ホーム> 政策について> 審議会・研究会等> 薬事・食品衛生審議会(薬事・食品衛生審議会医薬品第二部会)> 薬事・食品衛生審議会 医薬品第二部会 議事録(2013年3月13日)




2013年3月13日 薬事・食品衛生審議会 医薬品第二部会 議事録

○日時

平成25年3月13日(水)
15:00~


○場所

厚生労働省共用第8会議室


○出席者

出席委員(13名) 五十音順

○新 井 洋 由、 庵 原 俊 昭、 川 崎 ナ ナ、 清 田    浩、
  佐 藤 俊 哉、 田 島 優 子、 田 村 友 秀、 豊 見 雅 文、
  中 島 恵 美、 濱 口    功、 半 田    誠、 福 山    哲、
◎吉 田 茂 昭
(注) ◎部会長 ○部会長代理
他参考人1名

欠席委員 (7名)

大槻 マミ太郎、 奥 田 真 弘、 菊 池    嘉、 鈴 木 邦 彦、
前 崎 繁 文、  増 井    徹、 山 本 一 彦

行政機関出席者

赤 川 治 郎 (審査管理課長)
俵 木 登美子 (安全対策課長)
矢 守 隆 夫 (独立行政法人医薬品医療機器総合機構審査センター長)
佐 藤 岳 幸 (独立行政法人医薬品医療機器総合機構審議役)
中 野    惠 (独立行政法人医薬品医療機器総合機構審議役)

