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2013年4月23日 第2回今後のがん研究のあり方に関する有識者会議議事録

○日時

平成25年4月23日(火)
10:00~13:00


○場所

全国都市会館 2階 大ホール
(東京都千代田区平河町2-4-2)


○議題

1 開  会

2 議  題 
 (1)これまでのがん研究について
 (2)今後のがん研究の展望について
 (3)その他

○議事

出席構成員:堀田座長、上田構成員、後藤構成員、小松構成員、白岩構成員、祖父江構成員、田村構成員、中釜構成員、西山構成員、野木森構成員、野田構成員、眞島構成員、道永構成員、南構成員、宮園構成員、門田構成員、米倉構成員

○岡田がん対策推進官 事務局でございます。
 定刻となってございますので、到着までの間、資料の確認だけさせていただければと思います。お手元に配付させていただきました資料を御確認ください。
 座席表
 議事次第
 資料1 がん患者に希望をあたえるがん研究~Bench to Bedside~(眞島構成員提出資料)
 資料2 公衆衛生学的研究・政策研究について(祖父江構成員提出資料)
 資料3 総合的がん研究戦略策定へ向けて(野田構成員提出資料)
 資料4 製薬企業の立場から(野木森構成員提出資料)
 資料5 医療機器産業から提案する今後のがん研究のあり方(小松構成員提出資料)
 資料6 医療経済的側面も含めたがん研究の評価(白岩構成員提出資料)
 また、前回会議の資料につきましては、ファイルにとじた形で構成員の先生方の机上にお配りさせていただいております。このファイルにつきましては、今後の会議の資料と合わせて使用させていただきたいと考えておりますので、会議終了後、机上に残してお帰りいただきますよう、よろしくお願いいたします。
 とりあえず資料確認ということでよろしくお願いいたします。
 それでは、ただいまより第2回「今後のがん研究のあり方に関する有識者会議」を開催いたします。
 本日は、前回御欠席でございました日本製薬工業協会副会長の野木森構成員。
 東京大学大学院医学系研究科分子病理学教授の宮園構成員に御出席いただいております。
 また、構成員の先生方の出席状況について御報告いたします。
 本日は、石井構成員、石川構成員、上谷構成員、米田構成員から御欠席との御連絡をいただいております。
 先ほど資料の確認はさせていただきました。資料に不足、乱丁等ございましたら、事務局までお申し出ください。
 以上をもちましてカメラはお納めいただきますよう、よろしくお願いいたします。
 それでは、進行をよろしくお願いいたします。
○堀田座長 皆様、どうも遅くなりまして申しわけありませんでした。
 それでは、ただいまから第2回の有識者会議を始めたいと思います。
 早速議事に入りたいと思いますが、前回につきましては5名の構成員の方から、それぞれのお立場から御発表いただきました。それに基づいて意見交換したわけですが、その中で今回の有識者会議は、がん対策推進基本計画に基づく形で新たながん研究戦略を策定することという論点。
 これまでのがん種別あるいは予防・診断・発見といったモダリティーに加えて、新たな視点としてライフステージに着目した視点といったこと。
 各省の研究事業の実施体制あるいは学会の担うべき役割、人材育成といったことが議論されました。
 こういった議論を踏まえて、この中で事務局への照会事項として挙がりましたものは、研究費の領域、その疾患別の交付額あるいは研究事業の評価体制、また各省の連携などについては宿題として残されたわけでありますが、これにつきましては、まだ全体から日が浅いということありますので、次回にそれを整理して報告させていただくことしたいと思います。
 それでは、本日の第2回の会議におきましては、引き続き構成員の皆さんからヒアリングを行うこととしたいと思います。
 早速ではありますけれども、まず皮切りといたしまして、眞島構成員からお願いします。資料がたくさん多いので、15分程度でまとめていただきますようによろしくお願いします。
○眞島構成員 おはようございます。きょう、このような機会を与えてくださいましてありがとうございます。
 私は、がん研究の専門家でもありません。膵がん患者の遺族として、また自分自身が膵がんの患者として昨年全摘を受けましたので、そういう立場でもって、この会議に参加させていただいております。私どものパンキャンという患者団体は、本部がアメリカ、ロサンゼルスにございまして、膵臓がんのがん研究を支えるという意味で過去13年間活動してきた団体であります。
 私はここにおりますのは皆さんと一緒で、我々の敵はがんである。その共通のがんを撲滅するために、一刻も早くそれを撲滅するためにここで集まって力を合わせているのだと思っております。そのがんから私たちの愛する家族、友人、同僚などを救うために、そういうような目標がまずあるかと思います。
 2ページ、実は、私の妹が膵がんと告知されたのは2004年でして、がん対策基本法の恩恵を受けることはありませんでした。膵がんと告知されて治療の選択肢も提示されることなく、最初に提示されたのはホスピスの紹介でした。がんと名前のつく病院はがん難民であふれていまして、本当にどこに行ったらいいかわからないという状況がありました。それから今を考えますと、本当に隔世の念があります。
 今、全国に約400弱のがん拠点病院があって、がん医療というものが非常に身近になってまいりました。この表にありますようにがん基本法ができてから、議員立法、がん患者さんたちも頑張りました。この後、非常に日本のがん医療は整ってきたと思います。
 3ページ、私もがん患者委員として、がん対策推進基本計画の第2次計画に携わらせていただきました。ここで丸が書いてあるところが新しく今回追加になった項目でございます。やはりここ6年間で、かなり社会的ながんに対するニーズというのは変わってきたかなと思います。前回、門田会長がここら辺を御説明してくださいましたので、私からの詳細は割愛させていただきます。
 続きまして、「がん研究に期待すること 短期的」にというショートタームでどういうものが期待できるか、5ページです。
 表題に「今、がんで苦しむ患者の救済」と書かせていただきましたのは、がんは最近治りやすくなってきた、怖いものではなくなったというようなニュースなどもありますけれども、まだまだがんは治りづらい、そういったがんがまだたくさんあるわけでして、がん患者さんたちが毎日苦しんで、一日でも元気で長く暮らしたいということで新しい治療薬が出てくることを待っているわけです。
 ところが、過去30年間続きましたがん研究、その成果の恩恵を受けることなく亡くなっている患者さんがまだまだたくさんいます。このドラッグラグという問題は、がん研究がベンチからベッドサイドまで非常にスムーズに動けば、その出口である薬剤の恩恵に患者さんはすぐに受けられるわけですけれども、ドラッグラグがある限り、簡単には新しい治療薬が出てきても、その恩恵を受けることがない。要するに、そういったようなペナルティーを日本の国民が命でもって支払っているという現状がございます。
 ドラッグラグの申告の度合いなのですけれども、一つはドラッグラグの年数で計算されるということがありますけれども、もう一つはその数なのです。例えば治療薬でいえばその数。国際標準と比較してどれぐらい差があるのかというところも問題かなと思います。
 日本の部位別がんと保険適用薬という表を出させていただきました。部位別がんによっては、その度合いは非常に深刻だということを一つあらわしております。大体抗がん剤というのは、使えるものが10剤ぐらいあるというところを見てとれるかと思うのですけれども、膵臓がんという一番厳しい欄で、そのドラックラグが一番深刻であるというのが見て取れるかと思います。3剤、今保険適用されています。
 7ページ、それでは、世界の膵がん患者さんにとって抗がん剤というのはそんなに少ないのでしょうか。こちらの米国のNCCNの膵臓がん診療ガイドラインを見ていただければわかるのですけれども、9種類以上の抗がん剤がそこにリストされております。その中にはジェネリックもたくさん含まれております。
 8ページ、ドラッグラグの問題。今、日本、米国と比較しておりますけれども、まだまだ使える抗がん剤が日本に入ってきていないというのは現状です。我々が危惧していますのは、このドラッグラグの問題が解決に向かうのではなくて、さらに深刻になっていっていくのではないかという危惧でございます。それはなぜかといいますと、例えば最近家族性膵がんの患者さんにはジェムザール+シスプラチンというのは有効である。Gem単剤ですと6カ月ですけれども、そういったような特徴のある患者さんがGemCisを使いますと24カ月と4倍近くまで生きることができるというような発表がありました。
 ところが、今、日本のシステムを使いますと、このようなジェネリック+ジェネリックのような治療法は、いつになったら患者の手に届くのか、そのあたりが全く見えないという問題があります。
 9ページ、これは膵臓がんの例で申しわけないのですけれども、今から12年前に新しいお薬、ゲムシタビンというのが日本で保険償還されました。そのときに再発の患者、膵がん患者さんが署名活動をしている、時の厚生労働大臣にその署名を届けてやっと勝ち取ったのがこのお薬です。その段階でドラッグラグが5.1年ありました。今から2年前ですけれども、次のお薬。このお薬が出てきた。これも特にイレッサの問題もあってなかなか承認されない。署名活動を行いまして、厚生労働省に提出し、それで勝ち取ったお薬であります。その段階でドラッグラグは5.7年ありました。
 10ページ、このように未承認薬の問題というのはどんどん改善されてきました。今ではラグが2.4年とも言われておりました。これ以上、このラグを縮めるのは難しいというところまで来ておりますが、ところが、そういったように非常に患者数の多いところで最初に承認されるお薬、それがだんだんとマイナーながんに承認されている過程をあらわしておりますけれども、そこのところの適用外薬問題のラグというのが実際問題計測されておりません。計測されればよくなる、計測されないものは改善されない。そういうところを我々は非常に懸念しているところでございます。
 11ページ、このドラッグラグの問題をこうやって見たとき、基礎研究で一番であっても欧米でその薬が開発されて、日本の治験、臨床現場でおくれる原因となっていると言われておりますけれども、こういったような問題が継続する限りドラッグラグという問題は解決されないのではないかと思います。
 12ページ、がん患者からみたドラッグラグ。毎日のように同じような難治性がんの患者さん同士でこうやって話をしていくと、次から次と仲間が消えていくという現実がありまして、その患者さんにもしも国際標準治療薬が全て与えられているという環境であれば世界共通の問題だねということで済まされるのかもしれませんけれども、日本にはドラッグラグという問題があって、まだまだ世界には使えるお薬があるのに日本の患者だけが使えない。あるいはある患者団体が言っていますけれども、北朝鮮と日本ぐらいではないかというような問題がまだまだあります。
 13ページ、ですので、がん研究を考えるときに、まずは出口に立って待っているがん患者さんの立場からぜひ考えていただいて、少なくとも人道的な対策を最優先にお願いできればと思います。
 14ページ、ドラッグラグ・デバイスラグの解決方法は、実はここに書かれておりますように、さまざまな解決方法は書いてございます。ただ、患者さんからしてみれば、ここに書いてあるけれども、実際にお薬はいつ出てくるのか、誰が責任を持ってこういうお薬を承認してくれて、我々の手元に届けてくれるのか、その顔が見えません。誰が責任者なのかもわかりません。こういったような状況の中で患者さんは苦しんでいるという状況があります。
 15ページ「がん研究に期待すること 中長期的には」ということです。
 16ページ、これは米国NCI国立がん研究所のがん研究予算で、日本とはかなりの差があるというお話は以前ありましたけれども、これを見ていただきたいのですが、ピンク色の一番背の高いもの、1ドル100円換算でいきますと600億ぐらいの予算がついているのが乳癌です。その次が前立腺がん、大腸がん、肺がん、膵がんと来ています。5年生存率を乳癌は今90%、肺がんですと16%、膵がんですと5%となっておりまして、これは顕著にがん研究の予算イコール5年生存率に直結しているのではないかということが感じられる表になっています。
 17ページ、今、米国、治りやすいがんと治りにくいがんで、青の枠でもって囲ってあるところ、前立せんがん、乳がんと書いてありますけれども、こういうところで今問題になっていますのがサバイバーシップです。予算が少なくて、なおかつ治りにくいがん、下に書いてありますが、こういうところでは患者さんが切実に進行がんでたとえ見つかったとしてもなるべく一日でも長く生きられるような延命効果につながるものの開発を望んでいます
 18ページ、私どもの米国の関係の本部は、設立当時から国立がん研究所と一緒になってともにコラボレーションとして膵がん研究計画を2000年に立て、さらにアクションプランに落とし込んで2001年、その結果、リサーチマップを2003年につくり、スポアセンターという特別に膵がんに特化した研究を行っている研究センターが3施設立ち上がりました。それが初期の段階です。その当時、アメリカではOVACといいましてOne Voice Against Cancer、いろいろな患者団体が一つの声となってNCIのがん研究予算を取りにいこうと協力していた時代です。
 ところが、NCIにずっと結果が出るのを待ち望んでいた膵がんの患者さんたちはある意味裏切られたような格好になりました。相変わらず5年生存率5%がずっと継続していたのが2007年まで続きました。その結果、2007年にパンキャン、それからパンキャンのアドバイザーの先生方が立ち上がって、膵がん研究促進のための国家計画というような提案書をNCIに提出いたしました。このとき初めてパンキャンが主導となってデッドリー・キャンサー・コアリージョンという難治性がんの患者団体のみでつくられる団体をつくり、NCI、国会への働きかけを開始いたしました。また2006人にワシントンD.C.にそのようなロビー活動をするためのオフィスをつくったわけでございます。
 それからのロビー活動が功を奏しまして、ことしの1月に難治がん研究法というものがオバマ大統領によって署名されまして制定されました。残念ながら、ここには2つのがんしか入っていません。膵がんと肺がんでした。でも、このような患者活動が功を奏して、2020年までには、今言われています5年生存率6%が倍になるようにというような希望を持って患者は活動をしております。
 19ページ、難治性がん研究法の成立。ここの言葉を読んでいただければ、予算は余り関係ないというのは見てとれるかと思うのですけれども、これはあくまでもマネジメントをしっかりやってほしいというためのがん研究法の成立でございました。
 この中でうたわれていますのが20ページの難治性がんのがん研究、ここで2つ掲げられておりますけれども、早期発見ツールの開発と、進行がんでも治る治療法の開発でございます。この早期発見ツールの開発なのですけれども、今、アメリカの白人の方で5年製造率100%と言われておりますのは前立腺がんです。前立腺がんにはPSAという非常に簡便な検査方法がありまして、早期に見つかるということもあっていい結果になっております。
 このような早期発見ツールが例えば膵がんでも今でもあれば、現行の手術でありますとか抗がん剤治療でありますとか放射線治療でありますとか、こういったようなものを使えば必ず5年生存率は上がってくるはずですので、これが第一に来ておりまして、もう手おくれだと言われるような患者さん、早期に発見できない患者さんが例えば膵がんですと8割なわけですけれども、そういう患者さんでも少しでも治るという可能性が見出せるような治療法の開発と言うのが求められていると思います。
 21ページ、アメリカの話ばかりでしたけれども、日本のがん種別5年生存率も見ていただきたいと思います。膵臓がんは一番山が低くて5年生存率は6%と書いておりますけれども、日本とアメリカとこのあたりのアンメットニーズは変わらないかと思っています。
 最近、ニュースでもって、胆道がんで労災認定というようなお話がありましたけれども、22ページ、日本のがん死亡者数順位。これは膵・胆で意図的にまとめさせていただいておりますけれども、例えばアメリカですと膵臓がんはこのままでいくと今は5位なのですけれども、2020年までに3位に浮上するだろう。なぜならば、ほかのがんの治療成績がよくなってきているからなのですけれども、こちらの日本を見ていただきたいのですが、膵・胆合わせますと死亡者数で女性はナンバーワンです。これは非常に問題です。私ども、アメリカでもって膵臓がんの研究に関しての活動を進めておりますので見えておりますけれども、実は胆道がんというのはアメリカではそれほど多いがんではありませんので、研究はそれほど進んでおりません。
