ホーム> 政策について> 審議会・研究会等> 中央社会保険医療協議会(中央社会保険医療協議会費用対効果評価専門部会)> 第12回中央社会保険医療協議会費用対効果評価専門部会議事録(2013年7月31日)




2013年7月31日 第12回中央社会保険医療協議会費用対効果評価専門部会議事録

○日時

平成25年7月31日(水)10:58~12:27


○場所

TKP赤坂ツインタワー・カンファレンスセンター(東館7階)


○出席者

関原健夫部会長 印南一路部会長代理 西村万里子委員 森田朗委員
矢内邦夫委員 白川修二委員 花井十伍委員
石山惠司委員 田中伸一委員 伊藤文郎委員
鈴木邦彦委員 安達秀樹委員 嘉山孝正委員
万代恭嗣委員 堀憲郎委員 三浦洋嗣委員
土屋裕専門委員 田村誠専門委員  昌子久仁子専門委員 加茂谷佳明専門委員
池田俊也参考人 福田敬参考人 田倉智之参考人
<事務局>
木倉保険局長 宇都宮医療課長 佐々木医療課企画官
竹林保険医療企画調査室長 近澤薬剤管理官 田口歯科医療管理官 他

○議題

1 評価の具体例等について(医薬品等の場合)

○議事

○関原部会長

 それでは、皆様おそろいになりましたので、ただいまより第12回「中央社会保険医療協議会 費用対効果評価専門部会」を始めたいと思います。

 まず委員の出席でございますが、きょうは全委員が御出席です。

 それでは、前回に引き続きまして「○ 評価の具体例等について(医薬品の場合等)」を議題といたします。

 前回も同じ資料が提出されましたが、今回も議題に入ります前に、これまで議論してまいりました評価の具体的運用方法について、事務局からごく簡単に改めて御説明をお願いいたします。佐々木企画官、どうぞ。

○佐々木医療課企画官

 医療課企画官でございます。

 中医協費-1と参考でございますが、これは前回の6月26日の部会に出させていただきましたものでございます。部会で検討いただきました概要でございます。本日の議論の御参考につけさせていただいております。

 以上でございます。

○関原部会長

 どうもありがとうございました。

 きょうは、時間も大分おくれているということもありまして、参考人の方からポイントを絞ってお願いすることで、まず田倉参考人にイギリスの事例を紹介いただきます。その後、池田参考人からドイツの具体例について、簡単に御説明をお願いいたしますが、ドイツにつきましては、これまで評価方法をもう少し紹介してほしいという御要望も出ておりましたので、今回、具体的な事例とあわせまして、ドイツの評価方法についても、簡単に触れていただくことにいたします。

 それでは、田倉参考人より、資料の御説明をお願いいたします。

○田倉参考人

 参考人の田倉と申します。

 お手元の参考人提出資料○1をごらんいただけますでしょうか。

 きょう御説明させていただくのは、イギリスにおける分子標的薬の費用対効果の評価の例となります。

 2ページ目でございますが、最初にイギリスの化学療法の標準治療について、共有をさせていただきます。最初に選択したお薬、抗がん剤に基づいた化学療法、いわゆるファーストラインの一次化学療法ですが、お薬が効かなくなってきて増悪したときに、お薬をスイッチした二次化学療法の選択か、イギリスの場合は二次化学療法を受けないで、Best Supportive Careと呼ばれる苦痛の緩和等を中心とした医療を選択することになります。また、二次化学療法においても、BSCもしくは死亡という転帰が想定されております。

 このような肺がんの化学療法のストラテジーの中で、今回の評価対象技術でありますが、一次化学療法のステージを対象として、分子標的薬A、その比較対照の技術は、化学療法BC、これは抗がん剤BCの組み合わせのお薬となります。

 ちなみに、対象の集団でありますけれども、分子標的薬Aにかかわる遺伝子Aのミューテーションがポジティブ、陽性の方を対象とした評価となっております。

 ページをめくっていただけますでしょうか。今回の評価におけるエビデンスの選択の方法について、簡単に御説明させていただきます。臨床のデータの選定でございますが、基本的にはシステマティックレビューによって行われておりました。

 ランダム化比較試験の組み入れ基準でありますが、3つのインクルージョンクライテリアを設定しております。

 1つ目は、肺がん化学療法における一次治療であること。

 2つ目は、分子標的薬A単剤と2種類の抗がん剤を組み合せた化学療法の比較試験であること。

 3つ目は、遺伝子変異Aの有無で、サブグループ解析等を行っていることであります。

 このような条件を満たす試験について、レビューを行った結果、最終的に1つの臨床試験、Xと呼んでおりますが、X試験が同定されております。

X試験の概要でございますが、スライドの5ページ目になりますが、基本的には非盲検ランダム化比較試験で、87センター18歳以上の非喫煙者であり、手術不適用の肺がんの患者さん1,217症例をリクルートした試験となっておりました。

 ランダム化として均等に割りつけて、それぞれ遺伝子変異が不明、なし、ありという3つの整理をして、それぞれサブグループ解析を行っております。

 今回の評価でございますが、下の表にありますとおり、遺伝子変異がないグループにおいて、最終的に分子標的薬A132BC、いわゆる抗がん剤のほうが129という母集団となっておりました。

 ページをめくっていただけますでしょうか。ここから分析データの説明を行いますが、今回御紹介している技術評価ですが、承認から間を置くことなく、NICEガイダンスを発行することを目的とした、いわゆるSingle Technology AppraisalSTAと呼ばれるプロセスで評価を実施しております。STAというのは、分析者が企業で、アカデミックグループがそのレビューを行うというやり方でございますので、ここからのデータは、企業側が提出したデータとなります。

 最初に企業側が安全性のデータを提出しておりますが、こちらは有害事象の発生率についての話でございます。有害事象は、好中球の減少、疲労、下痢、脱毛、貧血などでございます。こちらについて、グレードが3、4、比較的重症なものについて、発生率を報告しております。

 表を見ていただくとわかるとおり、分子標的薬Aのほうが、比較的有害事象が少ないということが、御理解いただけるかと思います。

 ページをめくっていただけますでしょうか。続いて、有効性データについて御説明をさせていただきます。

 有効性データのうち、まずは生存率でございますが、スライド9番のグラフに、全生存の確率を示しております。中に分子標的薬A及び化学療法BCの生存曲線を示しておりますが、そのプロット曲線の下の面積が平均生存期間となります。

 下の枠に記載させていただいておりますが、分子標的薬A群は、平均生存期間が25.9カ月、化学療法BC群が22.6カ月ということで、分子標的薬A群のほうが、対象化学療法に比べて、増分生存期間が3.3カ月多くなるという報告となっておりました。

 続いて、同じ有効性データの中で、QOLについて御説明をさせていただきます。

 最初に算定の考え方を御説明させていただきますが、QOLについては、2つの視点から検討を行っております。スライドの11番に当たりますが、上の四角枠の中に、その内容を簡単に記載させていただいております。

 (1)でございますが、QOLの考え方として、増悪するまでの時間の違いから、QOLを評価する方法で整理を行っておりました。

 (2)は、治療法自体によるQOLの違いに着目した整理を行う方法でございます。

 (1)の増悪するまでの時間の違いによるQOLの評価でございますが、こちらは、増悪するとQOLが下がるため、例えば長期で考慮すると、療法からの比較において増悪まで時間が長いほうが、獲得されるQALYが大きくなるという概念でございます。

 (2)の治療法によるQOLの違いにつきましては、右下の図をご覧願いますが、上のほうに(2)という形で記載がございます。基本的に経口薬が注射薬かという投与スタイルの患者さんの負担による違いとか、もしくは副作用の多少、副作用の程度によるQOLの変化を考慮した算定が行われておりました。

