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2013年6月20日 第5回医療の質の向上に資する無過失補償制度等のあり方に関する検討会

医政局総務課医療安全推進室

○日時

平成25年6月20日(木)


○場所

専用第18・19・20会議室


○出席者

会議メンバー

塚田 祐次(秋山俊行 東京都副知事の代理) (東京都病院経営本部長)
有賀 徹 (昭和大学病院病院長)
飯田 修平 (練馬総合病院病院長)
岩井 宜子 (専修大学名誉教授)
遠藤 直幸 (山形県山辺町長)
貝谷 伸 (全国健康保険協会理事)
加藤 良夫 (南山大学大学院法務研究科教授/弁護士)
里見 進 (東北大学病院総長)
高杉 敬久 (日本医師会常任理事)
豊田 郁子 (新葛飾病院セーフティーマネージャー)
松月 みどり (日本看護協会常任理事)
松本 義幸 (健康保険組合連合会参与)
宮澤 潤 (宮澤潤法律事務所弁護士)
山本 和彦 (一橋大学大学院法学研究科教授)

参考人

後 信 (公益財団法人日本医療機能評価機構理事)

オブザーバー

警察庁
法務省
文部科学省
内閣府
消費者庁
一般社団法人日本医療安全調査機構

厚生労働省

秋葉 賢也 (厚生労働副大臣)
原 徳壽 (医政局長)
神田 裕二 (大臣官房審議官)
吉岡 てつを (医政局総務課長)
大坪 寛子 (医政局総務課医療安全推進室長)
田原 克志 (医政局医事課長)
鈴木 建一 (保険局総務課医療費適正化対策推進室長)
川嵜 貴之 (医政局総務課医療安全推進室長補佐)

○議題

(1)無過失補償制度のあり方についての論点
(2)その他

○配布資料

資料1 第4回医療の質の向上に資する無過失補償制度等のあり方に関する検討会議事録
資料2 「医療事故にかかる調査の仕組み等に関する基本的なあり方」について
資料3 産科医療補償制度について(日本医療機能評価機構提出資料)
資料4 第1~4回医療の質の向上に資する無過失補償制度等のあり方に関する検討会発言要旨
資料5 無過失補償制度のあり方についての論点

