ホーム> 政策について> 審議会・研究会等> 健康局が実施する検討会等> 原爆症認定制度の在り方に関する検討会> 第20回原爆症認定制度の在り方に関する検討会議事録(2013年4月16日)




2013年4月16日 第20回原爆症認定制度の在り方に関する検討会議事録

健康局総務課

○日時

平成25年4月16日(火) 13:00~15:00


○場所

全国都市会館 2階 大ホール


○議題

1.開会

2.議事

(1)各方向性のより詳細な検討について

(2)その他

3.閉会

○議事

○榊原室長 開会に先立ちまして、傍聴者の方におかれましては、お手元にお配りしています「傍聴される皆様への留意事項」をお守りくださいますようお願い申し上げます。
 これ以降の進行は、神野座長にお願いいたします。
○神野座長 それでは、定刻でございますので、ただいまから、第20回を数えましたけれども、「原爆症認定制度の在り方に関する検討会」を開催したいと存じます。
 委員の皆様方には、年度初めの大変お忙しいところをお集まりいただきまして、本当にありがとうございます。心より御礼を申し上げる次第でございます。
 それでは、議事に入ります前に、事務局から委員の皆様方の出席状況の報告と資料の確認をお願いいたします。
○榊原室長 本日の出席状況でございますが、高橋進委員、三藤委員から欠席との連絡をいただいております。
 また、高橋滋委員、草間委員はおくれて到着されるとの連絡をいただいております。
 次に、お手元の資料について御確認をさせていただきます。
 議事次第、資料一覧に続きまして、資料1「第19回検討会における主な発言」
 資料2「議論のポイントと各方向性の整理表(集約版)」
 資料3「前回の議論の整理」
 資料4「方向性イメージ図(追記版)」
 資料5「疾病と放射線との関係(長期的影響)について」
 資料6「原爆症対象疾病の考え方について」
 資料7「田中委員提出資料」
 参考資料「文部科学省による航空機モニタリングの測定結果」
 なお、これ以外に、委員の方には、前回、長瀧委員から御指摘のありました資料4、12ページの差しかえ分、田中委員から配付いただきました新聞記事を配付させていただいております。
 資料に不足、落丁がございましたら、事務局までお願いいたします。
○黒木室長補佐 カメラの方はここまででお願いします。
(報道関係者退室)
○神野座長 どうもありがとうございました。
 前回の検討会では、グレーゾーンをめぐっての議論と、特に方向性2と3の考え方の明確化に関して議論を頂戴いたしました。今回は、前回の議論を確認させていただくとともに、これまでの検討会でも委員の方々からたびたび御指摘ございました認定対象の疾病に関する議論が残っていると思いますので、その取り扱いを含めて議論をしていきたいと思っております。
 事務局のほうから、これに関する資料を作成していただいております。御説明いただければと思いますので、よろしくお願いいたします。
○榊原室長 まず、資料1は前回における主な発言でございます。御確認くださいますようお願いします。
 そして、これを全て入れ込みましたのが資料2でございます。「議論のポイントと各方向性の整理表」、A3の横紙でございます。
 前回、方向性2と方向性3につきまして一緒に議論する方向で指摘がございましたので、それに合わせまして、こちらの資料も両者を一緒にする形で記載させていただいております。また、その結果、記載を落とすべき部分については、見え消しの形で落とさせていただいております。
 では、赤字の部分でございますが、まず、1ページ目。
○残留放射線の影響というのは個人で違い、簡単に導き出されるものではない。個人の残留放射線の被曝線量を決めるのはほとんど不可能に近いから、詳細に検討を進めていかないといけない。
○(認定制度について)硬直したままではなく、新しいものが出てきた際、科学的に検証して判断を広げて見直すという柔軟性を持つことは非常に大事ではないか。
○実際に体験した人間からすると、被爆者は1カ所に留まっていたのではなく、移動している。だから、個別にどれだけの放射線を浴びたかといっても難しい。だから、残量放射線の影響を決めないと認定が難しくなるのではないか。
○残留放射線があるかないかではない。1人1人の被爆者がどういうふうに浴びる可能性があるか、可能性があるとしたら、それをどういうふうに認定の中に生かしたらいいかということを考えないといけない。
○(被爆者の移動について)認定で、どのように立証していくか難しさがある。制度設計するときには、客観的な根拠というのは大事な部分である。ただ、(レアなケースとして)個別に考慮する部分は出てきてもいいのではないか。立証する人とか客観的な資料など、税金を使っている以上どうしても求められる要件になるので、個別性を持った方の認定は、行政での裁量権が働くような制度があってもいいのではないか。
○(分科会の)専門の先生方は、ある程度の知識、経験に基づいて判断しており、ただ時間をかければいいというものではない。分科会の前に専門分野ごとの部会がありその上で全体会議にかける仕組みであり、ラフな検討には当たらない。また、分科会の先生方や事務局の方々は、何とか今の基準で拾えないかという考えで(審査に)当たっている。例えば、入市の要件がない申し立てについて、入市要件に当てはまるかどうか、あらゆる資料を点検して、申請者が意識していなくても、かなり掘り下げた形で綿密な認定作業が行われていることは、わかっていただいていいのではないか。
 ということでございます。
 次、2ページ目、下の部分でございます。
○疾病名は、科学的な知見というものを踏まえながらも、今の新しい審査の方針で考えられている疾病から増やすのではないか。
○(疾病について)その時々の科学的に最新の知見を使って行けば良いが、国際的に認められたものは出せると判断していいと思う。
○疾病認定の要件は、専門領域の中で検討をお願いして広げていくという方法が残っているのではないか。ただ、重篤性による手当額の差は大変センシティブであるので慎重にしていかなければならない。
○(疾病について)保険診療では、一定の有効性が認められて、普及した段階で保険診療の対象になるというルールがある。そういったことを認定にも取り入れてはどうか。今の時点での科学的な知見を尊重しつつ、あとは個別、総合的に認定するという余地を相当残さざるを得ないのではないか。
○疾病について、(検討会メンバーの)多くは医学的な素人であるので、別途検討の場を設けてもらい、その結果を検討会に上げてもらうことを考えてなければいけないのではないか。
○(主な論点で)要医療性をどう判断するかというのは1つ入れておかないといけない。
○心筋梗塞とか白内障など、しきい値内の距離で(認定を)決めていると思う。白内障は1.2キロメートル以内での被曝など直接放射線についてしきい値があると思う。しかし、直後に(爆心から)数百メートルまで近寄っている人たちがいて、かなりの放射線を当日受けていることを、きちんと押さえなければいけない。2キロメートルで被曝しているのだから起こるはずがないということではなく、その後、近距離のどこまで入ったかということまで調べていただきたい。
○心筋梗塞や、甲状腺(機能低下症)などは、前に「放射線起因性が認められる」という言葉がついているが、よくわからない。結局、しきい値だと推測してしまうが被爆者はわからない。3.5キロメートル以内で心筋梗塞だと、認定されると思う被爆者が圧倒的に多いが却下され、却下理由も「あなたは該当しません」となっているので、それが不満となっている。そこをグレーゾーンならグレーゾーンで明らかにしておかないといけないと思う。
○3.5キロメートルというのが(認定における)1つの基準でいいと思うが、福島や職業病認定など様々なところに広がっていく可能性があるので、国際的に必ずしもコンセンサスの得られた数値ではないので、最後のまとめでそのニュアンスを書いてほしい。
○3.5キロメートルの話を含めて、専門家から言えば、(現在の基準は)広がり過ぎているという気持ちがかなり強い。科学的知見というのは非常に大事で原爆症認定制度の一番支えになるが、一方で、それは単なる科学的判断だけではないということも根幹にある。それを表すため、法令などのレベルで明らかにしていくことで客観性が持てるのではないか。そういうことを含めて、3.5キロメートルを大事にしていくということだろうと思う。
 次のページでございます。
○広島、長崎の疫学調査の結果は、残留放射線も含めて放射線全部で考えており、残留放射線に関連した疫学調査は多分ない。
○2012年12月の放射線影響研究所の見解を受けとめれば、ある程度方向性は出てくる。放射線影響研究所の見解からすると、これ以上覆ることはあるのかという気がする。
○(残留放射線の影響は)あるのだという主張は絶対に無くならないだろうと予想される。裁判では全て残留放射線を認めたというわけではなくて、意見が割れている。ただ、科学的な評価、国際的に動かせるほどのデータがなかなか出てこないので、(放影研の)声明になっていると思う。
○(放射線影響研究所の見解は)1つの国際的なコンセンサスが得られた科学的な知見であると考えてよいと思う。
 続いて、4ページ目でございます。
 方向性2と3をあわせて議論するということで、「状態が重くなれば高いランクの手当、軽くなれば低いランクの手当に変更。さらに、軽くなるとか治癒すれば支給停止もあり得る」。
 1つ飛ばしていただきまして、「手当額の差の根拠」ですが、当検討会での議論も踏まえ、「疾病の重篤度(生命への影響の程度、日常生活への影響の程度、治癒の可能性、再発の可能性)」という記載にしております。
 また、同じページの下、「他の社会保障制度との調整」「経過措置」については、ごらんのように修正しておりますが、また引き続き御議論賜れればと思います。
 続いて、5ページ目でございます。赤い部分でございます。
○「行政認定と裁判における救済事例の乖離を指す場合」で(グレーゾーンを)救済事例の裁判と行政認定との乖離を指す場合というのはアバウト過ぎる。行政認定と裁判の乖離の(問題の)一番大きいところは、放射線起因性を認めるかどうか、具体的な申し立てをされている方についての放射線の影響性を認めるかどうかである。
○放射線起因性は、国際的な水準に照らして科学的な説明ができないところまでは広げるべきではないと整理できるのでは。果たして科学的認知に耐えられるかという意味で、新しい審査の方針が、もう既にグレーの部分に広げてきているという認識であり、グレーゾーンを、この外に設けるのは、放射線起因性との関係で言えば、適当ではないのではないか。
○(審査の方針の)3.5キロメートル以内について1ミリシーベルトという話は、感覚からすると、かなりぎりぎりに拾い上げた線であり、横並びの関係からいって認めざるを得ないと思うし、時間要件もかなり広い基準だろうと思う。(第19回の資料は)一般人が納得できる資料として判断し、乖離の問題をきちんと考える上では出発点にせざるを得ない。
○グレーゾーンというのはそもそも何だったのか。認定の問題と、疾病の問題と、起因性の問題でグレーゾーンでどうするというのか。