 この2つのQOLの算出の考え方について、もう少しイメージを交えて解説をさせていただければと思います。

 ページをめくっていただけますでしょうか。スライドの12番と13番で御説明をさせていただきます。少し見づらくて、わかりづらい絵で恐縮です。

 最初は増悪までの時間の違いによるQOLの値の分析でございますが、こちらについても、3つのステップでQOLの整理を行っておりました。

 上の四角枠にABCと3つ記載がありますが、1つはAに当たりますが、増悪前のQOLの値と増悪後のQOLの値を既存の研究から求めて、結果として、増悪前のQOL0.65、増悪した後は0.47という形で、増悪することによって、0.18ぐらいQOLが下がるというものを整理していたということであります。

 2つ目は、増悪する患者さんの割合を求めるということであります。そちらがBに当たりますが、2つ目のステップとして、具体的には無増悪生存曲線から、増悪前と増悪後の割合を求め、生存曲線に反映するということであります。

 具体的な方法については、下の絵に記載がありますが、簡単に申し上げますと、いわゆるA、1番目のステップで求めたQOLの値と、2つ目のステップBで求めた患者さんの割合、例えば増悪する前の患者さんの割合と、増悪した後の患者さんの割合を求め、増悪する前の患者さんに増悪する前のQOLの状態を掛けあわせ、増悪した後の状態について、増悪後の患者さんの割合とそのQOLを掛けることによって、スライドの13番目の一番下に記載する獲得したQALY、左上にCと書かせていただいておりますが、いわゆる質調整生存年を算出するということを行っております。繰り返しになりますが、いわゆる生存期間とQOLの重みづけを考慮して、QALYを算定しているということであります。

 下の図、左側は分子標的薬の獲得したQALYのイメージであり、右側が対象となっている化学療法BCのイメージでありますが、こちらの差分を求めることによって、分子標的薬Aの獲得したQALYを算定しているということであります。

 結果、右下のほうに書かせていただいておりますが、分子標的薬Aは相対する意味で、化学療法BCに対して、QALY0.187増加したと報告されておりました。

 これが1つ目のQOLの算定の考え方でございます。

 ページをめくっていただいて、スライドの14番をごらんいただけますでしょうか。2つ目のQOLの違いについての整理であります。

 こちらは2つのアプローチで整理をしております。

 ○1経口薬なのか、注射薬なのかということで、こちらについても、既存の先行研究のものを参照して整理を行っておりますが、例えば経口薬である分子標的薬AQOL0.01低下することになります。化学療法BCは、注射薬でありますが、それが0.04になるということが報告されております。

 もう一つ、こちらにおいては、有害事象の発生率によってQOLを整理しております。先ほど申し上げた有害事象について、例えば好中球減少とか、脱毛とかございますが、それに対して、有害事象が発生することによって低下するQOLの程度を他の研究から整理して、設定しております。

 例えばこちらの表の中で説明しますと、下痢などについては、QOL0.05下がるという形で、それに先ほど安全性のところで御説明した発生率を掛けることによって、期待値、母集団全体の平均の値を求めることを行っております。

 ちなみに、QOLにつきましては、臨床現場の専門家、例えば腫瘍内科の先生であったり、がんを専門とする看護師のグループによってレビューをされ、その内容が妥当であるという検証を受けたものでございました。

 続いて、費用について御説明をさせていただきます。ページをめくっていただきまして、スライドの16番をごらんいただけますでしょうか。費用計算の考え方について、最初に申し上げさせていただきます。

 費用計算につきましては、先ほどお話をさせていただいた治療のステップ、ステージに対して、まずは一次化学療法のところで1つ費用の数字をつくり、それ以外、いわゆる二次化学療法及びBSCのところでの費用を算定しておりました。

 一次化学療法の費用につきましては、2つございました。まずは化学療法自体の費用と、もう一つは、有害事象に対応するための医療費という、2つに分けた整理を行っております。

 また、二次化学療法以降につきましては、増悪した後の費用という考え方で整理が行われております。

 その内訳については、スライドの17から数字を入れさせていただいておりますが、例えば一次化学療法における費用でございますが、上に分子標的薬A群、下に化学療法BC群を記載させていただいております。

 分子標的薬A群については、いわゆる材料費と考えられる医薬品、バイオプシーとか、検査の判断にかかわるものを含む遺伝子検査、あとはレジメン処方とか、患者さんのモニター、その他の診料等々を含んだ投与費用、患者管理というもので、単価×数量×小計という形で、それぞれ数字が積み上がっております。

 ちなみに、分子標的薬Aはトータルで1万4,098ポンド、相対する化学療法群は8,928ポンドという数字が報告されておりました。

 もう一つページをめくっていただきまして、スライドの18、一次化学療法において有害事象の費用でございますが、先ほどから何度も申し上げている各種の有害事象に対して、こちらもコスト、単価を算定し、それに対する発生率を掛けて、いわゆる平均的な費用を求めております。

 ちなみに、有害事象の対応に係る費用、単価の内訳は、診察とか検査とか、もしくは抗生物質を投与するような場合においての薬剤費なども含んだものということで、それぞれの有害事象の特性に合わせて、費用が積み上がっていると説明がなされておりました。

 3番目になりますが、増悪した後、いわゆる二次化学療法のステージ以降の費用でございますが、こちらについては、二次化学療法を受ける集団と受けない集団に大別して、それぞれ費用を積み上げてみました。

 詳細は省かせていただきますが、これらの費用をまとめたものが、スライドの20番になります。

 左側に費目がございますが、医薬品、遺伝子検査、投与費用、有害事象とか増悪した費用の部分でございますが、それらに、今、御説明した数字を入れて、合計を示しております。分子標的薬は合計で3万1,539ポンド、化学療法BC群は2万7,902ポンドということで、分子標的薬は対象の化学療法に比べて、3,637ポンド費用が増えるという報告がなされておりました。

 ここまで説明させていただいた効果の値と得られた費用の値から、企業のほうでは費用対効果を分析しております。その分析方法は、ページをめくっていただければと思いますが、増分費用効果比、いわゆるICERと呼ばれる方法で説明がなされております。こちらについては、この部会でも何度か御説明されておりますので、省かせていただきます。

 スライドの23番目に、企業による分析結果が記載されております。いわゆる分子標的薬Aが、対象の療法に対して、どのような増分費用効果比なのかということを説明しております。増加したQALYは、先ほど申し上げたとおり0.187、増加した費用が3,637ポンドということで、トータルの増分費用効果比が1万9,402という結果となっております。繰り返しになりますが、分子標的薬Aは、1QALYを獲得するのに、約1万9,000円かかると推計されております。

 ちなみに、英国においては、費用対効果が優れているという目安を1QALY獲得当たり、約2万から3万ポンドと設定しておりますので、この時点での解析結果は、費用対効果に優れているという目安を満たすという考え方になっておりました。

 ページをめくっていただければと思いますが、この結果を踏まえて、専門家による妥当性の評価とアプレイザルの内容について、簡単に御報告をさせていただきます。

 英国における評価プロセスにつきましては、こちらも何度か御説明があったかと思いますが、1番から7番のステップの中で、今までお話してきたのは、2番目のいわゆる企業側の分析結果の提出です。これからお話させていただくのは、3番と4番に当たるところであります。3番は、本当のサイエンスとして、その結果についての妥当性を評価し、4番でもサイエンスをベースに多様な議論が行われておりました。

 ページをめくっていただけますでしょうか。最後のページになりますが、スライドの2627で、その内容を御説明させていただきます。

 最初にアカデミックグループによる妥当性の評価でございますが、論点は2つございました。左側に書かせていただいておりますが、1つは有効性について、もう一つは、化学療法の費用についてであります。

 細かい点は省かせていただきますが、有効性につきましては、盲検化されていないので、無増悪生存期間、PFSが信頼できるのかどうか。あとは、生存時間解析で用いられているハザード性が確立しているのかという指摘があり、費用につきましては、一律の体表免責を前提にしている投与量は正しいのか、もしくは後発品を用いた価格での分析を行うべきではないか、化学療法のサイクル数が臨床現場の実態と合っているのかという議論がありました。

 それらについて、右側、企業の対応として、再計算を総じて行っておりますが、下に書かせていただいているとおり、再計算の提出後、先ほど説明させていただいたICERの値が、1QALY獲得に3万から4万という形で、大きくなる、悪化するという結果になっておりました。