○議事

○医療安全推進室長補佐 それでは、定刻になりましたので、ただいまから第5回「医療の質の向上に資する無過失補償制度等のあり方に関する検討会」を開催いたします。
 本日は、御多用の中、当検討会に御出席いただきまして、まことにありがとうございます。
 議事に入ります前に、当検討会の構成員のうち、吉川東京都副知事、椎名健康保険組合連合会参与が退任されましたので、新たな構成員を御紹介いたします。
 東京都、秋山俊行副知事でございます。なお、本日は、秋山構成員は御欠席のため、代理として塚田祐次東京都病院経営本部長が出席されています。
 続きまして、健康保険組合連合会、松本義幸参与でございます。
 なお、本日は、印南構成員、岡崎構成員より御欠席との御連絡をいただいております。
 さらに、本日は、参考人として、公益財団法人日本医療機能評価機構理事、後信様にお越しいただいております。
 それでは、以降の進行につきましては、里見座長にお願いいたします。
 里見座長、よろしくお願いします。
○里見座長 皆さん、こんにちはといいますか、お久しぶりでございます。この会は、1年半前の12月以来ということですので、本当にお忙しい中お集まりいただき、ありがとうございました。この間、ワーキンググループのほうではいろいろ論議が進んでまいりまして、きょう御報告をいただくことになっております。東京は大分蒸し暑くて、ホットな議論は歓迎いたしますけれども、頭のほうはぜひクールにしておいていただければと思います。
 今回は、秋葉副大臣にわざわざいらしていただいておりますので、まず、御挨拶をいただきたいと思います。
○秋葉副大臣 皆さん、おはようございます。委員の皆様には、大変御多用の中、きょうも御参集いただきまして、まことにありがとうございます。一言御挨拶を申し上げさせていただきたいと存じます。
 今、里見座長からも御挨拶がございましたとおり、全く久しぶりの検討会なわけでございます。この検討会におきましては、患者・家族の救済及び医療関係者の負担軽減の観点から、無過失補償制度等のあり方や課題について幅広く検討を行うために、平成23年8月に開始をさせていただいたわけでございます。医療事故が発生した場合の原因究明や再発防止等の仕組みなどにつきましては、無過失補償制度と分けて議論しなければならないという座長の御進言もございまして、平成24年4月からは、別途「医療事故に係る調査の仕組み等のあり方に関する検討部会」を設けて集中的に御議論いただいたところでございまして、おかげさまで、先月29日に取りまとめをいただいたところでございます。
 このため、この検討会におきましては、1年半ぶりの開催とはなりますけれども、本日は「医療事故に係る調査の仕組み等のあり方に関する検討部会」の取りまとめや、産科医療補償制度の現況について御報告をいただきました上で、無過失補償制度の検討のあり方について御議論願えればと考えております。
 この無過失補償制度につきましては、前政権の公約に基づいて検討が開始されたわけでございますが、本検討会で議論が行われたことによりまして新たな医療事故調査制度がまとまるという大変大きな成果を得ることができたわけでございます。その上で、さらに医療行為全般に係ります無過失補償制度を創設することにつきましては、本日の資料の中でも整理をさせていただいているかと思いますが、補償範囲をどうするのか、費用負担、あるいは過失・無過失の認定等の面で大変難しい課題もあることも事実でございます。
 構成員の皆様におかれましては、大所高所からの御議論をいただきますようお願い申し上げますとともに、こうした困難な課題についてのまとめ役をお願いしております里見座長に改めて感謝の意を表しまして、開催に当たっての私の挨拶にかえさせていただきます。
 本日は、何とぞよろしくお願いいたします。
○里見座長 ありがとうございました。
 秋葉先生におかれましては、公務がありますので、この後、中座されます。どうもありがとうございました。
○秋葉副大臣 先生方、よろしくお願いいたします。
(秋葉副大臣退室)
○里見座長 それでは、議事を進めたいと思います。
 事務局のほうから資料の確認をお願いいたします。
○医療安全推進室長補佐 それでは、お手元の資料の確認をお願いいたします。
 まず、座席表、議事次第、検討会の開催要綱が1枚ずつございます。
 配付資料といたしましては、資料1、前回の議事録でございます。
 資料2「『医療事故に係る調査の仕組み等に関する基本的なあり方』について」。10ページまでございます。
 資料3「産科医療制度について」。日本医療機能評価機構からの提出資料です。11ページです。
 資料4「第1~4回医療の質の向上に資する無過失補償制度等のあり方に関する検討会発言要旨」。5ページです。
 資料5「無過失補償制度のあり方についての論点」。4ページまでです。
 以上でございます。
 乱丁、落丁等がございます場合には事務局までお申しつけください。
○里見座長 ありがとうございました。
 皆さん、資料のほうはおそろいですか。何かあったら、どうぞお申し出ください。
 特にカメラは入っていませんけれども、冒頭のカメラ撮りはここで終わりにさせていただきます。
 それでは、議事に入ります。
 平成23年12月に開催した第4回検討会で、医療事故が発生した場合の原因究明や再発防止の仕組みについては、この無過失補償制度とは分けて議論しなければならないとの意見がありました。そこで「医療事故に係る調査の仕組み等のあり方に関する検討部会」を設けて、平成20年2月から13回にわたりまして議論を重ねてきました。先月の29日にその検討部会において「医療事故に係る調査の仕組み等に関する基本的なあり方」についてきちんとまとめられております。この取りまとめに関して、最初の報告事項として、資料2について、検討部会の座長でありました山本構成員から説明をお願いいたします。
○山本副座長 それでは、私のほうから御説明をさせていただきます。
 資料2ですが、最初に9ページをごらんいただければと思います。検討経緯がまとめられております。
 今、座長からもお話がありましたとおり、平成24年2月に検討を開始しました。当初は、関係団体あるいは構成員からのヒアリングを中心に論点の整理を行ったわけでありますが、その後、第4回ぐらいから、その整理した論点に基づきまして各検討項目についての議論をして、コンセンサスが得られる部分についてまとめていくという作業を行いました。その間、必要に応じましてヒアリング等も行ったわけでありますけれども、最終的には、10ページで、この3月以降、3回にわたりまして取りまとめに向けた議論を行って、最終的に先月29日にこの「基本的なあり方」という文書を取りまとめたということでございます。
 その中身でございますけれども、3ページ、まず「調査の目的」につきましては、原因究明及び再発防止を図り、これにより医療の安全と医療の質の向上を図るということで、原因究明、再発防止がこの調査の目的であるということを明確にしております。
 「調査の対象」につきましては、診療行為に関連した死亡事例のうち、行った医療・管理に起因して患者が死亡した事例であり、行った医療・管理に起因すると疑われるものを含み、当該事案の発生を予期しなかったものに限るということで、その事案発生が予期しなかった死亡事例に限るということになっております。死亡事例以外につきましては、この制度の運用を見て段階的に拡大していくという方向で検討するということでございます。
 調査の具体的な流れでありますが、これは資料7ページのポンチ絵のようなものをごらんいただきながらお聞きいただければと思います。
 まず、事案が発生いたしますと、医療機関の側からこの第三者機関に対して届け出が行われるということでございます。その後、院内調査を行い、御遺族等に対する説明が行われ、場合によってこの第三者機関に対して調査の申請が行われるということでございます。基本的には、この院内調査を中心にして調査を進める、この院内調査を第一義的に充実させるということが今回の報告の一つの主眼となっております。
 院内調査につきましては、先ほどの対象になるような事例が発生した場合には、医療機関は院内に事故調査委員会を設置するということでありますが、その調査に当たりましては、中立性・透明性・公正性・専門性という簡単から、原則として外部の医療の専門家の支援を受ける。そして、必要に応じて、その医療専門家以外の分野についても外部の支援を求めるということになっております。
 そして、そのような外部の支援につきましては、この図の左側のほうに「支援法人・組織(登録)」というものがございますけれども、その外部の支援を円滑・迅速に受けることができるようにするために、あらかじめ支援法人・組織として、都道府県医師会であるとか、医療関係団体、大学病院、あるいは学術団体等を登録する仕組を設けて、ここから院内調査における支援を受けることができる仕組みを設けることにしております。
 その調査につきましては、医療機関は遺族に対して調査方法を記載した書面を交付する。あるいは、御遺体の保存であるとか、関係書類等の保管を行う。また、その院内調査の報告書につきましては、御遺族に対して十分な説明をした上、開示をしなければならないということであります。ただ、この院内調査については、かなり細かい専門的な観点からの検討も必要であると考えられますので、その具体的な手順につきましては、今後、厚生労働省においてガイドラインを策定するということで、詳細はそのガイドラインに委ねることになるということでございます。
 以上が院内調査でございます。これが中心的に機能し、そして、それによって御遺族にその説明がなされて、御遺族が納得されるということが最も理想的なわけでありますけれども、場合によって、それを補完するものとしてこの第三者機関を設けるということであります。この第三者機関は、独立性・中立性・透明性・公正性・専門性を有する民間の機関として、全国に1つ設けられることを想定しております。
 この第三者機関の機能としては、この図の左側のほうに青い点線で「助言」とありますけれども、院内調査について医療機関から助言を求められた場合に必要な助言を行うという機能であるとか、医療機関から報告があった院内調査の結果について確認、検証、分析を行うという機能等も有するわけであります。最も重要なものとして、遺族、あるいは医療機関からの求めに応じて、この医療事故についての調査を行う。図の右側の「(5)申請」となっているところでありますが、この「申請」は、遺族、医療機関、双方から矢印が出ているわけであります。
 また、この申請というのは、基本的には院内調査が行われて、その後になされることが前提になっていますが、この7ページの図の一番下に注記として書かれているように、「院内調査の結果が得られる前に行われる場合もある」ということが想定をされておるわけであります。
 具体的な調査につきましては、図の「支援法人・組織(登録)」というところから「第三者機関」の「調査」のところに黄色の点線が引かれておりますけれども、第三者機関は、この支援法人・組織と一体になってその調査を行うことが前提とされているということであります。
 調査の際には、医療機関に対して協力を求めるわけでありますけれども、医療機関は、基本的にはその調査に協力すべきものである。仮に医療機関の協力が得られずに調査ができないという場合には、第三者機関はその旨を報告書に記載して公表することとされております。
 第三者機関が実施したこの調査報告書というのは、遺族及び医療機関に対して交付されるということでございます。
 この調査の費用であります。費用については、学会あるいは医療関係団体からの負担金、国からの補助金に加えて、調査の申請者、遺族、医療機関からも負担を求めるということが前提とされております。ただ、その際には、この制度の趣旨を踏まえて第三者機関への調査の申請を妨げることとならないような十分な配慮が必要であるということで、そのような十分な配慮に基づいて、負担のあり方については今後検討していただくということにしております。
 最後に、第三者機関からの警察への通報は行わないということであります。医師法21条については現行どおりということでありまして、医師法21条の要件に該当する場合には、現行どおり、医師から所轄警察署に対して届け出が行われるということを制度の前提としております。
 以上でございます。
 最後に、8ページに今回の検討部会の構成員の名簿が掲げられております。13回にわたり大変熱心に御議論をいただき、また、最終的にこの「基本的なあり方」をまとめていただきました構成員の皆様方に、この場をおかりしまして、座長として感謝を申し上げたいと思います。
 私からの報告は以上です。
○里見座長 ありがとうございました。
