨床プロトコールで使用されていて、遺伝子治療で最も古くから使われているベクターです。先天性の免疫不全症に対して行われた造血幹細胞を標的とする遺伝子治療では、特に有効性が確認されている一方で、82人中9人という非常に高頻度で白血病などの造血系の異常を発症しました。(レトロウイルスベクターは)挿入変異のリスクがあるとは考えられていたのですが、実際に挿入変異によるがん化が起こってしまったのです。

 ただ、この挿入変異というのは、染色体に組み込まれたベクターによって近傍のがん原性遺伝子が活性化されたことが原因なので、ベクターが原因になっているということが考えられます。しかし、そのプロトコールをよく解析してみますと、挿入変異による白血病の発症というのは、造血幹細胞を標的とした場合に限られており、分化細胞を標的とした場合には、そのようなものは起こっていないということ、特に特定の対象疾患、あるいはレトロウイルスの中でも特に発現効率の高いウイルスを使用した場合に限られていること、白血病を発症した患者さんでは1名を除いて、白血病も免疫不全も治療されているということが分かっております。

 このようなことから、レトロウイルスは危ないから使わないというのではなくて、欧米では骨髄移植が実施できないような重篤な先天性の免疫不全症に対しては、リスク・ベネフィットを考慮すると、造血幹細胞遺伝子治療のベネフィットが勝ると考えられているところです。この作業委員会の結論としても、これは小野寺先生の遺伝子治療の申請のときのものですが、レトロウイルスベクターを用いた遺伝子治療を行うということでゴーサインが出ています。もちろん安全性の確保の対策は必要です。投与細胞数を減らすとか遺伝子導入数を減らすことによって、挿入変異の確率を減らすということ、より安全性の高いベクターを使用することで、ウイルスのプロモーターを除去したベクターを使ったり、レンチウイルスを使うということが最近行われてきています。また、遺伝子治療を行った後で長期間のフォローアップを行い、がん化の早期診断や治療を行うことで、挿入変異のリスクを低減させることが行われています。

(p10)ここは遺伝子治療薬の開発の動向です。遺伝性疾患に関しては、ベクターの主流がレトロからレンチやAAVに移行してきており、AAVベクターは先頃、西欧諸国では初めての遺伝子治療薬の承認が取れたものが出ております。がんの遺伝子治療では非増殖性のウイルスベクターを使ったものから、増殖性を持つベクターや腫瘍溶解性ウイルスといったものの利用が拡大してきています。

(p11)これは今まで使われているベクターの種類の比率を示したものです。遺伝子治療の最初からの統計ですので、アデノとかレトロとかプラスミドを使ったものの比率が多いのですが、レンチやAAVが最近増えてきています。ただ、これら新しいベクターに関しては、まだ経験が余りないということがあります。

(p13)次に、適用範囲についてです。海外の規制当局の遺伝子治療指針との比較ということで、FDAの指針、NIHの指針、EMAの指針、日本の臨床研究の指針を比較しています。遺伝子治療の定義に関しては、用語が多少違うところはありますけれども、それほど大きな違いはないと思います。ただ目的のところで、日本の遺伝子治療では治療と遺伝子標識というものがありますが、予防に関しては明確に記載されていません。一方、FDAEMAの指針では、治療だけでなく予防も書かれています。日本の指針の特徴的なところとして、対象疾患についての要件が書かれておりますが、海外の指針は医薬品の指針というところもあり、特に対象疾患の限定はありません。

 除外規定として、FDAでは多分部署が異なることから、感染症の予防用のワクチンが除外されています。その代わり感染症予防用のプラスミドに関しては、別のガイダンスが用意されています。欧州のEMAでは、がんワクチンやDNAワクチンなどは遺伝子治療に入れておりますけれども、「核酸医薬」と呼ばれている化学合成オリゴヌクレオチドに関しては、化学合成されたものは除外されるという規定があります。日本にはそのような明確な規定はありません。

(p14)ここで「遺伝子治療用プラスミド」と「DNAワクチン」の違いを、少し説明させていただきます。DNAワクチンも本体はプラスミドです。プラスミドというのは、遺伝子導入や発現効率が低くて一過性ですけれども、挿入変異による発がんリスクは低く、安全性の高いベクターと考えられているものです。遺伝子治療用プラスミドとDNAワクチンの違いは、目的遺伝子が治療用のタンパク質なのか、それとも抗原のタンパク質なのかというところです。DNAワクチンでは抗原タンパク質をコードするものを投与して、生体内で抗原が発現し続けることによって、従来のワクチンより高い免疫応答の誘導が期待されています。また、通常のワクチンに比較して製法が簡単で、保存や備蓄も容易というメリットがあるようです。

 海外ではB型肝炎DNAワクチンとか、インフルエンザDNAワクチン等の予防用ワクチンが開発されています。国内でも造血幹細胞移殖後のサイトメガロウイルス感染予防用のDNAワクチンの治験が、実は先日から遺伝子治療の治験ということで開始されています。もちろんがんのDNAワクチンもありますが、それは予防ではなく、治療あるいは再発防止用ということで開発されているところです。

(p15)それから、「遺伝子治療用ウイルスベクター」と「腫瘍溶解性ウイルス」の違いについてです。腫瘍溶解性ウイルスというのは、正常細胞内では増殖しませんけれども、がん細胞内では選択的に増殖して、細胞を壊すことでがんを死滅させるというウイルスです。従来の遺伝子治療用のウイルスベクターというのは、非増殖性のウイルスを使っておりますので、感染した細胞でのみ遺伝子が発現するということで、作用が非常に限局的になると考えられますが、腫瘍溶解性ウイルスの場合は、感染したがん細胞でウイルスが増えて、更に周辺のがん細胞にもその感染が拡大していくということで、作用が広範囲になるため、より高い抗がん効果が期待されているものです。

(P16) このような腫瘍溶解性ウイルスの種類としては、天然型のウイルスを使っているもの、自然弱毒化ウイルス、遺伝子組換えウイルスという3つに分けることができます。

 遺伝子組換えウイルスというのは、がん細胞のみで増えるように遺伝子改変を行ったものですが、必ずしも治療用の遺伝子を導入しているわけではありません。国内で開発されている単純ヘルペスウイルスやアデノウイルスの遺伝子組換えのものは、組換えウイルスということで、ウイルスベクターと考慮事項はほぼ同じということもあり、遺伝子治療の臨床研究として実施されているところです。

 一方、同じく国内開発例としては、自然変異で生じた単純ヘルペスウイルスも腫瘍溶解性ウイルスとして開発されております。これに関しては臨床研究が実施されたときに、厚生科学課のほうで遺伝子治療ではないという判断を出しています。また、海外でも天然型とか自然のものに関しては、遺伝子治療には含まれないというようになっているようです。ただ、遺伝子治療の指針を準用して評価を行っているというように聞いております。

(P17)最後に、「遺伝子治療薬」と「核酸医薬」の違いについて御説明します。遺伝子治療薬は遺伝子組換えDNA技術によって製造されているもので、DNARNA分子からなりますけれども、最低数千個の分子から構成されていると考えられます。遺伝子導入を行って、目的タンパク質の遺伝子発現を介して作用するものです。一方、核酸医薬は化学合成により製造されているもので、遺伝子発現を介さずに直接作用するようなオリゴ核酸です。オリゴというのは、DNA/RNA分子が10数個から5060個ぐらいまでつながったようなもののことです。

 種類としてはアンチセンス核酸、siRNA、デコイ核酸、アプタマーなど、様々な種類があり、これらを総称して「核酸医薬」と呼ばれています。ただ、遺伝子治療用のベクターを用いて核酸医薬というか、siRNAの基になるshRNAを発現させるという方法もあります。その場合はベクターを使って発現させるということで、規制上は遺伝子治療薬になると考えられています。

(p18)最後のスライドでは、核酸医薬の種類と作用機構をまとめて書いておりますが、ここでは直接関係しませんので、説明は省略いたします。興味のある方は読んでいただければと思います。私からの説明は以上です。どうも御清聴、ありがとうございました。

