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2013年3月22日 薬事・食品衛生審議会 医療機器・体外診断薬部会 議事録

○日時

平成25年3月22日(金)
13:00~


○場所

厚生労働省講堂


○出席者

出席委員(19名) 五十音順

○荒 井 保 明、  荒 川 義 弘、 石 井 明 子、 今 井 聡 美、
  梅 津 光 生、◎笠 貫    宏、 齋 藤 知 行、 正 田 良 介、
  鈴 木 邦 彦、  高 橋 好 文、 武 谷 雄 二、 田 島 優 子、 
  千 葉 敏 雄、  寺 崎 浩 子、 中 谷 武 嗣、 濱 口    功、
  菱 田 和 己、  松 岡 厚 子、 村 上 輝 夫
(注) ◎部会長 ○部会長代理
他参考人3名

欠席委員(5名) 五十音順

 川 上 正 舒、 木 村     剛、 塩 川 芳 昭、 西 田 幸 二、
 桃 井 保 子

3.行政機関出席者

赤 川  治 郎 (審査管理課長)
俵 木 登美子 (安全対策課長)
浅 沼  一 成 (医療機器審査管理室長)
矢 守  隆 夫 (独立行政法人医薬品医療機器総合機構審査センター長)
佐久間 一 郎 (独立行政法人医薬品医療機器総合機構副審査センター長)
梅 澤  明 弘 (独立行政法人医薬品医療機器総合機構副審査センター長)