 山本構成員には、この検討部会の座長として13回の非常に白熱した議論をおまとめいただきました。ありがとうございました。
 ただいま報告いただきましたこの検討部会からの報告というのは、この親委員会のもとに設けられた委員会でありますので、ここに挙がってまいりましたものについては、ここでオーソライズといいますか、承諾する手続が必要かと思います。ただ、検討部会の構成員が16名おりますけれども、そのうち10名はここにいらっしゃる親委員会の委員がそのまま兼務しておりまして、それに6名の医療に関する専門家の方々を入れてつくられた検討部会であります。したがって、この親委員会で検討部会に参加をされていない委員は、ほとんどが地方自治体の方であるとか保険者側の方々であります。このまとめられた報告書は、医療側と患者さんも含めて法曹界等が入って一致して決まったことですので、大きな枠組みは余り変えずにこのままお認めいただきたいと思っております。もし、今お聞きして、この会議に参加をされていなかった自治体の方や保険者側の方で何か御質問等がありましたら承りたいと思いますけれども、よろしいですか。
 よろしければ、この検討部会での報告を、この親委員会での報告といいますか、了解事項として厚労省のほうにお返ししたいと思っています。今後これはどういう取り扱いになっていきますか。
○総務課長 私どものほうで、今、医療法等の改正法案の準備をいたしております。これは、病院・病床の機能分化でありますとか、医療提供体制全般にかかわるいろいろな法律改正を行うということで予定しているものでありますけれども、その中に、この医療事故の調査の仕組みにつきましても、法律事項として必要なものは盛り込んで、できるだけ早期に国会に提出していきたいと思っております。枠組みはそうした法律で定め、先ほど山本構成員からお話がございましたように、院内調査を初めとする詳細な手順、手続につきましては、これから専門家の方々も交えた場でガイドラインをつくっていきたいと考えております。そうしたことで進めていきたいと考えております。
 あわせまして、第三者機関をまず設立することが必要になってくるわけであります。現在、御案内のように、モデル事業につきましては医療安全調査機構、医療事故の問題につきましては、後ほど御説明がある日本医療機能評価機構でもさまざまな事業をお取り組みいただいておりますので、そうした2つの組織との関係も踏まえながら、新しい組織のあり方を具体的にいろいろ御相談しながら決めていくということを早急にやっていかなければいけないと思っています。しかも、全国津々浦々でこの第三者機関の調査が円滑に実施されますように、医療関係団体の幅広い御協力もいただく必要があると思います。そうしたことをやりながら、できるだけ早期に新しい制度がスタートできるように取り組んでいきたいと考えております。
○里見座長 ありがとうございました。
 法制化を含めて、ここでの答申をきちっと受けとめて、急いで行動していただくということでありますので、どうぞよろしくお願いいたします。
 この件に関してはよろしいですか。
 ありがとうございました。
 それでは、次の議題に入ります。資料3に基づきまして「産科医療補償制度について」ということです。これは、日本医療機能評価機構の後参考人のほうから現況の説明をお願いいたします。
○後参考人 それでは、資料3をよろしくお願いいたします。医療機能評価機構の後でございます。どうぞよろしくお願いいたします。
 こちらの第1回の検討会で産科医療補償制度について一度御説明させていただいておりますが、その後の状況も含めまして、きょう改めて御説明いたします。
 資料3の1ページ目と2ページ目で、まず、制度についてごくごく簡単に御説明させていただきます。
 1ページ目の一番上の大きな黄色い四角の「制度の目的」です。分娩時の医療事故では、過失の有無の判断が困難な場合が多く、裁判で争われる傾向があり、紛争が多いことが産科医不足の理由の一つであることから、安心して産科医療を受けられる環境整備の一環として制度が創設されました。本制度は、分娩に関連して発症した重度脳性麻痺児と家族の経済的負担を速やかに補償するとともに、原因分析を行い、同じような事例の再発防止に資する情報を提供し、紛争の防止・早期解決、産科医療の質の向上を図ることを目的としております。平成21年1月より、私ども医療機能評価機構を運営組織として制度を開始しております。
 2つ目の四角ですが、「補償対象」です。分娩に関連して発症した重度脳性麻痺を対象としておりますが、具体的には、1つ目の黒ポツで、出生体重2,000グラム以上かつ在胎週数33週以上、または在胎週数28週以上で所定の要件に該当するもの、身障等級1・2級相当の重症児であること、先天性要因等除外基準がございまして、それは除くことにしております。このあたりは後ほどもう少し詳しく御説明します。
 次の下の四角で、「補償金額」は合計3,000万円。内訳は、一時金600万円と、分割金、年間120万円掛ける20回、20年で2,400万円、合わせて3,000万円となっております。
 右に参りまして、「掛金」は1分娩当たり3万円です。
 一番下ですが、「加入促進策」として、この制度は民間の私どもが行っている制度ですが、国からも最大限の御支援をいただいております。加入促進策の1つ目の○ですが、診療報酬上の算定要件に本制度の加入を追加していただいております。
 2つ目で、本制度への加入分娩機関での分娩については、出産育児一時金3万円を引き上げていただいております。
 2ページ目にまいります。矢印が右左に動いている上の図で、産科医療補償制度の補償の仕組みについて御説明させていただきます。制度に登場する主体は4者あります。左側から、妊産婦・児、分娩機関、そして運営組織である私ども日本医療機能評価機構、民間の損害保険会社ということになります。
 まず、加入分娩機関は私ども評価機構との間で制度加入をしていただきます。そうしましたら、加入分娩機関はこの制度の補償ができる施設になりますので、今度は、妊産婦・児に補償約款を示していただきまして補償の約束をしていただきます。同時に、分娩機関からは1分娩当たり3万円の掛金を私ども医療機能評価機構を通じて集金いたしまして、保険会社に納めていくという格好になっております。そして、もし該当となる児が診断されましたときには、補償金が保険会社から妊産婦・児に支払われることになっております。これを一時金と年間120万円を20回の分割で20年にわたり支払い続けるということをしております。
 その補償のために、その前段階として、下の円柱の漫画の一番左側ですけれども、審査をいたしております。補償対象か否かを私ども評価機構で一元的に審査をしております。申請の期限は満5歳のお誕生日までということになっております。基本的には満1歳から申請可能ですが、重症で明らかに診断できる場合は6カ月から申請可能としております。
 真ん中ですが、原因分析をしております。医学的観点から分析して、分娩機関と妊産婦にフィードバックしたり、個人情報、個別医療機関情報に配慮の上、公表しております。
 そして、一番右側が再発防止です。1事例ごとに分析された事例を集めまして、体系的に整理・蓄積いたしまして、再発防止に関する報告書を取りまとめ、学会、あるいは行政機関などに御提供しているというものです。
 続きまして、3ページ、少し詳しく御説明させていただきます。
 まず、「1.制度加入状況」です。上2つの○はただいま申し上げたとおりです。
 2つ目の○です。特に、制度発足当時、産科医療の崩壊がかなり強く心配されていましたものですから、一刻も早く阻止するという観点から、その崩壊、あるいは悪化のスピードを超えるスピードで制度を創設するということで、民間保険を活用して早急な立ち上げを図っております。
 3つ目の○ですが、分娩機関の加入状況を表1にお示ししております。ごらんいただきますと、病院は100%加入しております。診療所が99.6%。全国であと7カ所未加入の診療所があるということです。助産所は100%加入しておられます。合計で99.8%という高い加入率を達成しております。
 「2.補償・審査」、「(1)補償の仕組み」はただいま申し上げたとおりでございます。
 少し補足で2行目からですが、分娩機関は3,000万円の補償金を支払うことによってこうむる損害を担保するために、運営組織である当日本医療機能評価機構が契約者となる損害保険に加入しているという格好になっております。
 「(2)補償の対象」です。先ほど週数・体重の基準などを申し上げました。そして、一番下の4つの黒ポツが除外基準になっております。分娩等とおよそ関係のない児の先天性要因ですとか、児の新生児期の要因、あるいは妊娠もしくは分娩中における故意または重大な過失とか、地震・噴火・津波とか、そういうことであれば除外ということになっております。
 先天性要因とは、具体的なイメージを申しますと、先天性の脳奇形などがありまして、これは分娩とは関係なく脳性麻痺になったということが明らかであると思われれば除外するようなイメージです。
 新生児期の要因と申しますと、産まれてしばらく正常で、その後、およそ分娩とは関係のない感染症で髄膜炎になって脳炎になった、そして脳性麻痺になったということであれば除外になります。しかし、分娩との関連が全く関係ないということでなければ対象になっております。
 続きまして、4ページ、「(3)補償金額」でございます。これは、3,000万円と内訳は先ほど申し上げたとおりでございます。その3,000万円は、児の生存・死亡を問わず給付することになっております。
 「(4)審査の概要」です。産科医や小児科医やリハビリの医師、あるいは有識者などの専門家から構成される審査委員会で審査を行っております。審査の累計は表2のとおりでございます。
 まず、縦の列には、児の生まれ年、審査件数、審査結果。補償対象になったもの、対象外になったもの。対象外となったものには2つの区分がありまして、永久に対象外となる「補償対象外」という区分と、審査の時期が少し早かったので重症度の判断がまだできないことから適当な時期に再申請が可能な「再申請可能」という枠がございます。平成21年が初年ということになります。横に行を見ていただきますと、審査件数230件中、補償対象が199件、補償対象外14件、再申請可能が17件あるという状況です。その後、年が進みまして、最後、合計ですが、これまで552件の審査を行いまして、その約9割の501件が対象になっております。そして、再申請可能も33件あって、対象外が18件ということになっております。
 表の下の○になりますが、先ほど申しました申請期限が満5歳のお誕生日までです。したがって、初年、21年生まれの児については、26年12月までに5歳の誕生日を迎えるということになります。その後、手続、審査を経ますので、最終的に補償対象者数が確定するのは平成27年中ごろとなります。
 続いて「3.原因分析」です。補償対象となった事案について医学的観点で分析しております。その下の○ですが、責任追及ではなく、なぜ起こったかなどの原因を明らかにして再発防止を提言するために行っております。
 一番下の○ですが、原因分析委員会は、本委員会とその下に6つの部会という構成になっております。そして、産科医、小児科医・新生児科医、助産師、また医療を受ける側の方などを加えまして分析を行っております。
 5ページ、ことしの5月現在、累計255件の報告書を作成しまして分娩機関と保護者に送付しております。
 その下の○で、報告書は個人情報に十分留意した上で公表しているということで、具体的には、その下の○で、要約版はホームページに掲載しております。個人情報をマスキングした全文版を学術目的等のために開示しております。
 図1は、原因分析の流れを示しております。左側から、分娩機関が診療録、助産録などに基づきましてたくさんの情報を提供していただきます。そして、真ん中の四角の運営組織で6つの部会を設けまして分析を行っているということでございます。
 「4.再発防止」、これも次のページに図がありますので、一緒にごらんください。
 まず1つ目の○ですけれども、分析された事例を体系的に整理・蓄積し、再発防止のための報告書を作成し、分娩機関や学会、行政機関等に提供しております。
 そして、一番下の○ですが、これまで3回報告書を公表しております。報告書では、具体的な技術的なテーマについて分析を行っております。具体的には、常位胎盤早期剥離の管理でありますとか、臍帯脱出の管理でありますとか、胎児心拍数聴取、子宮収縮薬、新生児蘇生、吸引分娩などのテーマについて分析を行っております。
