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2013年7月31日 第21回独立行政法人評価委員会議事録

○日時

平成25年7月31日(水)9:55~12:04


○場所

労働委員会会館講堂


○出席者

永井部会長、内山部会長代理、本田委員、福井委員、藤川委員

○議事

(以下、議事録)

 

○永井部会長

 それでは、定刻より少し早いのですが、皆様おそろいですので、ただいまから第21回厚生労働省独立行政法人評価委員会高度専門医療研究部会を始めさせていただきます。皆様におかれましては、お暑い中お集まりいただきましてありがとうございます。

 本日は、祖父江委員、斎藤委員、花井委員、三好委員が御欠席です。

 では、本日の議事について事務局から説明をお願いいたします。

 

○政策評価官

 それでは、議事の説明に入ります前に、本年72日付で国立病院課長の異動がございましたので御紹介させていただきます。古川国立病院課長でございます。

 

○国立病院課長

 古川でございます。よろしくお願いいたします。

 

○政策評価官

 それでは、本日の議事について御説明いたします。本日はお手元の議事次第にありますとおり、国立成育医療研究センターの平成24年度の業務実績の個別評価について御審議いただくこととなっております。なお、お手元に配布しております資料の中で、右隅に机上配布資料という縦書きの「高度専門医療研究部会平成24年度実績に係る自己評定一覧表」という資料があるかと思います。本日の審議は、全体の項目をこの区分に従って、左側にありますとおり、4区分、1グループから4グループに分けまして、グループごとに担当から御説明いただき、その後質疑という形で進めていただければと存じます。

 また、同資料の右側には、平成24年度の実績評価に係る法人の自己評定と、右側の一番端には、昨年御審議いただいた平成23年度の評定結果も記載しておりますので、評定をお付けになる際の御参考としていただければと思います。

 なお、委員の皆様方には評定記入用紙【資料1-5】に評定とその評定を付した理由を記入しながら議事を進めていただくことになりますが、余り会議の時間がありませんので、記入が終わらない場合は、資料をお持ち帰りいただいて御記入いただくか、本日記入用紙の電子媒体をメールにて送付いたしますので、そちらに御記入の上、提出いただくことも可能です。その場合は大変お忙しい中恐縮ですが、86()までに事務局宛てに御提出いただきますようお願い申し上げます。事務局からは以上です。

○永井部会長

 ありがとうございました。では、国立成育医療研究センターの個別評価に入りたいと思います。最初に、五十嵐理事長から御挨拶及び平成24年度における業務実績概要の御説明をお願いいたします。

 

○国立成育医療研究センター理事長

 おはようございます。今日は御評価の機会を頂きまして感謝申し上げます。それでは、座ってお話をさせていただきたいと思います。資料1-1を御覧ください。成育医療というのは、今回初めてこの委員会の委員に御就任された方もいらっしゃると思いますので、少し御説明いたします。周産期、小児期、思春期を経て、次世代を育成する成人期までのライフスタイルの中で生じる様々な疾患の研究・予防・治療をすることを意味しております。

 それでは資料1-14ページを御覧ください。まず概要ですが、当センターは平成2241日に独立行政法人化されまして、本年で4年目を迎えております。センターの業務あるいは理念は、ここに記載されているとおりです。現在、役員数は常勤1名、非常勤5名。職員数は常勤938人、非常勤は512人の人員で運営をされております。病院の規模は、病床が490床あります。入院患者は平均して約1395人、外来患者数は約1,008人となっております。次の5ページには、センターの使命、目的を記載させていただきましたので、読んでいただきたいと思います。

6ページです。まず取組実績についてですが、臨床研究に関しては「臨床を志向した研究・開発」ということで、産学官との連携強化を1つの目標にしております。産学連携の基盤整備ということで、臨床研究センターの知材・産学連携室が、企業等の産業界あるいは大学等の研究機関と病院並びに研究所との連携を図っておりまして、共同研究数も平成24年度は平成21年度に比べて94%増加しています。それから、小児総合医療施設協議会というのがありまして、これは小児病院の団体で31施設が入っておりますが、これを基盤にして小児治験ネットワークというのを作りました。小児病床数としては約5,500床から成る31施設を中心に、文書管理システムあるいは進捗管理システムのIT化と統一化を図っております。さらに、これを基盤にして、昨年度から5施設を皮切りに小児治験ネットワークを構築して臨床治験を始めたところです。昨年度は新規が3件承認されました。それから「病院における研究・開発の推進」では、臨床研究機能を強化するために、医師主導治験を含む臨床研究支援体制を整備いたしました。そのためには医師2名、そのほか薬剤師等をこのメンバーに加えることにいたしました。この臨床研究センターは、現実に臨床研究数を増やすことを目的としておりますが、計画・立案支援件数は、平成24年度は25件に増加しています。それから実施支援件数も平成24年度は10件、データマネジメント機能の充実についても、昨年度は18件に関連した支援をしております。

7ページを御覧ください。研究については、小児病院を基盤にしておりますので、やはり再生医療が一つの大きな目標になっております。「重点的な研究・開発戦略の考え方」にありますように、ヒトのES細胞を樹立したり、あるいはES細胞を使った移植応用への事業を開始したり、そこから分化されたフェオクロムサイトーマの原因になる褐色脂肪細胞を作製することにも成功しております。これを中心とした研究成果として、英文は昨年度は224件、和文は62件、合わせて286件のパブリッシュメントをしております。それから小児の慢性疾患というのは、遺伝子異常等を基盤として、それに加えた形で病気が発症することが多いわけですが、これに関しては、原因遺伝子等の検索などをして2種類を同定して発表させていただいております。国際共同研究の成果としては、海外のいろいろな保健の指標について評価をして、ここにありますように損失生存年数、障害調整生命年、グローバル疾病負荷の3つの指標について検討いたしまして、昨年度はLancet誌に3件発表することができました。

8ページです。医療について御説明したいと思います。やはりナショナルセンターですので、高度先駆的な医療あるいは医療の標準化を大きなミッションにしております。まず高度先駆的な医療としては、昨年度も御報告いたしましたが、小児肝移植を非常に活発にやっておりまして、昨年度は46例、そのほとんどが生体肝移植でありますが、生存率は98%で日本の平均が約9割ですので、非常に高い成功率を誇っております。それからその中の一部は、小児の脳死肝移植も含まれております。そのほか胎児治療としては、双胎間輸血症候群に対するレーザー治療も行っておりまして、これは68件で我が国最大の数を誇っております。それから、症例数はそんなに多くありませんが、胎児胸水に対するシャント術も9例で、これも非常に成績の良い結果を得ております。

 それから、患者の視点に立った良質かつ安心できる医療の提供ということで、セカンドオピニオン外来を充実したり、あるいは医療安全管理体制を充実することを行ってまいりました。

 そのほか小児医療の中心としては、やはり小児医療あるいは周産期の治療ということで、なかなか世田谷区においても分娩を扱う施設が少なくなっているというのが現状でして、現在大きな病院に分娩が集中しているという傾向が見られますが、私どもの所も分娩数が増えておりまして、昨年度は1,942件の分娩を受けております。そのうちの7割がハイリスク分娩で、決して通常の分娩を増やしているわけではないということを御理解いただきたいと思います。それから、小児医療についても様々な問題がありますが、やはり救急外来患者をたくさん持っている、ここにありますように約年間33,000人の救急患者を受け入れています。それから、救急車の搬送受入台数も3,600台で、恐らく東京では一番多いのではないかと思います。東京都には、東京都が指定している4つのこども救命センターがありまして、そのうちの1つを私どもが担っておりますが、患者の受け入れ等はこの4つのセンターの中で一番を誇っております。

9ページです。その他の取組としては、小児医療あるいは周産期医療を推進する将来のリーダーを作るということが非常に重要と考えておりまして、人材の育成にも力を入れております。「成育医療に精通した人材の育成」あるいは「モデル的研修・講習の実施」を行いましてレベルアップを図っているところです。ここには書いてありませんが、このほか総合診療部においては、42名の後期専門医を育成しております。そのほか外科や産婦人科等の専門研修医がおりますので、毎年約60名程度のトレーニングをしている若い先生を預かっているというのが、私どもの大きなミッションの1つになっております。

 次に医療の均てん化と情報の収集・発信ということで、標準的な医療が全国で実施されるためのシステムを作成し、これを広めているところです。それから情報の発信にも努めているところです。

 それからナショナルセンターの役割としては、国への政策提言も非常に重要でして、例えばコホート研究資産を活用したゲノム解析及びエピゲノム解析の実施、あるいは国が行うiPSES細胞の承認や治療に関する委員会への参画もさせていただいております。「国際貢献」としては、海外に向かって手術をしに行くこともありますが、そのほかに海外からの研究者の受入れ等も多数行っているというのが現状です。

 それから効率的な業務運営体制・効率化による収支改善ということもナショナルセンターの1つのミッションだと思います。そのためには様々な複合的な取組もしなくてはいけない状況になっております。昨年から問題になっておりました内部統制体制を更に確立することも、昨年度は1年間かけてやってまいりました。法令遵守の厳格化についても努力しているところです。経営についても、これは非常に大きな問題なのですが、人件費率37.7%ということで圧縮を試みております。

12ページにありますような様々な施設基準をクリアすることによって医療収益が増えてくるわけですが、このように、施設基準をクリアすることによって、経常利益は幸いに昨年は約8億円の黒字を得ることができました。これは3年連続の黒字達成ということで努力はしておりますが、残念ながらこのセンターも約11年を経過いたしまして、施設あるいは医療機器その他が買換えの時期になっております。ですから、来年、再来年に関しては、この黒字状況を維持することが本当にできるかどうかについては何とも言えませんが、それについても努力する次第です。以上、概略を御説明させていただきました。どうもありがとうございました。

 

○永井部会長

 ありがとうございました。

 では、これから個別評価に入りますが、個別評価の進め方について御説明いたします。評価シートの個別項目を4つのグループに分けておりまして、グループごとに評価を行ってまいります。評価の指標ですが、計画どおりであれば「B」、中期計画を上回っていれば「A」、想定外の要因を加味して、かつ計画を大幅に上回っていれば「S」評価ということです。

