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2013年5月2日 第1回 平成25年度化学物質のリスク評価検討会(発がん性評価ワーキンググループ) 議事録

労働基準局安全衛生部化学物質対策課化学物質評価室

○日時

平成25年5月2日(木) 15:30~


○場所

厚生労働省 19階 専用第23会議室


○議事

○大淵有害性調査機関査察官 それでは始めさせていただきたいと思います。ただいまから「第1回発がん性評価ワーキンググループ」を開催いたします。本日は、お忙しい中、御参集いただき誠にありがとうございました。
 今回、ワーキンググループは初めての会合になりますので、最初に委員の先生方並びに事務局の御紹介をさせていただきます。委員の先生方の名簿は参考資料1にありますので、参考にしていただければと存じます。
 五十音順に紹介させていただきます。独立行政法人医薬品医療機器総合機構テクニカル・エキスパートの小野寺委員。名古屋市立大学特任教授の津田委員。国立医薬品食品衛生研究所安全性生物試験研究センター長の西川委員。同じく国立医薬品食品衛生研究所安全性生物試験研究センター病理部室長の吉田委員。静岡県立大学環境科学研究所教授の若林委員。
 次に事務局の紹介をします。化学物質対策課長の奈良。化学物質評価室長の角田。化学物質評価室長補佐の岸。同じく化学物質評価室の中西。最後に司会を務めます私は有害性調査機関査察官の大淵です。よろしくお願いいたします。
 今回は初めてですので、化学物質対策課長の奈良より、簡単に御挨拶を申し上げます。よろしくお願いします。
○奈良化学物質対策課長 各先生方には連休の間といいますか、なかなか難しい時に御出席を賜りまして誠にありがとうございます。今回このワーキンググループの設置のきっかけになりましたのは、胆管がんを踏まえて化学物質に関しての発がん性評価及びリスク評価の加速化が必要であり、それに対してどういう取組を行っていくべきか、リスク評価検討会の有害性評価小委員会、小検討会で昨年9月から半年間ぐらいにわたりまして、御検討いただいたところです。その中で発がん性物質のスクリーニング、新たな発がん性試験方法の導入を行うべしで、それを25年度からやろうではないかということで結論を頂戴したところです。それを受け、このワーキンググループにおいて、スクリーニングに当たっての発がん性の可能性評価基準の決定、個別物質の評価あるいは、試験対象物質の優先順位の決定等を御議論いただくことといたしているところです。何分にも25年度から新しくスタートをするということですので、各先生の方から御検討を頂きながらより良いもの、スピードを早く、なおかつ精度の高い試験を進めていく必要があろうかと考えているところですので、本当にお忙しい中恐縮でございますけれども、今日を皮切りにいたしまして、私どもの発がん性試験評価の加速化について先生方の御協力、専門的な知識でのお助けと御尽力をお願い申し上げまして、この開催に当たっての挨拶に代えさせていただきます。どうぞよろしくお願い申し上げます。
○大淵有害性調査機関査察官 ありがとうございました。続いて、このワーキンググループの座長の選出をします。事務局としては、西川先生にお願いをしたいと思っておりますが、ほかの先生方、いかがですか。
(異議なし)
○大淵有害性調査機関査察官 よろしいですか、ありがとうございます。それでは西川先生に座長をお願いいたします。
 以下の進行については、西川先生にお願いいたします。
○西川座長 よろしくお願いいたします。それでは議事に入る前に、事務局より議事次第等、資料の確認をお願いいたします。
○大淵有害性調査機関査察官 それでは確認をさせていただきます。議事次第は少し多めになっております。(1)平成25年度試験開始物質(2-ブロモプロパン)発がん性試験の試験方法の詳細について、(2)平成25年度の中期肝発がん性試験の対象物質の選定について、(3)中期肝発がん性試験の試験方法について、(4)既存情報による発がん性評価についてで、4点ほど予定しております。これに関係する資料は、次のページから2ページにわたり配布資料一覧が付いております。最初のページは資料1から6までです。この順序で説明させていただきますが、資料3-5については、未公表の資料のために委員、事務局の机上のみ配布にしております。次のページです。参考資料は1から8までです。この中では参考資料5について、雑誌に掲載されている論文ですので、著作権の問題もあり、机上のみ配布にしております。
 資料については、資料と参考資料とを分けてセッティングしており、それぞれ通しページが下に振ってあります。説明の際には、その通しページを補足するような形で説明させていただきます。
○西川座長 よろしいでしょうか、それでは本日の議題に入ります。議題(1)平成25年度試験開始物質の発がん性試険の試験方法の詳細について、事務局より説明をお願いいたします。
○大淵有害性調査機関査察官 それでは説明させていただきます。この議題に直接入ります前に、先ほど奈良課長からも申し上げましたが、一応御確認として、このワーキンググループを立ち上げる前の、昨年度の有害性評価小検討会での議論等について、簡単に御説明をさせていただきます。
 お手元の参考資料のつづりの5ページからです。上の方には参考資料3と書いてありますが、今年の2月27日に開催されましたリスク評価の企画検討会で配った資料です。内容としては、昨年9月から12月にかけて開催しました有害性評価小検討会の中で、発がん性評価をどう加速化していくか、それについて検討した結果を取りまとめた資料です。有害性評価小検討会の中では、発がん性評価の加速化の方針的なところを決めていただきました。資料の11ページにフロー図があります。世の中にある6万とも言われる物質について、どうやって発がん性評価を効率的に行っていったらいいかということを、昨年度の小検討会の中で御検討いただきました。
 本日の議論に関わってきますので、簡単にこの図を説明させていただきます。そのたくさんの物質について、いろいろな形で絞り込みをやっていきますが、まず、最初に発がん性情報が既にある物質については、それに基づいて判断をしていき、大部分のものについては直接リスク評価にもっていく、この図の一番下の二重囲みの所へもっていくというスキームを想定しています。
 一方、発がん性の情報がないもの、あるいは判断ができないものについては、段階を追って評価をします。最初の入口としては、遺伝毒性の判断の有無等をやっていきます。その中で遺伝毒性ありというものについては、強弱についても含めて考えていきます。一方、遺伝毒性の情報がないものについては、新しい試験なども導入しながら評価をしていきます。
 遺伝毒性があり、かつその程度が強いものについては、次の試験ですが、短期あるいは中期の発がん性試験を導入していくことを決めていただきました。特にその中でも、2段階発がんモデルによる肝発がん性試験を優先的に実施します。その結果、もしその2段階発がん試験で発がん性があるという場合には、まず第1段階目の行政対応として、健康障害防止指針を考えていくことにしております。
 更に進めて、必要なものについては長期の発がん性試験にもっていきます。長期の発がん性試験については、これまではラット、マウス、2種の動物について両方とも長期の試験を行ってきましたが、試験を効率化し、原則として1種類の動物では長期の試験、必要に応じて短期・中期の試験を追加で行う形で、この部分については効率化を予定しております。
 このような形で検討していただきました。本日の1つ目の議題である25年度の試験開始物質の2-ブロモプロパンの試験の方法の詳細については、このスキームでいきますと、下から2つ目の囲いになります。これから長期発がん性試験を実施していくわけなのですが、この2-ブロモプロパンについて、どの動物種について長期の試験をやるか、あるいはどの動物種について短期・中期の試験を組み合わせていくかといったことを中心に、御議論をしていただきたいと思っております。
 それでは、2-ブロモプロパン関係の資料を具体的に説明させていただきます。資料2-1、下の通しページ6ページに今お話した内容が書いてありますが、1「検討すべき事項」で、国が行う発がん性試験については、平成25年度試験開始物質より1種のげっ歯類を使用した長期発がん性試験と、短期・中期のげっ歯類試験系により実施することとなっている。平成24年度の第7回有害性評価小検討会において、平成25年度から国が発がん性試験を実施する物質として、2-ブロモプロパンが選定されたことから、この物質の試験については以下の事項について検討・決定する必要があるということで、長期発がん性試験に使用する動物種、短期・中期のin vivoげっ歯類試験系として採用する試験方法、並びに使用する動物種といったことを検討していただきたいと思っております。
 検討の際に考慮すべき事項ということで、2-ブロモプロパンについて、これまでに得られている有害性の関係の情報は、資料2-2で説明をさせていただきます。こちらは日本バイオアッセイさんで取りまとめていただいた資料です。2-ブロモプロパンの有害性情報で、構造式はここに書いてあるような形です。プロパンの真ん中がBr、臭素に置き換わっています。物性としては融点が-89℃、沸点が59.5℃という液体です。毒性情報としては、急性毒性についてはこちらに書いてあるような濃度で、それぞれ急性毒性のLD50、LC50が求められています。刺激性については、アルビノウサギを用いた試験で行っていますが、皮膚刺激性は認められなかったという情報です。
 また、今日の議論に深く関係してくる部分だと思いますが、反復投与毒性の関係では、まず吸入ばく露の試験ということで、ラットでの試験の情報が記載されています。こちらのラットの試験では、300ppm以上の全投与群で体重増加の有意な抑制、精巣、精巣上体、精嚢、前立腺重量の有意な低値、赤血球数の有意な減少を認めました。また、300及び1,000ppm群で腎臓重量、血小板数の減少、1,000ppm群で肝臓重量、ヘマトクリット値、白血球数の減少、1,000ppm以上の群で骨髄の巨核細胞の減少、脂肪細胞の増加などに有意差を認めた。これらの結果は、雄ラットにおける骨髄の造血細胞の減少を生じ、永続的な汎血球減少症を起こすことを示唆していると書かれています。
 2つ目の情報もラットを用いた試験の結果です。12週間の吸入の試験で、運動神経伝達速度、遠位潜時等を測定したということが書いてあります。こちらでは1,000ppm群で体重増加の抑制、脳、肝臓及び腎臓重量の減少、赤血球数、血小板数及び白血球数の減少に有意差を認めた。また1,000ppm群で運動神経伝達速度の低下傾向、8週目以降に遠位潜時の有意な遅延を認め、総腓骨神経では髄鞘の異常が見られたということがあります。また、別の試験では、ラットの雌を使った9週間の試験で、300ppm以上の群で、子宮の絶対及び相対重量の有意な減少、1,000ppm群でばく露時に活動低下が見られ、筋緊張は徐々に低下した。1,000ppm群で体重増加の有意な抑制、肝臓相対重量の有意な増加、卵巣及び脾臓の絶対重量、胸腺の絶対及び相対重量の有意な減少を認めたなどという情報があります。
 また、この物質について経口投与の情報もあります。ラットの雄で28日間強制経口投与試験の結果があり、経口投与に加えて25日目にヒツジ赤血球を静脈内投与したという試験です。結果としては1,000mgの群で体重増加の抑制、胸腺実重量の低値、白血球数、赤血球数、血小板数の減少、ALT活性の低下を認めた。また、1,000mg群で脾臓の抗体形成細胞、B細胞、T細胞、CD4+、CD8+の減少が見られた。胸腺では330mg以上の群で胸腺細胞数、CD4+、CD8+の合計の減少が、1,000mg群でT細胞の全分画の減少が見られ、ヒツジ赤血球に対する免疫作用の抑制が示されたという情報があります。
