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2013年8月22日 第33回労働政策審議会 議事録

政策統括官付労働政策担当参事官室

○日時

平成25年8月22日(木)
10:30~12:30


○場所

厚生労働省省議室(9階)


○出席者

【公益代表委員】

樋口会長、阿部委員、岩村委員、勝委員、鎌田委員、小杉委員、田島委員、土橋委員、宮本委員

【労働者代表委員】

相原委員、逢見委員、加藤委員、神津委員、塩谷委員、高橋委員、冨高委員、南雲委員、       眞中委員、山浦委員

【使用者代表委員】

川本委員、吉川委員、坂戸委員、鳥原委員、三浦委員、宮原委員

【事務局】

村木厚生労働事務次官、生田総括審議官、伊澤総括審議官(国際担当)、中野労働基準局長、   宮野職業安定局次長、杉浦職業能力開発局長、石井雇用均等・児童家庭局長、             熊谷政策統括官(労働担当)、山沖政策評価審議官、藤澤労働政策担当参事官

○議題

(1)平成26年度労働政策の重点事項(案)について
(2)法案の国会審議結果について
(3)分科会及び部会における審議状況について
(4)その他

○議事


○樋口会長

 ただいまから第33回労働政策審議会を開催いたします。よろしくお願いいたします。まず、議事に入る前に事務局に異動がございましたので、御報告をお願いいたします。

 

○藤澤労働政策担当参事官 

去る72日付けで事務局の異動がございましたので、御報告と御紹介申し上げます。始めに厚生労働事務次官の村木です、国際担当総括審議官の伊澤です、職業安定局次長の宮野です、職業能力開発局長の杉浦です、最後に私は労働政策担当参事官の藤澤と申します。どうぞよろしくお願い申し上げます。以上でございます。

 

○樋口会長 

よろしくお願いします。それでは議事に入ります。本日の議題ですが、議事次第にあるように4点挙げさせていただいています。まず第1に「平成26年度労働政策の重点事項()について」、第2に「法案の国会審議結果について」、第3に「分科会及び部会等における審議状況について」、第4が「その他」です。最初に、議題1 平成26年度労働政策の重点事項()について事務局から説明をお願いいたします。

 

○藤澤労働政策担当参事官

 それでは、労働政策の重点事項について御説明申し上げます。例年、夏の概算要求として考えていることのポイントや、制度改正の予定事項など労政審で御議論いただきたいことなどを一覧化しているものです。通しページの3ページを御覧いただきますと、こちらに前書きと項目がありますけれども、経済は持ち直しに転じているということで、今後、景気回復へ向かうことが期待されますが、今年は6月に「日本再興戦略」や「経済財政運営と改革の基本方針」いわゆる骨太の方針が取りまとめられております。

 人材こそが我が国の最大の資源であるという認識に立ちまして、働き手の数の確保と労働生産性の向上の実現に向けた政策が盛り込まれております。また、監督署での監督指導や、ハローワーク等での就職支援、さらに雇用情勢に応じた対策、成長分野あるいは、震災復興のための対策なども実施していきたいと考えており、これらを以下の内容として盛り込んでいるものです。3ページの下に1番から9番まで大項目がありますが、こちらは、先ほどの日本再興戦略などにそって、重点事項の項目として取りまとめたものです。以下1番から9番まで順次御説明申し上げます。

 資料4ページの1.行き過ぎた雇用維持型から労働移動支援型への政策転換という、いわゆる失業なき労働移動の実現に関する政策(1)(5)までの項目としてまとめています。

(1)労働移動支援助成金の抜本的拡充等ということで、労働者の再就職を支援する労働移動支援助成金を抜本的に拡充する、あるいは2つ目のポツにありますようにキャリア・コンサルティング技法の開発などを行ってまいりたいと考えております。

(2)が若者等の学び直しの支援のための雇用保険制度の見直しということで、社会人の学び直しを促進するために雇用保険制度の見直しで、具体的には既に労政審で御議論をいただいているところです。また、キャリア形成促進助成金、あるいはキャリアアップ助成金を学び直しのための支援として新たなものを設けたい、あるいは「地域若者サポートステーション」(サポステ)につきましては、その卒業者を、学び直しプログラムに誘導するようなことを考えているところです。

(3)は、産業雇用安定センターの出向・移籍あっせん機能の強化です。

 また(4)は、人材育成です。情報通信、環境・エネルギー分野などの成長分野、あるいは建設専門人材の確保・育成支援の推進を図っていきたいと考えております。

(5)は成長分野等での雇用促進の推進ということで、介護・医療・保育職種などの人材確保対策を進めてまいりたいと考えております。以上が大項目の1番です。

 通しページの5ページの2.民間人材ビジネスの活用によるマッチング機能の強化ということで、3項目ありますが、(1)ハローワークの求人・求職情報の開放等ということで、求人情報につきましては、民間人材ビジネスや地方自治体に対して、提供を開始するための措置を講じたいということと、求職情報につきましては、ニーズ調査を踏まえた対応を行ってまいりたいと考えております。また、自治体の意向を踏まえて、ハローワークと地方自治体の職業紹介機関等の連携強化を図ってまいりたいと考えております。

(2)トライアル雇用奨励金等の改革・拡充です。ハローワークの紹介に加え、民間人材ビジネスや出身大学等の紹介による雇い入れも対象とする。また、これまでの対象であったニート・フリーターに加え、学卒未就職者、また、育児等でキャリアブランクがある人などを対象として拡大をすることを考えております。

(3)民間人材ビジネスの更なる活用です。例えば、ジョブ・カードの交付について民間活用であるとか、学卒の未就職の方について紹介予定派遣を活用した正社員の就職支援、あるいは、育児・介護等で仕事の現場を離れていた人に対する研修と職業紹介の一体的実施などを進めてまいりたいと考えております。また、優良な職業紹介事業者や労働者派遣事業者の認定を行うことを考えております。以上が大きな2点目です。

3.多様な働き方の実現ということで5ページの下から6ページまで5項目あります。(1)が労働時間法制の見直しということで、労働時間法制について、労政審で御議論をお願いしたいというのが1点目です。

(2)6ページの一番上で、労働者派遣制度の見直しということで労政審で御議論を行っていただきたいことと併せて、派遣労働者のキャリア形成を支援するようなモデル的な取組を行ってまいりたいと考えております。

(3)が「多元的で安心できる働き方」の導入促進ということで、これは「多様な正社員」モデルの普及・促進を図るために、有識者懇談会を設けて、雇用管理上の留意点について取りまとめていきたいと考えております。また、業界検定のスタートアップ支援でありますとか、ジョブ・カードの活用などを進めてまいりたいと考えております。

(4)は、持続的な経済成長に向けた最低賃金の引上げのための環境整備ということで、これは中小企業・小規模事業者の生産性向上等のための支援の拡充、また最低賃金の遵守の徹底を図ってまいりたいということです。

(5)がパートタイム労働法制の整備等ということで、こちらはパートタイム労働法制の整備を行うとともに、キャリアアップ支援等にも取組んでまいりたいということです。

次に、4.女性の活躍促進で、これも4項目あります。(1)女性の活躍促進や仕事と子育て等の両立支援に取り組む企業に対するインセンティブ付与等で、ポジティブ・アクションや仕事と子育て等の両立支援に取り組む企業に対する助成、また税等の経済的インセンティブの充実、あるいは営業大作戦ということで、直接的な働きかけ、また企業への表彰、あるいは団体への表彰です。さらに、女性が子どもを産み、育児休業を取得しても、管理職として登用され、活躍できる企業を増やすために事例等の収集・情報提供及び経済的インセンティブの付与等を考えているところです。また、メンターやロールモデルの普及なども行ってまいりたいと考えています。

7ページの(2)女性のライフステージに対応した活躍支援ということで、次世代育成支援対策推進法の延長・強化を検討したいということが1つ目です。また「育休復帰支援プラン(仮称)」の策定・利用支援を行う。また、現在行っているイクメンプロジェクトの拡充、さらに育児休業中や復職後の能力アップに取り組む企業への助成制度の創設、マザーズハローワークの充実、母子家庭の母等への就業支援の充実などを盛り込んでおります。

(3)男女が共に仕事と子育て等を両立できる環境の整備です。育児休業給付の給付率の引上げを検討する。また、テレワークについて実証事業を実施する、あるいは労務管理に関する専門家の派遣等を行う。また仕事と介護の両立支援のためにモデルの活用などにより労働者の継続就業を促進していきたいという内容を盛り込んでおります。

(4)は男女雇用機会均等対策の推進ということで、こちらは既に雇用均等分科会で御議論をしていただいておりますが、その議論の状況を踏まえて措置を講じてまいりたいと考えております。以上が大きな4項目です。

7ページの下から、5.若者・高齢者等の活躍促進です。(1)若者で、一から五まで5項目ありますが、例えば、「若者応援企業」の普及拡大・情報発信、あるいは8ページの上の所で「正社員就職をあきらめさせない」継続的な支援、さらに中小企業と学生とのマッチングの強化、ジョブ・カードの活用、中小企業団体に対する新たな支援の実施、さらに、コミュニケーション能力が乏しいなど就職活動に困難性を有する大学生等を対象として、特別訓練コースを実施することを考えております。二.フリーター等の正規雇用化ということで、「わかものハローワーク」の充実あるいは、産学官による地域コンソーシアムを構築して、就職可能性を高めるような民間訓練カリキュラムを開発したい。先ほどもありましたが、サポステにつきましては、職場体験先の確保とか、フォローアップ等を行ってまいりたいと考えております。三.若者の「使い捨て」が疑われる企業等への対応策の強化ということで、夜間・休日に常設の「労働条件相談ダイヤル(仮称)」の設置あるいは、ポータルサイトの開設で情報発信を行いたい。さらに法令違反の疑いがある企業等に対しては立入調査や是正指導、また重大・悪質な違反を行った企業等に対しては送検し、原則として公表を行うということを考えております。更に、「わかものハローワーク」や「新卒応援ハローワーク」で「在職者向け相断窓口」の設置を考えております。四.キャリア教育等の推進ということで、「ものづくりマイスター」の拡充とか、キャリア教育のためのプログラムの開発です。五.は若者が就職後も無料でコンサルティングを受けることができるようにメール相談などを行ってまいりたいと考えております。以上が若者対策です。