 この内容を踏まえて、最終的なアプレイザルのコミッティーの議論でありますが、有効性、有害事象については、それぞれ支持できる、信頼できるということで、臨床的な効果の高いお薬であるという結論がなされておりました。

 その他の幾つかの技術的な論点についても、いろいろな議論がなされ、幾つかの再計算もされておりましたが、結果として、1QALY当たりの金額が、費用対効果として容認できるような目安を満たすことができなかったということで、最後、下にコメントを書かせていただいておりますとおり、議論の結果として、がん領域の特異性などを背景にしつつ、最終的には前にも御説明があったかと思いますが、患者アクセススキーム、いわゆる支払調整方式というもので、企業で2カ月分の医薬品の費用を負担する、NHSに請求しないことを条件に分子標的薬Aを肺がんの一次療法として、遺伝子変異aが陽性の方を対象に推奨するという結論をしておりました。

 イギリスにおける分子標的薬の費用対効果の評価のケースを御紹介させていただきました。以上であります。

○関原部会長

 どうもありがとうございました。

 続きまして、池田参考人より説明をお願いいたします。

○池田参考人

 池田でございます。

 私からはドイツの事例につきまして、簡単に御説明をさせていただきます。

 スライド番号の2をごらんいただきたいと思いますが、ドイツでは、従来は原則として、製造販売企業の申請価格に基づいて、自由価格で販売され、新薬は保険償還されてまいりましたが、2011年にAMNOG、医薬品市場再編法という法律が施行になりまして、それ以降、少し方式が変わっております。具体的には上市後の早期の段階から、企業と疾病金庫中央連合会(Spik)との交渉において合意された価格が、実質的な保険償還価格となるという制度に改めてられております。

 具体的なプロセスは、図に示したとおりでございますが、約1年以内にいわゆる追加的有用性の評価が行われます。これによって、追加的有用性がないと判断された薬剤については、従来の参照価格のグループに入る。そして、追加的有用性ありと判断されたものにつきましては、価格交渉になるわけですが、追加的有用性の大きさに応じまして、価格が設定される。ここで合意に至らなかった場合には、費用対効果評価を実施し、費用対効果評価を反映した価格が設定されることになっております。しかしながら、現時点では、まだ費用対効果評価の提出に至った事例はないということでございます。

 スライド番号3でございます。追加的有用性の評価でありますけれども、連邦共同委員会と言われるドイツの公的医療保険における最高意思決定機関、GBAですが、GBAが指定する比較対照に対して、当該薬剤の追加的有用性があるかどうかを検討するということを行います。このときはEBMの原則に基づいて、科学的に実施をされます。

 比較対照でございますが、実際の臨床現場等で現時点で最も用いられているものが指定されることが多いので、臨床試験における比較対照薬、あるいはプラセボといったものにはならないということも多く出てまいります。

 スライド番号4でございますが、2012年7月時点での追加的有用性評価の対象となった薬剤の評価結果でございますが、追加的な有用性がないと評価されたものは22品目、追加的有用性ありとされたものは15品目でありますが、その中で、中程度が9品目、小さいという評価が4品目、定量化困難と評価されたものが2品目でありました。

 具体的な評価の例でございますが、今回は2つの事例を簡単に御紹介いたします。スライド番号6でありますが、この薬剤は、2型糖尿病患者に対するDPP-4阻害薬という種類のお薬でございます。

 投与対象となる患者群を3群に分けておりまして、この薬だけで治療をする単剤療法の群に対しては、GBAのほうで比較対照とSU剤ということで設定がされております。その他、こちらに示しました3群について、それぞれ比較対照薬が設定され、これに基づいた追加的有用性評価が実施されたわけであります。

 スライド番号7にございますように、この中のabcの患者群の中で、acに関しましては、これを評価するための臨床試験が存在していないということで、評価が困難、定量化困難ということでございます。

bに関しましては、比較対照となった臨床試験が存在はしていたんですが、両群で薬の投与方法が若干違っておりまして、薬の効果の違いなのか、投与方法の違いなのか、その試験からは判断できないということで、この試験は追加的有用性の検討には適さないという判断で、結果的には追加的有用性は証明されていないという評価となっております。

 スライド番号8は、治療薬Bでございます。こちらは多発性硬化症という病気に対する治療薬であります。こちらでも投与対象の患者を3群に分けておりまして、その中のaの場合には、治療薬のcが比較対照としてふさわしい。ほかの患者群、bcに関しましては、インターフェロンが比較対照としてふさわしいということでございます。

 これに基づいて、有用性の評価が行われてございますが、スライド番号9をごらんいただきますように、結果的にはcの患者群に対しましては、国が指定したインターフェロンを比較対照とする試験成績が参考とされまして、結果的に小さな追加的有用性があることが示唆される。ヒントと書いてございましたが、小さな追加的有用性が示唆されるという評価に至っております。

 以上、追加的有用性の評価の状況でございます。

 次に費用対効果の評価事例について、御紹介をさせていただきます。

 最初に申し上げましたように、実際の価格設定に対して、費用対効果評価が実施された事例は現時点ではございませんけれども、評価法についての試行例が小数報告されております。

 効率性フロンティア法でございますが、11枚目のスライドをごらんいただければと思います。これは田倉参考人資料の22枚目にありました、費用対効果評価の一般的な考え方のグラフに考え方としては近いものでございますが、大きな違いは、横軸が費用、縦軸が効果でございまして、ドイツ以外のほかの国で一般的に書かれるものとは、縦横が逆になっておりますので、そこは御注意いただきたいと思います。すなわち、左上にあるほど費用は安く、効果が優れていることになりますので、左上に点が打たれているものほど、費用対効果がよいことになります。

 例えばある治療領域について、複数の医療技術があったときに、それを全て費用と効果のグラフの上に示していく。ここではABCDEFという6つの技術が書いてございます。この中で既存の技術がABCDということで、これについて線を引いていくということですが、技術Cについては、左上の線よりも内側に入っておりますので、費用対効果の検討からは1回外すということで、費用対効果のよいもの、ABDをつなぎ、DEの線を延長していていき、それよりも外側、左上側に新しい技術が描かれるならば、その技術は費用対効果がよい。もしもBDの延長線上の線よりも下側、すなわち技術Fのようなところに点が打たれるならば、この技術は費用対効果に劣るということで、評価されるものでございます。

12枚目をごらんいただければと思いますが、もしも先ほどの技術Fのようなところに点が打たれた場合には、その技術の価格を引き下げることによりまして、点は左のほうに動いていくということでございますので、少なくとも延長線上に乗るまで価格を下げる、これが効率性フロンティアを用いた価格設定の基本的な考え方になります。

13枚目でございますが、効率性フロンティア法と、先ほどのイギリスのNICEなどで用いられている一般的な方法について、比較を示しております。

 比較対照でございますが、NICEなどでは、原則として1つが選ばれておりますが、効率性フロンティア法では、当該治療領域の複数の医療技術が対象となります。

 効果指標ですが、NICEなどでは、主にQALY、質調整生存年など、疾病横断的な指標が用いられることが多いですが、効率性フロンティア法では、主に疾病特異的な指標、この領域について評価ができる指標ということで、用いられることが多いようでありますが、実際にはQALYを否定しているわけではなくて、ガイドラインの中にも、QALYというのは選択肢として入っております。

 また、これは学会発表レベルなんですが、2009年にC型肝炎に関して、効率性フロンティア法を使った研究が、研究所の委託研究として報告されております。その中では、疾病特異的尺度に合わせまして、QALYを用いた効率性フロンティアの結果が報告されており、QALYも複数の指標の中の1つとして、利用されるということであろうと思います。

 費用対効果の図示でありますが、縦軸と横軸です。先ほど申し上げたように、図に書くときは、逆転させて書くということです。

 評価法ですが、いずれもICER、増分費用効果比、すなわち結んだ線の傾きで評価します。NICEなどの方法では、傾きがきついほうが費用効果比は悪くなりますが、ドイツの場合は逆になります。傾きが緩いほうが、費用効果比は悪いことになります。