 次の6ページ、報告書につきましては、関係団体、あるいは学会に御提供していることは申し上げたとおりですが、特に関係の深い日本医師会ですとか、産科婦人科学会、産婦人科医会等、関係8団体ございまして、そこにつきましては報告書の中に「学会・職能団体に対する要望」という項目を設けております。例えば、先ほどの常位胎盤早期剥離については原因が不明でありますので、これこれについて研究をしていただきたいというような要望が書き込まれておりますが、それらの検討を依頼する旨の文書も発出しております。
 次の○で、厚生労働省にも御協力いただいておりまして、都道府県保健所設置市・区などに周知に関しての通知を発出していただいているところです。
 図2が、再発防止の流れを示しております。
 続いて5に参ります。最近、制度に係るアンケート調査を行っております。
 まず「(1)本制度全般に関するアンケート」でございます。平成24年6月までに補償対象と認定された件数が327例ございまして、その保護者、あるいは分娩機関を対象にアンケートを実施しております。60%台の回収率が得られております。そして、「この制度があってよかったと思いますか」と、その理由に対する回答を図3に示しております。
 7ページをお願いいたします。まず、上の円グラフは保護者の回答でございます。「この制度があってよかったと思いますか」という質問ですが、回答としては「よかったと思う」が91%となっております。
 そして、そのよかったと思う理由をその下の四角の中に囲んで示しております。多いものから言いますと「補償金を受け取り、看護・介護に対する経済的負担が軽減した」ということでありますとか「原因分析が行われた」「脳性麻痺発症の減少に繋がると思う」「産科医療の質の向上につながると思う」という御回答がございました。
 下の円グラフは分娩機関の回答でございます。「よかったと思う」という御回答が83%ございました。その理由のところですが「補償金を受け取り、看護・介護に関する経済的負担が軽減した」というのが147件、「原因分析が行われた」という理由、「紛争の防止や早期解決につながると思う」「今後の産科医療の質の向上につながると思う」という御回答がございました。
 続いて8ページ、原因分析の部分に特化いたしましたアンケート調査も行っております。これは、22年と23年に報告書を送付したものが87件ございまして、この87件に対して、その次の年の23年7月にアンケートを実施しております。五十数%の回答率になっております。※印のところですが、分娩機関は、搬送元と搬送先という2つの分娩機関がかかわることがありますので、送付先が少しふえて99機関になっております。
 図4でありますけれども、「原因分析が行われたことは良かったですか」という設問に対する回答です。まず保護者の回答です。「とても良かった」が29%、「まあまあ良かった」が32%で、合わせて61%になっております。「あまり良くなかった」という御回答も、11件でありますが、24%ございました。
 その下に、「とても良かった」「まあまあ良かった」と御回答された理由について、多いものからお示ししております。「第三者による評価が行われた」「産科医療の質の向上に繋がる」「原因がわかった」「スタッフに対する不信感が軽減した」「その他」となっております。
 先ほど24%ございました「あまり良くなかった」、4%ありました「非常に良くなかった」と御回答された理由をお示ししております。一番多かったものは、「結局原因がよくわからなった」というものがありました。「分娩機関や医療スタッフに対する不信感が高まった」「今後の産科医療の質の向上に繋がるとは思えない」「公正中立な評価だと思えない」という理由がありました。
 これについて少し補足いたしますと、原因は全ての事象について解明できるものではございませんので、そのあたり、原因が不明であったという点が「あまり良くなかった」という御回答につながったものと考えております。
 御家族や分娩機関双方に言い分がある場合も多いですので、その言い分にそぐわない内容になっていた場合には「公正中立な評価だと思えない」というような御意見をいただくこともございます。
 9ページをお願いいたします。分娩機関の御回答です。「とても良かった」と「まあまあ良かった」を合わせて76%となっております。「あまり良くなかった」というものが2%、「非常に良くなかった」は0でありました。
 「とても良かった」の理由ですが、「第三者による評価が行われた」「今後の産科医療の向上に繋がる」などとなっております。
 「あまり良くなかった」「非常に良くなかった」という理由は、件数がかなり少ないのですが、「分娩機関や医療スタッフに対するご家族の不信感が高まった」「公正中立な評価だと思えない」などとなっております。
 少しお話が変わりまして、「6.制度収支」、この制度は、民間の損害保険会社の御協力を得て運営しておりますので、各保険年度の収支状況を公表しております。
 ○のところですが、保険期間は毎年1月から12月までの1年間となっております。
 各保険年度における収入保険料、それから保険金などの状況は以下のとおりということで、その下に表を掲載しております。最初の年が平成21年1月から12月となっております。縦の列を左から右に見ていただきますと、区分のところに保険年度がありまして、次が収入保険料です。100万分娩余りございますので、310億円から320億円ぐらいの収入保険料が毎年ございます。保険金(補償金)のところですが、これは既に支払ったものです。初年ですと194件に58億余りを支払っております。次の列が支払備金です。これは将来の支払いのために保険会社に用意してある備金でございます。これが207億円。各年度二百数億円から二百数十億円備金があるという状況です。一番右側の列、決算確定見込みですけれども、初年の21年でもまだ平成27年の中ごろに確定見込みであるという状況です。これは先ほど申し上げました。
 下の※印のところです。収入保険料のところに「※1」がついておりますが、これは掛金対象となる分娩掛ける2万9,900円の計算で算出しております。掛金は1分娩当たり3万円でございますが、その差の100円は、分娩機関が廃止となった場合に補償責任を引き継ぐための費用としております。
 10ページ、「(2)事務経費」でございます。審査や補償、支払いに関するさまざまな経費がかかっております。上の四角は「ア.運営組織」です。私ども評価機構ということになります。物件費が5億4,000万余り、人件費が1億9,000万余りでございます。合計で7億3,500万円となっております。私どもは、収支相償と申しまして、かかった分だけいただくということにしております。
 下の箱は「イ.保険会社」でございます。物件費が8億7,000万余り、人件費が5億3,000万余り。制度変動リスク対策費という欄がございますが、これが16億1,500万となっております。この制度変動リスク対策費と申しますのは、その隣の四角の中に5行書いてございますが、医療水準が向上する、例えば出生時の救命率が向上することなどに伴って、脳性麻痺児の生存率が統計データ取得時点より上昇する。救命率が上昇するのはいいことですが、そのかわりに重度脳性麻痺児となって生存していくということが考えられるリスクです。統計データの母数が少ないために推計値が大幅に外れるリスク。これは、制度設計時のデータはかなり限られたものでありますので、それが実際には大幅に外れていくリスクです。長期にわたる補償金の支払い。これは20年ございますが、その業務に伴う予期できない事務やシステムリスクなどに対応する費用でございます。
 保険会社の事務経費は合計して30億2,600万となっております。
 そして、一番下の○ですが、運営組織と保険会社の事務経費は合計で37億6,100万となっておりまして、収入保険料に占める割合が11.8%となっております。
 最後、11ページ「制度の見直しについて」でございます。
 1つ目の○です。産科医療の崩壊を一刻も早く阻止するということで、限られた地域のデータで早期に制度設計を行っております。
 2つ目の○ですが、このために、制度の準備のときの準備委員会の報告書には、遅くとも5年後をめどに適宜必要な見直しを行うと記載されております。
 3つ目の○で、そのために昨年の2月から事業の運営委員会におきまして見直しの検討に着手しております。
 4つ目の○で、補償対象範囲、補償水準などについては、補償対象者数の推計値等のデータが必要となりますが、申請期間は5年間でありまして、初年度の21年度生まれの児についても27年中ごろにならないとわからないという状況でございます。
 5つ目の○ですが、このために昨年10月に医学的調査専門委員会を設置しまして、補償対象者数の推計を行っているところでございます。その後、制度の運営委員会に7月1日の会議で報告される予定となっております。
 6つ目の○ですが、補償対象範囲、補償水準、剰余金の使途などにつきましては、制度の運営委員会及び厚生労働省の社会保障審議会医療保険部会において議論されることとなっております。
 7つ目の○です。一方、推計値のデータがなくとも検討が可能な課題がございます。例えば、原因分析のあり方ですとか、調整のあり方などでございますが、そういったことは既に順次議論を行っておりまして、現在、6月ごろをめどに議論の結果を「産科医療補償制度見直しに係る中間報告書」として取りまとめる準備を進めているところでございます。
 以上です。
○里見座長 ありがとうございました。
 大変詳しく説明していただきましたけれども、ただいまの報告について御質問等ございますでしょうか。よろしいですか。
 こういう制度がスタートとして、一応順調にいっているということですけれども、多分、いろいろな試算の仕方等に問題があっていろいろ剰余が出ていると思いますけれども、その辺についてどうするかということは後で決めるという理解でよろしいのですね。
○後参考人 それについても検討を進めております。
 1点補足です。何度か繰り返し申し上げましたけれども、重度脳性麻痺児の罹患率が日本では一体幾らなのだというデータは、制度発足当初ありませんので、それについて専門家にいろいろお尋ねしてもないということで、私どもが既存の数地域のデータからまとめたものです。それが、現実、数字としてだんだん見えてきているわけですが、実際にはその限られたデータと全く一致することにはなっておりませんので、今後、掛金のこと、補償水準のことなども含めて調整が必要になってくるということで見直しの作業をしております。
○里見座長 この辺がこういう制度を走らせる難しさだと思います。日本で1年間に大体100万分娩ぐらいやられているというのはわかっていると思いますけれども、そこで脳性麻痺の方々がどれぐらい生存しているかというのはデータとしてなかったので、多分800件ぐらいを想定していたところが200件ぐらいの結果だったということで今のはよろしいのですか。
○後後見人 800件は、幾つかの地域を調べました。これも県ですとか市の単位ですから、日本全体と比べますとかなり小さい地域になります。そこで調べた限りの最大値800件でも制度が耐えられるように設計しております。
 現在のところ、初年のお子さんの対象数が約200件でありますけれども、脳性麻痺児の診断も含めた自然死を考えますと、重症にならないようにリハビリテーションを頑張るという御家族が多いものですから、重症の診断というのはなかなかつけにくいということで、時間がかかるという面がございます。また、今後そういう方から申請があると見込んでおりまして、最終的には27年ごろにわかると思いますが、その前に推計作業も先行して行っているということでございます。
○里見座長 ということでございます。よろしいですか。
 何かありましたら、また後でも結構です。
 それでは、本日の本当の議題に入りたいと思います。「無過失補償制度のあり方についての論点」についての議論をしていただきたいと思います。ただ、この検討会は、前回開催してから日時がかなりあいておりますので、過去4回の議論で出された主な意見等を含めまして、論点について振り返る意味も含めまして、資料4と5を使いまして事務局から説明をお願いしたいと思います。
○医療安全推進室長 資料4と5を続けて御説明させていただきます。
 資料4は、23年8月の第1回から同年12月までの第4回無過失検討会での主な発言要旨をおまとめしております。特に今回、本日、無過失の議論になりますので、2番目の無過失補償制度のあり方について御確認をいただければと思います。
 まず、「(1)制度の仕組みについて」の中で主にいただいている発言をおまとめしておりますが、一番初めの飯田構成員の御意見。例えば、何かが起こったらたたかれる、たたかれても仕方がないものはそれでいいが、そうでないものをどうするかといったような論点があるのではないかという御発言があったかと思います。