9ページ上の(2)は、高齢者の雇用対策です。2つありますが、改正高年齢者雇用安定法の施行に対応した中小企業等の支援とか、2つ目の項目にありますように、シルバー人材センターにおける就業機会の拡大、関係機関との連携や情報共有を行う「プラットフォーム」の設置などにより、就業・社会参加の支援の充実を図ってまいりたいと考えています。

(3)障害者等の就労促進です。一.改正障害者雇用促進法の円滑な施行に向けて指針の策定などを行うとともに、特に精神障害者の雇用について企業に対する大幅な支援の充実を図りたいということで、例えば委託訓練規模の拡充であるとか、精神障害者等に対しての訓練指導技法等の開発・普及や、二の最初にありますように、障害者雇用トライアル事業の強化、あるいは障害者本人に対する専門的な支援の強化を行ってまいりたいと考えております。また、発達障害者や難病患者に対する就職支援に対しての充実、更に、がん患者等の求職者に対する就労支援モデルの事業の拡充を図ってまいりたいと考えております。三.「福祉」「教育」「医療」から「雇用」への移行推進です。障害者就業・生活支援センターの設置の推進及び医療機関における精神障害者への就労支援の事業の拡充また、就職支援コーディネーターを全労働局に配置をするということを進めてまいりたいと考えております。以上が若者・高齢者等の活躍促進という大きな5項目です。

10ページの6.労働者が安心して将来に希望をもって働ける環境の整備ということで、4項目あります。(1)ワーク・ライフ・バランスの実現ということで、小項目が3つあります。一.過重労働解消キャンペーン(仮称)などにより、労使の取組の促進や重点的な監督指導を行うということです。二.自主的に時間外労働の削減等に取り組む企業への支援を図るほか、働き方や休み方の見直しに向けた事業主の取組の促進に努めてまいりたいと考えております。三.が治療と職業生活の両立支援などです。

(2)労働者が安全で健康に働くことができる職場づくりということで、これも3項目あります。一.労働安全衛生法令の見直しです。メンタルヘルス対策や、化学物質管理対策に関して労政審での議論を踏まえて、対応を図ってまいりたいということです。二.第12次労働災害防止計画を踏まえた施策の推進です。飲食店など、あるいは陸上貨物運送事業、また建設業について、非正規雇用労働者を含めた労働災害の防止を図りたい。震災復旧・復興関連業務における適切な放射線管理の実施を行ってまいります。更に、三.化学物質、粉じん、石綿などについて、新たな方針を策定して、監督指導等を実施してまいりたいと考えております。

(3)良質な労働環境の確保ということで、一.パワハラ対策でありますけれども、パワーハラスメントの予防・解決に向けて広報媒体・広報先の充実を図る。あるいは、労使への支援策の充実を図ってまいりたいと考えております。二.高い労働安全衛生水準にある企業の評価・公表を行いたいということの一方で、重大な労働災害を繰り返す企業を改善させるための必要な方策を講じてまいりたいと考えております。また、三にありますように労働保険の未手続事業の一掃対策の推進、労働保険料の収納率の向上を図ってまいります。

最後に、(4)が非正規雇用対策の総合的な推進ということで2つありまして、フリーター等の非正規雇用労働者の正規雇用化の促進、あるいは「多元的で安心できる働き方」の普及等による非正規雇用労働者のキャリアアップ支援を行ってまいります。以上が大きな6点目です。

7.重層的なセーフティネットの構築で、2項目あります。(1)生活保護受給者などの生活困窮者に対する就労支援の拡充などですが、1つは生活保護受給者や生活困窮者に対するより効果的な自立支援のために、ハローワークと地方自治体が一体となった就労支援を充実・強化したいと考えております。また、刑務所出所者等の就労支援事業を強化してまいります。

(2)が雇用保険制度及び求職者支援制度によるセーフティーネットの確保ということで、12ページの上ですが、これも既に労政審で議論を行っていただいておりますが、それを踏まえて措置を講じてまいりたい。更に、国庫負担金の本則復帰につきましては、雇用保険法の附則の規定に基づいて検討してまいりたいと考えております。以上が大きな7番目です。

8.震災復興のための雇用・労働対策ということで、(1)被災地での安定的な雇用創出です。一時的な雇用の場を確保しつつ、被災地での安定的な雇用の創出を図っていきたいと考えています。(2)は、先ほどの再掲です。以上が8番目です。

 最後に、9.その他ということで、国際関係です。一.外国人の適正な就業の促進です。外国人雇用サービスセンターが新卒応援ハローワークなどの関係機関と連携して、就職支援の取組を推進したり、あるいは外国人技術者・理系留学生の日本企業への就労・定着の実態について調査分析を行いたい。二.労働条件の確保ということで、外国語によるモデル就業規則の新たな作成です。三.国際発信力の強化です。東京電力福島第一原発の作業従事者の放射線被ばく状況などの英訳版の公表を行っていきたいということです。以上、かけ足で申し訳ございませんが、9項目をまとめて御説明申し上げました。よろしくお願いいたします。

 

○樋口会長 

ただいまの説明について、御質問、御意見がありましたらお願いします。

 

○逢見委員

 今、説明いただいた平成26年度労働政策の重点事項のトップに、「行き過ぎた雇用維持型から労働移動支援型への政策転換」というのが最初に出てきます。これには非常に違和感を持っているのですが、このタイトルは恐らく「日本再興戦略」に書かれたものをそのまま持ってきたのだろうと思います。この「日本再興戦略」は、規制改革会議なり産業競争力会議で議論されたものがまとめられものだと理解していますが、規制改革会議や産業競争力会議は一部の有識者、あるいは経済界の人たちの間で議論したもので、ここで雇用労働政策を固めて、それがそのまま厚生労働省の労働政策に下ろされているというイメージなのです。これですと、ILOの三者構成原則で雇用労働政策を議論するということに抵触するのではないかという問題点を持っております。

 「行き過ぎた雇用維持」ということですが、「日本再興戦略」では、リーマン・ショック以降の急激な雇用情勢の悪化に対応するために拡大した雇用維持型の政策を改めると書いてあるのです。要するに、リーマン・ショックのときにやった政策を変えなければいけないということですが、リーマン・ショックはアメリカから発したマネーの暴走による金融危機が世界中に広まって、我が国においても製造業を中心に急速に稼働率が低下したということです。そういう中で、失業を防ぐために雇用調整助成金を活用して雇用を維持したわけですが、これが「行き過ぎた雇用維持」だったのか。私は、むしろ、ああいう場合にこそ雇用調整助成金は非常に役に立ったと思っているのですが、あれは駄目だったのかという印象を持っております。そういう労働政策を平成26年度は冒頭にやろうとするのか。これについては、私は非常に疑問に思っておりますので、これについての厚生労働省の見解を伺いたいと思います。

 

○眞中委員

 逢見委員から、労働移動型と雇用調整助成金の関係で御発言がありましたが、2012年の実績の中で、雇用調整助成金が1,134億円、労働移動支援助成金が24,000万円ということで、日本再興戦略の中では、これらの予算規模を2015年度までに逆転させるのだ、それを2014年度の概算要求に反映させると伺っていますが、これまで我々労働組合としても、雇用調整助成金を活用して一時的な急激な減少に、労使で協力し、雇用を維持しながら何とか乗り切ろうと努力をしてきたと自負しております。直近ではリーマン・ショック以降、平成21年度にはかなりの利用実態もあろうかと思いますが、これまで多くの雇用情勢の山谷の中で雇用調整助成金を使いながら雇用を安定させてきたと思っております。現在はリーマン・ショックのときよりも経済状況は若干持ち直したとは言われておりますが、まだまだ中小企業では厳しい実態があります。そういった中で、雇用調整助成金と労働移動支援助成金の予算規模を逆転させるのだという考え方について、我々には到底理解ができないし、難しいと思っているので、この辺りについて厚生労働省の見解をお聞きしたいと思います。

 

○宮原委員

 今、お二人から議論があったところも含めて、2点申し上げます。1つは失業なき労働移動の実現、もう1つは若年層の活躍の促進という点が大変大事だろうと思います。先ほど御説明があったとおり、日本再興戦略の中で「行き過ぎた雇用維持型の政策」を見直すために、雇用調整助成金から労働移動支援助成金に大胆に舵をシフトするという方針が出たわけですが、これから先の我が国の労働市場をどう改革していくのかを考える上で、この方向性は大変重要であると考えております。是非、真摯な議論を期待したいと思います。しかし、同時にこれまで雇用調整助成金制度の果たしてきた役割の重要さも無視できないので、とりわけ経済情勢が急激に変化したとき、企業は雇用維持に最大限に取り組むわけですが、このときの側面支援という重要な機能も有しているのです。今後、こうした景気後退の局面がないことを祈りますが、ないとは言い切れません。そういった場合に備えて、柔軟な対応を図ることができるように配慮をお願いしたいと思います。

 もう1つの「若者の活躍促進」については、大卒の2015年度の卒業・終了予定者から、採用選考活動の開始時期が後ろ倒しということになり、経団連としても倫理憲章の改定等を急いでおります。しかし、現時点での新規大学卒業生の就職環境は依然として非常に厳しい。例えば、今年の春に卒業した学生のうち、進学も就職もしていない者が76,000人もいるということで、これは全卒業生55万人の中で大変大きな比率になりますが、この採用選考が後ろ倒しになることで、更にこういった数が増えることがないように、いろいろな支援や政策を導入しなくてはならないと思います。重点事項の中で、新卒応援ハローワークの充実などが盛り込まれておりますので、更に充実・強化を期待したいと思いますので、よろしくお願いします。

 

○樋口会長

 事務局に対しての質問が出ているので、それについてお答えください。

 

○熊谷政策統括官(労働担当)

 私からは、ILO三者構成原則の関係で、逢見委員から御指摘のあった点について御説明します。

 先ほど逢見委員からお話のあった産業競争力会議、あるいは規制改革会議においては、それぞれ会議の設置目的に沿って様々な観点から御議論が行われ、その中で労働移動支援型への政策転換等、雇用政策についても一定の方向性が含まれた取りまとめが行われました。逢見委員からお話があったように、もとより雇用労働政策についてはILOの三者構成原則の趣旨を十分尊重し、当事者である労使の参画を得て議論が十分尽くされることが非常に重要です。先般示された方向性を踏まえた具体的な雇用労働政策の決定の段階にこれから入っていくわけですが、その際には公労使の三者で構成されている労働政策審議会の、具体的には各分科会等の場になろうかと思いますが、そちらでしっかりと御議論をいただいた上で、具体的な政策を決めて実行していくということで対応していきたいと考えております。