ICERの基準値ですが、イギリスでは一定の標準的な値を設定していることがありますが、効率性フロンティア法では事例ごとに設定する。すなわち、先ほどの線の延長線上、つまりその傾きが1つの基準値になります。

 使用実績ですが、効率性フロンティア法は、使用実績あるいは具体的な試行例も、まだまだ少ないということでございます。

 少ない中で、14枚目でございますが、最近、出ました比較的詳細なレポートがございますので、こちらを簡単に御紹介いたします。

 抗うつ薬について評価をしたものでございまして、評価対象薬剤は○1○2○3○4の4剤、比較対照としては○5○6○7○8、プラセボとなってございます。

 効果指標としては、疾病特異的なさまざまな指標を用いて評価をしております。

 有効性のデータにつきましては、いわゆるシステマティックレビュー、メタアナリシスの指標ですが、詳細につきましては、本日、割愛をさせていただきます。

15枚目に費用算出の方法を書きましたが、これも他国と同様に、どのような患者さんの状態がどういう確率で起こり、そのときには、どのような費用が発生するかということを、費用の期待値を計算するという方法で、複数の薬剤の間の費用を比較しております。すなわち、先ほどのグラフの費用と効果の費用のところは、薬剤費だけではなく、関連した全ての医療費、あるいはさまざまな種類の費用が含まれているものでございます。

 具体的には15枚目の左上に書いてあるような、さまざまな医療費、あるいはこの分析では、追加的に社会の立場からの分析も行っておりまして、間接費用、いわゆる生産性損失を入れた分析結果も報告されております。

16枚目でございますが、これは実際の分析の具体的なものの抜粋でございますので、後ほどごらんいただければと思います。

17枚目ですが、費用対効果の計算をして、グラフを書いてみたところ、実際的に意味のある線がつなげたのは、3つの効果指標だけでありまして、残りのものについては、意味のある線が描けない、あるいはデータが少なくて、つまり2カ月後の再発について評価した臨床試験が少な過ぎて、全て薬剤について、こういった点が書けなかった、分析が行えなかったということも1つございます。

18枚目でございますが、実際の効率性フロンティアのグラフでございます。うつ病の評価、抗うつ薬の評価の中で、アウトカムとしてよく用いられるものに、寛解というものがございます。2カ月後の寛解がどの程度得られたかが縦軸、そして、薬剤費のみならず、関連する全ての医療費を含めた費用が横軸でございますが、効率性フロンティアの線が、プラセボから薬剤○6、薬剤○7とつながっておりまして、そこから先の延長線上ということですが、本来、比較対照とすべき薬剤に関しましては、全てその線の内側に入っているということでございます。

 単純にこれを使って価格を設定するとすれば、19枚目にございますように、線より右側にあるものは、少なくとも線上に乗るまで、費用を下げることになります。ただ、これは薬剤費以外のものも横軸に入ってございますので、19枚目の下のグラフにありますように、薬剤費分としては、かなり大きく下げないと、この線上には乗ってこない。つまり薬剤費以外のその他の費用が一定でございますので、薬剤費としては、かなり下げることが必要になるということでございます。

20枚目、21枚目は、ほかの効果指標、反応、レスポンスという指標を使った結果でございますが、こちらは同様の考え方ということで、割愛をいたします。

22枚目は、QOLの値を使ったものですが、そもそもQOLを測定した臨床試験が少ないので、ほとんど点が書けていないところでございます。

23枚目は、意味のある効率性フロンティアが書けなかった指標です。

24枚目も同様でございます。

25枚目でございますが、仮に効率性フロンティア法を機械的に適用したとすると、現状の薬剤価格をどのくらい引き下げる必要があるかということを、この報告書の中で示しております。

 例えば薬剤○1でございますが、1箱当たりの価格なんですが、現行241.18ユーロであるものが、仮に2カ月後の寛解を効果指標とした効率性フロンティア法で価格を設定するとすれば、30.66ユーロまで下げる必要がある。もしも2カ月後の反応を効果指標とするならば、9.30ユーロまで下げる必要がある。現実では考えられないような調整幅が求められているということでございます。もちろんこれは試行例でございまして、今、これがそのまま価格の設定に使われているということではございません。

 最後26枚目でございますが、効率性フロンティア法の課題として挙げられておりますのが、まず効果指標のとり方によって、先ほどごらんいただいたように、結果が変わってまいります。したがって、価格決定などに使おうとしますと、1つの結論にたどり着くことが難しいという問題点がございます。

 これに関しましては、研究所で複数の効果指標を1つに統合する方法、いわゆるQALYのような単一の効果指標に統合する方法というものも、現在、研究中でございまして、例えば階層分析法、あるいはコンジョイント分析というものが、研究されているということでございます。

 2つ目には、効果指標のとり方によっては、効率性フロンティア、意味のあるフロンティアを書くことができないということが、問題としてございます。

 3つ目としては、政策においても、研究においても、ドイツ以外では用いられておりません。ドイツでも、実際の価格決定における使用経験は現状ではないといったところでございます。

 4点目としては、当該の領域の治療法全てを原則として評価対照といたしますので、当該治療群の全ての技術の費用対効果を検討しなければならず、分析者の負担が大きいということが、課題として挙げられてございます。ただ、まだ使用経験が少ない、試行例にとどまっておりますので、今後、事例の蓄積を重ねることにより、この評価法についても、より確立していくのではないかということで、今後もドイツの動向というのは、我々も注意して見てきたいと思います。

 以上でございます。

○関原部会長

 両先生、どうもありがとうございました。

 きょうの議論は、イギリスとドイツの薬剤の具体的な評価例について議論するわけですが、ドイツの評価方法について、御紹介がありましたので、最初に若干の時間をとりまして、ドイツの評価方法に限って御質問を受けて、その後、本論に入りたいと思います。

 ドイツの評価方法について、御意見、御質問がありましたら、どうぞ。

 鈴木委員、どうぞ。

○鈴木委員

 ドイツの最新の情報を伝えていただいて、ありがとうございました。

 ドイツの場合は、基本的にQALYを使わないでやるということで、イギリスのようにはやらないぞという意思が強く感じられました。表の指標も逆に使用したり、絶対同じにはしないという強い覚悟のようなものが感じられて、非常に心強い気もしました。

 伺いたいのは、ドイツの場合は、見るところ、実証データだけでできている感じがしますけれども、いわゆるQALYで使われているような仮想データは使われていないと、確認してよろしいのかということです。

 それから、イギリスで行われているように、結果が一旦出た後に、アプレイザルによって、それをひっくり返すようなことは、ここには書かれていませんけれども、そういったことは行われていないのでしょうか。あくまでも実証データだけで、実証データのみによって出た結果を使うことでやっているのではないかと思うんですが、それでよろしいのかどうかを確認していただきたいと思います。

○関原部会長

 池田先生、2点について、お答えいただけますでしょうか。

○池田参考人

 御質問いただきました点でございますが、第1点目、いわゆる臨床試験で得られた実測値のみを使って、推計値は使っていないかということでございますと、先ほど時間の関係もあり、十分な説明ができておらないところでございますが、14枚目のスライドをごらんいただきたいと思います。こちらには、効果指標として、原則的は臨床試験から直接得られたデータとして、2カ月後の反応、寛解など5種類の効果指標による分析が行われておりますが、それと同時に、長期的予後の推計を行っております。一番下に書いてございます、12カ月後の寛解、有害事象による治療中断、再燃といった3つの効果指標につきましては、マルコフモデルを用いた推計によりまして、効果指標を算出し、それに基づいた効率性フロンティアが行われているということでございます。

 2点目でございますが、いわゆるアセスメントに加えて、アプレイザルの仕組みがあるかどうかということでございますが、これらの結果は、研究所で分析あるいは評価が行われておりますが、その後、実際的な意思決定をするのは、GBAという、先ほど3枚目で御紹介をしました、連邦共同委員会でございます。研究所で出しました評価結果に関しまして、GBAの中でさらに別の要素も勘案し、レベルが多少変更になっている例も報告されてございます。