 では、最初に第1グループ、項目12の研究開発に関する事項、臨床を志向した研究・開発の推進、病院における研究・開発の推進について評価を行います。法人から説明10分、委員の評定と質疑15分の合計25分でお願いいたします。

 では、説明をお願いいたします。

 

○国立成育医療研究センター臨床研究センター長

 臨床研究センター長の藤本です。1グループについて説明をさせていただきます。評価シートの1ページを御覧ください。(1)1の「研究所と病院等、センター内の連携強化」を説明いたします。また、説明資料については、1ページの資料1から、5ページの資料2が該当しております。まず、研究所の部長による病院のレジデントを対象にしたセミナーや、あるいは研究ユニット単位の共同研究会議を定期的に開催しており、トータルで59回開催しております。実際には平成21年度が52回を7回、すなわち13.5%上回ったという数値です。成育医療研究開発費の申請におきましては、病院と研究所等、要するにセンター内の連携を義務づけました。その結果、平成24年度における病院と研究所等との新規の共同研究数は28件ということになりました。実際には、平成21年度の6件を上回っております。

2ページ目を御覧ください。2の「産学官等との連携強化」です。説明資料については、資料36ページから資料6を御覧ください。1の企業及び他の研究機関との共同研究の実施数については、毎年大変順調に伸びております。特に平成24年度は、平成21年度のほぼ倍になる勢いになっております。2の小児治験ネットワークについては、先ほど総長から説明がありましたが、これは事業費が昨年度で終了しました。31施設の中でネットワークを構築しましたが、中央IRBが実質的に機能して、平成24年度には9回開催し、企業治験2件、医師主導治験1件の審査が終了し、現在治験を実施中です。特に企業からの実施可能性の調査も、このネットワークに対して平成23年度は9件、平成24年度は14件の問合せがあり、順調に実績を伸ばすことができました。このネットワークはこれで終わりというわけではなく、次に述べる臨床研究中核病院の中で引き続き機能させることになりました。

3に関しては、資料612ページ、横長のポンチ絵がありますので、そちらも併せて御覧いただきたいと思います。これは平成24年度の補正予算から始まった「臨床研究中核病院整備事業」に応募して、その指定を受けることができました。実は早期・探索型臨床試験拠点については、既に2つのナショナルセンターが指定されておりますが、今回の臨床研究中核病院におきましては、ナショナルセンターの中では、私どものセンターが唯一の指定です。ここではポンチ絵を見ていただくと分かるのですが。

 

○永井部会長

 資料番号は何番ですか。

 

○国立成育医療研究センター臨床研究センター長

 資料1-412ページを御覧ください。12ページからが説明資料です。いろいろと書いておりますが、まずは施設の中で横断的な推進体制を構築して、オールジャパン体制でニーズを拾い上げて、医師主導治験やICH-GCPに準拠した質の高い臨床研究の実施を目指すということです。具体的には16ページを御覧ください。左側に当センターの中での組織体制が書いてあります。右側には、先ほど述べた小児治験ネットワークをより拡大した形で、全国規模のネットワークを作り、その中からシーズを拾い上げて、臨床試験に持っていくと考えております。

3の「研究・開発の企画及び評価体制の整備」については、成育医療研究開発費の新規課題採択に関しては、外部評価委員会での審査の前に内部での評価を行っております。これは提案課題全てに対してプレゼンテーションをしてもらい、順位を付けております。平成24年度は、その結果の評価に応じて、研究費の傾斜配分の考え方を導入しました。また、研究の評価に関してはインパクトファクター以外に、被引用回数も参考としておりまして、平成24年度は人事にも一部この方針を採用しております。

3ページ、4の「知的財産の管理強化及び活用推進」については、1に記載しているように、一昨年度から顧問弁理士による相談体制を導入しましたが、それが定着しておりまして、平成24年度も職務発明の審査委員会の審査件数は16件と、平成21年度を大幅に上回っております。実際には平成23年度よりも若干件数としては低いのですが、16件のうち15件が新規の申請です。それは平成23年度の8件を大幅に上回っております。知的財産の審査に係る手順を明確にいたしましたために、手際よく審査することができました。また、研究者の意識を高めていくために、知的財産セミナーを開催しましたが、その中で特に研究者がミスしがちなものが数多く紹介されました。例えば、学会発表時での留意点などが非常に参考になったという状況です。

6ページ、(2)病院における研究・開発の推進、1の「臨床研究機能の強化」については、1の臨床研究支援のことです。先ほど総長からも説明がありましたように、要するに現場からいかにシーズを拾い上げて、それを計画書として完成させ、倫理委員会の承認を得て、実際に実施すると。全ての段階で恐らく支援が必要だろうと考えておりますが、そのためにここで記載したような、いろいろな能力を持ったプロフェッショナルたちのチームを臨床研究センターが中心になって作っております。研究の計画・立案に関しては、治験推進室並びに臨床研究推進室が担当しておりますが、臨床研究センター全体では25件と大幅に伸びております。うち2件は小児ネフローゼ症候群に関するもので、高度医療制度を念頭に置いた臨床試験です。

 治験に関しては、資料820ページを御覧ください。平成24年度には治験の実施数は18件ですが、その中で新規治験は5件でした。実は昨年度には、申請から症例登録までのFirst patient inの期間を110日と目標を設定しましたが、残念ながら、それを達成することはできませんでした。これは自閉症を対象とした薬剤2剤に係る3件が大幅に登録が遅れたことが理由です。資料1-420ページを御覧ください。これが実績です。実際には、「平成23年度」となっておりますがこれは「平成24年度」の間違いです。申し訳ございません。治験の申請からIRB、承認、そして契約までの日数は31日と非常に短いのですが、要するにFirst patient inの期間が非常に長くなってしまっているということで、この理由は先ほど述べた自閉症に対する薬ですが、適応外使用が非常に進んでいる状況があったことや、定期的に受診と採血が必要ということで、なかなか治験に入りづらい状況があったということです。これは薬剤を除くと目標を達成することができました。

2の「先端的医療の基盤・手技の開発推進」に関しては、先ほどありましたように、肝移植に係る余剰検体を用いて、肝細胞移植の臨床研究などや、慢性肉芽腫症の遺伝子治療に向けた準備が完成しており、該当患者を待つばかりという状況です。また医療機器に関しては、胎児疾患への応用を目指した内視鏡や超音波診断装置の開発を目指しておりますが、平成24年度は、内視鏡については医薬承認が可能なレベルにまで開発が進んでおります。

 最後に、2の「倫理性・透明性の確保」については、当センターでは、臨床研究・疫学研究の審査は倫理審査委員会が、治験の審査はIRBが担当しております。いずれも定例化されており、それぞれ13回、10回開催され、その概要は速やかにホームページで公開しております。すなわち審査概要のホームページ更新は、それぞれ12回、10回の更新を行い、透明性の確保に努めております。また、倫理審査の際には、倫理研修の終了を義務づけておりますが、そのために受講の確認を行っております。さらに患者や家族からの問合せが容易となるように、説明文書に問合せ先の記載、あるいは研究結果の公表に関する記載が十分に書かれているかどうかを、各計画書で確認をするという作業を行っております。以上で、私からの説明を終わります。

 

○永井部会長

 それでは御質問をお願いいたします。研究のところで「S」評価を付けていらっしゃいますが、想定外の成果というのはどういうところでしょうか。

 

○国立成育医療研究センター臨床研究センター長

 まず1つは、共同研究が非常に進んでいることが挙げられると思います。全体で24件あり、その成果の多くのものが実際には外部の企業、あるいはアカデミアとの共同研究が入っております。それが最終的には特許出願に結び付いてきているというところが非常に大きな成果かと思っております。

 もう1つは、当センターの中での臨床研究の支援の数が非常にたくさん伸びているということも、3年経ってやっと臨床研究センターの役割が認知されてきて、非常に活用していただいているという現れかなと思います。それは非常にいいかなと思います。

 

○福井委員

2点ほど伺います。1つは、臨床研究の支援のスタッフの数と、どういうバックグラウンドを持っている方が専任でやられているのか、パートでやられているのか、その状況を教えていただきたいと思います。

○国立成育医療研究センター臨床研究センター長

 実際に私も担当しておりますが、治験推進室長が1名、医師でPMDAの経験もあります。臨床研究推進室長が1名、これも医師です。その2人が中心となっております。治験推進室のほうが非常に充実しており、そこには専任の医師がおります。その方が多くの所を担当していると。それ以外にCRCの方が薬剤部から2名、看護部から2名専属で作業をしてくれております。そういう方々が基本的には常勤のスタッフということです。それ以外に事業費、あるいは研究費で雇用している非常勤の人が数名いる状況です。

 

○福井委員 

 ドクターであればいいということではなくて、研究そのものの専門性を持った方かどうかという意味のバックグラウンドを伺いたいのですが。つまり、例えば統計のPHDやマスターを持っている方とか、疫学をちゃんと勉強している方とか、そういう意味です。

 

○国立成育医療研究センター臨床研究センター長

 分かりました。疫学のほうは、生物統計の専門家はこれから雇用しようと考えております。そこの足りない部分は、スポット的にいろいろお願いしていることと、研究所のほうでPHDを持った方が部長として2名ほどおりますので、その方の支援もいただいている状況です。

 

○福井委員

 最後におっしゃった倫理審査の件ですが、倫理委員のクオリティについては何か対応されていますか。外部の方もいらっしゃると思いますし、内部の方もいらっしゃるはずですが、審査する方々のクオリティなり、研修なりです。

 

○国立成育医療研究センター臨床研究センター長

 基本的には講習会を開催して、どういう視点で審査が行われるべきかということは勉強していただいていると思っております。

 

○永井部会長

 よろしいでしょうか。

 

○藤川委員 

2点伺いたいと思います。1点目は、「S」を付けられた理由の1つとして、共同研究が非常に増えた、倍増に近い状態という点が挙げられるのだと思います。素人考えで申し訳ありませんが、共同研究を行うに当たって、当然、お金もかかると思っております。件数が増えたというのと、金額が同じように増えているのかという金額規模がどうなのかという点をお聞きしたいと思いました。

 それから、特許に関しては取得も重要だと思いますが、要らないものの放棄なども必要だと思っているのですが、その辺りの記述が見当たらなかったのでお願いします。

 