 23ページ、胆道がんは希少がんということで、欧米に少なくて日本に多く見られる希少がんの一つだと思うのですけれども、こちらのClincaltrials.govに登録されているリン使用試験の数を見ていただければわかるのですけれども、乳がんは4,682、大腸がんは2,482、肺がん3,984と非常に数があります。膵がんも最近多くなって、1,200であります。ところが、胆道がんを見ていただきたいのですが133。このように日本に多くて欧米に少ないがんの患者さんは、日本のがん研究に依存している部分がたくさんあるのかなと。ですので、そういうところも加味していただいてテーマを選択していただければと思います。
 24ページ、希少がん研究と国際協力。これは日本一国をとって希少がんというのは患者さんというのは患者さんが集まらなくて大変だと思いますが、確かにあるかと思うのですけれども、国際協力という観点から見れば、幾ら希少がんでもそれなりの患者さんはいらっしゃると思います。今、欧米ではと言いますけれども、アメリカと英国、欧州でもってはがん研究の国際協力が進んできておりまして、こういったように横とのつながりを使いながら希少がんとするというのも一つの方法ではないかなと思います。
 25ページ、国際共同治験の可能性と書いてありますけれども、これは2008年には臨床試験が16しかなくて、これは胆道がんですが、2010年は28と倍近くになってきている。こういったような現状がありますので、こういう日本発の治験、臨床治験の増加というのももちろん目標としてはありますけれども、国際研究コミュニティへの参加、国際共同治験への参加ということも一つの選択肢としてあるのではないか。
 欧米といいますのは英語圏という意味なのです。ですので、がん研究というのも人間関係が非常に重要だということは私どもの患者会から伝わってくる情報で聞こえてきまして、日本の先生方、英語が不得意だというところもあるかもしれませんけれども、ぜひこういったような国際研究コミュニティに参加していただいて、国際共同治験をやっていただければと思います。
 27ページ、がん対策推進基本計画と書かれております。この右上、「新」と書かれているところをごらんいただきたいと思います。働く世代や小児へのがん対策の充実。
 28ページ、サバイバーを支援する社会。社会のニーズが変わってきまして、今やがんは怖くないがんになりつつあります。サバイバーがたくさんふえておりまして、アメリカでもサバイバーはたくさんおります。サバイバーのためのがん研究が非常に重要かなと。がんで治ったけれども、社会復帰ができないというのでは元も子もありません。ただ、がんが治るあるいはまだがんと闘っている方たちも、社会でもってそれなりの役割を果たしたいという方を支援するということは非常に重要ではないかなと思います。
 29ページ「5.支持療法の開発」。これはがん患者さんからたびたび言われることなのですけれども、体重減少、腹水や悪液質、疼痛、がんに伴う症状を少しでも緩和できれば私は元気に毎日生活できるし社会復帰もできるのだという声を聞きます。また、せっかく抗がん剤をやっても、抗がん剤の副作用によって治療を断念しなければならない患者さんがたくさんいます。こういう方たちに何らかの救いの手を差し伸べるということも非常に重要ではないかなと思います。これもがん研究の一つの役割だろうと思います。
 30ページ「6.個別化医療の推進」。実は抗がん剤の全体の平均奏効率は20%、30%とも言われております。ということは逆に言えば7割、8割の方には効かない。効かないだけならばいいですけれども、副作用に苦しみ、さらにそのコストまで払わなければいけない。こういったような現実のある中で個別化医療というのは非常に魅力的な選択肢です。
 遺伝子解析をしていただいて、あなただけに効くこのお薬。非常によく効いてくれる。こういう世界が来るのだろうと思うわけですけれども、ぜひ個別化医療の推進というのは強力にやっていただければと思います。
 31ページ、実はこれは社会的現象になりつつありまして、スクリーンを見せておりますけれども、「全人類の遺伝子解析を目指す?」と書いてありますが、このような遺伝子解析サービスが今アメリカでは始まっておりまして、その値段も99ドル、1万円弱でもってこういったような解析をしてもらう。
 ですから、自分の遺伝子情報がどういうものかというのを社会的に知り得るというような状況が今生まれつつあります。先ほど言いましたような個別化医療とも結びついて、ぜひ日本のがん医療の進歩につながるような形になっていただけたらと思うのですけれども、ただ、日本にはまだまだがんに対しての社会的なスティグマがありまして、がんとは公然と言えないような状況もあるわけですけれども、こういったような教育活動プログラムみたいなものがあって、遺伝子というのは宝なのだというようなことが社会的に広がるようになってくれればと思っております。
 32ページ「7.高齢化社会のがん研究」。これは高齢者の方の介護をされた方はわかりますけれども、認知症とか慢性疾患とかさまざまな疾患がある中でのがん、そういった位置づけで、日本が世界に先駆けて超高齢化社会を迎えるということですが、ぜひこれをビジネスチャンスとしてつなげられるような形で発展できればいいと思っています。
 33ページ「8.IT先端技術の活用」。これ小さな資源で大きな成果、コストパフォーマンス的にはコンピュータというのは倍々で来ておりますので、何とか医療の現場を、がん研究の現場をIT技術を取り入れることによってコストパフォーマンス的に進めることができればと思っております。
 こちらに例として出させていただいていますのが希少がんです。希少がんというのは、専門医がいないためになかなか診断されないという難点があります。神経内分泌治療の患者さんは平均4.7年という正しい診断に行きつくまでのラグがあるわけです。その間、間違った診断でもって患者さんは苦しんでいます。ところが、FindZebraというのはコンサルタントのサービスなのですけれども、こういったようなものもありますので、ぜひITを活用できればと思います。
 34ページ「がん研究とは」。black boxとあえて書かせていただきました。私がきょう、ここの席に来る前に、がん患者団体の有志の人たちに、がん研究に対してという簡単なアンケートをやらせていただいたのですけれども、皆さんが口をそろえて言うのは、がん研究はよくわからない、何なのだろう。知らされていないという意見がたくさんありました。ですので、がん研究、またそのがん研究から出てくる恩恵に関してわかりやすく説明していただければと思います。
 そのためには、がん研究の可視化。これは最低限のことだろう。がん研究が過去30年間続いてきたということですので、どのような評価、総括をされているか、そういったようなことが国民にわかりやすい言葉でもって説明されるということが非常に大切なのではないか。もちろん、確率的には非常に難しいというのががん研究ですけれども、ただ、そこにはペイオフがゼロではなくてあるのだと。また、全体をポートフォリオ分析すればそれはプラスになるのだということがメッセージとして伝えられればいいのではないかと思います。
 36ページ「10.患者・市民参画」。これはアメリカ、英国でもそうなのですけれども、患者関係者を積極的に取り入れて、患者の声を届けていただければと思います。ただ、そこには患者関係者を協力させるためには最低限の条件というのがあるだろう。そのための教育プログラムというのが欧米では整っておりますので、ぜひそういうようなものも整理して患者市民参画を積極的に推進していただければと思います。
 38ページ「11.がん研究コミュニティと人材育成」。実はパンキャンが膵がんのがん研究を積極的にといったときに、それは予算だけの問題ではないという壁にぶち当たりました。それはがん研究者が育っていない、がん研究者がいないのだという問題です。ですので、がん研究応援団の育成も重要です。がん研究コミュニティの育成も重要です。これを継続的に行う、そういったような仕組みづくりをぜひお願いできればと思います。
 最後に「12.司令塔の必要性」と書きました。最近、新聞で日本版NIHのお話が出ておりますけれども、ぜひ日本のがん研究に顔をつけてください。責任者は誰、私がやるのだといったような形で組織とスタッフ、統括マネジメントができるようなシステムをつくっていただければと思います。
 日本のがん研究者は非常に優秀です。非常に優秀ながん研究者の助けを求めています。ぜひ日本から世界へ希望を生み出すがん研究、よろしくお願いいたします。
 以上です。
○堀田座長 ありがとうございました。
 患者、市民という立場から大変広範に問題点、私どもが3次がんの総括をするときの視点とほぼ似たような10項目を出していただいております。それにつきましては、また全体の研究者側からの総括というのを次回述べさせていただきますが、きょうは順番に発表いただいて、その後でまとめて議論ということにさせていただきたいと思います。
 早速ですが、次に、公衆衛生学研究で政策研究を祖父江構成員からお願いしたいと思います。
○祖父江構成員 祖父江です。よろしくお願いいたします。
 資料2「公衆衛生学的研究・政策研究について」というタイトルですが、これは基本計画のがん研究個別目標の中にある基礎研究、臨床研究、公衆衛生学的研究・政策研究の後半の2つをカバーするつもりという意味ですけれども、公衆衛生学的研究というのは具体的には何かというと、がんの予防に関しての観察研究・介入研究、あるいはがんの早期発見のための検診の評価研究といったものが公衆衛生学的研究と考えてカバーしています。政策研究というのはなじみのない言葉なのですけれども、政策研究あるいは普及推進研究が当たるというようなことと思ってカバーしました。
 2ページ目、科学的根拠に基づいたがん対策の進め方として、まず実態を把握し、有効な方法を開発して、それを適用するということが予防、早期発見、診断、治療、終末期ケア。これが実際の対策に当たるわけですけれども、そういう対策がきちんと実施されているかで最終的な目標、死亡、罹患の減少、患者家族のQOLの向上が達成されたかと言うことを確認して、データに基づいて進めていくというものです。
 この中で研究というのは、これまでにない新しいリスク要因ですとか原因とかを究明し、それに対しての介入をする、治療をする、新しい治療法を開発するというところがいわゆる研究だと思いますけれども、それとともに、きちんと実施されているのかということをターゲットとしたような研究、対策の後に来るような形の研究というのも政策研究として必要ではないか。政策研究の意味はこういうようなことだと私は認識しております。
 3ページ目、基礎研究、臨床研究、予防研究というのは、新しいことを開発するというフェーズですので、研究者の新しい発想あるいは競争による選択ということで、よりよい研究費の使い方が想定されるわけですけれども、政策研究というのは余り研究者自身から発想が出てくるということではなく、現実の行政のニーズを拾い上げて、ミッション、過大をきちんと先行させて設定し、さらに研究者が専門とするような領域だけではなくて、いろんな他分野の人が集まって検討しないと解決できないような課題が多いという特徴があります。
 そうすると、Funding Agency、研究費を配分する側の仕組みが単に配分するだけではなくて、こうした政策研究を進める上でのきちんとした機能を持っていないといけないということになるかと思います。アメリカの場合は、NIHの中のNCI、特にDivision of Cancer Control and Population Scienceというところががん対策に関してのFunding Agency機能を持っており、このような行政ニーズを拾い上げ、ミッションを設定し、さらに人材を組織化して研究の担い手を育成していくというような役割を果たしています。
 また新しい造語なのですけれども、Implementation ScienceとかD&I(Dissemination and Implementation)Researchと言っています。普及推進研究といったものだと思いますけれども、こういったところの日本での取り組みがややおくれているのではないかと思います。
 4ページ、橋渡し研究というのは、ベンチ、ベッドサイドというあたりのことを想定しがちですけれども、実はもっと奥まった適用の先があって、クリニック、コミュニティ、ポピュレーション&ポリシーと、これは全部橋渡しでありまして、その都度、下にVoltage Dropと書いてありますが、だんだん効果が薄まっていくし、効果だけではなくて研究者の熱意とかファンディングの額とかもだんだん減っていくという傾向にあるので、これはちゃんときちっと配分を是正、ボルテージアップしないといけないというところにFunding Agencyの役割があるのではないかと思います。
 5ページ目、研究として重点的に取り組むべき領域あるいは支援事業としてここにまとめました。やはり政策研究が日本では弱いというところで、特に高齢者に対してのがんの進行を前提としたというのがチャレンジングな言い方ですけれども、必ずしも治癒を目指さないという意味です。療養生活を支援することに関する研究。
 あるいは既知のがん予防対策(たばこ、感染)の普及推進戦略に関する研究。
 がん登録あるいはがん検診、情報提供、未知のリスク要因といったところが重点的な領域と思いました。
 支援事業として、既存のコホート研究。
 新規予防介入研究・検診評価研究。
 既存の資料の照合による大規模データ解析といったものが重要かと思います。
 以下、各項目について説明します。
 第1点目の高齢者のがんに対しての治癒を必ずしも目指さないという意味での療養生活の支援に関する研究というのは、背景としてはこれまで多くの先生方が言ってございました。2025年あたりには75歳以上のがん死亡、全体の3分の2ぐらいになります。ですから、疾病の負荷としては最も大きな負荷のある領域です。
 それに加えて高齢者では、がんだけではない自立機能の低下ですとか、他疾患の罹患ですとか、同時に複数の問題が存在します。こうした問題をがんだけで解決するということは必ずしも得策ではなくて、複数の要因を同時に考慮するということが重要かと思います。そのときに、がんだけの治癒を目指した治療あるいは予防検診というものの適用をきちんと合理的に判断できるような基礎資料が重要かということであります。
 7ページ、これまでの取り組みとしては非常に少ない。これは堀田班のがん臨床の総括報告の中でも、高齢者に関してのがん研究が非常に少ないということが指摘されています。合理的な判断をするためのデータが不足していますし、諸外国でも少ないというのが、要は超高齢化社会を迎えるのが日本がフロントに立つということですから、こういったところを日本で研究を進めるということが必要なのだろうと思います。
 短期的には研究者が少ないということですから、複数の領域の研究者を巻き込んで研究グループを育成、組織化するということと、その中で意見調整をして、きちんとデータを収集する仕組みを考えるということが短期的には重要で、中期的には個人のリスクベネフィットバランスの判断に役立つようなデータを収集して、さらは社会全体のコスト等も考え、長期的には高齢者がん患者あるいは家族の方々が合理的に判断できる環境を整備するというところが目標かと思います。
 第2点目の重点領域ですけれども、既知のがん予防対策。特にたばこ、感染の普及推進戦略に関する研究です。
 たばこ、感染というので下に書いてあるのが、我が国の人口データに基づいたがんの原因の割合ですけれども、たばこが30%と書いていますが、全体の男女計でいきますと20%です。感染が20.6%ですから、合わせて40%は予防、たばこと感染のコントロールにより減少可能であるということが日本のこれまでに30年蓄積されてきたデータに基づいて示されているわけです。
 たばこ、感染とも効果の予防対策をある程度わかっています。ですから、これをいかにきちんと普及するかというところが重要なことであって、それを戦略的に進めるための研究が必要だろうというのが背景です。
 9ページ、これまでの取り組みとしては、個々の対策の内容、たばこ対策、ピロリ菌の除菌、C型肝炎ウイルス駆除、パピローマウイルスワクチンといったものに関しては、効果について多数の研究があります。それを戦略的に普及推進するという研究に重点を置き、数理モデルですとかターゲットを絞った対策ということを課題として研究することが必要ではないかと思います。短期的にはそのようなグループを組織化し、そのような内容で検討し、中期的にはデータに基づく具体的な政策提言あるいは政策評価といったものを行い、長期的には肺がん、胃がん、肝がん、子宮頸がんの罹患数を激減させるということが重要と思います。