 そのほか、発がん性については発がん性試験、国際機関(IARC)での発がん性評価はありません。変異原性については、微生物を用いた変異原性試験で陽性で、比活性値は212、培養細胞を用いた染色体異常試験が陽性で、D20値が0.41といった情報があります。生殖毒性関係では、韓国の電子部品製造工場における2-ブロモプロパン取扱い作業者で、女性では月経停止、男性では無精子症が発生したことにより、生殖毒性物質として知られていて、疫学、動物試験とも、多数の報告がなされています。
 続いて次ページです。体内動態、代謝の状況ですが、こちらはラットでの情報があります。ラットに2-ブロモプロパンを4時間吸入させて尿中の代謝物を分析し、500mg以上の群で、アセトン及び臭化物イオンの用量に依存した有意な増加を認めた。尿中にアセトンの排泄を認めたことから、本物質はイソプロピルアルコールと臭化物イオンに加水分解され、更にイソプロピルアルコールがアセトンに酸化されたものと考えられたが、イソプロピルアルコールは1,500mg群でばく露時間内の尿中に僅かに検出されただけであった。なお、500mg以上の群で、ばく露時間内の尿中から本物質を検出したが、これはばく露時に本物質が尿中に移行したものと思われた。
 また、35Sでラベルした酵母を含む餌を3日間与えたラットの試験があり、1-ブロモプロパンの関係の情報が記載されています。そのほか関係する情報がそのページに記載してありますが、本日の議論としては、こういった有害性の情報なり代謝の情報などを参考にしながら、2-ブロモプロパンの試験を長期・短期・中期それぞれどういうやり方でやっていくか決めていただくということにしており、昨年度の有害性小検討会の中での議論では、特に何か特別な情報がなければ、原則としてラットを長期の試験にもっていくという議論がなされていたと事務局としては記憶しています。それでは検討をよろしくお願いいたします。
○西川座長 ただいまの御説明について、何か御意見、御質問等がありましたら、お願いします。よろしいですか。そうすると、2-ブロモプロパンの発がん性試験をどのように行ったらよいかについて、議論をお願いします。長期の試験と、短期・中期の試験は両方やることになるわけですが、長期については、事務局から説明がありましたようにラットがよいのではないかという御意見でしたが、いかがですか。反復投与毒性もラットで行われているし、そういう意味からラットが適当であろうと思います。よろしいですか。
○津田委員 ラットでやるということで。
○西川座長 はい。
○若林委員 マウスのデータはほとんどないのですね。あるけれども出ていないというわけではなくて、ないのですよね。
○西川座長 マウスのデータは、ないということでよろしかったでしょうか、マウスの試験ですね。
○大淵有害性調査機関査察官 こちらの資料を作成していただいたバイオアッセイセンターから御説明いただけますか。
○バイオアッセイセンター(松本) 本物質は生殖毒性が非常に強く出たことからクローズアップされた物質でして、そのため生殖毒性自体が、例えばOECDのガイドラインでもラットを原則としているので、1996年からラットを中心とした毒性試験が多数行われて、その中から一般毒性が引ける情報を引っ張ってくると、ラットが多くなるという事情があります。
○西川座長 マウスの試験のデータは、ほとんどないのですか。
○バイオアッセイセンター(松本) ないことはないのですが、非常に少な目です。
○西川座長 ということです。次の短期・中期をどのようにするかにも関わると思うのですが、それについて御意見をお願いします。
○吉田委員 これを拝見する限り、どうもターゲットは骨髄なり、汎血球減少症も起きているし、肝臓の重量は余り増加せずに、むしろ減少しているということですが、これで2段階というのは。
○西川座長 いや、2段階に限らず。
○吉田委員 発がん性はエームスでも出ますし。
○西川座長 いや、2段階に限らず、もちろんトランスジェニックマウス等でもいいわけです。
○小野寺委員 先ほど御説明いただいた別添2のフローチャートの「長期発がん性試験の実施」で、「原則として1種の動物で実施」「必要に応じて短期・中期試験を追加」という所ですが、この場合の「必要に応じて」ということになると、今回はどういう理由で短期・中期をやることにするのでしょうか。
○西川座長 これは私の勝手な理解ですが、マウスのデータが少ないということであって、それを担保するために必要性が生じていると理解していますが。
○小野寺委員 がん原性試験をするときに、まず短期・中期は、その物質のがん原性の有無のポテンシャリティを見るということで、短期に検討するというか、スクリーニング的な検討だと思います。それと、短期・中期は、今、吉田先生が言いましたように、特定の臓器が、発がんの標的臓器の特定はできないので、がん原性の有無に関しての検討が主になると思います。それを行った後に長期のラットのがん原性試験になると、今度はこれが標的となる臓器の特定もできると、各臓器の検討ができるということなので、目的が異なると思うのです。
○西川座長 もちろんそうです。
○小野寺委員 順序はどちらからですか。
○西川座長 今、議論しているのは、フローチャートの下から2番目の所であって、これまではラット、マウスの長期の試験をやってきたわけです。したがって、1つは、ラットの長期の試験を残すとして、それに代わるものとして、Tgマウス等を使うことになると思うのです。したがって、一応、これは確定的なものではなくて、評価のレベルを下げずに発がん性を見ていこうということですので、取りあえずはラット1本でいいかどうかはもちろん議論する必要があるのですが、Tgマウス等で長期のマウスの試験を補完する形にしていくべきかと思っています。
○津田委員 事務局から、今、チャートのどこまで行っていて、どこをやっているかを御説明いただいて、そこからスタートした方が無駄がないと思います。
○大淵有害性調査機関査察官 分かりました。
○西川座長 ですから、事務局から今説明があったように、下から2番目の所です。
○津田委員 もうそこまで下りていると。上からずっと。
○大淵有害性調査機関査察官 これから新しく評価を始めようという物質は、上から順に進めていくということでは予定しているのです。ただ、それを待っていると今年度は発がん性試験のスタートがまだずっとできないことになってしまうので、今年度に発がん性試験をするものについては、必ずしも上のスキームを通してではなくて、直にここの下から2つ目の枠に持っていくという形です。
 もう少したってくると、2段階発がん性試験の結果などが集まってくるので、そこの中から物質を選んでというふうになってくるのですが、今回はまだそういった情報がないので、既に分かっている情報の範囲の中だけで一応、試験対象物質を選んでいただきましたので、試験のやり方の所だけが従来とは変わってくる。2種類とも長期ではなくて、1種類は長期をやるということです。上のスキームを通ってくるのであれば、例えばラットの肝発がん性の試験で分かっていれば、最後の下から2つ目の枠の所は、必ずしも2種類の動物をやることにはならない可能性もあるかと思うのですが、今回はまだそういった状況になっていないので、事務局としては今回については1種を長期で、もう1つを短期ないしは中期でというやり方かと考えています。
 短期・中期の仕方については、仮に長期をラットでやるとなった場合には、短期・中期については遺伝子改変の動物を使ってという方法が、昨年度の議論からすると妥当かと思っています。関係する資料については、参考資料6として37ページに、昨年の小検討会のときに津田先生に発表していただいた資料を参考としてお付けしています。短期なり中期の試験については、この中から何らかの方法を選択する趣旨で、事務局としては、今回の会議の資料をお配りしています。
○津田委員 例えば、長期はラットとした場合に、これは吸入ばく露ですね。
○大淵有害性調査機関査察官 はい。
○津田委員 バイオアッセイさんの待ち時間はどうなるのですか。すぐにできるのですか。
○バイオアッセイセンター(松本) 今年度、また濃度設定試験を2週と13週やるので、来年度の終わりぐらいから発がん性試験を始めることになっています。
○津田委員 そうなっているわけですか。
○バイオアッセイセンター(松本) なります。
○西川座長 恐らく実施できるという前提であると思います。
○津田委員 要するに、用量設定試験も含めてすぐ開始できるという状況で話を進めていいということですね。
○大淵有害性調査機関査察官 そうです。少なくとも長期のそれでです。あとは、短期・中期を仮に遺伝子組み換えでやるとなると、それについてはバイオアッセイセンターではまだ経験がないものですから、その試験手法のトレーニング、あるいは試験手法についてもこういう手法でやりましょうということを、一応ワーキンググループでも決めていただくという作業も経て試験をすることになるので、恐らく遺伝子改変なりをやるとなった場合には、それは平成25年度からすぐ始めるというよりは、平成26年度以降に具体的な試験は始まっていくことになろうかと思います。
○津田委員 そうすると、ラットはもう吸入ばく露ということになりますね。
○大淵有害性調査機関査察官 はい。
○津田委員 この場合ですと、このスキームでいうと、代替法はマウスということがこの趣旨でしたね。
○大淵有害性調査機関査察官 はい。
○津田委員 そうすると、マウスで吸入というのは、ほとんど不可能でしょう。代替法で、例えば遺伝子改変動物のrasH2マウスを使ったとしても、吸入ばく露のデータはないと思います。そうすると、別のルートということになるので、果たしてそれがラットとマウスでやったことになるのかどうかも検討する必要があると思います。
○西川座長 話が少し先に進み過ぎているので、まず今、フローのどこの段階をディスカッションしているかというと、下から2つ目の所であって、1種の長期の試験は実施することになります。「必要に応じ」というのは、下から4番目の所で短期・中期の試験があって、既に実施されている場合もあるので、その場合は必要ないということが1つの理由だったと思うのです。順番にいくと、ラットの試験を吸入で実施することについては、いかがですか。特に問題はないと思いますので、そうすると、次に短期・中期試験を追加で実施するかどうかについて、御意見をお願いします。
○若林委員 長期試験でラットを使うことに関しては問題ないと思いますが、それを補完として短期・中期試験をすることの判断材料として、1つ教えてほしいのですが、この化合物の遺伝毒性に関しては、9ページの微生物と培養細胞を用いたin vitroの結果しかないわけですか。
○大淵有害性調査機関査察官 資料2-2です。
○若林委員 通常でしたら、in vivoの試験がありますよね。
○西川座長 労衛法では、vivoの試験までは必須ではないのです。ですから、このようなデータしかないのです。
○若林委員 でも、中期・短期の方に進む1ステップとしてin vivoの遺伝毒性をすると、どこにターゲットがあるのかという大よその推測ができる補完データにはなるのではないかと思っていますが、そこの観点はどうですか。
○西川座長 それはそうだと思うのですが、現行、ラット、マウスの長期試験をやる場合に、標的臓器はどこかということまでは確認はしてないわけです。したがって、それをやるとなると、また別の試験が必要になってくるわけです。つまり、できるだけ現行のやり方と異なる試験法をどんどん追加するのは、いろいろな意味で問題が生じる可能性があるわけです。したがって、今、議論していただきたいのは、マウスの長期試験に代わるものとして、どういう短期・中期の試験を実施したらよいかに焦点を絞って議論していただきたいわけです。