○国立成育医療研究センター臨床研究センター長

 金額はどれを基準にお話すればいいのか難しいのですが、いわゆる公的研究費の金額については、恐らく研究所から数字が出てくると思います。今回は、共同研究についてはいろいろな形があり、特に企業との共同研究の場合は、企業から研究費を頂戴してやる場合もありますし、あるいは共同研究者として来ていただいてやる場合とか、いろいろなパターンがありますので、決して金額ベースで考えるというわけにはいかないかと思います。実際にはそれでどういう成果が出たかと。特に特許に結び付いているかどうかという辺りが重要な評価点かと考えております。

2つ目は、特許の整理ということですが、実は国の時代はヒューマンサイエンスのTLO、あるいは企業が全額負担するという2つの方法しかありませんでした。ということは、今は維持しているというか、検討しないといけないものはほとんどがそういう仕組みの中でのものですので、まだ十分に整理が必要なものというのは、それほど多いわけではありません。今後、それは考えていくべきものだろうと考えております。

 

○内山部会長代理

 研究所と病院との連携を強化されているということで、非常に素晴らしいことだと思います。私どもの評価のやり方の1つの問題点として、数字に表れたもので持っていくものですから、これでいくと、研究と病院が連携するための会合をどんどん開いていかないと増えていかないし、共同研究数もどんどんやっていかなければいけないということがあるわけです。その中の1つで、成育研究開発費申請というのは、組織内の研究費ですか。この中で病院と研究所との共同研究を義務化したということですが、実際はどちらから話を持ちかけることが多いのでしょうか。さらに、成果として、大学などでも最近、リサーチマインドを持った臨床医が少ないという現状もあるわけです。したがって、病院の中で、このような研究がやりたいと研究所に声をかけるような人たちが少しでもたくさんいてくれると嬉しいと思ったものですから、お聞きする次第です。実際にはどうなのか。

 もう1つは、組織内の開発申請ですが、先ほど回数だけと一言申し上げたのは、回数だけ増やそうとすると、どうしても組織内でもコンペティションが減ってしまって制限することにならざるを得ない。本来なら、コンペティションがないといけないと思うのですが、回数が評価のもとになってしまうと、研究費を少なくしてでも回数を多くしようという心配がないかどうかとか、要するにクオリティの問題等々で教えていただきたいと思います。

 

○国立成育医療研究センター臨床研究センター長

 まず1点目です。どちらからアプローチするのかということですが、これは基本的には双方だと思います。既に基盤として病院の先生方が研究所に来て研究をされると。逆に、研究所のスタッフが病院の医師として、併任して診療されるという基盤がありましたので、それを発展するような形で、今回研究費の採択に関しては、そういうふうなルールを決めようということで、より連携を活性化させようということです。もちろん成育医療研究開発費は、運営費交付金の中から出しているものです。

 

○国立成育医療研究センター理事長

 補足させていただきます。先ほど医師になった3年目から3年間、42人の後期専門医、専門研修医を私どもはトレーニングしているのですが、希望者には半年間研究所のほうで研究することをトレーニングの一環として認めるようにしたところ、今年から1人、3年間の間に研究をしたいという方が出てきておりまして、これから研究所のほうで研究する予定になっております。

 

○永井部会長

 ほかにありますか。

 

○内山部会長代理

 話題は変わりますが、連携大学院等々はどのぐらい提携されているのですか。

 

○国立成育医療研究センター理事長

 連携大学院は5つの大学と組んでおりまして、昨年度からは東京大学とも1名ですが、生殖・発達・加齢医学専攻の中の枠に1名だけ連携大学院の大学院生を認めていただきました。

 

○永井部会長 

 論文数が少し伸びていて結構だと思いますが、引用回数はまだ法人化前に達していないのですね。これは気を付けて見ていっていただきたいと思います。別にハイインパクトジャーナルでなくても良いのですが、どこの雑誌でも引用されることが大事だと思うわけです。やはり世の中が変わっているのですかね。情報が増えてきていますから、少し良い雑誌に出しても、引用数はそんなに伸びないのかもしれませんが、Lancet2本出されたということですから、来年期待できると思います。全体として、この表はお分かりでしょうか。5つのセンターについて全部記載されています。何を期待しているかというと、破線が法人化前を45年後には超えてほしいと。せめて赤線を超えるような成果が中期計画の終わりのときに出てほしいということなのですね。総じて見ると、大体みんな右肩下がりなのです。幾つかは良い所はあるのですが。これは1つは情報化時代になっていて、やはり情報を発信してもインパクトが埋まってしまうという時代の変化もあるのではないかと思います。ですから、論文の数が増えたというだけで、良しとしないでいただきたいと思いますので、よろしくお願いいたします。よろしいでしょうか。

 

○藤川委員

 先ほどの追加の質問ですが、共同研究の面で私が「金額が」と申し上げたら、人、物、金という部分があると。それは確かにおっしゃるとおりだなと思いました。そうであれば、31件倍増しましたという内訳としても、人がどれぐらいとか、お金がどれぐらいとか、物がどれぐらいというような、内訳の要素が前期と比べてあるのだろうと思うのです。それは規模がなるべく大きいほうが、より良い結果があるとは限らないが、結び付きやすいのかなという発想があります。特許件数に結び付くかどうかという辺りが指標だとおっしゃっていましたが、件数としてはそこは倍増しているわけではないことからすると、効果が倍と倍ではないなというところもありますので、せっかく倍増したことについてはもう少し突っ込んだ効果を説明していただければと思った次第です。

 

○国立成育医療研究センター臨床研究センター長

 少し補足させていただきます。特許出願については、平成24年度は15件が新規出願でしたので、そういう面では、平成23年度よりは大分伸びたかなと思っています。共同研究の申請が非常に伸びた背景には、当センターの中でのアナウンスというか、これは非常に大事なんですというキャンペーンがかなり効いたかと思っております。特に企業との共同研究を実施するに当たっては、きちんとした契約書の下にやることが、最終的な成果の取扱いに関しても非常に大事になってきますので、そういう点で、そこの部分からきちんとやりましょうというキャンペーンが、成果としてだいぶ現れてきたのではないかというふうに考えております。

 

○永井部会長

 よろしいでしょうか。それでは第2グループ項目34にまいります。研究・開発に関する事項、担当領域の特性を踏まえた戦略的かつ重点的な研究・開発の推進、医療の提供に関する事項、高度先駆的な医療、標準化に資する医療の提供についての評価です。法人から説明10分でお願いいたします。その後15分の質疑応答となっております。

 

○国立成育医療研究センター研究所長

 まず、評価項目3については、私、研究所長の松原から御報告させていただき、その後、評価項目4については病院長の松井病院長から説明させていただきます。

 評価シートの8ページを御覧ください。一番右のカラムに沿って御説明いたします。「担当領域の特性を踏まえた戦略的・重点的な研究・開発の推進」についてです。センターで様々な研究が行われておりますが、その中で最も私たちが力を入れているのは再生医療です。平成22年度、平成23年度に引き続いて、再生医療センター内のセル・プロセッシング・センターで、移植時の障害となるヒト以外の異種動物成分を一切使用しない培養条件を用いて、ヒトES細胞3株を樹立しております。これまでのものを合わせると7株樹立しております。国内では、ほかに京都大学から5株樹立しておりますが、これは日本一の樹立数です。将来的にはヒトES細胞を用いて、高アンモニア血症を生じる先天性代謝異常症の患者さんで、肝移植が困難な症例に対して、経門脈を通して移植することを目指しております。それを目的として、PMDA、国立医薬品食品衛生研究所との共同で、革新的医薬品・医療機器・再生医療製品実用化促進事業で、そこに書いてあるタイトルですが、これを開始しております。

 平成24年度はヒトES加工医薬品に向けたバンクの手順書を作製し、安全性を評価するための細胞のバンク特性解析を設けて、細胞の有効性を担保する疾患モデル動物の試験デザインを確立するなど、臨床応用に向けて着実に研究を進めております。これに付髄して、再生医療に係る原著論文として、例えば褐色脂肪細胞、これはやせるための脂肪細胞として最近注目されておりますが、よくその機能は分かっておりません。こういったものの確立に成功するなどの成果を上げております。

 次に原著論文数については、先ほどからお話に出ておりますが、平成24年度は286件の原著論文を出しております。そこの下に表がありますが、平成21年度から順調に論文数としては増えてきております。論文数の中味は和文は62件で横ばいですが、この中身はほとんど英文で増加している状況です。これがどのくらいあと引用されるかということについては、今後注意深く見ていきたいと考えております。

 次に9ページを御覧ください。具体的方針として、疾病に着目した研究として、幾つかのことが具体的に行われております。まず、「成育疾患の本態解明」として、特に先天性免疫不全症、先天代謝異常症などの先天性難治性疾患の病態を解明するために、最新の次世代シークエンサーを用いて研究を実施しております。そこに細かく書いてありますが、通算で合計652例の解析が終了しております。2012年では、先天性内分泌疾患、あるいは先天奇形症候群の原因となる新規ゲノム構造異常の同定などに成功しており、その成果を発表しております。

 不妊・不育・胎児死亡の原因究明、受精・着床メカニズムの解明に向けて、マウスの精子と卵子の全ての後天的な遺伝情報(エピゲノム)の解析を実施しており、それに関しても、これまでに考えられていたメカニズムとはまた別な新たなメカニズムが存在することが分かりまして、これも論文として発表しております。

2の「成育疾患の実態把握」については、「成育コホート研究」は、平成15年より開始しており、センターで出産された1,550名の妊婦とそのお子さんを対象に開始した出生コホート研究です。これは毎年、アンケート調査、健診、採血を行っておりますが、現在、追跡年齢が6歳から8歳に達しており、追跡率が1,126名、72.6%、この種の研究としてはかなり高い追跡率を維持しております。遺伝子解析の検体も、すでに平成24年度には500名収集しております。平成22年度から、これとは少し別の「成育母子コホート研究」を開始しており、これも現在までに1,500組の登録が完了しております。これは先行している研究とは少し違いまして、胎盤とか臍帯血を収集して、ゲノム及びエピゲノムを解析することが特徴的です。さらに10万人の大規模出生コホート研究であるエコチル調査事業にもメディカルサポートセンターとして関与して、これまでの経験をいかして、様々な研究を推進しております。