 

○宮野職業安定局次長

 逢見委員、眞中委員、宮原委員から御意見を頂きました。

まず、リーマン・ショック以降の雇用維持型の対策・政策に対する評価、再興戦略、あるいは今回の重点施策で、うたわれている労働移動の支援についての私どもとしての考え方です。リーマン・ショック以降の雇調金を中心とする雇用維持対策ですが、これは私どもとしてもリーマン・ショック後の状況のような雇用情勢の急激な悪化に対して、雇調金を局面に応じて弾力的、機動的に活用するという雇用維持のための政策そのものについては極めて重要であると考えております。したがって、宮原委員から御指摘があったように、そうした事態が生じないことを願うわけですが、今後とも仮にそうした事態が生じたとすれば、局面に応じて弾力的、機動的な対応をしていかなければならないと考えております。

 この重点施策にある「行き過ぎた」というのは、リーマン・ショック後の対応のことを言っているのかという逢見委員の御指摘ですが、私どもの認識としては、今申し上げたとおり、リーマン・ショック後の対応としては効果を上げていると考えております。一方、現状を考えると、景気も大分好転してきている中で、リーマン・ショック以降の雇用調整助成金については、御案内のとおり様々な形で要件の大幅な緩和をするという対応を取ってきました。これについては、景気あるいは雇用情勢が大分好転している現状に照らすと、平時の段階に戻すべき段階であると考えております。こうした状況について「行き過ぎた」と表現をしているものと認識しております。私どもとしては、決して当時の対策そのものが行き過ぎたものであるという認識は、持っておりません。

 その上で、眞中委員からありましたが、雇用調整助成金と労働移動支援助成金の2つの助成金の額を逆転させることについて、現状は今申し上げたとおりです。一方で雇用調整助成金については、額的に一番膨らんでいたときは6,000億円強を支出していたわけですが、それが1,000億円程度まで現状では減少してきているということです。当然、要件の厳格化そのものも進めてきましたが、今後も更に要件の厳格化も行いつつ、景気の状況に応じて更に減少していくことが見込まれております。その一方で、今後、再興戦略にもありますように、我が国が成長していくためには、成熟産業から成長産業に向けて人材を円滑に移動させることが必要であろうと考えております。こうした対策の一環として、労働移動支援助成金の抜本的拡充が盛り込まれたということです。こうした取組の結果として、雇用調整助成金、労働移動支援助成金の予算規模が逆転していくであろうと見込んでおり、予算額を逆転させることそのものを目的としているものではないということを申し上げたいと思います。雇用維持政策、あるいは労働移動支援政策の考え方については以上です。

 もう1点、宮原委員から御指摘があった学生の就職支援の問題です。これも御指摘のとおり、学生を中心とした若者の安定した雇用の問題は、非常に重要な問題であると考えております。御指摘をいただいたとおり、新卒応援ハローワークを中心として、きめ細かな職業相談、職業紹介、あるいは大学との連携等々により、こうした対策の強化を図っております。来年度も、こうした対策を引き続き進めていきたいと考えております。さらに、来年度においては若者応援企業を更に周知していくということで、中小企業へも更にマッチングを図っていく、あるいは就職後の定着支援の取組も強化をしていきたいと考えております。以上です。

 

○樋口会長

 ただいまの説明について、何かありますか。

 

○逢見委員

 労働移動支援型も全く否定するわけではないのですが、日本再興戦略では大胆に転換するのだと言って、予算規模も逆転させるとか、数値目標を出していて、転職入職率を9%にするという目標が掲げられています。厚生労働省はそういうものを目的にするのかと思って資料を見たら、45ページにはそういうものが入っているのです。

 こういうものが、果たして政策目標になり得るのか。受け皿があって上方移動する人たちが出てくるのは良いと思うのです。しかし、まだしっかりした受け皿もないのに、そこで転職入職率という目標を掲げて、そこに助成金を使ってどんどん転職させること自体が本当に良い労働政策と言えるのかどうか。そもそも日本再興戦略の出したものは、現場感覚から見ると大分ずれている感じがするのですが、それがそっくりそのまま厚生労働省が掲げる労働政策の中に丸飲みされてしまうことについては大変遺憾に思っております。そのことを意見として申し上げます。

 

○樋口会長

 御意見として伺います。

 

○三浦委員

2点申し上げます。1点目は、3.多様な働き方の実現の(3)「多元的で安心できる働き方」の導入促進についてです。勤務地や職種などに着目した、労働条件が限定された雇用形態の普及促進を図ることは、働き方の選択肢を多様化させるものであって、安定的な雇用機会の拡大やワーク・ライフ・バランスの実現などの観点からも、早急に取り組むべき課題であると考えております。今後、有識者懇談会を設置するということですが、是非、懇談会では、それが労働者、あるいは企業にとってどのようなメリットがあるのか、できるだけ分かりやすく示していただき、こうした制度に対する懸念があるとすれば、それを払拭していただけるような内容にしていただければと思っております。また、既に制度を導入している企業は、どのようなプロセスで進めたのか、あるいはどのような効果が得られたのか、こういった具体的な事例を紹介していただくことも、もう1つの方策ではないかと思っておりますので、よろしくお願いします。

 次に、4.女性の活躍推進についてです。経済界としても、女性の力をより一層活かすことが重要だと認識しており、積極的な取組を様々進めております。経団連では、企業行動委員会の下に新たに女性の活躍推進部会を設置しました。また、7月末には「女性の活躍支援推進に関する企業の取組事例集」を公表し、会員企業が各社の置かれた状況に合わせて施策を推進できるよう支援をしております。行政サイドにおいては、日本再興戦略にもありますとおり、是非、待機児童の解消のための社会基盤の整備など、様々な支援策を早急に、かつ大胆に実施していただきたいと思います。

 

○南雲委員

2点、労働者派遣制度の見直しと多元的で安心できる働き方の促進について御意見を申し上げます。

 資料16ページの(2)に労働者派遣制度の見直しに関する記述がありますが、820日に厚生労働省内に設置された「今後の労働者派遣制度の在り方に関する研究会」が、労働者派遣制度の見直しに向けた検討結果について報告書を取りまとめております。その報告書には、派遣労働者のキャリアアップの推進なども盛り込まれており、派遣労働者保護を重視しようとする姿勢には一定の評価を与え得るものだと思うものの、先般マスコミで「派遣規制緩和へ」といった見出しが大々的に踊ったこともあり、全体的には問題が多いと言わざるを得ないと思います。

 具体的には、常用代替の防止のための規制である派遣期間の制限の在り方について、現行の「専門26業務」以外は原則1年という業務区分による期間制限を撤廃し、単に派遣元での雇用期間のみに着目し、有期雇用であれば上限3年、無期雇用であれば無期限に派遣を認めるといった内容が提起されております。また、有期雇用の場合も個人レベルでの上限を3年延長するとともに、派遣レベルでの3年超えの者の受入れも、派遣先の労使のチェックを条件に可能とするという提案がなされており、その内容は大幅な規制緩和であると思います。一方、派遣労働者の保護については、欧州諸国のような派遣先労働者との均等待遇を推進することは難しいと結論づけるなど、極めて不十分な検討にとどまり、研究会の報告書には問題点も多いと言わざるを得ないと思います。資料16ページ2(2)にありますように、今後、労働政策審議会で労働者派遣制度の見直しに向けた議論が開始される予定であるということですが、その議論に当たっては、日本型雇用の特徴である長期雇用システムに照らし、派遣法の背骨とも言うべき常用代替の防止の概念を堅持することが重要であると考えます。同時に、派遣労働者の保護を強化していく必要があります。この常用代替防止と派遣労働者の保護については、二項対立の関係で捉えるのではなく、不即不離の関係にあり、その双方からの見直しが必要であると思います。

2点目、「多元的で安心できる働き方」の導入促進については、資料16ページの(3)に、多様な働き方の実現の観点から、「多元的で安心できる働き方」の導入促進という施策が掲げられております。具体策として、職務等に着目した「多様な正社員」モデルの普及促進を図る旨が記載されております。そもそも職務や勤務地などを限定するジョブ型正社員制度については、非正規労働者から正社員へのキャリアアップに向け、固定化されることのない通過点として、労使協議を経て各企業の人事制度として導入・活用されることは望ましいことです。現に、大企業を中心に制度導入している事例も見られます。

 しかし、労働側として懸念しているのは、政府の規制改革会議などで、ジョブ型正社員が解雇ルールの枠組みで議論されてきたことです。資料16ページには、「有識者懇談会において、労働条件の明示等、雇用管理上の留意点について取りまとめ、周知を図る」とされていることについて、有識者懇談会はどのような構成となるのか、また、具体的にどのような内容の検討を行うものなのかを確認したいと思います。特に労働側として、ジョブ型正社員の在り方について、労働契約法などの解雇ルールの見直しは当然に行わないと認識しておりますが、研究会でも念頭に置いていないという理解でよろしいのかをお聞かせいただきたいと思います。

 

○鳥原委員

9ページの(3)の障害者等の就労促進について意見を申し上げます。先ほど御説明があったとおり、今後、改正障害者雇用促進法の施行に向けて、厚生労働省の研究会において障害者の差別禁止や事業主による合理的配慮の提供に関する指針の検討が進められることになります。障害者に対する差別の禁止については、何が差別に該当するのかが不明瞭であると、経験の少ない企業の現場では混乱が生じることになります。また、事業主の合理的配慮の提供に際しては、障害特性に加えて職場環境や従事する職務なども踏まえる必要があり、その対応は千差万別とならざるを得ません。指針の検討に当たっては、企業現場の実態を十分考慮しつつ、差別行為の要件や合理的な配慮の具体的な内容と過重な負担の判断基準を明確にしていく必要があると思います。更に、納付金制度を活用した事業主の経済的な負担軽減策についても考えていく必要があると思っております。

 また、今回の法改正によって、20184月から法定雇用率の算定基礎に精神障害者が新たに加えられます。残念ながら、現状では精神障害者の雇用環境が十分に整っているとは言い難い状況にありますので、精神障害者をはじめ、障害者雇用に着実に取り組む企業に対して、トライアル雇用やジョブコーチ制度など、支援策の大幅な拡充が求められます。その際、企業のニーズを十分に踏まえて、各施策の充実に向けたロードマップを早期に示していただきたいと思います。

 