○山口委員長 

今、説明いただいた資料について、御質問等を頂きまして、理解を共通にした上で、次の議論に移りたいと思います。御質問等がございましたらお願いします。

○位田委員 

私はnon-scientistで素人ですので、変な質問をするかもしれませんが、お許しいただきたいと思います。資料1の「対象疾患について」という所です。これまでに行われた議論の中で、「遺伝子治療が開始され20年経ち、安全性・有効性が確立されてきたので」という表現があったのですが、今の先生のスライドの9ページでは、レトロウイルスベクターの挿入変異のリスクがあって、安全性が必ずしも確保できないのではないかと私は理解したのです。例えば白血病が発症したときに、治療はできるけれども、それ自体の安全性が確立しているとは言えないのではないかと思ったので、これまでの議論のまとめとの関係で、有効性は病気が治るということなのでしょうが、安全性が確保されているというのは、どういう指標で、若しくはどういうことであれば安全性が確保されていると言えるのかが、よく分からないのです。幾つか質問があるのですが、まずこの点について少し御説明を頂ければと思います。

○内田室長 

それについては、ベクターによって、それぞれリスクが異なることが分かってきています。それと、先ほど説明した挿入変異のリスクに関しても、レトロウイルスだったら必ず白血病が起こるというものではなく、対象疾患ですとか、対象とする細胞が限定されたものに限られていることが、20年の蓄積で分かってきているということです。

 もちろん、そういうものを健常人に投与しようというものではなくて、この場合には造血幹細胞移植が行えればいいけれども、そうでなければ、致死的であるような遺伝性疾患の場合には、遺伝子治療、レトロウイルスベクターを使ってでも、遺伝子治療を行うほうがベネフィットがあるだろうということです。

 一方、ほかのベクターに関しては、かなりいろいろ蓄積がありますので、先ほどのようなプラスミドベクターに関しては、基本的なベクターだったら安全だろうと考えられていて、そういうものは予防用のワクチンとしても開発が検討されているというところです。

 それで、最近はレトロではなくて、レンチですとかAAVというものがよく使われるようになってきていますが、従来のベクターよりは安全性が高いと考えられてはいますが、それに関しては、まだ使用の経験や年数が余り経っていないということがあって、完全に安全性が確保されているわけではないかもしれないというところがあります。

○位田委員 

次の質問です。そのようにして、ベクターは新しいもものをどんどん使っていくということは、例えば20年前に始めたときの遺伝子治療の対象疾患の範囲から、新しいベクターが開発されることによって対象範囲が広がったと考えていいのでしょうか。

○内田室長 

20 年前は同じベクターを使っていてもうまくいかなかったのが、最近はうまくいくようになったというところがあると思います。いろいろ改良されていたり、投与方法の工夫がなされたりというところもあると思います。

○位田委員 

3 つの要件で縛っているのでやりにくいという議論が、以前にあったようなのですが、3つの要件で縛っているからやりにくいということは、その3つの要件に該当する以外の疾患にも遺伝子治療ができる状況になったということなのですよね。

 それはベクターが開発されたからということなのか、若しくは疾患そのものの研究が進んだからということなのか、その辺りはいかがでしょうか。

○内田室長 

現在の3つの縛りというところですと、現在ある治療法よりも優れていなければならないということが、例えばありますけれども、それは酵素補充療法のような場合ですと、酵素が治療用タンパク質として用意されている場合には、それでいいではないかということで遺伝子治療はできない形になるわけです。遺伝子治療だと、1回治療して完治するかもしれないのに、タンパク質として投与すると、その場合には一生涯投与し続けなければいけないということがありまして、そういうところの縛りがなくなると、より入りやすくなるかなというところがあると思います。

○位田委員 

分からないことが多いので、質問が多いのですが、先生のスライドの13ページの海外との比較なのですが、日本の場合には「遺伝子治療」という言い方なのですが、アメリカは医薬品と組換えDNA、ヨーロッパは遺伝子導入用医薬品ということです。ヨーロッパの場合は、医薬品に限定されているように思えるのですが、その辺りはいかがなのでしょうか。

○内田室長 

海外では、臨床研究も治験も、全て同じプロトコールで行っていることがありますので、全て見ているということです。

 一方、日本の場合は臨床研究と治験は分かれていますし、遺伝子治療の臨床研究であれば厚生労働省で見ていますが、遺伝子治療に含まれないということになりますと、施設内の倫理委員会の審査のみで臨床研究が行えるという違いがあります。

○位田委員 

そうすると、3ページで先生がおっしゃったin vivoの遺伝子治療薬と、ex vivoで遺伝子導入細胞を入れるというのは、海外では同じ取扱いになるということなのでしょうか。要するに、細胞であれ、遺伝子治療薬であれ、両方とも医薬品という取扱いに。

○内田室長 

FDA の指針も「遺伝子・細胞治療薬」という形の指針になっています。ヨーロッパもそうです。

○位田委員 

日本の場合には、その点については特に問題はないということなのでしょうか。

○内田室長 

問題はないと言いますか、重なるとすると、「ヒト幹細胞を用いる臨床研究に関する指針」になります。それがありますが、遺伝子導入が主体となる場合には、遺伝子治療ということで考えたほうがいいと思います。

○位田委員 

もう1点です。13ページの所で、「予防」という言葉をお遣いになっているのですが、これまでの議事録を読んでいると。一旦病気になっている人に何らかの治療が行われ、その後、一応治ったのだけれども再発の防止のために使う予防、それと、いわゆる健康な人が、例えばインフルエンザにかからないように予防するというのと、同じ予防でも意味が違うように思うのですが、その辺りはいかがなのでしょうか。

○内田室長 

海外の指針も「予防」と書いているだけで、予防用ワクチンを除くという、ちょっとよく分からないところはあるのですが、DNAワクチンに関しては、健常人に対する予防用のワクチンというところも含まれてきていて、インフルエンザのDNAワクチンは健常人に対する予防用ワクチンということで、海外では開発されているところです。それを遺伝子治療と呼ぶかどうかはありますが。

○位田委員 

日本の場合には、病気の人に使う場合に「遺伝子治療」と言っているということですね。

○内田室長 

そうですね。ただ、先ほどのサイトメガロウイルス感染症予防用のワクチンというのが、治験のほうでは現在行われているところですが、それは造血幹細胞移植を行った後の患者で、しかもサイトメガロウイルスを持っているということで、非常に感染症のリスクが高いということで、そういう形の治験が行われていると聞いています。

○位田委員 

その場合にはリスクがもともとあるので、それに対する対応策で、例えば通常のインフルエンザなどであると、みんな同じようなレベルのリスクですよね。ですから、少しリスクの違いによって、同じ「予防」という言葉でも、意味が違うかなと思っているのですが。

○内田室長 

そうですね。そこのところは、まだそういうものは日本で行っているところはありません。

○位田委員 

どうもありがとうございました。

○山口委員長 

そこの予防のほうだけですが、医薬品のほうですと、生物由来技術部会で予防ワクチンについては遺伝子治療に含めるかどうかという議論をしまして、審査管理課の回答としては遺伝子治療に含めるという回答がされておりますので、DNAワクチンと言われるものも遺伝子治療に含めるという考え方で、遺伝子治療薬にはなると思います。ほかにございませんでしょうか。よろしければ、次の議論の中でも出てきますので、その場合に内田先生に御協力いただければと思います。

 この内容を踏まえて、検討事項に入っていきたいと思います。まず、論点1について、事務局より御説明をお願いいたします。

○許斐課長補佐 

資料3です。1つ目の検討事項は、「遺伝子治療の定義及び適用範囲について」です。1-1「遺伝子治療の定義をどのように置くか。自然界に存在するウイルス・DNARNAを用いるものや、核酸医薬品等の化学合成されたものはどう扱うか」といたしました。

 「現状と課題」です。遺伝子標識については、現在ほとんど行われていない。組換え技術を用いずに化学合成したDNARNA等の核酸医薬品、自然界に存在するDNARNAやウイルスはどのように扱うか。プラスミド等を用いたDNAワクチンは現行の治療の定義には含まれない。

 そこで「検討のポイント」ですが、適用範囲を拡大して疾病の治療だけでなく予防も含めた場合、「遺伝子治療」ではなく「遺伝子医療」とするか。組換え技術を用いていないDNARNAやウイルスを用いるものも定義に含めるか。「見直しの方向()」ですが、適用範囲に合わせて、遺伝子治療を再定義してはどうか。また、予防を適用範囲に含めた場合、「遺伝子治療」ではなく「遺伝子医療」と定義してはどうか。2つ目として、自然界に存在するDNARNAやウイルス、また核酸医薬品を用いる治療は定義に含まないことにしてはどうか。一方、組換え技術を用いて作成したものは定義に含めることにしてはどうか。以上です。