○議事

○審査管理課長 定刻になりましたので、「薬事・食品衛生審議会医薬品第二部会」を開催させていただきます。本日は、お忙しい中を御参集いただきましてありがとうございます。本日の委員の出席についてですが、大槻委員、奥田委員、菊池委員、鈴木委員、前崎委員、増井委員、山本委員より御欠席との御連絡をいただいております。また、田島委員より、遅れる旨の御連絡をいただいております。清田委員も少々遅れておられるようですが、現在のところ、当部会委員数20名のうち、11名の委員の御出席をいただいていますので、定足数に達しておりますことを報告いたします。
 なお、本日は議題10に関して、国立感染症研究所副所長の倉根一郎先生を参考人としてお呼びしています。以降の議事進行は吉田部会長にお願いいたします。
○吉田部会長 本日の審議に入ります。事務局から配布資料の確認と、審議事項に関する競合品目・競合企業リストについての報告をお願いいたします。
○事務局 資料の確認をさせていただきます。本日、席上に議事次第、座席表、当部会委員名簿を配布しております。議事次第に記載されている資料1~資料19をあらかじめお送りしております。資料20「審義品目の薬事分科会における取扱い等の(案)」、資料21「専門委員リスト」、資料22「競合品目・競合企業リスト」を配布しております。当日配布資料として、資料23で佐藤委員からの御質問を配布しております。
 続いて、本日の審議事項に関する競合品目・競合企業リストについて御報告いたします。資料22の1ページ「沈降インフルエンザワクチンH5N1『生研』」ですが、本品目は「インフルエンザH5N1の予防」を予定効能・効果としており、同様の効能・効果を有する薬剤として資料に掲げる品目を競合品目として選定しております。
 2ページ「ゼルヤンツ錠5mg」ですが、本品目は「既存治療で効果不十分な関節リウマチ」を予定効能・効果としており、同様の効能・効果を有する薬剤として、資料に掲げる品目を選定しております。
 3ページ「アクテムラ皮下注162mgシリンジ、アクテムラ皮下注162mgオートインジェクター」ですが、本品目は「既存治療で効果不十分な下記疾患、関節リウマチ(関節の構造的損傷の防止を含む)」を予定効能・効果としており、同様の効能・効果を有する薬剤として、資料に掲げる品目を選定しております。
 4ページの「アラベル内服用1.5g、アラグリオ内服用1.5g」ですが、本品目は、「悪性神経膠腫の腫瘍摘出術中における腫瘍組織の可視化」を予定効能・効果としており、同様の効能・効果を有する薬剤はないことから、競合品目はなしとしております。
 5ページの「スチバーガ錠40mg」ですが、本品目は「治癒切除不能な進行・再発の結腸・直腸癌」を予定効能・効果としており、同様の効能・効果を有する薬剤として、資料に掲げる品目を選定しております。
 6ページの「スタリビルド配合錠」ですが、本品目は「HIV-1感染症」を予定効能・効果としており、同様の効能・効果を有する薬剤として、資料に掲げる品目を選定しております。
 7ページの「Bexarotene」ですが、本品目は「皮膚T細胞性リンパ腫」を予定効能・効果としており、同様の効能・効果を有する薬剤として、資料に掲げる品目を選定しております。
 8ページの「ポテリジオ点滴静注用20mg」ですが、本品目は「末梢性T細胞リンパ腫及び皮膚T細胞性リンパ腫」を予定効能・効果としており、同様の効能・効果を有する薬剤として、資料に掲げる品目を選定しております。
 9ページの「アドエア100ディスカス28吸入用」ですが、本品目は、「気管支喘息(吸入ステロイド剤及び長時間作動型β2刺激剤の併用が必要な場合)」を効能・効果としており、同様の効能・効果を有する薬剤として、資料に掲げる品目を競合品目として選定しております。以上です。
○吉田部会長 ただ今の事務局からの説明に特段の御意見等はありますか。ないようですので、本部会の審議事項に関する競合品目・競合企業リストについては、皆様の御了解を得たものといたします。それでは、委員からの申出状況についての報告をお願いいたします。
○事務局 議題1「インフルエンザワクチン」は、退室委員はなし、議決には参加しない委員はなしです。
 議題2「ゼルヤンツ」は、退室委員はなし、議決には参加しない委員は庵原委員、清田委員、田村委員です。
 議題3「アクテムラ皮下注」は、退室委員はなし、議決には参加しない委員は庵原委員、清田委員、田村委員です。
 議題4「アラベル内用剤及びアラグリオ内用剤」は退室委員はなし、議決には参加しない委員はなしです。
 議題5「スチバーガ」の退室委員はなし、議決には参加しない委員は清田委員です。
 議題6「スタリビルド」は退室委員はなし、議決には参加しない委員はなしです。
 議題7「Bexarotene」の退室委員はなし、議決には参加しない委員はなしです。
 議題8「モガムリズマブ」の退室委員はなし、議決には参加しない委員はなしです。
 議題9「アドエア」の退室委員はなし、議決には参加しない委員は清田委員です。
 議題10「生物学的製剤基準の改正」の退室委員はなし、議決には参加しない委員はなしです。以上です。
○吉田部会長 本日は、審議事項が10議題、報告事項が9議題となっています。なお、議題10については、参考人の倉根先生が到着次第審議を行いたいと思います。それでは、議題1について、医薬品医療機器総合機構から概要説明をお願いいたします。
○機構 審議事項議題1、資料1「医薬品沈降インフルエンザワクチンH5N1『生研』1mLの生物由来製品及び特定生物由来製品の指定の要否、製造販売承認の可否及び再審査期間の指定並びに毒薬又は劇薬の指定の要否について」医薬品医療機器総合機構より御説明いたします。
 本剤は、デンカ生研株式会社から、新型インフルエンザH5N1の予防を予定効能・効果として申請されたものです。本剤の有効成分として、弱毒化されたインフルエンザウイルスH5N1株を、発育鶏卵にて培養し、ホルマリンで不活化した全粒子を含むワクチンです。アジュバントとして、水酸化アルミニウムゲルが添加されております。2006年5月に開催された当部会において、本剤の希少疾病用医薬品の指定について御審議いただき、2006年6月に指定されております。
 新型インフルエンザH5N1に用いるワクチンとしては、これまでに本剤と同様の有効成分からなる3製剤が既に承認されております。本剤の専門協議に御参加いただいた専門委員は、資料21にお示しいたしました9名の委員からなっております。
 次に、審査の概略について、臨床試験成績を中心に御説明いたします。有効性について、審査報告書の19ページを御覧ください。表4-4です。国内第II/III相試験において、本剤を2回目接種した後のHI抗体価及び中和抗体価の抗体陽転率1.の上昇が認められ、5μgHA群よりも15μgHA群の方がより高い値を示しております。
 21ページを御覧ください。同様の結果については、抗体陽転率の2.、GMT変化率、抗体保有率についても同じような結果が見られております。機構は、国内第II/III相試験の結果より、本剤投与によって、特異的な抗体産生が認められ、新型インフルエンザH5N1に対する本剤の有効性は期待できるものと判断いたしました。
 安全性については23ページを御覧ください。国内第I相試験が実施されており、皮下接種群の方が、筋肉内接種群よりも局所反応の発現割合が高い傾向が認められました。一方で、国内第I相試験、国内第II/III相試験のいずれにおいても、接種用量によらず忍容性は確認されておりましたので、本剤の安全性は忍容可能と判断いたしました。
 最後に、製造販売後の対応については29ページを御覧ください。機構は、本剤が実際に使用された場合においては、通常の安全監視体制の下、パンデミックの状況等に対応し、適切に情報収集を行うことが妥当と判断いたしました。なお、本剤が使用されるまでには、安全性情報の収集方法や提供方法についてあらかじめ検討しておくことが望ましいと考えております。
 以上の審査の結果、機構は本剤について承認して差し支えないと判断いたしました。本剤は生物由来製品に該当し、希少疾病用医薬品であることから、再審査期間は10年、原薬及び製剤はいずれも劇薬に該当すると判断いたしました。なお、薬事分科会は報告を予定しております。以上について、御審議のほどよろしくお願いいたします。
○吉田部会長 委員の先生方から御質問、御意見をお願いいたします。
○庵原委員 1点確認いたします。19ページの表4-4の、抗体の陽転率の陽転を、17ページだと1対20で取っているように読めるのですが、これは1対20で取っているのですか。1対40では取っていないということで理解してよろしいですか。
○機構 表4-4にお示しております数字は1対20で取った陽転率です。1対40の数字については、21ページの表4-6に抗体陽転率2.とありますが、こちらが1対40で取った数字です。
○庵原委員 この陽転率は少し低いような気がするのですが、なぜ1対20で出したのかという、そこを教えてください。
○機構 当初の試験計画の中で、1対20で取るということで試験が実施されておりましたので、その結果について評価させていただきました。加えて、1対40についても数字をきちんと確認させていただいて評価をいたしました。
○庵原委員 もう1点確認ですが、今後インフルエンザのH5のHI抗体は1対20をもって陽性とするという方針に、PMDAは変えたわけですか。そこの確認です。
○機構 今回は治験実施計画書において、治験依頼者の方が1対20を主要評価とするという計画の下で実施されたので、その結果をそのまま評価した形になります。本剤開発後に発出されたプロトタイプの新型インフルエンザに対するガイドラインにお示ししているとおり、プロトタイプワクチンでは1対40を使うとされていますので、そちらを使うことになると思います。
○庵原委員 要するに、ダブルスタンダードでいくということですか。プロトタイプは1対40でいくと。でも、今回は1対20が試験計画に入っているので、試験計画どおりやりましたという解釈でよろしいですか。
○機構 当時の状況の中で計画された試験においては、1対20として計画され、その結果が示されていますが、1対40とした結果についても、今回はデータを示していただいております。今回は当時の状況に従って実施された試験についてそのまま受け入れたということと思います。
○庵原委員 わかりました。
○吉田部会長 今は、どちらが生きているのですか。
○機構 プロトタイプワクチンのガイドラインが出ていて、そちらの方では1対40を抗体陽転率で使うことが示されておりますので、少なくともプロトタイプについては1対40を使うことになると思います。今後、いろいろなワクチンが開発されると思いますので、そのときには個別に対応が必要と考えます。
○庵原委員 吉田先生、インフルエンザのHI抗体の議論をし始めると、1時間ぐらいかかります。それと、専門家によって見解が違いますので、とりあえずそういう規則でスタートしているということの前提で話をしていかないと、前提がずれてしまうと、インフルエンザワクチンの話がおかしくなりますので、とりあえずは先生が言われるように、今は1対40でやっているというところで理解しているということかと思います。
○吉田部会長 分かりました。ほかにございますか。御質問、御意見がないようですので議決に入ります。お諮りします。本議題について、承認を可としてよろしいでしょうか。
 御異議がないようですので、承認を可とし、薬事分科会に報告とさせていただきます。
 議題2に移ります。議題2について医薬品医療機器総合機構から概要の説明をお願いいたします。
○機構 審議事項議題2、資料2「医薬品ゼルヤンツ錠5mg錠の生物由来製品及び特定生物由来製品の指定の要否、製造販売承認の可否及び再審査期間の指定並びに毒薬又は劇薬の指定の要否について」医薬品医療機器総合機構より御説明いたします。
 本剤はヤヌスキナーゼ(以下、「JAK」)ファミリー阻害剤であるトファシチニブクエン酸塩を有効成分とする錠剤であり、今般、関節リウマチ(以下、「RA」)にかかる効能・効果で申請がなされたものです。JAKファミリーは、JAK1、2、3及びチロシンキナーゼ2からなる細胞内チロシンキナーゼであり、リンパ球の活性化、機能分化及び増殖に重要な役割を果たしているインターロイキン、インターフェロンなどのサイトカインのシグナル伝達に関与するなど、自己免疫疾患との関連が示唆されていることから、本剤はRAに対する治療薬として開発が進められました。
 本剤は、米国では2012年11月に承認されており、欧州では2011年□月に承認申請され、現在審査中です。本申請の専門委員としては、資料21に記載されております11名の委員を指名いたしました。
 主な審査内容について簡単に御説明いたします。審査報告書45ページの「3)国際共同第III相試験(A3921044試験)」の項を御覧ください。本申請における検証試験として、MTXで効果不十分な日本人及び外国人RA患者797名を対象に、本剤5mg、10mg又はプラセボを1日2回経口投与した際の有効性及び安全性を比較する、プラセボ対照無作為化二重盲検並行群間比較試験が実施されております。まず、関節痛等の症状の改善に関する評価について説明いたします。試験全体の成績については46ページ中段の表14に示していますように、主要評価項目の一つとされた投与6か月時のACR20%改善率は、プラセボ群25.32%、本剤5mg群51.46%、本剤10mg群61.81%であり、いずれの投与群においても、プラセボ群と比較して有意な差が認められています。
 また、本試験に組み入れられた日本人患者118名の成績についても表15に示していますように、投与6か月時のACR20%改善率は、プラセボ群20.83%、本剤5mg群59.57%、本剤10mg群65.96%であり、先ほどの試験全体の成績と類似した結果が認められております。以上の成績より、機構は、既存治療で効果不十分な日本人RA患者において、本剤5mg及び10mgいずれの用量においても関節痛などの症状に対する軽減効果は示されていると判断いたしました。
 次に、関節の構造的損傷の防止に関する評価について御説明いたします。試験全体の成績について47ページ上段の表16に示していますように、主要評価項目の一つとされた投与6か月時のmTSSのベースラインからの変化量のプラセボ群との差は、本剤5mg群で-0.34、本剤10mg群で-0.40でした。いずれの用量群においても、数値的にはプラセボ群を下回り、関節の構造的損傷の進展を抑制する傾向が示唆されましたが、統計学的には、本剤5mg群についてはプラセボ群と比較して有意な差は認められず、本剤10mg群については、プラセボ群と比較して有意な差が認められたものの、72ページ中段「2)関節の構造的損傷の抑制効果について」の項に記載しております感度解析及び追加解析の結果、表50及び表51のとおり、これらの解析結果のほとんどにおいて、主要解析結果との間で一貫した結果が認められず、本剤10mg群でプラセボ群に対する有意差が認められた結果は、本剤10mg群に臨床的に想定し難い値を示した症例が含まれていたことによる影響と考えられました。
 以上より、本試験の結果からは、本剤5mg及び10mgのいずれの用量においても、関節の構造的損傷の防止効果が示唆されていると考えるものの、当該成績のみに基づき、本剤の関節の構造的損傷の防止効果に対する有効性が示されたと判断することは困難と考えております。
 次に76ページ「(2)安全性について」の項を御覧ください。本剤は、種々のサイトカインのシグナル伝達を阻害することから、免疫機能への影響により発現が懸念される重篤な感染症をはじめとする有害事象の発現傾向について、第III相試験及び長期投与試験の併合データ等に基づき、検討を行いました。重篤な感染症については78ページの表56に示していますように、本剤5mg群及び10mg群でプラセボ群、並びに一部海外臨床試験で比較対象とされた抗TNF製剤であるアダリムマブ群と比較して、暴露量当たりの発現率が高い傾向が認められ、また長期投与試験併合データにおける、本剤10mg群の発現率は、本剤5mg群の約2倍と用量依存的に発現率が増加する傾向が認められました。
 さらに表57及び79ページの表58に示していますように、高齢者及び日本人を含むアジア人では、重篤な感染症の発現率がより高い傾向が認められており、重篤な感染症は本剤投与時に最も留意すべき有害事象の一つであると考えられます。なお、重篤な感染症の中では、帯状疱疹、結核等の発現が多く認められております。