○グレーゾーンという1つの制度をつくるということで(委員での)合意はされていないと理解している。
○科学的知見を取り入れつつ広げることができれば、それでいいのではないか。3.5キロメートルの範囲内で階段をつけるということになると思っている。
○(グレーゾーンについて)要するに、あいまいなものをどう受けとめるかだが、3.5キロメートルの範囲内であれば、ぎりぎり国際的にも説明がつくということなので、それであれば、グレーゾーンとは言わないで、原爆症というくくりでいいのではないか。
○(放射線の影響を)否定できるかできないかという議論があるが、裁判で言うのと同じように行政でも否定できないからというふうな言い方が成り立つのか。
○裁判も、残留放射線を考慮すべきであるという一般的なルールを宣言しているわけではない。起因性を判断するときに行政認定で考慮されなかったが、残留放射線の影響がないとは言えないとして、個別に影響があると認定した例がある。要するに、裁判も個別判断である。
○行政認定と司法判断の乖離を完全に解消するのは無理と思う。そもそも違った次元の判断をしており、元来、物差しは2つあっていいと思っている。ただ、個別のケースは、大きな尺度、物差しでは計れない。例えば、税法では不満があれば不服審判所に申し出るが、それと同じように、行政認定で不服の方は司法判断に委ねる。司法判断の結果が行政認定を覆すというのとは別の話で、行政認定はおかしいというのは、話が逆立ちしている。恐らく2つの物差しを使い分ける、多くの方々がより納得してくれる使い方の改善を考えれば解決すると思う。
 資料2は以上でございます。
 引き続きまして、資料3でございます。「対象範囲の考え方(特に、方向性2、方向性3の明確化)」という資料でございます。前回の御議論も踏まえて整理させていただいております。
(総論)
・行政認定と裁判所の救済事例について、被曝要件、疾病要件の対象範囲に分けて考えることとしてはどうか。
(被曝要件)
・国際的にも認められた現時点での科学的知見を前提とすると、既にグレーゾーンも含めて認定しており、これ以上距離要件を拡大することは、難しいのではないか。
・距離要件に該当しない場合であっても、その後爆心地に入っていた等の行動をよく精査した上で、個別に認定される余地を残すべきではないか。
(疾病要件)
・疾病要件については、国際的に認められたものについて、取り入れていくべきではないか。
・対象とすべき疾病については、専門家の意見を聞いた上で検討会に報告をしていただくことが考えられるのではないか。
(適切な見直し)
・硬直したままにするのではなく、科学的に検証し、判断を広げていくという柔軟性を持つことが大切ではないか。
(現行制度について)
・現行の「放射線起因性のある」疾病が不明確であり、被爆者には分かりにくいのではないか。
・却下理由が簡単であり、理由が分からない。はっきりさせるべきではないか。
(新たな類型を設けることについて)
・現行制度においても、疫学的には放射線の影響がはっきりしないものを含んで認定が行われており、現行の医療特別手当の外側に健康管理手当との間で新たな類型を設けることは難しいのではないか。
・センシティブであるが、放射線起因性というより疾病の重篤度で差を付ける考え方について、方向性3とともに検討してはどうか。
 (その他)ということで、前回特に御発言はございませんでしたが、
・「裁判例や医療分科会の客観的な積み重ねを尊重しつつ、相当程度判断が固まった」の意味。
・「裁判例や医療分科会の客観的な積み重ね」を中心に考慮すれば足りるのか。
・「相当程度判断が固まった」とはどの程度の状態を想定するのか。
 続きまして、3ページ「前回の議論の整理」ということでございます。
行政認定と司法判断の乖離について
・行政認定と司法判断の乖離の解消を完全に図ることは困難ではないか。その上で、行政認定と司法判断の乖離を出来るだけ小さくするため、どのようなことをすべきか検討すべきではないか。
放射線起因性の考え方について
・制度の前提として、放射線起因性の概念は一番支えになる概念であり、維持されるべきではないか。
科学的知見と救済対象の範囲について
・救済対象を検討するに当たっては、ある程度科学的知見に基づいて考えざるを得ないのではないか。
・また、個々人の行動は必ずしも明らかでない場合があるので、外形的な基準で判断することが適当ではないか。
・科学的に明らかでない場合、特に、残留放射線の影響について現段階では基準に取り込むほど明確だとは言えないのではないか。その上で、個別に判断する余地を残すということではないか。さらに、将来的に必要が生じれば基準に取り込むということではないか。
・救済対象範囲を考えるに当たっては、放射線起因性とともに、要医療性をどう判断するかという問題も検討すべきではないか。
 引き続きまして、資料4「方向性イメージ図」ということでございます。より具体的なイメージを持って議論していただくための資料でございます。
 方向性1、方向性2、方向性3につきましては、これまで当検討会に提出させていただいておる資料をそのまま添付させていただいております。
 5ページに、方向性2+3ということで、前回の議論も踏まえて作成をしております。医療特別手当について、手当額は疾病の重篤度を踏まえた段階的なものとする。そして、対象疾病を拡大する。そのときに、距離要件については既にグレーゾーンを含んでいる。疾病については科学的な知見が認められるものを取り入れていく。適切な見直しを行っていく。前回の発言を踏まえて、イメージを持っていただくために作成しております。
 以上、資料4でございます。
 引き続きまして、資料5「疾病と放射線との関係(長期的影響)について」でございます。これは、当検討会に既に出している資料を今後の議論のために再度提出させていただいているものでございます。
 1ページ目、晩発障害、急性障害、どんなものがあるか、環境等からの被曝線量、どんなものがあるかという資料でございます。
 3ページ目、「確定的影響と確率的影響」についての説明資料でございます。こちらも既に提出させていただいているものですので説明は省略させていただきます。
 4ページ目、「放射線によるがんの発生」ということでございます。放射線がふえると、がんのリスクも増加、ただし、100ミリグレイ未満のものは統計学的には有意ではないということでございます。
 5ページ目、「放射線によるがんの発生」ということで、臓器ごとに放射線により誘導されるがんのリスクはかなり異なるということでございます。
 6ページ目、同じく「放射線によるがんの発生」ということで、被爆時年齢が高くなるほど過剰相対リスクは小さくなるということでございます。
 7ページ目、「放射線によるがん以外の疾患の発生」ということで、各臓器にどのような影響が出るのか、また、そのしきい線量、最小潜伏期間などについて記載させていただいております。
 8ページ目、こちらも既に提出させていただいておりますが、「放射線の健康影響に関する国際的な合意の仕組み」ということで、科学的知見がその後UNSCEARに取り上げられ、そして、ICRPのほうで一定の過程を置いて勧告が行われるということを図示したものでございます。
 9ページ以下が「原爆症認定審査における判断について(これまでの経緯と現状)」でございます。こちらも当検討会に既に提出させていただいているものでございます。
 10ページ目、「(旧)原爆症認定に関する審査の方針」ということで、かつての原因確率論のときの基本的な考え方等の資料でございます
 11ページ目、平成13年の原因確率論以降、平成19年に与党のプロジェクトチームからの提言を受けて、平成20年には現行の「新しい審査の方針」ができた。また平成20年に与党プロジェクトチームから「肝機能障害を追加する」の提言等を踏まえまして、また21年に「新しい審査の方針」が改定されたという経緯でございます。
 12ページ目、こちらは、平成19年に開かれておりました在り方検討会の最終報告書の概要でございます。こちらも既に提出させていただいている資料ですので、説明は省略させていただきます。
 13ページ目、こちらが、先ほどもお話に出ました平成19年の与党の原爆被爆者対策に関するプロジェクトチームの取りまとめでございます。現行の「新しい審査の方針」の基礎的な部分が含まれているものでございます。
 14ページ目、こちらが、20年3月に策定されました新しい審査の方針でございます。説明は省略させていただきます。
 15ページ目、こちらは、今の審査の方針で各疾病がどのように認定されているかということの資料でございます。こちらも既に提出されているものですので、解説を省略させていただきます。
 16ページ目、「白内障に関連する放射線の影響」ということで、ICRP等からどのような提言が出ているかを参考までに再度配付するものでございます。
 17ページ目、「心筋梗塞に関連する放射線の影響」ということで、UNSCEAR、ICRP声明など、何が出ているかということでございます。
 18ページ目、甲状腺機能低下症に関連する放射線の影響はどのようなものが各機関から出ているか、あるいは慢性肝炎に関連する放射線の影響はどのようなものが出ているかというものでございます。
 最後に、資料6「原爆症対象疾病の考え方について」ということでございます。
 まず、1ページおめくりいただきまして「医療特別手当についての基本的な考え方」ということでございます。
○原爆症と認定された方には、原爆放射線の影響に起因する健康被害が他の戦争被害とは異なる特殊な被害であることを踏まえ、医療特別手当等を支給することとしている。
○認定を行う上では、
1 疾病の発症が原爆放射線に起因すること(放射線起因性)、
2 現に医療を要する状態にあること(要医療性)
 を専門的な観点から客観的に審査しているところでございます。
○原爆症の対象疾病とするには、放射線に起因する疾病が放射線に起因する高度の蓋然性が必要である。しかしながら、個別症例ごとの放射線起因性は、放射線特異的なものではないので、臨床医学、病理医学などでは十分に証明できない。
○既に原爆投下から60年以上経過し、疾病の発生には、加齢、あるいは生活習慣等さまざまなリスクが影響しており、放射線の影響のみを明らかにするのは不可能であり、疫学的な調査結果を積み重ねて、科学的に判断する必要があるのではないか。
 3ページ目、「対象疾病の考え方」でございます。
 現行、原爆症認定では、放射線起因性と要医療性が審査されます。これにつきまして、現在の疫学の一般的な考え方なども参照しながらブレークダウンしてみた資料でございます。
(1)相関性:原爆放射線被曝量が増えるに従い、疾病罹患割合が増える関係があるか。
(2)再現性:職業被曝や医療被曝など、当該疾病が他の放射線被曝でも発症するか。
(3)整合性:発生機序に関して医学生物学的に認められている既存知見と整合するか。
(4)特異性:放射線以外の発症関連要因がないか。また、一般的な罹患率はどうか。
(5)要医療性:放射線起因性のある疾病により現に医療を要すること。
ということでございます。
 次のページからでございますが、こうしたものをもとに、現行の認定疾病についてもう一度整理してみたものでございます。
 「1 悪性腫瘍(固形がん)」ということでございます。