○議事

○医療機器審査管理室長 定刻を少し過ぎましたが、ただ今から、「医療機器・体外診断薬部会」を開会いたします。委員の皆様におかれましては、御多忙の中御出席いただき、誠にありがとうございます。
 本日は、医療機器・体外診断薬部会委員24名のうち現在17名の御出席をいただいております。2名の先生方が遅れて御出席ということで、総計19名の御出席と承っております。薬事・食品衛生審議会令に基づく定足数を満たしておりますことを御報告いたします。
 続きまして、本日の議題の公開、非公開の取扱いについて御説明いたします。平成13年1月23日付けの薬事・食品衛生審議会決議に基づき、本日の議題については、医療機器の承認審査に関する議題であり、企業情報に関する内容等が含まれるため、非公開といたします。これより議事に入りますので、傍聴の方によるカメラ撮りはここまでといたします。御協力のほど、よろしくお願いいたします。
 それでは以後の進行について、笠貫部会長、どうぞよろしくお願いいたします。
○笠貫部会長 おはようございます。
 始めに、事務局から配布資料の確認をお願いいたします。
○医療機器審査管理室長 お手持ちの資料の御確認をお願いしたいと思います。資料1「医療機器『アクティバRC』の生物由来製品又は特定生物由来製品の指定の要否、製造販売承認の可否及び再審査期間の指定について(諮問書)」、資料2「医療機器『ディーシー ビーズ』の生物由来製品又は特定生物由来製品の指定の要否、製造販売承認の可否及び再審査期間の指定について(諮問書)」、資料3「医療機器『ヒストアクリル』の生物由来製品又は特定生物由来製品の指定の要否、製造販売承認の可否及び再審査期間の指定について(諮問書)」、資料4-1「新たに追加する医療機器の一般的名称に係るクラス分類及び特定保守管理医療機器等の指定について(単回使用注排用先丸針)(諮問書)」、資料4-2「新たに追加する医療機器の一般的名称に係るクラス分類及び特定保守管理医療機器等の指定について(電子尿糖計)(諮問書)」、資料4-3「新たに追加する医療機器の一般的名称に係るクラス分類及び特定保守管理医療機器等の指定について(自己検査用尿化学分析器)(諮問書)」、資料4-4「新たに追加する医療機器の一般的名称に係るクラス分類及び特定保守管理医療機器等の指定について(自己検査用尿糖計)(諮問書)」、資料5「優先審査品目『メドエル人工内耳EAS』について」、資料6「希少疾病用医療機器の指定の取消しについて」、資料7「競合品目・競合企業リスト」、参考資料1「薬事分科会審議参加規程」、参考資料2「クラス分類ルール(平成16年7月20日付薬食発第0720022号厚生労働省医薬食品局長通知)」、以上でございます。不足分がありましたら、事務局にお申し出いただければ御準備させていただきます。
○笠貫部会長 資料の方はよろしいでしょうか。
よろしければ議題に入らせていただきます。本日の審議事項に関与された委員と、利益相反に関する申出状況について事務局から御報告をお願いいたします。
○事務局 本日の審議事項に関する影響企業について、委員の皆様から寄付金・契約金等の受取状況をお伺いしたところ、薬事分科会審議参加規定第12条「審議不参加の基準」、又は、第13条「議決不参加の基準」に基づき、議決に御参加いただけない議員は、議題1について梅津委員、御退出いただく委員はおりません。以上、御報告いたします。
○笠貫部会長 ありがとうございます。ただ今の御説明について特に御意見はございますか。
よろしければ、議題に入らせていただきます。
 議題1「医療機器『アクティバRC』の製造販売承認事項の一部変更承認の可否等について」、審議を行いたいと思います。本議題の審議に当たっては、埼玉医科大学病院脳神経外科准教授の小林正人先生に御出席いただいております。よろしくお願いいたします。
 まず、審議品目の概要について、事務局から御説明をお願いいたします。
○事務局 議題1につきまして、資料1に基づいて御説明させていただきます。
1枚目が諮問書です。「審査報告書」というタブをお引きください。一般的名称は、振せん用脳電気刺激装置、販売名は「アクティバRC」、申請者は日本メドトロニック株式会社です。審査報告書5ページを御覧ください。図1に電気刺激装置本体の外観図が、図2に経皮的な充電に使用するリチャージャキットの外観図が示されています。本品は、薬剤で十分な効果が得られない振戦、パーキンソン病及びジストニアの患者に対して、脳深部に電気刺激を与えることで、各種運動障害の改善を目的とする脳深部刺激療法に用いる充電式の植込み型脳深部電気刺激装置です。本品は、振戦症状の軽減を適応として、平成23年10月に承認を受けており、本申請は、振戦以外のパーキンソン病に伴う運動症状及びジストニアに適応を拡大する一部変更承認申請です。本一部変更承認申請に当たって、ジストニアの患者団体であるNPO法人「ジストニア友の会」から、本品のジストニアの適応拡大について、「医療ニーズの高い医療機器の早期導入に関する検討会」に要望が挙げられ、平成24年に早期承認対象品目に選定されていました。本品の使用目的については、審査報告書3ページの中程に、またその下に承認条件が記載されています。詳細については、機構より御説明いたします。
○機構 審議事項議題1、資料1「医療機器『アクティバRC』の生物由来製品又は特定生物由来製品の指定の要否、製造販売承認事項一部変更承認の可否及び再審査期間の指定について」、医薬品医療機器総合機構より御説明します。
 当日配布資料の1ページを御覧ください。本審査に当たっては、御覧の6名の専門委員の先生方から御意見を頂きました。また、事前に配布した審査報告書の修正と部会資料の追加がありましたので、当日配布資料としてお配りした正誤表にてお示しします。御迷惑をお掛けしましたことをおわび申し上げます。
 まずは、本品の概要について御説明いたします。審査報告書4ページ以降を御覧ください。本品は、脳深部に電気刺激を与えることで、各種運動症状の改善を目的とする脳深部刺激療法(Deep brain stimulation)、以降DBSと言いますが、本品はDBSに使用する充電式の植込み型電気刺激装置です。本品は、薬物療法で十分に効果が得られないパーキンソン病や、本態性振戦等に伴う振戦症状の軽減を目的として、平成23年10月20日に既に承認されています。DBSは、当初、振戦に対して行われた治療法でしたが、現在ではパーキンソン病の各種運動障害やジストニアに対しても有効であるといわれ、海外では、これらの適応について、既に承認又は認可を得ています。また、国内外における治療ガイドラインにおいて、薬物療法で十分に効果が得られないパーキンソン病やジストニアに対して、適用が推奨されています。しかし、本邦においては、承認適応が振戦症状の軽減に限られており、パーキンソン病の振戦以外の運動障害やジストニアに対する適応は承認されていませんでした。そのため、このような疾患に対しては、これまで適応外で使用されていた実態があります。今回の承認申請に当たっては、ジストニア患者団体「ジストニア友の会」から、「医療ニーズの高い医療機器等の早期導入に関する検討会」に要望が上げられ、早期承認対象品目に選定されています。また、同法人は昨年、国会衆参両院に対して、適応拡大の早期承認等に関する請願を提出するなど、患者からのニーズも高い品目となっています。
 以上のような経緯を経て、今般、申請者はこれまで適応外使用されていたパーキンソン病に伴う運動障害及びジストニアについて、新たに適応を追加することを目的とした一部変更承認申請がなされました。
 それでは、審査の概要について御説明いたします。今回の適応拡大に当たっては、DBSの施術を含む本品の使用方法及び製品仕様に変更はないため、非臨床試験成績は添付されておりません。続いて、本品の臨床評価について御説明します。パーキンソン病に対する臨床評価については、審査報告書8ページから記載しております。本品のパーキンソン病に対する臨床評価に当たっては、米国で実施された臨床試験に関する文献及びそのほかの公表論文等の結果を基に臨床評価が行われました。米国で実施された臨床試験では、薬物療法によって運動症状のコントロールができない進行期のパーキンソン病患者を対象としてDBSが実施されました。有効性評価については、パーキンソン病患者の病態を総合的に評価するUPDRSを評価指標として、術前から術後6か月までの運動障害の改善等について評価されました。長期成績については、観察期間3年以上、例数20例以上の臨床試験に関する文献12報より評価されました。有効性については、審査報告書12ページ以降に示すように、術後6か月における運動機能は、術前と比較して、統計学的に有意に改善することが示されました。また、長期成績に関する文献から、その有効性が術後3~5年後であっても持続することが確認されました。安全性については、審査報告書16ページ以降に示す有害事象が確認されましたが、いずれも、既承認の振戦症状の軽減を目的とする使用下での既知の有害事象であり、今回追加する適応症特有の有害事象は確認されませんでした。
 続いて、ジストニアに対する臨床評価について御説明します。審査報告書18ページからになります。本品のジストニアに対する臨床評価に当たっては、国内外において実施された臨床試験に関する文献35報の結果を基に、各種ジストニアの分類ごとに臨床評価が行われました。有効性評価について、ジストニアの評価尺度であるBFMDRS又はTWSTRSを指標として、術前から術後の運動障害の改善について評価されました。有効性については、審査報告書23ページ以降に示すように、一次性ジストニアのうちの全身性ジストニア、分節性ジストニア及び頚部ジストニア並びに二次性ジストニアのうちの遅発性ジストニアについて、術後6か月以上での最終観察時点における運動障害が術前と比較して統計学的に有意に改善することが示されました。安全性については、審査報告書26ページの表20に示す有害事象が確認されましたが、先に述べたパーキンソン病に対するDBSと同様に、いずれも既知の有害事象であり、ジストニア特有の有害事象は確認されませんでした。
 以上の臨床評価について、本品の有効性及び安全性を文献等により評価することの妥当性について御説明します。審査報告書30ページの下段を御覧ください。まず、パーキンソン病に対する臨床評価に当たっては、次に述べる三つの点から、新たに前向き臨床試験を実施せずとも本品の臨床評価は可能であると判断しました。まず一つ目として、パーキンソン病に対するDBSは、米国を始めとする海外において既に承認されており、これまでに国内外で相当数の使用実績があることが公表論文等から認められること。二つ目として、これらの使用実績を踏まえて作成された国内外の治療ガイドラインにおいて、薬物療法で十分な効果が得られない場合に、DBSの適用が推奨されていることから、パーキンソン病に対するDBSの臨床的位置付けは既に確立されていると考えられること。三つ目として、手技及び刺激部位は本邦における既承認適応の仕様と同一であり、術前のベースラインとの比較によるDBSの治療目標の達成を確認することで、本品の有効性評価は可能であると考えられること。以上の3点を踏まえ、機構は本品のパーキンソン病に対する臨床評価に当たり、新たに前向き臨床試験を実施せずとも、既存の文献等から臨床評価は可能であると判断しました。
 続いて、ジストニアに対する臨床評価に当たっては、次に述べる四つの点から、新たに前向き臨床試験を実施せずとも本品の臨床評価は可能であると判断しました。まず一つ目として、ジストニアに対するDBSは欧州等において、既に認証され、米国においてはHDE制度による認可を受けていること。二つ目として、これまでの使用実績に基づいて作成された国内外のガイドラインで、薬物療法で十分な効果が得られないジストニアに対して、DBSの適用が推奨されていること。三つ目として、DBSが有効と認められるジストニア分類及びエビデンスレベルは国内外のガイドラインで一部異なっているものの、現在、薬物療法で十分な効果が得られないジストニア患者に対する治療方法は限られていること。四つ目として、ジストニアに対するDBSの手技及び刺激部位は、既承認適応の仕様と同一であり、術前のベースラインとの比較によるDBSの治療目標の達成を確認することで、本品の有効性の評価が可能であると考えられること。以上の4点を踏まえ、機構は、本品のジストニアに対する臨床評価に当たり、新たに前向き臨床試験を実施せず、既存の文献等から臨床評価が可能であると判断しました。
 以上の臨床評価を踏まえ、本品の審査における主要な論点について御説明します。審査報告書34ページの「総合評価」を御覧ください。まず一つ目の論点として、ジストニアに対する本品の適応範囲についてです。本品のジストニアに対する有効性については、一次性ジストニアのうちの全身性、分節性、及び頚部ジストニア、並びに、二次性ジストニアのうちの遅発性ジストニアに対して有効であることが示されたと考えます。しかしながら、ジストニアの分類は、分類法の提唱者によって見解が分かれており、現時点において、確立されたジストニア分類は定まっていないと考えます。したがって、現時点でジストニア分類に基づいて本品の承認の適応範囲を定めた場合には、今後、新たな知見の集積によって、その分類に変更が生じた際に、臨床上の知見と本品の承認内容に乖離が生じ、適切な患者に対してDBSが提供できなくなるなどの混乱が生じることが懸念されました。このため、機構は、専門協議の議論も踏まえ、本品の適応範囲をジストニア分類によらず、ジストニア全般に対して承認を与え、その適正使用に当たっては、関連学会への協力の下、ガイドライン等に基づいて使用することが適切であると判断いたしました。