 悪性腫瘍については83~86ページに記載しております。83ページの表62のとおり、本剤群の暴露量当たりの悪性腫瘍発現率は、プラセボ群よりも高く、かつ投与期間依存的に発現率が増加する傾向が認められていること、また、本剤10mg群における暴露量当たりの発現率は、本剤5mg群よりも高く、アダリムマブ群との比較においても高い傾向が認められていることから、本剤に起因して悪性腫瘍が発現するリスクは否定できず、特に本剤10mg投与時の悪性腫瘍の発現には厳重な注意が必要であると考えられます。
 さらに本剤投与時に認められた悪性腫瘍は、投与開始後1年以内の早期の発現が50例中28例と多く、診断時に既に病気が進行している症例や、転移病変を有する症例も50例中15例と多かったことから、本剤が悪性腫瘍の発現を促進する可能性又は悪性腫瘍の種々の症状をマスクする可能性も否定できないと考えられ、本剤投与と悪性腫瘍の発現との関連については、製造販売後調査等で更に明らかにしていく必要があると考えております。
 さらに86ページ以降、消化管穿孔、間質性肺炎、血球数減少、脂質異常、肝機能異常などについて検討した結果、本剤の安全性プロファイル及びそのリスクの程度は、RAに対する既承認の生物製剤である抗TNF製剤、抗IL-6製剤などと類似していると考えられることから、製造販売後には、既承認の生物製剤と同等の十分な安全対策を講じる必要があると考えております。
 次に96ページの下段「(3)用法・用量について」の項を御覧ください。国際共同並びに海外第III相試験において、ACR70%改善率などの有効性評価項目において、本剤10mg群が5mg群を上回ったことに基づき、より高い臨床症状の改善を得るためには本剤10mgの投与が必要であるとして、申請時における本剤の用法・用量は、「通常トファシチニブとして1回5mgを1日2回経口投与する。なお、患者の状態によりトファシチニブとして1回10mgを1日2回に増量できる。」とされております。
 しかしながら、機構は、安全性についての項で述べましたように、本剤の有害事象の発現率は用量依存的に増加することが認められており、特に生命に関わる有害事象である重篤な感染症及び悪性腫瘍について、本剤5mg群よりも10mg群で発現率が高い傾向が認められたこと、結核、悪性腫瘍に関しては、アダリムマブ群と比較して、本剤10mg群で発現率が高い傾向が認められたことなどを勘案すると、現時点で得られている臨床試験成績からは、本剤5mgから本剤10mgに増量したときに得られる関節痛などの症状の改善に関するベネフィットが、本剤10mg投与により懸念されるリスクを上回ると結論付けることは困難であり、本申請において、日本人RA患者における本剤の用法・用量として、10mg1日2回投与を承認することは困難と判断いたしました。
 また、102ページの「(1)用法・用量について」の項に記載しておりますように、5mg1日2回投与の安全性についても十分に忍容可能とまでは言えないと考えるものの、生物製剤の十分な使用経験を有するリウマチ専門医が、重篤な感染症、悪性腫瘍などの診断、治療に対応可能な医療施設において使用する場合には、そのリスクに対処可能であると判断し5mg1日2回投与を日本人RA患者に対して適用することについては許容し得ると判断いたしました。
 最後に104ページの中段の「(3)製造販売後の安全対策について」の項を御覧ください。機構は、本剤の製造販売後調査について、臨床試験では認められていない未知の有害事象の発現も含め、本剤の安全性プロファイルを早期に把握できるよう、医師及び患者全例を登録する使用成績調査とともに、長期投与時の重篤な感染症、悪性腫瘍、脂質異常に伴う心血管系事象などの発現についても検討可能な長期の調査を実施するべきであり、特に悪性腫瘍の発現については、既承認の生物製剤との比較が可能となるような調査を実施する必要があると考えております。
 申請者からは、105ページに記載しておりますように、本剤が投与された症例のデータが一定数集積されるまでの間は、投与症例全例を対象に、観察期間6か月とする使用成績調査を実施するとともに、全例調査解除後も、全例調査の全対象患者について3年間の観察を実施すること、当該調査に抗TNF製剤を対照として設定し、長期投与時の悪性腫瘍及び重篤な感染症の発現リスクについて、比較可能な調査とする旨が説明されております。
 以上の審査を踏まえ、105ページに記載のとおり、製造販売後調査に係る承認条件を付した上で、本剤を承認して差し支えないとの結論に達し、本第二部会で御審議いただくことが適当と判断いたしました。 本申請にかかる再審査期間は8年、また原体及び製剤は劇薬に該当し、生物由来製品及び特定生物由来製品のいずれにも該当しないと判断しています。薬事分科会では報告を予定しています。
 なお、部会に先立ち、佐藤委員より御質問をいただいております。関節の構造的損傷の防止効果について、国際共同第III相試験(A3921044試験)において、本剤10mg群で投与6か月時のmTSSのベースラインからの変化量がプラセボ群に対して有意であったことについて、本剤10mg群に臨床的に想定し難い値、(-13.4と-20.0)が認められ、除外した解析を実施させたところ、審査報告書75ページの表52にあるとおり、プラセボ群との群間差が縮まり、統計的にも有意でなくなったことについて、承認内容に関わる重要な国際共同試験の成績の解析にもかかわらず、なぜ申請前に発見できなかったのかとの旨の御質問です。
 申請者は、開鍵前の盲検下で調査を実施し、御指摘いただいた内容については把握していたことを説明しており、類薬の報告においても、mTSS変化量が-20~-30と大きな改善を示している症例も存在し、統計的にも臨床的にもこれらが外れ値であると判断する根拠が認められなかったため、mTSSの評価においては、これら2例のデータを解析から除外せず、解析計画書に実施したとおり、治験薬の投与を1回以上受けた全ての被験者(FAS)を対象として解析を実施した旨を説明しております。
 なお、これら2例のデータが解析結果に与える影響については、主解析の感度分析として、事前に解析計画書において計画された順位変換に基づく解析を実施した旨を併せて説明しており、順位変換データに基づく解析結果は、審査報告書74ページの表50に記載させていただいております。説明は以上です。よろしく御審議のほどお願いいたします。
○吉田部会長 佐藤先生いかがですか。
○佐藤委員 申請者の説明なので少々理解しがたいところがありますが。一方は予測値というか、補完値ですから、それが生物学的にあり得ない値ではないからという理由で、そのまま解析してきたというのは受け入れ難い回答だと思います。
○吉田部会長 お話を聞くと、解析前には外れ値とする根拠がなかったということを言っているようですが、最終的には外れ値なので除くと判断した経緯あるいは根拠について教えてもらえますか。
○機構 関節の破壊に関しては、この薬剤で進行を抑制するという効果は期待できる可能性はありますが、改善する効果はないと考えられます。それに対してこの2例ではかなり大きな改善が見られていることから、臨床的に想定し難いということで、審査においてはこの2例に関しては除外することが妥当であろうという判断をしております。
○吉田部会長 統計解析のときには、統計学的に外れ値とする根拠はなかったのだけれども、臨床的におかしいので外したという解釈でいいのですか。
○機構 はい、そうです。
○吉田部会長 分かりました。ほかに委員の先生方から御質問はありませんか。癌の件なのですけれども、例えば1年後に多く出てきたことを考えると、いわゆる発がんということではなくて、癌が存在している人に対して影響を与えている可能性があるという解釈ですね。
○機構 はい、その可能性は否定できないと考えています。
○吉田部会長 田村先生、何かコメントはありますか。
○田村委員 よくは分かりませんけれども、抑えられていたものが出てきてしまうのでしょうね。
○吉田部会長 可能性としては考えられるということなのでしょうか。インターロイキン6とか、そういったサイトカインを抑制したりすることで、癌が増殖するとか何か。
○田村委員 何らかの増殖阻害因子が減少するか、増殖促進因子が増加するか、免疫学的な機構にもだいぶ影響を与えているのではないかと思います。
○吉田部会長 あり得ることなので、市販後も引き続きしっかり見ていく必要があるという御意見ですね。
○田村委員 はい。
○吉田部会長 ほかにありますか。
○庵原委員 結核と帯状疱疹の件なのですが、TNFαが抑えられれば当然帯状疱疹が出てくるのは分かるのですけれども、結核に関しては前後にCTで有るか無いかを見ておく、というようなことは付け加えられているわけですか、レミケードとか既存の生物製剤と同じような形で。
○機構 はい、既存の生物製剤と同じ対応を予定しております。
○庵原委員 これも同じ扱いにしているということですか。
○機構 はい。
○吉田部会長 ほかにありますか。よろしいでしょうか。御意見もないようですので、議決に入ります。なお、庵原委員、清田委員、田村委員におかれましては、利益相反に関する申出に基づき、議決への参加を御遠慮いただくことといたします。本議題について、承認を可としてよろしいでしょうか。
 御異議がないようですので、承認を「可」とし、薬事分科会に報告とさせていただきます。
 それでは議題3に移ります。議題3について、医薬品医療機器総合機構から概要説明をお願いいたします。
○機構 審議事項議題3、資料3「医薬品アクテムラ皮下注162mgシリンジ及び同皮下注162mgオートインジェクターの生物由来製品及び特定生物由来製品の指定に要否、製造販売承認の可否及び再審査期間の指定並びに毒薬又は劇薬の指定の要否について」医薬品医療機器総合機構より説明いたします。
 本剤の有効成分であるトシリズマブ(遺伝子組換え)は、ヒト化インターロイキン6(以下、IL-6)レセプターモノクローナル抗体です。トシリズマブを有効成分とする点滴静注用製剤は既に承認されておりますが、本申請は皮下注用製剤に係るものであり、点滴静注用製剤に比べ投与時間を短縮すること、自己投与を可能にすることなど、利便性の向上を図ることを目的として本剤の開発が行われ、今般、関節リウマチ(以下、RA)に係る効能・効果で申請がなされたものです。なお、海外においては、2012年12月現在、皮下注用製剤が承認されている国はなく、欧州・米国において審査中です。本申請の専門委員としては、資料21に記載されています5名の委員を指名しました。
 主な審査内容について説明いたします。審査報告書、17ページ、「2)国内第III相試験」の項を御覧ください。主要試験として、疾患修飾性抗リウマチ薬(以下、DMARD)又は生物製剤で効果不十分な日本人RA患者を対象に、本剤の有効性及び安全性を検討するため、点滴静注用製剤を対照とした無作為化二重盲検並行群間比較試験が実施されています。用法・用量は、本剤162mgを皮下に2週間隔又は点滴静注用製剤8mg/kgを4週間隔で、24週間投与することと設定されております。なお、本剤の用法・用量については、点滴静注用製剤において血清中の本薬トラフ濃度が1μg/mL以上存在することで、IL-6のシグナル伝達を阻害することが示されており、RAに対する点滴静注用製剤の承認用法・用量である8mg/kg、4週間隔投与において、大部分の患者で1μg/mL以上の血清中トラフ濃度が得られることから、点滴静注用製剤を8mg/kg、4週間隔投与で投与したときと同程度の血清中トラフ濃度が得られることを目安として、162mg、2週間隔投与と設定されております。
 有効性の結果については、17ページの表11に示しておりますように、主要評価項目とされた関節痛等の症状の改善の評価指標である投与後24週におけるACR20%改善率は、本剤群79.2%、点滴静注用製剤群88.5%、群間差の95%信頼区間の下限値は-17.6%であり、事前に設定された非劣性マージン-18%を上回ったことから、点滴静注用製剤に対する本剤の非劣性が検証されました。
 一方、点推定値では本剤群が点滴静注用製剤群を下回っていたことから、その要因について検討したところ、審査報告書22ページ以降に示しておりますとおり、高体重及び高BMIの部分集団における両群の差が影響を及ぼしていることが示唆され、点滴静注用製剤では体重当たりの用量が投与されるのに対して、皮下注用製剤では固定用量が投与されるために、高体重及び高BMIの患者では、点滴静注用製剤に比べ有効性が低下する可能性があると考えられました。
 このように高体重及び高BMIの一部の患者では、点滴静注用製剤に比べ有効性が低くなる傾向が認められたものの、当該患者は7.5%程度に限られており、大部分の患者においては点滴静注用製剤と同程度の有効性が期待できること、また、皮下注用製剤である本剤では利便性の向上が期待できることも勘案し、本剤の有用性は認め得ると判断しました。
 次に、本剤の関節の構造的損傷の防止効果について、審査報告書の25ページ、「(1)有効性について」の「2)関節の構造的損傷の防止について」の項を御覧ください。本剤の関節の構造的損傷の防止効果については、日本人RA患者を対象とした臨床試験は実施されておりませんが、申請者は関節痛等に対する改善効果について、点滴静注用製剤に対する本剤の非劣性が検証された場合には、点滴静注用製剤で示されている関節の構造的損傷の防止効果に係る成績を皮下注用製剤に外挿可能と考え、本剤の申請効能・効果を「既存治療で効果不十分な関節リウマチ(関節の構造的損傷の防止を含む)」と設定しております。
 しかしながら、前述のとおり、国内第III相試験において点推定値では本剤群が点滴静注用群を下回る傾向が認められたことから、海外臨床試験成績等も参考とした上で、本剤の関節の構造的損傷の防止効果を担保可能であるか検討を行いました。26ページの8行目に示しておりますように、海外臨床試験においてはDMARD又は抗TNF製剤で効果不十分な外国人RA患者において、本剤162mgの2週間隔投与により、関節の構造的損傷の防止効果が示されております。
 また、日本人RA患者に比べ体格の大きい外国人RA患者においては本剤162mgの2週間隔投与の用法・用量では、血清中トラフ濃度が1μg/mL以下に維持される被験者の割合が、点滴静注用製剤を海外での承認用量である8mg/kg4週間隔投与をした場合よりも少なく、ACR改善率においても点滴静注用製剤に比べ低い傾向が認められたにもかかわらず、本剤162mgの2週間隔投与により関節の構造的損傷の防止効果が検証されていること、さらに、日本人RA患者及び外国人RA患者では、点滴静注用製剤について同用量である8mg/kg4週間隔投与により、いずれも関節の構造的損傷の防止効果が検証されていることを踏まえれば、日本人RA患者においても本剤162mg2週間隔投与により点滴静注用製剤8mg/kg4週間隔投与と同様に、関節の構造的損傷の防止効果が期待できると考え、本剤について「(関節の構造的損傷の防止を含む)」の効能・効果を付与することは許容可能であると判断しました。
 次に、31ページ、「(4)用法・用量について」の「2)投与間隔の短縮・延長について」の項を御覧ください。国内第III相試験及び海外第III相試験において、非盲検非対照下で、投与間隔の短縮又は延長を検討した結果を基に、申請用法・用量では「患者の状態に応じて投与間隔を短縮又は延長できる。」と設定されております。しかしながら、機構は本剤のような抗体製剤においては、中和作用が飽和に達する用量以上に増量しても、通常、効果の増大は期待できないと考えられ、減量時には抗体産生の懸念もあるため、投与間隔の短縮・延長については慎重な検討が必要と考えること、RAの有効性評価項目であるACR改善率等は、主観的な評価項目であり、非盲検非対照試験において投与間隔の短縮・延長時の有効性の適切な評価は困難であることから、本申請において提出された試験成績に基づき、投与間隔の短縮・延長を承認することは困難と判断しました。
 27ページ以降の「(2)安全性について」の項を御覧ください。本剤の安全性について、国内第III相試験における本剤と点滴静注用製剤の比較を行ったところ、28ページの表24及び表25のとおり、全有害事象の発現率、点滴静注用製剤において留意すべき有害事象とされている重篤な感染症、腸管穿孔、脂質検査値異常等について、本剤群と点滴静注用製剤群とで大きな違いは認められませんでした。また、32ページの「(5)自己投与について」の項に記載したとおり、本剤の自己投与時の安全性についても特段の問題は示唆されませんでした。しかしながら、臨床試験における本剤の使用経験は限られていることから、製造販売後調査において自己投与時も含め本剤の安全性について、さらに確認する必要があると考えております。