(1)相関性:固形がんの発症は、100mSv以上では線量反応関係が認められている。発症までの潜伏期は長く、放射線の影響は被爆時年齢が若いほど大きいことが示唆されている。
(2)再現性:放射線治療を受けた調査集団、職業被曝集団も同様の傾向がみられている。
(3)整合性:放射線被曝によって誘発されたDNA突然変異の結果であると考えられている。
(4)特異性:一般に、生涯でおおよそ2人に1人ががんと診断される。男性では4人に1人、女性では6人に1人ががんで死亡する。
(5)要医療性:手術、化学療法、放射線療法などから単独または組み合わせて治療を行う。
 続きまして、5ページ目「2 白血病」ということでございます。
(1)相関性:白血病発症との関連は、線量反応関係が明らかになっている。発病までの期間は固形がんと比較すると短く、被曝後2~3年で影響が出始め、7~8年でピークになる。
(2)再現性:放射線治療を受けた調査集団も同様の傾向がみられている。
(3)整合性:白血病の多くは造血幹細胞のゲノム変異により発生することがほぼ確立している。
(4)特異性:一般に日本人では年間9,000人が白血病に罹患し、10万人当たり罹患率は8.0人(男性9.7人、女性6.4人)。
(5)要医療性:化学療法・分子標的療法を中心に、状態に応じて、造血幹細胞移植を考慮することもある。
 続きまして「3 白内障」でございます。
(1)相関性:白内障への影響については、しきい値のある「確定的影響(組織反応)」とされている。
(2)再現性:チェルノブイリ事故処理者などの放射性物質取り扱い従事者等で白内障に罹患する者が有意に高いことが知られている。
(3)整合性:放射線被曝により、水晶体の赤道部(水晶体の縁)で細胞に異常が生じ、その後、その細胞が水晶体の後方にまわる等の機序が知られている。
(4)特異性:一般に、白内障の初期混濁も含めると50歳代で37~54%、60歳代で66~83%、70歳代で84~97%、80歳以上では100%にみられる。白内障進行の危険因子には、喫煙、紫外線、抗酸化物や栄養、薬物、アルコール、糖尿病、放射線、遺伝などが報告されている。
(5)要医療性:視力の低下など日常生活に支障を来す場合は手術療法(眼内レンズ挿入術)を行う。目や全身に障害がなければ95%以上の症例で0.5以上の矯正視力を得ることが可能。
 続きまして「4 副甲状腺機能亢進症」。
(1)相関性:副甲状腺機能亢進症への影響については、線量反応関係があることが知られており、1,000mSvの被曝でリスクは4.1倍程度となることが知られている。
(2)再現性:医療放射線被曝が副甲状腺機能亢進症の発症を高めることが知られている。
(3)整合性:医学的機序は不明であるが、数十年以上の長い潜伏期間を経て発症することが認められている。
(4)特異性:一般に、2,500人~5,000人に1人みられるといわれている。男女比は1対3で女性に多いとされる。
 (5)要医療性:症状が出現している症例では原則として手術により治療する。
 8ページ目「5 慢性肝炎・肝硬変」でございます。
(1)相関性:肝疾患への影響については、これまで知見が集積されてきたが、一貫した結果は得られていない。原爆被爆者では、被曝線量がB型肝炎ウイルスキャリアの増加に関連するという報告もあるが、C型肝炎ウイルス抗体陽性者の増加に関連するという知見はない。
(2)再現性:一般的に肝臓は細胞分裂の頻度が低いので放射線感受性が低く、3万mSvを超える放射線治療で肝実質障害が発生すると考えられている。※2,500~4,500mSvを全身に被曝すると、集団の50%が死亡する。
 ということですので、かなり高い線量ということです。
(3)整合性:高線量の放射線治療により、慢性の肝実質障害が発生し、線維化が進行して肝硬変に至ると考えられている。
(4)特異性:原因はウイルス性、薬剤性、アルコール性、自己免疫性あるいは代謝性などに分類される。全国では、B型肝炎ウイルス保有者は約130~150万人、C型肝炎ウイルス保有者は約150~200万人、B型肝炎患者数は約7万人、C型肝炎患者数は約37万人と推計されている。
(5)要医療性:慢性肝炎・肝硬変ではインターフェロン等の抗ウイルス剤療法、肝庇護内服療法が用いられる。
 9ページ目「6 心筋梗塞」でございます。
(1)相関性:500mSv以下で放射線と心筋梗塞の因果関係を示唆する知見はない。
(2)再現性:悪性腫瘍への高線量放射線照射(4万mSv以上)が循環器疾患の発症や死亡に関係することが明らかになっている。低線量の放射線被曝が経年後心疾患を増加させるかどうか明確な結論はない。
(3)整合性:高線量放射線被曝(4万mSv以上)により心膜、心筋等心臓のすべての構造物に障害が起こる。
(4)特異性:全国で心筋梗塞の総患者数は13万8,000人。心筋梗塞を含む心疾患の死亡数は10万人あたり154.5人/年、死因の15.6%を占め、悪性腫瘍に次いで死因の第2位である。病因の90%以上が冠動脈に生じる粥状動脈硬化に起因するとされ、危険因子としては、高脂血症、高血圧、糖尿病、喫煙が4大危険因子とされているほか、年齢、性、肥満、家族歴(遺伝)等も危険因子とされる。
(5)要医療性:発症後早期に血栓溶解剤による治療や、カテーテルによる治療を行う。慢性期には、二次予防のため、抗血小板療法や、生活習慣の改善等の危険因子の管理を行う。
 続きまして「7 甲状腺機能低下症」でございます。
(1)相関性:基本的に甲状腺機能低下症と原爆放射線被曝との関係は認められていない。1980年代の長崎被爆者の検討では、甲状腺自己抗体陽性の甲状腺機能低下症に限り、甲状腺被曝線量との関連が示唆されたが、2000年代の広島、長崎被爆者の検討ではその結果は再現されなかった。
(2)再現性:頭頸部のがんへの数万~数十万mSvの放射線照射に対して甲状腺機能低下症の発症が報告されている。(チェルノブイリ事故や核施設・核実験による放射線災害等では、甲状腺機能低下症との関連は示唆されていない。)
(3)整合性:大量被曝では、甲状腺の細胞が破壊されるため機能が障害されるが、低線量では機能低下の報告も乏しく不明。
(4)特異性:性、年齢によって異なるが、一般的には女性に発症することが多く、年齢が高くなるほど頻度も増すとされている。(60代は性別問わず2~3%。80代は男5%、女10%強)
(5)要医療性:甲状腺ホルモン剤の内服を行う
ということでございます。
 次のページ「因果関係の難しさ」ということです。
 相関関係が認められたとしても、因果関係があるとは限らず、見せかけの関係であることもある。解釈は非常に難しく、さまざまな知見を総合的に考慮することが必要。
 これは架空の例でございますが、30年前にコーヒーをよく飲んだ人は飲まない人より肺がんが多かった。コーヒーは肺がんの原因となるかということですが、見せかけの因果関係をもたらす要因もあるということでございます。交絡因子ということで、調査した中でコーヒーをよく飲む人に喫煙者が多かったため、見かけ上、コーヒーを飲む人に肺がんが多いという結果になるということがございます。肺がんのリスク要因(年齢、性別、喫煙、飲酒等)は全て交絡因子となり得ます。
 また、バイアスということで、情報の誤りや対象者の選び方が影響することがございます。がん患者のほうが健常者よりも丁寧に思い出したため、コーヒーの摂取頻度を多く回答したという場合がございます。
 それから、偶然ということ。一般的な統計手法では、患者群と健常者群に差がなくても、20回の調査で1回は偶然に有意な差が出る。加えて、有意な差があった結果はなかった結果より公表されやすいということで、再現性が低い報告は取り扱いの注意が必要であるということでございます。
 最後に「論点」ということでございます。
○「相関性、再現性、整合性」および「要医療性」すべてを満たすものだけではなく、「相関性、再現性、整合性」は認められるが、「要医療性」の低いもの、「要医療性」は認められるが、「相関性、再現性、整合性」が低いもの等、様々な疾病が対象疾患となっているのではないか。
○現行の対象疾患についても見直すべきものがあるのではないか。
○今後、対象疾患として追加する疾患をどのように考えるか。
○一般的に罹患率の高い(特異性の低い)対象疾患をどのように考えるか。
 最後は、これまで検討会で議論いただきました要医療性についてのグループ分けについて、参考までに再度添付させていただいております。
 事務局からは以上でございます。
○神野座長 どうもありがとうございました。
 前回は、ただいま事務局のほうから御説明がありました資料3及び4にございますように、方向性2と方向性3を明確化するという観点から、グレーゾーンに関する議論をしていただきました。これにつきましては一定の議論の整理ができたのではないかと考えております。
 ただ、方向性1の御提案を含めて、認定する疾病の考え方についてまだ具体的な議論が残された課題となっていると考えております。既に委員の皆様方から御発言がありましたように、この検討会で議論をするには、専門性その他からやや限界はあるかと思いますけれども、本日は、特に最後のほうに御説明していただきました資料6を中心に、制度を検討する上でどのような点が必要かなど御発言を頂戴できればと考えております。
 それでは、御意見、御議論を頂戴したいと思います。
 田中委員、どうぞ。
○田中委員 私のほうから2つ申し上げたいことがあります。
 1つは、資料7で配ってありますけれども、前回の討議とかかわるのですが、放影研が昨年の12月に残留放射線に関する見解をした後、その見解を前回の検討会で紹介されました。見解そのものは少し長いのですけれども、それを切り取るような形でこの検討会で紹介をされて、その部分に関する測定がどうできるかとか、放射線がどう測定可能であるかという補足的な資料をつけられて前回報告されたのです。その報告のされ方に問題がありました。
 私は、長い間、残留放射線というのは非常に重要だ、特に乖離をなくしていくためには残留放射線の影響をどう見るかが大事だと申し上げてきたのですけれども、その残留放射線があたかも大したことがないかのような話に持っていく提案の中身になっていたのではないかと危惧するわけです。
 文章そのものは、ほとんどもとの見解からとってあるわけですけれども、もともとの見解は「残留放射線の影響はない」ということを一言も言っていないわけです。きょう、中国新聞が報道した切り抜きをお配りしてありましたけれども、広島の原爆被害者団体の協議会から大久保理事長に質問されたのに対する答えで、「見解では『残留放射線の影響はない』ということは一言も言っていない。そう誤解されたのは心外である」という見解を述べているわけですが、私もそう思うのです。
 放影研は「残留放射線がない」と言ったのではなくて、放影研が科学的知見としてずっと主張されているのは、初期放射線から推定される被爆者の被曝線量の計算の仕方、それから推定される被爆者の被曝量を出してきているわけですから、基本的には初期放射線のことしか放影研では取り上げていないわけです。その初期放射線で取り上げている推定線量を評価する上で、少しばかりですが、測定されていた残留放射線をどう加味できるかを議論して「初期放射線の推定にはほとんど影響がない」ということを言っているだけであって「残留放射線がない」ということは一言も言っていないわけです。この前の検討会でそのような印象を与えられていたと思いますので、意見書を出しました。