○小野寺委員 今、若林先生がおっしゃったことも、もっともだと思うのです。遺伝毒性試験のin vitroの培養系の細胞を用いて試験が陽性となっていたのならば、次のステップとしてはin vivo系の遺伝毒性が有るか無いかを確認して、それが陽性となれば、例えば今回、がん原性試験を行ったときの結果も、遺伝毒性が関与しているかどうか、非遺伝毒性物質のがん原性か、遺伝毒性によるものかという判断がつくと思うのです。まずはin vivoの遺伝毒性の結果がない限りは、トランスジェニックマウスとか、ほかの短期の試験は、飽くまでも遺伝毒性物質を検出するのに優れている系なので、初めからそれをやることは、非常に時間と経費がかかりますから、今の考え方からすれば非常に、何かもう少し前に。試験法は確かに順番はあると思うのですが、順番からいうと、vitroの試験をやって、その結果を見てから動物試験に入る方が、通常やっている手法のように見えるのですが、それは違うのですか。
○西川座長 それはそれに越したことはないと思います。
○小野寺委員 その方が経費と。
○西川座長 ちょっと待ってください。それはフローのどこに入っていますか。
○小野寺委員 遺伝毒性の強さの遺伝毒性試験は、別にin vitroということは書いていません。総合的に遺伝毒性を評価するのが遺伝毒性の結果だと思います。
○西川座長 それはフローのずっと前の話であって、今は、先ほどから申し上げているように、下から2番目の所を議論しています。
○小野寺委員 でも、これは遺伝毒性があるわけですか。
○西川座長 遺伝毒性はあるでしょう。
○小野寺委員 in vivoで確認されていますか。
○西川座長 それは何度も言いますが、現行の労衛法の試験のルールでは、そこまでは確認してないわけです。
○小野寺委員 遺伝毒性の専門家の若林先生、それでよろしいでしょうか。
○西川座長 それが大きな問題であるとすれば、また大きな見直しになってしまいます。
○小野寺委員 いや、それで遺伝毒性があると判定してよろしいのですか。
○若林委員 ある化合物の遺伝毒性が有るか無いかということに関しては、in vitroとin vivoを組み合わせることが普通の方法であることは確かだと思います。ただ、ここのフローチャートの所で言うと、上の段をスキップして下から2番目の所を議論するという話でしたら。そこだけにフォーカスを当てて議論すればいいかもしれません。ただ、中期・短期の試験をする上において、in vivoの遺伝毒性が有るか無いかを見ることは、判断材料としては非常に重要なポイントだということを私たちは指摘したわけです。
○西川座長 ごもっともな御意見だと思います。非常に重要だと思います。ただ、現行のルールでそこまで確認しないといけないことにはなっていないので、もし、それが本当に必要であるとしたら、もう少し根本的なルールの見直しをしないといけないことになります。
○大淵有害性調査機関査察官 補足をするのですが、どういう場合に遺伝毒性有り無しと判断するか、どういう場合に遺伝毒性が強いと判断するかは、今回開いているのは発がん性のワーキンググループですが、もう1つこの春から遺伝毒性のワーキンググループも立ち上げたので、そちらで遺伝毒性の判断基準を議論していただく予定にしています。
 定常ベースになってくれば、このスキームを通して物質が全部一番最後の所まで来るのですが、今回、その手順がなかなか踏めなかったものですから、そういうところを抜いた形で最初から、下から2番目のスキームに来てしまっているので、議論の仕方がなかなか難しいところはあるのかと思っているのですが、一応、遺伝毒性の判断基準は別のワーキンググループで検討を予定していることだけは申し上げておきたいと思います。
○西川座長 よろしいですか。短期・中期試験も幾つかの候補があって、Tgマウス等に限定したものではないので、例えば変異原性を検出するようなTgマウス等があるので、どうしてもvivoの遺伝毒性を確認すべきであるということであれば、それも1つの候補になるかと思います。
○吉田委員 遺伝子改変動物を使ったとしても、どこの臓器を調べるかにより、その後に出てきた発がん性とリンクできることもあるのではないかと思うのですが、もし遺伝毒性をvivoで調べなかった臓器に腫瘍が出た場合は、それが遺伝毒性による発がんかどうかは分からないままで長期の試験の評価をすることになりますか。
○西川座長 それは全てそうなのです。臓器レベルで遺伝毒性が有るか無いかまで確認しないと、本当に発がんに遺伝毒性が関与しているかどうかは分からないです。そこまでやるかということになります。
○津田委員 ここで問題になったのは、がん原性が有るか無しかということについてのデータがきちっと欲しいということですね。
○大淵有害性調査機関査察官 そうです。
○津田委員 ですから、今、遺伝毒性の議論は確かにあるのですが、遺伝毒性があろうとなかろうと、がん原性有り無しは別のところにあるわけです。ですから、それをどうするかをここでやっていると私は理解しています。
○西川座長 そのとおりだと思います。
○吉田委員 そうしたら、私は2年の発がん性で十分であると思います。
○西川座長 ラットの。
○吉田委員 ラット1種で。
○西川座長 いかがですか。2年のラットの試験だけで十分ですか。
○津田委員 ただ、一般的な発がんの広い意味では2種となっているということで、このスキームのときに片方がラットの場合はもう一方はマウス、長期試験がマウスの場合は代替法がラットという議論があって、一応そういうふうでこのスキームはできたと理解しています。ですから、もし、ここで更にマウスについてもある程度の情報を得てコンファームをするということでしたら、この場合は長期吸入試験を2年間でやるのなら、もう1つの方の短期試験はマウスということに落ちるのだと理解しています。
○西川座長 例えば、ラットだけでいいということになれば、現行でラット、マウスをやっていたけれども、マウスは全く意味がなかったということにもなってしまいます。それは、動物種が違うから念には念を入れてという考え方でやってきた。そこをもうマウスは要らないということになっていいわけですか。
○小野寺委員 いや、2種をやるという意味に関しては、がん原性が出た場合に、種の差があるかどうかという確認をしているのも1つの目的だと思うのです。医薬品の場合は、遺伝毒性があるものはがん原性試験を免除するのです。なぜかというと、遺伝毒性のあるものは、生物に関してがん原性の出ることが予測できるので、これはポジティブだとするということで、何も動物でがん原性を改めて確認しなくても、遺伝毒性が黒という評価をしたものに関しては、動物でのがん原性試験はさせていないのが現状です。
 今回も遺伝毒性がin vitroのところで黒、陽性という結果が出ていれば、動物に長期に投与すれば、がん原性は予測できると。遺伝毒性が原因でがんが起きることが、長期にとって予測できることになります。もしも遺伝毒性がポジティブで長期にがん原性をしたときにネガティブだったときには、これはがん原性がないという評価ができますか。
○西川座長 すみません、また遺伝毒性に戻っているので、遺伝毒性は別のワーキンググループで検討するのです。
○小野寺委員 我々はがん原性試験をするかどうか、今、2種を使ってするかどうかとなったときに、2種をして、がん原性を確認する意味合いがどれほどあるのかと。
○西川座長 それは現行、ラット、マウスでやってきたという経緯があって、できるだけレベルを落とさないためには、ラットを2年やるとしても、もう1つマウスをやると。そういうことなのです。ですから、発がん性に限定した議論をしていただきたいと思います。
○小野寺委員 発がん性試験の実施の目的ということは、発がん性の有無の予測です。発がん性が有るか無いかというところの有無の予測ですね。
○西川座長 そうですね。
○小野寺委員 その予測をする1つのデータとして、遺伝毒性ということは、長期にそういう遺伝毒性物質がばく露されれば発がん性が起こることは、既知の事実としてあるわけです。
○西川座長 それは、そうとも限らないでしょう。だって、それこそその臓器に遺伝毒性がなければ。
○小野寺委員 遺伝毒性がなければですね。
○西川座長 そう、なければ。
○小野寺委員 なければどうかは、分からないわけです。
○西川座長 そう。
○小野寺委員 ですから、まずは遺伝毒性試験の、in vitroの試験での結果が陽性か否かです。
○西川座長 いや、このデータだけでは何とも言えないですよね。陽性所見が、これは全て陽性というわけではないですよね、全体を見てないので分からないのですが。
○大淵有害性調査機関査察官 これは国の委託で実施した試験の結果です。
○西川座長 これは安衛法のです。
○大淵有害性調査機関査察官 厚生労働省でバイオアッセイセンターに委託して試験をした結果が、こちらのデータです。
○西川座長 エームスとin vitroの染色体異常試験ですよね。
○大淵有害性調査機関査察官 そうです。
○西川座長 何か議論が少しねじれているのですが、結局、遺伝毒性が陽性であれば発がん性があるだろうと、そういうことは多分そうだと思うのです。実際にそれを確認するために長期のラット、マウスの試験をやってきているのです。なぜ2種やってきているかというと、動物種で差がある可能性も否定できないので、それでやってきたという経緯があるわけです。さもなければ、現行やっている長期の試験も不要であると、そういうことになってしまいますよね。ただ、その辺りは少し、もちろん医薬品とも違うし、分けて議論していただかないと、ごちゃごちゃになってしまうのですよね。
○大淵有害性調査機関査察官 今の医薬品との違いということで申し上げると、医薬品は医薬品として承認を受けて製造するスキームのための試験ですが、私どものは行政として規制をする必要があるかどうか、そういうことの判断として発がん性試験をさせていただいているという目的があります。仮に遺伝毒性で強い遺伝毒性ありと分かっても、その結果だけをもって最終的に強制力を持った規制に結び付けるのは、今のところはなかなか難しいところがあり、少なくとも動物実験ではっきりがんが出ているという状態でないと、最後の規制まで持ってくることはなかなか難しい。行政指導のレベルであれば、今でも遺伝毒性、エームス試験などの結果でも指導はしているのですが、強制力を持った規制をしようと思うと、動物実験のきちんとした結果がないとやりにくいところもあり、こういったスキームを作っていただいたと理解をしています。
○西川座長 いろいろな貴重な御意見を頂いているので、それはそれとして今後にいかしたいと思いますが、本日は、2-ブロモプロパンの発がん性試験をどのような形でやるかを議論していきたいと思っています。長期試験まで必要ないという議論になってしまうと、何が何だかわけが分からなくなってしまうので、そこはやめていただきたいと思います。
○小野寺委員 誤解がないように、必要がないと言っているわけではありません。
○西川座長 そういうふうに聞こえましたよ。つまり、遺伝毒性が明らかにポジティブであれば、発がん性をやらなくてもと。それは医薬品のことだと思います。
○小野寺委員 いや、そうではなくて、今回、実験を動物試験でラットを使ってやるわけですが、例えば、そこでがん原性が出てきたときに、その原因は何かという想定をするためには、遺伝毒性に起因するものかどうかという結論をつけるためには、遺伝毒性のデータも必要ではないかと。ただ、動物にがんができましたというだけで、原因が投与をしてできたというだけでは。
○西川座長 何度も言いますが、ここは発がん性があるかどうかを評価するためにあるわけです。今は、そのためにどういう試験をやったらいいかを議論しているのです。
○小野寺委員 例えば投与試験のところでもいいのですが、ラットの長期のがん原性試験はやるべきだと思うのですが、その他のものに関しては、例えばrasとかのトランスジェニックを使った動物だと、遺伝毒性物質に関しての感受性が非常に高いですね。遺伝毒性物質をスクリーニングするために使う系もあるわけです。その辺のところをターゲットにして2種目を選ぶのかどうかという基準にもなると思うのです。