 次のページをおめくりいただきまして、「(2)補償の対象について」も幾つか御意見をいただいております。里見構成員のほうから、過失の有無にかかわらず補償をするのか、過失がないものだけにするのか、大きな判断が必要だといった御意見ですとか、その下の宮澤構成員から、医療裁判の中では損害賠償の請求の対象にならない方が多く存在する、ここの部分をどう見ていくかといった御提言もあったかと思います。また、その下の加藤構成員からは、過失責任を問うことが難しい場合もあるでしょう、そういった場合に先行して無過失補償制度で補償するけれども、過失が明白なケースは医療者が賠償しなくてはならないと求償のことについても触れていらっしゃると思います。
 その下の「(3)制度設計にあたって注意すべきこと」というところでも、例えば高杉構成員から、医療というのはもともと不確実性であって、それを社会の仕組みとして不幸な結果となった方を救うということが本来の目的ではないかといった御提言ですとか、宮澤構成員から、そこの判断は非常に難しい、それが今後の医療にどのように役立てられるのかという議論も必要だといったような御提言があったかと思います。
 こういった御意見があったことを踏まえまして、事務局としましては資料5を御用意し、本日御議論いただくための論点をまとめさせていただいております。
 まず、1ページ目です。これは、先ほど山本構成員のほうからも御報告をいただきました、今般取りまとまりました医療事故調の制度についてまとめてございます。パラグラフが3つございますけれども、2つ目に、里見座長から御提言いただきましたように、無過失補償制度と医療事故調とは分けて議論しましょうということでこの取りまとめをいただいたわけです。今般いただいた報告に基づきますと、この対象者は死亡事例に限定していること、過失の有無は判断しないということを基軸としているといったものになったかと思います。
 次、おめくりいただきます。以上のことを踏まえまして、本日の議論の論点としては幾つかあると思うのですけれども、特に大きなもの、特に重要なものを3つほど挙げてございます。
 まず、補償の範囲なのですが、当該事案が医療行為に関連して発生したものかどうか、そもそも医療行為以外の要因によるものかどうかなどをどう判断するか。先ほどの議事録の中でも、その医療が不確実であって、不幸な結果となった方を対象にするといったお話があったかと思うのですが、その不確実というものの幅をどうするかとか、不幸な結果となった方というのはどういうものなのかといった判断があるのではないかと思っております。
 一方、破線で囲んでおりますのは、産科医療補償制度の場合を御提示しております。先ほど後理事からもお話しいただきましたように、産科医療補償制度の場合には、その分娩との因果関係が非常に難しいということから、ある程度明確なクライテリアを御用意しているということでございます。これを医療全般に広げたときのクライテリアの設け方というものは非常に難しい判断になるのではないかと思っております。
 2つ目の費用負担でございますが、こちらも破線の中に産科医療補償制度の枠組みを書いてございます。これは、御存じのように、分娩は保険診療ではございませんし、出産一時金という特別な環境にありますので、保険診療とは全く違う背景にあるといった中で、今般の保険診療全体に広げた場合にどなたがお払いするといった考え方が妥当なのかということを御議論いただかないといけないと思っております。
 また、「3.過失・無過失の認定」という項目を設けております。仮に、明確に過失がない、グレーゾーンの方を対象にしましょうといった場合には、それがグレーなのか真っ黒なのかといった判断をどなたかがなさらなければならない。いずれにしましても、加害者に明確な過失があると判断された場合には求償されることが自然でございますので、そういったところをどこが判断するかといったことも考えていただく必要があるかと思っております。
 一方、産科医療補償制度でどうなっているかということをまた破線に示しておりますが、ここは審査の過程で医学的観点から原因分析を行った際に、加害者といいますか、医療機関に損害賠償責任の成立要件となる過失があると判断された場合には、当該分娩機関との間で補償金と損害賠償金の調整を行っております。これが現実の産科医療補償制度の運用となっています。
 続きまして、「4.医療事故調査制度との関連」をいま一度ここにお示ししております。先ほども申し上げましたように、今般取りまとめていただきました医療事故調査の制度につきましては、その目的を原因究明と再発防止とするということから、その過失・無過失は問わない制度で御提言をいただいたところでございます。先ほど、産科医療補償制度を立ち上げる際に全国の脳性麻痺児の数字がないといったお話もありましたけれども、同じように、日本で起こっている医療事故の件数ですとか、そういったものの数字が現在のところではございません。その上で、当面、この医療事故調制度を動かすということでそういう数字が出てくるといったことも一つ考慮していただく必要があるのではないかと思いまして、このような資料をつくらせていただきました。
 以上です。
○里見座長 ありがとうございました。
 第4回までの議論のありようといいますか、主な意見というものを載せております。多分、思い出していただけたと思いますけれども、この委員会というのは「医療の質の向上に資する無過失補償制度等のあり方に関する検討会」ということでスタートいたしました。「無過失補償制度」だけではなくて、その前に「医療の質の向上に資する」という言葉があって、その定義等も含めていろいろ議論した結果、医療事故の調査の仕組み等のことをきちんと整理しなければその先に進めないのではないかということ。それまでの4回までの意見ですと、あるときには無過失補償のことについて話をして、あるときには医療事故の調査のことについてということで、議論がいろいろ錯綜しましたので、最初に医療事故の調査のあり方について検討した後で無過失補償について検討しますという流れできたということであります。それが大体まとまりましたので、今回は無過失補償について議論していただくわけですけれども、今、幾つかの論点を整理していただきました。主として4つほど挙げていただきましたので、それぞれについてここで御意見を伺いたいと思います。
 まず、補償の範囲というと、すぐ大上段で構えますけれども、皆さんどんなことを考えておられるか、もし御意見がありましたらどうぞ。
○宮澤構成員 補償の対象、補償範囲ということでございますけれども、本来の無過失補償制度というのは、医療の質に関する原因の究明と無過失の補償制度が両輪のような形で行われていくのが理想的であるというところが原則だったと思います。と考えていくと、医療事故に係る調査の原因分析の調査の対象、先ほど資料2のところで、「診療行為に関連した死亡事例(行った医療)」云々という形で調査の対象はもう限定されております。そうすると、この調査の対象になったものが補償の対象になっていくと考えるのが自然なのではないかというのが一つの考え方ではないかと思っています。したがって、補償の対象としては、この調査の対象と同様に「診療行為に関連した死亡事例」、後の括弧書きを含みますけれども、これを対象とするというのが原則ではないかと考えております。
○里見座長 ありがとうございました。
 それにかかる費用等の問題はまず抜きにして、原則論として今お話ししていただいたと思います。医療事故調査に入るようなものに関しては全て補償すべきだという御意見だということですね。
 どうぞ。
○加藤構成員 基本的に補償してほしいなと思うのは、特に遷延性の意識障害のような結果が医療行為によって発生したような場合、家族の負担とかいろいろなことで一番大変になると思うのですね。どういう場合にどういう範囲でというのは、いろいろなことと関連してくるので、切り離して補償の範囲だけを挙げていくというのは難しいのですけれども、当面、事故調査というのが一体的に行われなければいけないということは、私も宮澤構成員と同じ意見なのです。できることならば、どういう範囲でということの議論の中に、特に遷延性意識障害の後遺症を負ったような場合は救えるようなことをどこか念頭に置いて進めていただければと思っております。
○里見座長 ただ、医療事故にかかわる調査というものをスタートさせるのは、今回は恐らく死亡例だけに限っていると思いますので、それとちょっと離れて、新たにつけ加えて、意識障害の方だけは入れろという意見と考えてよろしいですか。医療事故にかかわる調査のスタートというのは、今回は答申でも触れられていますけれども、死亡した症例というものをある程度限定していると思います。ですから、それにリンクして補償するとなると、亡くなった方が対象になるのですけれども、加藤委員のお話ですと、意識障害というものを入れろということですので、その枠をそちらのほうまで少し広げなさいという御意見ですかとお伺いしたわけです。
○加藤構成員 スタートにおいて、この診療関連死についての事故調査の制度があるので、それに連動させて無過失補償の制度を立ち上げると考えるならば、そこからスタートということになるだろうということは私も了解しております。将来どう進めていくのかということにおいて、財源の問題とか、その他さまざまな問題があるので、やはり検討だけはしていく必要があるだろうという意味です。
○里見座長 ですから、要するに、無過失補償制度というものを医療事故の調査の枠組みと一緒に連動させるけれども、それ以外の分野のものについても検討してくださいというのが加藤委員の意見だということですね。
 ほかにございますか。
 有賀先生、どうぞ。
○有賀構成員 もともとこの親委員会の名前そのものが非常に難しいところから出発している。
○里見座長 そのとおりです。
○有賀構成員 資料4を見ながら、自分もこんなことを言っていたのだと思ったのです。もう忘れてしまっていましたが。今、加藤先生が言われるように、無過失補償というターミノロジーで思い浮かべる患者さんは、確かに、先生がおっしゃるような話は合点がいくのですね。つまり、こういうことを議論しなくてはいけない患者さんというのはそういう患者さんたちなのだよねとみんなが心の中で思い浮かべるという意味では、極めて自然な本件に関する思い。それは恐らく、医療者も患者さんたちも。遷延性の意識障害になってしまえば患者さんの御家族もそういうことを思う。そのことと、今、宮澤先生が言われた、そもそも車の両輪のこっち側がこうなったのだから、反対側もこのはずだという話は、実はサイエンティフィックに見えるのですけれども、「車の両輪」と言ったところで、実は言葉のあやみたいなところがあるのですね。本当に車の両輪なのだろうか。
 つまり、もともと親の委員会のプロセスで子供の委員会ができて、子供の委員会では、またWHOの話が出ますけれども、もともと医療安全を構築していくプロセスと、あなたに過失があるやなしやという話は別個のはずだという話が展開したわけですね。ですから、この無過失補償制度のあり方に舞い戻ってきたときに、子供はそういう意味では全く違うディメンションに行っているというか、違う価値規範の中に入っていると思うのです。
 当時「車の両輪」という言葉が出てきたことは、今、刻々と思い出していますけれども、本当にそれが車の両輪なのかどうかはむずかしい。という話は、産科医療制度の話をはたから見ていても、私たちが子供の委員会で議論したことと同じような難しさをどうやら秘めているみたいなところがあるようなので、のっけから、その対象だとか、お金をどうするかとか、今言った過失の認定ということでいきますと、子供で議論してきたことが御破算で願いましてみたいな話になるので、ここでの物の考え方をもう一回整理していただきたいというのが私の里見先生へのお願いみたいなところがあるのです。
○里見座長 私にですか。
○有賀構成員 だから、この最後にありますように、無過失補償制度について考えるには、「当面、新たな医療事故調査制度の実施状況等を十分に見極めた上で」とありますね。結局、車の両輪と言っていた、右だか左だかどっちかの輪っかは、そういう意味では、おまえに過失があるかないかというようなことでやっていくということには、結果的にはそうなりそうな部分があったにしても、そもそもそれとは違うところで議論してきましたので、急に元へ戻れと言っても、そうは簡単にはむずかしい。だから、右の輪っかと左の輪っかは運転手がハンドルを切ると一緒のほうを向きますけれども、場合によってはカメレオンの目みたいになっている可能性もあるわけですね。そういうことを言っているわけです。
○里見座長 では、まず、飯田先生、どうぞ。