 以上のことを踏まえ、機構は、DBSが有効と認められる患者に対して、適切に使用されるよう、術者に関する要件である承認条件1を付すことが妥当であると判断しました。
 続いて、二つ目の論点として、市販後の安全対策についてです。パーキンソン病に対するDBSについては、海外で実施された臨床試験が存在し、かつ、国内外で相当数の使用実績が認められること。また、今回の適応追加により新たに対象となる患者群は、本品の前世代品である「アイトレルII」に対して実施された国内使用成績調査で対象となった患者群と同等であるため、国内における有効性及び安全性は、市販後調査や文献等から確認できると考えます。
 以上のことを踏まえ、機構は、本品のパーキンソン病に伴う運動障害に対する使用目的については、使用成績調査の実施が必要となるほどの新規性はないと判断しました。
 一方、ジストニアに対するDBSについては、パーキンソン病とは異なり、国内における信頼性が確認された長期成績は明らかではなく、症例数も限られていることから、種々に分類されるジストニアに対して、有効性や有害事象の発生傾向について十分なデータが得られているとは言えないと考えます。したがって、機構は、本品のジストニアに対する使用目的について、ジストニア患者全例を対象として使用成績調査を行うことを、承認条件2として付すことが妥当と判断しました。
 以上の審査を踏まえ、本品を承認して差し支えないとの結論に達し、本医療機器・体外診断薬部会で御審議いただくことが適切と判断しました。再審査期間は3年と判断しております。また、生物由来製品及び特定生物由来製品のいずれにも該当しないと考えます。なお、薬事分科会では報告を予定しております。
 続いて、本日御欠席の川上委員及び塩川委員より事前にコメントを頂きましたので、御紹介します。川上委員からは、機構の審査結果に対して、特に異議はないとの御意見を頂きました。塩川委員からは、本品が充電式であることに関連して、震災等の災害時における充電器の紛失や電源喪失等の安全対策の必要性について御意見を頂きました。充電器の紛失に対しては、コールセンターを通じた代替製品の提供、電源喪失に対しては、定期的な充電の必要性について患者への事前の教育などの対応が考えられ、申請者は全社的な問題として認識し、対応の検討を始めていることを御説明し、了承を得ました。機構からの報告は以上です。御審議のほど、よろしくお願いいたします。
○笠貫部会長 ありがとうございます。それでは、参考人の小林先生からプロジェクター等を用いての御説明をいただけたらと思います。お願いします。
○小林参考人 ただ今御紹介いただきました小林と申します。ビデオの準備ができておりますので、そちらを御覧いただきながら御説明いたします。この機器の効果についてお示しいたします。今、始まりましたが、大体、1mm程度の太さのリード線が皮下を入って頭の中に埋め込まれます。前胸部には、大体名刺よりやや小さいぐらいのサイズのIPGという電池が埋め込まれます。このように、脳の深部に向かって電極が入っており、刺激をして、脳の機能の調節をするということになります。実際の例で、まず、パーキンソン病の振戦に対する効果を御覧いただきます。この患者は、今、手術後なのですが、効果を見るために、電池を両側オフにしております。前胸部2か所にそれぞれ、先ほどお示しした電池(IPG)が入っております。これは体外からリモコンのように、スイッチを入れたり切ったり、あるいは、刺激の条件、強さなどを変更することができます。このように、直ちに振戦が止まります。このほかにも、固縮や無動といった症状もよくなるのが、パーキンソン病に対する効果です。今も、スッと手を上げてくださいました。今のような動作はパーキンソン病の患者には非常に難しいのです。
こちらはジストニアに対する効果で、海外のビデオです。若い女性ですが、注目していただくと、背骨がかなり側弯していらっしゃいますが、麻痺などがあるわけではないのです。それから、小脳失調症状といいまして、距離がうまく測れないわけではないのですが、筋肉が異常に緊張してしまって、例えば手を曲げるときには、曲げる筋肉だけ緊張して、伸ばす筋肉は弛緩しなければいけないのですが、そういう調節ができないのがジストニアです。ですから、このお子さんは、字を書くときには顎で手を支えなければ書けません。左手も御注目いただきたいのですが、右手を動かすために、左手が異常に緊張してしまっています。そして、なかなか立ち上がれないのですが、これは、立つための筋肉が弛緩すべき筋肉と、緊張すべき筋肉のバランスがばらばらになっているのです。
これは手術の2年後です。2年も経つと、このように側弯も取れていて、片手を真っ直ぐ伸ばすことができます。このときに、ほかの筋肉が異常に緊張したりはしていません。非常にリラックスできています。字を書いていただきますが、先ほどのように顎で支えなくてはいけないということは、もうなくなっていて、今、左手も自然に出てきて、ほどよい緊張で紙をきちんと支えることができています。このように、歩くこともできています。この患者は比較的若い年齢で手術したこともあって、ほぼ側弯も取れて、少し左側に傾いている様子はありますが、走ったりしても特に異常な筋肉の緊張はなく、正常な姿勢が保たれている状態です。以上でございます。
○笠貫部会長 ありがとうございます。あまりにも劇的な効果で、言葉が出ないところもありますが、本件について、各委員の先生方から御意見、御質問を頂きたいと思います。御意見はいかがでしょうか。
○齋藤委員 海外で使用されているわけですが、カナダで平成21年11月から使用ができるようになったというのですが、これまでに、施工例は□□例を満たさない数しかありません。その理由について何か御見解があるのでしょうか。適用を厳格にして使用されているとのことでしょうか。
○機構 その件については、現在、それに関する情報が手元にございませんので、確認するようにいたします。
○齋藤委員 もう一つよろしいでしょうか。こういった機器すべてがそうだと思うのですが、やはり、外部の物理的な刺激に対して、例えば磁気などに対しては、安全性は担保されている機器なのでしょうか。
○機構 「申請書」と書かれたタブの部分で、別紙3-5を御覧ください。本品については、既に安全性が確認されて承認されていますが、注意喚起については、この添付文書にあるように、通常の植込み型のデバイス、ペースメーカー等の植込みデバイスと同様に、例えばMRIについては併用注意であるなどの注意喚起は行われています。
○笠貫部会長 ペースメーカーはいろいろなものから影響を受けますが、電磁障害については、基本的には心臓ペースメーカーと同じと考えてよろしいわけですね。
○機構 機構より御説明申し上げます。適用される疾患が違いますので、電磁障害が起きたときに患者にどういった症状が生じるのかという観点が、多分違ってくるのだと思っています。ペースメーカーの場合は、ペーシング機能をサポートしているわけですので、その障害のモードによっては、ペーシングが停止するということで、致死的なことになる可能性があります。本件については、ペーシングパルスを脳に作用させることによって固縮等を解消するというものになるので、ジストニアの場合は、故障のモードによっては、急に、ある程度障害が起こるような状態に戻るようなことも想定されますので、やはり、ここに書かれているような併用禁忌などをきちんと守っていただくことが重要になると考えております。
○笠貫部会長 ペースメーカーは心臓の電気刺激装置ですから、脳の電気刺激装置として、どういう違いがあるのでしょうか。例えば、今、ペースメーカーは本体が2台入っていますね。右と左で、片方だけが電磁障害を受けたときにどうなるかということや、EASなど電磁障害を来す機器が出てきているのですが、そういうものに対して、この本体の影響と、その結果としての脳の刺激による健康被害の影響については、先進国での報告がどの程度なされていて、それに対してどういう対応をされているかということは、いかがなのでしょうか。
○機構 資料概要の6ページを御覧ください。海外における不具合の発生状況について表1-3にまとめられています。こちらにあるように、電磁障害に起因するような有害事象は報告されていません。
○笠貫部会長 心臓ペースメーカーが電磁障害としては代表的な機器なので、それとどう違うかということを、整理していただいて、その心臓ペースメーカーよりも電磁障害としての健康被害は少ないということだけ確認をしていただけたらと思います。それ以外にございますか。
○荒川委員 一つお聞きしたいのですが、感染症に関しては、意外と少ない印象があるのですが、その辺りに何か工夫があるのかということと、もし感染症が起きたときの処置に関して少し教えていただきたいです。
○小林参考人 感染症については、手術のときに、頭皮の辺り、耳介の後部の辺りをよく消毒して行うというのが当然なのですが、口やお腹の辺りなどの雑菌がいるような場所から離れているので、脳のほうには感染はなかなか生じにくいのが実情かと思います。それから、皮膚の切開ですが、頭皮では約3cm、前胸部では約4~5cmと、非常に小さな皮膚切開でこの手技ができるので、そういう点からも雑菌などは入りにくいと考えております。
○千葉委員 これは基本的に、今の画像を見ても分かるとおり、非常に素晴らしいものであり、是非応用してほしいと願っておりますけれども、例えば人工心肺や補助人工心臓のような場合には、電子レンジの傍ではどうかとか、電気カーペットの上で何か起きないだろうかと。多分起きないだろうと皆さん思いながらも、こういったところまで見ている装置は、確かに存在するわけですね。ペースメーカーほど緊急性というか心拍に影響を与えるものではないと思いますけれども、飛行機に乗ったときにレーダーに当たったらどうかなどと、ありとあらゆることを想像して、そこまで見たのだというぐらいのことがあると、初めてFDAやCEマークの審査官と対等に渡り合えるような審査結果だと言えるなと、私は個人的には思っております。日常生活の中でどうであるかということ、例えば極端な話、自動販売機もあると思うのです、そこまでいろいろ想像を巡らしてお考えいただければ、本当に安心でいいものになるのではないかと、私は期待しております。
○機構 機構より御説明いたします。まず、本品のEMCに関する試験は、初回承認時に確認されていまして、添付文書の申請書の別紙3-6になるのですが、「使用環境における注意」ということで、日常生活の、例えば金属探知機や商業用の電気機器、携帯電話、高周波発生装置、家庭電化製品など等について注意喚起も行われているところです。
○千葉委員 私が申し上げたのは、確かに書いてあるので、文書上は問題ないと私も思います。ただ、そういうところまでお考えになっていただくと、この装置の期待度が更に高まるのではないかということを、少し付け加えただけだと御理解ください。
○笠貫部会長 心臓ペースメーカーが電磁干渉を受けますので、例えば、EASというステッカーが貼っている所には近づかないなどと、安全対策が取られているのです。心臓ペースメーカーと同じように、この機器は電磁障害に対する対応を必要ならば、きちんと対応を取っていただきたいと思います。先ほど千葉委員がおっしゃったように、もし炊飯器の所で電磁障害が発生したときに、心臓は止まらないけれどもパーキンソン病の発作が起こってしまったら、そこで二次的な健康被害が、当然起こり得るのではないかということを含めて、電磁障害については、心臓ペースメーカーとの差異がどこにあって、同じものについては同じような安全対策を徹底していただくことをお願いしたいと思います。
○機構 御指摘のとおりでございまして、使用する上で、患者がそういった危険があるということを、十分に承知していただいた中で使用していただくのが重要なことだと思っています。そういった意見があったことについては、後ほど申請者と面会を実施しますので、そういったことにも十分に配慮するように改めて伝達するようにしたいと思います。ありがとうございました。
○笠貫部会長 心臓ペースメーカーの場合は、友の会を含めて、患者さんの教育、啓発も含めた安全対策を行っていますので、是非お願いしたいと思います。
 この機器の場合には、文献による臨床評価について先ほど御説明をいただいて、承認へということになっているのですが、この文献調査についての御意見は、特にございませんでしょうか。
 それから、例えばアメリカでは510(k)だとしたら、そこでの承認のデータは、この文献調査の中に含まれているのでしょうか。あるいは、それは区別して、アメリカでの承認のときのデータは除いているのでしょうか。
○機構 機構より御説明いたします。今回提出された米国臨床試験は、米国においてパーキンソン病の適応を取得する際に行われた臨床試験でして、そのほかの文献については、現状、集めることができる臨床研究等に関する文献を引用しております。
○笠貫部会長 そうすると、アメリカの510(k)の承認のときに使われたデータは含まれていないということになりますか。
○機構 米国では510(k)ではなくてPMAで承認が取られています。
○笠貫部会長 510(k)ではなくてPMAの方ですか。そのときのデータは、今回は使われていないのですか。