○樋口会長

 今、労働者派遣、多元的で安心できる働き方、女性の活躍推進、障害者の就労促進というテーマが出ましたが、それに関連するテーマがあれば出していただきたいと思います。

 

○高橋委員

 女性の活躍促進について意見を申し上げます。6ページの4で、女性の活躍促進は持続可能な社会を作っていくためには非常に重要な視点だと書かれていますし、日本再興戦略においても、とりわけ働く女性にとって今非常に課題になっているM字カーブの解消が解決策として取り上げられていることについて、私たちも高い関心を持っています。とにかく日本の女性の働き方についてM字カーブがなかなか解消できていないという現実ですので、その解決のためには、何としても働く女性が第一子の出産を契機に6割が離職しているという実態を踏まえた解消策が要るのではないかと思います。ですから、子供を産んだ後も女性の就労継続が可能になるといったことをしながら、女性の就業継続率の向上を図っていくことが最も重要であると考えております。

 また、働く女性が子供を産むことについて、妊娠・出産は少子高齢化が進む日本にとっては非常に重要な観点になっていると思いますが、現実には妊娠・出産を理由とした、あからさまな理由ではありませんが、解雇、雇止め等がまだまだ横行している現実があります。連合で、職場のマタニティハラスメント、妊娠・出産に関わった精神的ハラスメントを受けているかという実態調査をすると、4人に1人がそういった状況があったと答えているという結果でした。これは、今ある現行制度、妊娠・出産、子育てに関わる現行制度が十分に周知されていない、制度がきちんと機能していない実態が浮かび上がったと受け止めております。働く女性にとっては、妊娠・出産をしても、継続しながら、キャリアを中断させることなく子育てと仕事の両立ができることによって、結果としてここに挙げられているような管理職が増えていることにつながるのではないかと思いますので、子育てと仕事の両立の前に、妊娠・出産と仕事の両立という観点をしっかりと位置付けた政策を展開する必要があるのではないかと考えております。

 

○坂戸委員

 ただ今、鳥原委員から障害者雇用の問題について御発言がありましたが、中小企業の立場として、御意見を申し上げます。

 鳥原委員のお話にもありましたように、現在、合理的配慮の提供についてのガイドラインなどを作るということで研究会が立ち上がっております。是非とも、この中で中小企業の職場環境についても十分に配慮いただいて、このガイドラインの策定に当たっていただきたいということをお願いしたいと思います。同時に、ここ数年の努力のお陰で、身体障害者や知的障害者の方に対する雇用の姿勢が、中小企業の間においても大分進展してきております。ただ、このたびは精神障害者が加わったわけです。精神障害を雇用する場合、企業の対応は、多岐多様にわたるということで、大変困難なことだろうと思います。中小企業においては、精神障害者雇用に対応、準備をしたりする人材がいないと言ってもよいような状況です。9ページにもいろいろ書いております。「精神障害者雇用トータルサポーターや就職支援コーディネーターを全労働局に配置し」と書いてありますが、これは障害者の方に対しての支援のように聞こえるわけです。中小企業が精神障害者雇用に取り組もうとしてもなかなか難しい面もあるので、求職者の方と同じように中小企業に指導、支援をする、アドバイスをするといった体制を取っていただきたいということをお願いしたいと思います。

 

○鳥原委員

 労働者派遣制度について、特に労働者派遣法の見直しの議論の在り方に関して意見を申し上げます。

 先ほどもお話がありましたが、820日に取りまとめられた研究会の報告書を拝見すると、常用代替防止の考え方の再構成や期間制限の在り方など、制度の根幹に関わる極めて重要な論点について、具体的な見直しの方向性が記述されていると感じました。今回の報告書は、今後の需給制度部会における議論に資することを目的に、論点を整理するために取りまとめられたものであると理解をしておりますが、これから行われる審議会の議論を制約するものではないということでよろしいかどうかを確認したいと思います。

 最近、法改正を行う際には、まず有識者による研究会を設置して報告書を取りまとめることが慣例化しつつあるように思います。報告書の取りまとめに当たっては、専門的な見地から様々な検討を行って、1つの方向性だけを示すのではなく、考えられる政策の選択肢やその効果を提示するなど、あくまで審議会での議論に資するような内容にとどめていただくことが望ましいと思いますので、その点についてよろしく御配慮をお願いします。

 

○樋口会長

 今、南雲委員、高橋委員、鳥原委員、三浦委員、坂戸委員から出された御質問について、事務局から何かありますか。

 

○宮野職業安定局次長

 職業安定局から、派遣と障害者についてお答えします。

 まず、南雲委員、鳥原委員から派遣制度の見直しについて御意見を頂きました。お話のあった「今後の労働者派遣制度の在り方に関する研究会報告書」は、820日に取りまとめられ、公表されましたが、これは有識者である委員の皆さんに、関係者からのヒアリング等も行いながら、派遣制度を取り巻く諸課題について16回にわたって御議論をいただき、その内容を専門的な見地から整理をしていただいたものです。内容については触れませんが、いずれにしてもこうした内容です。したがって、当然これは審議会での検討、議論そのものを制約するものではありませんが、こうした経緯を踏まえ、この研究会の報告書を十分踏まえて、今後、労働力需給制度部会において御議論をいただければと考えております。

2点目は、鳥原委員、坂戸委員から御意見を頂いた障害者の関係です。改正法に基づく指針の策定の検討についてです。御意見にありましたように、差別的取扱いの具体的な考え方、あるいは合理的配慮の具体的な内容、過重な負担の判断基準といったものを明確にすることは、非常に重要なことであると考えております。今、頂いた御意見も踏まえて、今後関係者の御意見も十分に聞きながら、更に検討を進めていきたいと考えております。また、これに併せて鳥原委員から御意見のあった経済的な負担策の問題ですが、こうした御意見を踏まえ、納付金制度、あるいは他の公的支援制度の活用も含めて、そうした支援の在り方について私どもとしても検討していきたいと考えております。

 もう1点、精神障害者を法定雇用率に加えるという改正内容について、鳥原委員、坂戸委員からも御意見を頂きましたが、これは平成304月から施行されることになっております。平成304月に向けて、企業が精神障害者の雇用に円滑に取り組むことができるように、精神障害者の雇用のノウハウの蓄積、あるいは医療機関との連携、更には企業へのトライアル事業を含めた経済的支援の強化、これは坂戸委員からあったような企業への支援も当然含まれておりますが、そうした様々な対策を平成304月を見据えた形で充実していきたいと考えております。よろしくお願いします。

 

○中野労働基準局長

 三浦委員、南雲委員から御指摘のあった多様な正社員に関する有識者懇談会について御説明します。有識者懇談会においては、勤務地や職務等が限定された多様な正社員制度モデルの普及促進のために、既に導入に取り組んでいる企業の成功事例等の収集、周知や「多様な正社員」に関する雇用管理上の留意点を取りまとめることとしております。その際には、三浦委員から御指摘があったように、どのような導入プロセスを行ったか、どのような効果があったかについて、成功事例の収集の際には特に留意したいと考えております。また、雇用管理上の留意点については、労使双方にとって良いものとなるような視点から御議論いただき、検討を取りまとめていただきたいと考えております。

 南雲委員から御指摘のあった有識者懇談会のメンバーですが、この分野は多様な正社員の雇用管理の実態・課題について識見を有している人事労務、労働経済、労働法の学者の方々にお集まりいただくことを考えており、現在、人選を進めているところです。

 検討内容ですが、先ほど申し上げたように、好事例の収集と雇用管理上の留意点ということで、その際には採用、配置、教育訓練、処遇、キャリアパス、雇用の終了まで幅広い局面についての留意点を網羅的、総合的に御議論いただきたいと考えており、専ら解雇について御議論いただくことや解雇ルール一般の見直しを目的に検討いただくことは考えておりません。

 

○石井雇用均等・児童家庭局長

 女性の活躍の関係で、三浦委員と高橋委員から御指摘いただきましたので、順次お話します。

 待機児童解消の関係ですが、これは本当におっしゃるとおりです。ずっとこの問題は女性の活躍促進を阻害するものということで、国が率先して取り組むべきという御指摘を、労使双方から頂いてきたと認識しております。今年の4月に、成長戦略に関する総理のスピーチの中で、総理自ら女性の活躍促進は成長戦略の重要な柱であるとして、待機児童解消をしっかりやっていくのだということです。当初想定していた子供・子育て新制度のスタートを待つことなく、足元から直ちにこの解消に向けてスタートするのだということで、平成25年度、平成26年度で20万人の保育の受け皿、5年間で40万人の保育の受け皿を作っていくのだということです。可能な限りの施策を講ずるということで、既に自治体が動き始めております。731日現在でその動きを集計しており、これは極めて都市部の問題ですが、待機児童が50人以上いる市区町村の94%が、このプランに手を挙げてきております。とりわけ東京23区や政令都市といった大きい所は全部参加するということで、今、非常に大きな動きが出てきております。ここは、とにかくしっかり取り組んでまいりたいと思っております。

 高橋委員からM字カーブの話がありましたが、おっしゃるとおりです。この問題について解消していかないと、女性の管理職の増加にもつながらないし、少子化の解消につながらないということで、待機児童解消と並んで、この問題をしっかり捉えていく必要があるだろうと思っております。女性の6割が妊娠、第一子出産前に辞めていくということですが、なぜ辞めていったか、中身を聞くと、大体4割の方が自発的に辞めていかれる。しかし、3割の方は両立が困難、1割の方が退職について勧奨を受けたとか、解雇されたと答えています。正に高橋委員がおっしゃったように法律があるのに、規制があるのに、それが守られていない、あるいは十分周知されていない部分もあるかもしれません。それによって、継続できない女性がおられるのは事実なのだろうと思っております。ここは法律はあるわけですから、周知は徹底的にやっていきたいと思っております。

 また、辞めていかれる女性の属性を見ると、中小企業で育児休業がまだ取りにくいという状況があります。ここをしっかり支えていくことが必要だと思っております。中小企業で働く方、あるいは育児休業が取れても、取れる条件にあるのに取れないで辞めていく非正規の方、こういう方々に対してしっかり目配りをしていきながら両立を図っていく。そのことによって、第一子を産んで、もう懲り懲りだと、第二子を産む気にもなれないということにならないようにしていくことが大変大切かと思っております。

 

○樋口会長

 今御質問なさった方々、よろしいでしょうか。

 