○山口委員長 

現状のまとめと、見直しの方向を提案していただきました。これにつきまして、先生方からコメントを頂ければと思います。

○今村委員 

前回にも申し上げましたが、私どもの感覚では疾病に対応するのが治療ということで、健常者に対するものは予防という観点です。そういったことから、医療保険の適用、あるいは適用外ということにも制度としてなっておりますので、この際、当然のことながら予防の部分が入ってくると思いますので、文言自体を「治療」から「医療」というものに変えたらどうかと思いますが、いかがでしょうか。

○山口委員長 

そのほかに御意見あるいは前提となることの追記等でも結構ですが、いかがでしょうか。

○中山研究企画官 

今のご意見は「遺伝子医療」という言葉にしてはどうかということでした。それについての留意事項としてなのですが、「医療」というと、いわゆる予防と治療のほかに、診断という概念が入ってきますので、「医療」という言葉を使う場合には、診断というものも含める概念として考えるかということを留意事項としていただければと思います。

 そこは違うだろうということであれば、「遺伝子治療及び予防」という言い方にするというのも、1つの案にはなるということで、そこは少し留意していただければと思います。

○山口委員長 

私から質問させてほしいのですが、診断というのは、いわゆるがんがどこに限局しているかという診断も入るのですかね。

○中山研究企画官 

そういったところも入ると思います。また、、がん遺伝子を見つけることも入るのではないかと思います。

○山口委員長 

事務局からありましたが、「医療」といった場合に診断も医療に含まれるので、その辺をどこまで明確に定義しておくか、どう考えておくかが議論の要点になるかと思いますので、御意見等を頂ければと思います。

○那須委員 

中山研究企画官が申しましたように、私どもも最近「臨床遺伝子医療学講座」というのができまして、その守備範囲は、遺伝子診断、遺伝子相談といったものも、いわゆる診断といった幅広いものも入ってくるという捉え方をしていまして、参考になればと思います。

○谷委員 

私も今村先生と同意見で、前回は「遺伝子医療」という言葉にしたらどうかという案に、賛成させていただきました。その後再考いたしまして、医療の中には診断や検査が入ってきますので、本指針に関しましては「遺伝子治療」という言葉にして、その定義の所に、予防も含めるといったような表現にしたほうが良いのではないかと、中山先生の御意見に賛成いたします。

○中山研究企画官 

「治療」と書くと、そこに予防も含むという概念は難しいかもしれないので、併記するのは1つの案かもしれないと思います。

○山口委員長 

併記というのは、例えばどうなりますか。

○中山研究企画官 

行政的なやり方ですが、「遺伝子治療及び予防」、あるいは「遺伝子医療」と書いて、診断は除くということで、その場合に「遺伝子医療」という言葉はそういう概念として使うということもあり得るかもしれませんが、予防を含めること自体には全く異論はないのですが、診断のことをどう取り扱うかということで、あとは言葉の遣い方の問題だと思います。

○山口委員長 

2 つに分けて議論させていただきたいと思います。1つの点は、予防を含めるかどうかについてまず合意を得た上で、もし言葉遣いに関しては、法律的にどう示しておいたほうがいいのかという点で、どういう表現を使うかとは別扱いとさせていただきたいと。今村先生、いかがでしょうか。

○今村委員 

結構です。

○山口委員長 

今まで予防という概念は、臨床研究の中には入っていなかったように思うのですが、薬事のほうでも、少し予防が入ってきていると。そう考えたときに、遺伝子治療の臨床研究として審査をする守備範囲としては予防も含めるということで、もし合意が得られるのであれば、そのように含めておければと思いますが。

○小野寺委員 

予防という概念ですが、これは議論になると思うのですが、健常人と患者に対する予防とはっきり定義したほうがいいと思います。健常人も含めての予防と考えるのか、それとも俗に言う患者に対する再発予防、つまり治療の一環としての予防という意味です。

 次の議題になってしまうのかもしれませんが、そこを明確に定義してから、予防を決めたほうがよろしいのではないでしょうか。どうでしょうか。

○山口委員長 

その辺はもう1つ明確にさせていただければと思います。先ほどの内田先生の資料にありましたが、これはFDAICHという議論の場の情報を提供させていただきますが、FDAが「予防」と書いている場合には、彼らは、がんの再発予防というところは、我々は言葉として「予防」と遣ってしまいますが、そこは治療と考えているようです。それは含めるということです。ただし、健常人に打つDNAワクチンは、別の指針で見ているという話です。ただ、EUに関しては、健常人に打つものも予防として入れて、それも含めているということかと思います。

 ただ、正直申しまして、予防用の健常人に投与するワクチンを、臨床研究として厚生科学課に申請してくる方は、実際上はほとんどいないと思います。ただ、そこに含めているかどうかというのは、重要なポイントですので、健常人に投与するものも入れた形でいいのか、そこは議論が必要で、あるいは含めないほうがいいと考えるのか。その辺について御意見を頂ければと思います。

○谷委員 

小児科の小野寺先生に質問です。遺伝子診断がかなり進んできていますので、代謝性疾患の場合は特に、発症前の予防目的で遺伝子治療を行う場合も将来的には想定されると思います。その場合の発症前の患者は健常人とみなしていいのでしょうか、それとも患者とみなすのでしょうか。

○小野寺委員 

多分、遺伝子変異を持つヒトという意味で保因者なのでしょうけど、単に遺伝子診断しただけで、その人が将来的にどう発症するかは分からないわけです。たとえ同じ遺伝子変異を持っているヒトでも発症する方もいれば、発症しない方もいる。つまり、遺伝子診断した段階では患者とはみなしていなくて、その後の経過観察(フォローアップ)のなかで病気を発症すれば、その段階で患者になり得るわけです。将来的には遺伝子変異と臨床症状の相関を研究するゲノムコホートが発展すれば、遺伝子診断の下でphenotypeを予想し、そのことから治療を始めるということもあり得ますが現時点では単純に遺伝子診断のみですぐに患者とは考えていないと思います。

○谷委員 

疾患に対する知識が増えていきますので、この10年、20年のうちに、かなりハイリスクの患者が予見できてくると思うのですが、そういった意味で。

○小野寺委員 

もちろん、ゲノムコホートが進み、遺伝子変異から発病をある程度予想できれば、遺伝子診断の段階で症状を呈していなくとも患者とみなして、早期の治療を開始しても良いと思います。特に、最近の酵素補充療法に関しては、かなり早い段階で酵素補充をしていますので、まだ、症状を呈していなくとも遺伝子変異を持つヒトを患者と考えていますので、それは患者でいいのではないかと思います。

○伊藤委員 

全くよく分からないのですが、ここで議論しているワクチンや予防という言葉を一般の国民が聞くと、様々な感染症のワクチン、予防と同じように聞こえてしまうので、例えばその辺の「ワクチン」「予防」ということを、もう少し別な表現にするとか、分かりやすくしないと、これで予防がいいとか、ワクチンがいいとか言われても、理解がきちんとされるかなという疑問を感じるのですが。

○山口委員長 

もし改正をして、そういうのを変えていくとすると、Q&Aのようなものを出さないといけないのかなと、個人的には思ったのですが、事務局としてはどうでしょうか。もし、そういうものを含めていくと、そういうことかなと。ここで全部説明するのは難しい気がするのですが。

○中山研究企画官 

「予防」とか「ワクチン」という言葉自体を何か分かりやすい言葉に置き換えるというのは、なかなか難しいところはあると思うので、そこは分かりやすい解説を付けるということかもしれません。

 ただ、今、「予防」と「再発予防」というのは混同されていて、「再発予防」自体は治療という概念で、余りまぎらわしい議論にならないようにすることは必要かなと思います。

○位田委員 

これは遺伝子治療の臨床研究なので、臨床研究として、感染症の予防の臨床研究のような形でやるのか、若しくは遺伝性の疾患の臨床研究としてやるのかで、予防かそうでないかと分かれるようにも思うのです。

 同時に、遺伝子治療の臨床研究だけ、通常の臨床研究とは違う指針を作っているのだという理由が重要なのだと思うのです。ところが、現状の指針には理由が書いていないのです。かつ、確かにこの指針は結構厳しい指針だと思うのですが、いわゆる通常の臨床研究の指針と書きぶりはそんなに違わないと思うのです。対象が遺伝子治療だということが書かれているだけで、遺伝子治療だから、ここがこう違うという書き方があまりされていないように思います。現状の指針の定義のところは、遺伝子治療とはうんぬんというのはたくさん書いてありますし、説明事項の所にも、遺伝子治療うんぬんというのは書いてあって、いろいろな所に「遺伝子」という言葉は出ているのですが、それ以外では、通常の臨床研究の指針に書かれていることと、そんなに変わらない。特に遺伝子治療の臨床研究だけ特別に抜き出して指針の対象にするというときに、それは疾患の治療ということに限定するのか、若しくは健常人に対する予防まで含むのか、それによってこの指針の存在理由というか、その辺が違ってくるのではないかと思うのですが、その辺りはいかがなのでしょうか。