○西川座長 何をおっしゃりたいかよく分からないのですが、まずラットの試験をやるのはいいですね。マウスの試験はやらなくてもいいということですか。
○小野寺委員 いや、そうでもないです。
○西川座長 さっきはそう言ったではないですか。
○小野寺委員 いや、マウスの試験をするのですが、きちんと目的を、通常のマウスではなくて、例えばトランスジェニックをやるのか、2段階をやるのか、ほかのものを使うのかと。
○西川座長 それを議論しているのです。だけれども、先ほどマウスの試験は要らないとおっしゃったではないですか。そこをごちゃごちゃにするといけないので、現行、マウスでやっている試験に代わる試験は何がいいかを議論していただきたいのです。遺伝毒性は遺伝毒性のワーキンググループでまた議論するのですから。それを併せてリスク評価に使うのだと私は理解しています。今、マウスの試験は要らないと、ラットだけでいいという御意見がありますが、それでよろしいですか。
○小野寺委員 いや、そうは言っていませんよ。
○西川座長 では、どういう試験が必要ですか。
○小野寺委員 マウスの通常の2年間の試験は必要でいいのかということで、ほかにマウスを使った、2種を使った中で、ここにも書いてあるように、短期・中期の試験をするのですよね。
○西川座長 そうです。
○小野寺委員 1種は、ラットの長期の試験をすると。もう1種をするときに、短期・中期をするときに、片側をラットで使っているから、片側を違う種でやったらいかがですかと。それに関しては、私も別に異論はないです。ただ、違う種を使ってやったときに、マウスがいいのかも1つの手ですが、その試験が通常の正常のマウスを使うのがいいのか、それともトランスジェニックを使うのがいいのか、2段階発がんを使うのがいいのかになってくると、いろいろ目的によって違ってくると思うのです。
○西川座長 だから、そもそも、そこを議論していただきたいのです。
○吉田委員 今回は骨髄にかなり障害性がありそうですので、何らかそういった非常にアクティブな細胞をたたいている可能性のある化合物ですから、発がん性は私としてはもちろん懸念がされるのです。例えば、通常の6か月のp53ノックアウト動物等でこのような免疫抑制がある場合、あるいは、そういった造血器系に障害がある場合の物質で、陽性に出やすいという傾向が認められたのはあるのでしょうか。もし、そうだとすると、そういったマウスは使えるのかもしれないと思うのですが、いかがですか、発がん性だけをディテクトしたいというのであれば。
○西川座長 rasH2マウスでやる価値はあると思います。
○吉田委員 それとか、p53とかというのは、今そういった免疫抑制剤とか、そういうので発がん性が出たという事例はあるのですか。もし、そうだとすると、そういうマウスは使えるのかもしれないようにも思うのですが。私は経験がないので。
○西川座長 津田先生、いかがですか。
○津田委員 そういう事例はそうはないのです。ですから、それを探してきてから実施したのでは、もう議論にならないと思います。変異原性の出た物質に対して、例えばrasH2、あるいはp53ノックアウトマウスでは、感受性は確かにあります。rasH2マウスで陽性に出るものは、in vivoの変異原性までやって陽性であったということとは全く関係ありません。
 見る臓器は、rasH2では肺、皮膚、血液系です。それが標的であるし、p53も大体似たようなところであって非上皮が多いのですが、それで腫瘍が出たことをもって発がん性ありということをしているので、臓器がどうのこうのということはほとんど関係ありません。だから、変異原性の標的臓器がどうでこうであるという議論は、ここでやっても意味はありません。発がん性が有るか無しかの問題について、これらの動物を使うかどうかということになるのだと思います。
○小野寺委員 今の補足ですが、rasH2の場合は、遺伝毒性物質に関しては非常に高感度に検出が可能ですが、非遺伝毒性物質に関してはそういう陽性になかなか出てこないというデータはあります。
 今、津田先生がおっしゃいましたように、出てくる臓器に関しては臓器特異性で肺と前胃と脾臓と皮膚ということで、どういうがん原性物質を使っても、それ以外になかなか出てこないので、臓器特異性に関しては、そういうトランスジェニックマウスは使う目的が違うと思います。だから、がん原性の定性をするためには大変有用な系ではないかと思います。
○津田委員 労働衛生上、臓器特異性は問題になるのですか。私は、がん原性有り無しが先だと思いますが。
○大淵有害性調査機関査察官 労働衛生上ということで言うと、具体的な対策という部分については、どのような臓器に影響が出るかということで、健康診断の項目等は考えていかなければいけないのですが、どこの臓器に出たから規制が必要だとか、必要でないということは、特に関係はありません。
○津田委員 そういうことから言えば、今は臓器特異性、変異原性あるいは標的臓器がどこになるかを押さえながらということは、それを議論していると前に進まないのではないかと思うのです。
○若林委員 下から2番目の所の議論をしているのですが、私は少しフォローアップできないので確認をしたいのです。「原則として1種の動物での実施」に関しては、このブロモプロパンについてラットを使ってと。その次、「必要に応じて短期・中期試験を追加」ということが書いてあって、今、津田先生がお話になったのは、エンドポイントを腫瘍に置いていますよね。短期・中期試験のエンドポイントの私たちのイメージは、腫瘍ではなくて、プレキャンサーのマーカーなどをイメージしたものですから、そこがフォローアップできなかったのです。「短期・中期」という所のエンドポイントは、何をもってエンドポイントにするかについては、前の議論ではどうなっているのですか。
○西川座長 これは1つの試験ではなくて、もちろんTgマウスは入りますが、Tgマウスの6か月の試験は、エンドポイントは腫瘍です。前がん病変ではありません。
 あとは当然、ラットの2段階の中期発がんモデルも入ります。ただし、それは前の段階で実施されていない場合に限定されるわけです。したがって、短期・中期の候補は幾つかありましたよね。ラットの2段階のイニシエーション・プロモーション、伊東法もそうだし、Tgマウスもそうだし。あとは幾つか、それに限定されたわけではなくて、もちろんほかにもケース・バイ・ケースで有用な試験があれば、それを取り入れていくことになっていると思います。
○若林委員 短期・中期は、非常に広い意味ですね。
○西川座長 広い意味です。
○若林委員 我々が今までずっとやってきたのは、前がん病変のアベラント・クリプト・フォーサイや、GST-P陽性フォーサイ等ですが、そうではなくて、例えば遺伝子操作マウスの腫瘍とかいうものも全部入るという意味ですか。
○西川座長 例えば、中期モデルの多臓器モデルという試験はありますが、その場合は、もちろん前がん病変を指標にして評価していくこともあります。したがって、エンドポイントは腫瘍に限定されたわけではなくて。
○若林委員 要は、期間が短く、簡便にできるということを目的とすると。
○西川座長 そうです。しかも多臓器モデルだと予想される発がんの臓器を集中的に検索できるというメリットがあると思うのです。
○若林委員 そういう意味ですね。
○西川座長 そういうことです。
○若林委員 分かりました。
○西川座長 出だしからえらい時間がかかってしまって、先が思いやられます。マウスの長期試験に代わる短期・中期の試験は何がよいかについて、御意見を頂きたいと思います。rasH2とかp53ノックアウトでもいいという御意見があったのですが、ほかにありますか。2年間の試験をラットでやるという点からは、マウスが適切であろうとは思いますが、Tgマウスにも2種類があって、どちらがいいかとか、その辺りの御意見を頂けると助かります。
○津田委員 私の書いた文献を見ていただければ分かりますが、バックグラウンドもあって信頼度が高いのはrasH2マウスとp53ノックアウトの2つしかありません。先ほど申し上げましたように、それを吸入で実施するかどうかが一番の問題になると思います。バックグラウンドデータに吸入はないので、実際的には経口投与になります。もし、吸入でやるとしたら、実施できるところは極めて限られてくることになります。
○西川座長 Tgマウスの試験を経口でやってもいいのですよね。それはあり得ないですか。
○津田委員 これは揮発性ではないですか。
○大淵有害性調査機関査察官 これは揮発性になります、先ほどの物性データもあります。
○津田委員 ですから、餌に混ぜることは不可能だと思います。
○大淵有害性調査機関査察官 はい。
○津田委員 そうすると、胃内投与か吸入か、あるいは特殊な装置を使った鼻部ばく露かということになると思います。
○大淵有害性調査機関査察官 バイオアッセイさんが通常されている全身ばく露の吸入は難しいところはありますか。
○津田委員 それはどうですか。
○バイオアッセイセンター(松本) それに関しては、マウスの吸入試験の短期版という理解で可能ではないか。ただし、先生がおっしゃるように、バックグラウンドデータは1回取る必要はあるかという理解をしています。
○吉田委員 78週ではなくて6か月ですから、ある意味では普通の発がん性試験よりもかなり短期間になりますね。ですので、どうしても吸入が難しい場合は、ある意味では強制経口というルートもあり得るかもしれないですよね。
○西川座長 それこそ吸入ができるかどうかは、フィージビリティテストで確認するわけですよね。
○バイオアッセイセンター(松本) 吸入試験自体ができることは、フィージビリティ試験で確認しています。
○大淵有害性調査機関査察官 確認済みですね。
○西川座長 どうしても駄目なら、強制経口投与にするという方向でどうですか。では、ばく露方法については、一応、取りあえず吸入で検討して、万が一駄目なら強制経口投与にするということにしていきたいと思います。問題は、マウスの種類ですが、rasH2かp53ノックアウトかと思います。
○若林委員 これらの遺伝子操作マウスを使うのでしたら、rasH2かp53マウスが一番有用であるということかと思うのですが、教えてほしいのですが、いろいろな化学物質のがん原性を調べるに上において、rasH2とp53の国際的な評価は現状ではどのようになっているのですか。
○西川座長 これは医薬品のICHというガイドラインの中に、長期のマウスは、偽陽性が結構あるので、それに代わるもっと短期のモデルができないかということで、そこでガイドラインに載ってきたのがrasH2とp53ノックアウトです。それは結構バリデーションの試験をたくさんやっていて、これなら大丈夫だろうということで採用されているわけです。したがって、実際、医薬品の審査資料にもrasH2を使った試験成績も出ていると聞いているので、実績は十分ある試験方法だと思います。
○若林委員 実績はどちらの方があるのですか。
○小野寺委員 ただ、インハレーションは1つもないです。
○西川座長 インハレーションで実施した試験ではないですが、経口に関しては、恐らく十分なデータがあると思います。
○若林委員 rasですか、それともp53ですか。
○西川座長 両方です、日本ではrasが多いのですが。取りあえずrasで行くという手もあるのですが、それではまずいですか。御意見があれば、お願いします。
○若林委員 どちらを使うかは、きちんと実績があって、使いやすい、科学的に効率的なものがいいかと思うのですが。
○西川座長 だから、実績は両方あって。
○小野寺委員 いや、実績というか、今言いましたように、インハレーションのデータは1つもないということです。
○西川座長 そう、そう、だから、私も今言おうと思ったのです。