 以上の審査を踏まえ、本剤を承認して差し支えないとの結論に達し、本部会で御審議いただくことは適当と判断いたしました。本申請に係る再審査期間は6年、製剤は劇薬に該当し、生物由来製品に該当すると判断しております。薬事分科会では報告を予定しております。
 また、本品目については、事前に佐藤委員より2点御意見をいただいております。1点目は、「効能・効果について、国内臨床試験では関節の構造的損傷の防止効果は検討されておりませんが、効能・効果には『(関節の構造的損傷の防止を含む)』が加わっています。これは点滴静注用製剤の国内臨床試験成績で関節の構造的損傷の防止効果が示されていること、海外でのDMARDに本薬162mg/2週間隔投与を上乗せした海外のNA25200試験において、関節の構造的損傷の防止効果が認められたことに基づいています。しかし、2点目に示しますように、点滴静注用製剤に比べACR20%改善率は本剤で有意に劣っていること、また、審査報告書の13ページ中程にあるように、『機構は本薬の点滴静脈内投与時と皮下投与時では血清中トラフ濃度が同程度であっても、CmaxとAUC等は大きく異なる』と述べられていることから、点滴静注用製剤の結果をそのまま本剤に外挿することには無理がありますし、海外での本剤162mg2週間隔投与との臨床薬理学的観点からのデータも示されていないため、海外の試験結果をブリッジする根拠もありません。このため効能・効果に『(関節の構造的損傷の防止を含む)』を入れるのは適切ではないと考えます。」との御意見です。
 また、2点目ですが、「国内第III相比較試験において、点滴静注用製剤と本剤のACR20%改善率の差の非劣性マージンが18%と設定されました。これは点滴静注用製剤の臨床試験成績からMTXとの改善率の差が57.3%、プラセボ群との改善率の差が65.5%であったことから、それらのおよそ3分の1とされています。このマージンは、審査報告書25ページの中ほどに、『なお、非劣性マージンを-18%と設定したことについては、設定根拠とされた臨床試験成績を踏まえれば、有効性の観点からは理解できるが、臨床的意義の観点からは過大であった可能性があると考える』と述べられているように、プラセボよりは皮下注のACR20%が上回ることが担保できたとしても、静注に対して18%も劣っているというのでは本当に非劣性であることを主張できるマージンにはなっていないと考えます。
 試験結果は、皮下注群と静注群のACR20%改善率の差が-9.4%、95%信頼区間は-17.6%から-1.2%であり、審査報告の17ページ下から2~4行目にある『95%信頼区間の下限値が非劣性マージンとして事前に設定した-18%を上回ったことから、点滴静注MRA-IVに対するMRA-SCの非劣性が検証された』と結論しています。しかし、-18%という非劣性マージンの設定自体に、臨床的意義の観点からは疑問があること、95%信頼下限が非劣性マージンを上回ったといってもぎりぎりであること、さらに、20%改善率が点滴静注に比べ皮下注で統計的に有意に劣っているという結果から、とても『非劣性が検証された』とは判断できませんでしたので、本剤を承認する根拠はないのではないでしょうか。」との御意見です。
 いただいた御質問についてですが、まず2点目について、本剤の非劣性マージンについては、治験相談にて議論をしております。治験相談時にも-18%の設定は臨床的観点から過大である可能性について申請者と議論をしておりますが、当時、生物製剤の非劣性試験の成績はほとんどなく、主要評価項目であるACR20%改善率について、臨床的に意義がない数値がどの程度であるかのコンセンサスは得られておらず、臨床的な観点から適切な非劣性マージンを設定するには至りませんでした。申請者は、非劣性マージンは、参考とした試験成績における静注用製剤群とMTX群との群間差の3分の1以下となる「-18%」と設定し、90%の検出力を担保可能な目標症例数を設定しており、期待される本剤及び対照群のACR20%改善率を約80%と想定しておりました。
 また、設定された目標症例数及び非劣性マージンにおける差の点推定値の許容範囲は7~8%であり、他の生物製剤のACR20%改善が44%~65.3%であったことを踏まえても、生物製剤として必要な有効性は担保されているとの考えから、臨床的に許容できる差であると説明しておりました。
 機構は、期待されるACR20%改善率は生物製剤の有効性としては許容できると考え、提示された非劣性マージンで合意しました。一方、相談時以降、現在までに実施された他の生物製剤の試験の状況を踏まえますと、本剤で設定された非劣性マージンは臨床的意義の観点からは過大であった可能性があると現時点では考えております。
 本試験の結果については、非劣性マージンの設定根拠を踏まえれば、得られた成績から、本剤のプラセボに対する有効性については担保可能であり、異なる試験間の比較ではあるものの、他の生物製剤で示されている試験成績を踏まえても、本剤の有効性は特段劣るものではないと考えております。また、追加解析において、本剤の有効性が点滴静注用製剤に比べて劣る可能性がある背景因子は、体重又はBMIが高値であることが示唆されており、皮下注用製剤では体重にかかわらず一律の量を投与することから、高体重又は高BMIの患者で血清中本薬トラフ濃度が1μg/mL未満となった患者が多く認められたと推察されるものの、当該背景因子を有し、かつ有効性が認められない患者の割合は10%未満と推測され、臨床上大きな問題となるものではないと考えました。
 以上の結果、また専門協議においても点滴静注用製剤では投与のために通院及び拘束時間が必要であるのに対し、本剤では投与時間の短縮、自己投与が可能になる等、利便性の向上が図られることの臨床的意義は大きいとの御意見もいただいていることも踏まえ、高体重又は高BMIの患者では、点滴静注用製剤に比べ皮下注用製剤では有効性が低い可能性があることから、当該患者において十分な有効性が認められない場合は、静注用製剤に変更することを考慮する旨を医療機関向け資材等により適切に情報提供した上で、本剤を承認することは許容可能であると判断いたしました。
 次に、1点目の関節の構造的損傷の防止効果につきましては、御指摘を踏まえ海外のNA25220試験の成績を、日本人RA患者に外挿する妥当性について検討いたしました。抗体製剤については、ターゲットとなる分子に結合して作用を発現するという作用メカニズムを考慮すると、ある程度以上の血中濃度があれば効果を発現すると考えられており、本薬の点滴静注用製剤においては審査報告書の12ページに示しておりますように、血清中の本薬トラフ濃度が1μg/mL以上であれば、本薬の効果の発現が期待できると考えられております。このことはIL-6のシグナル伝達阻害のバイオマーカーと考えられるCRPが、血清中本薬トラフ濃度が1μg/mL以上であればほぼ完全に抑制されていることからも支持されております。
 そこで、本剤162mg、2週間隔投与の用法・用量で実施された国内外臨床試験(MRA229JP試験及びNA25220試験)について、CRPと血中トラフ濃度、有効性の関係を比較検討しました。その結果、血清中本薬トラフ濃度が1μg/mL以上及び未満の患者で、CRPが0.3mg/dL以下となった患者の割合は、国内群では99%及び32%、海外では97%及び34%であり、血清中トラフ濃度が1μg/mL以上の患者でCRPが0.3mg/dL以下になる割合は国内外で同程度であり、またCRPが0.3mg/dL以下及び0.3mg/dLを超える患者でのそれぞれのACR20%改善率は、国内84.7%及び26.7%、海外では69.1%及び38.1%であり、CRPが0.3mg/dL以下の患者でACR20%改善率が高くなっていることから、本剤のCRPと血清中の本薬トラフ濃度、有効性の関係については、国内外で類似していると考えられました。
 さらに、海外のNA25220試験の結果より、CRPの正常化とmTSSの変化量の関連を検討したところ、CRPが0.3mg/dL以下の患者集団ではCRPが0.3mg/dLに抑制できなかった患者群に比べて、mTSSの変化量は小さく、関節破壊の進展が抑制された患者の割合についてもCRPが継続的に抑制できた患者群で高いことが示されました。
 以上の結果、さらに162mg/2週群の初回投与24週後の血中トラフ濃度が1μg/mL以下となった患者の割合及びCRPの正常化率は国内試験でより高いことを踏まえると、海外臨床試験と同様に日本人RA患者においても皮下注製剤の162mg2週間隔投与により、関節の構造的損傷の防止効果は期待できるとの評価は可能であると判断しました。回答は以上になります。御審議のほどよろしくお願いいたします。
○吉田部会長 佐藤先生、いかがですか。
○佐藤委員 いくつか確認させていただきたいことがあるのですが、今説明いただいた関節の構造的損傷の防止効果なのですが、結局、御意見としては海外のNA25220試験の結果をブリッジするための情報が、もう既にこの臨床データパッケージには含まれているということでよろしいですか。
○機構 結果を見比べた結果、日本人と外国人で類似する結果になっていることは確認できましたので、外挿することは可能であると判断しました。
○佐藤委員 十分外挿可能だということで、関節の構造的損傷の防止効果についても記載するということですか。
○機構 はい。
○佐藤委員 そうすると、国内での静注用製剤の試験で関節の構造的損傷の防止効果が認められたことと、静注用製剤と皮下注用製剤が臨床的に同等だからという理由は撤回されるわけですね。
○機構 点滴静注用製剤において、本薬そのものの作用として、関節の構造的損傷の防止効果が認められていますので、点滴静注用製剤の結果も皮下注用製剤の関節の構造的損傷の防止効果をサポートするものにはなると考えております。
○佐藤委員 やはり国内試験の結果はどう考えても、非劣性マージンは確かにぎりぎり上回っていますが、10%近くACR20%が悪いわけですから、静注用製剤には劣っていると解釈するのが自然だと思うのです。先ほどから臨床的意義があるとおっしゃっていますが、それは皮下注用製剤の持つ力、ACR20%が80%ぐらいあることに対してのことであって、静注用製剤のACR20%改善率に比べて本当に劣っていないのかということを言ったら、やはりこれは劣っているという結果だと思うのです。それはあくまでも静注用製剤より少し悪いということを前提に承認するのであれば、私は納得できますが、臨床的に同等の効果があるということで承認するというのは、この試験成績からは少々難しいのではないかと思っていますが、いかがでしょうか。
○機構 御指摘ありがとうございます。機構でも、御指摘のとおりと考えており、点滴静注用製剤から本剤が劣る可能性があるという部分については、臨床現場にきちんと情報提供した上で、それも加味した上で使用していただくことを考えております。
○佐藤委員 お願いします。それから、その理由として体重とかBMIが高いことを挙げられていましたが、先ほどの部分集団解析の結果を見ると、体重が一番低いところでもやはり皮下注用製剤の方が少しACR20%が悪くなっていますから、必ずしも理由は特定できていないと思うのです。それも特に高体重とか高BMIだけを注意するということではなくて、全般的にやはり悪い可能性があるけれども、それを上回る利便性があるのでという説明をしていただきたいと思います。それから、10%、ACR20%が劣ることと、皮下注にしたことの利便性がどのぐらい上回るのかというのは私には判断できないのですが、例えば処方間隔は何週になるのですか。
○機構 静注用製剤が4週間隔に対して、本剤は2週間隔になります。
○佐藤委員 いや、投与間隔ではなく処方の間隔。1年目は仕方がないとしても、でも1年目も特例で認められることはあるのですね。
○機構 最大で3か月程度になると思います。
○佐藤委員 例えば処方が1か月だったら余り意味がないかもしれないので。
○機構 症状が安定している患者では3か月程度が外来の目安と聞いておりますので、処方も3か月程度になると想定しております。
○佐藤委員 その辺のことも、十分な間隔を持って、自己注射ができる可能性も含めてという説明がないと、やはりどれだけ利便性が高いのかということが理解できなかったので、そういうことも加味していただきたいと思います。今のお話でしたら非常に納得できますので、結構だと思っています。ただ、審査報告書ではところどころ皮下注用製剤と静注用製剤の効果が同等だと書かれてしまっているところがあるので、それはそう書くと、多分申請者はそのように言って販売促進しますから、決してそういうことがないようにしていただきたいと思います。
○吉田部会長 乗せて、乗せてと、おまけが二つ付いているような感じがします。今説明がありましたが、有効性が認められない場合は静注に変更しなさいということを注意喚起するということなので、基本的に先生がおっしゃるように、皮下注は劣る可能性があるということを認識した上での承認ということになると思います。その辺の注意喚起を上手にしてもらうということで、対応の方をよろしくお願いしたいと思います。それから利便性ですが、リウマチの患者さんはどうしても運動器障害を合併していることが多く、病院へ行くこと自体がつらいということがありますので、自分で皮下注でできれば、それにこしたことがないというのは、特に雪国などでそう言えます。そういった点も御理解いただければと思います。
 ただ、私が質問したいのは、WA22762試験で毎週と静注が比べられているのですが、これは、例えば米国で承認を受けるときに毎週で、投与期間が日本と違ってくるということもあり得るのですか。
○機構 現在の海外の申請ではWA22762試験も使われていると聞いており、1週間隔投与も用法・用量として申請していると聞いておりますので、この結果と先ほどの2週間隔投与の臨床試験成績とを勘案して用法・用量が決められると思いますので、日本と用法・用量が異なることはあり得ると考えております。
○吉田部会長 データだけ見れば、2週間と1週間で、それほど大きな違いはなさそうですが、先ほど投与間隔とか投与量の問題に関して動かさないのだという説明がありましたね。その場合に、毎週のデータが出てきたら、その扱いをどうするのか、その辺を伺いたいのですが。
○機構 国内でも盲検下の比較試験等が行われるようであれば、その結果を加味して日本でも1週間隔投与を検討することは可能と考えます。
○吉田部会長 例えば効果が不十分な患者については、毎週投与が考えられるようなことができるようになるのかということを、聞きたいのです。
○機構 現時点では、日本において効果不十分な場合に週1回に投与間隔を短縮した際の有効性は十分に検討されていないと判断しておりますので、盲検下の比較試験等できちんと確認した上で判断する必要があると考えております。
○吉田部会長 もし、その可能性を考えるのだとしたら、効かなかった人を対象に、新たに臨床試験をやってくれということになるとは思うのですが、その辺も申請者に対して、皮下注で効果が不十分な患者に対して、どういうアプローチを今後していったらいいか、もう少し親切に考えてくれないかという注文をつけたいのです。市販後を含めて。
○機構 申請者に伝えたいと思います。
○庵原委員 2点確認したいのですが、162mg、0.9mLという微妙な量、要するに180mg、1mLにせずに、162mg、0.9mLにしたというのは、これは血中濃度とかPK/PDの関係でこうなったのかということの確認が1点です。
 それとこの針を見ると、ちょうどインシュリン注射器と同じような針だと思うのです。皮下注はインシュリンを注射するのと同じ方式でということで考えてよろしいですか。皮膚に対して垂直に刺すという。角度を斜めにつけると浅くなって、副作用が強く出たり、逆に言うと皮内に近付くとDCとか免疫関係の細胞の反応するリスクが高くなって、自己抗体を高めるリスクもあると文書に書いているので、そういうことが起こるリスクがますます上がると思うのですが、それに関しての添付文書と今後の注射の仕方の指導方法について、何か御意見がありましたら教えてください。
○機構 シリンジの自己注射の指導のための資材において、ある程度角度はこういう角度で注射してくださいという形で注意喚起されています。
○庵原委員 これは角度をつけているのですか。これはインシュリンとか成長ホルモンの注射の仕方と少々違うのですけれども。普通インシュリンとか成長ホルモンは、皮膚に対して垂直に刺すことになっていますが、この針はその針よりも長いのですか。見た感じ、インシュリンの注射器と同じ針に見えるのですけれども。