 10ページ、がん登録ですけれども、背景としては地域がん登録は今、県の事業であって、国の関与というのは研究班のみです。昨今、いろいろな動きがあって、地域がん登録を国の事業として行うということが検討されていますけれども、研究班として役割は終わりかというとそうではなくて、先駆的なデータ利用に関しての取り組みを継続的に提示していく必要があると思います。
 これまで研究班は標準化ですとか全国集計そのものの業務を担当してまいりました。院内がん登録、臓器がん登録、NCD等々の研究班も存在しています。
 これを踏まえて、短期的には国の事業としての取り組みを技術的に支援ということもありますけれども、実は新法ができたとして、新しい仕組みができるデータ収集が仮に2015年に起こったとしても、2014年までの罹患者に関するデータは誰かがやらなければいけない。研究班がやるか、あるいは移行措置として何か事業的なことをするのかはありますけれども、仮に研究班がするとしたら、2021年ぐらいまで、2014年の罹患例についての5年生存率を計測するといったら、大体2021年ぐらいまでかかります。大方、次の10カ年計画終わりぐらいまでかかるので、研究班としてやるのであればその辺りを見越していく必要がある。データの先駆的な利用、種々のがん登録の連携です。特にデータの入力の有無、診療の質評価というところは鍵になるかと思います。
 中期的には、次期の基本計画のときにきちんと罹患データを使ったがん対策の評価、立案ということに用いたいということもありますし、対策だけではなくて、がん患者さん、家族の方々、医療関係者等への情報提供ということも促進しなければいけない。長期的には継続的には政策提言と政策評価に利用するということかと思います。
 11ページ、4番目はいろいろ書いています。がん検診に関しては、現在、市町村事業として対策型検診が行われていますけれども、こういう枠組みでの検診の提供体制を維持するのかというのは過渡期かと思います。それによって研究方針が大きく左右されますけれども、少なくともこれまでの研究班で幾つかの活動に関しては方法論的に確立したところが、特にガイドラインの作成、受診率向上・精度管理といった部分が、今、個別の研究班の活動として行われておりますけれども、それは常設の組織として事業化する、あるいは予算をつけるといった形での実施が必要ではないかなと思います。
 情報提供・相談支援に関しても3次がん、がん臨床研究班で大きく成果があります。そのことと、国立がん研究センター、がん対策情報センターでやっている活動と事業的なもの、研究的なものが混在しています。この辺をきちんと整理して事業的な物に関しては常設の形での予算化ということが必要でしょうし、研究はフレキシブルな新しいことの取り組みといったことである程度切り分けることが必要ではないかなと思います。
 未知のリスク要因解明に関する研究ですけれども、これについても、ここ10年、20年のところで要望観察研究についてはJPHC、JACCなど、いろいろ日本発のデータを海外に発信できていると思います。まだまだその取り組みが十分というわけではなくて、アジア地域におけるリーダーシップをこのまま維持するということについて言うと、かなり危ない立場にありますので強化していく必要がある。既に開発が開始されている住民コホートを利用するという形になるかと思います。
 12ページ、あと支援事業で、既存の患者コホート、住民コホートの連携・分担と長期追跡に向けた体制強化ということで、これに関してはゲノムコホートなり患者コホートなりということで幾つかものが走っています。短期的な目標としては、こうした既存のコホートを目的に応じて整理、連携を深め分担をするということで、あと統合解析に必要な研究、妥当性研究などの実施が必要かと思います。
 13ページ、特に住民コホートに関しては、JPHCを中心とするグループとJ-MICCを中心とするグループが別々の質問票、プロトコールというのは質問票のことですけれども、それを使って行っています。これをきちんと統合して整理して活用するためには、妥当性研究といいますか、2つのデータをきちんとくっつけるためのさらに補助的な研究が必要で、こういったものを短期的には実施していく。
 統合解析、長期追跡の基盤整備をするということだと思います。中期的にはこうしたデータをきちんと利用する体制を整備し、結果的に収集されるデータというのは非常に大きなビックデータになりますので、それを解析する支援体制も必要で、そういうこと通じて、長期的には個別化予防、検診の実現、革新的ながん予防の開発、多世代コホートというのは、おじいちゃん、おばあちゃん、成人、子供、多世代にわたってのコホートをきちんと成立させ、さらに今後本人に聞くというような形ではなく、家族歴、職歴、既往歴などというのは既存の資料から抽出できるような形にだんだんなっていくのではないかと思います。既にいろんなことが電子化されているので、本人の同意が前提にあると思いますけれども、既往歴であればレセプトからとってくる、家族歴であればがん登録からとってくるとかということが客観的な資料として出てくるのではないか、そういうことに関して準備をすべきではないかと思います。
 14ページ、新規予防介入研究・検診評価研究というところですけれども、3次がんといいますか、戦略研究として大内班が乳がん検診、40歳代のマンモグラフィーに超音波を上乗せする効果というものを検討する比較試験をスタートし、これはJ-Startですが、これが比較的7万人強リクルートできて、日本でも個別のランダム割り付けによる比較試験が可能であるということを示していただいています。
 ただ、それ以外のところでも大腸内視鏡とか胸部CTなどのRTが開始されているのですけれども、非常に小規模に行われていて、研究費が不足している。ですから、こういったものをやるべきか、やらないべきかというのはきちん判断して、つけるなら予算をつけて長期的にサポートするということが必要ですし、やめるのだったらやめたほうがいいと思います。
 そういうことを支援していくデータセンターを強化する必要もありますし、こういう新規に開始するような介入研究を用いて付随研究として検体を集めるということもアイデアとして頭に入れておく必要があるかと思います。
 こういう介入研究というのは政策的な行為に直結するものです。今、いろんな検診に関して受診勧奨の方策ですとかウイルスを導入するとか、そういったものをきちんとこうした介入研究に基づいて、この成果を反映させる形で政策決定できているかというと疑問があるので、そういう政策決定に直結するような課題をきちんと選んで介入研究に取り組んでいくということが必要なのではないか。こういったものはアウトカムを死亡減少などというものにすると非常に長期間にわたります。少なくとも10年ぐらいかかるので、こういった10年間をきちんとサポートするような支援体制が必要だと思います。長期的には証拠に基づく政策展開でするとか、あるいはシミュレーションモデルなどを開発して、RCT全部の課題についてはできませんので、そういうことを補完する、あるいは将来的にはもっと研究期間を短縮できないかということにつなげていけないかなと思います。
 最後、15ページ、既存資料の照合による大規模データ解析。既存資料というのは何かというと、いろいろ統計調査もありますけれども、種々の医療サービスの結果、大量データが電子的に記録される時代になってきています。そういうものを利用できないかということです。それについては海外と比べると非常に立ちおくれた段階にあり、これまでの取り組みとして検診の有効性評価ですとか、コホートの追跡のためにこうしたものを使うということがされています。短期的にはもう少しデータソースとして広げて、具体的にはレセプト(DPC)、介護保険、人口動態、がん登録、住民票、がん検診受診者名簿を利用するということが想定されますけれども、当然個人情報保護とのバランスを考慮した法的整備が必要です。それに加えて、第三者機関による照合サービス、研究者が個人情報を持たないような仕組みを構築していく必要があるのではないかと思います。
 こうしたことをすることで、質の高い大規模研究を低コストで実現するということは可能です。ですから、研究費のことと関係ないということかもしれませんけれども、研究費を節約するという意味では、それで質の高い研究を維持するという意味では非常に大きな意味を持っているのだと思います。
 特に政策研究が重要で、がん医療質の評価、がん検診の精度管理あるいは市販後の薬剤の発がん性の確認といったコホートをやるにはこういう既存資料の大規模データ解析が非常に重要性を持っているのだと思います。長期的には証拠に基づいた政策展開ということであります。
 時間をとりましたが以上です。
○堀田座長 ありがとうございました。
 ただいま祖父江構成員から、公衆衛生学的研究の要点について、研究と政策研究との違いといったこと、研究なのか、事業なのかというところの区分けをきちんとやって、事業かできるものは事業にすべきだという論点もやられましたし、介入研究できちんデータを出してやらないとだめなのだけれども、中と半端なものをやるぐらいならばやめて、どこかからはっきりとした成果が得られるところに集中すべきだという御指摘だったと思います。
 引き続き次のものにいきたいと思います。「総合的がん研究戦略策定に向けて」、野田構成員からよろしくお願いします。
○野田構成員 ありがとうございます。資料3になります。
 厚労省からの依頼は、日本癌学会として総合的がん研究戦略に向けたアイデアをということでしたので、2ページ、大体4つのような内容について、きょうお話をさせていただきます。
 まず、そもそも日本癌学会としての考え方といった場合、日本癌学会はどういうものなのかというのを御説明いたします。
 3ページ、日本癌学会は1940年から活動を続けています。でも、実際には1907年に始まっているGANN(癌)という雑誌の出版がずっと100年以上続いていますので、100年間近い活動を続けていて、現在1万6,000名ほどの会員、大体10%が学生会員です。
 この研究分野別が特徴をあらわしていると思いますが、基本的には全ての分野をカバーしている広いというのが日本癌学会の特徴であり、どちらかといえば基礎に力点があるいというのが特徴ですが、やはり広い。今、ここで議論になっている臨床研究者の先生たちも入ってらっしゃいますし、あとは病理・診断の方、今、祖父江先生のような公衆衛生学研究・政策研究の先生方も入っておられます。ちなみにこの委員会の半分以上の方が日本癌学会の会員ということにもなっております。
 ですので、きょう、ここでお話しするのは、広い分野をカバーしたこれまでの政策を考えて、これからの施策はどうあるべきかということもありますが、もう一つは、ずっと広くやってきていますので、この分野間をつなぐべきもの、あるいはそれを俯瞰しての話というのも日本癌学会としては重要なのかと考えています。
 4ページ目、さて、その日本癌学会の流れですけれども、これが大体会員数ですが、会員数が左側の数字ですが、実際の第1次対がんのときにぐっと上がって1万6,000人をキープしてそのまま来ているというのが今の状態です。第2次対がん、第3次対がんはずっとその状態で、毎年の演題ですけれども、2,500程度。ここでは実際には演題数2,250になっていますが招待がありますので250程度の演題がずっと来ています。
 5ページ、その内容を見ますと、ベースに黄色が引いてある基礎の分野が多いのですけれども、その右側に診断・治療の分野がかなりの演題数を占めておりますので、癌学会は広い発表が多くて、その右側ですが、予防社会学というような発表も多いというのもまた特徴であろうと思っています。
 6ページ、ここで一つ、日本癌学会の存在意義というときに非常に大きいのは、学術成果の発信ということでありまして、学術成果の発信は、ひとえにCancer Scienceのハイクオリティージャーナルの維持ということにかかわっています。国別投稿数あるいは国別掲載論文数を見ますと、日本が頑張っているし、日本の先生方の論文がCancer Scienceのインパクトファクターも支えてくださっているのですが、実際には紫で書いてある中国からの投稿論文が非常にふえてきて、なかなか審査なども非常に大変な状況にはなっています。
 右側の表ですけれども、少しずつインパクトファクターは上がりながらも全体として順位が落ちてきています。全ては商業紙、いわゆるネイチャー、サイエンスという名前がついたところががん関連の雑誌をいっぱい出してきて、要するにインパクトファクター、つまり人の目に触れる率の高いジャーナルに、よりいい論文が集まる傾向にあって、例えばアメリカ癌学会のキャンサーリサーチでも8を超えることがなくいますので、日本癌学会も4の手前のところでとまっているという形で、やはり国際競争力が必要な日本癌学会としては、国際競争力を持つことと、国内のがん研究を支えることとのバランスが非常にこれからも大事になってくるということでございます。
 7ページ、ということで今後10年間において推進されるべきがん研究分野と研究課題をということなのですが、今見ていただいたように、申しわけないのですが、日本癌学会は極めて広い分野なので、ここでこの分野ですと橋渡し研究のこれが大事ですと挙げるというのは立場上非常に難しいところもありまして私らしくないとは思いますが、8ページ目、これが実はがん対策協議会のときにがん研究専門小委員会で10名近い委員が10回を超える議論を毎回重ねたときの途中の仮まとめのデータです。その委員には、ほとんどが癌学会の会員の先生方でしたし、加えて全ての分野をカバーして物が出てきましたので、そのときからそれほど大きく変わっていないので、それをもう一回関係者にちょこっと確かめながら来ました。
 どうしても分類は基礎研究、橋渡し研究、臨床研究。やはり重要なのが、この間の西山先生の発表にもありましたけれども、成功例を見た一方向のものだけがあしたのがん患者さんの予後を全部改善するわけではありませんので、そういうものを検証し、コーディネートし進めていくという公衆衛生学的研究・政策研究が非常に重要になる。加えて、先ほどの祖父江先生の体制の部分も踏み込んでおりましたが、実際には全体を俯瞰しての研究推進の体制整備という観点が必要だということが挙げられています。
 簡単にだけ触れますが、基礎研究はまだまだ発がんに関して言えば、内的、外的要因がたばこ及び感染因子以外は同定されていません。予防に行くにしても、あるいは治療に行くにしても、それを網羅する同定は必要ですし、もう一つは、やはりがん治療に向けた全ての根治的がん治療の確立に向けた本態解明というのはこれからも続けなければなりません。特に研究というのはどうしてもシステムに影響されますが、20世紀のがん研究が生命科学をリードした裏には、細胞生物学ががん細胞で行われたというところがあります。ということはどういうことかというと、20世紀のがん研究あるいは分子標的探しはがん細胞の研究であり、がん細胞の分子標的探しだったということが言えると思います。今、チロシンキナーゼインヒビターが全盛であることもそれを証明していると思います。
 問題は、今後10年間のがんの転移、再発を理解し、完全にそれを抑制する流れに向けては、やはり個体の中でのがん研究。言い方を間違えると非常に危険ですが、患者さんから学ぶことというのが物すごく重要になってくるということでありまして、そういう形での本態解明ということが重要だろうと考えています。
 橋渡し研究に関しては、叫ばれてから久しいのですけれども、徐々に動き始めていますので、進めるための見直しの時期かなと。どこが強く力を入れるべきかというところも含めて、日本の国内での優位性も見て見直すべきかというのがこの推進です。
 そして、臨床研究は田村、西山先生が十分にお話になりましたのであれですが、ここでは田村先生、西山先生だけだと2番目、小松構成員からこの後お話があるとは思いますが、どうしてもお薬中心になりますが、実際の患者さんが今接しているものには、手術が山のようにありますし、加えて放射線治療もあります。診断もありますので、基本的には機器の実現も含めて薬の推進とは違った意味での臨床研究が必要になりますので、そういうものを推進する必要がある。
 4番目の公衆衛生学的な研究・政策研究ですが、何よりも基礎研究者が多い我々の側から政策科学、公衆衛生学に臨むことは、それこそ患者さんにまで伝わるエビデンスを出していただく。現在の状況をきちんと評価してエビデンスを出していただき、そして先に向けたプランを示していただくということだと思っています。特に、予防・検診及びがん医療の評価法の確立というのは非常に重要だろうと、これは常に出てまいります。
 5番目、研究推進の体制の整備。これは一つは研究推進体制、ここでずっと出てきているような省庁間の連携あるいは情報を統括するような動きが重要ですし、もう一つは、人材です。ここにこうやって集まっていて研究をディスカッションするする人材はふえていますが、研究をやる人材は明らかに減っております。この10年間減っています。癌学会の会員を維持しようというときの努力をやっているのを見るとわかりますが、明らかに減っています。これは頑張らないと、将来、プランは立ったけれども、やる人間がないということになります。