 次に3の「高度先駆的及び標準的な予防、診断、治療法の開発の推進」について、一番大きなものとしては、慢性肉芽腫症に対する造血幹細胞を標的とした遺伝子治療臨床研究です。これはかなり時間をかけて進めてまいりましたが、ようやく厚生労働大臣により承認がなされましたので、現在、実際の遺伝子治療に向けて準備を進めているところです。これの一環として、新たに専門家を必要として迎えるなどして、かなり力を入れて研究をしております。そのほか胎児横隔膜ヘルニアに対する気管閉塞術の胎児治療といったものも準備をしております。

10ページを御覧ください。4の「医薬品及び医療機器の開発の推進」については、これは先ほどお話しましたES細胞の臨床に向けての準備を行っております。そのほか臨床研究の倫理に関する研修会、その他です。先ほど藤本臨床研究センター長から報告があったこととかぶりますが、そこに表があるような臨床研究実施、治験実施件数が順調に伸びてきております。医療の均てん化手法の開発の推進としてガイドラインの作成なども行っております。

11ページを御覧ください。「情報を発信手法の開発」として、患者・家族を対象とした成育疾患及び成育医療の情報発信のための研究の推進として、センターのWebサイトで様々な情報を発信しております。昨年度は特に「無侵襲的出生前遺伝学的検査」が、マスコミでも取り上げられて非常に注目されておりますが、このアクセス数が非常に伸びており、こういう情報発信を行っております。

 科学的根拠に基づく政策提言の実施に資する研究の推進としては、例えば、昨年度は小児のICU管理の評価を行うなど、政策に関係するような研究も行っております。

12ページを御覧ください。成育医療に係る各種相談事業などの展開も推進しております。その中で特に大きいのは、当センターにおける妊娠と薬情報センターがあります。本年度は全国からの問合せが3,756件ということで、我が国におけるこの種のセンターとしては非常によく確立されているものです。その他、様々なことを行っておりますが、時間の都合で割愛させていただきます。この後は松井病院長からお願いします。

 

○国立成育医療研究センター病院長

 病院長の松井でございます。資料1-438ページを便宜的に開けておいてください。最初に説明する所です。私は2グループの後半、医療の提供関する事項の(1)高度先駆的な医療、標準化に資する医療の提供について、御説明いたします。まず、高度先駆的な医療標準化に関する医療の提供のうちの「高度先駆的な医療の提供」です。1つは、何と言っても胎児治療です。高度先駆的医療である胎児治療は、双胎間輸血症候群、1卵性の双子が1つの胎盤を共有していて、そのそれぞれの臍帯(臍の緒)の血管の間に、更に交通がある。そのために双子のうちの片方が小さくなり、貧血になる。そして片方は多血になり、大きくなるという不均衡を生じる症候群です。これを妊婦の腹壁、子宮を通して内視鏡を挿入して、レーザー手術をして、この交通血管を焼灼する。それによって不均衡を解消するというものです。1児生存だけでも92%ですが、当センターでは2児生存で96%の生存率を誇っております。これは世界のトップレベルの成績です。一方、そのほかに胎児治療として、胎児の胸腔内に水が溜まる。これをシャントで服腔内あるいは子宮内に逃がすという手術。それから胎児不整脈に対する経胎盤抗不整脈投与を2例に施行しました。

 もう1つ、世界で一流の成績を残しているということであれば、小児の臓器移植があることは、先ほど総長が申したとおりですが、小児の移植施設として、世界最多の1年間に46例の手術を手掛けました。もちろん、これはそのほかに合併症に対しての治療も行いますので、1週間に1回以上の移植手術を手掛けていることになります。そのうちの大部分が生体間移植ですが、そのうち脳死ドナーからの移植が10例あります。これは欧米においても同じ事情がございますが、日本においても脳死ドナーが不足しています。そこで脳死となって臓器の提供を申し出た成人の一部分、具体的には側葉、あるいはそのまた更に一部を分割肝移植をすることによって、6例が成功裡に手術を終了しております。

 先ほど松原所長から申し上げたように、余剰となった肝細胞を保存凍結して肝細胞移植する。出生後間もなく臍の緒の血管から肝臓に注入するという手術の準備をしているところです。そのほかに先ほどの肝臓移植ですが、資料の38ページを御覧いただきますと、この46例の患者の出身地が見て取れることと存じます。

 そのほかの高度先駆的な医療の実例としては、川崎病の難治療に対するインフリキシマブ(生物学的製剤)及び血漿交換を27例及び19例をそれぞれ行ってまいりました。また、劇症型心筋炎に対して、体外補助循環を使って、この10年間で16例。今回は回復が10例、重度の後遺症を残したものが1例、死亡5例でした。そのほかに、極低出生体重、それも出生体重が1,500g未満の極く低出生体重児に対して、動脈管開存閉鎖術とか肺動脈絞扼術を行い、全例成功しております。また、免疫不全症に対して、特に慢性肉芽腫症に対して、サリドマイド療法を4例、既に1度骨移植、遺伝子治療を行ったアデノシン・デアミナーゼ欠損症に対して、酵素補充療法を続けております。また、ライソゾームに対する酵素補充療法も広範に手掛けておりまして、ゴーシェ病、ファブリ病、ポンペ病、ムコ多糖症1型、2型、6型の6疾患の全てに酵素製剤を利用した酵素補充療法を実施しております。これは日本で唯一の医療機関です。また、同時にモルキオA病に対しても、国際共同治験に参加している日本でただ1つの医療機関です。

20ページです。そのほかに痙性麻痺に対して、埋込み型ポンプを用いたバクロフェン髄腔内投与療法を行い、平成24年度は全国から来院した患者6例に施行しました。炎症性腸疾患、特にクローン病をはじめとする小児の慢性炎症性腸疾患に対して、カプセル内視鏡を試みて、診断及び予後判定に利用しております。また、難治性の腎疾患・リウマチ・膠原病に対して、難治性ネフローゼ症候群と難治性ANCA関連血管炎に対するリツキシマブ療法の臨床試験を40例。また、難治性膠原病に対する免疫抑制剤ですが、ミコフェノールモフェチル投与の臨床研究を30例で行いました。

21ページを御覧ください。医療の標準化を、先ほどの先進的医療とは対極をなすものですが、最新の科学的根拠に基づいて医療の標準化を推進させるための医療の提供をしております。その代表の1つが救急医療で、当院は開院以来、社会のニーズに合わせて、全ての救急患者を受け入れ、院内でトリアージを行って緊急度に応じた診療を重症の者から先に診るという原則に基づいて行っております。その結果、平成24年度には合計32,975名の救急患者を診療いたしました。うち、救急車の受入れは3,598台、応需率は97%でした。トリアージをしたところ、直ちに蘇生を必要とする者が513名、緊急度のある者4,469名の診療を行っております。また、「動くICU」と称して、他施設に患者を迎えに行き、状態の安定後に救急車やヘリコプターで当院の小児ICUまで搬送するといったシステムを実行して、当院の搬送チームは94名の重症患者を搬送、救命いたしました。

 先ほど申し述べた川崎病の診療に対して、大量ガンマグロブリン療法は今や標準的な治療になりつつある方向ですので、これを平成24年度には130例に実施して効果を示しました。小児難聴に対しては、補聴器や手術療法。手術療法の中には鼓質形成術あるいは人工内耳常設術を行い、また、その術後に言語療法及び教育・療育現場等の連携を組み合わせて治療を提供しております。また、乳児の頭蓋形態の異常に対して、頭蓋形状誘導ヘルメットを用いて、乳児頭蓋の形態違状の早期発見と早期解明を目指しております。次ページのバクロフェンについては、先ほど述べましたので、省略いたします。

 

○永井部会長

 それでは、御議論いただきたいと思います。研究成果で、もう一度画期的成果、想定外の成果というのはどこですか。

 

○国立成育医療研究センター研究所長

 なぜ「A」ではなくて「S」かという御質問だと思いますが、1つはセンターとしては心意気というのがあります。私たちも「S」か「A」かというのはすごく悩ましいところですが、私たちの気持としては「S」をやっているという気持はあります。具体的に申し上げますと、1つは再生医療、特にES細胞の臨床に向けての研究です。今、再生医療としてはiPSが一番注目されております。これは非常に重要な分野です。もう1つはES細胞というのが、ある意味で臨床にもう少しiPSに近い所にいるのではないかと私たちは考えています。

 

 

○永井部会長

 そこはいいのですが、アウトカムですね。

 

○国立成育医療研究センター研究所長

 そのES細胞に関して、国内で最多の細胞株を樹立しており、それに対する臨床応用についての準備を非常に進めているということは1つあります。

 

○永井部会長

 でも先生、それは例のガイドラインの問題があって、超えられないところがあるわけですよね。ですから、準備しているとおっしゃられても、それは超えられない枠の中での話になってしまうのです。ですから、そこを想定外としてどこかと。いろいろな検討を、こういう検討で、こういうことが明らかになったいうことをお話いただきたいのです。

 

○国立成育医療研究センター研究所長

 確かに先生がおっしゃるように、再生医療に関し、そういうことがあります。ただ、これは再生医療だけで「S」としたわけではなく、もう1つは遺伝子医療研究などに関しては、日本での治療研究は非常に遅れております。特に難治性の遺伝子性疾患については遅れておりますが、これについてもようやく厚生労働大臣の承認が下りて、今も患者さんの登録が始まっていて、間もなく実際の患者治療が始められる体制にまで何年もかけて漕ぎ着けました。それはセンターの。

 

○永井部会長

 それは慢性肉芽腫症。

 

○国立成育医療研究センター研究所長

 はい、慢性肉芽腫症です。

 

○永井部会長

 その準備がほぼ完了したということですね。

 

○国立成育医療研究センター研究所長

 そうです。それも非常に大きいことです。それから、成育のコホート研究として、既に10年近く前から始まっておりますが、これが順調に数も伸びてきまして、それに遺伝子解析研究のための項目が追加されてきましたので、そこの伸びも非常に。こういったコホート研究というのは、日本ではなかなか進めにくいのですが、センターとして非常に数も伸びておりますし、追跡率も高いと。ここも私たちとしては誇っているところです。