○関原部会長

 鈴木委員、よろしいですか。

○鈴木委員

GBA、連邦共同委員会というのは、日本でいえば、まさに中医協です。中医協で最終的に決定をするという仕組みなんですね。日本と同じ医療保険制度の国だし、むしろ日本がまねしたんだと思いますけれども、中医協がありますから、そういう意味では、非常に近いと思いました。QALYを使わず実証データでやるんだというところは、まだ例数は少ないけれども、イギリスとは違った体系で行っている国のデータが出てきたことが確認されたということで、非常によかったと思います。ありがとうございました。

○関原部会長

 安達委員、どうぞ。

○安達委員

 1つだけ、池田先生に申し上げます。大変詳細な解説をありがとうございました。

 最後の26の効率性フロンティアは、私は以前にもお伺いしたことがあって、実際には余り使われていないので、実際の例がないんだという御回答をそのときにもいただいたんですけれども、一番上です。効果指標のとり方によって、結果が変わるため、1つの結論にたどり着くことが難しい。これは確かにあるんですけれども、どの効果指標をとるかということについて、全体のシステムの中で、ある程度とるべき効果指標の優先順位を決めるか、対象品目によって効果指標を判断するとしても、判断するときの基本的な考え方を定めないと、効率性フロンティアはなかなか使いにくいところがあると思うんですけれども、そういう検討はドイツではされているんでしょうか。効果のとり方に際する基準のつくり方みたいなものです。

○関原部会長

 池田先生、お願いします。

○池田参考人

 御質問いただきました、効果指標はどれを採用するかということに関しては、価格の設定の時点で、実際に費用対効果評価が提出された事例はございませんので、実際にどのように1つに決めるのかということについての情報はございませんが、ただ、先ほども申し上げましたように、研究所のほうで、複数の効果指標の中で、どこに重みを置くかという重要性に関して、例えば患者さん、あるいは医療者に対して、調査を行いまして、それに基づいた重みづけの仕組みについての研究が進行中でございます。既に階層分析法という方法については、抗うつ薬で、そうした分析を行った結果も公表されております。したがいまして、恐らくそうした統合的な指標の使用も1つ視野に入れているのではないかと考えられます。

○関原部会長

 嘉山委員、どうぞ。

○嘉山委員

 イギリスにしても、ドイツにしても、これを見れば、医療というのは複雑だということがよくわかって、先生方もおわかりになったと思います。簡単に1つの指標では決められないということが、出ていると思います。

 質問です。今の安達先生の何の指標を使うかで全然違うということは、前から日本版のQALYをつくるためには、指標をどうやって選ぶかが、一番のポイントだということをお話してきたんですけれども、テクニカルな問題でも問題があると思います。

11ページのスライドを見ていただくと、新しい技術だとこれは全く使えないんでしょう。なぜかというと、先行した技術がない。11ページでいうと、BDのところに線を引いてやっていますが、例えば費用はこの場所でいいんですけれども、技術Dの効果が、Bとそんなに差がない場合は、引いてしまうと、平行になってしまうんです。並行になると、幾らでも費用がかかって、ちょっとだけ効果があっても、対費用効果があると判定するのか、ラインからどのぐらい離れた場合、判定するのかということは、どういうふうに決めていらっしゃるんでしょうか。テクニカルな問題です。

 私が言っていることは、効果でDがかなり低い場合です。だけれども、Bよりちょっと上がっている。その線でいくと、ほとんど平らになってしまうんです。平行で、幾らでも費用をかけて、少しだけ効果を上げられるという薬が出てきた場合は、対費用効果があると考えるのか、考えないのか。その辺の基準をつくっているのか。それによって、このシステムは全く意味がなくなってしまうんです。

○関原部会長

 池田先生、どうぞ。

○池田参考人

 御質問の点でございますが、この領域に他の治療法がない場合、点がほとんど描けないということ、場合によっては、比較対照薬がプラセボであって、プラセボと実薬と2つしかデータがないとか、さまざまな状況が考えられます。今回の抗うつ薬の例で見る限りは、複数の薬剤があり、相当な臨床試験が参考にされておりますが、それでも意味のある図が描けないという効果指標が多数ございまして、ここでどのように価格をセットするかということについては、私の読む限り、報告書の中では、それに対しての意見は書いてなくて、意味のある効率性フロンティアが書けた2つの効果指標について、仮にこの線に基づいて価格調整をしたら、幾らになるという数値が報告されております。

 また、いわゆる確率的感度分析といいまして、この値もばらつきをもった値ですので、そのばらつきも勘案すると、価格はこの範囲に入るのが妥当であるという分析はございます。

 したがいまして、このような意味のある図が書けないような効果指標に関して、どのように価格を設定するのかということについては、現状では情報がないところでございます。

○嘉山委員

 それはほとんど先行のスタディーがない場合なんですけれども、そうではなくて、今、線が書けても、平行で、11ページでいうと、技術Eにカラーが薄くついています。そのラインからどのくらい離れていれば、対費用効果があると見るんでしょうか。縦横の関係でということです。

○池田参考人

 基本的には、線に乗ることが求められております。線に乗る、あるいは線よりも左側になる。したがいまして、先生がおっしゃったように、ほとんど水平の線ですと、かなり延ばしていかないと交わらないということで、これを機械的に利用して価格を設定すると、現実とはほど遠いような価格が設定されることが懸念されます。

○嘉山委員

 最後なんですけれども、ドイツではまだ研究中ということなんですが、今、先生はいみじくも全ておっしゃられているんですが、例えば先行データがない場合、あるいは今のように平行の場合の対費用効果を評価する場合には、できないと判定するんですか。現時点ではできないというシステムも1つつくっておかないと、全部をやるというのは、無理があることがよくわかりました。自然科学は余りにも複雑系ですから、1つの何かで当てはめるのはなかなか難しいです。ですから、もしもそれができない場合は、ドイツではどういうふうにしているんでしょうか。

○池田参考人

 繰り返しになりますが、ドイツではまだこれは試行例、計算したらこうなったという結果でございまして、これをどう価格設定に使うかということについては、現状、具体的なものは報告されていないと認識しております。

○嘉山委員

 委員長、ドイツに限ってしまったんですが、イギリスについては、質問してはいけないんですか。

○関原部会長

 イギリスの評価の手法等については、前に大分議論したこともあります。

 石山委員、どうぞ。

○石山委員

11ページの図で、今の議論では、技術Eか技術Fかの選択です。Fは当然採用されない。仮に技術Eが採用されたとします。すると技術Eも既存の技術になりますが、効率性フロンティアはBからEに引くことになりますか。

○池田参考人

 基本的にはそのように描かれるであろうと考えられます。

○石山委員

 そうすると、BからEに引かれた線の上のほうでないと、次は採用されないということになります。次に、Fが既存のフロンティアの上にいったとします。そうすると、このカーブはBからFに引かれることになると思いますので、効率性フロンティアは常に変化していくということでよろしいわけですね。

○池田参考人

 新たな技術が導入された場合、あるいは価格も変動していきますので、そのたびに、グラフの形状が変わっていくと理解してよろしいと思います。

○石山委員

 わかりました。

○関原部会長

 白川委員、どうぞ。

○白川委員

 効率性フロンティアは、現時点で全く適用されていないということですから、ドイツの薬価制度全体のことで質問したいのですが、2枚目のスライドで、Spikとの価格交渉で合意に至らない場合、費用対効果評価を実施するとなっておりますが、現実に合意に至らないケースが発生した場合で、費用対効果評価が実施されると発売をとりやめるというケースも当然想定されると思うのですが、今の説明ですと、かなり通すのが大変という印象を受けているのですが、発売をとりやめるケースはあるのかどうか。薬の場合は、類似品があれば、別に発売をとりやめても大きな影響はないでしょうが、画期的な新しい抗がん剤のようなものであれば、社会的なニーズを踏まえて、とりやめができないケースも想定され得ると思うのですが、そうはいっても、価格交渉ですから、価格が折り合わないケースは当然あり得る。その辺のところは、現実どうなっているのかということを、もし御存じでしたら、池田参考人から教えていただきたい。