○伊藤委員 

今の位田先生の話と同じなのかもしれませんが、先ほど予防というときに、「再発予防」ということを言いました。再発予防と言われると分かりやすいですね。ですから、例えばここでの予防というのは、「遺伝疾患の発症予防」という言葉を遣うとか、いわゆる一般的な感染症の予防とは違うということを、頭にきちんと付ければ、もう少し分かりやすいかな、私にでも理解できる範囲かなという気はします。

○山口委員長 

ネーミングとしては、感染症用ワクチンとか付ければ分かりやすく説明はできるかなと思います。

1点気になっているのは、先ほど内田先生の説明にありましたが、使っているプラスミドというのは構造的には、ほとんど同じような基本骨格構造がありまして、その中に入れているものが疾患の治療に用いるタンパクなのか、抗原タンパクなのかというだけの違いです。そうすると、先ほど安全性の問題はかなり克服されてきたと言いましたが、プラスミドでも挿入変異がないわけではない。

 そういうことを考えるときに、同じ構造を持って、同じconcern、要するにリスクなどがあったときに、片方は目的が違うから遺伝子治療に入れないでいいのか、それとも目的とかconcern、リスクなどが共通するものであれば、同じく共通する指針で見たほうがいいのか、そういう観点も必要ではないかと思うのです。座長がこういうことを言っていいのか、そういう観点から議論いただけてもいいのかなと思いました。

○小野寺委員 

私も山口委員長のおっしゃることに賛成なのですが、基本的に今、位田先生が言われるように、遺伝子治療の指針をなぜ作るかというのが重点だと思うのです。もちろん対象疾患ということはあると思うのですが、それよりも、遺伝子を使って何らかの医療行為をするところが、遺伝子治療の指針を作成する一番の理由だと思います。

 先生がおっしゃるように、例えばインフルエンザに対するDNAワクチンだとしても、それがベクターを使うというところでは、そこで何らかの遺伝子組換え技術が発生するので、それを健常人であろうがヒトに投与することを考えるのであれば、この指針の中に入れても間違いではないと思います。つまり、遺伝子を使った医療行為を行うということで、遺伝子治療の指針と考えたほうが分かりやすいかなと。健常人とか患者というよりも、遺伝子組換え産物を用いているかいないかのほうが分かりやすいのではないかと思います。

○位田委員 

その場合に、要するに遺伝子を入れた、若しくはいろいろなベクターを使って遺伝子を治療するということが、通常の治療よりもリスクがかなり高いから、この指針を作るのだということであると、例えば感染症の予防にプラスミドを予防薬として使うことのリスクがどの程度高くて、そうではなくて、例えばがんの再発予防で使うときのリスクがどの程度高いか、そこはリスクの問題にもなると思うのです。だから、単に遺伝子を使って治療するからということだけだと、理由が希薄かなと思います。しかも、安全性はかなり確立されてきているという話もあるので、そうすると通常の臨床研究に入れても、特におかしくはないですよね。しかし、それを区別して遺伝子治療の臨床研究は特別だと言うときには、それだけリスクが大きい。そうすると、そのリスクの大小によって、通常の臨床研究にいくのか、遺伝子治療の臨床研究にいくのかも変わってくるのかなと思います。

○中村委員 

予防医学の立場からです。予防を含めることについては、国際的な動向も拝見して、あるいは再発予防からも当然のことだと思います。

 医療というと、先ほどありましたように、診断も含むということもありますが、一般の人が聞いたときに、やはり医療というのは診断と治療という感じで、予防という言葉が入っていないような印象を持っていると思います。そういう意味では、私は言葉としては、「治療と予防」のほうがいいのかなと思います。

 もう1点です。これは1-2で議論すべきことなのでしょうけれども、先ほど来出ている、いわゆる再発予防、一旦発病した人を治療して、再発を予防しますと。これは予防医学の世界では「三次予防」と言っています。それに対して、普通の人が発病しないようにというのが、一次予防です。二次予防は早期発見早期診断ですから、これは今回の議論とは違うと思います。

 その一次予防についても含めるのかなという気がするのですが、そのときに、先ほど来出ている「健常人」という言葉は、だんだん医学が進んでくると、何が健常人かというのは分からなくなってしまって、我々、普通に生活している人でも、何らかの問題を持っているし、あるいは将来発病するリスクがある、そういう意味では発病する前の状態というような形で、そこはまた少し、病気の人に対する治療とは違うような話、あるいは再発予防とは違う視点があってもいいのかなと思っています。

○山口委員長 

一次予防、三次予防と、非常に分かりやすく御意見を頂いたと思います。

○小野寺委員 

先ほどの位田委員のリスクの問題というのは、非常に重要な点だと思います。その意味で、先ほどのプラスミドによるDNAワクチンを一臨床研究として行ったほうがリスクは高いと私は思っているのです。つまり、先ほど出たプラスミドというのは、DNAを使うわけですから、そういうものが一般的なIRBで承認されたときに、プラスミド構造を判断できる方がいらっしゃるかとかどうか。もし、IRBにベクターの専門家がいない場合は、そのプラスミドの安全性を評価できる人がいないわけで、やはりベクターの安全性を評価するのは遺伝子治療の指針のほうが良いと思えるのです。確かに、国の審査側は大変かもしれないのですが、治療の安全性を考えると、遺伝子治療の指針に基づく国の専門家によるベクターの安全性評価の方が、将来的なことを考えると治療の安全性は高くなるのではないかと思っています。

○山口委員長 

位田先生の御提議の話とか、小野寺先生に説明していただいた内容を考えたときに、先ほど中村先生がおっしゃったように、予防も入れてもいいのではないかという御意見が多数かなという気はしてはいるのですが、それ以外に、「健常人」という言葉が難しいという話はあるのですが、それ以外に、そこはどうかという話はございますでしょうか。もしなければ、言葉遣いに関しては、先ほど今村先生から御提案いただきましたが、「医療」とするのか、それは法律用語もありますので、法律用語の中で整理していただくとして、含める対象疾患としては、遺伝子治療と、言わば一次予防も含めた形での範囲としてもいいのではないかと思ったのですが、それでよろしいでしょうか。

                                  ( 異議なし)

○山口委員長 

ありがとうございます。名称とか、その辺の話については、事務局にお願いしたいと思います。

 次の論点に進みます。1-2の論点について、事務局から説明をお願いします。

○許斐課長補佐 

次のページの1-2です。今、大分御議論いただいてしまっている部分になっていますが、1-2としては、「遺伝子治療の適用範囲をどこまで規定するか。予防も適用範囲として含めていくか」ということです。「現状と課題」は、現状の指針では、適用範囲について特に記載はありません。治療だけでなく予防も含めて、組換え遺伝子を細胞内に投与することについて、適用範囲としての定めがありません。健常人への予防として行われるDNAワクチン投与は、適用範囲に含まれていません。

 「ポイント」としては、治療だけでなく、再発予防や健常人への投与も適用範囲として含めるか、再発予防と健常人への予防は大きく異なるため、どのように扱うかといったところです。

 「見直しの方向()」は、治療だけでなく、再発予防も適用範囲に含めてはどうか、健常人への予防は再発予防と区別して扱ってはどうかとしています。以上です。

○山口委員長 

この辺については、先ほど議論してしまったと思いますが、追加で何かございますでしょうか。

○伊藤委員 

先ほど中村委員もおっしゃったように、私たちとしても「健常人」という言葉は違和感を感じるのです。病気である人、治療の対象者を患者というのはいいのですが、それ以外の者を健常人というのは、また「健常人」という表現も最近聞かなくなったような気もするのですが、どういう意味なのでしょうか。未発症の人なのか、ものすごく健常な人なのか、一般国民のことを指すのか、ちょっとよく分からないので、何か親切な表現はないだろうかという印象を持ちます。

○中村委員 

伊藤委員のおっしゃった未発症の人というのは、そうだろうなと思うのですが、特定の疾患ということに限定すると、それを発症している人と発症していない人ということで、分けることはできると思うのですが、いろいろな病気ということを考えると、相当難しい気がします。そういう意味で、何かいい言葉はないのかなという気がします。