○小野寺委員 そういうところからいくと、今回やる試験は初めてなので。だから、例えば今回の毒性情報で経口のラットは2,000mg/kg以上とありますが、これはラットでも同じようになるのかどうか。それで、マウスでも経口で可能だったならば、経口の方が今までのデータ、既知のデータが使えるということで、後からの結果の解釈が非常にスムーズに行くと思うのですが、インハレーションということになると、まずras自体がどれだけの濃度でどれだけの反応を示すかというところから、バリデーションというか予備試験をたくさんしないといけない訳ですね。 ○西川座長 もちろん、長期のマウスでも予備試験はやるのですが。
○小野寺委員 ということは、これが初めてのあれなので、比較するものがないので、解釈が非常に難しいのかと。
○西川座長 解釈が難しい以前に、予備試験を丁寧にやらないといけないですよ。今後、このモデルを使っていくとしたら、早目に検討しておいた方がいいという考えもありますよね。
○吉田委員 例えば、ダブルコントロールとか、何らかの腫瘍が投与群に発生したときということもあるので、そういった手立ても、今3Rの時代に怒られてしまいそうではありますが、最終的に統計処理ということになると思うので、そういうことも併せて考えていただくことになるのではないかと、今回は最初なので。
○西川座長 ごもっともなことだと思うのですが、それはまた先の話だと思うのです。
○大淵有害性調査機関査察官 この検討会でまた具体的な試験基準みたいなものは検討したいと思います。
○西川座長 日本での実績もあるということで、取りあえずrasH2が恐らくいいと思うのですが、御異論があればお願いします。ほかに御意見はないようですので、2-ブロモプロパンについては、長期試験をラットによって、短期・中期試験はrasH2マウスによって実施することとします。次に、議題2について、事務局より説明をお願いします。
○大淵有害性調査機関査察官 議題(2)は、「平成25年度の中期肝発がん性試験対象物質の選定について」ということですが、こちらも参考資料の11ページのフロー図で確認させていただきます。下から4番目の「短期・中期発がん性試験」で、スクリーニング目的で行われる短期・中期の試験です。こちらについては、2段階発がんモデルのように、肝発がん性試験を優先的に実施ということがこのスキームで決まっています。その対象物質をどうするかということで、今回は最終的に2物質を先生方に決めていただきます。その前段階としてどういう議論が行われていたかを御説明させていただきます。
 通しページの12ページ、資料3-1「中期肝発がん性試験対象物質の選定について」を順に説明させていただきます。「平成25年度におけるスクリーニング発がん性試験の実施」ということで、平成25年度から有害性評価小検討会の検討結果に沿って、化学物質の発がん性評価を推進することとしているが、このうち平成25年度におけるスクリーニングのための発がん性試験としては、2物質を対象とした中期肝発がん性試験を予定している。
 2「中期肝発がん性試験対象物質の選定について」ということで、(1)企画検討会における優先候補及び次候補の選定というのがあります。本日の検討の前段階として、本年2月に開催したリスク評価の企画検討会で、中期肝発がん性試験の候補物質を選定していただきました。その際、最終決定ではなくて、優先候補2物質、次候補2物質の計4物質の選定までをそこでしていただきました。なぜ、そこで最終選定までいかなかったかというと、発がん性評価ワーキンググループでの試験方法の検討において、反復投与試験の結果等の情報を精査すると、物質によっては肝臓以外の臓器を標的とした腫瘍発生の可能性が高く、他の臓器を対象とした中期発がん性試験を実施するような物質も出てくる可能性があるということで、そういう毒性の関係の専門家が多い検討の場で、最終的にきちんとした絞り込みをする必要があるということで、企画検討会段階では、4物質までの絞り込みにしてあります。
 企画検討会においてどのような絞り込みの仕方をしているかを丸数字2で説明させていただきます。企画検討会の段階では、事務局の資料として10物質をリストアップして検討していただきました。企画検討会で事務局がリストアップした物質というのは、私どもよりも先行して評価が進んでいる化審法における優先評価化学物質選定のためのスクリーニング評価のデータ等を活用しようということで、遺伝毒性の強さを指標として、候補物質を選定しております。具体的には、化審法で行っているスクリーニング評価というのがあり、化審法のスクリーニング評価で変異原性がクラス1あるいはクラス2の上位に分類されている97物質の中から、次に掲げる条件で絞り込みをしていきました。
 丸数字1~丸数字3の条件ということで次のページに記載しております。丸数字1細菌復帰突然変異試験で陽性で、比活性値が1,000以上。丸数字2哺乳類培養細胞の染色体異常試験で陽性で、D20値が0.01mg以下。丸数字3in vivo変異原性試験において陽性。このような物質が、先ほどの97物質の中に35物質ありました。そういうものの中でも、既にIARC等で発がん性の評価が行われている物質、製造・輸入実績のない物質を除くと10物質に絞り込みができました。これが、事務局段階での絞り込みをしたものです。イの所で、企画検討会ではその10物質の中から、製造・輸入量が多く、かつ用途や物性等から判断し、労働現場における一定程度のばく露が予想されるような物質を選定しようという考え方で選定していただき、2物質+2物質の計4物質を絞り込んでいただきました。
 (2)発がん性評価ワーキンググループにおける絞り込みということで、今回のワーキンググループにおいては、上記1の企画検討会で選定した4物質の中から、既知の有害性情報を参考にし、中期肝発がん性試験対象物質2物質を選定していただきます。具体的には、中期肝発がん性試験が適当な物質であるか、多臓器を対象とした試験が妥当な物質であるかを整理をしていただきます。
 具体的に企画検討会で絞り込んでいただいた4物質が資料3-2です。物質名から順に申し上げます。優先候補の1番目は「2-ビニルピリジン」、2番目は「3,3'-ジメチル-4,4'-ビフェニレンジイソシアネート」、その次の候補として「1,3,-ジブロモプロパン」「4-tert-ブチルフェノール」です【注:3番目の物質は資料3-2では「1,4-ジブロモブタン」となっているが、資料が誤り。】。企画検討会で配った資料は10物質でしたので、そこから4物質だけピックアップした資料です。変異原性の概要、物性情報、用途等の情報、製造・輸入量等の情報が記載してあります。
 今回検討していただくに当たり、この資料に加えてもう少し詳しい有害性の情報が必要かということで、バイオアッセイさんの方に、4物質それぞれについて有害性情報を少し整理をしていただき、本日の資料3-3で説明させていただきます。資料3-3以外にも関連する情報として、後ほど御説明させていただく、1番目の物質である2-ビニルピリジンについては、厚生労働省内の医薬食品局の関係で、トランスジェニックマウスの遺伝子突然変異試験が行われています。まだ、結果の正式な公表はされておりませんが、その概要の情報が本日ありますので、後ほど説明させていただきます。4番目の物質である4-tert-ブチルフェノールについては、過去に2段階発がんモデルの試験がされていて、その情報がありますので、それについては後ほど説明させていただきます。
 最初の参考情報として、資料3-3の有害性情報4物質について順に簡単に御説明させていただきます。表紙に4物質を並べておりますが、次のページからが具体的な資料です。最初は「2-ビニルピリジン」です。物性情報等は飛ばして、毒性情報から御紹介いたします。急性毒性については、経口・吸入・経皮それぞれこういう情報があります。
 反復投与毒性は、ラットを用いて28日間の反復経口投与試験の情報が記載されています。概要としては、胃が標的器官であると判断されるような、胃に関する情報が多く得られています。次の情報は、ラットへの92日間の反復強制経口投与試験の結果があります。腎臓重量の増加、前胃の過角化症等の情報があります。肝臓相対重量の増加、血小板数の増加、前胃の扁平上皮の変性という情報もあります。もう1つの情報として、ラットに1日4時間48週吸入ばく露した試験で、体重増加の抑制、白血球数の変化、行動の変化が認められたという情報があります。発がん性関係については発がん性試験、国際機関での発がん性評価についてはありません。変異原性については、資料3-2でも記載してありました情報をこちらでも示しております。
 2-ビニルピリジンの関係だけ先に続けて説明させていただきます。机上のみ配布の資料としている資料3-5の28ページで、トランスジェニックマウスを用いる2-ビニルピリジンの遺伝子突然変異試験の概要です。こちらの試験としては、用量設定試験をまず行い、その後に被験物質をトランスジェニックマウスに28日間反復強制経口投与し、最終投与後3日の肝臓・骨髄・胃及び精巣についてgpt-assay及びSpi-assayにより遺伝子突然変異頻度を求めました。
 その結果、2-ビニルピリジンの肝臓・骨髄・胃及び精巣のいずれにおいても、こういう遺伝子突然変異頻度は陰性対照群と比較して、統計学的に有意な増加が認められなかったという情報があります。こちらは、まだ正式に公表されておりませんので、先生方だけにお配りした資料となります。以上が2-ビニルピリジンの関係の参考情報です。
 資料の20ページに戻って、2つ目は「3,3'-ジメチル-4,4'-ビフェニレンジイソシアネート」の有害性情報を御紹介させていただきます。用途や物性は省略いたします。毒性情報は非常に少ない物質で、LD50の数値、それから致死量等があります。あとは、イソシアネート類を準用し、呼吸器感作性という分類がされています。変異原性関係の情報がここにも重複した形で書いてありますが、こういう情報という程度で、なかなか詳しい情報がない物質です。物性とも関係しますが、やや不安定な反応性の高い物質です。保管上の注意ということで、空気中の湿気を吸収しないように保管するという条件があります。
 この物質の情報が少ないということで、バイオアッセイさんの方では、構造の似ている類縁物質ということで2物質の情報を記載していただいています。1つ目は、メチレンビス(4,1-フェニレン)=ジイソシアネート(略称MDI)について、毒性情報として、急性毒性のLD50の数字、IARCでの評価の関係の情報等を記載していただいております。IARCではGroup3となっているそうです。
 次のページで、同じく類縁物質でトルエンジイソシアネートがあります。こちらについての毒性情報については、急性毒性としてここに書いてあるような情報があります。反復投与毒性については、GHS分類を用いた場合の根拠として、回復性のある喉頭の過形成、扁平上皮化生、鼻炎、努力呼吸うんぬんということがあります。これのまとめの所では、呼吸器・血液系が標的臓器と考えられたという情報があります。発がん性に関係しては、IARCなり産衛学会では2Bという情報、それからACGIHではA4という分類になっています。
 3つ目の物質は、「1,3,-ジブロモプロパン」です。こちらも、毒性情報の所から御紹介させていただきます。経口の急性毒性の値が書いてあります。下から3行目からが反復投与毒性の関係です。ラットを用いて反復投与毒性、それからその回復性を検討した試験があります。28日間反復強制経口投与が行われています。その投与の後、2週間休薬し、その後で状況を見ています。主な変化として、流誕、貧血、血中のたん白質及び脂質の増加、肝重量の増加、肝臓における小葉中心性の肝細胞肥大、小葉辺縁部肝細胞における空胞現象があります。