 実際に、高橋委員と石委員はそういう印象の発言もされていたように思いますので、そうでなく、特に原爆の場合の残留放射線の影響はきちっとあるということを前提にして、その影響を受けた被爆者の原爆症認定をどうするかをぜひきちんと議論していただきたいと考えましてお配りしてありますので、目を通してほしいと思います。
 実際に、残留放射線に関する測定のデータが前回配られておりまして、きょうも補足で修正のデータが配られておりますけれども、これらのデータは全て、時間がかなりたってからの測定ですから、短期の、半減期の短い、かなり強い放射線については測定ができていないということが1つあるのです。委員の方々はそのことをきちんと押さえておいていただきたい。前回そのことの説明が十分でなかったということがありますので、あえて強調しておきたいと思います。
 かなり大型の台風があって、長崎も広島もその台風で表面の残留放射線がかなり流されたのです。それは9月なのですけれども、その後の測定がいろいろ引用されるわけです。それは私たちも実際に見聞きしましたし、放影研もDS86もそのことについてそういう弱点があるということは言っているわけですから、あの測定がこうされているよというデータを見せられて、残留放射線がちゃんと抑えられている、その上で、大したことがないのだと受けとめられないようにしていただきたいというのが一つの私の意見です。
 続けて申し上げたいのですが、今、座長が重要だとおっしゃいました原爆症対象疾病の考え方についてであります。この問題が実は裁判で長い間争われたのです。厚労省側がこういうふうに認定すべきであるというのを出して、認定すべきである考え方に該当しないから却下をするということで裁判になっていったわけです。
 その根拠になることがきょう出されているわけですけれども、裁判では、実は厚労省のほうが29回負けているわけです。その考え方は正しくないという判断を裁判所で下されているわけです。実はそれがここで議論しなくてはいけない乖離の問題だったわけです。
 その考え方で救済された原告が、残留放射線の影響を受けた人たちが多かったので、その考え方が大事だというふうに私は何回か主張したのですけれども、実は、その疾病に対する考え、疾病を放射線との関連でどう見るかということの考え方が本当は大事であって、その点で裁判所と厚労省の考え方が違っていたわけです。それが乖離問題です。
 前回からと言ってもいいのかもしれないですけれども、乖離問題を具体的に議論されるのは初めてと言ってもいいくらいであります。厚労省の考え方だけが出てくるのでは一方的な判断になってしまうから、本当は、裁判所がこれをどう判断していたかということも厚労省のほうから出していただきたかったのですが、きょうは出ていない。裁判は29回、30回とあるわけですけれども、その裁判で裁判所はどういう判断をしたのかということを次回必ずきちっとしたデータで出していただきたいと思います。
 とりあえず以上でございます。
○神野座長 どうもありがとうございました。
 今のに関連して何か御発言があれば。
 よろしいですか。
 それでは、ほか御意見を頂戴できれば。草間委員、どうぞ。
○草間委員 今の田中先生の。
○神野座長 言ったことでも構いませんし、御意見でも構いません。
○草間委員 田中先生からの資料は、私もまだざっと斜め読みしかしていないのですけれども、残留放射線に関する議論についてこういった問題点があるということで御指摘いただいているかと思います。
 いずれにしましても、原爆症認定の場合、残留放射能、誘導放射能と放射性降下物も含めまして考慮しましょうというのは共通認識で、もう既に分科会の中で誘導放射能、あるいは放射性降下物について考慮しています。これは今までの議論の中で行われてきたことでして、そういう意味では、残留放射線、あるいは放射能に関して考慮しないというのはなくて、考慮しましょうというのがここの一致した意見なのだろうと思います。
 それで、きょう御提出いただいたというか、それでは残留放射能を認めましょうといったときに、先生は多分、そういう意味ではわからないから、全ての人を最初のモデル1という御提案があったのだろうと思いますけれども、残留放射能を考慮するということは、イコール被爆手帳を持っている全ての人たちを認定しましょうということとはやはり違うと思うのです。
 いずれにしましても、この検討会の中で考慮するというのは共通認識ですので、今、分科会で、例えば入市して100日でしたか100時間でしたか、誘導放射能についてはそういう形で、あるいは放射性降下物については西山地区については考慮しましょうという形でもう実際に使っているわけです。その数値がいいか悪いかという議論をここですべきなのか、あるいは別なところですべきかという問題なのではないかと思います。
 いずれにしましても、残留放射能については考慮しましょうというのは、厚労省ももう既にやっているわけですし、ここの先生方の共通認識だろうと思います。残留放射能に関して、今の時点になったら、正確な数値を出すということは多分不可能なことなのだろうと思うのです。短期であったりとか。だから、今まで出ているさまざまな科学的なデータを使って、線量をどう評価するかというところの問題。これは、私は、この検討会の外で議論しなければいけない問題ではないかと思います。そういう意味では「考慮しましょう」というのは「考慮している」と田中先生に御認識いただかないと。多分それは認識していただいているわけですね。今、分科会で使っている数値がいいのか悪いのかということの議論をここでしようとすると、それこそ物理の方とか線量の専門家がいないと評価ができない。もし今、使っているのが悪いとすれば、検討会等でワーキンググループみたいなものをつくってやるべきではないかと思います。
 私は、DS86、あるいはDS02のときも、残留放射能をどう考えようといったときに、今までのデータをもとにしてこういう判断をしましょうという形で一応してきた。いろいろな問題があることはあると思うのですけれども、そう大きく違っていないのではないかと思うのです。もしこういった議論が何回も出てくるようでしたら、例えば厚労省等に、この問題について分科会で使う数値はどうしたらいいかということは、ここではなくて、やはり別なところで議論しないと。きょう、細かい数値をお見せいただいても、私も含めて、多分100%理解できる方はおられない。それは、放影協に限らず、広島、長崎の残留放射能をどうするかは、物理の先生あるいは工学の先生が今でもまだたくさん研究なされているわけですので、そういう方たちにお集まりいただいて、今の分科会で使っている数値がいいのか悪いのかという判断をする。そこが田中先生にお答えするところではないかと思うのですけれども、いかがでしょうか。
 ここでこういったものを出されて、ここが悪い、あそこが悪いと言っても、トータルで検討しなければいけないことです。少なくともここの委員あるいは行政も含めて、残留放射能は考慮しましょうというのはみんなの共通認識だと思います。これを見せていただきながら、まだ斜め読みしかしていないからあれですけれども、そういう印象を持ったのですが、いかがでしょうか。
○神野座長 ありがとうございます。
 関連して何か。
○田中委員 残留放射線を認めているということはよろしいのですけれども、どうしてああいう見解が出されて、その見解のもとになっている背景の測定値だとか測定方法がどうして出されたかということを考えると、ここで議論してきた残留放射線の影響があるということの議論の流れの中に入っていないものなのですね。
 見解で言っているのは、DS86か02で、直曝線量から導き出す被曝線量の推定方式がいいかどうか、それはどれくらいの誤差を考えないといけないかということのために出された報告です。ですから、こことは関係がない。直曝被爆者も原爆被爆者の中にいるわけですから、その人たちの推定に関しては直接関係しますけれども、2キロ、2.5キロ以遠、3キロ以遠と言ってもいいかもしれないのですが、そういう被爆者に対しては、あの推定の結果とか、どう残留放射線が配慮されたかは関係がないわけですね。そのことをきちんと確認しておいていただきたい。
 そういう人たちの被曝線量は本来わからない。この前も潮谷先生から、よくわかる、理解できるとおっしゃっていただきましたけれども、原爆の被爆者の残留放射線の線量はわからないのです。どんなことをやってもわからないと思うのです。しかし、現実に被曝しているわけです。現実に被曝して、しかも、科学的には推定できない被曝線量を私たちはどうつかまえるかを確認しておいていただきたいということなのです。
 議論されたのは、今までも総合認定というところでそれはやってきましたよというのを荒井先生からも言われたし、草間先生からも話はあったのですけれども、実際にそうやられたという例が私たちの耳にほとんど入らないということなのです。ですから、そういう形で取り扱われると前と同じようになってしまう。しかも、現行の認定制度を残そうという方向で議論が進んでいますからそうなってしまうという危惧で私はそういう発言をしたのです。
○草間委員 先生はここにも多分引用されておられますけれども、DS86については、もちろん、初期放射線のガンマ、中性子というのがメーンだったのですが、誘導放射能に関してもちゃんと章を設けてあって書かれているわけですし、それは、とりあえずそれまでの研究結果が網羅されております。その後、広島の先生方、長崎の先生方、あるいは放射線医学総合研究所の丸山先生等も。丸山先生は、西山地区の測定にも関係したりしていますけれども、広い地域にわたって放射性降下物がどこに降ったかということも含めて調査しているわけです。だから、わからないと言ってしまうと、本当にわからないという形になってしまうのですけれども、不正確さはあっても、誘導放射線に関しては、少なくとも、物理工学の先生方が中心になって、わかる範囲内で線量推定をしましょうという形でDS86が出てきて、今回の放影研のことに関しても、例えば広島の星先生のデータとかさまざまなデータを使いながら、ああいった見解が出ていると私は理解しております。
 確かに、正確にというとなかなか難しい話ですけれども、ある程度の不確実性があるというのはしようがない話でして、ある程度不確実性を持った上で評価しているのがDS86であり、今回放射線影響研究所が出す前のさまざまなデータの集約であり、あるいは開催されたシンポジウムであったりと理解しております。だから、限られたというか、私は最大限のデータを利用していただいていると思うのですけれども、その中でどう評価していくかということでやっていかないとわからないという形では、私はちょっと納得いかないのですね。
○神野座長 荒井委員、どうぞ。