○南雲委員

 先ほど研究会報告の問題点について指摘をしましたが、使用者側の鳥原委員からも指摘をされました。今回取りまとめられた研究会報告は労働力需給制度部会の議論を制約するものであるべきではないということを、労働側としても重ねて申し上げておきたいと思います。

 

○樋口会長

 それでは、そのほかの議題について、いかがでしょうか。

 

○吉川委員

4ページ(2)の「若者等の学び直しの支援のための雇用保険制度の見直し」と、6ページの(4)「持続的な経済成長に向けた最低賃金の引上げのための環境整備」の2点について意見を申し上げます。

4ページに、若者等のキャリアアップ・キャリアチェンジを実施する学び直しを促進するため、雇用保険制度の見直しを行うという記載がありますが、雇用保険制度で対応するのであれば、雇用保険の給付を受けられる方に対象を限定すべきではないかと考えております。また、キャリアアップとキャリアチェンジでは、対象者も目的も大きく異なると思いますので、この制度の見直しに当たっては、若者に対しても企業に対しても、双方にとって良い制度となるように、対象者などを明確にした上で検討していただきたいと思っております。

 もう1点の最低賃金の引上げのための環境整備についてですが、中央最低賃金審議会が87日に答申を行い、今年度の地域別最低賃金改正の目安額は全国加重平均額で14円の引上げにつながる水準となりました。足元の原材料や電力コストの上昇、消費増税後の価格転嫁の難しさなどから、中小企業はますます収益悪化が懸念される中で、今回、賃金支払能力を上回る大幅な最低賃金の引上げにつながったことで、雇用に悪影響を及ぼすのではないかと懸念しております。日本再興戦略にも盛り込まれておりますが、最低賃金の引上げに当たり、中小企業、小規模事業主の生産性向上のための実効性ある支援策を、関係省庁と連携しながら、いち早く取り組んでいただきたいと思っております。最低賃金の引上げについては、そうした支援策の拡充を見込んでの了承と思っておりますので、その辺りのことを是非御検討いただきたく思います。以上2点です。

 

○樋口会長

 ほかにいかがでしょうか。

 

○相原委員 

相原です、よろしくお願いします。

 今、吉川委員からありました最低賃金の関係につきましては、全く同趣旨の発言をしようと思って準備をしておりました。今回の中央最低賃金審議会の審議の中においても、とりわけ経営者の皆さんから最低賃金の引上げを基とした中小企業に対する影響、その背景に対して最大限の配慮をなすべきだということについては多くの言及がなされていることも十分承知しております。もとより、日本の経済を広く支える中小企業の基盤強化なしに、安定した雇用が継続的に生まれてくることがなかなか難しいというのも労働側としても十分承知しているところです。家計や所得の改善と併せて、この機を以って経営体質の強化に当たられることも日本再興戦略に盛り込まれた趣旨を遺憾なく発揮する上で大変重要だと思っています。

 つきましては、単体の中小企業に対する点としての経営対策、経営政策若しくは経営改善指導はもとより、面として広げていく、都道府県にどんどん広げていく、若しくは吉川委員からありましたように、他省庁との関連も含めて総合的な対策を速やかに配置していくことについては、併せてこちらからもお願いしておきたいと思っています。

 加えてもう一点ですが、資料112ページの国際関係について一点だけ御意見申し上げたいと思います。9の「その他(国際関係)」です。今回記載はありませんが、労働側として、法違反などの問題事例が跡を絶たない技能実習制度について一点だけ、早急な改善をお願いしたいと思っています。現に厚生労働省でも、実習生を受け入れている事業場の8割で、何らかの法令違反があるとの報道発表資料を7月3日に公表されておられると承知しております。

 つきましては、この制度の適切な運用に向けて、厚生労働省としての具体的な対処方針を伺いたいという点が一点です。併せて、3月に設置されました法務省の第6次入国管理政策懇談会において制度の見直しの論議を行う旨も既に承知をしているところです。従って、この法務大臣の諮問機関に対する厚生労働省としての見直しの論議に対してのスタンス、又その関与の仕方についても併せて確認をしたいと思っています。

 いずれにしても、技能実習制度につきましては、開発途上国の技術移転などを基にして国際貢献をしていくという大義も持っている制度です。本来の趣旨を逸脱しない、健全な運営がなされるように安価な労働力という見方のみならず広く大きく捉えた上での制度、創設以来の趣旨を成就するような環境整備に今後も当たられることを期待したいと思っています。よろしくお願いします。

 

○樋口会長

 ほかにいかがでしょうか。

 

○神津委員

 私からは学び直しについて意見を申し上げたいと思います、資料で言うと4ページになります。その前に、4ページの大項目の1点目のタイトルに「行き過ぎた雇用維持型から労働移動支援型への政策転換」とありますが、この「行き過ぎた雇用維持型」という言葉については、先ほど逢見委員、眞中委員からも縷々ありましたが、非常に懸念、疑問を大きく持っていることを申し上げておきたいと思います。先ほど御説明もあったのですが、これは必ずしも大げさなことを言っているのではなくて、要件の緩和を平時に戻すというお話が雇用調整助成金についてありました。もし、そういう内容なのであれば、1点目に大々的な政策転換という形で掲げられるということについては非常に大きな違和感があるということを申し述べておきたいと思います。

 それと同じ項目で括られている内容なので、いかがなものかなという気もするのですが、それはそれとして、学び直しという概念自体は悪いことではないのだろうと思います。ただし、雇用保険制度の下でこれをやっていくということです。雇用保険制度の制度の問題ということについては、そもそもの趣旨や本質とか、これまでの経緯というものを十分踏まえる必要があるのだろうと思います。

 振り返ると、財政状況が危機に陥った2000年代の前半に、苦渋の決断によって給付水準、所定給付日数や給付率などの給付水準を引き下げたということです。支出の抑制によって、今日、積立金残高が6兆円近くに達しているということであります。この経緯を踏まえて収入と支出のバランスを図る必要があるだろうと思います。

 その意味で、まずは給付水準を引き上げて、離職者が安心して求職活動を行えるよう、雇用保険の生活安定機能を充実させる見直しを行うことこそが先決だと思います。その点のお考えをお聞きしておきたいと思います。

 また、雇用保険の枠組みの中で学び直し支援を行うということであれば、労使負担の雇用保険財源を使うということですから、今申し上げた雇用保険そもそもの目的、本人の雇用の安定、失業予防、処遇の改善といったことに資するように、本人への給付を中心に制度設計する必要があると思います。

 そのため、もしやるとしても、例えば支給要件にハローワークなどによるキャリア・コンサルティングの実施を義務付けるなど、濫給を防止する、みだりに大きな金額が支給されるということではなく、真に実効性のある学び直しに対して支援を行う、そういった制度設計が必要であると思います。その点の指摘をしておきたいと思います。以上です。

 

○川本委員

 ただいま、失業等給付の拡充に関しての御意見があったと思いますので、一言申し上げておきたいと思います。失業等給付のあり方について検討するということであれば、失業者の生活の安定を図るという視点だけでなく、失業者の早期再就職の促進を図る視点も大変重要になると考えているところです。

 従って失業等給付の日数や給付率について、拡充を検討するということであるならば、逆に求職活動の意欲低下を招くような結果にならないようにしていただきたい。先ほど申し上げた2つの視点のバランスを保ちながら慎重に検討すべきと考えています。先ほどのお話の中でもありましたけれども、保険料の積立額は現在、過去最高の約5.9兆円となっております。依然として厳しい経営環境に置かれている企業もあることを踏まえれば、本来なら保険原理に則って料率の引下げについても検討すべきであると思います。以上です。

○塩谷委員

 私から一点、パートタイム労働法制の整備について意見と質問をさせていただきたいと思います。

6ページの(5)「パートタイム労働法制の整備を行い、制度の周知を図る」というように記載があります。こちらに関しては、既に建議がまとめられているにも関わらず、今のところ、その後の法案要綱の審議や法案提出というところにはまだ至っていないという実態があります。可能な限り早急に、そこに結びつくような進め方をお願いしたいという要望です。それから、現在、そこに向けての見通しを、もし分かれば教えていただきたいと思います。

 

○樋口会長

 よろしいでしょうか。よろしければ、学び直しに関連する雇用保険及び雇用保険の見直し、最賃、外国人技能実習生、パート法について御質問がありましたのでお答えいただければと思います。まず宮野次長からお願いします。

 

○川本委員

 ただ今、最賃の話が出ましたけれども、最賃は中央最低賃金審議会が労働政策審議会と並んであるわけなので、法そのものを変えるのであれば、労政審に関わりますが、目安審議や実態については、審議会の職掌ではないと思いますので一言申し上げます。

 

○樋口会長

 吉川委員からそれに対する対応を、中小企業に対する支援をという御質問でしたので、それについてということです。

 それでは、お願いします。

 

○宮野職業安定局次長

 私から雇用保険の見直し、学び直しへの支援を含めた点につきまして、吉川委員、神津委員、川本委員から御意見をいただきましたので回答させていただきます。

 まず、雇用保険制度全体の見直しの関係ですが、これは今、御指摘がありましたような制度全体の運用状況、あるいは財政状況等々も踏まえ、基本手当の給付水準、あるいは学び直しへの支援措置を含めて、現在雇用保険部会において検討を行っていただいているところです。いずれにしても、こうした御意見を踏まえて、制度全体として部会において引き続き検討を進めていただきたいと考えております。

 特に、学び直しの支援措置については、御指摘のとおり実効性のある制度設計を考えなければならないと思っています。どういったプログラムについて支給をするのかというところが非常に大きい問題だろうと思っていますので、雇用保険部会に加え、そうした点については職業能力開発分科会においても御議論いただいているところです。以上です。

 

○樋口会長

 中野局長、お願いします。

 

○中野労働基準局長

 吉川委員、相原委員から最低賃金の引上げに伴う中小企業への支援策について御指摘がありましたので御説明申し上げます。支援策ですので当審議会の職掌だということでございます。

 全く両委員の御指摘のとおりです。閣議決定しました「日本再興戦略」におきましても、最賃引上げに伴い、中小企業、小規模事業者への支援を図ることが必要だということを閣議決定しているわけです。今回、目安が取りまとめられたことにより、今後、政府が取り組むべき重要課題はこの点であろうと考えているところです。