○機構 PMAで取られたときの臨床試験は、この審査報告書の中で御説明している米国臨床試験に当たります。ですので、米国でPMAを取られた際のデータは、今回使用されています。
○笠貫部会長 言葉の使い方なのですが、私は「PMAで使われている承認データ及び文献」というようにすべきではないかと、少し意味合いが違うかと思ったのですが、これから御検討いただけたらと思います
 それ以外に、パーキンソン病に加えてジストニアの適用を認めようということについての御意見は特にございませんでしょうか。データが必ずしも十分ではないということで、承認条件のところには、市販後成績を全症例と書かれていると思いますが、この点についてはいかがでしょうか。
○武谷委員 基本的には、私も承認という方向でよろしいかと思います。少し基本的なことをお聞きしたいのですが、電極を挿入する部位が、両側視床下部の刺激というのと、両側淡蒼球内側刺激というのが、2群に分かれているようなのですが、このパーキンソン病やジストニアは、症状や疾患によって、これを使い分けるのかどうかということ。
 もう一つ、審査報告書17ページに、今申し上げた両群による有害事象のプロファイルが若干異なっているのですが、それは、挿入部位の解剖学的なものによる脳の神経機能によって、ある程度説明できるのか、アドバース・イベントは本質的には同じなのか。その2点をお聞きしたいのですが。
○小林参考人 刺激の部位に関しては、パーキンソン病は、淡蒼球内節と視床下核、そのいずれかが選ばれることがほとんどです。淡蒼球内節に比べて視床下核の方が手術としては効果が現れやすいとか、薬を減らす効果もあるのです。薬の代わりになるような点もありまして、今はほぼ主流で用いられています。
 一方で視床下核の中には、特にお腹側の下側には精神活動にも影響する場所があるのであろうと考えられていまして、実際そのために、やや認知機能が低下する可能性があるのではないかと。実際、数%ではありますが報告もありますので、そのような差が出ているのではないかと考えます。ですから、パーキンソン病に関しては、症状に応じて、私どもは場所を選んでおります。
 ジストニアに関しては、淡蒼球内節、こちらが筋肉の緊張などにかかわる場所ですので、パーキンソン病でも振戦や固縮などに非常に効果があるものですから、そちらを選ぶのですが、ジストニアに関しては、淡蒼球の内節の方を選んで行っています。
○笠貫部会長 よろしいでしょうか。この承認条件の一番目で、適応を遵守し、十分な知識を得た医師が行うということですが、これはジストニアに対する仕様だけでよろしいのですか。パーキンソン病についても、私は、先ほどの手技を含めて、適切な部位にリードを挿入して電気刺激装置を入れるということから、医師基準も設けた方がいいと思うのですが、いかがなのでしょうか。
○機構 おっしゃるとおりで、パーキンソン病に関してもジストニアに関しても、非常に手術の手技として、ここに書いてあるような形でのものが望ましいのですが、パーキンソン病に関しては、以前に振戦の方で承認されている形のものがありまして、今回御説明しましたように、最初の市販後調査のときにもパーキンソン病の様々な運動障害に対する患者で、今回同じ条件になるような患者に関しても調査が行われていることがありまして、制度的に、今回はジストニアの方だけに承認条件を付すこととしています。
○笠貫部会長 今回は、ジストニアの適応拡大の話の方だけということで、よろしいのですか。
○機構 おっしゃるとおりです。
○笠貫部会長 この承認条件でも、先ほど文献調査等についても、あるいはジストニアの分類等についても、ガイドラインが非常に大事だというお話があったと思うのですが、承認条件の所に、学会等のガイドラインについて、一文書いておくことは必要ではないでしょうか。ガイドラインを遵守するということで、ガイドラインという言葉が入ったのは、今までなかったでしょうか。
○機構 機構よりお答え申し上げます。私どもの考えとしては、先生のおっしゃるとおりの方向で考えております。制度上といいますか、ここに記載することがいいかどうかに関しては、これまでの前例も含めて、少々相談させていただきたいと思います。
○笠貫部会長 それ以外にはございませんか。
特に御意見がございませんでしたら、議決に入らせていただきます。梅津委員におかれましては、利益相反に関する申出に基づきまして、議決への参加には御遠慮いただくことにいたします。
 「医療機器『アクティバRC』」については、本部会として一部変更承認を与えて差し支えないものとし、審査期間は3年間とし、また、生物由来製品及び特定生物由来製品への指定は不要ということでよろしいでしょうか。
御異議がないようですので、そのように議決させていただきます。この審議結果については、次回の薬事分科会に御報告することにいたします。
 議題1が終了しましたので、参考人の小林先生におかれましては、御退出いただいても結構ですし、この後お聞きいただいても結構です。どうもありがとうございます。
── 小林参考人退室 ──
 それでは、次の議題に進みます。議題2「医療機器『ディーシー ビーズ』の製造販売承認の可否等について」、審議を行います。本議題の審議に当たっては、参考人として奈良県立医科大学放射線医学教室教授、吉川公彦先生にお出でいただいております。よろしくお願いいたします。
 まず、審議品目の概要について、事務局から御説明をお願いいたします。
○事務局 資料2を御覧ください。1枚目が諮問書になります。具体的な品目の概要については、審査報告書1ページになります。一般的名称に関しましては、中心循環系血管内塞栓促進用補綴材、販売名は「ディーシー ビーズ」と呼ばれるものです。こちらの申請者はエーザイ株式会社になります。本品目の概要は審査報告書4ページを御覧ください。架橋構造を持つポリビニルアルコール高分子からなる親水性の球状微粒子で、図1、2のような外観になっております。粒子サイズに適したマイクロカテーテルを使用して標的血管を塞栓するといったようなものになります。使用目的、効能・効果については3ページに記載しております。肝細胞癌患者に対する肝動脈塞栓療法となっております。承認条件はその下に記載のとおり、それぞれ必要な措置を講ずることとなっております。詳細については機構より御説明いたします。
○機構 審議事項議題2、資料2「医療機器『ディーシー ビーズ』の生物由来製品又は特定生物由来製品の指定の要否、製造販売承認の可否及び再審査期間の指定について」、医薬品医療機器総合機構より御説明いたします。
まず当日配布資料1の2ページ、本品目の専門委員の一覧を御覧ください。本審査では、御覧の3名の専門委員の先生方に御意見をいただきました。また当日配付資料2、3ページの本品目の正誤表を御覧ください。この部分の記載が消えていましたので追記させていただきます。
それでは本品の概要から説明させていただきます。審査報告書4ページ以降を御覧ください。本品は、架橋構造を持つポリビニルアルコール(PVA)高分子からなる親水性のマイクロスフィア(球状微粒子)をリン酸緩衝生理食塩液とともにガラスバイアルに充填し、密封・滅菌した製品で、肝細胞癌患者に対する肝動脈塞栓療法に使用されます。本品のマイクロスフィアは、粒子構造全体の□%程度がリン酸緩衝生理食塩液で構成されており、親水性及び柔軟性/圧縮性に富んでいることから、粒子サイズに適したマイクロカテーテルを選択することで、カテーテル内での目詰まりや血管内での凝集塊形成が抑制され、安全かつ確実に標的血管へ塞栓材を注入することが可能となります。肝動脈塞栓療法は、肝細胞癌の栄養供給血管である肝動脈を塞栓することで、肝細胞癌を選択的に阻血・壊死に導くことができることから、国内外ともに広く普及しており、肝癌診療ガイドラインにおいても、肝機能が保持され、腫瘍が複数個確認された局所療法、切除の適用とならない進行肝細胞癌の治療に位置付けられております。血管塞栓材には、粒子、液体、金属コイルなど様々な形状、材質のものがありますが、粒子状塞栓材は主に小血管の塞栓療法に用いられており、天然物質由来のゼラチンを原料としたゼラチン粒が汎用されてきました。しかし、天然物質由来の粒状塞栓材は、粒子サイズが大きく、かつ不揃いで、粒子が団粒を形成しやすいため、標的塞栓部位より手前の血管での閉塞やカテーテル内で目詰りを起こすこと、血管径に合わせた塞栓剤による精密な血管塞栓療法ができないことなどが問題点とされてきました。欧米では10年以上前より、非天然物質由来のバイオメディカルポリマーを原料とした粒子状塞栓材の開発が進められ、現在ではPVA系マイクロスフィアが、天然物質由来の塞栓材に代わる有用な血管塞栓材として汎用されています。しかし、本邦では天然物質由来の多孔性ゼラチン粒の塞栓材が流通しているのみであり、非天然物質由来のバイオメディカルポリマーを含む一連の血管塞栓用マイクロスフィアは、未だ市販されておりません。本品は、「肝細胞癌患者に対する肝動脈塞栓療法」を適応として、2010年12月にエーザイ株式会社より申請されました。
 それでは非臨床試験成績について説明いたします。審査報告書6ページ以降を御覧ください。仕様の設定に関する資料、安定性及び耐久性に関する資料については、特段の問題は認められませんでした。また審査報告書7~16ページに記載しておりますが、性能に関する資料については、安全性を裏付ける試験、機器の性能を裏付ける試験、機器の使用方法を裏付ける試験の成績が提出されました。安全性及び機器の性能を裏付ける試験については、申請者から適切な回答が示され、特段の問題はないと判断しました。
 13ページを御覧ください。本品は、抗悪性腫瘍薬の含浸を意図しない塞栓材として申請されているにもかかわらず、本申請で添付された海外臨床試験では、薬剤を含浸させた本品が用いられていたことから、薬剤の含浸の有無による本品の塞栓部位への影響が懸念されました。その点について申請者は、本品と抗癌剤(エピルビシン)を混和した際の粒子径変化に関する試験及び本品と抗癌剤(ドキソルビシン)を混和した際の粒子径の硬さの変化に関する試験を実施し、含浸の有無による本品の塞栓性能について考察しております。申請者は、本品が抗癌剤の含浸により粒子径が小さくなり、粒子の硬さが増加しますが、球状塞栓物質ではサイズの減少で塞栓部位がより遠位側に、硬さの増加で近位側に移動する性質が報告されており、本品の塞栓部位への影響は移動方向が相殺され軽微であると説明しております。機構は、審査の結果、特段の問題はないと判断しました。
 続きまして、本申請に添付された臨床試験成績について説明いたします。審査報告書16ページからになります。切除不能な肝細胞癌患者を対象に、本品を用いたドキソルビシン併用の肝動脈化学塞栓術の有効性及び安全性を、既存の塞栓材を用いたドキソルビシン併用の肝動脈化学塞栓術と比較し、抗悪性腫瘍薬を含浸させた本品の有用性を検討した、多施設共同無作為化単盲検並行群間比較試験が欧州5か国、23施設で実施されました。本品群では、ドキソルビシン150mgを用時混和した本品4mLを肝動脈に注入し、塞栓を完成させるために必要に応じてマイクロスフィア塞栓材(Bead Block)を追加使用しました。一方、対照群では、治療前のビリルビン値により、ドキソルビシン投与量を体表面積換算で50~75mg/平方メートルの範囲に決定し、リピオドールと混和して肝動脈に注入した後、必要に応じて既存塞栓材である1.生体非吸収性素材マイクロスフィア、2.PVA粒子、3.生体吸収性素材のスポンジジェルのいずれかを注入して塞栓を完成させました。なお、治療は初回、初回治療2か月後及び4か月後の最大3回まで行われ、初回治療後、6か月時に評価が行われました。登録された236例のうち、212例が本品群(102例)又は対照群(110例)に割り付けられました。このうち少なくとも1回の治療が実施された201例(本品群93例、対照群108例)をModified ITT解析集団及び安全性解析集団とされました。
 審査報告書22ページの表6を御覧ください。有効性の主要評価項目である初回治療後6か月時点の欧州肝臓学会(EASL)基準による奏効率は、本品群で51.6%、対照群では43.5%であり、本試験は抗悪性腫瘍薬を含浸した本品の有効性が、既存の塞栓材を用いた抗悪性腫瘍薬併用の肝動脈化学塞栓術による有効性に対して、優越性を示すことを目的としていましたが、薬剤を含浸させることによる優越性は示されませんでした。安全性についてですが、治療後に発現した主な有害事象を表7にお示ししております。有害事象発現率は、本品群で84.9%、対照群では81.5%であり、処置後合併症、腰痛、発熱、悪心などが認められておりますが、両群で明らかな違いは認められませんでした。また表8には、いずれかの群で重篤な有害事象が1%以上の事象を示しておりますが、本品群35.5%、対照群34.3%であり、事象は処置後合併症、膵炎、肝腎不全、食道静脈瘤出血、肝不全、門脈血栓症、尿路感染が見られましたが、両群で差は見られませんでした。死亡した症例は、本品群8例、対照群8例でしたが、塞栓術後30日以内に発現し、その後、死亡に至った有害事象は、本品群で肝腎不全1例、心拡大1例、敗血症性ショック1例の計3例でした。一方、対照群ではセラチア性敗血症1例、敗血症性ショック1例、肝不全1例、肝腎不全1例の計4例であり、本品群と対照群の間で有害事象の種類及び発現率に特記すべき差異はありませんでした。