 もう1つは、そういう人についても、リスクの高い人とそうでない低い人というのは、だんだん分かってきていると思うのです。それを、ここの見直しの方向案の2番目として、一次予防と三次予防を分けて考えましょうと、これは賛成なのですが、一次予防もリスクの高い人と、そうではない人というのは分けなければいけないのだろうなと。ただ、明確にこれと付けることができないので、そこは実際の運用で、倫理審査を行うようなときに、そこも勘案しながらという感じで出さざるを得ないのかなという気がしています。

 いずれにしましても、そういう意味では「一次予防」という言葉を遣って、「健常人」という言葉を遣わなければ、特定の疾患あるいは疾患全てを包含しても、発病してない人に対してというようなことで、うまくクリアできるような可能性を、今しゃべりながら感じました。

○伊藤委員 

参考までなのですが、障害者福祉のほうでは、以前は「障害者」と「健常者」という言い方をしたのです。これは非常に差別感を伴うということで、最近は余り「健常者」という言い方をしなくなっているのです。そういうことも併せて、「健常人」と言われると、違和感があるかなという感じなので、何か工夫をお願いしたいと思います。

○山口委員長 

これは事務局でも考えていただいたほうがいい項目かなと思います。先ほどの1-1で議論した中身で、結論としては一次予防も含めると結論が出たように思いますので、用語の遣い方等については検討させていただくということでよろしいでしょうか。

○許斐課長補佐 

1-1 の「見直しの方向()」の2つ目のポイントに関して、少し御議論が抜けているような気がしますので、この辺についてどのようなお考えがあるのか、委員長からお願いしたいと思います。

○山口委員長 

自然界に含まれるDNARNAということで、言わば野性型のウイルスを使ったというケースです。先ほどの腫瘍溶解性ウイルスのときの野性型を使ったものは、今も含めておりません。その辺について、議論が抜けておりました。

 この辺は、先ほど内田先生から御紹介がありましたように、海外も野性型ウイルスを使った場合、腫瘍溶解性ウイルスは遺伝子治療とはしていない。ただ、遺伝子治療のガイドラインを使って審査をしているところが、特徴かと思います。現状は、日本はそこは含めていないということになっているのですが。

○辰井委員 

そこは私は素人なので是非伺いたいと思ったのですが、今の見直しの方向として入れないとなっているのは、理由を伺えればと思います。リスクの観点から違いがあるのかどうかというところを伺いたいです。

○山口委員長 

まだそこは結論は出ていないと思っていただければ。ただ、現状としては、今まで入れていなかったという現状がございます。先ほど少し内田先生から説明がありましたが、単純ヘルペス1型のものについて、野性型ウイルスを使った腫瘍溶解性ウイルスの臨床研究は遺伝子治療とせずに、臨床研究は行われています。それを含めるとなると、逆にいうと、必ずその臨床研究をやるときには厚生科学課に申請していただくということになるのですが、要するに、それは1つの大きな方向転換を提案する形になりますので、その辺について御意見を頂ければと思います。

○許斐課長補佐 

もう一度今の御発言を言っていただけますと。

○山口委員長 

まず、今まで臨床研究として行われていた、例えば野性型ウイルスを用いた腫瘍溶解性ウイルスとか、そういうものに関しては、臨床研究で遺伝子治療の臨床研究とせずに、臨床研究は行われていたということになるわけですが、野性型でも、こういうケースについては含めるという話になってしまうと、範囲が広がってしまうのですが、それについての、例えば特定のこういうケースについては含めてもいいのかどうかという、正直言って、私自身は今更無理ではないかと思ってはいるのですが、その辺について事務局の提案であるのは、組換えDNAを使ったものについてのみに限定すると。これは、現状の追認の形になると思うのですが、それでよろしいでしょうかということだと思います。

○許斐課長補佐 

ウイルスに関して言いますと、自然界に存在するものと組換えを用いたもので、1つ明確な線があるかと思います。自然界にあるもの、先ほどの腫瘍溶解性ウイルスのようなものですと、特に組換え技術を用いていないと。ただし扱いとしては、ガイドラインに準じてということですが、山口先生からもお話があったように、そういったものを全て含めていくと非常に広範囲になってしまうという部分があると考えております。

 それから、もう1つの核酸医薬品ということですが、あるいは自然界に存在するDNARNAということですが、これもベクターに乗せるのか乗せないかということで、大きく分かれてくると考えています。

○小野寺委員 

非常にここは難しいと思うのですが、内田先生に説明していただいた17ページの遺伝子治療薬と核酸医薬品の違い、ここしか定義の区別がないと思っています。つまり、遺伝子治療薬というのは、発現させたい目的のタンパク質を、ベクターを使って産生させる、つまり、DNAであれ、RNAであれ、細胞が持つ転写・翻訳のメカニズムを使って目的のたんぱく質を発現させて、治療するのが遺伝子治療薬と考えていまして、核酸医薬の場合は、それがそのまま何もせず(転写・翻訳されず)に働く、つまり、細胞における発現機構を利用せずに治療効果を発揮するのが核酸医薬だと思います。たぶん、違いはそこの1点だけではないでしょうか。

 ですから、一番最後に書いていますが、核酸医薬であっても、ベクターを使って発現させてしまったら遺伝子治療薬になると思われ、納得しやすい定義のとしては、細胞が持つ転写・翻訳などタンパク質の発現機構を利用するかしないかだと思います。

○山口委員長 

例えば核酸医薬のところで分かりにくいところがありましたら、御質問でも構いませんので、いかがですか。欧米でも、いわゆる合成された核酸医薬について、これを遺伝子治療に含めている所はないとは思うのです。

 ただ、微妙な点は、例えば、がん細胞からメッセンジャーRNAを抽出して、それを投与する場合などを遺伝子治療の指針で見ているケースはあるのです。これまで、メッセンジャーRNAについては、国内で臨床研究のほうではあったのですが、多分、見てはいなかったと思います。

 最近、DNA合成技術が非常に発達してきていまして、今、一番小さな遺伝子ですと3kbぐらいかなと思うのですが、1.5kbぐらいですと、合成できてしまうということもあるのです。そうすると、化学合成ではと言いにくいところもありまして、先ほど少し小野寺先生に説明していただきましたように、特定のタンパク質あるいは核酸等を発現させるようなメカニズムを持っているものという考え方が、一番分かりやすいのかなと思ってはいるのですが、小野寺先生、そのような感じでしょうか。

○小野寺委員 

多分、定義するとすれば、そこしかないかなと思います。先生おっしゃるように、例えば合成した核酸であればいいとすると、プラスミドも合成されてしまえば、もうそれは核酸医薬という定義になってしまうので、そこに(合成する・しない)定義を置くのではなく、細胞の中に入ったときに新たに転写、翻訳が起こって、何らかの形で機能を発揮するものを遺伝子治療薬と。この定義が本当に正しいかどうか分かりませんが、そういう形で分けるしかないのかなと思います。

○山口委員長 

この辺は話がややこしいこともあるかと思うのですが、それでは分かりにくいということがありましたら、お願いしたいのですが、いかがでしょうか。

○辰井委員 

そこの定義の区別が、この指針に基づく専門家による特別な審査を要するか要しないかの区別につながると考えてよろしいわけですか。

○山口委員長 

それはそのとおりだと思います。

○中畑委員 

振り出しに戻ってしまうのですが、自然界に存在するDNARNAは、今回のこれから外すと。今まで外してきたこともあるということでいいかどうか。ウイルスベクターは、もちろん小野寺先生が言われるように、目的とするタンパクを発現させるためにウイルスを使って、ウイルスの複製のところなど、不必要なところはどんどん削って、安全性を高めてきたわけですが、そういったベクターに比べて、自然界に存在するウイルスはウイルスそのものの病気を起こすというリスクを持っているわけですので、それを投与することについて、リスクという点で考えると、決して、自然界に存在するウイルスだから安全だということはないわけですので、それを外すという、今まで議論がなかったので外されてきたわけですが、今回改めて、それを外してしまっていいのかどうかということは、もう少し慎重に議論したほうがいいのではないかと思います。

○山口委員長 

リスクの点から言いますと、中畑先生がおっしゃるとおりなのです。例えばポリオウイルスであって、その中に野性株がいれば非常に重篤なことになってしまいますので、そういう意味ではそのとおりなのですが、逆にいうと、それを遺伝子治療で見るか、ワクチンのほうで見るかという、そういう論点の区分けかなという気がしてはいるのですが、整理するとそうなるでしょうか。事務局としてはどうでしょうか。遺伝子治療でそこを見るのか、そこの部分はワクチンならワクチンの中で見るのかという話かなと思ってはいるのですが。野性型ウイルスに関して、例えばという話になったときに。