 このため、今月末に行う概算要求におきましては、厚生労働省としては、最低賃金引上げに伴う中小企業支援事業で、従来から行っているものがありますが、これにつきまして対象地域や業種の範囲拡大を含めて予算を拡充したいと考えております。また併せて、利用をできるだけ図っていただくために申請手続の簡略化等も図り、支援の充実に努めてまいりたいと考えているところです。

 更に、御指摘がありました関係省庁挙げての支援ですが、この点につきましては経済産業省、中小企業庁をはじめ関係省庁に対して、近々のうちに村木次官の方から関係省庁に要請したいと考えているところです。以上です。

 

○樋口会長

 石井局長、お願いします。

 

○石井雇用均等・児童家庭局長

 パートタイム労働法のことで塩谷委員から御指摘をいただきました。御指摘のとおり、昨年6月に建議を頂戴し、それから1年を経過しております。第183回国会において、検討中の法案ということで位置付けていたわけですが、国会の日程や状況などの関係で提出に至らなかったというものです。

 ただ、私どもも早期の国会提出に向けて一生懸命やりたいと思っておりまして、国会の日程や状況に左右されますけれども大臣からもなるべく早くということでもありますので、早期の国会提出に向けて努力を重ねていきたいと思っております。

 

○樋口会長

 杉浦局長、どうぞ。

 

○杉浦能力開発局長

 技能実習制度についての御意見をいただきました。技能実習制度につきましては、これまでも様々な適正な制度の運用につきまして取組みを行ってきております。平成22年に法改正を行った後、不正行為を行った機関の数は減ってはきておりますけれども、労働基準関係の法令違反は依然として跡を絶たない状況にあることは御指摘のとおりです。このため、本年の5月に法務省等と連携し、本年度を技能実習制度の適正化強化年度と位置付けまして、国際研修協力機構(JITCO)による巡回指導の強化や監理団体に対するセミナーの充実強化といった集中的な取組を行うこととしております。

 監督指導についても、これまで以上に積極的に実施し、特に悪質な事業場に対しては送検を行うなど、厳正に対処していきたいと考えているところです。

 それから、御指摘のありました法務省の出入国管理政策懇談会の分科会の中で、今後、技能実習制度の見直しの検討が行われるということを、私どもも承知しております。厚生労働省は、この分科会にはオブザーバーという形で参加することになっていますけれども、事務的にも法務省ともよく話合いをしながら私どもの立場を十分理解してもらうように取り組んでいきたいと思います。また、更にその後、制度の見直しというような話になった場合には、法務省と連携しながら法令の遵守、技能を着実に身に付けて本国で役に立てるという制度本来の趣旨が生かされるような制度となるように働きかけてまいりたいと思っております。以上です。

 

○樋口会長

 ほかにいかがでしょうか。

 

○阿部委員

 今回の重点事項から漏れていて、気になる点ということで1つお話させていただきたいと思います。長期トレンドとして、長期失業者が増加しているというのは御存じのとおりだと思いますが、特にその中でも雇用保険制度から漏れてしまう、つまり長期の失業者への目配りということをどのように考えるかというのが重要ではないかと思います。

 今回見てみますと、雇用保険制度からも離れるような長期失業者については余り言及がないような気がしています。もちろん、全く対応していないというわけではありませんが、そうしたところにも、つまり長期の失業者についてどのような対策を打っていくかというのは考慮すべき点ではないかと思いますので、よろしくお願いします。

 

○吉川委員

 今の話と関連します。先ほど私が意見を申し上げました学び直しについて、雇用保険制度で対応するのであればという点ですが、今まで雇用保険をずっと払っていた方と職に就いていなくて払っていない方、それをどのように分けて考えるのか。この文言ですと、その辺がどうも曖昧に感じます。それでしたら雇用保険を今までずっと払ってきた方に、対象を限定すべきで、長期の失業者に対しては、別の施策で取り組むべきではないかと考えます。そのことを一言追加申し上げたいと思いました、ありがとうございます。

 

○加藤委員

8ページの三.若者の「使い捨て」が疑われる企業への対応策の強化です。これについて「労働条件相談ダイヤル」の体制を強化するとなっていますけれども、その委託先は1カ所なのか、また委託をした場合、公平性や中立性は保たれるのかどうかをお聞きしたいと思います。

 今回、労働基準法に関しての電話相談を受け付けるとなっています。法違反が疑われる相談の情報というのは、当然、監督行政に反映されるという認識でいいのかどうか。

 また、ここでも特に夜間や休日に、かなり重点を置いているような書きぶりなのです。連合も相談ダイヤルをやっていますが、夜間と休日は余り相談が寄せられていない。やはり仕事をした後とか、仕事中ですからお昼、様々なのですが、そういう実態なのではないかと思われます。これは一応、状況ですから、そのような実態だと思っております。

 特に2つ目のポツに「重大・悪質な違反を行った企業等については送検し、原則として公表を行う」となっているわけです。過労死や過労自殺が認定されるような事案であっても、その時の判断で送検も公表もされないということになりかねないのではないか。簡単に言えば、重大・悪質な違反というのはどういう基準なのか、どういう実例なのか。それがしっかりしないと、なかなか公表や送検まで行かないのではないかと思います。従って、その基準等については労働条件分科会等においてきちんと検討すべきだと考えております。以上です。

 

○冨高委員

 私から11ページの7(1)生活保護受給者等の生活困窮者に対する就労支援の拡充等について、数点の意見を申し上げたいと思います。

11ページの7(1)の一に記載されています生活保護受給者等就労自立促進事業の拡充ですが、これは社会・援護局の方から自治体の福祉部局を通じて取り組まれていると思います。ただ、やはり、福祉部局では就労について十分な識見やノウハウ、ネットワークは持っていないと思いますので、是非、効果的な事業の実施という視点で自治体へのハローワークの常設窓口の設置、巡回相談など、ワンストップ型の支援体制の全国的な整備というものを強力に進めていただきたいと思っております。また、その際ハローワークを含む全ての関係機関が生活保護申請の権利を侵害することなく取り組んでいただくよう徹底していただきたいと思っております。

 特に今年度から始まる生活困窮者に対する相談支援と訓練については、モデル事業が、この福祉部局を窓口にNPOや社会福祉協議会、民間事業者などとともに行われるというようになっています。就労との接続に関して、労働法規の適用関係を踏まえた相談支援や訓練を行う事業者の選定、運営が適切に行われる必要があるというように思っております。自治体において福祉部局と労働部局の連携、また労働監督行政との連携というものを十分取っていただきたいということでお願い申し上げたいと思います。

 このモデル事業ですけれども、「社会保障審議会(生活困窮者の生活支援のあり方に関する特別部会)」で、中間的就労とされていたものを連合も労働法の適用関係などについて強い問題意識を提起して、生活困窮者自立支援法案では「認定生活困窮者就労訓練事業」という形で規定されることになりました。

 それにも関わらず、今回このモデル事業の中では、予算の中でもですけれども、訓練ではなくて中間的就労ということで記載されているというように思います。こういったところに、労働関係部局の方でも経緯を踏まえつつ、認識を持って社会・援護局との連携を取っていただければと思います。よろしくお願いいたします。

 最後にもう一点、7(1)の二.刑務所出所者等に対する就労支援の強化です。これにつきましては、プライバシーの確保、経営上のリスクという難しい課題はあると思いますが、是非、事業者の受入れを様々な形で支援するよう、強力に推進していただきたいと思います。以上です。

 

○山浦委員

 資料の10ページ、(2)の一.労働安全衛生法令の見直しについて意見を申し上げたいと思います。昨年11月の衆議院解散に伴い、廃案となりました労働安全衛生法の改正法案については、職場におけるメンタルヘルス対策、あるいは受動喫煙防止対策を大きな柱とするものでした。

 また、今年の621日に厚生労働省が発表いたしましたように、平成24年度「脳・心臓疾患と精神障害の労災補償状況」では、精神障害の請求件数については1,257件で、昨年度に引き続いて高水準で推移しております。今日の朝日新聞にも掲載されていたのですが、労災認定件数について2010年度から3年連続300件を超えるという状況もあります。24年度は475件、前年に比べても150件増加しています。過去最大、最多を記録しており、職場におけるメンタルヘルス対策の重要性、必要性が更に増しているというのが現実であり、実態だろうと考えております。

 加えて受動喫煙防止対策についても、その有害性に係る認識については何ら変わるものではなくて、対策の必要性は極めて大きいと考えております。従いまして労働者の生命、あるいは健康を守るためにも職場におけるメンタルヘルス対策、あるいは受動喫煙防止を盛り込んだ労働安全衛生法の改正法案の早期成立に御尽力をいただきたいということを意見として申し上げておきたいと思います。以上です。

 

○樋口会長

 ほかによろしいですか。

 

○川本委員

 ただいま、労働安全衛生法の改正案の関係について御意見がありましたので、それに関して一言申し上げたいと思います。また、資料3に関して意見を述べさせていただきます。

 まず労働安全衛生法の改正案ですが、この法案の内容が大切であるということは承知しております。ただ、法案の基となりました建議を検討した時期からは既に3年の月日が経過しているわけです。この間、企業や従業員を取り巻く環境に大きな変化がありました。建議検討の当時と今の状況の変化を再度しっかり確認して、新たなものを検討していく必要があると思います。

 特にメンタルヘルスにつきましては、ここ数年間で企業側も様々な制度を作って施策を行っています。法令改正がなされない中でも、各企業でそれぞれ特性を踏まえて自主的に対応策を考え、それが徐々に浸透し効果を上げつつあるところです。メンタルヘルス対策は極めて個人的な、デリケートなものですので、個人個人の生活や行動にポイントを置いた対応が不可欠だろうと思います。一律的な対応では実効はなかなか上がりませんので、企業の取組が進んでいる環境の変化を十分に見極めながら、事業者に大きな負担を課さないような対応も考えていただきたいと思います。

 もう一点、資料3-3に職業能力開発局関係があります。その中の3番目にポリテクセンター・ポリテクカレッジの記述があります。都道府県への譲渡についての関係です。我が国の経済の再生には、産業の屋台骨である製造業の競争力強化が不可欠であり、それを支える「ものづくり人材」の育成が重要な課題であると思っています。事業者の保険料によって運営されていますポリテクセンターやポリテクカレッジにつきましては、ものづくり産業を支える人材の確保と育成に大きな役割を果たしてきたところであります。

 現在、都道府県への移管に向けた取組が進められていると聞いています。ただ、ほとんどの都道府県が移管を希望しないという状況であるということですので、無理に地方移管を進めるのではなく、引き続き、国と高齢・障害者求職雇用支援機構が責任を持って運営すべきだと考えています。以上です。