 続きまして、審査の過程で提出された、国内において本品に抗悪性腫瘍薬を含浸させずに用いた肝動脈塞栓療法の試験成績について説明いたします。審査報告書27ページを御覧ください。外科手術あるいは局所療法の適用とならない肝細胞癌患者□例に、本品単体を用いた肝動脈塞栓療法が行われました。有効性評価項目である□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□。安全性評価項目である「塞栓療法後30日以内に発現した有害事象及び不具合」は、不具合が□例□件、有害事象□例□件発現しましたが、重篤な有害事象の発現はありませんでした。不具合は、□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□と判断されました。主な有害事象は、塞栓術後症候群、背部痛及び便泌が各□例□件、発熱□例□件でした。
 続いて、審査における論点について説明いたします。審査報告書43ページ、「総合評価」を御覧ください。まず一つ目の論点の本品の有効性についてですが、本品の肝動脈塞栓療法における有効性は、海外臨床試験の成績からドキソルビシンを含浸させた本品の腫瘍縮小効果及び塞栓性能は、既存の塞栓材と比較して劣っているとは言えないこと、本品と薬剤を混和した際の本品の粒子径変化及び粒子の硬さの変化について検討した非臨床試験及び国内の□例の肝細胞癌患者に対して本品単体を使用した追加臨床試験から、ドキソルビシンの含浸有無により、臨床評価に影響を与える程の塞栓性能の違いはないと考えられること、過去の文献から、肝動脈化学塞栓療法による腫瘍縮小効果は、主に塞栓材による阻血効果によるものと考えられていること、最後に、肝細胞癌に対する肝動脈塞栓療法が、肝癌診療ガイドライン等でも明記されているように確立した治療方法であること等から、臨床試験で本品単体の有効性について検証は行われていないものの、既存の塞栓材に劣らないものと判断しました。
 続いて、二つ目の論点の本品の安全性についてですが、本品の肝動脈塞栓療法における安全性については、1.ドキソルビシンを含浸させたときの本品の安全性は、対照群の部分集団解析において、本品群と対照群のスポンジジェル以外の塞栓材(マイクロスフィア、PVA粒子)群の有害事象は同様の傾向を示していること、また、2.追加提出された国内6例の肝細胞癌患者に本品を用いて肝動脈塞栓療法を実施した臨床試験においても、本品の不具合及び有害事象は抗悪性腫瘍薬を含浸させた時と比べて特段異なる事象は見られなかったことから、本品単体による塞栓又は抗悪性腫瘍薬を注入した後に本品で塞栓した場合、海外臨床試験でみられた以上にリスクが高まることはないと考えます。しかしながら、本品が他臓器に流入した場合、梗塞、臓器不全等を引き起こす可能性があることから、本品は既存の塞栓材とは血管内の挙動が異なる可能性があることに留意した上で、緊急時の十分な対応ができる医療施設において使用する必要があることを添付文書で注意喚起し、講習等において、本品の使用方法について十分に指導を行う必要があると判断しました。
 以上の二つの論点並びに本品は本邦初の血管内塞栓ビーズであることを踏まえ、本品が本邦へ導入された際には、使用者が本品による治療について十分な医学的知識を有し、その使用方法について十分理解し習熟していることが必要であるため、トレーニングが十分かつ適切に行われることが重要であると考えることから、承認条件1及び2を付すことが妥当と判断しました。また、海外臨床試験においても、本品単体での安全性について確定的な試験成績が得られていないこと、国内臨床試験は少数例に対して実施されたものであり、日本人の本品の使用経験も少ないことから、本品の教育訓練を受講した医師による適正使用及び安全性の確認を行い、注意喚起の追加や教育訓練の内容の変更等の必要性について検討することが重要であると考えることから、承認条件3を付すことが妥当と判断しました。
 以上の審査を踏まえ、本品を承認して差し支えないとの結論に達し、本医療機器体外診断薬部会で御審議いただくことが適切と判断いたしました。再審査期間は3年と判断しております。また生物由来製品及び特定生物由来製品のいずれにも該当しないと考えます。御審議のほどよろしくお願いたします。
○笠貫部会長 ありがとうございました。それでは参考人の吉川先生から何かございましたら、お願いいたします。
○吉川参考人 奈良医大放射線科の吉川でございます。よろしくお願いします。先生方御存知のように、肝細胞癌に対するこの動脈塞栓術、TACEと呼ばれていますけれども、これは世界に誇るべき日本発の治療法であるわけです。欧米では、今回申請がありましたディーシー ビーズをはじめ、マイクロスフィア、粒状塞栓物質、これはかなり前から使われておりまして、多くの臨床試験のデータが既に存在しています。日本においては海外に遅れること5年ぐらいということなので、こういうディーシー ビーズが入るということは、日本のTACEをやっている臨床の先生にとっては悲願であったと思われます。このディーシー ビーズは、抗癌剤を含浸できる非常に粒子サイズの揃った永久の塞栓物質ということですので、どれぐらいのレベルの血管を詰めるか想定できるということで、より確実な塞栓効果が得られると感じます。こういう塞栓物質が臨床現場で使えるということは、肝動脈塞栓術における選択肢を増やすという意味において、非常に臨床的意義があるのではないかと思います。ただし、今、御説明がありましたように永久塞栓物質ですし、注入するときの動態は、従来のゼラチンスポンジと違う動態を示しますので、実施する場合にはそういう血管解剖に精通し、それと画像診断能力ですね、DSAとか使って血行動態の変化を瞬時に捉えて、塞栓のタイミングとか、どこで止めるかということを判断できる、そういう医師が使うべきではないかと思っています。
 日本においては、このディーシー ビーズ以外の優れたTACEが行われているので、こういうものがアベイラブルになって、その後、また大規模な臨床試験等が想定されると思いますが、こういうような非常に優れた塞栓物質が臨床現場で使えることは臨床的意義が大きいと考えます。以上でございます。
○笠貫部会長 ありがとうございます。それでは委員の先生方から御意見はございますか。
○齋藤委員 内容がよく分からないので、大変申し訳ございませんが、通常、抗癌剤というのは、こういう場合には単剤で使うものなのでしょうか。例えば何種類かの抗癌薬を含浸させて、ビーズを使った場合に、このビーズのサイズあるいは硬さに影響するなど、どのように考えればよろしいでしょうか。
○機構 機構よりお答えします。このビーズは、もともと1剤を含浸させる目的で開発されたようなのですが、ただ今御説明させていただきましたとおり、含浸をさせた上乗せ効果いうのは検証されておりませんので、含浸させるビーズとしては想定しておりません。ただ、今まで先生方が臨床現場でやられておられましたように、抗癌剤を動注して、その後、塞栓物質として蓋をするという使い方については、こちらとしても想定しております。
○齋藤委員 もう一つ、最終的にこういったものというのは、例えば生物学的改変というか、バイオデグラデーションが起きて消えていくのか。あるいは永久に体の中に残るものなのですか。
○機構 機構より御回答いたします。基本的に永久塞栓物質でございますので、そのまま残るということで御理解いただければと思います。文献では、マクロファージのような炎症細胞で貪食されるという報告もあるようですが、基本的には先ほど申し上げたような形で永久に残るということです。
○齋藤委員 少なくとも肝臓で使用することに限っては、炎症とか肉芽腫の形成とか、そのような問題は起きてこないとのことですか。
○機構 海外でも、3年以上の長期のフォローアップされている症例があるのですが、そういったところでも安全性は確認されているので、そこら辺の御懸念は払拭されるものかと思います。
○荒井部会長代理 承認条件の3番目の「一定数の症例が集積するまでの間は全例調査」について質問させてください。理由が44ページの下にありますが、私の理解が悪いのか、この日本語は明確ではない。要するに「単品での使用経験が乏しいから」ということですが、先ほどのお話にもありましたように、ディーシー ビーズ自体は基本的にアンスラサイクリン系の薬剤との併用で使用され、欧米では肝癌治療のスタンダードという言い方までされています。スタンダードと言う程の厳格な臨床試験は実はないのですが、最近の分子標的治療薬の臨床試験などでも、これをスタンダードとして、それにプラスマイナスという形で試験が組まれています。そのくらいの状況ですので、少なくとも薬剤と併用しての使用については相当十分な量のデータがあります。さらに44ページの中程に、「単品で使った場合、薬剤を併用した場合に比べてリスクが高まるとはいえない」という文言が承認の説明に入っているわけです。このような状況を考えていきますと、あえて単品での使用についての安全性を確認するために、全例調査を要求する必要があるのか極めて疑問です。更に申し上げると、国内でも恐らく肝臓癌の治療に単材で用いられることはほとんどないと思われます。そういう状況下で、単品での使用データを収集するのは実際問題として極めて困難です。くわえて、そこで単品のデータが収集されたからといって、それが何か臨床的に役立つかと言うと、そのような使い方はしないわけですから、ほとんど役に立ちません。そこで、この全例調査は、一体何を目的に「やらなくてはいけない」と判断されているのか、その理由を御説明いただきたいと思います。
○機構 機構よりお答えさせていただきます。まず今回、一定症例数を収集するまでの間というところに関してですが、そこに関しては、これまでずっと使っていたのがゼラチンスポンジもあったということもございます。さらに今回、初めてのビーズ塞栓材であるというところもございますので、若干、使い勝手も違うだろうということもございます。そこに関しては、初め、一定症例数のところできちんと使えることを確認していただきたいと思っています。先ほど先生がおっしゃったように、安全性に関しては恐らく問題ないだろうと考えていますが、その手技におきましてゼラチンスポンジと、若干、動向は違う可能性もあるところに関して、そこを確認していただくような形でいきたいと考えています。
○荒井部会長代理 「正しく使うための手技をきちんと知らしめる」ということと、「企業に全例調査を要求する」というのは全く目的が異なります。正しく使用されるよう企業が情報提供するのは当然であり、学会等もこれに協力しますし、正しく安全に使用できるように医師同士が切磋琢磨することも必要です。しかし、そのことと、全例調査をしなさいと、すなわち、企業に施設と契約して一定期間データ収集をしなさいというのとは全く目的が異なります。そこを履き違えたらいけないと思いますが、いかがでしょうか。
○機構 御意見ありがとうございます。本品もそうなのですが、国内で初めて使われるような品目に関して、全く使っていない先生方が多いということになりますと、リーダー的な先生方が最初に使っていただいて、国内でも手技的に問題がないか等を十分に確認していただいた上で、広めていただきたいというのがございますので、最初に限られた施設、これはリーダー的な先生方の施設になると思いますけれども、そこはそれほど無理のない範囲になると思いますが、一定数を複数例、リーダー的な先生方の施設で全例やっていただいて、安全性を確認していただいた上で、それを次に広めていただければという形のものでございます。
○荒井部会長代理 今のお答えは、私の質問の答えになっていません。あなた方が言っている「全例調査」と、「安全に使用するための対応を企業に要求する」というのとは目的が全く異なります。そこは区別していただく必要があります。この機器は、先ほどの御説明にもありましたように、日本から発した肝癌の動脈塞栓療法という治療法にもかかわらず、デバイスで大きく遅れをとってしまった代表格です。さらに申し上げると、ここでそこまでは言及すべきでないかもしれませんが、この製品には大した値段は付かないだろうと私は予測しています。にもかかわらず、企業に全数調査が課せられるとすれば、当然のことながら当分の期間、あなた方が言う一定の症例数が集まるまでは、対象施設を極めて限定してやらざるを得ない。なおかつ、この物品に関しては一定期間、みんなでトレーニングしてやりましょうということですから、逆に言えば相当期間、他の施設では使えなくて、限られた施設だけで全数調査を行うことになる訳です。恐らく、間違いなく、そういうことを要求していることになります。これは、ニーズ検討会が本医療機器を選定した理由でもある「世界中で行われている日本発のTACEという治療に、海外で標準的に使われているのに日本で使えないという異常な環境を是正する」という背景に全く逆行していると言わざるを得ないと思います。どうしてここで承認しておきながら、全数調査により、臨床現場で使えるようにする状況を遅らせる必要があるでしょう。少なくとも、今機構より御説明頂いた全例調査が必要な理由は、筋が通っておらず、私には理解できません。いかがでしょう。
○機構 機構の方からお答え申し上げます。言葉が足りませんで申し訳ありませんでした。全例調査になりますのは、最初のうちはどの施設でも使える状況を作らずに、リーダー的な先生の所だけで使う形を取るために、全例調査という形を取らざるを得ない。これはデータを集めるという意味ですけれども、それで安全性を確認していただくために全例調査をかける形になるのですが、その範囲や数に関して専門委員の先生方から、このビーズというのは、今までのジェルパートとは動向が違うので、慎重に日本に導入したほうがいいという御意見が多かったものですから、こういう形にさせていただきました。数とか範囲等に関しては専門委員の先生方と相談させていただいた上で、現場が混乱しない妥当なもの、先ほどデバイスラグとおっしゃいましたけれども、現場にできるだけ早く良いものが届けられるような形で、決めていただきたいと考えております。