 あとは無侵襲的出生前遺伝学的検査ですが、これはマスコミで随分騒がれましたが、国内で、民間の余りはっきり審査がされないような機関で始まることに先じて、きちんとした臨床研究としてセンターが先鞭を取って、正しい倫理感の下に行われると。こういった先鞭を付けたということも、非常に高い評価を自分たちなりに出しております。

 

○永井部会長

 いかがですか。

 

○本田委員

 不勉強で素人なので教えて頂きたいのです。先ほどの無侵襲的出生前遺伝子検査の件は、大変いろいろ社会に大きなインパクトを与えたとは思いますが、検査ができるようになってやっているというのは、最近よく報道されます。そこに至るまで、センターが開発や臨床研究でこれを明らかにしているとか、遺伝的な説明をこのように明らかにしたとか、そういう点があるのかを教えていただきたいのです。

 もう1つは、次の項目の高度先駆的医療を標準化する医療の提供の部分で、特に標準化に資する医療の提供でいろいろやっておられるという説明はありました。全国に高度先駆的はあれですが、後半の標準化に資する医療の提供ということで、それをやっているだけではなくて、全国に均てん化できるような何かをしているとか、提供しているとか、そういう部分を教えていただきたいのです。

 

○国立成育医療研究センター研究所長

 前半の御質問に関して、私からお答えいたします。出生前検査に関しては、かなり論議を生んでおります。技術的なことに関して、何かセンターが新しいことをやったわけではありません。技術としてはアメリカのものです。ただ、それが日本に黒船のようにいきなり入ってきますと、1つは倫理的な問題、遺伝カウンセリングの問題などをおざなりにしたまま、民間でただお金を払えばできるという形で入ってくることを、私たちは非常に恐れておりました。そういったところを関連学会とも相談をして、産科婦人科学会、小児科学会、いろいろな所と全部連携をして、まとめ上げて1つのガイドラインまで産科婦人科学会が中心になって作ったのです。要するに、オールジャパンでのきちんとした体制を作って、センターの中でもカウンセング体制をきちんと固めて、全国のいろいろな施設もそういった条件を付与した所でなければできないというところまでルールづくりをしたと。そういったところにセンターの一番大きな役割があったのではないかと思います。

 

○国立成育医療研究センター病院長

 御質問の後半についてお答えします。私どもが上げてきている成果というのは、例えば救急医療に関するトリアージです。要するに、ラインの順番ではなくて、重症である、すぐに医療を施さなければならない人から先に診るのだということに関しては、まずは受診する患者さんの御家族あるいは社会に対して、そういう概念を広める。小児においても災害に準じたトリアージをするのだということが、我が国の小児医療施設に広まってきていると自負しております。

 そのほかに関しては、医師として、あるいは科学者として私どもの上げた成果と思われるものを学会や論文あるいはその他のマスメディアに発表して、世間の批判を待つという姿勢であると存じます。

 

○福井委員

 細かいことで少しコメント的になってしまいますが、例えば妊娠と薬情報センターなどの活動が、何件ぐらいの問合せがあったのかというプロセス面だけの評価に終わってしまって、この情報を提供したことがどのぐらい役に立ったのかというような評価ができると良いといつも思うのです。診療ガイドラインもそうですし、このような非常に重要な情報を提供しているということが、どのぐらいの人で、ひょっとしてどのぐらい病気の予防につながっているかというデータの収集も考えていただけると良いなと思います。全くのコメントです。

 

○内山部会長代理

 仕組みの問題ですが、たくさんの救急患者を受け入れている。本当に素晴らしいことだと思います。五十嵐総長から、最初に、後期研修医が総合診療に40何名がいて、救急車を受け入れているというお話がありました。内科でも総合診療の在り方というのは検討されている最中だと伺っていますが、成育医療研究センターの中では、総合診療を目指している40何名の方たちが、救急とどのように関わっているのか、教えていただきたいと思います。

 

○国立成育医療研究センター病院長

1学年は14名ですが、3年間でカリキュラムを組んでいます。最近私どもは、総合診療部のレジデントというよりは、成育医療センターのレジデントと呼ぶようにして扱うようにしています。それがローテーションで回ってきます。

 組織のことに関しては、総合診療部の中に救急診療科があります。そこに医長も置いてありますし、救急診療科をローテーションしていくという形になっています。

 

○永井部会長

 よろしいですか。よろしければ、3グループの項目59の医療の提供に関する事項、患者の視点に立った良質かつ安全な医療の提供、その他医療政策の一環として、センターで実施すべき医療の提供、人材育成に関する事項、医療の均てん化と情報の収集・発信に関する事項、国への政策提言に関する事項、その他我が国の医療政策の推進等に関する事項。以上についての評価を行います。10分で御説明をお願いします。

 

○国立成育医療研究センター病院長

 それでは、24ページの患者の視点に立った良質かつ安心できる医療の提供についてお話いたします。1は「患者等参加型医療の推進」です。これは各医療機関からの紹介ケースの返書管理のシステムなどを検討しまして、紹介元医療機関の登録数は、各診療科等を含め、約6,000件となっております。平成24年度の初めに、患者相談窓口を開設いたしました。これによって、在宅移行支援や育児支援の相談のほか、医療費助成制度の案内についても、すぐに窓口で対応できるようになりました。また、情報コーナーの設営により、患者向けの情報をいつでも入手できるようにしております。さらに平成252月より、小児がん相談窓口も開設して、専門的な事柄に対して対応するための、後方の仕組みを整備しました。平成24年度のセカンドオピニオン外来総件数は145件となり、平成21年度と比較して400%の増加になりました。セカンドオピニオンをセンターの重要な使命の1つとして位置付け、その意図を全病院に浸透させることによって、このような増加を生むことができたと考えております。セカンドオビニオン外来総件数145件のうちの内容ですが、依頼の多かった診療科は脳神経外科24件、血液腫瘍科18件、腎リウマチ膠原病科15件、産科14件、神経内科13件等でした。このセカンドオピニオン外来の実績時間数は平均60分で、総収入額は250万円でした。一方、患者満足度調査については、従来より実施している調査を、より患者・家族の声を反映できるように調査対象者を拡大させて実施して、集計を行っております。セカンドオピニオンの実績は資料の47ページにありますので御覧いただきたいと思います。

25ページは「チーム医療の推進」です。多診療科、多職種にわたるチームで、複雑な病態を持つ小児と妊産婦の患者を診療することが、当院の重要な診療姿勢の基本です。この基本姿勢を堅持するために、以下の方策を採っております。

1は、総合診療部の設置です。これは創設以来ありますが、総合診療部において、チーム医療の土台をつくる機能を担わせております。2番目は、中央診療部門の強化です。高い能力を持つ中央診療部門として、麻酔、集中治療、放射線、病理、検査、感染管理の存在が重要であると思います。当院は、我が国で未だ数が少ないと言われている小児のICUPICU20床を有し、集中治療専門医と臓器系統別専門医がチームを組んで重症患者を治療する体制をとっております。放射線部門は24時間体制で全ての画像診断(読影)を行い、また感染症科は同じく24時間体制で各科からのコンサルテーションを受けて、チーム医療を支えております。チーム医療の3番目は、教育研修の充実です。当院は小児医療系レジデントを、各学年14名、合計42名を擁しておりまして、診療の指導に当たるだけでなく、論文塾といった組織を作り、研修医に論文の書き方を教えております。チーム医療の具体的な姿である多診療科、多職種によるカンファレンスは資料の54ページを御覧ください。合計で66あり、今年度の定例での開催回数は500回以上にのぼりました。当院に特徴的な診療チーム、カンファレンスとして川崎病ボード、胎児カンファレンス、腫瘍カンファレンス、SCANチーム、これは虐待と無視の疑いというSuspected Child Abuse & Neglectというチームを設けております。

 川崎病ボードは年間120例以上の、恐らく日本で最多の川崎病症例の診療に関与する小児科、思春期科、循環器科、腎臓・リウマチ・膠原苗病科、消化器・肝臓科、免疫療法研究室等のチームです。そのほか、御覧いただきたいのは、胎児カンファレンス、腫瘍カンファレンス、SCANのカンファレンスがこのように開かれていることで、説明資料の50ページの19を御覧いただきたいと思います。

26ページの3「入院時から地域ケアを見通した医療の提供」を行っております。退院支援チームは、退院後の地域における継続した医療や在宅ケアへの適切な移行を支援するために、医療連携室員及び入退院支援看護師を含む退院支援に関係する部門のスタッフによって、ケースごとにメンバー編成し退院支援を実施してまいりました。これは55ページにありますように、特別に退院を指導することが難しかったケースを挙げてありますが、9例は未だ交渉中です。御覧のように退院支援チームが関与した退院困難なケースは、平成24年度は22件でした。

4の「医療安全管理体制の充実」についてお話します。この委員会を月1回開催し、インシデント集計・分析報告をもとに、病院における安全管理に必要な調査を行っております。例えば検体ラベルの再印刷は絶対にしない。輸血検体認証徹底のためのカルテ記載機能を追加したり等々です。また、リスクマネージメントマニュアルを改訂しました。これは56ページの資料21にありますが、術前、術後の指導等に利用しました。また、全職員を対象として医療安全研修会を7回実施するとともに、56ページの資料22の「医療安全ポケットマニュアル」を作り、その内容をeラーニングテストによって徹底を図っています。

5は「客観的指導等を用いた医療の質の評価」です。患者・家族の視点に立った医療の提供について、更なる充実を図るため、医療連携患者支援センターを設置し、センター内に患者相談専門職、医療ソーシャルワーカー及び専任の窓口対応職員を加えた常設の窓口を設けて、診療に関する心理的・経済的問題について相談に応じております。

29ページの(3)その他の医療政策の一環として、センターで実施すべき医療の提供についてです。1の「子どもの心の診療」ですが、子どもの心の診療ネットワーク事業連絡会議を2回行うなど、子どの心の診療については大いに力を入れております。それは分担研究者を植田とする「子どもの心の診療およびその拠点病院システムの費用と効果に関する研究」によって評価がなされております。東日本大震災に関する研修は、現在研究中のため、研究の結果を受けて研修を実施することとし、平成24年度より開始されたメンタルケアモデル開発ナショナルプロジェクトである“慢性疾患をもつ子どものうつへのケア”に関して、日本小児科学会と共催で研修会を実施し、146名の患者さんを診ました。