○機構 御指摘を踏まえて再度検討させていただいて、資材で適切に注意喚起するようにさせていただきたいと思います。
○庵原委員 これは27ゲージですね。□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□要するにインシュリンに使われている針と類似していると思うので。皮下注の仕方は、ワクチンの皮下注とインシュリンの皮下注の仕方は違いますので、針の長さに応じた皮下注の仕方がありますので、それに応じた指導をしてもらうようにお願いしたいと思います。
○機構 分かりました。ありがとうございます。
○吉田部会長 貴重な御指摘だと思います。ありがとうございました。ほかにありますか。
○庵原委員 最初の質問の件ですが、この180mg/1mLにせずに162mg/0.9mLになっているのは。
○機構 本剤の濃度については、濃縮できる限界のところが162mg/0.9mLという濃度であるというのは確認しているのですが、1mLにしなかった理由は、PK/PDのトラフ濃度を合わせるというところも一つはあると思います。
○庵原委員 先ほどの佐藤先生の話だと、量を上げた方が効果は上がるわけで、そうすると0.9mLという微妙な量よりも1.0mLのきれいな量の方が効果が上がるのではないですか。それをわざわざ162mg/0.9mLにしたのは、理解し難いのですけれども。
○機構 資料を確認させていただいてもよろしいですか。
○吉田部会長 では、調べておいてください。でも、トラフ濃度を合わせたらそうなったという話でしたね。違うのですか。
○機構 162mgを投与することで、期待するトラフ濃度になるということが確認されているということです。
○吉田部会長 ほかにありますか。
○川崎委員 本剤の原薬の製造方法が変更されていることに関連して質問したいことが2点あります。1点目は静注用の製剤も今後この変更された製法で製造されるのでしょうかということです。もう1点は、比較試験に用いられた静注用の製剤と本剤の原薬は異なるものと考えられるのですが、臨床試験における比較試験において、製造方法の変更、つまり原薬の変更が影響した可能性はないかということです。審査報告書には、品質においてコンパラビリティが確認されたと書かれていますが、臨床試験追加による評価はされていないと思いましたので、その辺を確認させていただきたいと思います。
○機構 1点目については、本剤の原薬については皮下注用製剤のために開発されたものであり、従来の点滴用製剤には使われない予定になっています。臨床試験の点滴静注用製剤との比較において、一貫してその結果について試験間で異なるという形は示されておりませんので、製剤の影響はなかったのではないかと推察しております。
○川崎委員 製剤ではなく、原薬の製造方法が変更されており、特に濃縮されていますので、凝集体の生成などが影響した可能性はなかったのかと思いました。そのような影響はなかったのだということを確認させていただきたいのですが。
○機構 再度その点も含めて確認させていただきますが、現時点では影響はなかったものと考えております。
○新井部会長代理 この製剤に限った話ではなくて、一般的な抗体の医薬のことについて聞きたいのですが、純度の問題をどのように評価しているかということで、基本的にはほとんど同じような生成法で抗体を取ってきていると思うのですが、純度の問題として非還元のSDS-PAGEだと、ゲル濾過とイオン交換で純度を評価されていると思うのです。バンド2本出ればいいだけなので、なぜ還元型でやらないのかということと、この場合の例を取ってお聞きしたいのですが、ゲル濾過をしたときに、単量体と二量体が検出できたと書いてあるのですが、分子量がちょうど2倍ぐらいだから二量体と言っているのかもしれないけれども、別にそれが二量体だという根拠はどこにもないような気がするのですが。要するにこういう抗体の純度の評価法は、我々から見ると結構手落ちがあるというところを感じるのです。特に今回の問題というわけではなくて、一般論としてその辺を教えてほしいのですけれども。
○機構 申し訳ありません。もう一度、お願いできますでしょうか。
○新井部会長代理 単純な問題になるかと思ったのは、いろいろ電気泳動で確かめた上で、ある程度均一な蛋白の集団だということはほぼ分かっているからいいとは思うのですが、例えばこういうデータを見ると、ゲル濾過にかけたら単量体と二量体のところでピークが出たから、これは単量体、これは二量体と勝手に判断しているというか、恐らく分子量から判断していると思うのですが、二量体に出てきたものが本当にこの抗体であるという何の検定もしていないのですね。それ以外にさらにその他のピークが出たら、それはその他と書いてあって、では二量体は二量体だという根拠がどこにあるのかというのが。常識的に今はそうなのでしょうけれども、偶然に何か変なものが出てきたらどうするのかと、もう少し簡単に検定はできるのではないかと。それはもう1回電気泳動すればいいのではないかと思うのですが、ピークの高さだけで「はい、二量体、一量体、はい、何対何」というのは少し変かという感じがします。
○機構 お答えしますと、本品目については既に静注用製剤が開発されており、静注用製剤開発時の品質の特性解析でどのようなピークが出てきて、それが何かということが確認されており、静注用製剤の原薬から確立した標準物質を対照として試験されていることから、本剤で見られているものが何なのかは確認できていると考えて解析されております。
○新井部会長代理 分かりました。今回のことに関して特に言っているのではなくて、一般的にそのように言ってやってしまっているのかと気になっただけで、今回のことに関して既にそのような前の情報があれば、別に何の問題もないと思います。
○吉田部会長 ありがとうございました。先ほどの件はどうですか。
○機構 機構よりお答え申し上げます。本剤の開発の途中で原薬の製法が変更されているという点の御指摘があったかと思います。申請資料の2.3.Pの13ページの御指摘ということでしょうか。こちらに実際にどの試験にどの原薬が使用されたかということが記載してあります。本剤においては、原薬の製法が変更された製剤をそれぞれ用いて比較するという試験は行われておりません。第III相試験からは皮下注用に製造方法が変更された原薬を使用して、製剤を製造しております。ですので、原薬の製法変更そのものが何らかの試験結果に影響を与えているという形での検討は行われておりませんが、製法変更後の原薬を使用して本剤の安全性等のデータが収集されているという状況です。
○吉田部会長 よろしいですか。
○川崎委員 製造方法を変更した場合は、品質で同等性/同質性を確認する、それが確認できない場合は、臨床試験を実施する場合もあるということであったと思います。今回のケースは原薬の製法が変更されており、品質部分で同等性/同質性が確認されたと書かれていますが、臨床試験により比較はなされておりません。そのような異なる原薬をもって比較試験がなされていますので、有効性に対する差違が原薬の製法の差違からきているものではないということを確認するため、質問させていただきました。
○機構 静注と皮下注の臨床試験に使用されたものが同じ有効成分とはいえ、製造方法が異なるものを使用して、投与経路違いで比較されていることに、原薬の製法の違いが影響していないかという御質問ということでよろしいですか。
○川崎委員 はい、そうです。
○機構 分かりました。そういうことになると、投与経路が異なりますので、当然、投与経路に由来した安全性の違いも出てきている可能性はあると思います。ですので、先生のおっしゃるような意味ですと、厳密に原薬の製法が安全性に影響していないか、あるいは有効性に影響していないかと言われると、その点に関しては異なる投与経路で投与されておりますので、試験成績から比較することはできないだろうと思います。
○吉田部会長 違うのです。質問の意味は皮下注の効果が十分でなかったのは、原薬の違いも考えられるのではないかということだと思います。この試験をやったときに、静注のラインと皮下注のラインと同じ原薬を使っているのならいいのですが、それぞれ原薬が違ってしまったら、臨床結果が少し変わってきたのは、原薬のせいだということも考えられるのではないかと。そういうことがあるのですか、ないのですか、ということです。
○機構 同じ投与経路での直接比較は実施していませんので可能性としては否定できないと思います。
○吉田部会長 原薬が違うのですね。
○機構 製造方法が違います。
○吉田部会長 製造方法が違って、あと濃縮もしますしね。皮下注にしなければいけないから。原薬が違っている可能性があるということなのですか。
○機構 有効成分そのものの特性において違いはないというところは確認しております。
○吉田部会長 有効成分のスペクトルが合っているのだけれども、濃縮したりして皮下注用に細工しているので、化学的には多少違うというようなことがあるのですか。
○機構 ただ、濃縮工程を経ておりますが、製造されている有効成分であるとか、抗体製剤としては多少の分布を持って存在しておりますが、そういった含まれる成分の分布の状態等には影響がないということは、品質試験において確認しております。
○吉田部会長 中々「はい」と言っていただけないようですが。先生よろしいですか。
○川崎委員 はい。
○吉田部会長 ほかにありますか。
○機構 先ほどの0.9mLに関してですが、申請者の説明では開発の段階において検討したこととして、皮下注の投与可能な薬液量として約1mLということを踏まえた上で、容量としては0.9mLが設定されたということです。
○吉田部会長 いやいや、162mgの根拠から0.9mLになったのではないのですか。違うのですか。
○機構 PK-PDの観点から162mgが設定されているのですが、製剤の濃度として180mg/mLが限界だったというところも一方ではあったということだと思います。
○吉田部会長 180mgが限界で、等量にもっていくために162mgにしたら0.9mLになったということなのですか。
○機構 はい。そういうことかと思います。
○吉田部会長 いいですか。ほかにありますか。先ほども申し上げましたが、皮下注と静注では違うのだというところ、とくに臨床効果の上で劣る可能性があるのだということはきちんと伝えて下さい。投与した患者によって出ないことがあるということ、何%かそういう患者さんもあり得るということをきちんと伝えるように、再度お願いしたいと思います。
 ほかに何かございますか。
○中島委員 自己注射をされるオートインジェクターの説明書が非常に良くできていると思うのですが、添付文書案の基本的な注意事項のところには、「使用済みの注射器を再使用しないように廃棄する容器を提供する」と書いてあります。リウマチの患者さんで日によっては非常に注射をしにくくなるときがあるかと思われますが、そのときだけ御家族が介助するときに、使用済みのオートインジェクターを必ず添付の廃棄容器に入れるということを注意していただいた方が間違いないと思います。この自己注射の御説明は非常に良くできていると思いますが、最後に「注射針を抜く」で終わっているのですが、その後に「使用済みの注射器は廃棄容器に入れて薬局に返す」とか、そういうのを少し書いていただくといいかと思ってお願いしたいところです。
○吉田部会長 ゴミに出されたら大変なことになりますからね。
○機構 分かりました。適切に対応したいと思います。
○吉田部会長 よろしくお願いします。ほかにありますか。ないようですので、議決に入りたいと思います。なお、庵原委員、清田委員、田村委員におかれましては、利益相反に関する申出に基づき、議決への参加を御遠慮いただくことといたします。本議題について承認を可としてよろしいでしょうか。
 御異議がないようですので、承認を可とし、薬事分科会に報告とさせていただきます。
── 倉根参考人入室 ──
○吉田部会長 倉根先生が見えましたので、議題10に移ります。議題10「生物学的製剤基準の一部改正について」事務局からの概要説明をお願いします。
○事務局 審議事項議題10、資料10「生物学的製剤基準の一部改正について」事務局より御説明いたします。資料10-1~10-4です。資料10-1の「生物学的製剤基準の一部を改正する件(案)」の概要を御覧いただければと思います。生物学的製剤基準は、薬事法第42条第1項に基づく基準で、ワクチン、血液製剤等の生物学的製剤について、その製法、性状、品質、貯法等に関する基準を定めています。今般、厚生労働科学研究費、医薬品・医療機器等レギュラトリーサイエンスの総合研究事業において、平成21年度から3年間、国立感染症研究所加藤篤先生を主任研究者とする「医薬品を巡る環境の変化等に対応した生物学的製剤基準の改正のための研究」という研究班におきまして、今般の生物学的製剤基準の全般的な見直しについて御議論をいただきまして、資料10-4としてお配りをしている報告書が取りまとめられたところです。今回、この研究班の成果を踏まえ基準の改正をさせていただければと思っています。
 主な改正の内容は、資料10-2の概要の2.の改正の概要を御覧いただければと思います。「インフルエンザHAワクチン」に関しては小分製品の関係で、小分製品の試験について分画試験の係る改正を行っております。その下の「乾燥弱毒生おたふく風邪ワクチン」等については、現在の製剤の承認内容に踏まえた形での改正をさせていただければと思っております。その下の「ジフテリアトキソイド」、「沈降ジフテリアトキソイド」等、ジフテリア製剤の中の基準の整合等も踏まえて、小分け製品の試験におけるモルモットを用いた無毒化試験について改正をさせていただければと考えております。
 次のページの上から6行目の「乾燥細胞培養日本脳炎ワクチン」に関して、力価試験の試験方法の変更をさせていただきたいと考えております。その下の「組換え沈降B型肝炎ワクチン(酵母由来)」については、異常毒性否定試験というものが設定をされておりますが、今般、国立感染症研究所での検討結果を踏まえて、その実施回数に関する規定を追加する予定です。
 そのほか改正事項等がありますが、血液製剤の関係ですが、「人全血液」また「人赤血球濃厚液」等に関して、一般名称の変更や表示事項の整備、分析技術の進歩等を踏まえた自動測定装置による測定といったような記載の整備、追記の必要な改正をさせていただきたいと考えております。説明は以上です。御審議のほどよろしくお願いいたします。
○吉田部会長 倉根先生、何かコメントをいただけましたら。
○倉根参考人 国立感染症研究所の倉根でございます。今回、御審議いただく生物製剤の基準の改正については、当所の加藤篤先生を主任研究者とする研究班において、今御紹介いただきましたが、さらに我々の研究所の各部署の担当者がそれぞれの分野における課題を検討して、その結果を取りまとめ、本省との協議あるいはメーカーとの協議でまとめられたものです。更に国際化というか、国際的な品質管理法へのできる限りの協調ということも考えておりました。
 今回のところで幾つか細かいところもありますが、例えばおたふく風邪ワクチン、風しん、麻しん。実際に使っている麻しん、風しんの混合ワクチンについても、国際化的にも沿うようにシードロットシステムをきちんと明記する。これによって、品質管理も非常に効率的なものになるということが期待されるということなので、そこを入れていただくことになりました。
 異常毒性否定試験についても、回数を限定するという改正案を入れております。沈降精製百日せき、ジフテリア破傷風のワクチンについては、これまでは国内での単位ということをやっておりましたが、それを国際単位に合わせるということで入れておりますので、数値が変わっておりますが実際に数値が変わったわけではなくて、報告された単位に合わせるとそうなるということです。今後、百日せき、ジフテリア破傷風混合ワクチンのみでなく、血液製剤の多くのもので国際標準品を用いるものについては、国際単位を導入していく。それから用手法のみではなくて、科学技術の進歩も踏まえて自動測定装置の使用についても、そこに提案しております。マイコプラズマ否定試験についても、欧米の薬局方に準拠する。インフルエンザHAワクチンについては、これまで分画試験というのを小分製品でやっていたのですが、それを原液へ移動することによって、より効率よくA型2株、B型のHAをきちんと管理できることにしております。