○中山研究企画官 

今、明確に事務局としての考えというのは難しいなと思うので、いろいろ今までの御議論を踏まえて検討させていただきたいと思うのですが。

○山口委員長 

分かりました。EUFDAが腫瘍溶解性ウイルスなどの野性型あるいは弱毒型を入れているのは、中畑先生のおっしゃっているようなconcernがきちんとあるからだと思うのです。ただ、それを今度は、ここで審査するか、別の審査をするかという観点もあるのだろうと思ってはいるのですが。

○谷委員 

例えばワクチンの委員会で検討するとしました場合に、野生型の腫瘍溶解性ウイルスにおいては、我々も実際に同様の研究に携わっている立場から懸念しますことは、がん細胞の中でウイルスを継代することになるので、患者さんから採ってきたウイルス自体が、そこで既に変異がある程度入ってきますし、その中で、一番抗腫瘍活性が大きいものをがん細胞株での増幅の結果で選択した場合に、最初の野生型ウイルスと比較してかなりの変異をもったウイルスが発生すると考えられまして、そうなりますと、ワクチン以外の会での検討をした方が良いと考えられ、現行では遺伝子治療の会での検討が最良ではないかと思われます。

○山口委員長 

腫瘍溶解性ウイルスのところに議論が移っていると思うのですが、腫瘍溶解性ウイルスに関して言えば、2通りあるだろうと。要するに、含めるのもありだと思います。逆にいえば、国際的な調和からいえば、それを含めて議論してしまったほうが、非常に分かりやすいというか、concernも中畑先生、谷先生のおっしゃるとおりだと思います。少し問題は、今までそれを入れずに、ずっと各IRBに任せてきたところがあるのだろうと思います。

○小野寺委員 

これは参考になるかどうか分からないのですが、組換えDNAの指針との関連は結構あると思うのです。先生のおっしゃる、俗に言うナチュラルオカレンスをどう捉えるかという、あれは遺伝子組換え実験の項では入らないです。それから、自然界に存在するDNARNAも、組換えDNAの実験にも入らないです。

 だから、もちろんこれは別の指針として独立しても構わないと思うのですが、カルタヘナの問題を考えると、その辺と整合性を取っておいたほうが、もちろん何らかの形でナチュラルオカレンスが起こって、新しいウイルスができたとしても、それは人為的に起こっていないと考えて、それを遺伝子治療の指針の中で審査しないというのがよいかと思います。

○山口委員長 

これは個人的な意見なのですが、腫瘍溶解性ウイルスの組換えのものは、当然ここに入ってくると思うのですが、それについて書き込んであれば、逆にいうとナチュラルオカレンスの腫瘍溶解性ウイルスについては、それを参考にIRBでも評価をしてほしい。必要があれば、もちろんこちらから意見を出すこともあり得る。そういうやり方もあるのかなという気はするのですが。ただ、それは現実に決めておかないといけませんから。

 多分、海外でも、遺伝子治療に含めることはしていないはずなのです。腫瘍溶解性ウイルスに関しては遺伝子治療には含めないけれども、遺伝子治療の腫瘍溶解性ウイルスに関するconcernについては、その考え方を適用して評価をすることになっているのだと思います。FDAEMAも、ヒトに治療する場合には、遺伝子治療にあろうがなかろうが、全てFDAEMAが見ますので、そういう意味ではそういうやり方がやりやすいのだろうと思います。

2つだけ分けて、暫定的な結論をさせていただければと思います。遺伝子治療としては含めないで、例えば考え方を必要に応じて適用すると。そういうのはあり得ますか。

○中山研究企画官 

考え方を適用するといった場合、どういうやり方になるのかというところがあると思うのですが。

○山口委員長 

1 つは、IRBでそれを参考にして、やってくれという話にするのか。あるいはそこを含めて、こちらに出してくれたら審査をするというやり方にするのか。ここは皆さんの御意見を。

○中山研究企画官 

今、結論しないと駄目ですかね。検討させてください。

○位田委員 

もし、ここの遺伝子治療の臨床研究ではなくても、臨床研究であれば通常の臨床研究指針が適用されますよね。

○山口委員長 

はい。

○位田委員 

その場合には、厚生労働大臣の意見を聞くという要素はなくなりますよね。だから、遺伝子治療の臨床研究は厚生労働大臣の意見を聞くという要素があるので、そこに入れるのと入れないのとでは、随分手間が違うと。

 だから、考え方を適用してとおっしゃるのだけれども、実は考え方はそんなに変わらないのだと思うのです。臨床研究指針と、この指針の間では。ただ、手続が違います。手続のところで、IRBだけでは不十分なので、厚生労働大臣の意見を聞いて、より確実に安全性、有効性を図るという話なのだと思うのです。だから、考え方を参考にできる部分が、この指針にはないのだろうと思うのです。

○山口委員長 

先ほど言いました、天然に存在するDNARNAなどについては、外してそんなに問題はないと思いますし、核酸医薬について外すことも問題ないと思うのですが、腫瘍溶解性ウイルスの話だけはconcernが残っている気がしまして、これだけ先送りさせていただいてもよろしいですか。

○中山研究企画官 

次回までに一定の整理をして、また議論していただきたいと思います。

○山口委員長 

そのように取り扱ってよろしいでしょうか。

                                  ( 異議なし)

○山口委員長 

先ほど1-2も終わらせていただいたと思いますので、次に2に移ります。事務局から説明いただけますでしょうか。

○許斐課長補佐 

資料4です。2「対象疾患について」です。検討内容は、遺伝子治療開始後20年ほど経過し、有効性・安全性についての情報量が増えてきた状況の中、対象疾患について現行指針の要件のままでよいかです。「現状と課題」としては、現行指針では3つの要件すべてに適合するものに限られている。生命を脅かす疾患または身体の機能を著しく損なう疾患でないと対象疾患とならない。遺伝子治療の治療効果は、現在可能なその他の治療法と比較して優れている必要がある。

 「検討のポイント」は、新規性のないものについては、生命を脅かす、あるいは身体の機能を著しく損なう疾患のみに限定しなくてもよいのではないか。遺伝子治療による治療効果については、現在可能なその他の治療法と比較し、同等、あるいはそれ以上であることが十分に予測されるものでよいか。そして「見直しの方向()」は、新規性がなく、既に治療に用いられているようなベクターによる臨床研究では、生命を脅かす疾患や、身体の機能を著しく損なう疾患を必須要件から外してはどうか。治療効果については、同等、あるいはそれ以上であることが十分に予測されるものとしてはどうか。疾患の治療だけでなく、予防を目的とするものも対象としてはどうかとしました。お願いいたします。

○山口委員長 

3 ポツ目は結論が出ているかなと思いますので、1ポツ、2ポツについて議論していただければと思います。先ほど位田先生からかなり質問を頂いたところもありますので、御意見を頂ければと思います。

○那須委員 

特に私は2番目の「治療効果については、同等、あるいはそれ以上」の所について、非常に賛同でして、そもそも治療効果が単なる治療効果にプラスして、患者さんへの侵襲性というのがあり、例えば私の場合はがんですが、がんに対して同じような生命予後が得られる場合の治療法において、患者さんに与えるQOL、侵襲性の所が非常に大きな要素です。ですから治療効果が同等であっても、それは低侵襲性であれば十分患者さんへのメリットがあるということで、実際にこういう治療をやっており感じるところですので、是非こういう文言を入れていただければ、より適用が広がり、一般の患者さんへのメリットはあるものと考えております。

○今村委員 

私も那須委員の考え方と全く同じです。患者さんの側から見ると、同じ程度のものであれば、選択肢が多いに越したことはないわけです。これは是非そのようにして頂きたい。

○中村委員 

私もそのとおりだと思います。例えば臨床研究されている方はよく御存じですが、最近は非劣性試験、新しいものは従来の治療法と効果は劣らずに、那須先生がおっしゃるように、例えば患者にとってはメリットが大きい、副作用が少ない、あるいは治療期間が短くて済むなど、そういったことでやるような試験も出てきているので、効果については同等というのも当然含めていいと私自身も思っています。