○荒井委員 お二方のお話にそれぞれ関連すると思うのですけれども、まず、田中委員の今回の問題点の御指摘を読ませていただいて、わかるのですが、問題は、放影研の調査結果に対しての批判は、ここは疫学論争をやるべき場ではないというのが私の言いたいことの一つなのです。確かに、いろいろな専門の御意見というのがあるのだろうということはわかるのですけれども、そういう意見が1つあるからといって、それに従って制度設計をしていくわけにはいかないだろうと思うのです。ただ、こういう学説、こういう知見があるというだけでそれに従ってというわけにいかないので、これまでのここの在り方検討会での議論からすれば、残留放射線問題についてもいろいろ未解明な部分がある。放影研の調査結果についても指摘される問題がないわけではない。しかし、それだからといって、残留放射線の影響度を制度の中に取り込んでくるほど、確たる物差しにすべき知見はない。恐らくそれは今後とも難しいだろう。こういう議論として進んできていると思うのです。
 田中委員の御指摘のこの御意見を拝見しましても、問題があるということはよくわかるのですけれども、それではそれをどういうふうに取り上げて制度の中に取り込んでいくべきか、残留放射線の影響度をどうするかについては、実は学会のほうでも学問的知見としても確たるものはないという現状ではございませんでしょうか。
 先ほど田中委員が御指摘のように、確かにそれぞれの被爆者の方々が残留放射線の影響をどの程度受けたかわからないわけです。わからないものを原爆症認定制度の中にどう取り込んでくるかといえば、現実的にわからないものを取り上げることは難しいと思うのです。そこがこれまでのグレーゾーンの議論になるわけですけれども、やはり根っこに放射線の影響性を基本に置くものだとすると、総合認定という枠組みは一応維持していくとして、それ以上に、原爆症という認定の中に残留放射線の影響度をどれだけ見るかは、分科会にしても、別の場をつくったとしても、それは恐らく無理な話だろうと思うのです。そこを前提にして、結局、残留放射線は無視できないけれども、さりとて確実にその影響度をはかる知見はない。そこから出発しなければいけない。ないものだから、方向性1の案というのは、そこの影響度がはっきりしないものは病気の重篤度に応じて全部一緒の原爆症の対象にしたらどうか。それは広過ぎるというのが私の意見なのです。
 だから、堂々めぐりになってはいけないのですけれども、問題があることはわかりますが、制度設計上、それを拾い上げるほどのものはないのではないかというのが整理の仕方になってくると思うのです。
 先ほど草間委員の御指摘の、ここで議論すべき問題ではないというのは私もよくわかるのです。それでは、別のところで議論をするというお話は、対象疾病にしても、線量の評価にしても、新しい知見が出てくればそれを原爆症認定制度に取り込んでいく、順次その考え方を改めていくというのは大事なことだと思うのですが、今ここの在り方検討会で何らかの方向性を見出していくというときに、別の場で残留放射線問題をもう一度整理した上で結論を出しましょうという御趣旨ではないだろうと思うのです。もしそうだとすると、それはそこまでやるべきかという疑問が出てきてしまうのです。
 ということで、一番言いたいのは、残留放射線問題はこれ以上ここで議論はできないのではないか、あるいはその必要はないのではないかと言っていいのだろうというのが私の意見でございます。
 病気の問題、疾病の問題はまた後ほどいたします。
○草間委員 ちょっと誤解があるといけないのであれですが。
 今、認定の際に、残留放射線に関しては、一応、分科会で使っている基準があるわけですね。それはDS86をベースにしてつくったものですので、私はそれを大幅に変える必要はないと思っているのですけれども、もし、ここが悪い、あそこが悪いという形で、いつもこういう形で出てくるとすると、今、分科会で使っている数値がいいか悪いかという議論は一回しっかりしておく必要があるという意味で御提案したのです。
 現在の認定の中で残留放射線に関して取り上げていないという理解は違って、分科会の中では申請者の皆様の一人一人の行動を評価して、入市があったかどうか、西山地区にいたかどうかを含めてちゃんと線量評価をしているので、もし今の基準が悪いということになって、今さまざまな御指摘がありますので、これについて、これはこう、これはこうと一つ一つ説明するのはいいのですけれども、そんなことをしている時間もありません。また、さまざまな議論が出てくると思います。今の分科会で使っている基準がいいかどうか、もし悪いということになったら、ここでは議論できませんという意味で発言させていただいたのです。
○神野座長 潮谷委員、どうぞ。
○潮谷委員 残留放射線の問題について、この分科会の中では、影響がないという発言は一度もなかったのではないかと私も思っております。ただ、田中委員も御指摘されましたように、残留放射線というのは、持続性という点で、そこはどんどんとなくなっていっている。台風の影響もそのとおりですし、やはり測定できていないという現実があります。そういったことを考えたときに、私たちは影響はあるとしながらも、これから客観的に残留放射線をベースにして制度をつくっていけるほどのことが得られるのかどうかというのは、今までの論議の中ではどうも難しいのではないかというのが私の率直な気持ちです。
 司法判断が、国が29回負けているということで、疾病をどのように見るか、その判断をされたことについて、もしその類型化とかができるようであれば厚労省のほうから出していただきたいという発言も田中委員のほうから今ございました。しかし、疾病に基づいて司法のほうが判断したというのは、個別的に判断に影響を与えている部分というのはさまざまにあるのではないかと思います。それを普遍化するという形で基準の中に持ち込めるのかどうかという点では、私はいささか疑問を感じているところです。
 今までの論議の中で感じたことは以上です。
 もう一つ、今回の資料の中で思いましたことは、却下理由が非常に簡単で、申請した人たちに対してきちっとした説明責任というふうに受け取られていなかったのではないか。多分、却下したときに国側は説明責任を果たされたと思うのです。しかし、申請する方々に却下理由等々ももっときちっと丁寧にやりとりをしていくという配慮は今後とても大事になってくるのではないか、そんな思いを抱いたところです。
 疾病に関しては、治癒というケースに対して今後どのように考えていくのかという点も、この分科会の中ではもう少しきちっとした形の中で論議を深めていく必要があるのではないか。
 以上です。
○神野座長 どうもありがとうございました。
 高橋委員、関連してというよりも、先ほどの会議の問題を含めて御解説というか御意見をちょうだいできますか。
○高橋滋委員 前回、私の発言も御紹介いただいたようなのですけれども、基本的に現在の制度を揺るがすぐらいの不確実性があるかというと、配付された資料の御主張を拝見しても、そこまでの不確実性があるとは思えません。現に初期被曝線量を推定するに当たって残留放射線量は無視できるということをここでもはっきり引用されているわけです。したがいまして残留放射線についてばらつきがあるということを御主張されているのだと思いますが、その点については、草間委員がおっしゃったように、ある程度明確なものは取り入れているということだと思います。もしそういうことが覆されるだけの知見があるというのであれば、また別個出していただければ、私の見解も改めたいと思います。
 以上です。
○神野座長 続いて、疾病のほうはいかがでございますか。疾病の見方。田中委員がおっしゃった2つの問題のうちの後者の問題点。
○高橋滋委員 疾病はこれから考えていけばいいのではないかと思います。
○神野座長 では、坪井委員、どうぞ。
○坪井委員 私はこう思うのです。これは残留放射線があったわけですから。放射性物質として降り込んだものもあるし、あるいは原爆の場合、他の者が放射性を持ったと。それを受けているのは間違いないと思うのです。だから、影響があると私は思うのですが、それが今、続いているかどうかの問題なのです。私は、直曝でも、影響を受けてころっといくのもある。私のように何とか逃れて生きているのもおるわけです。今の残留放射線によっても、ひどいものはもう死んでおるのです。私はそう思うのです。だから、影響がないことはない。あって、今がどうなるかというのが問題だと思うのです。
 それが非常に難しいと言われるのですが、それは医学界のほうでも一生懸命になってやっているわけです。それは結論的には、受けているのは受けていても、自然界で受けたのと考えてみても、あれはないと言われるのだったら、それはその証拠をやっておられるわけですから。だから、今がどうかということがある。受けるのはみんな受けていると私は思うのです。ただ、途中で早く死んでいるのがおりますから、それを調べるわけにはいかない。そのように考えて、「影響がない」というその「ない」の意味が、受けることもなかったというわけではないだろうと思うのです。私はそう思っています。
○神野座長 ありがとうございます。
 では、田中委員、どうぞ。
○田中委員 私が申し上げようと思ったのは、そういうわからない残留放射線の影響を放射線起因性ということで判断しようとしてしまうと、外れていく人たちが出てくるのではないかという心配があるわけです。放射線起因性で認定をするということをかたく守ると言ったら変ですけれども、実行しようとすると、大部分の残留放射線の被爆者の影響を受けていたという人たちが落ちてしまうのではないかと思うのです。現に、西山だとか高須の人たちは一定程度認定されることもありますけれども、あれは非常に限定されています。残留放射線の影響は、本当はあんな狭い範囲、あそこだけではなかったということを前からも私は申し上げておりましたけれども、そういうことが起こるので、放射線起因性で残留放射線の影響を見るというのは難しいのではないかということを言いたいのです。
○神野座長 長瀧委員。
○長瀧委員 原爆に始まりまして、チェルノブイリも福島も含めまして、放射線の影響ということを、ここに専門家として出ているという立場から言いますと、最初に、放射線の影響というと、線量はどれぐらい浴びているかを科学的にできるだけ調べる。それが出た範囲で、過去の事例を我々の知識の中で健康にどういう影響があるだろうかとエスティメートするわけです。それは、我々専門家の仕事として評価を出すわけですけれども、その後は、それに基づいてステークホルダーのあらゆる立場の方が議論するという意味で、この委員会は非常に大事だと思うのです。利害関係者が全てここに集まっていらっしゃる。
 ですから、科学的な議論は議論として、ここで一々細かい科学的な議論をするというよりは、今、残留放射線の影響はなかったと我々は誰も思っていません。あった。だけれども、現在ある科学的なデータでどこまで物が言えるかという限界を我々としてお話する。それに基づいて、利害関係者という言葉がいいかどうかあれですが、被爆者の方、被爆者団体の方、あるいはそれぞれの立場の方が集まって議論していらっしゃるわけですから、ここは非常に大きな決定の場であろうと思います。今から科学的な議論をもう一度やり直しても、データは少し出てくるし、少しでもお互いに理解しようということでいろいろ新しい見方の議論はできなくはないですけれども、今そういう時期であるのか。ないとは言わない。だけれども、わからない。その程度はこれぐらいということがおおよそ委員の方がわかった時点で、そこに基づいて、それぞれのお立場から、制度の中にどう取り入れていくかという議論は、ここは非常に大事な場所だろうと思います。