 それと関連していきますが、そこに一つ大きい影響があるのは、真の国際化を推進しないと、そこの部分は本当に充当できないということであります。日本の偏ったある部分だけの国際化という、つまり、社会の国際化、そして研究環境の国際化を全体として考える中でがん研究のあり方を考えないと、スポット、スポット的な国際化は、今やもう限界に来ていると考えています。
 これをまとめたのは9ページですけれども、厚労省から、それぞれ1年、3年、10年、20~30年を書けというのが来て、私は吐き気がしてしまってそこで一瞬とまってしまったのですけれども、今書いて一応ここにありますので、後で見ていただくということにしたいと思います。
 10ページ、この3つに限ったことではありませんが、特に力を入れるべき研究というのが10~15ぐらいあるのだろうと思います。その中で癌学会としてわかりやすいというものを3つだけ挙げてまいりました。
 Aは、本態解明、そしてその知見がすぐに治療法に生かされる研究システム。
 Bは、競争力の問題もあって考えなければいけないのは、ゲノム科学を基盤とするがん研究というのは、1つ分けて中心として考える必要があります。
 C、後で出しますが、とにかくある意味、研究の本格的な予防へのシフトを始めないと患者さんは減りません。ということで、真に有効ながん予防法確立のためのがん研究。つまり、がん予防というよりは、今までやられてきた施策はがんを引き起こす感染症予防というのが中心になっていますので、やはり真に有効ながん予防法確立のためのがん研究をこの10年は統合的に取り組むべきだというのが提案です。
 簡単に一つ一つお話しします。
 Aですけれども、がんの本態解明とその知見を生かした治療法開発ということですが、先ほど左側のところで、いわゆるがんの基礎研究、これは西山先生のスライドでも厳しく批判されましたが、シーズプッシュ型では押し出し、私と西山先生だと相撲の話になりますが、プッシュかプルかという話で押し出しになるわけですけれども、この基礎研究から押していくという話のときの基礎研究といったときに、患者の方々、がんの基礎研究者は誰なのだということをお考えになると思うのです。物ができ上がると、グリベックができ上がると、それを見つけたのはあの人だよ、ジャパンプライズのあの人が標的遺伝子を見つけたのだよ、あの人ががんの基礎研究者なのだと出てきますが、実際にはそうではないのです。つまり、5年後、10年後のがんの医療をつくり出す、そのもとになるイノベーティブなシーズを見つける方たちは、ここにあるように全くがんに興味がないライフサイエンス研究者がいたり、あるいは技術開発に命を燃やしている。例えば細胞1個まで見えたけれども、どうしてゲノムの塩基1個が見えないのだということをやっている研究者だったり。そして、その中で、がんの生物学的特徴を把握したいとやっているがんの基礎研究者、つまり狭義のがんの基礎研究者がいて、この三位一体となった動きがイノベーティブに活性化しないと、いいシーズは生まれてきませんということで、広いがんの基礎研究と狭義のがんの基礎研究を分けて考える必要があります。
 そのときに、このがんの基礎研究のアウトカム。アウトプットは山のように出てきますが、アウトカムは何なのだというと、明らかに2つに分かれます。1つといえば社会の貢献でそれは間違いないのですが、貢献をこうやってしたいなとみんなが夢を描いているときには、新たな知の創造です。とにかくわからなかったものをこれだけみんなに見せたいのだ、教えたいのだというのがあります。同時にもう一つ、全員が持っていますが、それを使ってがんの予防と治療をしたいのだという2つは、必ず2つ共存するというのががんの研究だと患者の方にも御理解いただきたい。
 これがややもすれば問題になるのが分子標的薬を初めとする薬剤開発です。つまり、知の創造は一刻も早く正しいことをみんなに知らせたい。特許制度を考えると、一刻も早くお薬は開発したいけれども、物は隠しておきたいというのが非常に相反するもので、これをどういうふうにコンプロマイズしていくかというのが研究領域全体を活性化するためには非常に重要なポイントになります。その辺は野木森構成員がいらっしゃるので、この後、話としても出るかもしれません。
 その2つに分けて考えましょう。まずは本態解明そのものがどうなるか。これから幾つかポイントがありますが、基礎研究者がとにかく一つがんを治すことにつながるに違いないと思って、今、中心になっているのは、ここにあるがんの多様性とがんの可塑性です。先ほど言った1種の中のがん細胞、あるいはがん細胞1個のゲノムを読み切っただけでは理解できないのは、人の体の中にある全てのがん細胞の多様性、再発するときにはどの細胞が再発するか、薬で治療したときにはどの細胞が死なないのかは、今の状態では全くわからない状態ですので、要するにがんの多様性、もう一つはがんの可塑性です。これはiPSからお金をもらいたいというせこい根性ではありませんで、基本的にはiPSでわかりますように、これから後、幹細胞というのが出てきますが、あしたの幹細胞が今何をしているかは一切わかっていません。というところからも、がん全体としての可塑性あるいは細胞レベルの可塑性という、これがキーワードとなってということはがん幹細胞というのはここから3年間ぐらいのキーワードになるのですけれども、本態解明は進むであろうと。逆に言うと、イノベーティブな薬剤開発あるいは診断におけるイメージングから、全てこういうものを意識した診断法開発、治療法開発がこれから出てくるべきだし、そこで一番大きくこれからかかわってくるのは、恐らく薬剤併用のときの体の中での人のがんの多様性の変化というのが鍵になってくると思います。それを見られるTR研究がやれる国は先進国となると思います。
 13ページ、先ほど言いましたように、モチベーションのアウトカムは当然社会への貢献で薬剤開発になりますが、シーズがそのままあるときでは、先ほどグリベックができると今から見るとヒュージョンジーンのフィラデルフィア染色体はすばらしかったように見えますが、それに似た染色体異常が山のように転がっている中でどれを拾ってどう育てるのかというところこそが橋渡しの前段階になりますけれども、一番大事なところで、この一番左側のところです。イノベーティブな基礎研究シーズ、これは見にくいですね。これはわざと見にくくしているわけです。あっても見えやしない。この中から見て、見たからには育てないと本当の種かどうかわかりませんから、とにかく苗をつくるところまでの制度をやらないと、これは一般的な研究事業のモチベーションではなかなかできないところで、そして、企業もなかなかここに手を出せない状況になっていますので、ここは制度化してやっていくべきであろうと思います。
 14ページ、この2つが一緒になると、この2つの本態解明の両方の側面、これを一緒にして、20年後、30年後には転移再発を抑制する、固形がんを根治する薬ができるというのが完成するだろうということであります。
 15ページ、ゲノム科学ですが、ミレニアムでヒトゲノムが読まれて、なぜ今さらゲノム化なのだとおっしゃる方もいるかもしれませんが、基本的にはがんの診断・治療、個別化医療が全てゲノムの情報でやられる時代がもうすぐ目の前に来ています。恐らく10年後ではありません。いわゆるクリニカルシーケンスという言葉で取りまとめられていますが、これはどういうことかというと、要するにシーケンス情報がクリニックスでのディシジョンを決める、そういうためのシーケンス情報がクリニカルシーケンスですから、要するにその方のシーケンスがその方の診断、地理を決めていく時代になる。個別化医療の究極のような形です。
 ということから、今までややもすれば、シーケンスをすることで分子標的が見つかって抑制阻害剤ができて薬ができるという、この上に書いてある本態解明から左側の一方向性のゲノム科学が、今や全てのところがゲノム情報がカップルしていないと科学が進まない状況になっています。ということは、逆に言えば、先ほどの話ですけれども、治験をやった方の体の中のがんがどのように変化したかをゲノム科学で見させていただくということが必要で、右から左に戻っていく赤棒が大事です。例えば安くなった安くなったといっても、まだ1,000ドルシーケンスはいっていません。でも、10年後には100ドルシーケンス。そこで大事なのは次世代シーケンサーだとワンレーンで、およそ200個の200ゲノムのシーケンスが読めます。ということはどういうことかというと、がんのシーケンスをしましたといったときに、何百億円かけて2000年にできたマップが、今やそのがんの200個分のバリエーションのあるシーケンスが読める。あなたの再発の可能性があるのは何パーセントいますね、しかし、そのときにはこういうお薬がありますから大丈夫、あるいはあなたのは何パーセント以上超えているから、その薬を今から使っておきましょうかというような個別化医療が出てきますので、とにかくゲノム科学をしていかないと日本人のクリニカルシーケンスが外国で完成する時代になってしまいます。
 ということで、ゲノム科学としては特になぜこんなに言うかというと、下のゲノム解析基盤です。これだけサンプルが必要だ、シーケンサーが必要だ、何よりもコンピュータが必要だ。もう原子力事故を一番こうむっているのはゲノム科学です。スパコンが全く動かないよう状況。電気を物すごく食いますので、物すごい状態になっていますので、やはりここのところを支えないと日本人のがんの医療は関係しないというのがあります。
 最後に17ページ、やはり要望法をもう少し本気になってみんなで取り組まないといけない。たばこも大事だし、感染症も大事だけれども、それで減るがんは3分の1である。残り3分の2はどうやって減らすのだと。高齢化社会で、ここに丸が書いてありますが、すばらしい分子標的薬ができ、すばらしい検診の機会ができても、日本だけは高齢化に負けてふえ続けている。だから、予防へのシフトはどうしても必要だ。そのときに左側、食道がんを例に挙げましたけれども、国内特有のがんのパターンというのがありますから、予防には本当に国内での研究の推進が必要だと。
 18ページ、研究者の中でのステークホルダーが基本的に基礎研究と公衆衛生・社会学とのタイアップが先ほどのように縦割りになっていて、本当にフェーストゥフェースでできていないというのが非常に大きいです。これからランダマイズドコントロールスタディをきちっとやる。祖父江構成員がおっしゃるのはいいですけれども、治療のランダマイズドコントロールスタディでさえこんなに大変なのに、予防のランダマイズドコントロールスタディはそれの10倍量がかかって、お金がもっともっとかかるときに、いかに有効で小規模で早くものを出すスタディを、このエビデンスを使うことでやっていくかということだと思います。
 逆に言うと、基礎研究はそれに使ってもらえるような発がんの内的・外的要因に関するエビデンスをいかに出していくかということです。ここのキャッチアップがあると、要するに介入もできるし、あるいは個人、個別化予防も確立していくということになります。ただ、それには先ほど祖父江委員が出されたように、コホート研究、大型コホートと疾患コホート、この2つでさえ2つ一緒にうまくなっていないので、コホート研究と一緒になって情報、サンプルの共有というものが絶対に必要ですし、加えて政策研究、つまり使う情報はもっともっとあるべきであるということで、がん登録情報の精度管理等をもっともっと進めていただかないと、せっかくの情報が無駄になる。ただ、言いたいのは、基本的に予防に向けた統合的な研究推進というのは絶対に急務ですという話であります。それは19ページに書いてあります。
 20ページ、がん研究を取り巻く環境と課題の解決に向けて、ここまでいろいろ申し上げてきましたが、2つだけ申し上げたいと思うのですが、日本癌学会大阪宣言(2010)というものがあります。これは門田会長が総会をやられたときに私が理事長でありましたので、2人でやらせていただいて、そしてそのときにはがん研究のステークホルダー、産官学、患者さんもいらっしゃいましたし、マスコミの方もいらっしゃって、全ての方たちがいて3時間以上にわたってディスカッションをして必要なものをした。それでここに3つまとめてあります。
 この3つの一番上は、研究者は下品ですから、まず研究資金が足りないのを理解してくれと、足りない中でやっていくけれども、足りないぞというのが一つです。ただし、もう一つは、コンティニュアスな話は10カ年というよりも長い人材育成のスキームが必要です。一番最後が、これは繰り返し言われた、がん研究は何をやっているかわからない。役に立っているとこんなところだけで言われても、あるいは予算取りのところだけで言われてもというのを強く言われました。ということで、この大阪宣言を門田先生が残されたというと遺言みたいですけれども、門田先生が残されたわけです。
 これは今も全く変わらないということがいいことかどうかわかりませんが、22ページ、そこから毎年毎年私としては一応これを受けとめて、毎年継続的議論を学術総会でずっと続けてきているのです。とうとう去年の総会ではかなり強く言われまして、現状把握はいいから動けということを言われまして、宣言から実行へというのが求められるということで、ことしになって共同委員会というのを立ち上げました。要するにがん研究とステークホルダーの間をつなぐもの、ステークホルダーですからあるとあらゆるステークホルダーですが、何よりものステークホルダーは市民であるということで、この共同委員会に日本癌学会みずからのお金を投資して、とにかくこの間をつなぐ活動を始めましょうと。そのためにまずがん患者さん、市民ががん研究に望むものを吸い上げて、何よりも同時性でがん研究の状況を発信しましょうというのを始めましたので、今後、こういう役割が必要だという場合には使っていただければありがたいと思いますし、ステークホルダーとしてということですから、ステークホルダーとのかけ橋ですから、製薬企業との開発に関するもの、あるいはマスコミとの関係という全てをやりますので、ぜひ使っていただければ。
 最後に、これは日本癌学会と違うのですが、がん対策協議会の委員としてここに何人かいらっしゃいますが、門田先生が提起されたことを1回とにかく議論していただきたいというのが一つだけあります。それはこのままいけば7年後に、あるいは3年後にがん対策基本計画の見直しは行われて、そこにはがん研究の柱というのがきちんとあって、そのためにはまた小委員会をつくって、我々半年にわたって4時間のディスカッションを11回やって、おまけに十数ページの提言をまとめて、それががん対策基本計画のA4の3分の2ぐらいの部分になる。がん対策基本計画はそういうものですからそれでいいのですけれども、ただ、あの議論というのがそういうものだけのために終わって、また次のときにというのを繰り返し繰り返しやっていくというのは何かおかしいのではないか。
 それをシンクロナイズさせるという話よりも何よりも、そのずれであったり、その全てを情報的に把握している何か組織が必要なのではないかと思います。これは日本癌学会とは離れますが、そこのところは1回ディスカッションしていただけるとありがたいと思います。
 時間を使いました。以上です。ありがとうございます。
○堀田座長 ありがとうございました。
 最後の話は、がん対策推進協議会の下部組織として、がん研究専門委員会を野田先生が中心になってまとめられて、その報告書があるのです。かなりきちんとした報告書が出ていて、それがA4の3分の1ぐらいになってしまったということなので、それはそういうものだと思いますけれども、そういったことも含めてディスカッションするということで、実は3次がんの総括報告を次回させていただきますが、そういうことも一応踏まえた上でということを今後も念頭に置きたいと思います。ありがとうございました。
 それでは、時間も大分押してきておりますので、次にまいりたいと思いますが、よろしいでしょうか。
 製薬企業の立場からということで、野木森構成員からお願いいたします。
○野木森構成員 
日本製薬工業協会、略しまして製薬協と言っているのですが、そこの副会長をしております、アステラス製薬の会長の野木森でございます。
 今までエネルギッシュで、しかも少し長めのプレゼンが多かったと思うのですが、私はできるだけ時間を守って15分ぐらいでのお話にさせていただきたいと思います。
 2ページ、私どもの業界の宣伝みたいになるかもしれませんけれども、製薬協は70社メンバーがおりまして、いわゆるリサーチベースの製薬会社の集まりということで、私たちの実際行っていることが社会にどういう影響を与えているかというのをスライドに示しています。