 細胞培養の日本脳炎ワクチンについても、日本脳炎ワクチンがマウス脳由来から組織培養に変わったことに伴って、力価を測定するための中和法に用いるチャレンジウイルスと言いますが、そのウイルスをマウス脳ではなく、組織培養で作ることも入れております。こういう形で、国際協調及びこれまで得られてきた科学的な知見を組み入れる。それから技術的な進歩も入れて、細かいところも含めてここで我々としては厚生労働省に提案をし、我々の考えをできる限り入れていただいたということです。以上です。
○吉田部会長 ありがとうございました。委員の先生方から御質問、御意見をお願いします。濱口先生いかがですか。コメント頂けますか。
○濱口委員 質問というよりも、この改正の方に加わった方なので、コメントです。これまで生物基の改正というのは少し期間を空けて、フットワークがよくできなかったというのが現状でしたが、厚生労働省の担当課の先生方、我々自身も現状に合わせて、できるだけシンプルにできるものはシンプルにやっていこう、できるだけ精度を上げられるものは精度を上げていこうという形で検討した結果と考えております。以上です。
○吉田部会長 ありがとうございました。ほかに御意見はありますか。
○庵原委員 今回とは関係ないのですが、今、世界ではインフルエンザワクチンはBを2種類入れた4価ワクチンを作ろうという動きがあって、FDAは承認していますが、そうするためには日本の生物製剤基準を変更しないといけない、という意見が一部ありますが、今後インフルエンザワクチンの生物製剤基準はどうする御予定になっているかを教えていただければと思います。
○倉根参考人 私は予定を述べるという立場にはないですが、先生御存じのように、今、総たん白量の縛りがありまして、四つ入れるというのは現在の縛りでいえば難しかろうということだろうと思います。今後いろいろディスカッションは必要かと思いますが。
○吉田部会長 ほかにございますか。
○川崎委員 資料10-4を拝読して、大変素晴らしい御研究だと思いました。特にELISAによる抗体価の試験や、重合体評価のためのHPLCの見直しなど、これからも是非続けていただきたいと思いました。日局原案作成に関わっている立場から疑問に思ったのは、これは厚生労働省にお聞きすることなのかもしれませんが、標準品と単位のことです。日局では国際標準品ではなく国内標準品を用い、国内単位を使用していますが、今回の改正では国際標準品も取り入れ、国際単位で表記することになっています。この日局と今回の改正の違いが少し気になりまして、今後の方針をお聞きしたいと思います。
○事務局 今御指摘の所は、例えば「乾燥濃厚ヒトアンチトロンビンIII」の改正の部分などが該当するかと思いますが、今回の改正に関しては国立感染症研究所において、国際標準品と1対1の関係の国内標準品も併せて用意をしている関係で、改正の文言自体は両方を併記するような形で書かせていただいております。御指摘の局方との整合性は、今後は濱口先生からも御説明がありましたとおり、なるべく頻繁に生物基の改正を局方に倣ってやっていきたいと思っておりますので、その中でまた検討させていただければと思っております。
○吉田部会長 よろしいですか。濃厚赤血球などは名前が変わりますね。この辺についても、使う人たちに日赤を通じてでも通知してあげる。そういった広報についても、対応方、よろしくお願いします。
 ほかにありますか。御意見がないようですので、議決に入ります。お諮りします。本議題について生物学的製剤基準の改正を可としてよろしいでしょうか。
 御異議がないようですので御了解いただいたものとし、薬事分科会に報告とさせていただきます。参考人の倉根先生、ありがとうございました。
── 倉根参考人退室 ──
○吉田部会長 議題4に入ります。議題4について、医薬品医療機器総合機構からの概要説明をお願いします。
○機構 審議事項議題4、資料4「医薬品アラベル内用剤1.5g及びアラグリオ内用剤1.5gの生物由来製品及び特定生物由来製品の指定の要否、製造販売承認の可否及び再審査期間の指定並びに毒薬又は劇薬の指定の要否について」医薬品医療機器総合機構より説明させていただきます。
 審査報告書3ページを御覧ください。5-アミノレブリン酸(以下「5-ALA」)は、各種の生物に広く存在する生体内物質であり、細胞内において、青色光線で励起されると赤色の蛍光を発する性質を持つプロトポルフィリンIX(以下「PPIX」)に変換され、その後ヘム生成に利用されます。悪性腫瘍細胞では、正常細胞に比べてPPIX生成に関与する酵素活性が高く、PPIXからヘムへの生成を触媒する酵素活性が低いため、PPIXが腫瘍細胞に多く蓄積する性質を腫瘍細胞の可視化に利用することが考えられ、2007年9月に欧州で、2011年1月に韓国において、「成人の悪性神経膠腫(WHOグレードIII/IV)に対する手術における悪性組織の視覚化」の効能・効果で承認されています。本邦においては、2010年1月からノーベルファーマ株式会社により開発が行われ、また2010年4月27日に開催された「第3回医療上の必要性の高い未承認薬・適応外薬検討会議」において医療上の必要性が高いと評価され、同年5月に厚生労働省より開発要請がなされました。2010年9月には「悪性神経膠腫」を対象疾病として、希少疾病用医薬品の指定を受けております。今般、ノーベルファーマ株式会社及びSBIファーマ株式会社により国内外の臨床試験成績等を基に、本剤の医薬品製造販売承認申請が行われました。本剤の審査に関して、専門委員として資料21に記載されております委員が指名されました。
 本剤の審査の概略について、臨床試験成績を中心に説明させていただきます。有効性について、審査報告書21~23ページ1)国内第III相試験の項を御覧ください。本試験では初発又は再発の悪性神経膠腫患者を対象に、本剤20mg/kgを手術時の麻酔導入の約3時間前に単回経口投与をしたときの有効性及び安全性が検討されました。有効性の主要評価項目とされた蛍光部位における被験者ごとの陽性診断率は、審査報告書22ページ表3にお示ししております。被験者ごとに蛍光部位の6か所から検体を採取して評価された陽性診断率は65.8%。95%信頼区間の下限値は48.6%であり、95%信頼区間の下限値は海外臨床試験成績に基づき、試験計画時に設定された許容限界値である53%を下回る結果となりました。
 すなわち、国内臨床試験では偽陽性と判断される患者が想定より多い結果でしたが、悪性神経膠腫の切除術では、神経機能に影響が出ない範囲で腫瘍をできるだけ多く取り除くことが患者の利益につながる可能性があり、海外臨床試験では本剤により予後改善効果につながる高い陽性診断率と腫瘍の切除率が示されていたこと、残存腫瘍のない患者の割合は国内外の臨床試験で同様であったこと、国内外の臨床試験において、腫瘍摘出に関連した脳の神経機能への影響に大きな差異が認められていないことから、日本人悪性神経膠腫患者においても海外臨床試験と同様に、本剤を用いた腫瘍切除術により予後改善への寄与を含めた有効性が期待できると判断しました。
 安全性については、審査報告書47ページに記載しております。国内外の臨床試験において、肝機能検査異常又は重篤な肝機能障害が認められ、本剤との因果関係が否定されておりません。加えて、非臨床試験においてPPIXによる肝臓障害が認められていることも踏まえて、添付文書(案)の重大な副作用の項において当該事象を追記した上で、本剤投与後、定期的に肝機能検査を実施し、肝機能障害が発現した場合には十分に観察を行う旨の注意喚起を行うことが適切と判断しました。
 また、47ページ「2)光線過敏症について」の項に記載したように、本剤での光線過敏症の発現リスクを踏まえて添付文書案の重要な基本的注意の項において、手術室の照明、直射日光又は明るい集中的な屋内光等の強い光へのばく露を、投与48時間後まで避けることを注意喚起することが適切と判断しました。さらに、悪性神経膠腫切除術における組織の切除範囲は、通常、本剤を用いた診断のみから決定すべきではなく、MRI等の他の診断結果や残すべき神経機能も踏まえて切除範囲を決定する旨を添付文書上で注意喚起することが適切と判断しました。
 製造販売後調査について、審査報告書48ページの7.の項を御覧ください。国内臨床試験における症例数が極めて少ないことなどから、製造販売後、一定症例数に係るデータが収集されるまでの間は、全症例を対象に使用成績調査を実施する予定です。本調査では、肝機能障害及び光線過敏症の発現状況といった安全性に関する情報のほか、本剤の有用性に関する検討事項として、本剤を用いた診断により新たに切除を決定した組織の有無及び本剤を用いた蛍光誘導の境界領域の病理検体における腫瘍細胞の有無について、情報収集を行う予定です。
 以上のような検討を行った結果、一定症例数にかかるデータが収集されるまでの間は全症例を対象とした使用成績調査を実施することを承認条件として付した上で、「悪性神経膠腫の腫瘍摘出術中における腫瘍組織の可視化」の効能・効果で、本剤を承認して差し支えないとの結論に達し、医薬品第二部会において御審議いただくことが適当であると判断いたしました。原体及び製剤は毒薬及び劇薬に該当せず、生物由来製品又は特定生物由来製品に該当しないと判断しております。また、再審査期間は10年とすることが妥当であると判断しております。薬事分科会では報告を予定しております。
 なお、佐藤委員より事前に次の御質問をいただいております。「効能・効果について、『悪性神経膠腫の腫瘍摘出手術中における腫瘍組織の可視化』とされていますが、『術中迅速病理診断によりWHOグレードIII/IVと判定された悪性神経膠腫』とするべきではないでしょうか。国内第III相試験では、術中迅速病理診断でグレードIII/IVに該当しなかった参加者4名がFASから除外されています。術中迅速病理診断で、グレードIII/IVと判定されない患者にも使用可能とするのであれば、国内第III相試験で除外された4名はFASに加えて解析するべきであったと考えます。」との御質問です。
 本剤を用いた診断に関するエビデンスは、世界的にWHOグレードIII/IVに該当する神経膠腫の診断に係るものです。御指摘いただきましたように、厳密には病理診断後でないと対象の適切性は判断できませんが、本剤は麻酔導入前に本剤を経口投与し、約6時間後に最適な効果が得られる薬剤ですので、開頭した後、さらに病理診断後に本剤を投与するような効能・効果とすることは困難と考えております。
 また、術前にMR検査等で悪性神経膠腫と推定された患者に本剤が投与されることを考えると、結果的にグレードIII及びIVと病理判定されない患者に本剤が投与される可能性はありますが、先ほど申し上げたようにそのような患者におけるエビデンスは確立されておらず、本剤による診断の恩恵が得られる投与対象であるとは考えられていないことから、国内III相試験ではグレードIII/IV以外の患者データは評価から除外した次第です。
 なお、国内の臨床現場ではWHOグレードIII/IVの神経膠腫が悪性神経膠腫として認識されており、現在の効能・効果においてもグレードIII/IV以外に使用されることは意図しておりません。この旨、専門協議でも御確認いただいております。説明は以上です。よろしく御審議のほどお願いいたします。
○吉田部会長 佐藤先生いかがですか。
○佐藤委員 臨床試験では生検標本を取るリスクがあるので、グレードIII/IV以外の患者からは生検を取らなかったから、そもそもデータがないのだということもわかりましたので理解しました。ただ、どうしてもグレードIII/IV以外の患者さんに使われることは致し方ないと思いますので、少なくとも添付文書の臨床試験のところに、今の書きぶりだと「有効性が評価された38例において」とありますが、この部分にもう少し正確に「術中迅速病理診断により、WHOグレードIII/IVに該当しなかった4例及び腫瘍本体に蛍光がなかった3名を除いた」というのを加えていただいた方がより情報伝達にもなるし、明らかではないかと思いました。
○吉田部会長 私は、先生の御指摘をそのまま生かして頂きたいと思います。御指摘のように、臨床的にIII/IVだと思っても、結果的にそうでなかった人が入ってしまうのは仕方ありませんが、治験としては、その人たちの結果がどうだったかということも本当はきちんと検討しておかなければいけなかったのです。そこが不明瞭になってしまったというのは、余りいいことではないと思う。また、別の見方をすれば、未承認薬の検討会議で議題に上がったときには「悪性神経膠腫(WHOグレードIII/IV)」となっているわけですね。そういうことでいうと、効能・効果としてもグレードIII/IVとしておかないと具合が悪いような気もします。確かにグレードIII/IV以外の人にも使われてしまうのは仕方がないのだけれども、有効性はIII/IVでしか分からないという意味では、適応の疾患に「WHO(グレードIII/IV)」であってもおかしくはないかとは思います。いかがでしょうか。
○機構 御指摘ありがとうございます。先ほど頂きました御指摘を踏まえて、添付文書の臨床成績の項に具体的にどういった対象だったかを明記することとしたいと思います。
○吉田部会長 よろしくお願いします。ほかにありますか。
○豊見委員 経口剤でありながら50mLの水を入れて、これに入れて飲むということになっているわけですが、なぜこういう製剤なのですか。例えばジスロマックSRとか、あのような1回のみの内服用の容器があると思いますが、これは注射液で注射用水を入れろということになるのですか。注射用水を入れて、何かでまた吸うのでしょうか。
○機構 補足いたします。基本的に先生のおっしゃるように、注射用水である必要はないのですが、このお薬の溶かした後の24時間安定性試験がありまして、それは注射用水で溶かして試験しておりますので、厳密に安定性を保証しようと思うと、注射用水でとかした方が確実というところがあります。もう1点は御存じのように、アルミのキャップはよく薬剤部にある専用のペンチで取ることができますので、使い方の冊子をメーカーに出してもらい、水をメスシリンダーに入れて測りとるやり方も注射で取るやり方と併せて書く予定ですが、必ずしも注射用水ということではなく、すぐ使うということであればほかの水も使うことができるという感じだと思います。
○吉田部会長 以前そういった間違いも問題になりましたし、そのまま点滴をつないでしまうようなことも無きにしもですから、紛らわしい格好にはしない方がいいのではないですか。特に脳外科の病院は忙しいところですから、分からない人が間違ってという万が一もあるので。
○豊見委員 原則的に、この蓋は手では取れないようになっていますね。アルミですね。
○機構 そうです。特殊なペンチを使わないと取れません。
○吉田部会長 真ん中に凹みが入ると、これは注射ではないなと分かるから、そういう工夫も本当はあった方がいいかもしれない。例えば変なカットではないけれども、形として紛らわしくないようにしてしまうというのは手かもしれないですね。ほかにありますか。よろしいですか。そろそろ議決に入ります。お諮りします。本議題について、承認を可としてよろしいですか。
 御異議がないようですので、承認を可とし、薬事分科会に報告とさせていただきます。
 議題5に移ります。議題5について、医薬品医療機器総合機構からの概要説明をお願いします。
○機構 審議事項議題5、資料5「医薬品スチバーガ錠40mgの生物由来製品及び特定生物由来製品の指定の要否、製造販売承認の可否及び再審査期間の指定並びに毒薬又は劇薬の指定の要否について」医薬品医療機器総合機構より説明させていただきます。
 本薬の有効成分であるレゴラフェニブ水和物は、血管内皮増殖因子受容体等、複数の受容体型チロシンキナーゼ等のリン酸化を阻害し、その下流の細胞内シグナル伝達を阻害することにより、血管新生や腫瘍の増殖を抑制すると考えられております。今般、本薬は治癒切除不能な進行・再発の結腸・直腸癌に対して効果を示す薬剤として承認申請されました。本薬は、審査報告書の3~4ページに記載しておりますように、平成24年11月時点において結腸・直腸癌に関する適応にて米国のみで承認されており、EUを含むその他申請国では審査中となっております。本品目の専門協議に御参加いただいた専門委員は、資料21のとおり9名の委員です。
 以下、本薬の承認審査の概要を説明いたします。今般の承認申請では、主な臨床試験成績として本邦を含む世界各国で実施された一つの国際共同第III相試験成績が提出されました。有効性については、審査報告書52ページの表に示すように、標準化学療法施行後に病勢進行を認めた遠隔転移を有する結腸・直腸癌患者における本薬の有効性及び安全性を検討した国際共同第III相試験の結果、対照群として設定されたプラセボ群に対して本薬群の全生存期間が有意に延長され、当該患者に対する本薬の有効性は示されたと判断いたしました。