 ちょっとまとまりはないかもしれませんが、今から科学的なデータをというのであれば、もちろん、まだ出てくると思います。いろいろあると思いますが、考え直して、今の不確実なものをより確実にするような記録が出てくるわけではないだろう。今の状況を我々委員が全部理解した上で、その状況のもとにどう決定していくかがここの委員会の役目だと思います。これは、被爆者の方は被爆者の立場として主張されるし、それぞれの立場で大いに議論していただく。どこかほかで議論するというよりはここがメーンではないかという気持ちだけお話しさせていただきました。
○神野座長 石委員、どうぞ。
○石委員 今の長瀧先生のお話で、この在り方研究会の使命というか、ミッションとか方向が大分示唆されたのではないかと思います。恐らく、全てのジャッジメントをするときには、事実、あるいは科学的知見が100%わかるはずがないのです。あらゆる分野でそうだと思う。何も原爆症だけの話ではなくて、他の社会保障の関係も、あるいは経済も。まさに今のアベノミクスなどわからないのに大いに議論しているわけです。そういう中で考えなければいけないわけです。
 これを20回やってきたわけですから、その間のいろいろな努力の積み上げが毎回資料になって出てくるのですが、毎回同じような資料が出てきていると思って見ているのです。きょうは、資料4のイメージ図が2と3がコンバインされたような格好で出てきたというあたりが今後の我々の議論のたたき台としては重要ではないか。特に階段の刻みの仕方であるとか、手当のいろいろな性格づけとかというのをやればという感じがしますね。そうしないと、残留放射線の影響がどうだこうだと言ってもいつまでたっても決着がつかないのではないかと思います。
 そういう意味で、最後は、要は制度設計なのです。その背後にあるジャッジメントが、例えばどこかの方向性に賛成していた人同士で違ったとしても、価値が違っても、この辺でこういう方向性で制度をつくりましょうということで合意に達すれば、それでいいと思います。そういう意味では、方向性を見きわめる意味では、この間までのあらかたの議論というのは、2と3をコンバインした格好で、折衷案的なところで、ソフトランディングかハードランディングか知らないけれども、何かあるのではないか。少なくとも、この間の話で放影研の最新の調査の結果、こんなことだよということについては、皆さん、ある程度合意に達しているのではないかと僕は思いました。それをまた元に戻ってというのはちょっと生産的ではないと思います。
○神野座長 ありがとうございます。
 ほかはいかがですか。
 荒井委員、どうぞ。
○荒井委員 少し繰り返しを許していただきますと、今の原爆症認定制度、あるいは原爆被爆者に対してのもろもろの制度設計の中で、残留放射線問題をネグレクトしているわけではないということの私の理解の仕方を一つしゃべらせていただきます。
 原爆症認定の枠組みの中で残留放射線をどう見ているかと言えば、それは総合認定の枠でしかない。その基礎にあるのは、線量をどの程度に見るかというところで、田中委員の御指摘のように、具体的に総合認定で認定された例がそんなにないではないかということは、結果的に当たっているところはあろうかと思うのです。しかし、それは線量をどう見るかが今の科学的な水準といいますか、わかっている範囲がどうなのだということを、先ほど来、草間委員も御指摘のような医療分科会の基準に従ってやっている。しかし、それは考慮していないわけではない。
 新しい審査の方針で積極的認定の対象疾病ということで後からつけ加えられたものに、ちょっとわかりにくいのですが、放射線起因性が認められる心筋梗塞とか、放射線起因性が認められる甲状腺機能低下、放射線起因性が認められる慢性肝炎・肝硬変。この「放射線起因性が認められる」というところが甚だわかりにくいということですけれども、ここにはやはり線量評価を前提にしての、残留放射線を含めて評価をしている仕組みにはなっているのです。しかし、それはそれ以上にどの程度影響があったのかというのは、先ほど来、田中委員なり坪井委員の御指摘のように、具体的に特定の人がどれだけ残留放射線の影響を受けたかというその程度をはっきりつかむことは難しい。だから、原爆症認定制度の中では、今、申し上げたように、結果的にはそれで拾い上げられるレベルまでは至っていないことは事実だろうと思います。
 一方で、全体の被爆者の援護制度の中でどうかといえば、私の理解は、健康管理手当というのは、放射線の影響ということを前提にしながらも、原爆症認定のレベルに達していなくても放射線を浴びただろう、あるいは原爆の影響があっただろうということを前提にして健康管理手当が支給される仕組みになっている。そこには、残留放射線を浴びたであろう、影響がなかったわけではないであろうということが、当然、その制度の前提に入っていると思うのです。ですから、そこの残留放射線の影響を見ていないではないかという見方は、私は、それは一面的に過ぎるのではないかと思います。これが申し上げたかったことの一つ。
 疾病問題について座長からお話がございました。どう対象疾病を捉えるかという捉え方というのがあろうかと思うのですが、やはり原爆症認定制度の対象になる疾病というのは、出発点は放射線の影響ということだろうと思いますので、病気が何でもいいというわけにはいかないだろう。そこはやはり科学的知見に基づいての放射線の影響性というものがあるのだということが認知されている疾病に限られてくるだろう。これが一つ。
 方向性2、3のような考え方ですと、定型的な病気の重篤度を考えた上でランクづけを考慮すべきではないかという考え方になってきますから、ある程度の病気の重さということが前提にされてしかるべきではないかと思うのです。しかし、そうは言いながら、きょう資料説明がございましたけれども、疫学で言われているいろいろなメルクマールを基準にして、チェックポイントみたいなことの御説明がありました。これはわからないではないのですが、そういう目で、今、対象にされている疾病が適当かどうかは、今後のランクづけとの関係もありますので、見直すといいますか、点検する必要があろうと思います。
 新たに方向性2、3の考え方で、対象疾病を広げていく余地は何かないだろうかというときに、きょう御説明のあったような視点で新しい類型の疾病を広げていくことができれば、それは必要、それにこしたことはないと思うのです。
 問題は、ここの場で疾病についてそういう点検ができるかというと、これはこの場には必ずしもふさわしくないのではないか。専門の方もいらっしゃいますけれども、必ずしも適当ではない。そうすると、疾病を点検したり、新しい疾病を探し出すといいますか、拾い出す作業は、それこそどこか別の専門の方々の場でお考えいただいて、それをもとにこの場で議論を詰めるという手続といいますか、段階が適当なのではないかと思います。
○神野座長 ありがとうございます。
 潮谷委員、どうぞ。
○潮谷委員 1つは、疾病対象を拡大ということで、判断が相当程度固まっているものを救済の観点から行政認定に取り入れるという方向性が2と3のところで出てきておりますが、田中委員が先ほど言われました、国が29回負けた司法判断の中で疾病をどう見たのか。そこの判断がもしかしたらここのところに関係してくるのかもしれないと思います。しかし、29回負けた中身がどれぐらい精査されたときに疾病対象の拡大につながっていくのか。私のこの能力では、さっき長瀧先生が「さまざまなステークホルダーがこの会議の中に参画しているので、そこから発想し、提言していくのはとても大事」と。それは私もそのとおりと思いますが、さりながら、能力的にはやはり限界があるということが率直な意見です。
 それともう一つ言いたいことは、さっき荒井委員がおっしゃいましたが、これまで認定されてきている放射線起因性に基づいて、例えば、私たちからすると、白内障というのが加齢との間でどれぐらいあって、そして、放射線起因性ということで白内障が認定されているのか、非常にわからないところがあります。そういったことを見直して、既得権として、今まで見てきたものをここで見直していくということは、これはまた大変だと思いますし、ある意味では、既得権の剥奪だとか、既得権として持っている方と、次の認定の制度が変わったときとの間に差が出てくることになるので、既得権は既得権として考えていっていいのではないか。ただし、疾病対象を拡大するときの客観性をどのように証明していくのかが本当に大きな問題として出てくるのではないかということを感じるところです。
○神野座長 ありがとうございます。
 田中委員、どうぞ。
○田中委員 荒井委員にお尋ねしたいのですけれども、裁判で29回負けたというのは、荒井委員からしますと、お仲間の方が「厚労省の考え方は違うよ」というのを29回言われたわけです。その29回言われた「違うよ、そういうやり方じゃだめだよ」というのは、ここで明らかにしていただかないといけないというのが私の考えなのです。
 というのは、今まで厚労省が裁判でもずっと主張されてきた判断の仕方をきょう説明されたわけです。坪井先生がおっしゃった。私もよくわからない。非常に専門的な難しい話を一方的にずっと説明された。だから、それは立派だろうと私たちは思わされてしまうわけです。そういう判断でやっていると、それはもうちゃんとやっておられるのだと。でも、裁判ではそれは29回退けられたわけですから、どういう根拠でどういう理由で退けられたかというのは、公平に厚労省のほうが私どもに紹介をするというのが仕事だろうと思いますので、私は申し上げたのです。座長、そのことを確認していただきたいのです。
○神野座長 荒井委員のほうからございますか。
○荒井委員 裁判の結果の分析といいますか、どういう疾病についてどういう事案でどういう理由で国が負けたのかということを整理していただくことは、それは必要だし、結構だと思うのです。ただ一つ、これまでの議論に何度もありましたように、裁判で被爆者の方が勝訴したような事案で取り上げられている疾病を全て今後の制度設計の中で対象疾病に取り入れるべきかというと、それはかなりの問題があるだろう。
 それから、裁判というのは個別救済という性格のものですから、例えば、これまでの資料でありましたように、糖尿病などというのは放射線等の影響をどこまで肯定できるのかというのは、恐らく、素人の私でもかなりの問題を感じます。ですから、ある程度ギャップが残るということはやむを得ない。疾病との関係で言えば。
 むしろ、裁判との乖離というのは、私の理解では、放射線の影響性というか起因性というものをどの程度認めるか。疾病もそこでずれが出てきますけれども、起因性を認めていいではないか、厚労省のほうは新しい審査基準で距離とか時間とか線量ということを前提にして、認定すべきか認められないかという判断、そこの違いですね。ですから、それも、個別的な裁判結果を全部判断基準のところに取り込んでくるのは難しい、私自身はそういう整理です。分析して確認することは無意味とは申しませんけれども、だからといって、ギャップのところを全部拾い上げた制度でなければならないということにはならないと思います。これが一つ。