 これはAMNOGという再編法ができた後のスキームということですが、この前はどういう価格決定方式になっていたのかということも、参考までにお聞かせいただければと思います。

○関原部会長

 池田先生、お願いします。

○池田参考人

 第1点目でございますが、大変申しわけございませんが、発売をとりやめた事例というのは、業界誌等でそういううわさを見る程度でございまして、実際のところは、把握してございませんので、宿題とさせていただければと思います。

 2点目でございますが、医薬品市場再編法が入る前の制度でございますが、新薬に関しましては、原則として、企業の申請価格に基づいて自由価格で販売され、保険償還がなされていたということでございます。

 また、1989年から、参照価格制度が導入されておりまして、参照価格のグループに入った医薬品については、類似した医薬品ごとに、自由価格ではございますが、償還額としては、上限額が設定をされるということでございます。

 現状では2枚目の一番上に書いてございますように、数量ベースで75%、金額ベースで40%の医薬品が、参照価格のグループに該当するものということでございます。

○関原部会長

 白川委員、どうぞ。

○白川委員

 確かに参照価格制度はございますが、その前から、疾病金庫との価格交渉は、ここでいいますと、25%ぐらい行われていたということでよろしいですね。

 それと、全体からいうと、4ページ目のスライドに、追加的有用性が大、中、小とありますが、これは、日本の画期性加算であるとか、有用性加算といった加算制度と似た仕組みがあり、そうした加算がSpikとの交渉を経て反映されると見てよろしいでしょうか。

○関原部会長

 池田先生、お願いします。

○池田参考人

 1点目でございますが、新薬に関しましては、原則、自由価格でございまして、医薬品価格例というものによって、製薬企業が製造業者出荷価格を自由に設定できることが保証されていたと聞いております。2003年からは、製薬会社に対して、保険者への割引制度が導入されたということではございますが、十分な医薬品の費用の適正化には至らず、このような新しい方式が導入されたと聞いてございます。

 また、この仕組みが、我が国における加算の仕組みと類似のものであるかということでございますが、ある部分は大変似たところもございますが、そうでないところもあり、考え方としては、有用性の評価に従って価格の設定をするという点では、類似した面もあると考えていいのではないかと思います。

○関原部会長

 それでは、本題の具体的な薬剤が出ておりますので、その議論に入りたいと思います。その過程で、どうしても評価方法と絡むということがございましたら、そこで改めて質問いただくということで、薬剤の評価の具体例等について、御議論を始めていただきたいと思います。

 嘉山委員、どうぞ。

○嘉山委員

 田倉先生の出された資料で、前回は機械だったので、今回のお薬とは全く違うと思います。評価の指標がちょっと違っただけで、かなり違ってくることが、これでわかったんですけれども、例えば今回の9ページの指標をプロブレッション・フリー・サバイバルで、それをクオリティー・オブ・ライフに代償しているんです。オクリティー・オブ・ライフそのものではないですから、例えば前立腺がんデータは、バイオマーカーが上がってきている。これは再燃しているわけです。フリーではないわけです。そのときはフリーではないんだけれども、クオリティーが保たれている症例はたくさんあるわけで、何もプロブレッション・フリーだからといって、クオリティーが下がる例ばかりではないんですけれども、これは代償している。

 9ページのこれを見ますと、面積で見ているんです。普通、我々がんの研究者が見るときには、効果があるか、ないかは、50%生存で見るんです。ですから、50%のところで線を引いて、ここのところで、Aという薬とBという薬のプロトコルで、どのぐらい生存年数に差があるかという方法もあるんです。ですから、なぜ面積を使ったのか。患者さんのためには、なるべくお薬は通してあげたんですけれども、反対に切られる場合もあるので、指標の決め方をどういうふうにしているのかというのが、非常に疑問に思いました。

 あと、スライド13Cのところで、N週で評価しているんですけれども、この薬の場合は抗がん剤ですから、サバイバルレートで見ています。そうすると、普通、効果を見るときは5年なんです。N週というのは、どういうふうに決めるのか。

 いつも言っているように、指標の決め方で全然変わってしまうので、日本版QALYをつくるんだったら、どういうふうにお考えかということは、ずっと言い続けているんですけれども、先生方の頭脳を使って、これはN週だけれども、日本ではこういうことがいいのではないかという御提案をしていただけると、現場の医師も、患者さんも、また薬剤会社もいい薬をつくったんだから、認められたということで、みんなが納得すると思います。ある規定がちょっと間違うと、とんでもないことになるというのは、ここにあらわれていると思うんですが、何を指標にするかということの基準をどういうふうに考えるか。

 先生がお出しになったものでは、14ページに現場の医師とか、副作用が出た場合にはクオリティーが下がっているという、先行研究があったのでいいんです。クオリティー・オブ・ライフとサバイバルがほぼ一致している例だから、これはいいんですけれども、そうではなくて、サバイバルだけで、クオリティー・オブ・ライフに一致しているという先行研究がない場合、どうやってやるのかというのは、非常に問題になると思います。そういうときには、どういうふうにこの基準をおつくりになろうとしているのか、そこをお聞きしたいです。

○関原部会長

 田倉先生、よろしいですか。

○田倉参考人

 4つほど御指摘をいただいたと思っております。ありがとうございます。

 最初に、今回、英国のケースにおいて評価をされる方々の考え方でありますけれども、基本的にはQALYを使って評価をしています。QALYの算定についてですが、がん領域では、ターミナルのような患者さんもいらっしゃるので、直接患者さんからデータがとれない点もあります。なおかつ母集団の予後、いわゆる生存期間のところの数字についても、クロスオーバーという形で、はっきりとわからないところがあるので、それらを踏まえて、今回スライドに載せた12番、13番の考え方により、QALYを算出しているようです。

QALYの算出の考え方につきましては、1つは、患者さんの割合を、疫学的に算出しています。そのときに、今、先生から御指摘のあったPFS、無増悪の期間とそこの患者さんの割合を数字としてもってきたということであります。逆にいうと、PFSだけでQOLをつくっているわけではなくて、QOL自体については、別の研究で有害事情が起きるとか、もしくは増悪が起きることによって、どれだけQOLが変化するかというのを、単位として算定をしていて、それをQOLの変化と、今、申し上げた患者さんの割合を掛けて、QALYを算出しているというのが考え方であります。

 改めて御説明をさせていただければ、ここのQALYの算出、PFSみたいなものについては、どちらかというと、患者さんの割合の数字をとるための指標として、もちろんそこに増悪があるか、無いかという判断の材料にもなっていますが、増悪があったり、もしくは有害事情が発生した段階においては、QOLの変化がどれぐらいあるのか、健康度がどれだけ変化するのかということを算定して、数字をつくっておりますので、そういった意味で、代償という表現になるかもしれませんが、幾つかのデータを合わせて数字をつくったということでございます。

 そこの辺りから、少しテクニカルに説明が難しくなりますが、結果として、先ほども中央値というか、50%のようなお話をされていましたが、今回については、大きな母集団の中で、お一人の患者さんのQOLQALYの変化を算出するということなので、トータルの母集団での面積を1回つくり、それを患者さんの平均という形、今回は割合という概念が入っておりますので、例えばスライドの13番目ですけれども、下段にある、獲得したQALY、従来よくQALYの絵で出てきている横軸に期間、縦軸に患者さんのQOLの概念を入れた数字をつくっているということでございます。