 まずは、新薬をつくるということ、既存の製品を安定的に供給していくということで、患者さん、そして先生方の要求にお答えする。2つ目は、左側の赤いほうですが、新しい薬をつくることによって、その過程で発生する新しい知見、ないしは新しい薬を使っていただいて、さらなる科学の発展に寄与していきたい。最後に緑ですけれども、私たちは営利団体ですので、私どもの実際の利益が経済発展へ貢献していく。この3つがバランスよく行われて私たちの業界が動いていくということになります。
 3ページ、きょう私がカバーする領域ということで1~6までまとめております。健康寿命の延長ということが非常に強く求められている時代でもありますし、昨今は経済再生への貢献ということで、医薬品産業をかなり強化するということがうたわれております。その立場から、今回2~5の項目でお話をしていきたいと思います。
 5ページ、最初に今後のがん研究のあり方ということで包括的に見ているのですが、産業側から見まして、政府、アカデミアに注力していただきたい項目を絞った形であらわしたものでございます。
 一番右下の探索研究から、だんだんブルー、赤、グリーンと流れていくわけですけれども、まず基礎的なところでは、探索研究のところになりますが、アカデミアには基礎研究、基盤技術の研究開発に集中、特化していただき、その成果を早期に臨床に橋渡しいただきたい。それと同時に、臨床はスピードということが非常に重要になっています。ここでの効率化と同時に、体制の強化が求められて来ます。
 右の上になりますが、患者さんの診療情報を新しいがんの研究につなげるため、出てきたアウトカムを次の研究につなぐ。すなわちデータベースの構築、バイオバンクの充実、このあたりを充実させると同時に、それの門戸を開いていただきたい。製薬企業としましては、新薬創出に向けて確実に私どもは努力する所存ですので、アカデミアにはアカデミアのやれることを、そして製薬会社は製薬会社の得意なところをうまくマッチングさせて新しい薬の開発につなげていきたいと思っています。
 次の2の項目、新薬創出標的の発見/探索~開発候補物質の創出に関する研究というところで、7ページのグラフを見ていただきたいと思います。
 ここは色分けして示してありますけれども、赤い部分と青い部分。赤い部分はアカデミアがむしろ主力となってやっていただいたほうがいいのではないか。そして、ブルーのところは製薬会社が得意としているところ。昨今オープンイノベーションという言葉が非常によく使われますように、アカデミア、産業界が一緒になって基礎研究も進めていく必要があるわけですけれども、大学・公的研究機関は疾患のメカニズムの解明、そして疾病原因分子の同定、生理学など、企業ができないイノベーションにつながる基礎研究を分担していただいて、創薬標的が見つかった後のスクリーニングや化合物の合成展開など、応用研究は製薬企業が得意としているところ。したがいまして、むしろそのパートについては製薬会社にやらせるという考え方を持っていただきたいと思います。
 さらにアカデミアには、基礎の基盤技術の研究、リサーチツールなどの研究開発にも注力していただきたい。これは私ども企業も当然やるべきことなのですけれども、バイオ医薬品がふえてきております。バイオ医薬品の製造コストを下げる技術の研究開発にもアカデミアに取り組んでいただきたいと思います。そういうことで、餅は餅屋ということになると思うのですが、それぞれの強みを本当に生かしたオープンイノベーションの展開をしていきたいと考えております。
 8ページ、9ページは、今挙げました項目をさらにブレークダウンして、最後、右側のほうに、それがきちんとできるとこういう結果が出てきますよというアウトカムの期待が挙げられております。
 次に進ませていただきますけれども、3つ目の項目の個別化医療実現に向けた研究開発。これは研究開発の中でも昨今、特に個別化医療というところにフォーカスが当たってきております。11ページのスライドには、古いものから新しいものまで日本オリジンのがん治療薬を挙げております。昨今は分子標的薬が特に研究開発のパイプラインにはふえてきておりますし、ここに挙げておりますように、実際の医療の場でも日本発のものとしてポテリジオ、ザーコリなどが使われるようになってきております。
 こういう状況に合わせて私どもも変貌を遂げていかなければいけないということと同時に、新しいデータが出てくる、それらをいかにマッチングさせて研究していくかということになるかと思います。特に個別化医療のところでは、バイオマーカーの探索、検証ということが非常に大切になってきます。それが予防、診断にも使える、そして同時に結果のフォローにも使うことができるのではないかと思います。研究の過程で出てくる、バイオバンクの問題、さらにはコホート研究、このあたりを進めていくにはかなり大規模な活動が必要になってきます。これを中途半端な形で個別に幾つも連立するというのではなくて、きちんとしたものを1つまとめた形でつくるという意気込みと同時に、長期にわたるコミットメントが必要なのではないかと思います。
 同時に、これは私どもからお願いすることになるのですが、今後の抗がん剤で個別化医療製品はコンパニオン診断薬と一緒になって開発されていきます。ぜひとも実際の使用に向けて同じタイミングで承認がいただけるような方策を確実につくっていただきたいと思います。
 12ページは前の項目と同じように、課題とそれをブレークダウンした形で将来の期待される結果が挙げられております。
 その次、4番目の臨床試験環境の整備に移らせていただきます。14ページ、少しわかりにくい図になっているかもしれませんけれども、探索研究から進みまして臨床研究になってくる段階で、早期の臨床有効性をいかに見るかというところが大切であるということと、もう一つは、実際の人での有効性がわかる、よくPOCが取れたと言いますけれども、POCが取れた後の大規模臨床研究をいかに効率的に早く短時間で進めるかということが重要かと思います。特に最初のところの早期の臨床の有効性ですけれども、もちろん、倫理面での管理というのはきちんとやっていかなければいけない。しかし、その中でも新しいバイオマーカーなどをツールとして使うことによって、例えば臨床試験の一部を免除できる、省けることがあれば、そういうこともレギュレーションの中で取り入れていただいて、新しいガイドラインをつくっていただく。
 例えば今年、国立がん研究センターで早期・探索臨床研究センターができまして、こういうところがさらなる効率的な臨床研究を推進していただくということで、一つ大きな進歩となっておりますけれども、これをもっと強力に進めていただきたいと思っております。
 第3相の試験、大規模臨床試験のところですが、日本の状況を見ますと、一施設で集まる患者さんの数というのは諸外国に比べるとまだ見劣りするという状況があるかと思います。したがいまして、もう少し大規模臨床試験が進むように、一施設当たりの症例数をもっとふやせるような形でのがん関連施設のネットワーク化ということを進めていただき、効率的な臨床試験を実施できるような体制をつくり上げていただきたい。特に患者レジストリーを持つ先生方との連携も効率的な試験推進では考えるべきことの一つだろうと思っております。
 15ページに挙げておりますのが、先ほどと同じように臨床研究での課題、それをブレークダウンしております。
 5つ目の項目、16ページに目次だけ挙げておりますが、臨床でのアウトカムをもう一度基礎に戻すという、要は好循環をつくるというところでのお話ですが、17ページのスライドで表示させていただいております。ここでは例えば全国臓器別がん登録など、アカデミア、そして学会が中心になって行っていらっしゃるがん関連のレジストリー研究の整備をさらに図っていただく。そして、それを産業界が医薬品開発でも利活用できるような体制を整備していただきたいと思います。
 同時に、臨床医を中心とした研究会に基礎研究者、製薬企業の研究者も簡単に参加できるようにするなど、さらなる両者間の情報共有を積極的に行える仕組みを構築するということが重要かと思います。もちろん、製薬企業は臨床で得られた知見、情報を新薬開発につなげる創薬、適応症拡大につなげる育薬の活動にも取り組んでまいります。
 先ほどレジストリーのお話をしましたけれども、がんのゲノムコホートが現在実際に進められております。こういうデータもまだ有効活用するには時間が要るかと思いますけれども、できた段階では製薬企業も有効に活用できるような門戸をぜひ開いていただきたいと思います。
 18ページは同じ繰り返しになります。
 最後にまとめなのですが、20ページ、最後のところで7項目挙げておりますけれども、もう少しそれをまとめてお話ししますと、いわゆる基盤研究、創薬標的研究、リサーチツールなどを含めた、特にアカデミアが強みを発揮できるところ、それと実際に標的が見つかった後、製薬企業が得意とするオプティマイゼーション、このあたりをもっと有効に結びつけることによって、新しい創薬のインフラをつくっていきたいと思っています。よりダイナミックな産官学の連携ということになってくると思います。臨床研究を早期に進めるための橋渡し研究の強化、さらには効率的臨床試験推進体制、レギュレーション、制度改革を強力に進めていただきたいと思います。臨床の成果をもう一度基礎にフィードバックする、この仕組みを確実に組み込んでいただきたい。
 結構雑多なことを申し上げましたけれども、以上が私どもからの要望事項でございます。○堀田座長 どうもありがとうございました。
 ただいまは製薬協の野木森構成員から、創薬あるいはそれを実際にアカデミアとどういうふうに分担していくかという視点でお話をいただきました。時間も押しておりますので、一当たり発表いただいてからディスカッションとしたいと思いますが、休憩をとったほうがいいですか。このままやってしまいますか。
○野田構成員 ちょっとスタートがおくれたので。
○堀田座長 済みません。では、続きまして、御用がある方は途中で中座していただいても結構ですので始めたいと思います。
 その次は、日本画像医療システム工業会の小松構成員からお願いいたします。
○小松構成員 小松でございます。
 医機連の副会長並びに日本画像医療システム工業会(JIRA)の代表といたしまして、産業界から発言をさせていただきたいと思います。
 まず、現状でございますが、医療産業の市場状況をお話しさせていただきます。
 2ページ目、世界の医療全体の市場は2000年以降、年率で8.7%ずつ拡大し続けております。2010年には医療サービスを含めてトータルで520兆円に上るという市場規模でございます。この中で世界の医療サービス市場は、医療そのものでありますが、420兆円という非常に大きく、今後もこれが拡大していくという市場環境であります。一方、薬は80兆円、医療機器におきましては、世界でたかだか20兆円という状況でございます。日本の医療機器の市場は2兆円前後と見られております。今後、新興国を中心に市場の伸長が全体としては期待されているということでございます。
 3ページ目、2兆円の日本の市場の中で、医療機器産業全体でございますが大幅輸入超過と言われております。その中で下のグラフの右側、これはそれぞれの産業ごとに輸出と輸入を示しております。下のグラフの右側に示しております診断系の産業は、がん疾患を初めとした早期発見、早期治療を掲げておられる我が国の医療に携わる先生方の非常に厳格な要求と御指導を背景に、国際的に高い輸出競争力を持っているということが言えると思います。
 例えばCT、MRI、あるいは内視鏡などの大型画像診断システムにおいては、国内生産の50%以上を輸出しているということであります。海外からの輸入は30%以内にとどめている国際競争力のある産業分野でございます。今後、日本が世界をリードするであろう再生医療の分野におきましても、画像診断システムの担う役割は非常に大きいと認識しております。
 4ページ目、現在、医機連では、医療機器産業側から、産業活性化に向けた課題とその改善施策を政策提言し、協議を続けております。その中で薬事法改正並びに医療産業の海外展開は非常に重要な産業側としての要望でございます。関係各省にも御努力いただいておりまして、特に薬事法改正におきましては、医療機器の特性を踏まえた規制を見直されることで、迅速に臨床へ適用できることになろうと思っております。
 5ページ目、さて、がん関連の基礎研究に使用される質量分析計、あるいは健診・予防から診断、治療の臨床の中で使用される画像診断システムなど、医療機器技術は広く利用されているということでございます。特に画像診断システムは、臨床のワークフローの中でさまざまな画像情報を生み出してきております。ただし、医療機器というのは医師あるいは医療者が使う道具でありまして、この医師あるいは医療者を手助けすることを通して、がん医療に貢献しているということでございます。
 6ページ、産業界を担う企業の研究開発においては、非常に特徴がございます。企業側の研究開発というのは、事業の継続性を維持するという非常に大きい命題がございます。したがって、世界各国市場の変化をタイムリーに把握し、製品ターゲットの選択と集中を判断しながら、商品開発のスピードと効率を最大化することで、競争優位を確保するということが非常に重要になります。
 革新的な大規模開発においては、先を見つめる医療者と共同し、医療ニーズを捉えて確実な出口戦略を持って商品開発を行い、可能な限り現実的な価格と安定した製造技術によって商品化を達成するということが必要になります。これには非常に膨大な時間と費用を要します。先を見通した臨床医療ニーズに基づく研究、技術開発と、事業主体みずからが世界市場に対する出口戦略をもとにした投資回収計画を策定していかなければなりません。また、医療現場と密着した改良・改善も当然ながら欠かせないわけであります。
 7ページ、ここに大規模開発の一つの例を紹介します。かなり大量の投資と時間をかけた開発でございます。1990年代のCTは、シングルスライスCTが全盛でございまして、1回転ごとに1枚の断層像をつくるため、長い時間をかけて臓器1個を描き出していたわけでありますが、その時代に将来の医療を予見していた医療者とともに、企業の側が4次元CTの必要性を提案いたしました。
 1998年に経済産業省、NEDOの支援を受けまして、臓器を1回転で撮影する256断面の同時撮影CTの開発に着手いたしました。結局それから約10年の月日を要しまして、2008年に心臓、脳あるいは肺へ適用できる320列のCTを製品化し、日米欧あるいは中国に同時世界発売したとのことでございます。この技術、今、売り出して5年たちますけれども、5年間、いまだに他社の追従を許さないという経済産業省のサポートのおかげでここまでこられたということでございましょう。
 8ページ目、新戦略の中で位置づけるべき項目といたしまして、医療機器産業界として医療者との連携によって、超早期診断技術、低侵襲治療技術の実現に必要な革新的医療機器開発を行い、迅速に臨床の場に届けるということを目標としております。したがって、第一に、全体像を総合戦略としてまとめて、全てのステークホルダーに提示することが必要になります。2つ目には、医療機器の研究開発を重点化して進めること。3つ目には、実用化を目指す企業の支援を強化する必要があります。さらに多くの民間投資を喚起いたしまして、さまざまな産業の優れた人材や技術を導入し、研究開発を強化していく必要があろうかと思っております。
 9ページ目、第1の総合戦略の策定に関してでございますが、政府は成長産業の柱の一つとして医療分野の強化を位置づけ、医療機器の審査、承認の迅速化など、規制の見直し、海外への輸出促進などに取り組んでおられます。これに応えまして、企業側は戦略商品の開発を推進してまいりますけれども、研究開発力を強化するためには、民間資金の調達あるいは他産業の優れた人材あるいは技術の導入の活用が必要であります。投資家や他産業の経営者あるいは研究者に向けて、魅力のある出口戦略を意識した総合戦略を提示して、医療産業の新規参入を産官学連携で働きかけていくことが重要だと考えております。
 10ページ目、次に、医療機器の研究開発で重要と思われる4項目を挙げました。
 画像バイオマーカーの探索ということが1つであります。
 2つ目に、画像誘導の低侵襲治療の拡大でございます。
 3つ目に、難治性がんの診断・治療の研究促進でございます。
 4つ目には、在宅がん医療の高度化ということになります。詳細は省きますけれども、二、三説明させてください。
 11ページ目、がんの早期検知あるいは進行度の判定、治療効果の事前予測あるいは術後の判定など、その指標となるべき画像バイオマーカーの探索が非常に重要でございます。画像情報から形態あるいは機能、代謝に対するさまざまな情報から、画像バイオマーカーを探索し、超早期の診断あるいは低侵襲治療の実現に向けまして貢献していければと考えております。再生医療の中でも移植した再生細胞の状況を示す指標として利用されることでありましょう。
 12ページ、次に体腔内手術、血管内手術、放射線治療に代表される画像誘導の低侵襲治療のさらなる拡大でございます。超高齢化社会となって、高齢者の新たながん罹患がさらに増加してまいります。より負担の少ない画像誘導・低侵襲治療を実現していきたいと考えております。