 それから、潮谷委員は退席されたのですが、ちょっとよろしいでしょうか。
 先ほど、例えば白内障ということで既得権云々のお話が出ました。それは後日の会議で議論の場があろうかと思うので、これまで対象にされてきた疾病について、いわば重篤度等々を考えて見直す必要があろうかと思います。これまで取り上げられてきた疾病をそのまま点検、見直しをなしにすべきだというのは潮谷先生の御意見ですけれども、私はそれは賛成できないということ。また改めて議論の機会があろうかと思います。
○神野委員 わかりました。裁判の件については、これまで前の段階で一応説明していただいているというのが私の認識なのですね。事実としては説明していただいていると思います。専門家のほうからそれについて何かコメントがあればと思ったのですが、今の段階で事務局は何かありますか。一応は説明していただいていると。
○田中委員 この病気が認定されているケースと認定されていないケースがあるという紹介は厚労省からあったのです。裁判所はどういう根拠でこれを認定すべきだと言っているかというのを。
○神野座長 それも個別にやると全部大変でしょうけれども、一応の。
○田中委員 だから、29回の裁判がどういう判断をしたかという判断の大もとになっているところを紹介していただければ。
○高橋滋委員 済みません。放射線起因性の話ですか。それとも疾病の話ですか。
○神野座長 疾病です。
○田中委員 疾病と起因性はかかわるわけですから。
○高橋滋委員 両方という意味ですか。
○田中委員 裁判は、1人の場合は1人の起因性だったでしょうけれども、例えば10人の人たちを認定すべきだといったときには、なぜその人たちを認定すべきだと言ったかという起因性に対する判断があります。そのことをちゃんと紹介するべきだと私は言っているのです。私は全部認めろということを言っているのではないのです。
○神野座長 わかりますけれども、これまでの運営からいうと、個別の事案、事件について一応マクロ的にはきちっと説明していただいているというのが私の認識なのです。つまり、29件に限ってとか、そういったことはどれほどの意味があるのか。つまり、どういう形でやればいいのかというようなことを専門家の方にアドバイスをもらったほうがいいかなと思います。
○高橋滋委員 済みません。前にも判決の資料をいただいて、国が勝った事例と敗訴した事例の表が第3回の配付資料に出ているのではないかと思うのです。後ろから3ページ目ぐらいに表がありますが、要するに、国が負けている事例のほうが多いという程度であるのが裁判例の実際なのです。
 ただ、これまで繰り返し申し上げましたけれども、これらの裁判例も最終的に最高裁まで行った事例ではないわけです。大まかな判断の流れはわかりますけれども、ある種の傾向が見て取れるという話だと思います。さらに、29件個別に取り上げるのであれば、国が勝訴したものを含めて全て取り上げなければいけないことになります。以上、まとめて申し上げるならば、今の段階で29件全部取りまとめるかどうかというのは、疑問だということと、そういうことを個別にやるのであれば、全ての裁判例についても、国が勝訴した事例と敗訴した事例を比較してやらないと、実際の判例の評価はできないのではないか、ということになると思います。
○田中委員 最低、きょう紹介された疾病がありますね。そういう疾病で却下されていて、裁判で認定されたケースがいっぱいあるわけです。私はそれを言っているのです。全部出せという意味ではないのです。違いがわかるようなものを出してほしい。
 例えば訴訟で勝った人もありますし、荒井委員がおっしゃるような病気もあります。それをみんな認定しろということを言っているのではないのです。裁判所、司法がどういう判断をして、「厚労省の判断は違うよ。法律の趣旨、救済の趣旨からして違うよ」ということを言ったその根拠を見せていただければいいということなのです。
○神野座長 イメージがわかっている方に解説してもらいたいのですが、今おっしゃっているのは6の資料のことを言っているのですね。
○田中委員 そうです。
○神野座長 6の資料で病気が挙がっていることについて、ここに書いてある解説は厚労省の見解であって、裁判所の見解というのがあるはずだと。ここに書いてあることが厚労省の裁判にかかわるような見解というのもちょっと理解できない点もあるのです。イメージが湧くのであれば、事務局に投げてつくってもらえばいいのだけれども、私はイメージが湧かないので何かありますか。
○榊原室長 いずれにしましても、御指摘を踏まえて、うまく議論できるようなものを検討させていただきたいと思います。
○神野座長 それは準備する、できるという話。
○榊原室長 はい。
○神野座長 私の頭に入っていないので申しわけありません。
 あと、いかがでございましょうか。
○田中委員 細かいことかもしれないのですけれども、科学的知見というのがあっちこっちに出てくるのですね。いろいろな意味の科学的知見が出てきてしまうので、今、何を科学的知見と言うのかというのはどうしたらいいのでしょう。放影研が出してきた被曝線量の推定方式というのは、今、DS02であるわけです。それは国際的にも認められている。そのことが科学的知見であるという場合と、認定の基準を何か言ったときに、「その科学的知見にのっとって」という言い方をしたりします。そのときの科学的知見というのは何なのかということがあります。いろいろなところに同じ言葉がずっと出てくるのですけれども、もう少し丁寧な説明をしていただければいいなと思ったりしているのです。私自身も、これはどういう意味での科学的知見なのかなと思うことがあります。
 一番いい例が、資料3の2枚目の「放射線起因性の考え方について」というところで、「制度の前提として、放射線起因性の概念は一番支えになる概念であり」と。このときの放射線起因性の概念というのは。
 ここのところは科学的知見ではないですね。済みません。
 一番初めですか。「救済対象を検討するに当たっては、ある程度科学的知見に基づいて考えざるを得ないのではないか」。この科学的知見というのは。
○草間委員 今まで議論してきたもの、そして、きょう厚労省のほうからさまざまな資料を出していただいていますけれども、資料3の最初のところにも「国際的にも認められた現時点での科学的知見を前提」と書いてありますね。
 この委員会の最初のころ、1回目か2回目かちょっと忘れてしまったのですけれども、放射線領域の国際的な科学的知見をどう考え、国際的な科学的知見というのがまさに現在の放射線防護基準になっているわけですけれども、そういったものについて、今のICRPのメインコミッションの丹羽先生に相互の関係を御説明いただいたと思うのですね。
 そこで私たち、放射線影響、あるいは放射線防護の専門家としての立場から考えますと、放射線起因性を考えるときの放射線影響に関する科学的知見というのは、とりあえず国連科学委員会が定期的に出している報告書で集約されたもの、あるいはそれをもとにしてICRPも現在独自にさまざまな知見を集約していて、今回Publication118などを出しているわけです。国連科学委員会、あるいは国際放射線防護委員会は、ICRPにしましても、政府の代表としてというのではなくて、まさに放射線影響、医学、物理の専門家として集まった一つのボランタリーの団体でして、そういったところが出しているものを一応科学的な知見として使っていきましょうと認識しております。特に起因性等を判断するときの知見としてはそういうふうに御理解いただいたらどうかと思うのです。
○神野座長 一般的に我々が理解するのは、科学というのは真理を探究するためのものであって、しかし、科学もしょっちゅう間違えるわけです。今、我々が行動を起こすときに、私たち人間の真理を探究する能力にはある程度限界があることは間違いないけれども、今、専門家集団なり何なりが考えて、今、我々の時点で、恐らくこれが真理であろうと思われることについて、それを手がかりにして考えざるを得ないだろうということで、多分、科学的知見と普通に考えて使っていると理解しています。
○田中委員 わかりました。
○草間委員 その中で、特にこれはぜひ皆様に御理解いただかなければいけないと思うのですけれども、環境中にはさまざまな有害要因があるわけです。そういった中で放射線というのは、1928年から系統的にきっちり調べられてきたというか、調査され、知識が集積されてきたという点では、科学が何かという哲学的なあれではなくて、少なくとももっと実用的な考え方をすれば、放射線影響に関しては、国連科学委員会(ANSCEAR)、あるいは国際放射線防護委員会が長年にわたってPublicationという形で出してきています。なぜこんなにたくさんPublicationが出てくるかというと、それぞれの時期に合った最新のデータを使いましょうという形で出してきているので、それを一つの参考にという形で、きょうの資料もぱっと見ますと、例えばICRPの118を参考にしましたとか、幾つを参考にしましたという形であるので、放射線影響に関してはこういったものを使っていくというのは国際的な常識ではないかと理解しております。
○神野座長 山崎委員、どうぞ。
○山崎委員 いずれにしましても、もう2年半もたっているわけですし、一定の方向性を出さなければいけない時期がそう遠くないうちに来るのではないかと思います。今、方向性1と2、3を合体した方向で整理されつつあるわけですけれども、いずれにしましても、対象とする疾病については、我々全員がここでかかわることは、私が特にそうですけれども、無理でございますので、とりあえず専門家による検討の場を立ち上げていただくことは、どのような結論になるにしても、今、必要ではないかという気がいたします。この検討会とは別に、並行して、検討の場を早急に立ち上げるということで何とか合意を得たいと思いますが、いかがでしょうか。
○神野座長 いいですか。
 そろそろ終了の時間でございますけれども、高橋先生を初めとして、これまでも繰り返し、認定対象の疾病については、私どもの委員会の決定は最終的にちゃんと私どもでやりますけれども、その前段階として専門家の方々の見解を聞いておく必要があるのではないかと議論を頂戴しております。先ほど荒井委員が潮谷委員の発言について途中でとどめられたのは、そうした現在の疾病の点検、もう一つは、今、新たに認定する対象を含めて専門家に検討してもらうのだけれども、それは直ちにここの委員会での決定にはならないので、次のステップで、私どものほうとしてそれを見て、それを参照基準にしながら決定すればいい話で、そこの段階で、今まで既に認めていることについて云々という意見は、そういうフェーズのところで議論すればいいのではないかという御指摘だったと了解いたしております。
 そういう観点から、きょう意見を出されたことからいうと、一応、専門家の方々の意見をここの場ではないところでも検討していただいて、それを意見として私どもがいただいて、それを参考にしながら検討するということをしてはどうかと思いますので、放射線及び疾病の専門分野の先生方がいらっしゃいます厚生労働省の医療分科会で、疾病と放射線被曝との関係について、先ほど草間委員がおっしゃいましたけれども、国際的な合意などを含めて、現在の科学的知見を客観的に整理してもらって、それをいただいた上で議論を進める、深めていくという手順を踏んでいければと思いますが、いかがでございましょうか。