 一旦ここでお返しさせていただきます。これで御回答になっていると思いますが、いかがでしょうか。

○関原部会長

 嘉山委員、どうぞ。

○嘉山委員

 今回出されたものはいいんです。これは問題ないんですが、先行研究がない場合はどうされるのかということを聞いているんです。現実として、土屋専門委員とか、加茂谷専門委員とか、昌子専門委員はよく御存じだと思いますが、イギリスで抗がん剤は3分の1ぐらいしか通っていないんです。イギリスでは、QALYを使っているために、患者さんはドラッグラグで大変な目に遭っているわけです。QALYは、患者にとっては欠陥商品だと思っているんです。ですから、この例はいいんですけれども、そうでないものは、多分はねられているんだと思いますが、先行の研究がない場合は、サバイバルでは代償できます。だけれども、サバイバルとクオリティー・オブ・ライフが一致しているという先行研究がない場合は、こういうふうにできないわけで、そうすると、2万から3万ポンドで、これはだめだとぽんとはねられて、採用されていないんです。ですから、QALYには欠陥があると思っています。これは満点です。だけれども、そうではない、先行研究がない場合は、どういうふうに使っているのかということをお聞きしたんです。

○田倉参考人

 ありがとうございます。

 先行研究がない場合については、先生が御指摘のいろいろな制約条件が発生すると思っております。一方で、代入されるQOLの数字を短期間でつくるケースもあるようでありますので、そのような医療経済研究を追加並行した研究などを、多少早い時期から準備をしてやるとか、評価のための工夫をしていかないと、多分いけないと思っております。いずれにしても、私も先生の御指摘の部分はよく理解できます。そのような中で、工夫をしながら、数字をつくっているのが、イギリスの例だと思っております。

○関原部会長

 嘉山先生、どうぞ。

○嘉山委員

 イギリスのQALYに負けないような日本版のQALYをつくって、ドラッグラグが、これによって保険収載されないことが起きないように、要するに患者さんが使えるような状態にしていけるようなQALYをつくっていただきたいと思います。

○田倉参考人

 1点だけ、先ほど御質問のあった、週の単位の表現でございますけれども、こちらについては、出典というか、もとのレポートがそのような形を中心にしていました。私の解釈でありますが、今回、肺がんでありますが、手術不適用の患者さんということで、Median Survival Time20カ月から30カ月という比較的短い患者さんの成績を議論するため、こういう単位で感度を高くした議論がなされていたと理解しております。

○嘉山委員

 先ほど池田先生がお話になったように、もしできない場合には、QALYに掛けないで、なるべく取り入れるような、QALYで対費用化効果の判断は無理だという道もつくっておく、日本版QALYをつくっていただければと思います。

○関原部会長

 それはこれから検討していくことなので、また御議論いただきたいと思います。

 鈴木委員、どうぞ。

○鈴木委員

 イギリスの話ですが、12ページ、13ページ、14ページは、それぞれ大事なところが、さらっと既存の研究からと書いてあるんですが、既存の研究からというのは、症例の実証データからではないということですね。それはどのようにして、それぞれ出してきているのかということがあります。

 例えば14ページの○2の有害事象発生率によるQOLの違い、発症時のQOLの低下も、A群とBC群の数字は同じです。これは薬による違いではなくて、事前に数値が決められている。これは仮想データだと思いますけれども、こういうものが入っているのです。

18ページの費用も、A群とBC群で同じ好中球減少が93ポンドだから、もう数値が決まっています。この薬を使った場合のケースではなくて、好中球減少は幾らと決められているという感じです。それらのデータは、仮想データが入って、出てきた結果であり、しかも、最終的には企業がやることだから、私などが考えると、企業は自分のところに有利に出したいと思うでしょうから、その結果を最終的にはアプレイザルとか、そういうところでひっくり返すようなことになり、そこに無理があるような感じがするので、よほどこの仕組みをしっかりつくらないと、難しいという気がします。

 恐らくドイツは、その反省を踏まえて、できる限り実証値でやろうということで、今、試行錯誤しているという気がします。既存の研究をどうやって進めていくのか、そこをもうちょっと詳しく教えていただけますでしょうか。

○関原部会長

 田倉先生、どうぞ。

○田倉参考人

 御指摘ありがとうございます。

 2つ御質問をいただいたと思っております。

 まずは、他の調査、研究からのQOLのデータのお話でございますが、こちらについては、スライドの14ページ目となります。説明は十分にしておりませんでしたが、イギリスの国民の方々にQOLの変化についてデータをとるという方法で行っております。簡単に申し上げると、これは仮想データというよりは、実データになり、きちっとした理論に基づいた効用値の算出であります。例えば、増悪前、もしくは副作用がある、無しというものについて、QOLの変化をある母集団について定量的に数字をつくり、その結果を先ほど申し上げたモデル、例えば割合に入れ込む議論をさせていただいているということであります。

 もう少しお話させていただくと、こちらのデータについては、がん治療、特に今回は末期に近いところもあるので、患者さんから直接データをとることはできないということですので、一般の国民の方々に、その病態を想定していただいて、それについてQOLの変化を御回答いただく、いわゆる直説法というやり方で実施していたということでございます。

 さらに、発症率やいわゆる費用など、また対象技術と比較対照が同じ数字になっているというご指摘については、単純に分けて数字をつくるかつくらないかということとともに、有害事象の発症や状態について、例えば健康の状態が薬の違いによって違うのか、違わないのかという議論になります。今回紹介した研究においては、そこは違わないという前提で、それも実データとして数字をつくっていたということであります。

 あと、費用のほうも、有害事象が発生した段階は、もとのお薬がどうであろうと、寄与する内容が同じであったら、結果として医療費も同じになっていたという解釈で、私自身は整理させていただいております。

○関原部会長

 鈴木委員、どうぞ。

○鈴木委員

 今、御説明いただいたんですが、我々自然科学を学んできた者にとっては、研究するときに0.50.5は、1ではなくて0.25だということで、不確実なデータを重ねれば重ねるほど、真実から遠ざかっていくと習ってきたので、こういうものを織り込んでいくと、数字上は実証データでも、仮想データでも変わらず、結果だけを見るとわからなくなります。そこがQALYを使った場合の問題だと思います。

 今、イギリス人100人に聞きましたという話ですけれども、どんな人に聞いたのでしょうか。健康な人に聞いたとしたら、その人に、あなたががんになって、好中球が減少したときは、どんな感じですかと、3段階とか5段階で聞くんでしょうけれども、そんなデータを使って比較できるのかというのが素朴な疑問ですし、実証データと仮想データが混じっていて、結局、出てきた数字では見分けがつかないというところが、大きな課題として残ります。

 こういった問題点を踏まえて、先ほど関原先生はドイツからイギリスに戻ってというお話でしたが、私はイギリスからドイツに進んでいるような気がするのです。ですから、改めて問題点が我々と同じような感じになってきていると思いますし、そこは我々がやる場合に解決していかなければいけないと思っております。

○関原部会長

 一言言いますと、戻るというのは、議論の進め方のことです。イギリスとドイツのどちらが進んでいるではなくて、ドイツの例の後、イギリスとドイツの具体例をお話しましょうということであって、どちらが進んでいるとか、そういうことを言ったつもりはないので、誤解のないようにお願いいたします。

 ほかにございますか。白川委員、どうぞ。

○白川委員

 全体の印象的な話で申しわけないのですが、2号側の先生がおっしゃるとおり、基礎になるデータの信頼性など、いろいろな問題があると思いますし、嘉山先生がおっしゃったとおり、このケースはいいけれども、このケースはちょっとおかしいのではないかということも、当然あり得ると思います。100人全員が満足するような仕組みを最初からつくるのは無理だと思いますので、まずはトライアルをしながら宣伝していくというのが、費用対効果評価については、とるべき道筋だと感じております。

 もう一つ、田倉先生に質問なのですが、25枚目のスライドを見ますと、英国における評価プロセスが書いてあり、最終評価案に対して、関係者からの要請というステップが入っています。日本的に考えれば、アプレイザルコミッティーの評価を経た最終評価が決まれば、それで結果を発出というのが、ごく普通だと思うのですが、ここでわざわざアピールを入れているというのは、どういう意味合いなのか。実際にこのアピールというのは、どういう内容が行われているのかということを、御存じでしたら、教えていただきたい。

○関原部会長

 福田先生、お答えください。

○福田参考人

 福田でございます。

 前にこのプロセスの資料を出させていただきましたので、私が理解している範囲でお答えさせていただこうと思います。先生の御指摘のとおり、アプレイザルの段階で、さまざまな関係者が関与して、いろいろな意見を言って、最終案をまとめます。ただ、当然でありますが、これは構成員として決められたメンバーだけでの話になりますので、これを最終的に発出する前に、途中でパブリックコメントがありますが、それを行うという位置づけだと理解しております。