 反復経口投与時の毒性とその休薬性を、新生児ラットを用いて検討した試験があります。生後4日から離乳時までの18日間経口投与し、その後9週間休薬させ、回復性について検討したものです。この試験の結果では、体重増加抑制、血小板数の低値、γ-GTP活性の高値、下垂体重量の高値、副腎重量の低値、肝臓に重量の高値と小葉中心性の肝細胞肥大、単細胞壊死が見られたという情報があります。その他、下垂体及び肝臓重量の高値等という情報も記載されております。発がん性関係では、発がん性試験、国際機関での発がん性評価はなく、変異原性についてはこちらの値のとおりとなっています。
 4つ目は「4-tert-ブチルフェノール」です。こちらについても毒性情報から見ていきます。急性毒性が、経口・吸入・経皮それぞれこういう数値となっています。刺激性ということで、皮膚・眼に刺激性があります。反復投与毒性としては、ラットに経口投与した試験があります。反復投与と生殖発生毒性の併合試験となっております。その結果は、最高用量の雌の方で、大量に投与された4-tert-ブチルフェノールの刺激性による呼吸器系の雑音が認められたが、病理検査では裏付けの所見が得られない。200mg群で血漿アルブミンの減少が見られた。これについても、裏付けとなる他の血液生化学的変化は認められていない。病理検査でも異常は観察されていないという情報があります。
 別の試験では、雄のラットにこの物質を混ぜて51週間摂取させた試験があり、2段階発がんプロモーションの試験の一部として実施したということです。前胃の過形成などが認められております。次には、ハムスターの試験が書いてあります。20週間の経口試験で、前胃の過形成、乳頭腫様病変等が認められています。次の情報として、SDラットを用いた2世代の試験があります。体重増加抑制、雄には腎臓・肝臓の重量増加、雌には副腎卵巣重量の減少が認められています。
 発がん性の関係については、先ほど御説明した試験とも少し関係するのですが、2段階の発がんプロモーション試験が行われています。イニシエーターとしては、ニトロソグアニジンを強制経口投与し、その後、4-tert-ブチルフェノールを投与するという、51週間の試験です。単独投与群では、15例中14例で前胃の過形成があります。ニトロソグアニジンの単独投与群では、肉眼的に前胃に乳頭腫などが見られています。4-tert-ブチルフェノールとニトロソグアニジンの併用群では、前胃全体が非常に大きな腫瘍塊で占有されていた状況があります。
 同じ内容なのですが、表の形で見やすくしたものが資料3-4で、今の2段階モデルの試験については、最後の所に表の形でまとめたものを資料3-4ということで用意しております。ページは戻りますが、発がん性関係の情報としては、発がん性試験、国際機関での評価等はありません。変異原性は、こちらに書いてあるとおりです。4-tert-ブチルフェノールについては以上です。
 こういう関係情報を基に、本年度行う中期肝発がん性試験について2物質を選定していただきたくよろしくお願い申し上げます。
○西川座長 確認ですけれども、この中期肝発がん性試験というのは、先ほどのフローの下から4番目のことですね。別添2-別紙と書いてある。
○大淵有害性調査機関査察官 今のスキームは下から4番目です。
○西川座長 そうすると、肝臓を標的とする試験であって、投与は経口投与でいいということですね。
○大淵有害性調査機関査察官 はい、経口投与ということになります。スクリーニングの目的ですので、経口投与でさせていただきます。
○西川座長 それを前提に御意見を頂きます。企画検討会で優先候補を2つ、次候補を2つ選定していただきました。優先候補が、肝臓に発がんの標的性があるかどうかという検討はされているわけですね。
○大淵有害性調査機関査察官 企画検討会では、そこまでのことは検討しておりません。細かい毒性については、こちらのワーキンググループで御検討いただいて、その上で絞り込もうという考え方です。
○西川座長 分かりました。そういう観点から御意見を頂きます。
○若林委員 本質ではないのですけれども、25ページと26ページのニトロソグアニジンというのはMNNGのことですか。
○西川座長 MNNGのことだと思います。
○若林委員 これは、表記が足りないですね。N-メチル-N'-ニトロ-N-ニトロソグアニジンですから、ニトロソグアニジンという化合物は多分ないと思いますので、後でMNNGに。
○大淵有害性調査機関査察官 言葉が足りないということですね。
○若林委員 はい。小さなことですみませんでした。
○西川座長 したがって、これは胃をターゲットとした試験であるわけです。よろしいでしょうか。中期肝発がん性試験の候補物質として、取りあえずこの優先候補でよいかどうか御意見をお願いいたします。反復投与毒性の結果だけ見ると、最初の2-ビニルピリジンは肝臓に、重量変化だけですけれどもありそうです。ところが、2つ目の3,3'-ジメチル-4,4'-ビフェニレンジイソシアネートについては、余り肝臓が標的という気はしないですよね。
○吉田委員 1つ目についても、やはり刺激性がありそうです。変異原性もありますが、どちらがいいかなということも。
○西川座長 2つ選ぶので。
○吉田委員 なるほど。
○西川座長 1つは1番目でいいと思うのですが、2つ目をどうするかです。
○津田委員 事務局にお尋ねしますが、陰性だった場合はどうするのですか。
○大淵有害性調査機関査察官 肝発がん性試験をやって陰性だった場合、その先どうするかというのはまた検討会で検討していただく形になろうかと思います。そこで終わりにするのか、多臓器の発がん性試験をするという別の道へ進むのかというのは。
○津田委員 そういうフォローがあれば、いわゆる肝臓を標的にしたもので十分だと思いますので、事務局の考えどおり(1)と(2)でいいのではないかと思います。
○西川座長 多臓器の試験を追加でやるかどうかというのは、またこのワーキンググループで検討するのですか。
○大淵有害性調査機関査察官 そうです。中期の試験の結果が出てきたときに、評価していただくのはこのワーキンググループを予定しています。それで、評価した後どういうステップで次に進むのかという検討も、そのときにしていただくことになろうかと思います。
○西川座長 そういうことになっているようです。
○若林委員 確かに2番目の化合物は、このデータからして確実になるという予想は何となく立てにくい、又はデータが不足しています。試験をして、津田先生が言われたように、別にネガティブでもそれはそれでよろしいということでしたら構わないです。この中の4つをポッシビリティの高い順から選びなさいという話になると、少し違った観点になります。
○西川座長 そうですね。その辺りで議論をしていただきたいと思います。
○吉田委員 陰性を出すということも重要なわけですよね。
○西川座長 もちろんそうです。ただ、標的臓器が肝臓しか見ていないので、他に標的性がある場合は、追加で多臓器の試験をやらなければいけないということです。
○小野寺委員 これは、優先順位を決めるだけですよね。
○西川座長 優先順位を決めるだけです。
○小野寺委員 いわゆる、どれからやるかですね。
○西川座長 今年度は取りあえず2つ選ぶということですね。
○大淵有害性調査機関査察官 はい。
○津田委員 これを優先したのは、この2つのばく露量が多いからということですね。
○大淵有害性調査機関査察官 ばく露量と製造・輸入量が多くて、かつ用途を見て、例えば何かの原料に使うような物質というのは、ある程度密閉型で作業をされていることが多いかと思います。開放型で使うことが予想されるような物質は優先度を高くして選んでいただいております。
○西川座長 それと、遺伝毒性が陽性だということですね。
○大淵有害性調査機関査察官 一番最初の条件としては、遺伝毒性が陽性というのが、もともと選ぶときのもので、事務局が選んだ10物質は遺伝毒性の情報で選んでおります。企画検討会の中では、物性・用途・製造量等も加味して判断していただきました。
○吉田委員 優先物質(2)のうち、(1)はトランスジェニックマウスだと、遺伝毒性は陰性だったと。むしろ(2)、(1)というわけでもないのですね。この優先物質の2つは同じように並行して行うということですね。
○大淵有害性調査機関査察官 そうです。どっちが上位ということはなくて、両方とも同じランク付けでこの資料は作っております。
○津田委員 質問です。規模については何も書いてないのですが、1群何匹というようなことまでは。
○大淵有害性調査機関査察官 本日これから後の議題で、試験の具体的な方法は出てまいりますので、そこで御議論をお願いいたします。
○西川座長 そういうことで、特に御異論がないようでしたら、企画検討委員会で選んでいただいたものでもありますし、優先候補として、資料3-2にあるような優先候補2つを、今年度の試験対象物質としたいと思いますが、よろしいでしょうか。次候補については、また来年改めて。
○大淵有害性調査機関査察官 来年は別の観点から入ってくるかもしれませんが、取りあえず今年度は入らないということで、また次年度以降の対象候補になろうかと思います。ちなみに参考ということでお伺いしたいのですが、4番の4-tert-ブチルフェノールの2段階発がんモデルは1年間、51週の試験が行われていて、ここで胃に影響がありそうな結果が出ていたかと思います。こういう物質の場合に、改めて中期の試験をするような必要があるのか、あるいは長期試験の候補物質と考えるのが妥当なのか、その辺いかがでしょうか。
○西川座長 これは、2段階の胃の発がんモデルで、促進作用があったということです。この場合で、肝中期の発がんモデルで検討すべきかどうかについて、津田先生何か御意見をお願いいたします。
○津田委員 これは、前胃だけに出ているわけですね。
○大淵有害性調査機関査察官 はい。
○津田委員 広瀬先生の試験ですね。
○西川座長 そうです。
○津田委員 これを、もう一遍別の観点から、肝モデルで見るかどうかということですか。
○大淵有害性調査機関査察官 それが必要かも、それを飛び越えても、長期のほうに持っていってしまっても構わないのか。
○津田委員 恐らくこの類のを広瀬先生が胃でやられた理由は、伊東モデルでやってネガティブだったからではないかと想像します。
○西川座長 それでは、御本人に確認したほうがいいですかね。そういう経緯があるようですので、余り優先順位は高くないのかなという気がいたします。
○津田委員 この物質には抗酸化作用はありましたか。もしそうだとすれば、当時広瀬先生が、抗酸化物質について、例えばBHAだったかでこういうことをやって陽性に出たので、周辺物質として抗酸化作用のある物質をたくさんやられた、その中の一部ではないかと思います。そういたしますと、伊東モデルは恐らくネガティブであろうかと思います。これは私の想像ですので、広瀬先生に直接聞かれれば分かるのではないかと思います。
○吉田委員 今回4つ選んでいただいたのですが、この次の候補として非常に一杯あってというのであれば、この4番は微生物を用いた遺伝毒性が陰性ということもありますし、津田先生の情報などを合わせると、もし僅差の語意があるならば、それも1つの候補ではないか。もしデータがないのであれば、せっかく試験をされるのですから、それも候補かと思うのです。
○津田委員 どうして4物質でなく2物質だけにしてしまうのですか。お金がないからですか。
○大淵有害性調査機関査察官 今年度は予算的なものがありますが、次年度以降はもう少し物質を増やしていく方向で考えて予算要求をしていきたいと思います。
○津田委員 短期だから結果は早く出ます。これは8週間なので全部入れても半年たたないうちにデータが出るます。もう半年分また2つやれるのではないかと勝手に想像するのですが。
○大淵有害性調査機関査察官 今年の試験の計画で、この物質自体の試験に入る前に、試験自体はバイオアッセイさんにやっていただくのですが、バイオアッセイさんでもバックグラウンドデータを取る必要があります。そのバックグラウンドデータを取る試験をやってから、またこの物質の試験に入ると、今年度中は2物質ぐらいで、それ以上はなかなか難しいかというところです。