2は「周産期・小児医療における中核的な役割」として、1の周産期医療の提供、GCU、これはGrowing Care Unitと申しますが、急性期を脱した新生児の治療室へ12床の増床を行いました。また、平成255月に総合周産期センターの認可を受け、MFICU(母体胎児集中治療室)NICU(新生児集中治療室)を有効に活用することが可能になりました。

2番目の小児医療の提供ですが、高度な小児医療を行うとともに、小児救急医療についても積極的に取り組んで、中核的な役割を果たしております。救急来院患者数については、先ほど述べました。そのほかに重症疾患の“迎え”搬送についても述べましたので省略いたします。東京都こども救命センター事業については、平成229月に開始した事業が3年目に入り、平成24年度にはこの事業にのっとって他施設から602名の患者を受け入れることにより、小児重症患者の集約化が進んでおります。地域医療機関と連継した初期救急医療ですが、地域のクリニックの小児科医は現在はまだ3名ですが、大変よく協力して夜間の初期救急患者の診療に携わっております。これは総合診療部のレジデントの教育にも一部役立っております。

31ページの人材育成に関する事項の(1)リーダーとして活躍できる人材の育成です。病院では成育医療研修会を通して、多くの研修生を受け入れております。医師、薬剤師、看護師、栄養士、理学療法士、作業療法士、言語聴覚士、視能訓練士等について、大学や病院等から幅広く実習生を受入れ、成育医療に関する育成を積極的に行ってまいりました。日本救急看護学会トリアージナース教育コース、小児看護専門学校教師等々、ここに挙げられた研修生を受け入れております。救急診療科においては看護師、臨床工学技士、救急救命士に対して、多数のシナリオを作製し、シミュレーション教育を行ってまいりました。東京都及び関東中央病院の初期の研修医ですが、これを小児科医療研究に関して受け入れて、1~3か月間行いました。平成254月現在、海外に対してはトロント大学2名、ハワイ大学1名に留学しているところです。

(2)モデル的研修・講習の実施ですが、成育医療に関する均てん化の推進を目的として成育医療に携わるセンター内外の医療従事者を対象とした情報発進に関するモデル研修等を年24回企画して実施いたしました。臨床研究中核病院の指定に先立ち、UCSFTakayama教授とネット回線を結んで、Designing Clinical Researchについて研修会を行いました。また、201291日からは合計7回実施し、延べ76名が受講生及びメンターとして参加いたしました。実施に当たっては、最新の成育医療情報を用い、各種研修・講演会等をセンター外の医療従事者等を対象に年24回開催して、成育医療の均てん化を推進いたしました。

33ページは医療の均てん化と情報の収集・発信に関する事項です。時間も押し迫っておりますので要点だけを述べます。(1)ネットワークの推進について、御覧のようなカンファレンスを開き、標準的医療の推進・普及を図りました。PICUの専従医の少ない、あるいはいない施設に診療支援を行ったり、看護部では日本小児総合医療施設協議会看護部長部会の下に、幾つかのネットワークを組んで積極的に参加しました。耳鼻咽喉科でも、このような貢献をしておりますし、地域の療育の拠点である世田谷区総合福祉センターの理学療法士、作業療法士、言語聴覚士、ソーシャルワーカーなど、定期的にカンファレンスを開催しております。小児の炎症性腸疾患の研究会の中心施設として活発に活動しておりますし、世田谷医師会との協定の下に、地域医療連携体制を構築しました。また、地域のコメディカル等を対象に、当センターの職員が講演者となって、御覧のような懇話会を開きました。小児と薬ネットワーク推進室を新設し、全国の小児医療機関等からなる小児医療機関ネットワークを活用し、副作用情報や投与量情報等を収集する体制の整備を開始しました。情報の収集に当たっては、日本小児総合医療施設協議会(JACHRI)加盟施設等から構成されているネットワークの人的・機能的ネットワークを基盤として活用しました。

(2)情報の収集・発進ですが、センターのWebサイト内で、平成24年度Webサイトの年間更新数1,073件と、引き続き最新情報の積極的提供を推進した結果、サイト全体の平均ページビューは1日当たり47,080件に上りました。また、メールマガジンは平成24年度には11本、配信先は480。一般向けの「すこやかジャーナル」は12本配信しました。医師、小学校教師、療育関係者等に対しては、軽・中等度難聴児への支援や補聴器装用の必要性などに関する第2回市民公開講座を開催して、院外から多くの参加者が集まりました。

35ページの国への政策提言に関する事項です。平成24年度において、成育疾患に関する研究に精力的に取り組んでまいりました。特に長年にわたる国立成育医療研究センターが独自に行ってきたコホート研究の資産を有効に活用し、ゲノム及びエピゲノム解析による成育疾患の解析を精力的に行っております。また、国が行うiPSES細胞については、先ほど述べられましたので、省略いたします。大事なことで忘れてならないのは、小児慢性特定疾患事業の中心的役割を果たし、日本小児学会と協力して見直し作業に貢献いたしました。

 その他我が国の医療政策の推進等に関する事項ですが、(1)公衆衛生上の重大な危機への対応に対して、危機管理マニュアルの改訂を行っただけではなく、災害想定のシミュレーションを院内全体で反復し、センター内の危機管理体制を強化しております。それからDMAT(Disaster Medical Assistance Team)DMAT隊を当院内に保有し、運用しております。小児専門施設としては全国唯一です。他隊が携行しない小児用資機材を常備して小児災害治療への対応をいたし、また重症小児患者を救命する体制を整備しております。新型インフルエンザを始めとした感染症の発生に適切に対応するため、感染防御の実習を反復するとともに、感染症患者の院外搬送訓練を実施するなどを通して、事故発生時の診療体制を整備しました。

(2)国際貢献は、国際共同研究を推進するため、米国のワシントンDCにあるChildren's National Medical Centerと協議を開始しました。英文論文数は過去最高であった前年に比しても11件増加しております。Lancetについては先ほど述べられましたので省略いたします。医療連携・患者支援センターには、平成23年度までに設置した医療連携開発室を基点として、成育医療における渉外・外事を担う機能を開始しました。渉外活動として、海外の研究者受入れに関連する連絡業務を行っております。平成24年度には海外から診療を依頼された件数が、平成23年度の6件に対して41件と大幅に増加しました。その国はロシア、グルジア、アゼルバイジャン、カザフスタン、中国などです。案件ごとに詳細な情報のやり取りが行われましたが、実際の診療に至ったケースは肝移植の1例でした。以上です。

 

○永井部会長

 いかがでしょうか。Lancetの仕事というのは何ですか。具体的に教えてください。

 

○国立成育医療研究センター病院長

 これは実際にディシジョンメイキングに関わるようなシステマティックレビューの仕事で、100人近くの著者があります。

 

○永井部会長

2本。同じカテゴリーの3本。それはみんなディシジョンメイキングに関する研究でしょうか。

 

○国立成育医療研究センター研究所副所長

 代わりにお答えします。副研究所長の斎藤です。Lancet3本の論文ですが、業務概要に記載されており、損失生存年数、障害調整生命年、グローバル疾病負荷という3つの疫学指標がありまして、それについて世界中で統計を取り、システマティックレビューをしたという論文です。

 

○永井部会長

 それは今後の医療政策にとっても、非常に重要なデータだったと言っていいわけでしょうか。

 

○国立成育医療研究センター研究副所長

 はい。その通りです。

 

○福井委員

1点だけ。評価シートの26ページの5の客観的指標等を用いた医療の質の評価ですが、私は今年度から評価チームに入っているものですから、このことが要求していることが何なのかよく分からないのです。ただ、字面から言いますと、もう少しやるべきことをちゃんとやっているかという数値化することを聞いているのではないかと思うのです。例えばですが、比較的治療が確定している病気について、ちゃんとそのとおり治療が行われている患者が何パーセントいるかとか、ターゲットをちゃんとクリアしている患者がどのぐらいいるかという数値は、客観的指標を用いた医療の質の評価というときに、普通はクオリティ・インディケーターとか、そういうことを要求されているのだと私は理解しています。そういうことも考えていただければと思います。

 

 

○国立成育医療研究センター病院長

 検討させていただきます。ありがとうございます。

 

○藤川委員

 高度先駆的な医療を標準化に資する医療の提供で、先ほどの説明では、21ページの2の辺りで何が「S」の評価として重要だったのですかということで、トリアージを行った救急医療が重要だということをポイントとしておっしゃっておられたと思います。今回の29ページで小児医療の提供として同じようなトリアージの話が出てきて、もちろんこの点について非常に重視されていると思います。両方で「S」の視点として、ダブルカウントというと言い方が悪いのですが、そうなってしまってはいないのかなという気がしたので、その辺りを説明していただけますか。

 

○国立成育医療研究センター病院長

 そのように受け取られたら申し訳ありません。ただ、「S」として特に評価すべきなのは、高度先駆的医療の肝移植と双胎間輸血症候群のことだと思います。例えば肝移植については、247例を成育医療センターで今日に至るまで6年間続けております。肝臓の動脈と動脈をつなぐ部分があるのですが、その247例で1例も急性の冠動脈血栓症、要するに血管が詰まるということは起こしたことがありません。これはどの外国の一流の移植外科医が聞いても、驚嘆の目をもって聞きます。

 もう1つ、双胎間輸血に対する2児生存も世界でトップレベルです。トップレベルということは、これを維持することが大変で、その意味で「S」を付けたと解釈していただければと思います。

 

○藤川委員

 分かりました。では、前半は移植とか、そちらの技術に関しての先駆的な世界的にレベルの見られないようなことに関しての「S」と。トリアージのほうは後ろの方で「S」と考えたほうがよろしいということですね。

 

○国立成育医療研究センター病院長

 そうしていただければと思います。

 

○藤川委員

 分かりました。

 

○永井部会長

 ほかにいかがでしょうか。よろしいでしょうか。それでは、第4グループにまいります。効率的な業務運営、法令遵守等内部統制の適切な構築、予算・収支計画、資金計画、その他主務省令で定める業務運営に関する事項についての説明を法人から10分でお願いします。

 