○荒井部会長代理 趣旨は理解しております。ただ、最近は学会も本当にこういうことに協力しており、安全に使用されるように企業とタイアップして、下手な人が勝手に使わないように制限をかけたりもしています。一方、逆に企業の立場から見れば、承認後の全数調査はものすごく重い課題です。ですから、これは言葉の使い方かもしれませんが、責任ある立場として、全数調査という言葉は決して安易に使うべきではないと、私は思います。もし、おっしゃるように最初は限定して、絞り込んで上手な人から使ってもらい、安全性を確認して徐々に広げてほしいのであれば、それをそのまま表現すべきです。その言い換えに、全数調査という言葉を使うべきではありません。御検討ください。
○笠貫部会長 今の御質問に、参考人の吉川先生からお答えいただけるようでしたら、お願いします。
○吉川参考人 今の調査の件ですが、荒井先生がおっしゃいましたように、全例調査で時間がかかって臨床現場での使用が遅れるということは、できるだけ避けたいとは思っています。ただ、一方で、本邦初のマイクロスフィアということなので、より慎重にということは当然出てくると思いますので、慎重に扱うことに関してはビデオ等も作り、講習をやって使う先生の教育を行うこと、調査に関してはある程度施設を絞った形で、有効性というのはなかなか判断が難しいと思いますので、いわゆる有害事象の有無という形である程度施設を絞り、同時並行の形で行うことのほうが現実的ではないかと考えますので、その辺はまた検討していただければと思います。
○笠貫部会長 村上委員、どうぞ。
○村上委員 初めてのマイクロスフィアということで、基礎的な質問です。今回、架橋PVAを使われるということで、その架橋というのは化学架橋だと思いますけれども、どういう架橋をされているのでしょうか。生体適合性を考慮された製法だと思いますけれども。
○機構 今の御質問に関しまして、こちらも確認してお答えしたいと思いますので、また後ほど確認でき次第、先生に御連絡させていただきたいと思います。よろしいでしょうか。
○村上委員 はい。それと併せまして、いわゆる長期間使用する場合に低分子成分の溶出が起こらないように、多分、架橋されたと思います。今回、塞栓というのが目的ですから。その辺は問題にならない程度にされているかどうかも、確かめていただければと思います。
○機構 御指摘、ありがとうございます。確認させていただきます。
○笠貫部会長 これは、先ほどの荒井委員からの御質問とも関連するのですが、このマイクロスフィア、血管内閉塞療法は日本初であるというお話がありました。これがニーズの高い医療機器等の早期導入に関する検討会で出てきて、EUでは2003年、アメリカでは2002年にということでした。吉川先生にお聞きしたいのですが、今、日本でデバイスラグという言葉が注目されていますけれども、どうしてそこまで遅れたのでしょうか。日本にマイクロスフィアの導入が遅れた理由です。
○吉川参考人 それは、なかなかそういう申請が上がってこなかったというか、日本では従来、リピオドールとゼラチンスポンジを用いたTACEが行われていて優れた塞栓効果を上げていた。それは術者が非常に塞栓術に長けていて、従来のリピオドールとゼラチンスポンジで、かなりの好成績を上げてきたという背景が日本においてはあるのではないかと思います。選択的にマイクロカテーテルを持って行って超選択的に詰めるとか、そういうことでかなりの良好な成績が得られていたというバックグラウンドがあると思います。
○笠貫部会長 そうしますと、マイクロスフィアというものを使わなくても、日本の術者の高度な技術によって、この血管内閉塞療法を進めていたということですか。
○吉川参考人 できていたということが、その一つだと思います。
○笠貫部会長 このニーズの検討会は21年に出されているものですから、これが日本の学会からの要望として今回新たにマイクロスフィアが出てきたと解釈させていただいてよろしいですね。デバイスラグを正しい意味で理解することは非常に大事なことですので、日本でこのマイクロスフィアが遅れたように見える理由は、そこにあるということを、理解しておいていただけたらと思います。それと全例調査についての意味付けについては、安全性の問題を見るためにマイクロスフィアは日本にとって初めてというか、新規のものということで、専門家の御意見として全症例登録という御意見だったと理解しました。
○千葉委員 この新しく導入された治療法というのは、今の御説明から私が理解できる範囲では、成績は優位に上がるわけではない。劣るわけではないということは優位に成績が上がっているわけでなく、かつ副作用も違わないと。ただ、選択肢の数が増える。それから、恐らくスポンジジェルよりもこちらの方が使いやすいということが、多分評価なのだと理解しています。ですから、これは利点は確かにあると思います。そのコストに関しては、スポンジジェルを使っていた時代と、この新しいスフィアで、どれぐらい変わってくるものでしょうか。それが私の質問の第1点です。
 もう1点は、これは荒井委員がおっしゃるとおり、ここに書いてある「一定数の症例」という言葉が多少曖昧だと思います。ですから、これを早く臨床の現場に持って行くためには明確に、もう少し具体的に学会とも御相談の上、数は明示して、あるいは期間を明示されてはいかがでしょうか。そうなれば先が見えるのではないかと私は素人ながら考えます。
○機構 機構より御回答いたします。値段に関しましては、本品の海外の値段ですけれども、□万円~□万円ということで申請者の方からお聞きしています。一方、国内でのジェルパートのゼラチン粒になりますけれども、それは1万円程度とお聞きしています。あと先ほどの一定数の話ですが、それは申請者、学会の先生方とよく御相談させていただいて、なるべく期間や症例数のところが明確になるような形で、今後検討させていただければと思います。
○梅津委員 先ほどの千葉委員の話と似ているのですが、もう1回確認させていただきたいと思います。吉川先生から、いろいろな講習やビデオでまず示すというお話があったと思いますが、トレーニングというのは、とにかく早く普及させるためにやるのが目的だと思います。トレーニングの具体的な方法に関しては既に学会のほうで決めておられるのでしょうか。
○吉川参考人 まず、こういう新しい塞栓物質を使うに当たっては、従来の塞栓療法をかなり経験した先生が使うべきだと考えています。そういう基礎経験を持った先生が使うことが大前提であり、さらに、この塞栓物質の特徴と言いますか、どのぐらい詰めたらどのぐらいバックフォローするか、そういう実際の症例を多くの先生に、一遍に経験していただくことは難しいと思いますので、そういう症例のビデオを供覧する形でやっていく。もちろん、初めて塞栓物質をやる方が、これをいきなり使うことは非常に危険だと思いますので、十分な経験を積んだ先生が、そういうビデオ等を使って講習を受けることで、安全に使えるのではないかと考えています。
○笠貫部会長 よろしいでしょうか。全症例を対象にすることについては、安全性という問題だけでなく有効性の問題もありますし、手技の問題もいろいろ含めた上で、全症例登録というのが、その都度決められているのだろうと思います。また一定数や期間もそれぞれ、その機器の特徴に応じて専門家の学会の意見も含めて、最終的に決めていただけていると思いますが、今日はこういった意見が出たということを踏まえて、また専門家の先生方とPMDAの方でよく詰めていただけたらと思います。ほかに特に御意見がございませんでしたら、議決に入らせていただきます。
「医療機器『ディーシー ビーズ』」については、本部会として承認を与えて差し支えないものとして、再審査期間は3年間、また生物由来製品及び特定生物由来製品への指定は不要ということで、よろしいでしょうか。
ありがとうございます。御異議がないようですので、そのように議決させていただきます。この審議結果につきましては次回の薬事分科会に報告させていただきます。議題2が終了しましたので、吉川先生におかれましては御退室いただいても結構です。ありがとうございました。
── 吉川参考人退室 ──
○笠貫部会長 それでは次の議題に進みます。議題3「医療機器『ヒストアクリル』の製造販売承認の可否等について」、審議を行います。本議題の審議に当たりましては、参考人として、神戸大学大学院医学研究科内科学講座消器化内科分野先端医療開発部門特命教授であられる、久津見弘先生にお出でいただいています。よろしくお願いいたします。
まず審議品目の概要につきまして、事務局より御説明をお願いいたします。
○事務局 概要の説明をさせていただきます。資料3を御覧ください。1枚目が諮問書となります。「審査報告書」というグレーのタブの4ページを御覧ください。
 一般的名称は、血管内塞栓促進用補綴材、販売名は「ヒストアクリル」、申請者は、ビー・ブラウンエースクラップ株式会社となります。本品は、医療ニーズの高い医療機器として選定され、優先審査品目となっております。下の図1に本品の外観写真がございます。お戻りいただいて、3ページになります。使用目的としまして、胃静脈瘤の内視鏡的血管塞栓材料として用いる。承認条件としましては、以下の1番、2番、それぞれ、必要な措置を講ずることとしてございます。概要は以上です。詳細につきましては機構より御説明いたします。
○機構 審議事項議題3、資料3「医療機器『ヒストアクリル』の生物由来製品又は特定生物由来製品の指定の要否、製造販売承認の可否及び再審査期間の指定について」、医薬品医療機器総合機構より御説明いたします。
 まずは当日配布資料1の3ページになるのですが、こちら、少し間違いがありまして大変申し訳ありません。こちらは「ディーシー ビーズの審査報告」と書いてありますが、「ヒストアクリルの審査報告」の間違いです。大変失礼いたしました。こちら、御覧いただきました3人の専門委員の先生の御意見をいただいております。
 また、大変恐れ入りますが、審査報告書の一部に誤りがありましたので正誤表を当日配布資料2でお配りしております。こちらを御覧ください。大変失礼いたしました。
 それでは本品の概要から説明いたします。審査報告書4ページから御覧ください。本品は、胃静脈瘤に対する内視鏡的塞栓療法を行うために注入する塞栓材です。本品の原材料であるn-ブチル-2-シアノアクリレートは、血管へ注入されると、血管中のヒドロキシルイオンと反応することにより重合し、硬化する特性を持ちます。使用時には、本品を単独若しくは適量の造影剤と混和をした後に経内視鏡的に静脈瘤内に注入し、塞栓を形成いたします。本品は、1986年より現在に至るまで、本邦においては皮膚用接着剤、こちらはクラスIデバイスとなりますが、皮膚用接着剤として製造販売されておりますが、臨床現場においては、胃静脈瘤の塞栓材として20年以上にわたり適応外使用されてきたものになります。胃・食道静脈瘤は、門脈圧亢進症により発生し、基礎疾患としては、主に肝硬変等の重篤な疾患を既往しております。一たび出血を来すと致死率は高く、胃静脈瘤においては45~55%と報告されております。
 治療法には、内視鏡的治療、インターベンショナル・ラジオロジーを応用した治療、外科治療と、多くの選択肢がありますが、これらが単独又は併用して行われています。出血を来した胃静脈瘤に対しては、解剖学的にバルーン圧迫が困難であること、静脈径が大きい場合に内視鏡的結紮術が無効であること等の理由により、現在、主に内視鏡的血管塞栓術が選択されております。海外及び国内の臨床使用における有用性も、複数報告されております。塞栓材としては、古くから皮膚用接着剤を使用してきた経緯があり、食道・胃静脈瘤内視鏡治療ガイドラインにも、本品を用いた治療はHA法として既に記載されております。以下、本品を用いた治療法をHA法と省略させていただきます。
 審査報告書6ページにおいて外国における使用状況を記載いたしました。本品は、欧州、オーストラリア、韓国において胃・食道静脈瘤への適応を取得しております。現在、臨床現場での使用実態と適応を整合させる必要性から、本品は2008年の医療ニーズの高い医療機器等の早期導入に関する検討会において選定され、本申請は、優先審査品目として優先審査を行いました。
 それでは審査の概要について説明いたします。非臨床試験としましては、安全性、性能及び安定性等に関する資料が提出されました。生物学的安全性については、細胞毒性試験では、陽性、埋植試験では、軽度の炎症反応が認められました。埋植試験の炎症反応は軽度であり、回復傾向を示唆する所見が確認されていること、細胞毒性試験は陽性であったものの、細胞膜を破壊し接着するという原理に鑑み、本品がある程度の細胞毒性を示すことは必然性があること、感作性試験、急性全身毒性試験の投与部位の所見及び皮内反応試験において特段の問題は認められなかったこと、本品が致死的な病態に使用され、本邦において適応外で既に多く使用されている実態等を踏まえ、本品の生物学的安全性評価としては、臨床使用に際して問題ないと判断いたしました。