 13ページ目、がんを発症すると、非常に長期間の加療、さらには治療後のフォローアップが必要となります。医療情報ネットワークを多様化しながら、さらに高セキュリティ化を促進して、在宅医療インフラを高度化しまして、クラウド時代の在宅がん医療と呼ばれるものを実現していきたいものだと考えております。
 14ページ目、新戦略の中で位置づけるべき項目の3番目でございますが、医療機器の実用化を目指す企業の支援の強化でございます。我が国には優れた医療に培われた優れた医療機器技術があります。しかしながら、中小企業を中心にまだまだ日本の2兆円の小さな市場の中で事業を行っている状況であります。この事業を大きく国際展開していくための支援でございます。
 1つ目には、医療機器の実用化開発、あるいは国際展開を支援するファンドの設置でございます。公的研究資金は単年度が基本でありまして、さまざまな施策を同時並行で展開するには使いにくい資金であると言わざるを得ません。企業向けファンドを創設いたしまして、実効性の高い実用化計画と妥当な出口戦略を持つ企業に対して資金援助をするというものでございます。特に中小の企業の参入が加速すると思います。
 2つ目には、たしか19日、先週の安倍総理の記者会見にありましたように、医療の海外展開に官民一体となった組織をつくるということでございました。ぜひとも我が国のがん診断治療で培った先進的な医療と医療機器を輸出する相手国との窓口として、この組織を活用いたしまして、海外の市場展開を行う企業をオールジャパンで支援するということに期待したいと思います。
 最後でございますけれども、複数の企業体が厚みのある事業展開をすることで、相互の事業間のシナジーを期待したいと思っております。日本ではオープンイノベーションはなかなか育っていませんけれども、世界に先駆けた革新的医療技術あるいは医療機器を創出するために、産官学連携で環境を整備していければと考えております。
 15ページ目にマイルストーンを示しておりますけれども、なかなかがん研究の30年後の姿を産業界としては描くことができないので、2~3年ごとに見直しながら進めたいと思います。
 以上でございます。
○堀田座長 ありがとうございました。
 ただいま業界から製薬工業会、そして医療機器の業界からの発表で、これはただいま成長戦略というところではここが目玉になっていますけれども、こういうものとがん対策あるいはがん研究がどう切り結んでいくのかというところで接点にはなるのですけれども、これだけで全てを片づけられないという問題もあるものですから、こういうものを全体としてがん研究の中にどう位置づけていくかというのは、これから皆さんとディスカッションしたいと思います。
 それでは、最後になりますけれども、医療経済学的な側面の視点から、国立保健医療科学院の白岩構成員、よろしくお願いします。
○白岩構成員 保健医療科学院の白岩でございます。よろしくお願いいたします。
 私は、保健医療科学院で、医療の経済評価とか医療技術評価といった領域に従事しておりまして、必ずしも先生方のようにがん研究のあり方といったものに精通しているわけではないわけでありますけれども、我々が取り組んでいる研究分野、医療経済評価、医療技術評価といった分野が、こういったがん研究のあり方に多少なりともお役に立てればということでありまして、今回御発表させていただきたいと思っております。
 2枚目、医療技術を開発する際に、今までの多くの医療技術というのは、品質、安全性、そして有効性といった要素が証明されていれば、医療技術として広く普及して使われるという状況だったかと思うわけでありますけれども、近年はこれらの要素に加えて4番目のハードルだというような言い方がされますけれども、医療経済性、費用対効果といったものが医療技術の評価においても非常に重視されるようになってきていると考えております。
 3枚目、なぜこのような医療の経済評価といったものが重視されるようになってきたかといえば、皆さん御案内のように、医療費の伸びというのに先進諸国どこまでも頭を悩ませているというところでございまして、日本でも10年平均で2%強ぐらい公的な医療費が伸びているわけでございますけれども、それに比して経済状況というのは芳しくないところでありまして、対GDP比で見ますと、2000年の6%から1.3倍のここ10年で7.8%と約1.3倍の量にふえているというのが現状かと思います。
 4枚目、では、医療費が増加している要因は何かということを細かく見ていきますと、要因ごとに例えば診療報酬の改定ですとか、人口の増加、高齢化あるいは技術進歩といった要因に恐らく分離できると思うわけでありますけれども、4ページの図をごらんいただきますとおわかりのように、医療の技術進歩が医療費の増加の大きな要因を閉めるようになってきているというのが現状であります。これは医療費全体の絵でありますが、恐らくがん研究においては、がんの領域というのにおいてはもう少しこれは顕著な形であらわれているのではないかと思っております。
 5枚目、医療の経済評価というものは一体何かと申しますと、先ほどお示ししましたように、科学技術が進展することによって、高額な医療技術というのが次々に登場して増加してきている。一方で、先進諸国では高齢化の進展や経済成長の鈍化で医療費自体のパイが限られてきているという現状の中でして、医療経済評価というのは医療技術の費用対効果、すなわち得られる治療効果と費用の兼ね合いを考えるという学問領域であります。
 しばしば誤解されるわけでありますけれども、これは別に費用が高いから、医療費が増加するからだめだというようなコストカッター的な視点ではなくて、あくまで治療費用、投資した費用に見合うアウトカムが治療技術から得られているか検討するということを御理解いただければと思っております。
 6枚目、医療経済評価の基本的な考え方としては、医療経済評価の結果というのは増分費用効果費、我々はICER(アイサー)と呼んでおりますけれども、これであらわすのが一般的であります。この増分費用効果費というのは何をあらわしているかといいますと、分子が比較対象技術と比べたときの増分の費用でありまして、分母が増分の効果であります。増分の費用を増分の効果で割ったものでありますから、このICERというのは一単位の効果を獲得するのに必要な費用であるということになります。例えばアウトカムの単位が生存年であって、そのときのICERが500万円ということであれば、一生存年追加的に獲得するのに500万円かかる。これが高いのか、安いのかという議論がなされていくわけであります。
 7枚目、やはりこういうような考え方が必要になってきた背景には、非常に立場が違うというのがあるのかなと思います。今までの御議論はいろいろありましたけれども、患者さんの立場や読者の立場からすれば、当然有効で安全で、患者さんにとってベストな治療を選択するというのが当然でありまして、これは別に医療経済をやっている人間を軽視したりするつもりは全然ないわけであります。これが重要であることは全く否定しないのでありますけれども、しかし、もう少し広い社会全体の立場から見たとき、世の中全体の立場から見たとき、当然公的な医療費という有限の資源を使うわけでありますから、高額な医療技術がどんどん増加してきたときに、必ずしも患者さんや医師、ドクターの立場と社会全体の立場が一致するとは限らないというような状況が徐々に生じる可能性があるわけであります。このときにどちらの立場を優先させるかというのはもちろん議論があるところでありますが少なくとも何らかの説明責任のようなものが問われるのではないかと考えております。
 8枚目、我々がやっているような医療の技術評価で重視されるコンセプトとしては、以下の2点がありまして、1つ目は、追加的な臨床的有用性(Added clinical value)というものであります。これは既存の医療技術と比較したときの追加的な有効性がきちんと科学的に示されているかどうかというようなコンセプトでありまして、当然薬品や医療機器であれば知見を通して有効性は証明されているのでありますけれども、それよりもさらに生存期間あるいは健康関連QOL等の真のエンドポイントに近いような領域できちんと有用性が示されているかどうか。あるいはプラセボ等ではなく、実際の臨床現場で用いられているようなリアルワールドで使用されているような技術との比較というのも検討されることがしばしばあります。
 もう一点が、先ほど来御説明しておりますように費用対効果という点でありまして、これは既存の医療技術と比較したときに得られるベネフィットというのはどういったものなのか。それが医療技術の価格と見合っているのかどうかというのを検討する領域であります。
 第1回から御議論がありますように、日本のがん研究の予算は非常に限られているという中で、どういったところに重点的に投資していくかということになるかと思うのですが、こういった追加的な臨床的有用性ですとか、費用対効果の得られるような領域に、これだけではもちろん決まらないわけですけれども、こういった領域に重点的に投資していくというのも一つの考え方かなと思ったりします。
 がん研究においてこういった要素をきちんと示すということは、恐らく患者さんにとっても社会にとっても非常に重要なことなのではないかと思っておりますが、もう少しプラクティカルな問題として、実際にこういう要素がきちんと示されていないと海外市場で戦えないというような状況も徐々に生じつつあるかなと思っています。
 9枚目、これは医薬品の例で恐縮なのですが、ドイツにおける追加的有用性の評価が意思決定に活用されている例であります。このやり方については、いろいろ御議論あるところかと思いますけれども、2011年よりAMNOGと呼ばれている医薬品市場再編法に基づく有用性評価が義務づけられるようになりまして、追加的有用性の評価が市販後1年以内に行われるようになっております。ここで追加的な有用性がないと評価されると、非常に低い価格で取引、公的償還が行われないというような減所があります。
 10枚目、これがドイツで示されている追加的有用性の基準でありまして、サバイバルタイムですとか重篤な副作用あるいは健康関連QOLといった基準が重視されているということがおわかりいただけるかと思います。
 11枚目、ことしの2月までに追加的有用性評価が完了した27品目についての結果ですけれども、追加的有用性がありと評価されたものは12品目ということで、半分以下にすぎないというような厳しい結果になっております。
 12枚目、同様の評価はフランスでも古くから行っておりまして、これは5段階のASMR、追加的な臨床的有用性と呼ばれる基準で評価を行って、これに基づいて価格づけをするということがなされております。
 13枚目、ASMRにおいて追加的な有用性がありと評価されるような1~3のレベルに該当する品目というのはわずか20%以下にすぎず、多くの品目については追加的な有用性が認められないというような厳しい結果になっております。
 14枚目、今までは追加的有用性評価の例だったわけですけれども、費用対効果、医療経済評価というものを意思決定に活用している国の代表例としてはイギリスというのがありまして、お聞きになったことがあるかと思いますが、NICEという国立の研究機関、National Institute for Health and Care Excellenceという組織が中心となって、医療の技術評価、経済評価に取り組んでおります。
 15枚目、このNICEという組織は保健大臣の審査によって決められた一部の医薬品あるいは医療技術について技術評価を行ってガイダンスを出すということをやっておりまして、このガイダンスでは対象となった医薬品について、その使用を推奨する、あるいはしない、ないしは一部の患者集団に限定して使用を推奨するというような勧告がなされます。
 この勧告がなされる際に、当然臨床的な有効性・安全性というのはきちんと評価されるわけでありますが、これに加えて医療経済性、費用対効果というのが重視されるというのがイギリスのNICEの評価の大きな特徴になっております。
 16枚目、特にNICEの評価で大きな注目を集めているのが抗がん剤の評価でありまして、日本から見ると非常に乱暴に見えるやり方でいろいろ御議論があるところだと思いますけれども、私も必ずしもいいとは思っていませんけれども、こういうやり方をしているために多くの抗がん剤というものが費用対効果を理由に使用が推奨されない、あるいはしようが制限されているというような状況が出現しております。
 その結果、費用対効果のよくないものに関しては使用を推奨しないというような一律にリジェクトする形ではなくて、価格交渉を新たに行って、価格を下げることによって費用対効果が改善したものについては使用が推奨されるという患者アクセス保障(Patient Access Scheme)と呼ばれるようなやり方が適用されることがしばしばあります。
 17枚目、2011年以降に出された抗がん剤のガイダンスの中で否定的な結果が示されたものだけを持ってきたのでありますが、こういうものがNICEの費用対効果あるいは有効性効果で引っかかってきているというようなのが現状かと思います。
 18枚目、どういった領域の技術ががん研究において費用対効果がいいのか、あるいは経済性がよいのかというのは、一概には言えない。つまり、技術の費用やアウトカムの大きさに依存してくるわけでありまして、それが一番ですが、例えば固形がんの医療技術の評価においては、当該技術の医療費のみならず、関連する医療費というのも含めて検討するのが一般的でありますので、固形がんのような場合、下の図で示しましたように、上流で予防だとかの領域で優れた技術を開発できれば、下流の医療費の抑制効果も見込める可能性がありますので、費用対効果上、よい技術になるかもしれないということが言えるかなと思っております。
 19枚目、予防の領域において経済性をざっくりと計算すると一番簡単な方法というのはNNTを使う方法でありまして、御案内のようにNNTというのは、何人の患者に予防治療を行うと1件のアウトカムが獲得できるか、1件のがん予防が獲得できるかというような指標であります。
 このNNTに、介入によってかかる追加的な費用を掛け算しますと、先ほど御紹介しました増分費用効果費(ICER)になりますので、例えば1件当たりの費用が1万円でNNTが100、つまり100人に介入して追加的に1件のがん発症を予防できるというような技術であれば、1件のがん発症予防に100万円かかる。この100万円ががん治療の費用ですとか延命効果と比べて価値があるかどうかというのを判断する作業になってくるかと思います。
 20枚目、医療経済評価におきましては、医療費のみを取り扱うことが一般的に多いのですが、それに加えて社会的な損失ということで、労働生産性と損失も含めて検討することが行われます。ですので、例えば低侵襲の医療技術によって、たとえその医療技術の科学が高くても退院までの期間が短くなるということであれば、その間の入院医療費の減少ですとか、社会で働けた生産性の損失の回避といったものが評価に組み込める可能性がありますので、費用対効果が改善するかもしれないというようなことが言えると考えます。
 21枚目、治療が有効な先ほど来議論がありますけれども、遺伝子技術等々を使って、治療が有効なサブ集団というのを同定できて、これに対して限定して医療介入ができるようになれば、当然その費用対効果も改善する可能性がある。例えばトラスツズマブとかゲフィニチブ、セツキシマブなどという例もあるかなと思っております。
 最後にまとめになりますけれども、追加的な有用性評価や費用対効果というものは、患者さんや社会にとっても重要なのではないかと我々は考えておりますけれども、それ以上に、各国においてもこういったデータが求められることがふえてきておりまして、こういう要素がきちんと示されない場合、費用と時間をかけて医療技術を開発しても広く使用されなかったり、安い価格しか支払われないような可能性もあるということは視野に入れておく必要があるかなと思っております。
 ですので、がん研究においても、もちろん費用対効果だけでは決められないわけですけれども、前回の会議で出口戦略という議論もありましたけれども、出口戦略というものを検討する際には、こういった要素も意識しながら議論していく必要があるのではないかと感じております。
 以上です。
○堀田座長 ありがとうございました。
 これまでのがん研究には余りない視点として、新たにこういう視点もあるということを示していただいたと思います。今、中医協でもこういった費用対効果の分科会があったり、あるいは国民会議でも公的医療資源といったものをどう使うかといった問題で、根本的な考え方を改めなければいけないという議論もされているようでありますが、研究の中ではこういったものをどう生かすべきかというのは、これから深めてまいりたいと思います。
 ここで5分だけ休憩いただいて、すぐディスカッションに移りたいと思います。また5分後に御参集いただきますようによろしくお願いします。