○国立成育医療研究センター企画戦略室長

 企画戦略室の山本です。よろしくお願いします。37ページです。まず、効率的な業務運営に関する事項の(1)「効率的な運営体制」です。従来よりガバナンスを重視ということで、理事会、あるいは執行役員会、監査室において、適切に業務を行っているということです。次のパラグラフの総人件費ですが、技能職の退職後、非常勤職員への切替えを行う一方で、小児医療、あるいは周産期医療への適切な対応ということで人材確保を進めております。総人件費は平成24年度は70.6億円と、対前年比で7%増、平成21年度比で24.5%増と伸びております。この増加については、1つは先ほど来お話が出ているGCU増床12床のための人員確保、それから、上位基準、小児入院管理料1を取るための看護資格、というところが大きなところです。また、外部研究費の確保についても取り組んでおります。平成24年度は約11億円強です。人件費そのものは、総人件費は伸びていますが、人件比率については平成24年度実績37.7%で、平成23年度実績に対して1.2%の減になっています。具体的に平成24年度に取り組んだことについては、37ページの1に書いている「副院長複数制の導入」ということで、専任の副院長に替えて特命事項を担う副院長5名体制にすることを検討しました。実際には平成25年度41日から配置ということです。

39ページの(2)「効率化による収支改善」です。ここは「S」ということになるわけですが、経常収支は約79,000万円の黒字ということで、経常収支率103.5%で、目標値を上回っていますし、昨年度に比べても増ということで、3年連続の黒字を達成することができました。具体的に取り組んだこととして、効率化の部分では、15まであります。1は「給与体制の適正化」ということで、給与水準についての見直し。そして2に「材料費の節減」ということで、これは6NCの皆さんでということですが、NCに加えて、平成24年度は独立行政法人国立病院機構とも共同入札を行うということで、共同購入のメリットを生かすことを努めております。ほかに取り組んだこととして、40ページですが、3で「一般管理費の節減」です。これは額としてはそれほど多くないのですが、独法化以前に比べて委託費について大幅に削減しております。平成21年度に比して26.2%の節減です。平成23年度と比べると300万円の減ということですが、細かく見直すことで効果を上げております。また、「建築コストの適正化」ということで、施設・医療機器整備委員会等で検証を行い、適切な工事・建設コストを確保しております。また、5の「収入の確保」ということで、一歩ですが、平成24年度はクレジットカードの取引会社を増やし、支払をしやすくしていただくことで、医業未収金比率0.045%となり、目標数値0.05%を上回る節減ができています。

 評価シート説明資料1-481ページから、簡単ですが当院の収入が付いております。先ほど述べたように、人件費は非常に伸びているのですが、実際に黒字になっていることの原因の1つは、81ページには1日平均入院患者数等が書いてありますが、患者数は非常に伸びていますし、患者1人当たりの収益額も過去最高ということです。一方で、病床利用率は昨年ちょっと落ち込みましたが元に戻しつつあります。平均在院日数が11.1日で過去最短ですので、病床の回転が上がっているということで、全体として収益につながっています。

 一方、外来は82ページにあります。1日平均外来患者数が過去最大ということで、1,000人を超える患者がいることは、先ほど総長から申し上げたとおりです。また、1日当たりの診療収益額も過去最大で、18,000円を超える金額ですし、救急車の受入れ台数も、先ほど来ダブルカウントと言われましたが、件数としては非常に多い件数を受け入れています。

 また、ちょっと飛びますが、収益に直接関わる所として、86ページに月別オペ数、手術件数ですが、これも月平均444で過去最大ということで、必要な人材を確保しつつ、パフォーマンスとしては上げているということが言えるのではないかと思っております。

44ページです。法令遵守等の問題についてですが、総長の下に独立した組織とした監査室を設けるということで、特に平成24年度は、内部監査細則に基づき、内部監査実施基準を定めて監査手続の明確化をし、それを徹底しました。監事による業務監査の実施等を行っております。また、特筆すべきところとしては、コンプライアンス室の活動ということが(4)に書いてあります。平成23年度からホットラインを開設しておりますが、平成24年度は相談時間を更に増加することで、コンプライアンスの改善に取り組んでおります。(5)の「契約監視委員会による点検・見直し」ですが、平成24年度は平成2312月から平成2412月までの1年間に締結された225件の契約について審議を行っております。また、事後点検を行い、そのフォローアップについてはホームページにおいて公表しております。(6)「契約業務の競争性、透明性、公平成の確保」ということですが、原則として1件の契約予定額が100万円を超える案件は一般競争入札にするということです。また、契約金額が100万円を超える案件については、契約方法にかかわらずホームページで公表し、先ほど申しました競争性、公平性、透明性の確保に努めております。

47ページは「自己収入の増加に関する事項」です。特に自己収入の増加と言うと、外部資金の確保ということですが、寄附、あるいは研究費の増、その他競争的な資金ということで、平成24年度は約117,000万円という実績です。残念ながら、研究費については、国の研究費全体もなかなか難しくなっていて、昨年よりも若干減っておりますが、外部資金の確保について取り組んでいるところです。また、「資産及び負産の管理に関する事項」ということで、長期借入れを行わずに内部資金を活用するということで行いました。また、固定負債、長期借入金ですが、予定どおりきちんと償還を行い、79,000万円をお返しし、確実に総残額を減少させております。短期借入金の限度額に関連するところですが、平成24年度は、先ほど申したように短期の借入金を行っていないということで、最後の行になりますが、平成24年度の決算においては79,600万円の剰余があり、これは将来の投資、あるいは借入金の返済ということで積立金に当てております。

48ページは「施設・設備等に関する事項」です。先ほど来申し上げているように、長期借入れを行わずに自己資金を活用して施設整備を行ってきていることで、1つは、教育研修棟の新築工事ということです。これは平成24年度、平成25年度にかけての事業です。また、バイオバンク棟の増築工事、そして、院内の保育所の改修ということで、宿舎を改修しまして、院内保育所を設置し、看護職等の職員の定着率を高めることに取り組んでおります。

51ページは「人事システムの最適化」です。これは特に取り組んでいるのは人事評価制度の導入ですが、平成22年度から順次、職種を拡大しており、平成24年度から、その他職種を含めて人事評価を実施しています。また、人事交流ですが、国立病院機構との人事交流の円滑化を進めるために現給補償制度についてお互いに決定するということで、平成24年度は50人の人事交流を行っています。また、女性の働きやすい環境整備ということで、育児短時間勤務制度の対象範囲を拡大する、あるいは、先ほど申した院内保育所の開設に取り組んでおります。また、医師の業務縮減ということで、医療クラークの導入についても取り組んでおりますが、平成24年度も6名の増員を行い、全部で12名となっております。

 また、「人事に関する方針」です。言うまでもなく、良質な医療を効率的に提供するために、人件費の高騰を招かないように、適切な人員を確保していくということ。特に質の高い人員を確保することに留意しております。そのため、医長職以上の管理職員については公募制を基本とし、採用委員会において優秀な人材の確保に努めるということで、平成24年度は、常勤職員の公募が29件ありました。また、看護師の確保対策は非常に重要な問題ですが、1つは、外への講演会、あるいはPRを行うこと。そして、2交替制勤務を推進して離職防止をすること。あるいは処遇を改善することに取り組んでおります。

 最後ですが、52ページは当センターの整備方針です。平成22年度から平成24年度にかけて、病棟再編計画を立てて取り組んできております。そして、平成22年度、平成23年度と続けたあと、平成24年度は第3段階ということで、先ほど来御紹介していますGCUの病床を12床増床すること、そして小児入院医療管理料の1を取得するということで、予定どおり、看護士32名を増員し、実現したところです。また、その他の事項ですが、職員の様々な問題、あるいは課題認識を共有するということで意見交換会を行ってきましたが、平成24年度は、理事長が自ら若手医師との意見交換会を行い、若い方々の視点、あるいは問題意識を共有することを取り組んでまいりました。私からは以上です。

 

○永井部会長

 いかがでしょうか。病院の診療収益が21億円と上がっているわけです。この要因としてはどういうことなのでしょうか。資料の81ページで患者数や病床利用率を見ると、単価が上がって、患者数も増えていて、その影響だと思うのですが、ただ、病床利用率は下がっているのです。患者数が増えて病床利用率が下がるのはどういうことなのでしょうか。

 

○国立成育医療研究センター企画戦略室長

 平均在院日数が若干ですが減っていますので、そことの相殺もあると思いますが。

 

○永井部会長

1日平均入院患者数は、例えば平成21年に比べて増えているのです。毎日いる患者さんは増えていて、毎日の病床利用率が減っているということなのですが、何か計算上のことですか。

 

○国立成育医療研究センター企画戦略室長

 確かに先生のおっしゃるとおりです。先生の御専門だと思いますが、収益が上がっているということも、まず、テクニカル的には、先ほど総長から御説明させていただいた「業務の概要」という資料の12ページ最後に、平成24年度に取得した主な施設基準ということで、高い管理料等を取れる施設基準についてはなるべく取ろうとする努力をしてきていました。それと、やはり1つは、2回の診療報酬の改定、特に前回の改定で、小児の医療、特に高度な医療、救急医療についての評価はかなりしてくださるようになったことも非常に大きく影響しているだろうと思います。

 

○永井部会長

 先ほどの病床利用率の低下というのはどういうことなのですか。

 

○国立成育医療研究センター病院長

 全てが説明できるとは思いませんが、やはり私どもが見ていて、平均在院日数が減っている。そして、その病床の回転率が高くなっている。効率がよくなっていることが一番の要因ではないかと思います。

 あと、副次的なものとしては、私どもが恩恵を受けたのは、やはり小児入院管理料の1、その他のシステムでバックアップが増えていることがあるかと存じます。

 

○内山部会長代理

 人件費率が下がっているということで、相当な御苦労があると思うのですが、どの部分が圧縮されて下がっているのかお聞かせください。

 それから、文科省などでは、いわゆる承継定員と言って国から来ている定員と、私どもが病院の中での黒字化部分で雇用している定員、そのほか非常勤や委託の職員等がありますが。こういった黒字化の中で、人事管理はどの程度自由度があるのでしょうか。

 さらに、それに関係して、医師の負担軽減のところで、ドクターズクラークが一気に6人増えて、それでやっと12人という、これだけの病院で12人という数は極めて少ないという印象を持ったのですが、病院の運営、収入とのバランスの中で、人件費率、あるいは、人を雇うことの考え方などについて、大雑把でよろしいですがお聞かせいただきたいと思います。