 安全性について、本薬の使用において特に注意を要する有害事象としては、審査報告書94ページの上から20行目以降に示すように、手足症候群、肝機能障害、高血圧及び高血圧クリーゼ、出血、血栓塞栓症、消化管穿孔及び瘻、スティーブンス・ジョンソン症候群及び中毒性表皮壊死融解症、並びに可逆性後白質脳症が認められており、注意が必要と考えられております。これらの有害事象については、がん化学療法に十分な知識と経験を有する医師による慎重な観察と、適切な処置により忍容は可能と判断いたしました。ただし、日本人における検討症例は限られており、審査報告書99ページ上から4行目以降に示すように、製造販売後には本薬を使用した症例を対象として、目標症例数1250例、観察期間6か月間の調査の実施が必要であると判断し、申請者に指示しております。
 以上のような審査の結果、機構は治癒切除不能な進行・再発の結腸・直腸癌を効能・効果として、本薬を承認することは可能と判断いたしました。本薬は、新有効成分含有医薬品であることから、再審査期間を8年とすることが適当であると判断いたしました。また、原体及び製剤はいずれも劇薬に該当し、本薬は生物由来製品及び特定生物由来製品のいずれにも該当しないと判断いたしました。本薬の製造販売承認の可否等について、御審議のほどよろしくお願いいたします。
○吉田部会長 委員の先生方からの御質問、御意見をお願いします。田村先生、何かコメントはありますか。
○田村委員 特にないです。
○吉田部会長 この薬は経口剤で、しかもサードラインに使うことになると、最後の砦になってしまう、患者さんが藁をもつかむような場面で使われる可能性が非常に高いと思います。ことに経口剤だと、近くのかかりつけ医師も処方してくると思います。化学療法に熟知した云々の件ですが、その辺りは施設を限定するとかの考え方はあるのでしょうか。
○機構 今回、厳密な流通制限のような形ではないですが、企業として、警告に記載しているような内容のがん化学療法に十分な知識と経験を有する医師の下で使用されることを前提に処方されるよう、納入時に確認等の実施を予定しているという形です。
○吉田部会長 メーカー側に、卸す所ならどこでもというわけにはいかない、ということを当面の間でも徹底してほしいのです。というのは、日本人に有害事象が高率に出ているし、薬害などの問題で騒ぎになることも危惧されますので、その点の注意を是非よろしくお願いします。
○機構 市販直後調査も含め対策を十分徹底させるように、また申請者に指示いたします。
○吉田部会長 ほかにありますか。よろしいですか。それでは議決に入りたいと思います。なお、清田委員におかれましては利益相反に関する申出に基づきまして、議決への参加を御遠慮いただくことといたします。本議題について、承認を可としてよろしいでしょうか。
 御異議がないようですので承認を可とし、薬事分科会に報告とさせていただきます。議題6に移ります。
○機構 審議事項議題6、資料6「医薬品スタリビルド配合錠の生物由来製品及び特定生物由来製品の指定の要否、製造販売承認の可否及び再審査期間の指定並びに毒薬又は劇薬の指定の要否について」医薬品医療機器総合機構より御説明いたします。
 スタリビルド配合錠は、新規の有効成分であるエルビテグラビル及びコビシスタット、並びに既承認の核酸系酵素阻害剤であるエムトリシタビン及びテノホビルジソプロキシルフマル酸塩の配合剤として、米国ギリアド・サイエンシズ社により開発されました。新規有効成分のうち、エルビテグラビルは日本たばこ産業株式会社により創製された新規のインテグラーゼ阻害薬であり、HIV-1インテグラーゼを阻害することでHIV-DNAの宿主DNAの組込みを抑制し、抗ウイルス活性を示すとされております。また、コビシスタットはギリアド社により創製され、リトナビルの構造類似体であるものの、HIV-1プロテアーゼの阻害活性を示すことなく、CYP3A活性阻害作用を有するとされ、エルビテグラビルの暴露量を増加させる目的で配合されております。
 なお、エムトリシタビン及びテノホビルジソプロキシルフマル酸塩は、それぞれエムトリバカプセル200mg及びビリアード錠300mg、並びに両成分の配合剤であるツルバダ配合錠として本邦では承認されております。
 本剤の開発当初においては、エルビテグラビル単剤の開発が先行され、低用量リトナビルとの併用投与が計画されていましたが、リトナビルはHIVプロテアーゼ阻害作用を有し、プロテアーゼ阻害に対する耐性ウイルスを誘導する懸念があることから、抗HIV活性を示さないCYP3A阻害薬としてコビシスタットが開発されました。さらにHIV感染患者の抗レトロウイルス療法では、複数の薬剤を長期間服用することとなりますが、HIV RNA量を検出限界以下に維持するため、服薬アドヒアランスを高く維持することが重要であり、服用回数及び服用錠数が少ないより簡便なレジメンが求められていることから、1日1回1錠で投与可能な配合剤に対する医療現場のニーズも踏まえ、配合剤である本剤の開発が単剤の開発に先行されて行われることとなりました。
 本剤の海外における承認状況は、米国及び欧州で承認申請がなされ、米国では平成24年8月に承認されており、平成24年11月現在、米国及びカナダで承認されております。本邦では、エルビテグラビル及びコビシスタットは平成24年11月14日、エムトリシタビンは平成16年10月13日、テノホビルジソプロキシルフマル酸塩は平成15年12月12日付で希少疾病用医薬品として指定されております。
本申請の専門委員として、資料21に記載されております9名の委員を指名いたしました。
 審査内容について、臨床成績を中心に説明させていただきます。有効性については、審査報告書62ページ及び63ページの表を御覧ください。海外第III相試験GS-US-236-0102試験及びGS-US-236-0103試験において、主要評価項目である治療開始48週時のHIV-1 RNA量が50copies/mL未満の患者の割合について、本剤は対照薬であるエファビレンツ群及びアタザナビル群に対する非劣性が示されたことから、本剤の有効性は示されていると判断しております。また、本剤96週時のHIV-1 RNA量が50copies/mL未満の患者の割合は、本剤群及び対照薬群で同様であり、本剤の長期投与においても大きな変化は認められておりませんでした。
 次に安全性について、審査報告書56ページの表を御覧ください。海外第III相試験及び海外第II相試験における有害事象発現率は、本剤群で92.7%、エファビレンツ群で94.7%、アタザナビル群で93.8%とほぼ同様であり、認められた事象もほぼ同様で、大きな差異は認められませんでした。また、同ページの「腎機能障害について」の項を御覧ください。海外第III相試験並びに海外第II相試験において認められた腎機能関連の有害事象及び臨床検査値異常の発現率は高くはないものの、対照薬群と比較して本剤群で多く、投与中止例も多く認められたことから、本剤投与開始前及び開始後において腎機能検査値の測定を行うよう注意喚起するとともに、本剤投与時における腎障害に関連する有害事象及び臨床検査値の異常の発現状況については、製造販売後も引き続き情報収集を行う必要があると考えております。
 なお、現時点において本剤は海外においても承認されて間もないこと、日本人における本剤の有効性及び安全性については検討がなされていないことを踏まえ、製造販売後調査を実施し、本剤の安全性及び有効性を検討する予定としております。また、日本人における薬物動態についても製造販売後、速やかに検討する必要があると考えており、日本人健康成人男性を対象とした薬物動態試験が実施される予定となっております。
 以上の審査を踏まえ、審査報告書4ページに記載している承認条件を付与した上で、本剤のHIV-1感染症に対する効能・効果及び用法・用量を承認して差し支えないという結論に達し、本医薬品第二部会で御審議いただくことが適当と判断いたしました。本申請は、新有効成分含有医薬品及び新医療用配合剤であり、希少疾病用医薬品であることから再審査期間は10年、原体及び製剤はいずれも劇薬に該当し、生物由来製品及び特定生物由来製品には該当しないと判断しております。なお、薬事分科会には報告を予定しております。以上です。よろしく御審議のほどお願いいたします。
○吉田部会長 委員の先生方から御質問、御意見をお願いします。市販後のデータは何例ぐらい集める予定ですか。
○機構 機構よりお答えします。使用成績調査としては、医師1人当たりの記入調査票の上限として40例を目安とするとされています。HIV感染症の場合には共同調査が実施されておりますので、共同調査において、この薬が使用された患者さんに対して全例を取っていく予定です。
○吉田部会長 全部ひっかかってくるよ、という話でよろしいですね。
○機構 はい。
○吉田部会長 分かりました。ありがとうございます。ほかにありますか。特に問題なければと議決に入りたいと思いますが、よろしいでしょうか。議決に入ります。本議題について承認を可、としてよろしいでしょうか。
 御異議がないようですので承認を可とし、薬事分科会に報告とさせていただきます。
 議題7に移ります。事務局からの概要説明をお願いします。
○事務局 審議事項議題7、資料7「Bexaroteneを希少疾病用医薬品として指定することの可否について」事務局より御説明いたします。申請者は株式会社ミノファーゲン製薬、予定効能・効果は皮膚T細胞性リンパ腫となります。皮膚T細胞性リンパ腫(CTCL)は皮膚を主たる病変部位とし、T細胞の広範な増殖・浸潤が認められる節外性悪性リンパ腫の総称です。患者数は厚生労働省の患者統計調査などから、CTCLの1病型である菌状息肉症の患者数が約1000人、CTCLにおける菌状息肉症の割合が50%程度とされていることを踏まえ、本邦におけるCTCLの患者数は2000人程度と推定され、希少疾病用医薬品指定の基準である5万人未満と考えられます。
 医療上の必要性ですが、CTCLの代表的な病形である菌状息肉症とセザリー症候群のステージIII及びステージIVでは、生存期間中央値が5年未満と予後不良であること、及び国内外のガイドラインで推奨されている薬剤のうち、本邦既承認薬剤はボリノスタットのみであることなどから、新たな治療薬の開発が望まれております。以上の現状を踏まえ、本薬の医療上の必要性は高いと考えられます。
 最後に本薬は米国、欧州を含む35か国でCTCLに関する効能・効果に対して承認されており、本邦においてもCTCL患者を対象とした国内第I/II試験を実施中であることから、開発の可能性は高いと考えられます。以上から、本薬は希少疾病用医薬品の指定要件を満たすものと判断しております。御審議のほどよろしくお願いいたします。
○吉田部会長 ありがとうございました。委員の先生方からの御質問、御意見があればお願いいたします。対象患者数、医療上の必要性、更に開発の可能性についても条件を満足しているのではないかと思われますが、よろしいですか。特に御意見がなければ議決にいきたいと思います。本議題について、指定を可としてよろしいでしょうか。
 御異議がないようですので、指定を可とし、薬事分科会に報告とさせていただきます。
 それでは議題8に移ります。議題8について事務局からの説明をお願いします。
○事務局 審議事項議題8、資料8「モガムリズマブを希少疾病用医薬品として指定することの可否について」事務局より御説明いたします。申請者は協和発酵キリン株式会社、予定効能・効果は末梢性T細胞リンパ腫及び皮膚T細胞性リンパ腫となります。末梢性T細胞リンパ腫(PTCL)及び皮膚T細胞性リンパ腫(CTCL)は、悪性リンパ腫の一類型であり、T細胞由来であって、主にリンパ節、又は非リンパ系臓器に病変が現れるものをPTCL、主に皮膚に病変が現れるものをCTCLと総称されています。
 患者数は厚生労働省の患者統計調査などから、PTCLとCTCL合わせて総数として1万人程度と推定されており、希少疾病用医薬品指定の基準である5万人未満と考えられます。
 医療上の必要性についてですが、PTCLは初回治療としてアントラサイクリン系の薬剤を含む化学療法として、CHOP療法やそれに類似する化学療法が行われているものの、それらの治療による5年生存率は37%と報告されており、新たな治療薬の開発が望まれております。
 CTCLについては主要な病型のステージIVの5年生存率が15~40%と予後不良であること、また、国内外のガイドラインで推奨されている薬剤のうち、本邦既承認薬剤はボリノスタットのみであることなどから、新たな治療薬の開発が望まれております。以上を踏まえますと、本薬の医療上の必要性は高いと考えられます。
 最後に、本薬は予定効能・効果患者を対象とした国内第I相試験が既に実施され、現在国内第II相試験において、本薬の有効性と安全性が検討されております。本薬は海外において承認はされておりませんが、米国において第I/II相試験が、EUにおいては第II相試験が、米国においては第III相試験が実施中であることから、本薬の開発の可能性は高いと考えられます。以上から、本薬は希少疾病用医薬品の指定要件を満たすものと判断しております。御審議のほど、よろしくお願いいたします。
○吉田部会長 ありがとうございました。委員の先生方からの御質問、御意見をお願いします。議題7と非常に類似したものになっていますが、よろしいですか。患者数、医療上の必要性、開発も既に進められているということですので、御意見がなければ議決に入ります。本議題について指定を可としてよろしいでしょうか。
 御異議がないようですので、指定を可とし薬事分科会に報告とさせていただきます。
 それでは議題9に移ります。議題9について、事務局からの概要説明をお願いします。
○事務局 審議事項議題9、資料9「医薬品アドエア100ディスカス28吸入用、同100ディスカス60吸入用、同250ディスカス28吸入用、同250ディスカス60吸入用、同500ディスカス28吸入用、同500ディスカス60吸入用、同50エアゾール120吸入用、同125エアゾール120吸入用及び同250エアゾール120吸入用の再審査期間延長の可否について」事務局より御説明いたします。
 まず、再審査期間の延長に係る制度について御説明します。お手元の1枚目の諮問書に記載がありますが、薬事法第14条の4第2項においては、厚生労働大臣は新医薬品の再審査を適正に行うため特に必要があると認めるときは、薬事・食品衛生審議会の意見を聴いて、再審査期間をその製造販売の承認があった日から10年を超えない範囲内において延長することができる旨の規定がございます。この規定に基づきまして、小児の用量設定等のための臨床試験を計画する場合で、必要があると認められる場合には本審議会にお諮りした上で、再審査期間を延長しているところです。
 それでは資料の最初のタブにある品目概要から簡単に御説明いたします。本剤の申請者はグラクソ・スミスクライン株式会社です。対象品目は「アドエア100ディスカス28吸入用」ほか8品目です。本剤は長時間作用性吸入β2刺激薬(LABA)である「サルメテロールキシナホ酸塩」及び吸入ステロイド薬(ICS)である「フルチカゾンプロピオン酸エステル」の配合剤であり、今回対象とされている効能・効果は「効能・効果」の欄に記載のとおりです。
 ページをめくっていただき、2ページの下ですが、本剤の初回の承認日はディスカス製剤の成人の気管支喘息の効能・効果に係る平成19年4月18日であり、再審査期間は6年とされました。以後のエアゾール製剤の承認や、効能・効果、用法・用量の変更に係る承認事項一部変更承認の際の再審査期間は、本期間の残余期間とされています。現時点までに2ページに記載のとおり、本剤は気管支喘息の効能・効果に係る成人および小児それぞれの用法・用量が設定されているものの、4歳以下の乳幼児の気管支喘息に関する安全性・有効性は検討されておらず、「添付文書」の4ページ目、「使用上の注意」の「7.小児等への投与」欄には、「(2)低出生体重児、新生児、乳児又は4歳以下の幼児に対する安全性は確立していない(使用経験が少ない)。」と記載されています。
 次に資料の三つ目のタブ「試験計画書骨子/再審査延長要約」の2枚目、「アドエアの再審査期間延長について」を御覧ください。
 2ページ目の3.「1.治療実態について」ですが、本邦におけるガイドライン、「小児気管支喘息治療・管理ガイドライン2012」では、2~5歳の気管支喘息患者に対して、治療ステップ3の患者に対しては、ICSによる治療を基本とし、必要に応じて追加治療の一つとしてLABAの併用、あるいは本剤への変更が推奨されています。