(休  憩)

○堀田座長 それでは、そろそろ再開したいと思いますので、お席にお戻りください。
 きょうは6名の構成員の方からそれぞれ御発表いただきまして、最初に患者さんの視点ということで、特に膵臓がんを中心にして希少がんあるいは難治がんに対して治療、開発、あるいは薬が行き届けていない状況、そういったことはもちろんそれに限らず、今ドラッグラグという問題、新薬の開発あるいは未承認についてはかなり進んできたけれども、適用外についてはまだまだこれからの問題だという指摘がございました。そういったことも含めて希少がんといえども国際的に見れば一定数の患者はあるので、もっと国際的な共同研究等に進むべきではないかという提言もいただきました。
 こういう患者さんの視点あるいは希少がん、難治がんにどうするかという視点と、その次に公衆衛生の観点から、祖父江構成員から介入研究の必要性であるだとか、政策研究の位置づけ、事業化といった問題がございました。
 野田構成員からは、がん学会の立場から基礎研究を中心にして必要な研究のあり方といったところが出されました。ここまでを1つのまとまりとして前半の議論としたいと思います。
 最初に眞島構成員あるいは祖父江構成員、野田構成員に関係することで御発言あるいは御質問があれば受けたいと思いますが、いかがでしょうか。
 西山構成員、どうぞ。
○西山構成員 祖父江先生にお伺いしたいのですけれども、先ほどもお話が出ましたようにけれども、公的医療資源というのはこの国の将来にとってとても重要なポイントなのですが、どんどんとこれからビックデータになってまいります。りますけれども、それらの質的管理は?、それらをどこに集積するのですか?、一極集中方式ですか?、そうした方向性はことは研究費の中で配慮されているに?要するに継続的に集積すべきもの、臨床データもそうですし、ジェノムの情報もそうですし、そうしたものについて、のある程度のタクティクス、研究の方向性というのはあるのでしょうか。現状においていつも困るのは、どの研究においてもデータベースの作成が必要になって、みんなてんでんばらばらに作成する、なりますけれども、その結果実、質もがみんなばらばらで、さらに統合して使いようがないという状況。こうした中である程度データという公的医療資源の集積に関しての統一的な方向性をがんで示していかないといけないと思うのですが、先生のほうでに何かそうしたことについてお考えがありますでしょうか。○堀田座長 祖父江構成員、何かありますか。
○祖父江構成員 余り大きな話で何とも言いがたいところがありますけれども、少なくとも公的な資金を得て行った研究に対して、その資産として残ったデータベースをパブリックな形でアーカイブというような形で残して、みんなが利用できるような仕組みができないかという動きは多少あるかと思います。
 医療関係よりも、むしろ経済関係のほうでそういうことが進んでいるような話を聞きますけれども、例えば日本疫学会のようなところでもそうした追跡の終了したコホート研究をどう共同利用するかといったことを検討の課題としているというところはあります。あるいは研究班として、ことしから課題としているようなものもあると思います。
 そういう今までのデータをどう利用するかということと、現に集積されつつある研究について、いかに共通のフォーマットで、あるいは共通の基盤でやっていくかということと割と似ていることもあるかもしれませんけれども、そういったことをどこかヘッドクオーターというようなところがきちんと吟味して、指針を出すなり、そういう共通の基盤をつくるなりということを進めていく必要があるのではないかと思います。
○堀田座長 確かにいろんなコホート研究あるいはバイオバンク事業というのはそれぞれ別に立ち上がってきていますので、それなりの歴史とかあって、いざ統合となって非常に難しい問題だから、出だしからある程度整理がされていると本当はいいのですけれども、この辺は例えばバイオバンクジャパンだとか、6NCジャパンだとか、東北メディカルバンクなどでもどういう形で将来につないでいくかというのは、例えば中釜先生、その辺はどういう議論になっていますか。
○中釜構成員 今、実際に国レベルでの大きなバイオバンク事業としては、バイオバンクジャパンや、ナショナルセンターのバイオバンクの他、最近立ち上がった東北メディカル・メガバンクがあるかと思います。おのおの疾患コホートあるいは患者コホートという特徴があるかと思うのですが、今ご指摘があったように、これらがどのように連携をとるかというのは、当初はそれほど考えられていなかったのですけれども、今まさにそれは議論すべきだということで、実際にどのような連携があり得るのかという議論を始めているところであります。コホートの持つ性質上、ゲノムコホートは時間のかかることであり、疾患コホートとお互いに補完してどのように利用し合うかということに関しては、議論に時間を要することであると思います。利活用の幅を広げていくために必要なシステム、体制の整備、プラットフォームの整備であるとか、医療情報の抽出のあり方とか、そういうものを知恵を出し合って、今まさにその検討が進められているという理解であります。
○堀田座長 何かこの件あるいはそのほかでも結構です。
 眞島構成員、どうぞ。
○眞島構成員 今、ゲノム解析は非常に進んでいるということもあって、バイオバンクを患者会が独自に立ち上げ、例えば乳がんの団体でドイツなどはがん研究に貢献して、それから自分の治療、将来にわたっていろいろ心配だということでバイオバンクの必要性を訴えるというような患者会も出てきているのです。
 今、日本でもって我々患者会がこうやって活動している中で、ゲノム情報をどうやって活用していただけるのだろうかということが非常に心配だということが一つ。
 例えば疾患別バイオバンクというお話がありましたが、それはどのくらい進んだのかということをほとんどの患者会の方は余り知らないのではないかということがあるのですけれども、我々はどういう形でもってそれに協力させていただければいいのでしょうかということは率直な疑問です。
○堀田座長 その辺について、野田構成員、どうぞ。
○野田構成員 話に水を差すみたいですけれども、今ここで話しているだけでも、正確な情報が提示されずに、コホートは最初から一緒だったほうがいいとか、疾患コホートと大型コホートの区別もつかない、加えて今の話が一緒になったら、がんのゲノムなのか、人のゲノムなのか、全然混じった話が行われる。こういうのが非常に危険だと思います。必要だと思ったら、本当に現状の情報をここに提出してもらって、それについて話をするのが望ましいし、言ってはなんだけれども、コホートの統合に関する今の問題点のところを中釜先生が言われても、それは正式なものではないわけだし、そこは気をつけないと。
 特に本当に気になったのは、恐らく眞島さんはがんのことも一緒でバイオバンクと。例えばバイオバンクは、これを言うとまた私が同じことを言ってしまうことになるので文科省がどう言うかですが、バイオバンクはがんもやっているけれども、がんの人の末血のDNAの保存ですから、大型コホートと末血のDNAという上では一緒だろうとなっている。だけれども、それとがんのゲノムシーケンスをどうするかという話が不正確な情報でここで重なってディスカッションされるのは余り望ましくないと思うのです。前に進むべきだと思います。いいのだけれども、こういう形のディスカッションは中途半端な情報でここで話をして何かが出ていくというのはすごく危険だと思うのです。
○堀田座長 どうぞ。
○門田構成員 ここで話さなかったらどこで話すのですかということになってしまうので。
○野田構成員 ここというのは、今のここを言っているのであって、必要だったら、必要な正確な情報の提出を求めてから、それについての皆さんの意見を出すべきだと言っているのです。
○門田構成員 しかし、西山先生からの意見は、前回も申しましたけれども、全体的な司令塔はどうなっているのか、どなたかの発言にもありましたけれども、責任者は誰なのだということができていないということのポイントアウトではないですか。だから、今ディスカッションしたのは具体的な話よりも、今の我々の少なくとも今のこの会議ではそういうことが全員の問題意識として共有されなければならないというポイントアウトだと私は理解するのです。
○野田構成員 それならそれのディスカッションはいいです。だけれども、今言ったように、ゲノムのシーケンスはどう、患者さんのというのを今のような間違った情報でするのは無駄だということを申し上げている。
○堀田座長 言っていることはそんなに違ってはいないと思うのですが、要するにいろんな形でそれぞれの趣旨や基盤が違っていろんなものが立ち上がってきて、後から思えばそれは最初になぜ仕切らなかったのかという話になってしまうのだけれども、それは今そんなことを言っても無理です。
○野田構成員 無理というかしようがないのですけれども、サイエンスですから、研究ですから、例えば何でも大きく長く、ある方法でいっぱいやれば何かが出るのだということで物が片づかないから疾患コホートがあったり、大型コホートがあったり、それが今見えてきているから、今どうつなぐか、これから先どうするかという議論はいいのだけれども、最初にという議論はないのです。
○堀田座長 だから、これから立ち上げる場合にはどうするかという視点で考えれば先生の御指摘のとおりだと思う。
 どうぞ。
○西山構成員 例えばこういう提案だったらいかがですか。私どもは、臨床情報はとても重要なポイントだと思っていますので、がんに関するさまざまな臨床情報を集めていこうと思います。いろんな施設にも参加していただいて、できる限り大きい情報をとっていきたい。これはどの研究者も同じことだと思います。これはジェノムと比較する場合でも、何をする場合でもとても重要なポイントだと。そのときにある程度の指針がなくてクオリティがてんでんばらばらでという状態は困るので、ある程度の指針を出して研究を進めていくという方向性はいかがかという提案。これだったら、ディスカッションの具体的な内容になりますか。
○堀田座長 それについてどうですか。
○野田構成員 なると思います。なるべくそこで細かい部分に入らないようにしてディスカッションしなければいけないというのが私と門田先生との違いだと思いますけれども、細かい部分に入ると全体像が見えなくなりますから、今、細かい部分に入っていけば研究用の臨床情報と患者さんの臨床情報との切り分けとかいろいろありますけれども、出口だと思うのです。今必要だというより、西山先生は、例えば日本がどういう研究をどういう競争性を進めていくためにどういう臨床情報がどのくらいの規模必要だから、そうしたらハウになってどうするか。門田先生言われるように、それをここでと言うけれども、常にディスカッションしたりモニターしている場所がなくてそういうのはこれから続くのかという議論なのだと思う。
○堀田座長 少なくともここの場は3省がそろって同席していますし、今後展開していくとしたら、出だしのところからある程度つけていく。今までのものを無理にそこへやるのは大変難しいのですが、それだけにそういった問題意識がようやく共通のものになってきた。要するに全体として一元的に、あるいは一貫して基礎研究から応用研究まで見通す、そういった進捗管理が必要だろうということが認識されてきたと思うのです。これは共通した認識ではないかと思います。よろしいでしょうか。
 そのほかの論点をどうぞ。
○門田構成員 眞島構成員からプレゼンしていただきました。この中で患者さんの立場で御発言いただいて、ともすると開発段階から希少がんが後回しになるとか、適用外が話題にならないという点を患者さんの立場から重要性、必要性を非常に強調されているということを我々は新たに認識しなければならないのではないかなと思いました。ほかの構成員はどちらかというとそこのところが強調されなくなる危険性はあるのかなという気がしますので、これは強調しておくべきではないかと思います。
 もう一つ、先ほどの話に関連するのですけれども、希少がんなどでは国際治験に参加することという提案があったわけですが、今考えてみると、我が国内でも希少がんをしっかり集めていく必要性があるわけで、我が国の中においてどのぐらいの頻度のものをどういうふうな形で集めていくということを余り具体的には検討されていないと思うのです。ですから、今度の新しいがん対策基本計画でも希少がんという単語が残っていますが、そういうところを強調されましたので、特にほかの構成員の意見とは違ってくるような気がしますので、ぜひしっかり残しておかなければいけないのではないかというコメントです。
○堀田座長 ありがとうございました。大変重要な指摘でありますし、門田先生の指針に私はびびっと来て、国がん頑張れみたいなのを感じますが、確かにこれからはある程度5大がんというのは均てん化という中でかなり対応できましたけれども、それではないものについてどうブレークスルーをつくっていくかということは次期研究テーマになると思います。
 上田先生、どうぞ。
○上田構成員 祖父江先生に整理のためにお聞きしておきたいのですけれども、政策研究、確かにいろんなことがあると思うのです。今、本当に何をしなくてはいけないか、そのときのファンディングエージェンシーというのはどういうことをどのくらいの規模でどういうものを本当に想定できるのだろうかということが余りにも多くて整理できないのですが、本当にがん疫学からの政策提言と何が一番あるのかということがお分かりだったら教えてほしいということ。
 私の個人的な感想を言わせていただくと、まずは本当にがん登録をきちんとやっていただいて、それを徹底的にやっていただくということに関して国を挙げてまずはやるということが最初で、今の希少がんの話でも小児がんが大事だと言っていて、小児がんですらきちんとしたデータがないというのがこの間の小児がんの研究会のときにあったではないですか。ですから、そのあたりをまずは始めないといけないのではないかと、これは私の感想です。だけれども、もっと政策的にこういうことをせっかくやるのだったら、この4次がんできちんと最初の目玉として政策研究としてやるべきものは何か。アカデミアはアカデミアで考えるのですけれども、そこら辺を教えていただけることがあればと思いました。
○堀田座長 祖父江さん、どうぞ。
○祖父江構成員 その観点で、まさに最初の2つを挙げたのです。ですから、高齢者がんに関しての適切な判断をできるような基盤をつくるということと、既知のがん予防対策としてのたばこ、感染に関する普及促進、推進の戦略、この2点が一番大きなものだと私は思います。
 がん登録に関して、先生から何回も言われてはおりますけれども、さりとてがん登録は何も進んでいないわけではなくて、かなりこの10年間進んだと思います。それはいろんな背景があって、拠点病院の院内がん登録が進んだというのが一番大きかったと思いますけれども、DPCなどで地域がん登録の後押しをしていただいたとか、今、法制化の動きをかなり進めていただいていますので、それをにらんでがん登録に関しては、それなりに進んでいて、それをいかに今回これからは利用するかをきちんと考えていかないといけないと思っています。
○堀田座長 どうぞ。
○野田構成員 祖父江先生が言われたのですが、利用するのとカップルさせなければいけない。その利用する観点から、今は十分に進んだのか、これからどう進めなければいけないのかのインタラクションが常にないと、登録している側は、前に比べればこう進んだ、使いたい側は、いまだにこう使おうと思うと使えないという話で言っているので、非常にもったいないと思います。だから、本当に使う意識でのがん登録のディスカッションの場が、それこそ先ほど門田先生が言うように、上のところでそれがないと、一つ一つのところは進んでいる、10カ年たったら、10年前よりこれだけ進んだよというのでは仕方ない、その一つの例だと思います。新たに何かの情報、西山先生の臨床情報ととっていこうとしたときの労力を考えたら、DPCを含めて現有の情報をどれだけ有効に前に生かすかという制度を考えないとだめなのだと思います。
○堀田座長 がん登録は確かに私も当事者近いところで見ていますが、随分院内がん登録について地域もようやく24年度に全国でスタートしてということで、ある意味がん登録の新しいステージに入ったと思いますけれども、結局これは今や研究なのかどうかという仕切りから言うと、先生はどういう位置づけにいますか。
○祖父江構成員 それはもう事業として行うほうが絶対にいいと思います。
○堀田座長 そういうふうに、そろそろステージを変えて、事業としたら、そのアウトプットをどう利用するかという段階に入ってきているという状況かと思います。
 そのほかの視点はいかがでしょうか。そうしたら、また戻っていただいてもいいのですが、製薬企業もしくは医療機器の産業側からのプレゼンがございましたが、アカデミアと産業側との役割分担はどこら辺が橋渡しの重要なポイントなのかということを御議論いただきたいと思います。
 上田先生、どうぞ。
○上田構成員 野木森委員は、我々がいつも感じていることをきれいにまとめていただいているのですけれども、創薬の立場からシームレスにシーズからアウトカムまでというときに、大体同じようなプレゼンテーションが今までもなされて実際はできていない。そのできていないところの最初の早期の探索のときに、なるべく早く企業のほうへいいコンタクトができるようなシステムがあればということはいつもお話になるのですけれども、先ほど野田構成員の中にもいろんなそこら辺の研究者と企業との難しさというお話が少し出たと思います。そのあたりをどういうふうな組織構成とか、今までは日本の場合は会社の開発の関係者と研究者の個人的な関係と言うのが精いっぱいだったと思うのです。そうすると、本当は会社によっていろんなアビリティが違うと思うのですけれども、そのときははたして日本の総力として本当に動いていくのかとか、そういうようなことも含めて教えていただきたいと思います。
○堀田座長 野木森構成員、よろしくお願いします。
○野木森構成員 
その点につきましては、こういうシステムをつくったら必ずうまくいくというオールマイティーなものは多分難しいだろうというのが第一印象です。ですから、そこを少しでも進められるようにするにはどうしたらいいのか。一つは、アカデミアの研究を私たちがなるべく早いところからネットワークを張って情報をとっていくという動きをもっとすべきではないか。
 そのためには、お互いのインタラクションをふやしていくということ。製薬会社によってカバーする領域は必ず違いますので、しかも、がんの中でもまた違ってくる、興味の質も違うということで、1つのところに話したから、そこはだめだったから全てだめという話ではなくて、アカデミアサイドからも幅広く当たっていただく必要があるのではないか。いい研究であったら、必ずどこか興味を示すところがあるのではないかと思っています。
 もう一つ、最近の動きとして、基盤研をベースにしてアカデミアの研究を産業につなげていくための橋渡し役を行うということがあります。実際これから動くわけですけれども、それが実際にどういうふうに動いていくかというのは私どもも興味を持って見ているところであります。
○堀田座長 済みません、きょうは基盤研の米田さんはお休みですけれども、今言ったポイントはコメントをいただけないのですが、産業界に向けて、創薬あるいは技術基盤といったところでどのような橋渡しのポイントと考えておられますか。
○後藤構成員 
先日も申し上げましたけれども、がん研究の在り方は患者数が多い、死亡数も多い、関係している基礎研究者も含めた研究者も多いということで、橋渡しのモデルになるのではないかと考えております。
 野木森構成員の御発表の中で、私はちょっとディスカッションが必要かなと思ったのは、アカデミア発創薬の入口で、企業のほうに基礎のがん研究から標的を見つける力があるかというと、その部分まではアカデミアあるいは研究機関の役割が強いのではないかという点です。
 ただ、一旦アカデミアで標的が見つかると企業としてはその標的は誰にも知られず私だけが欲しいというのが一番の御意向ではないかと思うのです。ですから、産学でのオープンイノベーション、オープンイノベーションと言われますが、本当は皆にオープンではないので、それをどうつないでいくのかのシステムが必要です。
 2点目は、がん治療のための標的があっても患者さんの数や治療難易度などによりイノベーションに向けて企業側で取り組むべきか議論が2つに割れると思います。そこで漏れる部分を誰がすくい上げていくのか、ここではアカデミア発創薬研究の橋渡し機能が必要です。
 一旦企業の創薬研究に乗れば絶対製薬企業のほうが早いし、私は日本企業の底力を信じておりますので、その乗れないものをどうやって先に進めていくかというシステムづくりが必要ではないかと思います。
○堀田座長 野田構成員、どうぞ。