 

○国立成育医療研究センター病院長

 一番目の御質問ですが、人件費率と申しましても、この場合に、委託の人は入っていないのです。ですから、ピュアな比較ができるかどうか、私には即答しかねます。

 

○内山部会長代理

 すごく事務職員が減って、病院の運営にすごく支障をきたしていることがないか。院長先生のところにそれが届いていなければ分からないとは思いますが。

 

○国立成育医療研究センター病院長

 支障はあると思います。ないとは申しません。

 それから、クラークのことですが、先生が御指摘のように、これは圧倒的に足りない。これは増やしていかなければならないということを院長室会議で盛んに話し合っているところです。

 

○内山部会長代理

 それは、病院の中において、どういうレベルで、どのように決まるのでしょうか。

 

○国立成育医療研究センター病院長

 クラークの採用についてですか。

 

○内山部会長代理

 そうです。

 

○国立成育医療研究センター病院長

 これは、まずは院長室会議、それから病院部長会議等で決議して、それを執行役員会議に上げて、裁断を仰ぐというプロセスだと思います。

 

○国立成育医療研究センター企画戦略室長

 補足になるかどうか分かりませんが、先生がおっしゃるように、常勤職の事務職についてはなかなか増やすことは難しい、というか、最小限にして少数精鋭でやっていくということだろうと思います。医療職の増のところについては、正にこの病院が求められている高度先進医療、あるいは様々な地域への貢献。それから、今のところ診療報酬上の評価が、そちらの方向を特に重く見るということと、ベクトルがそれほどずれていないので、そちらをにらみながら充実すべき人材を充実させた結果、今のところ黒字を確保でき、増とした人間が最もパフォーマンスを高めて、収益にも貢献しているという高循環が回っているのではないかと思っています。

 

○福井委員

 簡単にお答えいただければと思いますが、最近になって病院も内部統制のことが随分言われるようになってきているのです。ひょっとして、会計士の資格を持っている方や司法試験に合格しているような人を雇用できる仕組みがあるのでしょうか、というのが1つです。

 もう1つが、外国の組織と比べると随分スタッフが少ないと常に思っているのですが、自己努力で、研究者や臨床医を増やせる仕組みはあるのでしょうか。

 

○国立成育医療研究センター企画戦略室長

 法学部を出た、あるいは弁護士資格を持っている、あるいは他のそういうアドミニストレーションに関わる専門職を雇える仕組みがあるかと言えば、仕組みとしてはあると思います。まだなかなかそこまで、常勤職で雇うというよりも、理事あるいは監事等でそういう専門の方からのアドバイスを頂いて、実際には取り組んでいるところだと思います。

 一方で、国際と言ってもアメリカの環境と比較するのは辛いのですが、医療職については、医療職を採用したことと収益が直結することも多いので、ある意味で取り組みやすい部分があります。その部分で、研究職というところが我がセンターの果たすべき役割を考えて、これからどういうふうに人材を確保していくかというのは、収益とのバランス、採算とのバランスをうまく取っていくということがあると思いますが、研究的要素がきちんとないと、当センターの役割を果たせないと思いますので、そこは、松原先生がおられますが、非常に重要な部分だと思っています。

 

○国立成育医療研究センター理事長

 補足させていただきます。これからのことなのですが、欧米の小児病院等は、民間からの寄附が非常に多額です。日本はそういう文化がないということで、結果的に昨年度は4,000万円弱の御寄附を頂いているのです。それでも大変有り難いのですが、将来は、非常勤だと思いますが、専属のファンドマネージャーあるいはファンドレーザーを雇用して、そういう方向に向かいたいと、今、考えているところです。

 

○藤川委員

 先ほど既に資料の8182ページ辺りで、よかった、高パフォーマンスであった分析を、ある程度していただいたとは思うのですが、積極的に「S」を付けていらっしゃることもありまして、今後も、高水準が保てるかどうかという辺りの見通しと、最初にちょっと、この先、修繕等もあるのではないかとおっしゃっておられて、設備が古くなってきているのではないかというところもあるということですので、その辺りの見通しをお聞きしたいという点。

 それから、余り触れたくない部分もあるかもしれませんが、昨年度「B」評価になってしまった部分が、今年は「A」とされているということで、何か改善があったということだと思いますから、その辺りも御説明を頂きたいと思います。

 

○国立成育医療研究センター企画戦略室長

 周産期・小児医療全般の見通しは、私よりも御専門の方が多いと思いますが、ずっと右肩上がりかどうかは、いろいろ注視しなければいけないと思います。そういった意味で、当センターがやるべき仕事をきちんと見極めて、無駄を省く努力をしつつ、それでも報酬上も高い評価を得られる、かつ、当センターがやるべき仕事については、ある意味果敢に挑戦していきたいと思っております。

 一方で、今、まだ診療報酬上もなかなか評価されないけれども、これからの日本の小児医療あるいは周産期医療のために必要だと思う様々な医療研究もあると思います。そういう部分は先駆的に取り組む。ある意味で不採算かもしれませんが取り組むことは必要になってくると思っております。もう1つは、総長が冒頭に申し上げたとおり、10年を超えてきた当センターの機器整備、あるいは建物の修繕等については、それが今までそれほど負担になっていなかった部分が我々のアドバンテージでしたが、これからは長期修繕計画を見通して、そこもやっていくということで、数字的な黒字がどんどん右肩上がりに増えることは難しいかもしれませんが、20年後のパフォーマンスがより高くなるような投資と受け止めていきたいと思っております。

 昨年「B」が付いたことについては44ページにありますが、一定程度の時間を費やして議論があったと聞いております。(7)に株式会社メド城取のほうから当センターに対して3.8億の債権があると言われた件で、このことについての内部の問題を指摘されたと思います。内部の調査の過程は、昨年度、私の前任からお話したとおり、調査するだけのことはして、内部からは問題点をなかなか見つけ得なかったのですが、その他関係資料については、捜査の関係でまだ東京地検に全部保存されているということです。今はまだ裁判も行われているということですから、それが全部終わった段階で、こちらにも開示いただけるという先方の弁護士との話合いもできております。逆に言いますと、これ以上の調査は現時点では当センターでは難しいということはあります。

 一方で、同じようなことのないようにということで、例えば、研究者が外部資金を得た研究資金についての契約事務については、個人契約ではなくて機関できちんと見ていくことを徹底することと、ガバナンスの強化に努めているということです。

 

 

○福井委員

 微妙なことで、もしお答えいただければと思うのですが、医療過誤の訴えなどで、抱えている訴訟は何件ぐらいあるのですか。どの病院もあるとは思うのですが。

 

○国立成育医療研究センター企画戦略室長

2件です。正直言いまして、非常に少ないと思います。やはり、お子さんの医療で、非常にリスクも高い医療をやりながらですので、自画自賛ではいけませんが、やはり、現場の先生方のきちんとして説明と、それに対する対応と、医療の水準の高さの努力もあると思いますし、ただ、2件でも適切ではないので、今後増えることのないように、あるいは、きちんとした解決ができるように取り組むべきだと思います。

 

○永井部会長

 参考のために教えていただきたいのですが、まず、診療報酬収益の目標は、今年は何パーセントなどと立てていらっしゃるのですか。全くないまま、前年度に比べてどうかということでなさっていらっしゃるのですか。

 

○国立成育医療研究センター企画戦略室長

 基本的には独法になったときの目標値としては、経常収支率101%という目標値があります。それから、黒字を継続したいということを思っております。

 

○永井部会長

 病院運営で、外泊数は把握されていますか。12日はいいのですが23日になると、恐らく保険上は3,000円ぐらいになってしまうと思うのです。長期の外泊が行われていないかどうか。把握しているかどうか。病院によっては非常に大きな数になっている所もありますから。

 

○国立成育医療研究センター病院長

 今どれぐらいであるということは分かりません。

 

○永井部会長

 一度把握していただきたいと思います。

 

○国立成育医療研究センター病院長

 ただ、先生がおっしゃるように、やはり23日などという長期の外泊は極力抑えるような努力は指示しております。

 

○永井部会長

 もう1つ、外来の予約は11枠になっているか、30分や1時間単位になっていないか。これについてはいかがですか。

 

○国立成育医療研究センター病院長

 それについては、全部がきちんとした、1時間に何人ということは、まだ達成しておりません。

 

○永井部会長

 できるだけ、11枠ということで進めていただきたいと思います。

 

○国立成育医療研究センター病院長

 はい。おっしゃるとおりだと思います。

 

○内山部会長代理

 先ほどの訴訟の件ですが、これだけ高度な医療をやっていながら2件は少ないと思います。ただ、一般には小児科や眼科は、全診療科の中でも一番訴訟件数の少ないところで、それだけ皆さん頑張っておられるのではないかという気がしています。

 全然関係ないことですが、ここの中に頂いている「先端医療を必要とする全ての子どもたちへ」というパンフレットは病院を代表する患者さん向けのパンフレットですか。それとも、ほかにもあるのでしょうか。

 

○国立成育医療研究センター理事長

 これは飽くまでも一般向けの簡易版です。もう少し詳しい、各診療科あるいは研究所の部のものは、概略は出来上がっているのですが、もう少ししっかりした厚いものを近いうちに作って、これは一般の方と、あるいはいろいろなゲスト等に、日本語版と英語版の両方を作ろうと考えています。ちなみに、このお配りしたパンフレットの英語版が今週中にできる予定です。

 

○永井部会長

 よろしいでしょうか。それでは評定等を記入いただいて、一応、項目評価は終了とさせていただきます。

 事務局から、今後の取扱いの説明等について御案内ください。

 

○政策評価官室長補佐

 本日お配りしている資料の送付を御希望される場合は、会議終了後に事務局にお申し付けください。会議の冒頭でもお話しましたが、資料をお持ち帰りになって評価いただく場合は、86日(火)までに事務局まで評定記入用紙の提出をお願いします。

 次回の開催ですが、85日(月)10時から、場所は厚生労働省内12階の専用第12会議室です。議題は「国立循環器病研究センターの個別評価」です。以上でございます。

 

○永井部会長

 それでは、これで終了させていただきます。どうもありがとうございました。


(了)

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