 また、治療ステップ4の患者に対しては、基本治療としてICS及びLABAなどの併用、あるいは本剤への変更が推奨されています。また、本邦における本剤による治療実態の調査の結果、図1のとおり、0~4歳の気管支喘息患児において、本剤による治療実態が認められたとされています。
 また、3ページの第2段落ですが、0~4歳の気管支喘息患児で、ICSであるパルミコートが使用されている患児においては、図3のとおり、β2刺激薬の貼付剤等が高率に併用されている実態が認められました。以上を踏まえて申請者は本邦における0~4歳の気管支喘息患児において、ICSに加え、β2刺激薬を併用する必要性が高いと説明しています。
 次に5ページの「2.開発の必要性及び経緯について」を御覧ください。申請者は本剤の小児開発について、本剤の成人における気管支喘息の効能・効果の承認申請中から検討を行い、まず、5歳以上の小児における開発を開始し、平成21年1月21日に5歳以上の小児への適応を取得しています。その後、本剤の製造販売後調査において使用実態を調査し、4歳以下の乳幼児においても使用されている実態が確認されたこと、また、6ページになりますが、0~4歳の気管支喘息患児において、ICSに加えて高率でβ2刺激薬等が併用されている実態などを踏まえて、本剤の4歳以下の気管支喘息患児における開発を決断したとされています。その後、製造販売後の臨床試験に関して、医薬品医療機器総合機構との対面助言を実施して、合意に至ったことから、今回の再審査期間の延長の申請に至っています。
 次に7ページを御覧ください。申請者は生後□か月以上、4歳以下の気管支喘息患者を対象とした多施設共同、□□□□、□□□□、□□□□□□□□を実施することにより、本剤の有効性及び安全性を評価する予定としています。
 調査予定症例数は、詳細な説明は「例数設定根拠」のタブの所に記載がありますが、□□□□□として、□□□□□□□例、合計□□例と予定されています。症例登録期間についてですが、本試験は4歳以下の気管支喘息患児に対する本剤の有効性を検証する試験であり、吸入ステロイド剤を使用した上で、喘息症状のある患者を対象としているため、非常に組入れが難しいと予想されることから、□年□か月と設定されています。そのため所要期間等を勘案した結果、再審査期間を当初より4年間、通算で10年間とすることが申請されており、計画されている製造販売後臨床試験の内容を考慮した結果、申請どおり、再審査期間を4年間、通算で10年間に延長することが適当と考えています。以上、御審議のほどよろしくお願いいたします。
○吉田部会長 ありがとうございました。小児に対する臨床試験をするので再審査期間を延ばしてほしいということのようですが、委員の先生方の御意見、御質問がございましたらお願いします。
○佐藤委員 再審査期間の延長は小児適用だけですか。
○事務局 はい、まず、再審査期間延長の範囲ですが、成人の疾患であるCOPDに加え、成人用製剤も含んでいます。その理由について御説明いたします。再審査期間の付与については薬事法第14条4第1項第2号の規定に基づき、既に承認されている医薬品と有効成分等が同一性を有すると認められる医薬品については、既に承認されている医薬品の再審査期間と合致するように定めることとされています。
 本剤の再審査期間は平成19年にディスカス製剤が成人の気管支喘息に係る効能・効果で承認された際に、新医療用配合剤として6年が設定されています。その後、エアゾール製剤の追加、小児の用法・用量の設定、及びCOPDの効能・効果の設定に係る承認時は、いずれもこの再審査期間の残余期間が設定され、再審査期間を一致させているところです。
 以上の薬事法の規定と本剤の再審査期間の扱いを踏まえまして、今回の再審査期間の延長は、同一性を有すると認められる医薬品における再審査期間を一致させるため、成人に関する製剤及びCOPDに関する効能・効果も含め、同一期間延長する必要があると考えております。
○吉田部会長 つまり、小児だけを延長するのではなくて、全部延長するということのようです。庵原先生、小児は□か月というのが私は妥当かどうか分からないのですが、ステロイドというのは普通に使われるものなのですか。
○庵原委員 これは吸入のステロイドですので、特に影響は少ないと言われています。割と小さい子供の喘息は重症になりやすいので、長期に使う例があるとは思っています。
○吉田部会長 □か月にこだわるというか、□か月以前には余り喘息というのはないのですか、それとも。
○庵原委員 多分、あったとしても診断ができないのだろうと思います。
○吉田部会長 なるほど、分かりました。では、□か月からということにしたのは、後で悔いを残すようなことにはならないということのようですが、よろしいですか。御意見がないようですので、議決に入ります。なお、清田委員におかれましては利益相反に関する申出に基づきまして、議決への参加を御遠慮いただくことといたします。本議題について、再審査期間を4年間延長して、10年とすることについて御了解いただいたものとしてよろしいでしょうか。
 御異議がないようですので、御了解いただいたものとし、薬事分科会に報告とさせていただきます。
 それでは報告事項にいきたいと思います。報告事項について事務局からの説明をお願いします。
○事務局 報告事項議題1、資料11「医薬品カンプト点滴静注40mg、同点滴静注100mg、トポテシン点滴静注40mg、同点滴静注100mg、イリノテカン塩酸塩点滴静注液40mg『サワイ』、同点滴静注液100mg『サワイ』、イリノテカン塩酸塩点滴静注液40mg『タイホウ』、同点滴静注液100mg、『タイホウ』、イリノテカン塩酸塩点滴静注液40mg『ホスピーラ』及び同点滴静注液100mg『ホスピーラ』の医薬品の製造販売承認事項一部変更承認について」です。本剤はイリノテカン塩酸塩製剤ですが、DNA合成阻害作用を有する抗悪性腫瘍剤でして、現在は「小細胞肺癌、非小細胞肺癌、子宮頸癌、卵巣癌」等の効能・効果で承認をされています。本剤について医療上の必要性の高い未承認薬・適応外薬検討会議において、公知申請への該当性に係る報告書が取りまとめられ、平成24年10月に開催された本部会における事前評価を踏まえて、株式会社ヤクルト本社ほか4社から「小児悪性固形腫瘍」の効能・効果及び用法・用量を追加する一部変更承認の申請がなされたところです。機構における審査の結果、本剤を承認して差し支えないと判断したところです。
 続いて報告事項議題2、資料12-1、12-2「医薬品ネオーラル10mgカプセル、同内容用液10%、同25mgカプセル、同50mgカプセル、シクロスポリンカプセル10mg『マイラン』、同カプセル25mg『マイラン』、同カプセル50mg『マイラン』及び同細粒17%『マイラン』の製造販売承認事項一部変更承認について」です。本剤はシクロスポリンの製剤です。カルシニューリン阻害作用を有するシクロスポリンを有効成分とする免疫抑制剤で、現在は臓器移植における拒絶反応の抑制、ベーチェット病等の効能・効果で承認をされています。
 本剤についても未承認薬・適応外薬検討会議において、公知申請への該当性に係る報告書が取りまとめられ、平成24年10月の医薬品第二部会における事前評価を踏まえまして、ノバルティスファーマ株式会社及びマイラン製薬株式会社から「ベーチェット病以外の非感染性ぶどう膜炎(既存治療で効果不十分であり、視力低下のおそれのある活動性の中間部又は後部の非感染性ぶどう膜炎に限る)」の効能・効果及び用法・用量を追加する一部変更承認の申請がされたところです。機構における審査の結果、本剤を承認して差し支えないと判断したところです。
 続きまして報告事項議題3、資料13「医薬品注射用エンドキサン100mg、注射用エンドキサン500mgの製造販売承認事項一部変更承認について」です。本剤はシクロホスファミドの製剤でして、アルキル化剤に分類される抗悪性腫瘍剤です。現在は「多発性骨髄腫等の自覚的並びに他覚的症状の緩解」等の効能・効果にて承認されています。本剤について未承認薬・適応外薬検討会議において、公知申請への該当性に係る報告書が取りまとめられ、同じく平成24年10月の本部会における事前評価を踏まえまして、塩野義製薬株式会社から一部変更承認の申請がなされたところです。機構における審査の結果、本剤を承認して差し支えないと判断をしたところです。
 続いて報告事項議題4、資料14「医薬品ダカルバジン注用100の製造販売承認事項一部変更承認について」です。本剤はダカルバジン製剤で、「悪性黒色腫及びホジキン病(ホジキンリンパ腫)」を効能・効果として承認されています。本剤について未承認薬・適応外薬検討会議における公知申請の該当性の報告が取りまとめられ、また、同じく平成24年10月の本部会における事前評価を踏まえまして、協和発酵キリン株式会社から褐色細胞腫の効能・効果及び用法・用量の追加の申請がなされたところです。機構における審査の結果、本剤を承認して差し支えないと判断したところです。
 続きまして報告事項議題5、資料15「医薬品オンコビン注射用1mgの製造販売承認事項一部変更承認について」です。本剤はビンクリスチン硫酸塩製剤です。抗腫瘍性植物成分製剤に分類される抗悪性腫瘍剤であり、現在は「白血病、悪性リンパ腫及び小児腫瘍」等の効能・効果で承認されております。本剤についても未承認薬・適応外薬検討会議において公知申請への該当性、また、平成24年10月の本部会における事前評価を踏まえまして、日本化薬株式会社から「褐色細胞腫」の効能・効果及び用法・用量を追加する申請がなされたところです。機構における審査の結果、本剤は承認して差し支えないと判断したところです。
 続いて報告事項議題6、資料16「医薬品ハイドレアカプセル500mgの製造販売承認事項一部変更承認について」です。本剤はヒドロキシカルバミドで、代謝拮抗剤に分類される抗悪性腫瘍剤であり、現在は「慢性骨髄性白血病」を効能・効果として承認されています。本剤についても公知申請への該当性に係る報告書が取りまとめられ、本部会における事前評価を踏まえまして、ブリストル・マイヤーズ株式会社から「本態性血小板血症、真性多血症」の効能・効果を追加する一部変更承認の申請がなされたところです。機構における審査の結果、本剤を承認して差し使えないと判断したところです。
○事務局 続きまして報告事項議題7、資料17「優先審査指定品目の審査結果について(スチバーガ錠40mg)(カドサイラ点滴静注用100mg、同点滴静注用160mg)」事務局より御説明いたします。資料1ページに掲げる2品目については優先審査指定申請が提出され、その該当性に関する機構の意見に基づき、優先審査品目に指定いたしましたので、以下御報告いたします。
 優先審査品目への指定の可否については、資料2ページにありますとおり、適応疾病の重篤性及び医療上の有用性を総合的に評価して判断することとしております。まず、はじめに「医薬品スチバーガ錠40mg」について御説明いたします。申請された効能・効果は生命に重大な影響がある疾患と考えており、また、化学療法治療後に病勢進行が認められた切除不能、又は転移性の消化管間質腫瘍患者を対象に実施された国際共同第III相試験において、プラセボ群に対する無増悪生存期間の延長が認められ、現時点で得られている安全性情報から本剤は忍容可能と考えられます。以上から、本剤の医療用の有用性は高いと考えております。
 次に「医薬品カドサイラ点滴静注用100mg、同160mg」について御説明いたします。申請された効能・効果は生命に重大な影響がある疾患であると考えており、また、既存の治療歴を有するHER2陽性手術不能、又は再発乳癌患者を対象とした海外第III相試験において、標準的な併用群に対する無増悪生存期間、また、全生存期間の有意な延長が認められ、現時点で得られている安全性情報から本剤は忍容可能と考えられることなどから、本剤の医療上の有用性は高いと考えております。以上より、これらの申請を優先審査の対象とすることといたしましたので、御報告いたします。
 続きまして報告事項議題8、資料18「医療用医薬品の承認条件の解除について(トレアキシン)」事務局より御説明いたします。資料2ページを御覧ください。ベンダムスチン塩酸塩を有効成分とする医薬品トレアキシン点滴静注用100mgは、平成22年10月に承認され、中ほどにお示ししましたが全例調査に関する承認条件が付されております。この度、承認取得者から使用成績調査に係る報告書が提出され、機構において審査されましたので御報告いたします。
 3ページを御覧ください。報告された使用成績調査は本剤を使用した全症例を対象に、目標症例数250例、観察期間18週間とされており、平成23年2月21日までに583例の症例が登録され、調査結果がまとめられております。
 まず、安全性については3ページの下部2.に記載しております。安全性解析対象583例のうち、副作用が96.7%、重篤な副作用が38.4%に認められ、重点調査項目とされました副作用については、臨床試験と比較して問題となる状況は認められませんでした。また、有効性については5ページ中ほど3.に記載していますが、有効性解析対象とされた全病型、497例について、奏効率は69.4%であり、日本人患者での有効性を否定する情報は得られていません。
 これらの結果に基づき、5ページ下部から6ページに書かれた添付文書の改訂、資材による情報提供等の適正使用に関する措置が講じられております。
 以上を踏まえて、本薬の全例調査に関する承認条件の内容については確認できたものと判断しております。
○事務局 報告事項議題9、資料19「医療用医薬品の再審査結果について(インターフェロンガンマ-1a(遺伝子組換え))、(オクトレオチド酢酸塩)、(メロペネム水和物)、(ラベプラゾールナトリウム、アモキシシリン水和物、クラリスロマイシン)、(クラブラン酸カリウム/アモキシシリン水和物)、(ロピナビル/リトナビル)、(フェキソフェナジン)、(エポエチンベータ(遺伝子組換え))、(抗ヒトTリンパ球ウサギ免疫グロブリン)、(乾燥組織培養不活化A型肝炎ワクチン)、(フェルカルボトラン)」です。資料19-1~19-12につきまして、まとめて報告をさせていただきます。
 資料19-1、一般的名称は「インターフェロンガンマ-1a(遺伝子組換え)」です。資料19-2、一般的名称は「オクトレオチド酢酸塩」です。資料19-3、一般的名称は「メロペネム水和物」です。資料19-4、一般的名称はそれぞれ「ラベプラゾールナトリウム」、「アモキシシリン水和物」及び「クラリスロマイシン」のものです。資料19-5、一般的名称は「クラブラン酸カリウム」及び「アモキシリン水和物」です。資料19-6、一般的名称は「ロピナビル・リトナビル」です。資料19-7、一般的名称は「フェキソフェナジン塩酸塩」のものです。資料19-8、一般的名称は「エポエチンベータ(遺伝子組換え)」です。資料19-9、一般的名称は「抗ヒトTリンパ球ウサギ免疫グロブリン」です。資料19-10及び19-11、一般的名称は「乾燥組織培養不活化A型肝炎ワクチン」です。また資料19-12、一般的名称は「フェルカルボトラン」です。
 これらの品目について製造販売後の使用成績調査、特定使用成績調査、また、製造販売後臨床試験等に基づいて、再審査申請が行われ、審査の結果、薬事法第14条第2項第3号に掲げられている承認拒否事由のいずれにも該当しないこと、すなわちカテゴリー1と判断をしたところです。報告事項は以上です。
○吉田部会長 公知申請が6品目、優先審査指定が2品目、承認状況の解除が1品目、再審査結果の報告が10品目となっております。委員の先生方からの御質問等がありましたらお願いします。
 特にないようですので、報告事項については御確認いただいたものといたします。
 本日の議題は以上ですが、事務局から何か報告がありますでしょうか。
○事務局 次回の部会の日程です。年度が変わりまして4月25日(木)午後3時から開催させていただく予定です。よろしくお願いいたします。
○吉田部会長 ほかに何か御意見はございますか。ないようでございますので、それでは本日はこれで終了させていただきます。御苦労さまでした。


(了)

備考
 本部会は、企業の知的財産保護の観点等から非公開で開催された。

連絡先:医薬食品局 審査管理課 課長補佐 益山(内線2746)

ホーム> 政策について> 審議会・研究会等> 薬事・食品衛生審議会(薬事・食品衛生審議会医薬品第二部会)> 薬事・食品衛生審議会 医薬品第二部会 議事録(2013年3月13日)

ページの先頭へ戻る