○飯田構成員 私もずっと同じことを言っているのです。例えば、1回目~4回目の発言要旨の3ページの下のほうから4ページにかけて、私が発言したことがかなり書いてありますので、詳しくは言いません。要点だけ言いますと、産科医療補償制度でも、私は、準備委員会から運営委員会、ずっと今まで関与しています。今、有賀委員が言ったのと同じような発言を最初から最後までずっとしているわけです。そこでも、産科医療補償制度は非常に大事だけれども、いずれこれは医療全体に絶対広がるからちゃんとやりましょう、分けましょうという話をしましたが、いまだに分かれていない。この前も中間報告が出ました。5年目の見直しです。そこでも再度申し上げましたが、結果としては分けないという結論になっています。私は、それはおかしいと今でも思っているし、発言していますが、この検討会ではそれを分けていただいたので非常にありがたいし、そうでなかったらきちんとした議論はできないと思います。原因究明と補償は両方とも大事です。
 前にも発言しましたが、「無過失補償制度」という単語をきちんとわかって議論している医療界の人は少なかったのです。過失があろうとなかろうと補償してくれるのだ。最初はそうなのです。補償するのです。ところが、後で過失が認められたら賠償責任を負うということを理解しないで賛成した者も多く、主に産科の先生方から後からいろいろ問い合わせとか苦情が来ました。それは初めからそうなのに、皆さんがわからないのが悪いのだという発言をしました。無過失補償制度というのは、過失がなかった場合には全部そのままですが、とりあえずお金が行くのですが、医療機関あるいは当事者が賠償責任を全然負わなくていいというのではないということがやっと最近わかってきたわけです。ですから、それをきちっとしてほしい。
 無過失補償制度を成立させるためには、やはり過失の有無を判定しなければいけません。そういう意味では車の両輪です。ところが、大枠で言えば、原因究明を目的とするものと、補償するためには過失の有無を判定しなくてはいけないから、そのための原因分析なのです。同じ原因分析でも全然違うのです。そこをきちっと明確にやっていただかないと、ここでも議論が混乱します。同じ原因分析で、「車の両輪」という言葉でも、補償のための車の両輪は賛成しますが、そうではなく、原因究明を目的とした仕組みとは全然違う。それに対して当事者の対応が変わってくるということは、既に今までの経過から見えていますから、これだけは留意していただきたい。
○里見座長 では、宮澤先生、どうぞ。
○宮澤構成員 無過失補償制度は、基本的には、飯田構成員が言われたように、過失があっても無過失であっても補償がされる制度であるということをまず前提的に理解しておく必要があります。その意味では、過失を認定するとか、無過失を認定するとか、そういう必要は実は全くないのです。逆に言うと、ここでやってはいけないことなのではないかと思っています。それをやるのは裁判所、法的な評価の問題であって、医学的な評価を前提にして法的にどう判断するかというのは、こういう制度の中の後の問題だとはっきりと切り分けなければいけないと思っています。
 その意味では、最後に書いてある「3.過失・無過失の認定」というのは、そもそもこの制度の中には入ってこないという形で理解すべき問題だろうと思っています。
○里見座長 どうぞ。
○飯田構成員 これはまた再三同じことを言いますが、そのとおりです。ただ、産科医療補償制度の仕組みの中では、原因分析委員会では、報告書には過失の有無とか回避可能性その他は書かないことになっていますが、患者の遺族、あるいは家族から質問があったときには文書で書いているのです。それはおかしいと私は言っているのです。それも問題提起しましたが、やはり議論はそのままでいいということになりました。ですから、そこは宮澤構成員のおっしゃるとおりで、そうやってくれればいいのですが、実態としては、結果として責任追及になっているわけです。それで見直しのときも見直しを求めましたけれども、今まで問題が起こっていない、だからいいのだということで押し切られました。今まで問題が起こっていないのと、これから起こるのとは意味が全然違いますから、枠組みだけはきちんとしてほしいと思います。
○里見座長 議論が白熱してきましたけれども、ほかに。
 どうぞ。
○高杉構成員 事故調査のあり方検討会では、医療の枠の中でどういうことがあったかをきちんと調査して答える、それから先のことはこの委員会で話すことではないということで、山本座長のもとで結論をまとめたところです。今度は法的なことが入ってしまうと、ここで議論したくても話はまとまりはしません。我々は淡々とその結果を調査して報告する。その後のことは医療の枠の外。法的なことをここで議論されたら、我々が反発するのは当たり前ですし、医療は、そうではなくて真面目にやっている、しかし起きた結果を患者さんにどのようにきちんと説明していくかということがこのあり方検討会のまとめであります。我々日本医師会の基本的提言も間に合わずに、今回ちょっとまとめてまたごらんいただきたいと思いますけれども、基本的には、この事故調査のまとめ方は我々の考え方に沿ったものであります。我々医療界ではそれをきちんとそうする。その後の法的な処理は私たちは関与しない。それは皆さんが判断することだろう。
○里見座長 医療事故の調査の仕組みというのは、前の検討部会で検討して、これについては少なくとも今は亡くなった方で問題がある方についても検討しましょうということで一致したわけです。それについてはここでオーソライズされましたから問題ない。ただ、本題の無過失補償というのを一体どう考えるかというのがまだ全く共有されていない。多分、医療側で無過失であって、なおかつ、何か救ってあげたいような、補償したいような患者さんというのは、亡くなった方ではないという思いもどこかであるような意見が有賀委員から出されました。ただ、原因究明を別な資料として使われては困るというものも医療側からあると思います。そういう意見を踏まえて、無過失補償全体について皆さんはどういうイメージをお持ちか。皆さんの持っている無過失補償制度というものは一体どんなものか。全くのイメージという格好で結構ですから、私の考えている無過失補償というのはこんなもので、もし言えるのだったら、例えばこんな範囲の方々を救済したいということをちょっと発言いただけると、もうちょっと全体のイメージが共有できるのではないかと思います。
 なかなか難しくて、皆さんに急に黙ってしまいました。
 どうぞ。
○松月構成員 イメージということを言われましたので。私は、この無過失補償制度に期待するものとしては、医療を受けた患者さん遺族の方、または遷延性意識障害の方も含まれないと、無過失補償が一番必要なのは遷延性意識障害の方かなと現場では感じます。では、どういうところをこれで進めたいか。医療の質ということを考えますと、やはり医療に限界があるのだ、ここが限界なのだというものを広く国民と共有できる仕組みを期待。多分、フリーに言っていいのだと思って発言しますが、私はそのようなイメージを持っております。
○里見座長 ありがとうございました。
 どうぞ。
○有賀構成員 黙ってしまったと里見先生が言うのでしゃべります。
 要するに、例えば麻酔をかけて、そして麻酔から覚ます。そのときに麻酔から覚めない患者さんがいたとします。これは、ある病院の先生から、今まさにそういう患者さんにぶち当たってしまったという話を聞いたのですが、麻酔のプロセスとしては、血圧が乱高下するとかそのようなことはなくて、普通どおり麻酔が終わった。だけれども、脳血管障害というのですか、大きな出血があった。この場合には、もともと脳血管撮影などもやって困ったものがないということを前提にして全身麻酔をかけていろいろ作業していた。だけれども、神様がある日ある時、脳卒中を麻酔中に発症させてしまった。これは過失があるかないかと言われても、これは無過失ですね。
 私たちの病院であったのは、整形外科の手術なのですけれども、どう考えても整形外科の手術中に何かが起こっている。麻酔科の先生方を外から複数呼んできていろいろディスカッションするのですけれども、こういうことはどうやらまれにあるらしい。だけれども、本当のことはよくわからない。私たちも気の毒だなとは思いながら、かといって、訴えてくれればお金が出ますねというレベルではないので、そういう形での遷延性意識障害なり死亡なりというのはイメージとしてはわかりやすいのではないか。
 里見先生も、外科の手術中にというふうに何かのときに発言されたのは、多分そういう話で、術者から見ても、麻酔医から見ても、アンイベントフルで状況が推移したにもかかわらず、結果が全然違うというようなところで、無過失の補償の制度があるといいなという話なのではないかと思います。
○里見座長 有賀先生には、医療側の無過失補償というものに対する考え方を非常に端的にまとめていただいたと思います。ある一定の確率で何か予期せぬことというのは医療の中では起こる。そのときに、本当に過失があるのであれば、みんな保険制度に入っていますから保険でカバーしてもらえるのですけれども、そういうところはなかなかわからない。そうなると、保険でもなかなかカバーできない。そのときに医療側で考えるのは、何とかこういう方々を救える制度があればいいなと。医療やっている方々は、それがこの無過失補償制度だろうという思いを持って参加しているのではないかと私は思っていますけれども、違いますか。
 高杉委員、どうぞ。
○高杉構成員 医療行為というのは、注射にしろ、手術にしろ、何らかの侵襲を加えるわけですから、その中で起こり得ることが100%確実なことはあり得ないということをまず国民の方は知らなければいけない。無過失というと、その原因がよくわからないということで、医療もおろおろするだけで何も原因がわからない。しかし、この事故調査の仕組みというのは、どういうことで起こったかをできるだけ懇切丁寧に分析しようと。その結果が、今、無過失だけを議論されていますけれども、結局、どこかに原因をなすりつけなければしようがないという、国民感情というのは医療を救わないと私は思うのです。だから、きちんと分析して説明したら、わかったという仕組みが一番大切で、その後のことは訴訟になろうと仕方がないと思います。ただ、結果がきちんと説明できる仕組みの中で、これはどうも無過失だねというのは救えるでしょうし、それなりに原因がわかっている場合には民事訴訟でいく。今まで、それがなくて、いきなり警察に行って犯人捜しをしてしまうという仕組みが一番悪かった。そこのところを直すことで、無過失がどうのこうのということは大きな事象で考えなければしようがないのだとは思います。それをどのように救うかというのは、一つの大きな国家的な仕組みの中でやられるべきものだと私は思います。
○里見座長 直接的に刑事にいくというのは、今回のことを含めると、多分なくなるのではないかということを期待していますけれども、そういうものが守られなくてどんどん警察に事例が届けられていくという話になると、これは何のために制度をつくったかわからなくなりますから、今回の制度がきちんと法制化されて、組織ができ上がればそういうことはなくなると思います。ただ、この無過失の制度の中で皆さんがどういうイメージを持って、どういう方々を対象にしてこういう制度を設けようとしているのかということをちょっとお聞きしたかったので、今、総論的な話に戻しております。
 どうぞ。
○加藤構成員 無過失補償制度というのを考えるときに、一番に考えたのは、お産のときに低酸素性の脳障害、脳性麻痺が起きてくるようなケースについては補償してあげたいねというのが国民的なコンセンサスでもあったのだろう。そのような重い障害のお子さんを抱えての負担とかいろいろなことを考えて、社会的に手を差し伸べることが何とかできないかということで、税金の投入等がある意味では肯定されているのだろう思うのです。
 一方、目を転じて、疾患自体は致命的なものでも何でもないのに、麻酔の事故が起きて、低酸素性の脳障害の後遺症になっているというケースはあるわけです。そういう場合は、その重さというか、子供さんがそういう状態になったときに、介護等の大変さというのは同じような状況に置かれている。一方は、産科の無過失補償制度で補償され、一方は、過失が認定されれば、もちろん賠償ということになり得るのですけれども、それが認められなければその方の負担ということでしかない。もちろん、社会保障とかそういうのは別途あるとしても、基本的に同じような悲惨な状況が起きているのに、一方では、社会的なこういう無過失補償的なものが手だてとして準備されていないというのはいかがなものかというのは私の気持ちの中にあるわけです。