○山口委員長 

御三方から御意見を頂き、事務局からの提案の形で進めていくことに対してはあまり異論はないのかなと思いました。

○位田委員 

それは治療効果が同等なものもこの指針の中に入れるという話なのでしょうか。外すという話なのでしょうか。入れてしまうと厚労大臣の意見も聞くというプロセスに入るわけで、そこの意味がよく分からなかったのですが。それともう1点、治療効果は同じであっても、リスクの高い、低いというのは当然あり得るので、例えば遺伝子治療のほうがリスクが高ければこの指針に入れるけれども、低ければ通常の臨床研究など、何かそういう考え方もあり得るかなと思いますが。

○山口委員長 

私の理解では、臨床研究をスタートする時点では治療効果が同等と予測されるという話になるので、多分リスクと将来的なベネフィットを比較しての話かと理解していたのですが、那須先生、中村先生、それでよろしいでしょうか。

○中村委員 

現状では資料4の関連条文にあるように、3つに該当するものしか対象としないということは、ここに該当しなければ、もう結局、臨床研究、治療研究ができないのが現状なわけですよね。

○山口委員長 

ええ、今のところはそうですね。

○中村委員 

そこに「同等」というのを入れれば、そういうのも手続を踏めば可能になりますと、私は理解しております。

○山口委員長 

そのとおりでございます。よろしいでしょうか。ほかにございませんでしょうか。今までの指針の場合は厳格に、遺伝子治療が始まる時点ではこういう考え方で行かざるを得ない。要するにまだ経験が浅かった部分、それは今かなり経験を積まれて、先ほど説明がありましたが、リスクそのものがどの程度のリスクかが分かってきたという現状では、特に上に書いていただいたように、新規性がないようなもの、ベクターの構造としては新規性がなく、新しい遺伝子を入れる場合、あるいは他の疾患でも使われているものを別の疾患で使うような場合、そういうものを含めて、こういう対象疾患を少し広げる形にしてはと。もちろん新規性の非常に高い、今まで使われたことのないベクターなどを使う場合にはという、多分、そこはまた別の判断が必要になるのだろうと思っております。そういう理解でよろしいでしょうか。

○中畑委員 

そうすると新規性のあるベクターを使う場合は、今までと同じ3つの条件が揃ったものに初めて使えるということになるのでしょうか。

○山口委員長 

あるいはリスク・ベネフィットを非常に限定した形でリスクを判断しながら、限定した使い方をしていただく。ただこの3条件を全部認めないとスタート自体が非常に遅れることがあります。条件そのものは外してしまってもいいのではないかなと思うのです。むしろファースト・イン・ヒューマンを少し厳格に判断するという考え方でもいいのかなと思うのですが、その辺は少し御意見を頂ければと思います。

○中畑委員 

整理をして書いたほうがいいと思います。

○山口委員長 

ありがとうございます。

○那須委員 

先ほどの治療効果についての私の考えですが、こういう申請書を書いたり、患者さんにICの文書を作ったりするときに、患者さんへのメリットは何かなどを考えるときに、今の議論の中では治療効果という意味のほかに、この治療の有用性がやはり大きな議論になると思います。その有用性は、本当にがんが小さくなるかという効果、直接的な効果と、それ以外のファクターがありますので。例えば、治療効果を含めた有用性というような文言などを書いていただけると、これを見て申請書を書く研究者がそういう記載ができるかなと思いました。

○伊藤委員 

この「見直しの方向()」の読み方の問題ですが、生命を脅かす疾患や、身体の機能を著しく損なう疾患を必須要件から外すのか、ここは「生命を脅かす疾患や、身体の機能を著しく損なう疾患」というものをこの必須要件から外すのかで全然違ってくるような気がするのですが、これはどちらなのでしょうか。こういう「生命を脅かす疾患や身体の機能を著しく損なう疾患」というのはいいのだというように見える。言葉のつながりが分からないのですが。

○許斐課長補佐 

少し分かりにくい書き方なので、こちらは直したいと思いますが、基本的にはそういった疾患も含めてという御理解でよいかと思います。

○伊藤委員 

ということですね。もう1つ続けて、そうすると下の「重篤な遺伝性疾患、がん、後天性免疫不全症候群」だけが対象になるという残り方ではないという言い方でよろしいのですね。そこがとても分かりにくかったのです。

○山口委員長 

よろしいですか。文言の微妙な分かりにくさなどは事務局と詰めさせていただければと思いますので、よろしくお願いいたします。次は資料53iPS細胞を用いた臨床研究の取扱いについて」、事務局から御説明をお願いします。

○許斐課長補佐 

では最後の資料5です。iPS細胞を用いた臨床研究の取扱いについて、本指針の適用範囲や審査体制をどのように整理するかがあります。「現状と課題」は、iPS細胞を用いた臨床研究について、現行の指針では適用範囲に含まれると考えられますが、審査体制も含め、その取扱いについての記載はありません。適用範囲に含めると判断された場合、2つの審査委員会で二重に審査をすることになるけれども、現状では当面の対応として「ヒト幹細胞を用いる臨床研究に関する審査委員会」に遺伝子治療の専門家である審査委員が加わり、審査を行っております。

 「検討のポイント」は、iPS細胞を用いた臨床研究について、本指針の適用範囲として含めるか。また、これを含めた場合は、二重審査を避けつつ、遺伝子治療に関する専門的観点から、必要十分な審査を行うためにはどのようにすればよいか。上記の取扱いについて、指針にどのように示していくかといったものがあります。「見直しの方向()」ですが、iPS細胞を用いた臨床研究は本指針の適用範囲でもあるが、その審査体制については2つの審査委員会で審査することのないよう整理してはどうか。この場合、現行と同様、「ヒト幹細胞を用いる臨床研究に関する審査委員会」に遺伝子治療の専門家が審査委員として加わることにしてはどうか。上記審査体制について、本指針に明記してはどうかとさせていただきました。以上です。

○山口委員長 

これについても前回も議論しましたが、一応、見直しの方向として2点示しております。この点について御意見等を頂ければと思います。

○小野寺委員 

非常にここは重要な点だと思うのですが、多分、ヒト幹に関わってくるような細胞への遺伝子導入というのももちろん出てくると思うのです。ですから論議するのは、多分iPSが一番、今、話題となっているから論議の中心と思うのですが、ただ、それのみならず、やはりヒト幹細胞にも関わるような細胞への遺伝子改変のときというように、少し対象範囲を広げていだいたほうが多分、分かりやすいのかなと思います。

○山口委員長 

梅澤先生、お願いします。

○梅澤委員 

この見直しの方向の1つ目のポツの一番最後の行ですが、「遺伝子治療の専門家が審査委員として加わることにしてはどうか」ということを「ヒト幹細胞を用いる臨床研究に関する指針」の中に、審査委員会の要件として文章を入れるという理解、別の指針の要件を変えるということを、こちらの委員会からお願いするという意味ですか。加わることにしてはどうかと、ここで決めても先方が違うと言ったら。その辺りがよく分かりません。提言すればということでしょうか。

○中山研究企画官 

いや、こちらで勝手に決めるわけにはいかないと思いますので、基本的な方針をここでの御意見としては頂き、もしそういう方向であれば担当部局としっかり整理するということだと思います。

○梅澤委員 

もう1つが、「ヒト幹細胞を用いる臨床研究に関する指針」の次に、こちらの机上配付資料の資料10として「再生医療等の安全性の確保等に関する法律案概要・要綱」となっておりまして、先ほどの小野寺委員の御発言と同様の意見ですが、こちらが10月の臨時国会で法律として10月中旬に施行される可能性がありますので、その法律案の中にある認定再生医療等委員会、またはここの扉のページ、法案の内容のところで第1種再生医療等について、これはiPSが関わりますが、そちらになると特定認定再生医療等委員会、こちらに関しては法律の中ではなく、恐らく政令・省令の中で認定再生医療等委員会の要件、その委員の構成について定められると思います。ですからそちらも先方の御意向、こちらでどのように提言するのか。提言の形であれば入れてくれるということになりますかね。

○許斐課長補佐 

既にこの件に関しては、梅澤委員の御意見のようなことがございますので、研発課が取り扱っておりますので、そちらとは調整を進めていきたいと考えております。

○辰井委員 

今の御議論の点ですが、恐らく指針に書くのはこちら側の指針だけに書いて、あちら側については、遺伝子の観点からの審議の必要性はもっぱら遺伝子の指針側の問題なので、遺伝子の側の指針がどこまでを許容するかにかかってきているだろうと思うのです。多分、先方の再生医療の委員会については、再生医療の観点からはその委員会で議論がされ、それで十分だという話になるはずなのです。だから指針としては、ここに書かれているように、こちらの側の指針に記載して、もちろん調整は必要ですが、あちらに専門家が1人加わっていれば、こちらとしてはオーケーですという意思表示をするというような形になるのかなと理解しています。