 パブリックコメントを求める段階で、主に関係者等から意見がある場合があって、実際にアピールに基づいて、もう一度、議論が見直されるというケースも拝見したことがあります。大きく結果が変わったということは、余り知らないのですけれども、実際にこういう意見がありましたということで、議論したケースはございます。

 お答えとしては、アプレイザルの場合には、関係者が参加はしていますが、構成員が限られているので、広く一般の人に意見を求めるという段階をとっていると理解をしております。

○白川委員

 そのためには、最終評価案を公表しなければいけないという話ですね。公表して、もしもアピールがあり、修正が必要であれば、修正した上で、最終結果を発出しますということですか。

○福田参考人

 はい。

○白川委員

 仕組みとしては、よくわかりません。アプレイザルの構成員を見ますと、NHS、患者、医療関係者、専門家、製薬企業等の利害関係者がみんな入っているわけです。そこで決めたものをまた修正するというステップを踏むのは、いかがなものかという感じがしますが、福田先生はどうお考えでございますか。

○関原部会長

 福田先生、どうぞ。

○福田参考人

 ありがとうございます。

 プロセスについては、今の御指摘のとおりで、最終評価案が全てオープンにされた上で、パブリックコメント等を求めるという形になります。御指摘のとおりで、アプレイザルの中で、関係者はかなりかかわって議論をしますので、最終的な変更が少ないと思いますけれども、プロセス自体は非常に慎重に、一般の方の意見を少しでも反映するようにということで、されていると思います。

 実際にここには書いてありませんが、イギリスのNICEの仕組みですと、市民団体がNICEでの評価のやり方について意見をするような会合等も持たれておりますので、最近、特にそういう傾向が強くなっていて、一般市民の方の考え方も取り入れています。なので、ステップからいうと、確かに時間がかかるとは思うのですけれども、そういう仕組みになっていると思っています。

○関原部会長

 実務で実際に体験されてきた土屋専門委員から、手が挙がっていますので、どうぞ。

○土屋専門委員

 白川委員の御質問ですが、まずアカデミアを含めたAppraisal Committeeの構成員が評価し、案ができた段階で、様々なステークホルダーに意見を聞いていただきます。そしてパブリックコメントにおいては我々も意見を出します。しかし、それらの意見は必ずしも全部取り入れられるわけではなく、基本的にはAppraisal Committeeの中で決まったことが、ほぼ最終結果として出てくるケースが多いと思います。そこで、不服に思う者がいれば異議申し立てをします。これがすぐ通ればいいわけですが、通らない場合は、もう一つ先のステップとして、裁判で訴えることになります。

 実際、幾つかの理由で裁判を起こすことになりますが、例えば弊社の事例では3つの理由を挙げました。そのうちの2つが勝訴しまして1つで敗訴しました。しかしながら、Appraisalの結果についてはすぐには変わらず、次の機会に新たなAppraisalをやりまして、今度は認められるという、非常に長いプロセスをとっております。

 これがこれまでの英国の仕組みで、御存じのように、来年から新しいValue based pricingに移行するということで、今、検討中だと思います。

 以上です。

○関原部会長

 どうもありがとうございました。

 それでは、時間が大分オーバーしていますので、鈴木委員プラス万代委員で終わらせていただきます。

 鈴木委員、先にどうぞ。

○鈴木委員

 イギリスはかなり長い間これをやっているので、いろんな問題が起きて、改善、修正しきているのです。ですから、今頃になってイギリスの最初のころのものを入れても、それこそ裁判沙汰みたいな話が頻発すると考えられます。イギリスも来年度からVBPという新しい手法を入れるということですから、それも見る必要があると思うし、ドイツの新しい効率性フロンティアも、今、どんどんデータが出ていると思うので、それも見る必要があると思います。また、フランスは医療技術評価の三大国の一つだそうですけれども、ドイツのような独自の指標もつくらず、かといってイギリスのようなQALYを用いた上限価格設定もしないで、方法論としては、最初から決めないで、その都度、対象に合わせて指標を設定し、少しずつ積み上げていくという方向でやっているのだそうです。そういうデータも出てきているので、我が国でできるだけいいものをつくるためには、フランスのやり方も、日本に近い医療制度でもありますし、最新のところを教えていただいて、また議論していければ、よりよいものができると思いますので、ぜひよろしくお願いしたいと思います。

○関原部会長

 万代委員、どうぞ。

○万代委員

 私は質問でございます。細かな点で申しわけありませんが、費用の算出です。分子標的薬を一次化学療法に使用するに当たっての費用対効果だと思うんですが、その際に二次化学療法とか、あるいはPSCについての費用も盛り込むことについては、どんなふうに考えればよろしいか。むしろそういうものは外す。日本では二次化学療法で終わることは、必ずしも多くなくて、三次化学療法とか、あるいは二次化学療法についても、減少させて投与するとか、いろんな方法がとられているものですから、そういったものは入れてしまわないほうがいいのではないかと思うものですから、そこら辺のところを教えていただければと思いました。

○関原部会長

 田倉先生、どうぞ。

○田倉参考人

 ありがとうございます。

 今回ご紹介した分析は、期間を生涯とした算定を行っております。私の御説明が十分でありませんでしたが、スライドの13番目の最後にQALY獲得の数字が出ており、こちらは生涯モデルを設定して算定をしております。平均約30カ月という条件であります。以上から、全ての化学療法のサイクル、もしくはいわゆるBSCみたいなものを含めて、バランスをとって費用を積んで、最終的に費用対効果を算出しているというのが、御回答になろうかと思います。

○万代委員

 そうしますと、ピュアの薬の費用対効果の増分比は、出にくい場合があるのではないかと懸念してしまいますけれども、イギリスの考え方としては、こういうことが多いと認識すればよろしいということでしょうか。

○田倉参考人

 今回のケースは化学療法であるということと、イギリスにおける各種制度を勘案して、先方は、ご説明したフレームでまずは計算をしているということになります。

○関原部会長

 よろしゅうございますか。

 これは肺がんの4期の相当厳しい患者の5年をとったもので、非常に具体的な話なものですから、割に説明がしやすいと思います。

 私が1つだけ質問したいのは、先生が試算された医薬品のプライス、1万2,200ポンドとか、既存のBCというのは、日本での投薬に比し随分低いからジャスファイしやすいのではないか。それから、遺伝子検査も、最近、盛んに乳がんで話題ですが、日本では20万円位のようで、その水準からすると、私自身は、試算より分子標的薬を使った治療は高く、増分費用というのはもっと多いように思います。値段のところについて、コメントがあったら教えていただきたいです。

○田倉参考人

 ご質問については、網羅的に、横並びの数字を存じ上げているわけではありませんので、あくまでも私見にすぎませんが、若干、議論はあろうかと推察します。ただし、ご紹介した数字は、NICEのレポート、いわゆる既存の報告書では、黒く塗りつぶされている点も多くありますので、シンプルに逆算してイメージがわかるように推計値を入れておりますので、もしかすると、実際はもう少し高い可能性もありますし、低い可能性もあるかと考えておりますので、そこは御留意いただければと思っております。

○関原部会長

 それでは、私のほうで質問してしまい、時間が大分オーバーしていますので、きょうの議論はこの辺で終わらせていただきたいと思います。

 事務局、次回の予定を教えていただけますか。

○佐々木医療課企画官

 医療課企画官でございます。

 次回の日程につきましては、未定でございます。決まり次第、また御連絡させていただきます。

○関原部会長

 それでは、これをもちまして、きょうの部会は終わりにさせていただきます。

 どうもありがとうございました。


(了)

ホーム> 政策について> 審議会・研究会等> 中央社会保険医療協議会(中央社会保険医療協議会費用対効果評価専門部会)> 第12回中央社会保険医療協議会費用対効果評価専門部会議事録(2013年7月31日)

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