○西川座長 ただ、これは経口投与ですから、バイオアッセイさんだけでなくても、限りはあるのですけれども、できる所がないことはないと思うのです。
○大淵有害性調査機関査察官 そうですね、次年度以降またその辺も考えてまいりたいと思います。
○西川座長 次候補について、特に4-tert-ブチルフェノールについては少し情報を集めていただくということで、また優先順位等に活かしていければと思います。平成25年度の中期肝発がん性試験の対象物質は、「2-ビニルピリジン」と「3,3'-ジメチル-4,4'-ビフェニレンジイソシアネート」にいたします。次に議題(3)の説明をお願いいたします。
○大淵有害性調査機関査察官 議題(3)は「中期肝発がん性試験の試験方法について」です。通しページの30ページからの資料4-1、資料4-2。それから直接御議論には使用しない可能性もありますけれども、参考資料には関係の論文を入れております。参考資料5として、通しページの27ページに、白井先生の論文が記載してあります。具体的な試験基準の説明に入る前に、これを検討する理由を御説明いたします。
 いわゆる発がん性試験としてはOECDの試験基準があり、更に厚生労働省の通達として試験基準を公表しております。ラット肝中期発がん性試験については、現在のところ公表されているような試験基準はありませんので、その試験を進める上で、どのような考え方で試験をしていくかをきちんと整理しておく必要があるということで、今回先生方に検討していただくことといたしました。資料4-1の草案については、日本バイオアッセイ研究センターさんに案を作っていただきました。資料4-1はその試験基準そのものです。資料4-2は、現在の通常の発がん性試験の試験基準と対照表で比べられるような形での資料も作っていただいております。内容については、バイオアッセイさんからお願いいたします。
○バイオアッセイセンター(野口氏) ラット肝中期発がん性試験の基準の案について説明させていただきます。伊東法による中期発がん性試験のガイドラインと基準は、今までに作成されたものはありません。そこで関連する論文を調べ、最も方法論的に細かく記載されている論文を調べました。それは1997年のもので、参考資料5に載せてあります。Toxicologic Pathologyに、白井先生が出された論文があります。これが、基準の細かい所まで記載された論文ということで参考にしました。
 基準の構成としては、資料4-2にあるように、平成9年にがん原性試験による調査の基準という形で公表されていて、これに従ってラット肝中期発がん性試験による調査の基準案を作成しました。近年、動物愛護の強い流れがあり、使用動物に関して匹数を決定することができないということに結論しました。今後、統計学的な評価を行い、必要な動物を求める必要があるものと考えております。
 基準を説明させていただきます。全文を読ませていただきます。ラット肝中期発がん性試験による調査の基準(草案)。1.試験の方法。ラット肝中期発がん性試験は、2段階発がんモデルによる試験方法(伊東法)とする。投与方法は、被験物質の物理化学的性質及び人体がばく露される経路を考慮して選択する。
 2.試験に用いる動物。(1)試験に用いる動物は、原則として6週齢前後の雄若齢成熟ラットとする。(2)1群当たりの動物数は、肝臓の前がん病変(胎盤性グルタチオンS転移酵素陽性巣、GST-P陽性細胞巣)の数及び総面積の変化を検出するのに必要な統計検出力が得られる匹数とする。
 3.投与群及び対照群。(1)試験における被験物質投与群の数は3段階以上とする。(2)被験物質投与群のほかに、被験物質対照群、起始物質対照群及び陽性対照群を設定する。(3)被験物質対照群には、被験物質の代わりにその媒体を投与する。(4)起始物質対照群には、起始物質の代わりにその媒体を投与する。(5)陽性対照群には、被験物質の代わりに既知の陽性物質を投与する。
 4.被験物質の用量。被験物質の用量は、次に定めるところによる。(1)用量は、あらかじめ実施した用量設定試験の結果又は同等の知見に基づき決定する。(2)最高用量は、最小限の毒性兆候を示すのに十分な用量若しくは技術的に投与可能な上限の用量とする。
 5.試験手順。試験は、起始物質としてジエチルニトロソアミン(DEN)の200mg/kg体重を腹腔内に単回投与後、第3週目より6週間、被験物質を毎日投与し、第8週目に解剖する。なお、第3週目の終わりに肝の3分の2を切除する。
 6.観察及び測定事項。(1)各群の全例について一般状態及び体重を適切な頻度で観察する。(2)必要に応じて摂餌量を適切な頻度で測定する。(3)試験に使用した全ての動物を解剖し、臓器の肉眼的観察をする。免疫組織学的に肝臓の前がん病変(GST-P陽性細胞巣)の数及び総面積の測定を行う。また、肝臓の病理組織学的検査を行う。なお、被験物質の毒性を考慮して、適切な器官・組織についても病理・組織学的検査を行う。以上です。
○大淵有害性調査機関査察官 本件についての説明は以上ですので、御議論をお願いいたします。
○西川座長 ただいまの説明について、御意見、御質問等がありましたらお願いいたします。
○若林委員 試験に用いる動物はラットと書いてありますが、ラットにもいろいろあると思います。原著を見ると6種類ぐらい使ったと書いてあります。ラットについて、ある程度このようなストレインのラットを用いるということを書く必要性が有るか無いかということ。6の(3)の所ですが、肝臓に関して何切片するのかということは、基準ですのである程度書く必要性が有るか無いか。この2つを質問させていただきます。
○バイオアッセイセンター(野口氏) 調査の基準ということで、細かい動物の系統までは記載していません。論文を参考にしていただければと思います。論文によると、具体的にはF34ラットの雄の感受性が高いということで一般的に用いられているということだと思います。
 肝臓の部位とか切片数の記載は具体的に論文等には載っていませんので、具体的にきちんとした形で提示できるものはありませんでしたので、記載してありません。
○西川座長 ラットの系統と、切片の数については記載したほうがよいというのが若林先生の御意見です。難しいですよね、御意見はありますか。
○小野寺委員 系統もいろいろな系統で実験されていて、どれが一番良いかという系統の比較というのは余りなされていないと思うのです。標準的なラットを使えば、さほど結果に影響はないと思うのです。もう1つは基準なのですが、これもコントロールを置いていますので、そのときの状態によって大分程度が変わってくると思います。飽くまでもコントロールとの比較として測定すればいいと思うので、どこまで細かく書くかというのは、皆さんの御意見を待ちたいと思います。私は、この程度でいいのかなと感じます。
 1つ言葉で気になるのは、「試験に用いる動物」の(1)で、「6週齢前後の雄若齢成熟ラット」の「若齢」というのはすごく誤解される言葉なので、「6週齢」が入っていれば、「雄の成熟ラット」でいいのではないですか。
○西川座長 そうですね、そのとおりだと思います。週齢が書いてあるので、わざわざ「若齢」を加える必要はないかと思います。
○吉田委員 雄は、6週は成熟ではないので、「6週齢前後の雄ラット」でいいのではないですか。
○西川座長 「成熟」も要らないですね。
○吉田委員 雄の成熟はもう少し後です。
○西川座長 ありがとうございました。
○吉田委員 伊東モデルは、歴史のあるモデルなので、それなりの方法は確立されていると思うので、余り縛りを掛けないほうがいいのかと思います。
○西川座長 だから、ラットの系統については、通常の一般毒性試験でも、特にガイドラインに明記されているわけではないので、通常使われるラットであれば一応OKということでいかがでしょうか。切片の数についても、多分常識的に2つか3つの切片で見ていると思うのです。
○津田委員 このモデルの開発者の1人として申し上げますと2/3部分肝切除後に残っている肝臓は3葉しかありません。それらを切り離して、並べて一番面積が大きい割面で薄く切って、大体3mmか4mmぐらいですが、それぞれの葉から取ると、標本にすると合計3cm2になります。掛ける匹数ということで、論文ではそのようにしています。使った動物は、フィッシャーの雄です。
○西川座長 これは、飽くまで基準ですから、多少のバリエーションはあっても、それは認められると思います。細かい情報はそういう文献を参照していただくということでいかがかと思います。
○大淵有害性調査機関査察官 これに基づいて、それぞれ試験をやるときには、試験基準を作成し、具体的なより細かいプロトコールはそこで決めます。おおもとの基準としてはこの程度でさせていただければ、今後の自由度がある程度出てくるかと思います。
○西川座長 動物の匹数については、動物愛護の関係等もあって、明記することが難しいということだったのですが、多分統計学的な検討をするためには、恐らく10匹以上は必要かと思います。その辺りについて何か御意見はありますか。
○津田委員 1匹から3cm2、それをずっと並べて測るわけです。統計的にきちんと出るのは最低15匹。慣れていれば、部分肝切除で1匹も死なないのですが、それで死ぬことも考慮に入れると20匹からスタートするのが一番良いと思います。それ以上減らすと、いわゆるスタティスティカルパワーが落ちてきて、信頼度が落ちてくることになります。
○西川座長 死亡例があるということなので、最低限15匹を確保するためには、スタートを20匹でという御意見です。これも、先ほどの系統等の議論と同じで、数は明記しないにしても、既にパブリッシュされた文献等を参考にしていただくことになるかと思いますが、よろしいでしょうか。
○小野寺委員 津田先生の今の数からいくと、大体1試験で120匹ぐらいになるということですか。
○西川座長 そうですね。
○津田委員 用量を幾つにするかによります。
○小野寺委員 用量を3段階と、これに書いてあるのは。
○津田委員 普通の高・中・ゼロ用量というと、20匹だったら60匹です。
○小野寺委員 あとは対照群と起始対照群、陽性対照群の3つが要るのではないですか。
○津田委員 普通、対照群はジエチルニトロソアミンだけです。
○小野寺委員 あとは溶媒。
○津田委員 ただし、被験物質投与まで入れると、全部で4群になります。DENの後に、高用量、中用量、ゼロ用量というのはDENだけですので3群になります。それから、高用量だけの被験物質だけを入れると、全部で4群です。そうすると、20匹とすると1物質は80匹で全群ということになります。
○吉田委員 高用量。
○小野寺委員 DENのない被験物質のみの高用量。
○吉田委員 それでもし出てしまった場合を考えると、もしDEN有り・無しの被験物質投与群とするとなると、更に増えることになりますか。
○津田委員 8週間でGST-Pが上がる化合物があるかどうかということですか。
○吉田委員 はい。
○津田委員 ほとんどないです。相当強力なアフラトキシンみたいなのをやれば別ですけれども。
○小野寺委員 津田先生に質問なのですが、3の「投与群及び対照群」と書かれたときに、(1)では「被験物質投与群の数は3段階以上とする」となっていて、その2番目に、被験物質投与対照群のほかに被験物質対照群と、あとは起始物質対照群、これはイニシエーションだけの対照群と、陽性物質対照群ということは。
○西川座長 6群ありますね。
○小野寺委員 この文章からいくと、最低6群あるということですね。
○津田委員 そうです。
○小野寺委員 確認したかっただけです。