○野田構成員 ちょうど西山先生が出したスライドに『Nature』のあれが出ていたと思うのですが、要するに最近承認された薬のシーズはどこにあったか。アメリカがヨーロッパを上回って、日本の倍ぐらいをしているときに、その半分以上はアカデミアからのシーズだという絵があると、あれは誤解を与えるのです。つまり、先ほど野木森さんが言われたみたいに、すぐ企業がとって売り出すところまでやったように、あれには全部ベンチャーが間に入っているわけですね。
 結局アカデミアのバイオロジーをそこから標的探しに特化した基礎研究をやるためのところからスタートしたベンチャーがあって、そろそろ阻害剤になって最適化が必要だというところまでやれるベンチャーもあれば、そこはその段階で同質される。売るためには、マーケティング、最近ベンチャーでもできるところはありますけれども、臨床試験は幾つかのところしかできませんから、そういう流れが日本には今ベンチャーの部分が極めて枯渇しているので、そういう中でのオープンイノベーションの役割はすごく重要で、どこまでオープンにできるのか、オープンにできないのかを本当に腹を割ってもう少し真剣に考えないと、線引きはどこにするのだというだけでなかなかいかない部分があるのではないかというのが実際最近やっていて感じるところです。
○堀田座長 実際のオープンイノベーションと言ってもどういうものを想定しているのか。要するにベンチャーは余り育っていないという状況の中でね。
○野田構成員 そのベンチャーに当たるインキュベーション部分を公的な資金も導入して、今は基盤研がリードしてやって、そこでイノベートするのですけれども、問題はそのときの情報がどれだけどう共有されるのかで、余り共有を1回されてしまえば、同質に向けて企業は入ってこないわけです。言葉としてのオープンイノベーションというのはそういうことです。
○堀田座長 野木森構成員、どうぞ。
○野木森構成員 オープンイノベーションという言葉の定義が実際には余りきちんとなされていない部分があると思いますから、誰もが同じ言葉を使いながら違うものを描いているということが多分にあるのではないかと思うのです。
 オープンイノベーションと言いながらも、やはり知財の管理というのはきっちりやらなければいけないものですから、そこは閉鎖的にならざるを得ないと思うのです。要はアカデミアもできる限り、例えば産業側と協力する。産業側もアカデミアの意見をたくさん入れるという基本的姿勢に対して私はオープンイノベーションと言っておりまして、広いものと捉えています。
 それから、標的探索という意味ではアカデミアのほうが圧倒的に基礎研究から出てくるものが多いものですから、数も質も高いのだろうと思っております。その標的が見つかった後、例えばスクリーニング系をきっちりつくり上げて、リサーチツールとして新しい評価系が出来上がった後は、製薬企業側には例えばハイスループットがあったり、要は数でこなせるところというのは組織、装置もきっちり持っている産業側のほうが早いから、そこは産業側に任せていただいて一緒に進めたらいいのではないかと思っています。
○野田構成員 そこのところだと思います。でも一緒でないとだめなのです。これからの創薬は、バイオロジーの段階からコンセプトがあってできてきますから、どれだけアフィニティーが高くて毒性の少ないものがとれても、常に細胞レベル、動物レベル、人レベルでプルーフ・オブ・コンセプトは必要で、そのプルーフ・オブ・コンセプトを詳細に見られて、正確に見られて、固体で見られるというのはアカデミアの助けがないと企業もできない時代にこれからはなっていくのだと思うのです。だから、コンパニオンテストだけの問題ではなくて、常にPoCを目指して、カップルして進む。ただし、同質が行われますから、パテントライトが移った段階でどちらが中心になっていくかというのは当然だと思うのです。
○堀田座長 西山構成員、どうぞ。
○西山構成員 今の件に関して、今後のがん研究のあり方を考えたときに、本邦において本当にイノベーションを進めていくとすると、ベンチャー企業の創生というところにかなり力を入れていかなければ、アカデミアから製薬企業へのバトンタッチという間にが抜けが生じるているということですか。そうお考えなのでしようか。製薬企業としては、いずれにせよその間の間に知的所有権は全てベンチャーでキープされることになりますし、間にベンチャーを育てていく形にするとさらにもっと本邦初、様々な領域ののいろいろなイノベーションが進むとお考えでしょうか。○野木森構成員 それはケース・バイ・ケースになると思いますけれども、ベンチャーが介在するということは非常に意味があると思っています。
 というのは、標的が見つかっても、その標的が果たしてビジネスにつながるという意味で十分な標的なのか、その辺を早い段階できっちりわかるということは非常に難しい。そういう面で、標的にほれ込んで進める、要はオーナーシップがちゃんと持てるという意味で、それを確実にやりたいという意識を持ったベンチャーがあらわれて、それを先に進めるということは大切だろうと思っています。
○西山構成員 
もう一点、観点が変わるのですけれども、臨床の面から。バイオマーカー研究をどんどん進めてほしいという、私どもにとってもそれは責務だと思っておりますけれども、実は治験の前も間も、バイオマーカーに関する詳細な情報はが表に出ない。治験の間でさえ臨床家へのフィードバックはがほとんどない。こうした状況下ではときに、バイオマーカーの早期の臨床開発研究、に対して我々がかかわれるバイオマーカーの早期開発研究は、企業主導のものだけということになります。
 さらに、その後に大規模な臨床試験を起こしてほしいとの要望があっても、。バイオマーカーは御存じのように、バリッドバイオマーカーになるためには同じキットドを使って臨床検証しやらなければいけない。当然そうすると、キットドの開発ということは知的所有権につながります。そうすると、この中で国プロでそうした研究こうしたものを行うということはほとんどなくて、企業主導になってしまう。現実的にも、今までの臨床試験というのはほとんどが企業の主導あるいは企業のバジェットという形で行われてきているわけです。けれども、今回のこの御提案、要するにオープンイノベーションのための探索的臨床試験拡充の意義というのは、そうしたものを企業から離れて国プロの中でやっていくべきだ、ある程度国もやっていくべきだ、そうした形に制度を変えていくべきだという御提案と考えてよろしいのでしょうか。
○野木森構成員 制度を変えろという意味合いよりは、むしろ幅広くやりましょうということです。企業は、バイオマーカーの研究をやらないのかと言ったらそうではなくて、製品の開発と表裏一体になるものですから、必ず続けるのです。ただし、安全性に関するバイオマーカーとか、ある一つの疾患の診断に関連するようなバイオマーカー、これはもっと広く研究したらいいのではないかと思っているのです。
○堀田座長 ありがとうございます。
 この辺はまだまだあれかもしれない。
 野田構成員、どうぞ。
○野田構成員 ちょっと区別したディスカッションが必要で、診断マーカー、バイオマーカーのときには、基本的に今会社というのはコンテンツの開発と、それが乗っかるディバイスまでカップルしないと保険承認されないので、最終的にはデバイスコンテンツが一緒になっていますが、今、野木森さんたちがアカデミアや臨床に望んでいるのは、そういうコンテンツを広くサーチできるシステムと能力を備えてほしいという部分のほうだと。それをどう診療にインプリメントしていくかというところは、今言ったように特許との関連が出てきますから、企業がまた入ってこないといけないということだと理解しています。
○西山構成員 だから、ここで我々ががん研究として進めるべきは、バイオマーカーとしてのコンテンツのサーチ、その幅を広げるということに力点理解を置くということですか。
○堀田座長 この辺は実際にポテリジオになったのだけれども、要するにバイオマーカーとそのコンテンツを実際にカップリングして製品にするところですね。それは別にやっていいのか、同時に同じところがやるのか、その辺はどう指揮下においてやっているのか。
○上田構成員 それも非常に難しくてケース・バイ・ケースだと思うのです。ただ、ポテリジオのときは、抗体薬として開発するためには患者様の経過や、細胞が逐次必要でして、それで経過を追ってきちんと診断として使えるとか使えないというのはアカデミアと一緒に解析・検討したから、承認と同時にコンパニオン診断薬ができたということは確かなのです。先ほど野木森さんもおっしゃっていたように、ずっと対話、どこまでがアカデミアで、どこからが企業ではなくて、たゆまないインタラクションをきちんとやって日本初のものを創っていくという気持ちが物すごく大事です。問題は、本当にそのときに如何に適正な能力のあるところ同士が組めるかどうかということだと思います。
○堀田座長 そういったマッチングがとても重要で、それはコミュニケーションが継続しないとだめで、どこかから切り離して、はい、どうぞではうまくいかないということでしょうね。ありがとうございました。
 経済産業省、どうぞ。
○江崎生物化学産業課長 恐れ入ります。ベンチャーの話になったので少しお話をさせていただきますけれども、実は私、ベンチャーのほうの仕事が長いものですから、その観点から申し上げると、ベンチャーというのは育成するものではなくて、ビジネスモデルが成立すれば自然に出てくるのです。アメリカももともと薬自体はフルパッケージだったものがバイオになってベンチャーが出てきたのですけれども、歴史的に申し上げると1996~2010年まで、このバイオベンチャーは物すごく出ました。ピークは2003年です。ところが、ほとんど潰れていきました。何かというと、ビジネスモデルとして精通しないところに無理やり持ってきてもしようがないというのが基本的なところで、ある意味大事なことなのですけれども、恐らく今のこの国で開発するためにバイオ医薬だとお金が回りません。これは多分国が入れても回らなくて、そろそろゲームのルールを変えてビジネスモデルをつくっていくような仕組みにしないといけないと思っています。そういう意味で、野木森さんがおっしゃったのはまさにそのとおりで、治験の段階から対象疾患を絞って治験をするようにしないと、恐らく1,000億単位のお金を出すことは世界でも難しいので、多分70社もあるこの国だと無理だと思います。
 逆に、今、この3カ月ほど診断薬メーカー等を回りましたけれども、実は各社さんとも戦略がばらばらで、PMDAさんも含めて誰も反対しないのですが誰もやらないという状況になっているので、ただ、皆さん答えが見えているところで、どうやってそこでビジネスモデルをちゃんと組んでいくような仕組みをある意味がんの中でできれば、恐らくシーズそのものは日本は少なくないです。悲しいのは、海外のベンチャーが日本のアカデミアのシーズを買って、それをベンチャーに仕立てて日本の製薬メーカーが買うという絵になっているので、そこはある意味どういうモデルの回し方をするのかということをトライアルしていただければ答えはあると思っています。
○堀田座長 ありがとうございました。
 後藤構成員、どうぞ。
○後藤構成員 今の部分、私もかなり同感です。10年間ぐらいずっと考え続けてはいるのですけれども、日本のバイオベンチャーは結構起きたのですが、基本的には医薬品に結び付けるパイプラインベンチャーがほとんどない。診断薬や創薬技術としてのツールボックスベンチャーのケースでは、今までのモデルでも結構いける可能性があるのです。しかし、医薬品メーカーに製品としてつながるようなものが出ない。特にがん研究の中でこれだけ標的としてのシーズがある中で医薬パイプライン創出をどうしたらいいのか。基本的には基礎研究から生まれるシーズは全部正しいわけではないので、個々のシーズに対して個別のベンチャーを設立するというのは、日本にそれだけの数の起業能力や開発経験を持った方はおられないと思います。
 多くの開発パイプラインが潰れていく中で、一個一個に対して全てに画一化したビジネスモデルで向かうのは非常に難しい。多分経済産業省さんに考えていただいたらいいと思いますが、そういう性格を持った創薬ビジネスの中で日本的なシステムをどうやってつくり上げていくのか。世界的な競争のなかで、多分経営者を何人も何人も潰していくという米国モデルではなく、どこかでまとめてどんとやる、国策ベンチャーと言ったら怒られるかもしれないけれども、そういうものが必要かもしれないなと思っています。
○堀田座長 では、手短にお願いします。
○江崎生物化学産業課長 補足させてください。実は過去に潰れたベンチャーの研究を全部分析しました。その結果わかったのは、大体ベンチャーさんからするとお金が足りないとか、審査が長いという議論があるのですけれども、実際に起きていることを見ると、実はアカデミックトラップと我々は呼んでいるのですけれども、大学発のベンチャーがほとんどなのですけれども、やはり研究テーマの論文が薬になると思っておられる方が多すぎるのです。そのまま特許を取ってしまわれて、特許というのは人に迷惑をかけない限りすぐ取れるのです。それで会社が終わりだと思ってしまって、多分野木森さん初め、製薬メーカーからするとそんなものは買えないと。一番大きいのは、効能の研究はやられるのですけれども、安全性の研究はないのです。そこの部分が空白になっているとか、恐らく製薬現場から見た評価自体を大学の先生はわからないので、そこの部分をどういうマーケットにするかという議論を押さえる人がいなくて潰れていったのがほとんどです。今生き残っているのは海外でベンチャーをやられて、私企業を調達することはどういうアウトプットを出すことかわかっている企業さんだけが細々残っている。
 したがって、今おっしゃったように、これはアメリカに範をとるというよりも、日本的なアプローチの仕方が多分あるのだろうと思います。そういう中で、最初の段階から企業さんと一緒にやる、これは日本のほうが強いと思います。その中でどういう形でつないでいくか。場合によってはベンチャーは要らないかもしれません。日本はもともとベンチャーが必要なときは出てくる国ですから、そういう仕組みは答えを探すことはできると思います。
○堀田座長 ありがとうございました。
 大分このところに集中した議論になってきましたけれども、時間もそろそろ迫っておりますので、先生、今の点ですか。別の視点で、最後の医療経済も含めて少し時間をいただきたいと思いますので、先生はどういうことですか。
○中釜構成員 創薬の体制やパイプラインのあり方に議論が集中したのですが、本日の議論の中で重要な論点の一つとして、野田構成員が提示された、あるいは祖父江構成員が提示された予防の対策のあり方、その研究を含めて、予防介入のあり方という議論は恐らく創薬以上に難しい面があると思います。そのための情報集約としてのコホート研究の取りまとめのあり方とか、俯瞰的な見方、こういう議論は野田構成員が指摘されたように、資料をもとにしっかりと議論すべきだろうと思います。それは一言、次回でもいいですが、きちっと議論して、必要な資料をそろえたほうがいいかなと思います。
○堀田座長 全く同感ですね。野田構成員も本体解明に基づく予防というのはそこでシフトしないと、患者数自体を減らすことができないという命題に我々は向かっているわけですから、大変重要な指摘だと思います。
 どうぞ。
○米倉構成員 前の議論に戻るのですけれども、やはりベンチャーが育たない云々という話の中で、日本型のものをつくっていくとしても、どちらにしても人材をうまくアカデミアと産業界の間で交流させないといけない。そこが一番キーなのではないかということを思ったので追加しました。
○堀田座長 ありがとうございます。
 それでは、白岩構成員の医療経済的な視点というのも言い出すと非常に議論が紛糾しそうな気がしないでもないですが、何かポイント。
 門田先生、どうぞ。
○門田構成員 医療経済の話も複雑になるので1つだけお話ししたいのは、経済にしろ何にしろ、質の云々ということになると、QALYならQALYの発想を患者さんというか国民がこの考え方を認識しなければ全く意味がないので、これを第三者が、あるいは政策上云々といってもそれは簡単にはいかないだろうと思いますが、そのあたりはどういうふうにお考えか、あるいは具体的に何かが行われようとしているのですか。
○白岩構成員 ありがとうございます。医療経済評価においては御指摘いただいたようにQALYと言って、生存年に質で重みをつけた指標を使ってアウトカム評価をするのが一般的なのですけれども、ただ、必ずしもQALYを使わなくても、例えば生存年でしたり、一件当たりの予防当たりどれぐらいコストがかかるということで十分議論ができればそれで結構なのだと思います。つまり、QALYというのは横並びで評価ができるというところに非常に特徴がある指標ですので、必ずしも別にQALYにこだわる必要はなくて、生存年当たり幾らだとか、予防当たり幾らだといった指標でも十分議論になるのかなと思っておるのです。
○門田構成員 ごめんなさい。生命予後云々という話は非常に簡単ですが、それにはいろんな問題点があるということが徐々に分かってきて来ています。今例えば胃ろうの問題一つにしても話題になってきつつあって、やはり我が国においてそういう物の見方を浸透させるのは一つのやるべき方向性だと思うのです。だから、経済を考える上ではそれでもいいかもわからないけれども、医療を考える上ではそういうものが必要になるので、どういうふうに踏み込んでいくべきかということを悩んでいますのでお尋ねしたい。
○白岩構成員 なるほど。質が重要であるという御指摘であれば、全くそのとおりかなと思っていて、やはり同じ患者さんであっても寝たきりである1年と、そこそこ元気で日常生活が行われるような1年、それを生み出す医療技術の価値というのは恐らく違っているはずでありまして、そういうものをきちんと評価できるような体制が重要なのではないかと思っております。
○堀田座長 その評価系というのは、ある程度完成形のものは提示できますか。それとも、それ自体がまだ研究段階ですか。
○白岩構成員 医療経済の世界では一定程度確立したものがあるのですが、いろいろ欠点だとか問題点もありますので、そういうものを合わせて総合的に判断するということは多分重要になってくるのかなと思っています。
○堀田座長 どうぞ。
○田村構成員 先ほどから野田先生もおっしゃっていましたし、我々もそう感じているのですけれども、がん研究をする研究者が減ってきている。臨床の部門でも血液内科医とかがんを専門とする臨床家が必ずしもふえてこないことは非常に問題でありまして、これについての現状と課題をこの会議の中で一度は議論をしていただければと思っています。
○堀田座長 人材育成もそういったような問題ですね。それは前回も中釜構成員から、トランスレーショナルのところで指摘されましたけれども、全体としてそういう研究者をどう育てるかという視点は重要だと思います。
 最後、どうぞ。
○眞島構成員 最後に一言なのですが、白岩構成員にお伺いしたいのですが、現場レベルでは、日本は例えば同じ抗がん剤を使っても海外と比べて5年生存率が2ポイントも3ポイントも高いというお話もあるのです。我々は実感としては、かなり日本のがん医療でいいのではないかと思うのですけれども、何か総合的にこれだけの予算を使ってこれだけのことができましたと、ほかと比べてもこれだけいいのですよみたいな指標とかはございますか。
○白岩構成員 余りそういう指標はないと思うのですが、ただ、もし日本のがん治療の成績がいいということであれば、同じ技術、同じコストを投下しても費用対効果がよくなるいということですので、そういうものを反映させたような分析方法はとれるかなと思っております。
○堀田座長 では、最後。
○野木森構成員 
この場面で費用対効果の話を余り詳しくするというのは場にそぐわないかもしれませんけれども、費用対効果というのは、客観的に治療の評価をしようというのは非常にいいことなので私どもも大賛成なのですけれども、今日披露されましたヨーロッパの例などを見ると、目的が医療費抑制というところに傾注しすぎてしまっていて、そのために患者サイドから見ると、その薬を自分に使ってもらえないという問題がむしろ大きくなっているので、その兼ね合いをよく考えた上で導入を図っていかなければいけないと私どもは考えております。
 余分ですけれども、つけ加えさせていただきます。

○堀田座長 日本の社会事情あるいは国民の願いと申しますか、そういった意思に則した形で費用対効果、全てこれは価値判断ですから、必ずしも一方だけの議論にはならないかと思います。
 きょうは時間が参りましたのでこのあたりで閉めさせていただきたいのですが、また次回、引き続きの議論をしていただきたいと思います。
 それでは、事務局から、次回の案内等をお願いします。
○岡田がん対策推進官 次回の会議につきましては、5月10日の10時から、本日と同じく全国都市会館3階を予定しております。よろしくお願いいたします。
○堀田座長 それでは、長い時間になりまして、出だしがおくれたと怒られましたけれども、済みませんでした。これで終了といたします。ありがとうございました。


(了)

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