 ある治療行為をしたときに、多くの人はその治療の効果を得てハッピーになる反面、その医療の中に含まれているリスクの部分があって、それで不幸な結果を引き受けざるを得ない。これは医療だから仕方がないというのは、医療者の方々からよく聞くのですけれども、そういう医療の限界に属する部分がもしあるとするならば、実際にはあるのでしょう。そういうことに対して、社会がある種の連帯という思いで補償の制度を考えていくべきではないかというのが私の基本的な考え方なのです。
 そういう意味では、補償の範囲というのは、一番大変な、多くの医療者も社会の人々もみんながこれは何とかしようねというところからスタートし始めた。それで産科の補助制度はある。それに類推するものからだんだん広げていくというような考え方でアプローチしてはいかがなものか。そういうアプローチの仕方が現実的だろうと。そのときに財源とか補償水準とかさまざまなことが検討課題として出てくるので、それはできるところから徐々にぼつぼつと始めていけばいいのだと私は考えているのです。
 要するに、この補償制度を全ての場面でパーフェクトにやり切れるものからスタートしないといけないと考えるのではなくて、例えば実態の把握とかというようなことも、今、私が念頭に置いているのは、例えば心カテの検査というのがありますけれども、そういうものとか、脳の血管内治療とか、ある種の予防的な治療をやったりすることもあるわけです。そういうようなときに、思いがけずひどい後遺症を負ってしまったという場合は、特にそういう作為型の医的な行為が直接的に介在して、折れ曲がりが激しいという現象が起きている。そういうようなときには、術者にとってもとても気の毒だなという気持ちが発生するであろう。それは多くのお医者さんたちもそういう気持ちを持つだろう。
 そういうような場面は具体的にどのぐらいのケースがあるのだろうか。それぞれの学会が医療安全の視点からそういう事故の事例を集めて、きちっと実情を把握していただきたい。私はかねてよりそう思いながら発言もしてきたところです。そういうサーベイランスの、ある意味では医療事故情報を広く網羅的に集める仕組みづくりというのは、今回の事故調査のあり方を一つの契機として、文化的に我が国でも定着し広がっていく。そのことが長い目で見れば医療の質の向上にも資するのだろうと考えているので、一応、事故調査の議論でどこまでこういうことができるかということと、補償の問題というのは、現実の議論と、先ほど死亡事例に限るのかどうかというような差が起きたとしても、それはそれで今言ったような意味でディスカッションは進めていただきたいと思っております。
○里見座長 どうぞ。
○宮澤構成員 2点ほどあるのです。
 まず1点。ネーミングの問題なのですけれども、無過失補償制度と言っていると、過失・無過失というのが入ってくるような概念が出てきて、考え方が非常にばらばらになるのではないか。「無過失補償制度」ではなくて「医療事故補償制度」というようなネーミングにしたほうが、恐らく、過失・無過失関係なく医療事故に関して補償が出てくるのだということがはっきりするのではないかと思っています。その意味では、ネーミングを変えるべきではないかというのが第1点です。
 第2点。今、加藤構成員のほうからの御発言なのですけれども、ちょっと内容が理解できなかったのです。加藤構成員が言われたのは、例えば、脳血管治療によって重大な後遺障害が生じたような場合。死亡ではなくて、そのような場合にまで範囲を拡大するという御趣旨なのか。あるいは、事故の中でもそういう先端的な医療行為だけを対象とすべきだという御趣旨なのか。その趣旨をちょっと御説明いただければと思います。
○加藤構成員 御質問ありがとうございます。
 結局、医療事故補償制度ということでも構わないと思うのですけれども、そういうふうに補償するというときに、死亡事例については制度ができていくであろう。そういうものと相まって、その範囲内で補償するという議論があってしかるべきだというのは、それはそれで、先ほども述べたとおり了解です。そのほかに、今、補償の範囲はどうですかという座長からの振りだったので、私は、そういう無過失補償制度の一番必要としている部分というのは、もちろん死亡の例もあるのですけれども、低酸素性の脳障害の状態に陥ったというケースなどは必要な範囲に入ってくるのではないか。ですから、そのときには、その補償とあわせて事故調査というのは、制度としても、産科の補償制度のような形で原因分析なり何なりというのを整備していくということは私の頭の中にあるのですけれども、そのような形で拡大していくべきだ、そんなふうに考えての発言であります。
○里見座長 私の理解では、むしろ加藤先生の話というのは、ある限られたところからきちんとスタートしたほうがいいのではないかという意見のようにお聞きしていました。つまり、一気にたくさんのことを望んでも、補償制度というのはそんなに簡単にはスタートできないでしょう。そうすると、ある限定的なところからスタートするとなると、産科で脳性麻痺の方々についてそういう補償をスタートしたように、意識障害が遷延しているような方々についてのものを最初にスタートしたらいいのではないかというふうに私は理解して、それに起こる事例というのはどれだけあるかはまだ十分につかめていないので、まずはそういう事例の収集を始めたらどうでしょうかという意見だったように聞いておりましたが、それでよろしいですか。
○加藤構成員 はい。
○宮澤構成員 そうすると、補償の対象というものを、死亡だけではなくて、遷延性意識障害というような形に拡大するという御趣旨と考えたのか。それとも死亡は除いて遷延性意識障害を中心にすべきだという議論だと考えたのか。それはどちらですか。
○里見座長 私は後者だと思っております。皆さんの意見を聞いていましても、医療事故の仕組みというのは、確かに両輪だけれども、その死亡の症例だけに限って無過失補償を考えなくてもいいのではないかという意見で、本当に対象としたいのは、もしかすると、生存していて意識障害が遷延しているような方々というのが、今、最も先にやるべきではないかという判断をされる方もいるのだなと思います。ですから、一気にたくさんのことをやろうとしても無理だろうから、ある限定的なことをやろうとしたときには、最初に、加藤先生の意見としては、そういう方々はどうでしょうかという話になっていると思います。
 どうぞ。
○有賀構成員 座長がおっしゃるような話の筋そのものはわかりますけれども、遷延性意識障害に関して言いますと、多分、日本脳神経外科学会がもう何年も前に数を出していて、その原因も、内因性のもの、外因性のものを多分出している。だから、おおむねのところの数は把握できるとは思うのです。さて、今、加藤先生が言われた作為的なプロシージャーによって結果が云々と。ここに問題がある。
 その作為的といったところは、例えば救急医療などを見ていますと、私たちが救命救急センターで診なければいけないような患者さんは、どんなに少なく見積もっても半分ぐらいは意識障害がありますので、そのような意識障害の患者さんに作為的なことをするわけですね。つまり、転がり落ちてくる患者さんを何とか止めようとする。そこには極めて作為的な話がばんばん入る。その結果、遷延性意識障害に陥った。もしそれが医療事故だという形でその俎上にのったとしても、多分、私はきちっと説明できると思うので、究極的に医療者が寂しい目を見るとは思いませんけれども、この机上の議論だけをそのまま聞いていますと、そんなことはやめてしまえと。つまり、カテーテルを使って脳動脈瘤をやっつけるなどという話は金輪際やめた方がいいのではないかという話は場合によってはあり得るのですね。つまり、無作為なら許されて作為なら許されないのかという話だけで言えば。つまり、転がってくる患者さんについて頑張っている医療者の心意気をくじくようなことだけは何とかしてほしい。したがって、子供の会では一生懸命発言して、高杉先生が言われたみたいに、とにかく医療の中で決着できるところはやろうではないかという話なのだと思うのです。
 無過失補償の話は、先ほどから言っているように、車の両輪のようではありますけれども、丁寧に、飯田先生が言うみたいに、ある程度サイエンティフィックに分けて考えないと、またぞろ、もとの振り出しに戻るというような嫌なプロセスをたどるのではないかという懸念を持ちます。
○里見座長 豊田さん、どうぞ。
○豊田構成員 私、もうそろそろ退席させていただかないといけないので、こうしたらいいのではないかということがうまく表現できないまま退席してしまうので残念なのですけれども、私もこの10年近くの間、患者会の事務局をやらせていただいて、たくさんの患者さんの声を聞かせていただいているので、加藤構成員がおっしゃる、何かで救うことができないかとか、経済的負担がどれだけかかっているかということは、よく話を伺っているので、拡大して考えていただきたいのは、私もすごく願うところです。
 その一方で、これから医療事故調査制度を始めていこうという声が上がって、医療界のほうでこの医療事故調査制度のほうにしっかり力を入れていくと言っていただいたばかりですので、事故調査や検証をもう少し進めてからでないと、実際にどういうことが起きているのかというのが見えてこないのではないかと思うのです。
 今、有賀構成員がおっしゃったことも本当にそう思いますし、現実をもう少し見てからどういった補償をしていったらいいのかというのを検討していかないと難しいのではないかと思っています。
 私自身は死亡事故の遺族ですけれども、死亡事故の賠償額のほうが、重い後遺症を負った方よりも大きいものだと思い込んでいて、でもそれは実は多くの方がそう思っているのですね。実際には、死亡事故でない場合は、介護費用や育児費用がすごくかかって、経済的負担をとても強いられていることを後から教えていただきましたので、そういったことをもう少し具体的に出していかないと、この議論は難しいのではないかと思っています。この先、一切やめてほしいと思っているわけではないのですけれども、まずは事故調査制度をしっかりしていただいて、現実に患者さんの側にどういうことが起きているのか。そして、医療側にもどういうことが起きているのか、両者を一緒に見てから議論を進めていかないと難しいような気がしています。
 意見として曖昧な言い方なのですけれども、今日もそうですが、双方のお話を聞いていて、本当にそうだなと思うことばかりです。産科医療補償制度も批判はあるかもしれないですけれども、現実にどういった事故なのか、どういった問題が起きているのかというのは見えてきたところがありますので、調査や検証を進めていくことがまずは大切ではないかと思いました。
○里見座長 大変貴重な意見をありがとうございました。やっと医療事故の調査の仕組みというものがきょうここでオーソライズされて、それを早目に法制化しようという形での動きを厚労省は多分とっていただけると思います。今のところ、残念と言ったら変ですけれども、我々の力量といいますか、医療界を含めていろいろなところの力量からいって、調査の対象になるのは、死亡症例、亡くなった方々を対象にしましょうということになっています。いずれこれがうまく軌道に乗っていくと、もう少し範囲を広げて、多分、重症な後遺症を持った方々についても調べていこうということになると私は信じております。そうなったデータを見たところで、実際に医療界に何が起きているかということを十分に分析した上で、このような無過失補償という制度を少し考えないと、今ここで議論をするにはデータが少し不足しているのではないかという指摘だったという気がいたします。
 私もきょうの議論を聞いていまして、まずは、実際に山本先生のところでまとめられたあの制度をきちんと日本で定着させて、それでもって初めて医療界の中身を十分に理解したところで、もう一度この無過失補償というものを考え直すような会議を開くというのが一番ベターな進め方かなという気がしております。
 ちょっと先送りをした感じがしないわけでもないのですけれども、皆さんを聞いていますと、いろいろな意見がたくさんあって、イメージ、お互いの持っている同床異夢的なところもたくさんあるので、なかなか前に進められないのではないかという気がします。その意味では貴重な意見です。
○豊田構成員 掛金の費用負担の問題などもあって、医療事故調査制度のほうも、当該医療機関だけで本当に負担できるのかという懸念からしても、費用の問題はまだまだ解決していないと思うのです。私たちからすると、そこの部分が抜け落ちてしまうことが非常に心配で、やはり患者側は原因究明を願っていますので、まずそこからしっかり始めていただきたいという思いがあって発言させていただきました。ですので、無過失補償制度が全くないほうがいいと思っているわけでは決してないですし、でもだからこそ一つずつやっていかないと、この医療事故調査制度も、とまったりしながら6年もかけてまとまった話だと思いますので、そこをしっかりやっていただきたいという願いが強くあります。