 続きまして、本品の臨床評価に関して御説明いたします。審査報告書10ページ~16ページを御覧ください。申請者より、胃静脈瘤に関する各国のガイドライン3文献、海外文献110文献、国内文献47文献が提出され、重み付けの結果、海外RCT3報、海外レビュー1報、国内調査文献1報を中心に評価されました。活動性出血例に対するHA法の止血率は、前向き比較臨床試験3報において87~93%、2008年のレビュー文献で58~100%と報告されております。その成績には幅が認められましたが、一方、日本門脈圧亢進症学会が中心となって行った2004年~2008年における国内コホート調査に報告されたHA法の治療後3日目における出血率は4.1%であったことに鑑みると、患者背景等の差異から直接比較は困難であるものの、現在の国内における止血に関する治療成績は96%程度であると考えられ、十分に良好であると考えられます。再出血率に関しては、前向き比較試験におけるHA法後の再出血率は22~31%であり、このうち2文献においてHA法は、内視鏡的結紮術と比較して有意に再出血率が低かったと考察されています。
 一方、国内コホート調査においては、観察期間内の再出血率は12.2%であり、海外の成績から見ても、良好な成績であると考えられます。また、安全性については、提出されたすべての文献から有害事象を抽出し、胃静脈瘤治療に対する一般的な有害事象と本品特有の有害事象に分けて考察がなされました。
 以上の文献評価に対する審査における論点について御説明いたします。審査報告書17ページ~19ページを御覧ください。申請者から提出された資料を総合し、機構は、本品の適応について、本品の使用方法について、国内外文献における安全性評価、長期成績について論点を整理し、評価を行いました。
 まず、適応についてですが、胃静脈瘤の病態として、出血例、出血既往例、予防例が挙げられます。このうち出血例及び出血既往例については、提出された文献評価結果により有効性が認められると判断いたしました。一方、予防例については、その適応とすべき所見についてのコンセンサスやエビデンスは不足するものの、出血例及び出血既往例同様、致死的な病態を回避するために有用な手段として用いられている実態を踏まえ、これを積極的に除外することは適切ではないと判断しました。以上より、本品の適応は胃静脈瘤に対する内視鏡的血管塞栓材として用いるとし、添付文書の効能又は効果に関連する使用上の注意として「原則として出血性または出血既往のある胃静脈瘤に対して用いること。本品を出血性または出血既往例以外の胃静脈瘤へ使用した場合の有効性及び安全性については確認されていない。」を記載することとし、さらに、本品の使用は胃静脈瘤及びその内視鏡的治療に十分な知識、経験を持つ医師が適切に対象を選ぶ必要があると判断しました。
 次に、本品をリピオドールと混合する際の混合比や注入量については、注入回数、注入速度、瘤の性状、手技等により適宜変更されていることから、現在、本品が適応外で既に使用されている実態に鑑み、厳しく規定することは適切ではないと考えました。ただし、本品をリピオドールで薄めすぎた場合に適切な部位で固まらずに肺塞栓を起こす恐れがあることから、添付文書において注意喚起をしています。
 安全性評価については、提出されたすべての国内外の文献を用いて評価を行った結果、胃静脈瘤治療に対する一般的な有害事象として、潰瘍、感染が、また、本品特有の有害事象として、他臓器塞栓・梗塞、早期硬化に伴う注射針固定等が認められました。これらは添付文書において注意喚起することとしており、特に本品特有の有害事象については、手技による部分も多いことから、添付文書において適切に情報提供し、リスク低減及び有害事象発生時に速やかに適切な処置を講じることのできる専門の医師及び管理体制の下で本治療を実施することにより当該リスクの低減化を図ることが可能と考えました。
 さらに長期成績については、胃静脈瘤患者は肝硬変等の重篤な基礎疾患があること、出血例については救命救急措置として実施され、本品を使用した施設における患者のフォローが難しいことから、その調査には制限があると考えます。しかしながら、現状では、本品を用いた治療の長期成績について十分なエビデンスがなく、可能な限りの情報収集が必要と考え、製造販売後調査において、死亡率、再出血率、使用方法等を重点調査項目として調査することとしています。
 これらの審査を踏まえまして、総合評価になりますが、審査報告書19~21ページを御覧ください。20ページ中程になりますが、本品の適応選択、使用方法について厳しく規定することは適切ではないものの、手技等によるリスクに鑑み、有害事象への適切な対応が必要であることから、専門の医師、専門の実施施設で本治療を行うために施設及び術者に関する要件である承認条件1及び2を付すことが妥当であると判断いたしました。
 さらに、当日配布資料として別紙としてお配りしております「学会による本品に関する施設基準及び実施医基準」を御覧ください。こちら、右上に「日本消化器内視鏡学会」、「日本門脈圧亢進症学会」、「日本消化器病学会」の3学会の連名となっております別紙を御覧ください。本品使用に関する施設及び実施医の基準はこちらの3学会の御協力を得て作成されているところです。本品の承認に当たっては、承認後も適切に使用されるよう関連学会の御協力も得ているところです。
 以上の審査を踏まえ、本品を承認して差し支えないとの結論に達し、本医療機器・体外診断薬部会にて御審議いただくことが適切と判断いたしました。本品は新性能医療機器であり、再審査期間は3年と判断しております。また、生物由来製品及び特定生物由来製品のいずれにも該当しないと考えております。機構からの報告は以上です。御審議のほど、よろしくお願いいたします。
○笠貫部会長 ありがとうございました。それでは、参考人の久津見先生から何かございましたらお願いいたします。
○久津見参考人 神戸大学の久津見でございます。よろしくお願いいたします。
繰り返しになる部分もありますが、少し現場の現状を報告させていただきます。今、機構からありましたように、胃静脈瘤は、背景に肝硬変を代表とする肝予備能の非常に乏しい患者さんがほとんどで、胃静脈瘤破裂の出血によって肝血流が低下して、ショックリバーとなります。それに加えて、腸管に多量の血液が流入します。血液にはたくさん蛋白が含まれており、その蛋白が肝臓に負荷をかけることで、肝不全進行に拍車をかける病態です。胃静脈瘤の出血に関しては、輸血を行いながら、まず内視鏡を行って出血部位を確認して、そのまま止血を行うというのが理想的な対応です。
 止血方法ですが、食道静脈瘤の場合は静脈瘤をゴムバンドで結紮する、EVL、日本語では結紮療法と言いますが、出血している局所を止めてしまう療法であったり、静脈瘤の中に直接界面活性剤を注入する、硬化療法があります。硬化療法は、内皮を障害させて二次的に血栓を発生させて血管を潰してしまうという方法です。ただ、硬化療法はその場での止血効果はなく、内皮を障害させた後、薬剤注入のために穿刺した針穴のところをバルーンで圧迫して止血をするという手法です。
 胃静脈瘤の場合は、静脈瘤の出来る場所は、解剖学的に背中の方に回り込んでいますので、針穴を作った後に圧迫して止血するのが困難です。また、静脈瘤そのものが非常に発達していて大きいという特徴がありますので、食道のようにゴムバンドで結紮するには大きすぎます。胃静脈瘤破裂の止血方法としては、局所を塞栓してしまうという本品を使用する方法が必須の方法であると認識しています。この方法は1986年ぐらいから世界で多く行われている方法で、ガイドラインでも標準的な方法として世界に広く普及しております。ですから本法は、現場では、なくてはならない方法と認識しております。以上でございます。
○笠貫部会長 ありがとうございます。それでは、委員の先生方から御意見、御質問はございますか。
○鈴木委員 6ページにある、外国における使用状況を見ますと、海外では胃・食道静脈瘤への適応と書いてあるのですが、我が国では胃静脈瘤のみということになっているようです。それはどういう理由からなのでしょうか。
○久津見参考人 食道に関して広く従来から硬化療法という、先ほども言いましたように、界面活性剤を注入して針穴をバルーンで塞いで止めるという方法が非常に進んでおります。それでかなりの止血率があるということ。もう一つは、食道の静脈瘤の場合は供血路が胃から直接上がってくるため、出血している所だけをヒストアクリルで止めてしまいますと、胃側の静脈瘤が腫れてきます。ですので、基本的には硬化剤をその流入路まで逆流させて、上皮障害をさせて全体的に治療するというのが理想的なのです。我々は食道静脈瘤に対してヒストアクリルを第一選択としては選びませんし、現実、食道に対しては使う先生はおられないと思います。
○鈴木委員 食道に対して使う先生はいないということですか。
○久津見参考人 私の認識ではほとんどいないです。
○鈴木委員 外国ではいらっしゃるということですか。
○久津見参考人 外国でも、私はそういうことをしている先生は知らないですし、そういう報告はあまりないです。
○鈴木委員 でも外国では、一応適応には入っているのですが。
○久津見参考人 それは、適応と言われると難しいです。ほとんど、私の認識では胃の静脈瘤が本邦の適応であって、食道静脈瘤は基本的には、硬化療法なり、EVLという結紮療法が第一選択に選ばれます。
○笠貫部会長 先生の御説明のところで、アメリカではガイドラインに食道は入っているのですか。2006年にガイドラインがありますが。
○久津見参考人 恐らく胃・食道静脈瘤という一つの疾患単位として表現しているだけであって、内視鏡は、出血部位によって手技を選ぶと思います。疾患としては、同じ門脈圧亢進症という病気の一つの病態ですので、一括りにして表しているものと判断していいと思います。
○笠貫部会長 アメリカのガイドラインに書かれていますが、アメリカでの、この機器の承認はいつ取られているのでしょうか。ヨーロッパでは昭和44年という適応になっているのですが、アメリカではいつ承認されて、いつごろから適応として認められているということはあるのでしょうか。
○機構 アメリカでは、こちらの適応に関しては、承認は得られておりません。先ほどからお話のありました、欧州の方では胃・食道ということで取られているけれどもということだったと思うのですが、本邦でのガイドラインが一応、お手元の資料3の参考文献の1番のタブをめくっていただきますと「食道・胃静脈瘤内視鏡治療ガイドライン」というガイドラインがあります。こちらの222ページを御覧いただきますとフロー図があります。こちらのフロー図で食道静脈瘤が上の方のフローで、下の方のフローが胃静脈瘤になります。食道の方には本邦で一般的に、先ほど久津見先生からも御説明いただきましたように、EVLとかEISという、EVLが結紮術で、EISが硬化療法になりますが、こちらは両方とも食道静脈瘤に関してはこちらが一般的ということになっておりますが、胃静脈瘤に関しては、「組織接着剤注入法」と書いてありますのが本品を用いた治療法というように御理解ください。こちらは、治療選択フローも、胃静脈瘤の方に関してのみ適応というようになってございます。このように、日本の内視鏡治療をなさる先生方コンセンサスとしては、この辺りの治療選択ということがコンセンサスとして得られていると理解しております。
○笠貫部会長 今、私が御質問したのはそうではなくて、アメリカでもガイドラインに載っています。アメリカではこの機器がいつ、どのような形で承認されたのかというのが、この報告書に載っていないので教えてくださいということだったのです。
○機構 アメリカでは、皮膚用接着剤として2007年に承認されていますが、胃食道静脈瘤に対する承認はありません。
○笠貫部会長 ということで、ほかにはございませんでしょうか。
○荒井部会長代理 いろいろな意味で、先ほどのディーシー ビーズでもありましたが、承認条件のところは、最近は規制当局側と学会とがタイアップしていろいろやっていく場合があると思います。今回、たまたま案ということで、今日、ヒストアクリルの施設基準、実施医基準というのを別刷りでお配りいただきました。
 実は常々気になっているのですが、こういう基準が、安全に使うための締め付けになるのは良い事なのですが、これは出血という緊急事態で使う機器です。施設基準の方には、「上記以外の施設で緊急対応が可能な施設」という表現があり、ある種の逃げが打ってありますが、実施医基準の方には「日本消化器内視鏡学会専門医であること」という縛りがついています。しかし、出血という緊急事態に使用するという点を考慮すれば、例えばここに、「あるいはこれに準ずる」などという言葉があった方がいいのではないでしょうか。リタイアされていてもう専門医を失ったけれど、目の前で血が出ていればやらざるを得ないといった状況が司法の場で問われることは多くないのかもしれませんが、一定度の余裕は必要ではないかと思います。実施医基準では、医師の裁量を絞り込むというか、「できるけれども資格がないから使えない」というような状況が現場に混乱を生じないよう御検討いただけたらありがたいと思います。これを出されたら、そういったゆとりの部分があるといいかと思い発言させていただきました。
○笠貫部会長 今、「専門医」については専門医制度機構で議論されています。「内視鏡学会専門医」と言うと多少問題があるかもしれませんので、「内視鏡学会の専門家」とかにして、「専門医」という言葉の使い方については今後御検討いただきましょうか。
○機構 こちらについては、手技等も難しいことから学会の先生方の方でこういった基準を策定していただいているのですが、荒井先生のおっしゃったとおり、非常に緊急性の高いようなものでもありますので、内容の文言について、再度検討させていただきたいと思います。