 

○三浦委員

 先ほど、女性の活躍について申し上げました。現在、ここにも書いてありますように男女雇用機会均等法の見直し議論が雇用均等分科会で進んでいます。企業として、女性の活躍は最大の課題と捉えており、いろいろな取組を進めているところです。ただ、実際の法律の問題になれば、各企業の置かれている状況は区々であります。仕事の内容も、働き方もいろいろな対応があります。是非、各社の自主的な取組をできるだけ尊重して、創意工夫の制約とならないよう配慮をお願いしたいと思います。以上です。

 

○眞中委員

5ページの3.多様な働き方の実現の中の労働時間法制の見直しについてお聞きしたいと思います。労働時間の現状を見ますと、昨年度、一般労働者は年間2,000時間を超えているという実態があります。週労働時間が60時間以上で、子育ての当事者というか、30代の男性でも2割を超えている。これが実態で、未だに長時間労働がなかなか解消されていないという現実があります。

 更に、先ほど山浦委員からもありましたように、労働安全衛生法上の問題からも、今日の新聞によれば、脳・心臓疾患の関係が3年間で2割増えているという報道もあります。その要因として長時間労働、あるいはストレスによるものが8割もあるという報道がされています。

 これまで労働基準法の関係で、月60時間を超える部分の時間外労働の法定割増賃金率については、第37条の改正によりその引き上げが行われ、既に3年を経過しています。これを決めた時、この規定の中小企業への適用が猶予され、3年後に見直すという条文があったように記憶しています。これらについて、いわゆるダブルスタンダード状態が続いていますので、今後の取扱いについて厚生労働省としてどうお考えなのかお聞きしたいということが1つです。

 あと、労働時間の見直しの中で企画業務型裁量労働制の見直しという所がありますが、見直しに当たっては更なる労働負荷にならないように、働く者の安全について十分留意をいただければと思っています。以上です、ありがとうございました。

 

○宮原委員

 分科会の審議状況の中に、雇用保険制度の検討があります。この関連で、雇用保険二事業について意見を申し上げたいと思います。改めて言うまでもなく、この二事業は雇用対策としていろいろな所で活用されてきたわけです。いかんせん、財源が限られていますので、その運用に当たっては、まず政策の重要度、あるいは緊急度を基に優先順位をはっきり付けて財源の振り分けをしていただきたい。

 また、使ったあとのPDCAサイクル、これもやっていただいていると思いますが、更に適正に運用していただきたいということが一つです。

 もう一つ、この二事業で対応している事業の中で、今後さらに、大幅な拡充が求められる事業、例えば41ページに記載されていますが、マザーズハローワーク事業が着実に実績を挙げています。これは先ほど来、言及されております女性の活躍の促進や、仕事と育児の両立支援が求められる中で、ますます大事なわけです。こういったものについては、二事業の枠の外で実施することを検討していただきたいと思います。以上です。

 

○樋口会長

 よろしければ、まとめて事務局からお答えいただきたいと思います。眞中委員、加藤委員、山浦委員、冨高委員、そして宮原委員、三浦委員、川本委員、吉川委員、阿部委員からの御質問・御意見についてお願いいたします。

 

○宮野職業安定局次長

 私から阿部委員、吉川委員、冨高委員、宮原委員の4名の委員からの御意見についてお答えさせていただきたいと思います。

 まず阿部委員から、長期失業者の対策がないのではないかという御指摘でした。そもそも、この長期失業者対策といいますか、失業者の早期再就職の対策というのはハローワークの最も重要な業務であります。これは雇用情勢に関わりなく、ハローワークの最も重要な業務として目標を掲げて取り組んでおります。その上で、御指摘がありました雇用保険の受給が終わってしまった方、あるいは雇用保険の対象にならないような方については、これは平成2310月から施行されております求職者支援制度でフォローするという形になっています。

 これにつきましては、資料には、簡単にしか書いておりませんが、11ページから12ページのところにあります。雇用保険制度の見直しと併せて、求職者支援制度についても平成2310月からの施行状況を踏まえ、必要な修正というものがあれば見直していきたいと考えているところです。

 それから、吉川委員から学び直しの支援を雇用保険制度でやるのであれば、当然ながら雇用保険の保険料を払ってきた方にという御意見です。この点、具体的にどういう仕組みが考えられるのかというのは、まさにこれから雇用保険部会で御検討いただくことになろうと思います。いずれにしても、まさに雇用保険制度の一環としての見直しということですので、雇用保険の中でどのような支給ができるかを御検討いただくことになると思っています。

 冨高委員から生活保護受給者及び刑務所出所者等の支援について御意見をいただきました。まず、生活保護受給者等就労自立促進事業ですけれども、これ自体がハローワークと地方自治体との協定に基づき、両者で構成する就労支援チームがきめ細かな職業相談、職業紹介を行い、自立を促進しようということで取り組んでおります。具体的には地方自治体へのハローワークの常設窓口、巡回相談というようなことで、ワンストップ型の支援体制を行っているものであります。71日現在、36市区で開設しておりますけれども、今、調整中のものもありますが、今年度中に、できれば100カ所程度を開設したいと考えています。今後、特に就労については御指摘の点も踏まえ、効果的な事業実施を行うべく、ハローワークと地方自治体が一体となった支援を進めてまいりたいと考えております。

 刑務所出所者についても、刑務所出所者等の就労支援事業ということで進めております。

これも引き続き、取組を進めてまいりたいと考えております。

 最後に宮原委員から、雇用保険二事業のあり方について御意見をいただきました。御指摘のとおり、この二事業については、その財源を有効に活用するためにPDCAサイクルを通じた目標管理というものを進めております。これを引き続き徹底していきたいと考えています。

 また、予算について、一般会計、あるいは雇用保険二事業の中で、それぞれ様々な事業の拡充・見直しを行うに当たりましては、二事業の趣旨に合致する事業と合致しない事業を精査し、必要性に応じて配分の重点化を図るということで、引き続き二事業の更なる適正化を進めてまいりたいと考えております。私からは以上です。

 

○中野労働基準局長

 私からは3点お答えしたいと思います。まず1点目、加藤委員から御指摘がありました若者の使い捨てが疑われる企業への対応策の強化の関連です。労働条件の相談ダイヤル事業については委託事業を考えており、一つの事業者に委託することを考えておりますが、御指摘がありました公平性や中立性の観点につきましては仕様書の内容や委託方法等で何とか工夫して、そういうことが保たれるようにしていきたいと考えているところです。

 また、監督行政に活かされるのかということですが、これは相談の際に情報提供としていただいた情報につきましては監督行政に資するよう適切に取り扱うことを想定しております。

 夜間・休日に必ずしも相談は余り寄せられないのではないかというお話でした。ただ、このような方が実際に相談できる時間帯、夜間というのが表現として適切かどうかを改めて御指摘を受けて考えたのですが、私どもは余り深夜を考えているわけではなくて、通常の勤務時間が終わって、退社してから深夜に及ぶまでの時間帯ぐらい、そこを深夜ではない夜間と考えておりました。ちょっと、この辺は誤解を生むのかと思っております。

 それから、休日については、これまでも単発的に労働相談の電話受付をやったことがあります。今般も91()に実施することを考えております。それにつきましては、一定の相談があったという過去の実績もありますので、とりあえず夜間・休日ということでやってみたいと思っていますが、実際の相談が少なければ、また今後のことは考えたいと思っています。

 重大・悪質な違反を行った企業について送検し、原則として公表を行うということについての基準を明らかにせよという御指摘ですが、まず労災認定をした場合、必ずしも労災認定制度自体は無過失違反といいますか、無過失責任という制度を社会保険として担保したものですので、100%全てが法違反あるいは過失と直結するものではありません。もちろん、法違反があるケースも多くあります。

 したがって、そのことを前提として送検する基準は、これは全国的に監督行政を斉一的に行うという観点から我々として基準というか、一定の考え方を定めております。しかし、このことが明らかになりますと、実際の監督指導の際、特定の法違反の事実について隠蔽が行われれば行政権限の行使は非常に難しくなります。その意味では、基準行政の適切な支障を及ぼすおそれがあるということから、この基準、考え方については明らかにすることは差し控えることと考えています。

 なお、若者を使い捨てにすることが疑われる企業への対応策の強化については、先般、大臣が記者会見でも明らかにいたしましたように、9月を「過重労働重点監督月間」として、集中的に監督・指導等を行うとともに、先ほど申し上げましたように、91日は労働基準法施行の日ですが、その日に全国で電話相談を行うことにしています。

2点目、山浦委員と川本委員から御指摘のありました労働安全衛生法の改正法案についてです。昨年の臨時国会において廃案となりましたが、この法案の中には御指摘のとおりメンタルヘルス対策など重要な課題が含まれております。一方で、これも川本委員から御指摘がありましたように、法案を提出してからかなり時間もたっています。その間も胆管がん事案など、最近の労働災害の状況を踏まえる必要性も生じてきています。また、第12次労働災害防止計画の検討事項も御指摘いただいております。

 従いまして、現在、改めて安全衛生分科会において御議論をいただいているところで、年末までに結論を得て、早期の国会提出を目指したいと考えております。その際、川本委員から御指摘がありましたように、この間の動きや最新のデータなどについては、きちんと把握、提示して御議論を行っていただくことが必要だと考えております。

3点目、最後ですが、眞中委員から御指摘がありました労働時間制度についてです。これにつきましては御指摘のとおり、現在、中小企業に適用が猶予されています月60時間超の時間外労働の割増賃金率につきまして見直し検討時期が到来しております。又、6月に閣議決定されました「日本再興戦略」においては、企画業務型裁量労働制をはじめ、労働時間法制について労政審で総合的に議論することとされております。これを受けて、この秋9月末にも開催すべく現在日程調整中です。

 その際には、御指摘のありましたように労働者の心身の健康や生活時間の確保、ワークライフ・バランスの確保といった観点、更には労働生産性向上や事業運営の柔軟化・弾力化といった視点など、様々な観点から御議論いただきたいと考えております。以上です。

 

○石井雇用均等・児童家庭局長

 三浦委員からの御指摘についてお答え申し上げます。改正均等法は平成19年に施行されておりますが、附則の下で、見直し規定があるわけで、現在それに基づいた議論を行っています。既に昨年10月から9回の議論を重ねてきており、その議論の中で、やはりいろいろな課題があるということが浮かび上がっている事実もあります。ただ、一方で、企業の自主的な取組を促していくべきだという観点の議論も行っています。いずれにしても、均等分科会の方で取りまとめに向けて更に議論を進めてまいりたいと考えております。