○津田委員 普通の試験でいうと、高・中・低ですから3用量と、それからゼロ用量ですから4群です。そのようにすれば5群になりますから100匹です。被験物質だけは、普通全部やる必要はなくて、一番濃い用量だけということになります。そうすると、4群+投与量が3群、ジエチルニトロソアミン単独が1群、それから被験物質だけが1群ですから5群になります。ですから、20匹とすると100匹です、訂正します。
○西川座長 陽性対照群は要らないということでしょうか。
○小野寺委員 陽性対照群というのは、DENだけですか。
○吉田委員 それは、起始物質対照群。
○小野寺委員 陽性対照群の意味というのは。起始物質対照群というのはDENですよね。
○吉田委員 DENだけです。
○津田委員 陽性対照群は、強力な発がん物質を使うわけにはいかないので、実験では医薬として使用されているフェノバルビタールを使いました。
○小野寺委員 これは、必ず必要なものなのですか。
○津田委員 プロモーターで、非変異原性物質です。このモデルで試験をやると、ちょうど物差しになって、その系でフィッシャーのこの6週齢でスタートして全てをやると、GST-P陽性巣は、DENのみの群で一平方センチあたり平均8個。多くても10個以内の値で動いていればこの系が動いているということになります。それが外れると、どこかおかしい、となります。
○小野寺委員 その場合は結局、試験手順の中で、いわゆるイニシエーションの所のDENは200mg/kgの単回・腹腔という規定をしているのですけれども、この陽性対照のフェノバルビタールの用量とか、今みたいなレンジというのはどこかで示さなくても大丈夫なのですか。
○津田委員 そこまではまた具体的になりますけれども、経験から言うと、フェノバルビタールは0.05%餌に混ぜます。そうすると、大体1平方センチあたり14、15個になります。ジエチルニトロソアミンの単独群は大体8個前後なので、フェノバルビタールがちょうど倍弱出るというところでシステムがうまく動いているということで、実験を進めました。それを参考データとして考えておけばいいと思います。

○吉田委員 「陽性対照群」という書き方だと非常に曖昧としていて分かりにくいと思うのです。フェノバルビタールはげっ歯類にがんプロモーション作用があるという物質です。やはり、陽性対照群がないと分かりにくいでしょうか。
○津田委員 分かりにくいというのは。
○吉田委員 そうですね、津田先生の御経験からいうと、陽性対照群はあったほうがいいのか、なくても大丈夫。DENだけの群である程度分かるのかどうか。
○津田委員 最初慣れないときはあったほうがいいでしょうね。動き出せばジエチルニトロソアミンだけの単独群で、GST-P陽性巣が8個、10個以内に収まっていれば正常に動いているという見当がつきます。それ以上多かったり少なかったりすると、どこかおかしいという判断でやりました。
○吉田委員 「必要に応じて陽性対照群(フェノバルビタール)等を加える」ということでもよろしいのではないでしょうか。
○津田委員 この方法にそこまでここに書く必要はないのではないかと思います。
○吉田委員 でも、DENの投与量は書いてあります。
○小野寺委員 技術的な問題で、100匹の肝臓の肝3分の2切除というのは、時間的に1日で大丈夫ですか。
○津田委員 習熟度によります。慣れた人だと、1匹3分はかからないと思います。5人でやれば、それが15匹進むということですから、そんなに時間はかからないです。ちょっと練習が要ると思います。非常に慣れていれば、100匹やっても、1匹も死なないことになります。
○西川座長 100匹ぐらいが限度だということなのですか。
○津田委員 それは、時間と人数だと思います。
○西川座長 分かりました。そうすると、投与群及び対照群については、陽性対照群は必要に応じてということでよろしいですか。被験物質対照群も必要に応じてになるのでしょうか。
○津田委員 被験物質単独ですか。
○西川座長 単独です。
○津田委員 吉田先生が言われたように、単独では何が起こるか分からないから入れろということなら入れてもいいですけれども、よほど強い発がん物質でないと、被験物質だけで陽性巣が、それは本当の対照は何もない投与群ですけれども、ゼロより上がることはそうはないです。
○西川座長 それも必要に応じてということですね。
○津田委員 はい、そうです。これがすごく強力だと思ったら、発がん物質であるということであれば。
○小野寺委員 西川先生の質問と同じなのですけれども、(3)の被験物質対照群には、被験物質の代わりにその媒体を投与するということになると、まったくの無処置ということですか。
○津田委員 無処置ではなくて、ジエチルニトロソアミンプラス溶媒ということです。
○小野寺委員 3番目はDENだけと溶媒ということですね。
○津田委員 3番目は、被験物質の代わりに、そうです、溶媒です。要するにゼロ用量群です。
○小野寺委員 4番目は、その検体、被験物質だけですね。それとも無処置ですか。
○津田委員 ジエチルニトロソアミンを溶かした生食を同じ量だけ入れるということです。それで被験物質は、被験物質の溶媒ということです。
○小野寺委員 結局、4番は溶媒だけということですか。
○若林委員 ヘパテクはやるでしょう。
○小野寺委員 だけですか。
○西川座長 ちょっと何か。
○小野寺委員 何かすごく混乱しているのですけれども。
○津田委員 もう一遍言うと、ジエチルニトロソアミン+高用量。もちろんジエチルニトロソアミンも被験体も、その溶媒は一緒に入ることになります。次の群が、ジエチルニトロソアミン+中用量。次の群が、ジエチルニトロソアミン+低用量。次の群が、ジエチルニトロソアミン単独群といいますが、溶媒群です。次の群は、ジエチルニトロソアミンの溶媒である生食投与後、被験物質の投与ということになります。
○小野寺委員 これは、高用量ということでいいのですか。
○津田委員 そうです、高用量だけです。
○西川座長 あとは、処置全部のコントロールも無処置群も入れれば切りはないのですけれども、お金と手間が嵩むだけになって、得られるインフォメーションはそうはないということになります。
○小野寺委員 先ほど若林先生が言われましたが、ヘパテクだけの群をコントロールとして入れなくてもいいのですか。
○津田委員 何もない無処置でですか。
○小野寺委員 ええ。
○津田委員 それは入れてもいいのですけれども、得られる情報は少ないと思います。部分肝切除のみでGST-P陽性巣がその期間内に増えるということは経験していません。
○小野寺委員 これが5群になったときの下の一番のコントロールはどれになっていくのですか。
○津田委員 比較コントロールはジエチルニトロソアミン+投与物質の溶媒を投与した群です。全動物は分割です。肝切除は施行されます。
○西川座長 最低限必要なのは4群ですよね。
○小野寺委員 4群ですね。
○吉田委員 そう、4群で。
○西川座長 4群ですね。
○吉田委員 4群投与、フェノバルとか。
○西川座長 あとは必要に応じて、例えばDENあるいは生食を投与して、高用量の被験物質を投与した群をケース・バイ・ケースで実施してもよいと。
○津田委員 そういうことです。
○西川座長 ですから、最低限4群ということなので、80匹程度になるかと思います。
○大淵有害性調査機関査察官 今の所の確認なのですが、(5)の陽性対照群というのは、必須ではなくて必要に応じてという言葉を入れるということですか。
○西川座長 そういうことです。よろしいですね。複雑な実験系でもあるし、頭の中を整理しないと訳が分からなくなりますので、この辺りは修文が必要かと思います。
○大淵有害性調査機関査察官 はい。簡単な図みたいなものを書いたほうが整理されるでしょうか。どの段階で何をやるという、今の組合せの話を、津田先生が御説明してくださったことが分かるような絵みたいなものがあったほうが分かりやすいでしょうか。
○津田委員 これ、白井先生の論文になかったでしょうか。
○西川座長 なかったでしょうか。
○小野寺委員 30ページにあります。
○津田委員 もう少し新しいのは、既に前の会で私がお配りした、同じToxicologic Pathologyで、2,000何年に出したのはあります。
○西川座長 一部修正を行った上で、資料4-1の試験基準を確定したいと思いますけれどもよろしいですか。
○津田委員 動物数は明記するのですか、どうしますか。
○西川座長 明記できないので、統計学的な検定ができる数ということですね。
○津田委員 どう減らしても、最終的に15匹は残るようにしないと、動物愛護の観点というあれが強くなってくると、例えば5匹にしてしまったらやった意味が何もなくなるので、それはどこかに入れておいたほうがいいと思います。
○西川座長 資料4-1に直接書かなくてもということですか。
○津田委員 資料4-1の。
○西川座長 今は基準について議論しているわけですけれども、動物の数については明記するのが難しいということなのですが、それをあえて書くべきという御意見なのですか。
○津田委員 そうです、書いたほうがいいと思います。動物愛護の議論は別の次元で行いますので、減らせば減らすほど、動物愛護の人たちは、そうだということになると、これは議論がかみ合わなくなってきます。それはさておいて、最終的に15匹、それは明記したほうがいいと思います。そうすることによって、どこの施設でやっても、同じような統計的な意味のあるデータが出せると思います。それを、どこかで8匹にしたりすると、本当にどうかということになるし、SDバリューが大きくなります。
○小野寺委員 比較が難しいということですね。
○西川座長 そうすると、最低何匹以上ということを明記していいかどうかということですけれども、事務局はいかがですか。問題なければ、恐らくそのほうが良いかと思います。
○吉田委員 発がんの基準では50匹と書いてあって、50匹以下のものはある意味では信頼性が非常に落ちてくる、ということに長期の場合はなりますから、最低限の数を書くというのは。
○大淵有害性調査機関査察官 今現在の発がんの基準のほうは動物数を書いていますので、これに従って民間のラボがやるときにもこれでやっていただくようにお願いしています。今回作る基準のほうも、私どもの立場としては数字が書けないというわけではないです。書いたほうがいいということであれば、今の書き方で、統計検出力が得られる匹数の後ろに、例えば(15匹以上)というようなことを書いても、それは別に問題ありません。
○津田委員 やはり、目安としてあったほうが、統計的にはきちんとしたものになると思います。
○西川座長 それでは、匹数を追記することを検討していただくということでお願いいたします。
○大淵有害性調査機関査察官 はい。
○西川座長 他にはよろしいでしょうか。それ以外の所については、試験基準を確定することにいたします。
○大淵有害性調査機関査察官 時間のほうが、当初の予定では6時ということでさせていただいていました。本日の議題はまだ残っているのですが、よろしければ別途日程調整をさせていただいて、残りはまたその時にとさせていただければと思いますが、いかがでしょうか。
○西川座長 それでいいと思います。
○大淵有害性調査機関査察官 よろしいですか。本日は具体的にこれからどういう試験をやってというところの議論だったのですが、今回議論できなかった議題(4)では、既存の情報を使って評価をしていためのいろいろな基準を作ったり、どんな情報を集めたらいいかという御議論をしていただく予定にしております。先生方には、メール等で日程調整の御連絡を差し上げる形にしたいと思いますので、よろしくお願いいたします。

○西川座長 他にないようでしたら、以上で本日の発がん性評価ワーキンググループを閉会いたします。お忙しい中をお疲れ様でした。どうもありがとうございました。


(了)
<照会先>

労働基準局安全衛生部化学物質対策課化学物質評価室

電話番号: 03-5253-1111(内線 5511)

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