○笠貫部会長 アメリカではこれが承認されず、承認の必要がないということですが、日本がなぜここで承認が必要なのかという、教えていただくことはあるのですか。
○機構 適応外使用で使われている実態は本邦も海外もあるのですが、内視鏡的治療の行われている比率が米国と日本とでは少し違うという実態もあるようです。詳細については、こちらで完全には把握しておりませんので、また調べまして御報告させていただきたいと思います。
○笠貫部会長 また教えていただけたらと思います。
○千葉委員 無色のものと青いものがありますね。これは緊急の場でお使いになるわけですから青と無色があるというようなことはなしにして、どちらも同等であるならば、研究の現場でしょうから、これは是非一つに統一される方がはるかに安全かと思います。是非それを御検討ください。
○機構 はい。
○石井委員 皮膚用接着剤との関連で教えていただきたいのですが、本日の申請品目と皮膚用接着剤では、規格は全く一緒ということでよろしいのでしょうか。今回、エンドトキシンが追加されているようですが、その点はどうなっていますでしょうか。
○機構 こちらについては、規格は全く同じになります。エンドトキシン試験はもともと実施されていたものではないのですが、今回、皮膚に適応するものから血管内に注入するものということで申請されるものになりますので、血管内に注入しても問題がないということを確認する目的でエンドトキシン試験も実施したところ、それについても問題がないという結果を得ております。管理方法としても、恐らくなのですが、欧米の方でも胃・食道の方にも適応を持っておりますので、品質管理としても特段、本邦の無菌医薬品と同等レベルであるような品質管理であることも確認いたしましたので、その点については問題ないと考えております。
○石井委員 本品ではエンドトキシン試験が承認事項に入っていると思うのですが、皮膚用についても、今後は承認事項に入るということでよろしいですか。
○機構 はい、そうなります。
○石井委員 分かりました。あと、パッケージ外側なのですが、二つともヒストアクリルということで同じで、添付文書は全く別になると思うのですが、外の紙箱は一緒で、一般名が二つ併記されるような感じなのでしょうか。
○機構 皮膚用接着剤については、実は今後、ヒストアクリルという名前はこちらの硬化剤としてのみ流通することになります。皮膚用接着剤としては販売を取りやめるというように聞いております。皮膚用接着剤としては、また別のものを考えているようです。
○石井委員 分かりました。使用の現場で混乱がないのかというのが心配になりましたので。ありがとうございます。
○鈴木委員 もう1回確認したいのですが、皮膚科用と今回のものとは全く同一成分ということですね。名称だけを変えるということですか。
○機構 いいえ、同一成分でヒストアクリルという販売名はこの硬化剤について適用される販売名になります。
○鈴木委員 そうすると、皮膚科用は同じものを別の名前にするということですね。
○機構 違うものを開発する予定ということです。
○鈴木委員 違うものですか。
○機構 はい。
○鈴木委員 何でですか。
○機構 ヒストアクリルという名前のこの同一成分の皮膚用接着剤は、販売を取りやめるというように申請企業からは聞いております。
○鈴木委員 理由は何でしょうか、せっかく有効なのに。
○機構 そこは企業さんのお考えになりますのでこちらでは分かりません。皮膚用接着剤はほかにも流通しているものがありますので、市場が困るということは恐らくないとは思います。
○鈴木委員 企業の考えは分かりませんが、もしかしたら高く売りたいからというのがあるかもしれないという気がいたしました。
○笠貫部会長 皮膚用は代用品があるからということだそうですが、先ほどから時々出ている、価格の問題はどうかということも念頭に置きながらここでの議論も必要なのかと思います。それでは議決に入りたいと思います。
 医療機器「ヒストアクリル」については本部会として承認を与えて差し支えないものとし、審査期間は3年間とし、また、生物由来製品及び特定生物由来製品への指定は不要ということでよろしいでしょうか。
御異議がないようですので、そのように議決させていただきます。この審議結果につきましては、次回の薬事分科会において報告することにいたします。議題3が終了しましたので、参考人の久津見先生におかれましては御退室していただいても結構です。ありがとうございます。
── 久津見参考人退室 ──
それでは次の議題に進みます。議題4「新たに追加する医療機器の一般的名称に係るクラス分類及び特定保守管理医療機器等の指定について」、審議を行います。今回は4件ありますので、審議品目の概要について、事務局より取りまとめて説明をお願いいたします。
○事務局 審議事項議題4、資料4-1~4-4「新たに追加する医療機器の一般的名称に係るクラス分類及び特定保守管理医療機器等の指定について」、事務局より御説明いたします。
医療機器に関しましては、一般的名称と呼ばれる区分がないものにつきまして、高度管理医療機器、管理医療機器、一般医療機器のいずれかであるかなどにつきまして薬事法第2条第5項~第8項の規定に基づいて、審議会の意見を伺った上で定めることとなっております。
 まず、資料4-1を御覧ください。1枚目に諮問書があります。その裏にいきまして、今回、新設しようとしています、一般的名称「単回使用注排用先丸針」の概要を示しております。次ページの一番下にあります「類似の一般的名称とその定義」に書いておりますとおり、既存の針と申しますのは鋭利のものとなっておりまして、そういった既存の一般的名称では該当し得ないことから、今回、新たにこうした一般的名称を付けることを考えております。具体的には、最後のページに具体的にこういったものということで図の外観図を載せておりますので、御確認いただければと思います。
○事務局 続きまして、議題4の資料4-2~4-4になります。御審議いただきます資料4-2の電子尿糖計、資料4-3の自己検査用尿化学分析器、及び資料4-4の自己検査用尿糖計につきましては、分析機器のクラス分類に伴います一般的名称の創設とクラス分類の改正となりますのでまとめて御説明させていただきます。
 なお、参考資料2では現在のクラス分類ルールを参考として付けております。また、当日配布3では「医療機器のクラス分類ルールの一部を改正する件について」として改正の概要、改正の内容につきましてまとめております。
 それではまず、議題4のうち資料4-3の自己検査用尿化学分析器及び資料4-4の自己検査用尿糖計のクラス分類について先に御説明いたします。当日配布3を御覧ください。
 この自己検査用測定機器についてですが、現行の分析機器のクラス分類では、自己検査用測定機器はすべて高度管理医療機器クラスIIIとされております。その後、2008年のGHTFにおいて合意されました最新のクラス分類ルール(GHTFファイナルドキュメント)では、「自己検査用測定機器はクラスIIIとするが、医学的に重篤な状態を決定するものではない場合、あるいは、予備的な検査であり、追って適切な臨床検査を行う場合に使用する機器はクラスB」、つまり、本邦のルールでいうところのクラスIIと示されたことから、これを参考にいたしまして、当日配布3の「改正の内容」の2つ目に記載しておりますが、「誤った診断結果が得られた場合において人の生命及び健康に重大な影響を与えるおそれがある検査項目を測定する自己検査用測定機器」、例えば自己検査用グルコース測定器などは、これまでどおりクラスIIIとし、「それ以外の検査項目を測定する自己検査用測定機器」、つまり、今回御審議いただきます資料4-3の自己検査用尿化学分析器及び資料4-4の自己検査用尿糖計につきましてはこの新たなルールを導入し、クラス分類を「2.特定保守管理を該当とした管理医療機器」として新設する一般的名称となります。
 また、資料4-2の新設する一般的名称である電子尿糖計につきましては、自己検査用尿化学分析器、自己検査用尿糖計同様、「誤った診断結果が得られた場合において人の生命及び健康に重大な影響を与えるおそれがある検査項目以外の検査項目を測定する自己検査用測定機器」に該当することからクラス分類をIIとし、特定保守管理医療機器の指定につきましては、自己検査用尿糖分析機、自己検査用尿糖計と異なり、機器の特徴として、これらにつきましては測定回数が規定値を超える、又は一定期間を経過した場合にセンサーの交換を知らせる機能であったり、適正使用(環境温度)を逸脱した場合又は測定時に洗浄を行わなかった場合には警報が鳴り、エラーメッセージが表示されるといった警報機能が備え付けられていることから、専門的な知識や技能がなくても保守点検が可能であり、適正な管理ができる医療機器であると考えられることから、特定保守管理医療機器の指定につきましては、非該当とさせていただいております。説明は以上となります。御審議のほど、よろしくお願い申し上げます。
○笠貫部会長 ありがとうございます。本件につきまして委員の先生方から御意見、御質問はございますか。
4点ありますが、いかがでしょうか。特段なければ議決に入りたいと思います。
 まず1点目。単回使用注排用先丸針については、本部会として管理医療機器として指定し、特定保守管理医療機器への指定は不要ということでよろしいでしょうか。
それでは、御異議がないようですのでそのように議決させていただきます。
 次に2点目。電子尿糖計については、本部会として管理医療機器として指定し、特定保守管理医療機器への指定は不要ということでよろしいでしょうか。
それでは、御異議がないようですのでそのように議決させていただきます。
 次に3点目と4点目。自己検査用尿化学分析、自己検査用尿糖計については、本部会として管理医療機器として指定し、特定保守管理医療機器として指定してよろしいでしょうか。
それでは、御異議がないようですので、そのように議決させていただきます。この審議結果につきましては、次回の薬事分科会において報告することにいたします。
 それでは次の議題に移ります。議題5「優先審査品目について」、事務局から御説明をお願いします。
○事務局 報告事項議題5、資料5「優先審査品目について」、事務局より御報告いたします。
医療ニーズの高い医療機器等の早期導入に関する検討会が平成22年3月19日の検討会において、疾病の重篤性が高く、医療上の有用性が高いとして選定された品目が今回、以下のとおり申請されたということで優先審査品目として指定し、審査を進めることにつきまして御報告いたします。
 具体的に下に記載しておりますとおり、販売名は「メドエル人工内耳EAS」と呼ばれるもので、補聴器装用では効果が十分に得られない低音域に残存聴力を有する高音急墜型の聴力像を呈する感音難聴を対象とし、聴覚障害者の聴覚路に音響刺激及び電気刺激を与え、聴覚の一部を回復させるというものです。以上、報告いたします。
○笠貫部会長 ありがとうございます。ただ今の御説明に御意見、御質問はございますか。
それでは議題6に移らせていただきます。議題6「希少疾病用医療機器の指定の取消しについて」、事務局から御説明をお願いいたします。
○事務局 報告事項議題6、資料6「希少疾病用医療機器の指定の取消しについて」、事務局より御報告いたします。
資料は、平成11年8月25日に希少疾病用医療機器に指定されたノバコア左室補助人工心臓システムについて提出された製造販売中止届です。この製造販売中止届の提出に伴い、薬事法第77条2の5第1項の規定に基づき指定を取り消すものです。製造販売の中止に至った経緯としては、次ページ、別紙に詳細が記載されております。
 本品は、平成13年8月に承認され、治験を含め、合計29例に使用されました。平成18年2月に埋め込まれたのが最後の症例で、それ以降は、新規患者への埋め込みは行われておりません。また、現在、本品が埋め込まれている患者はおりません。5.代替品についての表に記載されておりますとおり、代替となり得る3製品の医療機器が承認されているという状況です。平成24年12月に本品の再審査が完了したことを受けて、承認整理、及び希少疾病用医療機器製造販売中止届の手続に至っております。以上、御報告いたします。
○笠貫部会長 ありがとうございます。本件につきまして先生方から御質問、御意見はございますか。
特に御意見がございませんでしたら、本日予定された議題はこれで終了になります。
 本日は、医療ニーズの高い医療機器等の早期導入に関する検討会から出された3つの機器について御審議をいただきました。患者の友の会から出されてきた機器の検討など、ニーズの高い医療機器について十分議論され承認されたと思います。それではこれで本日の議題は終わりましたので、事務局から何かございましたらよろしくお願いいたします。
○医療機器審査管理室長 御審議、誠にありがとうございました。次回の部会につきましては5月22日(水)を予定しておりますので、皆様、御確認をよろしくお願いします。連絡事項は以上です。よろしければ、これをもちまして本日の「医療機器・体外診断薬部会」を閉会させていただきます。誠にありがとうございました。


(了)

備考
 この会議は、企業の知的財産保護の観点等から非公開で開催された。

連絡先:医薬食品局 医療機器審査管理室 室長補佐 安川(内線4226)

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