○田中委員 そのやり方に私は反対します。どこを専門家にお願いするのかというのが1つあります。私どもでは専門的なことはわからないから専門家に議論していただこうという御提案だと思うのですね。
○神野座長 わからないから、参考意見として、参照としてです。
○田中委員 それは誰の権限でお願いするのですか。
○神野座長 委員会としてです。
○田中委員 この委員会としてですか。
○神野座長 はい。
○田中委員 それから、医療分科会の先生方にお願いするのは反対です。今、実際に審査をしている人なわけですから、必ずしも客観的にはなれません。今の姿勢がそのまま反映します。今の審査のやり方については、被爆者はいろいろな意味で批判的なケースが多いものですから、別な形での諮問をされるということであればまた別ですが。
○神野座長 別な形でのという意味は何ですか。
○田中委員 何人か先生を挙げまして。
○神野座長 別な方にという意味ですね。
○田中委員 はい。別な方。
○神野座長 いかがでございますか。
○田中委員 それと、期間なのですけれども、次の検討会までの間に。
○神野座長 それは考えていません。
○田中委員 ではないと。それはどういう。
○神野座長 まだ依頼をしているわけではありませんので、どの程度の時間が必要かはわかりませんけれども、一応、別な場といいますか、専門家の場で御検討いただいて、それを頂戴した上でまたそれを検討するということをさせていただければと思います。
○石委員 ただ、検討といっても、ある種の専門的な判断が出てきて、素人集団が大半のここでまた検討してもいかなる意味があるかはちょっとわからない。田中さんが御心配なように、多分、人選が最大のポイントで、やるなら2、3人、ほんの少数の委員の人にアドバイザー的な御意見を聞く程度の話なら参考意見という形で出てくるかもしれないけれども、医療分科会が何人の先生方でやられているか知りませんが、10人、15人みたいな組織をつくって、ここから新たに委嘱するという時期でもない。やるなら最初からやればよかったのです。それができないから我々がやってきたのでしょう。今、科学的知見に疑問が出たけれども、細かいところまで皆さんが理解し合ってやらなければいけないという話ではないのではないですか。いろいろな幅で、残量放射線の問題、放射線起因性の問題も、皆さん、突き詰めていろいろ議論しても、恐らくこの場で共通の見解は出てこないです。そういうのを前提の上で、さはさりながら、今、言った制度設計の仕組みをつくっていきましょうというわけです。一番わからない点をこちらから指示してアドバイスを求めるならいいけれども、漠とした形で「我々の疑問にお答えください」というのでは一番まずいのではないかと思います。
○神野座長 いいですか。
○高橋滋委員 医療分科会の方というのは今まで審査に当たってきた方なのですか。そこがまず疑問です。
○神野座長 事務局、何かありますか。
○榊原室長 現場で審査されている方です。
○石委員 審査というのは、与えるとか与えないとか、そういうジャッジメントをしている人ですか。医学的な原因追及をして。そういう人ですか。個人的には座長に任せます。
○神野座長 わかりました。
○田中委員 ここの検討会に何人かの先生方に来ていただいて、我々の素人的な質問な質問も入るということであればまだいいのですけれども、別のところでそういう専門家の方に話をしていただきましたら、前のときと同じことなるのです。新しい審査ができたとき、ここにも書いてありますけれども、医療分科会の先生方が検討委員会の報告を聞いて出したのが、結局あのとき、与党PTの意見で全部つぶされたと言ったら言い方が悪いですけれども、対応されなかったわけです。そういうのがありますので、私はそれはうまくいかないと思います。
○山崎委員 専門家による検討の場を設けるとして、では誰に委嘱するのかという話になっているのですが、誰にお願いするかという議論を審議会でした記憶は私は今まで全くないわけでございまして、我々自身がどういう過程で任命されたかもわかりません。少なくとも形式的には大臣なり局長が任命されるということに尽きるのではないでしょうか。
○高橋滋委員 座長にお任せしたいと思います。ただ、そういう方々がいらっしゃるのであればご推薦頂く、また御推挙いただいた方と多少議論していただければいいのではないでしょうか。そういう場を設ければ。そういう形で我々がそれを聞くということで、裁判と同じだと思います。
○神野座長 ありがとうございます。
 荒井委員、どうぞ。
○荒井委員 専門家の方々に対象疾病について検討していただくという方向はもちろん結構だし、必要だと思うのです。具体的にどういう立場なりメンバーの方にお願いするかというのは、座長にお願いするしかないと思うのですが、一つ言えることは、今、田中委員がおっしゃった医療分科会の方々は今の仕組みをつくった人たちだから違った意見が出てこないのではないか、期待できないのではないかと。私は、専門家というのはそういうものではないと思うのです。
 今の国際的な水準を含めて、放射線とのつながりを疾病との関係でどこまで客観的に説明できるか、それはまさに科学者として、あるいは医療従事者としての立場で、そこを客観的に整理するということはできますし、もともとから言えば、今の新しい審査の方針で対象疾病を広げたことについて、医療分科会は最終的に承認はしましたけれども、どちらかというと、経過からいえば、田中委員が御承知のように、与党プロジェクトチームのほうからのアドバイス、示唆を受けてああいう拡大の方向が出てきたわけです。ですから、何が反対だとか、何がいいとかということを医療分科会の委員の方が個人的にその意見を持っているわけではない。科学者としての知見に基づいての御意見はあろうかと思います。だから、医療分科会の先生方にお願いするというのは、現実的には大変わかりやすい方法だろうと思います。
 そこは、この在り方検討会の中では、長瀧委員、草間委員のお二方、あるいは潮谷委員という専門家の方々がいらっしゃいますから、その先生方の御意見を座長のほうでくみ上げていただいて結論をお出しいただければ結構ではないかと思います。
○神野座長 わかりました。
 佐々木委員、どうぞ。
○佐々木委員 専門家の方に検討をお願いするということについては私は賛成です。それで、どういうメンバーにお願いするかということについては座長にお任せをしたいと思います。
 その際に1点だけお願いしたいと思いますのは、疾病だけの問題に限らないと思いますけれども、この問題は、司法と行政の乖離、違う考え方がいろいろ出てきているということから出発していますので、疾病の検討に当たっても、そういうところでいろいろな意見が出されていることを念頭に置いて、それならどう説明していくべきかということをちゃんと頭に置いて、結局最後は皆さんに納得していただかなければいけない。こう言われているけれども、いや、こうなんだよとか、こう言われているけれども、それは正しいとか、そこをちゃんと納得性のあるものにしていくということに留意して検討していただくということをぜひお願いしたいと思います。
○神野座長 どうぞ。
○田中委員 被団協が提案している提言もそうなのです。提言も結局認定が入るのです。認定しなくてはいけないわけです。そういうのをやりますよというのを提言しているので、それをここで全部決めましょうという提言ではないのです。
 同じように、今の認定制度を残してこういう方向でということがあったとしても、それを細かくするのは、その後の立法だとか政令の改定の段階に入ってからだと思うのです。そのときには専門の諮問委員みたいな人たちが出てきてやるということは当然あってしかるべきだと思いますけれども、検討会が報告を出す段階でそこまでやるのですか。
○神野座長 最後の報告書でどこまで具体的に書くかというのは、私の念頭には、今、聞くということはありますが、石委員がいつもおっしゃっていますように、抽象的なとフェーズでとどめるかということを含めて、そこについては白紙状態で考えています。ただ、委員の皆様方から少し聞かないとこちらでわからないという御意見が強かったので、そう申し上げました。
 もし田中委員もお認めいただけるのであれば、委員の皆様方からの意見もございますので、聞くか聞かないかまで少し含めて、あるいは聞く場合にどういうやり方でやるかを含めて、これも形式的にしておいたほうがいいと思います。私はそういう意味での科学的な知見の専門家ではありませんから、座長代理の長瀧先生と御相談した上で、ここの検討会のコンセンサスを形成していく上でかえってマイナスになると困りますから、それを含めてお任せいただければ。もちろん、それについてはまたメールなりほかの連絡手段で委員の皆様方全員に御相談いたしますけれども、当面、運用の仕方については考えさせていただくということでよろしいでしょうか。
○田中委員 最後に一言です。最初の議論のころ、今の法律で原爆症を認定していくときの姿勢はどうあるべきかという議論をやったと思います。原爆の被害者の被害というのはどういうものかという議論があったと思います。そのとき草間委員は、放射線起因性ではなくて原爆起因性という考え方もあるのではないかとおっしゃいましたし、長瀧先生は、もっと広く、どうやって救済するかという考え方で判断しないといけないのではないかという話をされていました。
 しばらく時間がたってきましたので、私どももそのことを忘れていく危険性があります。だから、放射線起因性といったときには、自分を振り返ってみると、また昔の厳しい、数量的なといいますか、そういうものがぱっと先行する危険性があるやに思いますので、もっと広い意味での放射線起因性。きょうは「放射能起因性」とおっしゃいましたけれども、そういう意味といいましょうか、広く解釈するのだということを確認していただければいいなと思います。
○神野座長 わかりました。
 それでは、先ほどもちょっとまとめさせていただきましたけれども、専門家のヒアリングを聞く件については、私と長瀧座長代理でちょっと相談をさせていただいて、やるとしてもどういうやり方でやるかを含めてお任せいただければと思っております。
 したがいまして、繰り返すようですが、そちらの話とはまた別にこちらはこちらとして運営してまいりますので、本日いただいた意見などに続きながら、引き続き方向性の詳細な検討や問題の明確化を図っていきたいと思っております。次回以降、今、提起いたしました問題を含めて御報告させていただければと思っております。
 事務局のほうから何かありましたら。
○榊原室長 次回の日程につきましては、日程を調整の上、追って御案内いたしますので、よろしくお願い申し上げます。
○神野座長 それでは、最後まで御熱心に御討議いただきまして、ありがとうございます。議事その他について私の不手際がありましたことを深くおわび申し上げまして、この辺で本日の検討会を終了させていただきます。
 どうもありがとうございました。


(了)
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