○里見座長 どうぞ。
○飯田構成員 私も豊田構成員のおっしゃることに大賛成です。私どもの勉強会でも、随分昔ですが、無過失補償制度をかなり考えました。薬害補償の制度を参考にしようと思ったら、とてもではないけれど、財源が違う。結局、お金がないと、幾らやりたくてもできないのです。ですから、私も全く同じ考えです。
 産科医療補償制度も、後理事がおっしゃったように、今あるデータを参考にしてやったということで、結局、その統計データというのは非常にスモールサイズですので、結果としては当たらなかった。もしこの無過失補償制度をつくるとしたら、それをきちっととっておかなければいけません。財源の確保と、どれだけのデータがあるかを確認しないと枠組みがつくれないと思いますので、私も大賛成です。
○里見座長 では、まず、松本委員、どうぞ。
○松本構成員 ありがとうございます。
 保険者の立場として、やはり患者さん、その家族のことをよく考えていかないといけないと思いますし、そのような中で、豊田構成員の意見というのは大変重要だと思います。そのような意味では、現状がよくわからないという点においては、まずは、医療事故調査制度のところで、確かに対象は死亡事例ということで最初は限定されていますけれども、ここで動き出して実態をよく見てから次のステップでもいいのではないか。座長もおっしゃいましたけれども、この報告書の中には「調査の対象」というところで「死亡事例以外については、段階的に拡大していく方向で検討する」ということも書かれておりますので、まずは死亡事例と限定して、今、医療現場で何が起こっていて、患者さんがどういう思いをしているのかということについてある程度データが出てから、次のステップを考えていくべきではないかと思っています。座長、あるいは豊田構成員の意見、飯田構成員も同じような意見を言われましたけれども、そのような意見に賛成でございます。
○里見座長 では、宮澤委員、どうぞ。
○宮澤構成員 私だけちょっと違う意見なのですが。
 数字的な根拠がなければ議論にならない部分というのは確かにございます。今回の産科医療補償制度でも、5年の見直しという形でやっておりますけれども、その見直しの部分に関しても、2種類、二本建てでやっているという状況になっています。それは、数字のエビデンス、ベースがなくても議論できるあり方の問題と、もう一つは、数字を基本にした費用をどうするかという問題という形で、二手に分かれていく議論だと思っています。無過失補償制度、補償制度に関する部分というのは、補償の水準とか、その収支の内容を幾らぐらいにするかというのは、もちろんそれは事実的な数字がなければ議論できないところだと思いますけれども、本来、制度がどうあるべきか、どのような形にしていくべきか、枠組みをどうすべきかというところは、数字の基礎がなくても議論ができるところではないかと思っています。
 そういう議論を何回もしていかないと、恐らく、制度というのはでき上がっていかないだろうと思っています。その意味では、ここで1回、数字のエビデンス、ベースがなくてできる部分に関してはきちんとした議論をしておくべきであって、その形を残した上で、さらにその数字が出てきたときにどうするかを議論すべき。そして、形ができていくということを段階的に考えるべきではないかと思っています。今ここで数字がないからといって、基本的な枠組みを放置してしまうのは、制度の成立を非常におくらせる危険があるのではないかと私は思っています。
○里見座長 ありがとうございました。
 どうぞ。
○有賀構成員 宮澤先生がそういうふうに言うので、話が錯綜して、むしろ困るのではないかということを私は言っているわけです。子供の会議では、調査や分析に関して言えば、医療事故の再発防止なのだね、事例を収集して分析しながら、もっと安全で安心な医療をつくっていこうねという話ですね。そのときには、過失という話はとりあえず横に置いておこうとなっています。先生が畳の上に寝っ転がって天井を見ながらいろいろなことを考えても構いませんけれども、子供の会議で議論したことをまた親の会で議論し続けるという話について言うと、やはりごろごろしてしまう。ごろごろというのは、畳の上でごろごろではなくて議論がごろごろする。だから、それはそれとして考えなければいけないということはあるけれども、こちらで高杉先生たちと一緒に頑張ろうではないかと医学部長病院長会議も言っていますから、しばし。そういう意味でみんな言っているのです。
 先生が考えてくださるのは一向に構わないと思います。ただ、この枠組みで話を転がすと、子供の会議でああなったのは一体何だったのだろうと。多分、都道府県医師会も、ばかばかしいからやめてしまえみたいな話になりかねませんので、医学部長病院長会議はそういう意味で一生懸命発言してきた。だから、先生、車の両輪、車の両輪ということになってはいますけれども、実は本当に両輪なのかというところからも議論があるということだけは理解していただかないといけないと思います。
○宮澤構成員 もちろんそれは理解するのですけれども、私の発言がちょっと誤解されているような気がしてしようがないのです。私の発言のどこが子供の検討部会で行ったことをひっくり返すというふうに捉えているのかよくわからないのです。私は検討部会でやられたことはそのまま了承しているわけです。それを前提にしながら無過失補償のことを考えていこうと言っているだけであって、検討部会で行われたことをどこかいじっているとか、どこか覆しているとか、議論を蒸し返しているという部分は、少なくとも私の発言の中ではなかったと思うのです。
○有賀構成員 もともと、この「医療の質の向上に資する」という形容詞と「無過失補償制度等のあり方に関する」という部分については、いわゆるディメンションが違うというか、価値規範が違うということは初めのころからわかるわけです。それでもって子供の議論に参加しているわけです。ですから、この題名「第5回医療の質の向上に資する無過失補償制度等のあり方に関する検討会」で子供の議論を持ち込むと混乱しますよということを言っているわけです。先生には、そういうところについての理解が恐らく乏しいのではないかということを心配しています。
○里見座長 大変白熱して困りましたね。
 どうぞ、岩井さん。
○岩井構成員 今までずっと議論に加わらせていただいて、患者ご遺族の方の御希望というのは、とにかく原因がわからない、その真相を知りたいという御意見が非常に強かったと思うのです。このたび医療事故調査制度が発足する見通しがつきましたので、その希望というものはかなり前進すると思うわけです。
 原因がわからない事故というものがかなり多くて、そのための補償が全然なされないところが問題だというのだったら、無過失補償制度についてかなり考えなければいけないわけですけれども、どの程度の損害額を生じていて、それが補償されないためにどの程度の被害が出ているかということ、それももう少し見きわめなければいけないのではないかと私は思っております。
○里見座長 ありがとうございました。
 所定の時間がだんだん近づいてきて、どうまとめたらいいかということにちょっと苦慮しております。
 確かに、医療の質の向上に資する無過失補償制度のあり方の議論がスタートして、医療事故をどのように調査していくかという枠組みが、少なくともこの委員会が開かれて、そのサブ委員会が開かれたということでまとまったということだけはあると思います。これは、見方によってはちょっとした進歩かもしれませんけれども、我々医療界から見ますと、医療界のほとんど全ての構成員がほぼこれに賛成して、まさにこういう制度をスタートさせるのだということが決まったということは非常に大きな出来事で、多分、医療の歴史の中では、どこかで振り返ってみるとすごくいいスタートになったのではないかと思います。その意味では、多分、厚労省もいろいろ準備すると思いますけれども、それをきちんと見きわめて、実際に起きている医療事故の中身の精査をきちんとやった上で、早い時期にまたこの委員会が立ち上がるようにしたいと思っております。
 そろそろ、私がそういうことを言ったときに厚労省としてはどう考えているかを少しお聞きしたいと思いますけれども、どうぞ。
○総務課長 今、座長からおまとめいただいたとおりではないかと私どもも認識しております。論点を挙げれば切りがないのですけれども、今日、改めて基本的な部分の論点を示させていただいて、御議論いただいたわけであります。私ども、その中でも一番の問題は費用負担だと思っております。今日も、その点について具体的な議論がないというのは難しさのあらわれでもあると思っております。
 こうした論点について具体的な議論をしていただくに当たりましては、やはりデータが必要なわけでありますけれども、残念ながらそれはない。今日、さまざまな構成員から御指摘いただきましたように、この事故調の仕組みをまずはしっかりとしたものにして立ち上げるということが大事ではないかという御指摘もいただきましたので、私ども、まずはそれに医療界の皆さん方とともに専念させていただき、そして必要なデータが出ますれば、そうしたことをもって、無過失補償制度について改めてどうするかということをその時点でまた考える必要があるのではないかと思っております。
 引き続き、各構成員の皆さん方には、さまざまな立場でいろいろな御協力、御支援をお願いすることになろうかと思いますけれども、よろしくお願いできればと考えております。
○里見座長 どうぞ。
○加藤構成員 まずはしっかりと事故調査を進めていくのだと。それはとても大切なことで、全く異論のあることではありません。ここで若干希望しておきたいのは、そういうデータ不足であるがゆえに、あるいはしばらく経過を見てからというのは、今までこういう制度をつくるときに、5年、10年という単位で、多分、無過失補償の制度というのは入り口に入れなくなってしまうのではないかという心配を私は感じているわけです。できれば、各学会が、例えばどのような重度の事例が発生しているのか。これは、有賀構成員が救急の場面のことをおっしゃいました。確かに、心停止で担ぎ込まれてきて、いろいろな医療行為をやって低酸素症が残ったという例もあるだろうと思うのですけれども、そういう場合に、要するに、医療事故によってそういう障害が残ったのかという問題の議論になってくるのです。無過失補償制度、あるいは医療事故補償制度のときの医療事故とは何か、あるいは医療事故によってそういう低酸素症が後遺症として残った、その判断の問題になってくる。
 あわせて、ある医療行為が許されるとか許されないとかというお話もちょっとあったのですけれども、無過失補償制度というのはそういう話ではなくて、むしろ生じた結果に着目して、そこに社会としてどのように支援をしていくのか、そういう問題として切り分けて考えなければいけないもの。できれば、その辺の共通認識だけはここでしておいていただいて、しばし、まずはしっかり事故調査を進めるということに私は賛成するのです。重い障害が医療行為に起因して発生してしまうという事例がそれぞれの分野でどのような頻度で起きているのかというサーベイランスがきちっとなされる必要があるだろうと思っておりますので、その点だけ発言させていただきたいと思います。
○里見座長 ありがとうございました。
 恐らく、先生が切り分けると言ったものの切り分け方がまだ十分に議論、認識されていない、お互いに共通になっていないというところが非常に大きな問題であって、それを過失がある過失がないと判断を入れ始めると、また議論が錯綜するということで、その辺のことも含めてある種のデータがもうちょっと出てこないとなかなか議論しにくい問題があるのだなと考えます。
 もうそろそろ時間になります。これまで5回やっていただきまして、ある意味では、この無過失補償については十分に話ができなかったわけですけれども、医療の事故の調査の仕組みというものがきっちりとでき上がりましたので、今度はそれをきちんと法制化するということを我々はぜひ見守って、厚労省が怠けるようだったら尻をひっぱたいてでも前へ進ませるようにしたいと思います。しばし休会ということになるかと思いますけれども、また時期を見て、多分、厚労省のほうから皆さんにお声がけがあると思います。そのときにはどうぞまた集まっていただければと思いますので、終わりにさせていただきます。どうもありがとうございました。


(了)
<〈照会先〉>

医政局総務課医療安全推進室
室  長:大坪(内線2570)
室長補佐:井上(内線4105)

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