 それから1つお伺いしたいのは、これも法律ができたらという先の話になるのですが、今のヒト幹の委員会が、iPSに関しては新しい法律では特定認定再生医療委員会になり、それと同時に厚生科学審議会の審査も経る形になっていたと思いますが、そのどちらを想定されているのでしょうか。

○梅澤委員 

この特定認定再生医療等委員会のほうしかあり得ないのかなと思います。

○山口委員長 

事務局からありますか。位田先生、どうぞ。

○位田委員 

ついでに追加して、余計ややこしくなるかもしれませんが、この指針の適用範囲でもあるとすると、当然、遺伝子治療臨床研究の研究計画も作らないといけないということになりますか。つまりそこの調整の仕方です。遺伝子治療臨床研究にも当たる部分があるのだけれども、それは全部iPSでみるとすると、これは法律事項で決めるという話になるので、こちらの指針でオーケーしていればという話では、そのままでは難しいかなと思います。つまり今、議論が始まっていますが、法律そのものには書かないとしても、これは相手先の話ですが、特定認定再生医療等委員会の中に、iPS細胞の場合には遺伝子治療の臨床研究の専門家も含める必要があるということを書いていただかないといけないのではないか。

○梅澤委員 

先ほどの小野寺委員と今の位田委員との絡みに付け加えさせていただきたいのですが、再生医療新法では、iPS以外のいわゆる体細胞に遺伝子を導入して用いる細胞も対象の中に入るという確率が極めて高い。もちろんそれは使用方法にもよります。例えば、血液の細胞を血液として使う場合は対象外、また、血液の細胞に遺伝子を導入して、例えば筋肉に打つと対象内といったような、これは1つの例ですが、そういうように新法がなった場合、この今回の遺伝子治療指針の対象か対象でないかは、先ほどの位田委員の御意見と辰井委員の御意見と小野寺委員の御意見はかなり近い、かなり重なってはいますが、整理が前もって必要だと思います。

○山口委員長 

多分これは、どちらがかかるか、もう新法が出来た場合には、そちらで全部カバーできるのであれば、もちろん必要はなくなるのですが。ただし今、ヒト幹指針で書かれている遺伝子導入に関しては、こちらを引用しているわけです。だから例えばベクターなどの構造についての記載はこちらに任せきっている。逆に言えば、そこの部分を議論しようと思うと、遺伝子治療臨床研究の指針から持ってこないと仕方がない。ただ恐らく前回、これまでの議論で、遺伝子治療臨床研究とヒト幹細胞臨床研究を別々のところで審査するのは避けるべきであろうと。それは割に合意ができている話だと思います。現実問題として、研発課と厚生科学課でその辺についてはかなり今までも調整されてきていて、秋にならないと分かりませんが、ヒト幹指針に関するiPSの議論のときも、こちらから応援に行くことにより、審査そのものはできている。それで整理はついているのだろうと思います。あくまでも遺伝子治療という枠組みの中の話で、iPSもそれに含めて置く場合に、それを作るときの要件などは遺伝子治療臨床研究しか多分記載されていない。現状ではそうだと思います。ただ審査をするのはもう別に両方で審査するのは。あるいは位田先生が今おっしゃられた、両方の所に出す必要は多分ないというような整理だと、ないという合意が得られつつあるのだろうとは思っています。それでよろしいですか。

○中畑委員 

それでいいと思うのですが、1つ、このiPS細胞を使った遺伝子治療がこれから行われてくると思うので、その場合は患者さんから作られたiPS細胞の遺伝子を修復して、正常にある程度戻して、そういったiPS細胞の形にして、そこから分化させて移植をする形。その場合は、やはり遺伝子治療の技術が占める全体の中の割合は非常に高くなるので、やはりそういうiPS細胞を用いた遺伝子治療の形のものは新たに、それはむしろこの委員会で今回作られる指針の中で、厳重に審査をすることが必要ですので、この2つのポツだけでなく、3番目として、iPSを用いた遺伝子治療は本指針の対象にするというようなことを別に折り込んでおいたほうがいいのではないかと思います。それは恐らく近々そういうことが始まるのではないかと思いますので。

○中山研究企画官 

いろいろ今、頂いた意見を踏まえて、基本的には研発課と役割分担をどうするかという話も含めて調整をしっかりとしたいと思います。

○山口委員長 

提案頂いた12両方ともについて多分こういう方向でいいということではないかなと思います。ただ新法との関係もあるので、どのように役割分担するかは、研発課と厚生科学課、あるいは厚労省全体として整理していただくということでよろしいでしょうか。

○中山研究企画官 

はい、結構です。

○谷委員 

iPS細胞」という文言をそのまま使った表現になるのでしょうか。それとも「遺伝子を導入した体細胞を用いた再生医療」という文言になるのでしょうか。つまり遺伝子を導入してダイレクトリプログラミングと呼ばれる技術により、現在繊維芽細胞から肝臓や造血幹細胞などに分化後、それらを移植する方法が検討されてきています。この場合には「iPS細胞」を経ないため、実質的には文言を「iPS細胞」に限定できなくなります。

○梅澤委員 

これは私見ですが、ダイレクトリプログラミングによって作られた細胞等を含めて、遺伝子によって改変された細胞については新法の対象になるので、結局、同じ結論になると思いますので、その整理をお願いしたいと思います。

○中村委員 

駄目押しのようになるのですが、二重審査も含めて、できるだけ研究される先生方の負担にならないようにということでお願いしたいと思います。研究の本体部分以外で、例えば、倫理審査などというのはとても大切なのだけれども、本体以外のところ、そこでどんどんハードルを高くしていくと、研究自体がもうそんなことならやめようかというような話になると、とても困る話になるわけです。それは医療全体だけではなく、国民全体にとってです。したがって、その辺は倫理的なことはきちんとしておかなければいけないのは分かりますが、負担についてはできるだけ避けていただかないと、下手すると金銭欲か名誉欲しかないような者しか研究しないというような世の中になると困るので、是非その辺は御配慮いただけたらと思います。

○山口委員長 

多分これは運用の問題だと思いますので、是非、そのように事務局としても対応していただければと思います。以上で大体3については結論が出たように思いますが、よろしいでしょうか。

 そのほかに全体として御意見等はございますでしょうか。全体として御意見がなければ、資料2を再び御覧ください。資料2に今までの遺伝子治療の指針の見直しのガイドラインの構成要素がこのような形ということで書いていただいています。次回の検討項目として、「ベクターの品質・安全性に関する基準について」がありますが、この点については委員の先生方に御相談したいことがあります。この検討については第1回の議論でもありましたが、治験との整合性などを考えていく上でも、具体的にはどのような品質基準を定めたり、指針内にそれをどう書き込んでいくかがあります。しかしそういう話になると、かなり具体的な遺伝子治療の専門的な議論が必要になってきていますので、それ自体をやはり議論していただかないといけないです。あらかじめ少し練っておいたほうがいいのではないかと思っております。それで大きな方向性についてはもちろんこの委員会で議論していただくのですが、品質・安全性に関する詳細な技術的要件についてはサブグループのようなものを作って、その中で検討していただければと考えております。検討していただいた内容をここに報告していただいて、問題点等がありましたらそれを受けながら改正していく体制を整えたいと思っております。その点について御意見を頂ければと思います。

○梅澤委員 

ベクターの品質については、これはもちろんこの指針は医師法、医療法で行われるものですが、薬事法ないしは改正薬事法とほぼ同様の安全性を期待しますので、専門家の方々にワーキンググループを作っていただいて、御検討いただくというのは極めて合理的な考え方だと思います。

○山口委員長 

もし御異論がないようでしたら、ワーキンググループの選定については事務局と委員長に任せていただければと思いますが、よろしいでしょうか。

                                     ( 了承)

○山口委員長 

それではそのようにさせていただきたいと思います。いずれその結果を報告して、議論させていただきます。それでは次回のこと等を含め、事務局からございますか。

○中山研究企画官 

ありがとうございました。本日の議事録については作成次第、先生方に御確認いただく手続を進め、その後公開にいたします。次回の日程は104日、午後2時~4時、三田の会議所の予定ですが、確定次第改めて御連絡させていただきます。事務局からは以上です。

○山口委員長 

それでは第3回の委員会は終了いたします。ありがとうございました。


(了)
<問い合わせ先>

 厚生労働省大臣官房厚生科学課
 担当:情報企画係(内線3808)
 電話:(代表)03-5253-1111
     (直通)03-3595-2171

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