 

○樋口会長

 委員の皆様からたくさんの御意見をいただきました。厚生労働省におきましては、今後の概算要求作業を進めるに当たって、委員の皆様の御意見を十分に踏まえて取り組んでいただきたいと思います。よろしくお願いいたします。

 それでは議題2「法案の国会審議結果」及び、議題3「分科会及び部会等における審議状況」についてを一括して御説明をお願いします。もう既に御質問、御意見が出ているところもありますので、それも併せてお願いいたします。

 

○藤澤労働政策担当参事官

 資料2で、実際の内容は15ページです。法案の審議結果で、こちらに記載のとおり労働関係の法案は2本で、前通常国会で成立し公布されております。17ページの資料3に、分科会及び部会等での審議状況です。労働分野に係る各施策の年度目標あるいは点検評価については、これまで労政審は点検評価部会を設けて集中的に議論をいただきましたが、今年度からは各分科会、部会において審議を行うこととしておりますため、その内容もこの審議状況の中に盛り込まれております。審議の状況については、先ほど会長からもありましたように、既にこの場でも御意見が出ておりますので、各分科会・部会等の担当の局から簡潔に御報告をさせていただきます。

 

○中野労働基準局長

 それでは、労働基準局所管の分科会等について御説明申し上げます資料21ページからです。

1点目は、安全衛生分科会において、第12次労働災害防止計画を踏まえた検討として、労働安全衛生法の改正案について、先ほど申したとおり御審議いただいております。昨年12月に、11月の衆議院解散に伴い廃案となりましたが、重要な課題が含まれているため、再度国会へ提出することを目指して御審議いただいているところです。

2点目は、安全衛生分科会において、労働安全衛生法施行令等の改正について御審議いただきました。これは胆管がん事案の原因物質として考えられる1,2-ジクロロプロパンについて、評価の結果リスクが高く規制が必要であるという結論になりましたことから、特定化学物質障害予防規則の対象とし、局排装置等発散抑制のための設備の設置、作業環境測定の実施等について義務付けを行うなど、所要の改正を行うこととしたものです。

3点目、労災保険部会において、労働基準法施行規則の改正について御審議いただきました。こちらも胆管がん事案に関連したものです。労働基準法施行規則の別表第12と、これに基づく告示に業務上の疾病の範囲が明らかにされておりますが、これについて専門検討会の報告書を踏まえ、1,2-ジクロロプロパン、ジクロロメタンにさらされる業務による胆管がん等を追加したものです。

4点目、労災保険部会において、労災補償保険法施行規則等の改正について御審議いただきました。これは本年1月のアルジェリアにおけるテロ事件の関係者からの要望を受けたものです。海外派遣者等で労災保険の特別加入をした者の労災保険給付の給付基礎日額の上限について、現在20,000円になっているところ関係者の要望を踏まえ、これを25,000円に引き上げることとし、所要の改正を行うこととしたものです。

 最後に、31ページからは、労働条件分科会と安全衛生分科会において、労働政策の実施に係る点検評価について御検討いただきましたので、簡単に御報告いたします。なお内容については現在、調整中で各分科会の委員の皆さんの御意見を踏まえ、内容が確定次第、公表する予定です。

 まず、労働条件分科会において評価いただく目標は、年次有給休暇の取得率と週労働時間60時間以上の雇用者の割合です。双方とも数値としては、改善している目標には届きませんでした。そのことを踏まえ、「労働時間見直しガイドライン」の周知・啓発等に一層力を入れることにより、2013年度は、32ページにあるように、年次有給休暇取得率を53.9%に、週労働時間60時間以上の雇用者の割合を8.6%にするという目標を達成したいと考えております。

 次に33ページです。安全衛生分科会において評価いただく目標としては、労働災害発生件数、メンタルヘルスに関する措置を受けられる職場の割合、職場で受動喫煙を受けている労働者の割合です。労働災害発生件数は、目標達成とはならず、むしろ3年連続で増加という結果になってしまいました。ただ昨年度後半からは、対前年減少傾向が続いており、これを確かなものとするために本年度からは、第12次労働災害防止計画に基づき労災が増加しております第三次産業を重点対象として、災害発生件数を減らせるような指導を実施していくこととしております。

 またメンタルヘルスに関する措置を受けられる職場の割合、受動喫煙を受けている労働者の割合については、現在、統計データを集計中で、この秋を目途に公表できる予定です。メンタルヘルス対策としては、引き続き専門家による事業場への支援、取組が遅れている中小規模事業場への指導を行っていくこととしております。また受動喫煙防止対策としている助成金制度については25年度から対象を全業種に拡大し、補助率を1/2に拡充し、制度の活用を積極的に周知していきたいと考えております。

 これらの取組により、35ページにあるように、労働災害による死亡者数及び労働災害による休業4日以上の死傷者数を前年比で5%減らすという目標を達成したいと考えております。以上です。

 

○樋口会長

 それでは、資料3-2について宮野職業安定局次長からお願いします。

 

○宮野職業安定局次長

39ページの資料3-2「職業安定局所管の分科会等における審議状況」です。「雇用保険制度」の検討については先ほど来、御意見、御質問に、お答えしましたとおり現在、雇用保険部会において御検討いただいているところです。

2点目、2012年度の評価及び2013年度の目標設定ですが、これも職業安定分科会及び障害者雇用分科会において、私どもから案の提示をして御審議を頂きました。詳細については省略させていただきますが1点だけ。資料45ページの中長期目標一覧です。ここにも先ほど逢見委員から御指摘がありましたが、転職入職率についての目標というものが掲げられております。これは職業安定分科会でも、こうした点を中心に御意見を頂いております。そうした御意見を踏まえ、今この内容について検討しているところです。以上です。

 

○樋口会長

 それでは資料3-3について、杉浦職業能力開発局長からお願いします。

 

○杉浦職業能力開発局長

 資料の53ページですが、能力開発分科会は、81日に第70回を開催しております。その内容はそこにある4点です。1 雇用保険制度の検討です。これは安定局の方で話がありましたように、雇用保険制度の見直しについて、特に能力開発分科会のほうでは、訓練に関わる部分を中心に検討を始めたところで、雇用保険部会と並行して、これから議論をしていきたいと考えております。

2番目、求職者支援制度の見直しで、これは2310月の制度施行から1年半を経過し、一定の実績が出ておりますが、施行後3年という見直し規定もあるので雇用保険制度の見直しと併せて見直しの検討を行うことにしております。この点についても雇用保険部会の検討と並行して進めていきたいと考えております。

3番目、ポリテクセンター・ポリテクカレッジの都道府県への譲渡の状況です。先ほど川本委員からも御意見がありましたが、独立行政法人雇用・能力開発機構法を廃止する法律が定められたときに、本年度末までに都道府県へのポリテクセンター・ポリテクカレッジの譲渡を行うことができる旨が規定されております。それに向けて都道府県への働きかけをやってきておりますが、今年の5月にアンケートを取った結果、先ほど川本委員のお話にもありましたが、移管を希望する都道府県はない、あるいは廃止を容認する都道府県もないということで、原則、国でやっていただきたいという意見が大半でした。この点について報告をしたところ、労使の各委員からポリテクセンター・ポリテクカレッジが果たしている職業訓練の役割を評価していただくとともに、都道府県の移管が困難であり、引き続き国あるいは高障求機構で運営することを求める意見がありました。この点については、今年度末の移管期限の終了後の取扱いについて、今後分科会で御議論していただきたいと考えております。

 最後に実績評価と年度目標は、資料60ページから62ページまでです。能開局としては5つの目標を定めております。おおむね目標の過半数は達成しておりますが、下回った部分もあります。それを踏まえ、62ページにあるように5つの項目について目標を定め、この目標に向けて取り組んでいくこととしております。以上です。

 

○樋口会長

 それでは最後に資料3-4について石井雇用均等・児童家庭局長からお願いします。

 

○石井雇用均等・児童家庭局長

 資料3-467ページです。雇用均等分科会における審議状況は、先ほど三浦委員の御質問にお答えしたように現在、均等対策については、まだ議論を進めている最中で86日が直近です。引き続き、議論を極めていきたいと思っております。

2つ目にある事業所内保育施設設置・運営等支援助成金支給要領の改正です。これは69ページを御覧ください。事業所内保育施設の支給要件は、認可保育所の設置基準に準じて定めておりますが、その中で安全基準の関係で屋外避難階段があります。避難用の屋外階段設置は、保育室を4階以上に設置する場合の要件としてあるわけです。これは認可保育所に倣って条例に揃えるかたちに見直すものです。条例といっても、これは従うべき基準ではなく、参酌基準で地域によって定めたものが異なれば違う形の要件でもいいということになるわけです。これは「日本再興戦略」の中でただちに見直せという指示を受けたものでご理解を得て要件を見直したものです。

 もう一つあるのは、2012年度の評価・目標設定です。いちばん最後72ページです。雇児局の関係で、女性の就業促進ということでポジティブ・アクションと3歳までの育児のための短時間勤務制度、男性の育児休業取得率、この3つを定めております。残念にして、昨年度は実績値は目標に到達していませんが、改善しているものもあり、この3つの目標を更に高めた形で、今年度も更に取り組んでいくことで、雇用均等分科会としては了解を得られたものです。今年度もしっかり取り組んでいきたいと思っております。以上です。

 

○樋口会長

 はい、ありがとうございました。資料2及び資料3-1から資料3-4まで御説明いただきました。既に御質問いただいていることについては、説明の中で、折り込んで御解答いただいたと思います。改めて何か御意見、御質問ございましたらお願いします。よろしいでしょうか。

 よろしければ以上で、本日の会議を終わりたいと思います。その他、御意見、御質問はございますか。よろしいですか。本日はこの辺りで閉会とさせていただきます。最後に本日の会議に関する議事録について、本審議会の運営規程第6条に基づきまして、私のほかに2人の委員に署名を頂くことになっております。労働者代表委員として冨高委員。そして使用者代表委員として三浦委員に署名人になっていただきます。よろしくお願いいたします。本日の会議は以上で終了いたします。


(了)
<照会先>

政策統括官付労働政策担当参事官室調整第2係(内線:7716)

代表: 03(5253)1111

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